法制審議会保険法部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  平成19年9月19日(水)  自 午後1時31分                        至 午後5時21分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題 保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第16回会議を開催させていただきたいと思います。  最初に,配布資料と当面の進行予定につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ● まず配布資料ですが,部会資料16,それから保険法部会の審議スケジュール(案),以上二点,いずれも本日席上配布のものでございます。  続いてスケジュールの関係ですが,保険法部会の審議スケジュール(案)を御覧いただければと思います。本日の第16回から第24回まで,日程が既に予定されてございます。このうち第16回から第20回までの5回で要綱案を作成していく前提として,さらに御議論いただく必要があると考えられる論点を取り上げまして,御審議をいただきたいと考えております。その上で,第21回以降,要綱案のたたき台をお示しした上で,取りまとめのための御審議をお願いしたいと考えているところでございます。  第17回の会議室のところに「変更後」という記載がございますが,以前にお配りしたペーパーから会議室が変更になってございますので,御確認をお願いできればと思います。  それから,パブリックコメントの結果でございますけれども,先週締め切ったばかりでございまして,今回ではなく,次回以降に各界の意見の概要を御報告させていただくということを考えてございますので,よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ● 以上,よろしゅうございましょうか。  それでは,ただいま事務当局から御説明がありましたとおり,本日の会議を含めまして5回ほどで要綱案を作成していく前提として,さらに御議論いただく必要があると考えられる論点を順に取り上げまして,取りまとめの方向性についての御審議をお願いしたいと思います。  本日はその第1回目ということなのですが,その前に私の方からのお願いを一言申し上げさせていただきますと,これからの5回で取りまとめの方向で御審議をいただくわけですが,いろいろこれまでの御審議で御協力いただきまして,ある程度内容についての了解が得られたかなという事項と,まだ意見が鋭く対立している事項とがあるように思います。後者の方の意見がまだ対立しているような事項につきまして,特に時間をかけて御審議をお願いするのですが,これまでのように依然として自由闊達に御意見をいただくというのは当然のことではございますが,このタイミングを考えますと,単に賛成,反対ということの繰り返しでは,この限られた時間の中で成案が得られないで終わるということも懸念されるわけでございます。そういうことも御勘案の上,今後の御審議においては,いろいろな表現は可能かと思いますが,建設的な妥協というのか,アウフヘーベンとかいうのか,いろいろな表現があるのではないかと思いますが,成案を得るためにはどのように対立している意見を調和させるような解決が可能かというあたりで是非とも知恵を出していただいて,いい成案の取りまとめができるように御協力いただきますようお願い申し上げる次第でございます。  それでは,そういうことで具体的な審議に移りたいと思います。まず,部会資料16,保険法の見直しに関する個別論点の検討(1)の1頁以下,第1の危険の増加について御審議いただくこととしたいと思います。事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。  まず,危険の増加に関しましてパブリックコメントに寄せられた意見の概要を御紹介させていただきます。中間試案につきましては,資料の1頁から2頁にかけて引用しておりますので,そこも併せて御覧いただきつつお聞きいただければと思います。  まず,中間試案のアの故意又は重大な過失によって遅滞なく通知がされなかった場合について,どういった意見が寄せられているかを御紹介いたします。  ①の「通知しなければならない」という規律につきましては,賛成であるという意見があり,このこと自体に否定的な意見というのはございませんでしたが,次のような意見がございました。  まず,特に長期の契約については,保険者は少なくとも一年に一回,通知義務の対象となる事実を保険契約者側に質問するものとすべきであるという意見,あるいは,必要な通知の内容や通知の重要性を契約者に周知徹底すべきであるという意見がございました。これは,そもそも通知しなければならないということ自体を認識していない人も多くいるということや,契約締結後に通知を求めるという制度自体,そういった通知の履行がなかなか期待し難いということなどが理由として挙げられてございました。  次に②,③についてでございます。これは,契約解除と保険者の免責という規律を定めているものでございますが,これについては賛成するという意見があった一方で,契約の解除という効果は大き過ぎるという意見,あるいは③の保険者の免責の点につきましては,告知と同じく,いわゆるプロ・ラタ主義を採るかどうかという論点があるわけでございますけれども,この点についてはA案とB案に意見がそれぞれ分かれてございました。  なお,プロ・ラタ主義の点につきましては,次回に告知の関係で御審議いただくことを予定しておりますので,今回はプロ・ラタ主義の採否自体は直接の議論の対象としては考えておりません。  告知につきましていわゆるプロ・ラタ主義を支持しない方でも,こちらの危険の増加の方ではプロ・ラタ主義を支持するという方もいらっしゃいました。また,危険の増加による通知の方につきましては,故意の場合も含めてプロ・ラタ主義によるべきであるという意見もございました。  あとは,告知義務の場合との整合性をとるように規律するという考え方について,賛成するという意見もございました。  続きまして,イの遅滞なく通知がされた場合などの規律でございます。  まず,①の規律でございます。これにつきましては,中間試案の際にもいただいていた御意見と同じでございますけれども,催告をして承諾ということを細かく規定しなくてもよいという意見や,保険契約者との間で契約内容の変更について誠実に交渉するようにすべきであるという意見がございました。  また,②につきましては,賛成の意見があった一方で,危険の増加があった時から保険料の増額その他の契約内容の変更という効果が生じるようにすべきである,また,危険の増加があった後,それぞれ仮に催告ということを定めるとすれば,その場面ごとに保険会社が責任を負うのか負わないのか,その辺を明確にすべきであるという御意見もございました。  さらに,③につきましては,これは保険料の増額に保険契約者が応じなかった場合の規律でございますけれども,解除の効力は,危険の増加を知った時あるいは危険の増加の時までさかのぼるべきであるという御意見がございました。  また,危険の増加関係の後注ですが,まず後注1では,解除権の除斥期間の問題,あるいは通知をいつすべきなのかという問題などについて触れておりました。まず,通知の時期につきましては,中間試案に括弧の中で書きましたように,危険の増加が生じることを知ったときには,危険の増加の前であっても通知をするようにすべきであるという意見がありました一方で,危険の増加の原因となる行為を準備する段階で通知義務を課すことは,契約者あるいは被保険者に酷である,あるいは,平成5年3月30日の最高裁判例,これは目的物譲渡の通知に関する判例でございますけれども,この趣旨からすると,そういった考え方には反対であるという旨の御指摘等がございました。他方で,中間試案に括弧の中で書いていたような考え方というのは,通知のインセンティブを促すためには必要なものであるとか,通知制度の維持あるいは保険母集団の維持のために必要であるという趣旨の指摘というのもされてございました。  続きまして,除斥期間につきましては,中間試案の取りまとめをお願いした際に,告知制度における除斥期間との整合性などという御指摘を多数いただいたところでございます。この点につきましては,告知と同様に1か月,5年という除斥期間を定めるべきであるという意見と,それとは正反対に,除斥期間を設けることに反対であるとの意見がありました。反対の意見は,危険の増加があった以上は,あるべき状態に合わせるという危険の増加の制度趣旨を徹底すべきであるということが理由として挙げられてございました。  あとは,仮にアの②の解除,すなわち保険者の免責を伴う形の解除については,5年という除斥期間を定めることに合理性があるけれども,将来に向かってまで保険料の増額の請求もできず,あるいは引受範囲を超えてしまった場合に一切契約関係を解消することができないということには問題があるのではないかという指摘がございました。この点については,本日の資料でも触れさせていただいておりますので,後ほど改めて御説明させていただきます。  あとは,人保険における危険の増加制度の特殊性に応じた規律とすべきであるという旨の御指摘,これは中間試案の注で書いていたとおりでございますけれども,それと同様の指摘があったところでございます。  とりあえずパブリックコメントに対して寄せられた意見の概要は,以上でございます。  ただいま御紹介いたしましたように,パブリックコメントに対しては非常に多様な意見が出されてございました。この問題を考えるに当たっては,危険の増加の制度趣旨,すなわちなぜこの制度があるのかについて検討することが不可欠なように思われるところでございます。そこで,今回の資料では,最終的にどのような規律とするかは別途2のところでいろいろ問題提起をしておりますけれども,その前提として,危険の増加の制度趣旨を極限まで徹底した場合にはどうなるのかということをまず記載してございます。資料の2頁の1のところでございます。  まず,契約締結後に危険の増加があった場合において,その危険の増加が引受範囲内,すなわち保険料の増額あるいは契約内容を変更することで継続することが可能な場合には,危険の増加があった時から保険料の増額あるいは契約内容の変更をするというのが,危険の増加の制度趣旨を徹底した考え方ではなかろうかということをまず記載しております。他方で,引受範囲外,すなわち保険料の増額等で対応することができない場合につきましては,危険の増加があった後発生した保険事故のうち,少なくとも増加した危険によって発生した保険事故については保険者は責任を負わないとすることがある意味で徹底した考え方なのではないかということを記載しております。これは結局,危険の程度と保険料の額等の契約内容とを合わせることを契約締結後に可能としておくことによって,保険契約締結時には危険の増加の可能性を保険料の額の算定に当たって考慮しないことが可能となるわけでございます。これを実現するためには,保険契約者あるいは被保険者から保険者に危険の増加の通知をしてもらうということが必要であり,この点についてはパブリックコメントでも否定する意見はございませんでしたけれども,これは改めて言うまでもないことかもしれませんが,通知の履行がきちんとされるような法律上の仕組みをどのようにつくっていくのかというのが,ここの真の問題の所在ではないかなと考えているところでございます。  こういったことを踏まえて,どのような規律を最終的に考えていくべきなのかということで,今回資料では3頁の2のところで,検討を要する点を箇条書きで書いてございます。順番に御説明いたします。  まず資料の(1)のところでございますけれども,中間試案のイの①から③までの規律,すなわち故意・重過失で遅滞なく通知がされなかった場合ではない場合の規律につきましては,中間試案では,催告をして保険契約者が確答した時などから将来に向かって保険料の増額等の効果を生じるものとしてございました。この点につきましては,危険の増加があってからそういった時までの保険料を請求することができるものとするべきなのかどうか,あるいはその間に保険事故が発生した場合にどう取り扱うべきか,つまり保険者が保険金支払義務を負うこととするのかどうかというのが論点ではなかろうかと整理しているところでございます。この点については,パブリックコメントでもそのようにすべきだという意見があったことから記載しているものでございます。この点については,先ほど若干御説明をいたしました,危険の増加の制度趣旨を徹底する考え方からすると,この間についても保険料を請求することができるものとし,あるいは※2のところで書きました,保険事故が発生した場合については,保険料の増額によって対応可能な場合には,保険料の請求をすることができる,場合によっては保険金から保険料の額を控除するということが考えられますが,他方で,保険料の増額によって対応することができない場合には保険料を請求するということは不可能でございますので,その場合には,一定の場合に保険者を免責とする必要があるのかどうかということが論点になるのではないかということで問題提起をしているところでございます。ただし,この点については,先ほどパブリックコメントでも紹介させていただきました,故意・重過失なく通知をした場合にまでこのような規律とすることの当否,あるいは特に保険者の免責ということを定めることになりますと,結果的にアの故意・重過失で通知をしなかった場合の効果と全く同じであるということになるようにも考えられ,このあたりが検討課題ではないかと考えておりまして,後ほど御議論をいただければと考えてございます。  続きまして(2)に移りたいと思います。(2)といいますのは,中間試案でいきますとイの④の規律に関する記載でございます。イの④は,引受範囲外の場合に,将来に向かって契約を解除することができるという規律を掲げてございました。この点につきましては,(1)と同様でございますけれども,危険の増加があった時から契約の解除をする時までの間に保険事故が発生した場合にどのように扱うべきか,すなわち保険者が保険金支払義務を常に負う形にするのか,一定の場合には保険者を免責すべきなのか,そこが問題ではなかろうかということで問題提起をしているところでございます。この点につきましては,※のところに書きました危険の増加の制度趣旨を徹底する考え方からすれば,一定の場合に免責とする必要があるとも考えられるが,どのように考えたらよろしいのでしょうかということを記載してございます。  続きまして(3)では,ここまでがイの規律の問題でございますけれども,解除権の行使可能期間,いわゆる除斥期間の問題について記載しております。この点につきましては,中間試案の取りまとめの際にも若干申し上げさせていただきました,危険の増加があったことを保険者が知った時から何か月という形の除斥期間を定めるのかという問題と,危険の増加があった時から,すなわち保険者が知らなかったとしても,一定の期間内に解除権の行使を制限すべきかという二つの問題があろうかと考えておりまして,それぞれ分けて御議論をお願いしたいと考えております。これについては,後ほど(6)のところでアの解除権,つまり保険者の免責を伴う形の解除権の方でも同様の問題提起をさせていただいておりますので,そこで改めて説明させていただきたいと思います。  続きまして(4)でございます。(4)からが,アの故意・重過失で通知しなかった場合の問題について触れているところでございます。この点については,まず通知をいつすることとすべきなのかということを書いてございます。この点につきましては,中間試案では,危険の増加があった後,保険契約者等がこれを知ってから遅滞なくするものとしていたところでございます。この点については,先ほどパブリックコメントに対する意見でもございました,危険の増加がある前であっても,増加することあるいはすべきことを知った場合には,通知をすることとすべきであるという点が論点であろうと認識しております。これについては,イの方でどういう規律を定めるかということとも併せて考えるべきであるという御指摘が第一読会あるいは第二読会の際にございましたので,そういった観点から検討する必要もあるのではないかと考えてございます。  さらに(5)は,通知しなかった場合の効果,あるいはその効果を導くための要件の問題でございます。この点につきましても先ほど御紹介いたしましたように,パブリックコメントでは,契約の解除と保険者の免責という効果は厳し過ぎるという意見が複数寄せられていたところでございます。  なお,この点に関連いたしまして,先ほど通知というのは告知とは異なるという話,あるいは契約時や契約締結後にきちんと保険契約者等に通知すべき事項等について知らせるべきであるという御意見がございましたことから,これに関連いたしまして,中間試案のアの②の故意・重過失ということの意味について詰めておくことが必要なのではないかと考えてございます。すなわち,ここでいう故意とは,事実の変更があったこと,あとはこれが危険を増加させる事実に当たること,それと通知を求められ,これをしていないことを知っていることを要するのではないか,重大な過失の方については,これらを知らないことについて重過失がある場合をいうのではないかとも考えられるところでございます。こういった観点から,先ほどのパブリックコメントに対する指摘についてどのように考えるか,あるいは(5)の問題についてどのように考えるか,御議論をお願いしたいと思っております。  (6)は除斥期間の問題でございますが,これにつきましては,4頁の※のところで記載しております1か月の除斥期間については,現行商法第657条第3項がこれと類似の規定を設けていることから,保険契約者の法的安定性の観点からこれを定めるということが必要なようにも考えられるということで記載してございます。他方で(6)では,5年の除斥期間を定めることの要否あるいは当否について問題提起をしてございます。この点については,仮に保険者の免責を伴う形の解除権について除斥期間を定める場合には,保険料の増額あるいは契約内容の変更あるいは引受範囲外の場合には将来に向かっての契約の解除をすることができるように併せてすべきなのかどうか,保険者の免責を伴う解除の問題とそれを伴わない解除あるいは保険料増額等の問題についてパブリックコメントで意見が寄せられていましたことから,御検討いただければと考えてございます。  (7)では,アとイのそれぞれの規律について,保険契約者の意思による危険の増加と意思によらない危険の増加とを区別することの要否あるいは当否について問題提起をしてございます。この点については,先ほどパブリックコメントに対する意見の紹介の際に,区別するべきであるという指摘があると御紹介したところでございますけれども,他方で区別すべきではないという意見もあったところでございます。  最後に(8)のところでございますけれども,これはほかに何か検討を要する点があるかどうかについて問題提起をしてございます。この点については,特に※のところに書きました告知の規律との整合性について御議論いただければと考えております。