法 制 審 議 会 被収容人員適正化方策に関する部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  平成19年6月22日(金) 自 午後5時02分                       至 午後7時05分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ● 予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第7回会議を開催いたします。 ● 本日は,前回の会議で皆様にお諮りしましたように,ドイツにおける公益給付を義務付ける制度等について調査していただきました,神戸大学准教授の○○先生から,その調査結果について御報告をいただく予定でございます。 大体の目安でございますが,まず,○○先生から1時間程度御報告をいただいて,残りの1時間程度を報告内容に関する質疑応答などに当てさせていただくこととしたいと存じます。   それでは○○先生,御報告をお願いいたします。   (参考人の自己紹介省略) ● 本日の報告では,まず,収容しないで行われる処遇の概観を得るために,収容制度,刑罰制度一般の概観を得た後に,その中で言い渡されることのある公益給付活動が大体どのような場面で言い渡されるのか,どのような手続で,具体的にどのように行われているかというお話をさせていただきます。引き続きまして,ドイツ連邦共和国内の1ラントであるヘッセン州で行われている未決拘禁者,そして保護観察対象者への電子監視の具体的な導入事例について御紹介した後,その他,若干の手続負担軽減策について御報告をさせていただきます。   まず,ドイツにおいては刑罰として自由刑と罰金刑がございます。また罰金を支払えない者が,その代替として自由刑を科せられることがあります。   自由刑は,一定の場合に,その全体,あるいはその一部が執行された後に残期間の執行が延期されることがあります。延期というのは,日本の制度になぞらえて考えますと執行の猶予,あるいは仮釈放に当たると考えられるわけですけれども,その猶予の期間は2年以上5年までの間というふうに定められておりまして,必ずしもその期間は残刑の期間に対応しておりません。この間の保護観察中に対象者に対して課される遵守事項として,今日の報告の中心として述べさせていただく公益給付活動というものがございます。   他方,罰金の支払いを行わない者は,刑法43条によりその代替として自由刑を科せられることがありますが,その代替自由刑を執行されるに当たりまして,本人からの申立てがある場合に,その代替自由刑に代えて任意の労働を行うことを許可することができるとされております。これはラントの権限として定められておりまして,各ラントによって一定の換算,どのぐらいの罰金刑がどの程度の活動に換算されるかという率が定められております。   もう一つ,ドイツにおいて犯罪を行った者が収容される可能性として,改善保安処分というものがございます。これにはいくつかの類型がありまして,まず,心身喪失等の状態で違法な行為に及んだ者が精神病院に収容される場合がございます。次に,アルコール・薬物を過度に摂取する性癖を有する者が犯行に及んだ場合に,その影響を禁絶するための施設に収容される場合がございます。第三に,主として複数回有罪判決を受けた者が自由刑ないし自由剥奪的処分のために2年以上収容された後に,新たに2年以上の自由刑を言い渡される故意犯を犯した者が,更なる重大な犯罪に出ることが予想され,それゆえに公共に対する危険性が認められる場合に,刑罰に付加して,その者を施設に収容することを命じる場合がございます。これを保安監置といいます。期間の定めはございませんが,収容されてから10年後に再審査を行うことが必要とされております。この段階で危険性が消滅していれば,その身柄を釈放するということになるわけです。   その他,自由剥奪を伴わないけれども対象者の行動の制約を伴う処分として,行状監督という制度がございます。これは,上記の改善保安処分が終了した者,あるいは刑罰の執行を満期で終了した者等を対象とし,裁判所に設置される監督所及び保護観察官の監督の下に指示事項の遵守を図るとされております。このような二つの可能性がありますことから,これを刑罰と処分の二元主義と言っております。   ここで統計上のデータを見ますと,刑罰の執行延期の件数は年々増加しております。ただ,その件数が最も多く増えておりますのは,刑罰を言い渡すけれども,その執行を延期するという執行猶予のような運用によって執行延期されているのが件数としては増えておるわけでございます。その他,有期自由刑の一定期間執行後の残刑の執行延期というものが刑法57条1項及び2項に規定をされており,また,無期自由刑についても,これは15年執行後ということですけれども,正確にはその残刑というのを観念し得ないと思いますが,その残りの部分を執行せず延期するということが刑法57条のaに規定をされており,いずれもその件数は横ばいというふうに見るべき状況にございます。したがいまして,刑罰それ自体の執行延期というものが件数としては非常に多くなっているということでございます。   続きまして,改善保安処分の統計上の推移を見ますと,精神病院収容,禁絶施設収容,保安監置というのは,相対的にあまり大きくない規模で推移をしておるということでございます。改善保安処分には,その他運転免許の取消しであるとか職業禁止というものも含まれておりますが,いずれも身柄にかかわらない処分でありますので,ここでは説明を割愛させていただきます。   以上が刑罰ないし処分として身柄を収容される可能性についてですけれども,これ以外にも未決勾留として収容される場合がございます。未決勾留は,被疑者の逃亡,被疑者による罪証隠滅を防止し,手続の維持を図るという目的に専ら資するものとして用いられております。どういう理由がある場合に勾留が行われるかということについては,その理由ごとに勾留された者の数値が統計上の数字として出ております。   勾留の理由については,刑事訴訟法112条2項の1号,2号に逃亡に関するもの,3号が,被疑者の行動が証拠隠滅のおそれがあるという場合,そして3項において生命に対する重大な犯罪を犯した者であることというものが理由として掲げられております。このほかに,これらの112条の各号に該当しない場合であっても,112条aにより,再犯のおそれがあることを理由として勾留することができるとされております。これは,専ら性犯罪,そしてテロリズム団体結成など重大な結果をもたらす罪ということになっております。   このように,再犯のおそれを理由として勾留が行われ得ることについては,勾留が専ら被疑者の逃亡,罪証隠滅を防止して,手続の維持を図るということに向けられた制度であることからは,整合的にとらえられないのではないかという疑問も生じるところでありますが,その合憲性は,制定された直後の段階で連邦憲法裁判所によって確認されております。そして現在も,この条文が理論上は確かにそのような疑義があるとされながらも,削除せよという議論も見られないという状況にあるとのことでした。   この再犯のおそれを理由とする身柄拘束が警察法上の犯罪予防措置としてではなくて,裁判官の命令により行われるということの是非についてですが,裁判官には,被疑者について様々な情報が集められており,その後の再犯の危険についてもよく判断できるから,それでよいのだというふうに言われております。ドイツでは,裁判官が改善保安処分の判断をするときに,今後犯罪行為に及ぶおそれを判断できるとされていることも併せて考えますと,全く考えられないことではないとは思いますけれども,我が国の理解としてはなかなか難しいかというふうに考えておるところでございます。   ところで,勾留状の発せられている者の数が,大分ここ数年で減少しております。その理由は必ずしも明らかではないわけですけれども,この減少しているということが収容状況にもインパクトを与えております。   ドイツにおける収容状況について,過剰収容の状況というのは全く無縁ではなくて,非常に困っていたということだったのですけれども,ここ数年で特に連邦全体の収容率を見ますと100%を切っている。収容定員よりも少ない収容人員になっているという状況であります。推移を見ますと,刑務所数は統計上減っているんですけれども,収容定員がどんどん増えておりまして,それだけではなくて,収容人員の数がどんどん減っている。特にその理由としてあるのは,未決勾留の数が減っているということでございます。   警察の統計によりますと,2005年と2006年の間でも,犯罪の認知件数というものは減少しております。検挙件数はそれほど変わらないんですけれども,その結果として検挙率が上昇するということになっております。ただ,この収容状況の緩和というのは,これは連邦制の国である以上,仕方がないのかもしれませんが,各州で状況が若干異なっておりまして,特にベルリンのような大都市では,緩和といってもなかなか難しいという状況にございます。これに対してブランデンブルク州は,ベルリンを囲むようにしてあるわけですが,比較的人口が少なくて,収容状況についても若干余裕があるということでございます。   このように,収容状況は緩和しておるわけですけれども,他方,自由刑執行のための収容期間というところを見ますと,1年を超える刑というものが若干ではありますけれども増えてきております。刑罰の長期化が進んでいるという感覚があるという話は,話を聞いた実務家は皆さん指摘をされていたところでありまして,これが今後どのように推移するか,収容状況についてどのような影響を与えるかは予断を許さないという指摘がございました。   以上が収容状況に関する概観でございます。   以下,公益給付活動について御説明を申し上げたいと思います。   公益給付活動が行われる場合には,三つの場合がございます。一つは,訴追ないし公判手続段階における手続打切りの条件です。我が国でいうところの起訴猶予をする場合に,その条件として公益給付活動に従事することという条件を付されることがあります。刑事訴訟法153条aに,どのようなことが条件として掲げられ得るかについて規定されており,各号を見ますと,損害回復のため特定の給付を行う,これは金員の支払いということですが,そのような損害回復のための給付や,国庫等への金員の支払いのほか,「その他公共に役立つ給付を行うこと」が規定されています。この「その他公共に役立つ給付」というのが,法でいうところの公益給付活動であるということになってございます。   二つ目は,先ほど御説明申し上げた自由刑及びその残刑の執行を延期する際の遵守事項ということで,刑法56条bというところに同様の事項が執行延期の条件として掲げられてあります。これは自由刑の執行延期として,有期自由刑の執行延期,一定期間の執行を得た後の残刑の執行延期,そして無期自由刑の一定期間の執行を得た後の残刑の執行延期,いずれについても同様に準用されている条文でございます。   最後に,罰金を支払うことができない者に,その代替として科される自由刑,これが刑法43条に規定があるわけですけれども,それに従うことができない者が申立てをすることによって,更なる代替的処分として公益給付活動に従事することがございます。これは刑法施行法293条という条文で,ラント政府の権限として,刑罰の執行の一態様として代替自由刑に代えて任意の労働を許可することができるということが規定されております。   これらはそれぞれ,結果としてその行われる活動自体は一緒なんですけれども,趣旨は異なっております。手続の打切りの条件として掲げられているものにつきましては,このような活動によって訴追に係る公益が消滅し,訴追をしないことが正当化される。