法制審議会保険法部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  平成19年3月28日(水) 自 午後1時31分                       至 午後5時46分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題 保険法の現代化に関する検討事項について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第7回会議を開催させていただきます。   まず最初に,配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 配布資料のうち事前に送付いたしました資料は,保険法部会資料8「保険法の現代化に関する検討事項(7)」と,その別紙一枚紙の2点でございます。   それから,本日は席上で6点資料を配布させていただいております。前々回,第5回会議の議事録,それから,「他人を被保険者とする人保険契約における保険契約締結時の被保険者の同意に関する規律」と題する一枚紙のペーパー,それから,「法制審議会第150回会議議事録(抜粋)」と題するペーパー,以上3点はいずれも事務当局が作成したものでございます。それから,損保業界の委員の方から御準備いただいた資料としまして,「『傷害による他人の死亡に関する保険』の主な契約形態」と題するペーパー,それから,普通傷害保険・家族傷害保険のパンフレット,それから,海外旅行保険申込書記入例と題する一枚紙のペーパー,以上3点がございます。   配布資料につきましては以上でございます。 ● よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず前回最後に御審議いただきました保険法部会資料7「保険法の現代化に関する検討事項(6)」の4頁に,「8 年金保険契約」というのがありまして,これについて御議論いただいたところですが,会場の都合などもございまして議論が途中で終わったような感じでございましたが,この年金保険に関しましてなお何か御意見がございましたらここで最初にいただいておきたいと思いますが,いかがでしょうか。   いろいろな問題は前回も御指摘があったと思うので,そこはなお詰めていただくことにして,とりあえず今日のところはこの点について御意見なしということでよろしいでしょうか。 それでは,それはそういうことにして先へ進ませていただきます。   同じく部会資料7の5頁,「9 団体生命保険契約」についてでございます。これについて御審議いただきますが,その後の6頁に「10 その他」という箇所もございますので,併せてまず事務当局から御説明をお願いすることにいたします。 ● それでは,御説明いたします。資料7の5頁の9では,いわゆる団体生命保険契約について取り上げております。   一般に団体生命保険契約は,個々の被保険者ごとに危険選択を行うのではなく,人の集団としての団体性に着目し,当該団体として危険選択を行う点に特徴があるといわれております。例えば,特定の会社の従業員は,勤務環境や会社による健康管理体制等に共通性があり,死亡率等について統計上の一定傾向があることから,団体としての危険選択が可能であるといわれております。そのほかに,団体生命保険契約の特徴としては,多数の被保険者を一つの契約として管理することになるため,事務処理のコストを削減することができ,保険料を比較的低額に抑えることができるという点などが挙げられております。   現行商法には,団体生命保険契約に関する特別の規律はなく,団体生命保険契約にも原則として生命保険契約一般の規律が及ぶと解されていますが,本文では今御説明したような団体生命保険契約の特殊性や以下に述べるような実務上の問題点,立法論等にかんがみ,団体生命保険契約に関する特別の規律を設けることの必要性について問題提起しております。   団体生命保険契約に関する規律について検討すべき問題点として,(補足)の(ⅰ)では,保険金受取人の指定又は変更に関する規律の在り方を掲げております。   かつては,全員加入型の団体定期保険契約について,事業主が自らを保険金受取人とし,従業員等を被保険者として社内規程における退職金や弔慰金等の額とかけ離れた高額の保険金額の契約を締結するという事例があり,そのため,被保険者の死亡後に被保険者の遺族と事業主や保険会社との間で保険金の引渡しをめぐって紛争になることがございました。最高裁の平成18年4月11日判決は,事例判決ではございますが,保険金の全部又は相当部分を遺族に支払う旨の明示又は黙示の合意が成立していたとする遺族側の主張を認めませんでした。   このような保険金の引渡しをめぐる紛争を一つの契機として,平成8年には総合福祉団体定期保険契約という新たな団体定期保険契約が導入されました。この保険契約は,被保険者の遺族の生活保障等を目的とする主契約に,事業主の損失補償を目的とするヒューマンバリュー特約を附帯させることができる仕組みになっております。また,主契約部分の保険金額は,社内規程に定める死亡退職金等の額を上限とすることや,特約部分の保険金額は主契約の保険金額を上限とし,かつ,2000万円を上限とすることなどが金融庁の監督指針によって定められており,これらの規制が遵守されている限り,かつてのような紛争が将来的に生じることは考えにくいとの指摘もございます。   他方で,総合福祉団体定期保険契約のもとでも,ヒューマンバリュー特約により事業主が従業員の死亡による損失補償を受けることができる点については,労働法の観点から事業主の労働安全衛生への安易な姿勢を生み,過労死を助長するなどとして,事業主による保険金の受取りを禁止すべきであるとの指摘があるほか,主契約についても,社内規程に基づく死亡退職金等の支払の裏付けがある場合でも,遺族が保険金受取人に指定されている場合と比べ,保険金相当額の遺族への支給が保証されているわけではないなどとして,保険金受取人を従業員の遺族に限定すべきであるとの意見や,保険金受取人の指定変更権を保険契約者ではなく,被保険者に与えるなどの方法により,政策的に従業員のための保険に制限すべきであるとの意見等もございます。   そこで,このようなさまざまな意見があることを踏まえ,全員加入型又は任意加入型の団体定期保険契約における死亡保険金の受取人に関し,契約法において何か特別な規律を設ける必要があるか等について御意見をいただきたいと思います。   次に,(ⅱ)では,被保険者の同意に関する規律の在り方を掲げております。   団体生命保険契約においては,保険契約者と被保険者が異なるのが一般的であることから,第5回会議で御議論いただいた他人の死亡の生命保険契約における被保険者の同意に関する規律が及ぶため,一般に被保険者の同意がない場合には,当該被保険者との関係で保険契約は無効であると解されております。任意加入型の団体定期保険契約については,被保険者が加入申込書を記入するプロセスで被保険者の同意が得られることになりますが,全員加入型の団体定期保険契約については,被保険者が多数に上り,また,従業員の入退社による被保険者の変動が常にあるため,個々の被保険者の同意を得ることが困難であるといわれることがございます。   そのため,実務上は,加入従業員全員に対して契約内容の通知がされ,不同意の申出をした従業員についてのみ保険契約の対象から除外されるという,いわゆる通知同意方式がとられることもあるようです。   他方で,被保険者の人格権的な保護を重視する立場からは,全員加入型の団体定期保険契約においても,書面等により個別の同意をとるべきであるとの指摘がされているほか,労働法の観点から,被保険者の同意に関する商法第674条は対等な個人間の契約を前提とするものであり,事業主と従業員のような主従の関係に立つ場合には,仮に従業員の同意がある場合でも事業主が保険金を取得することを許容すべきでないとの指摘等もされています。   そこで,このようなさまざまな意見があることを踏まえ,特に全員加入型の団体定期保険契約における被保険者の同意に関し,契約法において何か特別の規律を設ける必要があるか等について御意見をいただきたいと思います。   次に,(ⅲ)では,保険者又は保険契約者から被保険者に対する情報提供に関する規律の在り方を掲げております。   団体生命保険契約においては,個人が保険契約者となる場合に比べて,生命保険契約の被保険者になることの意識が希薄になりがちであるとの指摘がされることがあり,被保険者が団体生命保険契約の存在及びその内容を常に確認できることが望ましいといわれております。また,保険証券は,保険者から保険契約者に対して交付されるものであるため,被保険者の遺族等には団体生命保険契約の存在を知る手掛かりがなく,保険金請求の機会を逸することになりかねないとの指摘がされることもございます。このような観点から,諸外国の立法例を参考に,保険者は,団体生命保険契約の成立後,遅滞なく,保険契約者に対して保険契約の概要を記載した書面を交付しなければならず,保険契約者は,その交付を受けた後,遅滞なく,被保険者に対してその書面を交付しなければならない旨の規定を設けるべきであるとの立法論的な提案がされており,実務上も団体生命保険契約の一部では,被保険者証等の名称により,保険会社がそういった書面を発行している例があるようです。   被保険者やその遺族等に団体生命保険契約の存在や内容につき情報提供することが望ましいという点については余り異論もないと思われますが,被保険者の同意を確認する際に,保険契約の内容を記載した書面が被保険者に交付されている場合など,保険契約の加入に当たり,保険契約の内容について十分な情報提供がされている場合には,改めて書面を交付する必要はないのではないかとも思われます。   また,このような情報提供の必要性は,団体生命保険契約に固有の問題ではなく,保険契約者と被保険者が異なる生命保険契約一般に共通の問題であるとも考えられることから,団体生命保険契約についてのみこのような情報提供義務を課すことの合理性についても検討が必要であると思われます。   そこで,これらの考え方を踏まえ,団体生命保険契約における被保険者及びその遺族等に対する情報提供に関する規律の在り方について御意見をいただきたいと思います。   その他団体生命保険契約に固有の問題として検討すべきものがあれば,併せて御意見をいただきたいと思います。   (注)では,いわゆる事業保険契約について取り上げております。ここでいう事業保険契約とは,いわゆる個人保険を利用して事業主が役員や従業員,その家族等を被保険者として保険契約を締結するものであり,一般に団体生命保険契約における団体性の要件を満たさない中小企業等において利用されることが多いようです。事業保険契約は,団体生命保険契約には含まれませんが,事業主が従業員の死亡による保険金の受取人となることの可否や被保険者の同意の在り方等,先ほど御説明した団体定期保険契約に関する問題と共通の問題があり得ると思われることから,事業保険契約に関する規律の在り方についても,何か特段の御意見がございましたらいただきたいと思います。   続きまして,「10 その他」ですが,その他生命保険契約に固有の問題として検討すべきものがありましたら御意見をいただきたいと思います。   以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,ただいま御説明いただきました部分について,御質問,御意見をいただければと思います。   ○○委員,どうぞ。 ● 団体生命保険契約でございますが,明文の規定を設けること自体意味のあることだというふうに思います。具体的にどのように記載するかというのは,この部会資料の(ⅰ)から(ⅲ)までにあるようなところ,規律の在り方について整理をきちんとした上で考えていくべきだと思いますけれども,事務当局の御説明にもありましたけれども,会社と従業員,これ主従関係にあると。私どもの懸念するところは,会社とそういう会社に雇用されている労働者,従業員というのは力関係からいって対等ではないということでございまして,その主たる被保険者である労働者の同意が必要であるという条件を付したとしても,会社の意に反して被保険者,労働者が同意をしないということが実質的にできないという,実質的には難しいということになってしまうということも十分に懸念をされるところでございますので,そうなると規定自体も無意味なものになってしまいかねないと。   したがいまして,検討に際しては,そういう主従の関係,対等でないというところを十分配慮していただきたいということでございます。   以上です。 ● ○○委員。 ● 先ほど,事務当局の方からも御説明がありましたけれども,団体保険についていろんな視点で検討しないといけないというふうに思っていまして,ある意味で目的だとか意義だとか,その特性というものについて配慮した形でまず検討していただければというふうに思っていますけれども,結論として本当に特則というのは要るのかどうかというのは中身を見てきちっと御判断いただければというふうな気がしております。   そういう中で,先ほど○○委員の方から主従の関係があるのでなかなか同意をしないというわけにはいかないのではないかと,不同意できないのではないかというお話があったので,少しデータ的なところを話させていただきますと,団体数ベースなのですけれども,いわゆる通知同意方式をとっている団体で,何人かの方で不同意が出ている団体というのが約半数弱あります。そういう意味でいくと,全く入りたくないのに不同意ができない状態になっているという実態にあるということでは決してないのではないかなというふうに思っておるのですけれども。 ● ○○委員。 ● そういうデータが存在するということでしたら,そういうことであろうなということですけれども,そうではないところも多分あるであろうということを懸念しておりまして,きちんとした健全な労使関係があるところは私どもは余り心配をしていないというところであります。 ● ○○委員。 ● いろいろ難しい問題があるのだと思うのですけれども,まず最初の1番目の保険金受取人の指定変更の問題で,ちょっとこれは今の事務当局の御説明にはなかったのですけれども,多少関連しますね。グループBの方で保険料は社員が,従業員が払っていると。その場合に被保険者が保険金受取人を指定できるという規定があって,それを遺言でやったケースで高等裁判所でそれを認めなかったと。少なくとも保険会社には対抗できないけれども,受取人指定の効力を認めないといけないのではないかと,こういう問題があると。根本的な理由というのは直感的には分からないと思いますけれども,特に従業員が全部保険料を負担して入る団体保険というのは,契約者というのは非常に形式的なものなのですね。被保険者募集という言葉があるように,要するに被保険者がお金を出捐していますから実質的には契約者であって,その人に保険金受取人指定権を認めないと,これは相当おかしい,一番大事なところが行使できないようでは,それは会社を通じてやるのだから,それは手続をきちんととりなさいと。とれなかった場合には保険会社がこちらに手続前の方でやるよというのは,それはそれでいいと思うのですけれども,少なくとも被保険者にそういう保険料を全額負担する場合に,被保険者に保険金受取人指定権を認めるというところはやっておかないと相当まずいのではないかと,まずその一点を御指摘したいと思います。   それから,次に情報提供の問題で,これは業界の方はコストがかかるということでなかなか消極的なのですが,現状の私の理解,もし違っていたら御指摘をいただければと思うのですが,グループAというのは全員加入で,これは被保険者証と称する保険契約の内容を示すものは発行していないと。それから,グループBという任意加入で従業員の方が自分のお金で入ると,月2000円とか3000円を給料から天引きされて入るようなものですね。これはその企業の団体の要請によって被保険者証を出してくださいというところは出しておられるし,出さなくていいよというところは出していないと。だから,必ずしもすべてに出しているわけではないと,こういう問題があると。   私の考え方は,やはりこれは最低限の情報提供として被保険者証は出さなければいけないのではないかと。理由は,特に実際の例を見てみると,企業で入っている,全員加入の方もそうなのですが通知していて,例えば労働組合には組合員手帳ありますね。それにこういう保険がありますと。そこに保険金受取人がだれかと書いていない場合があるのですね。私も個人的に経験があるのですけれども,サラリーマンをやっていて突然手術しなければいけないと。全身麻酔で死ぬ可能性も0.1%ぐらいあるかもしれないと。そのときに保険は何があるかと示してだれが受取人か分からないと。ですから,本当にそういう情報が必要な人は,団体の本当に年に数人なのですけれども,そういう人のところにきちんとそれが行っていないと家族は保険金請求権を行使できない,又は安心できないという,こういう状況なのですね。   ですから,保険ですから一定の確率で1000人のうち何人という,その人たちのところにきちんと行っていないと始まらないわけで,コスト的にも保険会社の方は例えば1500円とか2000円の個人賠責とか動産総合なんかで立派な保険証を出しておるわけで,毎月2000円,3000円,年2万,3万,4万払っているところで被保険者証一つ出せないというのは,ちょっと私はなかなか飲み込めないところなのですね。ですから,やはり基本的にはそういう被保険者証という趣旨は,ただ被保険者証という名前でなくたってもう一歩必要上というのはそういう情報が全部伝わるような手当てができるように保険会社はしなければいけないと,そういうルールはどうしても必要なのではないかと思います。   3番目が,この事業保険契約の問題で,これは総合福祉団体定期保険ということで販売しておられるわけですけれども,いろんな問題があって,結局ヒューマンバリュー特約というのが2000万上限でやっておられると。そのお金何に使うのかと,ここが一番問題で,結構新しい人を見付ける費用とか,要するに費用に充当することを定額保険ではありますけれども,その費用をそういういろんな新しい人を見付け,その間に収入が下がったりとか,そういう費用利益損失のために使うという前提でヒューマンバリュー特約を売っておられると。   しかし,これが本当にもしそうであれば,これは生命保険会社の子会社の損害保険会社に費用利益保険でそういう損失をカバーする保険をおつけになれば一番いいわけですね。しかし,多分そう申し上げるとそれでは税法上の恩典がないと。いろんな保険料の損金算入とか,そういうのが全部なくなってしまうのではないかと。多分そこが一番問題で,そういうものとして機能させるために従業員に通知方式で同意をとり,これは研究会で私初めて分かったのですが,通知方式でも選択的同意はできないのですね。自分の死亡の方は同意するけれども,ヒューマンバリューはノーというような,そういう選択的な同意はできなくて,両方一緒に恩恵を受けるか,両方一緒にノーというか,その二つしかないと。いい方だけもらうということはできない形で同意をとっておられますので,やはりこれは行き着くところは,税の恩典というところはなかなかいろいろ問題があるし,中小企業の中の方もいろいろ聞いてみるとそんなのはなくてもいいという方と,あればあったで助かるという方もいらっしゃると思うのですけれども,やはり諸外国,これは調べて分からなかったのですが,こういう形で事業者が保険金受取人になることを禁止している国も確かあったと思うのですね。だから,やはりちょっとここはセカンドリーディング含めて本当にあるべき姿,つまり,ほかの費用利益のために本当に必要だというのだったら,それはそういう保険でカバーして,できるだけこういうものはだんだん退いていってもらうというようなことも考えなければいけないのではないかと。やはり従業員の命が担保になって保険がついているという意味では,ある意味ではより被保険者証を出さなければいけない状況で,Bの方で任意的に出しているなら,Aの方は本当はもっと出さなければいけないかもしれないのですね。つまり会社だけで済んでしまって,通知で判こを押して戻ってしまうと。だからここはちょっと根本的に見直す方向で考えていただいたらいいのではないかというふうに私は思っています。   その他の問題はまた後ほど。 ● ○○委員。 ● 少し実務の話もありましたので,実務のところからお話しさせていただきたいと思いますけれども,まず保険金の受取人の指定ですけれども,これはいわゆる任意加入,従業員が拠出する場合は,被保険者と言われる人が指定ができるようになっています。記入欄がありますから勝手に会社が指定しているとか,そういうことはございません。被保険者の人が例えば自分の妻にするのか,子供にするのかといったことについては記入ができる,指定ができる形になっております。それが実態でございます。   それから,情報提供のところですけれども,これにつきましては,まず基本的に申込書そのもの,今いわゆる従業員拠出の任意加入のお話をしているのですけれども,原則的にはまず申込書が複写になっております。複写になっていまして,一部が加入者が控えると。当然そこには受取人をだれに指定したかということを記入した後の形で複写になっていますから,その控えが加入者には残るという形になります。そういう意味で,いわゆる情報提供の被保険者証というのは何を指すかという問題はあるかと思うのですけれども,何も加入者に残っていないという状況ではまずないということが一つございます。   それから,在職中に万が一御不幸にして亡くなられたケースは,この団体保険の任意型についての保険の支払の手続は,企業さんの労務担当課を通じてやりますので,そういう意味ではそこでは例えば○○が幾ら入っているのかということについては,そこでもきちんとリストをお持ちですから,仮に遺族の方がきちっとお持ちでなくても,そこの企業の労務担当課の方できちんとされるということで,ダブルでそういう意味での加入状況を把握されているということで,いわゆる知らなかったので保険を受け取らずに終わってしまったということは現実には起きていないというのが実態というふうに感じております。まず,団体保険のところの今の実務という意味ではそういう状況でございます。 ● 最初の点はまさにそのとおりで,問題は裁判所がその意思表示を認めていないというところなのですね。ですから,実務は全然問題ないと私は思います。   2番目のところも,先ほどちょっと情報提供するという点を重視すればいいというようなことで申し上げた理由は,例えばその申込書に,私はその申込書がすべて皆さんそういう形で,受取人が入った形でやっているかどうかというのはちょっと自信ないのですけれども,それが特に保険会社から2か月以内に通知がない限りは,これが契約者証になりますと,被保険者証になりますと,そうお書きになればいいわけで,つまりこれは大事だからとっておきなさいよといって家に帰って世帯主なり配偶者に渡しておくという,そういうインセンティブもきちんとそういう形になるものにされればいいわけで,私は何もコストをかけてやれということは全く申し上げていないわけで,そこをもうちょっと工夫していただけないかなと,こういう趣旨です。 ● ○○委員。 ● 情報提供義務の方なのですけれども,いわゆる消費者相談の中で,団体保険の被保険者からのクレームはそれなりにありまして,どんなふうにありますかというと,例えば割とさ末な方の保険ですけれども,団体信用生命保険の住宅ローンではなくて,例えばクレジットに付帯するという,そういうタイプの保険ですと,事実上,加入勧奨するのはクレジット会社でもなくてもっと末端のクレジット会社に加盟をしている例えば墓石屋さんとか,例えば電気屋さんとか自動車ディーラーさんとか,そういうところが事実上の加入勧奨を行うというようなことが実際に行われています。そうすると,保険会社のモニタリングといったって,クレジット会社よりもっと先の方へ行ってしまっているものですから,事実上その勧誘の実態が分からないで,例えばワンシートに,今度ガイドラインを作りましたけれども,ワンシートの中に申込書の中に告知書も入っているし,それから何とかも入ってるみたいな,そういう形で例えば墓石を買う人,それから高額の電気商品を買う人,自動車を買う人が保険に入っていることを存在及びその内容を認知する程度に行っているかというと,なかなか心もとないという実態がたくさんございまして,そこら辺を考えると,やはり情報提供という意味で言えば,保険会社が契約者に行うのと同じようなことを事実上の加入勧奨を契約者が行うのであれば契約者又はその末端が行うのであればその人程度の加入状況の把握といいますか,そういうものが行われないと実態としてはまずいのではないのかなというふうに,大変そう思っております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 私ども企業が,現実に団体生命保険をどんなように使っているのだと実は私自身もよく知らなかったので担当者に聞いてきましたので,皆さんに御参考までに紹介します。   