法制審議会刑事法(裁判員制度関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成19年1月5日(金)   自 午後1時30分                        至 午後4時10分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のための法整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。   予定の時刻になりましたので,ただいまから,法制審議会刑事法(裁判員制度関係)部会の第2回会議を開催いたします。 (委員の自己紹介省略) ● それでは,早速審議に入りたいと思います。   前回,要綱(骨子)の全体にわたり,一通り御質問や御意見等をいただき,一巡目の議論をいたしました。本日は,引き続き,要綱(骨子)の第一から第三まで,順番に二巡目の議論をいたしたいと思います。   そのような進行でよろしゅうございましょうか。   特に御異論もございませんようですので,このような進行で議論を進めたいと存じます。   それでは,本日の審議に移りたいと思います。   まず,配布資料の説明とともに,前回の議論等も踏まえ,事務当局において検討した事項について説明をしていただきます。 ● それでは,前回の部会において複数の委員から御質問がございましたので,事務当局で検討いたしました結果等について御説明申し上げます。   まず,○○委員より,選任予定裁判員に対する接触の規制や威迫罪等についての御質問がありました。この新たに設けられる選任予定裁判員についてどのような法的な位置付けをするのかという御質問であったと思います。   本日お配りしました配布資料2-1,「区分審理決定がされた場合の罰則等の整備について」と題したものをごらんください。   この資料は,御質問のありました選任予定裁判員の地位をどのように取り扱うべきかという問題と併せまして,部分判決後終局の判決までの間の部分判決に関わった裁判員及び補充裁判員の職にあった者の地位をどのように取り扱うべきかという問題についてのものです。   最初に,選任予定裁判員の地位をどのように取り扱うべきか,という問題について,御説明いたします。   まず,裁判員法72条が定めます裁判員等を特定するに足りる情報の取り扱いについてです。 この規定は,裁判員等に対する請託,威迫等や接触により,公正な判断を行うことが妨げられるような事態をできるだけ防止するとともに,そのプライバシーや生活の平穏を極力保護しようとするものです。同条前段におきましては,裁判員候補者も保護されており,選任予定裁判員も同様に保護の対象とすべきものと考えています。そして,選任予定裁判員であった者については,後段で,裁判員候補者と同様に保護されることになります。ただし,選任予定裁判員は,通常,裁判員や補充裁判員に選任されますが,その場合には,裁判員等や裁判員等であった者として現在の前段及び後段で保護されますので,選任予定裁判員であった者として保護の対象となるのは,最終的には裁判員等に選任されず不選任決定がなされた者だけということになるかと思われます。   引き続き,73条の接触の規制について御説明いたします。この規定は,裁判の公正及びこれに対する信頼を確保するとともに,裁判員等のプライバシーや生活の平穏を保護してその負担を軽減しようとするものです。選任予定裁判員につきましては,特定の事件について裁判員又は補充裁判員に選任されることが予定されておりますことから,第1項において,裁判員等と同様に保護の対象とすべきものと考えられます。これに対し,2項は,職務上知り得た秘密を知る目的での接触を禁止しているところ,選任予定裁判員は,そのような秘密を知ることはありませんので,2項の対象にはなりません。   引き続き,77条の請託罪等について御説明いたします。この規定は,裁判員等に対する不正な働きかけを処罰することで,その職務執行の適正を確保し,裁判の公正及びこれに対する信頼を保護しようとするものです。選任予定裁判員は,特定の事件について裁判員又は補充裁判員に選任されることが予定されており,現職の裁判員等と同様,請託等を受ける可能性がありますので,77条の1項,2項のいずれの場合におきましても,選任予定裁判員に対する請託等を処罰の対象とすることを考えております。   引き続き,78条の威迫罪について御説明いたします。この規定は,77条の請託罪等と同様,裁判の公正及びこれに対する信頼を保護するとともに,個々の裁判員等の生活の平穏ないし自由を保護しようとするものです。選任予定裁判員は,裁判員候補者と同様,実際には裁判員又は補充裁判員に選任されず,選任予定裁判員のまま終わった場合には,職務を行うことがなかったものであり,威迫を受ける理由がありませんから,同条第1項ではなく,2項の対象とすることを考えています。なお,選任予定裁判員が裁判員又は補充裁判員に選任されれば,1項が適用されることになります。   引き続き,79条の秘密漏示罪について御説明いたします。この79条の1項ないし3項は,裁判員又は補充裁判員が,評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らす行為を処罰の対象としていますが,選任予定裁判員は,そもそも秘密を知ることはありませんので,いずれにおいても対象にはなりません。また,4項及び5項は,現に審判に関与した者の言動によって裁判の公正又はこれに対する信頼が害されることのないようにするための規定でありますが,選任予定裁判員は,未だ審判に関与しているものではありませんので,いずれにおいても対象にはならないものと考えております。   次に,部分判決後終局の判決までの間の部分判決に関わった裁判員及び補充裁判員の職にあった者の地位をどのように取り扱うべきかという問題について,御説明いたします。再度,表の1枚目を御覧ください。   まずは,裁判員法72条が定める裁判員等を特定するに足りる情報の取り扱いについてです。 部分判決により任務が終了した裁判員や補充裁判員は,その後の審理に加わるものではありませんが,事件の審理自体は部分判決後も継続しており,本人の同意があったとしても,その個人特定情報の公開を許すことは,裁判員等であった者に対する威迫,あるいは接触による秘密漏示が行われれば,終局の判決をする裁判員が影響を受け,公正な判断を行うことが妨げられるような事態を招くおそれが高いと言えます。したがって,終局の判決がされるまでは現職の裁判員等と同様に保護の対象とする,すなわち,本人の同意の有無にかかわらず,個人特定情報の公開を禁止することが相当であると考えています。   なお,この表では前段と後段とを併せて「○」としておりますのは,部分判決により任務が終了した裁判員等については,後段ではなく前段の対象とするという特段の規定を設けようとするものであることを示しているものです。これから御説明いたします73条の1項及び2項,79条の1項ないし3項についても同様です。   引き続き,73条の接触の規制について御説明いたします。   部分判決により任務が終了いたしました裁判員等の場合,審理自体は継続していることから,接触を受けるおそれは現職の裁判員等の場合と同様に高いことのほか,72条について御説明したのと同様,その言動等が終局の判決を担当している裁判員に与える影響を考慮し,終局の判決がされるまでは現職の裁判員等と同様に保護すべきものと考えています。   続きまして,77条の請託罪等について御説明いたします。   部分判決により任務が終了いたしました裁判員等につきましては,もはや請託の趣旨となる職務行使が考えられませんのでこの点については対象とならないものと考えられます。   引き続き,78条の威迫罪について御説明いたします。   部分判決により任務が終了した裁判員等につきましては,78条1項が,そもそも,裁判員等とこれらの職にあった者とで取扱いを同じにしておりますから,部分判決により任務が終了した裁判員等について,特段の手当は必要がないと考えられます。   最後に,79条の秘密漏示罪について御説明いたします。   先程申し上げましたとおり,この79条の1項ないし3項は,裁判員等が職務上知り得た秘密を漏らす行為を処罰の対象としております。この秘密漏示罪につきましては,1項が定める現職の裁判員等の場合は,未だ判決の宣告がされていないものであり,2項及び3項が定める裁判員等であった者の場合と異なって,財産上の利益等を得る目的なく,裁判官等の意見又はその多少の数以外の評議の秘密を漏らす場合であっても,自由刑の対象としています。部分判決により任務が終了した裁判員等の場合,秘密漏示がなされますと,これから終局の判決をすることとなる現職の裁判員に不当な影響を与えるおそれが高いことから,現職の裁判員等について定める1項の場合と同様の刑罰の対象とするのが相当と考えております。また,第4項につきましては,部分判決により任務が終了した裁判員等が,未だ終局の判決の宣告がされていない段階で,終局の判決において認定すべきであると考える情状事実や量定すべきであると考える刑などを述べることは,裁判の公正やこれに対する信頼を害する行為ですので,処罰の対象にすることとしています。第5項は,もともと裁判員等の職にあった者についての規定ですので,部分判決により任務が終了した裁判員等を現職と同様とする規定を設けるかという意味では,問題にはならないと考えられます。   なお,御覧いただきました表は,罰則等整備の要否について,便宜現行の条文ごとに一覧できるように示したものでありまして,具体的な条文の要件や規定の仕方等につきましては,今後さらに検討してまいりたいと考えております。   続きまして,前回の部会におきまして,○○委員から御質問いただきました部分判決における従犯の主張の取扱いについて御説明申し上げます。   部分判決における従犯の主張の取扱いにつきましては,共同正犯の起訴事実に対し,区分審理をする裁判体において,従犯である旨の認定がなされた場合と,共同正犯である旨の認定がなされた場合という二通りが考えられますので,まずは,区分審理をする裁判体において従犯である旨の認定がなされた場合について,御説明申し上げます。   従犯の主張は,共同正犯の起訴事実に対する否認に過ぎず,刑事訴訟法335条2項において,判断を示さなければならないとしている刑の加重減免の理由となる事実の主張には当たらないと解されているところではございますが,部分判決における必要的記載事項としての「刑を加重減免する理由となる事実」についての判断としては,記載を要することになると考えております。   もっとも,部分判決中の「罪となるべき事実」において,従犯である旨が摘示されることになりますし,また,「法令の適用」においても,従犯に関する刑法第62条第1項に該当する旨摘示されることになります。   そのため,「刑を加重減免する理由となる事実」として,別個に項を設けて従犯に当たる旨判示することも可能ではありますが,そのようにしなくとも「罪となるべき事実」においてその旨の認定がなされている以上,必要的記載事項の記載としては足りることになると考えております。   次に,共同正犯の起訴事実に対しまして,区分審理をする裁判体において,共同正犯である旨の認定がなされた場合については,従犯の主張の有無にかかわらず部分判決中の「罪となるべき事実」及び「法令の適用」において,共同正犯である旨が摘示されることとなり,その結果,従犯には当たらない旨の判断であることが明らかになります。   したがいまして,区分審理をする裁判体において従犯の認定がなされた場合であっても,また,従犯との認定をせず,共同正犯である旨の認定がなされた場合であっても,その認定は,必要的記載事項である「罪となるべき事実」及び「法令の適用」において必ず記載されることになります。   以上が前回の部会において御質問いただいた事項に関連する事務当局からの説明でございます。   続きまして,部分判決制度の下において,部分判決が言い渡された後,被告人の勾留及び保釈等の効力をどのように考えるべきかについて,関連する問題として事務当局において検討いたしました内容を,この機会に併せて御説明申し上げます。   