法制審議会刑事法(裁判員制度関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成18年12月18日(月)  自 午後3時00分                         至 午後5時40分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 部会長の選出について         2 裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のための法整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(裁判員制度関係)部会の第1回会議を開催いたします。 ● 法務省の官房審議官をしております○○でございます。本日は御多用中のところ,この裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のための法整備に関します審議のためにお集まりいただきまして,ありがとうございます。   まず最初に,私から本日この会議が開催されるに至りました経過などについて,ごく簡単に御説明をいたします。   去る11月20日,法務大臣から裁判員制度の円滑な運用に関する諮問ということで,諮問第81号が諮問されまして,同日開催されました法制審議会第151回会議におきまして,この諮問につきましては,まず,部会で審議をする旨の決定がされたところでございます。その会議におきまして,この諮問を審議するための部会といたしまして,刑事法(裁判員制度関係)部会を設けることが決定されまして,その部会を構成すべき委員,臨時委員,幹事につきまして,法制審議会の承認を経て,会長から指名され,本日お集まりいただいたということでございます。 (委員,幹事及び関係官の自己紹介省略) (部会長に川端博委員が互選・指名された。) (部会長代行に椎橋隆幸委員が指名された。) (松尾浩也法務省特別顧問の関係官としての出席が承認された。) (事務当局から,会議用資料等の公開について,法制審議会第151回会議における決定事項につき報告がされた。) ● それでは,先の法制審議会総会におきまして,当部会で審議するように決定のありました諮問第81号について審議を行います。   まず諮問を朗読していただきます。よろしくお願いします。 ● それでは,朗読いたします。 諮問第八十一号   裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のために,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。 別紙         要綱(骨子) 第一 部分判決制度  一 区分審理決定   1 裁判所は,同一の被告人に対し公訴が提起された数個の対象事件(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条第1項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件をいう。以下同じ。)の弁論を併合した場合又は同法第4条第1項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において,併合した事件(以下「併合事件」という。)を一括して審理することによる裁判員の負担を考慮し,その円滑な選任を確保するため特に必要があると認められるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で,当該併合事件のうち一部の事件を区分し,順次,この区分した事件(以下「区分事件」という。)ごとに,審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができるものとすること。ただし,犯罪の証明又は被告人の防御に支障を生ずるおそれがあることその他相当でないと認められるときは,この限りでないものとすること。   2 区分審理決定につき即時抗告の規定を設けること。  二 区分事件の裁判等   1 部分判決   (1) 裁判所は,区分事件に含まれる被告事件について,犯罪の証明があったときは,刑事訴訟法第333条及び第334条の規定にかかわらず,部分判決で有罪の言渡しをしなければならないものとすること。   (2) 部分判決で有罪の言渡しをするには,刑事訴訟法第335条第1項の規定にかかわらず,罪となるべき事実,証拠の標目,必要な範囲の法令の適用並びに法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実及び刑を加重減免する理由となる事実を示さなければならないものとすること。   (3) 裁判所は,部分判決で有罪の言渡しをする場合,犯行の動機,態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する事実並びに没収,追徴又は被害者還付の要件である事実及びその根拠となる規定の適用を示すことができるものとすること。   (4) 裁判所は,区分事件に含まれる被告事件について,刑事訴訟法第329条の規定による管轄違いの判決,同法第336条の規定による無罪の判決,同法第337条の規定による免訴の判決又は同法第338条の規定による公訴棄却の判決の言渡しをしなければならない事由があるときは,部分判決でその旨の言渡しをしなければならないものとすること。   (5) 部分判決には,独立して不服申立てをすることができないものとすること。   2 構成裁判官による部分判決   (1) 裁判所は,区分審理決定をした場合において,区分事件が対象事件を含まないときは,当該区分事件を裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条第1項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)の合議で審理する旨の決定をすることができるものとすること。   (2) 裁判所は,(1)により区分事件につき審理をした場合は,構成裁判官の合議により,当該区分事件につき部分判決をしなければならないものとすること。   3 終局の判決   (1) 裁判所は,区分事件の審理及び裁判の後,併合事件の全体について,終局の判決をしなければならないものとすること。   (2) 裁判所は,併合事件の全体についての終局の判決をするときは,部分判決に係る事項についてはこれによるものとすること。   (3) 裁判所は,併合事件の全体についての終局の判決をする場合において,構成裁判官の合議により,部分判決に刑事訴訟法第377条,第378条又は第383条の事由があると認めるときは,職権で,当該部分判決によらない旨の決定をしなければならないものとすること。  三 部分判決制度における裁判員等の選任手続等   1 区分審理決定をした場合における区分事件を審理する裁判員及び補充裁判員の選任は,区分事件ごとに行うものとすること。   2 裁判員及び補充裁判員の任務は,その審理する区分事件について,部分判決を告知したときに終了するものとすること。   3 裁判所は,部分判決の告知により裁判員及び補充裁判員の任務が終了したときに裁判員及び補充裁判員に選任されたることとなる選任予定裁判員をあらかじめ選任することができるものとすること。 第二 証人尋問等の記録媒体への記録  一 裁判所は,対象事件及び裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第4条第1項の決定に係る事件の審理における証人等の尋問及び供述並びにその状況等について,評議等における裁判員の職務の的確な遂行を確保するため必要があると認めるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができるものとすること。ただし,事案の内容,審理の状況,供述又は陳述をする者に与える心理的負担その他の事情を考慮し,記録媒体に記録することが相当でないと認めるときは,この限りでないものとすること。  二1 一の場合において,刑事訴訟法第157条の4第1項に規定する方法により証人尋問を行うときは,証人の同意を要するものとすること。   2 1により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体は,訴訟記録に添付して調書の一部とするものとすること。ただし,裁判所は,当該証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがないと明らかに認められるときは,当該記録媒体を訴訟記録に添付しないことができるものとする こと。 第三 公判調書の整理    公判期日から判決を宣告する日までの期間が10日に満たない場合の当該公判期日の公判調書の整理期限を伸長し,当該公判期日から10日又は判決を宣告する公判期日から7日のいずれか早い日とするものとすること。 第四 その他所要の規定の整備を行うこと。   以上です。 ● どうもありがとうございました。   次に,事務当局から諮問事項について説明をしていただきます。よろしくお願いします。 ● それでは,今読み上げました諮問第81号につきまして,提案に至りました経緯,諮問の趣旨等について御説明をいたします。   平成16年5月21日,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立いたしまして,5月28日に公布されました。この結果,平成21年5月までの間に裁判員制度が始まることとなっております。   裁判員制度の意義は,広く国民が裁判の過程に参加し,その感覚が裁判内容により反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解や支持が深まり,司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるということであります。   こうした裁判員制度を円滑に運用するためには,それぞれ職業などを持つ裁判員の負担が著しく大きなものとならないようにするとともに,迅速かつ充実した審理を行うことが重要であります。   この点,現行の刑事裁判実務では,同一の被告人に対しまして複数の事件が起訴された場合,これを併合して審理するということが一般的であります。   このような事件の中には,審理期間が長期に及ぶなど,裁判員の負担が大きいことが見込まれる場合もありますが,このような場合においても裁判員制度の意義を全うするためには,長期間の審理に応じられる国民のみならず,幅広い層から,より多くの国民に積極的に参加してもらい,健全な国民の感覚をより一層裁判に反映できるようにすることが重要であると考えられます。   そのため,裁判員制度の下において,裁判所に同一被告人に対する複数の事件が継続した場合に,一部の事件を区分し,区分した事件ごとに審理を担当する裁判員を選任して審理し,有罪・無罪を判断する部分判決をした上で,これを踏まえて,構成裁判官,裁判員で構成される裁判所が全体の事件について終局の判決をするということができる制度を創設することによりまして,裁判員の負担を軽減し,積極的に参加してもらえる法整備を行う必要があると考えられるところであります。   また,裁判員の参加する評議等を充実したものとするために,裁判員裁判の審理における証人尋問等を記録媒体に記録できるようにするとともに,連日的開廷等に対応するため,現行の公判調書の整理期限を伸長することも必要と考えておりますので,これらにつき御議論いただきたく,今回の諮問に及んだところであります。   今回の諮問に際しましては,事務当局におきまして検討いたしました案を要綱(骨子)としてお示ししてありますので,この案をもとに具体的な御検討をお願いいたしたいと思います。   要綱(骨子)の内容の詳細は幹事から説明をいたしますが,この諮問第81号につきましては,ただいま申し上げましたように,早急に国会に法案を提出いたしたいと考えておりますので,十分御審議の上,できる限り速やかに御意見を賜りますよう,お願い申し上げます。 ● 続きまして,要綱(骨子)の内容について御説明をいたします。   要綱につきましては,お手元に資料1として配布してございますので,適宜御参照いただければと存じます。なお,便宜上,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」につきましては「裁判員法」と,裁判員法第2条第1項の規定により,同項の合議体で取り扱うべき事件については「対象事件」と,裁判員法第2条第1項の合議体の構成員である裁判官のことは「構成裁判官」といって,以下御説明をいたします。   