法制審議会間接保有証券準拠法部会 第19回会議 議事録 第1 日 時  平成19年9月18日(火)  自 午後1時43分                        至 午後4時35分 第2 場 所  法曹会館高砂の間 第3 議 題  ヘーグ間接保有証券準拠法条約について 第4 議 事 (次のとおり)                  議        事 ● それでは,ただいまより法制審議会間接保有証券準拠法部会の第19回会議を開催いたします。  (幹事の異動報告及び自己紹介につき省略) ● では,事務局に配布資料の説明をしていただきます。 ● 今回は,部会資料27として,「4条以下で検討すべき論点」という資料を事前送付させていただいております。これまで部会資料26と22に基づきまして,実際の実務に即して,この条約を批准するとどういうことになるのかということを御議論いただいてきたわけでございますが,ようやくその御議論も最終盤に差し掛かりまして,今日の途中には,部会資料26で御検討いただく課題を全部検討し終わるだろうというふうに考えまして,この条約について,さらに検討すべきと思われる論点を書き出した資料を新たにつくって,事前送付させていただいたということでございます。   したがいまして,今日の後半にこれに入っていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。   以上です。 ● それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   前回は,部会資料22の国際的な証券決済事例の処分の事例の4につきまして,部会資料26の第6の2に基づいて御議論をいただいている途中で時間切れになってしまいました。   今回は前回の御議論に引き続きまして,部会資料22の事例4に関する議論の途中から御議論いただきまして,部会資料26に基づきまして議論を続けていただきたいと思います。   前回の事務当局の説明にありましたように,本年中に総会の報告案を取りまとめるという日程からいたしますと,先ほども言われましたけれども,可能であれば,本日,部会資料27にも入りたいと思っておりますので,効率的な御審議をよろしくお願いいたします。   では,まず事務当局に前回の議論の整理をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ● ただいま部会長からお話がありましたように,前回は,部会資料22の関係諸図に基づきまして,事例4の海外投資家の日本物取引について,この条約を批准して,しかも当事者が日本法を準拠法とするということにした場合にどうなるのかということを議論していた途中で時間切れになったわけでございます。どういう議論をしていたかということでございますが,日本法が準拠法となる場合に,この事例4―AのカストディのYが,日本の社振制度上の口座管理機関とならない場合に,Y-A間の関係についてどうなるのか。Yが,社振法上の口座管理機関になれば,Yの下に口座を開いているAが株主とかあるいは社債権者ということになるわけですけれども,Yが社振法上の口座管理機関にならない場合は,Y自体が株主あるいは社債権者ということになって,Aは社振法とは何の関係もないことになりますので,株主にも社債権者にもならないということになるわけでありますけれども,そのこととの関係で,Aの権利取得について,社振法の類推適用があるのかどうかということを議論していただいていたわけでございます。   この点について前回は二通りの意見が出されたわけでございます。   一つは,この事例4に日本法が適用される以上は,すべてが日本である場合と同じ取扱いになるべきであって,AのカストディYが,日本法上の口座管理機関あるいは保振法でいえば参加者ですけれども,これに該当しなければ,この条約の適用の結果,日本法を適用して株式を取得するとされるのはYでありますので,Aの権利の性質はYとAとの債権関係にすぎず,Aが社振法によって株式を取得したとみることはできないし,Aには社振法の適用はないので善意取得などの規定の適用もないと,そしてYの株式あるいは社債の取得については,YがY’において有するY名義の口座の記帳によって決まると,こういうことでございます。   このように考えますと,例えば事例2―2の英国の例ですけれども,それとの整合性ということが問題になるわけですけれども,事例2―2の英国の例では,この場合におけるXあるいはYについて,社振法の類推適用をするということを議論していたわけですけれども,それはそもそも日本の社振制度に基づく階層構造ではないところに,社振法を類推適用するという場面であるのに対して,事例4の場合は,それとは異なって,本来,日本の社振法が直接適用される場面について,わざわざその適用を避けるためにYが口座管理機関にならないという選択をしている場合であると,したがって,Aについては社振法の類推適用の余地はなく,したがって善意取得等の適用もないと,こういう考え方でございます。   もう一つの意見は,先ほど申しました事例2―2との平仄といいますか,事例2―2の場合は末端のAとX,あるいはAとYとの関係で,日本法が準拠法になる場合には,そこに社振法の規定を類推適用するという考え方をとるのであれば,それと同じことがこの事例4のAとYとの関係についても言えるのではないかと。ただ,先ほどのもう一方の御意見と同じなのは,この場合はYは口座管理機関にはならないという選択をしていますので,A―Yについて社振法の類推適用をするとしても,それによってAが株主とか社債権者になるわけではないと。ただAが何らかの権利,債権関係ですけれども,それを取得したと言えるかどうかという問題についての善意取得の適用とかいう問題については,社振法の規定の類推によって,Aに善意取得の余地があるというふうに考えてはどうかという。したがって,先ほどの意見とこの意見の違うところは,善意取得とかの規定の適用の余地を認めるか認めないかという,そこに尽きているだろうと思います。   そういう両方の意見が出たところで,前回は時間切れになったということでございますので,もう少し御議論いただければと思います。   以上です。 ● ありがとうございました。  それでは,今,○○幹事から御説明がありましたけれども,この二つの御意見というのは○○委員と○○幹事の御意見だったかのように思いますので,○○委員からちょっと御説明あるいは御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● この段階に至ってもう忘れてしまっているんですけれども,ポイントは,今,的確に御説明していただいたとおりで,私の感じでは,事例4で保振機構が一番上にあるという場合には,日本の法律が全部適用になるという前提ですけれども,Yは口座管理機関になれるわけですから,ならない道をとった場合には社振法の適用はないという方が自然であって,これも今,的確に御紹介いただいたとおりで,事例2―2の場合は,日本の方に頂点がないわけですから,口座管理機関になりたくてもなれないというか,なり得ないわけですのでね。一番上のCSDが保振機構,社振法上の振替機関になることはないわけですから,そういうことはないということでいいのではないかというふうに申し上げました。それが一点,御質問されずにいたんですけれども,今の一説と二説の違いですが,この例で言うと,Aが株主になるわけではないということは変わらなくて,Aが取得する何らかの権利――債権的権利と呼んでおきますけれども――の取得について,善意取得の規定が類推適用されるのかどうかという点に尽きるというふうにおっしゃっていただいたので,これAの取得する権利の性質のところはどうなるんでしょうか。つまり,簡単に言うとYが倒産した場合ですね。この場合に今,債権的権利というふうに言ってしまっているわけですけれども,ここの部分は社振法のそれこそ類推適用があるのか,善意取得だけなのかというあたり,ちょっとお伺いしたいんですが。 ● 私が前回申し上げましたのは,そこは善意取得の類推適用の余地があるのではなかろうかと,事例2―2との平仄から言ってですね。けれども,だれが株主かという問題はまさにこの事例4の場合には,○○委員もおっしゃられましたように,頂点が日本で,日本の社振法が直接適用されるところを,Yが口座管理機関にはならないという選択をしているわけですから,そこは株主という地位を取得することができるのはY以外にはない。そこは事例2―2とは違うところなんだろうと思いまして,ですからAはYに対するY―A間の契約に基づく何らかの権利あるいは信託受益権なのかもしれませんし,そうではない債権的な権利かもしれませんけれども,そこは日本の民法を適用するということになるんでしょうか,あるいは日本の信託法を適用するということになるのかもしれませんけれども,YとAとの関係については,どういう権利をAが取得するかは,それによって決まると。ただ善意取得の余地があるかどうかということについては,主として問題になるのは,この事例のようにXからAが取得した場合も,Yのところで善意取得をしてしまえば,もうそれに対する何らかの権利を取得するだけですので問題はないのですけれども,Yの下にぶら下がっている者同士でやり取りがあったという場合を考えますと,そこに善意取得を認める意味があるいはあるのかなと。あるいはそこまでする必要がないのかもしれませんので,そこはさらに皆さんの御議論をいただければと思います。 ● ついでにもう一点,よろしゅうございますか。   私は,前回の御説明ではそこのところは話もきちんと理解していなかったものですから,あくまで社振法上はYが株主でAは株主ではないということであれば,余り両説の差はなくて,今,御説明のあったとおり善意取得の規定の類推適用があるかどうかというあたりに尽きてくると思うんですね。そうですと,どっちでもよさそうに思えるんですけれども,これが全部国内の場合には,Yの下にAがぶら下がっていてもこれは類推適用はされるという利益衡量,御判断なんですけれども,そうではなくて,もし全部国内の場合には,類推適用の余地がなくて,こういうクロスボーダーの場合に類推適用の余地があるといったら,そこにある実質的な利益衡量というのは,一体何なのかということをちょっと教えていただけたらと思います。 ● そこはお尋ねになるかと思って,つらいところだなと思っていたのですけれども,要するに全部日本,Aまで全部日本だという場合にはもちろん社振法の適用はないし,類推ということも考えられないのではなかろうかと。したがって,善意取得ということはないということにならざるを得ないのかなと思っていました。そことのバランスを考えると,この事例4の場合のAについても,善意取得も含めて社振法の類推適用の余地はないと考える方が,平仄がとれるのかなという感じは確かにいたします。ただそうすると事例2―2との平仄がとれなくなる。結局,どちらかをとればどちらかがとれなくなるので,国際的な取引の場合は善意取得というのをやはり認めた方がいいということで,社振法を類推適用するんだとすれば,頂点がどこにあるかにかかわらず,事例2―2と事例4とを同じように扱うという考え方もあるのかなと,そんなにこだわっているわけではないんですけれども,ですからどちらを立てた方がいいのかということは悩ましいところかなと思っております。 ● 今の点につきまして,御意見をお伺いしたいと思うのですが,いかがでしょうか。○○幹事,いかがでしょうか。 ● どうでしょう。この事例4の場合で海外に出ている場合ですよね。私はどちらかと言うと余り上の機関が保振機構であるかとか,あるいは日本法上の特定の監督を受けているかとか,口座管理機関になっているかということによって,それと日本の公法上の評価によって,例えば投資家ですとかYですとか,それから私法上取得する権利ですとかいう部分に違いが出てくるのは余り適当ではないのかなあと,いわゆる日本の公法上の監督が及んでいるということを基準に,そこを切り分けるということは余り適当ではないのかなと。準拠法として適用する際にも,日本法を例えば適用する際にも,そういったことというのは,余り配慮しなくてもいいのかなと思うんですね。ですからそこを基準に分けなくても,日本における口座振替機関と同じような機能を果たしているような主体であれば,社振法の規定を国際私法を通じてなのかもしれませんけれども,適用するということがあってもいいのかなというふうには考えているんですけれども。ちょっと期待されたお話をしたかどうか,ちょっとついていけなかった部分もあるので,期待されたことを申し上げたかどうか自信がないんですが。 ● そうしますと○○幹事の御意見は,その事例2―2の場合と事例4の場合,この頂点が日本なのか外国なのかという違いがあるわけですけれども,それで区別しないで,日本法を準拠法として決めたのなら,社振法の類推適用がどちらにもあるべきだというお考えですか。 ● そうですね。国際的に見れば,それぞれ国,いろいろな機関があって,同じような機能を果たしている機関であっても,ある機関は公的な監督を置いていたり,ある機関は公的な監督を置いていなかったりというケースというのは,ほかのケースでもあると思うんですけれども,そういったことを私法上の権利の所在を決定するというような局面に,余り引きずってこなくてもいいのかなというふうに考えていまして,そういう意味では,だから形としては一緒ですよね。日本法上の口座管理機関としてのステータスを持っているか持っていないかということが,事例2-2と事例4とではひっくり返っているだけだと思うんですけれども,それによって違うと考える必要はないのかな,そういう意味では,○○幹事がおっしゃられたとおりだと思います。 ● 今,権利の帰属について区別して考えるべきではないということをおっしゃったんですけれども,事例2―2と事例4とで同じように扱うという点は,私の意見と非常に近いんですけれども,今,帰属ということをおっしゃったということは,事例4の場合でも,Yが日本の社振法,保振法上の口座管理機関や参加者になっていない場合であっても,実質的にそういう機能を持っている企業であったとすれば,株主はYではなくてAであるという,株式まで帰属しているというふうに性質決定をするところまで,日本法,その社振法の類推適用をしてしまうということなんでしょうか。 ● 株主がだれかということは,おそらく会社との関係で,会社との関係で株主がだれかということが問題となっている局面においては,それは,その今出てきているような社振法を一段一段つなぎ合わせて,権利の帰属を判断しているという場面ではなくて,もう,むしろ会社との関係でだれが権利者かということなので,会社の設立準拠法か何かによって判断をするということになると思います。その際に,日本の会社法が株主と考えるのはだれなんですかと,それは社振法を一個一個つなぎ合わせて判断をするか,そうではなくて実質的な権利者を日本の会社法上,株主と認めて権利を行使させてあげるというふうに考えるかは,この社振法とかその話もあると思うんですけれども,どちらかと言うと会社法の解釈論ということによっても影響を受けるのかなというふうに思います。 ● 今,○○幹事が言われましたように,会社との関係でだれが株主なのかという問題は,この条約の規律する範囲外ですので,別途決まってきて,日本の会社法とかあるいは社振法もそれの一部を成している部分があるわけですので--株主名簿の名義書換をどうふうに行うかということを規定している部分がありますから--そこで決まってくるんだと思いますけれども,実はそのことを前回私がそういうふうに申し上げたんですが,そのときに○○委員から言われたのは,それはそうなんだけれども,しかしこの条約が適用される範囲については2条に規定がされているわけですけれども,増額記録に起因する権利の法的性質,あるいは処分の法的性質というのがあって,ですから一体何をAは取得するのかというのは,対会社の関係だけではなくて,この条約の適用する場面として問題になるんではないかという御指摘を前回受けて,それにうまく答えられなかったんですけれども,私は対会社関係は,○○幹事がおっしゃられたように,この条約で決まる範囲ではなくて,別途決まる事柄なので,この事例4の図であればYが口座管理機関にならないで一投資家になるのであれば,株主名簿に書かれるのはYしかいないわけですから,対会社関係ではYが株主になることは間違いないんですけれども,その場合に会社を離れた権利の帰属では,Aに株式が帰属しているのかというと,やはりそこは違うのではないかなと,うまく説明できないんですけれども,Aは単に会社に株式を取得したことを対抗できないだけではなくて,やはりAが取得するもの自体は,株式ではないんではないかと。つまり,日本法を適用するとしても,先ほど信託とかあるいは何らかの契約上の合意に基づく民法上の何らかの債権的な権利というふうに申し上げたんですけれども,そもそもそういうものしかAは取得しないんではないかなと,そういってくるとだんだんつらくなってきて,類推適用する部分が善意取得だけ類推適用されるのはおかしいではないかという○○委員のお話も,何かだんだんごもっともかなという感じになってきてはいるんですけれども,その辺は○○幹事,いかがでしょうか。 ● 私がどうこういう話かよく分からないんですが,例えばAとYとの関係で,Aの口座に記帳されている権利,YもAの口座に記帳されている数字からAがどういう権利を取得しますかというようなことが問題となっているときには,今おっしゃられたように株主ではないと,何らかの別な権利ですとまで言う必要はないんではないかなと,そこにおいてはYと基本的にその会社は関係ないわけですから,YあるいはAあるいはYに記帳されているAの財産的な価値をめぐって,差押債権者とかいろいろな人がかかわってくるかもしれないんですが,その人たちが考えているのは,Aの株主としての地位ですよね。そこでAは株主としての地位を持っています。少なくともその口座の記帳との関係で,その口座をめぐって私こそが権利者であるということを主張する人たちの関係では,Aが株主ですよ。ただ上にいったらどうか分かりませんというふうなことしか,この条約によって決まるYが管理しているAの口座に着目して決まる準拠法というのは,その問題しか多分答えないと思いますので,そうであれば難しく考えてそこは株主ではなくて,それから何か除いたものなんではないかと考える必要はなくて,株主としての権利を認めてあげるといっても,その認めてあげるという言葉は意味が不明だと思いますが,余り難しく考えなくて日本法上同じようなシステムにおいて,Aの立場にあるような人が持っているのと同じような権利を認めてあげてもいいのかなと,それを除くことによって余り積極的に何か重要な意味が出てこないのかなと思うんですけれども。 ● もうちょっと新しいものを生かしてもいいのかもしれませんけれども,おそらく○○幹事がおっしゃった見解,やはり株式はAに帰属するっていうところまでいくんだと思うんですね。公法的な面にかかわらず適用する。会社以外の第三者との関係ですけれども,もちろんそういう考え方はあり得ると思いますし,公法的な規制とは別に,私どものところは一貫して考えましょうというのがそこまでいくと思うんです。したがって,第3説ですね。○○幹事のおっしゃったのは,そこまではやはりいけないだろうと,日本の社振法の適用する場合にはですね。それで善意取得のところを類推するというのは,ある種の一貫性ですよね,そこから出てくるので,そういうお考えもあるということではないかと思うんですね。   ですから,そこは分かれるんだと思うんですけれども,私の感覚ですと,全部国内の場合は駄目で,そうでない場合はほぼという言い方はよくないと思うんですけれども,類推適用があるというのは何となく私もナショナリズムの――こういうことを言ってはいけないんですけれども――発想からはちょっとやはり日本法の解釈としては,余りないということではないかと思うんですけれども,論理的にはおっしゃるように3説ありということだと思います。 ● ほかに何か御意見ございませんでしょうか。 ● ○○幹事,何か御意見いただけますか。 ● 私は,特に自分の強い考えがあるわけではないのですけれども,事例4におきまして,カストディのYというのが保振機関の口座管理機関にはなっていないという場合について,社振法の規定の切出し適用ができるのか,できるとして一体どの範囲でそれをするのかという,これまでもう何度も議論されてきた問題かと思いますけれども,私も結論的にはその例えば善意取得のような規定は,切出し適用があった方がいいのではないかというふうには思うのですけれども,果たしてそれをどのように説明するのかということについて,社振法の規定自身が業法・監督法的な規定と私法的な規定が一つの法律の中に一体として含まれておりまして,両者を峻別するということがどこまで可能なのかという点について,私はまだ十分な見識といいますか,考えを持つことができないので,本当にそういう意味では十分なお答えをすることができないのですが,ただ他方で,今申し上げたような事情によって,Aの法的地位に大きな差異が生ずるというのは,これはこれでまた本来この議論の出発点である法的安定性を高めて取引を迅速かつ円滑にするという,そういう目的からして,そもそも議論の目的に合わないような気がいたしまして,申し訳ございません。本当に適切な回答はできないのですけれども,なかなかまだ自分の考えを十分に持てずにいるところでございます。 ● どうもありがとうございました。   実務の方からでも結構でございますけれども,その他,○○委員,何か。 ● お伺いしている限り3説あるテーマなんですね。どれがいいかというのはちょっと私もよく分かりませんが,切出し適用,類推適用というのは余り振回しはいけないのではないかなという感じはいたします。それが今のところの印象ですね。 ● どうもありがとうございました。○○幹事,何か発言がありそうですけれども。 ● ちょっと私自身考えていたということではないんですが,Aの勝つときYと書いてあるので,金融機関等でしっかりした人で,例えば私が先ほど申し上げた同じような機能を果たしているんだったらいいではないかという話があったと思うんですけれども,現実の世界でこのYの地位に立つ人,どんどん積み重ねてだれかのために名前を管理しているような人が積み重なっていったとき,帳簿を管理している人が積み重なってきたときに,どこまでを同質の人として扱うかということは,実務的には難しい場合も出てくるのかなというふうな気は……。例えば,それこそ信託受託者だって帳簿は管理して電子的に管理しているかもしれないわけですが,その人をカストディ,金融機関の免許を持っていなくて普通の人が指示ができるといったときに同じように扱うというと,そこにそういった主体が管理している帳簿を,日本の金融機関が管理しているような帳簿と同じような意味を与えるというのは難しくなってくる場合もあるのかなと。それで,その同質性のチェックというのも実務的に場合によっては難しい。差が出てくるのかなということをちょっと思い浮かべて考えていた,そういう状況でございます。 ● 今,○○幹事から御指摘があった点,前にもこの条約の作成の過程でも議論があったし,できてからも議論があったと思うんですけれども,条文で言うと1条の1項c号ですか,口座管理機関の定義との兼ね合いで,この条約は口座管理機関に限らずいろいろな定義について,非常にニュートラルな余り実質の入らないような定義の仕方をわざわざしているので,この条約における口座管理機関に先ほど○○幹事が言われたような,例えば個人が,ある人の財産の信託を受けて,その個別の信託行為として株式を取得しているという,そんなものはおそらくここでいう口座管理機関には入らないんだろうと思いますけれども,それがそういうふうに条文上必ずしもはっきりしていないと,そこの問題ですよね。   ただ,その問題はちょっと置いておくことにして,一点だけ,これは私が申し上げるよりも○○委員あるいは○○委員から御説明いただいた方がいいのかもしれませんので,後で必要があれば補足をしていただければいいと思うんですけれども,このAのカストディYというのは,いわゆるカストディ銀行なわけで,非常に大きな金融機関なわけですけれども,実はこれから施行される株式の電子化の関係でも,外国のカストディ銀行が日本の保振機構の下位の口座管理機関になるのかどうかということは,実務上の一つの検討課題ではあるんですけれども,おそらく,多くのカストディ銀行は,日本の口座管理機関にはならないという選択をするだろうと見られているというふうに承知しています。それはなぜかと言うと,日本の口座管理機関になりますと,社振法上いろいろな監督規制を受けるというだけではなくて,社振法の規定上,毎期毎期に先ほど申しました株主名簿の名義書換をするための総株主通知とか,あるいは期中における権利更新のための個別株主通知とか,その他さまざまな行為をやらなければいけないということで,非常にカストディ銀行の今までの実務に照らすと,実務も変わればそのコンピューターシステムにも大きな手を入れなければいけないとかいうような問題があって,それで日本の口座管理機関にはならないという選択を,おそらく多くのカストディ銀行はするだろうというふうにみられているわけでございます。   したがって,そのようなカストディ銀行Yに投資をしている海外投資家Aは,どれぐらい法的知識があるかという問題はもちろんあるんですけれども,客観的にはYが社振法上の口座管理機関ではなくて,Yが単なる日本の社振法上は投資家にすぎない。その人が株主になるんだということを前提にAは投資しているということになりますので,そこを考えますと,そうであるにもかかわらず,Aが株主に対会社関係以外ではなってしまうというのは,ちょっと問題なのかなという実務の実情からしてですね。それがまさに前回,そして今回と○○委員がおっしゃられたYは,日本の口座管理機関になることができるにもかかわらず,あえてなっていないのに,同じ扱いをするのはおかしいとおっしゃった,そこに多分かかっているのかなというふうに思いますので,その点一言だけ申し上げさせていただきます。 ● ○○委員と○○委員,何か,今の点に関しまして。 ● 今,○○幹事から御説明いただいたように,今後も社振法の中で海外のカストディ銀行,グローバルカストディアンなりが保振機構に口座を開くと,直接口座を開くということはもう考えられておらない。今,○○幹事の御発言のとおり,法律上の制約もさることながら実務的な制約,システム的な制約がいろいろあるということだろうと思います。   今,お話を伺っておってですね,社振法の類推適用ができるかできないかということを,AのカストディYが持つ機能が,日本の保振機構に口座を持つ口座管理機関と同等と見られるのか見られないのかという観点で考えるということなのか,あるいは専ら法律的な位置付けというんでしょうかね,そういったもので考えられることなのか,ちょっとこれは私の質問ということなんですけれども,これは両方重なっているんでしょうか。それとも機能面で見ると,今,申し上げたように口座管理機関としての役割を海外のグローバルカストディアンなりは少なくともすべては果たさないということは明らかだろうと。それをもって類推適用が不適格ということなのか,あるいは法律的な,あるいは私法上の制約なり基本的な考え方によってそれは適当ではないとされておるのか,どちらでございましょう。 ● おっしゃるとおりだと思うんですね。両方の考え方が可能だと思うんですけれども,私はもう自分の説にこだわるつもりはないですけれども,もし企業がですね,企業に着目して法的には社振法上の口座をつくったんではないけれども,それなりの機能を果たしているから,その下にぶら下がっている人にも善意取得を適用する。そういう議論をするのであれば,私は全部国内の場合でも,やはり議論は高まるべきだと思うんですね。やはり国内投資家を保護せずに何で海外投資家をより保護する会社が出てくるのかが,私にはいまひとつ分からない,この文脈ではですね。結局,ですから社振法の考え方というのは,機能を果たしているだけではなくて,やはり社振法上の口座管理機関になっていると,そこでどこまで合法的な義務を負うのかというのは,程度問題だと思いますけれども,私法上も管理機関になっているというとちょっとややこしい言い方になってしまいますけれども,そのやはり,だから善意取得という効果を認めましょうということで,制度全体の安定性を図り,投資家というか流通の保護を図っているんだというふうに私は思うんです。もちろんそれでもまれに,およそ口座管理機関にはなり得ないような選択肢がない場合には話は別なので,そういう文脈において投資家保護をどう図るかという議論をしなければいけないと思うんですけれども。繰り返しになりますけれども,この場合Yは選択肢があるわけですから,それでなってない選択をしているわけですから,そういう文脈の下でこれはあらかじめ分かっていることですので,それ以外の投資家には善意取得で保護しますと,国内の人は駄目ですと,その方が私はすごく抵抗があるんですね。しかしこれは皆さんに……。 ● ほかに何か御意見ございませんか。何か一つに結論を絞るという必要もないかと思いますので,ではこの点はこのあたりで終わらせていただきたいと思います。   それでは,次に移りまして,第6の3について,今度は,この条約によって日本法が準拠法とならない場合について御意見,御質問はございませんでしょうか。 ● ちょっと説明をさせていただきます。この3の問題の方が実はこの事例4では一般的な場合なんだろうと思います。例えば,部会資料26に書いておりますように,AとYの間でYがアメリカの金融機関なので,ニューヨーク州法を口座管理契約の準拠法にしていたという場合にどうなるのでしょうかという問題で,これはどうなんでしょうかと言っても,ニューヨーク州法上どうなるかということによって決まることになるのかもしれないんですけれども,先ほどの議論とちょっと関係するわけですが,Yが日本の社振法上の口座管理機関になっていないということになれば,日本から見た目でいえば,Yが日本の社振法上は株主であって,AはそのYに対する何らかのニューヨーク州法上の権利を持っているというふうに考えるのかなと思うわけなんですけれども,国際私法学的に見てそういう理解でよろしいのか,あるいはそれはなんというか島国的なものの見方で,国際私法の目から見るとまた全然違う切り口で見ることになるのかといったあたりを,御教示いただければと思います。 ● ○○委員,何か。 ● AとYの間の関係はニューヨーク州法というお話ですが,Y―Y’の関係はこれはもう全く関係ない話なんですか。あるいはこれもニューヨーク州法ですか。 ● それはどうなのでしょうかね,○○委員。あるいは銀行だから○○委員に伺った方がいいのかもしれませんけれども,カストディアンとサブカストディアンの関係は……。サブカストディY’が日本の社振法上の口座管理機関ですので,そこに口座を持っているから日本法で口座管理契約をすることになるのか,それともカストディの方が大きいですから,そちらの力が強くてそこをニューヨーク州法になるのかというのは,両方論理的にはあり得ると思いますけれども,実際の実務はどんな感じになるんでしょうか。 ● 実際に今起きていることといいますか,説明を申し上げますと,保振機構さんのケースでも,それから国債についてCSDが日銀さんの場合も,そうですね。その両ケースともなんですが,Y’とYの間の個別の契約,これは日本の社振法あるいは日銀の約諾書,これに準拠するということを,言わば私の立場はサブカストディアンY’ですけれども,Y’からするとYにのんでいただいていると。YとAの間の契約もそれに準拠するという形になっているんですね。なぜそうなっているかと言いますと,これは事例4とその次の事例5の海外市場におけるDRの場合と比較してみるとおもしろいんですけれども,日本に非居住者に対する源泉徴収非課税措置というものがありまして,これは租税特別措置法に基づいているわけですけれども,租税特別措置法が日本の社振法に準拠して行うことになっていますから,それをAなりYがオーケーしないと免税の利益が受けられないんですね。そういうことがありまして,これがAもYもそれをのんでいるという状況が現実です。  それでなぜ事例5のDRの場合と比較するとおもしろいかと言いますと,DRの場合にはそれは減税措置というものがありませんから,そういうものは入れておりません。ですから日本の社振法及び日銀さんの約諾書に準拠したものという形にはなっておりません。   ですから,私の個人的な意見にはなりますけれども,そのヘーグ条約を日本が批准するということになると,この辺をやはり変えていかないといけないのではないかと思っております。日銀さんの約諾書あるいは保振さんの約定というのは,海外にも全部及ぶ形で構成されているわけですけれども,先ほど申し上げた租税特別措置法ですね,これを平仄のとれたものにしないとと言いますか,批准しても結局は日本のものでやっていくんですよという,日本だけは違うものになっていきますよということになりますので,世界でまだヘーグ条約を批准しているのは米国とスイスぐらいですけれども,世界中をヘーグ条約に基づいて行うといった場合に,もちろん個別の契約を優先することは分かっているんですけれども,我々の日本のサブカストディアンの立場からしますと,この一連の投資者の中で一番序列の強いのはAなんですね,当然ながら投資家ですから。投資家の言うことをYは聞かざるを得ない。Yの言うことをY’は聞かざるを得ない。そういう力関係にありますから,こういった一連の契約を行っていく中で,Aからすれば,なぜ自分の行為地法でやってくれないんだということになりますので,そこでY’,つまりYというのは現状の日本の保振法の約諾書をベースとするものと,海外からの圧力との間のジレンマに陥るわけですね。それが実務上の,今後我々が非常に懸念している問題でございます。 ● 念のため申し上げておくんですけれども,今の○○委員の御発言,非常に興味深く伺ったんですけれども,今直面している問題であるとか,今後の課題だとかとおっしゃった点は,ヘーグ条約とは関係のない点で,ヘーグ条約が批准されようが現行法の下であろうがある問題ですよね。なぜかと言えば,現在の法例というか通則法になりましたけれども,この下であれば別に日本法にしていようが何していようが,物権準拠法は何の関係もなく所在地で決まるわけですから関係がないわけですよね。それを今ここで問題にしているわけで,それがヘーグ条約の世界に入れば,それは合意によって決まるという違いが出てくるわけですので,それを踏まえた上で,もうちょっと正確に言うと,今,物権準拠法というのは当事者の合意で決められないわけですので,そういう世界において今どういう取扱いになっているのかというと,おそらく契約準拠法について今おっしゃったようなことがなされているんだというふうに,私は理解するわけです。なぜなら,物権準拠法についての合意は無効ですから。そういう立場に立てばですけれども。ですから,おそらくヘーグ条約になった場合には,そのいわゆる契約準拠法が合意でも別々に定めることもできるかもしれませんけれども,通常はそれが物権準拠法にもなるわけですから,そこのことをおっしゃっているんだというふうに私は理解しました。   もう一点,実務の話というのは税で決まるというのはよく分かった非常にいい例だと思うんですけれども,日本の税がそういう社振法の適用ということを前提にできている,そういうルールを採っているとすると,それはもちろん国際的には非難されるかもしれませんけれども,今でもあることでありまして,税がその立場を取り続ける以上は,仮にそれが主たる理由だとしますとですね,今後も今御説明があったような実務が続くということは,もちろんヘーグ条約との関係では何の問題もないということを,念のためにこれは申し上げておきます。 ● ○○委員,いいですか。 ● ちょっと私の理解は十分ではないかもしれませんが,保振とY’との間ではそのY’がこの下にぶら下がる以上は,日本法にしてくださいというのは,Yというのが入っているわけですよね。ところがヘーグ条約が適用されていれば,その保振とY’の関係は日本法と。さらにそのY’―Yとの関係も,上から言われているんで仕方がないので日本法にしてくださいというのを入れるということですか,今のお話は。上から言われているというか,それがぶら下がる条件になっているので,Y’としてはYが口座を開くときにこれについては日本法によるという約款を,もし今,大して変わらなければ入れると。さらにその投資家に対しても,今後については日本法によりますよということを言っておかないとうまくつながらないと。それがずっと続くかどうか分からないところだと思いますので,それは変わりないですか。その口座管理契約なのか,日本の証券の管理契約なのかというと,口座にはいろいろな社債なり株式が入っていると思うので,日本でないものについては日本法でやってくださいという必要はないですよね。そうすると約款の書き方がなかなか難しいと思いますけれども,この口座に入る保振がCSDになっている証券の管理については日本法によりますと。そういう観点があるんではないですかね。   そうすると,先ほどのことが全部日本法になるので,ヘーグ条約が適用されれば,そういうものも問題ないというか,今の租税とは違いますね。 ● 前提なんですけれども,○○委員は今ある方の,例えばここで言うとYですよね。YがY’に持っている口座に,そのCSDを保振とするものと,ほかのCSDを頂点とするものがごっちゃに一つの口座の中に入っていることを前提とされているような御発言があったと思いますけれども,ちょっとそこは○○委員あるいは○○委員に補充していただければと思いますけれども,私の理解では,これはシステム上,Y’は保振機構さんと直接つながるコンピューターシステムですので,保振機構に入っている分だけの専用の帳簿で保振システムとつながっているんではないかなと。だからほかのCSDにつながっている分が,もしもあるにしても,別口になっているんではないかなと理解したんですけれども,そうではないんでしょうか。 ● ○○委員。 ● 商品の帳簿の管理で申し上げると,一応当社の中では商品単位ごとといいますか,この取扱商品ごとの口座簿の管理は,一応できる形になっております。ただ,それは当社だけなのかという話があるんですけれども,少なくとも振替制度で振替口座簿というのが,これ明確に法律上明記されておりますので,これに関しては商品単位で一般債なら一般債,短期社債は短期社債,これははっきり分かるような形で,帳簿は一応法定帳簿として注目される形にはしております。 ● ということは,先ほど○○委員がおっしゃられたような,ほかのCSDに入っている証券も一緒に一つの口座の中に入って記帳されているということはないという理解でいいですか。 ● 顧客から見ればですね,それはお客様の口座上はどんぶりで入っているというふうに見えるんですけれども,証券会社の中の管理としては,そこは分かれるような形になっている状況です。 ● ですから,観念的にその一つか多数かはともかく,日本のCSDに入っているものについては日本法ですということが今のプラクティスで,この今の第6の3の前提は,そこを変えて末端の方については,外国法によって管理することは構わないということになった場合にどうかっていうことですかしら。 ● そもそもその前提なんですけれども,先ほど○○委員はYとAとの関係も日本法だとおっしゃったんですけれども,本当にそうなのかどうか。というのはここでの前提は,Yは保振法上の参加者とかにはもちろんなれないわけですね,単階層ですから。多階層構造になる社振法になっても,Yは日本の社振法上の口座管理機関にはならないという前提ですから,Yの下のAは日本から見ると株主でも何でもないわけですし,Y’はAとの間では直接には何のつながりもないんで,Yにそうしてくださいとお願いをしても,そのとおりYとAの関係がなるとは限らないと思うんですけれども,そこは○○委員がおっしゃったことが実務だということでよろしいんですか,本当に。 ● すみません。株についてはちょうどY’のレベルで常任代理契約が結ばれていて,明確に私ら株主ですと言い続けて振る舞われていると。振替法のもとで国債なり一般債なりいうことで,これはちょっと前回の部会を休んで申し訳なかったんですけれども,話題になったようでございますけれども,先ほど○○委員がおっしゃったように,一応国債の規定もそうですし,保振機構さんの業務規程も含めて,一応末端までこの法律に従うという形で行っているということですので,実務的には確かにつらい部分はありますが,法的にはそうなっているということで,ここは割り切ってしているんではないかなという気はしております。 ● 今,おっしゃったその末端とは何かという問題なんですけれども,Yが日本法上の口座管理機関にならない場合は,末端はYなんであって,日本から見れば,Aはどうでもいいというか,全然関係のない世界になるはずなので,末端はYなのではないでしょうか。