法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  平成19年7月20日(金) 自 午後5時00分                       至 午後7時04分 第2 場 所  法務省 第1会議室(20階) 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり)         議        事 ● 予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第8回会議を開催いたします。 ● 本日は,前回の会議で皆様にお諮りいたしましたように,フランスにおける関連諸制度等について調査していただきました○○委員から,その調査結果について御報告をいただく予定でございます。   大体の目安ですが,まず○○委員から一時間程度御報告をいただいて,残りの一時間程度を報告内容に関する質疑応答などに充てさせていただくこととしたいと存じます。   それでは,○○委員,御報告をお願いいたします。 ● よろしくお願いいたします。   レジュメと資料を用意しておりますので,それを御参照いただきながら,まずフランスの拘禁の状況というところからお話ししたいと思います。   まず,非常に大雑把な言い方をいたしますと,これからお話しします制度というものは,いろいろな歴史的な経緯があってモザイク的にできているものですけれども,現時点においてはフランスにおいても過剰拘禁の状況にあると言われています。その主たる理由としては,もちろん治安の悪化によって犯罪が増えているということもありますけれども,EUの方から拘禁状態の改善の要求があって,古くなった刑務所の改善などをしているということもありまして,そのキャパシティが減っているということも影響しているようでございます。   それはそれといたしまして,まず資料の16ページと17ページ,こちらについて簡単に御説明しておきたいと思うのですが,まず16ページのものがフランスにおいて2004年と2005年において,前科登録された者の人数の推移です。   2004年がオレンジ色で,2005年が青色になっていると思いますけれども,detenueですから,これは拘束された者という数でございますが,月ごとと,年の平均からなっておりまして,夏場が少ないのは,バカンスに行っているので余り犯罪が起こらないのだという話でございます。あるいは,警察官もバカンスなのかもしれませんけれども,そして気候の厳しい時期には犯罪が増えていくというふうになっています。これが一番上の表でして,その次に,population ecroueeと書いてあるのがありますが,こちらが,ecrouee,古い言葉で言いますと,囚人名簿に記載されている人,つまり刑務所に拘束をされている者の数でございますが,これが1996年から2006年のベースで書かれてあります。 2006年では5万9,522名ということです。   同じような表ですが,その年その年に入所した人数で見たのが一番下の表で,その上がたまりの人数かと思いますけれども,下の方がフローでございますので,この中から仮釈放,釈放等によって,あるいは出所によって人数が減っていくという関係にございます。   2000年,2001年ごろに減っている理由はよく分からないそうですが,それ以降,御案内のとおり,移民や外国人の犯罪も増えていて,あるいは治安対策が政治問題となったこともありまして,検挙率,あるいは記録にとどめる人数も増えているのが現状だそうでございます。   そして,資料の17ページになりますが,こちらは後でお話ししたいと思うのですけれども,いったん拘束され,あるいは囚人名簿に記録されることによって,刑事手続に乗った人の処遇の結果として,例えばこのような状況にあるということです。   一番右上の円グラフを見ていただきますと,16万984人が後でお話ししますSPIP,日本で言うと保護観察所に該当する機関でございますが,その保護観察所の処分を受けた対象者が16万984人いるということです。その中の内訳として後のお話にも関係しますが,75%が保護観察付きの執行猶予になっている。青い部分です。それから,紫色といいますか,15%の部分が公益奉仕労働というものが科されている人で,その次の青の5%が仮釈放です。それから,その次,これは予審判事の要請によって司法監視というものに付された人が2.5%です。その次の1.5%は滞在禁止など,その他の禁止処分に付された人です。最後の0.7%と書いてあるところが,社会追跡調査という近時の法律によって導入されました,性犯罪者対策としてできた処分に付された者の数です。   それから,その下の折れ線の棒グラフですが,これも一応以下の話の前提として少しイメージをしていただくと楽かもしれませんが,1996年以降,各種の処分に付された者の人数の変化でございます。そして,一番上が保護観察付き執行猶予の人数です。その次の青が公益奉仕労働,その次の緑が仮釈放,その次の紫が司法監視で,最後に他の処分という内訳でございます。   最初に見ました広い意味での犯罪者の人数の推移と,もちろんおおむね比例しているわけでございますけれども,日本流で言うと,保護観察付きの執行猶予が一番多いということになっております。   それで,この二つの表をまず見ていただきましたのは,今回調査をしてきた趣旨といいますのは,今日のレジュメの冒頭にも題名として挙げておりますけれども,あちらでも過剰拘禁と言われる状況がある際に,それに対応する手段としてどのようなものがあるだろうか,そして実効性のあるものはどういうものがあるかについて,現状を調べてきたわけでございます。主要な対応策は,今ここで見ました,例えば保護観察付きの執行猶予,公益奉仕労働等なのでして,それらは,レジュメの方の1ページの目次にも挙げておりますけれども,実は他にもさまざまな制度が存在していて,直接あるいは間接的に,あるいは刑罰として,あるいは刑事手続の途中からドロップアウトするような形で,拘禁刑を避ける効果を持つ制度は,他にもたくさんございます。それを全部話しますと,とても時間が足りませんし,今回の趣旨としては調査の依頼を受けて行ってきたものの御報告ということですので,あるいは先生方におかれてはもう御存じの部分,あるいはもっと聞かれたいと思っていたところが含まれていないかもしれませんが,そこは御理解いただければと存じております。   それでは,レジュメの方に沿って説明させていただきたいと思います。   まず,刑事施設に収容されている者に関する状況とその推移については,今見たとおりなのですが,これから話していく際に関連する機関,あるいは主体として,次の二つに言及しておいた方がよいかと思います。   最初はスピップ(SPIP)と呼ばれるものであり,もう一つは刑罰修正センターというものです。この二つが特徴的な主体であろうと思われます。SPIPというのはここに書いてありますとおり,社会復帰・保護観察所と正式名称で言われているものですけれども,行刑施設の内外で司法上の統制処分を受けている者の社会復帰を促進するために活動する公務所でありまして,司法省の一部署です。日本流に言うと,保護と矯正を併せて行っている部局でして,フランスの各県に一か所ずつ配置しております。大審裁判所というものがフランスにはございまして,日本の地方裁判所に大体相当するものですが,それがあるところには大体一つ存在しておりまして,現在では188ぐらいこの支署がございます。それだけの数,大審裁判所もあるということです。   具体的にはどういうことをするかということなのですけれども,これから話してまいります司法監視の対象となった者,あるいは執行猶予ですけれども保護観察に付された者,そういったものの対象者に関するケアを行いますし,また,刑罰として公益奉仕命令等を科された場合,あるいはその他の拘禁刑に代替する措置を受けた者の活動の現状を監督するという仕事もいたします。   それから,拘禁されている受刑者との接触も,もちろんメインの仕事ですが,その際には心理学を専攻した職員が多数おりまして,カウンセラーとしても活動するということもしております。そうして見ますと,日本の保護観察官に比して守備範囲は広いのかなという気がしております。   それと,もう一つ特徴的なものは,今日の話にも関連するところなのですが,刑罰修正センターという固有の機関がございます。刑罰の修正ということ自体,日本の刑事法には余り馴染のない概念なのですけれども,それを専門に行う機関が現在三つありまして,パリ近郊には私が訪問いたしましたヴィルジュイフというところに最新のもの,2006年6月にできたものがありまして,そこでは,後で説明いたしますが,半自由ですとか,外部収容といったものを専門的に行って,フルタイムの拘禁から開放するための作業を行っています。このときにも,刑罰修正センターの所長さんなどは,司法省の職員ですけれども,SPIPのメンバーと密接に連携して,種々のプログラムを提供している旨を伺ってきたところでございます。   それでは,具体的に刑罰の修正,amenagement de peineと言われるものについて,あらましを御説明いたします。   まず,そもそも刑罰の修正ということについて先にお話ししておきます。フランスの司法,刑事司法もそうですが,非常に特徴的なのは,特に刑事司法に関して申しますと,日本でいう検察官の役割をする人も司法官--magistratと言われておりまして,旧刑訴に近いのですけれども,裁判官ないし司法官としての公平な立場で,まず捜査を遂げ,起訴するか否かを決め,そして公判に付します。公判に付したときには公判を主宰する判決裁判所というところに事件をゆだねるわけですけれども,その判決が出た後は,今度はまた,刑罰適用裁判官であったり,別の裁判官も関与もあり得るのですけれども,裁判官,すなわち司法官という者に刑の執行がゆだねられて,随時,その刑罰が変更されていくということが伝統となっています。ですから,あちらで検察官が何をするかというと,予審判事の指示を受けて公訴の提起をし,また,量刑について意見を言ったりするわけですが,ほとんど主要なメンバーといいますか,プレイヤーとしてはmagistratと言われている裁判官であり,それは日本語に訳すると判事と言われているような者だということが,大きな特徴です。   そして,刑罰の修正は,最終的には拘禁刑の回避につながってくるのですけれども,日本と大きく異なりますのは,判決裁判所において有罪宣告がなされ,その後に量刑がなされるわけですけれども,有罪と認定された者の状況,あるいは拘禁すべき場所の収容の密度等を勘案して,さまざまな方法でその刑罰が重くなったり,多くは軽くといいますか,拘禁を避ける方向で処分がなされてくるという点が,日本の制度との著しい相違であろうと思われます。   そういったものの全体が刑罰の修正と呼ばれているわけですが,これを定義的に言うと,被告人に対して拘禁刑が宣告された場合に,当該の有罪認定された者の状況に応じて拘禁の程度を減刑していく制度だと言えます。その中に,これから話していく個別のものとして,仮釈放,外部収容,半自由というものが主たるものとしてあるのですが,それらに共通する趣旨としては,次のようなことが言われています。   まず一番目として,行刑施設外で対象者を働かせる。