法制審議会間接保有証券準拠法部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  平成19年3月20日(火) 自 午後1時30分                       至 午後4時30分 第2 場 所  東京区検察庁5階会議室 第3 議 題 ヘーグ間接保有証券準拠法条約について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 時間がまいりましたので,法制審議会間接保有証券準拠法部会の第17回会議を開催いたします。 (委員の異動紹介省略) (事務当局から,会議用資料等の公開について,法制審議会第151回会議における決定事項につき報告がされた。) ● それでは,まず事務局から前回の部会以降の状況について説明をしていただきます。 ● 前回の部会で申し上げましたように,まずアメリカとスイスはこの条約に署名をしたわけでございますが,その後,批准の手続をしているはずなんですけれども,どの程度進んでいるかという情報は今のところ入ってきていないという状況でございます。   それから,EUですけれども,委員会で議論がされているということを前回御報告申し上げましたけれども,引続き議論がされているようでございますが,どのような議論の状況になっているかということについては情報が入ってきていないということでございます。   以上です。 ● ○○委員,何か情報をお持ちでしょうか。 ● 特に伺っておりません。 ● そうですか,ありがとうございました。   何も特別は進展はないようでございますので,議事に入りたいと思います。   前回は,部会資料22の国際的な証券決済事例の説明書図の事例2-2について,部会資料26の第4の2に基づいて御議論をいただいている途中に時間切れになってしまったという状況でございました。   今回は,前回の御議論に引き続きまして,部会資料22の事例2-2に関する議論の途中から御議論いただきまして,部会資料26に基づきまして,時間の許す限り御議論いただきたいと思います。   なお,途中,区切りのつくところで休憩をとりたいと思っております。   まず,事務当局から前回の議論の概要と,前回の議論に基づきまして事務当局のほうで返答するとされていた一種の宿題でございますが,それについて説明していただきます。 ● 前回,昨年の10月24日でございましたけれども,部会資料22の5ページの2-2,英国の例というCrestに入っている証券の事例に基づきまして,この条約を批准した場合にどうなるかということを議論をしていただいている途中で時間切れになったわけでございます。 議論の内容は議事録のとおりなんでございますが,ごく簡単にご紹介いたしますと,この2-2の事例は国内機関投資家Aが国内証券会社Xに口座を持っていて,Xの上位にカストディX’,その上のサブカストディX’’,そのさらに上にサブカストディX’’’,その上にCrestがいるという事例でございましたけれども,前回,とりわけ議論になりましたのは,ここのクレストの下にぶら下がっているサブカストディX’’’が倒産したという場合に,A,あるいは国内証券会社X,カストディX’,サブカストディX’’がそれぞれ倒産手続にどのような権利を主張して参加することができるのだろうかという問題を議論していただいていたところでございます。 議論としましては,まず,Aが倒産したサブカストディX’’’に対して直接に自分が権利者であるということを主張して倒産手続に参加すること,あるいは日本法で言います取戻権の行使としての振替の請求をサブカストディX’’’に対して請求するというようなことができるのかどうかということが一つ議論になっておりました。ここは,先ほど部会長からも御紹介ありましたように,一部事務当局の宿題になっている部分でございます。 これは国内機関投資家Aと国内証券会社Xとの間でこの条約に基づいて決めた準拠法が日本法であるという前提で議論をしていただいておりました。日本法ですから,それを前提にしまして,Aが株式なり社債なりを持っているという構成になって,その権利を倒産したX’’’に対して主張することができるのか,できないのか,できるとしたらどういうふうに主張することができるのかという問題でございます。それが一つ。 それからもう一つ議論になりましたのは,Aの倒産したX’’’に対する権利と,X’’’に直接ぶら下がっているサブカストディX’’のX’’’に対する権利との優先関係についてこの条約はどういう取扱いをしているのかという御議論がございました。○○幹事から,私の要約が正確かどうか後でチェックしていただければと思いますけれども,口座に関する権利についてこの条約は定めているわけですので,口座名義人であるX’’とその関連口座管理機関であるX’’’との間で合意した準拠法でこのX’’’の義務といいますか,X’’’に対する権利というか,そういうものが決まるはずで,AとXとの間の合意による準拠法,これは日本法なわけですけども,これによってX’’’が管理する口座についてのX’’の権利とAの権利との優先関係が定まるものではないという趣旨の御意見を述べていただいたように理解をしております。 これに対して,○○幹事からは,このようなAのX’’’に対する権利とX’’とのX’’’に対する権利との優先関係といったことは,この条約の予定しているところではなくて,そこはこの条約で決まるのではなくて,倒産手続国法によるという御意見を述べていただいたように理解をしております。 これに対しまして,○○委員からは,条約がそこまでは決めていないということは○○幹事の御意見とほぼ同じで,ただ,このX’’とAとの関係について,それがどういう場面で問題になるかを考えて,実際の解決等を考えてみると,結局,○○幹事が言われるように,倒産したサブカストディX’’’との関係についてはサブカストディX’’だけが権利行使をすることができることになって,結局,○○幹事のおっしゃるのは結論的にはそういうふうになるのではないかというような御発言をしていただいたような理解でございます。 引き続きまして,その最初のほうの問題,つまり国内機関投資家Aが倒産したサブカストディX’’’に対して直接に自分が権利者であることを主張して,倒産手続に参加したり,取戻権の行使として振替の請求をすることができるかという問題については,先ほど申しましたように事務当局への宿題になっていましたので,私どもで検討した結果を御報告させていただきます。 まず前提として,これは前回の部会でも御議論になったんですけれども,この2-2の図ではA,X,X’,X’’,X’’’,Crestというふうに関係がつながっているということが当然の前提としてこの図が作られているわけでございますが,CrestとAとの間に,Aの上にXがいるということはAはもちろん分かっているわけですけれども,その上の関係がどういうふうになっているのかという事実関係が解明できるかどうかということ自体が,実務上は非常に難しい問題であると,部会資料22について○○委員に御説明いただいたときにも,上がどうなっているのかは分からない場合もしばしばあるというお話があったわけでございますが,前回もその点は確認されたと思いますので,そもそも,サブカストディX’’’が倒産した場合に,Aがそれに何らかの自分が関係があるんだということを認識すること自体が実際問題としては相当困難であろうというように思われますが,ここでは,この2-2の図に書いてあるようなつながりになっているということが解明されたという前提で,解明された場合には,AがサブカストディX’’’に何らかの権利を主張できるのかということを検討した結果を御説明したいと思います。 その場合に,前回の部会では倒産したサブカストディX’’’と,この下につながっているサブカストディX’’との間の合意による準拠法がドイツ法であるという前提で議論がされておりましたので,そういう前提で今日も議論を続けていただければと思いますけれども,まず,X’’がX’’’に対して他の口座管理機関で自分が開設している口座に振り替えることを請求することができるのかという問題でございますが,これはもちろんドイツ法がどうなっているかということによることにはなるわけですけれども,どこの国であっても口座管理機関に対して口座の開設を受けている口座名義人は振替の請求ができるということは,これは国が違えども,また法律の立て方はいろいろ違いがありますけれども,その点は変わりがないというふうに思われます。 したがって,サブカストディX’’’が倒産した場合に,その口座名義人であるサブカストディX’’は振替の請求をすることが普通ならできるはずですけど,問題はX’’’が倒産をしたということによって,本来できた振替ができなくなるのかという問題でございます。それはドイツ法がどうなっているかということが分からないとどうしようもない面があるんですけれども,仮にドイツ法じゃなくて日本法だったらどうなるのかという,そこは事務当局でも調べられますので,それを調べましたところ,口座管理機関が倒産した場合には倒産後のいわば清算的な手続が必要になるわけでございまして,その場合にはその口座管理機関は自分の口座に抱えている証券をどこか別の口座管理機関に移しかえる,あるいは現物が交付できるんだったら現物を交付するということをしない限りは倒産事務は全部終わらないということになります。したがって,X’’’が開設しているX’’の口座にある証券を他の管理機関の口座に移転するということは清算の目的の範囲内の行為ということになるはずでございます。これはおそらくドイツ法の詳しいことは分かりませんけれども,どこの国でもそうなのではないかと,法人である以上は証券を抱えたままで終わりにするというわけにはいかないはずですので,同じようになるのではなかろうかと思います。 問題は,振り替えるときにどういう手続になるかということでございますが,これX’’’の倒産手続が行われているという前提ですから,法廷地の倒産法によって決まるということに多分なるのであろうと。少なくとも,条約の準拠法じゃなくて,倒産手続の準拠法ということになるんだろうと思いますが,日本の破産法の場合ですと,取戻権の行使ということで,破産裁判所の許可を得て振り替えるという形で取戻権を行使できるということになるわけでございます。ほかの国でも何らかの倒産裁判所の関与が要求されることが多いのではなかろうかと思われます。あるいは倒産管財人の権限でできるというところもあるのかもしれないと思います。 それから,仮にX’’がX’’’の倒産管財人に対して別な口座への振替を請求したところ,何らかの理由で倒産管財人がこれに応じないということになると,振替をしろという訴訟を起こすということになるわけであります。 仮に,X’’が勝訴した場合にどういうふうになるのかということも前回御質問があって,私どものほうで調べてみるということになっておりました。これも厳密に言いますと,その判決の執行裁判所の執行準拠法というんですか,おそらく執行裁判所所在地の強制執行法ということになるんだろうと思いますけれども,したがって,それによって決まることになりますが,仮にそれが日本法であるとするならば,振替をせよという判決が確定した場合の執行方法は,これについて具体的に論じられたものはないと思いますけれども,おそらく間接強制になるのではなかろうかと思います。と言いますのは,振替手続というのは社債株式振替法におきましては自分の口座について減額記帳,あるいは増額記帳をする,この場合はX’’’ですと減額記帳ですけども,減額記帳をするとともに上位の口座管理機関に対して振り替えるように通知をするという,通知と減額記帳という二つの行為からなるわけですけども,少なくとも減額記帳について当該口座管理機関以外の者がそれをすることができるというふうには考え難いものですから,おそらく間接強制にならざるを得ないのかなというふうに思います。ただ,日本ではそんなことが問題になったことはないと思います。 それからもう一つ,口座管理機関が倒産した場合にそれが口座管理機関たり得るのかという問題がございますが,証券会社が口座管理機関であるとすると,証券会社が破産すると,証券取引法上登録が失効するということになっているんですけども,それとの関係で口座管理機関たる地位を維持して振替の手続を行うことができるのかという問題がありますが,そこは冒頭にも申しましたように振替をすることができないと非常に困るわけでございまして,倒産しても,残務処理の限度においては証券会社とみなされ,新しい口座を開設したりとか,新しい売買を受け入れるとか,そういうことはできませんけれども,倒産した自分の口座からほかの口座管理機関の口座へ移しかえるというようなことによって残務整理をするという限度では口座管理機関たる地位は維持されるということでございますので,少なくとも日本では振替をすることに支障はないということになろうと思います。おそらくほかの国でも,振替ができませんと倒産した口座管理機関の倒産事務処理上も困りますし,そこに口座を開設している者も困りますので,おそらくどこの国でも,どういう法制になっているかは別にして,似たような処理になるのではなかろうかというふうに推測をしているところですけれども,何か御教示いただけるところがあれば,御教示いただけると有難いと思います。 それから,今,X’’’に直接口座を開設しているX’’が振替を請求することはできるということを申し上げたわけですけども,それじゃ,一番下の投資家であるAがX’’’に対して振替の請求をすることができるのかということが次に問題になります。もしもできるとすれば,その相互の関係ということが問題になるわけですが,これも先ほどの例ではサブカストディX’’と倒産したX’’’との間の準拠法はドイツ法だったという前提で議論していますので,そこはどうなっているのかということによってくるのかなというふうに思いますけれども,ドイツのことはよく分からないもんですから,これを日本法に引き直してみますと,日本法の場合は振替の請求は自分が口座を開設している関連口座管理機関,ここでいいますと,AはXに対してしなければいけなくて,Aから請求を受けたXがX’に,先ほど申しましたように減額の記帳をして,X’に振替の通知をし,それを受けたX’がさらにX’’に同じことをし,X’’がX’’’に同じことをするということによって振替が行われるという仕組みになっていますので,全部が日本法だとした場合には,Aが直接サブカストディX’’’に振替の請求をするということはできないという仕組みになっているわけでございます。