法制審議会保険法部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  平成19年6月27日(水)  自 午後1時30分                        至 午後5時47分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第12回会議を始めさせていただきます。   それでは,まず最初に配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました部会資料13,それから本日席上に配布いたしました第10回会議の議事録の2点でございます。   以上でございます。 ● よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移らせていただきますが,まず,前回積み残しになっておりました保険法部会資料12「保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台(4)」の24頁の一番下の行から始まる「4(5) 保険契約が終了した場合の保険者による保険料積立金等の支払」という項目を御審議いただきたいと思います。前回,事務当局によるこの資料の説明の後,○○委員から別紙の資料に基づきまして御説明をいただきましたので,一応,御説明はそれで伺ったということにして,今日は直ちに御意見をいただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。   ○○委員。 ● こういう保険数理にかかわることで,ちょっとよく分からないことが多いので,御質問と,それとちょっと感想と申しますか,申し上げさせていただきたいと思います。   まず,25頁のところに書いてございます「一定の金額」の意味が非常にちょっと分かりにくいのですけれども,ここで考えられております「一定の金額」というのは,現行法の「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」と同じなのか,実質的な内容を変えるお考えなのか。現行法についていえば,保険業法施行規則第10条第3号の保険契約者価額と大体同じ意味ではないかというふうに,確か普通はいわれていると思うのですけれども,それと同じことになるのか,それとも,それと変わってくることをお考えなのか。これがまず質問の第一点でございます。   第二点といたしまして,それにもかかわるのですけれども,ここで考えられております額は,普通に言う保険料積立金のほかに生命保険でも未経過保険料が入ってくることになるのかどうか。生命保険の責任準備金は,保険料積立金と未経過保険料と危険準備金からなると普通いわれていますけれども,そこでいう未経過保険料も入っていることになるのか。損保については次の26頁のところで,未経過保険料がここでいう返還しなければならない金額になってくるという考え方をとられているわけですけれども,それとの比較で,生保の場合の未経過保険料がどういう扱いになるのか。これが二つ目の御質問です。   それから三つ目に,今のとかかわるのですけれども,現在の実務で行われている扱いがどうなっているか。これは,むしろ実務の皆さんに教えていただかなければいけないのですけれども,それとの関係でここで考えられているのが違った内容になってくるのかどうか。それをもし分かれば教えていただきたいと思います。実際には,こういうケースは余り多くないと思うのですけれども,実際の実務で出てくるケースと比較して,現在ではどう行われていて,それとここで考えられていることが同じになるのかどうかということを伺えたらと思います。   これから先はちょっと意見にかかわってくるのですけれども,一つは説明のところで28頁のあたりに,なぜ③による調整が必要かという理由がいろいろ書かれているわけですけれども,この中で保険者の破産の場合や解散の場合を別に扱うと,③の考慮をしないと。これは私も妥当であろうと思うのですけれども,それ以外の場合について,一番上のところに早期に解約された場合には利率が高過ぎるとか,一部の健康状態のよい被保険者等だけが解除されるとバランスが崩れるとか,そういったことが書かれていますが,こういった理由が例えば第640条のように保険契約者に全く責めがない事由で終了したような場合について,こういう理由で保険者側が解除をするというか,終了させた場合について,こういう理由付けで,こういう制度を考えていいのかというのが,ですから,もうちょっと第683条で準用されている条文の中でも,それぞれ性格の違うものが入っていますので,もうちょっと,そこは考える必要があるのかという,これが質問というか意見です。   最後に,この金額というのは恐らく保険契約の終了に基づいて,この金額の払戻しを請求する保険契約者の側が,ここの金額を主張・立証しなければならないという前提で,これは書かれているのではないかと思うのですけれども,例えば28頁の(補足)3のところなどは,そういったことで書かれているように思いますが,現在のこの案で①から②,③の額を保険契約者が主張・立証することができるのかと,極めて困難ではないかというふうに私はちょっと感じまして,何か形式的な基準が明示されていれば,それによって主張・立証はできますけれども,大部分の資料は保険会社側にあるわけで,先ほどの業法施行規則第10条第3号の額にしても,当該契約者に相当する額がその中のどれだけの額かとか,そういうことも多分契約者には分からないと思いますし,果たしてこういう規定をつくって,そもそも論になってしまいますけれども,こういう規定をつくって,それに基づいて請求させても,そもそも契約者にとって主張・立証できる,使える権利になるかどうかという点が,ちょっと問題があるのではないかと思っていまして,本当に使える権利にするためには,ちょっと話が大きくなり過ぎますけれども,契約法だけでやれるのかなと。やはり,業法と併せて機能できるような制度を何か考えないと,実際には使える権利にならないのではないかという危惧をちょっと持っております。   以上,御質問と意見を申し上げさせていただきました。 ● 今,○○委員から御指摘いただいた点は,いずれもまさに今日,この場で御議論いただきたい点ではなかったかと思いますけれども,資料についての御質問の形でいただきましたので,その点についてはとりあえず資料作成者の考えを御説明したいと思います。   現在の「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」という現行法と変わるのか変わらないのかという点ですが,この点はまさに現行法の「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」をどう解釈するかにかかるところではございますけれども,仮に,現行法の「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」が契約終了の場面で保険契約者に返るべき金額を適切に表現できているものだとすれば,これはこの資料の25頁の「一定の金額」と変わらないということになろうかと思います。そこを明確に表現することを意図しているという説明,言い方になろうかというふうに思います。   それから,未経過保険料の問題につきましては,まさに資料25頁の②の「将来の保険金の支払に充てるべき」といったところに未経過保険料も含まれるということを考えれば,生保についても(問題点)3で書きましたのと同じ問題が出てきますが,とりあえず,ここではそこまで一緒くたに議論をすると恐らく混乱するだろうと思っておりますので,未経過保険料は切り離して,まずは御審議をお願いしたというふうに思っております。ただ,生保についても(問題点)3で損保について提起した問題と同じ問題があるというようには認識しております。   それから,御意見の形でいただいた部分ですが,第640条のように契約者に責任のない終了の仕方の場合にこれでいいのかという点は,こちらとしましては25頁の一番下の(問題点)2で問題提起をさせていただいているという認識でおりまして,まさにおっしゃるように,そういう場合には①,②,③,この本文の規律とは別の仕切りが必要なのではないかということであれば,それはそういう形でまさに御意見をいただきたいというふうに思っております。   それから,立証責任の点も問題意識は持っているつもりでして,28頁の(補足)3の2番目のパラグラフに書きましたとおり,まさに御指摘のとおりの問題点があると思っておりまして,それをそもそも立証責任の点で解決すべきという意見もあるかもしれませんし,仮に立証責任としては恐らく請求する側なので,こういう所在になるけれども,実効あらしめるためには,プラスアルファが必要なのではないかということをこの28頁の(補足)3の2番目のパラグラフで,こちらとしては問題点としてはあえてくくり出しませんでしたが,問題点としては持っておりまして,それについても御意見をいただきたいと思っているところでございます。   とりあえず以上でございます。 ● どうぞ。 ● 質問の中でお答えいただいていないのが一番最初の点で,ここで考えられている金額が保険業法上の保険料及び責任準備金の算出方法書に書かれている施行規則第10条第3号にいう保険契約者価額に相当する金額を考えているのかどうか,それと変わってくるのかどうか,それをちょっと教えていただきたいのです。 ● ワーキングでいろいろ難しい問題を検討したわけですけれども,ワーキングの考え方というのは保険業法で今どうなっているかとか,それから,今後どうすべきかという点はとりあえず切り離して,端的に保険契約法でこういう解約返戻金について基本的な規律を設けるとすれば,どういうことになるのでしょうかという発想で考えておりますので,現行の保険業法でいうところの被保険者のために積み立てた金額とか契約者価額との関係は,ちょっと直ちには,そこは確実にこういう関係だということで詰まっているわけではないという,そういう前提ではあります。 ● 分かりましたけれども,ただ,もしここで考えられている考え方を詰めていくと,同じようなことになるのか,それとも変わってくることなのか,私はどうも変わってくるような気がしますけれども。 ● 一番分かりやすい例が低解約返戻金あるいは無解約返戻金の例ではないかと思うので,前回の説明資料の6頁に「低(無)解約返戻金型商品の解約返戻金について」となっておりまして,ここでは通常の生命保険商品の解約返戻金が大体この点線で書いてあって,最後は赤の線と合流する,この無あるいは低解約返戻金保険の場合の解約返戻金は赤のラインということですね。こういう保険があった場合に,解約返戻金は契約者価額として,恐らく約定された金額になっていると思うのですが,前提としての被保険者のために積み立てた金額が実はどうなっているのかと。恐らく積立金としては業法上は点線のラインで積み立てられているのではない,このラインそのものかどうかは知りませんけれども,少なくとも赤いラインよりは上で積み立てられているかと。   では,こういう会社が破綻したときに,幾らを払い戻すことになるのかと,こういうことが実は業法の解釈の問題としてあるわけですが,そこはまだちょっと残しておいて,その前提として例えばこういう保険があった場合に,第2回会議の資料でいろいろ最初にA案からD案というその中で,A案からC案というのは比較的伝統的な生命保険を前提にして,被保険者のために積み立てた金額というのは算数計算をやっていけば,かなり一義的に出てくると。そこから一定の解約控除をしたものが解約返戻金ですというような,そういう定義の仕方があって,これだとドイツも新しい法律では大体そういう考え方で,また控除できる率,額などを強行法的に限定しようという,そういう発想で,これは非常に分かりやすいのですけれども,ワーキングの中でいろんな保険を検討する中で,やはり低解約返戻金のように,被保険者のために積み立てた金額というところからそもそも出発していいのか。それよりは,やはり各保険ごとの保険商品のそれぞれの数理的な考え方があるので,今,行われているものを基本的にはそれぞれ何らかの合理性があるだろうということで認めようと。そういう場合に何か定式化が抽象的にではあれ,できるかどうかということを考えたのが,この一定の金額で①マイナス②マイナス③という。ですから,これを当てはめれば,伝統的な保険商品については①,②で恐らく被保険者のために積み立てた金額が出てきて,③は解除による不利益をどうするかという,そこの解約控除等の額が③に乗ってくると。ただ,新しいタイプの保険になると被保険者のために積み立てた金額という,そのあたりの前提がかなり違ってくるので,多少抽象化した金額にならざるを得ないと。   では,契約自由で算数計算さえ合えば,どんな返戻金の設定でも自由にできるのかと。そこは何らかの制約はあるのだろう,それが②の中で言っているところの「将来の保険金の支払に充てるべき保険料として相当な金額」であると。「相当な」と言っているのは,やはり数理的に見てきちんと説明がつくような,そういう額でなければいけない。それから,解約控除等についても,③のところで「維持するために必要な金額」という,そういうやや抽象的な言葉が入って,そこはきちんと保険数理の理論的な裏付けがあるということが必要なのだろうと。   こんなことが契約者に立証できるのか。できるわけないわけでありますけれども,やはり,こういう商品をつくって解約返戻金の額も決めてお売りになっている以上は,何らかの合理的な説明はされているはずなので,それは本当に訴訟になれば,このスカラーなりから説明をしていただけると。それをまた別の専門家の目で見て,これが本当に合理性があるのですかと。保険の群団を維持するために必要な額を留保しているのではなくて,単にペナルティーをかけているのではないでしょうか,そういうことが実質的な争点になるのかなというところであって,それで,もちろん,ここでは契約法でとりあえず考えて,こういう一般規定をとりあえず考えてみたのだけれども,日本の解約返戻金がこれで全部規律されるかと,恐らくはそうはならなくて,業法上,何らかのまたそれなりの手当てをしていただくと,そういういろんな手段を組み合わせると。その一番出発点の考え方として,こんなところではいかがかというのがワーキングのとりあえずのまとめだったというところでございます。いろいろ当然御意見はあって,また,不明なところもまだ多いと思うので,いろいろ御指摘をいただければと思いますが。   ○○委員。 ● 問題意識は今,○○委員がおっしゃったこととほとんど同じなのですけれども,まず,簡単に意見を申しまして,(問題点)のところについても簡単に申し上げて,最後に質問という形にしたいと。   短くしますが,まず,基本的な考え方としては第2回の議事録の50頁で私が述べたのと同じように,積み立てられている額は幾ら,それから解約控除の額は幾ら,そういうのがあらかじめ明示されている場合に,初めてこの契約の拘束力が発生するというような基本的な考え方を法文で明示した上で,前回,資料3の10頁でありましたA案からD案というところで,D案にやはりのっとって,これは公正な保険数理というだけではなくて,会計慣行も含めていいのかもしれませんが,そういう考え方をしてはどうかと。この資料の中には保険数理というものは意味が定まっていないということを言っていますが,そういうことはなくて,またドイツ保険契約法第176条にもそういう言葉は使われていますので,そういう考え方をした方がいいのではないかと思って,なぜかという問題もあるのですが,私が大分読み方が間違っていたら御指摘いただきたいのです。   まず,この①のところですけれども,要するに,この①は上限を画する金額に今なっているわけですけれども,今はすぐそういうことはないかもしれませんが,含み益の返還との問題という問題もあると思うのですね。含みが非常に大きい場合に上限を超えてしまったらどうかとか。そういう問題を離れても,ドイツでは2005年に憲法裁判所が保険会社側の利益追求に対抗して,保険契約者側を保護する立法上の手当てが必要だと,不十分だと,今改正作業が進められているわけですけれども,そういう問題についてどう考えるのかと。   それから,旧保険業法第84条の下で長期配当に含み益を使って契約者に返したという例はあるわけで,それから2010年から保険の時価会計で含み益のモニターがよりしっかりできるようになると。今,○○生命さんは6兆円とか○○生命さんで3兆円とかいう含みがあるわけですね。いろいろ,これはテクニカルに難しいということは確かですけれども,相互会社で長期の保険契約で区分経理,特別勘定のもとで含みが出た場合に,それを全く返さなくていいというのはあり得ないわけで,そこをもう少し踏まえた議論をする必要があるのではないかと。   それから,③の方がなかなか問題で,代理店に払う手数料がここに含まれるのかと。これは代理店は近い将来,開示すべきものだと私は考えますけれども,費用の差益といいますか費差益とかというものをなぜ明記しないのかと。もっと問題が「予定利率」をずっと行って「を維持するために必要な金額」と。それまで控除するのかと。予定利率までいかなかったら控除するのかと。これはちょっと大変なことで,次に,その間に挟まった文言を入れまして「保険料の計算の基礎とされるべきものを維持するために必要な金額」と。ここまでいきますと,死差損,利差損,費差損,全部,ちょっと足りないというときは控除していいのかと。これを読む限りは維持するために必要な費用ということで,しかも御存じの方も多いと思います,保険料の計算の基礎というのは単に概念だけではなくて文章の名前でもあるわけですね。認可申請書のときに約款,事業方法書と一緒に,算出方法書の下にもう一個,保険料算出の基礎というのを付けて,そこでこの保険料はどういう見込みで,どういう安全率のものでやります,これを維持するように経営しますと,こうなっているわけで,それから外れてくると契約者から取っていいというふうにも読めるわけで,ちょっと,これは文字どおり読むとあんまりな規定だなと。ただ,違うのだということをどこかで言っていただかないと困るわけですけれども,少なくともこれを見る限りは,なかなか私はちょっと読んで,これはどういうことなのだろうかというふうに考えた次第です。   この①,②,③の案と先ほど私はD案,保険数理とか会計の概念に基づいてと言った,一見漠然としているようですけれども,実は,そういう考え方で①と②と③の間は論理的関係があるのですね,保険数理とか会計に基づいたどこか飛んでいけない論理関係があって,それぞれの数字がばらばらではないというところが一番のみそで,ですから,この①,②,③だと,文字どおりなんら内在的関係はない状態で野放しになってしまうというところは,一見,こちらの方がしっかりしているようで,そうではないのではないかということを申し上げたいと思います。   そこで,(問題点)についてなのですけれども,ですから,(問題点)1については解約返戻金については明確な規定を置く必要がありますし,例えばドイツでしたかね,今のように5年,7年ではなくて全年度書いて,できれば,ここでは急に下がりますよとか,ここでは全然ないですよということがあって初めて,もちろん,約款でやれば一般的な拘束力は発生しますけれども,これだけしか入ってこないのという点は今でも残っているわけで,そこには,そういうものを開示したら,初めて拘束力があるのだというぐらい書いても,私はいいと思うのですね。   それから,生保の未経過保険料も当然基本的にはそれを含むものだと考えなければいけないと思います。損保の積立金についても規律を置くべきですし,(問題点)3,損保だけ書くというのはどうも理解できなくて,やはり損保に限るのはおかしくて,生損保を問わず,これも何回も申し上げていますが,保険料不可分の原則というのは要するに統計に基づいてすべて料率が出発しますということをやめるわけにはいかなくて,要するに,やめたかのような状態をつくるわけですね。例えば日割りでいつでも解約できるとなると解約する人たちが多数いて,そこにも大数の法則をはめられるという前提で,あらかじめその額を皆さんから余分にもらって,そこに返すと,こういうことですから緩和すると。その際には,何か,そういうふうにしていくのはもちろんいいと思いますけれども,ただ,生保の,例えば解約したときに,1年分を全部取ってしまおう,月払いを全部取ってしまおう。前回,月まで取っている部分はだからいいのではないかというのがありますが,では,日割りでなぜできないのかとか,ここはもう一度よく考えて。なぜかというと,生保の方が保険料は多いですから,そこは生損保ともに同じ土俵で考える必要があると思うのですね。   最後に質問なのですけれども,ワーキンググループを使われた,それを取りまとめられたということなのですが,そのメンバーはどういう方で,どういう所属の方なのかと,それからレポートがあるとしたら,それは拝見できないのかと。その中に業界の委員でない方は何人いらして,特に私が知りたいのは業界に関係のない会計の専門の方はいらしたのかと,時価会計との関係。このあたりをもしというか,教えていただきたいと思うのですけれども。   以上です。 ● それでは,また何点か御指摘いただいた点に,ちょっとコメントできるところはコメントさせていただきたいと思いますが,25頁の本文①は一定の金額の上限を画するものだとした場合に,まず,その上限について含み益云々の問題があるのではないかという点につきましては,含み益まで含めて考えるべきかというのは議論があるところだろうと思いますが,これで言い尽くせていないであろうという問題意識は持っておりまして,その点は26頁の(補足)2の(1)のところに書きましたとおりでして,払った保険料そのものだけではないだろうというようには考えておりますが,また御意見をいただきたいところだと思っております。   それから,25頁の本文③につきまして,予定利率を維持するために必要な金額という,確かに文章として改めて読んでみたときに,そう読まれてしまうという問題点はないかという点はおっしゃるとおりだろうと思っていますが,ここでこちらが意図しておりましたのは,結局,生命保険契約が終了して,ある保険契約者が抜けるという場面で,その人が抜けることによって計算の基礎が崩れるようなことがあってはいけないので,その場合には,そうならないような手当ては許容しなければいけないだろうと,そういう発想でして,その人が抜けたから予定利率が守られる,守られないという問題ではないと思いますので,その点はちょっと文章では表現できていないかもしれませんが,25頁の本文③で意図しましたのは,その人が抜けることによって手当てしなければいけないものは,その手当ては当然すべきだろうと,こういう発想だということでございます。   それから,未経過保険料の問題につきましては,先ほど○○先生からも御指摘があった点でして,問題にはなろうと思いますが,ただ,典型的には損保だということで26頁の(問題点)3では損保を掲げているということでございます。それから,逆に損保の積立型のものについてはという御指摘は,またおっしゃるとおりでございまして,資料が長くて分かりにくくなっておりますが,31頁の(補足)6の最後の2行で,損害保険契約におけるいわゆる積立保険と呼ばれているものについても,同じように考えなければいけないということであれば,同じように考えるべきだろうとは思っております。   それから,最後に御質問をいただいたワーキングの点ですけれども,そもそもワーキングにゆだねて,そこで何か結論を出すということでやっていたという認識ではございませんで,第一読会の議論の際に,公正な保険数理という言葉もあって,なかなか技術的な問題もあり,もう少し案自体をどういう形でお出しするのがいいのか,あるいはその前提となる点をどのように理解するのがいいのかという点を少し勉強会のような形でやった上で,改めて部会で提案させていただこうという趣旨でグループをつくったというように認識しておりますので,また,この場ではなくてお尋ねがあれば,こういうメンバーで,こういう形でやりましたということはお伝えいたしますけれども,あくまでこちらとしては第二読会に向けての案を作成する作業の一環としてやっていたというように考えておりますので,そこで何かを決めて,これでもういいということではなくて,改めてここでお諮りしようというように認識しておりますので,そういう点で改めてこの部会の場でこの本文あるいは(問題点)なり(補足)なりについて御意見をいただき,あるいは御審議をいただければというように思っております。 ● 一点だけ。業界と関係ない会計の方,特に時価会計との関係で重要な点なのですが,そういう方は入っていたのでしょうか。 ● アクチュアリーの方にも入っていただいて,アクチュアリー的な観点から御説明をいただきました。 ● アクチュアリーの方は分かりますが,会計学者というか業界と関係のない会計の,これは非常に対立しているところですよね,時価会計については,業界のお立場と国際的な会計基準では。そういう方は入っていなかったと。 ● それは入っておりません。 ● ありがとうございます。 ● 最初の2回目の保険数理に従ってというのと,思想的にはこの案もそんなに違わないと。まず,前回のは公正な保険数理によって出てくる額と丸投げして,これは余りに不確定ではないかということで,ややこれをかみ砕いていくとどういうことになるのかということは考えたつもりです。 ● そうしますと,柱の方のあたりに保険数理も考慮してとか,何か条文となったときには,そういうことも入ることもあり得ると,そういう理解でよろしいのですか。 ● それは今のところ何とも申し上げられません。   ○○委員。 ● 少し補足説明になるのですけれども,保険料不可分のところで生保の話が出ているので現状を御説明いたしますと,年払,半年の場合,確かに不可分のものとして保険料を計算しているのですけれども,その代わり,その分,割引がきいているというのがまず現状です。結果として不可分で保険料としてはお返ししないのですけれども,一方で解約返戻金を計算するときに,その分が払い込まれたという前提で解約返戻金の中に反映されています。例えば,年払保険料を払い込んだのだけれども,1か月後に解約をしましたと。そのときに解約返戻金というのは12か月分の月払が払い込まれたのと同じ価格で計算していますから,そういう意味では未経過保険料という考え方ではないですけれども,一方で,そのことはきちっと解約返戻金の中にプラスの額として乗っているというのが今の解約返戻金の計算です。これが実務ですので,まず御理解をいただければと思います。   それから,先ほど○○委員から①のところで含み益の問題があったのですけれども,含み益の問題というのは一方で配当について議論するポイントとしてはあると思うのですけれども,ここの議論というのは多分配当の問題はちょっと置いた議論だと思いますので,そこまで入れて議論すると話が非常にややこしくなりますので,ちょっと配当の話は置いて御議論いただけるとありがたいなというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 私も,この解約返戻金の問題というのが保険法のここの部分だけでまとまるのか疑問に思っているというか,一般の民商法から見たときに,やはり分かりづらいところがあって,それはどうしてかというと,会社法でも計算のところになると突然やはり法律だけ勉強していると分かりづらくなってしまって,会計の知識とかが必要になってきて,そうすると,そこには公認会計士という資格のある人の専門分野というふうになってくるので,それから,あとは不動産取引でも民法上は別に価格について何も言わなくても,消費者保護の見地からは宅地建物取引業法で規制されていて,契約締結時には取引主任者が重要事項説明を面前でしなければならないとか,そういう規制がかかっているところで,やはり特殊な計算を要するところというのは,基本法だけで特殊性というのを規定するのは難しいし,それから当事者が理解できないのではないかと思うので,ですから,できれば思想のところを①,②,③というところでまとめて,それが妥当かという議論を保険法上するというのは有益だと思うのです。   というのは,会社法上も計算についての専門的なことを法律的に分析しているとは思うのですけれども,でも,とりあえずは条文としては第2回会議に出ていた公正な保険数理に従いとかというふうに置いておいて,では,公正な保険数理とは何だというところで,アクチュアリーの方とか会計士の方とかが議論されて,何々法だとこうなるとか低額な解約返戻金の契約ではこうなるとか,そういう御議論をされて,保険法の施行規則というのができるのか,それか又は保険業法の方の規制となるのか分からないのですけれども,ちょっと正確なところは解約返戻金にとどまらず,保険の仕組み,保険者側がどれだけ正確な資料と計算をもって行っているかということと,それを相手方にどういうふうに開示するかということとの絡みもあるので,ここの解約返戻金のところの規定は,とりあえず公正な保険数理に従いというふうにとどめることも考えられるのではないかなと思っております。 ● ○○委員。 ● 質問をさせてください。資料の意味を教えていただきたいということなのですが,25頁の今,議論になっている①,②,③のところですが,既に○○委員から少し言及があったことの前提が分かっていないということなのですけれども,①というのがなぜあるのかというのを教えていただけるとありがたいです。私の理解では例えば「〔一定の金額〕=」というところは,100のうち30から5を引いた金額というようなものかなと思うのですね。そうすると,30から5を引いた25だけで答えは出てくるので,①の100というのをなぜ置くのかというところが分かりません。○○委員が上限を画すとおっしゃっていたので,そうすると,例えば20のうち30から5を引いたとか,何かそういう場合があるのかどうかというのがちょっとよく分からないのですが,あとの方はちょっと私の誤った理解に基づいた発言だったかもしれませんので必要がなければ取り消しますが,「①の金額のうち」というのが置かれている理由をお教えいただけませんでしょうか。 ● そこはまさにワーキングをやっていても,よく分からなかったところではあるのですが,27頁の(補足)2の(2)の3行目以下で書いてありますとおり,要するに裏からいえば,一定の上限を確立する総体があって,そこから過去の保険料として取っていいものをまず取ってくださいと。それから,それだけではなくて先ほどの③に当たる前提としたものを維持するために必要なものまでも,それも取ってくださいと。ただ,残りは返してくださいという発想もできるわけでして,そうしますと,当然,①はまだ必要になるということがある。   ただ,そういう攻め方をしなかったのは,やはり将来のものとしてあらかじめ取っていたものがあるからこそ,何か途中で終わった場合には返しなさいという方が,返すものが出てくるという発想は説明がしやすいという面もありまして,そうだとすると,25頁の本文の①,②で表現しましたとおり,①の中には②がありますよと,そこからただ③は引いてもいいですと,こういう説明もできる中で,ですから,この説明の仕方を取った場合に突き詰めると,今,○○委員がおっしゃったように,②と③だけでよくて①は要らないということになるのですが,ただ,そもそもの出発点に場合によっては①から過去分を取り,③を取るという発想もできる中で,その説明を欠いたときに①を完全に落としてしまうと,もともとのいろいろ考えたというか,この問題の発想が全部十分に伝わらないのではないかということを思いまして,やはり,ここは①,②,③全部掲げた方がいいだろうと,このような判断です。 ● 今,①100で,②30,③5という例でよかったのですかね。それで考えると,②の30というのが一義的に何か出てくる数字があるのであれば,②と③があればいいのですけれども,30というのが今の多様な商品の中ではいろんな決め方があると,そういうことをいろんな保険に対応するためには,やはり①のところを出発点にして,保険会社はどれだけ総額を受け取りましたか,過去の支払のためにどれだけ使って,逆に言えば②の将来どれだけ留保していかなくてはいけないのでしょうかという,従来,被保険者のために積み立てられた金額で,内容的にはそういうことだろうと思います。それが相当な金額というような形で,いろんな保険数理を踏まえて出てくると。それから,また解除の方がマイナス分が,それでマイナス,③を引くと,そういうプロセスを考えると,やはり根っこのところから決めておかないと,いきなり②の額を何かどんと出すというのは難しいかなという,そういう発想ではないかと思うのですね。 ● 分かりました。気持ちが分かりました。 ● ○○委員。 ● 一言だけ。やはり,そういう疑問を持たれる方は多いと思いますので,何か難しいことをシンプルに,シンプルなことを興味深くまとめるのが専門家なので,そういう点はアクチュアリーの方に消費者の方にも分かるような形で,何か典型的な例を幾つかまとめたものをやはり専門家らしく,なるほど,こういうことかというのを腕を見せていただいて,ちょっと配っていただくというのがやはり必要なのではないでしょうか。そういうふうに思います。お願いしたいと思います。 ● ○○委員。 ● ここに関しましてはもう全くお手上げでございまして,正直に申し上げて,先ほどの100と30と5というのも何でだろうというのも実は思っていまして,それから,○○委員がおっしゃいましたように,立証,こんなのを私たちがするのと。そもそもそんなことをだれも考えていないのに,どうしてこういうふうになるのだろうと。そんなのみんなできっこないと皆さん思っていらっしゃるのに,どういうことをして,こういう文章になってしまうのだろうというのが大変分からないところでございまして,これはいけないとみんな思っているのに,なぜこういう文章になるのだろうと実は思っておりました。   これを読ませていただいて,もちろん,これが条文になるとき,どういうふうになるのだか分からないのですけれども,書くのなら,やはり分かることを書かないといけないので,もっと中身を書いていただかないと困るというふうに実は思っていまして,例えば「支払った保険料の総額」,これは普通の消費者はみんな分かります,自分が出した分ですから,それはみんな分かります。その次に,2番目の「相当な金額」というのが分からない。例えば一番問題になるのは,保険会社が破綻したときに責準の90%と言われたときにみんな困ってしまって,私の保険の責準は幾らですかとよく聞かれたと。それで,分かりませんよという話をしたというのと同じぐらい,ここで言っている「相当の金額」は分からないですね。   ある意味,ここがこういうふうに書けるのであれば,もう少し突っ込んで何か契約で決まった一定の金額みたいな,そういうイメージがもしもつくれるのであれば,そういうものを書いていただかないと,先ほどの100は分かったけれども,30もよく分からない,5ならもっとよく分からないということになってしまうと,書いていただいても何の意味があるのか。書いていただいた方がいいとは思うのですけれども,そこの部分で大変読んで分かる納得感の得られるようなものをぜひ何とか努力して,先ほどのをお書きいただかないと,消費者側としては書いてあるけれども,何のことかしらということになってしまうのではないかしらと。   要は,例えば③の問題にしても何にしても開示の問題に行ってしまうのかなと。よく消費者サイドで控除される金額が適正かどうか分からないというお話がよく出てくるのですけれども,それはなかなか開示をされないという部分があるから,その部分についてもっと,契約法でそんなことができるかどうかは知りませんけれども,きちんと書いてほしいし,すごく平たく言うと透明にして公正にしていただいて,できるだけ引く金額を少なくしていただいてというのが普通の消費者が考えていることでございますので,その辺をやっていただければなというふうに思っています。   それから,損保さんの例で未経過保険料が出ているのですけれども,これの規律もいろいろおありになるのでしょうけれども,やはり,未経過保険料については当然返していただくという,第一読会の方のスタンスをそのまま申し上げたいなというふうに思っています。これに関してよく分からないので,一応,これぐらいの意見です。 ● ○○幹事。 ● すみません,今の○○委員の意見とも共通するところがあるのですけれども,それと先ほどの意見でちょっと訂正させていただきたいのですが,専門家が別に存在した方がいい分野ではないかという意味で不動産取引について言いましたが,不動産の取引でいうとむしろ先ほど宅建業法上の取引主任者と言ってしまったのですけれども,ではなくて,不動産鑑定評価法に基づく不動産鑑定士だと思うのです。そういう専門の人が出した評価額であれば,一般の人は第一次的にはその評価額に依拠して,議論ができるというところがあると思いますので,そういう意味で言うと保険に関しては保険業法上,保険計理人という人が存在するのであれば,ちょっと,これがどういうふうにつながっていくか,実務的にワークするのか分からないのですが,発想としては保険計理人のような保険の数理についての専門家が保険会社の中だけに存在するのではなくて,独立した専門家という形で存在すれば,そうすると何か紛争が起こったときに,消費者側からも解約返戻金はこうである,私がとった評価額というか,計理人によるとこういう意見が出てきたとかということもできると思いますので,それが基本法でどこでどういうふうに関係してくるか分からないのですが,保険の経理,公正な保険の数理というのがどういうものかというのが先ほど申しましたように,解約返戻金のところだけではなくて,出発点の大数の法則というのがどうやって計算されて保険料が算定されていて,積立金がどうなっていて,だから解約のときにはこれだけがお返しできるという一つのまとまった発想を,だれか専門家ができるというような仕組みがあったらいいのではないかなと思います。 ● ○○幹事。 ● このワーキングに参加しておりましたので一言。大変難しい議論をかなりの回数を重ねて,私も随分数学が得意になったなと思ったぐらいかなり議論を積み重ねたのですが,結果的に,ここで書いてあることは内包が問題で余り実はないのですね。ここの中身に書いてあること自体は,余り先ほど○○委員がおっしゃられたように,いろんな種類によって中の計算が実はいろいろあって,一義的に実は決まらないものだと。それを全体的に表現すると,こういう表現振りで包括できるということが確認されたというのが私たちのワーキンググループでの作業の結果なのです。   私が何を申し上げたいかというと,今回,ここで保険契約法としてのルールの中に,今までなかったものとして解約返戻金を返さなければいけないという,支払わなければいけないというルールを置くことが,万が一,誤った計算をして返していない人がいたときに返還を求める根拠になるので,そういう条文を設けるべきだろうという,こういうコンセンサスが一応あって,だとすると何を返すのかということについて議論をしたわけなのですけれども,それが一義的になかなか決まりませんので,そこの中にいろんなものが入り得る,正確に言えば,おおよそ今実際に売られている保険契約で行われている実務自体は,それほどおかしいものが現には存在していなくて,それはそれぞれにきちんとした計算が行われているということが前提になっていることは確認ができたわけなのですが,それらを表現するとこういう形になると。そして,ここから逸脱するものというのが出てくれば,それは返還をさせるべきだという政策的判断をして,その根拠としてこの条文を設けようという,そういう形にはなっているわけです。   そういう点でいきますと,バリエーションのあるものを一つの言葉で表現しようとしていますので,かなり抽象度が高くなっていますし,そういう意味では今行われているさまざまな合理性のあるものを超えたものがもし万が一存在していれば,この条文をもって返還するということを根拠付ける条文は設けた方がいいのではないかなというふうには思っています。そういう点では,この条文を設けること自体には私はなるべく積極的に賛成していただいて,概念は非常に内包が難しい,設定することは難しいのですけれども,それでもこの条文の存在意義は支持していただければありがたいなと,そういうふうに思っています。 ● ○○委員。 ● そういう意味で我々の業界で言えば,何らかの解約返戻金をきちっと適正に計算したものでお支払しているという意味で,何らかの規定を置くということについては全く異論はないのですけれども,今の書き振りで本当に今の商品がカバーできているのかどうか,先ほど○○委員の方からもありましたが,無解約返戻金とかの中では必ずしも差し引きでないケースもありますので,これでいくとやはり①から②引く③とかいう引き算になっていますので,本当にすべての商品がカバーできているのかどうか,あるいは今ある商品でもそうですけれども,これからいろんな商品が出てきますので,そういうことも含めて,将来の商品も含めて何かカバーできて,消費者からとっても合理的というような規定にしていただくのが一番いいのではないかなと。なかなか難しい表現になろうかと思うのですけれども,ぜひ,そんなことをお願いできればというふうに思っています。 ● ①,②,③を使うというのでは処理できないような商品というのは考えられそうですか。 ● というか,今の無解約返戻金型とか低解約返戻金型というのは,恐らく解約返戻金の額を先に決めて,その後で,保険料に戻っていっているわけですね。例えば先ほどの6頁でいきますと,通常の解約返戻金よりも下にしますと。単に下にするだけだったら,それを保険会社が取る形になりますから,その分というのは保険料を安くしているはずなのですね。安くした保険料でこの分を安くする,代わりに保険料を安くしますと。それで決めた保険料があって,しかも,それも最初に言いましたように,1頁にありますように,また平準保険料,年齢ごとに凸凹があるのではなくて平準保険料になりますから,それでいわゆる責任準備金が発生しますと。だけれども,そういう意味でいくと,責任準備金と解約返戻金というのがつながってはいるのですけれども,責任準備金から解約返戻金が導かれるのではなくて,むしろ解約返戻金から保険料に戻って保険料から責任準備金にいって,責任準備金と解約返戻金の差額が何か出てくるという,そういう仕組みなのですね。   普通の伝統的商品であれば,保険料があって責任準備金があって解約返戻金があるという,この並び方なのですけれども,実は,私どももこの商品を持っていないので,詳しいメカニズムは分かっていないのですけれども,低解約返戻金あるいは無解約返戻金型というのは解約返戻金を決めて,それから保険料に戻って,それで減らす部分を保険料の減額に持っていって,結果としてその保険料で積み立てますから,また責任準備金があって,責任準備金は出るのですけれども,解約返戻金は別途定めていますと。だから,差額は結果論なのですね。そういう意味でいくと,かなり伝統的商品とこの低とか無解約返戻金型の商品の計算のメカニズムは,パーツは一緒なのですけれども,流れ方がちょっと違うので,この差し引き額ができるかと言われると,ちょっと違うのではないかなという気もするのですがね,書き込み方によっては読めるのかもしれないのですけれども。 ● そこらあたり,ぜひちょっと。 ● ただ,私もアクチュアリーではないので。 ● 関係の方と少しでも…… ● 私も素人で今分かる範囲で御説明したつもりなのですけれども。 ● 確かに新しい商品というのは,コンセプトがどうも全く伝統的なものと違うものもあるという,それは確認しているところですね。   ○○幹事。 ● この資料に書かれていないことを申し上げるので,少し議論を混乱させることになるのかもしれないのですが,一つ解約返戻金の問題は数理的にどういう基礎が,さまざまな数理的な基礎で計算されるということ自体,それをどう条文に書き表すかという問題のほかに,そもそも契約で定めていないメカニズムに従って出てきた金額を返しますということになっていること自体がどうなのかという問題も多少あり得ると思っています。既に危険負担という給付の対価として当然取得できるものについて返さないというものはいいかと思うのですが,それ以外に解約控除という名のもとで一定率を掛けて引かれるようなものもあって,それも契約に必ずしも定めてあるわけではないものもあるというふうに承知しております。   そういうものすべてをひっくるめて一任状態で現状はやっていて,それは保険業法の下で監督ではもちろん法の規制の下には置かれているわけでありますが,契約法の問題として考えたときに,契約で定めていない解約控除を入れた,差し引いたものを解約返戻金として返してよいと,そういうことをここに書かないでそのまま認めていると,そういう条文で本当にいいのかなということは少し思っておりまして,契約内容として書くには技術的に過ぎるとしましても,実際に返した返戻金を支給にするに当たっては,その内訳をある程度説明するといったようなことも,もう少し突っ込んだ条文を御検討いただければというふうに思っております。   それからもう一点なのですが,特に契約締結費用を全額当然取得できるという前提でつくられているわけですが,これは契約締結時に何もトラブルがなければ,もちろん当然取得できるものだと思うのですが,契約締結時に相当なトラブルがありまして,説明義務違反に当たるようなものとか,そういうものがあって,でも,契約を取り消せる,あるいは無効にするというところまでいかない状態で,紛争解決のために解約をするという局面で,契約締結上のトラブルがあったにもかかわらず,契約締結費用はすべて保険会社が取得できるというのは,必ずしも自明の結論ではないように思われますので,こういう問題をさらに乗せていくと非常に議論が複雑になることはよく分かっているのですが,そういう問題は周辺的な問題だということなのか,少しお教えいただければありがたいと思っております。 ● 既に委員,幹事から出されている期待が余りに多くて,課題が膨大なものになっているかなという気はするので何ですが,今の話だと解約控除について何も合意がないということはないような気がしているのですけれども。説明として十分されているかというと,それは問題あるかと思いますが,解約控除は合意もなく保険会社が事業費その他を一方的に控除しているわけではないという,そこは。ただ,解約控除の額が相当なものかどうか,それは募集手数料を当然全額償却させていいのかという,そういう問題があるのはもちろんおっしゃるとおりですね。 ● 簡単に。一番最初に言った点は,私が申し上げた意見の中で全くその観点から申し上げたのですが,とにかく契約の時から終了するまで,どの年,どの月で解約したら幾ら積立金があって,解約控除は幾らというのを全部書けばいいわけですよ,どのぐらい,その特徴ももしコメントを書ければ。それを契約法上,契約法の問題として拘束力が発生する重要な要件ですから,それを書けというのを契約法で書いてくださいというのが先ほどの私の意見の最初で,それは全く同感なのです。今はぽんぽんと書いてあって,その数式の意味するところがなかなか分からない。だから,そこまでやはり,ドイツの方向はそうですよね。だから,そこは今回もこういう規定に変えて,やはりそれをやるべきだという点はまさに同感で,二番目の契約費用の問題は,これもそういう形にすれば一応ある程度分かると。しかし,どうも実質的に取るのはおかしいのではないかと,こういうお話ですよね。   これは実はアクチュアリーの方とも話したのですが,不可分原則を緩和するときに,あるところで多分契約費用を延べてしまって日割りにしても返せるようにすると。同じように最初に新契約費でたくさんかかるわけですが,契約件数が,解約する件数がある程度であれば,それで平準してそれを最初からみんなに,だから,その人以外の人が負担するのではなくて,その人も含めて持つような形にすれば,ずっと平たんな形にして,もっと少額にできるわけですよね。ただ,それは契約をしてすぐやめる人が余りに大きいから,そういうことができなったかということだったかもしれませんけれども,もうちょっとまともになれば,そういう,つまり,不可分原則を緩和したのと同じ方法で最初にたくさん取られるということも防げるはずなので,それをアクチュアリーの方はみんな知っているはずなのですよね。