法制審議会保険法部会 第22回会議 議事録 第1 日 時  平成19年12月26日(水) 自 午後1時32分                        至 午後6時35分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                   議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第22回の会議を開催させていただきます。   最初に配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 今回の配布資料は,事前に送付いたしました保険法部会資料25の1点のみでございます。 ● よろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思います。   本日は保険法部会資料25,「保険法の見直しに関する要綱案(第1次案・下)」の1頁,「第2 生命保険契約に関する事項」について,御審議いただくこととしたいと思います。   まず,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● では,御説明いたします。   まず,資料1頁の(前注)でございますが,(前注)2では傷害・疾病の死亡給付に関する契約と損害てん補方式の傷害・疾病保険契約の位置付けについて記載をしております。このうち,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約につきましては,「人保険であることによる特則を設けるものとする」と記載しておりますが,具体的にどのような特則を設けるべきかについては,個々の規律の箇所で御説明いたしますので,その箇所で御議論をいただければと思っております。   続きまして,第2の1ですが,前回と同じく変更点を中心に御説明いたします。   まず,(1)では金銭の支払以外の保険給付を約する契約も,保険法の適用範囲に含めることを提案してございます。ここでいいますところの「その他の一定の財産上の給付」の意味につきましては,(注)に記載したとおりでございます。   第19回会議におきまして,保険金受取人が保険事故発生時に,金銭給付と金銭の支払以外の給付とを選択することが可能となっている場合に限定すべきであるという御指摘がございましたが,保険の本質上,このような保険しかあり得ないということであればともかく,そうでないのであれば,このような限定をしてしまいますと,個々の契約のニーズに応じて給付の選択を前提としないで,金銭の支払以外の給付のみが定められた場合には,そのような契約が保険契約者等の保護について定めております保険法の規定の適用の対象から外れてしまうという難点があろうかと考えております。そこで,そのような契約をも保険法の適用範囲に含めるために,選択性を前提とした規律とはしてございません。   続きまして,2頁目の(2)のアでは,他人を被保険者とする死亡保険契約における被保険者の同意について記載をしてございます。なお,傷害・疾病保険契約につきましては死亡給付を含め,後ほど12頁の第3の1(2)のアのところで問題提起をしてございますので,傷害・疾病保険契約につきましては後ほど御議論をいただければと考えております。   また,イでは被保険者による解除請求について記載をしております。(ア)及び(イ)の場合には被保険者は保険契約者に対し,死亡保険契約を解除することを請求することができるものとすることを提案してございます。さらに後注ではこれまでの御議論を踏まえ,一定年齢未満の未成年者を被保険者とする死亡保険契約のうち,一定の保険金額を超える部分を無効とする旨の契約法上の規律は設けないものとすることを提案してございます。   続きまして,3頁の(5)のところですが,ここでは保険金受取人の指定について明文の規律を設けず,その方法などにつきましては解釈や個々の契約ごとの取扱いにゆだねることを提案してございます。   続きまして,(6)の遡及保険でございますが,ここでは死亡保険契約のみに関する規律とすることを提案してございます。これは,生存保険契約につきましては保険事故自体を保険契約の締結時よりもさかのぼらせることを観念し難いことなどを踏まえたものでございます。   最後の(8)の保険証券につきましては記載事項を整理しまして,保険契約の種類を独立の記載事項とはしないことを提案してございます。   続きまして,2の生命保険契約の変動について御説明いたします。   まず,(1)では保険契約者の変更の場合の被保険者の同意については明文の規律を設けず,現行商法と同じく解釈や約款等の規律にゆだねることを提案してございます。これは一口に保険契約者の変更と申しましても,個人契約において保険契約者が変更される場合もあれば,法人契約において事業譲渡等によって保険契約者が変更される場合もあり,法律上,保険契約者の変更について,一律に規律することにはなじまないと考えられることを踏まえたものでございます。   次に,(2)のイでは,生前の意思表示による保険金受取人の変更に関する規律を提案してございますが,①では保険者に対する意思表示によって保険金受取人の変更をするということを記載し,続きまして②では変更の意思表示は,その通知が保険者に到達したときは,当該通知を発した時にさかのぼって変更の効力を生ずるものの,その通知の到達前に行われた保険金の支払の効力を妨げないことを併せて記載してございます。これは第四読会での御議論を踏まえたものであり,その趣旨につきましては(注1)に記載をしたとおりでございます。   続きまして,ウの遺言による保険金受取人の変更ですが,この②のところでは保険契約者の相続人が通知をすると記載しておりますが,これは法律上は保険契約者の相続人のうち,1人が通知をすれば対抗要件を具備したことになるとすることを前提としてございます。また,遺言執行者による通知を記載していない理由につきましては,(注1)に記載したとおりでございます。   さらに,続きまして6頁のエのところでは,保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合の規律を提案してございますが,(注1)に記載したとおり,権利の取得割合に関しまして民法第427条の規定の特則は設けないことを提案してございます。さらに,(3)の危険の増加,(4)の危険の減少につきましては,それぞれの(注)に記載したとおりでございます。   最後に,7頁の(5)の保険金受取人の意思による契約の存続の規律につきましては,第四読会での御議論を踏まえての提案でございまして,②の支払をすることができる者に対する情報提供の在り方につきましては,(注1)に記載したとおり,特別の規律は法律上設けないことを提案してございます。   続きまして,資料の8頁の3の保険事故の発生による保険給付について御説明いたします。   このうち,まず(2)の保険金の支払時期につきましては損害保険契約と同様の規律としておりまして,かつ,(注)に記載したとおり,生存保険契約をも念頭に置いた規律とすることを提案してございます。   また,9頁の(4)保険者の免責のところでございますが,ここの(注1)では現行商法にあります「決闘其他ノ犯罪又ハ死刑ノ執行」を,法定の免責事由としては掲げないことを提案してございます。また,(注2)では自殺免責期間を法定しないことを提案してございます。   続きまして,4の生命保険契約の終了でございますが,ここの(1)から(4)まででは損害保険契約と同様の提案をしてございます。また,10頁の(5)のところでは,いわゆる保険料積立金及び解約返戻金の支払について,第四読会での提案と同じ記載をしてございます。この理由につきましては(注)に記載しておりますが,①から③までに記載したような法文化に当たっては,困難な検討課題があるところでございます。具体的に申し上げますと,第四読会の提案では保険料の計算の基礎をもとに,保険料積立金及び解約返戻金を算定することとしてございましたが,例えば変額年金あるいは市場金利連動型商品では,契約締結後の金利の変動が保険料積立金や解約返戻金の額に反映されることとされており,これを規律に表すことができておりません。   他方で,保険料積立金につきましては契約が保険期間中途で終了した場合には保険料積立金を返還すべきであるという実質については,基本的に異論のないところと考えられますが,これにつきましては民法の解除に伴う原状回復によって同様の結論が導かれないのかについても検討が必要と考えられます。また,解約返戻金につきましては,いわゆる解約控除などは合理的なものである必要があることや,契約の解除等に当たって保険者がペナルティーを取得することはできないことなどを明確にする必要性について指摘がされてございます。他方で,第四読会におきましては,実質的には保険の群団性を前提とした規律とすることには異論がなかったものと思われまして,これらのことを踏まえつつ,規律の在り方について検討する必要があるのではないかと考えてございます。   以上です。 ● それでは,ただいまの(前注)も含めまして生命保険契約に関する事項について,内容がかなり大量でございますので,また,例によって少しずつ区分して御議論いただきたいと思います。   まず,1頁の(前注)と第2の1,生命保険契約の成立の部分につきまして,御意見をいただければと思います。4頁の真ん中辺の2の前のところまで,この部分でお願いいたします。   ○○委員。 ● まず,(前注)のところで一つ簡単な御質問なのですが,確か前回の資料23の(前注)3では何か片面的強行規定の対象となる保険契約については次回に配るということで,前回は損害保険のところが配られたわけですが,生命保険に関する分はもうないということなのでしょうか。   これがまず一つの質問ですけれども,それから次は生命保険契約の意義のところですけれども,やはりこの(注)の下から6行目でしょうか,「給付の選択を可能としなくとも保険契約者等の保護に欠けることはない場合も想定することができ」というふうにあるのですけれども,どうもそうは言えないのではないかと。やはり今まで議論されていなかった問題が一つあって,それは価額の評価そのものの可能性の問題があるわけですね。それがあるから最低でも選択することができるという前回の御提案が意味を持っているのだと思うのですが,要するに市場がなくて換金ができないわけですから,いわゆる流動性がないディカウントというのを当然考えた上での評価がされるべきだと思いますが,例えば3割のディカウントであれば一応0.7で割る形で,要するにその会社の資産の帳簿上書くかどうか分かりませんが,例えば4割増しとか,そういうような形になるのだと思いますが,そういうことを保険事業者の方にやってもらうということがいいことなのかという根本的な問題がどうもあるのではないかという感じがいたしますので,前回と同じくやはりこの括弧書きのところは入れない方がよいというふうに考えます。   それから,未成年者の死亡保険のところですけれども,2頁の後注のところですけれども,これも議論をいろいろ申し上げたので繰り返しませんが,幾つかあるポイントの一つは前回,私が18回で出させていただきました死亡率のかい離を示す表というのがあったわけですけれども,自然に見れば,だれでも未成年者の死亡保険が引き受けられているために,子殺しとか子殺しに近いものが表に出ない形で行われているのではないかという疑問を抱くのではないかと思うのですよ。その点についてやはり説明していただく必要があると思いますし,そういう点についての説明がないままに,ここにあるように未成年者の死亡保険についてはどのような規律が妥当かという議論に入るのは,ちょっとなかなか抵抗のあるところで,仮にその先の議論としてはもちろん前回繰り返したような規範的にというか,倫理的にそういうものを認めていいのかと,かつ,そのお金は何に使うのかという議論が当然出てまいりますが,そういう点を付け加えまして,やはりこれは認めない方がいいという意見を申し上げたいと思います。   それから,(3)の告知義務のところ,これは質問なのですが,前回,告知の対象を保険契約者が知っているすべての事実に限ると,言い換えますと保険契約者側は重要な事実の告知義務を探知義務を負わないということについてはゼロ回答なのか,それとも今御検討いただいているのかということを後で教えていただければと思います。   それから,(5)の保険金受取人の指定のところですけれども,自信がないのですが,中間試案のように規定を置いた上で任意規定とするというのがなぜできないのかと。3頁の(注)にいろいろ文章がありますが,2行目の「実際上は保険者は」という説明と,その2行先の「契約によっては保険金受取人が」という理由は,これだけでは規定を置く理由にはどうもならないような気がいたしますので,ここはちょっと疑問だと感じております。   それから,(7)の生命保険契約の無効・取消しによる保険料の返還のところですが,これも先ほどと同じ質問ですが,前回,指摘させていただきました保険契約者側に過失があっただけの場合でも,例えば保険料は返さないと,無効についてですね。そういう約款の規定をどうやって前回のもので無効にできるのかという問題はあったかと思いますが,これも現在検討中であれば特に何も申し上げられませんが,ゼロ回答であれば,その旨を言っていただいて,またちょっと考えさせていただきたいと思います。   