初めに,要綱第一は部分判決制度に関するものでございます。   まず,第一の一にございます「区分審理決定」について御説明いたします。区分審理決定とは,同一の被告人に対し公訴が提起された数個の対象事件の弁論を併合した場合又は裁判員法第4条第1項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において,一部の事件を区分し,順次,この区分した事件ごとに審理する旨の裁判所の決定です。   この区分審理決定により,対象事件を含む複数の事件の弁論が併合された場合において,一部の事件を,併合された他の事件と区分してその審理対象とした上で,当該事件に関する部分判決がなされることになります。   第一の一の1は,裁判所が区分審理決定をするに当たっての要件に関するものです。裁判所は,区分審理決定をするに当たっては,「対象事件を含む複数の事件を一括して審理することによる裁判員の負担を考慮し,その円滑な選任を確保するため特に必要があると認められるとき」に行うものとしております。これは,複数の事件が併合され,審理の長期化が見込まれる場合,裁判員の負担が著しく大きいために,裁判員を円滑に選任することが困難となることがあっては,裁判員制度の円滑な運用に支障を生じることになるため,裁判員の負担を考慮し,円滑な選任が確保できるか否かを区分審理決定の基準とするものです。   一方,手口が共通した特殊な犯行である場合など,併合された各事件が相互に補強しあう関係にある場合や併合された被告人が反証する事項が併合された個々の事件すべてに共通している場合,さらには区分審理によって立証の著しい重複が生じ,証人に過重な負担を強いることになる場合など,一定の場合には区分して審理することが相当でない場合もあり得るところです。そこで,「犯罪の証明又は被告人の防御に支障を生ずるおそれがあることその他相当でないと認められるとき」は,区分審理決定を行わないこととしております。   また,犯罪の証明や被告人の防御に支障を生じるおそれ等が存在する場合に,これに反して区分審理決定がなされた場合などには,当事者としてその決定を是正する必要があることから,第一の一の2において,区分審理決定につき即時抗告の規定を設けることとしております。   続いて,第一の二は「区分事件の裁判等」に関するものです。まず,第一の二の1の「部分判決」について御説明いたします。裁判所は,区分審理の結果,部分判決を言い渡すことになりますが,(1)及び(4)において,裁判所は,部分判決では,有罪・無罪・管轄違い・免訴・公訴棄却のいずれかの判決を言い渡さなくてはならないこととしておりますが,刑の言渡し及び刑の免除の言渡しについては,部分判決では行わないこととしております。これは,各部分判決で刑の量定まで行うこととすると,一般情状に関する立証及び認定を各部分判決の審理において毎回行うこととなり,訴訟経済に反するばかりか,証人にも多大な負担を強いる一方で,裁判員の負担を軽減するという効果も薄くなってしまうことなどから,部分判決において刑の量定まで行うのは適当でないと思われることからです。   次に,部分判決の記載事項についてです。裁判所は,部分判決で有罪の言渡しをするときは,(2)において,罪となるべき事実,証拠の標目,必要な範囲の法令の適用並びに法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実及び刑を加重減免する理由となる事実を必要的記載事項として示さなければならないものとし,(3)において,犯行の動機,態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する事実並びに没収,追徴又は被害者還付の要件である事実及びその根拠となる規定の適用を任意的記載事項として示すことができるものとしております。そして,第一の一の3の(2)にございますとおり,裁判所は,部分判決の全体について判決をするときは,部分判決に係る事項についてはこれによるものとして,部分判決における有罪・無罪等の判断についてはこれに従うほか,必要的記載事項及び任意的記載事項についても,これに従うこととしております。このうち,必要的記載事項に係る事項については,部分判決においてそれが示された場合にはその旨の,示されていない場合には,そのような事項はない旨の認定をしたことになり,終局の判決もその認定に従うことになります。任意的記載事項に係る事項につきましては,部分判決において現に示された場合にのみ,終局の判決もそれに従うことになります。   必要的記載事項につきましてこのような効果を持たせるのは,これらの事項は,いずれも有罪の認定のため不可欠な事項,あるいは,それ以外の事項であっても,認定すべき範囲が明確である上,有罪・無罪等の認定に密接にかかわる事項であって,区分審理を担当した裁判体が認定することが合理的であるためです。なお,法令の適用については,「必要な範囲」で示すこととしておりますが,これは,部分判決における有罪の判決は,刑の量定を伴わないものであることから,一部の法令の適用を示せば足り,例えば,刑種の選択や累犯加重等につきましては,その適用を示す必要がないことから,必要な範囲としているものです。また,必要的記載事項として構成要件該当性阻却事由や違法性阻却事由等の「法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実」を挙げておりますが,これらの存否につきましても,部分判決の必要的記載事項としております。さらに,「刑を加重減免する理由となる事実」とは,必要的な加重減免の理由となる事実のみならず,障害未遂や自首等の加重減免が任意的とされているものについても必要的記載事項としております。いずれも,先ほど御説明いたしましたとおりの理由から,必要的記載事項としての効果を持たせることが相当と思われる事項です。   一方,任意的記載事項につきましては,先ほど申し上げましたとおり,部分判決においてそれが示された場合にのみ,終局の判決はそれに従うこととなりますが,これは,任意的記載事項として挙げた事項は,例えば,罪となる事実に関連する事実のように事件によって様々な内容が想定され,それらの存否をすべて判断した上で部分判決における記載を行うことは困難であると思われることから,部分判決に記載がないからといってそのような事実が存在しなかったという効果まで持たせることは適当ではなく,他方,これらの事項につきましては,区分審理を行った裁判体において,終局の判決における刑の量定の際に必要と考える範囲で記載すれば足りると考えたためです。   なお,任意的記載事項にございます「罪となるべき事実に関連する事実」とは,罪となるべき事実に関連する情状に関する事実を指し,具体的には,例示として挙げられております犯行の動機,態様及び結果のほか,犯行の計画性や被害感情等がこれに当たります。一方,いわゆる一般情状に関する事実は,「罪となるべき事実に関連する事実」には当たらず,部分判決の任意的記載事項ではありません。また,「没収,追徴又は被害者還付の要件である事実及びその根拠となる規定の適用」については,任意的記載事項としておりますが,これらの事項は刑の量定の前提となる事実ではありますが,当該区分審理を行った裁判体において認定することが合理的な場合も多いと思われることから,部分判決において認定できるとしたものであります。   次に,(5)において,部分判決には,独立して不服申立てをすることができないものとするとしておりますが,これは,部分判決に対して独立して不服申立てができるとすると,併合された事件の一部のみが控訴審に係属することとなって,併合の利益が失われるなどの不都合が生じることから,不服申立ては併合された事件全体について一括して行うこととし,独立して不服申立てをすることはできないものとしております。   続いて,第一の二の2は,「構成裁判官による部分判決」に関するものです。裁判所は,区分審理決定をした場合において,区分した事件が対象事件を含まないときは,構成裁判官の合議で審理する旨の決定をすることができ,その決定により区分した事件につき審理をした場合は,構成裁判官の合議により当該区分した事件につき部分判決をしなければならないことしております。これは,区分した事件が対象事件を含まないときには,構成裁判官のみで審理することとしても,裁判員制度の趣旨に反するものではなく,また,対象事件以外の事件を区分して審理するのにあえて裁判員の参加する合議体で行うとする必要性もないと考えられるからです。   次に,第一の二の3は,「終局の判決」に関するものでございます。区分した事件の審理及び裁判の後,裁判所は,併合した事件の全体について,終局の判決をすることとしており,終局の判決においては,終局の判決をする裁判体において現に審理した事件に関する判断のみならず,区分した事件も含めた併合した事件全体について刑の言渡しを含めた判決を言い渡すこととしております。ただし,その場合,先ほど御説明いたしましたとおり,(2)において,裁判所は,部分判決の全体について判決をするときは,部分判決に係る事項についてはこれによるものとしております。したがいまして,終局の判決を行う審理では,区分した事件については,刑の量定をするのに必要な範囲で,情状に関する審理を行うことになります。このように,終局の判決を行う裁判体の構成員である裁判員は,審理に加わっていない区分した事件についても併せて刑の量定を行うことになりますが,部分判決においては,犯行の動機,態様,及び結果その他の罪となるべき事実に関連する事実が示され,終局の判決を行う裁判体は,これをもとに判断することができますし,区分審理において取り調べられた証拠についても,情状に関する証拠として用いる必要のあるものは,直接取り調べることにより適切に刑の量定も行えることになると考えております。   なお,終局の判決は,部分判決に係る事項についてはこれによるものとしておりますが,部分判決に絶対的控訴理由に該当する事由がなる場合や,部分判決後に真犯人が現れたときなど,再審の事由が存する場合等まで,終局の判決がそれに従わなくてはならないとすることは相当ではありませんので,(3)におきまして,一定の例外的な場合については,職権で,当該部分判決によらない旨の決定をしなければならないものとし,部分判決によらない判断を行うことを可能としています。   第一の三は,「部分判決制度における裁判員等の選任手続等」に関するものです。部分判決制度では,区分した事件ごとに審理を行いますので,裁判員の負担を軽減するとの観点から,区分した事件を審理する裁判員及び補充裁判員の選任は,区分した事件ごとに行うこととし,その任務は,部分判決を告知したときに終了することとしております。   また,順次行われる区分審理が円滑に移行することを可能とするため,部分判決の告知により裁判員及び補充裁判員の任務が終了したときに裁判員及び補充裁判員に選任されることとなる選任予定裁判員をあらかじめ選任しておくことができるものとしております。   次に,要綱第二は,「証人尋問等の記録媒体への記録」に関するものです。   裁判員制度下におきましては,証人尋問等を記録媒体に記録することができる制度を一般的に導入し,この記録媒体を評議等において活用することにより,裁判員が充実した審理及び裁判をすることができるようにすることが有用でありますが,一方,事案の内容等によっては記録媒体への記録が相当でない場合もあり得るところです。   そのため,第二の一において,裁判所は,「評議等における裁判員の職務と的確な遂行を確保するため必要があると認めるとき」は,裁判員裁判における証人等の尋問及び供述並びにその状況等について,当事者の意見を聴き,記録媒体に記録することができるとしつつ,「事案の内容,審理の状況,供述又は陳述をする者に与える心理的負担その他の事情を考慮し,記録媒体に記録することが相当でないと認めるとき」は記録できないこととしております。   また,現行の刑事訴訟法においても,いわゆるビデオリンク方式によって行われる証人尋問につきましては,一定の場合に証人の同意を得て,記録媒体に記録することができるとされておりますが,ビデオリンク方式によって行われる証人尋問につきましては,特に証人である被害者等の保護の必要性が高く,その意に反して供述の状況等を記録媒体に記録することは相当ではないことから,第二の二において,裁判員裁判における証人尋問等を記録媒体に記録する場合であっても,ビデオリンク方式によって行われる証人尋問については証人の同意を要することとしております。   