法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  平成19年9月27日(木)  自 午後3時01分                        至 午後5時00分 第2 場 所  東京区検察庁会議室(6号館B棟5階) 第3 議 題 被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第9回会議を開催いたします。 ● 本日は,前回の会議で皆様にお諮りしましたように,アメリカにおける社会奉仕を義務付ける制度等について調査していただきました東北大学准教授の○○先生から,その調査結果について御報告をいただく予定でございます。   大体の目安ですが,まず○○先生から1時間程度御報告いただき,残りの1時間程度を報告内容に関する質疑応答などに充てさせていただくこととしたいと存じます。   それでは○○先生,よろしくお願いいたします。 ● 御紹介にあずかりました○○でございます。   早速ではございますが,お手元に配布されておりますレジュメの項目に沿って,アメリカ合衆国における社会奉仕を義務付ける制度等に関する御報告をいたしたいと存じます。   なお,お手元に配布されておりますもう一つの参考資料も用いながら,お話をさせていただきます。   今回,私は,アメリカ合衆国カリフォルニア州にまいりまして,連邦,州及びロスアンジェルス郡の制度に関する調査を行いました。   カリフォルニア州では,刑務所の過剰収容が非常に大きな問題になっておりますので,まず,その状況について,参考資料を参照しながら,簡単に御説明をいたしたいと存じます。  1ページの表を御覧下さい。字が小さくて恐縮でございますが,左上の項目Aの「TOTAL INSTITUTIONS」内に,ローマ数字のⅠ,さらにアラビア数字の1がございます。その項目の数字が同州の刑務所等の収容人員を示しており,164,239人となっております。この数字を右にたどりますと,200.5という数字が出てまいります。これを上にたどりますと,「PERCENT OCCUPIED」という項目があり,これが刑務所等の収容率となります。そのすぐ左には「DESIGN CAPACITY」という項目があり,刑務所等の収容定員82,436人に対し,本年9月19日現在,約2倍の人員が収容されていることが分かります。   2ページのグラフは,刑務所等の収容定員と収容率に関する経年変化を示したものです。1986年から昨年までの推移が示されております。   3ページは,現地の新聞記事で,カリフォルニア州が刑務所の過剰収容問題に対応するため,総額61億ドルの予算措置を講じ,刑務所の新設等をすることを報じたものです。   4ページから7ページは,連邦法域及び州法域における罪種別の科刑状況に関する資料です。本日は,その詳細に立ち入る余裕はございませんが,適宜,御参照いただければ幸いです。   それでは,最初に,社会奉仕を義務付ける制度に関して,カリフォルニア州及びロスアンジェルス郡の制度を中心に,御報告をいたしたいと存じます。   この制度は,自らの犯した犯罪によって与えた害につき,社会に対して償わせるため,無報酬の労働をさせることを内容とするもので,アメリカ合衆国では,1966年にカリフォルニア州アラメダ郡で,低所得の女性交通違反者に対する罰金に,この社会奉仕を代替させて,ジェイルへの拘禁を回避する,つまり,罰金が払えずに拘禁されることを回避するためのプログラムとして実施されたのが最初だとされております。この試みが注目を集めまして,1970年代以降,全国に広がっていったということです。   この社会奉仕の制裁としての位置付けですが,カリフォルニア州では,刑罰として科される場合と,保護観察の条件として課される場合とがあります。一般的には,種々の制裁の中では,罰金より重く,薬物濫用治療よりも軽いという位置付けが行われているようです。   その目的につきましては,社会奉仕の期間が終わるまでは,対象者の自由が制約されるという意味で,制裁としての側面を有する一方,対象者に社会において価値のある活動を行わせることを通じて,自分の評価を高め,社会からの隔絶を減らすなどの効果も期待できる,と説明されております。金銭的制裁との関係では,資力がない人についての場合と,莫大な資産を有していて財産刑を科しても制裁としての意味が余りない場合について,社会奉仕が意味を持つ場合がある,ともいわれております。   社会奉仕がかされる場合としましては,先ほど申しましたように,刑罰として科される場合と,保護観察の条件として課される場合とがございます。  刑罰として科される場合の具体例につきましては,レジュメにいくつか列挙いたしました。例えば,公共施設や公共交通機関において,料金を支払わない行為に対しては,250ドル以下の罰金及び30日間で48時間以下の社会奉仕が,法定刑として規定されております。   保護観察の条件として課される場合の具体例につきましては,一定の落書きを行った者に破壊行為や落書きの前科がある場合,ジェイルでの6月以下の拘禁,2,000ドル以下の罰金又はその併科がその法定刑として規定されるとともに,保護観察の条件として,350日間に400時間以下の社会奉仕を課すことができると規定されております。   社会奉仕は,このように,個別の犯罪に対応する,保護観察の条件として規定されるほか,裁判官の裁量に基づいて課すことができ,さらに,カリフォルニア州刑法典1203.1条(g)は,暴力的でない犯罪又は重大でない犯罪で有罪とされ,保護観察の条件として社会奉仕を命ぜられた者につき,落書きの消去に参加することを要するか,検討するものとしており,法律に,社会奉仕の具体的内容が規定されることもございます。   したがいまして,カリフォルニア州では,社会奉仕に関し,刑罰として科される場合と,保護観察の条件として課される場合とがあり,後者については,法に明定されている場合のみならず,裁判官の裁量によって課されることがあるということになります。   これに対して,連邦法域に目を向けますと,社会奉仕は,それ自体刑罰である保護観察の付加的条件として課されると規定されております。量刑ガイドラインに付された注釈では,社会奉仕は,一般に,400時間を超えて課されるべきではないとされ,その理由として,より長期にわたる社会奉仕を命ずるときには,その実施機関に,どこでその奉仕活動を行わせるかということなどに関し,外部との調整を行い,実施状況を把握するなどの事務が課されることになるため,負担が重くなることが挙げられております。   ここで再びカリフォルニア州の制度に話を戻しますと,社会奉仕を制裁としてかすことについては,裁判所と検察官がその決定権限を有しており,検察官の同意を得て裁判官が命ずるとのことでした。その判断の前提として,保護観察官が調査報告書を作成し,裁判官は,そこに示された勧告,犯罪の性質,対象者の前歴等を考慮することになっております。   先ほど,刑法典1203.1条を御紹介いたしましたが,そこに規定される一定の者については,社会奉仕命令の対象から除外される一方,暴力的でない犯罪又は重大でない犯罪で有罪とされ,保護観察の条件として社会奉仕への参加を命ぜられた被告人については,保護観察官において,その社会奉仕の実施に当たって,地域の高齢者の家屋の修繕又は庭の手入れ及び高齢者施設の修繕に参加することを要するか,検討するものとされております。   そして,社会奉仕の時間,終期,活動内容,命令遂行を確保する責任者は,裁判所において決定するものとされ,重罪事件のほとんどに関しては保護観察官が,軽罪事件に関しては裁判所書記官が,それぞれ,対象者をボランティア団体などに付託して,社会奉仕活動に従事させるとのことです。   具体的には,例えば,街路や公園,高速道路の清掃,落書きの消去,家屋の修繕,庭の手入れ,食事の配送といった活動が行われており,これらの仕事への割当てについては,各種のボランティア団体が関与し,保護観察官とともに,どの場所で,どのような仕事を行わせるのが適当か,あるいは,不適当か,という両面から検討を行い,配置先と仕事を決めることとなります。   例えば,その対象者が犯した犯罪の内容が,その配置先を決める上で問題になることもあり,高齢者の貯金を詐取したことで処罰された人が,地域の高齢者施設で活動することは避ける,教会の牧師など,対象者の知人が社会奉仕活動の監督者になるような場所に配置することは避ける,といった配慮を行っているとのことです。   この社会奉仕命令の執行については,裁判所が責任を有しており,先ほど申しましたとおり,軽罪事件では,対象者は裁判所書記官によってボランティア団体などに付託され,社会奉仕を無事終えた者は,再び裁判所書記官のもとに赴いて,その団体への登録,進捗状況,その活動に関する証明を提出するといった手続を踏むものとされております。   これに対して,ほとんどの重罪事件では,保護観察官が,作業の割当てを行うボランティア団体などに対象者を付託した後,その団体を訪問し,対象者が実際に活動を継続しているかどうかを確認するために報告を求めます。