法制審議会戸籍法部会             第14回会議議事録 第1 日 時  平成18年12月19日(火)  自 午後1時32分                         至 午後2時27分 第2 場 所  法曹会館富士の間 第3 議 題  戸籍法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● それでは,予定の時刻が参りましたので,法制審議会戸籍法部会第14回の会議を開会いたします。  最初に,配布資料について事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 本日の資料ですが,席上配布になってしまいましたが,資料番号43番「戸籍法の見直しに関する要綱案(案)」でございます。 ● 本日は,配布資料であります「戸籍法の見直しに関する要綱案(案)」,部会資料43について審議を行い,要綱案の取りまとめを行う予定ですので,よろしくお願いいたします。  それでは,まず要綱案の第1,戸籍の謄抄本等の交付請求,1の交付請求,2資料の提供等,3本人確認等となっておりますが,それと第2,除かれた戸籍の謄抄本等の交付請求について,前回御審議いただいた部会資料42の「戸籍法の見直しに関する要綱案(案)」からの変更点について,事務局から説明してもらいます。 ● それでは,部会資料43につきまして,42番,前回お配りした要綱案(案)からの変更点を御説明させていただきます。  まず,(前注)のところですが,ここは変わっておりません。  それから,第1,戸籍の謄抄本等の交付請求,1の交付請求(1)戸籍に記載されている者等による請求,ここは本文は変更はございません。(注)のところで,部会資料42番では,(注1),(注2)とございまして,(注2)で「交付請求者は戸籍に記載されている者等であることを明らかにする必要がある」といったことがブラケットに入った形で書かせていただいていたわけですが,これは削除させていただいております。と申しますのは,戸籍に記載されている者等であることを明らかにする必要があるという,請求者の属性を明らかにする必要があるのはここだけに限りません。公用請求の場合は,国,地方公共団体の機関であること,それから弁護士等の請求であれば,弁護士,あるいは司法書士等であることを明らかなにしなければならないということですので,ここだけで書くと,平仄がとれないということで,書かなくても,それは当然のことだという前提で削除させていただいたものでございます。  それから,次に(2)第三者請求でございます。第三者請求につきましては,部会資料42番の方から変更はございません。  それから,(3)の公用請求でございます。公用請求につきましては,まず本文で部会資料42番の方では,「国又は地方公共団体の機関は,その事務を遂行するため」というところを,43の方では,「法令の定める事務を遂行するため」という形にさせていただいております。  それから,資料番号42番の方では,明らかにすべき事項として,「その事務の種類及び請求者の官職,氏名」というものを挙げてございましたが,43番の方では,「その事務の種類及び根拠となる法令の条項並びに利用目的」という変更をさせていただいております。この理由ですけれども,請求者の官職と氏名に関しましては,まずここで言っていることの請求者というのが,だれを指すかということでございますけれども,これは仮にその請求主体である,必要性が帰属する請求主体であるというふうに考えますと,それは国又は地方公共団体の機関ということになり,その機関の執行機関ということになりますので,あえて書かなくても,国又は地方公共団体の機関ということで読めるであろうということでございます。  それから,では現にその機関の職員等が交付請求する場合の職員のことを指すというふうに考えましても,その場合は後で出てきますところの本人確認,代理人による請求の場合の権限確認といったところで,当然請求者の官職,氏名といったものは明らかになるであろうということで,事務の種類というのは変更しておりませんが,ここはむしろ根拠となる法令の条項と利用目的を明らかにして請求することができるものとするという記述にするのが適当ではないかということを考えた次第でございます。ちなみに,利用目的につきましては,次の(4)弁護士等による請求にも書かれているものでございまして,その意味で平仄が合うということでございます。  それから,(4)弁護士等による請求でございます。