全員加入の総合福祉団体定期保険,いわゆるA号団保というものでございますが,これは社内の弔慰金規程に基づいておりまして,弔慰金規程で三種類の弔慰金というのが私どもの職場にはあります。一つが基本弔慰金,もう一つは遺児加給,配偶者加給金,三番目が高度障害見舞金と,この三つに分かれていまして,それでこの基本弔慰金に関しましては,会社が弔慰金規程に従って役職員が亡くなった場合には,これだけの金額を入社何年目の人は幾らとか,部長級だったら幾らとか,これはルールで決まっていまして,これを会社がとにかく払うと,その金額を会社が保険でカバーすると。したがって,例えば保険金は出なくても会社が自分のポケットから払って,保険会社と会社の関係は別問題だけれども,一応保険が裏にありますよと,こういうことを明らかに社内規程でしています。   それから,遺児加給,配偶者加給は,同じ弔慰金規程の別のカテゴリーなのですが,これは保険対象としてはしていません。いろいろと経済計算した結果,自家保険の考えで自分で払えばいいのだという形で保険の対象にはしていません。   それから,三番目の高度障害見舞金というのは,これは基本的に保険対象にした上で,保険会社から保険金が払われたら同額を支給すると,こういうような規定振りになっていまして三者三様でございます。   本人同意のことでございますが,入社時に弔慰金規程はこうですということを人事担当者から説明して,それを今言ったような形で保険にリンクしていますという説明はして,不同意の意思が表明されない限り同意とみなすと,そういう形でやっております。   そうなると,規程を時々変更するということがあるので,規程が変更されれば当然保険内容も変わるということで,この際,従業員全員,何千人,子会社も入れたらもっと大変な人数なのですけれども,こういうことはちょっと実務的につらいということで,従業員組合に通知して現状の説明をして,従業員組合の書面による同意をもって同意とみなすというのですか,全員の,こういうようなやり方をしています。   告知に関しては,入社時に告知に関する書類をもらって,これを保険会社の方に渡していますと,そのままつないでいるのですが,一つ問題というのは,ちょっと気になっているのは,昇格とか年次がたって金額がアップしたときに,都度その告知をしなければいけないかと言われたらもうアップアップで,事務的にちょっと対応できないというような問題があるという問題意識があります。   現場の担当者の希望としては,そうではない,先ほどありましたヒューマンバリューとか云々という別のところは別にしまして,こういう形でそもそも会社が先に弔慰金規程で,社内規程で社員全員これだけの弔慰金をもらう権利があるのですということが非常に明示されていると。社内規程の変更につきましては,先ほど言いました労働組合との協議とか同意をとっているということにしておって,会社はそもそも利得は一切得ていないと。単純に経済計算で自家保険にするのがいいか,保険会社の方がいいかという,それだけのことであるので,本人同意とか告知義務の手続というのは,基本的に大幅に簡素化されるということを希望すると。余り費用がかかるのだったら,そもそも保険をやめようかという議論になるだけの話ですと,こういうのがA号団体保険ですね。   それから,任意加入のB号団体保険でございますが,これは,会社は窓口で手続を取りまとめるという立場であって,保険そのものは個々人が自発的に自己の意思で加入している通常の保険と一緒であると,こういう理解で,基本はそうなのですが,そこで先ほど申しましたように,話が○○委員からありましたように,契約の申込み時とか更新時に内容が書類で確認されて,その見合いで保険証というのは現状保険会社からもらっていないし,本人に渡していないということでありますが,さらにそれに加えて会社の中にコンピュータで皆さんが閲覧できるシステムがあります。弊社ではノーツというシステムなのですが,そこに個人情報照会機能というのがついておって,役職員は自分の個人の給料は幾らだとか,自分がかかっている保険は何かということは,全部データは365日自分で検索,アプローチすればいつでも分かると,こういうようなことが可能になっているということであります。   これは,実は社員はそういうことなのですが,OBですね,会社をリタイアした瞬間から会社のそういうシステムを使えなくなりますので,OBの方で引き続き団体生命保険を利用されている方には,これは不具合だろうという形で,保険会社さんから保険証書を発行してもらって各人に全部渡していると,こういう実務をしていますということで,基本は普通保険と全く変わらないのですが,現役の社員に関しては今言ったような形で電子的方法による情報提供ということがそのまま維持されると申しますか,認められるということを希望しますと,こういう話でございました。   以上でございます。 ● ○○幹事。 ● 被保険者同意の問題に関して少しコメントを申し上げたいと思うのですが,この団体保険における被保険者同意をどうするかということについては,生命保険法制研究会等でも立法提案がなされていたわけですけれども,その目的というのは主として私の理解では二つあったと思います。一つは,当時社会問題にもなっていた従業員の遺族に保険金が渡らないような,そういう団体保険が従業員の,被保険者の同意なくして締結されていると。そのような保険については従業員の個々の,被保険者の個々の同意を得るようにすべきであるという,そういう目的があったと。それはしかし先ほど事務当局からもお話がありましたように,そういう保険というのはほぼ姿を消してしまいましたので,ですからそれを今どうしなければいけないということはなくなったと言えるのですが,もう一つの立法提案の目的としてあったのは,従業員の遺族にもきちんと保険金が渡るような,そういう団体保険については,これはむしろ同意を簡便化,被保険者同意のルールを簡便化した方がかえって従業員やその遺族にとって利益になるということから,その通知同意方式というようなものについてもそれを認めると,そういう観点からの立法提案だったと思うのですが,それはもともと第674条の被保険者同意のところで書面による同意が必要であるという,そういう原則をとっていたこととの関係でまともな団体保険についてはそういう厳格なルールを適用しなくていいようにしようということで特則を置いてはどうかという,そういう目的からの立法提案だったと思うのですが,現在の事務当局から出ている第674条のところの提案では,これは書面による同意ということは必ずしも出てきていませんので,ですから別に書面でなくても同意がありさえすればよいというルールであるならば,団体保険については先ほどの通知同意方式ですか,あれの解釈論として同意があったというふうに考えることができますから,現時点では同意に関する規律をあえて置かなければいけないかというと,なくてもいいかなという気はいたします。   この団体保険の規律を置くときに問題となるのは,というか難しいのは,どういうふうに団体保険を定義しようかと,世の中にある団体保険というのはいろんな多種多様のものがありますので,それをあまねくカバーできるようになっていくのは非常に難しいというか,実際生命保険法制研究会が作った条文は非常に長ったらしくて余り美しくない条文だと思うのですけれども,そういうことも考えますと,規定を置かなくていいのであれば置かないというのも有力な選択肢になるのではないかという気がいたします。   ただ,先ほど○○委員が御指摘になった被保険者証あるいは別に「証」というほどのものは私も必要なくて,とにかく情報開示がなされるというのは紙切れでいいと思うのですけれども,それは何とか被保険者あるいはその被保険者の親族の方に渡るような形にあった方がいいとは思うのですね。確かに○○委員がおっしゃったように,現在世の中にある団体保険というのは企業の弔慰金規程がもとになっていて,その原資を賄うための団体保険なので,企業がきちんと弔慰金規程に従ってやっている限りは全く問題はないのですが,しかし,それは○○委員がいらっしゃるような立派な会社であればそういうことはきちんとされるのでしょうけれども,世の中には必ずしもそういうことを,そういう弔慰金規程があるにもかかわらずその支払をきちんとしないとか,遅らせるという会社もないわけではないと思います。そういうときに従業員の遺族が,たとえ紙切れであってもそういう保険に入っていたのですよという,そういうことが明らかになるような書類があれば,会社に対して保険に入っていたはずだと,弔慰金の支払はどうなっているのだということが後からでも言えると思うのですね。   だから,そういう意味ではやはり何とかコストを引き下げるような形で被保険者証的なものを出す方向で生保実務の方には努力していただければいいし,何とかそれをルール化できればいいのではないかなというふうに思っております。 ● ありがとうございます。どうぞ,○○委員。 ● そういう意味では,どちらかというと被保険者証というのは我々これまで任意加入型,従業員拠出型のことを主にイメージしてこれまで議論してきたところがあるのですけれども,先ほどの,今の○○幹事のお話も含めてなのですけれども,いわゆる企業拠出も含めてその辺についてはもう一度考えた方がいいのではないかというふうな御指摘ですか。やはりそれは大企業と中小企業は違うのではないかとか,万が一何かあったらいけないのでということの御指摘を頂だいしているという。ただ,それは保険会社が何かする必要があるのか,企業さんの方で例えば弔慰金規程はこうなっておって,これについてはきちんと保険でカバーされていますよという持って行き方を含めて,それはかなり幅があるというふうに理解しておいてよろしいですか。 ● 簡単に,私が先ほど申し上げたことは,要するに本当に保険のカバーに真剣勝負で取り組んで,その他気になる人,それはどうしても必要なのですね,そういう情報が。それはだからAかBかということによらなくて,やはりそれはどちらにしてもそういうものは最低限の,保険である以上は最低限の要求として用意すべきではないかという,そういう観点なのですけれども。○○幹事の方はちょっと。 ● 言われている趣旨は私も理解していまして,基本的には総合福祉団体というのは弔慰金をあくまでも保険で,要は財源として担保しているということなので,従業員と会社との関係でいけば,最終的にお支払するのは弔慰金部分だということなので,そこで支払漏れということが基本的にはないというふうに我々理解しているものですから,ちょっと今日の御議論というのは少しこれまでのスコープと違うのでですね。 ● 弔慰金規程が整備されていて全然問題ないというのは,それはそこで裏に保険があるということさえ開示していただければいいのかもしれませんけれども……。 ● ただ,基本的には総合福祉団体は,弔慰金規程とかそういう規程の裏付けがないものは加入できないですから,弔慰金規程がないにもかかわらず何か知らないけれども多額の保険が入れると。かつてのAグループというのはそういう部分もあったのですけれども,今の総合福祉団体というのは必ず裏付けの弔慰金規程なり何かというのはないと入れませんし,その金額と完全にリンクをしている保険になっていますから,そういう意味ではそこは従来のAグループとは随分違っているという形になっているのですけれども,そこは。何も裏付けがないのに保険が急にかかっておってというのは今あり得ないのですね。きちんと規程まで出していただいて,我々は規程の裏付けがあるかどうかというのも確認した上で保険というものに加入していただいているという形になっていますから,それは大企業であろうと中小企業であろうと規程の裏付けがないものは入れないというのは共通のルールになっていますので。 ● 私が一つ誤解したかもしれません。私は,労働組合の手帳なんかを見て,会社が全額負担で,弔慰金ではなくて生命保険をつけますと,従業員のために,幾らですと。しかし,保険金受取人がだれかは書いていないと,こういうケースはないのですか,全然。 ● 団体保険,総合福祉団体はありません。規程の裏付けのないものはないですから。 ● でも,そうではなくて,会社が全額費用負担で生命保険を役職,課長さんだったら幾らと,こちらは弔慰金規程がある場合ですよね。弔慰金規程がなくて保険金がついていて幾らという……。 ● 今,弔慰金規程の裏付けがない総合福祉団体というのは制度的にあり得ないですから。 ● 団体保険の定義なのですけれども,総合福祉団体ではなくて普通の団体保険でそういう保険というのは。 ● 団体保険は,今総合福祉団体という,いわゆる企業拠出型と従業員が拠出されるBグループという部分と大きく2つ,あとちょっと団体信用生命保険というのは別にありますけれども。あとあるとすると,団体保険ではないのですけれども事業保険というのが……。 ● それかもしれませんね。私が勤めたところはそうだったものですから,そういう全額会社負担で役職別に保険金が変わっていて,弔慰金規程ではなくて生命保険そのものを払うというもので受取人がだれかが分からないとか,必ずしもはっきり分からないと。 ● ただ,事業保険も,事業保険というのは弔慰金規程にはリンクは必ずしもしていないのですけれども,基本的には付保規定というのをつけまして,基本的に全額遺族受取りというふうになっていますから,これらの規程にはリンクしていないですけれども,付保規定というのは別途もらっていますので。 ● 遺族というのが,法定相続人になってしまっているのではないかとか。 ● そういう意味で,事業保険とはちょっと違う,団体保険ではないですけれども,事業保険に多分今○○委員がおっしゃっているやつが,イメージはそっちかなと思ったのですけれども,それはいわゆる普通に言う団体保険とはちょっと違います。 ● とにかく情報が家族のところにきちっと伝わるということが確保されていれば,それは弔慰金規程の場合は特にそうですね,分かっていれば,それは私は異論ありませんけれども。 ● どうも問題が従来被保険者の同意の問題として議論してきた,やはり同意がないところで保険をつけていいのという,そういう問題と,今日も議論があった被保険者証のように事故が生じたときに本当に権利者が保険金を受け取れる権利があるということを知る,そういう手掛かりがあるのでしょうかというのと,今日の御議論を聞いていると,もう一つやはり従業員に保険をつけることについて,従業員にそれなりの情報が周知されていないといけないのではないでしょうかという,いろんなどうも視点が今日絡み合って議論が必ずしもすっきりしていないように思うのですけれども。   ○○幹事。 ● 今のところの議論は,やはり根本のところは同意を要するかというところに収れんした方がいいのかなと思うのです。それで,団体の生保について特約を設けるか設けないかということで,設ける必要がないのではないかという御意見もあったかと思うのですけれども,私もどちらかというと今のところそういう印象を持っていまして,というのは,特則を法律上設けるのではなくて,同意を要するという同意があったかどうかというところをぎりぎり判断していくに当たって,最終的には同意があったものとみなすという規定も恐らく法律に入れるのは難しいのではないかと思いますので,その同意の有無の線というのは,事例判例か何かの積上げになってしまうのかも分からないですが,その判例に至る前のところで当事者としてこれは同意があったというふうに主張できるなというふうな商品を作っていくとしたら,やはりこれだったら従業員は仮に同意書をとらなかったとしても同意するのが当然だというような商品になるということで,同意して当然でしょうという商品の一つの要素としては,保険金というのがそのまま遺族の方に金額がそのまま同額が渡るとか,それから同意をすべき時点において十分な情報が開示されていたかどうかということも一つの要素になると思いますので,その情報の開示をしたというふうに会社側が後で無効だということを言われないためには,企業側が従業員に対してはこういう形で情報提供していますというふうに言えるような形になっていなければならない。それが退職金規程なのか,又は被保険者証なのかというのは,個々の具体的な事例によりけりだと思います。 ● ○○委員。 ● 二つ発言をさせていただきたいと思います。   一つは,少し分からないことがあるので事務当局へのお願いということなのですが,団体生命保険に固有の規律を設けることの要否というのが今の課題だと思うのですけれども,この規律の内容が一般の生命保険あるいは他人の生命の保険になるのかもしれませんが,その規律を緩めようとする固有の規律が問題になっているのか,それとも一般の生命保険ならば可能だけれども,団体生命保険はよりハードルを上げようとする議論なのか,あるいは両方が含まれているということもあると思うのですが,どちらなのかがよく分からないので,先ほど○○委員が整理された幾つかの問題があるというところを,できましたら今の軸に合わせて振り分けていただけるとありがたいなと思います。それが一つ。   それから,もう一つは少し違った観点でありまして,何か空振りになってしまうおそれがあるのですけれども,一つ気が付いたことがあるので述べさせてください。   従業員が現実の保険料を出捐しているタイプのものがあるというのが特にディスカッションの中で出てきました。しかし,この団体生命保険ですと,事業主が保険契約者となって保険金受取人になっている保険契約であるというふうに理解しました。そうすると,保険金請求権は事業主に帰属しますから,事業主の他の債権者との関係で従業員あるいは従業員の遺族が,いったん事業主に支払われた保険金について何らかの優先的な地位を本来ならば認めるべきなのだろうと思います。出捐しているのですから。しかし,どうもだれが出捐しているかというところは,これ保険法の外の自由な世界ということで扱われているようにうかがわれましたので,保険法で規律できるかどうかというのは今少し気が付いてから考えていたのですけれども,なかなか規律する方法も難しいのかなと思うのですけれども,団体生命保険の幾つかある問題のうちの一つにこのタイプの問題もあるのではないのかなと。実際に出捐した従業員,そしてその遺族が結局保険金を取りっぱぐれることがまれにではありますけれども,事業主が破綻あるいは無資力になったときに生ずると,そういう問題もこのタイプの取引にはあるのかなというふうに思いました。   以上です。 ● 今の点は非常に貴重な御指摘ですので,第二読会以降,またこちらで資料を作成し,あるいは問題点を提起する際に,今御指摘の視点から整理をしてみたいと思います。   ただ一点,緩めるのか強めるのかという点については,どちらかというとそういう発想というよりは,何か先生がまさにおっしゃったように,言ってみれば一対一の他人の生命の保険契約の規律では何か足りないところがあるのではないのかなと。もしあるとすれば,それは置くことになるのではないかなというようなイメージでおりまして,ですから,それが例えば指定変更権が普通は契約者にあると考えたときに,先ほど二点目の保険料の実質的な出捐者がだれかということとも関係しますけれども,その人に帰属しなくていいのかどうか。あるいは被保険者証が通常は契約書類というのは当事者間でやりとりされるものが,被保険者のところに行かなくていいのか,それは同意と,実質で取り込まれているものなのかどうなのかなどなど,どちらかというと他人の生命の保険契約の一般の規律で賄えない部分があるのかなという発想ですね。強めようとか弱めようとかという見方は,余りしていなかったというところはございます。 ● 被保険者の同意のところは,さっき○○幹事からもお話を,あっちでどういうルールをとるかによって,あっちが余りかたいルールになると,こちらはそういう意味では○○委員が言われたやや緩和されたルールということが必要だと,そういう議論になるかもしれませんし,あちらの方がそれほどかたくなければこっちでも特則は要らない,そんな議論になると思いますね。   議論の中で事業保険というタイプの問題も出てまいりましたが,これは実務的には事業保険についても先ほど保険金は付保規定を確認して保険加入をさせているので,一応従業員が死んだら保険金は契約者兼受取人である会社の方に払われるけれども,それは確実に遺族に渡ると,そういう実態だということなのでしょうか。 ● 一応そういう形に,はい。 ● 総合福祉定期保険の主契約というのは受取人が遺族に直接なっているわけですね。それと比べると事業保険というのは依然として雇い主である会社が受取人になっておって,それを付保規定に基づいて遺族に渡すと。これもかつて相当多数の中小企業で,そういう付保規定を保険会社としてはとって契約しているにもかかわらず全然渡していないというふうな訴訟,こちらの方も頻発していまして,そこら辺現状はどういう状況になっているのでしょうか。 ● 現状は,そういう意味でいくと訴訟が頻発しているとか,争いごとが多く起きているとかという実態にはありません。特に総合福祉団体は全くそういう訴訟は,弊社でいけば抱えていないという……。 ● 事業保険で変わってきたというのは何かやはり保険金がきちんと払われているかとか,そこら辺監視を保険会社としても強めているとか,そういうことはあるのですか。 ● 一応我々その辺で変な保険になっていないかどうかというのは,それなりにいろんな意味でチェックはするようにしていますので,そういう意味では総合福祉団体から始まりましたけれども,そういう考え方というのはこっちの事業保険の方にもかなり結果として似たようなものが浸透してきていると。また,企業側も従業員との関係というのは相当意識して行動されていますから,従業員にとって受け入れられないものを無理やり押しつけようとか,経済合理性のないものに対して保険をかけようという意識もなくなっていますから,そういう意味ではこの辺かなり従来に比べると変わってきているというのが実態ではないかというふうに思っておりますけれども。 ● その付保規定で払うことになっている金額と保険金額のリンクみたいなものの確認はされているわけですか。 ● そこは,基本的にはある程度はしていることはしていますけれども,細かいところまでどこまで見れているかというと,ちょっと私も事業保険にすごく詳しいわけではないので,保険金額とかいろんなことの確認はとっていますけれども,弔慰金と全くリンクしているかというと,そこまでの直接リンク性は総合福祉団体に比べると弱いのは事実です。 ● そういう意味では,総合福祉団体定期保険とはちょっと違った実態があるけれども,やはり考えるべき問題は共通の問題もあるのではないかと。これは団体定期保険をどう定義するかにもよりますけれども,その定義とは別にこういう実態のある保険があるというので,そこで何かルールを考えなくていいかと,そういう問題も一応認識しておいていただいた方がいいかなと思います。   ほかに,○○委員。 ● 今○○委員がおっしゃった質問で,私が答えるのはおかしいかもしれませんが,○○委員,私の理解では,事業保険を小さな親方がいるところでという場合は,死亡保険を非常に低くしまして,200万円ぐらいにして,後遺障害を1000万とか2000万にすると。だから,引受けの形が昔は死亡が多かったわけですけれども,それで変なことが起こったと。200万円ぐらいで葬祭費ぐらいに使えるようなもので,そういう形で規制化も行われているのではないかと思いますけれども,ただ逆にいうと,余り付保規定とかそういうことは,そこまで行くと余り気にしないというか,ただつけているということは言っているという,そんな実態もあるのではないかと思います。余計ですが。 ● ○○幹事。 ● 補足なのですが,先ほど○○委員から御質問があった何か新しいルールを置くことによって現在より厳しくなるのか,緩やかになるのかということ,被保険者証に関して申しますと,現在は被保険者証に関して全く規定がありませんから,規定を置くとすれば,別に個人保険,団体保険にかかわらず両方について,保険契約者と被保険者が異なるような保険については,被保険者にはどんな保険について自分は同意をしたのかということが分かるような書面を渡しなさいという,そういうルールを置くことになるのかなという気がするのですね。   