それから,保険証券につきましても同じ問題がありまして,前回,保険契約者側が契約内容に関する情報を確実に入手できることだけは,強行法規で保護を保証しなければいけないのではないかという議論があったのですが,これについても現在御検討いただいているのかどうかという問題と,あと一点確認させていただきたいのですが,私だけが鈍かったのかもしれませんが,3頁から4頁の記載を見ると,保険証券というか,書類が契約のときに出ますが,そのヘッディングというのは保険証券でも保険証書でも共済証書でもいいという,そういう前提でこの文言は書かれているのかどうかというところをちょっとお聞きしたいと思います。   2の手前までですね。以上です。 ● 幾つか御指摘いただきました点ですが,まず,片面的強行規定の点は前回の部会資料23の(前注)3で,第1次案の下において取り上げるという書き方をしていたのですが,その後,前回の部会の当日に席上配布で部会資料24を配ることができまして,私どもとしましては下で取り上げる予定だったものにつきましては,部会資料24,前回の席上配布の第1次案・上の追加分でお示ししたという認識でございまして,言い方を換えますと,この片面的強行規定をいわゆる企業保険について適用除外すると,すべてを任意規定として扱うというものは損害保険に限って考えているということでございます。   それから,御意見のところはまた他の委員,幹事の方の御意見を伺ってからが適当かと思いますので,質問に当たるところでいきますと,2頁の告知義務のところですけれども,前回御指摘いただきました,知っている事実に限定すべきという議論については前回の御議論を踏まえまして,その後,内部でも検討いたしましたけれども,やはり知っていた事実について告知義務を負うというような形で仮に明文の規定を書いた場合には,前回議論が出ましたように,知ろうと思えば知ることができた事実も解釈で読めるという言い方は,なかなか難しいだろうというのがまず第1点ございますし,知ろうと思えば知ることができた事実も解釈で読めるという立場に仮に立ったとしても,そうしますと,知ろうと思えば知れた事実について,故意又は重過失で告知義務違反があったというのは,一体何を言っているのかよく分からないことになってしまうというのが2点目にございまして,その2点からこの告知義務について故意の対象を明文で限定するというよりは,むしろ現行法どおり,やはり解釈にゆだねた方がここは適当であろうという検討の上,今回は特に新たな提案をしないで,損害保険について御提案した内容を維持しているということでございます。   それから,3頁の(5)の受取人の指定のところですが,ちょっとこの注では御趣旨が伝わりにくかったかもしれませんけれども,こちらが考えていましたのは,中間試案での御提案は,保険金受取人は契約締結時に契約者が保険者に対する意思表示によって指定する,つまり単独行為として指定するというデフォルトルールを置くことを考えていたわけですが,他方で契約締結時の話ですから,保険者の方は契約締結の拒絶権も持っているわけで,単独行為で指定できると言いながら契約は合意で成立するもので,その段階で拒絶権があるというのを一体条文ではどういうように書けるのかと改めて考えまして,なかなかそれは難しい,解釈で言われている実質を条文で受け止めるのはなかなか難しいのではないかというのがこの3頁の(5)に付した注の趣旨でして,そこのところは明文の規定を設けるまでもなく,解釈に引き続きゆだねるということとさせていただきたいというのが今回の御提案でございます。   それから,(8)の保険証券のところのまず書面という言葉につきましては御指摘のとおり名称を問わないと,保険証券あるいは共済証書,いずれにしてもこういった記載をした書面を交付しなければならないということを,デフォルトルールとして定めてはどうかということでございます。それから,必要な情報については必ずアクセスできるようにということについては,強行規定で保護すべきだという御指摘ですけれども,それについては前回も申し上げたことですけれども,強行規定で強制することをすべての保険者あるいは共済団体等に,一律に適用して本当に大丈夫だろうかという懸念もございますし,そこまで契約者側が求めない場合に,強行規定として強制するというと変ですが,求めることもまた必ずしも適当ではないだろうという判断がございまして,その点についてはそういう規定を設けるべきではないという判断の下に,追加の提案をしていないということでございます。   それから,すみません,過失云々という御質問をもう一度お願いしたいのですが。 ● 責めに帰すべき事由という過失があっただけの場合も保険料は返戻しませんというような約款はいいとするのか,それはまずいと,従来はそう考えていたと思うのですが,とすれば前回の規定の文言でそれが読めたのかと,そういう問題ですね。それを前回に申し上げたつもりだったのですが,無効に関してはいろんな約款がありますけれども,国民生活審議会でそういう昔は過失の場合も返さないという約款があったのですけれども,それはちょっと厳し過ぎるということで,何十年かかかって変えてきたわけですよね。新しい前回の無効・取消しの規定の場合で,それが維持されているのかと。この新しい法律となった途端にまた約款をそれに変えたら,有効とされてしまうとまずいと思いましたので,それを前回御質問したわけですが。 ● ちょっとなお御質問の趣旨が理解できていないのですが,少なくとも今回の資料の3頁の(7)で第1の1(6)の損害保険での御提案をそのまま引用してございますけれども,損害保険の方での提案の内容は,(ア),(イ),二つの場面に限定して保険料を返還する義務を負わないと書いているだけでして,それ以外の場合には民法の不当利得の原則に従って保険料を返還する義務があるということになり,かつ,限定的に返さなくていいというルールについて片面的強行規定とすることによって,これに反して契約者に不利な約定は無効とするという前提で提案させていただいておりますので,○○委員がおっしゃる約款の規定が契約者にこの提案内容よりも不利な内容のものであるとすれば,新しい改正の内容が,このとおりになればですけれども,施行された後は無効とされることになるというのが,一般論としては申し上げられるところだろうと思います。 ● よろしいでしょうか。 ● 確か,これは先回,○○委員からもちょっと考えてくださいとおっしゃっていただいていたように記憶している,私の記憶違いかもしれませんが,今,第643条では善意にして重大な過失なきときは保険者として返還しなければいかんということになっていますが,その規定はなくなってしまって,前回の資料の4頁の(6)の規定だけになってしまったときに,過失の場合さえも返さなくするというような厳しい規定を置いたときに,それはしようがないとお考えになっているのか,それとも従来と同じものをこの解釈から導けるのかということで,私はどうも導けないように思ったのですが。 ● 返さないでいいと言っているのは(6)の(ア)と(イ)の場合だけなので,あとは一般原則どおりですから,不当利得によって精算するというか,返還するということになるという御説明ですね,今のは。 ● そうすると,相当厳しくしていると。それ以外は駄目という,そういう前提の解釈に立っていると……。 ● ということ。 ● それならよく分かりました。ありがとうございました。 ● よろしいですか。   では,○○幹事から。 ● 大きく分けて今回議論すべきところについては二つ,実は金融審の方でも議論がございましたので,それについて御報告をさせていただきたいと思います。   最初の生命保険あるいは第三分野もそうですが,そういうタイプの現物給付についてどう考えるかということでございまして,金融審の方では11月22日とそれから12月18日の金融審議会保険ワーキングにおきまして,生保の現物給付というものについて保険会社に対する規制監督という観点から議論が行われたところでございます。保険業法において,生命保険型の現物給付というものを適用対象とするというふうにして規律を及ぼすことについては,一部限定的に要件を絞った上での商品であれば認められるのではないかという意見もございましたが,否定的な意見が大勢でありました。また,保険契約法で定めること自体についても,消極的な意見が多数出たところでございます。   そうしたものを踏まえまして,事務局としてもう一回よく頭の整理をしてみたところ,その中での議論でもございましたが,もともと金銭を出資あるいは拠出させて,それを運用して,その最後,その見返りに現物給付を行うという契約につきましては,個々の事例により適用判断されてございますが,基本的には金融商品取引法の集団投資スキームに含まれていないかという整理が可能と思っております。   このうち,これにつきましては集めたものの運用ないしは支払の段階で保険数理,保険原理といったものを適用していくタイプの生命保険,第三分野型の現物給付もあるでしょうし,あるいは単純に資金を積み立てていって,それを最後,現物で分配するというものもあろうかと思いますが,いずれにしても,これはこの集団投資スキームに含まれますので,そうしますと金融商品取引法によって消費者保護が図られている,具体的には金融商品取引業者については販売,勧誘についてのルール,行為規制が定められておりますので,そういう中での契約者保護が図られているのだというふうに整理ができるのかなというふうに考えてございます。   こういう無名契約に対して規制が及んでいないことについて,これを保険法を拡充して範囲を拡大して直接適用していくことのメリットと,一方で典型契約として御墨付を与えることが言わばシグナル効果といいますか,そういう効果を与えて,かえって危険な商品かもしれないものについて,そういう御墨付を与えかねないというデメリットもあって,その比較衡量をすべきではないかという御議論が金融審でもございましたけれども,そうした問題については無名契約とはいえ,金融商品取引法の適用があり,業法を通じた規制としての契約者保護の規律が及んでいると考えられるのではないかなというふうに思うに至った次第であります。   また,現物給付の世界をもし考えてみると,今は例えば保険数理を使ったものについては保険法の規律を適用する,保険数理を使っていないものは適用しないというふうになると,かえってそこの間のアンバランスが起こってしまうのではないかと。例えばバーチャルな話として,法制審でも入居権付き老人ホームの例が出されておりましたけれども,例えば10年間なりの積立てで入居権が得られると,例えば3年たって死んでしまった場合には残りのお金は返してあげるけれども,8年たってお金が足りなくなったら,追加を払ってもらいますよという契約には保険法の規律が及ばないけれども,これが要介護状態になったら3年しか入れなくても,あるいはその後10年生きても,入居権が認められるという保険型であれば保険法の適用を受けられるといったことにもなり,そういうことを考えると,現物給付まで拡大するのはどうだろうかというふうにまで思っているところでございます。   それから,もう一点の未成年者についてでございます。未成年者を被保険者とする死亡保険についても議論がございまして,1回目の議論でかなり何らかの措置を講ずるべきではないかという意見が大勢でございましたので,それを踏まえて,仮に何らかの対応を行うべきとすると,4つに区分されるというふうに整理してお諮りしたところでございます。1つが一定年齢以下の未成年者の死亡保険を禁止,2つ目が一定金額以上の未成年者の死亡保険を禁止,3つ目として未成年者の死亡保険の引受け等が適正に行われるための措置を加える,例えば募集とか引受け等々における行為の在り方についての制限,それから業界団体や保険会社における自主的な取り組みにゆだねるということの4つがあるのではないかということで御議論をいただいて,大勢としては少なくとも何らかの対応を行っていかなければならないという意見が大勢でございました。   最後の類型については,まさに業界団体に御検討をいただいているところでございますが,最初の3つの類型について,金融庁として具体的に何が保険会社に対する規制監督という観点からできるのかという宿題をいただいたものと思っておりまして,今,実際に何ができるのか,まさに頭を悩ませているという状況でございます。   以上,御報告いたします。 ● ただいま,現物給付と未成年者の保険について御意見をいただきましたが,二つともこれまで意見がたくさん出てきているところで,ちょっとその二つの議論がごっちゃになってもどうかと思います。まず,順次,お諮りしたいと思います。まず,現物給付の方につきまして御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● ちょっと事務当局側のお考えをお聞きしたいのですけれども,仮に今回の要綱案のように保険契約法において定額現物給付も保険契約であるというふうに明記した場合,保険業法ではどのように規律すべきだというふうに,事務当局としては考えておられるのか。この辺,契約法では契約法として必要なことを定めるだけで,保険業法ではどうされるのかというのは,こちらとしては一切関知しないという,これは金融庁さんの方で適宜やってくださいということなのか,それとも,こちら側としてもやはり保険契約法で保険契約として定める以上は,保険業法でもこれは保険業だと明記した上で必要な監督をする,つまり,無免許営業に対しては無免許営業として取り締まるべきだというふうに考えておられるのか,そのあたりのところをちょっとお考えをお聞かせいただければというふうに思います。 ● 今の御指摘については一定の考え方は持ってございますが,法務省として金融庁さんが所管している業法規制の在り方について,こう思うと,こうしろ,ああしろという立場にはございませんので,そこはちょっと申し上げるのは控えさせていただきたいというように考えております。   従前から,もともと契約法で傷害・疾病保険などについてどのように分類するかということと,業法における整理とは直接結び付かないということも申し上げているところですし,契約法で保険をどう定義するかも直ちに業法における定義にはねるものではないということは,我々はずっと一貫して申し上げてきているところでして,あくまで今回,ここでまず考えるべきは,契約ルールをどの範囲で及ぼすようにその適用範囲を設定するかという問題でして,それと業法における規制を及ぼすべき範囲というのが,直ちにリンクすべきものだというようには考えておりません。一定のリンク,車の両輪としてあるべき契約者の保護を図れるようにやるべきだというのは当然あるとは思いますけれども,ここで議論するときに業法規制がどうあるべきかが直ちにこちらの結論にはねるものではないというように考えております。 ● ○○幹事。 ● そうすると,仮に保険契約法で定額現物給付も保険契約だと定めた場合に,保険業法としてどういう対応が考えられるのか,恐らく二つ考えられて,一つは現行保険業法のまま保険業の定義は変えないと。そうすると,保険業法の規定では一定額の金銭の支払か,又は損害てん補というふうに限定しておりますので,定額現物給付というのは保険業ではないので,保険契約法では保険契約として認められて,もしそういうことをやる人が出てきたとしても,保険業法上は保険業ではないから無免許営業として取り締まることはできない。金商法で登録規制はできるのでしょうけれども,保険業法としては取り締まれないという,そういうことになるのか,それは余り私はよいことではないと思うのです。   そういうふうに保険契約法では保険だと認めながら,しかし,保険業法では保険ではないというのはやはりちょっと問題があると思うのですが,しかし,今度は保険業法で定額現物給付も保険業だというふうに定められるのかというと,先ほど金融庁の方から御紹介がありましたように,保険ワーキングではそういうことを少なくとも現在,定額現物給付のようなものを認めることについては非常に抵抗が強いというか,消極的,ネガティブな意見が非常に強かったわけで,しかも生保実務家委員のお話でも,いわゆる選択式でない定額給付のみを約束するようなそういう商品は,現状でもそういうことはまず考えていない,将来的にも余りないだろうと言われているわけで,にもかかわらず,保険業法ではそういうものも保険業だとしてとりあえず認めた上で,しかし,実際にはそういうものには免許を与えないと,そういう恐らく立法をすることになるのではないかと,これもまだ実際にはそんなものを保険業として実際問題としては認めないようなものを,しかし,法律上だけは保険業として,ともかく無免許営業として取り締まるというそれだけのために,保険業として認めるというのも余り望ましいことではないと思うわけで,要するに,こういうことになるのは,結局,保険契約法の方でこういうものを保険契約だと認めてしまうがゆえに,保険業法の方に良からぬ影響が及ぶということなので,恐らく事務当局側の御主張としては,どうせ現行の保険業法でもいわゆる定額現物給付というのは保険業の範囲内では入っていないから,だから,無免許営業として取り締まれないではないかと。だから,保険契約法で定めたとしても,別に保険業法,現状でも取り締まれないのだから,保険契約法で定めたとしても別に変わらないではないかという,そういう御趣旨でこういう立法を考えられているのかなという気もするのですが,しかし,やはり保険契約法で定額現物給付については御墨付を与えることの影響というのを,何か余りにも小さく見積もられ過ぎているのではないかという気がいたしまして,私は以前も申したと思いますけれども,やはり保険契約法において定額現物給付と,しかもそれのみをお約束するような契約をも保険契約として解禁する,認めるということにはやはり反対したいというふうに思います。 ● ○○幹事,先ほど御意見をいただきましたが,仮にこの部会資料のように,契約法の方では限定をしないで現物給付を保険契約の内容とするという場合に,先ほどの金商法の規制の適用はあるだろうとおっしゃいましたが,今,○○幹事が御指摘になった保険業としての規制というのは,どういうふうなことになっていくということなのでしょうか。 ● それについては,まだ最終的な取りまとめはされておりませんが,前回,保険ワーキングにおいて更に御議論いただきたい事項ということで,大きく分ければ議論した結果は五つに分かれるのではないかということで,お示しして議論をいただきました。   機械的に整理すれば,一つは保険契約法においても現物給付を規律しないと,それから保険業法においてもその場合には当然規律しない,適用対象としないというのがまず一つ。二つ目は保険契約法において現物給付を適用対象とするけれども,保険業法上は生命保険契約における保険給付としては認めないということで現行どおりというのが二つ目。それから,3,4,5と三つの類型を示して,一定の要件を満たした現物給付のみを認めるとして,例えば一定の要件の例として金銭的に評価ができる保険金額と相当のものにする,あるいは保険金の受け取りとの選択性とする,汎用性,代替性のあるものにする,価額変動リスクの可能性のないものにするといったものに限って考えるとした上で,3番目は契約法において,そういう要件を定めることが考えられる,4番目としてはそれを保険業法の保険給付の要件として定めることが考えられる,最後の5番目としては保険業法も保険法も幅広く現物給付を認めた上で,商品審査基準等の中でそうした要件についての対応を行うという五つの類型で御議論をいただきました。   それで,先ほど御紹介しましたとおり,意見の大勢は1番又は2番ということで,保険法も業法も定めないか,保険法で認めても業法で定めるべきではなく,というのが前回までの意見の大勢であったと理解しております。 ● というふうなことで,保険契約法のこちらの方で定義を広くするという提案が一方でなされ,他方で,監督法ではそういうものをそのまま受け止めるのではなくて,余り認めないというふうな,そういう考え方が有力であると,先ほど○○幹事が御指摘されたような,全然両方でやっていることが食い違っているというふうな状況になりつつあるわけですが,○○委員,どうぞ。 ● 具体的な商品イメージがあるわけではないので,そういう中でこういう議論をしているのは非常に申し訳ないなというところがあるのですけれども,一方で我々が思っていますのは今回の契約法の改正のもともとの諮問の中に,今後の高齢化社会における役割の重要性等にかんがみ,多様なニーズにこたえられるように規律を見直すということがございまして,そういう中で,今後,どういうニーズが出てくるか分からないと。そういう中で,いわゆる介護とか,そういったことを中心に現物給付的なものが商品としては十分考えられるのではないかと。   それが選択性ではなくて単独でいくのか,選択性かというのも幅があると思うのですけれども,そういったことというのは今後,この契約法ができて,10年,20年,30年ということを考えていったときに,絶対出てこないということではきっとないのだろうなというふうにまず思っていまして,そういうことであれば,そのときにこの契約法で規律の対象とするものにするのか,そうでないものにするのかということを考えれば,この規律の対象にしておいた方が,せっかくここで契約者の保護ということをもう一つの柱で契約法をやっているわけですから,そちらの方がいいのではないかと,シンプルにそういう発想で,それも含めた方がいいのではないですかというようなお話を実はさせていただいているというのが根本的なところでございまして,何か変なものをこの際,こういう機会につかまえて何かやりたいとか,変なことが起きることを何かしているとか,必ずしもそんなことではないので,ちょっとそういう意味で,何かすごく視点がうまくかみ合っていないなという感じがしておるのですけれども,私が主張しているのはそういう非常に単純な趣旨だということについて,改めて御理解いただければありがたいなというふうに思っております。 ● ○○幹事。 ● 私も保険会社が得体の知れないものを近い将来販売されるとは考えておりません。保険契約法でこういうものを保険契約だとされると,得体の知れない業者が保険契約だと称して売ると。しかし,それは保険業法で言う保険業ではないので保険業法の規制はかからないという,そういう問題が生じかねない。もちろん,保険業法の規制対象として明文で定められていない以上は,現在でもそういうことはあり得るのですけれども。しかし,保険契約法で保険契約なのですよという御墨付を与えると,より一層そういう危険が生ずるのではないかということを懸念しておるということでございます。 ● ○○幹事がおっしゃる懸念も分かるのですが,でも,本当に契約法で定義の中に取り込んだことによって出回ることになるのかということは,多分に予測の範囲の問題であって,私は必ずしもそうではないと思いますし,書こうが書くまいがいろんなことを考える人は考えるわけで,書いたことによって出回るようになるということではないのではないかというように思っております。   それから,先ほど来契約法で認める,認めないという話がございますが,これは中間試案の取りまとめ後,最初にこのテーマの御審議をお願いした際に申し上げましたとおり,若干,それまでの事務当局の説明がやはりミスリードであったということを私どもは認めた上で,契約法では認める,認めないという話ではなくて,契約自由の下では基本的に何でもできるわけですから,その世界で行われていることについて,どこまで契約ルールを及ぼすか,及ぼさないかという問題として,この論点は考えるべきだというように整理をさせていただいたところでして,ですから,その意味でこの論点はそういう観点で是非,本日も御検討をお願いしたいと思っております。   その場合に,確かに認める,認めないと考えると,御墨付を与えた,あるいはシグナル効果ということが出てくるわけですが,どこまで契約ルールを及ぼすべきかという観点で考えた場合には,契約ルールを及ぼさないままでいいのか,及ぼした方がいいのかと言われれば,多分及ぼした方がいいという結論になるのではないでしょうか。というように私どもは考えておりまして,先ほど○○委員からもこの亀甲括弧はない方がいいという御意見がございましたけれども,ない方がいいというのは契約ルールは及ぼさないままでいいということになるわけですが,それよりは及ぼした方がいいという考え方は十分に成り立つというか,むしろそちらの方がいいのではないかというように考えているところでして,定義に盛り込んだことによって出回ることになる,あるいはシグナル効果というのは決してそうではなくて,そういう商品が現にあるというように聞いていますし,そういうものは書いていないところでも出ているわけですから,そこはそういう形で考えるべきではないかというように強く思います。   それから,業法で受け止めない場合にはそごが生ずるということですが,それは業法が受け止めるかどうかの問題であって,受け止めないということを前提に議論をするのはそもそも適当でないと思いますし,仮に受け止めないのであれば書くべきではないと考えるとすると,それは業法での判断が正しいという前提になるわけですが,果たしてそれが本当に正しい判断なのかということも検証しないといけないと思いますので,そちらで書かないとそごが生ずる,あるいは規制が及ばないままになるから契約ルールを及ぼさない,及ぼすという決断をすべきでないというのは,論理が逆なのではないかと思いますし,更に申し上げれば,どうしても現物だから危険だという発想があって,それもまた分からないではないのですけれども,金銭についても変額年金とか本当にこんなに出回って大丈夫なのだろうかという心配はあるわけで,お金も金利変動とかになれば,いつでもゼロになるわけですよね。   例えば2年後を見たときにお金だから大丈夫かというと,金利変動型になればゼロになることもあるわけで,ところが現物の場合はむしろ2年後であれば,こういうものなら確実だというものもあるのではないかと思うのですね。そのときに物だから駄目だという発想はやはりなかなかなじまないのではないかと。お金も危ないときは危ないわけで,物も安全なときは安全なので,やはり給付が物か金銭かによって極端に変わるということの方が,契約ルールの適用範囲を考えるときには不自然な発想なのではないかというのが事務当局の提案でございます。 ● ○○幹事,ありますか。 ● 私ども商法の教師として会社法なんかを考えるときには,会社の募集株式の発行等の場合に,現物出資というのはやはり金銭の出資よりも厳しい規制に当然かかっていて,これについては何の疑いも持ってこなかったわけでありますから,金銭よりも現物の方がやはり危ないというのは,我が国の法秩序としてはある程度定まった評価があるのだろうというふうに思っております。   