法制審議会刑事法 (自動車運転過失致死傷事犯関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成19年2月9日(金)  自 午前10時00分                       至 午前11時44分 第2 場 所  法務省20階第1会議室 第3 議 題  自動車運転による過失致死傷事犯等に対処するための刑法の一部改正について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の第1回会議を開催いたします。 ● 本日は御多忙中のところ,自動車運転による過失致死傷事犯等に対処するための刑法の一部改正についての御審議のためにお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。   まず,私の方から,本日部会が開かれるに至った経過等を御説明申し上げます。   去る2月7日,法務大臣から,自動車運転による過失致死傷事犯等に対処するための刑法の一部改正についての諮問第82号が諮問されまして,同日開催された法制審議会第152回会議において,同諮問については,まず,部会において審議すべき旨決定されました。   そして,同会議において,同諮問を審議するための部会として,刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会を設けることが決定され,同部会を構成すべき委員,臨時委員及び幹事が,法制審議会の承認を経て,会長から指名され,本日ここに御参集いただいたところであります。 (委員,幹事の自己紹介省略) (○○委員が,部会長に互選され,法制審議会会長である○○委員により部会長に指名された。) ● それでは,先の法制審議会総会におきまして当部会で審議するように決定のありました諮問第82号について審議を行います。   まず,諮問を朗読していただきます。 ● 朗読いたします。   諮問第82号     自動車運転による過失致死傷事犯等の実情等にかんがみ,事案の実態に即した適正な科刑を実現するため,早急に,罰則を整備する必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。   別紙        要綱(骨子)   第一 自動車運転過失致死傷の罪の新設   自動車の運転に必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処するものとすること。   第二 危険運転致死傷の罪(刑法第208条の2)の改正   刑法第208条の2中「四輪以上の自動車」を「自動車」に改めるものとすること。   以上でございます。 ● 次に,事務当局から,諮問事項について説明をしていただきます。 ● 諮問第82号につきまして,提案に至りました経緯と要綱(骨子)につきまして御説明申し上げます。   近時の自動車運転による死傷事故には,飲酒運転中などの悪質かつ危険な運転行為によるものや,多数の死傷者が出るなどの重大な結果を生じるものがなお少なからず発生しており,そのような死傷事故に対する業務上過失致死傷罪による処罰について,量刑や法定刑が国民の規範意識に合致しないとして,罰則の整備を求める御意見が見られるようになっております。   また,平成14年以降の自動車運転による業務上過失致死傷罪の科刑状況を見ますと,法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案が増加しておりまして,特に飲酒運転等の悪質かつ危険な自動車運転により重大な結果が生じた事案等において,事案の実態に即した適正な科刑を実現することを可能とする必要があります。 そこで,自動車運転による死傷事故に対し,事案の実態に即した適正な科刑を行うため,早急に刑法を改正する必要があると考え,この諮問に及んだものでございます。   今回の諮問に際しましては,事務当局において検討した案を改正案の要綱(骨子)としてお示しして諮問することといたしましたので,この要綱(骨子)につきまして御説明申し上げます。   お示しした要綱(骨子)は,「第一」と「第二」の2項目に分かれております。 その「第一」は,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設しようとするものであり,その「第二」は,現行の刑法第208条の2において,危険運転致死傷罪の対象を「四輪以上の自動車」としていたものを「自動車」と改めることにより,二輪車もその対象に含めようとするものであります。   始めに,要綱(骨子)の「第一」について,御説明申し上げます。   これまで,自動車の運転に必要な注意を怠り人を死傷させた者に対しては,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金を法定刑とする業務上過失致死傷罪等が適用されてきました。 しかしながら,先ほども述べましたように,悪質・危険な運転行為によるものや,重大な結果を生じるような死傷事故に対する業務上過失致死傷罪による処罰について,罰則の整備を求める御意見が見られることや,法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案が増加しているという近時の自動車運転による業務上過失致死傷罪の科刑状況によれば,自動車運転による過失致死傷事犯につきましては,その事案の実態に即した適正な科刑を実現することを可能とするための法整備の必要性が認められます。   他方,自動車運転による過失致死傷事犯以外の業務上過失致死傷事犯につきましては,その科刑状況を見ると,現時点において,その法定刑を引き上げるべき理由は直ちには認められません。 そこで,自動車運転の持つ人の生命・身体を侵害する危険性の高さ等を踏まえ,自動車の運転に必要な注意義務を怠って人を死傷させた者を処罰対象とする自動車運転過失致死傷罪を新設し,その法定刑を7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金としようとするものです。 なお,この「自動車」や「運転」は,現行の刑法第208条の2及び第211条第2項の各概念と同じものと考えております。   次に,要綱(骨子)の「第二」について御説明申し上げます。   現行の刑法第208条の2の危険運転致死傷罪の対象は「四輪以上の自動車」とされ,二輪車はその対象から外されておりますが,この点につきまして,危険運転致死傷罪が新設された際,衆議院及び参議院の各法務委員会において,自動二輪車の運転者を同罪の対象とする必要性につき,今後の事故の実態を踏まえ引き続き検討すべき旨の附帯決議がなされておりました。   これを受けまして,法務省といたしましては,自動二輪車に係る業務上過失致死傷罪適用事件の捜査処理等の状況を調査,検討してまいりましたところ,近時,二輪車による悪質・危険な運転行為により,重大な結果を生じる死傷事故が少なからず発生しているという状況等が認められました。   そこで,二輪車についても危険運転致死傷罪の対象とする必要性が認められると考え,現行の刑法第208条の2において,「四輪以上の自動車」とされている危険運転致死傷罪の対象を「自動車」と改めることにより,二輪車もその対象に含めようとするものでございます。   要綱(骨子)の概要は以上のとおりでございます。 この諮問第82号につきましては,今国会に関係の法案を提出したいと考えておりますので,十分御議論の上,できる限り速やかに御意見を賜りますよう,お願い申し上げます。 ● 次に,事務当局から配布資料について説明していただきます。 ● 配布資料について御説明申し上げます。   御審議の参考にしていただくために,席上に資料6点を御用意いたしましたので,その内容等につきまして,御説明申し上げます。   配布資料の資料番号1は,先ほど朗読いたしました諮問第82号でございます。   資料番号2は,諮問第82号に関連する刑法及び道路交通法の条文の抜粋でございます。   資料番号3は,平成13年の臨時国会において成立した「刑法の一部を改正する法律」の審議の際に,衆・参両議院それぞれの法務委員会においてなされた附帯決議の各抜粋でございます。 ここでは,政府に対し,自動二輪車の運転者を危険運転致死傷罪の対象とする必要性につき,今後の事故の実態を踏まえ,引き続き検討することが求められております。   資料番号4は,諮問第82号に関する基礎的な統計資料でございます。   