法制審議会保険法部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  平成19年3月7日(水) 自 午後1時30分                      至 午後5時 第2 場 所  法曹会館高砂の間 第3 議 題  保険法の現代化に関する検討事項について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻でございますので,保険法部会の第6回会議を開催させていただきたいと思います。   最初に,配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 配布資料のうち事前に送付させていただきましたのは,保険法部会資料7「保険法の現代化に関する検討事項(6)」でございます。   それから,本日,席上に配布させていただきました資料は第3回会議,第4回会議のそれぞれ議事録がございます。もう一点,A4の2枚紙で「重大事由解除が認められた裁判例」という資料がございます。これは,生保の委員の方々から御準備いただいたものでして,後ほど該当個所につきまして御意見をちょうだいする際に御説明をいただける予定になっております。   以上でございます。 ● よろしゅうございましょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず前回の積み残しでございます保険法部会資料6「保険法の現代化に関する検討事項(5)」の7頁の一番下でございますが,「5 保険金の支払時期」という項目についての審議でございます。まずは,例によって事務当局から御説明をお願いいたします。 ● ここでは保険金の支払時期について取り上げております。 本文では,①として,保険者は,保険金受取人から死亡保険金の支払の請求があったときは,直ちに,保険金を支払わなければならないものとし,②として,①に規定する場合において,一定の調査をする必要があるときは,保険者は,①の規定にかかわらず,その必要な調査が終了した後,直ちに,保険金を支払わなければならないものとする案を御提案しております。 損害保険契約における保険金の支払時期につきましては,保険法部会第4回会議において御議論いただいたところではございますが,生命保険契約における死亡保険金の支払義務についても,不確定期限付債務であると解する見解もあるものの,一般には期限の定めのない債務であると解されており,この見解によれば,保険者は保険金の支払請求を受けた時から遅滞の責任を負うと考えられます。 生命保険会社の約款では,事実の確認のため特に必要な場合を除き,所定の書類による請求を受けた日の翌日から起算して,原則として5営業日以内に保険金を支払うものとし,共済団体の約款では,同じく請求を受けた日から原則として1か月以内に保険金を支払うものとするのが一般的であるといわれています。 これらの約款所定の期間を過ぎても保険金が支払われなかった場合に,いつから保険者が遅延損害金を支払う義務を負うのかについては,損害保険契約と同様の問題がございますが,保険金受取人等の保護の観点から,保険金が迅速に支払われるべきことについては異論がないと思われることから,本文では,被保険者が死亡し保険者が保険金支払義務を負っていることを前提に,①において,保険金の支払請求があったときは直ちに保険金を支払うことを原則として規定した上で,事案によっては保険金の支払に当たって一定の調査が必要な場合も考えられることから,②において,このような場合には,その必要な調査が終了した後直ちに保険金を支払うこととしております。 なお,本文の規律は,一般に期限の定めのない債務であると解されている死亡保険金の支払義務に関し,現行商法のもとで解釈論や約款の定めにゆだねられている保険金の支払時期について,明文で定めることを御提案するものであり,いわゆる生存保険契約における保険金支払義務については,一般に確定期限付き債務と解されており,かつ,実務上は期限到来前に保険者から生存保険金の請求案内を行い,住民票等により被保険者の生存が確認できれば,生存保険金が支払われることが多いといわれていること等から,特に保険金の支払義務に関する規律を設ける必要はないとも考えられますが,この点について特段の御意見がございましたらいただきたいと思います。 (注)1は,保険金の支払時期に関する生命保険契約に固有の問題について問うものでございます。保険金の支払時期に関する一般的な問題につきましては,保険法部会第4回会議において御審議いただいておりますが,何か生命保険契約に固有の問題がございましたら御意見をいただきたいと思います。 (注)2では,本文①の「保険金受取人」の範囲について問題提起しています。本文の規律については,保険金受取人として指定された者が保険金請求をする場合に限らず,債権譲渡や質権の実行等により保険金請求権を取得した者が保険金請求をする場合にも,同一の規律を及ぼすべきであるとも考えられますが,このような考え方について御意見をいただきたいと思います。 (注)3は,本文の規定の性質について問うものでございます。 以上です。 ● ありがとうございます。それでは,ただいまの5の点につきまして御質問,御意見をいただければと思いますが。   ○○委員。 ● 前々回の損害保険契約の固有の事項のところの保険金の支払時期の議論の中で,○○委員から御質問もちょうだいしておりますので,○○委員からはいわゆる請求に当たって保険会社のアドバイスが必要となる場合に遅延利息をどうしているのかといった御質問をちょうだいしておりますので,その御回答も含めまして現行実務の考え方,取扱いについて冒頭御説明をさせていただければと思います。   まず,御質問への回答ですけれども,我々は必要書類の提出により保険金の支払請求があったものの,それが不払となった場合,これにつきましては,その不払が保険会社の過失等によるものであった場合には,請求のあった時にさかのぼって遅延利息を付しているというのがまず今のいわゆる支払に関する取扱いでございます。   一方,いわゆる請求に当たってアドバイスをするというところですけれども,これにつきましては支払請求がございませんので,まだ履行期は到来していないということで,その時点では遅延利息の対象にはならないと考えております。   なお,個別具体的な説明につきましては,現在,当局の方から報告命令を受けておりますので差し控えさせていただければと考えております。ちょっとこれ以上の回答は現時点では難しいと御理解いただければと思います。   次に,以上の前提となっております今の考え方や取扱いですけれども,先ほどの御説明にもありましたように,保険金の支払義務というのは期限の定めのない債務であり,必要書類に基づく支払請求を受けた時から発生するという考え方に基づいてございます。そういう中で,生命保険契約におきましては大量の支払事務を正確に処理するための時間が必要なことから,約款上商品種類によって支払請求を受けてから原則は5日以内,商品によっては7日と規定しているものもありますけれども,そういった履行期間を設けてお支払をしておるということでございます。   実務的には,提出された請求書類に形式的な不備がないかどうか確認した上で,調査が必要であれば調査を行いますし,調査の必要がないと判断した場合には調査を行わずに支払処理をするという形になっております。そういうのが現行の実務でございまして,そういう意味で今回御提示いただきました事務当局からの案につきましては,現行の5営業日以内という現行の約款実務の取扱いを否定するものではなくて,一方で一定の調査という内容が前々回の損保の議論のときの内容であれば,特段問題がないと私どもとしては考えてございます。   以上,○○委員の質問への御回答も含めましての御回答ということで,よろしくお願いいたします。 ● ○○委員。 ● 前々回の○○委員の質問について,我々の保険金支払漏れの場合に遅延利息はどのように付けているかということで,○○社と○○社の取扱いを申し上げます。   まず,一つの事故に関して,ある保険金を支払った際に,その時点で他の保険金をお支払できることが確認できていたにもかかわらずそちらの方の支払をしていなかった場合は,支払済保険金の支払日を起算日としています。例えば,車両保険金をお支払済みの場合で定額の代車費用,保険金の支払を行っていなかったケースでは,車両保険金を支払った日を起算日としております。遅延利息は6%です。   次に,次のパターンで,保険会社がお支払するときに判断や対応を誤って,そもそも保険金をお支払していなかった事案の場合には,適切に対応していれば保険金をお支払できていたであろう時,すなわち,この前も議論になりましたけれども損害額が確定したであろう日を基準にして判断して,付けているというのが事実でございます。   以上です。 ● ○○委員。 ● どうもありがとうございました。   この規定の問題点というのは二つあると思うのですけれども,一つは,従来規定がなかったときにこういう規定の仕方をしていいかという問題と,二つ目は,今回の不払の問題とも関係していますけれども,これは保険法研究会の方で○○幹事がたしか御指摘になったことで,いろんな保険を組み合わせて,そのうちの一つの請求があったときに,ほかの方も払いますよという説明をする私法上の義務があるのかという問題なのですね。つまり,死亡保険金の請求が来たときに,その前に入院しておられたのではないですか,手術を受けたのではないですか,そこをちゃんと案内しなければいけない監督法ではなくて私法上の義務があるかどうかと。これは,業界はないという前提でいらっしゃるか,そこはよく分からないのですけれども,この二つの問題を多分ここで取り上げなければいけないと。 最初の問題については損害保険のときに申し上げましたけれども,私はやっぱりこの規定には反対しているのですね。理由を簡単に申し上げると,現在,法律の規定はありませんけれども,損保については最高裁判所の判例があって,生保については最高裁の判例を受けた高等裁判所の判例があって,結局,30日とか5日の間は考えて,その間にそこは付けないでもいいけれども,そこから先は付けなさいと。前回,○○委員の発言があって,その発言に非常に敬意を表したいと思うのですけれども,どうも払っておられないと。それは本当は払わなければいけない分だと思いますけれども,問題は,この全体の考え方が,最高裁の考え方は事故が起こったら遅滞なくまず払うのが原則だと。基本的には,契約者側に何ら帰責事由がなかったらすぐ払わなければいけないと。ただ,約款で30日ぐらい延ばすのはいいでしょうと。ドイツもこういう考え方なのですね。この約款は,今回提案されているものは,保険会社側に帰責事由がなかったら払わなくてもいい,そういう立場になっているので,逆さまだと思うのです。だから,基本的には帰責事由がない限りは,だから私の主張は最高裁判所の判例と同じようにいけということなのですが,30日間は考えてもいいよと,しかし,保険契約者側に問題がないのだったら,そこから先は検討するのはいいけれども遅延利息は払いなさいと,こういう考え方にしないとおかしいのではないか,これ逆さまではないかというのがまず一点です。   それから二点目の問題なのですけれども,これやっぱり民法の方の御意見,もし○○委員が納得いただけるのであれば民法の方の御意見も伺いたいのですけれども,死亡保険,高度障害,入院,手術,これ本来別の保険でももちろん構わないのですが,それをまとめてしまったときに,死亡保険だけ請求が来たときにほかのものがあるよという説明義務があるかどうかという問題だと思うのですよね。契約は一本ですから,信義則上あるという言い方は私はできるのではないかと思うのですけれども,ただ,もし業界の方がいや,ない,そういうのは法律上はない,私法上の義務としてはないのだともしおっしゃるとすると,それはちょっとやっぱり書かなければいけないのではないかと,こういう問題だと思うのです。   あと,時効とも実は関係があって,時効の起算点とどういうふうに整合的にさせるかという問題があって,これは大審院の判例があって,普通の請求の場合には,生保は昔,今5日というのが20日だったのですけれども,20日間経過してから時効起算点がスタートしていいよと。これはこれでいいと思うのです。問題は,保険会社側に帰責事由があって本当は説明しなければいけなかったと。手術はどうですか,入院はどうですかといってそのままになってしまったときの時効の起算点をどうするか。これは遅延利息をどこに付けるかというのと裏腹,完全に同じ議論ではないのですが。だから,これは私は現在の不払処理の問題についてどうしたらいいかという,請求時とか確定時といっておられましたけれども,一つの考え方は最高裁の判例のように遅滞なくということで,事故発生時からそういう保険会社側に帰責があるときは利息を付け時効も進行すると,そういう考え方もあり得ると思うのですね。   一応そういう意見なのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 私は従来,この規定に賛成の立場ですので,それで申し上げますが,基本的には,生保の場合は,生存保険はちょっと置いておいて特に死亡保険のケースですと,死亡されたということを書面で確認してお支払になるということで,特にそれ自体で大きなトラブルになることはないと思うのですけれども,要は,前回も申しましたけれども,やはり死亡について問題があるというのですか,死亡をめぐって受取人が刑事捜査の対象になっているというようなケースで,確かに保険事故は発生しているのだけれども請求があったら直ちに払うのかという問題が発生しますので,そういうケースではやっぱり直ちに払うということ自体が逆に社会的な批判を浴びるという保険会社としては非常につらい立場に立とうかと思うのですね。ですから,大半の死亡事故のケースでストップがかかっているという話ではなくて,ごく例外的なケースでストップがかかるという理解だと思うので,この規定もしたがって原則は直ちに払うということになっていますし,例外的に調査が必要であるというケースについてのみ,少しおくれますねということだと理解しておりますので,その前提として○○委員と少し違うのかもしれませんが,請求があったからといってすべて払えるというものではなくて,やはり保険事故というものがあるということは一応確認できた上で支払われるということが前提だと思うので,そうすると,一応その事実の確認としてはやった上でないと,正確,適切な支払ができないのではないかというふうに考えております。したがって,この規定でいいのではないかというのが私の考え方でございます。 ● どうぞ。 ● 一点誤解があると思うのですね。それは,払わなければいけないということはないのですよ。危ないと思ったら,利息を払うことを覚悟して調べなさい。それできちっとやっておりますからそのほとんどは不払で,要するに利息の支払なんて問題にならないと思うのですよね。まれにあったときにどうするかという話です。何も,その5日間で必ず払えということではなくて,支払をちょっと内容に問題があるから払うのを待とうというときには,遅延利息がもし判断が間違っていたらかかるかもしれないというリスクを負って判断しなさいという意味で,払えといっているつもりは全くないのですね。その点だけ御説明しておきます。 ● ○○幹事。 ● もちろん強制的に払えとおっしゃっているのでないのはよく分かるのですよ。結局,利息がつくということは支払を間接的に強制をしているのと同じですので,現行の利率からいうと6%というのは結構大きいなと思います。 ● ○○委員。 ● 今どれぐらい確認に回っているかと,調査が必要かといいますと,これ給付金の例なのですけれども,弊社でいきますと大体年間60万件を超える請求があるのですけれども,そのうちにいわゆる確認という調査に回るのは1%台です。そういう意味で,何でもかんでも調査をしているというわけではなくて,やっぱりこれ免責事由に該当する可能性があるとか,そういう意味でやっぱり本当に事実を確認するために調査が必要なものだけいっているということなので,それは一方でちゃんと払えるものはちゃんと払いますけれども,調べないと事実が確定しないというものについて,そういう形できちっと免責に該当しないのかどうかとか,あるいは支払,例えば入院の給付金であれば入院日数が本当に正しいのかどうかとか,そういう調査が必要なものについては調査をして,きちっと支払をすると。その時間はきちっといただきたいということなのですけれども,それについて御理解いただきたいと思います。 ● はい,どうぞ。 ● それは全くそのとおりです。それはもう異論は全くないです。そういうケースが少ないこともそのとおりで,問題はその中でも結果として支払わざるを得ないというのがまれにあるわけですよね。そのことだけが問題でして,それで利息はどうしているかと。最高裁は,そういうときは損保だったら30日,生保だったら5日過ぎた時から付けなさいといっているわけですよね。今付けておられないではないですか。要するに,私は結局,そういう判断をする以上は,ちゃんとそういうものを急いでやるという,そういう仕組みがないといけないと。だから今言われたことは全部そのとおりで,それを否定するつもりは全くないです。ただ問題は,わずかなケースだけれども検討に回した結果やっぱり払うといったときに,遅延利息をどこから付けるかということだけなのです。それは,最高裁は検討期間が終わった時から付けろといった。しかし,多分,そうだと共済の方の生保はどうも付けていないようですし,生保さんたちの方は付けておられないのではないかと思うのですけれど,それはやっぱりまずいのではないかという,ただそれだけのことなのですけれど。 ● ○○委員。 ● そういう意味で実務としては,必要な調査というのは5日と別にちょうだいしているのは事実です。ただ,それは一方で本当に必要な調査をしないと,逆にそこで,もしもそれで調査をした結果払わないといけないとなったときに,それが遅延利息の対象になるということになると,やっぱりさっき○○幹事の御指摘にもありましたけれども,結果としてやっぱりそこで適切な調査ということについて少し疑義が出てくる懸念もありますし,そういう意味でいくと公平・公正にきちっとお支払をするということを考えたときに,やっぱり必要な調査というのは別途きちっといただくと。ただ,それは何でもかんでもやるわけではないというのは先ほど申し上げたとおりですけれども,そこはやっぱりきちっと保険集団の間の公平性とか考えたときに,それは必要だろうと私たちは判断しているということでございます。 ● 支払の検討をしたときには,利息は付けなくていいのだという考え方ですよね。 ● 必要な調査についてはそうだと。 ● つまり5日を超えていてもということですね。 ● ええ,5日と別に必要な調査については。 ● そこは価値判断の問題で,最高裁判所はそこについて何といっているかというと,保険会社において所定の猶予期間内に必要な調査を得ることができなかった場合に,一方的に保険契約者等の側のみに保険金支払時期が延ばされるということに不利益を負担させ,他方,保険会社は支払期限猶予の利益を得るとするならば,それは保険契約の趣旨・目的と相入れないところだろうといっていて,ここはまさに価値判断の問題で,そこは○○幹事と私の違うところではないかと思っているのです。 ● 大先輩に少しお言葉を返すようなのですが,私はこれ価値判断の問題でもないと思っていますし,それから利息の問題は間接強制と損害賠償の問題とを混同してもいけないと思っております。基本的には,この問題は請求原因事実が立証された後で抗弁事実に当たる事実を調査すると。それが債務を履行しないという決定をした上で抗弁事実の調査をするということが,債務不履行の損害賠償を免れさせるほどのそういうものとして位置付けていいかどうかという問題だと思いますので,債務不履行の損害賠償を保険会社がしなくていいというそこの基準と,ここの必要な期間という基準が同じなのか,違うのか。これを言いかえることによって保険会社に有利になっているのか,不利になっているのか。