刑罰の執行延期の条件となる場合には,保護観察中に不法への償いをなさしめる。代替自由刑の代替的処分としてなされる場合には,それによって刑罰の執行を行うということになるわけです。なお,この換算割合につきましては,各ラントがこれを定めるものとされておりますが,一般的に日数罰金制度の下で,1日分の罰金日額が6時間の公益給付活動に対応するとされております。したがいまして,1日8時間働きますと1.25日分を働いたことになるということであります。   このように,趣旨が異なることによって,不遵守の場合の効果も若干異なっております。第一の場合には,定められた公益給付活動に従事しなかった場合,手続打切りの条件に欠けることになるので,手続が再開されまして,これは訴追されるということになります。これに対しまして,刑罰の執行を延期するという条件として言い渡されている場合,そのようなことをさせることによって対象者の改善更生が図られるという展望的な判断が誤りであったというときには,執行延期の判断が取り消されることになるわけですけれども,それは一回の不履行で直ちにそのような事態に至るかというと,必ずしもそうではないということでありました。罰金刑の代替自由刑の代替の場合には,履行されなかった部分について改めて罰金刑の支払いが命じられるということには実はならなくて,これは支払いができない場合のことですので,履行されなかった場合には,代替自由刑が原則に戻って執行されることになるということであります。   どのような場合にこのような活動が言い渡されるかということなんですが,手続の打切りは,条文の規定上,適用対象が軽罪と規定されておりますけれども,軽微な犯罪に限定をされておりまして,実務家の感覚としては,事実上訴追しても実刑にならないようなものが手続打切りの対象になっているということでありました。これに対して,刑の執行延期につきましては,犯情や当人の犯罪傾向等に照らして刑の執行を要しないという場合に,執行延期の判断がされるということであります。したがいまして,判断の順序といたしましては,まず手続を打ち切るか打ち切らないか,あるいは刑の執行を延期するか延期しないかということがあります。それに引き続き,その対象者に対して付される条件としては何が適切であるかというのを法律上のカタログを参照しながら選ぶという判断の順序になっております。したがいまして,逆に公益給付活動が命じられ得るから刑を執行しないという判断をするものではないということが言われております。   なお,このように言い渡される遵守事項の選択肢は幾つかございますので,統計上,保護観察に付される者の人数が年々増加しているということから,直ちに公益給付活動を行う者の数が増えているということを結論付けることはできないということになっております。ただ,罰金刑に代えて公益給付活動を行うという者の換算されている罰金日数は年々増加しているということを先方で聞いてまいりました。   いずれの場合も,対象者の同意を得て行われております。これは,命じられて義務付けられるものではなくて,あくまでそれに従うという意思がある場合にこれを行うことになる。罰金刑に関しては,若干異なる規定の仕方になるんですけれども,そのようなことで執行に代えることを許すということになっております。   現実に,どのような遵守事項,あるいは手続打切りの条件が命じられているかということになりますと,公益的団体に対する金銭の支払いというものが定められていることから,お金の支払いで済ませるというものが非常に多いということでありまして,公益給付活動に行くというのは,その後の段階であるということになっているとのことです。   以上が法律上の位置付けというところなんですけれども,次に,実際どういう手続の流れによって公益給付活動が行われているかということについて御説明を申し上げます。   公益給付活動は,手続打切りに際して,又は刑罰ないし残刑の執行の延期に際して言い渡されるものですけれども,この段階で何時間の公益給付活動に従事せよということを,その限りで告げられるわけであります。しかしながら,具体的にどのような公益給付活動を行うかということは,専ら本人の選択にゆだねられております。対象者は,自ら公益給付活動を選択する,又は一定の機関のあっせんを受けることによって,公益給付を実際に行う場所を選定することになります。   対象者が定められた時間数の作業を行いますと,その受入先からその旨の証明書の発行を受けることができまして,これにより命じられた公益給付活動を行ったことになります。これは刑罰の執行に関する取扱いですので,基本法上,この権限は州に与えられております。したがいまして,州によりどのような手続の流れを定めるかというのは様々となっております。   私は,三つの州について様子を見てきたわけですけれども,ベルリンからまず御説明を申し上げたいと思います。ベルリン州の司法省の中に司法社会サービス(SDJ)という組織がありまして,これは位置付けとしては,ベルリン州司法省には一から三までの三つの局があるそうですが,そのうちの第三局の下にある組織であると聞いております。これが専らあっせんを行うわけですけれども,このような公的機関だけではなくて,民間,非政府組織として二つの認可を受けた組織があっせんを行っております。SBHと,Freie Hilfeという民間の団体があっせんを行っております。そのあっせん機関の規模ですが,私が話を聞いたのはSDJとSBHの二つの機関なわけですけれども,それぞれの組織については以下のようになっております。   SDJはベルリン州司法省第三局に属し,160名の職員がおります。そのうち専門的技能を有する職員が131名,管理部門が29名ということになっております。担当するのは保護観察,あるいは裁判援助で,イメージとしては家裁の調査官的な役割をしていると思われますけれども,調査を担当しているということであります。そのほか,公益給付受入先のリストの管理であるとかを行っておりまして,公益給付作業のあっせんは裁判援助業務の一部として行われているとのことでありました。   これに対して民間団体であるSBHの概要ですが,これも公益給付のあっせんを行うわけですけれども,同時に作業を提供する,そういう立場でも活動しております。1827年に創立された,非常に古い歴史を持っている公益的な有限会社でありまして,例えば,後でも述べますように,私が見た実際の公益給付作業先としての小学校におきまして,塗装作業の訓練及び監督を行っているということであります。ですから,このSBHは,その作業に関しましては,あっせんをすると同時に自ら受け入れたということになっているわけであります。   どのような活動形態があるかというと,職員は有給で活動する者は30名いるほか,名誉職の理事がおります。理事の1人は現在も司法省の職員でありまして,インタビューをしたSDJの長も個人としての資格でSBHの会員になっております。したがいまして,司法省との緊密な連携があるということがうかがえました。活動資金の一部は司法省からの補助金であります。このような団体があっせんを行っているわけです。   ほかの州についてですが,ブランデンブルク州では,もう少し系統が異なっておりまして,司法省,そして民間組織が協力して「社会統合を通じた拘禁回避プロジェクト」というものを推進しております。私がインタビューしたのは,司法省に属する保護観察官及びそのプロジェクトに参加している民間組織のうちの一つの団体である青少年職業訓練コンサルト株式会社(BBJ)というところの代表者に話を聞くことができました。この「社会統合を通じた拘禁回避プロジェクト」というのは何をしているかといいますと,刑務所の内外における相談・指導,刑務所内での社会化教育,青少年教育,雇用に耐える能力の涵養,非営利活動への派遣,分割払いによる罰金支払いの申立て,社会的及び教育的な相談及び助言,職業訓練サポート,職業紹介・就職あっせんということになっております。そういう形で,民間の団体がかなりこの公益給付活動に強く関与しているわけですけれども,ブランデンブルク司法省との契約によって活動しているというのが,私がインタビューしたBBJの活動形態でございます。特にEUからの補助金ももらっているということを強く言っておりました。   ヘッセン州というのはフランクフルトを抱える州でありますが,州都はヴィースバーデンというところでありまして,ヴィースバーデンで話を聞いてまいりました。ヘッセン州には,そのような活動を行うSDJ,ベルリン州のSDJに当たる組織というものが存在しないわけでありまして,検察庁の一部門であるGerichtshilfe,これは先ほど申し上げた,感覚でいうと家裁の調査官というような活動をしている組織が行っております。21歳以下の者は,これは検察庁ではなくてヴィースバーデン市の機関であるJugendgerichtshilfe,少年裁判援助という機関が担当しているということでありました。このような形で権限がばらばらに存在しているわけですけれども,今後は,コスト削減の観点からSDJを設立した上で,公益給付のあっせんを民営化してSDJから切り離すこととし,SDJは保護観察及び裁判援助に特化することを検討中であるということでありました。   以上が,あっせんを行う機関について,どのような形で運営をされているかということであります。   公益給付を言い渡す判断の内容について,これから御説明を申し上げます。   どのような手続に引き続きましてこのような判断が行われるかといいますと,手続打切りの場合には,まだ公判手続は始まっていないという場合も含みますので,捜査資料を中心とした,いわゆる一件記録に基づいて判断が行われております。刑罰等の執行延期は,既に公判手続を経た後でありますので,これに加えて裁判上明らかになった事情や,民事裁判記録であるとかSDJによる任意の調査結果をも加味して判断をされております。   先ほど申し上げましたように,これらの判断の主たる対象は,手続の打切りや刑罰ないし残刑の執行延期自体の是非であるということになります。そうなりますと,公益給付活動が命じられる対象者というものが絞られてくることになるわけですが,手続の打切りは,それ自体が初犯者を中心として有責性の低い被疑者を対象として行われるものなので,薬物犯,粗暴犯,性犯罪などが問題となっている場合には,手続が打ち切られることがないがゆえに公益給付が命じられることはまれであるということになっております。これに対して,刑の執行の延期の判断においては,かかる犯罪が類型的に除外されることがないので,公益給付が命じられる可能性も生じる。言い換えれば,これらの者の刑罰の執行が延期されることの結果として公益給付が命じられる可能性が生じることになります。   検察官や裁判官は,何時間の公益給付活動を行えという形で時間を定めて公益給付活動を行うべきことを命じますが,具体的な活動内容を命じることはございません。その結果として,例えば性犯罪者が幼稚園に送られてしまうというようなミスマッチが生じることが懸念されるわけですけれども,そういうことがないように,これら検察官,裁判官は,あっせん機関に対して注意事項を伝達することがあるとのことであります。ただし,犯罪事実の伝達にとどまりまして,例えば前科を伝えるということはないということになります。   このような形で,何時間の公益給付活動を行えという命令を受けた対象者は,自ら公益給付先を選定するわけですけれども,どんなところで働いても公益給付になるわけではありませんで,ここで働いたら公益給付になるということについては認定をされていなければならないわけです。