法制審議会国際扶養条約部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  平成19年10月16日(火)  自 午後1時30分                         至 午後4時27分 第2 場 所  法曹会館高砂の間 第3 議 題  「子及びその他の親族に対する扶養料の国際的な回収に関する条約草案」         及び「扶養義務の準拠法に関する議定書草案」について 第4 議 事 (次のとおり)                 議        事 ● それでは,法制審議会国際扶養条約部会の第10回会議を開催いたします。   まず,事務局に,配布されている資料の説明をしてもらいます。 ● 配布資料でございますが,事前送付の資料と,今日,席上に配布させていただいている資料がございます。席上配布資料は,70-3という番号を付けているものでございます。それ以外は事前送付させていただいたものでございますが,資料番号65番は条約草案と議定書草案に対する日本国政府の意見の英文と日本文でございまして,これは前回,第9回のこの部会の御審議の結果に基づきまして,部会長とも御相談させていただいて,日本政府として提出したものでございます。   それから66番は,フォームについてのワーキンググループのレポートでございます。   それから67番が,それのRECOMMENDED FORMSでございます。   それから68番が条約草案についてのEXPLANATORY REPORTで,69番が議定書草案のEXPLANATORY REPORTでございますが,資料目録に注記をさせていただきましたように,68番につきましては,英文のみが各国に配布されておりまして仏文はございません。他方,69番につきましては仏文のみでございまして,英文は配布されていないという状況でございます。   それから,70番が,日本の意見以外の条約草案あるいは議定書草案に対して各国から寄せられた意見でございますが,70-1というのが2007年の9月26日時点で,ヘーグ国際私法会議のホームページに載せられたものでございます。   それから70-2が,10月1日付けで追加された部分がございますので,その追加分でございます。   それから70-3が,12日付けで追加された部分でございます。恐らく,各国からの意見が遅れて出てきたものがあって,それを追加してホームページに掲載しているのであろうと思いますので,最新のものまで含めますと70-3までということになるわけでございます。   それから71でございますが,これは今日,主として使っていただくものになるわけですけれども,この条約草案と議定書草案についての論点メモでございまして,この論点メモに基づきまして外交会議の対処方針の御審議をいただければと思っております。   以上です。 ● それでは,11月5日から開催されます外交会議の対処方針作成のために「子及びその他の親族に対する扶養料の国際的な回収に関する条約草案」「扶養義務の準拠法に関する議定書草案」について,部会資料71の論点メモに沿って御議論をいただくことにしたいと思います。   まず,事務局に論点メモのうち「第1 中央当局を介する申立てに関する手続の実効的な利用について(本条約草案第14条)」から「第3 本条約の適用範囲について(本条約草案第2条)」までの部分につきまして説明をしてもらいたいと思います。よろしくお願いします。 ● それでは,事務局から論点メモの御説明をさせていただきます。なお,前注として記載いたしましたとおり,本論点メモに記載していない事項につきましては,本日の御審議の結果等と関連して見直すべき点を除き,これまで主張等をしてまいりました意見を原則として維持するという前提で考えております。   まず,「第1 中央当局を介する申立てに関する手続の実効的な利用について」でございますが,ここでは条約草案仮訳の部会資料57では7ページからの本条約草案第14条に関係する論点を取り上げております。   部会資料65-1,65-2の1(1)にも記載しておりますとおり,申立人が受託国において法律扶助等を受けることができるかどうか,どのような内容の法律扶助等を受けることができるかにつきましては,受託国において判断すべきであると考えられますので,これまで本条約草案第14条第1案を支持するとの立場をとってまいりました。   しかしながら,米国やオーストラリア等を中心として第14条第2案を支持するとの立場が強く主張されており,また有力なようでもございます。そこで,第2案を支持するとの立場が大勢を占める場合には,先ほど申し上げたような考え方や第1案を支持してまいりました立場を前提といたしますと,ブラケット部分等について(1)から(5)までとして論点メモに記載いたしました立場をとることになるのではないかと考えておりますが,それでよろしいか御審議いただきたいと考えております。   (1)は,第2案第14条第5項の「扶養権利者によって」というブラケット部分につきまして,ブラケットを外しこの文言を規定することにより,諸費用の支払いを保証するために担保等が要求されない手続を扶養権利者によって開始される手続に限定するとの立場をとるというものでございます。第1案の第14条第6項では,そのような規定がございます。   (2)は,第2案第14条bis第1項の「扶養権利者によって」というブラケット部分につきまして,ブラケットを外しこの文言を規定することにより,無償の法律扶助を提供しなければならない申立てを扶養権利者によってされるものに限定するとの立場をとるというものでございます。   (3)は,第2案第14条bis第2項a号につきましてブラケットを外し,この規定を設けることにより,遺伝子検査の費用については合理的な請求をすることができるようにするとの立場をとるというものでございます。   (4)は,第2案第14条bis第2項c号につきましてA案を支持する,すなわち,受託国はその判断により申立人の経済的な状況によっては,無償の法律扶助を提供することを拒否することができるようにするとの立場をとるというものでございます。   (5)は,第2案第14条ter・b号の「申立人」あるいは「扶養権利者」というブラケット部分につきまして,扶養権利者と規定することにより無償の法律扶助について,受託国において内国民待遇を受けることができるものを,扶養権利者に限定するとの立場をとるというものでございます。   第1案第14条第5項の方にも,ほぼ同様の規定が設けられてございます。   次に,「第2 承認・執行の申立てに関する手続について」では,仮訳ですと12ページでございますが,本条約草案第20条に関係する論点を取り上げております。   (1)は,本条約草案第20条第4項が決定の執行可能性の宣言又は執行のための登録の拒否理由について,「第17条及び第19条」又は「第19条a号」とブラケットを付けて規定しておりますところを注7として,これらの選択肢のほかにも,例えば第17条及び第19条a号といった組合せも可能であるという提案がされておりますので,この点についてどのように考えるべきか御審議いただきたいというものでございます。   なお,論点メモに注1として記載いたしましたとおり,これまで当該ブラケット部分につきましては,承認及び執行の原因に関する第17条並びに承認及び執行の拒否事由に関する第19条のすべてについて審理されるべきであるとの考えから,第17条及び第19条とすべきとの意見を提出等してまいりました。   (2)は,本条約草案第20条第6項が不服申立て期間に関して,通知後30日又は60日以内と規定していることについてのものでございます。   この点につきましては,論点メモに注2として記載いたしましたとおり,これまで本条約は地理的状況や国内法制を大きく異にする国の間で締結されるものですので,不服申立て期間を一律に規定することには問題があると考えられることなどから,不服申立て期間は各締約国の国内法の取扱いにゆだねるべき事項であり,本条約草案第20条第6項は削除すべきであるとの意見を主張等してまいりました。しかしながら,この意見が受け入れられない場合に,例えば不服申立てをすることができる具体的な期間など,主張すべき点がございましたら御意見をちょうだいしたいと考えております。   (3)は,本条約草案第20条第11項が「本条のいかなる規定もより簡素な又はより迅速な手続の利用を妨げるものではない」と規定しておりますところ,この規定との関係,あるいはこの規定と同趣旨の本条約草案第46条との関係に限られるのかとも思われますが,注8として第20条の規定に締約国が排除することができないとすべきものがないかというような問題提起がされておりますので,この点についてどのように考えるべきか御審議いただきたいというものでございます。   「第3 本条約の適用範囲について」は,仮訳ですと2ページになりますけれども,本条約草案第2条第1項の「そのような子に関する扶養の請求とともに請求される配偶者間の扶養も含む。」というブラケット部分についてのものでございます。注として記載いたしましたとおり,本条約の義務的な適用範囲を限定すべきとの意見があるため,ブラケットが付けられているようでございます。しかしながら,この点については配偶者間の扶養が含まれたとしても,特に差し支えはないようにも思われますので,ブラケットを外し,この文言を規定すべきとの立場をとることでよいのではないかと考えておりますが,それでよろしいか御審議いただきたいと考えております。   論点メモの第1から第3までの御説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,今,事務局から説明のありました点につきまして,論点の順番に御議論いただきたいと思います。   まず,「第1 中央当局を介する申立てに関する手続の実効的な利用について」という部分につきまして御意見,御質問をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。 ● 14条,20条関係につきましては,先日,非公式の電話会議が行われまして,それに○○委員に御参加いただきましたので,○○委員からその電話会議の模様について,審議に必要な限りで御報告いただければと思います。 ● では,簡単に御説明申し上げます。10月3日の夜に1時間40分ほど,アメリカのカールソンさんという,これまで会議に出てきている方たちなんですが,アメリカのカールソンさんが呼び掛けて,カナダのメナール,それからECのレンツィングと私と4人,あとプラスアルファがありました,実質的には4人で電話会議をいたしました。これはあくまでも非公式な話合いということで,特に私は確認させていただきましたが,日本の代表としてお話しするわけではないということで話をさせていただきましたが,今度,外交会議があるので重要な点について,事前にいろいろ情報交換,意思疎通をしたいという申出がありましたので参加した方がいいかと思いまして,参加させていただきました。   主な話題は,今,御説明もございました14条の問題と20条の問題でございました。大体どういう話があったかを手短に御報告申し上げますと,まず14条についてですけれども,これはアメリカとカナダ,ECもほぼ同様ですけれども,これまで第2案を非常に強く推しております。日本がこれまで第1案を支持するということを言っておりますし,またコメントでもそういうことを出しておりますので,その点について少し情報交換の話合いをしたいということでございました。   お互いに,それぞれの立場を一通り説明しましたが,これはもう既にいろいろな場で出ている話ですので,特に御説明申し上げる必要はないのではないかと思います。   その後で,アメリカのカールソンさんというのは国務省のお役人ですけれども,ずっとこの会議に出ていて,私もごく親しくしておりますので非常にフランクにということなんですけれども,こういう話がございました。つまり,米国としてはこの14条と,次の20条もそうですけれども,これらについて米国が考えている立場がとられないと,この条約をつくる意味がないというふうに,特に重要な二つの規定であるというふうに考えていると。   日本の立場は,これまではそれとは違う立場であるけれども,少し考えていただけないかということなんですね。非常に率直な意見がそのとき出ておりまして,つまり,日本はこの条約ができてもすぐには,多分,入らないんではないでしょうかと。オフ・ザ・レコードの話だったものですから,非常に率直な話だったんですけれども。   それならば,恐らくこの14条,20条に関しましてはアメリカの支持する立場をカナダとかオーストラリアとかニュージーランドとか,あるいは多分ECもですね,つまり,主要なステークホルダーがほぼ合意する可能性が高いので,そうなったときに賛成はできないけれども,あくまでも反対して条約を成立させないというようなことはない方がありがたいですねという話をしておりました。