法制審議会電子債権法部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  平成18年12月19日(火)   自 午後1時02分                          至 午後6時26分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  電子債権制度の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,時間になりましたので,法制審議会電子債権法部会の第13回の会議を開催いたします。  本日の議事に入ります前に,会議用資料等の公開についての法制審議会総会の決定事項の報告が事務当局からございます。どうぞよろしくお願いいたします。           (事務当局から,会議用資料等の公開について,法制審議会第151回会議における決定事項の報告がされた。) ● ただいま御説明をいただきました。この点に関連して御質問等ございますでしょうか。--ございませんか。  それでは,会議用資料等についての決定事項の御報告につきましては,以上のとおりとさせていただきます。  それでは,配布資料の説明をしていただきます。 ● 今回の配布資料は,事前に送付させていただきました資料番号15番の「電子登録債権法制の私法的側面に関する要綱案(第2次案)」と,席上にお配りしております,金融審議会の「電子登録債権法(仮称)の制定に向けて~電子登録債権の管理機関のあり方を中心として~(案)」という金融審議会の報告書案でございます。このうち,資料番号15の要綱案の第2次案につきましては,この資料に基づいて本日実質的な議論の取りまとめをお願いしたいということでございます。それから,席上配布の金融審議会の報告書案につきましては,本日の審議の前提となる部分もございます。そして,この報告書案に基づいて先般の金融審議会で結論が出されましたものですから,この後,○○幹事から御説明をいただくことにしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。  以上です。 ● それでは,この席上配布の金融審議会報告書案に基づきまして,○○幹事に金融審議会の審議結果について,当部会の審議事項と関係の深い部分に重点を置いて御説明をお願いいたします。 ● それでは,お時間をいただきまして御説明させていただきます。  この資料は,12月11日に金融審議会が行われまして,最終的な御意見をいただいた上で結審いたしました。本日は,その当日配布された報告書案をお配りしております。特に法制審の議論と関連が深いと考えられる部分を中心に説明させていただきたいと思います。  なお,当日意見をいただいておりまして,所要の修正をする前のものでございまして,これはまだ最終版でないということだけ御留意いただきたいと思います。公表は一応21日を予定しております。  それでは御説明させていただきます。  まず1ページ目,下の方に1とあると思うんですけれども,「はじめに」というのがございますが,2段目のところ,「さらに,本年に入り,法務省の法制審議会において……私法上の問題点についての検討が具体化されたことも踏まえ」等々書いてございます。(注)といたしまして「電子登録債権にかかる私法上の論点に関する記述については,法制審議会におけるこれまでの検討を前提としたものである」というふうに注意書きをさせていただいております。  次に2ページ目でございますけれども,まず,電子登録債権の意義ということで,ごらんいただきますとおり,経済社会のIT化が進展し,商取引・金融取引の分野にも電子的手段を用いたサービスが広がりを見せている。3段目でございますが,手形につきましても,指名債権につきましても,その利用ですとか譲渡にいろいろ制約がある。4段目でございますが,中小企業者を含む事業者の資金調達環境を整備するため,電子的な記録によって権利の発生等の効力を生じさせ,取引の安全や流動性を確保する新たな制度として電子登録債権制度の整備を行うことが期待されるとなっております。  同じページの下の方ですが,2として,管理機関の果たすべき役割とございまして,2段目でございますが,「とりわけ,電子登録債権の権利の内容・帰属を定める登録原簿を管理し,業務規程等を通じて利用者の取引を規律することとなる管理機関は,いわば社会の公器として,公正性・中立性が確保され,国民から信頼される存在である必要がある」とされております。  次のページ,3ページ目でございますが,3といたしまして決済の安全性の確保。(1)同期的管理の必要性。これはいわゆる当事者の請求によらない管理機関の職権による支払等登録でございまして,この法制審の議論でも,第6の消滅というところに,当事者の請求を待たず職権で消すということについても言及がございますが,この同期的管理の必要性について,2段目でございますけれども,「電子登録債権制度においては,管理機関に対する支払等登録(記録の抹消)の請求は,原則として債権者が行うこととされており,債務者は債権者が承諾しない限り記録の抹消の請求を行うことができない。このため,債務者が支払等を行ったとしても,債権者の対応如何では,債権が譲渡され,債務者に二重払いの危険が生じることとなる。とりわけ実際の取引において一般的に利用されている金融機関を通じた資金送金により支払等がなされる場合,通常,債務者による資金送金が債権者による記録の抹消の請求に先立って行われることになると考えられるため,この二重払いの危険の回避が……極めて重要な課題」ということで,金融審の委員の方々も,ここを非常に重視しております。  (2)で管理機関による同期的管理ですが,「以上のような二重払いの危険を防ぐためには,債務者が支払等を行った場合,管理機関が,債権者からの請求を待たず,職権により記録の抹消を行う仕組みを導入することが有効である」。3段目でございますが,「管理機関による同期的管理は,事実の確認が比較的容易な金融機関の口座を利用した資金送金が行われる場面を対象とすることが適当である」とされております。  次のページでございますが,(3)の管理機関による同期的管理の方法といたしまして,1段目でございますが,「債務者の口座から債権者の口座への資金送金があった旨の連絡を,管理機関が金融機関から受け,記録を抹消する方法が考えられる」となっております。  同じページの4の管理機関の業務の適正性の確保ということでございますが,管理機関に求められる条件として,(1)として公正性・中立性の確保が挙げられております。  次のページ,5ページ目の(2)ですが,管理機関の破綻の回避。この破綻の回避ができるだけされることが必要であること,(3)が登録原簿の信頼性の確保ということで,信頼されることが必要であることが挙げられております。  以上を踏まえまして,(4)で管理機関の要件とございますが「以上を踏まえ,管理機関には,次のような要件が必要と考えられる」。まず業務範囲ということでございますが,いわゆる兼業,専業ということで,ここもかなり議論になりましたけれども,システムの共有によりコストが抑えられるというようなこともあるんだから,兼業も認めるべきだという意見もございましたけれども,(イ)に書かれておりますように,仮に兼業を認めますと,登録原簿に記録された利用者に関する情報が目的外に利用される等の懸念がある。それと,他業の破綻リスクが管理業へ及ぶことを遮断するためには,法人格を分離することが望ましいといったような理由から,管理機関は専業とすることが適当と考えられたところでございます。法制審の中間試案では,機関が送金手続を行う場合にはということで専業もあり得るという記載でございましたけれども,一応金融審では専業が望ましいという結論になった次第です。ただ,その場合でも,2段目でございますが,「電子登録債権制度が円滑に導入され,管理機関が安定的・継続的に運営されるよう,利用者の利便性やコストにも配慮しつつ,具体的な制度設計の検討を行うことが望まれる」とされております。それと,次の段でございますが,「なお,管理機関を専業に限ったとしても,別会社の形態をとれば,金融機関のみならず,多様な事業会社が管理機関を設立することが可能であり,公正性・中立性の確保や破たんリスクの影響の遮断という要請に応えつつ,ビジネスニーズに応じた多様なサービスが提供されることが期待される」ということで,金融機関に限るという観測もございましたけれども,それは限らないというような結論になった次第です。  ②が財産的基盤でございます。  ③が業務遂行能力ということで,まず1段目は,登録原簿を適切に管理する能力が必要であること,2段目は,情報管理体制の整備,情報セキュリティー水準の確保といった面が必要であること,3段目は,利用者の請求内容の記録を確実に保存することが挙げられております。さらに,7ページ目の最初の段ですが,債務者の二重払防止のために,管理機関は同期的管理の方法を提供する必要があること,管理機関は,金融機関と適切な連携を行って,資金送金を確認した上で,迅速・確実に記録の抹消を行えるようにすることが必要であるとされております。なお,企業グループ内など信頼関係のある関係者間に利用が限定される場合には,管理機関による同期的管理を義務づける必要はないとの意見もございましたが,そのような場合であっても第三者に電子登録債権が移転する可能性があることなどから,すべての管理機関は,同期的管理の方法を提供することが必要であると結論づけられた次第です。  (5)が監督でございますが,電子登録債権制度を信頼性の高いものとするためには,指定制等の資格要件を設ける。それと,必要な検査・監督規定を整備すると,このように言及されております。  次に,利用者の保護でございますが,消費者による利用ということで,電子登録債権制度については,民法等の特則としての第三者保護規定が設けられるなど,取引の安全に配慮された制度設計となっておりますが,「他方で,利用者保護の観点も重要である。特に,消費者は,事業者に対し,一般的に,情報の質,量,交渉力などに格差があると考えられることから,消費者が電子登録債権の利用者となる場合については,民法等の特則としての第三者保護規定が適用されず,消費者契約法などの消費者保護に関する法律や民法の規定が適用されることとなる」。この部分は,金融審の委員の間でも非常に評価の高かったところと記憶しております。ただ,このように,消費者については,法制面での保護が図られておるものの,そもそも紛争に巻き込まれること自体が不利益であるため,次のページでございますが,利用者が消費者の場合,消費者保護のための対応を適切に講じる必要があるとされております。  (2)が利用者の情報の保護,(3)が業務規程の利用者への周知ということでございます。  6がその他ということでございますが,まず1つは金融商品取引法との関係ということで,電子登録債権は,一定の流通性が確保され,多様な利用方法が考えられる仕組みでございまして,場合によっては金融商品として広く取引される可能性があるため,実効性を踏まえつつ,そのような金融商品については金融商品取引法の規制を適切に適用することを検討する必要があるとされております。  9ページ目でございますが,次の課題として,(2)で電子登録債権のネッティングというものがございます。多数当事者間の,関連する多数の債権につきまして,ある者がこれらの債権・債務を引き受けることによって,債権・債務を打ち消し合って,清算に要する資金移動額を削減する仕組み,ネッティングという仕組みがございます。先ほど,債権の消滅はBtoBの場合,銀行間送金が主だと思いますが,その次にこの相殺というものが考えられるわけですけれども,このネッティングにつきましては,いろいろ信用リスクが伝播する等の危険もあるのではないかというような指摘もございまして,3段目でございますが,現在のところ問題なく処理されているという意見,指摘もありますが,電子登録債権,非常に便利なものでございますので,これをもってネッティングが非常に広く利用されるような場合もあるので,そのような電子登録債権のネッティングについて,利用者保護の観点からどのような対応が適切か検討していく必要があるとされております。ただ,当日御意見がいろいろありまして,うまくこの電子登録債権を使えば,逆に法的安定性も高まるということで,便利な側面もあるということで,実務上の利点の確保といったような文言も入れる方向で修正される見通しでございます。  (3)で標準化等とございますが,複数の管理機関が存在する場合,管理機関ごとに端末機器が異なったり,登録原簿の方式などが異なると,いわゆる多端末現象ということですが,利用者の利便が損なわれることがございますので,10ページでございますが,必要なものについてはできるだけ標準化を図るべきであると。それとまた,現在手形交換所で採用されている不渡りの際の取引停止処分制度のようなものの仕組みを導入する必要性の有無ですとか,あと,登録の請求手続を簡素化するための実務的な工夫の検討など,電子登録債権が適切な形で広く利用されるよう,関係者の今後の努力が期待される。最後のところは,法制審でも発生要件としてA-1案からB-2案までいろいろな選択肢が示されたわけでございますが,B-2案のようなやり方は難しいにしても,やはり債務者が振り出しやすくしていただくことが重要でございますので,このような記述がされてございます。  私からは以上でございます。 ● どうもありがとうございました。  ただいまの○○幹事の御説明につきまして,この○○委員,何か補足されることがございましたらお願いいたします。 ● 今,○○幹事から御説明いただいたとおりでございまして,また,○○幹事がおっしゃいましたように,取りまとめは行ったわけでありますけれども,幾つか重要なポイントにつきまして委員の方から御意見をいただきましたので,その御趣旨を踏まえて報告書の文言の若干の修正をするということで御了解いただいておりまして,今,その御意見をいただきました委員の方に修正案を御説明申し上げまして,了解を得て21日に正式に取りまとめるということになっております。  以上です。 ● それでは,ただいまの御説明につきまして御質問等ございましたらお願いをいたします。--よろしゅうございましょうか。ないようですので,それでは,どうもありがとうございました。  それでは,本日の審議に入りたいと存じます。本日は,この部会資料15の「電子登録債権法制の私法的側面に関する要綱案(第2次案)」に基づきまして御議論いただくことになります。  この部会は,今年の2月から審議を重ねてきたわけでございますが,次回は要綱案を決定するという予定になっておりますので,残された論点につきまして,本日の部会ですべて決着をつける必要がございます。この第2次案は分量もかなりございますし,事務当局から提起された新たな問題点も含めて,議論をしていただく必要がある論点も相当数に及んでおります。したがいまして,本日も相当長時間にわたって議論をしていただく必要があろうかというふうにちょっと恐れているところであります。  本日は実質的に最後の審議になり,すべての論点について決着をつけなければなりませんので,十分に御議論をいただきたいというふうに思いますが,その一方で効率的な審議にも御協力をお願いいたします。  それでは,まず,部会資料15の「第1 総則」と「第2 電子登録債権の発生」の部分で,第1次案から変更を加えた点,特に議論をしていただきたい論点などを中心に事務当局に説明をお願いいたします。 ● それでは御説明させていただきます。  まず,第1の総則でございますが,「1 電子登録債権等の定義」の(1)でございます。電子登録債権の定義でございますが,第1次案では,この要綱に定めるところにより登録原簿に登録しなければ,その発生の効力が生じない金銭債権という定義の仕方をしておりましたけれども,今回の案では,「この要綱に定めるところにより行う発生登録,保証登録又は支払等登録をその発生のために必要な要件とする金銭債権」というように表現を少し改めております。中身が変わっているわけではありませんけれども,具体的に発生の要件となる登録が発生登録と保証登録と支払等登録の3種類であるということを明記いたしまして,それによって,発生登録により発生する普通の電子登録債権と,保証登録によって発生する登録保証債務の履行請求権,それから支払等登録によって発生する特別求償権の3つがすべて電子登録債権なのであるということを定義上も明らかにするということにしたものでございます。  それから,次の登録原簿の定義は変えておりませんが,登録記録の定義を少し変えております。これは注にも書いておりますように,第1次案では「一の登録記録番号が付される電子登録債権ごとに作成される電磁的記録」というふうにしていたのですけれども,御承知のとおり,発生登録によって発生する電子登録債権と,これを主たる債務とする登録保証債務の履行請求権は,一の登録記録番号が付された登録記録に一緒に記録されるわけでございます。したがって,1次案で書いておりました「一の登録記録番号が付される電子登録債権ごと」というのは,発生登録における電子登録債権ごとという意味だったんですけれども,登録記録番号というのは電子登録債権ごとに付されるわけじゃないものですから,そういう書き方はまずいだろうということで,発生登録または分割登録をする際に作成される電磁的記録をいい,その電磁的記録である登録記録にほかのいろいろな譲渡登録とか支払等登録などがされるんだと,こういうことをあらわす書き方に改めているということでございます。  それから,次に2の登録でございます。(1),(2)は変えておりませんが,(3)で管理機関の登録義務を書いております。これは第1次案では,それぞれの登録の箇所に書いておりましたのを,今回の案では登録事項から書き始めるということもあって,登録義務に関する部分は総則で一まとめにして書かせていただくようにしたということでございます。それから,(4)も同種のことでして,登録義務とあわせて管理機関が登録を制限することができる場合と,その内容を総則でまとめて書かせていただいたということでございます。そして,その各内容については,これまでの御審議の結果を踏まえまして,このような形にさせていただいたということでございます。  2は以上でございまして,3の登録の請求でございます。  (1)の部分,ここは本日また御議論いただかなければなりませんけれども,前々回,第11回の部会での御議論で,このような形にするということが御意見の大勢であったわけでございます。双方の請求が要るということで,B-2案をとらないということになったのが大勢だったわけですけれども,そうはいっても,当事者の一方は,他方の授権があれば,本人兼代理人として請求することができ,また,その授権は包括的なものでもいいということ。それから,管理機関と当事者との間の基本契約によって,一方当事者からの請求がされた場合に,その内容を管理機関が他の当事者に伝達し,その後一定期間内に伝達を受けた当事者から異議が述べられなかった場合には,その時点で請求があったものとして登録をするというような扱いもできるだろうというお話になったかと思います。それから,そういう伝達がされた場合に,それでオーケーという場合に,ワンクリックをすることによって請求をするというやり方ももちろんできる。どの方法をとるかということは,各管理機関の業務規程で適切に定められることになるだろうというのが第11回部会で○○幹事から御提案いただいて,そういうことで御異論がなかったところかと思います。こういうやり方で実務処理は円滑にいくのではないかというふうに思っておりますけれども,そういうことでよろしいかどうか,もう一回御議論をいただきたいということでございます。  それから,その次でございますが,(3)でございます。第1次案では,何を請求情報として提供しなければならないのかということを非常に詳しく書いておりましたが,これは不動産登記法におきましても,具体的な請求情報--不動産登記法では申請情報という言葉が使われているんですけれども--それは政令で規定するということになっておりますので,その請求者の氏名または名称及び住所という最も典型的なものだけを例示いたしまして,あとは政令で定めるという形にさせていただいております。政令に書く内容は基本的には第1次案でお示しした,代位による場合の代位者とか代理人とか,そういうものを政令で書かせていただくということを考えております。  それから,(4)は変更はございませんが,ただ,条文を書くときにこの形になるのかどうかということは,また別の問題でございます。これは要綱案全体についてそうでございますが,社債等振替法を見ますと,これは振替機関という名前なわけですけれども,振替機関は,この法律及び業務規程の定めるところに従って業務を行わなければいけないという一般規定が置かれております。そういう規定が仮に置かれるとすれば,それにこの(4)の内容も含まれるということになりますので,ここはまた金融庁さんと御相談して条文をつくっていくことになりますけれども,そういう形になるのかどうかということを条文の段階でまた--実質はこういうものを業務規程に定められるということですけれども,条文の書き方としては別の書き方もあるかもしれないということだけ御留意いただければと思います。  それから,(5)の意思の不存在・意思表示の瑕疵と第三者保護でございますが,ここは今回残された論点の一つでございまして,aのところにブラケットで「若しくは強迫」という言葉を入れさせていただいております。これまで何度も御審議いただいてきましたけれども,手形についての解釈と同じようにするには,強迫による取消しも善意無重過失の第三者には対抗できないということにすべきだという御意見と,民法が詐欺と強迫とを分けていることから,やはり強迫の場合だけは善意者保護よりも静的安全をより重視すべきだという御意見に分かれたままになってございますので,これについてもう一度御議論をいただきたいということでございます。  それから,3の後注でございますが,追認・追認拒絶の相手方につきましては,第11回部会で特則を設けることをやめて,民法113条,114条のルールをそのまま適用するというふうにお決めいただきましたので,そのことを念のために注記させていただいております。  それから,4の登録の効力でございますが,(1)を新たに設けさせていただいておりまして,電子登録債権の内容は,登録原簿の記録により定まるということでございます。当たり前のことですけれども,これによりまして,電子登録債権として登録原簿に書かれていない事柄によっては,債権の内容は影響を受けないということを明記することにした次第でございます。  それから,次に5の登録の訂正等でございます。  (1)が訂正,(2)が回復でございますが,いずれも第1次案では「することができる」ということにしておりましたけれども,こういうミスがあった状態ですので「しなければならない」とすべきではなかろうかということで,「しなければならない」という案にすることにしております。これでよろしいかどうか,御確認をいただきたいと思います。  それから,あとは細かい話ですけれども,6ページの6に入る前の後注でございます。従前,登録の訂正等の第1次案の(3)というところで,登録の訂正または回復をするときは,訂正または回復の年月日及びこれらの内容を記録しなければならないというふうにしていたんですけれども,内容を記録するというのは,訂正や回復をするんですから,それ自体が内容を記録することで重複になるということと,そうすると,残るは訂正,回復の年月日ということになるんですけれども,年月日を書かなければいけないということだけ要綱に書くのもいかがなものかということで,これは条文をその法律に書くのか,政省令にするのかということは,また権限ある御当局と相談したいと思うんですけれども,要綱案からはとりあえず落とさせていただいたというのがこの後注でございます。  それから,6の登録に関する管理機関の責任の関係ですが,ただし書について(1),(2)とも第1次案では,管理機関は,その職務を行うについて注意を怠らなかったことと書いていたのを,「管理機関の代表者及び使用人その他の従業者がその職務を行うについて」というふうに改めさせていただいております。これは第11回部会で,職務を行うのは管理機関じゃなくて管理機関の職員であろうという御指摘をいただきまして,それで法令を検索をしてみたんですが,確かにそのとおりで,職務を行うについて注意を怠らなかったという規定は幾らでもあるんですけれども,全部自然人でございますので,とにかく管理機関のあらゆる関係者のだれもが注意を怠らなかったことが要件だという形にさせていただいたものでございます。これでよろしいかどうか,御確認をお願いしたいと思います。  それから,第2の電子登録債権の発生。7ページでございますが,この「1 電子登録債権の発生の要件」は,表現を少し変えております。これは第1次案のときにも申し上げましたように,定義との関係で,できる限り重複がないように表現を改めたというだけのことでございます。  それから,その次が大きな問題ですけれども,2の発生登録の(1)の登録事項でございます。これはまず,登録事項から書くようにしたというのは,第1次案の下からそういうふうにさせていただいていますので,この部分もそのように改めさせていただいたということでございます。  そして,その関係で8ページをごらんいただきたいんですが,注の1に書いておりますように,法定の任意的登録事項は,これこれであるときはこれこれというようにすることによって,それが必要的登録事項ではなくて任意的登録事項であるということを示しております。それから,法定外の任意的登録事項は,⑮で「政令で定める事項」という形にさせていただいているということでございます。ここで御議論いただかなければいけないのは⑨と⑩でございまして,⑨につきましては,従前ブラケットにしておりましたのを,今回はもういよいよ最後ということで,ブラケットをできるだけ少なくするということで,ブラケットを外させていただいた形で,「善意取得又は人的抗弁の切断の規定を適用しない旨の定めをするときは,その定め」というのを法定の任意的登録事項として挙げさせていただいております。その理由は注2に書かせていただいたとおりでございまして,これを書きませんと,善意取得,人的抗弁の切断が法律上のものですから,法律に書かないと例外がつくれないということがあり,また指図禁止手形と同様の取扱いをできるようにするという必要がございますので,これを書かせていただいたということでございます。  ただ,そうしますと,前から御議論いただいているように,流動性に問題が生ずるわけでございますが,そこは,この法定の任意的登録事項につきましては,管理機関がそれを認めないということもできるということにしてございますので,そのことは9ページの(2)に書いているわけでございます。管理機関は,業務規程の定めによって,(1)の②から⑪までの一定の部分について,その登録をしないこととし,またはその登録を制限することができるという形にしていますので,管理機関によっては,こういう登録を認めるものと認めないものが生ずることになり,それによって流動性を確保したい当事者は,この⑨のような登録は認めない管理機関を利用するということで対応ができるのではないかというふうに考えまして,⑨を掲げさせていただいた次第でございます。これでよろしいかどうか御議論いただきたいということでございます。  他方,⑩につきましては,なおブラケットの形でお示しさせていただいています。ブラケットにしていますのは譲渡登録の部分ですけれども,仮にブラケット部分を全部まとめて削ってしまいますと,制限の方にだけ譲渡登録が入ることになるので,これらの登録及び譲渡登録を制限する旨の定めという形で,⑭と同じような書き方をすることになると思います。ここは,これまで電子登録債権の自由譲渡性の問題として議論をしてきていただいたものでございますけれども,なお両論があるところでございますので,今日,最も時間をかけて御議論いただく必要があると思います。よろしくお願いしたいと思います。  あとは,(2)は既に申し上げたとおりで,(3)は登録事項から書きました関係でこういう形になっていますけれども,従前と変わりはないということでございます。  私の冒頭の説明は以上でございます。 ● それでは,特に議論をしていただきたい論点について先に議論をしていただいて,それ以外の項目については,後で第1と第2をまとめて御意見を伺うという形で進行をさせていただきます。  まず第1のところですが,3ページにございます「3 登録の請求」の(1)について御議論をいただきたいというふうに思います。この部分につきましては,第11回部会における審議では,議論の大勢はこの原案のとおりであったわけでありますけれども,なお御異論もあったところから,もう一度この点について御議論いただいた上で取りまとめると,そういうことになっていたものですが,こういうまとめでいかがでしょうか。  ○○委員,お願いします。 ● それでは申し上げます。  まず結論から最初に言いますと,意見の大勢には従わざるを得ないかなというふうには思っております。また,今回,この注におきまして,請求手続をできるだけ簡略に認めようという御趣旨でいろいろとお書きいただいている部分もあると思いますので,その点は御配慮いただいてありがとうございます。  一方でですが,従来から主張しておりますとおり,手形代替手段以外の活用の場合はこの要綱案でいいと思うんですけれども,手形代替手段に関しては債務者単独請求がいいという,その主張そのものは利用の推進のためには重要だと思っておりますので,ここから先は議事録に残していただきたいという話なんですが,全銀協から顧客ニーズを踏まえると手形代替手段に関しては債務者単独請求が望ましいという点が強く主張され,債権者・債務者双方請求を前提とすると手形代替手段として活用されないのではないかという意見があり,その結果,中小企業金融の円滑化のために機能しなくなるんではないかという懸念が表明されたという点は,しっかりと議事録に残していただきたい。あと,あわせまして,今後法制化の検討の中でも必要に応じて引用していただきたいなというふうに思っております。  その上でですが,前回,実務的にあと納得していただければというふうなこともありましたので,全銀協で改めて顧客ニーズを聴取いたしましたので,ちょっとそれにつきましても報告させていただきます。  前々回の法制審議会以降,大体この1カ月ぐらいの間に,全銀協内部で個別行及び地銀協,第二地銀協,信託協会を通じまして50社以上に上るニーズヒアリングを手分けして実施してまいりました。ヒアリングの対象は中小企業から大企業までわたっていまして,債務者,債権者それぞれの立場で,まず電子登録債権そのものへのニーズ,それと,いわゆるB-2案や,この3ページの注で整理いただいているパターン,これに関してどれが望ましいかということにつきまして聴取しております。  まず電子登録債権に対するニーズでございますけれども,総じて言いますと,債務者側は,これまで一括決済や期日現金振込へのシフト,これを通じまして手形の減少に取り組んできていますので,手形代替手段に関する関心は非常に高い。さらに理解度も早いということです。一方で,債権者側は中小企業さんが多いということもあって,制度に対する理解や関心がまだいま一つかなという形で,特に明確な意思を表明されたというような感じではありませんでした。  次に,発生登録に対する考え方でございますけれども,債務者サイドは支払事務の合理化の中でこれまでいろいろな施策を打ってきておりますので,一言で言いますと,今よりも事務手間が増加するのは困るというふうな理由で,やはりB-2案を支持するのが大半の意見でございました。一方で,企画セクションとか管理セクションの方からは,今後内部統制ということも問題になってきますので,そういった観点からは双方の方がいいというふうな意見もございました。ちなみに,11月29日の金融審でも,○○委員の方から同趣旨の御発言があった。同趣旨というのはB-2案というようなことですね。さらにヒアリングの中で,債務者の中に中小企業の意見というのが含まれているということも付言しておきたいと思います。一方で,債権者サイドにつきましては,そこの注の案で問題ないというふうにカウントしたところもございましたけれども,そもそもいま一つイメージがわかないなというのが多くの反応であったと思います。  また,3ページの注のスキームにつきましてもヒアリングしておりますので,特に重要な反応について述べさせていただきます。  まず,いわゆるここに書いてありますワンクリックについてなんですけれども,債権者側からは,ワンクリックといいましても企業の意思表示の一つであって,だれがどういう権限でやるのか。つまり,担当者ができるのか,課長ができるのか,部長ができるのか,そういったことですね。どういう内部稟議手続を経て行うのかということはまちまちであって,ワンクリックと言うほど簡単な話ではないという反応が複数者からありました。したがいまして,このワンクリックというのは,もし反復・継続的に大量処理を前提にした場合というのは,その双方請求の手間を省く手段として考えるのは実際問題は難しいのかなというような印象を持ちました。  次に,一定期間後自動承諾についてなんですけれども,債権者側の確認が必要という意味では,これはワンクリックと同じであって,短期間の間に処理が要請されるとしたら,やはり事務的には厳しいんじゃないかというような意見がありました。ただ,ワンクリックよりは事務的には楽だろうというふうな意見でございました。  包括委任に関してなんですけれども,これは一括決済方式の延長線で考えている債務者に関しては,債権者側の意思も確認できるので安心だというふうな支持意見もございましたが,逆に債権者側からは,法的にクレームが言いづらくなるという点が問題であるというふうな指摘がありました。  結局,これらの顧客の声を踏まえて考えますと,この注に書いてある内容で実際に使っていただけるのかどうかというところにつきましては,正直言って余り今のところは自信がなくて未知数だなというふうに思っています。さらにもっといい方法がないのかということを,お客さんのニーズを満たせる方法がないかということを努力して探さなければいけないのかなというふうに思っております。  あと,全銀協の基本的なスタンスについて補足させていただきますと,銀行自身は,方式に関してはもともと中立的であるということは付言しておきたいと思います。要するに,銀行としては,どの方式がいいというよりは,お客さんが喜んで使ってくれるのであれば,それほどこだわりがないというふうなことですので,我々の主張の原点には実際にお客さんのニーズがあるという点は明記をしておきたいというふうに思います。  あと,私が特に言いたいことは2点ございます。  1点目は,手形代替手段が機能するということと,電子登録債権を活用して中小企業金融の円滑化を図るということは,これはコインの裏表の関係ということだと思います。よく中小企業である債権者から,債権者主導の電子登録債権の活用ということも言われていますけれども,現実的にはそんな簡単な話ではないと思っています。これは現在でも売掛債権流動化が進んでいないのと同じ理由だと思っています。つまり,債務者の協力がなくては発生もしないし,発生しなければ流動化にも使えない。その債務者の主たるニーズというのは,今回のヒアリング結果でさらにクリアになったと思いますけれども,合理化ニーズがその中心だということです。したがって,この合理化ニーズが満たせないとしたら活用されないんじゃないかというふうに我々が危惧することについては,十分御理解いただけるのではないかと思います。  2点目ですけれども,今回,特にこれから発生するニーズに対して先に制度をどうつくるかという話ですので,その制度の法的な検討ということと利用者の具体的なニーズ,これをどうバランスさせるのかが非常に重要だというふうに,これは従来から言っているところだと思うんですけれども,そのニーズにこたえる制度をつくるわけですから,私としては後者に比重を置くべきだというふうに考えています。  そこで,先ほど顧客ニーズということを詳細に報告させていただきましたので,それを踏まえまして委員の皆様の考え方をお伺いしたいというふうに思っています。  1つは,特にこの要綱案の内容を強く御支持をされる方に,報告させていただいた顧客ニーズに関してどういうふうにお感じになるかというふうなことをコメントいただきたいというふうに思っています。  2つ目ですけれども,特にこれまで中小企業のお立場から要綱案を強く推されました○○委員と○○委員に対して御質問です。これまで,どちらかというと,要綱案の中でどれが使われるのかとか,またどれだったら使いたいのか,実際にそれを使って業務に具体的にどういうふうに活用するのかといったところについては,特に明確な印象は持っていないんですけれども,もしそういったものがございましたら,ぜひ御発言いただきたいというふうに思っています。  あと,最後ですけれども,我々が聴取した内容をベースに考えますと,債務者の合理化ニーズが満たされないと,結局債権者としての電子登録債権の活用がかなわなくなるんじゃないかというふうに懸念しておりますけれども,その点,どういうふうにお考えになるのかという点につきまして御発言いただきたいというふうに思います。  私からは以上でございます。 ● どうもありがとうございました。  この問題について,あるいは今,○○委員の御発言の中で御発言いただきたい旨お話がございましたが,そういう方々,もし御発言があればということですが,いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● ちょっと盛りだくさんですので,できるところから御回答をさせていただければと思いますけれども,私ども,沖縄等で電子手形の実証実験等をさせていただいたときに,仕組みとしては完全な電子上ですべてのやりとりをやってしまおうということで試行いたしました。そのときには債務者の登録についても1件ずつ登録する。そして,受取側,債権者がそれを承諾しないと実際の債権としては成立しませんよという仕組みになりました。やはり債務者側からは,1件ずつの登録に対する事務負担の問題ということで,一遍に登録できるような仕組みが欲しいということで,そういう手当ても,一遍に何本の債権をも登録できるような仕組みにしたのも確かです。もう一方,今議論になっている,債権者側からの承諾がないと債権として発生しないことになるというところに対しても,それを待っていなければいけないというところに対して,手形を発行するのであれば,手形用紙に記載して相手に渡した段階でというよりも,郵送であれば,その記載した段階で支払手形という形で勘定上に乗るのに,電子手形としてやった場合は相手が受け取らないと勘定に乗せられないのかというところで,それは実務とちょっと違ってくるなという,そういう意見もございました。ここら辺は公認会計士協会等ともお話しして,なかなか決め切れなかったので,ある程度,もうこれはこういうやり方でやりますということで,こちらが先行してやらせていただいた部分もありますけれども,最終的には相手が受け取らないと勘定も乗せられませんというところに行き着いたわけです。これがどうしても,やはり○○委員のおっしゃったように債務者側からいくと,じゃ,いつ支払行為が勘定上に乗せられるかというところが非常に問題ですねということがあって,これは先ほどのB-2案のような形でいけば,その段階ででき上がるだろうという,そういう意見もあったのも確かです。  ただ,やはり債権者側,受取側の方から見ますと,今,やはり債務者が勝手に登録されて,それがいきなりもう債権として自分のものになってしまうということになると,やはりそれは中小企業から見ると,幾らの支払がされるのかというところがわからない段階で発生されてしまったら困る。例えば納品して,それを受けてもらって,それによって金額は,例えば返品があったら変わってしまうだとかということが起こる段階で,それが当初の約束どおりに払われればいいんでしょうけれども,それを返品の金額だとか値引きだとか勝手にされてしまって,それが債権として本当に発生して構わないんでしょうかというところは非常に危惧されておりましたので,やはり中小企業が債権者になるということを考えますと,そこは幾ら債務者の利便性を考えたとしても,そこを勝手に債権として発生させたらまずいだろうというのは,これはもう覆さないのかなというふうに思っておりました。  あと,その中で承諾について,前ちょっとこの場でお話しさせていただいたように,電子手形の場合は,受け側が承諾しないで一定期間が経過すると消滅してしまうということをやってしまったんですね。そうすると,債務者側としては,せっかく支払行為をしようとしたのに支払自体もなくなってしまうというのがあったので,ここは両者の声を聞くと,一定期間を経過すると発生するという形に直した方がいいだろうということがありましたので,そういう話をさせてもらったところです。ただ,これはやはり期間が余りにも短いと,債権者側がそれを毎日毎日確認することはできないので,ある程度の期間はやはり欲しいと。やはり1週間とか10日とか,そういう期間がないとやはり難しいんではないかという話がありましたので,これは○○委員が先ほどおっしゃられた,短期間であるとなかなか実務的に回らないというのはそのとおりかなと思っておりました。  あとは,ワンクリックという話がございましたけれども,これは単純にクリックするということではなくて,やはりそれは仕組みの中で,企業としての権限がある者による承諾行為ですから,これはワンクリックという言葉が余りにも軽くなり過ぎているのかなという思いがありまして,これは説明の仕方でどうでもなってしまったのかなと。やはり権限を持った人がそれを承諾する行為をネット上でワンクリックと言っているだけですので,それはちょっと違うのかなと思います。  ちょっとすみません。今,ここまで御回答させていただきたいと思います。 ● どうぞ,○○委員。お願いいたします。 ● 大変たくさんのことをおっしゃられたので,ちょっと私の方ですべてにお答えするというほどの整理ができておりませんけれども,先ほどアンケートされたときに,債権者側,主として中小企業であろうということで,十分に理解がされていないのではないかというお話があったんですが,これはもうまさに私どももそのとおりでございます。今のアンケートもいろいろな機関を通じて50社ぐらいというお話でございましたけれども,私ども中小企業側とすると,そういったことをアンケートするだけの組織的なものというのが必ずしもあるわけではございませんが,やはりいろいろな形で,例えば商工会議所なんかの中小企業金融委員会とか,そういったところでも議題として出しているわけでございますけれども,要するにこれはできていない制度であるということで,なかなか頭の中にこの制度が思い描けないというふうなことで,まず今の検討状況を理解してもらうこと自体が大変私どもも苦労しているところでございます。そういうところに出てきている人でもその程度でございますので,さらに恐らく末端のところにアンケートされたんだろうと思いますので,もう全くこの制度そのものが検討されていることさえ知らない方々が多分いたんだろうなというふうなことで,理解が十分ではないということは,もう御指摘のとおりだろうと思っております。  それで,いろいろ,例えば今のワンクリックの問題とかの御指摘もございましたけれども,こういったものも,要は今でも,これは企業内の組織,権限移譲をどこまでするかという組織の問題だと思うんですね。これは今でも手形を切るにしろ小切手を切るにしろ,多分だれかが権限を持っていて,判こというのは1つしかないんだろうと思いますので,どなたかが判を押しているというような形で仕事の流れというのは確立しているんだろうと思います。これに従って権限を有する方がオーケーをすればいい話でございますので,その辺はさして大きな新しい問題ではないんではないか。それから,もうまさに担当者なのか,課長なのか部長なのかというお話は,まさに大企業だからいろいろそういう人がたくさん,いっぱいいるために起きてくる問題でございまして,中小企業の場合には大体社長が1人ぽんと押せば済むというようなのが現実でございます。あるいは,せいぜい経理部長ぐらいというふうなことでもございます。  それから,一定期間後の承認というふうなことも,これも私は毎回申し上げておりますけれども,私ども企業として見たら,売った代金は一刻も早く回収したいというのが,これはもう回収しなければ企業の生命にかかわる話でもございますので,むしろいつ払ってくれるんだろうかという千秋の思いで待っております。ボールが投げられてくれば,多分非常にスムーズにボールは返球できるんではないかというふうに思っております。  それから,合理化の問題というのは,これはもうおっしゃるとおりでございます。これは債務者側に立とうが債権者側に立とうが,お互いに合理化されることが何よりも望ましいことでございますので,ぜひこれはいろいろなやり方を工夫しながら,お互いに進めていきたいなというふうに思っております。  それで,やはり○○委員御指摘のように,私どもも,せっかくできる制度でございますから,ぜひ使えるものにしたい。使ってくれればいいとおっしゃっておられましたけれども,もうまさに銀行さんのそういうニーズのみならず,我々企業としてもぜひ使える制度にしていきたい。そのために,きょうも御出席いただいている金融庁さんとか経済産業省さんなんかも,これからまたいろいろ制度づくりに御検討されるということでもございますので,この辺はぜひ我々もいろいろ協力しながら,使える制度にしていきたいというふうに念願をしております。 ● ありがとうございました。  ○○委員,どうぞ。 ● この論点はもう少し時間が早く終わるのかと思ったんですが,○○委員が非常に詳細に御発言されたものですから,ある程度詳細にお答えしないと議事録上バランスがとれないんだろうと思いますので,申しわけありませんが申し上げさせていただきます。  御理解いただきやすくするために,状況としてまさに使われないと困る。だけれども,使われないと困るからといって,現在の実務に破綻を来すようなものになってはいけないという観点から,現在行われている将来債権譲渡担保,こういうものを念頭に置いてお聞きいただければありがたいと思います。理論的に3点,実務的に1点という感じになります。  まず第1点,これは既にこの法制審でも議論して申し上げたところですけれども,原因債権が発生した後,それが譲渡される。将来債権譲渡なんかもそうですね。その後,電子登録債権が具体的に出されるという,売掛けが発生してその支払が大企業さんから電子登録債権で登録されたというようなことを考えていただく場合に,既にここでも議論になったように,これは手形とのアナロジーで考えるべきである。そうすると,原因債権が発生した後,手形が出されたということは,その手形を振り出したということが民法468条2項,また債権譲渡特例法4条3項にいう「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」に当たるというのが手形のアナロジーで,今まで手形で出ている判例で言えることであるということは,もうここで既に議論があったと思います。したがって,そのアナロジーでいうと,手形を出していますから,手形を返してくれるまでは,あるいは持ってきてくれるまでは払いませんと債務者は言える。同じようにすると,電子登録債権で出したから,そちらを支払等登録で消してくれるまでは払わないというふうに最初の原因債権の譲渡人に対して言えるというわけですが,そうすると,この電子登録債権の発生が抗弁事由になるという論理を用いるためには,発生登録のところでB-2案をとりますと,債務者が勝手に譲渡人に対して生じた事由というものを創出して,それを譲受人に対抗できるという非常に不合理な結果になります。これが第1点。  第2点。現在のこの要綱案では,原因債権と電子登録債権の関係は,発生させる当事者の自由意思に任せて特段の規定を置かないということになっております。したがって理屈としては,原因債権を消す,つまり支払に代えて出す電子登録債権もあれば,全くの無関係,つまり原因債権の帰趨を拘束しない電子登録債権というものもあり得るということになります。したがって,この問題は,結局,発生登録の主体の問題にも絡むわけで,発生登録に際して原因債権をどうするかは当事者が決めているはずだという考え方を我々の試案は採用しているわけですから,当事者の合意を想定しないB-2案のような登録形態が認められるのはこの点からもおかしい,こういうことになります。これが第2点。  次,第3点。現実的に原因債権が譲渡されてから電子登録債権が発生して,これが債権者の責任で二重譲渡されたとか,そういうような場合も考えられると思います。二重譲渡といいますか,原因債権の譲渡と別処分として電子登録債権が処分されるというようなことを考えることができます。その発生登録に関してA-1案からB-1案までのいずれかを採用した場合には,登録段階で債権者Aは,既にみずからがなした譲渡と抵触する発生登録がされるというか,するということを認識しております。したがって,少なくとも最初の原因債権の譲受人が譲渡人にその責任を追及する根拠は,その段階で既に明白になるんです。しかし,B-2案を採用しますと,債務者は,その譲渡の事実に悪意の場合も善意の場合もあるんでしょうけれども,単独で電子登録債権を発生させ得るので,譲渡人が知らないうちに電子登録債権が発生し,しかもそれが譲受人に対する先ほど申し上げた抗弁事由となり得るということになります。したがって,B-2案をとると,ここで問題は非常に難しい。Aの責任をどうやって追及するか,その根拠も法律的に不明確になるということであります。  最後に1点,実務的に,それでは現在行われている将来債権の譲渡担保において,具体的な各個別売掛債権が大企業から中小企業に対して電子登録債権の形で出されたようなケースを考えますと,先ほど申し上げたように,これは別処分がされてしまいますと最初の譲受人は劣後してしまう。取れなくなってしまいますので,そうすると,実際にはこういう現在行われている将来債権譲渡担保契約,そして特例法登記で第三者対抗要件をとっているものについては,具体的に,債務者が例えば大企業で,今後ほぼ全面的に電子登録債権を採用するというようなケースでありますと,その債権者としての被融資者,譲渡人の方ですね。これは融資者たる原因債権譲受人の名前で電子登録債権を発生させてくださいというふうに債務者に依頼するというのは現実的ではありませんから,実際には被融資者たる譲渡人を債権者とした電子登録債権が発生登録されることになるだろうと思います。その場合に,原因債権譲受人,さきの融資をした譲渡担保の融資者としては,その発生登録された電子登録債権を債権者となった原因債権譲渡人に速やかに回収させ換金させるか,それを自分が譲り受けて譲渡登録をするという形で防御しなければいけません。そして原因債権譲渡人に万一他に譲渡する等のコベナンツ違反があれば,期限の利益喪失等,直ちに融資契約を清算する趣旨の強い制裁を契約中に規定すると,こういうようなことが一つ対応手段として考えられますが,今申し上げた,自分が譲り受けるなんていうことをやる,あるいはすぐに回収してもらうということをやってもらうためには,電子登録債権の発生登録を債権者が知らないうちに債務者だけでできるなどということはあってはならないわけであります。したがって,この観点からも,先ほど申し上げた発生登録のところでのB-2案というのは採用できない。個々の電子登録債権発生について,債務者と債権者の両方で登録する案をとらなければならないということになります。  以上のことは,先ほど○○委員が御発言の中でおっしゃった11月29日の金融審で,今,○○委員の言われたような内容の御発言をされたというある委員に対して,私,今のことを論文に書きましたので,それをお送りして,なお御異論がある場合にはおっしゃってくださいというふうにお伝えしましたが,お返事はありませんでした。  そして,最後に○○委員のおっしゃった債務者の合理化ニーズということですが,これは○○委員のアンケート,顧客ニーズとおっしゃるのは大企業のニーズにほかならないように聞こえます。したがって,金融審の方でも申し上げたんですけれども,合理化できないと発行しないというのは,やはり大企業エゴであると私は思っております。したがって,使われなければ意味がないという論理を大企業としての債務者の合理化ニーズだけで置きかえて,それが果たされなければ使われない,発行しませんとおっしゃるのは,やはりこの制度全体を見た場合には余り適切なニーズの表明ではないと私は考えています。  長くなりました。以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私も事務局案を支持する者として,○○委員の御指摘に対して,ちょっと○○委員とは別の観点から発言したいと思うんです。  先ほど○○委員の方から,3ページの注にある方法のうち,包括委任については債権者からクレームが言いづらくなるという弊害があるというふうにおっしゃられましたけれども,○○委員のようにB-2案をとった場合は,これはすべての債権者がクレームを言えなくなるということで,かえってその弊害を拡大するわけです。包括委任であれば,特定の大企業と特定の下請グループという閉じた世界で信頼関係があってやっていることですからよろしいですけれども,それを手形代替手段一般ということで開かれた世界でB-2案をとりますと,結果的にすべての債権者に包括委任を法制度として要求するということになりかねないので,その弊害というのはさらに広がるということだろうと思います。  それで,それに対応するために○○委員は前々回の部会で,たしか単独発生説をとった上で,さらに債権者が管理機関に登録しないうちは電子登録債権を発生させないということにして,債権者が承諾しないうちの差押えの問題であるとか,今言ったような問題について対応したらどうかというふうに提案なさったというふうに記憶しておりますけれども,これは結果としては,もしそういう制度をつくれば,それは閉じた世界での利用をしているだけの話でありまして,この制度としては開かれた世界,債権者に事前登録を要求しないものとして議論してきたという,従前の議論とかけ離れ過ぎるという,これと同じようなことを前々回も私は申し上げたと思いますけれども,そういう問題がある。  あと,ちょっと今申し上げた,債権者が承諾しないうちに第三者がそれを差押えた場合どうかという問題は,やはりB-2案は余り解決になっていない。従前の議論で最終的には不当利得の考え方で,債権者は差押債権者に対する弁済を強要されたのと同じ結果になるということで,その行為は結果は不当であるというふうに私は考えております。結局,債権者の権利が債権者が知らないうちに発生するという根本問題が解決されていないんじゃないかというふうに思っております。  先ほどヒアリングの結果についてどう思うかというお尋ねでありましたので,これは確かに債務者の合理化ニーズというのはよくヒアリングで出てきたなと。債権者のニーズは何もわけがわからないなということで,それについては,だからどうなんだということで,大したことはないなというふうに思っております。 ● ありがとうございました。  特に御発言ございましたら……。よろしいでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 今,何人かの委員の方の御発言について,例えば○○委員の一番最初に挙げられた民法468条の2項との関係なんかは,B-2案をとったときにそういう解釈にはならないというようなことは前に申し上げたことでありまして,もう繰り返しません。もう○○委員も,意見の大勢には従うとおっしゃった上でおっしゃっているわけですから,記録にとどめるのは以上で十分であって,審議の促進をした方がいい。立法というのは妥協でありますので,もし将来これで何か問題が出てきたら,そのときに見直すということで進めていただけたらと思います。私は本来B-2案でありますけれども,そういうことでこれに従います。  以上です。 ● ありがとうございます。  ○○委員がまとめていただきましたので,もうおそらくこれで収束をしたものというふうに私も受けとめました。○○委員も最終的には受け入れることになるだろうというふうにおっしゃっていただいておりますので,この問題につきましては,この原案ということで皆さん御了解をいただけたというふうに確認をしたいというふうに思います。どうもありがとうございました。  