法制審議会間接保有証券準拠法部会 第20回会議 議事録 第1 日 時  平成19年10月30日(火) 自 午後1時30分                        至 午後4時28分 第2 場 所  法曹会館 高砂の間 第3 議 題 ヘーグ間接保有証券準拠法条約について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻になりましたので,法制審議会間接保有証券準拠法部会の第20回会議を開催いたします。   では,事務局に配布資料の説明をしていただきます。 ● それでは,配布資料の御説明をさせていただきます。   今回の配布資料はいずれも事前配布資料でございまして,まず,部会資料28の諮問第57号に関する審議結果報告案の担当者素案でございます。これは,次回に法制審議会総会への報告内容をお取りまとめいただく予定でございますが,その原案として担当者において作成したものでございますので,今日,できましたら,これについて一通り御意見を伺えればと思っております。   それから,次に,部会資料29の規則第3条第2項による外国証券取引口座に関する約款の参考様式というものでございます。これは,部会資料25で前にお配りさせていただいた外国証券取引口座約款の改訂版でございまして,金融商品取引法が先般施行されたわけでございますが,それへの対応等のために9月30日付けで改正されたものというふうに承っております。この内容につきましては,○○委員から若干補足をしていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ● ありがとうございました。   それでは,○○委員,よろしくお願いします。 ● それでは,部会資料29の補足の説明をさせていただきます。   当部会の議論を日証協さんが持ち帰って,いろいろと御検討いただいた上で,外国証券口座約款の見直しをこれまでしてきております。実は,2年ほど前にヘーグ条約が固まったという段階で,今後,批准もあり得るということを踏まえて,日証協で外国証券取引口座約款の中に準拠法を明記しようということで,実は2年ほど前に,この約款は準拠法の部分だけ改正をされております。モデル約款ですので,参考様式という形になるんですけれども,具体的には,6ページに雑則とあるところの下の方の31条になると思うんですけど,準拠法及び合意管轄ということで,外国証券の取引に関する申込者と当社との権利義務についての準拠法は日本法としますということを,一応ここで明記をした形にしております。いずれ,ヘーグ条約批准の段階でどうするかということについては,今後検討するということで,とりあえず日本法を準拠法としてここに置かせていただいたという形で整理をしたというふうに聞いております。   その後,当部会での議論もまたさらに持ち帰っていただいて,やはりこの外国証券取引口座約款において,ペーパーレス化証券,外国でも当然ペーパーレスの証券があるわけでございますけども,これの取扱いについて,やはりこの口座約款上では明確になっていないのではないかということで議論がされまして,昨年だと思いますが,保振機構さんが日証決さんから業務を移管といいますか,取引所に上場している外国証券の米国株券の決済の事務を受けられたという際に,いろいろな規定を直されたということでございます。その際に,ペーパーレス化の対応もそこで盛り込まれているということでございましたので,日証協さんの方でも,その後,精力的に検討されまして,今回,たまたま金商法対応で約款を直す時期でもございましたので,同時にペーパーレス化についてこの約款上に盛り込みをするということで議論をしたというふうに聞いております。   具体的にということでございますけども,約款の1ページ目,一番上のところでございますけども,例えば,第1条の第2項,3行目の終わりぐらいから,「保管」とあります後に,括弧書きで「当該外国証券の発行に係る準拠法において,当該外国証券に表示されるべき権利について券面を発行しない取扱いが認められ」と,以下云々ということで書いておりますが,これについても当然対象になっているということは,ここで明記されております。   さらに,その下,第2章のところでございますけれども,混蔵寄託等と書かれているところの第4条になりますけれども,この中でも,2行目になりますが,「当社が備える申込者の口座に当該申込者が有する数量が記録又は記載される外国株式等及び外国新株予約権(以下「振替証券」という。)」ということで,これにつきましても,適切に管理をするものとしますということで,ここでペーパーレス化についての対応が書かれています。   さらに申し上げると,その下に,第4条の2ということで,寄託証券に係る共有権などということも明記されておりまして,従前の約款ですと,共有権云々というところまでは細かく書かれていなかったんですけれども,ここで改めて明記した形にしています。4条の2の最初の2行は,おそらくこれは物がある場合,寄託の場合について共有権を取得しますということが明記されているのと,続きまして,ペーパーレスについても同様に権利を取得しますということが書かれているということです。   さらに,4条の2の第2項になりますけれども,権利の移転でございます。これについては従前から議論になっていますが,ワラント裁判の判例を踏まえて,権利の移転についても明確化していこうという議論がどうもされたようで,ここで移転について,どのタイミングで移転するかということについて,一応書いているという整理がされています。   このように,金商法絡みのところでありますけども,当部会で議論されたいろいろな課題といいますか,約款上の課題については,いったんとりあえず整理できる範囲で盛り込みをしたという形で,今回,契約約款は新しくなったということでございます。   説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   今の御説明について,何か御質問等ございますか。--よろしゅうございますか。   それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   前回は,部会資料27の4条以下で検討すべき論点の第1,4条関係の2の合意の有効性の準拠法のところまで御議論いただいたということになっております。   今回は,部会資料27の第1の3から御議論いただきまして,さらに,次回には総会への報告を取りまとめるという日程からいたしますと,部会資料28の報告案についても,可能であれば一読まで終えたいと思っておりますので,効率的な審議に御協力のほどよろしくお願いいたします。   それでは,まず,部会資料27の第1の3について,前回も既に説明していただいていますが,回が変わっておりますので,改めて事務当局から説明していただきます。よろしくお願いします。 ● 第1の4条関係につきましては,前回の御審議で1と2について御議論いただいたわけでございます。4条の関係につきましては,部会資料26と22を使って,具体的な事例についてこれまで御議論をいただいてきたところでありまして,それに加えて,部会資料27の第1の1と2で具体的な項目について御議論をいただいたわけでございますが,3としまして,ほかに,解釈上,実務上議論しておく必要がある事項があるかどうかということをお尋ねしているものでございます。もし,ございましたら,提起していただければと思います。   以上です。 ● 何か,前回のほかに議論すべき問題点がございますでしょうか。--よろしゅうございますか。   では,先に進ませていただきます。   部会資料27の第2について,次に,事務当局から説明していただきます。 ● それでは,「第2 5条関係」について御説明をさせていただきます。   この5条は,4条によって準拠法が決まらない場合に準拠法を決める補充的なルールでございますが,その問題点の1といたしまして,現在の契約実務において用いられている契約書というのが5条1項の要件,具体的にいいますと,「書面による口座管理契約において関連口座管理機関が特定の事務所を通じて当該口座管理契約を締結したことが明示され,かつ,その内容が明確であるとき」というこの要件を満たしているかどうかということがございます。   私どもがここで御議論いただきたいと考えた問題はこれ一つなんですけれども,ほかに5条について,解釈上あるいは実務上議論する必要がある事項があれば,御教示いただきたいというのが2でございます。   以上です。 ● それでは,まず,第2の1の現在の契約で用いられている契約書が5条1項の要件を満たしているかどうかという点につきまして,御意見,御質問等はございますでしょうか。実務の方からの御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 日本の実務で用いられている契約書は,先ほど○○委員から御説明をいただいた外国証券取引口座約款になるわけですけども,先ほど,これも○○委員から御説明いただきましたように,外国証券取引口座約款は口座管理契約の準拠法を定めることにされたわけですので,そちらで4条が適用される形の処理にされていて,したがって,5条は問題にする必要はないという整理になっているのかなという理解なんですけど,そういう理解でよろしゅうございますか。 ● 外国証券取引口座については,そのような理解だと思っております。ただ,有価証券という観点で申しますと,国内証券等も当然有価証券でございますが,これはまた別途,振替口座約款であるとか保護預かり約款であるとかというまた別の約款がございまして,そちらの方に準拠法が同じように明記されていないという形になっていると思います。   したがいまして,という話で,5条の考え方という点に関して言えば,事務所の明記が逆にされているのかということについては,約款上は確かに明記はなくて,当社としか書いていないとは思うんですけれども,当社といっても保振口座を管理している部署という点では社内で一つだけで,証券管理をしている部署というのが特定されるわけでございますので,約款上の明記はないのかもしれませんが,一応特定はできるのではないかなというふうには思っております。ただ,その明記が約款上必要ということであれば,今後いろいろと検討していく中には入ってくるのかなというふうに思っておりますけれども。 ● ほかに何か,○○委員から何か伺えますか。 ● 今,○○委員がおっしゃったようなことと思っております。 ● ほかに。 ● 実務上といいますか,実際世の中で起きていることすべてを我々存じているわけではないんですけれども,ある一例を見ますと,ある米銀の場合ですけども,グローバルカストディアン業務を米銀がしておりますと。米国においてやっているんですが,彼らはヨーロッパにいわゆる事務所に当たるものを持っていて,これがブリュッセルにあります。さらに,その先に,ブリュッセルにある口座を管理しているのは,シンガポールで行っているといったようなことが実態としてあるわけですね。グローバルカストディアンである彼らと日本のサブカストディアンがどういう契約を結んでいるかといったときに,事務所はシンガポールだとかブリュッセルというのは明記されているかというと,明記されていないケースが相当あるんではないかと。契約としては,ニューヨークの米銀と日本の銀行が契約として結んでいる。事務所がどこだというような明記はどこにもされていないと。将来的に変わることもあるからだと思いますけれども,そのたびに契約を変えていくというのは実際問題としていろいろ不都合もあるでしょうし,だから,明記されていない場合の方が多いんではないかというのが私の実感です。 ● ○○委員は後からこの部会に入られたので,この議論を余り御存じないところがあると思うんですけども,今おっしゃられたアメリカの場合は,アメリカは口座管理契約の準拠法で処理するというやり方なのであれなんですけど,ヨーロッパは今まで口座の場所で処理するというやり方をヨーロッパ内部でやっていたものですから,それを受けてこういう規定があるということなんでございます。ですから,アメリカの場合は,先ほどいろいろなところに事務所があるというお話がありましたけれども,口座管理契約上,必ず準拠法を定めていると思いますので,4条の方が適用されて,それで処理されるんではないかと思います。 ● すみません。私,過去の経緯を存じませんでしたので,私の例として米銀の例を挙げさせていただきましたけど,ヨーロッパの銀行でも同じような,シンガポールで実際の口座管理オペレーションをしているというようなものがありますので,契約を私も全部網羅して見たわけではないので,実際がどうなっているかというのはよく分かりませんけど,書かないケースというのは,事務所というものを指定していないケースというのは多々あるんではないかという感じを持っております。 ● ありがとうございました。   ほかに何か。御意見ございませんか。   では,今,御議論いただいた論点のほかに,5条に関して,解釈上あるいは実務上ここで議論しておいた方がいいと思われる論点がございましたら,御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ● 実務を教えていただきたいんですけれども,この約款は分かるんですが,約款にどこかサインをするんだと思うんですが,それは通常,最後のところに書くようになっているんですか。