法制審議会刑事法 (自動車運転過失致死傷事犯関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成19年2月19日(月)  自 午後1時59分                        至 午後5時43分 第2 場 所  法曹会館高砂の間 第3 議 題  自動車運転による過失致死傷事犯等に対処するための刑法の一部改正について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の第2回会議を開催いたします。 ● 本日は御多忙中のところ御参集いただきまして,まことにありがとうございます。 (委員の自己紹介省略) ● さて本日は,前回皆様にお諮りしましたように,交通事故被害者関係や,いわゆる職業ドライバー関係など,関係する諸団体の方々から,今回の諮問事項に対する御意見をお伺いしたいと思います。本日,御意見を伺う団体につきましては,お手元にお配りしてある一覧表のとおりでございます。   それでは,早速ヒアリングを実施したいと存じます。   最初に「生命のメッセージ展」実行委員会の方に入室いただき,御意見を伺いたいと思います。           (「『生命のメッセージ展』実行委員会」 入 室) ● 私は,法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の部会長をしております○○と申します。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議しております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考え,本日,皆様にお越しいただいた次第です。よろしくお願いいたします。 ● 私は「生命のメッセージ展」実行委員の○○と申します。今回の法制審議会には,「生命のメッセージ展」代表の○○と,実行委員の○○の3名が出席しております。私が○○代表にかわって意見を述べさせていただきます。至りません部分がありましたら,○○,○○が補足していくという形で進めていきたいと思います。   今回のこういう会合ですけれども,代表の○○の考えから申しますと,社会に訴える方法としてソフトな訴えとハードな訴えと分けています。署名活動,裁判,法改正等はハードな訴えとし,「生命のメッセージ展」はソフトな訴えとなります。そういうことについては,こちらの方の前書きに一応書いてあります。今回の場合,そのハードな方の訴えですので,「生命のメッセージ展」としては少し意見を代表して言うのには,少し反れるかもしれません。ただ,今回はメッセンジャーというか,この会の中の80パーセントの者が交通事故の被害者です。   そういうことで,今回はその意見を代表して話すということはちょっとできませんので,私の体験を添えながら話を進めていきたいと思います。   この質問された審議の内容ですけれども,1番の自動車運転過失致死傷罪の新設ということですが,新設することには異議ありません。今まで業過失として全部まとめて処理されてきたものから,交通事故だけを独立させた形にすると,事故が起きたときに交通事故の対処の仕方が今までよりももう少し深くというか,一般の業過失と比較しないでやっていけるという点では,とてもよいことだと思います。   そこで,私の考えですけれども,飲酒・ひき逃げ行為の科刑についてですが,この中でどのような形で取り上げていただけるのかということを,少し後で検討していただければと思います。   交通事故の場合,特に飲酒運転の場合には,ほとんどの人がひき逃げという形をとって,現行犯を避けることによって,逃げ得という状態が多いです。だから危険運転致死傷罪が成立したのですが,それに当てはまるのがある新聞の記事なんかで見ますと,本当に微量なもので,ほとんどの者が危険運転には当たらないような形になっていることなので,そういうふうな形にはなるべくしてもらいたくないと思うんです。逃げた方が罪に問われないということは,ぜひ避けてもらいたい。そういう意味からいっても,この新しい法令の中で上手にというか,うまく生かしていただきたいと思います。   それから,今度は2番の方ですが,危険運転致死傷罪の方の罪の中に,「四輪以上」というのを「自動車」に改めるということですが,これについても特に異議はありません。私の自分の話にこだわって申しわけないんですが,私は12年前に娘を飲酒運転のひき逃げで亡くしました。ところが加害者はいろいろな人からの出頭にも拒んで,逃げたにもかかわらず,2週間後に逮捕された結果はどうなるかと思いますと,生きている人の供述が中心になって,娘が勝手に倒れ込んだというような形に処理されました。そういう処理に対して,被害者は物言えませんから,客観証拠を並べて立証していかなければならないんです。だから,私は最高検察庁まで逃げ得はしてはいけないということで,起訴にしてくださいと訴えました。でも,結局私たちの言っていることを全部認めたのですが,初期のそういう対処の仕方が間違いというか,一歩分かれたことで,結局最後は不起訴のままに終わってしまいました。   それで,民事裁判ではその客観証拠を元にしましたので,100パーセント全面勝訴で終わりました。でも,私たちにとってはそういう問題ではないんです。逃げ得をしている,つまり加害者,飲酒運転の加害者がそのまま結局社会にまた戻ってしまって,また繰り返しているんではないか。実際,現在のところもそういうものが多々起きております。今になってやっとそういう飲酒運転について,それからひき逃げについて問題になっておりますので,できれば今回こういう新しい形で制度を一歩進歩したというんですか,できた場合に,ぜひ飲酒運転で事故を起こして逃げた場合,その逃げた段階で加害者が100パーセント悪いということで,まず始めてほしいんです。100パーセント加害者が悪い。つまり起訴にしてもらうということを原則にして,そして,その後,裁判でも,それから普通の話でもいいですから,加害者に自分の正当性,それを物的証拠,客観証拠で証明してもらいたいんです。それによって,自分の正当性が証明されたときに,初めて加害者が悪くなかったというか,不起訴にしてもいいと思います。   今はそうではありませんので,そういうことはぜひ今度の法律の中で有効に生かしていただいて,交通事故で大事な人を亡くした悲しみ以外に,第2次の被害として被害者はその遺族のというか,亡くした人の無念を晴らすために,第2の苦しみが始まっているんです。私も6年と3か月かかりました。ですから,そういうものをいろいろな罪が重くなるじゃないかとか,そういうことではなくて,逃げたら決してその場で出た人よりも軽くなるなんていうことは許さないでほしいです。だから,ひき逃げしたそういうことにまず重罰を与えて,逃げたらいけないんだ。それからお酒を飲んだ,飲酒運転をしたら重罰になるということになれば,飲酒運転はしなくなるし,ましてや逃げるような卑劣な行為はしないと思いますので,そういう点を私は今回のこういう意見を述べさせていただく中で,ぜひ皆さんにお願いしたいと思ってまいりました。   一応,大きなもので言いたいことというと,まだいろいろありますけれども,時間がありますので,あと,もしいろいろな質問とかありましたら,3人でお答えしますので,よろしくお願いいたします。 ● 委員,幹事の方で御質問ございますでしょうか。   本日は,御意見をお伺いしたいということで,皆様にお越しいただいております。まだ時間がありますので,もしほかにございましたらどうぞお願いいたします。 ● 一応「生命のメッセージ展」代表の○○です。私たちの活動は今,○○さんがお話ししてくださいましたように,命そのものを本当に守っていきたいという活動なんですよね。ですが,いつも私たちが思うことは,法律の中で本当に命って軽いんじゃないかというふうに思っています。   今回,この危険運転致死傷罪ではなくて,また別にいわゆる業過でもって,少し命の重みが上がったかなという気はいたしております。どんな軽微な事件とか事故でも,命が失われたら,やっぱりその命に相当するような刑を処してほしいというのは私たちの願いです。だから少しだけ今回では上がったかなと。でもまだまだ足りない。命はこんなに軽いものではないということを,私たちは訴えさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ● 事故が起きたときというのは,まず法律が先に来るんですね。そして,刑事訴訟法の中に,担当刑事がこれをゆだねるというのはあります。ですから,どうしても事故が起きたときには,生きている人というその人の証言というか,それが中心になって動いていくんですね。ですから,なるべく今度こういう形での業過失のものができましたら,生きている人ではなくて,被害者,亡くなって物言えない人の立場になって,それを加害者という--まあ加害者といっても,悪い人ばかりではないですけれども--その事故を起こした方の人にいろいろと証明させたり,罪を問わせたりというふうな形にしていただければ,この交通事故に関するこういう業過失の法律が制定されたことで,生かしてもらえればと思っております。 ● ○○さんの方で何かございますか。 ● ○○と申します。私の息子の事故の場合も,起訴率の問題もありまして,起訴をされる前に要するに門前払いのような状況であったんで,起訴率とかその辺も含めて考えていただいて,公平に要するに司法の場で裁いていただきたいというのは,ずっと思っておりました。 ● 私たちが署名活動をして,本当に獲得したというか,危険運転致死傷罪ですけれども,やはり今まで見てきますと,あまり適用されていないという実感なんですよね。現実に。ですから,もっとこの危険運転致死傷罪が,もっともっと適用されるような方向性をもって考えていただきたいと。なんか,あそこのうたわれている言葉もとても抽象的であいまいなので,もっとはっきりした,こうであればもう絶対的に危険運転致死傷罪だというようなそんなような1つの文章化というか,言葉だと思うんですが,それをもう少しはっきりした言葉を使っていただきたいというふうに,私は本当に法律の専門家ではないので,どんな言葉がいいのかはわからないんですけれども,それでもあいまいにするような言葉の表現ではない,もっとはっきりした言葉を使っていただきたいと思っています。   よろしくお願いいたします。 ● 最後にですけれども,こういう法律で裁く場合ですけれども,故意性の証明が必要であるとよく言われるんですね。特に飲酒運転の場合だとか,危険運転をやった場合ですけれども,正常な運転が困難だったことを立証する必要があり,とよく言われます。この正常な運転というこの高いハードルを加害者がどういう形で判断というか,裁いてもらえるのかということです。その飲酒運転,飲むこと自体がもうこれは未必の故意の殺人に当たります。そして,ひき逃げの場合には,その逃げた段階でもう故意犯になります。だからそういうことをしっかりとこの新しい法律,それから危険運転致死傷罪の中に入れていただいて,決して逃げ得になったりとか,それから飲酒運転のような悲惨なことが繰り返さないように,大事なことは繰り返されることが一番つらいです。そういうことを生かしていただきたいと思います。 ● 本日はお忙しい中,どうもありがとうございました。ただいまお聞きした御意見も踏まえ,今後の議論を続けてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。           (「『生命のメッセージ展』実行委員会」 退 室)           (「自助グループ『小さな家』」 入 室) ● 法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の部会長をしております○○でございます。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議しております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考え,本日,お越しいただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。 ● 私,富山県の自助グループ「小さな家」というところから来ました○○でございます。   私の場合は,被害に遭って今年16年という年月がたつんですけれども,自分が被害に遭ったときに,本当に加害者というのは,これくらいの罪で済んでしまうのかという本当に絶望的な気持ちになりました。今,新しい法律というか,自動車運転過失致死傷の罪の新設というのがありますけれども,これはやはり昨年,園児が多数,一度に亡くなってしまったとか,そういう事件といいますか,そういうものを踏まえての新設なんでしょうか。本当に私が被害に遭ったときも,あまりにも古い法律といいますか,随分前に,この危険運転致死傷罪が設立されるきっかけにもなったと思うんですけれども,ある大学生の子どもさんを亡くされたお母さんがきっかけとなってできた法律,私たちも署名ということで,随分協力したというか,かかわったつもりがありますけれども,本当に何か起こらなければそういうことが改善されない。また改善されたとしても,随分おくれているとか,また危険運転致死傷罪に関しましても,私はそれができたときに,なんか随分不備だなというようなことを自分なりに感じました。   その適用されるというのがあまりにも難しいというか,いろいろなこうでなければいけない,ああでなければいけないというものがたくさんありましたし,実際,私がその危険運転致死傷罪が設立された後に被害に遭ったとしても,自分たちはそのものに適用されなかったんではないかという気持ちがあります。   私は個人的な意見として新しいものをつくるというのも大切で,危険運転致死傷罪というものができたときは,本当に長い間何も変わらなかったものが,そういうものができたということだけで画期的だというふうな思いはしているんですけれども,実際はその法定刑というものをもっと幅広く,幅を持たせた,また年数を上げたものとしてできるならば変えていただけるならば,それが一番いいんではないかという気持ちも持っています。   その刑が上がったからといって,どんなものもそうなるわけではないので,その中でその事例にあわせて,刑が執行されればという思いを持っています。その危険運転致死傷罪にしても,現在,ひき逃げが増えているとか,飲酒にしても事を犯した後にまた重ね飲みというんですか,また飲酒をするというような問題点が,今既にたくさん出ていると思うんですけれども,そういうものを見たときに,あまりにも適用される,本当は適用されて当たり前のものがされていないということを,本当にそれが適用されたとしても本当に命を奪われた者にとっては,それだけでよかったとかと思えるものでもありませんので,それがそういうさらなる悪質な者によって,危険運転致死傷罪さえも適用されないというその現実を,本当に何とも言えない気持ちで私はいつも聞いています。   また,今新しい法律が新設されようとしているということですが,それが新設されれば,昨年のような何人もの尊い命を一気に犠牲にしてしまうような,そういうものについても救われるということがあるんでしょうか。その親たちが満足できるようなものになるんでしょうか。そのことが私はとても気になります。   また,このことに関しては,いろいろなことが法律をつくる前に,いろいろなことが想定されるものだと思います。こちらにいらっしゃる皆さんが,もし自分の身にそういうことが起きたらどうなるだろうかとか,例えばこんなことが起きるかもしれないということを想像する,そういう気持ちがあれば,もっと重いというか,そういうものもつくれるんではないかという気持ちがあります。   私の場合は,16年前に飲酒ということで,飲酒といってもひき逃げでしたので,酒気帯びということで加害者は捕まりましたけれども,その結果において3歳を迎えようとしていた娘を亡くし,それから私は妊娠中だったんですが,7か月の胎児を失い,それからその後子どもを生むということもできなくなりました。また,一緒に連れていた長男の方も,怪我を負って,私自身も4か月の入院をしましたけれども,その加害者に科せられた罰というのは,2年6か月の求刑でしたが,実際には2年の判決でした。私は,いつもどうしてそんなに2年半の求刑が判決の段階で半年も下がるのか。また,その2年の判決がさらに仮釈放とかによって,1年数か月に下がってしまう。そのことが本当に今でも納得がいきません。求刑自体,とても短いと思っているものが,段階を追ってもっともっと少なくなってしまう。そのことをとても不可解に思っています。   私の希望としましては,こちらでそれが今この段階で言うことではないのかもしれませんが,被害者としての気持ちとして言わせていただくならば,本当に2年6か月,例えば2年の判決が出たならば,それだけはちゃんと刑務所に入っていてもらいたいと思います。もし,それが当たり前ということで,それ以上に悪い犯人というか,卑劣な犯人ならば,それ以上の刑を科すのが本当なんではないかというような,そのような気持ちを持っています。   要望書にもありましたように,結果的にはこういうものができた,またできるということには,とても喜びというものを感じていますけれども,最初も言ったように私の希望は,それとは別に法定刑を上げていただきたいという希望を持っております。   私の意見はそのようなことです。どうもありがとうございました。 ● 委員,幹事におかれまして,何か御質問がございましたらお願いいたします。   特にございませんようですが,○○さんにおかれましては,時間はまだありますけれども,以上でよろしいでしょうか。 ● そうですね。すみません。時計も持ってこなくて。どのようなことを言っていいのかちょっとこちらに着くと上がってしまって,こういう状況をちょっと想定してきませんでした。申しわけございません。 ● どうもありがとうございました。本日は本当にお忙しいところをおいでいただきまして,ありがとうございます。ただいまお聞きした御意見を踏まえて,今後の議論を続けてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。           (「自助グループ『小さな家』」 退 室)           (「全国交通事故遺族の会」 入 室) ● 一言,御挨拶申し上げます。法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の部会長をしております○○と申します。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考え,本日,皆様にお越しいただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。 ● それでは,全国交通事故遺族の会から,今回の改正案につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。   初めに,今日は私どものような会をお呼びいただきまして,まことにありがとうございます。本来ですと会長の○○という者がこの席に参らなければならないんですが,何分高齢で,今私たちの会の実務的なことは今理事会の私たちの方に一任されておりますので,今日は私達が代表で参りました。   お手元に資料が全部で5枚行っていると思います。ちょっとこの資料を慌ててつくった関係上,あちこちにミスがございまして,その点を最初にお詫びしておきたいと思いますが,今日は最初の2枚目の方で交通事故撲滅のための遺族としての提言,これは総論的なことですけれども,これについて私が,それからその後の今回の法律の改正についてに的を絞りましての意見としまして,○○と,それから残りの○○,○○,合計4人から意見を述べさせていただこうと思います。   時間が限られておりますので,早速内容に入りますけれども,今回のこの刑法の改正につきましては,かねて私たちは強く交通事故の犯罪につきまして,厳罰化というものを望んでおりました関係上,今回の罰則強化というものが実現に近づいたということで,私たちは大変大きな評価をしているところであります。   願うならば,この法律ができたことの実質的な効用と申しますか,私たちはよく素人目でわかりませんけれども,日本では刑務所の数が犯罪者の量を決めるというようなことを言われておりますので,今世間ではどうも刑務所が足りないというふうなことで,この業過の2年を上積みするということで,また罰則が増えて,刑務所に入る人間も増えるわけですけれども,それによりまして,軽微な交通事故の犯罪等が,この見返りといいますか,引きかえにその軽い罪で,トータルとしては厳罰化にはならないというようなことのないように,この厳罰化というものがはっきりと実質的な厳罰化になりますようにお願いしたいなというふうに思っております。   今回の改正によりまして,交通事故の処罰というものは,今回の自動車運転過失致死傷罪と危険運転致死傷罪というのは刑法に,そしてもう一つ,関連する法律として,道交法にやはり処罰があるわけですけれども,この3本立ての処罰ということに関しまして,私たちはちょっとこれでいいのかなというふうな疑問符を持っているわけですけれども,やはりこの複雑さというものがやはり社会に浸透することが不確実になるんではないか。すなわち,社会の一般の市民の理解と協力が得られなくなるんではないかというふうなことを考えると,私たちの交通処罰に関する意見というものは,これから申し上げる次のような形にならざるを得ないというふうに考えているわけです。   今,日本では約100万件近い交通事故が起こっているわけですけれども,その中でも分析してみますと,車と人,あるいは車と自転車というように,いわゆる交通弱者が犠牲となるような事故というものが,欧米諸国と比べると日本は非常に高い。先進国では決して威張れない状態にあるわけです。政府の方では交通事故死の半減,あるいは交通事故の削減というようなことで取り組んでいるようですけれども,やはりそれに見合ったきちんとした大きな交通事故をなくすというビジョンのもとに,こういった処罰法というものはなければならないんではないかというふうに考えているわけです。   このビジョンのもとに,道路行政,そして免許制度,さらにはこの処罰やあるいは今大きな問題となっている被害者救済,こういったふうなものが一元的にとり行われる。今のように,縦割り行政の弊害と言われているように,交通事故をとりましても,いろいろな行政がかかわっているような姿を改めていくには,今のこの状況では決して満足なものとは言えないのではないかということで,私たちは今回のこの自動車運転の過失致死傷罪を踏み台としまして,交通事故の撲滅を目的とした刑罰を含む,あらゆる施策を包含した仮称「交通法」というようなものが必要なのではないかということを提言申し上げたいわけです。   この提言の中で,あるいは行政の一元化の問題,こういったようなことも含めて大きなテーマですので,ぜひこの法制審議会という機関でその必要性というものを御認識いただき,関係省庁の方に働きかけていただきたいなというふうに考えております。   私たちの今回のこの総論に関しての要望としましては,一番最後の帰結の言葉に書いてありますけれども,法制審議会の部会メンバーに交通事故被害者,もしくは遺族の代表者をせめて1名加えていただきたい。そういったところで私たちだれかがこの交通事故の悲惨さ,あるいは交通事故の被害者遺族が日ごろ持ち続けている思いを皆様方に申し上げていきたい。そのように思います。   提言につきましては,以上でございます。 ● それでは,引き続きまして,私,○○の方から今回の法改正にまつわる部分の要望,意見を申し上げさせていただきたいと思います。   まず最初に,お手元の資料のイの項目に当たりますけれども,危険運転致死傷罪が最高刑20年ということで,現在,規定がありますけれども,今回の自動車運転過失致死傷罪が7年,現在,警察庁の方で道交法の改正案が出されておりまして,例えばこの改正案に従うところの酒酔いですと,5年ということになるわけですけれども,今回の7年の併合罪を適用したとしても,最高で10年6月,したがって危険運転致死傷罪の約半分の懲役ということになるわけでございます。この間の乖離というのが大きく,皆様御案内かと思いますけれども,いろいろの重大な非常に悲惨な事故の遺族,我々ももちろんですけれども,そういった遺族は,なぜ危険運転致死傷罪が適用できないのかというところで,非常に憤りなり,矛盾なり,そういったものを感じているわけです。やはり運転の過失のその証明というところの難しさがあって,危険運転致死傷罪の適用というのが非常に困難になっているというところから,今回の法改正の元も多分出ていらっしゃるのではないかと推察しておりますけれども,であれば,例えば重ね飲みだとか,あるいは追い酒といったような,証拠隠滅を図る行為,そういった法のいわば盲点をつくような行為をするような悪質なドライバーが多々存在するということを顧みますと,今回の7年というのは,我々遺族の立場からすると,決して十分なものとは言えない。やはり,危険運転致死傷罪と並ぶ20年,どちらにいっても悪い,あるいは悪質な危険な運転行為をした者に対する処罰としては,同じレベルになるという具合にしていただきたいという具合にお願いしたいと思います。   それから,次の項目ですけれども,例えば被害者が死亡,あるいは非常に重度な後遺障害を負ってしまった場合,当然残された家族の負担,それから一家のもし無事であったら得られるはずであった生活権,そういったものがすべて悪質な加害者によって奪われるわけでありますから,実際の刑罰の処罰規定の下限というのが今回設けられておりませんけれども,少なくとも罰金刑,あるいは執行猶予等がつかないよう,そういった重度な過失に対しては下限を設けていただけたらありがたいという具合に思っております。   同じような理由ですけれども,社会通念上,考えられる横断歩道ですとか,あるいは商店街,通学路,そういった本来歩行者,あるいは交通弱者と言われる人が保護されるべき場所において,非常に悪質な運転行為が行われた場合というのも,同様に下限を設ける処罰規定にしていただければ非常にありがたいという具合に考えております。   それから私の方からは最後になりますけれども,この法制審議会のところでは管轄外かとは思いますけれども,今,刑法あるいは道交法の方が非常に整備されつつある中で,取り残されているのが行政処分であります。非常に軽い状態になっていますので,行政処分というのは,加害者にとって非常に困るものでありますので,こちらの方もこちらの法制審議会の方から関連部署に対して御指示いただけると,あるいは御指導いただけると非常にありがたいと思っております。   私の方からは以上でございます。 ● 続いて会員の○○の方から発言させていただきます。   今の○○の資料にもありますように,最後の方に危険運転の改正については,今回二輪車を含めるということに対して,これについては私たち,賛成しております。しかし,この危険運転致死傷罪の適用に対してかなりあいまいさがあるということで,我々被害者や遺族の中ではかなりの不満を持っている者は多いです。最近あるような,飲酒・ひき逃げとかそのような話があるときに,必ずこれが出てまいります。今回,この二輪車適用のみに,この危険運転致死傷罪の改正がなされていますが,私たちはこの適用対象を明確にしていただくため,数値目標などを厳格にしていただきたいと思っています。今回,自動車に関して業務上過失致死を自動車運転過失致死傷罪というものにしますが,これが刑が重くなったとしても,依然,この危険運転致死傷罪にかかるかかからないか,そのところで問題が起きてまいります。我々遺族はその辺でいつも苦しんでいます。例えば飲酒運転を数値,0.25以上が出た者,スピードの違反が20キロ,30キロ,これを超えた者の過失致死に対しては,危険運転致死を必ず適用する。そして適用した中で,20年から下の範囲の中で罰を決めていく。そういった形の見直し方を今回この二輪に限らず,危険運転致死傷罪に踏み込んでいただきたい。こう私は考えております。よろしくお願いします。 ● ○○と申します。私たち遺族の会は,昨年からひき逃げの厳罰化ということで,署名運動を展開してまいりました。その実績として全国から10万を超える署名が集まりました。ということは,国民の世論としてひき逃げについては厳罰化ということは間違いなく要望は高いということになります。   そこで,私たちは道交法でいう救護義務違反というのは,このひき逃げということに私はなじまないというふうに思っております。すなわち,ひき逃げということはこれは故意犯であるというふうに考えておりまして,法律の裏づけがほしいというふうに要望します。   以上でございます。 ● 最後に,資料で一部添付してございますけれども,「悪質な交通犯罪は殺人に相当」というタイトルのやつです。これは何と今から約7年くらい前の朝日新聞の論壇に載った○○さんという元検察官の出した投稿記事です。今私たちが述べたような新しいと思っているような話題ですけれども,もう既に7年前からこういったことを検察官の中からも声が上がっているということを,皆さんたちにも今日はぜひお知りいただきたいと思って,古い資料ですけれども,引っ張り出してまいりました。ここには今言われているような交通悪質犯罪についての考え方,そして○○が提案申し上げたような危険運転致死傷罪の適用というのは,どの段階からなされるべきかという提言,そして今のこの交通犯罪がこのように増えている段階で,今までのこの業過だけでは限界がある。いっそのこと,新たな法律を作っていくべきではないかというような提言も含まれているということで,ぜひ皆さんもお時間がございましたら,古いニュースではございますけれども,お読みいただいて御参考にしていただきたいと思います。   以上をもちまして,遺族の会からの御意見とさせていただきます。ありがとうございました。 ● ○○さんから何か御意見はございませんか。 ● 一言,それでは申し上げさせていただきます。私が息子の事故の後,検察官にお会いしましたときに,厳罰を求めましたところ,日本国民全部を加害者にするわけにはいきませんということで,自動車を使う者,また検察の方,警察の方,すべてがそういうみんながこういう事故を起こすというふうな考えがあるから,そういう厳罰はできないという考えがあるみたいです。ぜひ,それは車に乗る人は必ず法律を守って,できる人だけが車に乗る。ですから,免許を取得した後の先ほども言いましたけれども,欠格になるような,ああいうものは死亡事故なんかの場合は,以後一切とらせないような形の法改正を訴えますというよりも,こういうふうな形になっていただかないと,遺族としては非常に残念です。そういう厳罰を願って,法改正のこの場に立ち会わさせていただきました。ありがとうございました。 ● 委員,幹事の方で何か御質問等はございますか。   本日はどうもお忙しい中ありがとうございました。ただいまお聞きした御意見を踏まえて,今後の議論を続けさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。           (「全国交通事故遺族の会」 退 室)           (「NPO法人KENTO」 入 室) ● 法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の部会長をしております○○と申します。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものにするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えて,本日,皆様にお越しいただいたところでございます。よろしくお願いいたします。 ● では,要望書を読ませていただきます。奈良県でNPO法人KENTO代表をしております○○と申します。今日は同じく理事をしています娘の○○と参りました。   それでは要望書を読ませていただきます。   長勢甚遠法務大臣殿。   NPO法人KENTO代表理事,○○。   刑法改正に関する要望書。   本日は大変貴重なお時間をいただき,交通事故犯罪に関する刑法改正ヒアリングに参加させていただき,ありがとうございます。私たちNPO法人KENTOは,交通事故犯罪被害者遺族,支援者らで構成され,交通事故撲滅を目指し,交通事故ゼロの社会を実現するために,日々活動しております。今回,下記のとおり,意見を述べさせていただきますので,私たちの要望の趣旨を御理解の上,法改正をよろしくお願いいたします。   要望1,2が本題,要望3から5は副次的要望です。   要望事項。   1.自動車運転過失致死傷罪の新設について。 ①御検討されている条文「自動車を運転して必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。」について上限を7年ではなく10年にする。   ②自動車運転致死罪を新設するに伴い,刑法第211条2項「自動車を運転して前項前段の罪を犯した者は,傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」は廃止する。   2.危険運転致死傷罪(刑法第208条の2)の改正について。 ①刑法第208条の2の「四輪以上の自動車」を「自動車」に改めるとあるが,「自動車」の定義に含まれる二輪車に原動機付自転車(50ccバイク)も含める。   ②現状での適用条件(構成要件)が厳しく,本条が適用されるケースは極めて少ない。加害者の認否によらず,客観的な飲酒,スピード違反等の事実が認められれば,無条件に危険運転致死傷罪を適用する。   3からは副次的要望です。   3.刑事裁判での厳格な審査と適切な刑事罰の適用。 裁判所内の量刑基準を見直していただきたい。刑法の条文内容(刑罰)が厳しくなっても,現状の刑事裁判での判決内容は非常に甘いです。検察の求刑どおりの判決が出るように,裁判所内の基準を見直していただきたい。   4.交通刑務所の受刑者受け入れ能力の増強(増設・新設)。 交通刑務所(矯正施設)の収容可能人数を増やしていただきたい。   5.仮釈放の適用基準の見直し。 仮釈放の適用を厳格にし,刑期が短くなる減軽幅も小さくしていただきたい。   上記5つの要望に関する理由は以下のとおりです。   1.自動車運転過失致死傷罪の新設について。 ①上限の7年を10年まで引き上げることについて。 上限を7年とする理由が,他の刑罰とのバランスであるという意見がありますが,傷害罪(第204条)の上限は15年,傷害致死罪(第205条)は3年以上20年以下の有期懲役になっており,傷害致死罪の半分である10年であれば,ちょうどバランスはとれていると考えます。   これに対して,刑法は,故意による行為の処罰を原則(刑法第38条1項)とし,過失行為の処罰を例外としているのであるから,故意犯である傷害致死傷罪と過失犯である自動車運転致死傷罪(あるいは業務上過失致傷罪)を一概に比較して論じることはできないという反論があるかもしれません。