そこの関係が明らかになれば私はどういう言葉を使ってもいいと思うのですが,そういう問題であって,価値判断だけの問題でもないし,利息を付けることは間接強制と同じだみたいな議論でもないということだけ私の理解を申し上げたいと思います。 ● ○○幹事。 ● 挙げかけたのですが,御指名ですので発言させていただきます。   先ほど,○○委員から利息を付けられるとなると,結局それを機にして調査がおざなりになってしまうのではないかという懸念を表明されたのですけれども,実務としてそういうことになるというのはちょっと考えにくいと思うのですね。やはり払うべきでないものについてはきちんと調査した上で,結局,やっぱり払わなければいけないというものについては,当然それについては利息を払わなければならないとしても,それはあくまでも保険契約者間の公平を図るために当然必要なコストであると割り切って払うべきではないかと私は思いますので,どちらかというと私は5日というのはちょっとしんどいかもしれませんけれども,少なくとも30日程度は猶予を与えるとしても,それを超えた分についてはそのあたりから利息を支払うと。結果的に調査をした上で支払う必要があると判断されたものについては遅延利息を付けるのがいいのではないかと結論的にはそう思うのですが,ただ立法技術的にそういう条文がうまく書けるのかどうか。つまり,いろいろ調査した上で支払わなければいけないということを決めて,そのときには例えば30日のところにさかのぼってそこは履行期になるということなのですよね。最初からそれは履行期を30日後と定めてしまえばそれで済む問題なのか,ちょっとそのあたりが気になるところではあるのですけれども。 ● はい,どうぞ。 ● ○○委員,それから今の○○幹事の御意見を伺ってちょっと疑問に思ったのでお尋ねしたいのですが,○○委員は政策的な価値判断,○○幹事は保険契約者間の公平な分担とおっしゃいましたが,民法の先生のお知恵を拝借したいのですが,私は素朴な理解として,今利息として議論されているのは債務不履行に基づく遅延損害金の話ではないかと思うのですね。債務不履行というのは,基本的に債務者が本来払わなければいけないのに払わなかったことが責められる場合に課されるべきものであって,調査が必要だというのがひとりよがりの判断で,その時点で払わなければいけなかったものについては当然付けるべきだと私も思いますけれども,調査をすべきという判断が,これはだれでもちょっと調査してみないことには何とも言えないなという事態に立ち至ったときに,その債務者が払わなかったことを責められるかというと,私は責められないのではないかと素朴に思いまして,そうだとすると後で払わなければいけないことが判明した時にはさかのぼって払うべきだというのが,民法の債務不履行の考え方と相入れないのではないかという気がするのですがいかがでしょうか。 ● どうでしょうか。○○幹事。 ● 訂正されるというその担保があることを前提として,民法の債務不履行の原則という話からいたしますと,これ金銭債務の履行期が到来していて,本当にこの人が債権者かとか,あるいは本当にこの人に受領権があるかと疑うような事由があるときに,それを理由に履行期が到来しているけれども払わないということが損害賠償を免れるかといえば,不可抗力でない限りは帰責事由の要件もかかっていないということからしますと,本来はやはり損害賠償がかかってくるような話ではないかと理解をしています。だからこそ,それに対して受領権限者であれば債権の準占有者に対する弁済とか,そういう保護の話があるのだろうと。   そういたしますと,今回の話というのは遅延損害金がかからないというのはやはり法定の猶予期間を与えるということではないかと思われまして,その大前提としてそもそもこれがどういう債権であるのかと,金銭債権であるとして,先ほどの不確定期限という表現と期限の定めのない債権という両方の言い方を御議論の中でされたように思っておりまして,いずれであるかによっても変わってくるわけですけれども,いずれにしても,ある意味停止条件はかかっているのだと思いますけれども,保険事故が発生しないといけないわけですから。発生した上で,それを知れば直ちに払うべきであるのか,請求を受けて払うべきであるのか,そこまでは民法の議論の話なのですが,請求を受けてもなお遅滞に陥らないという期間を設けておりますので,そうだとすると,それは法定の猶予期間の創設ということになって,やっぱり保険金の支払というのはそういうような特殊な性格を持ったものであるという保険金の場合の特殊性を考慮しているのではないかと思います。 それから,これは非常にマイナーな点ですけれども,先ほどの御指摘のあった,例えば30日という期間を設けて,それを超える部分については,いずれにせよもう払わなければいけないということを規定上なり仕組みとして盛り込めるかという技術的な話なのですけれども,②については,これも以前から問題になっていたと思いますけれども,必要な調査が終了した後というのが,調査は必要なのだけれども,それをずるずるとやっているというような場合にはそれは問題で,それはそういう場合には当たりませんという解釈でやるのだということですが,解釈だとまた操作が要りますので,やはりこれは当該必要な調査にまさに必要な期間が経過した時とすべきではないかと思います。そうしたときに,その必要な期間を30日を超えることはできないという形にすれば同じような仕組みはつくれるので,技術的には対応は可能ではないかと思っております。 ● ○○幹事。 ● 今の議論の中に,うまくはまるかどうかちょっと心配なところはあるのですけれども,やはりここのところの支払の時期の規定に関しては,損害保険のときに述べた考え方をまた述べさせていただきたいと思っております。遅延損害金の起算点をどこにするかという,つまり民法上の○○幹事から御説明いただいた考え方はそのとおりだと思いますし,それからまたあと必要な調査があるときに,それについてはかからないとする必要があるという実務的な要請もあるとは思いますが,実務的な要請の部分に関しては約款での議論かなと思われますので,それは不当条項でなければ効力が認められて,その調査期間については遅延損害金が生じないという処理ができると思いますので,基本法でどういう規定をするかという点については,私は前回述べたように請求があった時には直ちに支払わなければならないという,基本的にはその一本でいけるのではないかなと思っております。   損害保険のときに議論になりました通知義務というのも,生命保険についても死亡保険についてもあると思いますので,それと通知したときに,やはり事情というのが保険契約者の方に存在しているから,付随義務としてその説明義務が生じる。基本法において保険金受取人と保険者が何ができるか,何をしなければいけないかと考えたときに,保険者の方が調査する権利があるというところを法律で支払の場面で書いていいかどうかということなのですが,むしろこの間も損害保険のときに申しましたように,受取人の方が説明する義務があると書くのが私には筋ではないかなと思っております。   それからもう一つ,ちょっと派生的なのですけれども,最初に○○委員がおっしゃっていたいろいろな保険金請求ができることがあるのに,それを保険者の方から説明しなかった場合はどうか。そういう義務があるのかどうかというのは,それはあると思います。それを法律に書くかというと,そこまではちょっと今のところは思っておりません。というのは,保険契約というものが一般の賭博とかそういうものと違うというレベルを法律のレベルにアップするのは何かというと,その保険者というのが保険契約者から長い期間保険料を収受して,それを保険事故が起こったときに支払うという受託者責任とまでは言いませんけれども,高度な責任を負っている当事者だと考えられますので,その保険金の支払の場面において保険金請求者の方で知り得ないとか,うっかりしていたとか,それについて請求を促すような義務というのはあるのではないかなと思います。   以上です。 ● それでは○○委員から。 ● 今,お話を伺っていて,損保のときの議論よりもちょっと進んでいるのだなと印象として持っているのですけれど,通常,消費者トラブルの現場で見ますと,保険金をいつまでも払わないという,いわゆるたなざらしみたいな,そういうトラブルというのは,実は生保は損保に比べてそんなに多くはありません。損保の方がどうしても多い,調査に難しさがありますから。ですから,割と早目に払うか払わないか決めていただけると。だからそれについて争えるという部分があるのですけれども,それでもやっぱりたなざらしになっている実態はございます。損保のときにも申し上げましたけれども,保険会社,いわば必要な調査ということですから,保険会社がリスクをとっていただいて,責任をとっていただいて,調査は幾らしていただいても構いません。構わないけれども,では,その結果として払うとなったら,あのときも全く同じことを申し上げましたけれども,もとの時点へ戻って,本来払うべきである時点,それが5日目なのか30日目なのか,そこがちょっと微妙なところではございますが,少なくともそこの時点に戻って払っていただくというのが,一般の消費者の合理的な期待に沿うものなのではないか。一般消費者がそれだったら理解できるよというスタンスに,そこの部分が原点なのではないかなと思っておりまして,そこの部分はぜひその形で決着をしていただければと思っております。 ● ○○委員。 ● そういう意味で,説明義務とか調査協力義務という議論をたしか前々回少し私も申し上げたと思うのですけれども,必要な調査の中身が事案によって相当区々であるというのは事実でございます。また,例えば病院の協力が得られないとなかなか調査が進まないといった事案も決して少なくないと。そうしますと,例えば皆さん方がおっしゃっているように,それも含めて30日を超えたらすぐ遅延利息ですとか,そういう何か中身にかかわらず一定の期間で何かびしっと物事を決めていくというのは,非常にやっぱり実務を担当する立場とすると,単純な事例であれば逆にどんどん早く払っていったらいいわけですし,複雑なやつはやっぱりそれだけ調査に必要な期間というのはとらざるを得ない部分もあるという実態からすると,何か一律的に何十日までがどんな事案であれ付利の範囲外であって,これを超えたらどんな事案でもそこから始まるというのは,非常に実務的に言うと無理があるのではないかなと。それでいくと,やっぱり最低限の日数プラス合理的な調査に必要な期間というところでやっている今の実務というのは,そんなに極めて不合理なのかということになると,正直言ってどうなのかなという感じがしておるのですけれども。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● ○○委員が言われましたように,協同組合の場合に遅延損害金というのは基本的に払っておりません。ただ,確実に払えるのに,要は支払漏れといいますか,そういうものが出てきた場合には,請求時にさかのぼって遅延損害金を支払うという仕組みはとっております。   それと,一定の調査の関係ですけれども,約款が少しずつ違う部分はあるのですけれども,ある団体の約款では,調査が必要な場合には契約者に通知をするということを条件にして,調査で若干時間を超すというやり方をとっているところもあるわけですね。ですから,むやみやたらに延ばしているということではなくて,やり方によっては一定の事業者に制限を加えた上で調査に入るというのが実務としてやられておりますので,あんまりほったらかしといいますか,たなざらしというのは,実態としてはないというふうに考えられて結構かと思いますけれどもね。 ● ○○委員。 ● ○○委員から消費者側の意見が出ていますので私が加えるまでもないのですが,ただやっぱり合理的な理由といいますか,期間とか,それから,こちらとしてはきちっとやっていますとおっしゃられたとしても,消費者の方にはそれが見えないわけなのですよね。ですから,そういう面では平均的な,業界として一般的にどのくらいの期間がかかっているとか,何かそういうものを参考にでもやはり期限を切られて,そしてそれを過ぎたものについてはさかのぼって損害金を付けると,これがやはり事業者と消費者との信頼関係を確保するのではないかと思いますけれども。 ● どうぞ。 ● 言われるとおりだと思うのですけれども,基本的には。ただ,例えば生命系で言いますと医療調査というのが結構入るわけですね。○○委員も言われましたように,例えばこういうことで若干調査中なので支払についてしばらくお待ちくださいという言い方をしたとしても,その医療調査の中身を本人に言ってはいけない部分もあるわけですね。例えば,がんだとか,そういう場合に本人が告知されていない場合に言えない部分もありますし,正確にやっぱりその辺は入口・出口の関係両方含めてやらなければいけない部分があるものですから,すべて日数がかかるからといって遅延損害金が発生するということだけでは律し切れない部分というのが現実にあるのだろうと思うのですね。一般的に,当然,平均的には生保さんの3日から4日ぐらいですか,協同組合でも大体3日から4日ぐらいで払っているわけですね。例外的にどうしても医療調査関係が生命分野はどうしても多くなるので,そういうケースが発生すると。そのことも正確に言えない部分がどうしてもあるという事実もありますので,余り期限でぴしっと切られるというのはなかなか実務として難しい部分が発生するということはちょっと御理解をいただきたいと思いますけれども。 ● ○○幹事。 ● いろいろ議論を聞いておりまして,最初に○○幹事がおっしゃったことに一番私はシンパシーを持っておったのですけれども,基本に考えておりましたのは,射倖契約である保険契約にあっては,払えるか払えないかという事実確認をしてからでないと払えないというのが基本にあるので,そうなるとどうしても宝くじに当たったと言われても,その当選券がなければ払えないのと同様に,その確認をしてから払うというのが射倖契約にあっては筋でしょうということなので。   それから,○○委員がおっしゃったように,そうかといってずるずる長いというのはやはり問題がありますので,それは一定業界で平均的にやはりここまでですねというのが実務経験としておありでしょうから,その線で実際的には解決をされるというのは適当かなと思います。確かに,ここを余り抽象的に書きますと保険会社側に有利になり過ぎるというお話は確かにありますので,そこは約款の規制の問題にもなるかとは思います。 ● 大体意見が出そろったかと思います。○○幹事から御説明があったように,民法の原則そのままだとやはり事故が発生した時からすぐ払えということになってしまう可能性があるので,それをやったら保険の場合適切でないでしょうというので,最低限の猶予は与えるというルールは必要だろうということは大方の意見であろうかと思います。その幅が①,特に②のような形のルールでいいのか。もうちょっと何か限定はあるのか。そのあたりが今日の御議論で意見がまだ若干食い違っているところではないかなと。   はい。 ● 一点だけ。抗弁の時間の制限ということであると,告知義務についてはしっかりと時間の制限があるのですね。保険事故発生時の抗弁についてどれぐらいの猶予が必要かということの問題だと思うのですが。それと,基本的には保険金請求権の時効期間が到来するころというのは,やはり請求者側としては保険金請求権を保全するためには裁判に行っていないといけないとか,そういう判断を迫られるわけで,それを,その期間を過ぎてもなお調査が必要なので保険会社内で調査ができるのですというのは,何となく感覚的にどうなのかなと。少なくとも消滅時効期間が来るよりもやはり法律的な期間というのはもう少し手前に来るべきではないかなというのが私の感覚であります。 ● はい,そのあたりを含めて,なお今日の意見を踏まえて検討してもらおうかなと。とりあえず,この問題はこういうことでよろしいでしょうか。   それでは先へ進みまして,部会資料7「保険法の現代化に関する検討事項(6)」,今度は第5の6ということになりますが,まず事務当局から御説明をお願いします。 ● それでは御説明いたします。   この6では,保険契約が解除されることによって保険金受取人が保険金を取得することができなくなる事態を防ぐための方策を導入する必要性と,その具体的な方法について問題提起をしております。   まず,この前提として,このような方策が必要といわれる理由について御説明いたします。   当部会の第2回会議において,保険契約者の任意解除権について御説明いたしましたが,これを保険契約者以外の第三者が行使することがございます。例えば,(補足)に記載いたしましたように,保険契約者がいわゆる解約返戻金請求権を有している場合には,これをその債権者が差し押さえることができ,最高裁判所の平成11年9月9日の判決は,解約返戻金請求権を差し押さえた者は,解除権の行使が権利の濫用となる場合などを除き,その取立権に基づいて保険契約の解除をすることができると判示いたしました。   また,保険契約者について,破産手続開始決定があった場合において,保険契約者が解約返戻金のある保険契約を締結しているときは,破産管財人が解約返戻金を現金化するために契約の解除をすることがございます。これ以外にも,例えば,保険契約者の債権者が保険契約者の解除権を民法第423条の債権者代位により行使するということもございますし,保険契約者が解約返戻金請求権を質権の目的とした場合には,質権者が契約の解除権を行使することができるといわれております。 ところが,これらの各場合に契約の解除がされますと,当然のことながら,その後に保険事故が発生しても保険金受取人は保険金を取得することはできないわけでございますが,生命保険契約は保険金受取人の生活保障を目的として締結されることがあるといわれており,その場合にはその目的が達成されないこととなってしまいます。そして,生命保険契約は被保険者が高齢になってからだと加入することができなかったり,加入できたとしても保険料が高額となったりすることなどがあり,一般に生命保険契約には再加入の困難性があるなどといわれることがございます。そうしますと,保険契約者が保険金受取人の生活保障のために契約をしたにもかかわらず,保険契約者以外の者が契約の解除をする場合には,このような事情も考慮する必要があるといわれており,学説上,諸外国の立法例を参考にして,保険金受取人が保険金を取得することができなくなる事態を防ぐための方策を法律上導入すべきであるとの立法論的な提案がされております。当部会の第3回会議におきましても,1頁の参考条文に掲げました現行商法第652条を削除するかどうかについて御議論いただいた際に,生命保険契約における保険金受取人保護の制度について別途検討をする必要がある旨の御指摘がされたところでございます。 諸外国の立法例を見ますと,解約返戻金請求権を差押禁止債権とするものや,保険契約者の任意解除権を一身専属的なものとするものがあるようでございますが,我が国においては,このような立法例を採用すべきとされることは一般的ではなく,むしろドイツ法で採用されているいわゆる介入権を参考にした立法論が主張されることが多いようでございます。このドイツの介入権とは,資料の(補足)にも書きましたように,保険金受取人が差押債権者又は破産管財人に対して解約返戻金相当額を支払った場合には,保険契約者の地位を承継する制度であるといわれております。 もっとも,前回御審議いただきましたように,今回の改正で保険金受取人の変更を法律上も自由とし,かつ,保険契約者に任意解除権を付与することと,保険金受取人の生活保障のための制度を導入することとの関係も含めまして,そもそも,その必要があるのかについても検討する必要があると考えられます。また,仮に必要性があるとしても,先ほど御説明したような立法論的な提案に対しては,遺族の生活保障のための現実的意義は乏しく,遺族の保障のための積極的な利害調整といえるかは疑問があるとか,常に保険契約者の地位の承継を伴わなければならないのか検討を要するなどとの指摘もされております。さらには,保険金受取人が保険金を取得することができなくなる事態を防ぐための方策としては,必ずしも解除前の手当てでなければならないわけではなく,解除がされた後に契約の復活を認めることによっても同様の目的を果たすこともできるとも考えられるところでございます。 