法制審議会保険法部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  平成19年10月31日(水) 自 午後1時31分                        至 午後5時46分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題 保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                   議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第18回会議を開催させていただきます。   最初に配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました部会資料の18と19がございます。それから,本日席上で○○幹事御提出の意見書,それから,○○委員御提出の議論のための図表2枚がございます。   配布資料は以上でございまして,本来であればパブリックコメントの結果を口頭で御報告申し上げるべきところですけれども,時間の制約がございますので,部会資料18の配布をもって御報告に代えさせていただければと考えてございますので,よろしくお願いいたします。   以上でございます。 ● 資料よろしいでしょうか。   それでは,ただいま御説明のありました配布資料のうち,○○幹事御提出の資料は責任保険に関するものでして,責任保険は本日予定している審議テーマに入っておりませんので,最初のところで簡単に○○幹事から資料の趣旨について御説明いただければと思いますが,よろしいでしょうか。 ● 発言の機会を与えていただきまして,どうもありがとうございます。   先回,御審議のありました責任保険金からの優先的な被害回復につきまして,(ii)の仕組み,つまり特別の先取特権を認めた場合に,裁判運用上どうなるかということにつきまして,申し上げたところを今回補足整理させていただいたのが,このペーパーという趣旨でございます。   そのときに若干調査できていなかった部分もございましたので,現在,裁判所に実際に来て,一定の運用がされているような先取特権,それは動産売買先取特権,あるいは給料等の先取特権がほとんど主なものなのでございますが,それについてどういう運用が行われているかということを最初に説明させていただいたものが第1の部分でございます。これらは御覧いただきますと分かりますとおり,いずれも書面としては極めて定型的なもの,大体書面としてはそろっていると。類型化されているもの,そういったものについては裁判所でも先取特権が認められて,差押えが認められているということを御紹介しております。   ただ,船舶先取特権,これは先回も話が出ましたけれども,実際のところはやはり損害について書面では証明が難しいということで,なかなか実効のある運用が行われていないという実情もございます。そうした場合に,今回の責任保険金請求権について,先取特権を認めた場合については,これは予測としてはかなり定型的・類型的な書類がそろわない,そういう判断が難しい類型の請求権かと思われますので,先取特権制度をこれに認めるということにした場合は,なかなか裁判実務上は機能しにくいのではないかということが予測されるという点を主に書いております。   あと,第4,第5につきましては,不服申立て制度,あるいは被害者が複数の場合,差押えが競合するということがあるわけですが,その場合の問題点についても触れてございます。   内容については詳細は省略したいと思いますけれども,やはり裁判所としてはこの審議会の席で,この被害者の優先的な被害回復の制度が導入された場合に,そこで想定された運用が実現されるように法を適用するというのが,これは言わば当然のことなのではありますけれども,これまでの審議におきましては,特別の先取特権を認めた場合に,裁判所がどこまでその書類がそろえば先取特権の差押命令を発するのかということについては,必ずしも共通の認識が得られていないのではないかというところが一番懸念されるところでございます。   先ほど言いましたように,裁判実務上,先取特権を認める証明ありとするための書類というのは,非常に厳格に扱われているわけですが,これは何も裁判所が運用上の裁量で厳しくしているというわけではございませんで,民事執行法上,判決書等の債務名義とか,あるいは公文書によって立証されるような担保権とは違いまして,単なる私文書で担保権実行を認めるというのが,この先取特権ということになります。そういう意味で民事執行法上,極めて例外的な位置付けがされているということからすると,今後,その証明文書につきまして,これまでの厳格な書類を要求するのではなくて,より緩やかな非類型的な書面であっても,先取特権の成立が認められるというような運用は,ほぼ期待できないのではないかというふうに考えているわけです。   そうしますと,このような民事執行法の規定を前提にする限りは,今回,仮に先取特権制度が導入されたとしても,責任保険金請求権について,先取特権の行使が認められる場合というのはかなり限定されて,その意味では実効性が乏しいということにならざるを得ないのではないかということが予測されるわけでして,仮にこれを,責任保険金請求権についてだけ緩やかな要件で開始を認めるということになると,逆に今度,民事執行法上のこれまでの運用に影響を及ぼす,ほかの先取特権の行使に影響を及ぼすというようなことになりますので,そのあたりの検討も大切なことなのではないかというふうに思われます。   したがって,今回,特別の先取特権制度を,この保険金請求権について導入するという趣旨が,仮に,これについてはかなり被害者救済の見地から広く認めるのだというのが,この制度を導入する趣旨で仮にあるとすると,民事執行法の規定の改正,あるいはそういったことにも何らか,民事執行法の改正等の手当てを講じるというようなことまで必要になるのではないか,そういうことをしない限りは,先ほどのような裁判所の運用を前提にする限りは,ここで意図された,あるいは期待されている運用と法改正後,裁判所が行う運用との間にどうしてもかい離が出てきてしまうというあたりがやはり心配ですので,そのあたりのところは裁判所としては,この際申し上げておかないといけないのかなというふうに考えております。   それとまた逆に,それではということで,先取特権の行使を非常に限定する債務名義とかが出された場合に限って先取特権の行使を認めるという,逆に狭い運用を意図した改正がされるとすると,今度はやはり法改正によって,債務名義が提出された場合に限り,今回の先取特権については行使を認めるというような,逆の意味の手当てをするということもあり得るのかなというふうに思われますが,いずれにしましても,この審議会でどこまで広く先取特権の行使を認めるのかというあたりと,将来それを踏まえた裁判所の運用との間にずれができないような配慮を,やはりお願いしたいというように考えております。   以上です。どうもありがとうございました。 ● ありがとうございます。   いずれも,これから詰めをしていく上で重要な御指摘かと思います。この点,今日いただいた御意見をなお事務当局の方の検討で詰めていただこうかと思います。とりあえず,この点はこういうことでよろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移ることといたしまして,まず保険法部会資料19の1頁から7頁にかけまして,第8,他人を被保険者とする死亡保険契約や傷害・疾病保険契約について御審議いただくことといたします。   まず,事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   まず,資料の3頁の1のところでは,他人を被保険者とする死亡保険契約や被保険者の傷害・疾病を保険事故とする契約における被保険者の同意について問題提起をしております。中間試案では,基本的に被保険者の同意を契約の効力要件としつつ,「一定の場合」の例外を認めるかどうかが論点となっておりました。今回はこの「一定の場合」について,生命保険契約すなわち死亡原因を問わないで被保険者が死亡した場合に保険金が支払われる契約については,このような例外を認めないこととし,被保険者の傷害・疾病を保険事故とする契約,例えば入院保険金が支払われる契約や被保険者が傷害又は疾病によって死亡した場合に保険金が支払われる契約については,一定の例外を認めることを提案してございます。   この問題については,第二読会において,被保険者の同意が求められている趣旨にさかのぼって検討すべきとの指摘がございましたことから,資料の※印のところではそのような観点から検討をしております。   傷害・疾病保険契約については,現行商法上,被保険者の同意が必要かどうかという点については解釈にゆだねられており,一般的には現行商法第674条第1項が類推適用されるが,同意の蓋然性があるとか,モラル・リスク防止などの趣旨からしても同意を効力要件とする必要はないなどという理由によって,この死亡給付を死亡保険契約と同例に考えることは相当ではなく,被保険者の同意が効力要件とはされない場合もあると,解されていたのではないかと思われます。   また,パブリックコメントでは,一定の場合の例外をそもそも認めるべきではないという意見もありました一方で,自動車保険の搭乗者傷害条項や遊園地の入場者のための傷害保険等については被保険者の同意を効力要件としなくてよいという意見が多くございました。また,家族傷害保険契約については,被保険者の同意を求めるべきであるという意見があった一方で,相当数の企業の方々より,その企業の福利厚生の一環として,家族傷害保険契約が締結される場合が多く,現行実務上,個別的に被保険者の同意をとることはしていないけれども,それでモラル・リスク事案や保険を付けたことによるトラブルはないという意見が寄せられておりました。   また,これに関連しまして,海外・国内旅行保険につきましては,旅行代理店での契約の実態などからすれば被保険者の同意を効力要件とすべきではないなどという意見も頂だいしております。この問題につきましては第二読会におきましても,御議論をいただきましたが,改めて御意見をいただければと思っております。   次に,資料で行きますと4頁の2の(1)のところでは,被保険者の同意を書面によるものに限らないとすることを提案してございます。この点につきましては,この部会あるいはパブリックコメントにおきまして,被保険者保護の観点から同意を書面によるものとすべきとの意見もあったところでございます。   被保険者の同意が効力要件とされる場合において,同意に書面性を要求することには意味があると考えられますが,他方で※印のところに書きましたように,モラル・リスクを防止するとか,あるいは被保険者の意思を尊重するなどという被保険者の同意が求められている趣旨からしても,同意を書面によらなければならないということは,直ちには導かれないようにも考えられ,場合によっては契約の効力要件である同意を書面でしなければならないとすることによって,かえって被保険者の意思に反する結果となりはしないかという懸念もあるところでございます。これらにつきましては,パブリックコメントでも寄せられた意見でございまして,これらを踏まえて資料に記載したような提案をしております。   なお,この点につきましては,保険業法施行規則のような監督法規において,契約ごとに適切な方法で被保険者の同意を得ることが求められており,契約法では同意を効力要件とするにとどめ,被保険者の同意の方法については,これらの監督法規の規律にゆだねることによって被保険者の保護を図ることが適切ではないかと考えてございます。   次に(2)では,未成年者を被保険者とする死亡保険契約等の保険金額を制限することの当否について,問題提起をしております。これについては資料の丸に記載したような点について検討する必要があると考えられます。   結論としては,未成年者以外の者と同じく保険契約を締結するかどうか,保険金額を幾らにするかどうかなどは,契約法において一律の規律を設けることには適さず,むしろ実務上,契約締結時の審査に当たって,高額の保険金額の契約が締結されないような手当てをすることなどによって対応していくことが相当ではないかという提案を資料ではしてございますが,この点につきまして御意見をいただければと思います。 ● それでは,3の被保険者の意思による離脱につきましては,私の方から説明させていただきます。   部会資料の方では(1)で,まずどのような場合に離脱を認めるべきかという要件論,(2)ではその法的構成を挙げてございます。   パブリックコメントの概要につきましては,前々回にその概略を御説明させていただきましたので,その詳細な紹介は省かせていただきますけれども,御意見の多数は離脱を認めること自体については賛成ということでございましたし,離脱に反対する御意見の多くが理由として挙げておられた,保険者が離脱の要件の有無を判断することは困難であるということにつきましても,法的構成を工夫することによって解消することができるのではないかと考えられるところです。   また,これまでのこの部会での御議論でも,離脱自体はおおむね認めるという方向かなというふうに認識してございます。そこで,まず,どのような場合に離脱を認めるかという(1)の要件論でございますけれども,これにつきましては,前々回,第16回の会議でございますが,その際に被保険者の同意があることを前提として,具体的にこんな場合はどうかということを幾つか例を挙げて御議論いただきましたけれども,その際の御議論のおおむねの方向性といたしましては,例えば離婚などの親族関係が終了しても離脱を認めるべきではない場合があり得るのではないか,逆に親子関係などの親族関係が終了していない場合であっても離脱を認めるべき場合があるのではないかということであったかというふうに認識してございます。   そのような議論を踏まえますと,例えば離婚しても保険契約を継続する旨の合意があるような場合には,保険契約者においても被保険者に対して契約を継続することを主張することができる正当な事由があり離脱を認めるべきではないということになりまして,離脱の可否については,ある程度抽象的な要件に基づいて考えざるを得ないのではないかということを考え方の方向性として,まず冒頭に掲げさせていただいてございます。その上で,ではどのような場合にこの契約を継続する正当な事由があるとは言えないのだろうかということをまとめたのが,このアとイでございます。   まず,アでございますけれども,これは重大事由解除の要件がある場合です。もっとも,この重大事由解除をすることができるすべての場合に離脱を認めるのか,それともその要件の一定の場合に限るのかにつきましては,重大事由解除の要件としてどのようなものが挙がってくるのかということを踏まえて検討する必要がございますし,また,保険契約者による殺人未遂の場合に,保険金取得目的を要求するのかどうかということも,また検討する必要があるかと存じますので御議論いただければと思います。   次にイでございますけれども,イはいわゆる事情変更がある場合でございます。これは契約の基礎となった事情が変更した場合には,もはや保険契約を継続すべき正当な事由はないと考えられることから,この場合には離脱を認めてよいのではないかということで,これを挙げてございます。   なお,例示として,「親族関係の終了その他の原因により」というのを挙げてございますけれども,これは事情変更の原因となり得る典型的な場合を例示したものであって,別にこれだけに限るというものでもございませんし,逆にこれがあったからといって,当然に事情の変更が生じたというわけでもないということには御留意いただければと存じます。   続きまして,ウでございますけれども,ウは,これ以外に保険契約者において契約を継続する正当な事由がないと言えるようなものとして,何か具体的に挙げられるものがあるかというものでございます。その上で先ほど御説明申し上げたとおり,前々回は被保険者が成人で,かつ,その同意があるということを前提に御議論いただいておりますので,その逆として被保険者の同意がない場合や,あるいは被保険者が未成年者などの制限行為能力者である場合には,このアやイの要件があれば離脱ができるということは,それは当然の前提といたしまして,それ以外にも離脱を認めるかどうかということについて御議論いただければと存じます。   引き続き(2)の法的構成でございますけれども,これは要件をどのように考えるかを踏まえて検討する必要がある問題と思われます。先ほど申し上げましたように,(1)のアやイのような事由を離脱の要件とする場合には,これらの要件は保険契約者と被保険者との間の事情によって定まってくるというものでございますので,このような事由の存否を保険者が判断することはできない,あるいは困難であると考えられますので,保険契約者と被保険者との間で争わせるのが相当だろうというふうに考えられます。   そして,保険契約者が請求に応じてくれない場合には,被保険者が保険契約者に対して解除の意思表示をせよということの訴えを起こしまして,その勝訴判決を受けて,これを保険者の方に持っていって契約が終了するという形になろうかというふうに存じます。   なお,先ほど申し上げましたけれども,パブコメでそもそも離脱を認めることに反対する御意見も,保険者が離脱の要件の有無を判断できないということを理由とするものが多かったのですが,今のような形をとるのであれば,そのような問題は生じないだろうというふうに思われます。   このように保険契約者に対する解除請求という構成をとった場合ですと,この※2に書きましたように,形式としては請求を受けた保険契約者が保険者に対してその契約を解除するという形式になりますことから,保険契約者がそもそも解除できない場合には,その解除請求をすることを認めるかどうかということも検討する必要があろうかと存じます。   さらに,※3の部分でございますけれども,(1)のウの他にどのような場合に離脱を認めるかという,その要件の内容にどういうものが挙げられるかということによっては,被保険者が保険者に直接請求しても,保険者は判断に困らないという場合もあり得るということもございますし,そのような場合にまで一々保険契約者に請求しなければいけないというのは迂遠ではないかということも考えられますから,(1)のウでどのような場合に解除請求を認めるかと併せて,この問題も検討する必要があるのではないかということを挙げてございます。   以上でございます。 ● ありがとうございます。   それでは,ただいま御説明があった部分,幾つかの違った問題が含まれておりますので,余り議論が錯綜しないように順次取り上げてまいりたいと思います。   まず,3頁の1の被保険者の同意が要らない場合の例外をどういう範囲で認めるか,このあたりから御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● この中身を少し確認しながら御意見申し上げたいのですけれども,お書きになっている中身ですと,生保の死亡保険については,例外を設けず同意をするということにして,傷害・疾病保険契約で,これは言わば死亡補償を含むものについては,ここに要件を定めた場合に同意を要しないで,この種の契約を締結できるという,そういう一定範囲の理解ということでよろしいわけですね。 ● そうですね。改めて整理しますと,純粋な生存保険についてはそもそも同意が不要ということで,死亡保険については例外なく同意が必要ということ。それから,傷害・疾病を保険事故とする契約については,その生存給付のみの場合も,あるいは死亡給付がくっ付いている場合も含めて,この受取人,この鍵括弧の要件に当たれば同意は不要とするけれども,それ以外の場合は原則どおり同意が必要という整理をしてはいかがかという提案でございます。 ● ありがとうございます。   そうすると,要するに傷害・疾病のリスクに限定した死亡補償と,この部分について同意を要せず保険契約が締結できると,こういう形になっているかと思うのですけれども,従来言われてきたところでは,やはり特に傷害保険でありますけれども,傷害保険はいわゆるレバレッジが高いといいますか,保険料に対して保険金額が非常に大きくなりやすいということで,モラル・リスク事案も大半は傷害保険契約であったという過去の経緯がございます。したがいまして,その支払段階でも相当注意をして,恐らくは怪しい事案については調査された上でお支払になっているのだろうと,こういうふうに考えております。   しかし,その一方で,契約締結段階について,どういう形でそこを,できるだけそういうモラル・リスクを高めない形で契約を成立させていくかと,そういう入口の問題が一方であったかと思うのです。出口の方はまた別途御議論になるかと思うのですけれども,今日はその入口の部分で少し議論をしなければいけないということかと思うのです。   そうすると,モラル・リスクを低減するというためにどういう仕組みをセットするかということで,同意が一つの大きな要素であったかと思いますが,同時に被保険者同意の問題は,モラル・リスクの低減と同時にどういう保険が自分に掛かっているのかという,それを被保険者にも確認してもらうと,こういう意味合いが強いかと思うのです。両方の観点から申しますと,やはりそういうモラル・リスクが特に懸念されるような保険の種類について,入口のところでそれなりに慎重に対応する必要があるということが言えるかと思うのですが,そのときにここの要件ですと,要は従来の商法の現行法といいますか,第674条第1項ただし書とほぼ同じ中身で,これは有効に契約が締結できるのだと,しかもそこは同意は要らないのだと,こういう形になっているかと思います。   この間,議論してきたところでは,以前タイトルにも出ておりましたけれども,被保険者同意以外の方法による弊害の防止方法というタイトルが出ていたかと思うのですね。同意をとる以外の方法で弊害を防止するという方法を考える。したがって,こういう第674条第1項ただし書を外したときに,いかなる形で同意以外の方法で弊害の防止方法を構築するかという点で,今回の御提案ですと,結局それは第674条第1項ただし書とほぼ同じ中身で,若干制限が付いているとすれば,それは「自己の業務又は活動に関して」というところが絞り込みになっているのかなというふうに思うのですけれども,この部分について,要するにこの要件だけで事実上フリーパスになるというのには,私はやはり危惧を感じております。   以前も少し申し上げたかもしれないのですけれども,やはり同意なくそういうことをやれるというのであれば,ほかの何らかのリスク低減策というものを一定考えておく必要があろうかと思うのですが,先ほどの御提案だと,要するに引受けに当たっての業法上の規制というようなお話が主になっているかと思うのですが,契約法上は何も実質的に手当てがないに等しい状況になる。同意がないというのであれば,やはりそこは金額制限をするとかいう形の一定のリスク低減方法をとるというのが一つの方法かと思うのですね。ここに関して,諸外国がこういう形でやっているかというと,ちょっと日本とは状況が違いますので必ずしも多くないのですけれども,後ほど出てきます未成年者のところにもかかわりますけれども,こういうリスクを何らか低減させるという場合には,やはり高額にならないように配慮するという意味で,どうしても金額が大きくならないように制限していくということが一つの手段だろうなと考えておりました。   それと加えて,最後に御説明になりました同意を不要として成立した保険契約について,同意をしていないで契約が成立しているわけですから,場合によったら不同意の方がいらっしゃるかもしれないので,不同意の方については後ほど当然そこから離脱をするということを認めるというような,そういう手当ても当然後半部分では必要になるのかなというふうに思っております。   保険制度自体は非常に効果的なものですけれども,比喩的に言えば料理のフグに似ているようなもので,毒を取っておかないと当たってしまうという,そういうことになりますから,毒をできるだけといいますか,取り除かなければいけないわけで,取り除き方がちょっと微妙でまずいということになると大変なことになりかねないということになりますので,是非ともそこは,もう一歩立ち入って考えていただければというふうに思っております。   