現実問題としても,上位の口座管理機関X’’’が開設している口座というのはX’’名義の口座なんですけども,これはX’’の自己口と顧客口という二つの種類の口座に分けて開設されておりまして’,X’’の顧客口はそのさらに下にぶら下がっている誰かの権利が記帳されているということは,X’’’は分かりますけれども,その顧客口の内訳がどうなっているかということはX’’’には全く分かりませんので,しかも,それをAが立証することもおそらく極めて困難だろうと思いますから,これに応じようもないという,実際問題としてもそうではなかろうかというふうに思うわけでございます。 それからもう一つ前回の部会で問題になりましたのが,それじゃ,振替の請求とは別に,この事例ではAとXとの準拠法が日本法だという前提で考えますと,Aが証券,つまり社債とか株式を保有しているということになりますので,それを踏まえてAがX’’’に対して自分が債権者である,あるいは株主であるということの確認の請求をすることができるかということも,問題点として提起されたところでございます。 この問題は,そもそも確認訴訟ということになりますと,日本法的に物事を考えますと,訴えの利益があるかどうかということがまず第一に問題になるわけでございます。おそらく日本の民事訴訟法はドイツの流れですから,ドイツでも同じことが問題になるのではなかろうかなという感じがいたしますけれども,Aは,Xに対してしか,直接口座は有していないわけでありまして,はるか上位であるX’’’に対して確認の利益があるのかということ自体が疑問のように思われます。確認訴訟が認められるのは,確認をすることによって紛争の抜本的な解決が図れるという場合に確認の利益が認められるとされているわけですけども,X’’’との間で物事を決めても,X’’やX’を拘束するわけでもありませんから,もちろんその解決に資すると言えるのかどうかということが疑問でございます。したがって,これも必ずしも断言はできないんですけど,そもそも確認の利益自体が認められず,確認訴訟は起こせないのではなかろうかという感じがいたします。 じゃ,Aは何ができるかというと,X’’’の下にずっとぶら下がってきて,自分の証券も入っているということになりますと,X’’’のところから別の口座管理機関の口座へ移しかえてもらわなきゃいけないということではあるわけなんですけども,その場合はAはXに対してそれを依頼し,XがX’に,X’がX’’に依頼して,X’’がX’’’に依頼して,その連鎖によって振り替えるということにならざるを得ないのではなかろうかというふうに思われます。 例えば,途中のカストディX’がこれに応じてくれないというときにどうなるのかというのは,これ日本の社振法,保振法でも問題になり得るものですけども,実際に問題になったことは一度もないと思います。少なくとも公法上は振替に応じなければならず,振替の請求があったときは自分の口座の記録について減額の記帳し,そして振替の通知をしなければいけないということには義務付けられているわけで,それに応じない場合は制裁があるということになっているわけですけれども,それに応じない場合にAが私法上直接口座管理機関に対して何らかの請求権を有するという規定はないわけであります。というか,そんなことが起きるということは想定していないといってもいいのではなかろうかと思います。 ただ,私法上全く何の措置もとれないのかということは,これも全く議論がされていないわけでありますけども,というのはそういうことが起きたことがないからなわけですが,公法上の義務であるだけじゃなくて,私法上の減額記録をし,通知をするというのが義務であるというふうに考えることはできるんだろう,できるかもしれないと思います。ただ,それもできるとしても,Aに対する義務はXしか負わないのではないか,X’がAに対して直接義務を負うということはないのではなかろうかという感じがし,そうなりますと仮にX’がやってくれないというときにはAはXの地位を,債権者代位権によって代位行使するとか,何かそんな構成にならざるを得ないのかなというふうに思います。 その債権者代位権の行使はできるのかどうかということも一つの問題で,というのはXは自分が減額記帳をして,X’に対して通知はしているわけですので,X自体,やるべきことはみんなやったということになりますので,Aが代位行使すべきものが何か残っているのかどうかということがいささか問題かと思いますけども,そこは民法理論で代位行使できるという考え方も,もしかしたらあるのかもしれないという気はしないでもありませんけれども,いずれにいたしましても,AがX’’’に対して直接に何かを請求するということは難しかろうということでございます。 それから,Aが発行会社に対して名義書換請求をすることができるかというような問題がございますが,この条約は発行者と投資家との間は何ら定めておりませんから,この条約が定める準拠法によって,Aが発行会社に対して名義書換を請求するということは,これはできないということになります。したがって,名義書換請求ができるかできないかがどの準拠法によって決まるのかというのが,この条約とは別の問題ということになりますが,従前の我が国の国際私法の先生方のお考えですと,発行会社の設立準拠法で決まるという考え方が比較的一般的なのかなと思います。仮に,その発行会社の設立準拠法が日本法だといたしますと,日本法では振替株式については株主が直接名義書換請求はできないということになっていますので,そういう証券については投資家が直接名義書換の請求をすることはできないということになるのかなというふうに思います。 長くなって恐縮ですが,前回の宿題の部分についてひと当たり検討したことを申し上げました。これに基づきましてさらに御議論いただければと思います。 ● どうもありがとうございました。   それでは,今の事務当局からのいわば宿題についての回答に関しまして,御質問とか御意見はございますでしょうか。 ● ありがとうございました。今,御報告いただいた中で一つ確認をさせていただきたいと思っております。 今,X’’’が破綻をして,それでAからX,あるいはX’,X’’,これらがそれぞれの権利なりを主張できるかというところの御説明の中で,X’’’が破綻しておるときに,X’’がこの図でいきますとCrestに対してということでしょうか,間接強制なりで振替の請求なりができるんではないかというお話がございました。 もう一方でX’が直接Crestなりに行くことができるかということについてはX’’が生きているという前提に立ちますと,X’’経由でやりなさいということだということでございますね。 もう一つ,今の御報告の中で,X’’’が破綻をしておるときにおいて,その清算過程の作業なりが許されるんではないかと,そうしないと全体が片付かないからという御説明でございましたけれど,Crestに対して間接強制という考え方もあろうかとは思うんですけれども,X’’’が自らの清算行為の中でX’’からの請求をさらにCrestに自ら取り次ぐというようなことは許されないんでございましょうか。 ● そうではなくて,さっき申し上げましたのは,X’’がX’’’に対して振替の請求をCrestにしてくれと--日本で言えば通知になるわけですけども--言ったのに対してX’’’の倒産管財人が何らかの理由を挙げて,それを拒絶したという場合は訴訟をせざるを得ないんで,それがどうなるかということを申し上げたわけでありまして,普通は訴訟になるまでもなく,X’’の請求といいますか,X’’にとっての顧客のものであれば,下からの連絡に従って請求することになるわけですけれども,それに基づいて請求をすればX’’’の倒産管財人としてはCrestに振り替えてくれるように通知をつなぐということには,普通はなるんだろうと思います。ですから,先ほど申し上げたのは通常の形態じゃなくて,何らかの理由で倒産管財人が振り替えてくれないというような場合に訴訟で争うということがあり得るということを申し上げたわけでございます。   それから,Crestに対する間接強制というようなことをちょっと○○委員がおっしゃったと思うんですが,Crestには直接には間接強制はできない,それはAがX’’’に直接に行けないのと同じように,X’’はCrestには直接には行けないんじゃないかと思います。私が間接強制と申しましたのはX’’とX’’’のように直接の口座管理契約のあるもの同士の間で判決をX’’が得て,振り替えろという判決をもらったにもかかわらずX’’’がそれになお応じないという場合にどういう強制執行の方法があるかということを申し上げたわけでございまして,強制執行の義務を負うのはX’’’だけですので,Crestに何らかの請求ができるということを申し上げたわけではございませんので,念のために。 ● 分かりました。ありがとうございました。 ● それでは,ほかにどうぞ。   ○○委員,よろしゅうございますか。 ● 結構でございます。 ● 今回初めてなもので,前回までのお話の経緯を詳しくは存じておらないんですが,これはX’’’が倒産した場合のケースのお話ですが,それ以外の違う,特殊な例をお話ししてもよろしゅうございますか。 ● 今の点につきまして,今の事務局からの御報告につきましての御意見なり,御質問なりございましたら,まずそちらを先にさせていただきます。 ● 分かりました。 ● 私の説明が長々とし過ぎてて,ちょっと分かりづらかったかもしれないんですけど,要するに結論的にいいますと,サブカストディX’’’が倒産した場合には,実体法レベルでX’’’に対して何らかの請求をすることができるのはX’’だけであって,Aが直接X’’’に何らかの請求をするということは難しいのではないかと。ですから,前回の部会の議論に戻しますと,結論的にいうと○○委員がおっしゃられたとおりなのかなというふうに思うわけです。つまり,AのX’’’に対する権利と,X’’のX’’’に対する権利とがバッティングするという事態自体が生じないで,結果的にはX’’のX’’’に対する請求だけで物事が処理されるという,そういう,○○委員の御説明のとおりになるのかなという感じなんでございますが,その点,前回議論を主導していただいた○○幹事,○○幹事いかがでしょうか。 ● 確認ですけども,要するにというお話だったもんですから,これ,英国法では信託を使って,信託受益権でつながっているという話が前回あったと思うんですが,ですから,そこの性格付けは難しいですが,もっと単純化して言えば,相対の当事者は債権的にしかつながっていないというふうに考えて大過はない,大きな過ちはない。場合によっては,債権者代位権を使えるかもしれないけども,それは準拠法がどうなるかということもあり,分からないけれども,基本的には一個一個がつながっているだけで全体を貫く何かがあるわけではないと,そういう御説明,それは別にX’’’が倒産しようと,しまいと,そういう構造になっているんだと,そういうことと理解してよろしいでしょうか。 ● 今,○○委員はこの事例がCrestが一番上に,頂点にあるものですから,CrestとX’’’の間が多分英国法になるだろうという前提で,英国法であれば信託だから契約でということをおっしゃったんですけど,私の冒頭に申し上げた説明はそこは全然考えておりませんで,仮に日本の保管振替機構とか,あるいはフランスのCSDが一番頂点で,直接の権利を末端の者,末端の投資家が持つというそういう法制であったとしてもそこは同じになるのかなと思っておったんですけれども。 ● 末端のというのはAですね。 ● そうです。 ● Aが何らかの権利を持つとしてもというのは,何らかというのは何なんでしょうか。 ● 例えば社債とか,株式自体を直接取得するという物権的な構成であったとしても,それはあくまでもCSDとその直近の口座管理機関との関係でそう定まっているというだけのことですから,それぞれの直接の関連口座機関との間の準拠法はそれぞれ別々になり得るという前提なわけです。したがって,たまたま一番上が契約的構成といいますか,信託が契約的構成なのかどうか,いささか問題があるかもしれませんけれども,一番頂点が何であるかということは,これは関係ない話なんではないかと,そこは頂点で物事を見るという考え方はこの条約はとらない,ルック・スルーじゃなくて,ステージ・バイ・ステージで考えようということですから,そこは○○委員がおっしゃっていることはちょっと違うものかなというように思うんですが。 ● 私が信託と間違えたのは,債権という話をするにちょっと引っかかるので,であってもということを申し上げたけれど,別に一番上がどうだからではなくて,どこかにそういうのが挟まっていようと,そういう法律構成をとっていようと,基本的には二当事者間の関係でつながっているというふうに見るのがこの図の見方であると,そういう説明と理解してよろしいでしょうかと,信託のことは忘れてください。それだけ申し上げます。 ● それはそうだと思うんですけれども。本当にそうなのかどうかと,さっきの私が御説明申し上げたのは,実体法とか手続法レベルでの話で,その申し上げた実体法自体は日本法を前提にすればこうなるんではないかと思われますということ,そこまでのレベルの話しか申し上げておりませんので,いやいやほかの,例えばスペインだったら全然違うよとかいうお話があればぜひ承りたいんですけども。 ● よろしゅうございますか。 ● はい,結構です。 ● 先ほど,お二方に御意見をというか,御質問があればというふうに申し上げました。 ● 前回の私の記憶ではX’’’の倒産というような事例のときに,そこに直接ぶら下がっているX’’と,それからもともと出えん者といいますか,Aですね,それがある種一つの本来あるべき権利というものを争うような形になった場合に,どのように条約のもとで処理されるのかという設問というかで,それに対して,私は○○委員と矛盾することは全然言っていないというのは多分議事録などの確認をさせていただきたいと思いますけれども,つまりその答え方が二つあって,一つは条約がこの問題の処理について,答えを用意しているかというと,それは用意していないということを私はずっと申し上げてて,○○委員はそれはそうで,ただ,では,X’’とAが相争うというような状況というのが起きるのかということについて,それも起きないというふうにおっしゃられていたので,その後者の問題について○○幹事のほうが今詳細に御説明いただいたということかなと思っておりますので,私は今の状態に非常に満足ということです。 ● ○○幹事,何か。 ● 私は,ハーグ条約がAと,例えばX’’との間の優先関係を直接にカバーできて,階層を越えたものについて,それを直接規律の対象としてということを申し上げているのではなくて,X’’’の口座において,X’’の名義が出ていると。この名義をAがチャレンジをする,私は,これこそが権利者なんだから,僕の言うことを聞いてくださいという形でおそらく現実の争いは起きるだろうと。