法制審議会保険法部会 第20回会議 議事録 第1 日 時  平成19年11月28日(水) 自 午後1時30分                        至 午後5時37分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                   議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第20回会議を始めさせていただきます。   最初に配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました部会資料21,それから,本日席上に配布してございます部会資料22と第18回会議の議事録,以上三点でございます。 ● 以上,よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思いますが,まず,前回積み残しになっておりました保険法部会資料20,保険法の見直しに関する個別論点の検討(4)の12頁,「4 契約成立(責任開始)前発病不担保条項について」から御審議をいただきたいと思います。この点についての事務当局からの御説明は,既に前回していただきましたので,今日は説明を省きまして御意見をいただければと思います。いかがでございましょうか。   ○○委員。 ● 前回,意見表明資料を配布していただきましたので簡潔に申し上げます。これはいろんな事例が消費者委員の方からも挙げられて,要するに支社長とか募集人の方に告知していて,払われるのではないかという誤解というか錯誤に陥ったと。それから,もう一つの事例は高度障害のような場合に,すべての症状を自分から率先して告知して,しかも保険会社の指定した医師の診断を受けて,それで条件が付かなくて入ったと,こういうような場合を何とかしなければいけないのではないかと。   ここの問題の要点というのはこの資料の1に書きましたけれども,要するに契約者の方としては全部きちんと言っていて,しかし,保険の仕組みというものがよく分からないと,保険契約の仕組み,保険法の仕組みが分からないために,落ち度がないのに払われないという事態が生じてしまっていると。これは大丈夫かなと思っていろいろ全部正直に言って,大丈夫,引き受けますと言われて,ああ,大丈夫なのだと思ってしまうと,こういう三段過程があるのだと思うのです。この問題は,前回の助言義務が認められれば要らない,こういうことを何もやる必要はなくて,どうも突き詰めて考えてみますと,この条文の骨子というか考え方の骨子ですけれども,その人が実は子宮筋腫なのですよとか,病名は分からないけれども,足がだんだん萎縮しているのですよというように全部正直に言っているときに,その病気については払われませんよと一言言ってくれれば,あと何も問題はないのですね。   ここの条文の骨子に書きましたのは,大事なところは4行目からで,その病気又は症状が責任開始前に発生しているために,それが払えませんよということを説明しませんでした,これは正確には包括的な説明義務,つまり,いろんな行為が束になって一つになっているというのではなくて単に告げればいいと。でも,告知義務というとちょっと誤解がありますから,告げる義務とでも言えばいいのですけれども,それさえ言えばすべては解決するのですが,それをやらないために契約者はもう契約に入ってしまうと。普通,この誤解とか錯誤は民法のレベルだと契約を解消する方向に働くのですけれども,保険の場合は付合契約でまず契約が成立してしまっていて,欲しいカバーが抜け落ちるという形になってしまうという,そこが普通の契約と違うわけですね。   保険会社の方としてはというか,募集人の方としては契約は欲しいと,しかし,その病気については払いたくないと。こういうところでも黙っていると,契約者の方は払ってもらえるのだと思ってそのまま入ってしまい,高度障害ですと何十年,10年とかたってから駄目だよと言われてがっくりすると,こういう形になるわけですよね。しかも,これは合理的な人間を前提としているわけですね。契約者として不合理な人間の不合理な判断は不都合というのではなくて,普通の合理的な人間でも保険法のこととか保険契約のことを知らないから,そういうふうに陥ってしまうと。だから問題なわけです。   当然,信義則で救えばいいではないかという議論はあると思うのですけれども,でも,類型的に,定型的にしかも契約者側に余り落ち度がないという場合でも,こうなってしまうというのは構造的な問題ですので,やはりこれは何か手当てをしなければいけないのかと。前回は助言義務さえ認められていれば,こんな規定は全然要らないので,そこでクモの糸一本でも認められないのかとちょっと申し上げたのですけれども,これぐらいは告げるときに説明義務というとまた重過ぎる。告げる義務ぐらいは認めていただいたらいいのではないかと,そういうふうに考えて,やはりこういう何か規定を置く必要があるのではないかと,そういう意見を表明したいと思います。   以上です。 ● では,○○幹事。 ● 今,○○委員がおっしゃったことにちょっと付け加えたいのですが,今,○○委員がおっしゃったのは主として契約者側が自覚症状があったというケースで告げて,保険会社が何も言わないで引き受けたと,こういうケースをおっしゃったと思うのですけれども,ただ,その場合のたとえ説明義務違反というような話になったとしても,結局,その義務違反によって契約者側にどんな損害が発生するのかと,こういう問題になったときに,保険会社としてはもともと引き受ける気がない部分ですので,もしその真意が伝わったとすれば,結局,契約は締結しなかったようになって,契約者側からいえば無駄な保険料を払わされたと,無駄な契約を締結して保険料を払わされた。だから,賠償としては結局,その保険料を返すぐらいしか出てこないのではないかという感じがしまして,もしそこを徹底して追及するのであれば,結局,契約前発病不担保条項をその場合は援用できないという形にしないと,要するに援用できないといえば,結局,告知義務違反のルールだけで処理するという方向へ持っていかないと,契約者は何もというのですか,ほとんど救われないという結果になって,余り説明義務だけではもう一つ解決には実質的に契約者を保護するということにはつながらない面があると思うのですね。それが一点です。ですから,もし契約者保護をするという方向で徹底するのであれば,本来,引き受けないという部分についてきちんと説明しないということであれば,その部分についての契約前発病不担保ルールの援用を抑止するという形のルールをつくらないと駄目でしょうと。   しかし,それはちょっと置いておきまして,むしろ多くのケースで逆に問題になるのは,善意の契約者側で問題が発生しやすいということだと思うのです。要するに,自覚が本当にできているのかできていないのか,はっきりさせないと,一応告知はきちんとしています,しかし,後からよく調べてみたら,実はやはり契約前に発病しているというふうに見られても仕方がないと,こういうケースが出てきたとき,言わば善意の契約者ですけれども,このケースで契約前発病不担保ルールを全面的に適用されますと,やはり契約者側としては意外な結果になるということで,実際,私の知っている限りでは生命保険会社の方々も善意の契約者について直接といいますか,直ちに契約前発病不担保ルールを全面的に適用するということはされていないと。文献によれば既に1980年代ぐらいから,そういう取扱いを生命保険会社の方ではされているというふうに承知しておるのです。だとしたら,善意の契約者のところを救うルールをつくっておった方がいいだろうと。   ただ,この書面にも書いてありますように,確かに担保範囲にかかわる問題ですので,余り強行法規という格好で定めるといささか窮屈になったり,ぎこちない結果になるおそれがありますので,一般の取引慣行どおりを任意規定として定めるというのであれば,一番使い勝手がよろしいのではないかなというふうに私は思っております。ですから,むしろ善意の契約者を保護する規定を任意規定として定めていただければ,その方がありがたいなというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 初めに○○委員の御提案につきまして,我々業界がどう考えているかということを御回答申し上げたいのですが,今もお話がございましたように,責任開始前発病不担保条項,逆に言うと支払条件のところに大概第1条とかに書いてありますけれども,担保範囲の規定でありますから,これがあるからといって,不意打ち条項だとは考えておりません。そして,また保険の仕組みをよく知らないことを理由に,担保範囲に関する規律を無効とするというのを保険法に設けることは適当とは考えておりません。   それから,告知義務と責任開始前発病不担保制度の関係につきましては,従前から説明義務というか,説明の問題だという御指摘もいただいていますが,現在,保険会社では例えば特約のパンフレットあるいは注意喚起情報,「ご契約のしおり」あるいは告知書の表紙の説明書き,あるいは契約時に証券とほぼ同時期に送ります「保険金の支払にあたって」,こういったところにその関係について分かりやすく説明しております。   それから,もう一つ条文の骨子の方に書いてございますけれども,告知制度とかあるいは特別条件,こういったものの制度と担保範囲に関する契前発病不担保条項とはやはり異なる制度ですから,正しい告知をし,あるいは条件が付かなかったからといって,担保範囲に関する規律の適用がなくなるというような論理関係にはないというように考えております。また,仮に口頭説明をしなかったという不作為の効果が約款に定める担保範囲を変更すると,そういうことに結び付くとも考えておりません。   もう一つ,実際の適用例,適用の仕方につきましては生命保険協会のガイドラインにありますように,また,今,○○幹事がおっしゃったように,この規定の適用というのは慎重にやっておりまして,まず,その疾患による容易に自覚可能な症状,身体の変調が存在すること,二番目がその疾患の他覚的所見あるいは検査所見が存在すること,あるいは三番目がその疾患,それには前駆症状も含まれますが,についての医療機関の受療歴があると,こういったことを総合的に勘案して,この規定の適用の有無を判断しております。これは例えば小社においても,先ほど申し上げた「保険金の支払にあたって」という契約時に証券とほぼ同時期に送ります資料にも,その旨,書いてございます。   私どもは約款に書いてあれば何の問題もないとか,そういうふうに考えているわけではございませんで,今後ともより分かりやすい説明,例えば記載資料はこれで十分かどうかとか,あるいはもう少し目立つようにとか,文字を大きくとか色を変えるとか,いろいろな努力をして分かりやすい説明に怒務めていきたいと,そういうふうに考えております。   以上です。 ● ○○委員。 ● 幾つか御意見があったのでお答えしなければいけないと思うのですが,○○幹事の最初の援用できないと。これは実は損害論では勝負していないのですね。それでは○○委員の足りないという御主張だったわけで。これは支払を強要できないということですけれども,もちろん,先ほど○○幹事がおっしゃったように援用できないで告知義務の方でやると。それはそれでとてもいいやり方だと思います。ですから,損害論では不十分なので,やはりこういう形もしくは○○幹事が言われたような形というのはとてもいいのではないかと。   今,○○委員がおっしゃったようにこれを無効とするとか,そういうことではなくて,また,口頭説明するしないではなくて,こういうルールがあれば当然文書で払いませんよと,一番関心をお持ちのものは払いませんよという文書を出せば,それで済むわけですから,そんなに負担を掛けるものではないと。   二番目の善意の人の問題ですけれども,ルールがあるのも承知していますけれども,でも,○○委員がたくさん紹介したというそういう相談があって,また判例の中にもそうではなくて裁判になって,最初は払うというのをちょっと待った方がいいですよといって結局払わないと言われて,裁判で一審では負けてしまって,二審では信義則で助けられたようですけれども,そういう実態があって,だから,その点を取り決めがあるからいいというわけにもいかないと思うのです。   三番目の一番問題は,こういう構造的にある問題をどう救うかという,信義則だけで救えるという形でいいのかと。それは弁護士さんとか裁判の心証等,いろんな問題がありますけれども,でも,本質は何か構造的に発生する問題で,今,言われたようなことだけでは,その人たちを一括して救うということはできないのではないか。だから,私は○○幹事の援用できないというのはとてもよくて,それで告知義務の問題だけでいくというのはとてもいいのではないかと。それでももちろん結構なのですけれども,そういうふうに思います。 ● ○○委員。 ● パブコメがたくさん出された中で,やはりこのことに触れているのがたくさんありまして,多分ほとんど消費者側の方の意見だと思いますが,責任開始前発病というものがこういう形で使われていて,大変正しく告知をした人にとって落とし穴的な感覚を大変持つものであるという部分については,多分皆さん了解をしていただいているのだろうなというふうに思います。   先ほど○○幹事からおっしゃっていただいたみたいに,善意の人に対してきちんと正しく告知をして,それで保険会社が選択をするわけですけれども,母集団に入れてよいというふうに判断をして,それで引き受けたものについては保険事故が起きたときに,責任開始前発病というもので不担保条項を援用すべきではないと,そういうふうにしていただければ,それは私がずっと申し上げていることとぴったり合いますので,そうしていただければ一番よろしいのですが,やはり始期前発病について,例えば,今,○○委員の方からガイドラインがありますというお話がございました。それは無自覚の方の人に関していえば,そのガイドラインはすごく画期的なガイドラインでございますし,有効で,損保さんの方にもガイドラインがあることは存じ上げておりますので,それについてもそう思っております。   ただ,正しく告知をした人の場合について,それで保険会社がお引き受けになった場合については,あのガイドラインがそういうふうに機能するのかなというふうに大変疑問に思っておりまして,その点については現実に保険会社がそれを実際のお支払の判断のときに,どういうふうに個々に御判断なさるかは別にしまして,あのガイドラインだけでそういうことができるのかなというふうに大変疑問に思っております。   申し上げているのは,結局は,もしも万々が一,保険会社が例えば告知がありました,告知があったのだけれども,そこで引き受けないという選択もしくは特別条件を付けるという選択があり得るのに,そういう選択を一切しないで,万が一,保険事故が起きたら,それは始期前発病ではねればいいと。だから,引き受けるのだと,そういう悪意,すみません,そんな現実にあり得ないと言われそうですが,そういう悪意の引受け方をされたら,もう太刀打ちできないと。そういうことで支払回避ができるという理屈になってしまうのではないかしらと。そういう意味では,そういう告知をしました。こういう人はこういう病気になるのだな,だけれども,万々が一のとき以外は引き受けても大丈夫だろうということで引き受けてしまうということもありだというふうになってしまうと,大変困ってしまうだろうと。そういうことが告知のところをゆるゆるにしてしまう,そういう引受け方が現実にあり得ないと断言できないわけだから,そういう意味では大変心配だということを申し上げたいと。   ずっと申し上げているのは,告知書で今度は質問応答義務になったわけですから,質問応答義務になったときに保険会社が必要な事項は聞くわけですから,聞いたものについて,そこに正しく回答したことについては始期前発病のルールを適用しないでいただきたいと,そう申し上げているだけなのですよ。例えばそれを契約法でどういうふうに形に組めばいいかということになれば,多分引受範囲を限定しない責任を保険会社に負わせるというような形にできないかなと。大変契約法で難しいということはよく存じ上げておりますが,申し上げたいことはそういうふうに思っておりますということでございます。 ● ○○委員,○○委員,今,○○委員が御指摘のように,要するに告知したのだけれども,結局,その病気で契約不成立後発病すると始期前発病免責を援用されると。これは認識も自覚もしているわけだから,先ほど言った善意で自覚ないような場合は援用しないという取扱いで対処できて,それはそれでいいけれども,そういう告知した場合が非常に説明不足でやはり誤解を招くのではないかという御指摘だったのです。先ほどの○○委員の御指摘というのは重要事項説明書とか,そういう書面では書いてあるという,いろんな段階の書面でそういうことが書いてあって,注意が喚起されているという御説明だったと思いますが,やはりそれは消費者にはなかなか届いていないと。では,○○委員が御指摘になったように口頭で説明するということが考えられるので,それはやはり保険の募集上,そんなことは言えないという……。 ● よろしいですか。結局,言った言わないの議論になるから,結局,書面で書いておくということになると思うのですね。いろんな方に書いてあると同じでありまして,告知との関係につきまして,したがって告知書の表紙の方に例えばこういう書き方をしているのですね。 ● 手元の資料の中にあったりしますか。そこまではないですか。 ● このファイルの中に○○生命の告知書というのが入っていますけれども,そこの下の方の「ご契約の保障が開始される時期について」というところ,初めの方から読みますと……。 ● よろしいですかね。割と一番上にあります,表面が申込み書式のその次の紙に,二色刷りで入っているところですね。それの真ん中よりちょっと下に「ご契約の保障が開始される時期について」と。 ● そこの例えば3行目から読みますと,「保険金のお支払いなどは,責任開始以後に生じたケガや病気を原因とすることが要件のため,責任開始前にすでに生じていたケガや病気を原因とする場合には,お申込みの際の告知などによって,当社がそのケガや病気が生じていることを知っていたとしても,約款に特段の定めがない限り,保険金・給付金などのお支払いや保険料の払込免除の対象となりません。この場合,お引き受けの際に特別な条件をつけているかどうかを問いません。」と,こういう記載がありまして,そういうことを前提に,しかもこれは控えですからお客さんの手元に必ずあるものなのですね。今は告知書というのは写しとこの表紙をお客さんが手元に残しておくと,そういう仕組みですね。ですから,先生方がおっしゃる不意打ちではないかというところを避けるために,いろいろなこともこれからも考えていかなければいかんと思っています。   それが一つは先生がおっしゃった個別に通知する,そういうことも含めて検討していきたいと,そういうふうに小社としては考えていますけれども,やはり繰り返しになりますけれども,今の資料も確かに青の字で見づらい字です。目立ちませんから,そこをもっと強調するとか,そういったことも含めて検討していきたいと,そういうふうに思っています。 ● 特定の病気を告知されたような場合は,やはり別書面にして証券を送るときなり,告知書の写しを送り返すときなんかに,はっきりこの病気は不担保というのは,それだけ見て分かるようなもので説明しないと,こういう文書の中に埋もれていても,多分だれも気が付かないと思いますよね。保険会社の方は必死にいろんなことを親切に書いているつもりではあっても,なかなかそれが届くかどうか,そういうところに問題がありそうだなという気がするのですけれども。 ● そういうことも含めて,例えば,仮に証券にもそういうことが記載できないかとか,いろいろなことを今考えています。 ● ○○委員,そういう少し改善策を考えていただくというのでは,まだなかなか不十分だということでしょうか。 ● いえいえ,そんな。改善策を考えていただくのも大変結構でございまして,是非改善策を業界を挙げて考えて,何も生保業界だけではなくて第三分野の保険を売っているのは損保業界の方もそうですので,是非考えていただきたいと思いますし,やはり信義則違反というのも大変長い刀で使いにくくて,そんなものをこれで使うというのはそもそも余り想定できませんので,是非告知した事項で責任開始前発病で例えばお支払にならないという判断をなさるようなことがあれば,やはり,今,ここでこういう議論が行われたのだということを踏まえた上で,何らかの形で別に監督法でなくてもガイドラインでもよろしいのですが,そういう形で業界として手当てもしていただきたいと,前向きにそういう形でやっていただくことがお願いをしたいことの最低の基本でございます。 ● ○○委員。 ● 今の約款について,普通の消費者関係の契約では考えられない条項なのです。というのは,「当社が知っていたとしても」というところが,これは消費者契約法の一方的に消費者に不利なというか,そういう条項になるのではないかなと思うのですけれども,知っていてもというのは外せないのですか。○○委員はここを言っているのだろうと思うのですね。きちんと告知したにもかかわらず,契約を成立させておきながら,保険金が出ないというのはおかしいと言っているので,約款にここまで書いてあるというのはちょっと私は驚いたのですけれども。 ● 告知義務の問題として考えれば,保険会社が知ったら当然,告知義務違反の効果は問えませんねとなるのですけれども,この契約前発病免責というのは,そういう契約者が告知したかどうかで支払の有無が決まるということではなくて,客観的に契約が開始する前に病気になっていましたかと。もしそうであれば,それはもう自分たちのリスクの引受けの範囲外ですねという,客観的な要件で分けているものですから,ところが消費者側から見れば言ったではないのと,それでもなお免責を主張するのかと,それは確かに気持ちはよく分かるのですが,法律上のルールの性質は全く違うという前提で……。 ● そうですか。 ● そこの誤解をどうしても生じやすいので,そこをはっきりさせてもらわないといけませんねということですね。 ● ただ,消費者がこれを読んだときは,そこまでは解釈できないと思うのですよね。だから,結局,自分はきちっと告知したにもかかわらず,いや,いいですよということで受けておいて,いざ,消費者は保険金が出るなと思って期待していて請求したら,いや,あなたは駄目ですというのでは,消費者からすれば,では何のための自分は告知したのか,受けておきながらという気持ちはどうしてもあると思うのですよね。そこを解決していただかないと,ここの文言を赤にするとか,大きくするとか,そんなのでは解決にならないと私は思うのですけれども。 ● ○○委員。 ● 今の議論の延長線上に,でも,やはり法律の枠内での議論をしなければいけないと思うのですけれども,やはりこういうことがあっても,やり取りの過程でそれを上回るこの病気については払ってもらえますよというふうに,仕返しができるようないろんな事実関係が積み重なっているからこそ問題なわけで,要するに一言でこの思いについて,今,○○委員がおっしゃったように,それは駄目ですよと一言,その人が言えば,すべて解決する問題なのですね。