したがって,いかなる作業が公益給付活動として認定されるか分かっていれば,それでいいのですけれども,対象者は通常明らかではないので,SDJ等の機関に行ってあっせんを受けるということになるわけです。   どのような機関,受入先が公益給付活動の受入先として妥当であるかということについては,各州でその認定のプロセスというものが若干異なっておりますが,ベルリン州では以下のようになっております。   ベルリン州では,SDJがこれを選定し,リスト化しているということであります。選定の際に考慮される事項は,公益的な事業を行う団体かどうか,作業に監督者を付することができるかどうか,対象者が連絡をとることのできる窓口を用意しているかどうか,実際の作業時間を把握するシステムを設けているかどうかという4点であると言われております。このうち,事業の公益性につきましては,専ら形式的に税務当局が法人税を免除しているかどうかによって決せられているとのことでありました。   受入先は,原則として受入先となることを希望する団体がSDJに申請を行うことによって確保されております。SDJのホームページを見ますと,申込みフォームのようなものが既にありまして,それに付随する契約合意文書のようなものも明らかにされておりますので,どういう要件を満たす場合に自分たちが申請できるかということについてはホームページ上で明らかになっているということであります。   このような形で応募してきた受入機関というのが,ベルリン州内において1,000機関あるとされております。そのうち500機関は対象者が自らコンタクトをとることができる。すなわち,あっせんを通さずに直接行くことができるということであります。残りの500機関については,自ら窓口を設けることに消極的である,また,作業内容との関係で,対象者の犯罪の種類に限定を設けることを望む,性犯罪者は嫌だとか,そういう形で限定を設けることを望むなどの事情から,SDJ等を通じてしかコンタクトをとることができないということであります。あっせんの際には,幼稚園は性犯罪者,老人ホームは粗暴犯,そして病院は薬物犯罪に及んだ者を余り受け入れたがらないということがございます。   この公益給付活動が労働市場に存在する営利活動を圧迫するような活動に及びますと,なかなか理解を得られないということで,SDJとして定期的に理解を得るための説明を行っているとのことでありました。すなわち,作業の性質というものは,補助的で公益的なものでなければならないとされております。具体的にどのような活動を行っているかといいますと,スポーツクラブや市役所の緑地課,保育園,老人ホーム,病院,劇場,プール,教会,墓地において,清掃であるとかベッドメーキングの仕事をしているということであります。   補助的ということについてなんですが,長期のコミットメントが要求される作業はこの要件を満たさない。すなわち,公益給付活動がなければ成り立たないというような作業を行わせることは考えられていないということであります。公益給付作業を行う者がいなくなってしまうと,その活動自体がなくなってしまうようなことがあってはならないということであります。既に存在している活動にあくまで付加的に参加するという形が考えられているわけであります。   公益性につきましては,例えば公共の老人ホームが,その経営状態が思わしくないため,公益給付作業により無給でベッドメークをしてもらうということはできる。しかし,ホテルがコスト削減のために公益給付事業により無給でベッドメークをやらせるようなことは考えられていない。公益性というのはそのような意味で考えられております。   その結果といいますか,受入先としては小規模の事業所が多く,SDJとしては作業管理等の面で能力的に疑問があるところも少なくない。例えば,遅刻や早退を大目に見ることによって作業認定を甘くしたり,あるいは公益的でない作業をさせるなどの問題が生じることがあります。運営や作業管理に不透明な点があればリストから外されるべきでありますけれども,他方で,何をもって認証されるべき「十分な作業」とするかについては,受入先の認定にゆだねるほかないという事情もありまして,明らかに証明書が偽造されたということを断定するのはなかなか難しいということでありました。   続きまして,ブランデンブルク州では,ベルリンのやり方を参考にしておりますということでありました。ただ,ブランデンブルク州では,作業量の確保について若干問題があるということでありました。ブランデンブルク州は人口250万人でありますが,ベルリンよりもはるかに広大な面積を持っておりまして,人口密度が低いため,受入先が散在している。十分な作業量を確保して,例えば家の近所で作業をしたいといった対象者の要望にこたえることや,定期的な監督を行うことは難しいという問題があるとの指摘を受けております。   ヘッセン州においても,公益性の認定という点においてはベルリン州と同様の指摘がされております。ここで受入先のリストを作成しているのは,ヘッセン州の社会保障省という組織であります。私が聞きましたヴィースバーデン検察庁の管轄区域内では115機関が選定をされている。ヴィースバーデン市の人口は28万人ぐらいでありまして,規模に応じてそのような数の機関が選定されているということであります。作業のあっせんについてはベルリンと同様の事情ですけれども,ここで聞きました話では,十分な作業量が確保できない場合には,Gerichtshilfe,裁判援助から市役所等に連絡するなどして探しています。公益給付により得られる作業量は,増減が甚だしい上に予測が困難であるということで,作業量の確保には苦労もあるけれども,現在のところ確保できなかったことはありませんということでありました。   具体的な受入先の決定でありますけれども,あっせんにより決定する場合には,日時,場所,作業内容等に関する対象者の希望について聞き取りの上,リストに照らし合わせて行います。決定に際してSDJ等が与えられている情報は,犯罪事実及び公益給付作業を行うべき機関でありまして,そのほかに必要な事情があれば対象者から聞き取りを行っております。具体的な受入先を選定するに際して,犯罪事実や本人の事情,とりわけ薬物中毒の有無については特に注意をしているということなんですが,犯罪事実が通知されるのはここまででありまして,受入先に対して,実際に作業を行う場所に対しては犯罪事実は通知していないということでありました。   あっせんというのは一度きりではなくて,一度のあっせんで必要な公益給付をすべて賄うことができない。それにはいろいろ理由がありまして,長続きしないであるとか,必要な作業量が得られないという場合には,改めてあっせんを行うということです。   決定にかける時間はさまざまですけれども,特に手続の打切りにつきましては,条文上6か月以内に行わせるということになっておりますので,相対的に短い期間であっせんを行っているということでありました。   公益給付作業の実態ということなんですが,ベルリン州では,2006年度に,手続打切りの条件として3万9,900時間が命じられまして,そのうち3万時間,75%程度が履行をされております。これに対して刑の執行延期,つまり執行猶予ないし仮釈放に類する制度の遵守事項として命じられる公益給付活動は13万時間が命じられまして,そのうち9万2,000時間が履行されているということでありました。   具体的にどのような人が命じられているかということについては,どこに行ってもこのような話をされたんですけれども,公益給付作業を行う者の多くは,罰金刑を支払うことができず,その代替として自由刑を科せられるところ,これを回避するために作業を行うものである。しかし,その多くは無職で収入がない,あるいは病気がある,薬物中毒であるなど,日常生活に重大な困難を抱えている。そのため,公益給付作業を確実に行うこと自体に困難を感じる者も少なくない。しかし,公益給付作業は正常な社会生活を送るためのきっかけとなるものであって,ここから社会保障の枠組みに接続することができれば,再社会化の実効も得られようと思われるということなんですが,無給の労働力である公益給付活動は,失業対策事業との間で競争関係にありまして,その間の調整がなかなか難しいという指摘もございました。   ここから公益給付作業の具体例を御説明申し上げます。   まず,ベルリン州でSBHの仲介を通じてペンキ塗り作業を行っている小学校であります。これが小学校の玄関なんですが,ここに「sbh」というステッカーが貼ってありまして,SBHが実施する作業であるということは見た人は分かるんですけれども,それが何を意味するかというのは一見して明らかではないということであります。   この作業は,そこの学校の校長先生から聞いた話なんですが,ベルリン州首相からの直接の依頼があったことから検討し,受入れを決定したということで,これ自体は極めてまれなケースではないかと思います。ただ,そういう話があったので,先生としても非常に積極的にこれを考えて,最初は非常に驚いたということだったんですけれども,これを受け入れる気持ちになって以降は,受入れに当たっては児童の父兄に対しても説明会を実施し,対象者が公益的な労働を行うことの意義を説明したということです。現在,児童,教職員,父兄のそれぞれに理解が得られ,友好的な雰囲気の中で作業をしてもらっているということでした。非常にしつけが行き届いていて,普通の塗装の業者よりも非常に後片付けがきれいだということを特に言っておられました。作業の結果のみならず,立ち振る舞い,掃除等も行き届いており,今回の作業には大変満足しているということでした。   次は,ブランデンブルク州の州都であるポツダムにあります,古いキャバレーを改装した事例であります。1920年代に建造された古いキャバレーについて,これが文化財として価値があるということが分かったということで,そのリノベーション,リフォームを公益給付活動によって行うことにしたということであります。それは,公益給付作業に従事する者は素人なんですけれども,それを監督する職人に関与してもらうだけではなくて,建物の構造計算であるとか文化的価値の調査のために,ポツダム大学等の研究機関の協力も得たということであります。改修された建物は,現在レストランとして用いられておりまして,公益給付作業で営利的な活動をしてはいけないということがあるわけですが,現在,その目的では用いられていなくて,立ち直りを要する少年の職業訓練のために用いられるということです。このプロジェクトは,先方の説明によれば,非常に高い水準を達成することができたけれども,すべての作業がこのようなレベルに達するには,受入機関の創造性というものが非常に強く求められる。「社会統合を通じた拘禁回避プロジェクト」に参加している企業というのは,そのような気持ちを持って活動している団体であるということでありました。   以上が具体例でありますが,このような作業に従事しなかった場合には,先ほど申し上げたように,打切りの場合には打切りの条件が失われることになり,手続が再開されて公訴が提起される。これに対して,刑の執行延期に関しましては,一回の不履行が直ちに刑の執行をもたらすわけではないということです。これは条文上,遵守事項違反が刑の延期の撤回をもたらすのは,「粗野に間断なく」行われた場合であるという規定が設けられているためであります。すなわち,不履行は執行延期を不適当とする程度のものでなければならないということです。   我が国で保護観察と翻訳されているベヴェールンクという言葉は,その本来の意味は能力のあることの証明ということでありまして,外に出てもやっていけることを証明する期間というものが保護観察期間であるということであります。ですから,その能力がないということが示された場合に,その取消しがされるということになります。   