だから,そういう形でもうちょっと生かしていただけるといいなというふうに思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● いろいろな御指摘をごもっともと思いつつ,事務当局の方々の御説明も含めて本文の規定はおおむね方向性としてはこういうものでいいのではないかと考えてはいるのですけれども,26頁の(問題点)3なのですけれども,これは損害保険契約の未経過保険料の返還規定を本文の規定と別に設ける趣旨も含むのでしょうか。といいますのは,基本的には損害保険契約については(問題点)1の御説明にもありますように,民法や消費者契約法の規律にゆだねることでよく,特別な明文の規定を設ける必要はないと基本的には考えております。   ただ,気になりますのは30頁のこれに関連しての(補足)6の3段落目のところに書いてあります,先ほども不可分のことが出ていますけれども,「法律上保険料不可分の原則を採用しないことが基本的な立場であるとすれば,契約の解除がされた日以降の保険料は返還すべきことになり,その場合は日割りによって計算することになるとも考えられ」というこの辺の箇所です。以前にも御説明いたしましたし,今日もちょっとお話がありましたが,実際の損害保険契約の中にはさまざまなものがあって,不可分でないからといって一律に返し方が日割りや月割りだけになってしまうと問題が生じます。   月割りで先ほどこれもありましたが,運営できる種目も多くなってはいますけれども,1年間の保険期間中にいわゆるリスクが偏っている場合には,月割りというふうにいかない場合がございます。例えばゴルファー保険なのですけれども,これはゴルフをやっているときだけを基本的に補償する保険です。1年間で例えば保険料が1万2000円だったとしますと,今月は何回もゴルフに行くからという人が1か月だけ入るということは可能です。そのときの1か月の契約の場合の保険料は単純に1万2000円の12分の1ではなくて,現在は3000円をいただいております。したがって,1年契約で1か月で解約という場合には3000円を差し引いて,9000円をお支払しているというのが実務でございます。ということで,それをすべて月割りで返すということになりますと,1年間1万2000円で加入して1か月たったところでやめれば,12分の11が返ってくるということにすべて月割りということになりますので,1000円の負担でリスクの濃いところが補償されてしまうということになって保険制度全体に影響を与えます。   本文には規定を設けないとしても,今度は27頁の5行目なのですけれども,(補足)2の(2)のところにこれも議論になっていました本文②の規定の説明として,「裏からいえば,保険契約の終了までの期間の保険料の額として相当な金額については保険者が取得することができる」とありますけれども,未経過期間に対応する保険料の返還に当たっても,このような考え方が同様に当てはまると考えております。そういうことが当てはまるのであれば,もし規定を設ける場合には,損害保険契約についてもこの本文の規定を適用させることは可能だと考えております。   以上です。 ● ありがとうございます。   ○○幹事。 ● ちょっと感想めいたことを申し上げさせていただきます。先ほど○○幹事からやはり契約法で25頁の本文のようなルールを置くことは意味があるのではないかというふうに御意見がございました。私もそのように思います。とりわけ,③の引き算できるのがどこまでかというのを定めると。要するに契約で定めさえすれば,ペナルティーとして幾らでも引けるのだよというのではなくて,群団を維持するために必要な分だけ,それだけは引けるのだということを明記するというのはやはり意味があると思うのですね。   ○○委員からこれを定めたとしても,②の金額,③の金額が分からないから,余り意味がないのではないかという御意見もありました。確かに裁判規範として現実にこれが役に立つかというと,この規定をもとに消費者が返戻金が少ないからもっとよこせという形で訴訟を起こすということは確かに考えにくいですけれども,しかしながら,③のルールを置いて,かつ,これが(注3)にありますように片面的強行規定として定められるということになれば,現在の我が国の監督実務ではいわゆる家計保険は基本的に事前認可制をとっていますから,商品認可の際にやはり②,③のルールに従って契約内容が定められているかというのが現在はもちろんきちんとチェックはされていると思いますが,契約法でこういうルールを置くことによって,これまで以上に厳正にチェックしていただけるということは期待できるのではないかと思いますので,その意味で,やはり契約法で強行法規として引き算できる額を限定するということに意味があるというふうに私は考えます。 ● ありがとうございます。   ○○幹事。 ● 私も基本的な方向は皆さんと同じなのですが,ワーキングでやっていただいた結論の中で,これが全部包括するような形で御提示いただいたのだと思うのですが,場合によったら従来型のオーソドックスな生保とか損保とかで解約返戻金について割り出せるものと,それから低解約返戻金ですとか,あるいは無の場合とかいうイレギュラーなものをちょっと切り分けて条文化するというような方向性はないのでしょうか。同じようにやってしまうと,どうも抽象的になってしまうので,別な定めを置くというような形で,そちらはちょっと解放するような格好で置けば,まだ分かりやすくなる部分があるのではないかなというふうに,思い付きで恐縮ですが,そんなふうに考えました。 ● 一応のそういう類型はあるのだろうけれども,それにしても次から次へ生まれてくるものを類型化していっても,切りがないという状況ではないのかなというので,一つにまとめてあるわけですね。   どうぞ。 ● 今までの御議論はほとんどが解約返戻金の額の定め方でいえば,契約者が自分の任意で契約を解約したときの契約返戻金について,一定の基準を設ける必要があるのではないかと,そういう御意見は私もよく理解できたのですけれども,一方で現行法の第683条のように,言わば法律上当然に契約終了の効果が生じたときを,それも基本的な契約自由の範囲で,それに一定の制約を加える,ある大きい方向だけを示せば足りるという話とは違ってくる部分があると思うのですね。一番の典型は破産の場合ですけれども,そこについてはきちんと決まった額が出てこないとまずいわけで,そこはまた少なくとも別に考える必要があるし,それについてはきちんとした基準が必要ではないかということを申し上げたいと思います。 ● そうですね,ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   多様な御意見をいただいて,余り抽象的なら使いようがないので,あってもしようがないのではなかろうかというふうな御意見が一方でございますが,これから消費者団体訴訟もできましたので,消費者が何か個人で裁判で争うわけではない。それなりにアクチュアリーでも雇って,戦いを仕掛けるような消費者団体がこれからは出てくるかもしれないという,そういうときの武器として使うということはあり得るかなと。ただ,もうちょっと後の御意見というのはそういう不明確さがまだ非常に残っておるというところと,やはり,ここの中に盛り込まれている要素がまだいろいろ過不足があるのではなかろうか。そういうふうな御意見もあったところではないかと思います。   いずれにせよ,現段階では25頁に出ている①から③というのも,何か条文のイメージというよりは物の考え方というのをとりあえずは表して,提示しているわけでございますので,なお,こういう今日の御意見を踏まえて,何か改良することができるかどうかというふうなことと,そういう作業を踏まえてなお契約法にこういう規定を置くことの是非というのをまた議論する必要があるだろうし,さらには当然,こういう問題というのは保険契約法だけではなくて保険業法など関連の分野とも密接に関連しているわけで,そこらあたり全体として日本のこういう解約返戻金あるいはその他契約が終了したときの払戻額の規整について,どういうふうに考えるべきかというのを全体として考えるということが課題なのだろうと思います。今後,なお,この審議会でも議論を深めていただければと思うのですけれども,今日のところはほかに御意見がないようでしたら,このぐらいでこの点は終わりたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,先へ進ませていただきまして,次は部会資料13の方へ入りまして1頁,第5の「1(1) 傷害保険契約及び疾病保険契約の意義」の部分について御審議いただきたいと思います。まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   本文では傷害・疾病保険契約の意義について記載をしておりますが,この内容は生命保険契約と同じく,いわゆる現物給付を給付の内容としている点を除き,第一読会における提案と同じでございます。今回は特に(問題点)に記載しました傷害・疾病の死亡給付に関する契約の契約法上の位置付けについて御意見をいただきたいと考えております。   この点に関する問題意識は資料2頁の(補足)2に記載したとおりでございまして,ここでは特に傷害・疾病の死亡給付に関する契約における保険事故の内容について御意見をいただきたいと思っております。理論的には3頁に記載しましたように,傷害・疾病が保険期間中に生ずれば足り,被保険者が死亡するのが保険期間中かどうかは問わないとする契約と,傷害・疾病だけでなく,これによる被保険者の死亡までもが保険期間中に発生する必要があるとする契約とが考えられますが,そもそも保険事故とは何か,あるいは保険法において保険事故でない支払事由なるものを観念することの当否について,御意見をいただければと思います。   なお,この(問題点)については保険事故が何かということによって契約法上の規律が異なったり,あるいは契約法上の位置付けが異なったりするのは分かりにくく,これらを分けて考えるという整理は基本法の規律としては適切ではないと思われますことから,このような観点からの検討も必要ですし,さらには事務当局における法制的な観点からの検討もしていく必要があると思われます。また,この問題は資料の8頁の3(1)の通知の対象や,3(4)の保険者の免責の項目の故意や重過失の対象にも関連する問題でございます。後者の点については資料10頁の(補足)3で若干説明を書いておりまして,免責事由に該当するためには傷害・疾病についての故意・重過失だけではなく,死亡についての故意・重過失まで必要であるとの考え方を掲げておりますが,このような考え方の当否について特段の御意見がございましたら,併せていただければと思います。   次に,資料を戻っていただきまして2頁の(注4),ここでは被保険者が傷害を受けたこと又は疾病にかかったことを原因として死亡した場合に,保険金を支払う契約が損害保険契約に当たることはあるかについて問題提起をしております。これは契約法上の整理の問題ですので,最終的には解釈論の問題となるようにも考えられますが,どのように考えるべきか,御議論をいただければと思います。   以上です。 ● それでは,この部分について,では○○委員,どうぞ。 ● 三点,ちょっと申し述べたいと存じます。   まず,(問題点)についてですけれども,死亡を保険事故としている生命保険とは異なって,傷害保険の保険事故はけが,傷害であり,死亡給付はあくまで結果にすぎず,その結果が死亡なのか入院なのかで保険金額が分かれる仕組みであります。資料の3頁の(補足)2のところに,①,②として違いを整理していただいているこのとおりでございます。傷害保険は死亡と後遺障害を保険金額共通で販売しており,生命保険と異なり,死亡だけでは販売していません。また,傷害保険は歴史的にも1911年に損害保険として発売されました。傷害保険の保険金は必ず保険金受取人を指定する生命保険とは異なり,被保険者に帰属することが基本ですので,死亡保険金についても被保険者に帰属して,結果として遺族が被る損害のてん補という思想が源流にございます。外形的に同じ定額の死亡給付だから生命保険契約と同じということではなくて,こうした性格の違いも踏まえて傷害保険の死亡給付につきましては傷害・疾病保険という位置付けで,そういうふうに位置付けていただきたいと考えております。   また,内容の問題ではございませんけれども,最も典型的な損害保険であり,かつ,年間5000万件を超える自動車保険なのですけれども,損害保険契約,それから傷害・疾病保険契約,生命保険契約というこの3つの複合となるのは非常に分かりにくいと考えます。規定自体は生命保険契約の規定が準用されることが多いとは思いますけれども,死亡給付を含めて傷害・疾病保険契約と位置付けていただいて,せめて自動車保険は損害保険契約と傷害・疾病保険契約の2つの複合にとどめていただければと考えます。   次に,二点目なのですけれども,(注2)でございますけれども,「その他の財産上の給付」という部分について損害てん補とは明確に区別される趣旨であることは分かるのですけれども,誤解されないように,そういうことがないように,一定額という文言がその他の云々以下にかかることが,明確になるような規定振りにしていただければありがたいと考えます。   それから,三番目に(注4)に関してですけれども,これも資料3頁の(補足)3の2つ目のパラグラフにあります自動車保険の人身傷害条項,無保険車傷害条項につきましては,定額保険ではないと認識しております。これも3頁の最後に整理されてございますが,解釈論ということで構わないのですけれども,定額保険ではないという位置付けが維持できるようにしていただきたいと考えます。   以上です。 ● ○○委員。 ● 従来は保険事故が何かということで生命死亡保険と傷害保険と疾病保険を分けていたと。死亡が結果として含まれるものを傷害保険,疾病保険と,そういう分類でやってきたわけですけれども,生命保険の死亡保険の上位概念,それから傷害・疾病の上位概念,傷害死亡,疾病死亡の上位概念を定額保険で,私の考え方では定額保険の性質を持っている以上,私どもはそういう結果になるということだと思うのですよね。だから,これはどこまで意味があるのか分かりませんが,分類学としてはそれを生命保険という必要まではないのではないかと。男と女の上位概念は人ですけれども,男は死ぬ,女も死ぬ,だから女は男かという,そういう論理にもなりかねないと思っていまして,ただ,問題はそれよりもやはり傷害保険のときにどういう規定が適用されるかという,何か準用されるとかいうのではなくてきちんと分かりやすく,傷害で死亡した場合にも生命保険と同じようなルールが適用されますよということを準用ではなくて,きちっと書くという,くどくても書くという,そういうことに配慮していただけたらと思います。   それから,簡単にいきますが,現物給付については,この傷害・疾病についても第1回議事録の13頁にあります,結果として受け取る給付が支払った保険料に見合っているかどうかが分かりにくくなるという観点で,やはり反対したいと思います。損害保険会社がおっしゃるこういうのは,損害保険に近いのではないかという,そういう議論にはくみしませんが,今のような理由で反対したいと思います。   それから,損害保険契約の中で(注4)ですが,死亡を保険事故とする逸失利益を損害とする保険というのはもちろんあって,逸失利益そのものも裁判でとられている損害そのものですから,こういうものは損害保険といえばいいわけで,何も死亡が保険事故だったら,それはすべて生命保険であるわけではなくて,あくまで被保険利益性を観念できるかできないかということで,被保険利益性を観念できれば,死亡だって保険事故になると。傷害保険の葬祭費用はもう戦前からあるわけで,そうお考えになれば,そういうふうに整理すればいいと思います。何かもう業際問題はなくなったのでは,余りこういうことを議論する必要はないのではないかなと思ったのですが,これを拝見すると,何か昭和20年ごろから生命保険会社の方は死亡に関係するのはみんな生命保険だという議論をされていて,60年ごろもされていて,業法改正のとき,私はよく知らないのですが,またここに出てきてすごく懐しい感じがいたしましたけれども。   あと1点,3頁目の真ん中のうちで②,死亡が保険事故であると書いてありますけれども,これはやはり約款を見ると,○○生命さんの傷害特約のを見ると,傷害の結果としての死亡というのがあって,その両方を含む期間が保険期間にないと払わないと。保険事故の定義は保険期間中にある要件が発生したら保険金を払うということですから,死亡が保険事故でなくて,それで従来の説明はあくまでも傷害が中心で傷害の結果,死亡,しかし,死亡の方も保険期間中でなければいけないと,こういう約款になっておりますので,ここはちょっと事実誤認があるのではないかなと思います。皆さんの配布資料と無配当傷害保険の第4条の規定を御覧いただくと,そこははっきり分かると思いますけれども。   以上です。 ● 今の○○委員の最後の点はあれですか,傷害の結果として死亡したこと全体が保険事故だという。 ● そのものが保険期間というふうに認識していないのではないでしょうか。死亡だけが。 ● 傷害から死亡まで全体が保険事故の構成要素だという,そういう御理解ですよね。 ● はい。 ● どうぞ,○○委員。 ● 生命保険の傷害特約はそういう考えをとっていませんで,あくまでも保険事故は死亡であると,そういう理解ですね。 ● でも,傷害が保険事故より前に発生したら,払わないのではないですか。 ● いやいや,傷害保険としてと書いてあるわけですからね。 ● ええ,傷害そのものが…… ● あくまでも保険事故は死亡であり,また入院であるわけですね。 ● いや,でも,こう書いてありますよ。責任開始日以降に発生した不慮の事故による傷害を直接の原因として,この事故の日から起算して180日以内に死亡したということですから,両方入るわけですね。 ● ですから,死亡を言っているわけです。 ● でも,約款を見る限りでは両方を要求しているわけですから。 ● いや,約款はそう…… ● 普通は傷害によって死亡したことというふうに学者の人は考えて,あれではないかと思うのですが。 ● それは,だから,もしそういうふうにとられるとしたら,ただ,時点をとらえれば死亡という一時点を指しているわけですね。死亡…… ● 最後の保険事故の完成があるというのは,最後は死亡であることは間違いないと思いますね。 ● そうです。 ● 傷害が保険事故の要素でないという…… ● いや,そうは言っていません。 ● そういうことではない。 ● 原因はあくまでも傷害を原因としてと書いてあるわけです。 ● だから,そんなに理解に違いはないように思うのですが。   ○○幹事。 ● 傷害・疾病保険について最後,どういうくくりにするかというのは,まさに2頁の(補足)1の3段落目に書いておられるように,契約の位置付けで個々の規律が定まって,それをどう束ねるかということに尽きるのだと思いますが,一点だけ,傷害・疾病保険は,今,第三分野として一定の世間で確立された考え方があって,業際問題でもあるのですが,実際は商品として密接不可分なものとして認識されていて,定額給付であったり,実損が入っていたり,それから傷害による死亡が入っていたり,そういうのも一体としてやっていますので,今度のくくり方いかんですけれども,混同されないような仮に違うくくり方をするのであれば,今の第三分野と違うものであれば違うと分かるような,名前の付け方だけなのかもしれませんけれども,その辺はちょっと御配慮いただいて,その免許のことの関係だけではなくて,世間において同じようなものだと思っていても,恐らく定額であるか否かでいろいろ規律が変わってくる,死亡を含むか否かで規律が変わってくるということが仮にあって,そのために何か今と違う分け方をしなければいかんということになったとしても,その場合は傷害・疾病という,世間でいえばそれは第三分野ということになるのでしょうけれども,それと違う何か分類があれば,その分,混同がなされないような分かりやすい何らかの御配慮があれば,大変ありがたいと思います。 ● ○○委員。 ● まず,傷害死亡,疾病死亡ですけれども,直接,生命保険の規律を適用するのか,同じ規律にするかというのは選択があると思いますけれども,基本的には規律としては同じ規律であるべきだろうというふうにまず思います。これが一点です。   それから,現物給付のところなのですけれども,これも第一読会のときにも申し上げたのですけれども,現実に第三分野でこういう現物給付の,例えば介護老人ホームへの入居といったような実際の商品も一部,外資系の生保で売られていますし,できれば,そういうのも含む形で規律をいただきたいなと。逆に言うと,ここに入らないとなると,無名契約になるということになるのだろうと思うのですけれども,無名契約とするよりはこちらで規律して,きちっとそういういろんな規律が働くという方が保険会社,それから消費者にとってもいいのではないかなというふうに思っていますので,現物給付を入れていただく方向で検討いただければありがたいというふうに思っております。 ● ○○幹事。 ● 今,○○幹事がおっしゃったことと関連するのではないかなと思っているのですけれども,いわゆる第三分野といわれているところが違うのであれば,違うことを明確にするということの裏返しとして,同じであれば同じ規律ということになるかと思うのです。では,傷害・疾病によって死亡した場合はどういうふうに同じかというと,死亡して保険金がおりる場合というのは,被保険者に保険金がおりないというところが特徴的なのではないかなと思うのです。   ですので,先ほど○○委員がおっしゃっていた傷害・疾病を原因として死亡したときには,死亡保険金というのが被保険者にいったん帰属してというふうになるのか,又は死亡保険なのだから,そこのところはやはり生命保険のときと同様に受取人ということの指定が重要であって,その受取人に原始的に帰属するというふうな考え方,共通の考え方で規律するかどうかということと,それから,傷害・疾病のときの入院費とかはどういう規律になるかというと,被保険者に生じた入院費とか治療費とかは損害なので損害保険という規律になって,そうすると,何が原則的な規律になるかというと実損てん補ということになりますので,そうすると商品として一定額を給付するという設計は可能ですけれども,それを複数締結しても,やはり実損以上の給付はできないというところで規律されるのかなとちょっと考えたのですが,要するに,第三分野というふうにくくっても,結局は損害保険の基本的な規律と生命保険の基本的な規律の掛け合わせにとどまるというところが原理なのだということを消費者に分かるようにすれば,混同は比較的回避,そういう混同の回避の仕方もあるかなとは思っております。 ● ○○幹事。 ● 現物給付に関して少し事務当局に御質問をしたいと思います。   本日は傷害・疾病保険契約の定義として現物給付が問題になっておりますけれども,生命保険契約でもというか,むしろ,そちらの方で問題になるのかなと思います。生命保険契約のときには意義の所に,特に★印が付いていませんでしたので,あのとき議論できませんでしたので,今日はちょっとそのことを御質問したいのですけれども,先ほど○○委員からもお話がありましたが,第一読会のときに○○委員から現物給付保険が可能になるように定義を広げてほしいという,そういうお話があって,それを受けてこういう定義になったのだと思うのですけれども,第一読会のときには私はちょっと記憶がはっきりしないのですけれども,原理的におよそ現物給付を定義に入れるのはおかしいというわけではないのだけれども,しかしながら,ほかの規定との関係で定義に入れてしまった場合に,不都合が生じないかどうかを考えて,きちっと検証してくださいというふうに申し上げたと思うのですね。   そこで,具体的にお聞きしたいのですけれども,仮に生命保険契約や傷害・疾病保険契約の定義の中で現物給付も含めるとした場合に,保険金受取人というのはどういうふうに定義することになるのかと。つまり,単なる金銭債権の請求権者ではなくて,現物給付を受領する者も保険金受取人に入ってくるのか。