あちらでは,日本と違いまして,行刑施設内で刑務作業を義務付けることはできません。そのため,刑務作業に従事させる場合は,また別途の処分が必要となってくるわけですけれども,それを行刑施設外でさせるということになります。そして,それは何のためかというと,仕事を手に付けて再犯を防止する点もありますが,被害者,これは付帯私訴原告となってくるわけですけれども,被害者に対する損害賠償を促進させるという第二の効果もねらわれております。   また,三番目には,これも皆さん驚かれると思うのですが,行刑施設外で治療を受けさせる。あちらでは,治療は司法省の所管ではございませんで,所管を考えれば保健省なのでしょうけれども,治療を受けさせるときには,これも行刑施設の外に出すというふうなことが考えられています。   それから,四番目は,社会復帰の基本となる視点ですけれども,家族あるいは社会とのリエゾンを保って精神状態を安定させ,もって再犯を防止するということです。   そして,これらの刑罰の修正の1から4の趣旨というものが,当初言われていたものなのですが,五番目の制度趣旨として,冒頭に申しましたように,徐々にフランスでも過剰拘禁となってきているので,現在では,刑罰の修正が過剰収容の回避に役立つものだという意識が生まれているようでございます。   では,これから挙げていく各個の制度がどのような関係にあるのか,非常にこれはややこしいのですけれども,一応,その拘禁状態(ecrou)の程度がどの程度強いかということで並べると,次のような関係になろうかと思います。   ecrouからの解放度が大きいものからお話ししますと,仮釈放というのは条件付きの自由と原語で書かれているように,遵守事項違反がなければ,もう完全に自由となっていますから,ecrouの状態から非常に遠いわけです。その次に,外部収容というものの中に二つあって,行刑施設の監督なしに行われる外部収容というものは仮釈放に非常に近いものでございます。他方,行刑施設の監督がある外部収容については,外で働いて夜は帰ってきますので,収容の程度は強いのでありまして,それは半自由,semi liberteというものに非常に接近しているという整理が可能です。   これらとは別のベクトルとして,電子監視というものが利用されてきておりますが,徐々にこれも利用の対応が広がってきておりますので,別の位置付けをさせていただきたいと思います。   レジュメでも,今,私が大小関係を付けて説明したものについての簡単な説明を改めて行っております。仮釈放は条件付きながら拘禁状態から解放するものです。それ以外は,そこまでの完全な自由というものは与えられていません。外部収容というのは,外部に本当に収容してしまう場合と,外部通勤のようなものがあるわけですけれども,あくまで概念的には収容先が外部に変わるだけであって,ecrouの状態は続いているということになります。   半自由というものは半分しか自由がないわけですけれども,拘禁状態の継続というものは前提となっております。   そして,電子監視。これはまた後でお話ししますが,おおむね態様としてはイギリスのそれと似ております。   これらの全体の運用状況についてお話しいたしますと,刑罰の修正,上に挙げたものを含めて,あるいは,若干ここはまだ質問をしても答えが返ってきていないのですが,司法監視的なもの,あるいはその他の,予審でしか使えないようなものも入っている可能性があるのですが,ほぼ上に挙げた刑罰の修正の総数としては,2006年中では2万1,246件で,2005年度に比べて11%の増加だということです。   また,半自由,外部収容,電子監視については,皆さんも御存じかと思いますが,loi Perben 2という法律が2004年にできていまして,かなりドラスティックな制度を種々入れている改正法でありますが,こういったものによって修正が加えられているところでございます。この法律これ自体を説明すると,また非常に長く,今日の会合の趣旨に沿わないと思いますので,それは避け,関連する部分についてのみ後でお話しさせていただきます。   次に,他の制度の比較という観点から御説明します。まず公益奉仕命令,イギリスでは社会奉仕命令と言っていたものですが,これは刑罰の修正ではありませんで,主刑として科されたりするものです。しかし,当然これが拘禁刑の回避に役立つことは自明のことですから,後で挙げたいと思います。   それから,判決の宣告猶予という制度,あるいは,ほかにも類似の種々の制度がありますけれども,これは,ここでは今回は詳しくは取り上げないことにさせていただきます。   他方,執行猶予としては後でお話ししますが,三つの大きな態様があって,そこに保護観察を付す場合もあれば,公益奉仕労働を付すものもあるという点に特徴がございます。   それと,あと二つフランスに特徴的なものとして,司法監視というものと,社会追跡調査と呼ばれるものがございます。 司法監視(controle judiciaire)というものは,予審判事又は釈放勾留判事の命令によって,拘禁刑に代えてなされる処分ですが,刑事手続の種々の段階でなされます。一言お話ししておきますと,予審判事というのは皆さんよく御存じだと思うのですが,釈放勾留判事というものも近時できています。これは日本でいいますと,令状担当の裁判官のような仕事をされるものと思っていただければよいのですが,予審判事が捜査検事の役割を果たしていて,予審のために三年間ほど身柄を拘束することもなされたりするわけですけれども,それに対して対象者の方から釈放の請求があったような場合,あるいは釈放したけれども,再び勾留の要求があるような場合には釈放勾留判事,これはmagistratですが,それが関与してできることになります。もともとは予審判事,あるいは予審部という裁判所の部がこういった仕事もしていたのですけれども,余りに予審判事の権限が大き過ぎることが種々の問題を生んで,近時も冤罪事件が起こって大問題になっているところもありますので,その職能を分けた結果,生まれたのが,この釈放勾留判事でございます。   刑事手続の種々の段階で司法監視という言葉が出てくるのですが,これも非常に広い概念ですので,どの段階からどの段階しか司法監視が妥当しないということは言えないと思います。ここでは,今日のお話に関する限りでお話ししておきますと,例えば予審開始決定がなされた場合,もちろんその者に無罪の推定が及ぶものですけれども,予審,捜査を遂げる必要性から,あるいは保安処分の手段として,一定の義務が課されることがあります。その際,対象者は司法官である予審判事の監視下に置かれますけれども,その際に先ほどのSPIPの支援の下に,種々の監視に付すことができるということになっています。これも非常に多く活用されておりまして,2006年1月1日現在で,この司法監視に付されていた者の数は3,907件だということであります。   それから,社会追跡調査というものが近時の法改正で入っております。このsuivi socio-judiciaireの訳については,いろいろな訳語があるようですけれども,今回は取りあえずこういう名称で呼ばせていただきます。これも刑罰の一つであると書いてあるわけなのですが,実態はかなり保安処分に近いもので,その厳密な意義付けについては争いがあります。被告人につき,有罪認定がなされた場合,取り分け性犯罪について,これが先ほどのloi Perben 2において考慮されているものですが,性犯罪について有罪とされた場合に主刑あるいは補充刑として科せられる刑罰であるとも言われています。これは保護観察と機能的には似ているのですけれども,社会追跡調査の対象となった者は,SPIPからの支援と監視を受けて,一定の義務を履行することになります。その際には,治療命令というものを裁判所から受け,これを医療関係者のカウンセリングを受けることなどを義務付けられます。そしてこの治療命令を受けた後に,対象者の状況が刑罰適用判事に報告されるということでして,性犯罪を犯した人に対して,刑務所に入れるのではなく社会において,いろいろとその状況変化を追いかけていくというものです。これは,保安処分に近いのですけれども,刑罰だと説明する文献もございます。この辺りは,実は刑罰と書いてあるものもあれば,それに疑問を呈する文献もあるのですが,今回は多数説というのでしょうか,一般的な見解に従って紹介させていただきたいと思います。  これらの司法監視,あるいは社会追跡調査というものは日本にないものですが,以下の制度にはもう少し日本の目から見ても馴染の深いものがございます。   まず,仮釈放でございますが,規定は刑訴法に書いてあるものでございますけれども,意義としては皆さんも御存じのとおりです。拘禁刑の執行を受けている者に対して,一定の義務を課すことで執行を停止し,その再社会化と再犯防止を目指す制度であると言われています。   義務として課されるもの,遵守事項の基本となるものですが,おおむねこの四つが挙がっております。他の刑罰の修正においても,大体この四つが出てくるのですが,読み上げさせていただきますと,第一に,教育を受けること,あるいはさまざまな実習,研修を受けることが義務付けられることが多いです。 本日配りました資料にデータとしては挙げていなかったのですが,仮釈放を受けている間に,例えば小学校課程を終えたという証明書を取ったり,あるいは大学受験資格を取ったりという人の数がデータとして挙がってくることもありまして,やはり教育の充実ということが犯罪防止に有効であるということは十分認識され,実施されているところです。 それから,実習とか市民としての研修というものは日本では馴染がないのかもしれませんけれども,市民としてふさわしい行動をするようにグループトーキングをして,どうして自分が犯罪に至ってしまったのかというふうなことを話し合う機会への参加が義務付けられたりしております。   第二に,一時的に就労させてみて,社会に戻りやすくさせることはもちろんやっております。   第三に,家族との接触。家族とのリエゾンを絶たないということです。   最後に,先ほども申しましたが,治療の継続も仮釈放の際の考慮事項となっております。   この仮釈放も,先ほど申しましたが,広い意味では司法監視の一つですので,こういった書き方が文献では出ておりまして,仮釈放中は司法監視に服し,刑罰適用判事とSPIP,保護観察所の監督下に置かれております。   仮釈放の申立権者は,有罪を認定されて,自由はく奪刑,拘禁刑等を宣告された者ですが,自らが再社会化をするための努力をしているということを証明する必要があると書かれております。実際には,この仮釈放の決定は,後に見ますが,検察官の出席を含めて対審構造で行いますので,刑罰適用判事ないし刑罰適用裁判所が開いたその手続において,申立権者,検察官が出席して申立権者の証明,実際には疎明に近いと思われますが,彼の主張を聞いて,仮釈放を認めるということになっています。   仮釈放の原則としては残刑期間主義が採られています。ただ,再犯の場合には残刑期間の二倍以上の期間,刑の執行が既になされている場合でなければいけませんから,実際には宣告された刑の3分の2超が執行されて初めて資格を得るということになります。   ただ,いずれの場合でも保安期間(periode de surete)というのがありまして,これが非常に長い。