弁護士等による請求は,資料番号42番の方では,A案,B案,C案ということで,三つ掲げさせていただいておりましたが,前回の部会で基本的に御了解いただいたC案のみを掲げさせていただいております。本文と注で,若干修正がございます。  42番の方では,ただし書き以降のところで,「紛争解決手続代理関係業務を遂行するために必要がある場合には」としておりましたが,43番の方では,「紛争解決手続の代理業務を遂行するために必要がある場合は」というふうに変えさせていただいております。これは前回も御説明させていただきましたように,紛争解決手続を現に代理している場合に限らず,その代理すべき紛争,あるいは代理することが予想される紛争を受任して,その前段階での準備・調査業務を行っている,その段階でもただし書きの適用があるということを,42番の方では「紛争解決手続代理関係業務」と,関係という言葉で読ませておりましたけれども,若干これは分かりにくいであろうと思われましたので,「紛争解決手続の代理業務を遂行するために必要がある」という,そのような業務の遂行に必要があるというところで,代理業務を行う前段階での準備,調査業務を含ませるという,そういう整理にしたわけでございます。その関係で,(注2)の記載が,今,御説明申し上げた説明に沿った記載となっております。  それから,(注1)の書き振りも若干変えております。これは弁護士等が破産管財人等に選任されて,法令に基づく固有の権限を行使するための説明でございますが,若干舌足らずだった部分があるかなと思いまして,依頼者から受任した事件の業務の遂行という点と,法令に基づく固有の権限を行使する,そういった業務のコントラストを若干明らかにしたものでございます。内容的に修正したというわけではございません。  それから,次の2資料の提供等でございます。これにつきましては,まず42番では,「市町村長は,戸籍の謄抄本等の交付請求の要件について確認するため,交付請求者に資料の提示等を求めることができるものとする」というふうに書かせていただいておりました。今回,「交付請求の要件について確認するため」に相当する部分を「明らかにすべき事由が明らかにされていないと認めるときは」というふうに変えさせていただいております。実質を変えている趣旨ではございませんで,法制的にこのように書くことが必要だということでございます。「明らかにすべき事由が明らかにされていない」という文言からは,若干分かりにくいかとも思いますが,本来交付請求書にきちんと書かなければいけないことの記述が足らないという場合のみならず,何らかの事情で市町村長の方で,正当な理由の存否について疑義が生じた場合に,資料の提供,説明を求めるということも,もちろん含んでいるという前提で,このような記載になっているということでございます。  それから,42番には「資料の提示等」と書かせていただいておりましたけれども,「資料の提供又は説明」という文言に修正しております。これは「資料の提示等」をもう少しブレークダウンして分かりやすくした,資料の提供の中には資料の提示と提出が含まれ,説明というのは口頭による説明が含まれるということでございます。  それから,(注)のところでございますけれども,42番では「交付請求の要件について確認することができないときは,当該交付請求を拒むことができる」と書いておりましたけれども,この場合,要件に該当することが確認できなければ,当然交付請求は拒むことになるというふうに考えられますので,そのあたりを明確化いたしまして,「交付請求の要件が満たされていると認めることができないときは,当該交付請求を拒むことになる」という断定的な書き方にしております。  それから,3本人確認等でございます。内容的な修正は本文についてはございません。「出頭した者が」の後に,「,」をつけたり,「交付請求手続をした者が」の後に,「,」をつけたり,そういった修辞上の修正のみでございます。  それから,ここの(注)のところで,先ほど御説明したことと同様の観点から,42番の方では「本人確認等ができない場合には,戸籍の謄抄本等の交付請求を拒むことができる」と書いてあったのを,43番の方では「戸籍の謄抄本等の交付請求を拒むことになる」というふうに直しております。  それから,第2の除かれた戸籍の謄抄本等の交付請求に関しては,修正はございません。  以上です。 ● それでは,第1の戸籍の謄抄本等の交付請求と,第2の除かれた戸籍の謄抄本等の交付請求につきまして,この要綱案について御意見ございましたら,お願いいたします。  