そして,ビデオリンク方式によって行われる証人尋問につき,証人の同意を得てその尋問及び供述並びにその状況等を記録した記録媒体は,証人である被害者等が後の刑事手続において同一の事実について繰り返し証言することを避けるために利用できるようにしておくことが,被害者保護の趣旨にも合致すると考えられることから,当該証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがないと明らかに認められるときを除き,訴訟記録に添付して調書の一部とするものとしております。   続いて,要綱第三は,公判調書の整理期限に関するものです。   現行刑事訴訟法第48条第3項は,公判調書の整理期限を原則として判決宣告までとしておりますが,連日的開廷が法定されたことや,裁判員制度の導入により,公判期日後すぐに判決が宣告されることが予想されることから,判決宣告日に近い公判期日についての公判調書の整理期限を伸長する改正を行う必要があると考えております。   そして,裁判所における公判調書作成実務の実情や上訴期間が14日間とされていることなどを踏まえ,公判調書の整理期限を当該公判期日から10日又は判決を宣告する公判期日から7日のいずれか早い日とするものです。   最後に,要綱第四は,技術的・細目的な事項を含めたその他所要の規定の整備を行うものとするものであります。   要綱(骨子)の概要は以上のとおりです。 ● 次に事務当局から配布資料について御説明をお願いいたします。 ● 配布資料について御説明申し上げます。   御審議の参考にしていただくために,席上に配布資料を御用意いたしました。その内容などにつきまして,御説明申し上げます。   配布資料1-1は,先ほど朗読いたしました「諮問第81号」です。   次の,配布資料1-2は,「諮問第81号」に関連する「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」,「刑事訴訟法」及び「刑事訴訟規則」の条文の抜粋でございます。   配布資料1-3は,司法制度改革推進本部の下に設けられました「裁判員制度・刑事検討会」において,平成15年4月25日に開催された第16回会議及び同年9月12日に開催された第25回会議の議事録の抜粋です。「裁判員制度・刑事検討会」においては,裁判員制度下における公判手続等に関連し,迅速で,裁判員にわかりやすい審理の実現という観点から,弁論の分離・併合のあり方について検討がなされておりますが,結論を出すには至らず,さらに検討することとされております。   配布資料1-4は,平成17年における裁判員制度対象事件の人員数や開廷回数などをまとめた統計資料でございます。   配布資料1-5は,本日席上に配布いたしました名簿でございます。   以上,簡単でございますが,配布資料の説明をさせていただきました。 ● どうもありがとうございました。   事務当局からの最初の御説明は以上のとおりのようでございます。諮問事項に関する審議の進め方につきましては,後ほど皆様にお諮りして決めさせていただきたいと存じます。この段階で,ただいまの事務当局の説明内容に関して御質問がある方は,どうぞ御発言をお願いいたします。○○委員,どうぞ。 ● 僣越ながら最初に質問させていただきます。こう見渡してまいりますと,裁判員としての資格を持つ人間は私しかいないという感じがしておりますので,裁判員になる立場の人間として気になる点をお聞きしてみたいと思います。非常に初歩的な質問からお尋ねします。外国の制度を見ていきますと,ある国では,評議の際に一般から選ばれた参審員の方から発言をして,法律のプロである裁判官は最後の方で発言するという趣旨を法律できちんと書いている国がございます。そしてまた,発言する順序も若い人からというようなことを書いているところもある。そういう趣旨からいきますと,私の方から,素人からまず発言することをお許しいただきたいと思います。   質問は三つございますけれども,その一つは,この部分判決のような制度を海外で実施している国はどのくらいあるのだろうか,あるいは,ないのだろうかということを,もし事務局で把握していらしたら参考までに教えていただきたいと思います。こういうきちんとした法的な制度でなくても,例えば参審員なり途中でいろいろな事情があって交代するようなとき,それを予定して違う形のメンバー構成で審議を続けていくというような実質的ないろいろな運用がされているようなケースはどのくらいあるのかというのがちょっと気になっておりまして,もしおわかりでしたら教えていただけないかと思います。つまり,参考になるような制度が海外にあるんだろうということです。それが一つです。   一つずつ質問させていただきます。三つだけに限ります。 ● 事務局,よろしいですか。では,お願いします。 ● すべて正確に承知しているわけではございませんが,今回諮問させていただいたような形での一部のみを判決をして,それによって一般国民の負担を軽減しようといった具体的な制度については,諸外国の制度としては特に承知しておりません。また,裁判員が交代する場合に,それに備えて例えば補充裁判員あるいは参審員のような制度を設けている国があることは承知しておりますが,それ以外に今回と同じような諮問の内容に相当するような制度は特に承知しておりません。 ● ○○委員,今の点はそれでよろしいでしょうか。 ● はい。   それから,二つ目は,「要綱(骨子)」を拝見しますと,裁判員の任期についての部分でイメージをはっきりさせておきたいことがあるものですから,お伺いしたいのです。一つは裁判員の任務が終わる時期については部分判決の告知と書かれておりまして,これは終了ということなのではっきりしていると思うんですが,もう一つ,始まる時期,始期の問題なんですけれども,区分事件ごとに選任を行うということになっているのですが,例えば併合された大きな事件が三つあって,A,B,Cという三つの合議体で審理を分けて行うということになった場合,Aの裁判体で選ばれる裁判員の最初の選任の時期,開始の時期と,一番最後のCの裁判体が審理するときの裁判員の開始の時期,これはイメージとしては同じ時期に一緒に選んでスタートするようなことになるのか,あるいは,実際に裁判が始まるときにあわせて,ずらして始まることになるのか,どちらなのだろうというのは疑問を持ちます。 ● 今,委員がおっしゃったA,B,Cの例で御説明しますと,Aで区分事件を審理して部分判決を出した上,Bでも同様にし,Cは最後のCの事件の事実について審理をして,全体の量刑をすることになります。今たまたま三つに分けた例を出されましたが,そのような場合,三つについてそれぞれに裁判員を選任することになります。   いつ選任していくかについてですが,これは裁判員裁判ですから,公判前整理手続を経てやることになります。その中でそれぞれの事件についてどういう審理計画を立てていくのか,各事件についてこのような立証計画を立てて,こういう審理計画でいくんだということがそれぞれ決まって,その全体を見渡して区分して審理し,部分判決で処理する事案なのかどうなのかという判断がなされて,そこで決定された上で順序が決まります。まずAからやるということになると,その段階でAの裁判員を選任します。Aの部分判決が出たところで,Aの裁判員の任務が終了するので,次にBの事件の裁判員を選任するというのが基本的なイメージになると思います。   ただ,途中でも説明しましたように,予定裁判員というものをあらかじめ選んでおくことができる。これは,1回の機会で,例えばAの裁判員と,それに引き続くBあるいはCの裁判員になっていただく人をあらかじめ選任予定者として選んでおくこともできるようにしておこうというものです。そうすることによって,A事件とB事件のつなぎというんですか,そこの間が間延びしないで済むような運用もできるようにしようということでこの制度は組んであると,そういうふうに理解していただければと思います。 ● わかりました。なぜそんな質問をしたのかと疑問に思われるかもしれないんですが,現実に少し時間をずらしてA,B,Cということで審理が行われていくとすると,一番最後の裁判体の裁判員になる人にとってみますと,Aの一番最初に先行して行われた裁判の内容について,例えば私たち報道機関による報道などが行われて,その内容の概略がわかってくると思うんですね。今日の法廷ではこんなことがあって,被告人がこんなふうに答えたというようなことが出てくるんだと思うんです。それがBでも重なってくる。最後の裁判体の人は,いわばそういった新聞報道とかテレビの報道などを通じてだと思うんですが,一定の知識を持った上で裁判員としての任期が始まるのか,それとも,一番最初に一線でそろえてしまえば,裁判員の始期としては,そういうような外からの情報については同じようなレベルで審理に参加することになるのではないかというようなことを考えたりしましてね。外からの影響を遮断した形での公正な裁判を実施するという意味では,開始の時期をそろえることもイメージしていらっしゃるのかなと思ったものですから,そういう質問をしたというだけです。わかりました。今のお答えは必要ないです。私はそういう趣旨で質問しましたということを説明しただけです。   それからもう一つは,もうちょっと実質的なお話になるんですが,刑の調整規定のお話です。今日配布されている部会資料の1-3-1,第16回の裁判員制度・刑事検討会の議事録の7ページに,裁判官の池田委員が刑の調整規定について幾つかのアイデアを出されていらっしゃいます。そのアイデアの中には今回の諮問に通じるような考え方もあると思うんですけれども,この「要綱(骨子)」では採用されなかったアイデアも述べられているんですね。例えば,「先に判断する裁判体が刑の判断までしてしまうけれども,後で判断する裁判体の方で前の裁判体の量刑も考慮して全体の刑を示す」というアイデアもありました。こういうシステムではなぜぐあいが悪いのでしょうか。事務局の判断ですね,こういう考え方を捨てられたというんでしょうか,なぜなのかということをお聞きしたいと思うんです。   それからもう一つ,池田委員が言っていらっしゃって,幾つかの判決とも量刑判断が確定した後に刑の調整規定を設けて,もう一度それについて裁判所がそれらの判決を前提として刑だけを決めるというアイデアも示されているんですね。これは恐らく裁判官だけの合議によって最終的な量刑を決めるという考え方なんでしょうけれども,それが採用されなかった理由は一体どこにあるのかなということを感じますので,ちょっと御説明願えたらと思います。 ● 今回の要綱案でいうと区分審理をしていく審理体ごとに刑の量定までやって,それを最後に調整してはどうかと,そういう意見が一つあるということですけれども,それぞれバラバラに分けた事件で刑の量定まで行うとしたら,先ほど概要の説明の中でも触れましたが,一般情状的なものをすべての裁判体でやっていかないと,その事件に見合った適正な刑の量定はできないんだと思います。たまたま今A,B,Cと挙げられましたが,これは可能性としてはA,B,C,D,Eと幾らでも増えていくわけで,それぞれの事件ですべて一般情状を繰り返し立証していかなければいけない。それは証人にも相当な負担になりますし,裁判員の負担の軽減ということにもつながらないだろうと思うのです。   それから,各裁判体で出した刑の意味というものは一体どういうところにあるんだろうかという問題もあります。それぞれ懲役何年,懲役何年と出した場合に,最終的に調整するといっても調整の基準自体が立てようがないんだと思います。その場合にそれぞれの裁判体が出した刑の意味というのは一体何なのか。単なる参考意見なのか,といった位置付けも非常に難しいんだろうと思います。そういうこともあってそういう考え方をとらなかったということになります。   最後に挙げられた例は,それぞれの裁判体が,今の要綱案でいえば部分判決をした後,裁判官だけで刑を決めると,そういうイメージのものなんでしょうか。 ● そういうこともあるのかなと私は考えていたものですから。もしそういうようなアイデアがあるとしたら,そういう考え方をとらない理由はどこにあるのかということを伺ってみたかったということなんです。 ● 最後に,裁判官だけで量刑を決めるというスタイルですか。 ● はい。そういうようなことは考え方としてはないのかということですね。 ● それは,事件についての事実認定のみならず刑の量定をも含めたものについて,個々の裁判員が必ず行わなければならないということはないんですけれども,裁判員制度全体のあり方として,一般の国民の考え方を裁判に反映させるというのは,事実認定にも刑の量定にも両方に及ぶんだという制度だという位置付けと理解しています。ですから最後の刑の量定だけを職業裁判官だけでやってしまうというのはとりにくいんだと思います。 ● ありがとうございます。 ● ○○委員,以上でよろしいですか。○○委員,どうぞ。 ● ○○です。先ほど外国の例の質問に対して,部分判決のような制度は少なくとも外国にはないというお話をされたんですが,外国の場合,特に参審の場合だと思いますけれども,同じような大量の事件で併合されて審理がされ,かなりの負担がかかるということは当然予想されるんですけれども,そういう場合は基本的には参審員に犠牲を強いているということなのでしょうか。 ● 実際の詳細な運用まで外国のことをすべて承知しているわけではございませんが,例えばドイツのように任期制をとっている国であれば,その任期の間でどのように公判期日を指定していくかということにもよると思われます。もともと事件単位の担当ではないということで,その点で既に前提の状況が異なっているのではないかと思っております。 ● イタリアなどでは任期を延長するということがあるというようなことを聞いたことがあります。外国では部分判決のような制度がないということは,一つの事件の中で参審員が替わるという言い方は変ですけれども,違う参審員がやるということはないのでしょうか。 ● 通常あまり想定されていないのではないかと考えます。 ● 若干つけ加えて申し上げれば,御承知のように無作為の国民から選出するやり方として,アメリカなどの陪審員の制度があるわけですけれども,アメリカもそうですし,イギリスもそうだと思いますが,基本的には陪審員は刑の量定をしないという仕組みでありまして,個々の事件についての事実認定,有罪,無罪だけの決定をしていくという役割分担でありますので,そこは刑の量定を含む今回の裁判員制度とかなり違う面があるのではないかと考えております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● いろいろな要因があって日本の場合はかなり特殊な状況になっていると思います。外国でも,一つの事件だけで相当長くかかる事件があり,例えばアメリカでは1件の審理が1年半とか2年かかった例がありますが,その場合には基本的に同じ陪審員でやりますので,相当苛酷な思いをするわけです。恐らくドイツなどでも,同じような事件にあたれば同じことだろうと思います。   今回の場合は1件の審理の問題ではなく併合事件についてのことであり,この併合については,日本の場合,併合罪の規定があって,実務の運用では,併合した方が一般的には量刑上被告人に有利に働くと考えられていますし,現にそうなっているのだろうと思います。そういうことから,基本的にはできるだけ併合する方向で運用していると思います。他面また,死刑事件などの場合には,1件ごとの判断ですと死刑になりにくいが複数まとまると死刑相当となるという意味で反対の方向に働くところがある。諸外国の場合,ドイツには死刑はありませんけれども,1件でもかなり重い刑が言い渡されるとのことですし,アメリカでは1件でも死刑が言い渡されることが少なくなく,1件死刑になれば,それで割り切って,あとはもう起訴しない。そのようなことで済むお国柄なのですけれども,日本の場合はおそらくそうはいかない。そういうことから,いずれの場合も,併合することを前提にしながら,しかしできるだけ裁判員となる人たちの負担を軽くしなければいけない。そういう特殊性があると思うのです。それに対応した方策を講じようというのが今回の案ではないかと思います。 ● どうもありがとうございました。   事務当局からの御提案に対する御質問に限ってお受けしております。具体的な審議の段階でいろいろご意見がございましたら,またその段階で突っ込んだ御議論をしていただきたいと思いますが。現段階で何か質問がございましたら,お願いいたします。 ● この部分判決の言渡しですけれども,有罪の言渡しをしなければならないというときの主文としてはどういうものを想定しておられますか。 ● 今の点,よろしいですか。○○幹事,お願いします。 ● 有罪の言渡しをする部分判決には,先ほどの有罪の判断のほか必要的記載事項や任意的記載事項が記載されることになると思われますが,具体的な判決書のあり方としては,運用の問題もございますので,主文としてどのような記載をするのかについては,今後さらに検討されていくことと思っております。 ● 私どもは現在の主文のスタイル,つまり刑の言渡しに慣れているわけですけれども,それだけに単に有罪の言渡しというとどうなるのだろうかという疑問を感じます。 ● 例えば主文において有罪か無罪かだけを宣言するという考え方もございましょうし,あるいは,有罪か無罪かの結論に加えて,それ以外の必要的記載事項に係るような部分まで記載するという考え方など,現時点では幾つかの考え方が考えられようかと思います。 ● ほかにございませんか。 ● ○○です。私も裁判員の立場ではないといいますか,そういうところから考えてみると,区分審理決定をする場合の要件で,裁判員の負担を考慮するというのは基本的には長期ということが主なのでしょうか。時間的な負担以外に,それぞれを分離して部分判決を出していくという場合に,考えられる負担が時間以外に何かあるかということをお聞きしたいのです。 ● その点いかがですか。 ● 恐らくどれだけ時間的な拘束を受けるかというのは一番大きな要因になると思いますけれども,裏返しにすれば何日間だったらいいのか,何回だったらいいのかという割り切りはなかなか難しいと思います。立証の都合で,個々の立証の期間があいてしまうことによって期間が伸びてしまうということはありますでしょうし,連日的な開廷にあっても相当期間を要するということはあるでしょうし,1回1回について丸一日要するという場合もあるでしょう。そういういろいろな意味の時間的な拘束,あるいは,立証の困難さといった要素が入ってくる場合もあるのではないかと思います。いろいろな要素が絡むのであり,委員が言われたような拘束というのは非常に大きな要素だとは思いますけれども,それだけで全部説明できるかというとなかなか難しいのではないかと思います。 ● それから,そのあとに「その円滑な選任の確保」というのがありますよね。これはこういう形にしないと手を挙げて裁判員になってくれる人がなかなかいないというような趣旨で受け取っていいんですか。 ● 例えば1年2年になっても私はできるんだという人たちも世の中にいると思います。しかし,この制度は幅広い一般国民の常識的な感覚を入れようという制度ですから,そこでの選ばれる母体というのが狭くなりすぎるというのは問題だと思います。ですから,そこはかなり広い母体の中から参加することに支障がないという意味合いでの「円滑な選任」というイメージでおります。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● イメージとしてお伺いしたいのですけれども,例えば期間がどのぐらいかかるかという点で言いますと,事案に応じてふさわしい期間が部分判決にはかかるでしょうから,3回ぐらいを目標にして部分判決まで行い,最後の裁判体については量刑をやるということですから,最後の部分判決の事実認定に加えて1回ないし2回,場合によっては3回ぐらいプラスアルファされるというようなイメージでいいのでしょうか。   それから,もう一つ,区分のあり方ですけれども,例えば三つ事件があるとした場合に,A,B,C,その順序をどうやって区分していくかということです。量刑を考えた場合に,一番基本になるというか,重いというか,そういうのを最後に持っていくといったことになるのでしょうか。これも事案によるのでしょうけれども,そういうようなイメージになるのでしょうか。お伺いしたいと思います。 ● 最初の御質問,つまり,最後の裁判体の負担が一番重くなるようなイメージかという御質問については,例えばA,B,Cと分けて,それぞれが事実認定を行うという,非常に抽象的なレベルで言えば,それぞれの裁判体が一つずつ担当して,終局の判決をする裁判体は,それらを踏まえた上で全体の量刑をするのですから,その負担が重くなると,単純に言えばそうなのかもしれませんけれども,個々扱う事件の立証にどのぐらいの期間を要し,どれだけの証拠を調べなければいけないかというのは,その事件ごとに千差万別だと思いますので,最後の裁判員の負担が一番重いかどうかというのは一概には言えないんだと思います。もちろん,全体の量刑をやらなければいけない,刑の量定をやらなければいけないという意味では,終局の判決をする裁判体の裁判員の方が大きな負担を持つというのはそのとおりだと思います。   順序につきましては,公判前整理手続を裁判員裁判の場合必ずやりますので,それぞれの当事者がどういう立証方針で,あるいは,どういう反証でやっていくといった審理計画を公判前整理手続で立てていくことになります。そうすると,事案によってはそこの部分を立証するために,例えばある証人の尋問は,この期間でなければいけないというような要素も当然あるでしょうから,そういう立証の都合で順番が決まる部分もあります。それから,最後に刑の量定をやらなければいけないので,裁判員対象事件でないものが混ざっているとしたら,一番最後に非対象事件を持ってくることはできないだろうと思いますので,そういう要請もあるだろうと思います。   では,一番重い事件が必ず最後にくるのかというと,そういう原則があるわけではないんでしょうけれども,そこは今言いましたようにどういう立証をやっていくということの絡みと,そうは言っても一番最後の裁判員の方が全体の量定をすることの関連で比較的重い事件が後ろにくるということも多々あるのではないかと思います。ただ,それが原則になるかどうかというのは,個々の事案によっていろいろだと思います。 ● よくわかりました。 ● ほかに御質問はあるかと思いますが,議論に入った段階でまた細かい御質問が出ると思いますので,そのときにお受けしたいと思います。   これから少し休憩を取らせていただきたいと存じます。           (休     憩) ● では,再開させていただきます。   諮問事項の審議に入りたいと思います。   今回の諮問は「要綱(骨子)」が付されておりますが,審議の進め方について,事務当局で何かお考えがございますか。 ● 審議の進め方ということでございますので,部会でそれについてお決めいただくということになるわけですけれども,事務当局の立場からお願いと言いますか,御提案ということで言わせていただければ,今回の「要綱(骨子)」の第一の部分判決が量的には非常に長いですし,内容的にも重たいわけですが,第一から第三,三つの項目に区切られているということで,それぞれ独立した項目でありますので,初回の本日については,第一から第三まで通じて,それぞれにわたって全般的な御議論をしていただければということでございます。特に,時間の関係もありますので,それぞれ問題意識と言いますか,問題の提起というような形でご意見なりを表明していただいて,御議論をしていただければということでございます。 ● どうもありがとうございます。   私といたしましても,それぞれの項目が独立した内容ですので,よろしければ,「要綱(骨子)」にございます第一から順次審議を行っていきたいと思いますが,いかがでしょうか。そういうことでよろしいでしょうか。   御異論もございませんようですので,「要綱(骨子)」の項目ごとに区切って御意見を伺うことにしたいと思います。もちろん,相互に関連した内容ですので,複数の項目にまたがる御意見でありましても結構でございます。   まず,「要綱(骨子)」第一にございます部分判決制度についてですが,第一の一の「区分審理決定」の項目に関し何か御意見がございましたら,お伺いしたいと思います。  なお,今日の段階では,本日お伺いした骨子についてどういう問題があるのか,各委員,幹事の問題意識等を主に御披露していただいて,次回以降,改めてまたそれぞれの問題について詳細な御議論をしていただきたいと考えておりますので,そういう形での御意見をお話しいただきたいと存じます。   どうぞ御自由にお願いいたします。 ● 質問でもよろしいですか。 ● はい,どうぞ。 ● 御提案の要綱の趣旨をはっきりさせるために質問させていただきますが,第一点はごく簡単なことです。併合すると決めた事件の中で,特に必要のある場合にご提案のような区分的審理を行うとのことですが,しかし留保があり,特に必要の会う場合であっても相当でないと思われるものは除くということですので,併合する以上は,一つの審理といいますか,同じ構成の裁判体による一つの手続で審理するのがあくまで原則であり,ごく例外的に区分審理という扱いをするというイメージのように受け取れるのですけれども,こういう位置付けでよろしいのかどうか,お尋ねします。   2つ目は,円滑な選任を確保するということがうたわれているのですが,裁判員の選任の手順との絡みもあるので,裁判所の方に伺った方がいいのかもしれないのですけれども,先ほどお話が出ましたように,個々の裁判員によってどの程度の期間耐えうるかというのはかなりばらつきがあるように思うのです。