15年以内,最高22年までいく保安期間というものが保安処分の観点から設定されていて,この間は仮釈放を許可しないことができる。現実には許可しないことがほとんどだそうですけれども,こういった制度が存在するために,いったん保安期間に該当すると認定されてしまうと無理だと言われております。   仮釈放の効果といたしましては,先ほど言ったこととオーバーラップしますけれども,司法監視に服してSPIPに観察されることになりますけれども,司法監視上の義務として,例えば日本と同様にSPIP又はJAP,すなわち,刑罰適用判事ですが,彼らの面会の要請に応じて現状の報告をするということがあります。無事に期間を満了すれば釈放が確定したことになって,仮釈放の日をもって刑が終了したものとされますけれども,遵守事項等に違反すれば仮釈放が取り消されます。   それから,少し下にいきますが,この仮釈放の決定権者としては二種類がありまして,刑罰適用判事,先ほどJAPと言いましたけれども,JAPか,あるいは重たい宣告を受けている者に対しては刑罰適用裁判所,TAPというものによる決定がなされています。   先ほど申しましたように,この仮釈放の決定に際しては対審制を採って,検察官の意見聴取をいたします。それから,対象者の観察記録も確認し,彼が弁護士を選任している場合にはその意見を聞きます。他方,被害者の意見というものは聴取することはできますが,それは任意であり,また被害者の出廷も認められていないということには注意していただきたいと思います。それは,伺ったところでは,検察官も裁判官も司法官であって,彼らが公平な立場で各種の意見を述べるので,被害者の参加は不要であるということでございます。もちろん,対審を開かない場合も例外としてありますが,原則としては開いているようでございます。   運用状況,こちらがどの程度,その過剰拘禁対策としての意味を持っているかにおいて,御関心があろうかと思いますので,まず数字ベースでお話ししますと,2006年に仮釈放が認められた総数は5,679名。刑罰の修正の全体の27%です。前年度に比べると4%減少し,2005年も2004年に比べると減少しているのですけれども,重たい拘禁刑を科されている人,10年以上の拘禁刑が宣告された者との関係でいえば,これは刑罰適用裁判所の管轄事項ですけれども,仮釈放率は上昇していまして,2005年では245名ということになっています。   この辺はどう理解するかはなかなか難しいのですけれども,一応お手持ちのグラフの方で確認していただきますと,資料の1ページ目,冒頭のところに出ているものです。これがliberations conditionnellesで,1995年以降の仮釈放に付せられた人数の経緯です。このように数値が大きく変動している理由はフランスの担当者もよく分からないようでした。   それから,レジュメに戻りまして,日本と同じく仮釈放の取消しというものがありまして,仮釈放期間中に新たな犯罪を行ったり,善行を保持することができなかったり,あるいは遵守事項に反したような場合には,当然ながら,取消しがなされます。これは制度の説明ですから,この程度にいたしまして,先に進ませていただきます。   次に,外部収容というものについて御説明させていただきたいと思います。   これは先ほど冒頭に話したのですけれども,日本語で言うと外部通勤に似た面もありますが,本当に身柄といいますか,本人の身体を行刑施設の外に収容してしまう場合もありますので,区別が必要でして,単純に外部通勤と全く同じというわけではありません。その意義としては次のような説明がなされています。受刑者を観念的には,なお行刑施設に拘禁し,そのecrouな状態を保ちながら,外部の収容場所で活動させることで,刑の執行があったものとする制度でございます。外部での活動を許可することで,やはりここでも受刑者の再社会化の可能性を高め,仮釈放へもっていくもの,あるいは早期の社会復帰を図るものでございます。   刑罰の修正としての外部収容は,(a)行刑上の監視付きのものと,(b)監視なしのものに区別されます。この他にも,外部収容は,刑罰の修正以外のものとしても用いられており,これは三つの場合に分けられます。 最初の場合が,(c)大審裁判所の裁判長により,有責性の事前承認手続,これは,近時のloi Perben 2によって入れられたものなのですけれども,有罪答弁をした者に対して,軽く,早く,手続を終えるというものとしてフランスでも入ったのですが,この有責性の事前承認手続の過程で利用を宣告される外部収容というものがあります。これは主刑として科されます。刑罰の修正ではなくて,主刑として科されるものです。   第二に,(d)軽罪裁判所によって宣告される主刑としての場合もあります。   最後の場合は,(e)刑罰適用判事によって既に被告人が有罪と認定され,拘禁刑が宣告されているのですが,それが未執行の場合,なかなか日本では考えられないのですが,フランスではこういうことが多いのだそうなのですけれども,それに換えて,拘禁刑ではなく外部収容に切り替えるということがあります。これは代替刑としての整理が可能でございます。   このように,刑罰の修正だけではなくて,(e)は広い意味では刑罰の修正ですけれども,そうとも言い得ない形で使われるものもあります。   刑罰の修正としての(a)と(b)については以下のとおりでございます。まず,行刑上の監視付きの外部収容。これは行刑施設外で,当局の監督下で雇用されることを受刑者に認めるものです。受刑者は原則として毎日施設から出ていきまして,一定の場所で仕事をした後,帰ってきます。その対象者としては残刑期間が5年以下であって,過去に6か月を超える拘禁刑の宣告を受けたことがない者,あるいは,後で話す半自由を受ける条件を時間的に満たしている者,あるいは仮釈放申請の提案を受けている者などですが,先ほど申しましたように仮釈放に移行可能な者,広く言えばそういった者が対象となっています。ここでも対象者は対審手続において,自分がこのような外部収容に適しているということを主張することが必要でございます。   それから,(b)の行刑上の監視なしの外部収容の方ですが,こちらはもう少し自由度が高いのでして,行刑施設外での活動をもっと広く認めるのですが,その理由としては,レジュメに(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ),(ⅳ),(ⅴ)の5点を挙げています。(ⅰ)から(ⅳ)までは今までの刑罰の修正に共通したものなので省きますけれども,(ⅴ)については,例えば歴史的遺産や海岸等の建築物の修理・改築等に自分が適しているのだということを主張して,それに従事させてもらうための外部収容というものが認められています。対象者は,残刑期間が短い,あるいは拘禁刑が一年以下を宣告されていて犯罪性が低い者に限られています。   それで,これが先ほど来言っている特徴なのですが,この行刑上の監視なしの外部収容に付された者は,行刑当局と協定を結んだ外部の団体が提供する居住施設に収容されて,そこで寝起きをします。その監督の下でさまざまな活動を行うということになります。それは,さっき言いましたように建築現場で働いたり,環境整備に従事するということなのですけれども,この団体は司法省,SPIPが契約を締結し,いろいろなモデルがあるのですけれども,受刑者が来たら,その団体から直接給与を支払わせたりする。あるいは労働の過程で教育も施すようにお願いをしているそうです。その団体は,SPIPを媒介にして,司法省に対して対象者がどういうふうな行動を行っているかを報告する義務を負っています。   こういった外部収容も実施されていることが特徴的だろうと思いますが,観念的にはまだecrouの状態ですので,対象者は,後で話します半自由の場合と同様の義務を負うことになっていまして,行動日程に従うことを始めとして,被害者への賠償に努めるための給与の獲得であるということを意識させられたり,あるいは被害者に遭遇しないように滞在場所や行き先の指定があったりすることもございます。   また,彼らはそのような者として外に出ているのだということを示す必要があるということで,外部収容に付されている者は,その旨を示す証明書を携帯しなければいけない。人に見せるわけではないのですが,持っていきなさいということです。このように,かなり大幅に自由を認めていることが特徴的でございます。   行刑上の監視付きの外部収容も監視なしの場合も,収容先,宿泊場所が違いますけれども,観念的には拘禁刑の執行中であるということであって,収容施設における規律には服するものとされています。したがいまして,一定の素行不良等が認められた場合には,まず規律違反に処せられ,程度がひどい場合にはこういった恩恵として与えられている外部収容処分が取り消されて,通常の拘禁に戻るということになっております。   いずれの外部収容についても,請求権者については本人とされており,ただ,一定の犯罪についてはSPIPの所長のみが請求権を持っています。   決定権者は刑罰適用判事で,審査の態様については前述のとおりでございますが,運用状況について見てみたいと思います。まず,数字レベルでございますけれども,2006年に出されました外部収容の決定数は2,528件。刑罰の修正全体の中では12%で,2005年に比べて2%の増です。2005年は2,478件ですが,これも2004年に比べて11%の増加ということで,増加基調にございます。   資料の5ページを御覧いただくと,2004年に底を打ってから,2005年,2006年と,また増えているようでございます。一枚戻って4ページですが,この外部収容として,2003年に2,733件がなされているのだけれども,どのようになっているかということで,一番右の649件が,監督の下に仕事に従事したと,その次の552件が,いろいろな研修に参加しているということです。それから,その次の456件が,労働の補助的な仕事をしているということでありまして,最後の一番小さな15と書いてあるのが,これは教育を受けるためというものです。こういった内容で外部収容が活用されているのが2003年のものでございます。   続きまして,レジュメに戻り半自由(semi-liberte)についてお話しします。このsemi-liberteといいますと,日本語の訳を見ますと,外部収容よりも自由度が高いのかなという気がするのですけれども,あちらの説明によるとそうではありませんで,まさに,半分しか自由がない。外部収容で監視付きでないときには外に出て行っているので,もっと自由の度合いが高いのだという説明がなされていて,そのようなものかと思った次第なのですが,どういうものかといいますと,拘禁刑の執行を受けている者に対して,その刑の一部につき,通常の執行場所である行刑施設外で執行させる制度,具体的には例えば刑罰修正センターですとか,あるいは通常の刑務所の中でも区枠を分けまして,半自由区というところで少し自由の高い待遇を与えるということです。   その意義は,対象者に半自由区において一定の自由を与えることで徐々にその再社会化を図るというものです。半自由区に移すことによって,完全な拘禁施設に少し空間をつくる必要もあるということが説明されておりましたが,過剰収容を回避する目的としても活用されているものです。ただ,これも先ほどの外部収容以上に観念的には行刑施設内での拘禁が継続されているものですから,種々の義務が免除されているわけではございません。   