法制審議会間接保有証券準拠法部会 第21回会議 議事録 第1 日 時  平成19年12月4日(火)  自 午後2時00分                        至 午後3時15分 第2 場 所  法曹会館高砂の間 第3 議 題 ヘーグ間接保有証券準拠法条約について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 定刻になりましたので,法制審議会間接保有証券準拠法部会の第21回会議を開催いたします。   本日は配布資料はございませんので早速本日の審議に入りたいと存じます。   本日は部会資料28の諮問第57号に関する審議結果報告案(担当者素案)に基づきまして,当部会から法制審議会総会に対して報告すべき内容について,前回に引き続き御審議をいただき報告案を確定したいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。   まず,事務当局に前回の議論の要約と本日御欠席の○○委員から事前に御意見を承っているとのことでございますので,その御意見の紹介をしていただきます。 ● それでは御説明させていただきます。前回ですが,部会資料28についてざっと御議論をいただいたところでございますが,議論になりましたのは3ページの本条約の批准等についての意見に関する部分で,そのうちの(1)の現状についての認識,それからこの条約が批准されることの意義といったところについては御異論はなかったというふうに理解をいたしておりますけれども,(2)以下につきまして○○委員から(1)のような現状にある中で,ヨーロッパの検討状況が決まるまでの間,何もしなくていいのかという問題提議をいただいたわけでございます。つまり,現在はこの部会資料28の3ページから4ページにかけて書いておりますように準拠法の決定ルールがはっきりしない状態にあるわけで,その状態をこのまま何年か放置するということはよくないのではないかという問題提起です。そこで○○委員は二つ御提案をされたと思うんですけれども,一つは本条約と同内容の国内法をつくってしまうということであり,もう一つはそれによらないのであればヨーロッパのルールである関連口座管理機関の事務所の所在地法によるという立法をして,今のヨーロッパと同じルールによることとしてはどうかという御発言があったわけでございます。   これに対しましては,数名の委員からそれと反対の御意見がございました。具体的には,ヨーロッパも批准するとなれば,米国も批准に動いているわけですので,この条約がグローバル・スタンダードになるということになりますけれども,まだそうなるかどうかが決まっていない状況の中で今直ちにこの条約の定めている準拠法ルールによるのがいいんだということは言い切れないのではないかと。グローバル・スタンダードになってしまえば,もうそれはグローバル・スタンダードなんだから日本もそれに合わせる形にするということでいいんだけれども,まだそうなっていない状況の中で,これが日本の準拠法ルールとしてベストなものだと決めて立法するということは無理なのではないかという御意見などがあったわけでございます。   そういう御議論をしていただいているところで時間になったというのが前回の状況でございますので,今回も前回に引き続きまして,この部会資料28に基づきまして報告案の内容をどのようにすべきかということについて御審議をいただければと思います。   なお,前回は3の本条約の批准等についての意見の部分に専ら御議論が集中したんですけれども,その前の1,2の部分につきましても何か直すべきところがあれば是非とも御指摘をいただければと思っておりますのでよろしくお願いいたします。   それから,本日の部会に御欠席の○○委員が先日,私のところにわざわざお越しくださいまして,部会には御出張でどうしても出席できないので事前に自分の意見を述べておきたいということで,私にお話をしてくださいました。○○委員の御意見は,この条約をアメリカとヨーロッパの双方が批准するという場合には,これは主要な国際的証券市場でこの条約が定める準拠法ルールが適用されることになるわけなので,そうなる場合には,これは国際的な証券ビジネスの共通基本コンセプトということで,日本もこの条約を批准するのが望ましいであろうと。ですから,事務局作成の審議結果報告案のように欧州の検討の帰趨を見極めた上で,適切な時期に日本もヘーグ条約を批准するという報告案でよいのではないかというお話がございましたので,御報告させていただきます。   私からの冒頭の御説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,報告案の内容につきまして前回に引き続き議論をしたいと思います。御意見がおありの方は報告案のどの部分に関してでも結構でございますので,御発言をお願いいたします。   ○○委員は前回いろいろ御発言をいただきましたが,いかがでしょうか。 ● ありがとうございます。   前回申し上げたことで私の言いたいことは尽きておりますけれども,国際私法は準拠法を決める役割を持っているわけで,そのことがすごく重要だというのか,それともそうではなくて決まっていることに意味があると。要するに信号が青なのか赤なのかが分かることが大切で,どのタイミングで青にするか赤にするかよりは,赤であるのか青であるのかが分かることが大切だということもあると思うんです。私は国際私法をやっていますけれども,ベストのルールでなければならないということではなくて,ないよりはある方がいいと思っておりますので,先ほどおっしゃったグローバル・スタンダードになるかならないかまでは分からないというのは,必ずしも私にとっては説得的ではないのです。分からないよりは何らかの分かるルールがあった方がよく,そうやって決まった準拠法上,適当な,妥当な解決を図るべきだと思いますけれども,準拠法自体は分かることの意味がすごく大きいと思っていますので,このまま放置するのはちょっとやっぱりどうかなと。   