まず,1ページと2ページは,交通事故の発生件数と死傷者数の推移,3ページと4ページは,自動車保有台数と運転免許保有者数の推移,5ページは,重度後遺障害者数の推移を,それぞれ示したものでございます。   これらの図表を参照いただきながら,我が国の交通事故発生件数とそれによる死傷者数の推移を概観しますと,1ページ・2ページのとおり,昭和30年から45年にかけて,著しく増加したものの,国を挙げての交通安全対策が進められた結果,昭和52年ころまでには,交通事故発生件数,死傷者数とも大幅に減少いたしました。しかしながら,その後,3ページ・4ページにお示しした自動車保有台数,運転免許保有者数の激増等によるものと思われますが,交通事故発生件数,死傷者数とも増勢に転じ,1ページのとおり,平成16年には交通事故発生件数が95万2,191件,死傷者数が119万478人と,史上最悪となり,その後においてもなお,交通事故発生件数は90万件前後,死傷者数は110万人を超す水準にあり,依然として憂慮すべき情勢にございます。   なお,このような状況の中で死亡者数につきましては,平成4年をピークに減少に転じ,平成18年には,昭和30年以来51年ぶりに6千人台前半まで減少するに至っております。しかし他方で,5ページにありますように重度後遺障害者数は年々増加し,平成14年以降も,依然として高い数値で推移していることが注目されます。   次に,6ページは,二輪車が第1当事者となっている交通事故発生件数及び死亡事故発生件数であり,併せて,信号無視,最高速度,酒酔いの各法令違反を伴う事故の内数を示しております。   この「第1当事者」とは,最初に事故に関与した車両の運転者等のうち,その交通事故における過失が重い者を意味しますが,二輪車の運転者が,この「第1当事者」となっている交通事故の発生件数を見ますと,信号無視,最高速度又は酒酔いの法令違反を伴う二輪車による事故が相当数発生しております。 また,車両による交通事故の総数に占める二輪車による事故の割合は,近年,6パーセントを超え,そのうち,最高速度の法令違反を伴う事故につきましては,二輪車による事故がその2割を超えております。 さらに,死亡事故発生件数を見ましても,信号無視等の法令違反を伴う二輪車による事故が相当数発生しているほか,車両による死亡事故の総数に占める割合を見ても,近年,全体では12パーセントを超え,そのうち,信号無視の法令違反をした事故に関しましては,約2割を占めております。   7ページは,検察庁における自動車等による業務上(重)過失致死傷被疑事件通常受理人員の推移でございます。交通事故の発生件数,死傷者数の増加等を反映しまして,平成8年から17年までの間において,自動車等による業務上(重)過失致死傷被疑事件数が約67万人から約90万人へと増加しております。また,自動車等による業務上(重)過失致死傷被疑事件の件数が刑法犯総数に占める割合は,各年ともおおむね7割程度になっております。   8ページと9ページは,業務上過失致死傷罪及び重過失致死傷罪の通常第一審終局被告人の科刑状況等でございます。8ページのとおり,業務上過失致死傷罪で3年以上の懲役・禁錮を言い渡された者の数を見ますと,特に平成14年以降,増加の傾向が顕著であります。また,9ページのとおり,業務上過失致死傷罪で実刑を言い渡された人員について,言い渡された刑期ごとの割合を見ますと,平成14年以降,2年以上の実刑を言い渡された割合等が大幅に増加しております。3年以上の実刑に限ってみましても,同様に大幅に増加しているところでございます。   資料番号5は,自動車運転による悪質・重大過失致死傷事犯事例集等であり,いずれも,当局が各検察庁に照会した調査結果に基づき作成したものでございます。1つ目と2つ目の事例集は,危険運転致死傷罪の新設を含む「刑法の一部を改正する法律」が施行された平成13年12月25日以降に発生した業務上過失致死傷事件で,平成18年10月までの間に4年以上の懲役又は禁錮の判決が言い渡された事案について,その事案の概要や判決結果等をまとめたものでございます。そのうち,表題に「業過のみ」と記載のある1つ目の事例集が,業務上過失致死傷罪のみの犯罪事実で4年以上の懲役又は禁錮の判決が言い渡されたものをまとめたものでございます。また,表題に「業過及び道交法違反等」と記載のある2つ目の事例集が,業務上過失致死傷罪及び道路交通法違反等が併合罪の関係にある犯罪事実で4年以上の懲役又は禁錮の判決が言い渡されたもののうち,それぞれの処断刑の上限に近い量刑のものをまとめたものでございます。 御覧のとおり,業務上過失致死傷罪等の法定刑や処断刑の上限やその近くで,刑が量定されている事案が見られます。   3つ目は「二輪車の危険・悪質な運転による死傷事犯について」との表題の資料でございます。これも同様に,平成13年12月25日以降に発生した二輪車の運転者による業務上過失致死傷罪で公判請求されたもののうち,危険かつ悪質な運転行為により重大な結果が生じている事案の事件数や,事故態様例をまとめたものでございます。 御覧のとおり,原動機付自転車による場合を含め,二輪車の運転者において飲酒運転,赤信号無視,著しい高速度走行などの危険かつ悪質な運転行為を行い,その結果,被害者を死亡させ,又は加療期間約1か月以上の重傷を負わせた事案が少なからず発生しているところでございます。   続きまして,資料番号6は,自動車運転による死傷事故に関する主要国の法制でございます。当局が調査いたしましたアメリカのミシガン州,イギリス,ドイツ,フランスにおける関係の罰則を一覧表にまとめており,各国ごとに様々な罰則が設けられているところでございます。   以上,簡単ではございますが,配布資料の説明をさせていただきました。 ● 事務当局からの最初の説明は以上のとおりございます。諮問事項に関する審議の進め方につきましては,後ほど皆さんにもお諮りして決めたいと思いますが,この段階で,ただ今の事務当局の説明内容に関して御質問のある方,どうぞよろしくお願いいたします。   どうぞ御自由に御質問をお願いいたします。 ● この段階でお伺いするのがいいのかどうかわかりませんけれども,基本的な問題ですので,今お伺いさせていただきます。   先ほどの御説明で,「自動車」の概念については,刑法第211条第2項,それから第208条の2と同じ意義であるという御説明がございましたが,現在どうなっているのかということを確認する意味でもお伺いさせていただきますと,先ほどの資料の中にも二輪との関係で,原動機付自転車が入っておったわけですけれども,原動機付自転車はこの「自動車」の概念に入るのでしょうか。 ● 「自動車」の中には原動機付自転車も入るという解釈でございます。 ● 道交法の「自動車」の概念とはイコールではないという理解でよろしいですか。 ● そうでございます。 ● はい,わかりました。ありがとうございました。 ● よろしいでしょうか。 ● はい。 ● ほかにいかがでしょうか。   特にございませんようですので,諮問事項の審議に入りたいと思います。   今回の諮問には,要綱(骨子)の案が付されておりますが,本日,要綱(骨子)の案の全体について議論を一巡しますと,委員各位の御関心事項が明確になり,次回の審議をより充実したものにできるのではと思いますので,残りの時間を使って,できれば,全体について議論が一巡できるように審議を進めたいと思います。   また,一応の目安として,要綱(骨子)の「第一」,「第二」の順で議論し,必要に応じて前後に飛ぶことがあり得るということで進めたいと思いますが,そういうことでよろしゅうございましょうか。特段,御異議もございませんので,そのように進行させていただきます。   今回の諮問がなされました法制審議会第152回会議には,私も総会委員として出席しておりましたが,その際,他の委員の方から自転車の運転による死傷事故についても,今回諮問されている罰則強化の対象とすることについて,部会で検討していただきたいとの御意見がございました。そこで,これからお願いする要綱(骨子)の議論において,このような御意見も踏まえて御議論をいただきたいと存じます。   それでは,要綱(骨子)の「第一」についての議論に入りたいと思います。 ● 全体の議論をする前に,例えば今回のこの自動車運転による過失致死傷事故をつけますと,ある意味で法定刑が上がりますよね。そうしますと,実際上は,実務の上でも刑が重くなったり,あるいは従来は執行猶予だったものが実刑になるというケースがふえてくるということとの関連で,私も委員をさせていただいている刑事施設における被収容人員の適正化に関する方策との関係はどうなるのか。