なお,約款上,保険契約者は,保険料不払によって契約が失効した場合には,一定の期間内であれば,一定の要件の下で契約の復活を請求することができるとされておりまして,これは,極力契約を同一条件で存続させようという制度ということができると思われます。 そこで,本文では,制度の必要性とその具体的な内容について御議論いただくために,たたき台として,保険金受取人が保険契約を存続させることができる具体的な方法について,二つの大まかな案を掲げております。 なお,本文は典型的な場合を想定して記載したものにすぎず,先ほど御説明しましたように,保険契約の解除がされる場合は差押債権者や破産管財人による任意解除の場合に限られませんし,本文には保険金受取人と書いておりますが,保険契約を存続させる方法をだれに認めるかは検討を要する事項でございまして,これらについては(注)で改めて問題提起をしているところでございます。 本文の二つの案のうち,①は,保険契約の解除がされる前に解除がされないようにしようとするものでして,例としまして,保険金受取人は保険契約者以外の者で保険契約の任意解除をすることができる者,例えば,差押債権者や破産管財人,これらの者に対して一定の金額を支払うことにより,その任意解除権の行使を制限することができるものとする方法を記載しております。これに対して②は,保険契約の解除がされた後に何らかの方法で改めて契約を続けることができるようにするもので,保険金受取人であった者が一定の要件の下で契約の復活を求めることができるものとする方法でございます。この①と②は理論上併存し得るものと考えられ,それぞれの具体的な問題点については(注)2及び3で問題提起をしておりまして,後ほど御説明いたします。 続きまして,(注)の御説明に入らせていただきますと,まず(注)1は保険金受取人が保険金を取得することができなくなる事態を防ぐための方策を設ける必要があるのはどのような場合かについて問題提起をしております。ここでは,保険金受取人が保険金を取得することができなくなるケースのうち,どのような場合にこれを防ぐ方策が必要かという観点から検討すべきであり,例えば,先ほど御説明したような保険契約者以外の者が契約の解除をする場合だけを対象とすることでよいか,保険契約者が自ら契約の解除をする場合にも保険金受取人が契約を存続させるための方策が必要か,あるいは,保険契約者と保険金受取人とが同一人である,自己のためにする生命保険契約の場合にも認める必要があるかなどについて,御議論いただければと考えております。 なお,この点に関連して,先ほど保険契約者について破産手続開始決定があった場合を具体例として挙げましたが,破産の実務上は,例えば解約返戻金相当額が20万円を下回る場合には,財団を構成しないという取扱いや,額がそれを超えて解約返戻金請求権がいったんは財団に組み入れられた場合でも,解約返戻金相当額が支払われたときは,破産管財人は契約の解除をせずに解約返戻金請求権を財団から放棄するという取扱いなどがされているといわれております。 次に,(注)2の御説明に入ります。この(注)2は本文①の方法に関する問題点について御議論いただくものでございます。 順に(ⅰ)から御説明いたしますと,まず(ⅰ)は,①の方法を採ることができる者の範囲について問題提起するものでございます。例えば,保険金受取人であればよいとすることや,保険金受取人のうち自然人に限るべきとすることや,保険契約者又は被保険者の相続人又は親族に限るということなどが考えられますし,あるいは,保険金受取人であるかどうかを問わず,保険契約者又は被保険者の相続人又は親族であれば認めるということなども考えられるところでございます。この点,被保険者の相続人という形で保険金受取人が指定された場合には,一般的には保険事故発生時の被保険者の相続人を指定するものと解されており,そうすると保険事故発生前には被保険者の推定相続人であっても保険金受取人ではないとも考えられますが,遺族の生活保障を重視すれば,このような者にも①の方法を認めるべきとも考えられ,さらに,保険金受取人が指定されていない場合でも相続人や親族であれば①の方法を採ることができるとすることも考えられるところでございます。これは,(ⅱ)以下をどのように考えるかということとの相関関係で考えるべきとも考えられるため,引き続き(ⅱ)以下についても御説明いたします。 まず(ⅱ)は,①の方法を採ることができる者であることを確認する方法について問題提起するものでございます。例えば,(ⅰ)において何らかの形で保険金受取人であることを要するとすれば,保険契約者の債権者などや保険者は一定の金額を支払うことを申し出た者が保険金受取人であるかどうかを確認する必要が生ずると考えられます。 この点について,前回御審議いただきました保険金受取人の指定又は変更の意思表示の議論との関係で,相手方のない意思表示と考えたり,相手方のある意思表示と考えたとしても,新保険金受取人や旧保険金受取人を相手方とすることができると考えたりする場合には,だれが保険金受取人かを保険契約者に聞くしかないことから,客観的な確認手段はなく,保険契約者が正しく回答しない場合に差押債権者等が害されないかということが問題になると考えられます。また,仮に保険者を相手方とする意思表示と考えたとしても,差押債権者等が確認する手段を法定する必要があるかなどについても,検討する必要があるようにも考えられます。 そこで,以上の点を踏まえまして(ⅱ)について御議論いただければと思います。 続きまして,(ⅲ)は①の方法を採る機会を保障する方法を問うものでございまして,具体的な検討課題は括弧内に記載したとおりでございます。 まず,ここで,何らの規定もない場合にどうなるかということを御説明いたします。まず,解約返戻金請求権が差し押さえられた場合には,差押命令が債務者に送達された日から1週間で債権者に取立権が発生し,その後,差押債権者はその取立権の行使として契約の解除をすることができることとなります。この点について,先ほど御紹介しました平成11年の最高裁判決は,債務者である保険契約者に生ずる不利益は,差押命令の取消しや解除権の行使が権利の濫用となるとすることによって考慮することができる旨判示しておりますが,これを前提としても保険金受取人が独自に採り得る手続はないようにも考えられます。また,保険契約者について破産手続開始決定があった場合には,破産管財人はその時から契約の解除が可能と考えられます。さらに,保険契約者の債権者による解除権の代位行使や質権者による解除の場合には,解除されてしまえば,もはや保険金受取人としては採ることができる手段はないということになります。 以上の点を踏まえて,①の方法を採る機会を保障するという観点から,本文では,①の方法を採ることができる者に事前に知らせた上で,一定の期間内は解除権を行使することはできないとする考え方を一つの例として記載しております。しかしながら,今御説明しましたうちの最後の二つ,解除権の代位行使や質権者による解除の場合を念頭に置きますと,契約の解除をする前にその旨を知らせなければならないとすることの当否には議論の余地があり,例えば解除の効力が生じるのを意思表示の後一定の期間が経過した時とすることなども,検討する必要があるかもしれません。他方で,①の方法を採ることができる者を保険契約者の親族などとすれば,通常は差押えや破産手続開始等の事実を知るでありましょうから,法律上の手当ては不要であるという指摘がされることもございます。 以上を踏まえまして,(ⅲ)については,何らかの手当てが必要かということと,その具体的内容について御議論いただければと考えております。 続きまして(ⅳ)ですが,これは①の方法を採るための要件について問題提起するものでございます。ここでは,保険契約者の債権者等に対して解約返戻金相当額を支払うことを要件とすることでよいか,これ以外に何か必要かなどについて御議論いただければと思います。 最後に(ⅴ)では,①の方法を採った場合の効果について問うこととしております。例えば,①の方法を採ったとしても保険契約者が保険料を支払わなければ債務不履行となってしまうことから,①の方法を採った者に保険料支払義務を課すこととする必要があるかという問題があるほか,①の方法を採った後に保険契約者が任意解除権を行使したり,保険金受取人を変更したりしては①の方法の意味が失われることから,保険契約者の権限の制限についても検討が必要と考えられます。また,差押債権者等に一定の金額を支払って解除を回避することができたとしても,依然として保険契約者が解約返戻金請求権を有する状態では再度これが差し押さえられ,同じ状況になるかもしれず,①の方法を採った者が保険契約者の地位を引き継ぐこととする必要があるとも考えられます。 他方で,当然に契約者の地位の承継という効果を生じさせるためには,一般法理の下では契約上の地位の移転には契約の相手方の承諾が必要とされていることとの関係で,契約相手方である保険者の立場にも留意が必要とも考えられますし,また,そもそも保険金受取人のためにこのような効果を認める以上,保険金受取人が保険契約者になるとしても,保険金受取人の変更権を有しないこととする必要もあるとも考えられます。 以上のような点を踏まえまして,効果についても御議論いただければと考えております。 続きまして,(注)3ですが,これは本文②の方法に関する問題点について問題提起するものでございます。 この②は,いったん終了した契約を復活させるものでございますので,その当否について議論の余地があり,資料ではこれを仮に導入するとした場合に検討すべき問題点という形で列記をしております。 (ⅰ),(ⅱ)は,先ほどの(注)2と同じ問題でございます。 (ⅲ)の括弧内で幾つか書いてある初めの二つも(注)2と同じ問題でございますが,終わりの二つは(注)3独自の問題でございます。これは,契約の復活についての法的安定性という観点から,一定の行使期間を定める必要があるのではないかという問題でございます。この点,約款上の保険料不払による復活では,保険料不払による失効から3年間行使できるとされるのが通例ですが,改めて告知をしたり,未払保険料に利息を付して支払うことや,保険者の承諾が要件となっており,自殺免責期間等がリセットされるなどという効果も定められております。これに対して,本文②の方法を導入する場合には,これらの要件を課したり,このような効果を伴うこととしたりすることは当然のことではないようにも考えられ,例えば,告知を必要とはしない代わりに逆選択を防止するという観点から,3年よりも相当短い期間を行使期間とすることなども考えられます。 次に(ⅳ),これは要件について問題提起するものでございます。②の方法が採られる場合には,保険者は解約返戻金相当額を差押債権者などに対して既に支払っており,これを元の状態に戻すのが筋であるとも考えられます。そこで資料では,②の方法を採った者が保険者に対して解約返戻金相当額を支払うという考え方をまず記載しております。他方で,(注)3の(ⅰ)で②の方法を採ることができる者を,保険契約者の親族などとすれば,その者が解約返戻金相当額を支払わなければならないとすることは,場合によっては現実的ではないようにも考えられ,例えば,解約返戻金相当額の一部が保険契約者貸付けされた場合と同じく,保険事故が発生した場合に保険金額から解約返戻金相当額を控除するとか,保険金額を減額するとか,保険料を増額するなどという方法によることも理論上考えられるところでございます。先ほど,①と②とは理論上,併存し得ると御説明しましたが,このような観点から,②に①とは別の存在意義を見いだすことはできないかどうかについても御議論いただければと考えております。 最後の(ⅴ)は,効果について問題提起するものでございまして,括弧内に記載したことのほかに何かございましたら,併せて御議論いただければと考えております。 以上,(注)2と3でいろいろ細々と問題提起をしておりますが,さらなる応用問題としては,死亡保険と生存保険と傷害・疾病保険とが一体となった契約について,どのように仕組むのかという問題や,保険金受取人が複数いる場合にどのように仕組むのかなどといった問題もございますが,ひとまず今回は基本的な問題を中心に御検討いただければと考えております。 最後に,(注)4は,本文の規定の性質について問題提起するものでございます。この点,本文のような制度を設ける以上は,各方法を採ることができる者にとって不利益な約定を許容すべきではないとも考えられますが,他方で制度の内容によっては,それぞれの保険の商品性から異なる規律を許容する必要が出てくることも考えられます。そこで,強行規定性については制度の骨格が定まった段階で改めて検討する必要があると考えられるところでございます。 以上でございます。 ● ありがとうございました。   この問題については,(注)のところも含めますと大変細かなところまで今,御検討をいただいて,説明をいただいたのですが,余り細かいところまで最初から一挙に入る議論をしても混乱が起きるかと思いますので,まずは①,②に書いてあるような受取人とか遺族を特に救うような特別の制度が必要であるかどうかと,それから,(注)1にあるようなそれはどういう場合,とりあえず破産とか,差押えという場合が挙げられているわけですが,それに尽きるのかとか,そのあたりのところを大まかなところからまず御議論をいただいてはどうかと思うのです。   はい,どうぞ,○○委員。 ● 難しいテーマなのでよく分からないというのが率直なところなのですけれども,これ自体は保険契約者の意思によらない解除ということから,受取人の利益を保護するという意味では非常に意味があると思いますが,例えば,親が自分の身に何かあったときに子供の生活を保障するために子供を受取人にして保険契約をするというケースが考えられるのですけれども,その親がその後,経済的に破綻をした場合に,あるいは破産をしたといったときに,例えばその子供が親に代わって一定の金額を支払って,かつ,その後も契約が失効しないように払い続けるということが実態的に存在するかどうかというのは,よく分からないところです。これはさまざまなケースがあるという御説明でございますけれども,素朴な疑問で,もうちょっとつまずいてしまっているというのが実情でございます。   それから一点,ちょっと言葉の意味で分からなかったのが,2頁の14行目ぐらいに,「本文の検討に当たっては」というところに「モラル・ハザード防止の必要性」,この場合のモラル・ハザードというのは,例えば具体的にはどんなことを言っているのか,ちょっと教えていただければと思います。 ● 事務当局,何かイメージがありますか。 ● この介入権の問題を議論するに当たっては,主に保険者の立場からこういったモラル・ハザード防止の必要性があるという指摘がされることが多々ございまして,私なりに理解しているところをまずちょっと御紹介して,後ほど保険会社の方々からも,もし違うということであれば,御指摘いただければと思うのですが,例えば保険契約者の地位の承継というスキームにした場合には,従前保険契約者でなかった者が保険契約者になると。今回のこのスキームでありましたら親族とか相続人とか,あるいは保険金受取人であった者が保険契約者になると。保険金受取人であった,あるいは保険金受取人でなかった親族等が保険契約者になった場合に何が変わるかといえば,一つ考えられますのが保険金受取人の指定変更権を有するという部分が違う。これまで保険金受取人であったので,ある意味ほかの人に自分の地位をゆだねていたのが,保険契約者になることによって指定変更権を有することになると。そうしますと,これまで指定変更権を持っていなかった人がそういった新たな権利を持つことによって,自由にその保険の利益の帰属先を決めることができて,それは普通はそんなことはないのかもしれませんけれども,使われ方によっては受取人としてはふさわしくないような人が受取人になってしまったりとか,そういったケースをもしかしたら念頭に置いているのかなという気もいたしますが,もし追加があれば保険会社の方からも御指摘をいただければと思います。 ● ○○委員。 ● では,追加という意味で補足ぐらいになるかもしれませんけれども,今お話があったように,恐らくこういう介入権であるとか,2番目のような復活的なことをした場合には,受取人が契約者に多分なっていくのだろうと。そういう意味で言うと,その人にいろんな権利が行くということで,従来の規律との関係で何か考えないといけないことがあるのかどうかということと,もう一つ,やっぱり先ほど○○委員自身がおっしゃっていたように,父が掛けていて子供が承継する,なかなか資力がないケースがほとんどですから,こういう制度がやられたときに,逆に言うと健康な場合は承継されるのですが,リスクが凝縮された部分だけが残っていくみたいな,保険会社から見るとそんな問題も実務的には出てくるとか,いろいろ個別事案を見ていると考えないといけない部分が幾つかのポイントであるだろうというようなことを指してこういうようなことが一つの論点としてあるのだろうかと。   私もポイントとして,受取人の生活保障という考え方は非常によく分かるのですけれども,一方で本当に実務的にワークするのかということと,本当にこういう規定が得られたとしても,その規定を生かして,例えば保険料だとか解約返戻金を払い続けられるような環境にある国民がどれだけあるのかと,そういうところは非常に疑問だなと思うのですけれども,モラル・ハザード的には先ほどおっしゃったのと同じような感じだと思うのですが。 ● 私もそう考えてます。 ○○委員。 ● ○○委員の御質問に少し答えて私の意見を申し上げたいと思うのですが,ただ,私の場合で言いますと,終身保険1000万,二十何年入っていまして今年55で払い済みになりますけれども,解約返戻金は370万,死亡保障が1000万なのですよね。私がもし破産したら,多分家族は必死にお金を集めて300万やるのではないかと,そのとき家族にそのお金があるかどうか,こういう問題はあるのですけれども,実際に裁判の破産実務の本なんかには,今はこの介入権はないのですけれども,介入権と並行してあるのが契約者の地位の譲渡とか移転,これは,今,保険会社の方は同意を条件にやっておられますけれども,その手続を使って介入権と同じような形で破産手続をやっていると。つまり保険の方だけ生かす形でやるという例はあると報告されているのですね。   この制度を新しく導入する,結論はまず,私はこの御提案の形でやることに賛成したいのですけれども,やっぱりこれは何のための制度かと,どういう目的でやるかというところをしっかりさせないと,後の質問にも答えられないということだと思うのです。私が申し上げたいことは,保険会社にとってもこれは意外にいい制度ではないかということも申し上げたいと思うのです。 では,まず,この介入権をどういうふうに考えるべきか。この介入権の制度の目的は二つ挙げられるのではないかと思うのです。一つは,今言ったように保険のカバーをもう持っています,しかし,キャッシュバリューとしては解約返戻金の部分しかない。債権者はその分だけ目掛けて来るのですね。しかし,解約してしまうと残りのカバー,これどういう意味があるか,いろんな意味がありますが,要するに,その間に病気になったらもう保険に入れないとか,いろんな価値がありますよね。それをまず,それをどぶに捨てるのは社会的にもよくないことだから,これはやっぱりきちんと守ろうと。 それからもう一つは,これは事前につくろうという動機は破産とか,そういうことで苦労されたと思うのですが,このルールをつくった後,どういうふうに動くのだろうかと考えると,これは悪くないと。今回,この保険法部会に見直しのポイントとして挙げられている中の,前にも言いましたけれども,高齢化社会における生命保険の役割の重要性にかんがみて,多様なニーズにこたえると。どういういい点があるかというと,生命保険とは意外にぜい弱なのですよね。まさにこういう解約権を差し押さえられて解約されてしまう。それから,前回あった保険金受取人の指定もいろんな条件がありますけれども,相続人が一致団結すると何か契約者と違うことができてしまうと。