しかし,交通事故犯罪では,未必の故意に匹敵するような暴走による事故,悪質な飲酒運転,重過失の前方不注意,居眠り運転などによる事故が多発しており,1件の交通事故で死傷する被害者数が多いのも事実です。   鉄道踏切事故,医療事故などで業務上過失致死罪に問われる事件もありますが,基本的には加害者は事故を起こさないようには努力しており,ちょっとした注意力の欠落で事故になっているケースがほとんどです。自動車事故では,事故を起こさないようにというのではなく,事故にあっても仕方がない(当事者本人の意識では事故など起こり得るはずがないという過信)という意識があり,未必の故意とも言える故意犯に匹敵します。   また,改正される道路交通法の酒酔い運転の罪と併合罪によれば,上限は10年6月になるという意見もありますが,飲酒検査逃れ,ひき逃げなども後を絶ちませんので,基本犯だけで10年の刑罰を科すことができる必要があります。必要性です。   下記のグラフでも平成12,13年からひき逃げ犯が急増しています。これは平成13年12月に危険運転致死傷罪が施行された時期と一致しています。 そして刑罰のバランスにおいても,自動車致死傷罪の上限を他の過失犯と比べてかなり重くしても,許容される範囲内であると思います。許容性です。   法を改正するには時間と手間がかかりますので,今回の改正でぜひとも上限を10年にしていただくことを切望しています。   ②刑法第211条2項の廃止について。 この条文は,危険運転致死傷罪の新設されたときに追加されたものですが,昨今の交通事故犯罪に対する社会的非難,厳罰感情を考慮すれば,不必要であると思います。   2.危険運転致死傷罪(刑法第208条の2)の改正について。 ①自動車の定義に含まれる二輪車に原動つき自転車(50ccバイク)は含まれるかについて。   「自動車」の対象となるものは,原動機付自転車(50ccバイク)を含めて自動車運転免許証を必要とするすべて自動車,二輪車に適用されることを御確認ください。 若者の暴走による事故も後を絶ちません。原動機付自転車でも十分に人を死に至らしめる能力がありますので,危険運転致死傷罪が適用されることを御確認お願いいたします。   ここは,次の小さな文字は飛ばさせていただきます。   ②適用条件(構成要件)の緩和。 飲酒運転やスピード違反が認められても,危険運転致死傷罪が適用されるケースはまれです。下記のデータが示すように,死亡事故で危険運転致死罪が適用されたケースは1パーセントにも満たないのが現状です。 危険運転致死傷罪での立件が難しく,たとえ危険運転致死傷罪で起訴されても,刑事裁判の法廷では同罪適用の可否が争われます。被告人が,「正常に運転できないほど酩酊状態ではなかった。」として危険運転の故意を否認すれば,立証することが難しいのが現状です。   危険運転致死傷罪の適用件数は,平成14年322件,平成15年308件,平成16年270件と減少(平成17年は279件とほぼ横ばい)していますが,悪質なドライバーは依然として多いです。特に昨年の福岡での飲酒運転による幼児死亡事故以来,毎日のようにニュースで飲酒運転の問題が取り上げられているにもかかわらず,飲酒運転するドライバーが非常に多いことにあきれます。せっかくよい法律をつくっても,活用されなければ意味はありません。   確かに,厳罰化しても事故は減らない,あるいはイグニッション・インターロック装置(運転前にアルコール検査をチェックする装置)をつけないと本当の実効性がないという意見もあります。 しかし,厳罰化による事故抑制効果があることは,下記のグラフから明らかです。危険運転致死傷罪が新設され,飲酒運転事故はほぼ半減しました。 また,インターロック装置がすべての車に装着されるまでには,かなりの時間がかかります。その間でも飲酒運転による死亡事故が発生し,尊い命が奪われるのです。飲酒行為自体が故意ある行為であり,飲酒によって自らを正常な運転をできない状態にしており,その時点で責任を問うことは責任主義に反しません。   したがって,飲酒運転は故意犯と同等な刑罰を科しても許されます。誰も刑務所には入りたくはありません。それでも飲酒運転をしたい人は,刑務所に行っていただくしかありません。   次は副次的要望3件です。   3.刑事裁判での厳格な審査と適切な刑事罰の適用。   刑法の条文内容(刑罰)が厳しくなっても,現状の刑事裁判での判決内容は非常に甘いです。任意保険に加入している,本人が反省しているなどと,いろいろな理由をつけてほとんど執行猶予付判決になり,たとえ実刑判決であっても求刑に比べて70パーセントの刑期に減軽されているのが現状です。7掛け判決です。   裁判官にもっと被害者の現状と,交通事故犯罪がいかに悪質であるかを認識していただきたいと思います。交通事故犯の裁判を傍聴すれば,被告人の嘘にだまされている裁判官がいかに多いかということに気づくと思います。 裁判員制度が始まっても,裁判官の量刑基準が低ければ,国民の意見を反映させることはかなり難しいと思います。裁判員制度は国民の意見を取り入れることが目的ですが,国民感情と乖離のない量刑を下すことは,今からでもできます。   4.交通刑務所の受刑者受け入れ能力の増強(増設,新設)。   実刑判決が下されても,矯正施設(交通刑務所)に入るまで受刑予定者が待たされているのが現状です。刑務所に十分な収容能力がないので,裁判官も実刑判決を出し難い状況にあるのではないでしょうか。条文の厳罰化だけでなく,刑務所の収容能力を増強し,法律が実効力を持ち,効果的なものになるようにしてください。   5.仮釈放の基準の見直し。   初犯であれば,刑期の3分の2で仮釈放されることもあるので,刑法で幾ら刑罰の上限を上げても,被告人が実際に刑務所に入っている期間は短いです。前記4で御説明したとおり,刑務所の収容能力が不足しているので,刑務所は仮釈放を認めがちです。これでは幾ら実刑判決が出ても,被害者感情がいやされることはないと思います。仮釈放の適用を厳格にし,できるだけ満期で出所させるようにしてください。   7枚目,次のページは法務省への依頼ですので,法務省の御担当の方はぜひお読みいただけますでしょうか。   以上,準備した書面を読ませていただきました。   本当に,今まで緩やかな刑で済ませてきたこの10年,20年,30年が,本当に交通事故を犯罪と思わない,たかが事故,事故だったから仕方がないというような意識がもう国民全般に浸透し,広まってしまいました。意識を変えていくことがどれほど大事か。また,皆さん本当に交通事故で家族を失った方,ここに恐らくおられないのではないかなと思います。そういう思いをしていないからわからないではなく,どうかその思いに少しでも近づけるような自分にまずなっていただきたい。どれほど生きる力をそいでしまい,両親や健全なよい心や健全な生き方も奪って,さいぎ心の強い人間にしてしまうか。交通事故がどれほど被害者の遺族をぼろぼろにしてしまうか。いいものを全部そぎとってしまうか。そういう人たちが本当に巷に増えていくんだ。もうここで本当にUターンさせてください。   私は,息子を亡くしましたけれども,もう6年,7年たちますが,まだ裁判,刑事が続いています。でもあきらめることはどうしてもできません。真実を追究したいです。真実追究されないと,確実な改善は行われません。中途半端な真相の追究では中途半端なままの状況が続くだけです。真相究明を徹底して,やるべき改善をして,どうかこの本当に今の現状,交通事故に対する世の中全般,お国の上にいる人たちの感覚,意識,考え,本当に今こそUターンしてください。国民に交通事故が犯罪だということを浸透させる,子どもたちの命を守れる社会になるように,どうかUターンさせてください。 ● ありがとうございました。委員,幹事の方で特に御質問がなければ,以上で終わらせていただきたいと存じます。   本日は本当にどうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を我々のこの審議に生かしたいと思いますので,本当にありがとうございました。 ● ありがとうございました。よろしくお願いいたします。           (「NPO法人KENTO」 退 室)           (「全日本交通運輸産業労働組合協議会」 入 室) ● 法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の部会長をしております○○と申します。本日はお忙しいところお越しいただきまして,本当にありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,お越しいただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。 ● どうも皆さん,こんにちは。私,交運労協で事務局次長を担当いたしております○○と申します。   まず,紹介だけ先にさせていただきたいと思うんですけれども,交運労協というところは陸・海・空のそれぞれの労働組合,ほぼ全体を網羅しているわけでございますけれども,そこの交通関係の組合が結集した組織でございます。おおむね組合員としては70万人でございます。   本日の案件に関係するところの労働組合で言えば,私鉄総連であるとか,運輸労連であるとか,交通労連であると,そういったところが我が交運労協に加入しているということを冒頭申し上げておきたいというふうに思います。   そこで,まず結論を先に申し上げておきたいというふうに思うんですけれども,罪の厳罰といいますか,刑罰を重くすることによっていわゆる事故を撲滅ないしは少なくしていくというこういう取り組み,その考え方でございますけれども,いろいろな考え方があって,それすべてうまくいくというふうには考えられませんけれども,ただ,数年前に飲酒運転に対する罰則強化を行って以降,実際に事故死をする人たちがずっと減じてきていると。こういう相関関係で見てみますと,やっぱりそういう牽制機能は働いているのかなとこういうふうに思いますので,ある意味ではほかにいい方法は思いつかない段階においては,やむを得ない処置なのかなと,こういうふうに考えまして,賛成をする立場で少し発言を申し上げたいというふうに思います。   ただ,発言する内容については,ちょっと懸念するという考え方,2点ほどございますので,そういう部分だけお話し申し上げたいというふうに思います。   まず,1点目でございますけれども,先ほど罪を重くすることに伴って,事故が減っていくとこういうふうに申し上げましたけれども,ただ,他のいろいろな類例を参考にしてみますと,必ずしもそれがイコール我々が望むところにいっていないというのが,事実あるような気がいたします。例えば少年法の罰則を強化することによって,学校内外のいじめが減っているのかというふうに言えば,必ずしもやっぱりそういうふうになっていないような気がいたしますので,そういう意味ではやっぱり慎重に事細かにやっぱり構えていくということも,一方ではやっぱり持っていくといいますか,考えていくということが大事なんではないかなというふうに思えてなりません。   特に心配しますのは,あまり罪を重くすることによって,実際に加害者の側,事故を起こした側がこれでおれの人生はもうすべて終わりだと。社会的な地位も職も,それから自分の持っている財産もすべて投げ出しても,まだ補い足りないというような立場に追い込まれれば,ある意味ではこの際,ちょっとやっぱりこの事故から逃げるかということで,ひき逃げ行為に逆に走ってしまうという部分もありはしないのかなという気がいたします。   したがって,その辺,それぞれの個々人の置かれた立場によってその判断は変わってくるんだろうと思いますが,ある意味ではそういうようなけしからん考えにやっぱり追い込んでいく一方の側面が残りはしないかなと,こういうふうに思いますので,そういう意味ではこの手法を検討される反面,もう一つやっぱり加害者の側に納得できるような,やっぱり罪のあり方ないしはその償い方というものも,時間をかけてもいいから,ひとつ専門家なり有識者の皆さん方の間の中で,検討願えないのかなというのが1点目でございます。   それから2点目でございますけれども,昨今,それぞれ交通事故というのはずっとやっぱり件数としては減じてきているというような承知をいたしています。ただ,そうは言っても負傷者数については,平成11年から8年連続してずっと100万人台を維持しているということもございまして,ある意味ではやっぱりこの社会全体の交通事故の数というのは,やっぱり減っているというふうにはまだ言えないという段階にあるのかなというふうに思います。なぜ減らないのかというところの問題を,単なる飲酒運転だけにとどまらず,いろいろな要因があるわけでございますから,そういう部分も含めて検討をしていただくということが大事なのではないかなと,こういうふうに思っているところでございます。   ちなみに私たちは先ほど申し上げましたように,交通運輸産業の労働組合でございますけれども,交通運輸産業においても1990年から規制緩和という波が大きく押し寄せてきています。それに伴って,働く側の労働条件というのは非常に厳しくなっておりまして,かなり過労運転も覚悟でやっぱり業務も担っていくという労働者も少なからず増えているという実態があるわけでございます。   それはどういうことかといいますと,規制緩和はどんどん進みますと,参入,撤退が自由にされておりまして,算入する業者はどんどん増えてまいりますと,コスト競争が拍車がかかるということでございます。ちなみに小さな運輸業も含めて対してみれば,過去10年前は約4万社でございましたけれども,現在,6万社を超えているという実態であります。多くの算入事業者がいるわけでございます。それがどのように運賃競争の中にあらわれてきているのかというのを申し上げますと,例えば東京,大阪,10トントラックが多くしますと,1995年の段階は16万円台の料金がやられていたわけでございますけれども,最近においては13万円台ということで,かなり減じているということでございます。当然,トラック労働者なり,いろいろな分野で運輸労働者というのは歩合制が多ございまして,運賃収入が減りますとその分だけ収入が減ると。収入が減った段階で家計が十分に営まれればいいわけでございますけれども,やっぱり足らない分はどこかで補いをつけるということになれば,やっぱり労働時間を長くするという以外に道筋はないわけでございます。   厚生労働省は2005年の労働時間調査をやりましたけれども,このときには全産業平均が1,829時間でございます。しかし,そのときのトラック労働者の平均労働時間は2,260時間でございます。これはまだいい方でございます。我々が実際に調査したところによると,2,600時間程度になるわけでございます。つまりそれだけやっぱり長時間労働を行いますと,どうしても過労運転というものが出てきて,やっぱりいろいろな事故要因をやっぱり生み出していくということになるわけでございます。   ちなみに,昨年の2月でございましたけれども,交運労協としてアンケート調査をさせてもらいました。これはバス労働者,タクシー労働者,トラック労働者,それぞれモード別に行わせてもらいましたけれども,それぞれ5,000人の労働者を対象にアンケート調査をやったわけであります。バス労働者の集計は4,136人,これは82パーセントの回収率でございました。タクシー労働者は,3,332人で66パーセント,トラック労働者は2,549人で51パーセントでございました。トータルは約1万名の労働者がアンケート調査をとったわけでございますが,この中で主な内容をちょっと御報告申し上げたいと思いますが,1点目に労働時間は延長されたのかという質問事項に対して,バス労働者の場合は2,624人がかなり延長されたという回答をしております。タクシー労働者は2,658人,トラック労働者が1,070人ということで,かなりの高率にわたって全体の労働時間が延びています。1日10時間以上働く人はどれだけいるのかというのを調査しましたところ,バス労働者は3,452人で約83パーセントでございます。トラック労働者は1,802人で70パーセントということで,10時間以上という労働者がかなりやっぱり増えているという事実でございます。   そうした中において,過労運転,一瞬眠くなるということがあるのかという質問事項を入れましたところ,バス労働者は2,603人で約63パーセントの人が一瞬眠くなるという回答が寄せられています。タクシー労働者も含めて2,728人で81パーセントでございます。トラック労働者は1,553人で約6割の方が一瞬眠くなる。疲労感が大きく残るというアンケート調査に回答を寄せられているところでございます。   ちなみに,今警察も警察庁を中心に様々な安全対策なり,いろいろな取り組みはされています。我々も交運労協という働く立場から,危険箇所の点検活動やいろいろな取り組み行動について行いながら,警察庁に対して協力態勢をとって,事故撲滅運動を進めているところでございますが,現在,第8次交通安全基本計画が策定されて,その実行がされているところでございますが,その中でそういう過労運転を強いるその事業者が,こういったところにきちっとしたやっぱり行政側からの対策を講じていく取り組みが重要であるという取り組みがされているわけでございますけれども,いかんせんながら,それが十分にいっていないというのが実情でございます。