法制審議会 被収容人員適正化方策に関する部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成19年2月5日(月) 自 午後0時58分                      至 午後3時00分 第2 場 所  法曹会館 高砂の間 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第4回会議を開催いたします。 ● まず,事務当局から会議用資料等の公開に関しまして報告していただきます。 (事務当局から,会議用資料等の公開について,法制審議会第151回会議における決定事項につき報告がされた。) ● 本日は,第1回の会議で皆様にお諮りしましたように,前回,積み残しとなった「刑執行終了者に対する再犯防止・社会復帰支援策」のほか,「中間処遇の在り方」及び「保釈の在り方」について,ひとわたりの議論を行う予定です。   前回,御議論いただいた「その他の社会処遇の在り方」に関し,矯正局の方から補足の説明があるそうですので,本日の議論に先立ち,まず矯正局から御説明をお願いいたします。 ● 前回,社会内処遇の在り方についての御議論の中で,矯正局における薬物依存の離脱のための処遇についてお尋ねをいただいておりましたので,若干補足して説明させていただきます。   資料18,刑事施設における薬物事犯受刑者に対する処遇を御覧ください。   新しい受刑者処遇法の下で改善指導が義務付けられることになり,その中で薬物依存離脱指導を市原刑務所,ここは交通事犯者を集めている施設ですので,対象者がいないということで,市原刑務所を除く73の刑事施設で実施しております。標準プログラムの内容は,その資料にありますとおりでして,これを土台に各施設では指導案と指導計画から成ります実践プログラムを作成して指導に当たっております。   内容を見てお分かりいただけますように,できるだけ民間自助グループの関与により,グループワークを導入し,また視聴覚教材,ワークブックを活用するという内容にしているものでございます。   前回は,当面,指導体制等の点で最も整備されたものとして,性犯罪者処遇プログラムを紹介したものですけれども,新法下の特別改善指導としましては,この性犯罪者処遇プログラムあるいは薬物依存離脱指導のほかにも暴力団離脱指導,被害者の視点を取り入れた教育,交通安全指導,それと就労支援指導というものを,特別改善指導として実施しております。さらに,アルコール依存の離脱指導についても整備していく必要がありまして,これは内容,方法について,薬物依存離脱指導と密接な関連がありますので,モデル的にといいますか,試行的に処遇を試してみるような施設を設けて充実を図るということについても,目下,部内で検討中でございます。   本部会における論議のテーマとの関係では,いずれにせよ矯正施設としては,釈放後に薬物依存離脱指導の効果が生きるように,社会内処遇との連携を強化しなければならないと考えております。薬物の自己使用者の処遇は,本部会のテーマからいきましても,実質的に重要なポイントかと考えまして,説明を付け加えさせていただいた次第です。 ● ただいまの御説明につきまして,何か御質問等がございましたらお願いいたします。 ● 今,最後に社会内処遇との連携ということを言われたんですけれども,資料の中にも民間自助グループの活動についての情報提供というようなことがあるのですが,実際に出所されて,その社会内処遇というかどうかは別としまして,そういう自助グループなどに参加している状況があるのか。まだそこまで分からないのか,そこら辺,もし分かったら教えていただきたいのですが。 ● 民間自助団体の方からの情報では,刑務所から出た人も参加をしていると聞いておりますが,調査をして確実に把握しているということではございません。 ● 更生保護施設に帰住した者についても,前回でしたか,御説明申し上げましたように,更生保護施設だけでは完結した対応ができないということで,出た後,そういう民間のダルクとか,そういう施設,そういう活動があるというようなことを紹介したり,あるいは更生保護施設の方にそのグループから来てもらって,いろいろな形での協力をもらうというようなことをやっておりますけれども,具体的にどういう形でというところまでは,今,いっていないのが実情です。 ● ほかにいかがでしょうか。どうぞ御質問がございましたらお願いします。 ● 直接,薬物依存離脱の関係ではないのですが,前回の議論の冒頭にちょっと韓国の例を私申し上げたんですが,必ずしも正確に述べていなかった部分があったので,ちょっとそこを補足したいと思います。   いわゆる社会奉仕命令と,それから受講命令との関係なんですが,実は私,宣告猶予の話もちょっとさせていただいたと思うのですが,韓国では宣告猶予というのは,1年以下の懲役,それから懲役・禁錮,それから一定の資格停止と罰金に関してのみ言い渡すことができて,それについて保護観察を言い渡すこともできますけれども,保護観察に加えて社会奉仕命令とか,いわゆる受講命令というのができないことになっています,刑法上。それ以外の通常の3年間の懲役・禁錮に関する執行猶予事案について,社会奉仕命令とか受講命令というものを付加して言い渡しすることができるという形になっているようですので,ちょっと正確ではなかったので,ここできちっとさせていただきたいと思います。 ● どうもありがとうございました。   ほかに御質問がないようですので,次に行きたいと思います。「刑執行終了者に対する再犯防止・社会復帰支援策」が積み残しとなっておりましたので,この点について御議論をしていただきたいと存じます。   本日も,事務当局の方から,前回配布したものと同じ諸外国における刑執行終了者に対する制度の一覧表を席上に配布していただいております。それを参考にしながら御議論いただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。   どうぞ御自由に御発言をお願いいたします。 ● まず議論をスムーズに運用するために,当局の方から,現在,刑執行終了者に対する再犯防止,社会復帰支援策として,現行の枠内で何をしているか,更生緊急保護を含め,ちょっとそれを簡単に説明していただけますか。 ● 現在は更生緊急保護と申しまして,刑期満了者に対しましては,本人からの申出によりまして,自庁保護というのですが,いわゆる本人が帰住したいところまでの旅費の支給だとか,あるいは食べる物も何もないということであれば食事の供与とか,あるいは働くための衣類も何もないというようなことであれば,観察所がいろいろな形で寄附していただいたような作業着だとかあるいは物品などを給与したり,あるいは必要があると,更生意欲もあると認定したような場合には更生保護施設への委託というような形での対応を,それも本人の意思に反しない限りということで実施しております。これが現行の犯罪者予防更生法48条の2の更生緊急保護の規定でございます。   ちょっと私の説明は分かりにくかったと思いますけれども,読み上げますと,次に掲げる者,要は,懲役・禁錮とか勾留について,刑の執行を終わった人あるいは執行免除を得た人とか,単純猶予者,要は保護観察を受けていない人たちが,身体の拘束を解かれた後に,親族からの援助とか福祉の方からの医療とか宿泊とか職業保護を受けることができない場合,仮に受けることができたとしても,これらの援助,保護だけでは更生できないと認められる場合に,緊急にその人に対して,さっき申し上げました帰住を斡旋するとか,金品を給与したり,貸与したり,宿泊所を供与したり,あとは教養訓練,医療,保養,就職を助けたり,職業を補導したり,社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うとか,そういう形で本人の改善更生を助けるということでございますが,その第4項に更生緊急保護というのは,本人が刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後,原則6か月を超えない範囲において,その意思に反しない場合に限って行うものとするということが原則でございます。   そういうことで,本人が保護カードを持つなり,これは刑事施設の長あるいは検察官が保護の必要がある,本人も出ても当面いかんともし難いというような事情を申し述べたときに交付しますが,その保護カードを持って保護観察所へ出頭してくれば,そういう事情を保護観察官との面接の結果,個別具体的に判断して保護するというような制度でございます。現在,満期釈放者を中心として,そういう制度で対応しているというのが実情でございます。 ● 原則6か月とおっしゃいましたけれども,延長することはできるという趣旨でしょうか。 ● 必要があるときに限って,あと6か月延長でき,最大限1年間ですが,これは極めて例外的な形になります。 ● それで,現行制度では,最大の問題は何かといいますと,満期釈放者は,結局,社会内処遇の対象とはなっていない,つまり,そういう例外的な福祉的な措置を本人の申出によってやっているという状況にすぎず,刑事施策的な観点からいうと,そこから完全に抜け落ちている。そういう意味で,この問題は,おそらく今後も我が国の刑事施策,矯正と保護にとって最大の問題であると思っております。   その場合に,満期釈放者というのはどんな人がいるのかですけれども,第一は反社会型といいますか,仮釈放なんて要らない,不名誉なことであると考える人もおり,再犯の可能性が非常に高いと言えるグループです。   それからもう一つ別のタイプは非社会型,不適応型ですね。つまり,社会生活を独立して一人ではしにくい,そういう一部の人々がいるということだろうと思うのです。   後者については,前回も言いましたけれども,いろいろな形で最近問題になってきていて,具体的には知的障害者あるいはホームレス,それから高齢者等です。いずれにしても満期釈放者の問題というのは両面ある。非常にそういうコントロールを強めなければいけない対象者と,ケアか,福祉的な措置を強めるべき対象者,この両方いるのではないかという気がするのです。   だから,そういう点でこの問題というのは,単に刑事施策といいましたけれども,福祉的な措置を含む刑事施策が大きな課題となっているのだと考えられます。あとの中間処遇とも関連するのですけれども,これまで我が国で抜け落ちてきた部分というのですか,そういう点を十分まず認識する必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。 ● 今の○○委員と関連することなんですが,今年の1月18日か9日ですか,いわゆる知的障害者に対して福祉との連携を図ることを4月から行いたいと法務省の方が発表したというような記事を読んだ記憶があるのですが,現状どういう形で進展しているのでしょうか。 ● 報道された内容等を必ずしも詳細には理解はしていないのですが,おそらく報道されたのは,厚生労働省で,知的障害のある人で矯正施設から出た人のケアということについて,実態はどうなっているのだろうか,あるいはどのような施策が必要なのかということについて,調査研究プロジェクトを実施をしておられまして,法務省も矯正局,保護局がこれに関与いたしまして,協力をしているという状況です。   厚生労働省のプロジェクトは3か年のプロジェクトになっておりまして,平成17年度を初年度としまして,18年度,19年度までのプロジェクトでして,現在のところで進めていますのは,矯正施設における知的障害者という人の実態はどうなんだろうかという調査と,モデル事業としまして,具体的な知的障害者施設がございまして,矯正施設では,九州の麓刑務所という,これは女性が入っている刑務所ですが,それと中津少年学院という,大分の中津市にあります少年院ですが,この2つをモデル施設として,ここから社会に帰っていく人に対して,帰っていった後,知的障害者施設に入所してケアをするということを進める計画が動き出してきたというところでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 自立更生促進センターが新しくできる,公的な更生保護施設ですけれども,その中で知的障害のプログラムがありそうな気がしているのですが,どうでしょうか。 ● 今のところ,ちょっとそこまでは。 ● そうですか。 ● 皆様の御記憶にも新しいところかと思うのですが,平成16年に奈良の生駒郡の方で女児誘拐殺人事件が発生し,その犯人に女児に対する強制わいせつの前科があり,刑を受け終わった者であったということで,そういう刑執行終了者による重大事犯をどう防いでいくのかということが,当時,大きな社会問題になりました。   国会の審議におきましても,刑期が終了したからといって何らの再犯防止措置も施さずにいるということは問題ではないかというような観点から,例えば,出所した性犯罪者に住居やその後の転居先を届け出る義務を負わせて,その情報をPTAや保護司,地域の防犯組織のようなところに伝えるという方策を講じてはどうか,というような御意見がありました。   諸外国におきましても,お手元の配布資料のとおり,例えば,アメリカのメーガン法など,性犯罪者の情報登録・公開制度がございますが,こういった制度を我が国に導入することにつきましては,そのような義務付けの根拠の問題とか,あるいはプライバシーの問題などの観点を踏まえ,検討が必要と思われますが,いかがでしょうか。 ● ただ今,具体的な問題提起がなされておりますが,この点についてどうぞ御自由に御発言をお願いします。 ● メーガン法やジェシカ法といった形の,今,インターネットで公開をされて,その地域のみならず全世界からアクセスができて,顔写真から年齢からすべてが分かるという制度というのは私としてはかなりプライバシー侵害という観点から問題があるのではないかという認識を持っております。   特にアメリカのメーガン法やジェシカ法と言われているような法律というのは,もともと私の理解する限りでは,いわゆる犯罪者であっても矯正が大きな前提であるという前提の中で,矯正との妥協という形で,しかもそれをある種の一つの大きなエポックの事件を通して,その被害に遭った人たちが大きなうねりとなって社会問題化してきて,それを国が取り上げてこういう法律ができたというような理解をしております。そういった場合には,まず動くのは決して政府ではなくて,一般の国民が動いているというところと,矯正の理念がどこかにあるという部分があってできたものだったというふうな理解をしているのですが,残念ながら,現実にはこの法律によって,それなりに公開されている人たちについては,例えばその犯罪者ないしはその犯罪者の家族に対して焼き討ち行為をされるとか,自宅に鉄砲で撃ち込みがされるとかという形で,かなり阻害されるような状況が生まれています。日本でもそうならないという保証は全くないと思います。   同時に,このような対応を受けた人間が再犯防止をしないと言えるのだろうかということが,彼を孤立化させることになることが,逆に彼をそちらの方に駆り立てる要素になるのではないかという懸念も私は持っております。   それと,やはりそういう形で追いやられた人間というのは,最後は結局,アメリカにおいても,少し規制の緩い地域に住居を移すという形で,そういう形で逃げ回るような生活しかできないという,そういったやり方というのはかなり問題があるのではないかという認識を持っております。 ● この問題については,性犯罪者について住居等の登録を義務付けるかという問題と,その上で登録された情報を一般に公開するかという問題を分けて考えたほうがよいのではないでしょうか。アメリカは,一般市民に公開しているところが多いようですけれども,お配りいただいた表を見ましても,イギリスやフランスは,登録制度はあっても一般市民には非公開ということになっていますので,制度の立て方はいろいろありうるだろうと思います。そこで,議論の前提として,日本でも,例えば,性犯罪等を犯した人について,法務省から警察に情報を提供するということをある時期から始めたと思うのですが,その制度の概要について教えていただけますでしょうか。 ● 御指摘の制度は平成17年6月1日から法務省が警察庁に対し,子供を対象とする暴力的性犯罪を犯した受刑者の出所予定年月日,出所後の所在等,帰住予定地等に関する情報の提供を開始したということでございます。   情報の提供の対象となる受刑者は,受刑に係る犯罪の被害者が13歳未満で,罪名は強制わいせつ,強姦,わいせつ目的略取誘拐及び強盗強姦のものでございます。これらの結果的加重犯を含みます。   具体的には,刑事施設の長は,当該受刑者が釈放となる場合,釈放予定日のおおむね1か月前に警察庁に対し釈放予定者の氏名,釈放予定年月日,入所年月日,帰住予定地,その他の参考事項を通知するということです。18年5月31日までの制度開始後約1年間で,情報提供した対象者数が169人というものです。   これに加えまして,性犯罪に絞らない出所情報の提供もしておりまして,これは平成17年9月1日から始めております。法務省は警察庁に対し,殺人,強盗等の凶悪重大犯罪及びこれらの犯罪に結び付きやすく再犯のおそれが大きい侵入窃盗,薬物犯罪等に係る出所情報の提供を開始しておりまして,これは毎月法務省が警察庁に対し,対象となる受刑者等の刑事施設における入所日,出所日あるいは出所予定日,出所事由等の出所情報を通知することとなっております。   子供を対象とする暴力的性犯罪に係る出所情報との違いは,帰住予定地までは情報提供の対象として含んでいないというものでして,この後者の制度は,警察で捜査の絞り込み等のために使えるということで,主として捜査の迅速性に役立つというものでございます。前者の情報は,付きまとい,声掛け等の予兆行動があれば,それに対して適切な行動をとって,再犯防止を図る目的と聞いております。   