でも,こういう制度を,介入権を認めることによってより契約者が自分の資産を処分する,そういう一つの道具としてより安定したものにすることができると,こういうふうに考えたらいいのではないかと思います。   そういう観点から,細かな点を一々は申し上げませんが,例えばどういう人がそれはできるかというのも,今みたいな観点からすると,これはまず基本は契約者が何も言わなかったら親族でもいいのだと思うのです。あんまり拡大すると生命保険会社の方もさっきのモラルリスクの問題があって,とんでもない人が入ってくるという問題がありますよね。でも,親族以外に契約の時に指定した人,例えば弁護士さんとか,そういう人を保険会社にきちんと最初から言って,保険会社もそれならいいですよということも認めてもいいのではないかと。つまり,保険会社の方も安心するような形で連絡先も分かるという形で設定すると。ですから,基本は契約者はいろいろ,例えば親族の中でこの人がだめということも契約者はやっていいと思うのですよ。こいつには絶対まずいと。契約者が限定したり広げたりできると。しかし,何も決めなければ親族とか相続人の範囲で,保険会社の安心できる範囲と,そういうような制度として基本的に考えてはどうなのかと。機会を保障するというのも,契約者が本当にそれを自分の財産処分として真面目にやろうというときには,保険会社へ絶対連絡しますよね。連絡がとれるようないろんなアレンジをできるわけですから,100%保障するということはできませんけれども,そういうものとして考えるというのがいいのではないかと。   それで,この①と②の間の問題は,やっぱりこれは両方併存させて3か月か分かりません,短い期間にして告知とか何か要らない形でやるというやり方がいいのではないのかなと。重要なポイントは,保険金の減額等の余地を認めるかと,これは認めてもいいと,まさにさっき○○委員がおっしゃったように,家族に,欲しいのだけれどやっぱりかき集めても足りないというときに,保障額半分だけでも,それはやっぱり大事なことで,特に解約返戻金と保障額の間にかい離が非常に大きいときは,より認める必要があるというふうに思うのですね。基本的な考え方はそういう形で,ですから制度目的というものを従来考えていた保険特有の価値というものの保護だけではなくて,保険というものが解約権を差し押さえられて根こそぎにアレンジメントがだめになってしまうというのを,そういうリスクを減らす,こういうための道具として,そうしたら保険をもっと使ってください,個人の財産処分として使ってくださいと保険会社も言えるような,そういうものとして位置付けたらいいのではないかと,これが私の意見です。 ● ○○委員。 ● 介入権につきまして新しいこういう考え方というのは非常に重要だとは思うのですが,一方で,先ほどの○○委員がおっしゃいましたような,やはりいろいろ危ぐされるべき問題もございますので,やっぱり実効性のある形で導入できるということが大事だと思っておりますので,より慎重に御検討をお願いしたいと思っております。 ● ○○委員。 ● 先ほど関係官の方から,基本的にさまざまな保険商品があるけれども,今日は割と伝統的なというか,基本的な保険で考えてみようということなので,いろんな特定の保険を考えると,さまざまな評価があり得ると思うのですけれども,今日は,例えば一番伝統的な保険でいいますと終身保険,養老保険も100歳満期の終身保険と考えれば終身保険がベースだと思うのですが,それで,もし考えますと,終身保険というのはキャッシュバリューが,解約返戻金でもいいのですけれども,キャッシュバリューが増えれば増えるほど,増えていくに従ってデスプロテクションというか,不幸が減っていくというタイプの保険ですね。キャッシュバリューで,もしある時点で契約が解除された場合に何が失われるかというと,キャッシュバリューは戻ってくるのですけれども,デスプロテクションという部分が失われると,そういうことだと思います。 その場合に,特約が入ったり,先ほどの○○委員の例ですと特約が入っていますからまたちょっと評価は違いますので,あくまでも伝統的な形で考えますと,デスプロテクションをなくならせないかどうかというところが一つの大きな問題だと考えます。そうしました場合,もし契約者が差押えとか破綻したという形で契約者自身,あるいは他人のための自己の保険ですと契約者,被保険者自身の経済状態,つまり財務状態が変化した,その変化したことによって当初の保険金受取人の生活保障という意味合いが変わってくるのではないかと思うわけです。つまり,もう少し具体的に言いますと,終身保険でキャッシュバリューの少ない時期,つまり契約して1年目ぐらいの時にはキャッシュバリューは少なくて,デスプロテクションは大きいわけですね。その時に保険金受取人がキャッシュバリュー相当額を払ってこの契約を存続したときに,どういうことが期待されるかというと,死亡保障,被保険者が死亡した方がどちらかというと望ましい,純粋に経済的な立場ですと,あんまり健康に長生きしてくれない方がありがたいと,そういう状況に極論すればなるわけで,逆に満期直前の場合ですと,もうこれキャッシュバリューは大きいですけれども,思い切って払えば特別配当とか,そういった経済的な利益を見込めると。そういう動機になると思うのです。 本来,最初の保険契約の時は,保険金受取人の生活保障ということで始まった保険が,こういった保険契約者の財務状況の変化によって,保険金受取人のインセンティブがゆがむ可能性というのも理論的に考えるとあり得るのではないかと。そういう意味で保険金受取人の生活保障の目的を貫徹するためにこれを導入するというのは,直ちには分からない部分があるというのが私の意見でございます。 ● ○○委員。 ● ちょっと先ほどの○○委員のところで少し確認もかねてお聞きしたいのですけれども,この介入権あるいは復活権というものが受取人の生活保障という視点で大きくは議論のテーマに上がっていると思うのですけれども,そういう中で考えると,我々が検討するとしても基本的にはその権利の行使者というのはまず受取人であって,受取人全部にするのか,少しその中で絞っていくのかというところがスタートだと思っているのですけれども,先ほど弁護士だとか,契約者が最初に指定したという意味でかなり広いスコープで御議論されているようなのですけれども,もともとの目的がやっぱり受取人の生活保障ということであれば,受取人というベースから離れてというのはどうなのかなというのは,ちょっと議論としてどこまでをこのスコープにして議論を考えるのかというところで,ちょっとよく分からなかったのですけれども。 ● ○○委員。 ● 弁護士というのは,そこで過剰に反応されたのかもしれませんけれども,要するに,これは保険契約者の人が自分の持っている資産,だから,それは生活保障に限られないと思うのですよね。生命保険いろんな機能というものを利用して,自分の持っているお金をいろいろ使いたいと。最初に言った私の例ですと,それは私の受取人がだれでもいいのです,主人が終身保険に入っていて奥さんが受取人みたいなのは生活保障です,だからいいのですけれども,何を念頭に置いて言ったかというと,保険会社の方はだれが新しい契約者になるか分からないというところが嫌だという議論があったので,その部分はあらかじめ,こういう人なのですといって契約者が指定してアレンジしていれば,それは御心配になる必要はないのではないですかという趣旨で,例えば弁護士というのは,そういう介入権というものを保険契約のぜい弱性を減らして,自分の末路における資産処分の前提で使いたいというときにはそういうこともあり得るかもしれませんが,それをメーンにするとか,そういうつもりは全くないと。基本的にはやっぱり家族とか,そういうものの中で,しかし,では全員がというと,それは契約者がこの人にと選んだっていいし,またそういう生活保障ということを考えれば,保険の対応だって考えますよね,シンプルで分かりやすいものにするかもしれない。そういう趣旨で申し上げたということですが。 ● 議論が進行中なのですが,ここで休憩したいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただいてよろしいでしょうか。   なお,この介入権その他についての御意見をいただければと思いますが。   ○○幹事。 ● 先ほどから○○委員,○○委員から,具体的にどういうケースで役に立つのかよく分からないというお話がありまして,○○委員からある程度具体的な説明がなされて,もっと極端なケースを考えれば,先ほど○○委員が挙げられた例えば終身保険,養老保険でもいいですけれども,死亡保険金が1000万円で現在解約返戻金が2,3百万までたまっていると。仮に被保険者が病気になって入院したとして,そのときに債権者が,被保険者が死亡してしまったらもう解約できないから,とりあえず解約返戻金を取りたいということで差し押さえたり,あるいは破産の手続開始の申立てをしたと。しかし,被保険者の家族にしてみればもうちょっと待ってくれたら死亡保険金がもらえるのにと。ここで解約されてしまうと300万,今300万なら用意できると。もうちょっと待ってくれたら1000万死亡保険金が入るのにと,そういうケースを考えると,まさにこの介入権というのは非常に役に立つケースなのですね。そういうケースが実際あるかどうかはともかくとして,しかし,債権者がこの解約返戻金をターゲットにしてくるケースというのは,やはり相当程度解約返戻金がたまっているケースであるし,そして被保険者の保険金受取人が守りたいというのは解約返戻金と死亡保険金の差がかなりあるケースなので,実際には,なくはないと思いますし,被保険者が入院した途端に債権者が解約をしてくるという血も涙もない債権者が本当にいるかどうかというのは分かりませんが,債権者としてもこれは必死なのですね。死亡してしまえばもう一銭も取れないわけですから,債権者としても必死ですし,そういう解約権を行使してきたときに,それが権利濫用ということで解約権を封ずることができるかというと,これは何とも難しいと思うのですね。その意味では,介入権というのを法律で定めるということは十分に意義があると思うし,先ほど御指摘になったように,破産実務では実質的に介入権的扱いをしておられるということのようですけれども,しかしながら差押えとか,あるいは債権者代位権で来られた場合には,保険金受取人としては現時点ではそれを守る手だてがない。それこそ解約権の行使が権利濫用に当たるということで保険契約者が裁判で争うぐらいしかないのではないかと思うのですけれども,その意味では意味はあるということだと思います。 ● ○○委員。 ● そういう意味で,○○幹事おっしゃったように今の事例のように介入権を制度化したときに意味があるケースというのがあり得るというのは,我々も生かしていまして,そういう趣旨を否定しているということではないのですけれども,一方で,今実務では受取人からの契約者変更というのも現実にはあるわけですね。例えば,親がずっと払っていたけれども,親が資力がなくなったときに,子供にこれから保険料払ってよといって受取人になった人が契約者になると,そんな制度も一方でありますと。 それともう一つ,これ私よくこの辺の法的なことは分からないのですけれども,この介入権というものを入れるに当たっては,差押えとか破産とか,ある特定の事由が起きたときに急にある種受取人の権利というのが従来に比べると飛躍的に上がっていくと。このことを法的にはどう整理するのかなと。私ちょっと法律の専門家ではないので,そのことが法律上どうなるのかがよく分からないところがあるのですけれども,そういったところを含めて,あと事務当局のペーパーに書かれていますように,実際にこのことを法律に書き込むとすると相当やっぱり詰めていかないといけないところがあるので,我々としては趣旨を否定するものではないのですけれども,法定化するとすれば,その辺の要件とか,対象だとか,範囲だとかいうことをきちっと書いていただいて,何かこの辺の争いごとの中に我々が巻き込まれてということだけはちょっと避けていただきたいなというのがやっぱり一番,趣旨を否定しているわけではないですけれども,やっぱりその辺がすごく気になっておるというのが正直なところでございます。 ● どうぞ,○○幹事。 ● すみません,今の○○委員の御質問に答えるというよりは,どちらかというと同意することになるので,答えにはならないかも分からないのですけれども,やはり今回の改正で保険金の受取人の地位というか,保険契約者が基本的には変更権を留保するということになっていると思いますので,もともと第三者のためにする契約として保険金受取人の地位というのがそんなに確固たるものではないと思いますから,そのような保険契約者の財産状態が悪化して差押えとか,破産手続開始決定を受けた段階で保険金受取人が介入できる,その地位によって介入できるというのは,余り合理的には説明できないかなと思っております。 ちょうど,前回も申しましたが,生命保険の受取人というか,生命保険金というのが被保険者の遺産のような性格があるとしたら,この時点では保険金受取人というのは推定相続人のような地位にあると思いますので,その人が介入してくるというよりは,今の時期まで行われている現状の基本法の建て付けの中で行われている破産管財人との和解的な解決とか,契約上の地位の移転とか,それから,その平成11年の判例というのは一応債権者の解約返戻金を現実化させる事実というのと,それから保険金請求権とか将来の権利が失われる不利益というのを一応裁判の判決の中では言っていないかもしれないのですけれども,一応比較考量した上で解約返戻金を差し押さえた者は取立権に基づいて契約を解除できるといっていると思いますので,やはり,もしそのような権利しか持っていない受取人が自己の権利を確固たるものにしたいのであれば,もともと自分が否認権を行使されないような時点において,その保険契約の保険契約者として地位の移転を受けておいて,他の者から保険金受取人の地位を変更されるようなことがないようにしておくとか,自分以外の者の資産の状況によってその権利が失われることがないようにしておくとか,又は実際そのようなことが実務的に容易でないのかもしれないですけれども,地位を移転しないのであれば資産状態が悪化した保険契約者が契約者貸付けというのですか,それを受けて,それもどの時点まで保険会社として実務的に受けるのか,その実務的な問題もあるかとは思うのですけれども,しかるべき段階で貸付けを受けて,差押えをしてくるような債権者に対して弁済をしておくとか,そのような解決方法があるので,あえて保険金受取人の介入権というのを今回法律上に整備として盛り込む必要はないのではないかと思っております。 ● ○○委員。 ● 介入権の問題に関しましては,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,正直に言うとこういうツールが増えることがいいのかどうなのか,分かりやすいのかどうかというので大変悩んでおりまして,例えば,今実務的には,先ほど来お話があるように保険契約者は財政的にこの保険を続けていけないような状態になった場合は,通常は契約者変更というのをするだろうと。受取人が解約返戻金相当額を持っているような受取人であれば,受取人が契約者貸付けを受けているとしても契約者変更ということで契約者の地位について,それで保険を継続していくという実務は多分あるだろうと。ただ,それだと契約者に対する債権者というのがいて,その債権者が自分の債権を実行するときに要するにバッティングするから,多分時間の競争になってしまうのかなと。そういうときに介入権というものがあれば,何らかの形で介入権という制度があることによって今通常行われている契約者変更より,より保険の継続に利するような形になるのであれば,それはすごくいいのかなと思うのですが,そこのところがいまひとつよく分からないというのが一つございます。   それから,すみません,まだ先の話で,ここはまだ皆さん議論になっていないのですが,②の方で言うと復活のお話なのですけれども,復活というのは私ども消費者相談を受けている人間から言うと大変高いハードルがあって復活が行われていると思っています。復活するのは期間も3年ですし,それからその間の保険料も利息を付けて払わないといけませんし,告知も受けなくてはいけないと。だから,復活していいのは年齢条件が違って保険料が高くなるのを防げるぐらいの,そんな感じで復活というものを考えているのに,その復活とこの復活を考えるときに,では,普通保険料が払えなくなって保険が失効しました,何とかお金をかき集めてきて復活しますというのとバランスが少し悪いのではないのかなと。レベル感が大変こちらの方が随分過剰に守られているような気がする,守られているから悪いのかという話は別にして。その辺のバランスがちょっとよく分からない。   その二点が私の疑問でございまして,どなたかお答えいただければ。 ● ②の復活は,必ずしも今実務で行われている失効した後の復活と全く同じものである必要はないという前提だろうと思うのですね。先ほど,だから復活期間を,普通の今の実務による復活だと3年,そういうものとは違うもっと短い間であれば告知の必要性というのも事情が変わってくるとか,そういう広い範囲でまだお考えいただいていいだろうと。 ● そのときは受取人の人が保険を引き継ぐとして,その人に告知をさせるということでしょうか。 ● その告知も要るかどうか。求めるかどうか。 ● ああ,被保険者に告知させる,すみません,間違えました。 ● だから,①も必ずしも今まで紹介されているドイツ流の介入権そのものだと特定しているわけではなくて,それに近いような制度も含めて,とりあえず幅広で考えていただいてということだろうと思うのですね。介入権というかっちりしたものにすると,先ほどからいろいろ御指摘になっている非常に法的な確実性というのを確保しようとすると,非常に大がかりな規定が要るのかなという,そういうことが実際に可能でしょうかと。使われる度合いというのもそんなに多くはなさそうだねということもあって,こういう大がかりな制度が要るのでしょうかという意見が一つにはあり得ると思うし,だけど,やはり今こういう制度がないところではそれなりに実務上動いている部分はあるけれども,それが確実なものでしょうかという,そこら辺を考えていく必要があるかと思います。   ○○幹事。 ● 先ほどから何名かの方が,任意の,事前に契約者変更すればいいではないかということがあるのですが,契約者変更の場合には詐害行為取消権でやられてしまうリスクがやっぱり残っていると思うのですね。これは契約者の事情はどうかということを見て詐害行為取消権が出てくるわけですが,受取人の側がそれを買い取るだけのキャッシュを持っているかどうか全く関係なしに行使できてしまうわけですから,契約者は経済が危機的状況にあるけれども受取人の側にキャッシュがあるという場合に,受取人がそれを買い取ってその契約を残すという制度は,やはりその制度でないと恐らくは。詐害行為取消権の解釈論で処理ができるというならともかく,そういう事情がある場合には,これはかなり有効に作用するのではないかと思います。 ● ○○幹事。 ● そもそも,この制度が必要なのかどうかという問題からちょっと先に進んでしまうのかもしれないのですが,従来の介入権に関する立法論として考えられていたのは,基本的に①だけだったと思うのですね。今回新たに事務当局案として②のアプローチもどうかということで出てきたと思うのですが,この①と②を比べますと,①の従来の立法論でいわれていた立法技術上の難点としていわれていたところは,例えば債権者が解約権や解除権を行使すると言ってきたときに,いったんストップさせないといけないわけですね,解約権を。つまり,先ほどの例で言うと2,3百万の解約返戻金を保険金受取人が手当てするために,例えば1か月程度の猶予期間を与えると。その1か月程度は債権者は解除権を行使できないということにしなければいけないと,そういう制度が必要だったわけで,しかし本当に1か月も猶予を与えていいかというと,1か月の間に被保険者が死亡してしまえば債権者は一銭も取れないわけで,逆に保険金受取人とすれば解約権を行使するという通知を受けてからとりあえず1か月は待っていればいいわけですね。