法制審議会保険法部会 第21回会議 議事録 第1 日 時  平成19年12月12日(水) 自 午後1時32分                        至 午後5時57分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題 保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                   議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会第21回会議を開催させていただきます。   最初に配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 配布資料は,事前に送付いたしました保険法部会資料23と,本日席上に配布いたしました保険法部会資料24の二点でございます。 ● よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思います。本日からこの要綱案の第1次案の審議という段階に至っております。よろしくお願いいたします。   まず,保険法部会資料23,「保険法の見直しに関する要綱案(第1次案・上)」の1頁,「第1 損害保険契約に関する事項」の「1 損害保険契約の成立」と,この資料の5頁になりますが,「2 損害保険契約の変動」について御審議いただくこととしたいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   まず,(前注)1に書きましたように,各項目について第四読会での審議の結果などを踏まえ,中間試案から変更している箇所が多々ございます。これらについては必要に応じて,その理由などについて注として記載をしておりますが,このような説明的な注は部会の今回のこの御審議のために記載をしているものでございまして,最終的な要綱案ではこのような説明的な注は削除することになるというふうに御留意いただければと思っております。また,中間試案にありました説明的な注のうち,既に削除しているものがございますけれども,削除したからといって従前の考え方を変更するものではございません。また,(前注)3の片面的強行規定の対象となる保険契約については,本日,席上に資料を配布しておりますので,その内容については後ほど御説明いたします。   続きまして,第1の1の損害保険契約の成立の部分でございますが,以下,第四読会において取り上げた項目については,第四読会での提案からの変更点を中心に御説明をし,第四読会において取り上げていない項目につきましては,中間試案からの変更点を中心に御説明いたします。   まず,(3)の告知義務のアの(注1)でございますけれども,ここでは現行商法と同じく契約の更新については個々の規定の解釈や契約上の定めにゆだねることとしております。   また,イにつきましては基本的に第四読会での提案どおりでございますけれども,第19回会議におきまして,保険募集人等が必ずしも個々の事実を認識せずに不告知を勧めたケースについても,契約の解除を認めるべきではない場合があるという御指摘がされましたことを踏まえ,修正をしております。   続きまして,ウにつきましては規律の内容が中間試案と同じでございまして,また,注で強行規定とすることを提案してございます。この点につきまして実務上,責任開始から2年以内に保険事故が発生しなかった場合には,契約の解除をしない旨の約定がされることがございますけれども,このような約定を否定する趣旨ではございません。   続きまして,エでは中間試案のA案を採用してございますけれども,その理由につきましては(注1)に記載したとおりでございます。いわゆる因果関係不存在の特則の証明責任の所在につきましては,ここの記載が若干不明確でございますけれども,第四読会での審議を踏まえ,保険契約者側にあるという現行商法の実質は変更しないことを提案してございます。また,(注2)では既に御議論いただいたところを踏まえ,因果関係不存在の場合の特則を含めて,エの規律を片面的強行規定とすることを提案してございます。   続きまして,(5)の遡及保険についてですけれども,遡及保険につきまして無効とされる場合を資料では記載をしてございます。まず,①では保険契約者が契約の申込みをした場合だけでなく,その承諾を保険契約者がした場合をも念頭に置いた記載をしていることが中間試案との変更点でございますけれども,その規律の実質的な内容につきましては変更はございません。また,②では保険者が申込みをした場合に,保険者側の主観的な事情によって遡及条項が無効とされる場合を規定したものでございまして,保険者が保険事故の不発生を知りながら保険契約の申込みをした場合に,保険料を取得するのは不当であることから,これを無効とすることとしております。以上の①及び②の規律によることとすれば,実務上,生命保険契約等において見られる責任遡及条項が無効となることはないと考えてございます。   次の(6)では,保険契約の無効又は取消しによる保険料の返還義務を負わない場合を掲げております。これはモラルリスクを防止するなどという趣旨から,民法の不当利得の特則を設けるものでございますけれども,保険料返還義務を負わない場合を限定列挙することとしておりますことから,(ア)に詐欺のほかに脅迫を追加しております。   最後の(7)では,書面を交付しなければならないとの記載に改めておりますが,実務上,保険証券や共済証書というネーミングを用いることを否定する趣旨ではございません。   続きまして,2の損害保険契約の変動について御説明いたします。   まず,(1)危険の増加につきましては第四読会での審議を踏まえて検討した結果,本文に記載したような規律とすることでどうかという提案をしてございます。詳しくは(注1)に記載をしておりますが,保険契約者などを保護するという観点から,将来に向かっての契約の解除が可能な場合を二つの場合に限定をしておりまして,まず,一つ目が保険契約者等が故意又は重過失によって遅滞なく通知をしなかった場合と,もう一つがいわゆる引受範囲外の場合,この二つに限定することとしておりまして,そのほか危険の増加に伴う保険料の増額につきましては,約款ベースの規律にゆだねることでどうかという提案をしてございます。   次に,(2)の危険の減少につきましては,危険が著しく減少したときには保険料の減額を請求することができるとすることを提案してございます。これにつきましては(注1)に記載したとおりでございます。   最後の(3)では,①で保険契約締結時の超過保険について提案をし,②で保険契約締結後の保険価額の著しい減少について提案をしております。その内容につきましては(注1)に記載したとおりでございますけれども,まず,①につきましては現行商法とは異なり,保険金額が保険価額を超えていた場合であっても,契約を無効としないということを前提としつつも,他方で保険契約者等が善意無重過失の場合には超過部分の保険料の返還を認めるべきであるという指摘がされておりましたことから,そういった指摘などを踏まえているものでございます。また,②では,ただいま御説明しました保険契約締結時の超過保険について①のような整理をしたことに伴い,保険契約締結後の保険価額の減少につきましては,現行商法第637条の規律を維持することを提案しております。   以上でございます。 ● それでは,項目がかなり多数に上っておりますので,1の成立の問題と2の変動の問題を一応分けて御議論いただこうかと思っております。したがいまして,まず1の損害保険契約の成立の部分全体につきまして,どの点からでも結構でございますので,御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● まず,小さなことといいますか,損害保険契約の意義のところですけれども,これは一応有効要件を定める規定でもあるとされて,損害保険契約の成立要件ですか,偶然性の要件は。そこは強行法規にしなくてもよかったのでしょうか。契約成立時の有効要件を定める規定だという考え方が,通説的なあれだったのではなかったかと思ったのですが,まず,それが一点ですけれども,それから,それで次に告知義務のところですけれども,今のお話だと注は全部削除されるということですね,要綱案になりますと。そうすると,例えば3頁目にある解除の効果のところの(注1)に,「アの『重大な過失』は故意に近似するものである」という指摘等の,このあたりの記述もなくなってしまうということなのでしょうか。要するにこの部分,プロラタを採用しないということになりましたから,できればこの「重大な過失」は故意に近いものに,その代わりといっては何ですが,お願いしたいと申し上げたのですが,こういうのが残るのであれば立法事実として,つまり法文上,それがなかなか書けないということであれば,立法事実としてそういう点を配慮していただくという形になるのかなと思ったのですが,今の御説明だとちょっとそれが全部消えてしまって,でも,議事録で皆さんが合意していただくということであれば構わないのですが,その点がちょっと。だから,質問をこういうふうに変えたらよろしいのでしょうね,つくっていただいた御趣旨としては故意に近似するものにすると,立法事実としてそうするという趣旨でやっていただいたのでしょうかというのが二番目の趣旨です。   それから,解除は遡及効ではないと,将来効ということなのですけれども,規定の仕方としてはてん補する責任を負わないという形になっているわけですね。多分,これはあれですか,後の危険の増加のところにも関係しますが,将来効にしておいて法文の法律効果として契約時から解除したときまでの間の免責にすると,多分,そういう考え方に立っているのだと思うのですが,そうだとすれば,何かもうちょっとそこは分かるような書き方をした方がいいのではないかなという感じがしております。   それから,あと危険の増加は後でしたね。とりあえず,そんなところです。 ● 御指摘いただきましたうち,分かりやすいところからいきますと,注が消えるのかという質問については冒頭の事務当局説明で申し上げましたとおり,最終的な部会でおまとめいただく要綱案は,その後,法制審議会の総会で要綱として答申していただくものの案ということになりますので,そこにコンメンタール的な注みたいなものは,基本的に入らないということで整理をしたいと考えております。ただ,その中でも現行商法の改正という改正の要綱ということにもなりますので,注のうち現行商法には規定があるにもかかわらず,その実質を引き継がずに,言ってみれば実質的に削除するということを指している注については,改正の一内容という見方もできると思いますので,そこは対外的な分かりやすさから最終的に残すということも視野には入れてございますが,いずれにしましても説明的な注については,最終的な要綱の姿には入らないということになるかと思います。   今,○○委員がおっしゃる立法事実ということにつきましては,ここでもろもろ審議されたということがすべて立法事実というか,立法過程における経緯ということになるかと思いますので,それはもう議事録その他の形ですべて残るというように,こちらとしては理解しているところでございます。   それから,一点目と三点目の御指摘はいずれも規定振りといいますか,書き振りに関係するところだろうと思いますけれども,まず,全体としまして今回の資料,第1次案をつくる方針としまして,この段階でこちらが今イメージしている条文の姿をお出しすることも検討したのですけれども,そうしますと中間試案と実質違う提案をこの第1次案でしているのか,それとも同じ提案をしているけれども書き振りを変えただけということなのかが委員,幹事の皆様に伝わりにくいのではないかとこちらとしては考えまして,書き振りは今,るる検討しているところでございますけれども,今回,この第1次案で御提案する際には,実質が中間試案のままのところは極力中間試案の表現のままにすることによって,そこは中間試案までの御審議で大体方向性を出していただいた実質を,そのまま最終的な要綱にも反映させる方向で考えているということで御提案をさせていただこうと,それがより伝わりやすいようにという形で考えておりまして,三点目に御指摘いただきました解除を将来効としながら,解除によっててん補責任を負わなくなるというのは一体どう表現するのかといったあたりは,まさに○○委員がおっしゃったような形で,規定としては書くことになるのではないかと考えているところでございまして,そのあたりは第2次案をお示しする際に,今回と次回で大体その実質的な方向性をお決めいただいたところで,それを規定振りにすると,こういう書き振りになるのではないかということは,まとめて第2次案のところでお示しさせていただこうかなという方針で資料を作成してございますので,そのように御理解をいただければと思います。   一点目の意義の点ですが,ここもそういう書き振りという意味では,この1頁の(1)のとおりの表現で条文になるかどうかというのは,法制的な面も含めて検討させていただきたいと思いますが,ここは今申し上げたような趣旨で中間試案と表現を変えないということ,それから,この表現自体がもともと現在の民法が売買その他の典型契約で使っている表現をそのまま使っている,どういう契約を損害保険契約と呼ぶかということを表現するために,この言葉を使っているということでございまして,ここに注で強行規定とも何とも付さなかったのは,最終的には恐らく法律の中で損害保険契約とはこういうものを言うみたいな書き方にきっとなるだろうと,それは強行規定とかなんとかという世界の話以前の世界のことなのかなという思いもございまして,特に注を付していないということでございます。 ● ありがとうございました。では,できるだけ注にもし入れられるのであれば,重大な事実は故意に近似するというのを可能であれば残していただきたいということだけお願いして,あと一点,大事なことを一つ忘れていまして,これも中間試案のときにお願いしたのですが,告知の対象を契約者が知っているすべての事実に限るというところは,ここで取り上げられていただかなくて,でも,これはとても重要なところだと思うのですけれども,例えば一つこれもプロラタの問題とも関係いたしますが,こう起こして,それを入れていただくと。企業保険の場合は重要事項の告知義務を課すのは全然問題ないと思うのですが,消費者保険については知っているものだけを告知すればいいというふうにするというのは,是非お願いしたいのですけれども。   それとあと一点,4頁の損害保険契約の無効・取消しによる保険料の返還のところで,私は正直言ってよく分からない部分が多いのですけれども,ただ,一点,問題は今ある約款で要するに重過失のときに保険料を返還しないと。あくまでもこれも企業物件ではなくて消費者約款で,その規定はこの新しい案でどうなるのかというと,それは有効だというふうになるのだと思うのです。それで,具体的にそうなる場合はどういう場合かと考えると,知らない間にどこか離れたところにある別荘の家がログハウスで全部解体して持っていかれたとか,何かそんな特殊な教室設例のようなものしかないのかなと。そうすると,しようがないのかなという感じもしているのですけれども,この部分,いま一つ私は納得というか,本当に大丈夫と言い切れる自信がないものですから,窮余の一策ですけれども,○○委員から,こう考えておられるというのが何かもしあれば,聞かせていただければなという,その二点ですね。すべての事実に関するものと保険料の返還の部分ですが。   以上です。 ● あとの二点目の御質問の趣旨は,保険料の返還をする義務を負わない場合が狭過ぎるのではないかという,そういう趣旨ですか。 ● いやいや……そういうことにもなりますかね。 ● 現行の約款だと契約者側に悪意又は重過失があれば,全然返さないという場合もあり得ると。それと比べると詐欺,脅迫……。 ● だから,その部分は問題ないと思うのですけれども,こういう規定ですと,従来,今ある約款で問題かもしれないという約款については,何ら影響を及ぼさない形になりますよね。 ● 影響を及ぼさないと申しますのは。 ● つまり,重過失の場合には返さないという,契約者側に重過失がある無効の場合に保険料を返戻しないというのは厳し過ぎるという意見がここでも大分あったわけで,確か○○委員も御発言されて私もどうかそれは,そういう趣旨なのですが。 ● 分かりました。(6)で書いてある場合以外に返すか返さないかが契約自由になっては問題があると。 ● もうちょっと手を伸ばして,契約者のために消費者約款でやる部分が残っていないのかという疑念がいまだに払拭できないという,そういう趣旨なのです。 ● まさに一言で申し上げますと,下の(注)に片面的強行規定ということで書いてありますので,それがお答えになると。したがって,これにより消費者に不利な約定は無効であるということになります。 ● でも,片面的強行規定の範囲に入ればいいわけですが,範囲外に○○委員がおっしゃった,私も危惧してはいましたが,無効の場合で重過失の場合には保険料を返しませんという規定があって,これは要するにある枠を決めて,その中は片面的強行規定と言っていますが,その外にあるのではないかと,この規定は。そこがちょっと分からないところなのですが。 ● 今,○○委員がおっしゃるとおり,(6)は契約が無効・取消しの場面という意味では枠がはまっているのですけれども,今,おっしゃるのは無効・取消しの場面でないという御趣旨ですか。 ● そうですけれども,どういう関係に……。 ● 無効・取消しの場面については片面的強行規定ですから,この(ア),(イ)の場合は返さなくていいけれども,外は逆に返さなければいけなくて,そこを返さないとしたら約款の効力はこれによって否定されると。 ● そうするとあれですか,今,例えば火災保険約款なんかでは重過失の場合も返さないという場合があるとなっていますが,そこは無効になるところで,そういう理解ですか。私はよく能力が足りないので分からないので,今ある約款がこの規定ができたことによって,どういう影響を受けるかがよく分からないというところなのです。 ● 約款が無効とされないためには,ここから外れるところは約款を改める必要が出てくるというふうに,こちらとしては理解しております。 ● (6)の見出しは無効というのが出てくるけれども,本文には何もそれが出てこないので,ちょっとそう読めるのかねという御疑問だろうと思うのですね。趣旨は無効・取消しの場合一般をカバーしているという,そういう趣旨でいいわけですね。 ● 火災保険の普通保険約款の第14条なんかでは無効があって重過失があると,だから建物が密室で知らなかったというか,いろんなちょっと普通ではない無効事由がありますよね,保険で。それに対して知らなかったことに重過失があると返ってこないというルールになっていて,そのルールにこの規定が影響を及ぼすというふうに読みたいわけですが,なかなかどう読むのかなというのが恥ずかしい,私が能力が足りないのかもしれませんが。 ● 御指摘の御趣旨がようやく分かりました。こちらとしては言っているつもりだったのですが,そこがもしちょっと疑義があるとすれば,そこは書き振りの問題として考えたいと思います。ただ,こちらの理解はそもそも保険法に何も規定がなければ民法の不当利得が働くわけですから,民法の不当利得が働く世界は普通は返さなければいけないというのがあると。それを前提に,ここで書いたときは返さなくていいですということになるので……。 ● ありがたいことなのですが,議事録を見ていますと○○委員がこの点について非常に危惧の念を残されておられて,私もそのときは発言していないのですけれども,よく見るとそうで,今ある典型的な約款がどうかと言われてみてこれと突き合わせると,昨日も夜見ていて分からなかったものですから,そういう趣旨なので……。 ● こちらの理解は見出しとそういう意味ではセットで(ア),(イ)を決めるということでございます。 ● それでは,これの最終的に表現をどうするか,誤解がないようにしてもらいたいと思います。   告知義務の方の対象はどうですかね。今,○○委員から知っている事実に限定すべきではないかという御意見ですが,ございましたら。   ○○委員。 ● すみません,先ほどから私の名前が出ておりますので,何か言わなければいけないのかなと思っておりますが,先ほどの件はここの部分は詐欺,脅迫以外のものは無効にならないのだというふうに素直に読みましたので,今,そういう御回答が出たので大変うれしいと思っています。それから,今,○○委員がおっしゃいましたように,知っている事実に限るのだという,そこは言われれば当たり前のことでございまして,知らないことは答えようがございませんので,そこが読めるような文章構成にしていただければ大変助かるなというふうに思っております。 ● 今までそういう御意見が早い段階からあることはあったと思うのですが,今のところ,今日の案に出てこないというのは,特に何かそういう要件を設けることに何か理論的問題があるとか,そういうことがあったのでしたか。 ● 理論的な問題というよりは実質としてどちらが適当かで,こちらとしては引き続き解釈論にゆだねておく方が適当ではないかという考え方で,書いていないということでございます。具体的に知らないものは働かないと明確に書いてしまいますと,知らないようにすれば,ある意味,いいみたいなところがありまして,重過失で知らなくてもいいということですね。それこそこれもまたちょっと例が適切でなければ御訂正いただきたいと思いますが,健康診断を受けて結果はずっと前に届いていたけれども,何か開けるとどうせろくなことが書いていないと,そういうときに,私は知らなかったのだということでいいのかとかいうこととか考えますと,やはり明文で書いてしまうよりも,むしろそこは引き続き解釈の方がというように考えております。 ● ○○委員。 ● 簡単にいたしますが,損保の方はきちんとそれでいいと言っていて,生保は必ずしもはっきりしておられないのですが,少なくとも議事録を見たりしても反対意見はないのですね,ここで出ていないのです,一つも。パブリックコメントを見ましても反対意見はなくて,そうしてほしいという意見は出ているのです。   これは質問に対して答える義務というのとワンセットに考えて,しかし,企業物件とか何かで,自らきちんと調べてもらわなければいけないというのがありますから,やはりいわゆる企業保険的なもので対等の当事者というものはやっていただければいいわけで,あくまで消費者保険で片面的強行法規が適用される世界では,やっても反対論もないのでやっていただきたいと。それがプロラタをあきらめざるを得なかった者にとっては,先ほどの重過失のところとここで,ちょっと飲み込めるのを飲み込んでいきたいという,そういう痛切な願いで,パブリックコメントにあるという点は特に重要だと思いますので,何とか御検討をお願いしたいと思います。 ● ○○委員。 ● そういう意味では○○委員がおっしゃるとおりだと思うのですけれども,ただ,○○幹事がおっしゃっているように,そういう本当に解釈の問題というのが残るのが事実なので,本当に知ろうと思えば知れていたと,人間ドックの結果通知が来ていますと,そのときに申し込んでいましたと,見てしまうと知ってしまったことになりますと。こういうケースまで救うというのはやはりどうかなという部分があるので,その辺の例外だけは極めて例外的な部分だと思うのですけれども,そういう余地はやはり必要ではないかなと思うのですけれども。 ● 本当にそれで見なかったこと,ちょっとよく,今,ぱっと言われたのですが,そういう結論に本当になるのかというのがちょっと,簡単にそうですという感じがしないのですがね。それは知っていたというふうに全体として……。 ● それを知っていたというふうに言えるのであればいいですけれどもね,その辺が解釈になるのではないかなというのが若干気になるのですけれども。 ● でも,同じことが今の損保約款でもあって,それでやっているわけですよね,常識的に。 ● 知っていたと法律で規定しても,そこは何らかの解釈の余地はあると思いますけれどもね,逆に今は知っていたという要件がないけれども,それは知っていたということを原則的には解釈で要求しているのだろうと思いますけれども,実質はそんなに違わないと思うのですけれどもね,いかがですか。