まず,部分判決において無罪・免訴・公訴棄却の言渡しがあったときの勾留状の効力について御説明申し上げます。   刑事訴訟法345条は,「無罪,免訴,刑の免除,刑の執行猶予,公訴棄却(338条第4号による場合を除く。),罰金または科料の裁判の告知があったときは,勾留状は,その効力を失う。」としておりますが,これは,無罪等の裁判の告知があったときは,被告人の逃亡のおそれが少なくなり,刑の執行を確保するために身柄を拘束する必要も少なくなることから,裁判の確定を待たないで勾留状の効力が無くなるとしているものでございます。   この点,部分判決において無罪等の言渡しがなされた場合も,同様でありますから,部分判決において,無罪等の言渡しがあったときは,当該事実について,勾留状の効力が失われるものとすることを考えております。   次に,部分判決において有罪の言渡しがなされた場合の保釈または勾留の執行停止の効力について御説明申し上げます。   刑事訴訟法第343条は,禁錮以上の刑に処する判決の宣告があったときは,保釈又は勾留の執行停止は,その効力を失うとしております。   部分判決において有罪の言渡しがなされた場合,終局の裁判はその判断に従ってなされることになりますが,これは終局の判決に至る手続の途中における中間的な判断ですから,終局の一審判決と同一視することはできないものと考えております。   また,部分判決において有罪の言渡しがなされた場合には,無罪の推定は覆るものの実刑判決が宣告されるものではなく,部分判決における有罪の言渡しをもって保釈等を失効させ,直ちに刑の執行を確保する必要性が生じたとすることには難がありますし,例えば,法定刑が罰金刑しかない過失致死罪が認定された場合のように,禁錮以上の実刑に処せられる可能性がおよそない事態も生じ得るところであります。   したがって,部分判決での有罪の宣告後,被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由等が認められた場合にはそれを根拠に個別に保釈等が取り消される場合があることは別といたしまして,部分判決における有罪の言渡しをもって,保釈または勾留の執行停止の効力を失わせるのは適当ではないと考えております。   事務当局からの説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   事務当局からの御説明は以上のとおりのようです。この段階で,ただいまの事務当局からの説明内容に関して,御意見・御質問がございましたら,よろしくお願いいたします。   ○○委員,いかがですか。 ● 審議の中で,また御質問をさせていただきたいと思っていますので。 ● そういうことで,次に進ませていただきます。   よろしければ,引き続き,要綱(骨子)第一の部分判決制度に関して議論したいと思います。部分判決制度につきましては,要綱(骨子)の項目順に従って御意見を伺うことにしたいと存じます。   まず,要綱(骨子)第一の一に区分審理決定を行う要件等が記載されていますが,この項目に関して何か御意見はございますでしょうか。どなたからでも結構ですので,御発言をお願いいたします。   では○○委員,どうぞ。 ● ○○でございます。私の意見を述べさせていただくのに,わかりやすいように書面をつくらせていただいておりますので,それを配布していただければ幸いかと思いますが。 ● では,そのようにさせていただきます。 ● よろしくお願いします。   ○○委員と私の名前で書かせていただいたペーパーを,今配布させていただきました。私の方から少し意見を述べさせていただきたいと思います。   このペーパーは,罪責判決制度という名前のペーパーでございます。この名称についてはまだ仮称でございますが,この罪責判決制度を提案させていただきたいと思います。   ペーパーでは,第1では罪責判決制度のイメージ,そして第2につきましては,今,部会長から御指摘いただきました第一の一の1,区分審理決定要件に合わせた形で,この罪責審理決定の要件を検討させていただきました。   まず,罪責判決制度のイメージでございますが,5つに分けられております。1つは,要綱でもありますように,数個の対象事件を併合した場合,または非対象事件と対象事件を併合した場合を前提にします。そして,2番目に,この併合した事件につきまして,一定の場合に,一部の事件--これを罪責審理事件と名づけますが,これを分離して罪責審理を行います。そして,残った事件を終局判決事件という名称で名前をつけたいと思います。そして,この3番目ですが,罪責審理事件の罪責判決後,罪責審理事件を終局判決事件に併合して,併合事件全体について終局判決を行うというものです。4番目に,罪責審理事件を一たん分離しますので,罪責審理事件の合議体を構成する裁判官は,他の罪責審理事件,あるいは終局判決事件の裁判官とは原則として別の裁判官とするということであります。これについては少し後で補充して述べたいと思います。5番目は,罪責審理の審理範囲を罪となるべき事実の有無の判断などに必要な範囲に限定すると,こういうものであります。   ここで区分判決制度との大きな違いと考えられますのは,この裁判官の区別だと思います。前回も議論が出たと私はお聞きしておりますが,今回の制度につきましては,裁判員の負担を考慮して,一定の場合に順次一部の事件について審理をしていくと,こういうことであるわけですが,私自身も一定の場合にはそういう場合はあり得るのかなと考えております。しかし,そうであっても,裁判員と裁判官との対等性,これについては,まず第一に重要視すべきであると考えております。この提案していただいている部分判決制度につきましては,裁判官はかわらない,あるいはかわってはいけないという案に思われますが,むしろ私の考えは,裁判官もかわるということを原則として考えるべきではないかと考えるわけです。その方法には幾つか方法があるわけですが,当初から分離していく,あるいは一たん併合して,この案のように分離をしていく。あるいは区分判決制度を別の裁判官にすると,いろいろ考え方はあり得るかと思いますが,最終的にはこの罪責判決制度のイメージと書かせていただいた,一たん併合した事件を対象にし,そしてそれを分離して罪責審理決定をしていくと,こういうのが望ましいのではないかと考えました。   裁判官と裁判員との対等性でありますが,2つの観点から,その対等性の確保が必要ではないかと思っております。1つは形式的な対等性の確保,もう一つは実質的対等性の確保という点です。   形式対等性というのは,区分判決制度になりますと,仮にA,B,Cとあった場合に,A事件では量刑まで行う裁判官と,Aの事実認定だけしか行わない裁判員とがいるということになってきますが,この罪責判決制度によれば,A事件において事実認定のみ行う裁判官と,事実認定のみ行う裁判員ということで,権限について対等性が確保されると考えられます。それから,実質的対等性の確保という観点ですが,ここは情報と経験の差というのが問題になってくるのではないかと考えます。   確かに情報格差については,前回余り大きな違いはないのではないかという御意見もあったとお聞きしておりますが,ただ,更新によってC事件の裁判員がA事件の裁判官,B事件も行った裁判官と証言そのものについて同じ情報に接するということは確かにそうかもしれませんが,証人の信用性というのは表にあらわれた証言だけではなくて,その証言態度,発声,その他いろいろな情報があるかと思うんですが,その情報に直接接していない裁判官と裁判員とにおいて一定の差があるのではないかと考えます。それから,経験でありますが,裁判所の評議です。裁判官は評議になれているわけですが,もともと裁判員制度で裁判官は評議になれている。その裁判所の評議になれていない裁判員との差に経験の差というのが懸念視されているわけですが,A事件,B事件において,ある被告人について評議に経験した裁判官と,C事件において初めて参加する裁判員の経験の差,これも無視できないのではないかなと思われます。こういう2つの観点から,裁判官もかわり得るという制度が望ましいのではないかと考える次第でございます。   以上が基本です。また,第2の罪責審理決定の要件でありますが,ここにつきましては3つほどあるわけですが,傍線を引いた部分が区分審理判決制度との違いと考えております。   まず1番目のアンダーラインですが,これは法務省の要綱では「裁判員の負担を考慮し,その円滑な選任を確保するため特に必要があると認められるとき」となっておりますが,ここでは「一括して審理すると長時日にわたるなど裁判員に過重な負担となり裁判員の選任が困難になるためやむを得ないと認められるとき」という要件にしております。ここは,前回の議論でも,この負担というのは時間的負担が主であるという趣旨の質疑がなされたとお聞きしておりますが,このように順次審理をしていくという場合は,恐らくは時間的負担が一番であり,それ以外はなかなか考えにくいのではないかということであります。そこで,この罪責審理決定の要件のところでは時間的負担を表に出し,そして,そのために裁判員の選任が困難になるというのを要件にしております。この長時日にわたるというのは,裁判所法の補充裁判官の規定に同様の規定があり,あるいは裁判員の選任が困難になるというのは,裁判員法3条1項,対象事件からの除外規定のところに同様の文言があり,この罪責審理事件決定であっても非常に例外的であるという趣旨を出します。このことについては,前回のこの部会の議論においても例外的であるということが確認されていたと思うのですが,それを明らかにするために,このようにしてはどうかという意見でございます。   それから,2つ目のアンダーラインは,これは罪責判決制度のイメージの2番と同じく,弁論を分離して罪責審理を行うという決定をするということであります。   それから,最後にただし書のところですが,ここは要綱案によれば「犯罪の証明又は被告人の防禦に支障を生ずるおそれがあること」となっておりますが,ここを,犯罪の証明に支障が生じるということはそのまま生かしておりますが,「被告人の防禦に支障を生ずる」という部分を「被告人の防御に不利益を生ずる」と,変えております。これは,「被告人の防御に不利益を生ずるおそれがある」という方が「防禦に支障を生ずるおそれ」というよりも広いのではないかと考えられるので,このようにしたわけでありますが,これも,この罪責審理決定,あるいは一部の事件について審理するということについては例外的であるということを明らかにした方がいいのではないかということから,こういう案としました。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただいま○○委員から,御意見が提示されました。この点につきまして御意見がございましたら,よろしくお願いします。   まず,今の御提案に関しての御質問がございましたらお願いします。 ● 今初めて拝見したばかりですので思いつきですが,部分判決制度は,基本的にこれまでのような併合を前提にしつつ,しかし区分審理をするという形で,同一の審理手続の中で,裁判体に連続性を持たせながら,区分して順次判決していくというものであるのに対し,それを御提案の罪責判決制度のように分離までしてしまうということになれば,審理手続は別になるわけで,そうなると,そもそも初めに併合する意味はどこにあるのでしょうか。   後に分離するのであれば最初から分離したままでよいはずであり,最初から分離したままである場合にも,裁判体は全く別だということになるはずです。今の実務では,分離して審理する場合も,たまたま同じ部に継続するということがあり得ますが,訴訟法上の裁判体としては別ですので,違う裁判体が有罪の認定をしてその旨判決をした,あるいは無罪の認定をしてその旨判決をしたときに,その後弁論を併合したからといって,前の裁判体の判断が併合後の裁判体を拘束するということの根拠付けが十分できるかどうか疑問に思われます。そこが,部分判決制度とは大分違うのではないかという感じがするのですね。   もう一つは,第1の5です。4についてはまた後で意見を申し上げますが,5については,なぜ罪となるべき事実の有無の判断等に必要な範囲に限定しなければならないのでしょうか。