法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  平成18年12月28日(木) 自 午後1時29分                        至 午後6時24分 第2 場 所  法務省地下1階大会議室 第3 議 題  損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度及び犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の新設等のための法整備について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● ただ今から法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会の第6回会議を開催いたします。 ● 本日は,御多忙中のところお集まりいただきましてありがとうございます。   本日は諮問事項の第一から第四までの全体について審議を行いたいと思います。その進め方ですが,本日は諮問事項の第一から,その諮問事項の順に議論を行いたいと思います。   それから,事務当局からそれぞれについて参考となるべき資料が用意されております。また,前回の部会において○○委員から日本弁護士連合会作成の資料が提出されましたが,諮問事項の第一及び第二に関する部分についての御説明はまだ伺っておりません。さらに,本日,○○委員から,諮問事項第四についての資料が提出されております。そこで,そのそれぞれの諮問事項について議論をするに当たって,事務当局,○○委員及び○○委員から,必要に応じて資料についての御説明を伺った上で,議論していきたいと思います。   それでは,早速,諮問事項第一についての審議に入りたいと思います。   まず,事務当局から用意していただいた資料,資料番号33についての御説明をお願いいたします。 ● 今回用意させていただきました資料番号33の「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度(諮問事項第一)に関する資料」について御説明いたします。   諮問事項第一につきましては,これまでの部会におきましては,皆様から示されました御意見等を参考にし,議論の分かれるところにつきましてはA案,B案等という選択肢の形にした上で資料を作成しておりましたが,各論点についての議論もおおむね出そろったのではないかと思われますので,今回は,これまでの議論等を踏まえまして,これまで選択肢とされている部分を1つの案にまとめるなどして資料を作成いたしました。なお,この資料では,これまで選択肢とされていたものを1つの案にした部分については点線によりアンダーラインを引き,第4回部会,これから便宜上「前回の部会」と呼んでいきますが,その前回の部会の議論等を踏まえて新たに加筆修正した部分については実線によりアンダーラインを引いております。   それでは,最初に,点線のアンダーラインが引かれた部分を中心に御説明をさせていただきます。   まず,第1の1の前半部分は,対象犯罪に関する論点でございます。これまでの部会におきましては,対象犯罪を限定するか否かという問題と,限定するとした場合における具体罪種,特に,財産犯や業務上過失致死傷罪を対象とするか否かという問題が議論されました。   対象犯罪を限定するか否かについては,限定するのは相当でないとの御意見もありましたが,その一方で,本制度の実効性を確保する観点からは,救済の必要性が高く,かつ,簡易・迅速な手続で審理するのが相当と思われる犯罪に対象を限定するのが相当ではないか,まずは制度を立ち上げることが必要であり,対象犯罪の拡大については,その運用状況等を見ながら検討を続けるべきではないかとの御意見等,対象犯罪を限定するのが相当であるとの御意見が多かったように思われました。   その上で,具体的な罪種についてですが,まず,財産犯につきましては,例えば,被害者が多数存在する事件等につきましては,必ずしもすべての事件が起訴されるわけではなく,起訴された事件の被害者と起訴されない事件の被害者との間に不均衡が生じるのではないか,その一方で,このような事態を避けるために捜査の範囲を広げることも現実的には困難ではないかなど,これを対象犯罪とすることについての問題点等が示されました。このような問題点等に加えまして,財産犯につきましては,盗品その物が犯人の手元に残っているような場合には,被害者還付の規定によりまして,これが被害者に返還されるのが通常であります。また,犯人に資力がある場合には,公判中に被害弁償がなされることも相当程度あるように思われます。さらに,例えば,悪徳商法や振り込め詐欺など,多額の犯罪収益が犯人の手元に残されている組織的な事件等におきましては,犯人から当該犯罪収益をはく奪した上で,これを当該事件の被害者に支給するための法整備がなされたところであります。このように,財産犯の被害者につきましては,犯人に財産がある場合には,本制度を利用するまでもなく,現実的な被害回復を図ることができる仕組みがそれなりにあるのではないかと思われます。   また,業務上過失致死傷罪につきましては,この種の事件は,現在の民事訴訟においても過失相殺の割合や損害論等の審理に時間を要しており,本制度にはなじまないのではないか,困難な審理を伴うような事件については民事裁判所の方へ移行させれば足りるという考え方もあるでしょうが,この移行が常態化するというのは,制度の在り方として問題があるのではないか,過失割合が問題となるような事案においては,刑事裁判の中で争っておかないと後になって不利になるという理由で,その争いが刑事裁判に持ち込まれ,迅速な刑事裁判を阻害するのではないかなど,これを対象犯罪とすることについての問題点が示され,また,本制度の円滑な導入のためには,業務上過失致死傷罪を対象から外すこともやむを得ないのではないかなどの御意見も示されました。このような問題点等に加え,交通関係の民事訴訟については,専門部,集中部が設けられている裁判所もあるなど,専門的な判断を要する事項が多いものと思われる上,保険会社が絡むような事件につきましては,加害者と被害者だけではなく保険会社を含めて解決を図る必要があることから,そもそも簡易・迅速な審理により紛争の解決を図ることを目的としている本制度にはそぐわないのではないかということも問題になろうかと思われます。   以上のようなことから,この対象犯罪に関する論点につきましては,故意の犯罪行為により人を死傷させた罪や性犯罪等,類型的に身体的・精神的に疲弊して,通常の民事訴訟を提起することがなかなか困難であると思われる犯罪であり,かつ,刑事手続において認定された事実を下に簡易・迅速な手続で民事上の請求についての判断をすることができる犯罪にその対象を限定することとする考え方を採らせていただきました。   次に,第1の1の後半部分の訴訟物に関する論点ですが,これにつきましては,これまでの部会において,刑事手続の成果を利用して簡易・迅速な手続で審理を行うという観点からすると,不法行為に基づく損害賠償請求権に限定するのが相当ではないかとの御意見が示されており,前回の部会においても,これについて特段の異論等は示されませんでしたので,このような考え方を採らせていただきました。   そして,第1の6の民事に関する審理の時期に関する論点ですが,これにつきましては,刑事裁判中に例外的に民事に関する審理を行うこととすると,民事の関係では,いわゆる狭い意味の弁論をやって,争点整理をしなければならないのではないかなどの問題点等が示され,前回の部会におきましても,刑事裁判中に民事に関する審理を一切行わないこととする考え方を採ることについて特段の異論等は示されませんでしたので,このような考え方を採らせていただきました。   次に,第2の1の審理の方式に関する論点ですが,これにつきましては,簡易・迅速な手続で審理を行うという観点からは,審尋でも審理を行えることとすべきではないかとの御意見が示され,前回の部会におきましても,審理の方式をこのような任意的口頭弁論とすることについて特段の異論等は示されませんでしたので,ここは「口頭弁論又は審尋」による任意的口頭弁論とする考え方を採らせていただきました。   また,第2の5の前半の裁判の方式に関する論点及び第4の不服申立ての方式に関する論点についても,ここで併せて御説明させていただきますが,これらの論点につきましては,審理の方式を任意的口頭弁論とした場合には,裁判の方式については決定となり,裁判の方式を決定とした場合には不服申立ての方式については異議の方法によることとなることについて,特段の異論等は示されませんでした。そこで,裁判の方式については決定とする考え方を,不服申立ての方式については異議の方法によることとする考え方を,それぞれ採らさせていただきました。   次に,第2の4の刑事判決の拘束力に関する論点ですが,刑事判決に法的拘束力を認める考え方につきましては,刑事判決のどの部分に法的拘束力を認めるかという枠組みを決めるのはかなり困難ではないかとの問題点等が示され,前回の部会におきましても,被告事件の訴訟記録を改めて取り調べることにより,事実上の拘束力を認める考え方について,特段の異論等は示されませんでしたので,このような考え方を採らせていただきました。   そして第2の5の後段は,仮執行宣言に関する論点ですが,前回の部会におきましては,仮執行宣言を付することができるか否かという問題と,仮執行宣言を付することができることとした場合に,これを裁量的とするか必要的とするかという問題が議論されました。   まず,仮執行宣言を付することができるか否かにつきましては,被害者の方々が簡易・迅速な手続で実際に被害回復を図ることができるという観点からは,仮執行宣言を付することができることとすべきであるとの御意見や,審理に当事者双方が立ち会うことができることとすれば,被告人の手続保障との関係においても仮執行宣言を付することを許容できるのではないかとの御意見が示され,このような考え方に賛同する御意見が多かったように思われました。そこで,後でも御説明いたしますが,本制度におきましては,民事訴訟と同様に,すべての期日について,当事者双方に出頭の機会を確保するなど,当事者の手続保障をより手厚いものとした上で,仮執行宣言を付することができることとするという考え方を採らせていただきました。   また,仮執行宣言を付することができることとした場合に,これを裁量的とするか必要的とするかについては,加害者が財産を隠すこともあることなどから必要的とすべきではないかとの御意見や,執行停止の要件を緩和すれば仮執行宣言を必要的とすることもあり得るのではないかとの御意見も示されましたが,その一方で,加害者の財産隠しについては,仮執行宣言を必要的としても防ぐことはできず,結局は,民事保全手続を活用せざるを得ないのではないか,執行停止の申立ては,法律的な知識を伴うものであり,実際に申立てをすることについてなかなか困難を伴うのではないか,現行の民事訴訟においては,事後的な回復の可能性・困難性等を考慮して,仮執行宣言を付するか否かを決定しているところ,本制度においても,事案に応じて適切にその判断ができるように裁量的とすべきではないかとの御意見も示されました。   仮執行宣言を裁量的に付することとするか,それとも必要的に付することとするかにつきましては,様々な御意見があろうかと思われます。事務当局といたしましては前回の部会における御議論等も踏まえた上で,まず,他の制度を見ましても,仮執行宣言を必要的に付することとされているものは少額訴訟等のごく一部に限られていることのほか,民事訴訟における一般の判決については裁量的に仮執行宣言を付することとされていますが,実務においては,金銭請求に係るほとんどの事件で仮執行宣言が付されているのが実情とのことであり,本制度において裁量的に仮執行宣言を付することとしたとしても,実際にはこれと同様の運用がなされるのではないか,一方で,事後的に回復することが困難であることが明らかな事案についてまで仮執行宣言を付さなければならないこととするのは,被告人に対して著しい不利益を課すことになるのではないか等を考慮すると,本制度におきましても,事案に応じて適切にその判断ができるように裁量的に仮執行宣言を付することができることとする方が穏当なのではないかと考えられましたことから,このような考え方を採らせていただきました。   最後に,第3の2及び3は,当事者の移行権に関する論点です。まず,第3の2は,被害者の一方的な移行権,すなわち,相手方の同意を得ないで移行することができる場合の問題ですが,前回の部会におきましては,手続の選択は原告である被害者の専権であることや,この制度が被害者救済のためにあることなどから,民事に関する審理の第1回期日までは被害者のみが移行権を有することとすべきではないかとの考え方が示されました。その一方で,このような考え方に対しては,特に,刑事裁判の告知があってから第1回期日までの間における移行の問題について,被害者にのみこれを認める理屈があるのか,当事者の一方にのみ裁判所選びを認めることになることになり問題があるのではないか,当事者双方の合意があった場合にのみ許すという考え方もあるのではないかとの考え方も示されました。   この被害者の一方的な移行権の問題につきましては,本日更に御議論をいただきたいと考えておりますが,前回の御議論等を踏まえまして,議論のたたき台として,その終期を,「被告事件について終局裁判の告知があるまで」とする考え方と,「最初にすべき期日まで」とする考え方を選択肢にさせていただきました。すなわち,被害者は,前者であれば刑事裁判の告知があるまでしか移行権を有しませんが,後者であれば民事に関する審理の第1回期日まで移行権を有することになります。   次に,第3の3は,当事者双方が移行することに合意している場合の問題ですが,前回の部会では,このような合意ができることは余り考えられないのではないかとの御意見が示されましたが,その一方で,必ずしもあり得ないとまでは言いきれず,いわゆる訴えの取下げと同様に,相手方の同意を要件とした上で,事件を移行させたとしても特に問題はないのではないかとの御意見も示され,これに賛同する御意見が多かったように思われました。   そこで,当事者双方が移行することについて合意している場合の問題については,このような合意がある場合には移行させるという考え方を採らせていただきました。   なお,この点につきましては,前回の部会においては,特に民事に関する審理の第1回期日以降の問題として議論されていたように思われますが,今回の資料では「第2の5の決定があるまで」としている以外は,特に時期を限定しておりません。これは,当事者双方が共に通常の民事裁判所で審理を行うことを求めている場合には,もはや本手続において審理を行う必要はなく,また,適当でもないとの考え方を突き詰めてみますと,例えば,刑事裁判中にこのような合意が成立した場合であっても,通常の民事裁判所に移行させるべきではないかと考えられたことに基づくものでございます。   以上が,点線のアンダーラインが引かれた部分の説明でございます。   次に,この資料において実線のアンダーラインが引かれた部分,すなわち,前回の部会での御議論等を踏まえて加筆修正した部分について御説明をさせていただきます。   まず,対象犯罪を一定の重大犯罪に限定した趣旨とも関わるものでございますが,第1の1において,損害賠償の請求をすることかできる裁判所を地方裁判所とすることといたしました。これは,簡易裁判所に係る事件を除く趣旨でございますが,そもそも,簡易裁判所において審理される刑事事件は,罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪又は常習賭博,横領,盗品譲受け等の罪に限られており,本件の対象事件のうち簡易裁判所で審理される可能性のある事件としては,傷害罪等に限られるのではないかと思われます。そして,仮に,傷害罪が簡易裁判所で審理される場合でありましても,これに対しては,禁錮以上の刑を科すことができないこととされておりますので,結局,罰金刑が相当と考えられるような比較的軽微な事案だけが簡易裁判所に起訴されるということになります。その一方で,例えば傷害罪のうち,重大な結果が発生しているようなものは,通常,地方裁判所に起訴されるのではないかと思われ,このような事件を対象とすることが,本件の対象事件を類型的に身体的・精神的に疲弊して通常の民事訴訟を提起することが困難であると思われる犯罪に限定している趣旨にも沿うのではないかと思われます。また,仮に,簡易裁判所に係る事件をも対象にすることとした場合には,民事に関する簡易裁判所の事物管轄が140万円以下の請求に限られていることから,このこととの調整をどうするかといった困難な問題も生じることになります。このような点に加え,本制度の円滑な導入という観点をも考慮し,地方裁判所において審理される刑事事件を対象とするのが相当ではないかと考えたところでございます。   次に,第1の5ですが,これは,無罪等を理由として第1の1の請求が却下された場合においても,時効中断の効力を維持させるための,いわば訴訟とのつなぎの規定という趣旨でこれまで記載していたものを修正したものであり,無罪等を理由とする却下の決定があった時から6か月以内に裁判上の請求,すなわち,訴えの提起等をした場合には,時効の中断の効力が維持されることとしたものでございます。この規定につきましては,これまでも御説明しましたとおり,他の時効中断の規定等との整合性をも考慮しながら検討を進めてまいりましたが,本制度における損害賠償の請求は,被害者が被告人に対して損害賠償債務の履行を要求する意思を明らかにするものであり,しかも,裁判所に対して当該請求についての判断を求めている間は,その意思が継続しているものと評価することが適当であると考えられますので,無罪等を理由とする却下の決定があった場合であっても,当該決定があるまでは,いわば「催告」の効力が継続しているものと解することもできるのではないかと思われます。民法では,債権者が「催告」をした場合においては,暫定的な時効中断効が認められて,6か月以内に裁判上の請求等をすることによって,確定的に中断効を認められることとされておりますので,このような規定を踏まえまして,本制度におきましても,無罪等を理由とする却下の決定があった時から6か月以内に裁判上の請求等をした場合には,時効の中断の効力が維持されることを明らかにしたものでございます。   そして,第2の2ですが,これは,本制度における審理を口頭弁論の方式で行う場合はもちろんのこと,審尋の方式で行う場合であっても,当事者双方を呼び出さなければならないことを規定するものでございます。前回の部会においては,仮執行宣言の許容性に関する議論の中で,当事者,特に被告人の手続保障の問題が指摘されました。そこで,本手続におきましては,民事訴訟と同様に,すべての期日について,当事者双方に出頭の機会を確保することとしたものでございます。   次に,第2の3の審理の回数についてですが,これまでは「3回程度」としておりました。この「3回」というのは労働審判法を参考にしたものでございますが,これについては前回の部会で「4回」の方がよいのではないかとの御意見がありました。そこで,ここでは「3回」及び「4回」を選択肢の形にして残してございます。   この3回にするか,4回にするかという点は,本制度における民事に関する審理,特に第1回期日に行うべき審理の内容としてどのようなものを想定するかに関わるものと思われます。1つの考え方としては,例えば,労働審判のように,第1回期日までの間に当事者双方で十分な準備をした上で,集中的に審議を行うこととすれば,3回で足りるということになるかもしれません。また,別の考え方としては,例えば,第1回期日においては,取りあえず被害者側の主張の補充やそれに対する被告人側の言い分を聞いた上,第2回期日までの間に当事者双方が主張の補充及び相手方の主張に対する反論等を準備することとすれば,4回ということになるのかもしれません。この点につきましては,更に御議論をいただきたいと考えております。   そして,第2の6ですが,これは,決定の方式について,主文及び理由の要旨を記載した書面を作成して行うことを規定するものでございます。このような規定を設けた趣旨は,前回の部会において,決定には理由を記載してもらいたいとの御意見もありましたように,当事者に対し,この決定の内容を正確に知らせ,これに対して異議を申立てるか否かを考慮する機会を与えるとともに,異議申立てがなされた後の通常の民事の裁判所に対して,この決定がいかなる理由に基づいて判断されたのかということを明らかにすることなどにございます。   次に,第3の1ですが,これは,民事に関する請求の争点が複雑である等の理由で一定の期日内に審理を終結することが困難であると認めるときに,事件を通常の民事裁判所に移行させるための規定ですが,今回の修正では,職権による移行のほかに,当事者の申立てによる移行の方法を選択肢として新たに設けさせていただきました。一定の期日内に当事者が十分な攻撃又は防御を尽くすことができるか否か,すなわち,決定をするのに審理が熟するか又は熟しているかということにつきましては,基本的には裁判所が判断し得ることではあるとは考えられますが,当事者の手続保障をより手厚いものにするという観点から,当事者に移行の申立権を認めることも考えられるのではないかと思われたことから,これを選択肢として揚げさせていただきましたので,この点を本日御議論いただければと考えております。   そして,第4の1ですが,これは,決定に対する異議申立ての申立て期間を明示したものでございます。この「2週間」という期間は,民事訴訟における上訴期間のほか,手形訴訟,少額訴訟,支払督促のいずれにおいても不服申立て期間を2週間としていることから,これらに平仄を合わせたものでございます。   最後に,第4の3ですが,決定に対して異議の申立てがあった場合には,その決定は,仮執行宣言が付されたものを除いて効力を失うことを規定するものであり,端的に申しますと決定に付された仮執行宣言は,異議の申立てがあってもその効力が失われないことを明らかにするものでございます。この点については,前回の部会において,異議の申立てがなされた場合に仮執行宣言の効力が失われるのか否かとの御質問がありました。そこで,事務当局において検討いたしましたが,本制度における決定に仮執行宣言を付することとした趣旨は,被害者の方々の迅速な被害回復の実現を図るという点にあるところ,仮に,異議申立てがあった場合に仮執行宣言の効力が失われることといたしますと,この仮執行宣言が意味を持つのは,異議が申し立てられるまでの間に限られるということになり,仮執行宣言を付することとする意味がほとんど失われることになるのではないかと考えられました。そこで,仮執行宣言については,異議の申立てがあってもその効力が失われないこととしたものでございます。   以上,簡単ではございますが,資料についての御説明をさせていただきました。皆様におかれましては,更に幅広い観点から御議論をいただければと考えております。 ● 続きまして,○○委員から,前回提出された資料のうち諮問事項第一についての御説明をお願いいたします。 ● 前回出させていただきました,法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会における諮問事項について,2006年12月15日付けの日弁連の意見書について,この諮問事項第一についての意見を説明させていただきます。   結論としては,この制度については刑事訴訟手続及び被告人の防御活動に対する影響並びに被告人に対し民事上の防御権が十分に保障されることとなるかなどについてなお慎重な検討が必要であり,制度設計によってはこの全部又は一部について反対せざるを得ないという結論です。   理由ですけれども,まず犯罪被害者等のために時間や費用の負担を軽減できる簡易・迅速な被害回復制度が存在することは望ましい。しかし,現在検討されている制度については以下に述べるとおり幾つかの問題が存します。5点を挙げております。   第1点は,刑事訴訟手続が長期化するおそれがあるという点です。この制度においては,損害賠償の請求についての審理は刑事訴訟記録を利用して行うこととされています。したがって,刑事訴訟記録に表れていない事情については,損害賠償請求についての審理において参酌されない危険性があります。そのため,被告人及び弁護人としては,刑事判決後に審理が予定される損害賠償請求についての審理で争点となる損害賠償の額に影響する可能性がある事項を強く意識して審理に対応せざるを得なくなります。殊に,民事上,被害者の過失に関する過失相殺の割合が大きな争点となることが予想される場合,犯罪被害者等を証人として尋問する際に刑事訴訟の争点ではなくても被害者の過失割合についての詳細な尋問をせざるを得なくなり,その分刑事訴訟が長期化する可能性が増大します。   第2点は,被告人や弁護人の防御活動に影響を及ぼすおそれです。被告人,弁護人が民事上の不利益を回避するため,必ずしも刑事訴訟の争点ではない事項についても事実関係を争うこととした場合,審理が長期化したり,争うこと自体が量刑上不利な情状として考慮されたりする不利益を被るおそれがあります。弁護人としてはこのような利害得失を考慮しつつ防御方針を検討する必要に迫られ,刑事手続における被告人や弁護人の防御活動に重大な影響を及ぼすことにならざるを得ません。   第3点は,刑事訴訟を担当する裁判官,裁判員に対し予断を与えるおそれがあるという点です。申立書中の損害の額や内容の記載内容だけからでも犯罪があり甚大な損害が発生したといった予断を裁判官,裁判員に与えるおそれがあり,無罪推定の原則にも反するおそれがあります。殊に,申立てを刑事裁判の判決前の段階で認めるとすれば,この申立書の記載が刑事裁判の判決宣告に影響を及ぼす可能性は排斥できません。これでは証拠裁判主義に反し,予断排除の原則及びこの原則を守るための諸規定が設けられている意味を無くしてしまうことになりかねません。   第4点は,対象事件が相当な範囲で裁判員対象事件と重なり合うであろうことから,裁判員裁判における刑事訴訟手続が混乱するおそれがあるという点です。この制度で対象とされる事件は殺人等の重大事件であることが予想されますが,これらの事件はほとんど裁判員対象事件です。