それから,契約法でその規律を書けないとき,契約者保護が図れないということについても,そもそもこの契約法で本当に消費者保護のルールがどれだけ入ったのだろうかということを,私はそこに少し疑問を持っておりまして,それから,例えば告知義務みたいなものを本来少し保険契約,典型的なものから外れたものについて,告知義務的なルールを使って契約を解除したようなことがあるとすれば,それはまさに保険法の告知義務に関するルールを類推適用するという形で,この法律を正面から適用することをしなくても,実質,同種の規律が侵害されるというようなことがあれば,それで救済することもできるわけでありますから,正面から適用を認めておかないと,そういうルールが一切適用できないとかいうのは,法解釈の技術としてはかなり狭い見方に立っておられるのではないかというふうに思っております。 ● ○○委員。 ● もしほかに御意見がなければということでお話ししたいのですが,大分見解の溝は深くて,中をのぞき込むと底も相当深いのかもしれないのですけれども,やはりここにはいろんなお立場の方がいらして,こういうことをやったら社会のいろんな部分にどういう影響を及ぼすかということを皆さんお思いだと思うのですよね。これをもし入れてしまった場合に,将来,それで何も起きなければいいわけですが,どういう効果,どういうことが起こるかもしれないと。だから,やはり決断をする以上は責任の所在も明確にしておく必要もありますので,やはり審議会令の第7条ですか,これに基づいて決議をしていただいた方がいいのではないかと。ですから,決議の動議を出したいと思います。 ● ほかに御意見はいかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● 弁護士会の方でも事前のちょっとこの辺の議論では,やはり定額給付の場合の保険で,一定の金銭の支払のほかに現物給付を亀甲括弧なくして盛り込む場合に,そのような契約を保険法の保護の下に置くためという場合,○○幹事も先ほどおっしゃいましたが,その場合に入れただけでどれだけ保護があるのかというところに多少疑問がありまして,そのような現物給付も定額給付の保険契約というふうに今回入れるのであれば,少なくとも効果の方で,もうちょっと保険契約者の保護を念頭に置いた規定を設けるべきではないかというところの意見が多かったということをお伝えいたします。   例えば,皆さん,いろんな方からも御意見がありますとおり,長期にわたった後の保険の給付の時点で,現物の価値が下がった場合のリスクはどちらが負担するのかというそこについては,例えば選択式の規定を設けたものでなければ,保険の契約に入らないというふうに考えるのではなくて,保険給付が現物給付の場合において,給付の時点で価格が下がった場合には担保責任を負うとか,たとえ任意規定にせよ,そのような規定を設けておくことによって,一定の現物給付の保険契約というのはこういうものだという,ただ,それが保険契約として認められたというシグナル効果だけではなくて,そのような契約は放っておけば,支払のときに価値が下がった場合には,その部分を保険者からてん補してもらえるものだというような規定を設けておいて,あとは契約自由というところであれば任意規定にするとか,そのような効果の方で保険契約者を保護する規定をやはりセットで検討していただいた方がいいのではないかというような意見が多かったです。 ● ○○委員。 ● ○○委員がどう言っておられたのか,私はちょっと確認をさせていただきたいのですが,すみません,○○幹事にお聞きしたいのですが,先ほど金商法の適用のお話をなさいましたでしょう。例えば私なんかが考えますに,いわゆる無認可共済で介護サービスや老人ホームの入居権というものを売り物にしてたくさんお金を集めて,それで破綻したのだか何だか消滅してしまったような,そういう被害事例がございますが,ああいうものは金商法のエリアに入ると,つまり,集団投資スキームであると,そういうお話で,そういう理解でよろしいのでしょうか。 ● 実質的な議論はきちっと個別に判断しなければならないと思いますが,金商法の規定では三つの要素を挙げておりまして,金融商品取引法上では他者から金銭などの出資・拠出を受け,そして,その財産を用いて事業・投資を行い,当該事業・投資から生ずる収益などを出資者に分配する仕組み,これを集団投資スキームと呼び,これに関する権利を包括的に有価証券と位置付けておりますので,もちろん,この金融商品取引法においても適用除外というケースは定められておりますが,そうしたことから一般的にはあらかじめ資金の拠出を求めて,それを運用した結果,その収益を現物でお返しするというものも集団投資スキームに入るものというふうに考えておりまして,したがって,業法としては金融商品取引事業者としての業法の規制が及ぶものというふうに考えているところでございます。一応,挙げられた事例の詳細については存じ上げていませんので,それの判断は控えさせていただきますが,一般論として申し上げれば,今,申し上げたとおりでございます。 ● お話の趣旨としてよく分かりました。集団投資スキームの最後のところの分配するところが金銭の分配をしないでもいいのだろうかと思っていたものですから,そこが分かりませんで,すみません,勝手に引用させていただいたのですが,意見としましては先ほど○○幹事がおっしゃいましたように,枠をとりましょう,蛇口を広げましょう,すみません,私の言い方だとこうなるのですけれども,そういうことをお考えでこの提案が出てきているのだと思うのです。そうすると,やはり保険法の中で広げました,蛇口を開きましただけで,あとは業法が受け止めるかどうか知りませんけれども,業法の方へというやり方だと,やはりかなり保険法としての役割という意味からいうと,国民の負託に耐えられないのではないかと。やはり○○幹事が先ほどおっしゃいましたように,そこにきちんと例えば保険会社の保証責任だとか役務提供をするときのレベルの低下とか瑕疵とか,そういうものはあるでしょうから,そういうものを考えると一定の民事効果をきちんとくっ付けてやって,初めて保険法として定義をしたということになるのではないかと思いますので,そういうふうに考えております。 ● ほかにございませんか。   どうぞ,○○委員。 ● 先ほど○○幹事がお金と物でも,どちらでも変わらないよと,お金でもインフレリスクがありますし,物でも変動があるからという,それは確かにそうなのですけれども,ただ,金銭と実物ではやはり大いに違うところがございまして,例えば保険の場合,定額保険で一定の金銭を支払の基準としておりますので,例えばインフレがあっても,あるいは逆にデフレがあっても100万は100万で,契約者は文句を言わないわけですね。   ところが一定の給付を約束してしまいますと,仮に価値が半分に下がった場合,残りの部分というのは保険会社が負うということを追加的に約束するということですので,そういうふうに考えると物と金銭では大分違って,一般的に保険会社の保険料を計算するときには金銭ベースで計算しておりますので,保険料の理屈からいいますと,やはり金銭というのがベースになって,ただ,給付はベースとなった金銭を基準にして希望するというのでしたら,余り問題は少なかろうと思うのですけれども,最初から現物というものが基準となって約束してしまうということは,多分保険料を計算するベース自体が不可能,あるいは相当の保険料の上乗せ,あるいはオプションと組み合わせるとか,いろんな技術を使えばできないことはないのですけれども,何か本来のここの基本ルールのようなシンプルな契約ルールにはなじまないような気がすると思います。   ただ,この規定をしかも(注)をよく読みますと,例えば葬儀組合がある葬式を現物給付で約束しているようなものではなく,「一定の財産上の給付」として,しかもここで「一定」というのは定額であること,そして「財産上の」というのは保険給付が金銭に評価することが可能性であると,こういったことの解釈があって,こういう裏付けでいけば先ほど申し上げたような葬儀会社が一定のサービスは給付するけれども,そのサービスが10年後,20年後に幾らになっているか分からないと。ただ,葬儀会社は葬儀をやっているので,現物を給付する自信があると。そういうようなサービスはやはり保険ではない。やはり「財産上の」というところに,もし生命保険の支払の基準はあくまでも金銭であって,それに基づいて保険料を計算しているのだというところが読み込めるのだったら,これでもいけるかなと私はそう思っているのですけれども,そういう解釈でよろしいのかどうかというのは,法律家ではないので自信がないのですけれども,いかがでしょうか。 ● 若干前提をすっ飛ばしてしゃべるところがありますけれども,今,○○委員からの御指摘で若干冷静になって考えますと,もともと保険であることを当然の前提としています。ですから先ほど○○幹事からも保険数理を使ったものと使っていないものとがあって,使っていないものと比較するとという御指摘もございましたけれども,使っていないものはそもそも保険ではないと思いますので,そういうものはこの契約法のそもそも対象外で,それと比較されても困るというのがまずございます。ですから,これは保険であることは当然の前提で,○○委員がおっしゃるように保険料は計算できないといけないでしょうし,積立金がカウントできないようなものは,そもそも対象外になることは当然の前提で,あくまで保険給付としてお金と物でそんなに大きな差が出るのはおかしい。逆に言うと保険といったときに保険だから給付がお金でなければいけないということは,出てこないのではないかという出発点に立っているということでございます。 ● そういう意味で,どうも議論が混乱しているような気がして,現物に伴うそれをどう保証するかというのは,そもそも保険ではないものの話,つまり,最初から現物給付を一定の金銭とのつながりがないところで現物給付を約束してしまうというのは,そもそも保険料が計算できませんから,そういったものははじいて考えれば,今,将来の現物給付に伴うリスクをどうするかとか,そういった話はそもそも余り意味のない話だと,意味のないというか,らち外の話だと理解してよろしいのですか,違うのですか。いや,ちょっと私の認識が違っているかも分かりません。 ● 今の○○委員の御指摘を正しく受け止めているかどうか分からないのですが,あくまで保険の議論をしているわけですから,保険であることがまず当然の前提だということがございます。それで,先ほどの私の申し上げ方がある意味で誤解を招いたかもしれませんが,お金と物が同じだと言っているわけでは決してなくて,違いがあるのは当然のことでして,ただ,給付の内容がお金か物かで適用されるルールが違っていいのかということで申し上げていたところでして,○○委員の例えでいきますと,蛇口は今回開けたのではなくて,もともと開いているのですよね,現物だろうと契約自由でできるわけですから。   もともと給付の内容を現物とする契約の蛇口も開いていれば,給付の内容をお金とする蛇口も開いているわけで,今はお金の方の蛇口の下にしか契約ルールという洗面器が置かれていないところを,給付の内容を現物とする蛇口の下の受け皿はずっとこの後もなくていいのですかと問われると,今回,契約ルールを整備する以上,共済も含めるとかいろいろ言っているわけですから,何で殊更に保険であるにもかかわらず,給付の内容が現物の蛇口の下だけいつまでも受け皿を置かないのですかと,受け皿がなかった共済の蛇口の下にも今回置くわけですよね。   なのに,何で保険であるにもかかわらず,給付の内容が現物の蛇口の下にだけ置かないのかと,そう聞かれたときに契約ルールを所管する者としては逆に説明ができない。共済も対象にしましょうとこう言っている中で,傷害・疾病もルールをきちんとつくりましょうといろいろ言っている中で,保険であるにもかかわらず,給付の内容が現物のものだけは殊更に嫌だと外に出す,受け付けませんというのを逆に説明ができないのではないかということを申し上げたかったということです。ですから,逆に言うと今日も反対意見というか,消極意見をいただいたから逆にお伺いしたいのですが,今回,この件でいろいろ文献を検討したりしましたけれども,先ほど○○幹事からは商法学者からはということもございましたが,商法学者のある先生の文献の中でこういうくだりがございました。「保険取引の歴史的本質は貨幣交換取引にあるが,今日の多様な保険業法の展開の下では,保険者の給付を金銭支払に限定する要のないことは異論をみないし,金銭でなく現物給付もしくは役務給付を約束するだけのことによって,保険規制を回避できるのは好ましくない。」こういう指摘がございまして,私はこのくだりを見て,もう全くそのとおりだと思ったところですけれども,これ自体は先ほども申し上げましたように業法規制の観点からの御指摘ですので,それについて法務省の立場でどうこう申し上げることではありませんが,これは全く契約ルールにも当てはまるというように思っておりまして,契約ルールも給付の内容がお金か物かでおよそ違いますというのはなかなか説明できないのではないかと。この「今日の」というのは何年前の文献か,それは10年以上前の話だろうと思います。今は10年以上もたっておりますし,先ほど○○委員から御指摘がありましたように,今回,将来も見据えて改正をしようというときに,給付の内容が現物のものについては嫌だ,それだけはあっちへ行っていてくださいという話ではないのではないかなということを申し上げたいということでございます。 ● ○○委員。 ● 今の御質問には答えなければいけないのだと思うのですけれども,これは保険契約でできないかといったら,できないことはないのだと思うのですけれども,結局はそういう生命保険という長期のものの中で,現物というときには安全率を見て予測の上にまた予測を重ねるという,そういう商品,形にどうしてもなるわけで,だからこそ,私が最初に申し上げたのは,キャッシュと選択できれば問題ないと思いますけれども,それもいけないということでありますと,これは要するにそういう理論的には可能だと,しかし,そういうものを入れるのが妥当かという妥当性の判断で,かつ,それが社会のそれぞれの現場でいろんな相談を受けておられる方とか,理論的な観点からいろいろ見ておられる方,それから事業者の方,そういう社会の各層から見てどうかという,そういう妥当性の判断だと思うのですね。ということで,先ほどの動議はまだ維持したままでお答えしたいと思います。   以上です。 ● 保険法の先生方,先ほどの現物給付というのは幾らでも可能なのではないかということだったのですが,いかがですか,理論的に。   ○○委員。 ● ひょっとして今の文献というのは,私が昔書いたものではないのですか。 ● 違います。 ● 違いますか。それならまた後で。 ● どうも損害保険で現物給付というのはいろいろあり得るだろうということは,従来,保険法でもいろいろ言ってきた。先ほどのもそういう一説ではないかと思うので,定額の現物給付があるという大胆なことを言った学者は,余りまだいないのではないかと思っていたのですが,いかがですかね。   ○○幹事。 ● 第三分野でも,やはり1年更新で短期で更新されるようなタイプの掛け捨ての保険であれば,ここで今議論しているような問題はないわけで,やはり長期契約であるというそこに問題があるわけで,我々が従来議論してきました保険法の特に民事効の部分で,長期契約であることに着目をして,その契約者保護のためのルールとしてどういうものを置いたか,そこの実質にまだ○○幹事のことにお答えになっていただいていないのではないかと思っているのですね。やはり長期契約であることに着目した契約者保護のルールは従来はやはり業法の守備範囲で,業法が監督をしてきた,商品認可をしてきたということだろうと思うのですが,もともとですから受け口の方は業法の守備世界にあるということを承知の上で,そこについて入口だけ開けたという,それがやはりちぐはぐで,そのままでは合理的な立法とは言えないのではないかということをここで議論されているのではないかと思うのですね。   ですから,民事効と直接言えるかどうか分かりませんけれども,例えば利害関係人の申請があれば裁判所で検査役を選任していただいて,現物給付の価値の相当性について検査役が裁判所に報告をしていただいて,その給付の水準について不適当であれば裁判所がその変更命令を出すと,そういうようなことも会社法から直接類推すれば,そういうルールだってあり得るのではないかという,これは単なる思い付きでありますが,とにかく受け口の民事効とかあるいは効果のところについて全く保険法では定めがない,入口だけ開けるということについてやはりそれはいびつな立法であるという意見ではないかと思っているのですが。 ● どうぞ。 ● まず,先ほど○○委員の御指摘に対して申し上げたとおり,今はそうすると開いていないという御理解なのでしょうか。今回,我々は開けることではなくて,もともと今も開いているものについてルールを及ぼすべきという発想をしております。 ● 契約自由で業者がそのままそういうことをやられていると思うのですが,一般消費者はそれを保険取引であると思っているのだろうか。お金を積み立てて例えば3年たったら,いつでも要介護状態になったらホームに入れますよみたいな契約が仮にあったとして,現在,それは全く保険会社とは関係がないといいますか,自由にむしろ介護サービス業者がそういうことをやられているときに,それを保険契約と見てお客さんは契約していないだろうと思いますし,そういうものについて破綻した場合に,どういう救済を与えるかということについて,保険法を使ってそれを救済してもらえるとも思っていないわけですね。   ところが保険法の適用になる契約で,定義でそこをかぶせることによって,保険法で救済してあげますよというキャッチフレーズはそれでいいのですけれども,実際,保険法が適用される契約だと思って入った人が実際にトラブルになったときに,保険法でどうやって助けてもらえるのか。ここで言うまさに長期契約で問題になるそういう特有の問題について,この保険法で具体的にどういう手当てがあるのか。ないのではないかというのが私の現在の印象でありまして,具体的にこのルールとこのルールは適用される可能性があるということについて,むしろお教えいただければと思っております。 ● 契約当事者の認識がどうだったかというところは,もちろん大事なところだと思いますけれども,当事者が保険と認識していなかったからどうこうということは本来問題にすべきことではなくて,契約法が適用されるかどうかは当該契約が保険契約に該当するかどうかで決まることでして,もし今の○○幹事のような認識を持ち出すとすると,現に銀行窓販などで売られている変額年金などは,お年寄りなどは貯金だと思って銀行で申し込んだら,変額年金だったからやめたいという消費者トラブルがたくさんあるというのも,私から紹介するのもおかしな話ですが,それは幾らでもある話で,では,それは保険法の適用がないかといったら,保険法が適用されるということになるわけですから,ちょっと極論ですけれども,やはり申込者の認識云々を持ち出すのは契約法の適用範囲を議論するときには,必ずしも適切ではないというように思います。 ● それはAという商品をBという商品と誤認させて売った場合の誤認の問題であって,誤認がないけれども,どのルールが適用されるかという問題はその誤認がある場合とはちょっと違う問題なので,そこは一緒にしないでいただきたい。 ● ○○委員。 ● 保険というものが前提となっているということで,それで,その上でこの規定があるということだったのですが,私は最初は保険ということが前提となっていなくて,こういうものがあると思っていたものですから,そこで混乱したのですけれども,もし保険というのが前提でないとしたら,この規定というのは二つに解釈できるのではないかと思います。   一つは本当に契約の時点で現物給付を約束するという保険契約。もう一つは約定した保険金額の範囲内で現物給付を約束するような保険。最初の方と後の方があるのですけれども,多分,私の感覚だと最初の方は保険ではないということで削られてしまうもの,つまり現物給付を約束するというのは,現物給付の将来の,つまり保険料計算が不可能,難しいという意味で,不可能という意味で,多分先ほどの葬儀組合の葬儀サービスを約束するみたなものは保険ではないという意味で,多分契約時点で将来に起こるあるサービスとかある権利とかある物を約束するという契約は,多分保険ではないと思うのです。   でも,次に言った約定した保険金額の範囲内で,あるいは全部又は一部で現物給付を約するとしたら,例えばその一部を介護の施設もその時点で利用できますよと,そういったものでしたら現物を約束し得ると思うので,もし,この規定が「一定の」ということで定額性を,そして「財産上の」ということで今の後段の意味を持つようならば,何か私としては解釈可能かなと考えております。   そういうふうに考えるのは駄目なのでしょうか。契約した時点と給付の時点,2点あって,給付形態の多様性というのは給付の時に選んでいただけると。それも約定した保険金額の範囲内で選んでいく。これは今やられていることだと思うのですよね,多分,実務的に何ら規制もないことだと思うのですけれども,一歩進んで契約の時点で現物給付まで約束しますというのが大きな違いなのですけれども,そのときでもやはり現物そのものをその時点で,将来にわたってある種のサービス財を給付するというのは,多分,○○幹事の言葉では保険ではないと私は思いますけれども,その辺はいかがでしょうか。 ● 私が答えるのもどうかと思いますが,そこが保険に当たるか当たらないかは,確かに解釈は分かれ得るのだろうと思います。例えば20年後,30年後を見据えたときに,契約時点である特定の金銭以外の給付を定めたときに,それは保険でないという,今の○○委員の解釈も十分あるだろうと思いますが,例えば給付の時点が今から2か月後だとしたときには,例えば契約時点で現物を定めても,それは十分保険と呼び得るということもあるだろうと思いますので,そこはまさに一律に何か決められるということではなくて,保険に当たるかどうかの問題だろうと思います。   それから,若干,○○委員に誤解を与えてしまったような部分がこの注記だったのかも知れませんけれども,そもそも生命保険契約の意義として掲げたこの4行も現行商法の規定を前提として書いたものですが,もともと現行商法の規定自体も,これによって生命保険契約の本質の要素をすべて言い表わしているかというと,どの保険法の教科書を見てもそうではなくて書かれざる要件があって,例えば1対1でAさんがBさんに,Bさんが亡くなったら相続人の方たちに100万お支払しますという約束をしたら生命保険契約に当たるかというと,それは当たらないのだと。文言上はこれに当たってしまうけれども,それは当たらないと恐らくほとんどの保険法の教科書には書いてあるところでして,ですから,それはあくまでバックに保険制度というのが想定されて,保険制度として行われる中でのこういう約束事が生命保険契約なのだという前提でしょうから,そこの中に「その他の一定の財産上の給付」と入れたことによって,何も変わりませんので,あくまで保険であることが前提で,あと,その保険の解釈自体は恐らく論者によって若干幅があるのだろうというようには思います。 ● 分かりました。 ● ○○委員。 ● 前にも意見を申し上げましたけれども,金銭と財産上の給付とは違うのは当然なのですが,その結果として契約者とか消費者がどちらを選択するかとか,どちらが有利かというのは,その消費者,契約者次第であるかと思います。分かりやすく申し上げますと,金銭は要らないと,年老いた夫婦2人でお互いの保険を掛け合って,残された1人がお金をもらってしまったら,保険金が入ったら,相続問題から場合によってはキャッシュ狙いで強盗が来て,命が危なくなるというふうに思えば,そう思った消費者はお金はもらいたくないのだと,安全に残された方が介護されることがよほど重要だと,こういう消費者がいたら,そういう消費者の選択の自由を最大限尊重するような法制になってほしいと,こういうのが私の意見であります。   現在,介護業者が似たようなことをやっている,別にこれが保険法でそこをしようとしまいと同じことをやっているということに対して,保険というスティグマを与えるのに非常にネガティブな発言をされている学者の先生が多いのですが,それがどうしてネガティブなのか,私は不思議で仕方ないのですよ。保険として正面からそういうものを見据えて,信頼できる保険会社さんが業務として,きちんとそのサービスも繰り込む方向でこの先の10年というのを考えて,消費者がどちらを信用するかとか,どちらを選ぶかという選択の幅を広げるというのが大事ではないかなと思いますので,投票させていただけるのなら,もちろん財産上の給付を正面から認めていただきたいということでございます。   以上です。 ● ほかにいかが……○○委員。 ● 基本的には○○委員が言われた内容と同じなのですけれども,実情をお話ししますと,介護保険制度が始まってから私の出身組織の毎年の総会といいますか,物事を決める場において,介護に関する一定の給付をするような仕組みを取り入れているのですけれども,現物の給付も早くやってくれというのが毎年出ているわけですね。なかなかそこまで実際にやるということになりますと,体制上も含めて大変なことなのですけれども,その芽を摘んでしまうということだけは避けていただきたいというように思います。芽を摘むといいますか,ふたをされてしまいますと,部会でふたをされたという答えを答弁席で言うしかありませんので,そういう事態だけは避けていただきたいというように思います。 ● ほかにこの点について御意見はございませんか。   今,現にあるではないかというのが事務当局の,私はそこはそんなにないという証明をしろと言われるとなかなか,理論的にもあり得ないという証明をしろと言われるとなかなか苦しいのですけれども,今まで保険の取引としてはそんなものはないだろうと世の中の人はみんな思っていたわけで,現にこれまでなかったわけではないと幾ら言われても,やはり新しいカテゴリーを認めていくということをこの部会としても,この原案どおりであるとすれば,やはり新しいものを公に認めるという意味合いが多分にあると思うので,そのときにいい面もいろいろ今の委員の御意見にも出てきたように,社会にメリットをもたらす面もあるのかもしれませんが,やはりいろんな副作用も伴うのではないかなというふうに思います。   そういう意味で契約法の保護を与えるのだから,とにかくこっちの方は道を開けばそれでいいので,あとは業法の方で何とかしないのが悪いと言われても私は困るので,やはり社会,国民一般の利益を考えれば,少なくとも契約法で何かこういう新しいカテゴリーの契約について絶対に何か私法の規定を設けないと,こういうものを認めないというのも少し固過ぎるかなと,特に新しいタイプの取引で。だから,少なくとも業法の面では何らかの弊害を防止できるような枠組みというのがセットでできないで,こちらの方で一方的に扉を開くというのもいかがかなと思っているのですが,そのあたりはいかがでしょうか。   ○○委員。 ● 私も○○委員と同じ考えを持っていまして,やはり前にも申し上げたことですけれども,保険契約法と業法というのはセットで,全体としての保険サービスについてのルールの機能を果たしていくべきだというふうに思っておりまして,むろん,理屈としてなるべく幅広い保険サービスについての保険契約法をつくりたいというのは,考え方としてはよく理解できるのですけれども,そうである以上はやはり先ほど○○幹事も御指摘になりましたように,セットとして業法の方の監督の体制もやはり整備されている必要があるのではないかというふうに思っておりまして,先ほどそれ以外の効果の面での規定を整備することでという御指摘,それも非常に貴重な御指摘ですけれども,多分,それだけでもちょっと不足であって,仮にこういう幅広い規制をするのであれば,やはり監督法と両方相まった制度整備がされる必要があるのではないかと思っております。   そういうことで申しますと,業法の方でこういう仮に幅広い定義をするのであれば,それについての規制ができるという見通しができたときに,こちらの方も規制をすべきであって,この先のところはこれ以上,ここで議論しても先ほどの深い溝があるだけでありまして,金融庁の方とお話しいただいて,金融庁の方でそれに見合った規制の整備ができるということであれば,幅広い定義,規定を設けるということも考えられると思いますけれども,その見通しがないまま,こちらの方だけで規定を設けるのは私はいかがかなというふうに思っております。 ● そういうふうなことで,今日の段階では少なくとも原案どおり取りまとめるというのは難しいと思っておりますので,なお事務当局にも関係方面と御検討をいただけませんでしょうか。   どうぞ。 ● 再三,同じようなことを申して申し訳ないですけれども,保険業法が直接適用になっていない共済も含めてということであれば,私は業法は確かに立派な法律だと思っておりますけれども,直接適用がなくて別に監督法もあるわけですから,幅広くやはり意見を聞いていただいて決めていただくということをやっていただかないと,私たちは関係ないのに何か引きずられているということになりますので,その点は申し上げて……。 ● たまたま保険業法だけ挙げておりますが,共済についてはもちろんそちらの枠組みも,規制の枠組み,監督の枠組みは異なるわけですから,そこはまた併せて御検討いただくというのは当然だろうと思います。   ○○委員。 ● 今日の時点でそういう集約をされるのであれば,先ほどの動議はお出ししたままで次回に持ち越していただいて構わないのですが,○○委員が先ほどおっしゃったことにはきちんとお答え,○○委員の内容はそれに答えているものだと思いますけれども,現物給付は共済としてできなくなるということではなくて,支払われる保険金相当額の支払指図というような形で,実際には長期にわたるものですから,余れば返す,足りなければ追徴するという形でやることはできるもので,ここでこういう定義をするからできなくなるとか,できるようになるということでは私はないと思うのですよ。また,そちらの方がより健全なやり方ではないかと思うのですね。ですから,そこだけはちょっと,そういうお気持ちになるのは分からないではないのですが,どうも違うのではないかということだけを申し上げたいと思います。   以上です。 ● 別にそこは反応するわけではないですけれども,一定の根拠がない中で,共済の監督官庁も監督法も違いますけれども,では,どこに根拠があるのということを私は学者でありませんので,○○委員のように立派にお答えすることができなくて,持っていっても門前払というのが普通だろうというように考えておりますので,そういう意味では非常に共済がやるといっても,ささやかな組合員の声を反映した現物給付の範囲ということでしか考えていないわけですから,なくてもできるのだというのが全体の御意見として,法律上も大丈夫だということであれば,そういう方法もあるのでしょうけれども,やはり一定の手掛かりがないとなかなか実際問題,行政の方に悪いですけれども,行政の方はなかなか動かないというのが実情でないかというように私は思っています, ● ○○委員の御要望は十分事務当局も理解していると思いますので。   では,先ほどのような今日の時点では取りまとめということでよろしゅうございましょうか。   それでは,未成年の問題が残っていますけれども,大分また白熱しそうですので,ここで休憩したいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開させていただいてよろしいでしょうか。   それでは,第2の1のほかの部分につきまして御意見をいただければと。   ○○委員,どうぞ。 ● 未成年につきまして,二つ申し上げたいと思うのですが,一つは○○委員の御質問に対する答えなのですが,○○委員がペーパーを出されたときに回答したつもりでおったのですが,もう一回御説明申し上げます。   国民生命表というのはその年の生死というか,死亡の統計をとったものということですね。それから,保険会社が使っている経験生命表というのは大体5年間ぐらいの死亡統計を基に,全社のものを基につくるものなのですが,これは生の数字ではなくて,保険料計算に使うために補正とかいろいろするのですね。未成年のところが国民生命表に比べて割り増しになっていると。これは補正をしているということを確認しております。未成年だけではなくて,ほかのところにも補正した関係で上がっているところがあるのですね。何か未成年のところだけ上がっているみたいにちょっと誤解されると困るのですが,それが実態です。それからもう一つ,犯罪が,統計に影響を及ぼすほど故殺が多いわけではありませんから,そういう推測は成り立たないのだろうなと思っております。これが第1点です。   それから,第2点の金額の制限ですけれども,これは個社としては,金融審議会とか,この審議会の検討状況を踏まえまして引き下げを検討しております。それから業界としましても独禁法の関係がありますけれども,金額について何かガイドライン的なものができないかということ,それから契約内容登録制度の見直しも含めて真摯に対応すべく検討を開始しております。   以上です。 ● ○○委員,先に。 ● 今の生保さんの後半部分に関連してなのですけれども,また,被保険者同意のところでも改めて御説明させていただく所存ですけれども,未成年を被保険者とする傷害・疾病保険について,業界としてモラルリスク防止のための自主的な取組みを行うということで,12月20日に損保協会会員全社で申合せを行ったことを御報告します。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 御回答いただきましてありがとうございました。   この図表があるからそうだということを私は言うつもりではなくて,こういう図表がある以上は,そういう疑念は払拭していただきたいということなのですが,確かに補正はしておられるわけですけれども,補正をしても例えば男性の場合,11歳ですと自然生命表よりも低い保険料になっていたり,これはやはり何らかの実績数字を反映したものではないなと。この表を出したときに申し上げましたけれども,男の子の場合,4歳から7歳と13から16ぐらい,非常に高いわけですけれども,女性の場合はこれよりもっとグラフは特に小さい10歳未満ですとまた上の方へ行きまして,すべての期間において男の子より上なのですね。だからということではないのですが,今日ここではすぐには無理だと思いますが,ただ,これもしかも私の,東大出版会から出しています日本の生命保険ですか,これに載っている数字で古いもので,現在,例えばこれが問題なくなっていれば,それはそれでいいわけですが,現代でも同じかどうかということとか,そのあたりももう少しやっていただけると助かるなというふうに思います。   以上です。ありがとうございました。 ● ○○幹事。 ● 業界での取組みに関して一言申し上げたいと思います。取組みを考えられているということは大変結構なことだと思うのですけれども,従来,あるいは今,○○委員も独禁法の問題があるのでということをおっしゃいましたけれども,独禁法の条文を見てみますと,私的独占についても,不当な取引制限についても,公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することという,これが私的独占又は不当な取引制限の要件ですので,モラルハザードを防止するために業界で情報交換して基準をつくられるというのは,公共の利益に反するどころか,むしろ公共の利益に合致することだと思いますので,ですから,この独禁法に違反するのではないかという懸念は余り持たれる必要はないのではないかというふうに思います。その点,申し上げたいと思います。 ● ○○委員。 ● その点,私どもはそういうことで公正取引委員会出身の弁護士さんに確認しましたけれども,やはりそうであっても抵触するというおそれは十分あると,そういう回答であったものですから,要するに協会としては例えば500万以下にするとか,そういった金額の明示というのはなかなか難しいでしょうと,そういうふうに我々は考えております。ただ,大勢として少なくとも今以上に下げていくということは,いけるのではないかと思っております。 ● ○○委員。 ● そういう意味で,今,○○委員から個社での検討という話もありましたけれども,それは○○委員のところの会社だけではなくて,弊社もそうですし,各社ともそういうことでやっておると。ただ,一律のガイドラインみたいなものはと,そういう趣旨でございますので,是非御理解いただければと思います。 ● 金融庁のワーキンググループでは,この問題について監督法上どう対応するかというのを検討して,その中に今の業界レベルのものあるいは個社レベルのもの,あるいは監督法上の法令とまでいかないけれども,監督指針レベルのものとか,いろいろ考えうる方策というのが提示されて,年明けになってあちらの方もワーキンググループとして意見を取りまとめるものとは思いますが,そこで何らかの対応はされると思いますが,個社ベースのものとか,そういうものになると,1月の初めの段階でこうですというのはなかなか決め難いので,そういうのはきちんとしたものになるかどうか,信用できないとか言われるとそれはそれで困るのですが,いずれそういう具体的に自主的にとっていただく措置や何かについても,金融庁のいろんな審議会等の場で必要に応じて御報告いただくなり,開示していただくなりというふうなことで,一応監督上あるいは自主規制的なものの上でも,それなりの御考慮はいただけるのではないかなと思います。   そういう意味で,従来から議論しておりましたような契約法的に例えば金額制限を設けるというのは非常に難しいというのは,それはそれで,この点については私も法務省の事務当局と同じことではないかなと意見を共有しているのですね。今日の提案では2頁の下の方の後注というところで出ていますが,契約法ではこういうことで規定は設けないということにしてはいかがかと思いますが,いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 基本的にその方向で結構かと思うのですが,実質的にも金融庁の方でそういう議論をしていただけているということで,今後,そういう深刻な事態が起きない方向で実質的に調整をしていただくということであれば,ここで契約法の方でそんなリジッドな規制を設けないでもいいかなと思いますが,もしそれで相当問題が出るということであれば,別途,また強力な手段をとっていただくということを確認させていただけるようであれば私は結構でございます。 ● ○○委員。 ● 基本的には金融庁のワーキンググループの方に信頼してお任せするという,そういう御趣旨だと思いますから,そういう御集約をされるのであれば結構ですが,先ほど申し上げたように,やはりちょっと実態をきちっと分析するということもなかなか難しいのかもしれませんが,確か非常に情報をたくさん開示されていて,それでいろんな研究者がそれについて分析して,またアクチュアリーの世界ではそこら辺についていろんなことを言われていたところもあると私は思うのですけれども,そういうものをもう少し表に出して,どの辺に本当の問題があるのかというのをもう少し,単に規範論,私は倫理的なものとか,そういうところからも相当議論はできると思うのですけれども,やはりそういう点もできればお願いですけれども,そこまではなかなかというのはあるかもしれませんが,どうもそこも人の子どもの命に,個別には名前のある子どもそれぞれのところに影響が及ぶわけですので,そういうお願いを○○委員にして,それで結構ですと申し上げたいと思います。 ● そういう意見を伺ったということを確認しておきます。   ○○幹事。 ● 保険契約法の方はこれで私もよろしいかと思うのですが,今,民間の保険会社さんの方は基本的に大体方向感は分かってきたのですけれども,金融庁は保険業法を所管しておられるだけですので,当然,保険業法の適用対象外の,そういう具体的に言いますと共済というのがあるわけなのですが,こちらの方の動きというのはどういうふうになるのでしょうか。やはり保険業法の方というか,民間の保険業者さんの方が一般的なガイドラインとまではいかなくても,そういう方向になっていくということで,並び他の監督官庁の方も同じような指導をされるというような考え方でよろしいのでしょうか。 ● 今日の御審議で,○○幹事からもそういう御指摘をいただきましたので,そういうことも踏まえての取りまとめがされたということであれば,意思決定の能力はこちらにはありません,当事者適格はありませんけれども,事務当局としてその意向を省庁間で伝えるという形で対処させていただきたいというように思います。 ● どうぞ。 ● 具体的にはかつての事件のときにも例として挙がっていますけれども,共済でもJAさんであれば農水省でありますとか,あるいは生協さんであれば厚生労働省とかを通じて,情報が必ずしも共有されていない可能性がありますので,こことそれから金融庁ではみんな何となく同じような方向感で議論がなされていますので,できれば省庁間で足並みがそろうようによろしくお願いしたいというように思います。 ● この部会で契約法の上では規定は設けないということにしたけれども,それは何にも規律が必要でない,規制が必要でないということではなくて,むしろ逆でやはり監督法上の規律あるいは自主的な規律というものでしっかりしていただくということを条件に,この部会としては規律を設けないということにしたのであって,そのことは是非関係の方面にもお伝えいただければなと思っています。   ○○委員。 ● 私どもも当然監督官庁がどのように考えられるかというのは分かりませんけれども,恐らく金融庁さんの方で検討されている中身というのは,基本的にベースになるだろうというように当然思っております。やはりモラルリスクを誘発する仕組みというのは,やはり改善をしていくということは当然のことだろうというように考えておりますので,当然,私どもも監督官庁とお話しするときには,その旨お話をした上で,決定権はありませんけれども,その旨,部会としての審議状況についてもお話をしながら,そごが生じないように私どもも考えていきたいというふうに思っておりますので,御心配をお掛けすることはないというように思っております。 ● 是非よろしくお願いします。   それでは,この点は以上のような取りまとめでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。   1のほかの部分はいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。   それでは,続きまして4頁から始まる2,生命保険契約の変動の部分について御意見をいただければと思います。これは8頁の真ん中辺まで続いております。   ○○委員。 ● ほかに御意見がなければ申し述べさせていただきますが,まず,最初の保険金請求権の譲渡のところですけれども,中間試案の21頁の(1)の②のところの規定を外しているわけですけれども,従来は保険金受取人は変わらずに保険契約者だけが変更される場合には同意が必要だという形で議論がされて,少なくとも人格的な不利益が生ずることが確かなわけです。それで,補足説明の77頁には保険金受取人は変わらず保険契約者だけが変更される場合にも,被保険者の同意を効力要件とすべきとの意見が多かったと,こうなっていたわけですね。   ですから,つまるところ,保険金受取人は変わらずに契約者だけ変更される場合で,被保険者の同意が不要だといって問題がないというのは,どういう場合を念頭に置かれて考えておられるのか。もし法人,個人ということを先ほどちょっと言われましたが,それだったら規定を置いて片面的強行法規にすればいいのかなという感じもいたしますし,ちょっと従来とがらっと方向が変わった形になったわけですので,つまり,従来は効力要件というような大勢だったのが削除ということになってしまったので,同意が不要だといって問題ありませんという場合がどういう場合なのか,何か具体例を一つ言っていただけると助かるなと思うのがまず1点です。   次に,2番目の保険金受取人の変更のところの生前の意思表示による変更ですけれども,これは任意規定というふうに書いてありますが,(注2)に,もしそうすると最高裁の判例はそれでも否定する趣旨なのか,強行法規なら分かるのですが,ちょっと私が混乱しているのかもしれませんが,最高裁の判例との関係はどういう,変更したのかと簡単に言えるのかというのがよく分からない。 ● どの部分ですかね。 ● 5頁のイのところ,①のところですけれども,(注2)のところで任意規定と書いてありまして,任意規定でこういうルール,保険者に対する意思表示だと大分議論をしたところですけれども,その場合,従来の最高裁の判例を否定するというような,変えるという議論でやってきたのですけれども,任意規定ということになると,ちょっと頭を整理してもよく分からなかったのですが。次に一番重要な問題は②を任意規定としますと,約款で発信主義を到達主義に変えられるのかと,こういう問題が一番大きいのだと思います。   私の考え方は,少なくとも変更できる,できないというのは,いろんな事情があるから,契約で決めるというのは分かりますが,保険金受取人の変更ができると認めた場合には,5頁のイの②の最初の「①の意思表示は」ではなくて,①の意思表示ができると認めた場合には,②のルールでいかなければいけないと,こういうふうにその制度を使うかどうかは別として,使う以上はその枠でやりなさいという,そういう片面的強行法規にする必要があるのではないかというふうに,思います。   それから,あと保険金受取人の変更のところの議論で,契約者が死んだら,その相続人は受取人の変更ができないという契約類型というのを認めていただけませんかということを申し上げたのですが,この類型だと一応そういうのもできると,契約自由の原則の中で保険契約者がそういうふうにあらかじめ契約時に定めれば,保険契約者が死んでしまったら,その相続人が一致団結して保険金受取人の変更はできないという契約類型もつくり出せるという前提に立っておられるのかどうかというところを,ちょっと教えていただきたいと思います。   それから,ちょっと次の頁へ行きますが,エの保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合の(注1)の中に3行目ですか,「民法の規律によるとすることが保険契約者の意思に反するとまでは言い難いこと」という文章がありまして,今までの議論は任意規定であっても,保険金受取人が保険金を取得する割合を相続分を反映したものにするのかどうかということを多分議論してきたのだと思うのですが,この6頁の御提案だと等分で,保険金受取人の頭数で等分した金額を取得するという任意規定にするという,そういうことなのですが,これは要するに技術的にできないからということなのか,反対するならやはり代案をお先に出しなさいという趣旨なのか,ただ,私の理解が間違っていなければ,ドイツ保険契約法の新しい第160条ではどうも相続分を反映するというような規定になっていて,もう少し,そういう方向で何とかしていただけないものかなというのが意見ですけれども。   それから,最後に介入権の問題がありまして,これがこの辺では一番重要だと思いますが,確かこれは18回議事録の52頁以下でいろいろ議論があって,57頁で○○幹事が発言されておりまして,7頁のところでいきますと①のところですかね,「保険者がその通知を受けた時から1か月が経過した日」というところですが,保険者がその通知を受けたことを保険契約者が知った時から1か月を経過した日と,こういうふうにすべきではないかと確か提案しておられて,要するに,それは保険契約者が知らないうちに介入権を行使できる1か月の期間が経過してしまわないようにする必要があるからだと。   もう一回繰り返しますと,①のところでは保険者がその通知を受けたことを保険契約者が知った時から1か月を経過した日と,そういう規定を置くと,事実上,保険会社の方では質権取立てとか債権者代位権のような場合に,保険契約者に知らせなければいけなくなると。確か,そのとき生保の方からも,そういうことを考えますという肯定的なお返事があったように私は記憶しているのですが,そうすると,やはり①の規定のままですと,知らない間に保険会社の方には通知が行って,1か月がスタートして,知らない間に介入権を行使できなくなるということになってしまいますので,やはり○○幹事がおっしゃったように,契約者が知った時から1か月というふうにしないといけないのではないかと思います。   以上です。 ● 4頁の保険金請求権の譲渡の(注1)の記載に関して,まず御質問をいただきましたけれども,冒頭の事務当局説明でも申し上げましたとおり,例えば団体生命保険の保険契約者に事業譲渡などが生じたような場合を考えますと,本当に例えば何十人,何百人いる被保険者である従業員全員の同意をとり直さないことには,保険契約は移転しないのかと,こういう問いかけをされたときに,確かにそういう考えもあるのでしょうけれども,法律で書いてしまいますと,ここはまさに強行規定ですので,そうでない限り無効ということになるわけですが,そこまで書いてしまって,どんな場合でも例外なしということで本当に世の中が回るのだろうかという,こういう懸念にぶち当たりまして,そこはやはり解釈にゆだねて多少アローアンスもあり得べしという形にむしろしておかないと,世の中が回らなくなるのではないかという懸念から(注1)に書きましたとおり,明文では書かないということでして,被保険者の同意がなくてもいい場合があると,正面から申し上げているわけではなくて,ちょっとそこは解釈にゆだねるのが適当ではないかという判断から,新たな提案をさせていただいているというところでございます。   それから,5頁の生前の意思表示による保険金受取人の変更のイの(注2)についていただいた御指摘は御指摘のとおりでして,若干この2の変動のところの強行規定,任意規定の記載がぶれているところがございまして,こちらもなお整理し切れていないところが正直ございます。今御指摘いただきました5頁のイの(注2)のところは,確かにおっしゃるとおり,①,②とも変更の効力発生要件あるいは到達前に行われた保険金の支払の効力といったものを定めているものですので,①,②とも強行規定という整理をすべきところではないかなというように思います。   それから,同じような意味で御指摘はいただいていないところですけれども,例えば6頁の上から2行目の(注2)に,遺言による保険金受取人の変更のところについても,「①及び②は任期規定」と書いてございますが,ここの②も対抗要件についての定めでして,対抗要件の定めが任意規定というのもまたちょっとどうかなと思いますので,ここも強行規定という整理をすべきところかなと考えているところでございまして,そういう意味ではぶれていて申し訳ないのですが,いくつか記載を修正させていただかなければいけないかなと考えているところでございます。   同じく8頁の上の方の(注3)でございますが,これも介入権の問題につきまして片面的強行規定という整理としているところでございますけれども,ここも片面的といえば片面的なのかもしれませんが,そもそも法律が強制的に契約当事者以外の者がする解除の効力の発生時期をずらすわけですから,こういう効力発生時点を定めるものについて,当事者の合意で動く,動かせるという整理をするのは不適当で,8頁の(注3)もむしろ強行規定という整理をすべきところかなというように考えているところでございまして,そういう意味では整理が不十分で申し訳ない,そこはおわびを申し上げたいと思います。   それから,もう1点,契約者死亡後には受取人の変更不可とするような特約が許容されるかというお話でしたけれども,その点は4頁から5頁にかけてのアの①で原則変更自由だけれども,その(注3)にありますとおり,①自体任意規定ですので,そもそも変更をおよそ不可とすることも許容されますし,それを更に限定的に契約者の死後は変更不可とするなど,そこはさまざまなバリエーションが許容されるということで考えてございます。   それから,6頁のエの受取人先死亡の場合のルールについてですけれども,この点についてはおっしゃるとおり,部会では特に学者の委員の方々から相続分に準拠するという方に,多数の賛成意見が寄せられたというのは十分認識してございますし,こちらもそういう方向でるる規定案を考えてきたところでございまして,6頁の(注1)でも引用してございます部会資料11などでは,そういう御提案をさせていただいたところなのですけれども,ここもいざ条文化となったときに本当に読んだ人が分かるようなルールがきちっと書けるのかというところで,なかなか難しい問題がございまして,相続分によると書ければ簡単なのですけれども,相続分によるといって,そのときもるる相続関係図みたいなのをお示しして,この人が亡くなって相続人がいたらいなかったらということを御検討いただきましたけれども,ここはなかなか書き切るのが難しいというところがございまして,(注3)にありますとおり,ここはまさに任意規定ですので,約款でそれぞれ契約類型に応じて,この契約は相続分によるということを全く否定するものではないのですが,デフォルトルールとしてはシンプルに均等ということでいかがだろうかというのが今回の提案ということでございます。   