この後者の制度は,対象はかなり広範囲にわたっておりますので,18年5月31日までで,対象者数は延べ約1万9,000人というものでございます。 ● ありがとうございました。   それで,今度は警察にお聞きしたいのですが,最初の方のカテゴリーである,子供に対する暴力的性犯罪を処した受刑者に関して出所情報の提供を受けた場合,その後,具体的に何をされているかという点を,差し障りのない範囲で教えていただけませんでしょうか。 ● これは担当部局が刑事局ではなく,生活安全局なものですから,詳細には承知しておりませんけれども,聞いているところで申し上げますと,帰住予定先が当該地を管轄する警察署に連絡され,その警察署におきまして,そこに実際に帰住されたかどうか確認するとか,そこに住居として住んでいるかということを定期的に確認しているということであります。もちろん御近所の方にそういったことを明かした上での聞き込みといったことはなじみませんし,また御本人にもそういった形での,一種監視されているというような心理的負担を与えてもいけませんので,そういったことは控えるようにして,周りから居住の実態を定期的に確認をしておるところと聞いております。 ● 例えば,対象者が転居したというような場合だと,その転居先を調べて,その転居先の警察署につなぐというようなこともおやりになっているわけですか。 ● はい,仕組みとしてはございますが,どこまでパーフェクトに把握できるかどうかというのは,若干難しいところがあるのではないかと聞いております。 ● ただ今の御報告を受けて,何か御意見がございますでしょうか。   ○○委員にお伺いします。先ほど○○委員から御指摘ございましたように,この情報登録や情報の提供などと,その公開とを分けて考えた方がよいのではないかというお話がございましたが,それとの関連で御意見はございますでしょうか。 ● ○○委員がおっしゃるように,登録と公開では全然制度が違っている部分があると思うのですね。ただ,公開といっても,ほとんどの国はおそらく原則非公開ですけれども,例外的な公開というのを認めているので,それをどのように定めるのかということが一つ問題になるのかなという感じがしています。   それと,実際上,これらの法律を見ていると,ほとんど年少者への性犯罪者を対象としているものが多いのですが,現実には海外ではそれ以外の重犯罪,例えば殺人だとか,そういったものについてどのような制度になっているのかというのがちょっと私ども分かりかねるので,もし分かればという感じをしております。 ● 年少の者に対する性犯罪者の登録については,一つ考えられるのは,そのような者が子供を扱う職業に就くということを防止するためにチェックができるようにするという制度は考え得ると思うのですけれども,そして,またそれは,例えば会社法の犯罪を犯した者が取締役に就任できないというのと同様に,一定の合理性はあると思うのですが,ただ,子供に対する性犯罪者がそのような職業に就いていることによってその種の犯罪を犯すことが多いという事実があるのかどうかについてよく知りませんので,もしそういう制度を考えるとすれば,そういう点についても調査が必要かと考えます。 ● 情報を登録することと,これを公開することを分けてというのは非常にもっともな御指摘だと思うのですけれども,そういう観点からすると,例えばイギリスやフランスなどでは基本的には非公開であり,非公開で登録させた上で,その情報をどのように活用しているのかということはお分かりになっているのでしょうか。 ● イギリスの非公開原則に対する例外として考えられているのは,私がいろいろな文献を見た限りによりますと,例えば内務省の警察への通達では,公衆への危険の程度が性犯罪者のプライバシーの保護の必要性を上回る場合に限り,登録された情報を提供することができるが,公衆にはその提供を請求する権利は認められないというふうな形になっているようですね。   それから情報提供が行われる場合として,多機関公衆保護協定に基づく情報提供というのがあるようです。そのようなことを文献でちょっと見ております。   今の多機関公衆保護協定というのは,MAPPAというところがあるのですが,ここが警察庁長官,地方保護観察委員会及び刑務所行政所管大臣が責任機関として,地元の教育機関,住宅,健康福祉担当部署等と密接に協力し,犯罪防止,特に子供を犯罪から保護するために必要な措置をとることを内容とする制度というのがあって,イングランドとウェールズ42地域でこれを実施しているということのようです。それで,参加機関による犯罪発生の危険性の評価に基づいて,警察が被害に遭う蓋然性の高いもの,またはその保護者等に対し犯罪者の情報を知らせることがあるということのようです。 ● 御指摘どうもありがとうございました。   情報登録とか公開に関しまして,ほかに御意見がございますでしょうか。 ● イギリスに関連して,先ほど委員からあった,いわゆる子供に関連する職業や子供がいるような場所に接近しないといったような,そういうものについては2003年刑事司法法というのがあって,性犯罪者に対し,子供の世話や訓練,監督等を内容とする職業,例えば教師,ベビーシッター,スポーツクラブでのボランティア活動に従事することを禁止する命令をクラウンコートで発することができるというような規定があるようです。 ● ○○委員にお伺いいたしますが,そのような職業に就いていたことと犯罪との因果関係が証明されない限り,そういう措置はとれないという趣旨まで含まれているのでしょうか。 ● そこまでは言いませんけれども,やはり立法事実として,仮に,およそこれまでそのようなことがない通り魔的な犯罪ばかりだったというのであれば,そういう制度を設けるというのもいかがなものかと思いますので発言いたしました。 ● どうもありがとうございました。 ● 性犯罪の話と関連して○○幹事にちょっと教えていただきたいのですが,警察では,最近,DNAのサンプルの管理を強化しておられると思いますけれども,その辺はやはり性犯罪者あたりが中心なんでしょうか。それとも重大犯罪一般ですか。 ● まず犯罪捜査におけるDNA鑑定の取扱いでございますけれども,再犯防止を目的としてDNAを強制的に取るとか,データベースを作るということは,現在の法制では困難と考えておりまして,あくまでも犯罪捜査の必要によって,例えば,被疑者と現場の遺留資料を比較対照する必要があるときにDNAの型鑑定を行っております。そして,警察におきましては,その当該被疑者が検挙された場合に,現在ある一定のデータベースを運用しておりまして,これは現在,数千件のデータが,登録されております。   そういうことでございますので,データベースへの登録につきましては,私どもといたしましてはあくまでも犯罪捜査の過程で採取したもので検挙に至った場合を原則としております。そのデータベースについては,今のところ1年ちょっとの実績でございますが,まずは犯罪捜査の必要があってということでございますので,性犯罪にかかわるものが,犯行の形態から必然多くなるという傾向はもちろんございます。他方,活用事例としましては,必ずしも性犯罪に限られるものではなく,被疑者が現場で資料を遺留して,例えばこの犯罪とこの犯罪が同じ被疑者によるものであるということが判明したり,侵入窃盗事件のものでも,例えば殺人事件の解決に結び付いたというようなものもございます。 ● 今の点は,以上でよろしいでしょうか。 ● また私の方から問題提起的に発言させていただきたいと思いますが,やはり国会での御議論等を見ますと,例えば,刑務所から出所した性犯罪者に対する措置として,GPSを用いた監視を行い,例えば子供たちがいるような学校とか公園の近くに寄ることを防止する方策を講じてはどうかというような御意見が出たところでございます。   お手元に配布しております一覧表にも,例えば,ジェシカ法など,刑執行終了者に対する電子監視を含むものが採用されているようですが,このような方策の導入についても,御議論いただければと考えております。 ● 電子監視の問題などいろいろ問題点があるようですので,この点につきましても御意見を承りたいと存じます。 ● 今の子供たちのいるような場所への立入りを禁止するといったこととか,学校の付近に来るなとか,そういったやり方というのが,その当該性犯罪者にとってさらに孤立化を深めることにならないかということを若干危惧しております。その辺の議論も十分にした上でないと,この制度の導入というのはかなり慎重にならざるを得ないのかなという意見を持っております。 ● ただ今,孤立化について御指摘がありましたが,この点に関しまして,御意見がございましたらお願いいたします。 ● 犯罪者あるいは刑執行終了者を孤立化させて社会復帰を困難にすると,また元の状況に戻るであろうという御指摘は全くそのとおりなのですが,電子監視の話も併せて考えますと,そういった孤立化をさせるということと,その一方で,社会復帰を促進させ,また,十分予測できるような再犯を防止するための手段として電子監視を入れるということは,相互に独立した話だと思います。