対象者の側も,月に最低一回は,保護観察官のもとに出頭することを求められ,社会奉仕命令を終えると,保護観察官に報告を行い,保護観察官がボランティア団体にその事実を確認して,最終的に裁判所に報告をするといった手続を踏むものとされております。   続いて,対象者の付託先は,各種ボランティア団体などで,これらの団体が,さらに,余り重労働ではない作業について無償の助力を必要としている非営利団体あるいは政府系の機関に,組織的な奉仕活動を提供します。このような助力を求めている団体は多数存在していて,その中には,地域の宗教団体のほか,地域の公園や市の保守点検部門のように,公的な財政支出の行われている機関もあるとのことでした。   なお,訪問先の裁判官が強調していたのは,カリフォルニア州交通局との関係でございまして,ロスアンジェルス郡の裁判所では,州交通局が管理している高速道路,幹線道路及び州道の清掃隊に社会奉仕を命ぜられた者を付託しているとのことでした。ほかに,カリフォルニア州には,落書き消去のためのプログラムもあり,多くの者が作業に従事しているとのことです。   これらの作業を確保する方法については,現実に需要は非常にたくさんあるため,裁判所として,特に宣伝はしていないとのことでした。また,対象者の付託先となるボランティア団体には,例えば,Red Cross,The United Way,Goodwillなどがございまして,そこに対象者を付託し,どのような仕事に配置されるかもそこで決まる,ということでございました。この仕事への割当てが適切になされているかについても,確認が行われます。   なお,ロスアンジェルス郡は,約1,000万人の人口を擁する大都会ですが,カリフォルニア州には,都市部ではない地域もございます。そのような地域では,付託先となるボランティア団体を確保できないところも存在しておりまして,そこでは,社会奉仕を命ずる前提条件を欠くこととなるため,保護観察官は,量刑判断のための報告において,ジェイルに拘禁することを勧告するとのことでした。   対象者を受け入れるか否かについては,社会奉仕命令を適時に完了させる責務を負うボランティア団体が,対象者の有する技術・技能を確認し,さらに当該地域の様々な需要を踏まえて,決定します。その際,対象者の技能,関心,健康上の制約,交通手段,子供の有無等につき,面接を行った上で判断し,作業を行う場所に関しては,複数の選択肢からその対象者に選ばせることも可能だとのことです。   監督に関しては,裁判所から対象者の進捗状況に関する情報を求められた保護観察官は,報告のため,ボランティア団体に接触をして情報収集を行います。   ここで資料を紹介いたします。参考資料8ページを御覧下さい。これは,あるボランティア団体が,受け入れた対象者の配置先に設置している,指紋照合による登録装置のイメージ図です。対象者がこの装置に指で触りますと,あらかじめ登録された指紋との照合が行われ,次の9ページのように,何時何分にだれそれが出頭した,という記録が自動的に作成されます。帰るときも同じく指紋照合による登録が行われます。このようにして,対象者の,言わば出勤状況の確認・記録が行われているとのことでした。対象者に関する情報自体は,非常に安全な形で管理されており,同様のシステムは,先ほど紹介いたしました州の交通局でも用いられているとのことです。   以上が社会奉仕命令の実施手続ですが,その際,対象者が出頭しないといった事態が生ずることがありますので,さらに,その場合への対応について御説明したいと思います。   保護観察の条件として課される社会奉仕命令への違反に対しては,裁判所によって,条件の変更又は保護観察自体の取消しが行われることがあります。そのための手続は,裁判所の職権により,又は対象者,検察官,保護観察官の申立てによって開始され,聴聞を実施した後に,違反の認定及び条件変更等の判断が行われます。   条件の変更として,社会奉仕のための期間を延長する,社会奉仕の時間を追加するといった対応も可能ですし,悪質な違反に関しては,拘禁することもできます。ただ,保護観察の取消しまで至るのはかなりまれで,基本的には,新たな犯罪行為を行った場合に取消しが検討されるようです。   続いて,ボランティア団体等の受入機関は,対象者のプライバシー又はその秘密に関わる情報を委託されることになるため,州法上,守秘義務を課せられております。   また,社会奉仕活動中に,不幸にも,事故が起きてしまった場合,保険によって対応するとのことでした。   さらに,社会奉仕に関する財政的基盤に関し,ロスアンジェルス郡保護観察局は,ボランティア団体から提供される役務について,何らその財政上の支出を行っておりませんが,ただ,そのボランティア団体は,対象者から手数料を徴収することができる,とのことです。   このような社会奉仕命令と過剰収容との関係につきましては,社会奉仕が拘禁に代わる手段として命ぜられることによって,ジェイルでの拘禁を減らすことに貢献をしていることは否定できないようです。   社会奉仕を義務付ける制度に対する評価につき,訪問先の裁判官は,社会に役立つ,償いをする,拘禁に掛かる費用を省くといった効果のうち,最も大きいのは経済的な点だが,一般市民の見方について,適切な対象者が選ばれ,現実にその者が活動している姿を見れば,社会の理解も得られ,彼らを許そうという気持ちにもなるのではないか,とも話しておりました。   以上が社会奉仕を義務付ける制度に関する御報告でございます。   中間処遇制度に関する御報告に移りたいと存じます。レジュメにお示ししたとおり,中間処遇制度には,様々な種類のものがあり,実際に運用されておりますが,今回の調査では,ロスアンジェルス近郊の,連邦のハーフウェイ・ハウスを訪問する機会を得ましたので,連邦における制度の概要につき,御説明,御報告をいたしたいと存じます。   まず,ハーフウェイ・ハウスの有する意義は,被収容者に対する統制ないし指導監督を行いながら,その自律性獲得と社会復帰を援助するという点にあるとされております。また,1日当たりの経費について,刑務所での拘禁には63ドル57セント,ハーフウェイ・ハウスを含む社会内矯正施設には55ドル7セント,保護観察官による監督には9.46ドルの経費が掛かっている,という統計がございまして,財政上の支出削減の効果を指摘することもできるかと存じます。   このハーフウェイ・ハウスを含む連邦の社会内処遇施設は,司法省矯正局の所管で,本年9月20日現在,被収容者総数199,485人のうち,11,728人に対する処遇を行っております。   この社会内処遇の制度上の位置付けにつき,連邦量刑ガイドラインによりますと,ハーフウェイ・ハウスを含む社会内拘禁は,保護観察又は仮釈放の条件として課すことができる,と規定されております。そして,ハーフウェイ・ハウス型の社会内処遇施設では,一般に,6か月を超えない範囲で,様々な処遇プログラムを実施するものとされ,ただ,薬物濫用の治療プログラムに関しては,その期間を超えて実施することができるとされております。   現在,ハーフウェイ型の施設は全国に257箇所あり,すべて民間の事業者によって運営されているとのことです。施設では,職業訓練,職業あっせん,施設外での訓練やカウンセリングを実施しているため,施設が公共交通機関に近い場所にあること,あるいは,その事業者が交通手段を提供することが要件とされております。また,施設に置くべき役職と職員数があらかじめ定められ,職員に対して,所要の訓練を施すことも必要とされます。なお,ボランティアの活用も推奨されております。   他方,この施設の被収容者に対しては,事業者に生活費を支払う義務が課されており,施設外で働いて手にした,1週間当たり総収入の25パーセントに相当する費用を徴収されます。   このような中間処遇のための施設は,1960年代に矯正処遇における地域社会の役割が強調されたことに伴い,連邦の財政的支援を得て発展を見せたものの,その後の景気の後退,犯罪者に対する世論の硬化を受けて,順調な拡大にはいったん歯止めがかかりました。   ただ,他方で,刑務所の過剰収容問題が生じてきたことから,それまでとは別の観点から,その活用が模索されることになりました。この点につき,受刑者の社会復帰を支援するといった側面のほか,新たに生じた,より危険な受刑者群を管理統制する手段としての側面も付加されてきている,という指摘がございます。   ハーフウェイ・ハウス型施設への収容は,宣告された拘禁刑につき,連邦の刑務所で拘禁すべき期間の最後の段階で行われる処遇で,各種制裁の中では,一般に,在宅拘禁とブート・キャンプの間に位置すると考えられているようです。   この施設における処遇につきましては,まず,刑務所から移送される資格に関し,不適格事由として幾つかのものが定められ,例えば,性犯罪者,医療上の処遇を要する者,さらに,地域社会に対する重大な脅威となる者などは,不適格だとされております。   2000年の統計では,釈放された40,674人の受刑者のうち,55パーセントの者が,不適格等の理由で社会内処遇施設に移送されませんでした。もっとも,刑務所内でも様々なプログラムが実施されており,それを受けることはもちろん可能です。   