私は,その話は伺いましたということで,特に反応はしなかったんですけれども。   それで,ちなみに今回の外交会議は,最近すべてそうらしいのですけれども,投票方式ではなくて,コンセンサス方式で,つまり昔は一点一点について投票して多数決で決めていったという時代もあったようなのですけれども,最近は基本的にはコンセンサスで,投票せずにいろんな論点を決めていくということのようです。それとの関係もありまして,あくまでも強く反対するところがありますとなかなか話が進まないということをアメリカなどは懸念していると,そういうことでございました。   それで,今のが大体,全体の話なんですけれども,14条に関して言いますと,14条については先ほど御説明がございましたように,アメリカその他は第2案,つまり子供に関しては基本的には一切無料にするという立場をとっておりますので,それを何とか通してもらいたいと考えているということでした。それで,私としては,その話を伺って何とも答えようがないのですけれども,様子は分かりましたということは申し上げて,それで,もう少し具体的に,今,お話のありました第2案をとった場合,14条2項c号について,A案,B案,C案とあるわけですけれども,これについてA案が一番日本の立場には近いので,A案についてはどう思うかということを聞きましたところ,アメリカは現在はC案,つまりこういう案は,こういう規定は置かないという立場を第1選択としてとっていて,もしそれが駄目ならB案と,これは要するに送り出す側ですね,嘱託国側が決められるという案を第2候補としてとっていて,A案はアメリカにとっては採り得ない案であるということのようでございました。   もう少し具体的にはカールソンさんは,例えばフランスと二か国でいろいろやり取りをして,どういう場合に法律扶助がもらえるかもらえないかという基準について,いろいろすり合わせをしてもいるようなんですけれども,その場合にフランスのような先進国との間ですら,アメリカの市民で扶養を求めたい人に対しては,富裕過ぎるので法律扶助が与えられないとされる割合が非常に高い。ましてや,ほかの国ではそういうことになる可能性が非常に高くて,したがって,受託国側が富裕であるので法律扶助は要らないんではないかということを決められることにしてしまうと,アメリカの市民がほかの国で法律扶助を受けるということは事実上非常に難しくなってしまって,そうするとこの条約の意味というのは半減してしまうというのがカールソンさんの説明でございました。   それが14条について具体的に少しお話ししたことでございます。   ちなみに,少しバックグラウンドの話も,半分雑談のようなこともありましたのでいろいろしたんですけれども,それによりますと,アメリカ,カナダ,オーストラリア等は,特に子供の扶養につきまして,公的な扶養といいますか,要するに社会保障的な給付というのが非常に弱くて,多分そういう政策をとっているということだと思いますが,大きく私的扶養,つまり主として父親からとるということによっていると,そういう体制がとられているので,この種の親族,特に父親から子供のための扶養料を取るということの手続の重要性というのは非常に高いんだということを強調されておりました。ECは,国によってのようですけれども,日本に近く,社会保障がそれなりに充実していて,父親から無理やり取らなくても子供がそう困らない状況があるので,この扶養条約にかける意気込みといいますか期待というものの強さが,少しずつ微妙に,そういう背景もあって違うんではないかというような話も出ておりました。   以上が14条に関して。   20条についてなんですけれども,これについても同じような構図でございまして,要するにアメリカとカナダとEC,そのほか電話会議には来ませんでしたけれども,オーストラリアとかニュージーランド等は,現在の案を非常に強く支持しておりまして,4項のブラケットに関しましては,拒否事由を公序に限る。つまり,19条a号に限ると。最初の審査段階で,公序での拒否はできるけれども,そのほかの拒否はしないと。それから,当事者の意見は聞かないと,こういう立場を,要するに現素案の立場を強く支持しております。   この点に関しましては,今日の論点メモに出ていないので,ちょっと一言加えておきますと,20条4項2文に「申立人も相手方も意見を述べる権利を有しない」という規定がございますけれども,これに関して,権利を有しないということなので,締約国が権利を与えて申立人,相手方から意見を聴することにしても条約との関係で問題がないのだろうかということを一応確認のため質問いたしましたが,それは駄目だというのがお三方の一様の御判断で,つまり,ここの段階では手続を延ばさない,時間を掛けないで,とにかく当事者の意見を聴かないで登録とか宣言をするという,そういう仕組みを採らなければいけないので,国によって当事者の意見を聴取したりするというような解釈を許すような文言のつもりはないんだと。もしそういうふうに読めるようだったら,ちょっと文言を変えなければいけないというようなお話がございました。それは,今日の論点とは直接関係いたしませんが。   要するに,考えておりますのは,第1段階では登録や宣言については,書類が来た段階で公序に関するex officioの審査をするのみで,あとは当事者の意見も聴かずにとにかく宣言登録をしてしまうと。で,その通知が行った後に当事者が,それについて不満であれば不服申立て,異議申立てですかね,チャレンジをすることができて,その段階で当事者の意見を述べたりあるいは17条,19条のほかの事由に関しての審理が行われて,果たして本当に適正にその決定が認められるべきなのかどうなのかというのがそこで審査されるという,そういう仕組みを採っているんだということなわけですね。   私ども,日本からのこれまでの懸念は,要するに当事者の意見も聞かず,それから公序だけの審査をするだけで宣言とか登録をしてしまって,もし執行が行われてしまうと後からあれは実は当事者の意見を聴いてみたら適正なものではなかったとか,17条,19条に徴して適当なものではなかったと,要するに執行すべきでなかったということになったときに,国境を越えてお金を取り戻したりするということは大変なので,それより前に何らかの審査をしなければいけないんではないかと,こういう意見だったわけですけれども,そういうことを一応説明いたしましたところ,ここから先がちょっと皆様にも一緒にお考えいただければと思うんですけれども,ECの代表の方から,そういう懸念であれば現行の条約案でも特に問題がないのではないかという,そういう説明といいますか,コメントがございました。   どういうことかといいますと,この4項でもって,宣言とか登録とかをいたしますけれども,そのときに当事者の意見は聴かず,ex officioでは公序の事由だけ審査するということですが,もしそれで宣言や登録がなされたとしても,直ちにそれによって執行がなされるというわけではないと。つまり,不服申立てというものは,異議申立てから上訴ということになっていますけれども,要するに当事者にその通知が行って,当事者が不服申立てなりなんなりで争うということができるまでは,そして争うことができなくなるまでというべきですかね,期間が経過して。あるいは,もしチャレンジをした場合には,そのチャレンジについての結果が出るまでは執行はしないということが可能であるのではないかというのがECの代表の見解でした。   どこをどう読むとそういうふうになるのかが,もう一つ実は条約自体からはっきりしないんではないかと私は思うんですが,余りその辺は詳しくは議論できなかったんですが,ただ,登録宣言があると自動的に直ちに執行できるとも書いていないんだろうと思うんですね。そこがもし,執行が求められる国の法制によって,単なる宣言とか登録だけでは執行はできない,異議申立てがなされ,あるいは異議申立ての審理が終わって結果が出るまでは執行がされないということが確保できるのであれば,一応これまでの日本の主張とはそごがないことになるのかもしれないという感じがいたしました。   ただ,ここはもう少し皆さんの御意見も伺って,どうなのかということを確認しておく必要があろうかと思います。   これが20条の4項に関することでございます。   それから,20条の6項に関しまして,今,これは先ほど○○関係官から御説明がございましたが,異議申立て,上訴の期間が,具体的に現在は国内ですと30日,外国ですと60日というふうに決めてあるという,そういう案になっているわけでございますが,日本のコメントの内容は,これは各国に任せるべきであるという意見で,それは地理的,社会的いろんな状況によって,具体的に30日,60日として決めてしまうのは少し問題なのではないかということと,それから,この条約が適用される場合とそうではない場合とで日にちが違ってくるということも不安定なのではないかと,そういうことで,具体的に30日,60日と決めないで各国に任せたらどうかというのが,これまでの日本の意見でございます。   実質的には日本としては,国内法と合わせるとするともう少し短く2週間になりますかね,そのくらいということになろうかと思うんですけれども,そのような話をしておりましたらば,アメリカのカールソンは,それは30日,60日と決めてあっても短くする分には構わないはずだと,そういう解釈をされていました。つまり,これは20条の11項に「より簡素な又はより迅速な手続の利用を妨げるものではない」という,そういう規定がございますので,その解釈として,もっと短くする分にはいいんではないかというのがカールソンさんの意見でしたが,しかし,カナダとECの方の御意見はちょっと違っていまして,やはりこれは30日,60日というのは一定の反論の期間を保障しているものであって,短くするのはやはり条約の解釈としても問題なのではないかという意見が出て,したがって,どう解釈すべきかということについて意見が必ずしも一致しないという状況でございました。   ただ,それらの議論から分かることは,一定の幅を決めて,その中で各国が決めるということについて,それほど大きな拒否反応はないのではないかという気がいたしました。   一番問題になりそうなのは,要するに余りに長くこの期間が各国によって決められてしまうと,迅速な手続というものが阻害されると。したがって一定の長さで切って,その中には必ずおさまるようにしたいというのがアメリカ等の意図であるということでございましたので,この具体的な30とか60というのに,大変固執しているというわけではないということのようでございました。   以上が20条に関することでございまして,以上の2か条につきましては大体以上でございます。 ● それでは,電話会議の模様をお聞きになられたわけですが,○○委員の会議の模様についての説明をお聞きになられて,まず14条について各論点ごと,どのようにお考えでしょうか。 ● 第1案で通ればそちらがいいですが,でもそうではないという話で,二番目の話として,第2案のところが出てくるわけですが,現行の日本の枠組みからいくと,ともかく第2案になると日本の枠組みを変更せざるを得ないというところは事実なんだろうと思いますね。そうすると,理屈としては2案の中でも扶養権利者によってなされるものに限定をするというと,より制限的なという形になろうかと思いますが,そういう意味では日本の枠組みを,ともかく第2案を受け入れるとなると,日本の枠組みを変えなければいけないということを前提にすると,それほど日本にとっては扶養権利者によってというブラケットを外すことが,日本にとって大きな意味を持ってくる,それほどの大きさを持ってはいないのではないかというのが私の質問なんですが,そのあたりはどうなんでしょう。ちょっと国内のシステムの話にかかわるところなんですけれども。 ● 確かに,どうせ変更するならばというお話なんだろうと思うんですけれども,これまで第1案を支持してきたような立場ですとか,あと,仮にこの条約に入るときにどこまでだったら,まだ手当てする可能性があるかという点で,主張としては,これまでとの連続性を重視させていただきたいというような考えでおります。   もちろん,最終的に議場での議論がやはりこの14条の趣旨を生かして,先ほど○○委員からも御紹介がありましたように,やはりなるべく扶養権利者に限らず,扶養義務者の方も優遇すべきだということになれば,やむを得ないのかなというような気もいたしておりますが。 ● いかがですか。 ● 筋を通すということですね。 ● それは,○○委員のおっしゃっておられるのは,(1)(2)それから(5)にもかかわってくるということですね。 ● そうです。