だからこそY’はYとの間で日本法にしようということにしなければいけないという取決めを保振機構さんとの間でされるんだと思うんですけれども,また間接口座管理機関ができれば,その間接口座管理機関も自分のお客との間では日本法を準拠法にしなければいけない。あるいは日本銀行のルールに従わなければいけないということになるんだと思うんですけれども,日本の口座管理機関にならない,そこから下はもうさらに下をもし持っていたとしても,それは勝手にやっているだけの話で,日本から見ると相手にするものではないので,末端ではないんではないかなというふうに思ったんですけれども。 ● 多分,実務的にはそう回しているのだと思うんです。ちょっと株についてはもう一つ先ほどの常任代理契約の下でY’が投資家として振る舞っているのは多分間違いないだろうと。その他,振替法のところの国債,一般債については,ちょっと前回の部会の議事録を見る限り,ここはちょっと私もよく分からなかった。実務とはちょっと違う世界で決められるというような感じはいたします。 ● 私も調べずに言っているわけではないんですけれども,必要なら次回まで調べてきますけれども,おそらく国債とか公社債との関係ではAというのが税法上は末端なんだと思います。Aという人が。ですからちょっとそこをどういうふうに――いや,余り調べずに思い付きで言ってはいけませんので,調べる必要があるなら調べてきますけれども――ですからAが税法上の特典を受けるためには,今先ほどおっしゃったようなことが条件になっている。ただ繰り返しになりますけれども,それは税法上の要求であって,別に税法上の特典を受けなくていいというんであれば,別にAとYとか,YとY’がニューヨーク州法にしたって構わないわけですから,そこはそういうダイナミックスの中でそういう選択は行われているとこういうふうに評価するのが普通だと思いますけれども。 ● ○○委員,何か,補足していただくことはありますか。 ● 確かに株であろうと公社債であろうとY’―Yの関係は,参加者の方がそれを押し付けてきますから,どういうふうにお思いになるのかなと。で,YとAに関しては株の世界ではむしろ投資家の意見の方が強いですから,投資家が希望する準拠法になると思いますし,この条約の外では準拠法を選択するというときの認識としては,こちらの2条3項ですか,この条約が定めないものということの方を認識して,準拠法を選んでいると思うんです。そしてその口座管理機関の注意義務ですとか,義務の範囲はどこまでかという方が,非常に契約債権的なものだけをイメージして準拠法を選択しますので,この上への影響について,あるいはそのAという人が持っている対第三者とかですね,Aのあるいは発行体に対する権利は意識せずに決めているはずですので,ここはそれで決まっているのかなと思います。 ● どうぞお願いします。 ● 前回の会合で国債振替決済制度などについての仕組みについては,御説明させていただいていると思うんですけれども,この図でいきますと,AのカストディYが外国間接参加者ということになって,日本銀行はそのYが外国間接参加者になりたいというときに,いろいろな審査をしまして,これと直接約定を結びまして,その準拠法を日本法でやるというふうに定めています。ただYとAとの関係については,そこを法律関係は日本法が準拠法であるというところまでは定めておらず,ただし,外国間接参加者Yの責任において,そのAにおいて社振法及び日本銀行の業務規程等に違反する事態が生じないことをYに確約させていると,こういう扱いをしております。 ● 今言われたのは,Yが間接参加者になる場合ですよね。ならない場合を先ほど私は申し上げたので,ならない場合はもう終わりでとまりということですよね。 ● だから関知できないということです。 ● 議論の途中ですが,ここで休憩を入れたいと思います。           (休     憩) ● それでは再開させていただきます。   休憩前の御議論の続きになるんですが,○○委員から,YとY’の間の準拠法はどうなのかという御質問をいただきまして,要するにAとYですね,海外での準拠法がニューヨーク州で今度上の方にまいりますと日本法になるということですね。その間のことで先ほど休憩前には議論していただいていたのですが,今までの議論からもう一度○○委員の御意見を伺ってみようと思います。 ● その意見を申し上げる前に,私が認識しているところを今お休みの間に少しお聞きしましたので申し上げますと,保振とY’の関係はこれはもう日本法以外にはあり得ないということだと思いますけれども,そこでY’に対しては,株主でそこにぶら下がる人はYだと思いますが,その人には日本法に従ってやってもらうようにしなければいけないというお願い,あるいは義務が課されると思いますけれども,そのことが必ずしも日本法を準拠法とする契約上の義務として課す必要があるのか,その外国法上の義務でもよいけれども,何を出すのかよく知りませんけれども,情報提供その他をきちんとすることを約束,それが確保できていればよいという可能性もあるようでございますので,もしかするとそこも日本法でない可能性があるのではないかと思います。   いずれにせよ,そこは日本法の場合と外国法の場合と両方あり得るし,さらに当然のことながら先ほど○○幹事のおっしゃったように,Y以下の人は日本から見れば見えないことなので,そこをどういうふうに実質的な保有者が決められているかは,少なくとも私法上といいますかは,関係ないと。ただ税法上どうなのかというのは,確かに先ほど御指摘があったように問題があるかもしれませんが,それも,もしかすると日本法上のことでなくても,居住者あるいは個人名が特定できて,きちんと権利を持っているということが証明されれば,もしかすると税法上も特典が得られるのかもしれませんし,あるいはそうでなくても今後得られるようにするのかもしれませんので,いずれにしても末端の方に――末端というか――Y―Aの間がニューヨーク州法になることはあり得ると。このことはこれまでも幾つかの例で逆の場合もありましたし,間の準拠法がいろいろ変わるということもあったと思いますが,それと何ら変わらないし変わっては困ると思いますので,AのYに対する関係になった場合,Aが持っている権利の性質,それから物権的な権利なのかどうなのかということも含めて,すべてニューヨーク州法で決まると。それがニューヨーク州法上,実はすごく強い権利があるとしても,上の方にまでいっていけるかというと,上の方は違う法律になっているかもしれないわけですから,実質的にはYに対してしか言えないということになるのは仕方ないということになるんではないかと思っています。それがお答えになっているかどうか分かりませんが,とりあえずそのように思います。 ● ○○委員,何か御意見がおありだと思いますので,伺いたいと思いますけれども。 ● 幕間に余計なことを言いましたので,お鉢が回ってきたのかと思いますけれども,先ほどちょっとよく分からなかった点であるわけですが,保振機構とYとの関係は,これは条約上,例えば日本法になるということでよろしいんですね。 ● Y’です。 ● ああ,これ上の方に書いてあるんですね。これはそういうことのようですから,それでよろしいんですが,Y’―Y,それからYとAの関係ですね,特にYとAの関係ですが,これはまた条約上,準拠法が別に決められると,こういうことでよろしいんですね。 ● そのとおりです。 ● それが,例えば日本法ではないという可能性があるといたしますと,いずれもこれはその権利者の権利の性質その他も条約が対象にしているわけですから,Yと保振機構の関係のその権利の性質その他は,この日本法によって決まる。それによればAの権利はどうも物権的なものではなさそうであるという結論だったわけですが,他方Aの権利の性質を決めるのは,これはY―Aの準拠法でもあるわけですね。そうしますと,これによって物権的なものであるというふうにされた場合に,これは準拠法が二つ出てきているわけですから,その間で矛盾するような結果が出てくるわけですから,これは単なる適用問題ではないだろうかと。そういうふうに考えますと,先ほど○○幹事がおっしゃったように,場合によれば善意取得のようなものを考えてもいいのではないかなということをおっしゃいましたね。Aについて。類推適用をすると,それは一つの適用のやり方であって,これは条約によってすべてを処理するということですから,国内の問題とそれから国際私法上の問題が矛盾する,あるいは違うということは十分に説明が付くことではないだろうかと,私は考えております。 ● 今の点につきまして,○○委員何か。条約の関係で……。 ● 先ほどおっしゃったのは,全部日本法が適用になる場合の話ですので,今の○○委員の御指摘は,その場合について先ほどの議論についての御指摘なんです,確かに。今ここで議論しているのはというか,○○委員に伺ったところから始まったのが,Y―Aはニューヨーク州法を選んだ場合ということの議論ですよね。ですからその場合にはAの権利というのは言うまでもないですけれども,ニューヨーク州法で決まりますので,Aは先ほど何か実質的にというふうにおっしゃったかもしれないんですけれども,実質的にもう法律上もYに対してしか権利はありませんで,ニューヨーク州法によればですよ,それは向こうの言葉で言うとセキュリティーエンタイトルメントということであって,それは物権的という意味においては,例えばYが倒産すれば,Aが勝つという意味においての権利がありますし,そのセキュリティーエンタイトルメントにおいては,何についてのエンタイトルメントかといえば,それは向こうの法律はYが有するファイナンシャルアセット,金融資産にしても,それについてのエンタイトルメントであるということになるというのが,この条約を適用した結果だと,それはここに掲げておりますけれども,資料に。 ● ほかに御意見ございませんか。  それでは,一応この件はここで終わらせていただきまして,先に進ませていただきたいと思います。  次が,今度は部会資料の26の第7の部分について説明していただきたいと思います。 ● それでは,部会資料26の第7,部会資料22の事例5,海外市場におけるDR(預託証券)の取引について,御議論いただきたいと思います。  ここも1と2に分けておりますけれども,この条約を批准する前の状況,つまり法の適用に関する通則法が今あるわけですけれども,それにおける準拠法がどうなるのかというのをまず御議論いただければと思います。ここに書いてありますのは,DRというのは部会資料22の事例5に説明が書かれていますように,預託銀行が原株とは別の証券としてDRというものを発行するわけでございます。  したがって,法律上というのか事実上というのか,そこら辺も御議論いただきたいと思いますけれども,海外投資家Aの権利取得の対象となるのは,原株ではなくてDRということにならざるを得ないのではないかと思いますけれども,そのDRは券が出されるという前提で考えますと,DRの所在地法によって海外投資家Aが権利を取得するかどうかが決まるという整理になるのかなというふうに書いているわけなんですけれども,そういう理解でよろしいか,御議論をまずいただければと思います。とりあえずここで切らせていただきます。 ● 何が御意見ございますか。あるいは御質問でも結構でございますが。   このアメリカのDR,ADRの件について,最初のころにちょっとお話されたかと思うんですけれども,この海外,例えば例に出されたのは日本の大手メーカーT社の事件か何かがあった……,そうですね。○○委員が先ほど説明されたときに。 ● まあT社さんが……。 ● 一応例として。そういう場合に海外でやり取りされるこのADRというのは,物権的なものなのか,要するに紙を対象としているのか,それとも日本国内の原株が物権の対象となっているのかというように思ったように思いますけれども。最初のころですけれども。その点いかがでございましょうか。 ● ここに書いてある記名式譲渡可能預かり証書ということで,現地の方からこういうのがあるということでしょう。向こうの世界ではUCCの中で法として扱われているかなというふうな気がするんですけれども。 ● アメリカの取引所で取引がされるのも,そのADRとして取引されているという理解でよろしいんですよね。 ● そういうことでよろしいわけでしょうか。   何かございませんでしょうか。実質もよく分かりませんので,現実にどういう形で取引がされているかということは,御説明いただいたことしか分からないわけですけれども。 ● 証券会社は数多くありまして,外国証券を取り扱う仕組みは,中小の証券会社は余り実は持っていないというのがありまして,このような形でやればですね,外国の有価証券にも外国株式であれ日本株であれ,韓国の株であれ,投資がしやすいと,扱いがしやすいということで,古くから1928年からという歴史があるみたいですけれども,広まった仕組みというふうに理解しております。   それで,今,直近では日本の国内でも同じようなものが出せないかということで,JDRというものについて,ちょっとそのJDRの性質についてはまだ議論があるようですけれども,こういったものが逆に日本の国内で発行できないかということを,今,御議論されているというふうに聞いております。 ● そうしますと,ここでの取引の対象になっているのは,アメリカの場合ですとADRであって,ADRはDTCに預託されていますので,その預託されている場所の法律がアメリカのどこかの州の法律によって,海外投資家Aが権利を取得したのかどうか,どういう権利を取得したのかが決まると,こういう理解でよろしゅうございますか。○○委員。 ● はい,○○委員。 ● 今の言葉尻をとらえるようですが,所在する州かどうかは解釈もそうにはならない可能性があると思うんですが,これは要するにDR発行銀行が決めた社債みたいな,要するに証券を発行するように見えるんですが,その準拠法を決めるのは自由ではないかと思いますので,それがたとえ近くにある会社でもニューヨーク州法で発行することは可能なのではないでしょうか。