法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  平成19年1月30日(火) 自 午後3時33分                       至 午後5時06分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度及び犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の新設等のための法整備について 第4 議 事 (次のとおり)                議        事 ● ただ今から法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会の第8回会議を開催いたします。 ● 本日は,御多忙中のところ御参集いただき,ありがとうございます。    (委員の異動紹介省略) ● 前回も申し上げましたが,本日は諮問事項の第一から第四までの全体について,最終的な詰めの議論を行い,できれば総会に報告すべき答申案の決定までいきたいと思います。   なお,本日,○○委員,○○委員及び○○委員から提出された意見書がお手元に配布されております。   審議の進め方ですが,本日はまず,事務当局において,これまでの議論を踏まえ「要綱(骨子)案」を作成しておりますので,その案につきまして,諮問事項の第一から第四までの全体について,事務当局から説明をお願いいたします。   その上で,事務当局が作成した「要綱(骨子)案」につき,諮問事項の第一から順に議論を行うこととしたいと考えております。そして,議論が終局しましたら,部会としての意見の取りまとめに移りたいと思います。このような進行でよろしいでしょうか。   それでは,早速,審議に入りたいと思います。   まず,事務当局から「要綱(骨子)案」についての説明をお願いいたします。 ● 諮問事項第一から第四までにつきまして,これまでの本部会における御議論等を踏まえ,事務当局におきまして「要綱(骨子)案」を作成いたしましたので,その内容について御説明いたします。   それでは,資料43の「要綱(骨子)案」を御覧ください。   まず,諮問事項第一の「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度」について御説明申し上げます。   諮問事項の第一につきましては,前回の資料から修正した部分は1点のみでございます。その修正点は,資料43の「要綱(骨子)案」でいいますと,その3ページの三の1の1行目に「最初の口頭弁論又は審尋を開始した後」という文言を挿入したというものであり,資料41の「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度(諮問事項第一)に関する資料」の中では,アンダーラインを引いて明らかにしております。   これは,民事に関する請求の争点が複雑であるなどの理由で一定の期日内に審理を終結することが困難であると認めるときに,事件を通常の民事裁判所に移行させるための規定ですが,これにつきましては,前回の部会におきまして,民事についての第1回の期日を開いてみなければ,被告側がどのような対応をするのかが分からないのであるから,第1回の期日を開いた後に,初めて,移行させることができることとすべきではないかとの御意見があり,特に御異論等も示されませんでしたので,このような考え方を採らせていただいたものでございます。   この諮問事項第一の修正点は以上ですが,前回の部会において御議論があった点について,補足して若干御説明をしたいと思います。   まず,一の2の書面の記載事項に関しまして,前回の部会において,相続人が被害者の損害賠償請求権を相続したことに基づいて申立てをする場合には,相続の事実は記載されることになるのかとの御質問がありました。これにつきましては,前回の部会で御説明いたしましたとおり,一の2の記載事項でいえば,「損害の内容」として記載していただくことになると考えております。そもそも一の2において,申立てに係る書面の記載事項を限定している趣旨は,民事訴訟においては,請求を理由付ける事実を具体的に記載した訴状を提出することになっていますが,仮に,被害者の方々に請求を理由付ける具体的な事実のすべてを記載させることといたしますと,例えば,刑事事件の審理をしている裁判官の心証に影響を与えることになるのではないかとの懸念を生じさせないともいえないことに基づくものでありまして,一の2では,訴状に記載すべきとされている事項のうち,裁判官の心証に不当な影響を与えないと思われる範囲のものを,「請求の原因となる訴因及び損害の内容」として切り出して,記載させることとしたものでございます。この点,相続人が被害者の損害賠償請求権を相続したことに基づいて申立てをする場合における相続の事実は,正に請求に係る損害の内容を明らかにするために必要不可欠な事実でありますし,このような請求を特定するのに必要な事項については,仮に,これを記載させないこととすると,その申立てがいかなる請求権に基づいているのかが明らかとならず,例えば,時効中断の範囲や二重起訴の禁止の範囲の判断が困難になるという問題があり,一方で,これを記載させたとしても,裁判官の心証に不当な影響を与えるということは考えられないことから,「損害の内容」として記載すべき事項に含まれると考えております。なお,この「損害の内容」には,いわゆる請求を特定するのに必要な事項に関するもののほか,具体的な損害の額等が含まれるものと考えておりますが,いかなる事項を法律で規定し,あるいは規則にゆだねることとするのかについては,具体的な立案作業の段階において,民事訴訟法や民事訴訟規則など,他の法令との整合性をも考慮しつつ,更に検討してまいりたいと考えております。   次に,三の5及び四の3の通常の民事裁判所に移行した後における書証の申出の特例に関する規定についてですが,前回の部会におきましては,通常の民事裁判所に移行した後に第三者に対する請求に係る訴えの併合等がされた場合においても,このような特例を認めるのかという点が問題となりました。この問題につきましては,更に裁判所との関係で,送付されてきた記録を裁判資料とするために,どのような方法によって書証の申出をさせることとするのかという問題と,訴訟の相手方との関係で,申出に係る書証の内容をどのように了知させるべきかという問題があるものと考えられます。このうち,前者の問題,すなわち,裁判資料とするための書証の申出の方法に関する問題につきましては,裁判所の手元には送付されてきた記録が現実に存在していますので,当事者がその記録のうちいかなる部分を書証とするのかを特定しさえすれば,これを裁判資料とすることに何ら支障はないものと考えられることから,通常の民事裁判所に移行した後に第三者に対する請求に係る訴えの併合等がされるなど,本手続の当事者でない者が移行後の訴訟の当事者として加わるような場合も含めて,このような書証の申出の特例を認めることが許容されるのではないかと考えられます。一方で,後者の問題,すなわち,訴訟の相手方の手続保障との関係で,例えば,申出に係る書証の写しを相手方に送付することとするのかという問題につきましては,少なくとも本手続の当事者である被告人と被害者との関係においては,書証の写しを作成してこれを提出・送付等をする必要なく,相手方がその内容を確認したい場合には,民事裁判所において閲覧・謄写等の手続を執ることになることについて,特段の御異論はなかったものと考えておりますが,通常の民事裁判所に移行した後に訴えの併合等がされた第三者との関係におきましては,前回の部会において,送付された記録が取り調べられた後に併合等がされたような場合には,証拠共通の原則から,当該記録を改めて取り調べる必要はないこととされており,また,現行の民事訴訟においても,併合前の書証について改めて写しの提出・送付等をさせてはいないのであるから,本制度においても,これと同様の処理をすれば足りるのではないかとの御意見や,併合等がされた後に送付された記録が取り調べられる場合もあり,弁論の併合という裁判所の裁量的な措置によって書証の写しの交付を受けられる立場が奪われてしまうのは問題ではないかとの御意見等がありました。この問題につきましては,現行の民事訴訟における文書の写しの提出・送付等に関しましては民事訴訟規則に定められており,いずれにしましても細目的事項であると考えられますので,具体的な立案作業の段階においては,他の法令との整合性をも考慮しつつ,更に検討してまいりたいと考えております。   次に,諮問事項第二の「公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」についてです。   諮問事項第二についての「要綱(骨子)案」は,資料43の6ページから7ページまでに記載しておりますが,その内容につきましては,前回の会議においてお配りした資料から,変更したところはございません。   次に,諮問事項第三の「犯罪被害者等に関する情報の保護」について御説明申し上げます。   諮問事項第三についての「要綱(骨子)案」は,資料43の7ページから10ページまでに記載しており,その内容については,前回の会議でお配りした資料とほとんど同じですが,1点だけ修正した部分があります。「要綱(骨子)案」の8ページの9行目を御覧ください。今回の「要綱(骨子)案」では,裁判所が公開の法廷で被害者特定事項を明らかにしない旨の決定を行うことができる事件の1つとして,刑法第241条の強盗強姦及び同致死の罪に係る事件を挙げておりますが,以前お配りした資料では,「刑法第241条前段の罪」としていたことから,同条前段の強盗強姦の罪は対象事件とされていましたが,後段の強盗強姦致死の罪は対象事件とされていませんでした。