この中で,従来およそ合意がとれていたかと思うのは,4頁の上の段の搭乗者傷害条項ですとか,遊園地やイベント等の傷害保険や団体型のものなどについては特に異論はなかったと思うのですが,同意がとれるものについても,とらないというような実務を促進するような形のものは,やはり適当ではないというふうに思っております。   以上,ちょっと長々としゃべりまして恐縮です。 ● ○○委員。 ● 基本的な考え方は○○幹事と同じで,また,この問題について何回か前のときに,これよりもうちょっと絞った案で大分がっかりされたという御意見を述べられた方がいらっしゃいましたけれども,私もこれを見て大分がっかりしてしまったのですが,でも成案を得る必要がありますから,いろいろ工夫をしなければいけないと思うのですが,まず基本は,この被保険者の同意というのは二つの要素があって,人格権的な保護,それからもう一つはモラル・リスクの保護。これが損害保険であればこういうことは問題ないわけですけれども,ヒアリングの際の御意見の中に中学生のときに親が自分に保険を付けたと,親が離婚して定職を失って,おまえの保険金が入ればと言っている事例がありましたけれども,そういう例はこの案だと防げないわけですね。   やはり基本的な,今いろいろ起こっていることに対して,これだけではやはり対応できないという部分があると思うのです。どう考えるかという問題なのですが,それからあと一つ,4頁の扶養義務とか協力扶助義務に基礎付けるというのはちょっと難しくて,特に子供の死亡の場合,そのお金を何に使うのかという問題がありますので,これはやはりちょっとおかしいと思うのですが。   それから,もう一つ,要するにこれは理論的に破綻しているわけですね。生命保険の方では同意が必要で,同じ定額保険で傷害・疾病が原因だと必要ないというのは理屈の上でも完全に破綻していますので,一つの考え方はやはり両方ともまず同意は必要だという建前にして,被保険者の同意がないということを援用できるのは被保険者だけにすると。モラル・リスクのことを考えれば被保険者の相続人も認めてもいいのかもしれませんが,基本的には同意の不存在を一律援用できるのは被保険者だけにすると。   そうしますと,被保険者の利益になっているという場合には,これは援用なんかもちろんしないわけで,多くの場合,家族傷害保険とか,多くのものについては申込みのときに同意をとることは工夫すれば私はできると思うのですね。搭乗者傷害とかそういうものはいろいろ確かに難しいところがあるかもしれません。それも損害保険的に構成すればできるという意見は申し上げましたけれども,それで不同意状態が生まれるかというと,そうは言えないのではないかと。少なくとも,そういう不同意の存在を主張されないようにするためには,業界としては同意を取り付けるという努力をしていただかなければいけないし,ですから,ずるをすれば今のままでも済んでしまうかもしれませんが,理論的にはやはり両方とも定額保険に同意を要求して,それで,そのことを援用できるのは被保険者もしくはその相続人だけというような,そういう扱いをすることによって,何か理論的にまず破綻を避け,かつ,業界の方には可能な範囲でできるだけ同意をとっていただくという,そういうことは考えられないかなと。妥協案といいますか,この延長で議論をする限りは例外を広くするか狭くするかという,そういう範囲の議論で,理論的に破綻しているという点は覆い隠しようがないものですから,そんなことをちょっと考えた次第なのですが。 ● ○○幹事。 ● この問題については,損保実務界と学者の人で従来から意見が対立して,なかなかこれまで成案がとても得られそうにない状況であったわけですけれども,損保実務界からのこれまでの主張というのは,結局傷害保険というのはもう実務上広く普及して,特に海外旅行傷害保険というのは大変なニーズがあるのだと。これを現在売っているような形で売れなくなるようにすると,そのユーザーにとっても不利益をもたらすのだということを強く言われてきたと思うのですが,ただ,その海外旅行傷害保険のニーズがある,ニーズがあると言われるのですけれども,そこで言うニーズの大半というのは,恐らくは海外で病気になったり,けがをした場合に医療費をてん補するという,その部分についてのニーズがあるということであって,被保険者の同意なしに何千万もの死亡保険金が支払われると,そういう保険を締結したいというニーズがあるということではないと思うのです。そういうニーズがあるということは,これまで実務家からも特に言われていないと。   ですから,その両者を混同しているかのような議論が従来あった。つまり,ニーズがあるというのは,あくまでも医療費のてん補の部分なのであって,死亡保険金について被保険者同意なしに支払うような,そういう保険契約を締結したいというニーズがあったとは私にはとても思えない。   それから,従来の損保実務で傷害の死亡給付に関する契約というのはちょっと長ったらしいので,傷害死亡保険というふうに言わせていただきますが,その傷害死亡保険が被保険者の相続人に死亡保険金が支払われる場合には被保険者の同意なしで販売するということが従来行われてきたわけですが,それはやはり現行商法の第674条第1項ただし書を踏まえて,そういう販売方法がとられてきたと思うのですが,しかし,第674条第1項ただし書というのは,これは立法論的に非常に問題のある規定であるというふうに従来から言われてきたわけで,この規定によればともかく相続関係にありさえすれば,被保険者に黙ったまま何千万もの死亡保険を掛けて,それで被保険者の死亡によって保険金を取得できるということになるわけで,これはやはり世界に類を見ない,へんてこな,おかしな規定だと思うのですね。   実際,そういうおかしな規定だからこそ,生保実務では第674条第1項ただし書というものは使わずに,できるだけ被保険者同意をとるようにしているわけで,ですから,確かに従来の損保会社も傷害保険の実務というのは,一応商法の規定には従っているのだけれども,その商法の規定というのはやはりおかしな規定で,そのおかしな規定に依拠した実務であったというふうにやはり言うべきだと思うのです。   今回は商法が制定されて100年たって,ようやくそのおかしな規定を是正するチャンスが来たわけですから,ですから,この機会におかしな規定に依拠してきた,おかしな実務はやはり是正していただきたいというふうに思うわけです。   そこでちょっと前振りが長くなってしまったのですが,今回の事務当局案なのですけれども,中間試案のたたき台として出てきた案では,家族まとめて被保険者とする,そういう傷害死亡保険については,一律被保険者同意は必要ないという,確かそういう案で,それは私もがっかりしたというふうにここで申し上げたと思うのですが,今回の案では保険契約者が自己の業務又は活動に関して保険契約を締結しているということが被保険者同意を不要とするための要件になっているわけです。   問題は,家族を被保険者として傷害死亡保険契約を締結するということと,保険契約者が自己の業務又は活動に関して傷害死亡保険契約を締結するということが,一体どういう関係にあるのかということなのですが,もし,仮に家族を被保険者として傷害死亡保険契約を締結する場合は,常に保険契約者が自己の業務又は活動に関して傷害死亡保険契約を締結することになるのだと,そういう趣旨でこの事務当局案が出てきたのだとすると,結局,以前に出てきたたたき台の案と実質は同じだと思うのです。すなわち,傷害死亡保険契約に関する限りは,現行商法第674条第1項ただし書を存続させるということになってしまう。そうすると,先ほど○○委員がおっしゃったように生命保険,死亡保険の場合と傷害死亡保険の場合とで,もう説明のできない評価矛盾というのが生じてしまうと思うのです。   そうだとすると私はこの案に賛成することができないのです。しかしながら,この案を善解すると,保険契約者が自己の業務又は活動に関して傷害死亡保険契約を締結すると,これが例えば保険金額等も考慮した上で実質的に判断するのだという趣旨でこの案が出てきたのだとすると,私はもうちょっと歩み寄ることができるのではないかと考えています。   例えば父親が保険契約者となって,家族をそれぞれ被保険者とする傷害保険契約を締結する場合,父親が自分自身を被保険者とする傷害死亡保険,これは保険金額が幾らであっても締結することはもちろんできると思うのですが,例えば自分以外の家族については死亡保険給付が例えば500万円程度に抑えられているというのであれば,それはその家族が死亡した場合の葬儀費用を賄うための保険であるというふうに理解することはできますし,そういう保険は,その保険契約者が自己の業務又は活動に関して締結したものというふうに見ることができると思います。   しかしながら,現在の保険実務で行われているように,被保険者の同意なしに何千万円もの死亡給付の付いた傷害保険契約を締結するというのは,幾ら家族を被保険者とするものであっても,扶養義務とか協力扶助義務ということで説明することは,やはりできないと思うので,この場合は保険契約者が自己の業務又は活動に関して契約締結したものと見ることはできないのだと。私はこのように事務当局案を解釈したのですが,事務当局案がこういう解釈を許す,あるいはさらに進んで,こういう解釈を予定しているのだということであれば,私は事務当局案を前向きに受け止めたいというふうに考えているのですが,果たして私の解釈と事務当局の解釈がある程度共通しているのか,それともこれは私が勝手に善解しているのか,私が思い込んでそう解釈しただけなのか。ちょっとこのあたりについて御説明をいただけければありがたいのですが。 ● そもそも第二読会のときの提案からそうですけれども,受取人がだれかという要件以外に,何かほかの要件もかぶせる方が適当ではないかと考えていますのは,まさに今,○○幹事からお話がありましたとおり,他人を被保険者とする契約を締結するのが当該被保険者のためだと言えて,そういう契約を締結することが,だれが見ても合理的な場合にまで同意を求める必要はないだろうと,同意を求める趣旨に照らしても,その場合には同意が不要だろうと,こう考えられる要件設定をしたいというところから出発しておりますので,その意味では,そういう実質的な要素も込めることができればいいなという思いは同じように持っておりますが,他方で,同意を契約の効力要件と考える場合には,余りにも実質的な要素がその要件の中に入り込みますと,一体同意が必要な場合なのか,要らない場合なのかの判断がそもそもできないということになってしまいますので,今のような実質的な考慮も盛り込みたいという思いは強いのですが,やはりなかなか盛り込むのも難しいだろうということから,この今回の鍵括弧のような御提案にとどまっているというところでございます。   ただ,そういう意味では○○幹事のおっしゃるような考え方もむしろ親近感を覚えるのですけれども,いざ要件設定という意味ではちょっと難しいのかなと。さらに進みますと,4頁の「もっとも」で始まるパラグラフに書きましたとおり,この鍵括弧の要件の中の前半部分ですら,これで本当にいいのだろうかと。かえって,これで実質的な考慮要素も盛り込めていいという評価もあるのかもしれませんけれども,実質的な要素がいかようにでも入り込み得るところでして,そうだとすると,契約の効力要件の要件設定としては,むしろこの前半部分ですら,ちょっとどうなのだろうかというところを懸念しているということもございまして,そういう意味では,そういうジレンマを抱えての提案になっているということでございます。 ● ○○委員。 ● もう一度,我々の考え方なのですけれども,3頁の1の二つ目の丸ですけれども,この整理に賛成いたします。   同意原則を厳格に徹底すべきという御意見の方からすれば,整理としてはきれいではないということかもしれませんけれども,私たちは既に長年にわたって,3頁の下半分から書いてあるような他人を被保険者とする傷害・疾病保険を多数販売してきております。損保協会のパブコメでも意見を提出させていただきましたけれども,これまでの経験から実務上懸念されるのは,保険金の受取人が個別で特定されている場合,特に相続人以外の人に特別に特定されているという,こういう場合であると考えています。このような形態にないものまで広く被保険者の同意を求めることは,実体とかい離してユーザーの理解を得られないものと考えています。   いろいろなパブコメの意見を見ていても,団体傷害保険の御契約者さんを中心に,家族の一人一人に漏れなく同意を取り付けるということは現実的ではなくて,このようなことを法律で規定することには反対という意見が多数見られます。同意がなければ契約無効ですと,契約者が同意取り付けを失念すると,被保険者が必要な補償を受けられなくなるので,契約者保護上も問題であると考えております。   有意義な商品を世に供給すべき立場からにとどまらずに,私たちとしては多くのユーザーが反対という方向,ユーザーに御負担をかけ不利益となる方向となることは許容できません。本文の整理は理論と実務のバランスをとったぎりぎりの案であると考えており,是非この方向でまとめていただければと考えております。   以上です。 ● 先ほど○○幹事から,海外旅行傷害保険は同意を厳格にとらないで成立させるニーズがあるのだろうけれども,それは死亡補償についてまで,そういうニーズがあるのかという御質問で,その点いかがですか。   ○○委員。 ● 海外旅行傷害保険ももちろん広く普及しておりますし,国内でも企業等々で出張するとき利用されておりますが,これはもちろん,もともとの目的は出張中あるいは海外旅行中の病気,あるいはけがをした場合,そのときの治療費等々が恐らく最もニーズが高いところだと思うのですが,一方で,やはり当然海外旅行中に死亡した場合のリスクというのも非常に大きい。家族にとってみれば,それは大変な出費になりますし,それを補てんするということであればニーズがあるというふうに考えておりまして,損害保険会社は1911年からこういう傷害保険を販売しておりまして,海外旅行傷害保険も戦後に発売したのですけども,そういう流れの中で,やはり傷害保険,それからこういう海外旅行傷害保険等々は,基本的に入院,通院,それから後遺障害,死亡,これらを一体として補償すると,こういうところにお客様のニーズがありまして,先ほどのお話のように死亡だけを念頭に置いているわけではなくて,けがをしたり病気になったりすれば当然これは入院をしますし,あるいは通院をします。それから後遺障害は当然発生しますので,後遺障害によるその後の生活の補償等々のニーズ,それから亡くなった場合には当然さまざまな問題もございますので,そういうものをあわせまして補償するというところにニーズがございまして,しかも,なおかつ私どもの統計によりますと,保険事故そのものは,過去起こっています件数の大体90%が通院,約10%が入院でございまして,死亡や後遺障害は約1%弱と。したがいまして,ほとんどのニーズは件数ベースで申しますと,こういう入院,通院と。しかも,なおかつ入院,通院と,それから後遺障害というのは,やはりこれは非常に一体化したものでございまして,被保険者本人を補償すると。こういう意味で非常に大きな役割を示していると。したがって,死亡だけが問題ではなくて,死亡を含めた,こういう入院,通院,これらを被保険者に保険金を帰属させると,こういう趣旨で,この保険がこれまで利用されているというふうに私どもは理解しております ● ○○幹事。 ● 今,おっしゃったところからすると,やはりニーズは医療費のてん補にあるわけで,今,現に実務で行われているように,死亡した場合に何千万円もの保険金を被保険者の同意なしに支払うというところをやめても,私は完全にやめる必要はなくて,金額をまさに扶養義務や協力扶助義務等で締結されると,それに基づいて締結できると考えられる程度,これが500万円なのか1,000万円なのか,あるいは300万円なのか,人によって考え方が違うかと思いますが,その程度に引き下げても結局保険契約者のニーズにこたえられるということではないかと思うのです。ですから,私はむしろそういう形で販売していただけるのであれば,特に大きな問題はないと言えるのかもしれないということでございまして,死亡給付の部分を完全に外せと,そこまで個人的には考えてはおりません。 ● ○○委員。 ● やはり議論をちょっと深めて歩み寄りをしなければいけないのだと思いますけれども,○○委員がおっしゃった受取人を家族外にした場合が危険で,そうではない場合は危険ではないということは,それはもうちょっと今は言えなくて,先ほどの例もそうですし,これはたまたま生命保険の例ですけれども,前回も言いましたけれども,栃木の例だと7歳の二男に8,000万,17歳の長男に3,000万付けているわけですよね。これはこの部分,だんだんこういうことが増えていくということは,そういう予測をしなければいけないのだという問題がまずあると思うのです。   二番目,これも○○委員がおっしゃった場合,同意は無効だというからやはり問題なので,先ほど私は苦肉の一つの代案として,被保険者がそのことを問題にするときは,それは問題にすればいいけれども,基本的には多くの者が適正な募集をし,そういうことが家族にとっても喜ばれるという形で募集しておられると思いますから,そういうときはだれも同意の不存在を主張しようなんて思わないわけですよね。   しかし,ヒアリングの際の意見の中に出てきたように,高校生になったりして,親が自分の保険金が入ったらいいなと口走っているときにというような,そういう場合が起こらないようにするためには,やはり被保険者だけがそういうものを援用できるという形にするのであれば,業界としてお困りにならないのではないかと。それでお困りになると言うのだったらまたちょっと考えなければいけないのですが,そういう案はどうなのでしょうかという質問なのですが。 ● ○○幹事。 ● 私は今までの審議の中で,個別の同意を取り付けるのが困難な場合があるということについては,よく理解いたしました。ただ,それは各委員,幹事が御指摘になっているように,一定の合理的な内容のものであるとすると,それにまで,個別の同意をとるのが困難な場合に,同意をとる必要はない,そういう例外を設けることはあり得るだろうというふうに思います。   それとの関連で何人かの方が言及された,扶養義務あるいは協力扶助義務という話なのですけれども,これを根拠にして広い範囲で同意をとらなくていいという立論をされるのは果たして妥当なのかという気がいたします。ここで,今回の資料ですと4頁の6行目でしょうか,「火災保険契約に付帯されている傷害保険契約等も」という例が挙がっておりますけれども,これが個別の同意を取り付けるのにそんなに難しい例なのかどうなのかちょっと私には判断が付かないのですけれども,そういうものにまで扶養義務あるいは協力扶助義務ということを理由に同意不要とするのはどうなのだろうかと。特に,この基準を使うと協力扶助義務はともかくといたしまして,扶養義務の範囲というのは一体どの範囲を考えているのかというのは,必ずしも明瞭でないというようなこともございまして,かえって難しい問題を抱え込みやしまいかという感じもいたします。   それから,ついでに申しますと,同意は,同意を取り付けるのが困難であって,かつ,内容が合理的な場合に不要だというのは,その場合には同意はあるだろうと,同意を求めていれば同意が得られただろうという,そういうことに基礎付けられていると思いますので,不同意だという人については,これは○○幹事がおっしゃったことですけれども,抜ける道というのをやはり残した方がよいのではないかと思います。 ● ○○委員。 ● 今までの流れの中で,○○幹事の御意見もそうですし,全く賛成なのですが,それを繰り返しても仕方がないのですけれども,やはり同意というモラルハザードの抑止と,知らないうちに保険を付けられたことの防止と,その二つの側面があるのだろうというふうに思っていますので,この案では大変,こういうことを言うとまた怒られてしまいますけれども,がっかりしたというのがやはり本音でございまして,原則例外と言っているのに,現行売られている保険を考えれば死亡保険だけの保険は別として,死亡保険契約にいろんな特約を付けての死亡保険だけの保険といって生保さんがお売りになっているもの。傷害・疾病の保険に関して言えば,当然ごく一部の医療保険に死亡保険金がないのがありますけれども,全部傷害死亡・疾病死亡がくっ付いていると,それらを全部こちらの方の原則例外でいう例外の方に持っていくと,例外がすごく無限定になってしまって,何のための原則だか分からんというふうになるのではないのかなというふうに実は思っていまして。何でそんなことを言うかというと,普通の消費者が保険に入るときに,これは同意が要るのですよ,これは同意が要らないのですよというところが,ある意味,先ほど○○委員が理屈がないとおっしゃいましたけれども,私もようやく利便性だとか現行問題がないという仕切りだけで原則例外を分けられますと,分からない人間から見ると,これが要る,これが要らないの理屈が分からないのです。   そうすると,政策的なもので分けたのだと,はっきり言えば政策的なものでお分けになるのだろうと思うのですけれども,そういうもので分けたということになると,保険を知らない人間が,これが同意が要るのだ,これが同意が要らないのだということをどうやって判断するのだと。どこに合理的な理由があって,ここは要る,これは要らないというときに,死亡保険は要るのだよと,死亡保険ではないのは要らないのだよ,でもこれは死亡保険が付いているし,そしたら分からなくなるということになります。   現行の,例えば家族傷害のお話を今メインにやっています。家族傷害の話だと傷害死亡しかないからいいですけれども,それに医療保険特約を付ければ,やはり今度,疾病死亡があり得ることになりますし,今のでいうと,むしろ逆に後退してしまって,今,現状医療保険で被保険者の同意をとっています。被保険者の同意をとっている実務がとらなくていいというところに下がっていってしまうのではないのかしらとまで危惧しますし,そういう意味では,消費者が見て,ここは,ではぎりぎりとらなくてもいいのですということだったら何とか整理が付いて理解が付くものを,つまり合理的に推定が付くものを推定が付かないような形にはしてほしくないというふうに思っていますが,いかがでしょうか。 ● ○○委員。 ● 私は実態がよく分からないのであれなのですが,本来,やはり同意というのは絶対必要であるというのが一つと,あと結果が同じ状況でありながら,入口で違ってくるというのが,やはりどうしても私たちからすると理解できないのですよね。   加えて今,○○委員が言ったように,消費者というのは本当に保険契約,入口のところはもちろんのこと,入った後,解約の部分に関しても知識がないのです。言われるままにというのが多いものですから,実際に事故が起きてからトラブルになるというのが大方なので,入口で仕分けして結果が同じなのに,最終的な結果が違ってくるというのは,やはりあるべきではないのではないかなと。   今,お聞きしましたら,死亡補償がないものがほとんどないということになると,結局みんな傷害の方へ偏っていってしまうのではないかという部分では,何のためにここでそういうふうに仕分けしなければいけないのかというのが,もう一つ分からないのですけれども。 ● 今,仕分けという話が出ましたが,どうしても傷害・疾病として議論していても,死亡給付ということで,死亡なら同じ生命保険における死亡保険で同意が必要なのになんでだと,こういうことになるのだろうと思いますけれども,おっしゃることは,今,るる御指摘いただいたところはどれもおっしゃるとおりというか,理解できるところなのですが,むしろこの傷害・疾病の場合で念頭に置いて考えるべきは,○○幹事からもお話がありましたが,それはまさに傷害,けがをした,けがをして治療費がかかる,あるいは病気で治療費がかかるというときに困らないように保険を付けましたと,それで保険給付が出ますと,その保険給付は契約者ではなくて被保険者本人に行くのですと,4頁の「もっとも」のところに書きましたが,わざわざ契約者が全然自分とは関係ない人のために保険料の負担をして,何かあったらその人が困らないように,その人にお金が行くようにしているというのはもうそれだけで,先ほど来,話が出ている,普通は合理的なものであって,むしろその人が「何でおれに保険を付けたのだ」と後になって知って怒るよりは,「付けてくれてありがとう。」