なぜ,十分なところに行政の目が行き届かないのかということでございますが,それはやっぱり世の中の仕組みといいますか,作り方というものにやっぱり弱点があるような気がしてなりません。   ちなみに,昨年の7月6日の朝日新聞でございましたけれども,コラム欄の中においてレフリーなき競争というそれぞれ特集を組んだ時期がございましたけれども,このときに行政による不正監視が行き届かない理由として,いわゆる監査委員,いわゆるそういう悪徳事業者,そういったところにきちっと監査を入れる態勢が非常に弱いということが指摘されています。ちなみに,御紹介申し上げますと,今いる監査陣で,トラック事業者をきちっと点検するに当たっては約15年かかるというふうに言われています。バス事業ですと9年,タクシーで5年でございます。いわゆるいろいろな法律で縛るわけでございますけれども,それをしり抜けしながらやっぱりコスト競争の中に走っていきながら脱法行為,ないしは違法行為,労基法違反というものが横行しながら,いわゆるそこで働く労働者の過労運転を強いるという社会的な原因が事実あるわけでございますから,そういったところを含めてやっぱりきちっとした対策ないしは法律的な整備というものがされていかないと,単なるあの飲酒運転だけが取り締まり強化をしても,全体的な事故撲滅ないしは事故を減じていくということについては,不十分さが残るのではないかなとこういうふうに考えておりますので,以上2点を申し上げまして,私の意見にかえたいと思います。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   委員,幹事におかれまして,何か御質問がございましたらお願いいたします。 よろしいでしょうか。   どうも,本当に本日はありがとうございました。ただいまお聞きした御意見を踏まえて,審議を続けさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。           (「全日本交通運輸産業労働組合協議会」 退 室)           (「社団法人全日本トラック協会」 入 室) ● 法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会の部会長をしております○○と申します。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,お越しいただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。 ● 全日本トラック協会,社団法人でございますが,理事長を務めております○○と申します。   本日はこのような席に,私どものこの問題につきましての意見を述べる機会をお与えをいただきまして,まことにありがとうございます。心から感謝を申し上げます。   そういうことで,今日は今部会長からお話のありました問題につきまして,私どもの意見を申し述べたいと存じますが,実はちょっと時間的な制約もございまして,私ども団体としての公式の意見集約を仕上げるところまでまいりませんでしたので,大変恐縮でございますけれども,本日の意見陳述は,その団体で理事長を務める私の責任の範囲でのものというふうに御理解を賜れば幸いでございます。   今回お話のございました要綱骨子には,2つの点がございますけれども,私ども今日申し上げたいのは,第二の危険運転致死傷の罪の改正につきましては,特に申し上げることはございません。第一の自動車運転過失致死傷の罪の新設という関係でございます。この点につきましての具体的な意見に入ります前に,ごく簡単に私どもの基本的な考え方,交通事故の防止あるいは安全確保につきましての基本的な考え方と,最近の事故の情勢について,ごく簡単にお話をさせていただきたいと存じますが,私どもの業界も自動車を使って商売をするものでございますので,交通事故の防止,撲滅ということについては,非常にこれは重大な関心を持っておりまして,私どもの業界の最重要課題ということで,これまでも一生懸命取り組んできたつもりでございます。その基本姿勢にはもちろん変更もございませんし,これまで以上に積極的に取り組んでいきたいということを類似の事業者大会などでも決議をしながら進めてきております。   実際問題といたしまして,諸規制が非常に強化をされ続けておりますので,こうした重大な事故,あるいは本当に危険運転致死傷罪の適用を受けるような事故が発生をいたしますと,現在の実際の世の中の流れといたしましては,ほとんど事業の継続が困難な状況も出てきておりますので,これは本当にいわば事業者にとりましても事故の抑止・撲滅というのは,死活的な問題になってきておるのが実情でございます。そういうことで,私どもとしましては,様々な取り組みを関係行政機関の諸規制に対応し,あるいはその御指導を得て進めてきているところでございます。   その中で,事故の実情でございますけれども,これはもうこのような審議の中で十分に御案内のことかもしれませんけれども,私どもが承知しておりますところでは,この自動車の交通事故は,関係者の総合的な取り組みによりまして,現在非常に漸減傾向をたどりつつあるというふうに理解をしておりまして,直近の平成18年の交通事故の統計,これは警察庁が先般発表されましたけれども,死亡事故は昭和30年の水準に下がったということを伺っております。昭和30年といいますと,車両の我が国の保有台数も150万台,現在の7,800万台の約50分の1ぐらいの時代でございまして,道路整備の状況も非常に低うございましたから,現実の走行距離などもさらにそれよりもはるかに小さい状態だったと思われますけれども,現在様々な対策が成果を上げる中で,このような減少傾向が明らかになった--もちろん油断はできないわけでございますけれども--このようなことが今動いているというふうに考えております。   その中で,私どもの分野の事業用の自動車のこれが第一当事者となる死亡事故件数でございますけれども,全体が対前年比で7.2パーセントの減であるところを,10.4パーセントの減ということになっておると承知をしておりまして,私どもの分野ではここ数年,最近では平成12年あたりを一つの山といたしまして,減少が続いておるような状況でございます。   また,この背景に,やはり道路交通法に基づく様々な規制の強化,あるいは罰則の強化,取り締まりの強化,また国土交通行政サイドでのこれは主に事業者に対する知恵でございますが,こちらの方の安全規制も逐次強化をされてきているところでございます。トラックの関係でいいますと,スピードリミッターなどというものも平成15年から強制をされまして,これは大型トラック8トン車以上に対して,高速道路を走行する際に,もう物理的にスピードが出ないようにする。80キロ制限ということになっておりますが,これが90キロ以上は幾らアクセルを吹かしても,いわゆる燃料が送り込まれないようになって,それ以上のスピードが出せないという本当のもう物理的な強制措置がとられまして,昨年8月で所要の大型車に装着が完了したようなところでございますけれども,そういったこと。その他,様々な安全面での規制の強化,また最近は技術も日進月歩でございまして,いわゆるその衝突防止装置というような,センサーで前方車両との極端に接近した状況を確認して,自動的にブレーキが作動するような装置でありますとか,いろいろな技術面での進歩も,そうした事故防止を支える一つのハード面での対策として進んできておりまして,私どもとしてはこのようなものの普及促進に,業界として様々な会員事業者への助成措置などにも努めているというようなところでございます。   そういうことで,私どもにとりましても交通事故の防止,撲滅,安全確保,これは最大の課題といって決して過言ではない状況でございますが,また先ほど申し上げました危険運転致死傷罪の創設につきましても,これも私どもとしてもやはり本当にあってはならない,特にプロドライバーとしては絶対に許されないような悪質,反社会的な事件は,これはもう何としても防止しなければならないということでは,全く同じ立場でございまして,厳しい法制がしかれたことも,またその抑止に効果があるのであれば,これはもうありがたいことではないかというふうに考えておりますが,ただ,今回のこの要綱にございます自動車運転過失致死傷の罪の新設が,業過事件の懲役5年を実質7年まで引き上げるという改正かと存じますけれども,この点につきましては,私ども自動車運転をいわば商売の基本にする,また昼夜を分かたず輸送サービスに従事する事業といたしましては,これについては大変にやはり影響するところは大きいであろうと考えておりまして,まことに恐縮に存じますけれども,にわかには賛成をいたしかねます。   むしろ,やはり同じ業務上過失致死傷の罪の中で,自動車のみが先ほど来申し上げたような全体の総合的な努力によって,いわゆる死亡事故も昨今では全体の致死傷事故も減少の方向をたどり始めたこの時期に,この自動車のみについて,これを特別に業務上過失の中で特に重罪を科するということについては,果たしてそれはどのような考え方に基づくものであるかという点については,実は私どもまだ要綱をいただいたばかりで,具体的な物の考え方を行政当局あるいは司法当局からお伺いしたわけではございませんので,十分認識のないまま申し上げているかもしれませんけれども,素朴な最初の印象としましては,そういうことを感じております。   特に,やはり道路交通法なども今国会に大幅な,また飲酒運転対策などを考慮した改正が提出が想定をされておりまして,既にパブコメにも付されておられますし,その中で罰則の大幅な強化や,あるいは重大な違反を起こした際の免許の欠格期間の延長,これは従来3年の欠格期間,免許を取り消されてから再取得をする期間が,これが5年に平成9年に延ばされまして,今度の改正ではさらに飲酒運転等の重大なものは10年に延ばそうと。いわば欠格が非常に長期化するというような形,こういった改正も予定をされていることをよく承知をしております。   こうした行政法規における様々な規制措置あるいは罰則の強化ということは,これは1つかと思いますし,それなりにピンポイントされた有効性というものもあろうかと思うのでございますけれども,やはり刑法というと,刑罰の基本法でもございますし,ここの改正については,刑罰の引き上げについてはやはり慎重に御検討いただくのは基本かと思いますが,特に過失犯の処罰を引き上げるということにつきましては,ぜひとも慎重に御検討を賜りたいというのが私どもの今の気持ちでございます。   危険運転致死傷罪が過失とはとらえ切れない,いわば極めて悪質な故意に相当するほどの,準故意というふうに物の本では拝見をいたしますけれども,そのようなものについての刑罰の引き上げは,これは社会的に考えましてもう十分に了解できるところかと思いますが,仮にそこまでの立証ができない。やはり過失の範疇におさまるものについて,刑の上限を引き上げてということについては,やはり過失犯の処罰の本質にさかのぼって,十分に慎重な御議論を尽くしていただくべきではないのかというのが,私どもの立場でございます。   これは,正直申し上げまして,やはり自動車を利用して一生懸命輸送サービスに努める仕事でございますので,この点について仮にこれが引き上げられました場合には,様々な不幸な事故に遭遇した私どもの従業者が,やはり非常に大きな刑罰の対象となり,また社会的にも大きな批判のさらに対象になるということで,それがもし過失という認定の範囲にとどまるものであれば,やはりある一定の限度は設けられるべきではないのかという気がしております。   正直申し上げて,やはり私どものような営業者が交通事故を起こし,またそれが重大な結果でございますと,それはもうほとんどそのいわば加害者の立場に立った方々は,仕事も続けていくことはもちろんできませんし,また社会的な復帰の可能性も非常に苦労といいますか,困難なものが多い事例をたくさん聞いておりまして,ある程度本当に過失のありように応じた処分というものを,お願いをしていきたいということでございます。   被害者の皆様の,あるいは家族の皆様の痛切な心情を考えますと,私どもの方はかなり大きな車両でございますから,結果が重大になることも多ございますので,大変に恐縮かつ申し上げにくいことを申し上げたつもりでございますけれども,やはりぜひともこれが刑法の基本法のいわばオーバーオールに自動車だけを対象として,そのような措置をとられるということについては,最大限,慎重な御検討をお願いしたいということと,大きなトレンドとして関係者一体となった努力の中で,非常に事故も減少の方向をたどってきている状況でございますので,むしろそうした道路環境,交通環境の整備によって,私どもは事故が最も有効に減少させていくことができるだろうというふうに,仕事を通じて考えております。   端的に申しまして,日本の交通事故の構造は,歩行者との関係が非常に国際比較をして多いと言われているようでございますが,日本の歩道の整備率といいますか,車道と区分された歩道の整備率は,まだ1割をちょっと超えたところだというふうに,これは市町村道を含めて言われております。私どもとしては,関係行政機関にもそうした歩車道の分離,そういった整備もできるだけ御配慮をお願いしたいということも申し上げておりますので,そういったハード,ソフトにわたる道路交通環境の整備をいわば中心にして,お答えをいただくのが有効ではないかというふうにも考えているところでございます。   ちょっと長くなりましたけれども,以上でございます。 ● どうもありがとうございました。委員,幹事におかれまして,何か御質問がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。本日お伺いした御意見を踏まえて,さらに慎重に審議を進めていきたいと存じます。どうもありがとうございました。 ● ありがとうございました。           (「社団法人全日本トラック協会」 退 室) ● 長時間にわたって意見を伺っておりますので,ここで休憩をとりたいと存じます。しばらく休憩にさせていただきます。           (休     憩) ● よろしいでしょうか。では,会議を再開させていただきます。           (「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」 入 室) ● 部会長の○○でございます。本日はお忙しいところお越しいただきまして,ありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明申し上げます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,皆様にお越しいただいた次第でございます。それではよろしくお願いいたします。 ● 飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会の幹事をしております○○と○○でございます。   本日は法制審議会にお招きいただきまして,私たちの意見を述べさせていただく機会をちょうだいいたしまして,ありがとうございます。ただいまから私たちの意見をお話しさせていただきたいと思います。   まず,お手元に資料が届いているかと思いますが,まず3枚が私たちの意見及びその背景と説明でございます。後ほど○○の方から読み上げさせていただきます。それから,共同代表をしております○○,それから○○,それから○○,それぞれの事件の概要を書いた新聞記事がございます。それからもう一名の○○の記事もございますが,今日は参加しておりません。それからその後,「飲酒・ひき逃げ犯に対して厳罰が下されるよう,刑法も含む関連法の改正を要望します。」という署名用紙と,それからそれを求めるチラシがついてございます。それからあと,危険運転致死傷罪の法の抜け穴について記載された新聞記事を2枚添付してございます。それから最後に,「日本の論点」文芸春秋編で今年出ていますその中で,私たち○○,○○が書いた記事,これが3枚ついてございます。これが今日お持ちした資料でございます。   それでは○○の方から内容についてお話をさせていただきます。 ● ○○と申します。それでは上から3枚を少し読み上げさせていただきたいと思います。   刑法改正に関する諮問内容についての意見。飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会。   意見の要約です。 1,自動車運転過失致死傷罪の新設については,大いに評価する。ただし,諮問されている法定刑の懲役7年は低過ぎる。致死罪の場合は懲役15年,致傷罪の場合は懲役10年としていただきたい。   2,危険運転致死傷罪の適用範囲を自動二輪も含む「自動車」全般に拡大することについては賛成する。   3,その他,「(仮称)危険運転立証妨害罪」の新設をぜひ検討いただきたい。   以下,背景と説明をさせていただきます。   1,私たちは飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者であり,2005年7月に全国連絡協議会を結成し,全国で署名活動を展開するとともに,法務大臣に対して飲酒運転で事故を起こし,現場から逃走するいわゆる飲酒・ひき逃げに対して,逃げ得とならないように,より厳罰が下せるような刑法を含む関連法の改正を要望してきています。   既に3回にわたり,合計18万6,120名分の署名簿を提出してまいりました。ちなみに昨日時点で手元集計しましたら,28万13名集まっております。