しかしながら,強盗強姦の罪だけではなく,強盗強姦致死の罪についても,対象事件とされるべきであるのは当然であると考えられますことから,今回の「要綱(骨子)案」では,「前段」の文言を削除することにより,強盗強姦致死の罪に係る事件も対象になることを明らかにいたしました。   諮問事項第三について,前回お配りした資料からその内容を変更した点は,以上です。   最後に,諮問事項第四の「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度」について御説明申し上げます。   諮問事項第四についての「要綱(骨子)案」は,資料43の11ページ以下に記載しておりますが,その中で,前回の資料から修正した部分を中心に御説明いたします。なお,前回の資料から修正した部分につきましては,資料42の「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度(諮問事項第四)に関する資料」の中で,アンダーラインを引いて明らかにしていますので,こちらの資料も併せて御覧ください。   それでは,まず最初に,一の「被告事件の手続への被害者参加」について御説明申し上げます。   前回の資料では,被害者等が一定の訴訟活動を直接行うことの前提となるような訴訟手続上の地位の名称を「補助参加人」としていましたが,今回の「要綱(骨子)案」ではこの名称を「被害者参加人」に修正させていただきました。これは,「補助参加人」という名称について,前回の部会での御議論において,刑事裁判に参加する被害者等と検察官との関係を「補助」という言葉で表現することは必ずしも適切ではないと考えられることから,「被害者参加人」という名称を用いてはいかがかとの御提案が示され,この提案に賛同する御意見が多く示されたことを踏まえたものです。これに伴い,一の表題を「被告事件の手続への被害者参加」と修正するとともに,一の「被告事件の手続への被害者参加」の項目から四の「証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述」の項目までの各項目において,前回の資料で「補助参加人」と記載していた箇所を,いずれも「被害者参加人」と修正するなどいたしました。   次に,一の1において,被害者参加の対象となる被害者等の範囲について,前回の部会での御議論を踏まえた修正をさせていただきました。   前回の資料では,参加の対象となる被害者等の範囲を,①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪,②死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪,及び③業務上過失致死傷等の罪の被害者等としていました。この点について,前回の部会での御議論では,参加の対象となる被害者等の範囲を定めることについては,特に御異論は示されませんでしたが,その範囲の定め方については,犯罪の法定刑に基づいて一律にこれを定めることとするよりも,被害者等のニーズをも考慮して,参加を認める必要性をより具体的に検討した上で,その範囲を定めることが適切ではないかとの御指摘がありました。   そこで,事務当局により検討いたしました結果,そもそも,この被害者参加の制度は,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」との犯罪被害者等基本法の基本理念に基づき,被害者等が,その被害に係る刑事事件に適切に関与するために,被害者参加人という訴訟手続上の地位を取得した上で,この地位に基づいて一定の訴訟活動を自ら直接行うという仕組みを刑事訴訟法上の制度として設けるというのがその趣旨であると考えられます。したがいまして,そのような被害者参加の制度の対象となる被害者等の範囲を定めるに当たっては,「個人の尊厳」の根幹をなす人の生命,身体又は自由に害を被った被害者等を広く対象とすることが,このような被害者参加の制度を設ける趣旨にも合致するものと考えられます。   また,被害者等のニーズにつきましても,被害者等が刑事裁判手続に直接関与する現行法上の唯一の制度であります意見陳述の運用状況が参考になると考えられることから,ここ最近の運用状況の調査結果を分析いたしましたところ,まず,現行法の意見陳述の申出を行った者の内訳は,遺族が約7割を占めており,被害者等が死亡した事案が中心であることが明らかになりました。また,罪名別に,公判請求件数に対する意見陳述の申出件数の比率を集計いたしましたところ,被害者が死傷した事件のほか,誘拐,強姦,強制わいせつ,逮捕・監禁など,被害者等が身体活動や性的自由に害を被った事案において,この比率が比較的高いことが明らかになりました。   このように,被害者等の「尊厳にふさわしい処遇」の一環として被害者参加の制度を設けるという趣旨からも,また,被害者等の実際のニーズの観点からも,その生命,身体又は自由に害を被った事件の被害者等を広く被害者参加の対象とすることが適当であると考えられることから,今回の「要綱(骨子)案」においては,まず,生命・身体に害を被った場合として,「故意の犯罪行為により人を死傷させた罪」及び「業務上過失致死傷等の罪」の被害者等を対象とするとともに,身体活動の自由や性的自由に害を被った場合として,「逮捕及び監禁の罪」,「略取,誘拐及び人身売買の罪」並びに「強制わいせつ及び強姦の罪」の被害者等を対象とすることといたしました。   一の「被告事件の手続への被害者参加」の項目における修正点は,以上のとおりでございます。   次に,二の「証人の尋問」及び三の「被告人に対する質問」における修正点について御説明申し上げます。   まず,二の1においては,裁判所が被害者参加人等による証人の尋問の許否を判断するに当たり考慮する事情として,「申出に係る尋問事項の内容」を加えました。これは,前回の部会において,申出に係る尋問事項の内容自体から,例えば,その尋問事項のすべてが以前になされた尋問と重複することが明らかである場合など,法律上許されない尋問であって,そのような尋問を行うことが不相当であることが明らかであるような場合は,尋問が認められないことを明確にすべきではないかとの御意見が示され,これに対して特段の御異論も示されませんでしたので,裁判所が「申出に係る尋問事項の内容」をも考慮することを明確にしたものです。また,これと同様に,三の1においても,裁判所が被害者参加人等による被告人に対する質問の許否を判断するに当たり考慮する事情として,「申出に係る質問を発する事項の内容」を加える修正を行いました。   次に,二の2及び三の2における修正点について,まとめて御説明申し上げます。   前回の部会では,「今回設ける制度においては,被害者等が証人尋問や被告人質問を要望する場合においても,まずは被害者等と検察官との間で十分な打合せが行われ,そのような打合せの結果,検察官が自ら行うこととなった尋問事項や質問事項については,まずは検察官が尋問や質問を行うこととなるのが通常であると考えられるところ,前回の資料では,このようなプロセスが十分に反映されていないのではないか。」との御指摘がありました。この点につきましては,前回の資料におきましても,尋問や質問の申出が検察官を経由して行われることを明らかにすることにより,被害者等が,検察官との間で密接なコミュニケーションを保ちつつ証人尋問や被告人質問を行うことが前提であることを表しておりましたが,今回の「要綱(骨子)案」においては,このような御指摘をも踏まえ,被害者参加人等による証人尋問や被告人質問が,先ほど申し上げたようなプロセスを経て行われるものであることをより一層明確にするために,二の2において,被害者参加人等による申出を検察官が裁判所へ通知する部分に,「当該事項について自ら尋問する場合を除き」との記載を加えるとともに,三の2においても,同様に,「当該事項について自ら質問する場合を除き」との記載を加えることといたしました。   これは,例えば,被害者参加人等が尋問や質問の申出をした事項について,被害者参加人等と検察官との打合せの結果,立証責任を十分に果たすため,あるいは尋問技術に習熟しているとの理由から,まずは検察官が自ら尋問や質問をすることが適当であるとの結論に至った場合には,被害者参加人等は,まずは検察官による尋問や質問の結果を見定めた上で,必要があれば再度申出を行うこととなるものと考えられるところ,そのような場合には,検察官が被害者参加人等の申出を裁判所に通知する必要がないことは明らかであることから,この点を明確にしたものです。また,一方で,例えば,検察官と被害者参加人等との打合せの結果,被害者参加人等が自ら尋問や質問を行うことが適当であるとの結論に至った場合には,検察官が当該事項について自ら尋問あるいは質問する場合には当たらないことから,検察官は,意見を付して,被害者参加人等の申出を裁判所に通知することとなると考えられますことから,このような点についても明らかになるものと考えられます。なお,例えば,被害者参加人等が要望する尋問事項や質問事項のすべてが法律上許されないものである場合など,被害者参加人等が尋問や質問を行うことが不相当であると判断される場合には,検察官としては,まずは,被害者参加人等との打合せにおいて,そのような尋問等を行うことは相当ではないことを説明して説得するものと考えられますが,仮に,被害者参加人等が飽くまでも自ら尋問や質問を行うことを希望する場合には,そのような尋問等を行うことは相当でないと考える旨の意見を付して,被害者参加人等の申出を裁判所に通知し,その判断を仰ぐことになるものと考えられます。   