法制審議会保険法部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  平成19年5月9日(水) 自 午後1時30分                      至 午後5時38分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻でございますので,保険法部会の第9回会議を始めさせていただきます。   それでは,まず最初に配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました部会資料10,それから本日席上に配布いたしました損保協会のパンフレット,それから○○委員作成の意見書,以上三点でございます。席上で配布いたしました二点につきましては,いずれも保険金の支払時期に関するものでして,その該当箇所でそれぞれ御説明をいただきたいと思っております。 ● よろしゅうございましょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず前々回から保険法部会資料8「保険法の現代化に関する検討事項(7)」の8頁以下に「第7 その他」というのが積み残しになっております。二回続けて時間切れで審議できなかったのですが,これにつきましては,後日の生命保険契約のところで再度問題提起した上で御議論いただくということにして,本日は前回に続きまして,損害保険契約に関する論点の御議論をお願いしたいと思いますが,そういうことでよろしいでしょうか。   それでは,今日配布されております保険法部会資料10でございますが,「保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台(2)」の審議に入ることといたしまして,例によりまして★印の付いたところを御議論をいただきたいということで,まず資料3頁の第1の「3(4) 保険金額が損害発生時の保険価額に満たない場合の保険者の損害てん補責任(いわゆる一部保険)」につきまして検討したいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● ここでは,A案として現行商法第636条の比例按分主義を法律上の原則として維持する考え方を掲げ,B案として同条の規律を改め,全部保険の場合と同様に保険金額を上限として,損害の全部をてん補することを法律上の原則とする考え方を掲げております。本文でこれら二つの案を掲げた趣旨は,(補足)1に記載のとおりでございます。また,(注)に記載のとおり,本文の規律を任意規定とした場合には,A案,B案のいずれを採用した場合でも,当事者がこれと異なる約定をすることは許容されることになると考えられます。したがって,A案とB案とで結論に差が生じるのは,結局のところ,当事者間において一部保険に関する特別な約定がない場合に限られることになると思われます。   以上を前提に,一部保険に関する法律上の原則として,A案,B案のいずれを採用すべきかについて御意見をいただきたいと思います。   以上でございます。 ● それでは,ただいま御説明のあった(4)について御意見をいただきたいと思いますが,どの点からでも。   ○○委員。 ● この問題は,比例てん補の考え方を今日的にどう考えるかということになると思いますが,比例てん補につきましては,前回もお話を申し上げたと思いますが,保険金額の保険価額に対する割合で保険料をいただいていると,これが現在の契約でございますので,事故が起こった場合にも,損害額に対して保険金額の保険価額に対する割合でお支払をしていると。一番典型的な例は,1000万円の建物に対して600万円の火災保険をつけている,こういう状態を考えてみますと,この契約は保険会社が60%分,つまり600万円の補償を引き受けておりまして,御自身で400万円分の補償を引き受けていると,こういうふうに考えると分かりやすいわけでございます。この保険契約につきまして,例えば500万円の半分の損害が発生したということになりますと,保険会社は500万円のうちの60%分,つまり300万円を保険金としてお支払をし,御自身が残りの40%部分,つまり500万円のうちの40%,200万円を御自身で負担されて,全体の補償が得られるということになっていると思うのですね。   こういう仕組みとして,物保険の世界では規律として使われてきておるのですが,やはり確かに今日的に見ますと,比例てん補の問題で消費者に十分に御説明ができていないという問題も一部にございますので,このような問題が今回論議されることになったのではないかなというふうに考えています。   ただ,一般に,それではそのB案のように,保険契約をした金額についてまで,そのまま保険金を払うということを規律としていいのかというと,別の問題としまして,このような問題があった場合にも,やはり全損が発生した場合には十分な補償が得られないということがありますので,やはり消費者の皆様に対する問題を回避するためには,全体の保険価額をきちんと説明をし,そしてきちっとした補償を御案内をし,その上で御契約をするということが必要になってまいりますので,現在問題になっている比例てん補が難しいからといって,それでは法律の規律を実損てん補型,B案的に考えれば問題が解決するというものでもないのではないのかなというように考えております。   先ほどお話ししましたように,やはり保険価額どおりに保険金額を設定しているお客様,100%つけているお客様と,その一部分しか保険をつけていないお客様との間の公平性という点につきましても,これはやはり一方では十分考えなくてはいけないのではないかなというふうに考えています。当然のことながら小さい損害,これはたくさん発生するわけでございますので,一部の保険しかつけていない方にその損害額まで,その保険金額まで全額払うということになりますと,相応の割増しをいただくことになりますが,この割増しというのはなかなか簡単には計算できませんで,あらゆる種類の財物保険についてこういう形の割増しをつくるということになると,なかなかいろいろな問題が生じますので,やはり保険料を払った割合に応じて保険金をお支払するという現行の制度の必要性も十分あり得るというふうに考えています。   なお,比較法的な側面でまいりますと,諸外国でもこうした比例てん補は一般的でございまして,御承知のようにドイツ,スイス,イタリアなどでもこうした原則が維持されております。それから,ドイツの新しい保険法でも検討段階で比較法的に検討された結果,比例てん補が規律となっておるというふうに聞いております。   いずれにしましても,比例的な責任負担主義の考え方,それから保険料負担の公平性,それから比較法的な考え方,こういう側面を考えてみますと,比例てん補を規定していただくということをぜひお願いしたいというふうに思っております。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ○○委員。 ● 今のお話,大変よく分かるのですが,私はB案をぜひ入れていただきたいと思っております。前回のときにお話をさせていただいたときに,A案の方しか実際になかったのに,ここにB案の方を取り上げていただいたこと,大変よかったと思っています。   今,○○委員の方から御説明がございましたように,大変分かりにくいから,だから原則を変えるのはいかがなものかというお話がございましたけれども,分かりにくいことを事実,認めていらっしゃいますし,それからここにいらっしゃる方は皆さん業界の方,それから保険法のプロの先生という方にとっては,比例按分というのはそれは仕方がないではないかという,それが合理的ではないかとお話しになるかと思いますけれども,加入者サイドから申し上げますと,先ほどの1000万に600万をつけたというお話がございました。それで例えば半損しましたというときに,では,600万つけているのだから,半損なのだから半損の分まで実損で払われると思うのが通常の契約者の期待でございまして,それを合理的でないというのはなかなか難しいものだと思うのです。   やはり,消費者側の合理的な期待に沿うものという考え方をしますと,事実上実損てん補型,前回のときのお話ですと,実損てん補型の保険の方にシフトをしていらっしゃる。そういうお話がございましたので,それで,業界もそちらへかじを切っていらっしゃるのだという認識を私は持っておりました。   そういう意味では,ここのB案を入れたことによって,何かすごくトラブルが,支障が起きるとか,保険制度が根底からひっくり返るというよりは,むしろこのB案を採用することによって,みんなというか,消費者サイド側の合理的な期待にこたえられる。つまり利用者利便といいますか,保険契約者の保護という今回の改正の目的からいうと,ぜひそこのところをB案を堅持していって,それを原則にして,比例の,一部比例按分なんていう制度が,そういう消費者にとってどちらかというと面容の分かりにくい,そこの部分をぜひ是正していただきたいと思っております。 ● ○○幹事。 ● 私もB案の方に賛成なのですけれども,A案の根拠というのがこの(補足)に書いてありますように,全部保険に相当する保険料を負担した保険契約者との公平というふうに定義付けられていると思いますが,恐らく全部保険に相当する保険料を負担した保険契約者さんというのは,例えば先ほどの例ですと1000万円の目的物,保険価額の目的物について,600万円の保険金額で保険契約を結んだ場合と,1000万円で契約を結んだ場合との公平性は,損害が600万円を超えた場合に,それ以上の保険金を払ってもらえるというところでバランスをとっているのだと思うのです。多分,この保険法では一部保険と全部保険とで分損が生じたときに,比例按分という考え方が定着しているようなのですけれども,例えば一般の民商法のレベルで,一部請求したときに,どこまで払ってもらえるかというと,やはりその金額まで支払ってもらえるというのがそういう常識というか,一般論があるかと思うのです。   ですので,一部保険を掛けた人がどういう期待をしているかというと,その600万円は保険会社に,残りの400万円は自家保険に,共同保険的な掛け方をしているという認識よりは,損害が生じたときには600万円の限度で損害額がてん補されるという期待を持っているのではないかなと思うのです。先ほど申しましたように,そのような期待というのは,公平が図られているという説明も,それで800万円の損害が生じたときには600万円の限度で我慢してくださいという,だから,損害が生じるのが600万円以上の確率が高いときには,そこの部分はてん補されないのですよというリスクを負担しているというところで説明ができるのではないかと思いますので,B案を採用することというのが損害保険における実損てん補の原則,損害てん補の原則ということに矛盾はしないと思いますので,そちらの採用というのを御検討いただければと思います。 ● ○○幹事。 ● 私は折衷案なのですけれども,消費者の期待という観点から考えますと,今,前のお二人の方がお話しになったように,B案のような考え方で保険をつけられているということが,かなりあるのではないかというふうに思います。ただ,ではA案の考え方に合理性がないかというと,これは○○委員がおっしゃったように,こういう内容のものであるということが説明されていれば,それは十分に合理性のあるものだろうというふうに思います。   ですから,A案のような合意をすることを全く妨げるわけではなくて,保険会社はこの保険はこういう契約なのだということで説明をされればよいのではないか。特約を入れて説明されればよいのではないかというふうに,まず第一次的には思います。   ただ,しかし,そうはいっても任意規定でB案というのが書かれたときに,A案の取扱いがそれから離れていておかしいというような印象を与えるということについて,多分保険会社の方々には違和感というのがおありなのではないかなというふうに思います。   だとすると,この規定の中にどれでなければいけないということではなくて,このタイプの保険には幾つかの類型のものがあるということが分かるような,どちらを選択することも可能であるというような形の書き方にする。ただし,その際にどちらを最終的なデフォルトにするかということを決めておくというようなことが考えられないだろうかというふうに思います。   これは,書き方の問題などがありまして,うまく書けるかどうか分かりませんけれども,A案も必ずしも合理性がないものではないということを,単に特約にゆだねるというのではなくて,書き込むというようなことも御検討いただければというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 私も消費者の方が一般にどういうふうに理解するのかという点でいけば,従来からB案のような理解があるということで,住宅火災保険約款等については80%の付保割合を条件としていますけれども,実損てん補の条項を入れるということで,実態としてB案のようなものが火災保険の場合の家計保険の分野では使われているという実態は分かるわけなのですが,しかし,それはやはり高い保険料を払ってもらうということに実はなるわけですね。つまり,分損がものすごく頻度としては多いわけですので,そうしますと,分損の部分で実損てん補を受けるということは,それに見合う保険料を払わされているという状況になりますので,比例てん補のときよりも高い保険料を払っていると。   ですから,保険料で買っているものですので,この買い方が原則だということになれば,比較的割高な保険というものを一般的に販売するというのが原則になって,それよりも保険料を安くしたい人が比例てん補の方を選ぶというような制度設計になるわけなのですけれども,果たして家計保険以外の分野において一般的通則として,高い方を原則にするということがあるのかどうかということを前提にした方がいいような気がしまして。   やはり,消費者の方から見ると,出口のところだけを見るとたくさんもらえるからいいような気がしますけれども,事故に遭っている方は限られているわけで,遭っていなくて高い保険料を払うということを原則で買っている人たちがいるということを想定した上で,果たしてその制度でいいのかということを考える必要があるというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 私も今の○○幹事の御意見と割と近い印象を持っております。最初に事務当局から御説明いただいたときには,結局この規定というのは,約款で規定がない場合に意味があるのだという御説明でしたけれども,しかしながら,仮にB案の規定を法律に書きますと,単なる任意規定というだけではなくて,実質的にはもうちょっといろいろな意味合いを持ってくるのではないかなという気はするのですね。立法者としてはB案の方がいいのだと。だから将来的には保険実務はB案の方に,その実損てん補主義に移ってほしいという,そういう何か誘導的な効果を持つ可能性があると思うのですが。   ただ,今○○幹事が御指摘になりましたように,B案というのは結局保険料のアップを伴うことですから,一般消費者がより高い保険料を払ってでも実損てん補をしてもらいたいという,ほとんどの消費者がそういうふうに考えているかというと,そこは必ずしもはっきりしないとは思うのですね。   それと,あとB案を仮に法律で書いたとした場合の効果としては,これは恐らくよい効果と言えるのではないかと思うのですが,B案が法律に書かれているにもかかわらず,約款でA案的な定めあるいは付保割合条件付き実損てん補主義を約款で定めた場合には,法律とは違うことを約款で定めているわけですから,より説明すべきであるというプレッシャーが恐らく保険実務に対して働くのではないかと思うのですね。その意味ではよい効果かなと思うのです。   ただ,これも○○幹事が御指摘になったところですが,結局B案というのは,現在の実務では存在していないようなことを法律で書くことになるわけで,よほどそのB案がよいという強い理由がないにもかかわらず,現在の実務とは異なるルールを法律上の原則として書くというのは,これは立法政策的には,かなり異例のことではないかなという気がいたしますので,そのあたりも慎重に考えた上で御検討いただければというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 混乱させるようなことを申し上げるかもしれませんが,私はデフォルトの一般規定としてはA案でいいと思うのですが,火災保険の場合にはその火災保険の分野の特色として火災保険の場合にはB案をデフォルト・ルールに対する特則として,もう一つ規定を置くということをもう一つのオプションとして考えていただければなというふうに思っております。   そのA案とB案と,確かにこれは保険数理上の違いに基づくものなので,どちらも合理的に仕組むことはできるのですが,保険を販売するときにどっちをデフォルトにして売った方が誤解を生じないかというふうにしますと,お客さんの誤解を,A案について余り理解が十分でないということを仮に前提としますと,お客さんの期待に沿うものをデフォルトにしておいて,それよりも安い保険料でもこういう形でも特約をつけて安くお売りできますよというふうに売った方が誤解は少ないですし,代理店なんかの売り方も売りやすいだろうと思うのですね。   逆に,A案がデフォルトでお客さんがこういうB案的な期待を持っているときに,その期待に見合った保険を調達するためには,特約をつける必要があるのですよということを説明して,高い保険料を払ってもらって,やっとお客さんの期待に沿うということがデフォルトになるよりは,火災保険に限ってはそこを少し入れ替えた方が,全体としてうまくいくのではないかなという気がするので,ぜひ御検討いただければと思います。 ● ○○委員。 ● まず結論を申し上げると,○○幹事とか○○幹事のおっしゃったようなあたりで,ちょっといろいろ工夫できないかなというのが私の気持ちで,ただ,これを見たときは正直言ってちょっとショッキングだったのですけれども,B案は。やはりそういう業界の偏見というか,従来勉強してきたことと違うことがあって少しびっくりしましたけれども,これはこういう商品をつくっておいてどうなのかと。多分,保険料ベースでいくと,保険金額と保険料が従来は正比例的に転がっていくのが,損害てん補方式ですから,外側に逓増するというグラフだと思うのですね。   本当に最終的に上がるかどうか,これはちょっと計算してみないとなかなか分からなくて,もう既に試算しておられればそれをお聞かせいただきたいのですが,本当に上がるのかどうかというのは,ちょっとそう簡単に,アクチュアリー的なあれでどうなるのかなと,今でも多少近似的なものでやっているわけで。本当は両方あれば一番いいわけですけれども,それはまた非常にコストがかかるということかもしれませんけれども。   ですから,確かにこの火災保険でとおっしゃったのはアイデアかもしれませんけれども,何か全体としてそういう方向に誘導するということは,やはり何か,いわゆるコマーシャルラインはちょっと別としまして,普通の個人契約者の場合にできるだけ分かりやすいものに誘導するということがやはり必要だと思いますので,そういう意味でデフォルト・ルールとして,つまり任意規定として置くということはいい場面があるのではないか。ただ,本質の問題は,任意規定とする場合であっても,本当にまずい場合はどういう場合なのかというところが本当の問題点なのかなという感じもいたしますけれども,そんな感じで。 ● ○○委員。 ● ただいまの保険料が上がる,上がらないという問題ですけれども,これは明らかであって,従来てん補されなかった部分がてん補されるわけですから,それに見合った,私の考えは単純かも分かりませんけれども,部分をだれかが負担しなければ,全体かあるいは部分保険の方,だれかが負担しなければいけないですから,全体として見たらこの制度をベースにしたら上がるということは,先ほどほかの委員がおっしゃったように疑いないと思います。   問題は,それ以外にもコストがかかるのではないかなということだと思うのですけれども,従来,損害保険の場合は保険料率という形で,ある種の,例えば,5000万円に対して幾ら保険料を2500万だとそれを半分という形で,先ほど○○委員が言われたように,要するに比率的にレートとして損害保険料というのを使って,極めてそういう意味では便利に保険料を計算できるわけなのですけれども,もしこういった比例てん補を使わない場合には,それを考慮した保険料率表を個々にするか,あるいはほかにイノベーションがあれば,またコストの安い方法があるかも分かりませんが,そういった部分のコストというのがかかってくるのは,これはやむを得ないかなという気がいたします。   以上です。 ● どうですか。 ● まことに申し訳ありません。私の発言が不明瞭で,○○委員に誤解を与えたかもしれませんが,私が申し上げたかったことは,上がることは間違いないのですが,それが「え,こんなに上がるの」というぐらい上がるのか「この程度で済むのか」と,そこが大きな違いで,これは本当にやってみないと分からないのですよね。   保険会社もこれぐらいで済むのかというのだったら,こっちの方がいいということになるかもしれませんし,こんなに上がるのだったらちょっとというのだとこれは,また商品的にそういう上がらない工夫はできないのかとか,いろいろあって,そういう趣旨で申し上げたので申し訳ありませんでした。弁解させていただきます。 ● そういった自由は,むしろここで決めてしまうよりも,企業の商品設計のイノベーションのところに任せた方が,私としてはいいかなと感じるわけです。 ● 先ほど○○幹事がおっしゃったことと少し関係するのですけれども,どういう規定にするかということも難しい問題だと思うのです。と申しますのは,結局,保険価額というのがいろいろな場面でちょっと分かりづらいなと思うときがあるのですけれども,保険価額というものは保険事故が起こったときの保険の目的物の評価額ということで提示されていると思うのですが,ここのところで一部保険の場合に,保険金額の限度でてん補を受けるかどうかということは,多分規定としては保険金額が損害額に満たない場合には,保険金額の限度でてん補を受けることができるという,まず損害額と保険金額の比較であって,それを仮に原則だとして置いたときに,ただし当事者が保険価額と保険金額というのをずらす,要するに割合的なてん補の約定をすることも妨げないというようなそういう規定にしたら少し落ち着くかなと思うのですが。   というのは,今まで話されていたことの現状の実務がどうなっているかということは,○○幹事がおっしゃっていたように,保険契約法でどういうデフォルト・ルールを置くかということが実務を多少誘導するということにはなるとは思うのですけれども,恐らくこの規定を任意規定にするということについては異論はないと思うのです。ですので,現状の実務をどういうふうに誘導するかということを意図するものでもなくて,多少誘導された場合に,保険料の価格が上昇するとかで,それで落ち着くところに実務が落ち着くということもあるとは思うのですけれども。   この契約法では,消費者の方が分かりやすいという,その保険金額が実損に足りなかったときには,その実損額とか評価額とかとの割合で賠償を受けるのではなくて,保険金額まではもらいますよという期待と,それから保険料を安くしたいという商品もあるでしょうし,分損のときに,だから全損と同じように80%でいいですよという商品もあろうかと思うのですけれども,そのような割合の約定もできるということ。   だから,任意規定であればそれもただし書で規定する必要があるかどうかということもあると思うのですが,要するに保険価額というものが何に役立つかというと,100%の付保にしたいか,80%にしたいか,50%にしたいかという割合のメルクマールなので,保険価額というものが例えば契約締結時の一部保険とか,そういういろいろな場面で出てきてしまうのが,実は付保割合を定める基準にすぎないというふうに整理することもできるのかなと今思いました。 ● A案がいいという意見,B案がいいという意見,それから両方取り入れたような工夫ができないかと,今三つぐらいに分かれていると思いますが。   ○○委員,どうぞ。 ● 同じことをもう一回言うことになるのは大変申し訳ないのですけれども,保険価額1000万の物に600万の保険,その1000万分の保険がつけられないから,お金がないから600万の保険金にしましたと。そのときに普通,○○幹事もおっしゃっているし,皆さんおっしゃっているから,もうよく御存じのように,普通の消費者は何を期待するかというと,マックスが600万なのだということを期待するのであって,それが1000万に対する600万だから10対6,5対3で按分されるのだということを期待するのではないのです。   そこのところが,保険会社の方がよく説明をすればいいというお話にもしかするとなってしまうのかもしれないけれども,今までずっと従前説明されてこなかったことは,皆さんがこれを理解していないことから見るとよく分かるのです。   そうすると,皆さんがおうちにお帰りになって,御家族にお聞きになってみたらよろしいと思うのですけれども,御家族がこれを,比例按分を理解するかといったら理解しやしません。あれはもう消費者相談の現場で,この手の苦情が来ると一生懸命,私こういう理屈なのですよと説明して,「だけど」と必ず言われて,「お前は保険会社の味方か」と言われるようなことを言って,さんざんやってきているからよく分かるのですけれども,幾ら言っても説明をなかなか理解してもらえない。それは,だから1000万に対しておれは600万つけたよ,でもそれはマックス600万出るのだろうと,ここを普通の消費者は譲らないのですよ。   すみません,大変地べたの議論で,理屈ではなくて地べたの考えで申し訳ないのですけれども,そこを譲らないというところをどうやってこの中に落とし込んでいくかということを御検討いただかないといけないので,従来と変わりません,原理原則変わりませんというのだと,そこがちっとも変わらなくて,現実に例えば保険会社の方がもう実損てん補の保険の方にシフトしていますとこの間お話がありました。では,それは保険料の計算はどうなさるのですか。同じことではありませんか。というふうに私は,すみません,保険料がどの程度,○○委員がおっしゃったようにこんなに上がるか,こんなに上がるかによって違うというのはそのとおりなのですが,でも「実損てん補だったら,では僕は入るよ」とおっしゃる方もたくさんいるだろうと思います。そのことを知らないのですから。実損だともともと思っていますから。   そういう意味でそこら辺の部分を,大変申し訳ない,大変トリッキーなことを言って申し訳ないのですけれども,そこら辺をもう一度再検討いただいて,頭をその辺を切り替えていただくのがよろしいのではないかと私は思います。 ● ○○委員。 ● 本当に一言だけ。もう一言だけ付け加えますと,今80%の特約みたいな形がある。でも,それを見たら実損なのですよね。そうすると,実損だったらこういうふうにならなければいけないとか,今は比例で保険料をとっている。だから,多分どこかで無理があったり,とり過ぎたり,とりそびれているかもしれない,理論的には。だから,それをそこまでやっているのに,こういう形にしたからといって,そんなに上がらないのではないかというのが直観的な思いなのです。つまり,今実際に広く言われているものとこのB案と,改めて考えてみますとね。   だから,そのあたりをしっかり本当に確かめないと何とも言えないなと。もしそれが,これだったらいいというぐらいだったら,それはB案というのも筋,特に火災保険についてですね,かなと。そういう意見です。   失礼しました。 ● ○○委員,先にどうぞ。 ● さっき○○委員から一般の消費者という話が出ました。私は,もうまさに一般の消費者のレベルだなと,この会議に参加して感じているのですが,やはり私,相談員もやっているのですけれども,相談員から見て保険というものが,言わばほかの金融商品と同じような認識できていまして,消費者対企業という感じできていたのだなというのが,最近私,やっと分かってきたということで,企業の方の後ろに同じ消費者がいっぱいいるのだというそういう商品というのは,ほかの消費者契約でないのですよね。   だから,そこから考え方がやはり違ってきている。私たち,消費者の受け止め方ができていなかったのだというふうに感じるのですが,この一部保険に関しては,私もまさにその1000万の物に対して600万,一部しか掛けていない場合については,あとの400万に関してはもう自分は放棄するのだと。たとえ損害が発生しても,それはあきらめる。でも,600万の範囲は担保されているのだと,やはり私もそう解釈したのですよね。   ですから,それは私たちが悪いというより,私たちが知らなかったということなので,その辺のことに関しては,やはり業界の方も十分に,今以上に認識していただかなければいけないということと,やはり今○○委員の言った,その一部保険と全部保険というのですか,その辺のことで一つにどちらかという形ではなくて,やはり選択できるというようなそんなことはできないのかなと思ったのですけれども。   まずは,ほとんどというか,大方の消費者は分からないということだけは,ちょっと○○委員に代わって申し上げたいと思います。 ● ○○委員の先ほどの消費者はやはり実損てん補を期待しているという,それを実現すべきだということになると,これは任意規定であること自体よくないということになるのですか。 ● はい。そこを主張すると,もうこれ自体が成り立たなくなってしまうので。 ● ここでB案というのをデフォルト・ルールで置いているのはまずなくて,あれなのですが,そこはB案もデフォルト・ルールならというのはまだ考えられると思うのですが,これを強行規定ということになると,ますます損害保険の一般原則をそれで強制していいかという問題が出てくると思うのです。かといって,任意規定だとすると,恐らく業界の方はそれは任意規定でも置かれればだんだんそっちへますますシフトしていくことになるかもしれませんけれども,やはり,その選択の余地がないというのは,やはり相当問題がありそうな……。そこで選択できるのだということにしてしまうと,結局は消費者の方で自分で選ぶ責任を負ってしまうみたいなことになって,不徹底かなという気もするのですけれどもね。   だから,本来は○○委員の主張を突き詰めていくと強行規定だろうかなということなのですが,そこまでいけるかという,そこはいろいろな議論があると思うのですけれどもね。   ○○委員,どうぞ。 ● 先ほどから○○委員,○○委員を初めとして大変御迷惑をおかけしておりまして,大変業界としても申し訳なく思っておりますが,そういう反省も踏まえまして,火災保険等々につきましては,今ほとんどの保険会社で実損で保険金が払えるような形,例えば先ほどの例ですと,1000万の物に600万をつければ600万まで払われるという,いわゆる素朴な契約者の期待にきちっとこたえられる商品を開発しておりまして,それを今通常販売しております。   それから,当然その場合には保険料が割高になります。住宅とか,家財とか,そういう非常に多数の母集団を持っているものにつきましては,精緻な統計ができておりますので,大体何%割増しがとれるかというのは,これは損害保険金の支払のデータをもとにそこで算出しておりますので,これは容易につくられておりまして,現実にもそうなっております。   一方で,そうではなくて,自分は比例的な保険がいいのだということであれば,そういう保険も御提供しておりますが,今,基本的には個人向けの火災保険等々につきましては実損型になってございます。   ただ一方で,絵画を持っておられる方とか,ヨットを持っておられる方とか,高額な一品物を持っておられる方が,例えばそれを破損したとか,盗まれたとかの保険をつけたい。盗まれた場合は全損になりますけれども,破損した場合の修理費,例えば機械を持っておられる方のその修理費というのは,全体のバリューに対して修理費は本当に一部でございますので,自分がここまで欲しいというその金額だけおつけになって,それを保険料で払われるとなると,どうしてもその計算が非常に難しいとか,あるいはそれを一般的な形にするというのは非常に複雑になりますので,おっしゃられることは重々承知しておりますが,いろいろな種類の企業から個人向けのいろいろな種類の財物がございますので,私どもとしてはもちろん消費者の皆様に対しては,きちっと説明をして販売することになっておりますが,法律の規律としては,まだ今の段階では比例てん補的なものが,諸外国との関係も含めまして,やはり財物の基本ではないかなというふうに考えております。 ● ○○幹事。 ● 今のですけれども,付保割合は関係なく全部実損てん補ですか。 ● 付保割合に応じて全部設計できるようになっていますので,大体バリューが幾らの物に対して何%おつけになれば幾らになるというものをベースに,そういう商品になっています。 ● 例えば通常の住宅火災の場合は80%コ・インシュアランス・クローズですよね。 ● それが前提になっておりますけれども,例えば60%まではできるようになっていますし,50%でもできるように設計はできます。 ● 前提は私もよく承知していまして,現実に家計保険の分野では実務がそうやって工夫をして,トラブル回避に向かっているということは承知しているわけなのですけれども,では損害保険全部が,今,○○委員がおっしゃられたような形のもので設計できるかというと,やや難しいということが恐らくここに前提になっていて。   それで先ほどもちょっと申し上げたのですけれども,全損とかあるいは相当程度の損害が起こるというのはケースとしては非常に少なくて,むしろ,分損の小さなところで損害が起こるケースが多いものですから,結果的には完全な実損てん補特約にしてしまいますと,相当自分が起こり得る,例えば1000万円の財価のうち,50万から100万ぐらいのところで大体損害が起こるだろうと考えた場合,その実損てん補を受けるためには,100万入っておけばいいということに極端な場合はなるわけですね。   そうすると,今よりも相当安い保険料で実損てん補を受けられるという状況になりますので,ややちょっとそこで巧妙な契約者であれば,そういう個性のある契約について,かなり安い保険料で実損てん補を得ようという人たちが増えてきてしまうということがあって,そうなればそれに対応して,その種の保険の場合は高額な保険料をとらざるを得ないということになるというのがシミュレーションできるわけですよね。   ですから,住宅火災のようなそういうケースの場合はもう定型化してきていますので,今の実務で相当程度,問題は解消していると思うのですけれども,それ以外の現にその家計とはいいながらも販売される火災保険についてB案を一般原則にしてしまいますと,そういったような逆の弊害が生ずる可能性があるのではないかなというふうにはちょっと考えているところです。 ● ○○委員。 ● すみません,ちょっと付け加えさせていただきたいと思います。   例えば,100%の物に対して60%まで保険をつけて完全に払ってほしいというものがあったとします。そうすると,統計的にその60%を超える損害は払えませんと。しかし,非常に少数の損害はたくさん起こりますと。そうすると,割増しを掛ける必要がある。大体,普通例えば1.2倍にするということになりますと。例えば全部保険を100%つけた場合には1万円でしたと。60%つけた場合は6000円でしたと。でも,60%までは実損で払ってほしいということになると7200円払いますと。   結局,あなたは6000円お支払できますか,7200円お支払になれますか,1万円お支払になれますかということを御説明をして,「いや,自分は絶対どんなことがあっても,60%以上は損害が起こらない」というふうに考えられれば,これは7200円お支払になった方がよろしいですし,それからどんなことがあっても全損になることしか考えていないと,そういう場合には1万円お支払になった方がお得なわけです。   お客様の御判断に応じて,本当はきちっと御説明をして,お客様の御判断に応じた商品を提供するというのが私どもの役目なのですが,ただ,いずれにしましても,6000円しか払わないけれども,6000円までしか払わない場合には,比例的にしか保険金を払ってもらえない。にもかかわらず,やはり7200円と同じ分だけ補償してほしいというのは,これはちょっと数字的には合いませんので,どうしても割高になってしまうということだけは,ぜひ御理解いただきたいと思います。   それで法律の基準で,任意規定とはいえ,7200円を払うのですよということを基準にされるのは,やや今の段階では,全部の保険にそういうものを適用するのはどうかなということは思いますので,ちょっと私どもの方で比例的な方がよろしいのではないかなということを申し上げたわけでございます。 ● 火災保険の分野以外で,その実損てん補のそういう特約を広げるみたいな可能性というのはどうなのでしょうかね。自動車であるとか…… ● それは基本的に実損てん補的に価格を協定しておりますので。 ● 既になっているということだと,家計分野の普通庶民が入るものが,割と実態上そうなっていると。 ● 例えば企業の大きな工場ですと,当然企業は減価償却をしてきますので,実際の保険価額でなくても簿価で十分だという会社もいらっしゃいまして,いろいろなケースがありますが,いろいろな工場がございますので,なかなか一律には,しかもその工場の中には機械の故障を補償してほしいという保険もございますし,コンピューターの修理をしてほしいという保険もございますし,いろいろなタイプの保険がございますので,なかなか財物保険は雑多でございますので,ちょっと個人とは趣が異なるということだけは御理解いただきたいと思います。 ● そういうことで,意見はさっき申しました三つぐらいに分かれるところです。   はい,どうぞ。 ● ちょっと余分かも分かりませんけれども,多分この問題はどちらの原則を選ぶかということなのですけれども,Aの原則の背後に,保険として非常に重要な原則があるということを,やはり理解しておいた方がいいと思います。というのは,保険料率を使うことによって,しかも比例てん補を使うことによって均一なリスクを大量に集めるという,大数の原理ですね。それをやはり意識したような,それと連関するようなAの原則で,これはこれで一つの考え方だと思います。   それに対して,もしB案を採用すると,それぞれ異なるリスクを区分するわけですから,先ほどの家庭,個人向けのものでしたら,一つの十分な多数の集団ができるかも分かりませんけれども,ただ厳密に考えると,100%と90%と80%と70%と60%で全く違うリスクになるわけですから。そうすると,細分化すればするほど,本来保険の持っていた大数の法則を使ったリスク集団というところからちょっと離れてくる原則にいってしまうかなと。   その辺,やはりどちらを原則にするかといった場合には,その辺をちょっと配慮して。ただ実態的には消費者の不都合とかいろいろありますから,先ほど○○委員がおっしゃったようにさまざまな企業の工夫によって配慮していくといった方が,何か自然な感じがいたします。 ● どうぞ。 ● 一点質問なのですけれども,この話は企業保険はちょっと関係ないというか,やはり消費者の問題だと思うのですが,私はちょっと自分が不勉強だったのかもしれませんが,今,火災保険で60%を超えるインシュアランスで,実損てん補で保険料1.2倍というのはあるのですか。 ● 計算の,契約方式で,それは契約をしようと思えば可能でございます。 ● タリフはあるのですか。 ● タリフというか,その保険会社の設計上,そういうことは計算上は可能でございます。 ● 今,売っているのですか。 ● 実際には60%を販売することは可能でございます。売っております。 ● というか,今,入れない。 ● いや,大丈夫でございます。 ● 入れるのですか。 ● はい,大丈夫です。 ● 3説,意見は分かれるかと思いますが,技術的あるいは専門的な観点からいうと,昔から比例てん補原則としてきたのにはそれなりの合理性はあると思うのですね。実際の契約者と消費者の間にギャップがあることも確かで,そのギャップが依然として埋められないのか,保険の実務を改善していけば多少そこは変わってくるのか,そのあたりが。   それから保険料が本当にどうなるのかというあたりも,もうちょっと本当はデータがあるといいかなという感じです。なお,そのあたり少し御検討いただいたり,あるいは情報いただくように業界にも御協力いただいて,それで,なおどうするかというあたりを詰めて,また考えてみたいと思いますが,今日のところはそのぐらいで御意見を聞いたということでよろしいでしょうか。   それでは,この点はそれぐらいにしまして,続きまして4頁「(5) 複数の保険者が損害てん補責任を負う場合に各保険者がてん補すべき損害額等(いわゆる重複保険)」の問題につきまして御審議いただきたいと思います。   まず,事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。   本文では,いわゆる重複保険について,第一読会において提案していた規律と同じ規律を再度提案しておりますが,その内容をより御理解いただくために,単純化した事例をもとに,その適用結果を具体的に記載することとしております。   まず,本文の説明に入る前に,この規律が働く場面を確認しておきますと,この規律は保険事故が発生し,かつ,二以上の保険者が被保険者に対して保険金を支払う責任を負う場合において,その保険金額の合計額が損害額を超過する場合に適用されるものでございます。   このことを前提として,まず本文アについて説明しますと,ここでは第一読会における提案と同じく,各保険者はそれぞれ契約上負うべき責任の範囲において保険金支払責任を負うことになるという規律を提案しております。具体例をもとにした適用結果をその下の表の「アの規律」と書いてあります欄に記載しておりますので,併せて御覧いただければと思います。   ここで特に御留意いただきたいのは,損害保険契約である以上,被保険者が損害額を超えて保険金を取得することはできないことと,各保険者は契約上負っている以上の責任を負わされることはないこと,したがって,被保険者はある保険者に対して保険金の請求をしたとしても,その保険金額が損害額に満たないときは,他の保険者にも損害発生の通知をし,その保険者から保険金の支払を受ける必要があることの三点でございます。そのほかの点については,(補足)1及び2に記載したとおりでございます。   次に,本文イについては,負担部分を超えて損害のてん補をした保険者の求償権について規定しております。これについても,具体例をもとにその規律の適用結果を記載しておりますので,御覧いただければと思います。この点については,資料では単純化した例をもとに記載しておりますが,例えば,複数の重複した契約のうち,ある契約は支払う保険金の額を時価で算定し,その他の契約は再調達価格で算定する旨約定されている場合や,複数の契約の中に評価済保険が含まれている場合などにおける求償額の計算方法については,なお検討する必要があると考えております。   このイの規律に関連して,(問題点)では,あらゆる場合に求償することができるとすることの当否及び求償する場合の規律を設ける必要性について,問題提起をしております。これは今回新たに問題提起をするものでございまして,その問題意識については(補足)3に記載したとおりでございます。この点については,約款上の他保険契約の告知・通知義務との関係も踏まえ,損害額以上は保険金が支払われないという損害保険契約の特質を維持しつつ,保険者間の求償を実効あらしめるために,例えば保険金の請求時などにおいて,保険契約者又は被保険者に他の保険契約の存在及びその内容の通知を求めることを前提とした規律を設けることが考えられますが,その場合には,義務違反の効果をどのように定めるのがよいのかなどについて御意見をいただければと思います。   なお,資料7頁に民法第443条を引用しておりますが,このうち第1項は他の連帯債務者が抗弁を有していた場合の規律でございますが,重複保険の場合には,例えば,ある保険者だけに免責事由がある場合など,被保険者に対して契約上の責任を負っていない場合には,そもそも重複保険には当たらず,その保険者が求償を受けることもございません。   最後に,(注)においては,強行規定性について,なお検討すると記載しております。本文の規律の強行規定性を考えるに当たっては,被保険者と各保険者との間の規律,すなわち本文アの規律の強行規定性と保険者間の求償に関する規律,すなわち本文イの規律の強行規定性とに分けて考える必要があると考えられます。   すなわち,本文アの規律は,同一の目的物について,他の保険契約が存在する場合に,どのように保険金を支払うのかという規律でございますので,これについてはさまざまな合意が許容されるべきであるとも考えられます。その反面,本文イの保険者間の求償の規律については,そもそも保険契約者とある保険者との間の合意の効力は他の保険者には及ばないと考えられますが,どのような場合に求償が認められるのかについては,(問題点)に関する検討も踏まえた上で考える必要があると思われますことから,その強行規定性については,なお検討するとしております。以上の点につきましても,特段の御意見がございましたら,併せていただければと思っております。   以上です。 ● それでは,この重複保険の問題につきまして,○○委員,どうぞ。 ● 第3回目のときの議論でもちょっと申し上げましたけれども,重複保険の規定は被保険者が多重請求によって不当な利得をもたらすことを抑止しようとする,もともとこういうことも機能として期待されていると考えていますので,モラルリスクの排除の側面からこのアとイの規律についても慎重に検討いただきたいと思います。   今,御説明がありました5頁の表を御覧いただきますと,ここで現行約款の,右から二つ目の欄になりますけれども,独立責任額按分方式では,他保険の有無によって支払う保険金の額が影響を受けて変わりますので,他保険の調査が支払のための必要な調査になると思われます。一方,連帯主義においては,他保険の有無にかかわらずてん補する額が決まりますので,他保険の調査が抗弁として許されなくなるかもしれないという,そういう懸念がございます。そうしますと,直ちに支払わなければならないということになって,二重払のリスクも考えられます。したがいまして,仮にアとイのような規律を設ける場合には,他保険の告知義務・通知義務の規定が,より重要になってくると考えます。   それから,これに関連してなのですけれども,先ほどの御説明にもありました7頁の(補足)3のところなのですけれども,ここでも指摘がございますように,保険契約者又は被保険者が各保険者に損害の発生を通知するなどして,各保険者があらかじめ損害の発生と他保険契約の存在を知っている場合には,求償を求めてもその仕組みが機能すると考えますけれども,先ほどの5頁の図の例で,A社が支払った後にBとCに請求したのだけれども,B社,C社は事故の通知すら受けていない場合は,損害の額や免責に該当しないかどうかなど,支払った後では被保険者に再度確認できないという問題があります。したがって,この求償の規定を実務的に機能させるために,事故発生の通知義務や協力義務の規定とも関連するとは思いますけれども,事故発生のときの他保険契約についても,保険者に通知することを規律していただくことが必要になってくるのではないかと考えます。   同様に,他の保険会社に求償することについて被保険者の同意が必要かどうか,個人情報保護法とは別に規定を設ける必要はないかというようなことも問題点ではないかと思われます。   それから,任意規定,任意性についてなのですけれども,これも第3回目で申し上げましたけれども,按分方法については,任意規定としていただければと存じます。