要するに,この後ろにどんな資産があるかということは,必ずしも,昔はすごく1対1関係があったのかもしれませんが,アセットがいろいろな形で今あるわけで,それの一つが株であるだけなんで,あるいはもっと言うと,複数の株式をアセットにしてDRを発行することだって理論上はできそう--実際にあるのかどうか知りませんけれども--ですので,いずれにしても後ろの,後ろというか日本の状況とは切れた話なんではないんですか。 ● 日本の状況から切れた話というのは,そのとおりだと思うんですけれども。 ● 発行について準拠法を決めることは証券ですからできるんではないですか。 ● ですけれども,有価証券が発行される場合の物権準拠法は,有価証券,紙の所在地によって決まるというのは現行国際私法の解釈ではないんですか。 ● 今おっしゃったのは,物権の問題だとしますと,発行地ではなくて券面の所在地になるので,その券面がカリフォルニア州に移れば,カリフォルニア州法上の善意取得もあり得るわけで,いずれにしても発行地は関係ない。 ● 私は発行地と申しませんで,預託されているDTCの倉庫の所在地ということを申し上げたつもりなんですけれども。 ● ああ,そうですか。動かないということですね。券面は。 ● 別の倉庫に移し替えられれば動くのかもしれませんけれども。 ● ああ,そうですか。1920何年のころは実際に動かしていたのかもしれませんけれども,今や固定しているのかもしれません。私それは詳しいことは知りませんけれども。そうであればそのままで。いずれにしても紙があれば,紙の所在地が物権だということはおっしゃるとおりだと思います。 ● アメリカは紙をとにかく出させることは出させるわけなんですよね,大券で。それをDTCの金庫に保管していて,取引自体はDTCも保振機構さんと同じような組織ですから,電子化された証券として口座で取引がされると,こういうふうにお考えいただければと思いますが。 ● まさにおっしゃるとおりだと思います。現行法の考え方として,確か以前議論したときには,それは多分一つの有力な考え方だと思いますが,ほかに帳簿の記載地を証券の所在地として読み替えて,自動車の登録なんかの話もこの部会で出ていたと思いますが,そのような考え方ですとか,日本の現行法をベースにしても紙の所在地以外に着目するという考え方は,全くこの部会の中では出てこなかったわけではないので,ただパラレルに考えることはできるということは,全くおっしゃるとおりだと思います。 ● ほかに,どうぞ。 ● 細かな問題なのですけれども,アメリカ法の下ではこういったADRが有価証券だっていうことには多分疑いがないのかなと思いますが,もし国によってはこれは有価証券ではないと,単なる預託証書だというふうに性質決定された場合には,預託証書,紙の所在地が準拠法になるというわけではないことになるのか,そこはDRが一体どういう性質,有価証券なのかどうかということが問題となるようにも思われるのですけれども,これはそれぞれ国によって扱いが違うものなのか,DRというのはもうみんなどこの国でも有価証券として認められているのか,これはどのような状況なのでしょうか。 ● どうでしょか。この点について。 ● ちょっとよろしいですか。預託証券か有価証券かという区別ではなく,多分その物の紙の所在地法だって言っているのは,無記名である場合にそうだと言っているんではないでしょうか。これはすみません,見ると記名式なんですか,アメリカのADRというのは。記名式だと紙を拾ったからといって必ずしも直ちに所有者になるわけではなく,またそのことが所在地法で決まるわけではないかもしれないですね。すみません。ですから物の占有によって権利が取得できるような場合には,所在地法というのは効いてきますけれども,それだけで決まるわけではないとすれば,もしかするとそれの証券についての準拠法上どういう場合に権利者になるのかという方が強い可能性はあると思いますけれども。ですから今の話とは直接にはつながらないかもしれませんが,国際私法的にはそちらの方がより重要なファクターなのではないでしょうか。 ● 何か……,○○幹事,何か御意見ありますか。 ● おそらく記名式か,そうではなくて記名式ではないかというのは,多分そのADRに限らず,普通の株式との関係でも存在する話であって,その証券の移転によって権利が移転するような制度を採っているかどうか,それによって違いが出てくるというのはおっしゃるとおりだと思うのですけれども,必ずしもそのADRに限った話ではないのかなと,そういう意味では確かに何となく有価証券で証券の移転だけで権利が移転,有価証券という言い方は悪いのかもしれませんが,その紙の移転で権利が移転することをイメージして,DRの議論をしておりましたけれども,もしそうでない性格のものがDRという名前で仮に流通していたとすれば,ちょっと異なる見方をしなければいけない場合も出てくるのかなというふうには思います。 ● ですから,要するにDRなるものが,その性質上,実務上どういうものなのかということをもうちょっと考えないと,どういうふうに準拠法が決まるのかということも決めきれないと,そういう理解でよろしゅうございますか。 ● JDRなんていうものができるという可能性があるかどうか知りませんけれども,そうなるとまた別な観点が必要かもしれませんですね。   次の日本法が準拠法となる場合について,進みます。 ● それでは,第7の2の日本法が準拠法となる場合の御議論に移っていただきたいと思いますけれども,この条約を批准したとした場合に,海外投資家Aと関連口座管理機関Yとの間で決めた準拠法によって,Aの権利取得は決まるわけですけれども,こんなことはないと思いますけれども,仮にAとYの間に日本法を準拠法とするということにした場合に,事例1―1などの場合と異なった配慮をすべき点があるかどうかということを御議論いただきたいと思います。  なお,その際に海外投資家Aの権利取得の対象となるのは原株ではなくて,DRであると,これはもう現行法の下ではそうなるんだろうということだったと思うんですけれども,その点はこの条約を批准しても変わらないという理解でよろしいかどうかということも,併せて御議論いただければと思います。 ● どうぞ。 ● ちょっと今の説明ですが,こんなことはないと思いますよというお話があったと思うんですけれども,今回海外投資家と書いてありますけれどもね,日本の投資家とニューヨーク証券取引所のT社を買いたいというときはありますよね。 ● まあ,あり得るでしょう。 ● そのときには日本の投資家で日本の準拠法に基づいてこれで動くんですよね。だからそんなにないわけでもない。海外投資家である必要があるかどうかという問題はありますけれども,投資家Aが日本法に基づくカストディ契約というか,そういう契約に基づいてこういう状態なのは案外あるんではないかという感じがしますけれども。 ● 要するにそれというのは,この事例5と事例1-1を組み合わせたようなそんな感じのイメージで考えればいいわけですか。 ● T社のアメリカ株を買うことは余りなくて,日本のT社の株の話なんですね。いいと思うんですけれども,一部ただ韓国の製鉄会社の株が,アメリカでADRで出ましたとか,それを日本の投資家が買いに来るというケースは多分にあって,ですから発行体は韓国,韓国市場の株式をアメリカでというのを日本投資家が買うと,こういう関係はあるんだと思います。 ● 実体的にはですね,この海外投資家Aですね,この人というのは大きな投資家とか企業体とかそういうのは余り意識してなくて,ADRというのは,もともと中小の人を対象にしたものなんですね。実際問題どういうことが起きるかと言いますと,海外投資家が大きな機関投資家である場合,米国なら米国の機関投資家である場合に,日本の証券会社に直接日本で買いますから,こういうADRを買うようなことはしないんです。ですから,先ほど○○委員がおっしゃったような,海外投資家Aが日本の投資家であるという場合も余りないんです。その人はもう日本でT社の株は買えますから,わざわざ回りくどくドル立てにしてリスクを余計に増やして買うということは余り考えられないです。 ● ほかに何か御意見ございませんか。事例1―1と異なる点があるか。ないという理解でいいかという点は,いかがでしょうか。 ● 今の確認ということでちょっとあれですけれども,先ほどJDRというのが日本でどうやって発行されるのか,その法的性質も含めて議論されているということでございましたけれども,このADRというのは,現行の日本の社振法で言えば,列挙されているものには載ってこない性格のものだというふうに思われますけれども,その点は例えば社振法の対象となっている証券の中に,外国株が入っていないというのを従前の部会で御議論いただいたかと思いますけれども,それと同じように社振法を切り出して適用するに当たって,あるいは類推適用するに当たって,そこに列挙されていないというところは,外国株と同様にそこは問題は生じないと,こういう振替類似の制度を使って動いている以上,そこはそうなるんだという理解でよろしいでしょうか。 ● 今の話はADRという,外国株と同じ取扱いを保振では今考えておりますけれども……。 ● 何か御意見ございますか。 ● それでは,今の○○関係官からの質問の点も含めて,外国株について議論していただいたものと,特にその準拠法の問題について違う点はないというそういう御整理があったということでよろしゅうございますか。 ● では次のところへ移りたいと思います。よろしいですね。  今,申し上げましたように,全株ではなくDRであるという理解でいいですか。ここはもうよろしいですね。  ただ,何かこの前の議論ですと,この辺のところは余りよく分かっていないというようなことが書いてあるのが気になるというのがありましたので,もう一度確認したかったんです。はい。結構でございます。どうもありがとうございました。   これで一応この部会資料22についての御議論は終わったということにしてよろしゅうございますか。ということにさせていただきまして,また何か出てくるかもしれませんが,今度はまた条約本体の方に戻りまして,そちらの方に移りたいと思います。  今度は部会資料の27になります。27のまず第1につきまして,事務当局に説明していただきます。 ● それでは部会資料27の第1について御説明させていただきます。  この第1は4条関係と書いておりますが,もう既に実は4条関係については,この部会資料26と22でその4条の問題を前提にして具体的にどうなるのかということを議論していただいてきたわけですので,それ以外の今まで議論していただいていない問題として御議論いただいた方がいいかなと思うことを掲げたのが,この第1でございます。  まず,1でございますが,その4条1項,2項に規定されている適格事務所要件,リアリティテストというのがございますが,この条約が定めているリアリティテストについて,これは念のための確認なんでございますが,条約の策定段階でも御議論いただいて特段問題はないだろうということだったと思うんですけれども,今もう一回見ていただいて問題はないという整理のままでいいかどうかということを,念のために確認させていただきたいというのが1でございます。  それから次の2でございますが,4条1項の合意の有効性の準拠法ということが問題になるわけでございますが,それがどのようにして定まるのかということでございまして,Explanatory Report の4-19によりますと,この合意の有効性の準拠法は,この条約の4条,5条で定まる準拠法ではなくて,法廷地法の抵触規定によるというふうに掲げておりますけれども,この点もExplanatory Report の作成段階に一度○○委員から御紹介いただいて,それで特段問題はないだろうという御協議になったというふうに私は理解しておりますけれども,引き続きそういう理解でいいかどうかということを念のために確認させていただきたいというのが2でございます。  3は,ほかにこの4条関係で条約の批准を議論するに当たって議論しておくべき問題があれば,御紹介いただきたいというのが3でございます。 ● ありがとうございました。  ではまず第1の1の適格事務所要件について,御意見,御質問等ございますでしょうか。  実務の方に伺いたいと思いますけれども,いかがでしょうか。○○委員,何か。 ● 特にここの適格要件に異論があるわけではございませんが,4条(1)のところに挙げられているYは,言わば適格だと見なされて,(2)はそのいずれかであることのみをもって従事されているものとは見なされないということで,ここで意識されているのは,最初の方は見なされるというのはグローバルカストディ,サブカストディというような関係のことを意識されているんだろうと思いますし,(2)の方は言わばオペレーションセンター的な,ただデータセンター,オペレーションセンター的なものだけではそうとは見なされませんよということを言っているんだと思うんですが,そこの辺の明確な区別といいますか,何かこれではっきり区別されるのかなというのが,ちょっとやや実務的には不安なところはなきにしもあらずという感じはしております。 ● ありがとうございました。 ● 具体的な例を申し上げますと,世界の大きなグローバルカストディなんかは,世界中に何か所もオペレーションセンターを持っておりまして,実際にそのオペレーションの内容が要するに異なるんでしょうけれども,ここの2項で言われるようなものは,例えばインドのボンベイでやっています。ただ実際にいろいろお客さんとサブカストディアンあるいは顧客と直接に接して,何らかのオペレーションを起こすところは,ベルギーのブリュッセルでやっています。