法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  平成19年11月9日(金) 自 午後1時00分                       至 午後3時00分 第2 場 所  東京区検察庁会議室(6号館B棟5階) 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事  (次のとおり)                   議        事 ● 定刻になりましたので,ただ今から法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第10回会議を開催いたします。 ● 本日からは,前回の会議で皆さんにお諮りしましたように,当部会における第一巡目の議論と外国法制の御報告を踏まえ,第二巡目の議論に移りたいと存じます。   まず,本日は「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」のテーマについて,第二巡目の議論を行わせていただきたいと考えております。その議論に入る前に,事前にいただきました委員,幹事の方々からの御要望を踏まえ,事務当局の方で統計関係の配布資料を用意したそうですので,まず,これにつきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 資料23として配布しております「統計資料5」について御説明いたします。   統計資料5の1は「刑期2年以下の新受刑者の罪名別刑名・刑期」であり,平成14年から平成18年までの各年の新受刑者のうち,宣告刑の刑期が2年以下であった者について,罪名別に,その刑名・刑期の内訳を示したものでございます。例えば,刑期2年以下の新受刑者の総数でございますが,平成14年では,1万7,713人となります。そして,平成18年では,1万9,194人となります。   続きまして,統計資料5の2は「罪名別刑の執行猶予の言渡しを受けた者の人員」であり,平成14年から平成18年までの各年において,刑の執行猶予の言渡しを受けた者につきまして,罪名別に,猶予された刑の刑名・刑期の内訳や保護観察の有無の内訳などを示したものでございます。例えば,執行を猶予された刑が2年以下の懲役・禁錮であった者の総数は,平成14年で申し上げますと,4万6,503人であり,同じく平成14年に刑の執行猶予を言い渡された者のうち,保護観察に付されたものは,この表では,4,277人,574人,435人の3つに分けて表示されておりますが,その合計の5,286人となります。   他方,平成18年では,執行を猶予された刑が2年以下の懲役・禁錮であった者の総数が4万2,311人であり,同じく平成18年に刑の執行を猶予された者のうち,保護観察に付されたものが合計して4,330人となります。   統計資料5の3は「入所度数1で刑期2年以下の新受刑者の罪名別刑名・刑期」であり,平成14年から平成18年までの各年の新受刑者のうち,入所度数が1,すなわち初入の受刑者につきまして,罪名別に,その刑名・刑期の内訳を示したものでございます。例えば,刑期2年以下の初入の新受刑者の総数は,平成14年では,8,989人となり,平成18年では,9,457人となります。   統計資料5の4は「2年以下の有期刑仮釈放許可人員の罪名別刑の執行率」であり,平成14年から平成18年までの各年に仮釈放が許可された者のうち,執行すべき刑期が2年以下であったものについて,罪名別に,刑の執行率,すなわち執行すべき刑期に対する実際に執行した期間の割合を示したものでございます。例えば,平成18年では,執行すべき刑期が1年以内で仮釈放を許された者の合計は1,472人であり,そのうち,刑の執行率が80パーセント以上89パーセント以下のものが767人,90パーセント以上のものが341人であり,合計すると,80パーセント以上の執行率であったものが1,108人となります。   統計資料5の5は「罰金刑執行件数及び金額について」であり,平成14年から平成18年までの各年に罰金刑が執行された事件数と,そのうち労役場留置の処分がなされた事件数の内訳を示したものでございます。なお,後に説明いたします配布資料24の統計資料6の中にも労役場留置に関するものがございますが,御覧いただいております統計資料5の5の方は,事件数ベースのものであることを申し添えます。例えば,平成18年では,64万3,971件,罰金額にして1,006億1,625万4,000円が執行され,そのうち労役場留置処分がなされた事件数は7,376件,罰金額にして21億9,452万1,000円となります。   資料23の御説明は以上でございます。 ● 続けて配布資料の説明をお願いします。 ● 続きまして配布資料24の「統計資料6」について御説明いたします。   番号順に御説明いたします。   まず,統計資料6の1の「刑事施設の年末収容人員の推移」と,2の「刑事施設の一日平均収容人員の推移」について御説明いたします。刑事施設の収容人員は平成18年末の数値を見ましても,引き続き増加傾向にあって,年末収容人員では平成13年以来,収容定員を上回る過剰収容となっております。中でも,既決の過剰収容が深刻でありまして,平成9年末から18年末までの間に約3万人,率にして約70パーセント増加しております。未決につきましては,本表では,平成16年以降,増加傾向がやんだかに見られますけれども,刑事施設への移送待ち解消について警察からしばしば要請を受けている状況にもありますので,未決がはっきりとした減少傾向にあるとは,いまだに言えないのではないかというふうに思っております。   統計資料6の3は,「新受刑者数の推移」であり,新受刑者数につきましても,引き続き増加傾向にありまして,平成9年の新受刑者数が2万2,700人弱であったのに対しまして,平成18年の新受刑者数は3万3,000人強と,人数にして約1万400人,率にして約46パーセント増加しております。特に女子新受刑者の伸びが顕著でありまして,平成9年には1,150人であったものが平成18年には2,333人になっておりまして,2倍以上の伸びを示しております。   統計資料6の4は「男女別,罪名別新受刑者数」であり,新受刑者の罪名で見ますと,窃盗が全体の30.1パーセントと総数の3割以上を占めて最も多くなっているほか,覚せい剤取締法違反が男女とも高い比率を占めており,男子で19.6パーセント,女子で33.6パーセント,全体で20.6パーセントとなっております。特に女子については覚せい剤取締法違反が窃盗を上回り,女子新受刑者全体のおよそ3分の1を占めております。   なお,本表では明らかではありませんけれども,10年前の平成8年と比較しますと,覚せい剤取締法違反の構成比は10年前に比べると低下しております。男子の場合,平成8年では28.1パーセントであったのが,平成18年では19.6パーセントまで下がっており,女子の場合,平成8年に52.6パーセントであったのが,平成18年では33.6パーセントまで下がっております。   統計資料6の5の「懲役新受刑者の刑期別構成比の推移」,同6の「受刑者の平均刑期(有期刑)の推移」,同7の「刑期別年末在所受刑者数」の三つの表について御説明いたします。受刑者の平均刑期は平成9年に24.8月であったのに対し,平成18年には29.3月となっておりまして,この10年間で4.5月の伸びが認められます。第5表の新受刑者について刑期別で見ますと,刑期2年以下の受刑者数の割合は平成9年から18年までの間に66.5パーセントから57.8パーセントに減少している一方で,刑期3年を超える新受刑者の割合は,同期間に14.5パーセントから20.4パーセントに増加しており,平均刑期の伸びを裏付ける状況となっております。   統計資料6の8は「労役場留置者の入場人員及び収容人員」でございます。労役場留置人員は,年末収容人員について見ますと,増加の傾向が認められておりまして,平成9年末には179人であった入場者数が平成18年には912人に増加しております。特に平成14年以降の増加が著しく,平成18年末の収容人員は平成13年の年末収容人員の約2.5倍に増えております。   統計資料6の9の「主要罪名別出所受刑者の出所事由」,同10の「出所受刑者の出所事由及び在所期間」について御説明いたします。出所受刑者に目を向けますと,平成18年は,仮釈放による者が1万6,081人,率にして52.6パーセント,満期釈放は1万4,503人,これは47.4パーセントであります。ちなみに平成17年は,仮釈放が1万6,420人で54.7パーセント,満期釈放が1万3,605人で45.3パーセントになっています。ここ数年の傾向を見ますと,満期釈放される者の比率は,おおむね40パーセント台の半ばから後半にかけて推移しているというふうな状況でございます。罪名別で見ますと,仮釈放率の高い罪名は業務上過失致死傷で77.3パーセント,覚せい剤取締法違反も仮釈放率は比較的高くて59.2パーセントとなっておりまして,逆に低いのは傷害で32.8パーセントとなっております。   統計資料6の11は「出所受刑者の出所事由及び更生保護施設を帰住先とする者の割合」についてでございます。更生保護施設に帰住した者の比率は,満期釈放,仮釈放のいずれにおいても低下しております。満期釈放された者のうち更生保護施設を帰住先とするものの割合は,平成8年の9.5パーセントから平成18年には3.8パーセントに低下しており,また,仮釈放により出所したものについても,平成8年には31.3パーセントでありましたけれども,平成18年には23.1パーセントまで低下しております。   最後に,統計資料6の12-1から12-2,13,14とまとめて御説明いたします。   12-1は「平成16年出所者の3年間の再入率」,それから12-2は「平成14年出所者の5年間の再入率」,13は「仮釈放・満期釈放別出所当年及び出所5年の刑事施設再入率の推移」,それから14は「再入受刑者の前刑罪名別再犯期間」となっております。   再入率を罪名別に見ますと,窃盗,覚せい剤取締法違反の再入率が高くなっておりまして,仮釈放・満期釈放別では満期釈放の再入率が高い傾向が続いております。13表で,出所後5年間の再入率を示しておりますが,そのうち,平成14年に出所した者の平成18年末までの出所後5年間の再入率を見ますと,仮釈放により出所した者は33.3パーセント,満期釈放により出所した者は56.7パーセントであり,平成14年に出所した者全体では43.6パーセントであります。同じく13表で,各年の出所受刑者の再入率の推移につきましては,出所5年の再入率が得られている平成14年までの出所受刑者について見ますと,若干の低下傾向が見られます。  