ただ,そのことによる実務の影響というのは,少なくとも現在の団体保険ではそういう被保険者証というのは出していませんから,仮にそういうルールが置かれるとすると,実務にとってはより厳しいルールということになるということで,ルールとしては個人保険と団体保険では変わりはないのだけれども,実務への影響という点では厳しくなるのかなと,団体保険に関して。個人保険に関して現在何か書類を渡して,判こを押しますよね,被保険者が,そのときに書類の写しというのを渡されているのか,それはないのですか。 ● 渡していない。ただ,今の議論というのは多分団体保険だけの問題ではなくて,多分契約者と被保険者が違うケースに共通になってくるとちょっと単なる団体保険の議論ではなくなるのかなという気がするのですけれども。 ● ただ,もし個人保険について渡していないのだとするとやはりそれは問題かなと。ただ,その場合の費用というのはそんな変わりないと。契約書の写しをそこで渡せばいいわけですから,判こを押した契約書の写しを被保険者にも渡せばいいわけで,ですから費用という点ではそれほど大したことはないと思うのです。ただ,団体保険に関していうと,今は全くそういうこと,つまり個別の同意をとっていませんから,それとは別に書類を一人一人の被保険者に行き渡るように出さなければいけませんから,その意味ではコストはかかるようになるのかなという気はするのですが,そういう理解でよろしいですか。 ● ただ,いわゆる団体保険の先ほどから申し上げている従業員拠出型は写しがありますから,それが変えられるものになるのであれば基本的に今の実務とそんなに変わらないと思います。むしろ企業拠出型のAグループと言われる方が,あるいはそれは弔慰金規程にリンクしていますから何も逆に発行していないと。それを今度は我々もそうなのですけれども,今度は企業側でも相当負荷がかかることになると思うのですね。今度は弔慰金規程で例えば役職が変わったときに,これまでだったら例えば500万だったものが700万になりますと,その辺も含めて保険会社と団体さんとのやりとり,それから,それを今度は保険会社から団体さんを通じて今度は従業員さんに伝えていくという,多分相当幾つかの関係で情報の流れだとか資料のやりとりが発生しますから,団体さん側にとっても相当負荷が増えるという問題はあるのだと思うのですね。そこまでしてやらないといけないものなのかどうかという判断に,要は最終的にお渡しするものは弔慰金ですし,弔慰金規程というのは一方できちっと就業規則等で定められて,従業員にとっては閲覧できる状況になっているという中でそこまでしないといけないのかという問題に多分議論としてなるのかなというふうに思っておるのですけれども。 ● すみません,先ほど来の団体に関して厳しくなるのか緩やかになるのかということなのですけれども,それと今のお話のところもリンクしてくるかと思うのですが,同意というのを団体の場合,団体生命保険契約のときの同意の取りつけ方が団体を相手ということも,集団を相手ということもあるので,同意があったかどうかという同意の手続自体が緩やかでなければ回っていかないということがあると思うのです。他方,団体だから緩やかでよくて,事務手続も保険会社と保険契約者との間でできるだけ簡素なものにして,だから保険料がその分だけ安くなりますとかという,その仕組みができる背景としては今度は団体の中に団体の組織としてきちんとあって,そこに依拠できるからということになりますので,そうすると今度は,先ほどおっしゃっている企業さんの方でのそういう保険に加入したときには団体の内部での規律は厳しくなるという,そういう関係にあるかと思います。   だから,今まできちんとした会社では大体従業員がどういう保険に会社が保険契約者として入っているかがアクセスできるとか,自分としてはヒューマンバリューのところは同意していないとか,同意したくなければ同意しないようにできるとか,そういう仕組みになっているとか,それでそのように運用されているかどうかというのは,今度はやはり保険料を安くして,それで事務手続も簡素化していいという,保険会社と保険契約者さんとの今度はその二者間でもモニターしなければならないというか,この保険というのは,保険金は遺族に支払われるものですという保険であったのに,会社が一部損害のてん補のような,実損てんのような形で使っていた場合には,それはそういう団体保険契約の違反として解除ということも念頭に契約上明示されていて,だから解除されないようにするとしたら,企業としてはそういう運営をしなければならないという,きちんと運営しなければならないインセンティブというのでしょうか,強制力が働くような契約関係にしておかないとうまく回らないのではないかなとは思っております。   それで,一部は今度は保険監督というか,ガイドラインの方でこういう契約となっているかどうかというような形でまたチェックが入るのかなと思いました。 ● ありがとうございます。いろいろ御意見いただきまして,大分問題点が明らかになりました。また,被保険者の同意の一般原則との関係もあるかと思います。   どうぞ。 ● すみません,一点コメントさせていただきますが,たまたま事業保険契約というのが,事業主が保険契約者となり,従業員を被保険者とするというふうに日本ではこういうふうに非常に狭く定義してしまっておるのですけれども,事業に関連して保険を付すのが事業保険だということになると,実際の使い方は外国なんかはもっと広くて,取引上のキーパーソンが事業に絡んで,例えば芸術家であったりとか,例えばバリスターであったりとか,大事件で巨額のソリスターを使ってバリスターに説明したらバリスターはお年寄りだから亡くなってしまったら企業は困るのでバリスターに保険に入ってもらって,こちらのソリスターの費用を後でコンテンツするとか,いろいろな使い方が諸外国にあって,今,日本では私の理解ではそういう使い方はほとんどされていませんけれども,将来だんだん個人個人のそういう個人の価値創造というのが個々の事業に対して極めて重要になると,生命保険をそういうふうに使うことが予想されるだろうと。そういった場合も事業に関連して使われる保険でございますので,そういうのが逆に制約されないでいただきたいなというふうな気持ちを持っています。   以上です。 ● 事業保険というのは,従来ある独特の使い方というものに即したもので,もっといろんなタイプのものがあるというのを含めて頭に置いておくべきことかと思います。   先ほど途中になりましたが,いろんな問題点が明らかになりましたし,一般原則との関係で考えていかなくてはいけませんので,一般原則をこれから詰めていく過程でまたこういう特別の規定が必要かどうかというあたりも検討していければと思います。このテーマについてはとりあえず今日はこのぐらいでよろしいでしょうか。   それで,その他の問題で何かこれまで挙がっていないけれども検討するものがないかというのですが,何かございますか。   ○○委員。 ● 生命保険の規定の仕方のことで,これをここで話していいのかよく分からないのですけれども,例えばこの資料の1頁に第683条で,こういう規定は生命保険に準用するというふうに書いてありますけれども,今回の立法をもし消費者保護的なことを中心にするのであれば,基本的には準用はやめて。準用というのは必要な修正を加えて適用すると,必要な修正というところは被保険者を保険金受取人に読みかえたりというのは普通の人には分からないですから。こういう主張は昔からあって,例えば田中英夫先生の実定法学入門の255頁,今から35年か40年前に出た本ですけれども,そこでも多くの非法律家が関係する分野については準用規定を設けて済ませずに,それぞれの場合ごとに具体的規定を繰り返すと,こういうことを考えてもいいのではないかと。まさにこの法律がそういうことを正面から取り組んでもいい法律なのではないかというふうに私は思いますので,その点をまず一つお考えいただきたいという問題と,もう一点は,これは前回確か○○委員から少し発言がありましたけれども,各社の不払の件数とかいろいろ件数の内訳でも告知義務違反であったり,詐欺のものであったり,そのうちどれだけ支払い,解除したのが適切でなかったとか,こういう問題がありますね。   基本的には,モラルリスクとの対応ということだと思うのですが,本当はこういう立法をするときにはいろんな保険学的な調査といいますか,統計分析的な調査とかそういうのがあってしかるべきなのです。現状なかなか難しいと。しかし,そういう数字について可能な範囲で,ですから公表されなくてもいいと思いますし,資料は持ち帰らないというものでも結構なのですけれども,生損保ともに告知義務違反のケース,詐欺無効,特別解約権を使ったケース,それから契約母集団の解約発生率とか,そういうものをお出しいただくことはできないのかなと。それを見てどうするという問題はあると思うのですけれども,例えばある特定の会社ではそういう特別解約権なんて全然ない,行使は全然ないと,あるところにはとても多いということであれば,これはひょっとしたら引受けのところに問題があるのかもしれないし,モラルリスクに対して我々がどういうふうに考えなければいけないか,また,保険契約法でどこまで対処できるのかと,こういう問題について非常に不十分なものではありますけれども,考えるきっかけになると思うのですね。   例えばアメリカなんかだと,これはジャーナル・オブ・ロー・アンド・エコノミクスの去年の末の最新号ですけれども,保険詐欺を防ぐためにはどういうのが一番効果的かというような研究があって,例えば関与したまず保険詐欺を重罪にすると,刑罰を過重すると。それから,保険詐欺というのは大体保険代理店,募集人,それから弁護士,お医者さん,こういうのはぐるになりますから,関与した人のライセンスを取り上げるとか,保険会社にそういう調査ユニットを強制的に設けることを義務付けるとか,そういう方がより保険詐欺と戦うためにはいいので,契約法で一体どこまで,つまりこれがないと保険詐欺と戦えませんよという,それは契約してしまったものについて使うということには全然異論はないのですけれども,保険立法,契約立法するに当たってこの問題の全体像をどう見るかというのはとても大事なことなので,業界の方で可能な範囲で,また事務当局の方で可能な範囲でそういうことを少し考えていただけないかなというのがお願いなのですけれども。   以上です。 ● 今の御指摘は御希望なので,これはちょっと何か可能かどうかというあたりを少し事務当局も含めて御検討いただければと思います。   ほかにございませんか。   それでは,この部分はこれでひとまず切り上げまして,次に保険法部会資料8「保険法の現代化に関する検討事項(7)」の方に進みたいと思います。   まず,ここでは「第6 傷害・疾病保険契約に固有の事項」の問題が取り上げられておりますが,まずその(前注)と「1 他人の傷害・疾病等の傷害・疾病保険契約等(他人を被保険者とする傷害・疾病保険契約等)における被保険者の同意」の部分につきまして事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   まず,(前注)では,今回御審議いただく傷害・疾病保険契約とは何かなどについて整理をしております。ここでいう傷害・疾病保険契約とは,第1回会議において御審議いただきましたとおり,被保険者の傷害・疾病等を保険事故とする契約であり,その保険金としては,医療保険契約の入院保険金や自動車保険契約の搭乗者傷害条項における後遺障害保険金,さらには資料には記載しておりませんが,高度障害保険金もこれに当たります。   これらは,例えば入院1日当たり5000円とか,高度障害となったときに3000万円といった形で保険金額が約定されることが多く,いわゆる定額保険に当たります。なお,海外旅行傷害保険契約の治療費用保険金のようにかかった実費を支払うものがありますが,これが損害保険契約に当たることは,第1回会議において御説明したとおりであり,これについては後ほど取り上げます8頁の(後注)において問題提起をしております。   次に,(前注)の「これに対し」という文言の下では,いわゆる死亡給付について記載をしております。実務上,傷害保険や医療保険といった名称で呼ばれている契約においては,傷害・疾病等によって死亡した場合に一定の金額を支払う旨約定されていることがありますが,これがここでいう死亡給付に当たります。これは,死亡した場合に保険金が支払われるということで,生命保険契約であるという見方もできる一方で,傷害・疾病等による死亡について保険金が支払われるということで,契約法上,傷害・疾病保険契約として位置付けるべきという見方もできます。   ただ,これについては抽象的に検討するのではなく,個々の規律の内容を踏まえて検討すべきと考えられることから,今回はひとまず個々の項目ごとに死亡給付以外の給付に関する検討と併せて死亡給付の規律の在り方についても御検討をお願いすることとしております。   続きまして,1について御説明しますと,ここでは他人を被保険者とする傷害・疾病保険契約等における被保険者の同意について問題提起をしております。被保険者の同意については,生命保険契約に固有の事項として既に御審議いただきましたので,生命保険契約における規律との違いを中心に御説明いたします。   まず本文では,死亡給付以外の給付について問題提起をしております。①では,保険契約者と被保険者とが別人である傷害・疾病保険契約を締結する場合には,原則として被保険者の同意を得る必要があるとしつつ,被保険者が保険金受取人である場合には同意を要しないという考え方を提案しております。   ①のただし書は,生命保険契約について提案した規律とは異なる規律でございまして,現行商法の第674条第1項ただし書に相当する規律でございます。生命保険契約においては,同項ただし書を削除すべきであるという立法論があるということは第5回会議において御説明したとおりでございまして,この立法論については後ほど御説明します死亡給付との関係を踏まえてさらに検討する必要がありますが,本文で問題提起しています死亡給付以外の給付については,生命保険契約とは異なり,その請求権が発生した時点で被保険者が生存しており,この者を保険金受取人とすれば,保険金目当ての犯罪を誘発するなどという弊害を防止するために被保険者の同意を要求するまでの必要はないと考えられます。   そこで①では,ただし書の規律を設けることを提案しております。ただ,実務上は死亡給付以外の給付は,死亡給付とセットで約定されることが多いことから,この規律についても後ほど御説明します(注)1の死亡給付の規律とセットで検討すべきとも考えられるところでございます。   次に,②と③は,保険契約締結後,保険事故発生前に保険金請求権を譲渡し,又は質権の目的とする場合の規律でありまして,生命保険契約について提案した規律と同じでございます。   さらに,④は,被保険者兼保険金受取人が,保険金請求権を譲渡・質入れした場合に,その譲受人や質権者がさらに譲渡・質入れをする場合には被保険者の同意が必要であるとするものでございます。これは商法第674条第3項の後半部分に相当する規律でございます。   以上御説明しました本文は,死亡給付以外の給付に関する規律でございまして,これについてはその必要性を含めて御議論をいただければと考えております。   次に,死亡給付に関する規律について具体的な検討課題を(注)に記載しておりまして,まず(注)1では保険契約締結時の規律の在り方について問題提起をしております。この点については第5回会議において,○○委員から損害保険会社における実務の御紹介をいただくとともに,生命保険契約における規律とは別に議論をさせていただきたいとの御発言があったところですが,本日席上に資料を御用意いただいており,これについては後ほど損保業界の両委員から御説明いただけるということでございます。   まず(注)1の(ⅰ)では,イベントや遊園地への入場者を被保険者とする傷害保険契約や自動車保険契約の搭乗者傷害条項のように,被保険者が抽象的には特定されているものの,保険契約締結時には,具体的にだれが被保険者となるのかが特定されていない契約を念頭に置いております。さらに(ⅳ)に書きました家族保険契約において,契約締結後に新たに家族の一員となったことによって被保険者となる者についても同様のことが妥当するようにも考えられます。   この(ⅰ)では,このような契約における規律の在り方を御議論いただきたいというものでして,少なくとも保険契約締結時には被保険者の同意をとるすべはないわけでございますが,そのような契約の保険金受取人は無限定でよいのか,被保険者が具体的に特定する段階を念頭において何らかの規律を設ける必要があるかについても併せて御検討いただければと考えております。   なお,これは先ほど御説明しました死亡給付以外の給付や生命保険契約についても同じことを検討する必要があるようにも考えられます。   次に,(ⅱ)では,被保険者又はその相続人若しくは親族が保険金受取人である場合に関する規律について問題提起をしております。   さらに(ⅲ)では,(ⅱ)の場合と一部重なりますが,異なる観点からの整理として,保険契約者以外の者が保険金受取人である場合を掲げております。   実務上は,被保険者の同意を保険契約申込書等の書面などで得るという実務と,被保険者の相続人や親族を保険金受取人とする場合には,そのような方法では被保険者の同意を得ることはしないという実務とがあるようでございます。ただ,後者の場合でも少なくとも保険契約者に対しては明示的又は黙示的な同意があったと言えるケースや仮に同意を求めれば同意をしたと思われるケースもあるようにも思われますが,すべての事案で同意があったと言えるかは必ずしも明らかではございません。   (ⅱ)や(ⅲ)につきましては,死亡給付を内容とする契約を無制限に認めると,生命保険契約と同じく保険金目当ての犯罪や保険の賭博化などという弊害が生ずるおそれがあることから,これを防止するために何らかの方策を設ける必要があると考えられますが,この方策として常に被保険者の同意を得ることとする必要があるか,それともこれとは別に,あるいはこれと選択的に何らかの別途の方策が考えられるかといった観点からも検討する必要があるようにも考えられます。   また,今後はインターネットによる契約も増えてくることが予想され,保険契約者の契約締結意思とは別に,被保険者の同意を常に確認しないと契約が有効に成立しないということでよいのかといった観点からの検討も必要であるとの指摘もあり得るところであり,保険金目当ての犯罪などの防止という趣旨を他の方法によって実現することができるのであれば,そのような方法を許容することも考えられるのではないかとも思われます。   他方で,第5回会議において,例えばクレジットカードに付帯した傷害保険や医療保険については,知らないうちに被保険者にされたというトラブルがあるという御指摘もございましたように,自己を被保険者とする保険契約を締結されることを希望しない被保険者の意思を尊重する必要性があるようにも考えられますし,また同意を求めたとすれば,同意をしたとは到底言えないケースについて保険金の支払を認めることは問題があるようにも考えられます。   例えば,被保険者であることを希望しない被保険者は,契約関係から離脱することができるとすることや,その前提として契約が締結されたことを被保険者に認識させる手段を定めること,さらには,保険契約締結時に同意を求められれば,同意をしなかったことが明らかな場合などには,そもそも被保険者とはならなかったものと扱うことなどが考えられ,これ以外にも実務上どのような規律が設けられているのか御指摘いただくとともに,どのような規律が必要かなどについて御議論いただければと考えております。   ここで,本日席上に配布しましたA4横の「他人を被保険者とする人保険契約における保険契約締結時の被保険者の同意に関する規律」と題する一枚紙,こちらを御覧いただけますでしょうか。   こちらは,冒頭に御説明しましたように,事務当局において作成したものでございまして,これを作成した趣旨は,死亡給付というのは死亡を原因として保険金が支払われるという点で生命保険契約と共通していることから,相互の整合性に留意しつつ御検討いただきたいというものでございます。   例えば,左側に1と書いてある列を御覧ください。   現行商法第674条第1項では,被保険者本人を受取人とする場合には同意が不要とされておりますが,第5回会議において御審議いただきましたところ,被保険者を受取人とする場合も被保険者の相続人が結局は保険金を受け取ることになることから,被保険者の同意を必要とすべきという御指摘をいただいたところでございます。   そこで,左から順に「不要」,「必要」と書いております。これを前提とすれば死亡給付についても同意を求めることになりそうですが,同意を要求しないとすれば,その整合性がどこにあるのか,被保険者の同意を要求することによって防止しようとした弊害はどのようにして防止することになるのかについて検討する必要があるように考えられます。ほかの列についても,相互の整合性に特に留意して御検討いただければと思います。   さらに,(注)1の(ⅳ)では,いわゆる家族保険等について問題提起をしております。いわゆる家族保険とは,家族全員を被保険者にする契約であり,(ⅳ)ではさらにこれ以外にも海外旅行傷害保険のように,保険契約者が一緒に海外に行く親族とともに被保険者となるような契約についても検討の対象としております。   この点に関連して,被保険者の中に未成年者が含まれている場合には,親権者だけの同意を得ている場合もあるようであり,立法論としてこれを考えたとしても,そのような法律関係を明確化するために何らかの規律を考えることもあり得るように考えられます。   この(ⅳ)を検討する際にも,個々の被保険者の意思を尊重すべき場合もあるようにも考えられ,(ⅱ)や(ⅲ)と同様の検討が必要とも考えられますし,保険契約締結時に家族であることを理由に特別の規律を設けるとすれば,家族でなくなった場合には,当然契約関係から離脱するものとする必要があるようにも考えられ,実務上はそのような規律とされている契約もあるようでございます。   以上,(注)1について御説明しましたが,(ⅰ)から(ⅳ)までを掲げましたのは,検討に当たっての視点を提供しようという趣旨でございまして,(ⅰ)から(ⅳ)までを別々に御議論いただこうという趣旨ではございません。そこで,被保険者の同意が求められている趣旨にさかのぼりつつ,生命保険契約の規律との整合性などといった観点から御検討いただければと思います。   また,死亡給付に関する契約締結後の規律については(注)2で問題提起をしておりまして,併せて御意見をいただければと考えております。   続きまして,(注)3では,(注)1に関連しまして,いわゆる団体傷害・疾病保険契約に関する特別の規律を設けることの必要性について問題提起をするものでございます。団体傷害・疾病保険契約とは,一般に,一定の団体の構成員を包括して被保険者とする傷害・疾病保険契約をいいますが,ここでは特に事業主が保険契約者となり,その従業員等を包括して被保険者とするいわゆる全員加入型の団体傷害・疾病保険契約について御議論いただきたいと思います。   全員加入型の団体傷害・疾病保険契約においても,先ほど御議論いただきました全員加入型の団体生命保険契約と同様に,個々の被保険者の同意を得ることが困難であるといわれることがございます。そのため,実務上は,事業主が死亡給付の受取人となり,これを被保険者の遺族等に支払う場合でも,個々の被保険者から書面による同意を得ることとはせず,災害補償規程等に保険契約の内容を記載するなどの方法により,被保険者に保険契約の内容を周知し,不同意の申出をした被保険者のみを保険契約の対象から除外するという方法が行われているようでございます。   そこで,特に全員加入型の団体傷害・疾病保険契約における被保険者の同意に関する規律の在り方について特段の御意見がございましたらいただきたいと思います。   最後に,(注)4は,ほかに傷害・疾病保険契約に固有の問題はあるか,また,傷害保険契約と疾病保険契約とを分けて規律することの必要性はあるかについて問題提起をするものでございます。   以上でございます。 ● ありがとうございます。それでは,ただいまの部分について御意見をいただきたいと思いますが,損保側から少し御説明があるということで,お願いいたします。 ● 最初に,議論の前提として資料説明という形でやらせていただければと思います。   お手元の資料としてはパンフレットと,それから「『傷害による他人の死亡に関する保険』の主な契約形態」,この2種類ございます。まずパンフレットの方からちょっと御説明させていただきます。   