その場合に,その点についてどの程度の情報を,区分審理についての決定をする構成裁判官は持っていることになるのだろうかということです。   裁判員候補者に選ばれたときに,ある程度の調査を裁判所の方でなされると思うのですが,1年,2年もかかるというのは大方の人は耐え得ないことは明らかだと思いますけれど,限界線上の場合に,裁判員候補者についてのその点の個別的事情どの程度考慮して円滑な選任云々というところの判断をすることになるのだろうかということです。具体的に個々の候補者がどの程度の期間になれば支障が生じるかというのは選任手続の過程で具体的に質問しないとわからない。ところが,その前提として審理計画が決まっていないとそういう質問はできませんから,これには間に合わないわけですね。   従って,区分審理決定をする場合に,具体的事情をどの程度考慮に入れて判断をするのか,この要件を理解するときにそこのところについてはっきりとしたイメージを抱くのが難しい気がしたものですから。言い換えますと,一般的・類型的にこの程度日数がかかるともはや選任が円滑にはいかない,円滑な選任が妨げられるのだといった判断をするのか,それともある程度裁判所が予備的にアンケートのようなものをとっている,それなどをも考慮して判断するのか。そのどちらのイメージなのか,その辺をお教えいただきたいと思うのです。 ● では,○○幹事,お願いします。 ● 前段の部分は○○委員御指摘のとおりで,基本的には併合した以上は同じ裁判員でやるというのが原則形であると思います。ただ,裁判員の負担ということを考えた場合に,どうしてもやむを得ないようなものについては,ある意味変則的な手続になりますけれども,こういう形で行うことによって,さっき言いましたように,選ばれる母体が非常に狭くなってしまうような事態を避けたいということですので,その意味では例外的な手続になるというイメージでおります。 ● 後段の部分について裁判所からお答えします。委員がおっしゃった意味は,一般的なアンケートとして情報を得るであろうから,その情報等に基づいて一般的・類型的に判断することになるのであろうかと,こういう御趣旨でよろしいんでしょうか。 ● すみません,質問の趣旨があまりはっきりしなかったと思うのですけれども,裁判員候補者について予めどの程度の情報を裁判所として得られると考えておられるのかもまだはっきりしないものですから,変な質問になったと思うのですが,個々の候補者の実情はあまり考慮しないで,一般的・類型的に,社会通念上と言いますか,見込まれる審理期間がこの辺までいけばちょっと耐えられないのではないかといった一般的な判断をするのか,それとも,あらかじめ質問事項の中に「あなたはどの程度の期間なら耐えることができますか」,「どの程度の期間になったら支障がありますか」というような項目が入っていて,それに対する回答が集められ,それをもとに裁判所として判断するのだろうか,そういうことをお聞きしたかったのです。 ● 私の理解ということになりますが,この部分判決制度に基づく区分審理決定をするかどうかという段階は,まだ裁判員の選任手続に入る前の段階ですので,具体的な個々の裁判員を必ずしもイメージをしていないのだろうと思います。そもそも何日間耐えうるかということを予備調査等で調べるかどうかということもこれから検討しなければいけないのですが,そういう意味で言いますと,先ほど委員がおっしゃったような,一般的・類型的判断として,一般の国民の方に来ていただくのに,例えば1週間を超えるのはとてもおつき合いいただけないだろうというような判断をするのではないかというイメージで考えておりました。 ● ○○委員,よろしいですか。 ● はい,わかりました。変な難しい質問ですみません。 ● いえいえ,どうぞ御自由に御発言下さい。活発な議論は大事だと思いますので,遠慮なく御発言をお願いしたいと思います。 ● 今の件の関連でお聞きします。部分判決制度は裁判員の辞退事由との関係は全く別個の問題として考えられているのでしょうね。 ● 辞退事由とは全然別個と考えております。 ● 全く別ですよね。ですから,辞退事由には当たらないけれども,できればそんな大変な事件はやりたくないという感情と言いますか,先ほど私が質問したのも「円滑な選任」のところにかかっていたのですけれども,無作為で裁判員になって,その辞退事由はまた独立に,こういう場合にしか辞退できないというのが規定されているわけです。そうすると,辞退事由とは全く別なところで,大変そうだなというのでやらないというのは具体的ではないわけです,具体的な場面では。一般的な国民の感覚としては,そんなことやらされたらたまらないなというのはわかるんですけれども,実際上,選任のときに,しかもその選任も辞退事由は決まっていると。そうすると候補者の選定のときなんですかね。 ● 今の段階では選任の問題はいかがでしょうか。 ● 辞退事由の判断とは別の話だというのはおっしゃるとおりでございます。例えば,区分事件を審理する裁判員を選任するとすれば,その区分事件の審理予定期間との関係で辞退事由は判断されるべきことということになると思われます。その意味で併合事件全体の審理期間についての問題は,区分審理決定が既になされた段階で選任手続が行われるとすれば,具体的な選任との関係では関連しないのだろうと思います。 ● どうぞ,○○幹事。 ● 今,「円滑な選任を確保するため」というところで御議論が出ていますので,確認のためにお伺いしたいと思います。円滑な選任を確保するためということですので,事前にこの事件がどういう事件なのかということを考慮して区分審理にするかどうかを決めるというような場合にはこの要件の書き方はぴったりしてくるのですけれども,先ほど○○幹事の御説明の中では,証拠調べをしていったら間があいてしまったというような例が出されたと思います。区分審理することなく,あるいは,幾つかの事件を塊にして審理していたところ,例えば後発的に何らかの事情が起こって予定外の時間がかかるようになったというようなときに,後から区分するということはありうるのでしょうか。あるいは,この書き方でそのような場合も含めて想定されているのでしょうか。そこをお伺いしたいと思います。 ● 今の点,いかがですか。 ● 後発的な事情が生じた場合についてお答えします。一番典型的なのは,裁判員対象事件を審理している最中に当初全然予定していなかった事件が発覚して追起訴をしたというような場合だと思います。この制度はそういう場合も視野に入れております。ただ,その場合の書き方がこれでいいのかということと思いますけれども,その場合は,「円滑な選任を確保」とは選任を維持し続けるというものまで含めて理解することになると思います。   後発的な事情で区分審理決定をするということがそんなにあることとは思いませんけれども,後から重大事件が発覚して,突然追起訴があることが全くないわけではありません。そうなりますと,期日間整理手続等を行い,区分審理決定をするのかということを判断して,その要件に合えば区分審理を行うということは考えられると思います。 ● ほかに御意見はございませんでしょうか。 ● 区分審理決定に関しましては,二重の意味で裁判所の裁量が予定されていると思います。つまり,区分審理決定をすることができるという形で一つの裁量が予定され,さらに,その前提として,併合審理をするかどうかという点でも裁判所の判断が働くわけですが,検討会の議事録を拝見しておりますと,その当時はまだ部分審理という問題は登場しておりませんけれども,そもそも併合するかどうかについて,できるだけ併合すべきであるという,ある意味で強い御意見の方と,裁判員制度が入ってきた以上,必ずしもそうはならないだろうというお考えの方とおられたと思います。今後お決めになるのは裁判所のお仕事ですけれども,どちらの方に傾くだろうというお見通しですか。 ● よろしければ,○○幹事,お願いいたします。 ● 今,○○関係官がおっしゃったとおりでありまして,併合審理するかどうかというところは刑訴法の313条で裁判所は裁量で決めるという制度になっていたわけでございます。先ほど○○幹事から御説明があったような事例,つまり先行事件を審理している後に別の事件が発覚して,その場合にこの制度を使うのかということで申しますと,先行事件の審理がどこまで進んでいたか,あるいは,両事件を併合して審理する必要性がどれぐらいあるのか,それから,裁判員の負担をどう考えるのかといったようなことをいろいろ考えて,刑訴法313条に基づいて併合して審理するかどうかという判断が先行します。   併合審理することとなった場合に,さらに裁判員の負担等を考えてこの制度を利用するかどうかという判断をすることになるわけでして,まさに関係官がおっしゃった二重の裁量が機能するのだろうと思うわけですけれども,いずれにしても裁判体の判断事項でありますので,どっちにいくのかという予想はなかなか申し上げにくいように思います。 ● 前の検討会のときの議論を見ておりますと,1人の被告人に対して複数の事件が起訴される場合の取扱いに関しては,まさにいろいろな議論があったわけです。一方で,現状行われているように原則併合して1個の適正な刑を出すべきだという側面と,もう一つは,裁判員の負担ということを考えると,余りに長期になるのは適当でないので,むしろ分割と言いますか,併合しないやり方になるべきではないかと,そういう二つの問題意識があったのだろうと思います。ですから,冒頭に○○委員が言われたように,併合しないでそれぞれ審理をして刑を言渡し,その上でさらに調整するというアイデアはそこから出てきたのではないかと感じるわけでございます。   ただ,今回のこの部分判決制度というのは,そういう意味では現在の実務で行われているような,できる限り併合して1個の刑を言い渡すという仕組みを何とか維持し,その上で,裁判員の負担を軽減すると言いますか,役割分担をすることによって,最終的に裁判員の負担が軽減される形で1個の刑が言い渡せるような仕組みをつくろうということを考えて制度設計をしたところであります。もちろん併合するかどうかは裁判所が決めるものではありますけれども,私どもがこれを考えたときの思いとしては,今行われているような併合のあり方をあまり崩さない形でやろうということを実現するためには,こういう制度が適当なのではないかということで考えたところでございます。逆に言いますと,分離と言いますか,併合しないで,それぞれ量刑までして調整するというのはかなり難しい問題があるということで,この制度を考えたということでございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● お手元の議事録に「○○」として登場するのは私でございます。検討会の座長として能力がなかったためにまとめ上げられなかったため問題を先送りしてしまったのですが,よく考えていただいたと思います。検討会の議論は,まさに今,○○委員がおっしゃったとおりでして,二つの方向の主張があったというよりは,併合か分離か,事件の性質自体から考えた場合にどうすべきかという意味では,現在行われているように,併合すべきものはできるだけ併合すべきであるということで,意見は一致していたと思います。ただ,裁判員の負担ということを考えるとどうしても分離せざるを得ない場合があり,そういう場合にどのように処置すべきかという点でいくつかの考え方があったということなのです。   さきほどの○○委員の質問は,今回の場合と少し前提が違いまして,分離して別々の裁判体による別々の手続でやってそれぞれ判決を出すということを前提にした場合にどう処置すべきか,後の方の裁判体が前の裁判体の判決を参考にして判決するという方法によるべきか,あるいは,第三の裁判体が最後に登場して第一,第二の判決をまとめて最終の判決を出すという方法によるべきか,そういうこと議論であったのです。しかし,そういうことが法制度として果たしてうまく構築できるのかというと,その当時から難しい問題があるということは意識されていまして,今回も恐らく準備の過程ではそういうことも検討されたのではないかと思うのですが,かなり難しい。そこで,併合してあくまで一つの手続で審理をし,裁判体も連続する形を維持しながら,その構成員が途中で替わるということで対応していこうというように考えたのが今回の案ではないかと思います。   そういう意味で,検討会で二つの方向があったのを,そのうちの一方を選択したというよりは,基本的に一つの方向にはなっていたのですけれども,障害になっていた点をどのように適切に解消しようかと,そういうことで考えられたものではないかと受け取っております。 ● どうもありがとうございます。