それでは,次に移りますが,4ページの(5)の意思の不存在・意思表示の瑕疵と第三者保護という問題でございます。これはブラケットに入っております強迫の場合の取扱いにつきまして,これまで何度も議論を重ねてまいりましたけれども,第三者保護の対象に含めるべきであるという御意見と,含めるべきでないという御意見の双方に分かれたままの状態が続いております。いよいよどちらかに決めないといけないという,そういう状況でございますが,この点について御意見をお願いいたしたいというふうに思います。  ○○委員,どうぞ。 ● 今,部会長の御紹介がありまして,それからその前に○○幹事からも御紹介のありましたように,手形にそろえるか民法にそろえるかということで両論あったわけですが,改めて考えてみますと,強迫による取消しについても,取消し後の第三者と取消し前の第三者があると思います。取消し後の第三者については,詐欺の取消しの場合と区別する必要はないのではないか。したがって,ここのブラケットを外して強迫による取消しも含めるということでいいのではないか。つまり,○○委員のおっしゃっていたようなことでこの点はいいのではないかというふうに思います。  問題は取消し前の第三者でございまして,詐欺については(5)のaの2行目に留保がついているわけでございます。これと同じように強迫も考えていいのではないだろうかというのが私の今回の意見でございます。詐欺による取消し前の第三者の処遇は民法にゆだねられますので,これは学説によりますと,善意でかつ過失のある第三者は保護されないというような可能性もありますが,いずれにしてもそこは民法にゆだねられている。そういたしますと,強迫について取消し前の第三者も一律に取り扱うということになると,かえって詐欺の場合と不均衡が生じる可能性があると思います。ですので,詐欺も脅迫も取消し前の第三者についてはまとめて民法に送ってはどうだろうか。具体的に申しますと,aの2行目の括弧内,「詐欺による取消しにあっては」というのを,「詐欺又は強迫による取消しにあっては,取消し後の第三者に限る」というふうにしてはどうだろうかというのが今回の私の意見でございます。 ● ありがとうございます。  今,○○委員に御意見を新たに表明をいただきましたが,いかがでしょうか。○○委員に御発言をいただければありがたいですけれども。 ● 私は,○○委員の御意見に同意いたします。 ● 何といいますか,非常に妥当な線に落ち着く。今までの議論を止揚するような,そういう御意見だというふうに伺ったんですけれども,ほかに御発言がございますでしょうか。また怒られますが,ほかにいらっしゃる民法の先生,いかがでしょうか。  ○○幹事,もしございましたらお願いいたします。 ● 特に異論はございません。この取消しの前後で,結局同じように詐欺の場合とそろえるという,詐欺の場合についてのどこにゆだねるかという扱いとそろえるという御意見ですので,それ以上につけ加えることはございません。 ● よろしいでしょうか。今,にわかに新たな提案があり,にわかに議論をしていただきましたが,よろしいですか。○○委員の御提案というのは,これは,この括弧の中に「詐欺による取消しにあっては」という文章が入ってございますが,それを「詐欺又は強迫による取消しにあっては」というふうにまず修正をするということですよね。それで,後ろのブラケットに入っている「若しくは強迫」という,この文章については,これは削ってしまうということですか。 ● ブラケットを外す。 ● ええ。ブラケットを外すという形で,だから「詐欺又は強迫による取消しを対抗することができない」。これ,取消し前の場合ですから,強迫を受けた者も対抗できないということになりますが,そういう御意見だったんですか。 ● 最後の文章については確認していただきたいと思いますけれども,詐欺による取消しも,取消し後の第三者だけを対象とするということです。 ● わかりました。失礼しました。括弧の中に「又は強迫」ということが加わったわけですから,わかりました。じゃ,その後ろのブラケットは外すということ。そういう御提案で,特に御異論--○○委員,ございますか。 ● 異論はありません。確認ですけれども,要するに扱いとしては基本的に○○委員などがおっしゃっていた,手形と同じように取消し後については扱うということで,ブラケットを取って含める。だから「無効又は詐欺若しくは強迫による取消しを対抗することができない」となって,取消し前の第三者については,詐欺についても民法に送ってあるので,強迫もそれと同じ扱いにしたらどうかと,こういうことですよね。修文としては,その2行目の括弧のところに「詐欺又は強迫」という「又は強迫」を入れて,後ろのブラケットは,そのブラケットだけを取るということになるんですね。異論はございません。 ● よろしいでしょうか。それでは,今,○○委員が提案をしていただきました形で,若干修正を加えました上で,それを最終的な要綱案ということでまとめたいというふうに思います。  それでは,次に5ページのところですが,5の登録の訂正等に移りたいというふうに思います。これにつきましては,(1)の訂正と(2)の回復の双方につきまして,第1次案までの「できる」という表現から「しなければならない」という表現に変更が加えられておりますが,このようにすることについて御異論はございませんでしょうか。--先ほど○○幹事の御説明のとおりですので,特に御異論はございませんようですので,これはこういう形で確定をしたいというふうに思います。  それでは,次に6ページの6で,登録に関する管理機関の責任に移りたいというふうに思います。これにつきましては,(1)と(2)の双方のただし書の主語が第1次案までの「管理機関」から「管理機関の代表者及び使用人その他の従業者」に変更されていますけれども,この点につきまして御意見をお伺いしたいと思います。  ○○委員,どうぞ。 ● この部分は,職務という言葉は自然人に使われるんじゃないかという前回の○○委員の御指摘で変わったと思いますけれども,今回このように変わったものを読んでみて,若干不安が出てきたので一言申し上げます。  例えば管理機関がいろいろなシステムを構築するに当たり,自分がやるんじゃなくて,いろいろなソフト構築会社に契約でつくらせる,あるいは,その先がさらにそれを孫請に出すというような形態が考えられて,それで出てきたシステムに欠陥があるというようなケースを考えますと,自然人ということで言ってしまいますと,そういうソフトを構築する会社,これはどうなのかなと。「その他の従業者」というところが,雇用関係に限らず委任であるとか請負であるとか,その中間の組み合わせであるとかいうものも含むという解釈を確認していただければ,それで一ついいかもわかりませんけれども,さらに,その従業者というのは自然人でなければならないのか。法人であるソフト開発会社というのもあるんじゃないか。あるいは,そこから先の孫請会社というのもあるんじゃないかという問題があるので,そういう場合に,これが簡単に管理機関の免責になっては困る。だんだんこういうふうに書かれてみると,定評あるソフト会社に管理機関が頼んだ場合は,その選任,監督に過失がなければよろしいというような解釈も出てきそうで,それがちょっと心配になりましたので,それはむしろ債務履行の履行補助者的な感覚で,下請,孫請に過失がある場合は,それは管理機関の過失であるという解釈をとるということを確認していただければというふうに思います。  あと,言葉の問題で,「代表者及び使用人」,その間に代表権がない役員はどうなるのかなという,細かい問題でありますけれども,私の主な関心事はそこでございます。 ● いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 私も全く同じ懸念を抱きまして,当然履行補助者もこれに含まれるべきだと思いますので,そういう点で,ぜひ疑念のない立法をドラフティングするときにしていただきたい。ちょっとこの書き方だけでは履行補助者が除外されるように読めてしまうような気がしますので,○○委員と全く同じ懸念を抱きましたので,その点,ぜひ立法の際の配慮をお願いしたいと思います。 ● 今御指摘いただきましたけれども,そういう外注先がコンピューターのシステムをつくったときに,それに明らかに過失があったにもかかわらず責任を免れるというようなことは,このただし書を直すときには全く考えてはおりませんでしたので,さらに書きぶりについては考えたいとは思いますけれども,いろいろ検索はしたんですけれども,注意を怠らなかった方の規定は,全部「職務を行うについて」になっていまして,その主語は全部自然人になっている。これは前回の○○委員の御指摘のとおりだったものですから,自然人を書かなければいけないので,代表者,使用人,その他の従業者という言葉にしたわけです。先ほど○○委員から,代表権のない取締役はどうなるのかというお話がありましたけれども,代表者と使用人は例でございまして,その他の従業者という言葉で代表権のない取締役も入っていると。理事とかいろいろなものが入り得るということで考えておりましたし,履行補助者も入り得る。外注ですけれども,全部職務を怠るのは自然人ですので,外注先があれば,その外注先の従業員に過失があったからソフトウエアに問題が生ずるわけですので,その外注先の従業員が管理機関の従業者という解釈になるというふうに理解をしておりましたけれども,その表現については,またさらにもうちょっと工夫ができるかどうか--できないかもしれませんけれども,少なくとも解釈は,今,○○委員や○○委員がおっしゃられたとおりということをここで確認させていただいて,書きぶりはお任せいただくということでよろしゅうございましょうか。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 細かいことを言って恐縮です。今おっしゃった外注先の場合は,外注先である法人ではなくて,さらに実際仕事に携わっている従業員なんだと,それが従業者なんだというふうな説明をいただいたんですけれども,果たしてそうなのか。履行補助者と考えればそうじゃないですね。それからあと,必ず職務は自然人だというふうにおっしゃるんだけれども,たしかどこかの会社法の書き方で,会計監査人がその職務を怠るときというのがあって,それは監査法人も含むんですよね。ですから,余り自然人にこだわる必要もないんじゃないかなと。  あと,私がちょっと心配するのは,ここは法定責任で債務不履行責任なのか,不法行為責任なのかよくわかりませんから,履行補助者という,じかに当てはまるところじゃないので,履行補助者的に考えるということをやはり徹底していただきたい。 ● 実質について,特に今議論されている以外のことを御主張される方はいらっしゃいますか。つまり,いわゆる履行補助者的なというふうに表現いただきましたが,履行補助者的なものが過失があるという,そういう場合について,管理機関の内部だけで過失がないということを免責立証すれば責任を負わないという,そういうことになるわけではないという,これが多分実質的な議論だと思いますが,それについて御異論がある方,特にいらっしゃいませんですか。すると,今議論していただきましたように,履行補助者的なものに過失があるという場合についてもここに含めて,そういうものに過失があれば免責立証というものはなされたということにはならないという,そういうまとめで,そういうことでよろしいでしょうか。  じゃ,修文について特に御指摘をいただきましたが,それは事務局にお任せをいただくということでよろしいでしょうか。--それでは,そういう形で,この問題については取り扱いたいというふうに思います。  それでは,第1のこの総則のその他の項目につきましては,後にまとめて御意見をちょうだいすることにいたしまして,第2の電子登録債権の発生のうちの,特に議論していただきたい論点である7ページから8ページにかけての,この「2 発生登録」の(1)の登録事項のとりわけ⑨と⑩ですけれども,これをまとめて先に議論をしていただきたいというふうに思います。この2つの項目につきましても,これまで何度も議論をしながら意見が分かれてきたものでありますが,今回は,先ほど来お話をしておりますように,いずれかにまとめなくてはいけませんので,この点について御意見をお伺いしたいというふうに思います。  ○○委員,どうぞ。 ● もう前から申し上げていることの繰り返しになるようで大変申しわけないです。ちょっとそもそも論みたいな話を繰り返すようで申しわけないんですが,そもそも,この電子登録債権という制度を検討しようとした目的なんですけれども,これはもうあくまでも中小企業金融の円滑化というふうに私は理解をしているわけでございます。不動産に匹敵する規模の売掛債権が資産としてありながら資金調達に有効に活用されていないという現実があるわけでございまして,その大きな理由というのは,この指名債権の安定性というのもさることながら,譲渡禁止特約によって流動性が阻害されていることだというふうに言われているわけですね。それで,そのために,この従来の指名債権とも手形債権とも異なる譲渡性を持った流動性の高い概念の電子登録債権を検討し,これをつくり上げようということで,この審議会も持たれているんだろうと思いますし,今までそのほかにも金融審議会等でも議論をされてきているというふうに私は理解をしているわけでございます。そういうことからいけば,当初の本来の目的であった,この譲渡性を高めるということであったものが,その譲渡性の問題が最後までこうして意見が対立しているというのは大変残念だと思いますし,ちょっと目的がどこかへ置き忘れられているのかなというふうにも思うわけでございますけれども,今度,この新しくつくる電子登録債権というのは,従来の手形債権とか指名債権の債権制度のコピーをつくったのでは,私は意味がないのではないか。安倍総理も盛んにイノベーションということを言われているわけですけれども,やはりイノベーションを考えていくときに,この辺も新しい概念をここで導入するという意味で,この電子登録債権には譲渡性というものを持たせるということを,やはりぜひ検討すべきだろうと思います。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども,中小企業としても,この電子登録債権制度に対して大きな期待を持っているわけでございまして,その期待の大きなものというのは,やはり資金調達の円滑化であり,調達様式の多様化であるわけですね。それから,第2の問題としては,売掛債権,買入債務,こういったものの取引代金の決済に関する合理化というか,そういう決済方式の改善。特に手続であるとか,あるいはコストが下がる。あるいはもう一つ,売掛債権の買入債務への決済充当ですね。こういうことで資金繰り的にも資金効率を改善できるというふうなことも,やはり企業として見ると非常に大きな魅力だというふうに思っているわけでございます。そういうようなことを考えたときに,売掛債権に流動性を与えるという大きな目的をぜひ忘れないでいただきたい。そういうことからいって,ここで現在まだ両案が平行しているわけでございますけれども,この譲渡登録,いわゆる債権譲渡ができるという形にここはぜひまとめるように御理解をいただきたいというふうに思っているわけでございます。  以上です。 ● ありがとうございました。  ○○委員,どうぞ。 ● それでは,私からも,今の○○委員の御発言と同趣旨ですが,電子登録債権の譲渡性を奪う全面的譲渡禁止特約を禁ずる明文規定についての提案をさせていただきたいと思います。正確に議事録にお残しいただきたいと思いまして,紙に書いてきたものを読み上げさせていただきます。もし部会長の御了解がいただければ,書いてきたものをコピーが全員分ございますので,配布をお願いできればと思います。 ● お願いいたします。 ● ありがとうございます。  時間の節約のために,最初の方から読み上げさせていただきます。  まず第1に,12月11日に開催されました金融審議会の,これは第2部会と情報革新ワーキンググループの合同会合というところで,電子登録債権,特に管理機関について,先ほど○○幹事から御紹介のあった,○○委員が部会長の会合でございますけれども,その審議が行われていたわけですが,その12月11日の会合では,私以外の複数の委員から,譲渡禁止特約の存在を問題点の一つとして,その報告書の冒頭部分に明示するべきであるという御意見が出されました。しかしながら,これについては結局,譲渡禁止特約については法制審議会の方で問題にすべきことであるとして,明示する案は採用されませんでした。この結論には私もその場で同意をいたしました。しかし,譲渡禁止特約の存在が問題になっているという認識が広く共有されているということは,このことからも明らかであると言ってよいと思います。したがって,この部会の方で何らかそれに対する対応を明示する必要があろうと私は考えております。  次のところですが,電子登録債権は,先ほど○○委員の御発言にもありましたように,企業の資金調達に資する等,この制度の基本的な趣旨を持っておるはずでありまして,その趣旨からして,原則的な譲渡性・流通性は確保されるものであるべきであるというふうに考えます。したがって,本来,民法典の形式に倣えば,要綱案の「第5 電子登録債権の譲渡」,この後に出てくるところですが,そこの最初で電子登録債権の譲渡性について明示的に宣言する明文規定を置くべきであろうと私は考えております。そこでは,当事者,殊に債務者が譲渡に何らかの制限を加えることはできても,全面的に譲渡性を奪う形の登録はできないことを示すべきというのが私の考えであります。付言しますと,このような性質の債権を新たに創設することにつきましては,そもそも民法典の段階で債権には譲渡性があることが466条で原則とされているのでありますから,法理論的には何ら問題はなかろうと思います。したがって,この第5の冒頭に電子登録債権の譲渡性について明示的に宣言する明文規定を置くべきというのが第1の提案であります。  第2の提案としては,したがって,ただいま審議にかかっております提案されている要綱案7ページ⑩,これにつきましては,下から2行目のブラケットの中の「,譲渡登録」というところなんですが,このブラケットは採用しない,削除する。しかし,譲渡の制限については取引形態によって必要性があるので認めるべきでありますから,7ページ最終行の「これらの登録」の後に「若しくは譲渡登録」の語句を入れる。先ほど○○幹事も御説明の中で,そういう表現もあるというようなことをおっしゃってくださったところですが,それゆえ,私の第2の提案を読み上げますと,「⑩保証登録,分割登録,若しくは質権設定登録をすることができないこととし,又はこれらの登録若しくは譲渡登録を制限する旨の定めをするときは,その定め」という修文になります。これが第2の提案であります。  以下,補足説明を加えさせていただきます。  まず第1に,この上記の第2提案は,結果として要綱案第1の2の(4),管理機関についてのところですが,2ページの中央のところであります。ここの書きぶり,表現とも平仄が合う形になります。  それから②,ここでいう「制限」という表現は,もちろん全面的な譲渡性を奪わない範囲の制限でありますから,要綱案の8ページ,注の一番下のところですね。8ページの一番下のところに例示されている注3の中の表現ですが,譲渡回数を0回とするというのは制限ではなく禁止でありまして,ここでの制限に含まれないのは当然というふうに理解をいたします。  それから③,要綱案9ページに例示されております,債務者の承認する者にのみ譲渡し得る--これは9ページ2行目ですが--という制限は,債務者の恣意によって,だれにも許諾を与えないという形で,承認をしないという形で禁止になりますので,これは認められないと考えます。したがって,登録時に債務者が承認する譲渡先を既に列挙して書いているものは認められるという考え方であります。  ④,しかしその他の制限,例えばシンジケートローンの場合で,エージェントが承認する者にのみ譲渡しうるという,取引スキームからして第三者に譲渡先を決定させるもの,こういうものが認められます。また,融資と対応した債権譲渡の場合等で,前回○○委員の御発言にあったケースですが,融資契約と切り離された譲渡はできないという制限をすることも認められます。つまり,債務者が譲渡性を全面的に奪う趣旨のもの以外は広く認められてよいということであります。  ⑤,2枚目になりますが,それでは,上記のような取引スキーム上の必然性がないのに,債務者がわざと第三者と通謀してその第三者に譲渡先を決定させる形にして,実際にはだれにも決定させず,全面的譲渡禁止の実質を達成するという脱法的な行為がなされることがあるという懸念がありますけれども,これについては私は放置してよいと考えております。したがって,管理機関が請求されてきた登録内容についての制限の内容について合理性等を判断する必要は一切ないと考えております。  理由は以下のとおりであります。現在問題になっている売掛債権等に関する譲渡禁止特約は,ほとんどが大企業によって付されているもので,中小企業は力関係からつけたくてもつけられない状況にあるということは,他省の統計調査にも示されておりまして,当審議会部会でも既に明らかにされ,議事録に残されているところであります。○○委員の御発言なんかにあったところであります。大企業の場合は,違法行為や脱法行為は企業の社会的責任という観点からも行わないと信頼することができます。したがって,上記のような脱法行為に当たるものは大企業においては行われないはずでありまして,大企業,中小企業を問わずあえて行うものについては,他の登録内容から合理的な制限ではないと認識されるものを登録するというような企業は,やがて取引社会からの制裁(それなりの評価)を受けて,電子登録債権市場から淘汰されると見てよいからであります。  ⑥,上記⑤に関連して,この要綱案9ページの上から4行目のところですが,注の3の終わりのところです。全面的譲渡禁止特約については管理機関が業務規程で登録を拒否できるという考え方は,それ自体は間違っていないと思いますが,それのみでは弊害が大きく,採用すべきではないと考えております。なぜなら,立法に規定がなく,管理機関の業務規程で排除するのみという場合は,そのような業務規程を持つ管理機関には登録しないという行動は全く違法でも脱法でもありません。そうであれば,大企業は,現在行われているのと全く同様に,自企業の便宜のために--これは言葉が過ぎているかもしれませんが,自企業の便宜のために単純な売掛債権にも全面的譲渡禁止特約をつけて,業務規程で登録を拒否していない管理機関を選んで登録するという行動に出るのは自明であります。したがって,この問題は業務規程にゆだねてはならない,立法で解決すべき問題であると私は思っております。  以上,本制度のために肝要なのは,債務者による合理性の乏しい全面的な譲渡性を奪う趣旨の登録のみを排除すること。そして,その排除をあくまでも法律で宣言することである。これが私の意見であります。  以上であります。ありがとうございました。 ● ありがとうございました。  ○○委員と○○委員から御発言がございましたが,○○委員,お願いします。 ● 従前から全面的な譲渡禁止特約は立法としては残したらどうかということをずっと提案しておりますし,その意見は現時点でも変わっておりません。ここに要綱案の注で示されているとおり,管理機関が業務規程でそういったものを望まない,特に手形代替的なことをサービスの中心に置かれるようなところは,多分全面的な譲渡禁止特約は業務規程から排除するだろうということを前提に,このような全面的譲渡禁止特約をあえて禁止するというような規制的な立法にする必要は全くないのではないか。もっと広く自由な形で,立法の段階では自由にしておいて,管理機関のサービスレベルで競わせて,それで最もすぐれたものが最終的に勝ち残っていけばいいんではないかというふうに私は考えております。ですから,○○委員がおっしゃった懸念とかいったところも,特に反論するつもりはございませんけれども,立法の段階で余りそういった規制的に全面的な譲渡禁止はそもそも排除するんだと。合理的な使われ方がするかもしれないけれども,そんなものは弊害が大き過ぎて採用できないというふうに決めつけてしまうのはいかがなものかなというふうに考えております。ですから,詳しいことについては,繰り返しになりますし,議論の効率的な進行ということもございますので,この程度にさせていただきますけれども,現在行われている譲渡禁止特約,特に債務者の承諾するものに対してのみ譲渡ができるというような形のものは,電子登録債権の制度にあっても一部取り込んでいくのが将来的に望ましいんではないかというふうに考えております。  以上です。 ● ○○委員,お願いします。 ● 私も繰り返しですけれども,○○委員の意見に賛成でございます。別な観点から,これも以前から申し上げていますけれども,譲渡禁止をつければ,電子登録債権を活用したいというふうなニーズもあるのではないかと思っております。例えば,以前から金銭消費貸借約定書の代わりに使うというようなことを一つの例で挙げておりますけれども,債務者が中小企業,もしくは消費者といったときに,流動性をつけるという以外に,可視化するとか,いろいろなメリットが電子登録債権にあると思いますので,そのメリットを活用するために,この電子登録債権を利用したいんですけれども,譲渡はされたくない。譲渡禁止をつければ使ってもいいというふうなものも出てくるのではないかなというふうに考えていると,そういう意味で,いろいろな商品の多様性といいますか,活用の多様性という意味で必要なのではないかなということは従来から申し上げているとおりです。  それと,例えば手形代替手段のことを考えてみた場合に,これは実務家として,これからどういうビジネスモデルを提供していくかということだと思うんですけれども,手形代替手段というふうに打ち出してやるからには,全く譲渡できないものというのはもとから想定はしていないと思いますので,そこはどういうビジネスとかサービスを想定したものを規定なり管理機関として世の中に打ち出していくかということなのかなと思いますので,その辺は管理機関の方にいろいろとお任せいただくという余地を残していただいた方がいいんではないかなというふうに思います。  以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 本質的には○○委員の意見に賛成で,全面的な譲渡禁止はすべきではないというふうに思っております。ただ,立法上,それがないとできないのかというと,管理機関という立場で,例えば先ほど○○委員のおっしゃられたように手形代替という形で考えれば,当然それは最終的に債権者が資金調達をするという場面を想定するサービスになると思いますので,そこで譲渡が必ず発生するということであれば,そこの譲渡を必ず確保するような仕組みというものは絶対必要なわけであって,そういうものをやらない限り手形代替とはならないと思っております。ですので,例えば譲渡回数とかいろいろな制限というところは仕組み上必要な部分はあると思いますけれども,冒頭申し上げたように,やはり全面的なというのは,この電子登録債権という当初の指針にかんがみると,それは私個人としてはあってはならないものだろうなと。ただ,それが立法上どうなるかについては,もうそこはお任せするしかないのかなと思っております。  以上です。 ● ほかに御意見ございませんか。  ○○委員,どうぞ。 ● 私は,前から申し上げておりますように,電子登録債権というのはなるべく広い利用のされ方がされるのが望ましいと思っておりますので,○○委員や○○委員と同じ考えでありますし,また,今回の資料にも書いてございますように,制限は認めるけれども禁止は認めないというのは,1回だけの譲渡までに制限することはできるが,0回だと制限することはできない。そういう区別をしてどれだけの意味があるのかなという感じがしておりまして,電子登録債権がなるべく利用されるためには,管理機関,そして利用者が自分のニーズに応じたいろいろな利用のされ方をすることが非常に望ましいと思っておりまして,電子登録債権が譲渡禁止のような使われ方はできないというふうに定めることによって,実際の中小企業の債権の流動化を促進しようという政策目的に使うというのは,ややちょっと,そこまでの政策的な目的のためにこの電子登録債権の制度を使うというのはいかがかなというように思っておりまして,私は,この譲渡禁止をするということも可能だというようにすべきだと考えております。  