受刑者が,刑務所から移送される場合,移送先の決定は矯正局において行われますが,受入側施設において不適当だと判断することもあり,受入を拒絶することも,制度としては予定されております。   この移送の決定に関しては,釈放予定日の11週から13週前に釈放準備計画を確定し,様々な調整を行うとのことです。刑務所側で,施設での収容日数を定めた上で,刑務所長の承認を得て,移送先の施設に打診し,それが受け入れられると,実際の移送手続を進めるものとされておりますが,受刑者本人が行きたくないと,拒否をすることもあるようで,その場合には,その意思を尊重することもあり得るとのことです。過去に同様の施設での処遇が不首尾に終わった経験を持っていることや移送先とされた施設に既に収容されている他の受刑者と衝突する可能性などが,その理由となり得るようです。   実際に施設に移送されると,職員は,入所時に,個別の面接を実施するとともに,施設の規則に関する説明を行い,受入書類を完成させます。資料10ページの書式は,中間施設における社会内処遇プログラムに参加することに関する同意書で,施設への移送に先立ち,受刑者が署名し,他の書類とともに施設に送付されます。施設での処遇は,拘禁刑の最後の段階として位置付けられていて,延長はなく,平均の収容期間は,2000年の統計では,104日です。   その間の処遇として,事業者からは,就職支援,住居を確保するための支援,薬物・アルコール濫用の治療,生活技能訓練など様々なプログラムが提供されます。   収容された受刑者には,その入所から15日以内に,勤務先を確保することが期待されており,職業支援に関する専門の職員が地元の雇用先との調整を行っております。   アルコール・薬物の濫用に関する治療やカウンセリングは,資格を有する職員によって,受刑者の個別の必要と濫用歴等に基づいて提供され,カウンセリングについては職員が,また,治療については専門の認可事業者が,それぞれ実施するとのことです。   収容後の処遇は段階的に展開され,収容の期間は,刑務所から地域社会への移行段階,釈放前段階,在宅拘禁という,自由に対する制約度の異なる,三つの段階に区切られております。   まず,刑務所から地域社会への移行段階では,施設からの外出は可能ですが,それは,仕事,宗教活動,許可された余暇活動,プログラム実施上の必要等の用件に限定され,それ以外の時間は,施設内に居なければなりません。この段階では,家族等との面会も施設内に限られます。   次の,釈放前段階に進めるか否かは,プログラムの進捗状況によって判断されます。この釈放前段階は,週末又は夜間の外出も可能で,地域社会や家族と関わる機会が増えますが,外出に先立ち,その日程について,職員の承認を受けることが必要とされております。   ここまでの二つの段階では,受刑者は移送された施設内に居住しておりますが,第三の,在宅拘禁の段階では,自分の家に戻り,そこで生活することが許されます。ただ,その場合,その者の行動を監視することが必要となります。その手段として,電話,直接の接触のほか,電子監視機器が用いられることがあります。   受刑者に対する監督及び施設の安全確保については,施設に出入りする者全員に関する記録をその都度作成し,受刑者の外出に関しても,交通手段,接触した相手,外出時刻,目的地,外出目的,予定帰所時刻,帰所時刻,確認した職員名等の記録を保管しているとのことです。   長時間又は長距離の外出には,特別の「外出許可」を受けることが要求されております。   施設では,薬物検査,飲酒検査の実施が義務付けられ,さらに,施設への持込禁止物品等が定められておりますので,そのことを事前に周知した上で,居住空間や所持品の検査も行われます。薬物ようの物件が発見された場合のため,薬物判定キットも常備されているとのことでした。   受刑者が退所する際,事業者は,釈放関係書類を確認するとともに,釈放の事実を司法省矯正局地域事務所の社会内処遇管理者に連絡し,退所から5日以内に,受刑者に関する最終報告書を作成し,同じく社会内処遇管理者に送付する手続を執ることになっております。   施設内での規律違反に関しては,禁止行為が,その重大性に応じて4つの範疇に区分され,対応する制裁が定められております。規律違反者に対して制裁を課す場合には,施設職員による調査を行い,施設懲戒委員会による審理が行われますが,重大な違反事案に関しては,地域事務所の社会内処遇管理者が関与することとされております。   施設を運営する事業者には,守秘義務が課され,社会内処遇管理者の許可なしに受刑者に関する資料を開示することはできません。   これまで述べたことと重複する部分もございますが,最後に,ハーフウェイ・ハウス型施設における収容の利点として,一般に,刑務所での収容時と異なる自由な環境で暮らすための再調整が容易となる,より条件のよい仕事を見付けることが可能となる,家族とのより親密な関係がもたらされる,薬物使用及び飲酒をやめることが可能となる,仕事を持ち家族を経済的に支えることが可能となる,といったことが指摘されております。   なお,オハイオ州における調査によりますと,ハーフウェイ・ハウスでの処遇には,通常の保護観察や仮釈放に比して再犯を減らす効果が認められる,ただ,その効果は,すべてのプログラムについて認められるわけではなく,危険性の高い受刑者に対して,また,質の高いプログラムにおいて,認められる,との結果が出ているとのことです。   以上が,中間処遇制度に関する御報告でございます。   未決拘禁制度に関する御報告に移りたいと存じます。今回の調査では,カリフォルニア中央地区を管轄する連邦地方裁判所に置かれた関連部署を訪問する機会を得ましたので,連邦における制度の概要につき,御説明,御報告をいたしたいと存じます。   まず,連邦法では,「相当な理由」の存在が逮捕の要件とされております。逮捕要件の有無につき,逮捕に先だって裁判官による令状審査が行われる場合もありますが,無令状逮捕も多く,その場合は,逮捕後に行われる「相当な理由」に関する審問の際に,裁判官が要件の有無につき判断することとなります。   この逮捕された者については,起訴前の段階から,一定の条件の下,身柄拘束からの解放が認められており,被疑者・被告人が防御活動を行い,また,無実であり得る者の拘禁を回避するとともに,拘禁の費用を省くことが可能となっております。   ただ,被疑者,被告人が自由の身となりますと,逃亡,証拠破壊又は他人に対する加害のおそれも生じてまいりますので,身柄拘束からの解放に際しては,それらのおそれを解消するため,様々な条件を付することが必要となります。   このため,古くから,保釈金の納付による釈放が行われてきましたが,保釈金の設定が機械的に行われることが多く,個別の事情を十分考えていないのではないか,また,裕福でない被疑者,被告人の場合には,設定された高額の保釈金を支払うことができず,身体拘束が長引いているのではないか,と指摘されたこともございました。そのような状況を改善するべく,1966年の法改正では,自己保証による保釈を最大化することが目指されました。   そこでは,金銭による保証のみならず,自己保証の方法として,本人の誓約書の提出によって釈放を得る制度が規定されましたが,更に,1984年の法改正では,被疑者・被告人が公判に出頭する見込みを個別的に評価し,自己保証による釈放又は金銭によらない釈放を促進することが目指されるとともに,釈放中に犯罪を行うおそれのある被疑者・被告人を「予防的に」拘束することを認める規定が設けられました。   現在,未決拘禁からの釈放の方式には,自己保証又は出廷担保金証書によるものと,保釈金等によるものとがあり,自己保証は,本人が出頭を誓約することにより,出廷担保金証書は,出頭しなければ金銭を支払うことを誓約することにより,現実の金銭納付なしに,被疑者・被告人を釈放するものです。裁判官としては,まず,この方式による釈放が可能か否かを検討するものとされ,その際,釈放中に犯罪を行わないこと,一定犯罪の被疑者・被告人はDNA型資料を提供すること,そして,裁判官が,上述した方式では被告人の出頭が確保されない又は他人若しくは地域社会の安全を危険にさらすと判断しないことが,釈放の条件として規定されております。   これに対して,自己保証又は出廷担保金証書による釈放が適当ではないと判断されるとき,裁判官は,保釈金による保釈の適否を検討することとなります。その際,自己保証又は出廷担保金証書による釈放の場合と同様,釈放中に犯罪を行わないこと,一定犯罪の被疑者・被告人はDNA型資料を提供することが,釈放の条件として規定されておりますが,更に追加して,レジュメに示した,様々な条件を付すことが認められております。   なお,これらの条件には,逃亡を防ぐという観点からは説明が難しいものも含まれておりまして,先ほど述べた,拘禁目的の変容・拡大のあらわれとみることができるように思われます。  ここまで述べた釈放の方式,条件を勘案して,釈放の可否について判断するのが,拘禁審問と呼ばれる手続で,重大犯罪等に関しては,裁判官が,検察官の請求により審査を行うのに対し,逃亡又は司法妨害等の重大な危険がある場合には,裁判官が,検察官の請求により又は職権で審問を行う制度となっております。