仮に,そういうものも含めて保険金受取人だとすると,例えば保険金受取人の変更に関するルール,指定変更に関するルールは現物給付の受領権者についても適用されることになるのか,それとも,適用除外の規定を保険金受取人の変更のところで置くことになるのか。そのあたりのことをちょっとお教えいただければと思うのですけれども。 ● その点は整理する必要があると考えておりますが,今のところは金銭給付であろうが現物給付であろうが,保険金受取人,あるいは名称をどうするかの問題はありますが,保険金受取人という概念は残って,言わば両方が仮に許容された契約法の下では,保険給付の相手方というような位置付けになるのではないかというふうに思っております。それに伴って,受取人変更の規律について現物給付の場合の特別の規律が必要かどうかというのは,先ほど申し上げた整理の一環として検討する必要があると思っております。本日の部会資料13でいきますと,例えばですが,6頁に「(4) 保険金受取人の指定」という項目がございますけれども,ここで例えば,②で保険契約者による指定がなかった場合に,だれがデフォルトとして受取人になるのかという問題も,金銭給付であれば契約者でいいけれども,仮に現物給付の場合はその現物給付ということに照らして,例えば被保険者でなければ何かしっくり来ないのではないかという考えも,場合によってはあるのではないかと思いまして,そのあたりも含めて今後整理していかなければいけないと思っておりますし,ある程度整理したところで,そこはまたこの部会にお諮りしなければならないと思っております。 ● どうもいろいろ考えられそうな問題点をせひ具体的に御指摘いただきたいと思います。 ● 現物給付で見た場合。 ● ええ,実際,当てはめてみた場合ですね。 ● あと,保険金の支払時期あたりですけれども,これはそのまま適用しても問題ないのかもしれないのですけれども,ただ,現物給付の支払時期も保険金の支払,金銭給付と同じように本当に考えてしまってよいのかというのもちょっと気にはなっております。 ● せっかくの機会だから申し上げますと,例えば現物給付について,そういう全体を通しての整理が必要だと思っていることと,同じく損保の話になってしまいますが,責任保険を典型契約として明確に位置付けた場合に,これまでの資料の中では損保の通則という形で物保険だけではなく,あたかも責任保険にもどの規律も同じように当てはまるかのような整理になっていますけれども,その点も責任保険を位置付けた場合に,本当に今,通則として位置付けているものが全部通則なのか,物保険だけに当てはまる規律なのか,あるいは責任保険については別途の規律が必要なのかという点も,やはり同じような観点から全体を通して整理する必要があると思っておりまして,そこも今の現物給付と併せて,もし問題となりそうな点があれば,御指摘いただきたいと思っております。 ● 傷害・疾病保険における死亡給付をどういうふうに説明するかという,このあたりも御意見はございませんか。   傷害保険については,普通,我々学者の頭では死亡保険金が出ても,これは傷害保険の一部だろうと。そこで生命保険を一部含んでいるというのは余り考えてはこなかっただろうと思うのですけれども,保険業法の,また先ほどの第三分野の仕切りとはまたちょっと違うような整理でもあるようだし,疾病保険の中へ死亡給付が含まれている,これは逆に今度,生命保険と言った方が常識的にはしっくりくるという,そういう常識面,それはまた結局,契約者にとって何か変な混乱が生じないのかという,そういうふうな問題もあれば,論理的にどう整理するのがいいのか,いろんな要素が絡まって非常に難しい問題だという気はしているのですけれども,具体的にはどう整理しようと違いがあるのは免責のところぐらいだという整理だったですか,事務当局の御整理は。 ● 今回の部会資料13では,免責のところがそもそも資料の中でも違っているという点はございますが,そもそもほかも違えるべきかどうかという点がありますけれども,今の整理では大きく異なるのは免責かなというふうに考えております。 ● 重過失免責が適用されるかどうか。自殺についても免責期間を法定すれば,そこで違いが出てくる一つなので,免責期間は法律上規定しないとすると違いが出てこないのですね,そういうことになる感じではございます。   ほかに,このあたり,特段ございませんでしょうか。   それでは,しばらく休憩にさせていただきます。           (休     憩) ● それでは,再開します。   ただいま御審議いただいておりました傷害保険契約及び疾病保険契約の意義の箇所ですが,なお御意見があればいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。--特段,追加の御意見はございませんでしょうか。   それでは,先へ進ませていただきまして,次は資料4頁の「1(3) 危険に関する重要な事項についての事実の告知」の箇所についての御審議でございます。まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   ここの項目では(問題点)について御審議をいただきたいと思っておりまして,この(問題点)ではいわゆる契約成立前発病不担保条項について,改めて問題提起をしております。第一読会において,この問題について御議論いただきましたときに,実務上のトラブルの御紹介あるいはこの条項の問題点の御指摘がありました一方で,契約法上の規律は必要ないという御指摘もいただいたところでございます。そこで,契約法上の規律の必要性を今回御議論いただきたいと思うわけですが,その際には,具体的にどのような規律の必要性があるのかという観点から御意見をいただければと思います。また,第一読会におきましては告知義務制度との関係を整理する必要があるという御指摘をいただきましたことから,5頁の(補足)3では一つの事例をもとに整理を試みております。この点についても併せて御意見をいただければと思います。   以上です。 ● それでは,この箇所につきまして御意見をいただきたいと思いますが。   ○○委員。 ● この問題は二つ問題があって,特に高度障害保険金と始期前発病免責の問題と,もう一つは無告知型の保険と始期前発病条項の問題,二つあると思うのです。最初の方は私は告知義務を片面的強行法規にするという形で考えれば解決する問題なのかなと,従来の議論を踏まえますと,そう考えております。   なぜかというと,従来,この点について書いた詳しい論文,例えばジュリストの755号にある坂本先生の「生命保険契約における高度障害条項」もそうですけれども,結局,告知義務違反に関する規定が強行法規になりますと,一定の場合には告知義務違反によって解除して免責という効果をもたらすということがある場合できなくなると。できなくなるにもかかわらず,始期前免責でそれを免責にしていいのかと。つまり,別途,契約でそういう強行法規による免責ができないという結果を覆していいのかと,こういう問題になりますので,特に問題になっているのは契約者側がすべて告知と,自分からお医者さんにも診てもらいたいといった,保険契約者側としてはやるべきことを全部やっていても,後で始期前免責だといって免責されてしまうと,こういう事案ですね。   こういう事案に対して信義則で救った事例は確かにあるわけです。ところが,一方で前回言及がありました最高裁判所まで行ったのがあるというお話だったのですが,よくよく読んでみますと,それは最高裁としてはその点について判断を下しておりませんで,中野次雄判事が言っておられる,いわゆる最高裁の判例と評価されるものではないですし,高等裁判所でも,争点としては,告知義務の性格と始期前発病の優先関係という形の点は全く争点になっていないものですから,これを先例として考えることはできないのではないかと,こういうふうに思います。実際,60年ごろでも実務では払っていたわけで,そのことはこの論文もそうですし,それから,保険学雑誌の457号に実務家の方がいろいろ書いておられまして,もちろん,問題はいろいろあるわけですけれども,全くゼロではなかったということだと思います。   そこで,問題は例えば網膜色素変性症というような問題をどう考えるかと。私は前回,それが不安であれば2年ではなくて5年間たってから解除というふうにするかどうか,又は損保の医療保険にあるように特定の疾病を免責に入れるかどうか,そういう対応もあるかもしれないと思いますが,ただ,ではクロイツフェルト・ヤコブ病を免責にしていいのかという問題にもつながる問題でして,かつて○○幹事が医療倫理の問題と保険の関係について議論すべきではないかとおっしゃって,私はそのときに否定的な発言をしてしまったのですが,ちょっと私は短慮であったのではないかということで,それはおわびをして撤回して,例えば告知義務の中で,あなたは遺伝子情報を調べたことがありますかとか,そう聞いていいかどうかということはやはりちょっと議論しないといけないと思うのですよね。   ですから,網膜色素変性症の問題のことをずっと考えますと,だから,保険会社として対応方法はあるので,始期前発病でいくのはやはりおかしいと思いますが,それとは別に,その問題をよく考えていくと,そういう告知の対象として遺伝子情報の検査を受けたことがあるかどうかを聞いていいかどうかという,そういう問題とも関連して,これは是非,そんなすごい時間をとる必要はないと思いますが,一度検討していただいたらいいのではないかと思います。   それから,二番目が無告知型の保険と始期前発病条項の問題がありまして,これは実は両方とも同じ問題で,募集過程というのはやはり代理店とか募集人の方の圧倒的な影響力とかコントロールの下で行われるからいろんなことがあるわけで,その極致が通販型で無告知で,一応,電話で説明は受けますけれども,基本的な保険の仕組みは分かっていないままで入るわけですから,告知義務というものが果たそうとした機能というのは,そういう中でのこういう場合は保険会社がああしなさいと,こういう場合は契約者の方がちょっと我慢しなさいと,バランスをとっているのを全部取っ払っておりますので,要するに真っ裸にされているわけですね,契約者の方は。ですから,やはりこれは非常に私は立派なことだと思いますが,大手の生命保険会社の中でそういう場合に特約をきちんと入れておられると。例えば,この特約の被保険者の責任開始の日から起算して2年を経過した後に開始した入院については,その被保険者の責任開始日以後に発病にした疾病による入院とみなしますと,こういうものをやはり入れることが必要だと思うのです。   ドイツで同じような例はないかなと思って見ますと,これと直接ではないですが,発想は同じものが,例えば,疾病の待機期間の長さをやたら長くしてはいけないと。3か月でしたかね,やはり一定の保険者側の対応にたがをはめるという手当ては契約法の下でしておりますので,それと同じような問題を是非していただかないと,余りにもバランスが崩れた状態で放置されているというふうに思います。それが意見です。 ● ○○委員。 ● 大分考え方が違うと思うのですけれども,まず,責任開始前不担保というのは免責条項にあるわけでもなくて支払要件にあるわけですね。すなわち担保範囲なわけなのです。そうしますと,そういう約束で引き受けたと。ですから,考え方によって商品によっては責任開始前の発病も担保する保険というも考えられるでしょうけれども,私どもの会社では売っていないと。それで,告知義務違反との関係をいろいろされますけれども,これは全く別の制度ですから,この関係について分かりづらいというのであれば,それは周知徹底を図ると。そういう意味で御契約のしおりとか,あるいは重要事項の説明書あるいは契約概要,今,盛んにそういうところにもっと大きく,もっとはっきりと書くように,そういうことはやるようにしております。   そして,いろいろ誤解もあるようなのですけれども,今の最後におっしゃった入院の2年経過につきましては,確かに割と比較的新しく,そういう場合には払いますというような条項を入れましたけれども,それでは,入院と高度障害保険金と比べますと金額の大きさが全然違うのですね。今挙げられた網膜色素変性症の場合に,個人にとっては確かに払っていただければうれしいと思うのですけれども,一方でほかの契約者の方から見ると,それはどういうことかというと,告知義務の対象期間が今は5年なのですね。5年以上前にそういう自覚症状なり何なりがあって,ただ,告知対象期間ではなかったということで告知しなかったと。それが後から契約後,失明したと。それで高度障害保険金を2000万とか5000万払いなさいといったときに,一般のほかの契約者の方はそれで納得されるかどうかということなのですね。   それで,いろいろなことが考えられるのですが,それでは告知期間を今まで何年かかけて,告知対象期間を狭めてきたのですね。これも契約者利便ということでやってきたのですが,それを一つはもっと先まで延ばしてやるかという話と,もう一つは不担保の約束というか特則をいっぱい付けてやるかということなのですね。我々としてはそういうことをするよりも,こういう責任開始前の発病については不担保ですよということを承知してもらって,実はそういったお客さんにすべていろいろ付けていきますと,事務が煩雑になるし,お客さんにとってもそんなに便利なものではないということがありますし,告知して入っていただいて,ただ,契約前の発病については担保されませんよということの方が皆さん方は保険に入りやすいではないかと,そういう考えでもやっているわけですね。そこら辺がちょっと我々とは考え方が違うということですね。   それから,契約前発病,責任開始前発病の適用につきましても,何かやたらにやっているように思われるかもしれませんが,そんなことはなくて,主に三つの観点からやっているのですが,それは,その病気が容易に自覚可能な症状とか身体の変調が存在すること,それから二番目にその疾患が他覚的所見,検査所見等が存在すること,あるいは三番目は医療機関の受診歴があること,こういったことを総合的に勘案して不払という決定をしているわけですね。それから,この前も申し上げましたけれども,実は告知したけれども,責任開始前不担保条項で不払になったというケースは,会社におけるトラブルとしては実際には少ないのですね。むしろ,告知絡みでなくて,単純に責任開始前発病不担保条項で5年以上前の話で,要するに告知事項の対象になっていないのだけれども,その条項を適用されたと。ですから,元へ戻りますけれども,やはり我々としてはこの制度は全体の契約者の利便にもなるし,むしろ,これを周知徹底して,皆様方に承知して入っていただくということがよろしいのではないかと,そういうふうに考えております。 ● ○○委員。 ● 一度,このときに問題提起をさせていただいて,このときに後出しじゃんけんという大変過激なことを言ったものですから,ずっと,何か今回のこの資料を見せていただいて,今朝から胃が痛くてしようがないのですけれども,これは何か言わなければいけないと思っていまして,これをずっと読んでいくと,このとおりに分析をしていると,これで今さら何を言うかというお話になってしまうのかなと,これで,こういう規定は契約法としては設けなくてもいいのではないかと,全編流れてそう書いてあるように読めるものですから,そういうふうに読ませていただいたのですが,その上であえて,では,それで,おまえ,何も言うなという話になってしまうのですけれども,でも,これだけちょっと申し上げたいなと思っております。   今,○○委員がおっしゃいましたようなことは私が申し上げたこととちょっと違っておりまして,私が申し上げたかったことは,責任開始前発病というものも告知義務というものも,両方ともそれぞれ効果も違いますし,場面も違うことは十分承知をしております。別におっしゃっているとおりでございまして,このごろは責任開始前発病でお支払をしないことがありますというPRを保険会社が一所懸命なさっていることも存じ上げております。存じ上げておりますが,申し上げたいことはこういうことでございまして,危険選択で危険選択のフィルターが一枚も二枚もあっていいかと言いたいだけなのです。危険選択のフィルターはやはり一枚でないと,普通の消費者の理解は得られないのではないかと。   告知というのは今おっしゃっているように時間軸があって,5年前までのことを聞いて,これから,要するに保険会社の危険選択にとって必要なことで重要なことはみんなそれで聞くのだという,そういう建前ですね。それに対して一所懸命頭を絞って考えて書いて,それで正しく告知をいたしました。正しく告知をしたことは既に保険会社において知っていることになるわけですよね。知っていることをもってして,責任開始前発病というはね方をするのは信義則違反でアンフェアでしょうと。ただ,今の状態では信義則違反とかアンフェアとわざわざ言っていかないと,それが回避できないのですね。   今の状態で言いますと,先ほどの網膜色素変性症云々というのは告知の内容にそもそも載っていない話ですから,それよりももっと前の出来事の話だから,それも告知としては正しい告知を,聞かれていないことについて答えていないというだけの話ですから,告知について正しい,ここのエリアについて聞かれたことに対して正しく答えて,なおかつ,答えている同一の疾病で責任開始前発病だから入院したら払わないよというのは,普通の保険契約者の真っ当な期待に反しますと,普通の保険契約者はそこで危険選択が行われることは承知しているから,危険選択の結果としてお引き受けいただいた,保険会社としては不担保にするなり何なり,ほかに方策がおありになったはずなのに,それをお採りにならなかったことによって,保険契約者は通常,それは払われるという期待を抱くわけです。   その期待が真っ当な期待でないとだれが言えるのだろうというふうに思うのですけれども,その期待に対してフィルターを通したのに,もう一枚下に実はフィルターがあって,それで同一疾病で入院したら,あなた,払わないよというのは,フィルターがそこのところが二層になっていると。だから,二層になっているのをやめてフィルターを全部一枚にしましょう,責任開始前発病という大きなテーブルがあるのなら,その上に,そこの部分は告知事項として保険会社が危険選択に支障だというものの部分のところは,その下に責任開始前発病というフィルターをかけるのをやめて一枚にして,このはみ出ているところを責任開始前発病という,そういうもので不担保ですよというくくりをするのなら,大方の消費者は何とか理解をするけれども,そうではなくて,そこのところで二枚あるというのはやはり保険契約者の真っ当な期待に反するのではないのかなというふう私は思います。   もちろん,先ほどおっしゃったように保険契約者間の衡平は,では,それで払っていいのかという話は当然出てくるのだろうと思いますけれども,やはり,そういう意味で保険会社の引受責任といいますか,受託者責任というのも変ですけれども,引受責任の観点からいうと,やはりきちんと告知をして保険料も払って保険がついて,なおかつ,その疾病で入院したら払われませんよと後で言われるのでは,何のために入っているのかというふうに普通の契約者は思うので,そのところはぜひ御理解をいただきたいなというふうに思います。 ● というふうな御意見なのですが,いかがですか。一応,制度は別だろうというのが前回,このテーマについて議論したときに多くの意見だったと思います。   ○○幹事。 ● 私,前も同じことを言ったかもしれないのですけれども,今,私が承知している限りで,実務をこんなふうにやっておられるというふうに聞いているのですが,要するに,告知を受けまして問題のある疾病があると,放っておいたら当然発病するでしょうと。そういう場合は,それは除いて引き受けますよという形で引き受けられると。こういうパターンで引き受けられている場合はトラブルはない。何も合意なく引き受けましたと。そうすると,その疾病部分についても,告知をした部分についても引き受けてもらえたのかどうかというそこのトラブルが発生すると。しかし,そこが二様に分かれて,契約者側が大した病気でないというふうに思っていた場合は引き受けてもらったのだろうというふうに思って,後でトラブルの原因になっていくわけですね。一方は,相当重篤な症状は,いずれそういう重篤な症状になるということは当然分かるという,通常,だれが見ても分かるような病気であると。こういう場合は保険会社はいくら何でもそれは引き受けないでしょうと一般の人が考える場合は,やはり,当然,それは排除して引き受けたのでしょうというふうに共通の理解が成り立つ場合は,やはり契約前発病のルールを保険会社としても適用するでしょうと。ややこしい例のところでトラブルになるというのが一つですね。   もう一つは,告知はしたのだけれども,自分では十分自覚ができていなかったので,告知漏れといいますか,告知できていない部分の隠れた疾病がありましたと。それが契約締結後に現れたと。そういうケースだとお互いに分からないと。これを契約前発病ルールで切るかどうかという,そういう局面と,二つ問題になるパターンが出てくるのですけれども,従来は最後に申し上げた例は,その疾病の状況に応じて,恐らくは大概のケースは保険会社の方は払われていたのだろうと思うのです。だから,余りそれは表へ出てこないというか問題がなかったと。だから,表へ出てきているのは,要するにその疾病は除いて引き受けますよという合意をしないまま引受けが行われたというケースで,お互いの共通理解が必ずしも成り立っていないというケースのトラブルということになるのです。   それを防ぐために立法するかという,そういう問題になってくるのですよね。そこだけであれば,余り立法の手当てまでは要らないかなという気はするのですが,ただ,潜在的な危険だけをいえば,加入者側は知らないで告知しないで,別に疾病を持ったまま,既に発症はしているのだけれども,入ってすぐさま発症しましたと。これを契約前発病ルールで不払とする合理性はあるのかもしれないけれども,ちょっと,それは期待に反することにはなることは事実ですと。現状は多くの場合は保険金が払われているのでトラブルが起こっていないと。そうだとしたら,そこはルール化することは可能かなとは思います。現状の実務を別にルール化しても大した問題はないということであれば。だから,先ほど言ったように,合意がないまま引き受けた場合のトラブルを解消するためのルールまで設ける必要はあるのかというと,ちょっと,そこまでは要らないのではないかなという,そういう印象を持っております。 ● ○○委員。 ● 大阪高判の平成16年5月27日という事件があって,これはもう正直に全部しゃべって,保険会社の方は何も条件を付けずに引き受けて払わないと。本人もクラッベ病とはとても思いもしない,ただ,調子が悪かっただけですよね。これは払っていないわけですよ。信義則で裁判官はいろいろ工夫して救ってあげたわけなのですけれども,この問題の一番の問題は,加入者は今だったらいろんな自分は病気だと知っているというのはまたちょっと別な,本当の突き詰めたところの一番の問題は,加入者側は自分にできることは全部やったと。それにもかかわらず始期前発病の規定を適用されるかどうか分からないままにずっと置かれると。これが一番問題なので,だから,私は基本は告知義務一本でいって,告知義務は強行規定にして,まさに○○委員がおっしゃったように二番底なしと。そこで発生する不都合は免責のところでいかれたり,特定の疾病については解除できるのを5年に延ばしたり,いろいろほかの手当てがどうしようもできないというなら考えもしますが,そうでなければ,基本は告知義務一本でいくというふうにしないと,本当に救われない人たちがいると。だから,立法する価値はやはりあるのだと思います。   以上です。 ● ○○委員の一番要望されているのはそういうケースではなくて,むしろ,告知した,保険会社も断らなかったと,加入したという,そういうケースですね。 ● ええ,それを例に…… ● 大は小を兼ねると申し上げているのです。 ● 例を申し上げております。ちょっといいですか。 ● どうぞ。 ● 前回,これを申し上げたときにちょっと議事録で確認したらモラルの問題だって,危険選択の方法がダブルスタンダードであることで,モラルが防げるのだというような御発言があったかなと思うのですけれども,これはモラルの問題ではないのですよね。