現実の商品は,先ほどの説明でもちょっと触れられておりましたけれども,基本的には独立責任額按分主義を原則として,実はいろいろな支払い方も認めております。例えば,先ほどの,また5頁の例の変形で,保険者Aだけが新価基準であったとして,時価が1000万だとしたら新価なら1200万だと,そういうようなケースも十分に考えられます。このようなケースでは,現在,独立責任額按分主義を単純に適用すると分かりにくいということもありまして,実際の約款は時価基準の契約を優先払という形で運用しております。   それから,自動車保険の方ですけれども,友人の車を借りて事故を起こした場合とか,同乗者に運転を代わってもらって事故を起こした場合に,車の持ち主の方の保険を使うのか,運転した人が入っている方の保険を使うのか,ケースによってこれは無事故割引とかにも影響がありますので,いろいろなニーズが出てきますので,請求者の希望によって,自分の保険を優先払するとか,他人の保険を優先するとか,どちらでもできるようなこういう規定をつくっております。   そういうことで,ほかにもいろいろあるようなのですけれども,このように企業保険分野だけではなくて,個人分野においても多様なケースとニーズにこたえた実務を行っていますので,任意規定にしていただければと存じます。   以上です。 ● 今,アとイを採用した場合,実務上どういう問題点があるかという御指摘をいただきましたが,このあたりいかがでしょうか。これはAにも裁判で800万円請求して,BにもまたAのことを隠して640万円請求するという,実際そういうことをやるとどうなるのでしょう,これは詐欺の一種。 ● 分かればそういうことになると思いますけれどもね。 ● 実際に何かそういうことが起きるかなと思って聞いていたのですが,可能性はあるのですかね。   ○○幹事。 ● 今,御懸念のようなそれぞれの保険会社に,全くお互い通知をしないで請求をした場合に,トータルとして支払金額が幾らになるのが適正なのかというところを固めてからそれに沿ったルールをどう構築していくかということを考えたらいいと思うのですが,そういう場合には,もう不正請求の意図があるから各保険会社ゼロ,つまり他保険の通知義務なり,告知義務の違反がすべてあるから,悪意があるからというようなことで,そこでぎりぎり責めればゼロにすることもできるようなケースだと思うのですね。   本当にそのすべてのケースでそちらも規律に従ってそういうふうにすることがいいのか,あるいは契約者の主観,どの程度であればこちらの今回御提案の重複保険の規律に戻るのかということ,やはり不正請求に対応する問題を含めて,この重複保険の規律で考えないといけないのか,他保険契約の告知・通知の問題と組み合わせてどういうふうにバランスをとるかということと併せて御議論いただいた方がよくて,そういう不正請求の問題がない場合の規律として,この重複保険でどういうふうに考えたらいいかということ,多分そこに特化した方が議論としてはやりやすいのではないかと思うのですが。 ● 仮にそういう前提に立つとどういうことになるのでしょうかね。 ● 少なくとも保険金請求時には他保険,他者の契約にはこんなものがありますということは通知されていて…… ● そういう義務を課すことはいいだろう。必要性がまたあるだろうということですかね。 ● はい。 ● その場合の違反の効果みたいなものはどう考えるのですか。 ● 私の今のところ思い付きなのですが,ほかのところで通知義務違反,告知義務違反で全額免責というのは,その悪意を要求しているわけなので,やはりその悪意の立証を保険者に課すということは必要だろうと思いますので,そうでない場合には,プロ・ラタ的に,つまりはその場合には,通知義務違反があれば,例えば,独立的に按分額までしか払わないとかということが,一応抗弁としては出せるというルールは,一つの方法としてはあるかと思うのですが,かなりルールとしては複雑になるかなという印象もあります。 ● では,○○幹事。 ● ほかの点でもよろしいですか。 ● ○○幹事,今までの関連ですか。では,○○幹事の方から先に。 ● この資料7頁で書かれている問題,今,○○幹事が指摘された問題で,それは思っていた以上に何か難しそうな問題で,その通知義務違反があった場合に保険者としては独立責任額までの責任しか負わずに済むということだと,余り義務違反の制裁にはほとんどならないのではないかという気がするのですよね。ちょっとその点を確認させていただきたいのですが。 ● もちろんそうなのですが,結局それぞれの会社に他社こういう契約がありますという通知をしないで請求をしています。それは契約者側の通知がなくても,恐らく損保協会の加盟会社ぐらいの間では多分それは分かるのだろうと思うのですね。そのときに,では通知をしないで請求をしたけれども,保険者が悪意の立証ができなかったという場合に,では,そのそれぞれの保険会社が事故が起こった後で他社の契約がありますかという質問を明確にして,それに答えないという場合には,かなり悪意が立証できるのだろうと思うのですけれども,請求しているにもかかわらずその通知をしないという場合。   そういう質問をしなかったとか,あるいはそういう悪意の立証ができない場合に,いや,その事故は起きているけれどもその通知がないということを理由に,ではどれぐらいの制裁を課すのが適正なのか。全額の免責を各社が通知して実際ゼロになるというのは,やはりかなり事故発生後の通知義務違反の制裁としてはかなり重い,重過ぎるという印象であります。 ● ただ,その被保険者が実際に複数の保険会社に請求しているにもかかわらず,他保険契約の告知をしないというのは,これはやはり半分保険金詐欺なので,その場合には,恐らくどの保険についてもゼロにしてしまうということで,恐らくいいのではないかという気がするのですが,そのあたりの判断というのはなかなか難しいと思うのですよね。 ● 今の保険の通知とおっしゃっているのは,一般的ということですよね。 ● 保険金を請求するときに…… ● 従来言った保険の告知義務とか通知義務と考えてきたものとは違う。 ● とは違うと思いますね。 ● 請求段階でほかにありませんかということを問われて,それに対して答えると。そういう義務で考えられているのですよね。 ● はい。ですから,従来の他保険契約の告知義務,通知義務よりは,その悪意性というより悪質性ですね,それは認定しやすいかなという気はしますよね。 ● そうですね。今のあれですと,損害保険金の請求書にいろいろ不実記載をして受け取ろうとした,あの手のたぐいの話ですよね。 ● はい。 ● これは相当悪質な場合は,全部免責になる,してもいいと一応判例ではそうなっている。それに似たような考え方ですよね。   ○○委員がおっしゃっていた他保険の告知通知が重要だという,これはそういう意味の告知・通知をイメージしておられたのですか。それとも従来から議論している…… ● まず従来のことということと,それから今おっしゃっていただいたように,(補足)3に関して申し上げたのは,こういう形で遮断するのはいいのですけれども,その前に求償という制度がうまく回るためには,やはりきちんと通知したという,そういう制度があった方がいいのではないかというそういう意味で。 ● 両方ですね。   どうぞ,○○委員。 ● ○○委員の言われたことと同じなのですけれども,通常の共済約款の中では,契約時に告知義務として他の契約といいますか,共済契約であろうと保険契約であろうと告知をしなければならないという原則がまずあります。当然,通知義務,途中で追加して契約に入るというケースがありますので通知義務と。それに違反した場合は解除ということで厳格にやっております。といいますのは,支払時点での按分の関係があるので,今の按分の仕方が違うのですね。   保険の場合と共済の扱いですか,そこが違うので,共済の場合はすべて按分しているのですけれども,そのために他の契約の存在を確認しておかなければいけないということがありますので,入口の段階でもきちっと告知というものを課しているということなので,ちょっと実態を十分理解していただいて,その辺の告知義務なり通知義務の扱いについて検討願えればと思います。 ● ○○幹事,先ほど違う問題で。 ● いや,似たようなことかもしれないのですけれども,求償のところでこの5頁の例で考えますと,例えばAの独立責任額が400万だけれども,自分の保険契約では800万まで払う形になっているので,800万を先に払いましたと。あと,その求償をしていくという関係になるかと思うのですが,その際に,例えばBやCがそのほぼ同じ約款を使っていて,免責事由についても同じものが入っていますというケースで,BやCはその免責事由を主張しますと,Aは主張しませんと,それで払ったと。こういうケースで,求償をBやCにそのAがしようとしたときに,この争いはなかなか簡単には決着できないかなと思うのですね。   通常ですと,Aが払うか払わないかというので被保険者と保険会社の争いになって,例えばあなたは故意だから払わないというその主張立証の関係になるのですが,AがBやCに対してこれを求償するという場合は,BやCがこれは故意ですということを主張立証するというような形で,Aからの求償を拒むということになるのかと。そうすると,これは非常にやりにくい話になりますねということもちょっと非常に気になったので,この原案段階でこれを作成される際に,そういう点はどうお考えになったのかというのをちょっとお聞きできればなというふうに思った次第です。 ● その点は,7頁の(補足)3のところに書いてございますとおり,今,○○幹事御指摘のとおりの問題点が求償の場面で生ずるだろうと。ですから,求償を認めてもまず問題ないと考えられるのは,(補足)3の第2パラグラフに書いていますとおり,全保険者が損害の発生を知っていて,それぞれの立場でその損害の発生の有無を確認し,損害額の算定もでき,かつ,他保険の存在も知っていた場合ではないかと。この両方が,これは「かつ」に意味を持たせているつもりなのですが,両方が満たされれば後から求償を受けても,それなりにきちっと対応できるし,求償関係に入る保険会社間で調整が事後的にできるだろうと思われるのですが,このどちらかを欠いた場合には,今おっしゃったとおりの問題があるので,そこがまさに問題点になろうということで資料を作成したということでございます。 ● すみません,続けて。そうすると,保険会社間にそういう合意がない,払うか払わないかについて,まだ最終的に判断し切れていない,こういう段階だとすると,この例で,例えばA社が800万払ってしまうということはちょっと考えにくいな,こういうお考えというふうに理解してよろしいのですかね。A社としては,しょせんその保険料としてはこういう形でとっているので,800万払っても別にA社としては損得はゼロだとは思うのですけれども,だからA社の判断として払って,あとはAとB・Cとの関係で処理しなさいと,こういう割り切りも可能かなとは思うのですけれども,ただ,後の処理は本当に難儀だなという。ですから,そこはある意味でちょっと手放し状態になるかもしれないのですが,そういった形で割り切るのであれば,こういうのでも一応筋は通るなとは思っていたのです。   それと,○○幹事が少し気にしておられた点ですが,金額的に,○○幹事もおっしゃっていたかもしれませんが,かなり高額の重複保険になっておって,請求を重ねてしてきていると。こういうケースで,しかしその物損などのケースであれば,相当その高額な請求でそれこそ道徳的危険が高いと,不正請求ですねということがはっきりするケースはいいのですけれども,必ずしもすべてそう判然とする金額が出てくるわけではないと,そういうところで重複保険が実際使われることもあるだろうと思われるので,そのときに簡単にここは不正請求ですねということは,なかなか言いにくいケースが恐らく出てくるので,差し当たりはよほど保険会社側でおかしいと思ったら払わないのでしょうけれども。   例えば,Aが請求されて次にCが請求されたぐらいでしたら,払ってしまうということがあり得て,それでBまで来るとそれはちょっと倍になるので,さすがに難しいかなと思うのですけれども,A,Cぐらいだったら通ってしまうという,そこぐらいまでは払っていいというようなそういう判断になってしまいがちだと思うのですけれども,そこぐらいまでは割り切っていいという考え方でいくのですかね。私はそれぐらいはしようがないかなと思っていたのですが。これは実務ではどう判断されるのか,ちょっとよく分からないですけれども。 ● いずれにしても,他保険の通知が受けられるようになっていれば,これはA,B,Cとも連合して対処,実際はするかなという気はするのです。そこで余り求償のそれぞれの支払の判断が食い違って求償がややこしいことになるということは,割と防げるかなと思うのですけれども,その通知というのはどの程度確実なものとできるのかという,そのあたりも重要な判断要素かなと思うのですが。   ○○幹事。 ● こういう問題を考えますときに,結局,保険金請求時の他保険の通知については,かなりその通知の中身をかなり重たいものを要求してもしようがないのかなという気がしておりまして,例えば,他の保険がありますかということではなくて,既にその保険について請求をしましたかとか,保険金を受け取りましたかとか,そういうことについても告知なりをさせるということにしておかないと,他社にも既に請求済みであることを隠しているということ自体も,やはりそれはまずいということになるのだろうと思います。 ● まず,○○幹事から。 ● 他保険が重複保険の場合に,現行法を変えてそれが当然無効ではないということを前提として,それで各保険者に対してその独立責任額を請求できるというふうにした場合に,まず保険会社としては特にデメリットはないのでしょうと思っているのです。他の保険の存在を知らなくても,もともと自分だけだと思ったときにその金額を払わなければならなかったので,だから,防がなければならないのは,保険契約者というか被保険者の方で損害額以上の保険金を取得してしまうという不正請求の部分だと思うのです。   それから,それを防ぐために他保険の存在を知らなければいけないということとか,受領したかとかという情報も得なければならないということのほかに,あとはそのように重複保険が当然無効ではないというふうな規律になったことの恩恵として,保険者としては,他に保険者がいるということを知ることによって,自分は単独で800万円払わなければいけないと思っていたところ,あと1000万と200万という人がいたので,それぞれに最終的には求償できるという恩恵ができたということで,これをどのくらい保護することが必要かということも考えなければならないと思うのです。   あと,先ほどから議論されている,その事故が起こったところでの他保険の告知というところが説明義務の分野だと思うのですけれども,それで次に出てくる支払時期とも多少関係するかと思うのですが,まず事故の通知をすることと,それから他にも保険に入っております,ですので,おたくに800万円請求しますけれども,他のA社とC社に求償できますよということも説明する義務が被保険者側にはあって,なおかつ,自分は800万円しか損害の発生した金額までしか主張はしませんという。それはだれとの関係でというのではなくて,それ以上もらった場合には,不正請求ということで免責又はそのことが発覚する前に受領していた場合には,保険ですので免責というのが,何の効果で免責になるかというか,既に払ったものは返還しなければならないというのをどこかで設けなければいけないのかなという気もしております。 ● ○○委員。 ● 一番前提として保険金額の合計額が損害を補償したときの保険価額を超えるときという条件ですけれども,いずれにしても,最初の段階できちっと他の契約がないのかどうか告知をしてもらいますと,当然超過を生まないような,まず実務的には,例えば他の契約があってもう一つの契約に入ろうといった場合に,他の契約があればそこで超過しないように,新価でやるのか,時価でやるのかによって価格は違いますけれども,そういう調整というのはまず入口の段階で可能だというふうに思っておりまして,実際にそういうふうに実務的にはやっているわけなのですね。   なおかつ,超過しなくても,やはり按分をするというやり方をとっておりますので,途中でまた他の契約に入られると,先ほどのお話ですけれども,当然そこでも通知をしてもらうということで,二重のチェックを実際上しているのが実態なわけですね。   そういう意味では,ちょっと契約者にとってきつい部分もあるのかなというふうに思いますけれども,基本的には不当利得を排除するということを前提にした物の考え方をとっているわけですね。そうしていただきますと,どういうやり方をとろうと,他の契約の存在が最初から分かっていれば,非常にその支払も含めて,額についてのいろいろな意見というのは契約者側からあるかもしれませんけれども,かなりの調査期間の短縮につながりますし,ある意味の告知,通知と,そういうことの連動で,やはり実務的な実際のその支払のやり方というのは,現行のやり方を変えることも含めて可能ではないだろうかというふうに思っておりますけれども。 ● 契約締結時の他保険の告知義務でやっているという御趣旨だとすると,ここで今議論している状況としては,そこまではまだこの全員コンセンサスはない状態で,ですから,仮に告知義務を課すことがそれはできるとしても,どういう要件のもとで義務違反の効果を問えますかという,そこはまだペンディングな状態なのですね。   今,○○委員が実務でやっておりますと言われていることが確実に実現する保証はないわけで,そういうことから今それとは区別して,やはり事故発生時にも,もう一回どんな保険がついているのですかということを確認する手段が必要なのではないでしょうか。そういう議論をしているのではないかと思いますけれどもね。 ● その場合においても,やはり○○委員が言われたように,最初の段階で分からないということであれば,一定の他保険に対する調整といいますか,実際に先に払うというのは,なかなか実務ではできませんので,全体を見た上で支払うということに現実的になりますのでね。 ● だから,知ること自体が重要だというのは,これはどなたも御異論がないと思うのですね。 ● そこのところを,いわゆる合理的な調査の範囲というふうに位置付けが必要ではないだろうかというふうに思いますけれども。 ● どうぞ,○○委員。 ● 入口のところの他保険の告知ではないというお話が今,ありまして。 ● そちらで…… ● そちらはそちらというお話なのですが,請求時点で他保険を告知させるというのは,すごくいいのではないのかなと。そういう意味で,私は入口の話はまた別のところでやるのだと思っていますので,それはそれで効果が大き過ぎるとかと,そういうふうに言うつもりではいるのですけれども,請求時点で他保険の告知をさせるというのは,保険金を請求している以上,御本人はよく知っているわけですから,そういう意味で,そこのところで縛りをかけるというのはかなり有益で,モラルハザードの防止にも効くし,それからそこのところはよろしいのではないのかなとそう思っております。 ● そういう今の議論で,やはり請求時にこの重複保険を把握する何らかの義務を課すこと自体,割と御異論が余りなかったようにも思うのですが,いかがですか。どのくらいの要件があったら,それは免責につながるかという,そのあたりは難しい問題はあろうかと思いますが,そういう義務を課すこと自体について,事務当局から見て何か問題意識がおありかどうかという。 ● 他保険の通知の義務を課すことについて,現在事務当局がどのような位置付けを考えているかを申し上げて,御批判を仰ぎたいと思いますが,これまでの他保険の告知・通知義務というのは,他の告知義務と同じような位置付けで,違反があったときの免責とかこういうことだったと思うのですが,先ほど事務当局の資料説明の際に,ここで他保険の通知のことも考えなければいけないと申し上げたのは,そういう位置付けで申し上げたのではありません。   といいますのは,これまでは重複で超過している場合には,超過部分は無効ですから,万一他保険のことを知らないで払ったとしても,それは無効な部分を払ったのは不当利得で返してくださいと被保険者に言えるわけで,それは他保険を知っていようが,知っていまいが関係ないということが一応言えるだろうと思います。   ところが,今回,重複で超過している場合にその超過部分は無効ではないと,かつ,アの規律をとってそれぞれの契約で払うべき金額は全部払ってくださいというと,被保険者との関係では払い過ぎということは生じないわけですから,その契約どおり払った部分,たとえイの規律を導入して負担部分という概念を設けて,その負担部分を超える部分は,他社との公平の関係で求償できるという規律を設けたとしても,被保険者との関係で払い過ぎということではありませんから,不当利得で返せとは言わないと。でも,ではそれでいいのかということについて,他保険の通知義務を課すことによって教えてくださいと,分かったらきちんと後で求償したときにトラブルにならないように手を打てるから,教えてくださいという義務を課すと。   ところが,その義務違反があった場合には,きちんと通知義務を果たしてくれれば求償できたのに,通知義務を果たしてくれなかったために求償できなくなったと。その自己の負担部分を超えて求償できなくなった部分については,あなたの義務違反によって生じたのだということで損害賠償請求をする,あるいは,それがその義務違反が不法行為を基礎づける違法性ということで損害賠償請求をすると。そういう形で働くことになるのではないかなというように考えていまして,これまでの他保険の告知義務違反で免責というのとは全然違う位置付けで,事務当局は今のところ考えております。 ● そうすると,今のアのところで,アの規律だとA800,B640,C160と,これはそれぞれ契約で支払義務があるわけだから,これに合計して800以上の支払を受けても,それは被保険者の不当利得にはならないという。 ● ごめんなさい,その…… ● そういうわけではない。 ● ごめんなさい,ちょっと説明が今,そういう意味では不正確でしたが,このアの表の右下の※印で書いてあるのが,損害保険の大原則ですから,この部分ではもちろん払い過ぎですから,このもともとの損害額を超えた部分については,被保険者に対して,いや,おれは例えばB社が--どの例を取り上げれば分かりやすいですかね。 ● どれかを特定する方が分かるかと--○○委員。 ● 最初に○○委員がおっしゃいましたように,仮にこのA,B,C3社に対して三つの請求が裁判所に提起された場合,裁判所は三つとも全部認容の判決を下すのですか,どうなるのですか。まずそこのルールから決めていかないと,ほかのところは決まっていかないように思うのですがね。   あるいは,最後の強制執行の段階で初めて調整するのか,あるいは請求する段階で,請求権の段階で裁判所が調整するのか,まずそこから決めていかないと,最後が決まらないとその前の求償とかそういうこともルールがなかなか決められないのかなという気がするのですが,いかがなものですか。 ● それは逆にお尋ねしたいのですが,今,連帯債務で全員が全額の弁済義務を負うとされていますよね。例えば,連帯債務者が3人いて全員が600万の債務を負っている。それでA,B,Cそれぞれにたまたま住所地が違って管轄裁判所も違うから,これはしめしめといって,それぞれ600万ずつ請求を起こしましたと。全部認容されてしまいますよね,分からなければ。というのと同じ問題で,それは今回新たにこのアの規律を導入することによって生ずる問題ではなくて,既に法律上存在する…… ● 判決までは出る。 ● 判決までは出るのですけれども,では強制執行についても全部強制執行の執行文付与もできるわけですか。 ● 執行文まではついてしまうのでしょうね。 ● では,実際に強制執行する段階での調整もなくて,全部いったんすべて強制執行も最後までいってしまって,その後で不当利得で調整していく,そういうことなのですか。 ● 強制執行を,途中で超えた段階で止められることになるのだろうと思いますけれども。 ● 請求異議がそこで…… ● いや,これまで全く考えていないで,確かにそこを決着をつけなければいけないというのはおっしゃるとおりでしたが,御質問を受けて考えるに,既存の問題であって,恐らく既存の問題についてはそういう説明がされるのではないかなというふうに思いますけれども。 ● 今までもそこまで考えて書かれたものはないとは思うのですよ。超過保険は無効ということでしたから,そこまで考えなくていいという前提だったのでしょうが,超過保険が有効だという前提をとった途端に,どこまでのルールとして有効ということを言っていくのかということをまず考えないと,後のことがなかなか決まってこないのかなと思います。 ● 検討してみたいと思います。 ● その問題はあるにしても,いずれにしてもその問題にしろ,このイの求償の問題にしろ,重複保険を把握すること自体が重要だということは変わりはないということですね。   どうぞ。 ● 先ほど○○幹事がおっしゃったこの今のお考えだと,他の会社にも重複保険はありますよというのを言わなかったというケースを考えますと,例えばA社が800万払いましたと。その払う際にBやCに重複保険がありますということを言わなかったと。その際に違反によって行われる制裁というのは,そのBが本来負担すべき320万,Cが負担すべき80万,これについてとれなくなるおそれがあるので,この分を返せというそういう請求が保険会社Aから被保険者に行われ,損害賠償として行われると,こういう理解でよろしいのですか。 ● とれなくなるおそれがあるだけで損害賠償を認めるようにするというつもりはありませんが,とれなくなったとすれば,それが損害だといって損害賠償を認める根拠に,その通知義務違反を位置付けることができるのではないかと考えているということです。 ● それが損害賠償なのか,不当利得なのか,そこはいろいろちょっと議論を整理した方が,もう一回よさそうな感じはいたしますね。ちょっとそれはなお御指摘を踏まえて検討して。   ほかに何かこのあたりで,注意すべき点などございませんでしょうか。非常に難しいところです。 ● あと申し訳ないのですけれども,そうすると,ほかの契約がありますよといういことを,損害の調査の段階で言わなかったということが問題になってくる。その保険会社側が聞いて,「ほかに契約はありますか」というのを,こういうシミュレーションをやりますと当然聞くということが前提になってくるかと思うのですけれども。聞きました,しかし,それにうそを答えましたと,それに対してそのペナルティーを与えますよと,こういう形になるわけですか。そうすると,それは損害の調査あるいは先ほどもちょっとお話が出ていたかもしれませんが,損害発生の通知あるいは説明義務の問題としてその制裁を考えると,こういうそちらの方の制裁を考えるというのか,あるいはその損害調査の言わばある種の妨害という意味にとらえるのかという,そういう位置付けも可能かと思うのですけれども。 ● その点は,通知義務をどの段階でどういう形で課すかによると思いますので,今,○○幹事がおっしゃったように,請求は請求でまずあって,その後の中で通知義務を位置付ければおっしゃるような形になるでしょうし,そもそも請求段階で同時に通知すべきという形で通知義務を位置付ければ,もうそこで違反の有無が決まるということになるかと思います。ここは位置付け方次第だと思いますけれどもね。 ● 請求段階で位置付けるということになると,それは積極的に言いなさいよという,通知してくださいという形になりますよね。その請求を受けて,保険会社側が動き出して,それで調査をした段階で教えてくださいと。ほかの会社との契約はありませんかということを聞いて,それに対して答えなかったというのだと,これは損害の調査のレベルの問題になってくるかと思うのですけれども,そうすると,恐らくは請求段階で全部他社のを言いなさいというよりは,通常だと調べていって教えてくださいと。それに対してうそを答えましたと,こういうレベルの問題に落ちていく。 ● その方が制度とのつながりがいいのかもしれないですね。 ● だと思うのですね。 ● あるいは,告知義務を質問応答義務に変えたこととも整合性があるということが言えるかもしれません。それもまた考えてみたいと思います。 ● はい。どうぞ。 ● そういう設問をすること自体に賛成すると申し上げたのですけれども,例えば,忘れていましたと,完全に。3本入っているのだけれども,3本目を完全に忘れていました。保険料は確かに払いましたけれども,請求する気は,はなからありませんと。そういうときも今のペナルティーを受けるのですか。 ● そこは,そういうのは難しいだろうと思っています。が,まさにその通知義務をどう仕組むかの問題だと思います。それから今おっしゃった…… ● それだとすると,それは酷だと思うのですが。 ● だから,それは要件をどう設定するかが,案外難しい問題だと。 ● 私はあくまで,手を挙げて,全部3社に請求して,それでもしらばくれてというのを前提にして申し上げているつもりですが。 ● あとその点でまた今後御意見をいただくために申し上げますと,今おっしゃったように,うっかり忘れていたということもあるでしょうし,そもそも大規模な企業のユーザーなどで,いろいろな部署が独立して保険を掛けて,ある部署は工場全体を掛けたけれども,ある部署はその中の特定の機械を掛けましたといったら,その限りでその機械については重複するということがありましょうし,あるいはいろいろな企業が連合してある事業を行っているときに,それはいろいろな会社が掛けて重複しているということもあり得るわけですから,気が付かないうちに重複になっているということが,恐らく幾らでも存在すると思うのですね。   ですから,それはうっかり気が付かなかったところでも,それとも気が付く余地もなかったことも含めてあり得ると思いますので,そこは十分意識して,要件設定をしなければいけないと思っています。 ● ○○幹事。 ● 今のところと関係するかと思うのですけれども,その通知義務の違反のペナルティーということと関係して,その事故が発生して通知する義務を負うというところ,今までの流れの中で,それでその通知の内容として,他に保険に入っているとか,他の保険会社からもう既に幾らか保険金を受領しているとか,そういう情報をまずそれは通知義務の内容に入ると思うのです。それで,その違反の場合には,一応判例でもその通知義務というのが,保険契約上の真正な義務というふうにいわれているかと思うのですけれども,それの違反によって生じた損害というのを賠償するというか,当然控除されるという形になっているかと思うのです。   それで,その当然控除という段階が,その320万とか80万とか,他社に求償できなかった部分が,当然,ですので,他社に支払ってしまったか,これから支払うかにもよるかと思うのですけれども,控除又は賠償額になると思うのです。ということと,それで○○委員の御質問で,では,うっかり知らなかった場合というのは,そのうっかりというのが,多分故意過失のところで処理できるのだと思うのです。   それから,あとはペナルティーというのがそういうレベルでいいのかというのが,○○幹事の御質問というか問題意識かと思うのですけれども,どこかの段階でその悪性が強くなったところで不正請求ということで,免責とか失効というのがどういうふうな構成になるのか分からないのですけれども,失効という形になるという,○○幹事がおっしゃっている要件設定の注意というところでは,どういう義務違反でどのくらいの悪性が強くて,その場合の効果というのもまた変わってくるということがあるのかなというふうに思っています。   それから,あとは告知義務違反との関係なのですけれども,告知というのをさせる重要な事実というのが,危険の料率の算定に必要な重要な事実だとした場合に,この他保険について告知させるかどうかというのは,危険の算定ではないにせよ,その求償ということをすることが,保険者にとってそれが正当な利益であれば,その算定を保険事故が起こったときに速やかにできるために,その事実は告知すべきだということになって,やはりそれも告知義務の中に入ってきて,その違反というのが直ちに解除権を生じさせるものか,それとも損害賠償で処理されるものかというのが決まってくるのかなというふうに考えました。 ● ほかにこの点,ございませんか。いろいろな理論的な問題の御指摘をいただきまして,もう一回,今の議論を踏まえて整理していただいて。実務面でもこういう方向のルールをもうちょっと整理していくとそれで回るものかどうか。そのあたりをまた事務当局にいろいろ知恵を貸していただければと思いますが,そういうふうに余計に払い過ぎるとか,あるいは求償の関係が合理的に規律できるのであれば,従来の超過部分は無効ということからアとイのようないわゆる連帯責任主義みたいな方向へ動くということ自体は,そこはそういう条件付きながら,大体大きな御異論はないということでよろしゅうございますかね。どういうきちんとした前提条件が備わるかというのは,これからの整理にかかっていますけれども,一応そういうことが現段階での大方の御意見だというふうなことではないかと思いました。   そういうことで,なお詰めていただきたいと思います。   それでは,ここで休憩をしたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただきたいと思います。   次は,資料8頁の「(6) 保険金の支払時期」の問題でございます。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 第一読会の資料では,損害保険契約における保険金の支払時期について,保険金の支払の請求があったときは,直ちに保険金を支払わなければならないものとし,一定の調査をする必要があるときは,その必要な調査が終了した後,直ちに保険金を支払わなければならないものとする案を掲げておりましたが,(補足)2に記載したとおり,必要な調査が終了するまで保険者が一切遅滞の責任を負わないという点に関して,複数の委員,幹事の方々から見直しの必要性を指摘する御意見をいただきました。   そこで,本資料では民法の特別法としての保険法の性格にかんがみ,民法における履行期及び履行遅滞に関する規律との関係を整理し,どの範囲で民法の規律を修正する必要があるかという観点から,改めて保険金の支払時期に関する規律の在り方について問題提起することとしております。   まず,民法上,債務の履行については大きく期限の定めがあるものと,期限の定めがないものに分類することができるため,本文の①と②では,保険金の支払について期限の定めがない場合と,期限の定めがある場合とに分けて規律を整理することとしております。   ①では,保険金の支払について期限の定めがない場合には,保険金の支払の請求を受けた後,損害の確認のために通常必要な期間が経過するまでは,保険者は遅滞の責任を負わないものとする案を掲げており,この規律の考え方については(補足)2に記載したとおりでございます。   ここでいう「損害の確認」は,保険事故及び損害の発生を確認することや,必要な場合に損害額の算定を行うことを意味し,免責事由の存否や告知義務違反の有無等の調査はこれに含まれないことを前提としておりますが,期限の定めがない場合に,どの範囲の事実の確認や調査に必要な期間を法定の猶予期間として認めるべきかについては,議論の余地があると思われます。   ②では,保険金の支払について期限の定めがある場合において,その期限が合理的な期間を超えるときは,その合理的な期間を経過した時から,保険者は遅滞の責任を負うものとする案を掲げております。   民法上,債務の履行について期限の定めがある場合には,それが確定期限か,不確定期限かを問わず,当該債務の履行期を定めるものと解されており,保険契約においても当事者間に期限の定めがある場合には,基本的にはその合意を尊重すべきであると考えられますが,他方で,保険事故の発生後,遅滞なく保険金が支払われることが期待される保険契約の性質にかんがみれば,その合意が合理的な期間を超える期限の定めになっている場合にまで,その期限が到来するまで保険者が履行遅滞の責任を負わないとすることは妥当でないと考えられることから,②の規律を設けることを提案しております。   このように,①及び②は民法における履行期及び履行遅滞に関する規律を前提に,期限の定めがない場合と期限の定めがある場合とに分けて規律を整理しておりますが,いずれの場合についても,被保険者又は保険契約者が故意に調査を妨害した場合等にまで,保険者に遅滞の責任を負わせるのは妥当でないと考えられることから,これらの規律に加えて,③の規律を設けることを提案しております。   ③では,保険金の支払のために必要な調査を故意に妨げた場合と,その調査に欠くことのできない協力を正当な理由なく拒んだ場合を掲げておりますが,このほかにも保険者が遅滞の責任を負わないとすべき場合があるかについては,議論の余地があると思われます。   また,資料1頁の第1の3(1)の(注2)において記載した問題,すなわち約款上,被保険者等に課されている,いわゆる説明義務を法定するかどうかという問題については,第一読会において,被保険者等の法律上の義務として掲げることに否定的な意見が複数の委員,幹事からあり,その中では特に免責事由に関する証明責任の転換につながるのではないかとの懸念が提起されておりました。そこで,被保険者等の説明義務として法定するのではなく,保険契約の当事者間において,信義則上,一定の相互協力が求められる場合があるという趣旨を,この③の規律の中で反映していくという考え方もあり得ると思われます。   なお,本文及び(問題点)について御議論いただくに当たっては,現在の実務の約款を前提とするのではなく,保険金の支払時期についてのあるべき規律を考えるという観点から御意見をいただきたいと思います。   また,この論点については,各契約共通事項として位置付けておりますが,損害保険契約,生命保険契約,傷害・疾病保険契約,それぞれの具体的な規律の定め方を検討するに当たっては,各保険契約の特殊性を考慮することも考えられることから,まずは損害保険契約に関する本文の考え方を一つのたたき台として,規律全体の枠組みについて,各保険契約に共通する問題として御議論いただくこととし,各保険契約の特殊性に応じた具体的な規律の定め方については,各保険契約ごとに改めて御意見をいただきたいと思います。 ● それでは,ただいま御説明のあったパートにつきまして,御質問,御意見,それでは○○委員から。 ● とりあえず資料をお配りいただいていますので,最初に説明させていただきたいと思います。   お手元のこの資料を開いていただきまして,この部分だけ御覧いただければと思います。これだけイメージしていただければと。ここに保険金受取りまでのフローが掲載されておるわけですけれども,①のところで事故の御連絡ということがまずございます。それから②のところで,保険金の御請求からお受取りまでの御説明,それから三番目,③として保険金の御請求に必要な書類の御提出,④損害調査への御協力,⑤お支払する保険金の御説明,⑥保険金のお受取り,こういうことでやっております。このうちの③と④なのですけれども,必要書類の御提出と損害調査への御協力,これは必ずしもこの順番ということではなくて,実際には同時並行的に行われるということが多いということで,一応こういうことでございます。   以上のフローを踏まえますと,事務当局の資料の本文①から③までの規律については,損害保険契約の特性に御配慮いただいていると思うのですけれども,これに関しまして二点だけちょっと申し上げます。   一点目は,①の損害の確認のために通常必要な期間についてですけれども,損害の確認という,そういいますと,損害があったことの事実さえ確認ができれば,損害額が確定しなくても履行期になるのかのように解釈されるおそれがあるような気がします。それで9頁の(補足)1にもございますように,保険金の支払のための調査を無制限に認めるというようなことは問題だと思います。しかし,支払保険金の額の確定のために必要最小限の期間であることが分かるような規定にしていただければと思いますので,ドイツの保険契約法改正案の訳文で,保険事故及び保険者の給付の範囲の確定のために必要な確認調査が終了した時に履行期となるというのがありますので,表現としては参考になるのではないかと思っております。   それから二点目は,②の規定及び(問題点)1の合理的な期間について,一律に明示するのはやはり難しいのではないかと考えております。第4回目のときにも申し上げましたけれども,例えば,大きな工場で火災事故が起きた場合には,請求書類の中の損害品の明細書も膨大ですので,書類を確認して支払保険金を算出するだけでもかなり時間がかかりますし,1991年の台風19号に代表されるような広域災害については,対策本部を設けて事故対応を行いますけれども,件数が膨大な上に,お客様と連絡をとることだけでも大変な作業ですので,損害があったことの確認だけでも相当期間がかかります。また,自動車保険では,対人の賠償責任保険においては,けがの治療の完了とか,示談の完了の後に最終のお支払となりますので,さらに時間は長くかかります。このように,保険の種類や事故の形態などによって,支払までの期間が大きく異なっていますので,一律的に期間を設けることについては難しいことを御理解いただきたいと思います。   また,4回目のときに○○幹事から御意見をいただきましたけれども,犯罪捜査がまさに続いているのに,例えば30日たったら遅滞になるという問題もあります。仮に保険会社の裁量で何度も再調査するというのであれば,保険会社のリスクでやるべきでしょうから,期間は明示せずに合理的な期間という文言で解釈すればいいのではないかと考えております。   それから,(問題点)2なのですけれども,保険会社としては免責事由に該当するかどうかを確認させていただくというプロセスは,適切な保険金支払のためにどうしても必要であると考えますので,免責事由の調査を拒んだ場合を含むということにしていただきたいと思います。よく言われる例で,先ほどもありましたけれども,免責でない証拠を出してくださいというような不当な要求が仮にあったとしても,本文③の正当な理由で拒めるのではないかと思います。   最後はちょっと任意規定性に関連してなのですけれども,約款の支払時期の起算点で,この法律ができたとしても,例えば必要書類の提出後何日とか,必要な調査の内容を詳細に定める場合がやはり考えられます。そのときに不利益変更になるかどうか判定が難しい場合があると思われますので,任意規定としていただければありがたいですけれども,いずれにしても約款で詳細に規定することが柔軟にできるようにしていただければとちょっと考えております。   以上です。 ● ○○委員。 ● ありがとうございました。簡潔に御意見を申し上げたいと思うのですけれども。   事務当局のお手を煩わせまして紙を1枚お届けしてありますけれども,まず全体像を分かっていただいた上で議論した方がいいと思ったものですから,この8頁の案,一応期限の定めのあるなしという区分で分けられたために,損害の確認のために通常必要なという,これは多分最高裁の判旨から持ってこられたのだと思いますが,こういう形にされたのだと思いますが,これはやはり今おっしゃったように,常に払うときには損害とそのてん補の有無の両方をきちんと調べた上で払わなければいけないということは,当然だと思うのです。ですから,今の約款を前提とするという仕方が,最初の説明とちょっと抵触するところがあるのかもしれませんけれども,基本としては前回の案のような形で,まず直ちに保険金を払わなければいけないという原則を宣言しておいて,しかし,実際には約款があって,これは適用されないわけですね。十分その保険種目の特性はあると思いますが,損害保険であれば損害額とてん補責任の有無,それから(問題点)の中にもありますけれども,免責事由についてもちろん調べた上で払うという,これは当然きちっとやっていただかなければいけないと。   ただ,期限の定めはやはり置く必要があって,これは最高裁の判決は30日というものを通常必要とされる合理的な範囲内という言葉,プラス被保険者が損害発生後,遅滞なく損害てん補を受ける利益が実質的に害されない限りということで,二つの絞りをかけて30日というものをいいですよと言っているわけです。   それについて,次に保険金を支払うための調査を必要な限りでやるべきかと。これも(問題点)のところにありますけれども,これは何かそういう規定はもちろん入れる必要があるのだと思います。例えば,30日余裕があるとなれば,それはゆっくりやればいいわけですから,それよりもやはり保険にあるべき姿で普通に処理をして,審査が終わったらすぐ払うと。それを30日間時間をもらったよというのではまずい。だから,これはしゃくし定規に考えるのではなくて,例えば最初に100件あったとして,30日間の間で一定の期間,生保の場合だと5日あたりには来るのかもしれませんが,一定の期間でだんだん下がっていくと。問題があるものはさらにという,そういう形だと思いますけれども,そういう何らかの歯止めは必要なので。   そこで,第2項のところですけれども,資料5にあった文言を使いまして,①の規定を受けまして,そういう保険金請求があった場合には,しかも約款にそういう調査期間の定めがある場合には,その期限が保険契約の定める30日を超えない期間で,かつ,保険金を支払うための調査に必要な期間,合理的なという言葉に代えてこういうものを入れるということですが,を超えるときは保険者はその期間を経過した時から遅滞の責任を負うと,こういうふうにしてはいかがかと。   三番目のところですけれども,これもこの規定には賛成したいと思います。(問題点)2にあるような免責事項の存否に関する調査を妨げた場合も,もちろんこれに入るという考え方でいいのだと思います。ただ,この規定だけを置くというのは,余りにバランスを欠いて,やはりその契約者サイドに問題がある場合もあるし,保険会社サイドに問題がある場合もある。両方,かたぎにやっておられるところもあれば,そうではないところもあるというのはどちらにもあるわけで,やはり両方を見て規定をしないと,これは相当バランスを失するのではないかと。   前回の最後にも申し上げましたけれども,やはり不払問題というものに対して,何から何までここで取り上げるという必要は私はないと思いますし,具体的には保険契約期間中に案内する義務があるかとか,そこまで今やる必要があるかと,これは議論があるし,私はそこまで今はまだいいのではないかなと思っているのですが,しかしやはり保険金を払ってもらうというのはとても大事なところで,その中でも二つの規定をこの3項とバランスをとるために置いてはいかがかというふうに考えた次第です。   これも簡単に申し上げますが,まず4項の方ですけれども,保険者又は保険募集人等,これも前回の13頁にある文言を使いまして,そこの部分の課題の一つの答えという考え方で出してみたのですが,責めに帰すべき事由によって当初保険金の請求がなされなかった場合において,保険金が支払われるべきものであるときは,保険者は,第2項の規定にかかわらず,損害発生の時から遅滞の責任を負うと。   損害発生の時からというのは,またちょっと後でお話ししますが,これは要するに,保険募集人の方がそんなのは後にした方が,保険金請求は後にした方がいいよとか,払えないよといった場合に使う規定で,実際も大阪高裁の判例がございまして,平成16年5月27日のもので,これは支部長さんが,これはお気の毒な方で,体にちょっと障害があったのですけれども,申告して保険に入れていただいたと,高度障害になって請求しようとしたら,「請求すると,医療保険金が出なくなるよ。」という,確かに約款はそうなのですが,それも本当は問題があるのではないかと思いますけれども,そう言われて待ったのですね。