その際に考慮されるのは,犯罪の性質及び周辺事情,有罪の証拠の強さ,被告人の前歴,他人又は地域社会に対して生ずる危険の性質及び重大性といった要因だということです。   次に,釈放中の逃亡等を防ぐための措置を,レジュメに示しました。具体的には,不出頭行為の犯罪化,電子監視の利用,釈放中の犯行に対する加重処罰,条件違反に対する制裁が規定されております。   以上が,釈放に関する制度の概要でございます。  続いて,釈放に関する事務に関しましては,地方裁判所に,Pretrial Services Office,という公判前釈放事務を担当する部署があり,その職員が釈放の判断に必要な情報を集め,対象者が釈放された場合には,その監督を行っております。この部署は,1982年に,保護観察事務を担当する部署から独立し,現在では,連邦地方裁判所のある94地区すべてに置かれています。   この部署が担当する,調査と監督という二つの職務のうち,調査に関する側面については,逮捕後の早い段階で,Pretrial Services Officer,という公判前釈放事務の担当官が被疑者と面接し,必要事項の聴取を行います。さらに,被疑者本人だけではなく,家族,友人,同僚,雇い主等とも面接し,そこで得られた情報を基に,釈放の可否に関する意見を裁判官に提出いたします。   監督に関する側面については,釈放された被疑者・被告人に対しても,薬物治療やアルコール治療等,様々なプログラムが用意されておりますので,手続の早い段階で,対象者に適切なプログラムを判定した上でこれに参加させ,必要な処遇を行います。さらに,在宅拘禁からの逃亡を防止するために行われる監視に際しては,電話,自宅での面会のほか,電子機器を用いることもあるとのことです。今回の訪問先であるカリフォルニア中央地区では,GPS技術を用いた監視を行っておりました。  この部署は,量刑手続が終了するまで対象者の監督を行い,その後は,例えば保護観察に付された者については,保護観察官に引き継ぐとのことでした。   在宅拘禁には,夜間の外出禁止,通勤・通学を除く外出禁止,通院・礼拝を除く24時間の在宅拘禁など,行動制約の程度としては様々なものがありますが,行動制約の実効性を確保するために,電子監視が命ぜられることがあり,先ほど申しましたとおり,GPS技術を用いた監視が行われております。なお,GPS技術を用いた監視には,大別して,能動的,受動的という二つのシステムがあり,監視者が,対象者の位置をリアルタイムで把握できるものを能動的ないし同時的GPSシステム,これに対して,対象者の外出中の行動に関する情報をひとまず装着・携帯している機器の記憶装置に保管し,帰宅後,対象者が,自宅にある,読出用機器に情報を読み取らせることによって,位置情報をまとめて監視者において取得できるものを受動的GPSシステムと呼んでおります。カリフォルニア中央地区では,従来,電話線を用いた無線方式による監視機器を用いておりましたが,近年,能動的GPSシステムへと切り替えを行ったとのことでした。   同地区における電子監視の対象者には,ギャングの構成員,薬物密売人,性犯罪者,コンピュータ詐欺,アイデンティティ情報の窃盗,ホワイトカラー犯罪の被疑者・被告人がおり,180人から190人の者を,監視班の職員5人で分担しております。   費用に関しては,ジェイル等における拘禁には1日62ドル掛かるのに対して,電子監視のうち,能動的GPSシステムでは8.75ドル,受動的GPSシステムでは4.60ドル,さらに,電話線を通じた無線方式による従来型の機器では3.30ドル掛かる,とのことです。   今,お話しいたしましたのは,Pretrial Services Office,という公判前釈放事務を担当する部署が実施している,未決段階における電子監視の概要ですが,最後に,項目を改めまして,保護観察中の者又は仮釈放された者に対し,在宅拘禁の条件として行われるものも含め,さらに詳しく,電子監視制度に関する御報告をいたしたいと存じます。   アメリカ合衆国では,電子監視に用いられる機器は,1960年代に,精神障害者の脱施設化運動の中で開発されたもので,1983年に刑事司法分野に導入され,その後急速に浸透するに至ったとのことです。   この急速な浸透の要因として,電子監視下での在宅拘禁が刑務所の過剰収容を解消する手段として位置付けられたことのほか,近年の技術の進展が指摘されております。   この電子監視の方法としては,まず,従来型の,電話線を用いた無線技術による監視がございます。この方法では,対象者の身体,例えば,手首や足首の周りに装着された発信器からの信号を,家の中に設置された機器で受信し,電話線を通じて,対象者の家の出入りの事実を担当職員に知らせるといった仕組みで監視が行われるのに対して,先に述べましたGPS技術の導入によって,対象者の外出後の行動を精確に把握できるようになりました。   ここで参考資料を御覧いただきたいと思います。19ページは,電子監視に用いられる機器でございます。まず,上段左の,アンクレット型の機器を対象者がその足首に装着いたします。腕時計より一回りから二回りほど大きい,という印象でした。その隣は,無線技術による監視を実施する際に,対象者の家に設置される機器です。   さらに,その右に,携帯電話型の機器がございます。これは,監視の際にアンクレット型の機器とあわせて利用されるものです。GPS技術による監視の場合にも,足首の周りに発信器を装着いたしますが,同時に,対象者にこの機器を携帯させます。この機器によって,担当職員から対象者に直接連絡を取ることもできます。ただ,対象者は担当職員からの連絡を受けるだけで,この機器を使って対象者から担当者に架電することはできないとのことです。機能も外見も,通常の携帯電話と変わりがありませんので,電子監視を受けていることは,一般の人には分かりません。   19ページ下段の,銀色の携帯電話及び小型端末状の機器は,担当職員が携帯するもので,クリーム色に見える部分はその画面上に映し出された地図です。監視対象者が今どこにいるかを,地図上で把握をすることができます。従来は,大きな機材を担当者自身も持ち歩いていたとのことですが,機材は,非常に小型に,また,軽量になったとのことです。   次に,資料20ページを御覧いただきますと,衛星写真上に,赤い線で囲まれた長方形の区域が二つございます。これは,GPS技術を用いた監視を行う際に,あらかじめ設定された,対象者の立入禁止区域を意味します。もし,対象者がその区域に立ち入れば警告が発せられることになっております。   資料21ページでは,衛星写真の右半分に赤い点が御覧になれるかと思います。これは,ある一日の対象者の足跡を記録したものです。仕事場や自宅のように,対象者がそこに長時間とどまる場所については,資料のように,赤い点が重なり合って表示されるとのことです。このようにして,対象者の位置の把握が行われております。   なお,監視対象者によっては,例えば,ペースメーカーに影響が出る,あるいは循環器系の病気のため足首に発信器を付けることができない場合もあるようですが,その場合には,対象者宅に声紋同定器を設置し,その在宅を確認するとのことです。  また,飲酒検知機を設置し,対象者の禁酒状況を監視することも行われております。 担当職員によりますと,監視に当たっては,上述しました機材を活用する一方,それに完全に依存しているわけではなく,例えば,電話や自宅の訪問など,直接確認も随時実施しているとのことです。   電子監視の実施に当たっては,まず,レジュメに掲げたような,様々な事情を考慮して,監視の対象者としての適性を判断します。   そして,在宅拘禁プログラムには参加条件がありますので,その条件を遵守する意思を対象者に確認しなければなりません。例えば,電話設備に関しては,従来型の,無線技術を用いた監視を行う場合,キャッチホンや転送機能を利用できない,コードレス電話ではないといったことが必要となりますし,在宅拘禁中の対象者の勤務形態に制約が加わることもありますので,個別に説明した上で同意を得る必要があるとのことです。   なお,通常は,ジェイルで拘禁されるよりは,自宅で暮らす方が良いだろうと弁護人からも説明されるようで,対象者から同意を取得する上での問題は特にないとのことでした。   この電子監視に掛かる費用については,その対象者が支払いを求められることがあります。   最後に,電子監視に対する評価でございます。 まず,一般的には,ジェイルにおける拘禁に比べ,自由制約の程度は少ないのですが,そうは申しましても,その期間につき現実には限界があり,電子監視の期間は180日を超えないことが望ましいとの指摘もみられます。今回の訪問でも,担当職員から,監視期間が8か月を超えると,機器を破壊したいという衝動を訴える者が出てくることがあり,余りに長い期間監視下に置くことを予定すべきではないのかもしれないという指摘がありました。裁判官が,監視期間として5年を命じた例もあったそうですが,それは非常に異例だということでした。