また,14表で,再入した者の再犯期間を罪名別に見ますと,窃盗,詐欺の再入受刑者については出所後短期間での再度罪を犯した者の比率が高くなっております。具体的には,再犯期間6月未満で見ますと,窃盗が29.9パーセント,詐欺が37.3パーセントであるのに対し,覚せい剤取締法違反では14パーセント,全体では22.8パーセントとなっております。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今,資料について御説明いただいたわけですが,これに関しまして何か御質問等がございましたら,お願いいたします。 ● 細かく分析していただいており,かつ,また何年かにわたる資料で大変有益だと思いますが,一つ教えていただきたい。どの表を見ましても,窃盗,それから覚せい剤,詐欺というこの三つが数量的に上位を占めているようでありますが,いずれも暴力団とは必ずしも関係が深くないように思われます。そうしますと,覚せい剤は若干別かもしれませんが,一般に抱かれている,受刑者には暴力団関係が多いという考えは正しくないわけでしょうか。 ● 平成18年においては,新受刑者中暴力団加入者の総数は4,143人であり,そのうち,罪名が覚せい剤取締法違反であるものは1,424人,窃盗であるものは504人,詐欺のものは239人になっております。   なお,平成17年における新受刑者中暴力団加入者の総数は4,612人であり,これに対し,平成18年の総数は前述のとおり4,143人でありまして,平成17年に比べて減少しております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 労役場留置に関して二点お伺いします。一点目は,先ほど御説明がありましたように,統計資料6の8によると,入場人員が,平成14年から急激に増加しているのですが,他方,統計資料5の5によれば,罰金刑全体の執行件数は,平成14年以降は,むしろ減少傾向にあるわけですね。それにもかかわらず,労役場留置がなぜ増えているのかについて,お分かりになる点があれば教えていただきたいと思います。それから,第二点目の質問ですが,統計資料6の8は,労役場留置の入場人員と収容人員の統計なのですが,労役場留置の期間に関する統計は取られていますでしょうか。 ● 労役場留置の人員数が増えている理由について,私どもで分析調査したところではありませんが,例えば,罰金刑の引き上げ等により一件当たりの罰金額が増えたことなどが考えられるのではないかと思われます。 ● 労役場留置の期間に関する統計は取っておりません。 ● よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。 ● 少し教えていただきたいのですが,収容人員に関する統計は平成18年までのものですけれども,例えば,今年,平成19年に入って若干収容人員が減りつつあるとか,そういうような状況は御実感としてありませんでしょうか。といいますのも,警察活動における検挙者数は長期的には減少傾向にあるので,それを反映して,受刑者等の数も減りつつあるのではないかなと思ったものですから,お教えいただければと思います。 ● 平成19年において,既決につきましては相変わらず増加しております。ただ,その伸び率というのは若干低下してきているところはあります。他方,未決につきましては,減少傾向が見られます。未決が減ると,将来,既決も減ってくるというふうなことに単純につながるのかどうか,今のところまだ分からない状況でございますが,既決人員数の伸び率がやや鈍化してきたかなということはひとつ言えるかと思います。 ● ありがとうございます。 ● よろしいですか。 ● 統計資料6の8で,労役場留置のお話が出ましたけれども,拝見しますと直入というのがどんどん増えてきて,資格移動はそれほどでもないという状況で,労役場留置に処せられる者の性格が少し変わってきたのかなという気がいたしますが,その辺はいかがでしょうか。以前は,資格移動が圧倒的に多くて,どうせ懲役で実刑を受けるから罰金の方も労役場にというのが大部分であるというように聞いていたんですが,どうもその状況が変わったようにも思われますが,現場の感覚として,いかがでしょうか。 ● 現場の感覚で申し上げますと,全く個人的な感覚ですが,罰金を納付できない人が増えているのではないかなという気がしないではないのですが,正確なところは何とも申し上げられません。 ● よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。 ● 再入率を見ていると窃盗とか詐欺が多いということなんですが,詐欺の場合について,いわゆる経済犯罪のような詐欺もあれば,無銭飲食のような詐欺もあると思うんですが,そのあたりの統計的なものあるいは感覚的なもの,何かありますでしょうか。恐らく無銭飲食ならば,また食べるものがなくなったから入ろうという形で入るというのは,結構,我々が国選でかつても行っていましたので,それはかなりの数があるのではないかなと推測しているんですが。 ● これも特別分けて統計を取っているわけではございませんが,個人的な感覚として,従来とほとんど構成比は変わっていないのではないかと思っております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 一点だけ確認なのですけれども,労役場留置者の罪名別の統計も取っていらっしゃいませんか。 ● そのような統計は取っておりませんので,はっきりしたことは申し上げられませんが,個人的な感覚としては,道路交通法関係の者が多いのではないかなと思っております。 ● では,○○委員,お願いいたします。 ● 配布いただいた統計資料では,労役場留置が非常に増えている,特に直入が増えているということでしたが,その原因として,例えば,検察の執行方針が変わったから増えたということではないというふうに理解していいんでしょうか。 ● 私の承知しているところでは,検察の執行方針が特段変わったということではないと思います。やはり刑罰の執行ですので,従前から厳正に対処しているものと承知しております。 ● 統計資料につきましては,また今後,具体的な数字を見ながら御質問することもあろうかと思いますが,ほかにいかがでしょうか。 ● これもまた統計上は非常に難しいのかもしれませんけれども,先ほどのお話ですと道交法関係が多いと言われていると,車の所有者なら罰金が払えないということは考えられないんだけれども,持っていない方もおられると思うんですが,そういうデータは全く分からないですよね。 ● ええ,承知しておりません。 ● 統計資料に関する御質問は以上で終わることにして,審議に入りたいと思いますが,よろしいでしょうか。   御異論がございませんので,「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」のテーマにつきまして,第二巡目の議論に移ることにしたいと思います。   ところで,社会奉仕を義務付ける制度と申しましても,これまでの議論などからも明らかなように,例えば,刑罰と位置付けるか,あるいは保護観察の枠組みで行うものと位置付けるのかなど,制度の法的位置付けとして様々なものが考えられ,また,その法的位置付けごとに制度の具体的在り方も様々であると考えられます。そこで,議論の焦点がより明確になるよう,私としては,考えられる検討事項を整理し,これに沿って御議論いただくのが適当ではないかと考えております。本日,皆様のお手元に配布している,「『社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否』の検討事項」というタイトルの資料は,私が事務当局と相談して作成した資料でございます。   そこで,まず事務当局から,この資料の概要と,これに沿った議論の進め方について説明していただきたいと存じます。 ● お手元に,配布資料22として,「『社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否』の検討事項」というタイトルの資料をお配りしております。   ただ今,御紹介いただきましたように,一口に社会奉仕を義務付ける制度と申しましても,その法的位置付けや制度の具体的在り方などには様々なものが想定され得るところです。   そこで,まず1として「考えられる制度の法的位置付け」と題して,これまでの御議論,御報告等を踏まえまして,その実現の可能性は濃淡様々かもしれませんが,考えられる位置付けとして,①から⑤までの5つを挙げました。   次いで,2として「上記1の各法的位置付けの当否を検討するに当たり考慮すべきと考えられる事項」を挙げました。これは,いずれも制度の具体的在り方に関連するものでございますが,考えられる制度の法的位置付けごとに,その制度の具体的在り方が大きく変わってくることを踏まえまして,1の各法的位置付けによる制度導入の当否を検討するに当たり,考慮すべきと考えられる項目として①から⑥までの6つを挙げたものです。   もとより,お配りした資料の表題のすぐ下に(注)として記載しておりますとおり,ここに掲げております検討事項は,これまでの議論などを踏まえまして当面考えられるものを挙げたものでございまして,今後の部会での御議論をこの範囲に限定するという趣旨のものではございません。   そして,この資料に沿ってどのような進め方で御議論いただくのが適当かというところの御提案でございますが,先ほども申し上げましたように,考えられる法的位置付けごとに制度の具体的在り方が変わってまいりますことから,1の法的位置付けと,2に掲げた事項とを切り離して議論するのではなくて,関連付けて御議論いただくのが適当ではないかと考えております。   そこで,社会奉仕をこの資料の1の「考えられる制度の法的位置付け」に記載しております①から⑤までの法的位置付けとして導入することの当否について,それぞれの法的位置付けごとに,2に記載した①から⑥までの各事項を踏まえながら御議論いただくというのが分かりやすく,かつ議論の焦点をより明確にしやすい進め方ではないかと考えております。   具体的に申しますと,まず,社会奉仕を資料の1の①の「独立の刑罰」という法的位置付けとして導入することの当否について,資料の2の①ないし⑥の各事項を踏まえながら御議論いただき,以後,順次,資料の1の②以下の法的位置付けについても,同様の手順でその当否を御議論いただくこととしてはどうかというふうに考えているところでございます。   なお,そのような議論の進め方で皆様の御了解が得られますならば,資料の記載の趣旨などのより詳しいところにつきましては,これから,各法的位置付け等の御議論をいただく際に,必要に応じて御説明させていただければと考えております。 ● どうもありがとうございました。   ただ今,事務当局から,お手元の資料の概要と本日の議論の進め方の案について,私と事務当局であらかじめ御相談したところを御説明いただきました。   まず,ただ今の御説明に御質問がございましたら,どうぞよろしくお願いいたします。   いかがでしょうか。  特に御質問はないようですので,次に御意見を伺いたいと思います。私としても,先ほども申し上げましたように,議論の焦点を明確にするためには,事務当局から御説明がありましたような方法で議論を進めるのが適当であろうと考えているところでございますが,皆様の御意見はいかがでしょうか。   特に御異論もございませんようですので,先ほど事務当局から説明いただいた方法で進めさせていただくことにいたします。   先ほど事務当局からも説明がありましたように,お手元の資料のより詳しい説明は必要に応じて,これからの御議論の中で,事務当局から適宜説明していただくことにいたします。   それでは,これから資料に沿って御議論いただくこととしますが,その前提として,私の方から一点確認させていただきたいと思います。法的位置付けの⑤の「保護観察の一内容とするもの」に関連するところですが,先般,新たに制定されました更生保護法において,社会奉仕を保護観察の遵守事項とするなど,保護観察の一内容として義務付けることができるのかどうかということにつきまして,更生保護法の解釈を事務当局の方から御説明いただきたいと思います。その点いかがでしょうか。よろしくお願いします。 ● 保護局でございます。今,御紹介いただきましたように,⑤で後ほど具体的に御議論いただくということですので,この段階では簡単に説明させていただきたいと思います。   更生保護法において,社会奉仕活動を保護観察の一内容として義務付けることができるかということでございますが,そのように社会奉仕活動を保護観察の一部として義務付けるためには,まず,保護観察制度の趣旨に合致することが必要であり,そのためには,保護観察は刑罰ではないことから,制裁を目的とするものではなく,改善更生を図ることを目的として実施されるものであること,保護観察の制度趣旨に照らして適正妥当な限度で行われることが必要であると考えております。この点に関しては,更生保護法第49条に「保護観察は,保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として,第57条に規定する指導監督及び第58条に規定する補導援護を行うことにより実施するものとする。」と規定してあるとおりでございます。   更生保護法はこのことを前提といたしまして,保護観察対象者に特段の義務を課す制度として第51条の特別遵守事項及び第56条の生活行動指針を規定しているところでございます。このうち,第51条の特別遵守事項につきましては,これに違反した場合には仮釈放の取消し等のいわゆる不良措置をとることがあることを踏まえ,保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において定めることとされており,相応に限定的なものとなると考えられるものの,第51条第2項第4号のいわゆる専門的処遇プログラム,すなわち特別遵守事項として設定が可能な専門的処遇プログラムの中に,特定の社会奉仕活動を合理的に体系付けることにより,社会奉仕活動を当該専門的処遇プログラムの一環として義務付けることは可能であると考えられます。   また,第56条の生活行動指針は,義務付けということの程度にもよるところなんですけれども,その違反が直接不良措置に結び付くわけではない点で強制の程度が弱いことから,改善更生に資すると認められる一定の社会奉仕活動は,生活行動指針として定めることが可能であると考えられます。  第51条の特別遵守事項については,保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において定めるものとされているのに対し,第56条の生活行動指針は,保護観察における指導監督を適切に行うため必要があると認めるときに,保護観察対象者の改善更生に資する生活又は行動の指針として定めるものとされております。そして,そのように生活行動指針が定められましたときには,第56条第3項により,保護観察対象者は,これに即して生活し,及び行動するように努めなければならず,その範囲で義務を負うことになるものと考えております。 ● どうもありがとうございました。   ただ今御説明いただいたところは現行法の解釈の問題でございますが,この点につきまして何か御質問がございましたら,よろしくお願いいたします。 ● 特別遵守事項として義務付けるとしたら,51条2項4号の専門的処遇プログラムの一環として義務付けることが考えられるというお話であったのですが,6号により,直接に社会奉仕活動を特別遵守事項にすることはできないのでしょうか。 ● 更生保護法の解釈としては,保護対象者に一定の作為義務を課す特別遵守事項の類型というのは2号及び4号であり,6号は,指導監督上の手段として必要な特別遵守事項の類型であるというふうに整理しており,6号には社会奉仕活動は当たらないものと考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 更生保護法51条2項4号に規定する専門的処遇プログラムの一環として,限定的ではあるけれども,社会奉仕活動を義務付けることは可能ではないかという御意見だったんですけれども,具体的にはどういうことが考えられますでしょうか。 ● 例えば,飲酒運転を繰り返す者に対して,医学,心理学,教育学,社会学等の知見に基づき,アルコールへの依存を自覚させ,飲酒運転が社会にもたらす害悪を認識させた上で,アルコールへの依存からの脱却に取り組ませるとともに,交通安全及び交通法規遵守に対する意識を高めさせることにより,そのような特定の犯罪的傾向を改善する専門的処遇の一環として,交通安全及び交通法規遵守の重要性を体感させることを目的として,特定の社会奉仕活動,例えば,交通安全チラシやポスターの作成・配布,道路上の環境整備,放置自転車の整理・撤去の補助,あるいは交通遺児育英募金の活動などを行わせることが考えられます。 ● どうもありがとうございます。そうすると,今のお話は,保護観察対象者の犯した犯罪と社会奉仕活動の内容とが非常に密接に結び付いているという例を挙げていただいたのですけれども,更生保護法56条の生活行動指針として定めることが可能なものというのは,もっと犯罪とのつながりが薄くても社会に役立つものであれば可能ではないかという御趣旨なのでしょうか。 ● 更生保護法では,特別遵守事項に違反すれば,仮釈放や保護観察付執行猶予の取消し等の不良措置が課されることとなりますので,特別遵守事項は,保護観察対象者の改善更生に特に必要と認められる範囲内で定めるものとされております。その観点から考えますと,社会奉仕活動を特別遵守事項の一環として義務付ける場合,それが改善更生に特に必要と認められる範囲内というためには,犯罪と社会奉仕活動の内容との結び付きが必要になってくるように思われます。  他方,生活行動指針については,そのような不良措置はないものの,対象者の改善更生に資するものであることが要求されておりますから,特別遵守事項とする場合ほどではないとしても,やはり何らかの形での関連性というんでしょうか,改善更生に資する程度の関連性は必要ではないかと考えております。 ● これから,社会奉仕を義務付ける制度の法的位置付けの議論を始めるに当たり,保護局に現行制度の御質問をされた趣旨をもう一度お伺いしたいのですが。 ● 私といたしましては,新たな法制度を導入するという立法問題を議論するに当たりましては,現行法によって賄える部分,つまり現行法の射程がどうであるのかということが,例えば立法事実の関係などの点で,議論の前提となる問題であると考えております。そこで,社会奉仕を義務付ける制度についても,今後の議論の前提として,まずは,現行法の枠内では,何がどこまで可能なのかというところを,ただ今御説明いただいたという趣旨です。 ● 分かりました。事務当局の解釈では,現行法では,特別遵守事項であれば相当限定的になる一方,生活行動指針であれば,改善更生に資するという程度のものであることから,特別遵守事項に比べてかなり範囲が広がるという御趣旨ですか。 ● はい。 ● その枠組みとの関係でもう一点お聞きしたいんですが,事務当局の御説明では,更生保護法51条2項の本文といいますか,柱書の規定により,保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内でなければいけないということを最初におっしゃっておられたと思うんですけれども,それと,同項の1号から6号までの各号に当たるかどうかということとの関係はどういうことになるんでしょうか。つまり,現行の1号から6号までの各号と並列して,例えば社会内奉仕活動という類型の号を新設すれば,要するにこの51条の精神からはおかしくないということになるのか,それとも,51条2項本文からすると,むしろ社会内奉仕活動というのは,この枠には余り適当でないというふうに考えるのか,それはどちらなんでしょうか。 ● そのあたりは,これから,この部会でお考えいただく社会奉仕を義務付ける制度において,社会奉仕というものを何の目的のための,どういう内容のものとして考えるかというところによって,更生保護法の枠組みにそのまま当てはまるのかどうかというところが決まってくるのではないかと思います。そういう意味では,現段階において事務当局からお答えするのが適当な問題ではなく,まさに今申し上げたように,これから御議論いただく制度の具体的在り方によるということなのだろうと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。   特に御意見がございませんようですので,本題に入っていきたいと思いますので,よろしいでしょうか。   それでは,本題に入ってまいりたいと思います。   先ほどお諮りしましたように,お手元の資料の1の①,社会奉仕を「独立の刑罰」という法的位置付けとして導入することの当否についての検討から始めることとしたいと存じます。それで,まず,事務当局から,社会奉仕を「独立の刑罰」と位置付けた場合の制度の概要ないしイメージについて御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ● 現行制度では,刑罰の種類として,刑法9条に,死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料が規定されておるところでございますが,資料の1の①の法的位置付けは,社会奉仕を,懲役,禁錮等の既存の刑罰と同様に,独立の刑罰と位置付けるという趣旨のものです。   