このパンフレットを御覧いただくことによって概略を御理解いただければと思いますので,まずこれを開いていただきまして,こういう形で御覧いただければと思うのですけれども,この左側の普通傷害保険・家族傷害保険の特長というここでございます。ここの②にございますように,まず個人型の方の傷害保険が普通傷害保険という名前でございます。それから,家族型の方が家族傷害保険となります。その下に絵がございますけれども,被保険者の範囲は,普通傷害保険の場合は記名した方,その人になりますが,家族傷害保険の場合は,記名した一名の人を本人として,その配偶者及び生計をともにする同居の親族,別居の未婚の子が自動的に被保険者になります。記名した本人との関係は事故が発生した時点で判断されますから,例えば保険期間の途中で子供が生まれたり,それから高齢の親と同居することになっても,これも自動的に補償されるということになります。このように,家族をまとめて無記名でというのがこの商品の特長で御好評をいただいております。   さらに,こちらの中を開いていただきまして,ここに「普通傷害保険・家族傷害保険はこんなときにお役に立ちます!!」というところがございますけれども,ここをちょっと御覧ください。ここに左側からケガによる死亡,その下にケガによる後遺障害,それから右に行きましてケガによる入院という形で順番に書いてありますけれども,これらがセットになっております。あくまで保険事故はケガ,傷害であって死亡給付,これはその結果に過ぎません。さらに,結果が死亡なのか,それから入院なのか等で保険金額が分かれます。この点,死亡を保険事故としている生命保険とはちょっと異なる点だと考えております。あと,このケガなのですけれども,事故といいますか,急激かつ偶然な外来の事故によるケガが補償の対象ですので,偶然の事故かどうかという調査を必ず実施するということも生命保険とは異なる特色ではないかと思います。   あと,ちょっと挟み込みの方の紙を御覧ください。   これが緑色の紙なのですけれども,「ご契約セット一覧表」ということで,保険金額,保険料を記載しております。死亡と後遺障害は保険金額一本共通としていて,生命保険と異なって死亡だけでは基本的には販売しておりません。それから,あと保険期間ですけれども,これは通常一年でございまして,基本的に毎年違う点も長期が主流の生保とは異なる点です。   この保険は,日常生活全般のケガを補償する保険ですが,交通事故だけを補償する保険もありまして,その交通事故だけを補償する保険での個人型が交通事故傷害保険という名前です。それから,家族型はファミリー交通傷害保険といいます。さらに,このパンフレットは個人契約用ですけれども,実際にはこの商品は企業,団体を通じて募集されているのがむしろ主流です。大きな企業さんですと,企業の福利厚生制度として従業員に募集していらっしゃいますし,それから,企業,団体を通じて加入された場合,団体割引が適用されて保険料は安くなります。   以上のとおり,傷害保険は生命保険と異なる商品特性を持っていますので,外形的に定額の死亡給付という点だけを見て生命保険と同一の規律とすべきではないと考えております。   引き続きまして,こちらの方の資料を,○○委員の方から説明させていただければと思います。 ● それでは,お手元の横長のA4判の紙二枚ございますが,これの「『傷害による他人の死亡に関する保険』の主な契約形態」ということで,被保険者の同意という視点から契約をくくり出して御説明をしたいと思います。   一番上の緑色のところに書いてございますように,「傷害保険」では死亡保険金受取人を特定して指定しない限り,被保険者の法定相続人が死亡保険金受取人となることを約款で規定しているということで,傷害保険の普通保険約款に書いてございますように,まず被保険者の同意を得て死亡保険金受取人を指定することができるけれども,指定がないときには法定相続人が死亡保険金受取人となりますということが約款上明示されております。もともとこれにつきましては明示的な同意をはとっておりませんが,傷害保険そのものは遺族の補償とか,遺族が被る損害のてん補ということを要素としておるということがその背景ではないかと考えております。   次に,明示的な同意をとっていない契約形態を大きく4つのグループに分けて下の方に列記をしてございます。大体ここで全体の3分の2ぐらいがこの中に記載されているというふうに考えております。   1番は,被保険者が不特定である契約形態。これは事前の同意がとれないというものでございます。ここに①,②がございますが,①番は自動車保険でございまして,搭乗者傷害保険,自損事故条項,これらにつきましては,事故が起こったその場の車に乗っていらっしゃる方が被保険者,補償の対象となる方でございますので,契約するときに被保険者を特定することができないということはお分かりいただけると思います。   それから,②の無記名包括,これはイベント,施設の入場者につきまして,被保険者として包括的に御契約するというタイプでございます。このタイプにつきましてもどなたが入場するかは実際には分かりませんので,このタイプの契約につきましても入場者や参加者が被保険者となるため契約時には特定できないと,こういう問題がございます。ただ,通常この包括型の場合には,保険金額がそう高額にならないということが言えると思います。   次に,下の2のところでございますが,被保険者が団体構成員の全員加入である契約形態(団体契約)ということでございますが,③につきましては御覧のとおりいろんなタイプがございます。ある団体の活動,あるいは学校で活動している間,こういう範囲につきまして,団体構成員をまとめて加入いただくということで,非常に安い保険料でケガの補償をしているということでございます。例えば学校で起きますと,子供たちが例えば学校でこの保険をつけようということで契約する場合,学校の生徒につきまして全員被保険者にした保険契約をした場合,先生方に生徒全員の同意書を集めていただいて提出漏れがないかどうか,これを事前にチェックしていただき,そして漏れますとまた保険金がお支払できませんのでかなり御負担をおかけするというようなことが十分考えられて,私どももそういうところを危惧している次第でございます。   それから④につきましては,企業が就業中・海外出張中などの災害を補償する傷害保険でございます。   これにつきましても,下段に書いてございます団体生命保険に近い企業を受取人にした形態の契約を除きますと受取人は遺族となっております。したがいまして,モラルリスクは余り発生は考えにくく,遺族補償としての合理的な補償内容である限り,同意はしないことは通常想定できないというふうに考えております。   また,ここに書いてございます③の下の方に書いてございますが,スポーツ安全協会,学校教育研究災害傷害保険等々は今やかなり日本全国に広がっておりまして,1000万人以上の御加入者がございますし,いずれにしましても大変公的な性格の強い補償制度として機能しているということでございます。   それでは,次の頁をお開けいただきたいと思いますが,次の類型は,3番の家族をまとめて契約するというタイプでございます。   これにつきましては,先ほど○○委員から御説明がありましたとおり,仮に家族全員の同意をとるとするならば,契約時に家族傷害保険の世帯主に同居,別居を問わず家族全員の同意を集めていただくということが必要でございます。同時にまた,契約時に同意をとりつけたとしても,途中で親を引きまとめて同居するケースでは,親の同意をとりつけませんと保険金はお支払できないということになりかねないということでございます。   また,家族傷害保険の多くは,企業の福利厚生として従業員の方が任意で加入される団体契約でございますので,非常に加入しやくす便利な保険としてお客様から好評いただいているということでございますので,こういう同意が漏れて保険金が支払えないというようなケースが発生しますと,加入の利便性にも問題が生じますので,保険加入の利便性につきましてもぜひ議論する際の要素の一つとしてお考えいただきたいというふうに思っております。   4番目は,即時締結,非常にスピーディーに契約をする必要があるというふうに考えているものでございます。これは海外旅行の旅行保険が大体典型的な例でございますが,皆様が空港で御契約される際によくお使いになられますが,家族契約につきましては家族全員で入ると保険料が安くなるということで,これも広く利用されていますが,家族契約につきましては,海外旅行をする際に家族がそれに対して反対する,同意をしないということは余り考えにくいと。したがいまして,旅行会社のカウンターや空港におきまして発券機を使うときに家族全員が全員そろって同意をするということは,やはり実務的にどうなのかという考えがございますので,こういう場合につきましては利便性を考えまして御配慮いただければというふうに思っております。   以上,全体をまとめて補足説明というのが下にございますけれども,被保険者を大きく分けますと,被保険者を契約時に記名し特定する契約と,被保険者があらかじめ不特定であって特定できないというふうなケースに分かれております。特定しない契約につきましては,死亡保険金受取人は法定相続人となりまして,被保険者を特定する契約もかなりの部分が保険金受取人が法定相続人というふうになります。保険金受取人が法定相続人以外となる契約は少なく,それらの契約は被保険者の同意をとるか,あるいは同意を得るとほぼ同じ効果のある方法で被保険者に周知をしているというのが実態でございます。   モラルリスクの防止とか人格権的利益の保護という観点から,新しい規律の中で傷害・疾病保険契約につきましても同意主義を原則とすることにつきまして異議を唱えるものではございませんが,傷害保険が広く現在普及しているという事実や,それから現行の実務を併せて御考慮いただきまして,保険金受取人が法定相続人となる場合などにつきましては,当然同意があることが推定されるというような例外的な規定を設けていただくということをぜひ御検討いただきたいと思います。   また,海外の事情でございますけれども,私どもが調べた範囲では,フランスでは法律上,生命保険の条文には被保険者同意が明記されておりますが,傷害保険にはこの旨の明記がございません。保険会社,それから監督官庁とヒアリングをしましたが,傷害保険の場合は被保険者の同意は不要であり,簡単に便利に保険がつけられるという,こういう保険としての価値というのは十分あるのだと,こういう御意見でございました。   また,ドイツにつきましては,ある保険会社では,保険契約者が全額保険金を受け取るという場合には同意を要するけれども,被保険者の相続人がそれぞれに受け取る場合につきましては同意を不要ということにしております。こういうような事情もございますのでぜひこの辺も御考慮いただきたいというふうに思っております。   以上でございます。 ● ありがとうございます。この問題について相当の御意見があるかと思いますが,ちょうど休憩する時間なので休憩に入りたいと思うのですが,ちょっとただいま御説明いただいた○○委員が御所用で中座されるということですので,休憩前に今の○○委員と○○委員の実務についての御説明に対する質問がございましたらここでまず承っておきたいと思いますが,いかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● ○○委員から海外の例について御紹介ありましたけれども,フランスやドイツでは,日本円にして数千万円に上るような傷害死亡保険金についても被保険者の同意は必要ないと,そういうルールでやっておられるということなのでしょうか。 ● フランス,ドイツにつきましては,金額が一体幾らになるのかにつきましてはまだ調査中でございます。特にドイツについては,そういう金額の制限については特にまだ聞いておりません。フランスについては今確認中でございます。   また,これについても追って御連絡しますが,傷害保険という概念そのものが,特に法律上そういう被保険者の同意をとりつけるという形にはなっていないというのは事実でございます。ですから,金額上どこまでというのは保険会社で決めるのかもしれませんが,法律上求められていないということは確認はしております。 ● 後の定義にもかかわってきますけれども,傷害保険で死亡保険給付があるからといって,その部分は生命保険だから生命保険のルールに服しているということもないという,傷害保険は死亡保険金が支払われても傷害保険であると,そういう理解の前提で同意は一応要らないようだと。金額については後ほど何か分かりましたら教えていただきたいと。   ほかに,○○幹事,どうぞ。 ● ○○委員の御説明,御趣旨はよく分かったのですが,一点質問と,それから一点今こちらにもありました海外の事情についてというもの,私個人として経験しているところを御紹介したいと思います。   御質問の方は,このお配りいただいた色刷りの資料の3と4の家族にかかわる部分なのですけれども,これは先ほど3の方については被保険者の方に挙がっているのは一定の範囲の者が自動的に被保険者になるということでございましたが,4については代表者と同行する家族ということでございました。この場合,お尋ねしたいのは3の家族の概念と4の家族の概念というのは連動しているのかどうなのかということなのですけれども,先ほどその前に○○委員からお話があったときに,同行する家族の中には,例えば3でいうと同居していないけれども,たまたま旅行だけは一緒に行くというような人が入っているような可能性もあるわけなのですけれども,そのあたりの仕分けというのが一体どういうことになっているのかというのが御質問です。これは単なる御質問です。   それから,海外のことについて被保険者の同意が要るのか要らないのか,私は生活経験はフランスしかございませんけれども,どうなっているのか必ずしもよく分からないのですけれども,それとは別の話で,この○○委員の資料の2のタイプのような団体契約で日本ではカバーされている問題ですけれども,私の経験ですと,例えば学校で子供が集団でどこかの見学に行くとか,あるいはスポーツクラブに入って何か競技をするというときに保険に入るのは個人単位ですね。それで,保険に入っていないと旅行には行けないし,試合にも出られないということで非常に不便であります。泣いている子供もいます。泣いている子供もいますけれども,それは個人単位でやるというのがどうも先方の方の感覚のようだというふうに思っております。これは私の個人的な体験に基づくものでございますので。 ● ほかにいかがでしょうか。とりあえず御質問よろしいでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● この団体管理下の学校契約団体傷害とか,こういうものの死亡保険金はどのぐらいなのでしょうか,それだけ教えていただければと思います。 ● 一般的に,例えば本日は大学の方がいらっしゃいますので,今一般的に大学では学生教育研究災害傷害保険というのが今250万人ぐらい学生さんがお入りになっておりますが,これでいきますと,死亡保険金は通常2000万円というタイプ,Aタイプというのが2000万円になっています。例えばお亡くなりになったら2000万円,こういうことが一般的でございます。それから,スポーツ安全保険,スポーツ安全協会の保険ですと,御契約金額が,これは確かAタイプが2000万円,それからBタイプがワイドで2100万円,この程度でございます。 ● それは,申し込むときに名前を書くのですよね。 ● はい。 ● それは同意というふうに見ることはできないのですか。 ● 日本国際教育支援協会とかスポーツ安全協会が契約者となる団体契約で,それぞれの被保険者である子供たちが加入するとき,あるいは親が保険料を払うということもございますけれども,そういう場合に名前を記載して加入すると,それをどういうふうに見るかという問題だと思いますけれども。 ● 子供はちょっと別なので,学生がゼミの旅行に行くのできちんと申し込みますよね。名前は申請すると。そのときに,それは確かにいわゆるさっき言った被保険者募集と同じような形でやるわけですけれども,そこに確かに同意は今していませんが,それは条項を見て,ゼミ合宿のしおりというのを見て申し込むわけですね。同意がそこに,同意を兼ねると言えば済むような形で被保険者募集が行われているのではないかというのが私の質問なのですけれども,それは子供の場合はちょっとまた別の問題,保険金額がどこまでとか,だれが同意するというのがありますが,普通の意思能力のある人については,それは同意があると言ったっていい現状ではないかということだけ質問しておきます。 ● そういうふうに見ることもできると思いますが,同意という形にはなっていないと。 ● 現状はそうですね。 ● ほかに御質問はございませんか。   ここで中断いたしまして,休憩したいと思います。           (休     憩) ● それでは,議論を再開したいと思います。   被保険者の同意の問題について,どの点からでも御質問,御意見ございましたらお願いします。   ○○委員。 ● 生命保険会社として発言いたしますけれども,我々としましては,傷害・疾病保険契約が人保険である以上,定額給付方式,損害てん補方式の事例であっても,生命保険契約と同様に被保険者が保険金受取人でない場合には被保険者の同意を得ることを原則として考えておりますが,死亡給付以外の場合において,被保険者が保険金受取人である場合の特則を設けることについては,特段に異論はございません。   もっとも,他人の死亡の生命保険契約に関しましては,先ほど事務当局の方からも御説明ありましたけれども,この場合,実質的に相続人が受取人となることから第674条第1項ただし書を削除するというのがかつての議論の方向性だったと認識しております。この議論は,傷害・疾病を原因とする死亡に関する給付を行う場合に関しても妥当するものと考えております。この点,(注)1について,被保険者が保険金受取人となっていても原則は同意を要件として,一定の例外を設けることの当否を検討すべきと考えておりますが,その例外の範囲が際限なく広がらないよう,生命保険契約の規律とバランスのとれた規律をすることが望ましいと考えております。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● とても難しい問題で,多分,○○委員はこのたくさんの例がきちんとうまく同意が必要だという立場からうまく整理できるのかという,そういう御質問でもあると思って伺っていたのですけれども,やはり基本的には今おっしゃったように同意が要るという前提に立って実務的にも負担のない範囲でとれるのだという,そういう形で,ですから同意は必要だという原則に立った上で,背景の考え方は定額保険,人に関する定額保険で,保険事故かどうかは別として結果として死亡に対して定額の給付をするものについては同じようなモラルリスクがあって,あえて言えば傷害の方は保険料がもっと安い分だけ危険性はより大きい可能性があると,そういう前提でその方向をどこまでそれを要求できるかというのを具体的に考えていかなければいけないのだというふうに思うのです。   それは,具体的に考えていくといろいろそんなに損害保険会社又は生命保険会社が売っておられる傷害商品でもそうかもしれませんが,負担のない形でできるのではないかという感じがあるのですけれども,先ほどの団体の学校なんかで入る保険,これはやはり基本的には子供の場合には葬祭費用に抑えるとか,そういう死亡給付については抑えるということを前提として,成人の場合にはその申込みのときに同意もするという,取りつけることは簡単というか,今をちょっと工夫すればできることではないかなと思うのですね。   家族の場合,これは私の知っている実態は,みんな勧誘のチラシと申込書を配られまして,大体はその場ですぐやらないで持って帰って家族と相談して幾らぐらいにすると。だからそこで作業することはそんなに難しいことではないと,子供はちょっと別ですけれども,ただ問題は家族,同居の家族のところが問題で,だから同意なしでとれる保険金額というのを例えば葬祭費用500万とか400万か300万か分かりませんが,そこまではいいというルールを置いてやる,そこの部分を超えるのか,そこはいろいろ議論はあるかと思いますが,海外旅行傷害だって,大体普通はそこに家族ばらばらにならないように一緒にいるわけで,全員サインしろということ自体は難しくないと。だんだん難しくなってくるのが構内入場者と搭乗者傷害ということだと思うのですけれども,構内入場者,例えば遊園地とか何かに行ってそこでケガをしたら払うというものについて何のためにつけているかというと,結局は見舞金相当分のものをお支払して,それで,もし余り過失があるかどう分からなければそれで我慢していただこうと。責任があればまた別途賠償責任保険で払わなければいけないと,こういうことだと思いますが。これは何かというと本当は見舞金費用保険であって,何かそういう一定の傷害の方にはこれだけのお見舞金をお支払しますという見舞金費用保険というものをパッケージしたものを遊園地なりそういうところに売るというのが本当なのかもしれないと。   つまり,この百何年間保険法をずっと手当てしないで来たいろんなつけを今,一遍に払わなければいけないのでいろんな工夫をしなければいけないわけですけれども,あと搭乗者傷害保険と,搭乗者保険は御存じかもしれませんが,これはモラルリスク,保険詐欺をやろうとするときに一番うま味のあるところなのですね。定額給付の実際の給付は2000万ぐらいにとどめられて,入院給付金が1000分の1.5ですから,上限が1万5000ぐらいで売るという形でやっておられますけれども,この入院給付金のときは全然同意の問題はないわけで,問題は死亡のところだけだと。この死亡のところも1000万,2000万ですけれども,考えてみたら人身傷害の方の被保険者の中に入れたらどうなのかとか,いろんな解決策はあると思うのですね。そういう形でこの場合をどうせよというのを全部いざとなったらやらなければいけないかもしれませんけれども,相当工夫してそんなに損害保険会社の方に悲鳴を上げなくても同意はとれるというような形で持っていくことは可能ではないかなと。ただ,基本的には同意が必要だという前提の上で工夫ができないかというのを考えていけるのではないかと。定額保険というものを転用して,ある機能を果たそうとしていたところは本来それを正面からカバーする商品というものに時間をかけて,ある程度一定の時間の中で変えるということも考えられたらいいのではないかと思います。   あと一点,3番目の団体契約に特別の規定を設けるかというところも,やはりこれも被保険者証の問題,これは今までの同意はモラルリスクのものですけれども,先ほどのような情報をきちっと家族に伝えるという意味でのことは同じように必要だろうと思います。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 今,○○委員がおっしゃったことに基本的に賛成なのですが,一番おっしゃった中でも問題になっていた自動車保険の搭乗者傷害の部分なのですけれども,これに同意を事前に求めるというのはなかかな難しいことは事実なので,同意を原則として要求するとして,そこを何とか解釈でクリアできないかということを考えざるを得ないのではないかと思っているのですね。解釈という場合にどういうことがあり得るかと,これはごく一つの仮案みたいなものですが,要するに今の任意の自動車保険の普及率から言いますと7割を超えるぐらいでしょうか,そのセットものの自動車の総合保険がそういう形で売れておって,家族などの場合でしたら事前に同意がとれる場合もあるのでしょうけれども,友人を乗せるとか,帰りに一緒に乗せてあげるよという程度のときに一番問題になろうかと思うのですけれども,普及率7割というような前提を見ますと,通常といいますか,多くのケースで自動車にそういう搭乗者傷害のついた保険がかかっているということを大体認識されているわけですから,それに乗るという場合は,明示ではなくても一応黙示の同意をしているのだという推定が働くようなケースについては,改めて同意を求めなくてもそれは同意をしていると,黙示的な同意をしているという形で解釈上おさめられるのであれば搭乗者傷害といったような形の普及した形の保険はクリアできるかなと思うのですけれども,海外旅行傷害保険のようなタイプですと,やはり家族だけではなくて,場合によっては友人が一緒に行きますよと,そういうときに同行の者だからといって同意なく海外旅行傷害保険を勝手につけられるというのでは,それは友人であったとしてもそれはちょっと冗談やめてくれという話になりかねないので,そういう全く推定が働かないというようなケースと,一定同意をしているということが推定できるようなケースと分けて,そこは一定解釈でやるか,処理するか,推定できるようなケースについての規定を置くかという,そんなことかなと思うのですが,やはり推定を設けるような規定はやはり難しかろうなというふうに現段階では思っておりますので,そこは解釈対応かなというふうには思っております。 ● ○○委員。 ● 同意ができないという理由をこんなにたくさん並べられますとちょっとへこむのですけれども,正直大変迷うところなのですが,ただ,事実上,要するに保険契約,すみません,こんなこと言って,保険契約は諾成契約で契約ルールにのっとってやっているというのに,やはり被保険者の同意がなくてもよいというふうにされるのは,やはり勝手に保険がつくのはそんなことが行われていいのという大変反発が強うございまして,それをあなたがもらえるのだからいいでしょうというふうに押さえ込むというのがなかなか説得的ではないのですね。そういう意味では,被保険者の同意をとるということが行われないで保険契約が行われるということに対して,通常消費者はそういうことに慣れていませんので,そういう意味では大変さっき申し上げたような素朴な反発というのが大変ありまして,それを人格権と呼ぶかどうかは知りませんけれども,そういうのがまずあるということです。   それから,もう一つありますのは,例えばクレジットカードに付帯をする家族傷害保険で実際にあった事例ですが,任意で入る方なので被保険者がお金を払う,クレジットカードから代金が引き落とされるというような,そういうタイプの保険なのですが,クレジットカード会社がカードホルダーさんのところに電話をかけて,電話だけで同意をとるというタイプのもので,たまたま出たのがおばあちゃんで,よく分かりもしないで,はいはいと言ったらそれで同意だったということで,何か月も落としていて,御本人が後で気が付いてこのお金は何だという話になって気が付いてクレームを言ったら,これはあなたのところにお金が行くのだから同意は基本的には要らないのですと,そう言われたという事例が実はこれ何例かありまして,そこのカード会社がそういうふうにやっていたものですから何例かございまして,そういう形でそれとは今ちょっと違いますけれども,それでもやはり基本的に被保険者の同意をとるという,すみません,原理主義者ではないのですけれども,そういう原則をある意味痛感していただかないと困るかなと。それで,どうしても搭乗者傷害のようにとれないというものについては,さっきおっしゃっていただいたような方法で特則をお設けになるとか,何か同意をとるとき規制するとか,そういう方法でお行きになる方が筋論ではないのかなと思います。 ● どうぞ,○○委員。 ● 原則は原則だというお話なのですけれども,なかなか言いにくいのですけれども,いわゆる消費者の利便性も考えてもらわないといけないなということで,この消費者の利便性がややもすると企業というか,保険会社の都合とマッチするというようなところもあるかもしれないのですけれども,やはり例えば海外旅行傷害保険なんかはやはり利便性があるから成田でちょこちょこと記入してすぐに入れるという,それで入るということも非常に私も自分で使っている身でありますので,そういったところも消費者利便というところも考えなければいけないと。死亡給付以外のところはやはりそういう,例えば保険事故が発生してから被保険者が生きているということですから,余りモラルリスクの心配はないのですけれども,やはり死亡給付は若干モラルリスクは心配した方がいいかなという気がします。   それから,家族保険なんかも,やはり家族で,例えばお子さんが遠いところに下宿しているなり,あるいは留学しているといったときに,簡便に入れるということで皆さん多分使われるということでありますので,そういったところでやはり消費者の利便性というところでも考慮する必要があるのかなと。   それから,一つよく分からなかったのですけれども,私も昔マリン関係のイベントを主催したことがあって,そのときにイベント保険をかけたのですが,そういう場合は参加者に,案内には参加料の中には保険料も入っていますということを書くのですけれども,これは同意をとるということになると,それは保険会社がやらなければいけないという話になるのでしょうかね。そこがちょっといま一つイメージができないのですけれども。 ● 別に保険会社がとる必要はないのではないかと思うのですけれども。自分について保険がかかるということについて被保険者の同意がどういう形でか確認できればいいと。それは団体のイベントの主催者がそこをとるという形でも,それはいいだろうと思うのですけれども。 ● 同意というか,お知らせという感じなのですけれども。 ● そこが微妙なところなのです。確かにきちんとやっているのだということをやろうとすれば一人ずつ名前を書いてもらって,あるいは判こでもということになるので,そういうことをいちいちやらないといけないでしょうかねという,先ほどの実例の中でもいろんな多数のメンバーがいる団体や何かで,学校なんかはまさにそうなのですが,いちいちやるというのがまた事務コストは相当かかるという面は一面ではあると。 ● 御説明させてもらったので,一応我々の意見としては,まず死亡給付以外の給付のところは,今の案のとおり①のただし書についてこのとおり設けていただきたいと。当該他人が受取人となる場合には,基本的には一方的に受益だと思いますので,被保険者以外の者に保険金が行くことはないので妥当だと,ただし書は妥当だと考えると。ただ,議論になっております死亡給付のところなのですけれども,○○委員から御説明しましたけれども,(注)1の(ⅱ)のような,保険金受取人が相続人,つまり遺族の場合,言いかえると保険金受取人を指定しない場合には同意が推定できるというような形にしていただきたい。先ほど我々は同意の意味合いを全く無視するのはとんでもない話で,同意主義の意味はよく分かっておりますし,そういうリスクを軽視するつもりは全くございませんけれども,逆にちょっとお話にも出ましたけれども,同意をとる煩さなことが保険会社というよりも契約者さんの方々が煩さだということで,どのくらい意識されるかはいろいろあると思うのですけれども,それをさっきの利便性という言葉で言わせてもらっているのですけれども,そのことが結構煩さになるのではないかと。さらに,一方で同意が普通どう考えたって同意しない人たち,これを同意しなくてもいいというようなつもりはなくて,同意がとれるような状態のものを基本的に考えていて,さらにそこでそうだとしても,受取人が遺族であれば幾ら高額であってもいいということではないと思いますので,その額の問題はちょっと技術的にとか考えますと,むしろこの基本法ではなくて,監督法とかそういう形でやる方が自然なのではないかと,そういうイメージは持っております。   とりあえずその二つを申し上げたいと思います。 ● ○○幹事。 ● ○○委員が最初におっしゃったように,これは非常に難しい問題で私も揺れ動いているところがあるのですが,ただ,この被保険者同意が何のために必要かというと,従来から賭博保険の防止,それからモラルリスクの防止,それから人格権の方,こういった三つのことがいわれているのですけれども,一番大きいのはモラルリスクの防止だと思うのですね。ですから,逆にいうとモラルリスクがそれほど高くない契約形態については被保険者同意のルールを緩めてもいいと思います。ここで言うと第674条第1項ただし書のルールを維持する,被保険者が保険金受取人である場合,あるいはさらに広げて被保険者の法定相続人が保険金受取人になる場合には同意は必要ないという,そういうルールを適用してよいということになると思うのですが,その関係で言いますと,まずこれも先ほど○○委員が御指摘になったと思いますが,保険金額が低いものですね。葬儀費用として,そういう費用としてどの程度を考えるかというのはまた御議論あるかと思いますが,以前未成年者の生命保険のところで○○幹事ですかね,二,三百万というふうにおっしゃったかと思いますが,私もその程度であればそれほどモラルリスクは高くないと言えますので,その第674条第1項ただし書のルールを維持してよいかなというふうに思います。   それから,あと第674条第1項ただし書のルールを維持した場合に問題になるのは,基本的には夫婦間の保険金殺人だとか,もちろん法定相続人ですから親子間もあるかもしれませんけれども,以前これも未成年者の死亡保険に関するところで生保業界から御報告あったと思いますが,親子間の保険金殺人というのはそれほどない,逆に言うと夫婦間では結構あるということだと思うのですが,その夫婦間の保険金殺人が起こりにくいような形態であれば第674条第1項ただし書を維持することも考えられると。   そこで,ここで載っている契約形態をいろいろ見ていくと,搭乗者傷害保険と,それからイベントや施設の利用者の保険ですね,こういう保険で夫婦間で保険金殺人をして,しかもそれを事故に仮想して配偶者を殺害するというのはそう簡単ではないと思うのですね。これに対して一般の傷害保険とか旅行傷害保険ではあれば,それは殺害の機会というのはいっぱいありますので,その場合にはモラルリスクは非常に高いと。そういうふうに考えますと,この①,②については,モラルリスクの程度が一般の普通傷害保険や旅行傷害保険に比べればモラルリスクは低いのでという理由で第674条第1項ただし書のルールを維持するという,そういう理屈も考えられるのではないかという気がいたしております。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私は,恐らく今まで○○委員とか○○委員がおっしゃっていたのと近い意見なのですけれども,やはり生命保険に限らず傷害・疾病とか人保険の部分に関しては,基本的な一本の筋を立てるとしたら被保険者の同意というものかなと思います。損害保険において実損てん補というのが一つの柱だとしたら,人保険の場合には人格にかかわるものだから同意というもので,ただし,人格にかかわるものだから同意とすると,契約の要件として書面によるとかというすごく形式を重んじなければならないわけではなくて,人格を損なうようなものでなければ軽くできるという,そういう種類ではないかと思うので,契約の成立のときに被保険者の同意が必要かというとそこまでではなくて,保険金が支払われるときに被保険者としては,お金がもらえる人が拒絶したくなるような契約であればそれは無効だということで,大抵の場合は家族保険とか成田で契約するときに父親が大慌てで買って,それで後から子供に説明したりして,それは私は入りたくないとかということは余り考えられないでしょうし,それから,実際に事故が起きたときにおまえには入ってやっていたよと言ってそんなということもないと思いますので,保険金を受け取るときまでに拒絶されないようなものであればもう同意はある,保険法で言う人保険の同意はあるというふうな評価はできるのではないかと思います。大体のところがこの横のリストになっているものの2,3,4はそうやって定義がきちっとして,難しい1に関しては,自動車保険であっても搭乗者として事故が起きたときに自分が対象になっていたとして,拒絶するような事例でなければ同意はあったというふうに評価し得ると思いますし,又は同意というふうな定義がつかない幼児なんかの場合には,それが入院なのか,又は葬儀費用なのかですけれども,そうするとそこのところは損害保険の実損てん補というところの柱の方で整理がつけられるのではないかと考えております。 ● ○○幹事。 ● 先ほど中断の前に家族の範囲について質問いたしまして,中断の最中にお答えをいただきました。そのこと自体は今ここで御紹介いたしませんが,家族の範囲について伺ったのは,保険会社さんがそれぞれこの範囲がその家族だというふうにお考えになっている,これは商品設計の問題なのだろうと思いますけれども,ただ,今まで出てきたこと,例えば利便性の問題ですとか,それから夫婦間の殺人事件というような話がありましたけれども,とりあえず保険会社が家族だというふうに考えている範囲と,当事者がこの人が家族だというふうに考える範囲というのは必ずしも一致しないのですね。法律上は配偶者であるけれども,もう別居していて関係は険悪であり離婚目前だと,殺してやろうと思っているかもしれないという,そのためには保険に入っている方がいいのですけれども,そういうようなことで,このパンフレットの枠に入っていても当然に夫婦の意思があるとは考えられないものもあるでしょうし,他方,成田で保険に入ろうというときには,連れていった子供だけではなくて,通常は別居している自分の父親,母親も保険でカバーしてほしいというふうに考えることもあるわけですけれども,先ほど伺いましたらそれは別口で契約をしなければいけないというようなことでございました。   そういうふうに考えますと,この範囲では同意があるだろうということは直ちには言えないと。しかもこの範囲で同意があるだろうというふうに考えてしまったことによって,当事者の期待が害されることもあるというようなこともちょっと御考慮いただきたいなというふうに思います。   さらにもう一言申しますと,これは保険法の問題なのかどうなのか分かりませんけれども,非常に家族関係の在り方というのは多様化してきておりまして,自分の家族というのはどの範囲だということについて,家族ごとに,あるいは人ごとに違う考え方を持っている,そういう時代になっているかと思います。そのときにある家族のタイプを想定して,これは家族だから同意が要らないというふうな考え方を全面に打ち出すのはややいかがかなと。もちろん一般的にはこういう人が家族であるけれども,さらにこういう人を付け加えることもできるというようなさまざまな解決があると思いますけれども,家族だから大丈夫だというのについてはいったん立ち止まってそれでよろしいかということを御検討いただけるとありがたいというふうに思います。   以上,具体的な意見ではありませんが,感想として述べます。 ● ○○委員。 ● 一言だけ。○○幹事がおっしゃったことと私が言ったことはどちらを原則にするかというだけの問題なのですが,多分皆さんと私どもの感覚が違うのかなというのは,実務的には工夫すれば急進運動ではないのですけれども,同意を原則としても相当部分同意をとったというような状況にはなるのではないかと。例えば,○○委員がおっしゃった利便性は確かにそうなのですね。それを損なうとよくないわけですが,例えば構内入場者であれば普通の掲示はあるわけです。こういう保険に入ったという掲示は普通していると思うのですけれども,チケットの裏にこういう保険に入っています,嫌な方はどうぞお申出くださいと書いてあっていいわけですけれども,掲示だけでもいいという考え方もあるかしもれませんけれども,ただ,海外旅行傷害,これは従来いろんなひどいモラルリスクの事件もあって,これを個別にとること自体そんなに難しくないのになぜ一緒にということを主張されるかはちょっと私理解できないところなのですよね。そこは皆さん同じだと思うのです。   特に夫婦間でもそうですし,子供は別に死亡保険金は要りませんから,こんなのはちょっと別に考えてもいいと思うのですけれども,だから治療費を300万とかというので十分なわけですよね。だから,いちいち申し上げませんが,どれも本気に必要だと思ってやると,手間も省き,現在よりも負担はかからないけれどもちょっと文言を増やすとかという形でできるものが多いのではないかと。搭乗者傷害の死亡だけは,今ある人身条項は損害てん補方式ですね,その被保険者を拡大するということでできないのかなというのをずっと考えていたのですけれども,それはちょっとこれからセカンドリーディングで考えて,とにかく百何十年分を一遍に総ざらいというのは大変なことでありますけれども,原則はきちっと述べた方がいいのではないかということだけです。失礼しました。 ● ○○委員の御意見で,同意があったと言えるのではないかというのは,黙示の推定というか,そういうものを含めて。 ● 必要があればどうしようもないと,しかし皆さんもこれがいいのではないかというならそれでもいいと思いますけれども,個別の保険で例えば今の構内入場者だったら,チケットで申し出なければ同意があったとはっきり言っていいですよね。いろいろ工夫の仕方はあるのではないかということです。 ● ○○幹事。 ● 今の続きなのですけれども,同意の法的性質というのでしょうか,従来意思の通知というふうに考えてきていて,保険会社か,あるいは契約者に対して同意しましたということを表示するのですと。明示であろうが黙示であろうが契約者側,契約者,被保険者,親密な関係にあるとすれば契約者に対して同意があったと認められるような事情があれば黙示の同意でしたと,こういう形で意思の通知というものを認定してきたというふうに考えるのですけれども,今ここに上げられている,先ほど○○委員のペーパーですと,比較的そういうパターンが多いのですけれども,一点引っかかりますのは自動車搭乗者傷害のところでして,これ契約者は必ずしも運転しているわけではありませんので,一般の被保険者になっている人が自動車を運転しておって,それに好意同乗するというようなケースですと,いつ同意したのという問題が出てきはしないかという,そういう解釈上の問題は出てくるなというふうに,ささいな問題かもしれないのですけれども,実際にその自動車を運転する人は契約者だけではないということになれば,同意の中身,その性質について少し考えておかなければいけない部分は残るなというふうに思いました。 ● 事後的な法律問題になってしまえば黙示に同意していたのかねとか,そこら辺は柔軟に運用できると思うのですけれども,やはりイベントなり組織を運用する側から言うと,そこははっきりさせておきたいねということもあるし,そういうメンバーにとってもそういう面があるかと思うので,余り柔軟なルールで立てておくというのもどうかという気もするし,かといって余りまたルールがかたいと身動きがなかなか難しいところで,結局かなり今日の御意見としてはこの死亡給付を行う部分については,大まかなところでは同意が要るというのが大原則では,出発点ではあろうというところで,あとはそこの認定の仕方なり,例外なりというものがどういうふうな範囲で認められるかを少し具体的に,なお考えてみましょうかねという,あと実務上のフィージビリティーも含めて,そんなところが今日の御意見の状況ではなかったかなと思います。   なお検討してもらおうと思いますが,その他,こちらの1頁の本文というか,死亡以外の部分については大体こういうことで何か特段御意見ございますか。これは大体自分に保険金が入っていく部分だろうからこれでいいのではないかと。○○幹事,どうぞ。 ● 同意というのを,柱みたいなものだからかちっとしたものではなく,かたくなく認定できるというような性格だと考えた場合に,このただし書も当該他人が保険金受取人であるときには同意を恐らくするでしょうという範ちゅうに入るのではないかなと思うので,このただし書の要否というのも検討の範囲内ではないでしょうか。 ● こういうものをわざわざ置かなくても……。 ● その方が同意というものが原則必要なのだという抽象論に落としやすいのではないかなという気がするのですけれども。やはり自分が保険金受取人であれば,やはり同意していたでしょうし,同意を取りつける機会がなかったような契約は果たしてあるのでしょうかという分類に落とし込むのでしょうか。 ● ○○幹事。 ● できるだけ生命保険における被保険者の同意と同じようにという理念としては分かるのですが,形としては同じように見えてもやっていることは相当違ったことになっているのではないかと思うのですね。生命保険における被保険者の同意というのは,どういう保険に入るということを内容をある程度理解した上でそれに同意するということが前提,ベースにあるのに対して,ここでいろいろと同意の推認ということが議論になっている局面では,そこまでの幾らもらえますとか,部位とかそういうものによって金額が変わりますとか,そういうことについて理解されて同意をとっているとは到底思えないので,条文として書けるところだけは同じようにそろっているかもしれませんけれども,考えていることは相当違うので本当に同じレベルで議論しているというふうに我々理解しておいていいのか,ちょっと私は違うのではないかと。そういう意味で言うと,むしろ同意の推認というのを余り多用するのは危険ではないかなと。同意が必要な状況を特定した上で,そこではしっかり生命保険と同じような同意をとると,そうではないものについては傷害保険で生命保険とは少し違うということを正面から認めてきっちり要らないというようなことを決めた方がいいと。私は,搭乗者傷害保険については要らないということをはっきり決めた方がいい類型であるというふうに思っております。 ● ○○委員。 ● 基本的に今先生がおっしゃったように同意の幅を厳格にやるのか,一定同意の幅というのも商品によって違いますので持たせるのか,それを法文として整理する場合に,全く運用がきかないような書き方というのは,これからどんどん保険の種類も増えてまいりますので,そういう意味では避けた方がいいのかなというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● というのは,何で同意というのを抽象化して,だけれどもそれはイメージとしてあった方がいいかというと,被保険者,特に死亡ではなくて傷害の場合には利益を得る人なので,それを拒絶するということが通常なくて,それで拒絶する場合というのは特別な状況にあるケースだと思うのです。   例えば,第三者のためにする契約の場合に,受益者が受益の意思を表示したときに契約内容として確定するというふうになっていて,あの条文も受益の意思を表示してくれないと権利として確定しないのかというのが,時々複数の受益者とか受益者が点々とするようなときに使いづらいなというふうな感じは持って,せめてあの一言なくなってくれればなと思うときもあるのですけれども,でも受益の意思表示というのが請求が受益の意思表示と同一視できるというような解釈になって非常に弱められているところもあると思うのです。ですので,被保険者が保険金受取人であるときには,保険金の請求をするところで同意をしているとか,そういう解釈ができるのではないかなと思うのです。そうすると,同意はいつも必要だという法律の条文でもワークするかなとは思いますけれども。 ● ○○委員。 ● 一般的にはその同意をしているということではなくて,契約,特に保険ですから,共済も同じですけれども,一定の同意というのは必要だろうということを前提にして考えていますけれども,ある意味では命を担保にしたものと,いわゆるケガだとかそういうものを基本にしたものと,おのずから同意の性格というのは違うのではないかと。したがって,幅を少し持たせないと,全く人の命を担保にした保険と同じような扱いをする必要が本当にあるのかどうかということを申し上げました。 ● 一応一般的には契約締結時に同意というのははっきりさせておかなくてはいけないのではないかというふうに従来は考えているわけで,それをやるとこのぐらいのただし書は要るのかなというのが今日の原案に出ているところではないかと思います。   ほかに。はい,どうぞ。 ● (注)3のところの団体傷害・疾病保険契約のところなのですけれども,これについては生命保険の団保がどうなるかということと,この第三分野のところがどうなるかを踏まえてもう一度御議論いただくということでよろしいですよね。多分そっち側がある程度見えてこないとこの辺の議論はしにくいところではないかと思うのですけれども。 ● おっしゃるとおり,何度も申し上げますが,一読で議論がおしまいということはありませんので,改めて今日出たさまざまな御意見も踏まえて,ちょっとこちらの方でその(注)3の問題も含め考えてみたいと思います。 ● 今(注)3の話が出ましたが,(注)2とか4についても何かございませんでしょうか。   ○○委員。 ● (注)4ですけれども,私どもとしましては,実際の商品においては疾病とか傷害というのは分かれていませんというか,その区別が明瞭でない場合があるのですね。一つの商品の中に疾病入院も災害入院も補償するものがありますから,基本的には共通する規定でやってほしいと思っております。 ● ほかにございませんでしょうか。--それでは,この部分は今日出た意見のもとになお検討を深めていただきたいと思います。   それでは,先に進みまして3頁の一番下,「2 保険者の免責」の部分に進みたいと思います。まず事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 次に,2では保険者の免責について取り上げております。   