すなわち,中間試案の取りまとめの際に除斥期間の問題を御議論いただきましたときにそういった御指摘がございました。また,パブリックコメントでも同様の指摘があり,因果関係原則の問題,あるいは契約解除の要件の点についてパラレルに考えるべきであるという指摘,さらには告知のところでは,保険者に故意・過失があった場合の契約解除権の阻却についても規定されており,それについてもパラレルに考えるべきであるという指摘もされておりまして,そういった観点で御指摘をいただければと思っております。さらに,告知につきましては,故意・重過失があった場合に解除することができるとされておりますこととの関係で,危険の増加のイの方では,故意・重過失がない場合,すなわち軽過失あるいは無過失の場合にも,一定の効果を伴う規律が置かれてございまして,これと告知の規律との関係についても整理する必要があるように考えられるところでございます。  少し長くなりましたが,以上でございます。 ● それでは,ただいまの危険の増加についての検討を要する点は多々あるということを御説明いただきました。どの点からでも結構かと存じますので,御意見をお願いいたします。  まず○○委員,どうぞ。 ● 全般にかかわるようなことかもしれませんが,いわゆる告知制度もここで御議論いただく危険の増加の制度も,ともに主として給付反対給付原則を具現する重要な制度であって,後者はそれに契約利便性も加味したものと考えていますが,その意味も含めて,資料の2頁の1に示された考え方には異論はございません。この趣旨を踏まえて御検討いただきたいと考えます。  全体としてこの考え方に沿って,危険の増加があったときに,危険の増加した期間に対応する対価,つまり保険料の増加分を保険者が確実に請求できるようにしていただきたいと考えます。この制度が機能する前提として,事故が起きたときに限るのではなくて,危険の増加があったときには通知がもらえる仕組みが必要だと考えます。すなわち,危険の増加があった場合,事故がないときに通知しないで安い保険料のまま契約を継続しておいて,事故があったときだけ通知しても救済されてしまうということになると,契約者の公平性や保険集団の維持という点から問題が生じますので,このような抜け穴が生じにくい制度にしていただく必要があると考えます。  それから,企業保険について,事業に関するリスクを担保する保険については,危険の増加だけではなく,原則として包括的に強行規定の適用除外をすることを要望していますが,本日の議論についても,企業保険を除いた前提で御議論いただいた方が焦点が絞れるものと考えております。 ● ○○委員。 ● 通知事項とは一体何なのかということをもう一回,申し訳ございませんが,御確認させていただくために,皆様のお手元に約款集がございますので,念のためそこの部分だけ,具体的にどういうことを言っているのか,これからの議論のためにも参考になると思いますので,説明させていただきたいと思います。ひもでとじてある中で一番上に「MOST(家庭用自動車総合保険)」という黄色い冊子があると思うのですけれども,大変恐縮でございますが,これの一番初めのものが自動車でございますので,まずこの自動車のところでございますけれども,130頁に普通保険約款の第4条,通知義務というのがございまして,ここでどういうものを通知するのかというのが一般的に自動車保険では規定されております。  1番目は,保険証券記載の自動車の用途,車種又は登録番号,車両番号を変更すること。これは簡単に言えば,例えば自家用で使っていた乗用車を,お金をもらって物を運ぶ営業用に変えるということで,ナンバープレートが当然変わるわけですから,こういう場合には必ず通知してください,2番目は,競技,曲技,カーレース,ラリーとかレース等に出場するような場合については,全然危険が違いますので,車がぶつかったり,事故を起こしますので,連絡してください,通知してください,ということになっています。  3番目は,危険物,ここは道路用車両の保安基準で定める高圧ガス等を運ぶような場合,これも非常に爆発リスク等々がございますので,一般の方が例えば車で石油ストーブの灯油を運ぶような場合は当然この中には含まれませんけれども,非常に危険な物を運ぶ場合がここに入ります。  4番目は,使用目的の変更です。業務使用とか通勤・通学使用,日常・レジャー使用のいずれかをいいます。自動車をどのように使うかという使用目的の変更。典型的な例は,これまで日常・レジャー用として使っていた車を,サラリーマンである私が脱サラして個人で何か事業を行うために,会社の仕事に使うという,業務使用に変更するという場合がここに当てはまると思います。  5番目は,保険証券等々に記載の重要な変更を生ずべき事実が発生し,危険が著しく増加すること。例えば改造とか,エアバッグを外してしまうとか,そのようなケースがあり得ると思います。これはケースとしてはほとんどありません。  それから,他の保険契約を締結すること。  これが自動車保険で求めているケースでございまして,そんなにちょっとした変更を求めているわけではなくて,大きく変わる場合,ナンバープレートが変わるとか,そういうときには必ず御連絡いただきたいと。これは自動車保険制度が維持されるためには必要不可欠な制度であるということでございます。  次に,緑色の約款集で火災保険がございますので,この9頁をお開けいただきたいと思います。住宅火災保険につきましては,この第8条に通知義務がございまして,これもそんなに多くのものを求めているわけではございませんで,人に売却した場合,保険の目的を譲渡すること。2番目は,保険の目的である建物又は保険の目的や家財を収容する建物の構造又は用途を変更すること。例えば,住宅用に使っていたのですけれども,その建物でレストランを開業するといったケース。レストランでは非常に火事が発生しますので,そういう場合には明らかに用途が違いますので,連絡をいただく。3番目は,保険の目的を他の場所に移転すること。例えば北海道にあった物を東京に持ってくるといったケースが考えられます。いずれにしましても,相当限定的なケースに限って,しかもはっきり分かるケースに限って通知を求めているということでございます。 ● では○○委員。 ● 最初に○○委員がおっしゃったアウフヘーベンといいますか,これからは今までとはちょっと違う実質的,本質的な議論をして何とか成案を得なければいけないということには全く同感ですので,そういう方向での議論ができればと思いますけれども,この問題に関しては,消費者向けの保険ということを念頭に置いた規律としてまずこれを考えて,企業物件的なものにもその定義はありますけれども,それはちょっと除いて考えるというのが一番いいのではないかと思いますけれども,問題はこの基本的な考え方というところです。これはまさに,思考実験としてこういうところからスタートするのは適切だと思いますし,そうすべきだと思いますけれども,現行の我々の保険法がこういうことだけで,つまり,このようにして,これからするとという形で議論していいものかどうかという点が最初にあると思うのです。これは告知義務との対比にもなりますけれども,危険測定に応じた保険料を確保するという意味では,告知義務の方でも,悪意・重過失の要件のところですけれども,主観的事情のいかんにかかわらず,告知義務違反の成立を認めるという考え方もあるわけです。そういう考え方をとらないで,契約者に重い負担を課すことは公平の見地から適当ではないということで,一応重過失がある場合という形にしているわけで,基本的には同じような考え方で,1の考え方だけだと厳し過ぎて,契約者の負担をある程度軽減するというところから議論は出発しないといけないのではないかと思います。ですから,1からするとではなくて,契約者の公平の観点から1プラスちょっと緩和したというところからまず議論をスタートすべきなのではないかと思います。  徹底的に考えて自信があるわけではありませんが,検討を要する点の最初のところに,危険の増加があった時から保険料を請求することができるものとすることはどうかと。この間に保険事故が発生した場合に,基本的に有責の方で保険金を払うという方向で考えるのであれば,これは請求しなければいけない,請求できるという考え方になると思うのですけれども,※2のところですか,保険者を免責とする必要があるとも考えられるというところにいきますと,故意・重過失がない場合に,そこまでいってしまっていいのか。これは要するに保険制度として,企業物件的なものであれば,再保険とかいろいろなものがあって,保険会社がそれを吸収できないという事情があれば,それは難しいと思いますが,消費者物件である程度,それが全額かどうかは分かりませんが,面倒を見ることができるというのであれば,ここは故意・重過失のない場合には簡単に免責という形にはいかないのではないか。  それから,(2)のところもそうです。危険の増加があった時から契約の解除をするまでの間の取扱い,ここも保険金ゼロという形ではなかなか難しいところがあるのではないか。※で「1からすると」とありますが,1からいくとそうなるかもしれませんが,もうちょっと緩和しないといけない。  それから,(3)のところですけれども,この解除権について,行使可能期間のところ,1か月のところは次の頁にあるこれで全くいいのではないかと思うのですが,問題は,5年のところは,私がよく分からないのは告知義務とどう違うのかということで,5年というのでもいいのかもしれませんが,ちょっとこのあたりは自信を持った議論ができない。  あと,次の頁にまいりまして,これでおしまいにいたしますけれども,(7)のところで,保険契約者の意思による危険の増加と意思によらない危険の増加とを区別する。これは,問題は契約者の側にその重要度が分かるかどうかです。重要度が分かって,きちんとあらかじめ言いなさいということであれば,それは可能かもしれません。問題は,重要度が契約者に分かるかどうかという関連性でちょっと考えないといけないのかなと,そんなことを思います。  以上です。失礼しました。 ● ありがとうございました。  ○○委員。 ● 少し具体的な項目についてなのですけれども,(1),(2)を中心に4点ほど申し上げたいと思います。  1点目は,2の(1)の※1にございますとおり,先ほど資料の1に記載された危険の増加の制度趣旨からすれば,危険の増加時から保険料を請求することができるものとしていただくことが合理的であると考えます。  2点目は,(1)のところで,②,③に記載する時までの間に保険事故が発生した場合の取扱いですけれども,契約者が保険料増額を承諾した場合には,責任を負うとすることが当然だと思いますけれども,増額を承諾しなかった場合には,増加した危険によって発生した事故については免責とすることが合理的であると考えております。  3点目は,(2)の※ですけれども,(1)の※2と同様に考えておりますけれども,危険の増加によって引受範囲外になってしまった場合,保険料増額で対応できない場合については,資料の1の制度趣旨からすれば,増加した危険によって発生した事故についてだけは免責にしていただくのが適当ではないかと考えております。  4点目は,今意見を申し上げた後であれなのですけれども,イの規律全体についてですけれども,催告をして承諾といったことを細かく規定しなくてもよいのではないかと考えております。実際の危険の増加による契約内容の変更は,例えば車をレジャー使用から通学目的に使うようになったのですぐ変更してほしいというように,タイムラグが少ないため,催告,確答といった手続が強行規定となると,迅速な変更手続が阻害されて,催告と確答の間に事故が発生した場合を考えると,トラブルを招くおそれもありますので,承諾した場合には増額保険料を請求できるといったシンプルな規定としていただければと思います。  以上です。 ● ○○幹事。 ● 議論の前提なのですが,基本的な考え方のところは確かにここに御提案いただいたとおりかと思うのですが,家計保険の分野で考えた場合に,引受範囲外に危険が著しく増加してしまうというケースがどれほどあるのかが定かでないのです。先ほど御紹介いただいた約款のつくりを拝見しますと,通常,適切に通知が行われれば,それで保険料を増加して引き受け直すということで適切な処理が行われるという段取りになっているかと思うのです。引受範囲外に著しく危険が増加するようなケースというのは,ここでは余り想定されていないようにも思われます。引受範囲外に出るような危険の著しい増加が起こるようなケースというのは,ひょっとしたら多くの場合,免責条項の方で処理されているのではないか。免責条項で処理できるのであれば,それは約款のつくりとしては,通知で対応しているのは引き受けられる範囲の増加危険ということになってしまうので,実際的な約款のつくりと,法律につくった場合の危険の増加の条文のつくり方がどううまく接合するのか,そこを今,私も十分整理し切れないで困っているのですが,教えていただきたいのは,今,実務でお考えになっている引受範囲外に出てしまうような危険増加のケースです。自動車保険とか火災保険の家計保険分野での想定事例といったものを教えていただくと非常に分かりやすいなと思いますけれども。 ● 何か。○○委員。 ● なかなか答えにくい問題なのですけれども,特に家計分野につきましては,かなり標準化されています。ただ,これは長い期間にわたって保険制度を決める基準でございますので,保険者が社内でいろいろ基準を決めて,引き受けられないもの,例えば保険の目的が譲渡された場合,その譲渡された条件等々で保険会社が引き受けられないものというのは,これは十分考えられるとは思うのです。ですから,危険が変更したとかということが通知義務の範囲で起こって,その結果,保険会社が全く引き受けられないといったものについても保険金を払えという仕組みは,やや強いのではないかなと。したがって,そこにつきましては,恐らく家計分野について今想定されるものにはほとんどそういう問題はないと思うのですけれども,保険会社の個々のアンダーライティング,約款上の基準によりまして,この通知義務に書いてございますいろいろな基準がございますけれども,この中で保険会社にその部分についても保険金を払えというふうに法律で決めるのは,ややいかがなものかなと考えております。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 制度的な趣旨からこれを考えると賛成で,これ自体についてはよく理解できるのですけれども,ちょっと一つだけ質問させていただきたいのは,増加した危険の増大の内容なのですけれども,通常,危険という場合には,頻度が増大するか,あるいは強度,損害の程度が増大するか,あるいは両方増大するか,そのように分解できると思うのです。例えば,個人の住宅総合保険等,火災保険などで,住居の用途を変更した場合,住居からレストランにした場合は,一般的には危険は増加するということになると思うのです。その際に,住居からレストランへの危険の増加というのは,火事が起こる可能性が高いから,どちらかというと頻度が高まるということで,危険が増加するのではないかと思うのです。そういった場合にこの約款だと,ちょっと確認したいのですけれども,通知せずに住居からレストランに変えてしまった場合には,増加した危険によって発生した保険事故なので免責になると考えられるのか,あるいは頻度だけなので,程度を若干考慮して実務的には対応されているのか,この辺の実務上の解釈というのはどのようになっているか,伺いたいのですけれども。 ● それは,故意又は重大な過失によるかどうかということになると思うのですが,通常,火災保険に住宅で入っていて,それをレストランに変えるということになると,当然レストランにするためには営業許可も取りますし,それから火災危険が増えるということは契約者も当然お分かりになっていらっしゃると思いますので,こういう場合には,もし火災保険を付けている場合には,住宅火災の保険のままで火災危険が得られているとお考えになられるというのはちょっと違うのではないかなと。通常,そういう場合には,契約者はよく理解されておりますので,重大な過失であると一般的には考えられると思います。ただ,説明の問題とか,いろいろな問題がありますので,個別のケースでどうしているかは別としまして,それは重大な過失であるということですから,一応契約は解除するということになると考えられるべきだと思います。 ● どうぞ。 ● ありがとうございました。  それでは,故意又は重大な過失でないケースというのもまたあるのでしょうか。例えば,自動車の用途で,土・日しか使わないというのを金曜日も使ったとか,多少その辺,グレーゾーンというのがあると思うのですけれども,そういう場合は実務的にはどういう対応をされているのでしょうか。 ● いろいろなケースがあると思いますが,例えば先ほどのケースで,個人用に使っている自家用の車を,お金をもらって営業用に変えるということになると,ナンバープレートが変わりますので,これは明らかに違う危険であるということを本人は当然お分かりになっていると思うのです。一方で,サラリーマンが脱サラして宅配ピザ屋さんになって自分の車を使ったというときに,そこまで故意とか重過失と言えるかどうか。それはついうっかりということがあり得るかもしれません。それから,レジャー用に使っていたものを通勤用に使うということも,恐らくそこを重過失ということは実際にはほとんどないのではないかなと考えていますが,それはそれぞれの保険会社の判断です。 ● 何か○○委員。よろしいですか。 ● 結構です。 ● お話を伺っていると,今の○○委員の御説明のように,故意又は重過失による通知義務違反とは言えない場合も中にはあり得るのではないかと。そのときにこの1頁のアの方のルールだけだと,これは免責とか解除にならない。イの方で保険料を改定するといったことはあり得るかもしれないけれども,通知がなければその機会もないということです。そうすると解除もできない,免責にもならないといったことは実務的にいかがなのでしょうかということの問題指摘がされているのではないかと思いますけれども,逆にアで,通知義務違反の免責の効果が発生するのを故意・重過失でせっかく絞っているのに,結局イの方についても,この3頁の2(1)の※2とか(2)の※のように,部分的に免責となる場合も認めるべきではないかということになると,少しは絞られていますけれども,何かアでせっかく免責の要件を絞り込んだ意味がなくなるような気もするのですが,○○委員はその辺の問題指摘ということであったのではないかと思うのですが,そのあたりはいかがでございましょうか。  先ほどの,実際にどういう場合に通知義務が発生して,違反したことについて,故意又は重過失があるかという,そこの解釈にもかかわってくると思うのですけれども,車の用途を変えるようなことについて,それは当然危険が増加したといったことは契約者側にも分かっているということであれば,アでいうところの故意だから,そこでもう解除できるし,事故が発生しても免責になるということが言えれば,実務上,何か危険だけ上がったけれども,保険料は増額できないし,保険金も払わなくてはいけない。その辺の不公平があるという問題はなくなるように思うのですが,逆に故意とか重過失とは言えないということになると,何か考えるかという話になってくる。