作業に不服がある場合には,ベルリン州ではSDJに申立てを行うことになっておりますけれども,現実にどういう問題が生じますかと聞いたところ,作業を行うことについては本人と話をした上で決めているということもありますので,深刻な問題が生じることは少ない。ないとは言えないまでも頻発しているわけではない。大体は話合いで解決しているという印象でありました。   以上が公益給付作業についてでありまして,次に,電子監視についての御説明を申し上げたいと思います。   電子監視に関しましては,ドイツでも何度か連邦法による導入というものが検討されておりますが,現在はそのような動きはないわけであります。現在は,ドイツ連邦共和国内のヘッセン州においてのみ実験的に実施をされております。モデルプロジェクトということで,フライブルクのマックス・プランク・インスティテュートとの共同研究という形で展開をされております。   電子監視の対象者は,未決勾留者で保釈の対象となった者及び自由刑ないし残刑の執行を延期された者を対象としております。法律上は,根拠条文はないわけでありますけれども,具体的な手続を定めるのはヘッセン州司法省の内規であります。対象者の同意を必要としております。これは,ドイツ語ではEFFというわけですけれども,この電子監視は,保釈の際の居所指定を担保する手段として,あるいは保護観察に関しての居所指定・出頭義務を担保する手段として用いられております。   現在は,保釈中の者,そして仮釈放中の者,保護観察中の者が対象ですけれども,2008年から刑務所の判断として,受刑者が釈放前準備をする際にEFFを取り付けて施設外に出るということを考えているということでありました。   手続でありますけれども,どのような資料に基づいて電子監視を行うことを決定するかということについては,裁判所が一件記録の重要部分を保護観察官に交付し,これを基に保護観察官は任意の調査を行い,対象者のEFFへの適性を調査する。最終的には,裁判官が検察官とともに対象者の同意に向けた説得を行っていく。手続にかかる期間は1週間程度である。弁護人は,身柄を拘束されているよりはましだということで,EFFを用いることを自ら提案することもできるとされております。   EFFによる監視なんですけれども,足首に発信機能の付いたバンドを装着いたします。ちょっと大きいんですけれども,足首ですので余り目立たないということだと思います。家庭には固定電話に接続した受信機を設置します。バンドから得られる電気信号の有無によって,対象者の在宅,外出のいかんを探知します。対象者は,指示により定められた日程表に従いまして,在宅すべき時間に在宅し,外出すべき時間に外出していることが義務付けられますが,GPSによる追跡はされないということであります。したがって,外出時の実際の所在地は探知されません。得られた信号はヘッセン州のデータ処理センターに送られまして,何か問題があると,待機官である保護観察官の携帯電話に通報があるということであります。この足かせを付けてみたいと申し上げたところ,いいですよと言われたのですが,いざ気軽に外そうとすると全然外れない。特殊な工具を用いるか切断しないとこれは外れないようになっておりまして,外すと,さらにその旨通報がされるということになります。   EFFを用いた緊密な監視や配慮が奏功したかどうかということは,通常,数か月のうちに明らかになるということで,6か月を超えて電子監視を継続するということはまれだということになっております。その後は,EFFを装着することなく保護観察をやるということです。対象者の援護はEFF装着中と同じ保護観察官が行います。   未決勾留者に対するEFFの使用というのは,逃亡,罪証隠滅を確実に阻止するためにあるのに対して,保護観察対象者に用いるのは,その再社会化を促進するためであります。特に生活習慣が身に付いていない人について,EFFを用いてある程度緊密な援護をするということが,教育改善効果があるというふうに考えられる場合に限ってこれを行っていますということでありました。   実態についてですが,規模としては,現状で対象となっているのは60名だということでありまして,そのうち25%が未決勾留者,75%が保護観察対象者であります。実際,どのような人に用いられているかということなんですが,専ら保護観察に際しての遵守事項や指示事項に従わなかったので,再度の収容が問題になる人である。すなわち,EFFがなくても問題なく保護観察に服することができる人は関係ないし,およそ刑の執行の延期が考えられない者も関係ない。その境界に属する者である。境界事例だということを何回も繰り返しておっしゃっておられました。彼らにとってEFFの使用に対する提案というのは,施設外,社会にとどまり続けるための最後のチャンスであるというふうに考えてもらいたいということでありました。   適する事例としては,未決勾留を回避する,被疑者が手続から離脱しないようにするために,より密接なコントロールないし教育的な援助が必要であるがゆえに,警察への届出を課すだけでは十分でない者。あるいは通常の保護観察から,やはり繰り返し離脱してしまう,例えば,常に新たな理由を挙げては,これは遵守事項の中にあるんですけれども,一定の扶養義務を果たすことに従わなかったり,あるいは公益給付作業を行わなかったりする者に対してEFFを行うということです。そういう人間だから,もう収容しておいた方がましだというような消極的な評価を改善するために,最後のチャンスとしてEFFの提案をする。   あるいは,性格が余りしっかりしていないということで,緊密な援護をする。つまり,違反に対しては即時に制裁を加える一方で,遵守事項を守ったということは即時に記録して,これを積極的に評価するという緊密な教育的な援護があれば成果が得られると予見される者を対象とするということであります。   これに対して,電子監視に適さない事例というのは,薬物中毒の中でも,それを満足させることが人生のすべてであるような薬物中毒患者というものは駄目なんだということでありました。   かかるコストについてなんですけれども,収容と比較した場合には,試算によれば,EFFによる場合,1人1日当たりのコストは53ユーロ,収容の場合は102ユーロということになっております。いったん設備をつくってしまえば,人数が増えれば増えるほどコストは低減していきますので,現時点では33ユーロまで下がっている。しかし,今度は保護観察との比較で考えてみますと,担当する保護観察官の数がEFFを用いた方がやはり多いということになっております。通常は1人で80名を担当するのに対して,EFFを用いる場合は20名ということで,比較をしますと,EFFを用いない保護観察が最もコストがかからない。その次にEFFによる保護観察が来て,最後に収容のコストがかかっているという関係にあるということなので,この意味でも正に限界事例だということが言えるかと思います。   公益給付との関係ですけれども,保護観察対象者が行う公益給付活動というのは,専ら生じた損害の回復に向けられた遵守事項と位置付けられるのに対して,EFFというのは,規則的に生活を送ることなど保護観察対象者の生活の改善,特に特別予防に向けられて発せられる指示の履行を担保するための手段でありまして,保護観察の対象者に対して同時にEFFが用いられながら公益給付活動に従事するということはあるということでありました。ただ,手続打切りに際して公益給付活動が行われる際にEFFが使用されることはないということでありまして,そこでは,余りはっきりしたことはおっしゃっていなかったんですけれども,やはり無罪の推定との関係が問題になるのではないかというような説明がございました。これが電子監視に関する御説明であります。   その他の手続負担軽減策として,現在,ドイツで検討されております判決申合せ,全く毛色の違うお話になって恐縮なんですけれども,判決申合せについて若干の御紹介をさせていただきます。   近年,ドイツの刑事裁判実務におきましては,裁判所が被告人から自白が得られた場合の量刑予測を示すことによって,自白をすればこうなりますということによって被告人に自白を行うよう働きかけを行って,被告人もこれに応じて自白を行うということが行われておりますが,これは実務上生成してきたものなんですけれども,連邦司法省が現在,担当官による法律案というものを作成・公表しております。   その場合も,裁判所は認定としては自白には拘束されないわけですけれども,専ら自白の信用性を吟味することによって事実認定を行う。そのことによって証拠調べの大部分を省略することができ,手続の短縮,証人の負担軽減という効果が得られる。また,その結果として勾留期間も短縮されるので,収容状況緩和にもつながり得るけれども,それを主たる目的としてやっているわけではありませんということでありました。   どういう類型の事件に用いられているかというと,自白がないと金銭のやり取りが余り明確にならないような複雑な経済事件であるとか,証人の過重負担が問題になるような性犯罪事件であるということです。   これは手続負担の軽減に向けられて展開されてきたものでありますが,ドイツ人一般の受取方としては非常にネガティブであるということで,大きな経済事件で大っぴらに手続の打切りが,しかも巨額の金銭との引換えという形で行われるということが報道されると,非常に強い反発があるということが言われております。   御説明は以上とさせていただきたいと思います。 ● どうもありがとうございました。   極めて詳細かつ有益な御報告だったと思います。感謝申し上げます。   ただいまの御報告につきまして,いろいろ御質問があると思いますので,どうぞ御発言,御質問をお願いいたします。   どうぞ,○○関係官,お願いいたします。 ● 二つほどお尋ねしたいと思います。   表4を見ますと,そこに連邦と三つの州が挙がっているわけですが,この表4では,むしろ連邦がたくさんの刑務所を運営し,中心になっているように見えますけれども,レジュメの3ページでは,連邦基本法によって刑罰の執行は州がやるんだと書いてある。この関係はどうなんでしょう。 ● 御指摘のとおり刑務所は連邦が運営しているわけではございません。したがって,表の「連邦」の欄には,連邦全体の数字として出ているということでございます。 ● 連邦が100の刑務所を運営しているわけではないのですね。 ● この表に記載しているベルリン,ブランデンブルク,ヘッセンのほかにもラントもあるんですけれども,各ラントが運営している刑務所をすべて足すと「連邦」の欄に記載しているこの数字になるということであります。だから,連邦が独自に運営している刑務所というのはないということです。 ● なるほど。それからもう一つは,公益給付活動に力点を置いて説明してくださったわけですが,刑事訴訟法153条aの条文を見ますと,先ほども話されたとおり,遵守事項は幾つかありまして,公益給付活動以外にも,検察庁,あるいは裁判所はいろいろ選択できるわけですけれども,実際上,公益給付が中心になっているわけですか。 ● 事実上は,公益給付活動の位置付けは余り大きなものではないということであります。金銭の支払いで済ませられる場合には,金銭の支払いを命じる場合が多いようでございます。 ● 昔,この153条aができたころには,サリドマイド事件などというものがありまして,あれは製薬会社が多額のお金を拠出して起訴猶予になったのですけれども,今は,それよりも中心は公益給付活動という方ですかね。 ● 公益的な団体に金銭を支払うというものも,広い意味では公益給付になるんだと思います。条文上も「その他公共に役立つ給付を行うこと」と,金員の支払いに引き続きまして書いてあります。