それか,AとX’’のどちらが優先するんですかというふうな争い方,あるいはAがX’’の名義でX’’’に保管されている証券を,例えば自分の指図のとおりに動かしてくれということが言えるかどうかというような局面だと思いますので,そういう局面だとすれば,条約には,口座名義人ではない人が権利を主張してきたときに,その口座管理機関がどのような義務を負うかというのはこの条約の範囲内ですよと,適用範囲ですよというふうな規定があったと思いますので,結果的にそういった場合にX’’’の口座を管理している口座管理機関がどのような義務を負うかというのは,X’’’とX’’の間の契約で決まる準拠法によるのではなかろうかということを申し上げたので,一つは条約が直接規定しているということを申し上げているのではないんですが,今,問題になっているような場面が実際にどういう形で争われるかということになると,まさにその条約が適用されるような争われ方をするので,結果的にはX’’とX’’’との間の準拠法で決まるのではないかということを申し上げたと。 AとX’’が争う場合が絶対ないかとか,あり得ないかと,事実上,それはA次第なので,何とも言えない。A,X,X’,X’’の間の記録が整合するような記録をAが絶対持ち得ないかというのも,これも何とも言えないところですので,場合によっては持っているかもしれない。だから,絶対あり得ないとまでは言えないと思いますけれども,結果的にどのルールによってX,Crestが,ちょっと点がいっぱいでよく分からなくなってきたんですが,結論はこの口座を動かせと言っている口座に着目して準拠法が決まって,その準拠法によって,では,この末端の人の言うことを聞くのか,あるいはその口座名義人の言うことを聞くのかということが決まるのではないかということを申し上げて,その意味からすると,○○委員がおっしゃられた結論は私にとって非常に違和感があるというわけではないし,○○幹事がおっしゃられたことも,そんなに違和感を持ってお聞きしたということはなかったんですけど。言いたいのはそういうこと。 ● ○○委員,何か。前回も,お二方の御意見にコメントをいただいたのですが。 ● はい,結構です。余り覚えていないんですけど。ちょっと後で関連することで,一つ質問させていただいてもよろしいでしょうか。 ● はい,どうぞ。 ● じゃ,質問を一つさせていただいて,一つコメントさせていただきます。   これが全部日本だとしますと,日本の社振法の世界の中で,X’’’が倒産しますと,X’’’の口座の振替をいわば取戻権の行使のような形ですることはできないと。常に,やっぱりX’’’に対して勝訴判決を得て,つまり振替の申請をする,その細かい形,よく分かりませんけども,どういう手続でX’’はX’’’の口座にある,そういう額にせよ,するにせよですね,その証券分を移転させることができるんでしょうか。これちょっと質問なんですが。 ● 全部が日本の社債株式振替制度だという前提ですと,X’’はX’’’に開設してもらっている自分の口座のうちの,まず自己口については自分で振替の請求をすればいいということになります。その振替の請求はX’’’の破産管財人に対して請求するということになって,その請求を受ければ,X’’’はもう倒産はしていますけれども,まだ,口座に証券が残っているということは倒産事務は全部終わっていないということですので,倒産事務処理としてその振替に応じるということになって,ですから,X’’’がその上の,ここにCrestと書いてあるところが証券保管振替機構になるわけですけども,自分の分の減額記帳をして,証券保管振替機構に別の口座管理機関への振替記帳をしてくださいという通知をするということになります。 これに対してX’’’に開設されているX’’の口座のうちの顧客口の分ですけれども,それは自分の権利じゃありませんから,下位の口座管理機関からの通知を受けて,その通知をさらに伝達する形での通知をするということによって振替をしてくださいということを,同じくX’’’の破産管財人に言うということになります。 そこは自己口か顧客口かによって,自らが直接権利者としてやるのか,それともつなぐのかという違いはございますけれども,やることは同じで,口座の振替の手続をしてくださいということを通知するというだけだと思いますが,それはですから,倒産していない状態と全く変わらないということで,ただ,その記帳を行うべき地位に立つものが倒産していますから,破産管財人がやるという,実際には従業員がやるわけですけれども,ということになるだけだと思います。 ● ちょっと関連して一点よろしゅうございますか。   それで管財人がやらないような場合に,さっきのお話で,日本法という文脈じゃなかったと思いますけど,何かある種の代位行使みたいなことは可能だというふうにおっしゃいましたっけ,それはおっしゃらなかったんでしたっけ……。 ● 代位行使ができるかどうかも議論されたことがないと思いますし,ただ,できるとすれば代位行使しかなくて,直接の請求は,つまりアッパーティアーにジャンプしての請求,直接請求はできないと。 したがって,やれるとすれば直接下にぶら下がっている口座管理機関に代位して--もちろん代位できるのはそれが顧客口の分だけですけれども--請求をするということができるかどうかということが,論じられたことはないと思いますけども,問題になり得るということを申し上げただけでございます。 ● ありがとうございます。   コメントなんですけれども,コメントは先ほど○○幹事がおっしゃったことと結局同じことを言うことになるんですけれども,ここが何法であっても,例えばドイツ法であるというお話がありましたし,あるいはイギリス法であるとかいうお話がありましたけれども,その請求の根拠というか,誰がこの証券を持っているかという話でいうと,今,もし仮に顧客分のほうの話をしますと,何法かによって,例えばX’ですね,この黄緑の一番下の人が,その下にいないとしてでも,持つ権利というのは当然違うわけですね。イギリスやアメリカであれば切れた関係ですし,ドイツや日本であれば一番下のX’が,下がないとしますと,株式とかを持っているんですけれども,ただ,X’’’が倒産した場合に,X’を通じてしか権利行使できないというのは結局同じですよね。それは,さっき○○幹事がおっしゃったことですけれども,したがって,何法であるにせよ,結局,X’’’が倒産した場合にはその権利行使は,構成は変わりますけれども,どういう根拠に基づいて,もとの権利が何かというのはありますけれども,X’’も日本で言えば破産管財人に対して請求していくという点については同じですよね,おそらく。もちろん何か突飛な国があれば別ですけれども,そこは。おそらく主要な国の法律である限りは同じであろうというのはコメントです。 余計なことかもしれませんけれども,○○幹事がおっしゃったことで申し上げますと,それはちょっとおかしなことをするようなAがいて,X’’’を訴えるということはないわけじゃないと思うんですよね。一番あり得るのは,これアメリカでブラックマンデーのときに起きた話なんですけれども,結局,X’’’が倒産--X’’’の倒産だとあんまりいい例じゃないですね,しかし,ちょっと似たような雰囲気で申し上げますと,X’’’が倒産して例えばX’’が,今の例でX’’’の倒産管財人を通じて,X’’’の口座を動かしていったとします。それで後からAが,いや,それは自分の証券だと言って,X’’’,これが倒産していますから,関係者,例えば破産管財人,あるいは場合によってはX’’を,日本で言えば不法行為ですね,損害賠償請求として訴えたというの,これブラックマンデーのときに,ちょっと変形していますけど,非常に起きた話ですね。それに対応する規定がアメリカには置かれているわけですけれども,それ簡単にどういう規定かといいますと,下からの口座管理機関の指図によって振替をしている限りにおいては,それ以外の人に責任を負うことはないと,簡単に言うとそういう規定なんですけれども,したがって,そういう話が問題になった場合にどうなるかということはあって,もちろん損害賠償請求そのものはこの条約がカバーしている話ではないわけですけれども,しかし,その前提として,X’’’の,今の例で言えば倒産管財人になると思いますけれども,振替をしていいのかということが一応問題になるんですね。それは,○○幹事がおっしゃるとおりでそこは,この条約でいえば,2条1項の中に含まれているはずなんですね,その手の話は。2条1項eだと思いますけれども。ですから,もうちょっと抽象的に申し上げますと,○○幹事がおっしゃったことを言うことになると思いますけど,イシュウ・バイ・イシュウというか,問題ごとに考えなければいけないということに--この条約の適用があるかないかという話ですけれども--にあると思います。 以上です。 ● どうぞ。 ● ○○幹事に質問なんですけども,先ほど○○幹事は,X’’’が倒産した場合に,その下にぶら下がっているX’’とAとの間で紛争が起きる場合があり得るということをおっしゃられて,それはあり得るかもしれないんですけれども,その紛争というのはどういうものなのかということを質問させていただきたいんですけども,それは例えばですが,AがXに対して自分の,例えば株式1万株を振り替えてくれという請求をして,XがX’にそれをつないで,X’がX’’につないだけれども,X’’がそれに応じてくれないというような,そういう場合でしょうか。 ● 私はまず,一つは先ほど○○委員がいいとおっしゃったのはまさにそのとおりで,そのつもりで申し上げたんですけども,今おっしゃられたAとX’’が争うという場合,非常に深く考えて申し上げたわけではないんですけれども,例えば,X’’はX’’’が破綻したので,自分が預けている分をまず自らの任務として取り戻したいと,誰が最終的な権利者かはよく分からない部分も,その下にX,Aとつながっていく末端のほうがどうなっているか分からないけど,まず顧客の預り資産を自らの管理に移してしかるべく処分をしたいと考えたとして,そうしたときにAが,これは本当に○○委員おっしゃられたように現実にこれだけ段が重なって,しかも外国の場合にどれだけ現実的かという問題あるかもしれませんが,Aが,いや,ちょうど私の証券はあそこにある,その証券については自分はこういう別の処分をしたいというふうに思えば,実質的な権利者と中間にいる人との間の思惑が違って,言い分が違う,そうした状態でどちらの言うことを聞いたらいいかというような問題状況発生し得るのかなとは思います。ただ,非常にまれだと思います。まず,Aがそこまで到達するための証拠を集めることに成功することはまれだと思いますけども。 ● 今,どっちの言うことを聞いたらいいかというのはX’’’がということですか。 ● 今の例でいくとそうですね,X’’’がですかね,ひょっとしてX’’’が倒産している場合でしたので,ひょっとすればX’’’とAが争う,X’’’の管財人とAが争うということを例としてお話をしたほうがよろしかったのかもしれません。それだったらあり得るということですか。今,よくお分かりにならなかったというのはX’’’が倒産したにもかかわらず,X’’とAと,私は途中,点の数がちょっとよく分からなくなったと申し上げたんですけど,それが原因で一段階下とAの間で紛争が起きる例をお話ししたから,いま一つよく分からなかったのかもしれないんですけれども,それがちょっと分かりにくければ,例えばX’’’とAがX’’’口座に記載されたようなものをどう処理するかということについて,Crestに対する指図がこう食い違うというような局面を考えてもいいと思うんですけども。 ● 指図が食い違うとおっしゃったんですけども,この図を前提とすれば,Crestに指図ができるのはX’’’だけなんで,AはCrestには指図できないんですよね。 ● それを決めるのはCrestとX’’’との間の契約で定まる準拠法だと思います。 ● それはそうだと思うんですけど,どの準拠法を選んでも,Aが直接CSDに対して振替の請求をすることは,どこの国の実質法,やっぱり変わったところは別にして,こういう階層構造の場合に直接の請求を認めている国は多分ないのではなかろうかということを申し上げたんですけど。 ● 分かりました。それに関しては,私はちょっと最近ドイツの実体法を調べる機会があって,間もなく論文を,続きを公表させていただくんですが,大した内容ではないんでお恥ずかしいんですが,ドイツ国内の国内法のレベルに関して言えば,間接占有をつないでいっていると,この階層は所有権プラス間接占有をつないでいっているので,要は所有権者が最上層に対して自らの所有権,あるいは本来的な占有権限者という権限に基づいて,それを返還を請求できるというのは当然であるという立場の学説と,それでは階層構造を採用している現代的な法制にマッチせず,そういった考え方は適当でないという考え方が対立していると。少なくとも2004年か3年ぐらいの文献の段階においては対立をしているというのが,少なくとも私の勉強した範囲ですので,国内法のレベルにおいてそういった考え方は絶対ないと,末端から上位の口座管理機関への指図がですね,学説のレベル,絶対ないというのはやや言い過ぎなのかなというふうな認識をしています。ただ,ドイツにおいても国際的な階層が重なっていったときにどうかとかですね,あるいは今これだけ国際的な環境が変わっている段階ですので,今度出た新版ではその学説が変わっているかもしれないというふうなことあるかもしれませんが,少なくともここ数年に出た文献においては,そういった考え方が対立して,さらにそれを批判する文献が出ているというような状況ですので,あり得ないかというと,そうでもないのかなというふうな気はいたします。 ● ○○幹事,ドイツが出ましたので,何かお願いいたします。 ● 国内じゃなくても,例えば余り現実的でないケースかもしれませんけれども,例えば6層続いている構造のうち,上の3層はいわゆる切れた関係になっていると。ところがたまたま下3層は全部,例えば共有権構成になっているというときに,下から4層目が倒産したときに,5層目,6層目,それから最後の投資家Aが例えば取戻権を主張できないかというと,これは最終的なところが共有権者,物件を有しているわけですので,取戻権は行使できるという考え方は十分飛び越えてあり得ると思うんです。おそらくドイツで共有持分権構成をとっているときに,下が上を飛び越えていけるというのは共有持分構成をとっているということと,非常に関係しているんじゃないかと思いますけれども,そのとき,では,一番下の人しかできないはずじゃないかという議論に対しては,上の方は管理権を持っていて,倒産のときにいち早く,例えば取戻権を行使して,最終的な共有権者であるAを保護してやる必要があると。そうだとするとAとXが両方取戻権を行使できてもいいという,こういうのが多分ドイツのこれまでの考え方だったんじゃないかと思うんです。