損害保険契約及び生命保険契約における保険者の免責事由については,第3回及び第5回会議において既に御議論いただいたところでございますが,ここでは現行商法に直接の規定のない傷害・疾病保険契約における保険者の免責事由について問題提起しております。   まず,本文①では,保険者の免責事由として,被保険者,保険金受取人及び保険契約者の故意を掲げております。傷害・疾病保険契約においても,一般に,被保険者等が故意に保険事故を発生させることは保険契約当事者間の信義則に反するなどといわれております。実務の約款でもこれらを免責事由とするのが通例であるといわれております。   もっとも,5頁の(補足)に記載のとおり,被保険者の故意によって保険事故が発生した場合に保険金を支払わないものとするための規律の定め方としては,被保険者の故意を保険者の免責事由として掲げる方法と,被保険者の故意を保険者の免責事由として掲げず,被保険者の故意によらないことを保険金の支払事由として位置付ける方法の二つが考えられます。これは,第1回会議で御議論いただいた傷害・疾病保険契約の意義にも関連する問題であり,どちらの方法をとるかによって被保険者の故意によることの証明責任を保険者が負うか,それとも故意によらないことの証明責任を保険金請求権者が負うかが変わってくることになると考えられます。   後者のような考え方,すなわち被保険者の故意によらないことを保険金の支払事由として位置付ける考え方に関連して,急激かつ偶発的な外来の事故によって傷害を受けたことが傷害保険契約における傷害の本質的内容であるといわれることもございますが,実務の交通事故傷害保険契約やファミリー交通傷害保険契約の約款には,「運行中の交通乗用具との衝突,接触等の交通事故」によって傷害を受けたこと自体を支払事由とするものがあり,少なくとも約款の文言上,急激かつ偶発的な外来の事故であることを要求していない例もあることからすれば,これが傷害保険契約一般における傷害の本質的内容であると考えることには疑問があるようにも思われます。   そこで,本文①では,傷害・疾病保険契約についても,損害保険契約及び生命保険契約と同様に,被保険者の故意を法定の免責事由として掲げ,保険法の規律としては,保険者が被保険者の故意による事故であることの証明責任を負うこととする案を御提案しております。   なお,本文①のように,被保険者の故意を免責事由として位置付けた場合には,平成13年判決が示した約款の解釈を変更することになる可能性があるほか,消費者契約法の適用によって同判決と異なる解釈が導かれる可能性もあると思われますことから,これらの点も考慮に入れた上で改めて御議論いただきたいと思います。   また,(注)4との関係で,傷害保険契約について,保険金請求権者に被保険者の故意によらないことの証明責任を負わせる約定を許さないものとするかどうかについても御議論いただきたいと思います。   次に,本文①に,亀甲括弧つきで掲げた「重大な過失」について御説明します。   被保険者等の重大な過失については,保険契約当事者間の信義則に反すること等が免責の趣旨として挙げられる一方で,これを免責とするかどうかは商品政策的な観点から判断すべきであり,約款によって免責としないことも許容されるともいわれております。実務上,生命保険会社及び共済団体の傷害・疾病保険契約の約款では,被保険者等の重過失を免責事由として定めることが多いのに対し,損害保険会社の傷害・疾病保険契約の約款では,これを免責事由として定めないことが多いといわれております。ただ,重過失を免責事由として掲げない約款でも,酒酔い運転中の事故等については免責とされていることが多く,これは重過失のうち主要なものを個別に列挙したものであると説明されることがございます。   そこで,本文①では,被保険者等の重大な過失を亀甲括弧つきで掲げるとともに,(注)1でこれを法定の免責事由とするかどうかについて問題提起しております。   この点を御議論いただくに当たっては,被保険者等の重過失を免責事由として掲げる趣旨をどのように考えるかという点とともに,(注)4との関係でこれを法定の免責事由として掲げなかった場合に,約款で重過失を免責事由として定めることができるのかという点についても御意見をいただきたいと思います。   次に,本文②では,保険者の免責事由として,戦争,内乱その他これらに準ずる変乱と地震,噴火,津波その他これらに準ずる天災を掲げております。これらは,一般に,巨大損害の発生する可能性のある危険であり,約款でも免責事由として定めることが多いといわれております。この点に関し,約款の中には戦争や地震等の場合に一律に免責とするのではなく,保険金を削減して支払うことを定めているものもございますが,このような約款も同様の趣旨に基づくものであると考えられます。   ここで保険法部会資料8の別紙を御覧ください。   これは,これまでの部会資料の本文に掲げました各保険契約における免責事由を一覧表にしたものでございます。この表からも分かるとおり,損害保険契約においては,被保険者等の重過失や地震等の天災を免責事由としておりますが,生命保険契約においてはこれらを免責事由とはしておりません。そこで,傷害・疾病保険契約の免責事由を御議論いただくに当たっては,損害保険契約及び生命保険契約の免責事由と異なる規律とするかどうか,異なる規律とする場合に,その違いを合理的に説明することができるかどうかについても御意見をいただきたいと思います。特に傷害・疾病等を原因とする死亡給付に関する規律については,これを生命保険契約として位置付けるか,傷害・疾病保険契約として位置付けるかはさておき,同じ被保険者の死亡に関して保険金を支払う点において生命保険契約と類似性がありますので,生命保険契約と異なる免責事由とする場合にはその合理性をどのように説明するかについて御意見をいただきたいと思います。   次に,保険法部会資料8の5頁の(注)について御説明いたします。   (注)1と4は,先ほど本文①に関して御説明したとおりです。   (注)2は,傷害保険契約と疾病保険契約とで異なる規律を設ける必要があるかどうかについて問題提起するものです。例えば,疾病保険契約について,約款では被保険者の故意や重過失を免責事由として定めるものがございますが,薬物中毒のような特殊な場合を除き,そもそも疾病を故意によって生じさせることができるのかには疑問がないわけではありません。また,重過失についても,例えば過度の飲酒や喫煙によって疾病が生じた場合等にまで重過失があったとして免責とすることは適当でないとして重過失を免責事由として掲げることに否定的な見解もございます。   他方で,これらは故意や重過失の解釈の問題であり,免責事由として掲げた上で免責の趣旨に照らして解釈することで足りるようにも思われます。そこで,傷害保険契約と疾病保険契約とで異なる免責事由を掲げるかどうかについて何か御意見がございましたらいただきたいと思います。   (注)3は,ほかに傷害・疾病保険契約に固有の問題があるかどうかについて問うものでございます。   以上でございます。 ● それでは,ただいまの御説明に基づきまして質問,御意見いただきたいと思います。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 重過失を規定するかどうかということなのですけれども,今御紹介ありましたように約款では重過失が入っておりまして,私どもとしてはこれは必要で当然というか,任意規定の前提ですけれども,法定の免責事由としていただければと思うのです。これは,任意規定だから約款に勝手に入れる分にはいいのではないかという話もありますけれども,私どもとしてはあった方がよろしいと。その免責事由そのものはいろいろ現在の約款でもここに書いてあるもの以外のものもありますから広がりもあることも予想されますし,社会情勢の変化等いろいろあります。これも説明はなかなか難しいのですが,実際にはモラルハザード等を考えると,この故意だけではなかなか排除しがたいところもあるということもありまして,できれば入れていただきたいと。   それから,もう一つ傷害と疾病の区別の例ですけれども,先ほどちょっと申し上げましたけれども,免責も例えば疾病では例外的なものは除いてはないというお話がありましたけれども,例えば放射能の汚染地域へ自ら入っていくと,あるいは,今後そういった生物化学兵器を使われたようなところへ入っていくと,故意と言えなくても重過失を問うような場合も出てくるのではないかと。それが疾病の原因として出てくるのであればそれも免責としなければならないというふうに考えております。   ちょっと話が戻りますけれども,重過失免責の例として過去の判例等幾つかあるのですけれども,例えばパトカーに追跡されて,時速100キロ以上のスピードで走行して対向車と衝突したというような例,あるいは部下に飲酒運転をさせて,助手席に乗っていてケガを負わせたというものについて,判例では重過失免責を認めていると,こうしたような例もあります。 ● ○○委員。 ● ①の(ア)に関してですけれども,(ⅰ)のような形で故意免責を掲げることが,もしも最高裁の判例の平成13年4月20日の傷害保険の偶然性の立証責任は保険金請求権者にあるということを変更する趣旨であれば,ちょっと賛成できません。傷害保険の偶然性の立証責任の問題は,約款の急激かつ偶然な外来の事故であることの解釈の問題であると考えておりまして,法律で決めるのではなくて判例にゆだねるべき問題だと考えているからであります。   あと,(注)1ですけれども,重大な過失はやはり免責事由に加えていただきたいと考えております。それは,やはり故意の立証は困難ですので,故意・重過失という形でセットでないと免責立証ができないことが多いので,モラル対策上大事なことだと思っております。   それから,(注)4については,免責条項については,やはり任意規定で規定すべきと考えております。   以上です。 ● 今までの議論と大分違うのですけれども,まずこの故意の免責を置くということについては,これは積極的な意義,つまり判例を変更するという観点から置くということには賛成したいと思います。   それで,重過失,これは私はちょっと今○○委員の意見を聞いてちょっと意外だったのですけれども,私はちょっと最近出歩けないものですから資料を探して,資料になかったのですが,昭和60年の国民生活審議会の消費者政策部会で損害保険約款の適正化という報告がなされて,そのときに私の記憶が間違いなければそれまで普通傷害保険には重過失免責があったのを規定が不明確だということが原因だったと思うのですけれども外して,その後順番に,すぐにではないのですが,交通傷害と順番に移っていって,今は所得補償以外は重過失免責はなくなっているはずなのですね。生保の方でも高度障害の方については重過失免責はないと。こういう形になっておりまして,そういう流れからいきますと,それで重過失の例,先ほどおっしゃった例は余りいい例ではないのですね。それは法令違反が伴っているようなケースもありますから,昔このときに国民生活審議会ができましたときにどういう例かというと,それは遮断機が閉まっていて,鳴っているのに一時間に一分しか開かないというときに下を行く人がいますよね。こういうのが重過失なのだと,そういうのは全く払わなくていいのかとかそんな議論で,これは実は重過失をどう定義するかという問題と,それからあと,任意的に免責認めるかという問題といろいろ関連するのですが,少なくとも生保も損保も両方ばらばらでありますので,重過失は(ア),(イ)とも,それから(ウ)も基本的には外して,それで建前として重過失規定を置くことは構わないということにまず議論のスタートはそうなのではないかというふうに考えます。   それから,この傷害と疾病とを分けて規律するかと,これは一緒でいいのではないかと。傷害保険の中にも伝染病担保特約のように伝染病,疾病を持つものもありますし,やはり一連のものとして規定する必要があるし,それから,一見関係ないと思われるかもしれませんが,将来のニーズという答申のことを考えますと,将来例えばかつてドイツ,今でもそうかもしれませんが,一定の収入以上の方は,特に家族の多い人は公的保険から離れて任意保険に入るとか,いろいろ公的保険の上積み保険とか代替保険,私はそれはいいと決して思っていないのですが,この分は現行保険制度との関連がある部分ですから,やはり一体のものとして,かつ,免責なんかもできれば同じ形でやる方が将来に対する阻害要因にならないのではないかなという感じがいたします。   それから,あと,重過失の定義の問題があって,一つは故意と同質のようなものだという説もありますが,確か最高裁の判例は共済についてあって,さっきの重大な不注意みたいなものですね。ただ,これ保険の世界で約款で自由だと言ってどんどん重過失免責を入れられてしまった場合に本当にそれでいいのかという問題もあって,私は基本的には最高裁の判例の形でいいと思うのですけれども,ちょっと国民生活審議会でかつてどういう議論をされたかというのをちょっと踏まえていないので分からないのですが,それはちょっと最終的に枠が決まった段階でまた考えようというふうにすればいいのではないかと思います。 ● 今のところは,被保険者の故意を免責事由に書くかと,それから重大な過失を書くかと意見が割れている状態ですが,もうちょっといろんな御意見をいただければと。   ○○委員,どうぞ。 ● 重大な過失につきましては,規定の中に入れていただきたいというふうに思っております。当然,それが入ったからといってやたら発動するということは当然いたしませんけれども,どうしてもモラルリスク等の対応のためには必要な条項だというように考えておりますので,その点をお願いしたいというふうに思います。   それからもう一点,4頁の②のところなのですけれども,現行商法で「特約アルニ非サレハ」というのがあるのですけれども,要は基本は免責でもいいのですけれども,実際に御紹介もありましたけれども,一定の削減払なり繰延支払ということを現行約款の中に入れておりますので,この「特約アルニ非サレハ」というのが生きていれば支払うというのが一つの特約というふうに考えれば対応できますので,その点についての御配慮をお願いしたいというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 私は,この重大な過失というのは入れないでいいのではないかと思うのですが,と申しますのは,この故意又は重過失というのは多くの場合,そういう行為者の責任の根拠になると思うのですけれども,これは被保険者側とか保険金受取人側のそのような対応が保険者との関係で最初に関係官が御説明されていた信義則に反するようなことになるので支払わないのでよいという形にするということだと思いますので,通常の重過失と行為者の方の責任を生じさせるのとは違う考慮のもとの要素だと思うのです。   というのは,故意にある保険事故を生じてしまって保険金を請求しようとするのは,やはりそれは公序という見地から排除しなければならないのは明らかだと思うのですけれども,重大な過失でかなり不注意とかで保険事故が起こってしまって,その人に保険金を払うのが公序に反するかというところまではいかないのではないかなと思いますので,ここのところは生命保険のところで被保険者の自殺というのがあって,決闘とか犯罪によるとかということは今回削除の方向だったと思いますが,そのときに私はそれは公序の見地から残ってもいいのではないかなと思ったのですけれども,今こちら側の傷害・疾病の免責のところから考えて,やはり故意の免責だけを残して生命保険の方も自殺だけを残すというような形の整理でいいのではないかと思っております。 ● 今の重過失の点は,先ほどモラルリスク対策として必要性があるというような御指摘が実務的にあったと思うのですが,実際に重過失が問われているかというと,モラルリスクばかりではないと思うのですね。そのモラルリスクの予防の必要があるというだけでこれを法定免責にするというのはもうちょっと別の理由付けが要るのかなという気がいたしますね。   はい,どうぞ。 ● ちょっと例として出したのが適切でなかったのかもしれませんけれども,要は○○委員も言われましたように,なかなか故意の立証というのが現実的に難しいのものがあります。その故意がモラルリスクかどうかというのはすべてがモラルリスクというふうには思いません。例えば自殺もある意味では故意ですから,そこも含めてモラルリスクというふうには考えておりませんけれども,やはり運用についてはかなり幅を狭くしてやるということを一応前提にしては考えているのですけれども,条文にあるのとないのではやはりその対応の仕方が実務的にかなり違ってまいりますので,そういう意味のトータル的な安全弁として契約法の中で入れていただく方が正常な契約関係を生かすことができるのではないかというふうに考えております。 ● ○○委員。 ● 私,法律的に不案内なので重大な過失の定義等はちょっと分からないのですけれども,今のモラルリスクのことにつきまして,この重大な過失が入るかどうかで,恐らく傷害保険の契約者等の努力,注意水準といいますか,それは明らかに変わるのではないかと。それはいわゆるモラルハザードということなのですけれども,そこの点はどのくらい大きいかということはやはり考慮すべきかなと思います。 ● 普通の人から見れば何て不注意なことをしたのでしょうという,でも故意ではないのだけれども相当なものですねと,まさにそういう事案をどう扱うかということですね。そこの考え方の問題かと。   では,○○幹事から先に。 ● 被保険者の故意については,私は判例を変更する意味で立法すればいいと思っていますが,それとは少し違うところで,②の(イ)のところで「地震,噴火,津波その他これらに準ずる天災」という文言なのですが,各種現在の約款を見ますと,地震,噴火又はこれによる津波で止まっていると思うのですけれども,その後ろに「その他これらに準ずる天災」というのをつけられた御趣旨というのはどういうことなのか,これは御説明いただければと思うのですが。 ● 申し訳ございません。そこまで考えていなくて損保に合わせたという,この資料の方のA4横のペーパーを御覧いただければお分かりのとおり,こちらとしてはそこまで深く意識せずに損保に合わせたということでございます。 ● 「その他これらに準ずる天災」ということを書きますと,下手をすると竜巻とかそういう巨大な台風とか,そういうものも全部そこの解釈で免責になってくるのではないかと。損保に合わせるということは損保では住宅総合保険とかの場合,風水害は持つということがあるので,こういうルールはそこまで入るようなものは当然デフォルトできないと思うのですけれども,傷害保険とか疾病保険でそれを書いてしまうと,ひょっとしたら解釈では入ってくる可能性がないのかなというちょっと気がいたしましたので,少し御発言しました。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 重大な過失のところで,先ほど生命保険のところでも考え方が前回と今回で変わるというぐらいですので,すごくこだわっているというわけではないのですが,整理としてはやはり故意の立証が難しいときに,そういうときには故意の認定を緩やかにしてもらうという,故意が免責になっているというのが信義則に反するようなことだから,公序に反するような関係になっているからということであれば,やはり公序に反しているかどうかというのは,故意というのは本当に心証が確たるところまで行かなくても,さすがにこれは公序に反するような状況があるというところの認定はできると思うのです。ですので,法文では故意のところで止めてしまっていいかなと思いますのと,それから,法文に重過失というのを入れてもらった方が保険契約者というか,被保険者側で一定のそういうことが起こらないような注意をするモラルハザードを防ぐというところの目的まで重過失というのを徹底してモラルハザードを防ぐということだとちょっと広過ぎるのではないかなという感じがします。保険に入ったからには保険事故が起こらないようにする義務というのが生じるわけではないと思いますので,やはり保険に入ったときにはその事故が起こってもカバーできるという多少気の緩みの方向になっていい関係なのかなと思います。   ひとたび保険事故が起こってしまって,それでその損害が拡大しないようにするという義務というのは信義則上あるとは思いますけれども,保険契約に入ったからといってそういう注意義務が発生するというような法文でない方がいいと思いますので,やはり今のところ故意で止めておいた方がいいかなと思っております。 ● 簡単に。まず,○○先生にはちょっと申し訳ないのですけれども,私は重過失が入っても余りシグナル的な効果はないのではないかと。実際,昭和60年の前は重過失があって,その後なくなったわけですよね。それでリザルトが悪くなったとか,そういうことは多分ないのではないかなと思うのです。これは業界の方が反論していただいても構いませんけれども,多分現場のいろんな相談を受けておられるところでもそういうことにはならないのではないかという問題がまず一点。   第二点は,モラルリスクに関連するかどうかというのはまさに定義が違うからですよね。つまり,私なんかは,故意のところは緩く認定して,さっき○○委員が心配されたことは故意の中に含めて,そうすると重過失というのはこれは専ら商品政策上の問題で,それを入れるとその保険自体がうまく立ち行かなくなるというなら,それは外していただければいいけれども,入れても入れなくても変わらないのであればこんなものにまでおれたちの保険金払うかというやつは外すのはいいのですけれども,これぐらいは持っていいという中に重過失で持たなければいけない部分もあるという,そういう考え方ですね。   だから,○○委員のような考え方をするとモラルリスクに関連してきますけれども,私が言っていることはそういうことは前提としていないと。政策上の問題があるということだけ御理解いただいて,ただ,これは最後に決めなければいけないことだと思います。 ● ○○委員。 ● 我々の立場としては,無制限にそれをやるわけではないのですけれども,故意と同視すべき著しい不注意というものについては重過失という中でしか読みにくくなるのではないかというふうに思っていまして,ぜひ重過失というのは入れていただきたいなと。○○幹事がおっしゃるように故意を緩めればいいではないかという考え方もあると思うのですけれども,必ずしもそういう形で裁判が行くかどうかというのは非常に疑問な部分があると思うのですね。やはり故意というものの立証責任というのは相当重たいですから,そういう意味でいくと,故意とまではいかないけれども故意と同視すべき重過失というのを故意重過失と並べることによって免責ということを現実に認定せざるを得ないケースというのはあり得るのだろうというふうに思っていまして,そういう意味ではぜひ故意と重過失と,ただし,それが無制限でないというのはおっしゃるとおりだと思いますけれども,そういった形でぜひお願いしたいというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 今,議論の中でも重大な過失の中身については理解が少し違っていると思うのですけれども,我々の解釈論でやっているときにも,重大な過失と一般的には過失の中で質の悪いものという意味で使うのですけれども,故意とか悪意の立証が難しい,つまり主観的な部分についてはどうにも立証できないけれども,客観的に見て故意としか言いようがない,悪意としか言いようがないというときに重大な過失をそれと同等なものとして認めるようにすれば立証負担が軽減されるという意味で重大な過失を使うときはあるわけで,これ考えていることが大分違うので,ここでは重大な過失を入れるか入れないかというよりも,中身をどっちの方向で考えるのかということをはっきりさせていただいた方がいいような気がします。 ● ○○幹事。 ● 重過失のところなのですけれども,基本的にこの御提案の形で私はいいと思っているのですが,従来重過失をどういうふうに実務で運用されてきたかというと,故意に事故を起こしたのでしょうというのは言いにくいということで,重過失があれば重過失で免責ですということを主張される方が契約者側に主張しやすい,角が立たないということだったかと思うのですね。実質的には恐らく会社側ではこれは故意なのだという判断をされていて,先ほど少し立証の問題がありますとおっしゃっていましたけれども,それ以上に恐らく故意の事故ですねということを正面切って言うこと自体が相当お客さんに対する心理的なかなり大きな問題なのだろうなというふうに思います。