待った後に,今度は遺伝子診断で,日本人に数人しかいないような病気だということが分かったと。多分,保険の理屈で救えることは本当はあるのだと思いますが,でも裁判所は,支部長の立場は募集人で,かつ支部長という立場にある人がしなくてもいいよと言ったけれども,その時もし請求したら全額もらえていただろうということで,1000万円の支払を認めたわけですけれども。   こういう類型のものというのは,ここにいらっしゃる会社ではそういうことはないと思いますけれども,常に起こり得る問題で,効果としては非常に微々たるものですけれども,さかのぼって遅滞の責任を負うと。この事件では,請求の時から,裁判所に訴えた時から遅延利息を請求しておられるのですけれども,本当はもっと数年前までさかのぼれる。ただ,どこかというのはなかなか難しいと,そういう問題があるのですね。それはまた後ほどお話しします。   次に,5項にまいります。5項が,今問題になっております,ちょっと読みますと,保険金を請求したときから,保険者は,その保険金請求とともに,その保険者が契約していた同じ被保険者を当事者とする保険契約の保険金請求についても,専らその被保険者の最善の利益のために説明し,行動する義務を負う。この場合において,保険者が義務を怠ったときは,第2項の規定にかかわらず,保険者は,損害発生の時から遅滞の責任を負うと。これは,今,問題になっているケースで,例えば生保ですと,だんなが終身の医療保険付きを夫婦型でやると。奥さんは終身で医療保険がついている。奥様が不幸にして亡くなられると,死亡保険金請求があると,次に「医療もありましたか。」とこういうわけですね。   次に,御主人の方の保険の夫婦型で奥さんもカバーされているから,「それはありますか。」ということまで,そこまでは言ってはどうかと。損害保険であれば,火災保険で,家財,家族4人であれば傷害は出ますと。それとは別に,もし御主人の入った家族傷害保険で家族もカバーされていたのなら,保険契約は別ですけれども,同じ保険会社であれば,その契約についても説明しなさいと。逆に言うと,「保険はありませんか。」と聞きなさいと。説明する義務はお分かりだと思いますが,行動する義務はこれはもう今はないと思いますけれども,例えば自動車事故なんかで,当然搭乗者傷害の請求があるのに,その書類を入れないと,送り状のところに請求書類を入れないとか,いろいろ細かな問題はあるのですが,そういう,要するに請求がしにくくなるようなことはしてはいけませんよ,こういう規定で。これは従来,信義則でお考えになったところをもうちょっと明確化してやってはどうかと。別に保険会社に信認義務を課すとか,そういうつもりは全くなくて,そういう議論が現実にはないと思いますが,あくまでもそういう契約者が常識的にこれぐらいはやってほしいと。また,今,保険会社がおやりになろうとしているところを,効果としては非常に遅延利息ですから微々たるものですけれども,明確な効果として規定してみてはどうかということですね。   最後,残る一点,この損害発生の時までさかのぼってという問題があって,これは理論的には三つのレベルで考えないといけないと思うのですけれども,多分,民法レベルでは,本来あるべき請求があるべき時までさかのぼって,そこからあと遅延利息。ただ,さかのぼることはいいけれども,さかのぼれるのはあるべき請求があったところと。それがなかなか言えというと言えない問題があるのですね。   だから,民法レベルでは,これに対して逆に保険会社の方が,そのあるべき請求というのが,いや,この日だということを言ったら,損害発生の時又は保険事故発生の時にさかのぼらないで,もうちょっと手前に戻るという,そういう理屈の方が民法的には一貫しているのかもしれませんけれども。   次に,保険法レベル。保険法レベルで,これぐらいちょっと制裁的な要素があるので,非常に抵抗がおありかもしれませんけれども,あるべき保険金請求があるべき時から事故のところまで,もうちょっと戻っていいのかと。そのモラルリスク上,モラルハザードで契約者側に,健全な保険制度を維持するためにということで,いろいろな制裁的な規定があります。今日は議論されなかったですけれども,無効の場合に,特定の場合には保険料は返さないと。それと同じようなことを,今までは議論されていませんでしたけれども,保険会社の方にかけていいのかと。もし,本当にそれが制裁的なものであればと,理論的にはこういう問題があるかと思うのですけれども。   しかし,約款を見ると意外にそうでもないのかなと。この4項,5項は要するに第2項で保険会社に与えられらた一つの猶予というものを,こういう場合にはそういう猶予による利益を享受できませんよと,こういう図式のものになるわけですけれども,実際の保険の約款を見てみますと,構造は,まず保険金請求権は,これは家庭用自動車保険で,中には定額も損害てん補方式も両方ありますけれども,約款の第20条を見ますと,「当会社に対する保険金請求権は,次の時から,それぞれ発生し,これを行使することができる」という約款になっていますね。ここだけ見ると,もう発生の時から何か遅延利息が付くように思いますけれども,もちろんそうではなくて,まず何十日以内に書類を出せとかいう規定があって次に30日以内に払いますと。   でも,30日というものを要するに援用できないような立場になったときにどうなるかというと,その発生し行使することができるという形になっていて,これは突っ込んでいくと,その期限の定めのある債務,ない債務という枠組みでは本当はないのかもしれないのですけれども,そういうのを見ると,損害発生時のところまでといってもおかしくはないのかもしれないのですね。ここは議論があるかと思いますけれども,こういう形にしてはどうかと思います。   以上です。 ● ありがとうございます。   ただいまの○○委員のペーパーだと,①から⑤まであるのですが,最後に御説明があった④,⑤というのは若干新しい問題提起で,これを一括して議論するとまた,近時の問題に議論がちょっと拡散するおそれがあるかと思います。とりあえずは,④,⑤はちょっと後に送って,③までのところ,したがって,この部会資料の方の案について,まず議論を整理してみたいと思いますので,このあたりまず御意見をお願いいたします。   ○○幹事。 ● まず事務当局案について,確認をさせていただきたいのですが,私がお聞きしたいのは①と③の関係なのですが,先ほどの御説明では①で言う損害の確認のためというのは,免責事由の有無は含まないものであるということだったと思います。仮に「損害の確認のために通常必要な期間」が10日間であったとして,しかし,保険会社は免責事由があるかどうかを調べたいということで,30日調査したと。30日たったところで支払うという場合には,結局請求があった日から10日のところから,これは遅滞の責任を負うという,①からするとそうなるのですよね。結果的に免責事由がなかったと,それで支払うという場合には。   これに対して,③の話は損害の確認のための調査に限るのか,それとも免責事由の有無も含むのか,二つ考え方があるということだったと思いますが,損害の確認の有無のためのことに限るというのであれば,①と③の関係というのは,私はよく分かるのです。というのは,通常であれば10日で調査が済むはずのところを邪魔したので20日間かかってしまったという場合には,20日たったところから遅延利息が支払われると。それで分かるのですが,③のところで,免責事由の有無の調査も含むとした場合には,通常の損害の有無の確認については邪魔はしなかったけれども,免責事由の有無については邪魔をしたという場合に,①と③の関係からするとこれは,③では免責事由の有無の調査も含むとした場合には,これはどういうことになるのでしょうか。 ● おっしゃるとおりの疑問が出るだろうと考えておりましたが,まず全体として○○委員から御指摘ありましたこの①の「損害の確認」というのは,表現が熟していないかもしれませんが,私どもの意図としましては,9頁の(補足)の上3行ぐらいにございますとおり,保険事故の発生の確認,損害の発生の確認,それから必要な場合にはその損害額の算定,すなわち損害の範囲の確定とその損害額の評価というのが,すべて含まれるというつもりでこの言葉を使っておりました。それがまず前提でございます。   それから,それを前提に,①では免責の調査のための期間というのを,これは考えていないところですが,その損害の確認のために通常必要な期間に何をするかは,言ってみればフリーハンドなわけでして,その間,当然免責のための調査も並行して行われることが予想されますし,あるいは,そもそも損害の確認の調査と免責事由の有無の確認の調査をそんなに峻別できるものとも思いませんので,この間その作業が並行して進むことが当然想定されるわけです。   そうしますと,それをその期間でやはり妨害行為が,仮に故意に妨げる行為なり,欠くことのできない必要な協力が正当な理由なく拒まれた場合には,免責事由の調査に関してですね,やはり遅滞に陥らないということにしておかないといけないのではないかということで,必ずしも①の範囲と③の範囲とが一致しなくても,説明はつくのではないかという考えのもとに,①では「損害の確認のために通常必要な期間」という表現を用い,③では「保険金の支払のために必要な調査」という言葉を使って区別しつつ,ただ本当にそういう①と③の範囲が一致しなくてもいいのかどうかという問題意識があるものですから,(問題点)2でその点を問いかけたと,こういう意図でございます。 ● そうすると,説明を伺ってもちょっとまだよく分からない。結局どういうことになるのかがよく分からないのですが,③でその免責事由の有無の調査までは含まないとした場合はいいのか。含むとした場合には,そうすると①の期間を超えても--やはりすみません,よく分からない。 ● ちょっと説明を。 ● ちょっと例が適切か分かりませんが,例えば,通常必要な期間が10日ぐらいの保険契約であり,あるいは保険事故があったとした場合に,その保険会社が,例えば10日で遅滞になってしまうから,頑張って損害の確認の作業はさっさと済ませて,あとはこの事案については免責事由の有無だけが問題だと考えて,10日のうちの2日で損害の確認を済ませて,残り8日は猶予があるから,この間で頑張って免責事由の有無の調査を遂げて,何とか払うか払わないかの判断を保険者として下そうと,こういって一所懸命調査にかかりましたと。ところが,それで妨害が入ってしまいましたというときに,許容された10日間を有効に使おうと思ったのが,使えなくなってしまうわけですね。   そのときに,いや,もう10日たったから直ちに遅滞ですよと言えるかというと,その間,その保険者としては免責事由の有無を調査しようとしていたことができなくなったわけですから,それでも遅滞になってしまったらいけなくて,その5日間妨害があれば,それは5日はカウントしないということの方が合理的な規律ではないかなというのが,③の発想ということなのですけれども。 ● そうすると,最初の10日の間で妨害があったかどうかということなのですね。 ● そこはそういうふうに考えています。 ● ○○委員。 ● 議論の立つ点が非常に,まずこれを観念的に考えよう,こういうお立場なのでしょうかね。つまり,①の場合は約款に今ある30日間調査するという,生保だと5日間という規定がなかった場合にどういうルールになるのかという,そういうことで議論しておられるという理解でいいのですか。 ● とりあえず,そうお考えいただいた方が分かりやすいかと思います。 ● その場合にも一定の期間を置くと,そういうことですよね。それを,私はだから,それは反対したいのですね,どちらかというと。3項はまた別ですけれども,①の方でそういう場合もこういう一定の通常期間が必要だという,そういう考え方はどうなのかなと。それは従来そういう考え方をしていなかったのではないか,実際,現実にそういう商品がなかったというべきだと思うのですけれども,そこはちょっと何か余りに,そこまで考えなくてもいいのではないかという気持ちはもちろんあるわけですけれども,これは…… ● 要らないのではないかということになると,従来のように②的に,30日の猶予期間を置く,特約するみたいなことの合理性というのがちょっと問題になるような気もするのです。 ● それは問題になる。その内実をどう考えるかということを直接議論しなければいけなくなりますね。それを二つに分ける意味というのが根本的によく分からないのですよね。実際の査定は両方一緒にやっているわけですから。 ● ただ,これまでそこを明確に区別しないまま来たので,一度きちっと整理した方がいいのではないかという考えで,資料は今回作成させていただいたということでございます。結果として,最終的にはいろいろ考えたけれども,規律としては①,②,すなわち期限の定めがない場合,ある場合を問わず,一本の規律で賄えるということは,十分あり得るとは思っています。が,まずきちっと整理しておく必要があるだろうということから,こうしたものでして,①で「直ちに」と書いていませんが,これは,先ほど来あるいは今も御説明しましたとおり,保険契約の場合には必須のプロセスが本来あるはずで,直ちに遅滞に陥るという規律は本来おかしいのではないかという考え方をしているということです。 ● 前の「直ちに」と書いてあるときには,この直ちにというのは文字どおり,通常の法令用語としての直ちにかというと,それはもうちょっと幅があるのではないのですかねという,そういう前提で。 ● それはもちろん最高裁も「遅滞なく」と言っていますからね。 ● この場合,少しは特殊性があるのではないかというのですね。そういうことだったと思うのです。そういう「直ちに」を無理に変な解釈をするよりは,もうちょっと正面から書いた方が,民法との関係でも整理がよくなるかなということなのですが。民法の先生方,このあたりいかがでしょう。民法第412条との関係をこういうふうに整理してはどうかということなのですが。   ○○幹事。 ● 民法第412条自体の問題としてどういうようなことになるかというのは,前回も確か議論があったと思います。特に,保険の特殊性があって,この資料に書かれたような調査がないと,債権自体の確定というのが類型的にもできないし,それをきっちりやらないと保険という制度自体の健全性が保たれないという特殊性があるときに,第412条の局面において,請求があると,やはりそこから遅滞に陥るということになるかどうかというのは,解釈の余地はあるのだと思います。   ただ,そこを非常に強調すると,第412条の下でも少し違う解釈は可能であるということは,可能性としては持ってこられるのだろうというふうには思うのですが,他方で,一般的に債権があるかどうかについての調査のために必要なのでということで遅滞に陥るというのを免れるかというと,それは保険のところを置いておいて,一般的に言えばそうではないのではないかなというふうには思いますけれども,ちょっと弁解を,前回これが問題になったときに断言し過ぎたかもしれないと私自身ちょっと思っておりまして,条件ですとかそういうのがかかっているときに,その条件の成就があるかどうかとかの確認について,調査が必要な場合に民法上どうなるかというのは,少し余地があるのかなというふうには思います。   ただ,そう明確に第412条の問題として要るのかということはありますので,特に,やはり保険の特殊性ということを考えるならば,明示するというのが適切ではないのかなというふうに思っておりますし,かつ,遅滞と関連させて,遅滞責任を負うかということと連動させて「直ちに」という表現を使うと,やはり事態適合的ではないような感じはしていますので,保険の特殊性からすると,こういった規律の方を明確化する方がよろしいのではないかと。   つまり,結局「直ちに」というふうに置くと,民法第412条を含めて,そこにおける解釈がどうであるのかというのを,結局解釈になっていくことになるのだと思うので,それを立法するときに明確化した方がいいのではないかというふうには思うのですが,ただ逆に,今度気になる話は,それが民法にはね返ってくるかという,そっちの方は多少気になるところで,そうすると民法で言う第412条は常に余地のない,即時にみたいなのかという,その問題は少し気になってはいるのですけれども。   具体的な①,②の規律が適切かとか,合理的な期間をより明確化する必要はないのかと。例えば,こうして御提示のあったような30日というようなことを切ってはどうかということについては,今,何も申し上げていないつもりで,以前に申し上げたことについて若干の修正余地を含んで発言させていただいたつもりです。 ● ありがとうございます。   ○○委員。 ● 「直ちに」というのは,その幅があるというのはそのとおりで,ただ,これはもし宣言的なものだとしたら,こういうのもいいかなということなのですけれども,問題の,何もなかった場合のときに,損害の立証のための通常の責任というところは,これは,損害が発生したときに条件付き債権として発生するという議論はありますよね。民法の不法行為と同視することはできないのですけれども,やはり,いろいろ債権を確定するための手続があっても,基本はそこから利息が付くのだというような,そういう考え方と同視して考えるというのはできないのでしょうかね。   どうも何か今の約款があるのに,その内容を二つに分けて,損害の立証のためとそれ以外というのにするというところが,どうも何かついていけなくて,逆に言うと,今の約款の中には第1項のこの部分も含んだ形になるということなのですか。30日の中には。1項プラスこの2項では,保険金の支払のために必要なというのは,前回やったのは消えてしまっていますよね。それを合わせた期間が30日だという解釈になるのでしょうか。そこがよく私は,そこですごく抵抗がさっきからあるのですけれども。 ● ちょっと最初にお願いしましたとおり,今の約款をどう位置付けるかというのはちょっといったん離れて,保険法であるべき規律をひとまず御議論いただきたいと思っているのですけれども。ですから,今ある約款を前提に30日がどうだ,5日がどうだと言い出すと,あるべき規律の話から離れてしまいますので,あるべき規律として,しかもこの①,②の整理がいいかどうかも含めて,まずはちょっと御意見をちょうだいできればというように思っております。   先ほど○○幹事から御指摘のあった,若干気になるという点は,おっしゃるとおり私どもとしても気になっているのですが,ただ,例えば売買代金請求があったときに,あれ,こんな人からこんな物を買ったかなと言って,その売買代金請求権があるかないかを確認している時間をくださいとかいうものと,以前から○○幹事がおっしゃっているように,射倖契約である保険契約のもとで請求を受けたときに,この必須のプロセスとして確認作業が必要というのは,やはり次元が全然違うと。ですから,その次元が違うことは表現していいのではないかということで考えているということです。 ● ○○委員からどうぞ。 ● 今の約款を離れてという前提だったので,ちょっと念のための確認なのですけれども,この①とか②で期限の定めがあるとかないとか書いてあるのですが,これは具体的にどういう意味でとらえたらいいのですかね。例えば約款を離れるとなるときに,期限の定めがある,ないというのは,一体どこで何が書かれていると考えたらいいのか,ちょっとそこが私自身,議論の出発点としてよく分からないので,そこを教えていただければありがたいなと思うのですけれども。 ● また例によって説明がちょっと不正確だったかもしれませんが,現在ある約款を離れてということでして,ここで期限の定めをするというのは,通常想定されるのは約款において期限を定めた場合ということになろうかと思います。ただ,今の約款でどう書かれているとかということを前提に御議論するのではなく,保険契約において期限の定めがあるか,ないかという区別で整理することについて御意見をいただきたいと考えているということです。 ● 例えば生命保険会社ですと,今は我々は5日プラス事実の確認のため,特に時日が必要な場合は,その5日の外枠にありますと。損保会社の場合は30日とありますと。この5日とか30日とかをちょっと置いておいて,約款で何か書かれている場合は②ですよと。それで約款で何も書かれていないときは①ですよと,そういう整理ですか。 ● その約款で書かれたものが期限の定めに当たるかどうかによって決まることだろうと思います。ですから,約款で書いていても,例えば,それが期限の定めのないものとしつつ,法律上,例えばこの①の規律がある場合に損害の確認のために,ちょっと生保会社さんだと違いますが,仮に損保で,損害の確認のために通常必要な期間と法律上許容されているものを,もう事務処理のルールとして,当社は約款でこれを例えば5日なら5日と設定しましたという位置付けをすることも可能だと思いますので,それは約款がある日数を置いたときに,それが期限の定めなのか,あるいは相手方との間の期限の定めではなくて,社内の処理のルールを契約者との関係で表明したという位置付けで整理することもあり得るとは思います。そこは,ですから,期限の定めがあると見られる約定の条項なのか,そうでないのかによって変わり得る,抽象的にはそういうことになろうかと思います。 ● まず,○○幹事から。 ● また先走ったことを言うようで恐縮なのですが,本文①ですけれども,これが法律ができた場合にどういう規定振りになるのかは,ちょっとまだこれからの検討課題ということだろうと思うのですが,今のような損害の確認のために通常必要な期間というもので,大分適用の幅が広くなったり狭くなったりするということがあるのかなという気がして,もし,こういう規律を取り込むのであれば,やはり,より具体的な規定振りにする必要があるのかなというふうには思います。   ただ,この①の本文の位置付けなのですけれども,原則が民法第412条第3項,これはその特則あるいは例外規定のような位置付けになろうかと思うのですが,損害保険契約の場合に,およそ損害の調査,確認ということが不要な場合というのが,実際問題としてあるのかという気がして,多かれ少なかれ程度の差はあっても,必要なのがむしろ普通で,実際のところは第412条第3項の規定がそのまま適用になるということは,保険契約の場合ではなくて,この①の本文の規律でいくということになるかと思うのですが,そういう意味で,特に損害の確認のために通常必要な期間というのが,余りに無限定に解釈されてしまうと,民法が原則でこれが特則だという原則・例外の関係が逆転して,むしろこちらが原則的な規律になるのかなというふうに思います。   それで,(補足)1の説明の中で,若干私自身よく分からないのが,民法第412条第3項の規律をそのまま適用した場合には,保険会社にとってはこういう損害確認のためのプロセスが必然なので,保険会社にとって酷になるということがあるのではないかという趣旨の御説明があるかと思うのですが,民法第412条第3項の規律というのは,期限の定めのない金銭債権については,原則もう催告があれば,不可抗力であっても遅滞に陥って,債務者が提供するまでは,遅滞の責めを免れないということになっているわけですが。   これは私の理解は間違っているかもしれませんけれども,金銭債権というのは,常に金利,お金があるところには必ず金利が発生するという考え方が,その規律の背景にあるのではないかと思います。保険金支払債務の場合も,確かにその損害の調査のために保険会社は時間を費やしているのですが,その間に保険金相当額というのは,保険会社の手元において運用されて金利を得られているわけなのですね。いよいよ保険金支払債務があるということが調査の結果判明したときに,その間運用した金利を保険会社が取得するのがいいのか,やはり請求をされた時から被保険者が取得するのがいいのかという,そういう点が問題になるのではないかと思うのですね。