これから送るように努力していただくのももちろん結構ですし,しかし,やらなかった場合,とにかく何か規定を置かない場合に,私は始期前発病を援用できなくて,告知義務だけでいくというのが保険法としては非常にすっきりしていいと思いますけれども,救われなかった場合に構造的に一定の確率でこれは発生するわけですから,その場合どうするかということだけはやはり決めておかないと,そこが一番大事な問題ではないかと思います。 ● ○○委員。 ● 決めておくというお話,今,○○委員がおっしゃっていただいたのは,私は先ほどのガイドラインでもいいと申し上げたのは,例えば先ほど○○委員の方からお話がありましたようなことは,当然各社さんで検討いただくのだと思いますが,例えばそういうことがされなかったときには,告知した事項について責任開始前発病ルールを軽々に援用しないのだと,そういう合意を業界団体でしていただけるということであれば,それはそれで実質的には私が申し上げた目途しているところに落ち着きますので,そういう形にしていただけないかなというふうに思っております。 ● ○○幹事。 ● 現実的なところはそういうことなのかなと思うのですが,理論的に言えば,結局,告知義務の規整は片面的強行規定というような格好でかかるとすれば,この告知義務を全部やらないで,全部契約前発病不担保ルールだけで引受けをしますということも理論的には可能なのですよね。そうすると実質的にはそこのルールが何もないということになれば,これは容易に脱法できるという,告知義務をですね,告知義務の強行規定を容易に脱法できるということは理論的にはあり得るのです。ですから,私が危惧しているのは要するにそこの理論的な手当てが何もないというのは,ちょっとしり抜けの面がないではないというので,せめてそこは強行法規として手当てするのはいささか行き過ぎかなと思いますので,何とかそこは任意法規で手当てしてもらえないかという,そういう希望です。 ● ○○幹事。 ● 私も今,○○幹事がおっしゃったのと全く同じ理論的な関心を持っておりまして,法律上のもともとの告知義務というルールが義務違反に対する解除権の行使,そして,それによる効果が免責と,そういう構造をとっている法律のルールを,それを含んでさらにそれよりも大きなものを取り込む形で不担保条項という形で全部ばりばりと切り取ってしまったら,少なくとも法的ルールの構造が違うからそれは別次元のルールであって,それが契約自由でまかり通るということを言い出すと,以前にも危険の増加に関しても申し上げたことがあるかと思いますが,危険の増加に関して通知義務の規定を置いて,通知義務違反に対しては解除で免責という,そういう効果を一式用意したとしても,それに関するものをすべて含むような不担保条項を置いたり,免責条項を置いたりして,これは解除の問題でなくて免責や不担保の問題で,これは契約自由の問題ですと,そういう理屈で,異次元であって,それが全部通るということになると,極めて片面的強行規定でこういう義務のルールを置くことは,ほとんどザル法になるというふうに私は思っておりまして,そこは同じ問題であるというふうに御理解いただいた上での審議をお願いしたいと思っております。 ● それは,もう契約前発病免責というのは告知義務ルールに一本化して,独自の免責としては置くべきでないという御主張ですか。 ● 結局,告知義務違反がなかった場合にもその条項が働くという限りでは,明らかに告知義務のルールの潜脱であるというふうに言えると思いますので……。 ● 契約前発病ルールの一面で持つ合理性というのは,お認めにならないという趣旨ですか。 ● 結局,リスク評価のどの範囲の資料で,保険会社が契約引受けの判断をするかということについて,保険法としてどういう態度をとるかということだと思うのですが,契約者に告知義務を課して,そこで得た情報に基づいて引受けの判断をするわけですが,要するに少なくとも契約者側も認識していない隠れたリスクについて,それは保険者側からも知り得ないリスクであって,双方,合理的な当事者であっても知り得ないリスクがあって,それに基づいて保険数理上,そのリスクの引受けとか判断ができないと。そういう事態について,それは探知できないものであるから引き受けなさいというルールを置くべきであるというのが,私の最終的な考え方になるのかなと思っておりますが。 ● そこの契約前発病ルールが免責ルールが全部おかしいということではないのだろうと思うので,だけれども,契約者側が全然気が付かない場合もあって,そこは今までの実務で先ほどから出ているように,そういう場合は基本的には援用しないというような絶妙な何か運用がされてきたようには思うのですね。それをなかなか法律上のルールにするというのが非常に難しいのかなという感じで,今まで……。○○委員,どうぞ。 ● そういう意味で先ほどから議論がありますように,告知義務違反とこの契約前発病というのは少し性格が違うものだと。ただ,そうはいっても契約者にとって酷な場合については,先ほど実務を御説明させていただいたように制限して発動していますと。あと多分残っている問題という意味では,そのことについて契約者側にきちっと理解,周知できているのかというところについて,我々は努力はしているつもりなのですけれども,まだ足りない部分がひょっとしてあるのかもしれないと。そういう意味で,そこについては引き続き業界としてもっと分かりやすくお伝えするだとかいったことも含めて,努力していくということではないかなというふうに私は思うのですけれども,そういう意味で契約法でというよりも,むしろ我々がやはりこれまでもガイドラインだとかいろんな形で取り組んでいますけれども,引き続きそういった形で取り組んでいくということでどうかなとは思っておるのですけれども,その意味で,○○委員がおっしゃっていただいているように,ちょっとワークする部分が告知義務違反とこれとは違うということについては是非御理解をいただきたいなと。それは無制限に援用するということではなくて,契約者に酷な場合についてというのは先ほどから申し上げているような実務で対応していく部分だというふうに思っておるのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 私は今の議論の実質について判断は付かないのですけれども,ただ,○○委員あるいは○○委員がおっしゃったように,現在,実務で対応できている部分があると,さらにそれに改善すべき部分というのがあるという御認識だったと思うのですけれども,実務で現在対応できている部分だけでも,法律の中に書き込むということはできないのかなというふうに思うのですけれども,というのは,やはりこれから対応すべき部分というのが何の手掛かりもなく全く信義則に投げられてしまうよりは,みんなが納得して,ここまではそうだろうというのがルール化してあることによって,それの延長線上でその先の問題を考えるということができるのではないかなというふうに思うのですね。ですから,今の実務ベースで認められていることがルール化可能なものならば,ルール化していただいた方がよろしいのではないかと思います。ただ,技術的にどうしても難しいということであれば,また別の考慮が働くのだろうと思いますが。 ● それでは,何点かまとめて事務当局の考えを改めて申し上げたいと思いますけれども,中間試案の前の御審議でもさまざまな御指摘をいただきまして,私どもとしてもこの問題を,それこそ契約法のルールの中で受け止められないものだろうかという観点で検討したつもりでございます。ただ,その割に資料の中身もは進歩がないではないかという御批判を受けるところなのですが,考えた中で例えば先ほど○○委員からお話がありました,このルールが存在するから,例えば悪意の引受けみたいなのが行われるおそれがある意味増大して,そうなった場合には契約者サイドは打つ手がないと。ただ,それは引受けの仕方に問題があるわけで,では,それゆえこのルールを無効というような形で契約法の中で受け止められるかと言われると,一面,○○委員にも御整理いただきましたように告知とは別の制度というのでしょうか,あるいは別の客観的な要件として合理性があるという面もある以上は,そういう契約法での受け止め方はまず難しいだろうということが言えるのではないかというふうに思います。   そこで,本日もるる御指摘がありましたように,きちっと説明さえしてもらえばというお話がありましたとおり,説明の問題ではないかというところがあるのですけれども,では,説明の問題と考えた場合に契約法でどういう形で受け止めるのが素直かというと,説明がきちっとされたのと同じような保護を与えようと,多分,こういうことになると思うのですね。金融商品販売法などで説明されなかったら,投資性商品で元本割れした場合に元本割れした部分を損害と認めているというような規定を考えますと,あれは説明がなければ,そんな怪しい商品に手を出さないことによって元本割れしなくて済んだから,割れた部分は損害として認めるというようなことで,割と素直に飲み込みやすいのですけれども,この場面で説明義務がなかったときに,きちんと説明されたときにどうなったかということと比較して考えてみますと,きちんと説明されれば,先ほどのお話にあったとおり,それでは余り自分にとっては意味がないから保険に入らないという選択をするか,それでも,その部分が補償されないのは分かったけれども,ほかの病気とかで入院したり,手術を受けたときには保険金がおりるように入りましょうという選択をするか,どちらかではないかなというふうに思うのですね。   そして,きちんと説明を受けて不担保になる部分を分かりながら入った場合,どうなるかというと,契約前に発病していた病気で入院したりなんかしても保険給付が出ないわけですから,今回,説明を受けなかった人について,この主張の援用を認めないということは,保険給付をするということになってしまい,説明をきちんと受けた以上の保護を与えることになってしまいます。そこまでしてでも保護すべきだという政策判断もあり得るとは思いますが,やはり一方で保険全体の健全性などという問題があることを考えると,なかなかそこまで契約法で踏み込むのはちょっとどうなのかな,つまり,援用できないという効果を契約法で定めるというのはちょっとどうなのかなと。   ○○幹事がおっしゃったように,一方できちんと説明を受けて入らなかった人と比較すると,保険料の返還という効果を与えるということになるのですが,それを保険法で特出しして書くかというと,勘違いしていたということで別途錯誤でしたということでもいけるでしょうし,あるいはだまされたということで詐欺ということでいける場面も出てくるでしょうし,そうしますと保険法で特別に何か書かなければ受け止められないことかというと,そこは逆に一般法理で受け止められるのではないか,こういう思いもありまして,なかなかきちんと説明してくれさえすればというところから,何か契約法で受け止められないかと考えても,なかなか保険法で特別に受け止める方法がないのかなという気がしております。   そして最後,実務で工夫されている部分の争いがないところをルール化というところも,そこはなかなか出口の支払の場面での事実認定に絡むものですから,それも一律に契約法で受け止めて何か明確な線を置いて,この場合にはもう援用しないで払ってしまいなさいということを書けるかというと,なかなか事実認定が絡むものですからそこも厳しいと,以上のとおりるる検討して,なかなかやはり契約法では申し訳ないのですがということで,今回の資料が進歩のないままに終わっているということでございます。 ● ○○委員。 ● 後半の部分はおっしゃるとおりかもしれません。前半はやはり深い溝があるのだなと。要するにそういう今のような判断をしていただくと,たまにいる悪い保険募集の人は万々歳だというか,つまり,そういう契約をしなかったはずだというふうに言っている,でも,そうではなくて,この場合は判断の過程の中で担保してもらえるという判断,意思形成が築き上げられているわけですから,現行法も損害論でいけない,それでは救われないからということでこの話が出てきたわけですから,どうもかみ合っていないと思うのですね。あと手短にいたしますが,○○幹事がおっしゃったように,通販の無選択型の場合には適用,こういうことをやっても駄目なわけですよね。だから,それでも入れますというような形で無選択の場合には確かにおっしゃるとおりなのですけれども,私は○○幹事がおっしゃったように業界の方に御異論がなければ,それをルール化するということにまずチャレンジしていただきたいし,最悪の場合でも○○幹事がおっしゃったように,やはり何か任意規定的でもいいから,そういうものがスタンダードなのだという形でやっていただければと思います。 ● ○○幹事。 ● すみません,この点に関しては弁護士会の方も生保協会のガイドラインで,妥当なところで運用していただけていることそれ自体は評価するものの,やはりそれはガイドラインのレベルではなくて,法律のレベルで何とか手当てできないものだろうかという意見が主流を占めておりました。   それで,では法律のレベルでどういう手当てが可能なのかということは,○○幹事や○○幹事がおっしゃっているところだと思うのですけれども,例えばずっと第1回目から私が個人的によく理解できなかったのは,これが特約だということで,では特約ではない場合はどうなのだろうという,その違いがよく分からなくて,それで,その違いが分からないので,あと○○委員がおっしゃっていたように,この文章では大きく書こうが色を変えようが,やはり分からないではないかというところにあるかと思うのです。   契約締結前,健全な保険の運営としてこういうものが必要だというのは,その意図されるところは分かるのですけれども,健全な運営のためにこういう制度が必要だという,こういう制度というのは何かというと,契約の成立のときにその原因が存在していて,そうするともう事故が100%生じるような,確率論でないような危険を引き受けてしまう。それは保険の制度としては相入れないものだということであれば,まずはそれが原則なのだということになって,特約ではないのではないかというふうに思えてくるのです。これが特約でないのであれば,そういうものが健全な保険の運営として必要なのであれば,それがみんな保険の制度としてはそういうものだということが分かるように,法律のレベルで規定されるべきものではないかなと思うのです。   他方,そうはいっても原因が契約締結時に存在している保険は担保しないというような,それを任意規定として規定するということも考えられるし,そこまで法律で書いたら行き過ぎなのではないかということだとすると,例えば契約の締結の際に既に原因が存在している保険事故については,保険契約者又は被保険者がそれを知っているときには担保しないというふうな規定に法律レベルでしておくと,一般の消費者が,なるほど,そういうふうに言われてみれば,もう原因があって,自分が知っているのであれば,それで保険に入ろうとしたって保険でカバーできないというのは当然ですねというのは,比較的分かりやすくなると思うのです。   そうすると,今度,特約はどうなるかというと,保険事故の原因が契約締結時に存在していて,法律のレベルでは知っていた場合に担保しませんけれども,この保険契約はあなたが知らなくても,その原因が存在する場合には担保されないことになっておりますというふうな書き方をすると,その特約の存在によって,この保険契約は自分にどう不利益なのかというのが分かることになるかと思います。今の文章ではさっと読んだときに,上から4行目のところで,「責任開始前にすでに生じていたケガや病気を原因とする場合には」というところで,知っていたとしてもお支払の対象になりませんというのが,先ほど申しましたするっと入ってきてしまう当たり前のような文章になっていて,ただ,その効果というのがこれ以上の効果を持っている規定になっているのではないかというところが多少問題なのかなと思っております。 ● ○○委員。 ● 自分の病気というものを消費者がどの程度認知しているかということなのですよね。善意というのは全く認知していない場合もあれば,そうではなくて例えば自律神経失調症なんていうのはありとあらゆる病気の原因になるみたいなのですけれども,どういう病気の原因になるかというのは自分は分からないわけですよ。ただ,こういう病気ですよというふうに告知すると。その先はやはり保険会社の方で調べていただく,ないしはあちらの方が情報は持っているかと思うのですね。   ですから,きちっと告知したことに対して保険会社が調べて,調べた上で対応していただければ,こういう約款があったとしても,それはそれで分かるのですけれども,何かこの条文とか約款を見た限りでは,そちらの責任はこっちへ置いておいて,何かこっちにだけ告知させるというような,そんな感じにとれるものですから,やはりあくまでも調べるだけのことは調べた上で,受けた,受けない,その判断をなさった以上は,やはり受けた以上は責任をとってもらわなければいけないと思うし,受けない案件というのが結構出てくるのではないかと思うのです。   そうした場合,私も自分の経験であれなのですが,中高年になりますと女性の場合,橋本病というのがあるのですが,それを申告しましたら,やはり保険が駄目だったのですよね。ああ,そうかということであきらめましたけれども,あえてそこから先,別な会社に当たるとか,そこまでの熱意はなかったのですけれども,そういう意味ではやはり十分に保険会社が調べるその責任というか,その辺のことを何か法律の中に含んでいただければ,随分違うかなというふうに思うのですけれども,それは今の考え方で入っているのでしょうか。受ける,受けないの判断のところの保険会社の調査義務というか。 ● 告知義務に関しては告げられたことをもとに何か疑問があれば,さらに再質問するなり,身体検査をする,そういう運びになると思うのです。よろしいですかね。 ● はい。 ● それで引き受けるかどうかを決めて,告げられた病気については確かにもう発病しているとすると,契約は引き受けるけれども,それによる医療を後で受けたような場合でも支払いませんよと,そういう形の引き受け方。 ● 契約前発病の規定はそうですね。 ● 告知義務違反になるかどうかのそのことについての調査はされたり,質問はされるのでしょうけれども,それ以上のことをするわけではない。 ● ちょっと……。 ● という御感想なのですが,どうですか,実務的に。 ● 今,○○委員のおっしゃることも分からないではないのですけれども,ただ,大量の契約を引き受けて,一つ一つの被保険者の方について個別に調査して,この方の実際の病気はどうで,過去にどういう病気をしたとか,そういったことまでコストをかけて引き受けると,そういうことはなかなか難しいのだろうなと思いますね。 ● ○○幹事。 ● 私がお願いしておりますのは,自覚症状があって告知してどうこうというパターンの方ではなくて,専ら,告知できないほど自覚症状がなくて善意で入ってしまったと,後から見ると非常に重篤な病気が起きまして,これはやはり契約締結時に既に発症していたのではないですかと調べて,それで契約前発病不担保ルールを適用されると,このときが一番びっくりされる,契約者側が驚くというパターンが一つ考えられるので,その部分を何とかできませんかと,むしろそちらの方を私は言っておりまして,それは告知義務の場合でも同じなのですよね。結局,善意で重過失なく告知できなかったと。この場合は告知義務違反は問われないので,これで契約者は保護されていると,こういうパターンです。   そのケースで同様に契前発病ルールについてやはり何年もたってから,現状の約款では大体2年ですか,2年でもう生保会社の場合は契前発病ルールは適用されないというふうに約款は定められているかと思うのですけれども,法律上は何もそういう制限がございませんし,別途,言おうと思えば言えないことはないという商品はつくれないわけではないという,そういうそのところの問題を特に気にしておりまして,要は先ほど言いましたように,告知義務違反のルールを全然適用しないで,契前発病ルールだけでいくというようなことがもしできるとしたら,やはり脱法になってしまうので,前者のところを是非何とかルール化できないかと,その部分については業界の方々も別に今のガイドラインどおりなので,実務的に何の障害もないわけですよね,実際,そのとおりやっておられるのだろうと思いますので。ですから,先ほど○○幹事もおっしゃったことかと思うのですけれども,その部分だけルール化を最低限していただければ,別にだれも困らないということかなと思っています。 ● ○○委員。 ● ちょっともう一回,資料にも書いてございますけれども,やはり基本に戻っていただきたいと思うのは担保範囲の問題ですから,この保険では契約後発病したもの,あるいはけがをしたものについて引き受けますと,そういう商品なのですね。今,○○委員がおっしゃったように告知義務の場合は主観的な要素もありますけれども,契前発病の場合は客観的に決まるわけですね。そのときに発病という概念のとらえ方は先ほども御説明申し上げましたように,協会のガイドラインにありますように医学的に発病しているということを言っているのではなくて,パブコメなんかもやりましたけれども,いわゆる発症,実際に病気が症状として体に現れているもの,それを自覚とか検査のときの所見とか,そういったものがあるものについてこの条項の適用をしていると,そういう実態であるわけですから,そこは御理解いただきたいと思っています。 ● ○○幹事が御指摘のような,そういう立法というのは難しいという技術的な理由というのは何か。 ● 立法の技術的な問題かどうかはよく分からないのですが,むしろ保険の問題ではないかなという気がするのですけれども,言ってみれば,今,基本に立ち戻っての話がございましたが,何をもって保険事故とするか,あるいは何を担保するかというのは契約で決められることであって,それに法律が口出しするのは基本的におかしいというのがまずあると思うのです。本人が自覚症状がなかった場合を救いたいという気持ちはよく分かるのですけれども,そうだとすると,被保険者の方の主観で担保範囲に入ってきたり,外に出たりということで,それ自体がむしろ保険の担保範囲の定め方,あるいは保険事故の設定としてどうなのかという思いがあるのですけれども。 ● そこは告知義務も同じですよね。 ● 同じなのですかね。ちょっと違うような気がする……。 ● もちろん,契約締結時の危険選択としては要するに主観的要素で切っているので入ってくるわけですね。もともと既に発症しているものが,今,発症という言葉はちょっと問題かもしれませんけれども,一応,既に原因が契約締結前にあったとしても,告知で危険選択するという段階で契約者側の主観は通っているわけですから,要件として,ですから契前発病ルールであろうが,告知義務のルールであろうが,言い方は悪いですけれども,要するにバッドリスクが入ってくることはあるわけですよね。その点では同じでしょうというふうには理解しております。 ● その点では,要するに私が申し上げたかったのは契約ルールあるいは契約関係の処理の中で,契約当事者なり,あるいはそれ以外の関係者の主観を問うこと自体はもちろん,幾らでもそういうシチュエーションはありますけれども,今,おっしゃった告知義務でも担保範囲が動いているわけでは全くないですよね。