法制審議会保険法部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  平成19年6月13日(水) 自 午後1時28分                       至 午後5時23分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論について 第4 議 事  (次のとおり)    議        事 ● それでは,法制審議会保険法部会の第11回会議を開催させていただきます。   それでは,最初に配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました部会資料12と,本日席上に配布いたしました○○委員御作成の保険金の支払時期に関する意見書の修正版,それから生保委員に作成していただきました「伝統的商品の保険料について(1)」で始まる7頁にわたる資料がございます。 以上でございます。 ● よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず,前回の保険法部会資料11「保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台(3)」の24頁の第4の「2(4) 保険金受取人の変更」の「ア(イ) 遺言による保険金受取人の変更」から後が積み残しになっておりますので,そこからまず御審議いただくことにしたいと思います。   まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   前回会議の最後に,生前の意思表示による保険金受取人の変更について御審議をいただきましたので,これを踏まえ,今回は遺言による保険金受取人の変更について御審議をいただきたいと思います。   これにつきましては,特に資料の24頁の(問題点)1のところに記載してあります保険者に対する対抗要件に関する規律の在り方について御検討をいただきたいと思いますが,この点の詳しい説明は(補足)1に記載したとおりでございます。   また,資料26頁のイでは,保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合の規律について問題提起をしております。   本文は,第一読会における提案と同じく,保険契約者は保険金受取人を変更することができ,これをしない間に保険事故が発生したときは保険金受取人の相続人又はその順次の相続人を保険金受取人とするという規律を提案しております。   今回特に御審議いただきたいのは,この(問題点)に書きました点でございます。   第一読会におきまして,本文②の規律による保険金受取人となる者が二人以上いる場合には,その権利の取得割合は,民法第427条により,特段の意思表示がない限り平等の割合であるとの考え方を提案いたしましたところ,権利の割合を相続割合によって計算すべきであるという御指摘を複数いただきました。   そこで,その御指摘の内容について確認させていただくとともに,改めて御議論いただきたいという趣旨で,前回席上にA4の2枚紙のペーパー,「保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合の規律」と題するペーパーを配布いたしましたので,そちらを御覧いただければと思います。   このペーパーは,Aが保険契約者兼被保険者で,Bが保険金受取人で,Bが死亡した後,Bの相続人であるCが更に死亡して,最終的には保険契約者兼被保険者であるAが保険金受取人をBから変更しないまま死亡したという具体例を基に記載をしております。   このペーパーの「検討」のところに記載いたしましたように,資料の本文の②の規律によりますと,保険金受取人Bの相続人又はその順次の相続人であるD,E,F,H,Iという5名の人たちが保険金受取人となると考えられますが,その権利の取得割合については,民法第427条によると,ペーパーの①に記載したとおり原則として5分の1ずつとなるのに対し,前回御指摘のような考え方を採ると,ペーパーの②のところに記載したようになるのではないかと考えておりまして,その内容について説明いたします。   まず,保険金受取人となるD,E,F,H,Iという人たちは,全員が保険金受取人Bの相続人というわけではございませんので,保険金受取人Bの相続人としての相続分によって権利の割合を計算することはできないものと思われます。ただ,DとEは保険金受取人Bの相続人であり,残りの人たちは保険金受取人Bの相続人CやAの相続人であることから,それぞれの者が死亡した時点ではそれぞれ相続割合を観念することができますので,これを手掛かりにして権利の割合を算出することができると考えられ,そのことをペーパーの「検討」の②(1)から(3)までに記載しております。   (1)のところを御説明いたしますと,ここではDやEの権利の割合について記載をしておりますが,これらは保険金受取人Bの相続人としての相続分6分の1と,Bの相続人Aの相続人としての相続分6分の1,これはAが取得した2分の1の権利のうちの3分の1という意味ですが,これをそれぞれ取得することになると考えられます。   (2)や(3)についても,同様の考え方によって取得割合を算出することができますが,2枚目の※印の一つ目に書きましたように,相続人なく死亡した者がいる場合には,その相続分を保険事故発生時に生存しているほかの保険金受取人の相続人又は順次の相続人で分けることが合理的と考えられます。   以上,御説明した点を踏まえまして,仮に民法第427条の特則を設けるとすれば,ペーパーの②のところに書きましたような理解でよいのかどうか,また,このような計算方法で権利の取得割合を決することとすることでよいのかどうかについて,御議論をいただければと思います。   この点については,資料26頁の本文のイは,保険契約者が保険金受取人を変更しなかった場合に法律の規定によって保険金受取人を定めるための規定でございますので,保険契約者の意思による変更のように,その意思を合理的に解釈することができず,しかも相続によって保険金請求権を取得するわけではないことから,直ちに相続割合によるという考え方が出てくるわけではないとも考えられます。そこで,以上の点を踏まえたとしても,このペーパーに記載したような規律を民法第427条の特則として設けることに合理性があるかという観点からも,御意見をいただければと思います。   以上です。 ● ありがとうございます。   それでは,大きく分けて(イ)の方の遺言による受取人の変更と,後半の受取人が死亡した場合の規律の二つの問題の御説明がありましたが,一応,議論の錯綜がないように分けて御意見をいただければと思います。   まず,(イ)の遺言の方でございますが,いかがでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 遺言による受取人変更につきましては,現在法律がない中で,裁判例が分かれていますけれども,実務ではそういうことから慎重にやっておりまして,今回これを規定するということについては,明確になってよろしいかと思うのですが,ただ,その場合にも要件を明確化していただかないと,せっかく遺言で書いてあっても受取人変更と読めないようなもの,例えば,契約を特定するとか,契約が複数ある場合もありますから,どの契約の何をどの割合でどうするのだとか,そういうことを明確化してもらいたいということと,それから,だれが保険会社に通知すべきかということですね。これは,ここにもありますけれども,相続人全員からやるのか,遺言の執行者を定めてやるのか,そこら辺も明確化していただきたいと,そういうように考えています。 ● ○○委員。 ● だれが通知をするかという,保険者に対する通知という問題があると思うのですが,遺言の執行者が通知をするということが望ましいのではないかなと思っております。相続人の通知だけにゆだねますと,相続のトラブル,いろいろなケースがございますので,そういうトラブルがかえって混乱を生じさせるのではないかなと思っております。   それから,全体としては,任意規定というふうにしていただきたいと思っております。 ● ほかに何かこの点に関して。○○幹事。 ● 前回,最後ちょっと申しましたところと関係するのですけれども,前回の生前の意思表示による保険金受取人の変更と,それから遺言による保険金受取人の変更,これを明確に区別してそれぞれの場合に適用することが可能なのかどうなのかというのがちょっと気になっています。   前回申しましたのは,(ア)のところで発信主義を採ったこととの関係で,例えば生前に保険契約者兼被保険者が保険会社に対する手紙を実際にもう書いていた。遺言書の横にそれを置いていて,保険契約者兼被保険者としては自分の死後にそれが発見されて保険会社に届くということ,そういうことを意図して,ですからもうあて名書きも保険会社というふうになっていた場合,そのような場合に,つまり,こういうふうに受取人を変更してくださいという形の手紙がもうつくられていた,それが保険会社あてになっていると,それはもう受取人変更の意思表示が発信されたものというふうに解釈されることはないのか。   それが民法の解釈としてそれは意思表示が発信されたものとして解釈されないのであれば,これは(ア)の生前の受取人変更の意思表示には当たらないので,そして,かつ遺言の方式をとっていない以上,そのような意思表示は効果が発生しないということで問題ないと思うのですが,ところが,たとえ対外的にははっきりしていなくても,手紙を書いて,しかもその意思表示の相手方が保険会社であるというようなことが明らかになるような書面が後から発見された場合に,それが受取人変更の意思表示が発信されたものと解釈されてしまうと,遺言ではないにもかかわらず,実質的に遺言と同じような法律効果が発生するということにもなりかねないので,ちょっとそこが前回気になっていたのです。   前回はそこがうまく説明できなかったのですが,民法の先生方にそのあたり,意思表示が発信されたというふうに解釈されるのは,外見的にどういう行為があれば意思表示の発信があったと解釈されるのか,ちょっと教えていただければというふうに思います。 ● どなたか。では,○○幹事。 ● 何というのでしょうか,発信主義という考え方に立つとしても,内心の意思が外形的な形であらわれて,しかし手元にとどまっている,その意思表示を行う人間の手元にとどまっているという限りは,発信したというふうには考えにくいのではないかなというふうに思いますけれども。   それで,これは別の筋の話ですけれども,似たようなことにかかわりますけれども,例えば戸籍の届出を出すというときに,届書をつくったけれども,その届書をつくってそれが戸籍窓口に受理される前に死亡したというようなときにどうなるのかということについて,戸籍法に規定が置かれているかと思いますけれども,郵便で投函していればそれは受理をするという扱いをしておりますけれども,しかし,だれかに預けたというだけでは駄目だというような線引きをしているように思います。   ですから,基本的には発信というふうに言うのは私はちょっと難しいのではないか,○○幹事の意見をまた伺いたいと思いますけれども,戸籍法が置いているような仕分けのルールをつくった方が明確になるということが,もしかするとあるのかもしれないというような気がします。 ● ○○幹事,何かございませんか。 ● 私も基本的にはおっしゃるとおりだと思います。   今の御指摘の中では,その意思を表明した文書の中に,届けてくださいというような文言が書いてあって,それが送付されるようにということまで意図していた,しかしながら,机の中に入れておくのと同じ事態ですので,その段階で発信されたというふうに認めることは,それは多分ないだろうというふうに思います。   問題は,それが死後に発見されて,送ってくださいと言われた人の手に至ったときに,使者にゆだねたということになるのかということで,そこは多分微妙なのだろうというふうに思いますけれど。   ただ,それも,あて名は保険会社で,だれに送ってくださいということもなくて,きちんとそれをやってくれる人があるといいなという希望が書いてあるだけなのですよね。そういう状況で,確実に発して相手方に届くような手段を採ったと言えるのかというと,それはかなり難しいのではないかなというふうに思いますが,ただ,微妙ではないかというふうに思いますので,もしその明確化の必要があるのであれば,それは明確化した方がいいのだとは思いますけれども。 ● ありがとうございました。   民法の方の解釈で,そのあたりはもう大丈夫だ,意思表示の発信があったとは恐らくは解されないということであれば,(ア)と(イ)の区別というのははっきりすると思いますので,意思表示が外形的にあらわれない形で受取人を変更しようと,それはもう遺言の方式に従わなければいけないということになると思いますので,私の疑問というのはもう完全に解消されましたので,どうもありがとうございました。 ● その辺,そういったようなケースだと,今の議論で大体いいのかなと思いますが,だれかに渡したところまでいった。それが,保険会社の外務員のような人に渡したというような場合と,それから今も議論に出た,身近の親族などに渡してくれといって渡すところまで渡した,そのあたりになるといかがなのでしょうね。一応,やはり発信ありということになるのでしょうか。 ● 保険会社の外務員の手に渡っているということですと,保険会社の支配領域に届いているという,そういうふうに考えるというのもあるかと思いますけれども。 ● 大体,そんな振り分けなのでしょうかね。ということでよろしいですか,○○幹事の御質問は。   ほかに,いかがでございましょうか。--では,この点,遺言による変更を認めるという大きな方向については概ね御異論ないということでよいかと思います。なお細かい対抗要件の充足の仕方など,御指摘を踏まえての検討をしてもらうということで,この点はよろしいでしょうか。   それでは,もう一点の方の,受取人が先に死亡した場合の最終的な受取人の受取割合の問題ですが,前回,やはり頭割りによる平等という今の判例はおかしいのではなかろうかという意見が続出して,事務当局にも考えていただいたのですが,御指摘のあったような,相続分を基に割合を決めるというような考え方で,これ,確実にすべての事案を処理できるかどうか,その点を確認したいということであったかと思いますが,そもそも大前提としては,相続分割合なのか,平等なのかというあたり,もし民法の先生方の御意見というか御感触をいただけると参考になると思いますが,いかがなものでしょうか。先ほど,資料に基づいて設例の説明もありましたが,そういうあたりで何かございますでしょうか。   ○○幹事。 ● 意見というより質問なのですけれども,前回これをやったときに欠席していたのではないかと思いまして,審議の状況は必ずしも十分に把握していないのですが,今日御説明をいただいた2枚紙の資料の「検討」の②ところで,民法第427条の特則を設けようとした場合の規律の内容というふうな記載になっておりますけれども,この特則というのは,この規定を置かなければ第427条が適用されてしまうだろうという,こういう前提に立っているということかと思いますけれども,その更なる前提というのは,本来はこの問題については契約解釈で決まる。何も定めがなければ第427条が適用されるけれども,保険については相続分に従うという,そういうルールを定める。それが第427条の特則に当たるという,こういう理解でしょうか。 ● おっしゃるとおりで考えております。 ● 今は,約款などで何も決まっていなければ,まさに意思解釈の問題だろうと思いますが,そこで判例は第427条によっているわけですけれども,合理的な意思解釈からすればそうでないという意見もあり,そこを明文化した方が争いはなくなるのではないかということかと思いますが。   これ,その受取人とかその相続人が死亡した都度その相続分を計算して,それが最終的な取り分になっていくということで何か概ね処理できそうな気もするのですが,○○幹事,何か前にこういう問題を議論されていましたが,どうですかね。 ● 見た感じでは,うまく処理できるのではないかと思います。後は,法律の条文で書けるのかどうかということなのですが,多分これは,専門家の方が作成されるのであれば問題なくつくれるのであろうと思いますので,実際に出てきそうなケースというのは,これを見る限りは処理できるのではないかという気がしております。 ● どうぞ。 ● 先ほど質問したのは,これは契約の解釈の問題であるということならば,法定相続分についてどういうルールが定められているかということとは一応独立に,どのような帰属の仕方をするというのが合理的な意思なのかということ,その枠内での解釈問題として処理されるということになるのではないかと思いますけれども,その上で何らかの数字は多分どんな場合にでも出てくると思うのですけれども,その数字の中に不合理なものというのがないだろうかということなのですけれども,それがないのならば,標準的な解釈としてこうなるということなのかなというふうに思います。   これも確認ですけれども,御説明いただいた具体例で,保険金受取人であるBが亡くなった場合に,それは相続人にその権利が,相続人になる人に権利が帰属する。そうすると,その場合にはAに帰属する部分というのもあるわけですよね。それは,当然そういうことでよろしいという前提ですね。 ● はい。 ● ならば,それはあとは計算上の問題ということで。 ● この相続分の割合で決めるより頭割りで決めた方が,合理的な意思から見て疑問だというケースがより生じやすいのかなとは思いますね。そういう意味で,このルールで一応合理性はあるのではないかなと思いますが,何か事務当局,ございますか。 ● ○○幹事から御指摘がありましたとおり,書けるのであればというように我々も思っておりまして,実は,このA4の紙の2枚目の※印に書きましたように,この※印自体,何を言っているのかよく分からないということがあるかもしれませんが,本当にあらゆるケースを想定して適用に困らないように本当に書けるのかというのは,実は若干自信のないところもございまして,ただ,規律としては第427条で平等になってしまうというよりは,やはり相続的な発想で考えた方がそれは当事者の意思により近いということがこの部会での御見解だということであれば,ちょっとそういう方向で条文に落とす努力をしてみたいと思っております。 ● どうそ,○○委員。 ● 平成5年の判決ですね,沖縄の件で○○生命の件だと思うのですが,これは人数も,受取人が20名を超えていたかどうかというぐらいに数が多くて,事務当局の方が書かれていますように,27頁にありますように,契約者の意思が云々というよりも,棚ぼた式に来ただけの話で,そこで割合をそう考えていく,要するに何世代にもわたっているわけですね。そうすると,必ずしも相続割合ということは私は妥当ではないのではないかと。   それで,手前どもの約款ですと,この約款の154頁ですか,例の平成5年,6年ごろの判決を受けて各社とも約款を直したのですが,それによると,ある会社は相続割合,ある会社は平等だと,そういうふうに分かれていますね。ですから,私の考えでは,まあ,法律に書くまでもないのではないかなと思います。約款で書けばいいのではないかと,そういうふうに思っています。今事務当局の方が挙げられた例ですと,確かに受取人から近いようなケースですから,そういうことも感情的には分かるのですけれども,余り離れているような場合,大勢いるような場合は,余り割合を考えるのもどうかなと,そんな気がします。 ● ほかにいかがでしょうか。○○幹事。 ● 確かに約款ではっきりさせれば,そちらの方が優先されるということには当然なると思うのですが,ただ,現在の約款で相続分によるというふうに書いてある約款についても,この資料の2頁の※印の場合のことは全く考慮されていないので,もし※印のことが起こった場合に,相続分で決めますと,約款でどうなるのか。   恐らく解釈としては,※印に書いてあるような形で処理することにはなるのだろうと思うのですけれども,やはり保険金受取りに関しては,民法の相続分そのものでは,割合は相続分で計算していくのですけれども,相続そのものではありませんから,やはり法律関係をはっきりさせるという意味では,とりあえずデフォルトルールとして法律で書いた方がいいのではないか。   それに対して,うちの会社ではもう頭数でいくのだということを望む会社は,そういうふうに約款に書かれたらよいと思いますので,やはり何か規律は,法律として,任意規定として置いておくのがよいのではないかというふうに私は考えております。 ● ありがとうございました。   今のような御意見が多数であったのではないかなと思います。なお少数の御意見もありましたので,なお最終的に検討していただこうかと思います。   ほかにこの点,ございますか。○○幹事。 ● すみませんが,先ほどの遺言のところへちょっと戻っていいですか。申し訳ないです。うっかりちょっと先ほど言い落としてしまったのですが,24頁から25頁にかけての一番下の段落,(補足)1の説明のところなのですが,遺言によって受取人変更をし,その後相続人あるいは遺言執行者が対抗要件の通知をするという場面で,ここにも書いてございますとおり,保険者が遺言の内容を確認することができる限りというフレーズが入っております。   そういう状況がある限りは,必ずしも相続人全員の通知でなければならないというほどの理由はないというふうにお書きになっているのですが,私もそのとおりかなと思うのですけれども,そうすると,対抗要件としての通知を行う際に,やはり契約者本人が受取人変更をしている,意思はもちろん事前にもう確認できているということなのかもしれないのですが,遺言書みたいなものも併せて提示をしなければ,やはりこの遺言による受取人変更の通知については対抗要件としては認めにくいというようなニュアンスも含められているのかどうかということをちょっとお伺いしたかったのです。   