だから,実態的には恐らく徹底的に故意であろうということで調査をされて,主張される段階でマイルドに重過失と言われているというのが実態なのだろうと思っているのです。   そうすれば,やはり免責条項としては故意だけということになるのだろうと思うのですけれども,どうしても重過失を残すという御主張であれば,これは重過失の概念について判例が使っております故意に比肩すべき,あるいは故意と同視すべき著しい注意欠如の状態というのが,保険会社としてはそれを引き受けることが適当でないという別の理由が公序とか信義則以上に必要になってきて,それを普通の保険料で引き受けるような低いレベルの危険ではありませんと,やろうと思えばすぐ保険契約者側,あるいは被保険者が事故を起こしてしまえるような容易な事故なので発生率にも影響がありますのでという,そういう形の説明が必要になってくるのではないかと思うのですけれども,そこのデータははっきりしないと思うのですけれども,もしそこはそういう主張をされるのであれば任意規定としての重過失を残すということはあり得るかなと思います。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 企業を全く離れて個人でございますけれども,先ほどから重過失に関して故意に準ずるということについては全くそのとおりかなということを感じていますけれども,これもまたお話がありましたように,ほんのわずかな注意をすれば避けられたはずなのにと言われたら,保険事故というのはみんなほんのわずかな注意をすれば避けられたはずなので,みんな重過失ではないかと。特に私は職場で山岳保険の今交渉中でございまして,帰ったらよく条件を見ようかと思っているのですけれども,山のクラブを何十年もやっていますけれども,起きた事故は私から見たら全部重過失ですね。ほんのわずか注意すれば,えっという話で,私の山岳部をずっと運営した人間から見たら全部重過失だろうとも言えるというので,もしそういう封印をされるのだったらそんな保険はという話になるわけですよ。ところが,保険会社さんはそう思っているはずなのですよね。全然モラルハザードもないし,故意でもなくて過失の程度は甚だしいというのは,法律で当然そういう解釈もされるような法律条文で,当然保険対象外なんていうのは,ちょっと保険ユーザーとして違うのではないかなというふうに思っています。   以上です。 ● ○○委員。 ● 私も故意と重過失にどういう違うがあるのか,そして傷害・疾病保険契約における重過失というのが具体的にどういうものがいろいろあるのかということを少し調べないと,よく判断できないということがあります。損害保険契約のときの免責事由で議論がありましたけれども,例えば飲酒運転で被害者が死んでしまったと,そのときに重過失だからといって免責だということになると被害者救済ができないという問題も以前提起したのですけれども,それと同様のことが起こるのかどうかちょっと想像がつかないのですけれども,そこら辺がちょっと疑問な点でございます。   それから,5頁の上の(ⅰ)と(ⅱ)のところですけれども,(ⅰ)の場合は保険者が証明責任を負うと。それから(ⅱ)の場合ですけれども,これは請求権者が証明責任を負うということですけれども,通常我々一般の消費者からすれば,なかなか普通の人が立証責任,証明責任を負うというのはちょっと重たいのではないかなという感じがいたします。   以上です。 ● ○○委員。 ● 先ほど○○委員がおっしゃったのですけれども,私どもそんなに厳しく適用しているわけではなくて,これも最近○○先生が書かれている論文の中にあるのですけれども,我々の売っている災害関係特約に重過失というのが,商法第641条の重過失と同趣旨のものと解した上で,重過失の意味を厳格に解し,これを故意に準ずる注意欠如の状態を指すと,こういうタイプのもの,あるいは同じく第641条の重過失と同趣旨ととらえながらも,これを注意義務違反の程度が顕著であるもの又は単に通常の過失に比べ,注意を著しく欠くこと,こういうような解釈でやっていますと。   それから,例外的に一つだけ判例があるのですけれども,重過失の概念について,保険者に免責を与えるのは当然だと一般人が認め得るような被保険者の過失と,こういう判断をすると,これは秋田の方の判例ですが,こういうのもありますけれどもこれは例外的だということが書かれています。ちょっとまたさっきの話に戻りますけれども,故意又は重過失,これは保険法に入れるか約款に規定するかというのはまた別問題ですけれども,現在私ども生命保険の約款に入っているのは,例えばかなり前ですけれども,例えば北陸地方の市役所で4階ぐらいの階段の踊り場から腰の高さ以上の窓から落ちて死んだというときに,それは自殺,故意だとなかなか決めつけられないのですね。それは間接証拠を積み重ねていくのですけれども,仮に遺書があっても自殺というのは遺族が遺書を隠しますからなかなかそれは出てこないと。それから,必ずしもそれを自殺と決めつけるだけのものがない以上は,その窓に上るということがやはり重過失であるということで重過失の意識をすると,故意又は重過失と,そういうことはあるのですね。そういう判例もあるという状況です。 ● ちょっと重要な点なので○○幹事にお聞きしたいのですけれども,私の理解ではこれは共済について確か最高裁で判例があって,一応射程距離は及んで重過失は先ほど例外とおっしゃった方が原則で,それがまず議論の出発点ではないでしょうか。何か議論がここまで進むと思わなかったので私はセカンドリーディングで言おうかと思ったのですが,もしそういうものに限るのであれば今の約款にも極めて重大な過失という約款もありますよと。そういうふうにするわけで,一応私は最高裁の考え方はそれはそれで議論の出発点として行くので,ちょっと原則と例外が逆だなと思って理解したのですが,そこはいかがでしょうか。 ● そこも含めて亀甲括弧にしているというのがこちらの理解でございます。ですから,何名かの方から御指摘いただきましたが,そもそも何をもって重過失とするか,裏を返せば何をもって故意と言うかとも関係しますので,そこは今○○委員がおっしゃったように重過失と一言で言ったときに,条文ごとに重過失の解釈が違うから言葉は重過失でいいという考えもあるでしょうし,いや,その規定ごとにきちっともう少しただ重過失と言いっ放しにしないで限定すべきだという意見もあるでしょうから,そこも今日さまざまな御意見いただきましたので,それを踏まえてちょっと考えてみたいと思います。 ● それでは,ここも大分御意見いただきましたので,なお御検討いただこうかと思います。   次に,「3 第三者のためにする傷害・疾病保険契約」のところで,まず事務当局より御説明をお願いします。 ● それでは,御説明いたします。   第三者のためにする契約につきましては,既に生命保険契約における保険金受取人の指定又は変更の規律などについて御審議いただきましたが,ここでは基本的には生命保険契約と同様の規律にすることを前提としつつ,生命保険契約とは異なる規律とする必要があるかという観点から問題提起をしております。   本文では,このような規律を設けることを提案するものではございませんが,実務上の取扱いや立法論的な提案を参考にしつつ,あり得る考え方を提示したものでございますので,このような規律を法律上規定することの当否について御議論いただければと考えております。   まず①では,保険契約者が保険金受取人を指定しなかったときにだれを保険金受取人とすべきかについて問題提起をしております。死亡給付以外の給付については,被保険者が生存している以上は被保険者に支払われるのが最も自然であるようにも考えられ,実務上このような規律とされている契約が多いようでございます。もっとも,実務上は被保険者の親族を保険金受取人に指定する契約もあるようでございまして,これは入院費等を現実に支払う者を保険金受取人とする趣旨などといわれることがございます。   以上のような実務の取扱いを踏まえつつ,法律上死亡給付以外の給付について保険金受取人を一定の者に限定することの必要性を踏まえ,御議論いただければと考えております。   これに対し死亡給付については,実務上原則として,又は例外なく,被保険者の相続人又は親族に支払うとしている契約もあれば,自由に保険金受取人を指定し,又は変更することができるとしている契約もあり,主に生命保険契約との整合性という観点から,本文①のような考え方について御議論いただければと考えております。   この点に関連しまして,法制審議会第150回会議の保険法部会の設置に関する審議の際に,保険法部会でぜひ保険契約締結時の保険金受取人の指定の在り方について御検討いただきたいという趣旨の御指摘がございましたので,本日席上にA4の縦の一枚紙でございますが,議事録の抜粋を配布しておきました。ぜひ御覧いただきまして,この点についても併せて御議論をいただきたいと思っております。   次に②ですが,これは保険金受取人の指定又は変更を自由に認めることとするか,それとも契約で定めたときに限り,保険金受取人を指定し,又は変更することができることとするかについて問題提起をしております。   実務上,約款に保険金受取人の指定又は変更について何らの規定も置いていない契約があり,これは指定又は変更を認めない趣旨といわれております。これは,現行商法第675条第1項ただし書について,保険金受取人の指定又は変更権を留保した場合に限って指定又は変更することができるといわれていることを前提としているようにも考えられます。そうすると,傷害・疾病保険契約においては,現行商法のような立場を維持することも考えられるようにも思われます。   なお,死亡給付については,①と同じく生命保険契約との整合性という観点からも②の当否について御議論いただければと考えております。   最後に③は,被保険者でない保険金受取人が死亡した場合の規律について問題提起をしております。この点については,生命保険契約について提案した規律と同じ規律とすると,保険金受取人の相続人が新たな保険金受取人となることとなります。しかし,死亡給付以外の給付については,①の考え方を強調すれば,仮に保険金受取人が指定されていたとしても,その者が死亡した場合にはその相続人,つまり保険金受取人の相続人よりもむしろ被保険者本人に保険金を支払うべきとも考えられます。これに対して,死亡給付については,生命保険契約との整合性という観点からは,保険金受取人の相続人とすべきとも考えられますが,併せて実質的な規律をどうすべきかについて御議論いただければと思います。   続きまして,(注)では,傷害・疾病保険契約に固有の問題があるかなどについて問題提起をしております。   一つ特に御議論いただきたい点といたしまして,死亡保険金請求権と高度障害保険金請求権との関係がございます。すなわち,被保険者が高度障害状態となった後に死亡した場合において,高度障害保険金の保険金受取人である被保険者の相続人,高度障害保険金の保険金受取人は被保険者とされていて,その方が亡くなった場合にはその相続人が保険金請求権を相続するということでございますが,被保険者の相続人と死亡保険金の保険金受取人が異なるときは両者の優劣ということが問題となります。この点については,約款で高度障害保険金を支払う前に死亡保険金の支払請求を受け,死亡保険金が支払われる場合には,保険者は高度障害保険金を支払わないという規定が置かれており,併せて高度障害保険金が支払われた場合には,その支払後に死亡保険金の支払請求を受けても保険者はこれを支払わないと規定しているようでございます。   ところが,請求が競合した場合の法律関係は必ずしも明確でないようにも思われ,同様のことは特定疾病保険金との関係でも問題になると考えられます。ただ,以上の点を明確化すべきであるとしても,いかなる場合にどの保険金を支払うかということは約款の規律にゆだねられる以上,約款で明確化すべき事柄であるとも考えられますが,法律上何らかの規律を設けるべきかについても御議論いただければと考えております。   以上です。 ● ありがとうございます。それでは,御質問,御意見をお願いします。   ○○委員。 ● ①につきましては,被保険者同意のところでちょっと申し上げたとおりなのですが,損害保険会社の傷害保険においては保険金受取人を指定しないのが原則ですので,生命保険とは異なる実務です。したがって,損害保険独自に同意主義の例外規定として保険金受取人を指定しない場合という形で設けていただきたいと考えますが,このような形で設けた場合には,①の死亡給付については,被保険者の相続人を保険金受取人とするという規定が必要になると考えます。   それから,②については,資料7頁の(補足)の3行目に自動車保険のことが書いてありますけれども,自動車保険の搭乗者傷害については,被保険者が不特定であり,保険金受取人の指定変更を認めていませんので,規定振りはこだわりませんけれども,このような実務を維持できるような形で対応していただければと思います。   それから,(注)につきましては,特に傷害保険契約と疾病保険契約とを分ける必要はないと考えております。 ● ○○委員。 ● まず,①のところなのですけれども,基本的には被保険者をベースに考えられているのが原案かと思うのですけれども,保険契約においては保険契約者が契約の当事者であり,しかも保険契約者が保険料を負担しているということから考えれば,保険契約者の意思というのをもう少し重視しないといけないのではないかなと。死亡給付以外については被保険者,死亡給付については被保険者の相続人ということで,どちらかというと契約者の意思というのがあんまり尊重されていないように見えてしまうのですけれども,まず契約者,契約の当事者であり,保険料を負担している人というのがもっと立つべきではないかなというふうに思うのですけれども,ちょっとそういう意味で少し①のところについては違和感があるという感じがしておるのですけれども。 ● ○○委員。 ● 私も基本的には○○委員と同じような気持ちでして,特に②の契約で「定めたときに限り」というのが本当にいるのだろうかと。搭乗者傷害というのは,ちょっとこれはもともとだれにも丸々丸々という名前を指定しないという類型で,それはまたちょっと違うのではないかという感じで,遺言で変更できないのかと,こういう問題ですね。ですから,ここはちょっとお聞きしたいのですが,固定しなければいけない理由は何なのですか。つまり契約で認めた場合にだけ変更できるというふうにしなければいけない理由というのをお聞かせいただきたいと思うのですけれども,実務上の理由がおありであれば。 ● ②で言っている保険金受取人というのは,これは死亡保険金受取人に限らず保険金の請求権者全般を言っていると,そういうこととの関係でもないのですか。 ● 死亡給付以外の場合に限ることもありましょうし,死亡給付以外,死亡給付両方についてこのような規定を置くということも理屈上はあるのかなと思っております。 ● ②のような契約で定めたときに限り指定変更ができると,逆に言えば契約で定めないとデフォルトルールはできないということの理由を今○○委員が聞かれたのだけれども,実際これは傷害保険,疾病保険の現在の実務では原則形がそうなっているというか,そういうことを踏まえたということなのでしょうか,この②というのは。 ● 踏まえたといいますか,こういう考え方があるかどうかという問いかけのとおりなのですが,物の本には,商法第675条第1項ただし書が傷害・疾病保険にも準用されると書いてあるものがございまして,そうだとすれば,もともと現在の商法のデフォルトルールが生命保険も含めて,生命保険のデフォルトルールが契約で定めない限り指定変更できないということですから,それが傷害・疾病保険にも当てはまるという考えはきっとそう考えているのだろうということから,もしそういう考え方に合理性があるのであれば,今回新たに見直した後,この傷害・疾病保険を典型契約として位置付けた場合のデフォルトルールとしてもそうすることが考えられるのではないかという問題提起をさせていただいたというのが②でございます。 ● 多分全体像は同じだと思うのですけれども,定額保険の生命保険の方でそこは問わないことにしているわけで,こっちも問わないということになりますし,二つ観点があって,これは生命保険の特約なんかで死亡以外の場合ですけれども,医療給付の受取人を親にしているような場合,それからもう一つ全然別の話ですが,まだ若い人で生保に入れないというときに,死亡で傷害保険で代替するというようなときにこれだとちょっとまずいかないというそんな問題意識があるのですね。でもこういうふうにしておかないと実務上問題があるというのであればそれはお聞きしたいなということなのですけれども。 ● ○○委員。 ● 一部6頁のところで若干御紹介いただいていますけれども,実務的な問題というよりは,むしろ一部の共済団体のもともとの根拠法の性格上,基本的に例えば消費生活協同組合法の場合には基本的に家族主義が前提になっていますので,家族以外のところに共済金が行くということについては,約款で受取人の範囲をまず決めています。なお,変更権も認めていますけれども,それは事業者の承認が必要という形で,かなり限定的に運用しているといいますか,ローカルルールかもしれませんけれども,そういう実態もありますので,恐らくそのことも若干踏まえてお書きになったのだろうというふうに思っております。 ● そうすると,これだめな場合は解約してまた入らなければいけませんが,要するに全くだめだというのはだめですか。一定の範囲に限定するのだったらいいですというのだったらお困りにならないわけですね。 ● 一応事情はお聞きをして,特に指定の場合ですね。 ● 正当な場合というわけではないけれども,家族だったらいいというのだったらお困りにならないと。 ● 順番で基本的に決まるような仕組みになっていますので,要するに生計を一にする家族から基本に始まりますので,それが一つの決め事と。特に指定をする場合にあったとしても,法の基本的な立法を中心に沿わない限りは承諾しないということが原則です。 ● ○○委員がおっしゃっている共済のあれは,傷害・疾病に限らず生命保険の部分もそういう原理ですね。   ○○委員,どうぞ。 ● 質問されている意味がちょっとよく分かっていなかったのですけれども,別に②でなくてはいけないとか言っているのでは全然私はないのですが,困るという意味は,私がそう主張したからと言われているのですか。 ● 今のような話を伺いたかったわけですね。 ● 約款に決めているとか思われているとか,分からなかった,すみません。そういうことではなくてということなのですが。 ● 死亡保険金以外はやはり指定変更というのは要請されていないわけでしょう。入院保険金,通院保険金,後遺障害等ですね。これは被保険者が受取人になると。 ● そうですね,もともとそういうことですから。全体がよく分からなかったので,すみません。 ● 原則も念頭に置きながら,そう何でも自由にして変更できる契約とはちょっと違うのではないのという気持ちではないかと思うのですね。だから,どっちを原則形で書くかということなのですけれども,一律に書いてしまうと死亡保険金の部分が浮いてしまう可能性は確かにあるのですね。それから③なのですが,これも前々回ぐらいに御議論いただいた生命保険で受取人が先に死んでしまった場合と,この③というのはルールがさっき御説明ありましたように違うということなのですが,このあたり御感触はいかがでしょうか。それと,死亡保険給付をする部分は生命保険だというのが比較的事務当局の基本的な立場だったのですが,この部分は傷害保険特有のルールがあっていいのではないかという,そういうことだろうと思うのですけれども。   どうぞ,○○委員。 ● 我々は,死亡ということについて言えば,生命保険と傷害・疾病の死亡については,基本的には同じ考え方という方が筋が通っているのではないかと。やはり人の命に関するものですから,ストレートに適用するのか,同じ規律をこちらに書き込んでやるかという問題は別にして,規律は同一であるべきだろうというふうに思っております。 ● どうぞ。 ● 一点,②の議論に関してちょっと補足させていただきますと,現行約款上は保険金受取人の指定変更の規律がない場合には指定変更を許さない趣旨であると一般的にいわれております。その根拠を私たちなりに考えましたところ,恐らくは傷害・疾病保険契約に類推適用されているといわれています商法第675条第1項ただし書において,指定変更権を留保しない限りは指定変更できないという規律が現行法にあると。ですので,それを前提とすれば約款に何も規定を置かなければ,それは当然指定変更できないと。逆に,その指定変更を認めるべき場合には,約款に規定を置くべきだということになるのかなというふうに理解をしております。   今回,第675条第1項ただし書の規律については,生命保険については自由に指定変更できるというのをデフォルトルールといいますか,法律上の規律とする方向であると。それと同じ規律を傷害・疾病保険契約にも置きますと,例えば自動車保険の搭乗者傷害条項ですとか,あるいは生命保険会社も入院給付金等については指定変更を認めていない契約も一部にあるというふうに理解しておりますけれども,そういったタイプの契約については約款できちんと指定変更できないということを書かないと指定変更できないという効果は導かれないのではないかなと。ところが,現にある商品を見てみますと,入院給付金等,死亡給付以外の給付については指定変更できないのがスタンダードな規律であるとすれば,少なくともその部分についてはいちいち約款でできないということを書かせるのではなくて,できるという規定を置いた場合にはできると,逆に言えば何も規定を置かなかった場合にはそれはできないのですよということを法律上も一定の合理的な規律として書くということもあるのではないかなという問題意識がございます。それは専ら法律上の任意規定というか,民法の任意規定に関する第92条との関係の議論かもしれませんけれども,そういった問題意識で今回②というような考え方もあり得るのではないかということを書かせていただいています。 ● 死亡とそれ以外を分けて書くということを考えた方がいいかもしれませんね。 ● それはありますね。ほかにこの部分,御意見ございませんか。   ○○幹事。 ● この第三者のためにする傷害・疾病保険契約に関するこの①,②,③のルールなのですが,これは保険契約者と被保険者が同一人物である場合と,同一人物になる場合ではない場合の両方を含めた話なのですかね。①のルールというのは同一である場合にはこれでいいのかなと思うのですが,保険契約者と被保険者が別人で,保険金受取人も指定していないとすると,だれが保険金受取人になるか分からない以上,被保険者の同意というのもできない,死亡給付に関してはできないのかなという気がするのですが,私も何を問題として言っているかよく分かっていないところもあるのですが,保険契約者と被保険者が別人であって,しかも保険金受取人を指定しないで保険契約が締結されるという,そんなことはあり得ないということなのですかね。その場合,本来同意ができないような場合ですよね。この死亡給付について同意が必要かどうかというのは,先ほどの議論にあったようにまだ決まっていないわけですが,そこで同意が必要であるというルールをとったとすると,この法律で死亡給付については被保険者の相続人が保険金受取人になるというようなことを勝手に決めてしまっていいのかどうかというのは,そこがちょっと気になっているのですけれども。 ● 我々の場合はきちんと指定されているようになっているのですけれども,されていないと本当にこういうふうに決まってしまっていいのかというのは私全く○○幹事と同じ疑問がありまして,特にそれが3頁の(注)1の要は同意をどうするかという問題と絡んできますよね。どういう場合に同意を緩めるというと言葉は変ですけれども,同意をとらなくていいとするのか,黙示の同意にするのかという問題と絡んでくるような気がしていまして,一方で契約者というのが本来契約の当事者であり,保険料を払っているということをもっと重視しないと,指定しないときというのは逆に言うと自分が受け取るという意思表示と考えた方がむしろ自然ではないかという気もしたりして,それは全く私見ですから皆さんで御議論していただいたらいいと思うのですけれども,ちょっとそのあたり契約者と被保険者が違うときの何も指定していないときというのは一体どう考えたらいいのか,同意問題と絡んで少しきちっと整理していおかないと何かおかしなことになるのではないかなというのが私の疑問なのですけれども。 ● そこはちょっと事務当局でちょっと詰めていただけますかね。ほかにいかがでしょうか。   