法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成19年12月13日(木) 自 午後1時30分                        至 午後4時57分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会の第1回会議を開催いたします。 ● 法務省刑事局長の○○でございます。本日は,御多忙中のところ少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るための法整備についての審議にお集まりいただき,誠にありがとうございます。   それでは,最初に私の方から,本日,部会が開催されるに至った経過等について御説明いたします。   去る11月29日,法務大臣から,少年審判における犯罪被害者等の保護等を図るための法整備に関する諮問第83号が諮問され,同日開催された法制審議会第154回会議におきまして,同諮問については,まず部会において審議すべき旨の決定がなされました。そして,同会議において同諮問を審議するための部会として,少年法(犯罪被害者関係)部会を設けることが決定され,この部会を構成すべき委員,臨時委員及び幹事が,法制審議会の承認を経て,会長から指名され,本日ここに御参集いただいたところであります。      (委員等の自己紹介につき省略) (部会長に芝原委員が互選され,法制審議会会長から部会長に指名された。) (部会長の職務を代行する者に岩井委員が指名された。) ● それでは,先の法制審議会総会におきまして,当部会で審議するように決定のありました諮問第83号について審議を行います。   まず,諮問を朗読していただきます。 ● 諮問第83号 犯罪被害者等基本法の趣旨及び目的等にかんがみ,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。 別紙      要綱(骨子) 第一 被害者等による少年審判の傍聴  一 家庭裁判所は,少年法第三条第一項第一号に掲げる少年に係る事件であって次に掲げる罪のもの又は同項第二号に掲げる少年に係る事件であって次に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるもの(いずれも被害者を傷害した場合にあっては,これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る。)の被害者等(被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。第二において同じ。)から,審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において,少年の年齢及び心身の状態,事件の性質,審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは,その申出をした者に対し,これを傍聴することを許すことができるものとすること。   1 故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪   2 刑法第二百十一条(業務上過失致死傷等)の罪  二 家庭裁判所は,一により審判の傍聴を許す場合において,傍聴する者の年齢,心身の状態その他の事情を考慮し,その者が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは,その不安又は緊張を緩和するのに適当であり,かつ,審判を妨げ,又はこれに不当な影響を与えるおそれがないと認める者を,傍聴する者に付き添わせることができるものとすること。  三 一により審判を傍聴した者又は二によりこの者に付き添った者は,正当な理由がないのに傍聴により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず,かつ,傍聴により知り得た事項をみだりに用いて,少年の健全な育成を妨げ,関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し,又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはならないものとすること。 第二 被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大    裁判所は,少年法第三条第一項第一号又は第二号に掲げる少年に係る保護事件について,同法第二十一条の決定があった後,当該保護事件の被害者等又は被害者等から委託を受けた弁護士から,その保管する当該保護事件の記録(家庭裁判所が専ら当該少年の保護の必要性を判断するために収集したもの及び家庭裁判所調査官が家庭裁判所による当該少年の保護の必要性の判断に資するよう作成し又は収集したものを除く。)の閲覧又は謄写の申出があるときは,閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び少年の健全な育成に対する影響,事件の性質,調査又は審判の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き,申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとすること。 第三 被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大    少年法第九条の二に規定された被害者等の申出による意見の聴取の対象者に,被害者の心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹を加えるものとすること。 第四 成人の刑事事件の管轄の移管等  一 少年法第三十七条第一項に掲げる罪に係る訴訟の第一審についての裁判権を,家庭裁判所の権限から除き,地方裁判所又は簡易裁判所の権限とするものとすること。  二 同法第三十八条を削除するものとすること。   以上です。 ● 次に,事務当局から,諮問事項について説明をしていただきます。 ● それでは,諮問第83号を提案するに至った経緯について御説明申し上げます。   少年審判手続において,被害者やその遺族の方々への配慮を充実させることは極めて重要であると考えられ,平成12年には少年法の改正により,少年保護事件の被害者等による記録の閲覧・謄写,被害者等の申出による意見聴取,審判結果等の通知の各制度が導入されるなど,少年審判手続における被害者の方々に対する配慮の充実が図られました。しかしながら,多くの犯罪被害者等にとって,その被害から回復して平穏な生活に戻るためには依然として様々な困難があることが指摘されています。 このような状況から,平成16年12月には,犯罪被害者等基本法が成立し,その基本理念として,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」ことが規定されています。また,この基本法を受け,平成17年12月に策定された犯罪被害者等基本計画においては,「法務省において,平成12年の少年法等の一部を改正する法律附則第3条により,同法施行後5年を経過した場合に行う検討において,少年審判の傍聴の可否を含め,犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い,その結論に従った施策を実施する」こととされておりますが,この少年法改正法は平成13年4月から施行されておりますので,平成18年3月でこの5年が経過したことになります。   法務省においては,こうした基本法や基本計画の趣旨,あるいは被害者の方々を始めとする関係各方面の御意見や御要望をも踏まえ,少年法の見直しの必要性等について慎重に検討を行ってきたところですが,その結果,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため,早急に法整備をする必要があると考えたことから,先般,法制審議会に諮問を行ったところです。   今回の諮問に際しましては,事務当局において検討した案を要綱(骨子)としてお示ししてありますので,この案を基に具体的な御議論をお願いいたします。 その内容の詳細は幹事に説明させますが,この諮問第83号につきましては,犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため,早急な法整備が必要であると考えておりますので,十分御審議の上,できる限り速やかに御意見を賜りますよう,お願いいたします。 ● 引き続きまして,要綱(骨子)について御説明いたします。   お手元の資料1が要綱(骨子)でございますので,御参照いただければと存じます。   始めに,要綱(骨子)第一の「被害者等による少年審判の傍聴」についてであります。   現行法におきましては少年審判は非公開とされ,事件の被害者等であってもその傍聴は認められておりませんが,特に少年が被害者を死亡させたり,その生命に重大な危険を生じさせたような重大事件におきましては,被害者やその御遺族から,審判におけるやり取りを自らその場で直接見聞きして,その具体的な状況について十分な情報を得たいとの強い要望が示されているところであります。 このように,被害者の方々が審判の具体的な状況について重大な関心を持たれるのは当然のことであり,その心情は犯罪被害者等基本法の趣旨などにかんがみますと,十分尊重されるべきものと考えられます。 また,被害者等に少年審判の傍聴を認めることは,被害者等の立ち直りにも資するものと考えられる上,少年審判に対する被害者等を始めとする国民の信頼を一層確保することにもつながることになると考えられます。 この点,少年審判の傍聴を認めることに関しては,少年が萎縮して言いたいことが言えなくなることなどから,慎重な検討が必要であるとの御指摘もございます。ただ,この点につきましては,裁判所が少年の年齢や心身の状態等を考慮し,きめ細かく傍聴の相当性を判断した上で,被害者等の傍聴を許可するということであれば,適正な処遇選択や少年の内省の深化を妨げられることなく審判を行うことができると思われます。また,少年の側からしても,被害者等が傍聴をしている場所でその立場や心情にも思いを致しながら審判を受けることにより,自らの非行の重大性を認識し,内省を深めることに資する場合もあると考えられます。   そこで,要綱(骨子)第一の一は,家庭裁判所は,故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪及び業務上過失致死傷等の罪,このうち被害者を傷害した場合にあっては,これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限るということにしておりますが,このような罪の被害者等から,審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において,少年の年齢及び心身の状態,事件の性質,審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは,その申出をした者に,これを傍聴することを許すことができることとするものであります。   このように,傍聴の対象事件を殺人事件等一定の重大事件に限ることとしましたのは,被害者等の「個人の尊厳にふさわしい処遇」の一環として少年審判の傍聴制度を設ける趣旨からしますと,特に「個人の尊厳」の根幹をなす人の生命に害を被った被害者等を傍聴の対象といいますか,傍聴できる方とすることがその趣旨に合致するものと考えられます。 また,少年審判が非公開とされている趣旨にかんがみますと,被害者等による少年審判の傍聴をその例外として認めることとしても,その対象事件としては殺人事件等,何ものにも代え難い家族の生命を奪われた場合のように,被害者側の事実を知りたいという傍聴の利益が特に大きい場合に限るのが適当であると考えられることに基づくものであります。   次に二についてですが,傍聴する者が著しく不安・緊張を覚えるおそれがあると認められる場合も考えられますことから,家庭裁判所は,このような場合には適当な者をこれに付き添わせることができることとするものであります。また,傍聴により知り得た事項には,少年等の名誉やプライバシーにかかわることが多く含まれていることから,三は,傍聴した者又はこれに付き添った者に対し,傍聴により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはいけないこととするなどの義務を課すこととするものです。   次に,要綱(骨子)第二の「被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」についてであります。   少年保護事件の記録の閲覧・謄写につきましては,平成12年の少年法改正により,被害者等から申出があるときは,裁判所が,当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって,かつ,少年の健全な育成に対する影響等を考慮して相当と認めるときに,当該保護事件の非行事実に係る部分の記録の閲覧・謄写をさせることができることとされました。 この記録の閲覧・謄写に関しましては,例えば単に事件の内容を知りたいとの理由であっても閲覧・謄写を認めるべきではないか。あるいは閲覧・謄写の対象については非行事実にかかる部分だけではなく,少年の身上,経歴等に関する記録についてもこれを認めるべきではないかとの御意見も示されているところであります。 被害者の方々が事件の内容を知りたいという心情から,少年保護事件の記録の閲覧・謄写を希望されることは当然のことであり,法律上も十分尊重すべきものと考えられます。 また,同様の趣旨から,先の通常国会において成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」によりまして,一般の刑事事件の公判記録の閲覧・謄写につきましては,被害者等には原則としてこれを認めることができるよう,その要件が緩和されたところであります。 そこで,少年法の要件を改め,まず被害者等については,原則として記録の閲覧・謄写を認め,例外的に閲覧・謄写を求める理由が正当でないと認める場合,又は少年の健全な育成に対する影響,事件の性質,調査又は審判の状況その他の事情を考慮して相当でないと認める場合に限り,閲覧・謄写を認めないこととするとともに,現行法で正当な理由の例示として規定されている「損害賠償請求権の行使のための必要性」という文言を削除することにより,正当な理由が認められる範囲を拡大することとするものです。   また,少年の身上・経歴等に関する記録も閲覧・謄写したいという被害者の方々の心情についても,犯罪被害者等基本法の趣旨等からすると,十分に尊重されるべきものと考えられますことから,非行事実に係る部分以外の記録も対象となるよう,閲覧・謄写の範囲を拡大するのが相当と考えられます。 ただ,少年の要保護性に関して行われる調査についての記録であるいわゆる「社会記録」につきましては,少年や関係者の名誉やプライバシーに相当深くかかわる内容を含むものであることから,これを閲覧・謄写の対象とすることは相当ではないと考えられます。そこで,いわゆる「社会記録」,すなわち要綱(骨子)に記載してございますが,「家庭裁判所が専ら当該少年の保護の必要性を判断するために収集したもの及び家庭裁判所調査官が家庭裁判所による当該少年の保護の必要性の判断に資するよう作成し又は収集したもの」,こういう記録を除いた保護事件の記録を閲覧・謄写の対象とすることとするものであります。   次に,要綱(骨子)第三の「被害者等の申出による意見聴取の対象者の拡大」についてであります。   平成12年の少年法改正により,家庭裁判所は,少年保護事件の被害者やその法定代理人のほか,被害者が死亡した場合におけるその配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹から,被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは,自らこれを聴取し,又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させることとされておりますが,現行法では被害者の心身に重大な故障がある場合における配偶者等は,その対象とされておりません。