そういうような違いが実際にありまして,おそらくそういったケースの場合,ブリュッセルの方は上の方の見なされる方になるんでしょうし,(2)の方は単なるデータオペレーションだけですよ,プロセスをやっているだけですということになるのかと思いますけれど,そういうことをコールセンターとかいう言葉もわざわざ出てきますから,そういうことを意識した上での区分かなと思っているんですけれども,これ個々の定義ではっきり分けられるのかどうか,ちょっと私にはいまひとつこれでいいのかどうかと言われると,ちょっと難しいなと思っています。 ● どうぞ。○○委員。 ● もうちょっと前に事務所という概念が出てくるんですが,これは商法で言う営業所とか何とかいう概念もありますが,そんな立派ものでもある必要はなくて,どちらかと言うと日常に事務作業をするそういう軽いものでも事務所であるというそんな意味でいいんです。  それから今こういう作業はほとんどコンピューターでやっているんだろうと思うんですけれども,コンピューターのある場所でなくて,何らかの作業をするというのは,キーパンチャーが居るところかなというと,それよりもうちょっと高いところなのか,その辺もちょっと,「記録を行い」というのは一体どういうことをいうのか。特にモニターをしているものというと,モニター画面があるところはみんなそれに該当するのかというふうに感じもあって,この辺あたりもちょっとよく分からないというような感じですね。その争いが起こったような場合には。  まず,事務作業をしている程度の事務所でよくて,そしてそのときの事務作業というものはどの程度が可能か。証券口座への記録というのはだれが記録しているのかよく分からないから,それでは最終的にコンピューターに打ち込むキーパンチャーが居るところか,それとももうちょっと高いレベルなのかどうかというのもちょっとよく分からないですね。それと今のインドでの作業とかいろいろな作業などに使っているのかよく分かりませんが,そのあたりがちょっとよく分からないですけれども。 ● 今おっしゃられたそのコンピューターの入力作業とかそういう実務的な作業,先ほどの○○委員のお話だと,インドのボンベイで行われているような作業,それはこの2項のa号の証券口座を管理する営業又はその他の通常の業務に従事しているものとはされない方になるんではないかと思います。そうではなくて,いわゆる証券会社や銀行の営業店としての活動をしておれば,この1項のaあるいはbの事務所があると,こういう整理になるんではないのかと理解しておったんですけれども,○○委員あるいは○○幹事,そういう理解でよろしゅうございますか。 ● ○○幹事。 ● まず,今,○○幹事がおっしゃられたことはそのとおりだと。データを記録するというのはまさに2項のaの方に記載されている事項でございますので,多分そうだと思うんですが,先ほど○○委員の方からおっしゃられたところが,ちょっと私は事実関係をよく聞き取れなかったものですから,むしろ確認したいと思ったんですが,要するにこれはリアリティチェックというのは,あまりその何でしょうか,そもそも準拠法を自由に選ぶというような一方のアプローチがあって,それに対してリアルなところではないとやはり困るのではないかという,もう片方のアプローチがあって,そのある種の折衷案として基本的準拠法を選べるんだけれども,その選ぶところには余りこの当該取引とは無関係なところというものは選べないようにというところで,このようなアイデアが生まれたということだというふうにまず理解していますけれども,そのときに,しかしできるだけabcdという形で列挙しているわけですね。先ほどの事例というのは,何かどこかに当てはまりそうな感じもしたんですけれども,もう一度ちょっと確認させていただければありがたいなと思ったんですが。 ● これ,どういう,例えば具体例,先ほど申し上げた具体例で言いますと,実際にグローバルカストディアンとしてサブカストディアンあるいは投資家からのオーダーなり何らかのオペレーションを流すと,受けて実際のオペレーションのアクションを起こすところは,例えば米銀なんですけれども,ベルギーのブリュッセルにあります。そういう銀行は実際にあるんですね。ところが,その海外のコンピューターセンターはブリュッセルにはなくて,インドのボンベイにあります。そういったケースを想定して,こういうことを書かれているんではないかというのが私の意見なんですけれども,ですから今の例で言うと,インドのボンベイは単なるデータ処理の技術的なサポートポート,あるいはコールセンターのような形,コールセンターの機能まであるかもしれません。そこまであるけれども,それだけではインドは1項ですよということはみなされませんねということが言いたかったんだろうなと思うのですが,実際問題なかなか区別って難しいなと思うんですね。  もう一つの言い方は,先ほど申し上げませんでしたけれども,ここの2項の方,abcdと挙げられていますけれども,この場合はan office is not engaged とあって,merely becauseとあるので,これだけではみなされないというのが列挙されているんですね。merely becauseということは複数ならいいのかどうなのかよく分からないんですね。例えば,(2)のabcの機能は持っている場合はどうなんですか。 ● すみません。すぐに答えられなくて申し訳ありません。私は少なくともaかつbかつcであっても駄目というのが理解だとは思います。その上で先ほど最初に申し上げましたけれども,ここの機能というのは,要するに先ほどどういう争いがあるというのが○○委員の方からも御指摘がございましたけれども,争いがあるとしたら,当事者がまず選んでいるというのが前提だとして,その選んでいるところがリアリティチェックによってそこはリアルな場所としておかしいのではないかというようなことが起こるということになると思います。そのときに,例えば,そのボンベイのところがさらにどうなるのかというところが問題になると思うんですが,こういうことを言ってあれなんですけれども,実質的に考えると,通常そうしたコールセンターないしデータの処理とかをやっているのは,人件費が安い。でもインテレクチャーの場所であるというようなところで指摘されているので,しかしその人件費が安いというところは途上国のことが多くて,その場合にそこの法制をわざわざ当事者が合意するということは,余りちょっと考えられないのではないかというふうに,ちょっと直感的には思ったものですから。 ● ボンベイという例を挙げましたけれども,それがシドニーという場合もあるんですね。 ● ただそのときもやはりグローバルな金融の,特に私には分かりませんけれども,わざわざオーストラリア法にいくのかというところがちょっとやはり引っ掛かるので,通常の場合には確かにどのような法律でも何て言うのでしょうか,限界例があって,果してここはどこなんでしょうかというのがあるんですが,今のボンベイのシチュエーションでは少なくともABCに該当し,また微妙なケースというのがあるのかもしれませんけれども,そもそも当事者がそこを準拠法として指定していることは余りないのではないかというふうに,印象論で申し訳ありませんが,感じました。 ● ○○委員のお話のときに,ブリュッセルが別にあって,それからもう一つボンベイがあって,ボンベイはコンピューターを置いているってあるんですけれども,ブリュッセルではどういう活動をしているんでしょうか。そしてそのときに……。 ● どの現状をおっしゃっているんでしょうか。ブリュッセルで今の例で言いますと,一つの例ですけれども,ブリュッセルというのはこれは米銀の例ですけれども,米銀ですら米国に本社があって,米国で営業の元締めはやっているんですが,グローバルカストディアンであるこの米銀はブリュッセルに営業本部を持っていて,カストディでね,本部を持っていてサブカストディアンとの連携,それに対する指示,それから投資家からの受ける指示,これを受けてオペレーションを行っていると。それの記帳上の指示は,どういいますか,各国のサブカストディアンに出す,あるいは直接に自分でCSDに出す。自分の銀行の中の電子的な取引の指示は,ボンベイなりシドニーなり,どこでもいいんですけれども,フランクフルトでもいいんですが,そこのオペレーションセンター,コンピューターセンターに対して出している,そういう意味合いですね。 ● はい,どうぞ。 ● その場合,アメリカの場合ですね,アメリカのニューヨークにある本社でも支店でもいいですが,そこに売り手と買い手が申込書を書いて持ってきて,受け付けた場合でもブリュッセルに持っていきますね。そのときにはニューヨーク支店なり本店は入るんでしょうか,入らないんでしょうか。 ● それは顧客によると思います。米国国内の顧客であればその米国本社の人間が間に入って,ブリュッセルにオペレーションをつなぐ場合もあり得るでしょうし,そのほかの国の場合ですと,例えばヨーロッパの客ですと,ブリュッセルに直接出す,あるいは日本の客もそこの相手の米銀のブリュッセルに直接通知を出す,あるいは受けるということになるかと思います。 ● はい。 ● その場合,ニューヨークで何を行うとニューヨークがクォリファイになってニューヨークで何か抜けていると同じ書類を受け取ったのですね。ニューヨークはクォリファイでなくなってブリュッセルでクォリファイになります。名義口座の記録を行いという「記録を行い」というのは,実務的には何を行うのか。 ● それが私の質問です。 ● 今,○○委員がa号の(ⅰ)だけを問題にしておられますけれども,(ⅰ)から(ⅲ)までのどれかに当てはまればいいので,今言われたニューヨークでの行動の例ですと,お客さんがそのニューヨークの支店に来ていろいろな依頼をされるということですから,証券口座を管理する営業その他の通常の業務に入るんではないでしょうか。ですから,その事務所を手掛かりにニューヨーク州法を準拠法とすることはできるんではないでしょうか。そういう理解で○○委員,よろしいでしょうか。 ● 最初に○○幹事のおっしゃったことはそうなんですけれども,この条約はまず4条1項で当事者の合意で選べますと,それで,では全然聞いたことがないような国を選んでいいかと,それを制約する条件なんですね。したがって,その顧客の例えば証券口座の管理の例は受け付けないわけです。そういうことで言うと,○○委員の最初におっしゃった例で言うと,ここのリアリティテストというのは,先ほどおっしゃった例で言うと,ボンベイかブリュッセルかというのを決めるのではないんですね。そうではなくて,まさに最後の方に議論のあったニューヨーク州法でその銀行のお客さんが,その銀行と4条1項の合意をニューヨーク州法としようとしているときに,ボンベイは選べますかということを問題にしているんですね。ボンベイは駄目です,先ほどの例ですと。で,ベルギー法は選べます。ニューヨーク州法はどうですかと,こういう問いなわけですので,その場合にはニューヨーク州法は自分でなくてもここのオペレーションがあれば選べますということになるわけです。逆を言うと選べない方を絞るというのは,そういう意味では2のabcがみんな満たしていたってアウトですけれども,そこで今の話に戻ります。では何がやっていればなんですかというのは,キー概念は証券口座ですね。証券口座の管理,そのお客ではなくていいですから。そういう業務をやっていればいいということで,若干広いですけれども,基本のところは証券口座というものについてのビジネスをしていることというので,最後,○○委員がおっしゃったような例で言えば,おそらくニューヨーク州法も選べますし,ベルギー法も選べますし,インド法とかオーストラリア法は選べないと,それだけというとちょっと大げさかもしれませんけれども,通常は,しかしニューヨーク州法を選ぶでしょうから,それで言えば余り問題はない。その程度の規定という言い方はいいかどうか分からないですけれども,あくまで趣旨は選べない,全然関係ないというか,そういう制約を設けるというその妥協と言えば妥協なんですけれども,そういう機能ですので,ちょっと,もともとの本質を追求して世界的に活動している金融機関のビジネスはどこで何が行われるかということを探求しようとした規定ではありませんので,ちょっと念のため申し上げさせていだきます。 ● よろしいですか。 ● 趣旨はよく分かりました。 ● ですから,もうこの問題は要は日本で検討しているわけですから,ここにいらっしゃるような金融機関さんが,ここのどこかにも全く引っ掛かりようのないようなところを,準拠法として選択しようとする現実のニーズ,あるいは考えられるニーズが存在するというのであれば,これはやはり問題だと思うんですけれども,何のセンターも何も一つもなく,かつ,いざとなれば特定するというこの1項(b)の方法なんかもいろいろあると思うんですけれども,こういった方法でもう一切対応できないような国の法律を準拠法としてビジネスをされるという具体的な,あるいは現実的なニーズがあれば困ると。そういうふうな問い掛けでしたら比較的ノーというふうにお答えになりやすいのではないかなと思うのですけれども。 ● はい,どうぞ○○委員。 ● 非常によく分かりまして,金融機関側の立場からですね。ただ紛争当事者から見ますとね,準拠法によって勝負が決まってくるというと,選ばれた準拠法はおかしいではないかと,それはその合意はあるけれども,そこの金融機関はこの要素が足りないではないかというんではね飛ばす技術になるわけですよね。そうすると,これのどの要件が要るのかというのは増えたようで絞っていないと。