特にそのうちの作業というものが今日,力点を置いて御説明申し上げた点でございます。 ● どうもありがとうございました。 ● ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● その公益給付活動についてお伺いしたいんですけれども,もしお分かりであれば,大体どのぐらいの時間の--裁判所が言い渡すということでしたけれども,平均的にどのぐらいの時間が言い渡されているのか。それから,その裁判所の言い渡す時間というのは,通常の量刑と同じように,例えば罪の重さと比例したものであるのか。その結果,例えば打切りの場合に言い渡される時間と執行延期の場合に言い渡される時間だと,執行延期の場合の方が長いのか短いのか。そういう点,もしお分かりであればお教えいただきたいんですが。 ● この点については,正直申し上げて分からないということであります。ただ,公益給付活動を行う時間というのは,必ずしも刑期と執行猶予期間が対応していないのと同様に,個々人によって異なり得るということが指摘できようかと思います。実際に,先ほどの御質問にも関係するんですけれども,どのぐらいの割合で遵守事項として公益給付が命じられているかというデータがありますかと先方に聞いたんですが,ないということでありましたので,必ずしも明らかではないところでございます。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 私も公益活動についての質問なのですが,御説明の中で,検察官なり裁判所なりが,まず,手続きを打ち切るか,あるいは,刑の執行を延期するかということを決めて,それから,何時間労働しなさいということだけを言い渡すというお話がありました。そうしますと,ドイツでは,公益給付活動というのは,対象者の社会復帰を考慮して言い渡されるものではないという位置付けになっているのでしょうか。   つまり,公益給付活動を行わせるという条件のもとで手続を打ち切るとか刑の執行を延期するというものではなくて,まず手続の打切りないし刑の執行延期の判断が先に来る,その上で,言い渡す内容についても,時間だけを言い渡すのであり,特にこういう活動をさせるということを裁判所等が言い渡すわけではないということでしたし,加えて,公益給付活動は,不法への償いであるとか訴追に係る公益を消滅させるという趣旨のものだという御説明もありました。そうだとすると,これは,公益活動を行わせることで対象者の社会復帰に役立つという視点で言い渡すものではないということになりそうなのですが,そういう理解でよろしいんでしょうか。 ● 基本的にはそのような位置付けにならざるを得ないと思いますけれども,ただ,実際に公益給付活動に従事することによって改善更生が図られるということが全くないわけでもないので,その改善更生に適した処分というか,具体的な活動を選択するようにということは考えていると思いますけれども,ただ,時間数しか決めておりませんので,時間数を定める際には,そこまでのことは考えていないのではないかと思います。 ● そうすると,具体的に対象者が活動を選択する場面で,それをあっせんする際には,その人にとってどんな活動がよいのかということを考えているのでしょうか。 ● 公益を回復するというだけではなくて,その人の立ち直りにも資するものがいいだろうというふうには考えられると思いますけれども。 ● もう一点,公益給付活動に関する質問ですけれども,公益給付活動は,どの類型も対象者の同意を得て行うということでした。①の手続き打切りの条件とする場合と,③の日本で言うところの労役場留置の代替処分の場合について同意を必要とするというのは分かるんですけれども,②の自由刑及びその残刑の執行を延期する際の遵守事項として行う場合についてまで同意を必要としているのは,どういう理由からなんでしょうか。 ● 有期自由刑の残刑の執行延期に関しましては,対象者の同意が要件になっておるものが幾つかあると思います。条文を見ますと,刑法57条1項3号というところがありまして,残刑の執行延期に関しては,その処分自体に対して同意が要るということになっております。これは無期自由刑に関しても同様であります。法律上そういうことになっているということです。 ● つまり,執行延期自体に同意が要るから,結局公益活動の方にも要るという関係になっているということですね。 ● はい。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 私も,ちょっとこの公益給付活動についてお伺いしたいと思っています。   公益給付活動を行う時間の最大のリミットのようなものはありますか。イギリスでは300時間といったようなものがあるので,私が前にほかの先生にいろいろな形で,ちょっと古いデータなんですが,540時間という非常に長い時間で,そこはかなり問題だというようなことを指摘されたことがあったので,そのあたりがどうだったかということが第一点です。   それから,もう一点は,この公益給付活動を支えるものとして受入先のようなものがあるんですが,実は,日本と同じで,保護観察官は非常にドイツは少ないと言われているので,そこがどういうチームワークでそこら辺の実際の公益給付活動をフォローしているのかということが分かれば,教えていただきたいと思います。 ● まず,最長期についてですが,調査が及んでおりませんで,その点については存じませんが,540時間を命じたということについては伺っておりません。   保護観察官の数についてですが,保護観察官の資格を持っている人が事実上,このようなあっせんに従事させられることによって,本来の活動ができないという嘆きが,特にヴィースバーデンの検察庁ではありました。ただ,それは現状,いかんともし難いということでありまして,何とかやりくりしていますという以上のことは,ちょっと私には分かりかねます。ただ,あっせん活動まで公的な機関が担うことによって,本来の活動に圧迫が生じているということは事実としてはあるようであります。 ● どうぞ,○○幹事,お願いいたします。 ● 関連してなんですが,コストの関係で,保護観察官が電子監視を用いる場合の方がコストがかかるということですけれども,それは,電子監視を用いるということによって,むしろ対象者に対する保護を厚くするという考え方だからそうなっているんでしょうか。要するに監視の手間を省くと言うと変なんですけれども,そうではなくて,そういう大変な対象者に対してそういう電子監視を用いるということだから,コストが余計にかかるということなんでしょうか。 ● 恐らくは緊密な指導,援護が必要な人を特にEFFの対象にしていることによって,通常よりも手厚い監視体制を敷いている。ただ,それは収容するよりはコストとしてはかかっていないのだという説明であるように思います。 ● そういうことによって,有意差は分からないということですけれども,感触としては,そういうことの方がいいとか悪いとか,そういうお話は何かあったんでしょうか。 ● 再犯率に関する御質問だとすると,実際にこの人が立ち直ったかというのは,まだ統計的な分析を得られていないけれども,ヘッセン州司法省の担当官の説明としては,そんなに失敗した事例はないということでしたので,手ごたえを感じているということでした。ただ,他方で,連邦司法省の方にも,ヘッセンでやっていることを今後連邦で拡大して使う可能性はありますかと伺ったところ,若干懐疑的に見ているようで,単に従来,普通に保護観察になっていた人にEFFを付けるだけのことに,ネットワイドニングになっていなければいいけれどもということでありました。ですので,連邦としては,今は白紙であるということです。 ● 電子監視のお話が出ましたので,ちょっと電子監視のことを私も伺いたいと思います。ヘッセン州でモデルプロジェクトとして実験的にこういうことをやっているという,その問題意識というのは何なんでしょうか。 ● 必ずしも明らかではありませんけれども,先ほど出てきたような,収容するまでもない,社会内にとどめておくことはできるんだけれども,援護の手段が十分でないので収容せざるを得ないという人を,やはり外に置いておいた方が,教育改善効果として望ましいのだという発想がどうも強い。これは,監視としては非常に有効な手段であるので,手間を省くためにやっているというよりは,そういう緊密な指導援護の一つの手段として,その犯罪者である人の立ち直りにとって特に有効であるという考え方があるということを何度も強調されておりました。 ● そうすると,従来であれば,出せなかった人を,これを付けることによってより広く社会に出そうという,そういうねらいを持っているというふうに理解してよろしいんでしょうか。 ● 出せないということの意味が様々であるということで,出せない人の中でも,再犯のおそれがあるとか,そういうことで出せないわけではなくて,ちょっと放っておくと崩れてしまうというような人たちが主に念頭に置かれている。   ですから,どういうふうにしても出せない人でもないし,何があっても出せる人でもない,そういう境界型の人は,もし電子監視がなければ,やはり収容せざるを得ないんだと思いますけれども,電子監視がなければ収容せざるを得ない人というのは,何があっても収容せざるを得ない人よりは若干収容の必要性は低いんだという考え方ではないかと思います。 ● 今の御質問と関連するのですが,電子監視を導入する際に,モデルプロジェクトであると。しかし,マックス・プランクとの協力もというお話があったのですけれども,今日のお話を聞いていても,これはヨーロッパ各地でやられているEMに非常に似ていると思うのですが,ドイツでもEU全体のEMの動向を踏まえてやっているのかどうかということが第一点。   それと,他方で表の1,2等で説明があったように記憶しておりますが,現状においてはオーバーポピュレーションじゃないのですが,それは言わばたまたまであって,今後どうなるか分からないというような御説明もあったのですが,今後あり得る過剰収容に対する他の選択肢として早目に考えていこうというふうな発想はあるのでしょうか。そのあたりを教えていただきたいと思います。 ● まず,EU全体の動向ということは担当者も踏まえていたと思いますけれども,それほど強く押し出していたわけではなくて,特に我々のイニシアチブでやっていますということでありました。   もう一点は,今後あり得る過剰収容についてどうかということなんですが,特にヘッセン州においてでありますけれども,民間資金を導入した刑務所が昨年開所しまして,それによって500人の収容を増やすことができましたということで,過剰収容の問題が生じたときに,施設はコンスタントに今後も増加させざるを得ないだろう。ですから,電子監視のことは,必ずしももう置いておけないから出すんだというネガティブな動機ではなくて,むしろそれが対象者にとって非常に社会復帰を促進する上で積極的な意義が認められるんだということがないとやらないんだということで,聞いて思ったんですけれども,現状でもそれほど大々的にEFFを実施しているわけじゃないんですね。非常に対象者を厳選して行われているということであります。したがって,今後起こり得る過剰収容状況に対しては,引き続き施設整備をするということになるんだと思うんですが,それは容易なことなんですかと聞いたら,容易なことではないということでありました。 ● 今の関連ですが,マックス・プランク研究所が関与していますが,その関与の度合いないし程度はどのぐらいなのでしょうか。 ● 既にウェブ上にも幾つか論文が発表されておりますが,私は,それを入手して先方に伺いましたところ,それは既に古くなっていますということだったのですが,成功・失敗例は,すべてデータとしてマックス・プランクの研究者に送られていて,再犯率等々についても,その人が分析を加えているということであります。