1か月待ったところで被保険者が生き延びそうだとすると,そこで介入権を行使するということもできるわけで,債権者と保険金受取人の利害調整を考えると,本当に1か月間猶予を与えるというようなやり方がいいのかという問題があったと思いますし,それからもう一つは,1か月間という猶予期間の起算点をどうするかという問題があって,差押えや破産,それから債権者それぞれについて起算点がどうなるかというのは,法律で書くというのはまた大変だなという問題もあったと思うのですが,これに対して②のアプローチというのは,とりあえず債権者は解除権行使してもよいと。その後受取人が保険者との間でもう一回契約を復活させるというアプローチですので,債権者としてはとりあえず解除はできると。債権者の利益を不当に害するという点は②では生じないではないか。   それからあと,仮に②でも先ほどのお話しからすると3年という猶予期間ではなくて,①とパラレルに考えると,例えば1か月程度の猶予期間を②に組み込むとすると,その1か月の起算点も例えば解除権を行使された時を起算点としてそれから1か月というふうに,統一的に規律することが②だと可能なのかなという気もしまして,まだ深く詰めて考えたわけではないのですけれども,②のアプローチというのは①でいわれていたいろんな問題点をうまく克服できる可能性のあるアプローチではないかと,第一印象にすぎないのですけれども,第一印象としては何かそんな感じを持っておりますので,もう少し②を詰めて考えていくということは十分にあり得るのではないかという気がいたします。 ● 事務当局がこの②を考えてくれたのですが,確かに,今言われたように柔軟な仕組みに少しなりそうな気はするのですけれども,なお詰める必要はあるかと思いますが。   あと介入権,仮に認める方向で介入権というか,①でも②でもいいのですが,そういう場合,(注)1と(注)2の(ⅰ)で聞かれているような,これは受取人なのか相続人なのかという問題もあろうかと思いますが,これは今までの御意見では受取人,契約者が保険金をやろうとした受取人が保護の対象となるのかなという,そんなことが前提で御議論されていたような気もしますが,その受取人とは別に親族,配偶者,子供とか,そのあたりの親族を考えた方がいいという御意見がございますか。   ○○委員。 ● 私のが正しいかどうか分かりません,イメージが,とりあえず受取人にやらせる,親族で円満に,必要ならばその後,次に任意の契約者変更か何か。だから,基本は何か受取人を中心に考えて制度を働かせると。○○幹事がおっしゃったことは全くそのとおりで,私も業界の方が心配されておられるような問題というのは,こういう形にして,あと契約の段階でいろいろちゃんと言いなさいと,アレンジしなさいということによって基本的には解決できるのではないかなという印象を持っています。   すると,復活のところは,他の委員にきちっと届くような形でさっき言えなかったのですが,要するに告知はなしで,短い期間でと,それが前提ではないと○○幹事がおっしゃったことは働かないし,私はそういう意味で非常によくできて,詰めていけば業界の方も納得していただける可能性があるという案を考えたのではないかなと,そんなふうに思います。 ● ○○幹事。 ● ②というのですか,復活を使って介入権と同様の効果を求められるという非常に新しい案で,いいなと思っていたのですが,ただ現状,例えば簡易復活のような制度を生命保険会社でとっておられるところと,全社がとっておられるのかどうか私よく承知していないのですけれども,あれはたしか3か月以内の復活を比較的簡便な形で復活させるということなのですが,しかし,そうはいっても一応復活の制度にのせてやっておられるので,自殺免責期間がもう1回始まったりとか,告知も簡便ではあるけれども,一定とるというような格好でやっておられるのですけれども,それとのいわば若干の切り分けみたいなものも必要で,復活とは一体何ですかということも場合によったら定義しないといけない話になってきて,そうなるとここだけで復活というのを使って整理できるのかという問題が,波及的に出てくるように思うのですね。簡易復活というようなものをもし制度的にくみ上げるという中で一つこういうものを入れるということになってきますと,結構これは難渋するなということも,技術的にちょっと懸念をした次第です。しかし,それとは別にこれだけで限定してこういう仕組みをつくるということも可能かなとは思うのですが,ちょっと概念の使い方とかいうのと,それからどの範囲でまさにこういう仕組みで復活を認めるのかというのは,簡単ではなさそうだなという印象を持ちました。 ● ○○委員。 ● 申し訳ありません,一言発言させてください。方向について大ざっぱな意見しか申し上げられませんが,○○幹事が途中でお話しされたことをもう少し強調させていただきたいと思います。それは,これまでの多くの問題は保険会社と契約者と受取人という契約関係の当事者間の利害調整の問題だったわけですが,この問題はそういう面も確かに含んではいるのですけれども,それとは異なった側面を持っているということを強調すべきだろうと思います。その異なった側面というのは,保険契約者の財産がだれのための責任財産であるかという問題であって,そこで保険契約者が破産したときの破産管財人とか差押債権者,代位債権者というものが登場してきているわけであります。保険契約の契約者変更で対応できる部分があるというのは確かにそうかもしれませんが,それにゆだねるにしては問題が大きいのだろうと思います。すなわち,保険契約者の差押債権者などは,保険契約の当事者ではありませんので,まさに任意ベースでありますし,○○幹事がおっしゃったように詐害行為であるとか否認であるとか,そういうものに対しては当事者間で調整するのは無力なのだろうと思います。したがって,介入権あるいはそれに類似する制度を設けて,設けたけれども介入権が使われないということになってもいいのだろうと思うのです。その一番最後のラストリゾートがあれば,それに向けて関係者がよりコストの小さい方法で調整をしていくだろうと。しかし,そのラストリゾートがありませんと,やはり保険契約者の財産がだれのための責任財産かという点について,適切な解決が必ずしももたらされないのではないかと思います。   最後の点ですが,これは何人もの方がおっしゃったので一言だけ申し上げますが,やはり解約返戻金の金銭的な評価と,それから契約者,あるいは,特に受取人にとって保険事故が将来生じた場合の保険金との差があるという,そういうある種の個性を持った法律関係というところがこの問題の出発点であって,それに即した形で解決するならば介入権のような方法というものがやはり望ましいだろうと思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● 提案されている中身については特別なケースとして一定法的な手立てといいますか,それは必要性はあるのかなと思うのですけれども,一般に共済契約の権利義務の承継ということが規定の中で運用されているわけなのですけれども,その共済契約そのものを残すということについては基本的には同じだろうと思うのですよね。その場合に,契約者の破産という特別なケースとしての契約の継承と,一般的な契約の継承と,規律として整理をされてやられるのか,それとも一般的なケースは約束事といいますか,書かれていればそれでよしというように整理されているのか,ちょっとそこは伺いたいと思います。 ● 一応これは一種の特則,契約者の地位が変わるということの特則だろうと思うのですが,何か事務当局ありますか。 ● ちょっとお尋ねの趣旨がもう一つ理解できなかったのですが。 ● いろいろ団体によって約款の違いがあるのですけれども,規定の中で一般的に共済契約について,事由にかかわらず契約の継承というのができるような規定になっているものもあるわけですね。そうすると,破産の場合であったとしてもそういうケースは適用されると。そういうケースというのは実際にあるのかどうかというのはあるのですけれども,例えば家族で入られているいわゆる掛捨ての場合に解約返戻金もありませんし,月額の掛金も低いわけですね。そのまま子供も含めて入っていますので,保障という意味では必要ということで,契約者の変更,つまり奥さんに今度契約者になっていただいて,契約の存続ができるという仕組みというのはとられているわけなのですね。そういう一般的なケースと,いわゆる破産ということなのですけれども,そういう特別なケースと規律として分けて考えるのか,それとも,そういう中に含まれるということでやるのか,特別なケースだけ規律として入れるのか,その辺がどうなのかということでちょっとお伺いしたいのですけれども。 ● 先ほど○○委員からもお話しのありました契約者変更の申し出があったら基本的にそれを認めるという制度が別途あるということとも関係すると思いますし,そもそもこの制度の導入の必要性をどう説明するか,○○委員からの御指摘とも関係すると思いますけれども,今の契約者変更のスキームは仮に合意ベースで行われるものだとすると,ここで考えているのは適用場面をどうするかという問題がありますけれども,受取人のイニシアチブのもとに同じ効果を実現するということを基本的に考えておりますので,その意味でもたらされる結果は同じということになりますが,仕組みとしては別のものという位置付けが恐らくできるのではないかと思います。 ● ちょっと違うなと思ったのは,受取人が基本になって動くというベースになっていますけれども,共済契約の権利義務の承継というのは基本的に共済契約者が基本になっておりますので,実際にその手続を採る方,権利を持っている方というのが違うわけなのですね,私どもがやっているケースでいいますと。だからちょっと特別なケースと一般的に契約を承継させていく仕組みというのは規律としても違うのではないかと思うものですから,その辺の扱いがどういうふうになるのか,それは約款で決めればいいということであれば,それで結構かと思うのですけれども。 ● 今の御指摘を踏まえまして,あるいは先ほど○○幹事もおっしゃったように,契約者変更とは別に簡易復活的な制度も別途あるとすれば,それとの住み分けということも含めて引き続き検討したいと思います。 ● その他,この(注)の(ⅰ)から(ⅴ)とか,細かい点も問題があるのではないかと,いろいろ考えてありますが,何かこのあたり特にございませんか。   ○○幹事。 ● 先ほど御指摘のありました権利行使者が受取人か親族かということですが,これ親族を受取人と並べて入れてしまいますと,限られた状況でありますけれども,被相続人の生前から相続財産をめぐる紛争がこれを引き金に始まってしまうということになりはしないかということを少し危惧いたしますので,受取人でかつ親族というような形でよろしいかと思います。   モラル・ハザードの観点から少し問題がありそうなのは,新たに契約者になった者が従来のポートフォリオを変えまして非常に死亡保障の高いものにして,早く亡くならないかなみたいなことがあると,これは多少問題かなと思いますが,それは保険会社の方でそれを組み変えることは保険者として受けないということで,契約でも処理できる問題なのかなと思いますが,念のためそれもできないというふうに書かれるのも一つの方法かなという気もいたします。 ● それではまた,このあたり今日,全然こういう制度は不要だという御意見が大勢だとは思いませんでしたので,なお,引き続き詰めるところを詰めていただいて,次の段階で御議論をいただくということにしてはいかがかと思います。   それでは先へ進みまして,「7 重大事由による解除(特別解約権)」の問題について,まず事務当局より御説明をお願いいたします。 ● この7で問題提起しておりますいわゆる重大事由による解除につきましては,既に損害保険契約に固有の事項として御審議いただいたところでございますので,ここでは損害保険契約と異なる点を中心に御説明いたします。   まず,本文の①では解除事由を定めておりまして,(ア)では詐欺を行った場合を掲げまして,(イ)としては包括条項を設けるということにしております。この(イ)の包括条項につきましては,損害保険契約の御議論の際にさまざまな御指摘をいただいたところでございまして,そちらの規定と併せて二読に向けて引き続き検討してまいりたいと考えております。   なお,損害保険契約とは異なりまして,保険契約者等の故意による保険事故の招致を解除事由とはしておりませんが,この理由については資料4頁の(補足)のところに記載したとおりでございます。   次に,本文の②,これも損害保険契約のときと同じ規定でございまして,そちらの御議論の際にはさまざまな御指摘をいただきました。この点,規定の分かりやすさも含めて引き続き検討してまいりたいと考えております。もし,そこで御指摘されなかった点について特段の御意見がございましたら,御指摘いただければと思います。   続きまして,(注)について御説明いたします。(注)1では,本文①の解除事由について改めて問題提起をしております。解除事由につきましては,損害保険契約の御審議の際に具体例も挙げつつ議論をしてはどうかという御指摘がありましたことを踏まえまして,ここで改めて問題提起しているものでございます。この点については,本日席上配布しましたペーパーを生命保険業界の委員の方に御用意していただいておりますので,その内容につきましては後ほど御説明をいただけるということでございます。   さらに,資料におきましても括弧内に幾つか具体例を挙げておりますので,(注)1の括弧内の具体例をごらんいただきながらお聞きいただければと思いますが,まず,いわゆる殺人未遂行為につきましては,前回も御指摘ございましたが,生命保険契約の約款で例示として掲げられているものでございまして,これを本文の規定においても解除事由となるのかについて御議論いただければと考えております。   これに関連しまして,保険金受取人が複数指定されている場合において,その一部の者が未遂行為をした場合にも,契約の解除でよいのか,あるいは,その一部の者の保険金受取人の指定を失効させることで足りるのかという点について,検討する必要があるように考えられます。   また,被保険者の自殺未遂については,約款で自殺免責期間が定められていることとの関係で,解除事由としても期間を制限すべきかどうかについても,免責の規定との関係も併せて検討していく必要があると考えられます。   また,殺人予備行為というのも記載しております。これにつきましては刑事法の分野の話になりますが,予備とは一般に実行の着手に至らない段階の犯罪の準備行為をいうと解されており,殺人予備罪については殺人の実行を可能にし,又は容易にする準備行為であるといわれております。その具体例としましては,人を刺殺するために刀剣を入手してこれを研ぐ行為とか,銃殺の目的で拳銃を借りてくるとか,殺害のための凶器を準備して被害者の家の周りをうろつくこと等が文献等では具体例として挙げられておりますが,こういった予備行為を本文①の例示として掲げることの当否や,(イ)の包括条項に当たるのかについても併せて御議論いただければと思います。   さらに,他の保険契約に関する事由が当該契約の解除事由となるかについては,損害保険契約の御審議の際にも御指摘がございましたが,ある契約について,本文①の解除事由があった場合に,同一の保険者との間で締結された保険契約者等が共通する他の契約の解除事由となるかという問題,さらには,他の保険者との間の契約についてもその解除事由となるのかという問題,さらには,生命保険契約と他の類型の保険契約との間でも同様のことがいえるのかなどといった問題が考えられます。これらについては,実質的にどのような規律がよいのかについて御議論いただければと考えております。   続きまして(注)2ですが,これは本文①(ア)の「保険金受取人」の範囲について問題提起をするものでございます。   (注)3は,本文①の規定による解除権に関しまして,除斥期間の定めを設けることの必要性について問題提起をするものでございます。これにつきましては,損害保険契約の御議論の際に御指摘いただいたことを改めて問題提起したものでございまして,御意見をいただければと考えております。   この点につきましては,一般法理によりますと,解除権はこれが発生した時から5年又は10年の消滅時効又は除斥期間によって消滅すると解されているようでございまして,重大事由による解除については,これよりも短期の除斥期間を設けるべきかといったことが問題となると考えられます。この点については,まず重大事由による解除が信頼関係破壊を理由とする解除であるという点を強調すれば,例えば,民法の雇用契約に関する第628条等同様の趣旨に基づく規定が民法にあること,あるいは賃貸借契約の信頼関係破壊を理由とする解除権などにつきましては,短期の除斥期間の定めはないこととのバランスを検討すべきようにも考えられます。   また,重大事由による解除が問題となるのは,詐欺行為があった場合や,故意による保険事故の招致がされた場合などであることから,一般法理よりも短期の除斥期間を定めることの当否についても検討が必要と考えられます。   他方で,損害保険契約の御審議の際に,解除事由が発生した後解除されるまでの保険料を保険者が取得することでよいかについて御審議いただきました。その結果としましては,取得できるということでよいという御意見が多かったように思われるところでございます。そうしますと,これとの関係で除斥期間を設けないと,保険者は解除事由の存在を知っているにもかかわらず契約の解除をせず,他方で保険料を取得し続けることが理論上可能となっており,これを一定の合理的な規律に服せしめる必要があるとも考えられます。   なお,解除権の行使について期間の定めを設けないときは,民法第547条により,保険契約者は相当の期間内に解除するかどうかを確答すべき旨の催告を保険者に対してすることができ,その期間内に解除の通知を受けないときは解除権が消滅するということになると考えられます。   以上のような観点から,除斥期間の定めを設けるべきか,設けるとすれば他の解除権と同じく解除の原因を知った時から1か月,ここで他の解除権と申しますのは,例えば告知義務違反による解除のことを指しておりますけれども,そういったものと同じく1か月,あるいは解除事由が生じた時から5年とすることでよいかについて御議論いただければと思います。   続いて(注)4は,他に生命保険契約に固有の問題があるかどうかという問題提起でございまして,一つ飛ばしまして(注)6は,本文の規定の強行規定性について問題提起するものでございます。   以上が,重大事由による解除に関する問題提起でございますが,さらに(注)5では若干異なった問題について併せて問題提起をしております。   (注)5は,被保険者は,一定の場合には,自己の意思によって将来に向かって契約を失効させることができる旨の明文の規定を設けるべきであるという考え方について,問題提起するものでございます。 ここで典型的な例を四つほど挙げさせていただきます。まず一つ目ですが,これは夫が保険契約者兼保険金受取人で妻が被保険者である死亡保険があったといたします。その事例で,その夫婦が離婚した場合に,被保険者である妻としては元の夫が保険金受取人である死亡保険契約の存続を望まないことも多いのではないかとも思われます。二つ目ですが,貸金業者が保険契約者兼保険金受取人で借主が被保険者で,ある意味担保の一種として死亡保険契約を締結していたというケースでございます。この場合において,借主が債務を完済したときなどには,借主としては保険の存続を望まないと思われます。三つ目ですが,これは会社が保険契約者兼保険金受取人で,従業員が被保険者の死亡保険契約があったとして,その従業員が退職したというケースでございます。この場合,後ほど御審議いただきます団体保険では,退職した場合には当然に被保険者の地位から離脱する旨の定めがあるようでございますが,個人保険を利用しているケースでは当然に被保険者が契約関係から離脱することにはならないように考えられます。