全然,そういう問題ではなくて,普通の契約者が保険に何を期待するかということに対する保険会社の回答がこれかという問題だと思うのですね。ですから,○○幹事がおっしゃっていましたように,これを何で保険法でやらなければならないのかと言われると,正直に申し上げれば,別に監督法でやっていただいても契約法でやっていただいてもよろしいのですが,置くところがどこによってでも,どちらにいかれるものでも,まま子扱いされているような気がいたしますので,そういう意味では本来,保険に保険契約者が求める機能は何だろうかと。保険がきちんと衡平で,そういう母集団の健全性でどうのという,そういう理屈の上に成り立って告知というのがあって,告知で危険選択をするのであれば,告知以外の危険選択というのがそんなに前にしゃしゃり出てきていいのかどうかというふうに思っていますので,そういう意味では○○委員がおっしゃっていることに通じていくのかもしれませんけれども,危険選択をいろんな形でなさるというのだったら,やはり危険選択をきちんと先につまびらかに消費者に見せないと,いけないのではないのかなというふうに思っています。 ● その告知された病気について,先ほど○○幹事が一つの類型として挙げられた,この病気に関しては不担保ですよと。明示して,それで引き受けて契約が成立した。こういう場合は問題ないと。 ● それはトラブルになりません。 ● それがないから消費者は誤解しやすいと,そういう認識ですね。 ● はい。現実に,そういう引き受け方は例えば生保さんの方は現実的に媒介ですから,そういう引き受け方は少ないかもしれませんけれども,損保さんの方は代理ですので,代理店さんが告知をしたときに受領権がおありになりますので,そういう引き受け方があり得るのですね。そうすると,表に出てきているトラブルは少ないのかもしれないけれども,私が地べたで知っているレベルでは実はたくさんあるので,そういう意味では,そういう規定をどちらかで設けていただければよろしいかなという。 ● ○○委員,○○委員,そこらあたりはどうなのですかね,告知はあって契約前の病気があるという,既往症があるというのは分かっているので,それはそのままで引き受けているという,そういう実態なのですか。 ● ある部位について不担保というのは確かにあるのですね。ところが,全部,それをやりますかという話なのですね。私が先ほど申し上げていたのは,そうでなくて責任開始前に発病したものはすべて不担保ですよということをもちろん約款に書いてあるわけですけれども,御契約のしおりとか重要事項の説明書とか,そういうものにすべて入れて,その上で入っていただくと。先ほどの○○委員のお話ですと,商品として支払要件,これはそのままでいいと。あとは告知したことについては会社は承知しておるけれども,これで支払事由が起きた場合には不払ですよということをあるいは分かりやすく表示するか,あるいは不担保ですよということを伝えなさいと,そういうふうに理解していますけれどもね。それを法律で書くかどうかというのはまた別問題と。 ● ○○委員。 ● それぞれの委員,幹事の御発言にその都度,もっともだなという感じになってしまっていまして,ずっとこの議論を通じて,これを契約法に入れるべきものなのか,あるいは業法なり約款で対処させるべきものかと常に問われていて,私もどちらだかよく分からないのですけれども,今のお話をお伺いする限りはきちっと告知をしてもらうということと,契約のときに保険会社がこのことについてしっかり説明をするということだけなので,それだったら,業法でも約款でもいいのではないかなという感じがします。   それから,いわゆる善良なる契約者というか消費者については,いろいろな配慮が必要だと思いますけれども,中には病気になる可能性があることを知っていながら,それを隠して多額の保険金を数年後あるいは数十年後にもらうような人があるとする場合に,そういうモラル・リスクへの対応というのはどう考えたらいいのかというのは,ちょっと分からないところです。 ● ○○幹事から,では。 ● 契約法の問題とするに値するかという観点から少し申し上げますと,まず,実際に置かれている条項は発病とか責任開始前に発病した疾病を原因としてとか,それを原因とするとかという形で,かなり解釈に幅のある概念を使ってルール化されているということに一つ問題があって,これは保険会社の運用の仕方によっては発病という要件とか原因によるという要件をかなり広く解釈することによって,いろんなものに対処できる構造に一応なっているような気がいたします。   それから,もう一つは免責ではなくて不担保だということなのですけれども,免責事由でなくて不担保だということになると,この点について争いが出たときには責任開始後の発病であるということについて契約者側に証明責任があると,そういう構造になっておりまして,その点も偶然性の証明責任と同じ構造になっております。偶然性の証明責任のときには,まさに故意による事故招致による問題をクリアするために,証明責任が転換されているわけでありますが,この場合にはもう少しモラル・リスクが疑われる事案とそうでない事案とを一緒に幅広く対象にすることによって,不担保であるということについて正当化しようというものなので,確かに担保範囲については契約で定めるべきだというのは一般論としては分かるのですが,ある免責事由について証明責任の転換を図るために,さらに広い範囲を不担保に切り取るというような契約の定め方が本当に無制限にあり得るのかということについては少し疑問のあるところでありまして,これは損保のケースでありますが,税理士賠償責任保険については最高裁の判決でも具体的な詳細はちょっと今思い出せないのですが,ある種の損害については不担保であると。これは税理士とそれから被保険者の間で結託して保険金を請求する可能性があるというようなことがある,念頭に置かれていながら,そういう結託とか,そういう故意による不正請求ということの立証を要らない形で丸々,その類型を全部不担保にしていると,そういうケースについて最高裁は制限的な立場をとったということもありますので,不担保条項であるから契約法の問題ではないというのは,少し私としては問題があるというふうに思っています。 ● ○○委員。 ● 医療保険,特に始期前発病につきましては,昨年来,いろいろ御迷惑をおかけしました点がございまして,現在,損保協会,損保各社はいろんなガイドラインを設けまして相当厳しく運用しておりまして,例えば,実際に人間の体というのは常に病気を持っていて,それがだんだん成長して,あるとき発病すると。したがいまして,保険契約に入ったときに何らかの病気は持っている可能性はもちろんあるわけですね。保険契約の前にその病気が発病しているかということは,医師がきちんと診断をしたとか,そういう客観的な証拠がなければ,始期前の発病というふうにはみなさないとか,それから始期前の病気と,それから始期後,保険契約に入った後の病気が同一であるかということの同一性,これは同じように見える病気でも非常に名前が近くても,全然違うよというのがいっぱいございますので同一性を厳格にすると。それから,疾病が同じ名前であっても間に治療期間の中断がありますと,いったん治って,また同じ名前の病気が発病するという可能性もありますので,こういうことも十分確認した上で適用するということになっておりまして,少なくとも現時点では相当厳しく対応しているというふうに思っております。   しかしながら,やはり保険制度そのものですから,自分が病気になって医者の治療を受けて,それが分かって急に保険に入るということ,告知の問題はもちろんありますけれども,そういう保険契約者側のモラル・ハザードを防止するということが保険集団全体の利益にかなうだろうということがありますので,やはり,この制度そのものは必要な制度ではないかなというふうに思っていますが,きちんと説明するということが非常に重要だと,今,そこに非常に注力をしているところでございます。   なお,私どもの会社のケースでございますと,基本的には始期前発病を適用する期間は保険契約後,1年ないし2年というふうに今限定しておりますので,少なくとも1年ないし2年以降は適用することはございませんので,恐らくそういう形でどんどん限定的になっていくのだろうと思いますが,ただ,全体の保険集団を維持する上では,こういう制度そのものは必要であると思いますし,それがきちんと運営されるためには,内部統制できちんと監督するということの方が効果的ではないかなというふうに思っております。 ● ○○幹事。 ● まだ,ちょっと十分な理解がないままの発言になってしまうかも分からないのですけれども,始期前発病を担保するか無担保かというところは,約款の当否ということもあると思いますけれども,基本法のレベルだと,契約締結の当時に事故が既に発生していることを保険契約者側が知っているかどうかというところに,整理できるのではないかなと思うのです。例えばもう発病をしていて,発病というのが広い概念だから原因は必ずあったのでしょうというところで,その後に死んでしまったという,風が吹いて桶屋がもうかるぐらいのところだと,その原因というのはもちろん契約締結時に事故が発生したという評価はできないと思うのですけれども,この病気,そういう通院の仕方をしていたら,その後,もう死んでしまうのはほぼ確実と言えるような状態で契約を締結した場合には,もう契約締結時に事故が発生したと評価できて,それを契約締結者側が知っていたのであれば無効だということになって,それで告知をしていなかったら告知義務違反という別の解除の方もできるのかも分からないですけれども,そうすると,後は保険者側ではどういうことをした方がいいかというと,そういう通院をされていたということを告知してくださってありがとうございます,告知義務違反はないです,でも,これで入院したら,この事故が,これが生じていることを自覚しているのであれば,もうこれでの入院は契約締結時に事故が発生したことをあなたは知っているということになるので,この保険契約は締結しますが,その原因による入院については一部無効ですよというか,担保しませんよということを明らかにしてあげるということは契約の当事者,対等ではない当事者としてすべき義務だと思うのですけれども,一応,基本法のレベルでは締結前に発病していたということが,事故が生じていたと同視できる場合かどうかということで整理できるのかなと思っております。 ● ○○幹事。 ● もし立法するとしても,結局,むちゃな形での契約前発病による不担保ルールを定めないようにという形にならざるを得ないと思うのですね。結局,今もしそういう立法をしないで解釈論で対応するということになれば,恐らくは消費者契約法第10条を用いて告知義務に寄せるという形で,契約前発病不担保ルールの適用を言わば保険者の危険選択にかかわるようなレベルのところへ限定をして,契約前の小さな原因でもって今,○○幹事が言われたように後になって発病したという場合に,それは評価の対象,つながりは,因果関係はそういうふうになりませんよという形で切っていくのだろうと思うのですけれども,結局,それは告知義務のルールと大差ない形での切り方になるかなと思いまして,解釈論的にそんなに対応できない話ではないかなというふうに思っているのですけれども,ただ,契前発病ルールを濫用されるという,そういう懸念に対しては一定,その手当てを契約法上していくと,強行規定的にしておくということはないわけではないなという,そういう印象です。 ● ○○幹事。 ● 今,○○幹事がおっしゃったように解釈論で対処できないかと言われれば,対処はできるのではないかなというふうに私も思うのですけれども,例えばおっしゃった消費者契約法の第10条でいけるかもしれない,やろうと思えば,いけるかもしれないと思うのですけれども,しかし,いけないかもしれないのですね。ですから,不明瞭なところはどうしても残らざるを得ないように思うのですね。   モラル・リスクの問題は確かにあると思うのですけれども,○○委員が盛んに御指摘になっているケースを想定すると,やはり何か対処が必要ではないかなというふうに思うのですね。あれを解釈にゆだねて,信義則でやるということで果たしていいのだろうかと。一定のやりとりがされていて,消費者の側からすると保険会社はそこについて担保しないというふうに明言していないのだから,担保してもらえるはずだというふうな期待が生じているというときには,それが契約内容に取り込まれるということをその類型に限って認めるようなある種の契約解釈ルールみたいなものを置いてもいいのではないかと。これは先ほど○○幹事がおっしゃったように,そこは担保しませんということであれば,それはそうなりますねということで,規定を置くことに対して危惧を抱かれている方々が御心配になるような事態というのを避けることが可能なのではないかなというような印象を持ちますけれども。 ● どうぞ。 ● 恐らく,今,○○幹事がおっしゃったような格好で実務的には運用されているのだと思うのですね。問題のある疾病は合意で除いて不担保にしますと。何も言わなければ引き受けているというのが一般だろうと思うのですけれども,時にそれが漏れることがあると。それがトラブルになるという話だろうと思うのですけれどもね。 ● ちょっと重要な私は病気を持っていますと。それを言えば,恐らくそれは引き受けません。 ● ええ,引き受けないか,あるいは…… ● 引き受けるけれども,不払ですよというやりとりがあって切るのだろうと思うので,告知の中に多分いろんな病名ははっきりしないけれども,とにかく何か心臓がちょっととか,その手のものも入ってきて,というようなことになると,そこを逐一確認して引受けするかというと,先ほど○○委員のおっしゃったように,そこはもう何か一括して既往症は駄目ですよというふうなことになるということかなと思っていたのですが,そこら辺の実態はどうなのですかね,やはり,疾病をこれは不担保というふうに特定して引受けというのは本当にできるのか。 ● 結局は告知したものについて承知しましたと,けれども,これで請求があった場合,契前発病であることが分かれば払いませんということになると思うのですね。ですから,一部の病気については部位不担保という方針をとっていることもありますけれどもね,それを全部,一つ一つの部位についてやりますかという話なのだと思うのですね。それを消費者は望むのですか,あるいは,そんな手間暇をかけてやるのですかという話なのですね。 ● それをやろうと思えばできるのですか。 ● いや,それは大変だと思うのですね。目がどうだ,鼻がどうだ,心臓がどうだって。それよりもやはり一括して告知があっても,こういう場合には払いませんということをやはりもう少し分かりやすく書くなり説明するという,そういうことになると思うのですね。 ● どうぞ。 ● 少し補足しますと,告知があってお引受けできませんという以外には二つやり方がありまして,全体として保険料を割増ししますという,特別保険料徴収というのですけれども,こういう形で全体として割増しをする代わりに全体としてお引受けするケースと,特定部位について不担保ですよと,例えば心臓に何かがあってもお支払しませんというケースがあるのですけれども,一方で,やはり契前発病を持つことによって特別保険料であったり,特定部位ででも引受けできる範囲が広がっているわけですね。一方で,契前発病というものがなかったときに,特別保険料か特定部位不担保だけでカバーしようとすると謝絶にいってしまったりだとか,あるいは特定部位を極めて広くとらないと,リスクとしてやはり言ってもらったものに対する衡平性が図れないと,群団として,という可能性が現実あると思うのですよ。だから,テクニカルにできないかと言われると,できないわけではないのでしょうけれども,では,どちらの方が保険制度としていいのですかというところもあると思うのですね。   やはり,もともと契約に入る前に原因が発生したものについて,要は後で出てきたものはある種,しかも,今,実際の運用というのが自覚症状があるとか,いろんな条件を付けていますから,分かっていて入ったという部分については,さすがに特別保険料だとか特定部部位不担保といっていなくても,これは払わないというのが分かって入ってもらうということは,保険としてはおかしいですよねと。多分,そういう価値観の問題ではないかなと思うのですね。それが無制限に広がって濫用されるようだったら問題なのですけれども,今は協会としてもガイドラインをつくって,先ほど○○委員から説明がありましたけれども,自覚症状の問題だとか明らかな所見だとか受診だとか,そういう要件を付けた上で,これを実際発動していますから,そういう意味では無制限にこのことが使われているわけではないと。それよりも保険制度としてどちらの方が消費者も含めていいかという価値判断ではないかなという気がするのですけれども。あと,保険会社側からすれば,こういう契前発病を持ちながら,やはりできるだけ広目にお引受けできるものはお引受けをするという方が,簡便ではないかなという気が個人的にはしています。 ● 消費者の方ではそういう感覚とずれた感覚がやはりあるという,今日の○○委員の御意見でしたね。   まず,では○○委員からどうぞ。 ● すごく○○委員のおっしゃった世界と両立しない世界ですよね。なぜ,そういうことが起こるかと。私が知っている限りは,結局やはり保険の人たちも生きていかなければいけないので,保険料をもらわなければいけない,募集をしなければいけないわけですよ。月末に締めがあって,それまでに何件欲しい。不担保の特約をとって本店までに回そうと思ったら2週間,3週間かかると。それだと締切りが過ぎて自分の業績の月何件は超えられないし,支社長にしてみれば1000万とか2000万という業績を達成できないと。しかし,募集人に対しては,実は私はこういう病気があるのですよと言っているけれども,いいや,引き受けてしまえと,始期前免責があるではないかと。そういう実態もあるのだと私は聞いているのですね。それは違うと言うならば,それはそれであるかもしれませんが,だからこそ,○○委員のところがお忙しいわけで,そこを抜きに余りまじめに考えていると,始期前発病をやると本当に酷なのですよね。それは募集人の方は知っている。しかし,受領権がないから会社は知らないという建前でいろんなものにバリアができて,結局,○○委員のところに救いを求めるという,そういう点もあるということをちょっと考えていただきたいなと思うのです。   どうぞ。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 私は○○委員に比べて知識がないものですから,○○委員の話を聞いて,そういう事実があるのかというふうに驚いているのですけれども,まず,自分の問題に置き換えたときに,保険契約をするときに自分はこういう病気を持っていますと言った場合に,だれが聞いても重篤な病気だというのが分かるのであれば,自分の病気はもしかしたら保険に加入させてもらえないかなという判断はつくのです。ところが,それがつかない,病気は持っているのだけれども,もしかしてこの病気が将来保険がおりない,そういう病気かどうかは,そういう判断がつかないケースの方が私は一般の消費者の場合,圧倒的に多いのではないかと思うのです。   そういうふうに考えると,やはり末端の消費者の判断ないしは告知に対しての認識,その辺と事業者の方の判断というのは違うのではないかというふうに思いますし,もし,○○委員がおっしゃるようなことがいっぱいあるとすれば,これは大変な問題ではないかな,というのは,やはり受けてくれたということになりますと,消費者というのは,これでもう保険金はおりるのだと思うとしきりにおっしゃっているのですが,私もそう思うのですよ。   まさか,それが先で,駄目,あなたはと言われてしまうとすると,これはちょっと告知すること自体,控えなければいけないのかなと考えてしまうかなというふうに思うのですが,やはり最初のときに,こちらはよく分からないで告知していることに関して,むしろ事業者の方は専門家を抱えているわけですから,その部分でこれはちょっと将来的に発病の可能性があるとか重篤な病気になるというのであれば,とことん,そこで調べていただきたいし,その上で駄目なら駄目,ないしは条件を付けるのなら条件を付ける,そこをやはりはっきりしていただかないと,どうも合意がないままいってしまい,先で駄目だよと言われる事実があるとすれば,私は普通の契約では考えられないことかなというふうに先ほどから思っていたのですけれども,まことに素人なので,そんな認識を持ちました。 ● ○○委員。 ● 別に業界を代表して言うわけではないのですけれども,基本的にこの条項というのは,本来の昔の保険契約でいいますと,私たちの年代でしたら何らかの疾病を抱えているというのは普通だと思うのですね。そういう方も含めて,契約を可能にする仕組みが前提だというふうに思っています。ただ,事業者,私どもも含めてきちっとしたルールといいますか,説明責任をきちっと果たすということが重要なことだろうと。それがなければ確かにトラブルは発生する余地はあるというように思いますけれども,この仕組みそのものがおかしいということではないというように私は思っております。 ● 仕組みそのものがおかしいという御意見ならやはり…… ● ルールの問題だろうというように思います。恐らく各会社で引受けの基準なり,そういうものはきちっと持たれた上でおやりになっていて,たまたま漏れるケースがトラブルに発生するというふうな事情だろうというふうに思いますけれども。 ● どうぞ,○○委員。 ● ○○委員の仕組みということについて若干補足させていただきますと,確かに問題は契約者の説明責任とか,そういったところでやはり問題が生じて,それについては確かだと思いますし,改善の余地はあると思うのですけれども,仕組みそのものを考えますと,基本的に先ほど○○幹事から免責だったものが不担保になって,転換があるのではないかとあって,そんなものかなと思ったのですけれども,よくよく考えてみると,免責ということと不担保,つまり支払範囲を定めるというのは同じようなことなのですけれども,目的が違っていて,免責というのはモラル・ハザードを防止して,故意だとか,そういったことがあると,保険自体,制約があるから免責を定めましょうということで,支払範囲を定めるというのは我々の言葉でいくとリスク区分の問題で,例えば自動車保険で20歳不担保というのは,商品の中でここまでは負いますけれども,ここまでは負いませんよというリスクをどういうふうに区分するかという問題で,なぜリスクを区分するかというと,高いリスクの人と低いリスクの人を一緒にしてしまうと,高いリスクの人に低いリスクの人から内部補助と我々は言っていますけれども,全体として見ると資金の移転があると。   それが全員がいいと思えばそれでいいのですけれども,余り極端な内部補助があると,我々が経済学的に見るとやはり不効率で,簡単にコストなしで区分できるのだったら区分した方が効率的ですよという考え方があるわけです。その意味で,この仕組み的に言いますと,始期前不担保条項というのはやはり免責とはちょっと目的が違って,理論的には少なくとも,担保の範囲を定めるリスク区分として考えられますので,もし,これは駄目だよと言われると,ほかの保険会社の商品の範囲といいますか,リスク区分,そこまで駄目だよということになってしまいまして,仕組みとしてはちょっと問題があるかなと,うまく説明できなかったかも分かりませんけれども。 ● 仕組み全般がおかしいと言っているのではなくて仕組みに対する認識。 ● ええ,認識が違う。 ● 認識ですね。すみません。 ● なかなか難しいですねという,そういう問題ですね。 ● はい,仕組みのことを言っていない。 ● そこの認識です。私の認識がちょっと,そういうことです。 ● ちょっと話が違うかな。 ● 申し訳ないです。ちょっとお答えになっていなかったかも。 ● 全体にリスクによる衡平性と先ほどからのモラル・ハザードとかモラル・リスクといわれている,そういう面よりも,実はそういう今の保険料の負担の衡平性,そちらがより大きい問題であるのは間違いないですね。   ○○委員。 ● すみません,何度も。   