つまり,付随してもう少しはみ出た部分まで審理したのだから,それを事実認定しても,時間的にはその方が節約できるわけですね。それをなぜ限定しなければならないのかという理由がよくわからないのです。また,「等」と書かれていますが,これは何か意味があるのでしょうか。   もう一つは,「不利益を生ずる」と最後に書かれており,これが「支障」よりも広いということになると,例えば併合の利益を奪うということなども含むのでしょうか。併合の利益を奪うということが不利益に含まれるとなれば,そもそも分離もできないし区分判決もできないということにすらなりそうな気もするのですけれども。「支障を生ずる」から「不利益を生ずる」に広げた場合,具体的にどこがどう違ってくるのかということをお教えいただきたいのです。以上3点です。 ● お答えできるかどうか不安ですけれども,まず第1点です。これは新たな制度であると思います。分離した裁判所の罪責審理決定につきましては,部分判決と同じように最終の裁判所が拘束されるということになりますので,今までの分離とは概念は異なってきますが,ここで罪責審理事件,あるいは罪責審理決定という中にそういう意味を込めるということで,ある意味では新たな法律と考えております。   それから,罪となるべき事実の有無の判断等に必要な範囲というところであります。この「等」というのは,ここでは省略しておりますが,法律上,犯罪の成立を妨げる理由となる事実及び刑を加重減免する理由となる事実,これらも含むという,こういう趣旨でございます。ちょっとここでは説明不足で終わっていますが,これに限定するのは,部分判決制度についての前回の議論を拝見させていただきますと,被害者の意見陳述もこの部分判決制度で行えるという御見解が示されたということでございますが,果たしてそこまでしていいのか。特に被害者の意見陳述までできるとなりますと,被告人側の防御でどこまで防御の対象が広がるのかということについて疑念が生じるという観点から,この一定の範囲の限定が必要ではないかと考えた次第です。その範囲の限定として,罪となるべき事実の有無が基本になると考えられるわけで,特に被告人の防御という観点から,この区分審理事件での審理の対象の範囲がややあいまいであるので,これを明確にする必要があるという観点から,この必要な範囲に限定する必要があるのではないかと考えた次第です。   それから,この「犯罪の証明に支障が生じ又は被告人の防御に不利益を生ずる」,ここにつきましては,現行法で刑訴法295条2項,あるいは312条4項に,尋問制限あるいは訴因追加の場合の被告人側の準備期間のところに同じような文言が使われております。そこでは「犯罪の証明に重大な支障が生じ」となっており,他方,被告人側につきましては,被告人側の防御に実質的な不利益という文言がありまして,その例を参考にさせていただいてこういう文言にしたと,こういうことです。具体的にどこまでかというのは,ちょっとまだ検討が及んでおりませんが,ただ,支障というよりは不利益の方が広いと考えられますので,こういうふうにしたところでございます。 ● ○○委員,今の御質問に対する御回答で何かございますか。御意見は後でお伺いしますが。 ● 1番目の御回答について,もう少し補充してご説明いただきたいと思います。法律で決めれば確かに何でも決められるようにも見えるのですが,実質的・理論的にそういうことが本当に整合し得るのかという点を説明していただきたいのです。つまり,御提案の制度では分離は分離なのですよね。部分判決制度では,あえて分離という形をとらないで区分審理という形をとっているのは,その辺に工夫があるのだろうと思うのです。それに対して,御提案の罪責判決制度では,併合した上で分離しなくとも,最初から分離のままで別々に審理した場合でも同じことができるはずなので,そのように最初から分離でいった場合と,一応併合した上で分離して途中まで別の手続で審理するという場合とで,本当に整合的に制度設計というものができるものだろうか,疑問に思うものですから,それができるということを説明していただきたいのです。 ● 当初,いろいろ検討したときに,当初から分離という考え方もあり得るかと思いました。しかし,現在の実務におきましては,被告人の利益,あるいはその他いろいろな観点から併合されていることが多いということ,どの範囲の事件を対象とするのかという問題があるので,ここでは一たん併合した上で事件を絞るということにしました。そして,その後,分離をするわけですが,そういう意味で,当初から分離とやや似たところがあるかと思います。ただ,その事件を現行実務が併合を前提にしているということと,それから事件の範囲の限定ということから,かつ併合するかどうかについての判断は現行法上裁判所の裁量に任せられているということから,それを前提にした上で,なおかつ必要があるときということに限定したと,こういうことでございます。 ● 御質問ですか。 ● 今の○○委員と同じ問題意識かどうかわかりませんけれども,罪責判決制度ですと,同一審級の同格の別々の裁判所が2つ存在し,その一つの裁判所の判断が,もう一つの裁判所を拘束するという制度をつくるということになります。これは民事でも生じないことです。民事の中間判決というのは,同一裁判所について前提事実について後で拘束するという制度です。法制度としてこうしたものをつくることについて,その必要性があるという御意見は今うかがいましたけれども,刑訴法全体の,あるいは裁判そのものの構造に影響を及ぼすことはないとお考えですか。 ● ○○委員,今の点について御回答をお願いします。 ● 確かに今の法制度からしましたら非常に例外的な場合に当たるかと思いますが,これはどちらの理念を重視するかということにかかってくるかと私は考えています。そこで,裁判員と裁判官との対等性,この点を重視し,非常に例外的な場合にやむを得ない措置としてこういう制度を設けるということで,裁判員と裁判官との対等性の確保,この点をどの程度重視するかということに関わってくるのではないかと考えております。 ● 今の○○委員のお答えとも関連するんですが,先ほど,裁判官と裁判員の実質的対等性を確保する必要があるという御説明があって,その中でC事件というふうにおっしゃっていましたけれども,一番最後の事件を担当する裁判員は,要するに更新でしか情報を得られない。他方,裁判官は全部について情報を持っている。それでは十分な意見を言えないから裁判官の方もかえるべきだと,こういう御意見のように伺ったんですが,それを聞いていますと,あたかも,裁判官も更新では本来十分な心証をとれないかもしれないけれども,裁判員と対等であるためにはそれでいい,要するに,十分な情報を持っていない裁判体にして,そこが最終的な判断をした方がいいんだという御意見のように思えるのです。それは恐らく,今おっしゃった裁判官と裁判員の対等性を確保するということが至上命題であるという発想に基づいているように思うのですが,そもそも裁判員法というのは,釈迦に説法かもしれませんが,裁判官3人と裁判員6人が事実認定と刑の量定に関しては,それぞれが対等の権限を持つという制度であると私は理解しておりまして,あたかも○○委員の御発言を聞いていると,何か裁判官グループと裁判員グループというものがあって,それぞれが対等でなければいけないと,こういう御意見のようにどうしても私は聞こえてしまうんですが,そのあたり,どのようにお考えなんでしょうか。 ● グループというのではなくて,今のC事件について言えば,部分判決制度では裁判官はかわってはいけないということなので,A事件,B事件を担当した裁判官がC事件の裁判を担当するということであるわけで,そこでもちろん経験,あるいは情報の差があるわけですよね。ですので,そういう意味で果たしてそもそも--もちろん更新によってすべて同じだというのはよくわかるわけですが,しかし,既にA事件,B事件の証人尋問にC事件の裁判官は接している。しかしC事件の裁判員は接していないということ。それから,もちろん同一被告人についてのA事件,B事件での評議に既に参加している。特にA事件,B事件とC事件で,例えば被告人と重要な証人の証言の信用性が,A事件,B事件,C事件もすべて同じような争点だった場合に,仮にA事件でどちらかの証言,あるいは供述について信用性について判断した裁判官,それから同じくB事件についても被告人の供述,あるいは証人の証言についての信用性の判断についてかかわった裁判官と,そして同じくC事件でも同じように争点がなった場合の経験,あるいは情報,この点についての対等性が本当に確保できるのかというところから,今のこの提案に至ったわけです。 ● 今の点については後で議論させていただきますが,1点だけよろしいでしょうか。   ちょっとまだわからないのは,さきほど○○委員が言われたのと同じ問題意識なのですが,今言われた御説明では,この罪責判決制度というペーパーの第1の4に書かれている点を確保するために弁論を分離をしなければならないということなのですけれども,弁論を分離しなくても,部分判決制度で裁判体の構成を全面的に変えれば第1の4の趣旨は確保できますよね。それなのに,何でわざわざ分離という形をとらなければならないのか,その理由がまだわからないのです。そういうふうにすれば裁判体も変わるからということで,そちらに飛びつきやすいのはわかるのですけれども,しかし,○○委員が言われたように,やはり今の裁判制度とは異質の考え方ではないですか。上級審ではなく同格の他の裁判体が別の裁判体を拘束するということは,相当無理なことだという意識がおありにならないのではないかと思うのです。それはかなり便宜的な考え方になってしまうので,そういう無理をしなくても,この部分判決制度の中で第1の4のようなことを提案なされば,そこは確保できるわけでしょう。なぜ分離しなければならないのかというところが,やはりまだ説明が足りないと思うのです。 ● よろしいですか。私の理解では,この第一の区分事件での裁判官というのは代わらない,ころっと代えることができないという提案だと理解しているのです。 ● 元の案はそうなのですけれども,そういうふうに提案なさっても,それは構わないわけでしょう。 ● 今の○○委員の御意見についても検討はしました。ただ,ここでいう場合の区分事件となりますと,一つの裁判体の中でありますので,その場合に,ある意味ではその裁判官をかえるというのは,同じ裁判体の中で裁判官だけが代わるという案ですが,それは同じ裁判体の中ということと整合性があるのか。むしろ分離した方が裁判官を代えるということについては整合するのではないかということから,この分離ということになった次第です。 ● ○○委員,今の点については,あとは御意見としてお願いします。   それでは,○○委員どうぞ。 ● 大体御理解をいただいたように,あるいはそういうことからこの案が出たんだろうというのはほぼ一致してきているかと思うんですけれども,○○委員の考えの基本は,ざっくばらんに正直に申し上げて,やはり裁判官も代わるべきではないのかというのが出発点なんです。それは,やはり裁判員制度というものを導入して,裁判員を--前回私も申し上げましたけれども,やはり裁判の主体として国民を迎え入れるという,このことをどのぐらい考えるのかということが出発で,前回,○○委員も,これはベストというのはないんだとおっしゃって,私はそこはそういう意味では同感なんですね。ただ,ベストという制度はないかもしれない。裁判員にできるだけいっぱい参加してもらいたい。その負担が大きければやりたくない人が続出する。これでは裁判員制度はつぶれる。この一つの危惧と,それから,実際裁判員が裁判の中に主体的に参加していくことの,その実質が,ほとんどおれたちが行ったって,もうやはり裁判官で決めるんだよなというような中身になっているとすると,これもまたいかがなものかという,ここの幅の中で,では,どういう制度が可能なんだろうかというところから出発したことが正直なところです。   ですから,それならむしろ分離というところから始まって,最後に併合という案がどうだろうかと考えました。そうすると,その場合に,ざっくばらんに言うと,私が前回言ったいわゆる親事件みたいな終局判決を下す裁判体というのは,一個一個分離,分離,分離で進めても,どこでトータルをカバーする裁判体というのがあるのだろうかというところに突き当たったりしました。