四つ目,これが重大事由による解除が問題となるケースと重なってきますが,例えば被保険者が保険金受取人等から殺されそうになった場合等には,自己を被保険者とする保険契約の存続を望まず,むしろ積極的に契約関係からの離脱を望むようにも考えられます。 以上のようなケース等につきましては,学説上,解釈論として被保険者の離脱を認めるべきであるとの指摘がいずれのケースについてもされておりますが,一般的には,被保険者が同意して有効に契約が成立した以上は,法的安定性の観点から同意の撤回はできないなどと考えられてきたようでございます。確かに,契約締結時にさかのぼって契約が効力を失うとすれば法的安定性を害することは明らかですが,(注)5のように,将来に向かって被保険者が契約関係から離脱することとすれば,著しく法的安定性を害することにはならないようにも考えられるところでございます。また,被保険者の同意の趣旨として挙げられているモラルリスク防止や人格権保護ということを強調すれば,契約からの離脱を認めるのが素直なようにも考えられますし,そもそも被保険者は事情変更後にまで契約に拘束されることを含めて同意しているのかについては,議論の余地もあるようにも考えられます。 この点に関しまして,損害保険契約の御審議の際にも若干御説明いたしましたが,道徳的危険が増加した場合には,商法第656条の規定によって契約が失効するという裁判例があり,学説上はこれに対して批判的な指摘もされているものの,モラルリスクに対する方策の必要性については御異論がないものと思われます。契約が失効するという規定は,既に危険の増加のところで御審議いただきましたが,それを削除することとした上で,今回,保険者のための制度としては本文のような重大事由による解除を明文の規定で設けることを提案しておりますところ,現行法上被保険者も失効を主張することができるとすれば,被保険者のための制度も設ける必要があるようにも考えられます。仮に,被保険者の意思によって契約関係からの離脱と契約の失効を認めるとしても,被保険者が嫌になったというだけで離脱を認めるのか,あるいは,何らかの要件を満たした場合に限るべきかについても検討する必要があり,併せて御議論いただければと考えております。 さらに,何らかの制度を設けるとしても,その具体的な仕組みが問題となり,資料では,被保険者の意思によって被保険者が契約関係から離脱し,そうすると契約の要素を欠くことから,契約が失効するという考え方を提示しております。この点につきましては,被保険者が保険契約者に対して契約の解約請求をすることができるといったような立法論的な提案もされておりますが,契約当事者でない者が契約の解約を請求することができるという構成が,若干技巧的であるということでありますとか,あるいは,被保険者が保険契約者を相手方として請求するという仕組みがよいのか等の疑問も提起されております。そこで,具体的な仕組みについても併せて御意見をいただければと考えております。 以上でございます。 ● ありがとうございます。   では,今の御説明のあった点について,御意見,御質問をいただければ。   ○○委員,どうぞ。 ● それでは,席上配布させていただいております「重大事由解除が認められた裁判例」につきまして,御説明申し上げます。この二枚物なのですが,まず一番左側の欄ですが,これは約款に定める解除事由として,保険金詐取目的の事故招致,それから詐欺的請求,それから特約解除,次の頁へまいりまして,過剰重複加入による保険制度目的に反するもの。それから,その他,参考と書いてあります。 1頁に戻っていただきまして,右の列は約款記載例となっておりまして,これは第一生命の約款規定を記載しております。これは昭和62年に特約約款に,それから翌年の63年に主契約の約款に導入されたものでございます。この約款規定は,当時生命保険協会でモラルリスク対策を検討した結果導入されたものであり,現在の生命保険会社の約款にはほぼすべてこの規定が採用されております。   それから,次が一番右の列ですが,ここでは,それぞれの事由で認められた裁判例を記載しております。これは生命保険文化センターが発行している生命保険判例集,あるいは保険事例研究会レポートから任意に抜粋したものでありまして,これ以外にも解除が認められた事例あるいは認められなかった事例もあります。   それからもう一つですが,この判例では必ずしもどの事由か判然としないものもありますので,便宜的にそれぞれの事由の欄に記載,振り分けております。   以上お断りして,以下御説明に入ります。   まず,一番上の保険金詐取目的の事故招致ですが,まず①の事案です。これは約款規定が設けられる前の裁判例であり,必ずしも故意の事故招致という約款規定によるものではなく,事由が判然としない面もありますが,追突事故により傷害を受けたように装い,災害入院給付金を詐取しようとする行為に関して特別解約権の行使を認めたものであります。また,次の二番目の例ですが,被保険者の供述の不自然さや,多数回にわたり傷害事故で他社の傷害保険から保険金を受領している事実等を総合考慮して,故意に保険事故の発生を仮装したと推認された裁判例であります。それから,三番目の例は,交通事故の内容や加入状況等から故意の事故招致若しくは偽装事故に当たるとして解除が認められた事案でございます。   それから,次の欄の詐欺的請求ですが,こちらは請求時の保険金受取人による詐欺行為を解除事由としております。裁判例としては,④の死因と関係のない事故報告書を提出し,検察医に偽装を働きかけたと,こういったことが詐欺的請求に当たるとして認められた裁判例でございます。   次に,一番下の特約解除でありますが,主契約の約款におきましては特約が重大事由により解除された場合にも解除できるとなっておりまして,特約の解除が認められた裁判例では,通常主契約の解除も認められております。   それから,次の頁に移りまして,過剰重複加入による保険制度目的背反による解除でございますが,⑥の例は債務を抱えながら7社,11件の保険に加入していた事例や,⑦の事例ですと5社,8件の加入直後に乳がんの確定診断を受けた事案で解除が認められております。   また,最後のその他でございますが,これは約款にはいわゆる包括条項が規定されておりまして,これには,単独では上記の特定の事由には当たらないものの,さまざまな事情を総合的に考慮して解除が認められた事例が存在しております。例えば,⑧の事例では,それ自体で過剰重複加入に当たる可能性もありますが,そのほかに覚せい剤の使用,脅迫的言動等の事情も考慮し,保険契約の継続を期待し得ない事由に当たるとされたものでございます。   それから,最後の列に参考が掲げてありますが,この⑩の例は昭和60年の大阪地裁の裁判例を記載しておりますが,これは重大事由解除の約款規定が入るきっかけとなった裁判例でありますが,これは不正請求目的で替え玉殺人を行った後に自殺をした例です。そういう意味で,この事案を契機として約款規定が作成された有名な事例であります。御参考までに掲げたわけでございます。この事案では,生命保険金の詐取を試みた保険契約者が,競艇場で知り合った他人を自分の身代わりにして殺害した後,不正請求が露見したため自殺をしたケースであり,このような事案において身代わり殺人行為をした時点まで遡及効が認められないとしますと,こうした事例では解除できないという不都合が生じかねないと考えております。   裁判で解除が認められた以上の事案で御理解いただけますように,業界としましてはこのような約款規定はいずれも必要不可欠な規定と認識しており,学説的にも規定の必要性については御理解いただけているものと考えております。したがいまして,今回の保険法の現代化に当たりましても,法律上明文の規定を置いていただくことが望ましいと考えております。   また,資料の(注)1とも関連しますが,(補足)にありましたように,保険事故招致を解除事由としないことについて,(イ)の条項によっても未遂の場合には解除できず,保険金詐取のための事故招致が成就したか否かによって結論が変わりかねず不合理と考えられ,さらに約款にありますように自社に同一契約者の他の契約が存在している場合,あるいは損害保険契約の議論の際にも申し上げましたけれども,事案によっては自社内の他の契約とか,あるいは他社契約の状況によって解除する場合もあり得ますので,故意の事故招致についても損害保険契約と同様の規律を設けていただきたいと考えております。   また,仮に生命保険契約の規律に故意の事故招致が解除事由として入らないことになりますと,現在我々が販売しております生命保険商品におきましては,先ほど事務当局の方から御説明がありましたように,未遂の場合,その解除をどこで読むのかという問題,あるいは,高度障害保険金の場合はこの保険法の規定外かもしれませんが,約款では必要になってまいります。それから,被保険者が複数となる団体保険,連生保険,こういった保険におきましては保険事故発生が直ちに契約の終了にならないという場合もありますので,包括条項があることによって現行の約款実務が否定されないということになるかということを確認させていただきたいと思います。   それから,あるいは,この最後にありますように,この条項が任意規定か強行規定かということですが,我々としましては,先ほど高度障害なんかの場合を例に挙げましたけれども,やはり約款上必要でありますので,その約款が否定されないという前提であればいいのですが,そうでなければ任意規定でお願いしたいと考えております。   以上です。 ● 今,幾つか意見というか,質問というかあったと思うのですが,何かそれについて答えられることはありますか。故意の事故招致を解除事由にしないとか,あるいは未遂というのは。 ● 答えられるというか,一定の考えはないわけではないのですが,それも含めて御議論いただくということの方がよいかと。 ● では,先に。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 問題は二つあって,重大事由の解除と(注)5の二つだということだと思いますが,まず私,この損害保険のところでも申し上げたのですが,この規定の仕方にちょっと異論を唱えたいのですね。それは,基本的には要件が広過ぎて,効果は免責という形になっていますが,これはさかのぼって解除といいますか,要するに保険金を支払わない法律構成として,従来は特別解約権で契約の途中までの遡及であったのが,これは途中までの解除による遡及というのはとても受け入れられないことかもしれませんが,免責という形にされたと。でもこれ,そういう効果が出るということは,やっぱり相当重大なものであればこそ遡及するわけで,重大性というものは要件に入っていないと思うのですね。これは具体的な事例,だれもが,特別解約権について一般的な法理を,まだ最高裁は認めていませんが下級審判例が認めた,学説が認めているものを法文化することはいいのではないかと思うのですけれども,問題はその仕方で,少なくとも学説が異論ないと思っている判例は先ほど○○委員がおっしゃった大阪のものと,もう一つ札幌地裁で自殺を偽装して替え玉殺人でしたか,これは犯罪被害を偽装したものですね,マニラに行って殺されたというものを偽装したと。どちらも単なる信頼関係の破壊とか,それから詐欺というか,そういうものではなくて,広い意味の保険詐欺ということではもちろんありますけれども,やっぱりそれは何らかの意味で公序良俗に反するような行為が関与していると。その重大性があればこそ,さかのぼって責任を持たせた,法律構成は免責なのか解除による遡及無効なのかいろいろありますけれども,本来はそういう重要なものであればこそこういう特別の遡及的に責任がなくなるというものだと思うのですね。基本的な発想は,前にも申し上げましたけれども,契約は残して免責のところで故意,故意というのは基本的に免責だけです,勝負すると。次に解除で勝負する。次にもっとひどいと公序で無効になると。実は,この免責というところと解除の間に以後免責というのがあって,これはもう今は第825条にあって実際は死文化しているわけですけれども,船が特定のところから離れたらそれ以降免責ですよと。でも,これとこれはある意味では無効といっても非常に近いような,保険料はとると。そういう特殊なものもあるということなのですけれども。   ですから,この二つの事件を見ると,結局,公序良俗による失効というのと,つまり公序良俗的な要素がないにもかかわらず,こういう解約権を,重大事由による解約権を認めなければいけない場合って本当にあるのかと,こういう問題で,ですから私は,この保険事故を偽装する手段として公序良俗に違反する行為をしたと。もう一つは,動機の違法といわれているもので,これも広い意味で公序良俗違反だということも言えると思いますが,もしそれが言えないのであれば,この資料の中にも少し同じような言葉がありますが,保険団体の目的外に保険金が用いられる蓋然性を著しく増大させる行為をしたと,そういう場合,そういう時点から,要件としてはそういうふうにきちんと重大な効果をもたらすような要件に絞って,効果の方はさっき言った以後免責と呼んでもいいし失効でもいいと。この②もよく考えておられまして,よくよく見ると,これ事由があった後,以後免責というのですよね。問題なのは,そんなに重要なのに保険会社の裁量というだけで解除権が行使しないと免責の方が発生しないと,そういうことが事の重大性からいって内在的な保険の法理論としていいのかという根本的な問題があって,ですから,この規定はとにかく置く必要はあると。置くときに,先ほど約款との関係を言われましたが,約款のもっと,約款はやっぱり要件の広いものも含んでおられるわけですね。その証拠に返戻金は返すということになっている。しかし,多分狭義の意味での重大な解除というのは,もう公序良俗違反,そんな返さなくたっていい,そういうのがやっぱり議論のスタートとしてはあると思うのですね。ここでは保険料の議論をしておられないので,あえてそれは避けておられるかもしれない,混乱しますから。そういう今のような前提で,もうちょっと,ですから私は保険事故を偽装する手段として公序良俗に違反する行為をしたとき,先ほどの二つは必ずそれをしているわけですね。それから,そういう保険制度目的外の保険,要するにお金だけ欲しいと,そういう取得する可能性を蓋然性を著しく増大させる行為をしたと,そういう時から法律構成はともかく以後免責でもいいですし,お金を払わないようにすると。そういう規定にしていただかないとちょっと広過ぎるのではないかというのが第一の意見です。   二番目の(注)5のところですけれども,これは確かに法律的には難しいところで,どうも諸外国でも撤回はできないことはない。解釈論として保険契約者に解除を請求できるのではないかという議論がある。少なくとも,最近の団信生保の議論を考えますと,もう今はそれを引き受けておられないのかもしれませんが,普通の個別の保険で同じことが起こり得るわけですよね。だから,貸金業者から電話がかかってきて,あんたお金返さないのは人間ではないよと,保険もついているから自殺する方法もあるよと,そういうテープをとったらそれを出せば失効の手続をとってくれると,そういうことは考えてもいいのではないかと。だから,少なくとも重大事由解除ができるような事案,それから保険金受取人が法人だという場合ですね,ここでの一応の詰めていないところはありますが,そもそも重大事由解除ができるような場合にはこういう規定を置いていいのではないかと思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● 実態をお話ししますと,重大事由の規定が広過ぎるというのがございましたけれども,4社で保険金と給付金合わせますと数百万件払っているのですが,そのうちの重大事由解除を適用した例が平成17年度で合計8件なのですね,保険金と給付金合わせてですから。それで4社の中でも1件もない会社もあるし,1件ある会社もあると,そういった状況です。私どももちろん裁判やりますと公序良俗違反等の主張ももちろんします。そのほか使えるものは全部使うのですけれども,やはり約款に規定してあるということは,裁判所が裁判官が認めてくれやすいものだということなのですね。詐欺無効が適用できるものはもちろん詐欺無効を適用して主張しますし,それができないからこそこういう規定をつくったという経緯があるのですね。そこら辺も御理解いただきたいと思うのです。 ● はい。 ● その事情は分かっていますし,また,こういう場合は払わなくていいという点については多分事案を見れば皆さんそんなに大差ないと思うのですよ。ただ問題は,私が申し上げたかったことは,そういうふうに限定しても実際これは詐欺の事件なんかもそうですけれども,故意の事故招致とか,それから巨額な引受けと,本来だとこれは他保険告知でやれば十分処理できるのではないかとか,そういうほかのいろんなやり方のもので処理できるという前提でここはやっぱり限定しておいて,約款で一定広げられるのはいいと。そういうことを申し上げたいのですね。 ● ○○委員。 ● それはなかなか御理解いただけないのは,やっぱり実務が苦しんでできた条項なのですね。それは今の他保険告知の話は以前も議論出ましたけれども,それは例えば契約内容登録制度とか,そういうこともやっていますし,結局,そういう種々の議論があっても分かるのは保険事故が起きてからというのが実態なのですね。そのときは必ずしも完璧な制度というのはなかなかあり得ないのですね。そういった意味でこういった請求時点での対応策というのも必要ですということでございます。 ● 3頁の①で先ほど御説明で,生保の場合死んでしまったらそれで契約が終わりだから故意の事故招致は解除事由に掲げないのだという御説明だったので,そうすると(ア)と包括条項として(イ)だけが残ってしまう。どうも,このあたりを並べると今○○委員が言われたちょっと何か軽い事由で解除を認めているのではないのという,若干そういうイメージを私も。そうですね,やっぱり(ア)には故意の事故招致というのがあると非常にこの規定の成果というのははっきりしてくるかな,今の詐欺の請求というのもそれと同程度というイメージがわりとわきやすいと思うのですよね。そういう問題はあるのですが,他方で故意の事故招致というのを挙げるとどういう契約の故意の事故招致と。この当該契約の契約者,被保険者,受取人が絡んだような別の契約,別の会社のさらに契約,あるいは生保会社も裁判の中では生命保険と全く関係のない損害保険で詐欺的なことをやった場合にまで主張するというですね,そこはまた際限なく広がる可能性もあるというので,ちょっとそこは広いのではないかなというイメージもありますので,そこはなかなか悩ましいところではある。   ○○幹事。 ● 私はちょっと,前回の損害保険のときの特別解約権のときには自分自身でよく整理できていなかったから意見は言えなかったのですけれども,今回生命保険での特別解約権を見ていて,今○○委員もおっしゃったように具体的に挙げられる事例は一つだけで,あとはキャッチオールになってしまうというのがあるところを考えてみまして,先ほどの話ではないですけれども,約款レベルでの有効性というのと基本法に設けるかというところで,特別解約権というのが本当に必要なのだろうかと思ってしまうのです。というのは,特別解約権を認める根拠というのが,解約の前に事故が発生しているときに,そこまで遡及するということだと思うのですけれども,そこまで遡及するというのがやっぱりすとんと落ちなくて,そこまで解除の効力を徹底させるということは,要するに保険金を請求されたときに免責だということだと思うのです。そうすると,免責事由というのが別に法文で定められて,なおかつ似たような事由で解除というのが規定されて,その効果も同じようでというちょっと整理がつきづらいので,やはり特別解約権というのは信頼関係が破壊された場合の一般法理としての解除で,その解除の効果は遡及しないけれども,その前に保険事故が起こっていて,それが公序良俗に反するようなことであれば免責されるという整理の方が整理がつくのかなと思っております。   そうすると,先ほど挙げられていた偽装の事故をしてから自殺したという場合に,それが本当に免責できないのかどうかなのですけれども,その点は前回議論された免責事由を,あそこは前回も申しましたけれども,さほど狭くしなくてもいいようにも思います。