ただ,そうなるとせっかくアの定めを置いたことの意味がかなりなくなってくるし,そんな問題なのではないかなという気がするのですが。  先ほど自動車と火災の約款の御紹介がありまして,それぞれどんな通知事項があるかというところの御紹介がございましたが,その同じ条文の中では,危険の増加が発生した場合にどういう効果が生ずるかというので,基本的には通知があるまでは一切免責というのが今の約款の定めで,多分,火災と自動車で若干規定の仕方が違っていて,火災の場合は正当な理由なく通知しなかったら免責ですよという,自動車は何もそこを書かないで,とにかく通知があるまでは一切免責のような文言になっていると思います。そこが諸外国のこういう通知義務に関する規定と比較しても,やや免責の範囲が広過ぎるのではなかろうかということから,アのような故意・重過失という,告知義務とのバランスをとったような主観的な要件で絞りをかけているということではないかと思いますが,逆にそのことから保険料を是正するようなチャンスが全然なくなるとか,そんな問題が場合によっては生じているかもしれないということなのですが,そのあたりはいかがでしょうか。○○幹事。 ● 今,○○委員から整理していただきまして,何が問題なのかということが随分よく分かったのですけれども,御指摘になったように,故意又は重過失がなくて,確かに危険の増加はあるのだけれども,そしてその事実を被保険者も保険契約者側も知っているのだけれども,それは通知しなければいけないことであると判断しなかった点に過失がある。それでそのままずっと来てしまった場合です。通知しないでいいと思っていたものですから。その場合には,危険の増加があるのだから,保険者を免責にしてもいいのだという(1)や(2)※のようなルールをとってしまうと,確かに,せっかく故意・重過失の場合のみその義務違反の責任を問うというルールにしたことの意味がほとんどなくなってしまうと思います。ですから,この中間試案でとられているような考え方を採用しますと,現在の実務よりは,保険者が負担しなければいけない危険というのは確かに多くなると思うのです。とりわけ,現在の約款では,危険の増加について被保険者に責めがあるべき場合とそうでない場合に分けていて,責めがあるべき場合は事前にあらかじめ通知しなければならないとなっているところを,この中間試案では遅滞なく通知すればよいとなっていますので,まずそこが違っています。ですから,全体としては保険者の引き受けるリスクは高くなるのかもしれません。しかし,それはよりよいルールを採用するということをまず最重要課題とするのであれば,そのことによって保険者のリスクが高くなって,それによって保険料が上昇するとしても,別にそれはよりよいルールを採用するための必要なコストであると考えてよいのではないかと思いますので,私は(1)の※2,それから(2)の※については,必ずしもここで提案されているようなルールを採用する必要はないのではないかと考えます。 ● ○○委員。 ● 手短に,今伺った議論を踏まえて四つほど申し上げます。  まず,現在の約款が本当にそのままの効力を認められるかという問題があると思うのです。これは最高裁の通知に関する判例等を見ても,その基本的な考え方を及ぼすと,多分,約款そのままではいかなくて,実際は正当な理由的なものが入るのではないか。だから,必ずしも加重することにはならない部分がある。  それから,基本は,戻りますけれども,告知義務との整合性というものを考えていくべきだと。そうすると,危険測定で保険料をまずしっかり取ることだけ,それはとても重要だけれども,それはちょっと緩和するという点で一貫させるというのが重要だと思います。  それから,○○幹事と○○委員とのやり取りの中で,実務の方が考えるのは本当の危険の増加ではない。危険の変更という言葉を使われたところにも象徴されていますけれども,約款でやっているのを全部認めるわけではないものですから,実務の方が危険の増加としてとらえる部分と法が前提としているものとはちょっとそごがあるのではないかという点を感じました。レストランの問題でも,例えば店舗併用住宅の場合に通知するかどうかという微妙な問題とか,実際にはよっぽど何かモラルリスク的なことがなければ,引き受けるわけです。そうすると,あとは保険料調整。保険料を故意の場合だったら最初から取るということだってありますし,詰めていきますと,そんなに違いはなくなってくるのではないかという感じがいたします。  以上です。 ● ○○委員。 ● 確かにおっしゃるように,家計分野では保険料で調整するということが恐らくほとんどの場合だと思うのですが,これは先ほど言いましたように,長い期間にわたって行われる制度でございますので,例えば,日本で想定されるかどうかは別としまして,ある地域の自然災害,例えば台風のリスクが非常に高まっているとか,雪のリスクが高まっているとか,あるいは放火リスクがものすごく増えているという地域がこれから発生してきて,ある保険会社ではその地域はもう引き受けないということがあったとします。そうした場合,保険会社に事前の通知なくしてそういう地域に移転して家財を移したとか,仮にそういうことがあった場合,どんどんほかのところで契約してそこに移ったというケースも考えると,それは保険会社のアンダーライティングというか,引受基準から比べますと危険がはるかに増えているところに移るわけですから,事前に移る場合にはもうお引受けできないというのが一応保険会社としての考え方だと思うのですが,それでも保険金を払えという形に,そこまで法で強制するかどうかという議論をお考えいただきたいと思います。 ● いかがでしょうか。  今のような場合は,本当にそういうことがあるとすれば,契約のときによほど明示しておかなくてはいけないはずであって,そういうことをやっておいてもなおそういう変な地域に移転するなどというのは,このアでいうところのまさに故意そのものに当たるような気もするのですが。 ● 一応,架空の議論なのですけれども,そういう仮定を置いた議論で,要するに保険会社がそれぞれ持っている引受基準というのですか,それと,引き受けられるもの,引き受けられないものについてどこまで強制するのかという問題で,企業についてはこういうことはしょっちゅうございますので,企業はこういうものから契約自由の原則で外していただきたいと思っています。 ● ○○幹事。 ● 私も,2の(1)のところは通知義務の履行がある場合ですから,通知義務の履行があってなお対価関係が崩れているというだけでそれまで払っていた保険料が全部無駄になって保険金がゼロになるというのは,ルールとしてはかなり極端なルールではないかと思っております。先ほどから議論がありますように,免責事由として処理するのと危険の増加という形で処理するのとで結果は随分違ってくるというのは,これはかなり重大な問題であります。例えば自動車保険で,曲芸の目的で自動車を使った場合には,保険会社は保険金は一切払いませんと免責事由に書いてしまえば,通知の問題は一切吹っ飛んで,常に免責になってしまう。そういう条項は,これは危険の増加の法理はややこしいから全部免責事由で処理しようということで全部そっちでやってしまうと,この規律が全部しり抜けになってしまうという問題もありますので,ここのところはもう少し危険の増加の問題で,契約事由だから免責事由に持っていけることで本当に済むのか,そういうのはこの規律が実質的に強行法規で及んでしまって,その規律も全部駄目になってしまうというところまで考えないといけないのかということについても,少し念頭に置いて議論しないといけないのかなと思っております。 ● 今,イの場合は通知があった場合というのですが,それには限らないわけですね。要するに,アの通知義務違反が成立しないから,アの効果は全然生じないのですね。そういう場合もあると思います。そうすると,保険会社としても,危険が増加したのは分かっているから,そこで調整すればいいというだけでは,なかなかうまくいかない場合もあるということです。それで,免責については,いずれにしても(1)の※2とか(2)の※のようなことについて,必要だという意見と,必要でないという意見も今日いただきましたが,(1)の※1にあるような保険料の調整については,御意見はどういうものですかね。2頁の1の大原則の二つの○ということから言えば,危険の増加があった時から保険料の面では調整があってしかるべきだという考え方で,こちらの方は,それでは問題があるという方はいらっしゃいますか。極力危険の増加の時から保険料の面では危険に見合った調整をするということを認めてはどうかということかと思うのですけれども。従来,先ほどの自動車とか火災で危険が増加したときに,追加保険料を約定することによって契約を継続させるということが行われてきたと思うのですが,この場合はいつの時点を基準に追加保険料の支払とかを約定してきたか,分かりますかね。○○委員。 ● 危険が増加した時からです。 ● もうその時を基準に増額という。それをのむかのまないかを確認した上で,のめば,危険が増加した時にさかのぼって保険料を増額したら,追加して支払ってもらうというシステムだということですね。 ● はい,そうです。通常は,客観的,物理的にいつの時点というのは分かりますので,住宅を改造した時とか,仕事を変わった時とか,そういう時から変更しております。 ● ということで,今の実務もそういうことだとすると,その考え方を基本的に維持するようなことかなと思いますが,そのあたり,特に御異論はございませんか。どうぞ○○委員。 ● ○○委員,○○委員に対する御質問で,念のためなのですけれども,企業ユーザーとしては基本的に強行法規は少ない方がいいという考え方なのですが,本件で事業保険について片面的強行規定は外すということについての御主張があったのですけれども,具体的にはどの約款のどういう条件を外すということを念頭に置いての御意見でしょうか。○○委員か○○委員に教えていただきたいと思うのですが。 ● ○○委員。 ● 基本的には,この通知義務につきましては,これを企業につきましては,例えば「遅滞なく」とか,そのような形にしますと,つまり危険が変更されることを本企業が分かっていて,事前にその危険の変更について保険会社に連絡がない場合には,保険提供が非常にしにくくなる場合が発生します。ほとんどのケースではそういうことはないのですけれども,非常に特殊なケースでそういう事態が発生しますので,企業契約についても,例えば事前の通知ができないような形の通知義務というのが法で決められますと,保険提供ができなくなるケースが発生するので,企業についてはそういう片面的な規定にしない方がいいのではないかなというのが私どもの考えでございます。  例えば具体的には何かといいますと,地震保険というのがございまして,個人では皆さん,住宅とか家財は地震保険に入っていらっしゃる方が多いと思いますが,これは政府が再保険をしておりますので,日本中どこででも非常に廉価な保険料で地震保険に入ることができますし,例えば北海道から東京に転勤してきても,東京の地震保険料を払えば,東京に移転してきて東京で地震保険に入ることができる,継続することもできる。一方,例えば企業のお付けになります工場とか資材等々にも,これは当然特殊な海外の再保険を前提にした地震カバーというのがございますけれども,これは海外再保険者の関係で厳格にゾーンごとに引受額を決めたりして再保険をしておりますので,例えば北海道で引き受けました,非常に安い保険料で入っております地震保険に入った機械あるいは資材を東京に持ってきている間に地震が起こってしまったとします。そうすると,東京では保険会社としては幾らまでしか引き受けないという形でかなり厳格に管理しているところにそういうものがどんどん流入してきますと,保険会社が破綻してしまいますので,例えば再保険上そういうものが引き受けられないということになりますと,保険事業そのものができなくなり,結果的には保険会社としてはそういうカバーは提供できなくなるということがございますので,基本的には資材を移す場合等々は事前に御通知いただいて,保険料の決定をしたり,あるいはここまでしか引き受けられませんという形で縮小してお引受けするとか,そういうことを行っているわけです。  あるいは,治験のPLなどを考えますと,非常に特殊なリスクなどは,あらかじめどのような形の薬剤でどういうリスクがあるかということを相談しながら,途中で変更する場合には保険会社へ連絡いただいて,再保険を変えながら,そのように交渉しながらやるということもございますので,そのようなケースまでできなくなる道を設ける必要はないのではないかなと思っています。一般の賠償責任保険とか,一般の企業保険ではそこまで厳しくやる必要もないケースが多いのですけれども,道を閉ざすということは非常に日本の企業のお客様にとっては,むしろ不利益を被ることになるのではないかなということを懸念しているわけでございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 故意又は重大な過失のところの問題ではないわけですね。軽過失とか無過失責任とかという扱いではないですね。 ● ええ,故意又は重大な過失よりもむしろ事前の通知の方ですね。 ● そちらの範囲ということですか。 ● その辺を非常に強行的に「遅滞なく」だけにして,事前の通知の道を認めないと,そういう問題が発生するというものでございます。 ● 分かりました。 ● 今のこととも関係しますけれども,4頁の(7)の契約者の意思による危険の増加について多少通知義務を早めるかという,これは消費者保険についても検討すべき問題で,最高裁の判例は消費者には余りそんなことは期待できないということでどうも否定的なのですけれども,アの方で通知義務違反の効果を少し緩和するということを考えると,この意思による場合について,これは分かっているわけですから,ここに事前の通知義務を課すという考え方も理屈の上ではあり得るのではないかなと思いますが,そのあたりの御感触はいかがでしょうか。その点があるとすれば,○○委員の御懸念も少しは解消するかなという気はするのですが,これは非常に問題があるという御意見でございますか。○○幹事。 ● これは,アの規律の文言が,危険が増加したことを知った後,遅滞なくということになっているのでそういう問題が出てくるので,危険が増加することを知った後,遅滞なくということにしてしまうと,1か月前から分かっていれば,そこから遅滞なくというのはあらかじめだという意味に読むことは可能なのではないかなという気がするのですけれども。例えばそれが3日前に分かったということであれば,それは3日では済まないから,事後でも遅滞なくというのはいけると,そのように総体的に読める,遅滞なくの解釈問題として済ませることができるような文言をとるということも考えられるのではないですか。 ● 今の点について,ほかに御意見はございますか。  では,とりあえずこの件はそういう御意見があったということにして,○○幹事から別の問題を。 ● いろいろ参考になる御意見をたくさんいただけたと思うのですが,研究者の何名かの方から,通知のインセンティブとの関係で,今日のペーパーでいきますと3頁の2の(1)の※2,それから(2)の※の免責とすることについて,消極的な御意見があったと理解しているのですが,改めて考えてみますと,危険の増加によって引受範囲外に出てしまう,引受けができなくなってしまう場合を想定すると,通知義務違反があっても免責だし,通知義務違反がなくても免責ということになってしまって,通知のインセンティブがなくなってしまうというのは確かにおっしゃるとおりかなと思うのですが,他方で,危険が増加したけれども,引受範囲内にとどまっていて,保険料の増額で対応できるというケースを想定すると,通知義務違反があれば解除されてしまうけれども,通知義務違反がなければ,つまりきちんと通知をすれば,保険料は払わなければいけないけれども,保険金はきちんともらえますということで,なお差があるわけで,そうすると,その引受範囲内を想定した場合には,なお通知のインセンティブは残るのではないかなと。先ほど○○幹事からお話がありましたように,家計保険の分野では大半は引受範囲内にとどまって,保険料の調整で済むケースなのではないかとすると,むしろそちらを念頭に置いたルールを考えることもあり得るのではないかと思うところでして,そうだとすると,なお通知のインセンティブは残るのだと。家計保険の分野でレアケースと考えられる,危険の増加によって引受範囲外に出てしまう場面については,むしろ今日のペーパーでいきますと2頁の1に書きましたような危険の増加の制度趣旨に照らしたルールを置いておいて,通知義務を果たしていても,果たしていなくても,そこは免責ということでやむを得ないと。ただ,家計保険の大半の分野を占めるであろう,危険の増加があっても引受範囲内にとどまっている場合には,差を設けることによってそれはなお通知のインセンティブが維持されるという見方もあるかなと思いまして,そのあたりをちょっと,インセンティブの話で先ほど複数指摘がありましたので,今,私が申し上げたような形ではインセンティブは維持されないということになるのか,いや,そういう見方もあり得るのかといった点について,もし御意見をいただければと思います。 ● 御意見はいかがでしょうか。○○委員。 ● 今おっしゃったように,私は範囲外というのは,まず基本的に考えられないというか,現実にはないのではないかなと。その上で,ちょっと十分考えた上ではないのですが,保険料は,イの「将来に向かって」というのはどういう意味かはあれですが,危険の増加があっても,とにかくとれることはとれるという形にして,払う方は緩和するという方がいいのではないかなという感じがしているのですけれども。ですから,今のに対する答えは,後半でおっしゃった考え方に非常に共感を感じますということなのです。 ● ほかの委員・幹事,いかがでしょうか。○○幹事。 ● 私は先ほど申しましたように,今の約款を前提にしますと,基本的に危険増加の通知義務のところは,通知を要求されている事項を見る限り,適切に通知されれば,それに合わせて引き受けられる範囲の実務が行われているのだろうなと推測していたものですから,危険増加の通知義務のところに関するインセンティブという問題から必ずしも私は発想していなかったのですけれども,通知をしなかったことによる一定のサンクションというのですか,それを課しながら適切な通知を促すということは必要だろうなとは思っております。それは引受けができる範囲内でのルールで,引受範囲外に出てしまうものは,これは先ほど御説明いただきましたように,通知されても引受範囲外ですので,保険会社としては,免責といいますか,解除するという話になるのだろうと思います。ですから,場合によったら,これはしょせん引受範囲外ということを明示するのであれば,先ほど○○幹事がおっしゃったように,約款の中で免責条項として入れてしまうという形で処理してしまう,あるいは当初の約定でそういうことを決め切ってしまうといった話になるのではないかなと思っておりました。ただし,家計保険分野で当初の約定でそういうことができるのかというと,それはちょっと変だなというよりは,ちょっと無理かなということが多いのだろうと思うので,恐らくそれをやるとしたら約款で決め切ってしまうのかなと思います。