以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今,○○委員の御指摘もあったあれで,全面的な譲渡禁止はだめだけれども制限はいいよというのはおかしいんじゃないかというお話。これは私も前から,制限も回数が制限されているとか,譲渡先が制約されるということもおかしいんではないかと。これは,やはり資金調達なんかに使われるためには,そういう譲渡先というのは制限されない方がいいんではないか。それから,回数というか,先ほど2つの,私どもがやはりこの制度に期待するものと申し上げましたけれども,やはり買掛債務を決済するために,持っている売掛電子債権を使って譲渡手形的にこれを資金決済に充てたいというふうなことをやったときに,やはり譲渡先が制限されている,あるいは回数も制限されているというのは甚だ困る話でございまして,願わくば全面的な禁止のみならず,そういう制限についてもここでは付さないというのは,やはり流動性を高めるこの制度の目的に沿うんではないかというふうに思っております。 ● ○○幹事,お願いします。 ● ○○委員のペーパーで,特に債務者の承認する者にのみ譲渡し得るという制限はだめだと。一方,シンジケートローンの場合でエージェントが承認するとか,融資と対応した債権譲渡等の場合で,そういう制限をつけることはできるとか,例えば管理機関を監督する場合に,こういう業務規程であれば制限を認めてもいいでしょうと,そのときに,では,恣意性が感じられるからそれはだめだとか,これは判断するのはなかなか大変じゃないか。それで,例えば所管官庁が,これであれば恣意性は感じられないからオーケーとして,それで裁判になって裁判官にひっくり返されるとか,非常に登録する管理機関の責任を問われはせんかとか,その辺がちょっと気になった次第でございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ただいまの○○幹事の御発言のところは,このペーパーの中にも書きましたように,私の提案は,管理機関は一切制限の合理性を判断する必要はない。つまり,何らかの理由をつけて制限を出してくるというのは,ほとんど全部通ってしまってよろしいということなんです。ただ,法律が全面的な譲渡禁止特約はいけないんだということを書いてくれるかどうかというところに根本の目的があるのでして,先ほど申し上げましたように,大企業さんは違法行為,脱法行為はなさらないはずだ。だけれども,違法行為,脱法行為にならないことは利益のためにおやりになる,それが現実であろうと私は言っているのであります。  そして,○○委員から先ほど,政策的な意味でこの譲渡禁止特約の禁止を用いるのはいかがかという御発言がありましたけれども,これは○○委員もよく御存じのように,世界的な趨勢では,まず法典上に譲渡禁止特約を明定しているところは,ドイツとか日本とか非常に少ないのであります。そして,これも幹事の先生方もよく御存じのとおり,世界的な今の水準としては一番極端なのはアメリカUCCですよね。統一商事法典は,譲渡禁止特約の対外効を一切認めておりません。そして,私も関与しましたUNCITRALの国際債権譲渡条約,2001年に成立して,まだ批准国が少ないので発効はしておりませんけれども,この中でも,非常に複雑な規定にはなっておりますが,単純な売掛債権のようなものについては譲渡禁止特約はつけても無効ということになっておりまして,我が国だけで,これは政策的に譲渡禁止特約をこういうところで使っては云々という議論をしているのでありまして,国際的な債権譲渡一般の考え方としては,そういうスキーム上,金融スキーム等で譲渡制限をかける,あるいは物によっては譲渡禁止特約を禁止するルールから排除する債権もあるかもしれないけれども,一般的な売掛債権のようなものについては譲渡禁止特約の効力を否定するのが趨勢であるということもあわせてここで発言しておきたいと思います。  以上です。 ● いかがですか。ほかに御意見ございませんか。  では,ここで少し休憩をとりたいというふうに思います。休憩後,再度,この点についての議論から始めたいというふうに思います。           (休     憩) ● よろしいでしょうか。それでは再開をしたいと思います。  引き続きまして,先ほど来議論になっております譲渡禁止特約の扱いについて御意見をお伺いしたいと思います。どなたか,さらに御発言をいただければというふうに思いますが,いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 先ほど,本質的には全面的譲渡禁止には反対ですというお話をいたしましたけれども,先ほど○○委員の方からありましたように,今後この法律を使ってどういうものができるかというところを考えると,いろいろな可能性をすべてここで断ち切ってしまうのもいかがなものかな。そういうことは,やはり立法上でそこをなかなか言えないのかなという思いも実はあります。ただ,先ほど申しましたように,中小企業の資金調達の円滑化のところから考えますと,最終的に金融機関にだけは譲渡できるような仕組みというものがないと,これはできないんだろう,使えないんだろうと思っておりますので,そういう管理機関ができるという立場から考えると,そこは全面的な譲渡禁止というのは業務規程で排除できるような業務規程を置くということが最低限できるということが必要なのかなと思っております。 ● ありがとうございます。どうぞ。 ● 今の○○委員の御指摘ですけれども,そこはこの要綱案で業務規程で⑨とか⑩については,もっとほかのものもそうですけれども,任意的登録事項についてはそういう登録は認めないということは置けるということにしてございますので。 ● 管理機関になる可能性がある立場の方々は,管理機関として譲渡禁止特約,これを制限するというような形にするということ,可能性があるわけですが,そういうことについてどのようなお考えかということについて御発言をいただければ……。  ○○委員,どうぞ。 ● その点につきましては,ちょっと先ほども触れましたけれども,まさにビジネスモデルによるというふうに思っておりまして,典型的な例で手形代替手段のことを考えれば,これはまさに流通して使っていただくためにつくるものだと思いますので,そういったものには排除していくんだろうなというふうには思います。その他のものについては,譲渡禁止をつけたいというニーズがあるのであれば,そういったことができるようなものを--これは別の商品なのか,業務規程なのか,管理機関のレベルなのかがあると思うんですけれども,そういったことを別途立ち上げていくということなのかなというふうには思います。 ● 休憩前に○○委員から,別のモデルといいますか,流通性はないんだけれども可視性を高めるという観点から,譲渡はできないけれども登録するという,そういう電子登録債権もあり得るのではないかという御指摘があったわけで,○○委員もいろいろなものがあり得るんじゃないかというお話でしたけれども,そういうものもあり得るというのが○○委員のお考えなのかということと,○○委員も今まで,今日はまだ全然発言していただいていないんですけれども,全面的な譲渡禁止特約をつけるということは,流動性がほとんどないということになるわけですけれども,そういう電子登録債権なるものも,原則的な非常に流動性の高い電子登録債権とは別にあり得るというふうにお考えなのかどうかについて,ちょっとお話を承れればと思いますが。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私はあり得るというふうに考えていまして,電子登録債権の入門版といいますか,そういう版なのかもしれないし,あるいは,実際に全面的に禁止するといっても,債務者の承諾する範囲ということですから,非常に可視性が高まることによって,今までは流通できなかったようなものについてもかなり流通がしやすくなるんではないか。そういったものを企業側がいろいろやってみて,そういったサービスを提供していただける管理機関があるということが前提ですけれども,そのサービスを使うことによって投資をしていくと,そういうことによって,さらにもうちょっと使い方を拡大していくとか,あるいは,そもそも譲渡禁止みたいなものは制限だけでやめてしまうとか,いろいろな使い方ができるのではないかと思っています。ちょっとその具体的なことをイメージしようとしても,なかなかできないんですけれども,あり得るんではないかというのがイメージの底にはある,ベースにあるというふうに考えます。 ● いかがですか。  ○○委員,何か御発言ございませんか。 ● 意図的に沈黙をしていたんですけれども,制度ができるまでと,それからできてからというのは,やはり若干違うんだろうと思っています。○○委員のペーパーの2ページ目に6段目以降のパラグラフで,大企業は,現在行われているのと全く同様に,自己の便宜のために云々と,自明であるというということは私はないんだろうと思っていまして,少し時間をいただければ制度がこなれてくる。電子登録債権を使うメリットというのは当然その双方にあるわけでございますので,こなれてくるのではないかなというふうには感じておりますけれども。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● ○○委員に質問なんですけれども,今の現状の取引において,だれにも譲渡しちゃいけないという形の契約というか,振出しですか。指名債権も,それから手形債権も含めて,大体全体の何%ぐらいあるんですか。つまり,現状がちょっとよくわからないものですから,今,全面的譲渡禁止特約とおっしゃっても,今のお話をずっと聞く限りにおいては,どうも銀行には持っていっていいとおっしゃっているようにも聞こえなくはないので,本当のだれにも渡しちゃいけないという条件をつけて渡しているものというのはどのぐらいなんですか。 ● 数字的なものは,ちょっと今手元にございませんので何とも申し上げられませんけれども,従前この議論をしたときに,世の中に非常に多いという話については,一般的に標準約款を含めて,債務者の承諾あるもの以外は譲渡できないというようなのが標準的な契約フォームとしていろいろな本に載っているし,国際的な取引の契約書にもそういったものが見られるということで,広く行われているということでございます。ただ,実際にどれだけやっているかというのはちょっとわからないですけれども。 ● その債務者の承諾しない場合,つまり銀行にも持っていっちゃいけないと債務者が言うような場合というのは,どういう場合なんでしょうか。 ● そういうような場合というのは余り聞きませんけれども,ただ,私も出身母体が一つの特定の企業ですし,使っている債権,債務の特殊なものはいろいろございますので,その経験だけでちょっと何とも申し上げられないですけれども,余りちょっとすぐにはわからないというふうにしかお答えできません。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 今の問題なんですけれども,私どもがいろいろな企業と,特に大企業と交わしている取引,基本契約の中には,大体譲渡禁止特約というのが入っているんですね。ただ,その場合にも,当然当社が承認をしたものについてはできるような条項になっているわけです。ですから,いわゆる全面的にというのは,もう全くだれにもだめよということからいけば,約定上はその点は多分ないんじゃないか。要するに,銀行なら銀行に仮にお願いをすれば認めていただける可能性はあるわけです。ところが,でありながら,お願いに行けば,そこでいわゆる風評リスクというのが出てくるわけですね。要するに,あの会社は売掛債権を担保にする,あるいは譲渡しなければ金繰りがつかないような状況にあるよというふうなことを言われる。それが現在の売掛債権担保融資がたかだか1兆円になるとかならないとかという,できてから数年,四,五年ですか--という現状が,まさにその問題なんです。 ● これは法律の議論より実態の話になっちゃっているんですけれども,要は,○○委員の今言われたことは,取引先にお願いに行かずして銀行に行けるような仕組みがあればいいという理解でいいんですか。 ● そういう意味で,ですから,この法律の立てつけとして,要するに,その都度譲渡禁止特約というのが電子登録債権制度には乗らないんだよということになっていれば,要するにそれはもう自由に,当然譲渡できるわけですね。ですから,その流動性が欲しいなということでございます。 ● わかりました。 ● ちょっとよろしいですか。○○委員は先ほど,法律で全面的な譲渡禁止--これは債務者の承諾がなければ譲渡することはできないというものも含めた全面的な譲渡禁止という意味ですけれども--は許されないということが規定されるべきだという御意見だったわけですけれども,○○委員は,法律でそこまで絶対しなければいけないという御趣旨なんでしょうか。それとも,先ほど来,○○委員や○○委員から,中小企業金融に使える流動性があるものにする場合には,業務規程でそれができないようになるような譲渡制限というものは登録させないという,そういう扱いをするというお話,当然そうなるでしょうというお話があったわけですけれども,それで実質は満たされるということでよろしいのかどうか。そこはいかがなんでしょうか。 ● 私は,できることならばきちんと法文の中に折り込んでいただけることが,もう何よりもやはり担保されるというか,流動性が担保されるという意味で望ましいことだというふうに思っております。ただ,私も非常に悩むのは,やはりこの電子登録債権にはいろいろなニーズがあるんだろうと思うんですね。いわゆる手形代替として売掛債権を電子登録債権化しようというときには,やはりこの流動性というものが非常に高いことが望ましいことだと思います。一方で,シンジケートローンの場合がここにもちょっと書いてございますけれども,譲渡先をエージェントが承認するものに限りたいというニーズも,これは私は理解はできるんですけれども,つまり,相反するニーズを持ったものを一本の法律の中に盛り込むということができるのかどうなのか。私なんか,法律の素人の意見としては,これは一本の電子登録債権法があるよと。でもその中に,例えば手形代替のコースでいけば,これは譲渡禁止は認めないよと,シンジケートローン型の場合には認めるよというふうな,そういう2つのものを一本の法律の中に折り込めるのかどうか。できればこの問題は解決しちゃうねというふうに思っているんですけれども,その辺は,法律をつくるというお立場からいけば,それができるのか,できないのか。そこのところが私はよくわからないんですけれども,私どもとしてみると,要は資金調達が円滑にできる,あるいは,いわゆる商品代金,取引代金の決済に有効に使えるぞということが達せられれば,その点は何かもし方法があるならば,その辺は--それがやはりきちんと担保される必要があると思いますけれども,考えられるならば,それも検討してみてもいいかなとは思いますけれども。 ● 先ほど○○委員から,管理機関の立場にも立ち得るということでお話をいただいて,流動性が望ましい手形代替の場合等については管理機関として,この譲渡禁止特約,これはついているものは受け付けないという形にする可能性が十分あり得るというお話をいただいたわけではありますけれども,○○委員がおっしゃるのは,そういうことであればというか,それが担保されればということですよね。 ● これから一つの法律として,例えば1つに絞らなければいけないよといえば,どっちかになるんでしょうけれども,2つのニーズがあるときにどちらかに決まったときに,反対側の方のものがある程度業務規程だとか何かで,要するにこれから管理機関というものが認可されるのか,指定されるのか,金融庁さんの方であれしていらっしゃるわけですけれども,そういう管理機関の認可基準の中にそういうことがあって,売掛債権のものについては流動性を損なわないような業務を営むということを一つの基準にしていただくようなことができるのかどうかですね。これは実際に法律ができた後で,この制度をこれから経済産業省さんとか金融庁さんがつくっていかれるんだと思いますので,そういう中にそれがきちんとうたい込まれるということであれば,そして,中小企業の資金調達等に,本来の目的に沿う機能が期待できるということであれば,その考慮の余地はあるというふうに私は思っていますけれども。 ● 今,○○委員からのお話ですけれども,そういう○○委員といいますか,中小企業側のニーズに即したような管理機関を絶対できるという保証は,今の段階ではもちろんだれもできないんでしょうけれども,そういうものもつくるという方向でいろいろな議論が進められているというふうには理解していいわけでしょうか,○○委員。 ● 以前この場で,全銀協で管理機関の検討をしているかどうかというような御質問があって,その際は特にしていませんでしたので,まだまだですというふうにお答えしたんですけれども,一応今,当然個社で立ち上げるようなケースもありますし,いろいろと御意見が出ているような,例えば統一で一つのものをつくったらというふうなパターン,そういったことも含めて管理機関のあり方というのを検討し始めています。統一なものをつくるということは,結局より流動性を高めて,どこの金融機関であっても使える,どこの利用者であっても使えるということをベースにして考えるものですから,当然そういう方向に行けば,それでなおかつ譲渡禁止しても,それは全く何をやっているかわからないので,そういう意味で,当然そういったことも視野に入れて検討をしているというふうなことでございます。 ● 折衷的なという形になるかもしれませんが,一つの解決策になるかもしれないという,そういうことだと理解しましたが,ほかに御発言はございませんか。  非常に議論の分かれる問題ではありますけれども,管理機関のあり方ということともかかわるわけですが,今ここに議論に出ているような形で,管理機関がしかるべき,つまり中小企業の資金調達ができなくなってしまうような形で管理機関を運営するというわけではないというふうなことが,ある程度表明されたわけですので,折衷的な解決としては,とりあえず法のレベルでは譲渡禁止特約というものの許容性というのは仕方ないとして,ただ,その管理機関の運用にお任せをするという,そういう解決もあり得るかなというふうには思うんですけれども,いかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● ただいまの○○委員のおっしゃられた点ですが,私は学会でシンポジウムのときに報告したのも,こう申しました。新しい制度をつくるときには,基本的なコンセプトは,やはり方向性を示す形で法が定めるべきであって,それを業務規程に落としておくと,結局その業務規程をつくる際の管理機関の方の都合であるとか,いろいろな業界からの圧力であるとか,規制がどういうふうになるのかわかりませんけれども,そういう中で新しい法律の基本コンセプトが達成されなくなる可能性がある。だから,基本的なコンセプトをこうするべきだということがあるのであれば,それは極力法で書くべきだということを学会報告では申し上げております。  そしてもう一点,管理機関が業務規程でやるということについては,先ほどペーパーにも書きましたが,現実に私は金融審の方でも発言をしましたのは,この管理機関になるために,最初,コストの問題とか,いろいろ困難もあるという御意見が金融審でいろいろ出ておりまして,ですから,本当は法律的には専業が望ましいと○○委員がおっしゃっておられて,その方向になったわけですけれども,兼業でやらせてくれという御意見もいろいろあったわけですね。そういうときに私が申し上げたのは,管理機関になるために,参入のフェアな競争が確保できるような状況にしていただきたいということを申しました。先ほどペーパーに書きましたのは,管理機関が,今ここで議論されているように,譲渡禁止特約の全面的なものがついているものについては登録を拒否するということを,制度の趣旨としてはそうやって言いたいところですけれども,そういう管理機関は使わないよというふうに制度の導入の段階で,大企業の一定の数の方がおっしゃると,管理機関としては商売が成り立たない。だからうちはそういう拒否はとりあえずはしないでおこうと,こういう流れになったときには,現状と何も変わらないではないですかということを私は申し上げたいんです。ですから,先ほど○○委員は,でき上がってからだんだんそういうことがなくなるんではないですかとおっしゃってくださいましたが,私は,そのイニシャルのところで,やはり大企業さんが現状のように便宜にやりたい。ついては,それに便利な管理機関をうちは選びますと,こうなったときに,業務規程のやり方では心もとないというのが私の発言の趣旨であります。  以上です。 ● ○○幹事,お願いします。 ● 先ほど○○委員の方から,管理機関の運用にという御発言がございましたけれども,やはり法律ができれば,その管理機関を指定する立場になるかもしれませんけれども,そのときに,やはり一応今まで柔軟といいますか,要件に合致すればできるだけ認めていく。金融機関に限らず,どんな会社も認めていくという,とにかく柔軟で,かつオープンで成長性ということをやってきたものですから,そのときに,やはりこういう業務規程じゃなかったら認めないとか,非常に恣意的に運用するということになると非常に批判されますものですから,○○委員のおっしゃることと同じなんですけれども,やはりこういうのはだめだというなら運用に任すということ,これは簡単な話じゃないんじゃないかと思います。  それと,やはり債務者の立場に立てば,自分の債務が暴力団に譲渡されたら困るというのが非常に多いんじゃないかと思うんですね。手形なんかはやはり暴力団へ行っちゃうわけですから,それで手形を使いたくないという方もいらっしゃるわけで,そうするとやはり,じゃ,だれならいいんだというのもなかなか言いにくいですから,だから,承認をするものに限って譲渡を認めるというのは,もうやむを得ないんじゃないかと。それで,承認をしたものに限って譲渡を認める,電子登録債権を振り出したいという債務者に対して,いや,そういうのは登録で認めないということになったら,本当に管理機関がやっていけるのかというような心配もちょっとするところでございます。御趣旨はよくわかります。 ● 先ほど,大企業で譲渡禁止の登録ができるんだったら,譲渡禁止の登録をするんじゃないかというふうに○○委員はおっしゃられたんですけれども,私はそうじゃないんじゃないかと思っています。というのは,今まで大企業だって多くの手形を使ってきたわけですよね。手形代替のニーズというのが,ビジネスモデルとしては,もともとこれの一つの大きな柱の一つであることは間違いないわけで,そういう場合は,お互いにそういうつもりで使おうというときは,大企業であっても,今は手形で譲渡禁止なんてしていないわけですから,電子登録債権にも譲渡禁止のない電子登録債権というのを出す場面というのはあるんじゃないかなというふうに思っているんですけれども,○○委員,どうでしょうか。 ● おっしゃるとおりで,私もそういうことを前提にこれまで議論をしてきています。ですから,手形代替のそういったものは当然取り込まれて,手形的なものはすべて取り込まれて,管理機関もそれで多分サービスが成り立つんではないかと。それ以外に法で何でそれ以外の部分を規制してしまうのか,それがおかしいんではないかという,そういう趣旨の発言をしてきたまででございますので,ですから,逆に手形代替的なものが譲渡制限的になるとか,そういうことは大企業というか,こちらとしても考えにくいなという気がいたします。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ただいまの○○幹事の御発言は,中間試案に対するパブコメをおまとめになった立場の方の御発言とは思えません。というのは,中間試案のときに出ていましたよね。大企業が譲渡禁止特約について,そういう譲渡禁止特約ができないという制約が加わるなら一律に電子登録債権を使わないという御意見が,中間試案に対する意見照会で出ていましたよ。それが我々の記録にも出てきて,それを私は批判する論文を書いていますから,ですから,やはりパブリックコメントの段階では,そういう大企業さんの方から譲渡禁止特約をつけられないのなら,電子登録債権を使わないという形の御意見が実際に出ていたということであります。 ● ○○委員,それは多分誤解だと思うんですけれども,大企業が常にそうだと言っているわけではなくて,今,譲渡禁止を付しているような債権を電子登録債権化する際には,譲渡禁止がつかないんだったら電子登録債権化しませんということを言っているだけであって,譲渡禁止をつけない--手形なんかは譲渡禁止をつけないわけですので,それまで譲渡禁止をつけてくれということを言っておられたわけではないと思うんですけれども。 ● 今,手元に正確な資料がないんですけれども,何回目かの部会資料の中で,そういう譲渡禁止特約をつけないようにさせることが,必ずしも中小企業の資金調達に資するわけではないと。どうしてかといえば,そういうのであれば電子登録債権を使わないからだという議論があって,それが部会資料に載っていると思いますが。 ● それはそのとおりなんですけれども,それは譲渡禁止特約がついている債権を電子登録債権化する場合のことを言っているのであって,すべての債権について譲渡禁止特約をつけるということを言っているわけではないと思うんですけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 電子登録債権を活用する場合,必ず,今現実でやっていることを電子登録債権に置きかえたらどうなりますかという,実務的にはやはり置きかえみたいなものが発生すると思っていまして,まさにどういう目的で使うのかということがポイントなんじゃないかと思いますね。手形のように売掛債権が別途あるんですけれども,流動性を与えるために別途手形を発行して,それで流動化することによって資金化してくださいと,そういったものに関しては,これを置きかえたときというのは,当然それに対しても流通性を与えるということであると思いますし,特に相殺とかの抗弁を留保しておきたいということで譲渡禁止をつけたりとかよくしていると思いますけれども,そういったものに関しては,やはりそういった蓋然性があるから譲渡禁止とかをつけているわけであって,それがもし仮に置きかえられたとしても同じようなニーズが出てくると思いますので,そこはまさに,どういうものを対象に,どういう目的で使っていくのかといったところではないかと思います。 ● ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● 特につけ加えることはございませんけれども,要するに,手形自体はもちろん電子登録債権化していくというのは,それは大前提で,それ以外の今まで流通性が非常に損なわれているような一般の指名債権について,どこまで取り込むかというところで,譲渡禁止みたいなものが実務的に現在存在しているのを取り込めるような余地を残しておいた方がいいんじゃないかと。もしそれがないとできないんじゃないかという,多分そういう趣旨で発言したことだと思いますので,そこは誤解ではないかと思います。 ● いかがでしょうか。これまで流通性というものを前提に使われていた場面では,やはり電子登録債権にしても,流通性といいますか,譲渡性を失わせるというのは,そういう形には多分ならないだろうという,そういう御発言だというふうに伺いましたが,だから,必要があって譲渡禁止特約をつけていた,そういう債権を電子債権化するという場合については,譲渡禁止特約をつけられないということであれば,ちょっと利用しにくいなという……。だから,そういう面では確かに譲渡禁止特約の必要性があるというか,そこまで電子登録債権の利用を拡大しようと考える場合には障害になるという,そういう趣旨だというふうに伺いましたけれども,○○委員,どうぞ。 ● 今の○○委員の御意見なんですが,実務的には私は実は非常に心配をしておりまして,例えば今,手形というのは流動性を与えていますよと。それまでも,電子登録債権化することによってその流動性を奪うようなことは考えていないんだよと,こういうお話なんですけれども,実際は,例えば普通,物を納めたら,売掛金というのが,その締め日があったり手形の発行日というか,あれがあります。