そして○○幹事が(ⅰ)でなくても(ⅲ)でいいというようなお話があるけれども,それぞれの要件がそれぞれきちっと決まってないと,争いようがないというんですか,あるいは争う人は大変やりにくいということになりますし,それぞれある程度明確になっていることが望ましくて,どこまで明確にできるのかなというのが一つの見方なんですかね。 ● 実際問題として,先ほど○○幹事が言われたことと同じことを申し上げることになるかもしれませんけれども,困るような場合ってあるんでしょうか,この規定で。条約の策定の過程ではそれはないというお話だったと思うんですけれども。 ● 銀行の方にお伺いしたいと思いますけれども。 ● まず,当事者の位置でやりたいんだけれども,何かたがをはめてくれというニーズがあって,確か第2項の方は何かみんな金融機関から来た人間で後ろの方に集まってイメージを全部並べて,これだけでは駄目ですねっていうのを書いたというのが経緯だというふうに記憶しているんですけれども,アメリカの場合UCCですと当事者の合意がない場合ですと,いろいろなコールバックが紛争に当たってあります。でも大体みんなそれをイメージしている。その口座ならいいよね,それではないもので現実にあるもの,例えばアメリカ人が多かったり,それからコネチカットにおいているものとか,ニュージャージーにおいているバックアップセンターとかですね,そういうものを引いていたというのが現実なのでして,むしろホワイトリストではなくてブラックリストをつくっていたということですので,むしろそれに該当しないというところを指定することで,透明性を出そうという趣旨だったと思うので,基本的にはグローバルカストディアンをやっているようなところは大抵きていたと思うんですけれども,少なくとも当時は不都合を感じてなかったと思います。 ● ほかに銀行の側から何か御意見ございますか。それほど問題はないという理解でよろしいでしょうか。ほかにございませんか。○○委員,何かありますか。 ● 大した問題ではないのかもしれませんけれども,これは契約締結当時のリアリティテストですね。その後事情が変わってきたときでも,例えば口座機関が消滅したり何かすることがあるので,そういう場合はどうなんでしょうか。 ● ○○幹事,どうですか。 ● すみません,ちょっと待ってもらえますか。今考えています。 ● その点は,Explanatory Reportの例えば4―21に書かれていまして,ちょっと読みますと,この要件――この要件というのはリアリティテストの要件ですけれども,――は準拠法に関する合意がなされた時点において,関連口座管理機関が規定されている要件を満たす事務所を有することを要求していると。ですからそこで満たされていればもうその後満たさなくなっても,準拠法としては有効な指定がされたことになるという理解かと思いますが。 ● 今の点を補足いたします。Explanatory Reportの4-27で今,○○幹事の方から説明させていただいことが明確に書いてございまして,頭の方から契約時に満たしてなければ後で満たしても駄目だよというのと,契約時に満たしていれば後でなくなっても有効だよということがここのところに明確に書いてございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。ほかに。なければ次に移ってよろしゅうございますか。ではその次に移らせていただきます。  ○○幹事の方から。 ● 2番目の問題というのは,4条1項の合意の有効性の準拠法の定まり方ですけれども,Explanatory Reportの4―19では,本条約に含まれる抵触法規則ではなく,法廷地の抵触法規則により規律されるというふうにはっきり書いてありまして,この点は先ほど申しましたように,○○委員からExplanatory Reportの作成作業の段階で確認をしていただきまして,その当時はこの部会でも御異論はなかったというふうに理解しておりますけれども,それに変更はないということでよろしいかどうかということを念のために確認したいということでございます。 ● このあたりは国際私法の方に伺った方がいいかなと思いますが,いかがでしょうか。 ● 国際私法の方に是非お伺いしたいというか,ちょっと消費者契約の場合の契約準拠法に関しては,通則法で新しい条文が加わったと思うんですけれども,それがどのように影響を与えるかという問題は,これを合意の有効性というかどうかは別なんですが,合意の有効性をどの法律で判断するかということ自体もいろいろ問題だと思いますけれども,消費者契約との関係での通則法の特則が影響を与えることはないのかなというのは,ちょっと考えておいてもいいのかなと思うんですけれども,これはその当時にはなかった問題ですので……。 ● 今,おっしゃった問題は,結局契約の変更の合意の有効性の準拠法を何にするかという問題と絡んでいるわけですよ。だから契約の準拠法によって判断するという最近非常に強い考え方によれば,この消費者契約の準拠法の決め方によって変わってくるでしょうが,国際私法自体で判断するという立場に立てば,それは関係ないんではないでしょうか。 ● 法廷地の状況で判断すると。 ● だからどちらをとるかによってかなり違ってくるんですよ。 ● まずは契約準拠法によるんだとなった瞬間に,まさに11条の問題が出てくるということですよね。消費者が事後的に自己の常居所地法を主張したら,その瞬間にいかに口座管理契約に例えばニューヨーク州法と書いてあったとしても,日本法にバーンとひっくり返るというふうな可能性はあると。 ● あるということでしょうけれども,だから,そこのところがそれは今度の通則法は明文の規定をおいておりませんので,解釈にゆだねるということですから,まずそこが決まらないと,何とも言えないんではないですか。 ● ちょっと今のお二人の御議論についていけてないんですけれども,その変更が問題になるというのは,どうしてなんでしょうか。つまり,ここで今議論しているのは,例えば口座管理契約の準拠法をニューヨーク州法とする旨を,日本に常居所を有する消費者と,アメリカの証券会社との間で決めましたという場合に,その準拠法に関する合意が有効なのかどうかは,法廷地の国際私法で決まるという……。 ● 今度は契約締結時に準拠法の合意をしなかった場合でも,準拠法が一応決まってしまうので,事後に準拠法を定めるとそれは変更になるというそういう整理であったものですから,ちょっと今変更の問題と言っているんですけれども,基本的には最初の合意ですか,準拠法の合意,その合意の有効性をどの法律によって判断するかということは,これは解釈にゆだねられている問題ですので,これはローマ条約のようにその合意された準拠法によって判断するというふうに考えれば,ただいまの準拠法の問題が特に消費者契約については出てくるかもしれないと,そういうことを申し上げます。 ● いかがですか。 ● 少し考えたいと思うのですけれども。 ● 今問題にしておりますこの条約の4条が適用される場面というのは,投資家と口座管理機関の間で合意をする場合なんですね。一番典型的な場合でいきますと,口座管理契約の準拠法の合意をしますと,それがこの条約における準拠法の合意になりますというのが,この4条のルールなわけですけれども,その場合……。 ● 法廷地の規則によるということですね。 ● はい。そういうことがこのExplanatory Reportには書いてあるんですけれども。 ● 今,日本が法廷地だとすればということを前提に言ったわけですけれども,そうしますと,合意の準拠法の有効性については,今回の通則法では何ら規定を置いていないと。 ● これはよろしゅうございますか。自分で言っておかしいんですけれども。このExplanatory Reportの4-19ですと,contract law doctrine such as lack of capacityと書いてあるんですよね。その合意,要するに意思表示の瑕疵のことを言っているのかどうかちょっと私よく分からなかったんですが,どうでしょうか。 ● lack of capacityというのは,行為能力を欠くということではないでしょうか。 ● ですから,そうなるとこういう能力の問題であって,意思自身の要するに詐欺とかですね,その他,いわゆる意思表示の瑕疵のことを言っているのかどうかちょっとよく分からなかったので,申し上げた。私,伺いたかった方なんですけれども。 ● ここに書かれている有効性という言葉にこだわったわけですけれども。 そのcapacityの問題ならそれはそういう能力の提示をという,そこだけのことだろうと思いますけれども。 ● だから意思表示の瑕疵そのものについて,ここで言っているのかどうかちょっとよく分からなかったんですね。今,意思表示の瑕疵そのものについては,先ほど言われたような説があって,通則法には何も規定がないんですけれども,ローマ条約のような例もあれば,韓国も確かそうでしたね。それでもあるということなんですが,ここでそれを問題にしているかどうか,ちょっと伺いたかったわけです。 ● capacityですと,これは有効性と同じですね。 ● またちょっとcapacityと書いてありますからね。これちょっと気になったところだったんです。 ● ○○幹事と○○委員の間の話というのは非常に興味深く伺っていますけれども,まず,4-19で何を言っているかというのを最初に確定すると,question whether an agreement on the governing lawなので,その準拠法の合意があったのか,なかったのかというところを問題にしているので,まさに○○委員がおっしゃったような,果たして,では準拠法の合意というのが本当に存在していたんでしょうかという問題で,通則法の制定過程では論点として上がり,しかし規定としては落ちてしまった話というのが,ここで問題視されていると思います。これは何か実質法のことを言っているように見えるんですけれども,英語ではsubstantive ruleと書いてありまして,要するに何かの規定,何か分からない。それは法廷地に任せるけれども,そのルールに従えばとりあえずその準拠法の合意ではなかったというときにはどうするかという文脈になっているので,これは明らかにやはり○○委員の御指摘になられたような話をしているというふうに私は理解しておりました。  その上で,もう一つ○○委員が御指摘になられたのは,またそれとは別の次元の話で,消費者契約の準拠法について,通則法11条という規定が新しくできたので,そのことは法例を前提にして前に議論したときにはしていませんでしたけれども,これはどうでしょうかというところを4―19とは離れて,しかし議論になるのはそのとおりでございまして,そこはそのとおりかなと思って今ちょっと横でも話していたんですが,どうなのかしらというふうに話しています。 ● この法の適用に関する通則法11条の消費者契約の特例というのは,同法の7条以下で定まる契約準拠法の特例を定めているわけですよね。しかし,そもそも論として先ほど○○委員かおっしゃられたように,準拠法の合意の有効性の問題は,この7条以下には定まっていないということだとすると,別途そこは解釈で決まるとすれば,11条のような取扱いがその際にされるのかどうかについても解釈にゆだねられると,こういうことになるわけですか。 ● 二つの問題は違う問題だというふうに私は申し上げて,4-19の話というのは,通則法11条の消費者契約も含めて準拠法の合意の有効性はどういうふうに考えましょうかということは,法制審の法例改正の過程では議論されていまして,最終的に規定が置かれなかったので,解釈に任せているということでこれで終わりで,しかし,では何ですか,準拠法については当事者の定めた契約準拠法がそのままこちらの物権の準拠法になるというような規定をつくってありますので,そのときにこの今回通則法11条ができたということは影響を与えるのかどうかということは,準拠法の合意の有効性の問題とは離れて,そもそも契約準拠法とは何なんでしょうかという話のときに影響を与えるかどうかということは,特別問題になるのかしらという話をしていたということなんです。 ● 問題点にようやく気が付きましたけれども,もうそれを言えばこの条約はどうやって準拠法を決めるかということを独立に全部書き切っているはずですから,その場面で法の適用に関する通則法の規定が出てくることはないのではないでしょうか。ですから,消費者であろうが何であろうが口座管理契約の準拠法を定めれば,それがこの条約が定める2条の適用範囲の事項についての準拠法になるということになるのではないんでしょうか。 ● ですから,そうすると結局は,通則法7条のところでは一般のBtoBないしそれに近いようなものがあり,BtoCに関しては通則法11条と置いているけれども,その大きな構造というのは,その証券決済の準拠法の決定の過程においては,そこのところに何ていうか穴が開けられているというか,別の規定が置かれているというふうに理解するのかなと思っていましたけれども,すみません,ちょっと私も整理できていないからちょっとね。 ● おそらく私が申し上げているのと○○幹事がおっしゃっているのは同じ結論ですよね。 ● そうですね。 ● どうぞ。 ● そういう考え方もあると思いますし,通則法11条自身が契約の当事者自治,自分たちでルールを決めていいですよっていうことでは,バランスがうまくとれないような場合についての特則ということで置かれているんだというふうに考えればですね,この条約の4条で,条約自身も,基本構造の部分は口座管理機関と顧客との間の合意で準拠法を決めましょうという基準を採用しているわけですから,そういう意味ではどっちも通則法7条の特則のような気がするんですけれども,その消費者保護という通則法11条に表れたようなものが,それはもう絶対にこの条約との関係で全く出てこないと言えるかどうかは,議論の余地があるようには思うのですね。