そして今回の刑法改正には大いに期待しているところであり,自動車運転による人身事故を従来の業務上過失致死傷罪と分離することを英断されたことに対しては,大きな前進であると評価するものです。これによって危険運転致死傷罪の適用に係るハードルの高さの緩和と,法の持つ抑止力が補完されることが期待できるからです。   2,東名高速2児焼死事故を契機とする2001年の危険運転致死傷罪の新設は,翌02年の道路交通法の改正と相まって,酒酔い運転に対して大きな抑止力となり,悪質危険な飲酒運転による悲惨な犠牲者は減少しました。しかし一方で,飲酒運転で捕まったら重い罪に問われるということを知っているがゆえに,飲酒運転の事実が発覚するのを恐れて,事故現場から逃走し,アルコールが抜けてから出頭する,あるいは逮捕されるという罪に罪を重ねるひき逃げ事犯が急増しています。   3,これは危険運転致死傷罪の構成要件である「酒酔い運転」が現行犯でないと立証が困難であることや,危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪の法定刑の差が大きいことがその主因です。つまり,酒酔い運転の上での死亡事故の場合,危険運転致死傷罪が適用されたら懲役20年の最高刑にも処せられるのに対して,加害者が現場から逃走し,アルコールの影響がどのようであったかを正確に把握できなくなり,その立証が困難となってしまった場合,業務上過失致死罪と道路交通法違反(救護義務違反)との併合罪をもってしても,その最高刑は懲役7年6月にしかなりません。すなわち,現場から逃走した方が逃走しなかった場合より刑罰が軽くなるいわゆる「逃げ得」が横行しています。なお,飲酒・ひき逃げ事犯の多くは立証困難なため,酒気帯び運転さえ訴因に含まれず,したがって統計にもあらわれてきません。   ちなみに今日こちらの方に参加しております共同代表の,真ん中に座っております○○の事件,北海道の江別市で起きた事件,並びに皆様から見ていただいて一番右側の神奈川県茅ヶ崎の○○の事件も,何時間も経ってからあるいは何日も経ってから加害者が逮捕されたり,出頭したりしてしまっていたために,酒気帯び運転の罪名では起訴されていません。危険運転致死傷罪の適用件数も2002年の322件から,年々漸減してきています。   4,もとより,飲酒運転で事故を起こして負傷させてしまった人を救護せずに,現場を立ち去る飲酒・ひき逃げという行為は,自己保身の勝手な行為であり,絶対に許されてはならない行為です。事故後,直ちに救護措置がとられていれば,助かっていたかもしれない命も,加害者が逃げることによって,被害者が救護されるまでの時間が長引き,最悪の結果を招いてしまうこともあります。   5,現在,ひき逃げについては警察庁が道路交通法の改正を検討していて,今国会に上程されると伺っています。これは大変評価できることです。公表のとおり,道路交通法の救護義務違反の最高刑が懲役10年に引き上げられることになれば,現行の懲役5年に比べて大幅に厳罰化が図られることになります。しかし,もし自動車運転過失致死傷罪の法定刑が懲役7年にとどまり,酒酔い運転の上で人身事故を起こした加害者が現場から逃げたために,危険運転致死傷罪での起訴が見送られた場合,本罪が適用され,救護義務違反との併合罪をもってしても最高で懲役15年までしか科すことができません。この最高刑は酒気帯び運転が加味されても変わりません。つまり,飲酒運転をして人身事故を起こしたら逃げればよいのだというとんでもなく悪質な考え方が,ドライバーの間で蔓延してしまうことは必定です。これでは,危険運転致死傷罪がますます適用されなくなることが危惧されるばかりではなく,その抑止力も期待できなくなってしまいます。   6,もし,自動車運転過失致死傷罪で人をあやめた場合の法定刑を懲役15年以下,人を傷つけた場合を懲役10年以下とできるのであれば,本来危険運転致死傷罪に該当する事犯で,それがひき逃げによって立証困難な場合でも,併合罪でそれぞれ22年6月,15年となって,危険運転致死傷罪に比べてより厳しいか,あるいは等しい罰則を科することができ,逃げても無駄であることを悪質ドライバーに知らしめることが可能となります。   7,昨年8月25日に福岡市で発生した飲酒・ひき逃げ3児死亡事件を契機に,国を挙げて飲酒運転を根絶させようという機運がいまだかつてないほど高まっています。私たちも署名活動を続ける中で,国民の意識の確かな変化と,厳罰化への期待の手ごたえを感じています。また政府も一丸となって,この目標に注力している中,基本法である刑法の改正で自動車運転過失致死傷罪が新設されても,その法定刑の低さゆえに,危険運転致死傷罪の持つ法の抜け穴を追認することになってしまうことになるのは,到底,納得できるものではありません。   8,さらに,自動車運転過失致死傷罪がすべての自動車運転による人身事故を対象とするならば,昨年9月25日に発生した埼玉県川口市の保育園児4人死亡事件のように,現行の危険運転致死傷罪のいずれの要件にも当てはまらない「ながら運転」を常習的に行っているような悪質な加害者に対しても適用されることから,たとえ過失犯にしか問えないとしても,結果が重大な場合には厳しい罰則が科せられるような法定刑の設定であるべきだと思います。   9,もしどうしても自動車運転過失致死傷罪が,業務上過失致死傷罪やその他の罪との量刑のバランスを欠くなどの議論があり,致死罪の法定刑を懲役15年以上とすることが困難な場合,「(仮称)危険運転立証妨害罪」を新設してください。すなわち,飲酒・ひき逃げや,事故直後にさらに飲酒をし,事故前の飲酒量を不明にする重ね飲み,あるいは福岡の事件で加害者のとった大量の水を飲んで体内アルコール濃度を薄めようとする行為を許さず,危険運転致死傷罪と同等かそれ以上の刑罰を科せるようにすることによって,法の抜け穴をふさぐことが可能となります。被害者の救護もせず,法をかいくぐって逃げ得を狙う,あるいは危険な運転をしていたことの立証を著しく困難にさせようとする悪質きわまりないドライバーが,現実に懲役2年10か月や懲役3年といった軽い刑罰で,あっという間に社会に復帰し,そのことで被害者や関係者が深刻な二次被害を受けることのないような法となるように,御配慮いただきたいと切に願います。   以上です。 ● 委員,幹事におかれまして,御質問等ございますか。 よろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。本日はお忙しいところ,お越しいただきまして感謝申し上げます。ただいまお伺いした意見を踏まえて,さらに慎重に審議を進めて参りたいと存じます。本当にありがとうございました。 ● 一言だけ,共同代表の○○からよろしいでしょうか。 ● はい,どうぞ。 ● 共同代表を務めております○○と申します。   私は検察官に法の矛盾を訴えるんであれば,署名活動でもして法を変えなさいということを3年前に奄美大島の検察官に言われました。そのことが今の私たちの署名活動を始めるきっかけとなっております。そして,昨日までに28万,先ほど申しましたが,28万13名の署名を集めてまいりました。たくさんの人の思いが込められた28万人です。本当に皆さんでよく考えていただいて,飲酒・ひき逃げが逃げ得とならないように,国民の声を聞き届けていただきたいと思います。   よろしくお願いいたします。 ● 北海道江別という町から来ました○○と申します。私も16歳の息子をちょうど4年前です。2月12日に新聞配達をしにいく途中で,朝までお酒を飲んでいた男にひき逃げされました。何時間もたって,7時間,8時間たってから逮捕です。自首したわけではありません。警察が犯人を見つけてくれました。そこから自供するまでに何時間もかかるんです。7時間ぐらいかかったと警察の人から聞きました。ということは,10時間以上たっているんですね。だから呼気もとってもらえずに,お酒を飲んでいたから怖くなって逃げたという供述さえも,刑事裁判では何も問われない。完ぺきな逃げ得だったんですね。その逃げ得ということを初めて知ったんです。こんなことがずっとまかり通ってきたのかということで,すごいショックを受けました。   どうかこの逃げ得ということをなくすための法律,きちんと子どもたちにきちんと教育できる法律を作っていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ● 神奈川県茅ヶ崎市から参りました○○といいます。2002年に25歳の息子を亡くしました。やはり飲み放題の店で2時間飲んで,2時間後の事件でした。逃げてしまったため,5日後に逮捕されましたけれども,危険運転致死罪にはなりませんでした。その中で,若い担当検事さんは,今の法律ではどうにもならないと言って,とても私たちに対してすごく悔しい思いをぶつけてきました。本当に今の法律ということで,私たちも検事さんもとても泣いていました。それで裁判中にも窃盗の立証をもう一つするんだとか,すごく頑張って,それで窃盗と合わせて刑を出してくれたほどです。皆さん,本当に国をよくするために,検事さんたちも本当に泣いておりますので,現場の声も聞いてよい法律にしてください。よろしくお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえて,さらに慎重に審議を続けていきたいと思います。           (「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」           退 室)           (「NPO法人交通事故後遺障害者家族の会」 入 室) ● 当部会長の○○でございます。本日はお忙しいところ,まことにありがとうございます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,皆様にお越しいただいた次第です。よろしくお願いいたします。 ● 本日は,NPO法人交通事故後遺障害者家族の会の意見を聞いていただくことになりまして,ありがとうございます。   今日は一応ここに簡単なレポートを陳述書にしたものを持ってきましたので,これを私たちの会員である○○に読み上げさせまして,あと質疑応答ということにさせていただきたいと思います。   よろしくお願いします。 ● ○○と申します。よろしくお願いいたします。   まず,四輪車の枠を外して,二輪車も含めるという案に関しては,当会としてはもう賛成で,それはもう当然のことであるというふうに思っています。   それでは,それ以外の部分でこのペーパーを読み上げさせていただきます。   まず,重度障害者という部分からその実情に関してなんですけれども,私たちの会はちょっと特別な活動をしているので,そのことを御理解いただきたいと思って読ませていただきます。   多くの障害者団体の主な関心事は「福祉」による救済ですが,当NPOは交通犯罪によって脳神経に重度障害を負った被害者とその家族により構成されております。日本では交通事故による重度障害者の人権回復と事故防止について声を挙げている,唯一の特長を持つ団体です。   交通事故で重度障害を負った被害者は,数か月以上も意識が戻らないことが珍しくありません。そのため,家族は全霊を助命と介助に費やすこととなり,事故の原因調査や加害者の処罰について考える余裕がないのが実情です。たとえ被害者の意識が戻っても,脳に障害を負っている場合は事故の状況を説明することは困難なため,重度障害者は無実の過失責任を負わされる確率が高くなります。こうした事情があることをまず第一に理解していただきたいと思います。   つまり,交通事故の被害に遭う,被害という言葉ですけれども,こちらの会の場合は,その被害の実態を自分の言葉で伝えることができないために,本来は被害者であるはずなのに,いつの間にか加害者の扱いをされる,そういうケースが非常に多く,その部分で一歩間違うと全く違う事実認定でこちらが処罰されてしまうということにもなりかねないという危険を持っています。   そして,事故を減らすために。交通事故が起きた場合は,その結果の大小ではなく,あくまでも原因にこだわって厳しい処罰をしていただきたいと思います。事故の原因が不可抗力に近い場合と,そうでない事故の場合では,ドライバーの過失には雲泥の差があります。つまり,注意すれば防げたであろう事故を起こした場合には,死亡とか軽傷といった被害の大小にこだわらない,メリハリの効いた厳しい処罰をしていただきたいのです。   そうでなければ,処罰を受けたのは運が悪かったからだと思われ,結果的に安全運転遵守意識が乏しくなり,本来,防げるはずの事故を減らせないという現象が生じます。例えば現状で見ると,前方不注意や横断歩道上の歩行者を無視するような事故についての処罰が軽いように思います。わき見運転やカセット操作中の事故は,前方注視をおろそかにし,その結果についてはだれにでもわかることですから,被害者が重傷とか軽傷とかの結果にこだわらず,厳罰にしていただく必要があるでしょう。また,特に横断歩道上での事故は,被害者の負傷程度に関係なく,従来よりも厳しい処罰をしていただきたいと切にお願いします。   これは○○代表の事故の状況ですけれども,私の息子は小学生のとき,自転車で横断歩道を横断中に対向車線から右折進入してきたトラックに衝突されました。脳挫傷の重傷を負い,前頭葉切除という緊急手術で,奇跡的に一命は取りとめたものの,結果的には1級の重度障害者になりました。事故から19年経過し30歳となった現在も,介護を受けながらの生活を余儀なくされています。青春もおう歌することができず,家族もあの日から1日も休むことなく介護の毎日を過ごしています。   息子が受傷した事故現場の交差点は見通しのよい場所でしたので,加害者が前方をよく見てさえいれば防げた事故でした。しかし,意識のない被害者が事故状況を説明できないことに乗じて,刑事事件は加害者の一方的な説明だけをもとに略式起訴となり,罰金20万円という軽い処罰で終わってしまいました。私は当時,警察や弁護士に懸命に相談し,異議を申し立てましたが,結局刑事記録については徹底して秘匿され,何も知ることができませんでした。   私の息子は事故翌年の春に控えていた中学進学もあきらめ,事故の日から3年半の入院とリハビリを余儀なくされました。さらに,その後の民事裁判の苦しみを考えると,被害者側の痛みに比べて加害者の処罰はあまりにも軽く,不公平であるといわざるを得ません。   数年前,私が北米やスイスを旅行した際,歩行者が横断歩道の前に立ったら,車がすぐにとまって歩行者を通す光景を多く目にしました。日本の横断歩道では,逆に車道の車が通り過ぎてから歩行者がわたっているのが実情です。被害の大小にかかわらず,横断歩道上での事故の処罰が厳しくなれば,ドライバーはこの安全地帯をもっと尊重した運転をするようになるはずです。そして,ドライバーが横断歩道を尊重するようになれば,歩行者も横断歩道を尊重し利用するようになるはずです。   上記を踏まえ,交通弱者がより守られる社会になるよう,自動車運転過失致死傷罪の適用対象を御検討いただくことを強く要望いたします。   なお,被害者が検察庁で刑事記録の開示を求めた際,各地検により対応が大幅に異なり,大変な苦労を強いられているという現状があります。このことに関し,当NPO会員から届いた意見を添えますので,別紙につけておりますが,あわせて御検討ください。これは,検察庁で調書の閲覧などをしたときに,各地検によって全くその対応にばらつきがあるという実情を別紙にまとめさせていただきました。   では,ちょっと続けて別紙の方も御認識いただくために読みます。   刑事記録の閲覧・謄写の手続は,本来,どこの裁判所や検察庁で行っても開示方法やその範囲は一律であるべきです。ところがその運用実態にはかなりばらつきがあり,不利益を被っている被害者が多数存在することが当会の調査でも明らかになっています。ここでは,ちょっと2つのケースを言いますけれども,1つは静岡県のある検察庁でのケースですけれども,刑事記録を閲覧・謄写する場合,多くの裁判所ではカラーコピーを出して,写真がかなり鮮明にとれるのに,こちらでは白黒コピーのみしか許されなかった。白黒コピーでは写真がほとんど鮮明にわからないので,できればカメラで接写をさせてほしいというふうに被害者はお願いしました。ところがカメラは持ち込み不可だということで,一度は断わられ,そして再度問い合わせをしましたら,一部だけだったら許可するということで,カメラでの接写を許されたということです。これはもうほかの検察庁では当たり前のように接写をしているところもあるのに,いまだにこういう形で写真を撮るということに対して,非常に苦労をしている被害者が全国各地におられます。   それから,ケース2の茨城県のケースですけれども,こちらは同じように刑事記録を裁判所で謄写した場合と,検察庁で謄写した場合で,同じ事件の同じ調書であるのに,裁判所で謄写した記録は126ページ,検察庁で謄写した記録は41ページ,これだけしか手に入れられなかったということで,こういうことも事実関係を被害者側がしっかりと確認するためには,こういうものの開示の範囲というものもぜひ統一して,不利益のないようにしていただきたいというのが一つお願いとしてあります。   やはり,厳罰化ということで,様々な会は刑罰を引き上げるというふうなことに皆さん要望をしていらっしゃる会が多いように思いますけれども,刑罰の強化の前に,やはり事実関係をしっかり捜査していただくということを,強く願いたいです。