条文の上では知っていたというふうな要件を書いた方が外国の立法例や何かを見ると,美しいなという感じは確かにするのですけれども。   どうぞ。 ● 保険者が保険契約の解除をすることができるのは,保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失によって,当該事実について,重要事実について事実を告知しなかったという場合に限られるわけですよね。知っていた事実を告知しなかったというのを付け加えるとすると,付け加えなければ,先ほど○○幹事がおっしゃられたように,重大な過失の解釈の問題で場合によったら重大な過失,知ろうと思えば容易に知れたにもかかわらず,わざとそれと知らないことにして告知しなかったというのは重大な過失だということで処理ができると思うのですけれども,知っていた事実というのを付け加えるとすると,来た検査結果は開いていないわけですから,知っていたとはやはり言えないのではないかと思いまして,そうすると,かえって何か主観要件が故意,重大な過失の上に知っていたという三つになると,余計何かややこしくなるだけなのではないかと。むしろ重大な過失で処理する方が簡明な解釈,運用ができるのではないかなという気が素人で恐縮ですけれども,感じを受けたのですけれども,いかがなものでしょうか。 ● 文字どおり,封を開けなかったというのは知らなかったといえば知らなかったになるのですけれども,そこは少し規範的な解釈の余地もあるのではないかなという気がしますけれども。   ○○幹事。 ● 今,議論をされている部分については,私も結論的には知っていた事実というのを書いても書かなくても,実質的には変わらないだろうと思っております。通知された中身を見なかったと,しかし,本人は一定の自覚症状がある場合は悪意で知っておったということになりますし,通常,病名までお医者さんから告げられていなくても,体調がおかしいとかあるいは何がしかおかしいなというのは薄々分かっておって,あえてそのペーパーを見なかったというだけであれば,悪意というのですか,事実は知っておったということで,その事実についての評価を誤って言わなかったと。だから,これは重過失パターンになり得るのですよね。自分の健康状態の評価を容易に少し注意すれば分かったにもかかわらず,それを注意しないで自分のまさに現在の健康状態の評価を誤って告知をしなかったというのは,普通の人がちょっと注意すれば分かったことであるという場合は重過失になりますので,そのペーパーを見なかったというのは言わば評価を誤ることにつながりますから,通常,重過失になるのだろうと思います。ですから,今,御議論になっている部分は現行法でもやはり重過失であろうというふうに私は考えます。   ほかの点を申し上げていいですか。同じく告知義務のウのところなのですが,解除権の除斥期間の件ですけれども,(注)のところで強行規定と書いてございまして,先ほど御説明いただきましたところでは,現行約款で除斥期間を例えば2年にするという点については,認められるというふうに御説明いただいたのですけれども,一般の,私の理解がおかしいのかもしれませんが,片面的強行規定であれば素直に受け取れるのですけれども,単に強行規定と書いてございますので,今,講学上の意味でいえば絶対的強行規定ということなるのではないか。そうすると,この規定と違うルールは約款では書けないというふうに私のように見ると感じてしまうのですが,どういう解釈でそれは書けるというふうにおっしゃっているのか,ちょっとそこの理屈を教えていただければと思うのです。もしそれが通るのであれば私はそれで結構なのですけれども。 ● では,ちょっとその点に行く前に,知っている事実かどうかで,ほかに御意見はございますか。ちょっとそこはテクニカルな問題でもあるので,もう一度事務当局で最終的にどちらにするか考えていただくということでよろしいでしょうかね,今日の御意見を踏まえて。 ● 御検討をお願いします。 ● では,それで除斥期間の点はどうですかね。 ● これもこの資料の注の立て方の問題ということになるのですけれども,注で強行規定あるいは任意規定,片面的強行規定と使い分けていますのは,片面的強行規定として今回の改正の一つの大きな方向性である,被保険者あるいは契約者に不利な約定を無効とするというものを働かせるのがどこなのか,あるいは言い方を変えますと,いわゆる企業保険の分野については,そういう縛りを外すのはどれなのかということを明示するということを主眼にして付けておりまして,ある意味,それ以外は基本的には契約ルールですから任意規定だと,ただ,一般的に任意規定と言われていないものは強行規定という形で整理をしようということでやっておりまして,そういう整理で考えてみたときに,消滅時効期間や除斥期間というものが一般に任意規定と言われているかというと,そうではないだろう,こう思っておりまして強行規定という書き方をしているということでございます。   ですから,強行規定という,そういう呼び方がそもそも適切ではないという可能性もあるかなというちょっと自信のなさはあるのですけれども,その辺,民法の先生に教えていただければと思いますが,あとは資料としてはそういう区分けを御提案させていただいて,中身をそういう振り分けでいいかどうか,御検討いただきたいという趣旨でそうしているということでございまして,その上で恐らく今さまざまな法律の中で,消滅時効期間につきましても,除斥期間につきましても,それと異なる何らかの約定がどういう効力を有するかというのは,それぞれの条項の解釈の問題ということになっているでしょうから,そこはそれぞれの条項の解釈であり,保険法でこういう規定を置いた場合にも,同じく各条項ごとに解釈されることになるだろうと。一例として現在,例えば消滅時効期間についても既に商法と違う約款がありまして,それについては有効か,無効かが解釈されているところでして,そこは引き続き解釈問題として,こちらも理解しているということを御説明したかったということなのですけれども,もしちょっとフォローしていただけるようであれば,よろしくお願いいたします。 ● ○○幹事,よろしいでしょうか。 ● 要は強行規定として立法したとしても,恐らく解釈で現行の約款で2年に除斥期間をしているという場合,それを少なくとも裁判所で否定されることはないでしょうという,こういう考え方ということでよろしいのですか。 ● 否定されないともちろん申し上げられないのですが,こちらとしては,そこは引き続き解釈であり,仮に現在否定されていないとすると,今回,そこには一切タッチしないというスタンスで立案をするということを表明しているということですので,現在否定されていないのであれば,今回のこの改正によってそこは言ってみれば左右されないというように,事務当局としては整理をしているということでございます。 ● どうぞ。 ● 一言だけ。そうすると,現行法の第644条第2項はどう理解するかという話になってくるのですけれども,これは任意規定とは見ないということになるのですかね。先ほどの御説明だと除斥期間というのは,そんな任意規定とか片面的強行規定というのは,なじまないというような趣旨の御説明であったかのように受け取ったのですけれども,そうすると,現行第644条第2項ですけれども,今の御説明とはなじまないような規定が現行法にはあるのですよというようなことになるのでしょうか。一般には私,これはまだ解釈で強行規定とまで言い切ったものは余りないように思うのですけれども,そういうのはあるのかな,ちょっと自信がなくなってきましたけれども,これは少なくとも任意規定でないというふうな理解をされているということなのですかね。 ● 私どもの理解は今おっしゃったとおりです。 ● どうぞ,○○委員。 ● 私も○○幹事と同じ意見で,これはやはり片面的強行法規というふうに言った方が理解しやすいのではないかなと。強行法規,教科書的なあれは当事者が契約で変更できないルールということですと強行法規でになると。今ある生保の約款なんかは非常にいいことなのですが,単に2年やっただけではないですよね,ちょっと入り組んでいて。しかし,全体として契約者の方に全部有利な規定になっていますから,そういうのは有効だとはっきり言えるわけですから,片面的強行法規と言ってどこが悪いのかなという思いがあれなのですが。 ● 民事法一般について,除斥期間はどういう理解で立法されているのですかね。除斥期間もやはり強行規定と言っているのですかね。   ○○幹事。 ● 私は定見はないのですが,延ばす方については強行規定だというふうに考えていませんか。○○委員,どうでしょうか。 ● 延ばす方が強行規定……。 ● 20年なら20年という……どうなのでしょうか。 ● 逆に言えば縮める方が合意ができると。 ● 訴権に対する絶対的な期間制限だというふうに言ったときには,20年で切れるということを主として念頭に置いて議論しているのではないかと思いますけれども。ですから,そのときには短縮する方についてはブランクになっているのかもしれないという程度なのですけれども,いかがでしょうか。 ● 何か基本問題と,はっきりしなくなっているのですが。 ● ただ,一般に時効の期間を長短するということについては,もともと規定を作ったときにはそれに対する抵抗感というのはあったと思いますけれども,最近は少し状況は変わってきているようには思います。 ● これは保険法だけで何かどうも決められることではないようで,従来,はっきりしなかったのでしょうね。何となく私も任意規定,現在の商法だと第644条,第645条を全部まとめて任意規定かなと思っていたのですが,どうもそこがはっきりしなかったようですね。いずれにしても,そういう除斥期間であるという性質付けをしても,現在の実務のように不可争期間というのですか,そういう形で短縮する合意が否定されないということであれば,実質的には問題なかろうかと思うので,そこら辺はちょっとなお確認していただくことにして,内容的にはよろしゅうございますよね。   ○○委員。 ● 今ごろ言って大変申し訳ないのですけれども,保険証券のところなのですが,保険証券が任意規定ということになっております。多分,電磁的方法でということで任意規定になったのだろうなと思うのですが,電磁的方法と言われると何かとてもすばらしくいいことのようなイメージが広がるような気がしますが,大変あやふやな不安定な世界でございましてね,そういう意味では保険証券のこういう書面交付をしなければならないものとすることを任意規定としてしまって,電磁的方法で可というやり方をなさるのであれば,保険というものに対する信頼性の確保ということを考えれば,最低限紙が要るだろうと思っておりまして,是非そこの部分はすみません,今ごろ言って,もう3周ぐらい遅れているような気がするのですけれども,一番最初のときにも申し上げたつもりでいますが,電磁的方法を視野に入れて任意規定というのは,いかがなものかというふうに思っておりまして,そこら辺は御検討いただけないかと思っております。 ● 今,御指摘の点は時期に遅れたということは決してなくて,そもそもパブリックコメントでも複数いただいているところでございまして,それは重々そういう意見があることは認識した上で,なお任意規定という提案をさせていただいているところでございまして,強行規定的にして必ず書面を交付することにすべきだという御意見の趣旨とするところは非常によく理解できるのですけれども,でも,実際にそうしてしまいますと,何か恐らくいろんな仕組み方というのがあり得る中で,常に書面ですよと,そうでなければ駄目ですよと,本当に言ってしまうと非常に窮屈なことになってしまって,それこそ今回,共済も対象にするということもございますし,そうしたときに何でもかんでも書面を渡さなければいけないと,そういう前提ですべての契約を仕組まなければいけなくなることのやはり窮屈さを考えたときに,なかなかそこまでできないというか,することの不都合さの方がむしろ気になってしまって,ここは任意規定とした上で,あとは契約ごとにしかるべく対応していただくというほかないのかなということで,こういう提案をさせていただいているというところでございます。 ● ○○委員。 ● 全く○○委員と同じ問題意識なのですが,書面とそれに代わるものと両方あわせてワンセット,それはどっちかにしなければいかんという形で決めるということはできないのですか,そういう電子的なものという。何かやはり契約者に最適な情報が行くことを確保するという点の,その部分だけやはり何か強行法規的なものとして残したいという気持ちはあるのですね。テクニカルに難しいという,そういう御議論なのか,もともとやはりそういう最低限のところも強行法規とする必要はないという議論なのか,そこはよくちょっと分からなくて,私は何か最低限テクニカルにできるのであれば,強行法規的な形で書面を課す,要するに契約者にきちんとインフォメーションが行くというところだけは確保するようにやってみる,トライしてみるということはお願いできないのでしょうか。 ● ○○委員。 ● ○○委員と同じような御意見を言われたのですけれども,きちっとしたものを出すということになりますと,一定の規模といいますか,そういうものが当然必要になってくると思うのですね。簡潔に言いますと,今,仮称ですけれども,いわゆる保険法というのがどういうところまで対象になるのかによって,この証券の部分,その辺が強行的な性格のものなのか,ある程度任意で必要な部分でカバーできるのか,そこによって中身が違ってくるのではないかと思うのですね。保険会社さんだとか共済も大手の団体では当然可能だと思います。ですから,そういうふうに範囲を限定されれば言われることは理解はできますけれども,その範囲がまだ決まっていない中で,強行的な中身で決めていくということでは無理があるのではないかというふうに思います。 ● 契約の内容を確認するという機能がある書面ですけれども,これは完全に書面というふうに紙に限定してしまうと,事務当局が言うように常にそれを交付しなければいけないということになって,非常にたくさんの種類がある契約の中で,あるいはそういう必要性がないようなものも出てき得るのかなという気はしますから,ややちょっと硬直的過ぎるのかなという印象があり,電子の世界はどうかって,そのぐらいは簡単に送れるではないかという意味で……○○委員。 ● ○○委員がおっしゃったことはもっともで,例えばコストをかけないのであれば契約した時点で証券番号とパスワードを伝えて,共済のホームページへ行くと自分のものが出てダウンロードできるとか,要するにここで言うのは書面というのは一つの情報提供を確実にするための手段を限定しているわけですから,だから書面もしくはそれに代わる形で,自分の契約内容をいつでもきちんと確認できるということはやはり確保しないといけないので,だから,そういうのであれば今の営利保険,相互保険を問わず,できるのではないか。何かそういう形のもので,消費者保険についてはですね,企業保険はともかく,消費者保険についてはそういうことをしないで外してしまうというと,そこを縫って悪いことをやる人もいると思うので,そういう趣旨なのですが。 ● ○○委員。 ● 今,私が申し上げているのは,どこまでこの保険法の,端的に申し上げますと共済の中でもいろいろございますので,どこまでが対象なのかと,そういうすべて共済と名の付くもので,定義がどうなるかというのは分かりませんけれども,一定の機能を持っているものについて,すべてやらないといけませんよといった場合に,果たして何の問題もなくやっている小規模な共済も含めて,これが過重な負担になって,結局やめざるを得ないというような現象が出てくる可能性だってあると思うのですね。そういうところを心配しているわけです。 ● 保険証券の内容でつぶれそうなところが出てくる。 ● あると思いますよ。少額なコストで運営している共済はいっぱいあるわけですから。ですから,保険会社とか大きな共済を対象にして考えられるのであれば結構かと思いますけれども,ただ,その範囲をどこにするかはまだ決まっていない中で,大手団体を想定をした規律を前提にしてしまうというのは,やはりまだ早いといいますか,もう少し検討をした方がいいのではないかというふうに思いますけれども。 ● ○○幹事。 ● 保険証券として,どういうものを考えるかということにかかわることかなと思うのですけれども,別に現在の大手保険会社が出しているようなきちんとした保険証券を発行しなければ,ここで言う保険証券にならないというわけではなくて,それこそA4の紙へ(7)の①に書いてある事項をワープロでプリントアウトして渡すのであっても,別に保険証券にはなると思いますので,小規模の共済はまさにそういう形でやっていただいても,この要件を満たさないということにはならないと思いますから,保険者の規模によって保険証券の体裁としてどういうものを考えるかというのは,それぞれで考えられればいいことではないかと思いますので,この保険証券の交付を強制したから,それで共済事業に大きな不都合が生ずるということは,私には考えにくいところではあるのですけれども。 ● ○○委員。 ● ○○幹事がおっしゃるように,その規模に応じてある程度工夫ができるということで,ここに書いてありますように任意規定で整理がされて,大体一定のものが書かれていれば,それをもって保険証券というのか,共済の場合は保険証券とは言いませんけれども,そういうものとして構いませんよということであれば,別にコストもかかるわけでありませんし,過重な負担を強いることも団体に対してないということもありますので,そこについてこれ以上反対ということは申し上げませんけれども,少なくともいろいろ議論はあるかと思いますけれども,範囲が決まっていない中で,いわゆるトップレベルの共済なり保険を前提にした規律だけでは,最終的には非常に困ることになるのではないかというように思っていますので,あえて言わせていただきました。 ● ○○幹事。 ● 今の問題点はそこなのかどうかという気がしまして,私はむしろ○○委員からは御批判を受けるかもしれませんが,これは任意法規にした方がいいだろうというふうに思っているのですけれども,将来のことを考えて今,必ずしも契約書を書面で出すという文化がどこまで続くのかということをやはり考えるべきだと思うのですが,大手の方でも例えばネットで契約を結んだ後,システム的に必ずダウンロードしてプリントアウトしないと,次の最後のオーケーのボタンが押せないとかという,そういうシステム的な対応をしながら,事実上,いわゆる保険証券のようなものを交付するというような形のシステムを組むということは当然考えられるわけでありまして,書面を交付したという概念を固くとらえてしまいますと,交付したことにならないのではないかというような形になってしまうわけなのですが,紙が必ずしも必要だとは思わない人たちは,例えばダウンロードしてデータとして保存するという形の人も出てくるだろうと。そうすると,それをもって紙ではないから駄目だというのは,何かこれから出てくる世の中には随分遠い感じがするのですね。   やはり私は当然のことながら,いいかげんな売り方をすればお客さんが離れていくわけですから,きちんと相手方に情報を伝えなければいけないという,そこは技術的に何らかの担保がなされてくると思いますけれども,将来的に高度に技術が発展していく中で,最後まで紙でなければいけないというようなのは,どうもすぐ改正があるならいいですけれども,そうでなければ私はやはりそこは任意法規にした上で,業者の良識と消費者団体の方からの要請の中で,きちっとやっていただければいいのではないかなというふうに思います。 ● ○○委員。 ● おっしゃることは大変よく分かりまして,そうなのだろうなと,そういう理由で任意規定になっているのだろうなということも想定が付くので,そうなのでしょうというのは分かるのです。ただ,保険というものは契約者だけが知っていればいいわけではなくて,当然,受取人が知らないと権利行使ができないというもので,すみません,私が言うのも口幅ったいのですが,そういうものだと思っています。   そういうものであれば,なおのこと,先ほどネットは不安定だと私は申し上げましたが,データとしてそこへ蓄積をしていることをどういう手段で,どうやって知るのだろうということを考えると,そこまでネット社会がずっと広がって,すみません,私は旧弊な人間なものですから,私なんかみたいな旧弊な人間の想定が付かないぐらいネットが進歩したとしても,でも,契約者,被保険者,受取人という概念が変わらない以上,受取人が権利行使するしかないと。   そうすれば契約者はここのパソコンのこれに僕の保険契約のことがダウンロードされているから,それを死んだら見るのだよという,そういうことを言っておくのかしらという,それの方がとても非現実的な気がして,何で紙を出せないのかなというふうに大変素朴に思いまして,申込書は紙でやれとか,そういうことを申し上げているわけではないのです。あくまで証拠証券としてのA4の紙1枚で結構なのですけれども,そういうものをお出しになるというルールを崩してしまうと,消費者にとって保険というものがますます遠いものになってしまうのではないかという危惧を込めて,申し上げているつもりでおります。 ● ○○委員。 ● ○○委員の意見も十分私どもは分かっていますが,一方で世の中にはきちんと契約者が自分の意思で紙による証券は要りませんと,むしろ紙による証券あるいは約款が大量に送られてきても,自分としてはきちんとネットを通じてよく理解できるし,そういうものをどんどん配るということについては,資源の問題を考えて自分としては拒否をするという人も世の中にはいるわけですので,そういう意思表示をした人については紙の交付をしなくてもいいという道を残していただかないと,やはり一律に配るということは,こういう自然環境の問題を考えてみますと,ややどうかなという感じもいたします。 ● どうぞ。 ● そういう明確な意思のもとにおやりになるというのはいいと思うのですけれども,確かパブリックコメントでもカードとか何かで入ったり,よくいつ,どこで入ったか分からない保険料を請求されたというような,そういうあれが確かあったと思うのですけれども,やはり私は書面ではなくても,書面という意味は○○委員がそこまで書面でなくても,私は推測ですけれども,私の意見と言えばいいのですが,何とかきちんとした機会が与えられて,本人と家族がそれを見るような,アクセスができるような形になっていればもちろんいいわけですが,そういうものに今なっていなくて変なことがいろいろ起きていると。   そのときにどう対応するかという観点から多分言っておられるわけで,というのは,うまくいく場合はいいのですけれども,うまくいっていない場合をどうするかという観点から,強行法規というと,だから,そういう受け取る権利を放棄できる,それは明確にして,放棄したとしてもいいと思うのですけれども,強行法規というのがいいのかという,そういう問題提起なのかもしれませんけれども,でも,単に任意規定でいってしまって済むかと言われると,ちょっとなのですけれどもね。 ● ○○幹事。 ● いろんな意見がされているようで,ちょっと私なりに整理させていただきますと,まず,そもそも書面交付というのは現在では一般的だけれども,将来的にはむしろ電子的な形で情報提供するということが一般的になるかもしれないので,そういうことも考えれば任意規定にしておくべきだという御意見と,これは事務当局もそういう御意見かなと推測いたしますが,○○幹事が先ほどそのように御意見を述べられましたし,それからあくまでも紙を要求すべきだと,それを強行法規として定めるべきであるというのが○○委員の御意見かと思います。そして紙又は電子的な情報でもいいけれども,保険契約者側にとにかく情報が提供されると,それを強行法規として要求すべきであるというのが○○委員の御意見かと思います。   そういうふうに,大体三つぐらいの御意見があったかというふうに私なりに整理させていただきますと,そういうことになったのですが,私の意見を申しますと,私は先ほどやや紙を必ず渡すべきだというふうな御意見に受け取られるかのようなことを申しましたけれども,必ずしもそういうふうに考えているわけではなくて,もし条文をうまく書けるのであれば,○○委員がおっしゃったように少なくとも何か情報が,紙又は電子的な形で保険契約者側に保険契約の内容を提供するということを要求すべきであるとは考えておりますが,しかし,そこの条文の書き方がうまくできない,難しいというのであれば,事務当局又は○○幹事がおっしゃったように,任意規定でもやむを得ないかなというふうに考えております。 ● ○○幹事と○○委員に確認をさせていただきたいのですけれども,今,○○幹事がおっしゃられたような紙かあるいは電磁的データか,どちらかは提供しなければいけないという,そういう形の一種の強行法規といいますか,そういうものならいいということなのでしょうか,それとも,それもやはり駄目で任意規定であるべきだという御意見なのでしょうか,ちょっとそこがよく分からなかったのですけれども。 ● ○○委員。 ● 保険会社としては,お客様にどういう契約をしたかということを御理解いただく必要は当然でございますし,そういうことをやらなくていいという話ではないのですが,一方で紙媒体による証券というものの配布というのを,意思によって自分がはっきり拒否するという方がいらっしゃった場合に,そういう方についても必ず配らなくてはいけないということを法律の中で決めるということは,やや違和感があるなという感じで申し上げたわけです。ですから情報を提供する,つまり契約者が自分の意思によって自分の契約内容を,今,証券内容をきちっと入手する道をはっきり明示しておくと,これは当然でございます。 ● ○○幹事。 ● 私はもしそういう立法をされるというのであれば,それでも構わないかなというふうには思います。ただ,今の現行法の中の電磁的記録というのは紙が電子データに変わっているもののことを指していますので,例えばID番号を渡して,それで保険会社のサーバーの中にデータが入っていて,いつでもアクセスできますというのを電磁的記録というのかどうかというのは,ちょっとやや疑問という感じがしますけれども,そういうところまで技術が移るのかどうかは分かりませんが,確か今の法制でいいますと電磁的記録というのは,同じものがただデジタルデータになっているもののことを指していると思いますので,若干先ほど挙がっていた○○委員の例というのも,そこからちょっと外れているのかなという感じもしないでもないというふうには思います。ただ,今の実務の状況というのでしょうか,世の中の状況の中で何かを渡さなければいけないということをもし明記するのであれば,私は先ほど○○幹事の方がおっしゃられた,そういう法案でも,もちろん全く異存はありません。 ● すみません,ずっと聞きっ放しになってしまいましたけれども,いろいろパブコメで御意見をいただいていたにもかかわらず,結局,書面を交付しなければならないという形にしつつ任意規定としましたのは,今,まさにさまざまな御意見が出ましたけれども,もともと書面だけでは今後対応できない場面が出てくるだろうと。でも,それは対応できなくなるのであれば,それも予測して電磁的記録も含めて書けばいいではないかと言われると,確かにそうかなと。では,その辺も含めて書いて強行規定とするかということも考えたのですが,そうしますと更に進んで例えば必要なデータをいつでも見られるということにしても,それでは足りないのかと言われたら,それでも足りるだろうなと,それでいいという人にはそれでいいだろうと考えますと,そこまで含めて書けばいいではないかと。では,それで書こうかと,最低限必要なのは必要な情報が提供されていて,アクセスすれば分かるようになっていることと,そういうことを保険者は提供しなさいということになって,それに強行規定性をかけるということも考えたのです。   そうしますと,書面を必ず交付しなさいという意見もなお根強くある中で,今度は現在の実態と離れ過ぎた規定で,何を言っているのだということになって,そうなるくらいであれば,結局,やはり書面ということは出しつつ任意規定とすると。これで無制限に規定の適用を外せるかというと,今は消費者契約法があるわけですから,何の手当てもないというとちょっと変ですけれども,一方的に契約者サイドに不利益な形で規定の適用を外した場合には,それはそれなりに消費者契約法の解釈として何らかの効力的な解釈がされる余地もあるわけですからと,いろいろ考えますと今の時点でどう書くかというと書面を交付しなさいと,これが現状にもマッチしていますし,かつ,メッセージ効果もあると。その中で,ただ強行規定性を課してしまうと,いろいろ今後の進展を考えたときにすぐ窮屈になる可能性も高いと。そうしますと,ここでとり得る選択肢としては,これが一番いいところではないかなという検討結果だったということで,御理解いただければというように思います。 ● 保険会社がこういう改正が行われたら急に紙を出さなくなるということではないと思うので,条文だけ見れば何か出さなくていいように見えるかもしれませんが,それを決して奨励している趣旨ではなくて,やはり今まで原則的に行われてきたことは今後も行われていくだろうと,そういう前提ではないかと思うのですけれどもね,いかがでしょうか。いろいろ考えた,今日も御意見がいろいろ出た,なかなかそういうものを全部満足する案というのはどうもなさそうなところで,こういう案になっているということなのですが,保険会社の方もよろしいですね,むやみにこれで実務を簡素化するということでは決してないということで御了解いただいたと思いますので,どうかこの辺はこのあたりで御了承いただければありがたいと思いますが,よろしいでしょうか。   では,ほかの点はいかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● 私もちょっと遅れた意見になってしまうのですけれども,2頁のイのところの②になります。2回ぐらい前の読会でもう落ち着いた感があって,ちょっと前回も意見を言いそびれてしまったのですけれども,やはり日弁連の方でここの②というのが,この規定を設けることが妥当なのかというのが多少まだ意見がありまして,お伝えしたいなと思いました。   その理由といいますのは,保険者が解除することができない場合として,(ア)のみならず(イ)と(ウ)を設けたというのがやはりそういう立法事実があって,媒介を行う人の告知妨害とか教唆的な行為は牽制するような先ほどメッセージ効果という言葉もお聞きしましたが,そういう意味が強かったと思うので,それで②が出てきてしまうときに,そのメッセージ効果が減殺されてしまうのではないかとか,それから言った言わないの世界というのも随分議論されたかと思うのですけれども,言った言わないの世界を広げてしまうというか,現場での争いになったときの論点がずれてしまうのではないかという懸念を持たれている人が多かったので,こちらの審議会での審議の状況はもう報告しているので,だから,どうしたらいいのかというのがちょっといいアイデアがなかったのですけれども,何かせっかく(イ)と(ウ)を今回規定する場合に,②がメッセージ効果みたいなものを大きく減殺することがないような,ちょっと御提案できなくて恐縮なのですが,何か工夫していただければと思いましてお伝えする次第です。 ● 今の点に対しましては説明の仕方だけになってしまうとは思うのですけれども,②を設けたことによってせっかく(イ)や(ウ)を設けたことが減殺されるとか,あるいはメッセージ効果が弱まるというようにこちらは全く思っていませんで,むしろ○○幹事がおっしゃるとおり,立法事実があるからこそ①の(イ),(ウ)を設けましたと。ただ,これを裸で設けてしまったときに,しめしめ,いいものができたといって,それを逆に悪用するような契約者が入り込んでくるとすると,逆に設けたことが失敗だったということになって,設けたこと自体にマイナス評価が出てき得るところで,逆にそのマイナス評価が生まれるような事態を未然に防止するために,②をセットで入れることによって,(イ),(ウ)でいいものができたと,しめしめといってよからぬものが入ってくるのをきちんと排斥することによって,より(イ),(ウ)の効果をきちんと実効性あらしめるという趣旨で設けたという説明振りで,そこは是非御理解いただければというように思っております。 ● ありがとうございました。 ● よろしいですか。   ○○委員。 ● 今,○○幹事が言われたのは契約者側ではなくて保険会社側がこれを使ってという,そういう趣旨ですよね。今,御回答の方は契約者もしくは被保険者がという回答でしたけれども,御趣旨は(イ),(ウ)の減殺効果を減殺するような形で反対に抗弁的に使えるものが出てきたので,そこに危惧しておられるという,そういう趣旨ではないのですか。 ● はい。 ● ちょっとだから答えが合っていなかったかな。 ● もしかしたら○○幹事がおっしゃる御趣旨は,そういう点も含まれていたかもしれませんけれども,まさに仮にこういうものを設ければ,ぎりぎり裁判の場面で,これが争点になる事態が生ずるという意味では,おっしゃるように一つの紛争の種になるということは,もちろん否定できないところですけれども,個別論点の検討でも話が出ましたとおり,ここで保険者側はそもそも告知妨害あるいは不告知教唆がなかったとしても,あなた告知義務違反をしたでしょうと言わなければいけない場面ですから,どれだけ,そういうことが本当にあるかと言われれば,本当にまさにそういう限られた例外的な場面ということになりますので,これによってこれを保険会社が乱発して,(イ),(ウ)を設けた効果が減殺されるという事態が生ずるかというと,現実的にはそういうことはないというように考えております。 ● ○○幹事。 ● ほかの点でよろしいでしょうか。告知義務の「エ アによる解除の効果」のところの因果関係不存在の問題の特に(注2)のところでございますけれども,免許証の色について以前議論されたことがあって,私もここでそれについて意見を申し上げたことがあると思うのですけれども,そのときには確か,たとえ例えば駐車違反のような道路交通法違反があっても,それは道交法違反をしたことがあるということで,やはりそういう人はリスクが高い,自動車事故を起こしやすいというふうに判断して保険料を高くしているわけですが,その人がまた道交法に違反して事故を起こしたのであれば,少なくとも私はそれは因果関係ありと見てよいというふうに考えているのですけれども,しかし,そういうふうに考えない人もおられるかもしれないということで,(注2)の括弧の中にごにょごにょと書いてあるところを見ますと,結局,この問題は解釈にゆだねるという,そういう御趣旨と理解してよろしいでしょうか。 ● そうせざるを得ないかなという判断で,かといって片面的強行規定としないという選択肢は,この個別論点の検討の流れからしてもないだろうと。かといって片面的強行規定としたからといって,今,○○幹事がおっしゃる点も含めて直ちに硬直的なことになるかというと,決してそういうことではないというのは○○幹事の御意見も含めて部会で出ているという前提で,こう整理してはどうかという提案でございます。 ● この告知義務制度の改正をする大局から考えれば,このあたりで細かいことにとらわれて枝だけ任意規定にするというのは大局を見失った方向ではないかなという,そういうことですね。これは解釈の問題ということにしたいということかと思います。   1の部分,とりあえずよろしゅうございましょうか。   それでは,2の部分はいかがでございましょうか。この中でも危険の増加はやや前回,実質的に積み残し的なところもあったところかと。○○幹事。 ● 保険料増額請求権について,今回の要綱案では明文の規定がなくなりましたので,保険料増額請求権については約款で自由に定められるようになったということだと思うのですが,以前の案によりますと,例えば保険料増額に応ずるか否かについて,例えば3日以内に答えを出せと,3日以内に確答するように催告するという,そういう約款規定を置いた場合には,ちょっと3日以内というのは恐らく相当の期間とは言えない,相当の期間を定めたものとは言えないので,恐らくは片面的強行規定に違反するというふうに判断されたというふうに思うのですが,今回の要綱案ではそのようなケースはどう判断することになるのでしょうかね。 ● 約款ベースにゆだねるというのが基本的な御提案ですので,そこはもし,もうそれでこの契約からは出たいと言えば任意解除していただくと。要するに,そこはもうほかのルールにゆだねたと,危険の増加としてはこういう形で危険の増加を理由に契約を解除することについては,こういう限定を付することによって法律上の手当てはここにとどめようという発想でございます。 ● だから,検討する期間が非常に短いような期間しか与えないようなやり方でもいいかという,そういうことですね。 ● はい,そうです。 ● 結局,約定の問題だから不当条項になるかどうかという,それだけのことだということでしょうか。 ● それこそ恐らく法律に仕組むとすると,何らかの期間を置いてみたいなことで仕組まないと,いきなり増額というのはということで,これまでの部会資料の中でもそういった趣旨の御提案をさせていただいた時期がございますけれども,契約の世界にゆだねた場合には,もともと契約をどうするかを尋ねるまでもなく危険の増加時から保険料はそれに応じてアップするのですよと定めて,それをさかのぼって請求しますよと書く約款ももちろん出てくるというか,それは契約の自由ですから,どう定めようが,期間を置いて尋ねるなんてそもそもステップを踏んでいない約款も当然あり得るところですから,そういう約款を前提にそもそも契約に入るか入らないかという段階での選択もあるでしょうし,いざ請求された段階でどうするかを選ぶという選択もあるでしょう。いずれにしても,そこはもう契約の世界であり,今,○○委員がおっしゃったように,条項そのものに問題があれば,あとは不当条項規定の世界の話になるというように整理してございます。 ● 保険者としては引受範囲内できちんと増額保険料を支払ってくれるならば,引き受けようと考えていると。仮に,しかし3日しか猶予期間を置かずに,3日以内に返事がなければ解除したものとみなしますよという,そういう約款規定を仮に置いた場合に,従来の案ではその期間が相当であれば,例えば2週間とか14日以内という期間を置いて,その期間内に返事をしなかったときは解除されたものとみなしますよと,そういう規定であればオーケーだったと思うのですが,これに対して3日しか期間を与えなければ,強行法規違反というふうに恐らくなったと思うのですけれども,この要綱案のもとでまさに3日以内に答えなさいと,答えなければ解除されたものとみなしますよと,そういう規定を置くことは,解除権を定めたことになってしまうので,できないということになるのですか。 ● 今,私が申し上げましたのは,解除と結び付けないで増額請求の世界でいく場合のことを申し上げていましたので,仮に約款が危険の増加を理由とする解除に結び付けているとすれば,危険の増加を理由とする解除はここに限定しますよと,それを片面的強行規定としますよということですので,それ以外で解除に結び付けていれば,そもそもこの片面的強行規定に反するということになるかと思います。 ● そうだとすると,従来の案では全く適法であった,例えば14日以内に返事しなさいと,返事しなければ解除されたものとみなしますよと。これは解除権を定めていても問題はないのですかね。それは解除権を定めたことにはならない。ちょっと私が勘違いしているのかもしれないのですけれども,従来の中間試案でいいますと,中間試案の7頁,イの遅滞なく通知がされた場合等の③ですかね。 ● この中間試案の7頁の提案とは,発想をそもそも変えておりますので,今の○○幹事の御質問の御趣旨が増額に応ずるかどうかを返答した,あるいはしなかったということを解除に結び付けているとすれば,それはもう今回の資料の5頁の危険の増加の提案を前提とし,かつ,これを片面的強行規定とすれば,そもそもこれに含まれていないのに解除に結び付けていることになりますから,それは片面的強行規定に反して許されないということになると思います。 ● 催告の期間が相当であってもということですか。 ● はい。ですから,あとはそれで増額するしないは約款ベースという整理をしていますので,約款で増額請求権が保険者側にあり,保険契約者側に増額後の保険料の支払義務があるとすれば,あとは不払解除とかいう世界に行くべきであって,危険の増加による解除ということに結び付けることは,この提案の片面的強行規定に反するという整理になるというように考えております。 ● 従来の約款の考え方というのは,危険が増加すれば,引受範囲内の場合であっても,将来に向かって解除するということは原則的にはできると考えていたのでしょうかね。それに対して今日の案ですと,①の要件に合致しない限りは解除という形で契約を解消することはもうできないということになって,ただ,危険に対応した保険料を取れないのかというと,それは約定でおやりになるということはいいでしょうという,そういうことで,従来の考え方とかなり違う考え方になっているのかなという気もしますが,○○委員。 ● 今の問題も含めてちょっと一回申し上げたいと思いますけれども,まず,ちょっとこの危険の増加という言葉にも実は前,○○幹事がおっしゃったように違和感を感じているので,それはちょっと小さなことですので後にまず回しまして,②の「危険の増加後に発生した保険事故」というところは,これも企業保険ではなくて消費者保険ということを念頭に置いていきますと,少なくとも危険が増加した時からではなくて,知った時からということになるのではないでしょうか,危険の増加を知った時から。   最高裁の判例がありましても,約款は事前と事後に分けていますけれども,実際は事後でも数日,2,3日あればいいわけですから,基本的には保険契約者が著しく危険が増加したことを知った時が消費者約款では免責のスタート時点で,企業保険や何かでもちろんそうではなくて危険の増加の時からでいいと思うのですけれども,ですから,まず,この免責とされる期間,遡及効ではないので一応将来効としておいて,法文でこの期間からこの期間の間は免責という形にせざるを得ないわけで,その期間の始期はどうなるかというと,契約者が知った時というふうにしないといけないのではないかと。これは片面的強行法規で企業保険では増加の時からとしていいという,そういう規定の仕方にまずなるのではないかと思うのです。   それから,もう一つ根本的な問題で,前にこの危険の増加をやったときに私が少し発言しまして,○○委員もそういう趣旨ですかという形で拾っていただいたところの議論に関係するのですが,告知義務と危険の増加の場合の通知義務を比較するというときに,まずどういう観点が一番大事なのかというと,告知のときは何が告知事項かというのがよく分かるわけですよね。ところが通知義務の場合は成立後の話で,普通,通知義務を負っているということはなかなか理解できない,その性質もさまざまですから。ですから,一般論として告知義務違反の場合の制裁と危険増加の通知義務違反の場合の制裁というのは,比較すると通知義務違反の方の制裁はやはり緩和されたものでなければおかしいと思うのですよね,消費者保険の場合は。   では,この資料23の5頁のものがそうなっているのかという,そういう問題があるのですけれども,告知の場合には契約者側に故意・重過失があると保険契約は解除できるということですけれども,①の(イ)のところで故意又は重過失になっていますから,非常にバランスはとれているのですね。次に保険者側の故意・過失があった場合は解除できないというのにバランスがとれているかというと,故意のところはこの③があって,解除の原因を知った時から1か月間行使しないときはということで,一応いいのかもしれませんが,保険者側の過失の部分,保険会社側に過失があったら解除できないという部分は一体どうなるのかと。これはなかなか難しいのですけれども,全体として告知義務違反の場合と通知義務違反の場合で,通知義務違反の方の制裁はやはり緩和された形になるはずだと,そういう観点。   少なくとも同じではなければいけないと思いますけれども,そうするとやはり故意・重過失の場合の重過失の契約者側の重過失の要件はやはり緩和するか,少なくともこれも告知義務の場合と同じように重過失を故意に準ずるものぐらいにして緩和しないと,やはりおかしいのではないかと。まだ,告知義務より通知義務の方が保険者側に過失が,だから,代理店が事情を知らないことに過失があったとかそういう場合に,単純に言えばそうですけれども,そこまでやるかどうかといういろいろな議論はあるかもしれませんが,何かもう少しバランスを考えて,それで重過失のところはドイツは御存じのように,プロラタの話とは別に,帰責事由の不注意の程度において減額するというのをやはりやっているわけで,理論的な問題はいろいろあるかもしれませんが,やはりこの通知義務の段階で何か緩和するということは,もうちょっと考えないといけないのではないかという感じがするのです。   ですから,少なくともここでプロラタをやれとまでは言いませんけれども,何かドイツ的なもの,つまり理論的にはいろいろ問題がありますけれども,基本的な観点としては注意義務にしなければいけない事故だって,やはりなかなか善意にしても気が付かないで,効果が大きくなってしまうというのは,どこかで緩和してあげる必要があるという点で同じ主張になりますが,告知義務と同じように重過失を故意に限定するとか,何かもうちょっとしていただかないとバランスがとれないのではないかと。   それが第一点で,第二点はこの規定を基本的に維持した場合に,まさに今使われている約款はどうなるのかという問題があって,例えば典型的な火災保険の住宅火災の約款の第8条では,解除しなくても通知の手続を怠った場合には,事実が発生した時又は契約者がその発生を知った時,この約款では事前に出せということがありますから,事実の発生した時がありますけれども,事務当局が出した案では事実の発生した時というのはこの約款で言うような場合ではないので,多分,知った時からだけということになると思うのですが,そういう場合は保険金を払わないと書いてあるのですね,普通の約款では。それでいて,要するに解除はしないで保険金は払わないという構成になっていると。   それで,ここに今言った「怠った」という文言がありますけれども,通知の申出を怠った場合,多分,これは新しい法律ができると,怠ったというところは故意・重過失のみに限られると。過失は駄目だよというふうに限定解釈されることになると思いますが,問題は保険金を払いませんというのがあって,これは解除することなく保険金を払わないということができる,つまり,解除が裁量的なもので,通知義務に関する第8条第3項に解除ができると。だから義務的ではないのですね。そうすると,先ほどの○○幹事の御説明にもありますけれども,新しい法律では解除した結果,払わないという効果がスタンダードになっていると。ところが実際の約款は免責が先にあって解除はしてもしなくてもいい。ということは保険料はもらい続けるけれども,責任はなくなるという,そういう形になっていまして,そうすると,やはり保険金を払わないというところは無効になるのではないかと,そういうふうに考えないといけないのでは,そういう理解でいいのでしょうかというのが第二の問題点で,あと保険者には損害保険の代理店も含むという考え方でいいと思います。   あと一点。これは○○幹事がおっしゃったのと関係するのですが,約款で保険料の増額請求を規定することは片面的強行法規に反しないということが前提になっていると思うのですけれども,一応片面的強行法規が不利益な形で変更するのは許さないということであると,このデフォルトルールというか,このルールでは私は動かしていません,割増保険料をもらわないでこういう場合以外は払いますよ,担保するという形になっているわけですよね。しかし,そういう場合でも保険料をもらってもいいとなると,やはり契約者に不利益な状態になっているのではないのですかね。だから,ここは○○幹事のお話とも関連するところで,ここのところはよく理解できないということなのです。   あと1点だけ,申し訳ありません。これは前,○○幹事がおっしゃったことなのですけれども,要するに商法は今著しい危険の増加と言っていて,ここはそうは言っていないのですね。それは理由が確かにあって,①のところの2行目,ちょっと最初から読みます。「保険者は,保険契約の締結に際して保険者から告知を求められた危険に関する重要な事項」で,かぎ括弧の中で一種の定義をしていまして「当該事項についての危険が増加したときは」,従来はここが著しく危険が増加したときはということですが,「その旨の通知をすべきことを保険者が求めたものに限る。」と書いてあって,要するに重要な事項の方が引受けの可否とか,保険料の決定とか,条件の決定に影響を及ぼすようなものだけであると。