どうぞ。 ● 2ページの(4)弁護士等による請求のところで,「紛争解決手続の代理業務を遂行するために」というふうに文章が改まったところですけれども,そこで言う紛争解決手続とは何かということについては,ここには広く「裁判手続,また裁判外における民事上若しくは行政上の紛争の処理手続」という書き方をしておられるわけですけれども,この紛争というのは,かなり広く理解してよいというような御説明であったかと思いまして,具体的には,裁判手続の中でも非訟に属するようなもの,家裁でいえば甲類審判であるとか,あるいは地裁でいえば民事執行,その他の民事商事の非訟事件,こういうのは紛争性がない場合も,社会的な意味での紛争性がない場合もあると思うのですけれども,ここでは紛争という言葉に,そういうたぐいの手続も含めるというふうに,前回までの説明を聞いて理解しておったのですが,これはその理解でよろしゅうございましょうか。 ● そのような理解で結構だと思います。 ● 今の部分なのですけれども,先ほどの御説明で,前回までの案では代理関係業務という「関係」というものが入っていたのを,今回削られた。内容は実際上同じだという御説明だったと思うのですけれども,何となく印象としては「関係」と入っていると,もう少し広いのかなという感じがするのですけれども,その辺はどうなのでしょうか。 ● 広いような印象を受けるのですが,その分,概念が不明確になってしまうということで,関係とか関連という言葉はあまり多用しない方がいいかなということがございます。本体でとらえるべきは手続代理であって,その手続代理に係っていくような類型の紛争について,その準備段階を含めるわけですから,それはそういった代理業務の遂行の必要性ということで読んだ方が,より的確かなと考えました。 ● そうか,遂行するためで,準備・調査等入るわけですからね。なるほど。 ● はい。 ● ほかによろしいでしょうか。  はい,どうぞ。 ● 2ページの一番上の公用請求のところで,今日加わった「利用目的を明らかにして」というところで,先ほどの御説明では下の(4)との並びというようなことでしたけれども,この公用請求の場合に,利用目的を明らかにさせる目的,なぜ明らかにさせる必要があるのかという点と,明らかにされた利用目的について市町村長の側からすると,どういう審査をするのかとか,そのあたりの,これを加える理由と,その加わった効果について,もう少し敷衍して御説明いただければと思います。 ● 公用請求の場合は,めったに想定されないと思いますけれども,職員がその事務を騙って,不当に戸籍をとろうとしているような情報が入った場合に,市町村長の方で「あなたの利用目的は何なのですか」と,戸籍事務処理とか徴税事務のためと書いてありますが,本当にそうですかということで,2の資料の提供等による説明を求めるということが可能になるという意味で,利用目的というのはそういった不当な目的であるかどうかを窓口で排除する,そういう機能があるのではないかと思っています。 ● そうすると,そういうきっかけということで,実際,請求する場合の明らかにする,その明らかにする程度というのは,今,例示されたような程度で足りるということでしょうか。 ● そうです。 ● はい,○○幹事。 ● 先ほどの弁護士等の請求のところですけれども,代理業務を遂行するためということで,この権限を有しているかどうか。またどういった場合について,これが対象になるかとか,その辺のところは,今後,基準なりをお示しいただく形になるのですよね。 ● 法律上は,どの士業についてどの業務が当たるかということを,士業法を引用しながら明確に書くつもりでございます。実際の運用に関しましても,この士業の方が,ただし書きで請求できるのは,どのような種類の業務かということも,きちんとマニュアル化して対応していただきたいなというふうに考えております。 ● それぞれの自治体がするというわけですか。 ● それは通達等で,民事局の方から示させていただくということも考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしいでしょうか。  はい,どうぞ。 ● (4)番の件ですが,(4)番の(注1)で破産管財人が挙がっていますけれども,そのほかにどういうものが想定されているのでしょうか。 ● 財産管理人とか。 ● そうですね。そのほかには。 ● 取締役の職務代行者とか。 ● その辺も,いずれ個別に明らかにしていただくことになるのでしょうかね。 ● それはかなり外延が広いと思います。 ● そうですよね。それで,ちょっと我々迷う者が出てくるのではないかと思うのです。 ● いずれにしても,依頼者が事件を受任しているかどうかがメルクマールだと思うのです。 ● そうですけれども,それは単純なのですけれども,例えば刑事弁護人の場合にはこれではなかったですよね。 ● 刑事弁護人の場合は(注2)の一番最後で書かせていただいておりますけれども,ただし書きでいけるという。 ● そうですよね。そうすると,刑事弁護人もあれが依頼者と言えるのかと,国選の場合に。 ● そこは刑事弁護人と付添人とそういった非常に限定されたものぐらいしか想定されないのではないかと思うのです。これから精査して,要するに固有権限を行使する場合で,ただし書きが適用になる場合というのを,もう一回洗い出さなければいけないわけですけれども,それは恐らくここで書いてあるような刑事弁護人と少年事件の付添人に準ずるようなものぐらいしか出てこないであろうというふうに,今は考えております。 ● 依頼者がはっきりしないものについてということですね。 ● そうですね。 ● そうですね。 ● よろしいですか。ほかに。  ○○幹事,どうぞ。 ● 今の点は精査をされて,弁護人,それから少年の付添人以外に出てきたら,それは入ってくるということですよね。 ● そのとおりです。 ● ほかにもありそうだと思います。 ● 幾つかありますね。刑事類似のものであれば,あるかなという感じはしております。 ● ほかによろしいですか。  はい,どうぞ。 ● 今,刑事弁護人と少年の付添人ということは,これは裁判手続に関係するという趣旨で入ってくるというふうに考えていられるのでしょうか。 ● そうですね。ここに掲げた弁護人と付添人は確かに裁判手続に関係するということではあります。ただ,特定の,依頼者ではないですけれども,固有の権限を持って,ある者に対して不利益処分を科するような手続が予定されていて,それが刑事手続類似のものであって,厳密な意味で裁判手続と呼べないものがあるのかどうか,よく分かりませんけれども,基本的には裁判手続に関係しているものなのではないかなというふうに考えております。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。  はい,どうぞ。 ● 例えば後見人が後見人等の資格で手続をとるというような場合,裁判に関係するようなものというような場合でも,やっぱり固有権限と考えて。 ● ええ。そちらの方で整理しております。 ● よろしいでしょうか。  それでは,第1及び第2については,要綱案どおりということでよろしいでしょうか。  どうもありがとうございました。  それでは,次に第3の戸籍の記載の真実性を担保する措置について,部会資料42からの変更点について事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 第3のところでございます。42番の方では「届書を持参した者の本人確認等」というタイトルでございましたが,今回,「戸籍の記載の真実性を担保する措置」ということで修正しております。これは前回の42番で「届書を持参した者」という用語を用いて,交付請求の際の本人確認というものと,概念の相違をできるだけ明確化しようと思ったのですが,やはり,本人確認という言葉を使うと,どうしても交付請求のときの正当な理由を有する者であるかどうか,あるいはそれから適法に代理権限を受任されている者であるかどうかという意味での本人確認というものと,どうしても混同が生じてしまうというような指摘がございましたので,本人確認という言葉を用いずに,43番は書いております。  したがいまして,第3の1のタイトルは「届出の際の確認手続」ということにさせていただいて,42番の方では「届書を持参した者の本人確認を行うものとする」という記載でございましたけれども,これを「届書を持参した者が誰であるか及びその者が届出人であるかどうかを確認するものとする」ということにさせていただいております。  それから,2の方ですが,これも42番では「本人確認ができなかった届出人がある場合の措置」というタイトルを「確認できなかった届出人がある場合の措置」と変えさせていただいた上で,42番の方では「本人確認ができなかった届出人があるときは,届出を受理した上で当該届出人に対し届出がされたことを通知するものとする」と書かせていただいていたものを,43番の方では「前記1の確認手続により,届出人の全員について届書を持参したことが確認できなかったときは,届出を受理した上で,確認できなかった届出人に対し,届出がされたことを通知するものとする」と書いております。  