やっぱり保険金をもらえるということで何か不法な行為を誘発するようなことは,回避するような法律の規定というのは認められる方向で,その規定を狭めることはないので,ですので,だから先ほどのケースで保険金請求権が行使されるのを阻止できなかったというのは,自殺の場合の免責が約款で請求されたら,それを免責されないというところにあるのでしょうか。もしそうだとしたら,法律のレベルに戻って自殺の場合には,このような事件での自殺による保険金請求権は約款の規定ではなくて,商法に戻ってそれは請求できないとかって,そういうふうにもあり得たと思いますので,そういうことで特別解約権というのが信頼関係破壊の議論による解除というのと,それから免責という条項の二つ整理できないかなと思っております。 ● ○○委員。 ● 今のお話ですと,私が先ほど申し上げた事例の10番のことを指しておられると思うのですけれども,これは今の○○幹事のお話ですと自殺そのものを商法に戻って免責できないかということですね。この前,最高裁の判例が出るまで幾つかの犯罪とか公序良俗に反するものは約款に縛られなくて免責にしてもいいという判例も出ましたけれども,これはそれよりも20年も前の話なのですけれども,やはりこういったものが特別解約権あるいは重大事由の解除があった方がやりやすいという実態があるわけですね。なかなか,幹事もご存じだと思いますけれども,裁判所で民法の一般法理で認めてもらうって結構至難の業なのですね。そういう点からも約款に入れているという実態でございます。 ● すみません,話を二つのことを一緒にしてしまったのですが,約款のルールでの有効性というのは別の手段だと思っていますので,そういうことがあるので,それで基本法では必要ないのではないかなと思って。それで,基本法において特別解約権の必要性を説かれるときに,やはりこの事例が挙げられて,信頼関係破壊で解除するのでは保険金請求を阻止することができないからというふうになっていたと思うので,ここのところは基本法レベルの免責でこのような公序良俗に反するような請求は阻止できるという規定にすれば大丈夫かなと思っているのですけれども。 ● ○○幹事。 ● この特別解約権の導入の経緯からしますと,実務でも先に特約の方から導入されて主契約の方にという経緯をたどっていますね。私の理解では,当初,特別解約権というのは特約の方が重視されていたと思うのですね。要するに,繰り返し繰り返し入院をして不正請求をすると。主契約に特約がのっていますから,特約だけ切るってなかなか難しいという構造があって,不正請求,詐欺的請求を何回も繰り返しやってくる人について,これを切る手だてが実のところ一回,一回の請求について不正請求であるということを実態的に証明しなければいけないという,そういう非常に信頼関係を破壊するような形の請求があったので,これに対する手段として何か適当なものはないかということを考えれば,現行法ですと第656条の主観的な危険著増というパターンもありますけれども,これだと直ちに失効ですから非常に効果がドラスティックに出てしまう。保険会社としての判断の余地なく,主張しなければいいという面はありますけれども,法理論上は直ちに失効ですと。そうではなくて,やっぱり一応その実態を見て解除するかどうかというのを判断するという意味で,重大事由による特別解約権というのを認める意味が大きかったと思うのですね。これ傷害でも同じかと思うのですけれども。   そこでの,非常に重大事由による特別解約権というのは大きな意味があったと思うのです。ただ,これを主契約の生保のまさに死亡保険の本体の方へ持ってきたときに,確かに事故自体が繰り返し発生する入院とか傷害とかというものではなくて,一回きりの死亡というような話なので,それを不正請求するということになりますと自殺絡みであったり,あるいは殺人という犯罪行為が絡むということになりますので,言ってみたらこれは公序良俗の問題に直ちにつながりやすいということで,重大事由による特別解約権イコール公序良俗問題ではないですかということでつながりやすく,生保の場合,特に主契約の場合なるのだと思うのです。   ですから,今少し議論がございましたとおり,どうしても公序良俗問題が前面に出てきてしまって,特別解約権の意味合いというのが,やや特約部分,疾病や傷害の部分よりはちょっとフェードアウトしてしまうような面があるかとは思うのですけれども,しかし,ここで議論されている中身でいきますと,必ずしも死亡事故が発生しない予防的な段階でも,非常に危険な状況があるのであれば,それは特別解約権を行使して契約を終了させるということも認めていい場面が多々あるかと思うのです。それは社会的にはないにこしたことはないわけですけれど,そういう危険な状況があるという場合にその手段がないということでは,やはり適当でないと思われますので,私は重大事由による特別解約権はぜひこの形で,あるいは,もう少し具体的に先ほどお話ありましたように,故意の事故招致を重大事由の特別解約権の行使できる条件として出すというような形で,そのイメージをはっきりさせるという形をとって,望ましい形でこれを入れていただくのが適当だろうと考えております。 ● 特別解約権の方はほかにご意見ございませんか。   ○○委員。 ● 傷害・疾病保険契約にもこの規定が適用される可能性があるという立場でちょっと申し上げさせていただくのであれば,基本的には(イ)のような包括的な条項を設けることには賛成の立場です。   それから,ちょっと細かい話で恐縮ですが,(注)1に関して前々回でも申し上げましたが,他の保険契約の告知・通知義務の規定が設けられないような場合には,重大事由解除の規定がこれに適用できるように,著しい重複の場合というものがここで適用できるという形の確認をしていただければと思います。 ● ○○幹事。 ● ここで御指摘いただいたことについて一通り,意見が出ないようですので,少し申し上げたいと思います。 まず(注)1の殺人未遂及び予備行為については,立法ができるかどうかという技術的な問題だと思いますが,これがクリアできる方向でぜひお考えいただければと思います。   それから,その次の,他の保険契約に関する問題については,他保険契約の告知義務,通知義務の方で処理するというふうに切り分けをしていただければと思っております。   それから(注)2の方ですが,これは保険金受取人の範囲の問題は事故招致免責の場合にも同じように,自転車による事故招致とか,保険金請求権の手続上による事故招致の問題がありますので,ここだけの問題でなくてそちらとできればそろえるような形で,私はこれらも入った方がいいのではないかと思っております。   それから,除斥期間の問題については,これは信頼関係破壊行為以後の事故については,信頼関係破壊行為と信頼関係のないものも含めてすべて免責であるというようなことであれば,やはり除斥期間の定めはどこかで要るだろうと思っております。逆に申しますと,信頼関係破壊行為と因果関係のないものについては,保険金を払うみたいなことをやってしまうと,これはなかなか,それがさわりを来すといいますか,結局その信頼関係破壊行為を毎回立証しないといけないということになっていくかと思いますので,ということは規定のつくり方としては信頼関係破壊行為は一つ立証すればいいけれども,それには適切な除斥期間を付ける方が望ましいのではないかと思っております。   それから(注)5ですが,これはぜひともこういう規定も置いていただく方向で議論していただければと思います。 ● ○○委員。 ● 先ほどからお話伺っていまして,故意の事故招致を書いた方がイメージというか,要するに普通の人がこの保険法の条文を並べて見たときに,損保のときと生保のときの格付けが違っていまして,もともと,いわば契約者などの道徳的な危険を排除するという意味で多分この条項があるのだろうと。そのこと自体はモラルの問題ですから,悪いことではないのですけれども,そういう意味で,故意の事故招致と並んで詐欺というふうに並んで,しかもそれで包括規定という並びの方が確かに分かりやすいと。その包括規定のところに,損害保険のときにも申し上げましたけれども,故意と詐欺に並ぶようないわば条件付けをして包括規定を設けていただくことで,やっぱり条文を眺めた人は,こういうものがこういうことに当たるのだということがつまびらかに分かるという意味で,大変その方がよろしいのではないのかなと考えています。それが一つです。   それから(注)5のところなのですが,ここでこういうものが出てきて大変びっくりしましたし,実はウェルカムでございまして,歓迎をしています。消費者相談の現場では,いわゆる被保険者のうち特に他人の生命の保険ですか,その場合の被保険者の地位というのはいわば無償の行為でございまして,利得になるところが一つもないというところで被保険者の地位にいったんはおさまりました。奥さんとだんなさんとか,いろんなことがあるのですけれどもいったんはおさまりました。だけど長い期間の契約でございますので,当然いろんなことがありますので,当然その地位を抜けたい,同意の撤回をしたい,契約関係から離脱したい,本人はちっとも契約していないのですけれども,契約の中の目的になってしまっていますので,そこからおりたいというようなことがあって,その場合に例えば契約者が怠けていてやらない,又はわざとやらない。そういう場合に,理由上どうしようもないのですね。保険会社に申入れをしてもどうしようもありませんから,契約者とよく話してください,これでおしまいでございますので,そういう意味では何とかしてほしいというような声をたくさん聞かされるのだけれども,いかんともしがたいという部分がございまして,確かに,例えば本当に公序良俗に触れるような行為があればそれはまた別でしょうけれども,そうではない部分でもやっぱりおりたい。そうすると,先ほどは四つ類型がございましたけれども,あの四つの類型でいいのだろうかと。もっと,ものすごく,大変ラフなことを言わせていただければ,もっと原点に,実は私,嫌になったのよというのでやめさせても,別に将来に向かってのことであればそんなに問題はないのではないかと,かなり過激な発言でございますが,そこまで思っているぐらい,やっぱりそういう意味ではここの部分の規定はぜひ設けていただければと思っております。 ● ○○幹事。 ● 一点意見と,一点質問をさせていただきたいと思います。   一点意見といいますのは,この特別解約権の規定を一般法としてのこの保険契約法の中に入れる必要があるかどうかということが,先ほど来から議論になっていますが,基本的に私はこれは今回書き込んでいただく必要があるだろうと思っております。それはやはり,ほかのところのいろんな制度を最後につくっていくに当たっても,伝家の宝刀としてこれが一つ用意されているということによって,ほかのところのプログラムも変わってくるという関係があろうかと思いますので,まず基本のところでこの制度があるということを徹底していただく必要があると思っております。   ただ,そこでちょっと申し上げたいのは,具体的に言いますと,例えば,ではどんなケースかといいますと,大量に短期間のうちに重複した保険に加入した後,自殺をもくろんだのですけれども未遂に終わったというようなケースの場合に,この人との保険契約を続けていくのかということは,典型的な例として保険会社の方は考えるべきだろうと思います。そういうような状況の中で,やはりもうこの方は保険金詐取のためにいずれは何らかの形で自殺するなり何なりするだろうと思われる蓋然性が高いにもかかわらず,それを放っておいて自殺をしたと。しかし自殺免責期間を経過しているので払わなければいけないというのはややおかしいだろうと思いますので,そういう点ではその事実関係を把握した段階で解除というのができるのだということにして,もちろん最終的には自殺した後にトラブルが起こると思いますけれども,そのときに既に前の段階でそういったような事実があったということがあれば,その期間の免責というのを考えるということは事例として十分あり得るだろうと思っているところであります。   あと一点,それとの関係でいきますと,実は今言ったようなケースというのは(注)1のところに実は大きくかかわっているわけでありまして,今の場合は故意の事故招致のようなケースの場合なのですけれども,先ほど来から出ていますように,死亡保険の場合については死亡という事実が起こってしまうと終わりという話があるのでという議論になっていますけれども,結局,一番気になりますのは死亡はしなかったのだけれども殺人未遂があったとか,あるいはその予備行為があったという,ここの部分をどのぐらい重きに置いて解除事由につなげていくのかということが問われているのであって,そういう点ではここを詰めれば書き込みの仕方が変わってくるのかなと思います。   そこでちょっと,先ほど○○幹事はここの括弧の中で,他の保険契約に関する事由のことは他保険の告知義務でとおっしゃられましたけれども,ここはやや違うような気がしまして,これは先ほどから例として挙がっていますように,同一被保険者,同一保険契約者との関係で,例えば傷害の特約についての不正請求があったという事実をつかまえたときに,ほかの契約の方の継続をするのかどうかという問題を含んでいるのだろうと思いますので,そういう点ではここはちょっと同じような意味で,直接事故を起こしたのではないですけれども信頼関係を破壊させるような公序良俗性に反する行為がつかまえられたときに,どういうふうに対応するかという問題で検討すべきではないかと思いました。   すみません,あと一点質問なのですけれども,それとの関係で3頁の②なのですが,これ先ほど以後免責だという御説明があって,まさにそうだとは思うのですけれども,実際に,例えば死亡の事実が起こった後に災害割増しの特約がついていたので,災害だということを装ってたくさん保険金をもらおうというふうにして不正請求をしたと。例えば普通に死亡したのですけれども,その死亡が事故であるかのように見せかけるために車に乗せて,そのまま海へ落としていわば事故によって溺死したというような形を仮装して,大量の保険金をもらいたいというようにした場合に,それが保険金請求のところの不正なのですけれども,保険金請求の不正が行われてから以後免責だとすると,前に死亡していますので保険金が払われるのかなという気がするのですが,そのあたりはどう整理されているのかをちょっと。 ● これはちょうど○○委員の御説明していただいた資料1頁の事例で言うと④がそういう事例で,これ一見したところ,今,○○幹事が言われたようなケースについてもさかのぼって解除の効力が及ぶように読める事例ですね。本来,特別解約権,重大事由解除,これは一般的には無理ではないかなと私なんか考えていたのですが,○○幹事もそんな感じでしょうか。 ● それは無理だということで,そこのところをもうちょっとクリアにしていけば,皆さんがちょっと幅広く考え過ぎている部分がかなり事例が限定されるのではないかと思いまして,そうすると結局は不正請求がいったんあった後にまた別な事故が起こったようなケースの場合ということですから,この⑤のようなケースのことが想定されているというふうな理解で,ごめんなさい,⑤ではなくて⑩ですか,いったん保険金殺人をして,それで替え玉殺人で請求をしてきたところ,別途,その後に自殺をしたというようなケースの場合が想定されるということでよろしいのですか。 ● 少なくとも資料の本文につきましては,今御指摘いただいたような理解でつくられていまして,例えば文言の②であれば,○○委員に御準備いただいた資料の④のようなケースは,そこまでさかのぼっての免責にはならないという文章のつもりでおりますが,ただ,それも一つの論点でして,さらにさかのぼらせるべきかどうかというのは論点といえば論点ということになると思います。 ● ちょっとこれ以上お話をしませんけれども,制度の導入には賛成ですけれども,やはり過不足のない形で制度をつくっていただく必要があって,4番のようなものが入らなくて10番のようなものが入って,それから先ほど言ったたくさん加重に入った後自殺で未遂になったようなケースの場合については,信頼関係が破壊されて,どういう理由か分かりませんけれども解除できるというような,何か具体的な事例で妥当な範囲がちゃんと捕捉できるような制度設計をしていただけるのであれば,私はこの制度の導入に賛成したいと思います。 ● ○○委員。 ● 特別解約権そのものについては,○○委員も言われていますように規律として必要だろうというふうに,現実に入っていますので必要だろうと思っていますけれども,適用の仕方でちょっとあいまいになると困るので,その辺がどうなのかなということで,主観的な包括規定だけではなくて,もうちょっとはっきり分かるような例示ができればなという感じはしているのですけれども,ただ,確かに立法上難しい面はあるかもしれませんけれどもそういう点が一点と。   特別解約権の考え方で,運用としてその根っこから解除ではなくて実質無効ということで,契約当初にさかのぼって失効させている例があるわけなのですね。それは,この特別解約権の考え方を見た場合に,その扱いは余りにも在り方として問題があるというふうに考えてよろしいのかどうか。実際に失効の扱いをしますので,契約自体をなくしてしまうという扱いになるわけですね。そのことは,この特別解約権の解釈の拡大のし過ぎだと考えてよろしいでしょうか。 ● 一応,重大事由が発生した後に何らかの免責なり解除の行為が生ずるということは大前提だろうと思うのですね。   ○○委員。 ● そういう意味で,根元のところにつきましては先ほどから議論が出ていますように,我々は故意による事故招致の規定化と,無制限でないにしても何らかの形で包括条項を入れていただきたいというところなのですけれども,(注)5のところなのですけれども,確かに契約者又は受取人が故殺,被保険者を殺そうとしたといったような場合について,何らかの手段を被保険者に与えないといけないだろうという趣旨は一方で分かるのですけれども,では,これについてどういうふうに要件だとかいうのを限定していくのかと。あと,それとやっぱり契約の当事者である契約者との関係をどう規定するのか。あるいは,保険会社の側からいけばその事実を一体どのようにして立証していただくのかといったところを,やっぱり相当詰めていただかないと,趣旨は分かるのですけれども,これ非常にちょっと危険な部分も。単に嫌になったからやめたというわけにもいかないところがあると思うので,ちょっとそのあたり趣旨はよく分かるのですけれども,かなりその辺の要件というところについては議論いただきたいなと。趣旨は否定するものではないのですけれども,その辺ぜひよろしくお願いしたいと思います。 ● はい,なお検討して。   ○○委員。 ● 除斥期間について私どもの考え方を申し上げますと,告知義務違反との対比においてこういう考え方が出てこられて,それから今,事務当局の方から先ほど御説明がありましたけれども,この信頼関係の破壊で除斥期間を設けて解除権を制限するということを私どもとしては想定しづらいと考えております。御指摘の案と異なりまして,実際に重大事由の発生したということは割合と事後的に,あるいは段階的に判明することが通常でありまして,また信頼関係が破壊したという時点が厳密にいつからというのを起算するのがかなり難しいと。したがって,告反と同様の短期の除斥期間というのを設けるのはなかなか難しいのではないかと。それから,事由の重大性から考えると除斥期間を告知義務違反と一緒のように規律する必要性があるかどうか,これについては慎重な検討をお願いしたいと思っております。 ● ○○委員。 ● 短く。先ほど○○幹事のお話で確認だけしたいのですが,自殺未遂一般が免責になるわけではないのですよね。つまり,たくさん保険契約をやっていて,それは判例なんかでも故意の事故招致の表象事実又は不正な保険金請求を表象する事実だとある場合にはそういうことはいいけれども,単なる自殺未遂でこれを使われては困ると。そこは確認しておきたいと思うのです。   もう一つ,他保険の問題で,判例には損害保険の方でいろいろ悪いことをして自殺したと,こっちをだめにしたのがあるのですが,これはなかなか私は賛成していないのですけれどね。