また,ネット・ワイドニングの問題も否定はできないとのことです。   拘禁に対する代替策としての側面については,監視状態にあるとはいえ,家族と暮らす,必要なサービスを受ける,更に仕事を続けることができる,という点で,在宅拘禁を通じて,社会の構成員としての自覚を培う,その基盤を提供する利点はありますが,ただ,ずっと自宅に居なければなりませんので,家族との関係が深まる一方で,衝突の機会も増える,ということも指摘されております。   また,先ほども述べましたが,拘禁に比べ,費用は低廉で済むとのことです。   再犯抑止の効果につきましては,それがあるという調査研究もありますが,他方で,その結果は,電子監視に付される者が,もともと危険性の低い者であることを反映しているとも考えられるとして,長期的な効果は,現時点では不明確だとする指摘もみられます。   なお,監視担当職員の立場からは,この手段が実施,利用できるようになって,直接対象者の自宅を訪問する必要がなくなり,時間ないし手間が掛からなくなった面はあるが,違反に関する警告には,迅速な対応を求められるので,その点の負担は変わらないということでした。 最後に,電子監視に対する一般市民の受け止め方につき,ニューヨーク州の市民に対する調査結果を簡単に御紹介したいと思います。 まず,電子監視を用いることが適当な犯罪に関する質問に対しては,飲酒運転,被害額が1,000ドル以下の財物の損壊・窃盗等については,半数を超える人が利用を是認する一方で,身体犯や薬物事犯については,その利用を支持する人は少ないという結果が出ております。   電子監視とプライバシー侵害に関する質問に対しては,プライバシーの不当な侵害だとみる人が6パーセントで,多くの人は一応許される制度だとみております。   ただ,監視によって把握される情報に関する質問に対しては,対象者の居場所確認のために使うことについては,90パーセント弱の人が是認をしているのに対して,在宅中の対象者の様子を具体的に把握することについては,70パーセントを超える人が適切ではないと考えております。   以上,非常に雑ぱくな御報告で,レジュメに記載しました情報につきましても,相当に省いたものがございますが,どうぞ御了承をいただけますと幸いに存じます。私からの御報告は以上でございます。 ● どうも○○先生,非常に詳細かつ有益な御報告をありがとうございました。   ただいまの御報告を受けまして,まず質疑応答をしていただいて,その後に意見交換,御議論をしていただきたいと存じます。   何か御質問がございましたらお願いいたします。 ● いろいろな点で大変興味深い御報告だったと思います。   やはり,アメリカは悩みも大きいし,その代わり最先端を行っているという印象を受けますが,まず社会奉仕を義務付ける制度について一つ,二つ質問したいと思います。   ボランティア団体ないしボランティアというのが,非常に大きな役割を占めているように思いますが,それに対応するものを日本でイメージできるでしょうか。例えば,アメリカで教会が果たしている役割というのは,日本ではどうなるでしょうか。 ● 社会奉仕を命ぜられた者を付託されるボランティア団体には,その能力や適性等を判断して,具体的な仕事を割り当て,命令を実行させるという役割があり,その責務を果たすためには,一定の専門的能力を持った職員が必要です。また,先ほど,ある団体の利用している,指紋照合による登録システムを御紹介いたしましたが,そのような対応にも,人的・物的な資源を必要とします。 また,これらの団体には,郡保護観察局から財政的支援は行われていないとのことで,その活動には,一般からの寄付が大きな役割を果たしているようです。これらの団体は,キリスト教に基盤を置くものが多く,そのような宗教的・文化的背景も,現在の制度の形成に寄与しているように思われます。 我が国について,このような組織的な基盤を有する団体に対応するものをイメージするのは,アメリカとの間の文化・歴史の違いも考慮いたしますと,正直申しまして,難しいように感じます。 ● それでは,もう一点。   社会奉仕という形で社会に有用な労働をするということは,対象者の自己評価を高める,あるいは更に対象者に対する社会の理解を深めるという御指摘があったと思いますけれども,これは建前でしょうか,それとも現実でしょうか。 ● 今回の訪問でお話を伺ったのは,保護観察官の方でしたので,社会奉仕には,それを命ぜられた者の側,また,社会の側に,一定の意義があることを強調されておりました。ただ,社会奉仕を命ぜられ,作業している者を見下す人もいるとのことですので,社会の側の受け止め方は,必ずしも好意的なものばかりではないのかもしれません。残念ながら,今回はその機会が得られませんでしたが,例えば,実際にそのボランティア団体で活動している方,あるいは社会奉仕活動をしている対象者に話を聞けば,また違う話が出てくるのかもしれないという気がいたします。   なお,社会奉仕に関与しているボランティア団体のウェブサイトでは,初めは,対象者自身もその意義について懐疑的な気持ちで社会奉仕に参加することがあるけれども,他者から肯定的な評価を受けることが,その者の自己評価につながるという説明も目にいたしました。 ● 社会奉仕を義務付ける制度について,二点,確認的な質問をさせてください。   一点目は,保護観察の条件として社会奉仕を義務付けるという場合について,レジュメの2ページに例が挙げられています。ここに記載されている法定刑の意味なんですが,これは,拘禁刑,罰金刑又はその併科のほかに,保護観察というのが,三つ目の選択刑として規定されているということなんでしょうか,それとも,例えば,拘禁刑が猶予される場合に保護観察が付くということなんでしょうか。 ● カリフォルニア州法では,保護観察の条件として課される場合は,刑の宣告又は執行を猶予されているはずです。 ● 独立に保護観察という刑があるというわけではないんですか。 ● ただ,連邦法では,独立の刑と位置付けられています。 ● 保護観察だけを科すということもできるということですね。 ● はい。保護観察の位置付けは,法域によって異なることになります。 ● 分かりました。二点目は,社会奉仕が刑罰それ自体として科される場合と,保護観察の条件として課される場合との振り分けなんですけれども,この条文を見る限りは,保護観察の条件として課される場合は,前科の存在が要求されています。そうすると保護観察に付して,その条件として社会奉仕を課す場合というのは,その意味で,より監視などをする必要性が高い場合であって,そうでない場合は,単に社会奉仕だけを課すというような振り分けになっているという理解でよろしいんでしょうか。 ● レジュメに記載しました落書き行為については,前科がある場合に関して,640.6条(b)項,(c)項で保護観察の条件として社会奉仕が規定され,前科がない場合に関して,同条(a)項で法定刑として社会奉仕が規定されておりますので,640.6条との関係では,前科があると,保護観察の条件として社会奉仕の内容を加重をする仕組みになっていると理解できます。   ただ,一般的にそのような原則があるかということになりますと,前科がなくても,保護観察の条件として社会奉仕を義務付けることは可能ですので,一律に前科の有無を基準に振り分けられているとはいえないように思います。 ● これは,刑罰として科される場合と,保護観察の条件として課される場合との違いにも関わってくるんですけれども,先ほどのお話だと,刑罰として科される場合でも,保護観察官が,言わば監督をしていて,1か月に1回来させるというようなことをやるわけですよね。そうすると,刑罰ではなくて保護観察の条件という場合と,どこが違うのだろうかという疑問があるのですが。 ● この点につきましては,申し訳ございませんが,よく分かりません。立法関係者に調査を行うべきだったかもしれません。 ● 実施機関のところが非常に特徴的だと思うんですね。○○関係官が先ほど触れられましたように,ボランティア団体とここで言っているのは何なのかというのは興味のあるところです。私的なボランティア団体に犯罪者を預けるということは,我々にとっては若干違和感があると思うんですけれども,仕事の現場で保護観察官がどの程度関与しているのかどうかという点ですね。この点,もし判明すれば教えていただきたい。 ● この点につきましても,御報告いたしました以上に,情報を持っておりません。お答えすることができず申し訳ございません。 ● 結構です。 ● 社会奉仕を義務付ける制度に関し御質問させていただきたいのですが,今回カリフォルニア州を調査されておりますけれども,まず前提としてカリフォルニア州においては日数罰金制度を採用しているのですか。 ● 申し訳ございませんが,把握をしておりません。 ● そうですか。そのときに,レジュメには,制度の経緯として,罰金の代替として,恐らくこれは刑罰としての社会奉仕だと思うのですが,発達したと書いてありますが,しかし,罰金を払えないときには社会奉仕に行くのですけれども,レジュメの3の「(2)各種制裁の中での位置づけ」によると,義務付けられた社会奉仕の方が罰金より重い制裁と位置付けられているわけですね。