それとも,約款によるというのはどこかに書いてある別の紙があって,それでこれがインコーポレートされているんですか。その契約書になんとか証券株式会社だけなのか,なんとか支店まで書いてあるのか。支店まで書いてあれば,もちろんグローバルに展開していなければいけないので,東京か大阪かは余り意味はないですけど,シンガポール支店なのかニューヨーク支店なのか,そこまで書いてあって,それを受けてその支店を通じて何か紙を渡しますとか,なんとかしますとかという条項が入っていれば,多分これに当てはまると思うんですが,場合によってはそういうことは何もなくて,支店という表示がサインのところにしかない場合もあるんではないかと思うんですが,それでも5条の要件は満たすのかとか,実際のことが分からないので,まずは,どんな契約書を当初結ぶのかを教えていただければと思うんですが。 ● 私もこの分野での実務経験は実際そんなには長くないんですが,グローバルカストディアンとサブカストディアンの契約の例で言えば,包括的な,全部を網羅するようなといいますか,概略的なアグリーメントがあって,これはおそらく米銀との間だと,米銀のニューヨーク,彼らも米銀で,ニューヨークで世界中の契約を収集していると思います。ですから,もとになる一番大もとの契約自体は,彼らのニューヨークの権限者のサインしかないケースがほとんどだと思います。さらにそれに付随して,サービスレベルアグリーメントとかいろいろな,こういうサービスの内容を規定した,特に株式のコーポリダクションについてはこういうサービスを行うというような,そういった個別のアグリーメントについては,どこどこの事務所のヘッドがサインをするというケースもあろうかと思います。ただ,それをまたニューヨークで集中しているというケースもあり,ケース・バイ・ケースだと思います。   ただ,先ほど申し上げました個別の,こういったたぐいのサービスについてサービスレベルアグリーメントを交わして,このオペレーションはABC銀行のシンガポール支店で行うというふうになっていることはあると思います。それもケース・バイ・ケースだと思います。 ● 分かりました。   上の方のレベルのお話だと思うんですが,顧客,ここで書いてある特に口座約款というお客様との関係でいうと,これはどうなんですか。 ● 思い切りドメスティックな話で,お客様に対しては,この約款を交付するとともに口座の申込書をお渡しして,申込書に書いていただいて,署名,捺印といいますか,社判を押してもらって,判こを押してもらっているという形でございまして,当然,そのときにどこの支店というのはもう決まって,口座番号も決まっていて,支店も決まっているという状態で発送させていただきますけども,ただし,なんとか支店でというところまで申込書に書いてあるかどうかという点は,多分口座番号しか,支店番号しか書いていなくて,なんとか支店というところまでは多分,明確には書いていないと。 ● ○○委員,よろしゅうございますか。 ● いや,それが条約の適用上どうなるのかを○○委員に教えていただければいいんではないかと思うんですが。 ● 余り考えていないものですから,また間違ったことを言うかもしれませんけれども,今おっしゃった通常の日本の証券会社の実務ですと,お客さんとの間で口座開設申込書のときには,もう支店は決まっているわけですよね。ですから,その支店番号と口座番号というのが書かれていて,おそらくそれにサインしますので,支店の名称がそこに物理的に書かれていなくても,どの支店で口座を開設したかということは明らかなんですね,もう支店番号,口座番号からはっきりしていますので。したがって,そういう意味では5条までいく可能性はないと思いますけれども,5条にいった場合の5条1項の条件は満たされているというふうに思います。カストディアンとサブカストディアンのところは,ちょっとよく分かりませんけれども,日本のこれまでの一般の証券会社と顧客の間の口座開設については,そういうふうに言えると思います。○○委員がおっしゃったことですけれども。 ● よろしゅうございますか。○○委員。 ● この条約の5条1項の限りでは,必ずしも東京支店なり大阪支店という特定をするまでのことはなくて,この会社が外国支店を持っていない限りはセーフということにはならないんですか。この特定というのは,日本にある事務所を通じてやるというところで,この目的では十分な感じもするんですけど,この会社が外国支店を持っていると,ちょっと混乱してくるんだろうと思うんですけど,どうでしょうか。 ● それは解釈問題ですよね。この会社に10の支店があって,どの支店で結んだかはっきりしないと。ここに書かれている意味で,expressly,unambiguouslyには述べられていないという場合であっても,10の支店のどこかのはずで,本店を含めてかもしれませんけれども,そのすべてが日本であれば,解釈問題として,どこに行っても日本法以外はないわけですよね,この条文では。ただ,もともとそういうことを想定して書かれていないんですけれども,それは解釈問題としてそうなるかということだとは思いますけれども。 ● 解釈問題であることはそのとおりだと思うんですけど,仮に解釈問題として厳格に解して,これは明示がされていないというふうに解するとしても,今の場合ですと,日本にしか営業所のない会社ということになりますから,これは日本法人ということになりますので,5条のほかの規定で,どっちみち日本法になると。だから,そこは余り議論する実益はないと思います。 ● ほかにございませんでしょうか。どなたか。--ほかに御意見がないようでしたら,部会資料27の第3について説明していただけますか。 ● 第3は7条の関係でございます。7条は準拠法の変更についての規定でございまして,これまでも何回も議論していただいたところですけれども,特に今回御議論していただこうと思いましたのが,第3の1と2でございます。   まず,第3の1は7条1項の変更の合意なんですけれども,変更の合意は当然有効に変更が行われるということが前提となるわけですが,その変更の合意の有効性の準拠法はどういうふうにして定まるのかという問題でございます。   それから,2が7条の3項と4項で,旧法に基づく証券上の利益と新法に基づく証券上の利益の優先関係というのは,新法によって定まるという整理になっているわけでありますけれども,これによって実務上問題が起きるということはないかということを問うものでございます。この点については条約の策定過程でも御議論していただいたところであり,特段問題はないということだったというふうに理解しておりますけれども,念のためにもう一度御議論いただければということでございます。   以上です。 ● ありがとうございました。   では,まず,第3の1の7条1項の変更の合意の有効性の準拠法について,御意見はございますでしょうか。あるいは,御質問はございますでしょうか。国際私法の方に伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。   ○○委員,何か。 ● すみません,よく分からないんですが,準拠法を変更するときの当事者というのは,ずっと変更がないという前提なわけですね。普通の債権ですと,債権譲渡があったときに,契約債権の譲渡であっても契約当事者としての地位は残るということになりますので,変更ができるのは前の当事者だろうと思うんですが,そういうようなことは,ここでは全く起こらないという前提でよろしいですか。 ● それで結構です。○○委員に補足していただいた方がいいのかもしれないんですけれども,口座管理契約というのは口座名義人と口座管理機関との間の契約ですので,違う人に証券を譲渡する場合は,別の口座管理契約が新しい名義人とその口座管理機関との間にございますので,準拠法の変更というのは,あくまでも当初の口座管理契約の当事者間でその契約の変更ということでございます。 ● 譲渡ということは考えられないという,そういう前提ですね。分かりました。 ● 7条を含め,この条約には,特段,有効性についてどの準拠法ということは定められていないわけですので,そうなると,普通の契約の準拠法の変更の問題と同じ問題だということで考えるのかなというふうに思ったんですけど,どうでしょうか。 ● ちょっと違うと思うんですけど,そこのところは別にしまして,先ほどの問題にちょっと返るんですが,当事者の表示というのが,もとのところでしっかりしていないと,先ほど当事者の表示が必ずしもはっきりしないというようなことがありましたので,そうなると,当社と書かれている,これは約款の上ですけれども,取引している事業所ですか,そちらの方の表示も問題ですけれども,相手方の表示のところも少し問題かなと。ちょっと別のことで,消費者契約のところでちょっと考えたことがあるものですから,その辺がどうなっているのかなというふうに思うんですけれど,当事者がもうそれで確実に特定できるのかどうか。 ● ちょっと私から,○○委員に補足していただくことになるかもしれませんけども,当事者は完全に確定しているというふうにお考えいただいて問題ないと思います。というのは,口座をつくるわけですので,関係当局もおられますけれども,口座は必ず本人確認をしっかりした上でつくらなければいけないというルールになっていますので,口座名義人は,昔はさておき,今は実在の実名のもので口座をつくっていますし,もちろん,それを管理する口座管理機関というのは現に管理しているわけですので,なんという会社かというのははっきりしていますので,そこについての疑義は一切ないというふうにお考えいただいていいと思いますけど,そういう理解でいいですよね。 ● 外国人についての当事者確認というのはどういうふうにされているんでしょうか。 ● 日本に住んでおられる外国人でしょうか。 ● それも分からないわけですけど,とにかく店頭取引をしたいと言ってこられたときに。 ● 当然,外国人であるというか,身分確認ができるものは必ず持ってきていただいておりますので,外国人であれば,いろいろな登録の書類とかそういったものは一応拝見させていただいているはずでございます。 ● これは,場合によれば消費者契約になりますよね,店頭で取引する場合には。そのときに,その契約自体についてはその国の消費者契約法が適用される可能性がありますよね。そのときに,例えば,取消しとかということが起こり得るのかどうか。そういうことになりますと,法の適用に関する通則法の,ひょっとすると,外国に常居所を持っている人がいて,そこの何か強行法規なんかを適用されるという場面があり得るのかなと思ったので,その辺の確認も全部した上で,例えば外国人との取引をしておられる。最近ですと,日本人でもどこに住んでいるかよく分からない人がおりますけれど,その辺までの確認はされていないということでしょうか。身分確認はできると思うんですけれど。 ● 基本的には本人確認書類として何が必要かというのは,法律というか政省令等に書かれておりますので,それにきちっとのっとった形で本人確認をさせていただいているところですという理解でございますけども,外国人のどこまでかという判断--ちょっとすみません,私も勘どころがなくて,最低限,法令で必要とされているところだけは確認しているというふうに理解しています。 ● 銀行の場合,外国人が店頭に見えられて,口座を開設したいということがありますと,まず本人の身分といいますか,本人を確認できるものは,基本的にはパスポートですね。あるいは,日本に在住しておられる外国人であれば,在住証明,外国人登録証ですか,これで住所も確認します。パスポートの問題は,パスポートには住所がありませんから,どこにも書かれていませんし,住所は自分で書くようになっていますので,なんらかの住所,日本に居住されている方は,やはりそういったものが必要だということになります。それから,外国で居住されている方ですと,やはり外国での居住を証明するものをいただくようにしております。 ● もとに戻りまして,変更の合意の有効性の準拠法についての御質問であったわけですけれども,国際私法の方で,○○委員,いかがでしょうか。 ● もう少し考えさせてください。 ● そうですか。○○幹事,いかがですか。 ● おそらく,前回,4条1項の合意の有効性について大分いろいろな議論があったと思うんですけど,基本的にパラレルに考えられるのかなというふうには思います。だから,条約では確かに書いていないと思うんですけれども,私も自信があるわけではないですが,国際私法の中でも,法廷地の国際私法に従って合意の有効性を判断するという考え方が比較的スタンダードで,あとは,そこで指定されている準拠法によるという考え方もあると思うんですけども,どちらの立場によるかにもよるんでしょうが,そういった考え方で処理をしていけば,特段その点がネックになるということも余りないのかなというふうに感じてはおるんですが。 ● 4条の場合はExplanatory Reportの中で,これは条約による抵触規定ではなく,法廷地の抵触規定によると,確かそうありましたですね。その前提で議論したと思いますが,今回のこの変更の場合はどうなのか。○○委員,いかがでしょうか。 ● 私も基本的には4条の考え方を普通にまとめればと思いますけども,どれほどあるのか分かりませんが,既存のAという国の法律によるというのをBという国の法律に変えるわけですよね。