と感謝される場面ではないかと思うのですね。   今,現に出回っている商品もそういう商品であって,そういう商品をなんで否定しないといけないのだろうというのがむしろ事務当局の発想の出発点にございます。ですから,それは若干分かりにくいという指摘が○○幹事からもありましたけれども,自己の業務又は活動ということで,どこまで入るのか,あるいは扶養といってどこまで入るのかということ以前に,被保険者が受取人であることによって,それはもう合理的なものだと普通は推認するとか推定されるものであって,それは許容していいのではないかというのがまず出発点でございます。   そうしたときに,まずその点に賛同を得られないとちょっと先に進まないのですが,では,仮に死亡給付については,同じ死亡なのに何で結論が違うのだということで,全部同意だと言い出すと,傷害・疾病保険に死亡給付を付けた途端にすべて同意が必要ということになってしまって,そうしますと,本来感謝されるべき契約を付けようとしているのに,もうすべて同意をとらない限りは付けられない,それでは手間もかかるしやめようとなったときに困るのはだれかというと,今だったら保険でカバーされている多くの被保険者の方々であって,そういう法改正が本当に望ましいのだろうかというところで非常に悩んでいるわけでして,同意をとれる場面はとれというのは,それはそうかもしれませんけれども,そこを要求したときに本当に困るのはだれなのだろうかということを,もう少し考えなければいけないだろうと。   それで,死亡給付を付けない,生存給付の商品だけで売ればいいのだということ,死亡給付を付けたのはすべて同意ということも一つの発想だとは思いますけれども,むしろ生存給付にそれが不幸にして死亡まで至ったときに,それもカバーするように死亡給付が付いているときに,付いた途端に全部同意かというと,結局保険でカバーされるものの大半を否定するに等しくなってしまうのではないかと,それは,むしろそうではなくて,モラル・リスク対策というのは,そもそも契約者が保険金目的で殺害をしたら免責でお金は行かないわけですから,そういうモラル・リスク対策は別のことで考えられると思いますし,そこを余り強調して同意を求めることによって,今,提供されている保険が否定される,あるいはその提供された保険によってカバーされるリスクの多くはカバーされなくなる,あるいはカバーするために多大な手数がかかることによって,国民にもたらされる不利益ということをむしろもっと考えるべきではないかというのが,今回の提案の内容ということになります。 ● ○○委員。 ● 前半は私,分かるのです。疾病と傷害と,その辺は分かるのです。   ただ,その先で死亡したときに,もう本人は死んでしまっているわけですよね。そこでモラル・リスクというのが,当然出てくるのではないかなというふうに思うものですから。   前半は分かるのです。死ぬ前で自分にその保険金が入ってくるというのは,それは十分に分かっているのです。ただ,結果が死亡になったときに同意がある場合とない場合というのが入口で分けられてしまうということが,もう一つ私の中で,すとんと,こう落ちないのですよね。 ● そういう意味では生存とセットでないと,例えば傷害死亡単独で,あるいは疾病死亡単独で同意は不要と言ってしまうと,それは御懸念はそのとおりかもしれませんけれども,あくまで今,念頭に置いて申し上げましたのは,その生存給付がメインで,それに死亡もセットになっているという場面をまず考えていますし,死亡になった途端にとおっしゃいますが,そのときは確かにお金が行くべき被保険者はいないかもしれませんけれども,それは,ある方が亡くなって困るのは被保険者本人ではなくて,例えばそれが同居していた親族であったりということも多々あるわけですから,そこになった途端に同意が必要となってしまうと,先ほどの話に戻りますが,では結局生存給付とセットのものは全部同意が必要ということになって,それはむしろ例外をも否定するに等しい結果になるのではないかと。それは,モラル・リスク対策と結局どちらに重きを置くかということになりますが,むしろ私はマイナス面というか,そういう改正をすることによってもたらされる不利益の方がはるかに大きいというふうに考えているということでございます。 ● ○○委員。 ● 保険を付けた家族の気持ちというものを評価されるところは全く共感するのですけれども,でもやはりそれは額によるわけで,1億円付いていて,治療相当額は100万とか50万では,それはやはり怖いわけですから,現実には後遺障害のみとか死亡を除いた担保で傷害保険のカバーを提供することは,そういう商品,そういうニーズがあって,そういう約款も用意されていて,それにもかかわらず売っているわけですよね。   今の議論をどんどん飛躍していくと,生命死亡保険に付帯した同じようなものだって要らないということになってしまうようにも聞こえます。そこまでは多分おっしゃるつもりはないのかもしれませんが。   ですから,やはりここは定額保険の死亡を担保する保険と,それ以外のところでは理論的に分けて,業界としてはそれで保険料収入が減るのではないかとかいうことがあるかもしれません。私は先ほどのような案だったらそうはならないと思いますし,仮に,もっと厳しい案だとしても,○○幹事のおっしゃったような妥協案は十分あり得ると。私はそれは未成年者のところで関係するので,そこでお話ししようかと思ったのですが,ですから誠に残念なのですが,○○幹事とはそこは最初の段階から,ちょっと意見は一致できないと。   申し訳ありませんが,以上です。 ● ○○幹事。 ● 先ほどの○○幹事の御説明を伺って,やはり4頁に書かれた「もっとも」というところから始まる文章の「保険契約者が自ら保険料を負担してまでそのような契約を締結するということにはそれなりの合理的な理由があるのが通常であるとも考えられる」,この文章がやはり問題があるのだろうと思うのですね。   もちろん,通常は合理的な理由があって,濫用目的はもちろんないのですが,中に濫用目的の人が紛れていて,それを保険者は到底特定できない。それを特定する,判断できる唯一の人が被保険者であるからこそ,被保険者に同意を求めて,そこの判断をしてもらうと。そういうことになっているわけでありまして,大多数が通常であるから,それを通すためにその関門を入れないというのは,少し同意主義の根幹を崩す議論ではないかというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● 大体皆さんがおっしゃっていることと流れは同じだと思うのですけれども,ちょっとまた方向性が違うことを言ってしまうかも分からないのですが,○○委員がおっしゃっている無効を主張したいのはだれかというは被保険者だというところを,そのまま立法化すればいいのではないかなというふうに思います。   というのは,例えば死亡保険について言うと,ただし書の部分とか,それからあとは傷害・疾病の方でもただし書の部分ですけれども,原則同意がなければ効力が生じないとして,その同意がないことによって,保険契約が無効であることを主張できるのは被保険者又は相続人に限るというふうにすれば,目的が達成されるかなと思います。   というのは,まず同意というのが,いろいろな機能があるとして,私は人格権かなと思っているので,その人格権というのが侵害されているときに侵害されていると主張するのは本人か,又は死亡した場合の遺族だと思いますので,という点と,それから,あと保険者の方が「いや,これは同意がなかったではないか。」というふうに言わなければならないのはモラル・リスクのときで,それは別の理由で免責とか解除とかということで対応できることかと思います。基本的には同意をとらないで,保険契約を締結した保険契約者の方も保険者の方も,原則的な規定のところで無効が主張できるというふうにする必要はないのではないかと思われるということがあります。   それから,もう一点,そうはいっても傷害保険とかで死亡給付も付いているようなもので,比較的簡便に契約成立を認めなければならないような場合があるから,一定の場合というふうに除外するという点なのですけれども,これも傷害・疾病の場合においては,本人が生きているから無効を主張する機会があると思いますので,ですから,一定の場合として除外しなければならないというのは,そのような契約で同意がなかったから,一応不安定な状況になっているけれども,その無効を主張できるのは保険給付を受ける本人だけだということになれば,大抵の人はそれが通常は合理的な場合であれば無効は主張しないので,さほど実質的には契約関係を不安定にすることにはならないのではないかと思いますので,そのような発想があるかということも,ちょっと御検討いただければと思います。 ● ○○委員。 ● 先ほどから生命保険と傷害保険で,死ぬことについては同じだというお話が出ておりますし,これまでも何回かお話をしておりますけれども,やはり傷害保険そのものは死亡が事故ではなくて,あくまでも事故はけがをしたということでございますので,けがをしたことによって入院をしたり,通院をしたり,後遺障害が発生し,最終的には死ぬということもあって,これらを全体として一つの契約としてとらまえているのが傷害保険でございますので,その意味では,あくまでも被保険者本人の補償,これに重点を置いた保険だと。したがって,保険期間中に別に死ななくても,けがが保険期間中に発生しておれば,保険期間が終わって死亡するということでも構わないということになっております。   傷害保険の場合にはさらに,仮に死亡で亡くなった場合の保険金が法定相続人に行く場合には同意をとっておりませんけれども,それ以外の場合には非常に厳格にとっておりまして,例えば私ども「傷害保険ハンドブック」というものがございますけれども,この中に死亡保険金受取人指定に関する規定というものがございまして,基本的に特定の人への指定は原則としてできないというふうに書いてありまして,もし強い要請があった場合には特定の人,これは家族も含めてですけれども,特定の人の場合には本人の実印,これを取り付けないと同意にはならないと。契約は毎年更新されますので,更新のたびにその同意を取り付けるということになっています。   したがいまして,基本的には第三者のためにする保険契約をして,保険金受取人を別の人にする場合,法定相続人以外にする場合には非常に厳格なルールにしている。これは逆に言えば,この保険契約そのものというのが被保険者本人の保険というふうにずっと位置付けられているということの証ではないかなと思っております。   今,現実には,日本の企業の中で約800万人以上の方々がこういう傷害保険を御契約されております。全部で800万人の方々に対して,全契約について同意を取り付けるということになりますと,これは必ず漏れる可能性もございますので,漏れる制度ということになりますと,もう恐らく企業としてはそういう制度は危険で,従業員からクレームが付きますので,そういう制度は採用できないということになると思いますので,私どもは非常にその点は懸念しております。   したがいまして,現実にこれだけ普及しておりまして,社会的に大きな役割を果たしているということを,是非御理解をいただきたいというふうに思っています。 ● 今の企業の団体の保険というのは,強制加入ですか,任意加入ですか。 ● 任意加入も強制加入もございます。 ● 家族がみんな被保険者になっている,そういうものをイメージすればよろしいのですかね。 ● はい。そういうことでございます。 ● そういうものについて,先ほど来,今日の部会資料にがっかりしたとおっしゃる方,そういうあたりについてはどういう御意見なのでしょうか。そういう保険についても,やはり全員の同意を取ってくるべきだと,こういうお考えなのでしょうか。   ○○幹事。 ● 私は,やはり保険金額で,実質的にまさに保険契約者の活動又は業務に関して締結したと考えられる範囲であれば,同意主義の例外として考えてよいのではないかと考えております。 ● ○○委員,そういう保険の死亡保険金額は大体平均がどれぐらいで,最高はどれぐらいとかいうのがありますか。 ● 例えば,家族傷害保険のようなケースでございますと,生計者が本人にしかなれませんので,本人が大体,会社の従業員,お父さんがなって,それで奥様,それから子供さんというふうに,例えば御主人が1,000万円入りますと,奥様が800万円で,その他の親族が500万円とか,大体こういうふうに差を付けた金額になっておりまして,平均的に売られているのは恐らくパターンとしては500万円とか,多くても1,000万円ぐらいのパターンだと思うのです。   例えば,1口,2口入れるというのが限度だと思います。もちろん,それは入ろうと思えばたくさん入ることはできますが,やはり非常に不自然な感じになりますから,それはやはり何か特定の会社の中でも,そういう突出した契約は非常に目立ちますので,余りそういうことは行われないのではないかなと思っています。 ● ○○委員。 ● 多少,論理的ではない話になってしまうかもしれませんが,最初の○○幹事から,それぞれ先生方の意見,それから業界側の意見を聞いて,それぞれもっともだなということで,ほとんど頭の中が兎巷幸弥太みたいな感じになって,どういうふうに発言しようか迷っておったのですが,○○幹事の御説明で私はすっきりしたなという感じがしております。   それで,同意の問題ですけれども,結局,同意をとったとしても,多分殺人者は殺すときは殺すのではないかなというようなことで,同意も巧妙にとったりすることもあり得るのではないかなという感じがして,それはそれで後の出口の免責等で手当てをしていくということではないかなと。   それと,今の企業の団体傷害保険の場合というようなものが出ておりましたけれども,これは多分同意をとるとすると,例えば総務とか人事部というのは,えらい大きな負担になってくると,そういうことになると,保険会社はともかく加入しにくくなることによって,これまでならそういう事故にあったときに手当てをされる人が,そういう保険によってカバーできなくなるということになると,これもまた消費者にとってはデメリットになるのではないかなということであります。   海外旅行保険もそうですけれども,利便性というところも一方であるわけでありまして,今回の案は多分,モラル・リスクというのは当然今回の議論の主要な,一番重要なテーマだというふうに思いますけれども,やはりそれと利用者の利便性の部分というようなところもバランスをさせるべきだというふうに思いまして,事務当局案は専門家の先生方からはいろいろ御指摘がございますけれども,バランスという点ではこれも適当ではないかなということで感じております。   基本法である保険法というのは,基本的な概念,類型整理をするということですけれども,やはり業法だとか監督指針とか,そちらの方でもきちっと手当てをしていって,ようやく機能していくわけでありますし,それから,最近の保険会社の不払問題等々を考えますと,多少心配なところもありますけれども,各社の保険者としてのコンプライアンスだとかモラルとかガバナンスを含めたチェック機能,そういうものも含めて保険制度がよりよくなっていくという方向で御議論いただきたいということであります。 ● ○○幹事。 ● 私は先ほど説明が適当でないということまでしか申しておりませんで,その後どう考えるか申しませんでしたので,申したいのですが,ここで与えられている説明は,まずいだろうと。説明するとすれば,類型的に法律によって同意があるものと推認できるから,もう同意があったものとして総合評価して同意主義を外しますと。そういう説明でないといけないと思うのですね。そういうことから金額とか何とかという話が出てきているわけでありますが,もう一つ,同意が云々という話で我々,近年勉強するのは,個人情報保護法ではオプトインという手続とオプトアウトという手続と二つあると。これを使うというのも,先ほども指摘がありましたように可能性としてはあり得るわけでして,同意を契約締結時にとらなかったものについては,必ずオプトアウトの手続を保障すると。これは私の感じだと,最低それはやらないといけないだろうと思っておりまして,ということは,どういう保険が付きますということは,同意のない契約については必ず情報提供が行くということを保障するということが言えるだろうと思います。   あと問題なのは,同意をしたときには信用していたのだけれども,裏切られたとかということで,これはそもそも同意主義では保護できない問題でありますから,これはそこまで同意主義でカバーしようということ自体無理がありますので,同意主義の問題として考える以上は,法がその同意があったと評価できる範囲にやはり限定して通すということでありましょうし,それについては法が決め付けるわけにはいかないと思いますので,それについてはオプトアウトの手続を必ず保障するということではいかがかと思っております。 ● ○○委員。 ● もとの議論に戻ってしまって,ちょっと○○幹事には申し訳ないのですけれども,私は余り法理論とか手続は分からないので,そういう話ではなくて,今,○○委員と○○幹事等々で,私は基本的にはそういった立場なのですけれども,ちょっと付け加えさせていただきますと,もし,保険金額等でこの基本ルールの中で規律を与えるとしますと,消費者の側からいったら消費者は多様ですから,一体どの辺が平均値か,そうしますと,制度設計者が神に代わってニーズを何らかの形で判断しなければいけないというのはかなり重い仕事ではないかと思うのが一点と,仮に特定の会社が突出して保険金額,死亡補償を多いものを売ったとすれば,もし正常に市場メカニズムが機能すれば,そういった会社は破綻しますので,競争原理が働いていれば,おのずからそんなばかな金額では売らないだろうと。若干,性善説かも分かりませんけれども,市場機能が動いていれば,多分特定の会社が突出して過大な死亡補償をすることはないのではないかと考えます。   以上です。 ● ○○委員。 ● ○○委員がおっしゃったことについて申し上げたいのですが,三つおっしゃったと思うのですが,一つは特定の人を受取人にするときは手続を厳格にしていると。これは先ほど申し上げたように,そういう問題ではないと思うのですね。それから,もう一つは傷害の事故というのが違うのだとおっしゃったのですが,その違いが人格権の保護,同意が不要だというところにつながるわけではないとやはり思うのです。最後は団体の問題で,私はこれが出てくるだろうと思いまして,最初に申し上げたのですけれども。   まず,最初の方からちょっと簡単に言いますと,同意はとれないことはないと思うのですよ。初めて契約するときに,きちんと家族に相談して,お母さんは幾らとか言ってやればいい。後で更改したときは,もう同意は継続契約として要らないというやり方が本当は望ましいと思うのですけれども,そうではないとしても,それはそれでいいことだと思うのですが,それを使って,私の知っている限りでは3,000万,4,000万,5,000万だってあるわけで,それを使われると困るときに,自分は抜けたいというのが,抜けられるというところが大事なので,だから,これが先ほど○○幹事もおっしゃったところで,抜けられるようにはしておかないといけないので,そこでやはり,先ほど言ったように同意がないよと,自分はそんなのないよということを被保険者は言えるように,そこがどうも肝心かなめのところで,そういう契約を基本的に広く認める方向でやるということには別に異論はないのですけれども,ただ,その場合の同意をとるように工夫はしていただかなければいけないと。   同意をもうとらなくていいのだという法制になってしまうと,やはりまずいということで,私は苦肉の策で先ほどのような考え方をして,それでいけないのでしょうかという反論をしていただきたいのと,100%自信があるわけではありませんが,何とかして成案を得なければいけないわけですから,可能であれば業界の方から批判をいただきたいという,こういうことなのですが。 ● ○○委員。 ● 私は結局,利便性とか何とかという,それも重大だと思うのですよね。でも,やはり被保険者になると,同意というものを軽視してはいけないということを申し上げたいのが一つと,あと,この場に参加されていないような業界の方も,今後この法律の適用を受けるようになるわけですよね。ですから,その意味では今ここにいらっしゃる方の間できちんとやられているから,ないしはモラル・リスクが心配ないからということで法律を決めていくのではなくて,これから入ってくるところにきちんと徹底するような,どうも相談現場では,かなり同意をとっていないとかいうのが,今ここにいらっしゃらないところでは多いものですから,その意味で,是非とも同意というのは大事なのだということは是非申し上げたいというふうに思います。 ● ○○委員。 ● ここで議論されているのはモラル・リスクと利便性というか,それと契約のニーズがあるということの一種のバランスが問題になっているのでしょうけれども,モラル・リスクについて言えば,マーケットメカニズムに任せておけば解決されるという性格のものではないのだろうと思います。契約の当事者以外の第三者の利益が害される問題をどうやって防ぐかということですから。ですから,それをどうやって,どこまで考慮した制度をつくるかということだろうと思います。   それから,オプトアウトの手続を設けてはどうかということについては,それはもう当然のことだと思いまして,まさに離脱の制度を考えているということは,そのことを考えているわけで,その一つとして,事前の同意がない場合は当然のオプトアウトを認めて,これは当然考えられると思うのですけれども,モラル・リスクを考えるときはオプトアウトの権利を採用しておけばいいかということで足りるかということはまさに問題で,実際,モラル・リスクを犯すような人は,最初にそういう契約が可能であれば,後で免責になる可能性があってもやってしまうから,まさに問題になるわけですから,そういうのを事前予防するということをどこまで考えるのかというのはここでの問題だろうと思います。   先ほどから御議論を伺っていて,モラル・リスクをどちらかといえば重視して懸念される方も,結局保険金額が過大であるという場合に心配が大きいということをおっしゃっていらっしゃるわけで,そうだとすると,全面的に同意がすべてなければいけないと言っているわけではなくて,そういう,言わば危険性の高い契約が同意なしに結ばれることに懸念を示されている。となると問題は,保険契約法の中にそういう金額制限を設けるような規定を入れることにするかどうか。ドイツなんかですと,この後で出てきます未成年者死亡なんかについて,まさに保険金額を契約法そのものの中で,言わば上限を設けるような形の法規定になっているわけですけれども,それを入れるのかどうか,もしそれが契約法の規定の仕方として難しいとすれば,先ほどから何人かの方の御指摘にあったように,保険業法の方の手当て等で,実際上そういう危険性の高い保険が同意なしに売られることはないような体制を,よりきちんとつくるようにするか,多分そういうことを総合して考える必要があるのではないかと思っていまして,恐らく保険法部会だけで済まないで,ちょっと言いにくいのですけれども,保険業法の見直しの方と併せて,全体としてそういう懸念が少ない体制をどうやってつくったらいいかということを考えるべきで,その問題,この後に出てくる,まさに未成年者の場合の契約と併せて,どうしたらいいかということを議論すべきではないかなと,とりあえずそれだけ申し上げておきます。 ● 金額がひとつメルクマールになるだろうという考え方があるかと思うのですが,事務当局はその点は余り前向きではないと思うのです。金額で同意の要否を分けるというルールがなぜ契約法で難しいのかというのをちょっと御説明しておいていただけますかね。 ● いろいろな説明の仕方があるのではないかと思いますが,先ほど○○幹事がいみじくもおっしゃいましたように,例えば,では扶養の範囲にとどまっている限りはいいだろうという発想で仮に金額を考えるとしても,そもそも,そういう発想で考えるかどうかも人によって分かれるかもしれませんし,仮にそういう発想で考えたとしても,それがまさに300万か500万か1,000万か分からないとおっしゃったとおり,それは過去の生活水準なり何なり,いろんなものに左右されるところでして,一律に契約法で,ではそれは幾らだと言って,それ以上は駄目という形で,ちょっと○○委員の発想は違いますが,少なくともこれまでのこの部会での議論は,同意は効力要件とするという前提ですので,その一律の金額を設定した場合には,その金額を超えた途端に一律に無効で,その一定の金額の価値観をすべての国民に押し付けるということになるわけですから,それは契約法の規律として適当ではないのではないかと考えているということでございます。 ● ということでありました。   いずれにしてもコンセンサスが全然得られていないということなのですが,この部会の多数説は,やはり少なくとも今日の部会の基準では甘過ぎるということではあると思うのですが,かといって,もう死亡生命保険契約並みに全部やれという,そこまでの御意見ではないと思います。これは何らかの妥協の余地を,先ほど○○委員がおっしゃったような保険業法上の監督の問題とも,あるいは絡めて少し考える必要があるのではないか。そのときにこちらの方では,今,言ったように事務当局としては金額基準は,契約法のルールとしては難しいのではないかというふうに考えていると。そういうことですと,今日のような業務又は活動に関してと,一見それだけ見ると非常にあいまいもことしてはおるのですが,やはり何かこういう金額によらないような振り分けの基準を設けることができるのかどうかというふうなあたりを,何か少し知恵を出さないと,これはにっちもさっちも進まないだろうという気がします。   それで,私はこの場で多く御発言いただいた方,保険法の専門家の先生方,普段から怪しげな保険ばかり頭に置いて,どう解決するかと頭を悩ませているのですが,それから,消費者の代表のような方も,これはやはりいろいろ問題点を日々感じておられる,そういう観点からの御発言かと思います。やはりこれが普通の一般市民のところへ行って,契約法のルールが変わりましたから,例えば海外旅行傷害保険でも全員の判こをとってこないと入れませんというようなことを言って,世の中でどこまで強制できるかというような,そこらあたり若干私は不安はあるのですね。この場の常識と世の中の一般の常識。世の中の常識が全部正しいというと,これは何にもならないのですが,そこら辺で何か両方が妥協し得るような落としどころを探っていくというか,そのための何か知恵を先生方にも是非出していただく必要があるのではないのかなということを感じるところでございまして,今日のところはこの点はこのぐらいで,まだこの問題は次にも続いておりますので,とりあえず今のところはちょっとそういうところで,第1点目は議論をとりあえず終えたいと思います。   それでは,ここで休憩しましょう。           (休     憩) ● それでは再開したいと思います。   それでは,4頁の2からでございますが,その(1)なのですけれども,これは同意を書面にすべきかどうかという問題で,最初から既に議論があった問題なのですが,事務当局の考えとしては,ここにあるように,やはり書面によるということを規定するのは難しいのではないかという,かなり固い意向のようなのですが,この点,どうしても反対だという方はいらっしゃいますか。あと,もっと重大な問題がありますので。   ○○幹事。 ● 確認だけですが,ここでその書面が要らないというのは原則だということになったからといって,保険業法の方で,でもやはり原則はとれるときには書面でとるということを,そういう考え方が,この局面で分離することは妨げないという了解の下に,民事上はこのルールという,そういう御理解でよろしいのでしょうか。 ● 少なくとも事務当局の考え方は,書面をとることの意味を否定するものでは全くございません。ただ,契約法上,先ほども申し上げましたように,同意が契約の効力要件であることを仮に前提とすると,その効力要件としての同意に書面性を求めることについては,若干消極的に考えているということでして,書面で同意をとるのがより確実であり,とられる側も慎重になるとか,いろいろなとることによる利点というか,意味があることを否定するものでは全くございません。その意味で,監督法の世界で,それを前提とした書面についてのルール化をすることを全く妨げるものではないというふうに考えております。 ● ということでよろしいでしょうか。   それでは,ほかにこの点,ございませんか。   それでは,5頁の(2)の問題でございます。これはたくさん意見があろうかと思います。お願いいたします。   ○○委員。 ● 簡単に申し上げます。今までの意見の簡単なサマリーになりますが,業界の方は死亡保険についてニーズがあると御主張になりますけれども,その死亡保険金を何に使うのかという質問にはお答えいただいていないと思うのです。   この資料の5頁の最初の丸の※印のところの「親が子どものために多額の支出をしているような場合等には,比較的高額の死亡保険契約等を認める必要がある」という考え方,意見が違って申し訳ないのですが,やはりこれはなかなか受け入れられない考え方で,私,自分の家族と周りに聞きましたけれども,やはりこれはちょっとと。言わずもがなですが,やはり今まで投資した資金の回収の器,道具として,子供の命を使うということについては非常に抵抗があると。そうなると,やはり原則に戻りまして,まずゼロから出発すると。ただ,やはりこれも成案を得なければいけませんので,葬祭費用相当額の死亡保険金までの契約は認めると。その金額のところで妥協するというのが筋道かなというふうに考えております。   理論的にはこういう問題で,これは規範的な理由ですので,今から申し上げることに直接は関連しないのですけれども,ちょっとお恥ずかしいのですが,1枚資料をお配りさせていただいたのですが。これは何かと言いますと,できれば,今日ではなくても説明をさせていただきたいと思うのですが。 ● この折れ線グラフが書いてあるペーパーだと思います。 ● 日本全会社生命表と第16回生命表,ちょっと古いものです。私が入手できたものはこれしかありませんでしたので,現時点でどうなっているかという問題はあるわけですけれども。   何をしているかというと,日本全国の統計で見た死亡率と,現実に引き受けられた保険会社の死亡率との間にどれだけ格差が,かい離があるかと。一般的に,全般的に格差はあるわけですね。広い意味での逆選択があって,どちらかといえばリスクのある方が保険に入るということになりますから,実際に引き受けた契約の死亡率は,現実の自然死亡率よりも高くなるということは確かなのですが,ちょっと見ると,実に不自然な部分がありまして,この数字はどういうことかというと,この下の方を見ていただくと分かりますが,第16回の生命表,これはN,10万分の何人という死亡率です。上が実際に引き受けられた会社の死亡率。この4歳から7歳までと,13から16歳まで,これが異様に高いのです。で,ちょっと不自然だと。   これが女性の場合どうかと。女性の場合,実は,11歳までは,これよりもっと全部高いのです。すごいかい離があると。それは何が起こっているのかと。もちろんこれは古い資料ですので,これだけで断定はできませんし,またデータも古いですから,それから今は事情が変わっているかもしれない。しかし,この年代だけに特有の逆選択の理由ってなんだろうかと。何か変なことが起こっていないのか。つまり表には出ないけれども,子供の命が危険にさらされている可能性はないのかと,そういう危惧も感じられる資料もあると。ただ,これは最近で見たら,全部説明が付くのかもしれません。それはそれでいいと思いますが,ですから,あくまで予備的,補充的に申し上げているわけですけれども,基本的には繰り返しますと,先ほどのような形で現実に引受けがありますから,ゼロにされたら商売が大変だというのもおありかもしれませんので,葬儀費用のところで何とか妥協して,しかしルールとしては,やはり原則は葬儀費用相当額の死亡保険金という,そういう形でやっていけないかなと。そういうふうにしていただければありがたいなというのが意見です。   以上です。 ● ○○委員。 ● このグラフを,今日初めて拝見したのですけれども,私は昔習った知識を交じえて,不十分かもしれませんけれども,誤解を解いておきたいと思うのです。   まず,下の数値の上段は,これは日本全会社生命表といって,生命保険会社の経験表なのです。経験表というのは,実際の生の数字ではなくて,保険料を算出するためにつくっている表なのです。これは,84年から85年の実際の死亡,それから高度障害ですね,こういった発生率をまず出します。それは実際には年によってでこぼこ,年齢によってでこぼこがありますから,それでは保険料を算出するために使いづらいので,数理的に曲線で修正するのです。さらに,それに安全割増しを加えているわけです。これは商売するための表ですから。   それに対して,下の段は厚生労働省がつくる実際の統計なのです。実際の,これはいわゆる完全生命表というのは,5年ごとの国勢調査に基づいてやると。それから簡易生命表というのは毎年つくるのですけれども,まずそういう違いがありまして,この上の段は実際の,生の発生率の表ではないということを御理解いただきたいと思うのです。   それから,ちょっと細かい話ですけれども,上の全会社生命表というのは,これは保険年齢でつくっているのです。下は満年齢なのです。それはどう違うかというと,保険年齢ですから,例えば誕生日から前後6か月の人が,例えば15歳6か月と14歳6か月,その幅のある人がここに含まれているということなのです。   それからもう一つ,数が少ないときは,生の数字はそのまま使えませんから,そこでも曲線を修正するのです。   もう一つ,この表だけだと,何か怪しいことがあるみたいに誤解されますけれども,それでは,例えば14歳のところに山があるのは一体なんだろうと,ここも何かモラル・リスクがあるのかとか,そんなふうに思われるかどうか知りませんけれども,全体的にもうちょっと,今日もらった資料ですから分析しないといけないのですけれども。   それからもう一つ,実際,生命保険表,我々が使っている経験生命表を基に使うのですけれども,これをそのまま使うのではなくて,会社によって選択するのです。これを例えば何%増し,あるいは何%割り引いて使うとかですね。例えば無配当の保険であれば,ここを割り引いたもので使うとか,あるいは年金の生命表というのは,昔ですと,これの85%掛けを使ったりしておったのです。   それから,ちょっと今申し上げたのですけれども,推測するに,多分,子供の,未成年のところは実数が少ないので,補完しているので,ちょっと多いように見えるかなと。それも10%増し,20%増しですから,全体から見れば,そんなとりたてて目くじら立てるほどの数字かなと直感的に思うのですけれども,いずれにしても調べてみなければ分からないです。   それからもう一つ,これは保険料の計算の基準ですから,安全割増しをいただいてつくるのですけれども,もちろんそこで実際の死亡率との差が出れば,これは配当として還元すると,そういう仕組みでございます。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● この問題も先ほどの問題と共通して,言わばモラル・リスクと契約上のニーズとのどういうバランスをとるかという問題だと思いまして,先ほど申し上げたことが,ほぼそのままこの場合も妥当するのかなと思っています。   ただ,私は5頁に書いてある,ここでのこういう意見は,少なくともこれには賛成しかねるということだけは,まず申し上げておきたいと思います。   (2)のところで丸が三つ書いてありますけれども,最初の丸のところで,ニーズの問題が書かれていますが,先ほど○○委員もおっしゃいましたけれども,確かに生命保険の場合は損害保険と違って,被保険利益とか,そういう概念は持たないことにはなっていますけれども,ただそれは,通常はそんなひどいことはないということが前提で,やはり死亡等によって生じる家族の経済的な不利益を実際上はカバーする目的で入られて,そういうことに,通常はそういうことで行われているからモラル・リスク的なことは少ないだろうということで,被保険利益ということをやかましく言わないということだと思っているのですけれども,生命保険についてはですね。   ただ,こういった未成年者を被保険者にする場合に,そういうことが妥当するかというと,私は一般的に言うと難しいのかなと思っていまして,先ほどの○○委員の御指摘ではありませんけれども,子供に投資して,その投資を回収しようという利益を一体どこまで認めるのか。私は未成年の子供がいますけれども,こういうことを考えたいと思いませんし,多分皆さんの,多くの方も子供にそういう経済的な利益があることを考えて,こういう生命保険に入っておこうというふうに思われる人は多くはないのではないかないうふうに思います。   このモラル・リスクがありますから,ここで,個々の保険契約者,家庭において判断されるべきと書いてありますけれども,先ほどの問題と同じで,やはりモラル・リスクのある問題は,契約当事者だけで判断できない,被保険者の安全等も考える必要があるわけでありますから,それだけでは,ニーズがあるから,マーケットメカニズムに任せればいいということだけは済まないから問題になっているのだろうというふうに思っています。   そこで,問題は,モラル・リスクに対してどう対応するかということで,二つ目の丸のところですけれども,ここでは保険者の免責があるとか,それから重大事由解除とかいうことが書かれていますが,それは当然のことで,それ以外にモラル・リスクを防ぐための一般予防的な方法として,被保険者の同意を要求するというのが生命保険の原則なのですけれども,ここに書かれていませんけれども,未成年者の被保険者の同意をどうするかという問題がやはりあって,法定代理人の同意だけでいいかということは非常に問題で,ドイツ,フランスなんかでも,一定の場合にそれを否定しているわけでありますから,その問題をちょっと抜きにできない。やはり未成年者の場合は,法定代理人の同意による代わりの同意で,モラル・リスクを避けるということが余り期待できないというか,そこに全面的な信頼を置くわけにはいかないから問題になってくるのだろうというふうに理解しています。   そこで,三つ目の丸で,したがって,そういう問題がありますから,やはり未成年者の保険については,私はやや極端な意見かもしれないけれども,本当はフランスのように,そもそも禁止してしまってもいいぐらいではないかと,個人的にはそういう意見です。ドイツのように,一定の場合に法定代理人による同意を否定したり,限定するということがあり得てもいいと思っていますが,ただ,それでは済まない,最低限のニーズは認めるべきだという御意見もあることは承知しています。先ほどの○○委員が御指摘になったように,葬祭の費用の範囲というようなことも言われていますし,ドイツですと,保険契約法でまさにそういう規定を入れているわけですから,そういうことはあり得るかなと思っていまして,そういう範囲で保険契約上,代理人の問題を含めた手当てができるなら,それが望ましいと思っています。   ただ,また恐らくここで○○幹事は,それは契約法になじまないと多分おっしゃるだろうと。そうなると,○○幹事が嫌な顔をされることになるのですが,私はやはり業法における監督体制と両方合わせて,極端なモラル・リスクのおそれのある契約は抑制していくような体制は,少なくともつくるべきだと思っていまして,現在の業界で行われている,業界御自身もいろいろな御努力をされていることは十分承知していますけれども,より一段とそういうことにセンシティブになってしかるべきではないか。先ほど○○委員が挙げられました例のように,子供に8,000万の死亡保険金を掛けていた例も最近あったわけです。その前に長崎の親による保険金殺人の例もございましたし,やはり問題はあり得るわけですから,それに対してそれなりの備えをしているということを,業界としてもきちんと世間におっしゃれるような体制をつくる必要があると考えていまして,現在の体制をより充実することができないか,それには何ら工夫がないかということは是非考えていただきたい。業法の方でも恐らく監督指針等で,先ほどの書面による同意は,保険業法施行規則の方で規定を設けていらっしゃるわけですけれども,それと同じように工夫をすべきではないか。   さらに,最近では,証券会社などは,まさに金融庁がつくられました証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会の報告書におきまして,そういった不公正な取引をチェックするために,証券会社は証券業協会あるいは証券取引所に,例えば相場操縦ですとか,あるいは内部者取引等の疑いのある取引をチェックするために,そういうところに情報を集中させて,そういう疑いのある取引を事前にチェックできるような体制を検討すべきだということを懇談会報告書で出されているわけです。また,懇談会では,証券会社の方々もそれに賛成されたわけでありまして,証券会社はそういうふうに努力されようとしているのでありますから,保険会社もそういった体制の構築に向けて協力していただければと考えている次第であります。   以上です。 ● ○○委員。 ● 今,○○委員からお話があったのですけれども,我々もモラル・リスクそのものは防止したいということで,その思いは一緒でございまして,その中で少し誤解もあるかもしれないので,これまでの話と重複するかもしれないのですけれども,今の取扱いをもう一度御説明したいと思うのですけれども。   今,15歳未満については掛捨ては売ってございません。死亡保障だけの商品はなくて,いわゆる養老保険という貯蓄と死亡を合わせた商品にしています。それと併せて,最高保険金額もかつては相当高かったですけれども,今は6歳未満で2,000万,ただこれは弊社の例ですけれども2,000万,それから15歳未満で3,000万という形で,相当絞ってきていると。これは過去に比べて相当下げてきています。そういう意味で,8,000万の話が出ていますけれども,恐らく,今売られた契約ではないのではないかなと。ちょっと私ども,その辺,直接的なデータを持ち合わせていないのであれですけれども,そういう意味では,相当いろいろな努力をしてきているということは御理解いただきたいと思います。   併せて,それでおしまいかと言われると,各社でいろいろな工夫はしていきたいと思いますけれども,では,これは一律的に何か保険金額を契約法で縛るべきかどうかについては,前から申し上げていますようにニーズは区々ですし,先ほど言いましたように,死亡保障だけではなくて,貯蓄という要素も含めて先ほどの最高金額が決まっているということですので,そのあたりは単に子供が亡くなったときに回収するということではなくて,財産形成といった視点も含めての保険だということについては,是非御理解をいただきたいなというふうに思います。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● 最高保険金額は当社も同じようなものなのですが,実態的に,例えば2,000万以下と言ったときに,何かちょっと聞かれる方は2,000万に張り付いているみたいに思われるかもしれませんが,実態を申し上げますと,当社の場合ですと終身保険で平均600万なのですね。だから,中位数はもっと低いのですが。それから養老保険ですと,二,三百万程度なのです。それから,2,000万にしておいてもその程度で,それが仮に葬祭費用しか認めないという先生方の御意見であっても,私どもとしては妥当な数字だと思っているのですね。   それは,今,○○委員が申し上げましたように,やはりこれも繰り返しになるのですけれども,何で若いうちに保険に入るかというと,その死亡保障だけではなくて,総合リスク,それから貯蓄的な要素ですね。親は子供のために保険に入ってやって,成人すれば,あるいは結婚すれば違う保険に変えるという,その積立て的な要素があるわけです。そういうことで入っているわけでして,それから,総合的なニーズで入っているわけです。死亡保障だけで入っているわけではないということも御理解いただきたいと思うのです。   それから,ちょっと余計なことを言いますけれども,何でヨーロッパはこんなに厳しいのかなと,ちょっと調べてみたのです。まず最近の,2006年の犯罪白書なんかを見ますと,殺人の発生率というのが載っているのですが,これは未遂も含めてなのですけれども,日本は10万人当たり1.2なのですね。それに対して,アメリカは4.6倍の5.5ですから,むちゃくちゃに多いのです。それからフランスは3倍の3.5,ドイツ,イギリスは2.5倍の3.0。そんなような背景があると思うのです。では,日本はなぜ少ないのだろう,それは,儒教とか,何かそういう道徳的なものがあるのかどうか知りませんけれども。   それから,もう一つ,ヨーロッパで厳しい規制が入ったのは,いろいろ調べてみますと,1840年に,埋葬協会という友愛協会みたいなもののちょっと変形したものなのですけれども,割と少額の収入の人たちが入る埋葬費用のための協会なのですけれども,そこで1840年に保険が目当てのかなりの数の子殺しというのが起きたと。それも,わずか40日分の生活費のために子供を殺したとか,そういったような背景があって,ヨーロッパでは規制を厳しくしたと。それがイギリスから始まったのですけれども,同意主義のドイツ等にも広がったと。そんなふうに読めるのです。ですから,イギリスみたいな利益主義で,葬儀費用だけというのであれば,それはそういう金額制限というのがあり得る。だけれども,日本というのは,そもそも死亡保障だけで入っているわけではないということです。   それで,また繰り返しになりますけれども,では,一般の国民はどう思っているかというと,それはやはり統計的には,この前御紹介した文化センターの調査しかないと思うのです。そこでは,災害,疾病の給付に加えて,万一の場合の給付,すなわち死亡とか高度障害の給付のために入るのだという回答が多いわけです。やはり国民はそういうことで入っているわけですから,そういった多様なニーズを本当に契約法で縛ってしまっていいのかというのが私どもの思いです。   ですから,それは先ほど,この前の議論と同じように,契約法ではなくて,監督の世界等でやっていく。我々もまた真剣にモラル・リスク対策を考える。そういうことでやっていきたいと考えております。 ● ○○幹事。 ● 先ほど,一般の方で原則同意を要して,それで同意がなくてもいいような一定の場合の除外という代わりに,無効を主張できるのが,被保険者又は被保険者の遺族というような限定にすることも可能ではないかというふうに申しましたが,その場合,子供のことを考えたら,子供が被保険者とされて,同意をする能力がないので同意がない。同意がないことの無効もまた主張ができないという,子供については穴になってしまうということがあると思うのです。   先ほどの件は私見なのですけれども,この子供を被保険者とする生命保険契約について,日弁連の方で中間試案に対しては,意見としては金額の制限を設けるのは難しいのではないかというような意見だったのですけれども,この点,もう一回ちょっと検討しまして,やはり日弁連の検討会の方々も,御自身のお子さんのことを考えたりして,ちょっとねというのがあって,何か子供を守るような機能が必要なのではないかということを話していたときに,自賠責法の施行令で金額制限を設けているということを使えないかというような意見が出てきたので,もし,御検討いただければと思うのですが。   ですので,基本法で,法律のレベルで金額を規定すると世の中のすう勢に合わなくなるとかあると思うのですけれども,それがいきなり業法に行くというよりも,子供については,同意というところで正当化できないというところを,基本法のレベルでそれが正当化できないので,そこを基本法のレベルで手当てをして,それで具体的な数字は施行令の方,保険法に施行令というものができるかどうか分からないのですけれども,そういう方法があるかということを御検討いただければということをお伝えいたします。 ● ○○幹事。 ● 前提として,一応15歳というのですか,中学を卒業して,もう自分で働いて稼いでいるという,そういう未成年の方もいらっしゃいますし,この場合は,御本人の同意を得て,全うに契約を締結できるという形にしていく必要が,一方であると思うのです。   他方で,いわゆる幼少期の,同意を求めようがないという,保険についておよそ理解できないというようなレベルの幼児を対象にした保険契約をしていいのかと。そのレベルの問題が,ちょっと違ったところで出てくると思うのです。ですから,ここのニーズの問題もさることながら,子供の保護ということを考えると,モラル・リスクも当然のことながらそうなのですけれども,同意をとる,とらないという以前に,やはり外国法の例から言えば,先ほどヨーロッパの諸国の御案内がありましたけれども,イギリスなんかは一番厳しいですね。アメリカのニューヨーク州法でしたら,割と段階的に,年齢によって金額制限を変えております。そういったのを参考にして,少し抑えかげんにするというようなことの方が,私はいまだに妥当かなと思っておりまして,この金額制限の話をすると嫌がられるのですけれども,そういう方向で検討いただければありがたいなと思っております。 ● ○○委員。 ● では,簡単に。やはり議論を深めないといけないと思いまして,やはりまだお答えをいただいていないと思うのですよね。この保険金は何のために使うのかと。ニーズはあるとおっしゃるけれども,保険金は何のために使うかというのは答えられないというのが一番の問題で,まずそれが第一点。   それから第二点は,先ほど埋葬協会の話をされましたけれども,これからどういうモラル・リスクが起こるかという問題があると思うのです。確か,アメリカでは1万ドル,100万円で殺したという事件がありますけれども,これは言い方に注意しなければいけませんが,日本でも,自分が殺した子供を,これは犯罪によって殺されたのだと主張するケースも出てきて,それは犯罪給付金の大した額ではないわけですけれども,そういう危惧を持たれているケースがあるわけで,これからやはり子供を守っていくというのは,従来以上に考えなければいけないというふうに私は思うのです。   ですから,やはり原則は,○○委員がおっしゃったようにゼロと。しかし,理論的に飲み込めるところで,今,○○幹事がおっしゃったようなニューヨークのようなものでも構わないかもしれませんし,しかし,やはり基本は,子供はゼロから出発して考えるというのが筋ではないかと思います。   以上です。 ● ○○委員から。 ● 今までのお話の中でも全くそのとおりと思っていまして,個人的には未成年者に死亡保険金は掛けるべきではないというのが個人的なスタンスなのですけれども,今おっしゃいましたように,国際的にも子供を大事にするというのが,今,少子化の日本の中で,子供を大事にしていかなければ,子供は社会の宝ですから。だから,そういうものを大事にしていかなくてはいけないと,未成年者の保護は必要だというふうに,やはりそこの部分はどうしても譲れない線なのですね。   そうすると,ただ,金額制限というお話がございましたけれども,先ほど○○委員の方から御紹介がありましたような埋葬協会ですか,そういう極端な例は,今,現実には日本にはないかもしれないけれども,私なんかはいわゆる多重債務の人をたくさん拝見していまして,そういう方たちのお話を伺っていると,もう葬祭費が300万とかいうお話が実はあったけれども,それだってのどから手が出るほど欲しい,すみません,こういう言い方をして。やみ金花盛りのころは,5,000円,1万円を借りて困ったという,そういう事例がたくさんございまして,信じられないという思いなのですけれども,すごく広がっているのです。   先ほど,消費者が多様化しているというお話がございましたけれども,全くそのとおりでございまして,金額制限というのは,では,100万なの,300万なの,1,000万なのというふうに言ったときに,どこで線が引けるのかなという気がございまして,そうすると,もう最終的なところは○○委員と全く同じでございまして,監督法に規定はないのでしょうが,未成年者のここの部分につきまして,何らかの形で手当てをしていただくという方向でお願いができれば。一番困るのは,こっちでも触りませんでした,あっちでも無理でしたとなってしまって,両方何もありませんでした,子供を大事にするような方向では法律が決まりませんでしたとなるのが,一番怖いのです。正直に申し上げれば,契約法でなくても,監督法でも何でも実が取れればよろしいので,そういう意味ではそういう形の御検討を是非お願いをしたいというふうに思っております。 ● では,○○委員から先に。 ● 先ほど○○委員から保険金をどう使うか回答がないというお話だったのですけれども,決して無視したわけではなくて,私が知っている限りでは,そういう統計というのはないと思うのですね。文化センターでも,どういうふうに使ったかなんていうことは聞いていませんから,そこはちょっと戻って調べますけれども,それはないのではないかと思うのです。   ただ,もらった人,自分の周辺とか,お礼の手紙等がいっぱい,たくさん来るのですけれども,保険金を受け取って,入っていてよかったというのがいっぱい来るのですけれども,その中で出てくるのは,もちろんお墓を建てたとか,あるいはそれまでの治療費を払ったとか,それから,例えば病院に寄附したとか,あるいは学校に寄附したとか,それから兄弟の学資に充てたとか,そういうさまざまな答えはあるわけです。ですから,本当にこれも繰り返しになりますけれども,死亡保障だけを目的に契約者は入っているわけではないということを是非御理解いただきたいと思うのです。   以上です。 ● では,○○幹事。 ● 発言を差し控えようと思っていたのですが,一言だけ発言させていただきたいと思います。   金融審議会の方では,9月18日にこの保険契約法の現代化に伴い,保険業法上どんな論点があり得るかということで議論をスタートさせました。その際には,未成年者を被保険者とする保険,この項目についても関連するであろう項目として挙げさせていただいております。また,来週何人かの方から御意見をいただくという,ヒアリングを行うことにしまして,議論を深めてまいりたいと思います。   その意味におきまして,先ほど金額制限を設けることが契約法上なじむのかなじまないのかということについてのお話がございました。私の方も非公式ながら,保険業法上金額制限を設けることがなじむのかなじまないのか,あるいはそういう,この問題に対する規律を契約法上行う方がいいのか,あるいは業法上行う方がいいのかということについての見解なりがないわけではございませんが,これから保険ワーキングで議論を始めますので,それとの関係で差し控えたいというふうに思っております。   ただ,それとの関係で一点,こちらの方でお願いをさせていただきたいと思っておりますのは,5頁の最後の3行のところで,これこれの規律を新たに設けることとすることでコンセンサスを得るのは難しく,実務上又は監督法上の規律にゆだねるべきではないかというふうにゆだねられた形の文章になっているのですが,私ども,これから保険ワーキングで議論をし,何らかのことができれば,何らかのコンセンサスが得られれば,それを行っていきたいと思いますし,得られなければ得られないと。あるいは得られた限りで得られるということでございまして,いずれにしても,切り離して,この文章上の整理をお願いしていただけないものかと。こちらでの契約法で得るのがどうかという評価について,今申し上げられませんが,後段については,少し削除をお願いをしたいなというふうに思う次第でございます。   以上です。 ● ここはどのように考えるかということなので,そこは今おっしゃったような御意見もあるということで承ったということでいいかと思いますが,ほかにこの点について。   ○○委員。 ● 今の切り分けにもかかわることだと思うのですけれども,私は,モラル・リスクはマーケットでは防げないということは,もう事実だと思います。では,法で防げるかというと,多分イエスだと思うのです。それは禁じれば防げるわけですから。ただ,ゼロリスクというのは,すごくコストがかかりますから,これも難しいと。そうすると,やはり金額制限という話が出てくると思います。   ただ,この金額制限についてはちょっと慎重に考えなければいけないのは,例えば契約法で保険金という,企業にとっては基本的な変数を制約してしまうと,何らかの弊害が生じる可能性があるのではないかと思います。つまり,企業はモラル・リスクの対策として,いろんな変数を自由な発想によって,企業独特の契約の仕組みでモラル・リスクを排除しようとしているわけですから,そこのところでやはり契約の工夫で排除しようとしていると。その中に,保険金というのは変数の一つですから,余りそこを基本ルールで設定してしまいますと,今の全体的な,この基本法というのは20年,30年,50年続くわけですから,全体の流れの中で,企業の自由な発想に基づいてイノベーションの余地と言うのですか,そこをもし極端な形で狭めてしまうとしたら,それはそれで問題があろうかと思います。   ただ,そうは言いましても,自由にやれというのは,先ほど○○委員がおっしゃったように当然ですので,そこのところは,ちょっと○○幹事はあれかも分かりませんけれども,やはり監督法との関連で,先ほどの子供を大事にとか,そういったなかなか契約法で盛り込めないところは,全体として生かしていただくというのがよろしいのではないかと思います。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 金額の制限を設けるかどうかということに何か焦点が,どうしてもこの問題の立て方だと当たってしまうのですけれども,もともとこれは法定代理人である親の同意でもって契約ができる範囲がどこまでかという,そういう話であったはずでありまして,そうだとすると,やはり親の監護権として通常認めてよいレベルまでは法定代理人が同意してよろしいけれども,それ以上になると,やはり特別利害関係人として疑うべき状況があり得るのではないかと,そういう文脈の下でのお話だということだと思っております。   結局,その場合に,特別利害関係のある状況も含めて,個々の契約者において判断されるべき事項と,ここの説明はやはり舌足らず,少なくとも舌足らずだというふうに思っておりまして,では,その金額で制限をするかどうかということですけれども,まず一つは,少なくとも子供が自分で同意ができるようになった時点で同意を得れば,その上限が外れるような契約に仕組んでおくことはよろしいかと思いますが,15歳,16歳までは低いけれども,子供の同意を得られることを条件に,そこから成年並みに上がっていくと,そういう商品を設計することに妨げはないのだろうと思っているのです。   そうだとしますと,あとは,本人が同意できるまでの期間について,どういうことを処理すべきかということなのですけれども,これを契約法で一切それについて何も指針というか,考え方の手掛かりになるものを置いていないところに,それは契約法としてはフリーパスということを定めているわけで,そういうものについて,監督法で何か規制をかけられるのかというのは,少し契約法と監督法の間に論理がそごを来してしまうのではないかという心配をしておりまして,先ほどの話ですと,事業又は活動のためにということの解釈を明確化するのは監督法の役割ですと,そういう住み分けはかろうじて成り立つのだろうと思うのですけれども,契約法に全く手掛かりのないものを,監督法で何か基準を設けてばっさり一刀両断に切るというのは,やはり少し保険法と監督法の体系,関係としてはそごがあると。契約法でも,やはり何か制限があり得るということであれば,できるだけ契約法で何かそういう手掛かりを残しておくべきだろうと思っております。   私は,これは国民の平均所得か何か,そういう統計的な数値を持ってきて,平均所得1年分とか2年分とか,そういう経済情勢が少し変わっても,それに応じて変動できるような数値でもって,やはり縛ってしまう方がいいのではないかという印象を持っております。 ● ○○委員。 ● 一言だけ。やはりこの問題は,やはり非常に価値判断的な部分がありまして,ですから,結論として監督法ではなくて,多少妥協しても契約法でやはり何らかの規定を置いて,今よりはいい状態にすると。そういうふうにした方がいいのではないかなと。そういうふうにしていただけないかなという意見です。   以上です。 ● 何かいい御提案がございますか。 ● やはり葬祭費用をちょっと20年間もつような額に,葬祭費用とは今からはかけ離れている。今,葬祭費用を売っている保険会社がございますね,御存じかもしれませんけれども,全国の葬祭費用をパンフレットにして。大人で大体200万後半から300万後半ですけれども,それで20年間,又は10年間もつようにするということで,やはり500万とかそのぐらいで,本当はそれだって○○委員の疑問には答えていないわけですし,根本的な問題はあるのですけれども,そのぐらいの金額をもう書いてしまうと。今,法律に金額を書いていると,例えば少額訴訟だと60万とか,いろいろ法文そのものに書いてしまっているものがありますけれども,何かそういう案が一つ。   もう一つは,葬祭費用相当額と書いて,監督官庁の方でその額は500万だとするという手もあるかもしれませんが,できれば,やはりこれは非常に子供の保護というか,価値判断的なものがあるので,契約法の体系の中で何とか工夫と妥協をして書くというのが一番いいのではないかと思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● やはり私は,子供を持つ身としては,子供に死亡保障の,未成年ですよね,契約というのは相入れないのですけれども,先ほど○○委員は,死亡保障が余りメーンではないようなことをおっしゃったのですけれども,そうだとすれば,死亡保障は要らないのではないかというふうにすら思えるのですが。私の周りの相談員なんかに聞きましても,やはり考えられないというのが大方の消費者の考え方であるということだけ申し添えたいと思います。 ● ○○委員。 ● 先ほどから死亡保障だけではなくて,貯蓄という話をしているのですけれども,これは商品設計のメカニズム上,死亡保障をゼロにしますと亡くなったときに,亡くなったら何ももらえませんと。ところが,例えば10年で1,000万ためようとすると,非常に荒っぽくいくと毎年100万ずつためていくわけです。例えば10年目に亡くなったときにゼロですけれども,要は解約すれば900万入ってくるわけですね。非常に保険メカニズム的に言うと,死亡保障ゼロで貯蓄だけといったら本当に,いわゆるトンチンみたいな,生きていたらぼこっともらえるけれども,死んだら何も出ませんと。そういう商品になってしまうのですけれども,それが果たして,今度は消費者的に受け入れられるかどうかというのも,これは議論があるのではないかなと私は思うのですけれども。   そういう意味で,今の生死混合でトータルでいろいろなものに対して,しかも高度保障も含めて保障しているというのが今の商品設計です。それは考え方だと思いますけれども,必ずしも死亡保障ゼロというのは,本当に今度は消費者にとっていいかどうかというのはまた議論があり得るのではないかなという気がするのですけれども。 ● ○○委員。 ● 今,○○委員が申し上げたとおりなのですけれども,私は決して死亡保障は要らないみたいなことを言っているわけではなくて,先ほども申し上げましたように,文化センターのアンケートを見ても,やはり加入者はそういうものを希望して入っているわけですね,万一の場合の保障ということで。それはこの前,御紹介したし,机上のボックスの中に入っていると思いますけれども,アンケート結果を御覧いただければ,そのとおりなのです。   それに先ほどの商品設計の話もありますから,生死混合保険で入る,それから,今日は出てきていませんけれども,高度障害だけでいいのではないかという議論もありましたけれども,そういう商品をつくれば,多分死ぬ前はみんな高度障害だったというような議論が,訴訟が起きてくるのは,それは目に見えているわけですね。高度障害になれば1,000万だけれども,死ねばゼロだと,あるいは既払保険料だけ払うなんて商品をつくればですね。   それからもう一つ,前もちょっと申し上げたのですけれども,死亡保障は安いのですね。先ほどの家族傷害特約で家族の傷害が例えば500万とか100万とかという話がありましたけれども,どちらを選びますかといったときに,多分,家族傷害でも家族の方の死亡保険金額を大きい方をお客様は多分選ばれると思うのです。我々,生命保険の方もそうなのですけれども。それがないから選ばれないとか,それはその方の推測というか考え方だと思うのですけれども,少なくとも文化センターの調査ではそういうのは出てきていないですね。やはり総合的なリスクを期待して入っているということです。 ● ○○委員。 ● 私は,余り自分に引き付けた話はしたくなかったのですけれども,また生命保険会社の立場を補強するために言うわけではないのですけれども,私自身はそんな大きな保障に入りたくないし,実際に今,少額の子供保険に二人の娘を入れていますが,ただ,いろんな考え方があって,多分保険会社は言いにくいのでしょうけれども,節税,税金のためにちょっと高額に入っておくだとか,あるいは僕はもしもっと余裕があれば,生命保険というのは死亡保障は平準保険料ですから,若いうちに入っていると全体的な保険料が安くなるので,ある一点で転換契約をすれば,多分大人になってから割と高額な保障が割安で受けられる可能性もあると。私自身はそれを考えませんけれども,いろんな考え方をする人がいらっしゃるのではないかなというのが,ちょっと個人に引き付けた感覚的な話ですが,御参考になれば。 ● ○○幹事。 ● 先ほど○○委員がおっしゃった死亡保障をゼロにすると,商品設計ができなくなるということですけれども,つまり9年目に保険料積立金が随分積み上がっているのに,死亡保障がゼロだとトンチンになって,だれもそんな商品を買う人がいなくなるということですが,それは商品設計の仕方であって,9年目に死亡した場合は,死亡保険金としては支払わないけれども,積み立てられたものは全部お返ししますと,そういう形の商品設計は可能だと思うのですね。 ● それも死亡保険金になりますよね。 ● いや,でもここで問題としている趣旨からすれば,それは死亡保険金と考える必要はないと思うので,積み立てられたものを返すというだけのことですから。私は従来から,そういうふうに,どちらかというと考えてきたのですが。   それから,あと,○○委員がおっしゃった死亡保障は安いと,だから問題はないという御趣旨でおっしゃったのかもしれませんが,むしろ死亡保障というのは安いだけにレバレッジが高くなって危険であるということだと思いますので,金額制限をしたいというふうに考えている人は,その点をむしろ問題視しているということを申し上げたいと思います。 ● ほかにありませんか。   これも先ほどの傷害保険をどうするかという話で,今までルールが何もなくて自由にやっていて,利便性のためにそれを全部そのまま認めないと駄目だとか言われると,この立法の話はできないので,それと似たような話で,今までは特に法律上の規制は余りなく,いろんなタイプのものを確かに販売してきて,相当のボリュームもあるということですけれども,この部会の議論を聞いておりますと,やはり生保会社さんがおっしゃるような,こういう合理的な理由があって,こういう保険が存在するのだということについて,やはりまだ委員,幹事の皆様方の納得が余り得られていない。全部がおかしいと言っているわけでは恐らくないと。   葬祭費の範囲でしか認めるべきでないと,これまた言ってしまうと,正当な目的というのはそれしかないのかというと,もうちょっと何かあるような気はするわけです。例えば,もう若いときに入っておけば将来お得になるからとか,そういう目的を言われると,まずそうまでして無理に入れないといけないのかねという,一種の適合性の問題のような,売り方のルールに関するような問題も含まれているような気がしました。   実際にある保険として,どういう合理的なニーズがあって,どういう範囲のものまで売られているとか。先ほど最高限度額は大体このぐらいですと言っても,ではあれは一社限りなのか,きちんと登録の対象にして通算しているのかとか,そういういろんな問題があるような,やはり理念的な面だけで考えるのではなくて,実態的な面も踏まえて少し考えた上で,この部会としても詰めていく必要があるのではないかなという気がします。   幸い金融審議会の方のワーキングでもそのあたり,少し今度は監督法の観点から議論してみると。それを待たないで,ここで何らかの結論を出すというのは実際的ではないと思いますので,今日のところはそういう御意見を伺ったということでとめておいていいでしょうか。もし,事務当局としてどうしてもということがあれば。 ● いや,どうしてもということではないのですが,若干補足だけさせていただきたいと思いますが,資料5頁にあります,この「監督法上の規律にゆだねる」というと,何かあたかも自分たちはやりたくないから他省庁に押し付けているかような受け止め方をされたかもしれませんが,どちらかというと,主眼はその前に,きちんと「実務上」というのがございまして,今,モラル・リスク対策というのは金額ももちろんあると思いますが,金額だけではなく,契約者の収入とか,契約者と被保険者,あるいは受取人との関係とか,さまざまな観点から最も,それこそ保険会社そのものがこの問題を直視してさまざまな対策といいますか,基準を設け,審査をなさっているというふうに考えておりますので,そういう点を意識したくだりということで,契約法で駄目だけれど監督法なら何でもできるとか,そういう趣旨では決してないということだけ補足させていただきたいと思います。   それから,あと二点ほど,ちょっと時間をとって申し訳ないのですが,契約法に手掛かりをというお話がございましたが,手掛かりはもう同意主義を採ること自体だというふうに考えております。それは,同意主義を採用することの理由はさまざま説明されているところですが,その大きな一つがモラル・リスク対策であって,そもそも同意を求めるのは何でかと言われればモラル・リスク対策だということで,そこからさまざまな解釈が生まれ,あるいは契約法で有効とされた契約であっても,何でもかんでも受けられるのか,あるいは何でもかんでも商品開発が許されるのかというと,決してそういうことではないということも出てくるところでして,そこは手掛かりがないということには決してならないと思っております。   それから,どうしても立場上,契約法,契約法という話をして,それは甚だ私たちは不本意でして,決して契約法だと駄目だけれどもというよりは,そういう契約法,監督法以前の問題として,私はこの金額制限にしましても,先ほどの被保険者同意の問題にしても考えておりまして,この金額制限にしましても,とにかく一律の制限を課すことが適当なのかと考えると,例えば,先ほど子供は宝だという話がありまして,全くそのとおりだと思っておりますけれども,子供のために,例えば自分は600万でも1,000万でも多少保険料は高いけれども付けておいてあげたいと仮に考えた人がいたときに,「いや,駄目です」と。何でかと言われたら,法律で駄目だと。何で法律が駄目だというかというと,子供を殺すかもしれないからだと言われたら,「私は人殺しをするためではなくて子供のために付けたいのだ」と,こう言われたときに,そんな一律な制限を課したのはどこのだれだと言われたら,保険法部会でしたというのは,それはとても説明できないだろうという思いが強くありまして,契約法だから,監督法だからというよりは,法律で一律のことをすること自体に,ヨーロッパに法制があると言われれば,それはその国はそういう実情なのかもしれませんが,日本でそういう立法をして,国民に説明できるかと言われると,それについて非常に消極的に考えているということでございます。 ● という御意見があるということを踏まえて,なお,少しお知恵をこの点についても出していただければと思います。   それでは,次へ進みまして,6頁の3の被保険者の意思による契約関係からの離脱についてでございます。これは前々回ぐらいで出して,御意見をお伺いして,それを踏まえまして,今日少し具体化したような御提案をいただいているのですが,この点について,いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 基本的にはこの方向で私も賛成でございますが,一点気にかかっておりますのは,要は被保険者が契約者に対して解約してくれと請求しましたと。その後,契約者がなかなか解約してくれないと。こういう場合に,先ほどの御説明ですと,基本線としては裁判を起こしてと,こういう話になるわけですが,さすがにそこまで行くと,かなり被保険者自身に負荷がかかるという場合もあろうかと思うのですね。そういう場合のことを考えますと,いったん,もちろん当然契約者に対して解約請求をするという,この線はもちろんそれでよろしいかと思うのですけれども,それで応じてくれない場合に,直ちに被保険者が保険会社に対して解約請求できるというのは,そういうのもちょっと行き過ぎかと思うのですが,例えば1か月とか,2か月が長いか短いかちょっと分かりませんけれども,一定期間を置いて,契約者と被保険者が話し合える期間を置くとか,あるいは保険会社に対して自分は解約したいと思っているという通知をさせる,被保険者が保険会社に対してするというようなことを組み込んで,当事者間で一定期間,ここに書いてありますような事情がもしあるのであれば,契約者,被保険者の間でやはり話し合ってもらう必要がありましょうし,離婚後の話で,「これは継続する話になっておったのだ」と,こういう話になれば,それは解約してはいかんということになりますから,そういったような事情をちょっと保険会社を交えて,交えてというと変ですが,保険会社サイドとしては余計だと,お節介という感じになるかもしれませんけれども,何らか被保険者がアクションをもう一歩起こすことによって,裁判よりは解約を可能にするような手だてを,期間設定をすることによって置けないかという発想を持っているのですが,これはやはり無理でしょうか。 ● 被保険者が保険会社に申入れをして,そこで話合いをする。 ● 最初はもちろん契約者に解約請求をすると。しかし,本来解約すべきものをしないと。何も契約者,被保険者の間に合意があったわけではなくて,ただ何か別の意図があるのかもしれませんが,継続しておると。こういう状態で,被保険者側からすればやはり解約してもらいたい,あるいは解約を請求するのがもっともだと,こんなケースの場合に,何も契約者がしないことによって,被保険者側だけに裁判を起こして解約をしなければいかんというような,これはかなり負荷がかかり過ぎるような面が感じられますので,そういった場合に,いったん契約者に対して解約請求をして,1か月とか,あるいは2か月とか置いて,何もアクションを起こしてくれないと。こういう場合に,被保険者から保険会社に対して,あれは解約請求したのだけれども何もアクションを起こしてくれないのだということで,保険会社に対して,これは解約したいという旨を申し入れて,保険会社サイドに契約者に対して意向を確認してもらって,問題なければ解約を受け入れると,こんな形で処理できるようなスキームが仕組めれば,裁判を起こすよりは自然に解消できるというふうに思うのですが,そういうのはちょっとやはり仕組み方として複雑になり過ぎるというお考えかなと思いまして,ちょっとお尋ねして,急に言って何ですけれども。ちょっと難しいですかね。 ● 今日の資料でいきますと,6頁の(2)の法的構成について,より実効性を高めるために,こういうことも考えられるのではないかという御提案として伺いまして,より軽い負担で実効性の高い法的構成が考えられれば,それは是非採用したいと思いますけれども,ただ,例えば今の御提案で,何のアクションもなかったから,今度は被保険者が直接保険者に行くということになると思いますが,そこで来られた保険者がやはり同じように,本当にアクションがなかったのかどうかというのをきちっと判断できるのかどうかと言われると,もともと(2)で,あるいは前々回の御議論の中で直接保険者に来られても,なかなか判断がというのとやはり同じ懸念は生まれてきてしまうのかなという感じはいたしまして,ですから,そのあたりが解消できれば,より実効性の高い構成も視野に入れたいと思いますけれども,同じような懸念がもし付きまとうとすると,ちょっとなかなかそこは,そこまで踏み込むのは難しいということになるような感じがいたします。 ● ○○委員。 ● 今,○○幹事がそういう御提案をされたのは,全く背景にある気持ちは同じなのでして,まずこういう形での集約だったのかというのが,前回の議論はなかなか微妙で,前回は二つあって,保険会社に直接意思表示をして撤回するというのと,保険契約者に請求すると。でも,実際は保険契約者に請求するなんて,いろんな,夫婦で離婚した場合とか,顔も見たくない,行くこと自体がなかなか難しいということもあるわけで,そういうお話だったと思うのです。   それで,少なくとも,この契約者,保険会社にとっては非常に法律関係が明確になることは確かですが,保険契約者に対して解除請求をするというと,解除の効果が発生するまでびくびくしていなければいけないという,根本的なこの問題を解決したいからいろいろ考えたわけですが,その部分が解決されないままになってしまうのではないかと。○○幹事の御意見は,そこをできるだけ短くしたいというお考えなのだと思うのです。   そこがまず一つありまして,この問題,私,今日の最初の議論とも関係するのですが,同意なくして契約した場合だってあるわけで,その場合は取消し計上か何かしていると思うのですよね,保険会社は。つまり,同意をとったけれども,その書類が偽造されていたとか,そういう例は,確かとられていなかった場合にどういう形をしておられるのかと。何を言いたいかというと,取消し計上をしておられるのであれば,同意の撤回というものも,もちろん要件の問題はありますけれども,直接保険会社の方に意思表示をするという道もそんなに難しいことではないのではないかという問題が一つあります。   最後は,仮にこの案でいくという場合に,ここは私は恥ずかしいのですけれども,建前としては意思表示の裁判ということになりますけれども,その場合は保険会社は全然関係ないのですか。保険会社なしに単に意思表示だけ,判決さえもらえば,それで解除の効果が発生すると,これはよろしいわけですか。 ● 意思表示は相手方に届かないといけませんので…… ● 届いた後で解除すると…… ● 判決をとった上で,保険者に届けるということは必要になります。 ● そうすると,今の点は結構ですが,どうもまだ解除の効果が発生するまで,おびえていなければいけないというところはもうちょっと手当てしないと。○○幹事の方向でも構わないのですけれども,そこはもうちょっとお考えいただけないかなというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 第16回ですか,前々回のときにこのお話をしたときに,最後に,保険契約者に言うのでは意味がないという方がいらっしゃるかもしれないけれどもと先生がおっしゃったので覚えているのですけれども,基本的には言う相手が保険契約者ではしようがなくて,そこが果たせないから保険会社に直接言いたいというところがございました。ございましたが,こういう形でこういうふうに出てきた場合,では,解除請求権,権利がないのでしょうから,本来解除請求権が被保険者になかったのでしょうから,そういうものを認めていただいたのは,先ほど○○幹事がおっしゃったのは,これが請求できて,その後どうなるのという部分があるから,そこの部分はあるのですけれども,これは一応いいというふうにするとすれば,では上の要件,ア,イ,ウとあるのですけれども,この上の要件について,こういう要件設定をがちがちでやる必要があるだろうかと。むしろ,基本的にア,イ,ウと並んでいますけれども,イに収れんしていくのだろうというふうに思っていますので,この「親族関係の終了その他の原因」の「その他の原因」をどこまで読むかという話だと思うのですけれども,親族関係の終了が前にあるものですから,どうしてもそれに引きずられるという気味があるとは思いますが,そこの部分について,例えばこの間,「嫌になったからやめるでいいではないですか」と申し上げたら,そうしたらそれは保険の法的安定性が崩れるというお話がございました。だけれども,そもそも入るときには,「ああ,いいよ」という形で入っているわけですから,そういう意味では被保険者が一回いいよということで同意をしたことで,例えば下手にすると終身保険ですから,終身それを縛られていくというのは大変過酷だというふうに思っていますし,それはある意味で人権の侵害だと思っております。   そういう形から言いますと,やめたいというような一見して安易な理由でそこに何があるか分かりませんけれども,その主観的な理由でも,今,実際に,例えば契約者がいろんなトラブルがあって契約を解除するときは理由を問いません。それと全く同じように,下に被保険者が契約者に一回言って解除請求権があるのだという,そういうつくりにするのであれば,上のア,イ,ウはもう少し条件を緩やかにしていただいて,どんな理由でもというと言い過ぎではありますが,少なくとも「その他の原因により」のところを広く見るというような,親族関係に関係なくて,例えばお友達に付ける人がいるかもしれない,内縁の方に付ける方がいるかもしれない,お子さんに付ける方もいる。お子さんには親族関係の終了はあり得ませんので,そういう意味ではそこら辺をもっと広く読むというようなことを,この中で合意をしていただく方向でやれば,これは飲めるのではないかのかなと,私は思っております。 ● ○○幹事。 ● 大体,○○委員と意見が同じなのですけれども,それで,私は,イのところを広げるというか,承諾をするときに,承諾の理由というのを問わないで,他人を被保険者とした保険契約が有効に成立するので,その承諾を撤回するときにも,どう事情が変わったかという基礎としての事情があるかどうかということがありますので,極論すれば,要件なくして,撤回したくなったときに撤回できるというのが整理としては整理が付くのではないかなと思っております。   その場合に,そうすると,被保険者は保険契約の当事者ではなくて,自分が利益は受けないですけれども,また経済的な出捐もしていないので,そうすると気まぐれな,「いいよ」と言って撤回しますということが起こり得ると思うのですけれども,その場合,保険契約者としては,そういう脆弱な契約を自分でしてしまったという,そういう性格の契約だということを,一般的に社会的に認知されるようになればいいですし,また,その場合に,そういう契約類型だったときに,いいよと言った被保険者が翌日,翌日か分からないのですけれども,撤回とか言って,それで保険料を一時に払って,それは解約返戻金はがんと落ちてしまったとかいう場合は,それは実効性があるかというと,ちょっと疑問なところはありますけれども,理屈の上では被保険者と保険契約者との関係において,保険契約者がいったんいいよと同意に依拠して保険契約を締結して,翌日撤回されたという保険金請求権とかの経済的な利益を侵害されたという,債権侵害みたいな構成もあり得るのかなと思っているので,ちょっと極端なところではあるのですけれども,そこのところで保険契約者の方が最悪救済されるという整理にした場合に,被保険者の同意の撤回というのは,余り要件は課さなくてもいいのではないかと思っております。 ● ○○委員。 ● 被保険者の意思というものを大事にしてあげないとという考え方はよく分かるのですけれども,やはり保険契約の当事者は契約者と保険者であるということも重く受け止めないといけないと思うのです。保険契約に入るときは,契約者が被保険者と合意をした上で,その契約に入っていると。被保険者が契約者ときちっと話し合って,やはりそうだと言って出てくるならいいのですけれども,被保険者がちょっと思ったからという形というのは,契約の当事者がだれかということの中では,そこはきっちりしておかないとまずいのではないかという気がするのですけれども。 ● 今のこの離脱を認める事由を,今日の部会資料よりはもっと緩やかに認めてはどうかという御意見が一方であったのですが,事務当局としては,立法論として考えるときに,かなり緩やかなものとするということは可能なのか。それとも,やはり今,○○委員が言われたように,いったん同意したということはそれなりの重みがあるから,そこから離脱できるにはそれなりの重大な事由が,事情の変更というのでしょうか,そういうものが必要だというふうに,理論的になるのではないかというふうにお考えなのか,そこらあたりの御感触はどうなのでしょうか。 ● 理論的にどちらになるというような感触は持っておりません。むしろそれは政策判断の問題だろうと思いますので,ここでのコンセンサスが,それこそ極端な話,いや,もう要件なしに広くということであれば,それは立法技術的に仕組めないかといえば,仕組めるだろうと思いますし,むしろ狭くすべきということであれば,幾らでも厳しい要件は課すことはできるということになろうと思います。   ちょっとそういう意味では,この論点を論じた最終的な落ち着きどころの理解が若干違っているところがあるのかもしれませんが,前回の御議論を事務当局なりに理解していましたのは,やはり要件を余りかぶせないで裸の離脱を認めるのは,それはそれでちょっと法律関係の安定性といいますか,契約当事者サイドの利益などを考えても広過ぎるのではないかと。そして,法的構成については,直接保険者に来られても,なかなか要件の判断ができないだろうと。その二つが大きな方向性だったかなというような理解の下に今回お出ししたということでございます。   ただ,(1)のア,イを非常に狭く考えているかと言いますと,限定すべきだという発想に立っているわけですが,例えば,イの要件を「親族関係の終了」というところに主眼を置いて書いているかというと決してそういうことではなくて,これは「その他の原因」の例示にとどまるものでして,むしろ主眼は,同意をするに当たって基礎としていた事情が失われた場合ということで考えておりますので,それに当てはまるものについては,それはもう離脱ということを認めていいのではないかというのが今回の提案の骨子でございます。 ● ○○委員の御質問の中に,直接被保険者が保険会社に申し入れて契約を解消する余地も残しておいていいのではないかという御意見,それは7頁の※3のところにあるのですが,先ほどの御意見の中に出た例だと,割と殺されそうだとか,そういうイメージのことをおっしゃったのかなと思うのですが,それはそういうことでいいのでしょうか。 ● そういうつもりなのですが,どう反応していいかよく分からなかったのですが,やはりまず一つ,この前回の民事執行法第174条でいけというのは,事実上離脱を消費者によって認めないというのと同じような,例えば普通の人が法律相談に行って,「では弁護士さん,やってくれますか」と言ったら,「100万払うならやる」と言うかもしれませんが,普通はしてくれないわけで,まずそこが一番問題かなという感じがします。   それから,今,ちょっと○○委員がおっしゃったのは,例えば,私の素朴なイメージは,アのところは重大事由の方の(1)のアに限ればいいと思うのですが,それの場合は確かに直接請求,ぽんといかないと,何かあんまりだというところがありますし,ちょっと何か…… ● 本当にそういう何かモラル・リスクの危機が迫っているということが,客観的に認められれば,これは重大事由解除の方で,保険会社としても対応していただけるわけでしょう。 ● そうですね。 ● どうぞ。 ● これも前から申し上げているのですけれども,先ほど○○委員はびくびくとおっしゃったのですけれども,これはアのケースをおっしゃっているということなのだと思うのですが,やはりこの場合の実効性を考えると,保険者,保険会社に言われても,保険会社は先ほども出ていましたけれども,それが事実かどうか,契約者に確認しないといけないわけですね。「あなた本当に殺そうとしているのですか」とかですね。   それから,もう一つは,これも前に申し上げたのですけれども,本当に殺されそうだというのであれば,そんな保険契約のことよりも,警察に言うべきなのですね。   それから,もう一つ,保険会社は,それでは「被保険者がこう言ってきていますよ」ということを当然契約者に確認しないといけないわけですね。そうすると,契約者は逆上すると思うのですよね。しない人もいるかもしれませんけれども。ですから,このアの場合の実効性というのはなかなか難しい。これは今,○○委員がおっしゃったように,実際にそういうものが起きているということが保険会社でも確認できれば,それは重大事由解除をするわけですから,なかなかアが使われる局面というのは余りないのではないかと思います。 ● 私が念頭に置いているのは,最初に申し上げましたが,日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会の発表にあった,お父さんが「おまえの保険金が入れば」と,こう言っているような事案なのですよね。だから,簡単に重大事由解除というのはなかなか難しいところで,かといって,意思表示の裁判を持っていらっしゃいというので本当に……。でも,これはまさに現実の危険は感じているからこそ相談に来ているわけで,ちょっとなかなか解決の方向が出なくてあれですが,どうもシチュエーションは違うということだけ,まず申し上げたいと思います。 ● ○○幹事。 ● アとイ,それぞれについて少し問題があると思っているのですが,まず,アについては,解除することができる重大事由が生じたときに,契約者と被保険者とのまず話合いが成立しないと,普通推認できるのではないかと思えるのですね。それぐらいの状況でないと,やはりこれは認められないだろうと思います。   現行法でこれを考えますと,生保にも一応危険の著増の方にかかっていますので,こういう状況だと,現行法だとかなり,今回は改正法ではもう消えてしまうというか,事実上働かなくなると思いますけれども,危険の著増で,危険増加時から契約失効という,そういう規律で無理やり処理することも可能かなと思えるのですが,それに近いもので重大事由解除にひっかけて処理をするとしますと,やはり被保険者が保険者に対して,私としては重大事由解除権を行使してもらうに値する事態が生じていますということを通知をしておいて,保険者としては,それをいったん受け付けて保留にしておいて,何かあったときにはこの時点までさかのぼって重大事由解除権を行使しますよということを契約者に通知をすると。そういうことであれば,契約を残した上で,契約者に対しての警報効果が果たせるのではないかというふうに思うのですが,まずそれで実務的にうまく組めないのかどうかということ。   それから二つ目ですが,これは「親族関係の終了その他の原因」の方が,これは本当は大事なのではないかと思いますけれども,例えば離婚の状況を考えますと,協議離婚ですんなりすぱっとまとまれば,やはりこれが出てくる必要がないわけでありまして,婚姻関係は実質的に破綻しているのだけれども離婚届に判こをもらえない状況でこそ,こういうことをやはり行使したいのだということだろうと思いますから,これはやはり,私も最初はこれは親族関係が終了したということを公的に証する書面を持っていけば,被保険者が直接保険会社に行ってもいいのではないかなというふうにも思ったのですけれども,それはそれで一つ認める線はあるかなと思いますけれども,実際には,特に離婚,婚姻関係破綻の状況では,やはりアと同じような問題で考えておくべきではないかと思っているのですが。 ● ○○委員。 ● 今の○○幹事の初めの方の御質問で,いつ契約者に知らせるかということですね。そこが大事だと思うのです。守るべきは何かというと,保険契約が生きているとか死んでいるかではなくて,その被保険者の命だと思うのです。そのときに,後から「あなたの契約は3年前に解除になっていました」なんてことを言われても,殺されてからでは間に合わないわけですから,それはその時点で申出があるということを伝えた方がいいわけですから,余り実態的でないような気がするのですけれども。 ● そういう通知を受ければ,直ちに契約者にそういう警告の文書を一通送るということを考えているのですが。 ● 普通はそこで,相当牽制が働くであろうという,その程度の例で。正面から,これでみんな裁判所へ行って撤回を,解除権を認めてもらうということ,そう世の中でたくさん起きるということを考えているわけでは毛頭ないのですね。だから,離婚したり何とかというときにも,「こういう規定があるから,あなたが保険を続けたいと言ってもしょせん無理よ」ということになれば,そこで交渉が一つ進むのではないかなと,そういうことを恐らく実際では効用として考えるのではないかなという気がしますね。   ですから,モラル・リスク絡みの場合であれば,まさに申出があった,保険会社にも申し出てもらって,そこで「こんなことを被保険者は言っておりますよ」ということで,そこで牽制がきくというような,そういう使われ方だろうという気はしますが。   ○○委員,どうしても,これはまだ納得がいきませんか。 ● そうすると,今,どのあたりに集約されているか,ちょっとよく分からないのですが,直接にこの7頁の※3のところについては,これは認めないということで集約されようとしておられるのですか。 ● いや,そこまでまだ行っていませんが,何かこういうことを認めるのがどうしても必要不可欠であって,かつ立法論的にもそれが実現可能という案があれば,それは考えるに値すると。 ● そうつくった方がよろしいと思います,そういう方向で。方向でというのは,何かつくると。そういう…… ● つくるとは言っていない。何かそういう御提案があれば検討をするということです。もうかなりこの段階ですから,やはり何か御意見がある場合に,それをかなり実際に実現したいということであれば,具体的な提案をそろそろいただいて,御意見を仰ぐということにしないと先へ進まないと思います。もしあれば,今日で打ち切るというわけでは全然ありませんから,またお考えいただいて。   ほかにこの点で。○○委員。 ● 私は,これは基本的に,被保険者が自分が死亡することによってだれかが利益を受けるような状態で,やはり重要なものだと思います。とにかく被保険者にとって嫌な状況を何とか脱するにはどうするべきかということで,そうやって考えますと,このアとイは非常に妥当だと思うのですけれども,その一方で,もうちょっと厳しくした方がいいのではないかなと思われるケースがありまして,それは,保険金がだれに行くか,つまり,被保険者のための保険,例えば養老保険で,大変などら息子がいて,両親が離婚したという,こういったイを条件に解約返戻金を自分が得るために同意を,未成年だかそうでないかも分かりませんけれども,それはちょっと別の話として,解約返戻金を得る,全体から見たら,これは親が保険料を払っていて,その結果,満期になればどら息子,ちょっと表現は悪いですけれども,そこに行くわけですから,やはり認めるべきではないと思うのですけれども,そういったのはアとイからは直ちには出てこないので,その辺……。出てくれば,私はあれですけれども,ちょっと出てこないような気がするものですから,その点,考えていただければと。 ● それでは,いずれにしてもこの問題について,一応前々回の御意見の大勢を踏まえるとこういう方向であったところで,それを具体化する案が今日出て,それについては,これでいいのかどうかという具体的な御意見を少し今日いただきましたので,なお,この書き振りを少し事務当局に検討していただくということで,それでその他※印のあたりとか,何か具体的な御提案があれば,それをまた出していただくというようなことで。とりあえずこの大きなところでは,この3のところで,大勢としては御了解いただけるというふうに理解してよろしいでしょうか。もし御異論がなければ,大体そういうことに,この点はさせていただきたいと思います。   