したがって,それで決め切れないような部分については,実務的には保険会社の負担がちょっと大きくなるのかもしれませんが,丸のみされるという形で処理されるのではないかなと思いまして,ルールの在り方としては,基本的には家計保険分野を想定する限りは,引受範囲内の危険の増加というものを基本にルール化するという方が適当かなとは考えております。 ● その点,ほかに御意見はございませんか。どうぞ,○○委員。 ● 建設的な提案ということなのですけれども,事前の通知という点だけが保険会社さんのコンサーンであるのであれば,先ほどお話がありました,事前の通知というのが一般的にあり得ると,故意の場合にですか,そういう形の条文振りにしていれば,企業保険の例外は要らないということになるのではなかろうかと思っているのです。後ほどの議論になろうかと思うのですが,事業保険の定義というのがいまだに議論されていなくて,事業保険といった一般的な例外条項を商法の中に入れるのはなかなか難しいのではないかなとちょっと推察しておりまして,一方では,事業保険については,なるべく任意規定がいいというのが我々の考えではあるのですが,具体的にどの点でどうしても事業保険の例外規定が欲しいのだという各論でちょっと考えたいなと思っていまして,今のこの問題に関しては,事前通知の事前の点だけが問題だということであれば,その点が解決されれば,事業保険の例外は要らないのではないかなと私は理解しています。 ● 例えば,通知義務違反はないけれども,危険の範囲外であるといった場合を議論していたのですが,このあたりは免責でもしようがないという感覚ですか。 ● それはむしろ……。 ● ○○委員。 ● 今,○○委員のおっしゃったことは,私はちょっと別の考え方をしておりまして,例えば2頁の1の基本的な考え方を徹底させて,主観的な要件は過失でも駄目だと,保険料をきちんと集めることが重要だということは,もちろん企業保険でやっていいと思うのです。ですから,事前の告知だけではなくて,基本的な問題で新しいリスクで再保険が不可欠な場合もありますし,そもそも約款でどこまで持つか自体をしっかり決めなければいけない。プロ同士ということであれば,これとは全然別の世界だというのは当然あっていいことですので。ですから,私はちょっと違った意見を持っております。 ● そこはまた,中身が少し詰まってきたところで御議論いただきたいと思います。  先ほどの危険の引受範囲外のあたりではいかがですか。これは,組み立てようによっては,危険がある時期に増加したら,もうその時点からすぐ,それが引受範囲外だということになると,その時点で即,それは免責だというのもいかがかなという。危険の増加の規定は,ある程度免責というのは認めることはあるかと思いますが,若干の通知のアローアンスというあたりは考慮する余地はあるかなと思うのですが,そのあたりはまたちょっと考えることにして,今日の御意見の多くは,通知義務の履行に少しでもインセンティブを付けるという考え方によるかどうかはともかく,引受範囲外にある場合には(1)の※2にあるような因果関係がある限りでの保険事故については免責と,そのあたりでもやむを得ないというか,そのあたりがいいルールだという御感触でしょうかね,委員の多くの方は。どうぞ,○○幹事。 ● 仮にそのルールをとったとした場合に,保険者が解除する必要はなくなるということなのでしょうか,そもそも引受範囲外であるような場合,直ちに免責されるということは。 ● ○○幹事のおっしゃる,その考えをとったというのはどの考えですか。 ● この※2のルールですが,危険の増加があった後に発生した保険事故のうち,免責とする必要があるとも考えられる。仮に免責にするとした場合は,保険者としては解除権はもう行使する必要はなくなる。 ● イの規律のところでしたら,解除権はそもそもないのです。通知があったわけですから,解除に値する通知義務違反がないわけですから,そもそも保険者には解除権がないのです。 ● いやいや,それでも④では……。 ● ④では解除権はあります。 ● ④では解除権はあるけれども,保険事故が発生しているわけだから,実際に解除権を行使する意味がないのですかね。 ● 今までの議論は,イの④について,解除はできます,けれども,過去にさかのぼってといいますか,増加時点までさかのぼって,それ以後に発生した保険事故について免責とするかどうかは,通知のインセンティブその他との問題でペンディングになっていた,という理解ですので,イの④に加えて免責ということを加えることも考えられるのではないかという問題意識でございます。 ● よろしいでしょうか。どうぞ,○○幹事。 ● ○○幹事に確認ですけれども,3頁の2(1)の※2が今議論になっているわけですけれども,※2の考え方をとれば,先ほど○○幹事がおっしゃられたように,もう2頁の④の規律は要らなくなって,引受不能な危険の増加があれば,その時点で契約は自動的に終了するということになるのではないかということを○○幹事は聞かれたのではないかと思うのですけれども,その点はどうなのでしょうか。 ● 現行商法の危険の増加のスキームが,主観的増加の場合ですけれども,責めに帰すべき事由による増加の場合には失効ということになっているわけですが,直ちに失効とするかどうか,免責という効果をもたらすために直ちに失効というスキームをとるのがいいのか,解除というのをかませるのがいいかというのはもちろん問題としてあるだろうと思っておりまして,その意味でちょっと本日の資料の書き振りが,2頁の1の最初の2行に書きましたように,基本的な発想を書いたということで,これを法的に仕組んだときに,自動的に契約を失効させて免責という効果をもたらすか,解除を経由して免責という効果をもたらすかについてはニュートラルで書いたつもりですので,そこはどちらかに決めて書いたというものではございません。ですけれども,どちらかというと意識しているのは,中間試案を出発点にしていますので,おっしゃるように,イの④をベースに考えていたということでございます。 ● ただ,※2の意見を採用すれば,④は必要なくなる,この規定を置かなくてよくなるという……。違うのですか,そこは。 ● 保険事故が発生したことによって当然にもう契約が失効するようなものならそうだと思いますが,そうでないものもあるので,それはそれで別に考える意味はあるかなと思うのですが,ちょっと別の面もあるかもしれません。 ● 恐らくアの場合には,解除することによって一応免責になるのですけれども,イの④の場合には,危険が増加したその事実と因果関係のある事項について免責になるだけで,それ以外の事実については有責なので,保険者が解除するまではその部分について担保責任が残るということです。ただ,通知義務違反があって解除したから免責になるのか,あるいは通知義務違反のあるなしにかかわらず引受範囲外だから免責になるのかということは,結局後者の場合には,解除権の行使の有無にかかわらず免責になるという点が違うということです。前者の場合については,解除前の事項について遡及的に免責にすれば,多分そっちはそろう。解除も免責も遡及しないということにすれば,そこはずれる。そういう違いです。 ● ○○幹事,何か。よろしいですか。 ● 今の議論を少し自分がきちんと理解しているかどうかを確認したかっただけですが,申し上げてもよろしいですか。 ● もしよければ,どうぞ。 ● 私,この2頁の1というのは基本的な考え方ですので,制度設計としてはまだいろいろな余地があるということで,この対価的な関係を踏まえて,危険に対応した内容に契約は本来変わっていくものだと。しかしながら,変わっていくべきだという内容としては,引受外のものはもうそこで全部,当然終了というか,終わってしまう。それに対して引受内のものであれば,内容が変更されて,保険料は増額されて続いていく。ただ,保険契約というのは本来そういうものだという前提をとった上で,しかしながらどういう内容に契約が変更されるのかとか,あるいは引受範囲内であるのか外であるのかというのが一義的には決まらないので,その内容の確定の必要があって,そのためには当事者の協議が要求され,言わばそのメカニズムとして通知変更というような請求があって,かつ通知をもってその危険についての情報を提供する,その情報の所在というのは契約者の方にあるので,そのインセンティブをどう確保するかということがあり,そうすると,通知しないことによるマイナスという形で持ってくるのか。それは逆に言うと,通知をすればプラス。そのプラスの,ここの切り分けが悪意・重過失で切っているために,軽過失で何もしないという部分が一番ややこしい位置付けなのですが,仮にそのように考えると,もう一つは通知をすることによるプラスをより積極的に与える,あるいはそれを組み合わせるという考え方があって,通知をしないことによるマイナスについては,アの方の全面将来解除,すなわち増加しない部分,これが一種可分的に考えられるとすると,頻度であれ,程度であれ,その部分を含めて全面的に解除するという,そういう解除はされないというプラスが通知するなり軽過失であればあるということで,逆に軽過失をどう考えるかという問題はありますけれども,そのプラスとして,単純に全面的に増加しない部分も含めて解除されないのだと,そこだけは維持されるということに加えて,通知までの間については当初契約が維持されて,先ほどおっしゃった通知のアローアンスという部分がもたらされるというのが一種のプラス面で,それがインセンティブ等につながっていく。そういうことなのかと理解していたのですけれども,誤解しておりますか。考え方としては○○幹事がおっしゃったことと違うつもりはなかったのですけれども。 ● 今,御指摘になりました,通知をするインセンティブとして,通知をすれば何かプラス面がもたらされるかという発想をしていたかというと,ちょっと頭が固いせいか,通知をした場合には,それでもたらされるのは,保険料を今まで払ってきたとおり保険金はきちんと払われますというある意味で当たり前のことで,ここで何か通知のインセンティブと考えるときには,通知をしなかったときのマイナス面を何か制度として仕組まないと,うまくインセンティブということにならないのではないかなということでこれまでは考えてきましたが,今,何人かの先生方から御指摘いただいたように,あるいは○○委員からも御指摘がありましたとおり,何らかの通知のアローアンスみたいなことをすることで,それを言ってみれば通知をすることによるプラスの要素ととらえて,それを何らかの形でインセンティブと結び付けるという発想もあるのだなと改めて思いましたので,そこも含めて,なお整理してみたいと思います。 ● どうぞ。 ● 一言だけ。インセンティブという話は確かに別かもしれないと思います。そういう結果の違いが三通りぐらいあるのかなと理解していまして,その違いを何によって基礎付けていくかという,そこにインセンティブというのを言ってしまったわけですが,そこの結び付け方や理由付けはいろいろあるのだろうと思います。すみません,時間をとってしまいまして。 ● 大分時間をとって,従来の部会でも余りよく議論していなかった問題で,いろいろなことが分かってきたのではないかと思います。今日のところはまだ結論を出す段階ではございませんで,今日の意見を踏まえて少し詰めて次のステップへ進んでもらおうかと思います。  この件は,あと除斥期間の点があるのですが,ここで休憩とします。           (休     憩) ● それでは,再開させていただきたいと思います。  通知義務の点につきまして,あと除斥期間の問題の提起があったのですが,この点について何かこの時点で特に御意見はございますでしょうか。今,そこへ至る前の実体法的な点について長時間御議論いただいて,検討して,それに基づいて詰めていただくということになるかと思いますが,その中でまた除斥期間の規定についてもその様子を見ながら検討していただくということでいいかなと思いますが。○○委員,どうぞ。 ● いわゆる※にございます1か月間の方の権利可能期間を設けることについては特に異論はないのですけれども,5年の方の除斥期間につきましては,保険期間が残存している長期契約,特に火災保険の長期契約を想定すると,危険の増加があった時から5年を経過すれば,将来に向かっての保険料の増額さえもすることができず,危険の程度と保険料の額とがずれたまま契約を存続することは相当でないと,そこは懸念しております。 ● その点を御意見も踏まえて御検討いただければと思います。  ほかにございませんでしょうか。○○幹事。 ● 少し違った論点でもよろしいですか。保険者が知っている事実が通知義務の対象になるかどうかというのは保険者の故意又は過失の問題なのですが,先ほどのイの④との関係で,保険者が危険増加の事実を知っていたという場合には通知義務の対象にはならないと,告知義務とパラレルに考えればそうなるのかなと思うのですけれども,そのような場合にも,例えば保険者が通知については免除したといった場合でも,通知義務違反がなくても,引受範囲を超えていれば解除することはできるといったルールになるように読める。これは,保険者が悪意の場合に通知義務があるかどうかということについて,全く今は触れていないことによってそういう問題がなお残っているということだけ申し上げます。 ● ありがとうございます。その点もちょっと御検討いただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは,時間の関係もございますので,次の論点に移りたいと思います。4頁の第2,危険に関する告知関係でございます。まず,事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。ここでは,いわゆる告知妨害などの問題について御議論をいただければと考えてございます。  なお,先ほども申し上げましたいわゆるプロ・ラタ主義の採否については,第17回の部会,すなわち次回に御審議をいただくことを予定しておりますことから,本日はそこの点については,次回取り上げるという前提でよろしくお願いいたします。  まず,パブリックコメントに寄せられた意見の概要について紹介いたします。告知に関しましては,ほかのプロ・ラタ主義の点も含め,さまざまな御意見が寄せられたところでございますけれども,今日は,中間試案でいいますところのイの②の規律に対して寄せられた意見をピックアップして紹介させていただきます  まず,中間試案の②のような規律を設けることについては,賛成するという意見と,反対する,あるいは慎重に検討すべきであるという両論がございました。  まず賛成するという意見につきましては,実態として告知妨害あるいは不告知教唆の例が多いこと,あるいは募集人が告知受領権を持っていないということを知らない,そのため募集人の説明あるいは指示というのは保険者からのものと認識するのが通常であること,保険募集人等を使うことで利益を得ている保険者は当然募集人等の行為すべてに責任を負うべきであるといったことを理由として挙げていらっしゃいました。  それに対して,規定を設けるべきではない,あるいは慎重に検討すべきであるという意見は,保険会社の実務あるいは現行商法の解釈上あるいは裁判例等を踏まえると,現行商法は,これそのものを念頭に置いた独自の規律というのはない中で,適切に対応されてきている,あるいはこの問題というのは,結局損害賠償の問題ではなかろうかといった指摘,あるいは契約締結の媒介を行う者の行為が本人の契約履行責任につながるということに対しての否定的な見方,あるいは告知受領権の有無については,保険業法上の規律を通じて告知義務者に周知されているといった指摘,さらには,後ほど御説明します(注1)とも関係するのかもしれませんが,保険契約者側のモラルハザード誘発等の影響も考えなければいけない,したがって慎重に検討すべきであるといった御指摘もあったところでございます。  その規定・規律を設けることについて賛成の意見の方々は,相当数,「保険者の使用人等」の範囲についても意見を寄せていらっしゃいました。その内容としましては,保険者を媒介・代理する者の従業員も含めるべきであるといった意見,あるいは募集人である銀行や証券会社等を含めるべきである,あるいは窓口での販売にかかわる従業員等の関係者も含むものとすべきであるという意見が多く寄せられてございました。他方で,保険募集人である銀行等金融機関が一律に告知受領権を有することとなるわけではないということについて確認したいという意見も寄せられていたところでございます。  次に,まさに本日ちょうど御議論をお願いしたいと考えておりますもう一つの論点としては,その要件をどのように設定するのかという問題がございます。この要件設定の問題については,パブコメでも(注1)の関係でさまざまな意見が寄せられておりますし,その(注1)に関係ない,(注1)そのものの問題ではないところでも意見が寄せられてございました。まず,保険契約者側の態様等を考慮するかどうかという問題以外の点について紹介いたします。  まずは,生命保険募集人等の帰責事由は要件とならないと考えるべきであるということ,あるいは保険募集人が被保険者の健康状態等の重要な事項を知った場合の保険者への通知義務を法定化する必要があるという意見がありました一方で,「風邪のため熱っぽいけれども,大したことはありません。」と契約者が募集人に対して言ったところ,「それならば告知の必要はありません。」と答えた場合,従来の考え方ならば不告知教唆とはならなかったはずである,あるいは,被保険者の症状の告知に対して何ら返答をしなかった場合に,黙示の不告知教唆と評価される余地はないのかとの危惧を持つ,こういった具体的な御指摘もいただいております。  あとは,明確な告知妨害や不告知教唆とまでは言えないが,保険募集人の対応に問題がある場合も含めるべきではないかという指摘もございました。  さらには,効果については,解除権の阻却だけでいくのではなくて,それ以外の解決という道も認めるべきではないかといった指摘が寄せられた一方で,その点については,少なくとも告知妨害あるいは不告知教唆の場合については,そういったものを認めるべきでないという立場から,そういったものは一般法理で対応すべきであるという意見も寄せられたところでございます。  あとは,先ほど(注1)の問題と申し上げました保険契約者側の行為態様等を考慮するかどうか,要は募集人側の事情だけで一律に解除できるということでいいのかどうかという問題に対しても,たくさんの意見をいただきました。この点については,そういった保険契約者側の態様というものなども考慮すべきであるという意見がございました。その根拠としては,他の保険契約者との公平性の問題,あるいは保険の健全性が害される懸念があるということが理由として挙げられてございました。これは,主に保険契約者側が悪質な場合,場合によっては募集人と結託しているケースがあるといった指摘もされておりました。そういった事情を考慮するかどうかという点については,そういった悪質なケースについては,信義則あるいは過失相殺の類推という一般法理によって保険金請求権の一部減額を導くことが可能であって,そういった告知義務者側の行為態様に着眼した立法をすることは,保険者が告知妨害を排除するに当たってのインセンティブをそぐ危険があり,妥当でないという意見も,他方で寄せられていたところでございます。  