そのときに,Aという準拠法の合意をやめるというところの合意はどうなるのかとか,それは法としての国際私法によるという意味がその指定された法律によるという意味であれば,そこはAという国の法律によることになり,新たにBという法律を指定するときにはBという法律,指定先の法律によるという考え方をとった場合ですけども,そうすると,一つの合意でそれをやるわけですから,Aの準拠法をやめるという方がうまく,そこでは錯誤とか何かが成立し,Bの方は錯誤がないとされれば,二つ準拠法があることになりますよね。そのときにどっちが勝つのかとか,おもしろい話は国際私法上幾らでも思い付きますが,現実的かと言われると余り現実的ではないような,一般原則としては。ですから4条の考え方を当てはめたんだと思います。   もっと簡単な例で言うと,Aという準拠法をそのままにしておいて,新たに同じ当事者間でBという準拠法を指定したときに,時間的に後の方が勝つというのはどこに書いてあるのかというのだって,理論上は何で決めるんだとか,いろいろなことが起きてくるかもしれませんが,でも余り起きそうにない話ではないかと思っています。 ● 今の点について,ほかに御意見ございませんでしょうか。 ● これは,最初に準拠法を決めていなくて,その後に決めるのも準拠法の変更というふうに整理されているわけですね。 ● 最初は決めていなくて,5条で決まった準拠法を後で変えるということも可能です。 ● それも変更の中に入るということ。 ● よろしゅうございますでしょうか。 ● 今の点ですけど,Explanatory Reportの7―9という項目のところに,トリガー変更をなされる前に本条約に基づき決定された準拠法が第4条第1項に基づき決定されたものであるか,第5条に基づき決定されたものであるかにかかわらず,第7条が適用されるというふうにはっきり書いてあります。 ● よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきます。   では,その次に,部会資料27の第3の2の方に移りたいと思います。   旧法による証券上の利益と新法による証券上の利益の優先関係が新法によって定まるということによって,実務上の問題はないかということについて伺いたいと思いますので,実務の方の御意見を伺いたいと思います。   ○○委員に伺ってよろしいでしょうか。 ● 特に障害を思い付きませんというところでございますね。 ● ○○委員,たびたび申し訳ございません。 ● 第3項の新法が規定するというところで,相手方に周知されない場合については,第4項の方で一応カバーされているという理解をしておりますので,特段問題ないのではないかというふうに理解しています。 ● ほかにございませんか。○○委員,よろしゅうございますか。   では,今までに御議論いただいた7条に関する論点でございますが,これ以外に解釈上,あるいは実務上,ここで御議論いただいた方がいいというような論点がございますでしょうか。 ● 第5項ですけれども,大分回りくどく書いてあるんですが,これは基本的には第4項(c)にかかわらず新法が適用されるピリオド,そういう意味であるということでよろしいんでしょうか。文章だけから言うと,4項(c)も適用されるし,新法も適用されるかのような読み方もできないこともないんですけど。 ● ちょっと御趣旨がよく分からなかったんですけど,7条5項というのは,旧法の下で発生したけれども,パーフェクションが新法の下で行われたものについては新法が適用されるということをいっているんではないかと思っていたんですけれども。 ● それならいいんですけど,ちょっと表現がそんなに直截には書いていないので。 ● よろしゅうございますか。今の点,よろしゅうございますか。 ● そういうふうに読むんだというなら,それでいいです。表現別に言えば,(c)は適用されずに新法が適用されるという形ですよね。表現だけの問題ですよね。「にかかわらず適用される」というふうに書いてありますから,そうなのかなと読みますけれども,議案文が必ずしもそういうふうに直截にうたっていない。 ● ○○委員に伺った方がいいかもしれませんですね。今の○○委員の御意見ですけれども。 ● これは,要するにprecludeという英語の感覚だと思うんですけれども,ですから,4項(c)があるからといって,次のことがということですから,4項(c)の適用はなくて,その次に書かれていることの適用があると。 ● 両方が適用されるというか,任意的にどっちを選んでもいいという意味はないですか。 ● それはありません。 ● ほかに何かございますでしょうか。   では,7条についてはこの辺で先に進ませていただきたいと思います。   次に,部会資料27の第4について御説明ください。 ● 第4は8条の関係についてのものでございますが,8条は倒産の場合にどうなるかということを定めたもので,これもこの条約の規定の中で非常に重要なものの一つではあるわけですけれども,特段御議論いただく必要のあるようなものは見当たらないのかなと思ったものですから,一般論として,解釈上,実務上議論をしていただく必要があるものがあれば教えていただきたいという趣旨でここに書いてございますので,何かございましたら,御提議をいただければと思います。 ● 倒産関係でございますので,○○委員,何かございますか。 ● ございません。 ● ほかに。実務上,問題はございませんでしょうか。   ございませんようでしたら,次に進ませていただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。   では,次に,部会資料27の第5につきまして,説明をお願いいたします。 ● それでは,第5の御説明をさせていただきます。   第5は16条関係でございます。16条は条約前の口座管理契約,それから証券口座についての規定で,この条約が適用される前にされた口座管理契約とか,つくられた証券口座についても,この条約が適用されるということを原則としつつ,ルールを定めているわけでございます。   この関係で幾つか論点を挙げさせていただいております。まず,1でございますが,3項の関係で,日本法が口座管理契約の準拠法となる場合に,日本の国際私法の規定によって,口座管理契約のある条項が2条1項に掲げる事項のいずれかの準拠法を定めるという場合があるのかどうかという問いでございます。これは,要するに,その次に書いていますように,2条1項に掲げる事項というのは,いわゆる物権的な事項でございますので,日本の国際私法上は当事者自治は認められていないわけでございます。したがって,口座管理契約の条項によって,2条1項に掲げる事項の準拠法が定まるということはないのではないかと。したがいまして,日本法が口座管理契約の準拠法となる場合,先ほどの部会資料29の約款などはそうなっているわけですけども,その場合に3項が適用されるという余地はないというふうに一応理解しているんですけれども,そういう理解でよろしいかというのが1の問題でございます。   それから,2でございますが,2は宣言についての論点なんですけれども,つまり3項,4項を自国の裁判所では適用しないということを宣言できるという規定でございますが,その宣言を日本はする必要があるかどうかというのが2番の問題でございます。   それを御議論いただく関係で(1)から(4)までに分けて問題提起をさせていただいておりまして,まず,2項には口座管理契約にこの条約に関する明示の言及がない場合という言葉があるわけですけれども,明示の言及がない場合というのはどういう場合なのかというのが一つ目の質問でございます。この口座管理契約というのは,この条約が発効する前に締結された口座管理契約ですので,普通はこの条約に関する言及はないのではなかろうかと思いますけれども,そういう理解でいいのかどうかというのが(1)でございます。   それから,(2)ですけれども,この宣言というのは,この条約の19条1項に基づく発効後であって,かつ宣言をするときに,ここで日本が宣言するとしますと,日本において発効する前に締結された口座管理契約に限って3項,4項は適用しないという宣言ですので,それをこのメモではギャップ期間というふうに呼んでいますけれども,その期間に締結された口座管理契約だけについて3項,4項を適用しないという,そういう宣言を認める意味があるのかどうかというのが(2)の問題でございます。   それから,(3)ですけれども,仮に2項の宣言をいたしますと,そのギャップ期間について3項,4項が適用されないということになるわけですけれども,その場合,ではどのように処理されるのかというのが問題でございます。注を付けていますように,Explanatory Reportを見ますと,3項,4項を用いないで4条,5条を直接適用するということになるのだというふうにされておりますけれども,そういう理解でいいのかどうかということでございます。   これらの検討をしていただくと,我が国が2項に基づく宣言をする必要があるかという答えが出るのではなかろうかと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。あるいは,ほかにも議論しなければいけない事柄があるかもしれませんので,それがあれば御提示いただければと思います。   それから,その次の3でございますが,3項の方も宣言があるわけですけれども,それは口座管理契約において証券口座が管理される国について明示的に合意されている場合に,2条1項に掲げる事項のいずれかを準拠法とする明示の文言があっても,3項は適用しないという,そういう宣言ですけれども,それをする必要があるのかというのが3番の問題でございます。   これも,その前提として二つの質問を出させていただいていまして,(1)が我が国における口座管理契約の実務上,証券口座が管理される国を合意するというような慣行があるのかどうかと。これは,先ほどの事務所の所在地を明示しているかという問題とも似たような問題ですけれども,おそらくないのではないかと思いますけれども,そういう理解でいいかということでございます。   それから,もしもそんな慣行があるとした場合に,その国の法令を準拠法とする意思を有している場合があるのかというのが(2)でございます。   それから,4は,16条について,今まで挙げてきました1から3までの論点以外に何か議論していただく論点があれば御提示いただきたいというものでございます。   以上です。 ● ありがとうございました。   16条についてはかなりいろいろな問題が提起されておりますので,順次,御審議いただきたいと思います。   まず,第5の1の日本の国際私法上,2条1項に掲げる事項について,当事者自治は認められておらず,そもそもは16条3項が適用されることはないという理解でよいかという点でございますが,この点についての御意見,あるいは御質問から承りたいと思います。 ● ちょっと確認なんですけど,この取引口座約款の31条でいっておられる準拠法というのは,2条1項事項というものを含まないということなんでしょうか。 ● 資料29ですか。 ● 29。この31条でいっておられる……。 ● 31条。いかがでしょうか。○○委員に伺った方がよろしいですね。 ● 少なくとも2条1項云々というところは意識せずに,この約款に書かれている,その他もろもろ書かれているわけですけども,その辺についての準拠法について日本法とするという理解だと思っておりますけども。 ● つまり,普通の債権に関する準拠法をここでお決めになっているという,そういう趣旨でいいんですかね。 ● 少なくとも物権準拠法までは意識していないと思っております。 ● そうすると,ここでいっているのは,括弧の第2条でここに掲げる事項について,他の国の法を適用することを明示的に定めた規定ではないということなのかどうか。いや,この趣旨が普通の契約の準拠法だけを定めておられるのか,あるいはもう少し別のことを考えておられるのか,ちょっとその辺を伺いたい。 ● この31条を入れたときの議論としましては,とりあえずヘーグ条約を批准するまでの間,何も準拠法がないのはさすがにまずかろうということで,一応入れたというふうに理解しておりますので,ヘーグ条約後どうするか云々というところまで余り意識はしていなかったと思います。 ● 何か当社との間の権利義務と書いておられるので,もうちょっと違う権利義務が出てくるのかなという,若干そういう気がしたものですから。ひょっとすると,2条1項の全部ではないにしても,一部入ってくる可能性があるのかなと思ったので,ちょっと伺ったんです。 ● 一応債権関係のみというふうな理解でよろしいということですか。 ● そこまで深く議論はしていなかったと思うんですけども,そのような理解だと。 ● いかがでしょうか。   第5の1で書かれておりますように,そもそも16条3項が適用されることはないという理解でよろしいということでございましょうか。   ○○幹事,どうですか。 ● 私もちょっと正確ではないんですが,おそらく御趣旨は,ここで書かれているようなものというのは基本的に物権的な論点であって,従来でいえば契約という単位法律関係に含まれないものばかりであるというふうなことだと思うのですが,2条1項に記載されている事項,本条約で争われるような事項を想像した場合に,本当に契約準拠法が全く関係ないようなことしか並んでいないのかというのは,今,絶対ないと断言できるかというと,そこまで想像力が,検討が進んでいるわけではないんですが,例えば,口座管理機関が競合する権利,本来であれば,Aさんが勝ちそうなのに,不当に消去を,例えば処分してしまいましたといったときに,Aさんが今の処分は不当だったから,私の手元に口座が回復されるべきであるというふうな主張をしたときに,それが認められるかどうかというのは,本条約で決まる準拠法によるような気もするんですけれども,そうだとすると,この条約がなかったとすると,契約準拠法によるというふうに,伝統的な考え方からすると考えてもいいような気もしますし,他方で,債権自治のようなことを考えますと,判例は債権の準拠法というふうにいっていますので,ちょっとそれは間接的かもしれませんけれども,全く契約準拠法の単位法律関係に含まれてくるような問題が本条約2条でいう問題と重ならないと言えるかどうかというのは,やや私は個人的には自信がないところであります。 ● ○○委員,何か。 ● 私も最初に,この条約のときには,一種の付従連結をしているのかなという気がしていたので,そうだとすると,契約の準拠法によって物権的なものも処理できると,そういう道を開いたものかなと思っていたんですけれども,そうではないんですね。 ● ○○委員がおっしゃった意味が必ずしも十分理解できていないんですけれども,この条約が定めようとしているのは,あくまでも2条1項に掲げられている事項,一般的には物権的な事項というふうにこの部会では議論されてきたと思うんですけれども,その準拠法をどういうふうに定めるかという……。 ● 契約の準拠法でよらしめることも,これは可能ではあるわけですよね,付従連結という形で。 ● 付従連結について御説明いただきたいということでは。 ● いや,性質決定上は別の問題を,その準拠法を別の単位法律関係の準拠法によらしめるという場合が国際私法ではあるわけですよね。それを付従連結と言うのだと思いますけれども。それはどうでもいいんですけれど。 ● 今の御質疑,どうでもよくないと思うんですが,重要な御指摘で,私も○○委員がおっしゃったような理解だと思っているので,この問題の設定自体がちょっと飲み込みにくいところがあるんですが,要するに,この口座管理契約に準拠法を定めていたり,あるいは取扱支店,所在国がはっきりしていたりして,準拠法が決まりますという場合には,その法律はこの2条1項(a)以下に掲げているもの全部の準拠法になりますという条約だと思っていたんですが。   本条約がなければ,この中の物権に係る問題は法の適用に関する通則法の13条で所在地法による--有体物が目的物であればですが--ところを,それを取り替えてというか,付従というよりはむしろそこを切り取っているのではないでしょうか。 ● 分割だけ付従なんです。 ● 分割--最後に説明するんですが,要するに単位法律関係をそこは切り取って,この条約の適用になるので,準拠法が日本法であればどこに証券があろうとも,もし物としての証券があるときにですが,それでも日本法によるんですと。物権問題も日本法によるんだというふうになっている条約だと思っていたのですが。 ● ですから,もしこの条約に入ったとした場合には,この約款の中でも,条約2条1項事項については条約によって決められるというような,準拠法が決められるというふうに書いておく必要があるんではないかなと,包括的に。 ● 私どもがこのレジュメを書いた前提と,今,両委員がおっしゃられた問題の前提が違うんではないかというふうに思っておりまして,両委員はこの条約が発効して,この条約を前提に合意をしたという場面でお話しになっておられたんではないんでしょうか。   我々がここで問題として設定させていただいたのは,条約がまだ発効する前の段階でのことですので,そうすると,発効していなければ,この物権事項について準拠法の合意をしても,そんなものは意味がないというふうに今の国際私法ではなってしまうはずですので,だから,そこの前提が我々が問題提起させていただいたのと,両委員がおっしゃったのと,そこがずれているんではないかなというふうに聞いていて思ったんですけど,そういうことではないんでしょうか。 ● 私は条約の適用のことを申しました。ですから,条約発効前の話であれば,おっしゃるとおりかもしれません。 ● 私は条約発効前のこととして申し上げたんで,○○関係官がおっしゃった問題認識の下で完全にそう言い切れるかどうかは,もうちょっと慎重に考えてもいいかもしれないということを申し上げました。 ● たびたびすみません。○○幹事の先ほどの後者の当事者自治の方の事例は問題意識を理解したつもりなんですけれども,前者の方におっしゃられたところが,ちょっといま一つ,そこが債権の準拠法になるんではないかと,伝統的にそう考えておられるんではないかというふうに御説明いただいたかと思うんですけれども,ちょっとそこのところが,私の不勉強のせいかよく理解できなかったもので。すなわち,Aが勝手に処分されて,Aがそれを取り戻すという場面であれば,Aに証券が帰属しているということを前提にものを言うことになりますので,証券の帰属,すなわちそれを物権的と申しましょうか,そういう形で議論する方がむしろ素直なのかなとちょっと思ったりもしたものですから,そこをもう少し補足いただければと思います。 ● 有体物の証券であれば,まさにおっしゃるとおりだと思うんですけれども,有体物ではない,物が全くないようなものになると,口座の記帳を回復せよとか,そのような請求の仕方を考えたときに,本当に純粋に物権の話であるというふうに整理できる,そこは今の国際私法自体があいまいな部分ですので,今ここで断言的に申し上げることはできないです。○○関係官がおっしゃったような考え方もあると思いますし,ちょっとほかの考え方もあり得るかなということで申し上げました。 ● 物権的請求権につきましても,性質決定が債権的なものか物権的なものかというのは,その都度違うというのが多数説だろうと思いますので,微妙なところがやはり残るような気がするんですけど。 ● 今の点について,何か。○○委員,何か御意見ございませんか。 ● ○○幹事のおっしゃられたとおりのような気がするんで,言い切ってしまうことについては少し疑問に思っております。 ● そのほかに御意見がございませんようでしたら,次に,ちょっと時間の制約もございますので,第5の2の2項の宣言をする必要があるかという問題に関しまして,まず,前提の確認としての(1)の口座管理契約にこの条約に関する明示の言及がない場合とは,どのような場合をいうかということ。   それから,(2)の2項の宣言により,3項及び4項の適用を排除することができるのは,いわゆるギャップ期間に限られることの趣旨,それから(3)の2項の宣言をした場合に,どのようにして準拠法が決定されることになるのかについて,御意見,御質問等を伺いたいと思います。よろしくお願いします。   この辺はやはり○○委員に伺った方がよろしいかと思いますが,まず(1)の点でございますけれども。 ● 先ほどの御説明を繰り返すことになるかもしれないんですけれども,2の(1)と関連する限りにおいて1に戻るかもしれないんですけれども,まず,2の(1)につきましては,おっしゃるとおりではあるんですけれども,例えば条約自体が発効していれば,ある国ではまだ批准していなくても,その条約というのを想定して,その間,その後になると思いますけれども,明示の,契約条項を入れることというのは十分あり得るわけですよね。ですから,論理的には全然発効もしていなくても,将来発効するかもしれないので,条約がもし発効したならばという条件付きで入れておくことも可能なわけですよね。ですから,むしろそういう場合が議論されていたということだと思います。   それでちょっと関連すると思いますので,先ほどからのお話なんですけれども,例えば,今というか,これは厳密に言うとギャップ期間でないといけないんですけども,今日お配りいただいた資料29の準拠法の規定31条の本文で,こう書いてある場合には契約準拠法を定めているわけで,日本の国際私法の現在の下では,いわゆる物権準拠法については,先ほどお話がありましたように通則法13条ですから,これは仮にそういう事項について,2条1項列挙の事項について準拠法だと言っても無効なわけですよね。通則法13条の方がもちろん適用されるわけですよね。   したがって,そういう意味においては,3項の適用の余地がないわけですけれども,ただ,もし,約款のただし書を使って,ニューヨーク州法と定めていたとしますよね,ギャップ期間だとして。そうしますと,ニューヨーク州法の下では,2条1項の一部について,ニューヨーク州法が適用になるんですね,ニューヨーク州の国際私法によればですけど。ですから,仮に3項,これは解釈規定ですけれども,何もなければ,その後何も変えないで,契約はそのままにして,ハーグ条約が発効されてきたらどうなるのかというのは4条問題ではあるんですけれども,そのときに16条3項のお助けを借りるということであれば借りることができる,そういう関係にはあると思うんですね。   しかし,もしそうであっても,いや,この証券は日本で保管するんですというような話であれば,その場合には16条3項の方のdeclarationということが問題にならないわけではない。3項はdifferent Stateというふうにいっていますので,そういうふうに流れていくんですけれども,ちょっと余計なことまで言ったかもしれません。最初の点,すみません,2の(1)だけでやめておくべきだったかもしれませんが,ちょっと関連するかと思ったものですから,全体の16条の話をさせていただきました。 ● 今の○○委員の御説明に対しまして,何か御質問等ございますでしょうか。   関連して一個の問題でございますので,(2)の2項の宣言により云々のところでございますね。この問題についてお考えいただきたいと思います。   ○○委員に伺ってよろしいでしょうか。まず,宣言によって3項及び4項の適用を排除することができるのはギャップ期間ですね。先ほども御説明がありましたから繰り返しませんけれども,ギャップ期間に締結された口座管理契約についてのみであるけれども,この期間に限って宣言を認めるというのはどういう意味かというのが,(2)の疑問でございますけれども。 ● これは,いろいろな定め方があると思うんですけれども,まず,16条の全体の考え方というのは,条約が当該国によって発効するよりも前に既に存在している契約というものも,その国で条約が発効したときに全部書き換えなければいけないのかという問題を解決するために,書き換えなくてもいいようにしましょうというものです。書き換えるということになると,非常に実務が大変なことになりますので,それが基本的な考え方なんですね。ですから--ですからと言えるかどうかは疑問かもしれませんけれども,国際的な発効後というのが当事者の意思解釈が通常問題になりますので,その前は余り手を付けない。   ですから,具体的な例で申し上げた方がいいと思うんですけど,仮に2008年,今,2007年なんですが,2008年1月1日に国際的な発効があるとしますよね。2年後の2010年1月1日にその国において発効があるとしますよね。そうすると,まず2007年までに締結された契約が,2010年1月1日以降にどうなるかがここでの問題なんですけれども,2007年までの契約で,例えば日本を,例えば2008年1月1日に国際的な発効があって,2010年1月1日に日本で発効があったとしますよね。その場合に,2007年までに先ほどの資料の29番の31条で,本文に従ってこう書いて,今,使われ始めたということが書いてあった場合に,まずどうなるかということなんですけれども,この場合には,本文で現在の日本の国際私法の解釈によれば契約準拠を定めている。物権準拠を定めることはできませんので,現在そういうような契約があるわけですね。それが2010年1月1日以降にどうなるんでしょうかというと,それは4条,5条,6条の直接適用で解釈する,こういうことになります。   次に,2008年1月1日からというと,国際的に条約は発効しているわけですよね。そうすると,そのことを当事者がそのときに,例えばですけれども,約款のただし書を使って,ニューヨーク州法というふうに定めたとします。そうすると,そこに解釈上の疑義が生じるんです。なぜかというと,ニューヨーク州法は,今,議論を分かりやすく言うために,2条1項のすべての事項ではなくて,かなりの部分の事項についてニューヨーク州法である,ニューヨーク州の国際私法が,当事者が合意した法であると定めていたとします。   しかし,ちょっと分かりやすい例で言いますと,当事者としては,ニューヨーク州法は契約準拠法として指定したんであって,実はこの証券は日本で保管しますというので,証券の保管ということについては,まだペンディングというか,まだニューヨーク州法にするというつもりはなかったかもしれない。仮に合意していたならばですけれど,ifが付きます。なぜなら,日本法の下ではいずれにしても無効です。そういう場合に16条3項を適用しますと,そのまま契約は何も変えなくても,それだけの文言であっても,2010年1月1日以降,ニューヨーク州法が4条1項の準拠法になるという効果があるというのが16条3項なんですね。   それに対して,3項で宣言すれば,日本で保管しているから,そのような解釈は適用しないということになります。適用しないということになると,当然には2条1項のすべての事項について明示の合意があるわけではありませんから,契約は一文も変えないという前提で,2010年1月1日がきます。