しかし,では直ちに国内法にしましょうということには多分ならないと思います。しかし,今後の実務上しばらくの間はこのまま進むとすれば,この審議会でどういう議論がされたのかというのはある程度の意味はあろうかと思うんですが,例えば現在の法の適用に関する通則法13条は所在地法によると書いてありますけれども,船舶とか航空機とか,あるいはそれに乗せられているものとか,あるいは自動車ですとかについては判例上所在地ではないルールが妥当だとされており,そうであればこの間接保有証券についても必ずしもその大券がどこにあるかとか,あるいはプールが,いろいろな同種同類のものがさまざまな国にある場合にその所在地法がそれぞれが適用されるというのではなくて,口座管理機関なりあるいはその口座管理機関の契約上決めた準拠法なりがより重要な意味を持つという解釈もあり得るということぐらいは,コンセンサスだったとか,あるいはその方向で解釈してもよいのではないかという意見が多数であったとか,それくらいのガイドラインは世の中に示してもいいのではないかなと思います。   以上です。 ● ありがとうございました。   この報告案の内容に何か具体的に付け加えるべき文言をお考えでしたら御意見を承りたいと思うのですが。 ● それはございません。 ● そうですか。ありがとうございました。   前回の議論を御説明いただいたんですが,御出席の方であのとき言い足りなかったからちょっととおっしゃる方がございましたら承りたいと思いますが,いかがでしょうか。   それでは,前回御欠席の方々からの御意見を承りたいと思いますし,また御出席であっても,もう少しあるいは御発言いただかなかった方からも御意見を承りたいと思いますが,○○委員は前回御欠席でしたですね。報告案につきまして何か御意見ございますでしょうか。 ● 文面に書いてあることは別に全然異論はないんですけれども,ちょっと具体的にどういう理屈だったか忘れてしまったんですけれども,ヨーロッパ諸国で抵抗があるということについて,それがヨーロッパであるCollateral DirectiveとかSettlement Finality Directiveとの整合性が一番の根拠だったと思うんですけれども,それは必ずしも整合的でないから反対しているという人たちの論拠が余り説得的でなかったように思っているんです。   そこで,それについてその後何か,どなたか情報があればという,むしろ質問になってしまうんですけれども。 ● EUにおける議論でございますね。この条約のどの点に反対でうまく進んでいないのかということについて知りたいとおっしゃるのでしょうか。 ● 条約の幾つかが,Collateral DirectiveというのがEUで出ておりまして,それとの整合性に問題があるという理由で反対をされているという,かつてどういう理由だったかは読んだ記憶があるんですけれども,内容を忘れてしまったんですが,その後,それが,必ずしもそのときに読んだ限りでは余り説得的な反対理由にはなっていなかったように思ったんですが,かなり前ですから,その後,何か進展があったのかなと思います。 ● そうですか。では,その点の情報につきましてちょっと御説明いただけますでしょうか。 ● 今のDirectiveとの関係ということをおっしゃられたのですけれども,この条約をEUが批准しようと思いましたら,この条約のルールというのは口座管理機関と名義人との間で合意した国の法律を準拠法とするというルールで,Directiveの方は口座管理機関の所在地によるというルールですので,これはルールが違いますからDirectiveは変えなければいけなくなるわけであります。そのことは十分認識された上で,この条約の採択に至ったというふうに私は理解しております。もしも違っていれば○○委員か○○幹事から御訂正をいただければと思います。   ヨーロッパでの今の議論の状況でございますが,議論がどうも秘密裏に行われているようでございまして,情報を得ようとはしているんですけれども,どれぐらいの頻度でどういうレベルでどんな議論がされているのかということの詳細は,実は把握できていない状況でございます。ただ,この条約自体に賛成の国の方から得た情報としては,賛成の方が多いんだけれども反対の意見を持つ国はかなり強硬に反対をされていて,したがってヨーロッパとしての意見がまとまるのがいつになるのかということは,当初は1年ぐらいで何とかなるのではないかとか言っていたのが,その後に得た情報ではいつになるか分からないという状況だというふうに承っております。何かほかの情報を得ておられる方がいらっしゃいましたら追加で御説明いただければありがたいと存じます。   ○○委員いかがでしょうか。 ● 特に聞いておりません。 ● ありがとうございました。   ○○委員,ほかに何か。 ● 確かEBF,European Banking Federationが相当強硬に反対しているというようなことを聞いてございますので,私の方でもう一回いろいろなつてで聞いてみます。 ● ありがとうございました。   では,○○幹事どうぞ。 ● 今の点について一点だけですけれども,公になっている文書の範囲では2006年におそらくECの委員会が本条約に関して加入するかどうかの検討を求められてレポートを出していると思いますけれども,そのレポートにおいては結論として加入に積極的というふうな方向を出していたと思います。   ただ,一点だけ検討してはどうかという点は,決済システムなんかにおいて複数の準拠法を選択されるようになりますとシステムに負荷がかかるのではないかというような,どちらかというとPrivate Lawというよりは監督法的な観点から,例えば決済機関の中での選択に関して若干の規制を設けるなど,そういうような検討をしてはどうかというふうな意見付きで条約としては積極的というレポートがEC委員会からCouncilの方に出されているというふうに,以前勉強したときにはそのように記憶をしております。