そうだとすると,たまたまですね,切れない関係がたまたま続いたところまでは,今のような○○幹事のような考え方をとるというのは,全くあり得ないことではないんじゃないかというふうに私も思いますけれども,おそらくこのイギリスの場合は切れた関係になっていると思いますので,多分,そういう考え方というのは出てきづらいのじゃないかと,ただ,先ほど,例えばX’’’とX’’の関係はドイツ法を準拠法としていた。例えばここでたまたま共有権の構成をとっていると。X’’とX’,その間もそうだと,そういう関係が続いたときは私は飛び越えることというのはやっぱり論理的にはあり得るような気がいたします。 ● 今,○○幹事が言われた取戻権の行使というのは一体何をするんでしょうか。それが問題だと思うんです。振替だとすると,Aが飛び越えたら,XやX’,X’’の口座の記帳と,X’’’の記帳に食い違いが生じてしまいますが,そういうことは振替システム上絶対許されないはずなんで,それを認めるということは実務的にはあり得ないと,○○委員に今うなずいていただきましたけども,絶対あり得ないと思うんですけど。 ● ですから,多分,今のは無券面の場合にはあんまり考えられない,現物があって,しかもその現物について取り戻す権利があり得るというような場合には,現実的にもあり得ると思うんですけど,ただ,Crestの上では,先ほども冒頭に申しましたように机上の理論だとは思いますけれども,論理的にはあり得るんじゃないかという気がいたしますけれども。 ● ちょっとよろしいですか。そうすると現物の取戻しですね。それは分かるんですけども,そうだとすると,X’’’のところに現物がなきゃだめですよね。ところが,こういう間接保有証券形態ですとCSDにしか現物はないはずなんで,あるいは全くないかもしれないんで,その場合はどうなるんですか。 ● ドイツの場合は,現物じゃなくて引渡請求権を取戻権の対象にしてしまうので,そこがちょっと,確かに日本と違うのかもしれません。 ● ちょっと今おっしゃった意味が分からなかったんですけど,振替請求権が取戻権になり得るということですか。 ● X’’’がCSDに対して持っている券面の発行請求権というのが,引渡請求権があるとすると,それを取戻権の対象にすると。 ● 自己がまさに権利者の地位に立てるということだと,要は預託機関に対して返還請求権を持つことになりますから,まさに顧客の地位になりかわれるということですよね。私もそう思います。 ● ちょっと今,○○幹事がおっしゃられた請求権の内容がよく分からなかったんですけど,この事例に仮に照らして,これはCrestになっているんですけども,ドイツの機関だとして,全部ドイツだとしたときに,Aは取戻権の行使の内容としてどういうことができるということなんですか。 ● サブカストディX’’’がCSDに対して持っている株券の引渡請求権を実質的に取得するということになると思うのですが。 ● 株券の引渡請求権,いわば代位行使するみたいな感じなわけですか。 ● 結果的にはそのようなことになると思うのですが。 ● 引渡請求権じゃなくて,振替請求権はどうなんでしょうか。 ● おそらくその振替請求権の効果と結び付いてくると思うのですけれども,それによって引渡請求権が発生するというのであれば,同じ請求ができるのではないかという気がいたしますけれども,どうでしょうか,よろしかったら,補っていただきたいんですが。 ● ○○幹事にちょっとお話しいただいて,その後,○○幹事,それから○○委員というふうに,その順序でよろしゅうございますか。 ● ちょっと状況が分からないんですよ。今の○○幹事の状況は上の方は信託受益権で,途中から物権的な構成なんですよね。そうすると,その信託受益権しかつながっていないところから,物権的な地位を買えるという,じゃなきゃおかしくなるんですが,逆なら逆で上のほうだけで問題になっているシチュエーションなら分かるかなと思うんですが,何か途中まで債権でしかつながっていないのに,途中から物権になってという要求はちょっと,そういうことあり得るのか分からない。 ● 物権的なことというのはおよそ考えできないということでしょうか。 ● たしか○○幹事は,そういう説明をしましたけど,途中から○○幹事が全部物権で考えたらどうなるかというところで,まず,ベーシックのところに設定を行ったので,そこの話から始めたほうが応用問題ですぐ行くよりはいいと思うんですけど,そのときに,引渡請求権になるんじゃないかというところは何か分かるけど,それってあれですか,間接保有構造から離脱を顧客が望むということでしょうか。そういうものが認められるということであると,何か分かる気がするんですけれども,そうだとすると,引渡請求権と,またその振替を更にさせる権利というものはまた別の話で,Aが最終的な物権の持ち主であるということの最終的な帰結として,Aは最後の最後にはこの間接保有の構造から離脱することができるというのが制度上認められているんであれば,それがこういうようなエマージェンシーなシチュエーションでこれを行使したという話だとすると分かるんですけど,今の話題というのはどちらかというと,その話はちょっと別の間接構造の中だけで完結している話のときに,果たして振替のようなことをA自身が,X’’などを使わずに,するようなことがあるのかというところが今までの多分議論の中心で,そのときに私はずっと疑問だったのは,AとX’’の権利が利益相反な,利害が異なってくることってあるのかなというのが,ずっと分からなくて,つまりX’’自身はAに頼まれて,Xに頼まれて,X’に頼まれて,X’’に頼まれているので,そのX’’個人の利益というのはないわけですよね。つまり,そのAとX’’が相争うというところがどうしてそう生じてくるのかというところがちょっといま一つ分からなくて,もしかしたら,先ほど,○○幹事がおっしゃられたようにダッシュの位置が,数が違ってて,X’’’が管財人に,倒産すると当然管財人に集約されていまして,管財人はできるだけみんなに公平に分配しようというのが一つの役割なので,そうするとX’’,あるいはAと,あるいは連合でとりあえずは自分の権利だからよこしなさいというときに,そことの間で利害衝突が起きるというのは十分考えられて,そう起こり得るシチュエーションじゃないかとは思うんですけども,そのときに一つはそのX’’’の管財人の方が,おまえなんて一般債権者じゃないかと,おまえ債権しか持っていないんだというときに対処する方法というのが8条1項に抱えられている,その権利の性質についてもこれの条約に定めがあるから,仮に倒産開始法が取戻権などの法制を整備してなかったとしても,準拠法上,物権的な保護を与えられるというのを選んでいれば,そうするとそれによってX’’’がどう言おうと,あるいは管財人がどう言おうと,AないしAに代わってやっている,あるいは本来の権利者かもしれませんが,X’’’が自己の観念的に取戻しができて,その振替か何かをするように判決か何かとっていくというシチュエーションはあるだろうと思いますけれども,X’’’というのがちょっとやっぱり利害が実際に衝突するというのが私はちょっとシチュエーションがよく分からない。さっきの間接保有構造から離脱という話だったら分かるんですけど,したいというんであれば。それが認められるかどうかという論点であれば,それは。 ● 今の○○幹事の後のほうのX’’とAが対立する場合って,この図だとないんじゃないかというのは,一般的にはそのとおりだと思うんですね。ただ,これは生じちゃいけないんですけども,生ずるとすれば超過記録になっている場合で,Aの請求に応じるとX’’の顧客口座の残高がマイナスになってしまうと。つまり,X’’が開設しているX’の口座に入っている当該証券の数よりも,その下のランクの証券の数のほうが多いというのが超過記録なんですけども,超過記録が生じている場合は振替に応じられないという場合がありますんで,そういう場合は利害相反というか,AがXを通じて振り替えてくれと言ったのに,X’’は振り替えてくれないということが論理的には起きます。 ● X’’’が倒産していようがしていまいが起こる現象では……。 ● もう全然関係ありません。 ● ですよね,それでは分かります。今,X’’’が倒産したときに果たしてどういう話が始まりますかということが前提だったと……。 ● 倒産したときにどういう話が始まりますかということは,冒頭に私が御説明申し上げていましたように,倒産しても全く何も変わりはありませんというのが私どもの結論で,だから,倒産したから,変わるとしたら何が変わるかというと,執行機関が倒産管財人になるというだけの違いで,やるべきことは何ら変わりがないということなんではないかと思います。 それから,○○幹事の前半のお話なんですけれども,つまり取戻権の行使の仕方が振替という形なのか,振替だと中で起きるわけで,それとも交付請求権,証券の引出しという形で外へ出てしまうという場合かで異なってきうるのではないかというお話だったんですけれども,私はそれは違うのではないかと思います。というのは,外へ出す場合も,Aが,例えば証券を引き出したいという場合に,Aが証券を引き出しますと,CSDに入っている証券総数が減るわけですね。そうすると,その下にぶら下がっている各階層の口座管理機関の証券総数も引き出された数だけ減らなきゃいけないわけです。それは振替の場合に振り替えられると減額記録を,片方の口座管理機関が記録をし,片方の口座管理機関にぶら下がっている全口座管理機関が同じ数の減額記録をし,他方の一連の系列が増額記録をしなければいけないというのと,実質的に同じことで,ただ,減額だけをするというだけの違いなんですけども,どっちにしても,Aが証券を引き出すんだったら,ここで言えばサブカストディX’’’,X’’,X’,Xの全部の振替口座の記録を減額記録しなければいけないはずなんですね。そうすると,AがX’’’に直接,あるいはCSDに直接取戻が請求できるとすると,XやX’の振替口座の記録が変えられないままで,取り戻しがされてしまって,超過記録が生じてしまいますから,そういうことって民法の理屈はともかくとして,振替制度,証券の引き出しですから保管振替制度になりますけども,というものの本質からして,絶対許し難いことなのではないかと思うのですけれども。だから,あるいはドイツではAが直接請求した場合も何らかの方法によってAからCSDまでつながる一連の口座管理機関の記録を,減額記録がされるように何か仕組みが組んであるのかもしれないんで,そうであるならば成り立ち得る議論ですけども,日本はそういうことはないんで,交付請求をする場合もAは直近上位の口座管理機関というか,保管振替制度ですから,参加者ですけども,参加者に請求して,参加者が保管振替機構に請求しないと引き出せないという形になっていて,それは何のためかというと,保管振替機構に預託されている証券の数と,その下にぶら下がっている口座管理機関に預託されている証券の数の数字が違ってしまうと困るからなわけですよね。それは振替決済制度のいわばイロハのイというか,根幹にかかわるところなんで,そこが確保されなければそういう直接請求には絶対応じられないと思うんですけど,○○委員いかがでしょうか。 ● じゃ,一言,あんまり言いたくないようなテーマなんで,私が最初に御質問したのはいずれこういう話に関係するのではないかと思ったので,最初何を質問したかというと,全部日本の場合に社振制度だったらどうですかという質問をしたんですね。つまり保振制度だったらどうなんですかという質問はしていないので,ドイツのように紙をよこせという請求をした場合にはロジカルには共有権に基づくのか,根拠はそれぞれの法制によって違うかもしれませんけど,請求権が立つという構成はあり得ると思うんですね。しかし,他方,私は考え方からいうと○○幹事がおっしゃったように,帳簿上のほうの記録と連動させないで紙を引き出して,いわばジャンプして認めるというのは本来あってはならないことだというふうに思ってます。 しかし,それがぶつかる局面というのもあると思いますので,ちょっと二つだけコメントさせていただきたいんですけれども,第一は裁判所が間違えてCSDに対して紙をAに発行せよという判決を出したらどうなるかと。もしそういうことが起きたときには,これは帳簿上に連動してない形でという意味なんですけれども,にもかかわらず,帳簿の記載によって処理していいかどうかという問題になるんだというふうに私は思ってます。それが一点目です。 それから二点目は,もうちょっと緩めてですけれども,緩めてというふうに申し上げる理由はこれから申し上げますけども,仮にドイツなどでAが直接紙を返せと,CSDに対する請求権を認めるという見解があって,それでそういう権利を行使したところ,他方,X’’’が,Aはもちろん認識しないのかもしれませんけれども,先ほど私が申し上げたこととちょっと関係しますけれども,X’’からの指示に従ってどんどん振替をしていったという場合にどうなるかというと,結局,後者のほうの問題を私は先ほどちょっと○○幹事との関係で申し上げたんですけど,2条1項eというところで一応扱ってはいるんですね。それで実は今,エクスプラネタリーレポートをみたんですけれども,エクスプラネタリーレポートの2条1項eのところには,例の2の10というのがありまして,これは日本の投資家がフィリピンで,ドイツの口座管理機関を経由して,最後はニューヨーク州法に基づいて設置されたCSDという例で書いてあるんですけれども,実は私が申し上げた以上のことがここには書いてあって,なんと書いてあるかというと,要するにX’’以外の人から何か言われたときにX’’’が,これが倒産していても,していなくても同じですけど,X’’の指示に従って振替をどんどんしていくということの結果,X’’’がX’’の人以外に何か責任を負うかという話については本条約の2条1項e問題だと,さっきのことを繰り返して申しわけない。ところが,この2の27というところにはライヤビリティの問題もカバーされるんだという言葉で書いてあります。 したがって,これを善意にというか,解釈しますと,私は先ほど準拠法は別ですからというふうに,一応,その前提の問題としてというふうに申し上げたんですけれども,この2の27の言わんとしているところはX’’’はX’’の指示だけに従って振替をしていれば,ほかの人には責任負わないかどうかは2条1項eの問題ですと。すなわち,この条約の準拠法で決まりますというふうに読めます。 仮に,この条約の準拠法がニューヨーク州法だったとします。すなわち,X’’’とX’’が合意した4条1項の法律がニューヨーク州法だったとします。そうすると私の一点目のコメントにちょっと関係してくるんですけども,ニューヨーク州法いわく,X’’からの指示以外の人のいかなる指示にも従う必要はない,したがって,X’’の指示に従ってやっている限り,実は無権利者が背後にいたとか何かがあったとしても,X’’’は責任を負わないというふうに書いてあります。 ところが,例外がありまして,裁判所の命令とかそういうものでフリーズされた場合は例外である。