入ってきた人を後でこんな人が紛れ込んでいたのはいけないといって,主観を問題にして契約を解除することによって外に出すということはあっても,担保範囲というのは全然動いていないのではないでしょうか。ここで○○幹事が救いたいとおっしゃっているのを救わなくていいと思っているわけではないのです。多分,自分も同じことを言われたら,何で払ってくれないのだと思うと思うのですけれども,ただ,やはり理屈で言われたときに,その担保範囲が主観で動いてしまっていいのかと言われると,仕方がないのかなという思いが私にはあるものですから……。 ● ですから,そこは強行規定と言っているわけではもちろんないわけですよね。だから,今のその実務,グッドプラクティスをルール化したら,そうなるでしょうということを申し上げているのです。個別具体的な最近の約款の例では,例えば先天性の病気とか,そういうものを個別に抜き出して,これはもう知っていようが知っていまいが駄目ですよというふうに,個別的にターゲットがはっきりしているという場合ですと,もう善意,悪意を問わないで,これはこういう保険ですからという目的がはっきりしていますので,それは除外されますよと,どう知ってようが知っていまいが主観はありませんと,こういう形でやらなければいけないし,それはそういう商品なのだろうと思うのですけれども,それは別に私は全然否定しているわけではなくて,それはまさに担保範囲の問題でクリアでしょうと。ですから,そういうところまで全部封鎖するとか,全然そういう趣旨ではありません。だから,広く網をかけるような一般的な契約前発病不担保ルールで全部が処理できるというふうにやってしまうと,ちょっとそれは行き過ぎの面があるのではないですかと。だからこそ,今,業界サイドでも一所懸命,そういう丁寧な対応をされているのだというふうに理解しています。 ● ○○幹事。 ● お話を伺っていますと,どうも最終的にいかに条文化するとした場合のイメージが先生方によってどうも違っているようで,例えば○○幹事が考えられておられるのは,告知義務に似たようなルールとしてルールを置かれるのかなというように思えるのですが,○○委員や○○幹事あるいは○○幹事が考えられていたのは,どちらかというと担保範囲の問題なので,免責事由として例えば責任開始前に疾病の原因が生じていた場合には,もう一切責任は負わないというふうに免責事由に書いて,ただし,そのただし書として保険契約者側が善意であった場合は除くというような,そういうただし書を付けるというようなことを○○幹事は少なくともそういうふうに考えておられたのかなと思うのですが,ただ,○○幹事の御意見からすると,そんな免責事由のような,担保範囲を定める事柄について,保険契約者が悪意であったか善意であったか,そういうただし書であるとしても,そういうものを免責事由として定めるのはどうも法律の条文としてはちょっと違和感があるという,そういう御趣旨で先ほど言われたのかなという気がするのですけれども,ただ,果たして免責事由の規定をそういうふうに考えなければいけないかというと,別にこのケースについては保険契約者が善意であった場合は免責事由としないというような立法も,できなくはないのではないかという気がするのですけれどもね,免責事由であれば任意規定として考えればよいということになると思いますので,ちょっとそのあたりのことももう一度御検討いただければというふうに考えておりますが。 ● ○○幹事,手を挙げておられましたか。 ● この担保範囲の決定というのが契約によって決まる事柄なのだという○○委員がおっしゃったのは,そうなのだろうと思いますけれども,それを前提にした上で,本来,当初の契約ではカバーされない範囲のはずのものについて,カバーされるのだという期待が生じているというのをどうするかということなのですよね。その中には,その期待をしんしゃくしてあげなければ,やはり気の毒だろうというふうに皆さんが思っているところというのはあるのだろうと思うのですね。それがどういうふうに書けるかということなのではないかと思うのですね。   ですから,一般論としては契約内容に入っているか入っていないか,これはきちんと決まると思うのですけれども,その上で一定の条件というか一定の要件を満たす場合に,契約の内容に入っていないということは主張できないのだというのを,やはり幾つかみんなが合意できるところだけをピックアップして書くと,あとはそれからの類推で賄うというのが考えられないでしょうかというのが,私が先ほどから申し上げているところなのですが。 ● ○○幹事。 ● 先ほど○○幹事が○○幹事の御提案をまとまった条文に近いような形で整理してくださったのですけれども,○○幹事の御整理を伺っていて感じたことなのですが,そういうふうに善意のただし書を設けるとした場合に,その前に○○委員がおっしゃられたことにちょっと触発されたのですけれども,一体,何をもって発病というのかという問題,それから何をもって善意,例えば同じ病状にあるのだけれども,ある人は神経質なので病院に行きましたと,そうしたら発病しているのが分かりましたという人がいて,病院に行くのが嫌いでちょっと体の具合が悪いなと思ったけれども,放りっぱなしにしていたという人は善意になってというようなことが起きかねないので,かえって,そういう条文を設けるということは今ガイドラインで,言わば実務の妙みたいな感じでうまくやっておられるのを,かえって何か変なことにさせることになりはしないかというようなことがちょっと気になったのですけれども,そのことは心配しなくていいのでしょうか。 ● いかがでしょうか。 ● 私は条文化するとすれば,そういう形が考えられるのかなということしか考えずに発言いたしましたものですから,むしろ○○幹事にその後……。 ● 告知義務違反の認定をする際に,やはり今おっしゃったようなことは微妙なところで裁判所も苦慮されている場合があるかと思うのですけれども,それは一応可能だろうと思うのです。要するに告知義務違反を故意あるいは重過失で違反したというときは自覚していたのですね,あるいはどの程度知っていたのですかというようなことをやはり確認するわけですので,そこは一応できるのではなかろうかと思っているのですけれども,どういう自覚があったのですかということは,一応認定されるわけですから。 ● それはその時点ではできるのだろうけれども,自覚の面から認定できるので,契約前発病で苦労するのはいつ発病したかが分からないと。そういうことから性質が全然違うのだろうと思うのですね。だからこそ,お医者さんにかかっているということで運用しないと,やはり保険会社の主観的な認定だけで,もう発病していたのだろうと言われると,それはなかなか問題があると。だから,多少病院に行かないで我慢して,保険だけ入ってというケースが中には入り込むのだろうけれども,それはしようがないということで運用されているのだろうと思うのですね。   なかなかこの問題は,そもそも委員の皆さん方がメーンにターゲットにしておられる問題点は,分からない場合にどうするかというのと,告知した場合にどうするのかと,全然違ったタイプの問題があって,それぞれ今の発病前の認定をどうやるのかというのも非常に微妙な問題があって,保険法で今,我々が考えているようなタイプのルール化というのは,なかなか難しいような気はしているのですけれども。それだけ結局,こういう疾病に関する保険というのは実はどんどん売っているけれども,非常に難しい問題があるという。   消費者としては,みんなやはり納得できないという問題がたくさんあると思っているのはまた間違いないので,何とかしてくれという悲痛な叫びが上がっているわけで,そこら辺,ちょっと今日ここでどうするかというのはなかなかこれだけ御意見があるので難しいとは思いますが,ちょっと実務的にも何か対応みたいなものを考えていただくようなわけにはいきませんかね。○○委員。 ● 今,先生のおっしゃったことを重く受け止めてやっていきたいと思うのですけれども,やはり何か基本的考えが合わないのは,商品そのものの話について知っている知っていない,そういうものではないのだろうと思うのですね。そこを御理解いただきたいというのが基本的にあるわけですね。それから,告知したけれどもということについては先ほどもおっしゃいましたように,もう少し契約者に明確に伝えられるような方法を考えていきたいと思っておるのですね。だから,オールリスク,契約前の発病も担保するという商品を考えられるでしょうけれども,この商品についてはそうしませんということを言っているわけですね。そこはだから主観で差を設けたりすれば,それこそ公平性の観点から問題があると思うのですね。そういう意味で客観的な事実でやると,その事実の認定も非常に厳格にやっていると,そういうのが実態でございます。 ● 今ので気が付いたので○○幹事に確認したいのですけれども,○○幹事は私自身の発言を免責事由として整理しているのではないかとおっしゃって,確かにそう整理できるのであれば,まさに免責事由自体の規定が任意規定ですし,○○幹事がおっしゃられるように,せめて任意規定的な形ででもいいから何か置けないかということが,それこそ立法技術的にも考えられるのかなと思わなくもないのですが,最初に申し上げましたように,そもそも免責ということではなくて,契約開始前発病不担保条項という名前がよくなくて,こう言っているので特約ではないかとか,あるいは免責ではないかということになるような気もしますけれども,そうではなく,保険事故そのものというか,こういうことについて保険金を払いますというまさにそういう約定なのであって,だから,たとえ契約で保険事故をこんなふうに定めたとしてもそんな保険事故の定め方は駄目ですよと,やはり契約法で書くとするとそういう書き方になるような気がして,やはりそれは難しいのではないかなと改めて思うのですけれども,免責と言われてしまうと何か一瞬書けるのかなという気になったのですけれども,改めて思うとその前の本体の問題なのではないかなと。そうするとやはりなかなか書きづらいのかなという気が改めてしました。なお考えてみたいと思いますけれども。 ● ○○幹事。 ● 私も担保範囲なのか免責なのかというのは,立証の容易,難易にも関係することなので,その立証の難易のことを考えた上で,どちらも本文にするか,ただし書にするかということは立法技術的に可能だと思うのです。   その前提として,結局,ただし書でカーブアウトというか切り取るのか,もともとそういう範囲なのですよという本文にするのかということの前提として,そもそもどういう保険事故を担保するのですよというときに,○○委員もおっしゃっているとおり,発病というのが難しいとか,そういうことだと思うのですが,まず,客観的に契約締結の前に発病したものは担保しないというのは多分原則で,異論のないところだと思うのですけれども,客観的な異論のないというのは語弊がありまして,そういうようなことが原則にあって,あとはどこから担保するのかという限界事例をどう規定するかという問題だと思うのですが,医学的に発症しているというのは難しくて,医学的に発症していて,しかも自覚をしているのであれば,これからは保険事故としてカバーしないのが妥当ではないかという政策判断があるとしたら,それを本文に書くか,ただし書で除外するかなのですけれども,契約締結前に発病して,それを自覚していた,あとそれで自覚又は容易に自覚し得た場合には担保しないというふうにすれば,現在のガイドラインが妥当に運用されているとして,それが法律レベルまで上がるのではないかと思います。   ○○幹事がまとめていただいたような免責の方の書き方にした場合には,契約締結前の発病については担保しない,ただし,本人が知り,又は知り得べきときには,逆になりますか,過失なくして知らなかった場合には担保するというような,善意と知・不知とあと過失とかを入れれば,多少,本人が病院に行かなかったとか,そういうところはカバーできるかなと思いました。 ● ○○委員。 ● 今の○○幹事の話とはちょっとずれてもとの話になりますけれども,○○委員がある種の合理性とおっしゃって,○○委員が基本に立ち返ってという,○○幹事が免責ではないというその流れのお話ですが,告知義務とプライシングは明らかに理論的に違うものだと考えるべきではないかと思います。告知義務に関してはあくまでもアンダーライティングの危険選択であって,逆選択あるいはモラルハザードの問題で考えるべきであって,契約前不担保というのはあくまでもプライシングの問題で,製造業だとしたら価格の原価のところの話であって,これは免責でも何でもない話ととらえた方が,ここのルールというのはより分かりやすいのではないかと。それでとらえた上で,ここははっきり,私は法技術的なことは分かりませんが,むしろここの基本をはっきりさせることによって,実務上問題となってくるところは実務的に解決すると。   むしろ○○幹事の言葉を返すような形になってしまいますけれども,ベストプラクティスを入れて,ある種の期待をもうちょっと明確化してやろうと思うと,余計,何か期待が広がってしまうというか,逆にもらえるのではないかとか,特にパーソナルインフォメーションというのは外からみて分からない情報ですから,そこが保険の基本ですので,むしろ原則をきっちりとした上で,実務的には対応するという方法の方がすっきりするのではないかと思うのです。 ● ○○幹事。 ● 私は今の○○委員のお考えと,基本的には同じスタンスなのだろうと思います。期待が生ずるそこが本来,契約の範囲に入らないのならば,入らないという期待が生じないようにするという方向にいくべきだろうと思うのですけれども,現在,我々は期待が生じる場合がありますよね,幾つかの場合はその期待は正当な期待ですよねというふうに多くの人は思っているのではないかと思うのですね。そうしたら,そこについては救済するという規定を設けて,そこに期待が生ずることが望ましくないのならば,期待が生じないような実務というのを形成すべきなのではないかなというふうに思っています。 ● 事務当局としてはこの立法は難しいと思っているのは間違いないので,これをひっくり返すというのは容易ではない。今日はいろいろ御意見をいただいたので,もう一度今日出た御意見をなお考えていただくとともに,どうも立法による解決は私が見ていても難しそうな気がするのですが,この問題はやはり今の実務の在り方をもう一回どこかできちんと問題点を整理して,どういう実務が望ましいのかというのをどこか契約者側,事業者側,双方で一回全部問題点を整理して,望ましい在り方というのを考えるということが必要なのではないかと思います。   そういう中で,法律の規定だと非常に単純化してしまいますから,非常に荒っぽいルールしかできないと思うのですけれども,この問題はどうもそういう荒っぽいルールでは解決ができないようなタイプの問題ではないかと思って,同じ医療関係の保険でもいろんなタイプのものがあるし,募集の仕方によってもまたいろんなタイプの募集の仕方があるだろうし,どうも一律に割り切れないような,1か条,何かを置けば済むというような問題ではなさそうな気がするので,この立法は立法で今準備を進めているわけですけれども,それに盛り込むかどうかだけではないちょっと全般的な検討をどこかでやる必要があるのではないかなと思いますが,生命保険会社,損保さんも含めまして,少しそのあたりをお考えおきいただけると,ここで仮に法律としては何もやらないということであっても,それは問題を何も手を付けないというわけではないということで,○○委員や○○委員たちもそれなりにまた対応していただけると思っているところで,そんなところで今日のところはよろしいでしょうか。   それでは,次の項目で今日の方の部会資料21の「第16 他人を被保険者とする死亡保険契約や傷害・疾病保険契約」の問題へ移りたいと思います。   まず,事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   まず,資料の1では他人を被保険者とする人保険契約における被保険者の同意について提案をしてございます。   まず,前々回の提案と比べますと,被保険者の傷害・疾病を保険事故とする契約に限って,被保険者の同意を効力要件としないという例外を設けていることや,あとは保険金受取人を被保険者又はその相続人に限定することとしている点は同じでございます。前々回の提案との違いは,傷害・疾病による死亡給付のみを定める契約については,被保険者の同意を効力要件としないという例外を認めないこととしている点でございまして,この趣旨については資料の(補足)1に記載したとおりでございます。   また,b,資料でいきますと2頁の※印のところでは,保険人受取人を被保険者又はその相続人とする旨を契約で定めている場合に限るということを問題提起してございますが,これにつきましてはその当否について検討すべきと考えられます。仮に,このような限定をすべきという場合には,保険金受取人の指定は保険契約者の一方的意思表示であると解されていることとの関係,すなわち,ここだけ契約上定めることを念頭に置いた規定を設けることの当否についても,検討する必要があると考えられるところでございます。以上のように,資料では被保険者の同意が契約の効力要件とならない場合について,契約内容と保険金受取人を限定することによって,被保険者の同意が効力要件とされないことによる弊害を防止することを意図してございます。   この問題については前々回の会議において,さまざまな御指摘をいただいたところでございますが,この問題を検討するに当たっては(補足)2に記載した点を考慮する必要があると考えられるところでございます。すなわち,この規律というのは契約の効力要件を定める規律でございますので,その内容を明確に定める必要があると考えられます。例えば現行商法第674条第1項ただし書は,被保険者を保険金受取人とするという極めて明確な規律となってございますし,今回の提案もこの点に留意しております。そういう意味では前々回の会議において,保険金額による制限をする必要があるとの解釈をする余地のある規定とすることも検討されるべきであるという御指摘も頂だいいたしましたけれども,それは適切ではないのではないかと考えております。   なお,契約法において保険金額を制限することが適切でないことにつきましては,(補足)2のなお書きのところに記載したとおりでございます。   さらに,前々回の会議においては被保険者の同意を契約の効力要件としつつ,その同意を欠くことを理由とする契約の無効を主張することができるのは,被保険者及びその相続人だけとすることとすればよいという御指摘もいただいたところでございますが,今回の提案でこのような規律としていない理由につきましては,(補足)3に記載したとおりでございます。   この問題につきましては,被保険者の同意が求められている趣旨を十分に踏まえて検討することが重要であることは,改めて言うまでもないことでございますけれども,その一方で傷害・疾病保険契約につきましては,あらゆる場合に被保険者の同意を契約の効力要件としてしまうと,保険契約者の負担を増すことになるなどとの指摘もされておりますので,このような指摘を踏まえたとしても,なお被保険者の同意を常に契約の効力要件とすることが合理的と言えるのか,また,被保険者の同意を常に契約の効力要件としてしまうと,保険が掛けられることに異存のない被保険者についてまで,その同意を得ていなければ契約が無効とされてしまい,結局,そのような契約を締結することができないことになり,被保険者やその相続人が必要な場面で必要な給付を受けられなくなるという事態を招くことが懸念されるところでございますけれども,そのことに問題はないかなどについても十分に踏まえた上で検討する必要があると考えられます。   次に資料の5頁の2のところでは,未成年者を被保険者とする死亡保険契約等について,契約法においては特別の規律を設けないことを提案しております。   契約法上一律に保険金額を制限することについては,前々回の会議においても御指摘のあったところでございますけれども,(補足)にも改めて記載したとおりでございまして,この問題につきましては契約法で規律するのではなく,実務上のさまざまな対応にゆだねることが適切と考えられるのではないかと思ってございます。   以上でございます。 ● それでは,前々回,非常に激しく御議論をいただいたところでございますが,それを踏まえて,なお事務当局として法案をつくるという観点から考えたときに,こういう提案になろうかというのが今日提示されたところでございますが,1の問題と2の問題は若干性質が違いますが,議論が余り紛糾しないように一応分けて御議論していただいてはどうかと思います。   まず,1の方の被保険者の同意一般の方につきまして御意見をいただきたいと思います。   ○○委員。 ● できるだけ成案を得るような形の建設的な議論をしたいと思いますけれども,従来からここでどういう議論をしていたかというと,結局,同意を求める趣旨を損なうことなく,一定の範囲で同意なしというふうにするための努力をしてきたと,こういうことだろうと思うのですけれども,他人を被保険者とする死亡保険の場合は,要するに保険者,契約者,それから被保険者,それから受取人は本人が死んでいますから相続人と,完全に四つにばらばらになるわけですよね。同意が必要なわけというのは,従来は人格権的な利益とモラルリスクの回避と。ただ,契約の民法的な扱いからいえば,保険会社と契約者の間だけで被保険者について当然契約できるかというと,人格権的な要素の中に含まれるのだと思いますけれども,そういう問題は根本的にはあるのだと思うのです。   この資料の案を見ますと,生保の方は同意が必要で,実際には生命保険に同様附帯のものが付いている場合はこれでカバーされると。そうすると,下の方は損害保険的なもの,いわゆる傷害保険が中心に疾病もありますけれども,死亡のところは,aのところは要求するということですが,実際は死亡・後遺障害とセットで売っていますので,私もそういう保険に入っていますが,証券などそもそも死亡・後遺障害が一本になっているわけですね。だから,要するに実際に機能するのはbだけだと。この場合,言わずもがなですが,要するに四者別々で本人が被保険者が知らない間に,保険に入ってしまうという事態があるのかというのはどうしてもあるわけで,やはり完全には成功はしていないと思うのですね。   でも,何かいろいろ考えなければいけないので,ではどうするのかと。私が前回,同意がなかったこと,これは効力要件かというのはなかなか微妙な問題なのですが,とにかくそのことを主張できるのは被保険者かその相続人といったときに何を考えているかというと,被保険者がまだ生きている間は自分自身が自分は同意していないよと言って,前回,オプトアウトという話が,契約関係から脱退すると。死んでしまった後,それはそんなに威嚇としての効力しかありませんが,例えばお父さんとお母さん,子どもがいて,妻が夫に内緒で夫に保険を付けて,夫が死んでしまって保険金を受け取ったというときに,子どもがそういうことを主張するかもしれない。そうしたら全部御破算になるよ。