被害者の心身に重大な故障がある場合も,被害者本人が意見を陳述することが困難な場合があると考えられます上,刑事訴訟法における被害者等の意見の陳述や少年法における被害者等による記録の閲覧・謄写の制度などにおきましては,このような被害者の配偶者等もその対象とされていることから,これらの者についても意見聴取の対象者とすることとするものであります。   最後に,要綱(骨子)第四の「成人の刑事事件の管轄の移管等」についてであります。   まず,一についてですが,現行の少年法においては,第37条第1項に掲げる少年の福祉を害する成人の刑事事件については,家庭裁判所が管轄権を有するとされています。 この点につきましては,これらの事件とそれ以外の事件とが併合罪の関係に立つ場合,家庭裁判所と地方裁判所等に別々に公訴が提起されることとなり,その結果,審理期間が長くなったり併合審理がなされた場合とは異なる刑が言い渡される場合があるなどの不都合が生ずる場合があるとの指摘があります。 また,同項に掲げる成人の刑事事件については,家庭裁判所に起訴されることにより,いわゆる略式命令による処理ができなくなるといった不都合が生じる場合があるとの指摘もあります。   こうしたことにかんがみますと,このような成人の刑事事件については,他の事件と同様に地方裁判所等で取り扱うこととするのが適当と考えられることから,その管轄を家庭裁判所から地方裁判所又は簡易裁判所に移管することとするものであります。   次に,二についてですが,少年法第38条において,家庭裁判所は,少年に対する保護事件の調査又は審判により,同法第37条第1項に掲げる事件を発見したときは,これを検察官等に通知しなければならないものとされております。この規定は,家庭裁判所における調査・審判の過程において同項に掲げられた事件を発見することが多いということを考慮して現行少年法制定時に設けられたものであります。ただ,現在の少年非行を取り巻く状況等をかんがみますと,少年の福祉を害する成人の刑事事件は同項に掲げられたもの以外についても様々なものが考えられます上,刑事訴訟法には公務員の告発義務の規定もありますことなどから,現在この規定の有する意義は少なくなっているのではないかと考えられまして,その点から第37条第1項に掲げる事件の管轄移管と合わせ,第38条の規定を削除することとするものであります。   要綱(骨子)についての御説明は以上のとおりでございますが,去る11月29日に開催されました法制審議会総会におきまして,委員の方から要綱(骨子)第一の傍聴に関して御意見が出ておりますので,御紹介したいと思います。   まず1点目は,少年審判が行われる審判廷は狭いので,部会においてはこうした実情を踏まえた議論をしていただきたいというものでございます。もう1点は,傍聴やその付添いをした者が正当な理由がないのに,傍聴により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を他人に漏らさないようにするための担保措置についても議論をしていただきたいというものでございます。このような御意見が示されたところでございますので,紹介させていただきます。   以上であります。 ● 次に,事務当局から配布資料について説明していただきます。 ● それでは,配布資料の説明をさせていただきます。   御審議の参考にしていただくために,資料を12点御用意し,あらかじめ送付させていただきました。その内容等について御説明申し上げます。   まず,資料番号1でございますが,先ほど朗読いたしました諮問第83号です。   資料番号2は,内閣府において作成された資料であり,「犯罪被害者等基本法の概要」をまとめたものでございます。 資料番号3は,「犯罪被害者等基本法」の条文です。 資料番号4は,番号2と同じく内閣府において作成された資料であり,「犯罪被害者等基本計画の概要」をまとめたものでございます。   資料番号5は,「犯罪被害者等基本計画」の抜粋であり,この基本計画のうち,少年法に関連する部分を抜き出したものです。平成12年に改正された少年法のいわゆる5年後見直しの検討において,少年審判の傍聴の可否を含め,犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い,その結論に従った施策を実施することが記載されております。   資料番号6は,犯罪被害者等基本計画の案を作成するため,平成17年4月28日から同年11月1日までの間に計11回にわたり開催された「犯罪被害者等基本計画検討会」において示された意見等のうち,少年審判の傍聴等に関する意見等の概要をまとめたものでございます。ここでは少年審判の傍聴に関して,これを認めるべきとの意見,慎重な検討が必要であるとの意見等,様々な意見が示されているところでございます。   資料番号7は,要綱(骨子)について御審議いただくに当たり,参考になると思われる統計資料でございます。1頁の1は,基本統計としていずれも平成18年の「家庭裁判所の処理対象人員」,「少年保護事件の処分内容別既済人員」及び「一般保護事件の終局人員」をお示ししております。   次に,2頁の2でございますが,要綱(骨子)第一の「被害者等による少年審判の傍聴」に関し,この5年間の対象となる保護事件,そのうち被害者を死亡させた事件に限りますけれども,その対象となる保護事件の新受人員をお示ししております。ここに記載したものが対象事件のすべてではなく,統計上,分かる範囲のもののみを記載したところでございますが,これによりますと,要綱(骨子)第一でお示しした少年審判の傍聴の対象となる主な保護事件で被害者を死亡させた者の新受人員は,平均しますと年間380人程度になっております。   次に,3は,要綱(骨子)第二の「被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」の関係の統計でございます。改正少年法施行後5年間の「記録の閲覧及び謄写の実施数等」及び「閲覧又は謄写をさせなかった理由」をお示ししているところでございます。これらによりますと,現行法上閲覧・謄写の申出をした者のほとんどについてこれが認められており,これが認められなかったのは審判が開始されなかったなどの理由によるものが多くなっております。   次に,3頁の4は,要綱(骨子)第三の「被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大」の関係の統計であり,改正少年法施行後5年間の「意見聴取の実施数等」,「意見聴取の方法」及び「意見聴取をさせなかった理由」をお示ししております。これらによりますと,現行法上,意見陳述の申出をした者のほとんどについてこれが認められており,全体の約6割は裁判所が意見を聴取しております。また,意見陳述が認められなかったものは,被害者等により申出が取り下げられたなどの理由によるものが多くなっております。   最後に,3頁の5でございますが,要綱(骨子)第四の成人の刑事事件の管轄の移管等に関し,この5年間の少年法第37条第1項に規定された少年の福祉を害する成人の刑事事件の違反法令別の第一審終局人員をお示ししております。これによりますと,家庭裁判所で裁判が行われた成人の刑事意見の第一審終局人員は,平均しますと年間370人程度になっております。   資料番号8から10までは,要綱(骨子)第二から第四までに関連する少年法,いわゆる犯罪被害者保護法,刑事訴訟法等の条文の抜粋でございます。   資料番号11は,法務省が平成18年2月から3月にかけて実施した被害者団体等からのヒアリングにより得られました御意見と,1頁の2に記載されているように,平成18年10月から12月にかけて,平成12年改正少年法の施行後5年間における施行状況の評価等につき検討・判断の参考にさせていただくため,2に記載された関係者による意見交換会を実施したところ,その意見交換会により得られた意見のうち,今回の要綱(骨子)にかかるものの概要をまとめたものであり,少年審判の傍聴,記録の閲覧及び謄写,意見の聴取等についての幅広い御意見を記載しているところでございます。   最後に,資料番号12でございますが,要綱(骨子)第一の「被害者等による少年審判の傍聴」に関し,主要国の法制の概要をまとめたものです。   以上簡単でございますが,配布資料の説明をさせていただきました。 ● ありがとうございました。   なお,本日,○○委員から提出された日本弁護士連合会の意見書がお手元に配布されております。   それでは,事務当局から本日のスケジュールについて何かございますか。 ● 一点御案内がございます。   今回,少年審判の傍聴について御審議いただいておりますので,審判廷を御覧いただくことは今後の御審議の参考になるのではないかと思われますが,少年審判は非公開で行われていることから,これまでその審判廷を御覧になる機会がなかった方も少なからずいらっしゃるのではないかと思われます。 そこで,本日の部会終了後,東京家庭裁判所の御厚意によりまして,審判廷を見学していただけるようになっておりますので,時間が許す方は是非とも御参加いただきたいと考えております。 ● それでは,時間が許す方はこれに御参加いただくということでよろしゅうございますでしょうか。   それでは,事務当局からの最初の説明は以上のとおりでありますが,諮問事項に関する審議の進め方につきましては,後ほど皆様にお諮りして決めたいと思います。   この段階では,まずこれまでの事務当局の説明内容に関して,質問等がございましたらお願いしたいと思います。 ● すみません。ちょっと議論が始まる前の前提の問題なんですけれども,今回この法制審議会の議事録がまた作成されると思うんですけれども,その議事録は顕名というか名前の付いた形になるんでしょうか,それとも従前どおり名前が出ないというような形になるんでしょうか。私の意見は前回も同じようなことを申し上げているんですけれども,基本的には名前を明らかにしていただくという方が関係者も読みやすいというようなこともあるのではないかと思うんですが,その辺りについてお聞かせください。 ● 法制審議会の庶務を担当しております○○でございます。   庶務を担当する立場から,これまでの経緯と現状について御説明をさせていただきます。若干長くなりますが,御了承いただければと存じます。   法制審議会の基本的事項につきましては,法制審議会令という政令が定めておりまして,そこでは審議会の議事及び部会に関し必要な事項は審議会が定めるとされておりまして,この規定に基づき議事細則というものが定められております。この議事細則では,会議は公開しないこと,それから議事録は幹事が作成するということが定められておりますが,他方で,その議事録の作成方法の詳細あるいはその公開に関する取扱いにつきましては,明文の規定がございません。   そこで,かつてはこの議事録それ自体も非公開ということになっていたところでございます。   しかしながら,平成10年の第124回会議におきまして,法制審議会改革の一環といたしまして,会議や議事録の公開の在り方についても審議がされました。その際には,情報公開の動向あるいは行政改革の動向といった点を考慮し,会議は公開しないが,発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を除いた議事録を作成し,これを公開するということが決定されました。以後,今日まで総会,部会ともそのような議事録の取扱いがされております。   なお,その後,平成15年4月に開催されました刑事法ハイテク犯罪関係部会におきまして,委員から議事録をいわゆる顕名方式に改めることについての御提案がございまして,そこで議論がされ,総会に報告した上,検討していただくということになりました。そこで,同年9月開催の第140回会議におきましては,ハイテク犯罪関係部会の部会長から一部の委員から顕名化すべきであるとの意見があったこと,これに反対する意見もあったこと等,議論の状況が報告され,総会におきまして部会での議論内容,他の部会において当初の要望が特に認められないことなどが勘案された結果,総会としては刑事法部会でそのような意見があったということを認識するにとどめることとされ,従来どおりの議事録の取扱いとすることが確認されております。   その後,幾つかの刑事法部会につきましても同様の問題提起がございましたが,これまでの経過等に照らし,特段の対応が取られることなく現在に至っているところでございます。   私からの説明は以上でございます。 ● 今の説明で,先へ進んでよろしいでしょうか。 ● 余りこのことで時間をとるというつもりはないんですけれども,要するに,個々の部会では決められないということなんですか。若しくは,場合によっては部会で決められるということであれば一応部会に諮っていただいて,その御意見に従うということでいいのかなと思うんですが。 ● 付言させていただきます。   先ほども御説明いたしましたように,現在の議事録の作成方法は総会における決定事項というふうにされておりまして,具体的には法制審議会令第9条におきまして,審議会の議事及び部会に関し必要な事項は審議会が定めるというふうに規定されておりますので,特定の部会におきまして,その部会独自の御判断で総会の意思決定と異なる議事録の作成を行うということは困難ではないかというふうに理解しているところでございます。 ● 分かりました。   もしその名前を出すという意見が強いのであれば,強いということを御報告いただければと思いますし,強くないのであれば,そういう意見を言っていた委員がいるというようなことで御報告いただくことになるのかなと思いますが。 ● 先ほども御説明の中でも触れましたけれども,かつての部会におきましてそのような意見が出されて総会にも報告され,検討されたということでございますので,顕名化に関する御意見があるということについては,既に総会として御認識のところというふうに考えているところでございます。 ● 分かりました。 ● それでは,先ほど諮問事項について事務当局から説明がありましたけれども,この内容について,まず御質問等がありましたら,承りたいと思います。 ● すみません,何度も恐縮です。ちょっと口火を切る意味で。   1点は,先ほどの犯罪被害者等基本計画との関係で傍聴の可否も含め検討するというような流れでこの検討に入っているという御説明だったと思うんですけれども,法務省の事務局からは傍聴を認めるということを前提に具体的な要件なども含めた要綱案が示されているわけですけれども,法制審議会のこの部会では,まずはその可否が議論され,またさらに可であるとすればその要件はどうなるのかというようなことで,可否も含めて正にここで議論するというふうなことでお聞きをしていけばよいのでしょうか。ちょっとその点の確認です。 ● 諮問の内容は別紙要綱(骨子)について御意見を承りたいということでございますので,もちろん可否の否という御意見も含めて御審議いただくということになると考えております。 ● 私も諮問の内容の範囲についての質問なんですけれども,傍聴について,ただいま,その可否と要件とが審議の対象となるというお話でした。それとは別に,先ほど,総会で,審判廷が狭いという実情を踏まえた議論をしていただきたいという意見があったとの御紹介がありましたが,例えば傍聴の方法といったことも,諮問の内容として審議の対象になりますでしょうか。 ● 傍聴の方法ということで,どのようなことを念頭に置かれているのかはっきりしないのですが,例えば,この要綱(骨子)の中でここの部分を傍聴の方法としてこう修正すべきだという御意見でありましたら,当然それは御審議いただくべき事項になると考えます。 ● そのほかございませんか。 ● 統計資料にかかわることでお伺いします。傍聴の可否を含めて検討するということですので,前提として当然,傍聴の必要性が問題となるでしょう。この点については,少年審判は非公開という大前提と被害者の方の強い御要望をも考慮して,少年審判の内容を知りたいという要請についての手当は,既に少年法で行われているわけですね。その関係で配布されている統計資料の中には,記録の閲覧に関する資料はありますけれども,改正法31条の2によって行われることになった審判結果の通知,これも少年審判の内容について知りたいという被害者の方の御要望におこたえするためにつくられた制度であるわけですけれども,この実施状況に関する統計資料は用意できますでしょうか。 ● ただ今御要望をいただきました審判結果通知制度の資料も準備させていただきたいと思います。   