二の「証人の尋問」及び三の「被告人に対する質問」の項目における修正点は,以上のとおりです。   四の「証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述」につきましては,既に御説明いたしましたように,「補助参加人」を「被害者参加人」と改めた点以外には,修正点はありません。   なお,この「証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述」につきましては,今回の「要綱(骨子)案」において,被害者本人のほか,被害者が死亡した場合又は被害者の心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者や一定の親族が,被害者参加人の地位に基づいてこれを行うことができるものとしておりますが,現行の刑事訴訟法第292条の2に規定する,心情を中心とする意見陳述におきましては,被害者の心身に重大な故障がある場合の配偶者等が,その主体とされておりません。そこで,現行の心情を中心とする意見陳述につきましても,被害者の心身に重大な故障がある場合の配偶者や一定の親族もこれを行うことができるものとすることが適当であると考えられますので,法案を提出する際には,その旨の手当てを行うことが相当であると考えております。   「要綱(骨子)案」の内容についての説明は,以上でございます。 ● ただ今事務当局から「要綱(骨子)案」についての説明がありましたが,これに対する御質問や御意見等はこれからの審議の中で伺わせていただくこととして,早速,議論に入りたいと思います。   それでは,諮問事項第一の「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度」についての議論を進めたいと思います。本日は,諮問事項の第一の全体について,一括して議論を行いたいと思います。御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。 ● 質問,すみません,1つか2つありますが,この手続で,私は被害者御本人が利用する場合が多いのではないかと思っているんですが,例えば損害賠償の命令が出た後,被告人側から異議申立てがされた後,被害者としては無資力で,実際に簡単に命令がもらえると思っていたけれども,異議が出て,通常訴訟に移行して,自らが訴訟追行しなければならないというようなときに,どうせお金は取れないんだから,もうこれ以上はやりたくないということで,取り下げたいとか,もうここで終わりにしたいということも多分あろうかと思うんですが,訴えの取下げという形でなるときに,これは被告人側の同意というのは要るのかどうか。つまり審尋などでも一切被告人は,大した書面も何も出さずに,実際には出た結果については異議を出しているというような場合に,答弁書も出していないので,それは取下げは同意なくできるのか。それとも,やはり争っているということで,取下げについては同意が要るので,同意しない以上は訴訟を遂行しなければならなくなるのか,それはどうなんでしょうか。 ● ただ今の問題はいわば応用問題みたいな御質問で,確定的な見解を申し上げにくいということをまずお断りして,取りあえずの御説明を申し上げたいと思います。   まず,配布された資料のうち,横書きのもので御説明していきたいと思うんですけれども,その3ページの第4の不服申立ての2になりますけれども,その決定に対し適法な異議の申立てがあったときは,これこれの請求があった時に,通常の民事裁判所に訴えの提起があったものとみなすものとするということで,いわば通常の民事裁判所に一から訴えの提起があったものとみなされるということになるかと思います。   今度は訴えの取下げの条文でございますが,民事訴訟法の第261条という条文があるかと思うんですけれども,第1項から見ていきますと,第1項で「訴えは,判決が確定するまで,その全部又は一部を取り下げることができる。」と書いてありまして,その上で第2項としまして,「訴えの取下げは,相手方が本案について準備書面を提出し,弁論準備手続において申述をし,又は口頭弁論をした後にあっては,相手方の同意を得なければ,その効力を生じない。」と,このように書かれております。したがいまして,いわば訴えの提起があったものとみなされて,ある意味,一から訴訟が始まりまして,その訴訟において被告の側が今申し上げた第261条第2項に規定されているような応訴の態度を示していれば,訴えの取下げをするには,相手方の同意,すなわち被告側の同意が要るということが,少なくとも文理上の解釈としては自然な解釈ではないかと考えております。   ただ,冒頭に申し上げましたとおり,難しい問題でございますので,一応文理上はそのように解釈できるということで私の説明は終わらせていただきたいと思います。 ● ちょっと別の質問でいいですか。   一の8のところで,これは終局判決,つまり刑事裁判の判決までの間の和解については書いてあるんですが,民事の審理に入ってからも訴訟上の和解というのはあり得るという前提でしょうか。 ● そこは結論的にはあり得ると考えております。あすの会の要綱にも載っていたかと思うんですけれども,刑事裁判中というのは,訴訟上の和解ということを念頭に置きますと,例えば和解の勧試が想定できるわけですけれども,さすがに刑事裁判中にそれは適当ではないだろうということになるかと思います。したがいまして,少なくとも刑事裁判中は,現行のいわゆる刑事和解の制度によって当事者間の合意が成立した場合には,その申立てをしていただくということを想定しております。   他方,民事のステージに移行した後は,この前も少しお答えしましたけれども,性質に反しない限り民事訴訟法の規定を準用すると考えておりまして,訴訟上の和解についても特段これを制限すべきものではないと考えられることから,その規定を準用する方向で,訴訟上の和解ということについてもできるようにしたいと考えております。   以上です。 ● そのほか諮問事項第一について御意見等ございますでしょうか。 ● 意見というのは,先ほどのこの意見書についての意見も申し上げていいのでしょうか。 ● はい,どうぞ。 ● いいですか。すみません。そうしましたら,意見書を今日出しております。前回の議論で,会議録の方に意見書は会議資料として掲載いただけるということなので,時間もありませんので,かいつまんで私の意見を申し上げたいと思います。   第一の諮問事項についての私の意見は,「要綱(骨子)案」について反対せざるを得ないという意見ですが,その理由は,この本制度に日弁連の意見書がいうような5つの問題点があるということです。1つは刑事訴訟手続の長期化,それから被告人,弁護人の防御活動への影響,それから裁判官に予断を与えるおそれ,裁判員裁判になった場合の争点整理が混乱する,それから5番目に被告人の防御権が十分に保障されないおそれがあるということですが,特に私の方は被告人の防御権の問題についてこの部会でも議論させていただきました。   私たちは,刑事弁護人として被告人の状況というのを実情として把握している立場から,例えば国選弁護人しか選任できない,または拘禁施設に収容されているという被告人や,また受刑者がいかに法的なアドバイスであるとかいうことから遠ざかっているか,保障されていないかというのが分かりますし,また,この部会でも明らかになりましたように,受刑している,又は拘置所にいるという中で,民事訴訟の審理に出頭することが保障されていないということが分かっております。   私の方で,日弁連で調査した結果では,平成15年の1年間で受刑者が民事訴訟への出廷許可を出願した件数は430件だけれども,実際に出廷が許可されたのは80件ということで,非常に民事の審理についてはこの出廷権が保障されていないという実態があるという中で,そういう手続保障のない中で仮執行宣言という非常に強い権利を,効力を与えてしまうということについては,この日弁連の意見書でも非常に問題にしてきたところですけれども,この制度設計においては仮執行宣言が任意的に付される,また実務的にも多く付されるであろうと考えられていることから,やはりこの手続保障が十分でない中での仮執行宣言というのは,制度としては問題があると思っています。   制度導入の必要についても,私も最初に指摘しましたように,この被害者による損害賠償請求の障害というのは,やはり加害者の無資力だと思います。そういう加害者の無資力を被害者に負担させているという今の日本の制度自身が問題であって,やはり国によって,又は社会によってこの犯罪被害者や遺族を平等に救済するという被害者の保障システムというものが作られなければなりませんし,やはり日本に今あるシステムでは余りに金額も少ないという意味では,それをもっと拡充していく必要があって,それができれば被害者が加害者の無資力を負担すると,リスクを負担するという必要はなく,平等に救済できる。又は,適切な保障を国がした場合に,国が加害者に求償するという制度を採れば,被害者や遺族を平等に救済することができるのではないかという点で,この制度が被害者を救済することになるとなかなか思いにくいところがあります。   