そして,受刑者がどういうことをするかということなのですが,先ほどの行刑上の監督に付された外部収容と似ているのですけれども,半自由区にまず場所を移されて,そこから外に出て行って労働に従事します。でも必ず帰ってきます。行刑施設への帰還が義務付けられている。例外がないというところで,外部収容と違う。したがって,拘束の度合いも大きいという説明でございます。   ただ,正直に申しまして,この半自由というものと行刑上の監視付きの外部収容というものの実際上の効果の違いはどの辺りにあるのかというのは,よく分かりませんでした。 例えば,最初に申しましたヴィルジュイフの刑罰修正センターに行きますと,はっきりと区域は分かれておりまして,半自由の方が,例えばその監視に立っている係官が多い。外部収容先のところはもっと自由な空間であるということは,フロアの色が変えてあることからも分かるのですが,それがどの程度の法的効果の違いに結び付いているのかという点については,残念ながら,はっきりと自信を持って言えるほどではございません。とはいえ,半自由を実施する区は分かれておりまして,さらにその中で三つに分かれております。   まず,一般の刑務所の中に半自由区というもので,パーテーションを区切ることがあります。それから,半自由だけの専門施設が全国に15か所あるそうでして,そこでは,食堂はありますけれども,面会室はないものでございます。それから,訪問したと申しましたが,刑罰修正センターというものがあって,ここは半自由区と外部収容の部分しかありません。ですから,半分が半自由区で,半分が外部収容なのですが,ここにはもちろん専門の食堂もありますし,面会室もありました。かなり自由な雰囲気のところです。   半自由にも,他と同じなのですが,刑罰の修正だけではありませんで,他の領域でも使われている場合があります。第一は,拘禁刑を宣告された既決の者につき,まだそれが未執行の段階,libreの状態にある場合に,刑罰適用判事が半自由を決定する場合で,広い意味では刑罰の修正と言えそうですが,あちらではこれを刑罰の修正と言っていないようであります。   それから,刑罰として軽裁判所が直接,半自由を宣告する場合もあるというふうに説明されております。   この半自由の宣告の対象となる者は,当然想定されるように,軽い犯罪性向の者ですから,一年以下の拘禁刑を宣告された者か,又は残刑期間が一年以下の者であります。上に書いたように,この対象者には刑罰の未執行のlibreの状態にある者も含まれております。   この半自由を執行する目的としては,やはり他の場合と同じですけれども,社会復帰のために手に職を付けて,お金を稼いで,それを家族のため,あるいは被害者に対する賠償として行う。また,場合によって,治療を受けるということが挙げられています。   半自由の効果としては,運用の実態も併せての御説明ですけれども,先ほどの外部収容の場合と同じように,外出許可証というものを携帯しなければいけません。そして,労働に従事する際には,雇用主と契約を結びます。   半自由の場合と,あるいは外部収容の場合もそうだったのですが,雇用主をどうやって探すかといいますと,司法省,その下のSPIPがいろいろな雇用先を見付けてくる旨,努力していますが,それと併せまして,受刑者個人も履歴書を書いて,どんどん外に送っています。訪問しました刑罰修正センターは半自由と外部収容の者だけだったので,特にそうなのかもしれませんが,施設内にパソコンルームがあって,そこで被収容者が自分で履歴書を作りまして,それを投函して応募して,アクセプトされると,そこに出掛けて行って働くということでした。先方によれば,「パソコンも使えないと社会復帰に困るのです,だからさせているのです。」という説明でありましたけれども,そういうところを見ると,言葉のとおり半自由なのかなという気はしたのですけれども,なかなかユニークな制度であると思います。   ただ,先ほど来話していますが,ecrouの状態は残っているという前提ですから,遵守事項はいろいろありまして,中にいるときの遵守事項違反,あるいは外に行ったときの遵守事項違反があれば,訓戒等の制裁から始まって最終的には取消し,拘禁刑に服することもあるということであります。   この半自由も仮釈放への移行措置,試験的な措置としてなされることが多いので,そうした場合には半自由が執行されているのは数か月程度であることが多いそうです。請求権者は受刑者本人ですし,一定の場合にはSPIPです。   その申請があった場合の決定権者としては,他と同様に刑罰適用判事ですし,あるいは軽裁判所が関与する場合,これは主刑としての場合ですが,生じてまいります。審査の態様においては,先ほどとほぼ同様です。   それで,運用状況なのですけれども,数字で見ると,2006年では6,751件がなされていまして,刑罰の修正総数の32%に該当していて,2005年に比べると,2%の増であります。   グラフの方で見ますと,資料の2ページ目です。こちらがsemi‐libertesのものなのですけれども,一番多いのが,5,150件になりますが,外に出て労働するためにこれを認められたものになります。その次の696件が一時的な雇用です。試験的に雇用されているものです。その次の橙色の223件というものが,教育を受けたり,専門的知識の習得のために半自由を許可されたものです。その次,125件が,家族との面接等のために認められたもの,55件が治療のためです。そして最後の12件というものが,他の事由を根拠にして認められたものです。   それから,その次に,電子監視について説明いたします。アウトラインとしての,電子監視の技術的なお話は,大体イギリスのそれと似ておりますので,若干省略させていただきますが,まず,意義にいては,一定の時間に自宅,あるいは刑罰適用判事によって指示された他の居所に居るという命令を受けた者が,その命令,すなわち決定内容を履行しているかどうかを確認するために電子的な監視に付されるもの,ということになります。   この制度は,更に二つに分かれていて,刑罰の執行としての電子監視と,やはり広い意味での司法監視の一つに区分される場合があると言われていますが,態様としてはほぼ共通しておりまして,大体夜19時から翌日の朝8時まで自宅に居なさいと,対象者がその場所から外出しますと,足首又は手足に付けた器具から発する信号がポストに届かなくなると,それが直ちに遠隔の監視センターに転送されないことによって,そこにあるアラームが鳴って,そこのセンターから検察官,刑罰適用判事,SPIPに伝達されるという仕組みになっています。   資料の7ページ目のイラストを見ていただきますと分かると思うのですが,さっきイギリスと大体似ていると言ったのですが,フランスの方が,技術的には一歩上を行っているのかもしれません。フランスでは,ゾーンディフェンスになっていって,本人が,イラストでは円が書かれていますが,その円の範囲内にいると,足首又は手足に付いた時計様のものから出る電波がポストに収録されるので,居ることが分かるのですが,ここから出てしまいますと電波を受けられないというメッセージがセンターに流れることによって,対象者が,例えば今自宅に居ないんだということが分かってしまうということです。   それで,レジュメに戻りますと,今,御紹介したのは固定電話がある居宅において実施されている電子監視でして,固定式,fixeなものだと言われていますが,近時は先ほど申しましたloi Perben 2等によって,性犯罪対策が進むことによって,GPSを経由した移動式の電子監視も実施可能になっています。しかしながら,現在,実情としてはまだ試験的運用にとどめられていまして,2007年3月現在,私がフランスに行ったのは4月ですが,3月現在ではまだ全国で8名しか,この移動式のものは実施されていないということでした。理由は,技術的なもの,予算的なものだという説明を受けました。   以下では固定式の,従来からある電子監視についてのお話になるのですけれども,以下にメインで話しますのは刑罰の修正として拘禁刑を回避して,自宅に居なさいと言うための電子監視なのですが,そのような刑罰の修正の場合以外にも,司法監視の手段として電子監視が用いられる場合があります。   第一に,予審段階において,予審判事が未決勾留の代わりに予審対象者を司法監視に付しておく手段として,所在確認のために電子監視に付すという場合がございます。   それから,第二に,先ほど述べた有責性の事前承認手続,有罪答弁のようなものですけれども,そこの過程において,この点については詳細な説明は受けなかったのですが,恐らく後に量刑宣告するまでの身柄確保の手段だと思いますが,そのために電子監視を付すということがあるそうです。   第三は,文献によると司法監視と言われているのですが,実際には,レジュメでも注記しておりますように,刑罰の修正かと思われますが,判決裁判所が一年以下の拘禁刑を宣告したけれども,未執行である段階で刑罰適用判事が電子監視に変えるという場合があります。これは刑罰の修正かと思われます。   第四も同じでして,未執行の場合にこのような電子監視に付す場合がございます。   第五が,これから話す主たる対象のものでございます。対象となる者は,やはり犯罪性向が重くない者です。一年以下の拘禁刑を宣告された者,あるいは残刑期間が一年以下の者,あともう少しという者です。こういった者に対して,対審手続を経て,要件の具備が確認されて電子監視に付されますが,この際には対象者の同意が必要だと言われています。   なぜかということなのですが,レジュメに電子監視の取消事由を挙げているのですが,もちろん(ⅰ)から(ⅳ)は種々の遵守事項違反,義務違反なのですが,(ⅴ)のところに対象者からの申出というものも電子監視の取消事由に挙がっています。あちらの説明を聞きますと,イギリスでも聞いたとおりなのですけれども,2,3か月しか大体人間はこういうものには耐えられない,何か月も付けていると,もうやめたくなって,外そうとすると義務違反で重い制裁を受けてしまう。そこで,イギリスでは本人からの申立てというのは運用としてあるということは聞いたのですが,はっきり書いてはいなかったと思うのですけれども,フランスでは対象者からの申出制によって電子監視を外して,他の刑罰の修正,あるいは拘禁刑に戻すということがなされています。そういうこともあるので,かなり精神的な拘束感が強いために,本人の同意を得てやっているとのことです。あるいは,イギリス人の方がタフで,余りこういうことは関心がないのかもしれません。   とはいえ,まず一回は自分で試してみたいというので,拘禁刑を宣告された本人からこの電子監視を受けたいという請求があったり,あるいはSPIPの主張から,彼は残刑期間が一年を切っているからということで申立てがなされたりすることがあります。ただ,ここは性格をもう少し区分した方がいいのですが,2004年の法律によるSPIPの所長による電子監視の請求というのは,先ほど言いましたように,恐らく性犯罪対策としてのものですので,今後活用されるであろうGPSによるmobileの電子監視についての話かと思います。まだ,運用がほとんどないので,文献を見ても詳しい説明がないのですけれども,そのような理解で恐らく間違っていないだろうと思います。   