2010年1月1日,そこはもう解釈問題になってしまうわけですね。4条1項までの合意がないという解釈になると5条1項にいくということになるという,こういうメカニズムです。   ですから,今の御質問は,それについて2007年までのものについても何で規定を置かないんだという御質問かと思うんですけど,まだ条約そのものが国際的にも発効していない段階で,当事者の意思を,言わば条約との関係でどういうのが合理的な意思でしょうか,そういう解釈規定を置くというのは,ちょっとやり過ぎというか,必要ないというか,そういう考え方ではないかと思います。ちょっと通じたかがよく分からないんですけど。 ● 今の○○委員の御意見についての質問,御意見は後でまた伺うことにいたしまして,ここで休憩をとりたいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただきます。   先ほど○○委員から御説明がありましたギャップ期間の問題でございますが,○○委員の御説明に対して,御質問あるいは御意見はございますでしょうか。--○○委員の御説明で御了解いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。   では,次に(3)の2項の宣言をした場合に,どのようにして準拠法が決定されるかということについて,御意見,御質問を承りたいと思います。   要するに,解釈上の支援を受けないことになるので,直接に4条及び5条を適用するということになって準拠法が決まるという,そういう説明がExplanatory Reportにあるということですが,それで御了解いただけますかということです。   何か御意見ございますでしょうか。よろしいですか。○○委員,何かございますか。 ● ですから,私は,先ほど○○委員がおっしゃったように,4条,5条の直接適用になるし,そうするための規定だと思っておりますので,先取りすれば,これはヨーロッパのための規定ではないかと思うので,日本としては宣言してしまって単純化した方が,もし実務上困らないんであれば,過渡期について別のルールを適用するよりは単純化させた方がいいんではないかと思っていますけど。 ● そういたしますと,(4)の方に行かれたわけですね。要するに,宣言をした方がいいのではないかという御意見ですね。今,(4)に進みましたので,どうぞその点も踏まえまして御意見をいただきたいと思います。 ● 今,○○委員は,3項,4項はヨーロッパのためのものではないかとおっしゃられたんですけども,先ほどの○○委員の御説明だと,3項はニューヨーク州法のようなものを念頭に置いているというお話で,4項の方がむしろヨーロッパ--ヨーロッパは今までEU指令ですか,EU規則で,どこで口座を管理するかという,口座を管理する地の法律によるというルールを決めていたので,それにより準拠法が決まっていた場合には,それを変えなくていいようにしようというのが4項だと思うんですね。そうだとしますと,3項はアメリカ向きで4項はヨーロッパ向きということになって,どっちにしても日本には余り関係がないのかもしれませんけれども,日本はギャップ期間だけ3,4項の適用を除外する旨の宣言をした方が本当にいいんでしょうか。ちょっとそこがよく分からなかったんですけども。 ● ですから,日本が現在3項か4項かいずれかのルールが明確にあり,それを遵守しているんであれば,それを自分の国で発効するまでは維持したいというニーズが出てくると思うんですが,いずれにしても日本はよく分からない状態ではないかと思うので,むしろ昔のルールによっていると思うので,私の理解では,宣言しておいた方が物事が簡単になるんではないかと。ただそれが,言うならば,今のプラクティスを覆すようなことになれば大変なので,そうではないという前提で申し上げたんですが。 ● この辺でやっぱり○○委員の御意見を伺った方がいいかもしれません。 ● まず,3項と4項がどういう場合を念頭に置いているかというのは,○○幹事がおっしゃったとおりでして,Explanatory Reportでいいますと,16-5というのと16-6というのにそれぞれ,3項というのはアメリカで行われているプラクティス--現在既に存在している条項だと言い切っているわけではありませんけれども--に典型的に見られ,4項はEUで行われている現在の取扱いに見られるということがあります。   それで,結論としては,私は宣言をしてもしなくても日本にとってはどっちでもいいというか,日本の現在のプラクティスは先ほどから何度も御紹介がありますように,部会資料の29なわけですね。ですから,この部会資料29はこのまま条約が仮に日本にも発効するということになったとしますと,その後で,この16条は条約を遡及すると言っているのではありませんので,例えば,先ほどの2010年1月1日から仮に日本で効力が生じることになった場合には,2010年1月1日から後に準拠法を決めるルールはこの条約にあるわけですけれども,その時点で,実は前に,2007年であれ,8年であれ,9年であれに締結された部会資料29のような文言を持った契約は何も変えないでも,あの文言が,例えば日本法とすると書いてある契約準拠法を日本法にするという文言が,4条1項によって物権準拠法というか,2条1項列挙の事柄についての準拠法になるだけのことなんですね。   そうだとしますと,これは宣言しようがしまいが関係なくて,16条3項の助けも何も要らないということだとは思うんですけれども,排除すれば明確になるのかもしれません。ですけれども,どちらでも同じかなというふうに感じるんですけど。 ● ○○委員,何か。 ● もう一点よろしゅうございますか。   先ほどの延長で言うと,私の例がいいかどうか分かりませんが,仮に2008年1月1日にこの条約が発効したという先ほどの例でいいますと,2008年から2010年1月1日までのギャップ期間に,日本の,先ほどの部会資料29で,ただし書を使って,ある顧客はニューヨーク州法を選んだという場合どうするかという問題もあえて言えば,宣言をするとしないで多少違いがあるかもしれないんですね。つまり,宣言をすれば--3項でさらに宣言すれば別ですけれども--3項で,2010年1月1日以降ですけれども,日本の国際私法上もニューヨーク州法が2条1項のすべての事項についてということになるんですけれども,宣言をしないと解釈問題ですよね。要するに,16条3項を経由しないで4条の直接の解釈問題ということになりますので,ただ,その例で申しますと,直接な解釈問題になっても,文言がどういう文言になっているかにもよりますけれども,部会資料29からでは,ただし書を使った場合に具体的にどの程度特定した文言なのかよく分からないんですけれども,ただ,部会資料29の31条1項ただし書だけを見ると,申込者が特に要請し,当社がこれに応じて,準拠法を,例えばですけれどもニューヨーク州法と書けば,これは別に16条3項もなく,結局4条1項の直接適用であっても,おそらくニューヨーク州法になるんだと思いますので,その意味においてはやはり宣言は不要かなと。そういう特殊な方々にとっても,既存の契約というのは,そのまま解釈で対応できるように感じますということです。 ● 今の点,実務の方ではいかがでしょうか。 ● 私の理解が正確かどうか,もしよろしければ教えていただきたいんですけれども,3項も4項も,要はリアリティーテストがある限り効力を認めるというルールを入れるか入れないかというふうな話のように見受けられるんですけれども,当該事務所を国内に有する限り効力を有するというところが効きどころだと思うんですけれども,そうしますと,先ほどの○○委員の例ですと,2008年に国際的に発効して,それから2010年に,例えば日本において発効するまでの間に締結された契約について,もし3項,4項が適用されなければ,一応契約に書いてあることがリアリティーテストを課されることなく尊重されるような気がするんですけれども,もし3項,4項が適用されることになりますと,4条1項,2項に掲げる条件を満たす事務所が国内にある限り効力を持つと書いてありますので,必ずしも契約書に書かれたとおりではなく,リアリティーテストを考慮しますというふうなところで違いが出てくるんでしょうか。もしそうだとすれば,2008年から2010年までの間,少なくともそれはまだ日本に対して発効していない間ですから,書いてあるとおりにそのまま効力を認めてほしいというふうなニーズが実務上あるんであれば,宣言をするということは考えられるのかなというふうな気がするんですけども。 ● 今の点はちょっと違うんではないかと思いながら聞いていたんですけども,つまり,3項,4項が適用されないとすると,1項が適用されることになって,その結果として,4条,5条が直接的に適用されるということになります。4条が適用されるためには,やはりリアリティーテストは必要なので,したがって16条3項,4項が適用されるか適用されないかによってリアリティーテストの有無が変わるということはないのではないでしょうか。   ここで違うのは,3項の場合ですと,先ほど○○委員から御説明いただいたところですけれども,2条1項のうちの一部の事項だけを準拠法とする効果を持つ,そういう口座管理契約の明示の文言であっても,2条1項のすべての事項について準拠法としての効果が生ずるというのが3項で,これは4条をそのまま適用しますと,一部についてだけのものは認められないわけですので,結局,その合意によっては準拠法が定まらないということになってしまって5条の方へいってしまうところを,そうではなくて,合意した準拠法によらしめるというのが3項の意味で,4項の方は4条とは全く違う切り口で,証券口座の管理地だけを定めた場合ですけども,それをやったときに,その管理地をもって準拠法とするという効果をそのまま認めましょうということですので,そこが違うのではないんでしょうか。 ● 私も自信を持って申し上げたわけではないんで,もう一度考えてみたいと思います。 ● よろしゅうございますか。ほかに。 ● 議論がいろいろ難しいんで,なかなか追い付いているかどうか分からないんですが,基本的に宣言をすると非常に単純になって,そして明確になると。だけれども,そうしないと,いろいろ特殊な合意をした人たちの特殊な合意を尊重することになる,そういうような類型でよろしいんでしょうか,結果としては。 ● 特殊な合意というのは,どういったことをおっしゃっているのでしょうか。 ● いや,今,幾つか出てきたように,一部のものについては別に準拠法にするとかという,顧客によってはこの期間で準拠法の特別な合意をする人がいるということですね。その関係でそれを尊重するかどうかという問題かというふうに理解したんですけども,今までの情報を。ですから,そういう合意があったところで宣言をして,3項,4項を適用しないということになるとすると,全体が非常に単純になってくるという,そういうような理解でよろしいんでしょうか。○○委員は単純にした方が明快だというような御意見かなと,そういうふうに理解したんですけれども。 ● ○○委員が今おっしゃったことを必ずしも正確に理解した自信はないのですが,まさに特殊な合意,3項,4項の第1文に書いてあるような合意というか,契約というか,そういう契約があった場合には,それがそもそも本来,条約が発効後にはこの条約でいうところの準拠法ルールになり得ないところを準拠法ルールにしましょうと,そういう意味で合意の中身を尊重するということになろうかと思います。それで宣言すると,当然そのルールが適用されなくてストレートに4条にいってしまいますので,少なくとも一部にしか合意がなければ,先ほど○○幹事から話があったとおり,それは全部の準拠法にはなり得ないし,その口座の管理地の合意--4項の方の前提の合意ですが--があったとしても,その後4条の合意には--そこは解釈なのかもしれませんけれども--ストレートに乗ってこないことになると思います。宣言してこれを適用しないということだと,そうなってしまうということですね。   また,別の問題かもしませんけれども,この宣言をする意味があるのかどうかというところで,先ほど○○委員からも御説明がありましたように,日本でされている契約を前提にすればどっちでもいいということなのかなという感じは持っておりまして,ただ,問題というのは,まさに今,○○委員がおっしゃられた,日本法を準拠法としないパターンで,3項,4項に乗ってくるようなものが日本の裁判所で問題になったとき--それが日本で法廷地となって問題になるということ自体が余り想定しにくいのかもしれませんけれども--そういうものについて法廷地が日本になったときに,この合意の効力を尊重せずしていきなり4条,5条に乗っかっていくということを日本がやることがいいのか悪いのかというところも若干気になるところでございまして,そこら辺のところはどうなんでしょうかというところでございます。 ● よろしゅうございますか。 ● そうすると,そういう特殊な合意がある例があるかどうかという問題なんだろうと思うんですが,数は少ないけれどもないわけでもないのかもしれない。あるいは,日本の口座機関に統合をするお客様がたまたまEUのお客様かもしれませんし,それを単に単純化するだけということで無理に切り捨てていいんだろうかと。数が少ないかもしれないとか,そういうようなことだけでやっていいのかな,政策的判断としてどうなのかなという印象はございますよね。 ● 余り正確なお答えにならないかもしれませんけれども,実務の感覚でいきますと,今,○○関係官がおっしゃったことの繰り返しなんですけれども,現在--というよりは,先ほどの例からいくと2008年ですけども--16条3項の最初の文章にあるような条項,あるいは4項にあるような条項がある場合に3項,4項を適用しますと,それらの合意が,2010年1月1日以降,4条1項の合意というふうに自動的になるわけですね。宣言,それはどういう意味かというと,それらの契約は書き換える必要がないということなんですね。これに対して,3項の適用がないということになりますと,これはもう解釈問題になるわけですけれども,解釈問題という不確実性があるわけですね。ですから,裁判所とかということもあるかもしれませんけれども,そうすると,実務的な概念としては,その場合はやはり2010年以降にきちんと書き直すということになるんではないかと思うんですよね。   そうすると,おそらく○○委員がおっしゃった根本にあるところの政策的な判断をする手前にある実質的な利益構造なり概念というのは,当事者の合理的意思ということだと思うんですよね。   例えば,先ほどの部会資料29で,仮にちょっと変わった人がいて,ニューヨーク州法だとか,2008年から2010年の間に契約をしたということなんですね。その当事者の合理的意思が何かということだと思うんですね,2010年以降。2010年以降,合理的意思というのは,現在は定めた立法なんですけれども,それはある程度は日本でも適用になるということになれば,それは,今,定めている一部についてなのかもしれませんけれども,ニューヨーク州法だったらということなんですけど,それがはっきりと2条1項の法であるというのが通常の合理的解釈で,それが嫌な人はそこで書き換えてくださいということなら3項を適用した方がいいですけれども,そうでなくて,解釈問題ですから,3項を適用しなければ常に逆の結論になるとは限らないんですけども,やはりuncertaintyが起こりますから,その場合には2010年1月1日以降,それなら今度は日本法を準拠法にしましょうと,条約が適用になるんだったら,もう日本法を選べるわけですから,証券は外国にあるという前提ですけれども,日本法にしましょうと。それをそこでもう一回仕切り直してくださいという意味があるんですよね。それですと,3項は適用しないわけでありまして,ですから,これを考えてみると,3項,4項の適用があれば,少なくとも現在のギャップ期間に3項や4項にあるようなルール等は変えずにそのままヘーグ条約の4条1項になっていくわけですけれども,それが適切でないと,ギャップ期間の当事者の合理的意思というのは,必ずしもそうでない場合があるというような場合に,やはり契約を書き換えるべきで,そうだとすると,それは3項,4項は適用しない方がいいと,そういう関係になるかと。 ● ありがとうございました。   よろしゅうございますでしょうか。--何か。○○委員。 ● 今,○○委員がおっしゃったところで分からなかった点があるんですが,16条1項が,実務が困らなければ何もしなくていいわけですよね。結び直さなくてもいいので,それが一番分かりやすいと。しかし,2項はそうでなく,特に条約に言及していないと,3条4項を適用しますよというふうに書いてあるわけで,そうしているはずはないですよね。今,言っている契約において条約に明示の言及なんていうのを。そういうやり方はなくはないかもしれませんが。ですから,それもおもしろくないということで,そうであっても宣言をしておけば,どうなるんですか,3条4項は適用されないので,条約のとおりになるんですね。それは,今分かりましたが,条約に明示の言及をしていないものは,でも1項でいけるということですね。それが一番,例えば何も日本に守るというか,今何らかのルールがあって,みんなそれを前提に動いているということがないんであれば,それが一番分かりやすいように思いますけども,そんな簡単な話ではないんですか。当初から申し上げているのはその点なんですけど。 ● まず最初におっしゃった点,必ずしもその点,御指摘の趣旨ではないかもしれませんけれども,先ほどもおっしゃったことですけれども,条約に明示にリファーしている契約がない。日本ではもちろんそうですけれども,今ないだけであって,先ほどの例で,2008年1月1日に条約が仮に国際的に発効した場合に,日本ではないかもしれませんけれども,どこかの国であるかもしれませんですよね。ですから,明示にリファーしていれば,もうそれはそっちの問題として処理しますので,そもそも16条というのは明示にリファーがない場合についての規定なんですね。それは明示にリファーしている場合はほとんどないでしょうというのはそうかもしれません。   それから,その次におっしゃったことですけれども,単純だという意味は,要するに,3項,4項などなくても,1項で条約を直接適用すれば済むのではないかというのは,それはそうだと思います。ただ,そうだと思いますというのは,やはり国によって違って,アメリカのような国はやはり3項があった方がいいし,それからヨーロッパのような国は,仮に口座管理地をもって条約が発効した後は,この4条1項の方にしたいというんであれば,4項がないと,直接適用だとまず解釈でいけるかということと,やはり書き換えないと安心ではないんではないかというその余地が残るんで,4項があった方が助かると言えるんですね。日本はどうかといったら要らない。でも3項,4項があっても困らないということだと思うんです。ですから,日本で残る問題は,ギャップ期間中に,先ほどの繰り返しになりますけども,ただし書の方でニューヨーク州法を選んだようなちょっと変わった人がいた場合にどうするか。その人がギャップ期間終了後に仮に発効という時期が来るとしてですけれども,私の例で,2010年1月1日以降に契約を書き換えるのか,あるいは書き換えないで解釈で4条1項へ持っていくのかと。4条1項へ持っていくのが当事者の合理的意思であれば3項でいけばいいと思うんですけれども,やはり書き換えるのは手間だと思いますので,もしそういう契約が多数ありますと,そこはどうなんでしょうねという,せいぜい実益があるのはそのぐらいかなと思うんですけども。さらに,しかし最初の方に申し上げたことなんですけど,当事者の合理的意思としては,証券のほかは日本でしているということだとしますと,今度は3項の方の宣言をしないといけないということにもなりかねないんだということだとは思います。 ● ニューヨーク州法を仮に約款の特則を使ってやったとしても,別にニューヨーク州の国際私法を選べるわけではないので,準拠法をニューヨーク州法にするだけであって,日本の国際私法としてどう扱うかが16条1項によって扱えば簡単ではないかと思うんですけど,そのときに証券の保管場所はどうかということですけど,この条約の前提は,保管場所は当事者は気にしていないということから始まっているのではないかと思っているので,物権問題も含めてニューヨーク州法で全部を記述されることについて,それが当事者の予測に本当に反するならば問題ですが,そうではないんではないか。そこは,実務上混乱が起きるならば別だと申し上げたところですけれども。 ● すみません,ちょっと証券の部分,間違えました。証券口座の管理地ですね。どうも失礼しました。その点は16条3項の後ろの方を御覧いただければと。証券の保管ではなかったですね。   それから,前の方の点なんですけれども,ニューヨーク州法と定めても,2008年から2010年までの間は日本の国際私法の下では証券の所在地ですから,日本の裁判所へ行けばですね。だから,何法と定めても,それは物権準拠法としては効力はないわけですよね。問題は2010年からどうなるかという点で,2010年からは日本の裁判所で訴訟になれば,ハーグ条約が日本に発効しているとしますと,ハーグ条約が適用になるわけですよね。そのときに過去2年間の契約を見たら,ニューヨーク州法と契約準拠法というか,部会資料29の方に書いてあった,それをどう解釈するかという問題なんですね。それが16条1項だけれども,それは4条1項の合意と見れるかどうかという問題だけで解釈することになるわけです。3項の場合には,最初の文章を直訳しますと,ニューヨーク州法の下だったら2条1項の幾つかの合意の準拠法として効力を持つような定め方をしていた場合には,2010年1月1日以降,当然にという言い方がいいかどうか分かりませんけれども,4条1項の,2条1項すべてについての定めをしたものというふうに解釈されるというか,みなされるというか,ちょっとそこは正確に私もよく分からないんですけれども,日本語で言えば,みなされるに近いんですかね。という趣旨だとは思うんですけれども,そういうことだと思うんです。   私がどっちでもいいと思ったというのは,結局,今の部会資料29の文言ですと,要は簡単に言うと,契約の準拠法は日本法ですとか,ちょっと変わった人はニューヨーク州法だとか何法とかということですよね。ですから,それは別に,2010年1月1日以降,4条1項の方というと,これではないかで終わりになるような気がするものですから,そういう意味においては,3項,4項の助けは要らない。もっと言えば,例えばそれが日本法以外の法律を定めていたとして,例えばフランス法とかドイツ法を定めていたとしても,それは日本の国際私法では今は無効ですけれども,通則法13条の適用があるような問題について。しかし,2010年1月1日以降はどうなるんですかと言えば,4条を直接適用して,16条の助けを借りなくても,確かにおっしゃるように,4条1項の解釈としていけるようにと思うんですね。もちろん,先ほどのリアリティーテストが満たされていることが条件ですけれども。そうすると,今度は逆に3項,4項の適用があったら困るかというふうに言われますと,適用があっても別に困らないと。今のこの部会資料29の文言でなされた場合ですけれども,というような気がするというのが最初の最初に申し上げたことなんですけれども。 ● 私は3項が機能する場合というのは具体的にどんな場合なのかというのが余りよく分からないんですけれども,4項の方は,例えば,日本の投資家が日本の証券会社とか銀行とかを一切介さないで直接,例えばブリュッセルの証券会社との間で外国で口座を開いて,ブリュッセルでこの口座を管理しますというそういう約款で契約していたというような場合に,その証券の帰属が日本の裁判所で問題になったというような場合ですと,4項が適用されればブリュッセルで管理しますとなっていれば,ベルギー法になるわけなんですけれども,仮に4項の適用がないとすると,この条約の4条なり5条で決めることになりますが,ブリュッセルで管理するというという証券口座の管理地の定めは4条では何の意味もないんで,結局5条になってしまって,ベルギー法ではない法律になってしまう。それを,今,日本の裁判所は適用することになるかもしれないわけなので,そうするのがいいのかという問題というふうに考えればいいのかなと思っていたんですけど,そうだとすると,2項の宣言はしなくてもいいのかなという気がしておりました。   それからもう一つは,ギャップ期間だけそういう扱いをするということにどれほど意味があるのかというのがいま一つ,先ほど○○委員からギャップ期間だけこういう特別な宣言ができるようにしたという趣旨については御説明いただいたんですけれども,先ほどの例ですと,2008年に条約自体は発効して,日本は2010年に加盟したというふうに仮定した場合ですけど,例えば2007年の契約だったとしても,2007年の契約なら4項は自動的に適用されるわけなんですよね。2009年にした契約だと,2項で宣言してしまうと,4項は適用されなくて,4条と5条という形になってしまう。それは本当に合理的なんだろうかというのが,なおよく分からなくて,その両方の点から2項の宣言をするのは余りよくないんではないかというふうに考えていたんですけれども。 ● すみません,分からないまま何度も発言して申し訳ないんですが,今の御発言の前半のところの,日本のお客さんが直接ベルギーで口座を持って契約をしていたという場合についてですけども,それが物権問題も含めて2条1項に係るすべての事項についてベルギー法が適用されるというのが,日本で問題になってもそうされるんだと思っているんであれば,そこを守ってあげるということは意味があると思うんですけども,そうではないんではないかと思うんですよ。思う人はいるかもしれませんが,それが実現されていない。ヨーロッパで問題になれば実現されるかもしませんが。でも,日本でも何かそう思っているのは,ちょっとヨーロッパの証券会社にそう言われたかもしれないけれど,日本は国際私法が違いますということであれば,4項に書いてあることをその期間の間に守ってあげる利益は日本にはないように思うんですが。 ● 投資家の方は準拠法のことをよく分からずにやっていることも多いでしょうから,どっちでもいいと思うんですけど,多分,ブリュッセルの証券会社は,今のヨーロッパのルールが証券口座の管理地で決めるというルールをもう既に採っているわけですので,それでずっといくと思っているはずだと思うんですよね。