例えば,万引きが見つかって恥ずかしいからと死んでしまう,いろんな政治資金で何かあって自殺してしまう,何でもいいのですが,自殺の場合は前も言ったように家族の問題とかいろいろあるわけで,そこは他保険を無制限に広げられるか,これは個別的にやらなければいけないし,公序良俗的な要素,それから動機の違法性の要素,そういう点に着目して個別にやらなければいけないので,ただでさえ広い規定にまたそれをやるというのは,相当よく考えた上でやっていただきたいと。 ● 大体いろんな問題点を指摘して,基本的な方向はこういうことではあってもいろいろ細かい点,問題ありそうなので,なお引き続き事務当局に詰めていただいてと思いますが。   どうぞ。 ● 次の論点に行く前に御議論の中で出てきた点について,若干補足だけさせていただきたいと思いますが,一つは,この重大事由発生後解除までの保険料の取扱いについて,今回書いていないという御指摘がございましたが,事務当局の意図としましては4頁の(補足)のところで,基本的に損保におけるのと同様にといったところで,あちらで書いたものは当然意識した上でそこでの議論を踏まえ,あるいはその後の検討を踏まえて御議論いただきたい点を注記したということでして,(注)4でほかに生保固有の問題はあるかと書きましたとおり,損保での問題点は当然あるという前提で資料としてはつくっておりまして,ちょっと分かりにくかったという気もいたしますが,こちらの意図としてはそういうことでございます。   それからもう一点,重大性がこれでは読めないのではないかという御指摘が複数,強くされまして,それはおっしゃるとおりでして,こちらも問題意識として本文の①の(ア)と(イ)だけではだめだろうと思っています。しかし,どうも例示は故意の方がいいのではないかという議論が損保のときにあったと聞いておりまして,私自身そこで実は個人的には疑問を持っているのですけれども,一読の段階で資料がまたころころ変わるというのも混乱の元ですので,ここは統一するという意味で,とりあえず(ア),(イ)だけにしているということでして,十分御指摘は認識しているつもりでおりますので,それを踏まえて引き続き検討したいと思います。   もう一点ですが,先ほど来複数の委員の方から,ちょっとこの点を確認したいという御発言をいただきながらお答えしないまま不誠実に過ぎているかのようにも感じておられるかもしれませんが,私の考えは事務当局が確認できる,できないという問題ではなくて,それは例えば受取人が被保険者を殺害しようとした事実があった,あるいは,明らかに過大な保険金額になる重複加入が行われていたというようなときに,まずはそれが実質として重大事由による解除のルートに乗ってくるのか乗ってこないかという実質の議論が先行して,その先行した実質を踏まえて,それがこれで表現できているのか,できていないのかという議論をすべき,あるいはそういう検討をすべきだと考えておりまして,ですから,この段階で御質問を受けて,こうです,ああですと答える立場にはないという考えのもとに,先ほどのように○○委員の方にそれも含めて御意見をいただきたいという形で発言させていただいたという趣旨ですので,御理解いただければと思います。 ● すみません,ほんの一言。そうだとするとちょっと問題があって,保険料の点。約款の特別解約権のときに保険料は返すと,保険料積立金は返すという形になっています。ところが,こちらは返さないという。要するに,私は約款を見る限りほとんど実質同じなのに,要するに広過ぎる,弱いものがあるからこそ返すという要求があって,だから,要するにそのことを何か言いたい,これは広過ぎるという例証,保険料と当規定の違いが,そういうことです。 ● 一言御説明させていただきます。保険料を返還しないという話は損害保険契約のところで出たことですが,○○委員が御指摘されたのは支払った保険料を全部返す,返さないではなくて,そのうちの保険料積立金,あるいは解約返戻金を返すという問題でしょうか。それについては若干資料が共通事項と固有事項に分かれている関係で,あれは共通事項の方でいわゆる解約返戻金については御議論いただいていたところでございまして,まさに○○委員のおっしゃるように,例えば現行商法も保険契約者の故意による保険事故招致の免責のところでは保険料積立金を返さないとなっていて,それと同じく重大事由による解除の場合にも返すのか,あるいは返さないのかという問題があって,それは先ほどの保険料を返す,返さないという問題とはまた別の問題として,認識しているというところでございまして,また引き続き,二読以降御議論いただければと思っております。 ● ○○委員。 ● (注)5ですけれども,これ賛成をするというか,結局,他人の死亡によって保険金の支払をすることを定める生命保険契約には,当該他人の同意がなければならないものとするということであったので,保険契約締結後の状況変化によって契約締結時の同意を撤回した場合,保険契約を失効させることができるという意味ですよね,これ。それは非常に理があるなと思いますけれども,ぜひ今後の検討という意味で,一定の場合というのがどういう範囲なのかということがはっきり素人にも分かるような形で提起をしていかないと,これが幅広過ぎると保険契約自体が何か極めて不安定なものになってしまうのではないかなという懸念がありますので,一言だけお願い申し上げます。 ● それでは,大分御意見をいただきましたので,今日の御審議を踏まえて,なお検討していただくということにいたしまして,もう1項目,次の「8 年金保険契約」のところへ進みたいと思います。まず事務当局より御説明をお願いします。 ● 御説明いたします。   この8は,いわゆる年金保険契約に関する特別な規律を設けることの必要性について問題提起するものでございます。年金保険契約は,被保険者の生存を保険事故とする保険契約,すなわち生存保険契約の一種でございまして,現行商法には年金保険契約といった形の特別の規律というのは設けられておりません。実務上年金保険と呼ばれているものには,個人が保険契約者となる個人年金のほかに,企業の年金制度の円滑な実施を目的に団体保険として行われる企業年金保険などがあるといわれております。この年金保険契約は,被保険者が生存している間,保険金が支払われる終身年金保険契約と,一定期間に限定して保険金が支払われる定期年金保険契約とに分類されることがございます。   一般的に年金保険と呼ばれているものの中には,被保険者が一定年齢に達した時に一括で保険金の支払を受けることができるようなものもあるようでございますが,そうでない場合には,被保険者が生存している限り保険事故が反復的に発生し,これにより保険給付が定期的に行われるという特殊性がございます。そこで,これに応じた特別の規律を設ける必要性について検討をいただきたいということで問題提起をしているところです。 一つの例として,消滅時効の問題について記載をしております。まず,今御説明したような反復的に保険事故が発生して,定期的に給付が行われるといったいわゆる定期金債権の消滅時効期間について御説明いたします。これにつきましては,個々の定期金債権であるいわゆる支分権と,個々の債権を発生させる大もとの根拠であるところのいわゆる基本権とに分けて考えるのが一般的です。 まず支分権の消滅時効期間については,民法上は原則として10年とされた上で,一定の債権については短期消滅時効がそれぞれ定められているところでございます。保険金請求権の消滅時効期間については,現行商法上は2年とされているところ,既にこれを維持するのか,それとも延長すべきかについて御審議いただいたところでございますが,まさにこの定期金債権の支分権についても同じ議論が妥当すると考えられるところでございます。 これに対して,基本権については,参考条文として民法第168条第1項を引用しておりますけれども,この規定が第1回の弁済期から20年間行使しないときは消滅すると規定しております。これが年金保険契約の基本権にも適用されるのか,それとも支分権と同じく2年なのか,それとも商事消滅時効に関する規定の適用のある契約については5年であるのかというのは,法文上必ずしも明らかではございません。 この点,ちょっと具体例を挙げて御説明いたします。例えば65歳から保険金の支給が開始して10年間毎年保険金が支払われるといった年金保険契約を前提といたします。この場合に,第1回は65歳で支払われるわけでございますが,その第1回分の支給を受けないまま2年間支払を受けずに67歳になったと。そうしますと,第1回の分は2年の消滅時効期間,これ支分権でございますが,それが消滅時効にかかるだけではなく,仮に基本権の消滅時効を2年としますと基本権も消滅時効にかかるということになりますことから,本来であれば65歳から74歳まで毎年保険金の給付が受けられるはずであったにもかかわらず,基本権が2年ということですと,67歳の時まで1回ももらっていないと基本権の消滅時効が成立して,それが仮に援用されてしまいますと,67歳の時点でそれ以降のすべての請求権がそもそも発生しないという結論になるのではないかと考えられます。これでよいのかどうかという点を御議論いただきたいと考えております。 なお,これはいわゆる年金保険だけではなくて,死亡保険金を例えば定期金の形で払うといったものが,現実にあるかどうか分かりませんけれども,あるとすればそういったものにも同じく妥当する問題であると考えられるところでございます。 以上の点を踏まえまして,ここではあくまでも立法論として,基本権の消滅時効は何年であるかといった点について御議論いただければと考えております。さらには,定期金債権であることによる特別の規律が消滅時効以外にあるかどうか,特段の御意見,御指摘がございましたら,併せていただければと考えております。 次に,資料でいきますと5頁の上から6行目のところになお書きで書きました差押禁止の問題について御説明いたします。 年金保険契約に基づく保険金請求権については,現行法上参考に掲げました民事執行法第152条第1項第1号の要件を満たす場合には,その一部が差押禁止債権になると解されております。保険金請求権の差押禁止,損害保険や死亡保険を合わせた保険金請求権ですけれども,その差押禁止については既に御審議をいただいたところでございますが,このうち年金保険契約につきましても同様の議論というのがございます。それにつきましては,例えば預貯金債権は差押禁止債権とはならないこととのバランスをどのように考えるかといった問題でありますとか,あるいは年金保険については投資目的のものがあることなども踏まえて,検討する必要があると考えられるところでございます。既に御議論いただいたところでございますが,年金保険契約に基づく保険金請求権について特段の御意見がございましたら,いただければと考えております。 以上でございます。 ● ありがとうございました。   それでは,ただいまの点につきまして御意見,御質問ございましたらお願いいたします。   これ事務当局の時効の点ですが,基本権についてどうしましょうかという問いかけなのですが,何もこの保険法の方で規定をしないと,参考に挙げられている民法の規定が何らかの効果を持ってくるとか,そういう御理解なのでしょうか。 ● そこについては私の方で論文等を調べたところ,両者の意見があって,必ずしも現行法上どうなのか明確でないということでございますので,そのまま維持するとすると依然として法文上明確でないということになる可能性もあって,一つここで明確化するということもあり得るのではないかということで,実質的な規律についてちょっと御意見をいただきたいという趣旨でございます。 ● という問いかけです。○○委員。 ● これは要するに現行法は基本権の方が20年か5年かどっちなのか分からないと。支分権の方は民法だとすれば5年,商法だって5年,要するに5年と。生保の約款でははっきりしないけれども,下手をすると基本権は3年,支分権も3年,時効は実際には援用されないと説明しておられると。これは,基本的には,私は民法と同じ,民事執行法の規定も置いて,基本権が20年と,本当は時効にかからないと言いたいのですけれども,それは無理でしょうから20年と,最後の弁済期から10年行使しないときも同様ということで,支分権は第169条だという形になっていますから,これで5年と。ただ問題は,支分権をやっていけば基本権の存在を前提としていますから,時効中断されるのではないかとかいろんな疑問はあるのですけれども,とりあえずこれは高齢化社会における重要性の役割ということで,要するにできるだけ長いもので,どこかからデファクトのスタンドを持ってくるなら民法の規定でいいのではないかなと。 それであと,年金払もやっぱり同じように考えるのだという点は思います。   三番目に,さっき言いました民事執行法の規定はいろいろ議論はありますけれども,これは変えなくてもいいのではないかと。 ● 基本権が20年という意見が出ましたが,○○委員。 ● 基本的な考え方としては年金で何か特則を置く必要はないのではないかなと思ってはいるのですけれども。   あと,今の時効のところなのですけれども,余り実務で,実は基本権の消滅時効ということは意識したことがなくて,というのは,実務として年金の第1回の請求の時に必ずやっていますから,そこでまず基本的には請求しているということで,基本権が消滅したからお支払できないということは,実態としてはほとんど生じてはいないですし,何かそのことをすごく実務的に意識しているかといわれると,ほとんどそういうことを意識するような実務,漏れることがないといった方が正確なのかもしれないのですけれども,それが実態ではないかなと思うのですけれども。 ● きちっとやっておられると思うのですよ。しかし,何年ですかといわれて答えられない状態というのはやっぱりよくないと思うのですね。それは決めないといけないと,そういうことです。この一点でさっきと違ってしまいましたけれど。 ● ○○幹事。 ● 実務の方に質問なのですが,年金保険の被保険者が年金支給開始年齢時に行方不明である場合にどういう処理をされているかということをお教えいただければ。そういう事例はないかもしれませんけれども,どういう考えのもとに進んでおられるか。行方不明で本人がいないので行使できない,死亡保険金の請求権が行使できるかどうかも分からないという状態というのは,一応論理的にはあり得ると思います。多分,そこが一番実質的にはこの問題は苦労しているのかなと思うのですが。 ● ちょっと細かいところまであれなのですけれども,まず我々契約者に御案内をするわけですね。契約者がすべての発想ですから,契約者の人からいろんな手続が出てくるということで,その時に行方不明ですと……。 ● それは毎年生存証明をとっていますから,そこでどう出てくるかによると思うのですね。保険会社が行方不明を知っているかどうかというのは,ちょっとまた別の問題なのでしょうけれども,そこから先はちょっと分かりませんね。生存証明が出てくれば払うということですけれどもね。生存証明というのは区役所でとるわけですけれども。 ● はい,どうぞ。 ● 共済も同じです。1年に1回生存確認をとりますので,その段階で確認をとれなかった場合は,当然,行方不明かどうかは別にして,確認がとれない場合であったとしても受給権というのはありますので,それをもって支払が一時ストップするだけであって,一定期間はまた繰返しとりますので,その後,例えば失踪宣告が出たりした場合はまた別な扱いになりますけれども,基本的には留保されるとお考えになって結構かと思いますけれども。 ● ○○委員。 ● すみません,今のお話とはちょっと違うのですが,年金保険は通常は大変長期の保険でございまして,二十歳に入って例えば55だとか60だとかから受給開始をするというお話ございます。そうすると,ここでこの話がぴったりはまるかどうかちょっと分からないで今言っているのですけれども,例えば,契約当初のいわゆる入口の時に,誤った説明をされましたと。分からないで何十年もたってから話が違うとなったときに,例えば,いわゆる民法の除斥期間の関係があって,多分,知った時から何年,契約当初から何年というつくりになったと思うのですけれども,除斥期間は多分20年だと思うのですね。そうすると,不法行為だと消費者側が言っていったとしても,除斥期間だからといってはねられてしまう可能性はないのかなと考えると,年金保険のような大変スパンの長い保険については何らか別の手当てをしていただければよろしいかなという気はいたします。 ● 実務が何年か分からないというので,学説はどう考えているのですかね。どうぞ,○○委員。 ● 大概,約款等には消滅時効2年と入っているのですけれども,率直に言って,例えば,年金開始後契約の解除権というのが契約者はできなくなっている仕組みになっていますので,そうすると契約解除ができないということは支払義務が当然あるわけですから,規定上時効期間を入れるというのは構わないと思うのですけれども,年金開始後は受給者に対する責任というのは当然,従前の支払時期以前に増してあるわけですから,形式上入れるというのは構わないと思うのですけれども,余り他の契約と同様に2年だとか,余りしゃく子定規に考える必要はないのではないかというふうに契約の性質として考えますけれども,約款等に入っていて実態と違うことを申し上げているのですけれども,ちょっとおかしいなというように個人的には思っています。 ● ほかにございませんか。   ○○幹事。 ● 私もちょっと理論的によく整理できていないのですけれども,基本権の消滅時効を考える必要があるのですかね。 ● そういう議論もあり得るかもしれません。 ● 現実の商品などを考えても,例えば10年の確定年金というのですかね,それだと順次支分権が発生していって,その支分権が個々に時効にかかっていくと。10年過ぎればというか,10年間の確定期間の最後の支分権が発生した時から2年間で消滅時効完了で,もうそれは基本権があろうがなかろうが関係は終わってしまうと。具体的に何も請求できなくなるということですよね。終身年金だとしたら,どんどん最初の支分権が消えていって,気が付いた時の支分権から請求できるというだけになるのではないかなと思うのですけれどもね,時効にかかっていない支分権だけが請求できる。何か基本権自体を時効消滅させるメリットというのですかね,理由がもう一つよく分からないのですけどね。 ● 大体時間が来ましたので,結局,今の点よく分からない状態なものですから,分からないで今後の作業はできませんので,ちょっと次回の冒頭にでも少し整理する必要があるかと思いますが。私も考えてみますが。今日出た以外の御意見がございましたら,私にでも非公式にまたお知らせいただきたい。いずれにしても,次回冒頭に少し整理するということで。   ちょっと会場の都合で,今日はここで。9は次回回しということにさせていただきたいと思います。事務当局から何かございますか。 ● それでは,次回以降の御案内をさせていただきます。次回,第7回目の会議は,今月28日水曜日,午後1時30分からでございます。場所は,法務省の20階の第1会議室,場所をこれまでお知らせしていなかったかもしれませんが,法務省の20階第1会議室でございます。今日積み残しになりました団体生命保険契約と,残りました傷害・疾病保険契約の固有の事項を取り上げたいと考えております。 4月,5月の場所についても併せてお知らせしておきたいと思いますが,日にちだけ決まって場所がまだだったと思いますが,第8回は4月18日でして,場所は次回と同じく法務省の20階の第1会議室になります。第9回は連休明けの5月9日水曜日でございますが,この日は同じ法務省の20階の最高検の会議室を予定しております。第10回は5月30日でございますが,こちらは同じく法務省の20階の第1会議室でございます。場所だけ繰り返しますと,次回,3月28日が20階の第1会議室,第8回,4月18日が同じく20階の第1会議室,第9回,5月9日が20階の最高検の会議室,第10回,5月30日が同じく20階の第1会議室。以上のような予定でございます。 ● それでは,どうもありがとうございました。これで終わります。 -了-