裁判員対象事件はすべてが公判前整理に付されることになります。そのため,公判前整理によって主張と証拠の整理が行われるた後になって,民事で争点となる被害額の算定に関する事実の有無が,刑事裁判の審理において事実上争点となることにならざるを得ません。そうすると,せっかく公判前整理手続で争点と証拠を整理して審理に入ったにもかかわらず,審理が計画どおりに進まず,公判前整理手続を設けた趣旨が無意味に帰するおそれがあります。裁判員裁判制度の下では,損害賠償を求める申立てがなされている事実は,初めて刑事裁判に関与する市民である裁判員の心証に大きく影響を与えるおそれがあり,事実認定に影響を及ぼす可能性もあります。   第5の問題点は,損害賠償の請求についての審理における被告人の防御権が十分に保障されないおそれがあるという点です。特に,国選弁護人が選任されていた場合には,経済的に困窮をしていることから,損害賠償の請求の審理についての代理人を被告人が選任することは極めて困難になりましょう。しかし,現在刑事施設に収容されている被告人は,民事訴訟のすべての審理に出頭することが認められておりません。すなわち刑事施設の現在の運用からすれば,被告人は刑事事件の有罪判決が言い渡された後の損害賠償請求についての審理の全部又は一部に出頭できない可能性が高いと思われます。特に,審尋に被告人が出頭することが認められる可能性はほとんどないでありましょう。その結果,経済的に困窮している被告人は,損害賠償の審理については代理人を選任することができないだけでなく,自ら出頭することもできないまま,3回程度の審理により判断が下されることになります。それでは被告人は損害賠償の請求について防御権を実質的には保障されていないことになりかねません。被告人には通常民事訴訟への移行申立権が認められず,更に賠償を命ずる決定に仮執行宣言が付されることになると,執行停止を得るため資力に欠ける被告人にとっては,異議申立てやその後の通常民事訴訟手続が画餅に帰するおそれがあります。被告人の心情を考えても,有罪判決を言い渡された直後は,控訴を申し立てるかどうかという判断にも直面しており,損害賠償請求手続に十分対応できるか疑問があります。また,自らに有罪判決を言い渡した刑事裁判官による民事の審理に対し,殊に無罪を主張している場合などにおいて,これを公正なものとして冷静に受けることができるかという問題も存します。   そこで,以上のうち問題点の1の(1)から(4)の問題点に関しては申立てが刑事訴訟手続等に影響を与えないこととするため,刑事裁判中に民事に関する審理を一切行わないとすることは当然として,例えば次の6点について,具体的,各論的な検討が不可欠です。   第1点は,申立てないしその正式受理の時期。第2点,刑事裁判官が申立書の受理に関与するか否か。第3点,刑事裁判官が申立書の記載内容に触れる時期。第4点,裁判員は申立ての事実及び内容を知ることになるのかどうか。第5点,被告人に対する申立書副本の送達時期。第6点,申立書の記載内容。例えば申立時においては公訴事実記載の不法行為に基づく相当額の損害の支払を求めるといった典型的な申立ては可能か,などについて具体的,各論的な検討が不可欠です。   また,1の(5)の問題点,被告人の防御権の問題ですが,これに関しては3つの点で同様な検討が不可欠だと考えます。1つは,当事者双方に通常民事訴訟への移行申立権を認めるか否か。第2点,裁判所の判断に仮執行宣言を付すか否か。第3点,刑事について上級審で無罪判決が言渡された場合の民事上の判断の効力と手続等について同様な検討が不可欠です。   簡易・迅速を旨とする制度である以上,主張,立証が制約されることはやむを得ません。しかし,それは当事者が不服申立てをすればその後に通常の民事訴訟による十分な審理が保障されて初めて許容されるものであります。そして,その保障のためには最低限次の点が絶対に必要であると考えます。   第1点,裁判は決定によるものとし,これに対して当事者双方は不服申立てができ,不服申立て後は審級の利益を奪うことなく一審の通常民事訴訟に移行すること。   第2点,損害賠償を命ずる決定には仮執行宣言を付さないこととすること。   第3点,仮に任意的に仮執行宣言を付すとした場合も,不服申立てにより仮執行宣言は当然にその効力を喪失するものとすること。   第4点,正当な理由がある場合,もしくは相当と認められるときは,当事者に決定前に通常民事訴訟への移行申立権を認めること。これが絶対に必要であると考えます。そうでなければ前述したとおり,被告人は出頭もできず,代理人も付かず,十分な防御権を行い得ないまま,3回程度の審理で自らを有罪とした刑事裁判官によって損害賠償を命ぜられ,仮執行に基づく強制執行をも甘受せざるを得ないことになります。さらに,決定前の通常民事訴訟への移行申立権が被告人側に認められず,被害者のみに認められるとすれば,制度の公正性,公平性に重大な疑念が生じ,国民の理解と支持を得られないことにもなりかねません。   以上が日弁連の意見です。 ● ありがとうございました。   ただ今の○○委員からの御説明について,事務当局から何か。 ● ただ今日本弁護士連合会,以下「日弁連」と言いますが,日弁連の御意見等についての御紹介がありました。この点について事務当局の考え方を簡単に御説明させていただきます。   まず,日弁連の資料の第1の1の(1),(2)及び(4)に関するものですが,本制度を導入することにより,民事に関する争いが刑事裁判に持ち込まれることにより,刑事裁判が長期化する等の問題が生じるのではないかとの御懸念が示されました。   しかしながら,本制度におきましては,これまで御説明してきましたとおり,刑事裁判中は民事に関する審理を一切行わず,刑事判決の後に民事に関する審理を行うこととして,互いにその審理を分けることとしております。このように刑事と民事の審理を分断することにより,刑事に関する審理においては,これまでの刑事裁判と同様に,刑事の観点から必要なもののみが審理の対象となり,この中に,民事に関する争いを持ち込まないことが可能になると考えられます。   また,本制度におきましては刑事判決に法的拘束力を認めておらず,刑事訴訟記録を改めて取り調べることによる,いわば事実上の拘束力を認めているにすぎません。したがいまして,刑事訴訟記録に表れていない事情については,民事に関する審理の中で十分に主張・立証をしてしていくことが可能になると考えられます。   さらに,その資料の第1の1の(1)では,民事に関する争点が刑事裁判に持ち込まれる場合として,被害者側の過失に関する過失相殺の割合が大きな争点となることが予想される場合を例に挙げられていますが,仮に本制度の対象犯罪が故意の犯罪行為により人を死傷させた罪等の重大犯罪に限るとした場合には,御指摘のような事例がどれほどあり得るのかについても,若干疑問がございます。   以上のようなことから,本制度が導入されることによって,殊更に,民事に関する争いが刑事裁判に持ち込まれるということはないものと考えております。   次に,その資料の第1の1の(3)において,損害の額や内容を記載した申立書の提出を刑事裁判中に許すと,裁判官や裁判員に予断を与え,また,無罪推定の原則にも反するのではないかとの御懸念が示されました。しかしながら,この申立書は,起訴状記載の事実によって被害を受けたとされる立場の者が被ったとされる損害額等についての主張の内容が記載されたものにすぎず,これにより,裁判官が予断や心証を抱くこともなければ,無罪推定の原則に抵触することにもならないものと考えられます。裁判員については,後の説明でも触れますが,この制度上申立書に接することが想定されておりませんので,御懸念は当たらないものと考えております。   また,第1の1の(5)において,民事の審理における被告人の防御権が十分に保障されないおそれがあるのではないかとの御懸念も示されました。まず,訴訟代理人を選任していない被告人の出頭の問題については,これは現在の民事訴訟においても生じ得る問題でありまして,本制度が導入されることによって,殊更に生じるものではないものと考えられます。また,そもそも本制度では,一定の回数以内の期日において審理を終結することが困難であると認められる場合,すなわち,その期日内で当事者双方が攻撃・防御を尽くすことができないと認められるような場合においては,通常の民事訴訟に事件を移行させることとされていますので,被告人の防御が尽くされないまま民事についての判断がなされるということは考えられません。さらに,本制度においては,当事者はその主張を記載した書面を提出することでその主張を裁判資料とすることができ,より柔軟に審理を進めていくことが可能とされているところであります。これらの点に加えまして,本日の審議では,被告人を含めた当事者の手続保障をより手厚いものとするため,双方審尋,すなわち,審尋の期日においても当事者双方を呼び出すこと,審理が長期化することを理由とした民事裁判所への移行について当事者に移行の申立権を認めること,損害賠償の請求についての決定は,理由の要旨を記載した書面により行うことなどを新たにお示ししておりますので,このような観点を含め,幅広い観点から御議論をいただければと考えております。   なお,被告人の心情からすると,有罪の言渡し直後は,民事に関する審理に十分対応できるかが疑問であるとの御懸念もございました。この点につきましては,例えば,縮小認定等がされた場合には被害者の方々においても同様に生じ得るところであり,被告人特有の問題ではないものと考えられますが,有罪の言渡しから民事に関する第1回の期日までの期間をどの程度空けるかについては,先ほど申し上げました民事に関する審理を3回にするのか4回にするのかとも関わる問題であり,この論点の中で御議論をいただければと考えております。   続きまして,日弁連の資料の第1の2において,具体的な検討事項として示された部分について,現段階における事務当局の考え方を御説明いたします。   まず,①の「申立ないしその正式受理の時期」でございますが,これは申立書が提出された時と考えております。   次に,②の「刑事裁判官が申立書の受理に関与するか否か」でございますが,これは,かなり技術的・細目的な事項であり,この段階でお答えすることは困難ではありますが,通常は,受理印を押印したり,受理簿を作成するなど,受理に際して行うべき事務的作業がございますので,この「受理」そのものに裁判官が積極的に関与するということは考えにくいのではないかと思われます。   ③の「刑事裁判官が申立書の記載内容に触れる時期」でございますが,これについては,例えば,刑事事件の第1回公判期日後でなければ申立書を見ることができないなどといった時期的な制約を特に設けておりませんので,申立書が裁判官の手元に来た時ということになろうかと考えております。   ④の「裁判員は申立の事実及び内容を知ることになるのか」でございますが,民事に関する審理はそもそも裁判官のみで行うことになると考えられる上,刑事の審理を行うに当たっては,その申立ての事実及び内容が必要となるものではないことから,制度上,裁判員がこれを知ることにはならないものと考えております。   ⑤の「被告人に対する申立書副本の送達時期」でございますが,これは事務当局作成に係る資料番号33の資料の第1の3において,「裁判所は,書面の提出を受けたときは,遅滞なく,当該書面の謄本を被告人に送達しなければならない」ものとされておりますので,例えば申立てが不適法であるような場合を除いて,申立てがあった後遅滞なく送達されるものと考えております。   ⑥の「申立書の記載内容」ですが,例えば,「被告人甲は,○○ころ××において,被害者乙に対し,その顔面を殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に全治約3週間を要する顔面打撲の傷害を負わせた」というような傷害の訴因で起訴された事件を仮定しますと,まず「請求の原因となる訴因」としては正にこの傷害の訴因に係る事実を記載することとなります。「損害の内容」としては,財産上の損害として,実費に相当するいわゆる積極損害と逸失利益に相当するいわゆる消極損害が,また,非財産上の損害として慰謝料が考えられることから,訴因に係る傷害の事実により生じた損害の内容を,これらの項目ごとに区分して記載することが考えられ,例えば,具体的には,治療費2万円,休業損害1日8,000円として10日間で8万円,慰謝料10万円などと記載することが考えられます。   以上のほかに,日弁連の資料の第1の3の③には,「刑事について上級審で無罪判決が言い渡された場合の民事上の判断の効力と手続」という検討事項が示されております。これは,例えば,被告事件について有罪の言渡しがあった後,被害者等の損害賠償の請求を認容する決定が発せられ,これについて当事者が何ら異議を申し立てなかったために当該決定が確定したものの,刑事については,上訴審において,第一審判決の全部又は一部が覆された場合に,その確定した決定の効力はどうなるのかという問題であると思われます。   これにつきましては,まず,本制度におきましては,刑事判決に法的拘束力を認めないなど,基本的に,刑事と民事の審理及び裁判を分けることとしておりますことから,刑事の判断が上訴審において覆されたとしても,確定した決定の効力に影響を及ぼさないこととするのがこれに整合的ではないか,また,いったん損害賠償請求についての判断が確定したにもかかわらず,それが後の刑事裁判の結果によって覆される可能性があるとすると,当事者は,刑事判決が確定するまで著しく不安定な地位に置かれることになり,特に,刑事裁判に関与することのできない被害者の方々にとっては酷ではないか,そして,確かに,確定裁判であってもその判断に重大な誤りがあったり手続に重大な瑕疵があった場合には,適正な裁判の確保の観点から,それは覆されるべきであると考えられますが,例えば,刑事上罰すべき他人の行為により,自白させられ又は攻撃若しくは防御の方法の提出を妨げられたことや,決定の基礎になった証拠が偽造又は偽証等により作り上げられたことが後に明らかになった場合等におきましては,民事訴訟法の規定の準用により再審の途が開かれることになるのではないか,といった理由から,仮に,被告事件についての第一審判決が上訴審において覆ったとしても,既になされた損害賠償請求についての決定が当然に影響を受けるというわけではないものと考えております。   以上,簡単ではございますが,日弁連の御意見等についての事務当局としての考え方を御説明させていただきました。 ● それでは,早速審議に入りたいと思います。これまで提示されました論点についても適宜関連する事項の場所で御発言いただきたいと思います。   議論の進め方ですけれども,事務当局の資料33,これの第1から順番に議論を進めていきたいと思います。取り分け実線のアンダーラインの部分は新しく提示されているところでございますので,特に御発言をいただきたいと思います。   このような進め方でよろしゅうございますでしょうか。   それでは,まずこの資料33の第1の損害賠償の請求の項についてどなたか御発言をお願いしたいと思います。 ● まず,審理の回数3回か4回かということですけれども。そこに触れてよろしいでしょうか。 ● それは第2の審理及び裁判のところで審議したいと思いますので,今は第1の損害賠償請求のところのみの議論にいたしたいと思います。 ● そうですか。 ● 確認だけですけれども,第1回の審議で議論になりました危険運転致死との関係で言いますと,この第1の1では当然ながら危険運転致死傷は入ると,しかし業務上過失致死傷は除外されると,こういうことになりますよね,そういう理解でよろしいでしょうか。 ● そういう理解で結構です。 ● 第1についてはこれで結構ではないかと思っています。地方裁判所というのも当然だと思いますし,5番のところも,6か月ということであれば,被害者にとってもありがたいことではないかと思っておりますので,よろしいと思いますが。 ● そのほかございますか。 ● 細かな点なんですが,5の実線の部分ですけれども。先ほどの御説明で,催告の継続と同視するというお話だったんですけれども,実際に催告が行われて,それから6月以内に本制度の申立てがなされたという場合に,その申立てがなされた時点では時効期間を徒過していたという場合に,この規定振りだと時効中断の効力は認められないように思われるのですが,それでよろしいのか。つまり,そういう場面においては訴えの提起をしないといけないということになるのかなと思うのですけれども。ほかの制度,例えばよく言われたりしますが,破産手続における役員の責任の申立ての査定の場合には,これは破産法の178条の4項という規定がありまして,その査定の申立てがあったときは時効の中断に関しては裁判上の請求があったものとみなすという規定振りになっているわけですが,こういう規定振りにすれば,民法153条との関係で,催告後6か月以内に裁判上の請求とみなされた申立てがなされるので,時効中断の効力が担保されることになると思うのですが。この今回の規定振りではその場合には時効中断効力が生じなくなるようにも思われるのですが,そういう理解でよろしいのかどうかちょっとお伺いしたいんですが。 ● 今,○○幹事の御指摘を踏まえて若干そこは検討させていただきたいと思います。 ● それでよろしいですか。 ● 先ほど申立書の記載事項について事務当局の方から訴因と損害の内訳という結論だけということで予断排除などの問題にならないのではないかということがあって,それについては見解は違うんですが,この事務当局の出されている訴因及び損害の内容を記載した書面というのは,逆に言うとそれ以外のものを書かないようにするというふうな何か制度的な担保のようなものは考えておられるんでしょうか。 ● 申立書に記載すべき事項として,○○委員御指摘のとおりのものに限っていると考えております。したがいまして,それ以外のものは書いてはいけないということになりますし,そのようなものが書いてあれば必要に応じて補正を命ずるということなどもあり得るものと考えております。 ● その他何かございますでしょうか。   もしございませんでしたら,次の第2の審理及び裁判のところにいきたいと思います。それでは,ここで○○委員から御発言をお願いいたします。 ● 第2の3の審理回数ですけれども,3回か4回かということになっておりましたが,私どもが4回と言っているのはどういう流れで4回になるのかということをちょっと御説明したいと思います。   第1回目は,刑事判決言渡しの日に第1回を開くようになるかあるいは時期をおいて開くかですけれども,第1回を開いてその時点で被告人に反論がなければもうすぐ終結してもいいですし,反論があれば期日を続行するということになるわけでありまして。第2回に被告の反論が行われる。それから,3回目に原告の再反論ないし事実調べを行って,第4回で刑事判決及び事実調べを踏まえた上での原告,被告双方の最終意見の提出をすると,こういうようなことで4回ということを考えているわけでございます。 ● 今の審理の期日の回数とも関係するので事務当局にちょっと御質問なんですが。第2の1で有罪の言渡しがあったときは口頭弁論又は審理の期日を定めなければならないとこう書いてございますけれども,これは,趣旨として,言渡しがあるまでは期日指定ができないということまで含んでいるのでしょうか。 ● この期日指定の時期についての第2の1の規定でございますが,ここは第1の6も見ていただければと思うんですけれども,第1の6で被告事件について終局裁判の告知があるまでは損害賠償請求の審理を行わないとしていることから,それを受けて第2の1でもこのような規定をしていると今のところは整理しております。ただ,刑事裁判の告知をするまでは審理を行わないということと,期日の指定を行わないこと,その両者の関係が必然ではないとも考えられますことから,刑事判決の前に期日指定を行う必要があるかどうかということにつきましても御議論いただければと考えております。 ● もちろん有罪となった場合に限るわけですけれども,私は,刑事判決の直後に第1回の口頭弁論又は審尋の期日を開けるようにしておくのが制度としては合理的かなと考えております。要するに仮に有罪判決になった場合には,その直後にまず被告人の側に反論があるのかどうかということを聞く。仮にそこで損害も含めて反論がないということになればそれ以上期日を続行する意味はないわけですから,そのまま直ちに決定することができる場合もあるだろうと。逆に反論がある場合には,被告側の反論のための準備期間を設けなければいけませんから,それで第2回までに準備してくださいということになります。それで,第2回の準備を受けて,原告側が第3回にそれに対する再反論をすれば,審尋としては普通はそれで足りている,3回あれば足りているのではないかなと考えるわけでございます。   ただ,刑事の判決が被害者の主張されるところと常に一致しているとは必ずしも限らないわけで,刑事の判決が被害者の想定されていたのと違う結論,要するに一部認容のような場合もあり得るかなということを考えますと,その場合にはもしかすると第1回目の期日には実質的な答弁を求めるところまでいかなくて,むしろ第2回までの間に原告の側に主張の修正等をお願いすると。そうすると,1回ずつずれていくので,そう考えると結局4回を要する場合もあるのかなと,そういう感じがしているところでございます。いずれにしても第1回期日は刑事判決の直後に開けるようにしておくと,こういうふうな制度にした方が柔軟かなと考えておるところでございます。 ● そのほかこの回数について御意見ございますでしょうか。その点はよろしゅうございますか。   それでは,その他の点,全体について,今第2の審理及び裁判のところですが,御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 口頭弁論又は審尋ということになっているんですが,前回口頭弁論と審尋がどう違うかはお聞きしたんですが,口頭弁論にするのか審尋にするのかという判断基準というのは,具体的にはどういうことになるんでしょうか。 ● そこは正に事案に応じてということになりますので,例えば現行においても口頭弁論又は審尋の手続において審理するものというものはあるかとは思うんですけれども,それにつきましてもやはり事案に応じてそこは対応していくことになっていくかと思いますので,この手続において明確な基準はどうなのかということのお尋ねでございますと,そこは正に事案に応じて決まっていくというお答えになってしまうかと思います。 ● 口頭弁論の場合は今民事訴訟法の159条で擬制自白とあると思うんですけれども,被告側が一切答弁書も出さないというような対応を取ったときに,この審尋の場合も口頭弁論の場合も擬制自白という制度の適用はあると考えていいんでしょうか,それともないんでしょうか。 ● 結論的にはないと整理しております。 ● そうすると,被告人が答弁書を出さなくても裁判所は被害者側からのいろいろな損害に関する資料等を提出させた上でその証拠に基づいて判断すると,そういう仕組みになるということですか。 ● そのように考えております。 ● 先ほどの回数なんですが,ここの整理の仕方では「以内の期日において」というような書き方になっているので,それであれば例えば4回あれば終わると,でも3回以内となっているからそれで通常訴訟にいくというのは余り合理的ではないかと思いますので,4回ということで整理しておけばいいのかなと思います。   それから,先ほどの直後の期日の問題なんですが,余り私直後ということを想定してなかったんですけれども,考えられないことはないんだろうと思います。けれども,そうしますと後の論点になります移行権のところで判決後第1回までのときに被害者側が移行できるというようなことで私は考えていたら,余りそこが直後に期日を開くというのを原則になった場合余りそこは意味ないんだなと今思っていますので,そこの論点との関係を少し整理しなきゃいけないのかなと思います。それが直後開くべき,べきでないという意見ではなくて,そことの関係があるだろうなと思いました。 ● この第2の2の期日を定めたときは事件の当事者を呼び出さなければならないというのは,今の民事訴訟法の規定と口頭弁論についての呼出しと同じ規定なんですが。先ほど今の民事訴訟と一緒なんだからいいのではないかとおっしゃったんですが,実態の私たちがこういう手続が我々が弁護したり被告人にどう関わっていくかと考えるときには,期日指定がいつになるか今はちょっと分かりませんが,例えば判決が出てから期日指定を例えば1月後にするというふうなことを考えたときには,その被告人は例えば控訴していなければ刑が確定してしまっているというふうになると,拘置所に身柄はあっても例えば受刑区の方に移ってしまっていろいろな制限がかかるわけですよね。例えば家族との交信であるとか面会であるとか。そういう意味ではこの状態になった受刑者というのは本当に孤立無援な状態になってしまうのではないかなという意味で,通常の民訴と一緒なんだという議論なんですが,やはりこういう事態がどんどん増えてくることになると,先ほど言いましたように,この出頭の確保というのが現実にされないことには機会を与えているからいいのではないかという議論では現実のこの刑事施設が今非常に忙しくて過剰収容になっていて拘置所の職員が足りないという中ではやはり実際にはここに出頭することができないままこの仮執行付の命令を受けるという事態が生じるのではないかという点で,これはここの問題ではないですけれども,やはり矯正の現場としてもこういうものについてきちっとした制度保障というのがされないと,これがすべて被告人側からすれば義務を負担するという不利益な手続なので,その防御権の保障というのは被告人側から例えば国賠訴訟を起こしているという事件とは性格が違うのではないかと思ったりします。   それともう1つ,これもここの諮問事項とは関係ないんですけれども,私は本当にこういう制度が入るのであれば,受刑者であるとか拘置所にいる状態の被告人がこういう申立てを受けたときに自分はどうやって防御したらいいのかという,それについて今は何も制度がないんですね。例えば私たちが考えるのは,今法テラスというのが10月に始動しましたけれども,例えばこういう国の機関によって拘置所であるとか刑務所であるとかで定期的な例えば法律相談が行われて,刑事弁護人からの援助は得られなくなったけれども,無料でこういう申立てに対して例えばどう対応したらいいのか,時効を申立てた方がいいのか又は先ほど出ているような時効に対して同意した方がいいのかどうかというふうなことも含めて,その被告人や受刑者が相談できるような,例えば法テラスの弁護士が出張相談をするようなシステムとか,こういうのがないと実質的には孤立無援になった被告人の犠牲の下にこういう手続がどんどん進行していくということになるのではないかと思うので。