なのに,そうではなくなるというのは,少なくとも証券会社側の予期には反することになってしまって,それは先ほどの○○委員の例でいくと,2008年が来るまでだったら,その予期に反する結果は生じないのに,条約を発効した2008年から2010年までの間だけベルギーの証券会社の予期に反する事態を生じさせるということになって,それがいいのかという問題かなと思ったんですけど。 ● ベルギーの証券会社がそう思っているのはおかしいですよね。要するに,それが実現できないからこの条約をつくったわけですよね。自分たちはいいルールを持っているのに,どうして日本は物権問題にこだわるんだという,あるいは日本以外の遅れた国々はどうして分からないんだみたいなので始まったと思っているので,伝統的なルールを守っている国において,彼らが持っていることができないのは仕方ないんだと思うんですね。この期間だけそれが実現できるようになると,何か日本は二種類のルールがこの条約に入ることによって適用されることになり,国際的な発効と日本が発効するまでの間にはヨーロッパルールを採り,日本で発効すれば国際ルールになりますと。その前は伝統的なルールですという形になっているんではないんですか。 ● そうではないと思います。そこの理解が違うんですけども,国際的な発効より前は16条1項が適用されるはずですから,この条約が適用されて4項が適用されるはずだと理解しているんですけど,それは違うんでしょうか。 ● それは正しいんですけど,ただ適用されるのは遡及適用ではありませんので,あくまで2010年1月1日以降の国際私法ルールに際して2007年,2006年,2005年に書かれた契約がそのまま放置してあった場合にも,その時点では日本の国際私法ですと効力がないわけですけども,2010年1月1日以降は,4条1項で同じ文章を日本の国際私法上読み直して適用されるというのが1項です。ですから,遡及ではなくて,前に書かれた契約を,条約の効力が生じた以降にどう適用するか,それが1項の問題です。 ● すみません,ちょっとよく分からないんですが,効力が発生したときに,例えば日本の準拠法に基づく契約があったときに,全部が日本法に基づいて2条に係るところが全部決まるということで,そしてもう一つは,○○委員からは遡及適用ではないというようなお話がありましたけども,そうすると,効力が発生するよりも前に行われた取得とか処分とか,それは動かずにですか。そのまま動かずに,それ以降に行われる処分とか何とかに適用されるということなんでしょうか。それとも,今までいろいろな形で現行法はどうなんだろうという整理をして,必ずしもよく分からなかったんですけども,それにもかかわらず何らかの形で,何らかの準拠法で有価証券の帰属が決まって,処分が決まってというのが積み重なっているんだろうと思うんですが,そこのところで遡及はしないけども云々というのと,どういうふうに切り分けて理解したらよいでしょう。 ● それは国際私法の一般原則だと思いますけど,私の理解では,先ほどの例でいいますと,2010年1月1日以降の譲渡とか担保取引に適用があるのであって,この条約はそれより前にされた譲渡とか担保取引に適用はないと思いますけれども。それをもって私は遡及という言葉を使ったんですけれども。 ● その辺でちょっとなかなか理解しにくいんですけど,旧法では,ここの管理機関の準拠法に基づいてということではなくて,有価証券の所有権が決まっていたり,処分の効力が決まっていたんですけども,昔取得した有価証券を条約が有効になった後,処分するような場合については,今度は準拠法が切り換わって処分されてくるんだろうと思うんですけども,そのあたりの乗り換えはどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。 ● ちょっと記憶がはっきりしませんけども,確か経過規定は手当てしていなかったと思いますので,国際私法の方の,それは国際私法が変われば常にある問題ですよね。ですから,そのときの経過規定としてそれぞれの国がそこは対応するということだと思います。 ● それでどういうふうになるんでしょうかしら,○○委員。 ● 今の御議論,いろいろ難しい問題があるということも分かりましたけれども,では,一応,4の我が国が2項の宣言をすべきかどうかということについての御意見は必ずしも一致していないというふうに理解してよろしいかと思うんです。今ここで結論を出さなければいけないということでもございませんので,今後もお考えおきいただくということにして,前に進ませていただきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。   次の第5の3につきまして,3項の宣言をする必要があるかという問題に関して,そもそも我が国の契約実務において,証券口座が管理される地を明示することがあるのか。仮にそのような場合があるとして,証券口座が管理されている地の法令を準拠法とする意思を当事者が有しているのかということについて,これは先ほどの議論と関連すると思いますが,御意見,御質問がございますでしょうか。 ● よろしいですか。ここで書かれている(1)の慣行があるかというと,ちょっと慣行という言葉が難しいんですけれども,例としてはあります。それが慣行かどうかというのはよく分かりませんけど,例としては,このような形をとっているものはありまして,実際上,私どもの銀行はこういう形になっているんですね。日本の投資家がいまして,私どものグローバルカストディーの口座管理は,実際ルクセンブルクで行っております。ただし,そのとき準拠法は日本法という形にしております。そういう形でできているものはあります。 ● これは,その当事者が口座管理契約中に他国において証券口座を管理する旨を明示しているという場合なんですけども,どういうふうに明示しているんでしょう。 ● 契約書にそういうふうに書かれています。 ● 証券口座を管理すると書いてあるんですか。 ● 口座管理契約,証券口座を管理される国を合意するというか,証券口座を管理する国はルクセンブルクだと。準拠法は合わせて日本法を適用するというふうにしております。この場合,当事者といいますか,投資家は日本の投資家ですし,それから日本の金融機関のルクセンブルク海外法人ですから,そういった意味で日本法という形でやりたがるといいますか,両方,当事者はそちらを適用したがるケースだと思いますけど。 ● ほかの場合について,何か御説明いただけることがございますでしょうか。今の○○委員の御意見に対して,異なった点があるか。 ● 証券会社としては,お客様の証券口座そのものは日本の当社の中で管理をしています。当然,階層構造で上につながっていっているわけですので,当然ルクセンブルクだと,例えばユーロクリアとか口座はありますが,それは当社の口座になっています。そこまで口座約款等には現地の法令規則にのっとって管理していますというぐらいしか書いていなくて,国までは明記はしていないというふうにしています。 ● では,そのような場合があるとして,(2)のところでございますね。証券口座が管理される地の法令を準拠法とするという意思を当事者が有しているということについてはいかがでしょうか。 ● 先ほどの○○委員のお話ですと,管理地はルクセンブルクであるというふうに定めながら,一方で準拠法は別に定めているわけですので,どっちでやりたいかというと,日本法という準拠法でやることですよね。 ● そうです。ですから,その国の法令を準拠法とするわけではなくて,日本法を適用するという意思を示していると,こういうのではなくてですね。 ● そうすると,3項の宣言をしてしまうと,かえってまずいということになるわけですね。 ● そういうことになりますかね。16条3項の含意がちょっといま一つ,私,まだはっきり理解できていないんで,ちょっと時間を掛けて考えたいと思います。 ● ほかに何か。--よろしいでしょうか。   今日は時間の制約がございますので,ちょっと急がせていただきまして,今まで御議論いただいたことのほかに,16条に関しまして,解釈上あるいは実務上ここで問題にした方がいいという点がございましたら御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。   では,御意見が今のところはないようでございますので,次に,部会資料27の第6について,事務当局から説明していただきます。 ● 今まで個別にここは議論していただいた方がいいんではないかと思われる規定のあるものについて論点をお示しして御議論いただいてきたわけですけども,第5までに掲げていなかったほかの規定について,解釈上あるいは実務上議論しておく必要があるという事項があれば御提示いただきたいというのが第6でございますので,よろしくお願いします。 ● 何かございますでしょうか。--現在特にございませんようでしたら,一応,部会資料27についての御議論はここで終わらせていただきまして,次に部会資料28についての議論に移りたいと存じます。よろしゅうございますか。   では,事務当局から,部会資料28について説明していただきます。 ● 部会資料28は,これまで御議論いただいてきた結果に基づきまして,諮問第57号--これはこの部会が設置された諮問なんでございますが--それについての法制審議会への当部会からの報告,それから法制審議会総会が大臣に対してする答申の中身となる報告の案でございます。既にお読みいただいていると思いますけども,条約採択に至るヘーグ国際私法会議における経緯と我が国における経緯をまず書きまして,それから,本条約の内容といいますか,概要といいますか,主要なポイントを書きまして,最後に本条約の批准等についての意見を書いているということでございます。   経緯はこれまでずっと御審議いただいてきた経緯をかいつまんで書いているだけでございます。それから,条約の内容の方も主要なポイントと思われることを書いただけでございますが,したがって,ポイントは本条約の批准等についての意見という部分でございますが,まず,(1)で我が国の現行法の下で間接保有形態の証券についての準拠法について,部会資料26で随分議論していただいたわけですけれども,はっきり言ってよく分からないという状況で,準拠法の決め方も分からないし,仮に決まっても証券の場所がどこにあるか分からないとか,いろいろな,法律上それから実務上,非常に大きな問題があるという状況にあるということをまず書いておりまして,そういう問題は本条約を批准すれば解消されるんだということをまず(1)で書いてございます。   それから(2)で,それでは,すぐに今この条約を批准すべきかという点について,諸外国の状況について触れておりまして,とりわけヨーロッパがいつ批准するのか,あるいはそもそも批准するのかどうかもよく分からないという状況にあることに触れ,ただ,これは世界的な統一条約ですので,もしもアメリカとヨーロッパという主要な証券市場を持つ国々が批准するのであれば,日本だけがそれに乗り遅れるというわけにはいかないだろうということも書いてございます。   そこで,最後のまとめとして,(3)でヨーロッパ連合における検討の帰趨を見極めた上で適切と考えられる時期,適切と考えられる時期というのは,ヨーロッパがもしも批准するのであれば,それと遅れることのない時期に批准をすべきだという意見の案にさせていただいております。これについて,どこの部分でも結構ですけれども,御意見を賜れればと思います。   以上です。 ● ありがとうございました。   今の事務当局からの説明について,何か御質問,あるいは御意見でも結構ですが,まず御質問ございますでしょうか。この報告案の内容についてでございますが。   1と2につきましては,言わばおさらいでございますので,何かこれに付け加えるべきことがあるかというようなことがございましたら,御意見を伺いたいと思います。   一番問題なのは,3の本条約の批准等について,この点についての御意見を承りたいということでございますが,いかがでしょうか。 ● ハーグ国際私法会議がつくる条約の中には,民事訴訟法の分野のものと,準拠法の分野のものと,それ以外の行政的なものとがありますけども,その中で相互に約束し合うような民事判決の承認とか,あるいは行政的な協力,これはほかの国も一緒に入らないと意味がないと言えるんですが,準拠法条約はほかの国と約束するということの意味は,余り私はないと思っていまして,ハーモナイゼーションは大切だと思いますけども,日本でも独自に立法できることをやるだけのことですよね。この条約について,前半に書かれていることもおっしゃるとおりだと思いますが,日本ではルールがはっきりしないと,困った状況だということであれば,別にヨーロッパ,アメリカがどうであれ,日本としてはこの内容のもので国内立法するという手だってあり得るはずで,条約としては発効しないかもしれませんけども,その説明が前半のところから,なぜ二つの大きな主要な証券市場の国が支持しないと日本もしないということになるのかが,やや分からない,すみませんが。 ● ○○委員も分かって聞いておられると思うんですけれども,これは国際的な証券の取引についてのルールですよね。例えば,ヨーロッパが今もう既に口座管理地ルールを持っているわけで,それを変更してこの口座管理契約の準拠法ルールに変えるのかどうか。仮に変えないとすれば,ヨーロッパと日本とが絡まるようなものについて,ヨーロッパはヨーロッパのルール,日本は日本のルールということで別々のやり方になってしまうわけですけれども,それはまずいんではないんでしょうか。