なお,簡単に口頭で説明させていただきますと,この通知制度について,平成12年に改正された少年法の施行後5年間にその申出をした方は3,180人おりまして,そのうち約99%に当たる3,153人につきまして審判結果の通知がなされたものというふうに承知しております。いずれにいたしましても,御要望いただきました資料は準備させていただきたいというふうに考えております。 ● 要綱(骨子)には特に傍聴の要請が強いと思われる一定範囲の罪種が列挙されているわけですが,統計資料として記録の閲覧及び審判結果の通知について,この罪種の方々がどのぐらいを占めているのかということも分かりますか。 ● そこは事前に確認しましたけれども,結論的に罪種別のものはないというふうに伺っております。 ● ありがとうございました。 ● そもそもこの要綱の前提となっている被害者の要望についてなんですが,平成12年の改正でかなりの情報の開示がなされるようになったその後についても,それでは不十分であって,傍聴を希望しているという,そういう意味での立法事実といいましょうか,被害者の具体的な要望の確認というようなものがされているのかどうかお聞きしたいのと,もう1点,今日,東京家裁で審判廷を見ることができるということは大変いい機会と思うんですけれども,ただ,東京は大きい裁判所ですし,私のように千葉というようなところですと,かなり部屋数も限られているとかということもございます。ですので,全国のある程度の部屋数とか,あるいは狭い部屋が一つで大きい部屋がどうでというような実情が分かると,より一層具体的な議論ができるかと思いますが,そういう情報はいかがでしょうか。 ● 被害者の最近の御要望というところで申し上げますと,先ほど資料説明の中で申し上げましたけれども,法務省の方でヒアリングを実施させていただいたり,あるいは犯罪被害者基本計画の検討会というものの中でいろんな御要望が出ていると,その中でもやはり傍聴に関する希望は非常に強かったと思います。 ● 2点目の審判廷の関係につきましては,今,手元に持ち合わせがありませんので,少し検討させていただきたいというふうに考えております。 ● よろしいですか。 ● はい,結構です。 ● それでは,ほかに御質問ございますでしょうか。 ● それぞれ○○委員,それから○○委員の御質問との関係での質問なんですが,まず統計資料の関係で,被害者の方の意見陳述について,罪名別に調査がされているかということについては,この法制審議会の少年法部会の前に出されている意見交換会の中では,最高裁の方から罪名に分けて意見陳述の件数の説明があったような感じがするんですけれども,統計がないかどうかというのは再度御確認をお願いしたいというのが1点と,それから,ちょっと同じようなことになるんですけれども,意見陳述がなされているのがどういう罪種別か,それから結果通知についてはないのかもしれませんが,結果通知の問題と,更にその対象になっている事件が最終的に逆送されたかどうかということも,要するに,その後,公開法廷で事情を知ることができたかどうかということとの関係では,実情がどうなっているかということの把握がしやすいと思うので,もしそのような統計を出すことが可能であればお願いしたいというのが第1点であります。   それから第2点は,同じ統計で,これはすみません,今回諮問をされているということとの兼ね合いで,傍聴とは全然違うんですが,一番最後の第四の少年法38条を削除するものというようなことでの諮問が出ているので,現実に裁判所から通知とかそういうようなのがどれぐらいあるのかないのかということが,もし統計があれば,現実の運用について教えていただきたいというのが統計の関係です。   それから,○○委員の質問との関係では,被害者の方からのいろんな御要望というのがあって,私自身もホームページなりいろんな資料などで勉強中ではあるんですけれども,特に平成12年の少年法改正を踏まえてというか,改正で一応一定の記録の閲覧・謄写,それから結果通知を受けられるようになっているわけですけれども,そういうことを経験しているんだけれども,なお,やはりこういう点が不満であったというふうな,そういうふうな御意見があるのかというか,平成12年改正の後のケースでそのような御要望が具体的にあるのかないのかというところまで御調査されているのか,特にそこまで区別して調査されているわけではないのかという,そこの点も教えていただければと思います。 ● それでは,今,御指摘のあった3点のうちの最初の2点については裁判所から申し上げた方がいいと思いますので,簡単にお話しいたします。   被害者配慮制度三つのうち,罪種との関係がどうなっているかということでございますが,私どもで確認をとっているところですと,意見聴取については先ほど意見交換会でもそういう議論があったのではないかという御指摘のとおり,ある程度罪種別の対応関係というのは出ております。その一方で記録の閲覧・謄写と審判結果の通知については,これはもう罪種との関係というのはとっておりません。もう1点,その事件が検察官送致になったのかどうなのかといったということは処分との関連ということになってまいりますが,この三つの制度とも処分との関連というところまでは難しいものでございます。   2点目については,38条の通知というのが現実にどれぐらいなされているかということですが,これも特段の統計をとっておりませんので,通知件数についての詳細は不明であります。   最初の2点については以上です。 ● 私からも1点補足と,それとその他の御説明をしたいと思うんですが,まず38条の通知の方からいきますと,その通知状況については,今,最高裁の方から御紹介があったとおりかと思うんです。ただ,申し添えますと,新聞などでも少なからず報道されているかと思うんですが,いわゆる成年後見人が,その立場を悪用して被成年後見人の財産を横領してしまうという場合があろうかと思うんですが,そういった場合においては家庭裁判所の方で事実を調査して告発をして,最終的には刑事手続に乗っている例があるのではないかというふうに認識しているところでございます。   それと,閲覧・謄写制度がありながらなお傍聴を希望されているということで御質問をいただきましたけれども,この点につきましては,御意見を紹介する形で少し御説明させていただきたいと思うんですが,まず○○委員が代表幹事を務められております「全国犯罪被害者の会」から,平成18年2月付けで意見書をいただいております。その御意見を見ますと,「少年審判において適切な事実認定が極めて重要であることは明らかであり,被害者等は審判において加害者が何を述べ,どのように事実認定されるかを自分の目で確認したいとして審判への出席を希望しているのである」ということで,やはりそこは閲覧・謄写とはまた別に自分の目でその審判で何が行われているのかを確認したいという御意見をいただいているところでございます。   もう1点御説明いたしますと,今度は先ほど御説明しました平成12年改正少年法に関する意見交換会におきまして,少年犯罪被害当事者の会の○○さんが意見を述べられております。○○さん曰く,「望む人があれば,やはり傍聴をお願いしたいと思います。それは,やはり自分の目で確かめたい,自分の目で,裁判官がどんなことを言うか,加害者がどんなことを言うか見たいわけです。そのために傍聴を許してほしいと思います」と言われております。これもやはり閲覧・謄写だけではなくて,傍聴をしたい,直接自分の目で見たいという御要望をいただいているものと,事務当局としては理解しているところでございます。 ● 若干補足をさせていただきますと,先ほど来,私どもの方で御説明をしておりますように,この間,犯罪被害者の方々からの御要望をいろんな機会で伺っており,その中でもちろん傍聴を認めてほしいという声が強いわけですが,私どもが伺う場合に,それを発言されている方が平成12年の少年法改正の施行後の事件を特に念頭に置いて発言されているのか,あるいはその方がそういう事件の被害者の方なのかということについて,個別にもちろん確認できない場合もありますし,していない場合もございますが,私どもとしては意識的にその点を伺う場合もございます。その中で実際に12年改正の施行後の事件の当事者の方からそういう御要望を聞いたこともございます。実際にこの間いただいた被害者の方々の声の中にはそういうものが少なからず含まれているというのが私どもの認識でございます。 ● そのほかに御質問ございますでしょうか。 ● 今のに関連してなんですけれども,被害者のグループもいろんな考え方の方,それぞれお集まりなわけですけれども,傍聴に関しても否定的,消極的な見方をする被害者の方々もおられるわけですが,そういう被害者の方の意見聴取もされているんでしょうか。 ● そのような団体が存在することは承知しており,意見書もちょうだいしておりまして,この会議室にお持ちしておりますので,御希望される方につきましては御覧いただければというふうに考えております。 ● 私の要望としては,様々な御意見を踏まえて議論をしたいと思いますので,配布をしていただけたらと思いますが,いかがなものでしょうか。 ● 御趣旨は分からなくはないんですけれども,少なからず意見書をいただいております。これをすべて配布ということになりますとかなり大部になりますし,他方,事務当局がこの意見はいい,この意見はちょっとということでセレクションして配布するというのもいかがなものかと思います。   したがいまして,繰り返しになりますけれども,それを御覧いただけるようにはいたしますし,また御希望があればその写しをお渡しするということも意見書の内容いかんによっては可能かというふうには考えております。 ● 被害者の団体で傍聴に反対する団体があると。そこから意見が来ているということですが,法務省の把握されている傍聴に反対する被害者の団体,それの数並びに出た意見書の数などを教えていただきたいと思いますが。できれば,その被害者団体の構成員の数も教えていただきたいと思います。 ● すみません。法務省の方でいただいているのは1団体から一つの意見書をいただいています。また,念のため申し上げますと,少年犯罪被害者の方からはいただいておりません。 ● その団体の構成員の数は分かりますか。 ● ちょっと承知しておりません。 ● ああそうですか。 ● そのほか御質問おありでしょうか。 ● ここでお聞きするのがいいのかどうか分からないんですけれども,今回のこの諮問の背景の一つに被害者の方へのいろいろな情報提供が十分でないというようなこともあろうかとも思うんですけれども,現時点において捜査段階それから少年審判段階,それから場合によってはその後の保護処分の段階で,被害者の方にどのような情報提供制度がなされているのか。それからそういう制度がいつごろから始まっているのかということを教えていただければと思います。それは現状を知りたいということが一つあるんですけれども,あともう一つは,今なされているような情報提供制度がどの程度システマチックにされているのかというところもちょっと教えていただきたいと思っているんです。恐らく,個別にいろいろな提供をされているというようなこともあると思うんですけれども,例えば一定の事件であれば当然にそのシステムが動くようになっているのか,そうではないのかとか。被害者の方からすると当然被害に遭われて何も制度が分からない中でどなたかが当然にそれをきちんと連絡するような仕組みにそれぞれなっているのか,なっていないのかということも知りたいものですから,その辺りも教えていただきたい。 ● それでは,この件につきまして,関係の省庁の御出席の方で御説明をいただきたいと思います。 ● 法務省の分につきましては,検察庁から通知する,あるいは少年院,保護観察所からも最近そのような制度を導入するということで幾つか動きがありまして,拡充しているところでございます。法務省の施策につきましては,取りあえず私の方からまとめて御説明申し上げたいと思います。   私どもとしましては,少年事件に限らず,犯罪被害者やその御遺族の方々に対する情報提供を適切に行うということは,極めて重要であるというふうに考えております。 まず,検察庁における情報提供について御説明いたしますと,検察庁におきましては,事件を担当している検察官が,捜査への影響等を勘案しつつ,刑事手続の各段階において,被害者の方々に対する情報提供を行っております。捜査段階におきましては,例えば被害者の方々から事情をお伺いする際に,検察官から可能な範囲で捜査状況等の情報をお伝えしているところでございます。 また,平成11年4月からは,「被害者等通知制度」の運用を全国で開始しており,これに基づきまして,検察官等が被害者の方々の取調べ等を実施したときには,その際に通知の希望の有無を確認し,また,被害者が死亡した事件等重大事件におきましては,被害者の方々の取調べを実施しないときでも,通知の希望の有無を確認することとしており,これにより把握した被害者の方々の希望の有無に応じまして,事件の処理結果,例えば家庭裁判所送致処分であれば,送致した旨ですとかその裁判所名,あるいは送致年月日,こういったものを通知しているところでございます。   さらに,平成11年10月には,全国の地方検察庁に被害者支援員を配置し,被害者の方々への情報提供等を行うとともに,平成12年4月には,全国の地方検察庁に被害者ホットラインを設置し,被害者の方々からの相談などに応じているところであり,法務省としては被害者支援員等により被害者の方々に,よりきめ細かな対応がとられるよう,各種研修等を積極的に実施しているところでございます。   そのほか,検察庁におきましては,平成18年12月から,被害者の方々に被害者通知の希望の有無を確認するに当たり,記録の閲覧・謄写制度や意見聴取制度等,少年審判手続における被害者等への配慮制度の説明を行うとともに,希望があれば,これら制度について分かり易く解説しましたパンフレットであります「犯罪被害者の方々へ」を交付することとしております。   次に,少年院及び保護観察所における情報提供について御説明いたします。 平成17年12月に策定されました犯罪被害者等基本計画におきまして,法務省において,保護処分決定確定後の加害少年に係る情報の提供について検討を行い,必要な施策を実施することとされております。 法務省におきましては,こうした基本計画の趣旨をも踏まえまして検討を重ねました結果,被害者の方々に対し,加害少年の処遇状況等について通知することとし,本年12月からその運用を開始したところでございます。 具体的には,まず,少年が少年院に送致された場合には,少年院の長が,少年院への入院年月日,収容されている少年院の名称,個人別教育目標など少年院における教育状況,出院年月日,出院事由等を,通知を希望する被害者の方々に通知することになっております。 また,少年が保護観察処分に付された場合及び少年院に送致された少年が仮退院を許された場合には,保護観察所の長が,保護観察開始年月日,保護観察をつかさどる保護観察所の名称,特別遵守事項の内容,保護観察官等との接触状況,保護観察の終了年月日,終了事由等を,通知を希望する被害者の方々に通知をすることになっております。   それと,○○委員の方から,一定の事件についてシステマチックに通知をするのかとの御質問をいただいたかと思いますが,この通知というのは場合によってはその犯罪を家族の者に内緒にして申告している場合もあり,そういった場合に,内緒にしているという事情を知らないで情報を送ってしまって,後でそれが内緒にしている家族に発覚し御迷惑を掛けるということもあり得るところであり,やはりそれは避けなければいけないというふうに考えております。したがいまして,取調べ等の機会にそこは十分御説明をした上で,その御希望を確認して,通知の方法についても併せて御希望を確認して,通知を差し上げる,このような形で基本的にはやっているところでございます。   少し長くなりましたが,私からの説明は以上です。 ● ただいまの法務省の対応につきまして,更に御質問ございますか。 ● 後でこれは警察庁の方から御説明があるのかもしれませんが,少年事件において被害者の方を検察官が取調べするという場合というのは非常に限定されていて,多くの場合は検察官の調べのない状況で家庭裁判所に事件が送致されるのではないかと思うんですけれども,そういう意味では,取調べのあったときには御説明はあるんでしょうけれども,やはりそういうこと自体が分からないで家庭裁判所の審判を迎えてしまうような事案がむしろ大半なのではないかというような気がするんですが,その点はどうなのかということと,それから少年院通知の関係での通知制度のことを教えていただいたんですが,こういう制度自体を被害者の方がまだ知るタイミングというのがどういうタイミングになるのかということ,要するに検察の調べのときにこういう少年院に行った場合にはこういう制度があるよというようなことでの御説明があるのかどうかという,そこもちょっと教えていただきたいという質問です。 ● まず,検察官調べがほとんどないのではないかという御指摘があったかと思うんですが,そこは正に事件によりけりということはあろうかと思います。ここは当然のことながらその統計的なものがあるわけではありませんが,周りの話を聞いたり,あるいは私自身の経験的なことということで申し上げますと,特に被害者の方が亡くなっているような重大事件についてはやはり遺族の被害感情というのを確認するというのは極めて重要なことですから,遺族感情,被害感情というのを確認して調書を作成しているというのが一般的な扱いではないかなというふうに思っております。その場合には当然通知の希望の有無というのを確認することになるかと思います。   それと,先ほどの説明で少し触れさせていただいたところでございますが,被害者が死亡した事件等重大事件においては被害者の方々の取調べを実施しないときでも通知の希望の有無を確認するということにしておりますので,御質問のあった取調べをしないときでもそういった希望の有無を確認するということでやっているところでございます。   更に申し上げますと,これも先ほど少し触れたところですが,被害者通知の希望の有無を確認するに当たりまして,記録の閲覧・謄写制度ですとか意見聴取制度等,そういった配慮制度の説明を行うとともに,希望される方があればそういったパンフレットをお渡しする,あるいはお送りするなどしており,様々な形でその配慮制度を承知していただけるよう取組をしているところでございます。 ● それでは,○○幹事からお願いいたします。 ● 警察庁における少年事件の捜査段階における被害者に対する情報提供ということについて御説明申し上げたいと思います。   先ほど,法務省の方からもお話がございましたが,警察庁の方でも少年事件であるかどうかにかかわらず,被害者に対する情報提供ということは大変重要なことだというふうに思っております。警察庁では平成8年の7月に被害者連絡実施要領というのを定めまして,殺人罪,強姦罪等の身体犯等の被害者又はその御遺族に対して,捜査状況等についての連絡等を図ってきたところでございます。その対象事件あるいは連絡の内容等についてもこれまで随時見直しをし,拡充等を進めてきております。   具体的な連絡内容につきましてちょっと申し上げますけれども,被害者から事情聴取等を行った捜査員等が被害者の御意向を踏まえた上で,まず,どんな手続で進んでいくか,刑事手続あるいは犯罪被害についての被害者のための制度というのがどんなことがあるのかといったことについて,パンフレットを使ったりしてまず御説明し御連絡することがございます。その上で,被疑者の検挙にまだ至っていないような場合には捜査に支障のない範囲内で,捜査状況がどんなふうになっているのかということを御連絡することがございます。それから,逮捕時には被疑者の検挙ということについて御連絡いたしますし,その際,被疑者の人定その他について御連絡することがございます。それから送致時等におきましても,送致先の検察庁あるいは処分結果,控訴を提起した裁判所その他必要と認められる事項等の連絡等を行うことにしております。全体的にはそうなっておりますけれども,犯罪少年事件,あるいは触法事件についても基本的にはこのような実施要領に基づいて被害者への連絡が行われることになるわけでございますけれども,被害者に被疑少年等の人定その他連絡することによって被疑少年の健全育成を害するおそれがあると認められるようなときには,被疑少年の人定に変えて,保護者の人定等を御連絡するという場合もございます。   なお,先ほど申し上げましたように,実施要領の対象事件につきましては,殺人罪,強姦罪等の身体犯等というこということで一定の事件になっておりますけれども,その事件に限らず,なるべく捜査への支障等のない限りにおいては被害者の方への情報提供の御要望に応じているということが実態としてございます。   以上でございます。 ● ありがとうございました。   ただいまの警察庁の対応について何か重ねて御質問ありますか。 ● 警察庁の方の説明に対する質問というわけではございませんけれども,被害者の方々にこういうふうに様々な御配慮をさせていただいているということは,私の現場経験からいたしましても,例えば法テラスから各地で情報提供していただいておりますし,それとともに最近は全国相当のところに被害者の御相談等に応じる民間団体をつくっていただいておりますので,そういった方々とも連携して様々な施策と申しますか,配慮の在り方,あるいはそれに関する情報は提供させていただいているというふうには私は承知しております。 ● それでは,最高裁判所,何かございますか。 ● 家庭裁判所における情報提供の現状について御説明いたします。   大きく分けまして一般的な周知活動とそれから個別の事件における対応とに分けてお話しいたします。   まず最初の一般的な周知活動でございますが,イラストなどを用いて被害者配慮制度について分かりやすく説明したリーフレット「少年犯罪によって被害を受けた方へ」というものを作成しております。これを各庁に配布した上で各庁では警察署,検察庁,弁護士会,それから地方更生保護委員会や保護観察所その他の関係機関に備え置きを依頼しております。また,同様の情報が載っておりますホームページその他での広報活動も行っております。いつからかということですが,リーフレットは改正法が施行された平成13年から配布しております。   2点目として,個別の事件における対応でございます。幾つかに分けていきますと,まず一つ目が被害者配慮制度の案内,被害者案内制度と私どもは呼んでおりますけれども,これについての御説明です。システマチックにという観点からいきますと,これは被害者が死亡するような一定の重大事件,それからその他裁判官が必要と認めた事件,各庁によって多少差はありますが,大体各庁ともこういう基準は共通しておるようです。これについては現在全国の家裁50庁すべてにおいて,捜査機関から事件が送致されたときに,被害者の側から何らか利用の申出があるのを待たずに,裁判所の方から,これらの制度を説明した先ほど申し上げたリーフレットだとか,裁判所の中で担当窓口がどこになるかという連絡先を記載した書面などを郵送しております。こうやって制度の案内をするという取組を実施しておりまして,被害者の制度利用の機会が一層保障されるように努めているところでございます。   このような取組の時期は,各庁によって異なりますが,平成17年ころから行われております。   小さな二つ目として,個別の事件について裁判所に被害者から照会があった場合の対応でございます。各家裁では被害者から問い合わせがあれば,その少年について例えば何月何日どういった罪名で事件の送致を受けたといったこと,これは回答しております。また,審判期日が指定されていればこれも同様に回答するなどの配慮をしております。また,その問い合わせの内容によってはそういったことだけではなくて,先ほどから出ております被害者配慮制度,記録の閲覧・謄写などを利用されたらいかがですかといった紹介もしております。   3点目ですが,記録の閲覧・謄写,審判結果通知と,先ほどの資料の中でも御説明がありましたが,少年法の制度の中にあります記録の閲覧・謄写,数字については先ほど御紹介がありましたが,2,880件の申出があるところを98.5%に相当する2,836件について認めたといったこと,それから審判結果の通知についても同様でございます。5年間で3,182の申出があって99.2%に当たる3,153人について認めて通知を行っているということがございます。双方ともその2~3%のところですが,多くは申立の資格はなかったと,こういった形式的な理由が大半であるという理解をしております。   四つ目として,被害者調査というものがございます。まず最初にお断りしておかなければいけないのは,被害者調査というのは別に情報提供を目的として行っているものではないわけです。ただ,典型的には被害者が死亡するような一定の重大な事件については,まず行うというものでございますが,裁判所の方から被害者の方に連絡をとって,被害者から見た非行の状況や被害の実情,それから少年の処分に対する意見などを伺うと,こういったものでございます。   こういった中で,まずその被害者調査の連絡をするということによって被害者の方は事件が係属したということを当然に知ることになりますし,また調査官からそのやり取りの中で,必要に応じて被害者配慮制度の内容だとか申出時期について説明したり,希望があれば申出のための用紙を渡すということもしておるようでございます。   裁判所からは以上でございます。 ● 私から1点だけ補足させてもらいます。   先ほど関係機関の連携という御質問もございますが,家庭裁判所の方で家裁調査官によって被害者調査をしたときにはその被害者の心情等を含めて,これを少年調査票に記載したり,そのほかの書面にして残し,一方,被害者が意見陳述をされたときも,その要旨をきちんと記録に残します。そして,これらの記録については社会記録に綴りまして,少年院送致あるいは保護観察処分になったときはそちらの方に送ることにして,少年院あるいは保護観察所の方で参考にしていただくように配慮しております。   以上補足でございます。 ● ありがとうございました。 ● 少し私からも補足ですけれども,○○委員から,例えば少年院における通知制度の教示についてのお尋ねがあったかと思うんですが,検察庁におきましては,その通知の希望の有無を確認する際には,当然の前提として制度の説明というものをしており,お尋ねがありました少年院における通知制度につきましても御説明するようにしているところでございます。 ● 今,御説明いただいたので,ちょっと裁判所に確認したかったんですけども,個別の事件に対する対応ということで被害者の方から照会があった場合に,送致の有無,送致年月日のほか,審判期日を伝えるよう配慮しているという御説明があったかと思うんですが,審判期日を伝えるということについて何か裁判所の中で通達,あるいは統一的な運用の基準みたいなものはおありなんでしょうか。というのは,支援の側の代理人として家庭裁判所に送致された案件で,審判期日を教えていただけなくて非常に苦労したという経験が複数あるものですから,その辺りどういう形で運用されているかを教えていただければと思います。 ● 通達云々ということに関しては,特に通達というものはございません。個別の事件においての各裁判所の裁判体の判断であろうと思います。もちろん,今,委員がおっしゃった個別の事件について当然承知しているわけではありませんが,一般的に教える,回答する場合もあれば,確かに回答しない場合もあるんだろうとは思っております。一般的にそこがどういう基準かというのは正確に全部把握しているわけではございません。個別の事案について承知しているわけではありませんが,通知することによって支障が生じる事案というのも考えられなくはなかろうと思います。そういった場合にはもちろんしないこともあるでしょうし,むしろ,例えば典型的には審判期日において意見陳述をしたいんだということであれば,当然教えるといったことになりましょうし,そういった個別の事情に応じて各裁判所において判断しているものと思います。 ● それでは,これまで皆様からいただきました質問等について,統計資料あるいはそれ以外の資料などで,書面でまとめることができるようなものがもしございましたら,事務局の方で次回までに御準備いただきたいと思います。次回の審議に資することになると思います。   時間がかなり経過しましたので,ここで休憩にいたしたいと思います。その後は諮問事項の審議に入ります。時間が限られておりますが,本日できましたら要綱(骨子)の全体について一巡目の議論をいたしたいと思いますので,御協力をよろしくお願いいたします。   それでは,休憩にいたします。      (休     憩) ● それでは,会議を再開いたします。   諮問事項の審議に入りたいと思います。   休憩前に申しましたように,できますれば本日次回からの審議のために,この要綱(骨子)の全体について,議論を一巡しておきたいと思いますので,御協力をお願いいたします。   まず,要綱(骨子)第一の「被害者等による少年審判の傍聴」についての議論に入ります。   この点について御意見,御質問などございましたら,御発言をお願いいたします。 ● 事務局にお尋ねしたいんですけども,要綱の第一の一の中に,傍聴を認める事件として「被害者を傷害した場合あっては,これにより生命に重大な危険を生じさせたとき」という規定振りがございますけれども,少年法の中には記録の閲覧・謄写に関する5条の2等では「心身に重大な故障がある場合」という規定の仕方もございまして,この「生命に重大な危険を生じさせたとき」というもののイメージというか,特に「心身に重大な故障がある場合」との何か違いを意識して要綱案をおつくりになられたのかどうか,その辺のお考えを聞かせていただければと思います。 ● 傷害に限定を加えている「生命に重大な危険を生じさせたとき」の要件についてお尋ねをいただきました。まず,「いずれも被害者を傷害した場合にあっては,これにより」とありますが,「これにより」とは生命への重大な危険がこの傷害により生じたということを意味しております。   次に,「生命に重大な危険を生じさせた」とは医療措置を施しても被害者が死に至るような,被害者が死亡に至る蓋然性が極めて高い状態にあることを意味しております。お尋ねの「心身に重大な故障がある場合」との違いということでありますが,心身重大故障,これは御指摘のようにほかの制度についても既に使われている概念です。その意義につきましては,その制度が利用できないほどの精神的あるいは身体的に重大な故障を負っていると。例えば寝たきりにあるとか,そうした場合には心身重大故障に当たるということが言えるのではないかと思います。それに対しまして,生命重大危険につきましては,先ほど少し申し上げましたように医療措置を施しても被害者が死に至るような被害者が死亡に至る蓋然性が極めて高い状態,典型的には例えば危篤状態が挙げられるかと思いますが,そういったものがこれに当たるというふうに整理をしているところでございます。 ● そのほか御意見ございませんか。 ● 第一の一について何点か御質問いたします。   まず2行目の同項第二号,触法少年の事件についても対象としているわけですけれども,これについて何かこの要綱作成までに御議論があったのか,特に触法少年も入れるということについての理由について御説明をいただきたいと思います。   それから,後ろから4行目の一番下からのところですが,「少年の年齢及び心身の状態」云々その他要件があって,そして「相当と認めるとき」とまとめられているわけですが,ここの要件ですけれども,例えば5条の2では「少年の健全な育成に対する影響」というような表現が使われていて,冒頭の「少年の年齢及び心身の状態」というところと用語が異なっているんですけれども,強いて違う用語を使った目的とか意義についてお教えください。   それで,三点目ですが,後ろから2行目,「これを傍聴することを許すことができる」とありますが,「これを」というのは,例えば審判の全部又は一部なども含めて「これを」という意味なのかどうか。   以上です。 ● 関連質問です。今,○○委員が最初に御質問された触法少年の事件について私も詳しくお聞きしたいので,お尋ねします。要綱(骨子)は傍聴の対象として3条1項2号の触法少年の事件も含むことになっているわけですが,年少であることによる少年の脆弱性についてはどのように考えておられるのかお尋ねしたい。先般の少年法改正は触法少年事件にかかわる事項を多く扱うものであり,特に国会審議においては,触法少年は年少である故に特に脆弱であるということが強く意識されて様々な議論が行われ,年少者への特別の配慮という趣旨を踏まえた新たな条文も設けられたと記憶しています。そこには触法少年と犯罪少年は,やはり区別して扱う必要があるというものの考え方が示されているのだろうと思います。そういう考え方もある中で,しかし要綱(骨子)は,触法少年の事件も犯罪少年の事件と特段の区別をすることなく傍聴の対象事件に含めるという形で作られている。そこのところの理由付けといいますか,御説明をお聞きしたいというのが関連質問です。 ● ○○委員から3点,○○委員から1点,これは○○委員の最初の質問に関連するということで,合計3点の御質問をいただきました。   