確かに契約者が生きておれば確認するすべもそれは当然容易なのだろうと思うのですけれども,その方が亡くなられておられて,場合によってはその契約者イコール被保険者というケースが多いわけですから,当然もう保険事故も発生していて,保険金請求の段階に近付いている,こういう段階ですので,遺言書というのですか,それが確認できないと,やはり支払う側としては非常に不安な通知ということにもなりかねないなというふうに思いましたので,この場合の通知というのは,遺言書もやはり提示をするというようなことも考えるということなのでしょうか。 ● 資料作成者の意図としては,そういうことまでは考えておりませんでした。   例えば債権譲渡の通知を対抗要件としたときに,債権譲渡の根拠となる,例えば売買契約とか債権譲渡の契約書を示さないと対抗要件としての通知にならないかというと,そういうことは恐らくないだろうと思われますので,ここでは通知とセットで遺言書の提示までということを考えてこういう記載をしたということではなくて,あくまでその遺言執行者を必要的なものとするかどうかと考えたときに,必要的とするとやはり非常に重たくなるのではないか。例えば,相続人全員が共同して通知をするという,協力してくれるような場合を想定すれば,その場合にまで遺言執行者がやらなければいけないのかというのだとちょっと重たいだろうなと。   ましてや,相続人の例えば全員が協力し,あるいはそのうちの一部ということがあるかもしれませんが,遺言書も示しつつ通知をしてきたようなことを考えると,なおさらその遺言執行者が必ずやらなければいけないというのは,手続としては重いような気もするといった,その問題意識をお示ししたくて書いたものでございます。 ● よろしいですか。そうすると,通知がありまして,対抗要件を備えましたと。そうすると,保険金請求の段階で保険会社サイドとしては,その通知があってもう対抗要件を備えているのだから,新たに受取人になった人に支払えばよいと,こういうのが通常の形かなと思うのですけれども,ただ,支払う際の必要書類として,例えば遺言書を,写しを提示しなさいというような,こういう要求をするというようなことはあり得るということなのですかね。それも要らないということで,新たな受取人が請求できるという,そういう段取りになるのでしょうか。 ● そこは,恐らく払う側の御判断だと思いますので,今現在でも請求書類としてどういうものを要求するかというのがありますので,二重払の危険を避けるために,どこまでの書類を請求書類として要求し,確認した上で払うかは,それは各義務者の御判断ということになろうかと思います。 ● そういう意味で,ちょっと確認になるのですけれども,今抽象的に遺言によってすることができるという書き振りしかないのですけれども,法文化するときに,ある程度細かくその辺を,例えば,だれがしないといけないのかとか,要件がどうかというのを書かれるのか,それはもう約款にゆだねられて,保険会社として二重払がないかとか,あるいは相続人間の争いに巻き込まれないために,例えば全員でないと認めないだとか,あるいは執行者でないと駄目だとか,その辺のどういう要件によってやるのかは,保険会社のある種,裁量と言うと言葉が適切かどうか分からないですけれども,ゆだねられると考えられるのか,その辺はどちらなのですかね,今のところは。 ● そこまではまだ検討ができていないというのが正直なところでして,最もシンプルに考えると,受取人の変更は遺言によってもすることができるという規定だけを置くというのも,それは選択肢としてはあり得るだろうと思います。   ただ,仮に遺言執行者がやらなければいけないという規律にするのであれば,当然のことながら,それに伴う規定を置かなければそうならないということになりますので,置くということになろうかと思います。   さらに進んで,今おっしゃったように,この場合の,例えば,通知は相続人の全員がしなければいけないという規定も置くべきかどうかといったあたりは,さらに検討が必要だろうと思います。   ただ,その際に,よく分からないのですが,先ほど例に出しました債権譲渡の通知で,債権譲渡が行われたけれども,譲渡人が債務者に債権譲渡の通知をする前に死亡してしまったというときに,では対抗要件としての通知を譲渡人の相続人が複数いるときに,全員でやらなければいけないのか,一人でできるのかといったことも実はよく分からないところでして,それがそういった既にある制度でどういう考え方が採られているかということも十分整理した上で,この場面でどういう規律を考えるのが適当か,考える必要があるだろうというように思っております。 ● よろしいですか。   ○○幹事。 ● すみません,最後に一言。もう遺言で保険金受取人の変更ができるということで大体固まったかと思いますので,こういう考え方もあるのではないかということにとどまるのですが,前回ちょっと申しましたように,保険金の受取人というのが,亡くなる人の遺産ではなくて,受取人として指定されている人のところで初めて発生する請求権だということですので,そのような権利を取得できる人の変更というのは,しっかりした要式行為である必要があるのではないかということで,それで,保険者に対する意思表示というのが妥当なのではないかということで,それで,遺言でできないという方が,遺産ではないという考え方と整合性があるのではないかというふうに申したのですけれども,ただ,明確な要式行為という意味で言えば,遺言も一つの要式行為だと思いますので,そういう結論もありかなと思うのですが,それで一つ,通知との関係で考えた方がいいのかなと思うのは,保険者に対する意思表示によって初めて保険金受取人が変更できるというのは,実務の要請なのか,それとも抽象的な考え方にすぎないのかはあるかと思うのですけれども,被保険者が亡くなるまでは,保険金受取人がだれであるかというのを開示したくない要請があるとか,保険会社としては個人情報というかそれは開示しないという,割と秘密性の高いようなものであって,遺産をだれに託すとかという,それも遺言と似ているのかも分からないのですけれども,そういうふうに考えた場合に,被保険者を保険契約者とする保険契約における保険金については,それをだれに渡すかということを被保険者から託されているような地位にあるのではないかと思いますので,そのときに,これは保険契約者から,被保険者から内密で指定されているというふうに思っていて,この人に,被保険者が亡くなったときには保険金を支払えばいいのだなというふうに整理をしていたところ,そうすると,今の流れの中で,保険会社がその保険金請求について,ある程度,保険金受取人が請求しやすいように行動することが要請されていると思うのですけれども,自分のところの記録として保険金受取人がこれこれというふうに書いてあったので,この人が亡くなったということで,保険金受取人と思っている人に請求したらどうですかというような御通知を差し上げたところ,何かちょっと時期をたがえて,遺言でこういうふうに書かれておりましたという通知が来たということだと,どちらがこの保険金について管理していたのだろうというところで,ちょっと多少整理がつきづらくなるのではないかなと思うのです。   ですので,遺言ではできないというふうに固くしてしまうと整理は付けやすいけれども,そうすると皆さんのコンセンサスとは合わなくなってしまいますので,遺言でできるといったときに,保険会社としては,この人に保険金を支払えばいいのだなというふうに,自分がその責任を負っているのだなと思っていたところ,別の文書から保険金受取人はこうですというふうな遺言でなされていた場合の,そちらの連絡をどういうふうに受けたら,そちらに従ったらいいのだろうというのが割と明確になるようなという要請を考慮した上で,遺言でなされた場合の対抗要件としての通知の在り方というのを考えた方がいいのではないかなと思いました。 ● ありがとうございます。   ほかに,この点についてございましょうか。--それでは,いろいろ技術的な問題点は,あろうかと思いますので,なお検討を進めていただくということで,この点はこのぐらいにしておきたいと思います。   それでは,部会資料12の「保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台(4)」の1頁,第4の「2(7) 保険契約の解除によって保険金受取人等が保険金を取得することができなくなる事態を防ぐための方策」の部分について,御審議をいただきたいと思います。   まず,事務当局より説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   本文では,保険契約者及び保険者以外の者が契約の解除をすることによって保険金受取人等が保険金を取得することができなくなる事態を防ぐために,契約を存続させるための制度を設けることを提案しております。   第一読会においては,そもそもどのような場合に必要性があるのか分からないという趣旨の御指摘をいただきましたことから,まずその必要性について御説明いたします。   詳しくは,資料3頁の(補足)2に記載しておりますが,生命保険契約は,年齢が高くなるにつれて引き受けてもらえなくなったり,引き受けてもらえるとしても保険料が高くなるなどしたりし,一般に再加入の困難性があるなどといわれております。そのため,契約が解除されてしまうと,改めて生命保険契約に加入することが不可能又は困難となり,生命保険契約についていわれている被保険者の遺族の生活保障などという趣旨が果たされなくなってしまいます。   また,この制度は傷害・疾病保険契約にも設けることが考えられますが,例えば傷害・疾病により高度障害や後遺症があり,現に入院給付金や介護費用等が支払われているような場合に契約が解除されると,入院給付金等の給付がストップしてしまいますが,このような場合にも制度の必要性があると言うことができます。   さらに,任意に保険契約者を変更したり,いわゆる約款上の契約者貸付けの制度によって貸付けを受ければよいとの御指摘もございましたが,解約返戻金請求権の差押えやこれが破産財団に属することを回避するために保険契約者を変更したり,契約者貸付けを受けて特定の債権者にだけ弁済したりすることは,その効力に疑義が生じ得て不確実ですし,解約返戻金請求権が差し押さえられた後に契約者貸付けを受けることができるかどうかについても争いが生じ得るのではないかとも思われます。   以上の点を踏まえ,本文では制度を設けることを提案しております。   続きまして,本文の規律を御説明いたしますと,本文では,まず1頁のアのところで,契約の解除の効力発生前に契約を存続させるための措置を設けるとともに,8頁のイの部分では,解除の効力発生後に同様の措置を認めることを提案しております。   まず,資料の1頁のアの部分から御説明いたします。   ここでは,契約の解除の通知が保険者に到達してから〔2週間〕後に解除の効力が発生するものとし,その間に〔一定の者〕が保険契約者の同意を得た上で差押債権者に解約返戻金を支払った場合等には,契約の解除の効力が生ぜず,手続を採った者が保険金受取人となるものとすることを提案しております。   その上で,保険者が反対の意思を表示しなかった場合には,この手続を採った者が保険契約者となることを提案するとともに,保険者が反対の意思を表示した場合には,この手続を採った者は保険契約者とはならないものの,その意思に反して保険契約者が保険金受取人を自分以外の人に変更したり,あるいは契約の任意解除をしたりすることのないような手当てをすることを提案しております。   ただ,先ほど御説明しました制度の必要性がこのアですべて実現されているかといいますと,このアからは漏れてしまう場合があることは否定できません。例えば,〔一定の者〕において保険契約者が破産手続開始の決定を受けたことや保険契約者の解約返戻金請求権が差し押さえられたことなどを知らない場合や,〔2週間〕という期間の間に,解約返戻金相当額を準備することができない場合などには,アの規律だけでは十分ではありません。そこで,8頁で,解除の効力が生じた後の規律として,イの規律をも設けることを提案しております。   この8頁のイの規律では,契約の解除の効力が生じてから〔1か月〕に限定して,〔一定の者〕に契約の存続の請求を認めることを提案しております。   また,本文②では,〔一定の者〕が保険契約者の同意を得るとともに,解約返戻金相当額を保険者に対して支払うことを要件としております。これは,イの場合には解除の効力が生じているため,保険者は差押債権者等に対して既に解約返戻金を支払っているか,又は支払義務を負うことが確定していることから,契約の存続に当たって〔一定の者〕が解約返戻金相当額を保険者に対して支払うことを義務付けるものでございます。   もっとも,第一読会において,解約返戻金を支払うことは現実的ではない場合もあるという御指摘がございましたことから,本文③では,解約返戻金相当額の支払を要件としないことが可能な場合には,保険金額の減額による契約の存続の余地を認めることを提案しております。これは,契約者貸付けがされた状態で契約が存続することや,約款に保険金額の減額請求について規定されることがあることなどを参考にしたものでございます。   また,本文②や③によって契約の存続が認められた場合には,本文④や⑤で保険金受取人と保険契約者の変更を伴うことを提案しておりますが,先ほど御説明しましたアとは異なりまして,保険者が契約の存続について反対をした場合には,契約の存続の余地を認めるための規律は設けておりません。   なお,第一読会のときには,〔一定の者〕に手続を採る機会を与えるための措置を設ける必要性について問題提起をしましたが,今回の案ですと,〔2週間〕の猶予期間を設けるとともに,〔一定の者〕を被保険者の親族に限っており,通常は〔一定の者〕が保険契約者について破産手続開始決定があったことなどを知ることが予想されますし,イのような制度を別途設けていることから,〔一定の者〕に手続を採る機会を与えるための措置を法律上設けることはしないことを提案しております。   以上,本文の規律を中心に説明いたしましたが,本文の仕組みについてはなお検討する必要があると考えており,その当否について御議論をいただければと思いますし,併せて,アとイの(問題点)や(補足)に記載した点についても御意見をいただければと思います。   以上です。 ● それでは,ただいまありましたアとイ全体で御議論いただければと思います。   まず,○○委員,どうぞ。 ● 第一読会でも少し申し上げたことと重なる部分があって恐縮なのですけれども,まず,全体として,受取人の生活保障という趣旨そのものは否定するものではないというふうに考えておりますけれども,一方で,この権利を取得する者が「一定の者」となっていますけれども,少なくとも受取人であることは間違いないというふうに思いますので,その多くが契約者の家族であるという実態を考えたときに,契約者が破産をした,実は,現実に今弊社の場合で,差押えが発生しているときの95%以上は,実は税金とか社会保険料が滞納になって差し押さえられているというケースなのですけれども,そういうことを考えると,本当に家族である受取人が一定の金額,解約返戻金とか,あるいは今後の保険料を払い続けられるのかなという意味で,本当に実効性があり得るのかというところについて,非常に疑問があるのではないかなというふうにまず思っています。   併せて,仮に,こういう規定がそうは言っても少数であっても救うべきだという議論になる場合には,一方で実務の問題,要件の問題とか,あと,かなりこれは保険数理的にややこしい問題が幾つかございます。例えば,アのパターンでいくと,2週間,要は空白期間みたいなものがあるのですけれども,その間に何かあったときに,ではどうなるのかとか,あるいは,イのケースでいきますと,単純に受け取った金額を返したらいいというものではなくて,当然その間に1か月過ぎているとか,あるいは契約者貸付けを受けていた場合には契約者貸付けを差し引いて払うわけですけれども,今度は戻ってくる金額は差し引いた金額でいいのかどうかとか,そういった極めて技術的な問題も幾つかございます。   その詳細はこの場で今議論すべきではないと思うので,またそういう機会になれば細かく御説明しますけれども,そういったことを含めて相当きめ細かく詰めないといけないと思いますので,是非そんなことも含めて慎重に御議論いただければありがたいというふうに考えております。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● この問題,アとイ,共通の意見として申し上げたいと思いますが,技術的には確かに非常に難しい問題があると思います。   また,第三分野の問題でも傷害保険の問題がございますけれども,傷害保険は自動車保険にも搭乗者傷害保険がございますし,それから期間の短い1年ものの傷害保険もございますので,こういう保険料の積立金のないような,キャッシュバリューのないような,そういう商品にまでこの制度が適用されますと,非常に約款そのものが複雑になってくるのではないかなというふうに考えますので,そこは対象外というふうにしていただきたいなと思っております。   それと,特にアの規定につきましては,非常に複雑な制度でございまして,これを分かりやすくお客様に約款の中で説明するというのは非常に大変かなと思っておりまして,例えば実務上も,保険金受取人の方が解除通知を受けたことを知るというのは非常に難しいところですね。幾ら支払ったらいいのか,金額を把握するのは非常に大変なところですね。それから,直接債務者に必要な金額を支払うというのは,もうなかなか現実的ではないのではないかなというふうに考えております。   それと,また2週間というのは非常に,期間は別としまして,仮に2週間としますと,この2週間という限られた期間の中に本当に受取人が行うということが現実的にできるのかどうか,こういう問題がございます。   一方のイの規定につきましては,いったん管財人や債権者からの解除を保険会社が受け付けて,その後,一定期間内に受取人が保険契約者の同意を得て保険会社に解約返戻金相当分を支払えば復活できるわけですので,アに比べれば現実性が高いかな,実効性があるかなというふうに考えています。   なお,細かい点でございますけれども,2頁の(問題点)1の中に,「生計を一にする親族」というふうな表現がございますけれども,生計を一にするという法律上の定義をどういうふうにするのかということが,ちょっと現実の問題としてなかなか難しいのではないかなと。だれに権利があるのかというのは明確にしていただかないと,実務上では混乱が生じるかもしれないというふうに考えています。   それから,9頁の(問題点)2のところで,解除の効力が生じた後請求するまでの間に保険事故が発生した場合,支払責任を負うという形にするということにつきましては,ちょっと問題があるのではないかなというふうに考えております。   以上でございます。 ● ○○幹事。 ● この点もどういうふうに整理したらいいか随分難しいとは思うのですけれども,整理が難しいものというのは,大体同じことばかり言って恐縮なのですけれども,原理原則みたいなものが何かということを考えると,それの応用問題という形に整理できるかと思うのです。   保険契約者について破産手続が開始した場合と,解約返戻金について差押えを受けたときと,一緒に考えるのはなかなか,一つは破産法ですし,もう一つは民事執行法で,同じように規定がされているわけではないので,両方一緒に整理しようと思うとちょっと難しいところがあると思いますので,まず,保険契約者が保険料を一括で払ってしまったら,もう双方未履行双務契約ではないかも分からないのですけれども,分割払のものとかで双方未履行双務契約という整理もできると思いますし,それからまた,破産管財人が解約権を行使する場合は恐らく任意解約権でしょうから,双方未履行双務契約での解約権を行使するわけではないと思うのですけれども,解約するのが妥当かどうかというような判断をするときには,既に双方未履行双務契約についての解約権が制限された平成12年の判例とかもありますので,一応そのあたりをヒントにして整理していくということは可能なのではないかなと思っております。   その場合に,どうして生命保険の場合に解除権を制限した方がいいのではないか,いい場面があるかというと,平成12年の判例というのは,ちょっとずつだけしか会費を払わなくていい片方の債務と,それから,解除したときには一括して預託金がもらえてしまってというようなアンバランスがあったというところに解除権の制限があったかと思うのですが,保険契約の場合には,一方で財産的な価値があるのが解約返戻金というのと,それからもう一つは保険事故が生じたときの保険金という,あちらが立てばこちらが立たずという二つのメジャーな請求権があって,それで,管財人が押さえられるのは解約返戻金の方だというところがありますので,そうすると,関係官の方で最初に御説明いただいた,どういうときにこのニーズがあるかというと,もうその被保険者が高齢になっているとか,実際に保険給付を受けているとか,要するに保険契約者であればもはや解約して解約返戻金をもらおうと思っていないような場面なのに,突然管財人が現れて,解除して解約返戻金を取るというようなのが公平というか,ちょっとそういう場面ではないのではないですかというような問題意識があるのではないかと思うのです。   ですので,そのようなときに,管財人の解約権を制限する論理というのをちょっと整理すれば,法律の方でそんなに細かく要件立てたり,場合分けとかをしないで済むのではないかなというふうに思うのと,それから,それは手続法の方で規定した方がいいのではないかなということを今考えております。   ただし,今のように破産手続開始決定がされた場合の整理がいったん付いたとしたら,今度は再生手続ということにも進んでいけるかと思うのですけれども,では差押えの場合は,解約返戻金について差し押さえた者が1週間たって取立権を行使するために保険契約を解除できるのだということをどうやって制限できるかというのは,ちょっとパラレルに考えられないところがまだ,という問題点が残ったままです。 ● ○○委員。 ● 一言だけですが,全体としてなかなか難しいものをよくまとめていただいたなというのが私の率直な感想なのですけれども,2頁の(問題点)1のところで,先ほど○○委員がおっしゃった生計を一にするというのは,これはなしで私はいいと。