皆さんがおっしゃっていただいていることもよく分かるのですが,申し上げたいことはたった一つでございまして,保険会社が危険選択をするときに,網を二重に張らないでもらいたいと,網を一重にしていただきたい。その方が契約者サイドから見てよく分かるでしょうと。ですから,告知事項に関することについては告知だけで勝負をしていただいて,それからはみ出すものについては責任開始前条項というものをお使いになれば,それで十分危険選択はできるのではないのですかという感じで思っています。もちろん,契約前の危険選択が告知で,契約後の危険選択が責任開始前発病だということは十分分かっていますし,効果も一応理解をしているつもりですし,それから業界団体がいろんな自主基準をおつくりになっていることも,それから行政処分を受けて,だんだん入口のところでもきちんと説明なさるようになったことも,それもあえて十分分かった上で,危険選択の方法が告知事項に関して二重にあるというのは,告知に対するインセンティブをやはり失わせてしまうだろうと。告知をきちんとさせるというのが第一次の目的であるならば,告知自体のところで責任開始前発病という制度を使っていかないと,普通の消費者の期待にこたえられないのではないのかなと,そう思っているということです。 ● ○○委員。 ● 保険会社ではありませんけれども,まず,基本的には告知が前提になると思うのですね。告知の中でいかに,こういう言い方がいいかどうか分かりませんけれども,救済をする仕組みというのが不担保条項だというふうに私は理解をしています。したがって,二重のフィルターをかけてやっているということではないというふうに考えているのですけれども,保険会社の皆さんがどういうふうにお考えになっているか分かりませんけれども,私はそのように考えております。 ● ○○委員。 ● 一言。先ほど私が申し上げましたけれども,もし告知義務制度だけにするのであれば,告知の対象を今まで努力して狭めてきたところをもう一回,あなたは生まれてからかかった病気について全部告知してくださいと,そういうふうな制度にしない限り,この告知一本だけではいかないということなのですね。ですから,そういうものとこの支払要件と,両方でやった方がいいでしょうというのが我々の思いなのですね。せっかく,今まで短くしていた5年というものを,では,過去すべてについて告知してくださいという,そういうことを望んでおられるように聞こえるのですね。 ● いろんな御意見をいただきましたが,何か事務当局としてありますか。立法を求める声が数的にはかなりあるようですが。 ● ちょっと整理をする上で○○委員にお尋ねしたいのですが,フィルターを一本にしてもらいたいというのは,私自身も一消費者としてよく分かるのですが,他方で先ほど来,きちっと告知して既往症があることが分かりましたと,では,その既往症による入院や手術については保険給付が出ませんよと説明されていた場合には問題ないとおっしゃったような気もするのですが,それは既に二つのフィルターを認めているという気がするのですけれども,そういう理解にはならないのでしょうか。 ● すみませんね,これでこんなに引っ張って。   説明というか,そこの部分を不担保にしますというふうに言われれば,それはそれで了解するでしょうと申し上げたつもりでいます。 ● とすると,それはひいては説明義務の問題というところに尽きるのではないかなという気もするのです。きちっとそこを説明しているか,していないかという問題であって,先ほど来,仕組みはおかしくないという話が出ていますが,告知された既往症があった場合に,それに基づくものは始期前発病ということで入院給付や手術給付その他は出ませんよという説明をきちんとしているか,していないかという問題であって,その仕組み自体はおかしくないと。フィルターも実は二本になっているわけですよね。きちっと告知された既往症についての問題ですから,告知義務のフィルターでは通ってきてしまったものについて,始期前発病不担保条項によって支給しないという二つ目のフィルターでやっていると。それは別に説明されていればいいということだとすると,二つのフィルターで危険選択をされること自体も許容されているのかなとも思うので。 ● 私が言っている例えば保険料を割増しにしますとか,部位不担保にしますというのは,告知制度の中から出てきているというふうに理解をしているのです。ですから,それは始期前発病の制度から戻ってきて,だから,そこの部分を特定部位不担保にしますとか,保険料を割増しにしますとかいう話ではなくて,あくまで告知制度の中で,そういう選択肢があるという理解をしていますので,そちらからは今おっしゃっているふうにはならないような気がいたします。 ● ごめんなさい,○○委員の整理は分かりました。引き続き,考えてみたいと思います。 ● 単に整理の問題はちょっと今あるのですが,きちんと説明をすれば,それで足りるという問題なのか,それ以上の何か実体法的な介入が必要な問題なのかが,ちょっとまだもう一つよく分からないところがございますから,実務的にこういうルールをつくるとどうなるかという,なかなか,そこも悩ましい問題があるような気がしまして,今日のところはこのぐらいでなお検討してもらおうかと思いますが,今まで議論したのは主として既往症が分かって,それを告知しましたというタイプの話だったのですが,○○委員が先ほどもう一つ別の類型で,実は既往症があるけれども気が付かないで,だから告知もできない,こういうケースの取扱いで,これはまさに告知義務の問題として一元的に扱った方がいいのではないかという御指摘だったと思います。   多分,先ほどの契約前発病免責不担保条項を保険会社が援用する場合には,病気にかかっているということの認識があるということが今のところ実務の運用だということなのですが,そういうことであれば,もう新しい規整は要らないというのか,何かやはり,まさに知らない場合をどうするかというのは,本当に危険選択の問題だと思うのです。だから,本質は告知義務とかなり似たようなところがあるわけで,そこをどうするかという問題があるかと思う。このあたり,御意見はいかがでしょうか,ほかの方々は。   ○○委員。 ● 今の告知のときに気が付かないという意味なのですけれども,我々が責任開始前発病で不担保にするときは,当然に契約前に発病していることを先生が今おっしゃったように自覚している,あるいは受療している,あるいは他覚的な所見がある,そういうのを前提にしていますから,まさしくうっかり告知しなかったということは分かりますけれども,過失で,ですけれども,今,症状が何も出ていなくて,それを責任開始前不担保で不払にするということはあり得ません。 ● ということだそうですが,○○幹事。 ● そこにはもう少しやはりグレーゾーンがありそうでありまして,体調は確かに悪い,医者にいろいろと内科とか何とかかかってみたけれども,検査をしてもそれらしいものは出てこない。でも,後から調べてみると,この時点でこれだけの死因で死んでいる以上は,さかのぼって何年前から,こういう病気があったに違いないという世界はかなり広い範囲でありそうでありまして,そのときに体が重いとか夜眠れないとか胃が痛いとか,そういうレベルで病気にかかって,単なる胃薬を出しておきましょうみたいなことで済んだものについて治療歴があるから何とかということになると,それはそれで消費者の期待からすると,難しい問題がやはり残っているのではないかという気がするのですが。 ● ○○委員。 ● 今の○○幹事の例で言えば,これを不払にすることはございません。そういう実情を調べますから。 ● ○○委員。 ● ○○委員と同じなのですけれども,告反解除の要件というのははっきりしていますので,多少,皆さんも同じかと思いますけれども,体調がちょっと年齢とともに悪くなったなといったら,やはり当然のこととして,そのために保険契約に入るというのは,入っていないとした場合に普通だと思うのですね。そこまで排除するということには保険制度自体,共済制度もそうですけれども,なっておりませんので,余りそういうところは考える必要はないのではないかというふうに。別にモラル・リスクとも思いませんし,考える必要はないのではないかというふうに思いますけれども。 ● ○○委員。 ● ○○委員の質問にちょっと完全には答えられない部分,つまり法律的にどうするかという問題は,私は御支持は得られないのかもしれませんが,告知義務違反の規定というものを強行規定にすることによって,その解釈の中で何とか救えないかと。実際,平成16年5月27日の判決は全部ディスクローズして,足に障害があることは分かっているわけですね。保険会社も全部知っていると。保険会社はそういうことを調べる能力もお金も全部あって,それで契約者の方はとにかく,この方は自身からもお医者さんの診断を受けた上で入りたいとまで言っていて,それで不払だと言われて,これはやはり保険の私は告知義務のところでいいと思うのですけれども,こういう場合はやはり始期前発病の規定を援用することが限定されるという,ただ,その場合,告知義務違反の規定,告知義務違反制度そのものが片面的強行法規的な規定だということから,そういう解釈は導けないということであれば,ちょっと少し考えて,でも,何か方向性としては,そこについては余り御異論はないのではないかと。しかも,何かやはり法的なもうちょっと工夫した手当てというものを少し考えたって,余り異論はないのではないかという感じがするのです。 ● 今の○○委員が御指摘になっている裁判例というのは,加入前から右の足が悪くてお医者さんにかかっているけれども,病名が何とも分からないと。 ● そうです。 ● それを全部告知して引き受けて,さらに相当後になって,ようやく何か最先端の医療…… ● 治療を受けて…… ● ようやく難しい病気…… ● 日本に一つか二つという。 ● ということが分かった,そういうケースですね。 ● 裁判官はやはり解釈論で救えないと思われて,特に告知義務違反の規定の強行法規性と云々という議論も念頭に余りなくて,やはり,どうも保険法の論理では救えないので信義則の方で全部払えと,こうおっしゃったわけですよね。だから,まさにその判断,特に支社長が今は払えませんよと7年ぐらい前に言って,何年かたってから,やはり払えないと言っているものですから非常に過酷なあれなのですけれども,ちょっと私はだから○○委員の御質問に対して法的な法律構成としてどうすべきかというのは,ちょっと今お答えできないのですが,しかし,やはり,それはちょっと工夫してみないといけないのではないかというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 今の判例につきましてちょっと事実誤認というか,私どもの理解では一審の判決が妥当であると,一審は契約前発病で不払であると。二審は入院給付金は払ったので,その後,契約者側が高度障害保険金を請求したいと言ったところ,支部長がもうちょっと目いっぱい入院給付金をもらってから,高度障害保険金を請求したらいかがですかと言ったことをとらえて,この前,○○委員がおっしゃっていたけれども,何か請求を妨害したというふうにとられて,したがって払えと言っているのですが,これは実は入院給付金,その前に告知は全部告知しているわけではないのです,一部告知なのですね。それから,直前の事実についても告知していないので,告知義務違反があったという主張もしているのですが。それからもう一つ,入院給付金を二回払っているのですが,これはどういうのかというと,保険会社の方で主張していますけれども,これは誤って払ったと言っているのですね。何でかというと,入院給付金であれば少額であるからいろいろ調べずに払うということもあったわけですから,それをとらえて,今度は高度障害保険金で何千万払えということですね。   実は上告を保険会社がしまして,裁判所は和解を勧めてきたのですね。結局,遅延利息,遅延損害金を不払でいいから払うという和解をしたのですけれども,明らかに高裁の判決は約款の解釈を間違った判決であると,全くおかしな判決だと思っております。 ● 個別の事案の評価というのはいろいろあろうかと思いますが,より一般化すると,やはりよく分からない病気で,あるいはもう別の例にすれば自覚症状がないというふうな場合でも,客観的に契約前に発病ということが証明されると払わないというルールが従来あって,それはそういうものだろうというふうに一般的には考えられてきたかと思うのですが,やはり,それで常にいいのかと。だから,よくないだろうから,まさに実務上は認識とともに何かの診断がなければ払うというふうなルールを立てて処理されてこられたわけですから,依然として,そういうルールを実務に任せておけばいいのか,きっちりやっておられれば,それでいいだろうという意見もあるし,何か,そういうことを少し,先ほどの○○委員の御指摘の類型の事例について考えるのであれば,別の類型の問題というのも一応考えてみる価値はあるのかなということなのですが,何か特段,この点について今日のところでございますか。いずれにしても非常に難しい,どこの国でも余り考えていないような立法になるかと思うので,ちょっとどのようなことになるか,検討していただきたいと思いますが,何か,今日のところで。 ● きょうの御審議を踏まえて検討したいと思いますが,検討に当たって,ある意味,期日間にヒントを与えていただければという趣旨で申し上げますと,先ほど来出ている,ここは何か手当てを置くべきだという恐らく意見をおっしゃっている方の多くは,やはり契約者といいますか,消費者の期待に反するということを理由として挙げられていたと思いますけれども,消費者の期待に反するから,では,こたえるにはどうしたらいいかというと,契約法的には保険者に責任を負わせるという形での答えしか恐らくできないと思うところでして,保険者に責任を負わせるということは,初めから負っているものについて解除してはいけませんよとか,解除は例えば権利の濫用に当たってできません,したがって,もともと負っている責任のとおり払ってくださいというのは分かりやすいのですが,ここの場面は仮にこの仕組み自体はおかしくないという前提に立つとすると,もともと責任は危険選択で負っていないわけですよね。負っていないものに対して,一定の場合には責任を法律が負わせるということになるわけで,一体,それはどういう仕組みを考えれば,そういうことができるのかというのはちょっとなかなか簡単に結論が出ないので,引き続き検討させていただきたいというのが先ほどのお答えだったわけですが,そこは今この若干の時間,なお頭の中で考えてみましたが,やはりなかなか浮かばないところでして,浮かばない限りはなかなか難しいのかなという感じがいたします。   ○○幹事がおっしゃったように,何か,そういうきちっと説明されなかったときには契約内容に取り込まれるというような解釈指針みたいなものを置く,あるいは,そういうみなし規定みたいなのを置くというのも一つあるのかもしれませんが,やはり契約の前提として合意というのが契約内容を定めるというのが大原則としてあるでしょうから,そういう場合に意思の合致がない,合意がないということで,契約内容に取り込まれていないという説明はできるとしても,あるいは契約がそもそも成立していないといったことは言えるとしても,合致がないけれども,この部分は契約内容になっているのだということをどうしたら言えるのかというところが課題としてあるかと思いますので,ちょっと,その点はまたこちらも考えてみますが,ぜひ御検討をいただいて,御意見をいただければと思います。 ● ○○幹事。 ● 今の点について御検討いただければ幸いなのですけれども,ただ,出発点として約款に不担保だというふうに書いてあると。だから,それが契約内容なのだという前提は当然の前提ではないと思うのですね。その約款をめぐって一定の交渉がされていて,それをトータルにとらえたときに,契約内容が何なのかということだろうと思うのですね。約款に書き込まれているということが重要な要素ですので,特段の事情がなければ,その内容で契約内容は決まるというふうに考えてもいいのだろうと思いますけれども,消費者の期待を考慮すべき場合は絞り込んだ上で,契約解釈がどうなるのかということについて,絞られた規定を置くというようなことは,なお可能ではないのかと,私個人は思っております。 ● ほかにこの点はいかがでしょうか。--それでは,なかなか難しそうだということでございますけれども,なお検討していただきたいと思います。   それでは,次へ進ませていただきまして,今度は資料11頁の「第6 保険法の適用範囲(「保険」の意義)」について御審議いただきたいと思います。まず,説明をお願いいたします。 ● 御説明いたします。   本文では,保険法の「保険」の意義について問題提起をしております。現行法上,保険の定義規定は設けられておりませんが,以前,共済が保険法の適用対象となる場合には,どの共済が保険法の適用対象となるのかを明確にする必要がある旨の御指摘がされましたことなどから,保険法の保険の意義について検討しておく必要があると考え,問題提起することにいたしました。また,大数の法則を保険の意義として明確に規律することは,この部会でも御指摘のありました保険母集団の存在を前提にした仕組みや,収支相等の原則という保険法上の規律の前提となっている理念を明らかにするという意味もあるように考えられます。   とはいえ,ここで保険の意義と申しましても,保険法の各規律,例えば告知義務の規律,危険の増加の規律,損害額の算定の規律等を適用すべき保険の意義という問題でして,保険業法等の監督法上の保険の意義とはその法律の目的を異にする以上,必ずしも一致しなければならないものではない点に留意する必要があると思われます。また,保険制度と共済制度とは組織法及び監督法上は別のものとして整理がされており,また,契約法上の規律の内容もそれぞれの制度趣旨との関係で考慮を要するような事項があるように思われますが,ここでは保険法の適用範囲を考えるに当たっては,保険であるか,共済であるかその他のものであるかにかかわらず,その仕組みの共通項を表現しようとしたものです。   本文の考え方は資料12頁の(補足)2に記載したとおりでございまして,まずは何を保険の要素としてとらえるべきかという骨格部分の御議論をいただければと思います。その上で,保証や代替的なリスク移転の制度との関係等についても御意見をいただければと思います。本文は,修正すべき点は修正していくという前提の案ですので,これでこれが読めるのかという観点からの御指摘をいただくというよりも,本文のどこの文言をどのように修正することが適切かという観点で御意見をいただければと思います。   次に,(問題点)では,保険契約の関係当事者が信義に従って誠実に行動し,必要な場合には互いに協力するよう努める旨の規律を設けることについて問題提起をしております。これは本文における保険の意義とも関連して,保険契約の特性にかんがみ,保険契約における関係当事者間の信義則を具体化した規律を設けることを提案するものですが,この規律の位置付けやこれを設けた場合の効果等については資料13頁の(補足)3に記載したとおりでございます。この問題については,具体的な規律の内容もさることながら,個々の規律とは別に総則的な規律を設けることの意義をどのように考えるか,契約一般の信義則にゆだねることでは足りないのか,保険契約について特別な規律を設けることに合理性があるかなどについても,検討が必要であると思われます。   そこで,まずはこのような総則的な規律を設けることの方向性や基本的な規律の考え方についての御意見をいただくこととし,いただいた御意見をもとに法制的な観点も踏まえて,具体的な規定振りについてはさらに検討することにしたいと思っております。   以上でございます。 ● それでは,今,御説明していただいたのは第6の本文,保険の意義についての規律と(問題点)の部分ですが,ちょっと違う問題なので,議論を整理するため,まずは保険の意義の方から御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 保険法で言う保険の定義を明確にするということは,意味があるのではないかなというふうに思いますし,(補足)に書いてありますように,保険法で言う保険と保険業法で言う保険の範囲が必ずしも一致するものではないということについても理解ができるわけでございます。ただ,一般の人といいますか,私も労働組合で自家共済的なものをやっているところを抱えている身からすると,そういうふうになかなか理解されない部分もあって,これは大変だというような議論につながりかねないということもありますので,実際に条文をつくる段階あるいは保険法の改正を受けて保険業法が改正をされるときには,そういう点に十分配慮をしていただきたいなというふうに思います。   それから,労働組合のいわゆる相互扶助活動だとか会社の共済会だとか,そういうものについて,保険法の適用範囲には入らないというようなことが多分明確になるであろうということでも,この事務当局案でいいのではないかなというふうに考えております。   以上です。 ● ○○委員。 ● 保険の意義につきまして,考え方はおおむね事務当局案の整理でよろしいかと思っております。特に,法律に基づく制度共済とか,つまり少額短期保険を含めまして,この適用範囲とすることにつきましては契約の性質が同じでございますので,このとおりでよろしいと思います。ただ,一方で,保険デリバティブとか,それからあと保証業務とか,なかなか境界を引くのが非常に難しい,あるいは見舞金的なものがございますので,その辺の境界をどういうふうに線を引くのかというのがなかなか現実的には難しいのではないかなと思いますし,その辺の御検討につきましては慎重にお願いをしたいと思っております。   それから,民間保険,保険というのは私人間の問題があるということもございますが,一方で,現実的には国や自治体が保険契約者,被保険者となるケースも随分ございますので,その辺だけは実務の世界から,そういうケースがあることだけは申し上げておきたいと思っております。   以上でございます。 ● ○○幹事。 ● 先ほどの○○委員から労働組合等がなさっている共済,自家保険のようなものについて,そこは除外されるような明確な規定になっていると。恐らく,その御趣旨は「多数の者がその危険に応じて保険料を拠出し」という部分なのかもしれませんが,ちょっといい修文があればという先ほどの御指示だったのですが,なかなか,そういうアイデアがないのですけれども,「危険に応じて保険料を拠出し」という部分は,恐らく保険数理が成り立っているというような部分を条文化されたのだと思いますが,恐らく厳密な数理計算がされていなくても一定程度とか,あるいはお見舞いをする弔慰金を払うといったような場合であっても,一定程度,程度問題ではありますけれども,拠出するときには,それに応じた常識的な金額というのがあって,それを仮に保険ではないというふうにしますと,仕組みようによってはいろんな入院保険ですとか,あるいは一部の死亡保険ですとか,いかようにでも,ここから外れるというような形をとることが可能であって,言わば,これを厳密に定義しようとすればするほど,ほとんど保険と同じ契約の性質を持っているにもかかわらず保険ではない,したがって,契約者を保護するためのいろいろな規律には服さなくてよいと。   さらにいけば,契約法上における保険の定義と業法における保険の定義は少なくとも一致させる必要はないのですけれども,懸念するのは契約法で定義された典型契約としての保険契約が狭く定義されてしまうと,業法はどうしてもそれに引きずられて,業法はそれを保険と言おうが共済と言おうが比較的広くとらえた上で,一定のものだけ適用除外するという対応をとっていますけれども,そこが余り契約法上,狭く典型契約として定義されてしまいますと,契約者保護のための監督の網から非常に重要な保険の実質を備えたものがこぼれてしまうという,そういう弊害が生じてしまうので,では,これをどう修文したらいいのかということで,いいアイデアは浮かばないのですけれども,ちょっと仮に共済のようなものを全部読まないという趣旨で書かれているのであれば,少し狭過ぎるのではないかというふうに考えます。 ● そこら辺,事務当局が考えているのは。 ● 今,○○幹事から御指摘があった点はおっしゃるとおりでして,狭過ぎてはいけない,入るべきものは入らなければいけないと思っていますが,狭過ぎてはいけないと思う反面,まさに典型契約の位置付けで考えたときには,余りそこが広いと何が典型契約なのかがぼけてしまうというのがありますので,まさに,そこの境界線をどこに持ってくるかが,いったん業法を離れて,この契約法プロパーで考えても非常に悩ましいところだと思っておりまして,一応,まさにどうしたらいいのかというところをいろいろ悩んだ上での文章のつもりではおります。例えば今,話が出ました「多数の者がその危険に応じて」といったところも,細かい話ですが,「その危険に応じた保険料」という言い方も考えてみたのですが,何かやはり「応じた保険料」というと,今おっしゃったようにリスクに応じた保険料を非常に厳密に算定したものだけがあたかも当たるように読めるような気もしまして,それよりは「その危険に応じて」とした方が若干,そこもぼけるかなと,気分の問題なのですが,これはまさに先ほどの事務当局の説明で申し上げていましたように,いろいろ御意見をいただいてなお考えたいと思いますが,一応,この文章でもその一文字も含めて検討したものであるということで御意見をいただければと思います。 ● ○○委員。 ● 保険とは何かというのは,保険を勉強している者としていつも考えている一番重要なところなのでとても難しいことで,ましてや保険法の適用範囲を定めるだとか,保険の定義というのは本当にすごく難しいことだと思っています。   ただ,ここで指摘された機能論として保険の最も強いところというのは,プーリング・アレンジメントによるリスクの軽減の機能,これは他の金融機関等と比べますと,ここにある意味で保険の主要な機能があると。そういう意味では,この条文に関しては合意するところであるのですが,ただ,保険会社といえども,リスクに対してはさまざまな手当てを実際にはしているわけで,このことは12頁の(補足)2で,「基本法である保険法では大数の法則を基本的な要素として考えることが分かりやすく,それで足りるとも考えられる」とあるので,この点は譲ったとしてよいとしても,ただ,保険の仕組みをここの定義のように考える場合に,二点ばかり不都合が生じないかという点がございますので,それについてちょっと意見を述べさせていただきます。   近代保険というのは,御承知のように前払確定保険料主義を採っておりますので,通常の予想を超える損失に対しては何らかのバッファー,株式会社でいえば資本,相互会社でいえばリスク・マージンなり,それを持っている必要があると思います。それがこの条文の規定ですと余り見えてこない。つまり,この仕組みですとかなり前近代的な相互会社的なイメージあるいは共済組合的なイメージが前面に出てきまして,近代保険会社にとって重要な資本の概念というのが見えてこないというのが一点目の不安でございます。   二点目は,この仕組みですと,例えば付加保険料を構成する要素が,多分保険を管理するコストだけが付加保険料という認識になってしまうと思いますが,実際には先ほど申しましたように資本のバッファーというのが必要ですので,我々はプロフィット・ローディングなどと言っていますが,付加保険料の中に当然あるべき資本的なコスト,もうちょっと具体的に言いますと,保険会社も資本が必要ですが,投資家が保険会社にも投資できるし,ほかの投資信託にも投資できるとしたら,わざわざ保険会社に投資しなければいけない,そのために,やはり資本調達コストというのは必要なので,それは当然にして付加保険料に組み込まれると思うのですけれども,その部分が見えてこないというのが,これが二点,不安でございます。   ただ,他方で何らかの形で保険の意味を明確化しなければいけないということ自体については,私も重要性はあると思うのですけれども,この辺,では対案はどうかと言われますと,今のところないというのが現状でして,とても難しいなという気がします。また,もう一つだけ最後に付け加えたいと思うのは,今,保険と金融というのはとても融合しつつある,しかも「ing」で変化している状況です。こういうときに,50年とか100年のタームで考える保険法で,保険の意味をかなりきつくしてしまうのは若干危険かなと思っております。具体的に言えば,例えば最低保証付き変額年金という商品がありますが,その商品は商品自体の中にアクチュアリアルな大数の法則に基づく保険数理の部分と,最低保証の部分のデリバティブなオプションによるプライシングの部分とを含んだハイブリッドの商品ですね。しかも,最低保証付き変額年金のリスクはどうやってヘッジしているかというと,大数の法則よりもむしろデリバティブでヘッジしていると。では,これは保険ではないのかとか保険なのかという,これが現時点ではなくて,こういった融合がどんどん進んでいる中で,果たしてどういうふうにしていくかというのは難しい問題だと。ちょっと問題提起だけで代案がないのは申し訳ありませんが,私の感想でございます。 ● これは必ずしも条文をつくるという前提だというわけではないということで,基本的な考え方というのですかね,ということなのですが,確かに,それでもこういうさまざまな要素で定義にはなるわけで,基本的な考え方が定義されているわけで,そこでやはり何を盛り込むかというのは非常に問題はいろいろあろうかと思いますね。   ○○委員。 ● 二回ほど第一読会と第二読会の最初にちょっとお時間をいただきまして,基本的な共済団体としての考え方を述べさせていただきました。繰り返し申し上げませんけれども,今日,御提起をされた内容というのは二回申し上げた内容について,○○委員も含めて第二読会の中で一定議論をしましょうということの第二読会の最後に今日は当たりますので,そういうことで議論がテーマとしてなったということについて,御礼を申し上げたいというふうに思います。   なかなか理屈でいいますと保険と共済は同じなのか違うのかというのは,最初,先生が哲学的なお話というふうに申されまして,非常に経済論だけで申し上げますと一定の方向性は出ると思うのですけれども,その裏打ちの根拠法が持っております協同組合の性質から議論し出しますと,なかなか,こういう場では結論が見出しにくいのかなというふうに思いますので,余り,そういうところに触れたくないなというふうに考えております。   今日の提案内容で本文の方から若干意見を申し上げますと,中段の方で「保険,共済その他名称のいかんを問わず」と,これは意味するところはよく理解できるのですけれども,諮問事項にもありましたように,契約の類型として,言葉の使い方なのでしょうけれども,そういう言葉の使い方もあるのかと。つまり,保険契約,共済契約という例としていいますと,契約法ですから契約という言葉を使わないといけないのでしょうから,そういう整理もできるのかなというふうに一点思っております。   それから,では,どういう定義の仕方をするのかということにつきまして,保険の定義も当然ここに記載がございますように商法上もされておりません。共済の定義につきましてもいろんな協同組合法の中でも共済の定義というのはされておりません。したがって,保険の定義をしていただきたいというふうに言いますと,共済の定義はどうなのですかということになりますので,一般的に使われている言葉ですから,あえてそこまで議論するのは結構なのですけれども,結論を出す必要はないだろうというふうに一つ考えております。   それから,○○委員から発言がございましたけれども,やはり一番の関心事というのは契約法上の中では共済という冠をつけたものというのは非常に多いわけですね。私的なものということが解説でありますけれども,その範囲をきちっとやはり整理をするということが必要だろうというふうに考えております。協同組合法に限らず,いろんな他の法律にも共済という冠をつけたものがございますし,それから労働組合等でもその種の契約も存在しますし,やはり,取扱いについて今後の検討の中で範囲を定めていただくということが,必要ではないのだろうかというふうに考えております。いろいろ課題といいますか,検討する項目は多いかと思いますけれども,今後とも十分にこの場におきまして,全体として御理解が得られるような整理ができればいいのではないかというふうに考えておりますので,よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● 今回のこの定義を拝見させていただきまして,12頁の(補足)2のところで書いてあります大数の法則の方で一応定義すると,「多数の者が」ということを要件に入れたわけですが,○○委員と一緒に苦労しました1995年の保険業法の改正のときに,結局,保険業法では第3条等のところで「多数の」というのを保険の言わば要件から外したわけで,そのときの外した経緯がまさにここに書いていただきましたような人工衛星保険などをカバーできないということが直接的な動機で,「多数の者による」というのを外したのですね。それについて,保険契約法ではこの「多数の者が」というのを入れるという,恐らく今いろいろ議論になっておりますような共済等をお考えになって,特に少額短期等にも入らないような,いわゆる純粋な意味での共済等のことを考えて,こういう定義をお考えになったのかと思うのですけれども,それはそれとして,そうなると現在,保険会社が保険として扱っている中で,まさに人工衛星保険とか,ここに書いてありますようなモデルの脚の保険ですか,そういったものが少なくとも保険契約法上の保険の定義からは外れるということになる。   多分,そういったものについては,大部分はそうなると保険契約法が適用されなくても,個々の契約でかなりカバーはできるのだろうとは思うのですけれども,一方で,例えばその他の第三者との関係に関する規定とか利得禁止とか,そういう言わば強行法的なところをどうするかという点,そこまでは要らないのではないかとも思いますが,そこら辺,特に第三者との関係とか,契約の中でカバーし切れない部分がこういう契約については保険法の規律を受けないということで問題がないかどうか,そこの検証をしていただいたかどうか,その点を教えていただければと思いますが,いかがですか。 ● その点はまさに問題だと思っておりますので,ただ,そこが典型契約ということで,あとは類推適用だということでは駄目なのかどうかが議論の対象かなというように思っています。 ● 「多数の」と書いてしまうと,本当に多数いないと保険でなくなるみたいな,人工衛星保険については10年前にはそんな議論をしたのですが,人工衛星も増えているし,ここは現実に多数いなければ,では,保険でなくなるのかというよりは,もうちょっと,事務当局はどう考えているか知りませんが,私個人としては潜在的に多数になり得るものがあれば,それで足りる程度でいいのではないかなと思っていますけれどもね。 ● むしろ,法文に書くときはそういうことになるのです。 ● 法文にそこまで書くかどうか,書くという前提でここはまだ議論しているわけではないのですね。そこはだから余り過度に考えてしまうと身動きならなくなるので,そういう面も合わせて何か本当に保険の定義まで,この際,欲張って考えるかどうか,そのあたりも考慮する必要があるかと思うのですが,○○委員から先に。 ● 人工衛星は多分計算するときに将来を見てやっているわけで,別に数が少ないかどうかは関係ないのだと思います。それはちょっと別として,○○幹事がおっしゃったことでちょっと問題点を提示させていただきたいのですけれども,要するに我々が言うと法律概念の相対性ということで,保険法で仮に定義を置いた場合の保険の定義と,保険業法で仮に定義を置いた場合の定義は当然,法目的が違ってきて,片一方は監督の網をかぶせるということで,こっちを権利義務関係を,要件と効果ということですが,当然,どうもこちらが広くなりそうだと。   もしそうだとして両方に定義が置ければいいのですが,置けないとなると両方ともやめるのかと。そうすると,これはいろいろ検討した上で立法者意思として国会で答弁するとか,そういう形で記録に残して,日本の法制上は立法者意思は尊重されるけれども,拘束されないという前提だと思いますから,そういうあたりでねらうと,そのあたりをねらっておられるのかと。それはそれで私はいいのではないかと。本当は両方定義ができればいいのですけれども,とにかく,こういう定義をパブリック・コメントに出して,いろいろこういう点は都合が悪いという意見をいただいても,監督法上の関係は解決しないわけですよね。だから,どうもイメージとして私は何かそういう方向でもいいかなと。   ただ,その場合,重要なのは今度は大分前に○○委員がおっしゃった名前の問題で,そのときはやはり保険共済契約法とか,要するにだれのために,そこの契約が適用されるかということははっきりしていかなければいけないと。そうする以上はそうしないと,やはり法の目的は達成されないと思うのですね。だから,一応,そういう仕分けをして考えればいいのではないかという意見なのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 私も今回,基本法で保険の定義を置く努力はした方がいいかなと思っております。それで,大体,今回御提案いただいたところで割としっくりいっているのですけれども,それで保険とは何かというのを基本法で言うときに,保険契約が他の民法上とかの契約とどういう違いがあるかというと,やはり,大数の法則というところではないかなと思うのです。払った保険料がいつか何かが起こったときに,そのまま返ってくるというのではなくて,契約の締結時に発生するか分からない事故について,又はいつ発生するか分からない事故について,それが生じたときに,その事故によるリスクを大数の計算に基づいて補ってもらうという,そういう仕組みがあるのが保険だということかと思うのです。   そうすると,そこからどういうことが出てくるかというと,まずは危険の分散ということになるので,生命保険とか定額保険であっても余りに高額であると,それは危険の分散ではなくなって不当な利得ということになって,そこも実損てん補ではなくても,おのずと制限が出てくるでしょうとか,それから,あとは人工衛星1機だけかということは,あと可能性とどういう議論をするかということもありますけれども,一定の不特定な人又は特定でも構わないですけれども,リスクを負うかもしれない人たちが危険を拠出して,その基金を保険者の方で運営して事故が起こったときに,保険数理に基づいて支払をするということなので,そうすると保険数理ということが保険契約基本法の中では,先ほどは書き下せるかどうか分からないというふうに申しましたけれども,保険契約というものの中ではかなり重要な位置を占めるのではないかなと思います。ですので,御提案いただいた最後の締めのところで,私人間の仕組みというのがまずは私人間というのは先ほど○○委員がおっしゃいましたけれども,その契約を国とか地方公共団体が結ぶのであれば,それもやはり保険でしょうという。   仕組みは二当事者間でされるわけではなくて,むしろ,保険者がそういう仕組みを運営する,保険者によって運営される仕組みで,ここまで言い切っていいか分からないのですけれども,13頁の方の下から7行目あたりに,保険の仕組みや保険数理等に関する情報量に格差があるというこれも,やはり保険契約の特徴ではないかなと思います。ですので,一部の共済とかでやはりそれが保険だという場合には,一定の公正な保険数理というのが適用されて運営されているものであるということが必要な要件になるかなと思います。   それで,そういう確率的な仕組みなので,どうしてもモラル・ハザードをちょっとかけようかという賭け事的な心が生じてしまいやすいところを,損害保険であれば実損てん補ということで区切ったり,他人の生命の保険であれば承諾というもので区切ったりという限定を付すということも,基本法の定義からの帰結が出てくると思いますし,それから,一人のリスクを一人が負うわけではないという分散をするということによって,見舞金程度のものだったら,リスクの分散とまでは言いませんねと,それとか積み立てていたお金を返すぐらいであれば,リスクの分散ではないですねということになって,保険の契約の定義から抜けるので,例えば幼児に対して同意を得ないで少額の金額を返還してもらうような契約であれば,同意は不要ですというような結論も出てくると思うのです。   そういうばくっとした定義を今回つくれば,今度はそれで,ただし,業法上は規制をする必要はないということになったら,同じ定義を使いつつ,ただし,業法の方ではこれこれの場合は適用除外するというふうにする方が整理がつくかなと。これは信託も今回の改正で,こういう信託の場合は委託信任関係というものがあったら,それで財産権が移転して目的的拘束があれば知らないうちに信託が成立していましたということに,これからはなると思うのですけれども,そのような行為を業として行えば,今度は信託業法の適用の範囲になって,あと適用除外はどうなるかというような発想かと思いますので,保険の方でも基本法で保険とは大数の法則によって動いているリスク分散の仕組みですよというふうに定義して,それで,あとは業法で,その業法上の規制を除外するものはどんなものかというふうに,整理していくことが可能なのではないかなと思います。 ● ○○幹事。 ● 保険の定義あるいは保険,共済の定義の中に,保険数理を盛り込むかどうかという点に関して,ちょっと私は今の○○幹事とは異なった意見を持っていまして,どちらかというと○○幹事のお考えに近いかなと思うのですけれども,やはり,危険に応じて保険料を拠出,これは「応じた」ではなくて「応じて」という点で注意されたということですけれども,しかし,この文言が入っていると,メルクマールとしてはかなり重たいと思うのですね。   保険数理に基づかない,いいかげんな保険料計算で契約者を募集して何か保険事業をやったという場合に,類推適用は可能であるということは,もちろん事務当局からそういうお考えを示されていますけれども,しかしながら,このようなメルクマールがあった場合に,これに外れるようなものまで本当に類推適用できるのかというと,やはり,そこのところは非常に気になるところでありまして,平成7年の保険業法改正でも,それから少額短期を入れた業法改正のときにも,保険数理というのは入れなかったのですね。それは,やはりいいかげんに保険事業をやればやるほど,保険監督を免れるというのはおかしいだろうということだったと思いますし,今回の保険契約改正はやはり保険契約者保護ということが重要な柱になっていますので,保険料計算は多少はいいかげんにすれば,それで保険契約法の適用を免れるというようなことには,やはりなるべきではないと思いますので,したがいまして,保険数理をやや全面に出すような形の定義というのは,もう一度お考えいただければというふうに私は思っております。 ● 業法の新しい改正をやったときの考え方は,まさに○○幹事,○○幹事がおっしゃったようなことだったのだろうと思いますね。やはり契約者を保護するためには,そういうことが必要だと,多少広目に網をかぶせることが必要だということだったのだろうと思います。   どうぞ。 ● 私もそのことに賛成なのですけれども,ただ一つ留保しておきますと,業法の第3条第6項は保険数理という概念を要件に使っているのですけれども,実際上,保証証券業務をやるのが保険会社以外では金融機関だということを前提にこれを入れているので,実質上,それで問題がないということで保険数理という概念を要件に使ったということかと理解しています。 ● 私個人,この定義をあらかじめ見てちょっと気になったのは最後の部分で,保険による給付の内容というのが割と無色に書いてあるのですね,金銭の支払というのが。普通,保険の定義というのは昔からあるものは基本的にはやはり損害のてん補で,定額保険もあるけれども,あれも全く純粋のお金を払っているわけではなくて,無色のお金を払っているのではなくて,経済的には損失の補てんというか損害てん補の機能があった,それは厳密に損害額は算定しないから定額にはなっているけれども,機能的にはやはり損害をてん補するという要素,保険給付の要素を何か盛り込んでいるのが普通の考え方ではないかなと思っていたのですけれども,このあたり,先生方,いかがでしょうか。余り,そこで厳密に書いてしまうとまた逆に損害てん補的でないものは自由に,勝手につくっていいのかという,それはまた別問題で,本当に保険とは何ですかと言われると,やはり給付の面で非常に特殊,経済的な不利益をカバーするという,そういう特徴的な面があるのかなと思って見ておったわけですが。   ○○幹事。 ● 今,○○委員がおっしゃった点は,本文でしたら4行目になりますか,「危険に備えるために」という文言が入っていますので,これで今おっしゃった意味合いを込められたのだろうと,そう解釈しまして,給付のところはそうであればいいかなという理解でした。 ● 私もどうしてもこれで読めと言われれば,そういうところで読むのだろうなとは思っているのですけれども,まさに先ほど○○委員が御指摘になったような保険デリバティブというのは,どういうふうに区別するかということで,これだと保険デリバティブでお金を払うというのも,この最後の部分には該当してくるので,では,どこで該当しないかといったら,多分,「多数の者」が云々と「その危険に応じて保険料を拠出し」,ここのメルクマールが備わっていないという整理になるのだろうなとは思うのですけれども,これは,先ほど○○委員が言われたように保険とそうでない金融との実質的に使っているテクニックというのが,どういう区別があるかよく分からない流動的な部分があって,そこではっきり区別できるかという問題で,恐らく外国の一般的な考え方で保険デリバティブと保険というのは何で違うかといえば,やはり損害てん補かどうかで一応区別するというのが一般的な考え方かなというふうに思っているところです。   どうぞ。 ● 私も保険デリバティブと保険の区別をこの考え方でやらなくても,損害保険契約について別途定義があると思いますので,そこで損害てん補目的というのをある程度書くことによって,ここには当たるけれども,そちらには当たらないと,そういうことでいけないのかなと思っております。それで,ただ,実質的に考えますと家計保険分野について,デリバティブの仕組みで参入した,例えば証券会社ですとか投資ファンドみたいなものについて,外見上,ほとんど保険と同じように売られるにもかかわらず,全く適用がないというのは多少問題がある。生命デリバティブとか傷害デリバティブみたいなものが商品化できるとしたときに,本当に生命保険法とかの規律が要らないのかということについては,問題があるかと思っておりますので,私はデリバティブがこちらに混入することについて余り抵抗はない。強行法規としてかかるものがそういう実際にニーズがある企業保険分野なので,保険デリバティブになっているときに,これがかかってきて,それが足かせになるということがないようにしてあれば,いいのではないかというふうに思っています。 ● ありがとうございます。   ○○委員。 ● 一点質問なのですが,よく多分分かっていないからこういうことになるのですが,オルタナティブ・リスク・トランスファーで,つまり証券市場で地震リスクをヘッジしていると。これはここに入るのですか。全然ちょっと取っかかりが分からないので,そういうものはやはり対象外という前提で考えておられるのですかね。よく分からないものですか。 ● 対象外と考えておりますが,でも,対象外と考えるのが果たしていいのかどうか,今,○○幹事から御指摘があったように,そこもよく分からないところではあります。 ● これは考え出すと,結論はそう簡単に出ない。 ● プロ中のプロ同士の最先端の勝負だから,放っておいてもいいという考え方はあり得るかもしれませんね。 ● どうぞ,○○委員。 ● 今のARTに関連してですけれども,多分,社会的な観点からリスクを減らすというのは二つしか方法がないと思うのですよね。一つはプーリングによって期待値周りの変動を減らすか,あるいはさまざまな異質なリスクを組み合わせると,ポートフォリオでリスクが減りますよね。もし三番目があるとしたら,損害自体を小さくするような安全活動とか,そういったものはありますけれども,二つしかない。