その点,以上,御報告でございます。 ● ありがとうございました。   今,おっしゃっていただいたことはそのとおりで,そういう報告が出されて,それで各国で議論になった。ところがその委員会の報告どおりにはなかなかうまくいかなくてというか,一部に違う意見があって今,泥沼に近い,泥沼といっていいのかどうか自体もよく分からないんですけれども,全部ブラックボックスの中に入ったような形になっていますので,よく分かりませんけれども,まだ協議は続けられているけれども帰趨が見えないというふうに把握しているんですけれども。 ● よろしゅうございますか。 ● では,ちょっと一言だけ。   多少前に申し上げたことをかいつまんで申し上げますと,私が観察している限りにおいては,この条約が審議されているときにヨーロッパ中央銀行とヨーロッパの若干の国が,反対というわけではないんですけれども強い難色を示していたというのがあります。それがずっと続いていて条約自体は成立したんですけれども,一つはヨーロッパ中央銀行がいろいろと検討事項があるというスタンスを言い続けて今日に至っているということがあるというふうに聞いています。それは,今,御指摘になった決済システムということも含めてなんですけれども,主としてそういう公法上のルール,例えば決済システムの安定性確保の見地からこの条約が仮に批准されたとして,この4条にいう準拠法というのは同じ法であることを公法が求めるということをしていいのか,それは条約を批准するとその趣旨に反するのかというような点,それから前にちょっと申し上げましたけれども,多少ヨーロッパ中央銀行とは違いますけれども,消費者保護の見地から,例えばですけれども,活字の大きさはこれこれ以上でなければいけないという法律があったとしまして,4条の合意の活字の方が小さかったという場合に,4条である準拠法を合意していた場合に,それはその国の消費者法の活字規制法といいましょうか,しかしその消費者法というのは,その国においては性格は公法ではなくて私法であって,例えば日本の消費者契約法のようにそれに違反した場合には私法上その契約の効力は無効であると,こういう定めをしているような場合に,この条約を批准した国がそういう消費者法を適用していいのかどうか,この二つぐらいだと思うんですけれども,そういうあたりについて,なお合意に至る必要があるという声があったというふうに思います。   他方,EU諸国の方は,今,御紹介がありましたEU委員会の方のレポートがあった直後にそれぞれの国の意見を聞きまして,前にちょっとここで言及があったと思いますけれども,当時は27ではなくて25だったのかもしれませんけれども,いずれにしても数か国が反対の意思を表明したと。ですから,数の上では少ないんですけれども英語でblocking minorityというふうに言っているんですけれども,その数か国には非常に有力な国が入っているという状態のために,EUとしては先へ進めない。それらの国がなぜ反対しているかというと,どちらかというと理論的な理由というのではなくて,その国で中心的な役割を担う方が条約プロセスのときに参加できなかったという,ややそういうどこの国でもよくある話なんですけれども,そのためにやはり先へ進めないという要素が大きいというふうに伺っています。   しかし,もうちょっと観点を変えて言えば,いろいろな国から日本はどうなるんだと,ヨーロッパは,日本の方が動けばヨーロッパも動くのではないかとか,逆に日本はヨーロッパが動けば動くのかとか,そういう話はままあるんですけれども,何といっても非常に重要なのは,これは○○委員がおっしゃったことと同じことだと思うんですけれども,実務がどうかです。今,準拠法が何か分からなくて,それで全然構わないということであれば大して実害はないというか,このまま日本も様子を見ることによって何の問題もないわけです。   長々と恐縮ですけれども,この条約を審議しているときに,この場でも出た話ではあるんですけれども,日本の実務はどうなっているんですかと,通常こういう準拠法だけではなくて法的な不確実性がある場合には,実務というのはそのリスクをとるかどうかというのに当たって,例えば弁護士の方のオピニオンをとるとか,そういうことがあってリスクが顕在化しますと,やはり問題だと考えれば,そこにいろいろな意味でのコストが発生するというふうに通常は言うんですけれども,この分野では非常に不思議なことに法的なルールがそんなどこの法律が適用になるか分からない状況でよく担保取引や譲渡取引が行えますねと言うと,余りにも分からないので,オピニオンもとらないから一銭も掛かっていないということをあるところで聞いたんです。これはルールが明確になると,今度はその解釈を巡ってオピニオンをもらわなければいけないのでかえって費用が掛かるという笑い話みたいな話なんですけれども,そのころは私も--今もそうなんですけれども--実務の実態は全然知らないんですけれども,そういうものかなと思って,日本の国内の金融機関や証券会社もそうですけれども,東京在住の外国の金融機関の方々の話を聞いたりもしていた時期もあるんですけれども,いずれにしても考え方としては私は○○委員のおっしゃるとおりだと思うんですけれども,どうも実務界からやはり今,何だかわけが分からない状態は困るという声が上がらないものですから,私などが例えば音頭をとって,おかしいのではないか,明確にした方がいいのではないかと言うのもちょっとどうかなという気持ちでいるということですので,したがいまして,ヨーロッパの状況というのは確かに○○幹事がおっしゃったようによく見えないし,現在分からないんですけれども,今まで申し上げたことの繰り返し,先ほど申し上げたようなことなんですけれども,おそらく取りまとめとしては,ついでに感想を申させていただいているんですけれども,こういう文書になるんだと思うんですけれども,○○委員のおっしゃったようなことは多分異論はないと思うんです。