そういうことを考えた場合に,民法の原則と違えて,民法の原則からいうと,一般的な債務の存否,額の確定の調査の必要ということは抗弁にならないと思うのですが,そういうことを保険金支払債務の場合については抗弁にするのがいいのかどうかというあたりが,ちょっとまだよく分からないところではあります。   そういうことを考えますと,この本文の①に言う「損害の確認のために通常必要な期間」というのは,より明確にする必要があるということと,仮にこういう規律を置くにしても,その事由というのはかなり限定されたものであるべきではないかというふうに考えております。   以上です。 ● 今のに関連して,おっしゃるとおり明確にする必要はあるだろうと思っていますし,ここに入るべき確認の対象は狭くすべきだと考えているからこそ,私どもは(補足)に書きましたとおり,免責事由の有無とかは入れていないということでございます。   それから,今の御意見に触発されて補足させていただきますと,もともと,従来直ちに支払わなければならないというのをデフォルト・ルールにしていたわけですが,損害保険契約においては,今まさにおっしゃったように,損害の確認の必要がない場面というのはないはずなので,それが請求書類を見た途端に終わるような事案はあるにせよ,少なくともそういう場合であっても,損害の確認というプロセスは経ているはずですので,少なくとも損害の確認に必要だというのは,まず最初に来るべきだろうということで,今回①を従来の書き振りから改めたということでございます。   ただ,その際に,必要な期間が経過した後,支払わなければならないといった,そういう書き方にしなかったのは,9頁の(補足)2の4行目ぐらいに書いてあるところですけれども,立証責任を意識してのことでして,必要な期間が経過した後,支払わなければならない,あるいは遅滞の責任を負うと書いてしまいますと,通常の発想であれば,その通常必要な期間が経過したことを請求者側が言わなければいけない,立証しなければ遅延損害金の請求の請求原因事実が立たないということになってしまうと思われますが,この場面はそうではなくて,これだけは通常必要だから,この間は遅滞に陥っていないのだよということを保険者側に言わせるのが相当だろうという判断のもとに,①はこういうちょっと持って回った言い方をしているということでございます。 ● ○○委員。 ● ○○幹事が全部言って,共通で,私がうまく言えなかったところをきちっと言っていただいたようで,そのとおりだと思うのです。 ● ○○幹事。 ● そういう意味では,私も○○幹事と同じになってしまうのですが,ちょっと補足になるかどうか分からないのですけれども,前回のときには,私は第412条第3項の原則でいけるのではないかというか,請求された場合には直ちにというような意見を述べたかと思うのですけれども,やはり先ほど皆さんがおっしゃっているように,保険契約の特色として,その損害の額を確定しなければならないというところが,保険会社の行為になっているというところが特色があるのかなと思っております。   何か事故が起こって,その金銭の支払を受けられるというのが,不法行為の損害賠償請求だとして,それと類似の場面で,保険会社としては自分に帰責性がなくて,ただ契約上の義務として,その損害保険金を支払うわけですので,その損害の額の確定というのを行わなければならない場合に,その額の確定のための調査とか,調査をする権利とか,調査をする期間については遅延の責めを負わないというのは,これは,やはり保険契約の特色としていいのではないかと思います。   そのための規定としては,①のところの皆さんがおっしゃっているように,この「損害の確認のために通常必要な期間」というところをもうちょっと絞り込んで,それはどういうものをヒントにしたらいいかということなのですけれども,そんなに適切な判例か分からないのですけれども,先ほどたまたま見ていたのが,昭和62年の自動車損害賠償事件なのですけれども,通知義務を怠ってそれで免責かどうかというところで,その義務というのは保険者が適切な調査を,損害が拡大することを防ぐとか,その判旨そのものの言葉ではないですけれども,解説に保険会社の権利を行使する適切な機会を与えるための通知であるというふうに言っているので,その支払の段階において保険者側が何らかの権利を持っていて,その権利を行使する期間については遅滞の責めを負わないのは当然なので,その保険者が行える権利というのは何かということをピックアップすると,ここに①の「損害の確認のために通常必要な期間」のキーワードが出てくるのかなと思うのです。   まずは,損害の発生というのが,被保険者側が立証責任を負うとすると,請求をする段階である程度,その手前でも通知義務というのがあるので通知は行われているでしょう。説明義務というのが書かれないにせよ,損害をある程度立証できるような形で請求をした場合に,その損害の事実の確認と,損害の額の確認と,それから先ほど議論されていた他保険にかかっているかどうかというのはその責任の有無というのか,ちょっと順番がいいか分からないのですけれども,そのくらいを確認するために通常必要な期間とかにすればいいかなと思います。   それで②の方が,①がそれがデフォルト・ルールだったら,任意規定ということで②というのは特に必要がなくなって,③については,その必要な調査を拒んだ場合には,通知義務違反とか,調査権というのがあればそれを拒めば,そちらで信義則違反とかで賠償責任が被保険者側に出てくると思うので,その間に保険者が遅滞の責任が発生したと,①の相当な期間を経過したために遅滞の責任を負ったとしても,被保険者側の損害賠償義務と実際には相殺できて,その期間についても遅滞の遅延利息というのを支払う義務が生じないと思いますので,そうすると③も要らなくなるかなという気もいたします。 ● ○○幹事。 ● 私も今の○○幹事の具体的な御提案はちょっと置きまして,その前におっしゃった基本的なスタンス,それから,その前の○○幹事がおっしゃった基本的なスタンスに賛成です。必要最小限の期間というのを具体的に絞り込むという方向で,規律を設けるべきではないかなというふうに思っております。   それで民法ではどうですかとか,あるいは第412条ではどうなるかというのは,先ほどから議論になっておりますけれども,その点について一言だけ私の感想を述べますけれども。   第412条の解釈は,基本的には先ほど○○幹事がおっしゃったようなことになると思うのですけれども,保険の方で保険の特殊性があるということであれば,それは立法しないとしても,第412条の解釈論で処理をするという余地は,それは十分にあるだろうと思います。ですから,第412条がある以上,絶対に請求したらこうなるのだというような帰結になるわけではありませんけれども,そこは留保させていただきたいと思うのですけれども,せっかく保険契約法をつくるということですので,明確なルールを確認であれ,創設であれ,設けておくというのが望ましいのではないかと思います。 ● ほかにこのあたり。   ○○幹事。 ● 私は基本的に御提案の方向で賛成なのですが,こういう理解でいいのでしょうか。1項の部分は,期限の定めがあろうがなかろうが,基本的に保険契約にあって,とりわけこれは損害保険ですけれども,損害保険にあって,支払段階で損害の確認が必要という一定の期間を置くことが,言わば理論的に前提とされる。   2項のところは,期限の定めを置いたとしても,その期限がかなり長過ぎるというような場合には,それは短く削るのですよと。   3項の部分は,その適正な支払のために調査に入っているのだけれども,その調査を妨げられた場合は,それがさらに伸びるのですよと。そういう理解ができるのであれば,私は基本的に賛成です。 ● 今の点,一点だけ,ちょっとこちらの認識と違う点がございまして,それは①は期限の定めがあるなしにかかわらず働くとは思っていませんで,やはり期限の定めがない場合だと思っています。といいますのは,期限を保険者が短く自らが設定した場合には,もうそれは約束したこととして,そこから遅滞に陥って全然おかしくない。ただ,もちろん保険の健全性の維持という観点から,そんな気前のいい払い方をしていいのかという議論は別途あるかと思いますが,少なくとも新しい保険法で規律をかぶせなければいけない場面かというとそうではないと。   あくまで当事者の,先ほど口頭での説明でも申し上げましたが,当事者が期間を定めたときには,それはそれを基本的に尊重しますと。自ら保険者が短くした分には,それはどうぞと。ただ,長過ぎる場合には短くしなければいけないだろうということで,あくまで①,②で期限の定めがあるなしで一応分けていいのではないかと考えているということでございます。 ● すみません,そうすると②のところは,言わば半面的強行規定みたいに,あるいは,場合によったら絶対的強行規定なのかもしれませんが,そういうことも含んでおられるということでしょうか。 ● 置く以上は,やはりそういう意味で強行規定的に考えないと,何のために置いたのかということになってしまうかなとは感じています。まだちょっと詳細,検討し切れていませんが,現在のイメージはそういったイメージでございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 今の事務当局の関係でちょっと確認なのですけれども,生保についてもう一度議論していただくということでよろしいのですよね。 ● そのつもりでおります。 ● ちょっと生保の場合,約款の書き方とか事務のフローが違うものですから,先ほどの御説明だとちょっと問題があるかなと思うのですけれども,それは改めてということで。 ● 抱かれた疑問点は温めておいていただければと思います。 ● ではそういうことで。   ○○委員。 ● 余りお時間をとりたくないのですけれども,根本論からいうと,私は先ほど○○幹事が御指摘なさった点は非常に根本的な問題だと思っていまして,金銭債務というのはとにかく期限が来たら,それで発生すると。なぜかというと,まさにさっき○○幹事が御指摘のように,その部分の資金を持っている債務者の方が払わないで手元にあれば,それで金利が発生してくるからと。それは本当は大原則で,できればそれの例外は規定しない方がいいとは思っています。   例えばそれと同じような考え方,民法第419条第3項で不可抗力の抗弁は金銭債務についてはできないというのは,基本的にはそういう考えがあるのかなと思っていまして。 ● そこはおっしゃるとおりで,以前,○○幹事からも御指摘いただいたところでそのとおりだと思っていますが,ただ,それゆえに期限の定め方として①のような規律が不合理になるかというと,そうでもないですよね。そこは,まさに政策判断というか,価値判断だと思っていますので,おっしゃることは…… ● いいですか,ちょっとだけ。政策判断から考えますと,仮に,少しぐらいこれを遅らせても,実際,保険会社にとって普通はそれほど大したことはないとは思います。ただ,金利の点について言えば,今は6分の金利というのが,実際の運用金利からはかなり乖離していますから,そこの点の問題があるということは一つあると思います。   それはそれとして,ここで言う「通常必要な期間」と,2項で言う「合理的な期間」の関係がどういうふうに理解されるのかというのが,それがちょっと気になっていまして,これは同じなのか,それとも①の方の「通常必要な期間」というのは,当該契約にスペシフィックな期間,例えば非常に調査等が難しい契約であれば,それの分だけ長いというような観念として書かれているのか。それに対して②の方は,「合理的な期間」というのは,当該種類の保険契約一般について,これぐらいの期間が合理的というところで決まっていくのか。その他の①と②の二つの概念を変えていくファクターはあり得ると思うのですけれども,そこら辺どうお考えになっているのか,ちょっと教えていただきたいと思います。 ● まだ詰め切れていない段階ですけれども,①と②の表現は違いますが,どちらもその契約にスペシフィックな見方をして,通常あるいは合理的かを考えるべきだと思っていますが,①は先ほど来出ていますような配慮から,損害の確認のために絞っているのに対して,②の「合理的な期間」というのは,基本的に当事者が契約で定める期限の定めを尊重しましょうということですから,そこで保険者側が免責事由の云々で,通常想定されることも意識しつつ,何か盛り込んで,では何日ということもあり得ると思うのです。   それは一律に指定すべきかというと,それが合理的な範囲であれば,それをも含むことでいいのではないかというようなイメージでおりまして,それで①,②の表現を変えているということでございまして,契約ごとにスペシフィックに考えるという点では共通だと思っていますが,今,申し上げた点では区別していい,あるいはしてしかるべきではないかと思っているということでございます。 ● そうすると,②の方である会社が定めた約款の規定は,ある契約については合理的な期間に反しているし,ある個別の契約については,スペシフィックとおっしゃったことの意味なのですけれども。 ● 個別ではなくて種類。 ● 種類がどれぐらいの範囲でお考えなのですか。 ● 先ほど来出ています契約,保険事故の種類なり…… ● ①の方は,場合によっては徹底的にスペシフィックになり得るような気もするのですね。本当に当該事案についてそういう事情があると,そこまで①の方は考えて,②と区別され得る場合が出てくるのかという気もしたのですけれども,そういうふうに考えているのか,そこら辺。 ● そういう考えもあると思いますが,資料をつくった段階では,そうは考えていませんでした。 ● どうぞ,○○委員。 ● もう少しレベルの低いお話をさせていただくと,約款を離れるというお話がありましたから,本当は約款を離れたいのですけれども,なかなか今,約款を離れるのが難しくて,ついついそれの目線で見てしまうものですから,ちょっと申し上げるのですけれども,期限の定めがある場合とない場合というふうに分けて,例えば先ほど○○委員が質問したのと同じような質問になってしまうのですけれども,現行の約款を離れるといっても,とりあえず,そのあるもので考えれば,何日間と規定しているのは期限の定めのある方で,ただし文言があって後ろに延ばせるという部分があって,それは①の方の規定に該当するのですか。   要するに,例えば5日間なら5日間,損保だと30日ですか,30日というふうにやっておいて,ただし調査に必要なものはという今,書き振りをしているではないですか。約款を離れろって言っているのにすみませんね。調査に必要なものはと言っているのは,それは②の規定のイレギュラーなものなのか,それとも①の規定だというふうに読むのかということが聞きたいのです。そうでないと,せっかく②の規定でこういうふうにがちがちの原則で,例えば30日を決めたら,決めたのだから,そこで限ったのだからそれ以上になったら,そこから払いなさいよとおっしゃっていただいている部分が,①の方で何もならなくなってしまうのかなという気がすごくあるものですから,それが一つ目の質問です。   それから,次は質問ではなくて,「直ちに」というのと全くこれは変わりませんよと,変わらないのだけれども,直ちにという趣旨でこういうふうにお書きになったというふうにここの解説にもあるし,先ほども御説明がありました。ただ,普通に読んでいると,これが「直ちに」という大変明瞭な文言が消えてしまったことが全然変わらない,その本来保険法で言う「直ちに」というのが想定したものとこれと同じですかと言われると,なかなかそういうふうに明瞭に読めないという部分がございまして,そこの部分は「直ちに」という規定が,○○委員のペーパーの中におありになりますように,やはり,そこに残していただきたい文言かなというのがございます。   すみません,先ほどの一番目の方を教えていただければ。 ● まず二番目の方からですが,おっしゃるのは,そういう御意見をいただくだろうと思っていましたので,なお工夫したいと思っています。第412条第3項があっても,まず請求で原則遅滞ですよと。ただし,保険者がこういう立証をした場合には責任を負わないという,これは言ってみれば,その第412条第3項を本文で書き,そのただし書としてこの資料の8頁の①を書けるようであれば,それはまたそういうことも工夫すべきかなとも思っていまして,そこはなお検討させていただきたいと思っております。   それから,今の規定がどうかというのは,抽象的なお答えは先ほどと全く同じで,その約款の規定がどう解釈されるかということにかかってきてしまいます。けれども,仮に例えば30日,それからそれが延びることがありますという2段階の約定があったとすれば,基本的にはそれはどちらの約定も②の期限の定めがあると。それは期限の定めとそれが解釈される書き振りになっていればですけれども,それは30日の方もそうですし,場合によっては30日を超えて延びますよと。両方ともそれは期限の定めであって,どちらについても②が働いて,合理的な期間を超える場合には,それは短く短縮されますよという働き方をすることになるのではないかと考えて,②を書いてございます。 ● 調査が必要な場合はさらに延びますみたいなことを①で読み込もうなんて気は全然ないと思いますね。   ○○委員。 ● 若干飛んでしまっている議論かもしれませんけれども,今,お話を伺ってきて,何か二つの考え方が割と明瞭で,一つは根本で金銭債務のこの利子自体をだれが受け取るべきかという基本的な問題,もう一つは政策的判断とおっしゃられましたが,この遅延利子というのが保険者あるいは被保険者に対して,何らかの行動に影響を与える,そういうことを前提とした議論と,何か二つに分かれているような気が私にはいたします。   後者の方がどちらかというと経済学的な議論になると思うのですけれども,その場合,遅延利息を早目に負担させたら,保険者側はできるだけ迅速に保険金を払うような行動に多分移るでしょう。逆に,そこを緩くしたら逆かもしれないし,また,それぞれの行動が変わると思うのですけれども,ここで問題なのは,その行動をどうしたら合理的だと判断するかという基準だと思うのですけれども,多分,行動変化させた場合の合理的というのは,最適な行動を両者がしたときが,理屈ですけれども,ここで言う合理的な期間であると思います。   ただ,そのときにこの利子というのが固定で5分ですか,今,定まっていて,市場の実態と合っていないということが,そもそもそれが行動をめちゃくちゃ,一番ゆがめる原因になって,そこが変わらない限り,余り根本的な,また,根本論に戻っても5分,そもそも実際の利子はだれが負うべきかといっても,5分というと相当の不当利得が,不当利得と言っていいかどうか分かりませんけれども,いってしまうわけで,そこがすごくインセンティブをゆがめるわけなので,実際合理的という場合には,そこまで考えないと難しい話だなと。ちょっと飛んだ話になってしまいましたけれども。 ● あともう一点,重要な問題がありますので,議論を収束したいと思います。   ○○委員,ごく簡単にお願いします。 ● 今,○○委員がおっしゃったこと,私も危惧していまして,要するに,この規定を当てはめたときにどういうことになるか。例えば自動車保険で何も言わないで30日以内に払いますと書いてあって,次に調査が必要だと120日と書いてある。だから,やはり規定の上限は置かないといけないのではないかという点と,3項について,これも議論されませんでしたが,3項を置いた場合だけ置いていいのかという論点は,またちょっといつか議論していただければと思います。   ありがとうございました。 ● では,今日の①から③について,いろいろ問題点が指摘されましたので,まだ「通常」とか「合理的な」とか,不確定のまま置いてあるところが,また余計に議論を錯綜させているのではないかと。そのあたりももう少し検討していただいて。 ● 一点だけ。 ● はい,どうぞ。 ● 期日間に御意見をいただく意味でも,一点だけ補足させていただきたいと思いますが,その事務当局案が①,②に加えて③だけを今回本文に掲げて,○○委員の意見書の④,⑤のようなことを掲げていないということでございますけれども,それについては理由がございます。   といいますのは,これまでは調査に必要がある場合には,調査が終了した後,直ちに支払わなければならないという規律にしていまして,調査が終了したかどうかを問題にしていたわけです。そうしますと,この③のような妨害なり非協力があった場合には調査が終わらないわけですから,それはもう調査が終わらないということで遅滞にならないということで読めたわけですが,今回,ちょっといったん整理をしようということで,本文の①,②のように実際に調査が終わったかではなくて,それにかかる相当な期間の経過をもって規律をしようと,こう発想を転換,転換というと大げさですが,そういう整理をしたわけです。   そうしますと,終わったかどうかを問題にするわけではありませんから,期間は刻々と進んでしまうわけです。その中でこの妨害行為や正当な理由のない非協力があったときにもカウントされてしまうということになってしまいますので,そこは①,②のように,実際の調査が終わったかどうかをとらえるのではなくて,期間の経過をとらえたことに伴ってセットで掲げるべきだろうという発想を事務当局はして,③を出したということですので,それを前提にまた御議論を三読以降お願いできればと思います。 ● ということで。   それでは,○○委員のペーパーで先送りしていた④,⑤,これ御説明は先ほど○○委員からあったと思いますが,この点について何か今日の段階で御意見ございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 一点だけ質問させてください。⑤の場合は,同一の保険会社の場合に限ってということですね。そうなると,他社の契約というのはこれは適用されないということ,当然…… ● それができれば一番いいのですが,それはもう無理な話で。 ● そうすると,競争という観点から,こういったことが果たして適切なのか。つまり,同一の会社に入った方がメリットがあるわけで,ある意味で抱き合わせ販売を,ちょっと下世話な言い方ですけれども,可能になってしまわないか。そういった競争上の配慮というのは何かお考えかなと。 ● そういうことは,余り現実的に問題になっていなくて,私の念頭にありますのは,もう既に業界は今,争いをやっておられて,始められて,お金をかけて発表しておられますけれども,そういう流れを踏まえて,こういうところまではいいのではないかと。これが何かマイナスの波及効果があるというふうには全く考えていないのですけれどもね。 ● ほかに。それでは,またこの点も,今日御提案ということなので,また御検討いただいて,次のときにでも御意見をいただければと思います。   それでは,とりあえず先に進みたいと思います。これが18頁に飛びまして,責任保険のところですが,その「1 被害者が保険金から損害の回復を受けるための方策」という部分でございます。   まず,説明をお願いいたします。 ● (補足)1及び2に記載したとおり,被保険者について破産手続開始の決定等があり,被保険者に対する個別の権利行使が法律上禁止される場合に,被害者が他の一般債権者に優先して保険金から損害の回復を受けられるようにするための方策を設けるべきであるとの立法論的な提案がされていることを踏まえ,本文ではそのような方策を設けることを提案するとともに,その具体的な方策の例として,①と②の案を掲げております。   この点に関し,被保険者が倒産した場合に限らず,被害者の損害賠償請求の便宜のための方策を設けるべきであるとの考え方もあり得るところではございますが,ここでは,まず保険事故が発生した後に,被保険者について破産手続開始の決定があった場合を念頭に置いて御議論いただきたいと思います。   ①では,被保険者が被害者に対して,現に損害賠償金の支払をした場合に限り,保険者に対して保険金の支払の請求をすることができるものとすることで,被害者の損害が回復される前に,被保険者又は破産管財人に対して保険金が支払われることがないようにし,その上で被害者と被保険者との間で,被保険者の損害賠償責任を認める判決が確定し,又は裁判上の和解,調停等が成立した場合には,被害者は被保険者が支払うべき損害賠償額を保険者に対しても請求することができるものとする方法を掲げております。   