それから,制度の利用についても,この4ページに書きましたが,我々弁護士がこの制度を利用するかというと,その後に異議申立てがあるという不安定な制度であれば,最初から通常訴訟を起こした方が安定的な迅速な解決が得られるのではないかということで,やはりこの制度ができた場合に利用されるのは被害者御本人,遺族御本人だと思うんです。簡単にそういう命令が取れるんじゃないかということで利用される方が今後あるかと思います。ただ問題は,実際にそれを利用しようと思って出したけれども,相手方が無資力であるというふうなことから,その後,異議とか,さっき言いましたような民事訴訟の手続に自分自身が入っていかなければならなくなるというふうなことになると,非常に問題が起こるのではないかと思っています。   そういう意味で,この制度自身が被害者や遺族の方のけじめというような損害賠償命令を得るということはあるかもしれませんが,現実の被害回復という点では十分な役割を果たせないのではないかという意味で,先ほどの多くの問題点を残したままで刑事手続に大きな影響を与える本制度を導入する必要はない,少ないのではないかと考えました。   ただ,制度が導入される場合には,やはり幾つか留意する点があると思いました。2つありますが,被害者,加害者,両方に対してやはり弁護士による法的支援をきちっとする必要があるのではないかということです。被害者や御遺族については特に逸失利益や慰謝料が問題になるということで,これについてはやはり法的な知識が必要だと考えますので,それがないままで被害者御本人が,遺族御本人が訴訟活動をされた場合に,いろいろ不利益を得る問題があるということです。   それともう一つは,簡単に命令が取れると思ったところ,実は通常訴訟に移行して,訴訟手続を自分でしていかねばならなくなるという,そういう問題で,印紙もまた追納しなければならないとかいう問題があるということで,犯罪被害者や遺族にきちっとしたこの制度の限界も含めてアドバイスをしなければならないだろうということです。そのためには,今あります法テラスの被害者の窓口を周知すること,それから日弁連が提起している公費による支援弁護制度などを整備する必要があるだろうと思いました。   加害者についても同じことが言えますが,特に加害者の場合には受刑をしている,又は拘置所に勾留されているということが多いので,今はまだそんな制度はありませんけれども,法テラスという,こういう制度によって拘置所・刑務所での出張相談などが今後実施されるようなことになれば,そういうところできちっと対処する機会を保障してはどうかと。加害者の方がこの制度を十分理解せずに無意味に異議を出すというふうなことになれば,それは被害者自身にも不利益なことになると思いますので,そのあたりも配慮が必要かと思いますし,先ほど言いましたような出廷権の保障についても,従来どおりのやり方ではなくて,特にこの手続は被告人側が義務を負担するという不利益を得る手続なので,出廷権の保障についても改善する必要があるのではないかと考えました。   長くなりましたけれども。 ● そのほか諮問事項第一について御意見ございますでしょうか。 ● 私の方も意見書の方でまとめておりますので,詳しくは見ていただきたいと思います。   今,○○委員の方が反対であるということをおっしゃって,日弁連の意見書というようなこともありましたけれども,日弁連の意見としては必ずしも全体として反対だということをこの第一については言っているものではなくて,問題点があるという指摘にとどまっておりますので,その点はよく後で見ていただければと思います。   私の方は賛成なので,それから今,○○委員の方からお話しのあったいろいろな問題点については,簡単に反論等もしております。異議の申立てがあった場合にこの制度すべて駄目じゃないかというようなことがよく言われますが,異議の申立てがありましても,例えば刑事記録がそのまま民事に使えるということは非常に大きなメリットであり,先ほど御説明ありましたとおり,書証の申出について特定すればよいという制度は,被害者にとってとても簡易な制度になっていて,ありがたいことです。そういう意味で言えばメリットは残っておりますので,必ずしもそのような言い方にはならないと私は考えております。   簡単に要望の方を申し上げますと,これから具体的な立案をされるところで,頭に入れておいていただきたい点を少し申し上げます。   まず,印紙代について,やはりこれは被害者に十分配慮していただいて,今の通常民事訴訟の印紙代よりも減額する形で決めていただければと思います。また,通常民事訴訟に移行した場合についても,特例等を検討していただければありがたいと思います。   それから,対象犯罪については政策的配慮ということで,これは私も同意したわけですけれども,今後この制度が広がっていくことを考えますと,更に対象を広げるということは将来的な課題として検討していただきたいと思います。   それから,今,○○委員からもお話しがありましたとおり,被害者になかなか弁護士が付かないという状況があります。刑事和解が余り利用されていないというのは,それが一つ原因ではないかと私は考えております。特に警察,検察の方で「弁護士に相談してみたらどうか」というようなことも一言言っていただければ,ありがたいです。弁護士は無料電話相談なども東京では毎日しておりますので,そういう意味で言えば,この制度を被害者が,御自身でするとしても,その申立書をきちっと書くとかいうことだけでも,弁護士の支援がなければなかなか活用しないのだと思いますので,そういう意味では,支援の連携という点からも弁護士へのアクセスを容易にするよう紹介等していただければありがたいと思っています。   以上です。 ● そのほか諮問事項第一について御意見ございますでしょうか。ございませんようでしたら,次に諮問事項第二の「公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」について審議に入りたいと思います。   御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。 ● この意見書の8ページにこの諮問事項二についての私の意見を書いております。この点を結論だけ申し上げます。   この要件の緩和については,被害者や遺族の方の精神的な被害回復のために証拠の内容,裁判の内容を知る必要性があると考えますので,要件を緩和することには賛成であります。しかし,今回の「要綱(骨子)案」は原則と例外を現行法と全く逆にするという条文の改正を提案していらっしゃるんですが,それについては賛成できません。   その理由については,9ページのところに書きましたけれども,現行の条文で問題になっているのは,損害賠償請求権の行使という例示列挙をしているために,それと同等のものがあるかどうかということで知りたいというだけではだめだということになっているので,私はこれを認めるとしても,原則と例外を逆にするのではなくて,この認める要件の中に公判審理の内容の了知とかいうものを追加する,又はもうこの例示列挙をやめることによって正当理由の解釈を緩和するという形にすればいいのではないかと思っております。   それから,対象犯罪の拡充についても,その必要性があると,それは考えられますので賛成ですけれども,この対象者であるかどうかの要件の有無の判断について,この「要綱(骨子)案」は,検察官を通じて提出される同種事件被害者の疎明資料に基づき係属裁判所自身が行うという制度設計になっておりますが,それは犯罪事実自身の認定にかかわる予断排除の原則にも反することになりますし,証拠になっていない文書・資料を係属裁判所が見るということは証拠裁判主義にも反するということで,そういう意味での「要綱(骨子)案」には賛成ができないということです。ですから,やるのであれば,ほかの裁判体などで判断をするというふうな仕組みができなければならないのではないかと思っています。 ● そのほか諮問事項第二について御意見ございますでしょうか。 ● 意見書に書いてあることを簡単に申し上げますが,私はもちろん賛成なので,要望についてなんですけれども,まず,この規定ができるということで,現実に運用上で実際に開示される公判記録の範囲が拡大されることを希望しております。   それと,これは対象ではないんですけれども,確定記録の問題がありまして,私たち支援活動をしている弁護士では,公判記録の閲覧・謄写もそうなんですが,確定記録の場合に,犯罪被害者がアクセスするときに開示がなかなか限定的であるという問題があります。これも新しい制度ができるという趣旨を踏まえて検察庁の方で御検討いただければありがたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● 諮問事項第二について,ほかに御意見ございますでしょうか。もしございませんようでしたら,続きまして諮問事項第三の「犯罪被害者等に関する情報の保護」についての審議に入りたいと思います。   御意見ございましたら,よろしくお願いいたします。 ● すみません。意見書の10ページのところに諮問事項第三に関する私の意見を書いております。結論としては,公判手続における被害者特定事項の秘匿に関する制度案には,性犯罪や児童を被害者とする犯罪類型等において,その秘匿の必要性があるということで,制度導入については賛成であります。しかし,名誉・生活平穏の侵害,それから危害・畏怖・困惑というふうな類型について規定されるということについては,制度設計において賛成できない点があるので,「要綱(骨子)案」には賛成できません。   その理由は,この名誉侵害,生活平穏被害,危害,畏怖,困惑というふうな要件が弁護人から争われたときには,当然裁判官がそれに関する主張や疎明資料などを検察官から提出されて見るということになります。