ない方が,○○委員がおっしゃったように,親戚の中でそういう権限を行使してくれるという方が,生計が一だと,まさにできない可能性だってあるわけですから,そういうふうにした方がいいのではないかなと思っておりますのと,あと,数理的な問題はどちらかというと,どうするかということを決めることが先だというふうに,そういう感想を持ちました。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 私も,この非常に難しい問題をうまく,いろいろな人の利益をいろいろしんしゃくされてうまい条文を考えられているなというのが全体的な感想でございます。   基本的に,執行法とか破産法の方を変更せずに,なるべく保険法の枠内で処理するということが,この案ですとある程度はというか,基本的にはそういう形になっていると思いますし,それから差し押さえてきた債権者を保護する,つまり解約権を行使したのだけれども,その解約の効力が生ずる前に保険事故が発生してしまって解約が空振りに終わってしまうということがないように,2頁の(問題点)2のルールというのが一応考えられているということで,債権者の保護のことも考慮されている。   もう一つ問題は,保険者の保護という,保険者もこの介入権を認めることによって何か大きな不利益が生じないようにということ,そういうことを考慮する必要があると思うのですが,その点に関しては,先ほど○○委員が御指摘になったのが,11頁の(問題点)2に関してで,そして11頁にその説明があると思うのですが,つまりこのルール,1か月以内に保険事故が発生した場合に保険者が保険金支払責任を負うというこのルールを仮に入れてしまうとすると,少し知恵が働く保険金受取人であれば,まずこの8頁,イの①の請求をする。1か月間様子を見て,事故が起これば,そのときに解約返戻金を支払う。それで,保険金を受け取るということになってしまうと思うのですね。   そうすると,この1か月間は保険者は対価なしにリスクだけ引き受けるということになりかねませんので,ですからこの1か月以内,解約返戻金相当額が払い込まれるまでに事故が発生した場合に保険金の支払責任を負うという,仮にそういうルールを導入するとしても,ちょっと1か月は長すぎるのではないか。2週間とか,その保険金支払については,つまり解約返戻金相当額を払い込む前に保険事故が発生した場合にも保険金の支払責任を負うというそのルールに関しては,1か月ではなくてもっと短くしてもいいのではないか。2週間とかあるいは1週間でもよいのかもしれないという気がしております。 ● ○○委員。 ● 読ませていただいて大変超力作だというふうに拝見をさせていただいて,ゼロからつくるのはものすごく大変なことなのだなという大変素朴な感想を持っているのですが,方向性も権能も大変よいというふうに実は思っています。一読のときには,こんなもの使えるのと申し上げたような気がいたしておりますので,そういう意味では,ニーズがどの程度あるのかということが,それはそれで検証するとしても,方向性も権能も大変よいというふうに実は思っております。   ただ,使えるのかという部分に問題がございましてね。大変,こういうものをこういうふうにつくっていただいて,先ほど○○委員の方から約款にどう書くかというお話が実はありましたけれども,ここにいらっしゃる先生のような方たちではなくて普通の一般の保険契約者というのは,こういう制度ができましたよと言っても,事実上,では差押えが来たらどういうふうにしたらいいかという,そこから先のストーリーが実は読めないという部分がございます。   そういう意味では,契約者,例えば,保険会社に差押えの通知が行って,契約者に差押えの通知が行く。それを契約者は,自分は続けたいと思っているのに,いわば横やり的に上からばさっとかぶせられて保険金がどこかへ行ってしまうという話ですから,これは大変だということで受取人に教える。受取人が,さあ,困ったということになって,これが,では上手にせっかく設けた制度をうまく使えるかという話になると,やはりそういう意味では契約者に保険会社の方から,併せて過重になるといって文句を言われそうな気がするのですけれども,この制度があることを知らせるように努めるものとするみたいな,そういう文言を入れていただくと,もっとより,こういう差押えが来てしまって,もう駄目だと思ったのだけれども,こういう制度があって,もしかしたらかき集めてくると使えるかもしれないと,そういうふうに流れていって,この制度がきちんとワークするのかなというふうに思いますので,そこがまず必要だろうというふうに思います。   それから,もう一点ありまして,被保険者の同意に従来からずっとこだわっておりまして,これも,契約者と被保険者が同一人でない場合に,受取人の変更があれば当然被保険者に通知をするのでしょう,同意をもらうのでしょうという話にはなるのでしょうけれども,これ,受取人が,保険会社がイエスと言えば契約者の地位になるということになります。そうすると,やはりその契約者の変更の部分も含めて,再度被保険者に同意を求めるという仕組みを入れないと,ちょっとモラルの点で危ないのではないのかなと実は思っていまして,瀕死の病人の足を引っ張るなんていうことがないようにお願いしたいなというふうに思っております。   それから,ちょっと私の理解が及ばないのかもしれないのですけれども,分からないのですけれども,イの方で言いますと,一度解除をされて契約が切れてしまいます。契約が切れたものをつなぐのですが,それは8頁の④のところに「①の請求をした者は,その時に保険金受取人になるものとする」というふうに書いてございますが,これだと断絶が起きてしまうのかなという気がいたします。   ごめんなさい,一回解除をされて,1か月の間にお金を持ってくればつなげますという話だけれども,その間がここへさかのぼって,「その時」というのもいつなのかという話なのですけれども,そこが,断絶が起きてしまうのかしら,それとも遡及するのかしら,新たな保険契約になるのかしらという意味がちょっと読み込めませんで,分かりませんでしたので,そこは教えていただきたいというようなことを,一応これについては考えております。 ● 先ほどの被保険者の同意の問題と,最後のですかね,このあたりは。 ● 被保険者の同意の問題は,7頁の(補足)8のすぐ直前のなお書きのところですけれども,そこに記載のとおり保険金受取人が変更になれば必要になるというふうに考えておりまして,また今の契約者の変更に伴って被保険者の同意が必要かどうかについては,従前の資料の中で(注)の形で問題提起をさせていただいておりまして,そこでどういう整理になるかによって決まるということになるだろうと思っております。   ただ,今,○○委員から御指摘のとおり,それを超えて,このスキームに伴って,これはこれで別の仕切り,あるいは一般論として別途あっても,これはこの中で,もっと何かこの仕組みの中に取り込む形で被保険者の同意を位置付けるべきだという考えも十分あり得ると思いますので,そこはまだなお詰めなければいけない問題だろうというように認識しております。   それから,確かに8頁のイの「その時」というのはどこを指しているかというのが分かりにくいのはそのとおりでして,その問題はアのスキームの2頁の③,④にもありまして,これはどちらもちょっと明確にしなければいけないと思いますが,少なくとも8頁のイのスキームについて,切れるのか切れないのかということであれば,切れないようにすることを考えて書いたつもりでございます。 ● ○○委員。 ● 今のイのところの話なのですけれども,それ,切れないようにするということは,いったん契約がなくなったのですけれども,例えば,1か月以内に戻せば,ずっと続いていたようにするという意味ですよね。そうすると,先ほど○○委員もおっしゃっていましたけれども,その間に保険事故が生じているようなケースは,みんなつなぎにいきますよね。   だから,それは,いったん切れたやつをつなげるという考え方というのはすごく難しいのではないかなと。やはり今度は,逆に言うと,その金額でいいかどうかというのは,先ほど言いましたように実はちょっと違う金額でないとうまくいかないのですけれども,今度またもう一回,保険料とかそういうのが戻ってきた時にというふうにしないと,極めてモラルリスクが高いという,例えば逆選択が働く構図になるのではないかなという,正直そういう気がするのですけれども。 ● その点はおっしゃるとおりで,その点を9頁の(問題点)2で問題提起したつもりです。先ほど○○幹事からも御指摘がありましたとおりでして,その場合には,事故が起きたということで,もうこのイの仕組みは使えなくなるというような形にするとか,いずれにしてもそこは当然手当てすべきというように考えておりますが,その手当ての仕方についてどう考えるかということをこの(問題点)2,(問題点)2の書き振り自体はそういう意味では,ちょっと問題提起の仕方がもう少し限定した,保険者の責任を負うか負わないかという提案の仕方になっておりますが,今申し上げましたとおり,そもそもこういう場合は,もうこのイのスキームには乗らない,というか,イのスキームは使えないということも含めて,そこはモラルリスクの観点からも手当てが当然必要になろうというようには考えております。 ● 先ほどの○○委員の御質問に対する答えで,解約返戻金額を払い込んだら契約は続いたことに,空白期間がないという御説明でしたけれども,それは9頁の,払い込むまでに事故が発生した場合,当然に保険金を払うという,こういうことを意味していたわけではないのですね。 ● そういうところは全然ないですね。 ● ちょっと分かりにくい関係なのですが,○○委員の御意見は,やはりそこはモラルリスク的な,今懸念,意見は出てきましたけれども,それは,事故が発生した場合には保障も受けられる,そういうルールの方が望ましいだろうということだったのでしょうか。 ● 私は,ものすごく口が悪い言い方をすると,1か月差し押さえられました,2週間は様子を見ています,1か月も様子を見ています,亡くなりました,では,お金を集めましょうというのは,それはやはりおかしいと思っておりますので,そういう意味では,むしろ遡及にするのではなくて,新たな契約なのかなというニュアンスが多少ありまして,そこで先ほどのように申し上げました。遡及にすると,保険事故が起きたときに保険金は払わないという選択があるのだろうかという気がいたしましたので。 ● ほかに。○○幹事。 ● ちょっと確認なのですけれども,今の一連の議論との関連で,アもイもそうかもしれませんけれども,保険者が遅滞なく反対の意思を表示したときはこの限りではないというのが付いていたように思うのですけれども,そこの関係付けというのはどういうふうになっているのかというのが一つと,それから,この規定は全体として任意規定としてお考えなのかどうなのかということも絡んでくると思うのですけれども,そのあたりをちょっと。 ● 最初の,反対の意思を表示した場合についての疑問点をもう少し具体的におっしゃっていただくと…… ● あるいは,反対の意思を表示するというのが,どの段階で反対の意思を表示すると,どういう効果が生ずるということなのかをまず確認させていただきたいのですけれども。 ● アの方の仕組みで考えておりますのは,2頁で書きましたとおり,④のただし書のところで,反対の意思を表示した場合には,結局,④の本文にあります保険契約者の承継という効果は生じない。ただ,③で受取人になるという効果は生ずるということですから,契約者はもとの人のままで,受取人はこのアの手段を採った人に移った形で契約が存続するというような整理で考えております。その場合については,⑤,⑥のような手当てもあった方がいいだろうということで考えておりまして,⑤,⑥を付けているということでございます。   8頁のイの方の仕組みで反対の意思を表示したときというのは,結局それは保険者がそういう形での存続はできないという意思を表示したということになりますので,もう契約は,復活というのが適当かどうか分かりませんが,存続されない。もう解除されたままの状態というか,解除されたということで,結局おしまいというようになるというように考えております。   それで,任意規定かどうかについては,アの仕組みについては8頁の真ん中あたりの(補足)10に書きましたとおりで,また,イの仕組みについては11頁の真ん中あたりの(補足)4に書きましたとおり,なお検討する必要があると思っておりますが,ただ,こういう規定を法律で設けて,保険金受取人あるいはその親族の生活保障というのを実現しようと考える場合には,強行規定的に考えることになるのかなというようには思っております。 ● 先ほどの○○委員の御意見で,例えば1年ものの傷害保険のようなものはやめてくれという,結局,強行規定だとすると,それが認められる保険の範囲というのがやはり多少変わってくるということになるのですかね。 ● ということも含めて検討する必要があると思っています。 ● そういう絡みが出てくる問題かなという気がしますね。   ○○幹事。 ● 保険者の同意との関係でなのですけれども,やはりこのアのスキームにせよ,結局,保険者の同意が得られないと余り意味のないスキームなのかなという気がしまして,というのは,保険金受取人を変えられたとしても,保険契約者の地位を変えられないと,もう保険料を全額支払済みだったら大丈夫かも分かりませんが,保険料がまだ分割払のときには,結局それで今度はまた解除事由が生じてしまうのだと思うのです。   それで,先ほど申しました破産法の方で整理をすることが適当なのではないかなと思ったのは,第53条に特殊な契約について処理というのがありますので,その一類型として,解約返戻金というのと保険金という二つの相反する請求権が生じてしまうような保険契約というのは特殊な契約類型だということで,管財人の解除権というのを考えるということで,では,具体的にどういうふうに考えるかというと,保険契約者が破産して,解約返戻金相当額の権利が抽象的にある場合に,管財人としては,それを現実化してそれで破産財団を増やすというその権限があるわけですので,にもかかわらず,もう老齢で,保険金受取人というのがもう正当な期待を有しているときに,それで解除して解約返戻金を現実化,具体化させて,保険金というのを失わせるというのは妥当でないでしょうという場合には,結局,保険契約者としての地位ごと第三者に移転して,その第三者の下でその保険契約を存続させて,管財人としては,その保険契約者の地位を譲渡させるときの対価としての解約返戻金を受領すれば目的は達成するという,そんなスキームが破産法の方でできるのではないかなと思っているのです。   そういうふうに,保険金受取人ということの利益だけを単独で取り上げるのではない場合には,結局,保険契約関係を第三者に移転させられるということで,まずは保険者の同意が必要ですし,それから,それを移転させるときに,管財人にきちんとした解約返戻金が払われるかということも,そのスキームを認める,だから管財人の解除権を制約するもう一つの要素だと思うのです。   そのようなことができる場合に限って,管財人は解約することができないというような規定にした場合も一つの整理かなと思ったので,保険者の同意というものの位置付けというものの御提案をいたしました。 ● 従来,破産手続の中で管財人が解約権を行使するのがどう見ても濫用的な場合というのは確かにあり得るので,それを抑える制度というのは考えられなくはないのですが,多分,どういう基準でそういう権利の行使を制限するかというのは,なかなかうまい考えが恐らく出てこないというふうなことがあるし,また,差押えの場合にまた,差押債権者が解約するのを防止するというのもなかなかこれはですね。   具体的な現行法の制度の下で,解釈で処理するということになれば,ケース・バイ・ケースで,権利濫用法理などを使って処理できるかとは思うのですが,なかなか立法的にこれをきちんと決めるというのは難しいのではないかというのが恐らく従来の大勢の御意見で,そういうような問題に立ち入らないで,比較的無色の制度で,お金を持ってきたら地位を引き継げるというような,そういう外国にある介入権というような制度を考えて。   これは,外国にある制度ですと,多分保険者の同意というのは要件になっていないということで,従来の受取人が解約返戻金を払えば,契約者の地位にも立つということではないかと思うのですけれども,そこは,契約者が変わるということはそれなりに重い意味があるので,この提案では保険者の同意という要件をかけているということではないかと思うのですが,これはどうですかね,実務家委員の方は,同意という要件がかけられても,例えば相続人の間で争いがあるとかそういうことがなくて,それからモラルリスクの懸念があるようなおかしな人でもないということなら,同意という要件があっても,全部承継には同意しませんなんていうことは余り考えられないような気もするのですが,そこはいかがですか。 ● 多分,○○委員がおっしゃったように,相続人の中で争いがあってというようなケースだとか,あるいは契約者になる人が別の意味でモラルリスクで引っかかっていて,要注意人物だとかいうことがなければ,仮にこの制度ができたとすれば,何か即排除するということではないのだろうとは思うのですけれども,ただ,一方で本当にその解約返戻金相当額が払われているかどうかとか,いろいろな意味でその辺の要件のつくり方というのは相当これ難しいですよね。   だから,本当にそれが技術的にできるのかということと,○○委員もおっしゃいましたけれども,約款に本当にどういうふうに書けるのかなとかですね。これは非常にざっと書かれていて,そういう意味ではすっと流れる部分もあるのですけれども,実際に本当にこれを保険実務の中に落とし込むとか,あるいは価格的に連続性があって,数理群団として衡平にいけるかどうかとかいうふうに考えると,レアケースのことも中にはありますから,これは相当難しい問題が結構あると思うのですね。 ● そこら辺はなお,いずれにしても詰める問題が多いのは確かだろうと思うのですが,いろいろ御検討いただいて,事務当局にも伝えていただければと思いますが。--ほかにこのあたりについてございませんでしょうか。   ○○委員,どうぞ。 ● 議論がここまで進んでいるので,ちょっとどうしようかと思ったのですが,契約者が破産したというような場合,家族,あるいは子どもが実際に保険契約を継続するためにお金を払うかどうかというのは非常に考えにくいなという中で,けれども,受取人の保護ということを考えると,やはりこれは必要であるなというふうに感想としては持っているのですが。   ただ,例えばイの方も,これもかなりのレアケースになるような感じがするのですけれども,少し懸念するのは,○○委員も御指摘があったのですが,この契約の解除,復活など,非常に手続的に複雑なものになりはしないかなという感じがしている。それと,短期間にそういうものをある意味素人の消費者がやれるのかなという懸念がありますので,もともと保険は複雑で難しいという声が一方であるのですけれども,ぜひとも消費者の目から見て分かりやすい仕組み,制度を御検討いただければと思います。 ● ちょっと事務当局として御意見を伺いたい一つとして,2頁の(問題点)1がございまして,その後段の「また」以下ですね。保険契約者は,〔一定の者〕に当たるとしても,本文②の方法を採ることができないものとする必要があるかという問題提起なのですが,このあたり何か御意見はございますか。--事務当局としての問題意識をもう一回ちょっと御説明いただけますか。 ● 資料6頁の上から二つ目のパラグラフ,(補足)6の直前のなお書きのパラグラフですけれども,この〔一定の者〕の範囲をどのように設定するかという問題がまずあるわけですが,契約者自身もその者に当たるといったときに,契約者自身は破産している,あるいは差押えを受けた債務者の立場でということになるわけですが,それと同時に,例えば受取人で一定の親族にも当たるというときに,その立場でこの手続を採って,保険契約だけは存続する,その破産から隔離するというのでしょうか,そういうようなことも理屈の上ではあり得るところで,その意味でやはり,保険契約者がそういう手段を採るというのは幾ら何でもという思いもする反面,受取人の保護という趣旨を徹底してしまうと,それは契約者であろうが何であろうが受取人はできるというのも一方ではあり得るところでして,どう考えたものかなというところで(問題点)と掲げさせていただいたものでございます。 ● というふうなことなのですが。   どうぞ,○○委員。 ● その関係なのですけれども,この〔一定の者〕というのをどこにするかということを考えるときに,やはりこの考え方の根元は,その保険契約がなくなってしまうと非常に,生活保障という視点で困られる人だと思うのですね,保護すべき人というのは。   だとすると,おのずとその対象が限られるというふうになるのではないかということと,併せて,先ほど○○委員が保険会社に何か通知義務みたいなものを課すべきだと言われたのですけれども,例えばそういうふうに考えると,保険金の受取人がこれ,任意にいつでも変えられるというところがありますから,そのことの通知義務を保険会社に課すという考え方は非常に何か酷な形になるのではないかなという気がしていまして,その辺は少し,一体だれをどういうふうに保護する必要があるのか,だとしたときに,その人に対して通知義務みたいなことを課さないといけない関係にあるのかどうかというのは,少し慎重に御検討いただければありがたいなというふうに思っているのですけれども。   あと,そういう意味でいくと,どういう保険金かという種類の問題も,先ほど損保さんからありましたけれども,例えばこれ年金とか,生存保険とか,法人契約とかいうところまで保護する必要があるのかとかいうことも含めて,相当整理をお願いしたいなと思うのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 契約者自身が保険金受取人である場合というのは,恐らく実際に問題になるのは,契約者が同時に被保険者で,自分を保険金受取人にしている,自分が死亡したら,相続人が相続を介して保険金を受け取れるという,そういうケースですかね,ここで実際に問題になるのは。   