そういうようなシチュエーションを念頭に置いていたのですけれども,基本として同意を効力要件としないというこの案にまず賛成して,その上で理論的にはやはりでも破綻しているわけですよね,同意が本当は必要だと。   それで,前回やりました契約関係からの離脱の問題で解約を請求するというのがあったわけで,同意した場合の話だけそこではやっていて,論点としては捨てましたが,同意をせずに契約が発生した場合にどうするかという問題が残っているわけですね。前回,オプトアウトをするというのは必要だというのが私以外にも確か三人,間違いだったらあれですが,少なくとも三人の方はそういう御意見も述べられたので,要するに理論的には本当はちょっとあれですが,同意のところは,被保険者の同意なしに契約が成立するのは認めると。   しかし,同意がなかったことで,解除請求をする要件として,前回議論した離脱の場合よりも,離脱の場合は自傷事故等の重大事由解除の一定の場合と身分関係がなくなった場合ですけれども,本人の同意なしにやってしまった場合はちょっと広げまして,自分は同意はないよ,印鑑は完全に偽造されたものだというのはオプトアウトできると。それは前回もルールに乗っけて解除請求をすると。迂遠ではありますけれども,そういうことで現在の実務は残したままで,できるだけ同意をとっていただきたいとは思いますけれども,その部分をちょっと広げる形でこの案でいいと,そういう条件付きであれば,何とか理論的にうまくつじつまが合っていくのではないかというのを一応考えてきたのですけれども。   以上です。 ● ありがとうございました。   ○○幹事。 ● 同意を効力要件とせずにオプトアウトするということを認めるという案についてなのですが,被保険者が好運にも保険金殺人に遭わずに生き残った上で,知らないうちに保険が掛かっているということに気付いて,そこでオプトアウトするというのであればいいのですけれども,その前に殺されてしまうということは防げませんので,やはり基本は効力要件とした上で,そして,そういう保険は同意を得ずに保険を売ることはできないのだということで,保険監督の方できちんとやっていただくということは,やはりむしろ私はそちらが基本ではないかなと。ただ,それが立法技術的に非常に難しいというのは分かるのですけれども,出発点としてはやはり私は効力要件ということで考えた方がいいのではないかというふうに考えています。   効力要件の問題はそうとしまして,今回,提案された事務当局から出てきたこの案なのですけれども,結局,この問題については紆余曲折がありまして,中間試案の前のたたき台の時点では,確か家族をみんなまとめて被保険者とする場合は同意不要という,そういう案が出てきて,これは現行実務をそのまま追認するもので,これは困りますねということを私は発言した覚えがあるのですけれども,この前の前々回ですかね,出てきた案では,保険契約者の業務又は活動の範囲内で締結する場合は同意不要というルールで,これは私はちょっと立法技術的に難しいのかもしれないけれども,考え方としてはうまくいく可能性もあるルールではないかということを申したのですけれども,これはどうも立法技術的にやはり無理だということで,結局,出てきた案は私の立場からするとゼロ回答なので,損保業界からするとこれは満額回答だからと,結局,現在売っている保険を現在の売り方をそのまま追認するもので,結局,例えば海外旅行傷害保険なんかでは家族であれば被保険者の同意なしに,それこそ5000万円とかインターネットで見たら5000万円まで簡単に掛けられるみたいで,あるいはひょっとするともっと7000万とか1億とかも掛けられるかもしれないのですけれども,被保険者の同意なしに非常に高額の死亡保険金を掛けられるという実務で現在やっておられるわけで,それをそのまま追認することになってしまうのですね,この案でやると。   やはり,その点には非常に私は問題があるというふうに考えております。海外旅行傷害保険に関しては損保実務家から,これは非常にお客さんたちから支持を得ていると,非常によく売れているという話が何回もありましたけれども,確かにそれは生存給付について非常に支持があるということだと思うのですね。なぜ被保険者の同意なしに5000万もの死亡保険金を掛けるということについて,そういう必然性というか,商品としてそういう商品でなければいけない理由というのが私は何度伺っても,それについての説得力があるお話というのはこれまで伺うことができなかったと思っております。   にもかかわらず,そのような被保険者の同意なしに数千万円もの保険を掛けるという実務を追認というか,それを認めてしまうような案が出てきたということは,ひょっとすると事務当局としては,私は説得力があったとは思えない損保業界からの御主張について,あれは説得力があると思われたのかもしれないのですが,そうなのか,あるいはそれとも最初に説明された2のところの立法技術的な問題から,傷害・疾病保険契約にはさまざまな契約があるので,その一部について保険金額を制限する規律を設けるというのが立法技術的におよそできないのだという,そういうことなのか。   保険種類ごとに規律を変えるということは,当初からそういう案が出てきていたと思うのですね。とりわけ,被保険者の個別的な同意を得ることが困難な自動車保険の搭乗者傷害条項とか,それからイベント主催者の保険,これらの保険というのは被保険者の同意を個別に得ることが難しいということとともに,責任保険代替的な要素もある保険だと言えると思うのですよね。つまり自動車を運転していた者が自分の過失で運転をミスして搭乗者にけがをさせたというときに損害賠償義務を,あるいはイベントの主催者がイベント中の事故でけがをさせて損害賠償責任を負うというときに,そういう場合に備えて傷害保険に加入しておくということも考えられるわけで,ですから,個別の傷害・疾病保険とはやはりかなり違った特色があると思いますので,そういう意味で保険種類ごとに,保険商品ごとに異なった規律をするということは,私はできるのではないかというふうに考えてきたのですけれども,事務当局としてはそれは難しいと,どうもこの(補足)2のところの記述を見ると,そういう商品ごとに規律を異にするというやり方は難しいというふうに御判断されたかのように思えるのですが,そのあたりのところをちょっと御説明いただけますでしょうか。 ● ○○幹事。 ● 恐らく出てきている案はゼロ回答ということで,大きく○○幹事のお考えとかい離しているようなものになってしまっているのですが,これまでの経緯を御覧いただければお分かりいただける面もあるのではないかと思いますが,私どもとしてもある意味,今の実務をただ追認するだけのルールを考えていたということでは決してなくて,むしろ適切な枠組みをはめるということで,類型化を試みてきたというつもりで実はおりまして,だからこそ,毎回案がそういう意味では揺れているということで,ですから,第二読会ではちょっと,(ア),(イ)のような形で二つぐらいの類型化を試みてみたということですし,これまでお出ししていた案も「自己の業務又は活動に関して」ということで,とにかく何か枠をはめなければいけないということで考えてきたというところは同じでございます。   ただ,こちらが考えていた類型化というか,あるいは枠のはめ方というのは法律の立法ですので,現在ある商品を念頭に置いて,こういうもの,こういうものと個別的に書けるかというと,やはりその中の抽象的な共通項をくくり出して,それを法律上の要件に落として,それを類型化して書くと,こういうことが恐らく条文の立て方だと思っていまして,ですから,そのために今ある商品のうち合理的と思われるものの共通要素をくくり出して,何とか類型化できないかと。その一つが恐らく○○幹事がおっしゃる,契約時点では被保険者が必ずしも特定していなくて同意がとれないという書き方になるのかもしれませんけれども,言ってみればそういう要素のくくり出しというか,くくり出しての要件への落とし込みをるる試みたのですが,どうにもうまくいかなかったというところでございます。   その意味では,不可能かと言われるとちょっと能力不足ではないかという面もないではないのですけれども,少なくともこれまで成功できなかったというところでございまして,その意味では,そこが難しいのであれば金額制限と絡めれば,ある意味,かなりクリアにできるというような思いはございますし,これまでの部会でも御指摘いただいてきたところですけれども,やはり金額制限については今回の資料の4頁でも書きましたし,前回までの部会でこのテーマを取り上げた際にも申し上げましたけれども,契約法の中で一律にある金額を持ち出す,それも一律ではなくて類型ごとの金額ということもあるのかもしれませんけれども,いずれにしても一定の金額を契約法の中で規定すること自体については,技術的に不可能ではなくて,書けばいいだけですから可能なのですが,適当ではないという判断が他方ではありますので,その金額を使わないで,かつ,金額基準を使わないで要件に落とし込むような何か抽象的な共通項をくくり出して,うまく類型化ができないかということはるる試みて難しいというのが正直なところで,今回の提案になってしまっているというところでございます。 ● この点は前々回,私の方からも何か名案を出してくれとお願いをしていたところで,私も何かつまらないものを考えなくはなかった。やはりうまくいかないという,なかなかそういう苦しいところ。   ○○委員。 ● ○○幹事がおっしゃったことは全く私もそう思っているのです。それから,死亡の場合にはどうしても空手形になりますけれども,あとは重大事由解除とか,そういう方でいくしかないということですが,内容でいろいろ検討しておられると思いますが,出てきたものはどうも押しても引いてもなかなか動かないので,このままこれで通ってしまうのはまずいから,最低限の条件をやはり付けないと理論的にも何かてこは必要で,たまたま離脱のところの規定で同意がない場合の離脱の道は論点でも残っていましたので,そこでやはりないよりは,そういうものでもいいかなと。妥協し過ぎだと言われればまさにそのとおりなのです。その点をまず一点申し上げて,不特定なものという形で類型化して外したりするということはできないわけではないのだと私も思います。今,説明がありましたけれども,繰り言になるかもしれません。   それから,海外旅行傷害保険は私は十何人に聞きましたけれども,夫婦の間でも家族の間でも,死亡保険はやはりきちんと同意を知った状態で付けてほしいと,私の周りの人はみんなそう言いますが,もし本当にきちんとアンケートを,市場調査をしたら,やはり知った上で付けてほしいという人が半数はいくのではないかと思うのですけれども,ただ,現時点に来た段階で何もないままにこれでオーケーというのはちょっと私は納得できないので,申し訳ないけれども,そういう先ほど発言をしたということで思いは全く同じなのです。 ● ○○委員。 ● 前回,海外旅行傷害保険につきまして高額な死亡保険金を付ける必要があるのかというお話がございまして,いろいろ調べてみましたら,やはり海外で現実に海外旅行傷害保険はいろんな形の契約ができるのですけれども,一番シンプルなけがの治療費と,それから死亡保険金,こういう契約をした場合,海外でやはりお亡くなりになられる方がいらっしゃいます。私どもの契約では年間相当な数の遺体を日本にお運びしているのですけれども,大体海外でお亡くなりになって遺体を運ぶだけで大体400万ぐらいかかりまして,遭難されたとか,それから最近は非常に考えられない奥地の方に皆さん旅行されていまして,御高齢の方が行かれるということで,場合によっては例えばアフリカに行って病気になられますと,良い病院がありませんのでパリに飛行機で運ぶとか,相当なコストがかかりまして,一つの例を申しますと,オーストラリアで脳内出血で倒れて日本に移送し,治療の後,亡くなられたという方なのですが,現地への親族の渡航費とか移送費等々でやはり1000万円を超えるような費用がかかっておりますので,仮にきちんとそういう保険が付いていればいいのですけれども,ない場合にはやはりかなりの負担になるということで,単に日本の国内で旅行するのと大分事情が違いますので,それなりに心配を持って皆さん行かれているのではないかなと思います。   しかも海外に行く場合,自殺も免責ですし,それからもちろんお互いに殺人をしますと,当然警察が入り込んできて調査をしますので,やはり何でも死ねば保険金が入るというものではありませんで,けがによる死亡ということが前提の保険でございますので,そういう不慮の交通事故とか飛行機の墜落とか船の転覆とか,そういう場合に入られる保険で,やはり皆さんそういうことを心配されてお入りになっているのではないかなと思っております。 ● いつもの休憩の時間が参りましたので,これで打ち切るのではなくて,しばらく休憩をとってリフレッシュしていただいて,なお論戦を続けたいと思います。それではここで休憩ということにさせていただきます。           (休     憩) ● それでは,再開してよろしゅうございましょうか。   それでは,この被保険者同意の問題について引き続き御意見をいただきたいと思いますが。   ○○幹事。 ● 部会資料21の3頁の真ん中あたりの段落の「そこで」という段落なのですけれども,「そこで」の次の行,括弧書きの部分で「被保険者の生存中及び死亡時に保険金が支払われるような契約であっても,被保険者の同意を効力要件としている趣旨を潜脱することだけを目的としたような内容の契約については,死亡給付のみを定める契約と同視すべきものとして,被保険者の同意がない限り無効と解される余地はある」と,こうおっしゃっているのですけれども,恐らくここで想定されているのは生存給付の方がわずかで,専ら死亡給付を目的とするような多額の死亡給付を約定していると,こういうケースだと思うのですが,そうするとバランスの問題が出てきて非常にややこしいことになりかねないなと,どこまでがバランスを失したというふうに考えるのかという問題があるので,ちょっと思い付き的で恐縮なのですが,例えば生存給付に相当する額以下の死亡給付の場合であれば,死亡給付額というのですかね,死亡保険金額であれば同意は要りませんという,そういう形は無理なのですかね。   要するに,御提案になっている2頁の二つ目の丸のaですか,aの括弧書きの中にある趣旨が,恐らく先ほど私が読み上げました括弧書きの中に書いてあるのだろうというふうに理解しておったのです。そうしますと,この趣旨を具体的な解釈として体現する場合,生存給付と死亡給付のバランスが著しく均衡を死亡給付の方に偏らせるというタイプのものは,やはり一つ目の丸と同様の同意を要する契約になるのだと,こういう理解だろうと思うのです。しかし,その際に著しくバランスを失するというレベルというのが必ずしもはっきりいたしませんで,そうだとすると,同意が要らないというふうにする中身の条件として,被保険者自身に与えられる生存給付と被保険者死亡のときに支払われる保険金の多寡を,少なくともイーブンにしているものでなければならないというような,そういう制限はかけられないのでしょうか。 ● おっしゃるところはよく分かるのですが,今,○○幹事のおっしゃる生存中の給付の金額で比べるというときの生存中の給付とは何を取り上げてというか,何をイメージされておっしゃっているのでしょうか。 ● いろんなものがあり得るので,確かにその計算自体がややこしいなというのはよく分かります。生存給付というと傷害,疾病,いろんなタイプのものがあって,それで給付期間も定められていたり,あるいはその多寡も大分でこぼこするというので,なかなか生存給付として総額どれぐらい支払われるのかというのが計算しにくいという,それも大体予想はできているのですけれども,しかし,それにしても保険料額を出している以上は,一定の生存給付でどれだけのマキシマム生存給付金が支払われるのかということは,保険会社サイドとしては算定できなければ,ちょっと保険料の方へ反映できないと思うので,その額と死亡保険金額,どの生存給付を主としてバランスさせるときに考えるかというのは,実務的にどういうふうになるのかよく分からないのですけれども,せめて何かそういう指標になるようなものと死亡給付というのをバランスさせるというふうな,そういうことでも考えられないかなというふうに思ったのですが,それはやはり実務的に無理という感じですか。 ● 発想はある意味,全く一緒でして,2頁のaを書いているときに,これだけだとただセットになるものは何でもいいのではないかみたいに読まれてしまうという感じもしたのですが,決して心はそこにあるわけではなくて,3頁の(補足)1の「これに対し」というところあたりから書きましたとおり,先ほど高度障害と死亡がセットだというお話もありまして,かつ,これまでの議論でも○○委員などから生存中に何かあってお金が出ると,それが当の被保険者本人に行くということに合理性があること自体は分かるという御指摘もいただきましたし,被保険者の同意が不要の場合があるとしても,それは合理的に同意が推認されるケースだからいいのだろうと,基本的にそれは生存給付なのだろうと思っております。   ただ,なかなか先ほどの類型化の難しさと同じようにここでも難しさがありまして,生存がメーンで,でも高度障害と死亡とが一緒の場合のように,生存に死亡がくっ付いてきているような場合に,死亡をくっ付ける以上は全部同意が必要となってしまうと,なかなかそれもという思いがありまして,メーンが言ってみれば生存にあって,ただ,それにも死亡がくっ付いてくるのは許容していいのではないかという発想に立っております。それをうまく先ほどと同じように抽象的な要件で落とせないかと,ここもるる考え,例えば生存の方がいってみれば主で,死亡の方はそれにくっ付いているに過ぎないみたいなニュアンスをうまく出せないかということもあれこれ考えてみたのですが,今,○○幹事がまさにおっしゃったように,なかなかそれを抽象的な要件で書くのは,これもまた難しいということで残念ながら断念したということでございまして,そういう意味では,こう書けば何でこういうセットの場合だけオーケーとしたのか,あるいは死亡オンリーのものは原則どおりすべて同意としたのかというところから,解釈でしかるべき妥当な結論が導かれるということで,解釈にゆだねざるを得ないのではないかというところが,御指摘いただいた3頁の「そこで」で始まるパラグラフの括弧の中ということでございまして,うまく書ければ書きたいという気持ちはこちらにもあったのですが,なかなかそこも条文の中での抽象的な要件として定立するのは難しかったということでございます。 ● ○○委員。 ● 同意の問題,○○委員が先ほどおっしゃいましたように,前々回,激しくみんなで議論をしたという,その上でこれが出てきているということなのだと思うのですが,そういう意味で申し上げれば,要するに原則の話を思い出して言えば,知らないうちに保険が掛かっているのは困るということとモラルハザードの排除というの,多分,その二つだと。その二つでぎりぎり考えて,ただ,実務上,今,実際に行っている特に損保さんの団体傷害とか家族傷害とか海外旅行保険の家族型ですか,そういうものについては実務的に何もトラブルも生じていないのだから,それを何とか飲む方向でいくというのがここの案なのだろうなと。   そういうふうに見ていくと,ずっと,では消費者から見てどうなのかというのが前々回のときにも申し上げましたけれども,これは同意をとる保険,これは同意をとらなくていい保険というのがあるところ,理屈でこっちからこっちはとらなくてはいけない保険,これはとらなくてもいい保険というふうに,あるところ理屈で割り切れてくれないと,なかなか消費者側としては受け入れ難いというか,無用なトラブルがたくさん生じると。例えばどんなのが生じるかというと,本来,同意をとらなければいけないような保険を募集人さんによっては同意なんか要らないから,あなたがうんと言えばいいのといって家族全員を個々に入れていってしまうとか,そういうのがよく下世話にあるものですから,すぐ想定できてしまうのですが,よくある話なので。   そういうことを考えると,今まで死亡保険,それから生保型の疾病保険の部分では同意を何とかとって確保してきて,契約という認識を契約者に持たせて,そういうところをクリアにしてきた文化が片方であって,片方でそういうものがない文化があって,そこのせめぎ合いが傷害・疾病といいながら,疾病保険では同意をとって,傷害保険ではとらないという,そこの部分で,そこで38度線があるという,すみません,例が古臭くて,そういう格好に多分なっているのだと思うのですよ。そうすると,基本的には原則同意をとるので,死亡保険に関しては被保険者が他人の場合はとるのだというところは皆さん,うんと言っていて,ぎりぎりそこだけというのなら,そこの部分をやはり何とか理屈で分けられないのなら,保険種類でいくというか,類型化をするという部分でぎりぎりやっていただいて,この部分だけはとらなくてもいいのだよということを明示的に消費者側に示してやらないと,無用の混乱が生じるのではないかと,そう思うのですよ。   そこができないからこうだと,先ほどから言われているのだと思うのですけれども,そこは何とか工夫をしていただいて,そこをやっていただかないと,どれがとって,どれがとらないか分からない。それからもっと困るのは,もしかしたらこういう書き方をしていくと,今とっている疾病保険の同意をとらなくてはいけないという分が逆に反作用して,とらなくてもいい方向に読みようによればできますから,とらなくてもいい方向に流れていくのではないか。それはこの部会の本意ではないわけですから,皆さんの合意ではないわけだから,そういうふうにならないような方向に,やはりどこかで現状に歯止めをかけないといけないのではないかと思うので,何とか類型化というものを是非やっていただけないかなと思いますが,いかがでしょうか。 ● 今の○○委員の御発言,ちょっと私はよく理解ができなかったのですけれども,先ほど来の○○幹事の説明なんかを伺っていると,できるだけ明確に切り分けなければいけないという○○委員の問題意識も踏まえて,こういう2頁に書いてある案になっているように理解をしておりまして,この案であれば,どういう場合に同意をとらなければいけないか,どういう場合に同意をとらなくていいのかというのは,だれが見ても一目瞭然になっているのではないかと思っていたのですけれども,そうではないということなのでしょうか。 ● すみません。だれが見ても一目瞭然というよりは,先ほど私が申し上げましたように,今,現実に疾病保険は同意をとっております。死亡保険にいろんな特約が乗っかる部分はもちろんとっていますし,いわゆる医療保険単品の保険であっても,ほとんどは死亡保険が付いていますので,付いていないのはごく一部にしかございません。ほとんどは死亡保険が付いておりますので,そういうものについては同意をとっております。これを見ると「傷害又は疾病を保険事故」と書いてあるので,傷害保険も疾病保険も両方とも入ってしまっているように私には読めます。