○○委員は背景事情をご存じですので,これからも積極的に御発言いただきたいと思います。   この制度については,即時抗告の点もございますが,この点に関して何か御意見ございますでしょうか。 ● 即時抗告もそうなんですけれども,その前のところで,区分審理決定をする際の区分の仕方と言いましょうか,区分の準則のようなことについて,もちろん裁量ということだろうと思いますけれども,どんなことをお考えなのでしょうか。   それから,今,部会長は即時抗告のことをおっしゃいましたけれども,例えば区分の仕方についての不服は即時抗告の理由になるのかどうか。このあたりはどのようなことになるのでしょうか。 ● その点について,○○幹事,お願いします。 ● どのように区分するか,区分しないかという判断につきましては,「要綱」に書かれている要件の実際の適用ということになろうかと思いますが,どの事件とどの事件を一緒に審理する,あるいは,区分しないと裁判員の負担が重くなるかという観点から,例えばすべてをバラバラにするのではなく,A,B,CとあるうちのA,BとCという分け方,あるいは,それ以外の分け方というのも含めて,裁判員の円滑な選任という観点からさまざまな区分の仕方があるだろうと思っております。   即時抗告の対象につきましては,どの事件を区分事件とするかしないか,それから,どの事件とどの事件を区分事件として組み合わせて切り出すか,そういった点については,この区分審理決定で,この制度を適用するかどうかの中心的な判断部分でございますので,当然即時抗告の対象になるものと考えております。 ● 今,質問申し上げたのは,一の1の区分のための要件の部分,つまり裁判員の負担ということ,それから,円滑な選任の確保ということ,それから,むしろ区分すべきでないという但書の理由の中の犯罪の証明あるいは被告人の防御という,事件の実質と言いましょうか,審理の経過というようなものは,必ずしも連動しないような感を受けましたので,そのように聞いた次第でございます。 ● どうもありがとうございます。   今の点につきましては,イメージとして問題点が指摘されたのだろうと思いますので,次の問題に入らせていただきたいと思います。   次は,「要綱(骨子)」の第一の二の部分判決でございます。この点についてはいろいろ問題点が多いかと思いますので,どうぞ御自由に御発言をお願いいたします。 ● 幹事の○○です。区分事件の審理に関して質問させていただきたく存じます。区分事件の訴訟に関する書類,いわゆる記録になりますけれども,これはどのように綴られることになるのかということです。本来の事件と同じように綴られるのか,それともそれと別途綴られるのかということです。   関連しまして,区分事件の合議体の構成員は,先行して判断がなされた区分事件の記録を閲覧することができるのかどうか。あるいは,量刑を判断する,終局判決を言い渡す合議体の構成員は区分事件の記録を閲覧することができるのかどうかということについて教えていただきたく存じます。   もう1点は,区分事件の部分判決についてです。区分事件の裁判員は先行して言い渡された区分事件の部分判決の内容を示された上で証拠調べに臨むということになるんでしょうか。 ● ○○幹事,以上でよろしいですか。 ● はい。 ● 今の点について御回答をお願いいたします。 ● 例えば,事件がA,B,Cとあった場合,Aで有罪かどうかという部分判決がなされます。そこには当然,刑の量定はなされないわけです。次のBの裁判体はB事件についての審理を行います。その審理についてはA事件で取り調べた証拠は全然必要ないわけですから,おっしゃるとおり全く見ないというになると思います。C事件をやる裁判員というか裁判体は,C事件の事実認定をやるとともに,A,B,C全体を踏まえた刑の量定をしなければいけないということになりますので,刑の量定をするに当たって必要な証拠については直接見ることにならざるを得ないと思いますが,その範囲を更新という形で,A,Bで調べた証拠のうち刑の量定に必要な,要するに情状に関するものという位置付けになるのでしょうが,そういうものは直接調べるような形。更新という形になるんでしょうけれども,そういう形で接することになるだろうと,そういうイメージだと思います。 ● その前提としましては,事件に関する書類として綴られている記録については区別をされるということになるんでしょうか。 ● 記録の綴じ方までは考えていないのですけれども,基本的に,今申し上げましたように,A事件,B事件,C事件として,B事件の裁判員がA事件の記録を見るということはないという位置付けになると思います。それから,C事件の裁判体についても,情状とおよそ関係のない,例えば犯人性を争っていた場合のアリバイ関係の証拠といった事実認定に特化したような証拠もCの裁判体は見ることはないと思います。そういう実態になるだろうと思いますけれども,記録の編綴までは検討しておりません。 ● そうしますと,Cの裁判員が情状に関して記録を見ることがある場合には,公開の法廷での何らかの手続を経た上で見るということになるという理解でよろしいでしょうか。 ● 更新あるいは更新類似のそういう何らかの手続を経て見るという形になるだろうと思います。   一番最後の御質問をもう一度お願いします。 ● 部分判決の内容についてです。後から始まる区分事件の裁判員は,自分たちが裁判員の職務を始める前にこういった部分判決が示されていますということを知った上で,区分事件の証拠調べに臨むことになるのかということです。 ● さきほどのA,B,Cの例で申し上げれば,Bの裁判をする裁判体の構成員にとってみれば,Aの部分判決は何の関係もなく,手続的にAの部分判決を見るということはおよえあり得ないと思います。ただ,一番最後のCの裁判体は全体を通じた刑の量定を行いますので,部分判決には必要的記載事項や,任意的記載事項が記載され,そこには犯情に関する事実認定も当然出ておりその認定に拘束力はあるわけですから,何らかの形で知らなければいけないということになります。それをどの段階でどういう形でという細部はこれから詰めたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● どなたかがお聞きになったらすぐに聞こうと思っていたんですがね。A,B,Cとあった場合,先ほど○○委員だったかと思いますが,最初から一番最後の事件をとっておくのかという御質問とのかねあいなんですけれども,A,B,Cという三つに分けたときに,一番最後にどの事件が終局判決をするかというのは出発のときには決まっていないのでしょうか,それとも決まっているわけですか。 ● それは公判前整理手続を経てそこで当然決まります。 ● そこでは最後の判決はこの事件だと決まっているということなんですね。 ● はい。 ● 言葉の問題なんですけれども,A,B,Cと三つあったときに,一番最後に終結判決をしなければならない事件というのは親事件みたいな感じと言いますかね,A,Bは子事件だけれども,C事件はA,Bという事件を最後まとめて親事件として量刑までやるということになるのでしょうか。要するにC事件も区分事件というのですか。 ● 要綱の用語で申し上げますと,A,B,Cがありまして,C事件を審理するときに終局の判決をするとすれば,AとBが区分事件と言われます。併合されている全体の事件から一部の事件を区分事件として切り出すという考え方です。 ● わかりました。土地の分筆と同じような感じですね。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 先ほど○○関係官が御質問になった区分判決の判決書の書き方の問題なのですけれども,この要綱を拝見しますと,必要的記載事項のほかに書いてもよいとされている事項がありますが,いずれも判決書中に書くとしますと,現在の判決書を前提にすると理由の中で書くことになるのではないかと思います。ところが,そのようにして書かれたものは,終局の判決に対して拘束力を持つ,つまり終局判決を行う裁判体はそれを前提にしなければならなくなるわけですが,判決書の理由の中にはそれ以外のこともいろいろ書かれる。事実認定に至る間接事実や証拠の評価などいろいろなことが書かれているのが普通ですので,,拘束力を持つ部分とそうでない部分を書面自体からはっきり区別できるのだとうかという懸念も感じられます。その意味で,拘束力のある部分は書き分けた方がいいような気がするのですが,そうないますと,現在の判決書の構成の仕方とはかなり違ってくるのではないかというようにも思うのですが,その点は,現段階ではどういうふうにお考えなのでしょうか。 ● まさに判決書の書き方という多分に運用に立ち入る部分でもあるわけですが,今回この制度ができたとしますと,判決書に書かれる事項について,少なくとも部分判決の一定の記載が終局の判決をする裁判体にとって,その認定に従うと言いますか,その認定に基づいて量刑をしていくという意味で,法的効力,法的効果を持つことになります。そういう意味でいうと,今行われている判決書の記載の意味合いとは違うことになるわけですから,特に必要的記載事項,任意的記載事項とされるものがそういう効力を持つということを念頭に置いて,それがその後の終局の裁判をする裁判体にとって,そういう意味合いでこういう認定をしたのだということがわかるように,言ってみればわかりやすい判決書ということが考えられるのではないかと考えております。   具体的にどういう見出しのもとにどう書けばいいかというのは,工夫の問題があるとは思いますが,基本的には今の判決書にないような,一種の法的効果を持つ記載内容になるので,それに見合った工夫をした判決書ができるのではないかと思っております。 ● ○○委員,よろしいですか。 ● はい。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 区分事件の審理に関しましてもう1点だけ質問をさせていただきたく存じます。区分事件の審理の中で被害者の証人尋問をされた場合に,被害感情に関する証言をすることが果たして許されるのかどうか。それとも,関連性がないということになるのかということです。さらに言いますと,区分事件の審理の中で被害者等の意見陳述を行うことは想定されているのかどうか。逆に言いますと,区分事件の審理の中で被告人側が請求した,専ら一般情状に関する証人の取調べをするということは許容されるのかということです。 ● その点,御回答をお願いします。 ● まず,区分審理の審理において被害感情に関する立証が可能かという問題でございますが,被害感情に関する事実も任意的記載事項である罪となるべき事実に関連する事実に含まれると考えておりますので,区分審理において立証することは可能であろうと考えております。   また,被害者の意見陳述を同様に区分審理の段階でなし得るかどうかについても,被害者の意見陳述の内容としては,いわゆる被害に関する心情その他の被告事件に関する意見などが述べられるということになっておりまして,これらについても,その段階で陳述することは可能であろうと考えております。   さらに,いわゆる一般情状というのは,ここでは被害感情などは含まずに,罪となるべき事実におよそ関連しない情状という意味での一般情状についてですが,これは部分判決での認定すべき事実の対象にはならないと考えております。ただし,公判前整理手続を経た審理計画の策定の中で,区分審理の中でそのような事項に及ぶ立証そのものが一切許されないかと言いますと,ここは一切許されないとまで考える必要はないのではないかと,今の段階では事務局としては考えております。 ● 詳細につきましては,また二巡目の議論のときに詳しく御検討いただきたいと存じます。   続きまして,構成裁判官による部分判決の項目がございますので,この点について御意見を承りたいと存じます。特にないようでございましたら,次の項目へまいりたいと思いますが,よろしいでしょうか。○○幹事,どうぞ。 ● 1点だけ質問させていただきたく存じます。先ほど御説明にありました「併合する以上は一つの裁判体で判決を言い渡すのが原則である」という原則につきましては,いわゆる非対象事件についても及ぶという理解でよろしいでしょうか。 ● それはそのとおりだと思います。 ● ちょっと戻ってしまいますが,細かいことなのですけれども,1点意味をはっきりさせるために確認させていただきたいと思います。任意的記載事項の中の「法律上刑の加重減免理由となる事実」という部分は,必要的な減刑事由に限るのかどうかということなのですが。 ● 刑の加重減免のところですか。 ● ええ。 ● これは任意的な加重減免理由となる事実も含むという趣旨です。 ● そうしますと,現在の判例などの解釈とはずれるということでしょうか。現在の判決書についての判例,例えば自首については含まれないということになっていますが,それとは異なることになるのでしょうか。 ● ここの文言の意味としては,ずれることになります。 ● その理由を伺えればと思います。 ● この部分判決制度においては裁判員の負担を軽減するという観点から,終局の裁判体は部分判決が認定した必要的記載事項や任意的記載事項については,それに従うことととされております。刑の加重減免の理由となる事実については,それが必要的であるか任意的であるかにかかわらず,いずれも罪となるべき事実と密接に関連した事実であると考えられますし,その範囲も既に法定されていて外延が明確な項目でございます。   実際に区分審理の中で証拠調べを担当した裁判員や裁判官がこれを認定するというのは十分可能ですし,そのようにしても合理的であろうと考えております。そうすれば,終局の裁判体もその認定に基づいて刑の量定を行うことができるという意味で,全体としての負担軽減に資するのではないかと思っております。そういった点について,先ほど申し上げましたように,必要的なのか,任意的なのかという点は,今のような事情の点から申し上げると違いはないだろうと私どもは考えましたので,刑の加重減免となる事実は,それが刑法上の必要的減免であろうとなかろうと,いずれもここの記載に当たると考えて要綱を作成いたしました。 ● 通常の裁判の場合の判決書についての考え方とは視点が違うということですね。 ● はい,そのとおりだと思います。 ● わかりました。 ● 次にいきたいと思います。 ● 今の○○委員の御質問に関連して,もう一度確認なのですが,この必要的記載事項には必要的な加重減免事由だけではなくて任意的な加重減免事由もそこに入るとのことですが,そうすると,刑法66条の酌量減刑はどうなるんでしょうか。これは任意的な減刑事由ですよね。 ● ここで言う加重減免の理由となる事実には含まれないと考えております。 ● 酌量減軽だけはということですね。 ● はい。 ● それ以外の自首とかはみんなこっちに入ってくる。 ● はい,自首や障害未遂などは含まれます。 ● はい,わかりました。 ● ○○幹事,どうぞお願いします。 ● 関連して。少し気になったのですが,(3)の根拠となる規定の適用を示すことができるとしているもののうち前段の犯行の動機,態様及び結果の方はよくわかるのですけれども,例えば必要的没収とか必要的追徴がされる事件において,必要的没収に当たるということは書かなくていいのかという疑問が,今,○○委員の議論を聞いて浮かんだのですけれども,その点はどのようにお考えでしょうか。 ● 必要的記載事項にすべきだという御意見ですか。 ● しなくていいのかという感じを思ってしまったものですからお聞きしました。 ● 没収,追徴の位置付は,飽くまで付加刑でございます。もちろん必要的な没収・追徴と任意的な没収・追徴がありますが,恐らく任意的な没収,追徴については,これは千差万別というかいろいろなものが広がっていってしまいますので,任意的没収,追徴に関しては必要的記載事項にできないのだろうと思います。   一方,必要的な没収,追徴については,そのようなことはあまりないので,理屈の上ではどちらへ振り分けてもいいのかもしれません。しかし,同じ付加刑の基礎になるものが,主刑とは別にその前提となる事実を,任意的没収,追徴のものについては任意的記載事項として,必要的没収・追徴の前提となる事実を切り出してそれだけ必要的記載事項にするのかと言われたときに,恐らく同じような没収,追徴の前提となる事実ということで言えば同じような位置付けにしておいた方がいいんだろうということで,一応任意的記載事項というところに位置付けたのです。 ● 実務的な観点から少し細かい議論をさせていただきますと,例えば幇助の主張があった場合には犯行態様の部分で見るということになりましょうか。法律上,犯罪の成立を妨げる事由ないしは刑の減免事由には当たらないということになりましょうから,犯行態様のところで,共同正犯の事案で幇助犯の主張があったような場合はこちらで書くということになるんでしょうか。   従前は単なる否認の主張というふうに理解されているわけですから,(2)の方には入ってきませんので,(3)の方で見るとすると,先ほど○○幹事がおっしゃったような態様というところに入ってくるのかなという気がするんです。ちょっと細かい議論で恐縮です。 ● この点は,次回以降もっと深刻な論点と絡んでくると思いますので,そのときに御議論させていただきたいと思います。今日のところは問題点があるということを確認させていただきたいと存じます。   先ほど,構成裁判官による部分判決についてお伺いいたしましたけれども,この点について何かございますでしょうか。もしないようでございましたら,次の終局の判決について御意見を承りたいと存じます。○○委員,お願いします。 ● 終局判決をする裁判所の構成裁判官の合議で,絶対的控訴理由がある場合には,職権でその部分判決によらない決定ができるという部分で,絶対的控訴理由に当たる事項を全部取り入れた趣旨は何なのでしょうか。特に理由不備ないし理由齟齬があったという場合もありうると思うので,それも含めてよいのかどうかお聞きします。 ● 絶対的控訴理由に当たる場合については,その前提とする事実の認定のところは別としまして,理由があると判断される以上は控訴審において破棄されることが明らかであって,絶対的控訴理由については,私どもとしては理由不備の点も含めまして,比較的明確に判断できる事項ではないかと考えたものでございます。 ● ○○委員,以上でよろしいですか。 ● はい,どうもありがとうございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 終局判決の前提となる任意的記載事項について,若干議論が戻ってしまうんですけれども,任意的な記載事項を記載するかどうかというのは,誰がどの段階で決めることになるのでしょうか。 ● 個々の部分判決を下す裁判体の判断によることになると思います。 ● それは裁判員も含まれるということなんでしょうか。 ● 裁判員も含まれると思います。 ● 裁判員も含めて記載するかどうかを決めていくということになるのですね。 ● はい。 ● はい,ありがとうございます。 ● その判断というのは,終局判決を拘束したいと思ったときは,書くという感じなんですかね。 ● 拘束したいと考えるというよりは,刑の量定にとって重要だと思われるようなものはおのずと書かれることになるのだと思います。 ● 刑の量定の前提になるのですけれども,当事者が主張したりしたため,その点についても突っ込んで審理をした,それで裁判所としても自信を持って認定できるというような場合に書くということになるのではないでしょうか。そこまでは至らず,当事者から主張がなされ,ある程度は調べたけれども,これは量刑に関係するところであるし,必ずしも自分たちの守備範囲ではないので,後の方でやってもらった方がいいという場合には後の判決でやるということになるように思いますが。 ● ○○関係官,お願いします。 ● 稀にしか起こりそうもない事態を想定して恐縮ですが,A事件,B事件が有罪であったところ,最後のC事件が無罪の認定を受けるという場合に,最後の裁判体は刑の量定に困難を感じるのではないかという気もしますが,いかがでしょうか。 ● Cの裁判体は自分の担当した事件について無罪を出しても,そのことはA,Bの事件とは関係もございません。A,Bの事件については部分判決で,そこによって立つ理由もきちっと書いてありますし,量定をするに当たって必要な犯情についても重要なものは書いてあるでしょう。その量定に必要な情状関係の証拠はまた更新等によって調べ直すということになりますので,そこは問題ないと思います。   メンタルな問題ということを言い出しますと,例えば,部分判決の場合ではなくても,通常の裁判員事件であっても,裁判員の中にはこの事件については無罪だという心証を持つ者がいる場合もありうる話で,その場合は評決で有罪となったら,それを前提に今度は量刑を決めていくという作業はどちらにしてもやることになりますので,そこは問題はないと考えています。 ● ○○幹事,お願いします。 ● 先ほどの○○委員の御質問に関係して,(3)に関連してお聞きします。あまり多くはないような事柄なのかもしれないので恐縮ですけれども,当該部分判決によらない旨の決定をした場合には,この判決で扱われた事件はどうなるんでしょう。 ● それは最後の裁判体が審理をすることになります。 ● 審理し直すという理解でよろしいわけですね。 ● し直すというよりかは,それまでの証拠調べを引き継いで後をやっていくということになると思います。 ● では,○○委員,お願いします。 ● 私の質問はこの要綱全体を流れる思想みたいなところなんですけれども,一つ,必要的記載事項というのをつくり,任意的記載事項をつくって,そこに情状も書き,その上で部分判決で拘束力を持たせるという制度設計は,例えばA,B,Cとあった場合に,Cの量刑までやる裁判員に,できるだけCの負担も軽くしましょうという思想があり,だから,区分審理で十分部分判決ができる範囲で,A事件,B事件についても十分必要な範囲で,量刑に関する事実も摘示してもらえるようにというような思想に基づくと理解してよろしいんでしょうかね。 ● 同じ裁判員にすべての事件を担当していただくには,とうていその負担は耐えがたいというものは分担し,複数の事件に分けて裁判員間の負担感を分配するという観点です。最終的に量刑を決める裁判員にできるだけ負担をかけないようにすべきではありますが,しかし,かといって,本来,A,Bを担当する裁判員に重い負担をかけることも避けるべきであろうということで,任意的記載事項に書いてあるようなものは,その多くは本来のA事件ならA事件,B事件ならB事件の事実認定なり審理をやっていく上で非常に密接に関連している,あるいは,それをあわせて判断することにそんなに負担は生じないだろうというものを中心に考えていると,そういう理解でございます。 ● まだ御意見のある方もいらっしゃるかと思いますが,時間の関係がありますので,次の「部分判決制度における裁判員等の選任手続等」について,御意見を承りたいと存じます。 ● よろしいですか。○○です。ここは,結論から言うと,裁判官は替わらないけれども,区分事件ごとに裁判員だけは交代するという提案だと思うのです。これはいろいろ言われていますけれども,裁判官がすべての事件に関与して被告人の事件総体に対して情報を持っていて,参加する国民側の裁判員は区分事件でしか判断できないという事態だと,一番最後のときに,先ほどから出ているいわゆるC事件の判断のところで,裁判官はA,B,C全部を通暁しているけれども,裁判員は最後の事件にしか対応できないということは,本当に国民を対等に裁判員として司法の中に迎え入れるという観点からいいのだろうかと私は根本的な疑問を持っているので,裁判官はなぜ替わらないのかということについて御説明いただければと思います。 ● ○○幹事,お願いします。 ● そもそもこういう制度をつくろうという目的といいますか,出発点は,併合された事件において生じうるであろう裁判員の重い負担をどう軽減していくのかというところにあり,裁判官の負担の軽減というのは全く関係のない話です。その意味で,裁判員の負担軽減の方法として区分して審理することが考えられるので,裁判官を替える必要はないと思います。   その理由は,今申し上げましたように,そもそもの制度趣旨を考えたときに,裁判官の負担軽減はおよそ関係のない話であるということがあげられます。また,それから,個々の事件の審理については,まさにそこに出てきた証拠によって判断するということはある意味で当たり前の話ですので,そこでA事件を担当した裁判官がB事件を担当しても,それは問題はないと思います。一番最後の刑の量定までするというところについては,おっしゃるとおり,全体としての刑の量定をするという意味では,最後の裁判員はA事件,B事件に直接関係はしていませんし,逆に裁判官はA事件,B事件に関係していますけれども,何をもって量定をするのかという判断については,この部分判決はその意味で拘束力を持たせているというんでしょうか,そこに書かれている事実,犯情に関する事実といった重要な事実,それについて拘束されて,それをベースに判断するということは全く一緒ですし,最後の刑の量定をするに当たって必要な証拠調べ,つまり情状に関する証拠調べはもう一度行うことになります。要するに更新することを前提にしていますので,それ以上に裁判官がたくさんの情報を持っているから,不公平だということはないと考えております。 ● もう一つつけ加えますと,今回の制度を運用していく場合には,事件全体を併合した上で,公判前整理手続を行い,どういう争点があって,どういう証拠調べが全体として必要かということを把握した上で,区分審理決定を行って順次審理していくということになるはずです。