まず,触法少年に係る事件を対象として入れた理由ですが,これにつきましては被害者の方が受ける被害というのは,当然のことながら,少年の年齢によって変わるものではないと考えられます。そうしますと,やはりかけがえのない家族を奪われたその近親者の方からしますと,審判におけるやり取りを自らその場で直接見聞きして,その具体的な状況について十分な情報を得たいと,こういう心情につきましては,犯罪少年によって被害を受けた場合と特段異なるわけではないというふうに考えられます。その心情というのはやはり十分尊重すべきであるというふうに考えられます。   また,触法少年につきましては,検察官送致されて刑事裁判になる可能性がないため,被害者にとっては少年審判が傍聴可能な唯一の機会ということも言えるかと思います。そういったことなどを考慮しますと,やはり,傍聴を認める必要性というのは高いものがあるのではないかというふうに考えております。   ○○委員から御指摘があり,あるいは○○委員も同様の問題意識に基づいておられるかと推察しているところですけれども,触法少年につきましては精神の発育が必ずしも十分でない場合もあります。その心情の安定への配慮の要請というのがより大きいということもあろうかと思いますが,これらの点についての配慮につきましては,個別の事案に応じて裁判所が少年の年齢ですとか心身の状態等を考慮した上で,きめ細かく傍聴の拒否について判断を行うことや,必要に応じて,傍聴している方に退席をしてもらうことなどにより,適切に対応することが可能ではないかというふうに考えております。少なくともおよそ一切傍聴を認めないということは適当ではないのかなというふうに考えてその対象に含めることとしたものでございます。   次に2点目が閲覧・謄写の考慮事情として書かれております「少年の健全な育成に対する影響」につきまして,傍聴につきましてはそのような言葉がなくて,「少年の年齢 」ですとか「心身の状態」,このような言葉になっているけれども,その理由はどのようなところにあるのかというお尋ねをいただいたかと思います。被害者の方に少年審判の傍聴を認める場合には,裁判所による適正な処遇選択ですとか,少年の内省の深化が妨げられないようにすることは,当然必要なことかと思います。そこで,審判や少年等へどのような影響を及ぼすのかを具体的に考えるべきというふうに整理いたしまして,考慮事項の例示としましては,少年の年齢ですとか心身の状態など,傍聴が少年や審判に与える影響を考える上で,いわば直接的に関連する要素,こういったものを挙げるのが適当ではないかと考えたところでございます。御指摘の「少年の健全な育成に対する影響」については,これは当然のことながら広い意味では考慮されるものでありますが,少年や審判への影響を具体的に考慮するための要素としては,あえて挙げる必要はないのかなということで,考慮事情として明示をしなかったというところでございます。   それと3点目の御質問でございますが,「全部又は一部」というのを含むのかという御質問をいただきました。今回の要綱におきましては審判の傍聴を許可することができると,こういう形で定めておりまして,裁量によりまして,審判の全部の傍聴の許可ができるということからしますと,当然これは一部の許可ができるものというふうに考えております。   あとは,その要綱に審判期日の全部又は一部と,こう明示しなくてもいいのかということもあり得るかと思うんですけれども,これは事柄の性質上,そういう形で全部できることから,当然一部というのもできるものというふうに整理ができるかと思います。   また,少年法におきまして全部又は一部という文言が使用されているのは少年法の29条ですとか30条の2などの費用に関するものがございまして,これは費用のうち一部の支給ですとか徴収が可能であることを法文で明示しなければ裁判所の裁量があるかどうかは不明確となるため,このような文言が必要であると考えられるところでございますが,この傍聴につきましては,事柄の性質上,先ほど申しましたように全部できる以上一部ということも当然許可することができるというふうに考えておりますことから,そのような文言は用いないこととしたということでございます。   以上です。 ● ただ今,既に要綱(骨子)の文言に関する御質問が出ているわけですけれども,私の質問はより基本的な前提に係ることです。事務当局の御説明にもありましたとおり,今回の諮問はいわゆる基本計画が一つのきっかけになっているわけですが,基本計画の文言は,先ほど確認されましたとおり,「少年審判の傍聴の可否も含め」ということであり,これに対して要綱(骨子)は一定の要件で裁量的傍聴を認めようとする文言になっております。このように傍聴を可とすることはこれまでの少年法の非公開の原則に極めて重大な例外を設定するものでありますから,やはり議論としては,なぜ少年審判は非公開なのであるか,それにもかかわらず被害者の方,あるいは御遺族の方にはなぜ傍聴を認める法的な必要性があるのかという,根本に立ち返った議論をしておく必要があるのだろうと考えています。要綱の文言に係る議論は,やはりこのような基本的議論との関係で問題になるのでありましょうから,まずは,傍聴の必要性ということについてやはり突っ込んだ議論をしていただきたいというふうに私は思っているところであります。   そこで,その必要性に関してですけれども,先ほど縷々御説明があり,被害者あるいは被害者遺族の方が特にこの目で審判の様子を御覧になりたいという強い要望があること,非公開である審判の内容を情報として提供する制度として記録の閲覧と審判結果の通知は既にあるわけですけれども,それとは別にこの目でそこで審判を見たいというお気持ちがあるということは分かるのですが,やはり大原則の非公開は何のためにあるのかということはまずきちんと押さえなければいけないと考えます。他方で,この目でその場で見ることというのが何であるのか,それはどういう利益なのであるのかということも,それは直感的には分かる気がしますが,少年審判が非公開であるということに例外を要請する以上は,この目で見たいという法的な必要性,利益というのは詰めると一体どういうことなのだということを明確に考えておく必要があると思います。そこで非常に抽象的ではありますが,要綱をつくられた方の基本的なお考えをお聞かせいただければと思います。その上でまた考えてみたいと思います。 ● 関連質問ですが,今,○○委員が骨子は非公開の原則に対して重大な例外を設定するという表現をなさいましたけれども,現在の少年法22条2項に,審判を公開しないという原則が明記されておりますが,これがいわゆる少年事件における審判非公開を定めた規定であります。そして,事務当局で骨子を立案されたときにこの原則に触れるというお考えはなかったのではないか,つまり,少年審判は非公開であるという大原則は維持しながら,その枠内で傍聴の問題を処理しようというお考えであったのではないかと思いますけれども,その点はいかがでしょうか。 ● 今,○○委員の基本的な問題提起,それから○○先生からの御質問がありますので,まずその点について事務当局の方からお答えをいただいた上で,できましたら皆様のこの点についての御意見を拝聴したいと思います。 ● 私,むしろ直感的に申しまして,○○先生がおっしゃるように非公開であることと何ら矛盾していないものですから,その上で,なおかつ相当である場合であっても知りたいというその御要望を拒否する理由がむしろあるのかしらということをお聞きしたいと思います。 ● 非公開原則との絡みで幾つか御質問をいただきました。   ○○先生から御質問いただいた点についてお答えいたしますと,まず結論的なことを申し上げますと,当然のことながら非公開原則は維持すると,このように考えております。では,そのような非公開原則,そもそもこれはどのような理由で公開しないということになったのかと申しますと,やはり少年の更生のためには少年等関係者のプライバシーやその内面にかかわる事実について広く情報を収集するとともに,少年の心情の安定にも配慮する必要があるということで審判を非公開としたものと理解されるところでございます。   そのような非公開の原則は当然維持いたしますが,ただやはり再三の御説明になりますけれども,審判を直接この目で見たいという心情につきましては十分尊重に値する,その必要性というのは基本法の趣旨などにかんがみますとこれを肯定することができるというふうに考えております。   あとは,非公開にしました趣旨,すなわち関係者のプライバシーや内面にかかわる事実を含め広く情報を収集することが困難になるような事態,あるいは少年の心情の安定が図られないような事態があってはいけないと考えております。したがいまして,そのような適正な処遇選択や内省の深化が妨げられることのない範囲で裁判所が健全な裁量権を行使して傍聴を認めると,このような制度設計にしているところでございます。 ● もしそうだとしますと,少年審判規則の29条,これは出席ですので,傍聴とは違うんですけれども,少年審判の理念に基づく出席者は裁判官の裁量で許可することができるわけですが,それ以外に非公開の原則にやはり例外を認めるというのが傍聴だと思うんですね。抵触するかしないかという表現もありますけれども,原則で今までは非公開,傍聴人は認めないということが貫かれていたわけですから,それに対して例外を認めるかどうかという非常に重要な問題なわけです。規則29条との関連ではどうなんでしょうか。 ● お答えします。   まず,そもそも少年審判規則29条がどういう規定であるかということを少し御説明いたしますと,「裁判長は,審判の席に,少年の親族,教員その他相当と認める者の在席を許すことができる」と,こういう規定でございます。この29条につきましては,これに該当するものとしては,少年の生活環境ですとか,あるいは処遇に関係の深い親族や教員ということで,具体的には担任教諭,校長先生,雇い主,あるいは保護観察官などをいい,被害者の方はこれに該当しないと解するのが一般的な理解であるというふうに承知しておりますので,規則29条で被害者の方の傍聴を認めるということは難しいのではないかというふうに考えております。 ● 今のお答えについてなんですが,被害者は該当しないということですけれども,それはそもそもこの規定ができたときや,それからこのつい最近の被害者の声が高まってくる状況が起きるまでは,そもそもこの29条で被害者が出席するとか,あるいは出席を求める,あるいは傍聴を求めるという事態そのものがなかったから,想定されていなかっただけで,文言の文理解釈として,相当と認める者という表現があるわけですから,被害者が絶対にここに入らないという解釈にはならないのだろうと思うんですね。今まで予想していなかったということはそのとおりかもしれませんけど,それは状況の変化の問題かと思うのですが。 ● その点は御議論のあるところかもしれませんが,ちょっと逆に御質問をさせていただければと思うんですが,少年審判規則29条に基づいて在席というんでしょうか傍聴というんでしょうか,そういうものを,その限度で認めれば良いのではないかということについて,その規定自体は要件も何も書いていないわけで,どういう場合に許し,どういう場合に許さないかということについて,判断の指針となるべきものがないので,私の素朴な感じとしては,むしろそういうことについては一定の要件を示して傍聴を許す場合には許すという形ではっきりさせた方がいいのではないかと思うのですが,その点はいかがでしょうか。 ● 今,新設の条文なのか規則なのかという,そういう各論よりは,根本的に申し上げたいことは,少年法1条の健全育成の理念がカバーする範囲内での例外なのかどうかというところをしっかりと議論しなければいけないんではないかと,そういう趣旨なんです。 ● 関連なんですけれども,要するにありていに言うと,今回事務局から出ている傍聴を認める範囲というか,要件ですね。これが規則29条に被害者の方を例えば例示をした,例示をする改正をするとしますよね,そのときに解釈上は恐らく少年法という法があって,その法の下の規則の中で被害者の方も在席というものがあり得るよという規則になるので,基本的には少年法1条を含めた少年法全体の趣旨が規則29条に基づく被害者の方の在席を認めるかどうかということに影響してくるという,そういう解釈になるんだと思うんです。ただ,事務局の方の今の御説明のように,要件自体ははっきり細かくは書いていないけれども,解釈としてはそうなると思うんですね。今回法律で少年法の中でこの改正をするときに,規則29条の中に被害者もあるよというふうに入れたのと,要件としては変わらないんだけれども,規則ではなくて法律に規定して,かつその要件を何にも書かないとか,健全の育成というふうに書くだけではややこしいので,それを明確化したんですというような御趣旨なのか,そうではなくて従前議論されている規則29条の中で認めるような場合よりは,更に広く被害者の方の傍聴も認めていくというような趣旨で立法されているのかという,そこのところが結局どうなんでしょうかということなのかなと思うんです。 ● 先ほど,少年審判規則29条についての事務局としての理解を申し上げましたけれども,申し上げたことは,少年審判規則は,要するに少年審判に協力する人,審判の必要上がある人が在席できるという規定なのではないか。ただ,今回認めようとしているのは,事件の中身を知りたい,審判の状況を直接自分で見聞きしたいと,そういう場合でも傍聴ができるようにするということでありますので,我々の理解からすると,その少年審判規則の29条とはちょっと趣旨目的が違いますので,そこに例えば少年審判規則29条に被害者という形で書いても,それは今のままの理解が多分続くのでしょうから,やはり審判に必要な範囲でのみ在席できるということにしかならないのではないかということだと思うんです。その辺りをもし少年審判規則でいいのではないかという御意見であるとしたら,それはどちらの御意見なのかというところをお聞きしたいという趣旨であったと思います。 ● すみません。もう一度根本の問題を確認したいんです。○○委員もおっしゃるように,この問題は私も含めて被害者に傍聴したいというお気持ちがあることはよく理解できますし,それは全く否定するものではないのです。ただ,他方,一つの要求があるからといって,それだけで制度ができていいかどうかは別な問題ですので,当然少年法というのは少年の健全育成という1条の大事な理念と,そのための一つの特徴である非公開という問題があるわけです。ですから,この法制審議会での重要な議論というのは,少年法の理念とそして被害者のニーズとここのバランスをどのように線引きするのか,そういう課題なんだろうというふうに思っているわけです。その課題から見たときに,要綱の御提案というのは,分かりやすく,すみません,ちょっと図式的に言葉はきついかもしれないんですけれども,例外的な重大事件においては,健全育成から見て若干問題があっても被害者のニーズが優先されるという御趣旨なのか,あくまでも健全育成の範囲内で裁量が働いて,そして被害者のニーズと合致させると申しましょうか,少年法の理念は決して否定しないという,そういう枠組みの中での御提案なのかと,そういう課題なのかと思っております。 ● 随分議論があちこち飛んでいるように思いますので。まず○○先生から,どうして被害者は傍聴したいのかという基本的な質問がありました。その気持ちは分かるけれども,しかし煎じ詰めればどういうことなんだ,どういう利益があるんだと,こういうことになると思いますが,一つの例を申し上げたいと思います。   家族が病院へ入院しておりました。朝起きてみると,その患者はベッドから落ちて死んでいました。そういう家族を想定してください。なぜ死んだのか,なぜ落ちたのか。落ちたから死んだのか,あるいはどこか自分の内臓でも悪くて,死んでから落ちたのか。ベッドの構造が悪かったのか。あるいは病院の見回りが悪かったか。いろんな疑問が患者にはあると思います。病院は病院で調査委員会でもつくって調査するんでしょう。その結果,紙1枚,こうこうこういう理由で落ちて死んだんです。こういうことを言われて満足する遺族がいるでしょうか。患者の遺族が。皆自分で確かめたいですよ。看護師さんにどうして落ちたんでしょうかと。なぜ落ちたのか。お医者さんにはなぜ落ちるようなそんな寝方をさせたんですか,聞きたいです。そして死因は,落ちたのが原因ですか,それともその他にあったんですかと。こういうことを聞かないでね,1枚の紙をもらってね,納得する人がいますか,この中に。私はそう思うね。だから,どういう意味があるかと言われたら困る。だけど人間の本性というものはそういうものなんだと私は思うんです。