保険契約者はもう破産している,あるいはもう財産はなくなっているのだけれども,実質的にその家族というか,相続人になりそうな者が資金を調達してきて,しかし,保険契約者の名前で保険契約を存続させるということが想定されるのかと思うのですが,ただ,仮に保険契約をいったん存続させたとしても,保険契約者は財産がなくなっているから,もう一回また差押えを受けたりという可能性はありますし,保険事故が生じたとしても,その被保険者が死亡して保険事故が生じた場合に,保険金が結局,相続債権者に持っていかれるということになるのではないかという気がするのですけれども,そうすると,仮に保険契約者も〔一定の者〕に含めて,保険契約者もこの介入権を行使できるのだとしても,何か実際にこれが役に立つケースというのは余りないのかなという気はするのですね。   全く意味がないということにはならないと思うのですが,ちょっと具体的にどういう場合,私が考えたような場合を想定されているのかということを,まずちょっと事務当局に確認したいのですけれども。 ● 今の点ですけれども,確かに今,○○幹事がおっしゃった場合も,(問題点)1の「また」以下のところの問題の一つだとは思うのですが,それよりも典型的に想定されますのが,保険契約者と被保険者は別人で,保険契約者が受取人だというケースを,この資料を作成したときには考えておりました。ですので,被保険者が亡くなった場合には自分がもらうつもりで契約をしたというケースを考えてはおりました。 ● 契約者は破産したのだけれども,破産債務については免責になるから,介入して,契約者の地位が確保できていれば,それはそれで保険として,保障を自分で確保し続けることができる,そんなイメージでいいのですかね。 ● では,実際には役に立つことはあり得るわけですね。 ● 今ちょっと思い付いて言っているだけなので,本当にそうなのか自信はないのですが,まあ,そんなことが考えられるかなと思ったところなのですがね。 ● その際の問題意識としましては,破産した者あるいは差押えを受けた者が自らこういった制度を使うものとすることの当否というものについて,若干議論の余地があるかなということで問題提起をさせていただきまして,まさにその制度の,保険金受取人の保障ということを先ほど若干関係官からも申し上げましたけれども,そこを徹底するとすれば,保険金受取人という点に着目をしてできるとすることもありましょうし,保険契約者としての地位も有している場合にはできないというふうにすることもあり得る。そのどちらがいいのか悩んでいるというような状況です。 ● ○○幹事,いかがですか。 ● 本当に私も今御説明を聞いて大体分かってきたのですけれども,契約者イコール保険金受取人,そのパターンで考えると,恐らく財産は,例えば土地とかはあるのだけれども,現金にすぐなるようなものはないというので,それは例えば,預金とかが差し押さえられる。保険の方も差し押さえられる。けれども,すぐ現金化できないようなものはありますよと,こういうケースだったら,確かにその人の将来を考えれば,契約者であるということだけで排除されるというのはちょっと行き過ぎかなという面は考えられますね。契約者イコール受取人のケースでそれを認めてもいいということはあり得るなと思います。 ● ○○委員。 ● もういろいろ考えておられるので,無理に否定する必要はないという考え方です。   それとあと,私はこの制度全体の問題で○○委員が御指摘になったことが重要なことなのだと思うのですけれども,やはり例えばこの生計を一にする云々というのが,利用があるかというのは,やはり都市と田舎とでは大分違って,私は田舎ではあると思うのですが,そういうことを含めて,いろいろな消費者相談センターとか苦情センターとかがございますよね。そういうところに相談に行って,それから先ほどの法テラスと提携するかどうかというような問題があると思いますけれども,最初はいろいろ理解は進まなくても,こういう制度ができれば,そういういろいろなネットワークというものの中でそれなりに,全部ではないと思いますが,困った方は救済されていく,そういうシナリオも,現実に相当動いているようですから,そういうこともお考えいただいたらいいのではないかなと思います。 ● ○○委員。 ● すみません,一点だけ補足ですが,先ほど申し上げた,せっかく制度をつくったら魂を入れるためにも動かさないといけませんので,動かすためには,こういう制度があって,こういうふうに使えるのだということを言わなければいけないという話は,私が想定しているのは受取人ではなくて,保険会社は保険契約者を把握しているわけで,保険契約者に知らせるように努めるものとするというぐらいのことだったら,そんなに過剰なことではないのではないのかなという気がいたしますが。 ● ○○委員,その点は。 ● それは,どういう形かということにもよるのだと思うのですけれども,まあ,ちょっとそれは中身を見て考えないと,中身が分からないときにちょっと,何をどう徹底するかという議論を先にしてもあれだと思いますので。 ● なお御検討いただいて。   ○○幹事。 ● 通知というところで言うと,保険契約者は,破産した場合でしたら開始決定を受けているわけですし,それから,差押えの場合にも差押命令が送達されるので,もちろん解除権を行使されたかどうかというところについては分からないとは思うのですけれども,手前のオプションを,保険契約者の方が保険関係を存続,契約者が一番存続させるインセンティブがある人だと思いますので,そうであれば,破産手続開始決定を受けたときとか,差押えの命令が送達されたときに契約者としてアクションを起こす,受取人に対して,ちょっとお金を集めてきてくれとか,この人の下で契約を存続させようと思っているその第三者に対して,お金を集めてきて,これを受取人として受取人の請求権を温存させたいのだけれどもというふうに期待できるのではないかなと思うのですが。 ● 契約者としてはそうする人もいるかもしれないけれども,もう破産したのだからいいやという人もいて,そういう場合の通知を知らせてくれない受取人というのは,やはり何か保護する必要があるのではないでしょうかという議論だと思うのですけれどもね。 ● 受取人の保険金請求権というのは,まだ期待というか,柔らかいもので,保険契約者の胸先三寸なのではないかなと思うのです。 ● それはそれとして,現に受取人ではあるわけですから,その人の利益を保護しましょうということなのだと思うのですがね。   ○○幹事,どうぞ。 ● 一つ前の話で,しかも細部にわたることなのですが,確認をさせていただきたいというのが,先ほどの(問題点)1の後段の「また」以下で,保険契約者自身が当たるかということに関連してなのですけれども,悩ましい問題だとは思いますけれども,もともと生活保障ですとか,一定のまさに保障に値するような場面があるからこそ,こういう介入権的な処理を認めるということからすると,そのような場面があるのであれば,必ずしも限定する必要はないのかなというふうに思ってはいるのです。   ただ,この保険契約者が入ったときにこれがうまく動くのかというのがちょっと分からないところがありまして,とりわけ差押えがかかったという場合に,次々と差押えがかかるということを封じる必要があるわけで,このアの提案の中では,そもそも保険者の同意を得れば保険契約者は変わってしまいますので,それはそれでもう次の差押えはかからない。   それから,もし保険者が同意しなかったときも,契約自体は存続して,保険契約者はそのままですが,⑥で解除権が失われるので,これの代行者ですとか,あるいは取立権の前提としての解除自体も,本人ができない以上はできないということで手当てをするということではないのかなというふうに考えていたのです。   そういう理解で,とりわけ後半の方はそういう理解でよろしいのかどうかということと,もう一つ,そうだとすると,保険契約者だということになりますと,特に保険者が同意してくれた場合には⑥が働かないですし,保険契約者の変更もありませんので,次の差押えがかかって,また解除されてということが次々と起こり得ることになるのですが,それはどう考えたらいいのか。それはもう封じないということなのか,大変細かいところなのですけれども,教えていただければと思います。 ● そこをどう仕組むか悩ましいところだと思っていまして,破産の場合であればもういったんこの手続に乗っかってしまって契約者が変わればおっしゃるとおり,もういいわけですが,差押えの場合は次々とされるということが理屈ではあり得ますので,ちょっとそこをどう手当てするか,まだそこまで考えられていないというところでございます。   ただ,おっしゃるとおりに⑥で解除ができないというのが法律で置かれれば,恐らくは差押債権者は解除できないのではないかというように考えております。   実は,この後の方の★印の付いていないところでは問題提起をしているのですが,一般的に任意解除権を契約者が放棄したときに,それはもうある意味絶対的な効力を持って,例えば契約者の債権者ももう手出しができないということなのか,法律上,例えば任意解除権を認めている以上,契約者がそれを一方的に放棄したとしても差押債権者に対抗できなくて,差押債権者は,取立権の行使として契約を解除できるのかというところが実はよく分からないところでして,そのあたり,逆に民法の考えでどう考えればいいのか教えていただければと思うのですけれども。 ● よろしいですか。私,自信がありませんので,後で御訂正いただく可能性があるということでですが,もし債権者による代位行使であるならば,もとの債務者が持っている権利を代位行使するということですので,放棄が可能な権利であれば,放棄された以上は無理ではないかと思います。   ただ,それが,その放棄がされることによって責任財産が減少する,解約返戻金というのが少なくとも差押え可能な形であったにもかかわらず,それを放棄するのと同じだということになると,その任意解除権の放棄自体を詐害行為取消しをかけるという可能性はあり得るのではないかというふうには思いますけれども。その上で代位をかけていくということがあり得るのではないかというふうには思います。   それから,取立権の前提として,取立権付与の中身として解除権まで認められるのだということの内容が,それはあくまで債務者が持っている権利が,取り立てるためには解除をしなければいけないということで,あくまでそれに依拠しているのだというのと同じことになるのではないかというふうに思っておりまして,やはりもう債務者が持っていない以上はしようがないということになるのではないかというふうには思うのですが,これは,責任を振って申し訳ありませんが,そもそも取立権でそこまで行けるというのは訴訟法の問題ではないかという感じもするのですけれども,ちょっとそれで大丈夫かということがあるかと思います。   あと,差押えまでかかった後は,その前提としてのものは,放棄をしても処分禁止にかかってくるのではないかというふうに考えておりますが,誤っておりましたらまた訂正をお願いしたいと思います。 ● ほかに,この点に関して。   では,いろいろちょっと難しい問題もなおありそうなので,引き続き詰めていただこうかなと思います。   それでは,しばらく休憩したいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただきます。   次は,資料12頁の「3(2) 保険金の支払時期」についての御審議をお願いいたします。   まず,事務当局より説明をお願いいたします。 ● 第9回会議では,損害保険契約における保険金の支払時期について御議論いただきましたが,今回は生命保険契約に固有の問題があるかどうかを中心に御意見をいただきたいと思います。   第9回会議では,複数の委員,幹事から損害保険契約における保険金の支払のためには通常,損害の確認のプロセスが必要であるとの御意見をいただきました。   生命保険契約はいわゆる定額保険であるため,損害の発生の確認や,損害額の算定というプロセスはございませんが,保険事故の発生の有無については確認の必要があると考えられることから,本文①では,期限の定めがない場合に,保険事故の発生の確認のために通常必要な期間が経過するまで保険者は遅滞の責任を負わないものとする案を御提案しております。   もっとも,期限の定めがない場合に一定の猶予期間を設けることについては,第9回会議において民法第419条第3項により,金銭債務の不履行による損害賠償は不可抗力をもって抗弁とすることができないとされていることなどを理由に否定的な意見があったほか,通常必要な期間をより具体的な規定振りにすべきであるとか,請求があった後,直ちに支払うことを原則として掲げるべきであるなどの御意見もいただきました。これらの点につきましては,今回の生命保険契約に関する議論を踏まえて,さらに検討することにしたいと思います。   本文②は,損害保険契約と同様に期限の定めがある場合には,その期限が合理的な期間を超えない限り,当事者の合意を尊重してその定めを有効とするものですが,具体的な期限の定め方としては,(注3)に記載のとおり,約款で請求があった日から何日以内に支払うという定めをすることや,調査が必要な場合を想定して,約款で調査事項を明示した上で,その必要がある場合には,何日以内に支払うなどの定めをすることもこれに含まれると考えられます。   本文③は,損害保険契約と同様に,本文②で期限の定めがある場合でも,その合意を合理的な期間に限定して有効とする考え方を採用していることとの関係で,保険金受取人又は保険契約者が必要な調査を故意に妨げ,又はこれに不可欠な協力を正当な理由なく拒んだことによってその調査が遅延した場合に関する特別な規律を設けることを提案するものですが,第9回会議において,本文①と③の規律の関係について問題提起があったとおり,期限の定めがない場合に,保険金受取人が免責事由の存否に関する調査を妨げた場合等を本文③の対象に含めるかどうかについては議論の余地があると思われます。(問題点)2の第2文はこの点を問うものでございます。   (問題点)1から3までのそれ以外の点は損害保険契約と同様の問題提起ですが,これらについても生命保険契約に固有の問題があるかどうかという観点から御意見をいただきたいと思います。   なお,(補足)1に記載したとおり,法文化に当たっては,期限の定めがある場合とない場合とで区別することなく規律を設けることも考えられますが,本文では,民法第412条との関係を整理しつつ,保険法において在るべき規律を考えるという観点から規律を整理しており,生命保険契約に関しても,ひとまずこの整理に沿って御意見をいただくことにしたいと思います。   以上でございます。 ● それでは,この点について。今日は生命保険を中心に御議論いただきたいということで,○○委員,どうぞ。 ● それでは,まず最初に,生命保険会社の約款とか実務がどうなっているのかというのを簡単に御説明をさせていただきたいと思います。   約款の方ですけれども,多くの約款では,事実の確認のため,特に時日を要する場合を除いて,原則5日以内,商品によっては7日というのもありますけれども,5日以内に保険金等をお支払しますというふうに規定されているのが一般的でございます。   では,この5日,あるいは7日の中で何をやっているかといいますと,一つは,提出された書類に不備がないかどうか,漏れがないかどうかのチェックをしているというようなこと。   それから,支払の事由に該当するかどうか,例えば入院給付金なんかでいきますと,入院日数が5日以上で支払うとかそういうような約款になっている場合がございますので,その日数に達しているかどうかという意味での支払事由に該当するかどうかのチェック。それから,例えば契約に入っていただいてからの経過年数とか死因等を基準として,調査が必要なのかどうか,例えば告知義務違反解除の対象期間に入っているのかどうかだとか,そういった調査の必要性のチェック。それから,御本人かどうかの確認。それから,多くが銀行振込で保険金,給付金をお支払していますから,送金にかかる日数というようなところで5日というのをいただいているということでございます。   これ以外に,調査が要る場合は調査をさせていただいている。ただ,調査がされているのは非常に少なくて,98%程度はもう調査なしにお支払をしているというのが現実でございます。   そういう意味で,今回のこの事務当局の原案については,現行の私どもの約款実務が②に該当するものだというふうに考えておりまして,そういう意味では細かいところはちょっと除きまして,大きな枠組みとしてはこの方向で大きな問題はないのではないかなというふうに考えております。   実務と約款はそんな状況でございます。 ● ありがとうございました。   ○○委員。 ● 今までたくさん言わせていただきましたので,この(問題点)1と3だけ簡単に述べさせていただきますが,ただ,上限を設けるべきかというのは,やはり設けた方がいいのではないか。   生保さんの場合は,私はもうきちっとやっておられて,ただ,問題点は20日間,調査期間を使われるときがあるというので,それをやはり何か表に出すという形で,5日プラス20日で,だから一応上限を30日ぐらいという規定はやはり置かれて,特に一般消費者向けの商品については強行規定とするということはやはり必要なのではないか。   今回は生保中心ですけれども,損保の場合ですと,家庭用総合自動車保険の普通保険約款の第21条第2項というので,被保険者の側に責めに帰すべき事由が全くないのに,つまり落ち度がないにもかかわらず,保険会社の方の選択で120日まで延長できるという規定がありますので,こういうのはやはりちょっと無効にして,もう少し制限して使わなければいけないのではないかと,そういう観点ですね。   それから,あと(問題点)3ですけれども,確認が終了した時点,若しくは,本文①の場合ですね,確認,本文②の場合は,調査が終了した時点で履行期が到来することを法文上書くべきか。法文にはやはり書いておいた方がよいと思うのですけれども,ただ,実際書いても,それは契約者の方は証明なんかはできないですから,現実にはその末日になる。現実にそうなるということは,また,上限を書いた方がいいというもう一つの理由だということになると思います。それだけ,確認させていただきます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 少し損保のことも出ましたが,逆に今回資料12頁の(注2)に,〔合理的な期間〕ということの趣旨を整理していただいているのですけれども,やはり損害保険契約につきましては,債務の存否,すなわち有無責の判断や損害の確認調査に要する期間は保険種類や調査内容などによってさまざまでございますので,一律に定めることはできないものと考えております。   それから,〔合理的な期間〕の考え方についてですが,保険金支払の範囲及び支払額を確定する上で合理的と認められる期間というような形で明確にしていただけるとありがたいと考えております。 ● ○○委員。 ● すみません,そういう意味で,一定日数と合理的期間について御議論がありましたので,そこに少し意見を言わせていただきたいのですけれども,まず,一定の日数の明示のところなのですけれども,調査が必要な項目というのは本当に区々でございます。そういう意味で,なかなか一律的に一定の日数を明示するのは難しいのではないかなというふうに思っているというのが一つなのですけれども,具体的には,例えば調査妨害とか調査拒否がなくても,例えばお医者さんに御協力いただかないといけないといったようなケースで,この場合,基本的には契約者,受取人の方の御了解を得て病院に当然確認に行きます。今はそうでないと,個人情報の関係とかプライバシーの問題がありますから,勝手に医者に行くというわけにはいきません。   ただ,そういうことをしようとしたときに,契約者とか受取人だとか被保険者の方が例えば御旅行をされているとか,いろいろな事情の中で,要は日数がこちらのペースでは進んでいかないということが現実あることも事実です。そういう意味でいくと,何か一律的に何日とかいうふうに規定するのは非常に難しいのではないかなというふうに思っています。   それから,(注2)のところで〔合理的な期間〕というのを保険の種類,保険事故の内容等に照らしてというふうに書かれておるのですけれども,例えば同一保険の同一保険事故でも,例えば死亡といっても,病死と交通事故とによっては調べる中身は全然違ってきます。そういう意味で,保険の種類がこうだから必要な日数は何日ですというふうに種類ごとに決められるかというと,これは相当難しいのではないかなという感じがしています。そういう意味で,実態に即した形で,余り硬直的にならないような形で,その辺規定していただけるとありがたいというふうに考えてございます。 ● ○○幹事。 ● (問題点)2と,それから13頁の(補足)2に関してでありますが,第9回会議で発言したのは私だったと思うのですけれども,生命保険に関してもやはり同じ印象を持っておりまして,本文①のルールというのは,期限の定めがないときに,保険事故の発生の確認のために通常必要な期間については猶予してあげようというそういうルールですので,これに対して③というのは,さらにそれに加えて,支払のために必要な調査ですから免責事由も入ってくる。   ①について,原則が保険事故の発生の確認のために通常必要な期間は猶予してもらえるのに,免責事由の有無について調査を妨げればさらにそれが延びてしまうと,やはりこれはそごがあるような気がしますので,①に関してはやはり,仮にただし書を付けるとすれば,保険事故の発生の確認のために通常必要な調査を妨げた場合には遅滞の責任は負わないという,こういうただし書にして,③のルールは,やはり実質的に②のルールのただし書という形に整理していただいた方が分かりやすいのではないかという気がいたしております。 ● この〔合理的な期間〕の具体化を図るかとか,あるいは今の免責事由の調査の必要な場合等について御意見が出ましたが,ほかに何かこのあたりで御意見はございませんでしょうか。   ○○委員,どうぞ。 ● 12頁の(注2)のところですけれども,その保険契約の種類,保険事故の内容,免責事由等に照らしてというふうに書いてあるのですけれども,これは個々の契約ごとに判断をするという意味ですよね。 ● 個々の契約という…… ● ということではなくてですか。そこがちょっと。 ● 要するに,当該保険金請求に関する調査等の問題になってきますが,最終的には個々の事案ごとの判断にはなるかと思いますが,ここではその遅滞に陥るかどうかの基準をどういうものとして設定するか,やや一般的な基準ということが問題にされているのだろうとは思いますがね。 ● ちょっと読みようによって,保険事故が起きるまで〔合理的な期間〕が定まらなくて,受取人の立場が不安定になってしまうのではないかなという懸念もあったので,ちょっと質問いたしました。 ● そういう問題がこの②の規律にあるのはおっしゃるとおりでして,ただ,損保のときにも御説明しましたとおり,この②の規律で考えていますのは,基本的に私的自治の原則が働く契約法の世界ですので,当事者の合意があれば要は基本的にはそれを,やはり尊重するというのがスタートラインだろうということから,基本的には期限の定めがある場合にはその定めにしたがって,遅滞に陥る,陥らないかが決まる。   ただ,それがやはり不当に長い場合には,それは不当に長い部分については,その合意の効力を否定するということはあっていいのではないかということから,そのぎりぎりのそういう局面において働く規律ということになりますので,そういう意味では,当初,まずその契約者の立場から,いつ支払を受けられる,あるいは支払を受けない場合に保険者がいつから遅滞に陥るかといえば,それは出発点は約定で定められた期日,ただ,それが不当に長い場合には,この②の規律を主張することによって,不当に長い部分のカットを主張することができるというようなイメージで考えております。 ● よろしいでしょうか。   ○○幹事。 ● ということは,この②の規律が主張されるケースというのは,不当にこの支払が長期間拒まれたというケースというよりも,もうほぼ問題なく,迅速にもっと早く支払ってもらえてしかるべきケースであるにもかかわらず,約款で60日とか90日とかという猶予期間の定めがあって,何か理由なくそのぎりぎりまで払ってもらえないかもしれないというときに,この条文が主張されて適用されると,そういう整理になるのでしょうか。 ● 両方働くと思っていまして,約定の期間が過ぎてもなお払ってもらえない場合に遅延損害金がいつから付くかというときに,約定どおりになるかというと,この②の規律を主張することによって,約定よりももっと前からもう既に遅滞に陥ったということで遅延損害金が付くという形で働く場合もあろうと思いますし,今,○○幹事がおっしゃったように,まだ約定の期間は来ていないけれども,とっくにこの規律からすれば来ているという形で主張されることによって働く場面もあろうかと思いますので,そういう意味では働く場面はいろいろなシチュエーションが想定されるだろうと思います。 ● よろしいですか。   ○○委員 ● 保険契約者サイドから言いますと,当然のことながら,請求をしたら,いつ払われるのかはある程度目安をつけたい,ついてほしいという部分がございます。   ですから,現行の約定で言えば,生保さんで言うと5日で,損保さんで言うと30日ですが,それを一つのメルクマールにします。そこから事実の確認でしたか,先ほどの話で言うと,文言は多少生保さんと損保さんで違いますけれども,そういうもので延ばされるときに,要するにそれが保険会社の恣意でなくて,本当に必要なものかどうかというのが,保険契約者の側からどうやって担保されるかという話なのですね。   そこの部分を②の規定で〔合理的な期間〕と書いたことによって,それが本当に担保されるのかどうかという部分は,今特にこういう御時世なので,大変言いにくいのですが,そこら辺がきちんと担保されるような書き振りにならないと,やはり保険契約者サイドから言うと,きちんと必要だと言われる書類はみんな本社に全部届けました,そこから先,棚ざらしになっています,棚ざらしになっているものについて,合理性があるかないかという話を事実上,それを全部,では裁判にするのかという話になれば,それは事実上大変苛酷なことを消費者に言われているということになりますので,そこの部分をこの文言でカバーできるのか。   特に③がありますので,③があって,こちらの方に,先ほど免責事由の話がありましたけれども,①で書いていない免責事由が何で③で出ているのだと私も思いましたけれども,そういう意味でそこの部分が,③という部分であなたのせいで遅れたら,あなたの責任,遅れても仕方がないのだよと言われた上で,なおかつこの〔合理的な期間〕という書き振りだと,ちょっとその辺がいまひとつ私どもとしては,もう少し何か適切なことがないのかなというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 規定から離れて実態のお話をしますと,調査,事実の確認をするときは通知をします。ですから,契約者側というか受取人側は,これは今どういう状態かと。それから,余り遅いと途中で報告もします。それから,受取人からの照会に対しても,今はどういう状態だと答えます。   一律に規定するのが難しいというのは,先ほど○○委員が申し上げたように,保険事故によっても違うところがあるのですけれども,さらに,調査というのはやってみないと分からないのですね。一つやってみると,転院があったりですね。そうすると,そこへまた調べに行くと,なかなかそのお医者さんのアポが取れない。そういうこともあったりして,やはり健全な保険制度の運用のためには,免責規定,あるいはこういう解除のような規定がある場合は,調査をしっかりさせていただくということが必要になってくる。   余談ですけれども,2~3日前の新聞に,簡保さんも,今度民営化したら即時払はやめる,それは正しい支払をするために調査をするのだと,そういうことが,新聞記事ですけれども書いてありましたので,御参考までに申し上げます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 実務とかけ離れているかもしれないのですが,民法の規定との関係というふうなこともかつて話に出たらしいのですが,私はこの問題というのは,第419条の問題というよりも第591条に類似する,第591条は消費貸借が,催告がされて相当な期間がたってから遅滞に陥る,つまり一定の準備をしなければいけないものについては準備の期間は遅滞に陥らないという,そちらのタイプに非常に近いのだと思うので,そういう意味ではその相当な期間というのはそれぞれの事件の具体的な事情によって変わるので,そういう定め方しかできないというのはそのとおりだろうと思うのですね。   ただ,もう一つ,民法関連で,保険会社の方では,事情によっては調査をしなければいけないことが非常にたくさんあったり,調査に時間が掛かったりするということがあるということで,それは保険会社にとっては非常に必然的なことなのだけれども,さんざん調査して,やはり有責だというふうなときに,私が長い間調査をしたのは必要だったのだから,それは遅滞の責めは負わないというので本当にいいのだろうかというところは,例えば借地借家法の地代等の増減請求権なんていうのは,自分が相当と思う額で頑張り通してよろしい,しかし,最後に判決で決まると,その差額については1割の利息を払いなさいというふうなものが規定になっているので,そういう意味ではちょっと保険会社にとっての必然性が当然に遅滞の責めを一律に免責するのかというと,そうではなくて,やはり客観的,合理的期間と,その後,その保険会社にとっては必然と思ったけれども実は必然ではなかったというときの責任の取り方というのは,ちょっと分けて考える方が,何か従来の民法学でやってきた発想にはなり得るのかなという感じがいたします。 ● いろいろ御意見が出ましたが,大体事務当局の聞きたかったことというのは出てきましたでしょうか。   それでは,なかなかこれ,まだ意見の隔たりが若干あるかと思いますが,なおこれは検討いただきたいと思います。   この点に関して○○委員から,今日の1枚物の紙があって,①から③までの今まで検討したことに関連して,④,⑤,これは,では簡単に一応御説明をお願いします。 ● 意見をそ上に乗せていただきまして,ありがとうございました。   修正案が当日の配布になりまして誠に申し訳ありませんけれども,ちょっといただいた意見を踏まえまして一部修正させていただきました。   第4項,これは保険者,保険募集人の責めに帰すべき事由によって,最初,保険金請求がされなかった。その後,やはりそれは支払うべきものだったという場合には,その責めに帰すべき事由がなければなされたはずの保険金請求の履行期,これは大審院の判例があって,これは最近の最高裁の判例と矛盾するものではありませんが,請求書類が用意されて,書類が会社に到達した時,約款で定めた20日とか,昔は20日,損保で30日ですか,経過した時に履行期になる。それから,その時期から保険者は遅滞の責めを負う。この場合について,損害発生の時,定額保険では保険事故発生の時をその履行期と推定するという規定でございますが,これは要するに,この本文中の「責めに帰すべき事由」というのは,民法の債務不履行の規定とはちょっと関係がなくて,商法第656条などの保険契約法の法文で昔から用いられているものを利用した,危険の変更等で用いられているものですね。   この推定規定を置いた理由は,一般の消費者の方が本来の履行期を証明するというのは難しい。保険会社の方は割合簡単なことですから,こういう形でより現実的なものにした。   それから,なぜ損害発生の時又は保険事故発生の時を履行期と推定するのか。これは最高裁判所の考え方の基本は,損害発生時又は事故発生時の後,遅滞なく履行期が到来するというのが基本なのだということを書いておられますので,それに一応従って考えた。   第5項の方ですが,これも以前申し上げましたように不払問題ですごく問題になったものの典型ですけれども,死亡保険金請求があったときに,手術給付金とか入院給付金の方についてきちんと説明しない。そのために,支払漏れができてしまったというものでして,説明などがなされなかったときには,遅れた給付金の支払の履行期をさかのぼって,今の例ですと,死亡保険金の支払の履行期とする旨を定めるものです。   このような規定を置く理由,第一は,これは消費者保護ということになるかと思います。二番目が,本文①,②,③の規定とのバランス。第三番目が,間接的に,まじめに仕事をおやりになっている保険会社を支援する。この三つかと思います。   第一の消費者保護ですけれども,これは法制審議会の諮問の第78号の「見直しのポイント」の第1の4に,このように保険契約の成立,変動及び終了に関する規律について,保険契約者の保護に配慮し,その内容を見直すと。繰り返しになりますが,保険というのは当事者が対等ではなくて,約款は保険会社の方が用意するというそういう世界ですので,今回の保険契約法の改正では,消費者保護をもっと前面に押し出して考えるべきではないか。また,この諮問にこたえる,趣旨にこたえるというだけでなく,不払問題という日本の保険の歴史に残るエポックメーキングな社会問題を受けて,消費者が有している権利関係を明確化するというものとして,これは入口の部分での告知妨害の規定と並びまして,この④,⑤の規定は意味があるのではないか。出口の場合での,保険金を支払う段階での規定として意味があるのではないか。   二番目の本文①,②,③とのバランスという問題ですが,これはいろいろ御議論はあるかと思いますが,最高裁の判例は,基本は保険事故発生後,遅滞なく履行期になる。それから,調査期間の定めがあるときは,損保の場合で30日,これは最高裁は生保にはないですが,高裁判決で調査期間終了後が履行期になるということになっていますので,本文の①,②はいずれも最高裁の現行の法律での理解を,ややちょっと保険会社に有利に変更するというふうに見ることも可能だと思います。   また,③の規定は,保険会社の方にだけ攻撃防御の,これはまじめな保険会社が,かたぎではない悪い契約者に対しての防衛ということですから,それ自体必要性はあるかと思いますが,こういう形で①,②,③を置くだけで終わってしまうというのは,ちょっと先ほどのバランスを配慮しておりませんし,契約者の保護に配慮してその内容を見直すという趣旨に照らすと,少し問題があるのではないかと思います。   最後に,間接的にまじめな保険会社を支援するという点ですけれども,④,⑤の規定は,従業員とか募集人とか代理人の教育をまじめにやっている保険会社であれば怖くない規定です。これまで,実は,コンプライアンスをやった方はお分かりだと思いますけれども,やってもお金が掛かるばかりで,余りほめられないといいますか,短期的には金銭的に損も得もしないということなのですが,こういう規定があれば,努力していれば少なくとも損はしないという状態に変えることができるわけでして,何を申し上げたいかといいますと,④,⑤の規定が,保険金請求の段階で適切な説明とか事務処理をするための行為規範を生むというものとして機能するということが期待できるのではないかと思います。   このようなわけで,④,⑤をたたき台として御利用いただけると幸いです。   以上です。 ● ありがとうございました。   ただいま御説明いただいた点について,何か御質問等はございますでしょうか。   ○○委員。 ● ○○委員からの御提案なのですけれども,趣旨は理解できるところも幾つかあるのですけれども,まず④の方ですけれども,保険契約者側から,保険者あるいは募集人に対していろいろな照会があるケースがあります。ただ,その照会内容,これも,妨害なんかと似たような話になるのかもしれないのですけれども,言われてくる内容が結構区々なのですね。そういう意味で,一律的に何かこういう,責めに帰すべき事由によってという,そのための事実認定になるのかもしれないのですけれども,こういう形で行けるのかどうかということについては少し慎重に御検討いただくとありがたいなという気がしています。   今も現実,契約者側からきちっとした照会があって,その回答にやはり問題があった,誤りがあったというような形で,結果,請求がされずにお支払できていなかったケースについては,後で分かった場合には,その誤った説明をした時に請求があったものとしてやっています。そういう意味で,個別には解決し,対応はしているのですけれども,こういう形で法文化することが果たしてよいのかどうかということについては,慎重に御検討いただけるとありがたいなという気がしています。   それから,⑤のところなのですけれども,これは同じ被保険者を当事者とする保険契約というふうにあるのですけれども,例えば同じ被保険者であっても受取人が違うケース,それから被保険者に病名告知がされていないケース,そういうプライバシー問題というのが幾つかあります。   当然,御請求いただいたときに,例えば特約でほかにも出ますよということについての請求案内というのは,今努力してやるようにしているのですけれども,ではそれをさらに広げてこういう形でやることが,本当に制度全体としてよい形になるのか。   被保険者のプライバシーもあります。例えば,今,御請求があって,例えば診断書を見たときにあと余命6か月というふうに分かるケースもあります。そうすると,本当はリビングニーズという特約があれば余命6か月でお支払できるのですけれども,病名を告知されていない場合は,お支払してしまうと実は我々が病名告知をしてしまうことになるということで,これ,病名を告知しているかどうかというのをきちんと確かめた上でやるようにするとか,同じようなことが,3大疾病なんかで特定疾病になっています,そのことを伝えることがやはりプライバシーにかかわる問題もありますから,一律的にこういう形で義務化されるということについては,別の問題が生じるリスクというのも十分にあり得るのではないかなと。   もちろん,請求いただいたことに対してきちっとお応えするということは,我々引き続き努力をしていきますけれども,こういう形で法文化するということについては,そういった今私が御説明したような問題もあるということを含めて御検討いただけると大変ありがたいなというふうに思っております。 ● 何かありますか,○○委員。 ● 最初の結構なんとかというところがよく聞こえなかったのですが。最初の④についておっしゃったところですが,結構いろいろなものがあるという御趣旨ですか。 ● ええ,保険契約者から御照会されるされ方にいろいろな質問の仕方があって,それが結果として正しい答えをしていなかったかどうかという,多分議論になっていくと思うのですね。それが,ある種,責めに帰すべき事由かどうかという,多分事実認定の問題になっていくのではないかということをちょっと申し上げたのですけれども。 ● そういうもの,細かな,きちっとしていないものの段階というのは,それは事実認定で裁かれると思いますけれども,問題は,実際には判例で問題になったような事案というのは,入院給付金が支払われた後で高度障害になって,それをその段階で払われるといって,しかしもし高度障害で払うと入院給付金まで払われなくなるからと言って,保険金の請求を延ばすとかいろいろあるのだと思いますけれども,そういう中で保険金請求の機会を逸してしまったという,もちろんそういう明らかな場合を念頭に置いて考えているわけで,何か口頭で,片一方がもう事案を特定しないで質問して,答える方ももっと一般的な回答をしたからこういう責任を負うと,そういう話にはならないと思いますね。   ⑤の方も,リビングニーズのところは私もぱっと答えられませんけれども,でも,この問題というのは,それともう一つ大事なことを忘れていましたが,これは損保の方を念頭に置いていまして,上の方に被保険者というところを①のところで,定額保険では保険金受取人と書いていますので,要するにちょっとこれは私の書き方が悪かったのですが,⑤のところの被保険者は,生保の場合はこれは保険金受取人というふうに,そういうふうに御理解していただければと思います。   このケースは,でも,保険会社の方は家族にみんな商品を売っておられまして,基本的にはまず面倒を見ないといけないという世界なのだと思うのですね。それは,リビングニーズについてはまたちょっとよく考えてみますけれども,基本的には,まずお父さんに保険に入ってもらい,次に奥さんに入ってもらい,場合によっては子どもも対象にするものも考えるとかいう形で,またその親戚という形になりますけれども,そういう形で売っておられる以上は,こういうものを基本的に御負担されてはどうか。   従来は信義則でやっているわけですから,それをケース・バイ・ケースではなくて普通の一般的な,しかも効果としてはそんなに負担がないわけですから,逆に言うと,私の素朴なイメージは,不払問題とか何かで保険会社の信任というものが大分失われている,これは決していいことではないし,私も,生保・損保ともにそういう信任を再構築するということについて研究者もいろいろ知恵を出さなければいけないと思うのですが,こういうものを,告知妨害もそうですけれども,そういう規定を置くことについて,できれば積極的に賛成していただいて,本格的な,今保険会社の方はそういう信任を再構築するプロジェクトをやっておられると思うのですけれども,その一つとしてこういうものを受け入れるということもお考えいただければと思います。   以上でございます。 ● それでは,興味深いやり取りがございましたけれども,こういう議論も御参考にしていただいて。   ございますか。簡単に。 ● ⑤についてでございますけれども,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,私どもとしましても業界を挙げて今,請求漏れを起こさないような意識改革,そういうシステムを構築するようにしています。それは実際にやっていて,そのベストプラクティスを,私が言うのも口はばったいのですが,民事基本法に書くのですかと,そういうルールの話ですかというのが一つあります。   それから,ここで請求案内というのはいろいろ状況がありまして,入院給付金の診断書で払えるものが出てきた,そういうケースというのは実は少ないのですね。したがって,そういう可能性があるということでお客様の方にチェックリストを送ったりして,そして確認していただいてその作業を進めているという,そういう実態があるのですね。   私どもとしましては,請求があったものはもちろんきちっと払いますけれども,請求前の案内義務を法律上に一律義務化することというのは,実務的にも大変困難なこともあるし,先ほど○○委員が申し上げたように,それはお客さんにとって必ずしも望ましいことにならないこともありますので,そこら辺は慎重に御検討いただきたいと思います。 ● この点は,議論は一応両方の意見が出たかと思いますので,先もございますので,事務当局も今日の議論を御参考にしていただければと思います。   とりあえず先へ進まさせていただいてよろしいでしょうか。 ● 特になければ。 ● それでは,先へ進みまして,17頁の「4(2) 重大事由による解除(特別解約権)」の部分についての御審議をお願いいたします。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 御説明をいたします。   重大事由による解除については,第一読会において,解除事由を過不足なく列記すべきであるとか,解除事由をさらに明確化すべきであるなどの御指摘をいただきましたことから,本文の①の(ア)では,保険契約者等が保険金取得目的で故意に被保険者を死亡するに至らせ,又は至らせようとした場合を例示として掲げることを提案し,このことによって(ウ)の適用範囲,包括条項の適用範囲を明確化することを意図しております。   また,(問題点)では,いわゆる他保険契約の告知・通知義務とも関連し,例えば,保険契約の重複によって保険金額の合計額が著しく多額である場合に,契約の解除を認めることの当否について問題提起をしております。   これについては,他保険契約の告知・通知義務の問題とも共通いたしますが,例えば,損害保険契約においては重複保険の規律などがある以上,契約が重複しているだけで解除を認めるための規律を設けることは相当ではなく,どのような場合に契約の解除を認めるべきかという問題がございますし,保険価額という概念のない責任保険契約のような損害保険契約や,生命保険契約,あるいは傷害・疾病保険契約のような定額保険契約におきましては,何を基準として保険金額の合計額が著しく多額であるというのか,その基準が明確ではなく,基本法である保険法において独立の解除事由として明示することの当否は慎重に検討すべきとも考えられます。   