では,この3のところはそれぐらいで,今日御指摘をいただいた点を踏まえてなお検討していただきたいと思います。   「4 その他」のところへ進まさせていただければと思います。まず,説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   資料で言いますと7頁の「4 その他」でございますが,ここでは1から3までに掲げたもの以外に傷害・疾病保険契約に固有の問題として検討すべきものがあるかについて問題提起をしております。   まず,(注)1では,いわゆる契約前発病不担保条項について問題提起をしております。実務上,例えば疾病による入院等に保険金を支払う医療保険契約にはこのような条項が設けられているのが一般的なようでございますし,介護費用保険契約の約款では,保険期間開始前に傷害,疾病その他の要介護状態の原因となった事由が生じていた場合には,保険者は保険金を支払わないと規定されているようでございます。   このような条項は,保険事故の予定発生率を維持する目的で設けられたものであって,この目的自体は合理的なものと考えられるのではないかと思われます。ところが,この条項をめぐっては,古くは昭和50年代の国民生活審議会において,近時は医療保険をめぐるトラブルの一環として,次のような指摘がされております。   まず,被保険者の自覚症状がなかった場合にも保険金が支払われないことになるわけですが,これは保険契約者側の保険加入への期待を裏切ることになるとの指摘がされております。これについては,約款上明記されているわけではないようですが,実務上,被保険者等が契約前の発病について自覚又は認識をしていなかったなどという一定の要件の下で保険金を支払うことがあるといわれております。   また,学説上,いわゆる告知義務制度との関係で一定の制約があると解すべきとの指摘がされることもございます。すなわち,契約前発病不担保条項と告知義務制度は,契約締結時の病気等を問題にするという点や,危険選択のための制度であるという点で共通性があることなどから,学説上,まず,保険者が疾病を知っていたり,知らなかったことについて過失があったりした場合には,告知義務違反による契約の解除はもちろん,契約前発病不担保条項に基づき,保険金支払責任を負わない旨の主張をすることは許されないとの指摘がされております。また,告知義務違反による解除権に関する除斥期間と同じく,契約成立又は責任開始から一定期間経過後は,不担保の主張をしない旨の条項を約款上設けるべきであるとの指摘がされており,実務上の約款では,責任開始後2年を経過した後の入院等については,責任開始後の発病によるものとみなすなどとの条項が設けられているものもありますが,このような条項がすべての契約で設けられているわけではないようでございます。   以上のような指摘に対しては,契約前発病不担保条項は告知義務制度によっては果たせない危険選択を事後的に行うこれとは別個の制度であって,告知義務制度を補完する機能を有するという説明がされ,保険事故の予定発生率を維持するという制度趣旨との関係で,単純に告知義務と同様の規律とすることでよいかについては検討を要する旨の指摘もされております。   さらに,いわゆる無選択型の契約,すなわち告知をせずに加入することができる保険契約においても,契約前発病不担保条項をめぐるトラブルがあるようであり,併せて御議論いただければと思います。   続きまして,(注)2は,被保険者が通常されるべき治療を故意に受けなかったため,傷害・疾病等が悪化したときは,保険者はその悪化した結果については保険金を支払う責任を負わない旨の規定を設けるべきとの考え方について問題提起するものでございます。   一例を挙げますと,早く病院に行って薬をきちんと飲んでおれば早く完治したのに,故意にそれを怠ったことから完治までに時間がかかった場合には,その完治がおくれた期間については保険者が責任を負わないといったたぐいの問題でございます。約款上,正当な理由がなくて被保険者が治療を怠り,又は保険契約者若しくは保険金受取人が治療をさせなかったために傷害が重大となった場合には,その重大となった部分に相当する部分の保険金は支払わない旨の規定が置かれている契約もありますが,そのような契約が置かれていない契約もあり,ただ,そのような規定が置かれていない契約についても,約款の支払事由を定める条項,つまり疾病を直接の原因とする入院などという定めが支払事由を定める条項として置かれておりますけれども,その解釈として同様の結論を導くことができるという説明もされることがございます。   この点については,保険金が支払われることを前提とした極端なモラルの低下に対して何らかの対応が必要となる場合もあるとは思われますが,その反面,傷害を受け,又は疾病にかかれば治療等を受けるのが普通と思われますし,もし治療等を受けないといった場合があるとしても,それにはさまざまな事情が考えられ,単に故意かどうかなどで画一的に区別することでよいかといった観点からも検討する必要があるように考えられます。   以上のような観点から,(注)2のような考え方について御議論いただければと思います。   最後に,(注)3では,損害保険契約又は生命保険契約と同様の規律とすることが考えられる規律について,念のため固有の問題はあるかなどについて問題提起をしております。   各事項については,既にさまざまな御指摘,御意見などを頂だいしておりまして,それぞれ二読に向けて検討していきたいと考えておりますが,今回は傷害・疾病保険契約に固有の問題に絞って何かあれば御指摘いただくということでお願いいたします。   それでは,最後に(後注)についても併せて8頁の冒頭でございますが,説明させていただきます。   (後注)は,いわゆる損害てん補方式の傷害・疾病保険契約に関する特別の規律を設けることの必要性について問題提起をするものでございます。   既に損害保険契約に固有の事項として火災保険契約や責任保険契約などについて特別の規律を設けるかどうかについて御審議をいただきましたが,同様の観点から人保険契約であるという特殊性に応じた特別の規律を設ける必要性について何かございましたら御指摘をいただければと思います。   以上です。 ● それでは,御質問,御意見を。   ○○委員。 ● (注)3の①の傷害・疾病等の発生の通知義務に関連してなのですけれども,できれば,例えば,保険者は,被保険者に対し,保険者の費用負担においてその指定に係る医師による診療を受けることを求めることができるものとするというような旨の規定を設けていただければと思います。約款では導入されておりまして,やはり不正請求対策のために必要な規定だと考えています。ただ,義務違反の効果については,消費者にとって不利益の少ない形で規定していただければと思います。もし規定を設けるのが難しいのであれば,現行約款の趣旨が維持できるように第3回,第5回で論議のあった包括的な契約者,被保険者側の協力義務の規定を設けていただければと思います。   あと,(後注)に関してなのですが一言だけ。例えば,海外旅行傷害保険の治療実費を払う保険などは,純然たる損害保険契約,費用保険であるというようなこととされていますので特別な規律は不要だと考えております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ちょっとここは少し,(注)1で大変触発されたので申し上げなければと思っておりますが,実は責任開始前発病と告知義務違反に関しましてはトラブルがたくさんございます。もちろん,さっき学説の紹介等があってそうなのと思って聞いていたのですけれども,当然契約前と契約後の危険選択であり,効果も違うということを重々承知していて,それだから両方ありますよということは,それはそれとしてよく分かるのですけれども,ただ,両方の適用の順番が現実に決まっているわけではございません。   そうすると,例えばこういう事例がございまして,きちんと告知をいたしました,きちんと病気を告知したら保険会社に引き受けていただきました,保険会社に引き受けていただいて,子宮筋腫だったのですけれども,子宮筋腫を告知したら保険会社がどういうわけか,多分引受けミスだと思うのですけれども引き受けていただいた。引き受けていただいたら,その後,同一疾病で入院をしました。引き受けていただいたので当然のことながら請求をしましたら,最初は告反だと言われた。告反だと言われて告反ではないと言ったら,そしたら責任開始前発病ですということでお支払をいたしませんと,これは強行に言われてしまったという事実がございまして,そこのときにどなたに聞いてもそれはしようがないねというようなお話が大変あったのですが,これは保険会社として信義則上いかがなものかと。   それから,消費者から見ると告知義務と今回応答義務になりましたので,なりましたというか,なる方向に大勢が行っていると私は思っているのですけれども,そういう意味で告知事項は消費者から見ると大変つまびらかになって分かりやすくなっていると。だからここにきちんと答えていけば保険に入れてもらえるものだと思ったのに,ところがダブルスタンダードで第二のあれが出てきて,告知しているから当然その疾病はあるわけです。そのある疾病で払わないと言われては目も当てられない。明らかに後出しジャンケンということになりますので,そういうしかも想像がつかない,どんなことで責任開始前発病と言われるか分からないという部分があると思うのですね。   私はどうしたらいいかという話でいつも思うのですけれども,例えばこのテーブル自体に責任開始前発病というルールが載っていて,この上に例えばこういう紙が載っていてこれが告知だと。この告知が時間軸があって何年前までという告知事項,この病気についてはというこういう時間軸と疾病の種類等があって,この告知についてきちんと正しく答えたら,この下のところの責任開始前発病ではねるということをやらないでいただきたい。消費者サイドから言うとそういう話なのですけれども,そうではないと告知をせっかく答えたという,告知をさせた意味がなくなるというふうに思いますので,そこら辺について本当はこれ監督法でおやりになるのかもしれないし,契約法の話なのと,どういうふうにうまく仕切るのという話が多分出てくるのだと思うのですけれども,それでもここのところのトラブルがたくさんありますし,それから通常保険契約者はそんなこと知りませんので,そういう意味ではぜひ何とか規定をしていただきたいと。   当然,生保協会も損保協会も団体の方で支払のガイドラインをお作りになったのはよく存じ上げていて,そこにそういうことが書いてあることも存じ上げているのですけれども,そこを法規定の方にぜひ取り込んでいただけないかなと思っておりまして,それだけを言いたいということでございます。 ● ○○委員。 ● 最後の○○委員のところの御発言のところでカバーされている部分は省きますけれども,いろんなケースがあると思うのですね。告知義務との関係やモラルリスクとの関係がいろいろあって,何らかの定義をしなければいけないという感じはするのですけれども,例えば,故意によって治療を受けないと,それで悪くなったということは,それはそれで分かるのですけれども,例えばよく聞く話で,宗教上の問題で輸血を拒んで悪くなったとか,あるいは死んでしまったとか,そういうケースがありますけれども,そういうものまでこれはだめだというふうに決めつけられるのかどうなのかというのはあります。いろんなケースがあると思うのですけれども,それを考えると基本法としての契約法で定義付けするよりも,業法とか約款できちんと定めた方が柔軟に対応できるのではないかなという気はしております。 ● ○○委員。 ● 事務当局の方から御説明ありましたように,告知義務制度とこの責任開始前不担保条項は目的が違う,制度が違うということで最高裁の判例なんかもあるのですが,先ほど実際の適用の場面の話も出ていましたので御紹介しますと,私どもとしましてはたとえ契約前発病であったとしても,その疾患による容易に自覚可能な症状,身体の変調が存在すること,あるいはその疾患の他覚的所見が存在すること,その疾患について医療機関の受診があること,こういったものを総合的に勘案して不担保の適用の判断をしているわけです。   それから,今,実際に告知期間というのは大体5年以内にしているのですけれども,実際にどういう例が多いかというと目の病気が多いのですね。網膜色素変性症ですね。こういうのは20年,30年たってほとんど失明になるということは実際にあるわけなのですが,そういう告知対象外のものについて,それでは昔に戻って告知をもっと期間を広げることが本当に消費者の利益になるのかということもあったりして,やはり責任開始前不担保条項というのはそれなりに機能していると思うのですね。そうでないと,高度障害保険金の対象になるのですが,2000万,3000万,こういった逆選択的な加入者に払うことが本当にいいのですかという話になるのですね。   それから,実際の統計的なお話になるのですけれども,告知したけれども払われなかったというのは,実はそんなに私どもとして上がってきているのは少ないのですね。圧倒的には5年以上前の発病の件が多いのですね。そういう実態ですね。   それから,だれも知らないというお話がありましたけれども,責任開始前で,これ支払要件の話ですから,それは約款を見ればもちろん分かるのですけれども,それで確かに知らないということが多いというか,そういう声も聞こえますので,重要事項の説明に入れたり,その他保険金の支払についてというような冊子に入れたり,今あちこちに入れて御理解を賜っている,そういう状況です。 ● かなり上がってしゃべったので少し言葉が落ちていたかもしれませんが,要するに責任開始前発病を否定しているのではなくて,責任開始前発病と告知義務のところを整理していただきたいと,そういうお話なのですよ。ですから,おっしゃっているようにさっきの私の言い方で言うと,この告知というものの時間軸を超えた部分を,超えた部分だとこれよりレアな部分について,それは責任開始前発病で不担保にしますというお話は,それはそれで了解はできるのです。だから,そうではなくて同じ疾病で,同一の疾病でダブルスタンダードがあり得るということがやはり問題だというふうに理解しているのですね。   それから,だれも知らないと言ったのは言葉が過ぎまして,だれも知らないというのはそういった意味ではなくて,責任開始前発病というのはだんだんこのごろ知られてきました。知られてきたのですけれども,責任開始前発病と言われたときに,つまり告知があったら質問事項がきちんと並んでいて,それについて誠実に答えていけばいいという話は分かるのだけれども,責任開始前発病と言われると風呂敷を広げられたようなので,そこについてどれがどれなのかというのが,本人が自覚しているかどうかというお話があるので,そこの部分において本人がチェックをできないという意味で申し上げたつもりでおります。 ● そこちょっと誤解がありまして,告知書の答弁義務というのは,別に今回初めて入ったわけではなくて,私どもとしてはもうかなり前からこの告知書に書いてあることについて自覚症状あるいは医療機関に受診したとか,そういったことを記入してくださいということですから,それは何の難しいこともないわけでして,それが契約前発病と異なっている,そういうことはないのですね。うまく整理すべきだというお話はありますけれども,やはり制度が違う以上,そこを簡単に何か告知したものは契約前発病をとらないという考えはあるのですけれども,実はそれでは告知したものについてこれを部位不担保にすればいいではないかという議論もあったりして,そういったことも検討もしていますけれども,なかなかそれが消費者一般にとって本当にいいのかという話もありまして,やたらに条件をつけていくことになるのですね。そういうことよりも,そういったある病気になった場合には契約前発病で払わないとした方が引受範囲は広がって,特に死亡危険で引き受けるのも広いわけですから,それの方が私どもとしては今のところ有利なのかなという思いはしています。 ● ○○委員がおっしゃるのは,既存の病気を告知したのだけれども,結局契約前発病として扱われる,そのルールそのものがおかしいとおっしゃるのか,その加入者の方は契約前発病と告知義務の関係が素人はよく分からないものだから,当然告知して私こんな病気ありますと言ってしまえば,保険会社は引き受けますよと言ったのなら,それは当然普通の人だったらこの病気も含めてカバーされるのだろうと思うので,そこを誤解がなきように保険会社としてはもうちょっと注意を喚起しておけばいいのではないかと両方の問題があるような気も,どちらの。 ● 欲張りでございまして両方なのですが,先生が整理していただいたものの両方なのですが,今この事例も別に大して詳しく言いたくないのですけれども,この方,実はお友達に保険の営業職員さんがいて,あなたそれで入れるはずないわよと言われたので保険会社に問合せをいたしました。保険会社に問合せをして保険証券も来たのだけれども,私は本当に入れたのでしょうかと問合せをしたら,保険会社の営業所から人が来てきちんと入れましたよ,心配しなさんなと言ってくれたのです。それでこういうことが起きたという事実があるのですけれども,ですからやはりルールをよく考えてみたら別に順番なんか決まっていませんし,責任開始前発病で先に適用して,別にちっとも構わないわけですね,現在の状況で言えば。そうすると普通の人が期待しているのは,告知書にきちんと回答すれば告知書の範囲内はこれでカバーされると,それからはみ出ているものについて責任開始前発病と言われれば,それはそれで状況にもよりますけれども納得感は得られるかもしれないけれども,少なくとも告知した事項において責任開始前発病と言われるのは,それは全然納得できない。何のために入ったのということになるのではないかと,そういうつもりで申し上げております。 ● 今○○委員がおっしゃった事例は,契約会社として不担保条項をつけないで受けてそこまでやって,やった場合は全体としては払うのだと,そういう意思解釈ができるのではないかと思うのですけれども,そこは私も最高裁の判例とかしっかりやっていませんので,ちょっとやはりこれはもう一点,過去そういう取扱いをしていたのかと,昔から規定ありましたよね。今と同じようなことを本当にやっていたのかという疑問もあるので,これはちょっとセカンドリーディングでもう一回考えていただければと思います。   あと,簡単に意見を二つ申し上げますが,全く告知をさせないで責任前発病と,これも一番問題で,告知義務というのは言わずもがなのことですけれども,両方にいろんな要件を課してバランスをとっているわけですよね。危険測定に関係ないことでちょっとぐらいうそはあっても別にそれは問わないと。一定の期間があると治癒をされると。バランスをとっているわけですけれども,こういう不告知で責前発病というとこんな楽な商売はなくて,お医者さんの引受診査システムも要らないと,保険料だけ来て,後でゆっくり断ればいいと。こういう形になりがちな保険で,やはりこれについては私どもでは本当にあれですけれども,同じ無選択の保険でも大手の保険会社は先ほど御案内があったように責任開始の時期から起算して二年を経過した後に開始した入院については,責任開始後に発病した入院とみなすと,こういう類型の方にはこういうみなし規定を置くということも考えないと,余りにも,つまりこれはやはり立法者は告知義務というところで保険会社といろんな思惑をバランスとろうとしたのを全部取っ払ってしまっているわけで,何も手当てしなくていいということにはどうもならないのではないかと。だから,今言ったのだけでいいのかどうかは別として,やらない,何もしないでここで改正をするということはあり得ないのではないかなというのがまず私の意見です。   それから,二番目がこの(注)2の問題です。これは,実際に生保さんにはこういう規定はなくて,「直接の」という言葉でどこまで読めるかという問題で,損保の方にはありますけれども,損保の方は正当な理由と,まさに先ほど○○委員がおっしゃったような心配もありますのでやっているわけですけれども,これを厳密にやると死の結果までの因果関係が消えてしまったり,やはり保険に通常期待するところまでも阻害するような結果になりがちなので,これはなかなか賛成できないというのが私の意見です。   以上です。 ● ○○委員。 ● 責任開始前発病不担保条項というのは実は昔からありまして,高度障害が廃疾保険金と呼ばれていたころからもあるわけですね。これは保険事故の性格上,例えれば,火が燃えている最中に保険に入って,それでそれを補償しろというのは無理だという,分かりやすく言えばそんなような話なのですね。既に病気になっている人はという話なのです。   それで,もう一つ今の入給は2年たてばみなしで払うというのはあるのです,確かに。それは金額も小さいのですね。入給ですからせいぜい数十万単位。ところが,この高度障害保険金というのは金額は先ほど申し上げたように大きい場合もあるわけです。ですから,高度障害については二年経過のみなし支払規定というのはないのですね。 ● ○○委員。 ● 今の○○委員が提起された事件で一番の問題は,保険会社がそういった告知を受けながらそういった病気については不担保であるということを明確にしないで保険を引き受けたことが一番問題だと思うのですね。この(注)1に書いてある問題について,確かに○○委員の御指摘になった点については今の点が非常に問題だと思うのですけれども,それを保険契約法のルールとしてうまくルールにできるかというと非常に難しくて,恐らくこれはそんな引受けをした保険会社が一番いけなくて,そして保険料をとっているのはけしからんと思うのですけれども,それについては恐らく保険業法の方できちんと処分すべきではなかったかと思います。○○幹事もいらっしゃらないのですけれども,ですからただ保険契約法の問題としてこれをちょっと扱うのは難しいかなと思うのですけれども,保険業法の問題としてはしっかり受け止める必要があると思います。 ● ○○委員。 ● 私の伺った範囲内では,保険契約上の取扱いとしては保険会社は全く正当な取扱いをしたのだというふうに思います。ただ,その説明義務違反の問題でしかないのではないかというふうに思うのです。例えば私が関与した例でも,心筋梗塞がありますけれども保険に入れますかと言ったら入れてくれたと。その直後に心筋梗塞が悪化して手術をしましたと,これはカバーされないのですよね。だけど何で保険に入れたのだ,意味ないではないかというけれども,その心筋梗塞以外の疾病については全部カバーしてくれるので,そういう意味で保険に入っているわけで,今のこの病気のために保険に入ったという意識を持つとそれはおかしいのだけれども,そういう意識を持たせた説明義務違反の問題であって保険契約の問題では,多分制度の問題ではないし,こういう問題をわざわざ保険契約法の中に条項を設けるべき性質のものではないのではないかなというふうに思います。 ● それでは,大分時間も超過いたしまして,今日はいろんな御意見を伺いましたので,なお検討してまいりたいと思います。   それでは,事務当局から何か次回のことについてございますか。 ● それでは,次回の確認とお願いを申し上げたいと思います。次回第8回会議は,来月,4月18日の水曜日,午後1時30分からこの会議室,法務省20階の第1会議室で開催いたします。   それから,今回積み残しが出ましたけれども,基本的には次回からいわゆる第二読会としまして,中間試案の作成に向けた御審議をお願いしたいと考えておりますが,具体的にどの項目をどのような順番で取り上げるかにつきましては,今日までの御議論を踏まえましてちょっと事務当局の方で検討したいと考えております。   つきましてはお願いなのですが,今日の資料の積残しになってしまいましたが,12頁の「2 その他」のところで,保険法の現代化に関しほかに検討すべき問題点があるかということで,何かこれまで項目として掲げていないものにつきまして契約法の規律として置くことを考えるべきだ,あるいは少なくとも検討すべきだというような問題点がございましたら,次回もちろんこの会議の場でおっしゃっていただければとは思いますけれども,事前に事務当局の方にお知らせいただければ,それも踏まえてまた次回の進行を考えたいと思いますので,できれば事前にいただければと思います。1週間前に資料を送付しますので,できれば2週間ぐらい前に,2週間前というのは結局来週のことになるのですが,来週の今日ぐらいまでにお知らせいただければ大変助かります。   以上,お願いでございます。 ● それでは,よろしくお願いいたします。  では,今日は長時間ありがとうございました。 -了-