あとは,実務上,保険募集人の方は保険の加入に対して不告知が誘引されることがないように丁寧な説明に努めている一方で,正しい告知がされない原因としては,保険契約者側が何らかの事情で告知をしたくないといったケースもあるのだといった指摘もされていたところでございます。  あとは,特に傷害・疾病保険については,死亡保険契約とは異なって,保険事故が複数回起きる可能性があるといった点に配慮した規律としていただきたいという御指摘や,告知妨害を行った者に対して保険者の方で求償権を行使することができるということを明確化する規律を設けていただきたいという指摘もちょうだいしているところでございます。  とりあえずパブリックコメントに対して寄せられた意見の概要は以上でございます。  以上,御紹介しましたとおり,いろいろな意見をちょうだいしたわけでございますけれども,こういった意見を踏まえまして,今回の資料では一定の提案をさせていただいております。その前提として,まず資料の5頁の1のところで,検討に当たっての前提というのを記載させていただいております。ここでは,第二読会のときにも同じようなことを申し上げましたが,ここで問題になる事案というのは,保険契約者等に故意又は重過失がある場合を前提とした議論である,かつ,ここで問題となっているケースというのは,純粋に契約そのものだけを見るとすれば,本来保険契約を締結することができなかった場合あるいは保険料の額が約定した保険料の額とずれているなどという場合を念頭に置いていることから,他の保険契約者との公平性の問題,結局は他の保険契約者の保険料アップといった負担につながりはしないかということなどに留意する必要があるように思われます。一方で,ここで問題とされております場合といいますのは,告知されなかったことが保険者において契約の媒介を委託等している者の行為に起因している場合であり,こういった場合については,現行商法上も一定の場合には保険者に過失があった場合と同様の規律によるなどという解釈がされているところでございますが,これが具体的にどのような場合なのかは必ずしも明らかではないという指摘もされているところでございます。  こういったことを受けまして,資料の2のところでは,視点ということで,そもそもこういった規律を設けることに反対あるいは慎重に検討すべきであるという御意見もちょうだいいたしておりますことから,イの②の規律を設ける意義について御議論いただければと思っております。中間試案のイの①の規律と②の規律との関係については,結局は要件の検討をした後に改めてまた整理する必要があると思われるのですけれども,この点について今回何らかの御意見をいただければと思っております。  さらに,その視点の問題の次には,3のところで,「保険者の使用人等」の実質的な内容についても問題提起をしております。ここでは,保険契約者が契約の締結をするに至る過程にはいろいろなものがあることを踏まえつつも,パブリックコメントで寄せられた意見も踏まえて,三つのものを掲げております。  すなわち,一つ目は,保険者の役員あるいは保険者に雇用されている者。二つ目は,保険者から募集(契約締結の媒介)の委託をされている者,ここには契約締結の嘱託のようなものをされている者も含まれるものと考えられます。三つ目は,保険者から募集あるいは契約締結の媒介の委託をされている者の役員やこれに雇用されている者でございます。これには,先ほどパブリックコメントでありました銀行等の保険契約締結の媒介をしている者やその従業員等も踏まれるものと考えられるところでございます。  なお,※1のところでは,保険者に対して単に保険契約者の紹介をしただけの者や保険仲立人は含まれないものとすることを提案しており,これについては補足説明で記載しておりましたが,パブリックコメントでは特段の意見は寄せられていない,むしろそういったものは含めるべきでないという意見が寄せられているところでございます。  最後に,4のところでは要件について記載しております。ここでは,まず保険者が契約の解除をすることができない実質的な場合をどのように考えるかということで,一つ目の○でございますけれども,3に掲げる者が,契約の募集(契約締結の媒介)に際して,保険契約者又は被保険者に対して告知をすべき事実の告知をしないよう勧めた場合や,これらの者が告知をすべき事実の告知をするのを妨げた場合をまず考えることとしております。  他方で,これに該当したとしても,保険契約者側が悪質な場合というのも一定程度あるのではないかという御指摘もございましたことから,二つ目の○,資料でいいますと5頁から6頁にかけてのところでございますけれども,3に掲げる者がこのような行為をしたことと,保険契約者又は被保険者が告知をすべき事実の告知をしなかったこととの間に関連性がないような場合,例えば,保険契約者又は被保険者が初めから告知すべき事実の告知をせずに契約をするつもりであった場合,こういった場合は契約の解除をすることができないと考えるべきかどうかについて問題提起をしてございます。  その下の※1のところに記載いたしておりますように,ここに記載した場合以外に考慮すべき場合が一つ目の○,二つ目の○それぞれについてあるのかどうかにつきましても,もし何かございましたら,御指摘をいただければと思います。  例えばということで,※2のところに若干問題となり得るかなと思われるものを書いてございます。ここでは,3に掲げる者が保険契約者等からあいまいなことを言われた場合や,いわゆる過小告知の場合の問題について記載してございます。ここでいう過小告知とは何かと申しますと,いろいろなケースがあると思うのですが,若干の例を挙げさせていただきますと,本来よりも軽目の病気や症状の一部を募集人等に告げた場合,あるいは入院の回数を少なく告げたりするなどといった場合を念頭に置いてございます。  次に,※3のところでは,中間試案のイの①の規律との整合性について問題提起をしております。この点については,パブリックコメントでも,要件設定に当たってはイの①との整合性ということについて留意すべきであるという旨の指摘がございましたことから記載しているものでございます。募集人等が契約締結の媒介をするにすぎない場合と契約締結の代理権を持っている場合との整合性というものについて,一例として何か御指摘いただける点がございましたら,御指摘をいただければと考えております。  最後に,※4のところでは,効果について記載しております。この点については,保険者が契約の解除をすることができないものとすることを提案しておりまして,この点については第二読会で,場合によっては保険金の額の減額をすることができる旨の規律を設けることもあるかどうかについて御議論をいただいたところ,第二読会では,こういった問題は一般法理にゆだねることでよいのではないかという御意見が多かったように思われるところでございます。  以上でございます。 ● それでは,ただいまの告知妨害の点について御意見をいただきたいと思います。○○委員。 ● 告知妨害の件ですけれども,先ほど御説明がありましたように,故意又は重大な過失で告知しなかったということが大前提でありますし,それからこの部会での議論の経緯を見ていますと,①でいう会社の過失としてとらえられるような事象であり,補助者というか,保険会社の監督責任の及ぶ範囲の人に限られるべきであろうと思うのです。ですから,それはこれまで申し上げてきましたように,生命保険協会のガイドラインにありますようなところから広げるということであれば,私どもはそれは賛成しかねるということでございます。したがって,募集行為をやらない人間,紹介代理店といったものについては,そもそも募集を行っていないわけですから,告知などという問題が起きないわけです。ですから,我々としては,「使用人等」とおっしゃるけれども,「使用人」でいいのではないかと考えています。  以上です。 ● 「使用人等」という中に代理店のようなものをまず含ませて,そのほかにもまたいろいろあるのかもしれませんが,そこの点。 ● そういう意味では募集代理店ももちろん入るということで,いわゆる募集人です。 ● 分かりました。○○委員。 ● 一番大事なのは,まず意義というところだと思うのですけれども,これは結局,募集人の方に告知受領権が与えられていないというところから生ずる不都合を解消しようというのがポイントで,その場合もアプローチは二つあって,それは,保険者側の過失という概念を広げて,一応そこを骨格にして考えていく考え方と,もう一つは,端的に解除権の阻却事由というものとしては,保険会社が解除できない場合というのはどういうものかというアプローチと,二つあるのだと思うのです。この部会でも御紹介したスイスのような考え方というのは,そういうものを誘引したという場合には解除できないということで,これは先ほどもちょっと出ましたが,告知義務のところの主観的要件,つまり保険会社側の主観的要件,故意・過失とか,契約者側の故意・重過失とか,このうちの重過失とか過失というところは,制度趣旨は公平の観点からという形でどうも説明されておりまして,これもそういう公平の観点からどうしたら一番いいのかという趣旨なのだと思います。  そういう趣旨からほかのことを少し考えていくべきだと思うのですけれども,まず最初の紹介代理店はどうかと私が申し上げたのですが,これは基本的にここでは法文に書く必要はないということで結構だと思います。ただ,実態は代理店についてキャッシュで払っている者もあれば,紹介代理店は募集人に紹介している場合もあるわけで,募集人の手数料からその分の紹介代理店の手数料が払われている場合もあるわけですから,場合によっては募集人の行為として見ることができる場合があるということが確保されれば,私は,そういうことを申し上げましたけれども,いいのではないか,また実質的にもそれでとりあえずはいいのではないかと考えます。  それからあと,契約者の行為の形態を考えるべきか。これは当然考えるべきです。ですから,これは要するに募集のときにいろいろなやり取りがあって,基本的には故意があったらそれはもう駄目なわけで,つまり募集人と申し込もうとする人が共謀して同じ立場でいるというのは,もう当然対象ではないのです。ですから,「妨害」というのはいい言葉ですし,また「誘引」というのもいい言葉だと思うのですが,要するに主として契約者の方は告知しようと思ったけれども,「そんなものは大丈夫ですよ。」とか,もう一つの段階では,学説では請託の問題があります。請託した場合,そこまではいいかなということになっていますが,結局対等の立場になって制度を悪用しようとしたら,それはもちろん駄目です。私はこの資料を見るまでは妨害というものをそういう相関関係で見て考えるべきかなと思ったのですが,この5から6頁には関連性がない場合には解除するという案を出しておられて,これでも,要するに妨害に当たらないという場合だということで,いいのではないかと思います。そういうイメージで考えてはいかがかと思います。  以上です。 ● ○○幹事。 ● まず,3の「使用人等」の実質的な内容としては,※1,※2ともにこれで私はよろしいかと思っております。  問題は4の方ですが,まず告知書が改ざんされた場合には,告知書にはいったんは契約者が告知をしているということで,これは告知義務違反ではないと整理できる。告知書にいったん契約者が書いた上で,募集人がそれを受け取ってから改ざんした,消したといった場合には,これは告知義務の違反はないということで,まず一つ整理ができると思います。  それから,契約者と募集人が共謀して告知義務違反によって保険に入ろうとした場合にも,こちらでも提案になっているような関連性がないといったことに当たるので,これも排除できるということでよろしいかと思います。問題として挙がっています過小告知のところですが,これは,過小告知の場合には本来告知すべき事実と契約者が実際に告知しようとした事実がずれているからこそ問題があるわけで,告知しようとした事実については要りませんという助言がありましたけれども,実はそれよりももっと大きいものが隠れていて,それについて告知しませんでしたということであれば,その事実について告知義務違反が成立しますから,それについて解除できるということで,この問題も多分それでクリアできるのではないかと思います。あとは,告知すべき事実と実際に告知しようとした事実が実質的に同じと言えるか,違うと言えるかと,そこの評価の問題として恐らく整理ができるのだろうと思われます。  そうなると大体この線でいけそうなものですが,一つだけ気になっておりますのは,先ほどお話がありました,契約者に故意があったら駄目という,その故意がいつの時点であったら駄目かという,その故意の判定の基準時の問題だろうと思います。告知しようとしました。その時には告知義務があると思って告知しようとした。ところが,「これは要りません。」と言われて,「そうですか,ではこれは告知の必要な問題ではないのですね。」という認識で告知をしなかったという場合に,それは当初告知をしないといけないものと思ったから,それは故意という評価をするのか,助言を得た上で最終的に告知をするときにはもう告知する必要がないと思っていたから,それは故意の問題ではないと評価するのか。そこはかなり微妙な問題でもあり,でもそこはかなり重大な分岐点になってくる。このルールではそういうことだろうと思われます。それをこのルールではオール・オア・ナッシングにしておいて一般法理で処理をするというときに,そういう微妙な問題を本当にわざわざ一般法理を持ってきて調整するのだろうかということは,かなりテクニカルなというか,非常に微妙なところを操作するのにそういう一般法理で中間的な解決ができるのかなというのは少し不安がありまして,この規定の中に中間的解決の余地を残しておく方が柔軟に解決できるのではないかという印象を持っております。 ● 最初は告知しなくてはいけないと思っていたけれども,募集人の方が「それは言わなくていい。」と言ったので告知しなかった,そういうケースの扱いですね。そういうケースというのは,この5頁から6頁のあれだとどういうことになるのでしょうかね。  では,○○委員。 ● そのことに関してなのですが,今,○○幹事がおっしゃったことは,恐らく契約者側の行為とこちらの募集人の行為とを,多分総合考慮するという中の,どういう場面で何を言ったのか,あるいは契約者はそのときにどう考えたのかという総合考慮の一つのバリエーションではないかなという気はするのですけれども,多分その辺の状況を総合的に見ないと,一律に,それだからこうですというふうには,なかなか今のも言えないのではないかという気はするのですけれども。 ● それはそうなのですけれども……。 ● 総合考慮した上でオール・オア・ナッシングにはなっていないのですね,今のこの提案の建付けは。 ● オール・オア・ナッシングなわけで……。 ● 今はオール・オア・ナッシングになっているわけですね。総合考慮した上で,オール・オア・ナッシングというよりは,どっちかの要件のありなしで振り分けないといけない。 ● はい,どうぞ。 ● そういう意味では,実務の中で,オール・オア・ナッシングだけではなくて,一般法理に戻って解決している部分もあるわけです。そういう意味でいくと,今の実務でその辺はうまく運用されているのではないかなという気がするのですけれども。だから,それを改めて何かここで書かないといけないのかという気もするのですけれども。そのようにちょっと根本的な質問をすれば,今の裁判例とか協会のガイドラインでやっているのを変えにいかないといけないのか,そのことでいいのか。では,そのことでいいのだとすれば,それを書かないといけないのか,今の運用で任せればいいのかという判断になると思うのですけれども,我々は前から主張させていただいているように,今の裁判例とか協会のガイドラインというのがそんなにおかしくないのではないか,むしろそれでうまくワークしているのではないかなというのが我々の主張なのですけれども。 ● ○○委員。 ● 先ほど○○幹事がおっしゃったのは,それは故意ではないと思うのです。意義のところでもっときちんと申し上げればよかったと思うのですが,この制度をどう考えるかというのは,従来は保険会社側の過失というところに着眼しているわけですけれども,実際には両方がやり取りをしているわけで,告知義務のところの告知妨害についての少数説で重過失がないのだという説がありますけれども,どうもそっちは,要するにやり取りをしているときに募集人の方からいろいろ言われて,それならいいのだなと。でも,それは客観的に見ると,それだけを見ると重過失かもしれない。しかし,妨害行為があるためにそれは重過失とは言わないで,解除権は阻却しましょうと,多分そういう構造だと思うのです。要するに告知受領権を与えていないというのがそれらの原因で,それを与えていないギャップを埋める,それは判例ではある程度は埋めていますけれども,完全には埋めていないので,やはり法を置くことが必要です。ただ,考えるときに,理論的には阻却事由として端的にまずどういう場合には保険会社は解除できないとしたら公平かという観点からいくべきですけれども,実質的に大丈夫という判定をするときには,本来なら重過失とされて解除されてしまうかもしれないけれども,でも募集側にいろいろあるというときには,それを下げて,過失というレベルとして解除できないのだと判断する。実質的な判断はそのように考えたらいいのではないかと思いますけれども。 ● ○○委員。 ● アウフヘーベンとおっしゃられたので,私は今日発言するのをやめようかと思っていたのです。余りアウフヘーベンと全然関係ないことを申し上げるようで申し訳ないのですけれども,私の右側と左側は今,同じことをおっしゃったのだろうかというのが素朴な疑問でございまして,違うことをおっしゃったのではないかなという気が実はしていたのですけれども,視点というところから申し上げれば,先ほど○○幹事がおっしゃったような事例は,本当は原理原則から言えば,故意かどうかということを争わなくてはいけないのだろうと思うのです。ただ,実態でとらまえて言えば,そういう実態は数々,いろいろなそれのバリエーションA,B,Cとあって,そのバリエーションA,B,Cが結果として告知書というペーパーで現れたときには,通常,みんな一緒くたに重過失という切られ方をしている現実がたくさんあります。そのときに,募集人さんとのやり取りで,言ったの言わないのというやり取りをしても,現実になかなかそれがうまく立証もできませんし,そういう意味では解決ができないで来ていた経緯がたくさんあって,それが10年と言わず20年,30年と続いてきた経緯がある。そこで改めてこの提案があるということに対しては,もちろん反対の意見がたくさんあったというのをだれが言ったのだろうなと思いながら聞いていたのですけれども,賛成の意見もたくさんあったということですごくうれしいのです。そういう意味では,この規定は,意義という意味から考えると,本来そういうことがあってはならないことが行われている実態があって,本来そういうことがあってはならないから,それを何とか募集人さんにそういうことをさせないようなインセンティブを働かせて,保険の健全性を保って,ひいては保険会社に資するようなことにもなるし,保険制度に資するようなことにもなるというふうにやっていくためのルールなのではないのかと,非常にプリミティブにそう思っております。