直接的には(2)ですが,(1)やらにもかかわってくるということです。ですから,そういう意味では筋を通してということで全部同じスタイルというのは賛成いたします。 ● ○○関係官も,あくまで外すことに固執するつもりはないということで,今までの主張との一貫性ということで入れるということなんでしょう。   ほかにありませんか。 ● この点は,従前から資料65-2にもありますように,我々としては受託国の国民よりも有利になるというのはおかしいんではないかということで,第1案を言っていたわけなんですけれども,大勢が第2案をとっているという,その国々はその点についてはどういう発想をとって,国内的な法制との違いについてはどう考えた上で第2案と言っておられるのか,もし何かありましたら教えていただければと思います。   そのあたりが,本日の71の資料の(2)にある14条bis1項あたりで,すごく問題になってくるだろうと思うんですけれども,いかがでしょうか。 ● いろんな国の様子はよく分からないんですが,特にこの点について主張していますアメリカに関して言いますと,要するにアメリカの国内でも同様のフリーサービスを子供に対して行っていると。それを国際的なものにも広げたいというのが,もともとの発想のようでございます。ですから,詳しい具体的なことは分かりませんけれども,アメリカでは国内の問題としても,同様の無料のサービスを子供の扶養に関しては行っているということを前提としているということのようで,賛成している国々がすべてそうなのかどうか,ちょっとその辺は分かりませんが,主要な賛成国は基本的にはそういう,先ほど申しましたように,私的扶養に大きく偏って,それを,言わば国の政策としているということだと思うんですけれども,そのために子供に対する扶養をとるためには,すべてただでサービスを行うということをしております。   ちなみに,アメリカのカールソンさんの話ですと,試算してみると,そうやって主として父親から取るためのサービスをただで与えることについて,もちろん費用が掛かるわけですけれども,その費用と,それから,例えば社会保障のような形で子供を公的に扶養するというのを試算で比べてみると,約3分の1で済む,非常にアメリカ的な感じですが,ということをおっしゃっていました。そういう立場を前提にしているということだと思います。 ● よろしいでしょうか。そのほかに。   それから(4)の第2案第14条bis第2項c号については,A案,受託国が判断を行うと。ただ,嘱託国の生活水準も考慮するということなのですが,こういう立場をとるか,それとも嘱託国で富裕かどうかということを一方的に決めるか,それとも富裕かどうかというような判断は削除にするかということなんですが,この点についてはいかがでしょうか。この点については,従来どおりの主張,A案でいくということでよろしいですか。他方で,アメリカはどうしてもA案では納得できないと言っておりますので,他の国もこれに同調するというようなことになりますと,A案はとれないということになります。その際にはBかCかということになるんですけれども。なかなかはっきりとは言いにくいですけれども,A案がなければB案と,B案がなければC案という順序になるんだろうかなと思いますが,ただB案はものすごく手続がややこしくて,見るからにそれ自体に難点があるようにも思えますが。 ● アメリカはCが第一希望で,Cが駄目ならBだという御紹介が○○委員からあったわけです。これに対して,日本はAが第1で,Aが駄目ならBで,Bが駄目ならCかというお話があったんですけれども,先ほど○○委員がおっしゃられたように,Bというのは非常に手続がややこしいという問題が一つあると思うんですね。それとまた,Bという発想自体が,法律扶助を行うかどうかは扶助する側が判断するという思想と相入れない考え方を正面に出しているところに,非常に嫌みがあるようにも思いまして,BになるぐらいならCの方がいいかという考え方もあるのかなというようにも思ったんですけれども,やはりそこはAでなければBというように議論する方がいいのでしょうか。 ● C案にするというのは,すべて認めるという趣旨だろうと思いますが,どちらがいいのでしょうかね。   先ほどの相違の扶養権利者かどうかという第1項の問題が,若干関係してくる気配もないわけではないですけれども,それを別にしますと,制度設計として扶養に関する事項については,先ほどおっしゃられた無料で提供するという選択肢ですので,そうした子供のする扶養については要保護性が高いという発想から,あり得る選択肢だと思いますが,いずれが妥当かということについては,ちょっと即答しかねているのですが,おっしゃるとおり手続の複雑さというマイナスと,思想としてこういう形で制約を盛り込むことに関する違和感というのは私自身も持っているのですけれども,1項の扶養権利者によってというところとの関係,先ほどの問題に再び戻るわけですが,制度としてこの条約は,適時に時期を失することなく簡易な,あるいは安価に扶養権利者に対する扶養料の回収を可能にすると,かつここについてはそれは絶対的に保障するのだという精神を貫きますと,とりわけ扶養権利者側がする申立てについては論理的にはあり得る選択肢かなという気がします。それで,一貫性は持つと思います。   ただ,日本が将来入るときに,いずれの立場が妥当かということについては,ちょっと申し訳ありませんが,今,にわかに判断しかねているんですが。 ● A案が採用されないというときには,どうしてもB案にいかなければいけないという理由はないと,それは複雑さということ,それから制度の在り方としても理念としても,国に対して無料の法律扶助を与えるということ自体は決して理念としては間違っているわけではないというようなことを考えると,直ちにC案ということも選択肢としてあり得るというようなこと,これはまたC案を採用することによって,アメリカに恩を売るということもあり得るわけで,政策的な配慮もあり得るわけでありますから,この点は,今,御発言いただいた方々の御意見も踏まえて対処方針案で処理をさせていただきたいというふうに考えます。 ● アメリカは,受託国になる国をどのような国々と想定しているのでしょうか。 ● 具体的にどの地域に。 ● アメリカというのは豊かな国ですね。でも,いろいろ話を聞いていますと,非常に身勝手なことを言っているような気がするので,アメリカよりも豊かではない国々が多分多いと思うんですけれども,特別な国は別として,そういうところにいろいろと要求するというところ,本来はアメリカは未成年者の扶養なんかについてもっと公的な扶助を充実させるべきで,こちらで言ってくるのは筋違いではないかという思いが常にするんですけれども。 ● その話もちょっと出まして,雑談のようにして出たんですけれども,つまり,入ってくる請求と出て行く請求とどっちが多いだろうかという試算を一応しているようなんですけれども,アメリカは受け取る方が多いだろうということなんです。つまり,アメリカが費用を負担して手続をやるのが多分多いだろうというふうに考えているようです。   ただ,もちろん海外にアメリカから出ていくのもあるので,ですから必ずしもアメリカが得するようにという趣旨で言っているわけではないようではありますね。つまり,アメリカの制度を世界に広げたいということのようですね。具体的にどういう国にということについてはちょっとおっしゃっていませんでした。例えば,日本からは多分アメリカへ請求するものは,アメリカから日本に請求するより多いだろうという予測はしているという話でございましたけれども。   何か具体的にその点は御存じですかね。 ● 国際の問題を同じように取り扱いたいということですよね。 ● その点,私も同じ疑問を実は持たせていただいたんですけれども,まさにそのとおりで,国際的にも州際と同じだけの地位を確保したいというアメリカの御希望自体はよく分かるんですが,それが先ほどの御説明ですと,アメリカでは私的な回収に期待していると,そういう国の制度だから期待しているというのはよく分かるんですけれども,そうでない諸国もあるわけでして,そうした国の中で,なおこのA案を頑張ると申しますか,A案まで持ってくるということは,アメリカとしては不適切,条約作成の目的は達成できないということは分かりますが,なお全世界的な調和としてあり得る選択肢だという説得の余地はないものなのでしょうか。 ● もちろん,そういう議論は十分あり得ると思います。ただ,多分こういう点とかほかの点でも,一番キーになるのはECの動向だと思うのですが,ECは制度としては日本的なものを持っている国もありますが,ただ今はもう既にコーディネーションというんでしょうかね,ECとしての意見を,いろんな国の意見を固めるということになっていて,その様子次第なんですけれども,それはどうやらこの条約に関して言うと,基本的にアメリカの立場を支持するという方向へ行っているというのがどうも感触でございます。   ですから,○○幹事がおっしゃったような,あるいは○○委員がおっしゃったような御意見は大変ごもっともなので,それは言ってみる価値はもちろんあると思うんですけれども,ただ,実際の会議の中で,どのくらいアメリカが耳を傾けるか,あるいはほかの国がどのくらい支持するかということについて,ちょっと何とも言えない状況かと思います。 ● ○○委員のような御意見は会議場で法律論として展開するのは,なかなか難しいと思いますけれども,そのあたりは代表団に適宜判断をしていただいて対処していただきたいと,そのような案がつくれたらいいなと思いますけれども。   以上で,大体,第1のところはよろしいでしょうか。   それでは,第2,第20条との関連で御議論いただきたいと思いますが,まず第一番目に20条の,この段階では意見は聴けないというところはさておいてということなのですが,20条の4項のところで,承認・執行宣言,登録の拒否理由として,17条の管轄権の問題も含めた規定にするのか,それとも19条のa号だけ,これはもう公序だけ,職権によるチェックができるということ,当事者の意見は聴きませんので,19条a号だけという公序則,反公序性の判断だけを裁判官は審査できる,あとは一般の17条及び19条というふうに言ってしまいますと,これは一般的な承認拒否理由ということになろうかと思うんですけれども,この点どんなものでしょうか。これは別の見方をしますと,19条のa号というのが,公序だけの審査を職権でできるというのは,これはブラッセル条約の立場ですね。   今のブラッセル規則ではこれすらできない。公序による反公序性で承認拒否するということも職権ではこの段階ではできないということで,ブラッセル規則よりは前の段階,条約の段階,言いかえるとルガノ条約も同じなので,要するにスイスとヨーロッパの国,諸国のような関係をこの条約で築くということになろうかと思います,19条a号というのは。   17条,19条プラスアルファというのは,ブラッセル条約よりもっと前の段階ということになると思います。条約のない時代の話なので。   ヨーロッパ内での比較的均質な手続ということは条件の中に入っておりませんので,ルガノ条約程度と,スイスとヨーロッパの間ぐらいの関係をこの条約で,締約国間で築こうというのが19条a号ということになるんだろうと思いますが。 ● 19条のb号からf号に並んでいるものというのも,相当重大な瑕疵であるように思われて,これが妥協案ではaは見るけれどもb以下は見ないというふうになっているわけですが,本当にそれで妥当な結果が得られるのか,先ほどお話のあった,どこでどう読むのか分かりませんが,そういう場合も執行しなくていいんではないかという点がどうなるのかにもよりますけれども,17と19のaは登録を拒否できるが,b以下が分かっていても拒否できないという仕組みはいかがなものかなというのを依然として思う次第です。 ● ほかにいかがでしょうか。これは根本的な問題なので,なかなか簡単にいきませんが。 ● これ,先ほどちょっと申し上げたことなんですけれども,制度設計全体を見てよしあしを決めた方がいいと思うんですけれども,もし,ステップを踏んでいくけれども,どこかの段階で必ず,例えば,今,19条のほかのb号以下のものもチェックできるし,当事者の意見も聴けると,それなしには執行がされることがないということが確保できるのであれば,システム自体を幾つかの段階に分けたときに,宣言登録自体は,今おっしゃったブラッセルのやり方でやるということも可能性としてはあり得るのかという気がいたしますけれども。だから,全体がどうなっているのかは,もう少し私自身,しっかり見なければいけないかなと思っています。はっきりしないで恐縮ですが。 ● そのあたりは十分に,議場外も含めて調べていただいて対処していただくしかないんではないかなと思うんですけれども。   ほかになければ,次,二番目の20条の6項の30日,60日という,この異議申立てというんですか,上訴期間の設定なんですね。