約1カ月ぐらいの売掛期間がありますよ。そこから先,例えば3カ月手形とか4カ月手形というのを発行されて,それで決済がされているわけですね。受け取った側は,1カ月間ぐらいの売掛期間というのは,資金化は今のところ非常にやりにくいけれども,手形になれば割引をするなりして資金調達ができているという流れになるわけですね。これが今度,電子登録債権化することによって,売掛期間が1カ月なんではなくて,手形を含めて合計5カ月とか,それが電子登録債権になってしまうんだろうと思うんですね。要するに,手形に代わるものとして電子債権を新たに発行するんじゃなくて,多分売掛金が発生した時点から期日までを一つの電子売掛債権にするんだろうと思うんですよ。そうすると,今まで手形として資金調達で流動化できていたものが,この流動性をもし認めないとすると,そこを含めて5カ月ぐらいが資金が固定化してしまうということに実務的にいうとなるんではないかということを,やはりちょっと心配をしているんですけれどもね。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● いろいろ議論が錯綜しているところへ発言するのはどうかと思うんですけれども,今,前提となっている事実関係の中に,手形が使われていないという事実があって,裸の売掛債権になっているという実態があるわけなんですね。これはもう言うまでもないことなんですけれども,それともう一つは,手形というのも,実際のところは本当に裏書は行われずに割引しか使われないという実際の状況がある。このことを2つ前提にした上で,今,裸の売掛債権を,電子登録債権の制度を導入したときにどういうふうな形に姿が変わって,中小企業の資金化につながるのかということをイメージしたときに,もし電子登録債権という形のものにしますと,今まで手形はいろいろ費用の面とかがあったので,手形としては振り出していなかった債権が,手形代替機能を持たせる電子登録債権に変わってくれるんだろうという期待感が一方にありまして,そのことがかなりの確実性を持って期待できるのであれば,おそらく業務規程の中で流通性を確保したような,そういう電子登録機関を使って,今まで詰まっていた手形というものの紙の持っていた限界を電子登録債権によって乗り越えていくことで中小企業の資金繰りの円滑化が図られるだろうと期待できる向きがあるわけです。  ところが,そこで1点だけ問題となりますのは,従来の手形の場合は,やはり銀行にしか持っていかなかったという問題があるわけなんですね。ところが,もしこれが手形代替機能を持たせるつもりであったとしても,電子登録債権になりますと,さまざまなところに流通をさせることが可能になってきて,必ずしも手形のように銀行しか受け取ってくれないという実態にはならない。そうすると,どこに持っていかれるかわからないという状況が出てきたときに,手形代替機能として使おうというふうな話でありながらも,やはり不安感が出て,何らかの形の譲渡制限というものが生まれてきてしまうんじゃないだろうかという気はちょっとしております。そこがおそらく,今,○○委員の方がおっしゃられた,結局は,手形としては使ってもらうのは構わないんだけれども,万が一のことがあるからということで,ずっとある程度のサイトの部分を譲渡制限をかけて丸ごと制限させてしまうという実態につながるんじゃないかという御発言になっているんじゃないかなというふうに思うんです。  このあたりのところが,それぞれの想定されているシナリオというんでしょうか,そこのところがややずれているので議論が平行しているのかなという感じがしまして,そこの部分のところがかなり実務的に,やはり手形代替機能というものは,手形の今までの紙の部分の限界を電子登録債権で乗り越えるだけで問題なく使われるんだということがシナリオとして保証されているのであれば,おそらく○○委員の方も御納得いただけるんじゃないかなというふうに思うんですけれども,このあたりのところはどうなっているのか,もし銀行の方々とか,あるいは企業の方々に教えていただければありがたいなというふうに思うんですけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● すべてがすべてではないと思うんですけれども,今の手形を振り出している関係というのは,やはりベースとして下請法というのがあって,手形を振り出さないといけないというのがある。一括決済等も手形の代替手段というふうに位置づけられていると思いますので,やはりそれは債権者側の資金調達に配慮して,そういった規制なり位置づけがされているわけですから,下請法のことは全然まだ議論されていませんけれども,手形の代替手段というふうに位置づけられるのであれば,同じく流通性が確保できて,資金調達に使えるようなものとして位置づけられるということになると思いますので,その辺は,おそらく今後の議論だと思うんですけれども,法的にも担保がされるはずでしょうし,逆にしなければいけないような話なんじゃないかなというふうに私は思います。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● ありがとうございます。私もおそらく,そういうような別な法規制の中で,例えば電子登録債権を手形代替機能で使うということが,いわゆる下請法的に手形とまさに同視できるというふうに言われるのであれば,やはり頻繁にどんどん流通するようなものではなくて,従来の手形割引という形で銀行に持っていくというような道筋で電子登録債権を使うという,そういう社会的制度設計ができれば,おそらく下請法の適用を受ける大企業の方にとってみますと,手形代替で今回は出すんだということが確保できますので,そうすると安心して譲渡制限をつけずに出すと。これはもう手形代替なのでということで譲渡制限をつけずに出すという慣行が生まれてきて,これが中小企業の資金繰りにつながる。これがおそらく,○○委員がおっしゃっておられた,使い始めるとそういうふうになりますよということなんだと思うんですね。ですから,もうちょっとそこのベースのところの規制というんでしょうか,いわゆる産業政策的な規制というもの,あるいは独禁法的な規制というものを少しここに加味すると問題は解決するんであって,一般私法上は,私はやはり,そうであるならば何にでも使えるというニュートラルなものにしておくので十分なんじゃないだろうかというふうに思います。 ● ありがとうございます。  ○○委員,どうぞ。 ● 電子手形をやったときも,実は決済という部分では一括決済,あるいは手形と同様に下請法の規制になるかどうかということで,そういう確認もしまして,やはり支払手段,資金化の手段として認められることは必要でしょうということを言われていました。ということで,そういう使い方というのが一番やはり将来的に考えられるのかなと思っております。  もう一つ,○○幹事がおっしゃったように,やはり今,中小企業が一番困っているのは,裸の売掛けのところで何も資金調達に使えないというところが一番困っているんだろうと。これを電子登録債権という形にしたときに,そこを可視化することによって金融機関としても融資がしやすくなるというところというのが一番大きな期待なのかなと。これは中小企業の金融を司る我々としても一番そこが,可視化できるところがあれば,今まで見えなかった売掛けというところによって,例えば人的な関係で融資したところにそういうものが出てくると非常にやりやすくなるんだろうというのは,金融機関の立場としてもそれはあるということだと思います。 ● ○○幹事の御指摘のとおりだというふうに考えておりまして,下請法の支払手段ということの定義化ということもあるでしょうし,大企業の取引形態が目に余るものであれば,いわゆる優越的な地位の濫用であるとか,不公正取引の類型化を図るというような形で,電子登録債権法の中に入れなくても,十分その辺のところは制度的には設計できるんじゃないかなというふうに考えております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 本当は○○幹事から御説明いただいたらよかったのかもしれないですが,前回の経済産業省の研究会で御報告をくださった委員の方が報告された内容というのは,手形代替という言葉であらわすけれども,それは電子登録債権を手形代替の決済手段として使うことをいっているのではなくて,手形の代わりに裸の売掛債権のところを資金調達するために電子登録債権を使うという意味で,これから報告をしますという報告だった。私も同じことを考えておりまして,裸の売掛債権,今,何人かの方から御意見が出たように,決済手段としての手形を代替するのではなくて,手形の代わりに売掛債権の資金調達を進捗させるためにこれを使いたいんだと。その場合に,先ほど私の発言に対して○○幹事からは,全部のものではなくて,今,譲渡禁止特約をつけているものについてつけられなくなるというのでは困るというふうにおっしゃったんだろうという御説明がありましたよね。私はまさに今,譲渡禁止特約をつけているものの現状が問題だと言っているのであって,平成13年に私が参加して座長をやっていた中小企業の資金調達の円滑化に関する研究会報告書が出ております。ここがアンケート調査を2,000社に対してして,何百社か返事をいただいたものでは,当時,売掛債権だったか請負代金債権だったかで,資金ベースで約50%について譲渡禁止特約がついているんです。私が申し上げているのは,この現状がこのままいくのかということなんです。それが資金調達の弊害として譲渡禁止特約の問題があるんだという,この間の金融審でも出た議論の背景なわけですから,今譲渡禁止特約をつけているものがつけられなくなるのでは困るという,その困るという御意見に対して,いや,そうではなくて,これからはその合理性の乏しい譲渡禁止特約というのはやめてくださいと,私はそういうことを背景にしてきょうのペーパーも書いているということであります。  以上です。 ● ありがとうございます。  この議論の途中でありますが,○○委員,所用で退席をされますが,ちょっと御発言をお願いいたします。その他の問題についてももしあれば……。 ● 今の問題については先ほど申し上げたとおりなので,特につけ加えませんが,事前に○○幹事から,28ページの一番最後の電子登録債権の発生,譲渡等に関する行為が絶対的商行為とはしないという整理をすることでよいかということについて意見を言ってほしいというふうに言われましたので,授業があるものですから,そのことだけちょっと申し上げて退席させていただきたいと思います。  これは非常に難しい問題で,私も自信のあることを申し上げられないんですけれども,従来,手形等の有価証券に関する行為が絶対的商行為とされている現在の商法の規定については,それほど意味のある規定ではないという理解がたしか多かったと思います。私も考えてみて,これは自信がないので○○幹事に補足していただければと思うんですけれども,大部分のことは,多分この電子登録債権法ができれば,例えば一番重要な事項とか,そういったことはその中で規定されますし,それから,商法504条以下のそれぞれの規定,これは全部精密にチェックしたわけではないので自信がないんですけれども,504条,505条,507条等々,問題となり得る規定を見た限りでは,絶対的商行為としてこれらの規定を適用しなければならないということはないのが多いんじゃないかと思います。  ただ,1つちょっと気にかかりますのが,協同組織金融機関--中小企業金融ですので,実際利用者の中にかなり多いと思いますね--については,これが最判昭和63年10月18日で商人とはされないということになっているものですから,商法503条の附属的商行為として扱ってもらえないということになります。そうすると,金融機関の相手であるものが商人か否かで電子登録債権上の行為が商行為になったりならなかったりする。商行為の規定が適用されたりされなかったりする。さっき申しましたように,大部分の規定は商行為の規定になるかどうかということで問題になるようなことは少ないんですけれども,1つ気になりますのが,利息の規定では差が出てくるかもしれないという気がしておりまして,多分実際上,意味があるのはそれぐらいの違いかなというふうに思っています。それぐらいのことであれば,例えば協同組織金融機関が相手方をだれかよく見ればいいというふうに割り切るか,そうではなくて,業務上はやはり相手がだれか,商人かどうかというのを確認するというのは,それなりに容易でないこともありますので,そこを重く見れば絶対的商行為としておくという方が,協同組織機関等がこの電子登録債権に関する取引をする上では業務上はやりやすいという面があるかなと思いまして,そこら辺の割り切りの問題かなというふうに思っております。とりあえずそれだけ申し上げさせていただきます。  以上です。 ● それでは,先ほどの議論に戻りたいと思いますが,いかがでしょうか。さらに御意見等をいただければと思いますが。ある種の政策判断の問題だと思うんですけれども。 ● いろいろ御意見を承ったんですけれども,確認できたことというのは,要するに,この電子登録債権というのはさまざまな用途に使われ得るものである。先ほども○○幹事も柔軟という言葉を言われたんですけれども,柔軟なものという前提で,どんな事項を登録するのかということは,必要的な事項以外は管理機関が業務規程でいろいろ定められるということによって,いろいろな用途に使えるようにしようというものであるということなわけですけれども,その中で流通性を確保するという普通の使われ方のほかに,流通性よりもむしろ可視性に重きを置くような使われ方というものもニーズとしてはあり得るという御指摘があったわけです。そうなってくると,○○委員からは,法律で一つの政策として一つ打ち出した方がいいんじゃないかという御指摘をいただいたんですけれども,そういうニーズがあるとすれば,どちらにするのかは,やはり管理機関がそれぞれどういうモデルに事業を使うのかということでお決めいただくよりほかないんじゃないかという感じがするんですけれども,○○委員,それではだめでしょうか。 ● 1点申し上げます。可視性という話が出てきているんですけれども,これは,この部会で前回も議論している,だれがこのデータを見られるのかという情報開示の範囲の問題にかかわりまして,今までのここでの我々の議論は余り広くないんですよね。だから,債権譲渡特例法登記のような公示機関ではないので,だれでも見られるわけでももちろんない。そして,譲り受けようとする者が見られるわけでもない。だから,現在の債権者から見せてもらうとか,そういうことにしなければいけない。ですから,私はもともと可視性というのは非常に重要な要素だと言っていたんですが,ここでの議論で余り可視性は広くないんだなという認識をしていて,だから,今日の議論で可視性ということが結論を出す上での大きなキーワードになるのかどうか,そこは疑問であります。  とりあえず以上です。 ● 確かに,だれにでも見られるというような,そういう登記簿のようなものとは,この電子登録債権の登録原簿は違いますけれども,しかし,譲り受けようとする人は,譲り渡そうとする人が登録原簿の中身の記録をとって,それを見せてもらうことによって開示が受けられる。それによって,そこに書かれているものだけが権利だということがわかるわけですので,そういう意味では可視性は指名債権なんかに比べれば格段に高いということは言えるだろうと思うんですよね。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私は,先ほど○○委員がおっしゃられた,今,現に裸の指名債権につけるべきではないと思われる譲渡制限がたくさんついているという実態は望ましいものではないと思いますし,改善しなければいけない問題だというふうに思うんですね。このことがなぜ起こっているのかということが問題でありまして,手形がちゃんと機能していれば,売掛債権ではなくて手形で処理されていたものが,今,しようがなく裸の売掛債権になっているというものについては,売掛債権のままですと,これはどうなってしまうかわからないので,譲渡制限をかけて,だれに譲渡されるかわからないということを防止しようということになっているとすると,ここの改善の余地というのは,要するに銀行に割り引いてもらうという道筋がついているような債権というのが健全に使われていくという,それをつくっていくことなんだと思うんですね。そうすると,おそらく今,不必要につけられている譲渡制限というものは,必要なものというのがあるのかどうかわかりませんけれども,○○幹事がおっしゃられたニーズのあるものにだけ収れんしていくということになると思うんですね。これを何によって導いていくのかということで,方向感はみんな一緒で共通の認識を持っているわけですから,それをどの手段を用いて実現させていくのかというのが議論のクルシュアな問題であって,それを私法上の規制でやるというのも,私は確かにあり得るとは思います。  といいますのは,例えば株式に関して言いますと,株式は,これを他人に譲渡することを得という規定を設けることによって,これまでも譲渡制限を禁止してきましたので,そういう意味では私法上の規定の中にそういう政策的な規定が入るということもあり得ないわけではないというふうに思うんですけれども,私としましては,まだやはりこれが何に使われるかわからないと言われる現状であり,また,場合によっては友達同士の間の普通の債権であっても電子登録債権にしておいてみようということが行われてくるということがあってもしかるべきだと思います。そのような場合には,これは売らないというのはどうすればいいんだ。じゃ,譲渡制限というのを書いておけばいいんだというような,そういう比較的気楽な形で合意の上に譲渡制限がなされるというような場面も一応視野に入れた上で,可能な限り柔軟な制度にしておくということで,むしろ先ほど来から問題となっている部分については,おそらく下請法自体も不十分であったりとか,その規制の部分,いわば中小企業保護立法のところにもうちょっとてこ入れをするということによって改善していくという必要があるんじゃないかというふうにも思いますので,そこは問題点としてきちんと指摘をしていただいた上で,他の整備法とかの考慮の際にいろいろ政策的に決めていただく。一般私法上は特に定めないというやり方でもよろしいのではないかなと。  ちょっと同じことの繰り返しになりましたけれども,発言させていただきました。 ● ありがとうございました。  いかがでしょうか。今,○○幹事にまとめていただきました。譲渡禁止特約が仮についていても,もっと別の規制の形でしかるべき方向に導かれる可能性もあるということを指摘いただいたわけですが,そういうことでいいというのであれば,恐らく禁止特約を一応可能だという形にするということももちろん考えられると思うんですが,いかがでしょうか。もう十分議論はしていただけたと思うので……。  ○○委員,どうぞ。 ● ちょっと話がずれちゃうかもしれませんけれども,事例として先ほど,大企業のことがよく出ていましたけれども,今,地方公共団体のいろいろな公共工事の支払とかも,実は譲渡禁止特約がついているんですね。ですので,それを沖縄でやったときに電子手形でやってくれないかという話もしたんですけれども,今の現状からはそれを乗せることはできないと,譲渡禁止のついているのはできませんと,それが実は金の流れとしては一番大きいはずなのに,そういうことも国なり地公体がそういう協力もできないという現状もあったということで,そういうところを何とか乗せられるといいのかなと。そのためには,余りがちがちにしてしまうのも厳しいのかなと思う一方,じゃ,何でそういう特約がついているのかというと,例えば公共工事関係で入金保証をしているというところで,それが譲渡されてしまったらというようなこともあるということでしたので,じゃ,それが本当に金融機関もいけないんですかというと,そうではないんですね。ただ,やはりそういうところが実はいろいろなところとして,ちゃんと奥深く検討すればできるはずのことが,譲渡禁止という特約すべてで物語ってしまって何もできない現状を何とか打破したいなというのが非常に強い思いとしてありますので,それがこの電子登録債権という中で,債務者の指定するということになってしまうかもしれないんですけれども,金融機関に譲渡することができるような仕組みさえ何とかつくることによって,中小企業の金融の円滑化につながっていけるような仕組みとしてできるんではないかなと。それが先ほど言ったように業務規程の中でできるということで解決できるのであれば,それが今の段階では一番いい方法なのかなというふうに思っております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 余り強い意見はないんですが,日弁連は従前,これは譲渡禁止特約を認めてもいいんじゃないかという議論をしておりましたけれども,それほど強いいろいろな考慮があって言っているわけじゃなくて,民法で今認められている範囲であれば,それを変えるという,これも新しい法律も,一般私法としてつくる以上は変えるというところまでは要らないんじゃないかということで述べたわけです。  今,両方からの議論をお伺いして私は黙っていたのは,両方もっともだと思うものですから,どちらかに賛成,どちらかに反対というほどではない。1つは,この法律にいろいろなものを取り込み過ぎているんですよね。ですから,すべてのニーズに対応しようと思うと特約は欲しい。それから,中小企業の資金調達ということに着目すると,そういう特約は外したいということで,ほかでもありますけれども,いろいろなニーズに対応し過ぎようとしているので無理が来ているのかなという気がいたします。ですから,中小企業の資金調達というのも重要な立法目的であるけれども,そのすべてではないということからすると,例えばシンジケートローンとか,ほかの正当な特約というか,それもないんだというのが○○委員のおっしゃりたいことかもしれませんけれども,合理的な特約,理由のある特約というものも取り込みたいというのであれば,それを認める。それで,どうしても譲渡性を強調するのであれば,そういう特約をつけたいものは来なくていいんだということになっちゃいまして,そうすると,裸の売掛債権みたいなものが,今のまま電子登録債権にならないで残っちゃうわけですね。ですから,どういう制度にしようと,そういうニーズがある人は来るか来ないかどっちかなので,変わらないかなという気はいたします。  ですから,譲渡禁止特約を絶対認めないという制度にしたところで,じゃ,今の裸の債権が入ってくるかというと入ってこないということにもなるので,果たしてこの一般私法としての法律でそこを達成できるのかというと達成できなくて,やはり○○幹事のおっしゃるように,別の下請法的な立法ないし指導をやらないと入ってこないのかなと。結論としては,○○幹事のおっしゃるように,広くつくっておくしかないのかなという気がいたしております。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● もともと出発点が中小企業の金融の円滑化だということでしたので,私も個人的には譲渡禁止特約をつけられるというのは何となく反対なんですけれども,そういう別のパターンが,先ほど○○委員がおっしゃられたような,全然中小企業とは違う世界があり得るんだということが,これが本当に何があるかというのは,また後でちょっと別途教えていただきたいと思いますけれども,それから,今,○○幹事がおっしゃられたような,別法で対策を講ずることでこの場が抜けられるというのであれば,我々としても中小企業政策の中で何ができるかどうかというのは,ちょっと検討はしてみたいと思います。それでむしろ法制審の場がうまくおさまるのであれば,それはそれでよろしいかなというふうに思っておりますけれども。 ● ありがとうございます。ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● 私も,何かいろいろ議論が白熱していて,どういうふうに言っていいかわからなかったんですけれども,先ほど○○幹事がおっしゃった中で,結局手形の発行のかわりに電子登録債権を使う人は譲渡禁止特約を入れることはないとおっしゃった。そして,前に○○委員の御指摘された中で,債務者の合理化ニーズと合致すれば電子登録債権に乗ってくるんだろうと。その中には,多分手形を発行するのにかかっている手間,暇,金というんですか,印紙税というのか,正確に言えばそうかもしれませんけれども,そういうものが要らなくなる分,その分だけ何かマージンが出てくれば,それは手形を発行してもいいと思っている。ああいう手形に対しては譲渡禁止特約なしに電子登録債権を利用するだろうということで,先ほど○○幹事が御指摘になったように,オーバーリアクションしている部分,あるいは過去の慣習に流されている部分が順次はがれていくかもしれない。これが一気に起こるはずはなくて,やはりラーニングエクスペリエンスというか,経験的に学んでいくしかないことだろうと思うので,それを法律をつくったからって一気に変わるはずはないんだろうと思いますし,それをこの電子登録債権に関する一般私法の中に取り込んだところで,行動がそんなに変わるんじゃなくて,もっと激しい法律,規制とか激しい内容を持った劇薬的な法律の中で盛り込んでいただくしかなくて,ここはここで提案されているような中で,ブラケットだけを消した形で法律をつくってまず出発して,学習を怠っていると思われたら,もうちょっと厳しくするよう,どこか同じところ,ここではなくて同じ政府の中で考えていただくことになるんではないかと思います。 ● いかがでしょうか。大方議論が出尽くしたように伺いましたが,○○委員のおっしゃるように,新しい器をつくるわけだから,中身に新しいお酒を盛った方がいいんじゃないかという,そういう強い御意見もございますが,他方,譲渡禁止を認めないということであると,結局譲渡禁止をつけている現状の債権が電子登録債権化されないという形で,さまざまなニーズにこたえたいという,そういう方向性といわば逆行する危険性もある。そういうことが多分あると思うんですね。結局,譲渡禁止特約を認めても,現在流通性があるものとないものがあるわけですが,現状の流通性が認められているものがそうでなくなってしまうという,そういうことでなければ,その譲渡禁止特約,現状と同じように認めるということも十分考えられるのではないか,ただ,そうならないということの担保が必要だというふうに思うんですけれども,その担保については,先ほど来の議論では3点,担保になり得るということが指摘されているように思います。  その第1点というのは,これは実務界の扱いとして,これまで流通性を認めてきたものについて,電子登録債権化をする段階で改めて譲渡禁止にしてしまうという,そういうことには多分ならないだろうという,実務界の実際の運用の感覚といいますか,そういう御指摘をいただいたように思います。  それから,第2点は,これは管理機関のあり方の問題ですが,流通性が確保されるべきような,そういう債権の電子登録債権化を扱うような管理機関においては,譲渡禁止特約というものがついたものを認めないといいますか,つけさせないというかな,そういう形にするという枠組みも用意されている。  最後は,○○幹事から御指摘をいただいたように,そもそも別の規制によって流通性が確保されているというものもあるということであったわけで,あれこれ勘案すると,ここはちょっと○○委員の強い御主張もあるわけですが,多くの意見が集約できるところは,とりあえず譲渡禁止特約が認められているという現状を,この電子登録債権の世界でもとりあえずは入り口としては認めたらどうかという,そういうお考えが強かったというふうに私は拝聴したわけでありまして,もしそういうまとめでよろしければ,そういう方向でまとめたらどうかなというふうに思いますけれども。  ○○委員,どうぞ。 ● 最後に申し上げさせてください。今,○○委員がまとめてくださいましたが,繰り返しますが,さまざまなニーズにこたえられるというのは,結局今日の議論でも現状を維持するということにほかなりません。これは皆さん,御了解だと思います。  それから,私は,現状に問題があるということを指摘して変えるべきだと言っている。