それをやはり理解しなければいけない。これは犯罪被害者等基本計画検討会でもいろいろ議論されました。今,犯罪が起こるということは今までは社会的な秩序,利益を害した者に対する制裁ということであった。しかし犯罪というのは,社会的な諸違反と同時に被害者の権利利益を害するのだと,こういう二つの面があるのに,後者を無視し過ぎた。それが被害者に対して大変な苦痛を与えてきたという反省の上に立ったら,そしてこの基本計画の10頁から11頁にありますが,刑事司法は公の秩序維持のためだけではなくて,被害者のためにもなければならないという最高裁判例と反する結論を出したんです。そして,それに基づいてこれは保護事件でも同じであるとして,11頁には事件の当事者である犯罪,被害者が刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続に適切に関与できるようその機会を拡充する取組を行わなければならない。こういう基本計画に基づいてこの私は法制審が行われているものだと思います。   だから,今までは健全育成一本やり,被害者なんかどうなってもいい,そういうことで被害者の犠牲の上で少年法は成り立ってきました。これではいけないということに被害者も気付き,基本計画でもそうなったんですよ。だから被害者が参加するのは,これは当たり前という前提で議論する必要がある。頭を切り替える必要があると私は思います。私も検討会の委員としてずっと熱い熱い議論を聞いてきておりましたけれども,結論としてはそういうことになって,健全育成一本やりではいけない。被害者もやはり納得するものでなければ,少年事件の制度というものは成り立たないんだと。被害者が納得して初めて制度は成り立つんだということになり,被害者も納得しなければ立ち直れないんだということになったんです。先ほどの病院の例で言いましたように。1枚の紙であなたの父親はこういうことで死んだんですと言われて納得する人は私はいないと思います。やはりこの目で確かめたい,この目で聞きたい,これは本性であって,それがどういう利益であるか,どうなんだ,どういう意味であるか,こう言われても私は答えられない。ただ,人間のそれが本性であり,それを通過しなければ遺族は父親の死をあきらめきれない。こういうふうに私は思います。 ● 今の○○委員の御発言にもあるような,犯罪被害者あるいは遺族の方々の心情といいますか,御意見というものが,この間,基本法でありますとか基本計画という形でいろいろな施策の実現といいますか推進の基になったことでありますし,今回の私どもの御提案というのも当然そういったことを踏まえたものであるのは事実でございます。ただ,先ほど○○委員の方から御指摘があったように,そういう声だけで今回の提案の内容がすべて決められたというわけではもちろんないわけです。少年法との関係で申し上げれば,健全育成を期するという少年法の目的であるとか理念というものについては,私どもとして,少年法1条のその部分を改正する提案はしていないわけで,そういうものを当然前提にして,その中で被害者遺族の方々の傍聴を認めるとすれば,どういう考え方でどういう要件があるだろうかということを考えた結果,今回このような内容に至ったということでございます。   ですので,先ほどの御質問の中で健全育成から見て問題があっても傍聴を認めるのかというようなお言葉がありましたけれども,要綱(骨子)の要件も少年の年齢,心身の状態,事件の性質等々の事情を考慮して相当と認めるときに,許すことができるというふうに書いているわけで,少年の健全育成ということ自体,当然考慮事項の中に入るというふうに御説明しているところでありますから,私どもとしてはそういう少年法の理念といいますか目的,そういったことと先ほどの○○委員の言われるような被害者,遺族の方々の御要望や御心情を,言ってみれば適切にバランスをとる形で傍聴を認めるのが良いのではないかということで提案をしたということでございます。 ● 公開の原則に反すると言いますけれども,テレビやカメラを入れたりしてやれと言っているんではないんですよ。遺族あるいは被害者,そういうごく限られた人だけが審判を傍聴したいと言っているのであって,私は一般的に使われている公開の原則に反しないと思っています。普通公開の原則というのは一般的に公開することですよね。だけどこれは極めて限られた人,その人にだけ見せる。そしてそこで傍聴した結果はよそへ漏らしなさんなよというような条件を付けてもいいでしょう。これをもいけないというのは,私はおかしいと思うんです。なぜ被害者がそこまで親の死んだこと,息子が死んだこと,この原因,この目で確かめたいという,その要求をなぜ健全育成という名のもとに我慢させられるのかということが私には分からない。 ● 私は被害者の方の保護を図らなければならないということは十分理解しておりますし,そして被害者の受けた痛みというものを少年がきちんと理解するということが更生するのに非常に大きな要件であるということは理解しているつもりなんですけれども,そういう少年審判の場合というのは,侵害行為が行われた,かなり近接した時点で行われるものだと思いますし,それから今までの行われた状況などを見ましても,そんなに回数が行われるものではないですね。割合短時間のうちに処分が決められるという状況で,その中で少年自体がその行為について反省し,被害者の痛みというものを十分理解するというところまで至る余裕があるのかというところにも懸念を感じます。そのため,ここでいろんなその他の事情を考慮して相当と認めるときというふうにありますけれども,そのときの事情ですね,どういう事情を判断するのかということが非常に決め手になってくるかと思うのです。先ほど裁判所の方から被害者調査ということが行われるんだというお話がありました。ですから,こういう事情を考慮するに当たっては,その前に家裁の調査官による被害者調査というものが行われて,必ず被害者がどういう心情を持っているのかということが十分考慮されて,そういう被害者の意見というものはまた別の機会に伝えることもできるわけですから,直接その少年に向かい合わせるのに,少年の更生にとってそれが妥当なものなのかどうかという配慮が十分できるような条件が整っているのかどうか,そういうところをお聞きしたいと思いますが。 ● 若干繰り返しの御説明になってしまうかもしれませんけれども,やはり少年の健全な育成という少年法の目的,理念というものはゆるがせにしないというふうに思っておりまして,もう少し平たくいいますと,適正な処遇選択,あるいは内省の深化を妨げないような範囲で,傍聴を認めるべきではないかと考えております。そういった被害者側の心情を伝えるとか,あるいは御指摘のような問題はないかということにつきましては,個々の事案で工夫していただく必要はあるのかなと思いますし,例えば御指摘のありました被害者調査についてどうかということにつきまして,直ちにこの場で事務当局としてお答えするのはどうかなと思いますが,いずれにいたしましても適正な処遇選択や少年の内省の深化,これは妨げられないような対応というのは是非していただきたいというふうに考えております。 ● 先ほどの少年審判規則29条に規定できないかということとの関係なんですが,ここでの一部の先生の御議論にございますように,今回の要綱を素直に見ますと,1条の目的の下に,なおかつ少年法22条の審判を公開しないというものと私自身は全然矛盾してないように思うんです。にもかかわらずその規則29条の改正みたいなことで行おうとしますと,何か少年法自体に反しているのではないかというふうな疑義を生んだり,あるいはこれまでの規則の,確か私の記憶するところでは,規則29条の主要な考え方は,○○幹事の方から説明されたような理解であったようにも思われますので,より1条と,少年法の目的と整合する形で,なおかつ審判非公開,これとも矛盾しないわけですので,その中で相当な場合に現場の混乱も避けつつ,こういう場合傍聴が認められるのかというふうな意見の対立みたいなものが実務上生ずることを避けるためにも,少年法本体に書かざるを得ないというふうにお考えになったんではないかと思われますけど,その点はいかがなんでしょうか。 ● 先ほどちょっと触れたとおりで,少年審判規則29条の理解としましては,やはり審判の必要がある場合に関係のある方に在席していただくという条文だと思っておりますので,そこに被害者という方を例えばということで例示しただけでは,審判の状況を直接見聞きしたいというような御希望に基づく傍聴,あるいは出席というところまで読み込むのはなかなか難しいのではないかというふうに考えておりますので,新たな規定が必要なのではないかということを考えております。ただ,もちろん出席あるいは傍聴の範囲を審判の必要のある範囲にとどめるべきであるという御意見の下だとすると,それはまた別の話でありまして,そこはそれ自体の御意見としての当否を御議論いただくということになるのかなというふうに考えます。 ● 私も,審判の状況を見るという被害者の方の利益を直接の根拠として傍聴ないし出席を認めるというのであれば,規則29条を根拠にするのは難しいと思いますので,別途,条文を設けるべきだと思います。その上で,傍聴を認めることと,少年の健全育成という少年法の理念との関係なのですが,これまでの事務当局からの説明によれば,適正な処遇選択や少年の内省の深化が阻害されるような場合には傍聴は認めないということであるわけですから,そうしますと,今回,要綱(骨子)の中で示されている審判の傍聴の制度というのは,現在の少年法が認めている記録の閲覧・謄写制度,意見聴取制度,それから,審判結果の通知制度と,基本的には同じ枠組みの下 で,被害者の方に認められるものを拡大したという位置付けになるのだろうと思います。そうだとしますと,その上で,審判の傍聴はおよそ認めるべきでないという考え方は,被害者の方が審判の場にいることで,一律に,適正な処遇選択とか少年の内省の深化が阻害されるのだという前提に立っているのだと思いますが,その前提が本当に正しいのかということを検討してみることが必要ではないかと思います。   もちろん,現在の少年法は被害者の方による審判の傍聴を認めていないわけですが,それは,少年法が,今申し上げたような前提に立っているからというのではなく,要は,これまで,被害者の方の傍聴が審判にもたらす影響について考えてこなかっただけのことではないかと思います。先ほど,○○委員が,規則29条との関係で,これまで被害者の方が審判への出席や傍聴を求めるような事態がなかったから,その対象に被害者を想定してこなかっただけではないかとおっしゃいましたけど,同じことが,傍聴のもたらす影響についても妥当するのではないでしょうか。そうだとしますと,一律に傍聴を認めるか認めないかということではなく,傍聴を認めたときにどういう問題が生じるのかを具体的に考えた上で,少年の健全育成に反しない限度で傍聴を認めるという枠組みは,妥当なものではないかと思います。 ● 私も細かい問題の前に大掛かりなところで議論を聞いて,私の考えを述べたいんですけれども,要するに,今までの被害者配慮制度によって手続の進行なり結果というのはそれは必要な都度示されるということだったと思うんですけど,それを超えて,傍聴の利益ということで具体的に何が想定できるかということで少し議論があると思うんですね。ただ,その利益という言葉から少し誤解が出てくるわけで,それは何か現世的な利益ということではなくて,法が達成しようと思っている具体的な内容として想定できるものは何かと,こういう話なんだろうと思います。それはいかなる手続であれ,そのことによる何か弊害と,それからそのことを行うことによる法の目的の一層の充実ということがあるわけですので,今,○○幹事からお話があったとおり,今までは一律にその点について,比較検討の対象にしてこなかったということだろうと思うんですね。そうではなくて,恐らく一定の事情のときに今までの手続の進行なり結果を示すことを超えて,実際にその場に現在していただくということによって,法の目的として何がより充足され,弊害として考えられ得ることがあるとすればそれは何かと。仮にその弊害が少年法の理念なり目的に齟齬しているというのであれば,それはおそらくそういう条項の立て方ではいけないはずでありますので,もう少しそこら辺のそれぞれの拮抗関係ですね,それをきちっと詰めて考えていく,そういう必要があるんではないか。それは恐らく要件論の方に響いてくるんではないか,こういうふうに思います。   それから,審判規則のところで議論がありましたけれども,その場に物理的にいるということに意味があるわけではなく,物理的にいるという現象は同じように見えても,これまでの29条の在席ということで考えてきた事柄と,今回我々が議論しようとしている事柄とはやはり本質は違うだろうというふうに思います。 ● 今の御議論の関係で○○委員に1点お伺いしたいんですけれども,少年法1条の健全育成という観点はよく分かります。それの前提からしますと,今,被害者の側の傍聴ということが健全育成を害するという前提でお話になっているわけですけれども,ただ,逆に利する場合もあるんではないかと。つまり,被害者側が存在することによって,ある意味立ち向かうわけですね。だから,その今回これを見てそういう面もあるなと思って,段々矛盾を,問題のある場合もあるかと思うんですけれども,その部分があるように思いますので,必ずしも抵触するわけではないと,こういうふうに思ったので,その点どういうふうにお考えでしょうか。 ● おっしゃるとおり,利する場合があることはそのとおりだと思います。特に被害者の心情や時期を配慮し,また少年の方についても被害者と会える状況といいましょうか,事件後の心の反省の深まり,そうした時期を選べばもちろんプラスになると思いますし,たまたまそれほど重くない事件であれば,たまたまそれが審判の時期にむしろプラスになるということもあると思います。ただ,概して,多くの場合には,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,事件から2か月以内ぐらいに,もし事件直後に捕まっていればですね,その程度の時期に審判が行われるわけで,私も随分たくさん付添人をやってまいりましたけれども,まず少年は自分が逮捕されたことで本当の被害者から見ればけしからんことだとは思いますけれども,自分自身が被害者的な意識になってしまっているんですね。また親族もそういうところがございます。それを徐々に本当の自分が迷惑を掛けた被害者への思いに振り向けていくということが,ある意味付添人や調査官そして裁判官の観護措置から審判へのプロセスなんですね。その審判でもなかなかそれは仕上がりません。少し気が付いたというぐらいがせいぜいでして,多くの場合には少年は家族に迷惑を掛けた。でも被害者に対してはまだ抽象的にしか考えられていない。その状況の中で,通常これまでの審判では自分を見つめさせて徐々に被害者の方に目を向けさせるということをやってきたわけですけれども,その状況の中で,やはり審判廷,特に狭い部屋の中で被害者の傍聴があるということは,少年自身もまず自分が悪いことをしたときの生の声を上げるということが難しくなります。非常に表現が難しいんですけれども,少年に反省を深めさせるためには,いきなりお前がやったことはけしからんだろうと言ってしまっては何もならないわけでして,事件当時,どういう気持ちからその事件を起こしたのか,まずそれを吐き出させて,その後,それについて振り向かせるということなわけです。そうすると事件当時の気持ちというのは,もう被害者から見れば聞くに耐えないことだろうと思います。でも,それを上手に丁寧に引き出していかないと,反省に至らない。そういうものなので,その時期に被害者が傍聴しているということは,今までのその少年審判の非常にいい緊張感の中で教育的な機能をこの1時間ぐらいの中で凝縮して発揮してきた,それが変容をとげてしまうのではないだろうか。あるいは少年自身が,被害者が傍聴している中で,果たして今申し上げたような意味での自己表現ができるだろうか。これについて大変疑問を持っているわけです。 ● 質問というか意見になりますけれども,○○委員がおっしゃったのは少年に利する場合もある,更生に資する場合もあるのではないかという御指摘,それ自体は否定するものではありませんが,被害者の傍聴の可否を論ずるに当たっては,余りその点は趣旨目的としてカウントしていただきたくないなというふうに考えております。というのは,それが制度の趣旨の一つだということになると,傍聴を希望する被害者に対して,あなたの場合は少年にとって役立つ,あなたは少年に役立たないからというような形の選別にもつながりかねないと。