それで,ようやく7頁の上まで来まして,それでは,次が第9の生前の意思表示や遺言による保険金受取人の変更に移りたいと思います。まず事務当局より御説明をお願いします。 ● まず第9の1におきましては,生前の意思表示による保険金受取人の変更について取り上げております。   まず(1)で,受取人変更の意思表示の相手方につきまして,生前の意思表示による受取人の変更については,保険者に対する意思表示によってするものとすることでどうかという提案をさせていただいております。   この点につきましては,保険契約者の意思を最大限尊重すべきとの観点から,意思表示の相手方は新旧受取人に対してでもよいのではないかという御指摘もされておりますが,中間試案におけるA案の方が法律構成も簡明で分かりやすいことなど,※印に記載しております理由から,本文のような提案をしている次第でございます。   その上で,(2)におきましては,受取人変更の効力発生時期の在り方について取り上げております。この点については,中間試案におきましては,①の規律についてA,B両案を併記しながら,②の発信主義の規律と,③の対抗要件の規律を掲げておりました。しかしながら,さらに詰めて検討してみたところ,※印のところに記載しておりますように,A案を採用しても,受取人変更の意思表示が保険者に到達しなくても発信時に効力を生じるものとすると,③の対抗要件を設けたとしてもなお関係者の法的安定性が害されるおそれがあるように思われます。また,A案を前提とする場合,発信主義を採ったとしてもほとんどの場合において,意思表示としての通知とは別に,対抗要件としての保険者への通知を観念する必要がないことからすれば,発信主義を採りながら対抗要件に関する規律を設けることは,保険契約者にとっても分かりづらい規律となってしまうおそれがあります。   そこで,このような問題点などを踏まえて,(2)では,受取人変更の意思表示は保険者に到達しなければならないということを前提としつつ,その通知が保険者に到達した場合には,発信時にさかのぼって,その効力を生ずるとすることでどうかという提案をさせていただいております。このような規律とすることで,受取人変更の意思表示を発信した後に,その通知が到達する前に保険事故が発生した場合であっても,保険契約者の意思を尊重し得るとともに,対抗要件に関する規律を別途設ける必要はなくなり,理論的にもすっきりするのではないかと思われますが,このような考え方の当否について御意見をいただければと思います。   次に,9頁の下の2の方では,遺言による受取人変更に関する規律の在り方について取り上げさせていただいております。そもそも遺言による受取人変更を認めるかといった点につきましては,パブリックコメントにおいて否定的な御意見等もございましたが,当部会でこれを認めること自体については肯定的な御意見が大勢であったことや,保険契約者の意思の尊重という観点からは,遺言による受取人変更を認めた方が望ましいと考えられることから,これを認めることを前提とした論点を取り上げております。   まず(1)では,中間試案におけるウの②の規律,つまり遺言による受取人変更がされた場合における保険者への対抗要件の在り方について取り上げております。この点につきましては,保険契約者の相続人が通知をする場合には,相続人全員による通知が必要とすべきとの御指摘もございましたが,10頁の※1の部分に記載したような理由から,必ずしも相続人全員による必要はないのではないかということで,提案をさせていただいております。なお,中間試案の(注)の中で,他人を被保険者とする死亡保険契約について,遺言による受取人変更をする場合の被保険者同意の相手方についてなお検討するとしておりましたが,その点については,他の場合と同様に解釈にゆだねれば足りると思われますので,その点を※2の方に付記させていただいております。   また(2)におきましては,遺言による受取人変更に関し,必要的記載事項を法律で定めることの当否について取り上げております。この点については,受取人変更の要件を明確化すべきであるという御指摘もございましたが,どのような意思表示をもって受取人変更の意思表示と見るべきかといった問題は,生前の意思表示による場面でも生じるものでございます。確かに生前の意思表示による場合とは異なって,遺言による場合には表意者である保険契約者が既に死亡してしまっているという点で違いはございますが,そもそも遺言については民法上厳格な方式が定められているところでございまして,受取人変更について,更なる要件を加えることは,保険契約者の意思を尊重しようとする趣旨を減殺しかねないように思われます。また,遺言による受取人変更がされている場合には,そのことを前提として,相続財産についての遺言も同時にされていることが少なくないと思われますが,必要的記載事項を形式的に欠くということだけで,受取人変更に関する部分だけが無効になってしまうと,相続財産についての遺言を解釈するに当たって支障が生じるおそれもあります。そこで,これらの点を踏まえて,(2)の本文のとおり,必要的記載事項を設けないとすることでどうかという提案をさせていただいている次第でございます。   以上です。 ● ありがとうございます。   それでは,大きく言えば二点あります。順次御意見をいただきたいと思います。まず,1の生前の意思表示による受取人変更の点ですが,いかがでしょうか。   ○○委員。 ● できるだけ成案を得たいと思いますので,一番の論点は,どういう場合が発信なのかというところではないかと思うのですけれども,例えば,前,委員の方からありましたように,末期の状態で保険募集人の方にまくら元に来ていただいて,受取人変更届をその方に渡して,会社に届けてくださいと。一応そこに第三者の証人もいたといたしましょうか。そういう委任をしたということで,その方に渡すと発信したということになるのかと。それでなるのであれば,私はB案でなくても,A案でもいいかなと。   そのときに申し上げましたけれども,一番の目的,ここで議論の最初のときに発信主義と遺言による指定を認めるというのが希望だったわけですけれども,だから,肝心かなめはその発信のところではないかと思いまして,その点だけ,民法の方の御意見を伺いたいと思います。   以上です。 ● まず,事務当局としてはどういう…… ● 事務当局が先にしゃべった後で先生方に間違っていると言われると恥ずかしいのですけれども,今の例でいくと,それはいろんな考え方があると思いますが,わざわざ募集人に病室に来てもらって,その人に言えば,保険会社に発信したどころか到達しているのではないかという見方もあるだろうと思います。そうなると,また受領権云々という意見があると思いますが,受領権を与えていないから到達していないのだと言われればそうかもしれませんが,受け取れないのだとすると,「あなたは何しに来たのだ」ということになると思いますので,私はそれは到達していると見たいと思いますが,ちょっと理論的には先生方の御回答を待ちたいと思います。 ● ○○委員。 ● それは保険会社と募集人との関係がどういう関係なのかによって,直ちにその瞬間に受領した,到達したというふうに言えるかどうかの判断は,検討の余地があると思うのですけれども,今の○○委員の御質問で言えば,まさに最終的に保険会社に到達した文書がそこで募集人に渡されているわけですから,それはまさにそのときに発信があったとしか言いようがないというふうに思いますけれども。 ● ということでよろしいでしょうか。   ○○幹事。 ● 発信問題は非常に難しいというふうに思っていまして,意思表示の過程自体は,どこかに発信があって,どこかに到達があるはずなので,どこかで発信があって,しかも発信の段階で効力が発生するということですと,例えば新しい受取人に対して,保険会社からいただいた書類を渡して,「あなたにしてやるから出しておくのだよ」というふうに言った段階で発信しているのか,先ほどの募集人の場合は比較的簡単で,やはり保険者側の人にわざわざ渡していると。受領権があれば到達しているでしょうし,そうでなくても,少なくとも発信はしているし,後は送ってもらえばいいだけの話だということになるのですが,そうではない第三者に渡した段階で,例えば宅配業者に渡したら明らかですけれども,宅配業者でない人に「これをお願いします」と言って「承りました」ということであれば,契約上の義務もあって,そのまま届けなければいけないということなのかもしれないのですけれども,新しい受取人に「やっておくのだよ」とか言っただけで,その人がどうしようが勝手であるような状態で置いただけで,果たして発信なのかとか,ややこしい問題は多少残るようには思うので,ちょっと気持ちが悪いなというところはあります。   ですから,発信の問題はぎりぎり言うと,実はちょっとこれで大丈夫かという話はあり得るのだと思うので,ただ,着いてしまえば,届けてしまえばということもあると思うのですけれども,これは,対抗の問題はもう起こらないというふうにされた点のところと関連するかと思いますので,併せて確認させていただきたいのですけれども,事務当局の案で示されているものは,保険者に対する意思表示であって,しかしながら発信の段階で効力が発生するけれども,その効力の発生自体が到達を条件とした効力の発生であるということになるのでしょうか。   そうだとしますと,次のような場合どうなるかという,非常に教科書事例で恐縮なのですけれども,発信後,到達前に事故が発生し,保険会社には到達していないので,前の受取人であるというふうに考えて保険者が事務処理をしたと。そちらに払った後に,実はもう変更されていたことが明らかになるような通知が到達し,それ自体は事故の前に発信されていたことが判明したという場合は,どのような処理になるのでしょうか。 ● 第一点目におっしゃった,新しい受取人に「出しておきなさいよ」と言った点については,先生自身,両説あるとおっしゃったところですが,そこは恐らくはまだ発信していないという整理をするのが素直ではないかなと,内部の検討では考えております。それは後を託された人が保険会社に向けて,まさに投函するというと変ですけれども,その時点で保険会社に向けた発信が行われたということなのかなというふうに一応は整理をしておりまして,中間試案のA案とB案とで,そういう意味では契約者の意思の尊重される場面が,若干範囲が今回の提案は狭くなるわけですが,それは新受取人に言った時点で発生するか,言われた新受取人が発信を託されたということで,保険会社に向けて発信の行為をとるかの間の差だけなので,そこはむしろ法律関係の明確性から,A案の方がいいのではないかというのが第一点目の御指摘について考えたところでございます。   それで,二点目の御指摘は,どういう条文を書くかにもかかってくるかと思いますが,発信時点で到達を条件として発生するという説明も恐らくあり得るでしょうし,そうではなくて,あくまで到達しないと効力は生じないということで,到達したときに初めて発信時にさかのぼって効力が生ずるという見方もできるというふうに思っております。ただ,その二つの間にどういう差があるのか自体は,ちょっと必ずしも整理し切れていないところでして,今,挙げていただいた例でいきますと,そもそも効力が発生していないのだから,到達前に旧受取人が今でも受取人だと考えて支払をしてしまった場合には,もうそれはそれで有効な支払になるだけであって,後から届いた変更の意思表示によって,何らその効力が動かないという見方もできるでしょうし,あるいは後から届いたとしても,もともとその場合にはさかのぼって生ずる,あるいは条件付きで発信時に効力が生ずるという法律になっている以上,変更の効力は生じているけれども,それを知らないで処理をしたのは,別途,債権の準占有者への弁済として有効と見ることになるのだという,別の理屈を持ち出すことになる可能性もあると思っておりまして,そこは,まだ整理し切れていないところですが,いずれにしてもその場合に,少なくとも考えておりますのは,保険者側が二重弁済のリスクを負うとか,そういうことにならないような理論構成と説明をしなければいけないだろうというふうに考えております。 ● 結論としてはそういうことだと思うのですけれども,その問題を従来は対抗の問題で扱っていたと思うのですね。ですから,この問題は要らなくなったということではなくて,それまでにした保険者の行為の効力を妨げないとか,何らかの手当てが要るのだというふうに考えておりまして,そこにそごはないということが分かりました。 ● 今の,保険会社に到達して,保険会社が知るまでに保険金を払ってしまったと,こういう場合,そもそも有効な弁済として扱うのか,それともやはり効力が発信したときにさかのぼって生ずるというのだったら,それはもう無権利者に対する支払だから,民法第478条で免責として扱うのか,両方まだあるという御説明でしたが,そこら辺の御感触はどうですか。私は何か前者のような解決を立法的に明文化できるのであれば前者のようなもので,実質的には,対抗要件的に何か規定を仕組むと。正面からの対抗要件として,もとの7頁のイの②のように,効力要件で保険会社に通知と書きながら,さらにまた対抗要件として通知が要ると書いてしまうと,いかにもこれは分かりにくいということがあるので,そこは何とか処理できないかということで,今日の案が出ているのだろうと思います。   どうぞ。 ● たびたびすみません。私自身もそのように,やはり書いた方がいいと思っていまして。ただ,対抗要件と書くから問題が複雑になったということではないかと思いますし,他の分野の規律でも,やはり遡及効があるときに,その間にした行為の効力が妨げられないとか,あるいは遡及的にだれかが承継することになって,無権利になるときに,やはり何らかの規定がないと本来はやはり救えないのではないでしょうかというふうに思われますので,そこは明確化した方が疑義がなく,よいのではないかと思います。 ● この点,何か御意見はございますか。   では,その点は少し,なお詰めていただくということで,方向としてはこういうことでよろしいでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 受取人に関する事項なので,前も申し上げたと思うのですけれども,全体的に任意規定ということなので,余り発言するつもりはなかったのですけれども,遺言とも関係するのですけれども,基本的に共済において受取人変更というのは,それぞれ協同組合法がありますけれども,一番厳しいところの立法趣旨でいえば,基本的には共済者の承諾ということを前提に規定がつくられておりますので,任意規定で許容されるというふうに解釈をしております。ですから,ここでどちらかA案かB案か決まるのでしょうけれども,それだけではない取扱いが許容されるということについて,恐らくそういう考え方になるかと思いますけれども,御確認をお願いしたいというふうに思います。 ● おっしゃるとおりに考えております。 ● ほかにございませんか。それでは,この点は方向性はこういうことで。   では,次の遺言の方について,いかがでしょうか。これも二つ問題があって,対抗要件,特に共同相続人がいる場合どうするかというものと,それから遺言の記載事項として何か要件をかけるかという二つがありますが。   ○○委員。 ● 私どもの主張としては,前から申し上げているように,この通知する人は,相続人全員,あるいは遺言執行者ということは考えておりますけれども,こういう法律ができて,あとは任意規定だから約款でどう書いてもいいよというのであれば,それはそういうことかなと思うのですけれども,ただ,実情を申し上げますと,遺言による受取人変更というのは,今現在,法律がない段階では本当に限られたものなのです。これが法律に入ってくれば,かなり増えると。   私どもが一番心配しているのは,そういう規定が法律に入ったときに,明確に規定がないばかりにかえって混乱してしまうということがあるから,例えば記載事項についてもきちっと本当はしていただきたいと。これは約款に書くかどうか,本当に考えなければいけないのですけれども,約款にそういうことを書くかどうかですね。先ほどの事務当局の方の御説明ですと,いや,生前でもそうだとおっしゃるのですけれども,生前の受取人変更の場合は,まず会社の所定用紙を出していただくのです。ですから,要件が明確になっているのです。   ここでちょっと話がまた飛んで恐縮なのですけれども,実は契約者と被保険者が別人の場合,今の法律に規定がない段階では,そういう申出はないのです。まず契約者と被保険者が同一人の場合で,自分の保険をどうしてくれ,こうしてくれという,そういう遺言の書き方なのですね。ですから,確かに生前の意思表示とのバランスにおいて,制限する理由がないではないかというのも一つのお考えですけれども,そこまで本当に広く認める必要があるのかなと。   ですから,考え方としては,遺言を書いたときに,被保険者の同意書を入れてやるのが一つと,それから,死亡してから遺言書を開けて,これは被保険者の同意がないから後から取り付けると,その二つが考えられると思うのですが,前者の場合は,そこまでいくのであれば,隠したいという人は別ですけれども,それは生前の意思表示で所定の用紙でやっていただくのが一番いいし,それから後者の場合というのは,本当にそんなニーズがあるのだろうかなという気がして仕方がないのですね。契約者と被保険者が別で,要するに他人の生命の保険で。それで,それをしかも被保険者が嫌だと言えば,遺言を書いても意味がないわけですから,そういうことまで制度として認める必要が本当にあるのでしょうかと,そういう思いがしてしようがないのですね。 ● その点はどうでしょう。 ● 根本的な御疑問で,仮にそういうふうに考えますと,もう全部,そもそも遺言を認めないということになるわけですけれども,ここで考えていましたのは,そのような遺言をあえて否定するまでもないだろうというところでして…… ● ○○委員の今の二点目は,契約者と被保険者が違うような,こういうものについてまで契約者が遺言で受取人を変更する必要,そういう変更まで認める必要はないではないのと,そういう御指摘ですよね。 ● そうですね。それは先ほど申し上げましたように,後から同意するかもしれませんし,遺言書を開封した後,「いや,自分は嫌だよ」と言うかもしれないと。そんな不確かなものについて,契約者の意思というのは尊重しなければいけないのかなという思いです。要するに新たに,今まではなかった,法律によって新たに発生する問題だと思うのですね。 ● そのように考えて,したがって遺言による受取人変更は認める必要はないというのも一つの整理だろうと思いますけれども,他方で,言ってみれば隠したいという思いと,より確実に受取人変更を実現したいという思いとを比べて,万一それはぽしゃったらぽしゃったでやむなしで,でも隠したいよ,隠したいということだけで遺言を認めるということではないのですけれども,仮にそういう思いの方が強く,そのリスクを抱えながらでも,やはり生前に自分が言うと逆にトラブルになるから遺言の形でという思いがあれば,それはその思いでの受取人変更も認めていいのではないかというようなことも多分言えると思いますので,そういった両方の考え方がある中で,今回は遺言についても認め,ただ,実務で受け止められないようなことになってはいけないと思いますので,そのような手当てができるような任意規定の形での仕組み方にするというような説明振りなのかなというふうに思いますけれども。 ● ○○委員。 ● この部分,事務当局の御提案に賛成したいと思います。   余計なことを一つ言えば,やはり高齢化社会におけるニーズにこたえるとか,いろいろな工夫があり得ると思うのですよね。信託的なものとどう組み合わせるのかとか,やはりはっきりこう書くことによって,次のステップに行くことができると,そういう重要な意味があるということで賛成したいと思います。 ● ○○幹事。 ● この点は以前にもコメントさせていただいたのですけれども,遺言で受取人を変更できるかという点に関しましては,今回のこの方向性でいいかと思います。   というのは,理屈を言いましたら,保険金請求権は,当初発生した時点で受取人に帰属するということになりますので,遺言で処分できるものかというところはあるかとは思うのですけれども,この点は,保険契約者と被保険者が一致している場合に,いったん死亡したときには,やはりその保険契約者のところに発生したような遺産性があるから一緒に遺言の中に書くというのが自然なのではないかというところで賛成をしております。   そうしますと,○○委員がおっしゃったように,他人を被保険者とするような保険契約の保険金受取人の変更を遺言でする必要があるのかというと,やはり余りニーズがないのではないかなと思いますので,遺言で受取人が変更ができるという今回の法制で,一つ,「被保険者が保険契約者である生命保険は」という限定を付しても,さほど混乱は生じないのではないかなとは思うのですが。 ● そういう問題はあると思います。いかがですか,先生方。   ○○委員。 ● 先ほどの○○委員とちょっと重なるのですけれども,遺言による受取人変更については,一人でもいいということではなくて,やはり全員か遺言執行者の意思表示にしていただきたいなと。というのは,旧の受取人も相続人であることが多いわけですね。全く何の関係もない人が受取人になっているわけではなくて,恐らく配偶者であったり,子供であったりという人が受取人になっていると。そのときに別の人だけが言ってきてというのは,非常に新旧でもめているケースが多いのではないかなと。幾ら供託ができるといっても,調べてからでないと供託できないですよね。いきなり供託しますというのは,保険会社としてはできないと思いますから,そういう意味では,これは全員によるべきではないかなという気がします。   それから,法定まで行くかどうか分からないのですけれども,最低限これは受取人の変更であるとか,書式までは要らないかもしれないのですけれども,必要最低限,何かこれがそういうものであるということが分かるような最低限の記載,項目ぐらいは法定していただける方が我々はありがたいなと。幾ら任意規定とはいえ,法律よりも約款でかなりきめ細かく我々が書き込むというのは相当しんどいのではないかなという気がしておるので,そのあたりをお願いできればと思うのですけれども。 ● いかがですか。○○幹事。 ● 先ほどの他人の生命の保険の場合には,もともと契約者より先に被保険者が死んでしまった場合には,遺言の効力が生じる前に保険金の支払事由が発生するわけなので,また同時死亡の場合にも被保険者の同意はまず得られないと思われますので,これが奏効するかどうかは,まさに偶然によって左右されるものでありますと。では,その程度のものであるから,では全面的に禁止をしますかということだと思うのですね。契約者と被保険者が了解の上で,被保険者の同意書を添えた遺言というようなものをつくっておく可能性を最初から法律で否定するのかなと。ですから,こういう制度をつくったら,そういうリスクはありますよということについては,少し何らかの広報といいますか周知といいますか,そういうことは要るかもしれませんが,認めてもいいのかなと。あるいは,そういうリスクがあるから,そもそも政策的にそこはもうふたをしますということも,それは一つの判断だろうと思っております。   保険金受取人変更の通知の件ですが,これは私は紛争状態にあればこそ,一人でも反対すれば全然請求ができないというのは少し問題があると思っておりまして,その場合には結局,受取人変更の通知ができないので,旧受取人が反対すれば,自ら請求して,自らまずもらえてしまうという状況ができ上がってしまうわけでありまして,それは,まさにここで契約者の意思を尊重しようという趣旨からすると,そこからは外れた処理が原則になってしまうということだと思いますので,全員そろわないと通知ができないというのは,少し我々が思っているのと違った方向に動いてしまうのではないかという危惧を持っております。 ● ○○幹事。 ● 基本的には,今,○○幹事がおっしゃったような方向なのですけれども,契約者と被保険者が別人の場合の契約者の遺言による受取人変更と,こういうケースだと,結局,先ほどの○○幹事がおっしゃったのだと,被保険者が先に同意書を与えておくと,これは余り問題はないと思うのですけれども,要するに同意をとらないで単に受取人変更だけをしていたと。