すなわち公的機関によって振替の記帳がストップさせられた場合は例外であると,こういうふうに書いてある。それはよくあるアメリカ的な規定なんですけれども,そうなるとさっきのような例で,裁判所が間違えてAの請求を認めたという場合に,もちろんその間違い方がですね,X’’’に振替をしてはならないという,こういう判決が出た場合には,今の例外に当たりますので,ニューヨーク州法が仮に準拠法だとしますと,ニューヨーク州法のもとでX’’’は例外としてX’’の振替の申請があったにもかかわらず,振替をすることはできないということになります。 問題は紙を引き出せという命令があった場合に,X’’’は振替をしていいかという問題当然あるわけですね。というのは紙と振替の数とはどれがどれだか分かんないわけですから,下手すると紙を出すまでは振替は,株式でいうと1株もできないということにもなりかねないわけでして,この先は解釈問題ですけれども,私は○○幹事がおっしゃろうとしたことと同じだと思いますけれども,それはもう振替の方が勝つと,そのような場合はですね,ということになるんではないかと思いますけれども,振替の方が勝つというのはどういう意味かといいますと,今,紙を出せという請求の相手方がX’’’の場合とCSDの場合とを区別する必要があると思うんですけれども,今,X’’’あてに紙を出せという請求があったりすると,これは○○幹事もおっしゃったことですけれども,X’’’がCSDに対して紙をよこせというわけで,引渡請求権が帰属したということにおそらくなるんだと思うんですけれども,その前にX’’’はその部分についてはX’’から振替の申請があっても受けてはならないかと,こういう問いになると思うんですね。それを特定することはできませんので,ここは見解が分かれるかもしれませんけれども,例えば1000株持っているうちの100株分について紙を出せという請求があって,それがX’’’の破産管財人に対する何らかの形で勝訴判決が出たとしても,それとX’’’が,例えば1000株の100株,あるいは1000株すべてについて仮にX’’から振替の申請があったときに振替をしていいか悪いか,それは止めてなきゃいけない,先に100株分を株券を出してくるほうが先に履行するまでは一切振替ができないのか,あるいは少なくとも100株分は振替ができないのかという問いについては難しい問題ですけれども,ですから,余り言いたくないんですけれども,私の個人の見解としては現時点ではということですけれども,振替の行為というものが妨げることにはならない。そうでないと振替制度のインテグリティというんでしょうかね,先ほど○○幹事が制度の根幹とおっしゃったものが非常に揺るがされるということになるのではないかというふうに思います。 ただ,これは,こことの関係でいうと,要するに何法で決まるのかという話を本来はしなければいけないのがこの部会ではあります。 すみません,長くなりまして。 ● ありがとうございました。ここで休憩させていただきます。○○委員,大変遅くなって申しわけありませんが,休憩後にお願いいたします。            (休     憩) ● 再開いたしたいと思います。お席にお戻りください。   それでは,休憩前の議論についてちょっと事務局の方でまとめていただいた上で続けたいと思います。 ● うまくまとめられるかどうか分からないんですけれども,最後に○○委員がおっしゃられたのは本当に究極の場合のことで,それまでに議論していたことのさらに先の話だったと思いますけれども,その前に議論しておりましたのは証券を引き出す場合,あるいは振り替える場合に直接途中の口座管理機関を越えて末端の投資家がそういう請求をすることができるという法制もあり得るという御議論があり,それに対しては飛び越えてやってしまうと,途中の口座管理機関の記帳をどうやって直すのかという問題があって,だから,日本法はその頭越しはできないので,下から順に上げていかなければいけないということで記録のそごが生じないようにしているわけなんですけども,○○幹事,あるいは○○幹事,直接ジャンプして請求できるという立場に立ったときに,口座管理機関相互間の帳簿の記録のそごが生じないようにするという点の手当については,ジャンプして請求できるという考え方はどういう手当をするんだと言っているんでしょうか。 ● 詳しくは存じませんけれども,おそらくその実体に反した,そういう意味では誤った,実体を反映していない記載になっているわけですので,早急に真実の状態に戻すと,そういうことが行われるんじゃないかと思いますけれども,私はあんまり多分実例はないと思いますので,議論もよく知らないのですけれども,そういう取戻しを行った上は,速やかに預託している管理機関にそのことを通知する義務はおそらく信義則上認められるのではないかという気がいたします。○○幹事,御存じでしたら,補っていただければ……。 ● ○○幹事何か。 ● 私も先ほど申し上げましたように,直接請求権を認めるべきであるというふうな議論があるのは承知をしていますけれども,どういう場合,常に気分次第で認めていいのかというふうな議論がされているという,そこまではないと思いますし,あとはでは,どう是正するかということについて明示的な議論がなされているかというと,そういうものは承知していません。 だから,先ほど○○幹事がおっしゃられましたように,実体としての占有関係について,預けていたものが返還されて占有関係がなくなってしまったと。口座の記帳関係というものが占有関係を正確に表示していないので,それを是正する,事務的に是正をすると,そのメカニズムが上からこう例えば何らかの指図があるのかですね,下から積極的に言っていかなければいけないのか,あるいは自動通報されるシステムが整っているのか,そういうような部分は承知をいたしませんけれども,法的には占有関係の実体に合わせるような,実体としての占有関係に口座の記帳を合わせるようなオペレーションがされるということになるのだと思います。それについて明示的にそういうシステムあるというのを論じたものは承知しておりません。文献は承知してないです。 ● 今のお話を伺ってますと,だから,実務的なことまで十分考えられて議論がされていないのではないかという気がしてしょうがないんですけれども,実務上はCSDに記帳されている数と下位の口座管理機関に記帳されている数の間にそごが生ずるということは絶対あっちゃいけないことなんで,仮に直接請求を認めるならば,その直接請求をした場合に,こういうふうなシステムで引き出されるのとほぼ同時に記帳の内容が全部変わるというようなことになっていないと,そういうものは受け入れられないはずなんですね,振替のシステムというものの本質からして。それは○○委員がおっしゃったような判決で間違って出てしまったときにどうするかとか,それはもう究極の問題なんで,それはどうしようもないわけですけども,それは後で超過記録の減少措置ということでやるよりほかないだろうと思いますけれども,そうじゃない一般的な場合としてそういうものを認めるとすれば何らかそれに対応した日常業務としてのマニュアルみたいなものがないと本当はいけないはずなんじゃなかろうかと。ですから,学説上そういう説があるとしても,実務はそういうものは取り難いのではないかなという気はしたんですけれども,○○委員,いかがですか。 ● 実務的にもちろんそんな手立てはとっておりませんし,権利として当然にその下位の人が,この例ですとAさん,この人が持っておって,上の人を飛び越していけるというようなことになった場合,もういつでもだれでもできてしまうということになるわけで,それはもうまさに制度そのものをひっくり返してしまうことになると思います。直上の人しか知らない,直下の人しか知らないということですべての制度が構成されておりますんで,そこを覆すことを制度としてはちょっと動かないと思います。 ● はい,どうぞ。 ● 制度論としてそういうのは認められるべきではないというお話だったんで,今までの議論非常に面白く聞いていたんですけども,どういうふうになるのかなというのをちょっと考えてみまして,今いろんな,日本と北の国と仲悪かったり,アメリカと中東の国が仲悪かったり,なんかいろいろしていますから,何が起こるか分かんない。それではどんな場面があり得るかというのをちょっと考えてみますと,日本の投資家がこういうふうにあります。そしてカストディがずっと上がってきますね。そしてサブカストディが特殊な国にあって,日本の資産を全部凍結と。売買も許さないし,配当も渡さないというふうになったときに,私が国内のAに依頼されてどうしたもんでしょうと言われたときにはどうするかなというふうになりますと,日本ではA機関が株式を持っていますと,それじゃ,Crestに直接訴えて免許を書きかえてもらおうじゃないかと,サブカストディX’’’の今ある名義は私が1万株持っています。だから,Aが指定するZカストディに新しい口座を作るから移転してくれと。そしてカストディXに,Xから1万株の受諾を受けていますと。カストディXのI’’’からも受諾を受けて,これはX’’’に預けていますと,全部証明書を出してやったならば,イギリスの裁判所はどうするのかな。場合によって,イギリスの裁判所はあなたが所有権者ですから,Crestに名義を移転しなさいと言ってくれるかもしれない。そういう判決をもらったら,あとはカストディX’’とX’がどう処理するかは,それは向こうが処理すべきであって,そういう判決をもらってくればいいわけですが,Aを守るためにへんてこりんなカストディX,特になんか政治的に動いてどうにもならなくなっちゃったものを取り崩してやるにはそういう訴えの仕方しかないと。そういう場合に,これは制度上認められないとかなんという必要なくて,日本ではAはこの株式の所有者ですというふうにやって,イギリスで訴訟すればいいじゃないというふうには思いますけどね。そして万が一イギリスの裁判所がカストディX’’’がある国はへんてこりんな国であって,これはおかしい,やはり所有権を認めるべきだということで移してくれたら,それはそれでいい。そしてそれをうまく受け取れるような制度にカストディX’’がなっているか,あるいはカストディX’がなっているかはそれぞれの制度の問題ですね。ちゃんとそういうふうになっていればうまくいっているし,そういうのもそういう異常な事態に対応できなかったら制度がおかしかったのかなというだけのことですね。 だから,ぶつかり合うこともあり得るんだと。場合によっては弁護士の場合はぶつかって訴訟を起こすこともあることかなというふうな感じがしますけどね。 ● ほかに何か,はい,どうぞ,○○委員。 ● 今の○○委員のお話も,サブカストディX’’’が動いてくれないということになりますと,振替制度そのものが機能不全に陥っているわけですので,そのときに振替制度を支えている,例えば間接占有なりの基礎理論でいくというのは分かるんですが,振替システムが機能しているときに同時並行的に基礎理論で占有とか,所有の理論を使って直接Aが直近の口座管理機関X以外の,その上位の管理機関に対して何らかの請求できるかというと,できないというふうにお考えでしょうか。私はできないと思うんですが,それが同時並行的にできるというんであれば,やはり少しおかしいなと思うんです。そのどっちなんでしょう,基礎理論としてはできるということなんでしょうか,それとも振替システム機能しているにもかかわらず,同時並行的に直接請求ができるという御意見なんでしょうか。この辺ちょっと,どちらなのかというのを。 ● ○○幹事ですか,あるいは○○幹事ですか,どちら,お二人のどちらでも。 ● 極めて,実務を余り意識していない,本当にそういう意味では理論的な議論だと思います。私もこの会議で御報告させていただいたことがございますけれども,ドイツも実務ではこのクロスボーダーの場合はむしろ契約構成でつながりを切るというのが実務でございまして,ドイツ国内のように非常に厳格な監督体制のもとでわりかし統一的な世界が構築されていると,そういうもとで共有権構成をとったときの,それまた,つまり余りあり得ないような事態を想定しての,しかし理論的にはそうなるだろうという議論だと思います。 ● ○○幹事何か。 ● ドイツを見ても通常,本当に平時に間接の山を飛び越して請求できるというふうなことまで想定されているというような議論ではなくて,最終的な権利者の権利の確保,実現というものは大事であろうというふうなことからくる議論だと思います。 ちなみに,ある学者はどういうことを言っているかというと,例えば顧客と仲介金融機関との寄託契約が解除されたんだけれども,何らかの理由で証券が返還されないような場合にはその最上位の金融機関に対しては,もはや顧客の証券を占有するそもそもの権限がないので,それは対抗できないんだから,その末端の顧客から直接証券の返還を求められたとすれば,それは返還に応じなければならないというふうな言い方をしていますので,そういう意味では常にということではなくて,いろいろな条件があって,最終顧客の権利を実現する必要があるような場合にはというふうな暗黙の前提で議論がなされているというふうに思います。 ● はい,どうぞ。 ● そうしますと,先ほど,○○幹事もちらっと言われた民法の基礎理論はともかくとしてという,むしろ基礎のWindowsではなく,MS-DOSのほうを言われているんではないかという感じが,それは別に○○幹事も否定されてませんでしたよね。 ● ほかにございませんか,今までの論点に関しまして。   では,お待たせして大変申しわけございませんでしたが,○○委員どうぞ。 ● すみません,お話を伺って二点ほどで,一つは先ほどお話しした話ですけど,実務の経験,まだ私は非常にこの分野は浅いんですが,一つ目は先ほどのお話の例のX’’’が倒産した場合で,AとX’’の間の関係はどうなるかというところの話で,○○委員が言われたことにも関係するかと思いますけど,利益相反といいますか,AとX’’の間の利益相反は十分起こり得るんじゃないかと,ケースによっては起こり得るんじゃないかという気がします。例えば自己口と顧客口両方持っている場合ですね,こうした場合に、X’’がこちらから振替の,この例ですとCrestですけども,こちらから振替を請求して100取り戻しましたと。じゃ,この配分はどうするんですかというところで,6,4で分けましたと。それに対してAは不満であると。なんで4しか戻って来ないんだと。おたくには100預けたじゃないかということで40しか戻らないというのはおかしいということで,どういうふうに配分をするんだということが起こり得るんじゃないかという気が私はいたします。それが一点。それは先ほどの議論のお話で,それからもう一つは全く違う観点のお話で,ちょっと私自身が今回初めてなもんですから,私のお話が切れた関係になっていると申しわけないんですけども,ケースとして,日本の投資家が例えばおりまして,日本の銀行なりどこかにカストディとして預けますと。