従来は著しい危険の増加という言葉が,またそれに対応した場合として使われていたわけですね。   しかし,そうではなくて,ここでは重要な事項,つまり,そういう保険料の変更等に影響を及ぼすような場合というのを危険の増加というふうに定義し直してはいるのですが,でも,それは本当にここにいる方は分かりますが,保険会社の社員とか消費者の方に分かるものなのだろうかと。次の危険の減少と見ると,こちらは「著しく減少」と書いてあるのですね。何を言いたいかというと,やはりもとに戻して,用語としては等置して重要な事項イコール著しい危険の増加と,そういうふうにした方がまず混乱がなくて,その場合には①の括弧書きが「当該事項についての危険が増加したときはその旨の通知をすべきことを保険者が求めたものに限る。」という,だから,重要な事項イコール著しい危険の増加で,かつ,それに限るという言い方をすれば,要するに今ある商法典のもとでの用語をそのまま使って同じことを規定する形になり,かつ,危険の減少とも関連するので,用語の混乱がないのではないかという点を最後に申し上げたいのですが。   以上です。 ● たくさん指摘いただいたので必ず漏れが出ると思いますけれども,一番最初に,○○委員から御指摘のありましたこれまでの発想と変わっているのではないかという御指摘は,結果としてそのとおりというように思っておりまして,これまで確かに将来に向かっての解除はできるという整理だったと思いますけれども,これまでそもそもこの危険の増加につきましては,まさにさまざまな御意見をいただいておりまして,現在の商法が帰責性のある,契約者などの責めに帰すべき事由による危険の増加の場合は直ちに失効としているのは,厳し過ぎるというか硬直的過ぎるといったような御指摘から始まりまして,保険料の増額で対応できる場合にはできるだけ契約を生かすようにしていいのではないかとか,そうしたさまざまな御指摘を一番すっきり受け止めるにはどうしたらいいだろうかとるる検討した結果が,現在のこの御提案になっているところでして,そういう意味では将来に向かっての解除も常にできるわけではなくて,この5頁に書いた場合に限られるという形で,基本的に保険料での調整で対応できる契約は続けることを原則としようというものです。   それで不都合が生ずるようではいけないのですが,先ほど申し上げましたように契約者側が嫌であれば任意解除ができるということになるでしょうし,保険者側は増加した危険に見合う保険料を払ってもらっても嫌だという思いがあるかもしれませんが,そこはもともと締結した契約なわけですから,払ってもらう限りは続けてもらうということでお願いをして,払ってもらわなければ不払解除ができるということであれば不都合は生じないだろうということで,大きくはそういう整理をした上で,御提案させていただいたということです。   それから,②の「保険事故」の前の「危険の増加後に発生した」という修飾語について,これは増加を知った後ではないかというお話でございましたが,確かに現行法の約款などでは契約者の責めに帰すべからざる事由による危険の増加などはそういう対応がされていると思いますが,一方で,責めに帰すべき危険の増加などについては危険の増加時というような約款も一般的にあるというように認識しておりまして,そこは一律に危険の増加を知った時とするのは,かえって不適当だと考えておりまして,そうしたときにデフォルトルールがどちらかといいますと,個別論点の検討の際に申し上げましたとおり,危険の増加の趣旨からすれば,増加時から保険の利益を受けるといいますか,保険のいろいろなカバーを受ける以上は,それに見合った保険料を払うというのが恐らく基本的な姿であろうということから,ここも免責になるのは危険の増加後に発生した保険事故としているところでございます。ただ,ここは片面的強行規定ですから,保険契約者側に有利に,つまり現行の約款どおり帰責性のないような危険の増加については,知った後の保険事故に限って免責とするという約款はもちろん引き続き有効ということで整理してございます。   それであれば,帰責性のあるなしという区別をここに持ち込んだらいいではないかということが一つ考えられるのですが,今回,その発想はやめて引受範囲内,範囲外で整理をしたということでございますので,これ以上,規定を複雑にしない意味でも,ここはすっきりそういう整理でデフォルトルールを置くことにしてはどうかということで,こちらとしては考えてございます。   それから,告知とのバランスという御指摘をいただきまして,保険者側の故意・過失が告知の方は解除できないとなっているのに,こちらにはないではないかという指摘は,私はむしろこちらにはバランス的に持ち込むべきではないと考えておりまして,告知の場面は契約を締結するかしないかの選択ができる場面ですから,告知されていないけれども,告知すべき事実を知っていて契約した以上は解除できないというのはある意味当たり前だと思いますが,ここは締結後の危険の増加の場面ですから,危険の増加を保険者側が知っていたからといって,知っていたからといって今から契約をやめられるわけではなく,契約締結の自由があるわけでもないわけですから,そこは保険者側の悪意・善意ということを持ち出して,それによって解除権の帰すうが左右されることはかえって不適当な場面であって,それは持ち出さないのが相当であるというように考えております。   それから,今の約款がどうなるのかということで火災保険の例を御指摘いただきましたけれども,○○委員自身おっしゃいましたように,今回の整理は,解除をこの場面に限り,そして解除し得る場合に免責が働きますという整理をした上で片面的強行規定としておりますので,解除できないのに免責云々というのは片面的強行規定に反するということで,そういう約款があるとすれば見直しが必要になることというように考えております。   それから,著しい危険の増加という表現はやはり残すべきではないかという点につきましては,こちらとしては実質を変えていないということは御理解いただいているということのようですので,あとは先ほど冒頭に申し上げましたように書き振りの問題ということで,引き続き整理をしたいというように思います。   あともう一点,すみません,聞き漏らしてしまったのですが。 ● ですから,増額請求をする規定を置くことは片面的強行規定に反しないということが,どうも多分そこは,そういう素朴な,結局,この条件よりは契約者は保険料を払うという意味では不利になるわけですよね。 ● それは先ほどもちょっと申し上げましたが,要するにここは解除なり免責と結び付けるものについて考えているということでございまして,5頁の(注1)の括弧の中で書いたところで,こちらとしてはそれは片面的強行規定に反するものではないという整理をしてございます。 ● 保険会社が通知すべき事実を知っていたなんていう場合は,もう通知をしてもらう利益がなくなっている場合ですから,(イ)のところの解釈で②のような免責の効果というようなのは発生しないということも,あり得るのではないかなと思います。確かに通知義務と告知義務との均衡というのは私も強調してきたのですが,余り通知義務で保険会社側に故意・過失があったら通知義務違反の効果が発動できないというのは,余り外国の規定でもないのではないかと思うので。 ● 余りこだわらない,ただ,比較するとそういう論点がありますよということだけで,問題は,結果として全体としてこちらの方がシビアになるのは,論理的におかしいというところを申し上げたかったので,そのために先ほどの重過失のところとか,やはり重過失のところはもうちょっと何とかならないかなという,そういう意識。 ● どうですかね,告知義務で実質的に先ほどのような解釈をするのであれば,ある程度のバランスというのはこちらにも働いてくるのかなという気はするのですが,そこはどうですか。 ● そこはまさに解釈論ということになろうかとも思います。 ● そういう方が望ましいのだということはある程度……。 ● どうもこの規定は,今までの商法とかあるいは約款というのとかなり考え方が根本的に違っているような気がするので,非常に難しい規定だなという印象が……○○幹事,どうぞ。 ● 増額請求については御説明いただいて大分理解はしたつもりなのですが,ちょっとまだ完全に理解できていないところもあるかもしれないので,まだちょっとこれは考えさせていただきたいのですけれども,最後に○○委員がおっしゃった用語の問題なのですけれども,危険の減少のところでは保険料が安くなるような危険の減少を指すという趣旨で,著しいという言葉を付けているということなのですが,危険の増加も著しいということを書いていなくても,危険の増加というのは少なくとも保険料が変わるような場合を指して危険の増加と言っているので,危険の増加については著しいと書いていなくても保険料が変わる場合が前提となっており,危険の減少については著しいという言葉が付いていると,やはりアンバランスだと思いますので,どちらかにそろえていただく方がいいのではないかと思います。 ● 御検討いただいて……○○委員。 ● ○○幹事が一つ前に発言されたところの一部について少し申し上げたいことがあります。質問というわけではなくて意見だと思うのですけれども,危険の増加があったときに解除せずに免責という約款に対して,今回の提案は認めないことを含意していると,なぜならば危険の増加があったときには,解除して免責というのを片面的強行規定で定めているからだというお答えだったように思います。私は実質的にそういう考え方をこの場面でとることは賛成です。   しかし,大分その考え方というのは高度なものだと思うのですね。ここに書いてある危険の増加というのは解除権の原因を定めていて,効果を定めていて,そして権利行使の期間制限を定めているというものですから,この原因と効果,効果のところが問題なのですが,効果と期間制限について片面的強行規定であって,期間制限は強行規定なのかもしれませんが,それは先ほど一応乗り越えたということで触れませんが,要するに保険契約者側に不利なものは認めないということだけだという考え方も成り立つのだと思うのです。したがって,○○幹事がお答えになったことは出てこないという考え方も出てくるのだと思うのです。   したがって,そこを○○幹事の考え方で臨むのだと,この立法はそういうことも含意しているのだということをなかなか法律の形にするのは難しかろうと思いますので,要綱案の取りまとめについてどうのこうのという意見はないのですが,やはりその後のあるいはその後のさまざまな活動,作業があろうかと思いますので,そういうところで今の考え方というのを是非強調していただきたいと思います。上等なというのでしょうか,上等な考え方であるのですけれども,だからといって当然にそうなるわけではどうもないのではないかというふうに思いますので,実質は賛成ですので引き続きよろしくお願いしたいと思います。 ● それでは,まだこの項目は続いていますが,時間が大分埋まっていますので休憩にしましょうか。休憩後に2のところを引き続きやります。           (休     憩) ● それでは,そろそろ再開してよろしいでしょうか。   それでは,2の部分,今の危険の増加の部分もまだ含めて結構ですので引き続き御意見をお願いいたします。危険の増加のところ,この部会もそう後がない割にまだ問題がありそうなので,問題がありそうなところは,今日のところで御指摘いただくとありがたいなと思います。   ○○幹事。 ● 規定振りといいますか,それはさておいて今日,御提案になった危険増加の①の(ア)の件なのですけれども,ここのルールでいきますと,増加後の危険が言わば保険者の負担ができないような状態に危険が著しく増加したと,この場合も結局このルールでいきますと,保険会社が例えば免責を得るためには解除をしなければいけないと,こういうことになるわけですね。そうすると,この危険増加にかかわる例えば免責条項を約款で設けているようなケース,例えば自動車とか火災なんかである,通常,我々は免責条項と考えてきたものですが,内乱で火災発生の危険が著しく増加する,あるいは自動車の損傷が生ずる危険が著しく増加すると。   しかし,内乱があったからといって必ず火災がその家に発生するわけではないし,自動車が損傷するわけでもないと。一応,その危険が非常に大きい状態が相当継続しますねと,こういう状態でありますと。これは通常,免責条項として設けているわけですけれども,危険増加の観点からいえば,これは一応危険の著しい増加ともとれなくはないですね。一方で,約款のつくり方で免責条項とすれば,何も解除を打たなくても免責になる。しかし,それがもし危険増加というふうにとらえられれば,そのケースは今の整理の仕方ですと解除を保険者会社がしなければ,保険会社としては負担しなければいけない一件になるのかと。これは解釈でもう処理するのですと,こうおっしゃるのであればそうするのかなとは思うのですが,ちょっと場合によっては切り分けにくいケースも出てこないかなと。   今,申しましたのは一例でございますけれども,要は危険増加が著しくて負担が保険会社としてそもそもできないようなケースについては,従来,免責という形で解除とかいう形の意思表示なく,当然免責ですよという免責条項を入れていたのですが,それも整理の仕方いかんで変わってきて,解除を打たなければ免責されないのだと。これも何かちょっと妙な感じもいたしまして,そのあたりは一応整理は付くというふうに考えられたのだろうかということですね。 ● 今,○○幹事に挙げていただいた例でいきますと,免責に内乱と書いていれば,免責事由を主張することによって免責の効果は取得できるということになろうかと思います。書いていない場合であれば,あと,危険の増加にまず当たるか当たらないかということと,当たるとした場合には(ア),(イ)に当たるかどうかで解除できるかどうか,そして解除すると同時に合わせて免責を主張できるかどうかが決まると。そこは整理できるというように考えております。 ● 懸念しました点は,懸念というのは変ですけれども,要は著しい危険増加のケースについて免責条項と書けば,危険増加の規定の方は一切適用はないということも,要は約款のドラフティングの技術によって何とでもといったらちょっと言い過ぎでしょうが,技術の巧拙によって,見事に危険増加の適用はないねという処理が一種可能になるのではなかろうかと。それは(イ)のケースでも場合によってはあり得るかなというふうには思うのですけれども,それは不当条項といったような規制はかかってくるのだろうと思うのですけれども,免責自体についてですね。その点が懸念を少し持った次第です。 ● 今,御指摘の点は恐らくすべての片面的強行規定で問題になり得るところだと思いますけれども,内乱と免責に書いた場合の考え方は先ほど申し上げたとおりですが,例えば一番極端な例で免責のところに危険の著しい増加があった場合と書いたときに,危険の増加の規定は働かないで,すべからく免責で何とでもできるようになるかというと,それはもうまさに危険の増加を片面的強行規定とした趣旨に明らかに反する条項ということになるでしょうから,それは否定されるということになろうかと思います。   それは恐らく危険の増加だけではなくて,ほかの例えば極端な例でいうと,因果関係不存在の特則も,因果関係がない場合を免責に書けば全部セーフになるのかというと,それは何のために因果関係不存在の特則を片面的強行規定としたのかということになって,まさにそれを潜脱するためだけの規定ということであれば,片面的強行規定に反するという解釈に恐らくなるでしょうから,そこから先は片面的強行規定の解釈と言わざるを得ないのかなというように考えております。 ● この辺は,このように改正されたら学説が頑張っていただくというところではないかなと。従来,日本では片面的強行規定はなかったので,こういう議論は余りしなくて済んだのですが,今後はそれをシビアにしなくてはいけない。ドイツなどで昔からやっている論争だと思います。   ほかにいかがでしょうか。   超過保険のあたり,前回と若干規定振りが変わっておりますが,この点もよろしいでしょうか。ちょっと最初見たときは取消権なんていう言葉が出たのでぎょっとしたのですが,実質はこれまで議論……。   ○○委員。 ● この超過保険のところですけれども,中間試案では返還を請求することができるとしてあったのを取り消すということになったわけですけれども,そうすると取消権としたことによって,いろんなことが起きないかということをやはり考えなければいけないと思うのですけれども,一つは時効の問題があって,取消権の,民法第126条ですか,追認できる時からということで実際に知った時からということであれば,そこは余り実際は問題ないのかもしれませんけれども,ただ,20年ということですが,20年以上の契約がありますね。そういう場合にこれはどうなってしまうのかと。   これをちょっとまずひとつ,20年超の契約は火災保険なんかでもありますから,その場合に第126条を適用すると,後半では取り消せないのかいう問題があるのと,あと第125条の法定追認の規定があって,何か総合保険で小さな請求をすると取消しできなくなってしまうのか,それから更改というのもありますから,法定追認の中に,そうすると取消権がなくなるわけですよね。そうすると1年契約だとすぐ取消権がなくなってしまうのか,それは継続契約で解釈するのかと,そういう問題が出てくるのではないかなと。だから,前の方がいいのではないかなという,だから中間試案の方がそういう点を考えると保険には非常に多様なものがあるし,いいのではないかなという問題と,もう一つ重過失のところの問題があったと思うのです。   重過失については議論があって,3人か4人の方がこの点については反対ないし危惧の念を表明されて,私が一番今でも覚えていますのは代理店が保険期間中に保険価額が上がるかもしれないと一言言いさえすれば,議事録にある文言ですが,保険契約者に悪意か重過失があるとされてしまうのではないかと,こういう問題が出てくる。これは余り好ましいことではないと。これは第8回議事録の24頁の発言なのですけれども,そのときはそれで重過失を過失にすべきではないかというような議論があったと思うのですが,ただ,やはり成案を得なければいけませんので,どういう場合を重過失と見るのかということで,きちっと一回議論をしておく必要があるのではないかと思うのですけれども,一応,この規定は企業は関係なしと,片面的強行法規ということで消費者保険を念頭に置いて,それで一応重過失の定義も注意義務を大きく怠ったといいますか,注意義務の程度が重たかったという場合に一応定義をして,普通は代理店が計算してやってくれるわけですね。そのとおりやっている限りは過失までであると。   次に,今言ったようにひょっとしたら値上がりするかもしれませんよとか,少しアローアンスを見ておきましょう。そこまでか,値上がりするかもしれませんよと言ったときはどうかと。3,4割アップでも構いませんよねと言ったら,これは故意だと思いますけれども,問題は代理店がちょっと上がるかもしれませんから余り低過ぎるのもとか言ったときに,黙っていると重過失になるのかという,どのあたりを重過失というかというのを議論すれば,成案を得られるのではないかなと思うのですけれども,確かこれは○○幹事がおっしゃっていたあれだったと思うのですが,確かにこれは一つの販売話法として上がるかもしれませんよというのを言われると,重過失だと言われる可能性があるかというと,あるような感じもするし,ちょっとここを皆さんどうお考えになるか,特に民法の方にもお聞きできればと。その上で何かまた結論というか成案が得られればと思います。   あともう一つ最後に小さいところ,ただし書なのですけれども,これは後で評価済保険のところとも関係するわけですけれども,「定めたときは,この限りでない。」と,超過保険の①の「ただし」というところですね。これは評価済保険のときも従来の法文がこういう規定なので,これで評価済保険だともちろん言ってきたわけですけれども,でも,評価済保険というのはあらゆる場面でそれを基準にして,それを保険価額ということで処理しましょうという契約で,単に決めただけでは評価済保険にならないわけですよね。だから,そういう趣旨を表すために後のところで議論しても,何か言葉はその場で代理店契約で定めているではないかというと定めているわけで,協定するとか別の言葉にしないと,定めているのだから意味が違うわけですよ,法律的な意味と協定するという意味は違うわけで,そこはちょっと今回工夫された方がいいのではないかなと。これは後ほどやっていただきたいと思いますが,基本は取消しの問題と重過失の問題です。   以上です。 ● 最初の取消し構成についての御疑問はそのとおりでして,民法が適用されれば確かに行為時から20年で取り消せないということになるわけですが,20年以上たってなお取消権を残さなければいけないかというと,民法が一般的な取消しの場面での判断としてこういう規律を置いているわけですから,そこにゆだねようというように考えております。そうだとすると,長期の契約を考えた場合に無効の方がいいのではないかという御指摘であろうかと思うのですが,無効だとしますと,ある意味一律に無効か有効かということになってしまうわけですが,むしろ価額は変動があり得べしだとすれば,多めに付けてしまっていたことが後で分かったけれども,今現に価額は上昇局面にあるから,ここまでは生かしたいとかいうときに,契約者に逆に生かす道を残してあげる方がより柔軟な規律になるのではないかとこちらとしては考えまして,取消し構成にすれば一律に超えていた部分が無効ということではなくて,取消権の行使の対象として契約締結時の価格より500万多かったけれども,その後の価格の変動とかを見ると,200万オーバー部分は生かしてもいいやと,300万だけ取り消して,そこだけは保険料を返してもらおうとかいうように選べた方が,かえって契約者にとってはいいのではないかというようなことを考えまして,確かに20年以上たった場合のことを考えると言えなくなるということはあるにしても,むしろそこを想定するよりは,より柔軟な解決という方を優先するといいますか,そういう規律とすることの方がより適切ではないかということで,今回の提案に至ったということでございます。   重過失の点につきましては,中間試案以来ずっと申し上げてきていることですが,民法の錯誤にしましても商法の現行の第643条にしましてもそうですけれども,重大な過失がないことを善意とセットで要件とすることによって,契約の効力や保険料の返還といった効果と結び付けているという面がありますので,そこはそのまま維持した上で,あとはケース・バイ・ケースの解釈ということで対応せざるを得ないのではないかというように考えております。   最後の①のただし書が分かりにくいというのは,確かに部会資料の体裁になってしまっていますので,分かりにくいことになっておりますが,ここは○○委員がおっしゃるとおり,意図しているのは評価済保険に当たる場合ということですので,そこは書き振りの問題として恐らく法文の姿になる場合は,どこかに評価済保険に関する規定があって,それに当たる場合といったことが明確になるような書き振りにすることになると思っておりますので,条文化の段階で今いただいた御指摘を踏まえて検討したいというように思います。 ● ○○委員。 ● 20年は全くおっしゃるとおりだと思うのですが,純理論的な話ですから。問題はこれは民法の方に助けていただきたいのですが,履行請求,総合保険で小さな損害,費用を火災保険で請求したとか,そういうのがあるともう取消権がなくなってしまうのかと,それから更改の問題ですね。このあたりは大丈夫というのであれば私はそれで飲み込めますけれども,そこは助けていただきたいという問題と,先ほどの二番目の重過失のところは現実にやはり立法事実として何が重過失かというところは,それは○○幹事にお願いするということよりも,何かもうちょっと議論があって,それが議事録に残るような形になると助かるのですけれどもという趣旨なのですが。   以上です。 ● ○○委員。 ● すみません,先ほどは逃げ切ったのですけれども,○○委員が御発言のうち,片方にしかちょっとうまく答えられないのですが,更改について1年ごとの契約の更新が当てはまるではないかということですが,それは多分御心配は要らないだろうと思います。