それから,前回御確認いただいた郵送による届出がされた場合に,たとえ実印と印鑑証明書が同封されていても,通知する扱いにするということで御了解いただいたところでございますので,この点を(注)の形で書き加えております。  それから,届出の不受理申出でございますけれども,これも本人確認という言葉を用いませんで,「届出があった場合でも,自己が届書を持参したことが確認できない限りこれを受理しないようあらかじめ」というような形で表現を変えております。内容的にはもちろん変わっておりませんが,より明確化を図ったということでございます。  第3は以上です。 ● それでは,この第3につきまして,御意見ございましたら,お願いいたします。  はい,○○委員,どうぞ。 ● 実質にかかわることではなくて,あるいはもっと前に申し上げるべきだったのかもしれませんが,今,これは不受理申出についてなのですけれども,拝見していますと,「前記1の届出について,届出人は」というふうになっているのですけれども,不受理申出をする人のことを,ここで届出人というふうに呼んでいると思うのですけれども,ここちょっと用語上,何か難があるように思うのですけれども,何とかならないでしょうか。 ● 何人もとか。何人だと第三者になってしまう。 ● 届出人とされている者なのですよね。ただ,そう書かれている人。 ● ただ,それは届出が出た段階でそうなりますので,それ以前の段階では。 ● ただ,前記1の届出というのは,そもそも届出があった場合の話ではあるのですよね。 ● この不受理申出というのは,その前ですよね。あらかじめですよね。 ● それは自分が届出人になる方を,あらかじめ入れていることが明確になればいいわけですよね。 ● そうですね。 ● 文言は考えていただければ。 ● 趣旨については結構ですので。 ● 御意見の趣旨は分かりましたので,ここについては,事務局の方で表現をちょっと工夫させていただくということにしたいと思います。  ほかに。はい,どうぞ。 ● 第3の2のところの,4ページの一番前,「全員について届書を持参したことが確認できなかったとき」というふうに書かれていますけれども,これは届出人の全員について前記1の確認手続ができなかったときという趣旨ではいけないのでしょうか。持参したことの確認という。 ● ちょっともう一度,さっきの修正案を。 ● 「前記1の確認手続により」というところを,後ろに持ってきて,「届出人の全員について前記1の確認ができなかったときは」と,そういう形ではどうかなと思ったわけです。 ● 「届出人の全員について前記1の確認ができなかったときは」ということですか。 ● はい。 ● 前記1の確認ができなかったというので,明確に読めますですかね。 ● そうすると,しつこくなってしまうので,届書を持参した者が誰であるか,またその者が届出人であるかどうかの確認ができなかったということですよね。同じことを繰り返すのは難しいかなと。 ● 要するに,1人でも届書を持参したということが確認できなかったときは,通知するという規律ですので,こういう表現で書けていると思うのですけれども。 ● ほかにいかがでしょうか。  それでは,第3については,ちょっと若干表現を工夫していただくということで,実質的な内容については御了解いただいたということでよろしいでしょうか。  そうすると,残りましたのが,第4その他ということで,ここについて,御説明を42からの変更点についてお願いいたします。 ● まず,第4の1の学術のところですけれども,これは42の(注)にあった学術研究の目的とか医学研究を目的とするのに限定されるわけではないというのは,前回の部会の御議論の結果,これ削除しております。医学研究を目的とするのに限定されないのですけれども,こう書くと何かかなり広がっているというような印象を与えかねないということで,これは削除したということでございます。  それから,制裁の強化及び不服申立手続については,変更は文言上の変更といたしましては,制裁の強化のところで,「偽りその他不正の手段により戸籍の謄抄本等又は除籍の謄抄本等の交付を受けた場合の制裁を強化する」と書いておりましたのを,「交付を受けた者に対する制裁を強化する」という形に直させていただいております。  