このカストディアンが海外の,米国なら米国のサブカストディアンにまた委託します。そのカストディアンがまた米国内でのサブカストディアンに委託する。転々とします。最初の投資家が持っている債券を違う人に,BならBさんに売りますと,そういうことで移転が,通常であれば海外のCSDで起きるわけですけども,途中に,例えば米国でのカストディアンEとでもしましょうか,Eというのが何らかの不法行為,あるいは違反行為をやって,やっぱり流用しちゃいました。例えば顧客口なのに自己口のようにして売ってしまいました。意図的,あるいは過誤の場合もあり得ると思いますけども,売ってしまいました。そのときに,じゃ,ずっとその後流れていって,結局,Bさんは取得したんですけども,Bさんはこれをいわゆる善意の取得者ですね,善意の取得者であって,その過去途中で流用されたという経緯を知らない,そういう不法行為があったという経緯を知らないと。ここで犯罪が明らかになりましたと,犯罪が見つかりましたということで,あるいは不法行為が見つかりましたということで,じゃ,このときにこのBさんはこのものを戻さなければいけないのか,あるいは善意の第三者として保護されるのか,その辺が実務上十分我々としては起こり得ることだと思うんで,その辺をどのように考えられるか,ちょっとお考えをお伺いしたいと思っているんですけども。 ● 今の○○委員の御発言に対して御質問……,はい。 ● ちょっと,今○○委員がおっしゃられた事例がよく理解,皆さんできなかったんじゃないかと思いますので,この2-の2の例で,例えばさっきおっしゃったBというのがどういうふうに表れるというようなことでもう一回ちょっと整理して言っていただけると議論がしやすいと思うんですけれども。 ● この絵ではちょっとまだ足りないんですけども,AさんのほかにBさんというのがいて,Bさんは例えば英国にいるとしましょうか。途中で違法行為,あるいは違反,不法行為を働いたのがX’’だとしますか。X’’が,例えば,もともとはAさんが投資して持っているものなんですけども,顧客口であるはずのものを自己口のようにして流用して売りましたと。また,ここの絵では出て来ないんですけども,それはZさんという人が新たにAさんが売ったことによってZさんが手に入れましたと,Zさんは英国におります。Zさんは正当に買ったつもりなんですけども,途中でX’’の犯罪が明らかに,犯罪,あるいは違反が明らかになって,これは流用しているじゃないかということになりましたと。そのときにZさんというのは正当な所有者として保護されるのか,あるいはZさんは必ず戻さなければいけないのかということなんですけど。 ● そのZさんというのはどこに口座を持っているという設定にいたしますか。 ● Crestで振替記帳で同じように自分の保有が示されていると考えてよろしいかと思いますけど。 ● X’’の下に口座を持っているというわけではなくて,別系列--。 ● 別系列,この絵では出て来ないんです。 ● 例えばYの下に,今国内カストディYと書いてありますが,そこがZだとして,X’’がAの証券を処分できないにもかかわらず振り替えてしまって,Y系列でZさんの口座に証券が入ったと,Zは善意であるという場合ですよね。 ● そうですね。実務上,割とこういうことって起こり得るんですよね,我々経験していると。 ● これは実はこの条約でも一番議論された部分の一つですから,○○幹事に御説明いただければと思うんですが。 ● 例えば今のシチュエーション,ちょっともう少し単純化して,AがBに何かを売りますと,Aが使っているインターミディアリーXとしますね。Bが使っているインターミディアリーYとします。XYの上にZがいてと,もしかしたらその上ずっとつながっているかもしれませんけども,次にZなりXなりYなりの何かの瑕疵があったとしますですよね。そのときにBはしかしもう既に手に入れていて全部記帳は終わっているというときには,Bが善意取得できているかどうかというのは,BがYとの間で決めている準拠法によって決まることになります。これで決まりますよね。ところが,Aにしてみると,いや,善意取得されていないんだということをAとXの間の準拠法によってもしも決められてしまうと,一つあるはずの権利が二つになってしまいますよね。これはどうするというふうに考えるんだというのが,ずっと日本政府は言い続けたんですね。これは37ページ問題と言われていたんですね,37ページに書かれていましたので。これはどうしたらいいかというので,みんな触れないようにしていたんですけど,日本だけ延々と触れ続けまして,それはなぜかと言いますと,日本は物権的構成になっているので,一つしかないはずなのに二つあるのおかしいと。ところが,信託的構成の国々は実際,経済的には非常に困るわけですけれども,しかし,理論上は余り困らないと。なのであんまり真剣には議論しないんですけども,結果的にはそれについて条文の挿入するということはいろいろな形でできませんでしたが,エクスプラネタリーノートですとか,あるいはその時期の議論とかで,少なくともその場合にはBの方がもうB・Y間の準拠法によって善意取得が認められてあれば,それが勝つのだということがロジカルかどうなのか分かりませんけど,帰結であるということは議場で確認され,エクスプラネタリーノートに一応書かれてあるというふうに認識しておりますけど。 ですから,トータルに見たときには動的安全が確保されている。 ● そうすると,最終的な善意の取得者が保護されるということですね。 ● そういうことになりますね。 ● 分かりました。ありがとうございます。 ● ほかに御意見ございますでしょうか。はい,じゃ,○○委員。 ● 議案から外れるんですが,実務的に教えていただきたいんですが,○○委員の御設例でサブカストディX’’にあるX’口座ということを言われましたよね,その中でたまたまAのものであるのにどこかに移転,自分のものとして移転してしまったということなんですが,サブカストディX’’というのはXのものかどうかというのは認識できるんですか,これはたまたまAのものを移してしまったというだけなんでしょうね,おそらく。 ● そうですね,これは国によると思うんですけど,これはCrestの例ですけども,ずっと由来といいますか,過去のだれからだれに渡ってこうなっているという記録が残っている,残る形をとる場合も,国もあるだろうし,直前のデータしか持っていない,X’’はX’の情報しかないという場合もあると思います。国によると思います。 ● ありがとうございました。 ● ほかになにか。はい,どうぞ。 ● 先ほど,○○幹事がおっしゃった部分なんですが,もしXのところにAの口座の記帳が残っていたというふうにしますと,X・AとZさんが,Yのもとで権利を取得していたからといって,当然,Aの権利がXとの関係で消えてなくなるというふうなことには,私の理解と,あと,ちょっと不正確なんですが,エクスプラネタリーレポートを読んだ部分では,必ずしもそこまでも書いてないのかなと。口座の記帳は消えてしまえば別ですけれども,末端ですから残っていることはあり得るわけですよね,Xのレベルにおいて。X’,単体が悪いことをしているんであれば。 ● 記帳がもうなされているけれども,Aにも記帳がまだ残っているということ--。 ● そう,そういうことです。それはあり得るわけですよね,中間の部分だけが悪いことをしているんであれば。それはその悪い人の下の部分で調整がなされるということになるんだと思うんですけど。 ● 数字が基本的に動き続けて,Bのところにいってなければ,Bは自己がまだ記帳されていないものですので,もうそもそも権利が発生していないわけですし,この条約のもとですね。BのところへいってしまうとAがなくなっているという前提で一応は話しているんですけど,今のシチュエーションというのはAにも記載が残り,Bも記載が残りというシチュエーションのときにどうするのかということについて,すみません,ちょっと書いてあったかどうか私,エクスプラネタリーノートちょっと今日持ってこなかったんで。 ● よろしいですか。書いてあるかどうか私も,今探さないといけないんですけれども,ただ,そういう問いの立て方がちょっとミスリーディーングじゃないかと思うんですけれども。つまりその場合はAは権利を失っているかどうかが問題なわけですよね。Aがもし権利を失っていれば,100と書いてあっても,それは消されなければいけない。無権利者の記帳だということになるわけですから。Aが権利を失っているのか,失っていないのかというのはAとXの定めた準拠法でカバーされるんですけれども,それが,○○幹事で言うと,BとYが合意した準拠法と違って,かつ37ページ問題があって,かつそのBとYの準拠法のもとでBが勝つと,権利を取得するという帰結であえば,Aは無権利者になるということですね。そうすると100の記帳はなかったことに,消さなきゃいけないということになるし,そうでない場合には権利者ですから,100の記帳はいいんですけども,もし,これが37ページ問題という形が問題になっているんだとすると,今度はBの方の記帳がないと,ないというか権利がないために100と書いてあっても消さなければいけないということになるということで,厳密に言えば100を消すか,消さないかというのは債権債務関係かもしれませんけれども,この条約,37ページ問題との関係で問題が生じるというと,そういうことになると。 したがって,○○幹事のおっしゃったのは,分かりやすく言うと○○幹事のA,X,Zの例でいうと,AがXに100持っていましたと,それはそのままにしておいて,Zが悪いことをしたので,Xを通じてAの分の100を消して,Yのほうに記帳しちゃったと。Yに記帳され,Bに記帳されましたと。しかし,Xは悪いことしてないんで,Zが勝手にやっただけで,XのもとにはAの100の記帳があり,しかし,新たにYのもとに100が記帳された,上のほうでは整合性,悪いことをしたから減額と増額のマッチしているけれども,下のほうでは残ってしまったという例なんですね。 ですから,それは何が問題かが問題ですけれども,37ページ問題だったとすれば,Bが権利を取得していればAは権利を失いますんで,100残っていたとしてもだめですし,Aが権利を失わなければ,Aは以前として権利者ですので100は残るということです。ですから,それを37ページ問題ととらえるかどうかという問題が一つありますけれども,そういうのが条約のときの議論ではあったと。 ● 私も全く同じですが,エクスプラネタリーノートのときにAに残っていた場合というのまで書いてあったかどうかというところに確信が持てないということです。 ● 先ほど,○○委員から御質問を受けた件の,どこまで情報が伝わっているかというところですけども,しばしば実務上,例えばサブカストディアンのX’’’の立場になりますと,税務上の現地での手続等は,これをやらなきゃいけないわけですから,そのときに一番最初の投資家であるAがどういう人であるかというところが問題になりますんで,途中のX’,X’’の情報はないかもしれません。そこはあるかどうかちょっと分かりませんけれど,少なくともでも税法上の適用をどうするかというところで,租税条約下の免税措置をとるとか,そうしたことからAの最終投資家といいますか,AのネームはほとんどX’’’は知っていると思います。その情報必要になりますんで。 ● Aのことを知っているかどうかということと,その口座が本来はどこに帰属すべきであるかという,これは連動しているというご趣旨でしょうか。 ● これはですね,ちょっと私の今の言い方は正確ではないんですが,免税措置を何らかの税的な優遇措置をとるためには,Aがこういう人であるということを証明しなければいけないという,ですから,その場合は分かっています。ところが,Aが普通に課税されて何も構わない,源泉徴収されて構わないという人であれば,知らなくてもいいわけですが,その情報はX’’’は知らなくていいわけです。ですから,部分的には知っているというのが一番正しい言い方かもしれません。 ● 例えば自分が来て,記帳されているとします。自分の下にぶら下がっていて,どうも100人くらいぶら下がっているらしいというときに,その免税措置か何かを求めたい人は何らかの形でX’’か何かにインフォームしてくるので,その結果,自分のもとにいて,その場合には自分は30持っているとか,20持っているとかというところの範囲では分かり得るという御趣旨ですね。 ● そうですね,X’’’が株式なり債券なり,債券というのはフィックスインカムという意味ですけども,ものを預ってて,これを普通でしたら全部税金については源泉徴収されますというケースがあるんですが,ただし,租税条約に基づいて個々の適応税率は20パーセントじゃなくて,例えば5パーセントですというような取り決めがあると,ただし,その5パーセントという取り決められる人はどういう人ですということを証明しなきゃいけない。要するに自分のアイデンテファイをしなきゃいけない。ですから,AはX’’’に対してアイテフィケーションを送ってこなきゃいけないということです。Aがそうであればそうなんですけど,例えばX’さんというのはそうじゃなくて,免税適応はないという人であればX’は何も言ってきませんから,少なくてもAの情報はあるけど,X’の情報はないということは起こり得ると思います。 ● もう一つですが,情報は,今のですとX’’’ですけれども,に直接行くんですか,それとも下から順に送られてくると。 ● ケースバイケースだと思います。 ● 今,○○委員がおっしゃったことがよく分からなかったんですけど,ケースバイケースだとおっしゃられたんですけども,X’’’の口座というのは普通は総数しか書いてないわけですよね。ある証券がX’’の名義で幾らあるかしか書いてなくて,そのX’’の下にだれがどのようにぶら下がっているかということはX’’’には分からないわけですよね。ですから,Aから直接何らかのアプリケーションがあったとしても,それが本当なのかどうかというのはX’’’はX’’を通じてしか分からないんじゃないんですか。だから,Aから直接何かを受けるということはシステム的にあり得ないんじゃないかなと思うんですけど。 ● おっしゃるとおりだと思います。ちょっとそれ確認します。ただ,既にX’’からX’’’に事前にもう明細情報をもらっているがゆえに直接Aにアプリケーションを求めるということはあり得ると思います。 ● ○○委員何かございますか。 ● 例えば税,配当やら利金にかかる税の話だということであるとすると,ある一時点,しかもおそらくは過去の一時点の投資家情報ということに過ぎないのであって,その後の変動,例えば今現在の所有者コード全体が見られるということではないと思いますので,今,ここで議論になっている振替によってどういう権利が移るか,だれの権利が移ったのかということの議論とはちょっと次元が違うような気もします。