それが予断排除の原則に反すると私は考えておりますが,この予断排除の原則についてはもっと狭く考えるという見解が言われておりまして,公訴事実の存否に限定して考える考え方もありますが,私自身はこれは被告人に関する予断,被害者に関する予断も含む事件に関する予断を含むと,広く含むと考えておりますので,今のような見解になります。   学説にも,ここに紹介したような幾つかの見解があります。日弁連の意見書も,この予断排除の原則を非常に広くとらえて,このことについて工夫が要ると言っていますけれども,私自身は,その予断排除の原則に抵触するのを回避するためには,第1回公判期日前の保釈請求の判断のように,秘匿決定の判断を係属裁判所以外のほかの裁判官に判断させるという工夫がなければならないのではないかと思いますが,この「要綱(骨子)案」ではそういう配慮がなされていないということで,賛成ができないという結論です。   それから,被害者特定事項の秘匿の要請に関する「要綱(骨子)案」についても,これについては検察官の要請のみで弁護人の秘匿義務が生じるという制度だと法務省の方が解釈をしておられるということがこの部会でも明らかになりました。日弁連は,現行の刑事訴訟法299条の2についても,このような義務は生じないというふうに解釈をしておりますけれども,事務当局がそのような解釈をされる以上,これについては,それは反対する以外にないということで,反対であるという結論です。 ● そのほか,この諮問事項第三について御意見ございますでしょうか。特にありませんでしたら,続きまして諮問事項第四の「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度」についての審議に入りたいと思います。諮問事項第四につきましても,その全体について,一括して議論を行いたいと思います。御意見等をお願いいたします。 ● それでは,書面を提出しておりますので簡単に述べさせていただきますが,刑事弁護人という立場で実務を担っている弁護士の立場からいたしますと,被害者の方が被害者参加人という立場で刑事裁判の法廷に出て訴訟活動されるということについては,やはり反対せざるを得ないということでございます。やはり実務の上で現状を見ますと,被告人の立場というのは極めて弱い存在でございますので,そういう意味では被告人の裁判における萎縮効果等というのは甚大なものであると。そのあたりを最も懸念するものでございます。   以上です。 ● ちょっと質問なんですが,今日の資料によると,対象犯罪について,前回は未遂罪を含むという文言があって,今回は入っていないんですけれども,これについてはどう考えたらいいのでしょうか。 ● 今回も未遂罪を除外するつもりはございませんで,いろんな対象罪種を並べている後に「等」という言葉で置きかえさせていただきましたけれども,この「等」の中に未遂罪も入ると考えております。 ● 最終確認なんですけれども,弁論としての意見陳述は,現行の意見陳述と違って,弁護士もできるということですね。被害者参加人から委託を受けた弁護士もできるということで間違いないですね。 ● 今回の「要綱(骨子)案」の14ページに「証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述」が漢数字の四番として記載されてございますが,その1行目から2行目にかけて,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が申出をし,その申出をした者が意見を陳述することを許すというふうにしておりますので,弁護士もできると考えております。 ● ちょっと質問ですが,「又は」ということは,委託弁護士がした場合には被害者はできないと,こういうことでしょうか。 ● 「又は」ということでございますので,今,見解が固まっているわけでございませんが,通常は一括して委託するのかなと思うんですが,どうしてもこの点だけは自らの口で述べたいということも,それはあろうかと思います。ただ他方で,余り数が増えますと,それはそれでまた別の問題はあるかと思います。 ● すみません。この意見書の12ページのところから第四の諮問事項についての私の意見を書いておりますので,本当にかいつまんで紹介させていただきます。   結論としては,この「要綱(骨子)案」には強く反対したいと思っております。   まず,刑事訴訟の理論的な問題として,今回のような法的地位を付与し,訴訟活動を認めるということについては,私は,事件の当事者という立場から,更に訴訟の当事者へというふうに刑事訴訟の構造を大きく変容させるのではないかと思っています。   この部会においてはもともと,事件の当事者としての特別の地位に基づいて一定の関与を行うというむしろ考え方に基づいて議論がされていったのではないかと。その中で個々の具体的な訴訟活動を認めて,その場合に弊害があるのかないのかというふうな議論がされていったと思うんですけれども,今回の最後の形でまとまってきた「要綱(骨子)案」では,被害者参加人たる地位を与えるということになりました。   私は,この制度は,加害者の処罰を求める目的で被害者が被告人質問,証人尋問,求刑などの実質的な有罪追及の訴訟活動をするということを認めることになっておって,これはもう事件の当事者であるとの位置付けを超えてしまっていて,これは被害者参加人という名の訴訟当事者又はそれに準ずる地位を認めたものと評価せざるを得ません。   検察官の訴訟活動と被害者等の訴訟活動の関係ですけれども,「補助参加」という言葉も一度提案されましたけれども,やはりそれはふさわしくないと言われました。理論的に考えてみると,検察官の公訴権というのは,私が勉強したところによれば,裁判所に理論的には有罪か無罪かの実体判決を求める権利であると言われているわけですけれども,そういう意味で公益の代表者としての検察官の当事者たる地位というのも,この担い手であるとされてきたと思います。ところが,今回の被害者の方の訴訟活動というのは,これとは違って,やはり有罪判決を求めるという立場で訴訟活動をすることを認めるわけで,その点では検察官の公訴権なり訴訟活動とは独立した訴訟当事者の地位になるのではないかと思いました。   訴訟の基本構造は変わらないんだというふうなお話もありましたけれども,やはり前回の意見陳述制度とは異なって,被害者や遺族が被告人や情状証人に対してこれだけの訴訟活動ができるというものについては,やはり訴訟構造の変容になるのではないか。   また,訴因についての設定権,上訴権の付与というのは今回認められておりませんけれども,今後もこれが認めないというふうな理論的な歯止めも十分なされているとは思えないので,基本構造,当事者主義が大きく変容していくのではないかと考えています。   理論的な問題の2番目は,国家刑罰権の行使という問題であります。被告人に対する捜査,公判,判決,刑罰というのは当然国家刑罰権の行使としてなされているわけですけれども,すべてこれは公益の観点からの応報,それから一般予防,特別予防という刑罰制度の目的のためになされていると考えています。しかしながら,被害者に求刑意見も含む広範な訴訟活動を容認することは,被害実態の解明に必要な資料提供の役割ということを超えて,主体的にその応報感情に基づく処罰を求める地位に立たせるということで,まず外形的にも,検察官の横に被害者,遺族,その代理人弁護士が座って被告弁護人と対峙するということが変わってきますし,更に理論的にも国家刑罰権の一翼を担わせるということになるのではないかと思いました。   無罪推定の原則との抵触ですけれども,これもやはり有罪率が99%を超えるという前提の下にいろんな制度設計がなされているようにも見え,しかし,有罪判決を前提に制度設計をすると,無罪推定原則が徹底されなければならない否認事件にまで影響が及ぶことになることは必至です。この制度設計においては,否認事件においては適用を除外するということにもなっておりませんので,やはり日本の刑事手続が公判と量刑が分離されていないという中で,この有罪事件を前提にした制度設計をされるということについては,無罪推定原則をないがしろにされるおそれがあるのではないかと。   特にこの無罪推定原則でいえば,被告人との関係においては,被害者であること自身が有罪判決確定までは明らかでないということが前提となっているので,起訴状に被害者と記載されたことのみをもって参加人としての訴訟活動の権限を付与することについては,私は無罪推定の原則に反するものと考えています。   それから,16ページの3から以降ですけれども,これは,先ほどは理論的な問題を申し上げたんですが,現実の刑事訴訟自身がどのように変わっていくのかという,弊害といいますか,そういう面での大きな点での私の疑問点です。   1つは,この刑事司法への報復の連鎖の復活になるのではないかということです。日弁連の意見書にもありましたけれども,現行の刑事訴訟制度というのが私的復讐が公的刑罰に昇華されていく歴史の過程で作られたものだと考えているわけですけれども,今回のような形で常時の在廷を初めとして訴訟活動を認めることが,検察官と被害者や遺族との共同訴追の形になるのではないか。そこで被害者が被告人と法廷で対峙することになると,被告人の中には,被害者や遺族の訴訟活動によって自分が有罪とされ,また重く処罰されたと考えて,逆恨みであるとか報復感情を抱くおそれもあります。それから,単に法廷の中にいるだけではなくて,被告人質問や被告人の家族などの情状証人に対する尋問などで例えば被害者や遺族が攻撃的な言動をしたような場合には,被告人の反発を招くことも考えられます。   