したがって,裁判所の判決により刑罰として一定の社会奉仕が義務付けられ,そして刑罰の執行としてこれが実施されるということになろうかと考えております。また,この場合,刑法総則に刑の種類として社会奉仕を規定するほか,刑法各則など各犯罪の罰則中にも法定刑ないし選択刑として社会奉仕を規定するということが必要になるのではなかろうかと考えているところでございます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の事務当局の御説明に対して,何か御質問はございますでしょうか。   御質問がございませんようですので,資料の2の各事項を踏まえながら,社会奉仕を独立の刑罰という法的位置付けとして導入することの当否につきまして,皆さんに御議論いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。 ● 社会奉仕活動を独立の刑罰とするのが適切かどうかという観点から見ますと,社会奉仕活動に刑罰としての性格を明確にしたいというお考えの立場からは,それが良いということになりますでしょうし,逆にそうすべきでないという立場からは反対の御意見になるわけで,これは考えられる社会奉仕活動の内容をどう定めていくかということによって決まると思います。   私はそこへ行く前にちょっと形式論ですけれども,ここで現行法には余りこだわってはいけないという御注意もありましたが,○○幹事御自身,刑法9条を引用されましたので,その隣にある10条との関係はどうなるのかなと考えております。日本では,昔から刑の軽重を法律で決めて,順番を定めるのが定着しておりますので,社会奉仕活動というのを9条に書いた場合に10条でどうなるのか,その順序のとおりということでよいのかどうか。さらに言えば,これを各則にも書くと言われましたけれども,いかにも何かそぐわないような感じも受けますけれども,各則の場合,社会奉仕活動何時間というようなことまで書くのか,それとも,それは別の定めにして間に合わせるのか。その辺り,形式論ですけれどもどんなものでしょうか。 ● 今,○○先生から御指摘いただいたところが,資料で申しますと,2の②の「対象者」の事項や,④の「作業の内容・時間数」といった事項に関連するところかと存じます。  まず,刑の軽重,刑法10条の関係でございますけれども,社会奉仕を独立の刑罰として位置付けた場合に,これを10条に規定する刑の軽重の序列の中で,どこに位置付けるのが相当かというところは,今後御議論いただくべき一つの論点でなかろうかと思っております。 考え方によっては,社会奉仕は懲役・禁錮と罰金との間に位置する刑罰であると考えることもできるかもしれません。ただ,例えば,今まで諸外国の例ということで様々な具体例を御報告いただきましたけれども,道路のごみ拾いとかあるいは介護補助とか,そういった程度の作業を内容とするのであるとすれば,それが果たして,多額の財産のはく奪もあり得る罰金刑よりも重い刑罰と言えるのかどうかには疑問の余地もあるように思われます。 そのように考えると,社会奉仕は,罰金と拘留の間のものとも言えるかもしれませんし,さらに言えば,拘留は刑事施設に拘置して自由をはく奪する刑ですから,拘留よりも軽い刑罰であると考えることもできるかもしれません。   そして,社会奉仕をどういう重さの刑罰として位置付けるかによって,制度の対象として,どのような対象者や対象犯罪を念頭に考えていくのか,あるいは,どのような作業内容・作業時間数を考えていくのかなどの御議論につながっていくのではなかろうかというふうに考えております。したがいまして,その意味で,今後の御議論において,そのような点も含めて御議論いただければということで考えております。   それともう一つ,社会奉仕の作業時間数などを各則に規定するのかどうかというところでございますけれども,やはり独立の刑罰ということで,懲役,禁錮等に並ぶ刑として社会奉仕を位置付けるということであれば,罪刑法定主義の観点からいたしますと,やはり刑法各則などの個々の犯罪の罰則中に,社会奉仕を法定刑として規定するとともに,その上限ないし下限として一定の作業時間数などを規定するというのが恐らく本筋なのだろうと考えております。もちろん,その点についても御議論いただければと考えておりますけれども,ただ,先ほど○○先生がおっしゃられましたように,そのように刑法各則中に社会奉仕の法定刑を規定していくことが果たして可能かどうかということも,やはり考えなければいけないのではなかろうかと考えております。 ● どうもありがとうございました。   冒頭から難しい問題が出ておりますが,いかがでしょうか。どうぞ,○○委員,お願いします。 ● 前回までにいろいろな国のお話を聞いて,ちょっと記憶が定かでなくなりましたので,復習のためにお伺いしたいのですが,今,○○幹事が御説明になられた独立の刑罰というイメージで社会奉仕命令を位置付けている国,制度というのはございましたでしょうか。 ● まず○○委員に御報告をいただきましたイギリス及びフランスでございます。また,前回○○先生に御報告いただいたアメリカのカリフォルニア州も独立の刑罰として社会奉仕を科しております。ただし,フランスでは,執行猶予の条件といいますか,それに付随するものとしても社会奉仕を義務付けております。また,カリフォルニア州では,独立の刑罰のほか,保護観察の条件として社会奉仕を課す場合もあります。  他方,○○先生に御報告いただいたドイツでは,独立の刑罰として社会奉仕を科す制度はなく,保護観察のための刑の執行の延期制度において,その保護観察の遵守事項等として公益給付つまり社会奉仕を義務付けているものと承知しております。 ● ○○先生の御質問とも関係しますが,独立の刑罰とする場合の法律の書き振りというのはどんなふうになっているのでしょうか。 ● 伺っておりまして,まさに○○先生の御質問のところが,今後の議論において総論的な大事なところだと思うのですけれども,この資料を拝見いたしまして,1のところで①から⑤まで挙がっておるのですけれども,個人的には,大きく分けますと,①から③をひとまとまりにして,④,⑤はまたひとまとまりかなと思います。   ①から③ですと,社会奉仕の内容をどう理解するかは別といたしましても,広い意味での刑罰に位置付け,それを独立のものにするのか,短期自由刑ないし拘禁刑の代替刑とするのか,罰金刑の代替的なものにするのかということだろうと思いますので,○○委員の御質問にも併せて答えさせていただくと,例えば,他国の例といたしましては,懲役,禁錮を含む拘禁刑の下に社会奉仕を命令する刑罰があって,その後に罰金刑が来るという順番になっています。ですから,ここでも,①,②,③と分けてしまうよりも①から③をひとまとまりとして,こういったものを刑罰と日本で呼んでいいかということを,例えば以前,罰金刑の検討を法制審でなさいましたが,それ以降の社会の,社会奉仕に対する考えは変わってきているのかどうか,その状況も踏まえて議論するのが,ここの部会の役目かなと思います。   そして,④と⑤については,○○幹事から御指摘がありましたように,ドイツあるいはフランスでもやっておりますけれども,そのようなお話で,それが今日,保護局の方からの御説明もあったところにつながっていって,現行法との延長線上でできるのか,親和性があるのかというところの整理かなと思っております。 ● どうもありがとうございました。 ● ○○先生の御質問との関係で,例えばイギリスの場合,各則がきちっとあるのでしょうか。その中に社会奉仕命令が一定の幅のものとして規定されているということなんでしょうか。 ● そもそもあちらでは,各則にすべての法定刑を書くというやり方ではなくて,言わば各則に書くべき罪の最大公約数を別の,別表に規定しておき,その中から,罪の重さに応じて刑を変えていくという方式を採っていますので,日本的にいえば,法定刑がすべての罪について決まっているということになります。この意味で,刑の上限が決まっていて,何年以内に何十時間という形で規定されております。したがいまして,罪刑法定主義の観点からは,不明確とはいえない法制が採られております。 ● 先ほどカリフォルニア州の制度として,社会奉仕が独立の刑罰として科される場合と,保護観察の条件として課される場合があるものと申し上げましたが,前回の○○先生からの御報告では,独立の刑罰の場合につき,各罰則の中に,一定時間以上,一定時間以下の社会奉仕という形で法定刑として社会奉仕が規定されているということも御紹介いただいたところでございます。 ● 立法例も調査しておられることですので,法律に書くことができなくはないのかもしれませんが,何となくそぐわない感じを受ける理由は,日本では,死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留,科料と,一つ一つの刑罰が言わばはっきりした輪郭を持ったものとして位置付けられてきたのに対して,今,考えている社会奉仕というのは,もっとソフトな,全体として弾力的なものだという感じを受けますので,そこのところが現存の刑罰と並べて扱うことに,どうも違和感があるのではないかという気がいたします。 ● どうもありがとうございました。 ● ただ今の○○先生の御発言に関連してでございますけれども,私どもも,考えられる法的位置付けの一例として,資料の1①で独立の刑罰というものを紹介させていただいた関連上,仮に,独立の刑罰として制度をつくるとする場合,果たして,刑法総則なり各則なりにどういう形で規定することができるんだろうかという観点から,いろいろと検討してみたところですが,まさに,今,○○先生から御指摘いただきましたように,社会奉仕はやはり非定型的な内容であることから,作業の内容としてどういうことに従事させるのか,あるいは実施監督の体制をどう考えるのか,これは資料の2の⑤や⑥に関連してくるかもしれませんけれども,そのように実施のやりよういかんによって,重さというのが相当変わってき得るのではないか,要するに,個別具体的な状況いかんによるところが相当大きいのではないかと思っております。そうだとすると,果たして,どのような犯罪について,どういう時間数の社会奉仕の刑を法定刑として規定するのか,そこのところの判断に相当難しいところがあって,なかなかいいアイデアが浮かばなかったというような状況でしたので,その点を,これからの議論の参考の一つとして御紹介させていただきます。 ● 確かに難しいというのはよく分かるんですけれども,ただ,現在の懲役刑における刑務作業も,その内容が刑法に規定されているわけではありませんし,作業の内容によっては重くなったり軽くなったりすると思います。