また,そもそも(問題点)に記載の点を重大事由による解除の問題として考えるべきか,約款上の他保険契約の告知・通知義務との関係を含め,御意見をいただければと思います。   以上です。 ● それでは,この点について御意見をお願いいたします。   ○○委員,どうぞ。 ● 資料18頁の(問題点)のところなのですけれども,第2回のときにも申し上げましたとおり,不正請求対策として,告知義務とは別に,損害保険契約及び傷害・疾病保険契約に他保険の告知・通知義務の規律を設けることを要望します。   現行損害保険会社で取り扱っているほとんどの約款に,他保険の告知・通知義務を課しています。学説,判例のほとんどが,約款においてこのような他保険の告知・通知義務を課すことを肯定しています。これはモラルリスク排除のために必要な規定であることの証ではないかと考えておりますが,損保にも,傷害保険については,不正請求対策として生保さんと同じような契約内容の登録制度というのがございますけれども,生保さんと大きく違うのは,損保の場合は通常代理店さんに契約締結権がありまして,迅速,簡便に契約ができるようになっている反面,著しい重複であることが判明したときには,もう契約は成立してしまっているということが大きな違いだと思っています。   例えば,当社ですけれども,傷害保険の著しい重複契約については,契約成立してデータを登録して,しばらくすると機械的にワーニングを出す体制になっています。一定の基準を超える重複が判明した場合,営業の業務点検としてこれを是正する活動を行っています。どうしても引受基準をオーバーする場合には,約款の規定に基づいて解除をしています。この事故が起きる前の解除,つまり免責にするかしないかとか,そういうことには関係のない将来に向かっての解除についてですけれども,当社で,年間100件を超える程度の件数がございます。このような取組みはモラルリスクの予防に役立っていると考えておりまして,告知義務違反の規定が適用できなければ解除できないことになってしまいますので,他保険告知に関する規定を設けていただきたいと考えます。   また,解除して発生した事故の免責まで主張するというのは,ほとんど裁判になったケースに限られますから極めて少ないのですけれども,第6回で生保委員さんより,重大事由解除を適用しているケースは大手4社で年間8件という説明がございましたけれども,少ない件数でもやはり免責を主張する根拠となる規定が必要だと考えています。   どうしても他保険契約の告知義務の規定が設けられないということになった場合には,次の二点を要望いたします。   一点目は,正しく告知を受けていれば引受けをしなかったというような場合には,資料17頁の①の(ウ),この要件まではいかないというような場合があるかもしれませんので,この場合には,将来に向かっての解除ができる取扱いとしていただくことが,先ほど申し上げたような重複契約のチェックの取組みのために必要です。そこで,現在でも他保険についてはリスク測定上の重要事項として告知を求めていますが,例えば告知義務違反解除の規律が適用できるように,すなわち,告知を求める重要な事実には道徳的危険も含まれる取扱いとしていただきたいと考えます。   二点目は,既発生事故の免責まで問わなければならない場合には,信頼関係を破壊するような場合に限ることでよいと考えますので,著しい重複については,重大事由解除の規定が適用できることが明確となるよう,先ほど申しました(ウ)の例示として,著しい重複の場合ということを明文で追加していただきたいと考えます。資料18頁(注5)にあるように,強行規定とされると,特に明確化が必要と考えております。   以上です。 ● ○○委員。 ● 違うことなのですが,問題提起として,18頁の(注2)に除斥期間の話が書いてあるのですけれども,これは多分,推測するに告知義務違反とパラレルに考えて除斥期間が必要かということもあるかと思うのですが,私どもが重大事由解除で解除するのは本当に悪質なものなのですね。先ほど○○委員がおっしゃったように,17年度で4社で8件というぐらいですから非常に慎重にやっているのですが,したがって,こういう悪質な,保険のプールに入れておけないような人たちに対して,除斥期間を設ける必要があるのかということですね。現行約款ではそこら辺の規定はないのですが,こうやって故殺とか保険金詐欺とかそういったものに除斥期間を設ける必要があるのかと,そういうふうに実務的には思っております。そういうような法定化がされて強行規定になった場合,現行の実務と反するということもあり得ますので。   特に1か月というのはなかなか,告知義務違反と違って知ったときの認定,要するに例えば交通事故の保険金詐取があったとしたときに,新聞報道があった時なのか,逮捕された時なのか,起訴された時なのか,有罪判決が下りた時なのかとか,いろいろ考えられるわけですけれどもね。それも事実認定の問題かもしれませんが。   それから,慎重にやるだけに,弁護士見解を取ったり,調査も慎重にやったり,かなり時間が掛かるというのも実態でございます。そこら辺も御配慮いただければと思います。 ● ○○委員。 ● この問題点にちょっと答えてみたいと思うのですけれども,なかなか難問だと思うのですけれども,まず基本のスタートは何かなと思ったのですが,これは要するにこの特別解約権又は重大事由解約権によって,保険会社,共済の方に,何かある特殊な権限を新設するのか,それとも,もう今まで保険法の中,若しくは判例法の中で認められたものを法文化して認めるのか。重大事由解除というと,もうちょっと制限的な形になります。特別解約権というと,イメージとしては広げるような感じになるのかもしれない。論理が必然的にそうなるかどうかというと,これはまた別の問題でありますけれども。それで,この問題についてはまだ最高裁の判例はないということですが,下級審が認めているものをこういうふうにいろいろ御苦労なさってまとめられた。   それともう一点,2項の方で,以後免責の形を使って,実際は解除がさかのぼるのと結果としては同じような形で,過去にさかのぼって結果的には免責の効果をもたらす。ということは,その実質は,やはり公序良俗違反とかによる無効とか失効とか,又はそれと同等の何か重大性の高いものがあるということが前提になっているのだというふうに思いますが,そういう目で見ますと,この第1項の(ウ)のところは,「その他の」というのがまた問題なのですが,当該保険者との信頼関係を損ね,当該契約者による重大な事由と,これが前回と違ってここが入ったわけだと思いますが,そういう意味でその方向はそれはよく分かると思うのですけれども,そうすると,この設問の,要するにたくさん巨額な契約があった場合どうかという問題で,実際は巨額な契約で保険会社が承知で引き受けているのがあるわけですよね。   判例でも,こんな額と思っても,それはそれで有効だとしているものもあって,それはやはり,例えば事業資金を貸し付けて,銀行の関連の代理店が,もちろん優越的地位を濫用とか何か,いろいろな金融庁のルールを守った上で,保険を売りに行って入っているとか,そういう場合がありますので,単に契約が巨額でたくさんあるというだけではやはりそういうふうにならなくて,それプラス何か超過要素ですね。保険制度を悪用しているとか,利得の意思があるとか,何かそういうものがあって初めてこの重大事由解除の中に入ってくるのだと思います。   でも,この(ウ)がどうも,「その他の」ということですから,(ア),(イ)は例示のようで,(ウ)が包括的な,だから,(ア),(イ)は(ウ)の中に入るのだと。この「その他の」という言葉の使い方は,法律家はそういう言い方で使うわけですけれども,そうだとすると,例示しても,(ウ)がかかるのであれば,それはそれでいいかなと。   ただ,今言ったように理論的に,巨額だというだけでは直ちに重大事由とは言えないので,超過的要素,何かそういう追加要素があって初めて重大なものですから,そういう意味ではやはり,そうだとしても,例示をしないで(ウ)の方に入れておいた方がいいのかなと,このあたりが。だから,いろいろ考えると,どうも(ウ)の中に入れてしまって個別に書かない方がいいのではないかと,そういう結論です。 ● ありがとうございます。   ○○委員,どうぞ。 ● 最初にまず,○○委員がおっしゃったことから言いますと,入口のところで他保険契約の告知をさせましょうというお話なのですけれども,それは一読のときにも申し上げましたけれども,すみません,反対でございます。   何でかといいますと,例えば団体傷害とかそういうときに,被保険者の同意をとるというのはいかにテクニカルに難しいかという話のときに,たくさんいろいろな保険があるのだと。本人が知らないうちにもう山のように入っていますよというお話がございました。そうすると,知らないものを告知しろというのはそもそも無理ですから,そういう意味では,告知をさせるという,保険金詐欺を防ぐためなのだから,知っている人の話なのだという,そういう仕切りはあるかもしれませんけれども,そういう意味ではそもそも保険の種類はたくさんございますので,そういう意味で,自分の保険を全部,全面的に,被保険者として,団体傷害とかたくさん入っているときに,本当にそれを把握しているのかどうかというのがまず一点目でございます。   それから,簡便に入れるから,だからそういうものを,簡便な部分でモラルハザードがあるのだというお話がございましたが,今,現実に他保険契約の告知をさせている,例えば申込書を拝見させていただくと,ここの会社,例えばA社ならA社に入るという申込書の中で,では同じような保険にどれに入っていますかというので,B社とC社と書かせるだけなのですよ。書かせるだけで,金額もなければ保険種類もない。事実上,例えば保険に加入するときに,ではほかの保険証券をみんな引っ張り出してきて,これを一覧にして並べておいてよく自覚してから入らなくてはいけないかというと,そんな手間暇をかけて入る人はだれもいないわけですから,そういう意味では,事実上,他保険契約の告知といっても,どちらかというと余り実用的でないような気が私はいたしますし,告知をさせることがかなり酷だというふうにも思います。   そういう意味では,他保険契約の告知をさせるのであれば,入口の部分ではなくて,前回か前々回の議論でありましたけれども,請求時点で,他保険契約について告知をさせるというのであれば,三つ入っている人に二つ請求をさせるという,例えば,どれとどれに入っていますか,按分で払うのだからというお話だったら分かりますけれども,入口時点で他保険契約の告知をさせるというのは苛酷だし,余り実用的な効果がないのではないのかなと実は思っています。   それから,今回のケースで言いますと,今,○○委員がおっしゃっていただいたように(ウ)のところなのですけれども,正直に申し上げると大変広すぎると実は思っています。ずっと限定してくださいというふうに申し上げていて,ここで重複契約が出てくるのは想定外でございまして,ここで重複契約の話をするのかと。   そもそも生命保険は皆さんよく御存じのように定額保険ですから,当然保険料と保険金を見合いで払っているわけで,たくさんかけているというのはどこで線を引くのか。私だったら1億でもたくさんかもしれないけれども,そうでない人は10億でもたくさんではないと,そういう部分でどこで線を引くのかというのが分からないのに,重複契約をこういう形で制限するというのはどうなのだろう。たくさんかけていること自体が信頼関係の破壊だと,それは乱暴な議論なのではないか。たくさんかけていて,それをもとに何か,例えば(ア)と(イ)に準ずるような行為を行って初めて信頼関係が破壊されるので,たくさんかけていること自体が破壊だったら,現実に10本も15本もかけている人はたくさんいますので,募集人さんに勧められて入っている人はたくさんいるので,そういう意味ではそこら辺はちょっと,これで,特別解約権という名称でも,重大事由による解除でもいいのですけれども,そういうことをするのはいかがなものか。おっしゃるように,公序良俗違反を縛ればよろしいのでしょう。そうしたら,ここで重複契約があること自体でもって縛るというのはいかがなものかなと私は思いましたけれども。 ● どうぞ。 ● 申込書のことをおっしゃっていただいたので,事実をちょっと説明させてください。   おっしゃったのは,自動車保険の場合には,他保険がある場合は会社名のみを書いてくださいということで終わっている,そのとおりです。   ただ,傷害保険の場合には,おっしゃったことを既に多少は配慮しているつもりで,簡単に書けるようにしてあるという一方で,傷害保険の場合には,面倒かもしれませんが,保険会社名と種類と保険金額を書いてくださいということはやっております。 ● それは,死亡保険金の話ですか,それとも入院給付金の話ですか。そういうふうにやっていくと,聞かれた方が,どれの話なのだろうと思うのです。単純な傷害……。ごめんなさい。 ● そういったところで事実だけ申し上げますと,死亡,入院給付金まで,事実としては書いてもらうようになっています。どうぞ。 ● たくさん言いたくなってしまうので,やめます。 ● ○○委員。 ● 先ほどの(ウ)の包括条項に関しましてですけれども,現在約款では,この前も見ていただきましたけれども,特約の方は,生保の方は多重契約というだけでこの重大事由の解除に当たるという規定はしていませんで,こういう書き方をしています。これは361頁の第17条に書いてあるのですけれども,他の保険契約との重複によって,被保険者にかかる給付金額等の合計額が著しく過大であって,保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがある場合と。これは,先ほど○○委員がおっしゃったように,実際には保険事故が起きてからやることが多いのですね。   それから,もう一つ,主契約の方,すなわち死亡保険金の方は,この重複契約の規定がありませんで,そういう事実ですね。主契約の方は,特約が重大事由で解除されれば主契約も解除されますと,そういう規定が入っています。 ● 先ほど○○委員から,事故が発生前でも,他保険の告知義務違反で解除している例があるというふうなお話でしたが,これはどういう要件のもとに解除されているのでしょうか。   実際に今,資料の20頁で裁判例というか判例が少し引用されているように,実際上の判例の運営としては,単に客観的なといいますか,告知義務違反の約款に書いてあるような要件だけでは足りなくて,正当な理由があるとか,そういう過重的な要件を解釈上課していて,かつ,実態上,実務上の運用としては限りなく黒に近いという事案で,初めて解除が認められていると思うのですね。必ずしもそういう事故が発生した後,そういうふうに,モラルリスクの疑いが極めてあるけれどもなかなか故意が証明できない,これは実務上はなかなかそれはやむを得ないところなので,こういう他保険の告知義務違反というようなことで初めて解除を認めて,保険金を払わない,そのぐらいで正当化できるのかなと思っているのですが,事故が発生する以前の段階だと,どういう実態上の基準で運用されているのでしょうか。 ● 名寄せをしまして,それで,合算額が一定金額以上になった場合に,実際は各社基準があるのでしょうけれども,普通,そのお客様の状態から比べて余りにも高額な場合と考えられるときに,お客様のところに行って事情をお話しさせてもらって,要するに不必要である,基本的には御相談をするわけなのですけれども,それで,余りにも不必要な金額を超えている場合には,解除という形でその契約を削ってもらうということをしています。不要な保険金額を削ってもらうということです。事故が起きていない場合ですね,そういうことをやっています。   そういう意味で,一定金額はあると思うのですね。生保さんもあると思うのですけれども,これも一定,一律なのか,収入とか,いろいろ必然の基準とかがあるのかもしれませんけれども,そういう基準でございます。 ● それは,かなり常軌を逸している高額というイメージで考えていいのですか。 ● そうです。 ● 先ほどの○○委員の御意見ではないけれども,普通の人が結構みんないろいろ,勧められるままに入っていますと。10個ぐらい入っていますとかいうのがありましたけれども,そういう程度のものなのか,もっとひどいものなのかというですね。それはいろいろあるという……。○○幹事。 ● 私は保険事故発生前に,引受基準を超えているからという理由だけでこの解除を認めてよいと思っております。契約が累積すること自体,やはりモラルハザードを誘発する危険な状況に近付くわけでありますから,その状況を保険会社の側で解消しようという努力をされるときに,それをわざわざ法の方でその解除はできないとかという制約を置くのは適当でないと思いますし,そもそもそういう状況を保険事故が起きてから初めて問題にするということが,保険法の全体の体系として適当なのか。入口でもしっかり,そういう状況が生じないようにモニタリングするということの努力をやはりある程度していくということの方が,そういうこと,そういう事態に至るケースを減らすということからは,私はやはり告知義務の問題は他保険の告知義務の問題として整備していただきたいと思っております。   結局,解除するときに,知らない間にたくさん入っているということはありますけれども,知らない間にたくさん入っているものについて,告知義務違反について故意があるわけではありませんし,重大な過失があるという認定もそんなに簡単にできないと思いますし,そもそも最後まで知らなければ請求自体もできないかもしれないわけでありますから,その辺は支払段階でのどういう態度をとっているかということとも併せて考え,事後的な問題についてはそこを併せて考えることで調節できるのではないかと思っております。事前のモニタリングの精度を落としてしまうということには反対であります。 ● ○○委員。 ● 他保険のこの告知の問題でございますけれども,損害保険,生命保険もそうですけれども,保険というのは非常に少額の保険料で,何か事故が起こったときに多額の保険金をもらえるということで,もともと非常に慎重に扱わなくてはいけないという性質を持っておりまして,ここを,ほとんどのお客様はもちろん善意でお入りになっておられまして,事故が起こったときにそれを補償されるということでございますが,そういう仕組みをねらった犯罪というものがいろいろな巧妙な形で行われる。したがって,保険というシステムを健全に維持していくためには,当然のことながら自衛的な仕組みを保険の中に持っていなくてはいけない。それが,この他保険契約の告知がその一つであろうというふうに思っております。   もちろん保険者そのものが,他保険契約の告知につきまして過剰な対応をするということは,これは監督でチェックをすればいいことでございまして,保険制度の仕組みの中に,もしそういう自衛的な仕組みがなければ,非常に特定の集団に保険制度が食い物にされてしまうという可能性もございますし,またさらに,保険というのはそういうものだということが広まることによって保険制度の健全性が損なわれるということがあると思いますので,特に他保険につきましての告知というのは必要だろうと。   例えば,けがをして入院をして,あるいは通院をして,1日に10万円,20万円,保険金が払われる,こういうようなことが広く行われるということ自体が,やはり何か現実的に問題があるのではないかなということから,いろいろな会社はそれぞれ告知を設けて,保険制度そのものの健全性を維持しているということでございます。   もう一つ,やはり非常に過大な契約があった場合には解除をするということ。それから,故意又は重大な過失があった場合につきまして,既発生の事故につきましては免責をするということ,これは基本的に必要な仕組みであると思っております。   ただし,当然前提でございますけれども,解除をする場合には,既発生の事故の免責につきましては要件を厳格にしておくべきであろうと思いますし,社会通念上,年齢とか年収とか,社会的地位とか,いろいろな観点から著しく過大なものであるということが客観的に証明される場合に限るとしても,その仕組みそのものはぜひ設けていただきたいというふうに思っております。 ● 今,他保険契約の告知義務の必要論というのが幾つか出ていると思いますが,○○幹事。 ● どちらかというと,他保険契約の告知をしなかったことで解除できるということを基本法に書くことは,私としては余り賛成ではないです。   というのは,もう何度か申しているように,入口のことの事由によって生じる解除権とか,期中での信頼関係が破壊されたことによって解除できるようにするということと,事故が起こったことによって,本来だったら支払わなければならないことについて免責として払わないようにできるということは,基本的には連続性があることだと思うのです。   保険事故が起こったけれども払わないでいいというのは,詐欺とかそういう重大な公序に反するような事由が生じている場合ということだと思いますので,期中で何か信頼関係が損なわれて解除できるというのは,そのような信頼関係が破壊されて,保険事故が将来起こったときに,もう払わないでいいように,契約関係の拘束から逃れるということですので,やはりその重大性というのは同じようなものだと思いますので。   また,入口のところでも,保険者側で自衛の仕組みをつくる必要があるというふうに今,○○委員がおっしゃったことについては,本来であれば,契約自由の原則だけれども,保険契約者側に,いろいろ保険者が危険の引受けをするに当たって判断しなければならない事情が偏在しているので,それを質問形式によって答えさせて,その重要な事由というのが告知されなくて,私たちは,重要な事由と言って,それで結果がプロ・ラタではなくてオール・オア・ナッシングという,解除ということの大体整理がつくとしたら,その場合には告知義務違反があって,それがために契約の目的が達成しないような場合という,そういう要件があって初めて告反での解除ができると思いますので,他保険,幾つか重複保険の場合に入っているというのは,恐らく保険金詐欺がされるであろう一つの徴表だということだけだと思いますので,そのことについて告知しなかったからといって直ちに解除できるというのもちょっと行き過ぎな感じがしますし,それから期中で他保険に入っているということが判明したときに,それを解除事由とするかという今回の(ウ)の例示とするかというと,○○委員がおっしゃっていたように,現在の生保の約款でも,保険制度の目的が損なわれる場合というようなプラスアルファの要件を書かれていると思いますので,そこのところが割と基本法としての在るべき姿だと思います。   