これは一つは反対していて,受託国の国内法にゆだねるべきだという立場を従来とってきたんですが,それは先ほどの4項との関連で,執行可能性の宣言とか登録の時点で,既に日本は当事者が意見を述べることができるということを前提にした上で期間の問題は考えていたように思うんですが,もし,4項の規定が例えば19条a項だけのチェックだというようなことになったときに,当事者としては意見を述べるのは上訴になった段階だと,アピールなりチャレンジをした後で初めて意見を述べることができるんだというようなことになった場合には,逆に言うと2週間というのはえらく短いということになってしまうようにも思いますので,30日と60日というような,受託国以外の国が60日ですか,というような期間の設定をすることについてはどのようにお考えでしょうか。   実は,これもブラッセル条約の加盟国以外に居るときには60日,加盟国に居るときは30日と,こういう同じ規律なんです。それをアイデアとして借用した規定だということなんだろうと思います。ですから,ヨーロッパの加盟国からすると,割と親しみやすい規定だということで,彼らにとっての問題は,ヨーロッパ外の国との関連でも,この日数でいけるかということが多分関心になると思いますが,こういった処理の仕方それ自体についてはそれほど違和感がないのかもしれませんが,いかがでしょうか。ちょっとこれはなかなか,日本ではこれまでそうなじみのある規定でもありませんので,どんなことが問題になり得るかということの経験がないものですから,なかなか御意見が出にくいかと思いますけれども。 ● 先ほどの○○委員からの電話会議の御紹介の中で,最短期間と最長期間を定めて,その中で各締約国が不服申立て期間を定められると,そういう選択肢が妥協点としてあり得るかもしれないという御報告があったわけですけれども,そういう考え方というのはいかがなんでしょうか。 ● ちょっとそこは違うんではないかと思うんです。アメリカの代表が少し考えが違うんではないかなと思って,これはやはり相手方にとってみると,これは権利の保障期間なんで,法的聴聞を受ける権利に関して,期間を短縮するというわけにはいかないんだろうと思います。迅速な手続をとることはやぶさかでない,例えばブラッセル規則とブラッセル条約の違いみたいなもので,公序の問題も承認拒否理由として,最初の段階ではしないんだというようなことで手続を迅速にする,これは分からないわけではないですけれども,相手方にとって異議申立てをできる期間を限定するというのは,単純に迅速化を図るというだけで説明できるようなものではないと思うので,これは単純にマキシマムを定めているので,これを例えば縮めるとかいうようなことができるというような規定とも私はちょっと思いにくいんですけれども,そのあたりは確かめていただくしかないと思います。特にございませんでしたら,ここも代表団にこの期間について,ハーグでの審議の状況を踏まえながら対応していただくということでよろしいでしょうか。 ● 念のために確認ですが,今の○○幹事のお話は,要するにこの第6項はそれなりに合理性があると,一定の期間を定めることによって手続保障を図りつつ,手続の迅速性を確保するということで合理性があると,しかし,これには我々日本が提起したような問題があるので,各国にゆだねるべきであるという選択肢を我々は出しているわけですけれども,その際,各国にゆだねる際に,上限と下限を定めるという妥協案が出てきた場合どうするかという御説明だろうと理解するのですが,そうすると上限下限がもし合意できるならば,その上限下限の範囲内で各国にゆだねるという選択肢は私自身は十分あり得るとは思いますが,ただ私も11項でカールソンさんと同じように読めると思っていたのですけれども,手続保障の観点からするとそうではないという立場があるとすれば,それは次の問いにも関係するのかもしれませんが,最低限の手続保障としてこれだけの日数は確保する必要があるということで,もし全体の空気があるとすれば,この数字以外はあり得ないのかもしれないという印象は持っております。 ● そうしたら,○○幹事の今の御発言も踏まえまして対処方針案を作成したいと思いますが,なかなか期間の問題は最終の外交会議でプロポーザルとして出すというのはなかなか厄介だと思いますけれども,ほかにもやり方はあるんだろうと思いますので,何とか対処方針案をつくりたいと思います。   それから,(3)の問題ですが,草案の注8というのは別の言い方をするとどんなことになるんでしょうかね。 ● 今,御議論いただいたところとも関連するんですけれども,当初,論点メモをつくったときには私の理解も十分ではなかったのですが,各国から出されたコメントなども見てみますと,やはり迅速な手続として20条の11項でより迅速な手続として二国間なりで,より手続を緩和することができるけれども,やはり最低限の保障というのは何らかの形で要るのではないかと。そうして,最小限の保障として残すべき手続はどの手続かというような提案のようでございます。   例えば,○○委員の御提案にありましたように,この期間の点については除けないといいますか,より短い期間を定めることは認められないようにするとか,そういったことももちろん考えられるのではないかと思われます。 ● 迅速な手続執行ということと,一方で権利保障というようなことの観点から,どうしてもこれだけはというものがあるかと,各国の立場からということのようですが,いかがでしょうか,20条との関連で。 ● この点も,○○委員のおっしゃるような全体の制度設計とかかわるところですけれども,例えば20条4項2文の意見を述べる権利があるかないかというあたりは,当方としてはこれまで反対してきたところであり,これすら排除できないようになるというようなことになると,全く我が国の制度的な整合性との観点からいっても問題が起こるのではないかと思いますので,そういうものについては排除できないこととすべきではないというふうに主張すべきではないかと考えております。 ● つまり,今の○○幹事の御発言だと,4項で,この段階では申立人,相手方双方とも意見を述べる権利を有しないというこの規定は,むしろ削除すべきだと。そうではなくて,少なくとも上訴審では必ず当事者の意見を,もし申立てがあった場合には聞くということだけは手続保障として保障するということ。 ● (3)の話ですかね。注8の話。 ● (3)の注8の話なんですけれども,ちょっと事務局の論点メモのつくり方もよくなく,誤解を招いてしまったのかと思うのですけれども,当初,この20条の規定の中からやはり日本の主張のように,排除できるものがあるのかというような考えも少し私の方にはあったのですが,どうも各国の意見とかを見てみますと,20条についてさらに扶養権利者保護のためといいますか,より迅速な手続をとることがこの11項でできると。   しかしながら,それによっても扶養義務者のために排除できない規定があるのではないかと。この11項によってより迅速な手続をとるとしても,なお,例えば先ほど○○委員から御指摘があったように6項の30日と60日を短くすることはできないとか,あるいは5項で異議申立て権ですとか上訴権というのが保障されておりますけれども,異議は認めないとか,上訴は認めないというような制度はできないようにするというようなものが,この注8の趣旨なのではないかと思われますので,今,○○幹事から御指摘がありましたように,例えば申立人と相手方に権利を与えるとか,あるいは異議を言うような機会を与えるというふうに逆の方向で手続を重くしていくのはちょっと難しそう,やはり注8でできるようなものではなさそうでございます。 ● 条約の規定を留保できるかどうかという話,別のことなんですか。 ● そのようでございます。どうも各国のコメントとかを見ておりますと,例えば,確か5項は残すべきだとか,5項,異議申立権ですけれども,そういったものはやはり最低限保障すべき権利であるというような主張があったように思います。   あと,例えば9項なども残すべきだと。直ちに通知される権利は残すべきであると,そういうような主張がされております。 ● なかなか新規な制度というところもありますので。 ● そうすると,4項についてどこかの国から,これは締約国が排除できない規定とするべきであるというような主張が出る可能性もあるでしょうか。 ● 多分それは,今,○○関係官がおっしゃった方向ですから,例えば4項に関して言いますと,公序によるチェックもしないということにしたい国があっても,それは認めないという意見が,例えば出るんではないかと思いますけれども。 ● ちょっとまだ,○○幹事,誤解された状態が完全には直ってないと思うんですけれども,この注8というのは11項についての注なんですね。   ですから,より迅速,簡素な手続にすることができるということについて,そうするために,はしょってしまうことができない規定はどれかということを尋ねているのが注の8。   ですから,先ほど○○関係官が申しましたように,ただ4項について,より重たくする,例えば第2文が残るとしたときに申立人に意見を述べる権利を与えるとか,そういう方向はそもそも11項では認められませんので,重たくする方は駄目なので,軽くして手続を少なくしてしまう方向がどこまで許容されるのかというのが注8だという前提で御議論いただければと思うんですけれども。 ● 11項に,ただし書みたいな感じで,より簡素にできるんだけれども,こういうところは簡素にしては駄目よということなんですかね。そうすると,私の方のそもそも65の2の我が国の意見では,この4項には反対しているわけですよね。なお,反対し続けていただきたいわけですけれども,それが入れられずに4項が入った場合に,その条約に対する態度として4項自体を留保するというようなことは,別途の問題と考えたらよろしいということでしょうか。 ● それは,恐らく別の問題で,条約草案の57条の方の留保の問題だと思うんですけれども,そこには挙がっていませんので留保はできないということに,今の案だったらなると思います。 ● 論点は理解しました。 ● だから,今の段階では,ここは留保するからというのは一緒にできるかと思いますが,ただ,はっきりしていない部分が多いので,なかなか今,留保の部分は議論できにくいと思いますけれども。 ● ちょっと話が戻ってしまうかもしれないんですけれども,先ほど○○幹事は,4項の関係では17条,19条全部にすべきという意見を維持すべきだという趣旨の発言をされたと思うんですけれども,これは4項の第2文は削除するという従前の主張,日本の主張とセットなんだと思うんですけれども,仮に,第2文の削除はアメリカ,ヨーロッパとも受入れ困難と言っているようでありますので,第2文が残ってしまうと。つまり,申立人も相手方も手続参加しないというときに,裁判所のチェック事項が19条の全部になってしまって裁判所が困るということはないですか。何かそこら辺が公序だと,債務名義自体の判決書を見て,それは公序違反という判断ができる場合があるかもしれないのに対して,それ以外の19条の例えばbの詐欺とか,それ以外のところについても,b号以下に該当することがあったのかなかったのかというのは,当事者が意見を述べる機会がないと,恐らく裁判所限りで,元となった判決だけが出てきて,判断するのは実際は難しいのではないかなという気がして。17条の管轄の方はまだ判断できるのかもしれないですが,それも合意管轄とか何かというところは問題があるかもしれないんですけれども。   だから,第2文が残ってしまう可能性が高いという状態の下で,17条及び19条にこだわるのが得策なのかどうかというところはどんな感触でしょうか。 ● 今,まさにその点がアメリカのコメントに出ておりまして,お手元の70-3という部会資料のアメリカのは後の方にあるんですが,真ん中ぐらいですか,すみません,それの10ページの一番上のところに今のような話がちょっとだけ出ておりますので,もし御参考になれば。要するに,判断する材料が全くない状態で,19条のa号以外判断するのは難しいのではないかという指摘が,まさに今の指摘がございました。 ● 逆の問い立てをすると,17条や19条のaについては審査しなければならないということになるんでしょうか。先ほど申し上げたように,それが判明しているのに裁判所の方で何か登録するというのはおかしなことだと思うんですけれども,ここで判断資料が本当にない状態で,公序も含めて分からない場合だってあるだろうと思うんですね。与えられたもので分かる範囲で判断してそれがある場合に,分かっているのに,なお執行の方に持っていくということについての違和感はあるだろうと思いますので。 ● ○○幹事の裁判所の意見も考慮いたしまして,十分配慮して対処方針をつくっていこうと思っておりますけれども,なかなかですね。   どうもありがとうございます。