明らかに加害者が例えば泥酔運転をしているとか,かなり危険な運転をしているということで,もうそれが客観的にはっきりしている場合はいいんですけれども,本当に真夜中の事故で,しかも被害者がこういうふうに植物状態になったり,亡くなったりしている場合は,もうその事故の事実関係自体があいまいに処理されてしまうケースが多いように思いますので,そのあたりをまずその段階からしっかりと捜査の強化ということをしていかなければ,幾らこの刑罰の強化とか新しい法律ができても,なかなかそれが正しく適用されないんではないかというふうに感じています。 ● 以上です。 ● 委員,幹事におかれまして,何か御質問がございますか。よろしいでしょうか。   では,以上で終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえて,当部会でさらに審議を進めて参りたいと思います。本日はどうもありがとうございました。           (「NPO法人交通事故後遺障害者家族の会」 退 室)           (「北海道交通事故被害者の会」 入 室) ● 当部会長の○○でございます。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。既に御案内のところと存じますが,皆様から御意見を伺うのに先立ちまして,その趣旨・目的を改めて御説明させていただきます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,お越しいただいた次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ● 北海道交通事故被害者の会の代表をしています○○です。意見の機会を与えていただいたことに感謝いたします。よろしくお願いいたします。   最初に,強調したいことなんですけれども,私たちが厳罰化を望むのは,感情に流された報復という意識では決してないということです。理不尽にまさに通り魔殺人的被害で命や健康を奪われた私たち被害者遺族です。悲嘆と絶望の苦しさを痛いほどわかる当事者であるからこそ,同じ被害者を生まないでほしい,そういう社会を作ってほしいと願い,それが死者への供養である,そういう純粋な気持ちになるわけです。   私たちが常に思い浮かべるのは,命の尊厳という言葉です。願いは奪われた肉親を,損なわれた健康を,元のままで返してほしい,それしかないわけなんですけれども,それがかなわないのであれば,せめて犠牲を無駄にしてほしくない,命の重みに見合う刑事罰を事故抑止につなげていただきたい,そう願うわけです。その意味で,私たちはだれよりも真剣に交通犯罪撲滅を願い,その方策を考えていると自負しております。   私たちの願いと活動内容については,お配りした封筒の中の会報及び冊子版「いのちのパネル」私たち体験講話もあちこちでやっておりますけれども,そこに凝縮しておりますので,ぜひお読みいただきたいと思います。   私たちは,会が発足してから間もなく2002年に1年ほどかけて要望事項をまとめました。これはとじた配布資料の後段にあるわけですけれども,その要望事項の中で4年前の当初から,交通犯罪を特別類型として厳罰化することを掲げておりました。そのこともあって,今般,法務省が示した要綱案について,大変異議あるものというふうに意を強くし,評価をしております。昨年9月25日に川口市で起きた悲惨な事件,これを例に出すまでもなく,今日多くの国民に重大な死傷被害を与えている交通犯罪,事故の原因というのは,飲酒やひき逃げだけではもちろんありません。法体系の抜本的見直しを行って,危険運転致死傷罪適用要件の実態に合わせた改定,飲酒の場合の逃げ得という抜け道を許さない方策,そして前方不注意,速度違反など,重大結果につながる危険運転が,命の重みに見合う刑事罰によって裁かれることを切望するものです。   御承知おきと思いますけれども,2005年において生命・身体に被害を受けた犯罪の被害者数120万を超えます。このうち,何と96.3パーセントは道路上の交通事故犯罪にかかわる,自動車にかかわる死傷なわけです。公の道路上で毎日のように運転者という加害者に通り魔殺人的被害を受ける事件が勃発し,ある意味,感覚麻痺に陥っているこの異常事態を放置しないで,被害ゼロの道へと確実につながる法改正になるよう,委員の皆様方には格別の御尽力をお願いするものです。   意見書の意見の1について述べます。自動車運転過失致死傷罪新設は大賛成です。しかし,その刑の上限は7年ではなく,10年以上の重罰とすべきという意見を持っています。さらにつけ加えるならば,被害者が死亡した場合について,下限を上げまして短期1年以上というふうに引き上げて,罰金刑という選択は削除していただきたい。   その理由です。自動車運転はそもそも危険な行為である,こういう社会的共通認識があるべきです。ですから過失犯であっても,結果の重大性に見合う処罰を科すことが抑止のために不可欠というふうに考えます。現状では命の重み,被害の重大性,これに見合う刑罰とはなっていません。そのことが交通事犯による死傷被害の常態化という大きな社会問題を呈していると思います。   1968年の業務上過失致死の改正がありました。しかし,前方不注意や速度違反など,危険きわまりない行為による死傷事件が,窃盗,詐欺罪の最高刑懲役10年に比べその半分に過ぎない,そういう軽い刑で扱われていますから,危険な運転で人を殺した場合にも事故だから仕方がないというような深刻なモラル低下が蔓延しています。そのことによって,自動車運転による死傷事件の被害者が一貫して増えている,そのことは明白だと思います。   自動車が実際に凶器となっているのに,それが自覚されていない。どうしてか。運転免許が不適格者にも容易に交付されている,あるいは運転行為があまりにも一般的,日常的な行為となって,そのことで運転者に意識されづらくなっている,そういうことだと思います。本来は許可制のもとで交付を受けている行為です。違反や過失があれば,相手の命を容易に奪う,高い注意義務を伴うということを承知しての行為ですから,結果の重大性で重く罰せられることは当然だと思います。   不可逆的な死傷という重大結果を招く行為である,そのことを重要視していただきたいと思います。法治社会において,法が第一義的に尊重し守るべきものは,人命ではないでしょうか。それ以上のものはこの社会にはないはずです。5年間前の危険運転致死傷罪新設がその適用要件のハードルの高さの問題から,実効的に作用せず,抑止力にならなかったという轍を踏まないために,要綱案の7年では軽過ぎます。上限を少なくとも10年以上に引き上げていただきたいと思います。7年にとどまるのであれば,同じ自動車運転によって引き起こされる危険運転致死傷罪との著しい格差が画然と残ってしまいます。飲酒運転で奪われた命と,わき見運転で奪われた命,どちらも車の不正使用によって奪われた命であるのに,一方は20年,最高ですけれども,こちらは7年,このような大きな差別があってよいものかと思います。   同時に,自動車運転における過失行為を特別類型として重罰化するのであれば,致死の結果について罰金刑の選択を許すことは,結果に見合わない軽い処罰の余地を認めることになって,厳罰化の趣旨に反することになります。罰金刑を廃止してください。下限を引き上げることによって,他の業務上過失致死との差異を明確にしていただきたいと思います。   次に意見の2です。意見の1に関連して,2001年の法改正で新設された刑法211条2項の「刑の裁量的免除」規定を廃止していただきたい。   理由ですけれども,この規定は検察官による起訴便宜主義によって,交通事犯の9割近くが不起訴となっている。この不当な現状を刑法が追認していることになります。さらには,自動車運転業務についてのみ免除が設けられているということで,交通事犯を一般の業務上過失致死傷罪に比べ,軽く扱うという間違った通念を広げることにもなってしまいます。   意見の3です。骨子第2の対象車両から四輪という限定を外す。このことについては全く異論がありません。   続けて意見の4,これは危険運転致死傷罪見直しに関連してですけれども,先ほど申しましたように,すべての危険運転行為の抑止となるように,危険運転致死傷罪の適用要件から内心的要素を除外するなど,大幅に緩和する法改正をぜひ検討していただきたいと思います。   そもそも通行中の人または車に著しく接近する行為,また赤色信号またはこれに相当する信号を無視する行為は,それ自体客観的に危険な行為なのですから,目的とか殊さらにとかいった超過的主観的要素がなくとも,処罰に値する,このように考えるべきだと思います。   危険運転致死傷罪施行から5年が経過した今,その5年の実態を踏まえて,所要の改正を行うことが急務だというふうに考えます。   次に,幾つか実態に即して,私たちがなぜ今回新設された法の7年ではなくて10年以上ということにこだわるのかについて,補充したいと思います。   実態ということで,実際の被害に遭った写真を持ってきています。私の娘です。川口市の事件と同じく,カーラジオの操作でわき見運転をした加害者によって,歩行中に命を奪われました。しかし,その加害者に下された刑は禁錮1年,執行猶予付でした。当時,10万円相当のバイク数台が盗まれた罪,それよりもこの加害者の私の娘を殺めた加害者の罪が軽いということを知って,私は愕然としました。私は実はその無念さからこの10年以上ですけれども,このことを伝える活動をしております。皆,北海道の子どもたちですけれども,当時中学校2年生の○○さんでした。犬の散歩中に前方不注意の車にひかれて若い命を奪われました。やはり加害者の罪は執行猶予でした。当時,北海道でハンターがエゾシカと間違って競走馬3頭を射殺したという事件がありました。狩猟法違反,その撃つ時期とかなんかの違反なんですけれども,狩猟法違反に問われたその罪は懲役1年執行猶予でした。そのことを知った遺族は,この○○さんの遺族ですが,娘の命は馬の命と同じなのかと本当に嘆き悲しんでおります。   校門前のスクールゾーンで下校時間に12時過ぎです。多数の児童の前でひかれた当時小学校1年生,○○ちゃんです。7月ですから入学間もない。犯人は逮捕もされませんでした。執行猶予の付いた判決に,やはり執行猶予が付いたんですけれども,母親は私は法律のあり方がわからなくなりましたと,強い言葉で社会とか法律に対する不信をあらわにしました。   そして,自転車横断中にひかれた○○君です。加害の運転手に前方不注意がありました。市街地40キロ制限のところ,15キロオーバー--実際はもっとそれ以上なんですけれども--という速度違反が認定されました。しかし,一審は無罪です。今高裁で争っていますけれども,かけがえのない肉親を失って絶望のふちに落とされた上に,法律や社会にぬぐいがたい不信を募らせ,それによって生きる力も萎えてしまう,社会生活ができない,健康を奪われる,これが被害者の置かれている実態です。この加害者天国とも言うべき不当な庇護は,加害者が実は人間として当然なすべき反省や謝罪という加害者の思考,行動,その回路も閉ざしてしまいます。   中学校3年生の○○さん,この娘さんが犠牲になった事件では,制限速度50キロのところを,実際はもっとそれ以上なんですけれども,28.8キロ以上オーバーという加害者です。反対車線で通学途中の○○さんをはねました。そういう危険運転でありながら,一審はやはり執行猶予で,今高裁で争っています。法に守られているこの○○さんの加害者,嘘の供述を繰り返しました。そして何らの反省もなく,遺族に向かって「死んだ人間に何をしたってわからないでしょう。」と,こう言い放ちました。遺族は健康を害し通院し,その悲しみの中闘っています。   冒頭に感情的発露からの厳罰化の要望ではないというふうに言いました。しかし,あまりに不当な,あまりにアンバランスな法のもとでは,報復的な感情すら芽生えてしまうのではないか,このように私は危惧をしております。   私は10年以上の刑罰引き上げによって,これまでの悪循環,軽い刑によってモラル低下する,モラル低下によって事故・事件被害が多発する,そのことによって捜査あるいは防止策が後手に回って,再犯も防げない。私は悪魔のサイクルと思っていますけれども,これから脱却する最良の策と私は確信します。厳罰によって注意義務が徹底すれば事故が減ります。科学的捜査,原因究明,事故防止策,こういうものを徹底することができると思います。再犯も減ると思います。命の大切さがより意識されると思います。この安全・安心のサイクルへ踏み出す大きな一歩が,10年以上の致死傷罪新設だと思います。事故だから仕方ないという人命軽視の風潮が深く沈潜した社会の意識を変えるのは,容易ではないと思います。ある意味,5年から7年という罰則では何も変わらないということも心配しております。救護義務違反が5年から10年とする案が今出されています。どうか英断を下していただき,10年以上に踏み込んでいただきたい,そのことを再度申し上げて,私たちの団体からの意見とします。   よろしくお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。委員,幹事におかれまして,何か御質問等ございますか。 よろしいでしょうか。   本日はどうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえて,さらに慎重に審議を進めてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。           (「北海道交通事故被害者の会」 退 室)           (「TAV交通死被害者の会」 入 室) ● 部会長の○○でございます。本日はお忙しい中お越しいただきまして,まことにありがとうございます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,皆様にお越しいただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。   では,どうぞよろしくお願いします。 ● 関西を中心として活動をしておりますTAV交通死被害者の会の代表○○と申します。本日はこのような機会を設けていただき,どうもありがとうございます。   まず,今回の法案内容は,8日の法定刑引き上げをというものであり,昭和43年以来,約40年ぶりに重い扉が開くのだと感謝しております。ただ,上限10年という思いは,私たちの気持ちでは届いていませんが,7年という数字になってしまったことは残念に思っております。   もう一つ,危険運転致死傷罪の四輪以上という制限を取り除く内容については,委員の皆様,何の問題もなく御賛同いただけるかなと確信しております。当会にもとんでもない,自動二輪車に高校生のお嬢さんの命を奪われた遺族がおられます。本当に無念な思いでこの四輪以上を取り下げるということは本当にうれしいと思います。   業過の99パーセント以上が自動車運転のものであって,依然としてこの法律で自動車運転の事故を裁いているということについては,当然無理があると思っております。自動車運転を独立させることにより,一向に減らない事故を抑止することを目的とした法律を考えていただけるものと,私たちは大賛成です。   今回,法定刑の上限7年となっておりますが,年間1万人以上の死者を出している交通事故を抑止するには不十分だと私たちは思っております。年間100万人にも達しようという莫大な事故件数を捜査する警察官の数も少なく,また起訴率,実刑率も極めて低いのが実情だと思います。日本人の交通に関する規範意識,そして道路の環境なども交通事故を増加させる要因だと私たちも考えております。そこで,自動車を運転するドライバーに注意を喚起し,法定刑の上限を上げる,高く設定することも有効であると考えます。7年と10年とでは,国民に訴えるインパクトは大きく異なり,10年にすることでより多くの命が間違いなく救えると思っております。年間1万人以上の大切な命が交通事故によって失われ,またその家族を含めると何万人という国民が絶望の淵に突き落とされています。法定刑の上限を上げることにより,不利益を被る国民はいるでしょうか。もしこれに反対する人がいるとすれば,どんな理由を挙げるのでしょうか。私たちには命を優先する理由,思いつきません。反対をする人がいるとすれば,自分の家族を交通事故で失ったときに,取り返しのつかない後悔をすると思います。   私たち遺族は,既に大切な家族を失い,あるいは重度の後遺症により,日々の生活を奪われた者です。この法案が成立しても私たちの事件には適用されません。何のメリットもありません。私たちは悲惨さを知って恨みや不平を言っているわけでもありません。交通事故の悲惨さを知っている私たちが皆様に言い伝え,変えていく義務があると思っています。それが犠牲を無駄にしないということでもあります。こんなつらい思いを二度と国民にして欲しくはありません。どうか,この戦争と同じ,戦争による犠牲者に匹敵する多数の命を奪う交通事故を,論理だけではなく,人の心を持って審議していただくことを切にお願いいたします。 ● ○○と申します。よろしくお願いします。   そのようなことから交通事故の背景を考えてみますと,次のようなことが考えられるのではないかというように思います。それは一つに,自動車の安全性の向上,医療技術の進歩,このようなものが非常に大きく,死亡に至らなくても重度の後遺症に苦しむ被害者が多く出ております。