ですから,私も,もし今後導入するにしても新しい制度ですので,いきなり独立の刑罰として規定するということが妥当かという点については,必ずしもそういう考えを持っているわけではないんですけれども,およそ独立の刑罰として規定することは難しいであろうということをここで決めてしまうということについては,ちょっとやはり行き過ぎではないか,将来的にそういうものが独立の刑罰として規定されるということは,立法論として十分あり得ることではないかというふうに思います。 ● 社会奉仕活動を独立の刑罰として規定する立法は困難ではないかという問題とは異なる話ですが,独立の刑罰にするというのは,要するに,社会奉仕活動を既存の刑罰とならぶ制裁の一つとして位置付けるということになるのだろうと思います。そこで,実務家の方にお聞きしたいんですけれども,先ほど社会奉仕活動を独立の刑罰とした場合に,既存の刑罰との関係でどこに位置付けるかという話があったわけですが,そもそも,現在,懲役,禁錮,罰金,拘留という刑罰があるわけでして,それに加えて,社会奉仕活動という刑罰を設けて制裁として科す必要性を,日々の事案を処理される中でどの程度感じておられるか,その辺りを伺わせていただきたいと思います。 ● 私としては,あえて独立の刑罰としてこういうサンクションを持ってこなければ,適正な科刑が実現できないかというと,そうではないのではないかというふうに思っております。   先生御指摘のように,社会奉仕をどのような重さの刑罰として位置付けるかにもよると思われますが,例えば,罰金刑より軽いものとして考えるとすると,罰金より軽い刑としては,現行法にも拘留,科料が定められている一方,罰金刑の下限は1万円でございますから,あえて罰金刑よりも軽い刑罰を新たに設ける必要性は乏しいだろうと思います。   他方,社会奉仕を,仮に,罰金と禁錮・懲役との間の刑罰として位置付けるとした場合どうかというふうに考えますと,懲役・禁錮の実刑と罰金との間の中間的なものとしては,もちろん独立の刑ではありませんけれども,懲役・禁錮の執行猶予や,保護観察付き執行猶予を言い渡すことができます。そして,そのように執行猶予を言い渡す場合においても,行為責任の軽重をも踏まえ,その執行猶予ないし保護観察の期間を5年にしたり,あるいは3年にするなど,行為責任の範囲内で,執行猶予ないし保護観察の期間も含めた量刑がなされているものと承知しております。このように考えますと,事案に応じた適正な科刑を実現するために,懲役・禁錮と罰金との間に,あえて新たな刑罰として社会奉仕の刑を設けるべき必要性は必ずしも高くないのではないかと思います。 ● 少し話が戻ってしまうようで恐縮ですけれども,先ほど○○委員から,懲役刑における刑務作業もある意味不定型ではないかとの御指摘がありましたが,確かに検討の過程ではそういうことも考えたことがございました。ただ,やはり懲役刑の場合,その基本として,刑事施設に拘置される自由拘束の期間が懲役何年という形で決まっており,そういう意味でその外枠が非常にはっきりしております。それに比べますと,社会奉仕というものは,刑事施設に収容するのではなく,社会内で,内容が余り決まっていない作業だけを行わせるというものであり,不定型性がさらに格段に強まっているような気がいたしますので,この点,施設内での刑務作業と,社会内での社会奉仕活動とでは,やはり少し違うのではないかなという印象を持ったところです。 ● もちろん罪刑法定主義の観点からは,社会奉仕をもし独立の刑罰と規定するとすると,時間の上限を決めないといけないでしょうし,言い渡すときにも定時で言い渡さないといけないんだろうと思います。そういうふうな形で言い渡せば,刑務所の中か外かという違いはあっても,例えば10時間なら10時間は自由を制限されるという形でやはり定型性があるので,もちろん,程度の差があるのは分かりますけれども,およそ社会奉仕命令は不定型であるということにはならないだろうと思います。 ● 私も今いきなり独立の刑罰という考え方をとるということについては,まだちょっとちゅうちょをしているところがあるんですが,位置付けをどうするのかというのは,罰金よりも下なのか,罰金より上なのかというのは非常に内容にかかってくるような気がします。具体的には,罰金の場合は,言わば当局に納付するだけで外には全く分からない状態になるんですが,社会奉仕といった場合には必ず外で何らかの作業をするという形になりますので,そういう意味では何かちょっと重いような気もする感じもあるんですね。そういう意味では,私もあえて独立の刑罰というのは,今やる必要があるのかなというふうな感じは持っています。   むしろ独立の刑罰とした場合に,一体どのような罪名のどのような犯罪を対象にするのかという形のとらえ方によっては,いわゆる刑罰の種類を増やしただけで,従来と変わらない運用もあり得るのではないかということを逆に危惧しているところがあります。 ● 先ほどの刑務作業のお話に関連して,収容施設の内か外かという議論がありましたけれども,例えば前に御紹介いたしましたフランスにおける外部収容制度では,比喩的に言えば,物理的な塀の外に概念として塀をつくってそこに入れておく,言わばハーフウエー・ハウスのような形にして奉仕活動をさせることによって,徐々に,拘禁の程度も緩和するし,社会復帰も進めるというふうな制度があったわけですね。ですから,そういった幾つかのオプションがあり得ることを踏まえますと,やはり個人的にも,将来のオプションとしては,少し残しておくような議論をしておいた方がいいのかなと思います。 ● 非常に単純で素朴な発想から申し上げると,犯罪の内容や被告人の状況によっては,罰金という形で金銭を支払わせて済むものではないけれども,懲役・禁錮の実刑では重いという事案もあり得ると思います。そのような場合は,現行の制度の下では,懲役・禁固刑の執行猶予ということになるのでしょうが,執行猶予は,結局刑務所には入らないわけですから,刑を言い渡された者にとっては,実際的な痛みはないわけですね。そうすると,言わば,現実的な不利益を伴うような,懲役・禁固刑と罰金刑との中間に位置する制裁があってもいいではないかという感じを持ちます。   ただ,実務をやっておられて,いま申し上げた意味での刑の隙間を感じる事案はないということであれば,あえて,そのような制度を導入する必要性は認められないでしょうから,重ねての質問になりますが,そのあたりの実感をお聞かせ願えればと思います。 ● 先ほど申し上げたのは,あえて独立の刑罰として何かを持ってくるまでの必要性は必ずしも高くないのではないかということでした。 ● そうすると,仮に,中間的なものを作る必要があるとしても,この後の話になりますけれども,例えば,執行猶予の条件として付すという形をとることで,カバーできるんではないかというような感じですか。 ● 社会奉仕が独立の刑罰であるということになると,やはり制裁としての性格が前面に出るのではないかと思われますので,この観点からしますと,制裁としての無償労働をさせるということが,自由刑の実刑と罰金との間の刑として必要かというと,そこまでは言えないような感触を持つということです。他方,社会奉仕の目的・効果として,対象者の改善更生であるとか,社会への償いであるといった面に着目し,例えば,実刑にして刑務所に入れるほどではないけれども,罰金では軽いという事案において,単純に執行猶予とするのではなく,社会奉仕として何かをさせた方が本人の改善更生に役立つだろうし,社会への償いにもなるという観点から,社会奉仕を義務付けるということの必要性までを否定しているわけではございません。   ただ,社会奉仕を制裁と言ってしまうと,何かそぐわないのではないかというイメージもあるという趣旨です。 ● 今の関連でほかにいかがでしょうか。 ● 内容がはっきりしていないとか,非定型とかという形でこの議論をやめてしまうと,あとずっとその議論が同じになってしまって,これも駄目,これも駄目という議論になってしまわないかということを懸念しております。この段階では,私はいろいろ工夫の仕方,制度のつくり方によっては,独立の刑罰として成立し得ることを前提に議論をすべきだと思います。   ただし,私の考えでは,むしろ問題なのは,我が国の刑事司法の中で,社会奉仕を独立の刑罰として運用することがうまくいくのかどうかという点だと思います。例えば,我が国にはいわゆる判決前調査制度がありませんので,裁判所側から見ると,社会奉仕と被告人とのマッチング,適合性の問題で悩まれることになると思います。この点で,私は,社会奉仕を独立の刑罰とすることは,我が国にはなじまないのではないかと考えています。 ● 私もまだまとまっているわけではなくて,今のお話と同じようなのですが,今の時点で独立の刑罰として設けるのがいいかどうかということになると,確かにちゅうちょはあるんですけれども,やはり社会奉仕を義務付けるということは,一種の自由刑的な部分といいますかね,要するに24時間自分の時間ではなくなるわけなんですよね。   その間は一定の義務を課せられて,それは自由に使える時間ではなくなるという意味では,何らかのやはり強制が働くわけで,そういう意味で自由刑という形式なのかもしれませんけれども,一定の制裁的な面というのはやはりないわけではないという気がするんですね,義務付けるということになりますと。そういうことでいうと,やはり罰金刑と自由刑の間の刑という位置付けも可能なのではないかという気はするんです。   それで,今まさに○○委員が言われたように,現実にそういう形で刑罰として運用するというのは,いろいろ難しい面があるんでしょうけれども,性格としてはそういう性格もあるものだという認識はしておいた方がいいのかなという気がいたしました。   それと,○○委員が言われたこととの関係なんですけれども,やはり全くの単純な執行猶予になってしまうということは,一応形の上では懲役刑を受けましたとなりますけれども,現実には何もなくて終わるわけですね。それで,でも刑務所に入れるほどではないというときに,もう少し何かあってもいいんではないのというのは,それもやはり考えられる話だと思うんですね。保護観察付き執行猶予でもなくて,単純な執行猶予でもなく,実刑とその間という意味でも,すべての犯罪についてそれがあり得るかというとちょっと分からないんですが,罪名によってはそういうものも,それなりに意味のある刑罰という側面はあるのかなという気がいたしました。 ● もう一つ考えないといけないのは,例えば,選択肢の一つとして,保護観察の遵守事項とするということがあって,ドイツではそうなっているという御紹介があったんですけれども,ドイツの公益給付活動というのは,基本的には,犯された不法の償いとして公益給付活動をするという規定になっています。