それから,不服申立手続に関しましては,「市町村長の処分の適否を争う手続」というふうに書いてございましたけれども,これは行政不服審査,行政不服申立等の段階では,当否も争うことができるという関係で,「単純に処分を争う手続」というふうに変えさせていただいております。  それから,制裁の強化の程度でございますけれども,政府部内で調整させていただいていて,罰金になると思いますけれども,刑罰化ということで強化できる可能性がかなり高まっておりますので,そういった了解のもとで,この要綱が御採択いただければというふうに考えております。その場合の構成要件といたしましては,「偽りその他不正の手段により」という,このとおりの構成要件になるというふうに考えております。 ● それでは,第4について御意見。  はい,どうぞ。 ● 今の制裁の強化の点ですが,現行の過料はどうなるのですか。 ● 不正請求以外の過料の制裁は,過料の制裁として残るということです。 ● 今,偽りその他不正の手段により云々の場合には,5万円以下の過料となっていますよね。その構成要件的には,この先ほどおっしゃっていた罰金の場合の構成要件と同じになって,そうではないですか。 ● 同じです。今の過料の制裁規定と同一の構成要件で罰金を科するという。 ● 罰金にするという。 ● そういう規定に直すということです。 ● それ以外というのは,どういうのを想定できますか,過料にするというのは。 ● 要するに,戸籍法の第6章の雑則のところに,過料の規定というのがいろいろございまして,120条以下でございます。そこで書かれている過料につきましては,そのまま維持ということです。 ● その過料についても金額も上げる。 ● 上げません。今回,不正請求についての制裁の強化ということで議論いただいていますので,特にこの部分だけ強化するということです。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。  はい,どうぞ。 ● 不正の届出をしたということについては,特には罰則というか,罰金の対象にはならない。 ● 不正の届出は,それは別の刑罰法規,公正証書原本不実記載罪の適用があると思います。 ● はい,どうぞ。 ● 今回,戸籍法,特に私たち弁護士という趣旨ではなくて,国民としてかなり大きな変革がなされるということで,大変な周知等の必要があると思うのですけれども,一どきに刑罰というのは,かなり厳しいことではないかと思うのです。行政の保有する個人情報保護の方は同じような要件で,過料という形で立法化されているわけで,同じ行政が持っている情報を利用するという行為に対して,こちらの方が厳しく刑罰でいくということについては,そのバランスというか,そこら辺のところにもちょっと気になるところです。  悪質なものをという趣旨であれば,非常に分かるのですけれども,この「偽りその他不正の手段により」というこれだけの構成要件で,国民としては,今までとれたものがとれなくなったということで,直ちに刑罰ということについて合意が得られるのかどうかという点について,ちょっと心配を抱いております。 ● 反対するという意味ではなくて,やはり刑罰の謙抑性とか,それから個人情報保護法もストレートに刑罰が科せられるようにはなっていないですよね。そういうことの均衡とか,それから士業についてはいいのかもしれませんけれども,やはり一般の市民の方がとるときに,いきなりストレートに刑罰で科すというのも,ちょっとどうかなというところもありますし,それからやはり構成要件的に,確かにこういう構成要件というのは,ほかの条文にもあると思うのですけれども,保護法益や立法事実から考えて,この構成要件でいいのかという問題もあると思いますので,刑罰化を絶対反対するというつもりは全くありませんが,その辺はちょっと慎重に,今後御検討いただければと思います。 ● 戸籍に記載されている個人の情報というものの保護価値というものが,この一連の立法の動きの中でかなり高まっているというふうに考えております。士業の方の不正請求等の事案も多発して,その防止というようなこともございますし,今回,全体の改正を見ていただければ,これまで不当な目的によることが明らかな場合以外は,法律上は請求できたものが,今回は正当な理由をきちんと示さないととれないということになってきているわけで,いわば原則と例外が逆転したという意味で,パラダイムが転換しているわけですので,こういう場合にしかとれないという,そういった情報を「偽りその他不正の手段により」とったということは,刑罰を科するに足りる高い違法性があると評価されてしかるべきなのではないかなと考えております。  