この更改というのは債務の消滅原因の更改を言っていて,日常用語というのですか,取引用語で使われることのある更改ではないと思いますので,1年ごとの契約で更新といったり,何というかはともかく,それでこの法定追認に当たるということにはならないだろうと思います。   一部請求の方ですが,そこはよく分からないのですけれども,損害保険契約というのをどうとらえるかという何かここにかかわらない一般論があるのかなと思うのですね。火災保険があって,超過保険の一つの典型例としては火災保険だと思うのですが,今おっしゃったのはそれに日常生活の中での責任保険が付いていて,それを請求したときにどうなるかというようなことをおっしゃっているのかなと思ったのですが,それは別の保険なのではないかなというふうに思いますし,そう解釈することが今,○○委員御指摘の問題を適切に解決するだろうと思うのです。   ただ,そういう解釈で本当に大丈夫なのかどうかがよく分からないところで,ほかにも,ここは今,損害保険の話なのかもしれませんが,特約という話がこの部会でも何度も出てくるのですけれども,それが別の保険と考えた方がいい場面もあるように思うのですが,やはり一体の保険契約なのだというふうに考えて処理をするということもあるように思われますので,ちょっと今のような一般論に広がるところであって,よく私からはうまく答えることができません。申し訳ありません。 ● やはりこういう……どうぞ,○○幹事。 ● 今,○○委員と○○委員で議論されているのは民法第125条の法定追認の話なのではないかと思うのですけれども,法定追認というのは普通の追認をすることができる状況になった後に,一定の行為をした場合ということで限定が付いていますよね。そうだとすると,一部履行請求したけれども,そのときは超過保険だということを知らなかったならば,追認できる状況ではないわけですから法定追認も生じないということで,それで問題ないのではないでしょうか。 ● 前提を誤解した。 ● そこは多分それでよくて,重過失も要するに普通の契約者がこれで取消権がなくなったと言われてもしようがないよねという程度に,物事を理解していたというあたりが前提になるのだろうと思うのですよね。だからよほどこの超過保険のあたりの仕組みがきちんと理解できている契約者であれば,重過失があったということはあり得るのかもしれないけれども,一般の消費者でここがちょっと高めに設定されていたり,代理店が先ほど言われたようないろんな言い方をしたからといって,何かそれで,あなたは気が付いていたはずだから重過失というのは,普通は考えられないと思うのですね。 ● そのお話を伺いたかったのです。ありがとうございました。 ● ほかに。○○委員。 ● 一般の消費者の観点から申し上げて二点だけお聞きしたいのですが,お聞きしたいことの一つ目は,(3)の②の方に「将来に向かって」と,こうやって書いてあるのですが,請求できるのは請求時点からの部分を減額する請求なのですか,それとも実際に超過している部分を超過している時点からの部分も請求できるのかというのがちょっと分からない。実際に事実として減額請求をするのだけれども,実際にはいつから超過しているかという部分からなのか,それとも請求時点からなのかというのが一つ分からないことです。   それから,もう一つ目は,①の方は締結の時から善意で重過失がなかったときには取り消すことができるというつくりにしていただいていますと。そうすると,1年ごとの保険なんかの場合は結構なのですが,例えば長期の火災保険みたいなときになりますと,最初のときにはきちんと超過しないで保険金額と保険価額が合っていましたと。それが気が付かないのを重過失というかどうかは別ですが,気が付かないうちにいつの間にか10年たってもずっと同じ保険金額を付けていたのでかい離が生じましたと。そうなったときに,二番目の方の将来に向かってという,一番目の方はしょっぱなからかい離がないといけないわけでしょうから,二番目の方でいうと将来に向かってだと。そうすると10年たって気が付きましたというときに,さかのぼれないということになるのではないだろうかというふうに疑念を持っていまして,疑念なら結構で,さかのぼれるのですとおっしゃられればちっとも構いませんが,もしかしてさかのぼれないのではないのかと。   そうすると,例えば今,現行,大変トラブルになっています火災保険の超過保険料の問題があって,それは無効だから不当利得だから返してもらうというスキームにしていて,事実上,さかのぼって返していただいているという,そういう実務があるのができなくなったら,具合が悪いなというふうに心配をしておりまして,そこの部分をちょっとお教え願えないかと思っております。 ● ○○幹事 ● 私がしゃべるのはどうかと思いますが,今の○○委員のようなものを私たちは不合理だというふうに従来解釈をしてきていて,むしろさかのぼって返してもらうということは,実はそこを一部分リスクをきちんと負担してもらっていたのに,最後のところで全部保険料が返ってくるというのはおかしいと,そういうふうに従来議論してきたと思いますので,最初から将来に向かって減額請求権になったという考え方は,過去の分はきちんと対価が補償,要するに一度も役に立たなかったところは別なのですが,これが①の部分ですよね。   今のお話ですと,少なくとも契約を締結した段階では保険料できちんとリスクを負担していただいたわけですから,それがさかのぼって全部返ってくるということになりますと,最初から安い保険料しかかけていなかった人と同じ保険料で済むことになって,しかもたくさんの補償を受けるということになりますから不合理だと,そういうふうに理解してきたように思うのですが,これをとれるというふうには解釈していなかったように思うのですけれども。 ● 借地借家法などでこうこうこういうときは,将来に向かって請求できるというのと同じだというところまでは分かっていたのですが,当の借地借家法がどうだったかがちょっと頭に浮かばなかったものですから,今,確認していたのですけれども,将来に向かって請求できるということですから,○○委員の御質問に対するお答えとしては請求時点以降ということになり,その理由はというと,今,○○幹事にお答えいただいた内容で恐らく説明することになるのだろうと思います。 ● どうですか。 ● この部会の最初のころにそう教えていただいて,なるほどなというふうに思ったのですが,ただ,この部会の中でそういう話をしているときに,消費者側が結局は募集人さんの言うがままに保険を付けてしまって,保険金額と保険価額がかい離していることに全く気が付かないできていると,それがいつの時点から超過になっているかという大変難しい問題があるにしても,そういう部分についてやはり不当なのではないかという部分があって,それは返還してしかるべきではないのかという議論が私はあったのかなと思っておりまして,その方向で①が出てきたのだろうとふうに思っていたのです。ですから,①の場合は単年度の保険だったら,もちろんそれでちっとも構わないのです。   申し上げているのは長期の火災保険,例えば住宅ローンと一緒にくっ付ける火災保険だと,20年,30年,そういう火災保険があったら,頭のときは合っていたけれども,ずっと合っていないということなると,すみません,お言葉を返して申し訳ないのですけれども,ずれてきてしまうと,結局は保険価額までしか出ないわけですよね。そうすると,その上に乗っかっている部分はやはりいわゆる消費者サイドからいうと,意図しないで超過している部分でございまして,そこの部分は不当に取られているという,大変そういう言い方がいいかどうか分かりませんけれども,そういう理解というか,認識をしている部分が多分通常だと思うのですね。その部分はやはり落ちてしまうのかなというのがありまして,そこを御確認をさせていただきたいということでございます。 ● そういう意味では今回の6頁の①,②の提案は,①の方はできるだけこれまでのこの審議で出たものを受け止めるように,かつ,それが柔軟に働くようにと仕組んだものでございますが,②の方は将来に向かってというルールを先ほどのような整理にした場合には,今,○○委員がおっしゃった部分はある意味落ちてしまうことにはなると思います。そこはさらに②の契約ルールをもっと工夫するという形で受け止めるやり方も考えられないではないと思いますけれども,そこはなかなかちょっと難しいところがございまして,あとはそういういつの間にかかい離が生じていたということがないように,極めて長期に及ぶ,しかも価格の変動が予定されるものについて,②を時期を逸せずに消費者サイドが使えるように,保険者サイドのサービスでやっていただくとか,何かそういう形で受け止める方向しかないのかなと思っておりまして,契約ルールとしてはちょっと厳しいかなというのがこちらの現時点での認識でございます。 ● ということですね。   ○○委員,どうぞ。 ● 同じ内容で申し訳ないのですけれども,火災保険で5年後とか何かに更新するようなもので,当初の新築のときの評価額で保険が掛けられているというのがあるのですよね。そういうものの場合は更新のところへさかのぼって返すとか,何か評価額は分かっていくわけですよね,変わっていくのが,ずっと続いているのではなくて。そうした場合もたまたま何回かの更新の後にそういうことが分かって,だから私は随分評価額以上のものを掛けた,払ってきているのだから,だから掛けてきているのだからという話は消費者の側とすれば,当然,そういう考えになるのですよ。それをどうやって私たちは説明すればいいのかなという感じなのですけれども,法律が法律だからと言えるかどうかという部分で,○○委員と同じように大変その部分では……。 ● どうぞ。 ● まず,今の○○委員の御発言のうち,更新の場合,更新の時に既に下がっていたけれども,高い価格のまま更新してしまったというところは,①の「締結」の解釈でいけるだろうというふうに考えてございます。   先ほど○○幹事の方から過去にさかのぼって減額の請求ということになってしまうと,なかなか難しいという説明を申し上げましたように,価格というのは日々変化するものであって,それをいつ,どこで,どうやって確定して,例えば20年前にさかのぼって,毎年毎年,極端に言うと毎年どころではない,毎月毎月ですね,そんなことが実際にできるのかという非常に難しい問題もあるということもございまして,ここは将来効という形で整理させていただいたということでございます。 ● 分かりました。 ● ○○委員。 ● ①の方は基本的に時価保険といいますか,ただし書で評価済みの意味だということなのですけれども,実際には評価済み以外にもいわゆる再取得といいますか,新価だとかいろんな保険の種類があるわけで,一概に私から見れば消費者がすべて,要は,要らない保険料を払っているということにはならないだろうと思うのですね。基本は時価契約が基本で,損保さんの代わりに言っているような感じで申し訳ないですけれども,いろんなケースもあるので,一概に消費者が余計な保険料を負担しているということにはならないし,契約もいろいろあるわけですから,その辺の法文上どう書くかは難しいと思うのですけれども,その辺の整理をしていただければ,理解は恐らく得られるのではないだろうかというふうにひとつ思っています。   それから,もう一つ,一般に信用保険といいますか,質権設定がされている場合に,これは片面的強行規定になっていますので減額ができるということですね。一般的に第三者が絡んだ信用保険といいますか,質権設定等がされている場合に,減額というのは恐らく認められないはずですよね,契約として。そういうレアケースかもしれませんけれども,一般的に住宅資金等を借りる場合には,当然火災保険等の質権設定というのが一般的にやられるわけですから,そこへの効果というのは原則及ばない,実際にできないだろうと思うのですよね。   それが片面的強行規定だということなりますと,その辺をどう理解していいのか,一般の保険ですよと,それが質権設定等をされている場合で,契約によって動かすことができないものについては,適用がありませんよということが法文上,整理ができるのかどうかというのはちょっとあれですけれども,そういうケースもあるので,一概に減額がすべてできないといったら,いわゆる片面的強行規定で,それは無効だと,そういうことはできませんよということでは,ちょっとどうなのかなと,いろんな契約の実態がありますので,その辺はどういうように考えればよろしいのでしょうか。 ● 契約の中で超過保険状態になっている,それを質権にとっている銀行か金融機関が減額に同意しないというのもどうかと思いますけれども。 ● ②のケースですね。 ● ②にしてもですよ。 ● 契約金額というのは大体一般的には固定だと思うのですよね。その種の契約についてはですよ,一般的な契約とは別にして。 ● だから,担保物の価値以上のものを押さえているわけではないので,保険契約の……。 ● その差額は恐らく契約者に行っていると思うのですよね。 ● それは行くのが当たり前ですけれども,保険契約の内容まで一切合理的に修正することができないというのもどうかとは思うのですが,いずれにしても先ほどから問題になっている,継続中に超過状態になったものを過去にさかのぼって返すというのは,どうも技術的にはちょっと不可能に近い,そういうルールを法定するというのは不可能に近いのではないかという感触ではないかと思います。   ○○委員。 ● ○○委員がおっしゃることは全くもっともで,やはり何かそれは解釈論でできないですかね。長期契約といっても結局は一年契約をくっ付けていっただけですから,やはりはっきり価値が下がったというところが分かったら,その年度の終わりからは解釈論でやるとか,やはり何かそれは工夫しないと,おっしゃるとおり……。 ● さらに幾ら住宅ローンの関係で質権の付いた契約で,20年,30年という期間が必要だというと,いったん契約したら全然私が今借りていた際の火災保険だって,銀行が紹介した代理店からその後,何の御案内も何もないわけで,やはりそういう契約の実務が問題だったのだろうと思います。そこは何らかの工夫を,保険会社の方でもいったん契約をとったら,20年,30年,そのとおりで問題ないのだという感覚がおかしいから,今,いろいろ問題になっているので,そこは何か改善を実務上は是非お願いしたいというところかなと思います。 ● ○○委員のおっしゃったことについて,先ほどちょっと私は○○委員に間違った前提でお答えいただいて申し訳なかったのですが,そのときに言った更改と継続という話と同じですが,損保の1年商品には数年たつとだんだん,例えば3年になると2.何倍というふうに保険料を縮減してくるのがありますけれども,一方で年数で倍数するものもありますし,やはりそういう商品構造そのものは1年契約のものですから,だから,それはどうも十分なお答えにはなっていないのですが,やはりちょっと研究者も解釈論のレベルで年単位の期末からは①を適用できるとか,それは商品構造からいえばおかしくはないので,何かそういうことも工夫しなければいけないのではないかということだけ申し上げたいと思います。 ● 実務的には今,○○委員,請求すれば返還をしてもらえることになっているのですかね。 ● 一時,すごく苦情がたくさんありましたが,保険会社さんの方でお調べいただいて,超過保険については保険料の返還をしていただいていると思います。ですから,大変苦情は減ってきていると思います。 ● そういうことで,その実務はこういう規定の改正が行われたら急にやめるとか,そういうことでもこれまたないと思いますので,是非実務的には続けていただくということで,今後はまたこれだけ大問題になりましたので,それなりに実務的にも問題意識されているのではないかと思うので,契約法の規定としてはなかなか立法が難しいのではないかということで,こういう取りまとめで,この際,御了承いただければと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは,2の部分,ほかに何かございますか。   では,次へ進みたいと思います。   今度は3の保険事故の発生による保険給付と,4の損害保険契約の終了のこの二つの部分をまとめて,まず事務当局より御説明いただきます。よろしくお願いします。 ● それでは,御説明いたします。   まず,(1)ですが,注に記載しましたように,これをそのまま法文化するというよりは,保険期間や保険金額の意義として規定することになるのではないかと考えてございます。   次に,資料の8頁の(4)のイのところでございますけれども,いわゆる評価済保険につきましては現行商法第639条と同じ規律を設けるとともに,(注1)で書いてございますが,中間試案における提案に加えて,保険契約者に契約で定めた保険価額の減額請求を認めることを提案してございます。   次に,(6)の重複保険につきましては,②の部分に変更を加えております。その趣旨につきましては(注1)に記載しておりますが,具体例で御説明をいたします。例えば保険者Aと保険者Bがいたという前提で,例えば保険者Aの方は新価保険であるため,保険事故が発生して1200万円の保険金の支払義務を負っているといたします。あと保険者Bの方は新価保険ではなく実損てん補の約定しかされていないため,例えば1000万円の保険金の支払義務を負っていると。こういった場合において今回の②を当てはめますと,1200万円を基準にして,それぞれの保険者Aと保険者Bの負担部分を算出することになりますので,Aの負担部分は算式でいいますと,高い方の1200万円掛ける2200万分の1200万ということで,計算しますと655万円になるのではないかと。それに対してBの負担部分というのは同じく1200万を基準にしつつ,2200万分の1000万を掛けるということで,計算をいたしますと545万円になると。単純な事例でございますけれども,そういったことを今回提案をしてございます。   また,(注2)におきまして保険金請求時の他の保険契約の通知に関する規律や,②以外の求償に関する特別の規律というのは設けないこととしてございます。これらの理由は(注2)に記載したとおりでございますけれども,これらに加え,契約の解除や保険者の免責を伴わない形で,例えば保険契約締結後に他の保険契約を締結した場合には通知をするように求めたり,あるいは保険金請求時に他の保険契約の有無を通知させたりするということは,何ら妨げられないのではないかと考えております。   なお,以上の①及び②の重複保険の規律につきましては,いずれも任意規定とし,これらと異なる合意をすることも妨げられないものとすることを前提としております。   続きまして,(7)の保険金の支払時期につきましては,第四読会での提案から一部文言を変更してございますが,実質的な規律の内容に変更はございません。また,(注1)に書きましたとおり,①の期限の定めがある場合に,相当の期間を超過する部分を無効とすることによって,第四読会での提案の趣旨をさらに明確にしているところでございます。   次に,(8)の消滅時効につきましては,①の期間が2年と3年ということで,依然として両論併記されてございますが,これにつきましては法制的な整理を付けた上で,改めて提案をさせていただく予定でおります。   (9)の保険者の免責につきましては,中間試案でなお検討するとしていた点につきましては,(注1)及び(注2)のとおり提案をしておりますが,もちろん,これらの事由を約款で免責事由とすることを否定する趣旨ではございません。   さらに,(11)の残存物代位につきましては中間試案の内容を変更しておりますが,その理由は(注1)に記載したとおりでございます。また,この規律を片面的強行規定としておりますが,例えば一部保険の場合に保険者が残存物の権利を全部取得すると,こういった約定は無効とするという趣旨でございまして,(注2)のところに書きましたとおり,保険者が残存物の除去義務などを負うことを避けるために,残存物を代位取得しない旨の約定の効力を否定する趣旨ではございません。   最後に,(12)の請求権代位につきましても被保険者保護の観点から,片面的強行規定としております。   続きまして,4の損害保険契約の終了について御説明をいたします。   まず,(2)の重大事由による解除につきましては,解除権の除斥期間を定めるかどうかについて,なお検討することとしておりましたが,これにつきましては(注1)のとおり,民法第547条の規律や解除権の消滅に関する一般法理にゆだねることを提案してございます。これは,ここで問題となっているのが保険金取得目的で損害を故意に生じさせようとした場合,生命保険契約でいえば保険金目当ての殺人未遂の場合などを念頭に置いていることから,民法以上に解除権の制限をすることは適切ではなく,また,保険契約者などの法的安定性という観点からしても,民法の規律で足りると考えられることによるものでございます。   また,(注2)で他の保険契約との関係につきましても,第四読会において既に提案していたところでございますけれども,他の保険契約が重複して信頼関係が破壊されるに至っているような,そういった場合につきましては,①の(ウ)の包括条項に当たるケースもあり得るということを前提としております。   最後の(4)の解除の効力につきましては,これを片面的強行規定としておりますが,(注2)の括弧内に記載した約定は,保険契約者が保険料支払義務を免れるという意味で不合理な定めではないと考えられることから,このような約定が無効とされることはないと考えられるところでございます。 ● 5と6もついでに説明していただけますか。失礼しました。 ● 続きまして,5の火災保険契約に固有の事項でございます。これにつきましては中間試案にありました保険証券の記載事項の項目を掲げておりませんが,これは資料の4頁の1(7)保険証券のところの(注1)に記載したような整理をしたことに伴い,項目を掲げていないものでございます。   なお,中間試案では責任保険契約や権利保険あるいは費用保険などについて,固有の規律を設けるかどうかということがなお検討することとされてございましたけれども,今お示しいたしました4頁の(注1)で若干触れておりますけれども,各規律において必要な手当てを講ずることとし,固有の規律は設けないことでどうかと考えております。   6(1)の責任保険契約についての先取特権につきましては,第四読会において問題提起し,御議論いただいたとおりでございます。   以上です。 ● ありがとうございます。   それでは,順次,御意見をいただきたいと思います。   まず,3のところはいかがでしょうか。   ○○委員。 ● 3の(1)から(12)までということでいいですね。 ● はい。 ● では,簡単に申し上げます。   まず,てん補責任のところは「その他の給付」という文言には損害をてん補する性格というのが内在的にあるのだと,伴っていなければならないというふうに考えるのであれば,それで問題はないと考えます。   (2)の損害発生の通知ですけれども,これは発信主義にしましても任意規定とするというのは意味がないのではないかと。第3回の議事録の34頁にこの点があって,契約者側に届かないことによるリスクを負担させないのだという趣旨が根本にあったのだと思いますので,これはやはり片面的強行法規にすべきだと思います。   それから,支払時期の問題ですけれども,私がちょっと疑問があったのは前回の保険金の支払について期限を定めた場合に,前回の文言でこうこうこういう場合には遅滞の責めは負わないという規定があって,その次にこの文言が来るというわけではないのですか。それは抜けているような感じがいたしまして,その上でのことですけれども,文言がちょっと分かりにくいのですけれども,例えば資料の10頁のところですけれども,「当該事項の確認をするための相当の期間」,これは確認をするために必要な相当な期間を約款に定めてあるものが超えるときは,当該期限の定めのうち当該相当の期間を超える部分は無効とすると,そういう趣旨だと思いますけれども,私は気持ちはやはり日数をとは思いますけれども,成案を得るという観点で,こういうふうにしていただいてよかったのではないかというふうに思います。   