運用の点ですが,かなり多いというのが実態かと思います。数字レベルでお話しいたしますと,まず,いろいろな場面で電子監視が使われているのですけれども,2006年において,全体として固定式のものですが,6,288件で,刑罰の修正の30%を既に占めています。2005年に比して52%の増ですし,2004年に比しても,41.6%の増ですから,1.5倍ずつぐらい増えているわけです。   資料の8ページ目の表を見ますと,2003年以降,急激に増えてきています。これは先ほど来申しましたように,固定式電話しか使っていない電子監視なのですけれども,なぜなのかという理由は余り説明を受けませんでしたが,時を合わせて過剰拘禁が進んでいるということが当然考慮されているのだろうと思います。このように2003年以降,1.5倍ずつで増えております。また,2006年1月1日現在,延べでは,1万5,000件程度の電子監視の実施経験があり,同日現在で884件実施されていたのですけれども,そのうち13件が司法監視の手段であったということです。   フランスでも携帯電話が普及してきておりますが,固定式電話を持っているかというと,犯罪者,あるいは司法監視の対象となる人には住居不定の者が多く,これを持っていないために,電子監視が実施できないわけです。そこで困難に遭遇しておりまして,SPIPの方が家を探してあげる,あるいは固定電話がある家を見付けてきて契約を取ったり,あるいはその対象となるべき人の内縁関係にある者あるいは恋人に頼んで,その同意を得て,その固定電話のある居宅をまずチェックさせてもらい,そこに彼を置いて,電子監視を実施するというふうな苦労をされているそうです。こういうことまでもするのか,電子監視の実施にかなり積極的だなと思ったのが現状です。とはいえ,先ほど言いましたように,電子監視の実施には,通常,二,三か月という限界があるのであり,その程度の短期の処遇としてなされている点は注意すべきだろうと思います。   以上が,電子監視までの,広い意味での刑罰の修正と呼ばれているものなのですが,その次に,公益奉仕命令(TIG)についてお話ししたいと思います。   こちらは1983年6月10日の法律によって制定されたもので,かなりの期間を経由して,フランスでも根付いているものです。拘禁刑を回避する代替刑の一種でして,刑罰の修正以前に,既に代替刑となっているわけです。機能としては刑罰の修正と同じです。   この公益奉仕命令は,主刑としてなされる場合と,主刑の補充刑としてなされる場合というものがあります。補充刑,あるいは選択刑という概念は日本には余り馴染のないものでして,それだけ説明しても非常に長いので,今日はやめたいと思うのですけれども,拘禁刑を補充する形としてTIGが使われています。   これは,行刑施設外部の人,公共団体,公施設法人,あるいは司法省に申し出て,そのような団体として認定してもらった団体に限定されているようでございますけれども,そういった公的な色彩を帯びた団体に依存して,彼らの協力を得て,そこで一定の労働をさせるというものです。 イギリスの場合にはこのような限定はなかったと思うのですけれども,さすがにフランスは行政国家でして,まず公共団体と,それから,地方自治体に対する還元ということで,受入先は公的な団体に限られるということが強調されています。   そして,当然ながら,このTIGとしてなされる労働は無報酬です。こういったことによって,民間,あるいは公共施設の仕事に影響があるのではないかという御質問も前にあったと思いますが,その点は既に考慮されていて,地方公共団体の計画において,既にある仕事とバッティングしないように,TIGの内容を決めろということになっています。   また,法定労働時間の制限とは別に,TIGに要する時間を換算できるということになっています。これはサラリーマンなどが公益奉仕労働に付された場合,いや,働いているからもう働けませんよという弁解は認めないということです。この場合は,主刑としてあるいは補充刑としてなされますので,同意は不要でありまして,ただ,認定された罪の重さによってTIGの時間も変わってきます。 違警罪,一番軽い罪ですが,この場合は20から120時間の範囲で決め,軽罪,その次に軽いもの,過失犯などがそうですが,40から210時間ですが,重罪には公益奉仕労働は適用されません。   いずれにおいてもTIGはその決定があってから18か月以内に実施しなければいけないということになっています。これについても運用状況が,数値レベルでは上がっているのですが,表では,数値レベルでは2005年1月1日現在では1万6,885件が執行中であるということですが,実態の写真としては,資料の9ページ目からになります。これが公益奉仕労働の実態についてのパンフレットからの写真の切り抜きです。次の10ページにいっていただきますと,これが公共施設,地方自治体等の,よくあるのが図書館ですが,そこで働きます。市役所の庭の掃除,剪定などをいたします。   それから,11ページは,この人が担当者としてどのような仕事があるかを配置するわけです。   次の12ページにいっていただきますと,これがいろいろな歴史的な遺産,施設の中の壁を直したりするような工事に従事しているわけです。   次の13ページは,これは公益奉仕労働に出る前に一定の教育を施してから出す場合の話です。   そして,14ページは,このような建設現場,あるいは荷降ろし等もやっていますし,次の15ページですが,これは公共施設の建物,図書館,市役所と申しましたけれども,そこの中での壁の色を塗ったりするようなものだそうです。   私が今回訪問したときに,SPIPの次長ぐらいの方とお話ししたのですが,女性の方なのですけれども,彼女が最初に,40年弱前の公益奉仕労働の最初の実施に立ち会ったそうでして,まず,パリから離れていった地方の都市の市役所の中に入っていって,その清掃をするというのに付き添っていったのだそうですけれども,最初は,市役所の者たちが,犯罪者が来るというので,どんな怖いのだろうと思ってびくびくしていたそうなのですけれども,やって来てみると普通の市民と変わらないということで,かつ熱心に清掃をしてくれるということで,非常に打ち解けて,以後はどんどん,TIGを受け入れます,送ってくださいということで,うまくいったという話をされていました。その際強調されていたのは,先ほど申しましたけれども,フランスはその公的な色彩を帯びた団体の協力を得ているものですから,そこをまず見付けてきて,それに適した人を配置して,その実績を積み重ねることが,困難だが大切なのだ,という点でした。   イギリスや,あるいは前回ドイツの紹介があった際には,社会に対する貢献,ペイバックが話題になりましたが,フランスでは,これはさほど,話題になっていないようです。イギリスと比べると,そういった観念は希薄であって,まさに一種の義務と考えられています。自分が犯罪を犯して社会に対して迷惑を掛けたということに関して釣合いがとれるかどうか分からないけれども,なし得ることをして,社会に態度を示すべきだ,との発想から,発達してきたのが,TIGではないか,と思われるところです。   最後は制度の説明にとどまるのですけれども,執行猶予に関するものを簡単にお話ししておきたいと思います。フランスでは三つに執行猶予が分かれていまして,①の単純執行猶予というもの,②の保護観察付きのもの,それから③の公益奉仕労働の義務を伴う執行猶予というものがある。②番,特に③番が特徴的かと思って挙げさせていただきました。   まず,単純執行猶予の方は,もちろんこれは先ほど来話していますけれども,拘禁刑の一つとしてなされているものですけれども,ここに書いてあるような日本と似ているような制度でございます。   保護観察付き執行猶予の場合,これは保護観察,広い意味での司法監視に付されるわけですから,刑罰適用判事とSPIPの指揮・監督にあってなされるということになります。   それから,最後に公益奉仕労働の義務を伴う執行猶予ですけれども,これは保護観察付きの内容として,保護観察で要求されている遵守事項として公益奉仕労働を取り上げたものと思っていただければよいのですが,公益奉仕労働ですから,無償労働をして公法人等のために労働することを続けていくことで執行猶予を満了しようということです。   このように公益奉仕労働が活用されているということ,そして②番と③番においては刑罰適用判事の監視下,具体的にはSPIPという特別の機関の監視下に置かれているということが特徴的かと思われます。   レジュメの説明は以上なのですが,資料の方でお話ししていなかったところを説明しますと,18ページが刑罰修正センターであり,パリの郊外にあります。パリの幹線道路から見るとそれと分からないところにひっそりと存在しておりまして,開かれていると先ほど申しましたけれども,あくまで行刑施設ですので,入るときには機関銃を持った監視員がいて,パスポートから何から何まで出して入っていくという重々しいものなのですが,次のページを繰っていただくと,裏道に回るとこのようなたたずまいをしていております。   20ページが受付の状況で,ここで私たちはパスポートを出しますし,その左の部分に自動ドアが見えると思うのですが,その先に携帯電話や持ち物全部を置いていく場所があります。外部収容されている方も多いのですから,あるいは半自由の方も多いので,外に出るときには携帯を持っていくのですけれども,このボックスに入れて中に入っていきます。この中には,きちんと携帯の機種に応じて充電器までそろっていまして,自分でそこで充電して持っていくというふうになっております。でも,これは将来のGPSによる監視を見越したものかもしれませんけれども。   それから21ページが,これは雑居も可能にしている居室です。22ページが個室の方ですが,やはり日本の行刑施設に比べると,最新のものだということもありますが,きれいで広いということには驚かされますし,各人私物の持込みも相当自由でして,部屋を歩きますと,廊下を歩きますと,いろいろな部屋から勝手気ままな音楽が流れてきます。みんなラジカセをつけて,テレビをつけているということですし,例えば収容されている人たちが出てきて,訪問した私たちにあいさつをするわけです。こそこそすることはなくて,それがいいのかどうか分かりませんけれども,そういう状況にも,多少,驚きました。   そして,その次の23ページが図書室でして,フランスですから文化的なリエゾンも保たなければいけないということで,さまざまな種類,美術の本ですとか,料理の本ですとか,そういう本が置いてありまして,それを見て勉強するのだそうです。ここで勉強したことを,写真には載っておりませんが,それを踏まえて,隣の部屋のパソコンルームに行って,履歴書を自分でつくって仕事に応募するという制度になっています。   24ページは,施設内から隣のマンションが見えることを示す写真です。マンションはこの施設よりも先にあったそうなので,施設を建てるとき住民から反対はなかったのですかと聞いたところ,いや,全然反対はなかったですということでした。ここに収容される人は,もう犯罪性向が落ちているということなので,住民も別に不安がることはなかったというふうにおっしゃっていました。   25ページもほかの角度から見た外観で,26ページは中庭で,屋内は禁煙なので,たばこを吸う人はここに出て吸ってくださいということでした。   