先ほどもちょっと保護局から御紹介がありましたけれども,そのような不法の償いというのは,恐らく対象者の改善更生を目的とするという,日本のこれまでの保護観察の枠組みとは少し性格の違うものになるように思います。それで,不法の償いとして社会奉仕をするというのは,日本のこれまでの保護観察の枠組みに入らないということになると,たとえ保護観察の中で行うとしても,それは従来の保護観察ではなくて,制裁的なものであるということにならざるを得ないのではないかと思います。独立の刑罰にするかどうかという問題は,各則に書くかどうかとかいう問題とはまた別に,保護観察やその他の処分との関係という点からも考えないといけない。ここだけではなかなか決まらない問題なのかという気がいたします。 ● 先ほど○○委員から,現行の日本の司法制度の中で独立の刑罰ということを裁判所が言い渡すことが,今すぐ現実に可能かというような形の御議論がありました。   私たちは,実は後のことにも関連するんですが,やはりどこかでスクリーニングするものが必要だろうと。この人が社会奉仕命令に適する人だ,この人にはこういう仕事が適当だというものを,だれかが決めなければならないだろうという,そこが先ほどの,○○委員の方とつながってくるんですが,裁判所とすれば,例えば独立の刑とする場合についてもし考えられるとした場合に,例えば,総則に裁判所は一定時間以内の社会奉仕命令を科すことができるという形のものだけを規定しておいて,各則は単に社会奉仕命令とだけ規定して,先ほどの刑務作業と同じように,具体的にいわゆる刑のどういう執行をするのかという行刑面で考えていくということも,考えられるのではないかなというふうにちょっと思っているんですね。これは次のほかのこととも関連してくるので,後でまたもう少し整理したいと思うんですが。   そういう意味では,裁判所が必ずしも具体的に,これこれの作業を何日以内に何時間やりなさいというような形ではなくてもいいのかなということはあり得るのではないのかなと,ちょっと思っているところなんです。 ● 私も独立の刑罰とすることが難しいとか反対だとか言うつもりはないんですけれども,ただ,刑を言い渡すという観点からすると,やはりほかの刑罰と同程度に制裁性というか不利益性というかが明確になっていないと,なかなか選択しにくいなという感じはあります。そういう観点でいうと,○○委員がおっしゃったようなこともあり得るとは思うんですけれども,作業の中身が具体的にどのようなものか,あらかじめ明らかになっていないと使いにくいのかなという感じがします。   それと,率直に言って,我が国において,この社会奉仕命令を独立の刑罰として定める必要性に関する議論が,やはりやや不足しているような気がしております。つまり,裁判所がどういう場合に独立の刑罰として科したいと思うかなということを考えますと,刑事施設に収容する,あるいは罰金を科すというのは,それが制裁であるということが非常に明確なわけですね。その意味では,社会奉仕を義務付けられ,やりたくない活動をさせられるのも制裁性は伴うわけですけれども,自由刑と罰金刑との間に,社会奉仕のような刑罰を設けることがどういう場合に有効なのかということが,いま一つやはりピンとこない。ちょっと今,浮かんでいたのは,罪刑の均衡という観点から自由刑の実刑にはおよそ適さないけれども,罰金に処したのでは制裁性が出てこないようなタイプの人,つまり非常に資力の豊富な人で一定額の罰金を払うのは何とも思っていないというような人に対して,制裁性という観点からこういうものを科すというのはあり得るのかなとは思いましたが,でも,そのように対象者の属性によって効果が変わるような刑罰というのはあるのかなというようにも思います。その辺りの理論的なお話をお聞きできればと思うのですが。 ● 独立の刑罰として総則の中に刑種の一つとして書くというと,犯罪すべてにそれが一つの刑罰として妥当するんだというようなイメージになりやすくて,それが独立の刑罰かどうかという議論と絡んで議論されてしまっているかなというふうに感じたところがあります。独立の刑罰かどうかというのは,すべての犯罪についてあまねく刑罰としての社会奉仕があり得るんだということとは必ずしも結び付いていなくて,一定の犯罪の類型について,こういうものが刑罰として出てくるんだというような考え方でも,独立の刑罰ということになるように思います。   そのように考えてみたときに,先ほど○○委員からは対象者の問題が指摘されましたけれども,やはり犯罪としても,社会奉仕というものがなじむ犯罪というのがありそうに思われます。恐らく,個人的な法益に対する罪については,余りこの種のものを科してもぴったりとはこなくて,やはり社会に迷惑を掛けるような罪に対して科するということが比較的分かりやすいのではないか。ターゲットとなる犯罪を特に想定せずに考えると,社会奉仕命令の中身というのも非常に茫漠としてきて,刑罰の重さとしても一体どこに位置付けられるのかという話にもなってきますけれども,もう少し類型を絞って考えると,ひょっとしたら一定の中身も具体的に想定できて,ある程度,刑の中身も分かるというような場合が出てくるのかなという感じも受けました。   しかし,その種のものが必要だという強い要請があるのかといいますと,○○委員が言われたように,必ずしもそこははっきりしていないだろうと思います。また,一応時間での拘束ということはありますけれども,さらにどのくらいインテンシヴであるかということによっても,負担の重さは変わってくる。ですので,作業の中身がある程度明らかになったとしても,なお外延がはっきりしないようなところもあるかなという感じも受けました。   独立の刑罰として考えられないのかどうなのかということについては,具体的な対象を絞った考え方をしたら,あるいは考えられるのかなというふうなことを思ったということでございます。 ● ○○委員から,実務をなさっている御経験から新しい刑罰をつくる必要性ということについて御指摘があったのですけれども,これは恐らく○○委員もお考えになっていることだろうと思うのですが,今日,○○委員も罰金刑を執行できず,労役場留置になる人の人数が増えているということに言及されました。罰金相当なのだけれども,未納が予想される,あるいは支払い不能か,支払い可能だけれども未納になるかもしれないという人に対して,他の罰金を支払う人と同等の感銘力を与えるための手段として,いきなり拘禁刑にいくというのは行き過ぎておりますから,一段優しい,ソフトな社会奉仕を命ずるようなものがあってもいいのかなというふうに思います。   また,○○委員が言われたところは大変難しい問題で,罰金刑だけの話に限定すると,その人に応じた感銘力を罰金にも持たせるためには,御存じのように日数罰金制度のような別途の手段もありますけれども,それはこの部会での議論の範囲は超えているかなと思います。   それから,○○委員が言われたことについても,若干記憶の喚起でございますが,社会奉仕命令を刑罰としている国においても,もちろんおっしゃるように,例えば殺人罪であるとか重罪のようなものについてこれを科す国はないと存じております。やはり軽罪,軽めのもの,多くは日本的に言いますと社会的法益に対する罪のようなものだと思います。また,制度の目的としても,具体的な被害者に対する償いというものではなく,自分が属している社会に対する償いが期待される犯罪について,過剰拘禁を回避するために制度がつくられているということですので,もちろん日本も過剰拘禁という状況がなければ,こういう議論もあまり意味はないと思うのですが,それに近づいているのであれば,検討しておく必要はあろうかと思います。 ● 今,資料の1の①ということで,社会奉仕を独立の刑罰という法的位置付けとして導入することの当否を御議論していただいているわけですが,他の法的位置付けの議論などとも関係すると思われますし,先ほど○○委員をはじめ多くの委員の方々から,この場で,独立の刑罰として導入するのは不適当であるなどと決めてしまうのは適当ではないという御指摘もありましたので,更に検討を進めた段階で必要に応じて改めて御議論いただくこととし,この辺りで,資料の1の①の御議論は一段落として次に行きたいと思いますが,いかがでしょうか。   御異論がないようですので,次に進みたいと思いますが,先ほど○○委員から御指摘がありましたように,資料の1の①,②,③はまとめてという考え方もあり得ると思いますが,やはりそれぞれの局面において特別な意味を持ってくる場合もあり得ますので,最初にお諮りしましたように,段階を踏んで別途に議論していきたいと存じますが,そういうことでよろしいでしょうか。   特に御異論もないようですので,次は,お手元の資料の1の②,つまり社会奉仕を短期自由刑の代替刑という法的位置付けとして導入することの当否について,御議論いただきたいと思います。まず,事務当局から社会奉仕を短期自由刑の代替刑と位置付けた場合の制度の概要ないしイメージについて御説明をお願いします。 ● 社会奉仕を短期自由刑の代替刑と位置付ける場合も,資料の1の①と同様,社会奉仕は刑罰の一つということになりますが,この場合,独立の刑罰ではなく,短期自由刑を科す代わりに社会奉仕という刑罰を科すという位置付けになりますので,様々な具体的制度の在り方が考えられるところではありますが,例えば,裁判所が一定刑期以下の自由刑,例えば6月以下の懲役ないし禁錮の実刑を言い渡す場合に,その刑に代えて,当該刑の刑期の長さに応じて算出される作業時間数の社会奉仕命令を言い渡すということが一例として考えられるのではないかと思います。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の事務当局の御説明につきまして,何か御質問がございましたら,お願いいたします。 ● 今の御説明によると,各則に,社会奉仕によって代替される一定刑期以下の自由刑が定められている場合は,その刑期以下の自由刑は,その法定刑から事実上削除されるのと同様の効果があるということになるのでしょうか。例えば,ある罪の法定刑が3年以下の懲役となっている場合に,裁判所が例えば6か月以下の懲役を言い渡す場合には,それに代えて社会奉仕を言い渡すということになると,結局,その罪の法定刑は事実上6月を超え3年以下ということになるという理解でよろしいんですか。 ● そこも制度のつくりようだと思っておりまして,今,○○委員がおっしゃられましたように,例えば,6月以下の懲役を言い渡すべき場合は必要的に社会奉仕に代替するものとしますと,まさに○○委員御指摘のように,事実上法定刑が改められたのと同じような結果になろうかと思います。ただ,そうではなくて,裁判所における量刑判断の余地を残すという制度とすることも考えられると思います。