この現状に問題があるというのは,ここだけじゃなくて,さっきペーパーでも御紹介したように金融審でも議論になっている。それは皆さんわかっているんです。かつ,○○幹事がおっしゃられた他の法制でというのは確かに結構なことなんですが,それは現在は白紙なんです。これから期待するというだけのことなんです。だから,私も今,○○委員がおまとめくださったように,今日のこの会議,これまでもそうでしたけれども,その現状を維持するというのが多数意見だというのは私も理解をいたしました。それが多数意見であるというのであれば,現状維持で皆さんが道を選択する。電子登録債権という,指名債権でも手形でもない新しい法制をつくるときに,この譲渡禁止特約の問題点については現状を維持するというのが多数意見であると,これは,それでいくんだというまとめであります。したがって,私は,それは会議の一員としては多数決ということであれば従いますが,私自身は間違っていることを言っているとは全く思っておりませんので,今後も,私は思っていることを発言を続けていきますということを申し上げたいと思います。  それから,ぜひ注か何かで,非常に強い反対意見があったとか--これは私だけじゃないんですから,○○委員もある意味,私以上に強い意見をおっしゃっていたわけですから,ここは議事録に残るだけではなくて,何かそういう形で反対意見があるものを取りまとめたんだということを残していただきたい。これを最後に私はお願いしたいと思います。  以上です。 ● よろしいですか。じゃ,強い反対意見があったということは,しかるべき扱いをさせていただきたいというふうに思いますが,まとめとしては,この7ページの一番下の⑩のところですが,これは譲渡禁止特約をつけることが許されると,そういう形でまとめさせていただきたいと思います。  それでは,時間が大分たってしまいましたけれども,すぐ上の,この⑨についての御議論をまだいただいておりません。この⑨についていかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 御質問させてください。今のような取りまとめになったとして,前から私,申し上げているように,譲渡禁止についての特約というか,人的抗弁としてはほかの抗弁と全く同じ扱いになるんですか。それとも何らかの別扱いをされることになりますか。 ● 登録されていないものは全部人的抗弁でございますので,同じ扱いで,害意がない限りは抗弁は対抗できないということになります。害意というのは,前から申し上げているように,何ら調査する必要がなくて,そういう抗弁があることを十分知りながら取得した場合にだけ害意があるということになります。 ● じゃ,確認ですが,そうすると,譲渡禁止特約を内部でつけていて,しかし登録はしなかったという場合には,その譲受人が内部で譲渡禁止特約をつけていたというのを害意があってよく知っていてわざと譲り受けたという場合以外は,その隠れている譲渡禁止特約が表に出てきて効力を持つことはないと,こういうことになりますね。 ● そのとおりです。 ● わかりました。 ● ほかに,この点について御意見ございませんでしょうか。--特にないようですので,それでは,⑨については,この事務局案ということで確定をしたいというふうに思います。  それでは,⑨と⑩の議論については以上で終わりにいたしまして,それでは,今まで第1の総則と第2の電子登録債権の発生について,重要な点を検討してきたわけですが,それ以外の点について何か御意見等ございませんでしょうか。まとめてお伺いをいたします。  ○○委員,どうぞ。 ● 1ページの1の(3)の登録記録というものの定義でございます。これは,ちょっと後の開示のところで申し上げた方がいいのかもしれないんですが,従来,第1次案におきましては「一の登録記録番号が付される電子登録債権ごとに区別される電磁的記録」というふうに定義されていましたので,発生登録以降に譲渡登録が積み重なっていった場合に,そういったものも一体として登録記録というふうなことが定義されていたと思うんですけれども,今回は,この発生登録というふうに,この字づらだけ見ますと読めるわけなんです。それとの関係で,26ページとか27ページの開示のところで,特にこの中の③のところで,この①と②というのは,現在の債権者もしくは債務者である人に対する開示ということを定義していると思うんですけれども,この③につきましては「自己の氏名又は名称が登録記録に記録されている者」というふうになっています。それとこの1ページの定義をあわせて読みますと,要するに当初の発生登録のときに記録されているけれども現在は権利者でない人という,そういった方しかこの③番の開示の対象にならないんじゃないかというふうに読めるわけなんですけれども,それがそういった趣旨なのか。おそらくこの③というのは,例えばAが債務者でB,C,Dというふうに譲渡されていったときに,当初の債権者ですのでBですね。これについては開示の対象になると思うんですけれども,途中のCとかは対象にならないような感じに読めるので,そういった観点から,この登録記録というところの定義がこれでいいのかどうかというところをちょっと考えた方がいいんではないかなという,文字づらだけ読むとそういうふうに読めましたものですから。 ● 御指摘ありがとうございました。趣旨は,27ページのところのロにありますように,BからC,CからD,DからEと行っているときには,そのC,D,Eというのが全部一の登録記録に記録されているという前提で書いているんですけれども,それが登録記録の定義の中では確かに,発生登録の際に作成されて,その後,ほかの登録はどうされるのというのがややわかりにくいということですね。だから,ちょっとそこはまた表現だけの問題で,実質は発生登録がされたものに他の登録,譲渡登録とか支払等登録とか保証登録とかが積み重なるという前提で,それが記録されるものが登録記録だというつもりだったので,それは当たり前だと思っていたんですけれども,その辺,書き方についてはまた,さらにどういうふうに条文をつくるかということを検討させていただきます。 ● ありがとうございました。  ○○委員,どうぞ。 ● 私も,ちょっと文字づらだけのコメントで申しわけないんですけれども,1ページ目の1の(1)で,ここの注を拝見すると,電子登録債権には,発生登録によって発生するもののほか,保証登録によって発生するこれこれの請求権,それから支払等登録によって発生する特別求償権の3種類があることを明らかにしたというふうに書いてあるんですが,この本文だけ読んだときに,特に支払等登録によって発生するのが一体何なんだと。支払等登録というのは,普通の人が読めば,それでもう消滅するんじゃないかということなんですね。支払等登録において発生するものは特別求償権ですと言われなければわからないですね。特別求償権のところを見ても,それが電子登録債権なのか何なのかということは書いていないわけなんですよ。特別求償権は電子登録債権だというのは,この場でのずっと議論なんですけれども,どこかでそれをはっきり書いておいていただかないと,もとの法定代位で取得する電子登録債権と,この特別求償権というのは異同の関係もよくわからないし,ちょっとそこが定義の問題なのかわかりませんが,特別求償権の書き方がよくわからんなというのが私の印象です。 ● 確かに支払等登録を発生のための要件とするというのは一体何かと思われると思うんですけれども,特別求償権をごらんいただくと--特別求償権は11ページですけれども--支払等登録がされたときは特別求償権を取得すると書いていまして,支払等登録がされたときに発生する権利というのは特別求償権なんだなというのはここでわかって,それが電子登録債権であるということが,この(1)で明らかになっているという,そういう関係でございます。 ● 私もそれはわかっておりますが,普通の人がこれを読んだときに,定義をまず読むわけですよ。それで特別求償権のところまで行ってようやくわかるというのはいかがなものかというのが私のコメントです。 ● うまくできるかどうかわかりませんが,御指摘もありましたので,さらに工夫はしてみたいと思いますけれども,うまくいかないかもしれないことは御了解いただければと思います。 ● 確かに,一覧してわかるというのは,おそらく法文としては重要だなというふうに私個人としては思うんですけれども,ほかに。  ○○委員,どうぞ。 ● 私も,ただいまの○○委員の御発言と全く同じように,支払等登録で発生するというのは何だろうというふうに,絶対これは一般の人は読んだときに不思議に思うんではないかと思って,正確に定義することによって,かえって読みにくくなっているんではないかというところは感じますので,そこはもし工夫ができるものならばやっていただきたい。  それからもう一点,ほかのところでもよろしいですか。これは書いてあることの内容の確認だけなんですが,2ページの一番下,「(5) 管理機関は,同一の電子登録債権に関し2以上の登録が請求されたときは,これらの登録を請求があった順序に従って行わなければならないものとする」。管理機関は云々という,この条文には何も異論がないんですが,確認しておきたいことは,その中身であります。つまり,この場合,債務者が発生登録請求にかかわっているわけですから,前にも伺ったかと思いますけれども,これは2つ発生するということでよろしかったですね。同一の電子登録債権に関し2以上の登録が請求されたとき,それらの登録を請求があった順序に従って行った結果,債務者は2つ発生したものについて弁済義務を負うのかということの確認です。つまり,これは,その後,2つの登録がされたものは別々に譲渡されたり差押えを受けたりというようなときに問題になるので,中身だけ確認をしておきたいと思います。 ● おっしゃったことはそのとおりなんですけれども,ここで書いていることは違いまして,ここは「同一の電子登録債権に関し」と書いていますので,1個のある電子登録債権,例えば3番の電子登録債権というのがあったときに,その3番の電子登録債権の譲渡登録と保証登録があったというような場合を念頭に置いております。今,○○委員がおっしゃったのは,2つの電子登録債権を発生させるわけですから,2個の電子登録債権を債務者,債権者が登録請求して2つ登録するということですから,2個発生します。ですから,ここでは,既に発生した1個の電子登録債権に関して2以上の登録の請求があった場合ということだけを定めているということでございます。 ● あるいはそういう趣旨かなと思ったんですが,日本語的に読むとというか,普通に読んだら,その区別はなかなか難しいんではないかと思います。おっしゃることの御説明で非常に正確にわかりましたけれども,同じ電子登録債権について,この2以上のというのは,発生登録とか保証登録とか,いろいろあるものについてということなんですよね。 ● はい,そのとおりです。 ● ですから,私の申し上げたようなケースとの文章上の区別というのが,もう少しつきやすい形にならないものかということなんですが。同一の電子登録債権に関し2以上の譲渡登録が行われた,この場合はどうなりますか。 ● その場合は,(5)と(6)と両方にかかわりまして,3ページの(6)ですけれども,相矛盾する2つの譲渡登録の請求がされた,AからB,AからCという譲渡登録の請求がされたときのことですから,その場合は,まずAからBの方が先にされればAからBの登録をするということになります。それでAからCの登録は,もうBに権利が移っていますから,AからCへの譲渡登録はできないので,それは拒否するということになります。ただ,AからB,AからCの登録が同時にされた。例えば同じ郵便でされて,同じときに郵便物が着いたというときは,AからB,AからCというのは相互に矛盾しますので,どっちも受け付けられないという,そういうことを(6)で書いてございます。 ● よろしいですか。今,最初の方の御説明がよくわからなかったんですが,ですから,(6)は同時に2以上の登録が請求された場合においてということですよね。ですから,それは受け付けないというんですね。時間が違って,2つ以上の譲渡登録が同一の電子登録債権に関して請求されたときは,それらの登録を請求があった順序に従って行うということになりますね。そうすると,AのBに対する電子登録債権がCに譲渡されるのとDに譲渡されるのは,両方登録されて…… ● それはそんなことはありませんで,AからCへの譲渡登録請求が先にされたわけですから,まずAからCへの譲渡登録をいたします。そうしますと,登録名義人がCにかわってしまいますので,Cしかほかの人には譲渡できない状態になりますから,AからDへの譲渡登録の請求というのは登録義務者になり得ない人がしていますので,それは拒絶することになります。それは当然のことという整理でございます。 ● わかりました。では,あくまでも(5)は,この「2以上の」というのは,そういう同一の電子登録債権に関して,さまざまな発生登録があったり保証登録があったり,そういうことを指しているんだということですね。了解しました。 ● ほかに,それでは御意見,御指摘をいただく点はございませんでしょうか。  幾つか取り上げなかった,しかし注がついていてというものもございますが,1ページについては今済みまして,2ページについても,これは済みましたですかね。  ○○委員,どうぞ。 ● これも言葉の問題なんですけれども,2ページの(4)真ん中辺,その3行目から4行目にかけて,「この場合において,管理機関がその定めを登録していないときは」ということですけれども,これはどこに登録していないということでしょうか。これは個々の電子登録債権の登録記録に登録していないときというふうに読むのでよろしいんでしょうか。 ● そのとおりです。登録は,1ページの一番最後の行ですけれども,登録原簿に登録事項を記録するのが登録でございますので,個々の登録記録に登録するわけでございます。 ● 個々の登録記録にね。登録原簿にではないですね。 ● そうです。 ● それでは,ほかに。  ○○幹事,どうぞ。 ● すみません。先ほど○○委員がおっしゃられたところ,私も読み間違っていまして,○○委員が先ほどおっしゃった例だというふうに思っていたんです。ですから,これは私の読解力の問題なんですけれども,(5)のところは「2以上の」の前に,何か相互に矛盾しないとかというのをちょっと入れておいていただかないと,ちょっと理解がしにくかったものですから。それでいいのかどうかはわかりません。検証していただきたいんですけれども,ちょっと修文をできればお願いできないでしょうか。 ● 実はこれはもう,不動産登記法にこれと全く同じ,登録が登記に変わっているだけのものがあるものですから,不動産登記法でこれで読めるということになっているものですから,いささか直すのは難しいかなと思います。 ● 御事情はわかりました。 ● それでは,ほかに。  3ページは,これは済みましたから,あと4ページの頭のところはいかがでしょうか。これは政令で定めるという形でよろしいでしょうか。それから,4ページの下に後注というのがございますが,これもよろしいでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 4ページの(5)なんですけれども,部会資料13では「登録の請求をした者は」という表現であったのに対して,今回「登録の請求の意思表示をした者は」というふうに変更になっておりますので,その意味を御説明くださいますでしょうか。とりわけ相手方がだれを想定しているのか。請求だと多分管理機関だと思うんですが,意思表示の場合には一体だれなのかということを御説明いただければと思います。 ● 「請求の意思表示」という言葉の「意思表示」をつけ加えましたのは,前回の御議論も踏まえ,それから,取消しが意思表示の取消しということもあるので「意思表示」ということを加えることにしたんですけれども,これは前から申していましたように,この登録の請求というのは管理機関に向けられているだけではなくて,相手方にも向けられている。相手方に対する関係で権利を発生させたり,あるいは譲渡したりする,そういう意思表示を含んでいるという前提で考えていまして,したがって,この意思表示の相手方というのは管理機関ではなくて権利義務の相手方であるというふうに第11回のときも申しましたけれども,それをより明確にするために「意思表示」という言葉を入れたということでございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● じゃ,今の点を確認いたしますと,相手方は管理機関であり,かつ相手方であるという,こういう二重の相手方がいるという理解でよろしいでしょうか。と申しますのは,申請ではなくて請求という言葉に変えたのは,管理機関が民間企業でもあるからというような御説明があったと思います。ということから考えると,相手方は二重だという理解になるかと思うんですが,今の御説明はそれでよろしいでしょうか。 ● 両性説的な考え方ですから二重は二重なんですけれども,ただ,ここで問題になるのは,管理機関の方は全然問題になる余地がないので,つまりだれが第三者かとか,だれが相手方かとかを考えるときは,権利義務の相手方が相手方であろうという,そういうふうにお考えいただければと思います。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● ちょっとページが戻って恐縮なんですが,先ほど○○委員がおっしゃった2ページ目の登録に関して確認をさせていただきたいんですけれども,これは業務規程で,例えば譲渡回数を2回と書いてあったとしても,それを管理機関が個別の債権ごとに登録をしないといけない。ですから,例えば業務規程において2回と書いてあった。しかし,仮に管理機関--これは管理機関が登録する事項となっていたと思うんですけれども,管理機関が登録をし忘れていたとしますと,その後に,何人も業務規程の定めの効力を主張することはできないと書いてありますので,例えば債権者が3回目の譲渡をしようとしたときに,債務者が「おっとっと,困りますよ。業務規程に2回と書いてあるじゃないか」と思ったとしても,その債務者は3回目がだめだという業務規程の効力を主張できない。それで何らかの損害が発生したのであれば,管理機関に対して,おたくが書き漏らしたから,私は3回目の譲渡をされて具体的に損害が発生したんだというふうな処理の仕方をする。それでもやむを得ないのであって,むしろどういう制限があるかというのは,それぞれの帳簿を見れば足りるようにしておくべきであって,個別の業務規程を一々見ないと制限がわからないようにするのは適当じゃないという御判断ということでよろしいでしょうか。 ● はい,そのとおりです。 ● それでは,ほかにございませんかという一括してお伺いしているんですが,何か御指摘をいただく点がございますか。  5ページについても済んだんですよね。6ページの頭のところも済みましたから,6ページの真ん中当たりの後注というのもありますが,これはこれでよろしいでしょうかね。  6ページの6の(1)は済みましたから,7ページについて,これは第2の1のところの注,これはこれでよろしいでしょうか,発生の要件についてですが。  あとは,8ページのところについては先ほどもう既に議論をしたところですので,それでよろしいでしょうかね。  それでは,第1,第2のところについては何かございますか。 ● ちょっと蒸し返しになるようで,先ほど○○委員が御指摘になった4ページの(5)のaのところの意思表示,先ほど○○幹事がおっしゃったように,これは権利義務の相手方に対する意思表示であるという御説明であると,結果としては従前,もう解決済みの問題ですけれども,A説,B説の対立で言えばA説的な考え方に立つという御説明と理解してよろしいですか。 ● A説といいますか,だから法定債権みたいには考えないということはそのとおりです。 ● B-1説的ではないということですね。 ● 請求の意思表示の中に両方が含まれるというふうに考える。 ● わかりました。 ● それでは,第1と第2のところは以上で確定をしたということで,それでは,重要な論点がなお含まれています第8を先に扱わせていただきます。第1次案からの変更点,あるいは特に御議論をいただきたい点を中心に,事務当局に説明をまずしていただきましょう。 ● 「第8 その他」でございます。  まず質権でございますけれども,23ページで,従前「質権順位番号」という言葉を使っておりましたのを「質権番号」にいたしまして,その定義も「一の登録記録における質権登録及び転質の登録がされた順序を示す番号」というようにさせていただいております。これは従前,質権についての登録という広い言葉にしておったんですけれども,前回の部会で質権について実体法の方の規定,これは22ページですけれども,(1)のcのように限定列挙するということになりまして,そうすると,問題になる質権の番号というものをつける必要があるものは,質権設定登録と転質の登録しかないということになりますので,それでこのようにしております。そして,質権順位番号といっても,これは設定登録や転質の登録がされた順番を単に書いているだけですので,これは何のために書くかというと,質権の順位の変更をしなければならないときに,第1と第3を入れかえるというような,そういう登録ができるようにするためにつけるだけのことですが,それでついた番号というのが順位の番号ではないわけですので,誤解が生じないように単に質権番号という言葉にさせていただいたということでございます。ですから,実質を変えた趣旨ではございません。  あと,ちょっと飛ばしてしまいましたけれども,22ページの1の(1)のcですけれども,前回の部会の御審議の結果に従って条文を列挙してございますので,御確認をいただければと思います。  それから,25ページに飛びます。転質の関係で御相談したいことがございまして,注をつけておりますけれども,譲渡登録の効力,つまり善意取得と人的抗弁の切断を転質の場合にも準用すべきなのかどうかということでございます。質権設定登録を受けた質権者については準用しているんですけれども,転質にも準用することが必要なのか,また妥当なのかという問題でございます。ここに書いてある2つの問題点などがあると思いますので,この点について御教示をいただければと思います。  それから,質権には質権設定登録と転質の登録と質権の順位の変更の登録と根質権の元本の確定の登録がございますが,質権の順位の変更の登録とか根質権の元本の確定の登録は非常に細かいことでございますので,要綱では規定を整備するというだけにさせていただいて,条文をつくるときにきちんと書きたいと思っておりますので,そのことを25ページの(5)に書いてございます。  その関係で注記をさせていただいていますけれども,前回の部会では,質権の順位の変更の登録は変更登録の一部としてやれるんじゃないかということを申し上げたんですが,さっき申しました質権番号とも関係あるんですけれども,変更後の順位を明確にするには,変更後の質権の順位を不動産登記のように書かないと,うまく登録ができないということに気がつきましたので,変更登録とは別の登録として,質権の順位の変更の登録という登録を用意するということにさせていただきたいということでございます。  それから,次の信託でございますが,信託については,余り進歩がなくて恐縮なんですけれども,信託目録は作成しないけれども,信託登録という独立の登録にするということで,どういう具体的な登録にするのかとか,どこまで法律で書くかという問題もあるものですから,抽象的な書き方で御勘弁いただきたいということでございます。  それから,3番目の登録記録等の開示のところですが,26ページの(1)の①のロがブラケットになっております。ちなみに,ここは「業務規程で定めるもの」というふうに書いていますけれども,これは27ページの②のハの方は「政令で定めるもの」に直したんですけれども,こちらは直し忘れで「業務規程」のままになっていますが,規定を設けることになるのであれば政令で定めるものというふうにしまして,政令で業務規程にさらに運用するという形に,②のハと同じようになると思います。  それから,今日,実は部会長に御指摘を受けて気がついたんですが,①が「自己の氏名又は名称が登録名義人として記録されている者」と書いてあるんですけれども,登録名義人の定義をごらんいただくと,登録名義人というのは,登録上,債権者または質権者である者ということなので,登録名義人として記録されている者という概念がおかしいことになりますので,単に「登録名義人」と書くか,「自己の氏名又は名称が登録上,電子登録債権の債権者又は質権者であることが記録されている者」と書くか,どちらかにしたいと思っています。これは表現だけの問題でございます。  話を戻しまして,①のロです。これはブラケットにしていますのは,前回少し議論していただいたんですけれども,②のハとの平仄の関係で,①にもロがあった方がいいんじゃないかという御指摘があった一方で,これを設けても業務規程で定めるものはないんじゃないかという御指摘もありましたので,もしもそうだとすれば,せっかく規定を設けても,どの管理機関も業務規程に何も定めないということになるとばかみたいな話ですので,規定は置かないということにしたいと思いまして,ニーズがあるのかどうかということをもう一度伺いたいという趣旨でございます。  それから,あと,28ページまで飛びますけれども,後注の1と2でございます。電磁的記録に記録されている場合における閲覧の方法を独立で書いていたんですけれども,法令を調べますと,主務省令で定める方法によりというふうに大体書かれていますので,そのようにさせていただいております。  それから,後注の2です。保存期間について,第1次案では具体的に御議論いただいたわけですけれども,これは第1次案にも書いておりましたように,監督の観点をも考慮しなければいけませんので,単に私法的側面だけでは決められないということもございますので,基本的には第1次案の方向で金融庁さんとも相談をして条文をつくるようにしたいと思いますけれども,要綱自体に具体的な案を掲げることはやめさせていただきまして,「5 その他」のところで登録記録の保存期間その他所要の規定を整備するという形にさせていただいているということでございます。  以上です。 ● それでは御議論いただきたいというふうに思いますが,最初に御議論いただきたいものは,この25ページの注のところにあるものであります。転質についても善意取得や人的抗弁の切断を認めるべきか否かという問題であります。2つの問題点が掲げられていますけれども,この問題は主として理論的な問題であるというふうに思いますので,まず,これまた恐縮ですが,まず民法の委員,幹事の先生方に御意見をお伺いできればというふうに思いますが,いかがでしょうか。善意取得があるかどうかということなんですけれども,認めるべきかどうか。  ○○幹事,どうぞ。 ● すみません。おそらく○○幹事の方がより整理をされていると思いますので,間違いがありましたら補足をしていただくということにいたします。  2点をここで指摘されておりまして,2点目の被担保債権をめぐる問題というのは,被担保債権の存在自体についてまでは保護されないというのはそのとおりなんだろうと思います。既に弁済されてしまって消えてしまっていれば,原質権が消えると転質権も消えてしまうということですので,そうならないように制約がかかるわけですけれども,しかしながら,この部分は善意者保護によっても本来は保護されないだろうと思われます。そうすると,被担保債権以外のところでの善意者保護なり取引の安全のようなものがかかってくるかということでございまして,さらにはバリエーションとしては,おそらく,その部分については,しかしながら善意者保護の要請がかかるはずであるというふうに考えるならば,それをさらに拡大するかという可能性はあるかと思いますが,基本的には被担保債権の部分というのは,本来的な質権なり転質なりを受けたとしても保護されないものですので,そうでないものを善意取得なりで保護するというのは矛盾したことになるんじゃないかと思われます。