ですから,それはこの部会ではそういうことであったというのは多分このままでも議事録から通じるのかなというふうに私は期待はしております。   ちょっと長くなってすみません。   以上です。 ● どうもありがとうございました。   今の○○委員のお話に対しまして何か御意見なり御質問はございますか。 ● 今の○○委員が最後におっしゃられた部分なんですけれども,これは○○委員が先ほど御発言された解釈論として,法の適用に関する通則法13条のルールではなくて仮に券面が発行されている場合でも,券面の所在地ではなくて間接保有の状態になっているときは口座管理契約で定められた契約準拠法であるとか,あるいは口座管理機関の所在地法という解釈になるのではないかという意見が相当多かったというようなことを盛り込んではどうかという御発言についてのものだったように理解したんですけれども,私はそこまで皆さんの議論が一致していたというふうには認識はしていないんですけれども。 ● すみません,ちょっと私の○○委員に賛成しますという意味は,今の点についてはこの部会では議論していないと思うんです。ですから,そうではなくて,しばらく日本が今のままで行きますというメッセージではないのではないかという趣旨,どういう意味で賛成したというか,つまり,どういうことかというと,必ずしも今の日本の法の適用に関する通則法でしばらく行くということになったとしても,その通則法は全く分かりませんということではないのではないか。   それから,常に券面を探して券面の所在地ということでもないでしょう。券面がない場合もあるわけですけれども。その場合には,法の適用に関する通則法のやはり妥当な解釈ということを考えて,実態に合った形式的な解釈ではなくてという表現がいいかどうかは分からないんですけれども,そういう工夫が必要でしょうという,そういうメッセージだと思いました。特定の解釈論なり,何か確かにここで議論していませんし,ひょっとすると部会の管轄ではないかとは思うんですけれども,ただ,今回,この今おまとめになっているようなことでまとめられることはこういうことかなと,繰り返しになりますけれども思うんですけれども,ではそれまでというか将来ルールが変わり得るときが来るまでの間,今のままかといえば分からないままですというのではなくて,やはりその間努力,解釈論としての努力が必要ではないでしょうかということなのかなというふうに私は理解しました。 ● ありがとうございました。   ○○委員,何か御意見ありますか。 ● 私もよく分からないんですけれども,ただいま法の適用に関する通則法の解釈ということをおっしゃったわけですけれども,通則法の解釈として言えば,今までは物権の問題ということで処理する方向で進んでおりますけれども,この問題は新しい問題なので法規欠缺ということで条理による。ただ,問題は条理によってこの条約の内容と同じようなことが解釈として導き出せるかというと,これはかなり苦しいのではないかと思いますので,やはり何らかの手当てがいずれ必要になるのではないか。ですから,アメリカとヨーロッパが両方とも批准すれば,これは日本も批准するというそういう方向はよろしいんですが,それがされないということが分かった時点でどう対応するかということもちょっと視野に入れて考えていただいた方がいいのではないか。そうでないと,今のままの状態がずっと続くわけですから,その辺を少し,諮問事項とはちょっと違うんですけれども,その辺の見通しも考えていただいた方がいいのではないかという気はいたします。 ● ○○委員の御指摘は誠にごもっともと思って伺ったんですけれども,この原案を作成しました担当者としては,ヨーロッパでの検討が非常に遅れてはいるんですけれども,この条約に加入するという意見の方がなお多数派であるというふうに承っているものですから,時間は掛かってもいつかはそういう方向に動くときが来るのではないかと,そのときに日本だけが遅れるようなことはあってはならないという,そういうメッセージを込めたつもりでございます。ですから,未来永劫この条約が日の目を見なくなるというふうには考えていなかったものですから,その場合のことについては何も書いていないんですけれども,万々が一そういうことになったときには考えなければいけないというのはおっしゃるとおりだと思います。   それで,実は法の適用に関する通則法をおつくりいただいたときも○○委員に部会長をお務めいただいて,法制審議会を始める前には○○委員に座長を務めていただいた研究会で御議論をいただいたわけですけれども,そのときに,先ほど○○委員自身が一部御紹介いただきましたけれども,非常に多くの項目について明確な準拠法を定めると,赤か青かをはっきりさせるという方向の研究会の報告書をおまとめいただいたんですけれども,それは部会での慎重な御審議の結果,時期尚早とか実務上の必要性が余り実務界から認められなかったとか,いろいろな理由があったと思いますけれども,立法されたものは一部にとどまったということもあり,また,将来,積み残しにしたものをどうするのかということを考えなければいけない時期が来ると思うんです。   そのときになっても,なおこの条約が発効していないというようなことになれば,またそのときに一緒にまとめてほかの懸案事項と一緒に検討するというようなことも十分考えられるのかなというふうに個人的には思っております。 ● それともう一つは,これはアメリカとヨーロッパが両方とも入ればということでございますけれども,どちらかが入らなかった状態のときはどういうふうにお考えなんでしょうね。 ● ですから,先ほど申しましたようにアメリカも入る手続の作業は始めているということですので,大統領選があるようですからそれでどうなるのかというのはちょっとよく分からないところがありますけれども,入る方向だと。ヨーロッパも入る方が多数ということですから,どちらかが入らないままになるということはないものと思っているんですけれども,ただその時期が分からないというだけのことでございます。 ● 要は,現状がどの程度続くかということだろうと思うんですけれども。 ● それが分かっておればもうちょっと明瞭な報告をおまとめいただくことができたんですけれども,このままの状態でヨーロッパの状況を待っていても,ヨーロッパでどんな議論がされているのかすら秘密でやっているからということで教えてもらえないという状況ですので,このまま待っていてもしようがないのかなということで,こういう形でいったんはお取りまとめいただきたいというふうに考えたわけでございます。 ● ○○委員,よろしゅうございますでしょうか。この報告案の内容に付け加えるべきことがございましたら具体的におっしゃっていただきたいと思いますけれども。 ● 書きにくいですね。 ● それでは,少し休憩をとらせていただきまして,その間にまたお考えいただければと思います。では休憩させていただきます。よろしくお願いします。           (休     憩) ● それでは再開したいと思います。   では引き続きまして,この報告案についての御意見を伺いたいと思いますが何かございますでしょうか。 ● 二,三ちょっと申し上げたいのですけれども,この案の4ページの(1)の最後「また」のところで,実際の実施の方法が書かれておりますが,これについてはもう少し具体的にどういう形になるのかなというのがちょっと分からない点であるのが一つと,それからもう一つ,条約をそのまま適用するにしろ立法にするにしろ,この条文が非常に分かりにくいといいますか理解しにくい。今回も実務の先生方の御指導でやっと追い付いてきたというような感じなんでございますが,これをそのまま,例えば条約をそのまま適用するときにExplanatory Reportがありますよということでそのまま放り出していいんだろうかと,一般国民に分かるんだろうか,あるいはそういう観点から何か対処しないでいいんだろうかという点がちょっと気になるところで,それからもう一つは,今回,合意でどこの国の準拠法でも選択できるんですけれども,その辺のおじさんおばさんがよく分からずに契約を結んだときに外国に連れていかれてしまうようなことを防止するような,言わば消費者保護的な観点をある程度警鐘を鳴らさないでいいのかどうかと,そういうような点が多少気になりまして,あるいは報告案に反映されるのもいいのではないかという感じがございます。 ● まず,この4ページの(2)に入る前の段落の部分ですけれども,これはこの条約は自動執行力のある条約なので,国内法をつくらなくても条約を批准するだけで国内法的効力を持たせることが可能であるということを書いているだけでございまして,ですから国内法を整備する必要はないという書き方にしているのは,そういう意味でございます。ですから,自動執行力のある条約を批准する場合であっても,なお国内法をつくった例もございますので,そうするかどうかはメリット,デメリットを両方考えなければならないと思います。   確かにこの条約は,分かりにくいものであることはおっしゃるとおりかと思いますけれども,そうかといって,仮に国内法をつくるとしますと,日本の法制執務に従って,全く違う表現になってしまって,この条約と同じ内容のものであるのかどうか,一見すると全然分からないという,国内法をつくったときにしばしば問題とされる--例えば国際海上物品運送法などについてそういう問題が起きているわけですけれども--そういう事態になることは必至でありますので,それは絶対法制執務上避けられないので,それとどちらがいいかということを具体的に批准する段階でまた考えることになるのだと思います。   それから,消費者保護の関係ですけれども,裁判管轄はまた別の問題ですので準拠法だけの問題ではありますけれども,少なくともこの部会で御議論がありましたように日本のCSD,保管振替機構さんなり日本銀行さんなりに入って,その下にぶら下がっていく分には全部日本法になるようにしない限りは口座管理機関にさせないというルールになっていますので,その点は確保されるんだろうと思います。   問題は,管理機関にならない外国のグローバル・カストディアンに直接口座を開くというか,取引きをするという場合ですけれども,その場合には行政指導などもしようがないことにはなりますけれども,そういう外国のグローバル・カストディアンに直接口座を開かれるような方というのは本当に素人なのかということもあろうかと思いますけれども,いずれにしてもこの条約がどういう内容のものかということは,条約を批准する場合には広報とかをしなければならないんだろうと思っております。   以上です。 ● ○○委員,よろしゅうございますでしょうか。 ● 直接適用の場合,例えばこういう例はほかにはどんなものがございますでしょうか。こういう実体法的なもので。 ● 著名なもので,これは実体法ではなくて準拠法でございますが,準拠法条約でも国内法をつくらなかった例がございます。   それから,実体法に関するものとしては航空機に関する,いわゆるモントリオール条約などが直接適用でやっています。それから,これはまだこれからのことですけれども,来年の通常国会に国連国際物品売買条約の批准案件を出す予定にしていますけれども,これは国内法は整備しないということで,条約の直接適用によるという方向で政府部内で検討をしておるところでございます。 ● ちょっと技術的でよく分からないんですが,例えば法律の場合は施行日を決めてそこから出発するんですけれども,直接適用のときは批准した途端に効力が発生するんですか。どういうタイミングで,業界や何かはどうやって準備させたらよろしいんでしょうか。 ● 日本に効力を発生する日のことは条約自体に規定がございまして,もちろん発効要件というのがありますから発効要件を満たしていなければならないわけですけれども,19条でございまして,まず3か国が批准しなければならないというのが1項で,2項で3か国が批准した後に仮に日本が批准する場合は,批准書を寄託してから3か月が経過した日の翌日に,日本について効力が生ずるということになります。 ● そうすると,対金融機関向けの準備その他からいうと,寄託のタイミングをうまく調整して事前にいろいろお知らせをしておくという感じなんですか。 ● おそらくそういうことになるんだろうと思います。 ● この場合の月の初日というのは日本時間の,例えば1月1日ですと日本時間から来るわけでしょうか。 ● ちょっと外務省の方が今日はお見えでないのでそこまでは。   分かりますか。 ● 具体的に時までは決めておりませんが,ちょっと具体的に時間というのが分かりません。 ● よろしゅうございますか。 ● うまく着地できることで一応……。 ● ほかに何か御意見ございませんでしょうか。 ● それから,趣旨の徹底とか解釈ですけれども,Explanatory Reportは日本語版が何らかの形で配布されるような形になるんでしょうか。 ● 日本語版を公表するということは現時点では考えておりません。これまで条約を批准したときもいろいろなExplanatory Reportがあるものもあると思うんですけれども,それは必ずしも日本語版を公表したりしているというわけではないと思いますけれども,ですから今後どうするかということは本当に批准することになったときにまた考えたいと思います。 ● よろしゅうございますか。   ほかに何か御意見ございませんでしょうか。 ● 実務界の立場といいますか,実務界としては先ほど○○委員がおっしゃったように,余りリスクの問題については証券界だけに限らず金融界全般が余り意識はしていなかったというのはまず正直なところだと思います。   ○○委員が先ほど笑い話として,分かっていないとか何が分からないかも分からないという状況だというお話だったと思いますけれども,笑い話というふうにおっしゃいましたけれども,我々としてはむしろおしかりの言葉ではないかなというふうに理解しておりまして,3年前にこの部会でヘーグ条約が固まりましたというところから日証協の方で○○委員に何回か講演もしていただいて,説明会もあり,議論も若干させていただいたことがございます。そのときにいろいろと,何がよくなるというところは,そこは共通認識がありまして,これは最後の報告書にも書かれておりますけれども,法的な予見可能性といいますか,法的安定性が高まるというところにつきましては各日証協のメンバーも認識はしており,この条約を批准することによるメリットというものは,一応認識はしたという状況だと思います。   ただし,それでもクリアにならない問題というのは多分実務,相当実践もありますのでかなりあるんだと思っておりまして,それについてリスクの所在といいますか,リスクがあることについては,そのときは若干は認識したのかなと思います。それからもう既に3年たっておりますので,議論も広まっていないという状況ですので,また多分おそらく忘れてしまっているのかなという状況ですので,やはりどこかで常にリマインドといいますか,今回この部会がある意味終わるに当たって,また改めて一回はレビューをするとか議論の場は必要かなとも思っております。   それと,あと日証協の方でも昨年あるいは今年と,協会のモデル約款,外国証券約款書のモデル約款を一応改正するに当たってはヘーグ条約をある意味意識して,準拠法をそこに入れ込むというようなことも一応やりましたというところでございますので,全くこの部会の議論が無駄ではなかったのかなというふうには理解しています。そのように,そうはいっても引き続きこの問題について我々の理解が足りないという点はもう十分反省すべきだと思いますので,証券取引,特にグローバルな証券取引における法的リスクの問題については引き続き我々もウォッチしていかなければいけないのかなというふうに思っております。 ● どうもありがとうございました。   そのほかにございませんでしょうか。 ● 内容のことではなくて,言葉づかいとかそういう細かなことでもよろしゅうございますでしょうか。 ● はい。どうぞ。 ● ちょっと二か所小さな点で気になる表現があり,また大きく言えばもう一つあるんですが,まず小さい方から申しますと,3ページの下から6行目から7行目にかけてですが,「のみだったりしている」という表現ですが,諮問に答える答申としては余りに口語的ではないかなと思います。ですから,そこをもし直すとすれば「だけの場合もある」というふうにして,しかしそこを変えると上の行も少し変えなければいけなくて「預託されたりしており,また,そもそも券面が発行されずに」とか何とかというふうにした方がおさまりがいいのではないかと思います。   もう一点,4ページの下から10行目で「条約自体で書き切られており」というのも口語では最近聞く表現ではございますが,どうでしょうか。しばらく昔なら言わない表現ではないかと思うので「条約自体ですべて規定されており」とか,何かもう少し格調の高い文章がいいのではないかなと思います。   それから最後に,これはそもそも論なのでちょっと今の段になって言うのはどうかと思うんですが,条約の"held"というのを「保有」と訳していて,口座管理機関によって保有されるということですが,保有というのが所有権をあらわしていない意味で使われていると思うんですけれども,ただ一般的にはもう少し,保有というと所有権まで意味しているようにも受け取られかねなくて,日本の「保管」という言葉とは違うんでしょうか。それが特に気になったのは,間接保有証券条約と短縮形で言っているときの保有は,口座の名義人が間接的に保有しているという意味で使っているのではないかと思うんですけれども,それを口座管理機関が保有と言ってしまうと,それは間接保有というときの保有とは何か使い方が違うのではないかなと思うので,そこのあたりの使い方を少し整理していただいて,短縮形を使わないということならいいんですけれども,部会の名前が間接保有証券部会ですよね。