法制審議会保険法部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  平成19年4月18日(水) 自 午後1時30分                       至 午後6時00分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第8回会議を始めさせていただきます。   それでは,まず最初に配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました部会資料9,それから,本日席上に配布いたしましたものが三点ございます。一つは「保険者が告知義務違反による契約の解除をすることができる場合」と題するペーパー,それから「いわゆる遡及保険に関する規律」と題するペーパー,それから「保険法部会の審議スケジュール(案)」と題するペーパー,いずれも1枚のものですが,事務当局が作成したものでございます。   配布資料は以上です。 ● よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思います。   前回,保険法部会資料8「保険法の現代化に関する検討事項(7)」の8頁以下,「第7 その他」が積み残しになっておりますので,これから審議をいただくことが考えられるのですが,本日は○○委員が御欠席で,○○委員も御都合により遅れてお見えになるとのことですので,「1 保険契約の無効・取消しによる保険料の返還」と,「2 その他」の(補足)に記載してあります契約の更新・更改をめぐる問題点については,本日の最後に御審議いただくこととし,「2 その他」のところで特に御指摘になりたいことがございましたら御指摘いただいた上で,保険法部会資料9の審議に入ることにしたいと思いますが,そういうことでよろしゅうございましょうか。   それでは,資料8の12頁の「2 その他」の関係ですが,この部会の期日の間に事務当局の方に御指摘いただいた点については,第二読会の審議に生かしていくことにしておりますが,それ以外に特にこの場で御発言になりたい事項がございましたらぜひお願いしたいと思いますが。   ○○委員,どうぞ。 ● 一読目のときにお話をした内容で,これから二読目に入るということで,若干,最初の段階では御質問という形で○○委員にもお答えをいただいたところでございますけれども,趣旨がはっきりしなかった部分もございますので,改めて見解を申し上げたいというように考えております。   具体的には,保険の類型の見直しの関係でございます。これにつきましては,今後,見解を述べさせていただきますけれども,今後の部会なり,事務当局での検討の中で御留意いただければということで申し上げたいというふうに思います。正確に申し上げた方がよろしいかと思いますので,一応ペーパーをつくっておりますので,そのペーパーに基づいて述べさせていただきます。   保険の場合は,商法第502条第9号の適用を前提とした営利性を有するということになっております。協同組合の場合は,組合員の最大奉仕,その事業については非営利性ということを法文上も絶対的な条件ということになっております。   したがいまして,一般的な理念の問題になりますけれども,協同組合の場合は,それぞれ一人一人の生活者なり生産者が相互扶助ということで,自らの要求を実現するというために設立をした非営利の組織という組織の形態でございます。したがいまして,組合員自らが出資をして事業を利用するということと,併せまして,具体的な運営にも参加をするというのが基本的な組織のつくりになっております。   したがいまして,例えば,法律ごとに若干違いますけれども,一つの仕組みをつくるという場合でありましても,理事会だとか総代会だとかそういうところの議決を要する,併せまして,生協の場合は特に厳しい規定がございまして,仕組み以外に,規定,それからその料率の算定書を含めて総会の議決事項という法の規制といいますか,そういうことが行われるという関係でございます。   全体的な共済,保険の役割,特に今の社会の中で,保険,それから共済の有用性といいますか,そういう観点で見ますと,相互に社会保障の補完的な役割を果たしているというように思っておりますし,共済につきましては,相互扶助という概念で,共済の組合員数というのは,これはダブっている数字ですから単体の数字ではございませんけれども,概ね6700万人ということで,広く国民に,いろいろな協同組合法に基づく共済がございますけれども,受け入れられているというふうに考えているところでございます。   そういうこともございますので,組織の形態の違いといいますか,組織の特質というものを抜きにして,保障という機能の面だけで,ある程度の条件,いわゆる無条件に同一の規律の下に置くということについては,特に組合員が実際にそのものづくりに参加をするということが前提になっている組織においては,一定の組合員の持つ権能を制限するということにつながるおそれがあるのではないだろうかというふうに考えております。   したがいまして,保険契約なり共済契約について,その規律の在り方というのを検討するということについては,現在検討されているわけですから,検討が必要だということは当然のことでございますけれども,今申し上げましたように機能面ということだけではなくて,実際にその形態による,法による機能,組織の機能というものが違う面がございますので,そういうところに一定の留意をいただきながら,保険契約なり共済契約についての法律上の位置付けなり,それから個別の規定の中での,一定,その区分をした表記というのを御検討いただければいいのではないだろうか,そういう必要もあるのではないだろうかというふうに感じているところでございます。   併せまして,実際に法の形式として,現行の商法の中での改正なのか,それとも独立した法律なのか,それは事務当局の方で御検討されるというお答えをいただいているのですけれども,単行法化されるといった場合の法律の名称の在り方の問題,それから,個別の規律の在り方についても,一定,繰り返しになりますけれども協同組合の持つ組織的な特質について,併せた御検討をいただきたいというふうに思っております。   また,実際に共済といいましても,いろいろなところで共済という名前が出てまいりますけれども,その範囲というのを,契約法の中でどういう共済を対象にするのかということの検討というのも併せて必要になるのではないだろうかというふうに思っております。協同組合法に基づく共済,それから例えば国でやっております農業災害補償法といいますか,それに基づく共済もございますし,地方自治法に基づく共済もあります。   そういう意味で,どこかで実際に契約法の対象になる共済というものについての規定をやはり入れておかないと,いろいろな共済と先ほど申し上げましたけれども,法律に基づく共済が前提であるとしても,その範囲について一定整理が必要ではないだろうかというふうに考えております。   協同組合としての考え方でございますけれども,いずれにしても,今日の保険の果たしている社会的な役割ということをやはりきちっと踏まえた上で,より消費者保護に有用な法をつくっていくということについて,協同組合としても当然賛意を表する立場で臨んでいきたいというふうに考えておりますので,先ほど申し上げました中身も含めまして,今後検討に当たって御留意をお願い申し上げたいというふうに思います。   ちょっと最初に総論的なことをまた申し上げて申し訳ありませんけれども,よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。 ● ありがとうございます。   では,○○委員。 ● 簡潔に三点ほど。意見はお出ししたのですが,その後で全体をずっと見回してみまして,やはりちょっと御検討をお願いした方がいいのかなということが三点あります。   一つは,契約時の規律の問題と保険金支払時の規律の問題で,それで,契約時の問題というのは保険料の取り過ぎの問題というのがあって,超過保険の部分は今日の資料9の21頁でいろいろ工夫して考えておられる。   割引の説明義務の問題が残っている。つまり,契約時にいろいろな割引ができるのに,それを説明しないで高いまま契約してしまった。この問題についてどうするのか。   今回の資料9の21頁のような同じような発想で,契約交渉が始まった時点で募集人,代理店がそういうものの説明義務を負っていて,それを果たさなかった場合は最初から取り戻せるとか,やはり何かちょっと工夫をした方が,つまり,取り過ぎ問題の方の,まだ全部解決していないところがあって,そこはちょっと,私は難しいかなと思ったのですが,この9の21頁のアイディアを見ると,これは同じ線で考えてもできるのではないかという感じもいたしますので,これはちょっとみんなで知恵を絞ってはいかがかという問題です。   二番目が今度は払う時の問題で,前々回でしたか,これは私が,非常に典型的な例として,死亡保険金請求があった時に,入院給付金,それから手術給付金もお支払できる可能性がありますよと,これは信義則で少なくとも言えるのではないかと。   しかし,賛同いただいたのは○○幹事だけだったのか,それとも皆さん,そう思われて発言されなかったのか分からないのですが,ただ,信義則というとケース・バイ・ケースだと。だから,これはもう非常に限定的でいいから,そういう説明する義務が何かあるというようなことを言えないのだろうかという問題をもう少し,忠実義務とか信任義務というと,こうなってくるとそれは大変ですけれども,その本当の一部をとって何かそういうことが考えられないか。   それから,この保険金の支払というものの二番目の問題は,これは,例えば約款にお医者さんが診査するというのを,故意にそれをしなかった。故意にというと,やはり相当背信的なもので,こういうものは従来余り考えなかったと思うのですけれども,いったんこういうことが起こってしまうと,これもなかなか議論はあると思いますが,労働基準法第114条と同じような付加金制度,例えばこれは,使用者の責めに帰すべき休業のときには賃金の100分の60を,倍ですね,倍払うというか,そういう規定でそれを,経営者側は非常に優越的な立場にある。保険会社もそうですね。事故を起こした人と保険会社という,事故にあった人と保険会社というのもそうですけれども,懲罰賠償というのはとても皆さん付けないし,いろいろ議論はあると思いますが,もう日本法の中に導入されて現在でも運用され,最高裁でももちろん認めているようなこういう制度をやはり,故意でやったときに,お金がないときに,ちょっと苦しいからしばらく払わないでおこうと故意にやったときに,何にもないというのはやはりちょっと問題なのではないか。これはもう言わずもがなですが,保険ビジネス固有の,常につきまとうビジネスモデルの問題でもあるわけですよね。保険金を支払うインセンティブというものがなかなかない。   これは,今行われている監督と契約法の在り方をどう考えるかという問題ともつながるのですけれども,ここ1年かそのぐらい,どのぐらいで手仕舞いになるのか分かりませんが,いろいろな問題を解決して正常化した段階で,多分こんな,ポケットの中に手を突っ込んで引っ張り出すということをいつもやるという,そういう状況がいいとも思われない。   やはり,行政による監督と契約法による規律,これをどういう関係に置いておくのかということを考えなければいけなくて,それで,前にも申し上げましたが,やはり契約法上で可能な範囲,変なことをやると引き合わないというような仕組みを可能な範囲で,なかなか難しいとは思いますが可能な範囲で取り入れていく。こういうことを考えるべきではないのかというのが二点です。   三点目は,法文の口語化,平易化,簡明化といいますか,そういう問題でして,これはいろいろな資料を拝見していて,今日の資料何かを見ると,簡明化何てとてもという感じがしないわけではないのですが,でも,ご存じのようにこの問題は穂積陳重先生以来,特に基本法の立法に当たってはとても重要な問題で,保険の場合は非常にテクニカルな面があったり,いろいろな難しい用語があったりして,ある意味では民法以上に必死になってやらないといけない部分がある。   例えば今日の資料9の最初にある損害保険契約の定義ですけれども,これは本当に,まず口語化なのかと。例えば「約し」という言葉がありますけれども,「約す」というのはこれは文語ではないか。そうすると,いや,「約する」という口語だとおっしゃるかもしれないが,でも,「約する」というと第一義は「要約する」という意味で「契る」という意味ではないし,それから,「その報酬」という,これは要するに漢文の,芭蕉のお弟子さんの其角の「其」という字ですね。これは何を指しているかというのはなかなか難しくて,この資料をお読みになっても,この「其」って一体何だという。   これは,普通の契約者の人にやはり,法文化したときに,「其」って何かと。これは,漢文の助辞解説によると,この其角の「其」というのは,その文章のテーマになるものを指すのだという説があって,「其」って一体何なのかというのが,やはり余り使わない,まずは「其」を使わないから,「効力を有する」というよりも,普通の人には「成立」というのがいいのではないか。民法には,もちろん「成立」という言葉もあるのですけれども,そういう使い分けは法の成句で何か理由があってやっているのかもしれませんけれども,この契約の定義だって,とにかく必死になって分かりやすくする,読んで分かりやすくと,そういうことに相当,命を賭けろとは言わないけれども,昔,オットー・フォン・ギールケというのがビントシャイトというのに猛然と反論して,民法典をつくるときに大問題になった。それを反面教師にして穂積先生はやられたのですが,もうちょっとこれは考えないと,特に今日の資料何かを見ますと,これは大変だなと。ますます分かりにくいもので,しかし,同じ内容でもっと簡単に書くということが本当にできないのかということをもっと考えてはどうか。   この三点です。せん越ですけれども。 ● ありがとうございます。   ほかにございますでしょうか。   では,共済の問題と,今の○○委員の御指摘の問題と,いろいろ立法の骨格にかかわるところから,また具体的なところもまた議論しないとなかなか結論が出ないような問題で,いずれも第二読会の中で検討の中に織り込んでいただこうと思いますが,事務当局から何か特にございますか。--よろしいですか。   それでは,その他に関する御意見は一応伺ったということで,今日の資料9でございます,「保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台(1)」の審議に入ることとしたいと思います。   まず,資料1頁の(前注)につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● (前注)は,いずれも第二読会の進め方をお断りするものですが,これと併せて当面の審議スケジュールについても御説明申し上げたいと思います。   まず,当面の審議スケジュールですが,本日席上に配布しました「保険法部会の審議スケジュール(案)」と題するペーパーに記載のとおり,本日の第8回会議から第13回会議までの6回で第二読会を行い,更に第14回会議と第15回会議の2回で第三読会を行って中間試案を取りまとめて公表し,意見公募手続を行いたいと考えております。   第一読会では,共通事項,損保固有事項,生保固有事項,傷害・疾病固有事項の順に論点を取り上げましたが,第二読会では,部会資料9の(前注)1にありますとおり,損保関係,生保関係,傷害・疾病関係の順に御検討をお願いしたいと思っております。   このように考えましたのは,ここで今一度,共通事項を各契約に即して書き下ろした上で,共通事項と各契約に固有の事項とを合体し,それを契約の成立から終了まで時系列に沿って並べてみる。比喩的に申し上げれば,損保契約法,生保契約法,傷害・疾病契約法をそれぞれイメージしてみることが,各契約に適用される規律の全体像を明らかにする上で有益であると同時に,これまでと違った切り口で見ることによって,今まで気付かなかった問題点に気が付く,あるいは今までと違った発想が生まれる可能性がある,このように考えたからでございます。   とは申しましても,第二読会で改めてすべての論点を同じように取り上げるだけの時間的な余裕はありませんので,会議の場では更に議論を尽くす必要性が高いと考えられる事項,これには資料で黒い★印を付けることとしておりますが,この★印を付けた事項に絞って御審議をお願いしたいと考えております。   更に議論を尽くす必要性が高い論点が各契約に共通の事項である場合,これには【各契約共通事項】という印を付けることとしておりますが,これに該当する論点については,議論の重複を避けるために,基本的には損保,生保,傷害・疾病いずれかのところで重点的に取り上げることにしたいと思っております。   もっとも,会議の場で取り上げる項目だけを第二読会の資料に掲げることとしますと,それ以外の項目については第一読会の資料からの変更点をいきなり第三読会の資料でお示しするということになってしまい,その点について十分な御検討をいただく時間,あるいは御意見を頂だいする時間が足りなくなってしまうおそれがございますので,第二読会の資料にもすべての論点を掲げまして,第一読会の資料からの変更点の有無,変更点がある場合にはその理由といったものを記載することにしております。   会議の場で取り上げない論点につきましても,資料を御覧いただきましてお気付きの点がございましたら,どのようなことでも構いませんし,どのような方法でも構いませんので,随時事務当局の方にお知らせくださいますようお願いしたいと思います。頂だいしました御意見や御指摘につきましては,第三読会の資料の作成に生かしていくこととしたい,このように考えております。   以上でございます。 ● それでは,そういう方針で--どうぞ,○○委員。 ● 私これ,中心にとか重点的にということで,★印以外のは後で話はできるのかと思ったのですが,どうもそうではない,絞ってというお話でしたから,一つだけ,印がついていないのにお願いしたいのは保険証券の用語の問題です。   理由は,ここで議論していないから。私は一回だけ,お願いということで「保険証券」という言葉を「証書」に変えない方がいい,理由は,このまま行きますと,保険法上は「保険証書」という言葉で,世の中にあふれているものは全部「保険証券」と,こういう状態になるのはよくないのではないか。   あと,付随的に二点理由を付けまして,国語辞典的な意味での「証書」というのは,事実関係を証する書類,法律家にとってはなかなか納得できないことかもしれませんが,どうも見ると国語的な意味では「証書」は事実関係を証する書類で,権利関係を証するものではない。   それから,もう一つの付随的な理由は,イングランド法準拠の貨物保険証券,これは現実に日本に,東京に海事弁護士の方が30名弱いらっしゃいますけれども,その長老の方に聞いても,昔の大審院の判例と同じように有価証券と考えている。もちろん,これは日本法の商法上の有価証券ではありませんが,日本法によって成立した有価証券だと考えている。   これは付随的な理由ですが,一番いけないのは,みんなが法律を見ると「保険証書」と書いてあって,手元には「証券」がある。こういうのはよくないと私は思うのですね。   その点について,簡潔で結構ですからちょっと皆さんの御意見を聞いていただけると,もし○○委員が御納得いただけるのであれば,聞いていただけると助かるのですけれども。 ● 今の点について何か御意見はございますか。   特にございませんでしたら,そういう意見があったということを踏まえてなお検討していただこうかと思います。   この種の★印が付いてない事項で,いろいろ実は意見があるということもあろうかと思います。それはぜひ事務当局の方へ御意見をいただいて,それを検討に反映していきたいと思います。   また,時間が余ったときには,★印以外の事項ももちろん御審議いただくということでございます。まずは,とにかく全体的な時間のスケジュールを考えると,まだ意見が固まっていないところ,重要問題を最重点に議論しようということでございまして,どうかその点は御協力をお願いいたします。   それでは,審議に入りますが,これも先ほどの委員の御出席の御都合との関係と同じ理由で,資料9の1頁の第1,1のあたりは後回しにさせていただきまして,大分飛ぶのですが15頁の「2 損害保険契約の効力・変動」のあたりから先に取り上げることにさせていただきたいと思います。   具体的には,★印がついております16頁の「(3) 危険の増加」からということになりますが,この項目については,ずっと行って19頁の下の方に(危険の増加関係後注)というのもあります。ここでは何を書いてあるかというと,規定の性質,強行規定かどうかということについて問題提起がしてあるのですが,これについては資料では告知義務の項目において詳しく説明されておりまして,後ほど告知義務に関する項目と合わせて御審議いただくのが適当かと思いますので,この後注以外の部分につきまして御審議をいただこうかと思います。   その点について,まず事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,資料16頁「(3) 危険の増加」の部分について御説明いたします。   まず,アでは,通知義務の内容と義務違反があった場合の規律について提案をしており,これらの規律は第一読会の資料に記載したものと同じでございます。   なお,(前注)のところに書きましたとおり,この危険の増加に関しましては,プロ・ラタ主義や,因果関係不存在の場合の特則という問題がございますが,これらについては生命保険契約の成立の項目において取り上げることとしまして,今回は義務違反の効果を保険者に対する解除権の付与とすることを前提として,その要件などについて御審議いただくこととしております。   また,ここで前提としております保険者が解除した場合の効果については,17頁の(補足)2に記載したとおりでございます。   続きまして,イでございますが,こちらは通知義務違反がない場合の規律について提案をしております。   まず,①では,将来に向かって契約がどうなるかを規律しており,この点について第一読会の資料では,保険者は将来に向かって契約の解除をすることができるという規律を提案しておりました。   これに対しては,契約を存続することが可能な場合にまで常に解除というのは合理的ではない旨の御指摘をいただきましたことから,今回の資料では,本文①で,将来に向かっての保険料の増額その他の契約内容の変更請求を原則的な取扱いとしつつ,本文②で,契約を存続することができない場合に限って契約の解除をすることを認めることを提案しております。   本文①につきましては,保険者の一方的意思表示によって保険料の増額などという効果が生じるというスキームでよいか,本文②については,契約締結時点を基準として契約を存続させることができるかどうかを考えることでよいか,つまり,危険が増加した時を基準として考える必要はないかについて,特に御意見をいただければと思います。   また,第一読会の資料では,危険が増加してから解除までの間に発生した保険事故について,保険者は常に保険金支払責任を負うという提案をしておりました。   これについては,常に保険者が責任を負うというのでは,保険者が増加した危険に対応する保険料を取得しないまま増加した危険について責任を負うこととなり,母集団全体として考えると相当ではなく,結局保険料の額を維持することが困難となりかねないなどとの御指摘がございました。   このような御指摘は一定の合理性を有すると考えられますことから,この点につきまして改めて18頁の(問題点)において問題提起をしておりますが,この点については,通知義務違反があった場合と異なる規律としなければ通知をするインセンティブが失われることとなりますし,常に保険者を免責とすれば,保険者は従前保険料を取得して負担していたリスクについてまで免責されることになり,それも不合理であると考えられます。   このような観点から,規律の在り方について御議論をいただければと思います。   以上です。 ● ありがとうございます。   それでは,ただいまの問題提起があったところを中心に御議論いただければと思います。   ○○委員,どうぞ。 ● 第2回部会で,「遅滞なく」ではなくて,責めに帰すべき事由がある場合はあらかじめ通知というふうにしていただきたいと申し上げました。   今の資料の17頁の(補足)1に御指摘いただいていますとおり,「あらかじめ」という語,言葉だけにこだわっているわけではございませんので,危険が増加した後,いまだ通知義務違反とはならない期間内に発生した保険事故について,保険者が保険金支払義務を負うかどうかという問題として考えていただければと存じます。   その前提で,18頁,イの(問題点)のところなのですけれども,通知義務違反がない場合において,危険が増加した後に保険事故が発生していたときの規律についてでございますけれども,自ら危険を増加させたにもかかわらず通知をしなかった場合は,危険の増加時から,免責あるいは免責に相当するような,そういうような通知を促すインセンティブを設けていただくことが,やはり通知制度の維持,ひいては保険の母集団の維持のために必要だと考えております。   告知の場合であれば,保険者は契約を引き受けないこともできますけれども,いったん契約してしまって,その後,通常なら引き受けない状態になったにもかかわらず,遅滞なく通知があれば,通知義務違反も問われずに保険金も支払われるということであれば,契約者,被保険者において,事故があったら通知すればいいというような行動につながってしまうのではないかと考えます。まじめに通知した人との間に不公平が生ずるということになってしまいますので。   それから,保険料の追加徴収でいいということにしていただいても同様で,やはり通知をするインセンティブとしては,弱いと考えております。   