そうしますと,被担保債権をめぐる以外のところでの善意者保護なり取引の安全を図るかということで,理論的にはその間に原質権が入ることによって,原質権自体については善意取得等がない,あるいは問題にならないような局面であるにもかかわらず,転質を認めることによって原質自体も存在せざるを得ないというようなものを認めるかという問題提起だと思うんですけれども,もともとの質権をめぐる転質の問題と即時取得のような話があり得るかということを考えたときに,正直余り議論はないというふうに思いますし,さらに言うとわからないという状態なのですけれども,取引の安全という要請からすると,その場合は除外されるべき理由は政策的にはないんだろうという気はいたします。  ただ,他方で,転質というのが動産の即時取得の対象となるような話であるのかと。むしろ質物質入説ですとか,いろいろな理解はありますけれども,基本的に権利質に近いような性格ではないのかという気もしておりまして,果たしてそもそも即時取得によってカバーされるようなものであるのかということが一つはあると思います。ただ,他方で,しかしそうはいっても,動産をめぐる広い意味での取引の安全を図っているんだといえば,そこまでカバーするという可能性も理論的にはあり得るだろうと思いますし,そうした場合に間の存在をどう考えるかということで,これは存在をある範囲では措定せざるを得ないと思うのですが,その措定の仕方が実質的に積極的に権利を与えるような措定の仕方であるのか,それとも,転質権者が自己の権利を,質権に比べて原債権と質権の存在によって制約された範囲で,いわば制約原理として働くだけなんだと考えるならば,実質的にもう余り問題なく,相対効というような説明をすることによって可能ではないかというふうには考えています。  ですので,くどくど言って申しわけないのですが,一般的な転質の場合を考えると,善意取得ないし即時取得による保護が及ぶかといえば,はっきりしない。はっきりしないのですが,この①,②の理由をもとに,およそだめだろうということも言えないだろうというところまでは言えるんだと思います。ただ,非常に,まず被担保債権以外の場合で保護に値するような場面というのは極めて限定的であろうということがあると思いますし,今のような話からすると,保護されるとしても,こういう極めて限定的で,しかも本当に保護されるのか,一般的な即時取得の適用の場合にさえもわからないようなものについて,さらにこの場合に保護をかけていくのかという問題ではないのかなというふうな気がしていまして,実際には被担保債権の方は保護されないとすると,ほとんど余り働く余地はないんじゃないかという感じはするのですけれども,結論が出なくて大変申しわけないのですが,理論的には無理ではないんじゃないかというところまでは言えると思いますけれども,ただ,そう大きな保護でもないんじゃないかというのが印象です。ですので,申しわけないのですが,○○幹事や○○委員から反論を含めて御指摘いただければと思います。 ● お願いします,○○幹事。 ● この問題,このペーパーも送っていただきましたし,あらかじめ考えてはきたんですが,何回か結論に達したんですが,その後,自分で自分を批判しようと思えば批判ができて,そうするとまた私自体も破綻していってよくわからないんです。  まず,非常に教科書的な議論になって恐縮なんですけれども,転質とは何かという議論があって,私,こういうことを授業でもやりませんが,質権質入説とか質物質入説とか,いろいろあるわけですよね。つまらない議論として紹介されていて,余り議論も授業中とかはしないんですが,ただ,今回の問題を考えてみますと,やはり質権質入なのか,質物質入なのかということによって,信頼する対象というものが根本的に異なってきますので,結構重要な理論的な対立なんだろうというふうな気がしております。  まず,どちらが通説かというのがよくわからないんですが,○○幹事の今の分析というのは,どちらかといえば質権質入的な発想なんだと思うんですね。まず第1の問題として,権利の上の権利を取得するに当たって,そもそも即時取得の規定の適用があるかという話が○○幹事によって提示されたわけですが,これは結局,16ページの3の(1)に書いてあるところの善意取得という制度が民法192条のような制度なんだというふうに考えるのか,それとも,全くもって電子登録債権における取引安全を図るための特殊な法理なんだというふうに考えるのかによって,もし後者で考えるならば,動産が絡んでいないじゃないかということは多分余り問題にしなくてよいのだというふうに思います。  さて,そういうふうにして質権上の権利を取得するということになりますと,転質権の設定を受けた者が何を信頼するのかというと,原質権者が質権を持っているということと,もう一つは原質権者が被担保債権を持っているという,この2つの信頼というものが同じことなのか,違うことなのかというのがやはり一番大きな問題なんだと思います。何でそうなるかといいますと,例えば抵当権の登記なんて考えますと,被担保債権額が1億円と書いてあっても,弁済により5,000万円になっているということになりますと,別段それは5,000万円というふうに登記面を変更しなくても,そのまま第三者に対抗できるというふうに考えられているわけです。さらには弁済によって被担保債権が消滅して抵当権が消滅しているということになりますと,これも登記の抹消手続をとらなくて第三者に抵当権の不存在というものを主張できるというふうに言われておりますので,被担保債権額が登録簿に書いてあっても,それ自体によっては被担保債権が有効に存続しているということの信頼を引き起こさないのではないかという問題が出てくるわけです。  それに対して,しかし質権という登録はあるじゃないか。そうすると,質権というもの自体が存在するということの信頼というものは存在し得るわけだし,それはまさに電子債権登録簿上の登録事項に対する信頼なんだから,まさに保護するというのがこの法律の全体の趣旨なのではないかということになりますと,理論的に考えますと,質権の存在については信頼が保護されて善意取得の対象となるけれども,しかし,被担保債権についての信頼は,それだけでは保護されないということになりそうなんですね。  ここから話が3つに分かれて,長くなりまして恐縮なんですが,被担保債権の信頼というものが引き起こされないんだから,空っぽの質権の信頼だけを保護するという法制度をつくるのはむだではないかというのが一つの考え方としてあり得るわけです。そうすると,転質権の善意取得というのはあり得ない制度設計にするというわけですね。  しかし,2番目に考えられるのが,被担保債権の存在についても別個の法理--それはこの電子登録債権法上の善意取得ではないけれども,例えば別個の法理によって信頼を保護すべき場合というのが存在するかもしれない。そうすると,電子登録債権法上で質権の善意取得というのが起こり,被担保債権の信頼はまた別個の法理によって保護されるということになると,それはそれでいいではないかというのが2番目の考え方としてあり得ると思います。  3番目の考え方としては,転質権の善意取得というのは極めて特殊な問題であるというふうに考えて,普通は,そこに現在の債権者が載っているならば,その債権者が現在の権利者であるということを信頼する。それを保護するということになるんだけれども,登録面を見て,質権の存在と被担保債権の存続というものを両方信頼した場合にだけ善意取得が適用されるという法制度もあり得るのではないかという感じになりまして,3番目のものが一番制度設計上簡単そうに見えるんですが,ただ,ここに問題がありまして,私は必ずしも賛成ではありません。なぜならば,先ほど申しましたように,被担保債権の消滅自体が抵当権の場合も登記を変更しなくて第三者に対抗できるということになりますと,何で電子登録債権についてだけは,被担保債権がどういうふうに記載されているかということについて軽過失者まで保護されるということになるのかというと,これはやはり説明がつかないのではないかと私は思います。  そうなりますと,せいぜいとれるのは2番目に申し上げた説であって,転質権については善意取得が生じて,しかしながら被担保債権についての信頼まで保護されるということになると,それは別個の一般原則に従って保護される場合があり得るというところにとどまるというのではないかというふうに思います。  実は私,個人的な考え方としては,転質権の善意取得はその意味ではないというふうに考える1の考え方を個人的にはとっているんですが,なぜ今それをここで主張しようとしないかと申しますと,抵当権に関する転抵当に関する最高裁の判決で,登記面上に抵当権があって,それは虚偽表示によってつくられた抵当権の登記だったんですが,それを信頼して転抵当権を取得した人というのが94条2項の適用によって保護されるという最高裁の判例がございました。私は,その最高裁の判例自体が誤っていると個人的には思っているんですが,立法するに当たって,最高裁の判決は存在しないという前提でつくるというわけにもまいりませんので,それはそういう最高裁の判決があるので,転抵当を虚偽表示で94条2項で保護される場合もあるのならば,転質権についても保護される場合があるだろうというふうに思って,善意取得を認めるというところまでは可能かなという感じがしております。  ただ,今,質権質入説に立って全部説明したんですが,質物質入なんだというふうに考えますと,これがまたわけがわからなくなります。そうすると,これは電子登録債権の存在そのものを信頼するということにもなりかねませんで,そうすると,○○幹事がちょこっとおっしゃった話なんですが,電子登録債権が再度質入れされているだけなんだと。ただ単に,そのときに,だから善意取得が起こるのは当たり前だと。しかし,その権利内容というのがただ単に原質権の内容によって制約されるだけなんだというふうな考え方も十分あり得るんだと思うんですが,ただ,この立場をとったときの根本的な問題点は,原質権が存在しないというところに問題があって,それならば,それについての信頼を直接的に語らないという法制度になるんだったらば,質物たる電子登録債権の存在を信頼したけれども,しかしながら,それはゼロの範囲に制約されてしまうので,結局ゼロであるということにもなりかねないんですね。そうなりますと,結論としては,私としては先ほど前者で述べました2番目の,転質権については理論的には善意取得が認められるけれども,被担保債権の存在についての信頼というのは電子登録債権法以外の一般原則にゆだねる,ゆだねざるを得ないというふうなところが穏当なところかなというふうに考えております。 ● 不動産の抵当権の場合,94条2項というものは類推適用されている。この問題は94条2項の類推適用の問題として解くべきであって,192条の問題とちょっと違う局面の問題ではないかという,そういう御理解にはならないですか。つまり,不動産の場合は94条2項でやっているわけだから,ここも94条2項の問題にならないのかという……。 ● それは十分あり得ます。それは私,時間をとり過ぎているので飛ばした4番目の考え方なんですが,適用条文を分けるというのが筋が悪いと仮定したときに,前後を善意取得でやるというふうになると,軽過失で保護されて,それは余りにバランスがおかしいだろうと。そうすると,全部を94条2項の方でやるというような選択肢は理論的に十分あり得るんですね。私は,それも十分検討に値する結論だと思います。 ● いかがですか。何か非常に難しい問題にぶち当たっていますが,ほかに御意見ございませんでしょうか。  ○○委員,どうもすみません。 ● 私は質物質入説で考えていたものですから,今のお2人のお話,あるいはそもそものこの御説明も,どちらかというと質権質入説と申しますか,共同質入説に近いようなのかなというふうに思っておりました。  それで,ここでもう長くお話ししても仕方がありませんので,私は図を示すだけにしたいと思います。BがAに対して電子登録債権を持っている。それをBがCに質権を設定し,CがさらにDに対して転質をすると,そういう図で考えたときに,果たしてDが即時取得するかどうかについて,それはDのAに対する電子登録債権なのか。それから,CがBに対する被担保債権を喪失したときはどうなのか。それから,Cではなくて,無権利者のC’からDが取得した場合はどうなのかと,大体そういうふうに整理していって,原質権の存在なのか帰属なのかということで分けていけば大体出るかなというふうに思いまして,善意取得が起こり得る場合はあるかなというふうには思います。  それから,人的抗弁の切断については,AがDに対して何を主張できるのかということを考えていけば足りるので,AはBに対して主張できたことをCにも主張できると,ここまでは来ると思うんですが,さらにそのことをDに対して主張できるかどうかという問題かなというふうに思います。結局は,○○幹事が御指摘のとおり,転質がどういうものなのか。質物を入れるのか,共同質入なのかという議論だと思いますけれども,そこの議論をここで決定して制度をつくるというのはなかなか難しいと思いますので,今申し上げたような具体的な場合について妥当な記述をすれば,あとは解釈にゆだねるということでいいんじゃないかなというふうには思います。 ● ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。  私は,この問題は,ここに挙がっている例は,善意取得の問題ではなくて94条2項の問題じゃないかというふうに個人的には考えております。というのは,善意取得の問題が出てくるのは,先ほど○○委員が挙げられた例を借りますと,Bが債権者でAが債務者である。電子登録債権になっている。これをCが質権にとると,こういう例だったですよね。Cがその質権を例えばEという人間に譲渡する。その譲渡が無効であったとか,そういう事情で本当の質権者はCであって,にせの質権者がEであると,こういう場合に,このにせの質権者,占有を持っている,ここでは登録を持っているわけですが,この登録を信頼してDが取引をしたと,こういう場合は192条の問題だというふうに思うんです。つまり真の質権者の対立が出てくるという,そういう場合には192条の問題で,ここはCとDの対立ではなくてBとDの対立になっているわけで,そうすると,BとCの間で,いわば通謀虚偽表示的なものがあって,本当はあってはならない質権があるかのごとく見せられている。それをCから取引した第三者という形で第三者が登場しているわけですから,Bはいわば通謀虚偽表示的なものを第三者Dに対抗できないかどうかという問題ではないかと整理する。だから,94条2項的な形でDが保護されるかどうかという問題が出てくる。  何というか,転質権の善意取得という問題も,さっき挙げたような例では出てくるわけで,それはどう考えるかというのは別個にあるとして,ここで挙げられている例は,要するに債権者Bと,それから転質権者Dとの間の利害の対立という,だから,その転質権の負担--何というか,想定される質権の範囲の負担ということになるわけですが,そういう負担をBが負わなくてはいけないかどうかという問題で,それは94条2項の類推適用という形で処理できて,Dを保護するかどうかというのは,これは政策決定の問題であると。仮に保護するとして,それは94条2項の枠組みであるとすると,Bはいわば94条2項の帰責性というのが必要である。だから,要するに類推適用できるかどうかという問題として一応考えることができる。場合によってはそれはもちろん善意者保護ということは出てき得るんじゃないかと,非常に単純に整理すればそういうふうになるんじゃないかと私自身は思っていて,だから,192条の善意取得の問題というのは,ここに挙げられているケースでは,ちょっと適用の問題は出てこないというふうに私は理解したんですけれども。 ● それは私と同じ理解でして,私は,さっきEではなくてC’というふうに申し上げたと思うんですが,帰属の問題と存在の問題とがあって,帰属の問題については善意取得で,存在についてはそれを拡張するかどうかということですから,○○委員と私は同じだと思います。 ● その善意取得という制度が適用される場合と,94条2項が適用される場合というものがあり得て,そういうものを適用するかどうかという政策決定というのが次にある。何というか,そこまで細かい議論をしなくちゃいけないような問題をここに盛り込むかどうかということだというふうに思うんですけれども,いかがでしょうか。  ○○委員は何か御意見ございますか。 ● いや,もう私は,○○委員と○○委員が意見が一致しておられるんだったら,それ以上……。日本の権威者がそうおっしゃるんだから,もう異論はどこからも出ないと思うんですが,ただ,最後におっしゃられた,そういう問題をここに持ち込むだけのものかどうかというところは,私もちょっともともと疑問があります。ただ,質権を置くとなればここまでやらなきゃいけないのかとは思うんですけれども,問題の前提にちょっと疑問があるということだけ申し上げておきます。  以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● お2人というか,3人が一致して進められているときに恐縮なんですけれども,○○委員のお考えをお聞きしたいんです。そもそものA,Bのところで,電子登録債権を虚偽表示でつくったときに,それをCが譲渡を受けた。転質の問題と全然関係ありません。そのときは94条2項の問題なんですか。善意取得ですよね。 ● それは94条2項の問題。 ● でもありますけれども,善意取得適用されるんですよね。 ● つまり,192条の問題というのは,そもそも所有権者のごとき外観という話ですよね。そうすると,真の所有者がいてにせの所有者がいて,にせの所有者には占有があって,その占有を信頼して本当の所有者だと思った。それを保護すると,そういう形で取引の安全を保護するというわけで,先ほど○○委員がおっしゃったように,それは帰属についてのいわば誤解というものをそのまま取引の安全という要請のもとで保護するという……。ないものがあるように見えるという意味では同じなんですが,しかし,全くないものなのか,あるいは,どこかにはあるけれども帰属が違うという場合の問題なのか。善意取得の問題は多分後者の問題。どこかにある。 ● 非常に私は重要な問題だと思うんですが,AとBの間で電子登録債権を発生させる意思がないのに,虚偽表示によって電子登録債権を登録して,それをCがBから譲り受けたという場合には,それはどの法上で処理をするということを前提の御発言なんですか。 ● だから,その場合には,電子登録債権がないのかあるのかというのがまず先に決められなくちゃいけなくて,それはあるという整理じゃないんですか。 ● 94条2項が適用されますので,Cが善意者であればあるということになると。ないということは言えないというのが正確ですけれども。 ● それは善意取得の問題ではなくて,94条2項の問題なんですか。 ● まず94条2項。債務負担をAがしているかどうかという問題ですから,本当は債務負担していないのに,したことにして登録したわけですよね。だから,さっき一番最初に議論していただいた第三者の保護規定が,虚偽表示の場合は民法94条2項をそのまま適用するということになっていますから,民法94条2項がまず適用されて,それで全部の勝負がつくんじゃないかと思うんですけれども,善意取得を持ち出すまでもなく,そこで取得し,債権が発生して取得するんじゃないでしょうか。94条2項で直接。 ● ○○幹事。 ● おそらく,私たちが手形法学というのでずっとやっていたのがこれでありまして,本来民法でいけば,まさに94条2項の問題なんですけれども,そうしますと,直接の第三者であるところの者しか保護されなくなってしまって,発生していないということがずっと後まで尾を引いてしまう。ですから,手形の場合はもともと,例えば手形的に言えば電子登録債権であることを認識して,電子登録債権として登録すれば,発生させてしまって,あとは全部善意取得の方に問題を流し込むことによって第三者保護を図ってきたという,そういう理論構成なわけです。○○幹事がおっしゃっておられるのは,まさにそういうことをしなくても電子登録債権の場合大丈夫かという,そういう御心配であると思いますけれども,一応理論的には民法的に考えれば,これは94条2項の問題であって,そうしますと,A,B,CといけばCの人のところでしか,その人が善意である限りにおいては,絶対的構成というのをとらない限りは,その人のところで決着がついて,あとはもう全部だめになるものはだめになるという世界なんだと思うんですね。おそらくこれが手形との違いで,私たちはそういうことでは流通性を促進することはできないからということで,ずっとそこのところを早目に発生させて,善意取得に問題を持ち込んできたということだと思うんですけれども。すみません。○○幹事の御懸念は,私どもの方はよくわかりますけれども,今決定しているのは民法の議論なんだろうというふうに思います。 ● わかりました。 ● それでは,ここで10分ほど休憩をさせていただきます。           (休     憩) ● それでは再開をしたいと思います。  今議論している問題についてですが,何かさらに御発言……。  ○○幹事,お願いします。 ● 私が先ほど発言をした内容が誤りであったと。発言した内容と申しますのは,A,Bの間で虚偽表示によって電子登録債権を発生させて,それをCに譲渡した場合に,それは善意取得の問題になるのではないかということは誤りであったというふうに思います。4ページにあります3の(5)のところに,その意思表示のところの瑕疵の規定というのは別個にあるわけですから,こちらの条文の方が優先されて,ここに虚偽表示というのはないわけですが,それは虚偽表示のそもそも第三者の主観的要件が善意に限られておりますので,ここで重大な過失というのを入れますと保護の関係で逆転してまいりますので,そういうことはないということでありまして,申しわけございませんでした。 ● ありがとうございました。  先ほど来の議論について,何かつけ加えて御発言ございますでしょうか。善意取得が適用されるかどうか,あるいはどういう場合に善意取得があるのかという問題も含めて議論があり,あるいは,この場合については94条2項の第三者保護の問題ではないかという議論もあり,いろいろ議論いただいたわけですが,最終的にこの議論がどこにつながるのかというのは,必ずしも個々の要綱案を見てもはっきりわかるということでもないので,ちょっとそこらあたりのところを事務局にまとめていただいてと思いますが。 ● 今の御議論を伺っておりますと,○○委員が今整理していただきましたように,転質について善意取得が認められるのかどうか,認められるとしたときに,どういう場面なら認められるのかということは,それぞれの委員,幹事によってお考えが違うということがわかりました。ですから,ただ単に準用するというわけにはもちろんいかない。そもそも94条2項の問題だという方にとってみれば,準用なんてとんでもない話だということになりますし,また,善意取得が認められるという方も,認められる場面というのは普通の譲渡の場合の善意取得とは全然違う,かなり特殊な場面であるということになりますから,準用ではとても賄えないわけですけれども,書きおろすにも,それぞれのお考えが違いますので書きおろしようもないということがわかりました。ということは,もうこれは,不都合が生ずるような事態が起きた場合は解釈で賄うよりほかはないということになろうかと思いますけれども,それでよろしゅうございましょうか。 ● それでは,この問題については--どうぞ。 ● 私,特に何も異論があるわけじゃないんですけれども,先ほど来から実は議論しているのは,解釈にゆだねられているというか,残されている部分というのは,実は立法しても随分あるということが前提になっていまして,私どもの方は,先ほど来から申し上げているように,電子登録債権が仮に手形代替的に使われた場合には,従来の手形法で構築してきたさまざまな取引安全についての法理というものを,可能な限りそこに理論的に当てはめていくという作業をすることになると思います。そうしますと権利外観理論の活用領域が広がってくるということは,偽造等についてはここはブランクになっていますので,結局は同じことが想定されていると思いますけれども,そういう意味では余りリジッドに決められない部分がたくさんあるということで,今回もその一例というふうに考えていただいていいんじゃないかなというふうに思います。 ● ありがとうございます。  それでは,この転質の問題はこの程度にいたしまして,よろしいですか。  次に,この26ページにございます3の登録記録の開示の(1)の登録事項の開示の①,ここにブラケットに入っているロというのがございますが,これを用意するかどうかについて御議論いただきたいと思います。この点につきましては,登録債務者の請求の場合,②にございますが,それとのバランスということで,業務規程で定めることができるようにする規定を置いてもよいのではないかという御意見がありました一方で,登録名義人による請求の場合に,管理機関が業務規程で開示事項を広げるということはないのではないかという御意見もあったところであります。業務規程で開示する事項がないのであれば,この規定を置く意味はないということになりますので,そういうニーズがあるかどうか,そういうことについて,これは実務界の方にお伺いするのが適当だと思いますが,御意見をお伺いできればというふうに思います。これはいかがでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● このブラケット自体は,私の方から提案させていただいたということもあるんですけれども,ただ,私自身としては余りニーズが想定できないというふうに思っています。たしか他の方で,こういったところのニーズもあるんじゃないかというふうな御意見があったように記憶していますので,債務者側とのバランスで申し上げただけでして,個人的には--個人的にはといいますか,余りここは管理機関として開示したいというものはないのかなというふうには思っております。 ● いかがでしょうか,ほかの委員の方々。  ○○委員,それではお願いします。 ● 余り自信があって申し上げるお話ではないんですが,業務規程等によって開示の範囲を拡大するケースというのはあるかなと思っています。債権の流動化等でどこまでどういうふうに活用されるかというのは,ちょっと今の段階でなかなかこうですという断言はできないんですけれども,例えばサービサーに関するような情報であるとかというのは,開示ができる情報として入れた方がいいんではないかというような意見がございました。 ● サービサーに関する情報って,一体何をおっしゃっているんでしょうか。ここでは,イに書いていますのは,現在の権利者と義務者,それから中間の段階にある人で自然人である譲受人とか質権者とか,あるいはその相続人は全部開示するということで,権利者,義務者に係る登録において記録されている事項に全部文章がつながっていますので,したがって,その発生登録の内容は全部開示されますし,債権者が譲り受けた,その譲渡登録も開示されるんですね。だから,残るは途中の段階の譲渡登録とか,あるいは一たん保証したけれどもやめたとか,今はそういう権利義務に関係のない部分を開示するかどうかだけなんですけれども。  ついでに申し上げますと,②の方でハを入れていますのは,ロという要件が非常に厳しいので,管理機関によっては譲渡履歴を債務者にはもっと自由に開示するところもあっていいだろうというお話があったのでハが入っているわけで,それと同じように,譲渡履歴を債権者側,あるいは質権者側に開示するという管理機関があるのかどうかという,そういう問題なんですけれども,それを前提に,もう一遍御意見をいただければと思いますが。 ● そうですね。であれば,そんなに大きな必要性は感じないですね。 ● 想定されるニーズが確実にあるということであると,これを置く意味があるわけですが,何となく置いておこうということだと,余りこの規定を置く必要はないかなというふうに……。  他に何か,特にこの種のニーズを感じていらっしゃるという御意見,ございませんでしょうか。いかがでしょう。ないようであれば,これは落とすということでいかがでしょうか。--では,そのように扱わせていただきます。  それでは,この第8のところで特に議論していただきたいものの最後としまして,この資料の末尾の絶対的商行為の問題がございます。これは,先ほど○○委員に最後に御意見をいただきましたが,前回の部会では絶対的商行為にすべきではないという御意見が多数であったというふうに思います。原案は絶対的商行為とはしないという整理をすることでよいかということになっていますが,そういう整理でよろしいかどうかということです。  ○○幹事,お願いします。 ● 前回,私の方もやや思いつきで発言をさせていただいて御検討いただきましてありがとうございます。そうは言いながらも大事な点だとも思いますので,私なりに考えてきたことをお話しさせていただきたいと思います。  絶対的商行為に関して,4号の規定があって,手形その他商業証券に関する行為というのを絶対的商行為にしておりましたのは,私が調べてまいりましたところによれば,当時,手形法が条約によって独立する前に,手形に関する行為が商行為編の中に規定されていたことを前提としていると理解しております。そのときには手形というのは,実は一般私法上の制度でもあり,必ずしも商人だけが使っているものではないので,それに対して,その原因関係が民事行為であった場合と商行為であった場合とで適用関係が不明確になることを防止するために,原因関係がどういう債権であったとしても,手形その他の商業証券に関する行為が行われた場合は一律に商行為を適用するということを念頭に置いてつくった規定だというふうに理解されるところであります。  そういった政策が必要なのかどうかというのは,今回もまた引き続き問題点となっているわけなんですけれども,その前提としまして,先ほど○○委員がおっしゃられたように,手形法が独立してしまいましたので,現在はその規定の意味はほとんどないと,私たちも教科書にそのように書いている次第であります。しかし,そこが今は意味がないということを蒸し返して恐縮ではありますが,新しく電子登録債権という制度をつくるときには,再び同じ問題を議論する必要が出てきているということになっているんだと思います。  考え方は2つに分かれているわけでありまして,いわゆる原因関係が民事行為であった場合については民法,原因関係が商行為であった場合は商法というような形で,その電子登録債権自体の個性,性質というのが原因関係に依存するという考え方が1つあると思います。おおむねそれでいいんじゃないかという御意見でありまして,そのことによって生ずる問題点というのは調べなければいけないということに尽きるということだと思います。私は,結論的にはそれでもいいんじゃないかなと今日は思って,ここで発言させていただいているわけなんですが,結果的には,○○幹事が前回おっしゃられたように,今回新しく,消費者というのが入ってきている場合については特別扱いということになっていますので,どうしても調べなければいけないということが前提になってしまっている以上は,画一的な処理をするということを指向しても余り意味がないということが根拠であります。  ただ,実は問題点として,先ほど○○委員がおっしゃられていたのは別次元の問題でありまして,債権自体が千差万別で,それが一体どういう性質のものなのかということで調べなければいけないということは承認したとしましても,先ほど出てまいりましたように,一金融機関の中に信用金庫,信用組合とありますけれども,信用組合に関しては中小企業等協同組合法というのが適用根拠になっておりまして,この協同組合に関しては商人ではないという判決があるということのために,同じ金融機関からお金を借りた場合であっても,本来ならば同じ金利が適用されるべきものが,一方が民事法定利率で他方が商事法定利率であるということが経済的実態に合うのかという問題があるということだと思います。この問題が唯一の問題だとするならば,その最高裁の判決自体が問題なわけでありまして,今後,電子登録債権がこういう形になった以上は,そちらの方を変えていくという方策をとるということで,その1点だけを解決するために,ここで絶対的商行為だというふうに規定することは必要はないだろうというふうに最終的には考える次第であります。  実際に適用される商行為編の問題を幾つか見てみましたけれども,結局は金利の問題と保証の問題で,商行為によって発生した債務を保証した場合,このときには連帯保証になるという規定などがかなり影響力を持つのかなと思いますが,こちらのあたりの規定については,結局調べて,主たる債務が商行為であるかどうか,その商行為上の債権であるかどうかというのを調査するということによってクリアする問題でありますので,結局は,先ほど○○委員がおっしゃられた1点に尽きる。そうなれば,そのために絶対的商行為にする必要はないというのが私も同意見ということでございます。  以上でございます。 ● ありがとうございます。  それ以外の方で御意見がございませんでしょうか。  ○○委員,どうぞ。 ● 私も,御提案になられた○○幹事がそうおっしゃるのであれば,ぜひ,これは絶対的商行為としないという方向でまとめていただきたいと思います。まさに今,○○幹事の御指摘のように,当事者が消費者である場合とかが存在するわけですし,それから,もう一つ別の懸念としては,これは金融審の方で,使われ方によってはみなし有価証券的に考えるという御意見も金融審の方から出ているんですが,そもそもが有価証券ではないんだという前提で議論をしてきているわけで,一般の市民の人たちに,ここで絶対的商行為なんて持ち出すと,基本的な法性決定自体が誤解を生じるおそれがあるという懸念もあり,ぜひここは,少し調べるのが面倒かもしれませんが,絶対的商行為とはしないということで取りまとめいただきたいと思います。  以上です。 ● ありがとうございました。  お伺いした御意見は,絶対的商行為にしないというのが適当であるという,そういう御意見だったというふうに思いますので,この問題についてはここの要綱案の整理のとおりとさせていただきたいと思います。  それでは,第8のところを通しまして,他の項目,幾つか注がついたところがございましたが,御意見等,あるいは御指摘をいただく点等ございましたらお願いをいたします。いずれについても,注が付されているところは,もう議論がされた形になっておりますので,最後のところは後注の1,2というところは議論がされていませんが,ここについて何か御指摘をいただく点がございますでしょうか。--よろしいですか。それでは,この第8のところについて,以上御議論いただいたとおりで確定をしたものとさせていただきます。  それでは,その間飛ばしております第3の登録保証から第7の登録事項の変更までについて御審議をいただきたいと思います。第1次案からの変更点や,特に御議論いただきたい点を中心に,事務当局に説明をお願いいたします。 ● まず,第3の登録保証でございます。登録保証の関係では10ページの「2 登録保証の独立性」の(2)のところです。注に書いておりますように,第1次案では,登録保証人が消費者である場合に,消費者保護ということで独立性の規定は適用しないということにしており,その関係で民法457条の適用除外も適用しないということに全部しておったんですけれども,これは1項と2項で中身が違います。1項の方は,主たる債務者に対する時効中断効が保証人に及ぶという規定ですので,それが適用されないというのが登録保証の独立性なんですけれども,その適用除外の適用除外をしますと,消費者である場合には時効中断効が及ぶということになってしまいまして,そうすると,この場面に限っては消費者でない登録保証人の方が消費者である登録保証人より有利になってしまう。これは,消費者保護の関係では,消費者が普通の人よりも不利にならないように常にしようという思想だったと思いますので,そうなりますと,消費者が登録保証人になる場合も457条1項の適用除外を維持しなければいけないのではないかというふうに考え直しまして,(2)を改めたということでございますので,それでよろしいかどうか御議論いただきたいと思います。  それから,あとは表現等を若干変えたところがありますけれども,実質を変えたところはございませんで,第4の登録記録の分割でございますが,ここは書きぶりをかなり変えております。その理由は,15ページの後注の1と後注の2に書いているところでございまして,第1次案では,分割登録という概念の中に,原登録記録から分割登録記録に発生登録とか保証登録とか譲渡登録とかの登録事項を移すという行為や,原登録記録中の発生登録等の内容に分割登録記録に移ってしまった分の債権の額等を減額するとか,そういう修正を加えるということも,全部をまとめて分割登録という概念として整理をしていたんですけれども,そのようにいたしますと,分割登録記録に転写された発生登録とか保証登録も分割登録である。それから,原登録記録の直した部分も分割登録であるということになりまして,発生登録であり,かつ分割登録であるとか,保証登録であり,かつ分割登録であるとか,そういう何でも分割があると全部分割登録ということになってしまいまして,登録の種類が混乱を来すということに気がついたわけでございます。そこで,ですから,もっぱらこれは法制的な整理ですけれども,分割登録という枠に入るものをできるだけ少なくするということで,13ページにあります事項だけを分割登録という表現にして,あとは分割登録に伴う記録ということで,記録したものは,あくまでも当初された発生登録であり保証登録であり譲渡登録であるという,そういう整理にさせていただいたというのが第1点でございます。  それから,第2点が後注の2に書いておりますけれども,本文でいいますと5の「その他」というものを設けたということですけれども,5に書いてありますように,一つの登録記録に債権者が複数いて,債権者ごとの債権の金額とか債務者ごとの債務の金額が記録されているというような場合,それから特別求償権がある場合,それから一部保証登録がされている場合というような場合は,その場合に分割登録するときにどういうふうに登録するのかというのが非常にややこしいことになります。ややこしいというのは,規定がややこしいだけで,やるべきことは単純なんですけれども,それを規定にあらわすのが非常に大部になるということでございます。そこで,それを全部書きますと,おそらくこの要綱案が倍ぐらいになるので,分割ばかりになってもしようがないものですから,その部分は特例の規定を整備するということにさせていただいて,分割というのは,基本的な場合はこういうふうに行われるんですよということだけは要綱として書かせていただくということでよろしいかということでございます。それが第4でございます。  次に,第5の「電子登録債権の譲渡」でございます。17ページで,ここは実質を変えたわけではないんですけれども,結果的には実質を変えたといいますか,(1)のbのところですが,この注に書いておりますように,無権利者Aから消費者Bが譲り受けて,さらにそれをCにだまされて譲渡して,さらにCがDに譲渡したという場合に,本来ここの規定でやろうとしていたことは,Bは善意取得するので,消費者Bから先は善意取得しないから,Bのところへ権利が戻りますということにしたかったんですけれども,第1次案の書き方ですと,権利が戻る先はAになってしまうということに気がつきまして,ちゃんとBに戻るような書き方にした。これはもともとの意図はBに戻るつもりだったんですけれども,そう書けていなかったということに気がつきましたので,それがあらわれるように書いたつもりでございますけれども,こういう書き方でよろしいかということをチェックしていただければと思います。  それから,次の「第6 電子登録債権の消滅」でございます。18ページの2の「混同」の(2)でございまして,第1次案では,電子登録債権を取得した登録保証人が履行請求権を行使し得ない他の登録保証人の範囲というのを共同登録保証人に限定しておったわけでございます。しかしながら,共同保証関係にない登録保証人,段階の違う登録保証人でも,本来その電子登録債権を取得した登録保証人が仮に弁済をしたとしても,別の登録保証人には求償できないという関係に立つものがあるわけでございまして,求償の循環を防ぐために,この(2)の定めをしようとしているということからしますと,他の登録保証人全般を対象としまして,これに対する履行請求権を行使すると求償の循環が起こる場合,全般について電子登録債権の行使をすることができないとする必要があるんですけれども,それが書き切れていなかったということに気がつきましたので,それが書き切れている形に直したつもりでございます。これでよろしいかどうかということを見ていただければと思います。  それから,次に,4の支払等登録の19ページの「(2) 支払等登録の請求権者等」の末尾からの注でございます。従前は電子登録債権の支払をする場合だけに引換給付を認めていたんですけれども,電子登録債権質のことを余り考えていませんで,債権質の被担保債権の支払等をする場合にも,その引換給付とか,あるいは支払をした後は承諾が請求できるとか,そういう同じ扱いにする必要があるということに気がつきましたので,そこを直しております。  それから,20ページですが,きょう冒頭に○○幹事から御説明いただきました金融審議会の報告書にもかかわるところですけれども,(4)の当事者の請求によらない支払等登録でございます。ここは金融審議会の報告書で,管理機関は,送金や入金の手続を行う金融機関と連携して同期性が確保されるような体制をとらなければならないということとされておりまして,その提携の金融機関から送金あるいは入金の手続を行った旨の連絡が管理機関にされるということになっていますので,それを前提として,そういう連絡を受けた場合には,職権で支払等登録をしなければならないという形の書き方にさせていただいております。  それから最後,「第7 登録事項の変更」でございますが,ここは特に直しはございませんので,これでよろしいか,もう一遍最後に確認をしていただければと思います。  以上です。 ● それでは御議論いただきたいと思います。  まず,この10ページの「登録保証の独立性」の(2)でございまして,その注にありますように,民法457条1項は消費者についても適用しないことに変更しているわけですけれども,この点について御意見はございませんでしょうか。これは,この注に書いてあるとおりだろうというふうに思いますが,いかがでしょうか。--特に御意見ございませんようですので,それでは,これはここに整理された形で確定をしたいというふうに思います。  それでは,第3のその他の項目につきましては後ほど御意見をいただくとしまして,第4の「登録記録の分割」に移りたいと思います。15ページにございます,この後注1でありますが,ここに書かれてありますように,今回の案では分割登録と分割登録に伴う記録に分けて整理をしているわけでありますが,この点について御意見ございますでしょうか。あるいは御指摘をいただく点はございますでしょうか。よろしいですか。ここに注で書かれてある整理で特に御異論はございませんでしょうか。--それでは,この点についても特に御異論ないということで,この要綱案の整理で確定をさせていただきます。  それでは,第5の「電子登録債権の譲渡」から,第7の「登録事項の変更」までにつきましては,特に御議論いただきたいという事項はないようですので,先ほど説明をいただきました第3の「登録保証」のところから第7の「登録事項の変更」まで通して,今まで議論をしていただいていないところ,特に注がつけられているものについて,まとめて御意見を伺いたいというふうに思いますが,いかがでしょうか。 ● 20ページの,先ほど御説明のありました(4)の当事者の請求によらない支払等登録の部分なんですけれども,冒頭で○○幹事から御説明をいただきました資料の4ページを拝見しますと,4ページの(3)のところにかなり細かい御説明をしていただいているかと思うのですが,そこによりますと,債務者の口座から出金された時点では譲渡登録を禁止する。その上で,債務者の口座に入金されたときには記録を抹消するというような方法が一つの方法として記載されているように見受けられます。しかしながら,この20ページの(4)の方法ですと,送金の手続を行ったと。これは読みようによっては,債務者の口座から引き落としたというふうな連絡があった時点で(1)の事項を記録しなければならないということになりますと,金融審議会のお考えになられている御提案よりも,さらにちょっと一歩進んで支払等登録がなされる時点が早くなっているような気がいたします。そこら辺,もしよろしければ,ちょっと確認できれば。  懸念しておりますのは,送金の時点で支払等登録をしてしまいますと,送金銀行が間違うということは過去にも発生している。そうしますと,支払等登録されたけれども,またやり直せばいいと。間違えていましたということで復活させればそれで足りるということであれば,それは一つの割り切りの仕方なのかもしれませんが,ただ,金融審議会の記録を見ますと必ずしもそうではなくて,それはやはり債務者からの口座の出金の時点で抹消してしまうことには御懸念をお示しになられているようですので,ちょっとここまでいってしまうと行き過ぎなのかなというのが1点。  あと,もう一つ,さらに一つの考え方をしますと,金融審議会は,いろいろな実務的な検討をする必要がある,いろいろなテクニックを考える必要があると言っていまして,ここら辺というのは,かなりやはりシステムのつくり方ですとか技術的な発展ですとか,いろいろなことによって,もっといい同期性の確保の方法が出てくるかもしれない。そう考えたときに一つの考え方は,法律でここまで書き込むのではなくて,例えば政令で定める場合にはやらなければいけないとしておいて,技術の発展などに応じて,あるいは金融技術のシステムの発展に伴って,監督官庁が適時適切な方法を定められるようにしていくというのも一つの考え方かなと思いまして,1点は確認と,もう一点は御提案でございます。 ● まず確認の方でございますが,これは,そういう一歩進めようという気があったわけではありません。この4ページのとおりのことを受けて書いているつもりでして,ですから,送金または入金の手続を行った金融機関から連絡を受けた場合というのは,これはどちらかと提携をとらなければいけないということになっているものですから,連絡はあくまでも入金があったことの連絡といいますか,送金した方の手続を行った金融機関からの連絡ですと,いつ送ったけれども入金できなかった旨の返事が返ってきていないので,入金されたものとして取り扱われる状態になったということの連絡になると思うんですけれども,そういう連絡があったときにはという趣旨でございます。  この「例えば」以下の部分ですけれども,出金の時点からというのは,要するに支払期日ということですので,支払期日から譲渡登録,支払等登録をするまでに,通常必要な期間内は譲渡登録ができないという業務規程の定めを置くということをここでは考えているわけですので,これはまた別の,そういう業務規程を置いていないと指定がされないとか,そういう形に多分なると思いますので,この要綱には出していないということでございます。  政令にゆだねるかどうかということについては,実際に条文を書くときにはそうするかもしれませんけれども,まだそこまで詰められていないものですから,そういうことも視野に入れつつ,さらに検討したいと思いますけれども,そこは事務当局にお任せいただければと思いますが,よろしゅうございましょうか。 ● わかりました。要は,御趣旨としては,送金の銀行,あるいは入金銀行,どちらかわからないけれども,確かに入金たる事実があったという確たる連絡と。金融機関にしてみれば,送金銀行がその確証を出すのはかなりリスクが高いとは思うのですけれども,要は,そういう確実な連絡がいずれかの金融機関からあった時点で抹消するという趣旨であれば話は通る。ただ,ちょっと誤解されやすいかなというふうな気もいたしましたので,もう少し表現を,そういうふうなことであれば,この事実をというふうにお書きになられた方がいいかなというふうに思います。 ● 書きぶりについてはさらに検討したいと思います。 ● ありがとうございました。  その他の点について御指摘を--○○委員,どうぞ。 ● 今の○○幹事の御指摘にちょっと関係しているんですけれども,この当事者の請求によらない支払等登録の「金融機関から連絡を受けた場合には」というところで,この連絡というのを文字どおりとらえますと,金融機関から管理機関への積極的な連絡というふうに受け取れるんです。実際,債務者側の金融機関から管理機関が通知を受けるというケースが多いと思うんですけれども,債務者側の振込みを取り扱った金融機関というのは,債権者側の金融機関に入金されたかどうかという事実を一つ一つ確認していませんので,おそらくこれは大量処理を前提にして定型的な処理をやることを前提にしますと,例えばこの時点までは特に債権者側の金融機関から入金されていませんというふうな連絡は来ていませんというふうな事実の通知というか,そういったことぐらいしか実際はできないのかなとは思っているんです。そういう意味で,この連絡というのは,管理機関と金融機関との間の,いわば契約といいますか,何をもって連絡にするかということは実務的に決めていく必要があるのかなというふうに思っていますので,ちょっとその点は御指摘させていただきたいと思います。 ● 連絡という言葉を使いましたのは,この金融審議会の報告書が「資金送金があった旨の連絡を,管理機関が金融機関から受け」と4ページに書いてありますので,そこに連絡を受けという言葉が使われていますので,それをそのままここでも「連絡を受けたときは」というふうに書いただけです。どういう連絡になるのかというのは,先ほども○○委員もおっしゃられましたけれども,私も同じことを申し上げたと思いますので,送金した側は,自分の銀行に入金したのでない限りは入金があったことを直接確認はできませんから,だから,一定の期間内に返事がなかったので入金されたというふうに考えていいと思いますという連絡になるんだろうと思っています。 ● ほかに。  ○○幹事,どうぞ。 ● ここの部分ですけれども,この金融審の報告書もまだ最終版になっていないということもあって,20ページのこの書きぶりというのは,どうしてもこの程度の書きぶりにならざるを得ないと思うんですけれども,確かに連絡というのは,どういうものをもって連絡とするかというのは,本当にこれから詰めていかなければいかんという部分が多いと思います。○○委員からもありましたように,現実には債権管理機関が登録原簿を管理しているわけなので,その管理をしている者として,この債権は明日支払期日になりますよと,だから送ってくださいという振込指図を債務者銀行にするとか,そういうのも連絡のうちに入るだろうと考えています。  その辺は実務的な検討が要るんですけれども,ちなみに韓国でも先行してこの電子債権制度がございます。中身は違いますけれども,電子債権管理機関に登録をすると効力が発生するという意味では同じでございますが,そこも聞きますと,金融決済院という金融機関が共同出資した社団法人が一応唯一の電子債権管理機関として指定をされております。実際何をするかというと,電子債権管理機関たる金融決済院が債務者銀行に振込指図をする。それで,指図を受けた債務者銀行は送金をする。全銀システムに金融決済院がつながっているものですから,必ず送金の情報が金融決済院を経由する。その経由を確認した上で職権で消してしまう。これによって二重払を防ぎ,なおかつ債権者が申請をする手間を省くと,このような扱いをされていると聞いておりまして,我が国の場合は金融機関に限るということもしませんし,一応兼業を認めないというふうなこともございましたし,管理機関によっては全銀システムにつながっていない管理機関もございますので,連絡というようなことでとりあえずは書かせていただいて,政令も含めて,ここはぜひ関係省庁と詰めていきたいと考えております。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 1点だけ,それに関連してなんですけれども,よくあるのが,何件かあるお客さんのうち,間違って今日が期日のAという人に払おうと思っていたところ,まだ期日が到来していないBという人に払ってしまいましたというのが実際のお客さんであるところだと思うんですね。そのときに,多分この規定がきけば,入金が確認された時点で職権で支払等登録がされると思うんですけれども,普通の商取引のやりとりであれば,「いやいや,まだ期日じゃないですから,やはり結構ですよ。お返ししますよ」とお金が返ってくるといったときに,支払等登録はなかったことにするのか。そうすると,いろいろな権利関係も支払がなかったように復活するのかどうなのかなというのは,ちょっと私自身もよくわからないんですけれども,実務的には結構あり得るのかなと。間違って過去の一時点のAさんにやろうと思っていたところBさんというのはよくあるケースですので,間違ってされたときに,相手方も受け取るつもりはなかった。しかし職権で消してしまったといったときに,支払等登録の取消しというか,そういうことがあり得るのかどうかというのは,細かい点かもしれませんけれども,ちょっと考えておいてもいいのかなというふうに思います。 ● ありがとうございます。そういう点も含めて実務界ともよく御相談させていただきながら,金融庁さんと詰めていきたいと思います。 ● ほかに御指摘をいただく点はございませんでしょうか。  これは9ページから始まっておりますが,10ページの注のところは先ほど御議論いただいたわけです。  12ページの一番下の注,ただし書を新設しているという,これについていかがですか。 ● すみません。これを説明し忘れていました。これは,言わば当たり前のことなんですけれども,今まで単独で分割登録ができるというふうに第1次案まではしてきたんですが,登録可能回数が記録されている場合に,しかも債権者が複数いるとした場合に,そのうちの分割登録記録に記録される側の債権者だけで,どっちの登録記録に何回あと登録できる回数を定めるのかというのを決めてしまいますと,原登録記録に残る方の債権者が不測の不利益を受けるという場合が出てまいりますので,この場合,すなわち原登録記録に残る方の債権者がいるときは,その債権者の承諾が要るという,考えてみれば当たり前のことなんですけれども,それを考え忘れていたということに気がつきましたので,追加させていただいたというものでございます。  以上です。 ● 今,追加して御説明をいただきましたけれども,この点について何か御意見や御指摘をいただく点はございますか。--じゃ,この点については,今御説明をいただいたとおりで確定をしたものとしたいと思います。  それから,ほかには,15ページは,これは先ほど御議論いただいた問題です。  それから,17ページの注については,この要綱案の整理でよろしいでしょうか。--特に御異論はないようですので,それでは,この点についてはこれで確定をさせていただきます。  18ページ,これも真ん中に注がございますが,これは先ほど御説明いただきましたが,まだ御議論いただいていません。特にこの整理で御異論があるという方は御発言をいただきたいと思いますが,これは注の整理のとおりではないかというふうに思いますので,それでは,これはこの要綱案の整理で確定したいと思います。  あとは,19ページの一番下のところの被担保債権の支払について,ここの注で書かれてある問題点についてはいかがでしょうか。特に御異論はございませんでしょうか。--それでは,ここの整理のとおりとしたいと思います。  あとは,20ページの先ほど御議論いただきました点は,これはもうこれで確定がされたものとして,あとは特に注がついている部分はございませんが,注がついていないけれども,特にここで御発言をという問題点がございましたらお願いをいたします。--ございませんでしょうか。  あるいは,全体についてさらに何か新たに発見した問題があるということであれば,御発言をいただければと思いますが,ございませんでしょうか。  それでは,これで本日予定しておりました審議はすべて終わったことになります。  では,事務当局から次回の予定について説明をしていただきたいと思います。 ● 本日も長時間にわたりまして熱心な御討議をいただきましてありがとうございました。おかげさまで要綱案の実質については全部決めていただいたということになります。幾つか表現等を考えなければならないところがございますので,そこを直しまして,次回の部会で最終的に要綱案の御決定をいただきたいと思います。  次回でございますが,1月16日の火曜日でございまして,場所は法曹会館の高砂の間でございます。  きょうは,本当に長時間どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。 -了-