そうしますと,ARTみたいなのは,むしろプーリングではなくて,市場を通して異質なリスクを組み合わせることによって,あるいは投資家にリスクを売ってしまうことによって分散するということだと思うので,そうしますと,扱うリスクの性質というのが大分違ってくると思うのですよね。多分,リスクはいろんな損失分布があると思いますけれども,保険の場合は一番得意にしてきて,ここは譲れないというのは純粋リスクで,普通は余り起こらないけれども,いったん起こったらものすごく被害が大きいですねと,これは昔から得意にしてきて,ここでこそプーリング・アレンジメントのリスク軽減が効くわけなのです。   だけれども,ARTの場合,もうちょっと市場リスクだとか信用リスクだとか,ちょっと損失分布とは違う,ある意味では逆のポジションをとったらリスクがなくなってしまうような性質のリスクで発達してきたわけですので,それぞれで何か背景となるリスクによって得意,不得意があって,それをどう,何かこういう規定に読み込むかということなのですけれども,先ほどの地震リスクでもちょっと最近読んだ論文で誤解があるなと思ったのは,ARTの地震リスクというのは,例えばディズニーランドのシンデレラ城の直接損害に対する地震証券ではないのですね。地震があった場合の利益の変動に対してヘッジするもので,それは,むしろ伝統的な保険会社の純粋リスク,直接損害よりも間接損害ですから,どちらでもできる領域なのですね。そういった形で特質がおのずからある程度は住み分けられているので,どこか,その辺をうまく利用して線引きができないかなと個人的には思っているのですけれども,なかなか難しいところだと思います。 ● ちょっと,もう一個,問題がございまして,先へ行きたいと思いますがよろしいでしょうか。   11頁の(問題点)の方なのですが,努めるものとするみたいな規定を保険の特質に照らした努力規定みたいなものを置いてはどうかということなのですが,このあたりはいかがでしょうか。   ○○幹事。 ● すみません,ちょっと先ほどの続きも出てきてしまうのですけれども,保険の定義を置いたとして,そうすると一対一の契約と違って多数なのか,潜在的多数なのかのリスクを負担する可能性のある人が基金を拠出して,それで保険者がその基金を運営して,現実にリスクが生じた人に分配するという,そういう仕組みだから,おのずと信義誠実というのが一対一のものではなくて,事故の情報が偏在している保険契約者の方は告知義務から始まって,通知義務,説明義務,損害の発生防止義務とか,そういう義務があるということと,あとは保険の運営者である保険者というのは保険金の支払の時点において,この仕組みは保険数理としてはこういうふうに計算されているものだから,解約の場合には返戻金はこのぐらいですとか事前に説明するか,又は保険金支払のときに,あなたはこういう保険金も請求できますねということを促してあげるという,やはり,多少違う義務が契約の当事者として生じるので,何らか個々の部分で書いた方が私はいいのではないかなと思うのです。   というのは,保険とは何ぞやというのがやはりこうやって議論になっていますし,一般の消費者の人でも分からないので,信義誠実にともう一回繰り返したところで,その義務のというのがどれだけ民法の一般則と違うのかというのは,多分理解が得られないと思いますし,そういう意味でいうと,先ほどのちょっと訂正というか,過去の保険の定義をあきらめたという経緯というのがそういうことだということをちょっと私の方が余り実感していなかったので,ちょっと私の方の誤解もあったかと思うのですが,保険数理というものが重要だというのは,そうやってリスクが起こる確率のある人からお金を集めて保険者が運営するということは,やはり,そこの計算というのは非常に重要だという,あたかも会社の計算が重要だということが契約のどこかの部分で出てきた方がいいということで,だから,それは公正な保険数理に従って何々するという規定が,定義規定ではなくても,どこかの条文で出てくればいいと思いますし,そうすると,例えば会社の計算が重要なときに,会社の定義のところで計算ができていることということは定義には入ってこないということなので,保険の定義の中に保険数理によって運営されたというところまでは出てこなくて,そういう不特定多数の人,同じ種類のリスクを負う可能性のある人から基金の拠出を受けて,その受けた者が管理運営して,保険事故が発生した人に給付する仕組みということが定義になって,そのような保険を運営する者は公正な保険数理に従って運営しなければならないというところぐらいまでが基本法になって,あとは業法の方でもっと細かな保険数理というのはどういう人がチェックするものだとか,どうやって開示しなければならないとか,そういう規定になるのではないかなと考えています。 ● ○○委員。 ● この(問題点)にある規定を置くことに私は反対したいと思います。   この規定の趣旨が書いてあるのが13頁の一番下の「例えば」というところなのですが,反対の理由の第1ですが,信義に従い誠実に行動すると述べてはいますけれども,その内容は「不法な目的で保険契約を締結しないことや,契約締結に当たって必要な情報を提供すること,保険事故発生後に必要な協力をすること」,これはみんな契約者の義務ばかりで,これでは保険契約者は浮かばれないというか,契約締結に当たって保険会社に対してこのような誠実義務に従って行動する義務を課す。保険会社の方がこういう義務も負うという話がどうして出てこないのかと。   それで,誠実義務というと保険法学者はイギリスの海上保険を思い浮かべるのですが,企業保険においてすら伝統的なこういう義務,告知義務に関する法規をそのまま適用すると,引き受ける方にも相当問題があったのに,事故が発生した後でいろいろ言われて,不当な抗弁を許すだけだという議論は非常にイギリスでは強くて,企業物件ならぬ個人物件ではいわんやということになるわけで,やはり,割引制度の存在を分かりやすく説明する義務とか,同じ担保内容の保険で,しかしこちらの方が安いという商品を勧めなければいけない義務とか,特に将来的には銀行などの窓販でそれも含めてですが,代理店手数料を開示する義務と,こういう義務には全然触れられていないわけですね。ですから,保険料の取過ぎの問題とか保険金の不払の問題というのはどこへ行ってしまったのかと。こういう包括的な義務を規定するというとき,昔,会社法で企業の社会的責任について置こうかという議論があって,そのときもそうだったのですが,それと同じ理由でやはり効果を書かないような規定は,基本的には置かない方がいいというふうに私は思います。   ただ,ここでこの文章を見ていて思ったのですけれども,今,ドイツでいろいろ改正作業をやっていて,私はそんなにドイツ語は得意ではないものですから,完全にきちっと把握していないのですけれども,でも,助言義務とか情報提供義務とか,いろいろ消費者側の観点から導入すべき点が議論されていて,私どもの今改正を検討している保険契約法は19世紀末ですけれども,その当時ですらもう時代後れと言われたプロシアの保険法を取り入れて,その後,非常に苦労しているわけですよね。今のドイツの保険法と比べて,どうもこのままで終わってしまうと,何かすごく消費者保護という観点だけから見ても差があるままで終わってしまうような感じがして,もうちょっとそのあたり,まだ半年以上あるわけですからお考えいただけないか,また,もし研究者がそういうのを提案するのが責務だというのであればやりますけれども,この御提案を見てつくづく考えたのはそういうことなのです。   以上です。 ● ○○委員。 ● くしくも全く同じ意見でございまして,最初にこれを見せていただいたときには,信義則をそうやって保険契約は大変複雑で難しいものだけれども,皆さん,つぶつぶの総保険契約者の立場で見ると衡平な扱いをされて,透明な支払がある必要があるから,これでもいいのではないかと思って見ていたのですけれども,きちんとまじめに読んだら,例えば,こういう努力義務というのは何か第一読会のときにこれが出てきたかなというのが実はありまして,努力義務という形でこういうのを入れた,協力義務というふうな努力義務を入れた動機というか発想というか,その辺がどこにあるのだろうという気が実はありまして,これを基にして例えばいろんな消費者側に課せられている義務が,それの根っこのところにこれがありますよというふうに置かれたら困ると。   他方,今,○○委員がおっしゃったみたいに,例えば保険会社の方で募集を適切に行うとか,説明をきちんとやるとか,保険金をきちんと払うとか,そういう部分は契約法の範ちゅうではありませんよといって,ぱんというふうにのけられているのにもかかわらず,こういう形のざっくりとしたものだからいいではないですかというような形ではあっても,こういう当事者間の衡平を図るために必要があるときにはどうのこうのというのが出ていると。ここで言っている当事者間というのが契約者と保険会社のことを言っているのだとすれば,対等な関係にちっともないのに,何でこんなものを求められるのかなと。   大きい保険会社と個々の保険契約者では,消費者契約法のを全部持ってくるわけではありませんけれども,ちっとも対等ではないのに,何でこんなことを言われなくてはいけないのかなと思うし,これが当事者間,個々の保険契約者間の衡平ということでおっしゃっているのだとすれば,互いに協力するようにといったとしても,隣の人にだれが入ったか分からないのに,協力のしようがないという部分もありますし,そういう意味ではこの「当事者間の衡平を図るために必要があるときは,互いに協力するよう努める旨を定めることが考えられる」云々というのは,一体,何をどこまで目途してお書きになったのだろうなという部分が大変疑念がふつふつとわいてくるという部分がございまして,こんなものを入れなくてはいけないのかなという気が正直いたしております。 ● ○○委員。 ● 私は消費者が保険契約というものについて,システムも含めて知らないというのがものすごく今回,委員になって感じたものですから,そういう面で契約当事者全部に努力義務があるというのはいいことだと思ったのですね。ところが,文章を読んでいくと,今まで出ていますように何か事業者のことは全然なくて,消費者保護と言いながら,それから保険者に悪意又は過失があった場合云々と言いながら,後ろの方は消費者の義務だけ言っているというのが,消費者契約法の努力義務はいつの間にか消費者の努力義務になってしまったのかなという感じがするのですよ。だから,むしろ,これをお書きになるのであれば,事業者の方のいわゆる努力義務ではなくて本当の義務という形で,並行して書いていただけるのであれば仕方がないと思うのですが,ただ,私がお願いしたいことはやはり消費者が保険というものを知るための,そのためには何らか,そういう努力義務というのは入れていただく分にはいいのかなというふうには思います。ただ,このままではちょっとという感じです。 ● 事務当局のどうも説明文が契約者側の言い分的なことばっかり並んでしまって,今,評判が悪いのですが,趣旨は両当事者に誠実に行動しなさい,保険の特質に即して行動しなさいよということですから,当然,普通の消費者契約法等で問題となっている情報格差というふうな問題はあるわけですから,そういうことを踏まえて,保険者側も誠実に行動しなければなりませんよという趣旨を含んでいるものというふうに私は理解しているのですが,どうですか。 ● 今,適切に補っていただきましたけれども,今の書き振りであるいは(補足)の説明で反対されるということであれば,そこはこちらの至らないところですので,その心はどこにあるかといいますと,以前,○○委員からも御指摘ありましたけれども,保険には保険のまさに特質というか特殊性があるわけでして,一対一の契約で確かに消費者保護が大事なのはそのとおりですけれども,では,一対一の関係と見て,ある契約者から何か言われたときに,その契約者だけ保護すればいいかというと,それで保険の健全性というか,それが崩れてしまっては,もともとの制度が成り立たないという大きな問題も控えているということがやはりあるだろうと。それが規定上も何らかの形であらわれている方がいろんな場面での解釈のよりどころにもなるし,あるいは規定としては置かれていない問題について考える上でも,考える方向性を示すことになるのではないかといったことから考えたものでして,○○幹事から個々の規定で書けばいいのではないかという御指摘もありましたが,個々の規定で書き切れないところも多々ありますので,その受け皿ともなるのではないかと。   また,定義ですべて言い尽くせるかというと,そこはそもそも定義自体が置けるかという難しい問題が先ほどの議論でもありましたとおりで,その意味ではいろんなよりどころというか,手掛かり,足掛かりとしてあってもいいのではないかということで,文章が至らないところはさておき,(問題点)の3行目に書きましたとおり,まさにこちらが意図していますのは「互いに」というところでして,あるいは(補足)の説明ではちょっとインパクトが弱かったところではありますが,13頁の下から2つ目の「さらに」のパラグラフで,保険者のところも意識しているつもりでおりまして,決して半端なことを考えているわけではないということでございます。 ● ○○幹事。 ● 「互いに」ということが思想として入っているのであれば,やはり保険者側に具体的にこういう義務があるということの具体的な規定にも,それが反映されているということでないと,お題目にすぎないという可能性がやはりあり得るということが一点と,それから,こういう規定のもともと我々が念頭に起きますのはイギリスの海上保険法で最大善意契約とかというのがありますけれども,あれは○○委員を初め,こういうことをもっと詳しい先生はたくさんおられるのですが,私の理解するところによりますと,イギリスでは,コモン・ローではそもそも信義則というものは昔から認めていない,契約というは当事者間の交渉によって,交渉した結果を契約内容に定めることによって,最も効率性が保たれるという考え方があって,大陸法的な信義則という考え方はコモン・ローでは知らないというのが原則で,その例外として保険契約についてはさすがに不都合なので,そうではなくて信義則というのが要るのですと。そういう形で最大善意契約というのをわざわざ規定に置いたという経緯があったのだろうと思います。   現在は,コモン・ローの国でも信義則というのは契約法の一般原理として入るのではないかという議論があるようですが,それが入ってきたときに保険法における信義則というのは,それと異質なものとして観念されているのか,それとも保険法はほかの契約類型に先駆けて,そういうものを認めてきたという形で整理されるのかについては,コモン・ローの契約法の理論でもう少しやはり様子を見ないといけないのではないかという気がしておりまして,我が国の現在の判例法理で信義則の使われ方を見ておりますと,わざわざ改めて規定をしなくても,民法の信義則を保険の場面で十分に活用していただいているのではないかという気がいたします。 ● ○○委員。 ● 保険契約は保険会社と契約者だけではなくて,被保険者とか保険金受取人とか,非常に数多くの方々が参加して,やはり,保険というシステムを関係する皆さんが一緒に育てていって守っていくのだということ,そういう趣旨からいうと,私はそういうふうに理解しているのですけれども,この(問題点)に書いてある内容については精神規定的になるかもしれませんが,非常に大事な,もちろん保険者にも義務があるし,関係する契約者,それから被保険者,保険金受取人,それぞれがやはり誠実に対応するということをどこかでうたうべきではないかな,それが非常に意味があるのではないかなというふうに思っております。 ● ○○委員。 ● 私も基本的には○○委員に賛成なのですけれども,保険というのは先ほど申しましたように純粋リスクを扱っていますから,いったん起こったら,かなり大きな損害を被っていると。そこがメーン・フィールドだということですので,ほかの契約と比べて例えばリスクを市場で処理するような契約を整えて,より信義則というのは大切ではないかと。それがある意味での区分になるかどうかはともかく,特徴ではないかということで,何かうまく書き込んでいただければと,意味があるものではないかと思っております。 ● では,○○委員から。 ● 保険の特殊性とか保険契約の関係で民法の信義則を具現化するという趣旨は理解しますし,よく分かるのですけれども,一方で置く場合と置かない場合で,何か具体的に変わることがあるのかというのがいま一つ分からなくて,別に置くことがおかしいとか言うつもりは全然ないのですけれども,置かなかったときと置くときと,例えば,これまで個別にいろんな議論をしてきていますよね。ああいう議論と別にまたそこで置かれることによって,例えばどういうところに,どういう影響が出るのかというのがいま一つよく分からないところなので,ちょっとそのあたり,何か,例えばこういうところをこう認識しているとか,例えば,効果が民法の信義則だけであれば,それが援用されるわけですから,あえて置かなくてもいいという考え方もありますね。ただ,精神的に置いておく方がいいのだという,要は精神論的な観点なのか,いやいや,具体的に例えばこういうのだと民法ではなかなか規定し切れないので置くのですということなのか,趣旨を全然否定するものではないのですけれども,その辺がよく分からないというのが正直なところなのですけれども。 ● 今の御指摘はまさに(補足)のどこかにも書きましたけれども,このような規定,一般的,抽象的な規定をそもそも置けるかどうかという問題になりますけれども,そういう意味では直接的な効果を定めたものではありませんから,近視眼的に何か変わるかと言われれば,変わらないという多分お答えになるのだろうと思います。ただ,長い目で見たときに,その保険の特質をまさに表現した規定があるかないかといったときに,保険法にそういう規定があることによって,恐らくいろんな派生効果は出てくるのではないかな,波及効果はあるのではないかなというように思うのです。   それが,ですから要件効果という意味での直接的な効果ではありませんけれども,保険というのはそういうものなのだなという前提で,まず,保険法の分かりやすさというところにもつながるだろうと思いますし,あるいは,まさにこうこう,これから置かれるかもしれない,あるいは置く方向で検討している規定の解釈,例えば,先ほどから契約者側に何もいいことがないではないかという話がありましたけれども,仮に告知妨害の規定が置かれるとした場合には,その告知妨害で恐らく法律で書ける要件とか効果というのは,ある程度明確なものでしか書けないと思いますけれども,そこの例えば告知妨害の主体の範囲を考えるときに,一体何をよりどころに考えるのかといえば,例えばこういう規定があれば,こういう規定をよりどころに告知妨害の主体の範囲について解釈に残された問題については,その解釈の一定の指針を示すとかいう意味は,恐らく持たせられるのではないかというように思っています。 ● では,○○委員。 ● 規定を置くことについて賛成をしたいと思います。   一つは,その前段の議論にありましたように共済の場合,経済活動を当然行っていますけれども,その裏打ちとして一定の倫理観をいうのを持っているということが前提になっておりますので,そういう意味で新しい法律の中に,その種の倫理観をきちっと入れていくということは,やはり必要だろうというふうに,一点目は考えております。   それから,二点目に日本の法律の世界ではありませんけれども,全体の状況を見ますと,非常に倫理観に欠けた経済活動が間々たくさん見られます。そういう意味で,新しい法律の中にやはりきちっと入れていくということの必要性はあるのだろうというふうに思います。   三点目に,議論がありましたけれども,保険の特殊性といいますか,かなりの高額な実際には保険金なり共済金が支払われるということについて,やはり契約者,事業者,一定の倫理観を持った活動をきちっとしなければいけないと,権利と義務がきちっとあるということをやはり明確にうたっていくべきだろうというふうに私は思っております。   以上です。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 簡単に。私の考え方は○○委員がおっしゃったのと同じような問題意識で,また,○○幹事がおっしゃったのと非常に共通するのですけれども,まず,効果の,こういう規定を置くことの意味というのが見えないわけですから,多分,現時点でどうしても置く必要があると思っておられるわけではどうもないのではないかと思うのですけれども,基本はまず要件と効果をしっかり書くと,この後,ほかの規定も全部そうですけれども,それでも何か必要だというときには,こういうことを考えてもいいと思いますけれども,どうも今の段階でいいとも悪いともなかなか言えないと。この規定,一応,もう少し姿が見えた段階でこういう規定を置くと,その結果,やはり契約者ばかりに言われてもここは困るわけで,また,保険会社ばかりすごく非現実的な責任を負わされても問題だと思いますし,やはり合理的なものはあると思いますから,そこで,例えば告知妨害はそういうことはあり得るということはおっしゃるとおりですけれども,もうちょっと後でゆっくり考えるというのが一番いいのではないかなというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 私は一般的規定でも置いてくださいという立場です。保険契約が射倖契約であるというこの前提からいきますと,やはり射倖契約の当事者としてはフェアに行動してくださいと,この原則はやはり譲れないと思いますので私は置くことに賛成です。 ● ほかに。   ○○幹事。 ● あるいは,この規定を置くことによって裁判になったときに,裁判官の方があるいは使いやすくというか,この規定を使ってうまくいい結論を導くことは可能になるのかなということも考えられて,ひょっとしたら,この規定を事務当局の方で考えられたのかなという気がするのですけれども,どうなのでしょうか,裁判所として,裁判官として,こういう規定があるというのはよいことなのか,あるいはあっても余り意味のないことか,ちょっとその辺のお考えをお教えいただければというふうに思います。 ● 何かございますか,○○幹事。 ● ちょっと具体的にどういう適用場面を念頭に置いて提案されているのかというのは申し訳ありません,よく分からないものですから,あった方が使いやすいのかどうかというところは何とも具体的にちょっと…… ● 裁判官の方は合理的な判断を適切にしていただけるとは思うのですけれども,裁判の場だけではないこともある。そういうあたりも考えておく必要があるのかなと思います。いずれにしても,これは大きく意見の分かれるところだろうと思いますので,なお,今日の御意見を踏まえて検討してもらうということにしたいと思います。   それでは,大分時間も回りましたので,一応,今日の検討予定事項は終わりましたので,議事の方はこれぐらいにしたいと思いますが,次回以降につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 予定の変更がありますのでお聞きいただきたいと思いますが,次回は7月11日水曜日に会議を予定しておりましたけれども,準備いたしました資料につきまして,今日,一通り御意見をいただけたということもございますので,第二読会としての議論は今日までということにいたしまして,次回,予定しておりました7月11日は会議を開催しないということにさせていただければと思います。今日だけでもたくさん宿題をいただきましたけれども,既にたくさん宿題をいただいておりまして,第三読会に向けて,ただこれまでの資料をくっつければいいということではないのは当たり前のことですが,るる検討しなければならないこともございますので,その意味では若干お時間をいただきまして,第三読会に備えるということにさせていただければと思っております。   したがいまして,次回は7月25日水曜日の午後1時30分から法務省の第1会議室,この会議室で第三読会の検討を行うということで御予定いただければと思います。 ● そういうことでお願いいたします。   今日は長時間どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。 -了-