条約には出てこない表現なのかもしれませんが,多分その表現,私のちょっと思い違いかもしれませんけれども,最後のところは説明をはっきりさせていただけるとありがたいと思います。 ● 確かに間接保有証券準拠法条約というときの「保有」という意味と,ここでの"held"の訳としての「保有」というのは意味が違うというのは○○委員がおっしゃるとおりだと今お聞きしていて思いました。ただ,ここで保有という言葉の訳語を使いましたのは,御承知のとおりこの条約の対象となっている証券というのは,券面が発行されてどこかに預託されている場合と券面がそもそも発行されない場合の両方があるわけです。券面が発行されている場合でしたら保管という言葉があるいはいいのかもしれないんですけれども,無券面のものもこの条約の対象になっているものですから,"held"を保管というと券が発行されていない場合は含まないようなニュアンスになってしまう。それで保有の方がいいのではないかなというふうに当時も考えましたし,今でもなおそう思ってはおります。   条約を批准する場合の訳は外務省と内閣法制局とが相談してお決めいただくことになりますので,そのときにまた多分検討されることになると思いますけども,とりあえずその"held"の訳として現時点の仮訳では「保有」のままでさせていただければと思います。 ● その点は了解しました。先ほど申しました最初の細かな点は,最終的にはドラフティングにお任せいたしますので,意見として申し上げました。 ● ほかにございますか。   どうぞ。 ● 書き振りの問題なんですけれども,アメリカ合衆国とヨーロッパ連合の双方が本条約を批准するという場合というのが最後に出てくるわけですが,その前にアメリカ合衆国については何も書いていなくて,ヨーロッパについては批准に根強い反対があって見通しが立っていないというふうに書いてあって,少しは何か明るい側面も書いた方がいいのではないかということで,例えばアメリカ合衆国では批准の方向で検討しているとかそういうのがあれば。確かに5ページの1行目のところに「両国においても批准には至っていない」というふうに書いてありますが,それは事実だろうと思いますけれども,これでは余りにも暗過ぎるというか。 ● 今の点ですけれども,4ページの一番最後の行に「アメリカ合衆国とスイスの2か国が署名したのみであり」ということで,アメリカは署名はしたんだということを書いておりますけれども。 ● 最後は批准が問題になっておりますので。 ● ただ,批准の作業はどのくらい進んでいるかがよく分からないんです。 ● そうですか。 ● よろしいでしょうか。   何かもう少し具体的にどう書きましたらよろしいかということを,先ほどの○○委員のように細かい点でも結構でございますが。 ● 批准の方向かどうかが分からないと書けないかもしれませんね。署名したのみでありということで,それなりに積極的な姿勢をアメリカが示したんだけれどもという,それ以上のところは難しいですね。   ただ,両方とも批准する見通しが全然何もない。両方が批准したらというふうに書くのは,何となくちょっと。 ● アメリカとスイスについては,批准に向けた作業に取り掛かっているというふうには聞いているんですけども,まだ議会にその批准案件が出たのかどうかとか,そういうところが分からないということでございます。署名したということは批准の意思を表示したということですので,この署名は批准のための署名をしたという意味ですから。 ● ○○委員,何かいい文言がございましたら教えていただきたいのですが。 ● しかし,これは伝聞的に書くより仕方がないですね。確たる証拠がないと書きにくいんですけれども,ただ一方だけは非常に強い調子で批准が難しいみたいに書いてあるので,ちょっと印象としては非常に難しいのかなということになるものですから,ちょっとその辺,何かいい書き振りは。 ● ただ,アメリカ合衆国の批准への動向もここへ加えますか,最後の3のところに。 ● それは分かっているのであれば。 ● 分かっても,それはちょっと書けないと思いますけれども。   よろしいでしょうか。ほかに御意見ございませんでしょうか。   今回が最後の部会でございますのでどうぞ。 ● 一番最初のころに,どういう順番で批准するのか云々という議論があって,ここの文面では常にアメリカとヨーロッパの後というふうに書いてあるかのように思いますけれども,もっとフレキシビリティを設けて,日本が入ることによってヨーロッパを引っ張っていくというようなものも,ストーリーとしては今後の展開であってもいいような感じもしますので,ここのところは常にアメリカとヨーロッパの後とまでは書く必要がなくて,タイムリーに批准することというようなフレキシビリティのある書き方でもいいのではないかという感じはします。 ● この(3)の部分である程度のフレキシビリティを持たせたつもりでございます。「ヨーロッパ連合における検討の帰趨を見極めた上で」というのはヨーロッパが批准した後という意味ではありませんで,もう批准することが確実になった状況の下で日本の方が先に批准するということはあるという意味で,「適切と考えられる時期に」という表現にしているわけでございます。ですから,ヨーロッパとアメリカの両方が批准書を寄託した後というふうに書こうと思えば書けたんですけれども,そうはしなかったのは多少のフレキシビリティを持たせるためでございます。 ● よろしゅうございますでしょうか。前回もちょっとそういった議論があったように記憶しておりますが。よろしいでしょうか。 ● 具体的な表現はお任せしますけれども。 ● ほかにございますでしょうか。   よろしゅうございますか。ほかに御意見がないようでございますので,本日,御議論いただきましたことを踏まえまして,一応内容としては原案どおりに報告案をまとめるということでよろしゅうございますでしょうか。   よろしゅうございますか。ではそのように決定いたします。   