国土交通省のホームページから見ますと,そのグラフにありますように,昭和45年を100とした割合で見ますと,重度後遺障害者は2.3倍に増えていると。確かに死者数は44パーセントとなっておりますけれども,それ以外の事故件数,死傷者数,これもそれぞれ増えていると。こういう現状にあります。これらは,法的にというのは難しいんですが,故意と呼べる悪質な交通事故と考えざるを得ない。確かに一般犯罪におきましても,平成10年から増加をし,14年度がピークになっております。これらは社会のモラルの低下が非常に大きな要因ではないかというふうに考えております。そうしますと,危険運転致死傷罪の適用要件が現在のところ非常にハードルが高いわけでありまして,今回の自動車運転過失致死傷罪の上限を見ますと,危険運転致死傷罪からの要件に該当しないものも,この自動車運転過失致死傷罪に該当するようになると。そうしますと,本当に7年でいいんだろうか。私は10年とする必要があるのではないかというように思います。   また,交通事故の悲惨さということにつきましては,これは審議委員の皆様はよくご存じだとは思われますが,被害者は一人ではありません。子どもが亡くなると両親,子どもの兄弟,または祖父母,これらが全員被害者なんです。残された者の悲しみとか苦しみ,これは生涯癒えることはありません。その一方で,加害者の方はほとんどの場合が刑務所に入ることなくて,事故前と変わらない生活を送っているのが現状であります。私たちの会の158家族中,加害者から評価できる謝罪を示されたという者は,1割にも過ぎません。ちなみに,昨年12月,私たちの会でアンケート調査をした結果を御紹介して,交通事故の悲惨さということについて御理解をいただければというように思います。   加害者は,捜査中に海外留学をした。私たち遺族への謝罪や,父への謝罪,墓参りもしないのに,自分の祖先への墓参りをしている。謝罪をしないどころか,たばこを吸って対応し,こちら側が悪いと言われ,すごく傷つきました。交通事故自動記録装置の解析が終わるまで,信号について嘘を言っていた。加害者の大幅信号無視と救護義務違反がわかった途端,供述を翻し,信号の認識がなかったとか,後続車にあおられていたとか,すべて嘘をつかれ,精神内科に行くはめになった。ほんの一例ですが,被害者の悲惨さということについて紹介させていただきました。   ありがとうございます。 ● 愛知県から来ました○○です。よろしくお願いします。   私は,2002年の8月に5名死亡,6人重軽傷という事故に家族を奪われました。その中の3人,母親と弟と息子,3人を亡くしました。そういう経験から話をさせていただきたいと思います。   今,ちょうど裁判が行われている昨年9月にあった埼玉川口市で起きた事故,保育園児らが多数犠牲になっておりますが,その意見陳述の中で,法律はむごい,何も悪いことをしていない園児たちに法律はむごい仕打ちをしている,しっぺ返しをしていると言われています。私も同じ経験をした遺族として,本当にこの言葉が心に響いています。皆さん委員の方々の御家族が,本当にこのような事故に巻き込まれたと想像して,それで考えていただきたいのですが,現在の業務上過失致死傷罪では,最高刑が5年となっております。それが7年になった。7年で本当に納得できますか。危険運転致死傷罪が適用されるものだと思っていましたというコメントも出ていますが,20年と7年,この差は非常に大きいと思います。どうかせめて倍増である10年,これを目指して委員の方には頑張っていただきたいと思います。   ありがとうございました。 ● 愛知県から参りました○○と申します。よろしくお願いします。   私は,子どもを平成14年の10月に亡くしました。近所の事故で,自宅近くで近所の人が加害者という状態でした。まず驚いたのは,ある日突然,交通事故の被害者遺族になったわけですけれども,子どもが亡くなって加害者が警察に逮捕・勾留されなかった。子どもたちが3人いて,そこで加害者が前方不注意で,うちの子どもを1人はねて死亡させたんですけれども,加害者は刑事裁判をしていく中で,前方不注意を認めている。そういう状況の中で,当然加害者は刑務所に入ったんでしょうと多くの方から言われました。裁判の結果,執行猶予が4年付いたという形になり,加害者は現在も私の自宅近くに住んでおります。裁判が終わった後,私は精神的に体調を崩しまして,引っ越しをして現在に至っております。   そこで気づいた幾つかの中で,一般の方は私も含めて交通事故で人を死なせたら,刑務所に入るのが当然でしょうというふうに思っているんだなと。自分もそうでした。でもそうではない現実を知りました。いろいろな遺族の方の裁判を傍聴していく中で,裁判官の方は遺族に謝罪をしてきなさいと諭してくださる場面をよく見るんですが,いろいろな遺族を含めて,私の加害者も裁判の後,謝罪は全くありません。謝罪をしない加害者がいかに多いのか。あるいは,1回や2回謝った。それを謝罪とする。私たち遺族は,1回や2回,すみませんでしたというのを謝罪だというふうにはとても思いません。あるいは,一生近く謝り続けてもらうか,供養してほしいというふうに望んでいる。物品を壊すのと人の命を奪うのは随分違うという認識でいます。   私も事故後,かなり抑うつになりました。子どもを亡くした親は多くの方がそうだと思うんですが,親が子どもを亡くすとかなり自責の念が強くなります。子どもが亡くなったのは自分のせいではないか。裁判もなく,加害者が刑務所に入ることもなく,のうのうと普通の生活をしている場面では,加害者は悪くないんだ。子どもが亡くなったのは自分のせいなんだと思いました。多分,多くの被害者の親御さんたちはそう思っていらっしゃるのではないかと思います。何でこんなに刑が軽過ぎるのかというのがとても大きな疑問です。刑が軽いから加害者は反省をしない。謝罪をしない。遺族が苦しむ。こういう悪循環のサイクルがあり,なおかつ,うちの加害者も事故を何回も起こしている加害者でしたが,再犯を繰り返す。その悪循環を断ち切るためにも,今回の量刑引き上げは,ぜひとも7年といわず10年,何年でもいいと思っています。多ければ多いほどというふうに思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ● 大阪府の茨木市から参りました○○と申します。よろしくお願いします。   私の当時19歳の一人娘は,5年前の2001年の12月に飲酒運転の加害者にはね飛ばされて,殺されました。加害者は20日間勾留された後,保釈されたわけですけれども,こちらの方から面談を申し入れました。3回の面談を加害者の方と私自身はしました。加害者の方は一応,すみませんということは言いますけれども,運転は絶対にやめないということを明言して,反省とか償いの姿勢は全くこちらの方に感じられませんでした。業過失と道交法違反ということで,公判起訴されて,判決は1年6か月の懲役ということで,実刑判決が下りました。刑務所の方に入りまして,1年半後,刑期満了後にまた面談の機会があったわけですけれども,全く以前とは変わっていないということで,全く反省の様子もうかがえなかったという状況でございました。   一方,恐らく今はそれからまた数年たっておりますので,加害者の方は運転をするというだけでなく,時には酒を飲みながらということで運転をしているんだろうということで,無差別に周りに危険をまき散らしているという状態かなというふうに想像をしております。   一方,被害者の遺族の私たちは,事故から5年以上経過しているわけですけれども,今でも何も癒されることはありません。同居しています祖母の方は,毎日現場の方まで行っています。妻の方はいまだに近所に出かけるというときに,帽子とかサングラスとかマスクとかいう物を手放すことができません。このように,日常生活を何の支障もなく過ごしている加害者に比べて,被害者の遺族の生活は激変を強いられることになります。こんなアンバランスは早期に是正しない限り,社会秩序は保てるわけがないというふうに思っております。   委員の皆さん,ご存じかどうかわかりませんけれども,私の友人で,大手の損保の友人がおりまして,そちらの方から聞いた話ですけれども,明らかに加害者が違法運転をしているという事故でさえ,加害者の方が任意保険に入っているので,謝罪に行く必要はないと,行くとしても,損保の方が行ったらいいんだと,そのために保険に入っているんやと嘘ぶく加害者が増えてきて,非常に困っているそうです。聞いた話では,当然のことながら再犯の率は非常に高いというふうに聞いております。一部の人たちであるにしても,彼らのモラルという意味で言いますと,地に落ちているということが言えると思います。近い将来に,再犯で犠牲を生み出す確率は非常に高いというふうに思います。それに伴って,社会秩序はますます低下していくと推測せざるを得ません。   以上,申し上げましたように,何の反省もせず,矯正もされない加害者の無謀な運転が放置されていることに対して,まず自動車運転犯罪の厳罰化を推進するということによって注意を喚起し,運転道徳の改善を促すことが最善策だというふうに確信をしております。早期の実現をお願いしたいと思います。   ありがとうございました。 ● 委員,幹事におかれまして,何か御質問ございますか。 よろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえて,さらに審議を慎重に進めてまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。           (「TAV交通死被害者の会」 退 室)           (「交通事故被害者遺族の声を届ける会」 入 室) ● 部会長の○○でございます。本日はお忙しいところ,本当にありがとうございます。   当部会におきましては,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,皆様にお越しいただいた次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ● それでは,交通事故被害者遺族の声を届ける会の代表をしております○○と申します。よろしくお願いいたします。早速,時間がありませんので,中身に入らせていただきます。   まず1番の,自動車運転過失致死傷の罪の新設について。これは既に皆さんのお手元に届いておると思いますけれども,そこの中にも書いてありますが,これでは足りないという認識であります。できましたら10年以上,我々は望んでいるということでございます。理由は,現行の交通事故処理システムは,加害者に対して刑事法でも民事法でも,制裁や再発防止の役目を果たしてこなかったと考えられると思います。今回の刑罰の引き上げに関する検討ですが,今よく厳罰化と言われておりますけれども,むしろ無力な刑罰に活力をつけるという改正ではないかとさえ考えております。さらにせっかく刑罰を引き上げ,事故抑止を図るにも,その運用が骨抜きにならないように,お願いを申し上げたいと思います。   次の2番の危険運転致死傷の罪の改正について。要するに,自動車というふうに改めるという部分ですけれども,これも意見書の中に書いておきましたけれども,私たちの会はこれに何ら反対する理由は見当たりませんということでございます。私からは以上で,次に会員の方から意見を述べさせていただきたいと思います。 ● 皆さんの中に,交通事故遺族の方がいらっしゃいますでしょうか。皆さんそれぞれに家族,家庭があったり,大切な方があったりすると思います。例えば皆さんのお子さんと,例えば連れ合いの方と,このまま突然もう二度と会えなくなったとしたら,それが交通事故によるものであったとしたら,仕方ないとあきらめられますか。交通事故なのだからしようがない,運が悪かっただけ,こんなことを周りから言われて,それでも「そうですね」と平然として生活できるとおっしゃれる方がいらっしゃいますでしょうか。昨日,あるいは今日,お家でどなたと一緒に食事されましたか。どなたとお話しされましたか。日常の生活の中でその人たちをかけがえのない大切な人とあまり意識して暮らしていないかもしれません。明日も明後日も,当たり前のように繰り返されると信じて疑うことのない生活を,ある日突然,一瞬の交通事故で奪われるのです。何でもないような日常が突然途絶え,元に戻ることはありません。そして奪われた命は,どんなことをしても取り戻せません。二度と会うことも話すこともできないのです。そんなつらい生活が想像できますか。失ってからでは遅いのです。   4年を過ぎましたが,いまだ真相が明らかにならない息子の事故のこと,二度と息子に会えないこと,その現実を受け入れられないのです。息子の帰りを待ちながら,帰らないのだという現実を否定して,何とか今を生きているような状態です。何もかもがむなしいばかりで,悲しく,苦しい日々の繰り返しです。失ったのは息子の未来だけではありません。同時に私たちの今まで築いてきたものは,何もかも壊れてしまいました。そして私たちの将来も奪われました。こんなつらい思いをする人をこれ以上増やしてほしくありません。   皆さんには,どうぞ御自分の身に当てはめていただき,皆さんの大切な方の,そして御自身の大切な命を守るために,交通事故抑止に効力のある法律になるよう,熟慮いただきたいと思います。 ● 人の命を簡単に奪ってしまう車という凶器,わかっていて運転し,交通事故を起こし,一瞬で被害者の命を奪ってしまう行為は,とても過失であるとは思えません。被害者の受けた恐怖や衝撃は,殺人と何の違いがあるのでしょうか。突然,大切な家族を失った私たち遺族は,言葉にならない悲しみを抱え,1日を生きるだけで精一杯の毎日を送らなければなりません。   今の交通事故に対する刑は,命の重さとはかけ離れており,さらに私たち遺族を苦しめます。大切な家族を失った悲しみだけでなく,これ以上の心の傷を与えないためにも,7年の引き上げは当然のことであり,一生傷のいえない私たちの苦しみを比較しても,事故の抑止を考えても,7年という数字ではとても足りないと私は考えています。もっと命の重みを尊重し,このような悲しい悲劇を繰り返さないために,皆さん真剣に考えていただきたいと思います。 ● こういった場に被害者遺族を呼んでくださってありがとうございます。私たちの届ける会,私副代表をしておる○○と申しますけれども,こちらにまとめた意見書というものを,ぜひ審議会の先生方に隅々まで読んでいただきたいと祈念してやみません。恐らくお読みになる先生方のうちに,こういった私たちの意見書を,何だ,被害者根性ではないか,加害者への制裁,復讐に燃えて,無理やり法制審議会という場にねじ込んできたんではないかと思われる方が,絶対に私はいないというふうに確信しておるんですが,改めてここでなぜ私たちがこういった場にうかがっているのかちょっと理解いただきたいと思いまして,申し述べさせていただきます。   こちらに今日持ってきた本で,水俣病やクロロキン薬害の訴訟を担当された○○先生という弁護士さんの「現代損害賠償論」という本を持ってきたんですが,もちろんこれは民法に関するものです。今日のこの意見聴取の会が,刑法,自動車運転過失致死傷罪の新設に関する刑法についての意見陳述の会であることは,私も理解しております。しかし,この「現代損害賠償論」を書かれた○○先生が,この本の中で冒頭に言ったことは,被害者というものは自分の被った被害,それがもう二度と起こらないようにとそう願って行動するものなんだと。その彼らの願いを抜きにしては,被害者らが訴訟等に費やす膨大なエネルギーを理解することは不可能であるということをはっきり冒頭近くで述べられておるんですね。この願い,私たちでもうこんな悲しい思いは最後にしてほしいという願いを,どうか御理解いただきたい。その願いが私たち被害者遺族にあるということをどうか念頭に置いて,この意見書をお読みいただければなというふうに願ってやみません。   私たちは,先ほど会員が申しましたとおり,こんな悲しい思いをする人間というのは,もう私たちで最後にしてほしいんです。時に加害者や社会,法曹関係者の方に向けて激しい呪詛の言葉を吐くこともありますが,それは奪われていった命の重みを本当に理解してほしい。二度とこんな悲しい殺害というものがこの社会に起こらないでほしい。でないと,私たちはこの社会に奪われていった命を受け継いで生きていくことはできないというそういう激しい思いがさせるわざなんです。どうか,厳罰化が交通事故の抑止につながるかどうか定かではないだとか,法律のそのバランスだとかそういったことからだけでなく,被害者遺族の抱く願いから理解していただけたらなというふうに思ってやみません。   このことを孝典先生の御本は,随分昔に書かれた本だそうなんですけれども,法律とは全く無関係の私が読んで,目からうろこが落ちるようなことばかりで,どうして何十年も前に書かれた本でうたわれた理念が,私が経験した事故の処理というものの中に反映されていないのか不思議でならないです。   長くなりましたけれども,被害者遺族の抱く願いというのをどうか理解していただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ● 届ける会の○○と申します。よろしくお願いいたします。   先般,犯罪被害者基本法というのが制定されまして,内閣府並びに法務省ヒアリングがありまして,交通事故は犯罪被害者なんですかというふうに問いかけましたら,内閣府並びに法務省のお答えとして「もちろんそうです。犯罪です。」というようなお答えをいただきました。