そうすると,今,同意をとっているものについて,とらなくてもいいよ,こういう例ならとらなくてもいいよというふうになってしまう可能性があって,今,例えば傷害保険として売っているものに疾病死亡を抜かした疾病特約を付けるとか,今,そういういろんな特約の付け方ってたくさん出てきているので,そうなると,そっちからどんどん押してくると,知らない間に保険が付くという事態を防ぐのだという部分の原理原則が崩れるのではないかなという余計な心配をしているのです。 ● 明確性の問題よりは実質が問題になるのだということですね。   ○○幹事。 ● この問題なのですけれども,先ほどの○○委員や○○幹事がおっしゃった離脱との組合せということについて一言申し上げたいと思いまして,ここでの御提案というのは同意が実際に必要とされるケースというのと,同意がかぎ括弧付きで擬制されるケースというのを用意をし,擬制される,不要とされるというケースとしては同意の取り付けが困難であったり,期待可能性がないということと,普通,同意するでしょうと,その内容からすれば機会さえあればと,そういう二面によって本来同意が必要だというところで,かつ,効力要件だとされながら,例外的にその場合は必要ないというふうにされていると。   ところが,そこで切り出されている部分が立法技術的な問題等々から非常にオーバーインクルーシブという形になっているために,ゼロ回答というふうに言われたり,余りに広過ぎるので,そこを何とか適切な範囲に縮減しつつ,しかし,明確性と立法技術性とすべてを兼ね合わせていけないかということを模索をしていて,その模索がうまく何か少しでもプラス回答になるようなところがあれば,それはそれで望ましいと思うのですが,仮にそれが難しいと,あるいは5ぐらいしかならないとか,そういうような場合に離脱と組み合わせるというのはそれなりに意味がないだろうかと思います。   もちろん,先ほどの御指摘のようにそうでない方が望ましいわけですけれども,言わば次善の策としてここはあくまで本来はきちんと同意をとるべきなのだけれども,先ほどのような理由で不要とされるというのは,およそ要らないという原則をそこに立てるというよりは,本来,要るのだけれども,別の事情からあったのと同じような扱いにしていると。その意味では要求される同意がいささか希薄であるということがありますので,事後的な離脱というのを組み合わせることで,本当に要らないとか危ないとかいう人は離脱ができるという形にするというのは一つの考え方として,また理念形としてもあり得るのではないかというふうに思いまして,そうしたときに事後的な手当てとしての離脱との組合せということですが,場面の限定とか,もう期間が終了しているときは駄目だとか,あるいは知ってから短期間だとか,そういうような組合せによって,それなりに適切なマイナスの影響がそう働かないような形で,制度化ができないかというふうに考えているのですけれども,仮にそういうものを入れますと,かなり広い形で同意不要とされるときも事後的な離脱の可能性がある以上は,とれるものならとっておかないと危ないということになりますので,今,○○委員がおっしゃったような懸念にも多少はこたえられるのではないかという感じはするのですけれども,ただ,そう言いながら,一方で理屈ないし理念的にはそうでも,実際上は気休めではないかというふうに言われるようだと,また,それだけのことをするだけの意味はないと言われるようだと,ちょっとどうかという感じはするのですが,それは考えてみるになお値するのではないかというふうに思っておりまして,あと細かなところですけれども,そういうふうに考えますと,4頁から5頁までに書かれています無効の主張権者に関する問題ですけれども,結局,契約関係からの離脱の権利を認めるのと同じだということで,それに対する批判としても書かれているのですが,被保険者の同意を契約の効力要件とする出発点とは相入れないということはなくて,むしろ,そこをとらないからこそ,後で手当てをして完全なものにするという説明もできると思いますし,また,保険金請求権を放棄するということですけれども,受取人という地位自体は,それでもう放棄できると思うのですけれども,被保険者たる地位というのがそれで終わってしまうのかというのはちょっとよく分かりませんで,そうすると離脱という方向と組み合わせて,次善か三善ぐらいなのかもしれませんけれども,そういうことはもう少し考えてもいいのではないだろうかというふうに思います。 ● ○○幹事。 ● ルールの明確性ということについて申し上げたいのですけれども,確かに効力要件のルールとして定める以上は,明確なルールであることが必要だというのは確かによく分かるのですけれども,ただ,先ほどの○○幹事のお話からしますと,事前に保険事故が発生するまで被保険者が確定せずに事前に同意をとることが難しい契約,これは書こうとすれば何とか書けるかもしれないと。それ以外のものについてはどうも抽象的な基準というのを立てるのは難しいと。そして,金額制限をするというのは法律で本来契約自由のものについて,金額で制限するのはいかがなものかという未成年者の保険のところで言われたのと同じことを理由として言われたのですが,ただ,傷害死亡のケースというのは本来,同意が必要であるというルールの例外として,同意なしでいいということにするわけですから,これについては別に金額制限をするということが何か契約自由を制限するとかいう,そういう問題ではなくて,むしろここまでの金額はオーケーなのですよということで,本来,駄目なところを認めてやるわけですから,金額制限するというのがなぜ駄目なのかというのが私は逆によく分からないですね。   むしろここまで来たのであれば,もう金額で決めるというのも一つの有力な選択肢として考えられるのではないかと思います。先ほど海外旅行傷害保険については,金額をもうちょっと高く,実際に1000万円の費用がかかったようなケースもあるのだからというお話がありましたけれども,ですから,そういう保険については金額を高めにすればいい話で,金額で割り切るというのは無理な選択肢ではないというふうに考えるのですが,このあたりはいかがでしょうか。 ● 書けるか,書けないかというと書けるわけですが,他方で,未成年者のところでも申し上げたかもしれませんし,ちょっとそれとニュアンスが違うかもしれませんが,具体的にこの類型で500万,この類型で1000万,この類型なら2000万というふうに,本当に先ほどの類型化の難しさとも結び付くのですけれども,うまく仕分けの類型をし,その類型ごとに金額を設定できるのかという問題もやはり一方であると思うのですね。そのあたり,あと未成年者のところでも繰り返し申し上げていますとおり,被保険者の同意をとる理由については恐らくさまざまな理由があるのでしょうけれども,モラルリスク対策ということを考えた場合に,幾つか,実務上の対応も含めれば複数の手当ての選択肢がある中で,金額を一律に縛ることが本当に被保険者同意に絡んだ問題の解決の手段として適切な選択なのかという疑問も,やはり残るという感じはいたします。 ● ○○幹事。 ● 確かに生保業界の方はその引受けのときの審査をきちっとするということで,実務的な対応というのを確かに考えられるということをこれまで発言されてきたと思いますが,海外旅行傷害保険に関してはそういうことを考えているという話は,全くこれまで出てきておりませんから,要するにこのルールがそのまま法律になりますと,現在の実務というのはまさに今後もずっと続くし,金額制限なしにそれこそ1億円とかいう死亡保険金の契約を被保険者の同意なしに,家族であれば締結できるということになってしまうわけで,少なくともこれまでの話を聞く限りは実務的に何か対応するということは全く出ていなかったと思うのですね。ですから,そういうことに期待することはできないのではないかというふうに思います。 ● ○○委員,○○委員,今の現状というのはどうなっていて,それで何かこれだけ意見が出ている中で少し考えられることというのはあるのか,いかがでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● それぞれ御契約者の方はいろんなお考えで御契約されるとは思うのですけれども,金額が今おっしゃられたように実務の世界で,もう少し見直す必要があるというのであれば,それはまた業界で考えることはできないのですけれども,各社で検討するという道は十分あると思うのです。 ● 例えば先ほど○○幹事が言われたような海外旅行傷害保険で5000万,7000万あるいは1億みたいな契約というのをやはり空港の代理店みたいなところにぽっと来られて申し込まれたら,他保険の告知とかそういうことは受けられるとは思いますが,やはり申し込まれたら自動的に引き受けるということになっているのですか。 ● 恐らく保険料の見合いはあると思いますけれども,会社によって引き受けている会社はあると思います。 ● ○○幹事。 ● 正直な感想を申しますと,これなら前々回に出てきた案の方を私ならできたら実施したい,それに戻せる可能性がないのかどうかということをまずお聞きしたいのですけれども,今回のものにつきましては解釈論上少し詰めておかないといけないものがありまして,現在の実務といいますか,監督法とか引受実務のことは一応度外視して純粋に考えますと,生命保険の場合でも契約の締結の仕方によっては同意が要らないで,かなり高額の死亡補償を付けることができるようになっているのではないかと思われます。例えば最初に契約するときの契約について死亡保険金は500万ですよと,500万なら同意しますよねと,はい,同意しますと。その後,契約者の方が被保険者の同意ないようなタイプの特約だけをどんどん足していくと。   特約の場合には,傷害特約とか総合入院特約とかそういうことになりますと,ここで言うすべて同意は要らないという方向に入っていくだろうと思いますので,そうすると入口の500万の死亡保険だけ同意すると,あとは同意が要らないで,かなり高額の死亡給付が得られるような保険が付いてしまうことになりはしないかということが一点と,それからアカウント型保険の場合にこれをどういうふうに解釈するかという問題があろうかと思いまして,主契約はアカウントですから何か死亡給付を買っているわけではなくて,ファンドにお金を入れるという契約を買っているのですね。それに特約で第三分野のものがどんどん乗っていくと。   それで,定期特約だけ付けないで,それ以外の第三分野だけずっと乗せていくという契約をした場合にも,やはりこの規定の解釈でいくと同意は要らないのではないかということになってしまうのであって,恐らく現在の生命保険会社はそういう実務を組んでおられないと思いますので,直ちにそういう弊害が起きることにはならないと思いますが,こういう条件で外してしまうと,我々はそもそも学生に保険法を教えるときに,被保険者の同意主義というのはどういう原則で,どこまでの範囲で要るのかということについて,学生に説得力を持って説明がやはりできないのではないかという,それは危惧しておりまして,同意主義のまさに自分の生命についての具体的なリスクを被保険者に判断させるということの根本を,やはりどういうふうに説明していただけるのかなと,それが最後の質問であります。 ● 一点目の前回の案という点につきましては,冒頭の事務当局説明でも申し上げましたとおり,あるいは資料の4頁の上の方の「なお」のパラグラフにも書いてございますとおり,るる類型化を試み,あるいは抽象的な要件を何とか抽出してという試みの中で御提案させていただいていたものなのですが,やはり明確性という観点から必ずしも成功していないという判断をして,今回,落としたということでございまして,ここに戻して,また不明確なものに戻すということはちょっと難しいのかなというふうに現時点では考えてございます。   それと,仮にということで2頁のような整理をした場合の解釈論というのは,もちろん整理しなければいけないというのはおっしゃるとおりですが,少なくともaのところで「傷害又は疾病」と書いていますが,傷害と疾病をそれこそアトランダムに適当に組み合わせて,何でもありということで考えているわけでは少なくともありませんで,3頁の先ほど引用しました真ん中あたりの「これに対し」というパラグラフで書いてあるような発想から,こういう整理でどうだろうかという御提案をさせていただいているところでございますので,傷害は傷害単位で考える,疾病は疾病単位で考えるということ,少なくともそれが表現できているかという問題はあるのですが,発想としてはそういう発想で考えているということでございます。   それから,最後の質問と言われた点……。 ● 被保険者の同意を得ることでモラルリスクを防止するという原則ですが,家族だと要らないということを前提に考えると,やはり家族以外に特定の人間の命をねらって保険を付けるということを,強い動機を持つ人というのは余りいないのではないか。赤の他人に保険を付けて,その人の命をねらうということは今までの犯罪史上も,和歌山の毒カレー事件という例外はありますけれども,そんなになかった。通常はやはり血のつながっていない家族ですとか,そういうところがねらわれてきたのではないかと思いますので,家族だから普通はもちろん同意するのですけれども,普通でない状況の歯止めとして,この安全装置がもともと言われてきたのではないかということについては,我々はどういう説明をすればよろしいのでしょうかということです。 ● それが一番難しい質問で,○○委員がおっしゃるような,要するにどういう論理で整理がされていて,消費者サイドとして要るケース,要らないケース,どういう線引きとして理解すればいいのかというところに結び付くと思いますけれども,ここでの発想として考えていますのは,家族の場合に同意が要るか要らないかといえば,基本的に要るということになるのかもしれませんけれども,先ほどのように生存を中心に考えていますので,生存給付について当の本人にお金が行く形になっている場合には,基本的には同意が推認されるといいますか,それは同意をとれるのだろうと,同意はされるのだろうという前提に立って整理をしてはどうかという考え方でございます。 ● まさにニーズがあれば同意はとれるのだろうという前提で考えるのが,やはり家族における原則的な考え方ではないのかなというふうに思うのです。 ● これは前から○○幹事が言われているように,日本中の傷害・疾病について全部家族の判こをとってこないと契約できないように,この際,保険法部会で決めるのですかということで,理論的に,変な家族があって,それを防止できないルールはおかしいので,おかしいのが紛れ込むのは言われるとおりなのですね。そのことは十分考えた上で,適切なルールができるかどうかということを今問題としている。   ○○幹事。 ● すみません。この点に関しまして日弁連の方でちょっと事前に打ち合わせた意見なのですけれども,この2頁のaとbのうちのbのところで,死亡保険金について被保険者又は相続人に支払われるという点が今,○○幹事がおっしゃっていた弊害の歯止めにならない規定になっているということで,もし同意を不要する類型として規定しなければならないのであれば,aのところが傷害・疾病とセットになっている死亡保険がある場合には,同意不要の一つの要素になっているようですけれども,ここのところを死亡給付が付いていないものというふうにできないかという,ちょっと単純化し過ぎかも分からないのですけれども,生存給付を被保険者が受領すれば,そこで同意が推認どころか多分第三受益者として同意があるというふうに言えると思うのですけれども,死亡給付が付いていないものに限定してしまうと,実務のニーズにこたえられないという点はあるかとは思うのですけれども,海外の旅行の傷害・疾病保険について実務のニーズがあるというふうにおっしゃっている点に関しましては,例えば空港で簡易に保険に加入したいニーズがあるというのは,多分,御本人が海外旅行に行くときに空港で保険に入ろうと思うときに,家族も一緒にということであれば,家族も一緒にいらっしゃると思いますので,そこで家族の同意をとらなければならないとすることが利便性を欠くようになるというのがちょっと余りよく分からなかったのと,それから海外で現実に疾病とか傷害とかで事故に遭われて,やはり多額のそれなりの金額の保険金が支払われるということが有益であるというのも,やはり本人が海外に行かれる方が同意をしている保険を掛ければいいのであって,そういう海外で事故に遭う人がいるので,その人の同意が不要な保険契約というのがニーズが高いという理由には,ちょっと私はよく分からなかったということがあります。   それから,もう一つは団体とか,それからある種の施設とか,そういうところに施設を運営する人が保険契約者になる場合に,不特定多数の人を被保険者として同意を事前にとる場合は困難だから,しかもそれを法文に書くのは技術的に難しいという点に関しましては,例えば被保険者が自分が被保険者となっていることを知りつつ異議を述べない場合には,同意があったものとみなすというような同意が不要の場合に,同意がとれなかったけれども,擬制できるというような事例を画することができるのではないかなと思います。例えばここでも事例があったかも分からないのですけれども,遊園地の施設なんかで看板に掲示しておいて,そうすると入った人は自分は被保険者なのだなと知りつつ,特に異議は述べないと思いますし,搭乗者保険についても多少現実的なところがあるかどうか分からないのですけれども,ステッカーとかを張るようにして,それに乗った人が異議を述べなければ,もう同意したものとみなすとか,同意はとらなければならないという原則の方を強くしてというような規定振りができるのではないかと思っております。 ● ○○幹事。 ● 私,先ほど○○幹事が発言された金額制限が個人的には可能ならばよろしいなというふうには思っております。○○幹事が全くおっしゃったとおりに,本来ならば同意が要るところを同意をなくすために金額の要件をかけて,そこを許容するということですので,金額でこの金額以上は駄目だということではないというのが基本的な考え方,制約するわけではなくて許容するのだというのが基本的な考え方なのではないかと思います。ただ,その上で,それが非常に立法技術上難しいというようなお話があって,そうだとすると,かけないということであれば,この道は仕方がないのかなと,無理なのかなというふうにも思わないではありません。   その上で考えると○○委員がおっしゃり,そして○○幹事がおっしゃったオプトアウトを何とかすると。これも○○幹事,そんなものは書いたってしようがないというふうにおっしゃったのですけれども,確かにしようがない場合もたくさんあるのですけれども,ともかくオプトアウトをするというのが理屈を立てる上ではまず必要だろうということと,その上で,しようがない場合もありますけれども,しようがなくない場合もありますし,それから実務的に非常に例えば高額の生命保険というか死亡保険が掛かったような場合について,オプトアウトの機会を何とか確保できるような方策を業界の方々に考えていただくというようなところかなというふうな感触を今の段階では持っています。 ● ○○委員。 ● 今のオプトアウトに関連してなのですけれども,まず実務的に例えば家族傷害保険とかのような場合には,今の実務ですけれども,親族関係が終了すれば自動的に被保険者ではなくなるという,それから団体傷害保険の場合も会社をやめたり,学校をやめたりすれば被保険者ではなくなるという,こういう実務がまずあります。ただ,それだけではなくて,今,いろいろ御意見が出ておりますように同意を要しない契約の方について,被保険者の離脱を認めるということは趣旨は十分理解できますし,一緒に考えていきたいとは思います。ただ,その場合,さらにちょっと懸念としてなのですけれども,家族傷害保険では被保険者が無記名ということもありますし,それから被保険者が直接保険会社に申し出られた際に確認ができませんので,以前の部会での方向のとおり,被保険者が保険契約者に対して解除請求をできるという構成をとることや,被保険者の情報提供については保険者と被保険者とは直接の契約関係がございませんので,保険者が直接被保険者に情報提供を行うのは無理ですので,被保険者への情報提供は保険契約者を通じて行ってもらうというようなことは,実際,入れるときにはいろいろ考えていただければと思います。   以上です。 ● せっかくオプトアウトの権利ぐらいせめてという御提案をいただいているので,余りそれを殺すような御提案をされると,また,まとまるものもまとまりませんので,そこら辺は,随分損保の今の実務が本当は是正すべきところはあるのだろうけれども,ぎりぎり涙を飲んでなかなか難しいねということになりつつあるわけで,先ほど○○委員のおっしゃったように,非常に高額のものでも各社の問題で何もしたくない会社は今までどおりですねと言われると,しかし,どうも皆さんも釈然としないという面はあるのではないかと思うのですね。そこら辺,十分御勘案の上,なお今後の審議に臨んでいただければと思います。   ほかに今日のところでこの点……○○委員,どうぞ。 ● 私もちょっと準備をしてきたのですけれども,余りに間抜けな意見になるのでやめまして,感想みたいな話になってしまいますけれども,そこの1の被保険者の同意のところを読んでいて,二つ目の丸のaがやはりちょっと非常に分かりづらかったですね。   それでいろいろ調べたら,実際に死亡のみ担保特約というのがあるということで,存在するのかと,こんな保険,あるのかなと思ったのですけれども,あるということで,それと切り分けの論理の整理の仕方でこうなったというのは今までの議論を聞いて理解しました。補足の方を読んで私の方は非常に納得をしたわけでございますけれども,例えば同意をすべて前提とするといったときに,実務上,どういう世界が出現するのかというのがちょっと私はイメージがしづらいといいますか,例えば保険料はどうなるのか,あるいは手続は契約者にとってどうなるのかとか,そこら辺が非常に多分バランスの問題だと思いまして,モラルリスクを排除するという問題意識とともに,やはり保険というのは利便性があってこそ普及していくわけですから,そのバランスを考えた上で議論を進めていくべきだなというふうに思っておりました。したがいまして,大変事務当局は御苦労いただいた文章だなというふうに思っておりますし,そういうバランスの点ではこれがぎりぎりかなと。それから,オプトアウトという案も出てきましたけれども,非常にそういう意味では興味深い話ではないかなと思います。   それから,一番下の※印のbのところですけれども,この保険金受取人の指定の形式,補足でも説明をされておりますけれども,約款であらかじめ保険金受取人が指定をされている方がモラルリスクの低減にはいいのではないかなというふうに思います。条文化できるのであれば,やった方がいいのではないかなというふうに思っております。 ● ほかにこの点,御意見はございますか。大体,御意見がこの点については尽きたということでよろしゅうございますかね……○○委員,どうぞ。 ● 規定の性質で一応強行規定ということになっているのですけれども,再三,いつでも同じことを言って申し訳ないのですけれども,約款で受取人はまず契約者にしてある約款というのはあるのですけれども,強行規定にした場合,それは変更しなければいけないというふうに理解しておいてよろしいのでしょうか。 ● 受取人が約款で決められているということがどこに関係してくるのですかね。 ● 被保険者又はその相続人というくだりから見ますと,契約者が受け取るというのはまず排除されているというふうに見えるのですけれども。 ● そもそもこの2頁の提案自体,ゼロ回答という御指摘もあるわけですから,このとおりになるか分かりませんが,仮にこういう方向になって,bのような形での条文化がされるとすれば,受取人を契約者としている契約であれば,原則どおり同意が必要というふうに……。 ● それは同意でカバーできると,同意で代用はできるという解釈でよろしい……。 ● 原則どおり同意が必要になるだけということでございます。 ● 分かりました。 ● よろしいでしょうか。   それでは,この点,なお事務当局に今後詰めていただくということにしたいと思います。   もう一つの2の未成年者を被保険者とする死亡保険の問題でございます。これも御意見をいただければと思いますが,かなり議論はいろいろしてきたわけですので,これまで随分いろいろ御意見をいただいているという前提で,なお御意見をいただければと思います。   なお,この問題は金融審議会のワーキンググループが先だって開催されまして,そこでも取り上げられまして,そこではこういうものに何らかの規制をすべきではないかと,金融庁さんはやるなら法務省で,法務省さんはやるなら金融庁でということで,今日は御欠席の○○委員がそれは大変困るということを非常に強く言われていたところでございます。今日も欠席だけれども,残念ながら欠席だが,その意を酌んでくれということのようでございますので,一言申し上げておきたいと思います。   それでは,御意見をお願いします。   ○○委員。 ● 何度も言っていますので一言だけ。前回の資料に対する回答は今日はいただけないということで,そう理解してよろしいのでしょうか。 ● この点,何か御用意されていますか。特にございませんか。前々回の未成年者の死亡率が何か一般の死亡率と経験率が違うのではないかという,何か折れ線グラフで御説明……。 ● 私,前回御説明したと思っていますが。 ● そうですか。何かお調べになると言っておられたので期待をしていたのですけれども,この問題,突き詰めると何なのかというと,結局,ニーズということでおっしゃいましたが,寄附をされるとかお墓をつくるとかいうようなニーズですね。   しかし,一方で一定の割合で小さい子が保険金殺人で殺されるという,そういう問題があって,私はちょっと目が悪いので1時間ぐらいしかできなかったのですが,日経のデータベースで見ても,保険金殺人でやりますと1400件ぐらいあって,そのうち100件ぐらい1時間ぐらいで見ましたけれども,その中に2000年に入ってからでも,4件,子どもを殺す,又は未遂と。その死亡保険金額,最近の栃木のものは7歳で8000万,17歳の人に3000万,それから2000年の一番最初の奈良の事件ですと高校1年生の女の子に3000万,広島ですと8歳と6歳の子にこれは1000万,それから,さくらの殺人ですと7歳の男の子に8000万と,こういうまだ全部ではないのですけれども,そういうものがあって,多分,ここの議論が分かれているのは一方で保険のニーズというのはあるでしょうけれども,それが本当に切実なのかと。   一方で,こういうのを認めれば,一定の確率で抵抗できない子どもというのが何十人か分かりません,これからどんどん増えるのではないかという深層の感覚もあるわけですけれども,そういう中でどちらを選ぶべきかという問題であって,ですから,やはり何らかの制限はしないといけないというふうに私は思って,議論は分かれましたけれども,多寡は分かりませんが,半分ぐらいの方はそれに賛成され,半分の方はそれでもとおっしゃるわけですが,ただ,ニーズというのはそういういろんな危惧を超えてまで,そのニーズのためにやらなければいけないということがなかなか飲み込めないというので,ですから,やはり何らかの手当てはしていただきたいと思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● 繰り返しになって恐縮ですけれども,従来の最高保険金額を相当下げてきていることについては,前々回に御説明したとおりですし,引き続き,そういったことについては今が最終形であって,これからも努力しないということでは決してないということについては御理解いただきたいと思いますし,この間の金融審の中では栃木のさくらの件については,民間の生命保険会社ではないといったお話も出ていたというようなことも,ちょっと仄聞はしておるのですけれども。 ● だから問題にならないというわけでは……。 ● そういう意味では,○○委員,こちらばかりおっしゃっているのですが。 ● 1500万という話もよく重々承知の上ですが,でも,ほかの会社に入ることはできるわけで,問題は絶対的にやはり上限があるかなしにするか,それはいろいろ議論があると思いますが,要するに制約なしでこのまま,この100年の改正に当たって何もしないというのは,どう見てもないのではないかというそれだけです。1500万にされた努力はとても御立派なことだと思いますが。 ● ほかにこの点はございますか。   この件は金融審議会のワーキンググループでもなお引き続き議論するかと思いますので,特に新しい御議論がなければ,こちらの方の御議論は大体伝わってもおりますので,そちらの金融審議会のワーキンググループの状況を見ながら,なおこちらの事務当局にもどうするかというのは最終的に考えていただこうかなと思いますが,今日のところはそういうことでよろしいでしょうか。   それでは,この点はそういうことにしまして,次へ進みたいと思います。   次は5頁の「第17 保険金からの優先的な被害の回復」の問題でございます。   まず,事務当局より御説明をお願いします。 ● 第17では保険金からの優先的な被害の回復について取り上げております。   第17回会議において,特別の先取特権を認める方向で検討することについて,おおむね御賛同をいただきましたことから,今回の資料では特別の先取特権に関する具体的な規律の内容について御提案をいたしております。   まず,①では被保険者に対して損害賠償請求権を有する者が保険金について先取特権を有することを定めております。この点に関し,部会では,民事執行法第193条第1項の「担保権の存在を証する文書」として,どのような文書が必要とされるかについて御議論をいただきましたが,一般に不法行為に基づく損害賠償請求権については,契約書のような定型的な文書によって請求権の存在やその額を証明することが困難であるため,被害者が一方的に作成した文書だけでは足りず,少なくとも被保険者の関与のもとで作成された文書が必要とされる場合が多いと考えられますし,また,たとえ被保険者の関与があったとしても,それだけでは担保権の存在を証する文書と認められない場合もあると考えられます。   このように先取特権の実行手続においては,被害者に担保権の存在を文書によって証明することが求められることになりますが,そもそも被保険者が損害賠償責任を負うかどうかについてさえ被害者と被保険者との間で争いがある場合もあることからすれば,被害者にこのような証明を求めたとしても被害者に過度の負担を課すものとは言えないと考えられます。   また,差押命令があった場合でも,保険者は取立訴訟において免責等の固有の抗弁を主張することができるほか,信義則に反するような例外的な場合を除き,被害者の損害賠償請求権の有無やその額についても争うことができることになると考えられますが,このような事態を避け,紛争の一回的な解決を図るためには,被害者は被保険者及び保険者との間で和解をしたり,被保険者に対して訴訟提起をした上で,その手続において保険者に対する訴訟告知をするなどの方法をとる余地もあると考えられます。   なお,実務上は,約款で被害者から訴訟提起を受けた場合に保険契約者又は被保険者が保険者に対して通知をすることや,事前に保険者の承認を得ることなく被害者からの請求を承認しないことなどが定められており,現在でも,保険者が全く知らないところで被害者と被保険者との間で示談や訴訟が行われることは必ずしも多くないようです。   そこで,このような基本的な考え方を前提に,①では被害者に特別の先取特権を認めるものとしておりますが,その実行手続については民事執行法における担保権の実行の規律にゆだねることとし,特別の規律は設けないことを提案しております。   次に,②では被害者に対して弁済をし,又は被害者の承諾があった限度において被保険者は保険金請求をすることができるものとしておりますが,これは被害者に対する損害賠償債務の履行を確実にする趣旨であるため,被害者と被保険者との間で確定した損害賠償額に基づき,被保険者から依頼を受けた保険者が被害者に対して直接保険金を支払うことなどは妨げられないと考えられます。   ③では責任保険契約における保険金請求権の譲渡,担保提供及び差押えを原則として禁止することとしておりますが,これは被害者が先取特権を実行する前に,保険金請求権の処分がされることを防止する趣旨によるものでございます。ただ,被害者に対する譲渡や被害者による差押えまで禁止する必要はないのではないかと考えられることから,(ア)においてこれらを例外として定めております。なお,被害者に対する担保提供につきましては,被害者が既に先取特権という法定担保権を有していることから,これを例外として掲げないこととしております。さらに,②により被保険者が保険金請求をすることができる場合についても,保険金請求権の処分禁止を維持する必要はないと考えられることから,(イ)においてこれを例外として定めております。   また,部会では,特別の先取特権を認める範囲について,D&O保険を含めるか等についても御議論がございましたが,※2に記載したとおり,この規律は被害者への弁済がされないまま保険金が他の債権者への弁済に充てられるのは不合理であるという,すべての責任保険契約に共通の性質に着目するものであることから,規律を設ける範囲を特に限定しないことを御提案いたしております。   以上でございます。 ● この点については,大体の方向性についてはかなりの御了解をいただいていたところですが,技術的な問題について幾つかの問題点の御指摘をいただいておったところで,そのあたりをかなり詰めていただいて,要綱案に近いような形に今日はなっております。この点についても御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。   ○○委員。 ● まず,初めに先ほどの私の発言で大変失礼いたしましたが,私どもは独占禁止法とか競争制限的なことにつきましては非常に気を付けておりますので,ああいう形で競争制限的なことはなかなかできないということから発言を申し上げたことで,この法制審議会保険法部会での議論は,各企業の保険会社の経営者は非常に重く受け止めておりますので,非常に賢明なる経営判断が行われるものというふうに思っております。   引き続きまして,優先的な被害の回復につきまして私どももやはり企業の倒産によりまして,被害者が救済されないということについては,何とか回復の道がないだろうかということで,保険金から優先的な被害を回復する方法として,場面を限定しながら救済策を入れるということについては賛成でございますし,既存の制度を活用しながら,こういう特別先取特権ということで構成することについては非常に賛成でございます。ただ,この賠償責任保険の特別先取特権が実務として今後うまく運営できるためには,やはり幾つかのことを考える必要があるかなということで,ちょっと御意見を申し上げたいと思っております。   これまで被害者救済の考え方を貫く上で,例えばこれまで幾つかお願いした点として強制保険に限ったらどうかとか,それから倒産の場面に限定したらどうかとか,それから被保険者に賠償責任があり,その額が確定して約款上の免責事由にも当たらない,通常の保険金が払える場合に限って払える仕組みとするために保険者の関与を条件にしたらどうかと,こういうことをお願い申し上げてきたわけなのですが,いよいよ最終段階に参りまして,やはり本当に限られた場面でうまく運用できるかということを考えますと,要保護性,被害者を保護するという,そういう視点が強いという観点から考えますと,人身損害の場合に限るということを御検討できないだろうかというふうに思っております。被害者救済を,さらに例えば自賠法とか犯罪被害者の給付金などの制度につきましては,人身損害に限られておりますので,経済的な損害とか物損とかいろんな損害がございますけれども,そういう中で人身損害に限ってこの制度を導入するということで,むしろ円滑な運用ができるのではないかなというふうに思っておりますので,皆様の御意見を頂だいしたいと思っております。 ● ○○委員。 ● 今の人身損害の話はちょっと後にしまして,まずこの資料の案自体に基本的に賛成したいというふうに思います。それで,一つの観点は一般個人の被害者をどうするかという観点で,これですと一定の限られた範囲でありますけれども,倒産前の段階でも一定の要件を満たせば先取特権を行使できるという,こういう枠組みですから,これはとてもいいものではないかと。   ただ,もちろん私は○○幹事が文書を出されまして,あれにはきちっとお答えしないといけないというふうに思っているのですけれども,それで,その問題が二番目の「担保権の存在を証する文書」というのをどう考えるかという問題で,○○幹事がお出しになった文章で二つ申し上げたいことがあるのです。一つは船舶先取特権の問題でして,船舶先取特権の実際はどういうことになっているかというと,先取特権があるために差し押さえるぞというとギャランティーが出るのですね。ギャランティーが出るというのは,つまり保険会社から主にP&I保険という日本でも2社ございますけれども,そこから船を差し押さえられるときに保証状が出て,それを使えますから,要するに保険者に直接請求する道が開けるものですから,実際,時々,それでも差し押さえてみろといって差し押さえると,実際,そういうのが出るわけですね,お金を積まなければいけない場合ももちろんありますけれども,ですから直接請求の道が果たされますので,もちろん競売から,その先の手続は全然ない。逆に言うと,そういう制度があるために裁判所へ行かないところで非常にうまく紛争解決機能が働いていると。   そのときにどういう書類を出しているかといいますと,海難報告書とか,これは船長が,加害者側が出すわけですね。それから船長の報告書が別にありますけれども,それからサーベイレポートという第三者が過失の問題や貨物損害なんかでしたら認定するような書類を出しておりまして,○○幹事が御心配になった前回の書類で,3頁のところに①と②というのがありまして,一つは債務名義ということで,②のところで御心配になっておられるのは,事案によっては診断書や治療費の領収書等さえあれば発令することができると,これはちょっと行き過ぎで,やはり被害者側だけではなくて加害者側のレポートとか第三者のものがあって,裁判所は判断されるべきだと私は思うのです。それが書証説ではないかと。被害者側の文書だけで全部やれということにはやはりならないのではないかと。   そういう要するに御安心いただきたいといいますか,それが多分書証説の考え方で,あと抗告,執行異議の場合,債権であれば執行抗告ですけれども,それ自身が言わずもがなですが,要するにこれは実体異議で不存在とかも争えるわけですから,それはそれで保険会社の手続的な保障もあるという観点で御理解いただければいいのではないかと。   あと一点,多分,本当に恐れておられるのは裁判所の事件が増えるのではないかという問題ではないかと思うのですけれども,先ほど言ったように一定のルールがあれば,それを前提に保険会社も行動しますし,仮に本当は保険会社が持っている資料を出していただければ,今の自動車保険の直接請求の中で,直接請求が認められている約款の下でどれだけ出せるかというのを出していただければと思うのですが,私の知っている限り,そんなにやたらと多くはないのだという。だから,余り裁判所に何かどっと来て,全部やらなければいけないということにはならないのではないかと,そういう前提の下でこの案に賛成したいと。   あと二点,人身損害に限るべきだというのは個人についてはやはりおかしいと私は,つまり,なぜかというと,そうすると限定されるから,つまり巨額な損害であれば弁護士はサーベイヤーを頼んだり,いろいろコストをかけてサーベイヤーとか,そういういろんな書類を集めてやることができるわけですよね。ですから,つまり企業間の場合,加害者も被害者も企業間という場合にはもうちょっと考えてもいいかもしれないと。   それに関連してあと一点,これは損害保険の総則ですから海上保険にも適用されると。海上保険に適用されるとすれば,P&Iクレーム,要するに先ほどちょっと触れましたけれども,企業者間の保険会社に対する直接請求というのはインターナショナルにあり得るので,消費者保護とかとは全然別の世界で,ビジネスの問題として少なくとも日本の二つ確かP&Iはありますから,そこはどう思うかと,やはり本当は聞かないといけないのではないかなと,私は面識も何もないし,コンタクトもとっていませんが,どうもちょっとそこはよく考えておかないといけないのではないかなというふうに思います。   以上です。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 今回の資料を拝見しまして,7頁の(補足)1の第2段落のところでございますけれども,ここで被保険者の関与のもとで作成された文書が損害賠償請求権の証明がありとするためには必要な場合が多いであろうという認識が示されておりまして,私の推測するところでは以前,それと○○委員の方から出ました被害者の例えば一方的な診断書とか,あるいは病院の領収書といったようなものでは,証明文書としては足りないということを意識されてのことだというふうに理解しております。それと,あと典型的な例としてここに判決文や和解文書,示談書など,そういったものが挙がっておりまして,これは一つの典型的な例として挙げてあるわけですけれども,逆に言いますと被保険者の関与のもとに作成された文書であれば広く認めていいというのは,どうも無理があるだろうというふうに思います。   とりわけ差押えとか,あるいは破産の実務を担当している感覚から言いますと,こういう差押えとか破産が問題になるようなケースでは,えてして債務者,本件の場合でいいますと被保険者は債権者,ここでいいますと被害者のある種強引な要求によって,あるいは経済的に破綻しているという,そういう不安定な精神状態の下で陳述書とか上申書といった文書が作成されて,それが例えば給与の先取特権の場合などにも証明文書として裁判所に提出されるということがよくありますが,そういったものはここで言う証明文書にはおよそ当たらないだろうというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。   そういう意味から言いますと,ここに例示として掲げられておりますけれども,仮にこの先取特権の制度が導入された場合に,証明文書として認められるものとしては,ここに挙がっている判決文とか和解調書あるいは示談書以外のものとしては,実際問題としてはほとんど考えられないのではないかというようなぐらいに考えております。それが証明文書の点でございます。   それと,もう一つ2番目の点ですけれども,いわゆる紛争の蒸し返しという点でございまして,この7頁から8頁のところにかけましては,訴訟告知をすれば紛争の一回的解決を図れるのではないかというお話もありますけれども,いきなり先取特権の行使から始まる場合には,先行する判決手続というのは当然存在しない,取立訴訟に先行する判決手続というのは存在しませんので,そこで訴訟告知をするというようなことはあり得ないという話になります。   そうしますと,債権差押命令手続の中では被害者は被保険者を相手に,この債権の存否を争わなければならない。あと取立訴訟の中では今度は保険会社を相手に,対象となる債権は性質的には違いますけれども,内容的には同じ保険事故の発生の有無とか損害の額といった点について争わなければいけない。そういう意味では,やはり同じことを二度繰り返すということは,先取特権制度を導入した場合には一定限度避けられないだろうというふうには思います。そういう問題がございまして,やはり先取特権制度をここで導入した場合には,そういう問題がどうしてもあるということは前々回に引き続きまして,やはりここで申し上げておきたいと思います。   ただ,この点についてちょっと私が消極な意見を申し上げておりますのは,何も裁判所にたくさん事件が来て困るということから申し上げているわけではございませんで,やはり今申し上げたような点から,先取特権制度がここで導入されると,しかも先取特権に関する民事執行法の規定については特に変更を加えずに導入するということになりますと,先ほど申し上げましたような点で,被害者救済の点でかなり実効性が限定されるということは,どうしてもかなりの確度を持って予想されるわけです。   もちろん,そのことをそういうものとしてこの制度を導入するということであれば,それはそれで一つの政策判断ということになろうかと思いますが,ですから,その政策判断について裁判所としてどうということを本来申し上げる立場にはないのかもしれませんが,ただ,ここで仮に被害者救済を本来広く認めるべきだという政策決定がこの法制審議会の認識であったり,あるいは一般の人の期待であったりすると,それらの認識と期待と法改正後に実際に行われるであろう裁判所の実務の運用との間に,かなりかい離が生じるということはどうしても懸念されるということで,そういうところが一番心配になるものですから,裁判所の立場として前々回以来,このようなことを申し上げているわけでございます。   ただ,もしそういう実効性の点でかなり限定的なものであってもやむを得ないというのがここでの一種共通の認識であるとか,あるいはそのことが一般の人にも理解されるということであるというのであれば,そういう認識あるいは理解と裁判所の法改正後に行われるであろう運用との間に,そごは特にないということになろうかと思いますので,そうであるとすると,先ほど来申し上げているような裁判所としての懸念とかあるいは不安といったものは,相当程度解消されるだろうというふうに考えております。   以上です。 ● ○○委員。 ● 三点おっしゃって,一番最後の問題が重要で,被害者救済を大幅に広げるというのは,私の認識としてはそういうものでなくても,現行の法制度の延長線上でそういうものが認められれば,現時点では私は十分だというふうに思っています。   それから,第一点の証明文書の問題なのですけれども,これは先ほど申し上げた船舶先取特権の場合の実務のところぐらいまでは,場合によって行ってもいいのではないかと。具体的な問題で,例えば今,自転車保険というのがございまして,被害の場合も大分ひどくなっていると。今,警視庁なんかも事故があったら法律上の交通事故ですから,すぐ連絡してくださいと。そうすると実況見分調書もつくりますと。