お金が払えないと働かされて,それはより重いものに格上げされるんでしょうか。   同じ疑問が,例えば罰金を払えないときに日数罰金制度を媒介すれば,同レベルで制裁が終わるのですけれども,ぱっと社会奉仕に行ってしまうと,より質の高い制裁になってしまって,それはやはり持たざる者に対する不当な処分ではないかという気がするのですけれども,これは刑法,実体法的な発想ですが,その点についてはどうなんでしょうか。 ● まず,レジュメ3(2)は,制裁の軽重につき,このような順番で一般的には考えられている,という,ある文献の記述に依拠したもので,法律上,そのように規定されていることを示した趣旨ではないことをお断りしなければなりません。その上で,宣告刑としての社会奉仕と罰金とで,常に罰金が軽いといえるか,検討の余地があるかもしれません。 ● 何かそういったグレードについて,法律上は何も定まっていないということですか。 ● 恐らくないと思います。 ● そうですか。それと,同じくレジュメの「4 目的」のところで,「高額の金銭的制裁を支払う余裕のない」と書いてありますが,ここでいう「金銭的制裁」には,3の(2)で言われているところの罰金に加えて被害弁償,これが入っているのですが,あるいは,ほかにも何か,広い意味での金銭的賦課も含められているのでしょうか。 ● これも一般的な指摘として理解しておりますが,特に罰金に限定する趣旨ではないだろうと考えております。 ● ほかにはどういうものが入るのですか。 ● 今,御指摘のありました被害弁償も含まれると思います。 ● ほかには何かないですか。 ● 具体的には,思い浮かびません。実際にも,罰金と被害弁償が問題となる場合が多いと思います。 ● 同じく社会奉仕を義務付ける制度に関連してですが,法的性格として,刑罰として社会奉仕を義務付ける場合と,保護観察の条件として課される場合があるということのようなんですが,刑罰として社会奉仕を義務付けるといった場合に,これまでの議論の中でも,日本の裁判官の今の裁判記録の中で,被告人がその対象者として適格かどうかというのは今の記録上はかなり難しいだろうという議論があったのですが,レジュメを見ますと,裁判官と検察官が適性の判断をするんですけれども,保護観察官の調査報告書に示されたいろいろなもろもろの事情を斟酌するような書き方がされているんですが,これはそうすると判決前に保護観察官が動くということになるんでしょうか。その辺りのことについて。 ● 保護観察官が判決前に量刑事情に関する調査を行うときに,関係する情報を集め,それを報告書の形にまとめて,裁判所に提出をするということになろうかと思います。 ● 未決拘禁制度の御報告のところで,レジュメでいうと「2 公判前における釈放」の「(5)考慮要因」のところについて教えていただきたいのですけれども,この考慮要因の①として,「犯罪の性質及び周辺事情」と書いてあるのですが,これはcircumstancesというだけなのですか。それとも,geographical circumstancesなのですか。 ● 規定の文言では,circumstancesという単語が用いられております。 ● circumstancesが周辺事情なんですかね。それはバックグラウンドとかいろいろなことが含まれ,ここの文脈でいうと,その地域に対する安全感ということで,地域的な目配りということに重点があるようですが,それは④でも挙がっていることでして,①と④とがオーバーラップしているので,①で言う「周辺事情」とは何なのだろうかと思うのですが。 ● 訳語として,不適当であったかもしれません。犯罪に関する事情ということで,犯行に至った事情及び犯行時の状況を含む趣旨で理解いただければと思います。 ● そうですか,分かりました。 ● レジュメの未決拘禁制度のところで,「拘禁審問」という制度について説明してありますが,それによると,検察官の請求によるというのですが,これはちょっと日本の感覚でいうと,保釈に関する請求は被疑者側から出てくるはずですけれども,検察官が請求するというのはどういう趣旨でしょうか。 ● 被疑者を逮捕した後で「相当な理由」に関する審問を行っているときに,そのまま手続が進んでいくと釈放されてしまうかもしれない,そこで,レジュメの「拘禁審問」の箇所に掲げました①から⑤までの一定の犯罪類型に当たる場合に関しては,検察官から釈放条件の審査を求める申立てをすると理解をしております。 ● 今,日本では権利保釈という言葉は余り使われなくなってしまいましたけれども,現行法を制定したときに,基本的には権利保釈であるというので,その例外事由という形で規定を置いているわけですけれども,レジュメのこの部分を拝見して,被疑者は保釈を受けるのが当然の権利であって,それに対して様々な条件を加えて制約するので,検察官が出てくることになるのかなと思いました。例えば,ここには死刑又は無期に当たる場合というのが出てくるんですけれども,死刑に当たる犯罪についても保釈を許すという考え方もあるわけなんですね。 ● カリフォルニア州では,憲法に,保釈に関して,何人も十分な保証によって保釈されるものとする,ただし,死刑に当たる事件で,有罪の事実が明白又はその推定が強く認められるときは除く,という規定がございまして,死刑に当たる事件であるから直ちに保釈を認めないということではないように思われます。また,連邦の場合も,一般的に,死刑に当たる事件だから保釈を認めないとはしておらず,先ほど述べました,法に規定された一定の犯罪類型に当たる場合に具体的に審査をしていくということではないかと思います。 ● 分かりました。 ● 今の関係ですけれども,保釈の手続というと,逮捕されて裁判官の前に連れて行かれて,普通だとそこで保釈条件を付けて保釈するかしないかを決めますよね。そうだとすると,このdetention hearing,拘禁審問というのは,その裁判官の前へのappearanceとは別の手続として何かするということですか。 ● 逮捕した被疑者を裁判官の前に連れて行き,そこで「相当な理由」に関する審問が行われますが,その際に,検察官が申立てをするという手続だと思います。 ● では,実態としては検察官が何か問題点を指摘してこういうことも考慮してくださいと言うという,そういうことになるのでしょうか。 ● はい,そうだと思います。 ● 中間処遇の話に戻りたいと思いますけれども,社会奉仕のところでは,ボランティアというのが大変正面に押し出されていたと思いましたが,中間処遇のところでは,民間からの参加主体は事業者であるということですね。財政当局と契約を行って仕事をすると。刑務所ですら民営化されている時代ですから,ちっとも不思議ではありませんけれども,ただ刑務所民営の場合には,結構その収益性というのが表に出て議論されているので,その点について中間処遇の実施機関,民間の企業というようなものも,やはり収益ということを表に出して議論しているわけなんでしょうか。 ● 訪問先では,直接そのような質問をいたしませんでしたが,事業者の選別は競争入札で行われますので,収益ないし費用の側面が軽視されることはないだろうと思われます。 ● 今の中間処遇の関係なんですが,職業支援を行っているということと,あと生活費として支払いをするということで,当然職業に就いているという前提のようなんですが,仕事先というのは,そういう人間であるということは分かって雇うところが一般的にはたくさんあるという前提なんでしょうか。 ● 施設職員の方に伺うと,対象者の立場については説明を行い,理解した上で雇ってくれるとのことでした。 ● それに別に困難な状況が生じているということはないということですか。 ● 雇用先が見付からず大変苦労しているというお話はございませんでした。 ● それと,中間処遇の関係ですが,例えば薬物関係だとかそういうのでは,職業に就くということではない形の何らかの義務付けがあるように思うんですけれども,そういうことについての費用というのも,結局先ほどのお話だと寄付とかそういうもので賄われているということになるんでしょうか。 ● 事業者は矯正局と契約をしておりますので,処遇上必要な費用については,予算として措置されると理解しております。 ● その薬物濫用の治療というようなプログラムの実施については,その機関に対して矯正側から費用が払われるということになっているわけですか。 ● はい,そのように理解しております。 ● 今のお二人の先生の御質問に関連しているところでして,レジュメで言えば,中間処遇制度の「第3 効果等」という御紹介のところなのですが,最初の段落で①から⑤の五つほどメリットとして挙げられていると思いますが,他面デメリットもあるかと思います。デメリットとして何か認識されていることはないのかということです。   それから,レジュメのその部分で「再犯防止の効果は危険の高い犯罪者に対して認められること」という記載があり,これはなかなか重大な指摘なのかなと思うのですけれども,どういうふうな犯罪者,今のお話ですと薬物ですとかあるいはアルコール中毒患者についてということかもしれませんが,これが実際に本当であれば大変重大なことなんですけれども,どういうふうな中間処遇をすることにより,本来再犯の危険性の高い者に対して社会復帰がより進んでいるのか,そこのところを御存じでしたら,是非教えていただきたいと思います。 ● レジュメに記載いたしましたのは,オハイオ州における調査を御紹介したものです。危険性の高低は,今,御指摘のあった薬物やアルコールの濫用歴のほか,前科・前歴,逮捕時の雇用状態,学歴,当該刑の言渡しを受けた犯罪の種類,精神衛生上の問題の有無といった項目を数値化し,対象者ごとに算出したもので,中間処遇施設を出た後の追跡期間において,中間処遇施設を経ないで保護観察等に付された対照集団に比べて,危険性を示す数値が中程度の者ないし高い者につき再収容率が低い,という結果が出ております。 ● 通常の保護観察や仮釈放に比してということもよく分かるのですが,中間処遇をして,それが特に潜在的な危険な者に対してどこに訴えかけて効果が上がっているんだろうかというのが,これだけではちょっと分からないのですけれども。 ● どういう種類の犯罪を犯したかということですね。 ● ええ。かつ,それは恐らくその後を見ますと,プログラムとの関連性だと思うのですけれども,質の高いプログラムを危険な者に与えて再犯が下がっているというのでしたら,もうちょっと具体的に教えていただくと分かりやすいのですが。 ● 御紹介した調査を実施した研究者の執筆した論文の中で,当該調査の結果,危険性の高い者に効果が認められることに加え,質の高いプログラムにおいて効果が認められるとの記述があるのですが,そこでは,刑の言渡しを受けた犯罪の種類や,具体的なプログラムの内容については,詳しい記述はございません。ただ,別の論文では,危険性の高い者に対して,認知行動療法による処遇が実施されていること,また,危険性の低い者に比べて,より長期にわたり,より多くの課程が提供されていることが効果的だという指摘もなされております。 ● レジュメの「Ⅳ 電子監視制度」のところで,電子監視の歴史が書かれておりますが,1960年代からスタートし,83年から刑事司法に入ったというわけです。俗にアメリカで起こった事象は10年経つと日本でも発生すると言われるんですが,これを見ますと,電子監視に関する限りは20年も30年も経っているのに日本に入ってきていないわけですね。それで,何となく日本では違和感があるとは思うんですが,逆にアメリカの社会ではそれがないのかどうか。アメリカでは,全体として非常に広がってきているという印象を受けますし,さっきの中間処遇にしても電子監視に対する依存度は大きいようです。しかし,先ほど8か月経つと装置を壊したくなるというお話もあり,なかなか微妙です。その辺どうなんでしょうかね。 ● 先ほど,御報告する際に触れました,ニューヨーク州における調査結果を見ましても,まず,刑務所に入れることによってすべての問題が解決するわけではない,という認識は,おそらく一般の人々の間でも共有されているといえるように思います。それを前提にした上で,刑務所での拘禁以外の手段として,電子監視が選択肢の一つになる,ただ,その利用に当たっては,対象とするのに適した犯罪があり,また,許されるプライバシーの制約には限界がある,ということが調査結果としてあらわれているのだろうと考えられます。このように理解いたしますと,一般の人々が,電子監視に対して違和感を抱いているとまではいえないのではないかと考えております。 ● 今のお答えは,電子監視制度に関し,レジュメに「2 一般市民の受け止め方」という項目がありますが,それと関連するのでしょうか。一般市民の受け止め方との関連です。○○関係官が御質問されたのは,これとも関連するのかどうかということになります。 ● レジュメの最終ページに,「2 一般市民の受け止め方」として,ニューヨーク州における調査結果を記載いたしておりますが,そこから,今申し上げたようなことが窺えるのではないかと思います。 ● 質問ではなくて,単なる私の印象論なんですけれども,一般にアメリカのテレビなんかを見ていると,社会内処遇を受けている人が堂々とカメラの前に出てきて,いろいろなことを話すというような場面に出くわすことがままあるような印象がありまして,一般の人々の受け止め方のほかに,犯罪者の方の受け止め方としても,自分が社会内処遇を受けているということに対して抵抗感が日本と比べて少ないのかなという,そういう感じを持っております。 ● 電子監視の機器についての質問なんですが,レジュメの方ではなくて,資料の方の19ページの,さっき写真を見ながら説明していただいた方なんですけれども,足首に付けるという機器については,これは体に直接付けるわけですよね。これは能動的というのではなくて受動的なもの。 ● アンクレット型の機器に関しては,GPS技術を用いた能動的システムと受動的システム,従来の無線方式を問わず,同じように足首に付けるものです。監視機器の形状は,アンクレット状という点では共通していて,位置情報の伝達に用いる技術ないし方式が異なります。 ● では,この携帯電話型のもの,これはどういう形で固定するんですか。 ● これは固定するのではなく,通常の携帯電話と同じように対象者に携帯させるわけです。 ● そうすると,この携帯電話を必ず持っていなければならないということですか。 ● そうです。担当職員からの連絡を受けることが可能な状態である必要もございます。 ● である状態でということになりますよね。それを手放してしまうということも,一般的にはあり得るんだろうと思うんですけれども,そういうことについては何らかの防止策みたいなものがあるんでしょうか。 ● 防止策については伺っておりませんが,アンクレット型の機器と距離が離れますと,担当職員に警告が行われるようです。 ● あと,この機器の種類というのは,どういう場合にどういう機器を使うというのが,一応何らかの区分けがあるんでしょうか。 ● 基本的には,一定の場所で禁止された行為に出る危険性が高い者については,在宅しているか否かだけではなく,GPS技術を用いて,同時的にその位置を把握し,ある区域への立入りや接近の事実を把握する必要が高くなると思われます。 ● ありがとうございました。 ● 続けて電子監視に関してなんですが,前回報告のあったドイツの例では,取消し事由として,2,3か月経つともう嫌になってしまうから,自分の方から取り消して戻してくれということがあるということで事由になっていると。2,3か月が限度だと言っていたんですが,今回のお話を伺っていますと180日と。これはその段階になると機器を壊してしまうということなんですけれども,機器を壊す前に,もう2,3か月の段階で嫌になっているということはないんですかね。アメリカ人とドイツ人で違うのかどうかということなんですけれども。 ● フランス人ではありませんか。 ● フランス人,そうですね,失礼しました。 ● 今回伺いました保護観察の担当部署では,8か月という数字が出てまいりましたが,その前の段階の対象者の心理につきましては,申し訳ないことですが,伺っておりません。 ● 従来型の電子監視機器の場合は費用の支払いを求められると,費用負担があるということが,レジュメの2の「(5)費用負担」のところに記載されているんですけれども,これはGPSの場合は費用の支払いはない,求められないというふうに考えていいんですか。 ● いいえ,いずれにしても費用負担は求められるということになります。 ● そうですか。そうすると,機器は違っても同じということなんですね。 ● はい。その部分は,レジュメの記載を訂正させていただきたいと思います。 ● 電子監視の話が出ていますので,もう少し伺いたいと思いますけれども,保釈する場合にも,これは付加的条件として使うことがあるということですね。その場合,かなり一般的に使うんですか。それとも,何か特性を見ながら使うんですか。 ● 保釈の場合は,すべてGPS技術を用いた監視に移行したとのことでしたが,強度の監視を要する対象者に用いているとのことでした。 ● やはり対象者の特性を見ながら,そこは選択的に使っていくということでしょうか。 ● はい。対象者が,裁判所から,被害者など一定の者との接触を禁止されている場合やカジノや学校など一定の場所への接近を禁止されている場合には,電子監視の利用を検討するとのことです。 ● 未決拘禁制度についてお伺いしたいんですけれども,身柄拘束から48時間以内にdetention hearingがあって,保釈の決定がされていくということでしたが,先ほど○○関係官からも御指摘がありましたけれども,重い事件についても保釈があり得るということなんですけれども,これはかなりの程度認められている状況なのでしょうか。私がアメリカに行ってdetention hearingを見たときには,保釈は認めるけど保釈金がかなり高くて,実際は出られないというケースが結構あったような記憶があるんですけれども,その状況がどんなものなのか教えていただきたいということです。   また,日本では,住居不定と逃亡のおそれという被疑者がいなくなってしまうと困るという観点と,罪証隠滅のおそれがあるという観点から身柄拘束の必要性があるという整理がされていますが,48時間で出てくるとなると,前者の観点は保釈金で担保するとしても,罪証隠滅の観点というのはどう考えているのかという点がちょっと分からないところがあります。   