ですから,今後の議論の進め方として,今はこの刑執行終了者に対する制度としても,特に性犯罪者の話に焦点が当たっているかと思うのですが,これだけの問題ではないと考えて進めていった方がよいかと思います。以前も○○委員の方から社会福祉的な問題について,御指摘があったと思うのですけれども,もちろんそれも大事であって,社会福祉的なことをしながら,かつ再犯防止のための手段として,電子監視の可否も含めた上で刑罰の延長等として電子監視の可否も考えていくと,こういう2つないし3つの要素を立てて見ていく必要があるのではないかと思って聞いておりました。 ● 先ほども御指摘がありましたけれども,再犯防止の部分とケアの部分をどのように調和的にといいますか,どのような配慮の下でそれを考えていくべきかという点も,○○委員が指摘された問題と絡むのだろうと思います。それも含めて,どうぞ御自由に御意見をお願いしたいと思います。 ● 刑執行終了後の監督ないし監視の法的性格についてなんですが,アメリカとかイギリスは,そうした点にそれほどこだわらないかもしれませんが,ドイツの行状監督とか,フランスの社会司法観察刑というのは,これは位置付けとしては刑罰の一種であり,刑務所における自由刑が終わった後にそれに付加するという理屈なんでしょうか。いわゆる保安処分とは違うものとして位置付けられているのかどうか,その点を教えていただきたいのですが。 ● フランスの社会司法観察刑に関しましては,判決裁判所より言い渡される補充刑及び代替刑として位置付けているという説明がなされておりまして,ただ,その補充刑ないし代替刑というのが具体的にどのような法的性格のものなのかというのは,私どもも承知しているところではございません。   また,ドイツの行状監督につきましては,文献等によりますと,自由剥奪を伴わない保安処分ということで位置付けられているようです。 ● フランスの制度について,私,詳しいわけではありませんが,刑罰の一部としてといいますか,ある期間の拘禁刑を想定しながら,そのうちの一部分を減刑して,その期間を超えない範囲で電子監視にするという考え方もとられていますようで,それも一つのやり方かなと思います。 ● 先ほど委員の方から子供たちがいる学校とか公園の近くに寄ることを防止する方策としてGPSを用いて監視を行うということに対し,孤立化を招いてはいけないという御指摘があったところですが,一般論としてはもちろんよく分かるところであります。その地域社会の方々などが,対象者が電子監視をされているということを知って,付き合いを避けるような,そういう対応になっては,なかなか再犯防止という目的が仮に達成されたとしても,もう一方の改善更生,立ち直るという面でかなりマイナスになるというのはよく分かるのですが,ただ,その孤立化ということで懸念される場合として,例えばどういうものがあるのだろうかということでありまして,特に子供のいるところに近寄らないとかという面では,社会のみんなが知ると,それは確かにそういう問題があるのでしょうけれども,GPSによる監視といった場合には,そういうところを工夫しようと思えばできるのかなという感じがいたしますので,もう少し具体的に,こういう孤立化の懸念があるというところで何かお考えがあれば,今後の検討の材料になるかと思うのでお聞かせ願えればというところであります。 ● 私が思うに,まず孤立化といった場合に,もちろんGPSとかそういう考え方もあろうかと思いますけれども,孤立化というのはまさに社会の中に生きていく上で,いわゆる友達がいないといいますか,話し相手がいないという,そういう人が結構そういう問題を起こすというふうなことも聞いたことがありまして,現実にカナダにCOSAという形で民間のボランティア団体で,支援と責任のサークルというのがあるのですが,これは全く民間の団体なんですが,8人1組になって性犯罪者で出所した人たちをフォローするという。8人が友達になるという。友達になるけれども親しくなり過ぎない,なおかつ疎遠にもならないという形にして,それぞれのボランティアの人たちが彼とホットラインが結べる電話を持ち合っていると。そういったときに,かなりこういう人たちがいることによって,自分の気持ちがちょっとおかしくなっているけど助けてくれというSOSのようなものがあって,結構そのために,ある種の人間関係ができて,それゆえに再犯に陥らないという。この例では,かつての新聞では,当初,一般の再犯率は17.6%だけれども,このCOSAによる指導を受けた場合には8.3%と,半分ぐらいになるというようなデータもあると聞いています。   ですから,私は電子監視とか何とかということも,それは考え方としてあると思いますけれども,やはり人間が何かケアをしていくということが必要ではないかなという気がしております。 ● 先ほど私が言ったこととも関連するのですけれども,○○委員のおっしゃるとおり,孤立化してしまいますと,社会に戻しても確かに生きていく意味をなかなか認識しないで,また犯罪に走ってしまうということがあろうかと思うのですが,例えば電子監視を付す理由として時々言われていることといたしましては,これは社会内処遇を徹底させていくための手段であると。普通の,犯罪を犯していない人と同じような生活を社会内でさせて,その生活基盤を奪わないためであると。刑務所に入れて収容するとそういった生活の基盤が崩れるので,短期であってもまさに社会から孤立化してしまって社会復帰も困難になるからだという意見が出されています。   ですから,マージナリゼーション,孤立化をさせないことが大事だということは全くそのとおりなのですが,その手段として,あるいは制度として何があるかというときには,先ほど私が言ったように電子監視を採用したり,あるいは他の制度を採用したりということは,また独立の変数として考えるべきではないかなと思っております。 ● この場で聞くのが適当かどうかよく分からないのと,ちょっと遅れてきたので議論の流れに必ずしもついていっていないところもあるのですが,電子監視という話が問題になっているのですけれども,具体的にモニターする方というのはどんなふうにしてモニターしているのかというところが,ちょっとイメージとしてよく分からないところがございます。GPSでやるわけですから,いわば自動車のカーナビと同じような話なのかもしれませんけれども,モニターしている側としては,対象者はたくさんいるわけで,それを付けている人をどんなふうにしてモニターしているのか。それは個々の対象者の行動が24時間なら24時間ずっとモニターされて,それが何らかの記録で残っていくようなものなのかどうなのか。   先ほど子供がいるところへ近寄らないようにするための方策としてそういうことが考えられるだろうというお話があり,なるほどそれは一つの方策として考えられますし,また,それをとることが直ちに孤立ということに結び付いていくのかという点は,いろいろ御議論があるところだろうと思いますけれども,他方で,24時間ずっと行動といいますか,どこにいたのかということが記録をされていくというようなことになっていくと,その点はその点でまた別の問題を生じるかなという気もいたしまして,そこは方法との兼ね合いということなのかもしれませんが,もし現実にやっているものについて,何か分かっていることがあればお教え願いたいと思って質問させていただいた次第です。 ● 私どもの把握しているところを簡単に申し上げますと,GPSにつきましては,諸外国の例を見ると2種類あるようでして,一つはアクティブGPS監視と呼ばれているような種類であり,監視員が24時間リアルタイムで監視をするというようなものでございます。   もう一つは,パッシブGPS監視と呼ばれているものであり,これは特定の日時における対象者の位置情報あるいは移動情報を後から特定できるという監視方法のものです。   このように,24時間リアルタイムで監視できるものと,例えば夜間確かに自宅にいたかどうかなどのことを事後的にチェックできるシステムと,二つのタイプがあるようでございます。 ● 多分,こういう制度をやると,多数の人が装置を付けているのですよね。それはだれか1人がずっと見ていたりするわけですか。なかなか現実には難しいと思うので,記録に残しておくということなのかどうなのか。 ● 知っている範囲にとどまりますが,アメリカでは特に性犯罪対策としては,今,幹事がおっしゃったようなアクティブGPSがとられているようでありまして,許可されたルートが,比喩的にいうと一直線に決まっておりまして,そのルートから離れるとエラー音が鳴ったりして追跡されるというイメージでお考えになればよろしいかと思います。   他方,イギリスなどでは,これも幹事から御発言があったように,夜間の外出禁止命令をかけておいて,それを守っているかを定時チェックをすると。そして,後になってあそこにいなかったではないかということになると命令違反だということになって,パッシブに制裁を科すという形であり,もう少し緩やかな監視をしています。