そうすると,やはり最終的にどこかで責任を持つ裁判体というのがなければいけないのではないかというところで,やはりまた併合した上で,分離するという考えになりました。○○委員がおっしゃるように,どうせ分離するなら最初の併合は要らないではないかというのも非常にもっともなお話で,そうだろうなと思うのですけれども,やはり一つの構成体,裁判体でずっとやっていって併合のイメージでいくと,結局は区分となり,かつそこに裁判員は交代していく。裁判官の構成は変わらないという,そこのギャップをどういうふうに埋めたらいいのかというところで,ある面では非常に,ざっくばらんに言うと中途半端な,併合しておいてすぐ分離しておいて,それでまた最後戻ってという,非常にある面では中途半端な提案になっていることはそのとおりだと思います。   ただ,やはり新しい制度をつくるときの基本的な観点というのか,この場合,私はどこに基準を置くべきかというところでいくと,やはり裁判員が可能な限りの対等性を持ってこの構成体の中で裁判をするんだというところの基準を,やはり重く見るべきだと思います。確かに裁判員に選ばれた方の負担というものを一方にちゃんと考えなければいけないけれども,新しい制度を基準に考えたら,一番重要な基準は,やはり対等な裁判体での議論というものを確保すべきではないのかというところから考え出したというのが正直なところです。 ● わかりました。   では,○○委員,お願いします。 ● 今の点について意見は別に持っているんですけれども,第1の3の部分について質問がございます。この点,私は,ちょっとイメージがわからないのですが,終局判決事件を担当する裁判所は,この言葉でいうと罪責判決をした裁判所の認定した事柄についてどのように審理するんでしょうか。 ● 私,ここでは書かせていただいておりませんが,第1の3では罪責判決の記載事項については拘束されるという意見です。その範囲がどこなのかということで,第1の5の罪となるべき事実の有無の判断に必要な範囲と考えておりまして,部分判決でいう任意的記載事項について記載している部分についてもう少し限定すると,こういうことでございます。 ● 質問の趣旨は,今のように拘束するとすれば,先ほど○○委員からあるような質問がまさに妥当すると思いますし,そうでなくて,終局判決事件を担当する裁判所が,例えば更新なりの手続をするのであれば,更新などでは心証がとれないという実質論があったように聞こえましたので,どちらにしてもちょっとわかりにくい制度かなと思ったものですから質問した次第です。 ● ○○委員,今の御発言に関してはよろしいでしょうか。   では,○○委員,お願いします。 ● 私は,第1の5について御質問させていただきたいと思います。さきほどのお答えでも,なお罪となるべき事実の有無の判断等というのはどこまでかということはよくわからないのですけれども,少なくとも意見陳述は含まれないという趣旨だと思います。裁判員裁判では,裁判員は事実認定だけでなくて量刑をも行うということになっておりますけれども,その意見陳述も含めて量刑の資料になるわけです。これをやってはいけないということになると,罪責審理を担当する裁判員と,終局判決を行う裁判員とは違う役割で,前者は量刑についての判断はしないということになるのかなという疑問がわいてきます。これは裁判員裁判の趣旨にそぐわないのではないかと思うのですけれども,いかがでしょうか。 ● では,お願いします。 ● 確かに量刑に関する判断,あるいはもっぱら情状に関するものにつきましては,この第1の5では対象外ではありますが,ただ,この構想は裁判官も裁判員も同じ範囲の権限だということで,A事件では裁判官も同じ範囲,裁判員も同じ範囲ということで限定されるということから,対等性はむしろ確保されると考えます。   それから,最後の終局判決事件で裁判員が量刑にかかわるので,その意味では,裁判員が量刑についてもかかわるということについては,その部分で担保されているのではないかと考えます。 ● では,○○委員,お願いします。 ● 今の制度のほぼ裏返しかもしれませんが,「原則として別の裁判官となる」とありますので,例外的にどういう場合は同じ裁判官でいいというイメージなんでしょうか。 ● これも正直なところ,「原則として」というのを入れるかどうかというのが悩んだ次第でありますが,例えば東京,大阪などでは,刑事部が複数ある場合,こういうことが可能だと思うのです。そうでないところもある場合どうするのかというのが,この罪責判決制度の,裁判官を代えるとした場合の一つの難点として挙げられるわけです。そういう場合を念頭に置いていただくわけです。   では,この制度と整合するのかというのが確かにありますが,ただ,実際上裁判所においてそういう代わり得る裁判官がいないという場合には,これはある意味ではやむを得ないという場合に該当してくるので,その場合は,この罪責判決制度の原則を譲歩せざるを得ないという部分で一つ考えていたわけです。そこはさらに詰めたいと思っていますが,そういう意味で「原則として」と入れさせてもらった次第です。 ● 御質問をお受けして,概ね提案の趣旨は御理解いただけたと存じます。お待たせいたしましたけれども,これから御意見を承りたいと思いますのでよろしくお願いします。御意見を承るなかで,また○○委員,○○委員にも御質問が行くかと思いますが,その時はよろしくお願いします。では,○○関係官から御意見をお願いします。 ● ○○委員,○○委員御提案の罪責判決制度でありますが,ここで使われている最も重要なキーワードは「分離」という言葉だと思います。「分離」という言葉は,第1の「罪責判決制度のイメージ」の項目2と項目4と2カ所に使われているわけですが,最初の項目2の方は「一定の場合に,一部の事件を区分して」といっても十分通用するのであって,この「分離」は骨子案にある「区分」という言葉と等置できる「分離」だと思います。しかし,項目4のところへ行きますと,この「分離」はやはり「区分」とは違って,本当の強い意味の「分離」なのであって,ここから裁判官も別になるという結論を引き出しておられるわけですね。   そこで,このお考えを貫きますと,裁判体はそれぞれA事件,B事件,C事件毎に別なのであって,本来ならばそれぞれの裁判体が刑の量定まで行って,それを最終的に調整して被告人の不利益にならないようにするという考え方が出てくるわけで,これは検討会の御議論などにもあらわれていたと思います。しかし実態は,お考えはそれに近いけれども,刑の調整ということは簡単にはできないことでありますので,このような分離という制度を提案されたことになると思いますけれども,しかし,やはりいろいろと無理が出てくるということは,先ほどの御質問の過程でもあらわれたように思います。徹底されれば別々に裁判する,むしろ分離するのが原則なのであって,この刑の調整という制度を考えなさいとおっしゃっているように聞こえるわけですが,これを手続的に裁判官,裁判員の対等性という理念のためにこういう制度を提案されたので,少し無理が出てきているなという感じがいたします。 ● どうもありがとうございました。   どうぞ。○○委員,お願いします。 ● 私の意見ですが,第1の「罪責判決制度のイメージ」の5にあるように,罪責審理の審理範囲を罪となるべき事実の有無の判断等に必要な範囲に限定するということになりますと,最後のA,B,CのC裁判体がすべて量刑をやるということになると思うのですが,その場合,量刑判断に必要な情状というのは,実は犯行にかなり密着した動機や計画性,あるいは犯行態様等,その事件に特有な情状がかなり含まれているわけで,それをすべてのC裁判体にゆだねてしまうということになりますと,C裁判体は恐らくA,Bの事件ほとんど全部をもう一度おさらいしなければいけなくなると思われます。そうなると,そもそもC裁判体の負担が大きくなり,併合した事件の審判を全部を行うことによる裁判員の負担を減らそうという今回の諮問がなされました本来の趣旨から見ていかがなものかなという感じが一ついたしました。   それから,もう一つが情報格差の問題でございます。これはやはり情報が等しい方が望ましいことは間違いないところでございまして,その点について○○委員,○○委員には全く同感なんですが,例えば情報格差の中で罪体に関する点については,重要証人がA,B,C等で共通しているような事件につきましては,そもそも恐らく部分審理になじまない事件ということになると思われます。それから,もう一つ,情状的な情報格差の問題というのは出てくるかもしれません。しかし,これも更新手続に工夫をめぐらすことによって,その情報格差を相当程度埋めることができていくのではないかという感じがいたしまして,そういう意味で,今回の趣旨,裁判員裁判の負担を減らす,しかもその中で適正な裁判を実現するという趣旨からしますと,今回の諮問の内容の方が全体としてバランスがとれているような印象を受けました。 ● どうもありがとうございました。   ○○幹事,お願いします。 ● やや質問のようなことになってしまうかもしれませんけれども,この罪責判決制度で最初に併合した後,公判前整理手続はどのような形で行うことになるのでしょうか。あるいは,先ほど○○委員がおっしゃられましたように,いわば全体に責任を持つ親をつくるというイメージだとすると,ここで全体の公判前整理手続をするのかなという感じもいたしますが,そうなのでしょうか。恐らく要綱で出ているような区分審理決定というのは,公判整理手続を行って争点を絞っていく中で,一体どのぐらいの期日がかかるかという見込みが立てられ,区分するかどうかということが決まっていくのだと思いますけれども,では,最初の併合した段階で全体について公判前整理手続を行わなかったら,この「長時日にわたるなど裁判官に過重な負担となり」というところが果たして判断できるだろうかというところが1つ気になります。ただ,逆にそれを今度やってしまいますと,先ほど来情報格差の問題,実質的対等性の問題がご提案の理由として出されておりますが,そうすると,親になるところの裁判体の裁判官は結局全部の証拠関係,争点等を知ってしまうということにならざるを得ないだろうと思うのですね。そこのところでご提案の当初のねらいと果たしてうまく整合しているのかという気もいたします。   公判前整理手続まで視野に入れていくと,先ほど形式的対等性ということを言われましたけれども,果たしてどうなのか。公判から以降については,確かに罪責判決制度のようなものをとれば対等性は確保できるのかもしれませんが,公判前整理手続まで入れれば,どうしてもその形式的対等性というのは出発点のところからややずれているところがあって,お考えの通りには貫徹されうるものではないのではないか。御提案の根底にはあるいは公判前整理手続の設計自身がおかしいというお考えがあるのかもしれませんが,そこはそういう出発点で考えざるを得ないと思いますので,そのあたりでうまく一貫性,整合性があるのかというところが少しひっかかるところでございます。   いろいろ申し上げましたけれども,併合した後に公判前整理手続を行い,そして罪責判決制度に持っていくとした場合に,その分離するか否かの判断と公判前整理手続とのかかわりというのはどうなるのだろうかというところに少し疑問を持ちました。 ● ○○委員,今の公判前整理手続の関連でお答えになることがございましたら,お願いします。 ● 御指摘ありがとうございます。この点もいろいろ考えたところでございますが,まず,この罪責判決制度のイメージでは,数個の事件を一たん併合しております。この併合しているというのは,現行実務でも併合していますし,恐らくは多くの事件において併合して,そして同一裁判官,裁判員でやっていけるだろうということでありますので,一たん併合し,そして併合した裁判所において公判前整理を行っていくと,こういうことをイメージしております。そして,その公判前整理手続の段階で,争点と証拠の整理をやっていくなかで,ここにあらわれているような要件が出てきたときに分離するということをイメージしています。そして,分離した後,各事件ごとに裁判体が異なっておりますので,その裁判体において公判前整理手続を引き続き行っていくということになります。