先ほどおっしゃった民事訴訟と一緒だからということについては,やはり実態と無視したものではないのかなと,私はそう思います。 ● そのほか,この第2について。どうぞ。 ● 先ほどの擬制自白の点ですが,民事訴訟法の159条1項はどうなんでしょうか,3項だけが適用ないし準用されないという御趣旨なのか,159条1項,3項,両方ともということなんでしょうか。いずれなんでしょうか。 ● 今の点は少し確認させていただきたいと思います。 ● よろしいですか。   それでは,この第2の点を一応議論を終えまして,第3の通常の民事裁判所への移行という点に移りたいと思います。ここでは第3の1の当事者に移行申立権を認めるかどうかという議論と,それから第3の2の被害者の一方的な移行権についてその終期をいつまでにするかという論点がございます。それで,便宜上,まずは第3の2,それから第3の3も含めてこの当事者の移行権についての議論を行いたいと思います。どなたか御発言をお願いいたします。 ● この第3の1に関しては,私は当事者の移行申立権は認めるべきではないかと考えております。特に被告人,刑事裁判における被告人という立場に立ったときには,この制度設計ですと被害者側の同意を得て移行することができるという制度ですけれども,自らが移行するという権限はないという制度設計になると思うんですね。簡易・迅速な被害者の救済を図るという観点から,被告人サイドにおいても移行ができるという制度設計をいたしますと何のための制度かというような一方的な批判も受けるとは思うんですけれども。少なくとも裁判所に移行の判断をしてもらうという申立権は,被告人サイドにもやはり認めておくべきではないだろうかと考えております。   と同時に,裁判所の職権あるいは申立て又は職権で移行できる要件として,3回あるいは4回の審理で終結することが困難であると認めるときと限定をされておりますけれども,もう少し違った観点での裁判所の裁量が働く余地もあってもいいのではないかなと私自身は思ってはおりますけれども。いずれにしても当事者の申立てによる申立権というのは認めた方がいいのではないかと思います。 ● 私はこの制度の趣旨からできる限り被害者に有効な制度になるようにと思っておりますけれども。今被告人にも申立権をということですが,被告人に関してやはり配慮するというのであれば,第3の1のところを職権だけではなくて,申立てにより又は職権でということで被告人にも職権発動を促す申立てができるようにしておいて。その2,3に関しては先ほど直後に期日ということもありましたけれども,一応最初にすべき期日までは被害者のみということで移行権を認める,あるいは裁判所と被害者のみということで移行権を認める。それで,3については期日が始まった場合には双方相手方の同意を得て,あるいは双方の公平な形を取るということでよろしいのではないかと思ってます。 ● 私は第3の1については今,○○委員がおっしゃったとおり申立てにより又は職権でという形でよいと思うのですが,第3の2については第4回の部会でも述べたところですけれども,やはり被告事件について終局裁判の告知があるまでとすべきではないかという考えでございます。   その理由ですが,刑事判決があった後に移行を認めるということは,要するに気に入らない判決をした裁判所の審理は受けたくないと,こういうやはり裁判所選びを許す結果となるのではないかと考えております。両当事者に認めるのであればともかく,一方当事者にだけこういうことを認めるというのはやはり制度としてはバランスを欠いているのではないかというのが私の感覚でございます。   とはいえ,被告側にも移行権を認めるということになると,結局は被告側が同意しなければ使えない制度ということになってこのような制度を設ける趣旨に反するというのはそれもまたそのとおりだろうと思うわけでございます。そうだとすれば,刑事判決があった後は被告側だけでなく被害者側にもこのような無条件の移行権は認めないこととすべきではないかと思うわけでございます。   ただ,○○委員が第4回の部会で御発言されたように,現在想定されている制度では,被告側は刑事手続の中でも民事上の請求に関連する点について争うことができるのに対し,被害者側は刑事手続には必ずしも直接関与していないわけでございますので,場合によっては刑事裁判で認定された部分を含めて1から主張・立証したいと考える場合があるんだろうということはそのとおりだろうと思います。そのような場合は,1つはこの制度の利用を取りやめて,つまり附帯私訴を取り下げて別訴を起こしてもらうということも考えられるわけでございますけれども,そうすると時効中断ですとか被告事件の訴訟記録の利用といった点で便宜を使えなくなるということはございます。そうすると,やはり何らかの形で被害者側からの移行というのは認める必要がある場合があるだろうと思うわけですが,それは単に自分に不利益な裁判をした裁判所だから気に入らないから移行させてくれと,こういう裁判所選びではなくて,自分の主張・立証をきちっとするためには3回や4回の審理では足りないから移行させてくれと,こういうことではないだろうかと考えるわけでございます。   逆にそういうふうに考えてみますと,それは被告側から見ても損害論について争いがあって本格的な主張・立証を要するというような場合はやはりあり得るんだろうという感じがいたします。そうすると,結論としましては当然に移行するといえば当然に移行する第3の2のような移行権としてではなくて,第3の1のような移行,つまり裁判所に移行を申し立てて裁判所が3回ないし4回の期日で審理を終結することが困難であると認めるときに移行する。その判断を適切に行うことによって,要するに裁判所選びですとか,単にこの制度から逃げたいというような理由による移行は認めないけれども,この制度の限界に起因する合理的な理由のある申立てについては適切に移行させる,こういうことが可能なのではないかと思うものですから,結論としては先ほど述べたとおりになります。 ● ただ今の点について御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 第3の3の相手方の同意を得て移行申立てをするという制度についてなんですが。これは双方が例えば弁護士が付いているとか合理的に判断できるようなシチュエーションであれば双方とも合理的に判断すると思うんですが。例えば相手方で,例えば被害者の方が移行を申立てしたいと,移行したいと。しかし,被告人側に同意をどうやって求めるのかということですよね。例えば被告人が一切それに対して応答しない場合は同意があるものとみなすのか,同意を取れない以上は移行できないとするのかという意味で,さっきも言いましたとおり,被告人側がそういうサポートを受けていない状況というのは本当に同意していいのかどうかも分からないというふうな状況でこの同意制度というのは本当にうまくいくのかなというのが私ちょっと疑問があって。最終的には裁判所の決定でできるような方式にしておいた方がいいのではないかなと思います。   ただ問題は,さっきおっしゃっていたように,最初にすべき期日までもこういう制度にする場合は,裁判所には何の資料も恐らくないので裁判所がどう判断できるのかなというのがちょっと疑問はあるんですが。私自身は本当にこの同意制度がうまく機能するのかというのはちょっと疑問があるので,このあたりについては相手方が同意をするしないの返事をしない場合はどうするのかというふうなことはどんなふうにお考えか聞かせていただきたいと思います。 ● これは実際上の話になりますけれども,明確に同意の意思を表明しない限り,そこはやはり同意がないということで整理をせざるを得ないのではないかと考えております。運用としては例えば被告人についても身柄を拘束されているものとされていないもの,両方あり得ますので,されていないものについて直接会うというのはなかなか大変なことかもしれませんけれども,手紙で事情を説明して了解するものであればこれに署名・押印をしてくれということで返してもらうということでしょうし,身柄拘束されていればよりそういう形でやるということが考えられるのではないかと思っております。   それと,誠に恐縮ではございますが,先ほど○○幹事から御質問ありました点について簡単に御説明させていただきたいと思います。民訴法の159条のまず1項ですが,この159条は自白の擬制の条文でございますが,その1項は当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合にはその事実を自白したものとみなすということが本文に規定されております。   他方,159条の3項についてでございますが,3項は第1項の規定は当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用するということが,これも本文に規定されております。   今回の手続への適用関係でございますが,御指摘のとおり,3項についてはこれは結論的には適用にならないと考えております。逆にこの1項については相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合にはこれはやはり自白の擬制が働くということで,本制度については適用があると整理をしているところでございます。 ● よろしゅうございますか。 ● 先ほどの○○幹事の御発言に関連して質問があるのですが,刑事の判決が出た後の移行を認めないとすると,更に進んで,判決後の請求の取下げも認めないという御趣旨でしょうか。 ● 私が答えるのが適切かどうかという問題はございますが,私は取下げの方を制限すべきだと言ったつもりはないです。ただ,取下げは結局民事訴訟法の世界だと相手が弁論をするまでは取り下げることができるということでしょうから,そこまではこの制度の中でもできてもいいのではないかと思います。 ● 大体今,○○幹事に御教示いただいたとおりでございますけれども,訴えの取下げにつきましては現行法上相手方が本案について答弁するなどの応訴の態度を明らかにした後にあっては,相手方の利益の保護の観点からその同意を得なければ訴えの取下げができないとされていることかと思います。   本制度の下においてこの訴えの取下げをどうするかということにつきましては,最終的には事務当局といたしましてもこの部会で御議論いただければとは考えておりますが,少なくとも被告人である相手方が応訴の態度を示した以上,その利益の保護というのはやはり考えないといけないと思うんです。したがいまして,そのような場合には,被告人の同意を得なければ申立ての取下げを認めることができないという考え方も十分にあり得るのではないかと考えているところでございます。 ● 刑事判決の後に移行を認めると,被害者側の裁判所選びを認めることになるのでおかしいという発想からすると,請求の取下げもできないということになるように思うのですが,そうではないんでしょうか。 ● 今の点は時効の利益等を放棄すればできちゃうというのは民事の世界では一般的にあり得ることですから,それはもう制度的には組み入れられて,時効の利益を保持しながら時効の中断の利益,期間遵守の利益を保持しながら選ぶのがけしからんということになるんじゃないでしょうか。 ● 刑事判決の結果によって,この手続を利用するかどうかを選択すること自体が不当なのだという発想からすると,移行も取下げも同じことになるような気もするんですが,そうでもないということですか。 ● そこにコミットするかどうか人それぞれだと思うんですが。 ● 第3の1の職権でというのではなくて申立て又は職権によりと,職権でというので私は1はいいと思うんですが。この2ですけれども,判決を見た後は逃げるなとこういうことかと思いますけれども。やはり意外な縮小判決が出たとかいうようなことになると原因判決にはならなくても事実上の拘束は受けてその裁判官の裁判を受けることになるわけであって,一審の刑事事件では附帯私訴を原告は何も訴訟活動はしていないのですよね。それを考えますと,やはりこれは最初の期日まで,これまでは移行することができると,こういうふうにしていただきたいと思うんですが。いろいろ考えましたけれども,やはりそれがいいなと。 ● 今の○○委員のおっしゃっていることは感覚としては分かるのですけれども,もともとやはり制度としては刑事の裁判の方に拘束力をかけてないので,被害者の側の方がその判決の認定に不服があれば,刑事判決後の民事に関する審尋の中でそれに反する主張・立証をやっていくことができるとこういう制度設計だと思うんです。それが仮に長くかかる場合には,当然のことながら移行することになるでしょうし,それは正に第3の1の方で申立てにより又は職権だと書けば被害者の側からこれはこうかくかくしかじかですから審理に更に時間がかかりますと,だから民事裁判所に移行してくださいとこういうふうに言っていただければ,それは移行させないと言って頑張る裁判所は恐らくいないんだと思うんですね。   もう1点,○○幹事がおっしゃったのは確かに取下げの方であれば同じように逃げることができるのに,こっちだけできないというのはどうなんだとこういう御指摘だと思うんですが。確かにそれは取下げという制度と今回みたいに途中で原因判決ではありませんが,要するに何らかの判断を示す制度を組み合せたときに生じる現象ではありますが,だからといって正面切って一方側にだけそういう裁判所選びができていいんだという理由には私の感覚からするとやはりならないんじゃないかなという感じがするんですが,このあたりはむしろ感覚の問題になるのかもしれません。 ● この点についてほかに御意見ございますでしょうか。 ● 先ほど来の○○幹事と○○委員あるいは○○委員のお話を伺っていて,差はかなり小さいのかなという感じを受けます。○○委員の先ほど言われた事例で,確かにその場合にこの手続ではなくて本来の民事訴訟に移行させてもらいたいんだというお気持ちはよく理解できるところではありますが,他方で,その場合に○○幹事の言われるように,被害者の側できちんと自分の主張を組み立てて,それを本格的に立証していくということをやろうと思えば当然この手続の中では収まらないので,第3の1によって移行をさせることができるということになりますので,それでもやはりなお問題があるということがあるんでしょうか。 ● 先ほど直後に開いた場合にはこの話は全然意味がないんだなと思っていまして,裁判所の方に職権の発動を促す申立てをして移行できるという道で現実上それが解消できるのではないかというと,それを裁判所の方が柔軟に受け止めてくださればそれはそれなりによろしいと思います。   それで,被告人とのアンバランスが,この制度が非常にアンバランスだというお考えを法律の専門の先生たちがそう思うのであれば,それは構わないと思います。それに,直後に1回となりますと余り意味がない議論で,もう判決は終ってすぐジャッジにいくかなんていうなかなか判断を被害者側もつけられない状況だと思いますので,そうであれば職権発動ということでするという道で解消するならば,あえて固執はいたしませんけれども。 ● 今,○○委員の御質問は,そういう事件についてはかなり3回,4回では終わらないからこの第1の1で移行の申立てをすればいいじゃないかと,こういうことですね。おっしゃられているのは。   裁判所がそのとおりだと言って聞いてくれればいいんですが,いや,俺がやると。 ● 結局それはやりたいかどうかという問題じゃなくて,主張からして3回か4回の期日でできるかどうかということが要件になってますから,そこは御信頼いただいても大丈夫じゃないかなという感じがいたします。 ● この第3の論点について,ほかに御意見ございますでしょうか。   もしありませんでしたら,第4の不服申立ての方に入りたいと。 ● 第2の論点のところでちょっと聞き忘れたので2つだけお聞きしたいんですけれども。1つは,仮執行の任意的に付けるというところなんですが,その場合,今支払督促でもいろいろな仮執行については民事訴訟法の403条で執行停止の裁判という規定があると思うんですが,これについても併せて導入されるということになるんでしょうか。それが第1点と。   先ほど159条の自白の擬制について1項は適用があるとおっしゃったんですが,今の民訴法自身は159条で口頭弁論においてというふうに記載されているので,今おっしゃるような意味では審尋の場合でも擬制自白の適用があるというふうに変えるつもりなのか,それとも口頭弁論を開いた場合にはこの159条を準用してやるということなのか,その辺ちょっとどうなのか教えてほしいんですけれども。 ● まず第1点目のお尋ねの停止の問題につきましては,結論的にはその規定を準用する方向で考えております。したがいまして,現行のほかの制度と同様の形で運用されていくことになるものと考えております。   また,159条1項の点につきましても,ここはちょっと言い振りの問題であったのかもしれませんけれども,結論的には準用する方向で考えておりますので,やはり審尋の場合であっても同様の取扱いになるものと考えております。 ● 恐縮ですが,第3の下線部分ではないのですけれども,若干事務当局の方へ確認させていただきたい事項がございまして。第3の5,実は第4の2の方でも共通しますのでちょっとどちらでお尋ねしようか迷ったんですが。通常の民事裁判所へ移行する場合に,裁判所書記官が当該事件に関する記録を送付するという規定がございますけれども,この規定の法的性質といいますか趣旨がどういったものになるんだろうかというところにつきましてちょっと御確認させていただきたいと。   と申しますのは,現在の実務ですと個別の事件の中で必要に応じて民事裁判所から送付嘱託の申出に基づきまして事件記録の送付をしてもらうというような形になるわけですが,今回のこの制度は,言ってみますと,この手続を経た場合にはある種類型的にそうした送付を受ける必要性が高いということで,個別の嘱託に対する判断ということを経ずに,当然に送付をするというような発想で作られているのかなとも思ったんですけれども。   そうなりました場合には,送付を受けた民事裁判所でこの記録はどういうものとして扱うべきなのかと。1つには,ただちにそれが証拠になるというわけではないと理解してよろしいのではないかとは思っておるんですが,それを例えば当事者が証拠として使用したいという場合に,どういった形でそれが手続の中に反映されるのか。現在の送付嘱託の場合ですと,裁判所に到着したことによって直ちにそれが証拠になるというわけではございませんので,当事者の方でそれを閲覧謄写した上で,証拠としての申出を,通常の書証としての申出をしていただくということになるわけですが,それと同じような扱いを移行後の民事裁判所において行うというような理解でよろしいのかどうか,ちょっとこのあたりの立案の趣旨といいますか,そのあたりを御確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ● ただ今のお尋ねについてお答えします。まず,前提のところについて簡単にコメントしますと,資料に書いてあるとおりこれは当然送付の規定でございますが,送られたからといって直ちに証拠になるものではないと。これは通常の民事裁判所にいって民事のステージの問題ですので,やはり当事者のイニシアチブによってそれを申出してもらうということになろうかと思います。   この送付された記録の後の申出の手続についてなんですけれども,ここは正直申しまして様々な考え方があるものと思っております。例えば送付された記録のうち,幹事から少しお話のありました送付された記録についてこれを必要と考える当事者が提出という方法によって書証の申出をするという方法,これがまずあるのかなと思います。これは御指摘ありましたように,送付嘱託の少なくとも実務の運用についてはそのような形で行われているものと承知しております。   それともう1つの考え方としては,いわば現行の民事訴訟に認められた書証の申出の方法に特例を設けるという考え方でございまして,例えば証拠としたい文書を特定するだけで足りるということにしまして,いわば簡便な方法での書証の申出を認めるという考え方も選択肢としてはあるのかなと思っております。   いずれにせよこの問題につきましては,事務当局で決まった考え方があるのではなく,この部会で御議論いただければと考えております。 ● ○○幹事,それでよろしゅうございますか。あるいはどなたかそれについての御意見。 ● 確認ですが,そういたしますと送付嘱託と同様にというふうな考え方による場合には今回特段法律上の手当はしないけれども,場合によっては特則を法律上手当するという選択肢も事務当局としては今お考えの中の1つとして検討中というような理解をさせてもらってよろしいんでしょうか。 ● この問題は非常に実務に対する影響というのもございましてなかなか難しい問題ではないかと思っております。法律にどうするのか,書くのか書かないのかという点につきましても,現段階で明確な答えというのはできないものと考えております。まずは制度としてどうあるべきかということを御議論いただいて,それに従って後は法文化するときにまた法律に書くべきかどうか,書かなくて済むものなのかどうかということを関係当局とも協議しながら更に検討してまいりたいと考えております。 ● 実務的なことを申し上げると,例えば送付嘱託だということで更に民事裁判に証拠として顕出しなければいけないとなりますと,まず謄写をして甲号証,乙号証を作って出すということになりますと刑事記録が第1回で取り調べされてから移るとなりますと相当な謄写費用とか実際には掛かります。そうすると,今刑事の公判記録の閲覧謄写というような形で安く,司法協会などでは安くやっていただいていますが,そういう特例もそのままであれば民事だから使えないということに多分なるんだと思うんです,今の制度でいきますと。だから,その点については証拠の出方ですね,出方に先ほど言ったように特例等を少し設けていただいて,被害者に記録の謄写費用等の負担がこれ以上余りかからないように御配慮いただければ助かります。民事で記録を作ってまた謄写して出すというのは相当な手間ひまかかることで,かなり大変な作業になりますので,この点も頭に入れて実務的に考えていただければと思います。 ● この移行のところですが,実は刑事の裁判が非常に遅れていると,その判決を待って民事訴訟を受けていてはとてもいつになるか分からないという場合もあるんですね。当然私たちの案では刑事の裁判中でも移行できるという規定を置いていたわけです。この案ではそれがありませんので,結局そうなると訴えを取り下げて,附帯私訴を取り下げて訴えを起こすのかとなるんですが,そうした場合の時効の手当が今度どうなるかということなんですね。この第1の5の6か月の時効中断の効力というのは,これは免訴とか無罪とかなったときの規定ですよね。途中で刑事が長引くときに取り下げた,そういう場合をどうするか。 ● 御説明申し上げます。第3の2の規定でございますが,第1の1の請求をしたもの--被害者ということになりますけれども,その後時期的な制限については両論併記の形にしまして,被告事件について終局裁判の告知があるまで,要するに刑事で判決を言い渡すまでというものが1つの選択肢でございます。もう1つが,最初にすべき期日まで,これは民事の第1回の期日までということでございます。   したがいまして,どちらの選択肢によったとしても,刑事の判決言渡しまでは少なくともその被害者の方は移行させる旨の申立てをすることができるというふうに整理しているところでございます。 ● 分かりました。 ● よろしゅうございますか。 ● ちょっとすみません。 ● はい,どうぞ。 ● これは附帯私訴原告はどこへ座るんでしょうかね。刑事事件の傍聴席に座るのか,どこか中へ入って椅子でももらうのか。今まで全く議論してこなかったんですけれども。私たちの中では中に座らせてもらえというような議論はしておりましたけれども,ここでは1回も出しておりませんので。 ● 在廷の問題につきましてはむしろ第4の方でここを御議論いただきたいと考えております。附帯私訴原告につきましては,例えば刑事手続において訴訟活動をされるということですと比較的検察官の側に座っていただくと,バーの中に入っていただくという考え方になじむのかなと思うんですけれども,今回は御案内のように,刑事と民事を完全に分けて,刑事の審理はそれはそれで迅速に進めるということで特段の訴訟活動をしていただかないで刑事判決に至るということを考えておりますので,そうしますと結論的にはそれは附帯私訴原告だから,在廷するということには必ずしもならないのかなと考えているところでございます。 ● そうすると,民事訴訟は移行したと,だけれども傍聴席へそのまま座るんだと,公訴参加の問題は別とすればね,そういうことですね。 ● 今御説明しましたとおりで,刑事の間には一応一切民事の審理はしないという割切りにしていますので,もし附帯私訴--この附帯私訴という名前がいいのかどうか分かりませんけれども,この請求をした被害者の方が在廷したいということになれば第4の方で議論する,そちらの方で在廷していただくという,ある意味合わせたような形になりますけれども,そういう対応が可能なんだろうと思います。民事の世界に入ればそこはまた民事の話になっていくんだと思います。 ● 分かりました。 ● それでよろしゅうございますか。   それでは,そのほか,第3の論点についてほかに御意見ございますでしょうか。第3,よろしゅうございますね。   それでは,第4の不服申立てのところ,よろしくお願いいたします。 ● 2点ございます。まず,第4の1の当該決定があった日から2週間以内にというところですが,この手のものは告知ないし送達があった日から2週間以内ということになっておりまして,裁判の日からということは民事の世界ではほとんどないのではないかという気がいたしますので,そのあたりどうなのか。ちなみに労働審判法上の異議ですと審判書の送達があったとき又は両当事者在廷の場合において口頭で告知してから2週間ですか,となっておりますので,そことの違いは一体どこから出てくるのかということが問題になろうかと思います。   