ほかにございませんでしょうか。 ● 今の最後の○○幹事の御指摘について,この4項の書き方は定める場合を理由としてのみ拒否することができるという書き方なんですけれども,そこに掲げられたものについては審査する義務があるのか,それとも,たまたま分かれば拒否できるという,それが理由が限定されているだけだというふうに読むのかというのは,どっちに読むんでしょうか。私は義務まではないのかなと思ったんですが。 ● 義務はあるんだろうと思いますね。ただ,どこまで審査しなければいけないかという場合に,今,○○幹事もおっしゃられたように,審査資料が限られておりますので,限界はあるという議論は私は成り立つのではないかと思いますが。   審査の権限ということに着目すれば,17条と19条はという,分かりやすいことだけという括弧付きの妥協案というのも十分あり得るかと思いますが,○○幹事もおっしゃるように,19条b以下のことが明らかである場合というのが,めったにないとは思いますが,あり得るわけで,19条aとb以下は,b以下も広い意味で申しますと公序は公序だと思いますので,書面から分かる公序とそうでない公序という分け方をするならばともかく,こうした事由を列挙して挙げている以上,19条全体をカバーしておくというのも十分あり得る選択肢ではないかなと私は思いますが。 ● そうしましたら,もちろん19条aだけではなくて19条全体にわたって,拒否理由が判明したときに,これをなお執行について宣言をするということについては,裁判所にどうしても違和感が残ってしまうというようなことを何らかの形で,外交会議で,一般論として述べられて,特に日本の裁判官がと言う必要もないかと思いますが,一般論としてどうしても裁判官としてはあるんではなかろうかと,この点については説明してほしいというぐらいのことは,最低限言えるのではないかと思いますので,お願いしたいということ。 ● いざ,本当にやるようなイメージで考えると,いろんなことが気になってくるんですが,先ほどの11項について御教示いただいたこととの関係で,何か17条や19条のaあるいはb号以下について判断するぞというときに,4項の2文との関係でそこには申立人も相手方も意見を述べる権利を有しないと書いてあるのですが,裁判所側から聞くのはこの11項との関係で許されるんでしょうか。 ● その点は先ほど○○委員から冒頭に御説明いただきました。そういうことは一切認められないというのがアメリカとヨーロッパの説明だったということですし,少なくとも11項は迅速なですから,意見を聞けば遅れますので,迅速なには当てはまらないことは間違いないと思います。 ● 判断資料としては,当局を介して送られてきたもの以外にないという前提で判断するということになるわけですね。 ● 4項の2文が維持されれば,そうなると思います。 ● 分かりました。 ● その関係で,先ほど○○委員が電話会議の模様でおっしゃられたことなんですけれども,一つの妥協案として不服申立て手続が終わって確定するまでは執行できないと,これは前,実は日本は意見を述べたことがあったけれども,採用されていないわけですが,それが受け入れられるのなら,ほかのところはある程度譲歩できると考えていいんでしょうか。今,○○幹事にはうなずいていただきましたけれども。 ● 厳格に解すれば,それも問題というのはあり得ると思いますが,この条約のスキーム自体が,繰り返しになりますが,時期を失さずに簡易手続で,とりわけ扶養権利者に権利行使の機会を与えるということでございますので,ぎりぎりの妥協点としてはそこが維持されれば,条約としてはあり得る一つの選択肢ではないかなと私自身は思いますが,ただ,それが日本の法制度に確実に合っているかという点については,もしかすると違う御意見の方がいらっしゃるかもしれません。 ● それでは,まだ第3が残っておりますが,休憩に入りたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただきます。   条約草案の方の最後の適用範囲の問題について,子だけではなくて,子に関する扶養の請求とともの請求される配偶者間の扶養も含むという点をブラケットにしているのですが,これを外して,この規定を入れてしまおうということなんですが。2条1項。   これは裁判実務の方からするとどうなんですか。 ● これは,この囲みの中に書いてあるとおり,ブラケットを外す方が適用範囲として明らかになってよろしいんではないかというふうに思います。   実際上,請求があるときにこの部分と配偶者部分の切り分けがなかなか難しいということを考えると,ここはやるのだったら明確にしておいた方がよいというふうに思います。 ● どうもありがとうございます。   いかがでしょうか。--それでは,外すという方向で対処方針を作成することにいたしたいと思います。   それでは,今度は準拠法に関する議定書の方に議論を進めさせていただきたいと思います。   まず,「1 子と親に関する特別のルールについて」,第4条から3の「抗弁についての特別ルール」,第6条までの部分につきまして,事務局の方から説明をいただくということにいたしたいと思います。 ● まず,第4,準拠法についての「1 子と親に関する特別のルールについて」でございますが,これは議定書草案ですと,仮訳,部会資料59では1枚目からになりますけれども,これの本議定書草案第4条が適用される扶養義務の範囲である第1項a号からc号までについてどのように考えるべきか,とりわけb号の親以外の者の義務の範囲に関する「18歳」又は「21歳」未満の子という文言のブラケット部分について,どのように考えるべきか御審議いただきたいというものでございます。   なお,注ではこの点に関連いたしまして,子に対する扶養義務に関する条約等における年齢の取扱いを御紹介しております。   次に,2でございますが,「配偶者及び元配偶者に関する特別のルールについて」では,仮訳の2枚目からの本議定書草案第5条に関係する論点を取り上げてございます。   (1)は,本議定書草案第5条の「当事者(の一方)又は扶養義務者の要請がある場合には」というブラケット部分についてどのように考えるべきか御審議いただきたいというものでございます。なお,注1には,御参考といたしまして前回部会における議論の概要をまとめてございます。   (2)は,本議定書草案第5条第1案から第3案までについてのものでございます。注2に記載いたしましたとおり,要件の明確性の観点からは第1案がすぐれていると考えられますし,注2に御参考として,前回部会における議論の概要をまとめておりますが,第1案を支持するとの御意見のほか,第1案を修正し,段階的連結を取り入れるべきとの御意見もございましたものの,原則として第1案をとるという点については御意見が共通していたと考えられますので,原則としては第1案を支持するとの立場をとることでよいのではないかと考えておりますが,それでよろしいか御審議いただきたいと考えております。   また仮に,第1案を支持するとの立場をとる場合には,「ただし,扶養義務者がその最後の共通常居所地国になお居住している場合に限る。」というブラケット部分について,どのように考えるべきか御審議いただきたいと考えております。併せて,注2に記載いたしましたとおり,先ほど御紹介したような第1案を修正すべきというような主張をするかどうか,御意見をちょうだいしたいと思います。   「3 抗弁についての特別のルール」は,仮訳では2枚目からの本議定書草案第6条の適用が除外される扶養義務の範囲について,どのように考えるべきかを御審議いただきたいというものでございます。   注として記載いたしましたとおり,扶養義務の準拠法に関する法律第3条及び扶養義務の準拠法に関する条約第7条は,傍系血族間又は姻族間の扶養義務に限って扶養権利者の請求に異議を述べることができると規定しておりますが,これと異なって本議定書草案第6条は親子関係に基づいて子に対して生ずる扶養義務及び第5条に規定する扶養義務の場合,すなわち配偶者間,元配偶者間等の扶養義務でございますが,これを除いているにすぎません。したがいまして,本議定書草案第6条によりますと,理論上は親や祖父母に対する成年者の扶養義務など,親子関係に基づいて子に対して生ずる扶養義務を除く直系血族間における扶養義務についても,扶養義務者が異議を述べることができることになるものと考えられます。もっとも,扶養義務の準拠法に関する法律第3条及び扶養義務の準拠法に関する条約第7条は,当事者の共通本国法によれば扶養義務を負わないことを理由として異議を述べることができ,さらに当事者の共通本国法がない場合には,扶養義務者の常居所地法によれば扶養義務を負わないことを理由として異議を述べることができると規定しております。   これと異なり,本議定書草案第6条は,当事者の共通本国法がある場合には当該共通本国法及び扶養義務者の常居所地法のいずれによっても扶養義務を負わないことを理由として,請求を争うことができると規定しております。   したがいまして,当事者の共通本国法がある場合について,当該共通本国法によれば扶養義務を負わないけれども,扶養義務者の常居所地法によれば扶養義務を負うときには,同法律第3条及び同条約第7条によれば異議を述べることができるというふうになりますが,本議定書草案第6条によっては請求を争うことができないことになるものと考えられます。   このように,同法律第3条及び同条約第7条よりも,本議定書草案第6条の方が要件が加重されているという差異もございますので,本議定書草案第6条の適用が除外される扶養義務の範囲を検討するに当たっては,この差異についても併せて検討する必要があると考えられます。   特別委員会において述べられた意見や,前回部会における御意見に照らしますと,一つ目として,親子関係に基づいて子に対して生ずる扶養義務に関して,本議定書草案6条において除かれるのは,子が未成年者である場合に限られるものとすべきかどうか,すなわち,子が未成年者である場合に限って,同条により請求を争うことができないようにすべきかどうか。   二つ目として,本議定書草案第5条に規定する扶養義務,つまり配偶者間,元配偶者間等の扶養義務ですが,これが除かれるものとすべきかどうか,すなわち配偶者間,元配偶者間等の場合に,第6条により請求を争うことができないようにすべきかどうか。   三つ目として,親に対する子の扶養義務,第4条第1項c号に当たりますけれども,これについても除かれるものとすべきかどうか。すなわち,親から子に対する請求についても第6条によっては争うことができないようにすべきかどうか。   四つ目として,仮に親に対する子の扶養義務が除かれない,すなわち原則として親から子に対する請求については6条によって争うことができるものとするとしても,例外として親が健常でないとき,この具体的な文言については,なお検討する必要があるかと存じますが,請求を争うことができないようにするものとすべきかどうかについて検討する必要があると考えられます。   第4の1から3までの御説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   なかなかリンクしておりますので,ちょっと整理させていただきますと,第1の問題との関連で整理させていただきますと,この今の議定書草案というのは大体四つの人を対象にしていると思うんです。   最初は完全な別枠で,あと扶養義務者とされた者が申立てをしたとき,要請をしたときに限りという条件が付くか付かないかと,これがあと問題があるんですが,この点を捨象していきますと,配偶者間,元配偶者間については,いわゆる国際私法上の一般原則といいますか,デフォルト的な最も密接に関係する地の法律を適用するという原則に忠実な連結基準で決めていくと,配偶者。   第2番目のグループは,親に扶養請求する子ですね。これは年齢の制限はないです,子については。この場合,親に対して扶養請求する子については優遇原則が妥当するという形になっています。基本的に子の常居所地,それでも扶養が受けられないときは親の常居所地と一致する法廷地法が適用する。それでも扶養が認められないのだったら,両者に共通の本国法があったら本国法によるというふうに三段構えで扶養が受けられるように受けられるように仕組みをつくっておるわけです。   これが,ほかのグループとまた違うのは抗弁を受けないということです。扶養義務者とされた者が,この法律によれば扶養義務がないんだと。6条の抗弁を全く受けないということで最も優遇されたグループということになります。   第3グループに属するのが,第1に出てくる4のb,cのところで,祖父母に対する子の扶養請求の場合の子です。それともう一つは,父母が子に対して扶養請求する場合の父母です。