結論が出るのは来年ということでありました。 ● どうもありがとうございました。   どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 電子監視に関連するんですが,未決勾留にも電子監視を利用しているような形の御報告が先ほどちょっとありました。この未決勾留の場合の電子監視の場合も,先ほどありましたように,本来ならばもうちょっとこのケアが必要なので,非常に危ないんだけれども,電子監視するなら外へ出そうという,そういう配慮で出ているのかということと,あともう一つは,未決勾留そのものは,罪証の隠滅のおそれとか逃亡のおそれといった,日本にも似たような要件があるんですが,それとの関係。それから,もう一つは,やはりまだ実際に刑に服している者と違って無罪推定の原則が働く。判断の上で,そういった者に対する配慮というのがあるんでしょうか。 ● 今御指摘がありましたように,確かに勾留に関しては,やはり教育改善効果というよりは,むしろ監視として有効であるという視点が強いようです。   もう一点,無罪推定との関係ですけれども,もう一度お願いできますか。 ● 実際上,刑に服している者が保護観察,いわゆる仮釈のときに出るとかというときに,一定の条件の下に電子監視が付くというのは分かるんですが,要するに,まだ未決の段階では有罪か無罪か分からない段階なのに,そこの部分について,もう少し緩やかな判断がされているのかどうかということなんですね。 ● その場合は,無罪推定の観点がおよそないというわけではないということにつきましては,手続打切りの際の公益給付活動にはEFFを使わないというところからも明らかではないかと思いますが,他方で,対象者の同意もあるということになりますと,恐らくは収容されるよりはましだという判断があるので,その同意を得た上でやっているということを考えると,無罪推定には抵触しないという判断があるのではないかと思います。 ● もう一点お願いします。これもまた電子監視に関する問題なんですが,先ほど,電子監視の場合,家庭用の場合については家庭に電話があることが前提になっているんですが,貧富の差によって,実際問題として電話加入権も電話も持っていないと,そういった者に対してもやれるような形にしないと不平等ではないかということがよく言われていると思うんです。現実にはそのあたりのところは,ドイツでは何か矛盾点は指摘されていないんでしょうか。 ● これは,確かに電話を持っていない人はどうするんだという話はありそうなんですが,その点については特に伺っておりません。 ● 電子監視について,GPSによる追跡がされていないということでしたけれども,これは何か理由があるんですか。 ● これは,先ほどから繰り返し強調されておりますように教育目的を重視しているんだということで,担当者,保護観察官にとって重要なのは,その人が今どこに居るかということではなくて,日課表に定められた行動をしているかどうかであるということが分かりさえすればそれでいいので,その間,例えば定められていない場所に寄っていようが--それは行っちゃいけないとされている所は別ですけれども,どこに居ようが,そこは余り深くは追及しないということでありました。 ● 未決勾留者の場合,逃亡の防止の点はともかく,罪証隠滅の防止ということを考えたときに,電子監視というのがどこまで意味があるのだろうかというのはよく疑問として出されるのですが,その点については何か言及はありませんでしたか。 ● 未決で保釈になるわけですけれども,出頭を確保するということで,保釈をする際にも,ある程度の条件を付することができるわけです。保釈保証金の納付もその一つですが,一定の場合に一定の機関に出頭せよという義務を課すこともできて,それを担保する手段なんだということであります。したがって,EFFがあっても,罪証隠滅は,確かに防止するのはなかなか困難かと思いますが,それは通常の保釈においても同様ではないかと思います。 ● ○○幹事,どうぞ,お願いいたします。 ● 未決勾留の電子監視についてなんですけれども,同意を得るというのはどういうところで得るのかということなんですが,勾留状が出されて勾留されるというふうになった段階で電子監視の選択肢もあるよという形で言われるのか。そこはまず勾留されるということが先にあるんでしょうか。 ● 勾留されて,それを保釈するわけですね。 ● 保釈の段階で,その条件の一つとして電子監視という,それは本人が希望すればということではなくて,裁判所なりが条件として提示した場合ということになるんですか。 ● そういうことです。保釈をする際に,先ほど申し上げたように幾つかの条件を付することが,法律上提示されていて,そのうちの一つを担保する手段であるということです。 ● 警察へ届出をするという程度で済む人についてはそれでよいと。それでは駄目だけれども,電子監視を付けるのであれば保釈してあげるよと。 ● 電子監視をすることによって出頭義務が担保されると。 ● 担保されるというような人については,そういう……。 ● あれば出られるという人は,付けてでも出たいと思う人はいるかもしれない。 ● そういうことを提示されて,では,付けてもいいから出たいという形で同意をするという形になるわけですね。分かりました。 ● そういうことです。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 電子監視についてなんですが,収容よりも教育改善効果が高いということなんですけれども,これは具体的にどういうことを意味しているのか。   電子監視というのは,一定の時間に,特定の時間に所在を確認するというのに大きな意味があり,それはどういうことかというと,犯罪の機会を奪うということだけにすぎないと理解していたんですけれども,ドイツでは教育改善的な意味が電子監視にあるような紹介をされたんですけれども,実務家がそういうことを言うというのは,それは一体どういう意味で言っているのかを聞きたいと思います。 ● EFFというのは,基本的には指示事項であるところの日課表を守るとか,ある一定の場所に行くとか,そういうことは通常,仮釈放の段階で指示が与えられるわけですけれども,それを放置しておくと,すぐにそれに従わなくなってしまうという人がいるだろうと。結局外に出した,それは社会復帰を願って外に出すわけですけれども,それがあだになってしまったということにならざるを得ない人が一定程度いるんだろうと。そういう人については,ある程度監視をすることによって,緊密な援護という表現になるわけですけれども,それによって絶えず保護観察官が接触をする。したがって,先ほど申し上げたように保護観察官の人数も大分増えるわけですけれども,保護観察官が接触することによって,立ち直りをより緊密に支援していくということが可能になるんだと,そういう意味でEFFを用いた方が教育改善効果がある。収容しておけばもちろん楽なんですけれども,それが必ずしも社会復帰には結び付かないんだと。外に出して,外の風の中で独立して生活を営むことができたらいいんだけれども,そのときに,通常の保護観察ではちょっと心が折れてしまうというような人については,密な保護観察官の接触があることが助けになると考えられることによるものではないかと思います。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 今の○○先生の質問と同じ疑問を持っているんですが,ほかの国で言われているのは,エレクトリック・モニタリングをするのは,従来の家庭環境を破壊しないためであると。例えば職を失うことはないのである,と。しかし,EMが付いているということで,一定の威嚇的な効果は心理的に作用しているということが言われるのですが,今の御説明ですと,それは○○さんに聞くのは酷なのでしょうか,あちらの説明として,EMを附していることについて割とバラ色の評価をし過ぎているのではないかという気がするんですが,そのあたり,いかがでしょうか。 ● そうですね。それは推進している立場の方からの意見ですので,やむを得ないところはあると思いますが,現実に,そんなに大々的に展開しているわけではないということも考えてみますと,今の○○先生の御説明だと,自分が自分に対して何か期するところがあるというか,威嚇されているということを意識し続けることによって立ち直りが強制されるんだ,立ち直りの方向に絶えず方向付けられているということなんだと思いますが,ヘッセン州でやっている制度は,もう少しコミットメントを密にする契機として電子監視を使っているというふうに位置付けたいということなんではないかと思います。そうすると,それが有効な範囲というのは余り大きくはないということにならざるを得なくて,先ほどの御質問にも関連しますけれども,過剰収容緩和の手段として,それほど重視されているかというと,そうでもなさそうであるということになるかと思います。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 伺っていての私の推測なんですけれども,在宅すべき時間に在宅していることを監視するという面では,ほかの国で重視されている夜間外出しないという効果がもちろん得られるんでしょうが、ヘッセン州で重視している定期的な生活を送るという意味では,放っておくと昼まで寝てしまうので,例えば、8時には起きて仕事に行くことという遵守事項があれば,きちんと8時には外出していることを確認する。外出していて隣の家で寝ているかもしれないけれども,とにかく外出しているということは確認できると,そういうことなんですかね。 ● 在・不在を問題にするんだと。居なければいけない時間に居るということだけではなくて,居てはいけない時間というのがあるということであります。その時間に在宅していないということも併せて監視されているということです。 ● はい,どうぞ。○○幹事,お願いいたします。 ● 何度も申し訳ないんですけれども,先ほど小学校の例とかを御紹介いただいたんですけれども,その小学校の児童だとかの保護者に対して,犯罪者というか,犯罪を犯した人がやっているんですよということを率直にそのまま説明するということなんですか。 ● 具体的にどのような説明をされたかは分からないんですけれども,今度リノベーションに来る業者は,そういう公益給付プログラムを利用して来ていますということは説明をした上で,具体的にどういう罪を犯したかというのはもちろん分からないわけですので,ただ,問題は生じないようにあっせんされているから大丈夫だということを多分言ったんだと思いますが,特におっしゃっておられたのは,そういうことを受け入れることによって,彼らの立ち直りが促進されるということに意義を認めたいということで理解を求めたということでございます。 ● それで特に反発はなかったというわけですか。 ● そこから先は,具体的に反発が全くなかったとは思いませんけれども,現在は非常に広く受け入れられていて,教員なんかも朝来ればあいさつするし,保護者が来てもあいさつするというような環境で,穏やかな状況で行われているということでした。 ● ドイツへ行って,日本では過剰拘禁の問題を生じ,その解決に努力しているという話をされたと思いますが,ドイツの関係者は,それに対して「そうだ,そうだ」と相づちを打ってくれましたか。 ● それは,行った先によってやはり違いました。   まずベルリン州の司法省に行ったんですけれども,数字を見ても分かるように,ドイツの中では非常に悪い状況ですので,我々も大変苦労していますということでありました。