確かに公判前整理が最終段階までに至った段階で分離してしまいますと,親事件,つまりここでいえば終局判決事件になりますが,この裁判官がほとんどすべてについての公判前についての情報を持っていることになると,確かにそういう危惧はございます。しかし,公判前での情報の格差と公判における情報の格差ということでいえば,特に公判での情報格差というのは,今,委員の御指摘がありましたように,これについては遮断されるという点を重要視をしております。したがいまいて,確かに御指摘のような問題点はありますが,公判における情報の差というものの遮断という観点から,この制度を考えた次第です。 ● ただ今の御説明を伺っていてよくわからないのですが,そうすると,この罪責審理決定をする前に公判前整理を行い,かつその後も公判前整理を行うということなのでしょうか。要するに,公判前整理をある段階で途中でとめておいて,分離した後,さらに引き続き公判前整理を行うというイメージなのですか。 ● そういうイメージでございます。 ● そうすると,もともと公判前整理では証拠決定までして,審理期間がどのぐらいになるか,審理の順番も決めて確定して,その上でどのぐらいの期間かかるかというのが判断されるはずですので,証拠決定をしないで罪責審理決定につき判断するという関係になるんでしょうか。 ● ですから,確かにどの段階でというのは運用にゆだねざるを得ないところはありますが,証拠調べ決定までいかなくても,おおよそ証拠調べの範囲が固まってくる段階で,こういう分離決定が可能になってくるのではないかと思っております。 ● それはなかなかかなり難しいと思うのです。要するに,どのような証拠調べ請求に対して採否を決めるかというのは,まさに裁判体が決める話であるはずです。ですから,少し極端な例かもしれませんが,最初の裁判所はかなりの証人尋問が必要だと考えて罪責審理決定をしたけれども,結局分離した後の裁判所は「証人はほとんど要らない。非常に短い審理で終わる」という判断をすることもあり得るのですから,そういう変化が生じるような制度というのはいかがなものかという感じがしてしまいます。 ● その点につきましては,少し考えさせてください。 ● もう既におわかりだと思いますが,最初の点については,形の上でも実質の上でも私は反対です。分離という形をとることについては,既に御指摘があったとおりですが,1つは既存の分離という制度があることを前提にして,御提案のような制度をつくった場合に,既存の分離と趣旨は違うのだ,あるいは機能は違うのだと言われても,やはり法制度として整合性が非常に悪くなると思うのです。それに,さきほど申し上げたように区分審理という形でも,御主張のような考え方をとることも理屈の上で可能だと思いますし,逆に,分離すれば別の裁判官になるというのも,論理必然ではない。今でも,分離しても同じ部に継続して,訴訟法上裁判体は別ではあるものの,事実上は同じ裁判官が担当するということはあるわけですから。○○委員がおっしゃりたいのは,実質として別の裁判官に担当させるべきだということであるはずですよね。また,そのようなことが実際にあるとは思いませんが,例えば,今の合議体の裁判体でも,構成裁判官が3人とも亡くなったという場合に,新たな裁判官を入れることによってその裁判体を維持するということが不可能かというと理論上は必ずしも不可能とも思えないのです。同じ構成ではないので更新はしないといけないわけですけれども,裁判体としては連続性を持って続いていくという方が,今の制度と整合しやすいのではないかと思います。さらに,対等ということを強調されるのですけれども,ベストな解はないということは前に申し上げたとおりで,そういう意味では,お考えのような考え方もなり立ち得なくはないと思うのですけれども,実質論として考えた場合に,本当に懸念されているような不都合が生じるのか,疑問に思います。○○委員は国民の司法参加にずっと熱心に取り組んでこられたので,御熱意はわかるのですけれども,実質としてどうかなと思います。   さきほど○○委員がおっしゃったのですが,前回も私が指摘させていただいたように,罪責問題の事実認定にかかわる重要証人や被告人に対する質問といったところが共通して問題になるような場合には,そもそも分離はできないので,このただし書きにより除外されると思うのです。残るのは量刑にかかわる何らかの情報ですが,それは前の部分判決で認定されていれば拘束力を生じますので,後の判決でそれと違うことは言えないわけですし,前の区分審理において調べた証拠について,後の審理でもう一度調べたいということであれば,更新するなりしてあらためて実質的な心証をとらなければならないはずです。後の裁判体で量刑について十分な心証をとってもらうためには,それにふさわしい審理をする必要がある。従って,更新の中身の問題として,対応すべき事柄ではないかと思うのです。   さらに,御提案のような制度でいった場合,公判前整理手続が複雑怪奇なことになるという御指摘がありましたけれども,公判前整理手続が別々に行われるとすると,その2つの公判前整理手続の関係はどうなるのかなど,難しい問題が生じてきますし,そうではなく,一応併合して最初の公判前整理手続で審理計画を立てたところ,これでは日数がかかってとんでもないことになるので分離しようということになった場合,その審理計画がそのまま生きるとしますと,分離された方の事件を担当することになる裁判体の裁判官は,他の裁判体が立てた審理計画に従って審理を行わなければならないことになり,そのようなことで,円滑に審理ができるのか。そういった実質的な問題がある。その意味で,ご提案は,余りにも建前といいますか,見かけにこだわり過ぎた案ではないかと思われますので,実質的にも反対ということです。   あと2点だけ述べさせていただきます。第1の5ですけれども,これは,要するに最初の裁判体で,罪責を認定するのに伴い,さきほど○○委員がおっしゃったように,動機ですとか犯行に至る経緯ですとか,背景にある人間関係ですとか,犯行後の被告人の行動ですとか,そういったことを調べるということが当然ある。それは罪責の認定にとっても必要な間接事実になり得る。両当事者ともそこまで主張し,防御して調べたのに,なぜ認定してはいけないのかが疑問なのです。それをもう一度後の審理で調べるのは,審理の重複になりますし,証人などももう一度来なければならないことになり,結局,今回の趣旨に反することになりはしないか。その分,後の方の裁判体を構成する人たちに大きな負担を負わすことになるわけですからね。御主張の真意は,むしろ,被害者の意見陳述をその段階ではしてもらいたくないということにあるようですが,それを問題にされるなら,被害者にその段階では意見陳述をさせるべきではないという意見を正面から述べられるべきであって,こういう別の形で被害者の意見陳述を間接的に制限しようというのは筋のよいことではないように思います。また,御承知のように,別の部会で被害者の問題は議論されているわけで,そちらの議論で,罪責問題についても被害者が意見陳述ができるということに仮になったときには,そのような間接的な形での制限というのは何の意味もなくなってしまうわけです。ですから,筋のよい議論ではないという感じがします。   第2については,この制度をごく例外的なものにしたいというお気持ちは分かるのですが,しかし,本体のところで「やむを得ない」とまで言っていながら,やむを得ないはずなのにまたただし書で除外を認める,やむを得ないのだけれども同じ構成でやるのだということが,果たして通用するのか疑問です。「やむを得ない」と言うからには,やはり分けざるを得ないと思うのですね。ですから,むしろ,本体の方は少し膨らみのある形にしておいて,ただし書でさらに絞った方が,全体としてはおさまりが良いのではないかという感じがします。以上が私の意見です。 ● すみません。今,第1の5について複数の御意見が出たので,ちょっと補足させていただきたいと思います。   第1の5については,この文章ではやや不十分なところがありましたが,ここで書いてありますのは,要綱に「犯行の動機,態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する事実」という文言がありますが,第1の5の「等」というのは,「犯行の動機,態様及び結果」,このあたりは含まれるのかなと思っております。ただし,その次の「その他の罪となるべき事実に関連する」については,関連性のところがやや広いと考えられるわけです。少年法でも,密接に関連するとして,より絞っておりますので,ここがやや広いのではないかということで第1の5をイメージしているということで御理解いただきたいと思います。 ● 今の点についての御意見でしょうか。○○委員,どうぞ。 ● 今の御説明で,若干誤解していた部分もあったことがわかりました。ただ,先ほど○○委員が,なぜこの第1の5のようにするかということで言われた理由として私が理解したのは,要するに審理の範囲が広がるといいますか,審理の対象があいまいになり,そういう意味で防御がしづらくなると,そういう御主張だったように思いますが,公判前整理手続のやり方の問題は置くとしても,いずれにしても公判前整理手続を行った上で審理をするはずですので,どういう事実関係について審理が行われるかというのは,まさに争点整理の中で明らかになる。むしろそこで整理されるはずですので,審理の対象があいまいになるというのが私にはなかなか理解できないんです。検察側としてどういう事実を主張するのか,情状事実も含めて主張し,それに対して防御の方からも同様の主張をする。それについて何が争点であるかということを整理して,これについて審理をしましょうという形で審理がスタートするわけですので,防御の対象があいまいになるということ自体が私にはなかなか理解できないところです。 ● 今のところ,罪責判決制度についての御意見が集中していますが,区分審理決定それ自体についての御意見がございましたら,その点もお願いいたします。   どうぞ。○○委員,お願いします。 ● 難しい議論だなと思って聞いていました。裁判員はなかなか理解するのが大変だろうと思います。   罪責判決制度についての感想みたいなもので恐縮ですが,私は,ちょっと難点があるなと思っています。というのは,やはりこの区分判決制度にしろ,大前提は併合事件という出発点だと思うんですね。いったん併合ということで根っこをくくってしまうわけですから,そこから先をまた分けるというのがなかなか理解しにくいなと思います。余りにテクニカルなつくり方ではないかなということを感じます。感想です。   そして,もう一つは,何かこの罪責判決制度にしても,先ほど,地方の裁判所みたいに裁判官が少ないところでは,なかなかできない事情があるだろうから,同じ裁判官でもってやらざるを得ない。原則的にというのはそういう意味なんだという説明がありましたけれども,やはり罪責判決制度にしろ部分判決制度にしろ,大事な点というのは,広く活用される制度ではなくて,最終的に事件の審理が非常に難しくて何年もかかってしまうようなことも予想されるというような,もし仮にそんな事案があったとしたら,裁判員はとても耐えられないから,その負担を軽くするためには審理を分けましょうという考え方だと思うのですね。ポイントになっているのは,やはり負担の軽減という問題だと思うのです。そうすると,かなりたくさん活用して裁判員をたくさん確保してやろうという制度として考えることはどうかなということをちょっと考えてしまいますね。あくまで参加する裁判員の立場からしましたら,区分審理に参加することであっても,あるいはこの罪責判決の審理に参加する形であっても,やはりこの事件のいろいろな事実を突き詰めて確認して,そして適切だと思うような量刑が言い渡せる,あるいは無罪だという判断をする,そういう一種の達成感みたいなものが必要だと思うのですね。それが国民参加の意味だと思うのです。   ちょっと余談ですけれども,ある模擬裁判を傍聴していたら,裁判員役の人が,懲役刑か無罪かという選択を迫られたときに「いや,それはどっちでもなくて島流しが一番いいですよ」という意見を言ったのです。というのは,現行の刑罰のどれに当てはめてもしっくりこない。江戸時代みたいな島流しというか,所払いというか,江戸追放というか,そういうような,とにかく接触を持たせないような措置をとるのが一番いいのではないんですかという意見だったのですね。