その場合,性犯罪者については,一定のエリアに,ゾーンに入ってはいけないという禁止があるだけで,ゾーンに入ったことが事後的に判明すると,やはり命令違反ということになっているようです。   ですから,やはり二つの監視の仕方があるのですが,委員の御質問のもう一つの,24時間監視しているかというと,定時監視の場合と,24時間監視する場合があるというのが,実情だろうと思います。 ● 刑執行終了者に対する処遇というよりも監視自体の当否の話になっていますので,その関係で一点お聞きしたいのですけれども,先ほどの孤立化ということの関係なのですが,現在の保護観察の運用として,性犯罪を犯した対象者に対して,保護観察の遵守事項として,例えば,一定の場所に近づかないといった内容の遵守事項を設定する場合はあるのでしょうか。 ● 確か遵守事項として,子供対象のということであれば,そういう子供が集まるような場所には近づかないとか,それからストーカー行為的なことであれば,そういう被害者等に近づかないとかということを特別遵守事項と設定することはあります。 ● 孤立化を懸念する○○委員のお考えだと,そういった遵守事項の設定自体がやはりおかしいということになるのか,それとも,それを電子監視という手段を用いて行うのがおかしいということなのか,どちらなんでしょうか。 ● 保護観察期間中,刑の執行期間がまだ満了する前ならば,それは一種の遵守事項の中にあり得ることだと思うのです。ただ,これは刑執行終了後もそれをやっていいのかどうかということになると,若干躊躇するものがあるということであります。 ● 電子監視から逸脱した場合,あるいは極端な場合,装置を破壊したような場合,そういうときの罰則はどういう具合になるのですか。 ● すべてを知っているわけではもちろんないのですが,もしも電子監視に付すということが裁判所の命令で出ている場合には,裁判所の命令違反として別個,他の罪を構成するという法制度はあるように承知しております。例えば,英米法の国では,こういう対応が多いようでございます。 ● どの程度の制裁を受けるのですか。 ● 監視期間が伸びる場合もありますし,遵守事項を強化した上で,再度執行するということもありますけれども,その前提として,電子監視の用具の破壊については,器物損壊罪が別個問われることになります。 ● これについては性犯罪に特化した扱いがなされているわけですが,性犯罪の特殊性を理由にして,こういうことを正当化できるかどうかという点に関してはいかがでしょうか。   国会においても性犯罪に特化した形での議論がなされたようですけれども,その点について御意見ございましたらお願いいたします。 ● 意見というか,この点もよく分からないので質問のようになってしまうのかもしれませんけれども,やはり性犯罪を対象にしたり,あるいは特にその中でも年少者を対象にした性犯罪がターゲットとして考えられているのは,それは犯罪なんだけれども,ある種,性格・人格に起因するようなところがあり,だから繰り返されるのだというような捉え方があるのかなとも思うわけですけれども,その辺りというのは,現実には,科学的にと申しますか,何か裏付け的なものというのはあるのでしょうか。 ● 正確な知識を持ち合わせているわけではなく,多分に推測的なことになるかもしれませんが,おそらく,そういった人の前科を見て,同種の犯行を繰り返しているというようなこと等を踏まえて判断がなされているのではなかろうかと,そのようなイメージを持っております。 ● 多分,年少者に対する性犯罪といった場合,私は二種類の犯罪者がいるのではないかと思っているのですね。一つは,もともと小児性愛,子供しか愛せないといいますか,子供しか対象としないという,いわば人格異常といいますか,そういう意味で人格的に問題があるというものと,それから大人との付き合いができないから子供の方に目が向いてしまっているという二つがあるのではないか。後者についてはかなりいろいろな形で人間的接触とか,いろいろなことをすることによって,私は矯正が可能なような気がするのですが。 ● この部会の中でも御紹介したところですけれども,再犯率というところを見ますと,子供というところに特化はもちろんしておりませんけれども,性犯罪関係の再犯率が比較的高いというのは,一つの現実ではあろうと思います。   それに加えて,子供に対するというところで,それをどう考えるかという問題があり得るのかなというところでありまして,子供の被害者の特性として,おそらくは一つは抵抗力がかなり弱いということと,もう一つは被害に遭った場合の精神的なダメージも含めた被害というのがかなり大きくなるのではないかというところで,その辺りで○○委員の御指摘にお答えするとすると,一定の再犯率があるということと,子供の特性というのを考えて,それが特別の措置を正当化するだけの理由になり得るのかどうかということなのかなと考えます。 ● まだ十分に読み切れていないのですけれども,性犯罪者処遇プログラムの研究会報告書というのが出ておりますよね。その中にいろいろなことが載っているのですが,受刑者自身に対するアンケート調査の結果のようなものもありまして,その中に,例えば13歳未満の子供に対する性犯罪を行った者に対する質問とかもあるのですが,その受刑者,性犯罪を行った者自身がどうすれば再犯をしなくて済むかというようなことに対して,例えば治療や教育を受ければよいと考えている受刑者も一定程度いるわけですね。自分自身がそう思うぐらいですから,そういうものが必要だという自覚があって,そういうふうにしたいといって,そういう人については強制的な形ではなくて,再犯防止というような手段がとれるのだろうと思うのですね。   一方で,そういう自覚も全くなくて,また再犯を行ってしまうというのが一番重大なんだろうと思います。そこについて統計的にどうなっているかとか,そこら辺はよく分からないのですが,おそらく一定の範囲では一種の治療が必要な病気といいますか,そういう部分もあるのだろうと思うのですね。ただ,それについて,今の法制度のもとで,そういう危険があるからというだけで,ただ監視をして,その犯罪から遠ざけるということが果たして適切なのだろうかと。それはその電子監視であれ,そのほかの方法であれですね。刑執行終了した後に,そういう一定の犯罪を犯した人間はまた再犯を犯す可能性が高いから,だから見張っておいて犯罪を犯させないようにするというのが正しいやり方なのかということについては非常に疑問を持つんですね。   やはり根本的に,なぜその再犯してしまうかということについて,個々別々の対策があり得るわけで,治療が必要であればそれは治療させると。その治療をさせるとしても,今の制度のもとでは,やはり刑執行終了後は任意の形の治療であるべきですから,そういう形をとるべきだと思いますし,受刑中にできることはもちろんそこでやるにしても,実際上できない部分というのは残ってしまうのでしょうから,後から中間処遇の話とかにも絡むんですけれども,何らかの形で社会内においても治療なり教育なりを続けられる方策というのは,それは必要なんだろうとは思いますが,それは刑執行終了者に対して強制的に行うという形ではない形でやるべきなのではないかと考えます。 ● 大変興味深い議論が続いていると思うのですが,今後,議論する場合に整理すべきことが幾つかあると思うのです。一つは,刑期満了者に対する措置としてこれを考えているのか,保護観察の遵守事項というような形で考えているのか,処遇の一部として考えているのかという点をはっきりさせないといけないということですね。   それから,今,矯正局と保護局でやっているような認知行動療法についてですが,これは別に薬物を使わず認知のゆがみを取ろうとするものです。   これについては,ゆがみを取れるのかということが疑問に思われる方もいますが,精神科医とか心理学者は有効だと考え,それでも行動化しない程度に何とか抑えることができるというのが,今のコンセンサスだと思います。性犯罪者も子供に対する何か異常な関心を持っていても,何かそういういろいろなことを持っていても,それを行動化しない範囲で我々は阻止できるかどうかだと思いますので,それは認知行動療法というのはある程度,一定の有効性を持っていると考えられている。ただし,そういう犯罪者処遇・治療の有効性というのは神話と言われて,1970年代にすごく批判された。それから何十年と経ちましたけれども,犯罪者処遇の有効性という点では,なお警戒する部分ある。   それから,強制的というふうに○○幹事は言われたんですが,電子監視はほとんど同意をとっていると思います。同意なしに電子監視をやっている例はないのではないかと思います。電子監視の議論が始まったころは,すごく憲法上の問題がアメリカで議論されて,プライバシーに反するのではないかということが議論されたんですけれども,この点は余り,最近ほとんど議論されなくなった。それはなぜかというと,対象者の同意をとっているということでありまして,その点はもう問題としては,強制というふうにはなっていないと考えられた。   