それとともに2つ目は,第4の3で,仮執行の宣言を付したものは効力を異議後も失わないとした場合に,第4の2の通常の民事裁判所に訴えの提起があったものとみなすという建前が維持できるのかどうかというのがちょっと疑問なのかなと。つまり,この第4の2はこの請求に係る裁判が効力がなくなるから最初から民事訴訟を始めたものだとみなしているわけですが,効力が残ってくるとそうしますとその効力が残ったこの請求に対する裁判を認可するかどうかあるいはそれを取消変更するかどうかという形に手続を組まないとまずいのではないかなという気がするわけでして。失う場合と失わない場合を分けるというのはかなり異議審の構造に大きな影響を与えるように私は思うんですが,その点はいかがなんでしょうか。 ● 2点目は非常に難しい問題でございまして,○○幹事からも更に御教示いただければと考えておりますが,まず第1点目のお尋ねにつきましては,これは結論的にはほかの制度と変えているつもりはございませんでした。表現を簡略化するということで当該決定があった日からというふうに少しさぼった形で書いてしまったんですけれども,さぼりすぎではないかという御趣旨でもあろうかと思いますので,そこはほかの書き振りとの整合性等を見きわめつつ更により良いものにしていきたいと考えております。   それと,2点目の第4の3と第4の2の訴えの提起があったものとみなすとの関係でございますが,まずその効力を失うものとすることということは参考にしたのが御案内の民事訴訟法の仮執行宣言前の督促異議の規定でございまして,仮執行の宣言前に適法な督促異議の申立てがあったときは支払督促はその督促異議の限度で効力を失うというものがございまして,基本的にはそういった書き方で効力を失うものについて書いてみたものでございます。   その上で,第4の2の訴えの提起があったものとみなすとの関係でございますが,やはり二重に債務名義が出るということは回避しなければいけないということを考えておりまして,少なくとも仮執行宣言の付いた決定について異議申立てがあって,それを民事の裁判所の方で判断する場合の判決というのは認可判決になるものと考えているところでございます。   事務当局としてはそのように考えているところでございますけれども,ここは民事の観点からいろいろな問題があり得るところかと思いますので,更に御議論いただければというふうに考えております。 ● 今の第2点についてですが,恐らく事務当局のお考えは,現在の支払督促の条文を前提としてそれを基礎にこの第4の3なりあるいは第4の2の項目を書いているんだと思います。それで私自身としては特にこの表現に違和感はありませんでした。○○幹事の御議論というのは,むしろ現在の督促手続の規定自体が,確かに395条の規定というのが仮執行宣言前の異議と後の異議両方にかかる形で書いてあるんですが,それがやや分かりにくいのではないか,という問題意識のように思うんですが,いかがでしょうか。 ● 私は督促異議がよく分かっていないというのもあるのかもしれませんが,どちらかというと私のイメージは手形異議に近いもの,手形訴訟における異議に近いものとして考えていたものですから,そこが効力が残るんだとすれば手形訴訟に対する異議に近いものであり,効力が残らなければ労働審判に対する異議,効力が消えてしまうのであれば労働審判における異議に近いというイメージで考えておりまして,もう1つ督促手続のことは余り考えておらなかったわけです。   ただ,例えば一部認容の決定がこの当該請求に,この請求に係る裁判でなされた場合に,それでは異議後の民事裁判所はどういうふうな裁判をすべきなのかというとやはり変更せざるを得ないのではないかという気がするわけですね。全部認容するのだとすると。そういうことを考えますと,私は何か仮執行宣言のように全部認容に相当するものにしか仮執行宣言が付けられない場合,付かない場合とはちょっと様相を異にするのではないかというイメージを持っているということでございます。 ● ただ今の議論をお伺いしまして,ここは民事の深遠な議論があるところだということがよく分かりましたので,先生方あるいは関係当局とも協議しながら更にこちらとしても検討を深めてまいりたいと考えております。 ● それでは,最後にこの諮問事項第一全体について何か御発言がありましたらお聞かせください。もしございませんでしたら,次の諮問事項第二に移りたいと思います。 ● これは全体にかかわるんですが,今回の印紙の問題は議論されているのかどうか,まだだと思うんですが。これは申立て自身についての印紙について何か被害者に軽減をするようなことが考えられるのかどうか。   それから,私非常に危惧するのは,簡単に決定が取れると思って被害者が例えば印紙費を軽減してもらって貼って申立てをしたけれども,命令が出て決定が出て被告人側から異議申立てをすると残りの印紙を多分貼らないといけないようになるということになると,資力のない被告人を相手にしているときに,更に印紙を貼って,また場合によったらさっき言った謄写費用もかけてやるというふうなことになるので。それはもともと覚悟してやればいいという話ではあるとは思うんですけれども,決して私はそうじゃなくて,簡単に取れるよというイメージを被害者の人たちに与えてやっていったけれどもだんだん重い手続に入っていかざるを得ない,今更引き返せないということになって。印紙の問題は結構問題になるんじゃないかなと思ったりするので,そのあたりについては何か軽減の措置みたいなものはあるのかどうかについてお尋ねしたいと思います。 ● 今,○○委員から御指摘のあった手数料の問題ということになるんでしょうけれども,正に今こういう制度を作っていく中で被害者保護支援のための制度を今作っているという観点からすれば,恐らく何らかの負担の軽減ということをやはり考えていかざるを得ないんだろうと思います。ですから,例えば通常の民事訴訟よりも軽減することができないかどうか,そういったことについては我々としても検討していく必要があるんだろうと思います。ただ,これは国の歳入にかかわる問題でありまして,私どもだけで自由に決められる話ではございません。関係当局との協議が不可欠なものでありますので,我々としてはこういう制度趣旨を踏まえてできるだけ努力していきたいと思いますけれども,その点については引き続き関係当局とも協議しながら検討を続けていきたいと思っております。 ● 先ほどの附帯私訴原告の刑事裁判における在廷の話ですけれども,手続を完全に分けているので在廷権は認められないというのはそのとおりで結構だと思うんですが。例えば附帯私訴原告に対して刑事裁判の期日を通知するといった手当てもなされないのでしょうか。 ● 期日の通知の問題につきましては,以前関係当局の方からそのような話もあったかと記憶しております。やはり被害者の方にそういった期日を通知して,刑事裁判にできるだけ来てもらい,傍聴をしてもらって,事案の内容をよく把握していただくということが,最終的には民事にもはね返って民事の迅速な解決にもつながるとも考えられますことから,ここは関係当局とも協議しなければいけない問題ですので,その協議を踏まえて対応する必要があるとは考えておりますが,その通知の趣旨ということも踏まえた上で検討してまいりたいと考えております。 ● 時間が大分経過しておりますが,できますれば休憩前に諮問事項第二までの議論を終えたいと思っております。   それでは,お差し支えなければ諮問事項の第二に移らせていただきます。公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大の問題であります。これに関する資料は資料番号34ですが,これは前々回に議論のたたき台として事務当局において用意された資料と内容は同じであります。この資料の説明も既に伺っております。   まずは,○○委員から,前回提出された資料中の諮問事項第二についての御説明をお願いいたします。 ● 先ほど紹介しました日弁連の意見書の3ページ,第二の公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大についてというところについて説明させていただきます。   まず,要件の緩和について。結論としては基本的な方向としては賛成であるということで,現行の犯罪被害者保護法3条1項が公判記録の閲覧又は謄写が認められる範囲を当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合,その他正当な理由がある場合に限定をしており,単に知りたいというだけでは閲覧・謄写が認められないとされています。しかし,犯罪被害者が訴訟の当事者であるかどうかはともかくとして,事件の当事者であることは疑いようがありません。そして,事件の当事者である犯罪被害者等が当該事件の内容について知りたいと考えるのは極めて自然なことであって,単に知りたいという心情も十分に尊重に値すると言えます。   また,現行法の犯罪被害者保護法3条1項は犯罪の審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは閲覧又は謄写をさせることができると規定をしており,閲覧又は謄写の許否について裁判所の裁量を認める規定となっています。しかし,犯罪被害者等が事件の当事者であることに照らせば,犯罪被害者等に対しては特に支障のない限り当該事件に関する情報を開示することが望ましいと言えます。したがって,法制審議会において提案されている案については基本的には妥当であると考えます。ただし,具体的な制度設計に当たっては以下の点に留意する必要があると考えます。   3点ですが,刑事事件の訴訟書類は本来刑事訴訟手続において使用されることを目的とするものである上,公判係属中に訴訟関係人以外の者に閲覧又は謄写を認めると当該公判等に支障が生じたり関係者の名誉・プライバシーが侵害されるおそれがあります。現行の刑事訴訟法が訴訟関係人以外の者の閲覧・謄写を認めていない趣旨もこのような点にあると解されます。したがって,犯罪被害者等に対して公判記録の閲覧又は謄写を認めるとしても,被告人を含む関係者の名誉・プライバシーへの配慮は不可欠であって,そのような観点から閲覧又は謄写の範囲を限定することが必要であります。ただし,現行の犯罪被害者保護法でもそのような扱いになっているので,それを改める必要があるという趣旨ではありません。   また,公判記録の閲覧又は謄写の要件が緩和することによって,謄写した公判記録が犯罪被害者等以外の第三者に流布される事態が生じる危険性が増大すると思われるところ,このような事態が現実化すれば,当該公判等に支障を生じたり,被告人を含む関係者の名誉・プライバシーが侵害されるおそれがあります。犯罪被害者等に対して当該事件に関する情報を開示することと,それを一般に公開することとは明確に区別されなければなりません。この点,現行の犯罪被害者保護法3条は謄写した訴訟記録の使用目的を制限し,その他適当と認める条件を付することができる,不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し,又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならないと規定しているが,その実効性が確保されることが必要であります。   第二の諮問事項の対象者の拡大について。結論は,基本的な方向としては賛成であります。法制審議会において提案された案が想定しているのは,例えば集団詐欺被害事件等のように,同一被告人による同種の犯罪行為による同種の被害が頻発しているにもかかわらず,すべての被害者が起訴対象となっているわけではない場合,起訴された被害者と起訴されていない被害者とが存在する場合だと思われます。このような場合,事件の全容を解明し,全面的な被害救済を図るという観点からは,起訴対象となっていない犯罪被害者等にも公判記録の閲覧又は謄写を認める必要性は高いと言えます。また,閲覧又は謄写を認める犯罪被害者等の範囲については,被告人又は共犯による被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われ,これと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者等と限定されていること,閲覧又は謄写の許否についても犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは閲覧又は謄写をさせることができると規定されており,裁判所の合理的裁量に委ねられていることなどを考慮すれば,起訴対象となっていない犯罪被害者等に対して公判記録の閲覧又は謄写を認めても,さほど弊害が大きくないように思われます。   したがって,法制審議会において提案された案が目指している方向性は基本的には妥当であると考えます。ただし,具体的な制度設計に当たっては,公判記録の閲覧又は謄写の申出を行った者が被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の犯罪の犯罪行為の被害者等であるか否かをだれがいかなる資料に基づきどのような手続で判断するかという点について,慎重に検討する必要があります。   すなわち,犯罪被害者等が直接刑事被告事件の係属する裁判所に対して疎明資料を添えて公判記録の閲覧又は謄写を申請するという制度を構築した場合,起訴されていない余罪に関する資料,しかもそれは刑事訴訟法では証拠とすることができない資料である場合もありますが,被告事件の審理を担当する裁判官の目に触れることになります。このような事態が現実化すれば,予断排除の原則や証拠法則との関係で問題が生じ,被告人の権利利益に看過し難い影響を及ぼす懸念があります。   したがって,この点について前記の懸念を払拭するような制度設計を行う必要があります。 ● ありがとうございました。   それでは,資料34の第1,第2にかかわらず,全体について何か御意見ございましたらちょうだいしたいと思います。 ● これも確認でございますけれども,被害者の方が単に知りたいということで閲覧又は謄写を請求された場合にも,この規定によるとそれは認められるということではあろうかと思うんですが,一方で犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して相当でないと認める場合というのが除外事由になっておりますので,単に知りたいということで申出はあったけれども,今私が申し上げたような事情によって閲覧又は謄写の範囲はこの範囲に限定されますよと,そういう取扱いを裁判所がすることは当然予定されていると,こう理解してよろしいわけでしょうね。 ● 基本的にはそのような理解で結構だと思います。今ある原則と例外をひっくり返すという形になりますので,やはり証拠書類によっては,ここに書いてあるような考慮事由で相当でないという場合もないわけではないと思いますので,それはそういう制限というかそれはあるということでございます。 ● ほかに何かございますでしょうか。   もしございませんようでしたら,この諮問事項第二の審議をこれで終了いたしたいと思います。   それでは,これから休憩にいたします。           (休     憩) ● それでは,会議を再開いたします。   諮問事項の第三,犯罪被害者等に関する情報の保護についてであります。この第三に関する資料は資料番号35でありますが,この内容は第5回会合で事務当局から提出された資料,資料番号28とその内容は同一であります。この資料35の全体について議論を行いたいと思います。いずれの点からでも結構でございますので,御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 意見ではなくて,1点御確認と申しますか質問なんですけれども。ここでの被害者特定事項と書かれているところ,括弧の中を拝見しますと当該事件の被害者の氏名又は住所その他その者が当該事件の被害者であることを特定させることとなる事項と書かれていて,それが全体を通じて秘匿の要請の対象ということになっているかと思うんですけれども,この規定というのは,現行法の中の295条の第2項とか,あるいは299条の2という,主として証人等にかかわってのこれらの規定とおおむねパラレルになっているようにも見えるわけです。ところで,この295条の第2項でありますとか299条の2というところを見ますと,何が秘匿の対象あるいは制限の対象となっているかというと,これらの者の住居,勤務先,その他通常所在する場所が特定される事項と書かれております。具体的に申しますと,例えば証人の氏名といったようなことは書かれていないわけですけれども,このあたりは違った取扱いをするということになるのかどうかというあたりを1つ確認したいと思います。 ● 今御指摘がございましたように,現行の刑事訴訟法は一定の証人の保護のための規定を既に置いているところでございますが,この現行法によりましても,証人の氏名が明らかになることにより,例えば当該の証人の通常所在する場所の特定につながるというような場合には,そのような氏名についても尋問を制限できることなり,また証拠開示の際に関係者に知られないように求めることもできることとなるのではないかと考えております。   また,その氏名が明らかになることにより,その通常所在する場所の特定にはつながらないものの,証人等を畏怖困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる場合などには,尋問につきましては現行の刑訴法の295条第1項の「その他相当でないとき」に該当するとして,これを制限できる場合があり,また,証拠開示の際には,同じく現行法の刑訴法の299条の2の「その他これらの者の安全が脅かされることがないように配慮することを求めること」の1つとして,その氏名についても関係者に知られないよう求めることもできる場合があるのではないかと考えております。   このように,現行法上,証人の氏名につきましても,一定の場合に,一定の危害を防止する必要があるということであれば,尋問の制限や証拠開示の際に配慮を求めることもできるのではないかと考えています。 ● そのほかございますでしょうか。 ● すみません。前も発言したときに運用上の問題ということだったのでそれがここにあることとどうかかわるのか,私は専門家ではないから分からないんですけれども,公判前整理手続をして裁判員制度みたいな裁判になっていったときに,この前も申し上げたように,名前とか住所とか伏せたとしても,プロジェクターによって本当に地図やらいろいろ家の写真やら全部出てきたり,全くそこにプライバシーはなく,それを見ただけで,その人の家の番地が分からなくても地図で分かってしまうとか,そんなお話を申し上げたときに,それは運用上の問題でということでしたよね。これはだから,そういういろいろ氏名とかそういうこと以外にも被害者であることを特定させるようなこととかについて配慮するということなんですけれども。   実際の裁判では始まってみないと分からないわけですね。申し出ると書いてありますけれども,実際に初公判に行ってみてプロジェクターでいろいろなものが出てきて被害者の方もここの目だけ黒くして正に分かるというようなことで出てきますから。ただ,それは運用上の問題というところで,別なところで,そういったことは今後の裁判員制度で公判前手続をしながらもっていく裁判のところで配慮されるんでしょうか。何か言ってる意味がお分かりいただけるかどうか分からないんですけれども。 ● 今回法律で規定しようとしていることは正にこの諮問事項に書いてあることなんです。それ以外のことについても運用としてはそういう被害者保護のために今検察においてもいろいろ努力しているところですし。ただもちろん立証する必要上どこまで出さなきゃいけないのかという,当然そういう問題は出てきますけれども,それも踏まえた上で十分配慮は今後も続けていきたいと思っています。 ● ただ普通裁判に行かれる被害者の方はやっとの思いで行きますね。それで,いきなりそういうプロジェクターで自分の家の中とかいろいろなのが出てきたときに,そんなものが出るとまず思ってなく行くわけですよね。だから,前もって申出をするとかそんなことって全然分からないと思うんです,普通ね。傍聴に行くかどうかというのもやっと決心して行くわけですけれども。予防ですよ,単にこれは。だから,実際にそういう裁判に入っていくときの運用上の差し支えがある場合には出ない,当然証拠として出さなきゃならない,裁判員に分かりやすくするために必要というのは分かりますけれども,そこまでしなくてもいいのではないかという例も本当にあったものですから,そういうことをちょっと申し上げました。 ● 十分配慮していきたいと思いますし,恐らく裁判員事件になるようなそういう被害者の方というのは,まず九分九厘検察官が直接お話を聞いていると思うんです。そういういろいろなお話を聞きながら,もちろんそういうところにも配慮しながらしていきたいと思っていますし,現にそういう方向で今動いているんだと思います。 ● その事件の経緯はもちろん詳細分かりませんけれども,いずれにしてもそういう事件の被害者の方ができる限り特定されないようにしなければいけないというのは,現行法の状態でも当然のことですし,被害者から申出がない場合でも,検察官の方で,進んで配慮して活動するということが必要なんだろうと思います。   今回こういう制度を作ることによって,その辺の検察の運用の在り方も当然もっと慎重にやるということが求められるということになると思いますので,より積極的に配慮する方向でやっていくことになると思っています。   なお,この規定の中で申出と書いてありますけれども,これは前にもちょっと御説明しましたけれども,基本的には被害者の方の意向によって採用を決める話であるから申出としておりますが,実際上の運用としては,被害者の方から言われるのを待っているということではなくて,むしろ検察官の方から,被害者の方の意向を確認するという形で,意思を踏まえて取扱いを決めていくということになりますので,第1回公判に来ていきなりそういう事態があるというようなことがないように,その辺は十分慎重にやっていくことになるだろうと思っております。 ● ○○委員の御意見を補足する発言です。裁判員制度との関係では,現在検察官だけでなくすべての法律家の頭が,もっぱら裁判員に分かりやすい審理の実現という方向に向いています。それは,裁判員制度の円滑な実施に向けた意識として確かに必要かつ重要なことではあります。しかしながらそのために,今後もその方だけに頭を集中しますと,想像力が欠如して,無意識に被害者の方のお気持ちを思い至らずに傷付けるということがあり得るだろう,それが○○委員のおっしゃりたいことなのであろうと思います。検察官のみならず,すべての法律家がこの点は配慮すべきことであろうと感じております。 ● それでは,諮問事項第三についてはこのあたりでよろしゅうございますか。   よろしければ,次の諮問事項第四に入りたいと思います。第四は,犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度であります。この諮問事項第四につきましては,事務当局から資料36が用意されております。また,本日席上に○○委員から提出された資料が配布されております。そこでまず事務当局及び○○委員,それぞれの資料について御説明を伺いたいと思います。   まず事務当局からお願いいたします。 ● 諮問事項第四の「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することができる制度」について,これまでの本部会における御議論等を踏まえ,事務当局におきまして審議・検討の参考としていただくための資料を作成いたしました。その内容について御説明させていただきます。   それでは,資料36を御覧ください。   まず最初に,第1の「公判期日への出席」について御説明申し上げます。   これにつきましては,これまでのこの部会におけます御議論におきまして,被告人の防御の観点などからの消極的な御意見も示されましたが,「事件の当事者」である犯罪被害者等がその被害に係る刑事事件の裁判の経緯に重大な関心を持つことは当然でありまして,「事件の当事者」としての立場にふさわしい扱いを受けることが重要であると考えられますことから,被害者等が,傍聴席ではなく,いわゆるバーの内側に出席して,刑事裁判の成り行きなどを十分に確かめることができるよう,公判期日への出席を認めるべきであるとの御意見が多く示されました。また,公判期日への出席を認めるべき場合に検討する事項として,出席を希望する者が多数である場合や,被害者等が後に証人として証言することが予定されている場合など,出席を制限すべき場合もあるのではないかとの御指摘もありました。   そこで,この資料におきましては,これまでに示されました御意見や御指摘を踏まえて,被害者等が公判期日に出席することができる制度について,考えられる案を記載させていただきました。   まず,1におきましては,裁判所は,被害者やその委託を受けた弁護士等から公判期日への出席の申出があるときは,公判期日ごとに,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聞いた上で,申出をした者が公判期日に出席することを許すものとすることにより,これらの者から申出がある場合には,後の4で述べますような特段の事情がない限りは,原則として公判期日への出席を認めることとしました。なお,公判期日への出席が認められる者としては,被害者やその遺族等のほか,今回新たに設ける制度におきましては,被害者等が弁護士に委託して一定の訴訟活動を行わせる場合も考えられますことから,被害者等の委託を受けた弁護士も含めることとしました。また,この資料では,裁判所は,「公判期日ごと」に出席を認めるか否かの判断をすることとしていますが,これは,後で触れますように,申出をした者が多数である場合に代表者のみを出席させるものとしたり,後に被害者等の証人尋問が予定されている場合など,出席を認めることが相当でないと判断されるときに,出席が許されない場合もあり得るところ,このような事情は,公判期日ごとに異なるものと考えられるためです。もっとも,出席の申出自体は,複数の公判期日を一括してすることも可能であると考えられます。   次に,2は,出席の申出の方法について記載したものであり,出席の申出は,あらかじめ,検察官にしなければならないものとしました。