といいますのは,やはり前回に比べまして,こういう規定であれば30日というのは事実として厳し過ぎるということにしても,そのあたりだということは大事なことで,ほかの会社が30日でやっているのに我が社は120日と,ここまで書いていただくとこう簡単には言えなくなるでしょうし,中小の会社が30日でやっているのに,人,物,金で勝る大手が30をはるかに超えるというのは,それも簡単には認められないのではないかと思いますので,ちょっと文章は主語をどこに置くかと,それから,あと資料20の2頁にあった本文のものを,遅滞の責めは負わないという規定の後にこれを付けていただければ,それでお願いしたいというふうに思います。   それから,あと免責のところですけれども,これは前から申し上げていますが,ドイツなんかはここはもうちょっと特別に減額して払うような対応にしましたけれども,一応任意規定だということは承知の上で,これも中間試案をつくるときに申し上げましたが,学説,有力説には何人かの有名な先生方が故意に準ずるものに限定するというような解釈をいたしておられますので,デフォルトルールとしても,そういう形にまたできないかと,同じような話がいろんな場面で出てきて申し訳ないのですが,だから,何かこの重大な過失は故意に近似する狭い範囲のものであるとの指摘を踏まえているという注でもあればよいのになと思っているのですけれども,そういうことをお願いしたいと思います。   それから,次が11頁の(10)ですけれども,これは保険によっては,これも損害保険総則になりますけれども,貨物,船舶では分損で担保していても全損は免責している場合にはそうならない場合がありますので,これはこのような約定ができるようにしないといないので,強行法規というのはちょっとまずいのではないかと,これは消費者保険には関係はありませんが,ですから,ここはちょっと任意規定にしていただくというのがよろしいのではないかと思います。   それから,残存物代位ですけれども,なぜ,ただし書がなくなってしまったのかはちょっと私は分からないのですが,一つ,どうしてもこれはちょっとまずいのかなと思ったのは(注2),片面的強行法規とするというところで,先ほど括弧書きのところの説明がされまして,残存物を代位取得しない旨の約定は保険契約者等に不利な約定には当たらないと,これは不利な約定なのですよ,多分。というのは,残骸撤去費用なんて莫大なものですし,保険会社が,あなたが全部やれと言っているわけでも,でも,実際はそこはいろいろP&Iで持ったり,残存物で費用保険金を持ったりしているわけでして,ただ,片面的強行法規というのですか,これは当たらないという説明はちょっとまずくて,だから,やはりこれは任意規定にするということでしょうかね。任意規定にしないと。でも,これは非常に大きな問題ではあると思うのですけれども,そういう感じがいたします。   それで大体,いろいろたくさん言って申し訳ありませんが,以上です。 ● それでは,7頁に戻っていただきまして(2)の損害発生の通知ですが,片面的強行規定にというお気持ちも分かるのですが,ただ,他方で事故が発生した場合に何をどういう形でどう通知してもらうかというところは,恐らく多分いろんな形があり得るところで,例えばこれ以上のことについて通知を求めたとしても,それが厳し過ぎる効果に結び付かないのであれば,それは約款でいろいろ定められていいだろうと思うところでして,ここを片面的強行規定とした場合には,それもまさに解釈によるのでしょうけれども,損害が発生しても求められるのは,(2)で書いたことだけで,これしか約款でも書けないということになってしまって,それは逆にちょっとどうなのかなということがありまして,ここは任意規定の世界なのかなというように考えています。   それから,支払時期の点の書き振りを御指摘いただきましたが,それは書き振りということで,より分かりやすい書き振りを目指すのは当然のことですので,そこはそういう御指摘と受け止めさせていただきたいと思います。   それから,免責のところは御指摘を受ける度に同じことを申し上げて申し訳ないのですが,重過失の点は従来どおりの解釈ということで,ここはましてや判例も古いものですが,あるということも踏まえての今回の整理という恐らく説明になるのではないかというように考えております。   それから,(10)の目的物の滅失のところの注は,実は○○委員がおっしゃるとおりにこちらも考えておりまして,ここで表現上,強行規定としましたのは損害がいったん発生すれば,それ以外の原因で目的物がその後に滅失しても責任は免れないよと言えば,それ以上,被保険者側に有利な約定はなくて,あり得るとすると不利な約定だけなので,そもそも片面的強行規定といって片面的に働く方がないので,表現上,強行規定という言い方をしていますが,(10)の規律自体は性質上は片面的強行規定に当たるものというのはおっしゃるとおりと理解していまして,今日このあと御審議いただく予定の部会資料24を御覧いただければ,その段階で御説明しますが,(10)の目的物の滅失の規律は性質上片面的強行規定に当たるというような理解をしておりまして,いわゆる企業保険の分野では片面的強行規定の対象外とするという整理を私どももしております。   それから,(11)の残存物代位も片面的強行規定として最も気になるのが(注2)の点だったわけですけれども,(11),(12)とも改めて考えますと,やはり法律上の当然代位と言いながら任意規定って何なのだろうと,逆にそこは説明等もしにくいのかなと,そこはやはり片面的強行規定という整理になるだろうということです。   その上で,(注2)の点についてどう解釈するかということにつきましては,片面的強行規定に反するかどうかというのは法律上の権利の帰属というか,帰趨によって判断すべきところで,その対象物の価値があるか,あるいは撤去費用がかかるだけのものかという事実の問題をそこに持ち出して,片面的強行規定における契約者等に不利,有利というのを判断し始めると,それを今度法文に書くのかということになってしまいますので,そこは法律上の残存物に対する権利の帰趨をどう定めているかによって,ここは片面的強行規定に反する反しないを解釈すべき場面であろうと。としますと,(注2)の括弧で書いたとおり,権利を保険者側が取得しないということですから,契約者側にむしろ有利なもので,不利な約定には当たらないという整理になるだろうというように考えております。 ● 私も一応そういう解釈を従来はしてきたのですが,異論は確かにあると思います。 ● 一言だけ。通知のところは要するに到達しないことのリスクは負わせないという点だけに絞って規定することができるかをちょっと,ほかはいろいろ書いてもいいと思うのですよ,保険が複雑になれば。でも,そこのリスクのところが一番ポイントで,そこをお願いできればと思います。   それと,重過失のところは今おっしゃっていただいたことが議事録に載っただけでも,価値があることだと思いますので,ありがとうございました。   それで,やはり残存物代位と請求権代位とか本当に難しいので,デフォルトルールとしては何かなければ,働くようなルールでありながら,何かそんなに強い強行規定性があるかという,そういうところでうまくつじつまが合わないわけですけれども,ここはある程度しようがないかなとは思うのですけれども,多分,絶対議論を呼ぶところですよね。片面的強行法規で不利かどうかという点は直感的にはどう見ても不利だから,何かもう少し我々も考えなければいけないのですけれども,何か少し考えないといけないところがあると思いますが,ありがとうございました。 ● では,○○幹事。 ● ちょっと別なところになるのですけれども,評価済保険のところで保険者の方からの減額請求というのが追加ということのようなのですけれども,何となくこの評価済保険というのはもともと将来,最後のところでどうなるかは分からないということを事前にフィックスさせてしまうという,そういう要素を持っている契約の仕方だと思うのですけれども,それもやはり最後のところで価格で調整されるのだということなると,やや何か本来の評価済保険の持っている機能というのとはちょっとずれてしまうのかなという感じは否めないわけなのですが,政策目標はよく分かるのですけれども,こういうもので実際かなり多額の保険金をもらってしまって,実際の損害額からはかい離しているということを何らかの形で配慮しようということは分かるのですが,それを保険会社の方の側のオプションにしてしまっていいのかというような感じが,ちょっと気になったということなのです。   恐らく想定しているのがどんなものなのかというふうには思いますけれども,従来,評価済保険がよく使われていたのは船舶とか,そういう保険の分野において寄港地によって価格がいろいろ違ったりして,よく分からないというような場合とか,いろんな資材の値上がり等々によって価格がかなり変動するというようなものについて,将来,その時点になってから幾らと評価されるか分からないということを,先にリスクをヘッジしてしまおうという形で締結しているものだというふうに思いますが,そういったようなものを想定すると,このただし書の部分はちょっとやや余計なのかなという感じがすると。   他方で,これから出てくるかどうか分かりませんが,今,火災保険の分野では付保割合を固定させるというやり方はやっていますけれども,最終のところで損害額をあらかじめ約定した保険価額でというものは,今のところはないということになっているわけですが,先ほども議論がありましたように,いわゆる超過保険の話などを考えていきますと,むしろ評価済保険にしてしまって,もう評価をめぐるトラブルは事前に回避しましょうというようなものも出てくる可能性はあって,それは必ずしも不合理ではないというふうに私は思うのですが,そういう場合でも,最後はやはり保険会社の方からかい離度が高ければ,もとに戻すことができるというので,制度のつくりとしていいのかなというか,政策目標は分かるのですけれども,これでいいのかなというのをちょっと思ったのですが,どうでしょうか,何か評価済保険の私のイメージが固いのかもしれないのですが,そこはミスマッチということにはならないのでしょうか。 ● 評価済保険の果たしている役割というか,それに対するニーズというか,こちらはこういう御提案をさせていただいておりますが,○○幹事が今おっしゃっていただいたのは,そういう意味で全く違いはございません。ちょっと弁解がましい言い方になるのですが,ここで言うただし書の「著しく」というのは,現行商法もこういう言葉だったと思いますし,(注1)で新たに御提案させていただいた「著しく減少」もそうなのですが,危険の増加で先ほど御指摘いただいた点,あるいは今回の6頁の危険の減少で御提案させていただいた「著しい」と,ここは別の意味で実は考えておりまして,そういう意味では同じ言葉を使っていいのかという問題はあるのですが,ここはあくまで評価済保険で今,○○幹事がおっしゃるフィックスさせることがそもそもの目的だったというのが,ちょっとずれたからどうこうということを全くイメージしているものではなくて,あくまでそれこそ利得禁止,信義則に反するような,そういうごくごく例外的なシチュエーションが生じた場合には,さすがに手当ては残しておいた方がいいのではないかという発想で考えてございます。 ● 何となく公序というイメージでとらえればよろしいですか。 ● はい。 ● それであれば分かりました。 ● まさにそういう趣旨ではないかと思います。よろしいですかね。 ● この評価済保険の規定,先ほど余りにも言いましたのでちょっとためらったのですが,このただし書のところの「①の価額を著しく超える」というのは,要するに損害が生じた地における価額ということですね。評価済保険は,その地では安いのだけれども,向こうの方で高いからこそ評価済みにするわけで,ここでやってしまったら肝心の機能がなくなってしまうので,これはちょっとまずいのではないのですか。評価済保険というのは出だしの地では安く,しかし,地球の裏側ではむちゃくちゃ高いというときにやるわけで,損害額の高いかどうかを出だしの地で,損害が発生した地が向こうであればいいですが,オンボードする前になってしまったら機能が全然果たされないというか,そんなふうに思ったのですね。   それから,あと減額請求の規定,保険料を戻す規定がなくなってしまったわけですよね。今のところは評価済みは消費者保険ではないので,みんな似ているけれども,新価保険ですから消費者の問題ではないのですが,今日はいらっしゃらないのであれですが,企業保険のユーザーとしてはちょっと,もしこういうただし書ができるのなら,やはり保険料返還の規定はないとまずい,それから,いつからやるかという問題もあると思うのですが,これが削られた説明があったのでしょうか,余り間がなかったのですが,ちょっとここは見た限りでほかのところと十分時間を掛けて調べていませんが,なかなかぱっとよく飲み込めないところなのですが。   以上です。 ● 今,御指摘いただいた8頁のただし書というか,中間試案であった提案を落としたということは(注1)の最後の括弧書きで断らせていただいているところですが,その理由は,中間試案の御提案を御覧いただければと思うのですけれども,保険料返還スキームというのを仕組んでいたわけですが,他方で過去にさかのぼって保険料を返せというときに,保険の利益を受けていたのに,その部分を返せというのはおかしな話なので,受けていた部分は除かなければいけないと,こういう提案にしていたのですね。先ほど保険価額の減少のところで,過去の分にさかのぼってそういうことができるかは,なかなか難しいので,6頁の保険価額の減少の②の規律もやはり将来に向かってとせざるを得ないと申し上げたことと関係するのですが,やはり保険料の調整を過去にさかのぼってすると,そのときに保険の利益を受けていた部分はそのまま保険者の取得を認めて,超えていた部分だけ返すなどということは,ちょっととても技術的に実現できないであろうということから,そこはあきらめざるを得ないだろうということで落としたということでございます。   ただ,もともとこのただし書自体が働く場面が,先ほど申し上げましたとおり,今,○○委員がおっしゃった例えば寄港地によって違うとか,そういうようなことで,そういうときに働かなくなってしまうというような形でただし書が機能するとは全く思っていませんで,それよりもずっとレベルの高いというか,公序のようなそういう場面でごくごく限定的に働くということでも支障は生じないのではないか,大きな問題はないのではないかと考えておりますし,さらに企業保険ということで申し上げれば,(注2)にありますとおり任意規定ですから,そこは約款でしかるべく保険料についての何らかの精算条項を置くことはもちろん妨げられないというように考えております。 ● すみません,一点だけ。でも,これは任意規定でも要するに評価済保険というものから,昔から考えられていたアイデアルタイプというか,それから外れてしまっているのではないかという主張なのですよね。特に「①の価額」というのはアの①ですから,「その損害が生じた地におけるその時の価額」ということで,石油,穀物でもそうですが,6か月後の高騰を予想して産地で1で契約して,バリエーションは8とか6とした場合に,船積みの横でタンクから海に落としてしまったというときに,これでバリエーションされますと減額されてしまうような感じがしますよね。だから,何と比較しなければいけないかというと,仕向け地の価格と比較して,初めて全体が評価済保険としての規定になるのだと。ここに「①の価額」といったときに評価,そもそも矛盾しているのではないかというのが私の主張なのです。評価済保険ってそういうものではないのではないか。 ● 従来の評価済保険の認識というのがこちらが間違っているのかもしれませんけれども,8頁のイのただし書で提案させていただいている内容というのは,こちらとしましては現行商法第639条にそもそも書かれているものについて,ちょっと書き振りは違いますけれども,それをそのままというか,基本的に引き継ぐという発想で考えておりまして,そういう意味ではこれまでの評価済保険でも,こういうルールはあったというように理解しておりまして,決してこれまでの評価済保険と発想が変わるということではないと考えております。現行商法第639条が言っている内容は,確かに○○委員がおっしゃるとおり,当事者が定めた保険価額が著しく過当なることを証明したときということで,ある意味,比較の対象を言わないまま過当と言っていますから……。 ● だから,①の価額というのを削るべきではないかという,もし最悪でも。最低限,そこを削らないと,これ自体,評価済保険との自己矛盾の規定ではないかと。 ● そうすると,何と比べて過当を考える,あるいは……。 ● それはマーケットのスタンダードで。例えば大体穀物とか,そういうものでもそうですけれども,どう見たって10倍のところを20倍やったらそうなるかもしれませんが,そのときに,あえてもし書きたければ仕向け地,ファイナル・ディスティネーションかもしないですね。 ● 動産の保険,運送にかかわる保険を必ずしも念頭に,規定は置けないと思うのですね。 ● なるほど。でも,実際,評価済保険があるのはそこですよね。貨物以外で評価済みというのは。 ● 車両,自動車保険,いろいろある。必ずしも貨物を前提にできないかも。ですから,ちょっと規定振りはこうするしかないかなという気がしますが,念のため,もう一回,確認はしていただこうかと思いますが,○○委員。 ● ○○委員のように専門的なことではないのですけれども,このただし書について少し分からないところがあるので,評価済保険のただし書について少し教えてください。これは保険事故が生じて評価済みの価格が2000だったけれども,実際には500だったと,あるいは50だったというときに,減額を請求できるということを意味しているのか,それともまだ保険事故が生じない段階でそのかい離が明らかになったので,あらかじめ損害の額の減少を請求しておけば低い額で保険金を支払うことができるけれども,先に保険事故が生じてしまったら,やはり将来に向かっての減額であるというのが(注1)のところに書いてありますので,結局,空振りというか,できずに過当な評価済みの保険価額に基づく保険金が支払われるのか,そこが申し訳ありません,ちょっとよく分からないので教えてください。 ● (4)のアからスタートして,ずっと一連の流れで考えておりますので,ここは保険事故が生じたときにてん補すべき損害額についてのルールの一環として考えておりまして,その意味で,かつ,イの本文があった上でのただし書ですので,あくまで保険者がてん補すべき損害額を決めなければいけないシチュエーションになったとき,すなわち,事故が発生した後に初めてただし書が働くという意味で,事故発生後のルールと整理をしてございます。それに対して(注1)に書きましたのは将来に向かっての減額ですから,契約者サイドは事故が起きていなければこのままだと,このまま協定した保険価額に従っていくと,ずっと無駄な保険料を払い続けることになるが,それはちょっと勘弁してもらいたいというときに,協定の見直しを求めることができるというので,そちらは事故発生前をイメージしているということです。 ● 分かりました。要するに,イに書いてある本文と(注1)とは別のことですね。正確に読み取らずに失礼いたしました。ありがとうございます。 ● それでよろしい……○○幹事。 ● 私のちょっと最初の質問がやや余り分かりにくくて,混乱を来してしまって申し訳なく思ったのですが,私がやはりただし書のところで感じましたのは,著しく過当という現行法とは違うニュアンスがここに含まれているのかなと,最初はちょっと思ってしまったのですが,そこはそういうことではないということは一応分かりましたので,それは議事録に残ると思いますから,それはそれで分かりましたということで,それから,○○委員がおっしゃっておられる点なのですけれども,「①の価額を著しく超えることを証明したときは」というのは,確かに運送の世界での評価済保険でいくと,これだとちょっとうまくいかないかもしれないなという事例は御指摘のとおりだと思いますが,今,それ以外の家計分野で御指摘のあった自動車保険等のケースを今さっと頭の中に入れて考えてみますと,どうも困るようなケースはなさそうだというような感じもしますので,そういう意味では,そちらはビー・ツー・ビーでビジネス・ビジネスであれば,約款で調整していただくということで,私自身,ちょっと冒頭変な質問をいたしましたけれども,この案で特に異論はございません。 ● ○○委員が御指摘のような事例も,まさに解釈で処理できる問題ではないかなということですね。 ● それでよく分かりました。 ● この問題はよろしいでしょうか。   では,○○幹事。 ● ○○委員が御指摘になった残存物代位と請求権代位の規定が,中間試案では任意規定だったところが片面的強行規定になっているところが気になっておりまして,特に請求権代位の②,一部保険の場合に被保険者の権利のうち,どの部分が保険者に移るかというここが片面的強行規定になっているということなのですが,現行法では規定がなくて,最高裁はいわゆる比例説,可能性としては理論的には三つ考え方があって,真ん中の保険者と保険契約者の一番平等になりそうな比例説で最高裁は考えると,しかし,学説では保険契約者の方に有利になる差額説も有力で今回は差額説をとると,中間試案ではこれを任意規定として差額説で定めるということだったと思うのですが,そもそも一部保険の場合に,被保険者が有している権利がどの範囲で保険者に移るかというのは,結局,つまり差額説でいくのか,比例説でいくのかというのは,保険料との関係で決めていいことではないかなというふうに私は従来思ってきたのですけれども,つまり,確かに差額説をとれば被保険者には一番有利になるかもしれないけれども,その分,保険料は高くなるし,比例説でいけば,その分,保険料は安くなると。   そもそも,この請求権代位の話から離れて一部保険の場合も実損てん補でいくのか,比例主義でいくのかという二つの考え方があって,ここでは現行商法第636条を維持すると,比例てん補でいくというその考え方が最終的にとられそうなのですが,しかし,こちらは明らかに任意規定として考えているわけですよね。実損てん補なのか,比例てん補なのかというのはあくまでも保険料との関係で決めればいい話で,でも,それからすると,一部保険の請求権代位でどれだけの権利が移るかというのも,何かこれは保険料との関係で決めればいい話であるというふうに,従来,考えてきたのではないかと思うのですが,そうすると,何かそれを片面的強行規定として差額説でいかなければ駄目なのだというふうに決めてしまうというところは,実質論としてはいいのかもしれないと思います。   特に実務家の方が別にこれでいいのだと,家計保険に関してはこれで決め打ちしてしまっても,特に支障は生じないのだということであればいいのかもしれないのですが,ただ,理論的にうまく説明できるのか。つまり一部保険のところの一般的なルールと,一部保険で請求権代位が生じた場合のルールというのが任意規定か,片面的強行規定かと違っているわけですね。ここをうまく説明できるかどうかちょっと私は心配で,○○委員もおっしゃったように,ここはかなり仮に片面的強行規定だった場合に,議論が生ずるのではないかなという気がしております。 ● こちらの方は,まだ被保険者が加害者に対して損害賠償請求権を持っておって,それと一部保険の保険金と合わせて両方を行使して損害を回収しても,自分の被った損害を超えるところまでいかないのに,そうなのにあえて約定をすれば,保険会社側で出張って,加害者に対する権利を取得するというふうなところまで認める必要があるかという,要するに本来持っている被保険者の権利をあえて保険会社が一部とっていってしまうと,そういうことを認める必要があるかどうかという,若干一部保険の場合とは違うのかなという……。 ● 確かにそこはそうなのですが,しかし,最終的に被保険者がどれだけの損害てん補を受けられるかという点では,一部保険の一般的なルールと余り変わりはないのかなということで,ただ,損保実務の方で別にこれでも大丈夫だということであれば,あえてここで私ががたがた言うこともないのかなと……。 ● いや,これは実は難しいところで,先ほどの残存物代位の方はまさに片面的強行規定としていいかどうかというのは大問題があって,そうすると,仮にそちらの方に問題があるとすると請求権代位が逆に,残存物代位は任意規定で請求権代位は片面的強行規定というのも何かおかしいような気もしますし,なかなか難しいところだなということなのですよね。 ● 先ほど事務当局でおっしゃった仮に任意規定とした場合に,こういう不都合が生ずる例として,例えば残存物代位でいうと,一部保険の場合なりに保険者が目的物を全部取得してしまうとか,これを請求権代位に引き直すと,例えばてん補した損害額の額を超えて権利を保険者が取得してしまうと,そういうことを定めた場合に,そういう規定も有効になってしまうのではないかという,そういう御懸念からこれを片面的強行規定にされたということなのかもしれないのですが,ただ,そんなことを定めたら明らかに不合理ですので,仮に任意規定だとしていても,それも消費者契約法等を通じて,その効力を否定することは可能だろうとは思うのですけれどもね。ということで,私も最終的に結論がまだ揺れておりまして,ただ,②の一部保険についてはやはり従来,一般的に考えられてきたところからすると,違和感を持つ人も少なくないのではないかという気がしたものですから,あえて発言させていただいたのですけれども。 ● 立法技術的に片面的強行規定でないと説明が付かないとか,そういうことではないのですか。 ● 先ほど申し上げましたように,法律上,当然代位だけれども,任意規定で,別の規定を置けば外せるということですね。そうすると,法律上,当然代位と書いてあるけれども,約款を見ないと一体その人が代位しているのか,していないのか,さっぱり第三者から見れば分かりませんというので,そういうのを法律上,当然代位と位置付けられるのだろうかというのがありますので,やはり,そこがクリアできないと,任意規定で使ったり,使わなかったりというのは難しいように思います。要するに約款で使えますと書いていれば,あるいは何も書いていなければ法律上,当然代位ですと。そうでないことが書いてあったら代位しませんと,すると端から見ていたら権利がどうなっているのか,さっぱり分かりませんとなる。それが一番ひっ掛かります。 ● 今の○○幹事の発言を補足しますと,恐らく法定代位ということであれば民法上,当然,対抗要件は要らないという世界になってきて,それを約款で外して,方や何か対抗要件がどうなっているのかよく分からないと,約款を見ないと移転しているのか,移転していないのかよく分からないというところが整合するのか,しないのか,またよく分からないところがあるかなという気もするのですけれども。 ● 代位を外していいかどうかというのは利得禁止の法則との関係で,仮に任意規定だとしても約款で勝手に外せるかというと,条文上は任意規定と書いてあっても,不文のルールである利得禁止原則からやはり外せないよと,それは出てくると思うのですが,問題は保険者に有利な規定を仮に置くとした場合ですが,先ほど挙げられた例というのはどう考えても保険者に有利な例だとしても,任意規定だとしても明らかにおかしい例,残存物代位の規定とそれから請求権代位の①に関しては,恐らくそうなると思うのですよね。②について,先ほどの繰り返しになりますけれども,②についてはこれを本当に決め打ちしてしまっていいのかと,理論的に本当に説明できるのかというのは,やはり気になるところでありまして……。 ● 差額説か比例説かというと,どちらもそれなりに理はあるかなと思うので,絶対説なんて約定されたらどうなるのですか。 ● 絶対説だと任意規定だとした場合には,結局,まさに消費者契約法でということになるのかなという気はするのですけれどもね。 ● 差額説が非常に不合理なもので,是非外す必要のある保険があるというなら別だけれども,この際,消費者保険に関しては差額説で統一するというのも一つの割り切りというか,政策判断かなという気はするのですけれどもね,比例説か差額説かという点に関して言えばね。やはり代位の規定だから片面的強行規定なのかどうかというのは私も答えがなかなかないのですけれどもね。 ● 損保実務家の方から特にこれに対して工夫はありますか。ないようですので,特に実務上問題はなさそうだということであれば,私も強く反対するわけではございません。 ● 残存物代位なのですが,一部保険の場合にはてん補すべき損害の額の保険価額に対する割合に応じて代位が生ずるということであれば,全部保険で一部弁済,例えば保険会社が倒産して約定した保険金の一部しか払わない場合も同じだろうというのですが,何か残存物代位というのはそこまで拡張していいのかというのは何かひっ掛かりが出てきて,従来の立法論をもう一回復習してみたら,そういう場合も代位を認めていいのだけれども,その場合には請求権代位についていえば,12頁の③の被保険者の権利を害しない範囲的な,要するに保険金を一部払わなかったことの不利益が被保険者側に及ばないような手当てを,一応どうも従来の残存物代位の立法論では考えていたようなのですよね。要するにきちんと全額,約定したものを払った場合と同じ範囲でのみ残存物を代位取得すると。   だから,単に一部保険の場合の代位取得とは,やはりちょっと考え方を変えた方がいいのではないかというふうなことを従来の立法論は言っていたようなので,全く同じにするというのは若干ひっ掛かりを感じて,かつ,(注2)の片面的強行規定性みたいなことがこれまたいたずらに論争を呼び起こしても非常に問題なので,残存物代位の規定というのは外国であるかというと,ない方がむしろ外国の立法例では一般的なので,この際,余計な論争を生むよりはない方がいいかなとか,○○幹事と事前に少し私の意見を申したりしたのですが,どうでしょうか。   まず,○○委員から。 ● 今の○○委員のお話は,伺っていると,前にあったただし書を,規定を置く以上は復活して,請求権代位の③みたいなものを入れたような方を工夫したらという,そういう御趣旨ですか。 ● そうするのも一案かと思いますが,そうした方がいいのかどうか,なかなか決め難いところが……。 ● 私はこのただし書は削ってしまっていいのかというのがそもそもちょっと,一言だけ先ほど言いましたけれども,まず,それが一点と,私の理解が正しいのかどうか,これは代位といっても民法の代位とは違って,大判か控訴判かありまして,意思表示して代位しないということができるような変な代位ですよね。だから,そこを何か,だから片面的強行規定で二つに割り切れない,何かデフォルトルールでそこに規定は絶対になければいけないと,そういう意味では強行規定なのだけれども,それをある程度修正できるような何か不思議なものなので,そういうものの理解でなしにして解釈にゆだねる,片面的強行規定でも強行法規ででもなくて任意法規でもないような,何かそんな手もあるのですかね。混乱を呼ぶのであれば,オープンに未解決の問題にしておくという手もあるかと思っただけです。 ● ○○委員。 ● 今,残存物代位の規定が必要かどうかというお話がございましたけれども,私どもは実務では実際にそんなにたくさん扱っているケースはないのですが,盗難保険,かなり高額なものが盗難になった場合,保険金は払いますが,その後,また出てきたということがございますので,こういう場合について約款で当然,それは不当利得になるということで私どもは約款をつくっているのですが,この条項が仮になくなった場合に,そういう不当利得ということで約款上置くことが問題にならなければ,私どもはいいと思っておるのですけれども,ちょっとややそこは非常に心配なものでございますから,一応申し上げておきたいと。 ● その点はおっしゃるとおりで,そういう盗難で保険金を払ったけれども,高いものが出てきましたというその両取りを認めるのは明らかにおかしいので,残存物代位,非常にその場合には合理性があるのだけれども,基本形で考えている焼け残りの木材とか鉄くずとか,鉄くずも最近は値段が上がっているかもしれませんが,そういう場合はまず代位しないとおっしゃるわけで,どうもなかなか基本形として考えている局面と実際に必要な局面というのは,なかなか一致しないという問題もあるようなのですが,まさか盗難保険の残存物代位の方が無効だなんて言う人は世の中にだれもいないとは思うのですけれども,そのあたり,だから外国でもこの残存物代位の規定はないのだけれども,別に盗難保険のその手の代位は問題なく行われているわけでして,そういうのも一つの解決かなと思うのですが,規定が全くなくなってしまうというのも気持ち悪いねというところがあるのですがね,ここは意見はどうですかね。   ○○幹事。 ● なくなってくれると授業が楽になるのでいいのですけれども,それはどうでもいいのですが,先ほど一部保険の場合というのはやはり付保割合で残存物を代位するといったときに,必ずしも利得が生じていない場合でも分けるという要素を持っていて,そこを残存物代位でどうやって説明するかという問題を,実ははらんでいたのではないかなというふうに思うのですね。今回のようにこれを切っていただきますと,とりあえずそこはぼやけてしまう形にはなるわけなのですが,ただ,別途,先ほど○○委員がおっしゃられたみたいな一部だけ,保険会社の方が負担力がなくて払った場合というのと同視されてしまうというのは,ちょっと違うかなという感じもするわけで,まとめ方としてはそれと一緒だというのはちょっと違うかなというような感じはしています。   ただ,先ほど冒頭申し上げたように,ただし書があると,結局は推定全損の規定で推定が覆って,実際のところは分損だったというふうに引き直して,保険金調整をするという規定になっているのだと思うのですけれども,そういうような制度コンセプトのものが必要なのかと言われると要らないような感じもするという,ちょっと余り説明がうまくいきませんが,もう一度ちょっと申し上げると,最初の一部保険についての規定は,例えば1000万円の建物に800万円の保険が入っていて,残存物が100万円だったときについては,別に2対8で分けなくてもいいわけですよね。利得禁止の観点からいけば,100万を残してもそれで900万円になるだけですので,損害が1000万円起こっているわけですから分けなくても本来はいいわけですが,100万円を80万円と20万円で分けているということは,実は損害が900万円だったということが後から分かったので,最終的には付保割合の8割を掛けると720万円払えばよかったということになるので,80万円が戻ってくると計算が合いますねという話になると説明が付くという制度なのだろうと私は思うのですが,そういうことって本当に必要なのかというふうに言われると,何か余り要らないのだろうなというふうに思うのです。ですから,ただし書がそもそも本当に合理的な制度だったのかということにやや疑問があるので,ただし書を復活させることは必要がないだろうというふうに思います。 ● ということでよろしいですか。ただし書はなくすということですね。   強行規定性の点はいかがでしょうか。特に残存物代位の方は,一応これで説明は付きますかね。 ● 大丈夫だと思います。 ● 大丈夫ではないかということで。 ● 基本的には多分説明が付かないと,この括弧書きなどは思うのですけれども,やはり船舶保険とか,そういうのが一番……。 ● 要するに,何が不利な約定って,不利ということをいかなる局面で見出すかということで,そんな残存物を残されると除去費用が莫大にかかるというのは,保険の目的物の所有者としての所有権についての被保険利益をカバーする損害保険とはちょっと違ったレベルの話,要するに船を持つことの,目的物を持つことのさまざまな……。 ● それは保険とは法的効果の部分。 ● 被保険利益とは別の費用がかかると。 ● 間接的なものだと説明するわけですね。 ● という話で説明しているのです。   ○○幹事。 ● かえって混乱するかもしれませんが,私はやはり代位しないでくれる方が残存物が残って焼け太りになるという現象があるところを,代位することでとられてしまうわけですから,代位しないということは得が残るという説明でいいのではないかなというふうには思います。何もサービスで代位してあげているわけではありませんから,そのサービスが減るということにはならないだろうというふうに思いますので,そういう意味では代位をしないという選択がむしろ不利益なのではなくて得が残るという,そういう整理でいいのではないかというふうには思います。 ● 実質は何にも得にならないというところが困った話。 ● だから,やはりこれは水掛け論ですけれども,何からの意味の強行法規というところを触れないで説明するか,ちょっとそこまでいかないというところのレベルで,しかし,広い意味での利得禁止原則みたいな形で残っているのだというところで説明すれば簡単なのですけれども,だから,よく事情は分かるのですけれどもね。 ● 一応,そういう前提でこういう案であるということで,もし御了承いただければこの案でいきたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。   ほかにこの3のところでございませんか。   それでは,なければ4の方はいかがでしょうか。損害保険契約の終了に関する部分ですが。   ○○委員。 ● 任意解除のところは前回話がありましたので任意規定でもちろん結構ですが,重大事由解除のところもこれで結構だと思うのですけれども,法文として書くときに(ウ)のところの「信頼関係を損ない,当該契約を存続し難い重大な事由がある」というのが全部にかかっているわけですよね,要件の(ア),(イ),(ウ)とか書いてありますけれども,それが何か上の方にも,次に掲げるこうこうこういう場合でというのが何か分かるような,つまり(ウ)の「その他の」という言葉で(ア),(イ)にこの(ウ)の要件がかかっているわけですから,何か法律家はすぐ分かりますけれども,普通の方はどうなのかなというところがあるものですから,何かここは工夫していただけないかなという素朴な一つの要望なのですが。   それから,二番目が解除の効力のところなのですけれども,(注2)のところですけれども,これも括弧書きの中で「一定期間保険料の支払を猶予した場合において,その期間内に保険料が支払われなかったときに,当初の支払期日にさかのぼって契約の解除をする」と,これは分割払の保険料の月払の規定にはすべて入っているということなのですが,これはやはりさかのぼっていると言わざるを得ないと思うのですよね。私は前から何かおかしいなと思いながら今回見て分かったのですが,約款はこれだけではなくて実は免責の規定も一緒になっていまして,だから,保険料を払わないと保険金も払わないという最高裁の判例があって,その場合には解除した場合に遡及効という最高裁の判例がありますけれども,このシチュエーションも同じで,払わないと一定の期間から保険金を払わないという効果があって,それと同じように解除するとさかのぼると。ということは,ある意味でこれはさかのぼらせないといけない利益状況なのですね。   だから,不利益かどうかというところがあるので,とりあえずはいいという,そういう考え方なのかもしれないのですけれども,どうも何かそのような解釈の結論を見てみると,片面的強行法規に反しないような遡及効のある解除を書いてもいいのだという,そういうことだと思うのですけれども,でも,そうするとちょっと混乱を,やはり何か全部遡及するという前提で遡及しないところを書くといった方がいいのかなという,もうすべての消費者約款の月払はいっぱいあるわけですから,そういう世界で,だから理屈は全部通っているというのはよく分かるのですけれども,確か解除の遡及効のところで○○委員が因果関係のところなんかあるからしようがないかなとおっしゃって,私もそう思ったのですけれども,その後で○○幹事は事由ごとの解除,項目ごとの事由ごとの解除という考え方があって,確かにそれは請負なんかで判例があるわけですよね。   だから,こういう契約で遡及効のあるものを定めても,解除の効力の片面的強行法規定に違反しないというところまでもしいくのだとすると,ちょっと本当に何か混乱してしまうのではないかな。それだったら,やはり原則に戻って,広い意味で,いろんな約款にも一部は遡及効的な方がいいものと,そうではないものとが両方混在しているわけですけれども,ちょっとこれは分かりにくくなってしまうのではないかなという,そういう意見です。   以上です。 ● 今,○○委員がおっしゃったように書くと分かりやすくなるかというと,今度の解除はどっちだったかなといっていちいち考えなければいけなくなるということですし,解釈の余地が残るという意味ではそのとおりなのですが,今,○○委員がおっしゃったように保険料分割の契約であれば,すべからくこれが入っているというのは現実はそうかもしれませんが,そもそもそういう約款があるかどうかも契約法の世界としては分からないわけですから,そういう約款があれば,そういう約款の世界における片面的強行規定の解釈の話というような整理を法律上はしないと,すべての契約類型なり解除の態様なりを想定して,これは遡及効,これは将来効というように振り分けるということは,逆にそれこそとてもできませんので,それはどちらかで整理をするしかないと思います。これはさんざん学説とある意味,けんかをしてきたところではありますが,今回は将来効という整理をさせていただきたいというように考えております。 ● ということは,要するに契約で片面的強行法規としての将来効に反しない形で遡及効を決めることも場合によっては許されると,そういう解釈をとるという,そういう理解でいいのですか。私が確認したいのはそこの一点です。 ● その意味ではこの場面に限らず,今日も大分出ましたけれども,片面的強行規定といったときには,有利,不利の解釈は常につきまとうと,そこは避けられないところというように考えておりまして,解除の場面も同じというように考えております。 ● それが目的。 ● ほかはいかがでしょうか。ございませんか。   ○○幹事。 ● ○○委員のおっしゃったことの再確認になるにすぎないのだと思いますけれども,告知義務とか危険増加のところで,実質的には解除の効果がさかのぼるようになる結果が生じますよね。すなわち,保険者が保険金支払義務を負わないと。解除は後から保険事故が発生してから行われたけれども,告知義務違反あるいは危険増加のケースではさかのぼってといいますか,保険会社が保険金支払義務を負わないと。従来,それを遡及効で説明してきたところを逆転させられて,告知義務違反ですとか危険増加のところを個別に保険会社が保険金支払義務を負わないという格好で取り出して,従来,遡及効で説明していたものを規定化していっているという,一方でそういう体裁があり,それで解除の効力というのを原則として将来効というふうに定めた場合に,これを任意規定ではなくて片面的強行規定と,こういった場合に,別途,そういう特別な実質的遡及効になるような手当てがないケースで,約定で遡及効があったときと同じような形の定めを契約者側に不利にならない形で書けるかというと,ちょっと実質的には難しいという結論が何か素直に出てきそうな印象を持つのですが,そこはそうではなくて,やはり解釈でここに例として挙げられているようなパターンでも有効と認められると,こういうことになるのでしょうか。 ● ちょっと御質問の趣旨を理解し切れなかったので,申し訳ありません。 ● そうですか。ちょっとややこしいことを申し上げているのかもしれませんが,要するに,原則として解除の効力は将来効ですと,こう定められて,一方で将来効ではあるけれども,告知義務違反だとか危険増加の場合には将来効とは違って,解除は後からしても保険会社の保険金支払義務はないという形の従来,遡及効で説明してきたところを別途,規定上手当てされているということになるわけですね。そうした場合に,そういう手当てがされていない部分で,約款上あるいは契約上といった方がいいのでしょうか,従来の遡及効的な考え方をベースにした解除の効果を定める,例えば(注2)に書かれたようなケースなども,今回の方針では片面的強行規定として定めても大丈夫なのですと,こういうことになるのでしょうかと。片面的強行規定に反しないというふうに言い切れるのでしょうかという,特別の手当てのない部分ですね。   ここでは猶予期間内に支払わなかったときに,支払期日に一応さかのぼって契約解除の効果が発生していると,形の上でやはり遡及するという格好になるかと思うのですけれども,これはまだ穏やかな形だと思うのですけれども,そういうのが手当てなく,そう簡単に認められるのかなという,片面的強行規定とやれば全部そうなるのですと,そうなるという,要するにそういうことはできないのですということになって,一律の規律ということになるのかもしれないのですけれども,そうすると約款のつくり方としては,やはりちょっと窮屈になる可能性があるかなというところを少し懸念をした次第です。 ● まさに先ほどの○○幹事の説明の繰り返しではあるのですけれども,片面的強行規定といったときに書いてあることと一言一句違うことをやってはいけないかというとそういうわけではなくて,なぜそれを片面的強行規定としているのか,それが何を守ろうとしているのか,その趣旨にさかのぼって考えるということは許容されるのではないかと,それは恐らく一般的な解釈ではないかというふうに理解しております。   例えば今の(注2)が書いてあったとき,例えば解除条件付き解除とか,または停止条件付き解除とかと,実質的には,同じような効果ではないかといったときに,その効力を否定するかというと,恐らくそれは否定されないことになるのではないかということになると思われますので,どこまでそう言えるのか,いろいろ議論はあるかもしれませんけれども,同じ効果をねらっているのであれば,そこは否定するものではないだろうという解釈は可能ではないかというふうに,ちょっと今,思い付き的ですけれども,考えます。 ● また,こういう(注2)のような効果を定めることの実質的な合理性があるかどうかということが,実際は大きいのだろうと思いますがね。だから,そこまですべて含めて考慮できるような規定振りが可能であればもちろんいいのですが,それはなかなか難しそうだということで,この手の非常に実質的に合理性があるような約款規定まで片面的強行規定性を規定したからといって,直ちに無効になるというわけではないということではないかと思いますが。 ● 要するに,申し上げたかったのはそういうこともあるので,片面的強行規定よりは任意規定というのは無理なのですねという,そういうことなのですが,原則としてはもちろん解除は将来効ですという任意規定で原則を宣言していただいて,しかし,約款で場合によっては合理性のある限りは変えられますよと,そういう規定振りではやはり弱いのでしょうかという,そういう御質問になるのですけれども。 ● これも適切な例か分かりませんが,一番極端な例で申し上げますと,一回事故が起こったら契約が終了するようなものではなくて,複数回保険事故が起こり得る契約を仮に想定して,事故が起きて保険金を払ったことがありました,まだ契約が続いていましたと。その後,どこかで保険料不払になって債務不履行解除しましたと。その場合,任意規定とすると,約款で将来効の規定を飛ばしますよと仮に書いたとしても有効になると,高い保険金を一回払っているけれども,それは返してもらって,逆に保険料は返しますよといって保険会社としてはもともと払ったものまで飛ばせるという約款が置けるということになってしまうわけですけれども,そういうのは封じなければいけないという意味で,我々は片面的強行規定と基本的に整理した上で,ただ,この(注2)にあるような合理的なものは許容されると。合理的なものがこれだけかどうか分かりませんけれども,少なくとも完全に任意規定にしてしまって,遡及させる,させないということを自由に選べるようにすることは,やはり不適当ではないかなというように基本的には考えているということでございます。 ● ○○幹事。 ● やはり解釈なのだろうと思います。私たちの仕事が増えて大変ありがたいなというふうに思いますが,基本的に思いますのは保険料がきちんと払われていて,一応危険負担があったはずの部分を前にさかのぼって,なくしてしまうということはできませんよという考え方で,継続的契約関係の法理だというふうに考えれば,この事例などは全く保険料を払っていないわけですから,保険料を払っていない部分についてさかのぼるのは認められるでしょうと,これはある程度解釈で済むのではないかなというふうな感じがいたします。 ● そういう説明で何とか御納得いただけますでしょうか。 ● 別に絶対いけないとか,そういうつもりはもちろんございません。今,申し上げたとおり,柔軟な対応が可能であれば,それで結構なのです。ちょっとやはり片面的強行規定というところに心配を抱いたということで。 ● ほかにいかがでしょうか。