この第3グループ,4条の1項のb,cと言われるグループというのは,やはり子と同じように,最初の父母に対する扶養請求する子と同じように優遇を受けます。常居所地法,その常居所地法,扶養義務者の常居地と一致する法廷地法,それから,あればということですが,共通本国法,このどれか一つ段階を踏んでいって,扶養請求が受けられるように,受けられるように仕組んでいくわけです。これは,しかし父母に対して扶養請求する子よりは劣位に置かれています,この草案では。それはなんでかというと,6条の規定の抗弁を受けます。つまり,請求権者と義務者との間に共通本国法があった場合には,その共通本国法で扶養義務が否定される,請求が否定される。それから,扶養義務者の常居所地法でも否定されるという累積的な場合には,この両方の法律が扶養請求権をともに否定しているときは,扶養請求権は否定されますと,こういうことで,一応は抗弁を受けるということ,要件は加重されていますけれども。今,○○関係官がおっしゃったように。   そして第4グループ,これは完全に劣位に置かれていまして,グループとしては傍系親族,それから姻族間,それからこれが入るかどうか分かりませんが,パートナーシップのパートナー。   これはもう,その人の扶養請求をしようとする人の常居所一本やり,これしかありません。優遇はされていません。段階的に順々に法を適用していってということはないです。扶養請求を受けられるようにという仕組みは採られていません。かつ,第3グループよりはまだ劣位に置かれるのは,さらに抗弁を受けるということです,このグループは。つまり,3条の常居所地法一本やりで,6条の規定の抗弁も受けますので,相手方,例えばパートナーなり,おじ,おばなりが扶養請求を受けるときに,その扶養義務者とされている者の常居所地法も,さらに共通の本国法も扶養請求権を否定しているときは,扶養請求を受けられないという仕組みを採っているわけです。   こういう4つのグループを想定しておいて,それで保護のグレードを付けていくという仕組みを採っておるわけで,第1の1の子と親に対する特別のルールという4条のaからc号までについてどのように考えるかというのは,結局そのグループの立て方の問題なんだということになろうかと思います。   この問題に限らず,特に18歳,早急といいますか,たちまちディシジョンメーキングしておかなければいけないのは,ブラケットに入っている18と21どっちにしようかということですので,この点も含めて御議論いただければと思います。 ● 大学教育の普及等も考えますと,いずれかと言えば21歳未満の方がよろしいかと思いますが,ただ,親以外の者の義務ですので,そこまで優遇する必要はないという考え方にもそれなりの理由はあるかと思いますので,18歳未満が大勢であれば18歳未満でも別に構わないのではないかと思います。   一応,21歳未満に賛成です。 ● どうもありがとうございます。 ● やはり,もともとの条約があって議定書,これをリンクさせないという案もあるようですけれども,一応経緯からいけばこの条約の冒頭で21歳未満ということで,それを前提に制度設計されてきますから,やはり素直にいけば,大学教育もありますけれども,素直にいけば21歳という形になるのではないかと思うんですが。 ● 議定書は一応独立ということもありますけれども,両方条約も議定書もという,国にとってみたら整合性ということから考えると,準拠法と回収の問題は同じ射程範囲に入ってくるということですよね。   ほかにいかがでしょうか。--よろしいでしょうか。そうしたら,この問題は21歳ということで対処方針案を作成するということにしたいと思います。   それでは,次に配偶者,それから元配偶者間の扶養との関連で5条の規定があります。   5条は,ブラケット部分,先ほど言いましたように二つ問題があって,一つはまだブラケットになっていて,この5条の規定が適用されるのが無条件なのか,条件が付いているのかということで,ブラケットを外すということになりますと,大きなブラケットということになりますが,外すということになりますと,本来は配偶者,元配偶者も扶養請求権者の常居所地法によると,3条に従って。だけれども,一方が,いやそうではなくというふうにあえて主張する場合には,5条で定めている準拠法によると。   例えば,当事者の最後の婚姻生活が行われていた場所の法律,最後の共通常居所地国の法律による可能性を認めるというのか,それとも,もう無条件に当事者が主張が何であれ,夫婦の間は常に5条の抵触規定による。第1案から第3案どれによるかはともかくとして,全く別個独立の抵触規定に服するとすべき。実は,現行の1973年の条約,扶養義務の準拠法に関する法律,日本の,あれの4条の規定はもう別個独立の規定として置かれていて,離婚準拠法によるというふうになっておるわけです。この離婚準拠法というのをブラケットの中を当事者,扶養義務者の要請がある場合にはという文言もブラケットの中から削除してしまいますと,離婚準拠法4条の規定に変わって,この第1案ないし第3案の規定の,基本的には当事者の最後の共通常居所地法という準拠法が,離婚の準拠法,離婚に適用された準拠法ではなくこちらの最後の共通常居所地法という連結基準に変わってしまうということになっているわけです。   ですから,最初の選択は,あと扶養義務者,当事者という言葉の問題はありますけれども,大きな選択肢としては,当事者の一方がともかく3条の扶養権利者の常居所地法によることを嫌がった場合に,初めて5条の規定は適用されるというふうにすべきなのか,それとも一律,最後の共通常居所地法,配偶者と元配偶者の間の問題ということ,ちなみに1973年,今の扶養義務の準拠法に関する法律の4条は,元配偶者,離婚当事者の間だけでして,婚姻当事者間の関係は4条は規律しておりません。   ですから,その点でもこの5条は新規なものを含むということになろうかと思います。   ボノミさんの解説文を読みますと,このブラケットの部分がどういう理由で出てきたかというのが十分に説明が実は余りされていないんで,どういう趣旨かなというのは,もう一つ私もよく分からないんですが,現行の扶養義務の準拠法に関する法律とのことを考えると,これは別個独立の準拠法に服するということに,そのまま移行してしまうよりも,その方が親しみやすいかなと思うんですが,このあたりはもし御意見がなければ,ハーグでブラケットの趣旨を理解,把握していただいて,判断を代表団にしていただくということしかないんではないかなとは思いますけれども,いかがでしょう。 ● 結局,このブラケットを外して条文に載せるとなると,当事者の一方か扶養義務者が準拠法を決定するという構造になるわけですね。   当事者に選ばせることによって実現できる利益というのが,今の趣旨もよく分からないというお話でしたけれども,ちょっと必ずしもよく分かりませんで,私も。やはり法的安定性に欠けるというのが気になって,当事者の意思を尊重するという側面でいけば,準拠法の指定というのが後でありますので,そうすると両当事者の合意は手当てできているのですが,一方の当事者だけを尊重して準拠法をその人の意思によって決めるという構造を実現するというのは,子供の扶養等々の場合だとまた別なんですけれども,配偶者あるいは元配偶者間の問題にあって,そこまで一方の当事者を優遇する必然性はどうも感じられないというのが私の考えですが。 ● どうもありがとうございます。 ● 前回のこの部会の議論は,注1に整理していただいておるわけですけれども,「他方で,」以下の意見についてもなるほどと思うところがあるわけですが,こういうのも要請が出てくる時期にもかかわってくるんだろうと思うんですね。   全部終わりかかったときに要請が出て,全部ひっくり返るというのは望ましいことではないので,その辺がこの要請を提案される方がどういう意識でおられるのかということが,もし今後分かるようであれば,ただしていただければというふうに思います。   それから,このブラケット部分がなくなってしまうということであれば,それでいいわけですが,英語を見ると,リクエストと書いてあるわけですけれども,それは国内に持ってくることを考えたときに,一体,訴訟法的にはどういう性格のものになるのか,特に家事審判法なんかは弁論主義も採っておらず,関係あるのかどうか分かりませんが,主張なのか申出なのか,そのあたりがちょっとイメージしにくい状態でおります。 ● これまた,手続の中でしなければいけないのか,それすら分からない状況ですから。   よろしいでしょうか,(1)の問題については。もう一つこの要請,ブラケットの中身については趣旨がよく分からないということもあって,もう一つ消極的だというふうに理解してよろしいでしょうかね。--それでは,そういうことにさせていただいて,(2)第1案から第3案までありますが,どれにしましょうかということです。基本的には第1案を支持するというふうに日本は立場をとっておるんですけれども,いかがでしょうか。   前回での議論というのは,第1案,第2案,第3案が出てきたといいますか,最後の共通常居所地国の法律というのが出てきたのは,国によっては夫婦の間ではもう扶養なんかあり得ないと,基本的に。スカンジナビアとか英米法のコモンロー諸国は,そういう立場をとっていないので,優遇ということはそもそもあり得ないということで,では,なかなか夫婦の間の離婚の準拠法が最もいいかというと,そういうわけでもないので,ではどこにしようかということ。   主に想定されている事案というのが,ともに例えばA国に住んで婚姻生活を送っていたと。ともにA国人だと。ところが離婚をして,一方がB国に現在居ると。A国というのは例えばスウェーデンで,夫婦間で扶養なんかあり得ないと,離婚した夫婦にという立場。ノーだと,こう言っている。ところが,B国はそうではなくて,夫婦間でも扶養は認めると,元配偶者間でも認める。そういう場合に第5条の規定によると,最後の共通常居所地としてこの別れたスウェーデン人夫婦の扶養の問題については,スウェーデン法を適用しようという理屈ですね。最後の共通常居所地法としてスウェーデン法を適用できる仕組みを採っている。   たまたま離婚後,配偶者の一方が扶養を認める国に住んでいるからといって,その者の離婚請求を認めるというのは,一方的な行為に基づくものですから,これは認められないということを前提にして,こういう5条の規定が出てきたので,何やら5条の規定自身は,離婚した配偶者間,元配偶者間での扶養を拒否する国とそうではない国という状況を想定しながら立てられているというふうに考えられるわけです。   日本ではどうなのか分かりませんけれども,私一人で余計なことをしゃべっておりますけれども,例えば日本人のカップルがサウジアラビアとかモロッコに住んでいて,そこで婚姻関係が破綻して,例えば妻が日本に戻ってきて,妻が離婚請求を日本でするというような場合に,モロッコ法やサウジアラビア法よりは日本法の方がよろしいんではないかと。最後の共通常居所地法を適用すると,やはりこれはサウジアラビア法になってしまうけれども,こういう日本人間の扶養離婚請求について,日本法によらない理由はないんではなかろうかなと思うんですね。こういうときに,日本法の適用に道を開くのは恐らく第1案でも第2案でも第3案でもできるんだろうと思います。第1案でも,もともと日本に生活をしていたのでしょうし,このカップルは。最後の共通の常居所地を一回は日本に持ったことがあるわけですから,日本法ということになるんだろうと思いますね,扶養請求権者の常居所地法。もちろん第2案でも,密接に関連するのは日本法だという筋合い。ちょっと第3案が苦しいかなと思いますけれども,いかがでしょうか。 ● 今,おっしゃったケースで,同一本国法たる日本法の適用を導くためには7条と8条がありますので,それで足りるのではないか。5条で本国法主義を採る必要はないのではないかと思いますけれども。 ● 日本法に同意した場合ですね。しなかったらやはり,サウジアラビア法の方が適当ですか,○○幹事の考えだと。 ● 扶養義務者が,なおサウジアラビアに常居地を有している場合にはそうなります。 ● サウジアラビアの方がよろしいと。準拠法としてより適当というふうに○○幹事はお考えですか。どうせ商社マンで日本に帰ることが分かっているときでも。 ● 確かに,そのケースを取り上げてみますと,そうだということになろうかと思いますけれども,すべての場合に適切な結果をもたらすようにルールをつくろうとしますと,非常に複雑になりますので,そこまでは。 ● そうすると第2案なんかの方がよろしいと。 ● 先ほどの本文のブラケットを入れた方がいいのかどうなのかについては,定見がないのですけれども,第1案かつ,ただし書を設けるという案がいいのではないかと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。