つまり,ただいまの例で申し上げますと,6月以下の懲役を言い渡すべき場合において,必ず社会奉仕に代替するというのではなく,一定の事情を考慮し,裁判所の裁量により,代替刑として社会奉仕を科すことができるというような制度にするのであれば,そこは必ずしもそういうふうにはならない,6月以下の懲役を科す場合もあり得るということになると思われます。 ● そのように裁判所の裁量を認めるという制度の場合,その罪の各則に,選択刑として社会奉仕活動を規定するのと何が違うのでしょうか。 ● 実質的には同じようなことになるのかもしれません。したがいまして,そもそも短期自由刑に代えて社会奉仕を科す必要があるのかということを御議論いただくのはもちろんですが,仮にその必要があるとしても,そのための法律構成として,○○委員のおっしゃるように,各則に選択刑として社会奉仕を規定すれば足りるのではないかということも含めて,御議論いただければと思っております。 ● 今,6月という数字のお話が出ておりますけれども,当然に代替にする場合は問題が起こりませんが,裁判所の裁量によってということになると,裁判所は6月という刑の量刑を一応は示すわけですか。 ● そこも可能性としては両様あり得ると思っておりますので,これも併せて御議論いただければと思いますが,例えば,裁判所が,一つの判決の中で,被告人を懲役6月に処すと言い渡した上で,その6月の懲役に代えて何時間の社会奉仕に処すと言い渡すといった制度ににすることも考えられると思います。他方,そうではなくて,裁判所の心証の中で6月以下の懲役相当と判断した場合において,裁判所は社会奉仕を言い渡すことができるという制度とすれば,判決の中では,例えば懲役6月といった懲役刑の量刑判断は言い渡されないということになろうかと思います。もちろん,これらの制度が妥当かどうかということについても御議論いただければと考えております。 ● 言わずもがなでございますが,私どもとして,今,御説明したような制度を導入するのが適当であるという趣旨で申し上げているわけでは全くありません。これまでの御議論等を踏まえ,考えられる法的位置付けとして,独立の刑罰や,短期自由刑の代替刑などを挙げているところですが,やはり具体的なイメージを御提示した方が議論がしやすいのではないかということで,先ほどの独立の刑罰の場合もそうですが,短期自由刑の代替刑というキーワードをもとに仮に制度を組み立てたらどのようなものが考えられるのかというところをお示ししているだけでございますので,そういう意味では価値判断は全く入っておりませんので,念のため申し上げておきます。 ● 先ほどの議論の繰り返しにすぎないんですけれども,短期自由刑の代替刑という位置付けは,実質においては,執行猶予の条件とか保護観察付き執行猶予の遵守事項ということと同じではないかと思います。ただ,執行猶予の条件や保護観察の遵守事項はそれ自体は制裁でないので,例えば,インサイダー取引で有罪になった人に道路掃除をさせるものとする場合,それは制裁としてしか言い渡せないんだということになると,やはり独立の刑罰とか代替刑とかいうことにせざるを得ないことになります。そのように考えなくて,執行猶予の条件や保護観察付き執行猶予の遵守事項としても,制裁的な社会奉仕を義務付けることができるということであれば,あえて代替刑と言う必要もないということになるでしょうから,そこの考え方次第であるというような気がいたします。 ● 裁判所が一応6月なり3月なりの刑を言い渡すとすると,それがどこかで復活してくるか,社会奉仕活動が実効を上げなかったようなときに,それでは刑務所に入れますよという話になるのかどうか,つまり代替ということの意味ですね。 ● 御指摘の点は,資料の2の⑥の「制度の実効性を担保するための方策」の項目に関連してくるように思われます。これも先ほど申し上げましたように,そのような制度を採用すべきであるという趣旨で申し上げているわけではないのですが,例えば,制度のつくり方としては,代替刑として命じられた社会奉仕を履行しなかったような場合に,代替されたところの短期自由刑を科すことになるという制度もあり得るところだろうと思っております。 ● 資料の2においていろいろな事項が挙がっておりますので,それとの関連を踏まえながら御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。 ● そうなると,判決の主文はどうなりますかね。被告人を懲役6月に処すとまず言っておいて,それで,しかし温情をもって社会奉仕に代えることができると。温情をもってということは括弧に入れるわけですが。 ● まさに○○先生が御指摘のとおりでございまして,例えば,フランスでは,判決宣告時において拘禁刑を言い渡しておき,その後に,刑罰適用裁判官が登場して,本当はすぐに入所させるべきなのですが,過剰拘禁なので社会において制裁を加えようということで社会奉仕命令が科されるわけですね。それがうまくいきましたらそれで終わりですし,途中でその約束に違反したということになりますと,社会奉仕命令が恩恵として与えられても取り消されて収容されるということになります。   他方,イギリスでは判決宣告のときに,社会内命令,ソーシャルオーダーを科しますが,その後に刑罰適用判事なる者が登場するわけではないのですが,裁判官が命じた命令に違反しますと広い意味での司法侮辱といいますか,司法に対する約束違反ということですので,そこで新たに拘禁刑に処せられるという仕組みになっております。   ですから,理想論といいますか,一つの感想としては,刑を言い渡した後の執行段階においても司法的な関与がもっと強ければ,状況に応じた判断ができるのですが,それがなかなか難しいところが議論の前提になっていることを踏まえて,何が採れる方策であるかを考えないといけないのではないかと思っています。 ● 私はどうも代替という考え方がしっくりきません。短期自由刑が望ましくないから,それを避けるために,その代わりに社会奉仕活動をさせるというのであれば,むしろ,短期自由刑を科さないように法定刑を改めるべきであって,各則の法定刑を短期自由刑を含む形で規定しておきながら,それを回避するために,代替として社会奉仕活動をさせるというのは,矛盾しているという気がします。また,そうではなく,事案によっては,短期自由刑よりも社会奉仕活動のほうが適当な場合があるという理由で,代替としての社会奉仕活動を認めるということであれば,各則の法定刑に,選択刑として自由刑のほかに社会奉仕活動を規定しておいて,事案に応じて適切な方を言い渡すというのがやり方としては筋が通っていると思います。   それに加えて,短期自由刑を社会奉仕活動によって代替させるという場合には,短期自由刑と社会奉仕活動を当然同等のものとして扱うんでしょうけれども,一体どういう基準で代替をさせるのかというのも,よく分からないところがあります。 ● 今の点は,過剰収容との関連でそれを緩和するための対策という観点や,制裁として社会奉仕が代替可能かという制裁性の観点から検討する必要があるように思います。また,先ほど○○先生から御指摘がありましたように,社会奉仕がなされなかったときに収容するかどうかという点も制裁性の点に関連するように思います。 ● 確かに,ご指摘のとおり,命ぜられた社会奉仕活動をやらなかったときにどうなるのかという問題は別途考える必要がありますが,考え方の筋としては,短期自由刑の代替というよりは,一定の制裁性をもった社会奉仕活動をまず想定した上で,選択刑として別途規定するほうが妥当だと思います。 ● そうしますと,先ほどの独立の刑罰といったものをお考えになっているということでしょうか。 ● はい,そのかぎりでは,そのとおりです。ただし,社会奉仕活動を行わなかった時にどうなるか,その担保手段をどうするかという観点から見ますと,独立の処罰にすると対応が難しいだろうと思いますので,むしろ,自由刑の執行猶予の条件にするといった形にしたほうがよいかもしれません。 ● 社会奉仕を義務付けたけれども,それをきちんと守らなかった人をどうするかということに関しては,イギリスのように守らなかった時点で改めて身体拘束の方に発展するというやり方と,社会奉仕を執行猶予の条件として義務付けておき,これが守られなければ執行猶予を取り消して元の刑に戻すというやり方と,両方があり得るような感じがしています。   そして,我が国の法制を前提にすると,もしそういうニーズがあるとすれば,後者の執行猶予の条件とする枠組みの方がなじむというか,全体的には収まりがいいんだろうなという感じがいたします。 ● 理論的な問題,理論的というとちょっと外れるかもしれないんですけれども,代替刑にする意味というのが一つあるのは,今まで執行猶予になっていたものがむしろ重くなって,社会奉仕命令を科せられるということになると,結局,拘禁を減らすということにはならないので,今までだったら実刑になったものについて,それが執行猶予までは踏み切れないけれども,とにかく外に出すという意味でその実刑の代替というふうにすると,とにかく拘禁をしないというものの数が,そちらの方が確実に増えるのではないかということが一つあるんだろうと思いますね。要するに,感覚的に言えば執行猶予の条件の一つではあるんですけれども,そういうふうにしてしまうと,今まで単純な執行猶予だったものに社会奉仕命令がくっ付くだけというふうになる可能性が,一定程度出てきてしまうんですよね。   それを回避するという意味では,必ず実刑を言い渡す刑等について,いったん,とにかく実刑を言い渡して,実刑を言い渡されたんだけれども,一定のものについては社会奉仕命令で代えることができると,そして一定期間,きちんとそれを守れば刑に服することはないけれども,それはあくまでも実刑の代替なわけですから,何らか遵守事項を守らなかったから即収監するかどうかは別として,やはり実刑ということは残っていて,最終的には刑務所に戻るという形にしておいた方が拘禁は確実に減らせるのではないかと。要するに,今までだったら拘禁されていた人が社会内で処遇されるという意味合いが,非常にはっきりするのではないかという気がするんですね。   それであと,そういうふうにくくるとした場合に,とにかくいったん実刑を言い渡すと。だから,やはり主文は懲役何月に処するという形になって,例えば言い渡す刑が一定の短期のものであれば,罪名はもちろん現実に社会奉仕に適するかどうかというところで,適さない罪名のものもあるんでしょうけれども,一律に社会奉仕命令に代えられるというような形にして,裁判所はとにかく実刑を言い渡して,その後の段階で社会奉仕を科すということができるようにするということも,立法論としてはあり得るのではないかというふうに考えているんですね。   