これは,出席を認める効果の1つとして,公判期日においても検察官とのコミュニケーションを適時に行うことができるようになることなどが考えられるところ,このような効果を十分に実現するためには,検察官が,申出の趣旨・目的や被害者等の要望を事前によく把握するとともに,これをも踏まえて,被害者等との間で,あらかじめ十分な打合せを行っておく必要があると考えられるためです。   また,3は,出席の申出をした者が多数である場合の代表者の選定について記載したものです。すなわち,多数の被害者等が出席の申出をした場合には,裁判所の設備の物理的な制約等から,全員の出席を認めることができず,代表者のみ出席を認めることとせざるを得ない場合もあると考えられますが,そのような場合,裁判所において代表者を選定することは困難でありますことから,裁判所が,申出をした者の全員又は一部に対して,代表者の選定を求めることができるものとしました。   最後に,4は,出席の制限について記載したものです。例えば,暴力団同士の抗争事件や,被害者等と被告人が一触即発の関係にあるような事件においては,「犯罪の性質」から,公判期日への出席を許すことが相当でないと判断される場合が考えられますし,被害者等が後に証人として出廷することが予定されている場合においては,その証言の信用性を確保するため,他の証人の尋問が実施される間に公判期日に出席することは,「審理の状況」から相当でないと判断される場合も考えられます。そこで,このような場合には,裁判所は,公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができるものとしました。   次に,第2の「証人の尋問」について御説明申し上げます。   これにつきましては,これまでの本部会における御議論において,黙秘権の保障を受ける被告人と,証言という重要な証拠を提出する証人とは,その立場が異なり,また,真実を証言する義務を負う証人の負担も考慮する必要があるのではないか,検察官の主張・立証と矛盾する尋問が行われることにより,真相の解明が困難になるおそれがあるのではないか,証人を直接尋問することにより,被害者等自身の証言の信用性が損なわれるおそれもあるのではないか,被害者等が証人を直接尋問することを認めなくとも,被害者等と検察官との間のコミュニケーションを充実させ,検察官が,被害者等の要望にも配慮しつつ,尋問を行うこととすれば足りるのではないかなどの観点から,消極的な御意見も示されました。しかしながら,他方で,証人の証言に対して,被害者等が直ちにその場で反論することが真実発見に資する場合も考えられるのではないかとの御意見や,例えば,情状証人に対して,検察官の尋問の後にその証言の信用性を弾劾する尋問をすることができるものとするなど,一定の場合に被害者等が証人を尋問する余地を認めるべきではないか,あるいは,尋問を認めることによる弊害については,裁判所が適切な訴訟指揮を行うことなどにより,回避するができるのではないかとの御意見も示されました。   被害者等による証人の尋問を認めるか否かについては,このように様々な御意見が示され,今回の会議で引き続き議論することとされたところであり,この資料ではこのような様々な御意見を踏まえて,考えられる選択肢の例として,A案からC案までの3つの案を記載させていただきました。   まず,A案として,被害者やその委託を受けた弁護士等が,犯罪事実に関する事項も含め,証人を尋問することができるものとする案を,考えられる1つの選択肢として記載させていただきました。なお,いずれの案におきましても,被害者等が尋問をする時期等については,事実についての主張・立証責任を負っている検察官の尋問が終わった後,補充的に尋問することができるものとしました。   次に,B案として,被害者やその委託を受けた弁護士等が,例えば,被告人やその親族による示談や謝罪の状況など,犯罪事実に関係しない,いわゆる一般情状に関する事項に限って証人を尋問することができるものとする案を記載させていただきました。先ほども申し上げましたように,これまでの議論において,例えば,加害者の親族が示談の意思についてうその証言をしている場合など,一定の場合に限定してであっても,被害者等が直接証人を尋問する余地を認めるべきであるとの御意見も示されたところであり,このような御意見を踏まえ,被害者等が情状に関する事項に限って証人を尋問することができるものとする案を考えられる1つの選択肢として記載させていただいたものです。   更にC案として,被害者等が証人を尋問することができる制度は設けないものとする案を記載させていただきました。被害者等が証人を尋問することができるものとすることについては,先ほど御紹介したように,これまでの議論において様々な弊害を伴うこととなる可能性も指摘されていることから,このような制度を設けないものとすることも考えられる1つの選択肢として記載したものです。なお,この場合であっても,例えば,公判期日に出席している被害者等が,証人に尋問してほしい事項について適時に検察官に希望を述べ,これを受けた検察官は,そのような尋問をすることが相当と考える場合には,そのような事項についても尋問を行うなど,検察官と被害者等が十分なコミュニケーションを取ることによって,被害者等の要望を実現する余地もあるのではないかと考えられます。   以上のとおり,第2の「証人の尋問」については,考えられる選択肢の例として,3つの案を記載させていただきましたが,皆様方には,これらを含め,考えられる制度につき,それぞれの利点や弊害も考慮しつつ,幅広い観点から審議・検討をしていただきたいと考えております。   次に,第3の「被告人に対する質問」について御説明申し上げます。   これにつきましては,これまでの本部会における御議論において,被告人の防御の観点などからの消極的な御意見も示されましたが,被害者等が納得できない被告人の弁解を弾劾するために,あるいは,意見の陳述をより実質的・効果的に行うことができるようにするために,被告人に対して質問することを認めるべきであるとの御意見が多く示されました。   この点,現行の刑事訴訟法第311条第3項は,検察官及び弁護人は,裁判長に告げて,被告人に供述を求めることができると規定していますが,他方,被害者等も,刑事裁判において意見を陳述することができる者であり,本部会においても御指摘があったように,被害者等が,被告人に問い質したい事項について直接質問を発し,これに対する被告人の応答も判断要素として,公判期日において意見を陳述することができるものとすれば,意見陳述をより実質的かつ効果的に行うことができることとなり,また,被害者等の名誉の回復や立ち直りにも資するのではないかと考えられます。   そこで,この資料におきましては,これまでに示された御意見や御指摘を踏まえまして,被害者等が被告人に対し質問を発することができる制度について,考えられる案を記載させていただきました。   まず,1におきましては,裁判所は,被害者やその委託を受けた弁護士等から,被告人に対して質問を発することの申出があるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で,被害者等が意見の陳述をするために特に必要があると認める場合であって,犯罪の性質等を考慮して相当と認めるときは,質問を発することを許すものとしました。ここで「意見の陳述をするために特に必要があると認める場合」に質問を認めることとしたのは,被害者等が被告人に対して質問をすることができるものとすることについては,先ほども申し上げましたように,被害者等の意見の陳述をより実質的かつ効果的なものとするとの趣旨が考えられることから,このような趣旨を示す必要があるのではないかと考えられたためです。なお,ここにいう「意見の陳述」としては,被害に関する心情の陳述を中心とする現行の意見陳述のほか,次に御説明する第4に記載した「証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述」を認める場合には,これも含むものとすることが適当ではないかと考えられます。また,「犯罪の性質,審理の状況,申出をした者の数,その他の事情を考慮して相当と認めるとき」に質問を認めることとしたのは,先ほども例に挙げましたが,例えば,暴力団同士の抗争事件の場合や,被害者等が後に証人として出廷することが予定されている場合,あるいは,申出をした者が多数である場合など,質問を認めることが相当でないと考えられる場合もあり得ることから,このような場合には,質問を認めないとすることが適当と考えられるためです。   次に,2は,質問の申出の方法について記載したものであり,質問の申出は,あらかじめ,質問を発する事項を明らかにして,検察官にしなければならないものとしました。これは,的確かつ効果的な質問のためには,検察官において,被害者等による申出の趣旨やその要望を事前に十分に把握するとともに,これをも踏まえて被害者等との間で,あらかじめ十分な打合せを行う必要があると考えられるためです。   また,3は,質問の制限について記載したものであり,被害者等が被告人に質問を行う場合も,検察官や弁護人が質問を行う場合と同様に,裁判長が,既にした質問と重複する質問その他の相当でない質問等を制限することができることを明らかにしました。   最後に,第4の「証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述」についての御説明申し上げます。   これにつきましては,被害に関する心情を中心として意見を陳述する現行の意見陳述とは別に,被害者等が,証拠調べの終了後に,検察官と同様に,事実や法律の適用についての意見を陳述することができる制度を新たに設けるべきであるとの御意見が多く示される一方で,被告人の防御権が侵害されるおそれや,証拠に基づかない意見や法に反する意見の陳述がなされるおそれがあるのではないかとの御意見も示されました。   そこで,この資料においては,これまでに示された御意見や御指摘を踏まえて,被害者等が,証拠調べの終了後に,事実や法律の適用についての意見を陳述することができる制度について,考えられる案を記載させていただきました。   まず,1においては,現行の刑事訴訟法第292条の2第1項に規定する心情を中心とした意見陳述のほか,裁判所は,被害者やその委託を受けた弁護士等から,事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において,犯罪の性質等を考慮して相当と認めるときは,公判期日において,刑事訴訟法第293条第1項の規定による検察官の意見の陳述,すなわち検察官の論告・求刑の後に,訴因として特定された事実の範囲内で,その意見を陳述させることができるものとしました。   この場合に陳述することができる事項については,検察官の論告に関する刑事訴訟法第293条第1項の規定の文言と同様に,「事実又は法律の適用」としました。また,「犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき」に意見の陳述を認めることとしていますが,その理由については,第3の「被告人に対する質問」において説明したものと同様です。さらに,陳述の時期については,事実についての主張・立証責任を負っている検察官の論告が終わった後にこれを陳述するものとし,また,意見を陳述することができる範囲については「訴因として特定された事実の範囲内」とすることとしました。   次に,2は,陳述の申出の手続について記載したものであり,陳述の申出は,あらかじめ,陳述する意見の内容を明らかにして,検察官にしなければならないものとしました。これは,これまでも御説明してきたのと同様に,この意見陳述が的確かつ効果的に行われるためには,検察官が,被害者等との間で,あらかじめ十分に打合せを行う必要があると考えられるためです。   また,3は,陳述の制限について記載したものであり,被害者等が意見を陳述する場合も,検察官が論告・求刑を行う場合や弁護人が弁論を行う場合と同様に,重複する陳述や事件に関係のない事項にわたるなどの不相当な陳述を制限することができることを明らかにしました。   最後に,4は,当然のことですが,被害者等による意見の陳述は,検察官の論告・求刑や弁護人の弁論と同様に,純然たる主張としてなされるものであり,その性質上,犯罪事実に関しても情状に関しても証拠とはならないものと考えられますことから,この点を明確にするために記載したものです。   以上,今回の資料の内容や考え方について,御説明させていただきました。今回の資料は,前回御議論いただいた,具体的なそれぞれの訴訟活動について,考えられる制度の案や選択肢の例を記載させていただいたものであり,そのそれぞれについて様々な御意見や検討すべき事項もあるのではないかと考えておりますので,皆様におかれましては,引き続き,幅広い観点から審議・検討していただきたいと考えております。   なお,この資料に記載させていただいた事項のほか,これまでの議論におきましては,「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することができる制度」を検討する前提として,刑事裁判における訴訟活動について,犯罪被害者等と検察官との間のコミュニケーションを一層充実させ,検察官が犯罪被害者等の要望を踏まえつつ,適切な訴訟活動を行うべきであるとの御指摘が多くあったところですが,この点につきましては,現在,事務当局でも検討しておりますが,最高検察庁におきましても,このような御指摘を踏まえ,犯罪被害者等と検察官のコミュニケーションを一層充実させるための方策を検討中であると聞いておりますので,この点につきまして可能であれば○○委員の方から御発言をいただければと考えております。 ● それでは,○○委員,お願いいたします。 ● 検察官と犯罪被害者の方たちとのコミュニケーションの充実のための措置についてですが,これまでの議論におきましても,新たな制度を設ける前提として公判活動全般について検察官と被害者の方々とのコミュニケーションを充実させるべきであり,検察官は被害者の方々の要望がある場合にはその方々とよく相談をし,それから要望に配慮し,適切な訴訟活動を行うべきであるという御意見が多くの委員,幹事の方から出されました。また,訴因の設定や証拠調べの請求,上訴につきましても,よく御意見を聞くとともに,説明をするようにしてほしいとの御意見も出されております。   最高検といたしましても,この部会で審議されているように,事件の当事者であります被害者の方々が刑事裁判に出席して直接関与することができる新たな制度が設けられることによって,刑事裁判におきまして被害者の方々とのコミュニケーションを充実させる必要はますます高まるものと考えております。   したがって,刑事裁判における検察官の訴訟活動について被害者の方々から御意見や御要望が出された場合におきましては,これをよくお聞きするとともに,よく御説明申し上げることがこれまでにも増して一層重要なことになると考えております。   さらに,検察庁は,各検察官が所属する庁や上級庁の長の指揮監督を受ける一体的な組織でございます。したがって,仮に検察官の訴訟活動が不適切なために被害者の方々が御不満に思われるようなことがある場合には,適切な指揮監督を行い,検察庁全体として,被害者の方々の心情に配慮した適切な訴訟活動に取り組んでいく必要があると考えています。   このようなことを踏まえまして,最高検察庁におきましては,検察庁全体として,広く刑事裁判における訴訟活動について,被害者の方々の御意見や御要望をよくお聞きするとともに,被害者の方々に十分な説明を申し上げることを確保するための具体的な方策について,鋭意検討を行ってまいりたいと考えております。 ● ありがとうございました。   それでは続きまして,○○委員から御説明をお願いいたします。 ● 何回か検討会でできるだけ検察官と被害者が協力し合って訴訟を行うようにという御意見が出ました。私どもはかなり独立的な立場で参加するということの案を作っていたんですけれども,御意見を踏まえますとこれはなかなか我々の言い分がそう簡単に通らないとこういうことで。また,御意見ごもっともなところが十分あるものですから,私どもなりにここで現れた御意見を前提にどこまで参加できるかということを考えてみた次第でございます。   今法務省案を御説明いただいたんですが,法務省の方は参加が公判ごとに裁判所の許可にかかっているということで,裁判を通してあるいは裁判前を通してずっと一体感を持つということになっていないような気がするわけでございます。   そこで私どもは,まず考えましたことは,これは前回申し上げましたが,第一に起訴に当たっては,1として,検察官は起訴するに当たって被害者の意見を聞かなければならないものとする。これは起訴するに当たってとありますが,起訴の処分をするときにということでございます。   そして,2は,検察官が被害者の主張する罪名と異なる罪名で起訴したときは,検察官は被害者に理由を付して書面で通知しなければならないものとする。この場合において被害者は検察官に再考を求めることができるものとする,こういうふうにいたしました。これは訴因の追加ということがここで袋叩きにあったものですから,それを撤回してできるだけ被害者の主張を聞いていただきたいなということで作ったものでございます。   それから,第2が公訴参加でありまして,これは罪種は別としまして被害者等は刑事裁判への参加を申し出ることができるものとしますとこういたしました。そして,裁判所は特に不相当と認める場合を除きこれを許可しなければならないと,こうして参加というのがまず徹底されるということ。参加人がそこで確定するということであって,公判ごとに出席するかしないかを決めるということではなくて,参加人という1つの地位をここでもらう。以後はその地位に基づいて何をするかということを決めていけばいいと,こういうことでありまして,それが第4ですが。   それまでに,第3ですけれども,公訴参加したときは被害者代理人弁護士は直ちに検察官に対し証拠請求しようとする証拠の閲覧謄写を認めることができるものとするという規定を置きました。これはできるだけ検察官と一緒に行動するためには証拠についても検察官が持っているものを見せていただきたい。そして,それに基づいて検察官と協議をしたいとこういうことでございます。   弁護士にはこれは閲覧謄写ということにしまして,被害者自身が証拠に直接触れるということは後で証人になったときなんかに影響があるだろうということで,これができるのは弁護士に制限をしたわけでございます。   そして,2として,前項の証拠の中には被告人弁護人が証拠として提出するために検察官に提出した証拠の写しや謄本,こういうものを被告人弁護士が検察官のところに持ってきた写し,そういうものも見せてくださいとこういうことにいたしました。被告人弁護士のところへはいきませんが,検察官の手元にある証拠なら見せてもらっていいじゃありませんかとこういうことでございます。   そして,第4として被害者代理人弁護士は,公判前整理手続に在廷することができるものとする,こういうことを考えました。これ公判前整理手続が始まりますと,もうそこでどんな証拠をどういう順序で行われるか決まってしまっており,公判が始まると一気呵成に行われて,一回の公判で結審されることもあると思うんですね。だから,どういう証拠を公判前整理手続でどういうことが行われたかということをやはり知る必要があるので。被害者自身が出席しても分からないものですから弁護士が座って傍聴することができると,こういうふうにいたしたわけであります。   整理手続の結果は弁護士から被害者に十分に説明させると,そうしたわけです。もしこれが弁護士が在廷しませんと,検察官が整理手続の結果を被害者に説明してもらわないと後の協力関係がうまくいかないことになりますが,これは検察官が一人一人やったら大変だろうということも考えました。法律用語の分からない被害者に一々検察官が説明するということは時間的にも大変だろうと。それだったら被害者の代理人弁護士を在廷させておいて,そこから説明させた方が時間的にも経済的にもいいのではないかなと,こういうふうに思ったわけであります。だから,当然これが弁護士が在廷しないときには検察官が被害者に説明するということになるわけです。   一番重要なのが第5の公判手続,ここにいくための前段階として今までがあったわけでありますが,公判手続において訴訟参加人は公判手続において検察官とのコミュニケーションを確保するために検察官の隣に着席するものとすると。先ほどからずっと何回も出ておりますけれども,検察官との連絡を密にするために隣に座る。   そして2として,検察官は,一定の要件に照らし,相当と認めるときは,裁判所に対し,訴訟参加人から被告人に対する発問を許すよう申し出ることができるものとする,裁判所が相当と認めるときは発問を許すものとする,こういう規定を置きました。これは前回も出ましたが,この点については検察官が聞くよりも被告人が直接聞いた方が効果的であるというような問題があるわけでありまして,そういうようなときに検察官を通じて裁判所に発問の許可を求めて発問すると,こういうような規定でございます。   それから,3番目は,検察官は,一定の要件に照らし,相当と認めるときは,裁判所に対し,訴訟参加人から情状証人に対する検察官尋問終了後の補充的な発問を許すよう申し出ることができるものとする,裁判所は相当と認めるときは発問を許すものとすると,こういうことを書きました。これは事実に関する証人だとなかなか証人に対する負担が重いというような反対がありましたので,情状に限って,しかも前回申しましたような事情のあるような場合,こういう場合については特に許していただきたいと,こういうことでございます。   そして,4番目は法務省のあれにもありますが,訴訟参加人は検察官の論告に引き続いて事実,証拠評価,量刑などについて意見を述べることかできるものとする。   第6は上訴でありまして,上訴するか否かの決定に当たって被害者の意見を聞かなければならないものとすると,こういうふうに書いておきました。   これが先ほど申しましたように,まず参加人という地位ですか,そういうものを決めて,その参加人が今言ったような在廷権であるとか被告人,証人に対する質問権とか意見陳述権とかそういうものが継続的にその地位から出てくるということであって,その都度その都度法廷がある都度裁判所の許可を得てやるということでは検察官とのコミュニケーションもうまくいかないのではないだろうかと,こういうようなことを考えたわけでございます。   もちろん検察官は被害者全員といろいろ協議したり意見を聞いたりしなきゃいかんこともあるでしょうけれども,参加人というままでいきますと,特に例えば兄弟の中で1人参加するということになるとその参加人を通じてまたいろいろなことが被害者に伝わることもできますし,ずっと継続的にコミュニケーションを持ち続けるには参加人制度というものを作る方がいいではないかということで考えた案でございます。 ● ありがとうございました。   それでは,ただいままでの御説明についての質問等は審議の過程でその点ごとにお願いしたいと思いまして,早速議論に入りたいと思います。   その議論の順序ですが,まず個別具体的な訴訟活動に関する論点についての議論に入る前に,いわば入口の問題として,○○委員御提出資料の第2の公訴参加の問題について議論を行いたいと思います。その後に,個別具体的な訴訟活動に関する論点について事務当局作成の資料に沿ってその第1から第4の順で審議を行いたいと思います。その後で○○委員提出のその他の問題についての議論を行いたいと考えております。なお,○○委員御提出の第5の点,公判手続につきましては事務局の案と論点が重なるものと思われますので,その点は一緒に議論をいたしたいと思います。   基本的にこのような形で議論を進めたいと思いますけれども,それでよろしゅうございますでしょうか。   それでは,まず,今申しました○○委員御提出の資料の第2の公訴参加の項目について議論をいたしたいと思います。どなたからでも結構ですので,御意見をお願いいたします。 ● ただ今○○委員の御説明を承りまして,部会長の御指示では第2の公訴参加について論ぜよといこうとでありますが,そういたしますけれども,その前に一言一般的な感想を述べたいと思います。   ○○委員も検察官とのコミュニケーションということから説き起こされましたが,この点につきまして以前の部会でいただいた「検察における被害者保護への取組について」,資料番号10というのがございました。今日も○○委員から検察側の取組の最新の状況についてのお話がございましたが,被害者の方とのコミュニケーションということについて,多面的に意を用いておられるということが感じられます。   したがって,○○委員の意見書のうちのかなりの項目が,既に実現されあるいは実現されようとしているのではないかという印象を持ちます。冒頭陳述書などは冒頭陳述の実施後に被害者に交付するということが行われているようでありますし,そのほか全般的に意見を十分交換しながら手続を進めていくという検察の対応が,この資料並びに本日のお話によって十分明らかになったと思います。   そこでこの第2の公訴参加ということですけれども,メリット・デメリットというのは少し大げさですが,長所と短所のようなものは考えられると思います。例えば公訴参加という言葉で法制審議会で結論を出しますと,それは一般には非常に分かりやすいという長所を持つと思います。ただ一方で,公訴参加という言葉は,少なくとも専門家の間では,ドイツの制度を指すものとしてこれまで扱われてまいりましたので,そちらを連想するとなりますと概念的な混乱を生じるおそれもあると思います。   ここで現在我々が想定している制度というのの内容は,公訴参加という観念の分析からは取り出すことはできないので,この事務当局から配布されました資料にあるそれぞれの項目を議論した後で,その内容の集積として新しい制度が決まっていく。そうなりますと,それに公訴参加という名称を与えることが適切かどうかということは,その後の段階で決まってくるのではないかと思います。   あと小さなことを付け加えますと,○○委員も訴訟参加人という言葉をお使いになりましたが,そういう言葉が生まれれば公判廷で便利な点もあると思います。裁判長は検察官,弁護人というふうに呼びかけられるのと同じように訴訟参加人と呼びかけることができるわけです。