これは,被害者と被保険者との間で,被保険者の損害賠償責任及びその額が確定するまでは,被害者から保険者に対する請求を認めず,それが確定して初めて,被保険者は保険者に対して損害賠償額の支払を請求することができるものとする考え方でございます。この点に関し,(問題点)1の(ⅰ)では,被害者と被保険者との間で,被保険者の損害賠償責任を認める判決が確定した場合や,裁判上の和解,調停が成立した場合以外に,いかなる場合に被害者から保険者に対する請求を認めるべきかについて問題提起をしており,例えば,裁判所が関与する手続に限らず,ADRのような裁判外の紛争解決手続を通じて,損害賠償責任が確定した場合にも,被害者から保険者に対する請求を認めることや,そもそも第三者機関を通じて損害賠償責任が確定した場合に限定しないこと等も考えられます。   他方で,被害者と被保険者との間で,被保険者の損害賠償責任を認める判決が確定し,あるいは裁判上の和解や調停が成立した場合であっても,その訴訟や和解,調停が保険者の知らないところで行われた場合には,被保険者が本来主張すべき過失相殺等の主張をしていなかったり,過大な請求額を安易に認めていたりする場合も考えられなくはございません。また,被害者と被保険者との間の訴訟が係属中に,被保険者について破産手続開始の決定があった場合には,破産法第44条により,当該訴訟手続は中断し,同法第116条以下の破産債権調査手続を通じて,被害者の被保険者に対する債権が確定することになると考えられます。   そこで,これらの場合のように,被保険者の損害賠償責任の確定に保険者が関与することができなかった場合にも,被害者から保険者に対する請求を認めることでよいかについても,御意見をいただきたいと思います。そのほか,①の方法を採用するとした場合に考えられる問題点については,(問題点)1の(ⅱ)から(ⅴ)までに掲げております。   以上の①の方法に対し,②では,被害者は保険金請求権について特別の先取特権を有するものとする方法を掲げております。この方法では,被害者は破産法第2条第9項及び第10項により別除権者となり,同法第65条により,破産手続によらずにその担保権の実行をすることができると考えられます。しかし,(問題点)2の(ⅰ)に記載したとおり,特別の先取特権の実行手続については,その実効性に疑問があるほか,(ⅱ)の点についても検討する必要があると思われます。   そこで,①と②のそれぞれに関する問題点を踏まえて,いかなる方策を設けるべきかについて御意見をいただきたいと思います。   (問題点)3では,①と②に共通する問題として,被害者が責任保険契約の存在及びその内容を知るための方策を設ける必要があるかどうかについて問題提起をしております。特に企業保険の分野では,責任保険契約の内容が企業秘密に関する情報を含むことがある,あるいは保険契約の存在そのものが企業秘密に当たるとの指摘がされることもあるため,このような指摘も踏まえて検討する必要があると思われます。   ここまでが主に被保険者が倒産した場合を前提として考えられる問題点を掲げたものですが,さらに(問題点)4では,被保険者が倒産した場合以外にも本文のような方策を設けるべきか,これを設ける場合にはあらゆる責任保険契約についてその方策を認めることでよいか,それとも,被害者が個人の場合や要保護性の高い人身損害に限って認めるべきか等について問題提起をしております。   以上のように,本文及び(問題点)は,被害者が保険金から損害の回復を受けるための方策についてのたたき台を提案するとともに,その採否を検討する上で問題となり得る事項を整理したものですが,具体的な規律を検討するに当たっては,さらに①の方法については保険者が被害者に損害賠償額を支払った場合には,被保険者に保険金を支払ったものとみなす旨の規律や,この場合に保険者が支払った限度で,被害者の被保険者に対する損害賠償請求権が消滅する旨の規律等を設けることを検討する必要があると思われますし,②の方法については,被保険者の保険金請求権の譲渡や差押えを禁止する旨の規律等を設けることを検討する必要があると思われます。   ただ,現時点では,被害者が保険金から損害の回復を受けるための方策を設けることの当否や,その方策の基本的な枠組み及びその適用範囲を中心に,御審議をお願いすることとし,それに伴う付随的な規律については,改めて御審議をお願いすることとしたいと思います。   以上でございます。 ● それでは,従前の第一読会でも非常に議論のあったところですが,今日は多少たたき台的なものが提示されております。またこれも,いろいろ御意見があろうかと思いますのでよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● まず,賠償責任保険につきましては,加害者の賠償資力を確保することによりまして,結果的に被害者の救済を図るという位置付けの保険だというふうに考えておりまして,保険金を被保険者,要するに,加害者に支払うということが一般的でございますが,一方で,また被害者のためのファンドというような性格を強めている賠償責任保険もあるわけでございまして,例えば,法律上加入が強制されているような保険,これにつきましては,むしろその加害者,つまり,被保険者ではなくて,被害者のための保険であるという性格が法律上も認められているわけでございますので,こういうものにつきましては,被害者の直接の求めに応じて保険会社が保険金を支払うという仕組みも,当然,十分考えられるわけでございまして,現実にもそういう形で,例えばドイツの新しい保険契約法でもそういう法律上加入が義務付けられているような,そういう賠償責任保険については,直接的な請求権,被害者に対する支払ということが行われるというふうに検討がされているところだというふうに皆さん御承知のことと思います。   一方,保険会社は,賠償事故に関しまして,本来紛争の当事者ではございませんので,事故の解決に向けて主導的な役割を果たすとか,原因究明のために被保険者を含めましたいろいろな方々の役割を調べるとか,それから,その被保険者の行為と損害との関係について,積極的に有責,無責を立証するとかということは,そういうノウハウもございませんし,被害者から直接的な請求を受けたとしても,なかなか判断がしにくい,関与がしにくいというのが現実でございます。   今回,この問題は新しい形で,いわゆる被保険者が破産した場合の救済というような形で明示されておりますので,被害者の救済のために責任保険契約の保険金から優先的に損害賠償金の支払をするということが方向付けられておりますので,これにつきましては,私どもとしても異論は特にございませんが,その場合でも,どういう場合でも倒産したらどのような場合でもよいというわけではなくて,客観的に被保険者に責任の所在があって,そういうことが明らかであって,なおかつ保険会社もその紛争に関与して,被害者の賠償額が確定しているような場合には,先ほどのような問題も解決されますので,こうした場合に限って被害者からの直接的な請求,あるいは被害者に対する直接の保険金の支払ということができるのではないかなと。そういうことにしていただきたいなというふうに考えています。   今,お手元の資料の19頁の(問題点)のところの1の(ⅰ)というところ,幾つか私どもの考え方を述べさせていただきたいと思いますが,1の(ⅰ)につきましては,19頁の下から2行目以下に記載がございますけれども,和解とか調停が保険者の知らないところで行われてしまった場合には,保険会社が損害賠償金を争いなく支払わなければならないということになると,非常に問題が生じると。それでは,後で保険者がそれについて争いを行うということになりますと,結局何のためにこの制度が設けられるかが分からなくなってしまう。したがいまして,こういうことで保険会社が関与した形の和解・調停が行われた場合に限って支払われることが必要ではないかなと。   これはなぜかといいますと,加害者と被害者が,言葉は悪いのですけれども,モラルの問題の高い賠償額,ある種の結託をして賠償額を決めてしまうというようなことになりますと,社会的なコストが上がってしまうということで,これは,やはり何のためにこの制度を導入したのかが分からなくなってしまう,その制度を悪用するということが十分考えられるということが懸念していることでございます。   次の頁にまいりまして,(問題点)1の(ⅱ)でございますけれども,被保険者に対抗できる事由につきましては,すべて被害者にも対抗できるというものにしていただきたいと考えております。抗弁事由を法律上制限することは,事故発生後の被保険者の義務を免責にするということになりますので,自賠責保険のような政府補償もあるような特別な立法の保険につきましては別としまして,一般の保険でこういう形にするのは望ましくないというふうに考えています。   それから,(ⅳ)でございますけれども,被害者の請求権と被保険者の保険金請求権の時効期間は,これはそろえておくということが適当であるというふうに考えております。どちらかの権利が残存するというのは好ましい状態ではないというふうに考えています。   なお,(問題点)3というところでございますけれども,この被害者が責任保険契約の存在及び内容を知るための方策でございますけれども,倒産に限れば,開示をするということも可能ではないかというふうに考えられますが,一般的にどんな保険をつけているかにつきましては,これは企業の秘密でございまして,そういうものにつきまして常に開示をするということは望ましくないだろうというふうに考えております。直接請求権を法定化しているフランスでも,調べてみましたが,実際には保険契約の開示につきましては強制されているわけではございません。   いずれにしましても,強制保険につきまして直接請求権が法定化されること,また,被保険者が倒産した場合に限って,被害者救済のためにこういう措置が導入されること,その場合にも客観的に被保険者に責任の所在があることが明らかであり,保険者も関与した形で賠償額が確定しているような場合,これにつきまして,この制度が導入されるということを希望する次第でございます。   以上でございます。 ● ありがとうございました。   ○○幹事。 ● 一般的にはこういった制度が導入されることが望ましいというふうに考えております。ただ,その範囲がどこまでであるべきかということでございまして,責任保険一般というのは広過ぎないだろうかという気がしております。つまり,この問題自体は以前から指摘されていますように,具体的な手続としてどういうような制度が,適正なものが組めるかということとともに,これらに要保護性を基礎付ける十分な政策理由があるのかという点が問題になっていたかと思いますけれども,後者の観点で,確かにその責任発生が原因となっているとはいえ,優先権を付与するだけの十分な理由がどこにあるのかといったときに,およそ一般的に保険による給付金がそれによって受けられることになったからというので,特に破綻している債務者の財産から優先的にとれる理由が十分に基礎付けられるだろうかというのは,いささか疑問なように思われます。   私自身は,個人の人損の被害のような場合に最も救済の必要性が高いというふうに考えておりまして,生命や身体の侵害があったような場合ということではないかと。その場合ですと,既に司法体系の中でも立法論として先取特権を付与するとか,救済の必要性というのがもちろん言われているのは言われているわけですが,それ以外のところでも,倒産手続における免責債権に当たるかどうかといったところで,一定の要保護性がある債権であるということは,既に承認されていますので,そういった政策判断は,既に実体法のとるところだという説明ができるのではないかと思います。   それに対して,言われたような企業間のケースなどは,それはそこまで優先権を付与すべき政策判断があるのかというのは,大変疑問なように思います。そうすると,適用範囲の中核がそこから出発して,むしろ,それからさらに広げるべき政策判断のあるようなものがあるのかということを問うていくのが,より望ましいのではないかと。特に,個人で人損のような場合に,例えば保険の存在なんかについても通知する必要があるかというところも,そういった事例から検討していって,さらにどこまで広げられるのかという検討の方がよろしいのではないかというふうに思っております。そういったものである限りにおいて,強制保険に必ずしも限らないということでよいのではないかと思いますけれども。   それが一つで,もう一つ適用範囲あるいは場面の問題ですけれども,最も要保護性が高いのは倒産の状況であるということは,そのとおりだと思います。ただ,法的倒産処理が開始している場合に限るというのは,一方で狭過ぎないかというのも気になるところでして,もしも,仮にそういうふうになると,そうだとすると,倒産前にさっさと保険は払っておいてもらおうみたいなことにもなりかねないわけで,そうしたときには実質的な破綻ということが一番問題ですので。   しかしながら,無資力とかそういうことを証明できないと発動しないとなると,これはまた問題ですので,適用範囲を先ほどのような最も要保護性の高いところに限った上で,必ずしも倒産手続に限らないというような形の方が,制度としてもよろしいのではないかというふうに思います。   とりあえず適用範囲についてはそういうことで,具体的な話としては幾つかあるのですが,細かいところかもしれませんけれども,①で裁判所の和解や調停等が成立した場合の「等」というのが,どういうものを想定しているかということですが,破産債権の届け出をして確定したような場合はここに含むということでよろしいのでしょうか。でないと,そこまでにやっておかないと,肝心な倒産のときにどうしようもないというようなことがありまして,ちょっとこれは内容として教えていただきたいのです。もちろん保険者が関与していないのでいいのかどうかというところは一方であるのですが,もともとこの「等」の中にそういうものも含んでおられるかというのをちょっと確認させていただければと思います。 ● 今の○○幹事の質問その他御意見について何か。事務当局がこれをつくった前提で。 ● 今の○○幹事からの御質問についてですけれども,先ほどの説明の中でも若干触れさせていただきましたが,ここの「等」につきましては,この(問題点)1の(ⅰ)で問題提起しているとおり,これ以外に何を含めるべきかということは,まさにこの場で御議論をお願いしたいと考えております。   例えば,和解・調停に類するものということでいうと,先ほどのADR等の第三者の紛争解決機関というものは一つ考えられるのかなということで御紹介をしたところですが,今,○○幹事からお話がありました破産手続における債権の調査・確定手続については,保険者が関与する機会が手続上保障されていないという問題がございます。   確かに,今,御指摘いただいたとおり,破産手続開始前に既に判決が確定していればよいのですが,訴訟係属中に破産手続が開始するという可能性も十分あり得ますので,その場合にも,やはり救済の措置がなければ制度として不十分ではないかという問題意識がございます。その場合には,訴訟が中断して,債権の調査・確定手続に移行し,そこでもって債権の確定が行われるわけですから,その手続の中で確定した場合には,この請求権を認めるという方向性もあるのではないかと思います。   他方で,それを認める場合には,保険者としては,先ほど○○委員の方からもお話があったとおり,保険者が関与していないところで確定したものを認めることでよいのかということもあるかと思います。   この問題については,先ほど○○幹事からお話があったとおり,どの範囲で認めるか,すべての責任保険なのか,ある程度限定すべきなのか,そのあたりの範囲の問題とも絡んでくるところかもしれませんので,事務当局としてどこまで考えているかというよりも,このようなさまざまな問題があるということを御提示した上で,ぜひ御意見を賜って,さらに適用範囲を固めていきたいという考え方でおります。 ● ①は,破産その他の倒産手続に入っている場合を当然前提としているのですか。 ● とりあえず①,②とも18頁の下4行にありますとおり,まずは,その場面を想定して御意見をいただくのが,議論の混乱を避ける意味でいいだろうというふうに考えております。 ● その場合を前提に御議論いただいて,なお,○○幹事から御指摘があったような事実上の倒産のような場合どうなるかという,そこの拡張もなお議論していただくというふうなことになるかと思うので,問題の指摘は重要なところだと思います。   ○○委員。 ● この議論,大分前に相当やって,そのときに私が何度も申し上げたのは,債権そのものの性質ということではなくて,損害保険契約というものにおける被保険者というものを,広い意味での倒産のときに,その被保険者の一般債権者が持っていくというところだけは避けようと。そういうところだけはお認めいただけても,保険会社の方としては実質的にそんなにお困りにならないのではないか。そういう手法があるのではないかということを,ちょっとくどくて申し訳なかったのですが,申し上げて,これを拝見して,本当によくお考えになったなというのが私の感想で,私の理解では,要するに全部が全部保険会社にいったらたまらないだろうと。本当に限られたときに限られた範囲でいくのだったら,それは保険会社の方にお受けいただけるかなという形で御配慮して考えられたなと思うのです。   私は,そのときに言ったのと今も意見は変わらなくて,つまり,倒産的なもの,限定はあれですけれども,倒産的なもののときに被害者の方が保険をつけている加害者の方に行って,そこがつぶれてしまったときに,リターンマッチで保険会社の方にきちんと請求が行けると。その道さえ残っていれば,私は私の意見としてはそれで十分なのですね。   そういう意味では,例えば○○委員のおっしゃったような情報開示をする必要はもちろんないし,だから債権を限定するという大きな方向が違って,これは消費者保護の問題ではなくて,企業,個人を問わないで,一般的な責任保険の被害者の保護という観点で考えればいいと。   ○○委員のおっしゃったことには大体賛成するのですが,さらに倒産した場合だけは,関与していなくてもいいと。もう一回リターンマッチでやってきたら,きちんとそれはやると。そこを,だから常に関与していなければいけないかというと,私はそうではなくて,基本はこういう形でもいいのかもしれませんが,実際は,例を見ると,大きな運送会社の倒産なんかで実際それが起こっているわけですね。示談とか,判決が確定してもつぶれてしまった。もう一回,訴訟提起の,私,いろいろ伺ってみると,やはりもう一回提起すると。もう一回,それがこういう手当てで提起しなくてもいいようにできれば,もちろんいいのですけれども,少なくとも提起して一般債権者の方にはいかないということだけは確保するというのが,私の最低限の目的で,今回,実現できたらいいなと思っているところなのです。   だから,その○○委員の話は,常に保険会社が関与しないと直接請求を認めないと,こういうことではなくて,そこを何とか倒産的な,つまり,被保険者が倒産した場合には受け付けると。だからこれは,例えばよく分かりませんが,やり方としては判決の確定とか,そういうものを一種の条件として,基本的にはそういう条件がないと保険会社に来れないと。しかし,倒産した場合はそういう条件は外すか,成就したものとみなして,その場合だけは保険会社に来ると。そういう,だから余り多くを求めないでいいのですが,それだけはやったらいいのではないかと。   そういうふうに申し上げれば,○○委員,業界としても,そういうところぐらいはいいよと言っていただけるのではないかと,こう思っているのですけれども,そういう意見です,とりあえず。 ● ○○幹事。 ● 今の保険者の関与のところなのですけれども,私自身も必ずしも保険者が関与していなくても,公権的に確定されたようなものであれば,懸念の部分はかなり解決するのではないかというふうに思っているのです。   さらに,20頁で問われております,先ほど○○委員からの御指摘もありましたけれども,抗弁の対抗の,(問題点)1の(ⅱ)のところなのですけれども,抗弁の対抗は認めていいのではないかと思っておりまして。もともと保険契約上の給付としてできる範囲でもらえるというものですから,やはり自賠法とはちょっと制度が違うので,そこを認めれば,もし何か問題がある,結託してというようなことであるとすると,そこは抗弁のところで請求ができますので,もちろんそういうことができることによって,もう一段階争わなければいけないわけですが,保険契約上の給付が立たないのであれば,それはとれないのはもうしようがないわけですので,そこを認めておけば,保険者が手続に関与しなかった場合であっても,認めるということの問題は大分クリアされるのではないかというふうに思っているのですけれども,補足をさせていただきます。 ● そういう保険者の関与,どのくらい必要とするかという論点と,今,先ほどから○○幹事と○○委員の間で,この保護される,優先が認められる対象が,やはり個人の人損のようなものに限定されるのか,責任保険一般に適用していいのか,そのあたり意見が割れているのですが,ほかの方々,どうでしょうか。   どうぞ。 ● やはり賠償責任保険として機能させる前提である限りは,言葉はあれですけれども,無承認和解とか,それから無通知訴訟というのは,保険者というよりも,保険料母集団の構成を崩す,本当にいいのだろうかということで,大変なことになりますので,これだけは我々の関与なしというのはちょっと避けていただきたいと思います。 ● そこでどうなのですかね。請求は認められるのだけれども,本当に無承認で示談をしたとか,そういうことをやっていれば,約款上の抗弁として不当に認め過ぎた部分は払わないと,そういうことは言えるわけですよね。そういう抗弁は当然に①の場合でも留保されているということになるのでしょうか。 ● 20頁の(問題点)1の(ⅱ)の文章をちょっと御覧いただければ,こちらの趣旨は伝わるかと思いますが,(ⅱ)のところで,被保険者に対抗することができる事由については,すべて被害者にも対抗することができるものとすることでよいかという問いかけをしているのは,基本的にはそういう発想をすべきだろうなということを書いているものです。 ● だから,保険会社抜きで示談してきました,これで確定しましたから,当然そこまで全部払いなさいということではないのですよね。 ● そのとおりですが,ただ○○委員から御指摘ございましたとおり,その場合に対抗できるからいいかということで済むかというと,保険会社の側からすれば,当事者になり代わって改めて争わなければいけないという立場に立たされるという問題はなお残るということだろうと思います。 ● より確定する前に関与しておきたいと,それは合理的なニーズで分かると思うので,そこをどの程度要件にするかという,そこは一つの論点なのですね。   ○○幹事。 ● 手続的なことになってしまうので,多少ずれてしまうかも分からないのですけれども,どの範囲の保険金請求権を対象とするかということと,それからあとどういう手続において,その被害者の損害回復を受けるための方策を講じるかという中で,とりあえずここで破産手続を書いてあるのは,手続として破産法の中で規定するとかいうことも考えられますでしょうか。というのは,まずは破産手続が係属している場合に,被保険者というか,破産者の方としては,賠償しなければ保険者に請求することができないというのがまずきて,それで被害者が云々というふうになっていて,その中で請求権が確定した場合であって,その確定の手続において,保険者も関与していることが必要だとかいうことになった場合に,全くテクニカルなことかも分からないのですけれども,逆の立場で破産会社が取締役に対して,損害賠償請求権を持っているのではないかというときに,手続内で簡易に確定させるために,査定という決定で確定させることができれば,逆に,その加害者の方に手続が開始している場合には,その決定で損害賠償額を確定することができるとして,そのときには保険会社も関与するというような機会を与えておいて,そのときには管財人は保険会社に請求することができないという規定をしておくと,ワンセットで済むかなと。   