ただ,すべて免責となると,アの通知義務違反がある場合と変わらないということになってしまうので,帰責事由がない場合,あるいは軽過失の場合で,保険会社の引受基準の範囲内であれば,保険料追加徴収で対応可能かというふうに考えております。   以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 17頁のイのところでございますが,基本的にはこの事務当局案でいいなというふうに思っております。   一読目のところで,いわゆる保険契約者の母集団との関係,衡平性の問題をどう担保するのかということが分からないことがありまして,一度契約を解除して,それから危険が増加した後の条件でまた再度やり直す,締結をし直すというようなことも考えておったわけでございますけれども,保険契約締結時のプロ・ラタ化,あるいはオール・オア・ナッシングといった議論と分けて考えますと,既に成立をしている契約の継続を前提として,保険者に保険料の増額,あるいはその他の契約内容の変更請求権を与えた上で,一定の場合に解除権を与えるということがここには書かれているというふうに思いますけれども,基本的には,そういう意味では,消費者だとかあるいは当事者の利益と,それから保険母集団の健全性という意味で,そういうものを両立させるものではないかなというふうに思っております。   それから,危険の増加後に保険事故が発生をした場合,事後的にでも増加した危険分の保険料を保険金から控除するということが適当な手法ではないかなというふうに,今のところは考えているわけでございます。   これは,いつ起こるか分からないリスクに備えるという保険の本来の目的に沿ったものを考えつつ,リスクに応じた保険料とのバランスをとるためにはいいのではないかなということでございまして,基本的には,この事務当局案を支持したいと思います。 ● 今のは,イの部分を支持されるということですかね。危険が増加したけれども,通知がない間に事故が起きた場合の効果について,保険料を後で,その期間分のを追徴する,そういうルールがよくて,○○委員が指摘されたような免責の効果をという,そこはやはり問題だということなのでしょうか。 ● そこはちょっとまだよく分かりません。どっちつかずで申し訳ないのですが。 ● 分かりました。   ○○幹事,どうぞ。 ● 私も,基本的に事務当局案でよいのではないかというふうに考えております。   先ほど○○委員から,「遅滞なく」という,その通知義務自体を遅滞なく通知すればよいということにすると,まじめに通知した人がばかを見るというか,事故が起こってからでも通知すればいいのだというふうに思われかねないという御意見がありましたけれども,「遅滞なく」というのは,事故が起こってから遅滞なくではなくて,これは危険が増加してから遅滞なくということでしょうから,ですから,その「遅滞なく」の期間をどう考えるにせよ,例えば,その自動車の使用目的が,それまでは週末に買い物とかあるいはレジャーに使うだけだったのが,通勤,通学に使うようになった,これは明らかに現在の保険料率の設定からすると危険が増加すると思うので,これは通知しなければいけないと思うのですが,そういうふうに自動車の使用条件が変わったにもかかわらず,2~3週間そのまま放っておいて事故が起きたという場合には,おそらく遅滞なく通知したというふうには考えられないと思いますので,やはりその場合には通知義務違反ということで保険金が支払ってもらえないということになるでしょうから,やはりインセンティブはあると思うのですね。「遅滞なく」ということであっても,その通知をすることのインセンティブはあると思います。   ただ,この事務当局案のうち,(問題点)として書かれているところの「一定の場合に保険者が免責され,又は事後的に保険者が増加した危険に対応する保険料を徴収することができるものとすることについて」ということで,二つの案ということなのか,そのあたりをちょっとお聞きしたいのですけれども,免責されるというのは,これは,その危険の増加については保険料の増加では対応できないようなケースについての話で,事後的に保険料を徴収するというのは,それは保険料の増加で対応できるような危険の増加の場合の話で,つまりこれは二つの案から選択的に採るということではなくて,この両方を適用するという,そういう御趣旨なのか。   そもそも,その危険の増加が,保険料の増加,値上げでは対応できないような,およそそこまで危険が増加したら保険会社として,保険者としては引き受けなかったであろうという場合には,これは後の方の事後的に保険料を徴収するというのでは無理だと思うのですね。   ですから,そういう場合に備えて,そういう場合については保険者は免責されるという趣旨で書かれたのかどうなのか,ちょっとそのあたりをお教えいただければと思います。 ● 18頁の今の(問題点)の,一定の場合に免責される,又は保険料を徴収と書いた部分につきましては,今,○○幹事がおっしゃったところまで分析して書いたものではございません。   19頁の(補足)2の最後のパラグラフに書きましたが,まさに(問題点)の箇所では,考え方の例として,結局こういう場合には免責するという形にするか,あるいは事後的に保険料を徴収するということが一つ考え方としてあり得るところで,それを,例えば両方認める,あるいは場合分けをして,ある場合にはこちらの対応,ある場合にはこちらの対応をする,あるいはそれらをうまく組み合わせるとか,そのあたりも含めて御意見を頂だいしたいという趣旨で掲げたものでして,事務当局として(問題点)の文章に何かその思いを込めたということはございません。 ● そうすると,この保険料の事後的な徴収だけではおそらく対応はできないのではないかと思うのですね。つまり,原則的にこういうケースについて,保険者に何らかの救済を与えるかどうかという問題があって,そこで救済を与えるとすれば,保険料の値上げで対応できる場合については保険料を徴収し,そしてそれでは対応できないような,そこまで危険が増加してしまった場合には免責させるという,そこまで行かざるを得ないのかなという気はいたしております。 ● 今,損保の約款では,危険が増加したら,通知するまでは保険金を支払いませんという書き方がよくありますよね。そこは,例えば契約者の責めに帰すべき正当な理由なくとか,多少そこは主観的に限定されている場合もありますけれども,基本的には通知義務違反があったら免責で,その場合に,必ずしも保険契約,保険料割増し,追加払すれば引受けが続けられるか,全部もう引受けの範囲外になるか,そういうことは余り関係なく,もう通知がないと免責というのは,それは今の約款の基本的な考え方ですよね。 ● ほとんどの種目はそうですね。 ● だから,そういう今の約款のルールというのをかなり法律的なものにする。要するに通知というのはなかなかしてもらえないので,やはり免責というふうな制裁を定めておかないと全然通知をするインセンティブにならないねというふうな,そういうルールを設けるかどうかということですが,全般的にやはりこういう契約者側の義務規定に対する違反の制裁をどうするかというのは,これは全般的にはやはり何らかの帰責事由がないと,そういう効果が認められるべきでないという考え方もあり得るだろうと思うし,それから,効果の面でも,事務当局のペーパーにあるように因果関係の有無や何かで制限していくとか,いろいろな絞り方があると思うのですね。   危険が増加して,とにかく通知しないと全部,通知があるまでに起こった事故は免責というのは,やや何か,今の約款どおりで厳しいルールではないかなという気もする。そのあたり,先生方,御意見いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 私も,基本的には○○幹事が述べられたのと同じような疑問を持っていたのですが,ただ,本当の結論,要するに,今○○委員がおっしゃったように義務違反がないというところで,直観的な解決は,やはり個人的な消費者相手の場合と企業的なものを分けて,企業の場合は免責ということもあるかもしれないけれども,消費者の方はそうではないと。   だから,ではどこに問題が来るかというと,飲み込めるだけの,確かに保険料を計算したらある程度はその差が出ますけれども,飲み込めないようなものなのかという,そういう。ところが企業保険だと,これはやはり飲み込めない部分がいっぱいあるし,特に再保険の問題があって,カタストロフなものはやはり,ちょっとこれは違いますけれども,事前に要求しないとアレンジメントが全然できない。これを業界の方がおっしゃらないから,私は本当にそれで保険会社は大丈夫なのだろうかと。逆に言うと,これは余り,保険会社が持つということになると,参入障壁みたいになってしまってもいけないので,それは体力のあるところだけできるということになってもいけないと思いますし。   だから,二つ別のことを言ってしまいましたが,事前に,企業物件でこうしなければいけないかというのはちょっと別の問題としまして,だから本当にお聞きしたいところは,免責というところまでやらなければ,その分をスプレッドして,制度として飲み込めるということができないものなのかというのが質問なのですけれども。 ● これは,実務的に何かありますか。 ● それはもう,どちらとも言えないと思うのですけれども,もともとそういう形で母集団全体の料率,それを先に飲み込むことを逆に論理的に覚悟してしまうと,もともと通知で低く抑えようとしている制度自体が崩れるわけですから,それはとんでもない話になるとしか言いようがないですね。   もちろん,それでやれというのであれば料率は上がるでしょうし,それからもう一つは,こんな人は余りいないと思うのですけれども,その通知が甘くなったことを利用して,告知の時からうそをついてしまおうとか,最初から頭の中で分かっていてというようなこともあり得るので,ここだけで増えるのではない可能性もちょっとあります。   いずれにしても,制度自体を否定するような形のイメージがちょっと出てきて,もちろんきちんと計算してみないとというか,できるかどうか分かりませんけれども,どのくらい,飲めるか飲めないかと言われたら,そういうふうなお答えしかできないと思います。すみません。 ● ○○委員,どうぞ。 ● これ,先にお聞きしたいのですけれども,「危険の増加」のところに★印がついていて,その次に【各契約共通事項】というふうに書いてございます。ということは,これは生保でも損保でも,傷害・疾病でも同じだというルールでございますか。基本的に,現行,今例えば通知義務はない生保においても同じだということですね。 ● 基本的にはそういうことです。ただ,今の生命保険のように,法律上のルールはあるけれども,実際上は健康状態が途中で悪くなってもそれは問題としないと,そういう引き受け方をすれば,それはもう問題にならないと,そういう点でですね。 ● はい。というのであれば,ちょっとお話を申し上げたいのですけれども,一読のときに申し上げましたけれども,基本的に通知義務の,現状今,実際上はなかなかお使いにならないことはよく分かっているのですけれども,通知義務という規定があって,それの効果が,どうも通知義務というものの皆さんへの周知度,契約者への周知度に比べて効果が高すぎはしませんかということを多分申し上げたと思います。   それと,あと,通知義務のインセンティブが,当時の一読の案では,これではないのではないのですかということを申し上げた。   あと,加えて,では募集時に通知義務を言うしかないですね。通知事項はこうですよと,それは募集時に言うしかないので,長いスパンの契約だと,では,それを覚えていなさいという論理になってしまう。   では,それを覚えていないことを故意,重過失として,これだと解除されることになってしまうのですね。そこまで,やった行為と,帰責性と今○○委員におっしゃっていただきましたけれども,そことバランスを失するのではないかという思いは,これでもやはり消えないというふうに消費者サイドとしては,あくまで善意の消費者はどうしても期待してしまいますので,そういうふうに考えますが,いかがでしょうか。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 二点ありまして,一点は,今日の資料が(損害保険契約の効力・変動関係後注)というところまでありますので,変動関係は今日で終わりなのかなと思ったので,それにしては,他保険契約の通知義務がそこに来ていないのはなぜかということをまずお尋ねしたいということが第一点です。   それから,もう一点,先ほどからの議論と少し違うのですが,この規定のもとに保険の目的の譲渡もこれで規律するというふうにした場合,譲渡してしまって完全に被保険利益がなくなればそれは問題ないと思うのですが,現在の判例理論上は,保険物の目的の譲渡担保をした場合にも目的の譲渡の規律が当てはまる。しかも,判例のもとでは,譲渡担保の場合には譲渡担保権設定者にも被保険利益があるという,設定者と担保権者の両方に被保険利益がある,そういう理論だったと思うのですが,その場合に,この規定ですと,通知を求めて,かつ,危険が増加した場合については通知義務を負うということですね。ということは,保険の目的の譲渡担保をして,契約者が危険が増加したと思わない場合には通知をしなくていいというような解釈が出てくるのではないかという気がいたしますし,そもそも保険の目的の譲渡担保において常に危険が増加するという,そういう前提のもとに考えることができないのであれば,そういう規定を置くこと自体が,この規定の強行規定性に触れてしまって,今までできたことができなくなるという可能性がありはしないかということをお尋ねしたいと思います。 ● 最初に,どういう取り上げ方をするかをもう少し詳細に申し上げるべきだったかもしれませんが,他保険告知・通知は次回取り上げる予定にしておりますので,またそこで御意見を頂だいしたいと思います。   それから,二点目の譲渡担保の場合にこの危険の増加の規律がどう働くことになるのかについては,正直そこまでちょっと検討が及んでおりませんで,確かに今,○○幹事がおっしゃったように,最高裁の判例が仮に前提としていると言われる,両方に被保険利益があるような考え方に立った場合にどう働くかは,引き続きちょっと考えてみたいと思います。 ● 譲渡担保の場合どうするかというややこしい問題があるかと思いますが,ちょっと余り変則の形態から考えないで,まず基本形からちょっとルールを決めていきたいと思うので,そのあたりいかがでしょうかね。   ○○委員。 ● 規定の性質ともかかわりがあると思うのですけれども,いつの部会だったか記憶がないのですけれども,業種による,漁協の関係の例を出したと思うのですけれども,これが,○○委員が言われるように生命を含めて,基本的にその共通の規律として考えるということであった場合に,例えば,繰り返しになりますけれども,漁場に出た場合に著しく,そのとき申し上げたのは,気象庁の基準で,緯度によって,台風なのか低気圧なのかこれが違う。一般的には低気圧だと思っていても,実際には台風と。だから,著しく危険が増加したことを遅滞なく通知するといっても,現実的には実効性がないわけですね。   その場合に,一般的な規律としては確かにこのとおりかと思うのですけれども,これが強行規定ということになりますと,現実に支払っているわけですけれども,そういうケースについては,支払われなくなるというようにやはりせざるを得ないということもありますので,ケースとしてレア・ケースなのかもしれませんけれども,業種の抱えている特性という観点から見た場合に,一般の規律としては是としたとしても,一定の運用性を持たせたものの考え方というのを,前段で多少共済のケースを申し上げましたけれども,少し包含していただけるような立法の仕方を考えていただければ,基本は同じだったとしても,一定の事情によった酌量の余地を設けられるということになるかと思いますので,そういう点での御検討をお願いできればというように思いますけれども。 ● 確かに,この17頁の①の記述で,現在の資料の文章の字面だけを読みますと,告知を求められた事項のうち,通知を求められたものは全部通知しなければいけないと,通知義務がかかってしまうような文章になっていますが,法は不可能を強いるものではないというのが大前提としてございますので,おそらく解釈としては,それは通知しようがないものは,通知を求めたところで,それによってこの義務が生じ,あるいは義務違反による解除権が発生するといったことはないと思いますが,なお今の御指摘も踏まえて,より適切な表現がないか考えてみたいと思います。 ● ○○幹事。 ● 原案の「危険の増加」という文言の意味なのですが,現行法ですと「著シク」という言葉が付いておりますけれども,これは今御提示いただいているところではその文言は削られているのですが,現行法と同じ意味合いで,ここでは「危険の増加」ということを使われているのかどうかという点,おそらくそうではないかとは思うのですけれども,それで削ってよろしいのかなという,そういうちょっと不安が一つございましたのと,先ほどの○○委員がおっしゃった漁船のケースですとか,これは「危険の増加」ということになるのですかね。それで,台風とか低気圧でそのまま転覆して大損害が生じましたと,これは保険事故の発生そのもので,台風が一過してしまったらまた元の状態に戻って,危険のそういう増加した状態ではないということになりますので,一般的な危険の増加の観念から言いますと,一定増加した危険の状態がずっと続く。だから,いったん台風の状態に突っ込んだら,もう当分の間それを抜けられないよという,何日間もずっと,1週間ぐらいそういう状態にありますよと,それは確かに危険の増加かもしれないのですけれども,数時間そういう嵐の状態にありまして,それで事故が起こるというのは,これはまさに保険事故が発生する状況自体ですので,通常危険の増加の規整では律しない,まさに保険事故が発生するか否かというそのレベルの問題になっていくのではないかなと思いましたけれども。 ● どうぞ。 ● 一般的に台風が来て去るまで,陸上と海上は違うわけで,大体,最低でも3日ぐらいはやはり違うわけですよね。そういう意味で,危険の増加ではないというふうに言っていただいた方がむしろいいのかもしれませんけれども,現実的にはやはり危険の増加には間違いないというふうに考えているものですから,そういうのは危険の増加ではないよというふうに規定していただければ,むしろもうそういうのは外れてしまいますので,その方が余計な心配をしないでいいのかなというふうには思いますけれども。 ● そういう解釈になると思いますがね。   どうぞ。 ● ○○幹事の今の一点目の御指摘ですが,資料の取り上げる順番が前後した関係で分かりにくくなってしまいましたが,今の点につきましては,そもそも前提となる告知の対象につきまして,資料の3頁のところで,現在単に第644条で「重要ナル事項」となっているところを,現在の本文のこの案は「危険に関する重要な事項」とし,かつ,それが引受けの判断に影響を及ぼすものと,こういう限定を付すことを想定しております。   それを踏まえて,この資料の16頁,17頁の案をつくってございまして,そう限定すれば,それに変動が及ぶというのは,すなわち現在の第656条の著しい増加に当たるとこう考えまして,「著しい」という言葉を本文の案では掲げていないと,こういうように我々としては考えております。 ● この18頁の(問題点)のところで提起されている問題について,もうちょっと皆さん方の御意見を聞ければと思いますが,何かございませんでしょうか。   今の損保の約款は,危険が増加したら通知があるまでは免責とはなっていても,そこは,さっき言ったように正当な事由とかそういう絞りがかかっていたり,そもそも通知義務が,○○委員が問題提起されたように,自分の行為で危険を増加させているときはあらかじめとか,そうでない場合は知った時とか,非常に段階を細かく分けて,リーズナブルな,余り過剰な制裁にならないようになっているような気もするわけで,案外芸が細かいふうになっていると思うのですが,やや,この事務当局の18頁の案は,一律に何か通知の実効性を確保するのに免責と,ややちょっと強く出過ぎているかなという気がするのですがね。   ほか。どうぞ,○○委員。 ● 19頁の(危険の増加関係後注)というのは,②というのが一番下から2行目にありますが,「いわゆる企業保険については任意規定とすべきであるとの指摘に関連して,具体的にどのような場合に,どのような理由によって,各規律と異なる特約を許容する必要があるか」というこの質問に対して,ちょっと考えてみたのですが,にわかに答えるというか,なかなか思い付かない。   ただ,漠然と,要は任意規定であれば,むしろこの危険の増加の解釈というよりも,そもそも何を保険対象にしたか,どういう危険を保険対象にしたかということをおそらく詳しく書くことになるだろうなと。   それで基本的には解決できるような気がするのですが,まだ,では本当に強行規定にして一切問題ないかというのは,これもまた自信を持って言えない。   それで,①のところで書いてありますように,片面的強行規定であればもちろん何も問題ない。企業ユーザーとしても,この括弧を取っていただければ,②は検討のしようがなくなる。   それから,そもそも②の書き方が,いわゆる企業保険というのも,今までこの部会で企業保険を独立に定義したり,規律対象にするというのは試みていませんですよね。そうなると,またこれは非常に大ごとになるなと思いまして,結論的に言うと,この①が片面的強行規定であるのであれば私どもは全く問題ないという,そういう考えです。 ● ○○委員。 ● ただいま強行規定の話が出ましたので,併せて御説明させていただきたいと思いますが,企業の契約ですね,一般の契約ではなくて企業の契約につきましては,非常に種々さまざまな保険契約がございますし,非常に特殊な新しい分野の保険に対しても,これから損害保険会社が補償を提供していかなくてはいけない。   そういう中に,なかなか損害保険会社としては補償を提供しにくいような分野もございますが,そういう場合には海外の再保険者等々いろいろな特殊な契約をしながら,かなり条件を狭めながら補償を提供していく,これがますます求められてくると思うのですね。   こういう場合に,やはり企業の契約につきましては,一般的な附合契約というよりもむしろ相対取引みたいな形態が多いものでございますので,こういう取引の阻害とならないような形にしていただかないと,個人の契約ではもともと問題はないと思うのですが,余り厳しくされますと,むしろ再保険等々で補償が提供できない。   例えば新しい分野とか特殊なリスクにつきましては,例えば保険期間中に危険の変更があった場合には,あらかじめ通知をしてほしい。さもなければ,再保険は提供できないと。   例えばある地域だけ,瀬戸内海だけで船を走らせるときには補償してあげるけれども,例えばそこから出たら,あらかじめ,出る前に連絡をくれないと次に再保険は買えないとか,こういうことは十分あり得るはずなのですね。   そういう場合に,例えばある地域だけ,あるいはある仕事をしている間だけは補償するけれども,そこから出る場合には更に次のカバーを買わなくてはいけない。こういうときに,もし契約上,法律上,あらかじめ通知するということができない形になってしまうと,結局保険会社としても,そういうリスクはお受けできませんということで,結局社会的に見るとリスクが補償されないということがあり得るのではないかなというふうに考えていまして,その辺はぜひ,原則はもちろん分かるのですが,企業につきましては任意規定にされた方がよろしいのではないかなというふうに考えております。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 18頁の危険の増加のところの,通知義務違反がない場合の規律というところの意見なのですけれども,これは第一読会のときにも申したかと思うのですが,それから,今○○幹事がおっしゃいましたように,順番としては告知義務のところがあって,それとの関連での規定だというふうに考えた場合,やはり告知するような契約の締結の意思決定に影響するようなそういう要素について,その危険が増加した場合にはという要件を議論する場合には,まず,契約を解除することができるという,そちらの効果の規定が先に来て,そのような保険者としては,そういう場合には解除することができるという効果を実効あらしめるために,その危険の増加というのが被保険者とか保険契約者側の事情によるときには,通知しないと,それは,その通知義務違反自体で解除権も生じるときもあるとかという,ちょっと付随的な義務の効果が先に出てくるような規定振りではない方が,整理がつくかなという気はいたします。 ● ほかにいかがですか。○○委員。 ● 簡単にしますが,○○委員のおっしゃったことは,私は,そういうことは確かだと思うのですね。だから,これは○○委員の意見とちょっと違うのかもしれませんが,それは実質的に問題がありますが,いろいろちょっと前の方に,商人で見るか,いろいろな形で法人契約というものを苦労されていろいろな例が挙がっていますが,完全にきちっとやるというのは難しいにしても,こういう,やるかやらないかということであれば,やはりそういういわゆるコマーシャルラインとか法人契約といわれているものを分けて,そこは自由にする。   パーソナルラインで,個人,消費者の問題,契約の場合には,やはりこれは相当権利義務関係にドラスティックな効果がある場合があるわけで,だから,分けた方がいいのではないか。   それで,私は先ほど飲み込めないかという質問をいたしましたが,要するに通知義務違反のない場合というのはケースとしては少ないと思うのですよね。だから,ではその母集団に比べてそのケースが少なくて,そこで払う金額というものは多分,全体の保険料から見れば非常に微々たるもの,小さなもので,もうちょっと工夫は必要かもしれませんが,方向性としては,できれば免責とまでは行かないようなそんなことができるのではないか。   だから,一点は,法人・個人というか,パーソナル・コマーシャルというのはやはり分けるところで少し考えた方がいいのではないかなという感じがいたしました。 ● どうぞ。 ● 決して企業保険ということの定義をつくるのに反対しているわけでは全くありませんでして,今まで議論されていないときに,後注で付け足しのような話ではないのではないかなと。もし,企業保険という定義を新しくつくるのであれば,これはもう本文の中できちんと組み込む必要があるという,そういう指摘なのですよね。   それから,結論として,企業については任意規定にしていただきたいというのも全くそのとおりで,○○委員と。   だから,そういうことをしないということであれば,少なくとも片面的強行規定であればこの問題については不都合はありませんと,こういう意味なのですよね。全体の体系の中で,企業に関する保険というのはやはりきちんとした方がいいということであれば,これは後注ではなく本文の中で最初から組み立てる必要があろうかなということですね。 ● いろいろ御意見をいただきました。何か事務当局としてぜひここを聞いておきたいというところはございますか。--とりあえずよろしいでしょうか。○○幹事,どうぞ。 ● 言葉だけの問題なのですけれども,18頁の1行目ですか,「その他の契約内容の合理的な変更を請求することができるものとする」と言われている部分,後ほど告知義務のところでも少し問題になるかもしれないのですけれども,これは,趣旨としてこういう説明をされているということなのでしょうか。あるいは,法文の中にこの「合理的な変更」ということを書き込まれるおつもりなのかという,これは,大変難しいことを考えておられるということはよく分かるのですけれども。 ● そちらの趣旨は,こういう法文が書けると考えているということでは全くございません。考え方として,保険料の増額というのは割とストレートに書きやすいし,受けとめていただきやすいと思うのですが,それだけでは多分足りないという場面が多々ある。それについてはどういう形で反映させればいいのかなというのを考えていただきたいという,その思いも込めてこういう言葉を使っているということでございます。 ● 分かりました。 ● それでは,通知,危険の増加に関するルールで,一方ではこういう増加した場合に契約の内容を修正したい,場合によっては免責のようなルールも必要であろうけれども,どういう要件のもとでそれを発動させるかなど,そこはいろいろまだ要件の検討が必要かなというのが今日の意見ではなかったか,今後なお詰めていただこうかと,そういうことでこの部分はよろしいでしょうか。   それでは,この部分はそれぐらいにいたしまして,次に21頁の下の方,「(5) 保険金額が保険価額を超える場合の保険料等の減額請求(いわゆる超過保険を含む)」の部分について御審議いただきたいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● (5)では,保険金額が保険価額を超える場合の保険料等の減額請求について取り上げております。   ここでは,いわゆる超過保険,すなわち損害保険契約の成立時に保険金額が保険価額を超えていた場合と,保険期間中に保険価額が減少したことによって保険金額が保険価額を超えることになった場合の両方について,いずれもその超過部分の保険契約を当然に無効とはしないことを前提に,統一的な規律を設けることを提案しております。   まず,本文①は,損害保険契約の成立時に超過状態にあったかどうかを問わず,保険期間中のある時点において保険金額が保険価額を超えている場合には,保険契約者は将来に向かって保険金額及び保険料の減額請求をすることができることとしております。これは,第一読会の資料の考え方を基本的に維持するものでございます。   次に,本文②及び③は,損害保険契約の成立時に超過状態にあった場合には,保険契約者は保険契約の成立時にさかのぼって保険金額及び保険料の減額請求をすることができることとしており,これにより保険契約者は,不当利得として超過部分の保険料の返還を求めることができることになります。   ただし,保険契約の成立時に保険契約者が超過状態であったことを知っていた場合,例えば保険契約者が将来の保険価額の値上がりを見込んで高い保険金額を設定していたような場合には,このような減額請求を認めないこととしております。これは,(補足)1に記載のとおり,第3回会議における議論を踏まえて,保険契約者が過去分の保険料の返還を受けるための特別な規律を設けることを提案するものでございます。   この本文②及び③のような規律を設けることの当否及びその具体的な要件を検討するに当たっては,現行商法の規律や,民法第95条の錯誤無効との関係を整理する必要があると思われます。   まず,現行商法の規律との関係ですが,現行商法の下では,第631条により,超過部分の保険契約が当然に無効となるため,保険契約者は保険契約の成立時に超過状態にあったことを証明すれば,不当利得として超過部分の保険料の返還を求めることができることになります。   この点に関し,商法第643条によれば,保険契約者又は被保険者が,無効原因につき悪意又は重過失があることを保険者が証明した場合には,保険契約者からの保険料の返還請求は認められないことになると考えられますが,この規律を維持するかどうかについては,別途御審議いただくことを予定しております。   このような現行商法の規律と比べますと,本文②及び③は,超過部分の保険契約が有効であることを前提とするものであるため,保険価額が当初の価額よりも上がった時点で保険事故が発生した場合に,当初の保険価額を超えて損害のてん補が受けられるという点で,現行商法の規律と異なることになります。   また,本文②及び③は,保険契約者が保険契約の成立時に超過状態にあったことを証明すれば,保険金額を減額して保険料の返還が受けられるという点では,現行商法の規律と基本的に同じですが,超過状態にあることにつき,保険契約者に重過失がある場合にも,保険料の返還請求が認められるという点については,現行商法の規律と異なることとなります。   次に,民法第95条との関係ですが,超過部分の保険契約を保険法上は無効とはしないことを前提に,保険契約者が民法第95条により錯誤無効を主張することを考えた場合,保険契約者は,当該保険契約の要素に錯誤があったことを証明しなければなりませんが,ここで言う「要素」とは,一般に,その点について錯誤がなかったならばその意思表示をしなかったであろうと考えられるような,意思表示の内容の主要部分であるといわれております。   通常,保険価額が幾らであるかは保険契約者の重大な関心事であるため,この点について誤解があった場合には,損害保険契約の要素に錯誤があったものと考える余地は十分にあると思われますし,また,手形金額に錯誤があった場合に,意思表示の一部無効を認めた昭和54年9月6日の最高裁判決の考え方によれば,通常は保険契約全体ではなく,超過部分についてのみ契約が無効になるものと考えられます。   そして,一般に錯誤無効の効果は,相手方や第三者が表意者の意思に反して無効を主張することはできないという意味で取消的無効であるといわれており,保険契約者は超過部分の保険契約が無効であることを理由に,不当利得として超過部分の保険料の返還を求めることができると考えられます。   なお,民法第95条ただし書によれば,保険者が保険契約者の重過失を証明した場合には,錯誤無効の主張は認められないことになりますが,保険契約者及び保険者の双方が保険価額を誤解していたような場合には,いわゆる共通錯誤として,保険契約者に重過失がある場合でも錯誤無効が認められる余地があると思われます。   このような民法第95条の規律と比べますと,本文②及び③は,保険契約者が自らのイニシアティブによって保険金額を下げることができるという点では,民法第95条の規律と同じですが,保険契約者が保険契約の成立時に超過状態にあったことを証明すれば,これが当該保険契約の要素に当たることや,この点につき錯誤があったことまで証明する必要がないという点について,民法第95条の規律と異なることになります。   このように,本文②及び③は,現行商法及び民法第95条の規律と比べますと,その要件及び効果の点で異なる部分がございますが,このような特別な規律を設けることの当否については,民法の一般法理にゆだねるのではなく,保険法に特別な規律を設けることに合理性があるか,超過保険の場面だけに特別な規律を設けることが損害保険契約に関する規律全体のバランスを欠くことにならないか等の観点からも検討が必要であると思われます。この点に関連して,(問題点)1及び2についても御意見をいただきたいと思います。   また,仮に本文②及び③のような規律を設けた場合には,この規律による減額請求の具体的な範囲についても検討する必要があると考えられます。   例えば,保険契約の成立後に保険価額が上がった場合でも,保険事故が発生するまでの間は,当初の保険価額を下限として任意に選択する金額まで保険金額を減額することを,保険契約者に認めてよいとも考えられます。   他方で,保険事故が現実に発生し,いったん当初の保険価額を超えて損害のてん補を受けた場合には,その後に保険契約者が減額請求を行い,その損害てん補を受けた価額よりも低い金額まで保険金額の減額を求めることは,もはや許されないと考えるのが素直であるように思われます。   このように,本文②及び③の規律を御検討いただくに当たっては,保険契約者が減額請求を行うことができる具体的な範囲につきましても,併せて御議論をいただきたいと思います。   なお,第一読会の資料では,いわゆる超過保険と併せていわゆる重複保険についても,超過部分の保険契約を無効としない考え方を提案していたところであり,超過保険と重複保険とでは理論上共通する部分があることも否定できませんが,重複保険に関する規律については,第9回会議において御審議いただくことを予定しておりますので,ここでは重複保険の問題とは切り離して,保険金額が保険価額を超える場合の規律の在り方について御議論をお願いしたいと思います。   以上でございます。 ● それでは,ただいまの部分について御意見をいただきたいと思います。   ○○委員,どうぞ。 ● この本文の規定につきましては基本的に異を唱えるものではございませんし,これでよろしいとは思うのですが,二点ほど意見を出させていただきたいと思います。   まず,第一点目は,保険金額が保険価額を超えているということでございますが,一般的に物の評価額というのは点で定めるものではなくて一定の幅があるものでございますので,やはりその一定の幅があるものということがある程度反映できるような表現,例えば,現行の第637条には「著シク減少」という概念が入っておりますので,例えば「著しく超えている」というような表現にしていただければ,その辺が非常に分かるのではないかなと。つまり,「保険金額が保険価額を超えている」という言葉の中には,「明らかに超えている」とか,「著しく超えている」ということが織り込まれたそういう概念であるというふうに私どもは考えておりますので,「少しでも超えたらどうこう」とか,そういうことに話が行かないようにしていただければと思っています。   それから,二番目は,契約成立時からの減額請求でございますけれども,この規定を入れることにつきましては特に反対するものではございませんし,もちろんこういうことが必要だと思っておりますけれども,減額請求ができるのは,契約者が善意で,重過失がない場合というふうにしていただけないだろうかというふうに思っております。   現行の第631条では,超過部分は無効で,無効の場合,第643条によりまして,契約者が善意かつ重過失がない場合には保険料返還請求ができますと,こういう同じような要件にしていただければというふうに思っております。   なお,企業の契約につきましては非常に特殊な契約がございますので,強行規定性に関しましては,先ほど申しましたように企業につきましては強行規定性をとらない方が,いろいろな形でよろしいかなというふうに思っております。   以上でございます。 ● 今具体的な意見が二点ばかり,強行規定性も含めると三点ございましたが,いかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● 若干関連しますが,別なことになるかもしれませんけれども,先ほど来から,成立時において超過していた場合について,後になってから,その分の保険料が無駄だったときには減額請求ができる,この考え方は私も望ましい方向だろうと思いますし,現行法のように「一律無効」と言ってしまいますと,将来保険価額が上がっていく可能性がある場合の保険契約の成立を妨げるという点で考えられた制度なのだろうということで,基本的には賛成であります。   ただ,実際に事例としてあるかどうかは別にしましても,理論的には,契約成立の後に一時保険価額が高騰したのですが,その後,保険価額がまた下落したというような場合に,その場合,中間の時点においては一応の保障を得ているわけなので,保険料はそれなりに役を果たしたということになった場合,それをどういうふうに規律していくのかということがやや難しいかなというような気がいたします。   先ほど,御説明のときにも,範囲の問題として考えるのだということだったと思うのですが,答えのないまま質問してもあれですけれども,そのあたりのところを丁寧に規律付けをしないとこの制度は成功しないのではないかなと思いますので,ぜひよろしく御検討いただければと思います。 ● 最初に○○委員の御指摘があったように,この種の取り過ぎの問題というのが,特殊な状況で発生したことを考慮していくと,こういうような点,○○幹事が今おっしゃったように,一般化すると非常に難しい問題がある,そういうことなのですね。   ○○委員,どうぞ。 ● この点に関しまして,基本的に企業保険ではなくて個人保険を対象にした考え方と承って聞いていたのですけれども,この場合,ちょっと一つだけ気になるのは,実務的に行われていて,既に住宅総合保険等に組み込まれているコ・インシュアランスについてで,あれは,簡単に言うと,保険価額と保険金額の間が20%ぐらいまでは,まあ,変動があるのだから,消費者にその細かい変動について,一部保険にするのは酷だろうと。したがって,その範囲だったら実損てん補にしよう,保険料はそのままで実損てん補にしようと,そういう制度の意図だと私は思っているのですけれども,その場合,この制度があると,では上の方に20%上がったときは保険料を返してもらって,下の方は保険料はそのままで実損てん補をしてしまうというのは,ロジカルにはちょっとおかしいかなという気がするので,先ほど○○委員がおっしゃったように,できるだけそういう実務を踏まえた形で,変動がリスクですから,そのリスクを消費者が,現状の実務で利益を得ているわけですから,それを阻害しないような,それを損ねないような解釈,あるいは表現にしていただきたいと思っております。 ● 3名の委員,幹事の方から共通する問題の御指摘をいただきまして,弁解だけになってしまいますけれども,事務当局も問題意識は持ってございます。   内部で検討するときには,時系列の図を描いて,上がって下がったときにどこまでどう返させるのが合理的か,あるいは正義にかなうのかといった視点で,上がった事例,上がって下がった事例,下がって上がった事例,あるいはそれがもう波になった事例,いろいろ想定しながらシミュレーションをしているのですが,まだ正直,シミュレーションしきれていないというところでして,引き続き問題点というか,問題意識,今のような形で御指摘いただいた上で検討してまいりたいと思っております。 ● ○○幹事。 ● この論点は,第一読会でどなたか委員の方からも御説明があったかも分からないのですけれども,この減額請求というのが問題になるのは,保険事故が起こって,それで保険価額がそのときに想定していたよりも下がっていたから保険金が少なくて,その場合に今まで払っていた保険料の返還を受けられるかとかいう場面で問題になるという,そういう問題意識ではなかったのでしたか,この論点は。   もしそうだとすると,中間で上がって下がってとか,そういうことはさほど真剣に考えなくてもいい場面なのかなという気がいたします。最後の精算のところで,どのぐらい保険料を無駄払していたかとかいうときに,もちろん,3年間保険期間があって,それで3年後に保険事故が起こって,2000万の保険金をかけていたところ,実は1500万円だったといって1500万円しか保険金が下りないときに,では無駄な保険料を支払っていましたねという,そういう場面で問題になる場合に,あとは,ではその無駄な保険料を払い戻してもらえる要件は何かというと,当初から超過保険であった場合とか,途中で下がった場合とか,そのときには多分,事情の変更みたいな発想になると思いますし,その時点から,保険の契約の内容が変わっていたのではないか,それを保険料の減額というふうに織り込んでいいのかどうかということと,それから,当初からという場合には錯誤ということとの関連も含まれてくると思いますし,それから,途中でということであれば,知っていたか知っていないかということも関連してくるというような,この論点が議論になる場面から要件というのを見ると,少しは違う見方で整理もできるかなと今ちょっと思いました。 ● どうぞ,○○幹事。 ● 私が御説明する必要があるのかどうかあれですけれども,基本的に今の現行法の超過保険に関する規律については,超過していれば無効というふうに規定されているわけなのですけれども,この規定の適用について,基準時を問題にしておりまして,保険事故発生時にそれを適用してしまいますと,その保険事故発生の時に,必要だった保険料で全部精算されてしまうということになるわけですが,これではだめだというのが私たちの解釈の通説的な見解で,その保険事故がたまたま起こった時点で保険価額が急落していれば,それまでずっと保障を受けていたにもかかわらず,全部保障を受けた分の保険料を返してもらえるというのは正義に反するという考え方が基本になっているかというふうに思います。   したがって,例えば途中に高くなった時に事故が起これば,それは保険料を返さないで高い保険金をもらうことができたわけですから,それはその保険料がきちんと機能しているわけなのです。それで,たまたま最後のところで勘定尻を合わせて前の部分について払った保険料を全部返してもらえるというのは,これは,きちんとしたサービスを受けているにもかかわらず対価を払っていないことになりますので,幾ら消費者保護と言ってもその部分は返すというのは正義に反するというのが私たちの考え方だと思います。 ● 分かりました。先ほどの○○幹事の御発言も,事故が起こった時から振り返ってみて,では幾ら保険料が無駄に払われていたかという,そういう精算の場面だということであれば,大体私がちょっと最後になって自分なりの整理をようやく追い付いただけかも分からないのですけれども,そういう場面であれば,余り途中,期中で保険の価額が上下変動しても,理屈の上では,上下変動して,その危険をカバーしてもらっていなかった部分だけを精算すればいいのですよという理屈は通りやすいですし,実務でそれを計算するときには,ある程度,約款レベルとかでその計算は便宜,簡略化するということもできると思いますので,振り返ってどのぐらい無駄な保険料を支払っていたかということを考える場合に,期中の保険価額の変動を織り込むという発想でいいのかなと思います。   すみません,ちょっと会話が成り立たなかったら申し訳ありません。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 今の○○幹事の最初の話では,これは事故が実際に起こった場合の話に限られるのかということの御質問があったのですが,私の理解では,別にこれは事故が起こらずに保険期間が満了した場合にも,この②,③のルールは適用されるのかなと,そういう理解でよろしいのですね。実際,損害保険契約というのは短期で1年の契約が多いと思うので,1年の契約でいったん終わって,同じ保険金額のまま更新される。それが,実際に保険価額が下がっているのに同じ保険金額のまま更新されて,要するに契約締結時には差がある。その場合には,その契約が終わってからでも,事後的にでも,例えば平成19年になってから,平成17年度の契約はこれは保険金額と保険価額に差がありましたねということで,後からでもその減額請求ができるという,そういう趣旨でよろしいのでしょうか。 ● 本文②のただし書に当たらなければ,②,③を使えるということに,この今の本文の書き方ではなるということです。 ● ①はあくまでも期中で,保険期間中にしか①の請求はできないけれども,それと書き方が違うので,②と③は終わってからでも請求ができる。   ただ,時効がどこまで,この減額請求権の時効がどうなるかというのはちょっと考える必要があるのかなと。現行商法だと,契約が無効で保険料の返還ということになりますので,これは保険料返還,2年の時効にかかるということで一律処理できるのかなという気がするのですけれども,こういうふうに減額請求権ということにした場合は,いつまで減額請求をすることができるのかという,時効についてちょっと考える必要があるのかなという気がいたしました。 ● そこは何かお考えは。 ● 内部で検討したときには,その点についても,形成権の消滅時効又は除斥期間に関する一般原則にしたがうのか,それとも何らかの特別な除斥期間を定めるのかという形で議論はしておりました。   今日の御指摘を踏まえて更に検討させていただこうと思うのですが,その点に関連して一点,こちらとして御意見を伺いたい事項としまして,22頁の(問題点)1のところに書かせていただいた問題がございます。つまり,契約者がいつまでも減額請求権を行使できていいのかという問題意識がある反面,そのような状態を早期に解消するための手段として,例えば,保険者からの減額請求を認める,あるいは契約者による減額請求権の行使を保険者側から促していくという制度を設けることも考えられますことから,このような制度をどのように仕組むかということも考慮に入れて,あるべき権利行使の期間を考える必要があるのではないかと考えております。そこで,この点につきましても併せて御意見をいただければと思います。 ● ○○委員。 ● それぞれ御意見を言われているので繰り返しになるかもしれませんけれども,大体,火災保険といいますか,火災共済の例で言いますと,1年ものの契約が多いわけですね。そうしますと,これが規定の性質ともかかわりがあるのですけれども,1年の間にその減額請求がもう,例えば悪いケースで言いますと,契約満了寸前と。形式上,自動更新であったとしても契約単位は1年だということになりますと,微々たる金額であったとしても,リスクの上では,絶えず減額請求というのは当然起こり得るということになるのではないか。実質的にそういう事態はないにしても,1年契約の場合において,すべてこの強行規定で,強行規定という性格を持たせていくということになりますと,それはその著しく超過するとか,一定の要件があれば,決して,例えば建物が一気に20%も目減りするとかいうことはあり得ないので,そういう事態はないと思うのですけれども,一定の減額請求ができる基準といいますか,そういうものがありませんと,短期契約の性格上,その都度請求が起きる,それも拒否ができないということになりますと,一般的にその減額請求権は当然の権利として考えているのですけれども,ただ,その運用の仕方によって,強行規定になりますと,実務をやっているサイドから見ますと,それに対応する仕組みがあってもなくてもつくっておかなければならないということにもなりますので,そういう点も若干,規定の性質との関係で考慮いただければというように思いますけれども。 ● ○○幹事。 ● 先ほどちょっと問題意識を唐突に述べてしまったのは,今,○○委員がおっしゃったのと大体重なっていると思うのです。   何か減額請求がこう減額すれば保険料も減額できるときには減額請求できるというと,その期中に常に行使できるというそういう請求権というのが,何か合理性というか,妥当性というのが余りというか,正当化根拠というのでしょうか,存在意義というのでしょうか,余りピンと来なくて,それで考えていて最後に,前回,一読のときには,保険料支払の場面でその精算みたいなことをどなたかがおっしゃっていたということで言ってしまったのですけれども,というわけで,もちろん理屈の上では保険料と保険価額とのバランスというのを調整すべきだというのは,期中ずっとそれはあると思うのですけれども,だからといって,その請求権が常に行使できるというのは,行使する人がどのぐらい出てくるか分からないのですが,それに対応する保険者というのも煩さになるのではないかと思われますので,ですから,かといって,保険金を支払う場面だけというのも,それも規定としては合理的ではないと思いますので,期中もできるということであれば,著しく変動があったときとかということの制限を課した方がいいでしょうし,それから,当初から超過保険だった場合には,錯誤の規定との関係でちょっと主観を,要件を入れるとか,それから,あとはもちろん更新できる期間で除斥期間のようなものを設けるということも考えられると思いますし,それから,あと,期中でそういう減額請求ができるような場合に,例えば要所要所で議論されていた,保険者側で,受託者的な注意義務を,全契約者,反対の場合があるかも分からないのですけれども,そういう言葉で言うのかも分かりませんが,保険契約者の方にその請求権を行使することを促す必要があるかどうかということを考えた場合に,期中はまだ変動の過程ですので,なかなかどちら側も,今は下がったかもしれないけれどもまた上がるかもしれないというような,そういう契約関係の中で行使する合理性が見出せないでしょうし,さらには,行使することを促すということも妥当かどうかということがあるかと思います。 ● ○○委員。 ● 同じ規定を見てもイメージすることが大分違うのだなと思ったのですけれども,こういう規定を置いたら,保険会社や共済のビヘイビヤーはどう変わるか。   今回の問題は,結局は募集段階での代理店の問題であったり,募集人の問題であったり,こういうものがあれば,普通の経営者であれば,後で文句を言われないように入口でしっかりやっておこうとこうなるはずなのですよ。