それと,刑罰化することによって,刑法総則部分の規定の適用も可能になりますので,背後にいる共犯者,教唆犯等も罰することができるわけでございますし,「偽りその他不正の手段」という構成要件は用例としては多数ございまして,懲役刑を科しているものもございますし,これ故意犯でございますので,うっかり間違えて請求してしまったとか,そういったものは多分故意が阻却されることになりますので,それほど今回の刑罰化というものが,対国民との関係で理解が得られないほど厳しいもの,あるいは謙抑性に反するものとは考えられないのではないかなと,事務局としては考えておる次第です。 ● 1点,総則の適用があるからこそ,ちょっと心配するところなのです。その辺はもう○○幹事,十分御承知だと思いますけれども。 ● ほかにいかがでしょうか。  はい。 ● 今の刑罰化の件ですが,これはまだ決まったわけではないので,いろいろ検討していかなければならない論点もあるので,私どもとしては,今,御指摘いただきましたそもそも論というのは十分念頭に置いて対応したいと思っています。  それに,最初,○○委員からおっしゃっていただいたように,やはり急に刑罰化されたことによる,ある日突然,みんな手錠かけられるような事態というのは,もちろん避けたいと思うので,仮にこれができたといたしましても,立案当局としては相当の周知のための措置というのが必要だというように考えますし,また,実際に執行する当局等も十分にその点の打ち合わせ等はさせていただきたいと思っております。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。  それでは,第4につきましても,要綱案のとおりということで,制裁の強化の程度の方向性としては,今,○○委員からもお話ございましたけれども,一応刑罰化,罰金ということが視野に入っているということで御了解いただいたということにさせていただきたいと思います。  一応,若干文言の修正はございますけれども,要綱案のとおりに取りまとめを行うということにしまして,これを戸籍法の見直しに関する要綱案として法制審議会総会に諮りたいと思います。なお,先ほどの表現等,細部の文言も含めまして,最終的には事務当局と部会長に御一任をお願いしたいと思います。  最後に審議を終えるに当たりまして,○○委員から御あいさつお願いいたします。 ● 担当部局の責任者といたしまして一言だけ御礼を申し上げたいと思います。  この戸籍法の見直しというのは,かねてから個人情報保護の高まりが明らかになってくるという,そういう現象を受けて,私どもも意識としては,非常に大きい検討課題だと思っておりましたが,幸い,昨年11月1日から,非常に熱心に御討議をいただきまして,今日で14回目に当たるわけでございますけれども,要綱をお示しいただいたところでございます。  今,部会長からもお話ございましたとおり,来年早々に行われます法制審議会に,これを御審議いただくように提出することができることになったわけであります。  仮に法制審議会の総会で,これを御了解いただけるということになりましたら,私どもといたしましては全力を尽くして,次の通常国会に関連法案を提出して,来年の夏までには法律として,これを実現したいと,このように考えているところでございます。  非常に考え方そのものは受け入れやすい環境になってきておりますが,しかし,実務から見ますと,なかなか難しいところも多数ございます。法律ができたからといって,簡単にできるものでもないことも,また事実でございますので,そういう面でもまだまだ努力していかなければならないところがございます。  ひとつ,これからもいろいろな面で御支援をいただければ,大変ありがたいと思います。  本当にありがとうございました。 ● それでは,事務当局から今後のことについて。 ● 法制審議会の総会は2月7日を予定しております。 ● あと,事務当局から,資料の公開について御説明がございます。  (事務当局から,会議用資料等の公開について,法制審議会第151回会議における決定事項の報告がされた。) ● 今の御説明について,何かございますか。--特によろしいでしょうか。  それでは,法制審議会の戸籍法部会の会議を,これで閉会させていただきます。  昨年11月から本日まで,14回にわたりまして,委員・幹事の皆様方には熱心に御審議を賜りまして,また本日は要綱案の取りまとめに御協力いただきまして,まことにありがとうございました。 -了-