ただしかし,私はそれが適当かどうかということについては若干ためらいを感じます。やはり参加しておられる被害者の方についてはむしろお名前を呼んで,例えばヤマダさん,この点はどうですかというような,ある意味でくつろいだ姿勢の方がむしろ法廷の雰囲気にふさわしいのではないかという気がするわけです。   大まかな感想でございますが,一言申しました。 ● ありがとうございました。 ● 部会長が設定されました公訴参加の問題,それから被害者の手続関与の在り方全般に関する事柄について,私も○○関係官とかなり重なったことを言おうと思っておりました。ただ少し違うところもあります。また今日初めて○○委員の案を見せていただきましたので,これについても併せて発言させていただきます。   ○○委員のペーパーと委員の御説明をお聞きしまして,委員の一番おっしゃりたいと思われるところは,被害者の方が参加の申出をして,裁判所が参加の許可決定をすることにより,公訴参加人という法的な地位,一定の訴訟法上の権利ないし地位が付与される,その点が非常に重要であるという御趣旨だとお聞きしました。   それで,このような構成を採らなければならない絶対的な必要があるのかということを考えたときに,例えば○○委員の案ですと,公訴参加人の地位から出てくるのは第3と第4,1つは記録の閲覧謄写と,それから公判前整理手続への代理人弁護士の在席,これが直接出てくるんだと思いますし,委員のお話になりましたとおり,被害者の代理人弁護士に限って公判前整理手続に在席し,あるいは証拠を閲覧するということについては,恐らく個別にそのような権限を認める余地はあるのではないかと思われます。   そこで,もし公訴参加人あるいは訴訟参加人という言葉を使っておられますが,そういう法的地位の名前,名称が非常に重要で,しかも象徴的にも重要である,極めて重要な名称の問題であるということであるならば,元来法的な地位というのは,先ほど○○関係官がおっしゃったように,実定法によって認められた権限の束,権限の総称であるわけですから,今後の法改正によって様々な権利が付与されることになる被害者の法的な地位をそのように呼んで位置付けるということはできると思います。例えば,仮に私が将来でき上がった法律について刑事訴訟法の教科書・概説書を書くとしたら,そこには例えば「被害者訴訟参加人の地位」というような形・項目を設けて,刑事手続に関与する被害者の個別具体的な権限について,まとめて説明するということをするだろうと思います。そういう意味で,委員のおっしゃりたい地位ということが重要だというのはよく分かるのです。   ただ,更に考えてみますと,この参加の申出をし,裁判所がわざわざ参加許可の決定をするというような手続の存否にかかわらず,今後議論するように,残りの部分,例えば第5の部分は事務当局の案とほとんど重なっておりますし,ここに出てくる個々の権限はそれぞれ一定の要件があれば法定される権利行使が被害者に認められることになる。そういうふうに個別具体的な権限とその要件を明定する方が,もしかすると,より被害者の要望・利益に柔軟に対応することができる法律的な構成ではないかとも思われます。   例えば被告人への質問,あるいは現在ある意見陳述の制度,それから最終的な論告的意見陳述の制度,さらにそれらすべての前提としての在席の権利,これらがそれぞれ一定の要件の下で認められることになるとすれば,参加の申出という手続を介在させることがなくてもそれは法的権利ないし権限として認められるわけです。そしてそういう権利が被害者の方に付与されることになるというそのこと自体が正に訴訟参加ないし手続参加なのであって,それをまとめて総称すれば,それは1つの参加人の地位というものが現行法実定法によって認められることになるのだと理解することができます。   このように考えれば,そして先ほど○○関係官がおっしゃったように,第1と第6の部分は先ほどの検察庁のお考えの表明でほぼ実質的には同じような事柄が行われるということになれば,全体として委員の御提案の実質的内容はほぼ実現され,総体として被害者に参加人の地位が付与されたと説明できるのではないか,あえて第2の部分,参加申出手続を置かなくてもよいのではないかというのが私の印象です。 ● ドイツの公訴参加制度にとらわれすぎているのかもしれませんが,○○委員の御提案のように公訴参加という形で一定の地位を認めるというのであれば,それは,手続的な権利というのがそれに伴ってこそ意味があると思います。その関係で,事務当局の案について,後にお伺いしようと考えていたのですが,事務局案の構成は,その文言を見るかぎり,公判への出席にしろ,それ以外の,被告人質問,証人尋問,更には拡大された意見陳述にしろ,それを法的な権利として認めているというよりは,現在の意見陳述制度と同じような枠組みで立てられているような印象を受けます。繰り返しになりますが,公訴参加人という地位を認める以上は,法的権利があって,一定の例外的な場合については,それが認められないという構成になるのが自然だと思います。この事務局案が,それとは異なり,これらの訴訟行為は,法的権利ではなくて,被害者の申出に従って裁判所が裁量によって認めるという考え方に立っているとすると,それは,あくまで個別の訴訟行為ごとに認められるものであって,包括的な地位としての訴訟参加人という構成にはなじまないのではないかという気がします。   もちろん,法的権利でないにしても,一定の訴訟行為が認められる以上,それらをまとめた地位を訴訟参加人と呼ぶということであれば,それはそれで1つの制度の立て方だとは思います。ただ,私自身は,一定の包括的な地位を認めることと,具体的に認められる訴訟行為が法的権利でないということとが,どうもしっくりこないという印象を持ちます。 ● この公訴参加の問題は,前回も少し話題になりまして,私の方からは制度の作り方の問題ではないかということをお話ししたわけですが,法制度として作るかどうかはちょっとわきに置いて,実態といいますか,実際の運用としてどういうことになるんだろうかということを考えた場合に,前にも○○委員が言われていましたけれども,実際の被害者には非常に千差万別といいますか,いろいろな方がいらっしゃって,積極的に裁判に傍聴も含めて関与を求めてこられる方もいれば,なかなかそういうところまではできないけれども,非常に気になって仕方がない,いろいろなことを知りたいと思われる方もいるでしょうし,本当に傷付いてなかなかいろいろな人との接触ができない方もいらっしゃると思います。   検察官が公判活動をやる場合には当然いろいろな被害者に応じていろいろな対応をしなければいけないわけで,そういう意味で言いますと,特に積極的に検察官に意見を述べたりあるいは要望を述べたりされる被害者の方というのは,どちらかというとそれ以外の被害者の方と比べれば,検察官とのコミュニケーションが濃密になっていくといいますか,別にそういう方だけを検察官が手厚く対応しようとしているわけではないわけですけれども,当然のことながらいろいろな意見交換を通じてその関係が深くなっていくということが1つの実態としてはあるんだろうと思います。   そういう意味で,今回の公訴参加というのを制度として作るかどうかを離れて言えば,検察官の方から言えば,そういう被害者とそうでない被害者の方との間では濃淡の差なりあるいは接し方の違いが出てくるということがあると思います。○○委員が1つの枠組みを作ってその中できちんと検察官に対応してもらいたい,あるいはそれを踏まえて被害者としていろいろな活動をしたいと考えられるのは,その限りではよく分かるところではあります。ただ,その上で制度としてどうするかというのは,先ほど来○○関係官,○○委員,○○委員,それぞれのことをおっしゃったわけですが,やはり具体的な法制度の在り方としてそういう参加を申し出て許可をされるということが法的にどういう意味を持つのかとか,あるいはそれが法律上の概念として参加という言葉でいいのかとか,かなり技術的にはよく考えないと,詰めないといけない問題ではないかなという感じがしております。   先ほどの○○幹事が言われた権利なのかどうかということももちろん含めて考えなければいけない問題だろうと思いますが,私どもとしては,そういう法制度というか法技術の問題としては,最終的にどうするのがいいのかまだ考え中でございますし,この場での議論を踏まえてまた考えを詰めていきたいと考えているということでございます。 ● まさしく今,○○委員がおっしゃったとおりで,どういう組み方をするのかというのは非常に微妙な問題だろうという感じがするところでございます。今回の事務局から出ている資料の第1で公判期日への出席という制度があって,ここが要するに期日ごとに出席するかどうかを判断していただくということになっているところが適当なのかどうかということが,結構問題の本質的なところなのかなという感じがします。   というのは,証人の尋問にしても被告人に対する質問にしても証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述にしましても,いずれも出席して,その場面では間違いなく出席しているわけですけれども,例えば意見陳述を,出席していなかった被害者の方が突然最終回に現れて意見陳述をするということが果たしてどういうことなのかなという問題もあるような気がいたします。   訴訟を運営する立場から言いますと,一定の訴訟活動を何かしていただくということを考える場合には,その方がやはり一定の訴訟法上の,どう言っていいか分かりませんが,何らかの地位を持ってらっしゃるから発言をされたり質問されたりするのではないかなという感じがするわけでございまして,もし仮にそこに何らかのものがあるとすると,それについて何らかの名前を与えると,例えば訴訟参加人という名前を与えると,ということは必ずしもそんなにおかしいことなのかなというのは今ちょっと話を聞いていて思いました。   また,それと直接関係しないんですが,これまで遺族の方が傍聴しているというのと,今回この法務省,事務当局で作られました第1の公判期日への出席で御出席されるということとはどこが違ってくるんだろうかなと。恐らくこれはバーの中に着席されるということを出席と呼んでらっしゃるんだろうと思うんですけれども,やはり単なる傍聴ではないんだろうという気がするわけです。先ほど申しましたが,何らかの訴訟活動をやる可能性がある出席ということになりますと,それなりの訴訟法的地位というか責任が伴うように思うわけです。   例えば,これまで遺族の方が傍聴する場合に遺影の持ち込みということを希望されるケースが最近は非常に多うございまして,最近多くの裁判所ではそれについて遺族の方の心情に配慮してそれは許すということをやってきたんだと思うんですね。今後も,例えば,この直接関与する制度としてバーの中に座るとこういう制度を導入するとした場合に,ではバーの中でも遺影を持って入られるんだろうか,それは多分違うんだろうと思うんです。そこは恐らく,なぜ違うのかというと,やはり単なる傍聴ではなくてこういう制度を設けて関与する以上は何らかの訴訟法上の地位というか責任というかそれが発生しているんじゃないかなという感じが私はどうもするんですね。それに対して公訴参加という名称は私も不適当だという感じがするんですが,それについて訴訟参加という名前を付けることというのはそんなにおかしいかなというのは私の率直な感想なんですけれども。 ● 私は前回のこの部会の際に,本日の事務局案の第4にあるような事実又は法律の適用についての意見陳述というのはあり得るだろうと意見を述べ,その前提として公判廷にある程度継続的に出席しているといったような形での条件が必要であって,そういう意味では○○委員が発言されたこの訴訟参加的な構成に近いようなイメージの意見を述べたように思います。それ自体私は魅力に感じるところもあるのですけれども,ただ他面それは,先ほど○○委員も言われたかもしれませんけれども,非常に重い鎧を着るという話なのかなという感じもいたします。   イメージとして,恐らく公判期日への出席ということをベースにしながら,最後には実際に直接公判で見たこと等を踏まえて事実あるいは法律の適用について意見を述べるという一連のものとして見たときに,一番ベースになっているのは多分公判期日への出席ということだろうと思います。多分出席というのはかなり広く認められてよいし,事務局案でも申出があれば出席することを基本的には許すものとするというような書き振りもされているわけで,出席のところはかなり認められやすいのではないか。そして,それ以外にもし訴訟参加という構成を採ると,何らかの訴訟活動ができるということになってくるのかもしれませんけれども,訴訟活動については,それが相当かどうかということは,訴訟参加という構成を採ったとしても,多分ある程度個別に判断を加えていかなければいけないということになるのではないか。   ○○委員の案でも,第5の公判手続のところを見ますと,相当と認めるときはというような形で少しここは要件が加重されているようにも見えるわけで,そういう点では個別に判断をしていかなければならないということになるだろう。   そうすると,一番ベースにあるところの公判期日への出席というのがどの程度認められるのかということが,先ほど○○幹事が言われたように1つのポイントになってくるのではないかと思われるわけですが,そこについてはかなり広く認めてよいのだということだとすると,訴訟参加人という枠をかぶせるということとどれだけ違いが出てくるのか。むしろそうかぶせてもかぶせなくても,大きな違いというのはそこのところでは出てこないのではないかという感じもいたします。   逆に,訴訟参加人という形で重い鎧を着ることによって,例えば○○委員の案を見ていきますと,多分被害者については代理人弁護士が付いてくるというのが重要な意味合いを持ってくるように思いますけれども,すべての被害者がそういう形でやれるかというとそこもまた難しい場合というのがあるかもしれません。できるだけきめ細やかに対応していくということも重要であるわけで,基本的には出席のところは多分原則は出席希望があればできるということだとすると,あとはきめ細やかな対応ができる方がいいのか,それとも重たい鎧を着た地位をかぶせるのがいいのかということだろうと思います。私自身はきめ細やかな判断をしていくという方向に引かれるところがございます。 ● 私は○○幹事の御発言に全面的に賛成なんです。この事務局案を見たときに,はっきり言ってこれは基本計画の諮問事項に答えていないと思いました。つまり,基本計画の中身は犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することができる制度について我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行うということがあるんですね。ここの前には公訴参加制度を含めということも含まれてくるんですが。制度として日本にふさわしい制度を検討しなさいと言っているのにかかわらず,つまり例えば公判期日の出席については傍聴人である被害者がそのまま入っていくようなこういう書き振り--そういうふうに見えたんですけれども,公判期日ごとに許可制だと,わざわざ公判期日ごとにと書いてある。これだと例えば被害者がバーの中に入ってどういう立場にいるのか地位にあるのか分からないんですよ。   つまり,在廷することのメリット,私たちの立場,支援弁護士の立場から言わせていただくと,まず期日についてきちっと予定を聞いてもらうとかそういうことが出てくるんですね。つまり,傍聴人じゃない立場を得ると,当然得ると思っていたにもかかわらず,傍聴人だったのがそのまま中に入ったようにしか見えない。それから,バラバラにやれることについてももちろん全面的な権利性を被害者が持つことができるかどうかは別の議論ではあるけれども,何かポリシーがないというか理念が見えない,制度全体の考え方が全く見えないで,この程度ならいいかなというような感じしか見えないんです。   ですから,○○委員のこの公訴参加という言葉はともかくとして,傍聴席にいた被害者が中に入ってどこまでどういう地位で何ができるのかというような,それを1つの枠組みで見えるような形でやはり検討していただきたいと思います。それが重い鎧になるならば,これはA案で罪名で限定すればいいと思います。罪名で限定するのを附帯私訴のときには,諮問事項第一のときは政策的配慮だと,そうじゃなきゃ大変ですと皆さんおっしゃいました。実際にこれをやったら非常に大変だと思います。いろいろなこれとこれとこれはできますよということで,在廷できますよ,期日ごとに許可しますよ,被告人質問も最後補充的にできますよ,書面出してください,意見陳述もできますよというのを全部認めて,全罪種限定しないでやったら,はっきり言って今の検察官対応できないと思います。   ですから,それであればきちっと地位をここまでできますということでもっときちっとした全体とした地位を被害者の方に与えるために罪種を限定した上で参加人なら参加人ということで傍聴席にいる被害者とは違うということを明白にした形で制度設計していただきたい。それが実態的には中身,やることが同じであっても意味は全然違うと思うんです。   弁護士が付くから重い制度になるとおっしゃいましたけれども,大きな事件,重大事件の被害者は今ほとんど弁護士が実際上付いています。支援弁護士がほぼ付いてますので,そういう意味で罪種を限定してまずそこから始めてみるということであれば,被害者を,中に来てそういう地位を与える被害者ということを限定してもいいのではないかと思います。そうでないと何かせっかくこういうふうに基本計画が言っていることに対して検討しているにもかかわらず,ただただバラバラというような検討で終ってしまうのは非常に残念な気がしています。 ● 本日この問題については結論が出るわけではございませんが,この基本的な問題についてもう少し議論してみたいと思います。御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 私はずっと遠慮していたわけですけれども,事件の当事者である被害者を抜きにして裁判を関係のない人たちが進めてしまうということに対する憤りを被害者はみんな持っているんですよね。だから,それを訴えて基本計画の中で関与する機会を拡大するということになったわけなんです。それがこの審議会で簡単に変えれることはできないということは私もよく分かっておりました。だから,何らかの形で今の制度の中で許されるぎりぎりのところで私たちは参加していきたい。被害者を訴訟法の中で被害者として扱ってもらいたいと,こういう気持ちで作ったんです。ただここで何をさせてやるからいいだの,これをやるからいいだろう,同じことじゃないかと,こう言われるのは非常に私たちは残念なんです。もっと被害者,現実に被害を受けて泣いている者を,刑事訴訟は被害者のためにもあると書いてくれた基本計画の中でどう工夫してくれるかということなんですよね。   やはりそれのためには訴訟参加人ないし公訴参加人とか特別の名前を付けて,その手続の中で1つの位置付けをしてもらいたい。そして,権利の主体として考えてもらいたい。権利と言うとまたこれは検察官との間がどうするかこうするかということをいろいろ議論されるかもしれませんが,しかしそれはそうならないように一生懸命私ども考えたんです。これくらいならこれは参加人という名称を持っても今の訴訟制度と矛盾しないのではないだろうか。検察官とぴったりくっついてやることによってこの悔しい思いを晴らしたいということで作ったんです。それにはバラバラ,ただかやの中から何か投げてやればいいんじゃなくて,きちっとした位置付けをしてもらった上で,その位置の中からどういう権利ができるかということをしっかり決めてもらいたい。これは基本計画を作るころからずっと私どもが言い続けている。やっと規定ができ,そして基本計画ができたものですから,やはりその精神は重んじながらひとつお考えいただきたいと思います。   これによって刑事訴訟法,被害者が出てきてぶち壊すとかそういうことでは全くありません。私どもは円満に進めながら,しかも被害者としての思いを達成したいと,真実も知りたい,尊厳を守りたい,こういう気持ちでやっているわけですので,そこのところを御理解是非いただきたいと思います。 ● それでは,この基本的な問題は今後議論することと密接に当然関係しておりますので,議論の進行という点では事務局案に戻りまして,その第1から第4について,この順番に沿って審議を行いたいと思います。むろん今問題になっております基本的な問題はこれに大いに関連することでございますので,その点を配慮に入れた形でこれから事務局案の審議を行いたいと思います。   それでは,まず第1の公判期日への出席の点について,御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 第1の公判期日への出席という論点に限定されたものではなくて,第1から第4までの議論の前提について意見を述べるということになるかもしれませんが。   まず,第3回の部会で私が申し上げましたのは,検察官と被害者が十分なコミュニケーションを取り,検察官が被害者の意向を酌んで訴訟活動を行うことにより,大方の問題は解消するのではないか。ただ,その際検察官よりも被害者本人の方が適切な訴訟活動を行うことができる場面も想定されますから,そういった場面では,検察官と被害者がよく打合せをした上で,例えば被害者が被告人質問の一部を検察官に代わって行うとか,それから,検察官の論告に加えて被害者も意見を述べるといった制度にすることに意味があるのではないかということであります。   検察官と被害者とのコミュニケーションという点については,前回においても,○○委員,○○委員,○○委員,○○委員,それから○○委員も同様な意見を述べられていたはずであります。しかし,今回の事務局の案には文言上検察官が被害者の意向を酌んで訴訟活動を行うということがはっきりと表れていないという感じがいたします。そういった意味で前回までの意見が反映されていないのではないか。確かに,先ほど事務当局の方から,検察官と被害者とのコミュニケーションを取るべきであるとかいろいろおっしゃいましたし,それから最高検の方もそういった形でいろいろ努力するんだと,今後もやっていくんだというようなことをおっしゃいましたけれども,それがやはりこの文言上,はっきりそれを出すべきじゃないかというような思いがするわけであります。   それから,公判期日への出席につきましても,事務当局案には結局何のための出席なのかということが明示されておりません。○○委員がおっしゃったことと重なるかもしれませんけれども,そういう感じがいたします。そうすると,結局バーの中に傍聴人が入ってくるだけで,それがどう変わるのかというような思いにもとらわれるわけであります。その点ではむしろ○○委員から今日示されました公判手続第5の1のところに書いてありますけれども,そちらの方が前回までのこの部会での議論を反映しているのではないかという思いをいたします。 ● 検察官と被害者のコミュニケーションの話題につきましては,もちろん前回を含めいろいろ議論ございましたし,先ほど○○幹事の方から説明しましたように,私どもとしても引き続き検討しているところでございまして,文言が生み出されて御提示できる段階には至っていないわけではございますが,引き続き検討してまいりたいと考えております。 ● 第1について意見と質問をさせていただきたいと思います。私は第1の公判期日への出席については事務当局の案に賛成でございます。そして,その出席の形態につきましては,やはり被害者等にとって重要であり象徴的な意味もありますので,バーの中に入れて在席を認めるべきだと,こういう考えを持っております。   また,出席できる場合,それからできない場合について,出席できない場合もありますけれども,これも事務当局が説明された例を考えますと合理的な制限だと思われますので,これについても賛成であります。   公判期日ごとにとありますけれども,これにつきましても,これも制限との関係で意味を持ってくるという御説明でしたし,運用上杓子定規に公判期日ごとに被害者等に申出を求めるというわけではないということだと思いますので,そういう意味で賛成でございます。   質問といいますのは,平成12年に刑事訴訟法等の一部改正がありました。そこでは被害者等が証人として証言する際,法廷という場面,それから被告人の面前だということで証人が精神的な圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある場合に,証人の精神的圧迫を緩和するために付添いを認めたり,また,遮へい措置,あるいはビデオリンク方式,これらの方式を採ることができるということが認められましたけれども,今回のこの諮問事項第一の公判期日への出席が認められた場合に,特に私はバーの中で在席すべきだと考えておりますので,そういう点を考えますと,これらの付添い,遮へい,ビデオリンク措置,これらの措置はこの場合にも採られ得るのかどうかお尋ねしたいと思います。 ● 今御指摘のございました平成12年の法改正によって認められるところの付添いでございますとか遮へいといった被害者の方々の保護のための措置を,今回新しく設けることとする,これは公判期日への出席も含めて,そのようなものに認めることとするかどうかという点でございますが,これにつきましても,それぞれの訴訟活動ごとに,犯罪被害者の方々がそのような活動を行うことができることとされる趣旨でございますとか,あるいは現行法上の付添い,遮へい,ビデオリンクの措置を採ることが認められる趣旨などを勘案しつつ,それぞれの措置が採るべきものは採れるようにする必要があるのではないかと考えてございます。例えば例を挙げますと,遮へいなどにつきましては公判期日に出席した被害者の方々の不安や緊張を和らげるために,あるいは公判期日に出席した被害者の方々が仮に被告人や傍聴人から見られていることにより精神的な圧迫を受けるというようなこともそれはあり得ることだと考えておりますので,今申しました付添いや遮へいということも認める必要があるという判断になってくるのではないかと考えております。 ● 先ほど申し上げましたが,私のイメージとしてはやはり出席したいと,在廷したいということを言って,その被害者に関して事実上なのかとにかく一緒に期日を決めて,それでこの第4項のように,もちろん3項,4項とかそういうような制限はあるだろうと,それは当然あると思っています。