つまりそんな,事件が終わったごとにやられたらたまらないですから,やられないようなバリュエーションをきちんとお互いにやって,そこで手間をかけるのが嫌かどうかという問題で,ですからちょっと発想が,新しいルールをつくったときに,世の中ではそのルールを見てどうみんなが呼応するかは,これは劇的に変わるわけですから,そのことを念頭に置いてまず考えた方がいいのではないか。   私,この(問題点)の1と2というのは,何度も考えたけれどもよく分からないのですね。ただ,保険会社から何らかの相手の主張を制限する効果を持つようなものを認めるということがいいのかもしれない。ただ,新しい規定ですから全体像がよく分からないので,問題はその次の2の重過失の問題で,これもまた重過失は故意と同視すべきものに限るというのか,不注意な,注意の程度がひどいものかというのもあれなのですけれども,これもよく分からなくて,ただ,今は契約に当たって,私も保険の更改に当たって,すごいチャート式みたいなものが来て,そこでバリュエーションを見て割引があるかどうか,とても2週間何かではやっていられない。もうこのまま更改しましょうと言ったときに,これは重過失になるのか。割引だったら,割引は関係ありませんけれども,バリュエーションでもきちっとやりだしたら大変ですよね。   つまり,これはルールをしっかりつくっていくと,契約しても過失がありと,ある意味ではきちっとやると危険な方に追い込まれていくような何かそんな側面もあって,ちょっとこれは,商法第643条の規律,そしてその部分はこの超過保険の問題があったので,こちらに持ってきたら重過失も当然こちらに持ってくるのが自然だというのは論理としてそのとおりなのですが,やはりもうちょっと,どういう場合に重過失のイメージかというのがよく分からないものですから,業界の方又はほかの方で,こういうときにはそれに当たるのではないかというのを言っていただくと助かるのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 私も,今の○○委員と全く同じことを思っておりまして,保険価額が上昇するリスクは認識していたという場合にはもうこれは悪意があって全部だめなのかとか,上昇リスクを認識するに当たっては,それは代理店が上がるかもしれませんねと一言言えば,それを聞いたらもう認識していたことになるのかとか,客観的に見ると,1割ぐらい,あるいは2割ぐらいは上がるかもしれないなと思っていたところに,上がるかもしれないから,ちょっと多目に3割,4割つけましょうかと。上がるかもしれないということさえ最初に断っておけば,すべて悪意があるとか,そこの判断について重過失とか,そういう問題が出てくるのは余り好ましいことではないなと思っているのですが。 ● ほかに。では,○○委員から,まず。 ● 今先生たちがおっしゃったように全くそう思っておりまして,もともとこれは,超過保険の話は,イコール・フィッティングが実はそうではありませんでしたということがあって,そういう現象がたくさん起きて今社会問題になっていますけれども,そういうことがあって,ではそのときに無効ではなくて,保険料掛け過ぎの部分,どっちにしたって保険価額までしか出ないのだから,それを保険料掛け過ぎの部分をどうやって返したら合理的に返す理由ができる,理屈ができるのかということを頭を絞っていただいた結果がこれだというふうに,そう思って拝見させていただいたのです。   ところが,(問題点)2のところに何か落とし穴的にこういうことを書かれてしまいますとね,そうすると,もともとごく一般的な消費者は事実上代理店さんの言うままに保険を掛けておりまして,「お客さん,これは幾らですよ」と言われたら,「ああ,そうですか」と言って入っているのが現状でございます。大変残念ながら,それが現状でございます。   そうすると,そこによった部分で,今先生たちがおっしゃったようなことを重過失と言われては身もふたもなくて,せっかく①,②,③をつくっていただいた意味がないので,その辺はぜひ御検討いただければと思います。 ● ○○委員。 ● 別に○○委員の言われたことに反論するわけではないのですけれども,超過の場合に決して,先ほど1年もの云々言いましたけれども,そういう面倒くさいことをやりたくないという発想ではなくて,極端な例で言いますと,砂漠でダイヤモンド1粒を探すようなことまで事業者に求められてもできません,ただ,社会的に見て合理的な手法はいたしますということを前提に申し上げているので,すべて事業者としてやらなければいけない,100%完璧というのはいずれにしても無理ですし,客観的に,消費者保護というのは基本ですけれども,そこがやはり企業において,共済もそうですけれども,やれる限界というのはおのずからございますので,その範ちゅうで,善意な発想を前提にした御意見というふうに承った,意見としてお受けいただければというふうに思いますけれども。 ● ○○幹事。 ● もう既にいろいろな先生が御発言されましたので補足ということになってしまうのですが,この②,③のルールというのは,現行商法と比べて保険業界が極端に何か事務量が増えるというものではないと思うのです。   少なくとも私の理解ではそう思うのですが,ただ,現行商法ではとにかく超えている部分は無効だということですから,ですからもう既に保険期間が終了した契約についても,それが1年契約であってもとにかく超えていた部分は無効なので,現行法の下でも,それは契約者の側が,「あの時は超えていたのだから,これは無効だ」ということが,後から返還請求をしてくればそれは応じなくてはいけないはずなのですね。   ところが,第一読会の事務当局案というのはそういうものではなくて,もう全部,錯誤無効で処理しましょうということだったので,この中で,「いや,それはちょっと現在できているような請求ができなくなるのはいかがなものか」という意見が強くなって,それで②,③という案が出てきたと思いますので。   現行商法と比べてみますと,少なくとも契約者が悪意の場合は請求できない,ただし書,(問題点)2はこれは除くとすると,悪意の場合はできないとなっていますので,そうすると現在の商法のこの超過保険の規定よりは,少なくとも文言上は明確に請求できない箇所,部分というのはできているので,損保実務からすると,マイナスではなくてむしろちょっとプラスというか,請求される部分は減っているのではないかという気はするのですけれどもね。 ● なぜこういう②,③が生ずるような状態になるのかのイメージが皆さん違っていて,引受側に問題がどうもあるというタイプのあれと,まあ,今は物価が安定しているから余り問題ないけれども,これ将来激しいインフレになったようなときは,契約者の方もいろいろ可能性を考えて,例えば超過保険に最初しておく。でも,だんだん様子を見て,機会主義的な行動に走ることに使われないとも限らない。   そこらあたり,どうもこういう今の書き方をしていると,何かいろいろ問題のある事例も中には出てきそうですねという,何か絞り込みをするか何かの作業が必要かなという今日は印象だったのですが,そんなあたりで少し,なお今日の御意見を踏まえて御検討いただくということでよろしいでしょうかね。   それでは,ここで休憩にしたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開したいと思います。   今度は,最初に資料9の最初の方に戻りまして第1を順次取り上げますが,★印がついているのは2頁の「(3) 危険に関する重要な事項についての事実の告知」の部分でございます。このあたりから御審議いただきたいと思います。   まず,事務当局より説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   今回の資料では,いわゆる告知義務についても危険の増加と同じく,義務違反の効果を保険者に対する解除権の付与とすることを前提として,その要件などについて御審議いただくこととしています。   まず,アですが,こちらでは義務違反の要件について提案をしております。詳しくは資料3頁の(補足)に書いたとおりでして,現行商法とは,告知義務を質問応答義務としたり,損害保険契約の被保険者に対しても告知を求めることができるとしたりしている点が異なっております。   また,質問事項である重要な事項の内容を具体的に明記することを提案しており,この点につき本文では,保険者が契約を締結するかどうか,あるいは契約内容の決定の判断に通常影響を及ぼすべき事項であることを要すると記載しておりますが,これは,質問事項は原則として各保険者が引受基準に照らして定めるものの,一定の合理性のあるものである必要があるという実質的内容を規定することを提案するものでありまして,このような考え方でよいかについて御意見をいただければと思います。   次に,イは,解除権の阻却事由について提案をしております。   今回は,(問題点)の①において,第2回会議における審議を踏まえ,保険者から契約の締結について媒介をすることを委託された者の責めに帰すべき事由によって保険契約者又は被保険者が告知をせず,又は不実の告知をした場合には,保険者は契約の解除をすることができないとする案を提案しております。   ここに保険者から契約の締結について媒介をすることの委託を受けた者とは,生命保険募集人等の保険者の使用人を含み,保険仲立人は含まない趣旨でございますが,このような実質を言い表すことができているかなどについては,なお検討する必要があると考えております。   他方で,一言で告知妨害あるいは不告知教唆といってもさまざまな事案があるなどという御指摘がありましたことから,①で「責めに帰すべき事由」という抽象的な文言にするとともに,これによって告知義務違反が生じたことを要件とし,更に②において,事案によっては不法行為あるいは債務不履行に基づく損害賠償における過失相殺と同じく,一定の金額を減額することを許容することとしております。   その他,詳細については(補足)2に記載したとおりでございます。   この問題を御審議いただくに当たり,(問題点)に記載した規律が働いてくる場面を再確認する趣旨で,席上に「保険者が告知義務違反による契約の解除をすることができる場合」と題するA4横のペーパーを配布しておりますので,こちらを御覧ください。   非常に基本的なことで,改めて確認するまでもないことかもしれませんが,こちらは,どういった場面で(問題点)の規律が働いてくるかをまとめたものでございまして,まず,告知を正確にはしなかった,つまり,不告知・不実告知があったことが前提でございまして,さらに,これについて,保険契約者又は被保険者の故意・重過失があることが要件となります。かつ,保険者が善意・無過失であることが必要でございまして,どんどんたどっていっていただきますと,最終的に,一番下の部分,「保険者が善意無過失」と書いてある部分に行き着くものが解除が可能な場合でございます。逆に申しますと,これ以外の場合は,そもそも保険者は契約の解除をすることができないということで,まさに一番下の点線に書いてあるものを認めるかどうかというのがここでの議論の対象ということになります。   また,保険募集人が契約締結の代理権を有していたり,媒介の委託を受けた者であっても,告知を受ける権限を有していたりする場合には,民法第101条第1項の類推適用により,この者の悪意又は過失が直接問題となると解されていることから,(問題点)に記載したような規律はなくとも解除権が阻却されることになります。   以上を踏まえまして(問題点)について御議論いただければと思いますが,そもそも実質的にどのような場合に解除権を阻却すべきか,解除を認めないこととする一方で,てん補すべき損害又は保険金額全額を支払うべきではない場合があるとすれば,それはどのような場合かについても具体的な御意見をいただければと思います。   さらに,後注につきまして御説明いたします。   ここでは,本文の各規律を強行規定とすることを提案しております。各規律を強行規定とすることの効果につきましては,(補足)1に記載したとおりでございます。   また,第一読会,さらには,先ほど危険の増加のところでも,企業保険については任意規定にすべきであるという御指摘をいただきましたところでございます。   この点については,(補足)1にそれぞれ,強行規定とした場合にはこういった特約が許されなくなるということを一つ一つ書いてございまして,それぞれについて,どのような特約を,例えば企業保険については許容する必要があり,その合理性はどこにあるのかについても御意見をいただければと思います。   さらには,企業保険とは具体的に何かについても問題提起をしておりまして,併せて,具体的な御議論をお願いできればと考えております。   さらには,先ほど危険の増加の規律の強行規定性について御意見を頂だいいたしましたが,そこについて,もし言いそびれてしまったことがあるようでしたら,併せてここで御意見を頂だいできればというふうに思っております。   以上でございます。 ● それでは,告知義務に関して幾つか御意見を聞きたい論点があるということですので,お願いいたします。   ○○委員,どうぞ。 ● 最初に,告知制度の重要性について,念のために申し上げたいと思います。   学者の方々の言葉をお借りすると,保険制度の合理的運営のためには,保険事故発生の統計的計算を基礎として,多数の契約における危険の総合的平均化によって,保険金の総額と保険料の総額との間に均衡を保たさせることが必要である,このため,保険会社は危険測定をして保険料を決定するのですが,実際上,保険会社がすべてを調査するのは困難なので,法律で保険契約者に告知義務を課しているといわれています。したがって,単に1件だけの契約の保険料を低くするための制度ではなく,その契約が所属すべき保険料集団全体のコストを低く維持するための制度だと考えています。   このような保険料集団の中に,正しい告知がされない,リスクが高い契約が混入すれば,リスクに見合った保険料が確保されなくなり,結果として全体の保険料がアップとなってしまい,それから,繰り返しになりますが,リスクに見合った保険料提示もできなくなってしまうということになります。   このような告知制度の意味を踏まえた上で,正しく告知をしていただくための仕組みの重要性も御理解いただいた上で御検討いただければと思います。よろしくお願いします。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 資料5頁のイの(問題点)の②の規律についてでございますけれども,保険募集人の帰責事由がある場合の,解除権の阻却が認められた場合の支払うべき保険金の額を裁判所が決定するというこの規律についてなのですが,これはおそらく,規定される場合には実体法の規定として規定されるということになるのだろうと思います。それで,実際に問題になる場面は,訴訟で裁判所が保険金請求事件を扱う場合に最終的な形で適用されるという規定になろうかと思います。   ただ,この規律を今拝見している限りでは,余りその要件が具体的に書いていなくて非常に抽象的で,要するに減額するのが相当であるときは減額するということ以上は書いていないように私は理解したのですが,もしこれがそのままの形で実体法の最終的な法文の形になるようなことがあるとすると,おそらく裁判所のこの規定の適用については非常なばらつきが出る。適用した結果についても,適用すべきかどうか,適用した場合の結論についても非常なばらつきが出るのではないかということが懸念されます。ですから,もしこういう規律が取り込まれるのであれば,やはり適用要件については,できるだけ具体的に規定していただくということが必要なのではないかというふうに思います。   それと,ひるがえって考えますと,先ほど事務当局の方からも説明がございましたように,この考え方は,根底には過失相殺の規定,あるいは信義則の規定,これらはいずれも民法に規定されているわけですが,その考え方を根底とするものであるという御説明であったかと思いますが,仮にそうだとすると,現在の民法の規定によっても,信義則あるいは過失相殺規定の適用あるいは類推適用によって,契約上の請求権についても,一部減額するというようなことは,裁判例あるいは学説等で認められているところではないかと思いまして,その保険法の規定の中にこのような規律をあえて置く必要があるのかどうかということも,やはり検討課題ではないかというふうに私は思います。   特に,この規定をイの(問題点)の①の場合に限定しておくということが,ほかの場合とのバランスを欠くということにならないのか。例えば,イの本文にあるような場合にも,こういう過失相殺類似の規定の適用とかいったことをすべきだというような考え方が出てくるのではないかというようなこともあり得るのではないかと思いますので,そこら辺への影響ということも考えますと,あえてここに,この①の場合に限っておくことの必要性,妥当性があるのかというような気も若干するところであります。   以上です。 ● 大変重要な御指摘かと思います。事務当局,何かそのあたりはございますか。 ● 何点か重要な御指摘をいただきまして,このままでは基準として不明確というのはおっしゃるとおりでして,これで表現として熟しているとは思っておりません。先ほど危険の増加について御指摘のありました契約内容の合理的な変更のところの条件もそうですが,ここのところは,とりあえず考え方をお示しして具体的な御議論をいただきたいという趣旨で出したものでして,今の御指摘のとおり引き続きなお明確にする方向で考えなければいけないと思っております。   それから,ひるがえって,そもそもこの②の規律が必要かという点もまた検討課題だというように認識はしておりまして,ただ,こちらが考えていますのは,①の規律だけを置く,あるいはイの本文の規律だけを置いた場合もそうですけれども,解除できないと,できないということは,イコール保険金の全額の支払義務を負うのだと,こういう形で整理されてしまうという懸念も一方ではないかということを考えまして,①で,解除はできないのだけれども,保険契約者の側にも故意・重過失があるというケースが想定されているわけですから,そちらの保険契約者の側の落ち度と,保険募集人の側の言ってみれば落ち度というか,その関与の度合いを見ながら,やはり適切な支払金額というのを導くべきではないかという思想をとりあえずお出ししたかったというのがこちらの意図でございます。   ただ,今の問題点はどちらも重要ですので,なお考えてみたいと思います。 ● では,○○委員からお願いします。 ● 私の場合はもう少し単純な質問なのですけれども,「裁判所は,これを考慮して,てん補すべき損害の額を定めることができるものとする」というその意味ですけれども,これは,裁判所のみが決めることができるというふうな意味合いなのか,それとも,その他の決め方も含まれているのかということについてちょっとお伺いしたかったのですけれども。今,これ自体の必要性があるのかどうかというような御議論が○○幹事からもございましたけれども。 ● こちらの意図は,最終的に裁判になった場合には,こういう規律がその場面で働くということを言い表したかったというだけでして,当然のことながら,例えば示談で支払金額を当事者間が合意するというようなことを否定する趣旨では全くございません。 ● では,○○幹事から。 ● 恐縮です。今の○○幹事の御指摘は,私もここに何か唐突に裁判所が出てくるのはまた検討の余地があるだろうと思いますし,全般的にもし信義則や過失相殺の話があるのであれば,それは民法の一般原則だろうという御指摘に賛成したいと思います。   ただ,そうは言いながらも,ここに書いています本来の目的は,5頁の上に書いてあるイの阻却事由以外に,告知受領権を持たない者が告知妨害をした場合についても何らかの解除権の阻却というのをすべきではないかという御指摘だと思うのですが,この点については,私,前の読会のときにも,ぜひこれを入れた方がいいのではないかということを主張いたしましたので,制度自体についてはぜひ御検討いただければというふうに思います。   その理由は,社会の実態としまして,告知受領権がない者といえば生命保険の募集人が一番分かりやすいわけですけれども,どうしても,これは実態が合っているかどうか分かりませんが,ノルマも多少あるでしょうから,お友だちの方とか,あるいは親戚の方とか,いろいろな方に声をかけるわけですけれども,そうした中で,いよいよ契約してもらえそうになったときに,「いや,よく考えてみたら昨年ちょっと入院していたよ」という話になると,自分がせっかくこれで契約が取れたと思ったのにというところから,ついつい,「まあ,告反といっても2年たてば,それで何も起こらなければ保険金をもらえるから」と言ってしまいそうな感じがややあるわけで,そういうことになると,「ああ,そうなのですか」ということになるのですけれども,実際例えば1年で病気になってしまったときに,では告反だというふうになるのは,どうも消費者側の方から見て納得できないという部分があるだろうということと,それから,告知受領権がある人については,これは履行補助者という形で,先ほどの表で御説明がありましたように,保険者自身の悪意・過失とみなして考えるということなのでしょうが,一般の消費者から見ると,告知受領権がある人なのかない人なのかということは区分けがつきませんので,それによって結果に大きな違いが出るというのがどうかなとも思いますから,ぜひこの点については御検討いただければと思います。 ● ○○委員,お願いします。 ● ○○幹事のおっしゃったことだけについて,そういう意見がここに出るのではないかなとは思っていたのですけれども,まず一点,こういう例はあるわけですね。もちろん利益状況が違いますけれども,商法の第801条で一切の事情を考慮して裁判すると,救助料の規定ですけれども。   これは現実に動いていて,それなりに判例法が,判例的にはいろいろな基準があるわけですけれども,何らかの基準が必要だというのは全くそのとおりで,これは,では過失相殺と同じかというと,契約を有効にしておいて半分以上減額できるかという議論もあって,やはりちょっと性質は違う。契約は生きるという前提での話ですから,だから,やはり民法の一般理論だけではちょっと行かない部分があって,だから,そういう意味で何らかの基準は必要だと思うのです。   だから,ここの文言も,「定めることができる」とするのではなくて,スタートはやはり全額から減額することができるとかそういう文言にまずして,もうちょっと内容を工夫する,そういうやり方をすれば飲み込んでいただけるのではないかと,こういうふうに思ってここに伺ったのですけれども。   以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私も○○幹事の御意見に賛成なのですけれども,と申しますのは,この(問題点)の②のところに,「①の場合において」というこの場合で,裁判所の控除とか信義則とかに近いような大風呂敷が出てくるというのがちょっと,局所的なところで大風呂敷の規定になってしまっているというのが違和感を覚えておりまして,と申しますのは,裁判所が,明文でないにせよ,控除とか信義則とかを使う場合には,原則でいくと結論が妥当性を欠くからこの大なたでちょっとだけ切りますとかという,そういう場面だと思うのです。   その場合に,この告知義務違反があって,それで保険者側の,保険者自身ではないけれども,委託を受けた者又は履行補助者のような人に落ち度があるから解除ができない,だけれども,やはり契約者の方には義務違反があるのだから,それは解除できないという結論は妥当ではないですよねというような,二転三転するようなときに,最後にこの大なたのような裁判所の判断でとか,過失相殺でとかというようなそういう規定が出てくるというのは,ちょっと場面が違うかなと。   そういう原則を通すと結論が不当だとかいうのは,例えば出てくるとしたら,前回などには出てきましたけれども,故意で免責できるようなときに,故意が立証できなくて,重過失でいくかとかですので,告知義務違反の故意が立証できなくて,重過失という要件でも,欠いていた場合には何か裁判所が柔軟な判断をするとか,それとか,告知義務違反があることは立証できたけれども,保険者側の落ち度というのが,保険者自身には悪意,過失がなくて,告知受領権のない者が告知妨害をした場合に,それをどうやって切るかというときに,第715条を使うのか,そういう明文の規定ではなくて履行補助者の故意,過失の理論を使うかとかいう,そのようなところで裁判所の柔軟な判断ということが出てくると思うのですけれども,もう一回,それで解除ができませんねという結論が来て,それで,最後にまた裁判所がというのは,ちょっとステップがかなり細かくなったところで大きな判断が出てくるという感じがするので,やはり結論としてはちょっと落ち着きが悪いような印象を受けました。 ● では,○○委員から。 ● 告知妨害のところで幾つか御議論が出ていますけれども,やはり一番大きな問題は募集人のところだと思いますので,少し実務を含めてお話しさせていただければと思います。   まず,正当な告知を行う契約者を保護する立法という視点については全く異論がないというのが基本的なスタンスです。   ただ,一方で,生命保険募集人の告知妨害をもって一律に解除権が阻却されるということになりますと,例えば一番端的な例が,正当な告知をしていれば明らかに加入できなかった人まで加入できてしまうといった例が一番端的だと思うのですけれども,やはり不都合なケースというのが出てくるのではないかなということなので,基本的に一律的な解除権の阻却というのは果たしてどうなのかというところについては少し疑念を感じております。   では,今現行の実務はどうなっているかということで言いますと,協会でガイドラインというのを今設けてございまして,そのガイドラインの中には,「告知義務違反の態様や程度と取扱者の不適行為の内容を総合的に考慮し,公平性の観点からみて保険契約者を保護することが相当と判断される場合については,取扱者の不適行為を保険会社の過失と同視し,解除権は行使できないと考えるべきである」というのがございまして,一応これに沿った形で募集人の悪さ加減と契約者の方の問題点というのを相殺しながら個別に解決しているというところで,解除をしたり,解除権の行使をしなかったりというのを事案ごとに判断をしているという形が今の実務ということであります。   