結局アメリカでは逮捕するという意味について,一体捜査機関としてはどう考えているのか,何の意味があって逮捕しているのかというところをですね。48時間で出てくるのであれば,保釈金を積ませることに意味を持っているのか,それとも,逮捕直後に被疑者から情報収集をするということのようなので,そこに意味があるのか,その辺の考え方について,もしお分かりであれば,教えていただければと思ったんですが。 ● まず,罪種別の保釈状況につきましては,全米の都市部,75の郡の統計を抜粋いたしましたので,参考資料14ページと15ページを御覧いただければと思います。まず,罪種別の保釈状況をみますと,謀殺についてはそれが認められる率は低いですが,暴力事犯についても,最終的に,半分程度は保釈が認められているようです。また,釈放されなかった理由や保釈金額をみますと,それが高額であるために,釈放されなかった者も多く存在するであろうことが窺えます。 それから,逮捕の実際的な意味につきましては,逮捕時点における逃亡防止という観点から,まずは一旦身体の拘束を認めることも,理解可能であるように思います。ただ,被疑者が早い段階で保釈された場合に,罪証隠滅防止という観点から,捜査に支障がないのか,この点に関しては,検察官ともお話をいたしましたが,証人等に対する危害防止は別として,その必要性に関し,うまく問題意識を共有することができませんでした。 ● 保釈に関連してなんですが,レジュメの「(2)歴史的展開」のところですけれども,保釈保証人というのはアメリカでの特徴的な制度だと言われていますが,ここでのところで「裁判官ではなく,保釈保証人がジェイルの看守となり」という言葉があるんですが,これはどういう意味でしょうか。 ● これは,ジェイル・キーパーという単語を看守と訳したもので,一種の比喩とご理解いただければと思います。裁判官が保釈の可否を検討するに当たって被疑者逃走の危険を判断いたしますが,設定された保釈保証金を,保釈保証人が提供する場合,被疑者が逃げてしまうと,その保証をした業者は,金銭的損害を受けることになります。そこで,保釈保証人がさらに逃走の危険を厳しく判断することになる結果,ジェイルからの釈放の可否は,あたかも保釈保証人によって決められているかの状況を呈するという指摘がなされております。 ● 質疑応答はこれぐらいにいたしまして,この際,ただいまの御報告を受けまして,御意見を述べたいという方がいらっしゃいましたら,御意見をお願いしたいと思います。御感想でも結構でございます。   ○○関係官,何かございますでしょうか。 ● 頂いた資料の14ページを見ますと,「Full cash bond」というのは非常にわずかになってしまっておりますが,昔はアメリカで裁判所の周りにはボンズマンのオフィスがずらっと並んでいたんですけれども,そういうのはだんだん消えていく傾向なんでしょうか。日本では保釈というのは,とにかく金銭を取ることしか考えていないわけですが,そこから大きく動いたと思っていいんでしょうか。 ● 保釈保証業者が衰退する傾向にあるか否かについては,調査が及ばず,お答えすることができません。ただ,資料14ページ本文の記述では,「Full cash bond」が保釈保証人によらずに保釈金が直接裁判所に納付される場合,また,「Surety bond」が保釈保証人による保証の場合をそれぞれ指しているようでございます。 ● これで既に四つの国の法制について伺ったということになりますね。全体を通じてどこの国も非常に動きがあるという印象を受けましたが,それだけに日本も今後動くことを考えなければならないんだろうと思います。しかし,どう動くべきかということのイメージ作りは,まだなかなか難しいという感じがいたしました。 ● ○○委員も前に御報告いただいたことがありますので,何か感想はございませんでしょうか。御報告いただいた国との比較の観点からいかがでしょうか。 ● 特に最初に御報告がありました社会奉仕を義務付ける制度のところで,イギリス,フランスとの比較ということで聞いておりました。イギリス,フランスにおいては,フランスはそれほど多くありませんけれども,社会奉仕は,無償労働して社会に貢献をするものであり,そのスケールは本当はないのですけれども,ある労働が社会に対して幾らに換算されているかということで,彼らなりの貢献ということで社会復帰を促すような風潮があるわけです。しかし,このレジュメでも御紹介があったところですと,カリフォルニア州に限定されているかもしれないのですが,社会に対するペイバックということ,あるいは彼らなりにできることをやったということは余り強調されていないのでしょうか。   先ほどうかがったことに関係しますが,社会奉仕が,単に罰金刑の代替刑としてあるという側面が強いのであれば,それは少なくとも日本の文化を考えますと,今,○○関係官の御指摘にもありましたように,我が国で将来導入を考える際には余り参考にならない制度なのかなという気もしたのですけれども,この社会奉仕を義務付ける制度の背景を踏まえた上で,現在の趣旨の理解というのをもう一度教えていただければと思います。 ● 今回の調査でお話を伺った裁判官からは,社会に役立つ作業をしている姿を一般の人が目にすることによって,対象者を許し,社会の中にもう一回受け入れることを容易にする効果があるとの指摘がございました。レジュメでは,落書きや破壊行為に対する制裁として社会奉仕が命ぜられる場合を御紹介いたしましたが,作業を通じて,自分の行為に対する自覚や反省を促す側面もあることを考えますと,罰金刑に対する代替刑あるいは拘禁刑に対する代替刑としての側面のみならず,社会奉仕それ自体の有する意義もあるのではないかと考えております。 ● 落書きを消したというところで,例えばこれは社会奉仕労働によって落書きが撤去されたんだというふうなディスプレイなどはするんですか。 ● その点につきましては,伺っておりません。 ● ほかにいかがでしょうか。   特に御意見がございませんようですので,本日の御報告とこれに関する審議はこの程度にしたいと存じます。   ○○先生,本日は本当にありがとうございました。   さて,これまで当部会では第1回会議から第5回会議にかけて,主な検討事項について御議論をいただきました上で,それを受けて第6回会議から本日の第9回会議にかけて,イギリス,ドイツ,フランス,アメリカにおける当部会の議題に関連する法制度の御報告をいただき,本日をもって予定されていた外国法制の御報告は終了したこととなります。   そこで,次回以降の審議の進め方でございますが,このことにつきまして事務当局の方で何かお考えがございますでしょうか,お伺いいたします。 ● 審議の進め方につきましては,もとよりこの場で御協議いただいて決定していただくことでございますけれども,事務当局の立場から,一つの御提案といいますか,考えを申し上げますと,これまで,当部会では,ただ今○○委員の方からも御紹介ありましたように,いわゆる第一巡目の議論,それから外国法制の御報告をいただいてきたというところでございます。そこで,次回以降の審議につきましては,これまでの審議等を踏まえまして,第二巡目の議論として,今後導入が考えられる制度等につきまして,更に掘り下げた議論をいただくこととしてはどうかということを考えております。   今の段階で直ちに一つということには恐らくならないと思いますが,いろいろな考えられる制度について,適宜事務当局の方でも,必要に応じ,論点を整理するなどしてお手伝いをしたいと思います。   もし,そのような進め方につきまして御了承をいただけますようでしたら,第一巡目の議論と同じ順番ということで,次回は,まず,社会奉仕命令のテーマについて御議論をいただき,それ以降順次,その他のテーマについて第二巡目の御議論を進めていただければどうかと考えております。 ● 私といたしましても,第一巡目の議論や御報告を踏まえて,議論をより深めていく必要があると思いますので,事務当局から御提案がございましたような進め方でよろしいのではないかと考えます。皆さんいかがでしょうか。   御異論がございませんので,そのようにさせていただきたいと存じます。   それでは,次回以降,社会奉仕命令のテーマから第二巡目の議論を進めてまいりたいと思います。次回の日時,場所等について,事務当局の方から御確認をお願いいたします。 ● 次回は11月9日でございますが,11月9日金曜日に東京地方検察庁の330号室において会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては午後1時からということで予定させていただいております。 ● ただいま御案内がございましたように,次回は11月9日金曜日に,東京地方検察庁330号室において会議を行うことにいたします。開始時刻につきましては,午後1時からということになりますので,よろしくお願いいたします。   それでは,本日はこれで散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-