業務上過失傷害とか何とかいうことで不起訴処分にした段階で,その刑事訴訟記録は弁護士が見て,謄本で取り寄せることができるわけで,そこには供述調書もあるわけですね。だから,いわゆる加害者側の書類もありますし,いろいろ工夫ができると。   それからもう一点,現実に丸々海事検定協会とかというところは損害賠償責任保険の鑑定業務というのをやっておりまして,主に依頼人は被害者としての企業,加害者としての企業,そういうところは双方当事者のいろんな書類をやったり,供述をやったり,証拠を集めてレポートを出すわけですよね。だから,そういうものの中で裁判所の心証として担保権があると,全部ではなくて,そういうものは認めていただければ,私はそれでいいと思うのです。   それから,紛争の一回的解決というのも限定がありますが,例えば先ほどの自転車保険等はそんなに難しい問題ではなくて,加害者側の過失があったとか,そういうことが分かれば基本的には解決できる問題なので,そうではないものは,それはしようがないと,そんなふうに考えております。   以上です。 ● ○○委員,今の点に関係していますか。どうぞ。 ● ○○幹事の大変真摯な御説明に,逆に安心しているというのが私の意見でございます。すなわち,そもそも責任保険といっても任意保険であって,掛けるか掛けないかは個人の自己決定権に属する話なのに,たまたま掛けたら直接請求だということに対しては,前回か前々回に申し上げましたように非常に困ると,バランスを欠いているというのが企業界のユーザーの本来の立場でございます。それが救済との要はバランスの中で,加害者の任意保険を掛けた方の自己決定権を逃さないような微妙なバランスでこういう提案があって,この提案だったら裁判所が被担保債権をきちんと認定してくれるから,経済界が恐れているようなことは比較的ないだろうと安心しているので,一方的に被害者保護だというようなのが総意であるということではないと思います。   特に不法行為の損害賠償に関しては,どっちがいいとか悪いとかというよりも,受けてしまった損害について,どうやって公平に損害を負担しようかというのが最近の物事の考え方でございまして,そもそも加害者も個人であったり,加害者の方が非常に窮状に陥っていることも想定されるわけですよね。そういう中で,裁判所が従来どおりきちっとした双方に目配りをした判断をしていただけるということに大変期待しておりまして,したがって,○○幹事の御懸念はなくて,逆に御説明した内容を大変期待しているということを申し上げます。 ● では,ちょっと○○幹事から。 ● 今,○○幹事の方からるる御指摘をいただきましたので,事務当局としての考え方といいますか,考えているところも申し上げたいと思いますが,もしかすると私自身が広く認めるという言葉を使っていたのかもしれませんが,もしそうだとすると,それはミスリードだったので訂正したいと思いますが,私自身はそういう言葉を使ったつもりはなくて,むしろここでの出発点はどうしてこの保険金が被害者以外の債権者に行ってしまうのという疑問を解消して,きちっと手当てをしようというところだったと思いますので,それによって何か夢のような世界が広がるということでは決してなかったのではないかというように思います。   従前,担保権を証する文書につきましてもハードルが高いということは,事務当局として繰り返し申し上げてきたところだと思いますし,ここでの御審議でも,もともと直接請求スキームと先取特権スキームを比べていたときに,先取特権スキームの方がどうしても実効性という意味ではハードルが高い,むしろ直接請求の方がいいのではないかという審議の中で,そうはいっても直接請求をとったとしても,保険者は判断のしようがないのだから,債務名義まで求める必要があるのではないかという議論があった中で,結局,いろいろ種々の観点を考慮して先取特権スキームの方でとなったわけですから,先取特権スキームの方になってハードルが下がるわけはないわけで,もともとハードルは高いという前提でここでの議論もされてきたとこちらは理解しておりまして,その意味で今回の資料で7頁に書いてございますけれども,被保険者の関与のもとで作成されさえすればいいということを考えているということでは決してないということでございまして,先ほどの事務当局説明で申し上げましたが,たとえ被保険者の関与のもとで作成されましても,○○幹事がおっしゃるように給料の先取特権などで破産した経営者が和解を乱発して,とても証明文書とは言えないものが執行手続に乗ってくるということは,実務を担当している裁判官は皆さん分かっているはずで,そういう意味では非常に慎重な判断がされるべきシチュエーションであるということも申し上げられるのだろうと思います。   その意味では,ハードルが高いということは申し上げられますが,それゆえに,今回,ここでこういう政策決定をすることが無意味であるとか,あるいは実効性がないから置くのはおかしいとか,そういうことには決してならず,出発点に戻ってやはりこういう手当てをつくることは,非常に有意義なものであるとなお考えているということでございます。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 今の点に直接かかわることではないのですけれども,範囲につきまして,私は今回の議論は先取特権なり,何らかの優先的な回復を認めるという,優先ということがあるいはちょっとミスリーディングなのかもしれませんけれども,議論としては二通りあったところ,むしろここでは特に被害として保護に値する被害者だから何とかしたいということではなくて,責任財産の性質がほかの債権者に回るのはおかしいということをいかに確保するかという,ただ,その場合にはいろいろ複数の被害者ですとか付随的な問題が出ますので,それをゼロからつくっていくよりは既存の制度に乗せた方がいろんな形で明確性も担保できるということで,先取特権構成が選ばれたというのがこれまでの考え方で,違う考え方もありますけれども,最終的にはそういう考え方で,今回の御議論も出ているのだと思います。   ですから,その意味では,およそ責任保険である以上は,その性質に伴ってこのような扱いをするのだということですので,一般的には対象は限定しないということに親和性が高いというふうに思うのですけれども,しかしながら,先取特権構成なり,そのような責任財産の性質ということに照らして,一定の措置をとるのだということだとしても,これをまた従来から,しかしながら関係当事者の保護の要請というのはあって,被保険者の利害,それから第三債務者ないし債務者に当たる保険者の保護ということを考えなくてよいかということは,その点から例えば適用範囲を限定するということはなおあり得るかということは議論されていたように思います。   それで,今回の御提案で基本的にはこれでいいのかなというふうにも思うのですが,ただ,若干気にかかる部分がございまして,一つは責任保険契約の保険金の請求というのが払ってしまうまでできないという②ですとか,あるいは③にかかわる事項なのですけれども,この考え方によりますと例えば平時において,企業において保険の存在は知らせたくないと,全くその当事者間で支払をするのだけれども,原資としてはまず保険金の支払を受けてから,それで払うというような可能性もないわけではないということを聞いたように思うのですけれども,そういった被保険者の利益ということは大丈夫だろうかというのが一点気になっております。   それから,もう一つの点は先取特権構成で最終的には何か問題があるということであれば,債務者の保護というのは先取特権構成にする形でかなり実は図られることになるとは思うのですけれども,他方で被保険者が行方不明であるというような場合に,情報がとれないというときにどうしたらいいかといった問題も出されていたかと思います。そうしたときに,とりわけ責任保険において免責事由の証明において十分な情報がとれないというような問題があるときに,取立訴訟で争ってくれればいいのだということなのですけれども,十分な情報がとれないと。だけれども,それが個人であるならばそれはしようがないでしょうという判断ができるかもしれず,他方で企業間で取引相手であるというような場合であれば,相手方が負担すべきだというような考慮もあるのかもしれません。   そういった観点からすると,企業間で大丈夫だろうかということが一方では気になってはおります。ただ,それにつきましても一応最初の例えば平時において保険の存在だとか,そういうことは自分の背後にあるものとして,その原資は確保した上で,あくまで取引関係として支払いたいというようなことに対しては,損害賠償債権とかが決着しているのであれば,直接振込みなり何なり,そういう形でしてもらえばいいことで対処ができるのかなというふうにも思っておりまして,後者の方の免責事由等については実際に調査の必要等々があるということであれば,それはもう一般的な保険金の支払をめぐる問題なので,そちらの方で手当てをすればよいと,そういうふうに言うことができるのであれば,くどくど言って申し訳ありませんが,原案のような形で範囲を限定しないということも,それぞれの懸念には対応できるということなのかなというふうに考えたのですが,果たしてそれで大丈夫でしょうかということをちょっと確認をさせていただくのと,あと○○委員から言われた海上保険というのもちょっと何か特殊なことがあるようですので,大丈夫でしょうかということ,少し細部にわたりますけれども,確認をさせていただければと思います。 ● 第一点,特に平時のときなどの被保険者の保護については,こちらでも一応懸念しているといいますか,この資料の案を考えましたときに,特に7頁の②などを置きますと,自ら損害賠償債務を履行してからでないと保険金の請求ができないということですから,払ってからではないともらえないと。そうすると,資力がない人はもらってから払おうとしたときにどうしてくれるのだと,こういう懸念があるが大丈夫だろうかということは検討したのですが,例えば被保険者と保険者との間で合意をして,あるいは約款の定めに基づいて先ほど○○幹事がおっしゃったように,被保険者が保険者に対して支払指図をして被害者に払ってくださいと,こういう合意をし,その合意に基づいてそういう支払をすること自体は,この②の趣旨に反するものでは全くありませんので,被害者の方にお金が行くわけですから,そういう合意は当然有効であって,それに基づいて支払をすることができるだろうというように考えまして,そこは大丈夫なのではないかというように考えております。   保険の存在を最後まで表に出さないでおきたいという要請がある場合には,ただの支払指図だと保険会社の名前で振り込むことになってしまいますから,さらなる合意というか,被保険者と保険者間の工夫が必要になるということではありますけれども,そこは実務上の工夫で対応できるのではないかというふうに一応考えまして,そういう支障は生じないのではないかというようにこちらとしては整理して,今回の提案に至っているということでございます。   それから,二点目の被保険者が行方不明などのような場合に情報がとれないという問題は確かに生ずるのですが,そこはまさに○○幹事がおっしゃいましたように,責任保険の場面だけで手当てすべき問題かというと,やはり一般的な手当てにゆだねざるを得ないのかなと。ここで何か特別の規律を置いてということは,なかなか難しいのではないかというように考えておりまして,そこは一般的な手当ての方で考えざるを得ないのかなというように,一応現時点では考えております。   それから,海上保険については確かに難しい問題があるというように考えておりまして,そもそも海上保険については今回,商法の中にそのまま規定を残すというか,今回の見直しの対象外ということにしておりますので,海上保険の方に今回新たに改正した後の規定を準用するというか,現行法は適用かもしれませんが,引っ張る際に責任保険に関する規定も丸々引っ張って大丈夫なのかどうかという中で,さらに検討したいというふうに考えております。 ● では,○○委員から。 ● 現行のもので私は当然,総則として海上保険に適用されるという理解で最初発言したのですが,今までも確かそうだったと思うのですが,今の御発言はそのあれを変えて立法に当たっては……。 ● その問題に関してということですか。 ● これは損害保険総則ですから,黙っていると海上保険の賠償責任保険に適用されてしまいますよね。 ● はい。ですから,黙ったままの適用にしていいのか,この条項については別途の配慮が必要なのかは検討したいという趣旨で。 ● 今日の段階でちょっとそれはもう一回考えますと。今までとは違って,ここで新たに少し考えてみますと,こういうお話ですね。 ● ええ。個別の問題かと。 ● ありがとうございました。 ● ○○委員。 ● ○○幹事が御指摘になった点は私も気になっていまして,②の弁済した後でなくては保険金がもらえないということになると,相手方との間で和解をしても,自分が保険金を請求できないということになって,米国みたいによく示談代行をPL保険でやるのは逆の極致で,保険会社が前面に出てやってくれて,直接会計してくれるのですけれども,今の日本の責任保険の実務はその反対の極致で,こっそり裏でこうやっていると,かけた事実も言わないと,保険会社も示談代行はしないと,ましてや当事者間のもめごとには余り今はサービスの手を欠く。それも変わると思いますけれども,将来。現時点で言うとちょっと具合が悪い。要するに立替資金を持っていない方には若干具合が悪い話になると。   それを保険会社側が前面に出て,直接,代理して払うというのは一つの方法なのですが,保険の事実も明かしたくないといった場合の解決はやはり難しいのではないかなと。私,隣にいる○○委員にもちょっと聞いたのですけれども,これも難しいだろうということになるので,この法制を導入したら逆に言ったらやはり責任保険を掛けた事実を秘したまま,かつ,立替金を用意しないで解決するような実務はむしろ原則できなくなるというメッセージを出した方が正確ではないでしょうか。それを克服するような実務をしてくれるかどうかというのは,むしろ保険会社さんに問いたいところですが,特別のことがない限りちょっと難しいのではないでしょうか。 ● 実務上,幾らでも工夫の余地があるように思っているのですが。 ● いや,企業はお金の話にはマネーロンダリングの規制もあるし,非常に最近,支払名義だとか,いろんなことに関しては神経質というのですか,厳格にやるのが今の流れでございまして,保険会社が自ら表に出ないで被保険者の名前で勝手に払うなんていうことは,大企業というかまともな企業ではちょっと考えにくいなというのが私の受けている印象です。したがって,その限度において責任保険を掛けたときに制約が生じるというのだったら,今回の法制で制約が生じますとはっきりそういうメッセージを出した方が,それこそ誤解が生じないのではないでしょうかというのが私の言いたい点です。 ● ○○幹事。 ● 先ほど私が申し上げましたように,保険会社の名前が出るような形での支払指図を受けての振込みであれば,恐らく大丈夫なのだろうと思いますが,今,○○委員がおっしゃいましたように保険会社の名前が出ないようにするには,さらに一段の工夫が必要と申し上げましたが,その工夫が本当に可能なのかどうかは,当然のことながらまた次回までに検討しまして,それがもし何かできるように思って一段の工夫と申し上げましたが,そう言ってみたけれども,どうも確かに○○委員がおっしゃるように難しいということであれば訂正させていただいて,そういう説明をしなければいけないということも考えたいと思います。 ● では,この点,なお詰めていただくことにして……○○幹事。 ● ちょっと確認なのですが,前提としてこのルールは責任保険であれば,どれにも適用されると。だから,家計保険,企業保険,どちらでも……。 ● 今,だから,委員からそこは限定してみてはいかがかという御意見をいただいて,そこをちょうど今,伺おうとしているところです。 ● それにかかわってですけれども,被害者のところ,この案文ですと自然人であろうが法人であろうが,いずれも被害者としてこの条文に乗ってきますけれども,そこもまだ検討をするということでしょうか。あるいはこの……。 ● 一応,原案は限定がないという案ですね。 ● 限定なしと。事業者でも構わないという。分かりました。 ● そこら辺の御意見はいかがでしょうか。 ● 例えばPL型を考えると,ちょっとどうかなという気はいたします。PLの賠償などを考えると,人身の被害が出ていてという場合で,物損とか人身被害だけではなくて,いろんな賠償請求がありますと。そういうときにどういう請求の仕方になるのかちょっとよく分からなかったのですけれども,被害者がたくさん出ている場合ですと,やはり通常ですと自然人を先に保護したいなという感覚になるかなと……。 ● 例えば船主責任制限手続のような,それを区別するためにいかに大変な規定を置くのか。そこら辺を御勘案いただきたい。 ● 分かりました。 ● 制限すべきだという御意見はございませんか。先ほど考え方としては○○幹事が御指摘になったように,責任保険の保険金というのはやはり特別の性質を持った財産だという,そういう考え方なので,これで適用範囲を一部の損害とか一部の保険に限るというのは余り適当でないように思いますし,ヨーロッパで一般的な先取特権に類似する優先権を認めている立法でも,これは責任保険一般に認めているのではないかと思います。直接請求権ということになると限定するという考え方,ヨーロッパでもそういう立法が多いと思います。これは先取特権の規定なので,限定しない立法をこの際してはどうかというのが今日の御提案なのですが,いかがですか。   ○○委員。 ● 先ほど人身損害に限ってどうかというお話を申し上げましたが,賠償責任保険にはもちろん非常にいろんな賠償責任保険がありまして,人身のもの,物損もありますし,純粋に経済的な損害を賠償するものもありますし,それから例えば品質保証とか,そういう保証責任を担保するものもありまして,特に企業間でこういうことが起こりますと,いろんな訴訟が当然発生しますので,それのいろんな保険が現在ございますし,これからも賠償責任保険はさまざまなものが出てくると思います。先ほど○○幹事がおっしゃったように,全般的にそれを認めると考えたことはございますし,やはり法律に入れるとすると例えば被害者が個人の場合に限るとか,そういう考え方が一つあると思うのですけれども,その辺もちょっと皆さんの御意見を……。 ● それも前に強行規定性のところでさんざん議論して,個人以外保護しないのかと,事業者を除いたら事業者でもいろいろなのがいるとか,また,収拾の付かない議論になるわけですね。この時点でまたそういう議論をするのもいかがかなと思うのですが,そういうことで,この際,限定なしということでお認めいただければと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,先ほどの②の点についてはなお,この立法が実現する方向でどうしたら最善の処理ができるのか,ルールができるのかというところを御検討いただいて,次の段階でさらに御議論いただくということにしたいと思います。   それでは,先に続けさせていただきまして,本日配布の保険法部会資料22「保険法の見直しに関する個別論点の検討(6)」,これは第18の保険料積立金等の支払に関する項目でございます。   まず,事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   資料22の第18のところでは,いわゆる保険料積立金や解約返戻金について問題提起をしております。   まず,1の(1)では生命保険契約の保険料積立金に関する規律を提案しております。保険料積立金については現行商法にも「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」を払い戻さなければならないという規定が設けられておりますが,今回の提案はこの実質的内容と同様のことを書き表したものでございます。この規律は保険料の算定方法のうち,いわゆる平準保険料方式を採用した場合の規律でございますけれども,資料では保険者が保険契約者から受領した保険料の総額のうち,予定死亡率,予定利率その他の生命保険契約において保険料の金額を算出する際に用いた計算の基礎により,当該契約の終了の時において当該契約に基づく将来における保険者の債務の履行に備えるために積み立てていた金額に相当する金額を支払うということを記載してございます。   この金額については当該契約において保険料の金額を算出する際に用いた計算の基礎によって,幾らが将来の保険金の支払に充てられるべきものかどうかということを基に金額を算出することを意図しておりまして,保険料の計算の基礎は客観的に存在しているものでございますので,これによって一義的に金額が導かれることになるものと考えております。   保険期間が長期の生命保険契約では,この規律で支払うべき金額が存在しているのが通例と考えられますが,短期の契約では支払うべき金額がない場合もあると考えられますし,また,資料の同じく2頁の2のところでは傷害・疾病保険契約にも同様の規律を設けることを提案してございますが,一般的な傷害保険契約や保険期間が短期の疾病保険契約では,この規律によって支払うべき金額はゼロとなることもあると考えられます。   また,(ア)から(エ)のところに掲げている場合は,保険料積立金を支払うということを書いてございますけれども,ここに掲げているのはいずれも現行商法で「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」を払い戻すとされている場合でございます。これにつきましては資料の3頁に表でまとめておりますので御参照いただければと思います。   なお,中間試案,資料の1頁に引用してございますけれども,ここでは(注1)のところで将来の保険金の支払に充てるべき保険料として相当な金額と,ここで「相当な」という文言を使ってございますけれども,保険料として幾らが相当かどうかということは,保険事故が発生して保険金が支払われた場合やあるいは保険期間が満了した場合にも同じく問題とする余地があることから,ここで問題となっております保険期間の中途で契約が終了した場合にだけ,これについて何らかの規律を設けることは整合的でないと考えられるところでございます。そこで保険料の金額の相当性については,ここで規律するのではなく,詐欺や暴利行為等の一般法理等にゆだねるのが適切と考えているところでございます。   次に,(2)のところでは解約返戻金に関する規律について提案しております。ここでは1頁に引用しております先ほど御覧いただきました中間試案の(注1)の後半部分の記載に相当するものでございますけれども,記載内容こそ違っておりますが,実質的な内容は同じことを記載してございます。今回の提案というのは同一の保険料の計算の基礎を用いている他の保険契約との関係を意識した規定としてございますが,これは保険というのはそもそも保険母集団あるいは群団というものが観念され,その集団としての収支が等しくなるように保険料が計算されているといわれておりますので,それを踏まえたものを提案してございます。   