そういう中で,そういう意味では,資料の6頁の2行目のところで,「信義則や当事者間の衡平等に照らして」というふうに書かれている趣旨というのは,全くそのガイドラインと同じ趣旨だと思いますので,この考え方はいいのだろうと思うのですけれども,一方で,ではこの規律の,5頁の(問題点)のところで書かれている,例えば①というところが,果たして両者の衡平性とかいうところを考慮した形の規定になっているのかどうか。これは募集人の方のことだけが書かれているような気がしまして,果たしてその衡平性のバランスをとるという規定として,こういう書き振りでいいのかどうかといったところについては慎重に御議論いただきたいなという気がしております。   そういう意味では,どういった場合がやはり解除を認めるべきではないのかというところの,少し共通的な前提みたいなところを置いた上でその辺について御議論いただければ大変ありがたいなと。趣旨は否定するものではないですけれども,やはり実務というのはもう少しそういうところも含めて成り立っていますし,そういうところを含めた御議論をいただければというふうに思っております。 ● 今おっしゃったのは,例えば①の中で,委託を受けた者が告知をしないことを勧めた場合等々あって,そういうものを含めた責めに帰すべき事由によって,契約者又は被保険者が事実の告知をせずというような,「によって」というような言葉もあるので,そのあたりに何か解釈の余地もありそうな気もするのですね。   ②の方で問題にするだけではなくて,①のような書き方をしても,やはり告知妨害は確かにあったけれども,それで当然に,では①が適用されて解除できなくなるかというと,それは①の解釈としても,今,○○委員がおっしゃったような契約者側の事情も何か入る可能性はあるかもしれないなとは思って私は見ていたのですがね。 ● そういう意味では,契約者側に別途,責めに帰すべき事由があるのであれば,この「帰すべき事由によって」に該当しない,例えばそういう解釈が……。 ● 妨害はあったけれども,もう完全に病気で「俺は入れない」と分かりきっているというようなそういう場合や何かを考えれば,これは①でも処理できる事例はあると思うのですね。 ● 我々,読んだときにちょっと①でそこまで読めなかったものですから。 ● そこはいろいろな読み方があるかと思います。可能性としては,そんなのもあるかなと思ったところですが。まあ,御意見はまたいろいろあろうかと。   では,続きまして,○○委員。 ● 私の方から言わせていただければ,完全に①,ウェルカムでございまして,①がとてもいいのですが,いいというのは実態から言いましてね。今,○○委員がおっしゃいましたように,この書き振りだと,そのように募集人さんがイニシアチブをとって告知義務違反をさせましたというふうに読めますのでね。それだったら,これはこのままでよくて大変いいのに,何で後ろに②みたいな尻尾がついてくるのかなというのが,正直なところでございまして,これ,こういう実態が今ありますというお話がありましたけれども,それは,消費者サイドから言わせていただければ,保険会社が募集人をコントロールできていない,むしろアンコントロール下にあるのだということを正直におっしゃっていて,だからこれをつけろという,それはおかしいでしょうという。   きちんと保険会社は募集人をきちんと監督をしてコントロール,支配下に置くべきであって,例えば逆に鼻づらを引っ張り回されるようなことは本来起こるべきではありませんし,それは募集人としての資質向上の問題から言ってもおかしな話で,なぜここのところに,コントロールできていない部分を,なぜ契約者サイドをそうやって責めなくてはいけないのかなというふうに思います。それは,先生たちがさっきおっしゃったようにほかのところで処理できる話でございまして,ここの部分でこの②がくっついてくるというのはいかにもおかしいのではないのかなと私は思いました。 ● では,○○幹事,どうぞ。 ● その②についてなのですけれども,先ほどから言及がございまして,ほとんど付け足す点はないぐらいなのですけれども,これでとらえるべき実質があるかという話と,それを法技術的にどうとらえるかという両面がございまして,前者の問題は,どのような問題が実際にあるかということを検討していくべき事項なのだろうと思っております。   後者の問題については,ある一定の立場を原案として出されたわけですけれども,確かに説明のところで過失相殺といったことが言われまして,実際(補足)のところでもそういう裁判例の紹介もあるわけですけれども,場面は相当やはり違っておりまして,後者の紹介の方は損害賠償請求をしたという場面で過失相殺というふうに説明がされております。それに対しまして,②の場合というのは,契約の本来的な給付を制限するという場面ですので,可能性としては,契約の改訂をしているか,それとも信義則による本来的な請求の制限のいずれかなのだろうと思います。   もちろん,根本に衡平の観念があるという点で過失相殺等と共通する面はあるかもしれませんけれども,損害賠償において裁判所にかなり裁量の与えられた過失相殺という仕組みとは,かなり違ったものをここで出されることになるのではないか。そうすると,結構劇的なものかなという感じがいたします。   特に,契約の改訂ということになりますと,当事者の請求もなく,いきなり給付の内容を決めてしまうということですから,そうだとすると,より座りがいいのは,やはり信義則による本来的な給付の制限を行っているのだと,そこまでは主張できませんという信義則の適用ですということなのだろうと思います。実際にそこで出されている要件も,事情,経緯その他の事情を総合判断して,相当であるときはということですので,非常に一般条項的な書き方と。そういたしますと,これももう既に一番最初に指摘のあった点ですけれども,何ゆえここだけというところが一方ではあるのだと思います。   ただ,他方で,しかし全く規定がないときに,ではもう当然信義則で減額請求的な処理をやりやすいかというと,もう最後の最後の発動ですし,個別事情によるということですので,全く一般条項にゆだねられたときに,それがやりやすいかというと,それもかなりハードルの高いものとして想定されることになるだろうとは思います。   そうすると,また実質の問題に戻ってくるわけですが,それをやはりハードルを多少低く,あるいは少なくともこの場合はかなりいろいろな状況があって,請求が減額されるような場合があってしかるべきだという想定なのだということについてのメッセージを送るような規定を置くということは考えられるのかもしれません。 ● ○○幹事。 ● 私も,基本的な議論の整理の仕方としては,①の方は効果としてはやはりオール・オア・ナッシングなのだと思うのですね。オール・オア・ナッシングがどのように適用されるのかということが先ほどから議論されていて,必ず保険会社の方の解除権が阻止されるのか,それとも,○○委員がおっしゃられたように,事情の総合的判断の中で阻却される場合と,されない場合があるという話があるかという,そこが一つの論点で,私は当然後者のように解釈すべきだろうというふうには思っております。   しかし,そのときの効果はオール・オア・ナッシングなのですが,しかし,②の方でやはり考慮したいのは,オール・オア・ナッシングではなくて,半分は払うけれども,半分は払ってもらえないという,そういう事情の考慮の要素があるということを別途規律する必要があるということを考えられたのだと思いますが,そこの部分は,解除権が,まさに本来的給付の請求は認めるにしても,信義則上認められないという調整手段を一般則でやっておけばいいかなというのが私の個人的な感想です。 ● では,○○幹事からどうぞ。 ● 恐縮です。合計三つぐらいになるかと思うのですが,まず第一点として,この(問題点)の②を告知受領権のない者に限って置いていることの意味がどういうことなのか。私は,これは,代理権のある代理店の場合も同じ問題があり得るべきだと思いますので,バランスとしてはイのところにぶら下げるというのがいいのではないかなというように思っています。   それから,この問題をプロ・ラタと切り離してここだけ取り出して議論すると,ちょっと困ったことになるのではないかなという気がしておりまして,まず,今日いただいたこのチャートで見ますと,保険契約者等に故意・重過失ありと。この段階で,故意があればもうそもそもプロ・ラタの話にならないわけですが,重過失だということになるとプロ・ラタになる可能性があるわけですよね。   まず,ここで6割とか何とかと減らした上で,更にこの先へ行って,保険者の過失と,契約者の過失ということになりますと,6割の更に6割とかという話になりそうでありまして,そのときには,多分同じ事情を2回考慮しているということがあり得るのではないかと思われますので,そこがそうならないように考えるためには,やはりこれは一体のものとして検討すべきではないかというふうに思っております。   それから,第三点,これはかなり技術的な問題ですが,①の方で媒介の委託を受けた者がというふうになっていますが,これは紹介代理店とか復代理の問題が,ここまではっきり書いてしまうと多分入ってこないという解釈になりそうなのですが,それはやはり少し問題があるのではないかというふうに思っております。 ● では,○○幹事。 ● 今,○○幹事がおっしゃったことの二点目と重なるのですけれども,やはり私もこの告知義務違反の効果というのをオール・オア・ナッシングとプロ・ラタということの,その主要な効果の方と切り離してこの解除のところを議論すると,多少,一面的なことだけ議論して,次にオール・オア・ナッシングのところを議論したときに,2回考慮するようなことになってしまうのではないかという懸念がありまして。   というのは,先ほどの危険の増加のときの通知義務違反のところで申しましたように,その主たる効果は,事情変更だから,解除になるかならないか,契約の内容を変更するかどうかというそちらで,その付随としてその通知義務があるかということだと思うのです。   そうすると,告知義務違反のときは,ある事情,契約の内容,保険料の額に影響するようなある事実があるから,であればその契約内容は変更されるべきではないかという,オール・オア・ナッシングなのかプロ・ラタなのかというそちらがあって,というのがまず1本あって,その事実を告知しなかったことに対して,悪意・重過失があった,保険契約者側に悪意・重過失があった,だったら解除できる,保険者側に悪意・過失があった,では解除できないという,そこのところは,ゼロか1かで,ちょっと調整する方法というのは,その告知しなかった内容が何であった,であればオール・オア・ナッシングか,又はプロ・ラタかという,そちらの方で調整するのが,調整の場面としては主要なところなのでないかなと思うのです。   もちろん,告知義務違反のところの契約者側の主観,保険者側の主観によって,多少バランスをとらなければならないということはあるかと思うのですけれども,それは,信義則とか過失相殺とか,何か一般原則で行けるのかなと思っております。 ● プロ・ラタというのも,何に即してプロ・ラタなのかという問題があって,これは契約者側の主観的な事情とかいうことは,今まではプロ・ラタでは余り考えていなくて,リスクと成立した契約とがどれぐらいずれていましたかねと,引受基準の面から考えていた。   一応ここで言っている,これも部分支払みたいになるわけですので,若干着目しているところが違うのではないかとは思うのですけれども,プロ・ラタにもいろいろあるので,いずれそこを検討するときには,併せて検討するというのはもちろん必要なことではないかなと思います。   ほかにいかがでしょうか。○○委員,どうぞ。 ● 5頁の「媒介をすることの委託」という表現なのですけれども,これは,委託契約などをきちっと結ばれたものというふうに解釈してよろしいのでしょうか。   といいますのは,別に特殊性を強調するわけではありませんけれども,協同組合の場合にはいろいろな推進の組織がありますので,厳密に言いますと,確かに一定の契約を結ぶものもありますし,組合員の組織が自らやるケースも当然あります。   ただ,現実には,そういう組織で起きた問題であったとしてもやはり事業者が責任を負うというスタンスでやっておりますので,基本的なこの内容についてはそのとおりだというふうには理解するのですけれども,法律できちっと書き込むということになりますと,やはりその線は明確にしておかないといけないのかなというふうに思いますので,その点,これから検討ということなので,その辺の範囲についてもぜひ明確にできるような規定振り,ちょっと難しいのかなという感じはするのですけれども,お願いを申し上げたいというふうに思います。 ● ○○幹事から御指摘があった紹介代理店とか,その手のものも含めて,どうなるか,一応検討してもらいましょう。   ○○幹事。 ● 先ほどの二重のプロ・ラタということですが,私が考えているのは,一つ目のプロ・ラタはもちろん実際の保険料とあるべき保険料の差なのですが,そこの差といいますか,2段目でもう一回考慮されるのではないかということを少し危惧しているということであります。   それから,少し前の方の,今は議論になっていないところについて少し申し上げたいのですけれども,4頁の上から3段目の「そこで」から始まるところの,これは告知事項の重要性に関する問題で,「通常」という文言によって質問事項が一定の合理性のあるものでなければならないことを明示するという,ここに関するのですが,例えばHIVテストを受けたことがあるかどうかとか,その結果がどうであったかとか,あるいは遺伝子情報についてどういうことを知っているかとか,そういうことが今後,生命科学の発展によっていろいろと出てくる可能性があると思うのですけれども,そういう問題を告知の対象に入れていいかどうかとかいうものは,これは契約法の問題として我々念頭に置いておく必要がないかということで,それは一定の合理性のあるものでなければならないという,そこの解釈論にそれを全部ゆだねてしまうというのは少し乱暴な気もいたしまして,それは本文の趣旨で言いますと,「通常影響を及ぼすべき」の「べき」という文言の解釈なのかなという気がするのですけれども,こういう問題は全くこの審議会で議論することなく先へ進むよりは,少しそういうことも論点として考えた方がいいのではないかという気がしております。 ● 今ちょっと重要性のあたりの論点が出てきましたが,先ほどの,告知妨害というか阻却事由の方ですね,大体御意見をいただいたということでよろしいでしょうか。--こういう方向で,②のような方向がそのままでいいという御意見は余りなくて,こういうのは信義則その他の解釈にゆだねるなり,あるいはせいぜい,何か置くとしても信義則的なものにするという御意見と,他方で,この趣旨のことを置くのであれば,告知妨害の場合だけではなくてイ全体にかかるような規定にするのではなかろうかとか,そういう御意見あたりが有力であったように思いますが,なおそのあたり御検討いただくことにして,では,ほかの論点で,今「重要な事項」のところで御指摘がございましたが,なかなか遺伝子の検査とかそれは大問題で,このタイムスケジュールの中でこの部会で何かコンセンサスをまとめられるかというと,何か直観的には難しそうだなとは思うのですが,いろいろ御意見があるかと思いますので,ぜひ御意見をいただければと思います。 ● 今の○○幹事の御指摘に対しての思い付きですけれども,今の点はおそらく,このアの規律を設けた場合には,この「通常影響を及ぼすべき事項」というか,この「重要な事項」に含まれるということになってしまうのだろうと思います。   そうしますと,あとはこの保険法の中で独自に解決すべき問題かというと,そうではなくて,おそらくそれは規範的にバッティングが生じた場面というそういう大きな問題で,規範と規範がバッティングしたときにどちらが優先するのかという,おそらくそういう問題として解決すべきことではないかなというような感じがいたします。   ですから,何かある法律が要求しているものと例えば個人情報とがバッティングしたときにどうするかとかいうのは,いろいろなシチュエーションで出てくるかと思いますけれども,何かそういう形で考えていかないと,この保険法の規律の中で,閉じた世界で解決しようとするのにはちょっと無理があるのかなという印象を持ちましたが,あくまで感想ですので。 ● そこの,遺伝子とかそういう高度のプライバシーのところに行く前に,この主観説と客観説があって,どうなのでしょうか,ここの案にあるように,「通常」という言葉を置いたらどうなのでしょうかと,まずそこからちょっと御意見をいただきます。   ○○委員,手を挙げていましたが。 ● 今の○○委員の意見については,文言はもうちょっと考えないといけないけれども,こういう規定は必要でしょうと,考え方の方向はいいと思うのですけれども。   それから,もう一つは,○○幹事がおっしゃったことについて一言だけ。前回,網膜色素変性症の話もありましたけれども,これは条文とかそういうことではなくて,やはり法と倫理とかそういうもう根本的な問題で,憲法的な価値とか,ですから,それは重要なことですが,やはり立法そのものにはなかなか直ちには反映しない。   ハンチントン舞踏病について聞いていいかとか,これは非常に強烈な問題で,また何か自然法的な憲法価値的な問題ですから,これはもっと重要度があるのですけれども,でもちょっと,すぐこの条文には具体的にならないという,そういうことだと理解しているのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 3頁の,先ほど御指摘のあった「通常影響を及ぼすべき事項」というところの問題なのですが,ここで,事務当局案の御説明ですと,一応主観説に立ちながらも,一定の客観的合理性も必要ですよということをおっしゃっているので,私も趣旨としては全く賛成なのです。   ただ,この「通常」という言葉で今おっしゃっている意味が通じるかというと,ちょっとニュアンスが違うなという感じが出てきてしまうように私にはちょっと受けとれました。というのは,「通常」と言うとどうしても,生命保険なり損害保険の業界なりの横並びを見たときに,通常,皆さんこれは告知事項と考えていますねということで,横並びの意味合いの方が何か強くなるようなニュアンスが出てきそうに思いました。   しかし,ここでおっしゃっていることはそうではなくて,不合理でなければ,合理性というところを徹底してこれを告知事項とする,ある事項を告知事項とするということについて,みんなが全員合意しなければいけないというレベルまでの合理性は要求されないけれども,不合理ではない。保険会社として,これを告知事項とすることについて,一定の説得力はあります。それを採用するかどうかは選択肢の一つには入りますねと,だけれども,みんなが採用するかどうかは分かりません,そこまでの合理性はないかもしれないけれども,ある保険会社にとっては非常に重要視できる事項であったというレベルでの合理性と言われると,やはり不合理でないというレベルのお話になるのではないか。そうすると,「通常」と言われるとそのニュアンスはちょっと伝わりにくいなと思いまして,おっしゃっている趣旨には全く賛成なのですが,言葉がちょっと私にはまだ十分納得できないという面がございます。 ● 実質的なルールの内容としては,ばかげた引受基準でなければ,個々の保険会社が決めるもので一応重要性を判断していいと,そういうお考えですかね。 ● そういうことです,はい。 ● ○○委員。 ● そういう意味では,もう確認に近いのですけれども,今商法上は「重要ナル事実」,「重要ナル事項」となっているのですけれども,これから大きく変えようという趣旨ではない。ただ,要は応答義務化したところの関係で,こういう表現になっているのだという理解でよろしいのですかね。それとも,やはり告知すべき項目を今よりも狭くするだとか広くするだとか,何かそういう意図をもってこういう表現をされているのか。ちょっと質問に近いのですけれども。 ● こちらの意図としましては,現行の商法第644条の「重要ナル事実」,「重要ナル事項」というのも,言っていることは危険に関する重要な事項であって,今の3頁の本文で書いてあることがその実質のはずだと。それを,今御指摘がありましたとおり,質問応答義務とすることに伴いまして,より明確化する。何でもかんでも聞けばいいということではなくて,答えなければいけない,告知義務違反に問われる質問というのはこの枠なのですよということをより明確にする必要があると考えて言葉を足したということでございます。 ● その重要性をどう考えるかというときに,今までの議論で,保険会社の引受政策としてどういう事実が重要かという,保険会社の側から考えるというアプローチがあるかと思いますが,もう一つ,外国なんかで議論をするときには,その重要性の判断をするときに保険会社だけで決めていい話かと。お客さんの契約者側から見ても,やはり「ある程度これは重要なのだろうな」ということが分かるようなですね。やはり告知義務を課されて,違反するともう契約が解除されたりするわけですから,契約者側から見ても「それは合理性のある基準だね」という観点もあり得るかなという気もするのですが,今の事務当局案に,余りそういう観点は考えておられなかったのですね。 ● 考えていないというか,それは一致するものだと思っていましたので。 ● ああ,ということですね。 ● ええ。そこにそのギャップがそんなに存在するのかなという,ちょっと意識していますので。 ● そこはなかなか難しい。私もよく分からないところなのですが,どうなのですかね,○○委員。 ● 私は当然,今,○○委員がおっしゃったような意味を含んでいるのだというつもりで読んでいたので,そういう理解でいっていただきたいと思うのですが,ただ,○○委員がおっしゃったことについて,やはり保険会社側の選択肢を広げたという部分がどうしても出てくるのではないですか。 ● ○○委員,どういうお答えになりますか。 ● 私は,広げたとかいうよりも,基本的にこれまでと同じ考え方である,事務当局はこれまでと変えようと言われているのではなくて,質問応答義務に変えられたことによって,表現を少しこういうところで定義しておかないとまずいということでこういう表現をされたのだろうなと。そこでいくと,先ほど○○委員がおっしゃったようなことを御議論されたいという意思ではないのではないかというふうに理解していたのですけれども。 ● ただ,これまでのというのが何を意味するかで,古い判例だと何か業界一般みたいな,ここで言っている客観説ですね,そういうものがあるみたいな基準だというふうに,何となく教科書等には書いてある。それが現状だというのであれば,それからはやはり変わっているということなのですね。 ● ○○委員がおっしゃった,契約者の視点があるかどうかということにつきましては意識していなかったのが文章にもあらわれておりまして,本文の2行目,3行目には,「保険者の……判断に通常影響を及ぼすべき事項」と,事務当局でこれは意識して「保険者の」という修飾を付けましたので,それはやはり保険者側から見てということで考えていましたが,それが契約者から見て絞り込まれるということはちょっと考えていなかったということです。 ● ○○幹事。 ● テクニカルなことなのですけれども,先ほど来,「合理的な」というふうに,基準とかとおっしゃっていますし,それから判例でも「合理的な意思」とかという言葉を使われると思うのですけれども,法文で「合理的」というのはにわかには見付からないのですが,だから,この「保険者の当該契約を締結するか否か及びその内容についての合理的な判断に通常影響を及ぼす」という,そこに一言だけ入れたらどうでしょうか。   「通常」というのは,多分,民法第416条とかで,「特別」の反対の「通常」ということで,まあ,それが一般的ですよね,影響を及ぼすのが一般的ですよねと言えて,あとは,その保険者の判断というのは,「合理的に」というのを一言入れると,保険契約者の側も不意打ちのような基準ではないというのが入れられるかなと思います。 ● 合理性をどうやって判断するかというところの問題なのですけれどもね。   ○○幹事。 ● 保険契約者側の視点というのは,ここは答弁義務という形になっておりますので,したがって,保険会社側から,「これを重要視していますよ」という形で聞かれるわけですから,そのことによって契約者側には伝わるでしょうと,こういう体裁になっているものと私は理解したものですから,したがって,あえて契約者側の視点というのであれば,答弁義務になっているということによって,保険会社側からのメッセージは伝わっているという,そういう理解をしたのですけれども。 ● 割と,非常にシビアな引受基準を持っていて,普通の保険会社では全然問題としていないような病気も,質問事項に入れていると,それはやはり告知しないと,それは重要性のある事実を告知しなかったという,そういうことで,しようがないという。 ● 私の場合,それはしようがないでしょうと。そのかわり,それが厳しいわけですから,お客さんの数も減るということになりますし,それは競争の条件の問題にすぎないというふうに考えております。 ● そういうことでいいのかどうかというあたりも含めて,御議論をいただければ。   ○○幹事。 ● やはり,例えば「めまいがしますか」とか,「動悸がしますか」とかいうことを質問しておいて,「それは告知しなくても分からないだろう」とかみたいなことで告知しなくて,保険会社の方も,「質問は一応したけれども,みんな答えないだろう」というつもりで,それは一応聞くは聞いているのだけれども,全部受ける。   実際に事故が起きてみてから,いや,動悸があったとか,何々があったとかということを立証して,「いや,これは義務違反だ」とかという話になるのはやはりまずいので,やはりその客観性というのはある程度,契約者の理解一致性といいますか,それは当然考慮した上での判断になるべきではないかというふうに思っております。 ● はい,どうぞ。 ● 議論になる可能性はありますけれども,まあ,今おっしゃったことももちろん考えられるのですけれども,それがまさに説得力の問題にもなるのですけれども,同時に,先ほど議論がありました告知義務違反の解除の効果ともかかわるお話なので,この要件のところは一応当たったとしても,違反の効果のレベルで大分,先ほどから議論があるように,いろいろなレベルの解決が出てきますねということであれば,今までのようにオール・オア・ナッシングという話だけではないですよというのと連結した話になってくるのだろうなと思うのですね。   だから,要件の立て方としては,もちろん効果のところもにらみながらということになるのですけれども,やや私の意見は厳しいと言われるかもしれませんけれども,一応現行法の体裁からすれば,保険会社側から聞いていることだけが告知義務の対象ですよという形に明確化されておりますので,その部分は相当,保険会社サイドとしては気にされることだろうなと思いますし,加えて,余り厳しい告知をとるのであればこれはやはりお客さんを逃がすという話にもなりますので,そこのところはそんなに私自身は気にしておりません。 ● 今御議論がありますように,我々も引受けに影響が出ないような項目をむやみやたらに聞くようにしようという気は全然なくて,やはり必要最低限のことをきちっとお聞きする。そういう意味で,逆に言うと,聞いていることについては,基本的には合理的なものを聞いているのだという事実上の推定みたいなものが働くのかどうか。あるいは,どういう場合に,逆に言うと,これは合理的でないという判断がされるのかという,その辺がよく分からないので,ちょっと議論がうまく進まないのかなという気もしているのですけれども。 ● ○○委員。 ● ここの条文自体の趣旨を認めた上で,単なる表現の問題なのですけれども,ここで,先ほど○○幹事から「合理的な」ということを入れるというお話だったのですけれども,「合理的」だと,企業にとって合理的なのか,ちょっと基準がずれるので,社会的にも,アンダーライティング的にも,両方通用する言葉として,例えば「適切な判断」とか,そういった文言で逃げることはできないのでしょうかということと,あと,「通常」というのは,私は余り法律は詳しくないので,意味がいまいち分からないのですけれども,では異常な場合はいいのか。この「通常」の意味というのがよく分からなくて,もし「通常」という場合には,通常でない場合というのはどういうことを想定されているのか,ちょっとよく分からないのです。その点は,むしろ質問ということなのですが。   以上,二点です。 ● この言葉が適切かというのは,なお検討ということで(補足)にも書いてございますし,先ほどの口頭での説明でも申し上げましたけれども,こちらが考えていますのは,今日さまざま御指摘をいただきました,合理的な幅の中に収まっているかどうかということをこの「通常」という言葉に込めて表現しているという趣旨でございまして,ですから,保険者の引受基準によって幅はあるけれども,その幅が合理的な幅の中に収まっていなければいけない,それから外れたものについては,告知義務違反を問われないのだということを表したい。   ただ,○○幹事がおっしゃったように,それがそういうようにみんなが読めるのかという御指摘はごもっともでして,なお検討しなければいけないというように思っています。 ● ○○幹事から。 ● 今議論されているのは,告知すべき事項,告知事項についての範囲をどういう言葉で明確化するのかという話だと思うのですが,従来から議論になっていますのは,この3頁のところにもありますけれども,「危険に関する」というところの方がむしろやや重要なような気もしまして,このお話ですと,今は重要な事項のところの重要性をどうやって評価するのかということになっているのですけれども,もしかすると,聞いていることが危険測定に関係がないのではないかと思われるような事項が問われているときに,それに答えなかったことが告反になるのかということの方がむしろ大きな問題のような気がしています。   例えば喫煙をしているのかどうかということが,今科学的に死亡率とどのぐらいの因果関係があるのか分かりませんけれども,それを聞いたといった場合に,それに対する答え方がおかしかったことを告反とするのかということの方がむしろシビアなような感じがしまして,それはむしろ危険測定にかかわっているのかどうかということについて疑念があるという場合ではないかなというふうに思います。   この文言は,危険には一応関係しているのだけれども,それに対する重要度のところを今表現しているのか,それとも,その「危険に関する」というところまでをもこの括弧の中で表現し切ろうとしているのかということがちょっと読み取りにくかったものですから,そのあたりのところをちょっと精査していただいて,また御提示いただければありがたいなというふうに思います。 ● ○○委員。 ● ちょっと戻るようで恐縮なのですけれども,どういうことを聞くかということは,契約者に情報は伝わらないと思うのですよ。   ○○幹事の御意見と違って申し訳ないのですけれども,要するにこれは,昔は手術をおなかから切った場合では出て,後ろから切ると出ないとかがありましたけれども,そういうのは契約者のところに,そういうものを細かく判断して入るかどうかを決めるわけではないので,この場合も,要するに,客観的なものでなければいけないということだけ申し上げたいわけですけれども,やはり契約者にとって,もちろんその告知事項は基準判断に,自主的にきちんと影響を与えるようなものでなければいけないことは確かなのですが,それはやはり契約者から見て一定の客観的な枠に合うと。だから,これはこのままでも,あるべき保険者と言ったら変ですけれども,何かそういうようなことを前提に,でも議論していただきたいという,その一点だけなのですけれども。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 留意点ということで,一つ前の重要な事項という方なのですけれども,この括弧内の表現は,直ちにやはり思い付くのは消費者契約法第4条第4項等の表現との非常な類似性ということでして,もちろんそれを想定した上で使われているのだと思いますけれども,消費者契約法自体はもともと平均的な消費者基準を採るのか,個別消費者基準を採るのかということで争いがあった中,おそらく前者を採るということで表現が用いられたという経緯もありますし,非常に酷似した表現に「通常」というのを入れることになって,そうなりますので,もちろん違う法律で同じ文言を使ったとしても,別の解釈だということは十分にあり得ることだとは思いますけれども,それとの関係でのインプリケーションということもお考えいただく必要があるのではないかと思います。 ● このあたり,ほかに御意見ございませんでしょうか。--ここら辺,やはり告知義務の根本にかかわることで,いろいろ問題点の御指摘があったと思うのですが,なお検討していただこうかと思いますが,あと,告知義務に関して,強行規定性,それからそれに関連して企業保険の扱いと,あるいはその定義というふうなところも問われている。企業保険については,少し先ほども通知義務のところで御意見をいただいたところですが,このあたりについて何か。   ○○委員。 ● 後注の強行規定のところでおっしゃっていただいたように,通知義務のところで大分出ましたので繰り返しみたいになるかもしれませんけれども,損害保険実務では,先ほどもお話がありましたように,企業向けと個人向けとはもう大きく取扱いが異なっているのが実態でございます。   監督法上も,ほとんどの企業向け保険では,保険契約者及び被保険者が事業者の場合には,当事者間の合意により特約を自由につくることができますので,補償内容だけではなくて,この告知,通知義務といった当事者間の権利,義務関係についても,約款と異なる定めができます。このように,企業活動に関わったような顧客ニーズに迅速に保険対応することができるようになっています。   この前提で,②についてなのですけれども,例えば賠償責任保険などでは,企業との取引の中で全く新しい,従来なかったリスクの引受けを求められることも結構ございますので,このような場合,質問応答義務ではなくて,前の一読のときにお話ししましたけれども,自発的に申告してもらって,その範囲に限って引受けを行っている。引き受けられるかどうか,ぎりぎりの判断をやらせてもらっていますので,その告知内容が違っていたらもう取引ができないということで,故意・重過失のみという条件は付さずにやらせていただいています。   それから,告知内容が違う,危険が増加した場合にも,増加した時からもうすぐに,その時点で解除というようなことも,あるいは失効ということも必要になりますので,このように,さらに,リスクが巨大な場合には再保険者から同じようなこと,○○委員が申し上げたようなことが求められます。   そういうことで,事業者同士の取引では,基本的に自由な取引,特約を認めていただく必要がありますし,強行規定と言われると,何とか引受けができていたリスクが引受けできなくなりますので,契約者にとっても保険対応ができないという事態になってしまいます。   あと,少し極端な例かもしれませんけれども,外資企業さんが本国で使っていらっしゃる英文のコントラクト,個別の保険契約書みたいなものなのですけれども,それをそのまま使いたいというようなリクエストもございまして,この英文コントラクトが保険法の強行規定に反して無効ということになれば,企業のお客様にとって大変な不便になると懸念します。   このことから,保険法全般を通じて,先ほども意見を言われていた方がございましたけれども,規定の性質上,絶対的な強行規定になる,そういうものは除いては,基本的には契約自由を確保していただければと思っています。   あとは,個人の方なのですけれども,今この告知の規定のアからウだけに限れば,現時点でどうしても任意規定でなければ困るというようなことはないのだと思うのですけれども,ただ,これも全般を通じてなのですけれども,本当に強行規定とまで明示する必要があるかどうかということなのですけれども,例えば,仮に将来何らかの理由で大幅に母集団が保険料アップをせざるを得なくなった場合に,強行規定でここでいろいろなことを決めてしまいますと,契約者の側に少し負担を課させていただくけれども,保険料を安くするというような商品開発というものができなくなってしまいますので,そのようなこともちょっと考慮の上で,強行規定性については御議論いただければと思います。   それから,最後,強行規定として定める場合であっても,少なくともあの規律は片面的強行規定ということで,かぎの中で書いてある「で保険契約者又は被保険者に不利なもの」を入れていただきたいと考えます。   以上です。 ● 御意見。○○幹事,どうぞ。 ● すみません,皆さん余り御関心がないところかも分からないのですが,4頁の(補足)3のところの記述は,告知義務を質問応答義務とする場合に,告知した後に告知事項に変更が生じた場合というので,もうその場合には告知義務違反とはならないと考えられるというのは,もうここは異論がないのでしょうかというか,多少ちょっと疑問がありまして,やはり質問応答義務というふうにした場合に,保険者にとって重要な事項を情報提供しやすくするという,そういうテクニックだと思うのです。   そうすると,質問事項が来たので,もう,「あ,これが重要なのだな」と分かったわけですから,そうすると,契約の成立までに,それについてまた変化が起こったら情報提供をする義務というのはやはりあるのではないかなと思うのです。 ただ,その場合に,質問してから,契約の申込みに対して承諾が遅れているような場合で,それでその間に出てきてしまうというような場合を考えれば,やはり一回質問を受けて回答して,それでもう質問応答義務は終わりとすることが妥当だと思うのですけれども,他方,契約の成立が第一回の保険料を支払うのが遅れていて,だからずるずるということがあるか分からないのですけれども,仮定としてそういうことがあって,それでその間に告知事項に変更が生じたら,やはり言わなかったら告知義務違反は問われるように思うのです。   ですので,ここのところは,おそらくはその事実を質問の時に告知すれば足りるというのは,裁判とかになったときにこの結論にはなるとは思うのですけれども,明文ではそういう規定は置かなくて,約款レベルでそういう,「何とか何とか何とかの一番遅い時に責任が開始する」とか,そんな約款レベルの対応か何かで,そこでその時までに告知をしていれば責任が開始するから,それ以降はその告知事項に変更が生じたとしても告知義務違反は問いませんという,そういう効果が出てくるのかなと思いました。 ● ○○委員,今の実務では,一応質問応答義務に約款上はなっていて,それは質問した時を基準にしていることでもう割り切っておられるのですね。 ● 割り切っています。 ● 特段それで何か問題があるということも,まあ,ないと。 ● はい。 ● 一応そういう形で動いているようなことなので,それを前提としているのかなと思うのですけれどもね。 ● (補足)にこういう規定が出てくるとか,そういうことではないのですね。 ● そこまで書くつもりではないわけですね。それはもちろんそういうことです。   ほかに。○○委員。 ● 私がここで重要な問題だと思ったのは,今日の6頁の一番下にある片面的強行規定の問題なのですけれども,前回,○○委員が御紹介された事例がありましたけれども,それは始期前発病と告知義務の問題で,その事例のことを言っているわけではなくて,そこで始期前発病と告知義務との関係というのはこれは昔からあった議論で,最近の状況を私が全部分かっているかというとちょっと自信がないのですが,少なくとも昭和60年ごろ,その当時は大手の保険会社は,始期前発病の規定はあっても,告知義務の規定,例えば2年過ぎてしまったら,それは余り言わないという取扱いをしていたと思うのです。   具体的な論文としては,西嶋先生の本とか,坂本弁護士が書かれた論文とかがあって,私が当時教えていただいたところでは,大手の保険会社でも,告知義務違反の規定,告知義務の規定を片面的強行規定とまでは言わないけれども,始期前発病というと実質的にそれに抵触するような形になるので余りそれは言わないのだというような,そういう扱いをしていた会社があったと思うのですよね。   ここで,完全に片面的強行規定と書いた場合に,これはやはりちょっと,従来はそこまで言い切れなかったところが言い切れるようになる部分があるのかと。   そうすると,今日は○○委員がいらっしゃらないのですけれども,網膜色素変性症のようなものはどうするのかとか,いろいろ議論はあるかもしれません。ただ,これは私は,これこそ,一回診断を受けて,いつか失明するかもしれない,それを隠して告知しなかったというようなとき,始期前発病でいくのではなくて,せいぜい告反の除斥期間を本来の5年にするとか,そういうところまではあるのではないかなと思うのですけれども。   だから,そういう形で工夫していけばいいので,そういう意味も含めて片面的強行規定にするというのに賛成したいというふうに思っているのですけれども。   それと,もうあと一点,この関係のところで,法人,企業保険の意義というところですけれども,多分ここは,契約法でこの保険契約,共済契約法でこのことを問題にするのは,要するに情報格差,情報処理能力の格差というものの,ある人とない人という区別ですから,その定義は多分,能力もそうですけれども,いろいろコストをかけて,保険会社と同じようなところまで,又はそれに対等にできるようなところまで行くことができる人とできない人と,実質的な意味はそういうメルクマールで行くべきだと。   ただ,法文上どう書くかという問題があって,私は告知義務のところが任意規定にしなければいけない場合がやはりそれはあるのではないかと思うのですが,今,委員の説明を聞いても,そんなに広いのだろうかと。やはりこれは相当先端的な保険とか,カタストロフなものとか,だから,単に企業保険というだけでいけるものかどうか,ちょっとまだ。ですから,本当に必要なところをもうちょっとディスクローズしていただいたらいいのではないかなと。   こんな二つの意見なのですけれども。 ● 本当になかなか難しいところですね。   ○○幹事。 ● 私の持っている企業保険というか,そのイメージとしては,むしろ会社法上の大会社プラス事業者団体が交渉に当たって約款を決める場合ぐらいではないかなと。店舗総合保険とかがもう契約自由ですというのは少し抵抗があります。 ● ということですね。   ○○幹事。 ● 私も同じところなのですけれども,先ほど○○委員がおっしゃったように,リスクを引き受ける際の問題を考えますと,必ずしも大きな企業イコールではないですね。そうすると,やはり事業にかかわるリスクという形で一定切るしかないかなというふうには思っているのですが。   要するにリスクの中身が問題で,それがたとえ小さな企業であっても,とてつもない損害が生じるという可能性が今の世の中の場合あり得ますので,そうなってくると,どうも今,○○幹事がおっしゃったように,必ずしも大企業イコール大きな危険という,そういうわけでもないと思われますので,事業にかかわるリスクという形で切るのかなというふうに思っていたりしたのですね。会社法上,一応「事業」という概念が入りましたので,それで切れないわけでもないかなと思って。ただ,法人で切るというのはちょっとまだ広すぎるなという感じはいたしております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● それに関しまして,いろいろな切り方があると思うのですけれども,私も,法人とか,その事業の主体で,契約者で切るというのは,これはちょっと無理ではないかと思います。   また,リスクごとも,これもちょっと難しいのではないかと思いまして,基本的には,プロとプロの契約かプロとアマの契約か。つまり,契約の在り方,いわゆるコマーシャルラインと言われている企業契約の場合はカスタム・メイドで,基本的には相対契約をしているようなものであって,そこにいわゆる市場規律が効くようなものだと思いますし,また,個人保険の場合は,プロとアマの契約で情報格差があるためにレディ・メイドで,附合契約性があって,約款に基づく。その約款も,監督官庁の一応認可を得ている。そういう契約の在り方で切らないと,同じ法人であっても,個人契約に類するような契約もあるし,又は本当に企業契約もありますので,その辺はそう考えたいと思います。 ● 大体の御意見,割と有力なところがあるかと……。  ○○委員 ● 企業保険のところで,一般的に,○○委員が述べられたように大きな保険を想定されているので,そんなにガチガチに規定をする必要はないのかなという感じはするのですけれども,この企業保険の定義付けをどうするのかという問題提起もされておりますけれども,例えば協同組合でも,中小企業等協同組合の場合で,例えば中小業者のトラックの協同組合があるわけですね。当然,交通事故が起きますので,その賠償のために共済をやっている。つまり,法人の経営を維持するためにやっているような共済もあるわけなのですね。そういうのも,一般的にいわゆる企業保険に該当するのかどうか。   冒頭言いましたように,協同組合ですから,協同組合の形態のものを企業保険と言うことは非常に言いづらいのですけれども,その種の形態もありますので,ここにありますようにやはり企業保険の概念といいますか,そういうものと,それから,今,○○委員も言われましたように,何らかの切り方といいますか,そういう整理がやはり必要ではないかというように思います。 ● どうぞ ● 我々が今,そもそも監督法上やっていますのは,先ほど申し上げましたように基本的には事業者ということで特約自由を扱っておりますので,それが余りいろいろな制限がつかないようにはしていただきたいとは思いますが。すみません。 ● 実務の方はそういう御意見ですが,まあ,その他の御意見はかなり,企業保険というのは限られた,それはどういう観点から限るのかというのはなかなか難しいのですが,そういう御意見が多かったのではないかと思います。さて法文にどう書くのかというあたりで非常にこれは頭が悩ましいかと思います。ちょっと問題点が今日出てきたので,そういうあたりで御検討いただきたいと思います。   ○○委員,どうぞ。 ● ○○幹事がエールを送ってくださったような気がしておりまして,前回申し上げました責任開始前発病と告知義務違反の切り分けという話は,もしかしたらここではないところでテーマとして生保のときに出てくるのかなというふうに期待しておりまして,そのときにまたお話をさせていただきたいと思っています。それだけです。 ● それでは,ひとまず次へ進まさせていただきたいと思います。今度は,資料の9頁の「(4) 第三者のためにする損害保険契約」の部分でございます。   まず,事務当局から御説明をお願いします。 ● この項目は,(問題点)について重点的に御審議いただきたいということで取り上げております。   (問題点)では,保険契約者が被保険者から委任を受けないで損害保険契約を締結したときは,保険契約者又は保険者は,被保険者に対し,その旨及びその内容を知らせなければならないものとすることについて問題提起をしております。   この点,本文の規律では,被保険者の受益の意思表示が権利の発生要件とされていないことから,被保険者が保険契約者に契約の締結を委任していないような場合には,被保険者は,契約が締結されたことやその内容を知らないこともあり得ると考えられます。   そうしますと,資料の10頁の(補足)1に書きましたが,保険事故が発生したにもかかわらず,被保険者が保険金の請求の時期を逸してしまわないかなどの問題もあるようにも考えられます。   また,(注2)において,現行商法第648条前段の規定を削除することを提案しておりますが,この規定については,通知義務等を被保険者に課すことを前提として,その履行を促す趣旨があるといわれることもあり,この趣旨については別途の規律によって実現する必要があるとも考えられます。   以上のような観点から,(問題点)について御議論をいただければと思います。   この点については,(補足)1において,生命保険契約における被保険者に対する情報提供の在り方とも整合的に考える必要があると書きましたが,ひとまず損害保険契約を念頭に置いて御議論をいただき,その後に生命保険契約との関係についても御意見をいただければと思います。   また,本文の規律については,(注3)でこれに反する特約を無効とすることを提案しておりますが,これにつきましても何かお気付きの点がございましたら御指摘をいただければと思います。   以上です。 ● 事務当局からの問題提起でございますが,この点について御意見はございませんでしょうか。   ○○委員。 ● 基本的に,本文の規定については賛成でございます。   (問題点)にある被保険者への情報提供ですけれども,現状では,保険業法第300条第1項第1号の重要事項説明義務というもので,保険契約者又は被保険者に対して課せられているということでございます。   ただ,保険法で情報提供義務を課した場合,義務違反の効果を定めるのは結構難しいのではないかと考えます。   それから,あと,保険者と被保険者とは直接の契約関係にはないために,保険者が直接,被保険者に情報提供を行うのは困難ですので,被保険者への情報提供は保険契約者を通じて行ってもらうこととしていますけれども,ただし,保険契約者に対して情報提供の義務を課すような規定を置くことについては慎重に御検討いただきたいと考えております。 ● ○○幹事。 ● すみません。今回,情報提供という意味で被保険者に通知する内容が知らされるということになることに関して,これは,被保険者がその意思に反していたときのことを考えないでいいのでしょうか。 ● 自分が被保険者になるということが,自分の意思に反すると。 ● それが反しないとなると,もうほとんど承諾を要件としているのと同じになってしまいますし,もし,意思に反していてもやはり保険は掛けさせてくださいと言うとなると,今度は第三者弁済のときみたいな規定振りになるというか,利害関係を有する者は,第三者を被保険者として保険を締結することができるという形になるのかなと思いますが。 ● 今のところのこの考え方は,別に被保険者の同意がないと契約が成立しないとか,そういうことは考えていないわけですよね。 ● 考えておりません。 ● 保険金は被保険者に払われるわけだから,そういう意味で,意に反して契約が成立しても弊害はないであろうということですよね。 ● ただ,第三者弁済も,債務者が利益を受ける結果,昔ふうの考え方で,日本人の気質としては,払ってもらいたくない人,債務者もいるのだからというのが骨子だったと思うのですけれども,保険法の現代化ではそういう陳腐化した発想はないということであれば,それはそれで一つの整理かと思います。 ● そこの点について,一点,民法との関係を詰めなければいけないかなと思っておりまして,この第三者のためにする損害保険契約というのは,民法第537条以下に規定されております第三者のためにする契約の一種であるといわれております。   第三者のためにする契約の議論におきまして,受益を受ける者,民法の条文で言いますと「第三者」という形で表現されておりますけれども,その者が受益をしない旨の意思を表示した場合には契約が失効するのかどうかという点が議論をされております。   民法の一般的な議論におきましては,第三者に指定された者が受益をしない旨の意思を表示したときに,個々の契約ごとに契約が失効するかどうかを見るべきであると,一般論としてはいわれております。   その点,損害保険契約においては,まさに被保険者以外の者が保険金を受け取るということは想定ができない建前になっておりますことから,被保険者が受益をしない旨の意思を表示した場合には,基本的には,民法の一般法理からいっても契約が失効するというふうに言えるのではないかなとは考えておりますが,その民法との関係を含めてもうちょっと詰めていきたいなと思っております。 ● ありがとうございます。 ● ○○委員。 ● ○○幹事に対して,少し答えになっているのか分かりませんが,余りそういう理論的に起こりそうなことで現実に問題は余り起こっていなくて,この規定を議論するときには,実際にはその背後にいろいろな法律関係があって,それは倉庫だったり運送だったり,もっと最先端,いろいろ議論は細かくなるわけですが,そういうことを前提としていて,それでいて現実に余り問題は起こっていない,まず,何かそういうところから出発していると私は思うのですね。   9頁の(問題点)1の知らせなければならないという部分は,いろいろお考えになって,でも,これは要するに手続的な要件にするか実質的な要件にするかというと,実質的にするとこれはなかなか大変なので,どういう意味があるかという考え方,でも,何かはないとまずいと,どうもそういう,苦しまれた上での規定で,私もやはり何かないといけない,でも,ではこれに代わる何かを思い付くかというと思い付かないので,やはりこれはこれでよくお考えになったなという,そんな感じを私は持っているのですけれども。   答えになっていませんけれども,要するに何かはなければいけない。しかし,無効というのはやはりちょっとあれなので,非常にこの方向はいいのではないか,こういう意見です。 ● ○○委員。 ● 実際に,どういう形で第三者のためにする契約がなされているのか,ちょっと御紹介したいと思うのですけれども,例えば所有権留保付売買における自動車につきまして,契約者が販売業者を被保険者として車両保険を付けて自動車を持つ,これは非常に,皆様もおそらくそういうふうになっていると思うのですけれども,ディーラーさんが被保険者になりますのでそういう契約になっている。   あるいは,倉庫業者が荷主のために付する倉庫の火災保険契約,あるいはクリーニング屋さんがお客様のために火災保険を付けている。それから,親が子どものためにする契約があるとか,あるいは,例えばグループ会社でですね,ある企業で,グループ会社がありますので,親企業がグループ会社全体に対して保険契約をして,被保険者はそれぞれのグループ会社になる。あるいは,またマンションの管理組合が,全体のマンションの保険契約を一括して契約して,被保険者はそれぞれの区分所有者と,こうなる。   こういう場合について,いずれも保険契約者を通じて被保険者に対して,例えばマンションの管理組合では必ず保険が付きますよということを案内する。あるいは,グループ会社であれば,子会社に対して,こういう契約を付けているよという案内をする。こんなことになっておりますので,いずれにしましても,現状としまして,保険契約者と被保険者の関係が全く無関係だという契約はほとんどございませんし,実際に保険金も払われているということから,まず,そういうことをぜひ御理解をいただきたいなと思っています。 ● ○○幹事。 ● 今おっしゃったように,損害保険でおよそ余りこれが問題になることはないと思うのですけれども,これ,【各契約共通事項】というふうになっておりますので,これは生命保険契約についても,ここで議論になっていることを理論的に適用していくと,こういう御趣旨ですね。そうだとすると,ちょっと損害保険の特に物保険等とは違った色彩が,生命保険の場合は出てくるだろうなと思います。   損害保険契約の場合で,被保険者に保険金請求権が帰属する。これを請求すれば,もうこれは当然,受益ということを承認して請求しているので全然問題ない。ところが,請求しないと。私自身が被保険者になること自体が嫌だというようなことを損害保険の被保険者が言うとした場合は,これはどうなるのかと言われると,受益したくないと言われたら,その人に保険金を受け取らせられないとしたら,その損害保険契約は無意味になりますので,効力がなくなるのかなとも思うのですが,実際上はおそらくそれは想定できないケースだと思うのですけれども,ところが,生保の場合はあり得るわけですよね。   大阪高裁でしたか,妙な判決があるのですけれども,受取人が保険金請求権は帰属してほしくないということを言ったケースがあるわけですね。契約者は,その受取人のことを考えて契約を締結していたかもしれないのですけれども,受取人自体は嫌だというケースですと,生保の場合だと,受取人が拒絶をした場合に,その契約に基づく保険金請求権の行方としては,保険契約者に戻るのか,あるいはその保険金受取人に権利が帰属をして,それが権利放棄されたのかという,その形でちょっと,全然その支払い方が変わってくる,あるいは全然支払わないでいいというそういうことになりますので,ここで一緒に議論していいのかなという気はいたしました。   そうすると,何が言いたいかといいますと,結局生保の問題をここへ取り込んで議論しますと,その受取人側の私自身に権利を帰属させてほしくないというような主張を認めるのかという問題が出てくるのですね。   これは,別にそれを認めなくても契約者に戻るのですと言われれば,これは契約はそのまま有効に存続するのですけれども,有効に存続するというのですか,契約者に事故が起これば契約者を受取人として払うということになるのですけれども,それを受取人の権利放棄だということにしてしまうと,これはもう払わないでいいという話になってしまうので,それを含めてここを考えるという話になると,基礎のところで,今ここで少し議論されていますように,当然にその権利が帰属する,受取人なり,その受益者にですね。受取人,あるいは被保険者ですか,権利は帰属するという構成で行くかどうかということなのですが,従来はおそらくそういうふうに考えてきたのだろうなと思うのですね。   それで多くの場合はもう問題はないというふうには思うのですが,そういう例外的なケースだけが少し,理論的に問題になってきますねということです。 ● 生保の場合を考えると,いろいろな問題がちょっと波及してきてややこしくなりそうなので,とりあえず損保で今日は御議論いただいて。   ○○幹事。 ● 損保の場合,先ほど○○委員の方からお話がありましたように,ほとんど問題は起こらないのだろうというふうに思いますが,そうだとしますと,こういう規律があっても特段弊害があるというわけではない。   では,これが加えられることによって例えばどんなケースに影響があるのかという,ごく例外的ですけれども考えられるものとしては,今この新しい提案の中で第648条が削除されてしまいますと,勝手に隣の家に保険を掛けて,被保険者欄に隣の人の名前を書いておけば有効ですから,それで何も知らせないまま,ずっとその保険が生きているという状態になっているということだと思います。   このことの状況で,もちろん理論的には,事故が起こったら,隣の人が保険金を請求する権利を持っているわけで,契約を締結した人には何のメリットもないということになるのですけれども,そうだからといって,自分の建物に人が保険を掛けているということを知らなくてもいいのかという問題がややあるような気がしまして,具体的な事例としては,例えば火災が起こったので隣の家の人が混乱の状態に陥っていたので,保険金の請求を任されましたと称して,隣の家の人が何か変な委任状を持って保険会社に駆け込んできたときに,保険金が払われないとも限らないわけでありまして,もしそういうことをねらって,いろいろな人のところに保険を掛ける人が出てくると,やや気持ち悪い感じもするという気がします。   これも,事例としてはもうこれ教室事例みたいな,教壇事例みたいですね,要するにつくったような話でもあるのですけれども,やはり世の中的には,自分の所有物にかかっている保険ぐらいは把握するということが大前提できてしかるべきだと思いますので,ほかの人が掛けた保険でも,自分が被保険者になっているものについてはお知らせいただけるというのは,制度化されてもいいのかなと。   そういう制度にしたとしても,先ほど○○委員がおっしゃられたように,ほとんどの事例の場合はそれが履行されているわけですので,特に大きな実務の混乱はないのではないかなというふうな気がします。 ● ○○幹事。 ● 今,○○幹事が挙げられたケースで,もうちょっとありそうなケースとして私がちょっと気になっているのは,例えば抵当権者が抵当権設定者の建物に火災保険を掛ける。これはまさに第三者のためにする損害保険契約ですね。   今のままだと借金が返ってきそうにないので,抵当権設定者の建物に火災保険を掛けて放火して,保険会社に対して物上代位権を行使して,保険金で借金を返してもらうというようなケースはひょっとしたらあり得るのかなと。   そういうような場合に,被保険者が「いや,おれはそんな保険は嫌だ」という可能性はあると思いますので,ちょっと,これも教壇事例になってしまうのかもしれませんが,全く問題がないケースばかりかというと,そうでもないような気もしますので。 ● それがあるからといって,第648条みたいな形とか,あるいは被保険者の同意ということはおそらく難しいのでですね。 ● 結局,どうすればいいのか私もよく分からないときに,何か問題点だけ指摘しているというので恐縮なのですが。 ● 知らせる義務というのを契約者に課すというのも考えて,なかなかこれ,効果が何か容易に想像がつかないのでですね。まあ,ここは一般条項の世界かなという気もするのですが,いかがでしょうかね。--ちょっとそういういろいろ難しい問題が出そうだということで,なお検討していただきましょうか。   それでは,先へ進みまして,11頁の「(5) 損害保険契約の成立前から保険者が責任を負う旨の定め(いわゆる遡及保険)」の部分でございます。   まず,御説明をお願いします。 ● それでは,御説明いたします。   いわゆる遡及保険につきましては,第1回会議におきまして,その定めを有効とするための要件と,生命保険契約の実務における責任遡及条項の取扱いにつきまして御審議をいただきました。そこでの御議論を受けまして,今回の資料では具体的な提案をしております。   まず,本文では,現行商法の規律のうち,契約を無効とする必要がないと考えられる場合は無効とはしないこととしつつも,基本的には現行商法の立場を維持することを提案しております。   この本文につきましては,遡及保険の定めが本来無効なのであれば,端的に有効となる場合を正面から規律するのが筋であると考えられますことから,例えば本文に掲げた場合以外の場合は,遡及保険の定めは効力を有する旨を規定することなども,なお検討する必要があると考えております。   ここで,本日席上配布しました「いわゆる遡及保険に関する規律」と題するペーパーを御覧いただけますでしょうか。こちらが資料の本文と(問題点)を前提として少しまとめたものでございまして,左側の二つの表,縦に並んでいますこの二つの表が本文の規律を整理したものでございまして,無効である場合に灰色の網かけをしております。   次に,(問題点)の①です。ここでは,生命保険契約の責任遡及条項を例示して御審議を以前いただいたところでございまして,そこでの御議論を踏まえまして定型化した規律を考えてみました。   生命保険契約の責任遡及条項におきまして問題となりましたのは,契約の申込みから承諾までの間に時間的な間隔があり,本文のような保険契約の成立時を基準とする規律を適用すると,その条項が無効とされる事案が相当生じてしまう点にあると考えられますが,例えば,申込みの後に保険事故が発生した場合において,そのことを承諾までの間に保険契約者や被保険者が知った場合に契約を無効とすると,責任遡及条項を定めた意味がなくなってしまいかねないという点が挙げられると思われます。   そこで,(問題点)の①では,生命保険契約の責任遡及条項のように,申込みから承諾までの間の保険事故について保険者が責任を負う旨の定めは効力を有すると規定しております。これにつきましては,先ほど御説明しました席上配布資料の真ん中に説明を記載しております。   次に,(問題点)の②は,申込みより前から保険者が責任を負う旨の定めについては,本文の規律のうち,契約の成立時を基準としている部分を,申込みの時点を基準にすることを提案しております。   これにつきましては,席上配布資料の一番右側に説明を記載しておりますが,この②については,※印で書きましたように,保険者において保険事故が発生していないことを知ったかどうかを,保険契約者が申込みの通知を発した時を基準として考えると,保険者は,承諾時に保険事故が発生していないことを知りつつ承諾し,保険料だけを取得することができることとなりますが,それは不合理とも考えられます。そこで,この点につきましても併せて御議論をいただければと思います。   なお,資料の提案及び席上配布資料は,保険契約者が申込みをし,保険者が承諾をするという,実務上は通常と思われる場合を前提として書いておりますが,基本法として規律を設けることを考えますと,保険者が申込みをし,保険契約者が承諾をする場合をも念頭に置きつつ検討する必要があると考えられますが,この点については本日の御審議を踏まえましてなお検討していきたいと考えております。   以上です。 ● 現行の第642条で生かすべきところを生かして,生命保険のように特殊な引受け方をしているものについては,本案が支障にならないように,(問題点)の①,②というようなことを考えていただいたというのが案ではないかと思いますが,こういうことでうまく,実際に行われていることが処理できるのか,賄えているのかどうか,そういうあたりが問題ではないかなと思いますが,いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● まず,質問なのですが,資料によりますと,本文の規律と,それから,本文の規律のほかに①,②の規律がある。全部で三つの規律があるということなのですが,これは,三つとも必要なのかどうなのかというのがよく分からない。   つまり,①,②の規律があって,それ以外に本文が,①,②が適用されずに本文が適用されるような場合というのはどういう場合なのか。これを読むと,時間的間隔がないような場合が本文では想定されているのかと思うのですが,そういうことなのか。ちょっとそのあたりをまず御説明いただけますでしょうか。 ● おっしゃるとおり,実はそのような問題がこの資料の11頁の提案に含まれているというように考えております。   (5)のこの本文は,今○○委員から御説明いただきましたとおり,現行法の無効とされているもののうち,無効としなければいけないものを,まずきちっと頭の整理をしましょうということで書き出したのですが,その後,クリアしなければいけない問題点ということで,①,②を考えてみましたところ,今日席上でお配りしました①,②の規律を御覧いただければお分かりのとおり,いわゆる遡及保険といわれるものは,契約成立前までこの責任を及ぼそうと,その及ぼすときに,申込み時まで及ぼす場合もあれば,更に申込みよりもさかのぼって及ぼす場合もある。   こう考えますと,結局,(問題点)の①②でそのすべてが尽きてしまうということになる可能性もありまして,そうだとしますと,まさに御指摘のとおり,本文の規律は要らなくて,(問題点)の①,②の規律が適切かどうかという問題がありますけれども,①,②の場面でそれぞれ適切な規律が置ければ,それで尽きてしまうというようにも考えています。そこも含めて,御意見をいただければと思っております。 ● よろしいですか。   ○○委員。 ● そういう意味では,まず①のところは,もう先ほどの御説明にもありましたように,我々,今の生命保険の実務を規定していただいているので,この規定は非常にありがたいなというように思っているのですけれども,逆に言うと,本文とやはり②の関係が逆によく分からなくてですね。②というのがどこを意識されているのかがちょっと分からなかったというのが正直なのですけれども,こういうことというのは,生命保険は余り,これは損保を意識されている規定なのかなと思ったのですよね。   生命保険を意識して書いていただいたのは多分①なのだろうと思っていまして,ただ②は生保というよりも損保かなという気がしていたのですけれども,そういう理解でよろしいのですかね,まず。 ● 正直なところ,生保まで検証が追い付かなかったところで,頭でイメージして考えましたのは,いわゆる昔から言われている船が出航してしまってみたいな,後に契約を結ぶみたいなことをイメージして考えましたので,そういう意味では,何をイメージして考えたかといいますと損保で,生保に当てはめたらどうかまではちょっと検証が及んでいませんでしたので,もしかしたら,おっしゃるようにそもそもこういうシチュエーションが想定されないということかもしれません。 ● 本文の方が生・損保共通のルールというか,一般規定としてあると,やはり①だけあれば,それは本文の方は見ると無効になってしまうので,それを,基準時を申込み時にして本文に対する特則を設ける,それが②だという,一応そういうことではないのでしょうか。 ● そういうことですか。 ● 本文がある限りは,②がないと,やはり今の責任遡及の実務というのが,そのままでは行えないという,それに合わないと。 ● ちょっと私,生保で行くと,本文と①でいいのかなという気もしたのですけれども。 ● 告知などの関係で,もうそもそも申込み時以前に責任をさかのぼらされるということ自体がないということですね,おっしゃっているのは。 ● ないという,ええ。 ● ですから,今申し上げましたとおり,そうだとすれば,この(問題点)の②は生保には当てはまらないということになろうかと思います。 ● そういうふうに思ったのですが,ちょっとよく分からないところがあってですね。   ただ,①というのは,今の実務ですので非常にありがたいというのは事実で,あと,本文と②の関係がちょっと,正直言ってよく分からなかったというのが。 ● 成立時というのは,保険会社が承諾をした時になるわけでしょう。 ● そうです。 ● すると,この本文の「又は」以下のところで,契約者,被保険者がもう死んでしまったということを当然知っていることもあり得るわけで,そうすると,この後段,「又は」以下の方を適用してしまうとやはり無効となってしまうということではないですかね。本文だけだと。 ● その特則が①なのかと思ったのですけれども。だから,①はいいと思うのですけれども,更に②が要るのかどうかがちょっと,生保の場合がよく……。 ● ①で,次に②で私が言ったような趣旨だと言っているようなことが,①にもう既に入っているのではないかと,そういう御理解ね。そこはどうなのでしょうかね。そこまでは行っていないのではないかなと私は思っていたのだけれども,あるいは解釈の問題なのかもしれません。 ● そういう意味で,生保と損保を一緒に議論するのがいいのかどうかという問題なのかもしれないなという気もするのですけれども。 ● この点,実質的に何か,今の実務はおかしいからやめようとかいう趣旨は全然含まれていなくて,そこを条文にどう整理するかというあたり,そこはもう,では技術的に。 ● 我々も,①を入れていただいているのは非常にありがたいと思っていますので。 ● ②まで言うかどうかという,さっきの○○幹事の御質問もあったのも含めて。 ● だから,②があっても,別に生保実務としては差し支えがあるわけではないと思うのですね。 ● 多分そうなのですね。 ● ①があれば。 ● ①があれば,ええ。 ● ですから,あとは損保の方が,①と②で十分なのか。十分であれば,本文はもうなくてもいいと思うのですけれどもね。 ● ちょっと,そういうことでいいかどうか,なお詰めて御検討いただきます。   ほかに,この点に関して。○○委員。 ● 損保につきましては,第1回のときの遡及的保険の例としまして,ラスベガスのMGMグランドホテルの火災の事故の件をお話ししたのですが,あれは,思い起こしてみると,1980年にあの火事が起こって,当時お客様に対して賠償保険金は3000万ドル付けていたのですが,訴訟が非常に増えたので,更に1億7000万ドルを追加的に保険を買って,そして過去に起こった事故について,将来起こる訴訟の賠償金に充てようと,こういうことでございますが,これは明らかに契約者側は事故が起こっていることが分かっているということですから,それを単純に当てはめるとそういう契約はできないということなので,我々も非常に,いろいろな保険契約がありますのでいろいろちょっと心配したのですが,考えてみますと,保険事故というのが,過去に起こった火災ではなくて,これから訴訟されるということを保険事故と考えれば,まあ,問題はないかなというふうに考えられます。   それから,また,自動車保険のうっかり失効特約というのがございますけれども,これにつきましても当初心配したのですけれども,停止条件つきの自動継続特約というふうに解釈することもできますので,それも処理できるかなと。   あと,生産物賠償責任保険などにつきましては,過去に,契約の前に事故の発生がある,契約する前のある時点よりも後に起こっていて,契約よりも前に事故が起こったとしても保険金を払うという,それは,保険期間中に賠償請求がされれば,その賠償請求をされたものを保険事故とみなすという,クレームズ・メイドというそういう保険がございますけれども,これも過去にさかのぼるようなイメージですけれども,考え方によっては,賠償請求そのものを保険事故と考えれば保険期間中と考えることができるというふうに整理できるかなと。   こういうことで,ほとんどのケースについては,こういう規律を入れても問題はないのではないかなというふうに今は考えておりますが,ただ,唯一,官公庁の発注物件は必ずこの期間中に保険を付けなくてはいけないというのがありまして,これ,ときどき建設会社の方が保険を付けることを忘れてしまって,さかのぼって保険を付けてくださいということがございますけれども,こういう場合につきましては,なかなか説明が難しいので,いいお知恵を拝借したいなと思っています。   以上でございます。 ● ほかに,何かこの点。○○幹事。 ● 生保の問題でもよろしいでしょうか。 ● はい。 ● 承諾前死亡の問題なのですが,責任開始条項については法律で認めるということなのですが,結局,この条文を置いただけではやはり保険者の承諾義務とかというあの問題は立法的には解決されないので,承諾義務とか何とかということを議論する代わりに,例えば保険者の承諾期間というのを法定するとかいうことはいかがかなと。   例えば,8週間以内に申込みに対する応答がなければ申込みは失効するとか,あるいは逆に申込みは承諾されたものとみなすとか,どちらでもいいと思うので,とにかく申込みはしたけれども,承諾さえしてくれれば保険はさかのぼるのだけれども,承諾がいつまでもなくてずっと棚ざらしになっているというときに,それをいつまでも放っておいていいというようなタイプの契約ではないと思いますので,私は,消費者法という観点から承諾擬制をして,謝絶したければ8週間以内に謝絶するということの方がはっきりしていいのだろうというふうに思いますが,いかがでしょうか。 ● 答えは今できないのですが,契約一般の規律として,民法及び商法に承諾期間を定めた申込みと定めのない申込みの規律が置かれていますので,ちょっとそれとの関係で,保険法に何か特別の規律を置けるのかどうか,置くのが適切なのかどうか,ちょっと今問題提起をいただきましたので,検討してみたいと思います。 ● 今の○○幹事の御指摘は,申込みはしたけれども,引受けをする前に事故が発生しました,事故が発生したことを知ったので,保険会社が引き受けないとか何かそういうことを防げませんかという,そういう。 ● もちろん,もともと承諾義務という議論は多分この条文だけでは解決しないので,引き続き解釈上の論点として残ると思うのですが,それを一部,部分的に埋め合わせるものとして,保険会社がその死亡したところから調査を始めますと。それで,1か月,6週間と調査をしてということになりますとかなり長引きますよね。   それは,いつまでも放っておいていいということにはやはりならないと思いますので,少なくとも「調査中です。いついつまで,もう少し待ってください」とかいうことを言わない限りは保険者としては承諾されたものとみなされるとか,そういうルールは一つあってもいいのではないかなと。 ● その部分の問題は,今実務がどうなっているかというと,もともと告知しておられた内容だとか,その時に健康診断を受けられた状態で,もともと引受け可能であれば,そういう場合もお支払をしている。   もともとやはりお引受けできないケースは,これはお断わりをしているということで,そこで何か死亡という事実があったから引受基準が変わるとかいうことは,現実には実務的にはやっていないというのが実態なのですけれども,それを何か契約法で縛りにいかないといけないのかというのはちょっとよく分からないところがある。しかも,それ,期間を区切られるというのはちょっと何か,どういうことになるのかなという,すみません,ちょっとよく分からないところがありましたので。 ● それを,今の実務上変なことがいろいろ起きているということであれば,何か規定をつくってということかと思いますが,つくりにくい規定をあえてつくるほどのニーズがあるか,運用で何とかなっているのかなという感じではあるのですがね。   ほかに,この点いかがでしょうか。   では,大分時間が過ぎましたが,あともう一点だけ,13頁の(損害保険契約の成立関係後注)のところだけ御議論いただこうかと思いますけれども,ちょっと説明をお願いします。 ● それでは,資料13頁の(損害保険契約の成立関係後注)につきまして御説明いたします。   契約の募集につきましては,第一読会では横断的な形では問題提起をしておりませんでしたが,前回会議の後,前回資料の最後の頁の「その他」の項目に関連して御指摘をいただきましたことから,問題提起をしております。   例えば,告知義務のところで先ほど問題提起をして御審議をいただきましたいわゆる告知妨害,不告知教唆等の問題は契約の募集に関する問題でして,これは保険者の解除権の阻却という民事上の効果と直結することから,保険法で規律を設けることを提案しておりますが,このほかにも保険法で規律すべき契約の募集に関する事項がございましたら,御指摘をいただければと思います。   