逆行する諮問ではないのかというような感じがあったものですから御質問させていただきます。 ● この点について,事務当局においてはいかがでしょうか。 ● 委員にも出席していただいておりますが,被収容人員の適正化のため様々な方策を御検討いただいている部会がございます。もちろん被収容人員を適正にするということ,あるいは様々な処遇の方策を考えるというのは,私どもとしても非常に重要な課題であると考えているところでございますが,実体法の在り方というのは,当然のことながら,その結果として,被収容人員が増加する場合ももちろんあるでしょうし,それによって減少する場合もあるわけでありますが,その結果といいますか,効果といいますか,そのことだけから実体法の在り方を検討するというのは恐らく本末転倒な話であって,本来,社会における犯罪の事象に対し,どのような構成要件により対応し,どのような罰則が必要かということを,正面から議論して決めるべき問題であろうと考えているところでございます。   その結果として,被収容人員が増加するあるいは減少するということとなった場合に,これにどう対処するかというのは,別途検討すべき課題であると考えておりますので,それぞれの諮問についてはそれぞれのテーマとして御検討いただきたいと考えているところでございます。 ● 引き続いて御質問したいのですが,実体法の在り方といった場合に,刑法典というのは人の刑罰にかかわる法律ですので,かなりいろいろな意味で謙抑性があるというふうに言われてきたと思うのです。そういった中で今回の諮問を考える場合,その実体法の在り方という言葉が今出たんですが,実体法というのは,多分,時々の恣意的ないろいろな情報とか,いろいろなものに左右されることなく,ある国民全体にとって最もいい方法としてどういうものがあり得るかというのを探すという形で行うのが適正であろうと私は思うのですね。   今回の,先ほどのこの立法しようということになった経緯を伺いますと,要するに悪質な事案があるということと,結果が重大であるということがありました。私はちょっと疑問に思っているのは,過去において,それでは同じように平成13年を起点とするならば,それ以前,4年間において全く危険運転致死傷に当たるものも含めて,同じぐらいのケースがあったのではないかと思うので,そういったデータというのは出てくるのでしょうか。要するに,過去も今も変わっていないのに,なぜここで刑の引き上げをしなければいけないのかということを明確にしたいという考え方からのものです。 ● 今日お示ししました資料に,業務上過失致死傷罪の科刑状況に関するものがございますが,平成13年あるいは平成14年ころから,2年以上の実刑,3年の実刑,さらに5年以下の実刑の全体に占める割合が相当大きくなっており,それ以前と比べますと,非常に大きな差が見られるところであり,また,その傾向がそのまま平成17年まで継続しているという状況を見ますと,事故の実態等として,悪質・危険なものが相当増えており,そのような事案についてどの程度の量刑が相当であるのかという判断が,この割合に示されていると思います。 ● 今の点は,この統計資料の読み方にもかかわりますし,実体法の改正の在り方という根本にもかかわる問題でございますので,御意見のある委員及び幹事の方がございましたら,御自由に御発言をお願いします。 ● 平成11年ぐらいまでは2年以上の実刑事案というのがほとんどなかったんですね。それ以降,増えてきたというのは,例えば東名高速で起きた2人の女の子の焼死事故以降,特に意見陳述制度が,刑事裁判で被害者の意見陳述が認められるようになってから,そういった被害者の行動とか,あるいはそういった被害者保護法とかできてから,かなり重くなった事案が増え出したと私は思っています。ですから,最近の現象として,いろいろな原因があって量刑の重い事案が増えてきたと,そういうことだと思います。 ● 昨今,被害者の立場が非常にいろいろな形で議論されて,それなりの手当てをしなければならないということは,私も共通の認識を持っているところであるのですが,今回の諮問に当たっては,途中で被害者のヒアリングをされるというようなことも伺っております。そこで,私,これは片手落ちではないかという気がしているので,ちょっと意見を述べさせてもらいます。   というのは,昭和43年のこの業務上過失致死傷が3年から5年に引き上げるときに,かなり国会でいろいろな議論があったと聞いております。その中で,特に交通関係の労働団体等から非常に強い反対があったために,40年から43年にかけてその法律ができなかった,改正ができなかったという経緯も聞いていますので,そうだとするならば,実際,自動車を業務として運転している側の意見も聞いておく必要があるのではないだろうか。やはり運転する側と,これはいわゆる被害者というのは,加害者,被害者と言っていますけれども,私は両方から聞くのが,今回の諮問としては公平ではないかというように思っております。   それともう一つは,やはりこの統計データにありますように,7,800万人ほどの免許保有者がいるということは,その人はあるときは加害者になる,あるときは被害者になるという,そういった共通の視点で見ていかないと,被害者の意見の尊重は非常に重要なことだと思いますけれども,それのみに偏ってこの諮問を考えるのはいかがなものかと考えて,意見を述べさせていただきます。 ● どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ● 加害者側,ドライバー側の意見というのは,ふだんにおいて,これまで刑事裁判においても,弁護士さんを通じて意見はなされてきたというのが実態ではないかと私は思っているのです。   ところが,被害者側の意見というのは,ほとんど表に出てこなかった。そういう面で,ヒアリングというのは意義があるのではないかという気がしております。ですから,もともと平等な,被害者と加害者という制度があって,そういうことであれば委員のおっしゃるとおりなのですけれども,被害者の意見というのは必ずしも制度に反映されといないと,そういう面があるのではないかと思っております。 ● おっしゃることはよく理解できます。   私は被害者のヒアリングをしてはいけないと言っているのでは全くございません。被害者の意見を聞くことについては,それは十分に聞く必要があろうと思いますし,これまでも聞いてこなかったということについては,そこは我々も戒めてきちっとすべきだと思います。ただ,やはり40年ほど前にそういった経緯があったにもかかわらず,40年たったからもう彼らの意見を聞かなくていいということでいいのでしょうかということを申し上げているだけです。 ● ヒアリングの件につきましては,また後ほど御議論していただきたいと存じます。 第一の点に関しまして,何か御意見がございましたらお願いいたします。 ● 要綱(骨子)第一について一番中心となるのが自動車運転の危険性ということではないかというように思います。先ほど委員がおっしゃった法定刑の全般的な引き上げの問題について言えば,日本の人身犯罪は,財産犯罪と比べて刑が非常に軽かったという基本的な流れがあって,それがここのところ,言葉が適当なのかどうか分かりませんが,是正されてきたというのが基調にあるだろうと思います。それと被害者の方々の声がより反映されるようになり,それが国の政策としても立法に反映されてきたと,そういう複合的な要因があるのではないかと思います。今回の諮問は,自動車運転の危険性が類型的に高いものであるので,これを特に取り上げて,刑の上限を上げようというものであると理解しております。また,刑の下限を上げるわけではないわけですから,もちろん上限が上がると全体的な影響というのはあるでしょうけれども,ストレートに下限が上がるのとは異なって,すべての事犯が一概に厳しくなるということではないと理解しております。   先ほど法制審議会総会の方で言及されたものとして自転車についてどうかというお話がございましたが,昨今,自転車もかなり危険だといえば危険なのですけれども,自転車の類型的な危険性ということをいいますと,やはり自動車とは異なるものがあるというように思います。自転車について,恐らく業務上過失致死傷罪が適用されるというのは,余り考えにくいことだというところにもそれが現れているようにも思われますので,私は自転車については要綱(骨子)第一の犯罪に入れる必要がないのではないかという意見を持っております。 ● 自動車運転が持つ類型的な危険性との対比において自転車についてはそれほど大きくはないので,対象に入れないということですが,○○幹事,自転車による事故についてどういう扱いを受けているかについて御説明いただけませんか。 ● 統計的な数値等を持ち合わせているわけではありませんが,事案によっては重過失致死傷罪ということで処理されているケースがあると承知しております。 ● 自動車運転による悪質・重大な過失事件について,近時,結構処断刑の上限に近い量刑がされるケースが増えている。これは恐らく統計上も現れているところですし,そういう認識は私も持っているところで,これについて何らかの手当てが必要ではないかという今回の御提案はよく分かるところです。   ただ,これを検討する上で一応確認しておきたいのですが,業務上過失致死傷罪で処罰される類型の中で,自動車運転以外のものでも,例えば多数の死傷者が出るようなケースというのはございます。業務上過失致死傷罪の中から自動車運転にかかるものを切り分ける理由について,先ほど,自動車運転以外のものについてはまだ科刑状況を見ても一律に引き上げる必要が認められない旨の御説明があったと思いますが,この両者を切り分ける実質的理由は,どのように説明されるのか教えていただきたい。また,今度,今回の要綱(骨子)の第一は,結局,「自動車の運転に必要な注意を怠り」ということで,業務性の要件は必要とならないという整理なのだろうと思うのですけれども,ここについてはなぜ業務性の要件が必要ないのかについても,御説明をいただきたいと思います。 ● まず自動車を特に切り出すという点ですけれども,確かに御指摘のとおり,これまで自動車運転による過失致死傷事犯というのは,ずっと業務上過失致死傷罪が適用され,それで処理されてきたところですが,先ほどの事例集でも御説明いたしましたように,法定刑・処断刑の上限に非常に近い,それと同等の量刑がなされている事案というのは,すべて自動車運転による過失致死傷事犯だけでございました。   他方,自動車運転によるもの以外の業務上過失致死傷事犯というのは,件数的には自動車運転によるものに比べると非常に少ないのですけれども,様々な過失の態様の事件が起きています。ただ,危険運転致死傷罪が施行された平成13年12月以降,業務上過失致死傷罪により,4年以上の懲役又は禁錮に処せられた事件の中には,自動車運転によるもの以外の事例はございませんでした。   今回,自動車を要綱(骨子)第一のように切り出したというのは,近時,自動車の悪質な運転による事故が非常に社会問題化しているというところが出発点になっておりますが,自動車運転によるもの以外の過失致死傷事犯については,先ほども述べましたように,法定刑を引き上げるべき科刑状況にあるわけではないということがございます。また,自動車を他の車両や歩行者等が往来する道路などで運転することは,その形状や性状等からしますと,人の生命,身体を侵害する危険性が類型的に高い行為であると位置付けられるのだと考えております。そして,こと自動車運転による事故を防ぐためには,正に運転をしている個人の注意に依存するところが非常に大きいのに対し,自動車運転によるもの以外の事故,例えば,工場の事故,食品流通関係の事故,医療事故などでは,その事故の直接の原因となるミスを犯した個人だけの責任に特化していいのかどうか,要するに,その個人の注意だけに期待していいのか,むしろ組織的な,あるいはシステム的な対応の在り方の問題として見ていった方が事案の実態に即している場合が多いのではないかと考えられるところであります。   そうすると,繰り返しになりますけれども,自動車運転というのは,正に運転する個人の注意義務に特に注目していい類型なのではないか,そういうことで過失致死傷事犯の中の特別類型として切り出すということには相当の合理性があるのではないかと考えております。   そして,そのように,自動車運転の類型的な危険性などに着目していった場合,自動車運転による過失致死傷事犯であるということに加えて,さらに業務性という要件を加える必要はないのではないかという判断で,業務上過失致死傷とは別に,自動車の運転による過失致死傷事犯という類型を設けてはどうかということで提案させていただいたというものでございます。 ● 業務上過失致死傷罪が通常の過失致死傷罪よりも重い法定刑が定められている理由は,通常は業務上の注意義務というものがより高度な注意義務が求められる点にあると思うのです。   他方で,今回の自動車運転過失致死傷罪の新設については,先ほど来の御説明からすると,結局,自動車運転そのものの持つ危険性に着目して重い法定刑を定めるという理解なのだろうと思うのですけれども,私ども裁判官の立場で考えますと,そのような異なる理由で加重類型を2つ設けられた場合に,自動車運転による業務上過失の場合に適用関係はどうなるのかと気になるところがあります。   全く異なる視点からの2つの加重類型ということになると,あるいは両罪が成立した上で観念的競合ということになるのかなという気もしますが,他方,両罪を成立させる必要もないという意見もあり得ると思います。この点について,立法当局としてどうお考えなのか,教えていただけますでしょうか。 ● 本罪は自動車の運転に必要な注意を怠って人を死傷させた者を処罰するという,人の生命,身体の安全を保護しようとする過失犯の新しい構成要件でございまして,業務上過失致死傷罪と罪質,保護法益は同じものであります。   そうしますと,本罪が成立する場合には,やはり同じ保護法益,罪質の業務上過失致死傷罪は成立しないのではないかと考えておりますけれども,この点はまた御議論いただければと思います。 ● 従来,自動車を運転しながら業務上過失ではなくて重過失で扱うような事案というのはなかったんでしょうか。もしあったとすれば,それらもこれを含める趣旨で,あえて業務性を除いたのかなと私は思ったんですが。 ● 判例上,自動車運転イコール刑法211条1項の業務と解釈されているわけではございません。その業務に当たるためには,社会生活上の地位に基づく行為であること,人の生命,身体に危険な行為であること,さらに,反復継続性の要件,つまり反復継続して行う行為であることが必要とされております。そして,その反復継続性の要件を欠くということで,自動車運転であっても業務性が否定された裁判例があるものと承知しております。 ● そうしますと,先ほどの説明ですと,業務と自動車の運転による過失は一緒だとおっしゃいましたけれども,今回の法律ですと,業務ということは出てきませんので,重過失のものが入ってきますよね。 ● 御指摘のとおりです。 ● 屋上屋を重ねるという感じなのですが,反復継続性といっても,現実に反復継続している必要はないのであって,反復継続の意思であればよろしいということで,ほとんど意味のない要件になりつつあるわけですね。それはなぜかといえば,自動車運転がそれ自体として,くどいようですが,危険なのであって,別に現実に反復継続されている必要はない。ただ,「業務」という文言ですから,そこに入れるためには反復継続の意思が必要だという形で,緩やかに解釈されているというのが現状ではないかというように思います。   それを半歩進めるということになるのかもしれませんけれども,業務という概念も,本来のもともとの,法律家でない者が理解する理解とはかなり離れているということもあり,先ほどから申しておりますように,自動車運転自体に類型的な危険性があるということもあるので,私としては,このような,いわば自動車運転自体を,業務上過失致死傷罪における業務と同じように,切り出してくるというのは合理性があるだろうと思います。   それから,ほかの過失事犯との関係なのですけれども,やはり重要なのは,自動車運転は私たちの日常生活に身近な脅威になるものであって,そこがやはり違うだろうと思います。列車は線路に近づかなければ,極端なことを言えば,脱線転覆したって大丈夫なのですね。もちろん列車の線路の近くにお住まいの方には脅威かもしれませんけれども,それはやはり私たち一般の身近な日常的な脅威といえるかどうかという問題とは,やはり一線を画すだろうというように思います。   それからもう一つ,死傷者が多数にわたるという点なのですが,確かに意味がないとは申しませんけれども,しかしながら,現在の我が国の刑法は同一の行為によって複数の結果が生じた場合には観念的競合にするというのが基本的な考え方であって,それも踏まえますと,多数の結果が生じるということは副次的な理由にとどまるのではないかと思います。そんなところから,私としてはこのような,現在,事務当局が示されている要綱(骨子)の案については合理性があるのではないかというように考えております。 ● 3点ほど申し上げたいと思いますが,御議論がありますように,自動車の運転というものは非常に特有の危険性を持つものでございます。私どもが取り扱っておりましても,やはり道路交通の場というのは,いろいろな交通主体が錯綜しておりまして,その場自体が非常に危険な場所でございます。そこで,大体一定の確率で事故が起きておるわけで,しかも,その相当部分が運転者の適切な運転行為に期待するところが多くございまして,事故防止のために非常に注意深くしていただく必要があります。したがって,それに見合う注意義務というのは確実にあると,このように感じております。したがいまして,結果も確かに重大でありますが,道路交通が危険な場所であるということと,運転者の行動,行為によることが非常に大きいというところについては,非常に着目すべきではないかと思います。   その観点では,自転車についての御提議がございましたけれども,これは確かに,中には非常に無謀な運転と言われる自転車がございますけれども,自動車に比べると,運動エネルギーが小さいというようなことで,事故の実態には画然と違うものがあるように感じております。   それから,先ほどヒアリングの御指摘がございましたが,恐らく,私ども考えてみますと,昭和40年ごろというのは,まだ免許というのは特殊な方ないしお金持ちの方などが持っておられて,その後,国民皆免許ということでずっとドライバーが増えてくるわけでございます。したがいまして,確かに職業運転者の方々は,その当時は自動車の運転者を代表する方々だったと思いますし,今でも非常に有力なセクターだと思いますけれども,今の私どもの印象では,ドライバーは国民そのものであると,そういうような印象を持っておりますので,その国民がどう考えるかというのが,まさに重要であろうかと思います。   以上でございます。 ● 今おっしゃるように,多分,昭和40年代と現代では,かつてはかなり業務性の欠くものが多かった。しかし,今は,多分マイカー運転とかいろいろな形のものがふえてきて,国民だれもが運転するような時代に来てしまったということが,当時の40年代とは大きく変わっていると思うのです。   ただ,私,先ほどの資料を拝見させていただいて,資料の5の1枚目をめくっていただいた業過のみのリストを見ますと,これは,一部はなるほどマイカーみたいな感じもないではないですが,ほとんどが業務上の運転をしていた方,いわゆる貨物自動車だとかバスの運転をしていたとかという方なのですね。そうだとすると,果たしてこれを一般国民にまで広げていいのかどうかということは,ちょっと御議論いただく必要があるのではないか。できれば,この中でその部分が業務性を,いわゆる仕事として運転しているのか,していないのかというのがわからないものについてもそこを明確にしていただくことはできないでしょうか。例えば1番目の問題なんかについてはちょっとそれはわかりかねるのですが。ただ,ほかを見ていると,かなり大型貨物自動車等が並んでおりますので,恐らくある意味で仕事として運転をされている方でこういうことが起こっているとすると,私は場合によってはこれは労働条件とか,あるいはいろいろな交通政策上のものがどうなっているのかということを考えた上でないと,一概にこれは個人だけにこの責任を追及するというのはいかがなものかと考えておるのですが。 ● ただいまの資料にあらわれた事例について,もう少し分析をすることが可能かどうかについては検討させていただきたいと思います。 ● 仮定の質問で恐縮ですけれども,「自動車の運転に必要な注意」と書かれているわけですが,自動車を運転している人だけではなくて,同乗者とか,お酒を提供した人とか,そういった人たちの刑事責任ということも最近言われるようになってきて,将来もしかすると運転者以外の人について過失致死傷の責任というものが問われる事態もあり得るのではないかと思っております。そういった場合に,この「自動車の運転に必要な注意」というのは,あくまで自動車を運転する人自身について言うのであって,そのほかの関与した人については,この新しい規定ができたとしても適用はないとお考えなのかをお聞きしたいと思います。 ● まず,ここで言う「運転」というのは,自動車の各種装置を操作して,運転者のコントロール下において自動車を動かす行為を言いますが,運転に起因する危険性を踏まえて,そのような運転に必要とされる注意義務を怠り人を死傷させた場合を本罪の処罰対象にしようと考えており,それ以外の場合を対象にしようと考えているわけではありません。なお,今,御指摘がありましたように,自動車運転には,様々な関与の仕方があるところですが,基本的には今述べたように考えており,あとは過失の共犯のような話になってしまうかもしれませんけれども。 ● 関連しての質問なのですが,どの範囲の注意義務なのかということとの関係でいきますと,先ほど冒頭に申しましたように,「自動車」の概念と並んで,「運転」の意義がかなり重要なことになるのではないかというように思います。普通,自動車を操作して走らせていて事故が起きるというのは非常に分かりやすい状況なのですけれども,それはどこまで及ぶのか,例えば,駐車した後はどうなのかとか,あるいは停車してハンドル操作にかかわりない状況についてはどうなのかとか,その辺についてもう少し踏み込んだ御説明というのでしょうか,事務当局の御理解を御説明いただければありがたいというように思います。 ● 「運転」というのは発進に始まって停止で終わるというまず理解でいます。ただ,停止した途端に終わってしまうのかというと,一連の運転として流れがあって停止するわけですから,その停め方に問題があるような場合,要するに危険なところに停めてしまったというのは,運転行為の中に含まれていくだろうと思います。もとより個々の事案の事実関係,証拠関係によると思いますが,運転と全く関係ないような形で,運転とは連続性を持たないというようなことになると,およそ自動車に関連するというだけでは,自動車運転過失致死傷罪には当たらないのだろうと思います。あとは,個別具体的な判断になると思います。 ● 関連した質問ですが,今のような御説明で納得するのですけれども,それは「運転」という概念とあわせて,今後,「よって」という要件についても御議論する際に明らかになっていくようなものとして理解しておいてよろしいでしょうか。 ● そういう観点で御議論していただければと思います。 ● 今の「運転」の概念について確認させてください。従前の業務上過失致死傷では,発進から停止までに限られずに,例えばドアの開け方を誤って,後ろから来たバイクが巻き込まれたというような事案も対象になっていたと思うのですけれども,今の御説明ですと,それは自動車運転過失致死傷罪ではなくて,これまでどおり,業務上過失致死傷罪の対象になるという理解でいらっしゃるのでしょうか。 ● もちろん個々の事案がどういう罪に当たるのかはその事案ごとに,証拠に基づいて判断していかなければいけないので,必ずこうだからこうとは言えませんけれども,先ほども申し上げましたように,「運転」というのはあくまでも運転者のコントロール下において各種装置を操作して自動車を動かす行為であって,発進に始まって停止で終わるものでありまして,この一連の流れの中でそれに実質含まれていくものがあるのだと思います。   ですから,例えば,自動車を路側帯に停止をさせ,しばらくして,そこから降るときにドアを開ける,要するに,「運転」から切断されたその後の行為という位置付けになれば,それは「運転」に含まれないということになるのだと思います。ですから,そのような事案については「運転に必要な注意」を怠った場合には当たらないということで,今,ここで新設しようとしている罪は成立しないと考えられますので,それは従前どおりということになるのだと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。第一巡目でもあり,論点を指摘していただくという意味もございますので,御自由にお願いします。 ● 先ほど昭和43年の改正のことをちょっとお話し申し上げたんですが,あの当時は,たしか議論の中に,いわゆる交通事犯が,その当時としてはかなり激増して増えていて事故も多かったということを受けて,それに対応するために5年と決めたと聞いておるのですが,したがって,その後の国会の附帯決議で,これが一般の交通業界以外のところで重くするような方法をとらないようにというような趣旨の附帯決議がなされたと聞いているのです。   そうだとすると,今回の切り分けをするとすると,残るのは従来の3年以下ではないのかなという感じがしないでもないのですけれども,業過として残るのは。   