そうなった場合,被害者や遺族は犯罪被害による衝撃のみならず,この被告人からの反発や報復感情にも怯えるということにもなりかねないのではないでしょうか。それを覚悟した被害者や遺族だけが公判に出席し,訴訟活動をすればいいという考えもあるかもしれませんけれども,やはりこの訴訟活動をするということが量刑に影響することになるでしょうから,このような制度を置くことによって被害者や御遺族を処罰感情と報復の危険への怯えとの板挟みにすることになるのではないかということで,私はこういう制度を採ることが近代刑事法が断ち切ろうとした報復の連鎖を復活させることになるのではないか,刑事司法の在り方として適切ではないのではないかと考えました。   2つ目の影響ですけれども,これは被告人の萎縮効果と自由な供述の困難化という点です。当然,刑事裁判というのは強制力をもって刑罰を科していく制度ですから,被告人にはもちろん黙秘権もありますけれども,逆に弁解であれ,反省,悔悟や謝罪の言葉であれ,被告人が自由に供述しやすい裁判の環境を作る必要があります。仮に有罪判決を受けるとしても,納得して受けられるようにするためには,自分の生い立ちであるとか,弁解であるとか,そういうものができるだけ供述しやすいようにという形で,我々訴訟関係者は制度を運営しているわけです。そういうことによって事件の真相が解明されたり,社会が犯罪の原因を知り,教訓にしていくことができるという刑事裁判の機能にも資するものだと思っています。   私たち弁護人は,有罪の被告人に対して,なぜ犯行に及んだのか,ひいては,なぜそんな動機,人格を形成したのか,その生い立ち,家庭環境,学校,社会の影響など,いろんな観点から掘り下げて,被告人にその原因を自覚させ,被告人自身の口から法廷で語らせることを弁護活動として重要なものと考えております。それによって心からの反省を引き出したり,被害者や遺族に対する謝罪の気持ちを引き出そうとする。そのような過程を通じて被告人の更生の契機が見出されることが少なくないと考えています。   しかしながら,死亡事件などの被害が深刻な事件,被告人にとっては,どんな弁解をしても社会は分かっていただけない,また,特に被害者や遺族に対しては何を言っても納得いただくことはできないという気持ちから,なかなか法廷で自分の気持ちを供述しようとしない被告人もおります。被害者や御遺族が常時在廷をして,被告人と対峙する形で存在することになることによって,今以上に自由な供述ができなくなるおそれが私はあると考えております。   それから,18ページの5以下ですけれども,これは被告人質問についてちょっと考えた点を述べさせていただきました。被告人質問の目的又は訴訟参加の目的として適正な刑罰,真相の解明というのが挙げられると思うんですが,特に真相の解明(名誉回復を含む)ということについては,事実認定の問題でありますけれども,実際上,公訴事実に関するものや重要な量刑事実に関する事実というのは,検察官が主張し,立証しているのが通常であります。被害者の方がやはり検察官と違う観点でというふうになるのは,この以外の事実に関するものが多いかと思います。例えば犯罪に至る経過であるとか,動機に関する細部の事実,そういうものについて被害者が違う事実を主張したり,違う観点でやりたいということだと思いますけれども,実際には今後,日本の刑事訴訟が裁判員裁判の導入によって精密司法から争点を絞ってやっていく制度に変われば,これ以外,公訴事実に関する,又は重要な量刑事実に関する以外は判断の対象にはならないのではないかという点で,被害者が訴訟活動をしても,そういうものについて裁判所が認定をしたりというふうなことにはならないのではないかという意味で,限界があるのではないかと思いました。   それから,被害者による被告人質問というのを考えたときに,先ほども御紹介ありましたけれども,実際に意見陳述をしている方々の中の遺族の割合が非常に高いと。被害者御本人は19%で,さっきは70%が御遺族とおっしゃったと思いますけれども,そうすると,やはり遺族というのは亡くなった方に対する気持ちとして仇討ち的な感情があるのが当然だと思いますし,そういうものを被告人にぶつけるというのも,また当然だろうと思います。しかし,被告人には黙秘権があって,黙ってしまうかもしれませんし,反発をして余計なことを口にするかもしれないという形で,この部会では「人間的なぶつかり合い」というような言葉も使われたと思いますけれども,私たちが危惧するのは,報復感情や怒りが被告人に直接ぶつけられ,被告人は何とも言えないという状況で裁判が進むというふうな裁判の姿を危惧するところであります。   それから,19ページの下からは情状事項に関する証人尋問ですけれども,これはここでも議論されたんですが,私自身は弊害といいますか,イメージをすると,もちろん示談経過などの事実関係を淡々と聞かれるということであれば何の問題もないかと思いますけれども,実際にはさっき言ったような,例えば御遺族などからは,犯罪が行われた責任,例えば生い立ちであるとか,監督状況であるとかいうものが家族等にもあるのではないかという尋問がなされたりということがあるのではないかと思います。また,証言する家族も,被告人を人質に取られているというふうな形で,不利になることは避けようという形で,被害者側の一方的な事実認識で聞かれても,否定をしたり,違いますということはなかなか言えないということも起こり得るのではないかと思いました。そういうような弊害も予想されるということと,理論的な根拠については,ここでも出ましたが,被告人質問については黙秘権があるので差し支えないが,証言の義務がある証人については,それは認められないというふうな形で,被告人質問を許容するという意見があったんですが,今回,情状事項については尋問ができるとなった場合に,それを分ける,情状事項と公訴事実を分ける理論的な根拠はなかなか見出すことはできないのではないかと思っています。   それから,最後に,事実,法律の適用に関する意見陳述と裁判員制度。つまり,裁判員制度について2つほど指摘したいと思います。これは21ページの8からですけれども。つまり,被害者というのは,すべての刑事記録の内容を把握しているわけではなく,自分の主観や証拠とされていない資料に基づく意見なども述べるおそれがあると思います。その被害者に検察官のような客観的な証拠に裏付けられた意見のみを,意見を期待するということ自身にもともと無理があるということで,そういう証拠に基づかない意見などが訴訟活動でされた場合に,審理に不当な影響を与えるおそれがあるのではないかと。特に,市民たる裁判員が関与する裁判員裁判の場合に,厳密な意味での証拠に基づくもの,そうでないものとの区別が非常に付きにくいということで,証拠裁判主義が崩れるおそれがあるのではないかと思います。つまり,被害者が証人として述べたことは犯罪事実,量刑の証拠になる。現行の意見陳述として述べたことは犯罪の証拠にはならないが,量刑資料にはしてもよい。被害者が最終意見として述べたことは,いずれの証拠にしてもならないという複雑な証拠評価の仕組みになるわけですけれども,これが市民裁判員に理解されるであろうかという危惧を感じます。   もう一つ,裁判員制度における影響については,特にこの求刑の問題があろうかと思います。もともとこの検察官の求刑や裁判所の量刑というのは,公益的な観点,それから刑事政策的観点からなされているということで,特に被侵害法益の性質,被害の程度,被害者の属性,年齢などの諸要素,犯行に至る経緯,被害者の過失などが類型化されて,他の犯罪における処罰の程度などとの均衡,それから公平などの司法的な正義を勘案しながら決めていると,判断をしているということで,この類型化とか一般化という作業が実際にはこの刑罰権の行使には欠かすことができない作業であろうと思いますけれども,被害者や御遺族にとっては一度しか体験しない事実で,他の同種の犯罪の被告人にどんな刑が科せられていようと,それは関係がないことであります。それは当然だと思います。こういう公益というフィルターを通さない生の応報感情に基づく求刑意見について,職業的な裁判官が判断するのであれば,まだ弊害は少ないかもしれませんけれども,一生に一度しか裁判を体験しない市民たる裁判員にとって,この生の応報感情に基づく求刑意見というのは,単なる心情の吐露ではなく,訴訟活動として行われるということは,これは後に量刑の判断作業の中で裁判官とともにその類型化,一般化の作業を多分していくのだと思いますけれども,やはりこの市民裁判員に与える影響は非常に大きく,重罰化の意見に傾くことが多くなるのではないかと思いますし,遺族がいて訴訟活動に関与した場合は量刑が重くなり,遺族がおらず,また,遺族がいても,だれも訴訟活動に関与しなかった場合には量刑が軽くなるという事態も生ずるおそれがあり,その場合にはむしろ刑罰としての公平を損なうことになるのではないかという意味で,この量刑の問題としても問題があるのではないかと思いました。   最後に,そういう意味で,この被害者参加人としての法的地位を与えて訴訟活動をする制度については,手続が二分されていない日本の制度には適合しないと考えます。日弁連の意見書が指摘していますように,やはり検察官を通じての間接参加を促進することを提言しておりますが,被害者と検察官のコミュニケーションというのを図ることが必要だろうと思います。