規律の具体的な内容といたしましては,(2)のところに書いてあるとおりでございまして,読み上げさせていただきますと,(1)により支払うべき金額というのが保険料積立金でございますけれども,この金額のうち,当該契約と同一の計算の基礎を用いている同じ保険料集団あるいは群団の他の保険契約に基づく将来における保険者の債務の履行に備えるために必要な金額として,当該計算の基礎によって算出される金額を超える部分に相当する金額を契約者に払い戻さなければならないということを記載してございます。   ちょっと具体例をもとに御説明いたしますと,例えば伝統的な養老保険,以前,資料で御説明いただきましたけれども,ああいったものであれば解除に当たって,典型的には新契約費用と言われる契約締結にかかった費用などが控除されることになりますけれども,これについては契約を解除した者の負担とすると,つまり,解除する者にその部分を返還しないとすることによって,結局はその経費等の部分が同じ群団のほかの保険契約者の負担にならず,結局,群団に残存する契約について,保険者の債務の履行に備えるのに十分な金額が確保されるということになるのではないかと考えております。   また,いわゆる無解約返戻金あるいは低解約返戻金の商品についても保険数理上合理的な計算がされているのであれば,本文の3行目の他の生命保険契約に基づく将来における保険者の債務の履行に備えるために必要な金額が,返戻金の額の決定に当たって考慮されているということになるのではないかと考えてございます。いずれにしても,これらについて一義的な金額が導かれるということになるのではないかと考えられるところでございます。さらに,各号,すなわち(ア),(イ)のところでは解約返戻金を支払うことをそれぞれ提案しておりまして,これについても資料の3頁の表を御参照いただければと思います。   この1の(1)と(2)につきましては,契約法における規律の在り方の大きな方向性について本日御議論をいただければと思っておりまして,最後の詰めについてはさらにしていく必要があるのではないかと考えてございます。   次に,2につきましては傷害・疾病保険契約についても同様の規律を設けることを提案してございますけれども,傷害・疾病保険契約につきましては生命保険契約と異なり,何回も保険事故が発生し得るという特性がございますので,各号にそれぞれ掲げている場合については,保険事故が何回も発生し得るということを踏まえて,どういうふうに掲げたらいいのかどうか,そこら辺をさらに検討していきたいと考えてございます。   以上です。 ● この事項は以前から課題としては積み残しになっていて,どういうふうな規律というか,要綱の案をつくればいいかという大変難問であったのですが,一応,事務当局の方でいろいろ考えていただきまして,今日御提案のような形で御提示できるところに至っているところでございますが,先ほど御説明がありましたように,本日はこれを別に取りまとめるということではございませんので,こういう方向はいかがなものかというのと,こういう仮に規律を置くとどんな問題があるのだろうかといういろんなお気付きの点があろうかと思いますので,今後の検討のためにも幅広く御意見をいただければということかと思います。よろしくお願いいたします。   ○○委員。 ● 事務当局の方で大変御努力いただいたという感じがしておりまして,大きな方向としましては今の御説明がありましたように,保険の群団性というところにも非常に配慮いただいておりますし,一方で伝統的商品から低あるいは無解約返戻金型,あるいはこれから将来いろんな商品が出てくるという中で,そういったことについても配慮していただいたような表現になっておりますので,大きな方向としてはこの方向で我々としては異存はございません。 ● ○○委員。 ● ちょっと難しい話なので理解をするために質問をさせていただきたいと思います。結局,私などは解約返戻金を一つの言葉で考えていましたが,中間試案の中の(注1)にある二つの例を軸にして,二つにカテゴリーを分けるということが明確に示されたものという理解をいたしました。そして,何が返されるかということですが,(1)の保険料積立金の方が多くて,それで(2)に当たる場合の方が少ないということも,一義的な事柄になるのかなというふうに,いろいろな場合があるのではなくて,と思いました。最後にこれでよろしいですかというふうに伺います。   それで三番目は何が違うか,(1)と(2)は何が違うかというところは先ほど○○関係官がおっしゃってくださったところを引用するのですが,販売費用を(2)の方では,当該やめてしまった人にかかった費用をほかの人に負担を転嫁しないと,その人自身がかぶってくださいねということで引くのだというふうにお話しいただきましたので,逆に言うと(1)の保険料積立金を返す側は,このカテゴリーに入る場合は販売費用についても当該やめる人,やめた人等について保険群団の他の人に負担を転嫁する部分があるということを意味しているかなと思ったのですが,それでいいかということです。   そして,これが最後ですが,(1)と(2)に分けるのがそれぞれ(ア),(イ),(ウ),(エ)と(ア),(イ)がありますが,非常に簡単な表現をしてしまいますと,(1)の方は保険契約者に販売費用を負担させるべきでない,他に転嫁しても構わないだろうという場合であって,したがって保険契約者が勝手にというのでしょうかね,保険契約者側の事情だけでやめるというのではないと。それに対して(2)の解約返戻金の方は,保険契約者の事情あるいは保険契約者に責任を負わせてもいいと考えられる事情に基づいて離脱するというものだと,こういうふうに御説明を理解したのですが,細かいところはともかくとして,大枠はそういう理解でよろしいのでしょうか。 ● よろしいですか,○○幹事。 ● 事務当局説明が分かりづらかったので,俺が分かりやすく説明してやったという感じですが,どれもまさにおっしゃるとおりです。ただ,三点目に販売費用の点をおっしゃいましたが,典型的で分かりやすいので,(2)でさらに(1)より少なくなる,何で少なくなるかというと例えばということで販売費用と申し上げたので,決して販売費用だけではないということは,もちろん当然のことながらございますけれども。 ● どんなものがありますか。 ● 例えば伝統的な商品では典型的には契約を締結したときにかかった費用ということで募集人の給与というのでしょうか,そういったものですとか,例えば保険証券を送ったのであれば,その費用ですとか,そういったものが一番典型的なものとしては挙げられてございます。   それ以外にも例えば長期の契約であって,20年もの,30年ものであれば,保険契約者が支払った保険料をそれだけ長期に運用できるということで,相当高い利率が見込まれていたけれども,例えば途中で解除されてしまったら,そんなに高い利率で運用できませんよということであれば,そういったものを考慮をするということもあり得るでしょうし,あとは例えば先ほど保険母集団あるいは群団という御説明をいたしましたけれども,そこがある程度の人数がいれば,おのずと死亡率というのも平均化されてくるものの,その群団の人数が例えばどんどん減っていってしまうと,どうしてもリスクが偏ってしまうと,そこら辺を当初予定していた人数であれば,ある程度平均化されていたのに,どんどん契約者がやめていってしまうと,そこら辺が当初予定していた死亡率のままではいかないということであれば,そこを若干修正をするとか,そういったいずれも保険数理から導かれてくるものと理解をしておりますけれども,そういったものもいろいろと観念できるというふうにはいわれてございます。 ● 保険数理の本を見ると,今,御説明のあったような契約締結の諸費用,それから元気な人だけがやめていくことによって死亡率が高まるその損害に備える,それから資産運用が非効率になるそのロスというのがあって,それに加えてペナルティーというのが教科書には昔から挙がっている。多分,この案によればペナルティーは駄目よと,そういう思想ではないかと思います。 ● ありがとうございます。 ● ○○委員。 ● 今日拝見していろんな問題があって,全部気が付いているかどうか,またもう少し考えたいと思いますが,今日この時点で御質問したいのはこの問題を考える視点ですよね,どういう視点で見るかと。そうすると,まず一つは保険料積立金の方は非常にテクニカルで,これもとりあえずこれでよしとして,まず解約返戻金の金額の妥当性の問題があって,計算の過程が保険数理的に妥当かというのが本当は一つまず論点としてあって,次に広い意味での解約控除する項目の額そのものが妥当かという難しい問題があると。もう一つ解約返戻金の金額について,それが本当に契約者の意思の内容になるかという論点がもう一個あって,最後にある意味テクニカルかもしれませんが,解除権の保障みたいな問題,現実は今は例の年金の場合だけちょっと別かもしれませんが,消費者契約では一応全部入っているという理解でよろしいのでしょうか。でも,これを見ていて思ったのですが,前回,企業保険の強行法規のときに解除は入っていませんよね。中間試案では一応任意解除規定は強行法規になっていなくて任意規定になっていますよね。でも,そういう問題が一応あるというのだと思うのです。   それで,そういう観点でこれを見てみますと,まず解約返戻金の計算過程が保険数理的に妥当かどうかは,ここでは何も言っていないということだと思いますが,これはしようがないという御判断なのでしょうかね。それから一番最初にあった保険数理に基づいたとか,そういうのがあれば,一応,そこは保証されるわけですが,でも,文言上はそれは必ずしもちょっとはっきりしないと。それから……。 ● 一応,それぞれ数学的な根拠はあるという……。 ● そういう前提ですか。 ● 前提になっていないわけですか。この(2)でもこれこれに相当する金額という言葉が使ってありますけれども,これも数学的には一応……。 ● 「計算の基礎により算出される金額」でそういう,それだったらよく……。 ● 予定死亡率等についてどういう前提条件を置いて,こう計算していくと,この金額になりますと,一応,それは数学的に正しい計算がされているというのが前提だと思いますけれども。 ● ありがとうございました。   二番目の額そのものの妥当性,この額は正しいとはなかなか言えない額なので,どうするかというのが大問題なのだと思うのですよね。そこはここで……。 ● 正しいというのはどういう意味ですか。 ● 正しいというか,一義的に言えない,各社の政策的な問題で決まるという問題ですよね。(2)のところで質問の一つなのですが,算出された2行目の「当該生命保険契約と同一の計算の基礎を用いて」云々というところで,何か平均みたいなもの,ここでそういう表現をしているわけですが,これは消費者契約法第9条第1号との関係で何かてこになるようなものではない。 ● これはどう……。 ● これはどういう,まず二番目の質問がそこなのです。単に計算の過程を出しただけ。 ● 単にこれは一つの計算上の群団の意味で,先ほど言われていたのではないかと思いますが。 ● そうすると,消費者契約法的に言うと,そこの額が本当は各社まちまちなわけで,いろんな考え方があって,そこを開示して,あの会社は高いからというので競争原理を働かせるとか,いろんなことを言われている部分はひとつこの案だと見えないということですね。 ● そこはそうだと思いますね。 ● それをいろいろちょっと議論をしないと,本当はいけないところなのかもしれませんが,三番目が納得してこれが契約の内容となるかというのがここには何もないと。でも,これは本当は任意解除のところの一番の問題で,その問題は今日は何も申し上げられませんが,解除権の保障という点は私の記憶では中間試案では任意解除は任意規定になっていて,年金特約の場合で年金開始後に解除できないとかいうのは,ちょっと私は例外的なもので,基本的には消費者の任意解除権は強行法規で保護してもいいのではないかという感じがするのですけれども,そこはどうお考えなのですか。何かまずいというのは。 ● そこは何かお考えですか。 ● その点についてはこれまで御提案させていただいたとおり,任意解除については基本的に任意規定で考えていますけれども。 ● だから,実際は今は余りそういう会社はないと思いますけれども,そういう大胆な会社が出てきたときに,任意解約,解約返戻金の解除ができないような商品はやはりよくなくて,それを禁止すると何かマイナスの波及効か何かあるのでしょうか。 ● 今,先生がおっしゃったように年金で終身年金ですと……。 ● 給付の始まった後のお話ですよね。 ● そうですね。 ● ですから,そうではなくて完全な保険……。 ● ですから,そういうのをまた書き出すのは大変だということではないでしょうか。 ● では,そこは実際は監督に……それはよく分かりますけれども。 ● 任意規定といっても消費者契約法は働くわけですから,仮に何の根拠も,先ほど御紹介いただいた年金の支給開始後といった合理的な理由もなく,まさに一方的に任意解除権を奪おうという位置付けができるような仮に商品だとすれば,消費者契約法の歯止めは働くと思いますけれども。 ● ちょっと考えながら言っていますので,ありがとうございました。 ● ○○委員。 ● 今の段階でちょっと先生の問題意識で一つ言えることは,解約返還金の比較ができないというお話がありましたけれども,これは約款の「ご契約のしおり」の後ろにも載っていますし,あるいは会社にお尋ねいただければ,解約返還金だけ別に隠しているわけではないですから,それは比較できると思います。 ● すみません,一言だけ。そう言ったわけではなくて,新経費部分のところの比較ができないと,これが問題,これはもう全然違うわけですから,各社で。それこそ受取額が大きくなるか少なくなるかというのを左右する最大の原因で,そこがブラックボックスになっているわけですよね。そういう趣旨です。 ● だから,それはですから保険料と解約返還金を比べていただければ,その会社は解約控除と言われているものが多いのか少ないのかというのは分かるわけですね。 ● 期間が経過すれば減り方は,商品はさまざまなので,そんな簡単にはいかないというのが普通の考えではないかと思いますが。 ● この点は生保さんがおっしゃるほど透明な市場があるとは,とても私も思っていません。保険証券に金額が毎年書いてあるので,それは絶対額が書いてあるだけで,どういう計算をしてそうなるのですか,全く分からない。この点は金融審議会のワーキングでもなお,こちらの方はまさにまた監督法上重要なことなので,なおそちらの方でも検討されると思いますが,○○幹事,どうぞ。 ● 今回,非常に明快にまとめていただいていて,よくクリアになったのですけれども,今回お書きになっておられる部分というのは,計算の考え方というのが法律上明確になったということで,特に非常に私が重視したいと思うのは(2)のところで,先ほど○○委員がおっしゃられましたようにペナルティーというのは引けないということが,計算の仕掛けの中である程度読めるというところは非常にいいと思うのですが,大枠のところのまず(1)のところの金額が不当に安かった場合には(2)の方にも影響してくるわけなのですけれども,そこの部分でもとの原案では「相当な」というのがあったわけなのですが,それを外してしまいますと,目的が将来の債務の履行のためでありますと言ってしまえば,それでいいということになってしまうのか,それとも先ほど○○委員がおっしゃられたように,そこにはきちんと計算が合っているということがどこか規範として読めるのかということが,「相当な」という言葉を外した場合に,ありやなしやということをちょっとだけ確認させていただきたいのですけれども。 ● いかがですか。 ● そこは苦しいところですが,少なくとも何らかのというか,しっかりとした計算の基礎があって,それによってきちっと算出されるものでなければならないというところまでは言えるわけですけれども,最初の事務当局説明でも申し上げましたように,個々の設定した要素の合理性というのですか,相当性というのでしょうか,あるいは個々の数値の合理性,相当性というのでしょうか,そこまでは全部織り込めるのかというと,そもそもここの解約返戻金だけの問題ではないということもありまして,その意味までこの中に持たせるのはちょっと難しいのではないかなというように現時点では考えております。 ● 結局,業法で言えば契約者価額ということになるわけですから,これも現行法だと契約でしているということになるのですかね。   ○○幹事。 ● まさにここにお示しいただいているこの案につきましては,金融庁としましても業法に与える影響ですとかの検討も必要になってくるわけですが,まずはこの案そのものが現行の保険実務あるいは保険監督に与える影響の検討を,我々としても是非進めさせていただこうと考えているところでございます。そうした検討を進める中で法務省の事務当局の方に随時不明点ですとか,御意見等を御提示させていただきたいと思っておりますので,御対応の方をよろしくお願いしたいと,一言申し上げさせていただきたいと思いました。 ● 実質的に何か今のところで御感想とか御意見はないのですか。 ● 急な御提示でございまして,まだ事務的には一つ一つの用語についての字句の解釈をどう考えておられるのかお聞きしているようでございますが,まだそういう今,申し上げられるような段階ではございません。 ● ○○委員。 ● 今の○○委員の発言ではっと思ったのですが,これは要するに今の約款では責準の文言が残っていたのもあって,これが契約の一内容だとすると,これについても何らかの審査が,解釈というか,及び得るという,そういう御趣旨ですか。 ● これは基礎書類の一部ですよね。契約者価額というのは当然のことですが。 ● 責準算出方法書の中に入れておく形がありますから,そうすると契約の一内容にもなっているという前提で,そうすると実際は立証の問題がありますけれども,観念的には何らかの解釈の対象になるといいますか,そういう契約の一内容になるというだけでもいろいろ工夫はできるかもしれないということだけ申し上げておきます。ありがとうございました。 ● 行政的な認可ということを通じて,行政的な監督が及んでいるのは確かだろうと思うのですね。 ● 契約の一内容……。 ● 契約上の合意そのものとして,合理性というところまで内在しているかどうかというのが先ほどの○○幹事の御質問だったと思います。   ○○幹事。 ● まだ,この資料をいただいたばかりで,このような規律で裁判所に訴訟が来たときに,うまく額が計算できるかということについてはちょっと即断できないのですが,ちょっとその点はさておきまして,実際の訴訟ではここに挙がっているような予定死亡率とか予定利率等の数字については,保険契約者が必ずしも把握していない場合もあろうかと思うのですが,実際にはどういうような形で訴訟に資料として提出されるというようなことを想定されているのかということが,もしあれば教えていただきたいと思うのです。 ● 仮に訴訟の場合になれば,それを出してくださいと言うか,出してくれなければ強制的な証拠の獲得手段がございますので,そういうのを活用していただくということになろうかと思います。 ● 大変難しい問題ですが,何かほかに御意見はございませんか。   これは非常にテクニカルな問題でもございますので,また業法の問題とも非常に密接に関連しますので,なお今日いただいた御意見も踏まえて詰めるところまで詰めて,また次の段階の御提案ということにしたいと思いますが,○○幹事,どうぞ。 ● 私もちょっとよく今日,ここのところをそしゃくできていなくて,次のときのためにもしできればと思って提案なのですけれども,やはり基本法の中でこの計算の基礎とかいう抽象的な言葉で終わっているときに,何か保険契約者の側から,先ほど実務でも○○委員の方でそういう開示ができるというふうにおっしゃっていたかと思いますので,一応,そういうのを閲覧とか開示とか,その規定を一つ設けていただければと思うのですけれども,それで実際,開示されたものでどこまで保険契約者で分かるかということも,次の問題としてはあるかと思うのですけれども,それから,そういうことを基本法の方で計算が妥当だということを担保するような規定を一つ設けておくことが,今,業法との平仄が今後,どういうふうに合うのかというのが分からない中で,保険法の方がもう先行して改正が進むと思いますので,例えば以前も申しましたが,会社の計算などの場合に,計算規則が会社法と改正前の証券取引法の開示規則の規定と微妙に違っていたとかいう問題が,私はそんなに昔のことを知ったようには話せないのですけれども,長い間続いて,今回の会社法の改正で平仄が合うようになったということがあったかと思いますので,保険料の積立金とかに関して,基本法の方と業法との平仄を合わせられるような一言,キーワードだけでも載っていれば,規定されたらいいのではないかなと考えます。 ● その点も御意見として伺って,○○委員。 ● 前回も申し上げたのですけれども,今日の議論の中でも現行の各省庁の認可基準に触れる中身が,ほとんど実際問題触れるのですれども,そういう関係もありますので,○○幹事も言われましたように,特に算出方法書の中身に属するのが最後のテーマになっていましたので,そういう意味では金融庁さんのは保険業法の中身についての整合性といいますか,そういうのも必要かと思いますけれども,他の省庁の認可基準も非常にかかわりを持っておりますので,その点について改めて留意をお願いしたいというふうに思います。 ● ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この点はなお事務当局に御検討を進めていただくということにしたいと思います。   それでは,一応今日予定していた項目は終わりましたので,本日の審議はこれで終了したいと思います。   個別論点の検討は今回が最終回でございまして,次回からは具体的な要綱案の作成に向けた詰めの審議をお願いしたいということでございますので,よろしくお願いいたします。   次回の予定につきまして事務当局よりお願いいたします。 ● 次回会議,第21回になりますけれども,第21回会議は12月12日水曜日の午後1時30分から,今日と同じ法務省20階のこの第1会議室での開催になります。要綱案のたたき台的なものを前半と後半,2回に分けましてお示しさせていただきまして,次回と次々回の2回で御審議をいただきたいというふうに考えてございますので,よろしくお願いいたします。 ● すみません。危険の増加は,ではいきなり案が出てくると,そういう理解でよろしいわけですか。 ● まだ生煮えの状態であるという自覚はあるのですけれども,今回,まだ十分こちらが条文の形で,こういう形であればいけるだろうというところまで至らなかったためにお示しできなかったという事情がございまして,申し訳ないのですが,要綱案のたたき台的なものの前半,後半を分けてお示しする中に盛り込んで,お諮りしたいというふうに考えてございます。 ● ほかにもそういう項目はあるかと思いますので,また御意見は十分いただくということで御了承いただければと思います。   それでは,本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 -了-