そういう意味では,今おっしゃっている話の中で,例えばオール・オア・ナッシングでないものも,按分的にその辺を一般法理にどうのこうのというお話があったけれども,規定は規定としてこういう形でお置きになるというのは一つの結果なのではないのかなと私は思っておりますが。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 相談を受けていて感じるのは,一番消費者が会う相手,外務員の方というか,職員の方とか,いろいろな呼び方があるのですが,そういう方とのやり取りなのです。そういうのを聞いたときに,今,○○委員が言いましたように,言った,言わないの話というのは,本当に間に入って聞いていても,どっちがどっちか分からないという感じなのですが,実際にセンターで話合いをして感じることというのは,外務員の方というか,募集人の方自体が,自分には責任がないということのために,何か自信がないままに勧誘しているという感じ。それと,今度は悪く考えれば,責任をとらないでいいのだよということで言いたい放題言ってしまっているという部分もなきにしもあらずなのです。ですから,そういう部分では,募集人の方に自分たちにも責任を与えられているのだという自覚を与えることによって,勧誘を適正にさせるという意味での効果というのは,やはりこういう規定を入れることによって発生するのではないかなと思います。ですから,決して募集人の方が,みんながみんなそうやっているというわけではないのですけれども,きちんとやっている方までもが,何か言った,言わないの話の中に巻き込まれていくという実態もあるような気がするものですから,そうだとすれば,各募集人が自分の責任をきちんと自覚することによって適正な勧誘をしていくというふうに持っていった方がいいのではないかとは思います。 ● そういう中で……。○○幹事,どうぞ。 ● もう少しだけ補足いたしますと,この制度の意義につきましては,募集人は保険者とは異なる経済的なインセンティブで動いている。告知がない方が契約が成立しやすくて,自分の報酬がよくなる。そこに問題があるわけで,ですから,保険者の過失を広げていくという話とは少し,もともとの根っこが違ったところにあるのだろうと思われます。  それから,これはちょっとここで話題に出たので事務当局に御質問ですが,6頁の1行目の「告知をすべき事実の告知をしなかったこととの間に,関連性がない場合」という,この「関連性がない」という言葉は因果関係とかそういう概念とはまた違う意味なのでしょうか。消費者契約法でも何か似たような,不実表示と意思表示の間のといったことがあったと思うのですが,そこと同じような問題だと理解してよろしいのでしょうか。 ● 今の点,詰め切れていないところがございますが,因果関係と言って狭くなければ,因果関係に尽きるのかもしれませんが,もう少し広げる必要があるのかもしれないということもありまして,この今回の資料では,関連性という言葉を使ったということでございます。 ● ○○幹事,何か御意見はございますか。 ● こういう問題で因果関係という言葉を使ったときに,それがどういう意味なのかということについては,まだそんなに蓄積はないと思いますので,使う言葉を決めてしっかり定義していくということであれば,問題ないかと思います。  それからもう一点だけ。ガイドラインがあるからということですが,基本的にガイドラインを全社が守っていただければ,確かになくてもあっても一緒なのでしょうけれども,ガイドラインを守らない会社が出てきて裁判まで行ったときに,裁判所がガイドラインに依拠して処理するのかという問題になってしまうかと思われますし,従来からこの問題は,この4,5年は少し結構違っていますけれども,昔からこの問題については判例は学説をほとんど無視してきた状態で,それは判例が無視しているのではなくて,ひょっとしたら保険者が負けそうな場合には和解している,それだけかもしれないということなので,それは判例が一方的にどちらかばかりがずっと勝ち続けるという場合には,その紛争解決の実態はどうなっているかということも踏まえて見ておかないといけないのではないかなと思っております。 ● どうぞ,○○幹事。 ● すみません,私も,だんだんまとめの方向に入っている中で,またちょっと方向性が違うことを言ってしまうと思うのですけれども,ただ,この4頁の枠の中の,イの①と②の関係をどう考えるのかということの考え方の整理という意味でだけなのですけれども,多分②というのが,①では拾い切れないところを特則みたいな形でどうやって明確に拾えるようにするかということだと思うのです。その明確に拾うための特則としてのキーワードはどうしたらいいかというところにあるかと思うのですけれども,例えば①の方で拾い切れないところが,保険契約者の方が不利な立場に立たされてしまうのではないかというところは,もしかしてこの①のところを保険者側に善意・無過失の証明責任を負わせることによって妥当な解決が図れるのではないかなと思っているのです。それはどういうことかと申しますと,契約の解除の要件のところで,保険契約者又は被保険者に故意又は重大な過失があって告知しなかったときは,保険者は当該事項を知らないことに過失がなかった場合に解除できると,保険者側の善意・無過失を保険者が証明しなければならなくなると,例えば,告知妨害などがあったときに,媒介の人の告知妨害だったら解除できないとか,紹介者であれば,そこまでは保険者は,平たい言葉で言うと,そこまでは知りません,そこまでは自分の責任ではないから,これは解除できますとかという範囲が,自分はこの紹介者が保険契約者にそういう教唆的なことをしたことは自分の責任ではありませんということが証明できるかできないかということだと思うのです。それで,先ほど○○幹事がおっしゃった,間に入っている媒介をする人とか紹介をする人は別の報酬とかのインセンティブによって動くので,保険者の過失の在り方と多少違うところがあるとおっしゃっていたかと思うのですけれども,もしかしたらそれは報酬とかをもらうということは,やはり保険者との関係では,保険者が委託先を選任するに当たって,きちんと過失がなかったかとか,又は監督する場面において過失がなかったかというところでうまく隠せるところではないかなという気持ちがしております。  また,これは今まで議論のそ上にも乗っていなかったことだと思いますので,ただ,そういう考え方もあり得るのかなということを,整理の役にでも立てばと思って申しました。 ● ○○幹事。 ● 今,○○幹事がおっしゃられたことは,それはそれで一つの考え方だとは思うのですけれども,私は次のように考えるべきだと思います。確かに,保険者側の方の過失の中に選定及び監督に関する過失というのを入れると言えば,今のような解決策もあるのかもしれませんけれども,私は,これは告知した事実を知っていたかということに関する過失ということできちんと運営されてきたというこれまでの判例法もありますので,それはそれで崩すべきではないと考えています。それで,○○幹事がおっしゃられたことは,私は基本的に同じ考えなのですけれども,募集人の方は,保険者の方からはこの昨今の状況の中でコンプライアンスを非常に強く要請されていて,こういうことはするなという指導を受けているわけなのです。ですから,実際にはなるべくこういうことはしないようにしなければいけないというメッセージが一方にありながら,他方でノルマを課されていたり,あるいは報酬上の問題があって,やってはいけないと知りながらもこういう行為に至る場合がある。この場合は,保険者の方に分からないようにやるわけです。基本的には,保険者にばれないように自分たちの方でやってしまうといった場合があるわけで,ここは情報が分断していると考えて,①の問題と②の問題は別問題ということで処理するのが合理的なのではないかなとは思います。 ● 一応,従来はそういう土台の上で考えてきたので,できればその土台の上で解決したいと思いますが,先ほどのオール・オア・ナッシングなのか,多少そこにそうでない要素を入れるのか,○○幹事の問題提起がございましたが,何かそのあたりでございますか。○○委員。 ● 一言だけ確認。阻却事由ということでオール・オア・ナッシングでいいという前提で申し上げました。 ● いかがでしょうか。 ● ルールとしては,以前の事務当局から出てきた実質過失相殺的なああいうルールを置かない限りは,あれはかなりこの部会でも消極的な意見が多かったと思うのですけれども,そういうことから,今回は4の二つ目の○のようなルールを置かれたと思うのです。これはやはりオール・オア・ナッシングかどうかというと,オール・オア・ナッシングのルールだとは思うのですが,ただ,この二つ目の○のようなルールが置かれるということで,実際の裁判になると,どちらとも分からないようなケースが出てくると思うのです。そうすると,裁判官としては,このあたりでどうですかという和解勧告をするようなこともあり得るのではないかと思いますので,この4の二つのルールを置くということで,裁判実務では従来のような実務が結果的に維持できるのではないかなという気もしております。しかし,ルールとしては,オール・オア・ナッシングのルールしか,ちょっと立法としては難しいかなという気がいたしますので,私は基本的に今回のこの案でよいのではないかと考えております。 ● ほかにこのあたり,御意見はございますか。それから,その他の点でも何かございませんでしょうか。今日の大きな御意見としては,5頁から6頁のたたき台というのは,そう基本的に,根本的に反対という御意見はないようにも思ったのですが,○○委員,○○委員,そのあたりはいかがですか。 ● 前から申し上げているように,今,先生がおっしゃったとおりでして,要件をきちんと現状以上に広がらないようにしていただきたいということです。 ● そのようなことかと思いますが,事務当局の方で何かこの際御確認されるような事項はございますか。 ● 時間の関係がありますが,6頁の※3ですけれども,これは説明振りだけの問題かもしれないのですが,今,イの②については,5頁の4の解除をすることができない場合で記載しました二つの○のようなことを考えていいのではないかということについて比較的好意的な感触をいただいたところですけれども,仮にイの②についてそういう形で両面から見るみたいな発想をしたときに,一方で,先ほど○○幹事や○○幹事からお話がありましたとおり,イの①については,専らといいますか,保険者の故意・過失だけで解除権を行使できるかできないかの決着が付いてしまうという建付けになっていることとの関連が一応は問題になるところでして,今日この場でなくても構いませんので,ちょっとそのあたり,①のルールが適用されたときは一律それだけで決着が付くのに対して,②が働く場面では,5頁の一番下に書いた4の二つ目の○も働く形で解除できるかできないかを決めるということの違いをどう説明するのかという点が事務当局としては悩みとしてありまして,それが6頁の※の3番目ということでございますので,また次回このテーマを取り上げるときでも構いませんし,それまでの間でも構いませんので,何か御示唆がありましたらいただければと思っております。 ● このあたりの説明がきちんとできると,完璧な答案に近づくということで,つらつら思うに,①の方は代理権のある代理人も含めてですけれども,これは本人の方の問題で,②の方は代理権を持っていない他人の行為についてどこまで責任を負うかという問題なので,多少問題の質は違うというあたりが取っ掛かりになるのではないかなと思うのですが,私もまだちょっと考えは固まっていないので,是非そのあたり,理論構成をうまくしていただければありがたいと思いますので,よろしくお願いいたします。  ほかに何かこのあたりでございませんでしょうか。  それでは,この点についてはこれぐらいにしまして,3点目の第3,被保険者の意思による契約関係からの離脱の問題に進みたいと思います。まず事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは御説明いたします。この論点につきましては,今回は7頁の上から3行目のところの※に書きましたように,被保険者が成人一人であり,かつ,被保険者の同意が契約の効力要件とされ,被保険者による同意がされていた場合を念頭に置いて御議論をお願いしたいと思っております。  それでは,この項目につきましてもパブリックコメントに寄せられた意見の概要を簡単に御紹介いたします。  この論点につきましても,離脱を認めることに賛成であるという意見と,反対ないしは慎重に検討すべきであるという両論がございました。  まず賛成という意見の根拠として挙げられておりましたところは,被保険者の自己決定権を尊重すべきである,あるいは生命保険契約のような長期の契約では,事情の変更があり得て,離脱することができないと不測の事態が起こる可能性があるということ,あとは,保険契約者は任意解除権を持っていて,保険契約というのはそもそも保険契約者の意思によりいつでも消滅し得るものであることを考えると,法的安定性は必ずしも決定的な理由にはならないということ,あるいは消費者トラブルの中には被保険者をやめたいが,契約者が手続をしてくれないというものが一定数あるということなどが挙げられてございました。この離脱を認めるべきであるという御意見の中にも,無条件で,つまり被保険者が,ちょっと言い方は悪いかもしれませんが,嫌になったらやめられるというふうにすべきだという意見から,一定の明確な,あるいは厳格な要件を定めるべきであるという意見まで,さまざまございました。この点については,後ほど資料で何個か具体例を挙げておりますので,御議論をお願いしたいと思っております。  あとは,被保険者は無条件で離脱することができるとすべきという御意見の方の根拠としては,被保険者の離脱を認めるべき理由とほとんどかぶっているのですけれども,それ以外でありました理由としては,離脱することに要件付けをすると,結局は保険者に申出の相当性を判断するという非常にセンシティブな作業を行わせることにつながるが,むしろ離脱の要件を制限しないことによって制度の安定性を確保することができるといった理由も挙げられてございました。  他方で,先ほど申し上げましたように,反対又は慎重に検討すべきであるという意見もございました。この中には,離脱というスキームに反対という意見から,規律をそもそも設けるべきでないという意見,あるいは実務上の問題点が整備されない状態で立法化するのは反対であるといった御意見がございました。  まず,離脱という法的構成の制度を設けることに反対という御意見につきましては,離婚して,妻の側に子供がいる。そのときに夫を被保険者とし,妻を受取人として,実質養育費と,元御主人の方が亡くなられたときの養育費に充てるといったことで保険を,離婚の合意の際にそういったものを条件としていることがある,そういった場合に無条件で離脱を認めてしまうと,その合意の前提が崩れてしまうといった例が挙げられてございました。この御意見というのは,結局は保険契約者に対して解除の申立てを認める制度を設けるという方が合理的であるといった意見に結び付いているようでございます。  他方で,規律自体を設けることに反対だという意見は,被保険者という契約当事者でない者が契約関係を終了させるということは,契約関係を著しく不安定なものとし,あるいは保険契約者の意思に反するということ,あるいは要件設定というのは非常に困難であるということ,あるいは保険者にその要件の判断を求めるのは非常に困難を強いることになるのではないかということ,あるいは結局はこの問題というのは重大事由による解除の規律が妥当するような事案の問題で,重大事由による解除の規律にゆだねれば足りるのではないか,あるいは保険契約締結時の,あるいは貸付けの際に保険を担保としてとっていたようなケースであれば,その契約のときの条件に取り込めば十分なのではないかといったこと,あるいは保険契約には貯蓄性の高いものがあるということで,そういったものについては保険契約者の方の利益も無視できないのではないかということ,そういった種々の理由が挙げられていたところでございます。  あとは,(注1)のところの要件の問題につきましては,契約者の利害というのと被保険者の利害というのが相反することがあることを前提に,慎重な規定振りをすべきであるということや,契約関係が不安定にならないようにすべきである,つまり要件は厳格かつ明確に定められるべきであるということなどが挙げられているところでございます。  さらには,対象とすべき契約について,一定額以上の高額な死亡保障がない保険商品や,傷害・疾病保険といった類型的にモラルリスクのおそれが低い保険商品については,規律が適用されないようにすることが必要なのではないかという御意見もございました。  次に(注2)の問題でございますが,これは法的構成の問題でございますけれども,これについて中間試案ではまだまだこなれていないという前提で「離脱」という文言を使ったわけですけれども,それについては何を意味するのか不明確であるといった御意見がございました。一方で,被保険者に端的に契約の解約権のようなものを認めてはどうかという意見や,同意の撤回として規律すべきであるといった御意見もございました。あとは,先ほども若干申しました保険契約者に対して保険契約の解約を請求するといったスキームを考えてはどうかという御意見もあったところでございます。あとは,このスキームを仕組むに当たっては,仮に離脱ということにしますと,いつの時点で離脱が生じるのか,その離脱の効果などについても明確にすべきであるという御意見もございました。  最後に(注3)のところでございますけれども,生存保険を除外する必要はないという御意見もあったところでございます。  あと,(注4)の強行規定性のところでは,無条件に離脱を認める場合でも,団体信用生命保険のようなものあるいは質権を設定した保険契約のようなものなど,一定の契約については,別途の考慮が必要であるということで,一定の約定による解決を許容するといった御意見もあったところでございます。  これにつきましてもまさにさまざまな御意見をちょうだいしたところでございまして,こういったものを踏まえまして,今回資料では7頁のところから,問題提起をさせていただいております。  まず資料の7頁の1のところでございます。まず前提の確認として,契約者の方で任意解除をしたり,あるいは保険者の方で重大事由による解除をするといったケースであれば,そういった規律で適切に対応ができるということを記載しています。したがって,ここで議論すべきなのは,保険者も保険契約者も契約解除をしない,あるいはそもそも要件を満たさないということでできないといった場合であるということでございます。その上で規律を設けるべきかどうかについても,パブリックコメントでは両論の意見がございました。どういった場合を念頭に置くのかということと規律を設けるかどうかという問題とを切り離すことは困難ではないかということで,資料ではとりあえず2のところで要件の問題を記載しております。これを考えるに当たっては,7頁の真ん中あたりの※のところでございますけれども,こういった点についても検討する必要があるように考えられるところでございます。  まず,保険者において要件に該当することを,仮に何らかの要件を定めた場合には,それを保険者において確認できるのかという問題でございます。