この点についてはこの部会審議でも一致を見たところでありますけれども,私たちは検察官の実際の多忙な状況などもつかんでおりますけれども,やはりこれについては被害者や遺族に対して丁寧な説明に努めて,検察官が公判活動をしていくというためには,もっと検察官にゆとりが必要なのではないかという意味で,今,法曹人口の増員というのが言われておりますけれども,やはり検察官の増員もあわせて行わなければ,実際このコミュニケーション強化というのが現状では難しいのではないかと考えました。   最後としては,被害者や遺族に,今まで刑事司法の場から疎外されてきたという方々に提供しなければならないのは,被告人と対等に闘う権利,機会ということではなくて,その意見を適切に反映していくために,検察官や支援弁護士という我々法律実務家が被害者や遺族を十分に支援していける体制を作ることではないかと考えております。 ● そのほか諮問事項第四について御意見ございますでしょうか。 ● 私は賛成です。賛成の理由は意見書の方に書きましたので繰り返しませんが,要望について申し上げたいと思います。   まず,対象犯罪について今回限定されているわけですが,これは私も同意いたしますが,将来的には拡大する方向で見直していただければと考えております。   それから,被害者参加人という地位をもって一定の訴訟行為を行うということ,この制度を十分に被害者が活用するためには,やはり記録にアクセスできなければならないと思います。○○委員の方から議論の途中で言及がありましたとおり,弁護人に開示される記録については被害者にも開示してほしいということがあります。これについては刑事訴訟法47条のただし書を用いて運用で解決するというようなお話もありましたが,是非そのような運用をしていただきたいと思っています。   それから,この要望には書くのを失念いたしましたけれども,公判前整理手続が採用される事件については,被害者御本人はちょっと法律の専門家ではないので無理でしょうけれども,被害者参加人から委託を受けた弁護士が傍聴できるように将来的にはしていただきたいと思います。これを傍聴しなければ,一々検察官に説明を受けるということで,検察官も非常に煩雑でしょうし,本当に事件の進行も全く分からない状況で参加するということは余り意味がないことだと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。   それから,被害者参加人による証人尋問,被告人質問については,要件が厳しく定められております。特に証人尋問にはそうですが,これは実際の被害者に認める場合には,必要以上にその要件を厳しく,書かれている以上に厳しくしないように運用でお願いしたいと思っています。   それから,この新しい制度,被害者参加人に付く弁護士に関しては,これは基本計画にいいます公的弁護人ということの対象となるわけなんですけれども,是非その公的弁護人制度創設を検討していただきたい。これはこちらで検討すべきものではなくて,恐らく内閣府の方の検討会のテーマではあると思いますけれども,公的弁護人ということになりますと,この対象犯罪が限定されている,それから公判活動に限定されているということで,非常に活動がはっきりいたします。今,弁護士による支援活動は非常に範囲が広くて,これを全部公費によって賄う,公費による弁護士選任制度と基本計画で言っておりますが,これについては非常にちょっと限定ができないという難点があると私も思っております。しかし,この新しい制度に伴う公的弁護人という基本計画が予定しているものですが,これは非常に分かりやすいものです。予算立ても楽にできると思いますので,是非この席を借りて申し上げたいんですが,公的弁護人制度を創設し,過重な検察官の負担を減らして,弁護士による支援が幅広く行われ,この制度を被害者がきちっと活用できるように是非していただきたい。この周辺の制度の整備も含めて,この制度を検討していただければと思っています。 ● 一言だけ意見と感想を述べます。第四の二,証人の尋問についてのみ意見を述べます。   既に御案内のとおり,この証人の尋問の対象事項は情状に関する事項に限定され,公訴事実や犯行に至る経緯,動機,目的等の犯情には及ばないものとされております。このようなことから,既に話題になっていますとおり,実際上想定される場面は,いわゆる情状証人の弁護側主尋問に対して,その供述内容が果たして信用するに足りるかといった観点から,被害者御自身あるいは御遺族の方が自ら問い質すというような場面が主として想定されるのであろうと思います。   その法形式は証人尋問,特に実際の運用においては反対尋問であり,訴訟法上は証人尋問ということになりますと,これも既に議論がありましたとおり,証人には被告人のような包括的な黙秘権はなく,偽証罪の制裁の下に証言義務を負う。そして,証言内容それ自体も証拠になる,そういう法形式を採っております。このため,そのような法的な効果を生じ得る訴訟行為を被害者が独自に行うことができるという法的な仕組みそのものに,私自身はなお疑問を禁じ得ないところが若干ございます。   しかし,翻って,被害者ないし御遺族が自ら話を聞いていて納得ができない情状証人の発言内容に対して,その発言を問い質したいという御心情を抱かれることは一方で十分理解できるところでございまして,このような証人の尋問という法形式を採りつつ,実質においてはそのような心情の表明,被害者ないし御遺族の方が心情の表明を発問の形式で行うという機会を設けたものであると理解することもできるように私自身は感じております。それが一つの感想でございます。   それから,これも先ほどの御意見の中にありましたが,第四全体につきまして,もしこのような制度ができ上がった暁には,他の手続の関与者,具体的には刑事被告人あるいは証人が刑事訴訟法規に定められた正当な権利を行使するについて,そこに不当な影響が及ばないように配慮することも必要でありますし,また,これらの制度の対象事件のかなりの部分は裁判員対象事件とも重なります。先ほども話題になったとおり,裁判員の方は法律の専門家ではございません。以上の点,両方考えて,そのときにやはり裁判所の公判期日における訴訟指揮,あるいは最終的あるいは途中での評議の場における的確な制度趣旨の説明,配慮ということは,是非運用としてお願いしたいと思います。そういうことによって,一つの新しい制度が導入されることになるのだろうと思いますけれども,やはりそれぞれの訴訟関係人の基本的な権利の行使,それ自体が不当に制約されることがあってはならないだろうと感じているところでございます。   以上です。 ● そのほか諮問事項第四について御意見ございますでしょうか。もしございませんでしたら,この「要綱(骨子)案」の全体につきまして修正の御提案がございましたら,お願いいたします。   修正の提案はございませんね。   それでは,これから意見の取りまとめを行いたいと思いますが,その前に是非とも発言を御希望の方はこの機会にお願いいたします。   ございませんようでしたら,これから部会としての意見を取りまとめたいと存じます。   諮問第80号は,「犯罪被害者等基本法の趣旨及び目的にかんがみ,刑事手続において,犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,左記の事項に関してその整備要綱の骨子を示されたい。」というものであり,第一から第四までの4つの諮問事項が掲げられております。そして,この4つの諮問事項について,事務当局から「要綱(骨子)案」が提出されたところであります。   そこで,採決の方法ですが,今回の諮問事項は,多岐にわたっておりますので,第一から第四までについて,それぞれの諮問事項ごとに採決したいと思います。また,諮問事項の第三につきましては,第三の一の「公開の法廷において性犯罪等の被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度」と,第三の二の「証拠開示の際に,相手方に対して,性犯罪等の被害者の氏名等が関係者に知られないようにすることを求めることができる制度」とを分けて採決してもらいたいとの申出があらかじめございましたので,この2つを分けて採決したいと考えております。このような採決の方法でよろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきます。   まず,第一の「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度」について採決いたします。   事務当局の「要綱(骨子)案」の第一を部会の意見とすることに賛成の委員の挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● 結構です。   それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方は15名,反対の委員の方は2名でした。   出席委員総数は,部会長を除きまして,17名でした。 ● ただ今報告ありましたとおり,諮問事項第一の「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度」につき,事務当局の「要綱(骨子)案」の第一が賛成多数で可決されました。   それでは,次に,第二の「公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」について採決いたします。   事務当局の「要綱(骨子)案」の第二を部会の意見とすることに賛成の委員の方の挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方は16名,反対の委員の方はおられませんでした。   