それから,その次の表,これは先ほど既に説明したところなのですが,仮釈放,半自由,外部収容,電子監視について,2005年,2006年単体で示したものが左の二つで,一番右が2005年,2006年の比較ですが,仮釈放が最も多くて半自由がその次になります。それから,外部収容は先ほどお話ししましたけれども,特に行刑施設の監視なしの外部収容というのは相当自由を与えるものですから,やはり慎重なのでしょうね。実施数は相当少ないです。   他方で,電子監視が特に2006年になるとこれだけの比率を占めているのも特徴的で,その収容人数の増加に苦慮した対応なのかもしれません。   また,いったん戻りますが,今こちらに出ているこの施設は2006年にできた新しいものなのですけれども,こういった施設はあと二つ建設中とのことです。あくまでこれら最新の施設は,外国人や研究者に見せるものなのかもしれませんで,実際にはパリの中心部にあります著名な刑務所などは,最初に申しましたように古くなっていて,EUの基準を満たさないので使えないものもあり,大改修をしているそうです。そのため,以前は2,000人ぐらい収容できたところが,今は500人ぐらいしか入っていないということで,したがって,他の全国に散っている施設が満杯状況になっているそうです。そこで慌ててこういうような刑罰修正センターをつくっているし,それからネッツとかナンシーの方に行きますと,今度は少年刑務所も増設しているということでした。また,フランスでは犯罪の数が増えているということと,後で御質問があるかもしれませんので先に申しておくと,再犯率があちらはかなり高くて,40%弱ぐらいもありますものですから,この刑罰の修正をして外に出していっても,どんどん戻ってくるので,ともかく収容先を作らなければいけないということで,少しイタチごっこのようです。   ですから,最後の感想として思ったことは,こういったいろいろな,もちろん社会復帰のためになる,かなり先進的な制度があるのですけれども,まだ追い付いていない状況で,それが先ほどの最後に見ました円グラフの割合になって表れているのかなと思った次第です。   以上が今回訪問して得た知識ということに限定させていただきますが,報告させていただきました。 ● どうもありがとうございました。   ただいま詳細かつ有益な御報告をいただいたわけですが,その御報告につきまして,何か質問ございましたらよろしくお願いいたします。 ● レジュメで,有罪認定された者の状況に応じて刑罰の修正を行うという記載がありますけれども,これはどういう「状況」を考えるのでしょうか。 ● これは,まず本人のといいますより,本人の手の届かないところでございまして,例えば有罪宣告されたのですけれども,入れるべき行刑施設が満杯であるために刑の執行がまだなされていないようなことを主に念頭においております。   それから,あとは有罪宣告をして確定したのですけれども,精神的にあるいは肉体的に病気の状況になったので治療を優先させるべきであるというふうなことが,例として考えられます。 ● 後で仮釈放が出てくるわけですが,日本の場合,仮釈放については居住地の状況とか,身元引受けとか,そういうのが恐らくもっとも重視されるファクターかと思うのですけれども,フランスの場合は,そこはちょっと趣が違うような気がしましたが。 ● おっしゃるとおりでございまして,条文上の要件としては,そういうものは挙がっておりませんが,遵守事項を課している際に,最初に遵守事項の共通事項として,例えば被害者に遭遇しないこと,被害者に損害賠償するように労働することというふうな義務がいろいろ課されるのですけれども,そのためにはやはり一定の居宅で家族との交流を図って,精神状況を落ち着かせてということが必要ですので,運用としてはSPIPというものがそういったことは配慮しているようでございます。   ただ,先生の御指摘のとおり,その点の強調はなかったように記憶しております。 ● もう一つよろしいでしょうか。仮釈放などの制限ということで,保安期間が置かれ,期間中は仮釈放を許可しないことができるわけですけれども,これはしかし,許可することもできるのですか。 ● はい。これは裁判官のmagistratとしての裁量だと言われております。しかし,許可することはほとんどないと言われています。 ● しかし,アメリカの司法などで,ミニマムこの期間だけは収容せよという期間とは性質が違うのでしょうね。 ● はい。この辺りは上限下限が広くありまして,裁量が相当に大きいというのが実感です。 ● 刑罰の修正としての電子監視が,どういう場合に科されるのかという点について確認させていただきたいのですが,レジュメでは,電子監視は,刑罰の修正の諸制度の中で独自の地位ということになっています。ただ,拘禁刑の実施の過程において電子監視がなされるということになると,それは,結局は,仮釈放された者に対してなされるということになるように思うのですが,そのような理解でよろしいのでしょうか。 ● そうなのです。実態としてはそう言って全く問題ないと思うのですけれども,何度か申し上げましたが,観念としては仮釈放という解除条件付きの自由付加以外の場合は刑務所に収容されているというイメージなのです。ecrouということです。   そうしますと,刑罰の修正としての電子監視を,独自の地位と言ったのは,今後,外部収容や半自由の履行確認のためにも電子監視を付し得るし,あるいは性犯罪者対策としては独自の地位を持っていると,そういった技術的にどこにもくっつけ得るという意味で「独自の地位」と申したのですが,先生の御質問に戻ると,おっしゃるとおりでして,私たちの目から見て,そのように言って全く間違いではないと思います。ただ,あちらはそう言っていないということです。 ● つまり,現在は,固定式の電子監視しかないので,結局自宅に居ることが条件になり,そうすると仮釈放の場合しかあり得ないということでしょうか。 ● そうです。ただ,一点補充しますと,行刑上の監視なしの外部収容というのは委託先の宿泊場所に昼夜泊まるわけです。そこに電話を置いておいたら電子監視もできるのですけれども,現実にはやっていないようです。 ● 「刑罰の修正」という観念は相当思い切った表現かなという気もしますが,裁判官は量刑の際に,その事件について最適の刑を定めるために非常に心を尽くし苦労しているというのが日本での常識かと思うのですけれども,いずれ修正されるぞという前提の下で,裁判官の量刑意識というのはどうなるのでしょうか。 ● まず前提として,判決裁判所の判事も,刑罰適用判事も,皆さん予審判事も含めてmagistratであるという共通の土俵に乗っているので,役割分担の意識からスタートしているのかもしれません。   そして,判決時に公判廷において量刑宣告したのですけれども,むしろその人の状況,宣告を受け止めて良心がどのように変わっていくのかとか,あるいは反社会性を変えるように努力をするか,それはむしろ時とともに動いていくので,変えるのが当然だという発想があるのかもしれません。   私も話を聞いていて,そちらの方が実は素直なのかなと感じました。過去に罪を犯したことの認定は公判の段階でできるわけですが,将来に対する予測というのは限界があるので,やっていきながら修正しましょうと。だから,それは有罪認定を経て,別の人にお任せしても構わないという発想なのではないかと。逆に言えば,そう考えないと理解できない制度かもしれません。 ● 今の点について,判決の確定に反するのではないかというような議論があるかどうかという点と,それから,判決裁判所の判事と刑罰適用判事は,同じ土俵だというお話だったのですけれども,裁判官として同じような資格を持っていて,かつ相互に人事交流があるのでしょうか。 ● ルーティンで回っているということでした。3年ごとに大体,刑罰適用裁判官から判決裁判所に移るそうです。ですから,パリの大審裁判所に勤務したり,あるいはそこに付属されている予審判事をやったり,刑罰適用判事になると少しパリの郊外に行くのですけれども,そちらに行ったりということで,回っているということです。   それから,判決の確定に反するという意見ですが,私の知る限りは存じないのですが,フランスの根底にある発想は,変化し得る人間を対象にして刑を科しているので,彼の対応が変わってくることは前提だということのようです。さっきも言いましたけれども,そう思わないと理解できない制度ではあります。やはり日本人の目から見ると,刑罰の修正というと相当違和感があるものなので,フランスに行っているときはそのように努めて考えていたところです。 ● その関連で,御説明の中では刑罰が重くなる場合もあるとおっしゃったのですが,刑罰の修正によって,事後的にそれが重くなるということが実際にあり得るわけですか。 ● それはあり得るとは伺いました。ただ,その実例は聞かなかったのですけれども。 ● フランスではもともと過剰収容対策ということでは必ずしもなくて,こういう半自由なども含めてあったということなのですけれども,実際に社会とのつながりが切れないというのが一番大きなポイントなのかなと思うのですが,現実にそういう社会とつながっているということで,必ずといいますか,仕事を皆さんがきちんと持っているのか,家族との関係もうまくいっているのか,そこら辺は実際のところはどうなのでしょうか。 ● これはこういう場で言うのかどうかよく分からないのですけれども,フランスの方にとっては家族とのふれ合いが一番大事でして,仕事は時が来ればという感じかもしれません。ですから,日本的に言うと就労援助として種々の施策がSPIPによってなされているのですけれども,もちろんそれが出所後に継続してできるとは限りません。ただ,それも従前はそれほど大きな問題ではなくて,一回バカンスを越えて,また仕事を探そうというのが実態なのだと思います。とはいえ,継続的な仕事探しはかなり意識してなされていて,先ほどもお話ししましたけれども,自分で履歴書を書いて雇用主を探していくというのはそのためです。自分はこういうのに向いているのだと,だから雇ってほしいということを言っているのはそうでして,刑罰修正センターの所長さんもそういった指導はしているとおっしゃっていました。 ● それと,一応社会とのつながりというのはそれなりに成功しているというふうにフランスの方々は評価しているのでしょうか。 ● 当局の方は成功しているから継続する,あるいはもっと足りないから強調されるのかもしれませんけれども,やはりさっき言いましたように,面会室がないような施設もあるわけですから,逆にその場合には半自由にしたり,あるいは外部収容にして外の空気を吸わせることが絶対大事なのでしょうね。それはかなり重点が置かれていると思います。外部収容と半自由を実施している施設に行ったときの感想はさっきも申し上げたのですが,本当に,そこの雰囲気は明るいです。もちろん中に入る前には,警備が重々しいのですけれども,中に入っている人たちはこれで本当に過去の罪を反省し,あがなったのだろうかという気にもなるぐらい明るく,一所懸命仕事を探して外に出ていって,お金を稼いで家族に送り,被害者に送り,そして出所していくのだそうです。ですから,先生の御指摘のように,まず家族とのリエゾンを大事にし,社会との連帯意識を持った上で過去をあがない,将来選択をしているというのが,あるいは,そうさせるべきだというのがイメージかなと思います。 ● ちょっと観点が違うのですが,先ほどの御説明ではSPIPの関係で,3か所あって,これから5か所にする予定があるということなのですが,スタッフなどが日本の保護観察所,あるいは矯正局のいろいろな刑務官でいろいろなものを考えた場合,予算的な形でかなり思い切り大盤振る舞いしているような感じがするのですが,そのことが国民に理解が得られているのかどうかとか,その辺りのことはお聞きになられているのでしょうか。 ● 予算としては,まず日本の保護観察官よりも広い所轄範囲がありますから,当然それは人数的にも金銭的にも手当てを厚くしなければいけないのだろうと思うのですが,近時の政治状況においては,治安の回復ということが強調されており,これが大統領選挙の争点にもなるぐらいですから,当然それは支持を受けているところだと思います。   あとは,スタッフの中に非常に女性が多いというのも特徴的かもしれません。ヴィルジュイフの刑罰修正センターでも,30歳代くらいの女性の方が所長になっているのですけれども,全国的にもこれは非常に早いのだとおっしゃっていましたが,大学を出て,心理学や刑事学を専攻して,それから職員に採用されて,南仏で専門のトレーニングを受けるのですけれども,その後2,3回転勤して,昇進試験にアプライして,今ここの立場にいるのだということでしたが,本当に優秀な方で,人的な層も厚いのだなというのを実感したところです。 ● さっき「社会との連帯」とおっしゃった,それは大事なことだと思います。フランスの社会は一般的に言って,犯罪者を受け入れる雰囲気があるのでしょうか。   日本の場合は,犯罪者は外部収容で働くとか,あるいは社会奉仕命令に従うというような場合にも,多分犯罪者であるということを極力隠そうとすると思うのですが,さっきのお話では,外部収容で外で働く場合,履歴書を出すと言われたかと思いますけれども,その履歴書には自分はこれくらいの犯罪で,これくらいの刑を受けているということまで書くのでしょうか。 ● もちろん書きます。そこは本当に国民性の話になってきまして,お答えするのが難しい分野ですが,前提として少し関連するかと思うことをお話ししておきますと,刑事施設に,あるいは刑事手続にのって,一度前科登録証というのですか,ecrouにされたものの内訳として,現在5分の1が外国人で,5分の4がフランス人です。その外国人の中で2分の1がアフリカ出身です。   そういうこともありまして,そこはセンシティブな話になったので余り聞かなかったのですけれども,やはり外国人犯罪に対しては感覚としては別のものがあるかもしれません。逆に5分の4を占めているフランスの国民,ナショナリティを持っている人に対しては,もうやったことはしようがない,いずれ社会に帰ってくるのだという観点は強くありますので,他方,またこれも今日話しておりませんが,あちらでは過去の行為に対する非難ということよりも,社会防衛ということが強調されておりますので,防衛のためになることとしては,ほかの市民も協力を惜しまないというような雰囲気ではあります。ですから,先生の御指摘のように,先ほどの話と関連しているかと思うのですけれども,犯罪者が犯罪をしたことについて後ろめたく思うということ,それはあるはずでしょうが,社会に戻って食べていくためには仕方がない。したがって,自分でそのことを明かして履歴書を書いて,アプライをするというふうな方向になっているのが現状かと思います。 ● 刑罰の修正というところで,請求権者という言葉がたくさん出てきていて,これは要するに刑を受けている人が請求権を持っているという考え方かと思いますが,何らか職権的なものというのはあるのですか。 ● SPIPの所長のみが請求権を持っている場合があります。それは自分が請求しても駄目だという人だと思うのですけれども,性犯罪などにかかるときには,保護観察所に相当するSPIPの所長さんが医療事項ですとか心理状況などを見て,そして,これならいけるというときにその刑罰の修正を求めるという仕組みがとられていると思います。 ● 確かに性犯罪のところではその種のSPIPが出ていますけれども,レジュメに挙がっている限りでは,基本的にはその場合ですよね。そうすると,それ以外のケースというのは請求権に専らかかっているということでしょうか。 ● はい,そうです。そのような理解で結構かと思います。 ● 未決拘禁の関係で,例えば居住指定等されて,電子監視に付されるのがどうもフランスでは一般的になっているというふうにお聞きしたのですが,2000年以降,いわゆる司法統制処分ということで,未決拘禁の数自体が司法統制処分によって,言わば日本の勾留に当たる形のものが解けて,保釈のような形ですかね,保釈なり,そういった形のものが増えているということが言われているその辺りの調査はされましたでしょうか。 ● それはお願いしたのですけれども,ちょっと人の手配ができないということでしたので,最後に表も使ってお話ししましたけれども,電子監視のところで分かっていると思うのですが,おっしゃるように司法監視の態様としての電子監視を含めた数が特に2004年以降激増していますね。そのあたりが先生の御指摘の理解を裏付けるものかと思います。 ● 私はフランスについて知らなくて非常に興味深い報告だったと思います。すごく刑事政策が動いているなという感じのする印象を持ちましたので,その点すごく参考になったかと思います。   かいつまんで聞きたいところがあるのですけれども,フランスの今現在の刑事政策の特徴というか,これは何だというように思われますか。 ● それは本当に難しいですね。一貫しているフィロソフィーがあるのかというと,なかなか見付けにくいですし,また,それは状況に応じて変わっていくものだと思うのですけれども,今はやはり犯罪を鎮圧するという言葉をよく使いますけれども,犯罪情勢を鎮圧するために何が有効か,そのためには再犯を防止することが大きな柱であることは一貫していますので,拘禁だけでは足りないという発想は強いです。ですから,ここに言ったような種々の手段を使って,非常に複雑に,今日はお話ししませんでしたけれども,他にも幾つかありますし,どんどん今も法律が変わっているのですけれども,そういったことで対応して,広い意味で再犯防止に関心が集中している,ということではないかと思います。 ● その点で,先ほど再犯率が40%という数字を出されましたけれども,そのことは余り気にしていないように思えるのですが。 ● それはそうですね。物憂げな顔で言われたわけではなかったので,それはもう現状としてあるということですかね。 ● それと関連なのですけれども,前回のドイツの報告のときに感じたのですけれども,ドイツでは非常に社会内処遇を重視しながら,一方では,前回の報告の数値を見ますと,保安拘禁,保安監置が厳然として存在し,結構多用しているような印象を持ちました。   フランスではその点,社会内処遇に積極化している印象を持つのですが,一方で保安処分の点はどうなのですか。両国とも死刑は廃止しているわけですけれども。 ● それはもう今日の話題,テーマではないと思ってお話ししていませんが,先生方御案内のように,これはもう保安処分の国ですので,新社会防衛論以降,デフォンスというのは非常に強調されています。ですから,あちらの刑罰論を見ても,非難可能性ですとか,あるいは道義的非難という話は余り出てきません。いかにしてデフォンスするかという話と,かつそれは司法監視ですとか,先ほど言いましたように,予審判事が予審として3年まで未決勾留できるというふうな制度が,日本では考えられないことですけれどもやっておりますから,その前提,保安処分を徹底するという前提の上に,それでも出てきた人にどうするかというお話かと思います。 ● ちょっと数字絡みのある意味で単純な質問ですけれども,レジュメに,単純執行猶予のところで,「宣告刑の一部について(拘禁刑4年,単純執行猶予3年)」と書いておられるのは,これは1年だけは実際に執行し,その後,残刑の執行を猶予するという意味ですか。 ● そうです。すみません,スペースの関係でそうだったのですが,拘禁刑として4年宣告した場合,先生のおっしゃるとおりで,1年だけ拘禁し後は執行猶予するということも裁量として可能だということです。 ● 日本流の,刑期は4年,執行猶予期間は3年というものはないわけですか。 ● ちょっとこれも説明すると長くなりまして若干時間がないのですが,日本の説明をしますと,非常にシンプルですねと,まさにこの単純執行猶予よりももっとシンプルですねというふうなお話はされます。逆に,それで本当に執行猶予の効果が上がるのだろうかという意見も聞きましたけれども,先生の御指摘のように1年間ショックを与え,残りで希望をつなげさせるというふうなことが,フランスでは考えられているのではないかと思います。 ● そうですか。それから,仮釈放の話ですけれども,レジュメでは,刑罰適用判事は,10年以下の拘禁刑を言い渡された受刑者と,宣告刑の長さにかかわらず,残刑期間が3年以下の受刑者について仮釈放を決定するとされていますが,これは,例えば,刑期が4年であれば,1年執行すれば仮釈放できるということですか。 ● そうです。ただ,通常そのような場合には認めないとは思いますが,理屈の上ではそうなるかと思います。やはり残刑期間という方が重視される場合もあるということです。 ● その残刑期間の重視ということですが,今のところでも短い方に軍配を上げているわけですね,3年以下の場合という。ただ,刑罰適用裁判所は,10年を超える拘禁刑を宣告され,かつ,残刑期間が3年を超える者について,仮釈放をするとなっておりますが,むしろ,これは,逆の方向を向いているのではないかと思いますが。 ● 単独の裁判官,刑罰適用判事が行うものについては,もともと罪質としても軽く,宣告刑の程度も多くないものなのですけれども,合議の刑罰適用裁判所が扱うものについては,残刑期間がまだ長いのだけれども,申請があったときに慎重に判断をするという体制はとっておりますが,先生の御想像のように,恐らくここでは簡単には認められないと思います。 ● 私としても教えていただきたいのですが,執行猶予の中で公益奉仕労働の義務を伴うものがありますよね。その場合,本人の同意を得てこれに従事させるわけですが,刑罰の一種として行われるということなのですけれども,外形上刑罰の一種として労働奉仕がなされているということが分からないようになっているのでしょうか。それを一般に見せるような形でやるべきだというような配慮はあるのでしょうか。 ● すみません。そこは聞いたのですけれども,余り明確な答えが返ってきませんで,先ほどスライドで見ていただいたように,特にこれというふうな強調はないです。むしろロープロファイルでやっているのだと思うのですけれども,そこは正確な知識は持ち合わせていないのですが,イギリスのパンフレットにあるように,今これがやっているところであるとか,成果を強調するようなことは聞きませんでしたので,ないのではないかと思います。 ● 特に性犯罪者に対する問題なのですけれども,初めに字句だけを読んだときに,追跡調査というのはいわゆる電子監視みたいなことを想像していて,レジュメを見ますと全然違うような制度だったのですけれども。この「追跡」というのはどういう意味ですか。 ● 「追跡」というのは,suiviという言葉の訳として日本でよく使われているからなのですが,継続という意味です。