少年の更生に資する場合があるとしても,それはむしろ制度の反射的効果と,反射的利益にとどまるのではないかという考えを持っています。   ここまでの議論を拝聴していて,被害者が少年審判を傍聴したいという希望,あるいはその心情自体が間違っておるとか理解できないという御意見はなかったように思います。そうであれば,傍聴したことに審判廷に被害者が入ったことによって,およそすべての場合に少年の健全育成というのが阻害されるのかと,まずここを考える必要があるのではないでしょうか。確かに審判廷に入ることによって,少年に萎縮的効果を与えるような場合や,報復,報復感情という言葉も穏当ではないですが,非常に被害感情の強い方が入ることによって阻害されるケースというのはあるかもしれない。ただ,いただいた要綱(骨子)ではそういうことに配慮して要件立てをしているように私は理解しておりますのでと。これでは駄目だ,この要件ではもっと厳しくしろ,いやここまで厳しくする必要はないのではないかという議論は,私としては比較的イメージしやすいんですけれどもと。阻害するかしないかという,何かこう大きな議論で話していても,何となく私としては阻害する場合もあるだろうし,阻害しない場合もあるんではないのとしかちょっと申し上げようがないかなと思っております。   それから,今日ここに私が呼ばれたのは,どちらかというと被害者側の活動をやっている弁護士として来たものと理解しておりますが,現場で活動していると,率直に申し上げて,家庭裁判所に1回送致されてしまうと,被害者のところにほとんど情報が来ないというのが実感です。先ほど家庭裁判所から種々の制度や運用についての御説明をいただきましたが,人が亡くなっている事件であっても,送致後何日かたって審判結果だけが通知されるという実態もやはりまだございます。それはやはり御遺族にとっては非常に心情的に耐え難い,こういうことは先ほど○○委員が申し上げた,御説明いただいたとおりだと思うんですね。   いろんな結果の通知と記録の閲覧ということもありますけど,やはり被害者が情報を取得するというあるいは審判そのものに関する情報を取得するということでは,傍聴以上に,傍聴に勝る方法というのはないだろうというふうに思っております。そうすると,この被害者の知りたい,この目で確認したいという利益に関しては傍聴という制度が優れていることは恐らく否定できないのでと。ではおよそその場合に必ず少年の健全育成は阻害されるんですかと。例外は立てられないんでしょうかというふうな形で可否と要件をセットで議論することができるんではないかと思ってはいます。 ● 私も,被害者の傍聴が少年の健全育成に資するか,あるいは阻害するかという議論の立て方は,基本的に妥当ではないと考えています。これは人によって想定する少年像が大きく異なっていることと,所詮は予測の問題にならざるを得ないことから,被害者の傍聴が健全育成に資するという人もいるでしょうし,阻害するという人もいるでしょう。このような議論の立て方は,ある意味で神々の争いとなってしまい,ここで議論しても決着の仕方がないものです。したがって,私は,被害者の傍聴が少年の健全育成の理念に反しているかどうか,という観点でしか議論ができないだろうと思っています。   私自身の見解としては,被害者が発言しない,傍聴をするだけでという形で審判廷に出てくるというのは,必ずしも少年審判の非公開の原則に反するものだとは考えておりません。さらに,もう一つ,少年は再社会化する権利を当然に持っていると同時に,再社会化する義務を負っているのだろうと思うわけです。しかし,その場合にも,非行事実を契機として要保護性が解明されたらすべてがリセットされて,何もなかったかのような形で再社会化するということはないわけで,被害者の傍聴といった程度のことは甘受せざるを得ないのか,という観点は無視することはできないと考えております。   それから,弁護士会の意見では規則29条で十分に対応できるという話がありますけれども,規則29条をそのような形で使うということは,やはり本来的なやり方ではないだろうと思っているわけです。 ● いろいろ御議論聴かせていただきまして参考になりました。先ほど,審判の傍聴が少年の健全育成に資する場合もあるという御発言がありましたが,その点については,私は○○委員がおっしゃったのが筋であろうと思います。審判傍聴の可否に関して,たまたまそれが少年の方に資するかどうかで問題を考えるのは筋がおかしいのではないかと思っております。   それから,これまでは被害者が審判廷を傍聴されるという事態はなかったわけですし,どのようなことが問題となるかということはこれまで考えられていなかったので,正に慎重に様々な事柄を考えなければいけない。ただし,やはりこれは法律をつくり,要件を組み立てるわけですから,きちんとした理屈と筋がなければいけないわけで,その場合,ここで問題になっている法的な必要,立法をしなければいけない必要というものの核心部分に被害者がこの目で審判の様子を見たいという表現でそういう利益が主張されているわけですね。そんなものは人間だったら分かるだろうといわれますけれども,しかし,私は学者ですので,やはりそれはきちんとした明晰な客観的な立法をするためには言葉としてどういうそれは利益なのであるかということは確かめたかったわけです。それははっきりさせて,その上でそれと,少年法の基本理念,少年の健全育成という言葉で表現されていますけれども,これまで培われてきたそういう利益と非公開というものが非常に密接不可分だということ,それとの調整が問題なので,だからやはり両方はきちんと言葉としてはっきりさせた上で,筋を通した立法でなければならないと考えている次第です。 ● 今の○○委員の御発言ですけれども,私が思うのはやはりこれは基本法3条がいっているところの「個 人の尊厳にふさわしい処遇」ということの内実で何が想定できるかという,そういう話なんだろうと思うんですね。それは別の表現で人間的な欲求ということだけでは足りないということで,今,○○委員が御指摘だと思いますけど,その中身として考えられるところのものを詰めていくことによって要件もおのずと定まっていくと,そういう議論なんだろうと思います。その中で,対象犯罪の関係で先ほど一番最初に事務当局から御説明があったとおりなので,個人の尊厳の中で最も基本的な部分であるところの生命ないしはその生命が失われる危険に至ったといったような場合に対象犯罪を絞ったというのは,その観点をも踏まえた理屈とそれから対象犯罪の要件というものがうまくセットされていると,こういうふうに感じたわけです。ですから,それ以外の場面で要するにどの限度で傍聴を認めるか,あるいは認めるのか認めないのか,議論はあるかもしれませんが,その限度でそういうことを考えていくのかというのは,やはり,今,○○委員がおっしゃったような意味での突き詰めた利益ということなんでしょうか,傍聴の利益という言葉が熟しているのかどうか分かりませんが,そこで考えられているところのものをもう少しはっきり析出してみると,こういう作業が必要なんだと思います。   それから,同じく言葉の問題になるかもしれませんけれども,傍聴といっても通常の刑事裁判の傍聴とは全然性質が違うわけですから,その刑事裁判の傍聴を念頭に置いて非公開原則に対して例外的にこれを解除するかどうか,そういう話では恐らく全然なくて,これはこれとしての目的を持った手続なんだという,そういう位置付けなのではないかなというふうに思います。 ● そのほか,要綱(骨子)第一についての御意見ございますでしょうか。 ● 誤解があったと思うんです。私は利するかそうでないのかということを基準で判断すべきだと申し上げているわけではなくて,そもそもその制度論自体が必ずしも利する場合があるということなので矛盾するものではないということだけを申し上げたかっただけなので,念のため。 ● 被害者を支援する立場で,意見になるのかもしれませんけど,一つだけ聞いていただきたいことがあります。私は現場で被害者支援をずっと行っていますけれども,被害者にとっての被害からの回復には,やはり現実を受け入れるという作業が不可欠なんですね。その現実を受け入れるためには,やはり想像だけですとか文面だけから何かを読み取るという作業では不十分なんです。やはり○○委員がおっしゃったように自分の目で確かめて,納得はいかなくてもこういう事実があったのかということをきちっと自分の中に位置付けることによって,一つの山を越えていくのだというふうに思っています。そこからやはり次のものの作業ですとかが始まって,苦悩しながら少しずつ回復をされて,最終的には自分の体験を含めて社会にそれを還元していきたいというふうに回復される被害者の方もいらっしゃいます。だからその第一歩として,やはり自分の大切な家族,自分のかけがえのないものが失われた事実を,例えば文面だけとか,あるいは被害感情とか処罰感情を述べるだけで克服できるかといったら到底そういうことはないんですね。だから,やはり傍聴というものは,もちろんいろいろ要件はあるとは思いますけれども,権利としてやはり認められるべきものだというふうに私は思います。 ● すみません,第一の関係で。先ほどから調整という言葉を使うかどうかは別として,いろいろ議論がされているわけですけれども,いずれにしろ,例えば捜査段階で捜査情報をすべて被害者の方にお知らせするという制度は採っていないわけですよね。今後ももちろん恐らくお採りにならないと。それから,例えば保護処分段階で被害者の方がお知りになりたいからということで少年の保護処分を全部少年院の中で見ることができるようにするとか,そういう制度を採るということも多分ないだろうと思うんです。そういう意味では,やはりそこの制度制度の中で一方ではどういう目的があり,他方で被害者の方の強い御要望があるという中で,どういうふうにそこを正に調整するかということを決めているわけですから,そういう議論がここでされなければならないと。   その際に,どちらが立証責任を負うのかというのは私はよく分かりませんが,私の感覚では従前行われてきたやり方を大きく変えるわけですから,そのことについて本当に問題がないかどうかということについてのエビデンスは立法当局が出すべきではないか。すなわち,被害者の方が傍聴するということについて,全部ということではないかもしれないけれども,少年の健全育成を侵害しないような場合がこういうふうな形であるんだというようなエビデンスか何かがなくて,空中戦で議論するのはまずいのではないかという気がしているんです。特に私がそういうふうに申し上げるのは,これも,直接の私どももそういう意味ではエビデンスが全くないわけですけれども,付添人として非行少年と話している中でそういう傍聴があると,とても話がしにくくなるのではないかというようなおそれ,これはあわせてこの法制審議会の少年法部会の前の意見交換会や恐らく犯罪被害者の基本計画の検討会の中で恐らく裁判所の方も同じような感覚で議論をされていたんではないかと思うんですけれども,そういう実務に当たっている人の意見ですね。   それから,一般的に少年,年少の少年から真実を聞きだす手法として考えるときに,いわゆる圧力面接というか,圧力をかけるような形で面接をしたのではうまく中身が引き出せないというのはかなり一般化しているのではないかと思うんです。先般,触法調査の関係で警察庁から出ている少年からの聞き取りマニュアルの中にも,少年は担当者が醸し出す不快感とか怒りなど雰囲気には特に敏感なことを踏まえた上で,取調官というか担当官の自分のしぐさなどには十分注意するようにというような記載もあるんですけれども,要するにそういう圧力的なものを感じてしまったがために違うことを言ってしまう,迎合してしまうというような問題点もあるというようなこととか,あと,これは海外の関係で認知高度療法の中で被害者のことを考えるというプログラムを入れるとかえって再犯率との関係ではまずいのではないかというような研究成果もあるように私は聞いていまして,そういう幾つかのことからすると,どちらかというと,その少年健全育成に悪い方向に働く可能性があるんではないかという,周辺のことですけれども,というふうなことがあるものですから,やはりそこは慎重に議論すべきではないかと。エビデンスを追求した上で議論すべきではないかというふうなそういう趣旨で発言させてもらっているということです。 ● 私はこの第二の方の話なんですけれども。ここでは不安又は緊張を緩和するのに適当な者の付添いということで御提言いただいていますけれども,恐らく一番典型的な付添いをする者としては,被害者の代理人弁護士であったりとか,未成年の被害者の場合であれば法定代理人というようなところなんでしょうけれども,この制度を議論するに当たって,大体この辺の人たちであれば緊張緩和に適当ではないか,あるいはこういう人たちになってしまうとちょっと含めるのはいかがなものかというような具体的な議論がもし骨子作成する過程であったとしたら,その辺のイメージをちょっと教えていただければと思います。 ● この第一の二の「不安又は緊張を緩和するのに適当な者」ということでありますが,傍聴をされる方の不安又は緊張を緩和するのに適当な者ですので,傍聴される方のお気持ちというのがかなり大きなウエートを占めるのかなというふうに思っております。したがいまして,例えばということで,被害者のための支援をしている方,あるいは弁護士ということでしたけれども支援あるいは被害者の相談に乗って対応されている弁護士の方,そういった方について言及があったかと思いますけれども,いずれにいたしましても,被害者の方との間で信頼関係を築いてその不安又は緊張を緩和するのに適当な者というのを想定しているところでございます。 ● それでは,議論は尽きないと思いますが,時間もある程度押し迫っておりますし,先ほど申しましたように今回は第1回の会議でございますので,できますればこの要綱(骨子)の第一から第四まで一巡の議論をいたしたいと思います。そういうことで,要綱(骨子)第二に入らせていただいてよろしいでしょうか。 ● ちょっとお話が出なかったので,この被害者の方がいわゆる傍聴されるといったときに,審判廷のどういうところにお座りになるのかとか,それとの関係で,何らかの係の方が今の付添いの方という意味ではなくて,裁判所の係の方が立ち会われるような場合もあるのかとか,その辺の具体的なところを今ここでお話しいただけるのか,また別になるのか分かりませんけれども,議論をしておいた方がいいなと思ったものですから,問題提起しました。 ● その問題につきましては,個々の裁判体の判断ということになりますので,なかなか一般化して申し上げにくいところではありますが,ただ,懸念される向きの一つの指摘として,保安上不測の事態が生じないかという点があり得るかと思います。そこは工夫はしていただかないといけないということで,例えば,少年にしても被害者の方にしても基本的には座って審判を受ける,あるいはその傍聴をしているということだと思いますが,極端な話,手が届くような範囲ですと,それはやはり保安上不測の事態というのが場合によっては生じ得るのかなと思いますので,そういったことのないように距離を置いていただくとか,工夫をしていただく必要はあろうかと考えております。 ● 私も個々の審判運営というのは最終的には裁判官に任されるところだと思うので,ここの法制審議会でこういう位置でなければならないというふうに決定するという趣旨のものではないと思うんですが,ただ逆に議論する上では,やはり例えばこんなふうになるというのが何か分かった方が話もしやすいので,それで決めるとか拘束するという趣旨ではなく,例えばモデルとしてはこういうものが考えられるというようなことも出していただけたら,御議論がしやすいのかなと思います。 ● 今の点の問題提起としては今回答申にまだ入っていないのですけれども,最初の時間のところでもちょっと議論が出ていたかと思うんですけれども,可否とプラスして方法論ですね。今のその少年は,部屋が狭いということで,少年に与える影響,おそれということがあるということを考慮しますと,例えば犯罪被害者保護二法で認められた証人に対するビデオリンクの制度がありますけれども,あれの応用版といいますか,今度は加害少年に対するものを別室で傍聴するとかいう,例えばですね,そういった方法論なんかも検討の余地があるんではないかというようなことでちょっと問題提起をしておきたいと思います。 ● ありがとうございました。   それでは,この点につきましては次回以降にしたいと思います。 ● 三号が飛ばされているので,三号のところで「身上に関する事項は漏らしてはならず」となっているのですけれども,この条項ですと非行事実については支障を生じさせなければ公表してもいいかのように読めるという問題点があるので,そこを御議論いただきたいと思います。