それプラス,各保険会社が,とはいっても証明が大変だから,こういう事例があったら解除しますよというのを約款レベルで幾つか設けるということについては,それは特に問題はないのではないかなと思っております。 ● ほかにいかがでしょうか。   他保険の告知義務をも立法的に明文化するという意見と,重大事由解除の中で処理することにして,その中で解除事由として明文化するという意見と,それからその他,包括条項の中で読み込むと,大体そんな三通りが意見としてはあり得るかと思うのですが。   ○○幹事。 ● 他保険契約の告知義務,通知義務は,現在損保会社の損害保険,傷害保険の約款では入っておって,そして実際にその約款に基づいて解除の主張がなされた場合に裁判で争うということが幾つかあるわけですけれども,これまでいろいろ立法論もあったと思うのですが,なかなかそれが具体的な立法論として出て詰めるところまで行っていなかった。やはり要件の定め方というのは非常に難しい。特に悪意,重過失あたりをどうするか。仮に定めたとしても,その悪意,重過失をどう判断するかというのは,結局実際の裁判で裁判官がどう考えるかということになってしまうと思うのですね。   そうだとすると,この包括条項の信頼関係を損ねないという,これがあれば,実質的に悪意,重過失をもって告知義務,通知義務,約款で仮に定めたとしても,その約款に定めた告知義務,通知義務に悪意,重過失をもって違反しているというその判断と,この信頼関係を損ねるというのはかなり重なってくる可能性があると思うのですね。   ですから,法律で,他保険契約の告知義務,通知義務については明文の規定では置かない。そして,仮に,その場合に,明文の規定を置かなければ,当然に約款でそういう規定を置いたときにその約款はもうおよそ意味のないものになるかというと,必ずしもそうではないと思いますので,そうだとすると,約款でそういう規定を置き,現実にその通知義務,告知義務に反したという事例があった場合には,その効果として,この重大事由による解除の,この(ウ)に該当するかどうかが判断される。これで処理できるということになるのではないかという気がするのです。むしろそうすべきなのかなという気はするのですね。   やはり,これと離れて約款が独自に告知義務,通知義務の規定を定めて,そしてこの信頼関係を損なうかどうかということをおよそ考えずに,もっと簡単な要件で解除できるとしてしまった場合に,本当にその約款どおりの,約款がもっと緩やかな要件で解除できるとした場合に,その効果を認めてよいかどうかというとそれは難しいので,結局実質的にはこの(ウ)の判断で裁判所も考えるということになるのではないかという気がするのですね。   そうすると,この(ウ)の規定というのは,ややあいまいですけれども,しかしあいまいであるというのはそれなりにいいところもあるので,特に裁判例が積み重なりつつあるところで,まだどういう方向がいいのかというのが必ずしも明確ではないところがありますので,今後の裁判実務にゆだねるということも考えられると。そうすると,この(ウ)の規定というのは必ずしも悪くはない。私はむしろ,この規定というのはうまく使えるのではないかなという気がしております。 ● はい,どうぞ。 ● 前に言ったのかもしれないのですけれども,我々の要望というのは,他保険告知というもので,先ほど申し上げたように,事前のモラル対策ができるように解除がやりたい。そのときの解除は,別に免責という効果を伴わなくても構わないという一つのパターンがあって,もう一つは,免責が必要なときには,先ほどの判例のような形で,不正の請求とかそういうものが絡んだときにそこまでの効果が欲しいという,非常に難しいのですけれども,そういうことで何とか組合せができないかなということで,先ほどの二つの案を出したということです。 ● ○○幹事。 ● 今,○○委員がおっしゃったことは少し分かってきたのですけれども,今のこの御提案になっているところですと,②のところで,要するに①の(ア)から(ウ)までの事由があった後,解除までの間に発生した事故については免責ということになりますから,さかのぼって免責という話になるのですね。かなり効果はきついわけです。   遡及的に免責という状態をつくり出すことになりますので,除斥期間が長ければ,ずっと免責状態というのが続いていて,保険契約はあるけれども,この部分についてはもう免責ですよという状態になっているので,やはり(ウ)の事項は一般,バスケット条項みたいなことになるのでしょうけれども,やはり(ア),(イ)に相当するレベルのものでないと,これは相当,免責の範囲が広くなり過ぎるなということになりますので,先ほど○○委員がおっしゃったように,それは一般の,事故発生前に解除にいかれるような他保険の場合とはちょっとレベルが違うのかなとも思ったりします。 ● ○○委員。 ● すみません。一つ目の案で申し上げましたのは,この重大事由解除ということに直接かかわりなく,他保険告知の規律をつくってくださいというお願いが一つ目です。   その中で,何も全部片っぱしから遡及免責にしなくてもよくて,とりあえず解除ができて,さらに,だから,今のままの通知・告知の内容とは違うと思うのですけれども,遡及免責になるのはやはり判例で認められているような条件付きの重大事由のときだけと,そういう他保険告知の規律を一つ新たにつくっていただけないかということ。新たにというのは,今ある告知そのものよりは少し規律が違っているからですよね。   それから,もう一つは,それが無理であればその二つのところを,仕方がないので二つに分けて,二つ目の案というのは,今申し上げた一つ目のねらいをやるために,今の告知制度の中で危険測定というところ,重大事由の中身が普通だと道徳的危険というのは含まれないので,道徳的危険も含まれるようなことで入れていただければ,そこでとりあえず解除ができるようになって,それで免責の方は,この(ウ)の中でとれるようにしていただいて,それは非常に,不正行為というものの条件付きの前提で縛られても構わないと,そういうことです。 ● どうぞ,○○幹事。 ● 今のお話は,かなり損害保険の例を念頭に置かれているかと思うのです。ここは生命保険について念頭に置いて考えると,ちょっとやはり損害保険のケースとは色合いが違うかなというふうにも思います。   生命保険の場合で,例えば①の(ア),(イ)に準ずるような形の(ウ)のレベルを要求した場合は,②があってもいいのかなというふうに,②で処理していいのかなというふうには思うのですけれどもね。よほどこれはひどいというか,公序良俗違反に近いようなレベルに及ぶというケースを,主としてこれでカットするということであれば,損保と必ずしも一致しなくてもいいかなという気はしているのですけれども。 ● 他保険の告知義務というのを独自に何か明文をつくる,法文をつくるということになると,その要件の立て方が非常に難しいと思うのですが,仮に何もつくらなかったときに,解釈論的にどうなるのでしょうか。普通の告知義務の規定で,先ほど○○委員の方から道徳危険も告知事項に含まれるというふうな,これは解釈でもよいということですよね,最悪の場合は。そういうのはいかがなのでしょうか。   要するに,別に必ず他保険のことを告知事項に入れなくてはいけないかというと,それは今生保の実務でやっているように,そんなことは聞きません。聞こうと思えばそれは告知事項たり得るのであって,それは聞くことは可能です。わざわざ独立の条文を起こさなくても,一般の告知義務で聞けますと。   ただ,そのときにまた,では違反したときの解除要件などをどうするかというふうな問題は出てくると思うのですが,そもそも普通の告知義務の中で問える事項なのかどうか,このあたり御感触はいかがですか。   まず,○○委員。 ● 私は,これまでの用意された本文で,告知義務と通知義務のところではそう読めるのだというふうに理解しておりまして,ただ,○○委員の御意見ももっともなので,要するに極端なものを入れるということはあり得る。少なくともこれまで用意されたものを何度も見る限りは,それは排除されていないという理解で,実はこれを検討するときに思ったのですけれども。そういうふうに理解していますが。また,それでよいと思っているのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 私も,解釈論として読めと言われれば読めると思いますが,通常の告知義務の規定で読む場合には,因果関係法則の適用は外さないと,あれも強行法規でかかってしまうという解釈になると,他保険告知は,通常は保険事故との間に因果関係はありませんから,それはモラル対策としては全然効かないということになります。   独立に条文を設けることの意味としては,やはり私は,先ほどから○○委員が言われているように,事前に契約は代理店契約で代理店のところでもう即時に成立するのですけれども,後で見直しをしてみると引受基準を超えているということが分かった時点で,その解除をしている。保険事故発生前であれば,かなりの低い要件で解除ができる。ここに立法をする意味があって,ですから,そういう制度を全く保険法の枠の外で任意に保険会社がやってくださいということなのか,保険会社がそういう制度を採用しようとすれば,その解除の要件については法が保証しますと,そういう態度で臨むのかという違いではないかと思われるのですが。 ● 先ほどの○○委員の御意見だと,要するに事故発生前のものを告知義務違反で解除したいという,そういうニーズがあるというお話で,これだと別に因果関係不存在の特則があって問題ないわけですよね。だから,事故未発生のものはそれで処理できる。   事故発生後のものについては,この重大事由解除の規定でさかのぼってという,そういう処理は可能なので,余り軽い告知義務の規定を何か独立に設けるというのはいかがかなという,私個人的にはそんな感じも持つのですが,どうですかね。   ○○幹事 ● 告知義務についてはそれでいけると思うのですが,通知義務に違反した場合というのは,現時点ではその法文をつくろうというのはないと思う。入るのですかね,危険増加の通知義務にこれは。 ● 告知事項に入るというのだったら,その道徳危険の増加も危険の増加にあるいは入るというように考えるのかもしれないですけれどもね。どうですかね。 ● 確かにこの案では,通知義務ですべて通知すべき事項というのは,告知のところで聞いた事項で,かつ約款で特にまた定めた事項というふうに確か限定していると思いますので,確かにそうすると事前の解除というのは,告知義務,危険増加の通知義務で対処できるのかもしれないですね。 ● ○○委員。 ● 他保険の告知ですけれども,それを普通の医的な告知と一緒に混ぜて告知事項にしましょうという,今そういうお話だと思うのですけれども,そもそも告知事項というのは,この保険契約をするに当たってとても重要な事項でというその縛りがかかって,何でもかんでも告知事項にできるわけではないというふうに完全に思っていましたので,それはとても重要なことで,それはその信頼関係を,信頼関係の破壊というこの言葉をそのまま使ってしまえば,信頼関係を破壊するようなことだから,だから告知義務違反に問われて契約が解除されるという効果が生まれるのだと,そういうふうに思っているのですね。   そうすると,今現状の他保険契約の告知のさせ方,在り方を見ていて,それは契約を解除されるような効果のあるようなことだというふうに,普通の消費者が思うだろうかというのがまずございます。   それから,思え,という話にもなってしまうかもしれないけれども,現状今やっている実務の流れを見れば,他保険契約の告知って,正直な言い方をすればおまけみたいな扱いで書いている部分があって,例えばこれがA社だったかな,B社だったかな,分からないやというのでも,それでも事実上書いているということが実際上あるのですよ。   そうすると,そういう意味で,今度はそういう形のこの縛りをかけて,保険契約者側に酷な,よく思い出しなさい。よく思い出して,あなたが認識している保険はどれとどれとどれですか,きちんと書きなさいという,そういうふうに誘導するのが本当に,モラルの人は,確かに,モラルは,もちろん公序良俗に違反するようなものは当然排除しなければいけない,それは母集団の健全性のために必ず必要だと,それはもうよく承知をしております。承知をしておりますが,通常の消費者にそこまで要求するのが本当にバランスを欠いていないことなのですかねというのが,私はちょっとそこがよく分からないということでございます。 ● そこはこの問題の根本問題ではありますが,事務当局,何か御感想,ただいままでの議論で。 ● この他保険の問題はなかなか,位置付けも含めて難しい問題だと思っておりまして,今日まさに御議論いただきましたとおり,成立段階での告知の場面,危険の増加の通知の場面,あるいは重複保険における請求あるいは支払の場面での調整の側面,それからここでの重大事由の解除の側面と,いろいろな場面でどうとらえるか,位置付けるかということがございますので,これまでの御議論を踏まえてちょっと全体を一度整理して,また次にお出しするときにお諮りしたいと思ってございます。 ● そうしたら,今の他保険の関係で何かありますか。どうぞ。 ● 最後に,もう一点,整理されるときに考慮要素としていただいた方がいいかなと思うのが,生命保険において重複保険というのが,それは直ちに何か違法とかそういうものではなくて,著しく高額だと,例えば40億とかそういう事例があったように聞いていますけれども,そういうのだと保険金詐欺というものを強く推認させるとか,そういう意味で,そのような保険契約のかかり方をしていませんかという,それを知る事由にすぎないということと,他方,損害保険の場合には,損害てん補ですので,幾つ入っていても損害額までしか出ませんよという縛りが実体法としてありますけれども,それで今までは,それ以上超えた部分については無効とか,そういう効果がそもそも何もないような規定だったところ,今回は,一応重複保険でも効果はあって,それで独立責任で,それであとは保険会社相互間で求償関係になるという。ですので,求償の処理をスムースに行わせるために保険契約者に重要な事実として告知してくださいというそういう機能もあるのかなと思いますので,多少,生命保険と損害保険とで意味合いも違うのかなとは思いますけれども。 ● そうですね。それも御検討いただいて。   それでは,他保険の関係はそういうことにして,あとこの重大事由解除については,①の解除事由の最初に来ている(ア)の書き方について,これは前回から変わっているものであったりとか,②の解除の効力の規定など,少し,前回この点を議論したときにいろいろな御意見をいただきましたが,何かこのあたりで御意見等はございませんでしょうか。   ○○幹事。 ● (注3)の受取人には保険金請求権の譲受人,質権者等を含めない方向で検討するというお話なのですけれども,生命保険のケースを考えますと,(ア)や(イ)に該当するようなケースだと解除してもいいのではないかというふうに考えたりするのですね。   それで,保険金請求権の譲受人というケースですと,その保険金請求権自体,譲渡担保みたいな形に供するのか,元へ戻すということが場合によってはあり得るのかもしれないのですけれども,しかしこれは,契約者はもう,受取人ももう知った上での譲渡ですし,質権設定の場合も,通常は多くのケースで契約者,受取人も知った上での質権設定ということになりますので,契約関係者はほぼこれは知った上でその保険の利益を与えるべきものを別人にしているという形になりますので,この①の(ア),少なくとも(イ)といった程度の,相当ひどい状況になりましたら,これは解除を認めてもよいように私の方はちょっと思ってしまったのですけれども,さらに(ウ)を(ア),(イ)の同レベルの水準に上げるということであれば,これは含める方がより安全ではないかという気はいたします。   ただ,契約者側の利益を考えますと,当初の受取人以外の人が受益者になって,当初の関係者以外の者が勝手なことをやったがために契約を失うということが相当問題だという面は確かに分かるのですけれども,ただ,全く関知しない人がこういうひどいことをやるという状況が生命保険の場合はあり得るというか,あるのが多いということを考えると,対象にしないとどうするのかなという,逆にそのおそれの方が大きくなるような気がいたします。 ● ○○委員。 ● 今,先生がおっしゃっていただいたとおり,ちょっと私,発言するのを失念しておったのですけれども,今の現行商法の第680条に書いてありますように,免責規定ですけれども,そこにありますように,やはり保険金額を受け取るべき者という意味でそこも広く広げているという,そこの説明なんかにもそういうように書いてありますけれども,やはり実質的な受取人もそういう,排除しなければいかんということだと思います。 ● ほかに,このあたりいかがですか。   他保険の点や今の受取人の範囲等を除けば,大体①,②,基本的なところではそう大きな御異論はないという感触でよろしいのでしょうかね。   どうぞ,何かあれば。 ● 今の点,一点だけ,○○委員あるいは○○幹事がおっしゃったことは感覚的に非常によく分かるところでして,そういう思いもあるのですが,なおちょっと資料をこういたしましたのは,そもそもちょっと○○幹事と前提の認識が違うかもしれませんが,保険金請求権の譲渡なり質入れという場面で契約者が関与するのかなというのが,むしろ認識としては関与しないでできてしまうことなのかなというのがまずありますのと,それと,免責の場合について○○委員がおっしゃったようにこういう人たちが登場するというのは比較的飲み込みやすいのですが,ここではまさに①の(ウ)にございますとおり,当該保険者との信頼関係,何の信頼関係かといいますと,これは契約当事者としての信頼関係というふうに普通は理解をするでしょうから,そのときに,この保険金請求権,これは契約者がやるものではなくて,受取人が譲渡なり質入れをした場合のその相手方である譲受人や質権者の行為が契約当事者間における信頼関係を破壊するということに結び付くのかなという疑問もありましたものですから,こういう形でお出ししたということでございますが,御指摘を踏まえてなお検討したいと思います。 ● それでは,この点,なお御意見を踏まえて検討いただきたいと思います。   ほか,この点,よろしいでしょうか。   それでは,先へ進ませていただきまして,今度は22頁の「4(4) 解除の効力」のところの御審議をお願いいたします。   まず,事務当局の御説明をお願いします。 ● 御説明いたします。   この項目では,資料の23頁の(補足)1に記載いたしました告知義務違反による解除の効力について,重点的に御審議をいただきたいと考えております。   告知義務違反の解除の効果につきましては,前回,保険者が解除をした場合には保険者が免責されるとか,告知されなかった事実と発生した保険事故との間に因果関係がない場合には保険者は保険金支払責任を負うとか,いわゆるプロ・ラタ主義を採用すべきかなどについて御審議をいただきました。   これらの実質的な規律については引き続き検討していく必要があると考えておりますが,(補足)1に記載いたしました告知義務違反による解除の効力についてどのように考えるかという点は,これらの実質的な規律が定まった後に,これを理論的にどのように説明することになるかという問題と位置付けることができると思われます。つまり,ここで解除の効力を将来に向かって生ずるものとするか,契約締結時にさかのぼって生ずるものとするか,そのどちらの立場を採るかということと,前回御審議いただいた告知義務違反の効果についてどのような立場を採るかということとは直接の関係はなく,この点に御留意をいただければと思います。   詳しくは,(補足)1に記載したとおりでございまして,現行商法と同じく,解除の効力を将来効,つまり将来に向かって生ずるものとする場合には,解除前に発生した保険事故について,告知されなかった事実と因果関係のない場合を除き,保険者を免責とするということを規定すれば足りると考えられますが,他方で,死亡保険契約については,保険事故が発生し,契約が失効した後の契約の解除ということを観念することの当否について検討する必要があると考えられます。   これに対し,解除の効力を遡及効,すなわち契約締結時点にさかのぼって生ずるものとする場合には,解除前に発生した保険事故についても保険者が責任を負わないことの説明は容易になりますが,他方で,因果関係不存在の場合の特則をどのように位置付けるのかが問題となり,告知されなかった事実と発生した保険事故との間に因果関係がない場合には将来効,それ以外は遡及効ということにすることになるのか,さらに,保険事故が複数回発生するような契約についてはさらに複雑な説明が必要となりはしないかについて検討が必要ですし,そのほか,保険者が保険料を取得することができるという規律を設けるだけで十分かなどについても検討する必要があると考えられます。   以上の論点については,立法技術的な観点からの検討も必要になりますが,その点はひとまず措き,理論的な面からの御意見をいただければと思います。   以上です。 ● 告知義務違反の解除の効力で,昔から条文と学説が違うようなところの一点ですが,この点についての御意見を確認しておきたいということで,どうぞ,○○委員。 ● もう手短にいたします。この23頁の(補足)1の7行目にあるどちらの見解を採るとしても,告知義務違反による解除に関する実質的な規律が異なるわけではない,これは保険法研究会以来申し上げたことで,全く賛成したいと思います。   