ただし,事実上の強制ではないかと反論はあり得ます。つまり,拘禁刑の代わりに,電子監視をして社会に出すという場合が圧倒的に多いので,拘禁刑よりはよいという形で本人は同意するからです。しかし,その所在を確認する程度であれば別にプライバシーに反しないというのは,どうも法律家のコンセンサスのように思いますので,強制というふうには私は言えないと考えます。 ● 「監視」という言葉は旧刑法にありましたので,当時は性犯罪などに限らずもっと広く付加刑としての監視を認めていたわけですが,これはやはり実施の結果については評判が悪くて,現行刑法になるときにこの制度は廃止されました。それから100年経った現在,新たに電子監視という形で,やや似たようなものが再登場してきたという感じがあるわけですけれども,ストレートにこれを受け入れて,日本社会で実行するということには,無理があるのではないかと思います。ただ,一方において性犯罪その他特定の犯罪に限定し,他方において,本人が納得する場合に採用するというようなことはあり得るような気はいたしますので,それはおそらく本人の職業とか,あるいは家庭関係によるでしょう。会社などに勤めている人にとっては,これはとてもだめだろうと思うのですが,例えば農業をやっているとか,あるいは作家や画家のような自由業であるとか,そういう場合には割と受け入れやすいのではないかという気がいたします。仮釈放の遵守事項の一つとして,本人が同意した場合にそれを採用するということは考えられるのではないでしょうかね。 ● どうもありがとうございます。 ● 先ほど申し上げたのは,刑執行終了者に対してという前提ですので,刑の満期までの間の電子監視とか,そういう問題については言ったつもりはないので,それについての強制という意味ではなくて,いずれにしても刑の執行が終わっているという状況であれば,本来何らの義務なり電子監視に服さなければならないというようなことはないはずであるにもかかわらずという意味,あるいは病気とか治療という言葉も不適切だったと思うのですけれども,ゆがみを治すための教育なり,何らかの先ほど出ている認知療法だとか,そういうものについても本人が自らそれを望んでやるのであればそれはいいと思いますし,効果的だと思いますが,それを何らかの形で刑執行終了者に対して義務的にするということについては問題だという意味で強制という言葉を使ったので,ほかの場面での,電子監視はそれはそれで問題があるとは思いますけれども,そこまで触れたつもりではないので,そういうことで御理解ください。 ● 電子監視の議論については,先ほども幹事から紹介がありましたように,その導入を当然のことのように主張する人がいると思います。特に性犯罪の重大事件が起こると,そんなの当たり前ではないかと当然のように主張されることがある。安全を求める社会の要請として,被害者を含む近隣の人々・コミュニティの人々が不安感を持つというところからこの問題は出てきている。この点と法律論や刑事政策の議論をかみ合わせていくかというのは,すごく難しいのではないかという気がいたします。 ● 確かに非常に難しい問題点だと思いますので,この点に関しましても御議論いただきたいと存じます。それから,先ほど委員や関係官からも御発言がありました同意の問題について,同意があることによって,法的な観点でどういう意味を持ち得るのかということについても,御意見がございましたらお願いいたします。 ● 電子監視の場合は,刑執行終了後の問題と,それから刑の内容としてそういうものを考えるという問題とがちょっと混線してしまうところがあるように思います。同意の問題も,刑執行終了後に同意があるからといってそのような処分ができるかというと,それは保安処分のような制度を設けない限りは無理だろうと思いますが,刑に代えてということであれば,同意を条件としてということはあり得ることかなという気がいたします。 ● ○○委員,先ほど,コミュニティにおける体感治安の問題とストレートに結び付くことの問題性が指摘されましたが,この点に関しましていかがでしょうか。あるいは,それに対する有効な手立てのようなものについても,御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ● 電子監視というのはほかにも問題があって,トラブル,事故が多いのです。電子監視をやっているつもりなんだけれども,何か障害があると通じないことがある。それゆえ装置を付けたからそれですべて安心できない部分があります。 ● 刑の執行終了者に対する制度ということに戻りますが,これまで,基本的には刑の執行終了後は何らの義務も負わないはずだということが大前提とされてきたわけで,それはそうであろうと思います。ただ,先ほど話題になったことですが,警察が出所した人の住所等を把握し,定期的にその住所を確認するというのも,突き詰めていえば,それはある意味で対象者のプライバシー侵害なのかもしれないわけですが,それは許されると考えられているわけですね。これは,法的には,警察による犯罪予防活動の一環として位置付けられるのだと思いますが,そのことと,例えば,最初に出た情報登録を義務付けるということとが,本質的に違うのかどうかという点を議論する必要があると思います。更に言うと,対象者の同意を得て行うことができるのはどこまでなのかということも議論があり得るところで,例えば,現在でも更生保護施設では,刑の執行終了者に対し,同意を得た上で一定のプログラム等を実施しているわけでして,それがおかしいという話はないわけですね。それは自ら同意している以上はよいということなんでしょうから,そうすると,監視措置的なものも,同意を得てやることができるという考え方もありうるように思います。他方,そうではなくて,先ほどの御意見のように,それは同意があっても駄目なのだということであれば,刑執行終了後という枠組みでは実施が不可能になりますので,一定の範囲で,刑罰の執行の中に組み込んでいくという方向性で考えていくということになろうかと思います。 ● 刑務所から出てきた刑期終了者,満了者に対して何かをするということは,結局,保安処分的なことになりますので,正当化事由が要るし,おそらく保安処分というだけで強いアレルギーというか抵抗がある。その正当化事由というのはなかなか見付けにくいところがあると思う。   そこで,注目したいのはアメリカの中間的制裁です。中間的というのは何を意味するかというと,施設内処遇よりも軽い。しかし社会内処遇よりは重いという意味合いを含んでいると思われます。   自宅拘禁,その上でより不安があれば電子監視に付しましょうということが一つで,それからもう一つは,前回申し上げましたけれども,分割刑というものでありまして,判決時に施設内処遇と社会内処遇を同時に言い渡すというものであります。その際に何日間の拘禁刑,何年間の保護観察という形で判決を下すということであります。   私の理解では,ショック・プロベーションというのがもう一つありまして,特に長期の言渡しをしてショックを与えるということですね。その上で,施設内で何とか行状がよくて,出ても再犯しないなという見通しがつけば,刑務所から出してプロベーションに付すというものです。それからもう一つ,この後の中間処遇に関係するところですけれども,居住施設利用の社会内矯正というのがあります。居住施設というのは,これは日本で言えば更生保護施設ですけれども,その更生保護施設から通勤通学させることも可能である。そういう意味で,居住施設を利用した社会内矯正という形での方向が考えられるということであります。   それからもう一つは,仮釈放をした場合に,必ず中間施設というか,そこに向かわせる。そういう形での中間処遇と施設内処遇を完全にミックスさせるというようなやり方ですね。こういう形もあり得るということ。そういう点で,この問題というのはまだまだ研究の余地がありますし,いわゆる過剰拘禁を緩和するということと,国民の体感治安,あるいは被害者の要請というものにもこたえるという点では,すごくアメリカによく似た状況にあったので,研究の余地があるのではないかと考えております。   もう一つ,総論的なことを言いますと,施設内処遇と社会内処遇ということが分けられて,有効な連携ということがずっと言われてきたんですけれども,有効な連携というのも大事なんですけれども,もっと施設内処遇と社会内処遇,二者択一的に見るのではなて,むしろ融合させるような処分というか,処遇というか,何かそういうものを考える時代に来ているのではないかという感じがいたします。   長く社会内処遇は陰に置かれていまして,ほとんど立法的な議論というのはできなかったんですけれども,そういう点で,こういう形で部会で議論するというのは,大変我が国の議論の状況というのは変わったかと思いますし,ある意味では今がチャンスではないかと思いますので,研究の余地というか,検討の余地という点で発言したいということです。   以上です。 ● 今,中間処遇の問題も出かかってはいるのですが,まだ先ほどの議論が続いておりますので,そのまま続けさせていただいて,その後,本題として,次回になるかもしれませんが,中間処遇それ自体の問題として議論したいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。   それでは,電子監視の問題についてかなり議論が進んできていますが,ほかに何かございますでしょうか。 ● 先ほどの○○委員の御発言の中で,更生保護的な文脈では,例えば刑執行終了者に対しても何らかの介入をできる場合があるではないかというお話があったわけですが,ただ,例えば,電子監視を刑執行終了者に対して特にやるとした場合に,その主体はどこになるのだろうという問題もあるかなと思ったわけで,更生保護的な文脈で考えるのか,それとも警察に行くのかということで,少しまた性格が違ってくるかなと思います。先ほど○○委員がなかなか難しいのではないかと言われたのは,警察的な文脈で考えたときに,果たしてそういうことが可能なのかというような問題意識も,あるいは御念頭にあったのかなとも思ったのですけれども,主体をどう考えるのか,この点は目的ともかかわってくるのだと思いますけれども,そこがもう一つ,問題点としてはあるかなと思いました。 ● 私は刑執行終了者に対する更生緊急保護は,やはり援助的なものであって,それと監視を一緒にするというのはちょっと無理があるかなと思います。 ● 電子監視の性格付けによって,誰がそれを行うかという主体の問題は,おのずから決まってくると思います。その点に関しまして何か御意見ございましたらお願いいたします。 ● 更生緊急保護と電子監視とでは目的が違うではないかと言うのはそのとおりです。しかし,まず,先ほど御説明がありました警察による出所者の住居等の確認に示されているように,刑の執行終了者に対しても,犯罪予防を目的とした措置がとりうることは認められているわけですね。そうだとして,次に,対象者に対する積極的な介入を伴う措置まで可能なのかが問題で,そこで,更生緊急保護の例を出したのですが,更生保護施設等における一定の処遇プログラムへの参加に同意が必要とされている理由が,援助的な目的を持ったものとはいえ,それが対象者の行動等に対する一定の介入を伴うものであるからだとすると,それは,要するに,権利制約を正当化するためのものであるわけですから,その目的が,監視ないし再犯の予防であったとしても,同じことが妥当するのではないでしょうか。例えば,あまり考えられない例ですけれども,本人の同意のもとで,住居等を届けさせ,行動をモニタリングするという措置をとることが,監視目的だから理論的に許されないという理由はないように思います。ただ,更生緊急保護における同意というものが,そのような意味ではなくて,要するに,やる気のない者にプログラムを提供しても無意味だからという理由から必要とされているものだとすれば,違った考え方もできると思います。 ● 今の点は,後日また議論になると思いますので,今のうちに問題点として自由に御発言いただけたらと存じます。 ● 電子監視は,体感治安の向上につながるという御指摘がございましたけれども,他方,こういう監視によって,諸外国では,例えば,再犯防止の効果が出たのかどうか,出ているという評価になっているのかどうかというところも,お教えいただければと思います。   また,お話を聞いていて感じたことは,電子監視の中身として,子供の居そうな場所に行ったらビビッと音が鳴るということであれば,例えば公園の中で,子供の遊具場に行ったら鳴るとか鳴らないとかとなると,果たして実効性が確保できるのだろうかということであります。また,事後的にどこにいたかということのチェックをするということであれば,結局それは,実は再犯防止ではなくて,事後の捜査の目的なのかなというようなことも,お話を伺っていて思ったりもしました。その辺の位置付けがはっきりしないと議論としてなかなか前に進まない面があるのかなとお見受けしました。 ● 御指摘ありがとうございました。   そういった点も含めて,何らかの形で制度化を図るという局面で,性格付けは大きな意味を持ち得ると思いますので,御意見をどうぞ御自由に御披露いただきたいと存じます。 ● 今の○○幹事の方からの御発言ですが,電子監視をやっている国々で,おそらく共通のスタートラインというのは,刑罰を多様化していって,社会内処遇の中にも刑罰的なものを入れていく。ただ,それを管理執行する人手が足りないので電子監視を付けるということであり,これは,まずは手段として採用されているのです。電子監視と言いますと,ここで議論が盛り上がっているように,ユニークですから皆さん関心を持たれるのですけれども,それはあくまでモニタリング手段の一つであろうと思います。モニタリングのためのマンパワーが足りないからということで導入されていることが多いのだろうと思います。   実効性については,やるたびにいろいろと欠点を修正してやっているようでございますが,全面的な24時間の監視をしていない限り,御指摘のように,違反の有無は事後的にしか確認しかできないわけですね。しかし,先ほど関係官からの御指摘もあったように,いったんそういった電子監視の命令に違反したときには制裁が加重されるという威嚇をかけておくのであれば,命令違反も少なくなるであろう,そのような場合をケース・バイ・ケースで認めていこうとしているのが,現在の状況かなと思っております。 ● どうもありがとうございました。 ● 電子監視の問題,再犯防止という観点はもちろんあるわけですけれども,この部会の本来の趣旨は収容人員の適正化なので,現在,性犯罪に対する量刑はだんだん厳しくなる傾向を示していると思いますが,以前と比べて長期の刑を言い渡されている受刑者に対して刑期の短縮の機会を提供する,なかなか仮釈放しにくいところをこういう条件を付けて,本人もそれに納得して出所するというようなことが可能になれば,収容人員の適正化という観点で一つの意味を持つかなと思います。それがもし成功するようでしたら,性犯罪からもうちょっとぐらい範囲を広げるということもあり得るかもしれませんし,逆に,しかしやはり電子監視というのは日本の風土に到底なじまないというネガティブな結論になるのかもしれませんけれども,その限度で考える余地がある問題なのかなという気がいたしております。 ● 過剰収容の解消という観点から,処遇条件の一環として電子監視を用いるという方向での議論としてならば,この部会で新たな制度を設計する段階で考慮に値するだろうという御指摘でしたが,この点に関しましていかがでしょうか。 ● 処遇の一環としての電子監視ということなんですが,電子監視については,私ども弁護士としては,仮にこれがいわゆる刑満了以前であっても,それでいいのかどうかということについて議論がいろいろあります。   一つは,拘禁されているよりいいではないですかという議論は一つあります。それよりは軽いのではいかという議論です。その場合,おそらくその人たちの意見としては,四六時中監視ではなくて,ほかのもっと何かプライバシーを侵害しないやり方があるのではないかという考え方があります。その一方で,電子監視は全くやってはいけないという,これは人格を否定するぐらいプライバシー侵害だという意見もあります。この辺がどのようにかかわっていくのかというのが重要なところではないのかなと思っております。   結局,我々弁護士の中では,一度電子監視を,仮に軽いものであっても導入すれば,おそらく改正,改正でどんどんとそれが監視の方向に行くのではないかという,そういう懸念を持っている方もおられます。そういう意味で,非常に私たちがどれを選択してこの部会に臨めばいいかというのは悩んでいるところなんですね。 ● その点に関しまして,また後日,突っ込んだ議論がなされるかと思っております。   さて,これまで,性犯罪などに特化した形で議論してまいりましたが,そのほかの関連ではいかがでしょうか。 ● これまで,性犯罪などの重大な犯罪に焦点を当てた御議論でありましたが,統計資料にもありますように,重大犯罪の再犯ではなくとも,窃盗,薬物犯罪などの罪を犯した者の刑事施設への再入率が高い傾向があることにかんがみますと,これらの罪による刑を受け終わった者に対して,再犯を防止し,社会復帰を支援するための措置を講じることも,必要であろうと思われます。そこで,例えば,更生保護施設の利用や就労支援制度の利用を義務付けるといった方策も考えられるのではないかと思われますが,この点についても御意見を伺いたいと存じます。 ● 若干補足させていただきますと,例えば,電子監視というのは,ある意味見張っていて再犯防止ということになるのですが,その一方で,改善更生を促すための措置ということで,今,あくまで例示的ですけれども,更生保護施設を利用してもらう,あるいは就労支援制度を利用してもらうことを義務付けるという方策が示されたのですけれども,この点に関しましては,刑期の満了とともに何らの義務付けも終わってしまうということで,本当に大丈夫なのかという問題提起がいろいろなところでなされているということであります。