ですから,やはりヨーロッパがどういうルールを採るかということも見極めた上で,日本として,アメリカはこの条約にもう署名していますので,あとは時間の問題という面があるのかもしれませんけれども,それとていつ批准するのか分かりませんが,ヨーロッパにおいては,もしかしたら口座管理地ルールがそのまま維持されるかもしれないので,そうなった場合に,なおこの条約のルールに日本はいくのかどうかというのは,かなり慎重に考えなければならないのではないかと思っているんですけれども。 ● ○○委員,どうぞ。 ● もう一つだけよろしいでしょうか。   別に何も事情は分かっていないんですけども,ですから,日本が今ヨーロッパと同じルールを採用していて,あえてこれに変えるというなら,それは慎重に考えなければいけないと思いますけれども,日本ははっきりしない状態にあるわけで,おっしゃるとおりであれば,もしそうであれば,そのことを重視するんであれば,今からでも遅くないから,日本はヨーロッパルールを採用し,しかる後にこの条約に入ると,国際的にそっちに動くなら,そういう話なら分かりますが,そうでなく,分からない状態にしばらく置いておきましょうということの結論なので,そこは国際私法を専門とし,審議会に参加させていただいている者からすれば,結論としてはおもしろくないという感は否めない。 ● ちょっと伺っていいですか。   ということは,この条約の内容を一種のモデルローのようにして日本の国内立法をする場合というお話でしょうか。 ● ヘーグ国際私法会議のつくる条約の中で,準拠法条約はすべてモデルローと同じ役割しか果たしていないと思っているので。 ● 分かりました。いかがでしょうか。   ○○委員,どういうお考えでしょうか。 ● 私は,理想は確かに○○委員のおっしゃるとおりでありますけれども,こういう文章の性格から,保守的なものでいきますと,これで十分なのではないかなというふうに考えております。でも,御意見は,学者としては確かにおっしゃるとおりだと思います。 ● ○○委員の御意見ですか。 ● はい。 ● ○○幹事はいかがでしょうか。 ● いいものであれば早くという御趣旨だと思いますので,その点については,本当にいいものかどうかというのはいろいろ問題を抱えている部分もあるかと思うんですけれども,○○委員がおっしゃっている部分も確かにあると,そういった考え方もあるなと思います。ただ,別に焦って,確か書かせていただいたんですけど,ヨーロッパで幾つかもうちょっと慎重に検討していいんではないかというふうな問題点が指摘されていることも一方で事実ですので,必ずしもハーモナイゼーションということではなくても,そういった議論の動向をもうちょっと見ようというふうなこと,ヨーロッパ自身がそれに解決を付けて,いいものなんだろうと言えば,日本ももっと安心して乗れるというふうな意味で言えば,もうちょっと動向を見るというふうなことにも,そういった意味で意味があると思いますので,そういう意味での結論はここにお書きになられているようなことでいいのかなというふうに思います。 ● ○○幹事に伺ってよろしいでしょうか。 ● こういった証券取引の理解において,有体物としてのペーパーがますます無機能化しているという実態を踏まえて,このような内容の意見が集約されるということは,私も賛成であります。それを越えて,さらに国内の立法を推進するかということにつきましては,私はできればそうしていただければ非常にありがたいとは思いますけれども,他方で,国内法のレベルで株,社債等を初めとして,ペーパーレス化自身が進んできているという状況もございますので,そういった状況の中で,少なくともここのペーパーにまとめられていることには,私,異論はございません。その先どこまで進めるのかというのは,むしろ本当に国際私法の先生方の御意見に従いたいと思いますけれども,ここに書かれていることについては,私は賛成でございます。 ● 実務の方々の御意見も伺いたいと思いますが,もし差し支えなければ,いかがでしょうか。 ● この素案に書かれている内容で,我々も十分これまで,例えば日証協等でも同じような議論がありまして,やはりヘーグ条約を,もし仮に周りの国が批准するという段階においては,やはり日本も批准すべきだという合意は日証協等のワーキング等でも議論はされていたと理解しています。   ただ,状況がやはり変わってきて,特に欧州においてもうちょっと慎重にという議論がかなり出てきているという実態を踏まえますと,やはり国際金融市場という観点で,欧州というのは巨大な存在でございますので,日本だけがという道筋もなくはないと思うんですけども,やはりそこは整合性の観点でいうと苦しいのかなというふうに思っておりますので,とりあえず実態としては受け身になりますが,様子を見るということについては何ら問題がないというふうに思っております。 ● ほかの方の御意見いかがでしょうか。実務の方から承りたいと思いますが。   ○○委員,どうぞ。 ● 結論としては(3)に書かれておられるとおりで,ヨーロッパなり欧州での動向を見て我々日本も考えるべきかなという結論に,私は異論はございません。   ただ,実務上のことからしますと,実際問題としまして,準拠法について,ニューヨーク州法にするのか,日本法にするのかとか,契約するときに金融機関同士の契約の場合は必ず明示します。明示するというか,係争にならないようにそういうことを考えますので,余りそういう,どこか分からないからヘーグ条約に従ってずっと流れていくというものには至らなくて,一番最初の段階で準拠法が書かれていますねというところになると思うんですが,先ほど○○委員がちょっと御指摘されたような,例えば,日本に来られた非居住者,あるいは居住者でもいいんですが,外国人が来られてというようなケースは,彼らと預金契約をしたときに,必ずしもどこまで準拠法なりなんなりが明示されているんだというところが,ちょっと私も定かでないんですね。おそらく預金契約なんかは余り書かれていないんではないかという気がします。   ですから,やはりその辺きちんと振り返って,そういうことを明示する。先ほどの部会資料29の条項ではないですけども,そういった部分も実務上必要かなという感じはしております。ちょっとヘーグ条約から離れたお話になりますけど,むしろ実務をきちんと整えるといいますか,そういった観点は必要かなと思います。 ● ○○委員,いかがでしょうか。 ● このペーパー自体はこの部会での議論に沿ったものだと思っておりまして,これでよろしいのかなと思っております。この部会の範疇を超えることなのかもしれませんけれど,国際資本市場として生きていくために,日本はもちろんそうでございますけれども,できるだけ早い段階で国際的なルール,統一のルールというものができることを期待したいというふうには思っております。 ● ○○委員,何か御意見ございますか。 ● 今の制度で大混乱が起きたら,なかなか現実にそこまで研究はされていなかったけれども,大混乱が起きているということは望ましい状態ではないと思うんですね。それで何らかの形で明確なルールをつくるということは望ましいことだと。そして,これが一つ提案された方式として認識できると思うんですが,これが本当にベストかはちょっとよく分からない,正直言って。例えば,物権的な権利についても当事者が自由に選べるとか,それから公示制度が本当にあるのかどうかとか,そういうような問題もあり,いろいろなことを考えると,これが本当にベストかどうかはよく分からないというのが非常に正直なところなんです。   ただ,今のように,アメリカとかヨーロッパが全体これで進もうというときに,それをとめるような状況ではないし,提案されたのが一つの案であって,国際的にも統一がとれる意味のあるルールならば乗るについてはやぶさかではないと。ただ,○○委員がおっしゃったように,条約が国際的にそろわないにもかかわらず立法してこれを採るかというと,本当にこれがベストなのかどうかを差しおいても,ベストなのかどうかについては必ずしも私は自信がないんですよね。ただ,申し上げたように,アメリカもヨーロッパもこれでいくんだということなら乗ってもいいと,そういうような感じですね。 ● 御発言いただかなかった方の御意見,承ることができれば幸いですが,いかがでしょうか。   ○○幹事,いかがでしょうか。 ● ここに書いてあることに特に意見があるわけではございませんけれども,ヨーロッパ連合における検討の帰趨を見極めた上でということの意味なんですけれども,これは,ヨーロッパ連合が批准をするということがあれば,それを条件として我が国も批准をすべきだということをこの審議会としては,法務省の方に言わば助言をするというような,そういう形になるということなんでしょうか。あるいは,例えば我が国が批准をすれば,そのことをてことしてヨーロッパ連合での議論が進んで,彼らも批准をするというような動きになるということもあり得なくはないと思うんですけれども,そういったことも見極めて批准をすることもあり得ると,こういうことなんでしょうか。 ● どちらかというと,今おっしゃったものについては前者の方に考えていまして,後者のようなことは,論理的にはともかくとして,実際には余り考えにくいのかなと思っておりました。 ● 適当かどうか分かりませんけれども,あと時間がございませんで,最後にちょっと○○委員に。 ● 余り感想にもならないんですけれども,条約の批准についての考え方はここに書かれているような文章になるんではないかと私も思います。そういうことでは,この部会の報告はこういう文章でいいのではないかというふうに思います。   ただちょっと気になるのは,これは○○委員がおっしゃったことにも関係すると思うんですけれども,今ルールが分からないんで,このままでいいのかということだと思うんですね。先ほどの○○委員の例で言うと,いや,金融機関は準拠法を決めているからいいんだとおっしゃって,まさにそうかもしれませんけど,決めていても準拠法の合意は無効なんですね,実際裁判所へ行けば,その取り決めは。通則法13条で決まるという見解をとれば,そうなるわけです。ですから,今の日本の状態というのは,問題が生じていないのか,問題はあるけど顕在化していないと。したがって,先ほどの○○委員の言葉で混乱が起きていないということであって,これは要するに,国際的な証券に関する取引,あるいはファイナンス取引が行われていないか,法的問題を生じていないということとしか,推測ですけれども,言えないわけなんですね。そうだとしますと,社会的に見ると,日本のファイナンス市場はこういう投資証券に関する限り,各国の証券を使ったファイナンスというのはおそらく行われていないということだと思うんですね。あるいは,ひょっとすると,行われているけども,問題が顕在化していないということなのかもしれません。   ですから,ちょっとそれはこの部会の問題ではないんですけれども,やはり,逆に言うと,何か混乱なりが起きれば,これは大変になってくると思うんで,すぐ法的な手当てということになると思いますので,そういうことが少なくともこの5年間でも,部会の審議の間も一度も指摘されていないということは,おそらく日本にとって,時期尚早という言葉が適切でないのかもしれないんですけれども,まだ今不明の国際私法のルールを直すニーズが実務界から出ていないというふうに言わざるを得ないと思うんですね。それを今後どう受け止めるかというのは,やはり一つ課題であると思います。   もう一点は,○○委員がおっしゃったことなんですけれども,確かに私も参加した者として,ヘーグ条約のルールがベストであるとは思いませんけれども,このルールよりもより優れたルールの御提案はこの5年間の部会では1回もなかったと思うんですね。ですから,ベストでないということは理由にならなくて,よりいい御提案があったのであれば,それはそちらの方が少なくとも条約とかと関係なく,もし日本が国内立法するんであれば,そちらが採択されるべきだと,○○委員の真意はそういうことだと思います。ですから,そういうことから申しますと,いろいろな問題点はあることは確かですし,ベストではないとおそらく思いますけれども,よりいい提案はなかったということで,やはり確認はしておく必要があるのではないかと思います。   ただ最後の,今の点もその前の点も,直接この部会のことではなくて,この部会の報告としてまとめられるということであれば,ここの原案にあるようなことでいいのではないかというふうに思います。 ● どうもありがとうございました。   まだ,今日御出席でない方の御意見も承りたいと思いますし,なお御意見のある方もいらっしゃるかと思いますが,今日は時間の制約もございますので,ここまでにさせていただきたいと思います。   では,今後の予定につきまして,事務局から御説明ください。 ● 本日も熱心な御審議をいただきまして,ありがとうございました。   次回でございますけれども,12月4日火曜日に,同じ法曹会館の2階の高砂の間で会議を開きたいと思います。これは前から申し上げておりますように,次回にこの部会資料28の報告案に基づきまして,御審議をもう一回いただいて,最終的な審議の取りまとめをしていただくということになります。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   では,本日も大変熱心な御議論をいただきまして,ありがとうございました。   これにて散会といたします。                                        ―了―