--ございませんでしたら,従来どおり第1案ということの方向で考えていくと。その際にただし書はどうするかということで。これはちょっと最初のときは,ただし書を入れることを条件にしていたんですかね。 ● この1,2,3案に分かれてきたのが前回からでございまして,特にただし書とセットでということで部会で御議論いただいたことはなかったという記憶でございます。 ● そうですか。そうしたら,ただし書も含めて第1案で,ただし書を入れるかどうかというようなことについては,ハーグで事情をよく見極めて御判断いただくというようなことでどうでしょうか。--もしございませんでしたら,次の「抗弁について」の6条の規定。御意見ございましたら。 ● 前回もちょっと話をさせていただいたこともありますので,今回,法律と今回の案とどちらがより過重になっているのかは一概に言えないという御指摘を受けて,その点,大変参考になったんですが,ここでの一応対象をどうするかということに関してだけ言えば,やはり今,老親扶養等々の問題も出てきているわけで,子供に対する扶養義務,それから元配偶者間の扶養義務,それから③ですね。このあたりは日本の社会にとってはセットで考えていくのが私としては望ましいのではないかという気がしますので,③のような考え方に個人的には賛成したいというふうに思っています。 ● ③につきましては,○○委員の御意見と同じく除くべきであるという考え方です。①につきましては,子が未成年者である場合に限らない方がよいのではないかと思います。   成年に達しておりましても,高等教育の必要性でありますとか,子が病気である場合とか,扶養を必要とする場合もありますので。   5条の場合については,余り深く考えてはいないんですが,除いた方がいいのではないかというふうに考えております。 ● お二人に聞きますが,優遇原則という観点からしますと,序列を付けていただけますか,抵触法上,だれが絶対,未成年者がこうだと,これは絶対優遇すると。抗弁も認めない。三本立ての段階的連結を認めると。その次は。○○委員,どうですか。 ● なかなか難しい御質問ですが,この議定書の案は,そういう意味ではここの抗弁の記述というのは,一応夫婦を優先しているというふうな構造になっているかと思うんですが,その枠組みに乗るのが穏当かなというのが今のところの考え方ですが。 ● 6条の関係でちょっと不思議に思うのは,4条の祖父母に対する子の請求の場合と,父母が子に対する扶養請求をする場合については,一方で三段構えで優遇しておきながら,他方で6条では抗弁も認めていると。一方で優遇しながら他方で認めない方向にもあるというところが,もう一つ,どういう考えに立っているんだろうかと分かりにくいというのが恐らく二人の御発言の背後にあるのだろうなと想像はしておるんですが。 ● そうですね。この議定書の枠組みからとは言えないですね。確かにそちらの面からいえば,この夫婦間の方の話は第3グループ,第3番手というふうな読み方もできるかなという気はします。 ● なかなかこれ,判断は難しいですよね。日本法でどうなっているかということを抵触法の方面で反映させるのはなかなか大変だろうと思うし,ましてや比較法的に見て,どのグループが優遇されるべきかということについても,ちょっと判断しかねるところがあるだろうと思いますしね。   この点もやはり,まだ十分に私はボノミさんの解説はこの点が明瞭になっているとは思えないので,状況を見極めながら御判断いただくしかないんではないかなと思うんですが。   コアな部分,一方の対極にある子については,未成年かどうかはともかくとして優遇すべきだろうと。他方で,姻族の関係は一番劣位に置かれてもしようがないかなと。今の草案の姻族の取扱い,傍系親族の取扱いは,1973年,つまり扶養義務の準拠法に関する法律の3条に比べるとまだいい方なんですよね。というのは累積的適用で扶養義務を否定しているときだけ否定できるので。現在の扶養義務の準拠法に関する法律は,扶養義務者の常居所地法か共通本国法かどっちかで扶養義務を否定したら,扶養義務を認めないんですから,こっちはそれでも累積しているから,まだ少し抗弁の範囲が狭まっているということが言えるので,少しはよくなっているわけですけれども,そのことがいいかどうかということも含めて,それでも一番最下位にあるという順序からするとということになると思うんです。   では,この点は以上のようなことにしまして。 ● ④のvulnerableが不明確だという問題については,何か進展はあったんでしょうか。 ● 解説には何にもないです。多分それは次のところで出てくるんではないでしょうか。8条との関係,準拠法の指定ができるかという。   それでは次の「第4 準拠法の指定」というところ,この部分に移りたいと思います。 ● まず「4 準拠法の指定について」でございますけれども,仮訳では3枚目からの本議定書草案8条に関係する論点を取り上げてございます。   (1)は,本議定書草案第8条第1項は,「いつでも」と規定しておりますが,準拠法の指定をすることができる時期を限定することについてどのように考えるべきか。(2)は本議定書草案第8条第4項は,「指定された法律の適用が明らかに不公正又は不合理な結果をもたらす場合には,その法律は適用しない」としておりますが,これを規定すべきかどうかを含め,この点についてどのように考えるべきか,それぞれ御審議いただきたいというものでございます。   注1に記載いたしましたとおり,ポーランドから(1)及び(2)に関連するコメントが提出されております。なお,(2)につきましては,第4項は予見可能性や指定の有用性を損ない,また新たな紛争を生ずるのではないかというような趣旨の指摘がされてございます。また,注2には御参考として,前回部会における議論の概要をまとめております。   「5 公序について」は,仮訳では4枚目からの本議定書草案第12条第2項の扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮に「入れることができる」又は「入れなければならない」という文言のブラケット部分について,どのように考えるべきかというものでございます。   注として記載いたしましたとおり,扶養義務の準拠法に関する法律第8条第2項は「扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮して定める」と規定し,また扶養義務の準拠法に関する条約第11条第2項は「扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮しなければならない」と規定しております。   本議定書草案第12条第2項の適用が問題となる場合としては,例えば,A)扶養権利者の需要は大きいが,扶養義務者の資力が小さい場合や,B)扶養権利者の需要は小さいが,扶養義務者の資力が大きいような場合が考えられます。   この点,扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮に入れることができるとする場合には,例えばA)の場合について,扶養権利者の需要が大きいため,扶養義務者の資力が小さいにもかかわらず,扶養権利者の需要に相当する金額を決定することや,B)の場合について,扶養権利者の需要が小さいにもかかわらず,扶養義務者の資力に相当する金額を決定することも許容されるようにも思われます。   また,扶養権利者の需要も扶養義務者の資力も考慮しないで,一定の金額を決定するというようなことも許容されるようにも思われますが,これらの点を含め御審議いただきたいと考えております。   「6 留保について」は,仮訳では8枚目からの本議定書草案第24条第1案,第2案のいずれを支持するとの立場をとるかということとの関係で,本議定書草案中の扶養義務の準拠法に関する規定のうちに,我が国として留保すべきものがあるか御審議いただきたいというものでございます。   論点メモについての御説明は以上でございます。 ● 「準拠法の指定について」,4からまず御議論を始めていただきたいと思いますが,○○関係官,この(1)の点でポーランドはどんなコメントを載せているんですか。 ● 特に,なぜ,こういう「いつでも」というのを問題にしているかというような具体的な主張はないんですけれども,7条の方では,「手続の開始前にされる」というようなフレーズが入っておりますので,このことも考慮するというような趣旨の提案のようでございます。 ● (1)についていかがでしょうか。--もし何も特にございませんでしたら(2)はいかがでしょうか。 ● (2)の方ですけれども,考えておりまして,公序との関係がよく分からなかったですね。当事者自身の濫用に備えて,公序ほど厳格ではない,準拠法選択行為を無効とする理由を設けたいのかなと思いますが。 ● だから,4項は削除の方向で考えるべきだということですか。 ● そうですね。削除して公序に任せれば簡単ではないかと思います。   もし,公序以外に弱者保護のための弱者保護規定を設けるのであれば,基準を明確にすべきではないかと思います。   それから,8条1項の方に戻ってよろしいでしょうか。準拠法の指定をいつまでできるかというのは重要な問題ではあろうと思いますけれども,ポーランド提案のように訴訟の開始前に限定してしまいますと,その被告ないし相手方の方は十分考える余裕がないということで,これでは少し早過ぎると思います。   各国の訴訟法に任せればいいのか,あるいは信義則に反しないようにというような形で,一般条項的な書き方をするのか,どれがいいのかちょっと私の具体案はありませんけれども。   以上です。 ● 4項については,消極的な見解が述べられまして,そういう方向でよろしいですか。大体,これは公序で大体説明できるから,かえってこういう不確定な概念を,不公正とか不合理とかいうような文言を持っている規定を置かない方がいいというような理由でよろしいですか,こういう制度一般的に。 ● 私も結論的に,この4項は不要であるという意見に賛成なんですけれども,ただ一点,○○幹事がおっしゃっていた点で,公序との違いがよく分からないという点ですけれども,これはあくまで優遇原則と同様に,選択がなければ客観的連結によって適用された法との比較ですので,法廷地では非常に少ない扶養しか認めていなくて,選択された法を適用しても公序に反しないという場合であっても,客観的連結によれば準拠法となるべき法が別にあった場合に,そちらの法には反するというときにこの規定が効いてくるという趣旨ですので,そこのところはそれなりに意味のある提案だと思います。 ● はい,分かりました。 ● ○○幹事,削除案を撤回するという意味ですか。 ● 4項には,公序則と違った性質があるということが分かりましたという意味ですが。   そういう考え方をとるにしても,もう少し明確に定めないといけないのではないかというふうに思います。 ● ほかにございませんか。これは私個人的には○○幹事と同じようにやはり疑問がありまして,8条に従って,例えば夫婦で準拠法の合意をしたと,ところが一方が判断能力が不十分になってしまって,後見人が選任されて,かつての合意も変更したいというような場合,例えば法定代理人としての後見人と,他方配偶者は法選択できるとかいうようなことは考えていないということですかね。   やはりもう一つ疑問があるのは,その場合に,もしできるというようなことになれば,この法定代理人もできないと具合が悪いということになってくる。そうすると,今度は法定代理人が果たして準拠法の合意ができるかといったときに,どういう後見人が法定代理人として合意できるかという,後見人選任の有効性の問題というのはこの条約の中では処理してないと思うんですけれども,それはどうやって解決するのかという問題がちょっと頭にどうしても残ってしまうんですね。   それは,ハーグに行って状況を見極めていただきたいと思いますけれども。   それでは,8条については,(1)の問題についてはそれほど……。(2)が比較的,それなりの理由はあるけれども,○○幹事のお考えだと,本来のこの4項の趣旨が生かされるような規定振りであれば,それはそれで構わないということなんでしょうかね。   そこまでする必要もないと。大体客観的に適用される法律は,大体,法廷地法に一致することが多いから,特に4項を認めて法廷地法とは異なる法律との比較ということもしなくても構わないということでいいですかね。というようなことで不要だということでよろしいですか。 ● はい。 ● では,4項については明確さということ,趣旨は分かるけれども,実際的な有用性は余りないんではないかということから,対処方針は消極的な態度をとるということでよろしいですか。 ● それで結構なんですけれども,注の4によれば,なおまた別の文言が出てくる可能性がございますけれども。 ● より明確だとは思いますけれどもね。   