この問題は,保険業法等の監督法と契約法である保険法との関係をどのように考えるのかということとも関係しますことから,ほかの法律における規律を若干紹介しますと,例えば保険業法第283条,こちらは14頁の冒頭に参考条文で掲げておりますが,そこでは保険募集人が保険募集に関して保険契約者に損害を加えた場合の保険者の損害賠償責任について規定されております。また,金融商品の販売等に関する法律では,重要事項の説明義務や,断定的判断の提供等の禁止について規定されるとともに,これらに違反した場合の損害賠償責任等について規定されておりまして,これも14頁に参考条文として掲げております。   このほかに,保険業法等の各種の業法におきまして,投資性の高い契約については,契約締結時の書面交付義務などの金融商品取引法の行為規制に関する規定が準用されております。   この問題は,我が国の法体系を踏まえつつも,契約法において設けるべき規律はないかという観点から御検討をいただければと考えております。   また,この後注では,損害賠償の範囲についても併せて問題提起をしております。例えば,保険契約者と被保険者又は保険金受取人が同一人の場合を念頭に置いて考えますと,契約の締結過程において,損害賠償責任の根拠となる違法行為があった場合に,その損害額として問題にすべきなのは,保険契約者が支払った保険料相当額か,それとも被保険者又は保険金受取人において契約が履行されたならば得られたであろうてん補されるべき損害額又は保険金額かということが問題とされております。   これは事案ごとの判断になりますが,保険契約においては,損害賠償請求に当たり主張される内容の契約が締結されていたかどうかなどが不確実であることも多く,直ちに保険金額等を損害とする賠償請求が認められることになるわけではないとも考えられますが,説明義務違反があったことによって,何らかの保険給付が受けられなかった場合には,その給付の額が損害額となり得るといわれることがございますし,ほかにも,例えば,ほかの保険契約を解除して契約を締結したところ,その契約の締結過程において違法な行為があり,その契約が解除等されたような場合などには,他の保険契約の保険金額が損害額として認められることもあり得ると考えられます。   以上のことは,すべて民法の損害賠償の一般的な規定から導かれるものであって,これと異なることを保険法で規定することは考えにくいようにも思われますが,保険募集の過程における違法行為によって生じた損害とは何かなどについてここで御検討いただくことは,ほかの論点を検討する際にも有益と考えられますことから,併せて御議論をお願いしたいと思っております。   以上です。 ● では,ただいまの点について御意見を。○○委員。 ● 提案をしたのは私なので,私が何か言わなければいけないと思っているのですけれども,保険の募集時に,いわば保険会社の方から説明義務違反がありましたと。例えば生命保険で言いますと,年金保険というのは20年,30年の超長期でございます。そうすると,一番最初の時に,募集人さんによる説明義務違反,虚偽説明等があったときに,保険契約者の方は,それを営々として20年,30年払っていて,それで事が露見するのは20年後,30年後,そのときの損害についてどういうふうに規定をするかについて,今御説明がありましたように民法の規定しかございませんので,今の民法の規定ですと,せいぜい「ごめんなさい」と謝って保険料をお返しして,それに遅延利息をくっつけてそれでチャラになるというような仕組みしか今現在多分ないのだと思います。   せっかく100年ぶりの保険法改正ということであれば,その民法の規定以外に,新たに保険法としてその特則を設けていただけないのか。無理ではないかというようにさっき御説明がありましたけれども,そういう,その御提案をぜひさせていただきたいというふうに思っております。   例えば,募集人の不実行為により契約者が誤認してしまって,そうすると,そのことが後日判明したとしても,もう既に20年も30年もたっていれば,新たに入り直すこともできませんし,被害は甚大でございます。そうすると,先ほど申し上げたような保険料の返還と,せいぜい遅延損害金がくっついたとかというのではどうしようもない。   それから,この保険に加入するために他の保険契約を解約したのだとすれば,その他の保険契約で得られたはずの利益というのが損害というふうに認定することもできるし,それから,競合して何本もあったときに,虚偽説明によってこれを選んだというときに,こちらを選ぶことも可能だったからというそういうこともあり得ると思うのですけれども,基本的には,営々として払ってきて,「ごめんなさい」と謝罪されて,それではどうしようもない。   ものすごく単純に言わせていただければ,保険者側の誤った行為により契約者に損害を与えたときは,単純に言うと履行利益と言うのでしょうけれども,当初の説明で受け取れるはずの金額と現実に受け取る金額の差額を損害としてみなすというような,そういう損害論の新しい考え方,そういう観点,切り口を御検討いただけないかなという御提案でございます。   もちろん,保険契約者間の衡平とかそういうお話は必ず出てくるのだと思うのですけれども,それはそれとして,そういう切り口でそういう規定を設けていただくことによって,例えば今行われている,適切な募集が行われない云々かんぬんという部分の回避になるというか,そういうインセンティブが働くのではないか,適正な募集が行われるということにつながるのではないかと思いますので,それも併せてお願いをしたいと思います。 ● 問題提起はそういうことです。   では,○○委員。 ● この後注の部分ですけれども,とても重要な御提案で,少なくともこの賠償の問題について,保険募集の側面で賠償について特別な規定を置くということは十分考えていいのではないかと思います。   その基本はやはり,大森先生なんかも言っていると思うのですが,雇用関係の方に着目するということにどうしてもなるのだと思うのですけれども,もうこれはだれでもご存じのことかもしれませんが,損害賠償というのは,損害てん補という側面と,もう一つ,違法行為の抑制といいますか,そういう二つの機能があって,これは,昔会社法で三井鉱山事件というのがあったときにある民法の先生がおっしゃって,なるほどと思ったのですが,会社法に特有の,会社法の法目的に特有の損害論というのがあるはずではないかと。やはり保険法,保険契約法,共済契約法に特有の損害論というものが,私はあってもいいと思うのですよね。   ただ,今の事務当局の御説明では,契約の成立を信頼して従来ある契約を解約したような場合は民法の方でいけるという,そういう御説明だったのですか。ちょっとそこがよく分からなかったのですが,それは本当にそうなのかなとちょっと。 ● ○○委員のおっしゃる,いろいろな分野独自の損害論というのが,独自の損害論ということではなくて,民法一般の損害論の各分野への当てはめの問題ではないかということを申し上げたわけです。 ● それはやはりちょっと,本当にそうだろうかという疑問を持っているということなのですね。やはり何か,募集人が,何らかのもう既に錯誤に陥っている人を利用して,乗り換えさせて,もう契約はこっちで成立したのだからと言って,部分的な保障を受けられる従来の契約を解除してしまったというときに--あ,そうかそうか,そちらは全部それでカバーできるという,では,それが本当なのかというのを議論した方がいいのですかね。私は…… ● それは,そういう勧誘がなければもとの契約が生きていたのだろう,普通で考えればそこで保険金がその契約に基づいて支払われたということは,まあ,蓋然性があるというふうに言えれば,それは保険金額が損害額になるだろうということですね。それは,もとからそういう契約があったからそういうことが言えるので,○○委員が御指摘になったようなのはもっと違った…… ● 一つの契約で虚偽の説明をされて,乗り換えた云々というのだと元へ戻る可能性があり得るし,競合していればこっちという話もありますけれども,私が申し上げたいのは,しょっぱな,一番最初にお入りになった時に,その募集人さんに虚偽説明をされて,間違ったままずっと,事実を誤認したままずっとかけ続けてきて,結果として結局,「誤認ですから,そんな契約はだめですよ。だから,ごめんなさいね,保険料を返しますよ。遅延損害金も返しますよ」では,それは消費者の期待している保険利益が得られない,まっとうな期待に反するでしょう。   そこまで引っ張ってきたのだったら,それはそれとして責任をとらなくてはいけないのではないのですかと。保険会社としては,もう,「とんでもない」という声が聞こえそうな気がするのですけれども,保険会社としてはやはりそれはきちんとした,消費者が期待しているようなものを本来は与えるべきでしょうというのが私がお願いしていることでございます。 ● それはよくあるだろうと。もう今は余りないのかもしれない,よく分かりませんが,年金が正しい契約内容としては100万円払われるものなのだけれども,何か150万円払われるみたいな説明をして契約が成立しているとか,あるいは養老保険で満期保険金は100万円だけれども,配当がこれだけつくから,満期になったら150万円もらえるみたいな説明をして契約した。満期とか,年金開始になると全然違う,思っていたのと違うと,そんな例をイメージすればいいわけですね。 ● そういう例を紹介しています。今,現実にはそれはたくさん起きていまして,実は,細かい話は余りしたくないのですけれども,例えば現実には,今,団塊の世代がもう年金をもらい始める時代になりました。そうすると,もう満期の御案内が来て,つまり,終身保険を払済みにしたときに年金に移行できますという保険をたくさんお売りになりましたので,そのときに,では印字している金額が例えば年金100万と書いてあるのに,実際には30万,20万しかもらえないというような苦情がたくさん来ています。   その場合に,保険会社サイドの方がおっしゃるのは,設計書がありまして,設計書の下のところに,印字はこんな大きな字で書いてあるのですけれども,設計書の下の方に免責文言がありまして,この100万円というのは基礎年金額プラス配当金が入っているから,配当金は経済情勢の推移によるもので,確定したものではありませんと,そういういわば免責文言を付けているというのが今現実なのですけれども,そこの部分で,その文言の話は今は横に置いておいて,事実上,募集人さんが「100万もらえますから」ということで,ずっと営々として払ってきたというような,そういう事例がたくさんございます。そういうことに基づいてお話をしています。 ● こういうケースは,伝統的な民法だとなかなか,約束したとおりの金を払え,賠償金を払えというのは難しいのだろうということだと思いますね。   どうぞ。 ● そういう意味で,○○委員のおっしゃられたような例が,過去の年金のところで幾つか確かに争い事になっているというのは,一部で起きていることは事実なのですけれども,一方で,ここに14頁を中心に事務当局の方から挙げていただいていますように,いろいろな募集絡みの規定,法律があるというときに,更に契約法で別途定める必要があるのかどうかというところは,少し慎重な議論が要るのかなと。   今,○○委員がおっしゃったようなことについては,昔は本当に配当とごちゃごちゃとなっているような記述が結構あったこともかつてはありますけれども,今はそのあたりはきちっといろいろな規律もされていますし,我々自身も直していっているという中で,しかも何も規律が,こういう業法のコントロールだとか,あるいは金融商品の法律,いろいろなものがないのであればまた別ですけれども,こういう規定がある中で,更に契約法で要るのかどうかということについては,慎重に御議論いただければありがたいなという気がしてございます。 ● では,○○委員。 ● 基本的に契約法と監督法というのは別物と,別物という言い方ではあれですけれども,対象が違うということが基本的な法の性格だろうということがまず基本なのですけれども,ただ,今この部会の中で,例えば告知妨害の件だとか,まさに入口の契約の成立にかかわる事項を取り扱っているわけですね。したがって,そこに関係する部分について,最小限契約法の中で定めることについては,検討することはいいことではないだろうかと。   ただし,ここに書いてありますけれども,募集の概念そのものが,保険会社との違いというのも,他の団体にもあるということと,違法行為の概念,保険業法上,この「違法」とかいう言葉は入っておりませんよね。そのことをどういうふうに整理をするのか,そこまで保険契約法の中に入れていいのかどうか。これは,私はその部分はもう保険業法にゆだねてもいいのではないかと。   ただし,契約の成立にかかわる事項,契約の有効性を問う事項については,やはり保険契約法の性格上,その部分は一部入ってもいいのではないかというふうに考えています。 ● ○○委員。 ● 私,○○委員の御趣旨には賛同するところがあるのですけれども,一般の消費者から見ると,やはり保険の商品というのは非常に複雑であったり,あるいは手続が複雑だということで,消費者がその保険を選んで加入しようというときに,非常に影響力があるということなのですけれども,それ自体は否定はしないのですけれども,今も御議論があったような,基本法にそういうものを事細かに規定をすることが果たして必要なのかどうかというところがよく分からない。本当によく分からないのですけれどもね。   ただ,基本的な何かそういう,適正にやりなさいよという,ある意味精神論みたいなものを規定するのはいいのではないかなという気はしておりますけれども。ちょっと今の時点で,正直言ってよく分からないという。 ● ほかに,この点。○○委員。 ● 既にお話も出ておりますけれども,保険業法等の中には賠償の範囲等々を記載してございますので,これとダブったり,二重になったり,あるいは非常に複雑な形になると,なかなか問題が生じるかもしれませんので,その辺につきましては,できるだけ二重規定とならないように御検討いただけないかなというふうに思っております。 ● ○○幹事。 ● まず,義務規定の方からですけれども,一方でここで掲げられたような各種の一般的な規律,それから,保険については保険業法に既に規定があるということとの関係でどう考えるかということですけれども,一方で,それぞれの規定にはその性質ゆえの限界があるわけで,業法の議論をするときには,常にそれは行政的な規制が背後にあって,したがって,ある意味,謙抑的であらねばならないというような議論がされたりするわけです。   本来,契約法として,一方当事者がどういう義務を尽くすべきなのか,あるいは一方当事者側にある人がどのような説明義務等を尽くすべきなのかというのは,私法の問題としてあるところ,業法は,基本的には,しかし行政的な問題であるので,それと連動した形での義務規定であり損害賠償であるという制約がかかっておりますので,一般私法としての適正化という観点からの義務が果たして業法で尽きているのかという視点は必要だろうと思います。   それから,それ以外の消費者契約法ですとか,金融商品販売法というのも,これは一方で非常に射程が広いですので,保険の場合に具体的にどうかというようなことについては,オーダーメイドではないわけですし,また,一般法であるがゆえに,逆に個々の問題は個々にゆだねるべきだということで,これもまた謙抑的に規定がされたという経緯があり,そういうことを考えますと,まさに基本法だからこそ,契約締結過程の適正化の規律がないというのは,非常に不備と言ってもいいようなところがあるのではないかというふうに思っておりますので,それを十分に検討した上での結果であるということが言えるようなプロダクトが必要ではないかと思っております。   問題は効果の方でございますけれども,先ほど例が挙がりましたような,口頭では「ここはもう100万円,必ず出せるのです」というような説明をされたときに,果たして契約内容がどうであるのかという一般的な契約の問題としては,私自身は,そのような権限のある人がきちんと説明をしているのであれば,それは契約内容に取り込まれることもあり得べしというのが,一般法の問題としてはそうなのだと考えておるのです。セールストークかという問題はスクリーニングとしてあるのですけれども,契約の給付内容を説明しているのであれば。   しかしながら,保険の場合は集団的な要素があって,個々の契約を個々ベースで全部内容を変えていく,この人だけは免責を外すとかそういうことが非常にできないような商品,そういう契約類型として存続しているということがあるのではないか。そういう特殊性があるような場合の話ではないかというふうに思っておりまして,本来的には,契約締結過程の中で,それぞれの当事者的な立場にある人が「給付内容はこうです」と説明したのであれば,それは本来,そういう給付内容であるべきだろうというふうには思っております。   それが,そういう一般論と,それから保険の場合は少し違うかもしれないということなのですけれども,損害論で,これがおそらくは最大の問題だというふうに考えておるのですけれども,幾つも異なる事例を出されたと思いますので,それぞれの事例によって対応は違ってくる。あるものは,確かに民法で対応できるものもあるでしょう。既にある契約をわざわざ切ってまで,おそらくそのままで行けばそのままの契約であったろうというような場合であれば,非常に蓋然性も高いですので。   それに対して,機会の喪失に近いようなものですと,果たしてそちらを選択したのかと,選択した蓋然性は何パーセントで,それを掛けて損害を出すというようなことも考えられなくはないのですけれども,おそらく現在の損害賠償でそういう損害の立証というのは余りとられていないのではないか。保険だけではなくて,およそ一般的な問題として損害のとらえ方にもかかわってまいりますので,そこの部分はやはりちょっと特殊なのかなというふうには思っております。   そうすると,民法の一般論よりは少し踏み越えたことにするのか,本当はそれはできてしかるべきなのだけれども,だけれどもなかなか実現しないだけであるということであるならば,明確化するという手法があり得るのかとは思っております。   ここの部分まだ結論が出なくて大変申し訳ないのですが,場面によってかなり異なってくるだろうということと,やはりそういうものを設ける必要がある場面もあるのではないかというふうに思っておりますので,ここで問題を切ってしまうことなく,効果の面も含めてなお検討すべきものだろうと思います。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私は,今最初に○○幹事がおっしゃられたこととの関係でいきますと,保険業法第283条というのが,保険業法にあるべき規定なのかということをやはり議論する必要があるだろうというふうに思います。   ○○幹事がいるところで言うのもどうかと思いますが,これは保険業法に便宜上ありますけれども,これはもうどう見ても一般私法上の規定だと思いますので,これが業法にあることによる限界がもしあるのだとすれば,一般法に持ってくるということは十分考えていいのではないかなと思います。   それから,損害論との関係でいきますと,確かに一般の損害賠償の議論からいきますと,先ほど来から出ている例,丸ごと,セールスで言われた内容どおりもらえるということは非常に難しいと思います。だからこそ,逆に言えば,そういうものを補償させるのだというもし政策判断があるのであれば,特別な損害賠償の推定規定等を設けて,それで補償するという可能性もあるのかなと思います。   例えば,具体例としましては,これは全く事例の違う話で,忠実義務違反なので利益を吐き出させるという政策に基づくものでありますが,取締役等の競業避止義務違反の場合については,その会社が被った得べかりし利益の損失とは全く無関係な,取締役等が得た利益を吐き出させるという意味で損害として推定しているという規定がありますので,これは損害賠償の一般論からいけば,どうもそうとは,それが損害とは言えないだろうと思うものを一応損害として推定するという規定があるということはあり得ると思います。   ただ,これは相当程度イレギュラーであり,また,この規定がなぜ設けられているかということについては,むしろ利益を全部吐き出させるという政策的な配慮に基づくものですので,それと同等の何らかの立法をしなければいけないだけの立法事実があるかどうかということを検討した上で,条文を考える必要があるのではないかなというふうに思います。 ● ありがとうございます。   ○○幹事。 ● 説明義務については私も,いろいろな問題がある,損害論で問題があるということは分かっているのですが,損害論とは別に,金融商品販売法で置かれたような推定規定ですね,因果関係,あるいは損害の推定,証明責任の転換の規定と同じようなものをこちらに置くということは考えられる。   金融商品販売法で投資的なものについてはカバーされているのですが,投資的でないものについての証明責任の転換というのは保険の方にはかかってきませんので,その分をこちらへ持ってくるということは十分考えられます。   それから,保険業法第283条とともに,私はぜひ第309条を保険法に移すということを考えていただければというふうに思っております。少なくとも,金融庁と法務省の共同でこの内容を考えていただくということをぜひお願いしたいというふうに思っております。   それから,もう一点は,情報提供義務違反の場合の取消権についてもぜひ御検討いただければと思っております。先ほど○○幹事が言いかけて飲み込まれたところなのですが,消費者契約法をつくられるときには,途中までそういう提案があったところ,消費者契約法という非常に範囲が広いもの一般について取消権をつくるのはいかがなものかというような議論で消えたというふうに私は伺っておりますので,では個別の具体的な取引類型ごとにそれが置けるのか,置いていく必要が本当にあるのかどうかということをぜひ検討していただければと思っております。 ● ○○幹事。 ● 保険業法の方はなかなかまだ追い付いていないのであれなのですけれども,第283条とかの規定を保険法の方に移すのがいいのかどうかということもありますし,というのは,業法の中で,民事の一般の損害賠償規定の立証責任を転換しているとか,それから推定規定を置いているということもあるので,それ自体がさほど不自然なことではないのではないかなと思います。どちらか,実効性のある方で消費者がより救済されやすくなっていればいいのではないかなと思っております。   それで,先ほど来議論されている,では効果はということで,損害賠償で,○○幹事がおっしゃっていた,例えば競業とか利益相反とかの場合に,その取締役が行っていた行為によって得た利益を会社の損害と推定するとかというところを,では保険契約だったらどういうことを損害の推定とできるかというところで,先ほど○○委員がおっしゃったかと思うのですけれども,そのあり得べき契約又は失効してしまった契約の内容での保険金を損害額と推定するというところまでは,ちょっと行きすぎですか,というのが。   おそらくそれを設けるとしたら,それが基本法の方になるのか,保険業法になるのかはまた一つの論点かと思うのですけれども,推定できる損害といったら,そのぐらいになってしまうのかと思いますけれども。 ● ありがとうございます。   ○○幹事。 ● 恐れ入ります。ここでやっておられる基本法で規定するか,あるいは業法で規定するかということについて,余り法務省と金融庁でそんなに縄張り争いもしたくないので,そこはよく,座りのいい方でいいのだと思いますけれども,確かに,第283条,非常に契約法的色彩も強いですし,それから,金販法の損害額の推定規定を入れるときは大変な苦労をして入れた経緯もあるのですけれども,いろいろそういうものをどちらにやるのかというのはよく調整させていただくとして,一点,契約法に入っていて,業法から落ちた場合に,実はこれは直接の監督規定ではないのですが,例えば損害発生の防止に努める努力を怠っているような場合ですね。実は,ほかの規制で引っかけたりはするのですけれども,こういったことを当然に求められている中で,監督上,例えば業務の運営が正しくない場合は,それの是正を求めるですとか,それに罰則が付くですとかそういった効果もありますので,その点はどちらかで抑制していくということだろうと思いますが,まずは,実際にそういう損害の推定ですとか,そういうものが実際にできるのかとか,あるいは必要があるのかという御議論は,いずれにせよ必要な御議論であろうかと思います。 ● ○○委員。 ● 私も不十分なところがあってあれなのですが,これも,この項目は後注ということですから,この最初のあれから見ると,基本的に中間試案に何か盛り込むと最初に書いてありますけれども,でもやはりもうちょっとスペシフィックにこうすべきだということを我々も言わなければ,私も言わなければいけないと思うのですけれども,少なくとも,これを懸案としてちょっとキャリーオーバーしていただいて,それで民法の方にも納得いただけるような,それで,またスペシフィックな何かものができるかどうかというのは,やはりちょっと考えさせていただく。ここで消すのだけはやめていただきたいという,そういう。チャレンジしてだめだったら,もうそれはあきらめなければいけないと思いますが,そんなお願いなのですけれども。 ● 時間もまいりましたので,これぐらいにしたいと思いますが,今日御意見が出たことを踏まえて,なお検討していただこうかと思います。   結局,資料9は,★がついているところは終わったのですが,資料8の最後のところが残ってしまいまして,変則的な形になってしまいましたが,これは次回御検討いただこうかと思います。   事務当局から,何かございますか。 ● 次回の予定だけ確認させていただきたいと思いますが,次回第9回の会議は,来月,5月9日の水曜日,午後1時30分から開催の予定になっております。   本日に引き続きまして,中間試案の作成に向けて,損保関係の規律の後半部分を主に御審議いただきたいと思っております。 ● それでは,そういうことで今日は終了したいと思います。  どうもありがとうございました。 -了-