お答えはいただいたんですけれども,では現実問題,どのように交通事故の被害者が扱われているかと申しますと,死亡事故でも不起訴になったり,また起訴された中の9割が略式起訴の罰金刑,1割のみが公判起訴ということで,これで本当に犯罪として扱っていただいているのかどうか。全くそれは納得できない部分であります。   やはり,犯罪である交通事故というのを認めていただいているのであれば,当然一般犯罪と同じように扱ってほしいというのが,交通事故の私たちの要望であります。いろいろと検事の方ですとか,検察の方ですとか,そういう方といろいろお話しする機会とか,やはりこういう事故が起きてからあるんですけれども,やはり交通事故を起こしたその犯人に対して,どうしても一般の犯罪のような扱いをしていただけない。なぜか交通事故の犯人は,善良な市民なんですね。検察の方や検事さんから見ると,善良な市民が犯罪を犯してしまっている。そして一般犯罪の場合を見ているとそうではなく,やはり凶悪犯であるとか,そういうとらえ方をして。一般の犯罪も考えてみると,よくテレビなんか報道でやっていますと,あの方は非常にいい方でした,まじめな方でした,とても善良な方でした,そういうのが非常に多いんですよね。一般犯罪でも。それでもやはり検察,検事さん,それから警察もですけれども,凶悪犯としてきちんととらえて,犯罪としてとらえる。   では,交通事故が善良な市民がではその犯罪を犯した。犯罪を犯した時点で,もう善良な市民ではないはずなんですね。やはり悪質な運転によって,人の命を奪ったという時点で,既にそこでもう善良な市民ではないということを深くやはり考えていただきたいと。そういうお話をいろいろさせていただいている中で,そういうお考えをお持ちの方がなんか非常に多いのではないかと思います。   交通事故というのが,本当に悪質な運転によって,飲酒ばかりでなく,その他の前方不注意であるとか,漫然な運転であるとか,そういうもので命が奪われているわけで,そういう運転というのは悪質な運転になるわけで,それで命が奪われているわけですから,非常にそういう悪質な運転で命が奪われているにもかかわらず,やはりなかなかそれが本当に犯罪であるというふうに受けとめていただいていない。やはりそれが9割,起訴された中でも9割の罰金刑になっているんではないかと。私たちはやはりそういう部分も今後,今回はそういうものは入っていませんけれども,ぜひ引き続きましてこのような問題に関しても,また審議をぜひしていただいて,本当に交通事故の犯罪被害者の人権,死亡した者の人権,さらに死亡したその家族の人権というものを,やはり取り戻したいと思っています。やはりそういうものを考えていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。委員,幹事におかれまして,何か御質問がございますか。 よろしいでしょうか。   本日はどうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえて,さらに当部会で慎重に審議をさせていただきたいと存じます。本日はどうもありがとうございました。           (「交通事故被害者遺族の声を届ける会」 退 室)           (「社団法人日本バス協会」 入 室) ● 部会長の○○でございます。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,皆様にお越しいただいた次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ● 私は日本バス協会の理事長の○○と申します。本日はこういうことで,私ども団体の意見を申し述べさせていただく機会を与えていただきまして,大変ありがとうございます。   私ども日本バス協会は,大体日本で営業しております乗り合いバスのほとんど全部,それから観光バスにつきましては,台数ベースで8割程度,事業者数ベースで6割程度,加盟をしておる団体でございます。したがいまして,乗り合いバス関係につきましてはほとんど全体の意見を代表しておると,こういうふうにお思いいただきたいと思うわけでございます。   そこで,お手元に今部会長さんからお話のございました自動車運転過失致死傷罪新設に対する意見ということで,私ども団体の意見を簡略にまとめてございます。これに基づきまして御説明を申し上げたいと思います。   私ども協会は,この事案につきましては慎重にお考えをいただきたいと,こういうふうに考えております。その理由でございますが,まず第1点といたしまして,過失致死傷罪のうち,特に自動車の運転に限って厳罰化するということにつきましては,公平性に問題があるのではないかというふうに考えるわけでございます。私ども職業運転者は,走行距離,運転時間ともに一般ドライバーより格段に長いと。これは乗り合い,貸し切りともに年間に4万キロ程度運転をいたすと。運転時間につきましては,乗り合いバスで労働時間がおおむね年間2,500時間というふうなことになっておりますので,ほぼこれが全部が運転時間というわけではございませんが,非常に長い時間運転をしておるということでございます。したがいまして,この新しい罰の新設によりまして,厳罰を科される可能性がかなり高くなります。他の危険を伴う職業との均衡,これに問題が生ずるのではないかと思うわけでございます。同じ乗り物業といたしまして,航空パイロットでございますとか,あるいは船舶の乗組員,こういったものについて,ついせんだってもフェリーの乗組員が過失から軽自動車を海に落っことして,人が死んだとこういうこともあるわけでございます。一体,こういうケースと比較してどうなんだと,こういう問題を生じるかと思うわけでございます。   また,乗り物業のみならず,医師でございますとか,あるいはフグの調理師さん,いろいろ危険な職業はあるわけでございますので,自動車だけなぜこういうことになるんだというあたりが,均衡を失するのではないかというふうに考えるわけでございます。   それから3番目といたしまして,自動車の運転による過失致死傷が,非常に重大な結果を招くということで厳罰化するということが,少し入っておるやに聞いておりますが,これは警察庁さんの統計によりますと,一番重大な結果である死亡事故,こればかりは取り返しがつかないわけでございますから,大変重大な結果であろうかと思うわけでございますが,平成12年に9,000件を超えていたものが,平成17年には6,000件台まで落ちたと。6,800件ぐらいに減ったということでございまして,ここ数年間の間,ずっとこれは減少をみているわけでございます。死亡事故が急速に増えているということであるならばともかく,一番重大な結果である死亡事故が減少しているではないかということも,考慮すべき要因ではないかというふうに思うわけでございます。   それから4番目でございますが,飲酒運転のケースを考えますと,罰金が大変高くなるとこれは大変だと。もうお酒を飲むのをやめようということは,自分の意思,自分の行為としてできるわけでございますが,罰金が高くなったら事故を起こさないようにしようと,こういうふうに思う人はいないわけでございます。いないというとちょっとあれでございますけれども,もともと事故を起こそうと思っている人はいないわけでございまして,これは全く飲酒運転のように,自分の意思でコントロールできる範囲外のことで起こっているというふうなケースが多いわけでございます。飲酒運転と違って,幾ら罰金が上がったところで何とか安全を確保する注意力,集中力というものが,それによって増大するということはあまりないのではないか。飲酒運転のときのような効果は期待できないのではないかと,こういうふうに考えられるわけでございます。   私どもといたしましては,バス事業に従事する運転手は,大変厳格な資格であります大型2種免許の保有を義務づけられておりますし,道路運送法の運行管理制度でかなり厳しい安全対策がしかれておるわけでございまして,それに基づきまして社内の教育訓練というあたりもかなり一生懸命やっているというふうに思っております。常日ごろからこのような事案が発生しないように,一生懸命やっているつもりでございますので,ひとつこういったものにつきましては,慎重にお考えをいただきたいというふうに考えております。   以上でございます。 ● 他のお二方は何か御意見はございませんでしょうか。 ● 残りは私ども協会の担当の常務理事と,それから担当の部長でございます。今意見は私が全部申し上げたとおりです。 ● ただいま御意見を伺ったわけですが,委員,幹事におかれまして,御質問がございましたらお願いいたします。 もし,ございませんようでしたら以上で終わりたいと思いますが,よろしいでしょうか。   では,どうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえまして,さらに当部会で慎重に審議させていただきます。どうもありがとうございました。           (「社団法人日本バス協会」 退 室)           (「社団法人全国乗用自動車連合会」 入 室) ● 部会長の○○でございます。本日はお忙しいところお越しいただきまして,まことにありがとうございます。   当部会では,刑法に,自動車運転過失致死傷の罪を新設すること,危険運転致死傷罪の対象を「自動車」に改めることという2点の諮問事項について審議をいたしております。 そこで本部会における審議をより一層充実したものとするためには,その2点の諮問事項に対し,関係する各団体の方々の御意見を広くお聞きするのが望ましいと考えまして,本日,皆様にお越しいただいた次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ● 社団法人全国乗用自動車連合会理事長をやっております○○でございます。よろしくお願いいたします。   本日は,自動車運転過失致死傷の罪の新設につきまして,慎重な対応をお願いできればということで,意見を述べさせていただきたいと思います。   全国乗用自動車連合会といいますのは,ハイヤー,タクシーの業界団体でございます。道路運送法におきましては,タクシー事業に関しましては一般乗用旅客自動車運送事業というようなことで,乗用自動車という言い方をしておりますので,これに倣いまして全国乗用自動車連合会ということでやっておりまして,昭和37年に分裂していたのが合併して,約四十数年たっておる団体でございます。それで,タクシー業のおおよその概要を述べさせていただきますと,法人で現在22万7,000台,個人で4万5,000台,合計で27万3,000台ぐらいの車両数がございます。零細な事業者が多くて,事業者数といたしましては1万300社というようなことでございます。   タクシードライバーにつきましては,約40万人ぐらいのドライバーが日夜働いておるということでございます。年間輸送人員といたしましては,22億2,000万人の方々を運んでいると。国民1人当たりにいたしますと,年間大体20回ぐらい御利用いただいておるということでございまして,公共交通機関の非常に重要な一翼を担っているということで,日夜,安全な運転に努力しているところでございます。   それで,タクシー業界におきまして,安全な運転というのは非常に重要な課題ということで,昔から対応してきておりまして,例えば運行管理者の専任といったようなことで,営業所ごとに出発前それから出発後に対面点呼を行って,運転者の状況を確認するですとか,あるいは過労運転の防止のため,年間の労働時間が事細かに決められているとか,あるいはタクシーにおきましても,いわゆるタコメーター,運行記録計を設置する,あるいはドライブレコーダーといいまして,事故が起こる30秒前からの様子を--フライトレコーダーと同じようなものでございますけれども--カメラでおさめるというような機器もかなり普及してきておるわけでございます。   これに加えまして,昨年10月には道路運送法の方が改正されまして,これは主に一昨年のJR西日本の福知山線の事故を教訓にいたしまして,国土交通省を挙げて安全対策により一層力を入れていこうということでございまして,運輸安全マネジメントというような制度を導入させていただいたところでございます。それでこれはトップがまず安全意識を持てということでございまして,トップから末端のドライバーまで一丸となって,「Plan Do See」といいますか,計画して実行してさらに検証してというようなことで,それぞれの会社の安全目標を定めておるというようなことで,安全・安心・快適なタクシーを目指して,日夜頑張っているところでございます。   それで,今般,自動車運転過失致死傷の罪の新設ということでございますけれども,現在におきましては,211条の業務上過失致死傷,あるいは208条の2の危険運転致死傷が規定されておるわけでございます。特に208条の2のアルコール,薬物,あるいは高速度での運転といったものにつきましては,ある程度重罰がかけられるというのは納得できるところではございますけれども,211条の方の業務上過失致死傷の規定というものがございます。これをさらに上乗せする,5年を,7年と上げることによって,交通事故の抑止効果がそれによって高まるというふうなことにつきましては,タクシー業界としてはもう先ほど御説明したような態勢でやっておりますので,それは過重な負担になるんではないか。交通事故の抑止には必ずしもつながらないんではないかというふうに思っておるところでございます。   同時に,業務上過失致死傷,これにつきましては,例えば医者ですとか鉄道や旅客船,フェリーといったものも全部この業務上過失致死傷5年でやっておるわけでございます。何で自動車関係だけ7年になるのかというようなことを考えますと,ちょっと量刑につきましてバランスを欠くところがあるのかなというふうに思っておるところでございます。   以上のようなことから,自動車運転過失致死傷の罪の新設に関しては,慎重な対応をお願いしたいということを重ねて申し上げまして,この場での要望とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ● 以上でよろしいでしょうか。   委員,幹事におかれまして,何か御質問がございましたらお願いします。 なければこれで終わることにしますが,よろしいでしょうか。   では,本日はどうもありがとうございました。ただいまお伺いした御意見を踏まえまして,慎重にこの部会で審議を続けさせていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。           (「社団法人全国乗用自動車連合会」 退 室) ● 長時間にわたりましたけれども,予定したヒアリングは以上で終わらせていただきたいと存じます。   かなり時間が経っておりますが,若干,お時間をいただいて,これからの進行についてお諮りさせていただきたいと存じます。お願いいたします。   前回の御議論や,本日のヒアリングの結果を踏まえまして,私の方から今後の審議の進め方について皆様に御提案させていただきたいと存じます。   皆様お聞きのとおり,本日のヒアリングにおきまして,今回の諮問事項に対し,各団体から様々な御意見が述べられました。 そこで私といたしましては,このような様々な御意見にも十分耳を傾けて,丁寧に御議論をしていただくことを通じ,よりよい結論が得られることになると思います。 現在のところ当部会では2月21日と2月28日の2回,会議を予定しておりますが,今申し上げましたように,様々な御意見も踏まえて十分な御議論をしていただくという観点からしますと,もう一回会議を設定するのが適当ではないかと考えるに至りました。 この点に関し,日程と場所の確保につきまして,これは事務当局の方の都合はいかがでしょうか。 ● 2月26日月曜日の午後でございましたら,法務省地下1階の大会議室を確保することが可能でございます。 ● 日時場所等はそれで確保できるということでございますので,できましたら2月26日に会議を予定させていただきたいと存じます。   いかがでしょうか。 よろしいでしょうか。御賛同いただきまして,ありがとうございます。   今回の諮問につきまして,よりよい結論を得るという課題を私たちは背負っておりますので,どうぞよろしく御協力のほど,お願い申し上げます。   それでは,次々回は2月26日午後2時から,法務省地下1階の大会議室において会議を開催したいと存じます。   本日の審議はこの程度にしたいと思います。 次回の審議の予定についてですけれども,特に御意見がなければ,前回御議論いただきました諮問事項の第一,第二について,再び議論を行いたいと考えておりますが,よろしいでしょうか。 特に御異論もないようですので,そのようにさせていただきます。   次回の時間,場所等について,事務局の方において再度確認をお願いいたします。 ● 次回の部会は,先般御案内いたしましたとおり,明後日でございますけれども,2月21日水曜日の午後1時30分から,前回第1回と同じ第1会議室,法務省20階の第1会議室で会議を行うこととなっております。   それと先ほど部会長の方からお話がありましたように,次々回を2月26日月曜日の午後2時からということで予定させていただいております。場所は,法務省地下1階の大会議室ということでございます。その後,さらに2月28日午前10時30分からということで,また予定をさせていただいております。 ● そういうことでよろしいでしょうか。   では,本日は長時間にわたりましたけれども,これで終わりとさせていただきます。   どうもありがとうございました。 -了-