だけれども,こういう第1項の書き方,それはどうしてもそういうような制度ではなくて,もう決められた期日に,じゃあ,被害者は出たかったらどうぞ,許可してあげますよと。先ほど一括の申請もいいと言いましたけれども,現実には期日を決めてもらわないと全然出られないわけです。その前にちゃんと一緒に打合せをして被害者もこれでいいと,それならこうしましょうと。そのためにはある程度そこに被害者は傍聴席にいた被害者じゃないという地位を認めていただかないとなかなか実務上できないのだろうと思います。それは裁判員制度などになりますと,本当に集中審理とかになったときに,まず支援弁護士が付いていても弁護士が出られない,今月2回ぐらいの殺人事件の公判で5人の弁護士が立ってても一度も出られないときがあって,急遽ピンチヒッターを立てるとか,みんな被害者側はそういうふうに対応しているんです。基本計画で検察官が期日に配慮するというものはできましたけれども,検察官で実際に配慮してくれた方は私はまだ知りません。   ですから,そういう意味合いでいきますと,本当に被害者が訴訟に公判廷に出席して,例えば被告人質問ができると,あるいは証人尋問一部できるというようなことまで決めていただけるなら,それを実行性あらしめるためにも,決められた公判期日に被害者どうですかというようなことではなくて,きちっと期日を決めるときから被害者がある一定の地位で関わっていくということにしていただきたい。   ここだけの書き振りを考えても「公判期日ごと」に書かなくても,4項で出席を許さないことができるということがあるのですから,これはだぶって書いている。ここに非常に何か嫌だなと思うんですよね。つまり,これで十分であるにもかかわらず,公判期日ごとにということが書いてあるということで,これは違うんじゃないかと思っております。   ですから,実務的にはそういう被害者側から見るともう期日の設定段階からかかわっていかないと恐らく,それこそたまに出席するお客さんみたいにしか現実にならなくなってしまう。 ● 恐らくこれ事務当局も別にたまにしか出席させないぞというつもりでこう書いているわけではなくて,出席できない場合もあるので「公判期日ごと」にと書いているんだとは思うんです。ただ,実務的な観点からいいますと,今,○○委員がおっしゃったことはかなり正しいというか正鵠を得ているところがありまして,恐らくこういう制度にすると,被害者の方に参加する機会を与えなきゃいけないということになると思うんですけれども。そこがどの被害者の方がそもそも参加したいのかということが分かっていないと通知のしようもないんですね。そこはもともと参加される希望を出す被害者の方には通知をするとかいう手当が可能なので,それはむしろそういうことは分かっていた方がやりやすいという面もあるような気はいたします。 ● そのほか第1の点についていかがでしょうか。 ● ちょっと確認。事務当局の案は,○○委員案には公判前整理手続における被害者代理人弁護士の在廷というのがありますけれども,先ほど来出てますけれども,検察官と被害者の方との十分なコミュニケーションを前提とすると,その公判前整理手続への参加は予定していない案であると,こう理解してよろしいですか。 ● 今お示ししているのは公判期日への出席ということで,この第1の中には公判前整理手続の話は入っていないという理解であります。 ● 関連する質問なんですが,先ほど何のために公判期日への出席を認めるかという話がありました。出席することにより,公判の推移をしっかり見ることができるとか,意見陳述のために役立つというのはそのとおりだと思うのですが,そうだとしますと,公判期日だけではなくて,例えば公判期日外で証人尋問を行うような場合についても,被害者の方に出席していただくというのが趣旨に合うように思います。その点は,事務当局は,どのようにお考えなのでしょうか。 ● 今御指摘がございましたように,特に証人尋問等の重要な証拠調べが行われる場が公判期日ではなくいわゆる期日外で行われるということもあるわけでございまして,そのような場合にも当然被害者の方々の出席を認めるということが必要になってくるんだろうと考えております。 ● 先ほどの○○幹事の御発言の中で,公判期日の通知というようなお話が出て,裁判所としてその点をお気になさるのもよく分かるのですけれども,例えばこの事務局案の構成ですと,申出は検察官にしなければならないものとするというふうになっているわけで,事務局の案のイメージとしては検察官から連絡がいくというようなことが想定されているのかなと私などは思ったんですが,その点はいかがでしょうか。 ● 検察官を経由してというように考えています。 ● すみません,今のお尋ねの趣旨を確認させてほしいんですが,ここで書いてございます「検察官にしなければならない」というのは,要は公判期日への出席の申出でございまして,この申出が検察官経由で裁判所に対してなされるということはここに書いたとおりでございます。お尋ねは,公判期日の通知自体がどうなされるのかというお話かもしれませんが,その点については,この事務局案には何も書いてございません。 ● この公判期日ごとに出席を許されるということは非常に面倒くさいですから,まとめて参加というようなことにしてしまえば簡単だし,それからぐるぐる日替わりメニューみたいに被害者がなりそうな気がするんですね,これだと。あるときは傍聴席に座る,今日は参加人席に座ると,こんなようなイメージがわいてくるんですが,それを通しで決めてしまってはまずいことがあるんでしょうか。 ● 特段それは,これは書き方の問題だったのかもしれませんけれども,出席を認めるべきでない,相当でないというのは4に正に書いてあるとおりで,期日によってはそういう事情があるんだろうということで,非常に技術的なことですけれども,今回はこういう書き方にしているだけです。もちろん方法としては今おっしゃったような1回申出をして包括的に認める,だけれども,ここの期日においては相当でない場合がある,そのときには遠慮していただくという,そういうやり方も当然あり得ると思います。 ● 第1について,ほかに御意見ございませんでしたら,第2の証人の尋問のところに入りたいと思います。ここではA案からC案までの3つの案が示されております。これらの3つの案,あるいはそれ以外の点でも結構ですが,御意見をちょうだいしたいと思います。 ● その前に質問もよろしいですか。私は前回,先ほど○○幹事が簡潔にまとめていただいた理由で,C案の主張,すなわち証人尋問制度は設けない方がよろしいとの主張をしました。しかしそのような主張をした想定は,A案を想定した反対論を述べていたのです。これに対し,今回のB案,それから○○委員の案も,いわゆる情状事実あるいは情状証人に関する尋問のみを可能にするという案が出てきているわけですが,まず,ものを考える前提として,B案そのものについていくつかお尋ねしたい。この事務局案で言いますと,一定の事項,犯罪事実に関係しない情状,まずこの範囲について,例えば広く情状と言いますと,いわゆる犯情,犯行の動機・目的のように犯罪事実にも密接に関係する事項がありますけれども,そういう事項は除いた純粋な情状事実と,そういう意味と理解してよろしいですか。 ● そういう趣旨です。 ● 分かりました。   それから,証人尋問という制度について,いわゆる情状証人でない証人と情状証人とを分けて扱う法制度というのは現在の刑訴法の世界にありますかというのがもう1つの質問です。 ● 不勉強でございますけれども,私が把握している限りでは,人の属性で純粋に情状だけを語る証人というのはもちろんいるわけでございますが,犯罪事実に関する証言と合わせて情状の証言をする方もおられるわけでございますので,人の観点からきれいに切り分けるということは,現行法上はそういう規定振りはないのではないかと思っております。 ● そうすると,B案というのは,ある証人がいろいろな事項に関する証言をし,これに対して被害者の方は通常は被告人側に有利なことを述べる証人に対して反対尋問という場で尋問する。そして主尋問に対する証言の中には,犯罪事実や犯情に関することもあったけれども,それは除いて,純粋情状に関する事項についてだけ,その証言内容の証明力ないしその証人の信用性を争うような,そういうイメージになりますね。   あるいはいわゆる情状証人,被告人側の人間,例えば被告人の親兄弟であるとか雇い主が証人となり,純粋情状について,例えば将来の指導監督等の見込みについて語られる。それについて検察官はあえて何も問わないまま終わるという場合もあるかと思いますけれども,そういうときに,被害者御自身が,あなたの言ってることは本当か,真に監督できる見込みがあるかというような形で反対尋問する,そういうイメージが想定されるようにも思われます。   このようなイメージの下で,被害者自身による尋問制度導入の適否につきいろいろ考えてまだ決めかねているのですが,私が前回述べたA案に対する反対論として述べた事柄を詰めていきますと,それでも仮に被害者による直接の証人尋問の余地があるとすれば,今想定したような場合,尋問する事項は純粋の情状事実に限るという整理はあり得るようにも思います。   ただ,具体的に被害者の方は何ができるか考えて見ると,情状証人の,あるいは情状事項についての証人の言い分が信用できない,あるいはその証人自体が信用できないという観点から反対尋問をすることになる。確かに,そういう訴訟行為が想定できるとしても,被害者が検察官の隣に在席されておれば,それは,すぐ横に座っている検察官にあの言い分は変だから聞いてくれという形でも御意向を伝達し,検察官に尋問してもらえば満たされる要請なのではないか。そして訴訟当事者である検察官が,即時に被害者の気持ちを汲んだ的確な反対尋問をすれば,更に加えて被害者御自身が尋問することは,重複尋問になり,訴訟法の世界ではもうそれは必要ないというような形になってしまう可能性がある。   あるいは,証人の主尋問における証言の信用性を争うという反対尋問の要請をいささか超えて,例えば,情状証人に対する尋問の場において,被害者自身が被告人側に立っているその証人に対して,自らの言葉でものを言いたい,そのような心情・要請があるのかも知れません。しかしそれは意見陳述やその証人と議論になることとほとんど紙一重の反対尋問であり,その場で証人に対する被害者自身の意見を述べているというような世界に近づいてくるのではないか。   このような被害者の発言ないし発問を認める制度が全くあり得ないとは私思わないのですが,果たしてそれを証人に対する尋問という法形式によって行うことが妥当か疑問が残るところです。情状事項に限定するとはいえ,B案のような直接証人尋問の制度を作ることが証人尋問全体の刑訴の世界の中での位置付けに何か不測の困った影響を与えないかという面と,今のような尋問あるいは被害者自身による発問の機会・要請に対しては,別の現行の制度でも間に合うのかどうか。もし間に合うのであればそちらの方でやった方がより効果的なのではないか,このような点を慎重に考慮・検討しなければならないと思います。 ● 明確化のために若干申し上げますと,犯情を除くというふうに申し上げておりますが,いわゆる示談であるとか謝罪であるとか,そういうプロセスについてはいわゆる犯情ではないと考えておりますので,そういったものも含む情状について証人に対して弾劾をする,信用性を争う尋問をするということを含めて,ここではB案として考えております。前回○○委員の方から言われた示談等の話について証人がうそを付いているではないかという形で尋問をするというのは,一応私どもの想定としてはB案で可能になると考えているところでございます。 ● 私は,刑事訴訟については素人ながら,前回A案に近い意見を申し上げました。そのときに申し上げたように,手続の混乱という問題は,裁判所の適切な訴訟指揮でカバーできるのではないかと,今でも考えています。また,そのときにA案に対する反対論として言われた,被害者が尋問すると,俗な表現によれば,検察官の立証が壊れるという議論や先ほどの御説明にあった,かえって真実の解明が犯罪事実に関して非常に難しくなるという御指摘には,,素人のせいかよく分からない面がありますし,必ずしも私自身は納得できるものではありません。   ただ,本日,○○委員から提案された案ではもう既にB案に近い意見になっていますし,また本日の事務当局の御提案ですと,A案にしろB案にしろ,いずれにしても検察官の尋問が終わった後に補充的に証人尋問するというそういう枠組みです。そうしますと,A案とB案との差というのはそんなに違いはないのかなと感じます。つまり,検察官として当然証人尋問でベストを尽くしているわけですから,特に犯罪事実そのものについては基本的に十分な尋問が行われていて,更に被害者が補充的に尋問する余地というのはそんなにないのではないことになり,そうすると,A案とB案はそんなに差がないように感じます。   ただ逆に心配なのはB案の方でありまして,今,情状ということの意味について明確に事務当局からお答えがありましたが,しかし所詮証人の属性によってはだれが証人かということだけでは区別できない。結局,尋問事項との関係で決まる問題だということになるわけで。そうすると殊更このB案という形で一定の事項という形で制限をしなくても,A案で補充的にというところをよく考えれば,適当なところにおさまるのではないかと,このように考えております。 ● 私は前回被告人と証人とでは,被告人については黙秘権が保障されている立場にあるのに対して証人の場合には基本的に供述義務を負っているので,先ほどの○○幹事の御整理に従えば,そのことに基づく証人の負担ということも考えなければならないのではないか,そういう立場からC案的なことを申しました。私自身はそこで述べましたように証人と被告人との間には線は引けるだろうと思っておりますけれども,しかし,では黙秘権がある被告人と供述義務を負う証人との差異を前提にしつつ証人に尋問をするということを許したらおよそ理論的におかしいのかというと,そこはそういうことではなくて,政策的な判断の問題として考える余地はあるだろうと思います。被害者のお立場を考えればそこまで質問させるということもあり得るということなのかもしれない。そこはどこで線を引くか,理論的にこうでなくてはいけないということでは必ずしもないのではないかとは思っております。   ただ,この間の御議論で,訴因の枠内で被害者は関わるというようなところについては大きな御異論を見ずに話が落ち着いてきているのではないかと思います。訴因の枠内でということだといたしますと,犯罪事実の主張・立証については,基本的にはこれは検察官に委ねるということになっていくのかなと思うわけで,証人尋問ということで考えると,B案的なところ,広げるとするとB案的なところかなという感じを持っております。 ● そのほか御意見ございますでしょうか。 ● この証人尋問を入れるかどうかということは,もう少し皆様の議論を伺っていると,また議論した方がいいのかもしれませんけれども。先ほど○○委員の方からどういう場合に具体的な必要性,合理性があるんだろうか,そこはもう少し検討したい,考えたいということで。○○案を拝見していますと,この書き振りが検察官が相当と認めるときは裁判所に対して申出をすると。その前提としてコミュニケーションを図っているんだという案になっておりまして,これは推測で,そのように考えられたかどうかよく分かりませんけれども,その点について,要するにバラバラにやるのではなくて,検察官がどういう切り分けをし,それが検察官の尋問ではなくて被害者を尋問するのが相当であるというふうに考えられるかということを一応検討した上で,検察官から申出をするというような形式になっているのだとすれば,それはそれなりの配慮があるのかなと。たたき台の方が別にそういうことを配慮してないと申し上げるつもりはないんですけれども,○○案についてはそういう配慮があるというあたりは含めて検討した方がいいのかなという感じはいたしました。 ● 先ほど○○幹事の方がおっしゃったことでちょっと理解しにくいところがありまして。前回は証人と被告人について供述義務,黙秘権で切り分けられてそれはそれなりに分かりやすかったんですけれども。今日のお話を聞いていると,情状証人については政策的にそれは解除されるという部分が理論的になぜ情状証人,つまりそれは情状というものを言うからそれは解除できるのか,それとも被告人側の証人だということで解除できるのか,そのあたりの理論的に政策的にとおっしゃるんですが,どうして,その根拠ですよね,その辺がまだ十分に理解できないんですけれども。 ● 発言の仕方がよろしくなかったかもしれません。私自身前回申し上げましたように,被告人は黙秘権を持っている,それに対して証人は供述義務を負っている,そこに1つの線があるんだという,これは私自身そういうふうに思っています。ですので,今でもC案的なものの考え方に私自身は引かれるというのを本当はまず言わなければいけなかったのかもしれません。その上で,ただ,例えば供述義務を課されている証人に犯罪被害者から質問をさせたらそれは理論的に許されないことなのかと,義務を課している以上およそ許されないことなのかというと,それは多分そうではなくて,そういう義務を課せられて話す人と犯罪被害者の方々を刑事手続の中でどのように位置付けるかということとのバランシングの問題で,証人の尋問ということを原理的に許さないという理屈ではない。1つの差はありますけれども,原理的に許されなくなるようなことではないだろうと思います。ですから,そこは腹を決めて一歩出るということももしかしたらあり得るのかもしれない。   ただ,あったとした場合に,じゃあ,どこまで広がるのかといったときに,訴因の枠内での訴訟活動ということがほぼ前提として考えられているということだとしますと,訴因に関する,つまり犯罪事実に関する主張・立証というのは基本的には検察官に委ねるということになるのだろうと。いわばそこは引き算として情状部分が残ってくると。そういう構成というのもあるかもしれないというような趣旨での発言でございます。 ● 私は,前回,この問題を扱った際には,証人尋問であっても認められる余地があると思うけれども,ただそれを認めることによる弊害もあり得るので,その点を考える必要があるだろうということを申し上げました。証人尋問を認めることに伴う弊害といいますか,問題点として考えられるのは,先ほど○○委員がおっしゃったとおりで,第1に,検察官と被害者とで立証方針がずれることによって真実解明が逆に妨げられることになる恐れがあるという点,第2に,例えば,訴因の枠を超えるような不相当な質問がなされた場合に,裁判所がそれを訴訟指揮権で的確に制限できるかという点です。   この2点につき,実務家の委員・幹事の方から御意見があり,この2つの問題点というのはかなり解消しづらいということでした。この点,B案のように情状事実に限れば,犯罪事実に関する検察官の立証が崩れるということもないわけですし,また,第2点につき,訴因外の事実に関する質問かどうかというのは聞いてみないと分からないという御意見もありましたが,その点も,情状事実に限れば特に問題として出てきません。先ほど挙げた具体的な弊害が,運用ではどうしても解消できないということであれば,B案のように制限するというのも,1つの考え方として十分成り立つと思います。 ● 私は証拠調べ請求権を前回言いましたら袋叩きに遭いまして,証人尋問についてもかなり厳しい御意見いただいたんですけれども。例えばこの今の証人尋問のA案,B案,C案とこういうふうに書いた場合には,ちょっとよく分かりませんが,第3の被告人に対する質問を見ますとかなり限定的に補充的になっております。もしこういう書き方をするのであれば,例えばB案みたいな形で先ほど○○委員がおっしゃったように,では情状というものは分けられるのかなんていうような論点もありますけれども,A案的にしておいて,それをかなり絞りをかけて検察官の補充とか必要性とかあるいはそこに情状にわたるもののみと書くのがB案なんでしょうけれども,A案みたいな形にしても相当絞り込みはできるのではないか。何を聞きたいか出せというようなことを入れますとですね。ですから,情状というような絞り方が非常に難しいとか,実務的に難しいのであれば,A案的な文章にしてそれを絞り込むのか。   最低B案,お願いしたいと思っています。最低B案ですね。というのは,必要性があるんですよ。理論とかの問題ではなくて,これは被害者にとっての必要性と弊害の少なさなんですね。ですから,そうすると被告人質問というと現実的には,原理的にはかなり近づく場合が多いので,最終的にはB案までは認めていただきたいけれども,A案的なもので記載を絞っていくという○○委員のおっしゃるようなそれでも可能だと私は思います。 ● よろしいですか。   それでは,次に第3の「被告人に対する質問」の項に入りたいと思います。御意見ちょうだいしたいと思います。 ● 2点お伺いしたいんですけれども,1点は前回の御議論の中で,また今日も○○幹事からも出ていますけれども,証人と違って被告人の場合は黙秘権が保障されているから質問できるんだということで,現行法上確かにそのとおりで,供述を拒否することは全く自由なわけでありますけれども。ただちょっと気になるというか教えていただきたいのは,確かに裁判官とか検察官からの質問に対して拒否できるとしたら,被害者,特に深刻な事件の被害者とかその遺族から質問されるときにかなりプレッシャーを感じる,そのプレッシャーはどちらのプレッシャーでも感じ方を同列に扱っていいのかというようなところで。もし私の杞憂であれば問題ないんですけれども,被害者側の質問によって供述拒否がなかなか困難になるおそれはないのかというようなことで。もしそうだとすると,事実上黙秘権の侵害のおそれはないのかと,ちょっとその辺が気になったことが1点教えていただきたいことと。   もう1点は事務局案に対してですけれども。3の2のところで申出ですけれども,これは手続なんですが,納得できない被告人の弁解に対して被害者側がその場で直ちに弾劾とか反論のために質問できるとそういう制度といたしますと,それはあらかじめ質問,発する事項を明らかにするとありますが,検察官に対してその審理の途中で行うという理解でよろしいのでしょうか。具体的な手続がどうなるのかという,2点お願いします。 ● 恐らく両方あるんじゃないでしょうか。要するにあらかじめ被告人質問が予定されていて,その場合に被害者がこういうことだけ自分の口から聞きたいということも多分あるんだと思うんです,そういうのは文字どおりあらかじめということになるかと思います。   それから,被告人質問があって,そこでいろいろなことが出たという場合ですが,その場合には通常弁護人の方から被告人質問があり,その後検察官がやる。その後,具体的な手続をどうしていくかはともかくとして,そこでこういうことを被害者としても聞きたいということを告げれば,それでもこの要件を満たすんだと思います。 ● それは審理途中でそれを話し合って,それで裁判官に対して申立てると,そういう。 ● そういうイメージなんだと思いますけれども。 ● 分かりました。いや,事務局ではなくて○○幹事がおっしゃったので,例えばそれでよろしいですし,○○委員とかその辺の,杞憂であれば。その辺は大丈夫。 ● 事実の問題として,被告人が自ら付与されている刑事訴訟法上の権利ないし憲法上の権利を行使しにくいかどうかという問題は,分けて考えた方がよいのではないかと思います。制度設計の問題を考えるに際しては直接の関係はないというのが私の理解です。制度として,刑事訴追を受けている被告人は憲法上自己に不利益な供述を強要されず,かつ刑事訴訟法上は包括的な黙秘権を持っていてあらゆる供述を義務付けられることはない,それと原則的に供述を義務付けられる証人とは全然法的な地位が違うということ,こちらの点を制度設計の前提にした方がよろしかろうというのが私の意見です。 ● ○○委員の御質問というのは,被害者が非常に真剣に迫ってきたときに事実上拒否できなくなるのではないかというお話ですけれども,要するに被告人の意思決定の自由が損なわれなければよろしいということであって,もしそんなことになればそれはいけないということになるのかもしれませんけれども,現実に被害者が真剣に迫ったからそうなるとは私はちょっと思いません。 ● この制度は,やはりこれまでの議論でも検察官と被害者とはよく打合せをして,この質問は被害者がした方がいいと,こういう質問をその部分を被害者が検察官に代わって質問をするということでありますから,本来犯罪事実の立証に関する,要するに黙秘権が深刻に問題になるようなものについては,もともと被害者がそこで代わってやるということは余り想定されないのではないかという感じがするんですね。これまで○○委員あるいは○○委員あるいは○○委員の方から,こういう場合に被害者の方が発言したいと思うとおっしゃっているシチュエーションというのは,そういう黙秘権が憲法上問題になるような場面ではなくて,正に被害者の面前で全くうそのようなことを言っているときに被害者が黙って聞いてなければいけないのか,そういう議論だったような気がしますので。理屈の問題とは別に余り本格的な問題になるのだろうかという感じが私はします。 ● 第3の被告人に対する質問の1の裏側のところの上から3行目ですか,「委託を受けた弁護士が意見の陳述をするため特に必要があると認める場合であって」とありますが,非常に要件が厳しすぎるんじゃないかと思うんですね。意見陳述のためというだけではなくて,やはり事実を確かめたいという部分もあるわけですね。そして,自分の尊厳の意義を守りたいために是非とも聞いておきたいということがあるので。これは検察官と十分打ち合わせするといっても被告人質問のときに被告人は突然何か言い出すことがあると,打ち合わせする余裕もないというふうなときに,今の点についてはこうですが質問させてくださいと検察官に頼んでそこで質問させてもらいたいときもあると思うんですよね。   意見陳述のためということもちょっと絞りがきついし,特に必要がある場合とまたここで特に強調されたということもさっきの証人のところの記載と見ると被告人に対する質問が非常に厳しすぎるような,逆になっているような気がするんですね。   それから,先ほど○○委員からも御質問がありましたけれども,この2の「あらかじめ,質問を発する事項を明らかにして,検察官にしなければならない」とありますが,これは重罪について裁判員の付く事件というのは本当に2回か3回パッパッと終ってしまうと思うんですね。事前に検察官に詳しく質問をしておいてやれるくらいなら検察官にやってもらった方が早い場合があると思うんですよ。