ちょっといろいろな議論の対象となることが確定した後のテクニカルなことなのですけれども,そういうふうにする。どこにどういうふうに規定するかということを考えると,多少,その確定する場合も分かりやすくなるかなと思った次第です。 ● 要するに,破産手続の中で責任を確定する特別の簡易な手続を設けたらいいではないかという,そういう御趣旨ですかね。 ● 規定振りがまた今度再生手続に,更生手続にコピーされてとなると,割とどういう場面での手続なのかと分かりやすくなるかなと思いました。 ● とりあえず御意見をいただいたということで。   ○○委員。 ● 責任保険の一般論でこれを認めるかどうかということについて一つ意見があるのですけれども,もし一般論でこの原則を認めるとなりますと,そもそも責任保険というのは,自分で破産確率が分かっている人とか,財産が少ない人が,それを超えて,そもそも超えた金額の賠償責任保険にかかるというインセンティブはないと思います。   破産したら,基本的にはそこで有限責任ですから,自分の財産よりももっとたくさんの賠償責任の保険に加入するという動機はそもそもないと思います。ですから,例えば,先ほどの○○幹事の生命とか身体に限るとか,そういうふうに考えますと,例えば民間の労災の保険だとか,これは日本よりもアメリカの方が多いですけれども,あるいはPLとかそういったものは,割とこの事業者が破綻したときとか,そういった場合,非常に分かるのですけれども,一方,例えばD&Oなんかの保険で,ディレクターが個人の失敗で会社に巨大な責任を負わせたときの賠償責任の場合に,ここまでこういった原理を及ぼすべきかという,身体だとか国民の生活の安定とか,そういったことまでは割と分かるのですけれども,ちょっとその辺のあたりが疑問でありますので,○○幹事の限定するという方向には賛成であります。 ● ○○委員。 ● ちょっと技術的なことで伺いたいのですけれども,①の案も非常に工夫された案だと思うのですが,これは,恐らく訴訟については,訴訟告知をすることを求めるということになるのでしょうね。それで参加的効力を及ぼすという。この①の後半の方なのですけれども,被保険者が支払うべき損害賠償金の額,保険者に対しても請求することができる,被害者がですね。そういうことですね。これは,そういう場合に,被保険者の保険者に対する保険金請求権は,その場合どうなっているわけですか。   例えば,被保険者が破産したりすると,破産管財人が保険金請求権を行使してくるということもあり得るわけですね。両者が出てきたときに,それがどういう関係になるのか,ちょっと私,十分理解していないのだと思うのですけれども,そこら辺どう処理されることをお考えになっているのか,ちょっと教えていただきたいのです。 ● 両者が出てきたときに,保険者から破産管財人に先に支払われてしまっては,財団に溶け込んでしまうということになりますので,それを防ぐ必要があるだろうということが,①の最初の2行で,それをまず担保した上で初めてこの規律が働くことになるだろうということです。そういう意味では,①の規律というのは,大きく二つの規律からできていて,最初の2行とそれ以下と,こういう整理をしております。 ● 破産した場合に限っていますけれども,そこは自賠責保険で行われているのと同じで,加害者が保険金をもらうには,現実に賠償してからでないとだめよという,そういう調整の仕方。 ● 後半は前段を前提にしているという。 ● そういうことです。   ○○委員。 ● 今,○○委員がおっしゃったことは,考え方としてそのとおりだと思いますし,実際は訴訟告知して保険会社が賠償責任保険,被保険者の後ろ側でいろいろやっていますから,そういう限りでは余り問題はないのだと思うのです。 ● 実際の責任保険の実務からいくと,訴訟になれば告知,被害者側も告知する,保険会社に訴訟を告知するだろうし,示談でやるときも勝手にやってしまった後,不利益が及ぶというのは分かっているから,そこは保険会社に何らかの通知はしていると思うので,そう懸念されるような,保険会社抜きで変な判決とか,示談が出ることは普通はないのではないかという気はするのですよね。 ● あと一点,○○委員の御意見に反論しなければいけないのですけれども,恐縮で,まことに申し訳ないのですけれども,ただD&Oでもどこに着目しているかという問題で,その保険会社が賠償責任保険をつけたところが倒産したときに,一般債権者というものにどこまで口を出せるかどうかというのがすべての問題なので,だから,それはひょっとすると,何のためにこれをやろうとしているかというところが実は違うということなのかもしれないのですが,私はどっちかというと,新たな試みで保険会社に最低限のところでお願いしたいという意識だったので,その代わり,まさに裁判例で問題になったような,被害者一般を救済するための制度ということで限定しない方がいいと,そう考えている次第なのです。 ● 前にも御指摘があったように,確かにそのD&Oの被害者たる会社をどれぐらい保護する必要があるか,それだけ考えれば,クエスチョンマークということが一方であるのだけれども,他方で,要するにD&O保険の保険金というのは何で加害者というか被保険者に払われるのですかと言ったら,それはやはり責任を負うことによって払われるので,そういう支払がされる財産について,一般債権者が,それにかかっていけるというのも何か変ですねという考え方が一つあると思うのですね。   これはなかなか難しい判断で,あとは何か被害者を限定するかというときに,一つの責任保険でそういう被害者個人もあれば,法人もあるし,大規模な法人から中小企業までいろいろ被害者があるというのは,何か施設の賠償とかいろいろなものであり得ると思うのですよね。そういうときに何か区別していいのかというような問題もあるような気はするのですが。 ● おっしゃるとおりだと思いますけれども,逆に言うと被害者一般というのがあり得るかという議論も…… ● ○○幹事。 ● 確認なのですが,ここで言う責任保険というのは,通常の損害賠償に支払うべき費用を充てる保険に限定されると考えてよろしいですか。例えば普通,賠償ですから,過失なんかがあるときに限られますが,特別に無過失でも何かあったら,それを賠償というのかどうか分かりませんけれども,お支払しますと約定しておいて,その約定履行のための費用保険に入るとか,あるいは法令で,売ったものについて,一定の年限については賠償しなさいよと,不具合があればとされているときに,それよりも超えて何かあればお支払しますというときに,その費用を,一読のときに言うべきだったと思いますけれども,それを埋めるような保険,約定履行費用保険というのかもしれませんが,そういうものとは別の,通常の過失なりなんなりがあって,損害賠償しなければいけませんという,それに限られるという理解でよろしいのでしょうか。 ● 一応,法律上の責任をカバーする保険で,今まで考えているのは確かだろうと思うのですね。 ● ちょっとよく分かりませんが,仮に,今,○○幹事がおっしゃったようなものも含めて仮に適用されるような制度として設けたとしても,そもそも無過失ということであれば,被害者の,被害者とそういう場合は呼ばないのかもしれませんが,損害賠償請求権が立たないわけですから,それも取り込むような形で制度が設計されたとしても,そこにはのってこないというだけということではないのでしょうか。 ● 例えば,約定,契約上,何か本来法律上はないような責任も合意して,それも法的責任である以上は,こういう責任保険にはなり得ると思うのですけれども,多分こういう特別の保護を与える制度は,そういうものまで適用しますかと,そういうことで考えていって,恐らく法律上の責任ぐらいに限定して考えるということになるのではないかなという気がしますが,ちょっと詰めてもらわないといけないですけれども。 ● 実はそのことを申し上げたのですけれども,いろいろな賠償責任保険があって,いろいろな過失がない場合,何か埋めるような方策はないものか。特に政策課題として上がるもので,特に被害者の保護といったとき,同じような目線でやるような場合があって,似た状況が起こっているのに,この場合とこの場合,扱いが違うということについて,先ほどの範囲をこの規律を適用するのかという御議論があったときに,そこをきちっと説明できるような状態にしておく方が,そういう現にあるというか,今後いろいろな議論,似たようなものがそ上にのぼる可能性がありますので,ちょっと確認でですね。 ● そのような御指摘かと。ちょっとなお…… ● 文字どおり適用範囲の一つの論点ということになろうかと思います。 ● 検討していただいて。   ○○幹事。 ● 一読のときに比べますと随分議論が整理されて,事務当局の方でも随分苦労されたのかなということがよく分かるのですけれども,一読のときに,特に損保会社の方から強く言われていたのは,一つは保険会社が損害賠償額の確定に関与できない形で,その保険金を支払わされるのは困るというのと,それともう一方は,加害者をすっ飛ばして保険者と被害者の間の訴訟になってしまうのも困ると。これは,この二つの話は矛盾する話で,なかなかどう解決するかというのは難しいのですが,ただ,事前に訴訟告知がなされて保険者が関与できた場合に限って直接請求を認めるというのは,やはりちょっと狭過ぎるかなという気はするのですよね。   その場合でも,加害者が開き直ってしまって,およそ防御しないと。何の主張もしないという場合には,実質的に保険者と被害者の間の争いになってしまうわけで,ですからその加害者と被害者の訴訟があるからといって,それで当然に保険者が何もしなくてよいということにはならないと思うので,だからその訴訟告知があって,事前に関与できた場合に限るというのは少し狭過ぎる。   ただ,特に先ほどの破産の手続の場合,これは保険者が関与できないままに,破産管財人と被害者の間で賠償額が確定してしまうということもあるわけですけれども,この場合について保険者は何も言えないのかというと,やはりそれはおかしいので,この場合については,もう一度被害者が保険者に対して訴訟を起こして,その中で賠償額を確定するという形をとるのが自然なのかなという気がするのですが。   あともう一つは,さらに広げて,およそ裁判所が関与しない形でまさに示談がなされた場合であっても,保険者と被害者の間でもう一回訴訟,事後的に責任の有無や賠償額について争えるようにしておけば,それでいいのかというと,そこまでいくとやはり今度は保険会社が関与させられる場合が広くなり過ぎる。まさにその加害者と被害者がなれ合いで示談書1枚つくったら,あとはもう保険会社が,その被告になって全部争わなければいけないのかというのも行き過ぎかなという気はします。   ①の案というのは,結局裁判所が関与した場合,この場合については仮に事後的に保険者が争わなければいけないという形であっても認めてもいい。事前に訴訟告知がある場合はいいのでしょうけれども,そうでなかったとしても,事後的に保険者が争えるのであれば,直接請求を認めてもいいかなという形で,かなり折衷的に範囲も限定しているのかなという気がしますし,さらに○○幹事が最初に指摘されましたように,人身損害に限ってこの制度を認めるというのであれば,損保会社の負担もそれほど大きくはないのかなという気もしますので,私はそういうふうに限定するという形で,この①の案はなかなかいい中庸を得ているのではないかなというふうな感想を抱いております。 ● 今のところの御議論で,①,いろいろ技術的な問題はあるにしても,大きな方向としては割と支持する御意見というのが多いのではないかと思いますが,20頁の①の(問題点)1の(ⅴ)のところで,被害者がたくさんいて,賠償額の総額を考えたら,どうも保険金の支払限度額を超えそうだと,こんな場合をどうするかなんてことを考えると,これは要するに①の案というのは,破産の手続外で支払を受けるということで,そうなると,この(ⅴ)で問題としているような被害者がたくさんいる場合,どうなるのでしょうねという,事務当局はそんな問題点もあるかなというので。   ②のような,これはもともと②の特別先取特権というのは,技術的に非常に難点が多いということではあったのですが,その選択肢として②が挙がっているようなわけで,そうすると,この被害者がたくさんいるという,こんな場合,何かどう考えたらいいのかというのはなかなか難しい。何か御意見を。   ○○委員。 ● これは私,答えを持っているわけではないのですが,でもこれはアメリカなどでよくあるわけですよね,いろいろ。それで約款の方で相当対応できる,どこまで対応できるのかと。法の方で対応できる部分と,約款の方で対応できる部分,まだよく分からないので,お願いなのですけれども,そういう問題は常に起きているわけで,約款にそれなりに何か対応をしている部分があるのではないかなという疑問があるのですけれども,今日ではなくても結構ですけれども,多分これは薬害とか,アスベストとかいろいろあって,それは法で考える以上に保険会社の方で考えなければいけないことなので,いろいろ手は打っておられて,ちょっと手元に何も今ないので調べられなかったのですが,そっちからまずお知恵を借りてアプローチするというのも一つではないかなと。だから,そういうことをお願いできないかなというのが意見なのです。 ● 本当に大量の薬害とか,PL被害が出た場合は,被害者団というのが形成されると思うので,そこで,おのずから何か解決が図られると思うのですが,問題はそこへ行くまでの過程で,パラパラと大体順繰りに払っていったら,いつの間にかすごい被害者が現れたというかね,そんな場合が一番問題かなと。   ○○委員。 ● 自動車保険のような場合は,全部ではないですけれども,たまたまアンリミット,要するに無制限の場合なので,かなり実際それはあったかなかったかは別にして,解消されると思うのですけれども,そうではない場合は,ちょっと約款で特にその被害者から来たときに順番をというのは決めていませんよね。リミットいっぱい払うと被保険者に対して言っているだけなので,ここはきちんと議論していただきたいのですけれども。というのは,普通の場合だったら,普通の場合というのは,この保険の直接請求権ではなくて,要するに被害者に対して破産債権,分担をどういう優劣をつけるかというようなこと,管財人が裁判所のバックアップを受けてやっているような,そういうレベルの高い,その手の重い判断だと思いますので,これを保険者でやれというようにポンと放り出されるとちょっと困りますので,むしろ,やるのであれば,そういう言い方があれかもしれませんが,ちょっと議論していただけたらと思います。ここのこれで前に進むのであればですね。 ● そういう問題が,現実にどれだけ発生し得るかは別として,理屈の上では大きい問題だろうと。実務的にもまた重要な。   ○○幹事。 ● 今の点なのですけれども,複数の権利者があって,直ちに複数あるということが分からなかったような場合に,最初の人でその限りだと思って支払ったというような場合ですと,債権譲渡で複数の譲受けがあったような場合で同順位であるというようなときに,払ってしまえばそれで免責されるという,あのような規律になるのかなというふうに思っておりまして,したがって,保険会社としてはもう払って免責ということになる可能性があるのだと思います。債権に対する本来的な履行というふうになるのか,準占有者に対する弁済ということになるのか,本当は按分であって一部しかなかったのだけれども,全額あるというふうに見えたというような場合には,そういう救済の余地は一方であると思います。   ただ,このケースだと今1人来ているけれども,あと2人,3人来る可能性もあるというようなときに,分かっていて,そうすると待たなくていいのかというところがありますので,もちろん配当期間にするのは余りに適切ではないと思います。そうしたときは,最後は供託ということで,ちょっとそういうものの利用可能性が,本当に利用されるかどうかはともかく,やはり最後のところはそこに行かざるを得ないのではないかなというふうに思いますので,それを使うとするとどういうことが仕組めるかということも検討すべきかなと思います。 ● ○○幹事。 ● 供託に行く前に信託か何かで仕組めないかなということもぜひ御検討いただきたいと思います。 ● そういうビジネスをやってくれる人が…… ● それはもう最終的には契約者保護機構ですか,そういうところにそういう業務をゆだねるということも,考えとしてはあるのかなと。 ● どうぞ。 ● 今回の資料の②の方法については,余り関心を呼ばず,御意見もいただいていませんが,今回,事務当局として資料の中に,もう一つ評判が芳しくなかったと思われる②をあえて並列的に掲げましたのは,今の問題点が一番大きいところでして,20頁の(問題点)2の(ⅱ)に書きましたけれども,先取特権的なスキームで考えれば,少なくとも先取特権の実行と,担保権の実行手続というのは既に準備されていて,その中で他の債権者もかかっていける,もちろんこれは配当要求の終期で切られてしまいますけれども,他の債権者もかかっていけて,かつ,それが配当される,分配されるということが既に用意されていますので,これにきれいにのるのではないかと。   もちろん,その既存の手続を使うだけでは,実質早い者勝ちにほとんど等しくなってしまって,複数いる人に平等に配るという理念が実現できないのではないかという問題はあるにせよ,少なくとも新たに大げさなこの配当的なものを仕組むということにはならないで済むのではないかという思いがありまして,ちょっとその点を御議論いただく上で対比してみることも意味があるのかなということで掲げさせていただいたということでございますので,またその点も含めて御検討いただいて,今後,御意見をいただければと思っております。 ● ○○幹事。 ● 多少机上の空論になってしまうかも分からないのですけれども,もしそういう配当期間をどうするかということで,先取特権スキームというのを考えられたのであれば,ちょっと先ほど言ったのが本当にワークするか分からないのですけれども,破産手続の中で処理するということにすれば,例えば最初の一文で,被保険者は,被害者に賠償した場合に限り,保険金の支払を請求することができるというよりも,その受領した保険金というのをその手続の中で各被害者の損害額を査定して,それで複数いるときにはそこで分配するという,本来的な破産管財人とかに破産裁判所の決定,査定と,配当機関である破産管財人が行うということもできるのではないかなとは思っています。   それで,その保険事故を絞り込むのも,例えば○○幹事が最初におっしゃっていた,例えば人身関係とかいうのであっても,一部,差押債権とか,そういうのが執行のレベルで特定の債権を限定するということがなされているということとパラレルに考えた場合には,破産法とかにそういう生活要保護性の高い保険事故に関しての限定とかもしやすくなるのではないかなという気はしております。 ● 確かに,破産手続の中に閉じ込めるというのは,それはそれでこういう被害者がたくさんというケースを考えると,あり得る制度ではありますけれどもね。実際にそれが仕組めるかどうかはまた,技術的な課題が検討される必要があろうかなと思いますが。 ● その点も内部では検討いたしましたが,ただちょっと難しいかなと思いますのは,仮に①の方法にせよ,②の方法にせよ,被害者が優先的にその保険金にはかかっていけると仮にしますと,その保険金がだれに,幾らいくかというのは,基本的に一般債権者の配当とは関係ない話ということになってしまいまして,その一般債権者の配当原資にならない財産の処分について,管財人が何か労力を割くかというと,それは管財人はそんなのは勝手にやってくださいということになってしまうので,なかなか取り込むのは難しいのかなというところもありまして,資料にはその点は掲げていないということでございます。 ● 私もちょっとそういうふうに思ったのですけれども,破産管財人が労力を払うメリットは何があるのかなと思ったのですが,破産債権としてその債権だけは別に処理する,別に処理するというのは,処理できるというメリットではなくて,処理しなければならないデメリットになるわけですね。そういう意味でいうと,ちょっと一瞬その破産債権を別に分けて処理できることが,破産管財人のメリットにもなるのではないかなと思ったのですが,やはりそうにはならなかったわけですね。分かりました,すみません。 ● ほかに。   ○○委員,どうぞ。 ● 異論はないので,補足の説明なのですけれども,20頁の(問題点)3ですね,下から10行目ぐらいです。「被害者が責任保険契約の存在及びその内容を知るための方策を設けるべきか。」というような問題点について,それはもう設ける必要はないということで意見は一致していると思いますので,他面で企業保険のことについて立場を申し上げますと,企業の判断で積極的に「こういう責任保険に入っていますよ。」という形で関係者に安心していただくというように扱う場合と,その正反対で,責任保険に入っている事実そのものを企業秘密として開示しないという場合と,両方があると。   特に,開示しない方が,非常に深刻な巨額の保険の話が間々あると。それはいわゆる訴訟の誘発を避けるためであるとか,いろいろ理由があると。   それから,企業保険というか,企業の関連の保険で,先ほどのD&O保険の話がありましたけれども,D&Oの保険なんかにつきましては,それはさらに役員の方の個人情報であるという形で,固く秘密扱いにしていますので,そういうことも御勘案いただいて,事務当局の方からもそういう事情があるという御説明があったし,それから委員の方もそこまでの必要はないと。設けるとなると非常にいろいろな問題が起きてきますので,そういう形で収れんしていくことについて,私も賛成であります。   以上です。 ● それでは,○○委員,何かありますか。簡単に。 ● この件ではないことに,一,二分ちょっと,このテーマで発言ができればと思っただけなのですか,この議事を進めていただいて…… ● よろしいですか。 ● この資料10にあることで,ほんの一,二分…… ● とりあえずこのところで,責任保険のところでほかに御意見ございますか。   そうすると,かなり技術的な問題点がまだいろいろありそうだけれども,今日のところの御意見は,被害者多数の場合を除けば,割と①というのはいい案ではないかという御意見が多数ではなかったかと思いますので,被害者多数の場合も含めて,なお,どこまでこれでいけるかというのを詰めていただこうかなというふうに思います。   ほかにこの点,特に御意見ございませんか。時間も大分過ぎておりますので,この資料で今日検討した★印以外のところはいろいろ御意見があろうかと思いますが,時間があればそれは席上で取り上げるということで,もしよろしければ,個別の今日議論しなかった問題点については,事務当局へ御連絡いただくということで,そういうことで処理させていただきたいと思います。   ○○委員,そういうことでよろしいですか。 ● はい,結構です。 ● それでは,今日はまた大分時間が超過しましたが,これぐらいにしたいと思います。   何か事務当局からございますか。 ● 次回の御案内だけ念のためにさせていただきます。   次回,第10回会議ですけれども,5月30日水曜日,午後1時30分から法務省の第1会議室での開催を予定しております。次回は,中間試案の作成に向けたたたき台(3)としまして,生命保険契約の前半部分の御審議をお願いしたいと思っております。   以上でございます。 ● それではそういうことで,よろしくお願いいたします。   では,今日はこれで終了いたします。   どうもありがとうございました。 -了-