ただ,こういった契約,このタイプの契約のときだけ,消費者がバーゲニングパワーはないというようなことに関する考慮を一切しなくていいというふうに言い切れるかどうかというのは,議論の余地があるのかなという気は私はしませんが,ほかのお考えも,先ほどおっしゃられたように,もうこれはあくまで通則法7条で決まるときの特則なんであって,この条約というのは全く別の独立の体系なんだから一切関係ないというふうな主張もできると思いますし,いや,そうではないというふうな形の主張の余地もあるようには思います。 ● そういうお考えもあるかもしれませんけれども,この条約をつくった人たちは少なくともレポートを見ると,4-19の最後の文章によれば,そのconsented-to agreementになっていればと書いていますけれども,これは消費者契約でもconsented-toしている必要はあるわけですよね。ちょうど通則法11条というのはそうであってもなお保護する別のコアタイムですが,この条約のつくりはそうであればもうこの条約の11条,これは公序の規定ですけれども,そこしか救えませんと言っているので,そこは割り切った条約なんではないですか。立法論としてはあるかもしれませんが,解釈でそこを持ち出すと非常にあいまいな条約になってしまうような気がします。 ● 私,その条約の制定過程で,例えばそういった消費者契約の問題まで検討した上でこの4条がつくられたのか,ちょっとよく分からないんですが,公序ではじくからそれでいいし,問題は大変複雑になるし,もし消費者が巻き戻せるということになりますと,大分かなり混乱のもとにもなるような気がしますので,そうですね,ただ全くそういった主張の余地がないかというと,主張の余地があるような気はしますが。例えばその条約の制定過程においてね,その消費者契約なんかは検討し尽くしたけれども,そういった問題はあると,必ず消費者は契約することは分かっているわけですよね。消費者は契約するけれども,それをもうこの条約上のプロセスに従って合意をしたのであれば,消費者が合意をしようが法人が合意をしようが,もう一切その合意の締結過程におけるバーゲニングパワーの差だとか,そういったようなものはもう考慮しなくていいというふうなことまで考えてその議論がなされたのであれば,まさに○○委員がおっしゃられたようなものが立法の趣旨から非常に明確であるというふうなことは言いやすいと思うんですよ。そういう……。 ● どうぞ。 ● 先ほど○○幹事の問題意識というのをどういうふうに私の中でそしゃくしようかと思っていたんですけれども,例えばこういう場合ですよね,消費者が金融商品を買いましたと,そのときにこの証券の署名をしてそれで準拠法の合意みたいなものはできましたけれども,そうすると遠い外国の法律について気が付いたら合意をしていたような場合で,しかし十分に説明がなかったと当事者は言い張っているようなシチュエーションで,そのときに,もしも準拠法の合意がなかったというふうに評価された場合には,5条のFall-backか何かにいって,そのときには日本法にしてくれるというようなシチュエーションがあって,そのことが自分にとって有利のようなシチュエーションのときにどうなるかですよ。その話っていうのは準拠法の合意の有効性の問題のときに,果たしてどうなるかという話ですよね。それは先ほど○○委員が整理されたように,国際私法に任されて日本の国際私法で規定がないので解釈を任されていると,その中で,もしかしたら今のようなシチュエーションは準拠法の合意の有効性がどういうふうに判断されるかという問題の過程で,当然解釈の余地があるという話で先ほど整理は終わりましたので,その中で○○幹事がおっしゃられるような方向性の解決というのはあり得るのかなと。そのこと自体は条約で規定していることとは矛盾しないのかなというふうには思っていたんですけれども。そういうことでいいですか。 ● 今の考えだとするとその合意の有効性という形で問題になったような場合には,通則法11条が出てくる可能性は……。 ● いや,通則法11条かどうか分かりませんけれども,その,出てくる可能性があるということですね。 ● 消費者保護の規定が問題になる可能性はあるけれども……。 ● いえいえ,そうは言っていないです。ですから消費者を保護するような方向で準拠法の合意の有効性の判断についてはどのように考えるかについては,通則法には規定がないので,そこについては解釈に任されていますから,通則法11条の問題とは離れてその解釈の中で消費者に有利というような解釈を展開することは可能であるし,そのこと自体は条約に書いてあることは全く矛盾はしませんと申し上げたんです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● ただ,契約の準拠法の問題についての特殊性というのはですね,これは準拠法の合意とは関係なくいろいろな準拠法を決めていくわけですよね。ですから合意された準拠法によって判断するという問題とは全く違いますよね。ただこれは全く関係ないと言わざるを得ないのではないでしょうか。仮に合意された準拠法によってその合意の有効性を判断するとして……。 ● そういう立場だとしてですね。 ● そういう立場だとしても,合意された準拠法について,それがあればですね,強行規定以外は問題にならないわけでしょう。強行規定は別に有効性には適用されるとは思わないので。 ● ですけど,その準拠法の合意の有効性をどのように判断するかについては,今,○○委員がおっしゃられたような立場のほかの立場というのは当然あり得るかと思いますので,今ここに規定がない以上は。 ● そうではなくて,合意された準拠法によって,その合意の有効性を判断するという立場に立ってもですね,そもそも契約準拠法の特則の趣旨は,そういう合意された準拠法を考えているのではなくて,まさに消費者保護のためにそれとは別に準拠法を定めるというところに特色があるわけですから,その合意の有効性は,その準拠法によっては判断されないのではないですかということなんです。 ● 最後のその準拠法というのは。 ● 合意された……。 ● 合意された準拠法ですか。そうすると通則法11条が効いてくる可能性があるということですか。 ● ない。 ● ないですか。それは私は同じ意見ですけれども。 ● いかがですか。 ● 確かに有効性の問題として契約準拠法にしたとしても,そこで言う準拠法によると言ったときに,これはまた通則法11条でいうようなルールはもうそこに入ってこないから,という御趣旨ですよね。それはそれで確かにそのとおりだと思います。他方で消費者と事業者が合意をしているという局面で,それが例えば法廷地が強行法規かもしれませんが,あるいはそういう意味では通則法11条の問題ではなくて,むしろ消費者契約法とかの話なのかもしれませんけれども,その消費者と合意をしているという局面との関係で,今の4条がそういった消費者を保護するという法規の何らの影響も受けないのか,場合によっては立法するときに何らかの適用除外を明確にするためにしておいた方がいいのかとか,そこら辺は,今,私がちょっと申し上げた通則法11条がどうこうという話とは別に,考える余地はあるのかなとは思うんですけれども,それはいかがですか。 ● どうぞ。○○委員。 ● もし,そういう解釈があり得るようであれば,現在の通則法43条にその適用除外の条文があるんですけれども,そこに1か条は少なくとも書くと,書き方は難しいですけれども,その間接保有証券条約の適用範囲については,この項は適用しないというふうなことを書かないといけないのかなと,その条約の場合にいちいち今までは書いてないと思うんですが,これ国内法化した場合には例外を,どこは適用されないか,どこが適用されるかを書くのがこれまでの例ですけれども,この間接保有証券条約を批准したときに国内立法をするのか,条約の前にするのか,これもまだ決まっていないことだし,批准するかどうかも決まっていないことですが,いずれにせよ不明確なことはできるだけなくした方がいいと思いますので,つなぐ規定といいますかね,関係をはっきりさせる必要があった方がいいですので。 ● 今,○○委員は通則法43条を例に挙げられたんですけれども,これはまさに○○委員がおっしゃられたように,法律相互の関係だからこそ通則法43条の規定はあるわけですよね。条約と法律であれば条約が優先するというのが確定した取扱いなので,条約が定めているところはその限度においてそっちが優先するわけですから,これは規定の置きようがないんではないかと思うんですね。問題は,だからその範囲がどこまでかという問題ですけれども,そこは○○委員がおっしゃられたように,この条約は間接保有形態の証券についての一定の事項,物権的な事項を含めた一定の事項について,どうやって準拠法が定まるかということを書き切っている条約なんで,そこは○○委員がおっしゃられたように,もう法の適用に関する通則法が出てくる余地はないというふうに考えざるを得ないんではないかと思うんですけれども。 ● もちろん,はっきりしていればおっしゃるとおりです。私もそうなんです。 ● ○○委員の方から御指摘があったのですけれども,11条の公序によって解除する余地というのは考えられるかもしれませんね。 ● ○○委員,今の御議論を聞いていただいてどうでしょうか。 ● 一言だけ。一言だけって何を申し上げていいのかよく分からないんですけれども,条約のときに当然これは間接保有証券の取引ですから,Aとかいう投資家が消費者である場合があるわけですよね。ですから一番問題になりましたのは,端的に言えば今議論されている問題ではなくて,4条1項でとにかくニューヨーク州法を選びましたとか,例えば日本の投資家が,日本在住のアメリカの証券会社との間でニューヨーク州法と選びましたとか,二つ問題があると思うんですね。一つは,その意思表示の瑕疵と言ってもいいし,能力両方を含むと思うんですけれども,その合意は無効だと言って後から争うようになる。これが今の二番の問題になっている話ですよね。  それから,もう一つの問題は,合意自体は有効だけれども消費者契約法に違反すると,だから無効だと,消費者契約法がそういうふうに定めているとしてですけれども,そういう主張ができるかというこの二つなんですね。それで,前者については,今いろいろな説があるんです。先ほどから御指摘があるように,合意した準拠法ではなくて,法廷地のところで決めましょうという考え方に立って,明示はされていませんけれども,条文上は。そういう整理で後で出てくる変更の場合も同じだと思うんですけれども。後者に至っても,もちろん条文上は明らかでないんですね。ただ後者の問題は基本的には条約の11条ですけれども,先ほどの公序の規定で対応しましょうというのが,大体皆そう思っていたということなんだと思います。これで今出されている話はちょっとどちらとも微妙に似ているような,違うようなところがありまして,合意自体の準拠法の話は,今の第一点の話なんですけれども,日本の通則法11条という話は,これは日本の通則法7条の特別規定として国際私法レベルでの規定ですけれどもね。ですから,その話とこの条約がどういう優劣関係になるのかというのは,○○幹事が最後におっしゃったように条約の方が適用されるし,条約の中にこの日本の通則法11条の規定は,物権準拠法を定める条約ですけれども,まず第一,そこでずれていますけれども,そうだとしても合意でということですので,通則法11条の規定は置かれていませんので,したがって,この条約の中に日本の通則法11条が入り込むということは考えられないと思うんですね。ただ実質的な利益衡量から言えば,○○幹事はそれを言いたいんだと思うんですけれども,そういう日本の通則法11条的な意味で,この条約の下での当事者間の合意が消費者保護の見地から制約を受け得るような解釈論の余地があるのではないかという,そういう御趣旨だったと私は理解したんですけれども,それは私には国際私法のレベルなのか,先ほど言いましたような強行法的なレベルなのかというのは,ちょっとよく分かりませんけれども,この条約の考え方は,ただ消費者というのを念頭においた議論の文脈では条約の方の11条で整理するという考え方ですので,余り結論は変わらないと思うんですけれども,そういう構造になっているというふうに思います。 ● ありがとうございました。  まだこの点について御議論なさりたい方がいらっしゃるかもしれませんが,今日はひとまずここで終わらせていただきたいと思います。  次回以降のことにつきまして御説明ください。 ● 今日も御熱心な御議論をいただいてありがとうございました。一応第1の2までは終わったことにさせていただき,もしも何かあれば次回の冒頭に御発言いただくことにしまして,一応第1の2までは終わったということで,次回第1の3から御議論いただきたいと思います。   次回は10月30日の午後1時半から,場所はここ法曹会館の高砂の間でございます。ちなみにその次が12月4日でやはり1時半から同じく高砂の間でございます。   ちょっと私が思っていたよりも,予定が遅れぎみなんですけれども,次回は少なくともこの27を全部終えていただきたいと思っています。総会への報告案を御用意したいと思っていますので,事前送付ができれば事前送付させていただきたいと思いますけれども,その報告案の第1読までしていただきたいと思っております。それで12月4日にもう一回議論をしていただいて,報告案を固めていただければというふうに考えておりますので,どうぞよろくお願いいたします。 ● ありがとうございました。   本日は熱心な御議論をいただきましてありがとうございました。これにて散会といたします。                                          了