ただ,次に連邦司法省に行きましたら,連邦全体の数字を見ますとすごく改善しておりますので,そういう問題はありませんと。昔はひどかったけれども,今は大丈夫と言うんですね。ヘッセン州も,最近までひどかったけれども,去年新しい刑務所もできたので,もう大丈夫ですと言うんです。ただ,その後に,やはり刑の長期化があるので,今後も予断を許さないだろうというのが付くわけですが。   このように,最初に訪問した所では「そうだ,そうだ」と言っていただいたので,これはよかったと思ったんですが,あとの所では「ちょっとあなたの期待にはこたえられないけれども。」と言われてから話が始まりました。 ● いただいた資料を拝見して興味があるのは表4ですけれども,表4の中ほどに自由刑執行のための収容期間が記載されていて,そこ,6月,1年というような切り方なんですね。日本の統計であれば,1年を超えるという部分がさらに3年,5年,10年と細分化されて,そこに関心が行くと思うんですけれども,ドイツの統計は,要するに1年を超えるというのを一括していて,それ以上の興味を持っていないのか。そこからいうと,全体としてドイツの自由刑の刑期は日本より短いのかなという感じを持ちましたが,その辺,どうでしょうか。 ● 私が参照した,その下に書いてある出典がそのような統計になっているわけですけれども,日本と比べてどうかというのは,ここからだけでは必ずしも明らかにならないような気がいたします。 ● よろしいでしょうか。それでは,○○委員,お願いいたします。 ● まず,公益給付活動の,先ほど○○幹事の方から御質問があった,例えば小学校で給付活動をする際のことですが,例えば,それをする人たちがグループで送られて行って,一定のユニフォームを着て,それと分かるような形で行動しているんでしょうか。 ● 今回の小学校の件は,確かペンキ屋さんのような格好をして行くんですけれども,撮影しないでくれと言われたので撮影していないので,ちょっと覚えていないんですが,彼らはSBHのトレーナーを着ていたように記憶しております。 ● 現場を見られたわけですか。 ● はい。ペンキを塗っているところを見ましたが,写真は撮らないでくれと。 ● それと,それに関連してレストラン,ポツダムの方のお話もあったのですけれども,成果物であるということは大々的には示さないのですか。分かる人には分かるような形にするのですか。 ● これは,多分だれが見ても分からないと思います。 ● そうですか。それに関連するのですけれども,幾つか公益給付の根拠も違っているという御説明があって,三つぐらいに分かれていたと思うのですけれども,二点伺いたくて,一点目が,まず刑訴法153条aで出ているところで,先ほど以来いろいろ御質問がありましたが,この社会に対して犯罪が惹起した損害を回復するためという中の,かなり下位の中の一つの類型として公益給付活動のようなものが入っていると思うのですけれども,その社会に対するペイバックをしている,社会に対する損害と,彼らがやった労働との均衡関係というのをどうやって判断しているんだろうか。また,そういう社会に対してペイバックをしたということが暗黙のうちにしか示されていないわけですよね。それがこの条文の趣旨に合っているんだろうかというところを一点伺いたい。   もう一つは,この刑訴法153条aによったものではなくて,刑法施行法293条による場合がありますよね。そういう御説明があったと思うのですが,そこで,ちょっとこれは私の条文の読み方が分からないので教えていただきたいんですが,1項を見ると,真ん中あたりで,この代替自由刑による労働は無報酬のものでなければならないと書いてありますね。無報酬のものだと書いてあるのですが,レジュメの2ページの制度趣旨の3を見ますと,日数罰金制度の適用があって,何時間の労働がどれぐらいかかるかという費用対効果の基準が当てはまっていますよね。これは,この条文の読み方と一見するとちょっと合わない気もするのですが,それはそれとして別途の考慮が働いているんでしょうか。 ● 二点目から申し上げますと,これは,いかなる公益給付活動も無給で行われなければならないということで,ほかの公益給付に準用されておると思いますけれども,それは刑罰の執行として,刑法施行法293条の場合は刑罰の執行として行われるものである以上,ある程度量を定めなければいけない。量を定めるときに罰金の日額を定めているだけだということではないかと思います。 ● なるほど。でも,実質的には罰金をカットしてもらっているわけですよね。その辺の抵触については,もう仕方がないという割り切りになるのですか。 ● 罰金をカットするのは,まずは代替自由刑によってカットしているわけですので,それを何によって切り替えるか。労働するんだったら外でもやらせていいですよと。 ● ですから,素人的に考えると,もちろん時間の設定はしないといけないのでしょうけれども,1日6時間というふうな明確なものではなくて,上限設定をしておいて,状況を見て決めるという方がいいのではないか。これは○○先生の質問にも関連してくるところなんですが,そういう疑問を持ちました。 ● ただ,現状は1日分の罰金日額に対して6時間ということなんですが,議論としては,2002年ぐらいに,連邦法によってこれを1日3時間にしようという法案が提出されたことがあります。これは司法省で聞いてきたんですが,その後,そのような議論はなくなったということであります。それは,労働のために一定の時間をとられますと,それは単に1日分の罰金を支払うよりも,6時間の労働というのは非常に負担が重いので,半分でいいのではないかという議論だったと思うんですけれども,ただ,その議論はSPDが政権を持っていた時期に出てきて,その後,それは通らずにそのまま終わっているということでございます。   次に,ペイバックが明らかでないという点についてですが,場所によっては分かるのかもしれませんが,ただ,例えば公園の緑地課で働いているあの人がひょっとしてそうなのかなとも思うわけですが,それ以上は分からなかったりするわけです。このように,公園の緑地課で働く人は緑地課の格好をして行くわけですので,この人がこういう給付活動に従事中であるということは,どこから見ても多分分からない。SBHがやっているところは,SBHがそういう団体なのだと,知っている人しか分からないと思います。そういう意味では,公益が返ってきているんだということはみんなには分からないというのはやむを得ないことではないかと思います。ただ,返っているわけですので,趣旨に反するかどうかというと,必ずしもそうは言えないのではないか。 ● 返っている,というと。 ● 公益給付として,犯罪によって生じた損害を埋め合わせる活動は実際になされているわけですので,それがみんなに知られなかったとしても,なかったことにはならないのではないか,という趣旨です。 ● ありがとうございました。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● 二点あります。まず,公益給付活動のあっせん先に関する質問です。レジュメの4ページのブランデンブルク州のBBJという組織なんですけれども,その前のベルリン州のSBHというのは,このための組織のように見えるんですが,BBJは,このための組織というよりは,一般的に青少年の職業訓練みたいなことをやっていて,その一部の活動が,公益給付活動のあっせんであると理解してよろしいんでしょうか。 ● 御指摘のとおりと思うのですけれども,ただ,青少年の職業訓練ということをやっていて,今,御説明したヴァルハラなんかも,多分彼らがマネージをしているんだと思うんですね。そのつながりで,例えば罰金支払いを分割払いにするとか,そういうものも含めて活動している。 ● そうすると,公益給付関係に特化した組織というわけではなくて,それは,組織の活動の一部として行っているということですね。 ● そうだと思います。 ● それから,もう一点は確認なのですが,6ページの作業の性質のところで,公益的というのはよく分かるんですけれども,補助的というのはどのような意味なのでしょうか。要するに,それに頼ってしまうと成り立たないような作業でないという程度の意味ですか。 ● 私はそうだと思います。それがなければ成り立たない作業というのは,常に犯罪者の存在を前提にすることになってしまいますので。 ● 逆にいうと,これは,単純に,長期間行うようなものは駄目だという趣旨ではないということでよろしいんですか。 ● 定められた時間数によっては,ある程度長期にならざるを得ないこともあると思いますけれども,ただ,それにもともと存在した活動が依存してしまうほどに長期になったら駄目だということです。 ● どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● かつてこの部会で社会奉仕命令について議論したときに,対象者の同意をとるかという問題が論じられたと思うんです。そのときに,刑罰として執行する場合に,同意はあり得ないというような議論もあったかと思います。ドイツでも対象者の同意を得て行われているということは,興味深い。そういう点で,ドイツの刑罰論との関連はどうなのか。この前の議論では,ドイツの刑罰論からいったらそういうことはあり得ないというような議論だったと思う。私はそのとき英米の議論を前提としていましたので,「いや,そんな,余り難しい議論をしないでください。」という趣旨のことを言ったような記憶があります。 ● 刑罰論との兼ね合いで同意を求めることにどういう意味があるのかということについては,必ずしも私も明らかではありませんが,ただ,公益給付活動を命じる,やってもらうに当たって,およそ同意もないのに嫌々働いてもらっても意味がないだろうということは,実務に携わる人は皆さんそうおっしゃっておられました。 ● 長時間にわたって質問攻めに遭われて,大変申し訳ありませんが,ほかにまだ御質問がございますでしょうか。   はい,どうぞ,○○委員。 ● 先ほどのところで,非常に興味深いところなんですけれども,公益的団体に対する金銭の支払いが定められていて,実際にはそちらの方が多いと。その金銭的な支払いが済めば,この奉仕活動をしなくていいということになっているようですけれども,これは極めてドライなというか,効率性を非常に重視しているように思えるんですけれども,この点はどういう理由付けがあるんでしょうか。 ● ドイツにはアウフラーゲという遵守事項というものと,ヴァイズンクという指示事項というのが保護観察に関しては付することができるということになっておりまして,この報告中でも遵守事項,指示事項と言い換えておりますが,このうち,遵守事項は犯された不法の償いであり,指示事項は行為者の特別予防に資する措置であるというふうに位置付けられております。   ですので,先ほどの○○先生の御質問にも関連しますけれども,生じた不法が償われるということがある。生じた不法に対して何もないわけではないということを明らかにする趣旨であるということでありまして,特に刑訴法153条a,手続打切りの方は,これは刑罰ではないけれども制裁であるという説明をする人もいますし,コメンタールなんかを読むとそう書いてあることもありますし,実務家の感覚でも,事実上は刑罰と同様の機能を果たすことが期待される。ただ,それは事実上そうなのであって,理論的にそうだとはもちろん言えませんということでした。 ● はい,どうぞ,○○委員。 ● 罰金刑の規定を見ると,罰金刑は日数罰金で,最低5日となっているようなんですけれども,それで支払わない場合には1日6時間働かなければならないとすると,最低限30時間公益労働をしないといけないことになりますね。これは、かなり長い印象を受けます。