この点については,先ほど申しましたように,パブリックコメントでは,仮に保険者の方に何らかのアクションを起こすとしても,これが不明確だと,契約関係が不明確となるといった指摘や,こういった判断を保険者などにさせるよりは,要件を限定しない方がよいという意見もあったところでございます。あとは,契約当事者でない被保険者の意思による離脱を認めるに当たっては,契約当事者である保険契約者の意思を尊重することの要否についても検討する必要があるように考えられるところでございます。  次に※の2のところでございますけれども,被保険者が同意をする前提となっていた事情を欠くに至ったかどうかということ,こういった形で区別して考えることの当否についても問題提起をしております。この点,中心試案では,注のところで,例えばということではございますけれども,こういった記載をしていたのですが,そもそも契約をした,あるいは同意をした目的というのを事後的に確定することができるのかなどといった問題があるようにも考えられ,この問題というのは,この項目についてどのような視点で考えるのかということとも関連する問題であるように考えられます。  最後に※の3のところ,保険金受取人の変更をすれば離脱まで認めなくてもよい場合があり得ることについて,どのように考えるかということを記載してございます。  あとは,その下(1)から(7)までで,典型的に考えられそうなケースを7つ挙げてございます。ほとんどがこれまでの部会で挙げられていた例でございますけれども,(1)の離婚のケースについては,先ほど御紹介しましたように,自由に離脱を認めることは適当でない事案もあるという意見が寄せられたところでございます。  また,(2),(3)については,保険契約や何らかの契約があった際に,その契約の合意内容とすればよいのではないかという御指摘や,結局は(4)の重大事由による解除が問題となる場合になるのではないかと,そもそも(4)については,重大事由による解除の規律との関係についても整理する必要があるように考えられるところでございます。  あとは(5)の親子の場合については,具体的にどのような場合に契約関係からの離脱が認められるべきなのか。  さらには(6)のところでは,保険契約者が被保険者に対して契約関係からの離脱を承諾した場合には,保険契約者も了解している以上,離脱を認めて問題ないとも考えられますが,端的に保険契約者が任意解除をすればよいとも考えられるところでございます。  最後に(7)のところでは,要件を限定しないという案も掲げてございます。この点については,先ほどパブリックコメントを御紹介した際にも出ておりました,一定の契約では直ちに離脱を認めることが適当ではない契約もあるのではないかという指摘もされてございます。  あとは,この要件の問題というのは3の法的構成の問題とセットで検討する必要があると考えられますことから,資料では併せてこの問題についても記載しております。  法的構成としては,さらに詰めて考えなければいけない問題がございますけれども,大まかに申し上げれば,資料に掲げましたように,被保険者が保険契約者あるいは保険者に対する意思表示によって直ちに契約は失効するという考え方と,被保険者は保険契約者に対して解約をするよう,あるいは解約を承諾するよう請求することができるという考え方があり得ると思われますが,いずれの考え方についても,契約当事者である保険者あるいは保険契約者の法的安定性などについてどのように考えるか,検討が必要であろうと思われますし,これにまつわる法律関係についてもさらに明確にしていく必要があるのではないかと考えているところでございます。  以上でございます。 ● それでは,この点についても御意見をいただきたいと思います。○○委員。 ● この離脱ということなのですが,保険会社としては離脱の要件に該当するかどうかということを確認する手段を持っていません。したがって,仮に規律を設ける場合に,後日保険契約者との間で紛争にならないように,保険者が当該事由の有無を客観的に確認できるような明確な要件を設定していただく必要があると考えています。  それから,ちょっと違うのですが,契約の安定性ということは,これまでも出てきていますけれども,大事なことだと思うのです。というのは,ある意味精神的に不安定な人からの申出等でいったん契約者と関係が悪くなったから解約する,離脱する。しかし,これはもう撤回というのは認められない話だと思うので,今度は新契約に入るとしたら,それは年齢も上がったりすることもあるでしょうし,健康状態が悪くなることもあるから,再加入できないということもあり得ると思うのです。もう一つ,我々は,最後の方に出ていましたけれども,3の法的構成なども考える場合,保険に入るときには契約者は被保険者の同意を得て契約に入ったわけですから,ある意味で契約者側の範ちゅうにある話ですから,離脱したいということは契約者に申し出ていただきたいということで,この二つ目の○にあるように,それをお願いしたいと思うのです。  それから,離脱と言っていますけれども,結局は保険契約を解約するわけですから,解約返還金というのは契約者に行くわけですから,契約者が知らないうちに何でもできると思うのは,私どもとしてはいかがなものかなと思うのです。ですから,仮にこの制度を認めるとすれば,離脱しやすくなるように,契約者に対して申し出ることができるといった規定も考えられるかなと思うのです。私どもとしては当然ながら,繰り返しになりますけれども,そんなに契約を不安定にしていいのですかという思いはあります。  以上です。 ● ○○委員。 ● やはり要件をしっかり決めるというのが一番重要なことで,そうすることによって,不安定だと言われないようにする。それから,要件を判断できると。逆に言うと,判断できるようなものでないとワークしないということだと思うのです。これは前回,日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の事例の中で,中学生のときに自分の知らない間に親が付けていて,酒を飲むと「おまえの保険金が入ればな。」と言われたという例がありましたけれども,この場合,自分は幾らの保険に入っているのかも分からない。これは,いわゆる中学生など若い人の死亡保険はどれだけかという話と,今回の問題と,それから自分が幾らかという被保険者に対する情報提供で,今回三つの問題があって,その中にこの一つの問題が入るわけですけれども,私は,結局この要件は大きく二つに分かれると。一つは,重大事由の最初の項目でしたか,要するにまさに前回紹介があったように,殺されてお金を取られてしまうと,自分がモラルリスクの対象だと感じたときに,その同意を撤回する。先ほどの場合は同意もしていませんから,これは不同意を通知するという形になると思いますが,そういう類型と,身分関係といいますか,法律上の何らかの地位があって,それを前提に契約が行われたけれども,それがなくなったということを理由に撤回する。従来の議事録では,親族関係,妻の地位もしくは養子という地位がなくなったと。それから雇用関係,これは役員で入ったとか,部長さんで入ったとかという場合です。それから担保の場合,これは債務者としての地位です。そういう地位が大前提になって契約がされて,そういう地位が失われたからということであれば,離婚を証する書類とか,会社を辞めたという書類とか,債務を完済したという書類によって認定する。そういう意味では,私はこの8頁の(5)とか(7)というところまではとりあえず考えないで,そういう保険会社の方ものみ込んでいただけるようなところをまず考えて,あとそれは類推適用で,それに準ずるような何らかの法的な地位というものが前提となって契約がなされたと。それがなくなったからということが第2の類型だと思います。  その関連で,契約者にどういう形で要件・効果を決めるかという問題ですけれども,例えば重大事由解除的なものと地位を前提としたものがあるという意味では,重大事由解除的なものについて,契約者に申し出ろと言ったとしても意味がないわけです。そういう場合はそれは使えないし,いろいろな法的な地位がなくなったという場合にはそれは契約者に言ってもいいかもしれませんが,ここでは自分でイニシアチブをとってそういう関係から離脱できるということが決定的に重要で,特に前者の重大事由解除のような場合には,とりあえずまず同意の撤回の通知もしくは不同意の確認の通知を出して,その時点からなくなる。これは○○幹事が論文で書いておられたように,効果は失効ということでいいのではないかと思います。  ですから,この法的構成の○の二つ目のところは,「保険契約者に対し解約をするよう」とありますが,これは※1の保険者に対してしなければいけない場合も,重大事由解除のときには保険者にいくというのも一つの手段ですから。でも,とにかく自分は撤回の通知をしたからもう自分を狙っても駄目だよという手段は必要なのだろうと。ですから,規定の仕方としては,要件のところは,今言ったように二つの類型を書く書き方をしてもいいですし,そういう具体例を列挙される形でもいいですけれども,ですから8頁の(4)が一つの類型で,それ以外の法的な地位がなくなったことを理由とするものが二つの類型で,(5)の親子の間で事情の変更があったとか,離脱を希望した場合というのは,ちょっと,今はそこまでいかなくてもいいのではないかなという気持ちがあります。  以上です。 ● 重大事由の解除の場合以外の身分がなくなったという場合は,請求の相手方は保険契約者でもいいかなということですか。 ● それは三つあれば,どの場合も,両方の類型も三つ用意すると。三つというか,自分で意思表示する,それから両当事者に解約を求める,どれでもいいと思いますが。 ● そういう並列的な権利行使方法があっていいと。 ● というのは,身分がなくなった場合でもモラルリスクを恐れてやるということがあるわけですから,そうしないと,つまりモラルリスクが顕在化している,していないという問題だと思うのです。 ● ○○委員。 ● 今の重大事由に該当するような,殺されるなどという話は,これまでもちょっと申し上げておりますけれども,保険金があるから殺される,そういうことはあるかもしれない。そういう場合は,保険会社に言うより前に警察に言わなければいけないのです。「これを保険会社に言った。」などと契約者に伝えたら,それこそ逆上して殺されるぐらいの話になるわけですから,それはちょっと違うと思うのです。だからこそこれまで検討の中では,私はある意味,その話は全体の中には入っているかもしれませんけれども,そもそも当初は同意の撤回から議論が始まったとき,そこはむしろ薄くなってきたのだろうなと思っていたのです。本当に命の危険があるときは,保険会社に言ったからそれで殺されなくなるなどということはまずないのです。そういうことを考えれば,殺されるのであれば警察に行っていい話だと思うし。 ● 全くおっしゃるとおりで,一番大事なのは,とにかく同意を撤回して,「あなたが殺したってもうお金はもらえないよ。」ということですから,それが主であるということは全くおっしゃるとおりだと思います。 ● そういうことを言っているのではなくて,保険会社に言えば,それで殺されなくなるのですかということなのです。そうではなくて,殺そうというのは……。 ● 保険会社に言って法的効果が生ずるということであれば,それは殺されないのだと思いますが。 ● どうぞ,○○委員。 ● 一点だけ,前提のところに二つ○が打ってありますけれども,通常,協同組合の場合は,組合員が契約者で,つまり事業利用の権限というのは権利として組合員が持っているわけです。ですから,重大事由というのがありますけれども,基本的にその組合員イコール契約者を通さない契約内容の変更という場合に,確かに犯罪行為とか一定の犯罪に絡むものについて,そこは,そういうことをやろうとした場合には,当然組合員としての権利ははく奪といいますか,そういう性格のものだろうとは思うのですけれども,重大事由の三つ目,信頼関係の部分というのはまだ固まっておりませんよね。幾つかの契約を結んだ場合に特別解約権が行使できるという部分というのがまだないと思うのですけれども,一般的に重大事由による解除の規律というのがきちんと整理できれば,確かに犯罪行為に類するものについては組合員としての権利を制限するということは可能かと思うのですけれども,一般的に契約者を通さないで,つまり組合員の事業利用の権利を通さないやり方で契約内容を変えてしまうということについては,ちょっと他の法の立法との関係でいいますと,その辺の整理が少し必要なのかなと思っておりますので,趣旨そのものについては反対するものではありません。当然,こういう世の中ですから必要なものだろうとは考えておりますので,協同組合法制の中でもそのことが生かされるような形での検討をお願いできればと思っております。 ● ○○委員。 ● 今の○○委員の意見と少し重複するかもしれないのですけれども,保険契約というのは,当事者は保険契約者ですし,もともと被保険者の同意を得て契約に入っていただいている。その中でどうしても契約者と被保険者で話し合ってもらって救えないケースが一体何なのかと。普通であれば,被保険者の人が契約者に言って,契約者が了解して,保険会社に言ってくるというのが筋だと思うのです,契約の当事者でありますから。では,そういう場合で救えなくて,どうしても被保険者の意向を聞いてあげないといけないケースというのは一体どういう場合なのですかというところをもう少し詰めていただいたらいいのではないかなと。契約当事者である契約者を飛ばしてやるというのは,相当イレギュラーなことをやるわけですから,それでも救ってあげないといけないケースというのは一体どういう場合なのかということ,緊急性も含めて,その辺のコンセンサスがどこまであるかによってこの議論というのはちょっと違ってくるのかなという気がしているのですけれども。 ● それは,保険者に対して離脱するという意思表示を認める,そのことについての問題の御指摘と考えていいのでしょうか。 ● そうですね。保険契約者を通じないでやるという……。 ● 契約者を通じる法制を採るのであれば,そこは……。 ● ただ,一方で保険契約者を通じてやるのであれば,法制が要るのかどうかというのはちょっと……。法制でなくても,それは話し合いでいける部分もあるわけです。それでも法制化すべきという議論はあり得るというのは理解していますけれども。 ● そういう問題指摘でございます。  ○○委員。 ● 先ほどちょっと十分御説明できなかったのは,重大事由に該当するようなケースというのは,実際にもう故殺しようとしているわけです。そういう事実が現れたわけです。そういう場合は重大事由の規定を使って保険者の方から解除できます。ただ,殺されそうだとか,そういうのが事実かどうかの確認というのは,保険会社ではできないのです。一方的に,自分は殺されそうだという場合,その認定はできないので,そこを言われても実は困るということです。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 先ほど○○委員がおっしゃったように,時代の流れといいますか,こういうのを認める方向にいくのだろうなという,そういう方向があらまほしいだろうなと。確かに保険の構成要素である被保険者にはなりました,けれども,いろいろな事情の変更がある,時間を経ていれば経ているほど事情の変更があって,自分は降りたいけれども,保険契約者に言ってもちっとも手続をしてくれない。そういうときに,ではどういう方法があるかというので出てきたのがこれだと理解しています。そうすると,二つ申し上げたいのですが,一つは,言う相手が保険契約者だという前提は実態と全くかい離しているのではないのか。保険契約者に言っていいのであれば,この仕組みはそもそも本当に必要なのだろうかというのが一つございます。保険契約者に言っても動かない,やってくれないからこそ,こういう言わば途中からヒュッと救ってくれるようなルールが必要なのではないのかなというのが一つでございます。  それから,故殺云々という話がありましたけれども,故殺のことは余り考えていないのですけれども,それはもう警察に行けというお話はよく分かるので,考えていないのですけれども,余りこういう一定の条件を,これで,これで,こういう条件なのだ,例えば夫婦別れをしたのだとか,これが何とかだといった条件を付けていくことが,これを制度として存続させようと考えるときに,そういう条件を付けるのはむしろ,例えば相手は保険会社だと私は思っているのですけれども,保険会社さんにすごく負担が掛かるのではないか。むしろ,自分がやめたいといったときに,一定の書式なりそういうものがあって,そういうものがきちんと保険会社に提出できて,保険会社がそれをきちんと確認できるのであれば,ではこれは条件にはまっているかどうかということを考える必要がなく,むしろスパッとやめられるというふうにした方が,制度の趣旨からいっても,手間からいっても,一番よろしいのではないのかなと思いますが,いかがでしょうか。 ● この問題は意見がなかなか収束しないのですが。○○委員。 ● 要件を絞られると,その要件認定をしないといけないということが保険会社にとって負荷ではないのかという御指摘なのですけれども,一方で今度は無条件に嫌になったらいつでもやめられるとなると,今度は契約者にとってみれば,こんなタイミングでやられたらとてもではないけれどもというケースもあると思うのです。保険料を出しているのは契約者であって,例えばいろいろな保険商品がありますから,そのときによってすごく価格変動しますと,例えば金利連動だとか,そういう商品までこれの対象にするのかどうかという議論はあると思うのですけれども,そういうことでいくと,今度は我々が契約者と被保険者の間に挟まってトラブルに巻き込まれると,そこのリスクも一方で,契約の当事者は契約者ですから,そのことも我々保険会社としては無視はできないと思うので,何か要件を絞らずにというのは少ししんどいのではないかなという気はするのですけれども。 ● はい,どうぞ。 ● すみません。おっしゃっていることはとてもよく分かるのです。ただ,要件を絞らずにはしんどいのだというお話がありましたけれども,保険は,保険契約者がいて,被保険者がいて,これで成り立っているものです。受取人という概念はあるにしろ。ここの概念の人がやめたいと言っているのに,そもそもこの保険そのものが,これが,車なら車がなくなったり,家なら家がなくなった,被保険者が降りたいと言っているのに,それを尊重しない契約者とは何だろうなという気が実はするのですけれども,いかがでしょうか。 ● そういう意味では,多分これは被保険者とは何かという法的整理の問題になるのかなという気がするのです。 ● すみません,原則論にはできないのですけれども。 ● だから,例えばこれは,同意の問題とか,多分そういうことにも絡んでくるのではないかなと。今日はその議論をする場面ではないということなのですけれども,多分,今の議論は,被保険者というのは一体どう位置付けになりますかという議論のような気がして,ちょっと今日はあれかなという気がするのですけれども。 ● 一方の極には,何の理由も要らないで保険会社に一方的という非常に離脱しやすい権利を認めるべきだというところから,他方ではそもそもそんなことは認めないのだというのが一番消極的なのですが,それに続くものとしては,事由を十分絞り切った上で,契約者に対してまずは言ってもらうというあたりの法制が考えられるかなというのですが,そのあたり,技術的に考えると,そもそもそんな権利は実効性があるのかという話もあるかもしれませんが,立法技術的に考えたときに,それは全然成り立ち得ない話なのか,保険者に対する直接権利行使よりは多少は規定をつくりやすいという感覚なのか,そのあたりはいかがですか。 ● 立法技術的に契約者に言うというスキームが受けとめられないかというと,受け止められるのではないかと感覚的には思いますが,ただ,○○委員から御指摘がありましたとおり,契約者との間で決着を付けるというのが本当にこのニーズにこたえることになるのか,むしろその実質の方が問題かなと思っております。事務当局内部で検討している中でも,感覚的に何でもかんでもありというのもひどいから,では要件を絞ろうかと考えると,保険者が判断できないということになる。では契約者に言ってもらおうかというと,契約者に言えというのも何か実態にそぐわない。翻って,では要件設定なしに保険者に言ってもらうことにしようかと,何となくそこに,ついつい安易な道に流れがちになるわけですが,ただ,そうしますと,先ほどのパブコメの意見でも御紹介いたしましたとおり,本当にそんなことをしてしまって大丈夫なのだろうか,その保険契約というのが契約者と被保険者あるいは受取人など保険関係当事者の間で何か別の約束事に仕組まれているとか,多分いろいろなことがあり得るわけで,何でもかんでもありと,仮にそれを法律に書いてしまったときに,とんでもないことになりかねないというのもちょっと検証のしようがないということでジレンマに立ち至っていて,今日テーマとして取り上げさせていただいたというところでして,むしろこれは法技術的な問題というよりは,実態,実質をどう仕組むか,本当に仕組んで大丈夫なのかという難しさであって,何となく仕組めたらいいなという思いはあるのですが,本当に仕組んで大丈夫かという懸念もあるというのがまさに正直な現在の状況でございます。 ● 明らかにこういうことを認めていい場合というのが世の中にあるのははっきりしていて,それは御異論もないと思うのですけれども,それを絞り切れるかという実質論と,それから法律構成の両面で,なかなかハードルの高い制度だなということが分かりつつあるので……。○○委員。 ● 私は,○○委員の意見をよく承知している上で限定すべきだという意見を申し上げたので,心苦しいところもあるのですけれども,今おっしゃったような問題があるので,ある程度限定せざるを得ないかなと。例えば,保険金受取人を変更すれば離脱まで認めなくていい場合,そういう場合は撤回する前にいろいろやるということが予想できるような場合が多いのだと思うので,だれが見ても,保険会社の方からも確認しやすくて,社会的にも必要があるというところに限って,あと,もし必要であれば,先ほど申し上げた類推適用的なもので裁判所に考えてもらうということで,一番大事なのは,契約者に行くとか,保険会社に行くのではなくて,撤回の意思表示でイニシアチブをとって,契約を失効させることができる,させてもいいよと,こういう場合は安心でしょうというものをまずつくるのが一番大事ではないかなと思ったのですけれども,いかがでしょうか。 ● ○○幹事。 ● 私は,この制度を認めるべきだと大胆に言ってしまっているのですけれども,その際に考えましたような典型例というのは,例えば親子関係,養子縁組をしていて,子が親の方を被保険者として契約者は子,受取人は子で,親を被保険者と。それで養子縁組を解消しましたと。そうすると,残った被保険者,元親は非常に不気味な状態になります。さらに離婚ケースもそうですけれども,妻が夫を被保険者とし,契約者,受取人は自分ですと。それで離婚しましたと。そして契約を解消しない。元夫はこれもまた非常に気持ちの悪い状態になります。こういったときに被保険者が契約関係について何も言えないということになると,やや問題が起こりやすい状況ではないか。そのように考えまして,これを契約者側に解除してくれと言ってみても素知らぬ顔をしているということは十分考えられますので,そうすると被保険者としては手の施しようがない,自分が死ぬのを待つのかという非常に不気味な状態は余り適当ではないということです。ただ,そういう事例を想定するだけでいいのかという点はもちろんございます。先ほど御説明いただいたように,例えば離婚に当たっても,子の養育の問題を考えて,その契約を継続するという合意をした上で生命保険契約を存続させているといったケースで,その被保険者が単に戸籍を出して,もう離婚したのだからこれは解除してくれと言って,それで済むのかという問題はもちろん出てくるのですけれども,そうするとどちらを重く見るかといったお話になります。一定の合意があるといった後者のケースですと,それは勝手なことをすれば合意違反ですから,ほかの法的なサンクションがかかってくる。しかし,前者の不気味なケースですと,これは何も法的サンクションはないままずっと存続するということを考えまして,この場合,そのバランスを考えたら,やはり不気味な方を処理する手続としてこういうものを用意してはどうかと思った次第ですが,弊害が多いということであれば,もう少し考えなければいけないかなと思いますけれども,一応私がターゲットとして考えておりましたのは,そういったケースでございます。 ● ○○幹事。 ● 話がかなり御提案からずれて根本的なことまでいきましたので,少し私の思うところを申し上げますと,私は,被保険者の同意が人格権的な要素を考慮するのであれば,やはりそれは原則自由に撤回できる,そこがベースになるだろうと思っておりまして,そうだとすると,撤回権の濫用というのがその次に多分出てくるのではないか。今ここでいろいろと撤回というか離脱できる事由を拝見しましたけれども,既存の債権関係なり過去の家族関係なりに基づいて債務を負っていて,それの履行のためにとか,そういうことで保険契約を消してしまうことがまずいと。そういう状態で離脱をする者はすべて撤回権の濫用であるという整理をしてしまって,その被保険者が撤回の意思表示をしたときに,例えば一定の期間内に保険契約者の方が,これは撤回権の濫用であるということを立証すれば,その撤回は効力を生じないとか,そういうスキームにできないかなと思うのです。その場合に問題になりそうなのは,確かに債権関係とかそういうものはあるのだけれども,現実には命を狙われているとか,そういう状況のときに,外見的には撤回権の濫用と言えそうなのだけれども,よく見るとそうとは言えない事由がさらにあるという場合があると思われますので,結局撤回権の濫用に当たらない事由をもう一回被保険者が立証する機会が必要かなと。ルールの複雑さとか,実務でうまくワークするかとかということを度外視して考えれば,そういう構造で多層的に考えないと,落ち付きのいいところには落ちないだろうと思うのですが,そういう考え方で実務的には回らないということなのでしょうか。 ● ○○委員。 ● 私は法律の構成,法律論の構成のことは分からないので,ちょっととんでもないことかも分かりませんが,この前提はまさにこのとおりで,先ほど○○委員から,重大事由というのはけがでもしていない限りなかなか認められないということで,この前提だと,この二つが無理な場合,それでもなおかつ問題がありそうなのでということなのですけれども,その際,この問題点の2番,被保険者が同意する前提となっていた事情を欠くに至ったというところがやはり私としては大きいのではないかと思っています。例えば,先ほど○○幹事がおっしゃった不安定な状態と,あと離婚の事例ですけれども,決定的に違うのは,同意の時の事情というのが前者は変わっているのですけれども,離婚の例のケースでは事情自体は変わっていないわけです。そうはいっても,元妻が殺意を抱いたとか,そういう事情の変更もあり得ますけれども,同意を変更するためのある程度正当な合理的な理由がある場合は,保険会社も門前払いをせずに聞くということも,もし実務的に可能ならば,素人判断ですが,ちょっと検討していただきたいなと。以上です。 ● 実質論を考慮できるように,○○幹事のとある意味では共通のようです。 ● 私は,これは,もともとが他人を被保険者とした場合の保険契約の同意というのが人格権というところにあるとしたら,それを撤回するというのは余り要件を要求するになじまないことではないかなと思うのです。というのは,その同意をした前提を欠くことになったというのは,まさに本当に同意を撤回することが正当化できるとは思うのですけれども,もともと同意をするときに何か前提がありますかというところが要求されていないと思いますので,それなりに事情があって同意をしたのでしょうけれども,同意を撤回したくなるのもそれなりの事情でというところで撤回させてあげるのがバランスがとれているかなと思います。それは,以前にも申したかと思うのですけれども,保険契約者がいつでも保険契約を終了できるということとのバランスで,他人を被保険者としての保険契約というのは,それなりに脆弱な契約で,その被保険者が同意を撤回したくなるような状況になったら終了してしまうような契約だということを認識した上で保険契約者は契約すべきではないかなと思っております。こういう制度を設けたことが社会的に何か大きな影響を与えてしまうのではないかということがあるとは思うのですけれども,こういう他人を被保険者とした保険契約というのがそれだけ脆弱なものだという認識を社会的にもし持ってもらえるようであれば,それはそれで不合理なことではないのではないかと思います。  それからもう一つ,そのようにした場合に,被保険者が撤回権の濫用とか,又はちょっと感情の起伏が激しくなったときに撤回してしまって,それで保険契約者としては,こんなときに何も解除しなくてもいいのにとかと思うというところはあるかと思うのです。というのは,被保険者というのは,自分は利益は受けないけれども,自分の命によって他人が利益を受けるという何か不合理な立場にある反面,自分は保険料を出捐していないので,いつ解約して,せっかくの将来の保険金に対する期待が解約返戻金という現在の小さな経済的な利益に変わっても,余りそれには利害を持っていないので,ちょっとしたしこりから撤回をするということにもなりかねないというのは確かだと思います。その場合に,ですので,不当に他人を被保険者とした保険契約関係を必要以上に脆弱にしないようにするためには,まず保険契約者の方に解除してくださいと言ってワークはしないと思うのですけれども,8頁の最後の方で民事執行法第174条を挙げられていて,ここのところがどうやってうまくワークするように使えるのかちょっと分からないのですが,基本的には,同意は撤回しましたので保険契約を解除してくださいという請求権が保険契約者に対してあって,それを行使してくれないので,代位というのでしょうか,代位みたいな形で自ら解約をできるという形にして,その解約の意思というのが,保険契約者がするのと同じぐらい,一応解約しますという確固たる意思が見られたら,保険者としても応じるという形になるかと思うのです。ですので,そのときの解約の手続というのは保険契約者が行うのと同じような手続になって,もう一つ,それで保険契約者自身がなす解約ではないので,保険者として本当に解約していいのでしょうかと確認するステップがあった方がいいと思うのです。そのときに,解約返戻金を解除権を行使した者が取得するわけではないので,そうすると被保険者としては,「解約しますが,解約返戻金の受領権は持っておりませんので本人に渡してください。」と言うときに,保険会社としては,本人に対して「今般解約されましたので,解約返戻金はどちらにお振り込みしましょうか。」と言うステップのところで,もし単なる保険契約者と被保険者の一時的な仲違いとかというのであれば,そこで「ちょっと待ってくれ。」みたいなことがあるのかも分からないですし,またはきちんと,「私は同意は撤回しますので,今般自分で解約にいきます。」とかというところまで話合いがついているのであれば,解約返戻金の受領権限とかももらって解約できるといった形にできるのではないかなと思います。 ● ○○幹事。 ● 被保険者同意を撤回できるかどうかという問題については,従来はそんな簡単には撤回は認められないと考えてきたのではないかと思います。ですから,とにかく嫌になれば保険者に「もうやめた。」と言ってやめさせてもらうというのは,非常に違和感がありますし,法的不安定性をもたらしますし,保険契約者の利益の点でも問題があると思います。今,○○幹事が言われたように,一時的に被保険者と保険契約者の仲が悪くなって,感情的になって被保険者がやめたいと言ってやめてしまって,本当にそれでいいのかということで,私は保険者に対して被保険者が嫌になったらやめられるというスキームは,少しというか,かなり問題があると思うのです。かつ,保険者としても,幾ら要件を定めたとしても,本当にこの要件に合致しているのかどうかという判断に非常に困ると思います。ですから,仕組みの仕方としては,被保険者が保険契約者に対して,これこれの場合には解約を請求することができると。しかし,請求しても普通は保険契約者は応じないと思うのです。その場合は裁判に訴えて,勝訴すれば意思表示に代わる判決をもらえるようにする。そういう仕組み方が実質的にはいいのかなという気がするのですが。かつ,その要件の立て方を,被保険者と保険契約者が争うのだという形にするのであれば,そんなに細かく具体的に定めてしまうというよりも,被保険者が同意をする前提となっていた事情を欠くに至ったといった割合ぼんやりした要件であっても,まさに保険契約者と被保険者の間で争って,そこで本当に被保険者が同意をする前提となっていた事情がなくなったのかどうか,そこで確定するようにすれば,そういう要件でもいいのかなと。例えば,親族関係が終了した場合という,それは一見明確です。しかし,これはパブコメで出てきたように,保険契約の存在が離婚時の合意の内容になっているという場合もある。この場合,例えば先ほどの被保険者が同意をする前提となっていた事情を欠くに至ったかどうかでそういう基準を立てておけば,離婚するときにそういう合意があれば,それは事情を欠くに至ってはいないという判断で,結局請求は認められないということになると思います。そのように考えていきますと,要件を細かく厳密に定めたからそれで解決できるという問題ではないような気もしますし,それから仕組み全体としては,保険契約者に対して請求するというのは迂遠ではありますけれども,保険契約者に対して請求するという形の方が,自然というか,うまくいくような気がするのですけれども。  ちょっと感想めいたことを申しました。 ● 今,○○幹事がきれいに整理してくださいましたけれども,今日の御議論を伺っていますと,まさに要件を設定しないでの自由な離脱というのが問題だということであるとすると,何らかの要件を設定するということになりまして,その要件設定につきましては,先ほど来さまざま御示唆をいただいているところでして,その何らかの法的地位に立って契約がされたが,それがなくなった,あるいはその撤回に合理的な理由があるのかどうか,あるいは自由に撤回できるという前提に立った上で,その撤回が濫用に当たるのかどうかといったさまざまな視点があり得るわけですし,契約者との間で決着を付けるとなれば,○○幹事がおっしゃるとおり,こんな場合,こんな場合と細かく書くのではなく,恐らくそれを抽象化した要件設定をすることになるのではないかと考えております。  そうしますと,翻っての問題ということになるわけですが,当然,その要件を満たしているかどうかは,被保険者と契約者との間で決着を付けてからでないと離脱の効果を保険者には主張できないという仕組み方になるわけで,今日の資料でいきますと8頁の3に書きました二つ目の○のような構成にどうしてもせざるを得ないということになるところです。そうしますと,被保険者に対して,契約者のところに行って決着を付けてこいということになってしまうわけで,それで本当にワークするのかという問題と,効果からして契約が失効するわけですから,効果が重たいと言えば重たいのですけれども,そこまで本当に重たい手続として仕組んでまで規定を設ける実益があるのか,あるいは設けなければならないのか,設けるべきなのかといったところに最後は立ち至るのかなといった感じを持っているのですけれども。 ● 法律家的な感覚から言えば,契約者経由で仕組むという方が仕組みやすいかなという気はしているのですけれども,そんな権利なら要らないとかと言われると困るのですけれども,世の中,わけの分からない人はいるのだろうと思うのです。役員にしてやるからと言われて同意して生命保険に入れられて,役員をやめたけれども,幾ら言っても解約してくれない社長とか,離婚したけれども,保険を解約してくれというのに断固応じない元配偶者とか,そういう人はいると思うので,そういう場合に最後の安全弁でこういう権利を設けておくということは考えられるのか。逆に余り強い権利としてしまうと非常に副作用が目立つというのが,今日のいろいろな御指摘の中で出てきたのではないかと思います。  それから,これは最後は結局契約者と被保険者の間の法律関係の話には帰着するので,そこで要件の立て方次第では,いろいろな要素を織り込んで柔軟な処理もできる。余り柔軟にすると,また裁判所の方から,何も決められないと怒られるかもしれませんが,そこはいろいろなそうならないような工夫を少し考えてみるかということではないかと思うのですが,今日結論を出すのは余り適当でないと思いますけれども,今日出た御議論を踏まえて,この点はもう一回考えていただいて,もし何らかの提案ができそうであれば,次のステップでということでいかがでしょうか。  それでは,ほかにこの点では御意見はございませんでしょうか。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 簡単に。○○委員にほとんど言っていただきましたのであれですが,実は○○幹事がおっしゃったようなことを考えて,多分代位行使ができないかとか,でも,契約者にすべていけるかというとなかなか無理があって,ですから全く基本的なところは同感なのですが,そこはちょっと苦しいかなと思ったものですから,そういうことも考えたということだけ申し上げます。 ● その点も検討してまいりましょう。  ほかにございますでしょうか。  それでは,今日予定していた検討項目は大体お話を聞いたということで,今日の審議はこれで終了したいと思います。  次回以降について,事務当局から。 ● 次回第17回会議は,来月10月10日の水曜日午後1時30分から,今日と同じ法務省の20階第1会議室での開催を予定しております。次回も午後1時30分からの開始を予定してございます。  次回ですが,先ほど今後の進行予定で御説明申し上げましたとおり,今日に引き続いて個別論点についての検討の二回目を予定してございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ● ということで,よろしくお願いいたします。  それでは,今日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 -了-