これは私は「あっ」と思いましてね。そういう意見を量刑の中に反映させていくということが裁判員制度のもう一つの意味だと思うのですね。そうしますと,罪となるべき事実の有無の判断に限定してしまうということになってしまうと,裁判員として本当に言いたいこと--つまり,この事件というのは本当に島流しみたいなものがいいんだよというような意見を持っている人,そういう意見がいいなと思って共感を覚えているような人,そういう意見が生かされなくなってしまう可能性があると思うんです。そういうのは,やはり一部の事件の審理についての意見であっても終局判決に生かしていくような,そういう構成がとられる必要があるだろうと思うのですね。そういう意味で,余りに絞ってしまう形のつくり方というのはどうなのかなと感じます。感想です。 ● どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   ○○委員,お願いします。 ● 区分審理決定そのものについても議論するということでよろしいですか。 ● はい,どうぞ。 ● そうしますと,確認なんですけれども,この区分審理決定という中には,決定自体の変更取り消しも含んでいると考えてよろしいんでしょうか。 ● 決定の取り消しや変更も可能な制度を構想しております。 ● 具体的に申しますと,審理は生き物ですので,当初は3つやろうと思ったけれども,最初の区分審理で例えば有罪が出て,その後の事件は認めますよということもあり得ると思うのですね。 ● まだ要綱ですので,そこを明確にすべて書き切ってはございませんが,そういうことにも対応できるような制度として考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● ○○委員と○○委員の提案の中の第2の部分について,余り皆さん言及していないので,ちょっと感想を持ったのですけれども,真ん中のアンダーラインが引かれている部分のところに「一括して審理すると長時日にわたるなど」と極めて具体的に書いてあって,私はこれは非常にいいなと思うのですね。つまり,抽象的な負担というふうに言われても一体何だろうということを考えてしまうのですが,この提案は客観的に長時日というふうに,時間というものを物差しに持ってきていますから,こういうものを書くことは私は考えていただきたいなと思います。 ● どうもありがとうございました。   どうぞ,○○関係官,お願いいたします。 ● 第2についてちょっと質問したいと思います。先ほど要綱(骨子)に合わせて案をつくってみたというお話であったと思いますけれども,要綱(骨子)の方は区分審理という言葉と部分判決という言葉を2つ用意していて,区分審理というものと形式上分けるというだけの話で,分けた後どうなるかという内容の方は部分判決という言葉で表現しているわけですね。ここでお示しの第2は,罪責審理決定というので,これは内容の方なのかなと思いますけれども,その点,要綱骨子と少しずれているのではないでしょうか。 ● この第2の方につきましては,要綱でいえば第一の一の1の部分に対応させて書かせていただいて,その後,この罪責審理事件の審理の範囲についてどうするかということの規定を盛り込まなければいけないと考えてはおります。ですので,そこで定義が出てくるということになります。 ● 区分審理決定に関しての御意見はおおむね出そろったように思われますので,要綱(骨子)の第一の一につきましてはこの程度でよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。   次に,要綱(骨子)第一の二の1に部分判決における記載事項等が記載されてございますが,この項目に関して何か御意見がございましたらお願いいたします。 ● 質問があるのですが,よろしいでしょうか。第一の二の1部分判決の(3)にございます,先ほど私が指摘させていただいた「犯行の動機,態様及び結果,その他の罪となるべき事実に関連する事実」というところですが,これにつきましては,裁判所が判決に記載する事項として,任意的記載事項であると前回御説明があったと聞いておりますが,どの範囲の事実を書くのかというところでは,どの段階でだれが決定するのでしょうか。前回,裁判員と一緒に決めるかのような話があったように聞いておりますが,先ほどもありましたように,この事実の範囲については公判前整理手続である程度,どの範囲の事実を審理し,そしてそれを任意的記載事項に盛り込むのかという問題があるので,ある程度公判前整理手続の段階で密接に関連する事実というのが出てくる可能性はあるのではないかと思います。その観点からの質問なんですが。 ● その点について,事務当局からの御回答をお願いします。 ● 前回の議論で出た話と申しますのは,具体的な審理を終えた結果,どのような任意的記載事項を記載するかは,それぞれの裁判体において重要な事実として認定すべきだと考えるものについて,その裁判体の判断で記載することができるということを御説明したものだと思っております。一方,今御指摘のありました公判前整理手続でどの範囲の立証がどの段階で行われるかということは,もちろん公判前整理手続で外延が決められることにはなりますので,やむを得ない事由などに当たらない限りは,その範囲での立証がそれぞれの区分審理で行われるというのは御指摘のとおりだと思いますけれども,具体的な部分判決の記載としてどのような事実が結果として認定されるのか,さらに任意的記載事項として書かれるのかということは,それぞれの裁判体が審理の結果判断するということになるのではないかと考えております。 ● 実務的な手順としては,求刑はないわけですけれども,この部分判決の前に,何と呼ぶかは別として,今の論告・弁論に当たるような手続がされるという前提と考えてよろしいのでしょうか。 ● 今,委員がおっしゃったとおり,区分審理においても,論告・弁論に当たるような手続を行うことになるだろうと考えています。 ● そうしますと,今,○○委員の御質問の点も,便宜上,論告・弁論と言いますけれども,その中で議論されたことについて,裁判所が判断するかしないかを裁判員もあわせて評議して,最終的に何を判断するかというのを決める。おそらくそういう流れになっていくのかなと私は考えておるんですが,それでよろしいでしょうか。 ● そういうようなイメージでおります。 ● そうすると,基本的に区分審理についての審理の範囲というのには余り限定はないという,要するに最後の量刑だけを終局判決に回すというようなイメージでいいんですかね。 ● 公判前整理手続において,各事件について一体どういう事実を立証していくのかなどの審理計画を立てていくわけです。そこで大枠は決まることになるのですが,その審理計画を踏まえた上で,部分審理においてそれぞれの立証活動が行われて,証拠も顕出されますので,それをもとに最終的に論告的なもの,あるいは弁論的なものがなされます。そして,それに基づいて部分判決にどういう事実を記載していくかを裁判体において判断する,という順序になっていくものと考えております。 ● それから,あらかじめの公判前整理手続で基本的な枠は決まりますよね。そして,その区分審理ごとには,それぞれの裁判体がここまで審理をするという,ある面では,あらかじめ公判前整理手続が決まっているだけではなくて,具体的に審理をしていく中で,そこの構成体の判断で行う部分というのも出てくるのでしょうか。それともそのようなことは全くないのでしょうか。 ● 現行の刑事訴訟法での手続においても同様ですが,公判前整理手続が終わった段階では,どの期日にどの証人をどういう立証趣旨で調べるかということも,既に一応確定しているということで審理が始まるという前提で運用されると考えておりますので,基本的には,どの区分審理のどの期日にどの証人をどういう内容で調べるかということまでスタートの段階でわかっているということになるのだろうと考えております。 ● 我々から見ると,例えば一般的情状は任意的記載事項ではないとなっていますからね。そうすると,被害者が出て被害感情--判断にかかわることだったら当然あり得るけれども,被害感情や被害者の意見陳述,そういう部分というのは終局の審理で行うのかなというイメージを,任意的記載事項のイメージがあったから考えるけれども,そうではなくて,意見陳述を含めて,審理そのものはもう全部区分審理でやってしまうということになるのですかね。 ● そういったことをどの段階でやるのかを公判前整理手続の中で決めていく。そこで決まったことに従って審理が進んでいくと考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,○○委員,お願いします。 ● 前回の質問の確認になるんですけれども,この3の終局の判決の(2)で「部分判決に係る事項についてはこれによるものとすること」というのがあります関係で,部分判決でない判決は当然,何を書くかというのは335条によることになるわけですが,この部分判決の中身が335条と過不足がなければ同じことになるんですけれども,若干過不足があった場合に,それを踏まえた終局判決に対する規制というのは,やはり335条なのでしょうか。それとも,335条とこの部分判決の終局判決の(3)の2というものもかぶってくるのでしょうか。結局そこがどういうものでしょうかというのがお聞きしたいことなのですが。 ● 正確にお答えできるかどうかわからないですが,基本的に部分判決で必要的記載事項として求められていることを網羅してあれば,終局判決がそれに従っている限りは335条の要請も満たすのではないかと考えております。 ● 具体的に言いますと,そのとおり全部差がなければ,今言った問題は起きないんですけれども,何らかの理由で,部分判決には書いてあるけれども終局判決には書いていないといったことが起こった場合に,それがしかも任意的判断事項だと,335条の点でいけば別に違法にはならないわけですけれども,この部分判決の規定によってやはりそれは違法になってくるのかという,そういうことです。 ● 恐らく御指摘の点は,終局の裁判を行う際の判決書きの記載の仕方といった運用の面にもかかわる話かもしれないと思っております。その場合に,すべてを書きおろす形になるのか,あるいは部分判決を受けて何らかの新しい書き方が工夫されるのかということかと思いますけれども,基本的にはそのような過誤がないような形で運用できるようにしていくことになるのではないかと,考えております。 ● この点について,御意見は出そろったようでございますので,この点はこれで終わることにしまして,ここで休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただきます。   今度は,要綱(骨子)第一の二の2にございます構成裁判官による部分判決の項目に関しまして,何か御意見がございましたらお願いいたします。 ● 前回欠席したため質問をしていないので,質問させてください。この構成裁判官による部分判決で,非対象事件について構成裁判官の合議体で審理するということでありますけれども,非対象事件の中には,もともと単独事件だった場合もあると思うのですよね。裁判官裁判の対象事件で単独事件の場合と法定合議事件という場合もあるのですが,この場合では単独事件についても3人の裁判官で審理すると,こういうことになる前提かと思いますが,その理解でよろしいですか。 ● そのとおりでございます。 ● これは,現行は単独。「できる」ということはどういう趣旨でしょうか。 ● ここの「できる」は,単独でできるか合議でできるか,という趣旨の「できる」のではなくて,構成裁判官だけで審理できるのか,裁判員の参加する裁判体で審理するのかという趣旨の「できる」ということです。 ● やはり考え方のもとは,もう一たん併合しているからという前提なのですかね。裁判体がやるからという意味で裁判官の合議体と,そういう意味ですね。 ● そうです。 ● ほかに御意見がないようでしたら,この点については御審議いただいたということで,次にまいりたいと存じます。   次に,要綱(骨子)第一の二の3にございます終局判決の項目は,終局の判決は部分判決によることなどについての項目ですが,これに関して,何か御意見はございませんでしょうか。 ● 確認なのですけれども,3の(3)です。