しかも,罰金刑の下限というのは,量刑上は一番下の部類でしょうから,自由刑を打ち切ったり,あるいは延期したりする場合には,さらに重いということになるとすると,かなり長時間働かないといけないことになります。   何となく,公益労働のイメージとして,1日ペンキ塗りに行ってきておしまいというイメージを,抱いていたんですけれども,そうではないということなんでしょうか。 ● コメンタールに出ていた事例としては,刑罰自体も刑の執行の延期になるような犯罪なので,それほど重大なものではないということが予定されているんだと思うんですが,それでも3か月以内に50時間の公益給付を命じるとか,そういう例文みたいなものがあるわけであります。   一点補足させていただくとすれば,罰金刑を支払うことができない人というのは,では,今度,代替自由刑と公益給付活動どっちに行くかということなんですけれども,古いデータによると代替自由刑の方が多いんですね。通常の感覚からすると,外にいた方がいいんじゃないかというふうに思うんですけれども,前提として,罰金刑を支払うことができないぐらいお金がないという人が,さらに無給の労働に外で服するというのはなかなか困難なことではないかというふうに考えると,そのような統計上のデータにも意味があるかなというふうに思っております。 ● すみません,確認させてください。今の○○委員の御質問と共通するのですが,イギリスでは拘禁刑,それから社会奉仕命令,それから罰金刑という刑の序列が明確にあるわけですが,ドイツでもそれを前提にしていると思ってよろしいんですか。そして,今の場合は,罰金未納の場合には順々に上に上がっていくと。いったん上に上がるけれども下に落ちてくる,真ん中に落ちてくる,そういうイメージですかね。 ● 序列というのは厳しさということですか。 ● そうです。 ● やはり自由を剥奪する処分の方が厳しいという位置付けなんだと思いますが,ただ,そうすると,例えば罰金刑というのは略式でも命じられることになっておりますが,手続が比較的簡易であるにもかかわらず,最終的には身柄拘束に至ってしまうということに問題はあり得るという指摘はあるかと思います。 ● そのときは,罰金刑を命じられたのに払わないというか,別個の違法が出ているというのでしょうけれども,罰金を払わないときは代替自由刑に行って,それが公益奉仕労働に落ちるわけですね。ですから,その前提としての三つの序列が意識されているか。 ● その場合は,公益給付が一番軽いということですか。 ● ドイツではどうかということなんですが,どうなんでしょうか。 ● 少なくとも代替されるということは,その間は交換関係があるんではないかなと思います。 ● 先ほどの同意が要求されているということに関連してですけれども,自由刑とか残刑の執行を延期する際の公益給付命令ですね。その場合も同意が必要であるということでしたが,最初に○○委員が質問された際に,果たして本人の社会復帰のための教育的なものなのかどうなのかという話もありましたけれども,同意もないのに公益活動をやらせてもしようがないだろうという感覚というのが,教育的なものとして自ら受け入れる気持ちがなくては,余り教育として役立たないだろうというのだったら分かるんですが,必ずしもそういうことでもないようなお話だったとすると,そのあたりはどんなふうにつながっているのかなと思ったのですが,いかがでしょうか。これは○○さんに聞いたら悪いのかもしれませんけれども。 ● 公益給付活動の期間を定めるときに,どのぐらいの活動をすると生じた損害を償ったことになるのかという観点から期間を定められているんだと思うんですね。そこで,このくらい働いたら社会復帰になるとか,そういうことは一義的には考えられていないのではないかというふうに思うわけですけれども,ただ,事実上,いろいろなことが期待されておりまして,それを通じて改善更生が図れるというのもその一つですし,自分が犯した罪の重さを知ってもらうという,そういうことは事実上は言われているわけです。ただ,それを理論的に組み込むかどうかということについては,クリアな議論というのはないんではないかなと思います。場合によっては153条aの刑罰を科せられていない人,手続を打ち切られた人に対する遵守事項の条件付けというのについても,刑罰と同様の機能を期待する人がいるぐらいですので,この辺は議論と実際というのは若干乖離しているかなという気がいたします。ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんが。 ● 今日いただいた統計資料を拝見していて,日本と大きく違うなと考えるもう一つの点は,未決勾留について,逃亡のおそれを理由とする方が罪証隠滅のおそれよりずっと多いという点ですね。   日本の統計は,この点は逆になっていて,罪証隠滅の方が多いと思いますけれども,従来,日本の刑訴学者は,ドイツの勾留の規定に特定の事実に基づいてという限定があるので,これは勾留について慎重な立法者の考え方であると敬意を表していたんですけれども,どうもこの統計を見ると,逃亡のおそれもかなり緩やかに解釈されているようにも思えますが,この点はどうですか。 ● 緩やかに解された結果,逃亡のおそれを理由とする件数が多い統計になったのかどうかはちょっと明らかではございません。   ただ,連邦司法省の担当の方はもともと検事の方でしたが,勾留状を請求するときにどういうふうに考えるかというと,上から順番に当てはまるかどうか考えて,一つ当てはまれば,その段階でもういいという考え方をするとおっしゃっていました。この点,日本は複数並べて請求するということかもしれないんですが,ドイツでは,実務上,罪証隠滅のおそれの前に逃亡のおそれの有無を検討するということなので,それが認定されると,もうそれでいいということになっているという説明を受けました。緩やかに認めているかどうかというのは,ちょっと直ちに言えないことだと思います。 ● まだ御質問があるかとは思いますが,かなり長時間にわたっての労働時間に等しいわけで,そろそろ解放してあげなきゃいけないかなというような気がいたしますので,質疑応答は以上にさせていただいて,ただいまの充実した質疑応答を踏まえて,この際,発言したいという方がございましたら,どうぞ御自由にお願いしたいと思います。   日本との比較においてこうだとか,いろいろ御意見があろうかと思います。もしそういう御意見がございましたらお願いいたします。   はい,どうぞ,○○委員。 ● 日本との比較というよりも,例えばイギリスなんかを見た場合に,公益給付活動,向こうは社会奉仕命令といいますか,その関係では,言わば一つの刑罰的な形の方向に動いている。ドイツの場合は,どうも教育的効果のようなニュアンスがかなりあるんですが,場合によっては,方向性として世界のすう勢がそういう方向に動いているような感じが私はするんですが,ドイツにはそういう形になりそうな雰囲気というのは全くなかったんでしょうか。 ● 御質問ということでしょうか。特に御質問というわけではないようですので,○○参考人には御意見としてお話しいただいて結構です。 ● 刑罰として社会奉仕命令を科すということは,特に考えられていないようですけれども。 ● ほかに御意見はいかがでしょうか。   はい,どうぞ,○○関係官お願いいたします。 ● 私は○○幹事に伺いたいのでありますが,今日の参考人のお話を聞いていても,ドイツはヨーロッパの一つの例ですけれども,結構短い刑期の刑も言い渡しているような印象を受けます。しかし日本では,昔から短期自由刑の弊害ということが非常に強調されていて,我々もそれが染み込んでいる感じがするわけなんですが,矯正の立場からお考えになって,一昔前とは矯正も違ってきているのだと言えましょうか。作業の賦課だけではなくて改善指導,教科指導等を十分にやっている。伺っていると,改善指導等についてはそう長い期間を予定しておられるようでもないので,そういう意味で,短期自由刑についての矯正の考え方は昔とは違ってきているというふうにお考えになりますか。 ● お答えになるかどうかなんですが,監獄法が改正されまして,改善指導についても着手しているわけなんですが,短期自由刑の問題といいますか,そこに限定したというよりは,私たちは今,去年から受刑者については始めておりまして,スタッフの問題もございますけれども,一部外部の方の御意見をお聞きしたりしながら,今,施設の中での改善のための指導ということに取り組んでいるところでございまして,短期自由刑に絞った形でというのは,まだちょっと何とも申し上げられないかなというふうに思っております。 ● はい,どうぞ,○○委員,お願いいたします。 ● また,ちょうど未決勾留の回避ということで,今度は刑事局の方にお伺いしたいんですが,我々は今度,裁判員制度に向けて密な弁護活動をしなければならないという形になるんですね。そういった場合に,電子監視がいいかどうかは別にして,法務省の選択肢の中にドイツのような未決勾留の回避の方法,要するに,ある意味ではお金がなくてもそれがあれば出られるよという,そういうことは考えられるのでしょうか。 ● 考えられるかというのは,その点も含めて御審議いただくために,諮問をしているのでありまして,刑事局として何か方針を決めているということはありませんが,一般的に申し上げれば,やはり勾留の目的を達することができるとういうことを前提としつつ,裁判員制度の下での十分な防御活動・弁護活動を行うことも重要であるというのはもちろん認識しております。 ● 感想だけなんですけれども,ドイツの刑事政策の不可思議さというのを非常に感じたところです。なぜかといいますと,例えば,日数罰金が成功するというのは,だれも予想しなかったと思うんです。社会奉仕命令も,イギリスのまねをしただけだと初めは言われたんですが,これも非常に定着しているということは非常に興味深いと思います。ただ,一方で,電子監視の方がなぜなじんでいないのかというところも非常に興味のあるところなので,今後,ぜひ○○先生にもいろいろな御意見を伺いたいというふうに思っています。   以上です。 ● そろそろ予定した時間になりましたので,本日の審議はこの程度にしたいと存じます。   ○○准教授には,長時間にわたりまして誠にありがとうございました。どうも御苦労さまでございました。御礼申し上げます。   前回お諮りいたしましたように,今後は諸外国の関連する法制度の調査につきまして,その結果を順次御報告いただき,質疑応答や意見交換を行いたいと思っております。次回に御報告をいただける調査結果があるかどうかにつきまして,事務当局にお伺いいたします。 ● ○○委員におかれましてフランスの調査をしていただいているところでございまして,次回,○○委員の方からフランスの関連諸制度の御報告をいただけるものというふうに承知しております。 ● ○○委員,よろしいでしょうか。では,次回は○○委員から,フランスにおける関連諸制度等につきまして,御調査いただいた結果を御報告いただくことにいたします。   それでは,次回の日時,場所等について事務当局から御確認をお願いいたします。 ● 次回は7月20日金曜日でございまして,場所は法務省20階の法務省第1会議室でございます。開始時刻は午後5時でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただいま御案内がございましたように,次回は7月20日金曜日に20階の法務省第1会議室において会議を行うことにいたします。開始時刻につきましては午後5時からということになりますので,よろしくお願い申し上げます。   それでは,本日はこれで散会といたします。どうもありがとうございました。                                      -了-