当時,昭和43年以前,改正前までは3年以下という形になっていたと思うのです。そこが5年以下に43年の改正でなったと思うのですが,そのときの議論の中で,今回,3年を5年にするのは,いわゆる交通事犯がふえてきて,それに対応するためだということで5年になったと聞いています。そうだとすると,今回,切り分けをすると,残るのは本来からいうと上げる必要のなかったそれ以外の業過の3年にはならないですかと,こういうことを申し上げているのです。 ● もちろん昭和43年のときの立法の主たる要因というか,動機付けはおっしゃるとおりなのだと思います。ただ,同時に,その当時は自動車運転による過失致死傷事犯以外のものについても,重い刑に処せられている事案が見られたということも事実のようです。現に,昭和43年に法定刑の上限を3年から5年に引き上げた後の自動車運転によるもの以外の業務上過失致死傷事犯の科刑状況を見ますと,禁錮3年以上の刑を言い渡された事案もございます。ですから,そのような実態を踏まえますと,業務上過失致死傷罪の法定刑を3年以下の禁錮に戻すというのは,余り現実的ではないのだと思います。 ● 昭和40年代の改正の件が議論の対象になっているわけですが,あのときの改正はかなり難航したといいますか,時間をかけて実行されました。一つの理由は,あのころ,大きな鉄道事故がありまして,その事件との関連,三河島事故と呼ばれたものでありますが,それとの関係が難しい問題を生じていたということであります。   それからもう一つは,法定刑の上限を3年から5年に上げるにとどまらず,懲役刑を導入しましたわけですが,これは「過失犯には禁錮を」という明治以来の大原則を変更するものでありましたので,この点についても賛否の両論が非常に激しかったと記憶しております。   ただ,昭和40年代は道路交通事情が非常に悪化して,いわゆる交通戦争と呼ばれた時期でもありましたので,結局は法定刑の引き上げが国会で承認されるに至ったという,そういう経緯であったわけです。 ● 先ほど委員の方から,観念的競合を日本の場合とっているので,結果がどういう結果が生じても,どちらかというと関係がないというお話があったように思います。私は被害者の人たちの事件を扱っておりまして,例えば3人死亡とか,3人の御家族が重度障害を負うとかの場合,被害に応じて,例えばこれがそれぞれ加算されるのであれば,先生,全然違うのでしょうにという声をたくさん聞くんですね。だから,今回,例えば危険運転が片一方でできて,その刑の格差ということもあるのでしょうけれども,日本の場合の観念的競合の考え方というのは,ほかの国と比べて,今回のこの改正に影響していないわけではないのではないかという気はしているのです。素人的な発想なのですけれどもね。例えば刑を加算するとか,そういう考え方でいくと,例えば,今回資料として出ているほかの国の業過の刑としたら5年というのが多いのですね。そういう国では,例えば結果に応じて違ってきているのではないかという気がしているのです。私が不勉強なので申し訳ないのですけれども。 ● 私どもの方で広く諸外国の罪数論について承知しているわけではございませんが,少なくともドイツにおいては,1つの行為で複数の犯罪を犯した場合は,日本と同じように,観念的競合という形で処理されているものと承知しております。 ● 報道で,私もマスコミ的な部分で聞く限りは,アメリカなどでは,例えば刑を加算するとか,単純に加算すると聞いているのです。最近,そういう結果が重大な事故が多い,例えば3人死傷とか4人死傷,例えば川口の事故のように4人死傷とかですね。そういうことは,最近の現象ではないとは思うのですけれどもね。ですから,自動車事故に絡んで,非常に複数の人たちが死傷するという現象があるので,ある程度処罰を重くしなければいけないという声が出てきているのではないか。   昔からあった議論でしょうけれども,どうしても観念的競合ということを言われると,一つの行為だと,3人死亡しても10人死亡しても同じ行為なのだという,どちらかというと,そういう考え方が片一方はあって,被害者の人たちはそうは思っていない人たちが多いと私は思っているのですけれどもね。 ● 被害者の方々,あるいは御遺族の御気持ちからしますと,1個の行為で複数の結果が生じた場合,観念的競合ということで,処断刑としてはそのこと自体で加算されるものではないということが,必ずしも納得できないというという点は私も非常に理解ができるところであります。   法定刑あるいは処断刑としては結局変わらないわけですけれども,その結果が重大であったことというのは,量刑上当然考慮されているのだろうと思います。ただ,国民の目から見ると,やはり,もっと厳しい処罰をしてほしいという気持ちがある。そういう日本の観念的競合の在り方と国民の意識とがかかわっている問題であると思います。   他方で,その観念的競合という考え方自体を,ここで何か改めるかというと,それは,相当大きな問題にはなってくるのだろうと思いますが,いずれにしても,国民の意識というものを考えるときに,そういう結果の重大性というのがかかわっているということは一つの重要な事実としてあると受けとめております。 ● 今の点は,これは罪数論の根本にかかわる大問題でございまして,日本においては,アメリカみたいに単純加算主義をとっていないという大前提がございますので,その点は,今,御説明がございましたように,量刑上考慮されているということで御理解いただけたらと思いますが,いかがでしょうか。ほかにいかがですか。 ● 今後の議論のためにということなのですが,法定刑,今度は7年になるということであるならば,今の日本の法典の刑罰法規の中で,7年以下のものというのはどういうものがあるのかということのリストを拝見できればと思っております。   それと,やはりこれは同じような形で,例えば人の健康に関する公害法という法律があるのですが,あの第3条2項,あれなんかを見ていますと,結構これとアンバランスが生じるのです。要するに,企業が垂れ流しをうっかりしてしまって,故意ではなくて,そのために死傷に至った場合については,たしか3年か2年だったと思うのですが,それとの関係とか,そういったものもあるので,そういった関連の過失犯のそういう法定刑も,やはりある程度一覧表をつくっていただいて,今回の議論をした方がよいのではないかと思います。 ● 今,お申し出があった資料につきましては,次回,お配りしたいと思います。 ● 今,道路交通法の改正も検討されているということを伺っています。この部会がそれを審議の対象にするものでないということは十分承知しておるのですけれども,他方で,今日お配りいただいた資料の中でも,結局,道路交通法違反と業務上過失致死傷罪がともに成立して,それでかなり悪質で刑が重くなっているというケースがかなりあるように思います。例えば,酒気帯びあるいは酒酔い,あるいは救護義務違反などが典型的には考えられるのでしょうが,これらについて法定刑の引き上げが検討されているということを伺っていますので,その引き上げ幅によっては処断刑が変わってまいります。今日は突然なのですぐには無理でしょうが,今後の議論のため,現在の検討状況等を次回以降にでも教えていただければなと思います。   もう1点は,同じく道路交通法の改正について救護義務違反の罪の法定刑を10年に上げることが検討されていると新聞報道で拝見しました。これもまだ検討中で決まったものではないのかもしれませんが,10年ということになると,自動車運転過失致死傷罪の法定刑が7年ということなので,救護義務違反の方が自動車運転過失致死傷罪よりも重い形になるということになります。そうすると,この両罪の関係についてどういうような整理をされているかということも,実際に量刑をする裁判官としては非常に関心のあるところですので,教えていただければなと思っておりますので,同様に,できれば次回以降にお願いいたしたいと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。まだ第二も残っておりますので,もし第一の点について現時点でこれで十分だというのであれば,第二にいきたいと思いますが,よろしいでしょうか。 ● 最初に委員が,複数の部会に出席している者の悩みといいますか,被収容者の人員適正化に関する部会も現在進行中であるという御指摘をされました。私自身も,諮問を発せられる法務大臣はなかなか御苦労だなと思ったことがないではありませんけれども,この被収容人員に関する諮問の方は適正化を求めるというのであって,収容人員を減少する方策を求めるというものではありませんし,現にその諮問を受けた総会でも,ある委員の方が,適正とは何かということから議論してもらいたいという希望を述べられたこともありました。   