これは,終局の判決をする場合において絶対的控訴理由がある場合には,ということだと思うのですが,その場合に,さらに区分審理によるという決定はできるのでしょうか。この場合は,最後の裁判体で全部審理するということなのですか。「終局の判決をする場合において」となっているものですから。 ● 通常は,恐らくその最後の裁判体で審理するということになるでしょうけれども,法律上は,再度の区分審理決定はできると思います。 ● この「終局の判決をする場合において」ということなのですけれども,ここは少し幅のある概念ということでしょうか。要するに,最後の事件についても審理が煮詰まっていて判決できるという段階で初めてできるのか,それとも,どこかで気づいたときにこの決定ができるということなのでしょうか。 ● 必ずしも区分事件以外の事件の審理が終了した段階で初めてできるというものではございません。「終局の判決をする場合において」と記載してございますが,そこまでの時期的な限定をした趣旨ではございません。終局の判決をするための審理の段階においてということでございます。 ● いかがでしょうか。ほかに特に御意見がございませんようでしたら,次へまいりたいと存じます。   次は,要綱(骨子)第一の三にございます部分判決制度における裁判員等の選任手続等の項目です。具体的には区分審理に関与する裁判員等の任務終了や選任予定裁判員の制度などの項目でございますが,これに関して何か御意見ございましたらお願いいたします。 ● 質問ですが,3項でございますが,これについてはあらかじめ,仮にA,B,Cと事件があった場合に,C事件の裁判員の選任予定裁判員をあらかじめ選任することができるということで,恐らくA事件が始まる前に選任予定しておくと,こういう趣旨でよろしいでしょうか。 ● 御指摘のように,A事件の裁判員を選ぶ段階で一緒に選ぶことも可能ですし,それ以降,例えばB事件の審理中に選ぶということも可能な制度を想定しております。 ● それを前提に,質問ですけれども,そうしますと,A事件の前,あるいはB事件の前でもいいですが,いずれにしても,あらかじめC事件についての公判の開始日や審理期間などが決まっていることが前提になっているという理解でよろしいでしょうか。 ● そのようなことが公判前整理手続について明らかになって,その結果として区分審理が必要であるということが判断されているんだろうと考えております。 ● そうしますと,例えば場合によっては,A事件,B事件などの審理の経過によっては,C事件の審理が変更し得るという場合もあり得るかと思うのですが,その場合は,もう一度裁判員の選任をやり直すなりするのでしょうか。あるいは,C事件が長くなる場合か短くなる場合,両方あると思うのですが,そういう場合はどのように対処することになるんでしょう。 ● まず,仮にA,B,Cとあって,Cが最後の事件だとした場合に,C事件の裁判員となる選任予定裁判員をどの段階で選任するかというのは,その事件の内容,例えばA事件やB事件にどの程度の審理期間がかかるのかといったことにもよって,事案によって変わると思いますので,必ず最初に選任しなければいけないものではないということが前提になります。その上でC事件の選任予定裁判員を適宜の時期に選任することになりますが,その場合であっても,やむを得ない事情でC事件の審理予定が大きく変更になるということは,これはもちろんあり得ることだろうと思います。その場合には,その選任予定裁判員について,いわゆる現在の裁判員であれば辞任に相当するような事由が認められるかどうかといった判断を前提として,選任予定裁判員がそのままC事件の裁判員として選任されるかどうかによって,追加的にさらにC事件の裁判員を選ぶ必要があるかどうかということが起き得るのだろうと思っております。 ● いかがでしょうか。御意見,あるいは御質問でも結構でございます。御意見がございましたらお願いいたします。この件に関しまして特に御意見はないようですが,本日は最後まで,この要綱案について御意見を承った後,また全体をまとめて御意見がございましたらお伺いする予定であります。そういうことですので,この問題はひとまずこれで終えて,次に移らせていただきたいと存じます。   次は,要綱(骨子)第二の証人尋問等の記録媒体への記録について議論していただきたいと思います。要綱(骨子)第二につきまして,どなたか御意見ございましたらお願いいたします。 ● 確認も含めての質問ですが,証人尋問等の記録媒体の記録ですが,二の2で「記録媒体は,訴訟記録に添付して調書の一部とするものとすること」ということですが,この点に関して,幾つか確認をしたいのです。調書の一部とはなりますが,別途証人尋問調書などの作成は予定される趣旨なのかどうかということと,それから,この記録媒体については当然でありますが,刑訴法157条の4第1項の場合は,とにかく原則として謄写というか,ダビングというのか,そういったことが可能になってくるのかどうか。この2つについて確認したいです。 ● まず前者の御質問です。これはあくまで刑事訴訟法157条の4第1項に規定する方法による証人尋問を行う場合に関するものでございますが,その場合には記録媒体が公判調書の一部となります。その場合には証人尋問調書も作成されるという理解でおります。   それから,謄写,あるいは内容の確認についての御質問は,二の2の場合ということでよろしいですか。 ● 一の場合も含めてでございます。 ● この点につきましては,当事者においてその内容を確認できるような手当てがなされることになるのではないかと考えております。もちろん,一方,二の2で公判調書の一部となった場合には,現在の刑事訴訟法の規定にのっとった形になりますので,調書については謄写,添付された記録媒体については謄写の例外となるという扱いだと思います。 ● 第二の1の方は,録画をしても当然に訴訟記録になるという整理はしていないと私は理解しております。したがいまして,当然にビデオテープの閲覧,謄写ができるということには法律上はならないわけですけれども,これは前回,この場でも御説明しましたとおり,要するに裁判員の便宜のために撮るとなると,それは当事者の方も場合によっては確認したいという場合もあろうかと思います。事件が第一審にある限りのことで言うと,それについて,これは裁判員のためだからお見せしませんと言う必要もないのかなと思っていまして,当事者の方はさらに検討しなければいけない問題があるように思っていますが,何らかの形で当事者双方にも見ていただくための手当てをする方向で今検討しているところでございます。 ● ○○委員,今の点につきましてはよろしいでしょうか。 ● 先ほどの点で1点だけ補充させていただきますが,157条の4に規定する方法による証人尋問で訴訟記録の一部となったものの扱いについては,現行の刑事訴訟法40条2項と同様の扱いになると考えております。 ● 要綱(骨子)第二につきましてはこの程度でよろしいでしょうか。   では,次に,要綱(骨子)第三の公判調書の整理について御議論いただきたいと存じます。要綱(骨子)第三につきまして,どなたからでも結構ですが,御意見がございましたら御発言をお願いいたします。   特に御意見がないようですので,この第三の公判調書の整理につきましても御意見を承ったということで,これまでの審議は一応これで終わることになりますが,第一から今までのところで,まだ御発言が足りなかったとか言い漏らしがあったとか等の方がいらっしゃいましたら,自由に御発言していただきたいと存じます。   どうぞ。○○委員,お願いします。 ● 先ほど,裁判員の任務の始まりの時期については若干議論が出たんですけれども,任務の終期について,少し意見を述べてみたいと思います。   今日,選任予定裁判員の法的地位についての整理の表がつくられて,非常にわかりやすくなったと思いましてよかったと思うのですけれども,この表でいきますと2枚目の79条の裁判員等による秘密漏示罪の関係などで,部分判決を担当した裁判員の任期の終わりの時点が関係してくるように思うので,その点,どなたも意見を述べなかったので,私の方から何も言わないのはまずいかなという趣旨で,積極的反対という意味ではないですけれども,懸念があるということを言っておきたいと思ったのです。   と申しますのは,私は,前々から裁判員の守秘義務の範囲についてはかなり限定して考えるべきであろうという意見を述べてきたものですから,その立場からしますと,この示された配布資料の考え方というのは,選任予定裁判員の法的地位というのを限りなく現職の裁判員に近い位置付けで考えていらっしゃるように思うのですね。守秘義務のところも,終局の判決までは現職の裁判員と同様にするということですので,部分判決を言い渡した後も守秘義務としては続いていくという想定ですね。となりますと,私は守秘義務の範囲を絞るべきであると考えている立場なものですから,若干どうかなというのが懸念材料としてあるかと,あるいは反対論が出てくるかなというのが予想されますので,そういう意味でちょっと意見を述べてみたいと思うのです。   これは非常に難しいとは思うのです。区分審理を担当した裁判員が部分判決を言い渡したことによって,その任務が終了するという方がいいのかなと私は考えているのです。実は終局判決に至る終局の合議体が,まだ審理がそのときは続いているという状況に恐らくあると思うのですけれども,そうしたときに,部分判決の言い渡しが終わったら全部終わりということにして,裁判員であった者という法的位置付けで,守秘義務などが適用されていく方がいいのではないかという考え方なのです。後の審理に影響が出る可能性があるので,部分判決が言い渡された後も何らかの形で法的義務をかぶるような仕組みにしておいた方がいいという理由はわかります。恐らくそういうことというのはかなりの方が支持されるのかなとは思うのですけれども,ただ,何で部分判決をやるのかということを考えますと,それは理由の一つとして,裁判員の負担の軽減という問題が挙げられておりますから,そう考えると,審理が終わったら即解放してあげる。裁判員のいろいろな負担を解放してあげる。元裁判員になってもらうという方がいいのではないか。その方が負担は軽くなるだろうと思います。まだ終局判決が続いているので,ずっといわば現職と同じような立場でいなければいけないというのは負担が重いということが1つ感じられるということですね。   それからもう一つは,裁判員にとっての一種のわかりやすさとでもいうのでしょうか,そういうものが必要だと思うのですけれども,部分判決を言い渡してしまったら任務が終わりというのは非常にわかりやすいと思うのです。けれども,終局判決が出るまでは続いているということであると,では,いつ任務が終わるのかなと思うのです。終局判決が出ましたという確定通知でも来て,これでもってあなたの任務はおしまいですということになれば,それはそれでいいのかもしれませんけれども,例えば転勤族が裁判員に選任されて審理を担当するということだってあると思うのですね。そのような方が参加して部分判決をやったけれども転勤してしまって,全然違うところに今住んでいるというようなことになっていったときに,終局判決がどうなったかよくわからないということもあろうかと思うのですね。そうしたときに,まだ続いているのか続いていないのかわからない,宙ぶらりんな状態になるのはどうなのかということも,感じまして,そういう2つの理由からすると,ここは部分判決の言い渡しでもって任務は終わると考えてもいいのではないかと思う次第です。また,そういうふうに考えても,ここで懸念されているような異常な事態というんでしょうか,処罰に値するようなこと,つまり,部分判決に関与した裁判員が秘密を漏らすというようなことが起きるかというと,それほどないだろうと思います。私は少し楽観的に考えている面はありますけれども,現実的にはそう心配することもないだろうと思っております。   そういう理由からいくと,部分審理裁判員というのでしょうか,その任務の終期については,最初に事務当局の方で考えておられたのは,部分判決言い渡しをもってその任務が終わるという判断なのかと思ったものですから,前回そういうような発言をしたのです。