今日ではなく。 ● 恐らく,全体として議事をちょっと急がなければいかんということがあると思うんですけれども,私も何か言いたいことを言っていると私も今日は帰れなくなってしまうので,できれば,恐らく論点表なども作られていくということなんだと思うんですけれども,今ここで議論になっていないことでもこちらとしてはこういう論点があるのではないかということで,次回の部会までにまた論点,我々からも何かを出させてもらうというようなことで次に進めていただければと思います。要するに議論が出ていないのに急に論点が出たと言われると,今,言いたいことを全部言っておかないといかんという感じになってしまうので,そんなに細かく多数に及ぶという趣旨ではなくて,大きなポイントとして,今日は議論にはならなかったけれども,こういう点,こういう点もやはり論点としてあるのではないかということもちょっと次までに出させてもらえたらなと思っています。 ● 分かりました。今の点は皆様にお願いしたいことですけれども,そういう論点がございましたら,事務当局の方にお寄せいただきたいと思います。   審議を急ぎまして誠に申し訳ないんですが,もしお差し支えなかったら,要綱(骨子)第二に入りたいと思いますが。「被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」について,御意見又は御質問がありましたら,伺いたいと思います。 ● これを見ますと,いわゆる社会記録が除かれております。しかし,加害少年がどういう家庭に育ち,どういう経歴を経てここに至ったのかということを知らないと,その処分の審判の結果が妥当なものかどうかというのが被害者には分からないんですね。やはり社会記録を見せてもらって初めて全体の審判に至る経過が分かって,その結果を受け入れようかどうかということになるのであって,社会記録だけを除いて諮問されていますけれども,私どもは社会記録をも含めた閲覧・謄写ということをお願いしたいと思っております。 ● お答え申し上げます。   社会記録を見たい,そのようなお気持ちを被害者の方が持たれているということは十分理解させていただいているところでございますが,事務当局から冒頭御説明申し上げましたように,やはり社会記録というのは類型的に相当プライバシー性の高いものというのが入っておりますので,それ自体について閲覧あるいは謄写というのは少年の健全な育成等を考慮しますと,難しい面があるのではないかなというふうに考えているところでございます。   他方,若干繰り返しの御説明になりますが,現行法におきましては,およそその非行事実に係る部分しか閲覧・謄写が認められていないところでございますけれども,どういう生い立ちの少年に自分の家族が殺されたのか,そういったことも知りたいと,こういう強い御要望をいただいているというふうに受け止めているところでございます。そこで,非行事実に係るというものではなく,保護事件の記録でそのうち社会記録を除くとした上で,あとは正当理由がないか,あるいは相当,不相当と言えるかどうか,そうした実質要件を考慮することにはなりますけれども,いずれにせよ今まで土俵に乗らなかったそういった生い立ちに関する記録,例えば警察で作成する身上調書ですとか,あるいは審判で出てきました少年の生い立ちに関する供述が記載された審判調書,もちろんプライバシー性の高いものについてはそこは社会記録と同様に考えざるを得ないとは思っておりますが,ただ,そういった生い立ちに関する一定の記録についても,閲覧あるいは謄写をしていただくということで,今回のような要綱(骨子)を御提案しているものでございます。 ● うまく質問できるかどうか分からないんですが,社会記録の閲覧については認めない。法律記録の少年の身上に関するところについては閲覧を認める。それから審判の傍聴は認める。この三つのことがうまく整合しているのかどうかというのがちょっとよく分からないんです。それが例えば端的に言うと審判の中では正に社会記録に書かれているようなことについて突っ込んで触れなければ審判が進められないというような場合も多分あるんだろうと思うんです。今の御趣旨から言うと全体の制度をバランスよく運用しようと思うと,そういう非常に少年のプライバシーの厳しい部分になってくると,そこの部分だけ被害者の方に退席していただくというようなことになるのかとか,それから法律記録に書かれている身上等を言っても,いつごろ生まれて,お父さん,お母さんがこういう人でという程度のものから,かなり突っ込んだものが出ているような場合もあったり,それから極端な場合は捜査段階で責任能力について鑑定がなされて,その鑑定書がそのままもちろん法律記録にひっ付いてきますので,社会記録よりさらに突っ込んだものが法律記録に入っているような場合もあると,そうなってきたときに三つの制度の運用バランスとして元々どういうことを考えておられて,それでどう整合するのかというところについてちょっとお聞きしたいんですけれども。 ● 社会記録については結論的に御遠慮いただくということで制度設計しましたのは,やはりそれはプライバシー性の極めて高いものが類型的に多く含まれていると,こういうところにあろうかと思います。社会記録を閲覧・謄写したいというお気持ちは分かるんですけれども,やはりそこは御遠慮いただければということで整理をいたしました。そうしますと,傍聴の場面におきましても,○○委員から少し御指摘がありましたが,実質的に考慮しなければいけないということになってくるかと思いますので,プライバシー性が相当高いもの,例えば性的な虐待を受けていたとか,これは個別具体の判断になりますので,一概には言いにくいところではありますけれども,そのようなものが出てくるというときには,それは退席していただくということもあるのかなというふうに考えております。   また,鑑定書ということで例を出されて御質問をいただきましたけれども,鑑定書に限らず法律記録の中でもそのようなプライバシー性の相当高いものにつきましては,やはり事柄の性質上適当ではないのかなと思っておりますので,そこは裁判所の健全な裁量によって相当かどうかということを御判断いただくことになるのかなというふうに考えております。 ● そのほか,要綱(骨子)第二について御意見ございますでしょうか。 ● 今の御回答との関係で,次回からの議論になるのかもしれませんが,この部会で仮にこういう内容のものをカットするというふうに考えたときに,また細かい解釈論をすべて確立して決議すると,そういう性格のものではないと思うんですけれども,他方でやはりこういう立法に至る背景として,具体的にこういう場合はどうなのかとか,ああいう場合はどうなのかということについて,意見が分かれるにしても議論しておくということはとても大事なことで,その辺の議論が不足していると,これがそのまま仮に立法となったときにあとをどう実務が対応していいか分からないということにもなりかねないかなと思っているんです。   先ほどから,すみません,特にちょっと傍聴の部分に入って申し訳ないんですけれども。あるときの回答ではやはり傍聴の場合というのはある程度限定されて運用されるのかなというふうにも聞こえ,違うときの回答では,やはりもうちょっと広いのかなというふうに聞こえたりして,どの程度のことを考えておられるのかが少し分かりにくくて,それが例えばこの記録閲覧が拒否される場合の正当な理由とどう違うのかとか,それから意見聴取が駄目だといわれるような場合とやはり違いがあるのかないのかとか,その辺のところがちょっと私としては少しあいまいな部分のような気もしますので,その辺のもう少し具体的なところも次回,議論できたらなと思っております。 ● 部会長としましては,十分審理を尽くして結論を出したいと思っております。   今の要綱(骨子)第二については,加えて何か御意見ございますでしょうか。 ● 私が担当したケースではこういう記録閲覧・謄写が被害者の方からお話が出たときに付添人に意見を聞かれたということが自分の経験としてはあるんですけれども,条文上はまた付添人の意見を聞くというようなことが,元々がここでは入っていなくて,先ほどの傍聴との関係でも,こういうような被害者の方からの申出があったような場合にそういう付添人が少年の意見を聞くというような枠組みをいれていくのかどうかというようなことも論点になるのかなと思いまして,その点もちょっと発言させてもらいました。 ● それでは,お差し支えなければ次の要綱(骨子)第三に入りたいと思います。「被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大」についてであります。御意見をちょうだいしたいと思います。   御意見ございませんか。 ● これは当然最初から入れるべき規定であったものが抜けていたんではないかと私は思いますので,これで賛成です。 ● そのほかにございませんか。   それでは,本日のところはこの三につきましてはこの程度にしまして,最後の要綱(骨子)第四に入りたいと思います。成人の刑事事件の管轄の移管等についての議論に入ります。 ● ちょっと私,ここの点については非常に不勉強なので,より,とんちんかんな意見を言ってしまうのかもしれませんが,この第四の一の部分について,管轄を移すということに関して実務上いろいろな問題点が出ているというのは,私としても実感としてそういうことかなというふうに思っていまして,そういう意味ではここに規定されているものが地方裁判所又は簡易裁判所の管轄に移っていくということは,やはり実務上,きっとそういうことが必要なんだろうなと思っているんですけれども,元々こういう福祉違反などの事件を家裁に集中させたそれなりの理念と,それに基づく,ここでやっていこうというような,当初はきっとそういうものがあって,それがうまく機能しなかったのか,若しくは,元々のお考えが余りよくなかったのか,実務上いろいろな支障が出てきたということなんだろうと思うんですけど,その辺の元々どういう発想で出てきて,そこが実はというのは,もとの発想自体はやはり家庭裁判所か何か少年のいろいろな福祉を守っていくというか,そういう発想も多分混ざっていたんだと思うんですけれども,そこがどううまくいかなくてどうなってきたのかという辺りを,その辺りをうまく説明していただければと思って質問しました。 ● 御説明いたします。少年法37条の規定でございますが,これは昭和23年に現行少年法が制定された際に設けられたものということでございます。立法時の説明によりますと,この規定が置かれたのは,少年の不良化の背後には成人の無理解ですとか,あるいは不当な処遇がひそんでいることが極めて多いと。そのような成人の行為が犯罪を構成する場合にはその刑事事件は少年事件のいわばエキスパートであり,少年に理解のある家庭裁判所が取り扱うのが適当であり,こうした成人の事件は少年事件の取調べによって発覚することが多く,証拠関係も大体において共通することから,家庭裁判所が取り扱うのが便宜であると考えられたためということで説明されているところと承知しております。 ● 私が存じております限りでは,この少年法の制定は今おっしゃった昭和23年ですが,立案にはGHQ側の意向がかなり強く働いておりました。特にこの37条の規定につきましては,この種の規定を是非入れるようにという強いサゼスションがあったために,日本側がそれを受け入れたものと理解しております。 ● そのほか要綱(骨子)第四について御意見ございますでしょうか。 ● この立法当時のいろんな社会情勢でございますとか,当時の少年の保護に向けた法制,当時の法制とその後のやはり我が国のいろんな観点からの法制の発展と申しますか,その中で地方裁判所,簡易裁判所が相当数の似たような観点からの罰則を扱われたり,そこで関係者も含めてどういうことが背景にあるのかとか,様々な専門的なエクスパティースというか,そういうものを当然今は裁判官の皆さんお持ちだと私は信じて疑いませんし,そのように感じております。その中で,むしろ少年法第37条が残っておりますがために,例えばの話,観念的競合だということでいろんな種類のものがございますけれども,最後のところで情状によって評価が分かれるがために,非常に難渋しましたり,あるいは被告人も含めて,もっと簡単に手続を進めたいという方の要望にも沿えなくなってきていると,いろんな観点がございますので,これは少年法第37条についての要綱は実務的に非常に意味のあることだと思っております。 ● 要するに,今,○○委員からも御指摘があったんですけれども,家庭裁判所の福祉的な側面を持っていると思うんですが,そういう何か理念的そういうものが変わってきたのと連動していると言われると少し私としても寂しいという思いもあるんですね。ただ,並行して現に生じている実務上の支障が,例えば恐らくおっしゃっているのも同じことだと思うんですけれども,たまたま児童福祉法違反になるか強姦事件になるかで,全く違うところで裁判がなされていて,その支障が余りにも著しいものがあるというのは私も同じような感覚ですので,そういう意味では私としては元々の発想としては一つの発想として良かったのかもしれないけれども,余りにも実務上うまくいかない。かえって実務上の不都合が多過ぎるということで改正の話も出てきて,それはやむを得ないのかなというふうに私自身としては受け止めております。 ● そのほかございますか。   もしございませんようでしたら,本日の審議はこの程度としたいと思います。   次回以降の審議について事務当局の方から何かお話はありますか。 ● 審議の進め方でございますので,もとより部会で決めていただくということでありますが,事務当局の方から一つの御提案をいたしたいと思います。   今回は被害者等の審判傍聴を初めとする少年審判において被害者の権利利益の一層の保護等を図るための法整備ということで御審議をいただいているわけでありますけれども,今日の議論の中でもありましたように,従前から少年犯罪の被害者あるいはその御遺族の方々から様々な御意見が示されているところでありまして,法務省にもそういった御意見が数多く寄せられているところでございます。もちろんその一部といいますか,要約した形で本日の資料の中に盛り込んでいるところではありますけれども,当部会における審議ということを考えました場合,こうした被害者あるいは御遺族の方々の実情あるいは御要望というものを踏まえて審議いただくということは大変有益だろうというふうに考えております。そういうことで,そのような犯罪の被害者,御遺族の方々から直接御意見を拝聴する機会を設けてはいかがかというふうに考えているところでございます。 ● もし,皆様の御了解が得られましたら,次回の会議においてそのような機会を設けたいと思いますけれども,いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,そのようにさせていただきたいと思います。   具体的な問題ですけれども,それではどなたに御協力をいただくかということにつきましては,事務当局の方で整理をしていただいて,審議の時間の中の一定の限られた時間ということになりますので,この点につきましては部会長に御一任いただければありがたいのですけれども,よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,本日はこれから審判廷の見学などがございますので,審議を急ぎがちになりましたことは誠に申し訳ございませんでした。次回はヒアリングの機会がございますが,その後は本日の審議を継続いたします。そのときには時間的にもしお差し支えなければ,より余裕のある方策を部会長としても考えていきたいと思っております。   それでは,次回以降の日程等について,事務当局からお願いいたします。 ● 当面部会用に会議室を確保しておりますのは,今月21日(金曜日),来年の1月10日(木曜日),1月25日(金曜日)でございます。本日を含めまして,一応4回の会議が開けるように準備をいたしました。場所は次回の12月21日は,法務省地下1階の大会議室,来年の1月10日と25日は,法務省20階の第1会議室となっております。時間はいずれも午後1時30分からを予定しております。 ● それでは,次回につきましては,12月21日の金曜日,時間は午後1時30分から,場所は法務省地下1階の大会議室といたしたいと思います。   次回は,犯罪被害者や御遺族の方々の御意見を伺った上で,引き続き要綱(骨子)について第二巡目の議論を行いたいと思います。   本日の会議はこれで終了いたします。長時間どうもありがとうございました。