それでは,今度は公序について。公序といいましてもこれは2項の話です。御意見をいただきたいと思います。   この1973年条約も同じ規定が置かれているのですが,11条の2項でしたかね,あそこではshallとなっておりますので「なければならない」ということで,扶養義務の準拠法に関する法律,今はただ「定める」だけになっているので,shallの意味で使っておられるのかなと思いますが,8条の2項というのは1973年条約をなかなかデフォルメしていまして,外国法を,要するに公序の一環として2項の規定をとらえているのですが,実は1973年条約の11条2項というのは,この草案の12条2項と同じでして,別に外国法の適用に際してとは書いてないんです。   規定にはないので,国内法化するときに適用すべき外国法に別の定めがある場合においてもという規定,これは結構,趣旨を酌み取った規定で,特に公序の枠組みでとらえなければならないというか,絶対そうだという規定では,実は,1973年条約でもないです。   むしろ,現在の草案の12条2項と同じだと。なければならないというものと同じだということですかね。   ちなみに,もし12条2項がそっくりそのまま国内法化,もし批准するということになりますとこれ,準拠法は日本法もあり得ますので,何も外国法に限りませんので,日本法が準拠法になったときも,この資力と需要という規定は,実質法の枠組みとしてかかってきます。 ● 先ほど,○○関係官から御説明のあったこの資料71の5ページの注のところの趣旨なんですけれども,2段落目に「この点」とあって,考慮に入れることができるとする場合には例えばと,これこれが許容されるようにも考えられるというのは,入れることができるとする場合には,考慮に入れないこともできるんだから,こういう不当な結果を招き得るという趣旨で言われているんですかね。 ● おっしゃるとおりでして,ただ,「ようにも考えられる」というのはそこまで意図しているのかどうか,ややよく分からないので,そういう書き方にしているのですけれども,今,現行の条約11条2項ではshallになっているものをそうではない形にするとなれば,そこは違う意味ということになるんでしょうから,より緩やかに考えるということにはならざるを得ないのかなと。それは,事務局としてはいかがなものなのかなという意味を込めているつもりなのですけれども,やや自信がなかったものですから,少し緩やかな表現にさせていただいていますので,その辺の忌憚のない御意見を承れればと思います。 ● そういう前提で言いますと,こういう結果が起こり得るような定め方であるとすれば,仮にそういう規範に従って定めないといけないとする裁判所は,非常につらいだろうなというふうに思いまして,先ほど○○委員から御指摘があったように,日本法では,そういう事情を含めて,一切の事情として考慮するということにされていますので,もし,しなくてよいというか,しないで決めることも,何を考慮して決めるのか分かりませんけれども,あり得るというような規定は,現行の民法なんかの考え方とはちょっと違ってくるように思いますので,shallの方がよろしいんではないかなというふうに感じております。 ● shallですね。ただ,その場合に,扶養義務の準拠法に関する法律のような趣旨でshallにした方がいいですか。外国法の適用との関係でshallというふうに考えるということですか。12条の2項というのは,外国法が適用される場合にだけ適用されるわけではないです。つまり,公序の判断基準として出てくるわけでは必ずしもないです。ただ,扶養義務の準拠法に関する法律の8条の2項は,公序の枠組みで判断できる仕組みになっています。ですから,shallととらえても,現行の扶養義務の準拠法に関する法律の8条の2項のように考えるのだったら構わないという御趣旨なのか,そうではなくて,およそ一般的にこれはshallでなければいかんと,日本の民法との関係でも。要するに,縛りをとにかく条約で入れてしまうという意味でshallなんだと,どちらの御趣旨なんですか。 ● 後者ですね。 ● およそ一般的な実質法の言わばガイドラインといいますか,法規範として,資力と需要は考慮するものではないと,日本の裁判所は適用しないと。 ● 今のはどういう意味ですか,考慮しないと。 ● 考慮しないと,そのような法規範は適用できないと。そういうものとしてとらえてよろしいということですか。   何度も言いますが,12条の2項の準拠法は日本法も入ります。 ● そうですね,はい。 ● shallとすると,日本法との関係でも非常に縛りが強いものになる。 ● 強いものになりますね。分かりました。 ● そういう趣旨です。shallでいいと,もしお考えになるのだったら,そこのところはどう考えるかということです。 ● 今,おっしゃられた意味がちょっとよく理解できなかったんですけれども,確かに12条2項の準拠法は日本法になる場合もあるわけですけれども,日本では先ほど○○幹事が言われたように,需要と資力は必ず考慮するというのが確定した実務ですから,日本法が入っても別に全然困らないんではないんでしょうか。 ● そうやって割り切っていただいたら間違いないです。それだったら結構です。   ただ,ほかの国がそれでいいかということになってきますけれどもね。   ただ,日本としてはそれで一向に構わないと思いますが,そこまで割り切ればshallで,しかも扶養義務の準拠法に関する法律のような外国法のみを対象とした規定ではなくても構わないということでよろしいでしょうか。--では,その方向で,ハーグではshallでいくということでよろしいんではないでしょうかね。 ● 12条との関係で一点だけ御質問したいのですが,現在の1973年の条約と違って,法廷地法が適用されるべき場合にも,この12条2項が効いてくるとしますと,1項とかなり性質が違うものになってまいりますので,その条文の立て方として1項と2項は切り離して12条,13条とした方がよいのではないかと思われるんですが,その点はいかがでしょうか。 ● いかがでしょうか。この扶養義務の準拠法に関する議定書草案は,公序としてヘッドタイトルを付けてまとめてありますけれども,これは73年条約そのものもやはり11条の1項と2項で,ヘッドタイトルはないんですけれども,同じ条文の中で処理していると,項が違うという形で。ですから,見方によっては確かに条約自体は公序の枠組みでとらえられるような読み方は大いに可能で,まさしくこれが扶養義務の準拠法に関する法律の8条に反映しているんだろうと思いますけれども,今,言われた法廷地法が適用される場合にも適用されたら,まさしく○○幹事がおっしゃったように,別の問題を規律しているわけですから,公序とは別個の規定として置くという方が合目的的であると,そして分かりやすい,誤解を生まないということになろうかと思いますが,この点いかがでしょうか。 ● 内容的には賛成なのですが,この資料の58の1で,草案のフランス語文の6ページの注5では,この規定はもっと前に持ってくることも考えられるということが出ていますので,別にして,むしろ公序の前に独立の条文にした方がよろしいんではないかと思います。 ● ○○幹事の御見解を一歩進めて,前に持ってくるという形にするわけですね。   ○○幹事はどっちが12に来るか,どっちが13にするか,特に特定されなかったけれども,○○幹事はどちらかというと前の方に持ってくるということですね。 ● 確かに,準拠法を適用して扶養料を決定する場面できいてくる規定ですので,公序よりも前に置いた方が整合的かと思います。 ● どうもありがとうございます。 ● 私,個人的には若干違う感想を持っておりまして,1項は法廷地の公序という問題であって,2項は外国法でこれらの資力とかを考えなくてよいと規定していても,それはもっと広い意味でのパブリックポリシーに反するので,その規定にかかわらず考慮するというのが2項の趣旨であるという,広い意味で言えば12条で並べて規定することについてもそれほど違和感はないのかなというふうに思います。 ● それは,1か条において適用に関する問題としてまとめることはできないことはないとは思いますけれども,どうでしょうか。   ○○関係官の考えをとりましても,適用に関する問題として公序の前に置いても実質法的な規定だということで,適用に関する局面で出てくる規定なんだということを考えると,公序に関する規定の近くに置くということでもよろしいんではないかなと思いますけれどもね。 ● 全くの初学者的な質問なんですけれども,1項と2項がぶつかるということはあり得る話なんでしょうか。全くそれは関係ない話なんでしょうか。例えば,2項を適用した結果が法廷地法の公の地位に反するぞというような,そういう法廷地国の場合は,何かそれを12条1項で2項を排除するなんていうことはあり得るんでしょうか。それとも,法律の適用というのはそういう意味ではない,法の選択だけの話ということになるんでしょうか。全くの疑問だけですので。 ● 私もよく分かりません。余り抵触することはないんではないかなとは思いますけれどもね。 ● 先ほど少し考えておりましたのは,この12条2項を適用して扶養義務者の資力とそれから認められるべき扶養料の額というのがあったときに,例えば準拠法上,上限が決まっていて,その資力それから需要というのを考慮して調整しても,法廷地から見ると,やはりなされるべき扶養に到達しないというような場合には,やはり公序に反する場合があり得るんではないかと思います。それもあって,12条2項を前に持ってきた方が,最後の安全弁として12条1項の法廷地の公序が効いてくるということがあり得るかなと考えておりまして。 ● そういう意味では矛盾しないんですよね。前に置いておいて適用しておいて,それがまた公序に反するということです。適用した結果も,公序が機能しないとかいう話ではないですから。   では,shallにしておいて,条文をどうするかというのは,今,言われたように別個の条文として立てて,できたら論理的には前の方に持っていくというのが望ましいんではないかというようなことで対処方針案をつくったらいい。 ● ○○幹事のお話で,資料番号58の1ですか,注5,そこでフランス文でplus avantというのがあるんですが,これは前の方に置くという意味かもしれないんですけれども,私は今は辞書がないのでちょっと分からないんですが,もっと考えなさいというだけの意味かもしれないので,位置を前にという意味ではないかもしれないんですけれども。だから,ちょっとそこはもう一回確認して,注の意味を見たいと思いますので,後で確認させていただきます。 ● しかし,それはそれとして○○幹事のおっしゃることは,それ自体合理性があるわけですからよろしいんではないでしょうかね。   それでは,24条の「留保」,この規定は留保した方がよろしいという。--73年のときは,姻族と傍系親族の扶養の問題について留保が少なくとも認められていたと思いますけれども,どうでしょうか。73年の当時は,日本はこの点については留保していないです。--いかがでしょうか。特に留保するという,しなければいけないと感じられるような事項はないと考えてよろしいでしょうか。--そうしたら,そのようにして。   最後に,ほかに外交会議で,この点は日本の代表が主張すべきであるという点がございましたらお聞かせいただけませんでしょうか。--ございませんでしょうか。それでは,これで一応,論点メモに掲げられました点は御議論いただいたということで。   時間,まだ少しありますけれども,以上御議論いただいた点を踏まえまして,11月5日から開催される外交会議の対処方針を作成するということになろうと思います。   詳細につきましては,私と事務局に御一任いただきたいと思います。   それでは,最後に事務局から今後の日程等について連絡をしてもらいます。 ● 本日も熱心な御議論,ありがとうございました。   今,対処方針を御議論いただいたその外交会議は,11月5日から23日までヘーグにおいて開催される予定になってございます。これには○○委員に御出席いただくほか,○○関係官と○○関係官も一緒に随行させていただくという予定にしてございます。   次回ですけれども,外交会議の結果報告と,それからこれで外交会議が終わりますと,当部会の役割というのは終わることになりますので,総会へ報告する報告の仕方について御議論いただくというために,もう一回会議を開かせていただきたいと思います。   その会議の日付ですけれども,来年の1月15日火曜日1時半から法務省の第1会議室において会議を開催させていただく予定にしておりますので,よろしくお願いいたします。   以上です。 ● それでは,法制審議会国際扶養条約部会の第10回会議を閉会させていただきたいと思います。   本日は御熱心な御審議をいただきましてありがとうございました。 -了-