今回,その点は明確になったのですが,逆に少し心配なところも出てきたかなというのがありまして,そういう意味では積極的に反対するわけではないですけれども,心配でもあると感じているということです。 ● ただいまの御意見に対して事務当局において補足説明がございましたらお願いします。 ● 若干補足的な御説明でございますが,区分審理に関与して部分判決を行ったそれぞれの裁判員の職務そのものは部分判決の宣告,告知で終了します。その点は当初から変わっておりません。その場合に秘密漏示罪との関係でございますけれども,まず,これは現在の秘密漏示罪も同様でございますが,現職の裁判員と元裁判員であった者との間で守秘義務の範囲は何ら変更はございません。ただ,評議の秘密のうち,それぞれの裁判員や裁判官の意見や,その多少の数を漏らした場合と,それから財産上の利益その他の利益を得る目的で評議の秘密を漏らした場合については,元裁判員であった者に対しても,現職と同じ法定刑が科されます。それ以外の場合は罰金にとどまるという,法定刑に差がついているという違いがあるだけでございます。そうしますと,本日御説明した部分判決後終局判決前の区分審理を担当した裁判員について違いが生じるのは,評議の秘密のうち,意見やその数でもなく,かつ利益を得る目的もない場合については,罰金だけではなく懲役刑が法定刑として加わる場合がある。その部分のみが手を加える必要があるのではないかというのが本日御説明した内容でございます。 ● 終局判決が部分判決に関与した者に対して告知されるのかどうか,あるいは,何か知らされるのかどうかという御質問がありましたが,この点についてはいかがでしょうか。 ● 現在,事務当局の方で,その点について法律上手当てをすることまで考えているものではございません。今御指摘を受けた点は,さらに検討させていただきたいと思います。 ● 今の点は,確かに○○委員がおっしゃるように,強い義務を課す,と申しますか,強い罰則の対象にする義務をかけるとすれば配慮しないといけない点だと思うのですけれども,もともとの○○委員の御主張は御主張として,現在法律としてできているものについては,さっき○○幹事が説明されたとおりの形になっているわけです。そのときに,現職か元職によって罰則の質,程度が違う。罰則というか刑罰が違ってくるということですが,それは任務が終わったかどうかということで区別しているのですけれども,それで強く保護しようとしているのは,やはり現在進行中の審理への影響が考えられるかどうか,もう終わった審理なのかどうかと,そこで分けていて,単純な場合は任務が終わるのとそれが一致するものですからそうなっていると思うのですが,今回の場合は,その事件を含む審理手続は現在進行中なわけです。ですから,その趣旨からしますと,終局判決により終了するという段階まで強く保護するということに,むしろなるのではないかと思います。当の裁判員にとっては,任務が終わったと思い秘密を漏らした場合は重いが,終局まで行って任務が終わった後に漏らした場合は軽いという差が,見かけ上は出てきますので,○○委員の立場からすると少し抵抗がおありになるのだろうと思うのですけれども,裁判員法の趣旨からしますと,事務当局の案の方が筋が通っているという気がします。 ● どうもありがとうございました。   今の点に関して何か御意見がございますでしょうか。   特にございませんようですので,ほかの観点から御意見がございましたらお願いいたします。   どうぞ。○○関係官,お願いします。 ● 区分事件について,決定による公訴棄却の事由を生ずるということはめったにないとは思いますけれども,公訴の取消しなどは稀れにはあり得ると思います。それについては言及しておかなくてもよろしいでしょうか。338条まではここに全部列挙してあるわけですが,339条をどうするか,という質問です。 ● 公訴棄却の決定があった場合については,御指摘のように要綱に特段触れてございません。公訴棄却の決定に対しては,その決定自体に対して即時抗告という形で独立の不服申立てが認められておりまして,そのような制度の仕組みから考えた場合,私ども事務当局としては,ほかに公訴棄却の決定の対象とならない事件が併合されている場合に,それと一括して終局の判決まで待った上で,それに対してそこまで待つ,そういう制度はむしろなじまないのではないか。むしろ公訴棄却の決定をしなければならないような事案については,弁論の分離をしてしまった上で,その当該分離された事件についての公訴棄却の決定を別個にするという方法が考えられるのではないかと考えております。つまり,併合した中で部分判決のような形で公訴棄却の決定をするのではなくて,そもそもの併合をやめてしまって,弁論を分離した上で公訴棄却の決定を別個にするという制度でよいのではないかと考えたものですから,区分審理の結果として公訴棄却の決定に手当てをするということは考えておりません。 ● 公訴棄却事由は,被告人死亡などであれば,これは一括して全部処理できますが,先ほど例に挙げた公訴の取り消しで,例えばB事件だけが取り消されたという場合に,そもそも339条を発動できるのでしょうか。もしできないとすれば,その裁判員はいつまでも職務が終わらないということにならないかというような点が気になります。 ● まず私どもの事務当局で考えた考え方でございますが,公訴が取り消されたような場合には,当該事件についての弁論をいったん分離した上で,それについて公訴棄却の決定を下す。もし再起訴がなされた場合には,それが再起訴なされた上で併合が相当であれば,また併合されるということになるのではないかと考えております。 ● 区分事件については特に規定を置かなくても,当然に339条が発動できるという前提ですか。 ● 私どもで考えておりますのは,区分事件といいますよりも,その事件が公訴棄却の決定の事由がある事件であれば,そもそもの最初の弁論の併合を取り消すといいますか,最初の弁論を分離して,その公訴棄却の決定の対象となる事件を別個の事件とした上で,それを公訴棄却の決定を下せば足りるのではないかと考えております。 ● しかし,公訴の取消しは事後的に審理の途中で生じ得るのではないでしょうか。 ● 先ほど私が質問したところと関連しているんですけれども,区分審理決定をその場合は取り消すのだと思うのですね。ないしは変更するのだと思うんですね。その上で,いったん弁論の併合分離ができる状態にして,それで分離して公訴棄却の決定をするというのが御説明だと思うんです。 ● そのような趣旨でございます。 ● どうもありがとうございました。 ● もとに戻すと理解しているんですけれども,いかがでしょうか。 ● 弁論の分離は,私どもが現在考えておりますものとしては,部分判決が既になされた場合は別といたしまして,それに至る前の段階であれば弁論を分離することも可能だと考えております。 ● ですので,区分審理決定を変更か取り消さないとうまくいかない,ということになるはずです。 ● 御指摘の点はそのとおりだと思います。 ● 裁判員は選び直すのですか。分離してどうするのかというのが若干疑問があるのですが。 ● その場合は,その事件は公訴棄却になりますから,その裁判員は終わりだと私は思っております。もともと区分した上で選任しているわけですから。その事件が公訴棄却になるわけですから,その裁判員はそれで任務終了になるだろうと思います。 ● 御質問の趣旨は,分離後の分離された方の事件の配点の裁判体をどうするのかということでしょう。その点につきましては,分離しますと手続が別になって,裁判体としても形の上では別にならないといけないことになりますでしょう。その場合,分離された方も裁判員制度対象事件ならば,改めて裁判員を選任しなければならない。現在は職業裁判官だけですから同じ部に係属させてもいいわけですけれども,別の裁判員を選任し別の裁判体として,それに担当させることになる。そうすると,分離してしまうと,本当は死んでいる事件なのに,死んでいる事件であることを宣言するためだけに裁判員を選任しなければならなくなっておかしいのではないか。そういうご趣旨かと思いますが,いかがでしょう。 ● まず,実務的にはさまざまな解決の方法があり得るかもしれないと考えております。例えば,裁判員が既に選任されている事件と選任されていない事件がある場合,どちらからどちらを分離するかという対応も可能かと思いますが,実は御指摘の問題というのは,もともとの裁判員裁判の審理の途中で弁論を分離しなければならなくなった場合にも生じる問題でございます。その点については,必要であれば新たな裁判員の選任が行われることがあり得るだろうと思っておりますが,その点にいわば焦点を据えた制度という形には,現在の裁判員法もなっておりません。 ● 私も,今のお話について考えていたのですけれども,自分なりに解釈したのは,裁判員法6条で,構成裁判官だけで判断ができるからという理由によるものかなと推測していたのですが,そういう可能性はないですか。 ● 公訴棄却の決定の判断事項は,もちろん構成裁判官の合議によって判断できるというのはおっしゃるとおりだと思っております。 ● 区分審理をする裁判体ではなくて,区分審理をする裁判体の構成裁判官が判断を下せば足りるので,したがってここにはあらわれてこないということではないんでしょうか。 ● 今の御趣旨は,手続を分離せず,当の手続の中において,訴訟手続事項として,構成裁判官だけで判断すれば足りる。だから,特別の手当はされていないのではないか,ということですか。 ● 本則というか,大もとの裁判員法の規定で解決するということです。 ● その場合であっても,弁論が併合された状態のままで,観念的には,公訴棄却の決定がなされた事件は,弁論がその段階で分離される形になるのではないかと思いますが。 ● 今,○○委員の御意見のような形になりますと,この訴訟手続に関する判断というのは非常に広くなってしまって,この規定というか,今回の要綱にあるような管轄違いとか,そういうのも全部やるということになってしまうということになって,この要綱案の考え方とは違うのかなと私は思っておったのですが。 ● その点について自説があるわけではありませんけれども,判決と決定で違っているのでということもあるのかなと思ったのでありますが。要するに,その当該公判廷での弁論に従って管轄違いなり何なりは言う。あるいは,公訴棄却でも338条の場合はそちらの手続を要求されると。したがって部分判決のところに出てくる,なじみやすい裁判だと思うのですね。ところが,公訴棄却の決定ですと,ここの部分判決というところには登場しないということなのかなと思うのです。 ● それでは,今さまざまな御指摘をいただきましたので,御指摘の点を踏まえまして,事務当局においてさらに検討させていただきたいと思います。 ● ほかに御意見がございますでしょうか。ほかに御意見がございませんようでしたら,本日の審議はこの程度で終わらせていただきたいと存じます。   非常に効率的に議論が進みましたので,本日はこれで終わらせていただくことにいたします。   今回の審議で要綱(骨子)の全体について議論も二巡したことになりまして,改正に向けての御意見もおおむね出そろったように思います。それで,次回は詰めの審議を行い,できれば答申案の決定まで行きたいと考えております。なお,委員,幹事の皆様方には要綱(骨子)の修文案,あるいはそのような堅苦しいものでなくても,よい法律をつくるための御協力としての御意見等がございましたら,できる限り次回の会議よりも前に,事務当局の方に御提出いただければと存じます。そういうことでよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。   次回の開催について,事務当局の方で御確認をお願いいたします。 ● 次回の会議は1月22日月曜日の午後3時から午後5時30分まで,場所は,前回,法務省20階の最高検察庁大会議室とお知らせしましたが,変更になっております。変更後の場所は法務省20階の第一会議室でございます。同じ20階でございますが,第1回の会議を開いた場所と同じ場所で開催することとしたいと思います。 ● ただいま御案内がございましたように,次回は1月22日月曜日の午後3時から午後5時30分を目途に開催させていただきますが,場所は法務省20階の第一会議室でございます。   それでは,本日はこれで散会いたします。どうもありがとうございました。 -了-