それから,下から10行目にある,規律の内容が著しく複雑となるかどうかという観点が大事だというのもそのとおりで,最終的には,具体的な法文の姿が見えてきた段階で,消費者にとってどちらの法律構成の方が分かりやすいかという観点から,消費者委員の御意見も伺って決めればよいと思いますけれども,一点,私がこだわってきた理由だけを一つ申し上げる必要があると思うのです。   ミクロにはそうなのですが,巨視的な議論としては,解除の将来効という考え方に私は一般論として消極的な理由は,その背景に,保険契約は継続的契約であるからと,今回は賃貸借とかそういうことが抜けていますけれども,継続的契約だというと,民法のいろいろな理論を類推して保険の方に持ってくるのかと。まさに,そういう継続契約だからということを主張されている研究者もいらっしゃるわけですけれども,そうすると,柔軟な契約の変更可能性を指向するといいますか,そういう方向に議論が行きがちで,柔軟な契約変更を認めると,個人にとっても法人にとっても,どちらかというと契約者に酷な方向に行きはしないか,これが一番恐れているところで,だから,余り継続的契約だから将来効ですとか,それだけはちょっと注意しないといろいろなものが流れ込んできてしまう。そういう背景があって申し上げたという点だけ御理解いただければと思います。   ありがとうございました。 ● ほかに御意見,この点,ございますか。○○幹事,どうぞ。 ● 私も,保険契約が継続的契約だということに対しては多少違和感を持っているというか,というのは,やはり保険契約というのは,保険事故が生じたときの保険金支払ということが主要な目的で,分割で保険料を払うときなんかは,その保険料の支払については継続的な義務というふうに観念しやすいですけれども,一括払の場合何かを考えると,ほとんど売買の実行の時期が将来だというだけのこととパラレルに考えやすくなって,要するに,何か起こったときに解除して拘束から免れる目的というのは,保険料の支払義務から免れるというよりは,保険金支払義務から免れるところにあると思うので,そうすると比較的,解除の効果が遡及しても差し支えないのかなと思っています。   ただ,将来効にして,将来効と免責というものの掛け合わせでも同じ効果があって,将来効にしておくと保険者が保険料を手元に置いておくことの理由にはなりやすいと思うのです。   でも,その場合には,免責事由と重大事由解除の事由と,それから告知義務違反による解除ができる事由というものをパラレルにしていないと,一方で将来効で,それから免責で払わないことができるかというものの掛け合わせがうまくいかないときもあると思います。 ● そこら辺は横並びで見るというのも,確かに必要な視点かと思いますね。   ほかに,御意見はございませんでしょうか。どうぞ,○○委員。 ● 24頁の(補足)2のところで,よろしいでしょうか。これは,ここに書いてある表現の中には,保険契約者が保険料の支払を怠った場合には,契約の解除とは別に保険料が支払われていない期間に発生した保険事故については保険者を免責とする旨の規律等が設けられている,これは誤解されると困りますのでちょっと申し上げておきたいと思うのですが,昔は保険料というのは保険契約が始まる前に全額一時に払わないと,保険料領収前免責といいまして,保険金は一切払わなかったのですが,それをだんだん分割払にしてくれというニーズがございまして,そして,では分割払にするときに,一回目だけはあらかじめ契約前にいただきまして,二回目以降は口座引落しと,こういうのが増えてきたのですけれども,実際には口座引落しの応答日が来ましても,なかなか口座にお金がなかったりして,その場合にすぐに免責にするわけにはいかないので,翌月末まで猶予期間を設けて,翌月末に保険料が落ちれば,その保険料を支払わなかった期間中に起こった事故についても保険金をお支払しますよという約款になっているのですね。   それを一回目も口座から引落しをしてほしいというニーズがありますので,初回,お金をもらわなくても,口座から引落しをして,ですから,保険契約が始まるときにもお金を払わなくても自動的に補償はします,その代わり口座の引落しのときには払ってくださいと。そのときに,さらにお支払ただけないと,その翌月末までと。場合によっては,さらに翌月末までというような形の契約も今はございます。   したがいまして,保険料をもらわないまま補償している期間が結構長いものでございますので,もし例えばその3か月間事故がないことをずっと様子を見ていて,事故がなかったらそのまま逃げてしまうという契約者がいると思いますので,保険料の支払応答日,それから猶予期間中に払わない場合には,本来払うべき日にちにさかのぼって契約を解除すると,こういう実務をしています。   こういう実務が非常に利便性があって広く今広まっておりますので,こういう実務が使われるような,そういう規定にしていただかないと,非常にお困りになる契約者の方が増えるということを御理解いただきたいと思います。 ● 今御説明があったようなこともなお考慮して,詰めていただこうかと思います。   それでは,この点は大体よろしいでしょうか。学説で,大学で授業してきた人たちは,ずっと遡及効のある解除だと言っていた手前,何か気分がすっきりしないところがあるかと思いますが,あれも因果関係のない場合の特則のことを考えると本当は説明がつききっていなかったという面はあるわけで,そこら辺を,ちょっと学説とは違った整理にしてみようという御提案で。   ○○幹事。 ● 一点だけ,別にこだわっているわけではないのですけれども,例えば火災保険の場合などで,全損が起こってしまって,もう既に保険契約自体目的を達成してしまって,もう消滅,失効してしまっている。そういうときに,告知義務違反というのは,その事故の調査から普通見付かるわけですよね。告反があったという事実を発見して,そこで因果関係があるからということで免責を主張するときに,やはり解除の意思表示をしなければいけないのでしょうか。もう既に契約はなくなっているわけですよね。将来効,将来に向かって効力を失わせるための解除の意思表示というのをしないと,過去の保険金の支払の免責は受けられないということになるのですよね。 ● 今の資料の案もそうですし,現行商法もそうだと思いますけれども,おっしゃるとおりになるのだと思います。   ただ,商法も,明治44年までは告知義務違反の効果は無効としていた時期がございますけれども,無効という構成ですと,当然のことながら意思表示なく当然に,最初から無効ですから,保険事故が起きても保険者免責という効果が導かれると思います。しかし,そこを解除という形で保険者の意思でもって免責にするかどうか,あるいは契約を将来に向かって残すかどうかというのを決しようというふうに,明治44年の改正によってなった以上は,そういうふうに保険者の解除という意思表示に,保険者を免責にするかどうかをかからしめるようにした結果が現行商法の規定であり,現在の事務当局の案でもこれと同じ提案になっているというふうに理解をしております。 ● よろしいですか。 ● 理論的に説明のできるところ,できないところを確認するという意味でいけば,もう既に存在しない契約をその意思表示で解除するというのは,ややちょっと違和感はあるのですが,まあ,そこはそういう普通の免責の主張と同じ程度のものだと考えて,とりあえずは,名前は解除の意思表示だというような程度で理解すればいいのですかね。 ● そこも,なお詰めていただこうかと思います。   ○○幹事,どうぞ。 ● 具体的な帰結は変わりないということですので,余り言う必要もないのかもしれませんが,若干気になる点だけお伝えしておきたいと思います。   一つは,継続的契約というとらえ方というお話ですが,恐らく民法上の継続的契約というときにはいろいろな意味があって,一体何に着目しているのかということと,どういう効果を導こうとしているのか。賃貸借などですと,一方で継続性の補償という話がありますし,解除の遡及効のところは精算のやり方としてどういうものが適合的かということとも関連していますので,継続的契約だからという切り方が適切ではないだろうというのはそのとおりだと思っておりまして,むしろ保険契約だからということを正面から打ち出すのだと思うのですが,そのときに保険契約のとらえ方が,○○幹事がおっしゃったような一回的な給付,保険金の支払だけを対象として,ひたすら停止条件を待っているのか,それともその間,何らかの,付保するような形で,ある種のサービス提供などがあるというものなのかという,保険契約のとらえ方の問題としてとらえる話なのだろうというふうに理解をしております。   それから,そういう契約の性質をどうとらえるかということとともに,具体的な各種の帰結をどういう説明をすれば一番整合的に説明できるかという点でございまして,因果関係の点については,あるいは可能性としては一部解除というような構成も採り得るのかもしれません。すなわち,どういうような事由があれば保険金を払うのかというその各種の事由の部分について,ある部分の事由についてはもう解除してしまうということで,そういう説明もないわけではないだろうというふうに思います。   それから,失効しているものを解除するというのが論理的にどうかという話は,論理的には確かにそうですが,無効な契約を取り消せるかという一般的な話もあって,それは構わないだろうということもありますので,そういうことも御参考になるかと思います。 ● ○○幹事。 ● その御批判をいただくものだろうと思っていましたけれども,対価性の問題に関して言えば,例えば,我々伝統的には危険負担を対価性として考えてきて,ずっと継続して,保険料給付に対して危険負担の対価をいただいている。   その危険負担の内容が,告反をしてしまった以上は告反と因果関係のある事故については危険負担を受けられないけれども,その他の事由に基づく保険事故に対しては保険金給付を受けられるという,そういう意味での危険負担が保険料との間で対価性があって継続しているという,そういう枠組みできっととらえて事務当局の原案が成り立っているのだろうと。   先ほどはちょっとやや腹いせ的に,私どもがずっと言ってきたことに対して耳を傾けていただけなかったことをちょっと申し上げただけのことで,構造上,今,○○幹事が言われたことについての契約の構造としては,一回的な給付ではないという方が,むしろ私たちの保険契約のとらえ方に近いのかなというふうには思います。 ● 対価性のところが,解除までの保険料で本当によいのかというのはよく分からないところがあるのですが,一応そういう整理だと。ほかに何か名案があれば,喜んで採用されると思いますので,ぜひ名案があれば御連絡いただきたいと。   それでは,解除の効力の点はそのぐらいにしまして,次が24頁の下から始まる,保険契約が終了した場合の保険者による保険料積立金等の支払ということで,解約返戻金等の問題を取り上げているのですが,これは非常に重要な問題なので時間を相当とって御議論いただきたいのですが,そうすると,今から相当時間をとると大変遅くなるので全部は無理かと思うのですが,今日はお手元に横長の資料がございまして,その横長の資料の御説明を受けながらこの24頁以下の資料を読んでいただくと,御理解が少しはしやすくなるかと思いますので,今日は事務当局からの御説明と,それからこの横長の資料に基づき,これは○○委員にお願いできると思いますが,そこまでのところを今日は残りの時間でしていただいて,議論は次回の部会で改めて本格的にしたいとそんなことを考えております。   それでは,事務当局の方からまず説明をお願いいたします。 ● 御説明いたします。   本文では,生命保険契約が解除又は失効により終了した場合に,保険者の支払うべき保険料積立金又はいわゆる解約返戻金について問題提起をしており,今回はこのような規律を保険法に設けるかどうか,その規定の仕方などについて検討する前に,保険法として在るべき実質的な規律の方向性を確認したいということで,こういった問題提起をしているものでございます。   本文の基本的な考え方は(補足)にいろいろと記載したとおりでございますが,保険料の内容や,保険料積立金や解約返戻金の内容等を踏まえた上で検討すべきと考えられますことから,これらについては後ほど○○委員の方から御説明をいただけるということでございます。   なお,第一読会においては,この論点についてA案からD案までという形で問題提起をしておりました。このうち,「公正な保険数理等」という文言を用いる案については,資料にも記載をいたしましたが,保険数理という文言をその意味するところを明らかにしないまま用いることは適切でないように思われ,その意味する実質的な内容を検討する必要がありますし,また,「被保険者のために積み立てた金額」又はそれから一定の金額を控除するという案につきましては,同じくこのこの実質的な内容を検討する必要があると思われますことから,今回の資料では,実質的な規律の方向性について本文で問題提起をしているものでございます。   また,そもそも保険法において規律を設ける必要性については,(問題点)1のところにおいて問題提起をしておりますので,本文の検討を次回にいただいた後,御意見をいただければと思っております。   さらに,資料の26頁の(問題点)3のところでは,本文とはちょっと違う問題なのですが,保険契約が終了した場合の保険料の返還という点で共通する問題でございますので,保険料不可分の原則の問題あるいは未経過保険料の返還の問題についても,併せて御議論をいただければと思っております。   以上です。 ● この問題については,最初にこの問題を議論したときに,技術的な側面に非常にかかわる問題なので,ワーキンググループといいますか,そういうところで少し検討してからまた部会に提案をしてはどうかということで,そういうワーキンググループの中で検討したことを踏まえて,この25頁以下にあるようなことを一つの方向性として出したわけですが,そのワーキングの中では,要するに今の生命保険というのは,古典的なもの以外にいろいろなものがありますね,解約返戻金の算出の仕方についてもいろいろなものがありますねと,そういう話を伺うようなところから始まったわけでございます。   今日○○委員に御説明していただく資料は,そういうところのものを少しダイジェストしたようなものかと思いますけれども,まず御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。 ● それでは,A4の数頁のカラーのものですけれども,簡単に御説明します。   解約返戻金は,先ほど事務当局の御説明にもありましたけれども,契約者が保険期間の途中で保険契約を解約されたときに,手前ども保険会社から契約者に支払う金額ということで,約款で規定している金額でございます。   生命保険の保険料や解約返戻金は,これから御説明させていただきますけれども,商品の多様化に伴いましてさまざまな方式より算出されております。幾つかの例を御紹介をさせていただきます。   まず,1頁目,これが伝統的商品の保険料でございます。   保険料には大きく,①のところに書いています自然保険料と②の平準保険料というものがございます。自然保険料は,そこに書いておりますように1年間の収支,いただく保険料収入と保険金支出とが等しく相等するように定められた保険料でございますけれども,一方で,年齢が上がりますと保険料が上昇するという欠点がございますので,保険期間を通じてトータルで収支が合うように保険料を調整したというふうな形で計算するものが平準保険料ということでございます。   左の下の方に,自然保険料と平準保険料と書いていますけれども,例えばこれは30歳下限で保険期間5年ということですけれども,自然保険料だけで行きますと,30歳の2000円から35歳の6085円というふうにわっと上がっていくわけですけれども,平準保険料であれば,各年均等に4024円と,こういう形になるということでございます。そういうようなイメージでございます。   平準保険料,この方式が今伝統的商品では多く採用されているわけですけれども,これは保険期間全体の収支を合わせたものになりますから,単年度で見ますと,年齢が低い間は保険金支出に必要な金額よりも保険料の方が高い。そういう意味で,(b)と(a)を比べた差額が要はたまっていく。例えば30歳のところであれば,2024円を余分に頂だいしておりますので,これが積み立てられていくという形になります。途中までは積立て額が増えていくわけですけれども,だんだん今度は自然保険料よりも平準保険料が小さくなりますので,取り崩されていって,最終的にはゼロになる。こういうようなイメージになっているということでございます。それを図示したものが右下の緑色の山のような絵になります。   これが,まず伝統的商品の保険料の考え方でございます。   では,そういった保険料がどういう構成と計算基礎でできているかということを示したのが2頁目でございます。   お客様にお支払していただく保険料,私どもはこれを営業保険料と呼んでおりますけれども,これは純保険料と付加保険料に分かれます。純保険料は,いわゆる保険金の支払に充てる予定の部分でございまして,予定死亡率,それから予定利率に基づいて計算をされます。それと合わせて,保険事業を運営していくために必要な経費等に充てる予定の部分として付加保険料というのを頂だいしている。大きくはこの二つ,純保険料が二つの要素に分かれますから,大きくとらえると三つという形になりますけれども,そういった基礎率で計算されているということでございます。   続きまして,3頁では,伝統的商品の解約返戻金がどうなっているかということですけれども,この伝統的商品では,先ほど差額分がたまっていくという話をしたのですけれども,この責任準備金から,新契約費の回収等を考慮いたしまして,一定期間につきまして若干の控除をした形で解約返戻金を算出しているということでございます。   これは,新契約時にかかった費用等が,保険期間全体を通じて回収してくるようになるわけですけれども,途中での解約により回収できない結果となりますので,その部分を解約時に回収しているということでございます。   こういった形の商品というのが,いわゆる伝統的な商品の保険料であり,解約返戻金だということでございます。   次に,4頁を見ていただきたいと思うのですけれども,これが少し新しいタイプの商品でございまして,ここで御紹介しているのは一時払の利率変動型年金の商品なのですけれども,こういったいわゆる市場金利連動型商品では,多くの商品設計では新契約費を契約当初に一時払保険料から控除させていただいております。そういう形では,最初からもう新契約費を取っているという形になります。   また,伝統的商品よりも高い利率が設定できるように,長期債の利回りをよりダイレクトに保険料に反映するという形にしておりますけれども,一方で,契約締結時から満期までの間の市場金利リスクを抱えますので,市場金利の変動を解約返戻金に反映させるという形にしております。この市場金利の変動部分につきましては,プラスに出る場合もあればマイナスに出る場合もあるということで,いわゆる金利の変動に応じて積立金が凸凹してくるという形になります。   こういうのが,市場金利型の商品ということでございます。   それから,次に5頁でございますけれども,これはいわゆる変額年金タイプでございまして,これはもう特別勘定の運用成果を直接積立金に反映し,それをそのまま契約者に享受をしていただくというタイプでございます。これも,契約当初に新契約費用を控除するタイプの商品が増えておりますので,この場合は,積立金がイコールそのまま解約返戻金になるということでございます。   なお,こういった変額年金で最低保証を付けている変額年金につきましては,保険会社の会計の計算上,最低保証のコストを積立金から控除いたしまして準備金を積み立てておりますけれども,この部分が解約返戻金に反映されないといったような仕組みのものも出てきてございます。   それから,次に6頁目でございますけれども,これはいわゆる低解約返戻金型,突き詰めたものが無解約返戻金型というふうになるのですけれども,これは商品の仕組みとしましては一般的には終身保険何かで使われていますので,新しいタイプではないのですけれども,解約返戻金の水準をあらかじめ低く設定することによりまして,この低く設定している分を保険料の割引ということで,保険料を下げていく。そういう意味で,安い保険料にする代わりに,万が一解約があった場合にも返っていく金額が少なくなりますよといったような形でつくっているものでございます。   この考え方を徹底して,途中解約をしたときに全く返しません,その代わり,その分さらに保険料を下げますというふうにしたものが,いわゆる無解約返戻金型商品というようなタイプになります。   最後,7頁目でございますけれども,そういったタイプの商品がどういうところで,何社ぐらいで売られているかということでまとめたものでございます。   いずれにしましても,解約返戻金はいろいろなタイプが出てきておりますし,いわゆる価額設定と非常に密接に連動しているという関係にございます。そういうことを踏まえて,次回のこの部会で御議論をいただければありがたいなというふうに思っております。   簡単ですけれども,以上でございます。 ● ただいま御説明があったような多様な解約返戻金の決め方というのがあって,そういうものを包括的に読み込めるようなフォーミュラーを考えると,この25頁のようなものかなというところなのですが,これはいろいろな問題点がございますので,ただいままでの御説明に対する質問のところから次回は御議論を始めていただこうかと思いますので,今日はそういうことでここまでとさせていただきたいと思います。   それでは,次回について何か事務当局からございますか。 ● 次回第12回の会議は2週間後,6月27日の水曜日午後1時30分から,法務省20階の第1会議室での開催を予定しております。   本日,積み残しになりましたテーマのほか,中間試案の作成に向けたたたき台の(5)としまして,傷害・疾病保険契約に固有の論点,あるいは,二読の中でさらに重点的に御審議をお願いしたい事項を取り上げたいと考えております。 ● それでは,そういうことで。ちょっと開催の頻度が増えてまいりますが,どうかよろしくお願いいたします。   それでは,今日はこれまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。 -了-