ちょっと話が飛び過ぎかもしれないんですけれども,裁判所が社会奉仕命令を受けるのにふさわしい人間かどうかというのを今の法制度の下で判断するというのは,かなり難しいんだろうと思うんですよ。その人の行動パターンだとか,そのようなものについて調査するわけではないですし,社会奉仕命令を受けるということについて,ふさわしい人間かどうかというのはいろいろなスクリーニングも必要なんでしょうから,そういうスクリーニングを裁判所にやっていただくというのは,多分,調査官制度が今ないところで難しいというふうに考えると,とにかくいったん実刑に服する形にして,その後,何らかの形でスクリーニングをして刑務所に入る代わりに,社会奉仕命令を受けてもらうというような制度というのがあり得るのではないかというのをちょっと考えておりました。 ● 今の日本の刑事司法を前提としますと,短期とはいえ実刑を言い渡される事案というのは,やはり国民一般の感情としては,かなり悪性のある事案であるというように,受け止められていると思うんですね。そういう人について,社会奉仕を命ずることとなるので,事実上,刑務所に行かないとなったときの国民感情といいますか,そういうところも考慮する必要があるのではないかなというふうに考えているんですが,その点はどうでしょうか。 ● 今,代替刑との関連で御意見が出ておりますが,その点についていかがでしょうか。どうぞ,お願いします。 ● 意見というより,こういった観点からも御検討いただければということでの発言でございますが,まさに今,○○幹事がおっしゃられたように,資料の2の②の対象者というところに関連してくると思うのですけれども,現行の刑事裁判実務の中で短期とはいえ実刑に処せられている者というのがどういうものなのか,悪情状といいますか,どういう犯罪を犯して,どういう経緯・理由から実刑になったのかということをも踏まえつつ,さらには,刑罰の本質・目的としては,特別予防というところのほか,やはり応報あるいは一般予防という観点もありますので,そういうことをも考慮した上で,短期自由刑の代替刑として社会奉仕を科すことが妥当なのかどうか,そういった観点からも十分御議論いただければなというふうに思っております。 ● 短期自由刑の代替刑にするにしろ,あるいは執行猶予の条件や保護観察の遵守事項とするにしろ,過剰拘禁を緩和するという観点から,現在短期自由刑になっている人をこちらの新しい処分あるいは刑罰に移していくということになると,先ほど○○幹事から御指摘があったように,一体,そういう短期自由刑を受けている人で,社会奉仕に代替するのがふさわしい人がいるんだろうかということが,恐らく問題になってくるんだろうと思います。   今日いただいた配布資料23の3の「入所度数1で刑期2年以下の新受刑者の罪名別刑名・刑期」の統計を見ますと,相当数が道交法違反になっています。道交法違反にもいろいろあるんでしょうけれども,凶悪というイメージではないような気がいたします。どちらかというと規範意識に非常に乏しい人というイメージがいたしまして,そうだとすると確かに罰金では不十分なんだろうけれども,必ずしも刑務所に入れなくても社会奉仕活動をさせることで社会も納得するし,本人にとっても改善更生への効果があるという場合も相当数あるのかなというようにも考えます。ただ,これはあくまで推測なので,もし可能であれば,入所度数1で短期の自由刑になっている人というのは,恐らくどんな形で制度をつくるにしろ,最も候補になる人だろうと思うんですけれども,どんな人なのかということを,分かる範囲で教えていただければと思います。 ● つまびらかに承知しているものではございませんが,先ほど御指摘の統計でも割合の高い道交法違反で実刑に処せられている者について,私の認識しているところを申し上げますと,基本的に,やはり,無免許運転とか,酒気帯び,酒酔いといった飲酒運転などの類型が多いと思うのですが,御承知のとおり,それらの道路交通法違反の罪には罰金がありまして,最初は何回か罰金が科されているものと思われます。それでも,さらに違反行為を行い,罰金の略式命令請求ではなく,公判請求されるわけですが,初回の公判請求で実刑判決を受けるというのはやはりまれでして,まずは執行猶予付きの懲役刑の判決を言い渡されることが多いものと承知しております。そのように執行猶予が言い渡されたにもかかわらず,執行猶予中の再犯というのが典型でございますが,また同じような無免許運転なり飲酒運転などに及び,それでついに短期の実刑判決が言い渡されるというケースが多いように承知しております。 ● 弁護する側からも,そういう被告人がいることは事実でございまして,また懲りずにという,そういう人は確かにおられます。   ただ,すべてがすべて,そうではないのではないか,自分ではすべての事件を扱っていませんから分かりませんので,そういう意味で,もしその対象犯罪を道交法のようなものに限るとした場合に,やはり道交法違反をしたということについて,社会の遵法義務違反が著しいということがやはり実刑になっている根拠になっていますから,単に何かの労働をすればいいというのではなくて,交通刑務所に自ら行って,あなたはここに本来入るべき人だったのよというような感銘力を与えた上,きちっとしたプログラムでもって受講するという,これは第一巡目の議論のときもありましたけれども,韓国のように受講命令とセットにするというやり方だったら考えられるのではないかなと,このように思うんですけれどもね。 ● 実態として,恐らく道路交通法で短期自由刑を科せられている人というのは,今,紹介したような者であって,比喩的に申し上げれば,そういう人がだんだん階段を上がっていって刑務所へ入っていくと言えるように思います。その中間に何かもう一段階あってもいいんではないかというのは一つの考え方だと思うんですが,ただ,それを短期自由刑の代替と言ってしまうのが適当かどうかというのは,また別の問題ではないかと思っています。   本来自由刑の実刑に処せられるべき人を,その代わりに,こういう社会奉仕をしてもらうということで,社会内に置いておくんですと言ってしまうと,やはりそこで○○幹事が御指摘になったような問題も生じるでしょうし,あるいは,○○委員が御指摘になったように,実刑と代替し得るにふさわしいような制裁としての強さがあるのかどうかといった問題も生じてきますので,実質的には,階段の真ん中あたりにもう一段設けることとしても,そのことと,短期自由刑の代替という位置付けにするのが適当かどうかということとは,別の問題ではないのかなという印象は持ちます。 ● 裁判所から見て,もしこういう制度があればあえて実刑にしなくても,どこかの段階で実刑の階段を上がってしまうわけですけれども,こういうものがあるとすれば,あえて実刑にしなくても,もう一回,この程度にしようかと思う,要するに実刑と間があれば,先ほどの話とつながるんですけれども,そこら辺でとどめておくと。罰金で終わりにするわけにはいかない,でも,次にもう一段階あれば,そこでとどめようというようなケースというのは,こういう道交法の場合はあり得るんでしょうか。 ● 先ほど○○幹事から御説明があったとおりで,道交法の関係で実刑になっている方というのは,大体が執行猶予中にもう一回やられたようなケースや,あるいは執行猶予は切れたけれども,割と近い時期に同じような前科があるというようなケースであり,どちらかというと実刑にせざるを得ないと思って実刑にしている場合が多いんですね。だから,道交法の関係で今おっしゃったように,別の処遇があれば,実刑にしなくて済んだのにというケースは,余り浮かばないというのが正直なところです。   ただ,それ以外の罪で,そういうのがないかというと,絶対ないとまでは言い切れないけれども,私の感覚を素直に申し上げると,むしろ執行猶予になる事案なんだけれども,やはりこの人は大丈夫かなという事案の方が多いです。「更生保護のあり方を考える有識者会議」の際にも議論になったんですけれども,保護観察付き執行猶予を言い渡す場合に,裁判官の中には,要するに保護観察による改善更生の効果をねらうというよりは,次回は必ず実刑になるという威嚇力をねらって保護観察に付しているのではないかという議論がありまして,そこは私はそうではないというふうに思っているんですが,現実にはそういう観点から保護観察に付されている場合もあるようなのですね。つまり,単純執行猶予ではやはり不安であり,再犯をさせないためにどうしたらいいかという観点から保護観察に付しているという場合ですね。 ● 道路交通法違反による新受刑者数についてですが,先ほどの配布資料23の3-5でお示ししております平成18年ベースで見ますと,入所度数1で刑期が6月以下の新受刑者というのは約1,000人いるのですが,その中で,罪名が道路交通法違反というのは,約600人強ということになっております。数字だけでございますが,紹介させていただきます。 ● 確か短期自由刑の問題で,この部会でも冒頭の方で議論したかと思うんですが,やはり実務的な意味で,社会奉仕命令を議論をする実益が余りないんではないか。つまり,実態として,社会奉仕命令が想定される実務上の必要性は非常に乏しい領域ではないかという印象を持ちました。 ● 今の点はいかがでしょうか。御意見がございましたらお願いいたします。   今,資料の1の②まで来ましたが,いろいろと御議論いただくことができましたので,一応ここで一段落として,今日の審議はここで終えて,次回は,もう一度,この「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」について,資料の1の③以降を議論するということにしたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。   とくに御異論がございませんので,次回は今回に引き続きまして,「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」のテーマについて,資料の1の③から御議論をいただくこととしたいと存じます。   それでは,次回会議の日時,場所につきまして,事務当局から御確認をお願いいたします。 ● 次回は12月27日木曜日に法務省地下1階の大会議室において会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては,午後4時30分からということで予定させていただいております。 ● ただ今御案内がございましたように,12月27日木曜日に法務省地下1階の大会議室において,4時30分から会議を行うことといたします。よろしくお願いいたします。   本日はこれで散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-