なお,出席委員総数は,先ほどと同じ17名でございます。 ● ただ今報告ありましたとおり,諮問事項第二の「公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」につき,事務当局の「要綱(骨子)案」の第二が賛成多数で可決されました。   それでは,次に,第三の「犯罪被害者等に関する情報の保護」について採決いたします。   まず,第三の一の「公開の法廷において性犯罪等の被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度」について採決いたします。   事務当局の「要綱(骨子)案」の第三の一を部会の意見とすることに賛成の委員の方の挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の方の挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● 結構です。   それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方は15名,反対の委員の方は1名でございました。   なお,出席委員総数は,先ほどと同じ17名でございます。 ● ただ今報告ありましたとおり,諮問事項第三の一の「公開の法廷において性犯罪等の被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度」につき,事務当局の「要綱(骨子)案」の第三の一が賛成多数で可決されました。   それでは,次に,第三の二の「証拠開示の際に,相手方に対して,性犯罪等の被害者の氏名等が関係者に知られないようにすることを求めることができる制度」について採決いたします。   事務当局の「要綱(骨子)案」の第三の二を部会の意見とすることに賛成の委員の方の挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の方の挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● 結構です。   それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方は15名,反対の委員の方は2名でございました。   なお,出席委員総数は,先ほどと同じ17名でございます。 ● ただ今報告ありましたとおり,諮問事項第三の二の「証拠開示の際に,相手方に対して,性犯罪等の被害者の氏名等が関係者に知られないようにすることを求めることができる制度」につき,事務当局の「要綱(骨子)案」の第三の二が賛成多数で可決されました。   それでは,次に,第四の「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度」について採決いたします。   事務当局の「要綱(骨子)案」の第四を部会の意見とすることに賛成の委員の方の挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の方の挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方は15名,反対の委員の方は2名でした。   なお,出席委員総数は,先ほどと同じ17名でございます。 ● ただ今報告ありましたとおり,諮問事項第四の「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度」につき,事務当局の「要綱(骨子)案」の第四が賛成多数で可決されました。   以上ですべての事項についての採決を終わり,諮問第80号につきましては,事務当局から示された「要綱(骨子)案」を部会の意見とて総会に報告することに決しました。   この意見につきましては,部会長から総会に報告いたします。部会長報告につきましては,慣例として部会長に一任願っておりますが,今回もそういうことでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,本日予定しておりました議事はすべて終了いたしました。   この際,特に御発言の御希望の方はお願いいたします。   事務当局から何かございますか。 ● 事務当局を代表いたしまして,一言ごあいさつ申し上げます。   委員,幹事,関係官の皆様方には,御多忙のところにもかかわらず,今回の諮問につきまして毎回長時間にわたり大変熱心な御審議をいただき,厚く御礼申し上げます。また,○○部会長には,議事の進行,意見の取りまとめに格段の御尽力を賜り,誠にありがとうございました。   今回の諮問では,我が国にふさわしい制度としてどのようなものが考えられるかにつきまして,幅広い観点から検討をお願いしたいという趣旨で,これまでの刑事法に関する多くの諮問とは異なりまして,具体的な要綱骨子を示して意見を求めるという形を採りませんでした。諮問の内容はそれぞれ重要な問題を含んでおりましたが,皆様方に正に一から御議論いただいた上で,本日その成果としまして,本部会の御意見を賜ることができました。重ねて御礼申し上げます。   本部会の冒頭でも申し上げましたが,今回諮問した4つの事項は,犯罪被害者等基本法を受けて策定されました「犯罪被害者等基本計画」の中でその検討及び施策の実施が求められており,犯罪によって傷付いた被害者やその御遺族の方々の保護・支援をより一層充実させるため,新たな制度を一日でも早く導入することが重要であると考えてまいりました。   また,本部会におきまして,被害者の方々を支援する活動をされている委員の方々から,普段から被害者の方々と接している中でお聞きになられた,被害者の方々の様々な生の声を御発言いただきました。このような声をお聞きしておりますと,今回,法律上の手当てをしようとしていること以外の運用上の様々な問題につきましても,今後,より一層の改善に努めていかなければならないと感じました。この点につきましては,今後とも,事務当局におきましても,引き続き検討していく所存でございますけれども,最高検におきましても,検察官と犯罪被害者等の方々との間のコミュニケーションをより一層充実させていくための具体的な方策等について検討されているとのことでございまして,本部会での御意見が,今後の実務にも反映されるよう努めてまいりたいと考えております。   最後に,今後のスケジュールでございますが,本日の部会における諮問第80号に関する御決定は,2月7日に開催が予定されております法制審議会の総会に部会長から御報告いただきまして,速やかに答申をちょうだいいたしました上で,法案の立案作業を進め,できる限り早期に,関連する法律案を国会に提出いたしたいと考えておりますので,委員,幹事,関係官の皆様方には,今後とも引き続き御支援,御協力のほどよろしくお願いいたします。   どうもありがとうございました。 ● いいでしょうか。 ● はい,どうぞ。 ● この審議会における審議は,もともと私どもの「あすの会」の運動がもとになって行われたものでございました。   私どもは,被害者が公訴参加するというドイツ並みのものを求めていたわけでありますけれども,でき上がったものは,かなり制約されたものになってしまいました。しかし,考えてみますと,60年も掛かって行われた現行の制度をわずか8回の審議で変えるということは,これは不可能なことでございます。その中にあって,先生方が一生懸命,被害者の希望をどのようにしていかすかということについて熱心にお考えいただいたということは,心から感謝している次第でございます。   現行制度の中でできる,ぎりぎりのものであったと思い,また私どもは,また更に今後とも被害者の権利を確立するための運動を続けてはいきますけれども,しかし,この8回の短時間でここまで一生懸命やってくださったということを深くお礼申し上げます。   そして,先ほど○○委員からもありましたように,いろいろと被告人質問とか証人についての制約が付いておりますけれども,これはできるだけ狭めないようにひとつやっていただきたいと思います。   また,検察官が権限の行使について,被害者といろいろ打合せをするというふうなことを入れていただきました。訴因の追加というのは強力に言ったのですけれども,そういうような格好で現行制度の中に入れていただいたということも,ありがたいことでございます。   本当に熱心に私どもの話を聞くことからこの委員会がスタートしてくださったと。先ほど事務当局からお話がありましたが,事務局案を出すことなく白紙で私たちの意見を聞いていただいて,そして皆さんで被害者の権利をどうすれば守れるかということを考えてくださったことは,この運動に参加しました者全員に伝えるつもりでございます。   本当にありがとうございました。 ● 皆様の御協力により,採決に至ることができました。ありがとうございました。   今,○○委員からのお話もありましたように,刑事法部会の慣行と異なり,今回は当初からの具体的な要綱骨子というものが示されないまま,その審議を行うということになりました。無論この問題につきましては,それまでに至る長い議論がございますが,当部会としましては,いかなる答申案になるかということは,当初は全く明らかでなかったわけでございます。それにもかかわらず,委員,幹事の皆様の御尽力により,本日このような答申案の決定をいただくことができました。この点について,部会長として厚く御礼申し上げます。   また,事務当局の方の御尽力にも感謝いたしたいと思います。   それでは,これにて散会といたします。 -了-