なお,今回法定刑の引上げを内容としておりますので,むしろこの刑が重くなる,実刑が増えるという懸念をお述べになりましたが,場合によっては悪質な事犯が減少し,それが実刑の減少をもたらすということも可能性として考えられるかと思いますので,委員や私の悩みがなくなるわけではありませんが,軽減されると言っていいのかなと思います。 ● どうもありがとうございました。   実は私も両方の部会長を務めておりますので,代弁していただいた気がして非常にうれしく思っております。   それでは,要綱(骨子)の第二の点についていかがでしょうか。 ● 昨年の,平成18年の犯罪白書を見ると,大体は予測はつくんですが,先ほど自動二輪についてはそれぞれの内訳,スピード違反や酒酔いの入った場合とそれ以外とか分けて出ていたんですが,いわゆる自動二輪ではない自動車についての表のあれは,どれくらいの比率でなっているか。多分,自動二輪とは違うと思うのですよね,その比率が。そこら辺のデータがもしあれば出していただけるのか,あるいは後で御説明でも構いませんけれども。 ● その点も検討させていただきます。 ● 新聞の報道によりますと,危険運転罪が年間適用件数が280件ぐらいで非常に少ないと。そういう刑のバランスからして,今回,引き上げになるのだというようなニュアンスのことを書いていたんですけれども,今回の法務省の表面的な理由というのですか,これは上がっていませんけれども,そういったことは実質的にはあるのですか。 ● 危険運転致死傷罪が,致傷ですと15年以下,致死だと1年以上20年以下と相当重くなっておりますが,構成要件を見ていただければお分かりになるように,危険運転致死傷罪は,暴行による傷害あるいは傷害致死に匹敵するようなものとして位置付けられているものです。それとのアンバランスということでございますが,結局,過失犯をどう見るかという問題になってくるのだと思います。   その中でも,今般,昨年来より非常に社会問題化してきた飲酒運転による死傷事故,それに象徴的に代表されるのだと思いますけれども,そういう過失の,特に非常に態様の悪質なもの,そういったものについては何らかの対処をしていかなければいけないと考えております。   その点,先ほど話がありましたように,道路交通法の改正も予定されているようですが,飲酒運転をして死傷事故を起こした場合というのは,道路交通法の飲酒運転に対する罰則がどのようになるにもよりますが,その罰則と刑法の自動車運転過失致死傷罪とが併合罪となり,処断刑の上限が上がっていくのだろうと思われます。 では,危険運転致死傷罪の構成要件をもう少し広げるかということになりますと,今,申し上げましたように,ここまで重い法定刑を定めているというのは,まさにそれが暴行による傷害あるいは傷害致死に匹敵するものであることによるものでございます。そうすると,そこまでには至らない類型というものを,これに加えることには慎重な検討が必要と思われます。また,危険運転致死傷罪とは別個の構成要件として規定し,これに対して重い法定刑を定めるということになりますと,まず,通常の自動車運転によるの過失致死傷事犯があり,今申し上げた中間的な構成要件があって,さらに,危険運転致死傷罪があるということになりますが,なかなかそれは,恐らく,構成要件の切り分けが相当難しいのではないのかなと思っています。 ● これは第一の点とも若干関連するのかもしれませんが,先ほどの御説明によれば,自動車運転を切り出す,または切り分けるということとも関連して,危険運転致死傷罪の中の自動車に,自動二輪だけではなくて原動機付自転車も含むというお話がありました。そのあたり,もう少し御説明をいただけたらと思います。というのも,危険性の点では,自動二輪と比べたとき,原動機付自転車の場合,通常の速度もそれほどではないでしょうし,しかもここで資料として挙げていただきました二輪車の危険で悪質な運転による死傷事犯にあっても,第一例は確かに原動機付自転車によるものではありますが,それ以外は普通自動二輪ということですから,原動機付自転車の危険性を同じく自動車にあたるということで,くくって切り出すのにふさわしいものであるかについて,若干の御説明をいただければありがたいと思います。 ● 確かに委員御指摘のとおり,原動機付自転車は,ほかの自動車ほどスピードが出ないというのでしょうか,あるいはその形状からして危険性がそこまで高いとまでは言えないのではないかという,そういう御意見もあるかとは思いますけれども,二輪車の危険というものを,何に対する危険ということでとらえるべきかを考えたときに,恐らくそれは中心になるのは対歩行者の関係になるのだと思います。   対歩行者の関係で見ると,自動二輪であるのか,原動機付自転車であるのか,つまり,50CC以下の二輪車と,例えば70CCの二輪車とでどれほどの違いがあるのかということだと思います。実際,原動機付自転車も,かなりスピードの出る,歩行者にとっては相当危険性の高いものでして,死亡事故発生件数を比べますと,自動二輪車による件数と,それから原動機付自転車による件数は,例年ほぼ同程度の状況にあります。   また,原動機付自転車の酒酔い運転による死傷事故が少なからず発生しており,例年,自動二輪車の酒酔い運転による死傷事故数を相当程度上回っているという状況にございます。ですから,やはりそこで原動機付自転車を外すというのはいかがなものかと。やはり,特に対歩行者との関係で考えれば,その危険性というのは,自動二輪と同程度に,相当高いと思われますし,実際の事故の発生状況を見ましても,悪質な飲酒運転をして事故を起こしているという数も相当程度出ておりますので,同じように扱うべきではないかと思っております。 ● 今の質問に関連してお伺いしたいのですが,確かに統計上は,二輪車が第一当事者となった交通事故の発生件数,死亡事故の発生件数の表や,その数値を拝見いたしますと,原動機付自転車においても,かなり悪質な事案があり,信号無視や酒酔い,あるいは最高速度違反というものが自動二輪よりもむしろ多いという事情はよくわかります。しかし,これで自動二輪車と同じほどの死亡事故が発生するというのは,何か特別な事情があるのではないでしょうか。例えば,日常もよく見かけるケースなのですが,原動機付自転車が歩道上を走行して歩行者をはねるといったような特殊な事例なのか,それとも歩行者帯が区別されていない生活道路でかなりのスピードを出して死傷事故を引き起こしたような事情があるのか,そのあたりのデータは特に統計上どうなっているのでしょうか。 ● 発生場所,要するに歩道上なのか交差点なのかということの統計は,私の方で承知しておりません。 ● それでしたら結構です。 ● その点は,そのような統計はありませんが,経験則上,歩道を原付が走って,それで歩行者をはねるというのは,あるとすると非常にまれなケースだと思います。 ● 資料の読み方について御質問したいのですが,統計資料4の6ページの二輪車の死亡事故と死傷者ですけれども,この中に運転者本人というのは入っていないということでしょうか。 ● これは運転者が死亡した場合も入っております。 ● わかりました。 ● 同じことで,だから直ちにどうこうということではなくて,歩行者との関係では原付も十分に危険だと思いますけれども,二輪の場合には,運転者自身が死亡するケースも十分想定されるところなので,その意味では少し6ページの表はちょっと割り引いて考える必要があろうかなとは思っております。 ● これはあくまで質問としてお伺いいたしますが,以前,危険運転致死傷罪の規定を設けられたときに,自動二輪車を適用対象から外すに当たって何らかの考慮があって,そうした経緯が当時の議事録にも残っているかと思います。そこで,今回,改めて自動二輪車も適用対象に含めるとし,さらに,原動機付自転車も含めるということになりますと,過去の法改正時の説明との整合性というか,状況が変わったという理由に依拠されるのであれば,そのあたりについてもお教えいただけるとありがたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ● 確かに平成13年の危険運転致死傷罪新設の際の検討というのは,当時の状況を踏まえたものだと承知しております。ただ,その後,先ほど資料等でも御説明申し上げましたように,衆・参各法務委員会の附帯決議を受けまして,危険運転致死傷罪新設後の二輪車による事故の発生状況等を調査いたしました。