この部分はよろしいでしょうか。   それでは,大体御了承いただいたということで,最後,5と6のところはいかがでしょうか。これも従来の大体御了解いただいている内容どおりかと思いますが,よろしいでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 二つ,教えていただければということなのですが,前回の案では先取特権の対象が保険金になっておりましたよね。今回は請求する権利というふうに変わりまして,いろいろ御検討のがあったと思うのですけれども,そのポイントをちょっとかいつまんで御紹介いただければと思いますけれども,それが一点で,第二点はもっと分かりやすくできないかということなのですが,私がもし誤解していなければ,③の(ア)のところですが,「①の損害賠償請求権を有する者に譲り渡し」というこの主語は被保険者ですよね。次の「又は」というのは被害者の方ですかね。だから,主語が違う人のを並べているので,もう少し主体が分かるように書かれた方がぱっと頭に入るのではないかなという,そういう趣旨なのですけれども。   以上です。 ● 二点目の書き振りは,御指摘も踏まえて検討させていただくということにしまして,一点目も書き振りですが,保険金をこう表現を改めましたのは,ここで先取特権といったときに,その法定担保物権の目的物は何かというと,もともと請求権と考えておりました。ただ,それをそう表現していなかっただけで,どこかに保険金という何かお金が存在して,それが担保物権の目的物と考えていたわけではこれまでもなくて,そこは少しでも要綱に近づけるために,より法的に正確な表現に改めたということでございます。 ● そういう法文もあるので,いろいろ悩まれたとかありそうなので。 ● 基本的に今,申し上げましたとおり,担保物権の目的物はこのシチュエーションでは権利だというように考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,5,6も御了承いただいたということで,そこで席上配布の部会資料24の7,片面的強行規定に関する部分を続けて御審議いただきたいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 保険法部会資料24の7では,片面的強行規定について取り上げており,①から③までで片面的強行規定とすることが考えられる規律を掲げるとともに,④で片面的強行規定の対象から外すべき保険契約について記載をしております。   (注)に記載したとおり第19回会議における議論を踏まえ,④の(エ)では法人その他の団体又は事業を行う個人の事業活動に伴って生ずる事故を保険事故とする損害保険契約を片面的強行規定の対象から外すこととしております。   これは,事業に関するリスクについては一般に保険契約者側に情報が偏在しており,リスクに応じた柔軟な約定を許容しなければ,保険の引受け自体が困難になる場合があることを考慮したものですが,片面的強行規定の対象に含まれるかどうかは個々の約定の効力にかかわるものであり,基準として明確なものであることが求められると考えられますし,事業にかかわる保険のうち,片面的強行規定の対象となるものとならないものをあいまいな基準によって分けることは,保険の引受けについての萎縮的な効果につながり,ひいては事業者の事業活動を阻害することになるのではないかという懸念もございます。このような観点から,④の(エ)では事業に関するリスクを担保する損害保険契約を広く片面的強行規定の対象から外すこととしており,この点について御審議をお願いしたいと考えております。   なお,①では,1(5)の遡及保険の箇所に亀甲括弧を付しておりますが,この規律が片面的強行規定となるか,それとも強行規定となるかについては,具体的な規律の内容とも関連して,改めて整理をする必要があると考えております。   以上でございます。 ● それでは,この部分について御意見をいただきたいと思います。前々回ですかね,大分議論をしたところですが,それを踏まえてこのようなまとめになっているかと思いますが。   ○○委員。 ● 意見ではないのですけれども,質問なのですけれども,ここで言う事業者という場合に,私どもの監督されている法律では,例えば農業の場合は生産者で,漁業の場合は生産者ではないですね,事業者ですね。中小企業の場合は事業者というふうに分かれているのだろうと思うのですけれども,まず,生活協同組合法は消費者ですから除外ということに,事業者は組合になれませんので事業活動に関する,○○委員が一番御存じですから私が下手な解説を加える必要はないと思いますので,農協法,それから水協法,中小企業協同組合法の場合は明らかに事業者,生産者というふうに考えていいのではないかというふうに私は思っているのですけれども,ここでかかっている内容は,当然,当該法律に基づく事業については,これに該当するというふうに理解をしていいのかどうかという質問です。 ● 要するに,組合の組合員が……。 ● いえ,事業として,例えば水産業ですと魚を捕るために港を出るわけですね。それは明らかにもう事業活動ですから,それに伴うものは事業活動ですねと,農業の場合は畑も田んぼもありますけれども,その周囲にまつわる活動というのは当然事業活動ですねという意味の確認です。 ● 一応,その点につきましては,そのようなものもここで言う事業活動に含まれるものとして理解をしております。 ● 消費者契約法のようなあれは事業者かどうかということで切っているのと,実質は同じになるのですかね,あれも事業に関して,例えば個人の場合は事業に関して契約すれば消費者でなくなるという,それと実質的には同じことなのでしょうか。それとも,こちらの方がより事業性というのを強いレベルで要求しているのか。 ● そこにつきましては,必ずしも消費者契約法で言っているところの事業と,別に分けるということを前提としているわけではございませんが,消費者契約法はあくまでも契約当事者となるということが前提とされているのに対して,ここは前回も御議論いただきました,基本的にリスクで見ていくということですので,そういう意味では事業そのものについての範囲という考え方自体は,特に別の考え方をとるということではありませんが,あくまでもここは事業活動に関するリスクを担保するものという発想ですので,若干書き振りが変わっていると,そういうふうに考えております。 ● ということだそうです。   ○○幹事。 ● 今,○○委員が御質問になったところに関係するのですけれども,これを見ますと海上保険契約とそれから航空運送は,もともと(ア)と(イ)で除外されますので,陸上運送については(エ)で判断するということになると思うのですが,運送業者に個人が運送を頼んだと。そのときに個人が運送保険契約を締結して被保険者となって,それで運送中に事故が起こったという場合は,運送自体は運送業者がやっている事業活動に伴って生ずる事故なのですが,しかし,私が保険契約者となって,あるいは被保険者となって保険に加入する,それは別に私が知人に物を送るというので,それは事業活動でやっているわけではないと。これはどうなるのですかね,このケースは。 ● 今,御指摘いただいたような例につきましては,ここで言うところの(エ)の対象ではない,純粋に個人が契約者であって,そのリスク自体が個人の荷物についてということであれば,そこについての事業性というものは,帯びてこないのではないかというふうな整理をしているところではございます。 ● そうすると,保険契約者又は被保険者にとって,その事故が事業活動に伴って生ずるものかどうかという,そういう趣旨で……。 ● 基本的にはそういうふうな考え方に立っております。 ● ○○委員。 ● 今の点とも関連するのですが,やはり事業者概念,ここで言う事業者,「法人その他の団体又は事業を行う個人」ですか,この定義,これを事業者と一言で言うとすると,やはり立法事実として,立法趣旨として実質的に消費者に当たるような人はそこからは外れると。その定義は,私流に言えば保険についての知識の差があって,また,保険についてのルールを理解する能力に差があって,それを補うためのコストも負担できないと,個人でもすごい大企業ということだってあり得るわけですから,そういうのはまた別かもしれませんが,基本的にはそういう立法事実で事業者という概念を解釈していくのだということだけは,やはり確認していただきたいと思うのですけれども。つまり,そういう意味で縮小解釈していくと,「法人その他の団体又は事業を行う個人」と。それがまず一点お願いで,(エ)の文言そのものについては私はこれで結構だと思います。ただ,今申し上げたように前回あった店舗総合保険なんかで,実質的には個人と同じようなものだというような場合は,やはりその実態を見て外していかないといけないと。外すという意味は片面的強行法規の適用があるというふうに,そういう場合は言わないといけないと思います。   最後の質問は,説明があったのかもしれないですが,「損害てん補方式の傷害疾病保険契約を除く」というのは,どういう趣旨で入ったのでしょうか。   以上,三つなのですが。 ● ここで対象として考えておりますのは,あくまでも人保険はここでの片面的強行規定の対象から除く,対象には含まれないということを意図しているものでございます。 ● 事業活動で行う人保険というのは,団体の疾病保険とか,そういう意味ですか。それは実質,被保険者募集で個人だから,それは保護しないとまずいでしょう。 ● ですから,そういう意味で,それは保護の対象になってくるのだと思いますが。 ● 「除く」だから大丈夫ということですか。では,そのために契約者……分かりました。では,これは保護しているわけですね。 ● はい。 ● そうか,二重否定だからちょっと……ありがとうございました。 ● 最初の質問はどうですかね。縮小解釈ということの趣旨,意味。先ほどの○○幹事の質問にあったようなケース。 ● 実質個人のケース。 ● そのようなことをおっしゃっておられるわけですか。 ● ええ。だから,多分,契約形態としては運送人が保険契約者で被保険者募集的に申し込んで,しかし,実質は個人の運送保険の話ですよね,個人保険と同じようなもの。 ● 私,先ほどそれはきちんと区別していなかったのですが,その場合はありますよね,確かに。運送人が保険契約者となるけれども,荷送人,我々個人が被保険者になるという場合,それはどちらになるのですかね。 ● だから,これは団体生命保険の場合とか団体の医療保険と同じで,ただ,実質を見ていかないとまずいのですよ,外れてしまいますから。 ● ○○委員。 ● 同じことなのですけれども,中小企業の協同組合で中小の運送業者の協同組合があるわけですね。ですから,トラックの運送で,当然,トラックですから一回事故を起こすと大きいということもあって,契約者はそこの中小企業のトラック,運送会社の責任者と,事故が起きた場合には当然,その共済の仕組みに従って被害者に支払うという事業者保険だろうというふうに思っていまして,あえて言わなかったのですけれども,そういう場合はもうここで言う事業者の保険に該当するというふうに考えてよろしいのかどうか。個人の場合は全くそれは個人契約ですから別ですけれども,あくまで事業活動のための共済というものは,ここに当たるというように解釈してよろしいのでしょうか。 ● 今の○○委員からの御指摘と,あと○○幹事からの御指摘をいただいたところも,若干関連するかと思われますが,結局のところ,被保険者が形式的に個人であるとしても,例えば先ほどの○○幹事の例で申し上げますと,運送人が契約者となって,実質的には当該事業活動に伴って生じるものを担保するために契約を締結する場合には,ここに当たり得るのではないかと。ですので,○○委員の御発言いただいた部分についても形式的には被保険者が別の方になっているのかもしれないです……。 ● 社員ですね。そこの社員。従業員です。 ● であれば,そこは事業に関するということで,事業活動に伴うものということで,ここの整理に含まれてくるというふうに考えております。 ● そうだとすると,保険契約者が事業をしているかどうかが決定的であるということでしたね,今のお話だと。被保険者が個人であっても保険契約者が運送人となっている場合は,ここでいう事業保険というか企業保険であって,片面的強行法規の対象にはならないと。別に,それなら,そう割り切るというやり方はもちろんあると思うのですね。契約者が事業者であるかどうかって,まさに消費者契約法がそういう立場をとっているわけですから。ただ,この書き振りだと,そこは非常にはっきりしないのではないかと思いますし,それと本当にそういうやり方で,消費者契約法的に契約者が事業者かどうかで判断するというやり方がいいのかどうかというのは,議論があり得るかもしれない。ちょっと私は,そこはどうすればよいかというのは,まだはっきりちょっと詰められていないのですけれども。 ● どうぞ。 ● やはり契約者が事業者かどうかというので判断するというのは多分まずくて,今,○○委員がおっしゃったのは賠償責任保険ですか,トラック業者の。 ● いや,通常の自動車保険ですよね。企業の代表者が契約者で……。 ● その場合,トラックはビジネスに使うトラックですよね。 ● 当然です。 ● それはもう完全に事業者で間違いなくて,問題は運送品全部に運送保険を付けていたというのは事業かもしれませんが,宅急便なんかを送る人に応じて個別に付けるという場合には,やはり個別,消費者保険的に考えなければいけないと思いますし,それから一番の問題はやはり団体契約で,会社は一応名目上契約者になるけれども,実質的には被保険者募集で,被保険者を契約者とみなさなければいけない場合,これは医療関係の保険でもあるし,傷害保険でもあるわけで,これはもう個人と,団体生保でもそうですが,だから,やはり実態が先ほど言った,その人が消費者としてのやはり保険のことをよく知らなくて,コンサルタントに聞くお金もないというような要件を満たしたら,やはり片面的強行法規で保護するという,そういう前提の下で事業者というのを解釈するというふうに,やはり立法者意思として決めておかないとこれは機能しないし,又は相当まずいことが起こるというふうに思います。 ● 今の(エ)の書き振りだと,契約者がだれかということは基準にならないわけですね。そこをだから実質的に保護する必要があるかどうかという観点から決めようという,そういうことで,それで先ほどの○○幹事の言われたようなケースだと,もう一回,どうなるのですかね。 ● 運送業者が保険契約者だけれども,被保険者は個人であるという場合は,そのリスクで判断するという,従来からの考え方を維持するということだとすると,個人が物を送る場合のリスクですから,これは事業上のリスクというよりは,それ以外のリスクというふうに考えることもできるのではないかと。○○委員はそういうお考えですね。ちょっと私はそこまで,どっちなのか。 ● 保険会社としてはそういう場合,運送事業者全体の運送リスクを見ていると思うのですよね。 ● 保険者としては恐らくそうなのですね。 ● そういう目で見るのか,やはり実質的な契約者といいますかね,加入している被保険者の目から見るかと,そのあたりがちょっと必ずしもはっきりしないなと。 ● 若干補足いたしますと,そういう意味では形式的に契約者がだれか,被保険者がだれかという基準をとるというものではございません。そういう意味で申し上げますと,これも適切な例かどうか分かりませんが,店舗に関する火災保険であっても,通常は契約者と被保険者がイコールになることが多いと思いますから,その場合はここに言う事業活動に当たるというふうに考えられますが,これもイレギュラーかもしれませんが,事業主である御主人のために奥さんが形式的に契約者になるというようなことが仮にあるとしても,それは明らかにリスク自体が事業自体にかかわるものなので,ここで言う事業活動に伴う事故ではないかと。   つまり,契約者もしくは被保険者,それぞれのどちらかが事業者であるかという基準ではなくて,形式的にだれが契約者,被保険者になっていようが,リスク自体が事業にかかわるものか,事業に伴うものかという観点で実質に見ていかないと,本来,外すべきものが外れてこないのではないかという基本的な発想に基づくものでございます。 ● おっしゃることはよく分かるのですが,ただ,運送の場合はリスク自体が事業に伴うものなのか,そうでないのか,先ほどのケースはどちらとも判断ができるので,保険者の観点からすると,まさに運送事業に関するリスクですから,これは事業上のものだというふうに見られるかなと思うのですが,しかし,我々保険契約者の立場から見ると,私たちが知り合いにお歳暮を贈るために送っているのであって,それは全然事業上のものではないと,事業上のものではない,それ以外のリスクだというふうにも見られるので。ですから,運送のケースというのは判断がこの基準ではできないのではないかなと。形式的に事業主である夫のために妻が契約者となるというケースとは,ちょっとこのケースは違うのではないかと思うのですね。 ● ○○委員。 ● 要するに被保険者が違う,つまり,同じことでも片一方は所有権利益だと,こちらはビジネス上のものですから,同じものを重畳的に評価ができたとしてもいいのではないですか。個人からすれば,向こうから見ればビジネス上の利益ですけれども,こちらから見れば普通の動産総合を付けて,カメラを友達のところまで運んだというのと変わらないわけですから,だから,そう排他的なものではないと考えれば,それでいいのではないかと思うのですが。 ● そういうことは可能なのですか。   どうぞ。 ● 今の御議論を伺っていますと,個別具体的な事案について片面的強行法規が適用されるのか,適用されないのかという結論については,どなたにも異論はなくて,それが(エ)の書き振りで十分書き表されているのかどうかという問題だろうと思うのですね。だから,そこはさらに検討しなければいけないと思いますけれども,しかし,ぱっと見た感じだと,これ以上うまい書き振りもなかなか思い浮かばないような感じがしますので,もしも,そこが明瞭に書けるものがあるというのであれば,是非ともお知恵をいただければと思いますが。 ● なかなか難しい問題ですが,今の運送保険の例で○○幹事が言われたような場合に,これは個人の保険であるという解釈を否定するまでの必要はないような気もするのですがね。そういう実質に応じて解釈できるという余地はここでも残るのであれば,あとはケース・バイ・ケースの話になるかなという気もしますが,それではちょっと緩やか過ぎますか。 ● いえ,そうだと思います。結局,(エ)で書いていますのは保険事故をどうとらえたかで振り分けるということですから,○○幹事の出された例が一律にどっちということになるのか,まさに今おっしゃったように,その保険契約が運送業者のリスクを見て仕組まれた契約なのであれば(エ)に当たると,恐らくこう考えることになるのだろうと思いますが,すべからくそうなるかは,その個人がかける運送契約というのがどんなイメージになるのかにもよるということかなと思いますけれども。   要するに事業者かどうかという先ほどの議論がありましたけれども,事業者かどうかで仕切っているかというと,そうではないというのは○○関係官の方から申し上げたとおりでして,現に事業を行っている個人が自宅に火災保険を付けていたときに,事業活動に伴って生ずる保険事故と見ているかというと,そういうことは決してありませんから,事業者が契約者になるものが外れるというようなことではありませんので,そういう意味で事業者を基準にしていることではなくて,あくまで保険事故を見ているというところだけは,こちらとしては整理していまして,○○幹事が挙げられた例が余りにも微妙なために答えに窮してしまいましたが,一応,ベースとなる振り分けの発想は,今申し上げたとおりです。 ● 今,○○幹事がおっしゃったことでふと思ったのですが,やはり(エ)の書き方はこれはこれでいいのかもしれないですね。何かまとめて事業者とか何か言わないで,こういうふうに「法人その他の団体又は事業を行う個人」というふうにして,保険契約法独自のそれについての解釈というのをやると。だから,事業者という言葉を使わないという方が,だから,今日のものをすぐ見てのことですからまだあるかもしれませんが,今のお話ではこの方がいろいろまだ含みがあっていいのではないかと,それだけ申し上げたいと思います。 ● 大変私の言いたかったことを言っていただいたような気がしますが,どうでしょうか。なお,進めていただこうかとは思いますが,基本的にはこういうことで進むということでよろしいでしょうか。もっとはっきりさせた方がいいでしょうかね。こういうことでいかがでしょうか。 ● どうも私が挙げた例は本当に微妙過ぎて,それでちょっと余計な混乱を生じさせてしまったのかもしれませんが,確かに事業者基準よりはこちらの方がいいと思いますし,これよりよい文案が考えられるかというと,確かに非常に難しい問題でとても私には考えつきそうにありませんので,もし何か出てきましたら,またお知らせしたいと思いますけれども,それほど悪いものではなさそうだという,最終的にはそのような印象を持っております。 ● ということで御了承いただければと思います。   この点,ほかの点はいかがでしょうか。強行規定性について,よろしいでしょうか。   それでは,この部分も御了承をいただいたということで,これで大分時間は超過しましたが,予定しておりました検討事項について御意見をいただいたと思います。ほかに全体的に何か御意見はございますか。   ○○委員。 ● 私が言う場合は,何を言うかというのは大体お分かりになるかと思いますけれども,部会長,それから法務省の事務当局,それから各委員,幹事の皆さん,今,私もその一員に加えていただきまして,ようやく要綱案の審議まで来たという意味では,非常に最初の目的にありました消費者保護のための適正な仕組みをつくっていくということについて,かなり進んできたのではないかというふうに私自身は思っております。   また,委員の立場ということで,共済団体としての代表ということではありませんけれども,全体を通してやはり入口の問題として保険法の適用範囲,先ほど若干出ましたので,関連することがあったので多少申し上げましたけれども,私も日本共済協会,それから各共済団体におきましても,中間試案のパブコメのときに,今回の中間試案につきまして保険法の適用範囲の問題だとか,それから保険なり共済の定義の問題だとか,それから部会の事項ではありませんけれども,法律の体系なりの在り方,名称の問題等につきまして,見解として述べさせていただいているところであります。   今後,いよいよ1月中旬で部会におきまして,要綱案としてまとめていくという時期になっておりますので,私どもも非常に全体の先ほど申し上げました新しい保険法をつくっていくということにつきまして,当然,必要だという認識を持っておりますし,当然,そのつもりで私も意見を申し上げてきたつもりであります。それに加えまして,今までは商法の改正ということが前提にありましたので,その中に共済も含めてという中で,先ほど申し上げました関係につきまして,できるだけ早く,どういう検討がされているのか,どういう提案がされるのか,早めに御提示をいただきまして,私ども一つの重要な課題なり,これから具体的に進めていく上での入口の問題という位置付けをしておりますので,なるべく早く御検討なり,案を御教授願いたいというふうに思っております。要請でございます。よろしくお願いいたします。 ● こちらの方から何かお答えした方が……。 ● いいえ,それはもう要請ですから。 ● よろしいですか。では,そういう御意見を伺ったということにして,ほかにございますでしょうか。   それでは,今日の審議はこれぐらいにしたいと思いますが,次回につきまして事務当局よりお願いいたします。 ● 次回,第22回の会議になりますけれども,12月26日水曜日午後1時30分から,本日と同じ法務省20階の第1会議室での開催を予定しております。本日に続きまして,保険法の見直しに関する要綱案の第1次案の後半部分ということで,生命保険,傷害・疾病保険を中心に御審議をお願いしたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。 ● ということで,次回もよろしくお願いいたします。   それでは,本日はどうもありがとうございました。 -了-