その人の性質が,犯罪性向がなくなったかをフォローしていくということでsuiviという言葉を使っています。 ● 別の面なのですけれども,電子監視というのは特に性犯罪者を主な対象としているわけではないのですか。 ● 先ほど申しましたように,GPSによる電子監視は専ら性犯罪者に対してかける方向です。 ● 性犯罪者の改善に力を入れているという印象でもないのですか。 ● それはやはり治療命令です。先ほど申しましたように,刑罰の修正といいますか,行刑施設では対応できない者という前提があるようでございまして,医療の面,治療命令で対応するということです。 ● 保安処分の性格になるのですか。 ● ただそこは,保安というよりも治療だということです。 ● 結構です。ありがとうございました。 ● 社会追跡調査の関係で,今も先生から御指摘があったように,性犯罪が取り分け取り上げられているということなのですが,こういった性犯罪以外でもう一つ問題になる問題としては多分薬物の問題があるのではないかなと思って。アメリカなんかでもドラッグ・コートとかやっていますけれども,そういった点について何かフランスで問題になっている点があるかという点と,あともう一つ聞きたいのは,これは全然違う観点なのですが,少年の事件については何かこういったたぐいの取組みというのはあるのでしょうか。 ● それは,今日はあえて言わなかった二点なのですけれども,まず,少年の方では,今,かなり少年刑務所を新しくして,まさに社会追跡調査のような態様で処遇をしようという方向に動いています。こちらはこちらで相当複雑な態様を呈しているので,ちょっと今日はお話をやめさせていただいたのですけれども,少年の場合,特に考えられていることは,成人の場合でも少し話したのですけれども,教育をきちんと受けさせるということです。身柄を取って収容している場合であっても,例えば日本でいうと高卒の資格を取って,大学入学資格を取らせて卒業させる。そこまでいかない人には中学高校卒業程度の教育を施すのだということが非常に強調されています。そして,少年の中にも薬物犯罪にかかっている者が多いので,彼らに対しては薬物の根絶処分のようなことを強調していて,統計にもそういったことが表れてきています。   あと,成人を含めた薬物犯罪対策としては,御存じかと思うのですが,それは治療命令あるいは治療処分という別途の方向でやっておりまして,イメージとしては通常の刑務所,行刑施設とは別ルートと思っていただければよいかと思います。ですから,日本の方は同じところでいろいろな分類処遇をするのですけれども,かなり区分けがはっきりしているという理解でよろしいのではないのでしょうか。 ● 先ほど御質問がありました,単純執行猶予の一部だけ刑を実刑で執行して,その後,残りの部分を執行猶予にするという方法,これは非常におもしろく拝見しました。ただ,こういう制度は,要するに仮釈放の先取りみたいなものというふうにも見えるのですけれども,日本のように,懲役4年を言い渡しておいて,後は仮釈放で対応していくのだというやり方に対して,あえてこういう方法をとって,日本はシンプルですねというふうに言うとすると,この方法はいいというふうにも思っているのでしょうけれども,何か違いというのはあるのですか。 ● そんなに心理的な違いは大きくないですよね。御指摘のように仮釈放でも条件を遵守しないことが解除条件であるわけですから,大差はないと思うのですけども,しかし,単純執行猶予の場合でも,それは観念としてはですが,拘禁刑が続いているということはあちらでは強調されるわけです。仮釈放の場合はもう自由になっているのだと。ただ,下手をうったら戻るよということなので,与えている心理強制の程度が,仮釈放の方が随分低いという点で違いがあると理解されているのだろうと思います。 ● かねてからフランスの場合は,治療は司法省の管轄ではなくて厚生省という形になっているということなのですが,これはやはり日本の場合,厚労省は一杯お金を持っていて,病院の施設なんかにもいろいろ金をかけられるのですけれども,そのあたりはフランスの場合もそうなのですか。 ● それはよく分からないのですけれども,それは多分歴史的なもので,お金の持ち方は別にフランスにおいて保健省が有力かというのは分からないのですけれども,あえて説明すると,恐らくフランス革命以前の司法権の濫用に対する危惧というのがあって,何でもかんでも司法に任せないという伝統なのではないかと思います。ですから,司法の範囲でできるところと,そうではないところはスタートの段階で割り切っているのではないでしょうか。 ● 今に関連してなのですが,これはフランスそのものも,もともとはそうではなかったのではないのでしょうか。 ● もともとというのはいつのことですか。 ● 要するに,例えば刑務所の中の受刑者に対する治療については,初めから司法省の管轄ではないというのは,もともとは司法省の管轄ではなかったのでしょうか。 ● すみません。そこは存じておりませんが。 ● 多分そういう形の理解をしていたのですけれども,ちょっとよく分からないですけれども。 ● そうかもしれませんね。ただ,それを恐らく正当化するには,刑罰と保安処分の二元主義というのをきちっとやらないといけないのだろうと思います。その治療のところにつきましても難しい問題がありまして,よかれと思って治療するのだったら,対象者の同意は要らないことになるわけですけれども,イギリスで紹介したように,事はそう簡単ではありませんで,薬物治療,根絶治療をするためにも同意が要るとされている国も出てきていますから,スタートをどこで切っても具体的な施策になると,かなり似てくるのではないかと思います。 ● 電子監視については,性犯罪に関して固定式の電子監視が使われることが多いというお話でしたが,これは,性犯罪の場合には在宅義務を課されることによって性犯罪を犯さなくなるという点で効果的だという趣旨なのでしょうか。 ● はい。そうも当然理解できると思いますし,今までは固定式電話と,それから,在宅命令を出すということによって対応できたわけですが,今後はやはりどこにいるのか分からない方が怖いですから,性犯罪対策としてはむしろGPSを使って,mobileの携帯を使っての監視がメインとなってくるという形で制度設計はされているようです。 ● それから,電子監視が司法監視の一環として行われる場合ですが,これは被疑者,被告人の身柄の確保ないし出頭の確保という観点で,未決勾留の代わりとして有効性があるというような理解がなされているのでしょうか。 ● そうですね。それはおっしゃるとおりです。先ほどグラフを見ましたけれども,電子監視の数が飛躍的に増えていて,恐らくかなりの部分は先生がおっしゃった司法統制手段として使われている。それは身柄の確保のためだとも理解可能だと思います。 ● それは,そういう成果を上げているということになるのでしょうか。 ● そうなるかと思われます。 ● 分かりました。どうもありがとうございます。 ● 比較的短い期間内にイギリスとフランスと両方を見てきていただいて,詳細な御報告をしてくださったわけですが,この二つの国の違いというか,あるいは逆に共通する傾向というか,そういう点についてはどういう印象を持たれましたか。 ● それは聞かれたくなかった質問で非常に難しくて,フランスをやるときは頭はフランス語だけになるものですから,なかなかお答えにくいのですが,どちらもまず共通して非常に大まかに言うと,こういった制度をつくるときに余りタブーがないのではないかという気がします。先生が今日御質問なさったように,刑罰の修正というのは日本人の目から見ると,概念矛盾のようにも聞こえるわけですけれども,量刑をした段階から刑の執行が始まるのだということで考えるならば,このような制度も採っていいでしょうし,また,ここでの公益奉仕命令というのは,フランス人は余り認めませんが,イギリス発祥のものであると言われていて,イギリスからフランスに流れて,ベルギーに行って,ドイツに行ってという経緯がありますが,そのいずれにしても,これが刑罰なのかと言われると,にわかには納得できない部分もあるのですが,慣れてくると刑罰に見えてくるとのことでした。ですから,どちらの国でもプラグマティックな対応がなされていて,現在の問題として過剰拘禁に対応するために,一つ有益であるということが分かれば,それをある程度制度化して使っていくという方向があるように思います。また,イギリスでは刑罰と処分の対比が,余り明確な軸としては出てこないわけですが,当然の前提となっていて,司法のできる範囲とそうではない範囲は,区別されておりますが,そのためにはやはり理論的に進めるならば,きちんと二元主義を採らなければならないのだろうと思います。そういうふうにタブーがないということと,現状がこれまで日本よりも過酷なことがあったために,いろいろな制度を作ってきたということで,諸先生方も御理解されている点でございますが,初めからこのような枝葉の多い制度であったわけではないので,今これだけ見るとなかなか難しいのですけれども,日本で使えるところを考えるとすると,やはり刑罰の執行段階を見通して,だれがどういう責任を持ってやるのが一番いいのか,そして刑罰といっても,社会復帰が極めて大きな目的であるとするならば,拘禁だけではなく,もっと外に出すということも考えてよいように思われます。しかし,それが治安の不安を惹起するのであれば,その手立ても考えなければいけないはずでして,この点に関しても,フランス,イギリスの経験は役に立つとは思っております。 ● 最後に御感想もいただきまして,ありがとうございました。   ただいまの御報告と御感想を受けまして,この際何か御意見をお述べになりたいということがございましたら,どうぞよろしくお願いいたします。   特に御意見がないようでございますので,今日の審議はこの程度にしたいと存じます。   ○○委員,本日は本当にありがとうございました。御礼申し上げます。   前回もお諮りいたしましたように,諸外国の関連する法制度の調査につきまして,その結果を順次御報告いただき,それに基づいて質疑応答や意見交換を行っておりますが,今後もこういう形で行っていきたいと思います。次回に御報告いただける調査結果があるかどうかにつきまして,事務当局にお伺いいたします。 ● 東北大学の○○先生に,アメリカの関連諸制度の調査をいただいているところでございますので,その結果を御報告いただくことが可能であると承っております。 ● それでは,次回は○○先生から,アメリカにおける関連諸制度等につきまして,御調査いただきました結果を御報告いただくことにいたしたいと存じます。   次回の日時,場所等について事務当局から御確認をお願いいたします。 ● 次回は9月27日木曜日に法務省B棟5階の会議室におきまして,会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては,午後3時からでございます。 ● ただいま御案内がございましたように,次回は9月27日木曜日に,法務省B棟5階の会議室において会議を行うことといたします。開始時刻につきましては午後3時からということになりますので,よろしくお願い申し上げます。   それでは,本日はこれで散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-