これは,統計という形ではなく,個別具体的な事件の判決書を取り寄せるなどして調査・検討いたしましたところ,先ほど申し上げましたように,酒酔い運転,著しい高速度運転,赤信号無視など,二輪車による危険かつ悪質な運転行為によって人が死亡したり,あるいは1か月以上の重傷を負っているような事例が少なからず発生しております。そういったところを踏まえると,やはりその実態を踏まえた法整備が必要ではなかろうかということで,今回の御提案をさせていただいた次第でございます。 ● 日経新聞の記事によりますと,当時,危険運転致死傷罪について二輪を省いたという,省略したというのは,車体が軽いため重大事故を起こしにくい。2つ目として,四輪に比べて走行安定性が劣り,過失による事故が起こりやすいという,この点はどういう形でクリアされて今回入るのですか。 ● 確かに,二輪車は四輪に比べると重量が軽くて走行安定性が劣るといえるところですが,しかし,そのような二輪車で危険な運転をしたことにより重大な死傷事故が起きていないのかと言われれば,ここ数年の動きを見れば,先ほど紹介しましたように,二輪でもそういう事故が相当数発生している。そして,平成13年の危険運転致死傷罪の新設時には,事故の実情を踏まえて引き続き検討するようにという国会での附帯決議がなされたわけですから,そういうことを踏まえて検討をした結果,今回,二輪車についても危険運転致死傷罪の対象車両に加えるべきではないかという御提案をさせていただいているということでございます。 ● 行動を見たり,それから法務省の方で多分こういうものを,黄色い色刷りで,飲酒運転中の過失致死傷の事犯に関する法整備についてということで,飲酒運転だけ取り上げて,ここでかなりそれを説明するような資料があるようなのですけれども,これは,今回の立法に当たっても,飲酒運転等かなり危ない,危険な運転が多いということが第一に挙げられておったんですが,もちろんそれ以外のものも事例の中にあることは承知しているのですが,そういった視点で考えた場合,恐らく自動二輪や原付自転車の場合について,酒を飲んでそういう大事故になるというケースは,先ほどのリストからするとほかの四輪車よりは少ないと理解しているのですが,いかがでしょうか。 ● 御説明しましたように,確かに昨年来,飲酒運転中の事故,これが非常に社会的な問題になったというのも一つの契機であることは間違いないですけれども,必ずしも飲酒運転中の事故だけを対象にこの改正をしようというわけではありません。非常に悪質・危険な運転行為のある意味一つの代表例ということで飲酒運転が多分挙がるのだと思いますけれども,必ずしもそれに特化した話ではありません。   それから,二輪で酒酔い運転をして事故を起こす件数についての話ですけれども,それは四輪より件数が少ないから対象の車両から外してよいという議論には多分ならないのだと思います。現に,酒を飲んで死傷事故を引き起こしたという事案が少なからずあるというのが現実でございまして,その件数が四輪よりも少ないからそれは省いてもいいというような関係にはないのだと理解しております。 ● 関連したことなのですが,今,自動車の中に自動二輪を入れるか,あるいは原付を入れるかという御議論がございましたが,先ほど自転車に関しては運動エネルギーが少ないという御発言があったかと思いますが,それを逆に解しますと,原付であっても,少なくとも対歩行者の関係では,無謀な運転をし,その致死傷を生ずるような危険な運動エネルギーを持った乗り物であることは否定しがたいところですので,むしろもともと危険運転致死傷罪,あるいは今回の要綱(骨子)第一に係る自動車におきましても,当然,二輪を含める方向で考えるべきではないか。特にそれが過失致死傷罪の特別類型として考えられるのであれば,自動車運転という行為が持っている危険なエネルギーに着目した切り分けをするというのが正当であって,そのようなものを使っている限りは,飲酒によるものかどうかは,過失の中の一態様として考慮すればよいので,こういうふうな提案で結構であろうと個人的には思っております。 ● ほかによろしいでしょうか。   もうそろそろ予定の時間になりますので,特に御意見がなければ本日の審議はこの程度とさせていただきたいと存じますが,よろしいでしょうか。それでは,御意義がございませんようですので,次回以降の審議について決めていきたいと思います。   審議の進め方について,事務当局の方で何かお考えがございましたらお願いいたします。 ● 先ほどもヒアリングの話が出まして,それについて若干のやりとりがあったところでございます。もちろん部会の審議の進め方でありますので,部会で御決定いただく事柄ではありますが,私どもとしましては,今回のテーマが交通事故の被害者あるいは遺族の方々のいろいろな御意見,提言も踏まえたところがございますし,そういった方々の実際の様々な被害の実情,さらにはそれを踏まえた具体的な意見の内容等につきましてもこの部会で直接聞く機会があった方がいいののでないかということを考えて,事務的な準備を進めているところでございます。もし部会の御決定として,そういうヒアリングというものを行った方がいいということであれば,そういう形で進めてはいかがかというのが一つでございます。   その際に,その被害者,遺族の関係の方以外に何らかの意見を聞くべきではないかということであれば,その点についてもまた御検討いただければと思います。 ● どうもありがとうございました。   今,具体的な御提案をいただいたわけですが,私としましても,今回の刑事法部会において,より一層充実した審議をするためには,交通事故被害者の実情や被害者,御遺族の心情等を十分に把握した上で審議することが必要であると考えております。そこで,交通事故の被害者団体の方々から御意見を伺うことは大いに意義のあることと存じます。皆さんの御了解が得られましたら,次回の会議においてそのような機会を設けたいと思いますが,その点,いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。特に御異議ございませんので,次回の会議において交通事故の被害者団体の方々から御意見を伺うことにしたいと存じます。 ● 具体的には,交通事故の被害者の団体は幾つかございますので,そういうところと内々に連絡をとっているところではございますが,先ほど委員から御提案がありましたように,主として,職業として運転を行っているような方々の御意見を聞く機会を設けるということであれば,そういう適当な団体があるかどうか私どもの方で調べて連絡をとってみたいと思いますが,その点はいかがでしょうか。 ● 今,事務当局からもそういう形で具体的に示されておりますが,この点いかがでしょうか。お聞きするというのであれば,その準備をさせていただきますが,そういうことでよろしいでしょうか。では,特に御異議ございませんので,そのような団体からも御意見を伺うことについても準備させていただきたいと存じます。   具体的にどの団体に御意見を伺うか,その協力をお願いするかということにつきましては,事務当局において,活動されているものについての調査がなされていると聞いておりますので,どの団体にどういう形で聞くかという点につきましては,部会長に御一任いただければと存じますが,その点,よろしいでしょうか。では,ただいまの部会の意見を踏まえて,適切な団体から御意見を伺う機会をつくらせていただきたいと存じます。   続きまして,次回以降の審議について日程等を決めたいと思いますが,事務当局の方で会場等について御教示いただきたいと存じます。 ● 本日含めまして2月中に4回の会議を開催できるように準備をいたしております。部会用に会議室を確保しておりますのは,次回が2月19日月曜日でございます。そして21日水曜日,さらに28日水曜日でございます。場所は,2月19日は法曹会館高砂の間,そして21日と28日はいずれも本日と同じ,この法務省20階にございます第1会議室となっております。時間でございますけれども,19日が午後2時から5時まで,そして21日が午後1時30分から5時まで,28日が午前10時30分から午後0時までを予定しております。 ● それでは,第2回目の部会は2月19日月曜日,時間は午後2時から5時まで,場所は法曹会館高砂の間,それから第3回目の部会以降についてはただ今御説明があったとおりでございます。 次回の内容としましては,先ほどお諮りしましたように,交通事故の被害者団体やいわゆる職業ドライバーの関連団体の方々から御意見を伺うということにしたいと存じます。   本日はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 -了-