公判前整理手続を誰がやるかというのは,検討会でも議論があったわけでありますけれども,事件全体についてどういう審理計画を立てて行うかということについては,当該受訴裁判所,とりわけその中の裁判官の合議体が全体を見て責任を持って公判運営に当たるという観点で受訴裁判所が行うとされたわけであります。   この区分審理決定が行われた場合に,区分審理ごとに裁判官が交代していくという制度をつくってしまうと,最初の事件はいいのかもしれませんが,B事件以降は審理計画を立てた裁判官がいなくなってしまう,それを交代するという話になってしまいまして,それは全体を見た上で公判運営に責任を持つ受訴裁判所が公判前整理手続を行うという思想とも矛盾するし,実際上もそれは人が立てた計画に従って審理するということを制度的につくっていくということになり,適当でないのではないかと考えているところでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。○○委員,どうぞ。 ● 今の点は,そもそも論になりますが,いろいろなお考えはあるのだろうと思います。○○委員がおっしゃるようなものの見方というのも確かにあり得て,裁判官と裁判員が対等ではないのではないか,少なくとも見かけ上はそういうふうにも見えなくはないわけです。しかし,この問題にはベストの解答はないように思うのです。どういうふうにこの併合・分離の問題を解決すればよいかは,実際的にどの方策がより意味があり,問題も少ないかということで制度を組んでいかざるを得ない,そのような問題ではないかと思います。そういう意味から,実質的に意味があるか,あるいは不都合があるかという観点から見ていきますと,今,○○委員が言われたように,後ろの方の事件の審理を円滑に行っていくためには,最初に公判前整理手続で立てた審理計画に基づき裁判長の訴訟指揮のもとに審理を進めていくという形をとらざるを得ないわけで,そういうことからしますと,今回の案のように構成裁判官は前後同じとすることに実質的な理由があるだろうと思います。その反面,後の裁判体を構成する裁判官と裁判員との間で確かに情報に差が生じる。問題は,しかし,そのことによって何か実質的に不都合が生じるかということですが,後の裁判体についてみますと,さっきご指摘のあったように,マイナスの影響というのはないか,あるいは,小さいものにとどまるのではないかと思います。   つまり,一つは,罪責面での事実認定についての影響という点では,併合された複数の事件の間で証拠が共通ないし相互に補強しあう関係にあるとか,事実関係が相互に関連している,さきほど例を挙げられましたように,手口が共通しているとかいったような場合ですと,確かに前の事件の証拠を見ているために後ろの事件についての心証もそれに影響され得るということが考えられますが,こういう場合は,そもそも,但書により,区分審理にはされない。従って,証拠面で事実認定に影響するということはあまり考えなくてもよいと思います。   量刑につきましても,前の事件についての情報がどういう形で影響するかということを考えてみますと,後の裁判体がそれを証拠として考慮するためには,もう一度更新の形で,構成裁判官とともに後の裁判体の裁判員にもそれを見せたり,実質的に調べる機会を与えなければならないことになっていますので,その意味ではイコール・フッティングは確保されると思うのですね。また,前の区分判決に書かれていることは,後ろの裁判体はそれに拘束されますので,それと違う主張を評議の中で裁判官がするということはできないはずです。そのように考えますと,制度として,構成裁判官が前の区分審理に関与したことが,後ろの方の審判に実質的な影響を及ぼし,その点で後ろの審判にしか関与しない裁判員との間で差異ないし不平等が生じるということは,考えられないのではないかと私は思います。 ● どうもありがとうございました。はい,どうぞ。 ● 三番で選任予定裁判員について書かれておりますが,この選任予定裁判員の法的地位というのをどのようにお考えなのかということをお聞きしたいのです。裁判員という法的地位を与えられることによって,威迫罪が出てきたり,あるいは,接触禁止とか,そういう効果が生じてくるわけですけれども,選任予定裁判員というのはどういうような地位を考えておられて,接触禁止規定とか威迫請託禁止規定というのがどのように影響を及ぼしてくるのか,その辺のお考えをいただければと思います。 ● 選任予定裁判員はまだ正式に裁判員として選任されたわけではございませんが,実質的な地位に鑑みてそれぞれの規定について一定の手当が必要な場合があり得るだろうと考えております。例えば接触の禁止についても,選任予定裁判員を接触禁止の対象として追加することを含めて検討しなければいけないと考えております。 ● どうもありがとうございました。   次に,証人尋問等の記録媒体への記録の問題がございます。この点については,いかがでしょうか。 ● その前に一つ質問があるのですが。 ● はい,どうぞ。 ● 今日配られた配布資料の中に事件の数の資料があるのですが,部分判決の対象になりそうな事件というのはどのくらい想定していらっしゃいますか。 ● 具体的な数はなかなか御説明が難しいのです。と申しますのは,裁判員対象事件としてどのぐらいの事件があるのかというのは,統計でそんなに難しくなく出るのですが,部分判決の対象になるのは,その中で併合されたようなものということになります。ただ,併合されて,そのうち裁判員の円滑な選任に影響を与えるような,かなり長期間を要するというようなものについて,昨年の11月から公判前整理手続というものが始まりまして,これが施行されて1年ちょっとになるんですけれども,以前に比べると相当審理期間が短くなっている。あるいは,立証のやり方も非常に手際よくなっているという状況にありまして,かつてこれぐらいかかったら当然こうなるだろうというのが数字としては非常に出しにくい状況です。   ただ,冒頭申し上げましたように,日常的にこういうことがあるんだとは我々も考えていなくて,そういう事態が生じたら手続がとれるようにというような例外的な位置付けが相当だと思いますけれども,具体的に何件と言われると明確にこれぐらいというのは御説明しにくいという状況です。 ● 記録の点はいかがでしょうか。○○委員,お願いします。 ● これもあまりありそうな事件ではないのかもしれませんけれども,A,B,Cと事件があった場合,公判前整理手続をやっているわけですから,審理計画も策定されている筈です。そうすると,先ほど○○委員が心配されていたのは,裁判員に前の事件の情報が入ると,それが公平な裁判,事実認定に影響を与えないだろうかということなのではないかと思うんですけれども,そのようなおそれを少なくするために並行してというか,一つ終わって次のをやるというのではなくて,あるいは同時併行的にやるというか,あるいは,もっと期間を詰めて,場合によっては重なって実施するというようなことは事案によっては考えられないでしょうか。 ● 裁判員という観点から見るとそういう制度も可能かもしれませんけれども,結局,同じ被告人と弁護人がずっと対応しなければいけないことになります。そうすると,今,連日的開廷と言われているように,一つの事件について集中的にやろうという形になっていて,そのときにそれを組み合わせていくのは現実的ではないんだと思います。ですから,そういう前提ではこの制度は御提案していないということです。 ● ○○委員,お願いします。 ● 確認ですけれども,第二の二の方では,この記録媒体は訴訟記録に添付して調書の一部とするということになっているのに対し,第二の一の方ではそういう言及がないということは,第二の一の方の記録についてはそういう扱いはしない,調書の一部とはしないという御趣旨でしょうか。 ● そういう趣旨です。 ● そうしますと,その記録の作成の趣旨が「評議等における裁判員の職務の的確な遂行を確保するため」とされていますので,評議のときにこれを見たりすることが当然想定されているのだろうと思うのですか,どういうものとしてそれを見ることになるのでしょうか。もう一つは,「等」と書いてある「等」の意味なのですが,さきほど更新という例が出ましたので,その場合などを想定されているのだろうと思うのですけれども,,そのときはどういうものとして使うことになるのか。後の点は,更新の場合などに使うのか使わないのかということをまずお伺いし,その上で,使うとすると,どういう位置付けで使うのか。この辺を御説明いただきたいと思います。 ● まず前者の御質問ですけれども,評議において使用するというのは,本来,公判廷の審理を自分の目で見ている裁判員が,例えば記憶喚起などのために実際に法廷でとった心証を思い出すための手段として用いるということを考えております。その意味では証拠といった扱いではなくなるのだろうと考えております。 ● 例えば裁判官や裁判員が審理中メモをとりますよね。そのメモを見るのと同じだと,そういう位置付けでしょうか。 ● 同様だろうと思います。それから,更新の際に用いるかどうかについては,更新の際に用いることはあり得るし有用であろうと考えております。その場合,どのような扱いにすべきかということについてはさらに検討していきたいと思っておりますが,評議において使う場面とはおのずと異なった扱いにならざるを得ないのだろうと今のところ考えております。 ● そうすると,1番の場合は,弁護人はこれにアクセスすることはできないということになりますか。2番は調書の一部になっているから,調書の閲覧権でアクセスできるんだけれども,1番は評議のためのものであるという前提だと,弁護人がこの部分にはアクセスできないのだということでしょうか。 ● 録画体については,法律ができましたら,裁判所が管理することになると思っていますので,現在,裁判所で考えていることを御説明しようと思います。もちろん,これからここでどういう議論がされるかにもよるわけですけれども,録画体を撮るというのは記録がその場ではできないということが前提になっているわけです。評議の中で,「きのうあの証人は何といったかな」ということがその場で確認できないから,その記憶喚起のためにメモの代わりにビデオを見られるようにしようということがあるわけです。そうすると,当事者,検察官や弁護人にとってもほぼ同じような状況がありうるだろうと思っていまして,記録が第一審にある段階のことを考えますと,当事者の記憶便宜のために録画体を再生して見ていただくという機会を何らかの形で確保できないかという方向で今検討しているところでございます。 ● 予定の時間を超過しておりますが,最後に「公判調書の整理」について御意見ございましたら,お願いいたします。   特にございませんようですので,本日の審議はこの程度にしたいと存じます。司会の不手際で時間が超過してしまいまして,申し訳なく思っております。論点が多岐にわたるものですから,いろいろ御意見もあったかと思います。それを封じ込めたようなきらいもないわけではございませんで,その点おわび申し上げます。   本日はそれぞれの諮問事項に関しましてさまざまな御意見や論点をお示しいただきました。各諮問事項につきまして検討すべき課題も明らかになったのではないかと考えられますので,次回は本日の審議を踏まえた上でさらに議論を深めていきたいと考えておりますが,いかがでしょうか。そういうことでよろしいでしょうか。   では,特に御異論もないようですので,そのようにさせていただきたいと思います。   次回は主に諮問事項の第一についての2回目の議論に移りたいと存じます。   事務当局に確認いたしますが,次回以降の部会の日程がどのようになっているかお教えいただきたいと思います。 ● 現在,部会用に会議室を確保しておりますのは,1月5日(金)と1月22日(月)でございます。本日を含めまして3回の会議が開催できるように準備しております。時間につきましては,1月5日は午後1時30分から午後5時ごろまで,法務省3階の東京地方検察庁会議室を確保しております。1月22日は午後3時から午後5時30分ころまで,法務省の同じ20階でございますが,別の場所にあります最高検察庁大会議室を確保しております。 ● 予定はそのようになっております。   私,先ほどちょっと言い間違いをしましたようでして,第一だけではなくて第一から審議を進めてまいりたいという趣旨でございますので,そのように訂正させていただきます。   それでは,特段の差し支えがございませんようでしたら,次回は1月5日(金),時間は午後1時30分からおおむね午後5時まで,場所は法務省3階の東京地検会議室ということにしたいと思います。   本日はどうもありがとうございました。皆様,よいお年をお迎えくださいませ。