もちろん,そのような本人のためになる措置を,自らやる気になって参加する人がいて,それは非常によいことなわけですけれども,先ほど性犯罪の処遇プログラムの関係でも出ましたが,本人が自分は何が悪いのと考えていたり,およそ立ち直る気がないといった場合に,刑期が終わった以上,本人のためになる措置であっても,本人がやる気になって同意しない限りは何もしないということで大丈夫なのかという意見があるということでありまして,もちろん先ほどから御指摘がありますとおり,刑期が終わったら原則としてはもちろん義務付けができないということなのですが,それが基本的には本人の利益になるための措置であっても何もできないのかという問題意識がやはり出てくるのではないかということでございます。 ● ただ今,具体的提案の形で意見が出ておりますが,この点につきましていかがでしょうか。 ● 今,例示された窃盗と薬物とはまたちょっと違うとは思うのですけれども,例えば窃盗などの場合も,何度も繰り返している人は結局満期ですよね。満期まで刑務所に居て出るわけですよね。その後,強制的にといってもなかなか難しいのでしょうが,先ほど委員からも御発言がありましたように,仮釈放なのかどうかはともかく,刑期中に何らかの形で社会とつなぐということをしなければやはりまずいのではないかと思うのですね。   窃盗犯などは,本当に気持ちの上では自分も仕事を持って普通に働いて普通の生活をしたいと思っているけれども,満期で出て住所もないと,身内からも見放されていると,就職しようと思っても身元保証人になってくれる人もいないということで,とりあえずその日食べて,次の日はもう食べられなくなるような人が結構いるわけですね。そういうことについて,生活保護も含めて,その人がその社会の中で生活できる態勢をある程度整えて社会に戻すという途中がやはり必要なので,そういう制度は是非あってほしいなと思います。   それから,薬物の関係も,中間処遇に絡んできてしまうのですけれども,結局,性犯罪もある意味で似たようなところがあるとは思うのですが,刑務所の中というのは,薬物に手を出そうと思っても,およそ手を出せない環境なわけですね。そういうところでいくら指導を受けたとしてもやはり限度があるので,実際にそういう薬物関係のことをやっておられるお医者さんとか,ダルクの方とかに伺うと,やはり誘惑のあるところで自制をするということができない限り再犯は防止できないということで,その刑期の中で途中からは社会内処遇に移して,さらに最終的に刑期を終わって,その段階では自分の力で生活できるような状況になっているというのが望ましいんだろうと思うのですね。そういう意味でいうと,刑執行終了者というよりは,やはり刑期の中で同じことを考えた方がいいのではないかと。むしろ薬物などの場合は,刑務所に入っている時間が長ければ長いほど,薬物をやったことによって自分がどれだけ肉体的にもおかしなことになっていたかということは,長く入っていれば入っているほど忘れてしまうようですので,そういうことも含めて,刑務所の中と外とをつなぐという,そういう意味で中間処遇的なものというのが実際はかなり重要なのではないかと。   だから,ここで今,刑執行終了者に対して考えられているようなことは,むしろ刑期の間に何とかやるようにするべきなのではないかと。すみません,ちょっと議論を先取りしてしまうような形になったんですが。 ● 私も○○幹事と同じ意見でして,今の制度の中でも,刑の執行としてやることはたくさんあるし,それから刑が終わった後も援助的な措置としていろいろなことができると思いますので,この審議会では,特に第1ラウンドにおいては幅広く議論しようということで,今回,刑終了後の措置についても,いろいろ議論が出ているわけですけれども,やはり現在の制度の枠内で,電子監視にしても,関係官が先ほどおっしゃられましたように,刑の枠内で考えていく制度を議論した方が生産的ではないかと感じております。 ● 少し切り口が違うところでお伺いしたいのですけれども,私も実際に刑事裁判をやって,執行猶予にするかどうかということを検討するに当たって,帰住先のない人の場合には更生保護施設の収容の可能性があるかどうかを,一般的な形で保護観察所に問い合わせて検討することもあります。そういうときに保護観察官の方がいつもおっしゃるのは,酒をやめられない人間と,それから働く気のない人間は更生保護施設に来てもらっても何もできないということをかなり強調されていました。   これはもっともなところのような気もするのですね。そういう意味は,更生保護施設による援助を充実させることは,社会復帰を図る上で重要だと思いますし,あるいは就労支援というのもそうなんだろうと思うのですけれども,自分が働く気のない人間について,そのプログラムを強制するということで,果たして機能するのかというところの疑問は感じるのです。このあたり,保護の現場としてはどういうふうに感じられているのでしょうか。 ● 非常に難しいところで,今,おっしゃったとおり,更生保護施設というのは正にそこにためるわけにはいかない,福祉施設でもない。そこで一定期間,社会復帰,自立のための準備を整えて,それで自立していくことを助けるという構成になっておりますので,いろいろな問題があっても,確かに今の枠内でできるだけのことは少ない職員で努力はしています。だけど,やる気がない,集団生活は嫌いだと,保護観察付きの執行猶予等もらうために,ではそこでやってみますと口先で言うものの,集団生活は嫌いで,内心,ここでずるずる食事と宿泊場所が提供されればいいですよという人もいる。そうすると,ほかに集団生活する人がいますので,あの人はただそこで何もせずに働かないということになると,更生保護施設自体が成り立っていかないですし,定員も決まっていますので,そこで仕事もしない,それから外から酒なんか持ち込んで飲んだくれているということになると,やはり受け入れても非常に苦慮する,更生保護施設自体やっていけない。それから周りとの集団生活も機能できないということになると,そこらあたりを義務付けて強制してもどうなるのだろうかというところは現実の運用上の悩みであるところです。 ● そろそろ予定していた時間がまいったようでございますが,ほかに御意見がなければ本日の審議はこれまでとしたいと思います。ほかに何かございますでしょうか。 ● 訂正ですが,先ほど厚生労働省の調査研究プロジェクト,知的障害のある人に対する調査研究プロジェクトの説明をした際に,年度を1年間違えてしまいまして,17年度から3か年と申し上げましたが,18年度からの3か年でございまして,今年度が初年度ということでございます。訂正させていただきます。 ● それでは,中間処遇の在り方と保釈の在り方についての御議論は,次回に回させていただきます。   次回,保釈の在り方についての議論を終えますと,諮問の内容に関しましてひとわたりの議論をしていただいたということになります。その後の審議の進め方について,何か事務当局の方でお考えがございましたらお示しいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 今後の審議の進め方についての一つの御提案ということでございますけれども,事務当局といたしましては,現在,諸外国の関連する法制度の調査を進めていただいているところでございますので,今,○○委員からお話がございましたように,ひとわたりの議論が終わった段階で,その調査結果を順次この部会の場で御報告いただいて,質疑応答あるいは若干関連する意見の交換というのができればいいのではないかと考えております。   そのような外国調査の結果を踏まえて,更に次の段階の議論としてどのようにしていくかということをお諮りしたいと思っておりますけれども,いかがでしょうか。 ● ただ今こういう形の御提案を受けたわけですが,この点について,いかがでしょうか。それでよろしいですか。御異論もないようですのでそういうことで進めさせていただきたいと存じます。   次回につきまして,場所等の確認をお願いします。 ● 次回は3月23日金曜日でございますが,東京地方検察庁304会議室で会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては午後1時からということで予定をさせていただいております。   また,次々回の会議の予定も現段階で入れさせていただいております。次々回につきましては4月27日金曜日でございますが,場所は,この高砂の間でございまして,ここで会議を行う予定でございます。開始時刻はやはり午後1時ということで予定させていただいております。 ● ただ今御案内がございましたように,次回は3月23日金曜日,東京地方検察庁304会議室,開始時刻は午後1時からでございます。よろしくお願いいたします。   それでは,本日はこれで散会といたします。どうもありがとうございました。 ―了―