今の御議論にもありましたけれども,報告案の字句等につきましては提出する前に最終的なチェックを行いたいと思いますので,内容の変更にわたらない範囲内で事務当局と私にお任せいただきたいと思います。   よろしゅうございますでしょうか。   では,ここで○○委員からごあいさつがございます。 ● ○○でございます。一言ごあいさつを。   諮問57号に関する審議結果報告案をお取りまとめいただきましてありがとうございました。この第1回会議がちょうど平成14年7月でございます。実に5年間にわたりまして,延べの回数は21回,熱心な御審議を続けていただきまして本当にありがとうございました。そのお陰をもちまして,条約の採択に至るまでの過程におきましては我が国政府として充実した意見を提出することができまして,その意見が外交会議に,我が国の代表として御出席いただいた○○委員と,それから○○幹事を通じて存分に展開されまして,その多くは本条約に反映されていると,このように承知しております。   また,本条約が採択された後は条約の解釈において重要な役割を果たすこととなるExplanatory Reportの内容についても御検討いただいて,その結果をraporateurのお一人に就任された○○委員を通じまして,Explanatory Reportに盛り込むことができたと理解しております。さらに,それが完成した後は,この批准の要否につきましてさまざまな具体的事例に即した実証的かつ網羅的な検討をしていただきました。以上の経過をたどって本日の報告案の取りまとめに至ったわけでありまして,部会長を初めといたしまして委員,幹事の皆様方の御尽力に厚く御礼を申し上げる次第であります。   最後に話題になっておりましたが,本条約につきましてはヘーグ国際私法会議の歴史上例がないほど迅速に採択されたと。それほど手続が早く進んだので,当初は署名をしたアメリカだけではなくてEUも迅速な批准に動くのではないかと予測されたと,こういうことであります。しかしながら,予期に反しまして,ヨーロッパ内部での検討作業が停滞してしまったと。今は先行きが見通せない現状だということでございます。   私どもといたしましては,本日お取りまとめをいただいた審議結果を踏まえまして,外務省を初めとする関係省庁と十分な連携を取り,ヨーロッパやアメリカの動向をしっかりと観察して,時期に後れることなく批准の作業を行うようにしていきたいと,このように考えております。   これまでの長期間かつ長時間にわたる熱心な充実した御議論に,改めて厚く御礼を申し上げまして私のごあいさつといたします。本当に御苦労さまでございました。   ありがとうございました。 ● それでは,私からも一言ごあいさつ申し上げたいと思います。   もう既に○○委員がいろいろおっしゃいましたのでそれほど付け加えることもございませんが,先ほど○○委員からのお話にありましたように,既に5年有余の長きにわたりまして,21回の会議を重ねてまいりました。この間,委員,幹事の皆様には御多忙の中,御出席いただき,熱心に御審議いただきましてありがとうございました。厚く御礼申し上げます。   特に,先ほどの○○委員のごあいさつにもありましたようにraporateurのお一人でいらっしゃる○○委員には毎回欠かさず御出席いただきました。そして,同委員からは本条約に関するさまざまな論点につき,明快な御説明をいただいたほか,本条約と国内法との関係で議論が紛糾した折りなどにも適切なアドバイスや貴重な御意見をちょうだいいたしました。ここに厚く御礼申し上げます。   また,○○委員とともに特別委員会及び外交会議に御出席の○○幹事には条約の内容について御報告をいただいたほかに,会議の雰囲気などもお伝えいただきました。これが審議の参考になったと思っております。   さて,日本がこの条約を批准する場合には,申し上げるまでもなく実務の実情の把握が不可欠でございます。実務の側から御出席の委員の方々からは,貴重な資料や情報の御提供とともに実務の実態についていろいろ御教示を賜りました。ありがとうございました。中でも○○委員には大変な骨折りをお願いいたしまして,部会資料22の国内証券会社における外国証券取扱いの概念図――これは色刷りのでございますが,(例)と書いておりますが――を作成していただきました。この8ページに及ぶ色刷りの資料に基づきまして,第9回会議から第19回会議の前半まで実に活発な議論が展開されました。議長の不手際もございましたが,議論が白熱して時間切れになってしまったこともしばしばでございました。このことは皆様の御記憶に新しいと思います。このような貴重な資料をおつくりいただいた○○委員に改めて心より厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。   また,事務局の方々,特に○○幹事は毎回会議のために周到な準備をしてくださいましたほか,非力な部会長をさまざまな面で終始お支えいただきまして,深く感謝申し上げます。   最後に,委員,幹事の皆様が万事不行き届きの部会長に長い間御協力くださいましたことに対して心より御礼申し上げ,私のごあいさつといたします。どうもありがとうございました。   それでは,何か続けて言うのはおかしいんですけれども,今後の問題につきまして,日程について事務当局に説明していただきます。 ● 報告案をお取りまとめいただきありがとうございました。これで当部会の審議はすべて終了ということになります。5年間にわたり本当にありがとうございました。この後でございますが,法制審議会総会が来年の2月に開催の予定でございまして,部会長に総会で御報告をしていただくことになります。そして,この報告案を総会で御議論いただきまして,御答申をいただくと,こういう運びでございます。   以上でございます。どうもありがとうございました。 ● それでは,これをもちまして当部会の審議を終了することにいたします。   どうも長い間本当にありがとうございました。 -了-