そういうふうに考えましたが。 ● おっしゃるとおり株の場合は期間が問題になりますので,どこからどこまでの期間保有していたかということが問題になりますし,株式でしたら,3月末とか,そのときに保有していたかどうかということが問題になるので,税金の払い方についての情報というのはまた違うと思います。ただ,○○委員から先ほど御質問あったX’’’がAの情報を持っているかというところに関しては先ほど申し上げたとおりです。 ● ○○委員,よろしゅうございますでしょうか。 ● 厳密に言えばいろいろあると思うんですが,私ただ実務が知りたかっただけですので,はい,これで結構です。 ● ほかに,今までの点に関しまして御議論ございますか。 ● ちょっと話を○○幹事が提起された問題に戻したいと思うんですけれども,これは確認なんですけども,従前,37ページ問題として議論されてきたものというのは,図を簡単にしますけれども,末端の投資家としてAとBがいて,Aの上にXがいて,その上にCSDがあって,別にぶら下がっているYがいて,Yの下にBがぶら下がっているというごく簡単にするとそういう図になって,AからBへの振替が行われて,順次記帳がされて,Aは減額記帳がされて,Bは増額記帳がされたと。ところが,このAからBへの振替の実体関係に何らかの問題があったという場合に,Bが権利を取得しているのか,それともAが,記帳がなくなっているんだけどもAが権利をなお保持しているのかというのをバラバラに考えるのか,それとも連動させて考えるのかという問題について,それは連動して考えるべきだということで,その場合は増額記帳がされているBとその直近上位の口座管理機関であるYとの間で決めた準拠法によってBが権利を取得するかどうかが決まると,そこはこの条約上明らかなんですけども,そうなってBが権利を取得したとなれば,AからBへの振替,だから一個の証券が移り変わったものなんだから,AとXとの直近上位の口座管理機関であるXとの間の準拠法で定まる実質法によってどうなろうが,Bが権利を取得した以上は,その反射的な効果としてAの権利はなくなったというふうに評価されるんだという,その確認がされたということでしたよね。今,○○幹事がうなずいていただきましたけど。 それに対して○○幹事が今提起された問題というのはBのほうに増額記帳がされたんだけども,Aのほうは減額記帳がされなかったという例ですので,そもそも37ページ問題とシチュエーションが違うといいますか,一個のものがAからBへ移りかわったという場合じゃないんじゃないかなという感じがいたします。この全部が日本法だとすると,場合によっては超過記録の問題であって,本来Aの方を消してBの方のを増やさなきゃいけないのを,Bを増やしたにもかかわらずAを減らさなかったというふうな単純な例だと考えますと,全体に超過記録が生じていることになるので,その超過記録の処理をどうするかという問題になるのではなかろうかと,その準拠法を別にして,実質法レベルだけで物事を考えればですね。 日本法ならどうなるかというと,BはYにぶら下がってますんで,Yの方に超過記録が生じてなければBは増額記録を受けたとおりの権利を取得すると。それに対して,Aの方は,これはAは消してなくてXがどうなっているかという問題がありますけども,Xが減っていて,Xの口座のCSDが開設している口座におけるXの証券の数が減っているのにもかかわらずAが減ってなければ,そこに超過記録が生じてますんで,そのXにぶら下がっているほかの顧客と案分して超過記録分の権利が減るという扱いに日本法ではなるということで,そこがどうなるかはそのAとX,直近上位の口座管理機関のXとの間で定めた準拠法によって定まるということにこの条約ではなるのかなと思ったんですけども,いかがでしょうか。 ● 一言よろしいですか。 ● はい,どうぞ。 ● 超過記録になるのか,37ページ問題になるかが何法で決まるかということだと思うんですが,そこは37ページ問題になればというふうに言ってしまったんですけれども,したがってという言い方かどうか分かんないですけど,○○幹事がおっしゃるように減額された場合を想定してエグザンプルというか,議論をしていたことは,これも○○幹事もおっしゃったことですから確かだと思います。ですから,問題はAX・BYの例ですと,BY側の準拠法は例えば日本法でそういう問題は超過記録として扱いますと。A側のほうの準拠法がそうではありませんという場合にどうなるんだと,逆にあり得ると思いますね。AXの方は超過記録として扱いますと,すなわちAは権利を完全に失っているわけではありませんと。しかし,B側のほうの準拠法は超過記録ではなくて,善意取得の問題として扱っていますという場合にどうなるのかということになりますと,37ページ問題そのものではないんですけれども,そういう問題があるということだとは思いますけれども,どっちで決めるか。 ● この話って,もう最初からある話で,今さらということに思いますけども,私も当初,AからBへという話を確かに伺ったんですが,実務上はAからBに売るなんてことは分からないという御指摘があり,だれに売るかというのは追及できないと。先ほど,○○委員がおっしゃった悪いやつが途中にいるというケースで,例えばXが悪いやつで,Aからの指示は受けていないのに勝手に売ってしまったという場合が問題だと思いますが,そうするとXにとってはだれの口座のは消すかは任意なわけですよね。たまたまAさんのを消したと。だけど,A1でもよかったし,A2でもよかったはずなのにA1を消しましたと。そうすると,Bが取得するのは結構ですが,A1は失いましたというのは当然の結果かというと,私はそうは思わないんですが,Xの下にぶら下がっている多くの同じ立場の人たちの案分で損をしているというか,損害を受けていると考えるのが妥当なんじゃないかと思うんですが,ですから,たまたま消されたから当然というふうに考えるのが合理的とは思えないんですが。 ● たまたま消されたからというふうに申し上げていないんで,37ページ問題として議論されていたのはいわば相対取引だと思うんですね。というのはこの条約ってもともとは担保が中心でしたから,担保というのは相対なんで。今,○○委員がおっしゃったのは証券市場での売買のような場合で,それは分けて考えなきゃいけないと思うんですけども,37ページ問題として議論されてきたのはAB間の相対のトランザクションがあって,そのトランザクションに基づいてAからBまでの一連の口座の振替手続が行われたと,Aは減額記録がされ,Aの上のXも減額記録がされ,Yの方に増額記録がされてBに増額記録がされたという状況のもとで,それはAからBへのトランザクションが行われたわけなんですけども,そのトランザクションに何らか,意思表示の瑕疵とか何か問題があったとして,あったかどうかが問題になるわけですけども,その場合にBの方の準拠法,YとBとの間の準拠法であれば,Bは権利を取得することになり,XとAとの間の準拠法であればAは権利を失わないということになっていた場合にどうなるのかという,そういう相対の問題が37ページ問題として議論されてきたんだと思うんです。   ですから,それが相対でない市場取引でAからBへ権利が移転したんだということが言えない場合というのはもちろんあると思うんですけども,そういう場合は37ページの問題じゃなくて,それは,Bが権利を取得したかどうかはBとYとの準拠法で決まり,Aが権利を,口座の記帳が減額されたことによってその分権利を失ったのかどうかはAとXとの間の準拠法によって決まるという,普通の,特殊じゃないルールが適応されるだけなのではないかと思います。   さっき,○○委員のお話を伺ってて,私の言い方が悪かったなと思ったのは,普通はですからAからBへの相対のトランザクションが行われた場合はAが消されてBが増額記録されるんです。普通は消えて増えたという形の場合が37ページ問題と申し上げたんですが,○○委員のお話を伺ってて,相対なんだけど何らかの事情でAの方が消し忘れられたということはあり得るかもしれないんで,その場合はやっぱり消し忘れといってもなお37ページ問題ということではあるのかなと,そういうことを○○委員がおっしゃったのかなと思ったんですけれども,だから,相対じゃないときはその37ページ問題じゃなくて,それぞれの準拠法に基づいてそれぞれ権利を取得しているか,取得していないかが決まって,場合によったらそれによって超過記録がどこかで生じているという整理になって,その場合にどういうふうに,超過記録の結果として権利がどういうふうになるのかということもまたそれぞれの準拠法で決まっていくという,そういうことになるんじゃないかなと思いますけれども。 ● まず,○○委員。 ● 大体おっしゃていただいたことだと思うんですが,つまり私が申し上げたかったのはおっしゃっていただいた例で言いますと,AX側の準拠法も,BY側の準拠法も仮に日本法だとしますと,これは超過記録の問題として処理されると思うんですね。Aの100が残っててBにちゃんと記帳された場合ですけれども,しかし,もしこれが両方ドイツ法だったら例えばこうなるんだと,ドイツ法は超過記録扱いはしないで善意取得扱い,すなわちインフレはないと,だからBが取得したらだれかが失うんだと,その失うのは,失うのがAかどうかと○○委員がおっしゃった問題がある,相対を想定してますので,失うのはAだとすれば,幾ら記帳があっても権利は失う。Bが勝つといえば,反射的にAは権利を失うはずですよね。ですから,一方がドイツ法で,一方が日本法だったらどうなるんだと言われると,37ページ問題的ですねと,私の理解は。やはりB側の方の法律に従って,まずBがどうなるのかと,例えばこちらは超過記録であり,こちらは,逆のほうがいいんですかね,こちらが超過記録で,こちらが例えば善意取得だと,こちらはまだ失ってないわけですよね,少なくとも勝手にやられたわけですから。超過記録の方は取得しているけれども,その結果,超過記録の処理を認めてもいいんですかね,逆になるとBが取得したということはだれかが失っているということなんで,こちらが超過記録の構成でAは失ってないと言っても,やはりその処理とは矛盾するのかどうかという,とにかくそういう作業で物事を考えることになるのではないでしょうかということです。大した話じゃ--。 ● 確認ですが,こういうことが生ずる場合にはとおっしゃられたのは,やっぱり相対の取引を前提にしてということですよね。 ● 相対のを前提としていますけど,もし,そこで○○委員のあれにコメントしてよければ,それは結局,だれが権利を失うかという問題ですよね。ですから,たまたまA1,2,3,4とあって,A1の口座は消されましたと,それでBが取得しましたという場合に,我々が考えていたのはA1とBが相対で,A1がその証券を譲渡担保とする,担保に入れた場合を想定しているわけですけれども,応用編として言えば,確かに失うのはだれですかという問題はA側の準拠法で決まりますという話はあってもいいとは思いますよ。ただ,A側が,A側というか,A側の方がだれかが100なら100失いますという結論が何法から出てくるのかというのが37ページ問題ですと,実はA側のほうからは出てこないんですね。だれかが100を失いますよという話,だれかが100を失いますと決まったら,次はその人間のことでだれがそれに当たるんですかということを議論できるんですけれど,だれかが100失いますかというのは37ページ問題があって初めて,A側の準拠法からは出てこないけど,B側の準拠法と矛盾するがゆえにBが100を取得する反射的効果として,だれかが100を失わせなきゃいけないと,初めて出てくるんで,ちょっとそこだけの問題があるというふうに思います。あんまりお答えしているというより,話を複雑にしているのかもしれない。 ● 必ずしも十分理解できてないかもしれないので確認させてもらいたいんですけども,反射的に失うというためには市場取引ではそういうことはないというふうに考えてよろしいと,僕はそう思っていたんですけども,それでよろしいんでしょうか。つまり相対だからこそ,一方が権利を取得すれば他方は権利を失う関係が起きるんであって,市場取引ですと,片方が権利を失ってないにもかかわらず,もう片方に記帳がされちゃうという,○○委員がおっしゃられた口座管理機関の不正行為なんかの場合ですね,そういうことが起きると思いますんで,それと37ページ問題とは全然別の問題だと思っていたんですけれども,そういう理解でよろしいのか,それとも○○委員がお考えのことは違うのかというのがお聞きしててもよく分からなかったんですけど。 ● 1000件の記帳があって,ここ,一番重要なんですけども,1000人分に減額記帳があって1000人分増額記帳があって,どれがどれかは市場取引だから分かりませんと。1000増額記帳があったものについて,準拠法上で1000人が権利を取得していますということになったとしますね。しかし,実は1000件が記帳があったうちの一つが間違いでしたと。999は正しい減額記帳があったんですけれども,こちらが減額記帳側の準拠法によるとですね,一つだけは間違いだとします。これは37ページ問題かというのが,多分御質問だと思うんですけど,私はこれは37ページ問題でいいと思っているんですけれども,グローバルマッチングと私は言っているんで,個別のマッチングじゃなくて。ただ,意見は分かれるところだとは思いますけど。 ● でも,今のグローバルマッチングの場合ですと,1違っていたと今例を挙げていただいたんですけども,違っていた1に対応する増額の1000のうちの1はどれなのかというのは決められないんじゃないですか。決められないと,37ページ問題に持っていきようがないんじゃないでしょうか。 ● いや,決められませんけれども,1000のどれかが,1000本あることは言えるわけです。どれが対応しているか言えないんです。だから,おっしゃるように今の例でいいますと,1000本取引があることはあって,そのどれかだということは言えるんですけど,どれが,だれとだれのがだれのものかということは言えないんですね。その時点でおっしゃるように,もう37ページ問題はないんだというのも一つの立場だとは思います。ただ,少なくとも私の個人的な見解では37ページ問題を議論しているときには,この問題は一応は多分,多少議論した思うんですけれども,立証の問題というか,つまり私の立場で言えば1000あるということが言えて,一個瑕疵があるということであれば,どれかなわけですから,さっきの言葉で言いますと,だれかが権利を失う。だれが凹むかという問題はA側のほうの準拠法で決まるということでいいのではないかとは思っていましたけどね。ただ,明示的には議論していなかったかもしれない。 ● 今の関連ですか,じゃ,○○幹事のほうが先に。 ● 今の37ページ問題の射程がどこまで及ぶのかという話だと思うんですけれども,確かにさっき○○委員からおっしゃられたように,基本的にはさっきから,相対であるということをまず前提に考えていて,それから記帳はきちっと流れているということ,こちらで減っているというのを基本に考えた。ここについてはどうするかと。これある種の,私なんかロジカルな答えである種の適応問題だと思うんですけれども,今のこの準拠法の選択ルールを使ったために。そういう不可避的に起こるような現象についてはどうやって解決するかというときにB側の準拠法によるということにしましょうと,その帰結にA側もロジカルに合わせましょうという処理をしたということで,例えばその処理というのはすべての場合に当てはまるのかというと,必ずしもそうではなくて,そういう一つのパターンとしては相対ではなくて,市場などで大量にやられた場合に果たしてどうなるのかというと,どこまで射程が及ぶと言えるのかというのがちょっと分からない部分があるわけですよね。まさにだれだれの名前なのかということですね。それでだれの凹んだところに当てはめるか。一つの考え方としては今まさにその集団で減額記帳された,こちらに減額をされている場合にはその減額の人であなたに泣いてもらうという処理もあり得るわけですが,論理的にはですね。他方で○○委員がおっしゃられたような,それはもう全員で公平に分担してもらうというのもまたあり得るわけですけど,それについてまで議論したのは,実はそこまで議論,多分していないと思います。 それからさらに応用問題で,市場での決済で,なおかつ向こうの方の記帳も全然減っていないとするとだれかが変なことをやったと。そうすると,多分37ページが一番初めに想定したのとは随分違って,変なインターミディアリーが非常に背信的なことをやったために全体の計算式が混乱しているという状況なので,そのシチュエーションでこうすると,本当はだれかというのがまず特定することができないですね,A側の方の人の。そのときにまで37ページ問題が本当に使えるかどうかというのは,一つはBを勝たせるという,あるいはBの準拠法によるというところは明らかなんだから,それのところは37ページ問題の根幹なので,そこは生かそうと。その上でどうするかというふうに,37ページ問題をどこまで外円を広げていくかということはあり得て,○○委員は例えばそれは外円を広げていくというのも一つの筋ではないかというふうにおっしゃっているんだと思いますけれども,ただ,そこは多分議場での議論がみんな固まっていたということは全然ないとは思います。だから,そこはまだ,ただ,そこのところを○○幹事がおっしゃられたとすると,まさにまだ開かれた問題ですし,また,○○委員がまさにその一番最後の究極的なシチュエーションみたいなものがどうするのかと言われると,先ほど,私は不用意にも37ページ問題の例で説明しましたけれども,実はじゃ,それで答えていたかというと,そうでもなかったかなというふうに思っています。 ● 相対というのは売買ではない例だと私は理解してて,要するにB側の準拠法にAが巻き込まれるのは担保等のために差し入れたとか,それなりの理由があって,しかもそれは客観的に見える状況であって初めて言えることで,実は相対だったんですということで区別されたんでは,見た目はどっちかが減って,どっちかが増えているように見えるだけですよね。そのXが悪いやつか,悪くであったかどっちかは分からないわけですから,それなのに37ページ問題なるのは相対かどうかですという区別なんていう,そういう基準を持ち込まれると,非常に分かりにくいので,それはもうバラバラに考えるしかないんですというのが,本来あるべきことで,特につながっている場合だけ,それが表れているときだけ連動するという特別な扱いがあり得るんではないかと思うんですが,ですから,状況をまとめたときに,通常売買のように聞こえたもんですから,そういう例では通常ないんじゃないかなと,37ページのような扱い方はないんではないかということを申し上げたんですが。 ● 市場のものは含まれないという,ここは○○委員と私の意見の違うところなんですけども,私は市場取引というのは相対じゃありませんので,証券会社が自己の計算で取引するわけで,どれとどれがマッチングしているかというのは後で適当に減額記帳や増額記帳がされるだけですから,ネッティングした後にですね。だから,それはこっちが増えたからこっちが減ったという関係には立たないので,そういうものについては37ページ問題は生じないというふうに先ほど申し上げたんですけども,ただ,○○委員がおっしゃる相対という概念が分かりにくいというのが分からなくて,相対というのは実務上は非常にはっきりしていまして,投資家同士で直接取引をする,市場を通さないで。ですから,それは売買のときもあるし,担保の場合もあるわけです。市場に上場されているものでも,市場を通さないで直接市場外で取引することができますんで,売買もですね,その場合はAからBへの売買が行われて,それに基づいてAの指図によって振替が行われるわけです。その場合にAの方が消えなくて,Bだけが残る,Bは増やされるということは普通はないはずなんですけども,万が一,Aを単に消し忘れたというんであれば,操作でやられている問題だと思いますけども,ですから,相対という概念が分かりにくいと言われるのがよく分からなかったんですけど。 ● その仕組みを知らないもんですから。そうするとAはBに私の1000を売りたいということを自分のインターミディアリーというか,直接の証券会社であるXに言えば,市場には絶対出ないで,必ず向こうに行くという取引があるんですね。 ● それはあります。 ● 分かりました。 ● ○○幹事何か。 ● 一つは,私は○○委員と同じような印象を抱いていまして,決済の方法によって,あるいはどういう,どれくらい大きいか,どれくらいのものが市場かもよく分からないんですが,例えば非常にマイナーな株式であれば,決済は市場なるものを通じてなされなかったかもしれませんけれども,売り手,買い手をある程度特定できるようなケースあるかもしれません。その決済の方法によって適用されるべき実体的なルールは非常に大きく異なる,証明できないとか,そういう話じゃなしに。というのはかなり,なぜそういうことになるのかなというのはちょっとよく分からないのと,あとは37ページ問題ということは確かに検討の過程ではあったと思うんですけれども,エクスプラネタリーレポートが出ていて,エクスプラネタリーレポートの中で37ページプロブレムというふうな表現が使われていたかどうかはちょっと定かじゃないのと,あとエクスプラネタリーレポートをどなたがどういうふうな理解で,その当該部分をお書きになられたかは分からないんですけれども,おそらくエクスプラネタリーレポートが出た以上は,ほかの国ではエクスプラネタリーレポートをベースにそこに書いてあるケースを前提に議論が積み重なっていくと思うんですね。そうしたところ,私の読み方が,短時間で読んだので定かではありませんが,必ずしもエクスプラネタリーレポートの84ページとか,85ページ以降にそういうような問題が論述されているように思うのですけれども,必ずしもダブルインタレストですとか,ダブルライアビリティを否定したような書きぶりにはなってないように見えると。諸外国の文献を見ても,ハーグ条約にそういう問題点があるから,もう少し別な考え方をとったほうがいいんじゃないかというふうな文献もあるように見えますので,おそらく議論をより緻密にするためにはエクスプラネタリーレポートを一つ前提に議論をしていかないと,過去,おそらく議場でどういう理解があったとかいうのはなかなか使いにくい議論なのかなというふうな気はします。 少なくとも,私ちょっと見た限りではエクスプラネタリーレポートは必ずしもBさんの方に記帳がなされたから,例えばBさんと上の準拠法によってBさんの方に記帳がなされたから当然にAさんの方が消えるというふうな言い方はしていないように思います。むしろ,Aの方が,例えば一たん間違った記帳がなされて,それは例えば取引に瑕疵があったから,回復されたとしても,それにもかかわらず動いた先が権利を取得するかは,この動いた先の口座に関する準拠法で決めるというふうな書き方をしていると思うんですけれども,ちょっとそういうこともあって,余りこう,宙に浮いたというか,議論を余りこう続けても生産的ではないのかなという,私がこんなことを申し上げるのはあれかもしれません。最近,エクスプラネタリーレポートを読む機会があったので,十分理解できてない部分はあるかもしれませんので,できれば皆さんもエクスプラネタリーノートをベースに一度検討してみる機会があってもいいのかなということで,すみません,ちょっと差し出がましいことで申しわけありません。 ● ○○委員,何か今の点に関しましてコメントがおありでしょうか。 ● じゃ,一言だけ。○○幹事が基本的におっしゃったように私も理解していますけれども,理解していますけれどもというか,リポートでいいますと4-43から4-51,一番広くとると,ページ数でいいますと82ページから87ページになるんですけれども,確かに,私も本当に覚えていないようなことで申しわけないんですけど,本会議というか,会議の場では,Aを100減額して,Bが100増えてという例で議論していたとは思うんですね。そういう意味では,いわゆる○○幹事の言葉で言う相対の取引というのを想定というか,例にとって37ページ問題というのを議論,それはもう,それが一番分かりやすいからで,B側の準拠法とA側の準拠法がぶつかったらどうなるんですかと,両方勝つでは困るじゃないですかという話としてしていたわけです。 しかし,一方が,私のさっきの例で言いますと,一方が1000になって,他方が1000になったって,1000は1000なんですから,1000取引があるというふうに見る限りにおいては,違った見方をすれば別ですけれども,37ページ問題はあるわけでして,そこはどういう書き方しているかといいますと,私もちょっとあわてて見ますと,今,○○幹事がおっしゃったようなことで,要はB側だという,例えばパラグラフ44-47というのはA側の方のどれがAのだということには関係なく,要するにB側の方が取得したかどうかだけを見て,それがプリベールするんだという書き方ですので,申しわけないんですけれども,もうちょっと相対のときよりは,○○幹事のおっしゃった意味での相対のシチュエーションよりはより広く,仮に37ページ問題というとすればですけれども,の処理は行われるということで書いてあるということではないかと思いますけれども,私ももう一度よく読んでみたいと思います。 ● はい,○○委員どうぞ。 ● 好奇心でちょっとお伺いしたいんですが,今ほどの議論で,超過記帳の結果になるというお話も委員からありましたけども,ちょうど逆で,Aの準拠法では下は処分されていると,Bの準拠法では取得されてないという結果もあり得ると。そうすると,例えば100が浮いてしまうということになるんだろうと思うんですが,そういうのもあり得て,その場合に例えば日本の保振法は超過記帳のところが書いてあるんだろうと思うんですが,そういうときはどういうふうになるんでしょうかしら。 ● 過大記帳のほうは,過大になった場合に発行者に発行したよりも多くの責任を負わせるわけには絶対にいかないので,それを口座を持っている投資家たちで負担しなきゃいけないわけですけども,それをどういう範囲で負担させるのかというのは保振法では全投資家で平等に負担するというルールだったのを,社振法にするときに過大記帳が生じた口座管理機関の傘下に入っている投資家だけが責任を負うということにしたために非常に複雑な規定を設けることになった,これが国際的なスタンダードだというふうに理解はしているんですけれども,逆の場合というのは,それ社振法にも保振法にも何の規定もありませんし,そういうことが生ずればだれかが権利があるはずなんで,これは国際的には準拠法が違いますので,そういうことが,今○○委員が言われたようなことが起こり得るかもしれませんけども,日本国内であればそういうことは起きようがないんで,どっちかが売らなきゃどっちかはあるはずですから,国外を前提に規定は置いてますので,ですから,そこについては何の手当もしていないということでございます。 ● それじゃ,今までの議論について何か御質問,あるいは御意見,今この場で言っておきたいという御意見がございましたら伺いたいと思います。そうでなければ,一応時間がまいりましたので,今日はここまでにしたいと思いますが,何かございませんでしょうか,よろしゅうございますか。それでは,今日の議論はまた次回に続けるということにいたしまして,今日の審議はここまでにしたいと思います。   では,次の予定につきまして事務局のほうからお話をお伺いしたいと思います。 ● 次回以降もアメリカやスイス,ECの動向も見ながら会議を開催していきたいと思います。次回は,先ほど○○幹事からは非常に重要な御指摘がございましたので,私どもも条約ができた直後にこのエクスプラネタリーレポートにコメントするかどうかというときにはかなり徹底して読んだんですけれども,そのときは37ページ問題のことは書かれていたという記憶ではあるんですが,最終的に修正が加えられたものについて,もう大分長いこと読んでいないもんですから,ちょっとどういうふうに書かれているのかということを今ただちに申し上げられないような状況ですので,エクスプラネタリーレポートの最終的な確定版ですね,確定版の4-43から4-51までを,私どもももう一回しっかり読み直してみたいと思いますし,委員,幹事の皆さん方にももう一回しっかり読んでいただいて,それで,○○幹事のお話だと37ページ問題という議論設定の仕方自体ももうやめたほうがいいというお話だと思いますので,そうなのかどうかということを含めて,次回にまずそこを議論していただいて,それから今やってきていました2-2の事例についてさらに議論すべきことがあればしていただいて,次に移るというような形で議論を進めさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 次回でございますが,ヨーロッパとかの動向を見なければいけないということもございますので,次回,ちょっと先ですけれども,7月24日火曜日,午後1時半から,ここと違いまして,いつもやっています法務省の20階の第1会議室で会議を開催させていただきたいと思います。もう一回申します。7月24日火曜日の午後1時半から,法務省の20階の第1会議室でお願いしたいと思います。 ● どうも,本当に今日はまた長時間にわたりまして,熱心な御議論をいただき,ありがとうございました。 これにて終了いたします。                                        ―了―