だから,その切り取って,ほとんど反対尋問ですよ,被害者がやりたいのは。そして,この部分がおかしいからこれを聞かせてくださいと言って検事にその場で隣で頼むと,こういう場合が事実上多いんではないかなと思うんですね。そういう面ではこの「あらかじめ,質問を発する事項を明らかにして,検察官にしなければならない」というふうに余り厳密になっちゃうとそれができなくなると,こういうふうに思います。   それから,この3のところもやはり3の1,2行目に「又は意見の陳述をするために特に必要がある事項に関係のないものにわたるときその他相当でないときは」とか,非常に要件が厳しくてがんじがらめにしているので,ここまでやらなくてもいいんじゃないですかと。これは表現の問題ですからどうにでもこれは後でなるんだと思いますけれども。精神が余りにも厳しいなという感じがいたしました。 ● 全くではないんですが,○○委員に私も賛成で。多くの被害者の方を見てきてその被告人に質問したいというのは意見陳述をするためにしたいというそういう声ではないと思います。それぞれありますけれども,やはり例えば○○さんという二十歳の子を山中で自分で穴を掘って殺された子ですが,あのお父さんはどうしてもなぜ,被告人に質問したかったのはなぜうちの子だったのかと,それを知りたいと。結局それは裁判の中で知ることができず,本人訴訟を起こして刑務所まで御夫婦で会いに行ったけれども,やはり犯人の女性は一切言わなかったと。そういうことも半ばで○○さんは御病気で亡くなられたんですけれども。   私どももいろいろな被害者の方を見てきて,意見陳述をするために被告人に質問をしたいと,そういうことではないように思います。その部分だけ同じです。 ● 私も同じで,これ「特に」に反応してしまいましたけれども,何か目的を書くということでも意見陳述という現行制度もあって新たに広げる制度を出してきれいな流れになっているんだと思いますが。逆で,やはり被告人質問をして聞いたから,あるいは法廷の中にいてそういうふうな形で参加したから意見陳述も広げるというのだろうと思うんですね。だから,ちょっとここは書き振りを少し考えていただいて。意見陳述が広がるので中味的な問題ではないんだと思うんですね。今までの意見陳述だったら中味的に異議を申し立てる必要があると思うんですがそうではないので。ただ,書き振りをやはりちょっと変えていただかないと,実際の○○委員もおっしゃったあるいは○○委員もおっしゃっているような実態と違うと,余りにもかけ離れているかなという感じはいたします。やはりあらかじめ申し出てということなんですが,これについての例えばどういうことを聞くかというのは相当アバウトな形でもいいというふうにしていただかないと逆にやはり使い勝手が悪くなるなと思いました。 ● この意見の陳述するためというのは現行制度の意見陳述のみではなくて,第4の新たな意見の陳述のためにという場合もセットであるというのが先ほどの御説明だったと思いますが。そうしますと,これはかなり範囲は広いものであると思うんですが,そのような理解でよろしいですね。 ● それで結構です。 ● これも文章上の問題でしょうが,2枚目の上から4行目ですね。「犯罪の性質,審理の状況,申出をした者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは,申出をした者が被告人に対して質問を発することを許すことができるものとする」とありますが。これは申出をした者の数を考えて申し出た者に質問を許すとありますが,ここもちょっと文章はおかしいのかなというような気がします。たくさんあった場合にはそれを絞って何人かにやらせると,こういう趣旨ですよね,これは。全員じゃなくて。 ● おっしゃるとおりで,余りにもたくさんの方が希望された場合は,それは制限せざるを得ない場合があるだろうということです。 ● 数を考えて申出をした者に対して質問させるということになっているものですから,おっしゃるような趣旨だと思います。 ● どういう場合に被告人質問を認めるかという話なんですが,被告人質問というのも訴訟行為として行われるわけですから,何らかの形で訴訟の結果と結び付くものである必要があると思います。ですから,前回も申し上げましたが,例えば質問の形で被告人に言いたいことを言うことで被害者の方の精神的な回復や立ち直りを図るといったことを,正面から制度の目的にすることは無理だろうと思います。そこで,私自身は,証人尋問と同じように,質問による事実解明を目的とするという位置付けをしたらどうかと考えたんですけれども,ただ,そうした場合,証人尋問のところでB案のような形にしますと,事実解明のためになし得ることが証人尋問のところと被告人質問のところでずれてしまって,うまく整合性が取れないという問題が出てきます。そこを考えますと,もう1つの切り口として,意見陳述と結びつける形で制度を組むというのは1つの制度の在り方として考えられますし,実際の中身としても,その方が質問できる範囲が広がります。もっとも,先ほどから御意見として出ているように,それは実態に合わないという問題はあるのかもしれませんけれども,制度の組み方としては1つ十分あり得る制度ではないかと思います。 ● 2項の質問を発する事項を明らかにしてということについて何人かの方からお話がございましたけれども,○○委員の案も要するに被害者の方から検察官の方に話があって,検察官がそれを裁判所の方に申し出るという形をとっていて,そこで検察官が相当性を判断するとなっているわけです。今回やはり検察官と被害者のコミュニケーションを十分に行った上で,これは被害者に聞いていただいた方がいいというふうに,もちろん要件をどう書くかの問題はありますけれども,その上で被害者に聞いていただくという場合は,やはりどういうことを聞きたいのかということを検察官の方で伺って,その上で裁判所の方にそれを判断していただくという形にやはりならざるを得ないかなと思っています。   ただ,確かにその場で被告人の供述を聞いて,それに対して聞きたいことが出てきたということは当然あり得ますので,そこで検察官と打合せをしていただいて,やはりこの要件を満たすということで質問をしていただくということになると考えております。このことは,質問を制限するという意味ではなくて,むしろ検察官とのコミュニケーションをこれによって図っていくという趣旨で御理解いただければと思います。 ● 1点ちょっと補足的に御説明させていただきいたんですが。ここで言う「あらかじめ」というのは,当該公判期日に先立ってという意味ではございません。質問を発する前にという程度の意味でございまして,現行の意見陳述も「あらかじめ」とされてございますが,これは公判期日に先立ってなされなければならないとは考えられておりませんので,こちらも同様のことになるんだろうと思っております。 ● そのほかございますか。   それでは,第4に移りたいと思います。証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述,御意見ちょうだいしたいと思います。 ● この「事実又は法律の適用について」というのは論告についても同じような言葉なので,そうすると公訴事実であるとか法律の適用,それから求刑,こういうものを含むという趣旨なんでしょうか。 ● ええ,そういう趣旨で書いております。 ● 質問で。2項のところに申出はあらかじめ内容を明らかにして,それで検察官はそれに意見を付してとありますが,これは文書である程度検察官は文書で裁判所に出していくというような形になるんでしょうか。 ● それはケースバイケースで,必ずしも文書に限られるものではないと思いますけれども。 ● 前回もちょっとお尋ねしたと思うんですが,例えば傷害致死で起訴されている事件について,殺人であるというふうな意見陳述をするとか業務上過失致死の事件について危険運転致死という罪名の違った意見を言うということについては,前回○○委員と○○委員少しニュアンスが違ったと思うんですが,事務当局としてはこれについてはどうお考えなんでしょうか。 ● 今ここに書いてある,訴因として特定された事実の範囲内でということです。もちろん証拠に基づいてここでは陳述をしなければいけないというのは当たり前の話です。その証拠に基づいて,検察官としては傷害致死で起訴しているというものについては,やはりそこでの証拠の評価をるるしながら,だから殺人なんだというのはやはりこれはちょっと制限から外れるのかなと思います。ただ,例えば,これは言い方なんでしょうけれども,被害者が自分としてはこれは殺人だと思っているんだと,だけれどもこういう枠組みの中でというそんな言い方なら恐らくそれは外れないのかなと,非常にざくっとした言い方ですけれども,そんなイメージになるのかなと思います。 ● よろしいでしょうか。○○委員。 ● この3ですけれども,3の2行目ですね,「弁護士の意見の陳述が1の範囲を超えるとき,既にした陳述と重複するとき」というふうにありますが,これは1の範囲を超えるときというと,ちょっと超えてもいけないんですかね。意見を述べているときには勢いで多少超えますよね。 ● 訴因として特定された事実の範囲内でというのは検察官の論告も当然そうであるはずですが,その場合にちょっとぐらい超えてもいいとは思われていないはずですので,基本的には同じ規律だろうと思っております。 ● ただ,事件と関係がないとか訴因を超えてるとかいうようなことならばありがたいなと思います。 ● この第4の2のところで,「この規定による陳述は,証拠とはならない」ということで,先ほどは量刑に関する証拠にもならないとおっしゃったんですが。現行は,現行の心情に関する陳述は量刑に関する証拠にはなると。ところが,最後に言うものはならない。量刑資料にならない。でも,それはこの前も裁判員制度の問題触れましたけれども,裁判員が被害者の意見陳述,心情について述べたものは証拠にするが,ここでは無視しなさいというようなことが実際上区別できるのかという点で言うと,やはりそれは心情というものも含めて裁判員には大きな影響を与えてしまうという制度にならないのかということは疑問なんですが。 ● 御懸念は御懸念として恐らくいろいろな弁護人の方にもおありだろうと思いますし,ただ今回の新しい意見陳述と申しますのは,こちらにも書いてあるんですが,証拠とはならないということをはっきりまず書いてあるということと,それから,検察官が行う論告の後にという時期も書いてございます。そうしますと,検察官の論告が証拠とならないのと同様に,つまり証拠調べの手続が終わった後でございますし,正に検察官の論告という主張がなされた後に引き続き行われるイメージでございますので,手続的に紛れが生じる余地があるとは考えておりません。   その上で,証拠と,それからそれ以外のものとの区別の重要性というのは,もともと裁判員制度が導入されたときからいろいろと御議論があったところだと思いますが,それはこの新しい意見陳述固有の問題というよりも,場合によっては裁判官の十分な説明でございますとか,あるいは弁護人自身,最終弁論の中で,今述べられた被害者の陳述というのはこれは証拠にならないことを裁判員の皆さんには是非認識していただきたいと弁論することも可能だと考えておりますので,実際の切り分けと申しましょうか,区別というのは付くのではないかと思っております。 ● 検察官に申出をして最終的な意見陳述を被害者の方がされるということですので,実際にどのくらい起きるかは分かりませんけれども,検察官の求刑と被害者の求刑と,要するに2つの求刑が存在することを一応予定した制度であると,こういうことになりますよね。 ● ええ,そうなりますね。 ● 今いろいろ伺うと,今回認められる意見陳述と現行の意見陳述と同じ名前でありながら大分違うんですよね。これちょっと名前を変えるとか何か考えないと,結局量刑の資料に前のはなるはずですよね。それから,意見陳述のためにと書いた場合にもパッと見たとき,じゃあ心情関係かと思ってしまったりとか。名前というか何か少し考えないと混乱するかなというような感じはちょっとします。 ● それは事務局の方でも御配慮いただくということでよろしいですね。 ● また立案に当たって検討したいと思います。 ● そのほかこの論点について何かございますか。   もしございませんようでしたら,先の○○委員御提案の論点の方に戻りたいと思います。このうち,まず第5の公判手続というところは,直前に議論していたことと関係することで,既にその議論の中でこの問題にも言及されておることでございますけれども。加えて,第5,公判手続について御意見ございましたら伺いたいと思います。 ● ここに書いてあること,○○委員の紙に書いてあることは個々の訴訟行為に関することで言うと,要するに要件の書き振りの問題はありますが,基本的に事務局案で書かれていることと同じことを書いてあるのではないかという感じがいたします。ただ,それのうち要件の問題と,あとは検察官とのコミュニケーションということを案の上で出してみたらこうなったという感じじゃないかなと思うんですが。その点は今後更に事務当局でも検討されるということですからこれも踏まえて更に検討していただいて,また次の機会に議論するのが適当かなという感じがするんですが。 ● 御指摘ありがとうございます。   それでは,残りの論点ですが,まず第1と第6を便宜的にともに議題としたいと思います。 ● これは私最初に述べたかと思いますが,第1,第6の○○委員の御提案は,要するに重要な訴訟行為を検察官が行うに当たって,被害者の意見を聞き,それと仮に違う判断をする場合にはその理由をよく説明しという,そういう事柄ですね。   そして,そのことにつきましては,先ほど,検察庁の方から,かなり具体的に全国の検察において今後このような内容が実現されるように努力されるとおっしゃったように思います。その中には現行の検察庁法の中の仕組み,事件処理に際しての上級検察官の判断ですとか,検察官の措置に苦情があるときにそれに対処する現行の制度もあったかと思いますので,そういうことも含めて運用に努力されるという趣旨の表明があったと理解しました。そうしますと,この点について○○委員の案の実質的内容は,かなりの程度実現される方向になろうかと私は認識しております。 ● それでは,あと残りました問題は第3と第4ですので,第3についての御意見をいただきます。 ● これは私が前回出した案にも書いてあるんですが,やはり記録にアクセスしなければなかなか被害者がその実態が分からないと思います。ただ,いろいろきっと難しい問題もあるものと思いますけれども。できる限り被害者の記録へのアクセス,これを実現していただかないと,被害者がきちんと事実関係を知って検察官と一緒に事実究明していくという意味合いからいくと,できる限り早めにアクセスしたいと思います。 ● ○○委員のペーパーは今日いただいたところであり,細かいところまで考えが及んでいないかもしれませんが,一言申し上げます。基本的な認識として御趣旨は非常によく分かるのでありますが,現在の訴訟記録,つまりまだ公判が始まっていない段階における訴訟記録の基本的な扱い,それから現在の両当事者,つまり攻撃側の検察と防御する被告人弁護人側との相互の証拠開示の問題で生じる利害状況と,それから被害者の方がその手続に関与して活動を行うためにどのような資料が必要かという問題とは重なるところもあり,またずれるところもあるのではないかと思いますので,その点は慎重に勘案した上で制度を設計する必要があるだろうと考えます。防御する被告人弁護人側が知っていることは常に被害者も全部当然見てもいいとか,あるいは検察官が攻撃するときに使う材料は全部被害者も見ていいという話には当然にはならないのではなかろうか。また,被害者が関係する記録証拠をすべてあらかじめ見ている前提の制度になると,かえって今度は被害者の訴訟における独自の活動,例えば証言とかあるいは供述の信用性にマイナスの効果が生じたりするのではないかという懸念も生じるように思います。いろいろな利益状況の違いを考えた上での基本設計が必要であろうと思います。 ● そのほかございませんか。よろしいですか。   それでは,最後の論点の第4の公判前整理手続についてですが,御意見お願いいたします。 ● ○○委員の冒頭の御説明では,検察官が公判前整理手続の結果を被害者に十分に説明してくれるのであればそれでよいのだということでしたので,まずは,検察官がそれをやれるかどうかということが問題なのだろうと思います。その上で,そうではなく,公判前整理手続に被害者側の弁護士が関与するとした場合ですが,その場合でも,何かをそこでできるというものではないわけですから,要するに,その場でどういうことが行われているかというのを知りたいということだと思うんですけれども,そうだとしますと,例えば両当事者間で書面のやり取りなどが行われた場合,被害者の代理人たる弁護士は,それらの書類も全部見ないと,ある意味で何が行われているかは分からないということになると思います。しかし,現実問題として,それができるのだろうかという疑問があります。   それから,以前の話で,証拠調べ請求権を被害者側に認めないということの前提として,被害者として取り調べてもらいたい証拠があるのであれば,それを検察官とよく話し合って,検察官から証拠調べ請求をしてもらうということが言われていました。そうだとしますと,公判前整理手続が行われた場合には,そこで証拠調べ請求しておかないと,公判では原則として証拠調べ請求できなくなりますので,検察官は,被害者の方に対して,どのような証拠調べ請求をいかなる理由でするのかという点を,当然説明することになると思います。そこから考えますと,あえて公判前整理手続への在廷,傍聴という制度を採らなくても,検察官から説明するという形で足りるのではないでしょうか。検察官がそれはできないというならば話は別ですけれども,そこはどうなのでしょうか。 ● 弁護士会でいろいろなところで模擬裁判やっておりまして,そこでやった弁護士がこれとにかくあのときに出てないと大変だよ,わけ分からなくなるよと,こういうことを言われましてね。そして,それを検察官が説明するとなると法律用語の分からない素人相手にこれは大変なことになるよと,こういうような話がありましてね。是非これは弁護士に見せていって,そしてその弁護士から説明するようにした方が経済的だと言われたものですからね,言っておいたんですが。 ● 中味的なことは検察官がちゃんと説明して足りるということなのかもしれませんが,公判前整理手続までなる事件は弁護士が大体付いてます。そうしますと,先ほど申し上げたように進行の関係も含めて,傍聴しているかしていないかということは非常に大きな実務的には問題があります。どういうふうに流れていくかとか,どのくらいの期日をやるかと。そのときに検察官がいちいち支援弁護士の日程表を持っては行ってもらえませんので,一緒に行ってそこで事実上検察官を通じて×○とかということもできるので。   本当であればかなり実務的にはこの傍聴だけでもさせてほしいという,弁護士が付いている場合は傍聴させてくれと,検察官の後ろで文句は言いませんからというような感じはあるんですけれども,中味的なものは検察官がきちっとやっていただけるならそれでオーケーだということにはなるんでしょう。 ● 公判前整理手続で,どういうふうにやっていくか,どういう結果になったかというようなことを説明することが,検察官にできるのかという御質問がありましたけれども,この公判前整理手続に関する被害者等に対する説明の在り方については,実はもう全国的に通知も出ていて,かなり事案の内容まで誠実に説明を行うということになっています。ですから,やれるのかといったら当然やりますというお答えになります。そこはちょっとお任せ願いたいと思いますが。   それと,公判前整理手続において,被害者の方で,将来的に非常に重要な証人になるといったときに,あらかじめいろいろな証拠を覗いておいてもらってはやはり困るという場合もありますし,そこはケースバイケースの判断になってきますので,そこはひとつ検察の運用に任せていただけないかというのが率直なところです。 ● 若干補足になりますが,その上の記録の閲覧謄写とも共通する問題でありますけれども,○○委員の方でいろいろな御配慮の上で,代理人弁護士が付いている場合にこういうことを認めるということを書かれているわけですが,制度として組み立てるとすると,代理人弁護士がいる場合だけ認めるという制度を作るというのはかなり難しいのではないかと感じております。そこは1つは運用でどこまでカバーできるかということとの兼ね合いもあるかと思いますし,あるいは被害者に直接のそういった権限のようなものを認めることの問題も合わせて検討しなければいけないと思いますが,弁護士が付いている場合だけの制度だというのは,ちょっと組立てとしては難しいのではないかという点を申し添えます。 ● それでは,今日のところはこのくらいでよろしゅうございますか。 ● 諮問事項第四の審議の最初の方で私が公訴参加という言葉を用いることについて疑問を述べましたところ,即座に○○幹事から御批判を受けまして,言葉はどうしても必要であるという御趣旨でありました。確かに刑事手続への直接関与ということでこれだけの新しい制度を作ろうとします以上,何らかの言葉が必要だということは確かにおっしゃるとおりだなと反省いたしましたが,そうなると何か提案しなければならないかなと考えます。そこで,私は刑事手続は決して被告人のためだけにあるのではない,被害者のためにもあるのだという御主張に十分共感し,そして被害者こそが事件の当事者であって犯罪の処理の一連の手続の中で最も重要な存在であるというお考えにも十分に理解をすることができると申し上げた上で,今のような心情を刑事訴訟法の立案に当たってストレートに持ち込むことができるかということになりますと,そこにはやはり限界があると思います。先ほど○○委員が使われた言葉ですと,訴訟法の世界というものがあるというお話でありました。そこで,私が試みに提案したいと思いますのは,「補助参加」という言葉であります。これは民事訴訟法にある言葉なので,民訴の方から勝手に持っていくなとおっしゃられると困るのでありますが,刑事訴訟法ではまだ使ったことのない新鮮な観念でありますので,この新しい制度を表現するのに役に立つのではないかという気がいたしまして,試みの提案をした次第でございます。 ● ありがとうございます。   それでは,○○委員。 ● 先ほど私ちょっと強い口調でしゃべって皆さんを白けさせてしまいまして,おわび申し上げたいと思います。これも日々被害者と接触していますと,どうしても被害者の心情になりがちなものですので,そういうふうな大変失礼な強い言葉を使ってどうも申し訳ありませんでした。   今,○○関係官から大変ありがたい御提案をいただいたんですが,やはり何らかの言葉をいただいて,それでくくっていただいて中に入っていく,中に入るということはどうしてもさせていただきたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。   補助参加という,これは○○委員もお使いになって。 ● 委員会で補助参加だったんですが,わざわざ民事の補助参加ということになるといけないので補佐的なと使いましたけれども,ほぼ同じような言葉を使っていました。 ● 私たちももちろんそれは検察官が前面に出てその後にいるわけでありますので,そういうような言葉でも何でも結構ですので,何か1つ言葉を与えていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。 ● それでは,ただいまの御発言で諮問事項第四の本日の審議は終了したいと思います。   今後の問題ですけれども,今回の審議で諮問事項の第一から第四までの議論をほぼ三巡いたしました。したがって,本部会としましてはそろそろ全体についての詰めの議論を行っていきたいと考えております。そこで,事務当局におかれましてはこれまでの議論を参考にして制度の具体的な案についてのまとめの作業を更にしていただきたいと思います。とりわけ諮問事項第四につきましては,本日までの議論の下に次回の御提案をお願いいたします。   それから,皆様へのお願いは,このような事務当局案に対する修文を初めとするいろいろな御意見がございましたら,できましたら次回の部会までになるべく早く,またできましたら書面の形で事務当局の方に御提案いただければ幸いと存じます。   それから,日程の問題ですが,当初事務当局においては部会として7回の会議を開催できるように準備をしておりましたが,次回がその第7回目ということになります。その後の予定について御説明をいただきたいのですが。 ● 私どもの方では当面7回の会議が開催できるように準備しておりましたが,今回新たに来年1月30日火曜日につきましても部会用に会議室を確保いたしました。時間はこれまでと同じ午後1時30分から5時ごろまでを予定しております。場所につきましては現在最終調整をしている段階でございますので,追って御連絡させていただきます。 ● それでは,次回につきましては諮問事項の全体について詰めの議論を行ってまいります。次回の部会の日時,場所について。 ● 先ほど申しましたのは次々回の話でございまして,次回の部会につきましては,来年1月11日木曜日の午後1時30分から,本日と同じこの法務省の第1会議室で会議を行うこととなっております。   なお,この際,追加で御説明させていただきたいんですけれども。前回の会議で,パブリックコメントの実施結果につきまして,私どもの方から御報告を申し上げました。パブリックコメント自体につきましては,前回のときにも御説明したように,今年の11月30日で受付が終了しておりますが,その後も幾つか御意見等が寄せられているところでございます。そこで,これらの寄せられた御意見そのものを御覧になりたいとの御要望がございましたら,個別に私ども事務当局の方まで申し出ていただければと存じます。 ● それでは,次回は1月11日午後1時30分より,場所はこの会議室です。   年末のこの時期にこのような長時間熱心に御議論いただきまして本当にありがとうございました。皆様,どうぞよいお年をお迎えください。   部会長といたしましては年明けのしかるべきときに部会の成案を是非ともいただきたいと存じております。来年もどうぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。   それでは,本日はこれで散会といたします。ありがとうございました。 -了-