あと,契約者が死にました。まだ保険事故は発生しておりませんので被保険者の同意に遺言書の効力がかかってくるという場面に遭遇するわけですね。保険金の受取人を指定するのと同時に,ほかの財産の分け方も,恐らくは遺言書の中に書いているケースが考えられます。そうすると,受取人の変更について被保険者が同意をしないということになったら,その遺言書は全面的に基礎を失って崩壊するという可能性も出てくるのですけれども,そういうリスクがあったとしても,それでやりたいというのを封殺する,そこまではちょっと行き過ぎかなと思いますので,そういうリスクを御承知の上でやられる分には,それはやむを得ないというふうに思いますので,認めてもよろしいのではないかと思います。   それから,先ほどおっしゃった複数の相続人間での問題と,受取人変更の通知の問題というところは,○○幹事と同じ考えです。 ● 契約者と被保険者が違う場合の処理,遺言を認めるかというのは,一般論として言えば,そんなに高いニーズがあるとは,少なくとも言えそうにないけれども,禁止するほどのものかと。実際の実務で遺言のモデルやなんかをつくるときには,余りそういうものをモデルとして出したりするのはいかがかなという気がしますが,今日の御意見は禁止するほどのものでもないのではないかということが大勢ではなかったかと思います。   それから,手続の方なのですが,共同相続人全員が同意の上通知をするというのが一番確実ではあるのですが,実際は逆にそうすると,この規定が生きてこないと。○○幹事のおっしゃったとおりでありまして,こういう争いがある場合に,従来どうも余り供託を受けてくれないのではないかということがあったのですが,これは,でも事務当局に伺うと,従来漠然とほとんど駄目よと言われていたほどのものではないということなのですが,そこはちょっと御説明を。 ● 先ほど○○委員からお話がありましたとおり,供託の要件としては,過失なく債権者を知ることができない場合となっていますので,それに当たらなければいけないということではありますけれども,例えば遺言書の効力自体が争われていて,例えば裁判にまでなっているという場面,かつ,遺言が有効であれば,受取人がAからBに変更されるのに,無効であればAのままになると言えば,それはまさに過失なく債権者を知り得ない場合という供託要件に当たって,供託することができるのではないかというのが,今回の資料を作成するに当たって前提として考えたことでございまして,恐らくその点は,民法の先生方から異論が入るとまたスタートラインに戻ってしまいますが,一応そういうような整理をしたということでございます。 ● そういう,従来我々が聞いていたよりは余地があるのではないかなということでございますので,もしよろしければ,この点についてはこういうあたりでまとめたいと思うのですが,いかがでしょうか。 ● ちょっと念のために確認を…… ● では,○○委員から。 ● 今のお話の中で,例えば相続人全員の通知が無理なときに,遺言執行者から出してもらうというのは,やはり物理的に難しいのですかね。というのは,我々はできるだけ確実に,それが正しい遺言書であって,争いごとではないという形で出していただきたいというのが実務サイドからいくと一つの要請なのです。そのときに,何らかの都合で全員でないのだとすれば遺言執行者から出していただくというような形で,それを担保できないかという気がするのですけれども,それが物理的に難しいのかどうか,ちょっと私も余り遺言に詳しくないので。 ● 遺言執行者自身は利害関係人の請求によって,これを選任することができるということになっていますので,相続人間に争いがあったときに,そもそも遺言執行者の選任自体ができないのかというと,恐らくはできるということだろうと思いますので,その場合には,かつ,何らかの約款の規定で,保険者に対する通知自身に一定の要件がかぶさっているというときに,それは遺言執行者がその要件を満たすために選ばれてやるということは,考えられるのではないかというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● ちょっと私,供託の件はよく分からないのですけれども,今の相続人のうちのだれが通知するのか,あるいは遺言執行者が通知するのかという件ですけれども,前提として,この通知というのは,遺言書の内容を示して,このような遺言がされていて,効力が発しているというふうに言われるということをお考えなのだろうと思いますけれども,その上で問題は幾つかあって,その遺言の効力自体が覆る場合があると。   それが一つなのですけれども,あともう一つ,保険会社の方で心配されるのは,何か書いてあるのだけれども,それが変更の意思表示に当たるのかどうか分からないというような場合があると。遺言の解釈の余地があると。その解釈のリスクをだれが負うのかというのを,多分危惧されていると思うのですね。これは裁判所で争えば,後で判断していただけるということなのだけれども,持ってこられた段階では何を言っているのかよく分からないというようなものをどうしたらいいのかと。そこで一定の記載事項を定めておいたらいかがと,そうしていただけるのが助かるという御議論が出てくるのではないかなというふうに思うのです。   先ほどの生前の場合とのバランスということが出ていたかと思いますけれども,生前の場合に何も記載事項等の定めがなくて,しかし,遺言による処分のときには記載事項を定めるというのは,ちょっとなかなか難しいのではないかと思うのですね。実際上,生前の場合には書式を定めているので,それに見合った形でやってほしいという御希望だろうと思いますけれども,その御希望を生かすためには,むしろ生前の方についても一定の方式みたいなものを定めないと,ちょっと難しいのかなというふうに思います。   今,一連のことは,新しい一般法人法で遺言によって財団法人を設立にするときにどうするのかというルールが,従前に比べて少し詳しく書き込まれましたけれども,定款に記載すべき事柄を遺言の中に書かなければいけないと。遺言執行者がそれに基づいて,その認証を得て設立の登記をするとかいうような手続が定まっていますけれども,それとの見合いで考えたときに,生前の方に一定の要件がかかっていて,遺言だと,生前のように整った形でやるのは難しいかもしれませんけれども,それを若干緩和した形で,しかし要素を満たすような形で遺言がされていることが必要だというような制度は考えられるように思うのですけれども。繰返しになりますけれども,生前の方に何もないときに,遺言だけを何かするというのはちょっと難しいかなと。お気持ちはよく分かりますし,そこで紛争が生じ得るというのもそうなのだと思いますけれども,そこのところを法律上書くのは,少しなかなか難しいかなという感じがします。 ● そういうあたりで御了解いただけますでしょうか。もし,また何か,どうしても決定的な,致命的な問題点があるということに対しては,それはまた御指摘いただくことは結構かと思いますが,今日のところはこういうことで御理解を得たということにさせていただければと思います。   大分超過して恐縮なのですが,次の11頁からの「第10 保険金受取人等の意思による生命保険契約や傷害・疾病保険契約の存続」という問題について,ちょっとこれはかなり細かい問題も含まれていますから全部議論はできないと思いますが,前回まで二つの選択肢を両方提案していたような形になっていますが,今回は一方の方向へ絞ってはどうかという御提案なので,少し大きなところの御感触をいただければということですので,この点まで審議させていただきたいと思います。   まず事務当局から御説明をお願いします。 ● それでは,御説明いたします。まず,資料の1のところでは,規律を設ける場面,規律を設ける必要性について記載をしてございます。   資料では,保険料積立金,いわゆる解約返戻金のある人保険契約に限った規律とすることを提案してございます。この理由は,※1に記載したとおりでございまして,また,※2では,団体生命保険契約等を除くことを提案しております。   また,規律を設ける必要がある場面については,これまでの方向性と同じく保険契約者及び保険者以外の者が契約の解除をしようとした場面とすることを提案してございます。   さらに「一定の者」の範囲につきましては,中間試案の取りまとめの際にも御議論をいただきましたが,保険金受取人であり,かつ,保険契約者又は被保険者の親族である者で,保険契約者を除くということを提案してございます。この理由は※1に記載したとおりでございます。   次に2では,規律の骨格について記載してございます。   この点について,まず(1)のところで法律構成について,今回の資料では契約の解除前の規律とすることを提案しております。この点については,中間試案の段階では契約の効力発生後の規律を設けるのか,解除の効力発生前の規律と発生後の規律をセットで設けるのかということも検討課題としてございましたが,そもそも解除の効力が生ずる前と後についてそれぞれ異なる規律を設けることは複雑に過ぎることや,解除の効力が発生した後に,解除がされなかったものとみなすことは,契約法上も異例であることなどを踏まえ,解除の効力発生前の規律だけを設けることを提案してございます。   さらに解除の効力発生前の規律とした場合には,規律の実効性に疑問があるという御指摘もいただいていたところでございますが,これに関連して,(2)のところでは,解除は,保険者がその通知を受けた日から1か月の後に,将来に向かって,その効力を生ずるものとすることを提案してございます。   あと,(3)のところでは一定の金額の支払をしたときには,解除の効力は生じないものとすることを提案してございます。これについては資料の※1から4までに記載した点について検討する必要があるほか,差押えが競合した場合には一定の者が供託することができるなどとの規律を設ける必要があると考えられるところでございます。   最後に(4)では,規律の性質についても問題提起をしてございます。   以上です。 ● 相当細かい点も問題提起されておりますが,余り微細なところは入らずに,方向性としてこんなところだといかがなものかというあたりの御意見をいただければと思います。契約解除前の規律とすることでどうかという方向性でございますが,いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 方向性ということですので,保険料積立金のある人保険契約に限るものにするということに賛成いたします。 ● 法律構成としても,こういう解除前の規律でよろしいということでしょうか。   ○○幹事。 ● 最初に部会で議論されたときに,解除後の規律を提案されたわけです。そのときに私はこれはなかなかいい案かもしれないので,さらに検討していただきたいということを申しましたが,その関係で私から新しい案についてコメントさせていただきたいのですが,最初に部会で議論されたとき,あるいはそれ以前の保険法学者の間での立法論を議論していたときには,保険契約者の債権者が解除権を行使してきたときには,解除権を行使すれば,その時点で解除の効力が発生するということが恐らく大前提になっていたと思うのです。解除権というのはそういうものだと。   ところが,すぐに解除権を行使されて,解除の効力が発生してしまうと,保険金受取人が資金を調達してくる時間がないので,だから解除権を行使する前に一定の待ち期間が必要だと。ところがそうすると,保険契約法の枠内だけでは処理できなくて,民事執行法やら,あるいは民法の債権者代位の規定をいじらなければいけない。それが大変なので,事後の規律,解除後の規律というのは,恐らくそういうことを考えられたと思うのですが,今回の案では,そもそも,我々が前提としていたドグマというか,解除権というのは行使したら,その時点ですぐに解除の効力が発生するのだというところを,もうそのドグマを克服されたといいますか,解除の効力が発生するのを1か月後に延ばされて,その間に保険金受取人は資金を調達してくる余裕があるわけですね。   他方,その間に保険事故が発生してしまったときは,解約返戻金相当額が差押債権者等に支払われるので,債権者の利益も考えられているということで,いろいろ考えると,この問題というのはいろんな利害関係者の利益を考えなければいけなくて,あちらを立てればこちらは立たずということが多かったように思うのですが,今回の案を見ると,まだ深く考えたわけではないのですが,印象としては,あらゆるというか,ほとんどの利害関係者の顔が立っているのではないかと。かつ保険法の枠内だけで処理できるということですので,私は,こういうことであれば,事後の,解除後の規律はなしにして,解除前の規律だけにするということで結構かなというふうに考えております。 ● ○○委員。 ● 前に,この保険金受取人に限るべきかどうかということを少し申し上げたのですけれども,この制度,保険金受取人の期待権を保護する制度と見るのか,それとも保険契約が有している法律上は金銭に評価できないような価値を保護する制度として見るのかと。例えば,1,000万円の契約で解約すれば350万ですと。多分ドイツなんかは期待権保護なのだと思いますけれども,そこは妥協しまして,要するにその家計は多分お金がないから,普通は受取人はお金がないわけですから,どこかから持ってこなければいけないと。だから,結局受取人に貸すというか,融通するという形で機能させれば同じようなことかなと。ただ,制度趣旨をどう考えるかというのは,ちょっと本当は理論的にはいろいろあるかと思うのですけれども。   そうすると,後は実効性があるかという問題で,1か月というのがどうかというところだけ,私はまだよく本当にそういう仮定で1か月で全部アレンジできるのかと。でも,だから,そこはちょっとよく分からないのですけれども。ですから,そこはまた皆さんの,特に民法の先生方から意見を聞いて。方向性としては,こういう方向でいいのではないかと思いますが。 ● ○○委員。 ● 我々,介入権というのは本当に要るのかという議論をしていたのですけれども,仮に入れるとしたときには,解除後というよりも解除前の方がいいだろうというふうに思っていますし,ただ,細かい問題としては,介入権を持っている人が複数いたときにどうするのだとか,この待ち期間の間に事故が起きたときにどうするのだとか,細かいところはありますけれども,入れるとすれば,まだ全体の枠組みとしては解除後よりは受け入れやすいかなというふうには思っています。 ● ○○幹事。 ● 以前は解除前の仕組みを一方で用意し,さらに加えて解除後もセットで設けるという考え方が出されていたようにも思うのですけれども,なぜそういうある意味,複雑な考え方が出されていたかというと,解除前のところで十分に処理し切れるか。先ほど,○○委員がおっしゃった実効性の問題で,他方で,しかしながら解除の効果をとめるということは,それだけ差押債権者等に弁済を待ってもらうということになるわけで,余り長くはとめられないと。そうすると,そこそこの待ち期間を用意した上で,しかし,それ以上待たせられないというところは,多少解除の効果を一方で覆す形で,やや複雑な処理ではあるけれども,そういう形で利害関係者のそれぞれの利害を調整しようという考え方が,もし組み合わせるということであるとすると,あったのではないかというふうに思います。   それに対しては,そこまで複雑なことをしてまで,やるだけの必要性があるのかという問題の指摘もあったわけですが,他方で,解除前の規律だけを入れたときに,結局,もうさっと時間がたってしまって,使えるときがないよということが一番懸念されていたのではなかったかと思うのです。そうだとすると,組み合わせる考え方に対して,解除前の規律にすることによって,簡明性や透明性は高まったと思うのですけれども,他方で,よりその実効性の観点について強調するなり,仕組みを考える必要が,組み合わせる場合に比べると,より出てくるのではないかと。   そうしますと,それがどこに出てくるかといえば,期間の問題と,もう一つは機会の確保の点で,情報提供の問題ではないかと。ですから,ずっとここはかぎ括弧の形で,例えば「1か月」という考え方だったと思うのですけれども,後がないというときの期間の場合と,後がちょっとだけでも延びるという場合の期間設定とは違う可能性があると思いますので,期間は解除前になった場合はどうであるのかということは,また別途考える必要があるのだろうと思います。   もう一つの情報提供は,14頁の(3)の※4に書かれていて,保険契約者には分かっているので,差押え等は保険契約者からそれなりの関係者に通知をするであろうと。また,そもそもそういう同意の下で動いていく制度なのだからというのは,恐らくそのとおりだと思うのですけれども,ただ,場面としては差押えや破産手続開始決定の場合はそうだと思うのですけれども,質権に基づく取立てですとか債権者代位であった場合にきちんと分かるのかという点があって,それらの場合に十分に保険契約者が分かる形に,あるいは保険契約者に,あるいはこの権利の行使者に十分な機会が与えられるかという問題があると思われまして,私,個人的には,そもそも質権ですとか債権者代位の方できちんと手当てをすべき事項ではないかという気はしているのですけれども,そうなると,非常に大ごとにもなるということもあって,やはり入れるからには,実効性がそれなりにあると。どのぐらい必要性があるかと,もちろん原資の手当てもしなければいけませんし,使える場合は少ないのかもしれませんけれども,でも,これでは全然,実際にはもう知らないうちにやられてしまって意味がないということはもったいないというふうに思いますので,※4については,それ以外のここに書かれている差押え以外の場合についても,本当に大丈夫かという観点から確認をする必要があって,そういう意味で,期間とこの情報の点の二点で一定の考慮をした上で,この形の制度がとられるのであれば,基本的な方向はこれでよいのかなというふうに思います。 ● ほかに御意見ございますか。   ○○委員。 ● 今のお話の中で,今回の事務当局の案は親族に限ると。被保険者,契約者の親族ということですから,契約者側は分かっているのですね。受取人がだれかということは分かっているというか,連絡しようと思えばできると思うのですね。   一方,保険会社の方は,受取人の名前は確かに申込書に書いてあるから分かるのですけれども,住所等は把握していないのですね,実態として。そういったときに保険会社に対して,受取人に通知せよというのは,実際上できないということですね。 ● どうぞ。 ● 細かい話になって大変恐縮ですけれども,情報提供の在り方がだれにどういうことを言うのかという話はあって,権利行使をし得る主体に対して,権利行使の機会を確保するための情報提供をダイレクトにやっていくのか,それとも,もともとの差押えですとか,契約の解除がされたということを契約者に伝えるという話もあり得ると思うのです。   それで,一番問題視しておりますのは,契約者の知らないところで,代位の形で,例えば解除権の行使がされると,もうどうしようもないというような場合について,どのような手当てをするかという話かと思いますので。 ● ほかに御意見ございますか。   今までのところで何か事務当局,コメントはありますか。 ● 質権者による取立権の行使ですとか,債権者代位権でやられてしまった場合とかについて,御指摘の実効性の問題があるのは,そのとおりだろうと思っておりますが,そこまで手当てしようとすると,非常にまた重たい制度になってしまって,なかなかうまく仕組み切れないかなという思いもありまして,まさに御指摘いただきました点は14頁の※4に書きましたとおり,基本的にはもうそれは契約者サイドから,契約者の意思に反して解除がされてしまった,あるいは解除されそうになっている状態に立ち入ったときに,なお契約者は自らの意思でその契約を守りたいと考えているときには契約者のイニシアチブでやってもらう仕組みにせざるを得ないのかなというような考え方で,今回の提案をさせていただいているところでございます。 ● ○○幹事。 ● ○○幹事と○○委員のお話を聞いていますと,○○幹事は質権と債権者代位権の場合は,保険者から保険契約者に連絡をすればよいという,そういう御主張をされたのかなと理解しているのですが。 ● 解除がされたという事実が伝われば,あとは保険契約者から。だけれども,保険契約者自体が分からない状態であればということを考えていたのですが。それとも,根本的な現実を多分理解していないのかと思います。当然そういう通知がされるのであれば。 ● 少なくとも法律上は手当てをするまでもなく,それは契約が終了したら,終了したということが契約者に伝わるのかなということを期待していたということです。もし,そのあれが全く違うということになると。 ● 契約が終了するのは,このルールだと1か月後ですから,単に債権者が債権者代位権を使って解除すると言ってきた場合に保険者は分かるわけですね。だから保険者は保険契約者にそういう請求が来ましたということを通知すれば,後は保険契約者が保険金受取人にお金を集めてきて,この介入権を使ってくれという連絡をすればいいので,ですから,保険者の負荷としても,単に保険契約者に通知するだけで済むのではないかと思うのですが。 ● ちょっと勘違いしていました。その点はおっしゃるとおりですので,そこまで仕組むかどうかということで,さらに考えてみたいと思います。 ● その点について何か,実務家委員のコメントはございますか。 ● ちょっと実務を確認してみますけれども,全く契約者が知らない間にできるのかなというのがちょっと,確認してみないと分からないですね。 ● とにかく債権者代位権を行使しますと言って,解除通知が,解除の申出が保険会社に債権者からあるわけでしょう。それは有効なあれかどうかは分からないけれども,とにかく保険会社としては,債権者代位権の行使による解除の申入れを受けましたということを,単にその事実を淡々と契約者に通知することはできませんかという,そういうことですね。 ● それは今そういう制度でなければ,やればできると思います。 ● ○○委員。 ● よく分からないですけれども,そのときは本当に契約者が知らない状態の中でそういうことが起きるのですかね。 ● ○○幹事。 ● 全く知らないかどうかではなくて,いつその権利が行使されたか,そこから1か月,きっちり初日を決めないといけない話ですので,何月何日というところを知らなければ,この制度はやはりうまくいかないわけですから,その点ではやはり保険者が通知を受けた日が基準というのは,私は少し問題があると思っていまして,少し実質的な問題になるかもしれませんけれども,契約者が知った時という方がまだ実効性があるのかなというふうに思っているのですが,いかがでしょうか。 ● それでは,大きな方向としては今,御指摘があったようないろいろな問題点があると思います。そこらあたり,何か問題が解決できるのかどうか,まだやってみないと分からないところがありますが,今日の案を基にそういう検討をしていただくと。そこら辺で大きな障害がなければ,こちらの方向へ行くということで,方向性としてはそういうことで,今日のところは御了承いただいているということでよろしいでしょうか。   それでは,なお,細かい点を,今日の御指摘も踏まえて詰めていただこうかと思います。   そうしますと,14頁からの強行規定性の重大な問題が残ったのですが,もう相当な時間をとりましたので,これは次回の方へ回させていただきたいと思います。その点も含めて,次回のことにつきまして事務当局からお願いします。 ● 次回,第19回会議になりますけれども,個別論点の検討の4回目ということで,11月14日,午後1時30分からの開催を予定しております。   以上でございます。 ● 次回はこの読会の割と最後。 ● あと2回あります。 ● そうですか。では,今日の残ったのが積み残されまして,できるだけ進みたいと思います。ある程度の時間は御予定おきいただければと思います。   それでは,そういうことで,今日は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 ─了─