それから,7頁の(5)のいわゆる介入権の①のルールで,起算点について通知を受けた時からではなくて,契約者が知った時という御指摘は従前の御審議でもいただいていたところでございまして,そこは内部的に検討いたしましたけれども,やはりこの場合,考えるべきは介入権を行使する契約者サイドの利益だけではなくて,待たされる側の利益というのも当然あるわけで,何回目かの部会資料で,考慮すべき要素というのを列挙してお示ししたかと思いますが,待たされる側のことも考えなければいけない場面ですので,介入権を行使する側の利益だけを考えれば,確かに行使の実効性ということで知った時というのが一つの基準として考えられるところですけれども,他方で待たされる解除権者の利益ということも考慮しなければならないという点と,その時点の明確性という観点,その2点を考慮しますと,契約者が知った時というよりはやはりここに御提案させていただいておりますとおり,保険者がまさに解除の通知を受けた時という明確な基準で律するのが適当であろうという判断のもとに,従前どおりの提案をさせていただいているというところでございます。   一応以上です。 ● 以上ですが,ほかにございますか。   ○○幹事。 ● 最後の点の7頁のいわゆる介入権の①のいつから解除の効力が生ずるかということで,確かに債権者の側からすると,保険契約者が知るまで何か月たっても,それこそ解除の効力が生じないというのは確かに問題ありですから,この解除の効力が生ずる日というのは確かに保険者がその通知を受けた日から1か月が経過した日というこちらの基準ではいいと思うのですが,ただ,(注1)の二つ目の段落に書いてあることですかね,7頁の下から2行目のところで,保険契約者の破産の場合や解約返戻金請求権の差押えの場合は,保険契約者がいつ差押え等があったかというのは知ることができるのだけれども,質権者が解除権を行使してきた場合とか,それから債権者代位権が行使されてきた場合は,それだけでは当然に保険契約者が知ることができないわけで,確かにいつからそういう権利が行使されるかというのは認識可能かもしれませんけれども,実際に解除権が行使されたかどうかというのは全然分からないこともあり得るわけで,だから,差押えの場合と債権者代位権の場合とで,ここまでの差を設けることが合理的に説明できるのかというのは私はかなり疑問に思っていまして,先ほどの○○委員から御紹介があったように,前回,○○幹事がこれの点について保険者から保険契約者に通知させるという,そういう義務を負わせるべきではないかという御発言をされたと思うのですが,当初は実務界は保険者から受取人に通知させるのは受取人がどこにいるのか分からないのに,そんな義務を負わされるのは大変だというお話があったと思うのですが,別に保険者から保険契約者に通知させるということはそれほど困難な問題ではないということで,その程度の義務を課すということは,それほど負担にならないのではないかということを私も申し上げたと思うのですけれども,業界側もそれほどそれに対しては強い抵抗を示されなかったと思うのですが,にもかかわらず,こういう形で案が出てきたというのはどういう事情でこうなったのかなというのをちょっとお教えいただければありがたいのですが。 ● 前回,このテーマを取り上げたときの審議の雰囲気の認識違いがあるのかもしれませんが,確かに強い反対というか,オブジェクションはなかったように思いますけれども,法律で一律に義務付けられることについて,それでも全く構わないということだったかというと,そういうことではなかったのかなというように認識しておりまして,事実ベースとしてはできる範囲で是非やっていただきたいと思いますし,相当程度できるのではないかと思いますが,法律で一律に義務付けられることについてはという点については,ちょっと認識が違っておりまして,そこまで重たい義務を保険者サイドにまた課すというのも,重たくないと言われれば重たくないかもしれませんが,こちらとしてはそこは一律の義務を課すことまではちゅうちょをしたというところでございまして,そこは,一律の義務でもということなのであればあれなのですが,逆に改めてお尋ねさせていただきたいと思いますけれども。 ● やはり本来,解約されても仕方がない契約を特別に生かそうという相当強い権利を受取人に認めるので,そこは余りがちがちの要件を,がちがちではないと言われるかもしれませんが,余りそこを厳しく規制するような要件というのはどうかなという感じはしているのですが,どうぞ,○○幹事。 ● このルールの期間が開始することにつき利益のある者にその義務を課すというのも一つの考え方ではあろうかなと思いまして,債権者がこの取立てをしようとするときには保険者に対する解除の通知表示と,それから契約者に対する通知をしたいずれか遅い時から1か月,そういうルールも一つの考え方としてあり得るのかなと思うのですけれども。 ● どうぞ。 ● 前回の議論,18回の議事録の56頁ですけれども,そういう通知はできるのではないかというところで,とにかく保険会社としては債権者代位権の行使の解除の申入れを受けましたということを単にその都度,淡々と契約者に通知することはできませんかということで,実務家の生保の方々は,それは今そういう制度でなければやればできると思いますと,こうおっしゃっていて,だから,私は○○幹事と同じ思いなのですが,万が一,この規定のままでいくとしても,何かそういう制度はきちんと,そういう通知を何かしていただくということはできないかというのと,この説明はやはり○○委員がおっしゃったように,解除する側も我慢するけれども,される側も少し我慢せよということで,何か介入権を行使する側に問題はないのだというか,配慮しているかのようにも読める,さっと書いておられますので,そこは何か痛み分けみたいな書き方をされた方がいいのかなと思っているのですけれども。   以上です。 ● ○○委員。 ● そういう意味で,実務として通知できるように努力するというのはまさしくおっしゃるとおりで,努力しないというつもりはないのですけれども,法律で義務化されるというところまでと言われると,ちょっとそこまでということになるのかどうかというのは,個人的にちょっとしんどいなと思っているのですけれども,全く努力しないということではないですけれども,そういう感じだと思います。 ● 契約者と受取人というのは何らかの関係があるのでしょうから,自分の契約について債権者代位権を行使して解約するぞというのは,だったら……。 ● 恐らく質権の行使にしても債権者代位権にしても,理屈の上では知らないうちにいきなりということは,○○幹事御指摘のものは当然あると思います。しかし,通常は催告を受けて払ってくれなければという多分やり取りになると思うのですね。その意味では,今,○○委員がおっしゃったように,契約者は通常,そういうだんだんせっぱ詰まった事態が,場合によっては差押えを受けるかもしれないという事態が迫っていることを,知り得るのではないかという思いもございまして,例えば○○幹事がおっしゃるように解除権者の方に通知の義務を課すというのも一つの採り得るアイデアだと思いますけれども,解除権者の方は待たされるだけでも勘弁してもらいたいのに,そんな制度を仕込まれるのは反対だということも十分あり得るわけで,保険会社の側もそもそも当初はこのような仕組みの導入自体に非常に慎重な検討を求めるというのが業界の立場だったと思いますが,負担にならない範囲で協力を求められればということで,積極的な反対まではしていないというような恐らく状況だろうと思いますので,ここでまた一律の義務を課された場合に引き続き賛成というか,消極的賛成でいられるのかというところも定かではありません。通知義務を課してもいいですけれども,通知しなかったときにどうなるのか,そういうことを言うとまた嫌がられるところですが,通知しなかったらどうなるのかなと,こう思いをはせたときに,通知をしなかったからといって,あなたが通知してくれなかったから介入権を行使できなくて解除されてしまい,効力が発生してしまったと,ついては責任をとれということも,またそれは非常に重たい負担を保険者に課すということになりまして,それもなかなかということもあり,そうやってやはりいろいろ複数の利益を考慮すべき制度設計が求められる場面ですので,いろんな意味で重たい要件を課すのは適当ではないのかなという感じがしております。 ● ということで,いろいろ御意見はあろうかと思いますが,まずはこういう制度を生み出す方が意義があるのかなと思う次第でございまして,どうか御了承いただけないかなと思います。よろしいでしょうか,この点。   では,ほかの点はいかがでしょうか。   ○○委員。 ● 6頁のエの保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合でございます。今日の事務当局の提案については当初の私の意見とは異なりますが,この(注1)に書いてあるところに対して十分に反論する用意はないなというふうに思います。その上での質問になるのですけれども,あとはお願いみたいなことになるかもしれませんが,まず,一つ質問は保険金受取人の地位というのをこのエのように任意規定として規定した場合には,現行法どおりということなのかもしれませんが,民法第896条が相続についての基本的な規定を置いているのですが,受取人の地位というのは,この「被相続人の財産に属した一切の権利義務」の中の権利には入らないというのがどちらで決まっているのかよく分からないのですが,保険法の方で決まっているのだということが前提にあると理解してよろしいのでしょうか。   それはもう書くまでもなく現行法どおりだからそれを前提とすると,○○委員がうなずいてくださっているので,そうだということで進めます。そうすると,次のようなことは任意規定であるので,保険契約の中で決めることができるかなのですが,相続財産にするという決め方はできるのでしょうか,それとも,それはできないのでしょうか。   私は(注1)のところについて,ちょっともう反論する用意がないというふうに申し上げましたが,やはり保険契約者の意思の多くの場合は相続なのではないかなというふうに思います。ですので,それを法律で書くのが難しいということであると,恐らく契約の中に書くのも難しいのだろうと思うのですね。それをどういうふうにして実現するかということで,これは相続財産にするのだと。したがって,実際に保険金受取人がどういう順番で亡くなるかというのが分かってみないと決まらないけれども,相続のルールでほかの財産と同じように動いていくのだということを決められるならば,それで随分私が推測する保険契約者の意思を実現することができるように思うのですが,何を相続財産にするかというのは契約で決められるかどうかというところが,それは保険法の問題ではなくて民法の問題なのかもしれないのですが,よく分からないのですが,どういうふうにお考えになっているのかということが質問です。 ● すべての場面において,この4頁の一番下に書いてありますアの①のデフォルトルールが働くというのが一応出発点でございますので,例えば,保険金受取人の変更を随時やることもできるでしょうし,あるいはAさんを指定して,Aさんが亡くなったときには次順位でBさんという定め方も恐らくできるのではないかというように考えておりまして,共済の約款などではもともと順位を付けて受取人指定をしている約款も現に存在するだろうと思いますので,それを否定する趣旨ではなく,これは任意規定で,まさにそういうのもすべて許容するということですから,今の○○委員の御指摘ですと,デフォルトルールとしては6頁のエの本文の2行の規定が置かれていたとしましても,デフォルトルールで任意規定ですから,これを外す形でAさんが亡くなったとしてもこの規定が適用されるのではなくて,その場合でも引き続き保険金受取人は変わらないと,Aさんのままだとすれば,それは恐らく相続財産ということになって,相続ルールに乗っかるということでしょうから,そういう定めも民法の理論に反しないのであれば,そういうことも含めて許容されるという考え方でおりました。 ● 受取人が被保険者より先に死亡した場合に,受取人の権利が死んだ受取人の相続人に相続されるという,そうやって移転していくという,そういう定め。 ● そういう約款があったときに,その約款が否定されるかという,要するに6頁のエの本文の2行は任意規定と考えていますので,これを合意で外すのも自由ですから,外した場合にはデフォルトルールで亡くなったときに自動的にその相続人が新受取人になるというのはないわけですから,言ってみればAさんが亡くなってもAさんが受取人のままの状態になるわけですね。それで新たに変更することもできますけれども,変更しないまま保険事故が発生すれば,受取人がAさんの状態で保険事故は起きたがAさんはいないわけですから,あとは民法のルールでというように考えています。 ● 亡Aさんは死んでいるわけですから,権利能力のある主体ではないわけですから,やはりそれは死んだ時点で相続人に相続されていると言わなくてはいけないのではないですか。 ● 今のお答えの実際の結論は私にとって共感できるものなのですが,ただ,そういうことが成り立つかどうかは,ちょっと私は難しいかなと思っていたのですけれども,それが最初にちょっと○○委員のうなずいたところで分かりましたと申し上げたところなのですが,保険金受取人の地位というのが相続財産に入らないというのがまず前提にあって,そのルールを変えることは何に基づいてできるのかということで,今の○○幹事のお話は契約でできるということを意味したのだと思うのですが,しかし,4頁の(2)のアの①のこれとの関係では,今のことの問題は出てこないのではないかなというふうに思います。 ● そういう意味では民法の今御指摘の第896条とこの6頁のエの本文の2行のルールとの関係を十分考えていなかったというのが正直なところですが,そこは十分整理しなければいけないところでして,仮に民法第896条は排除して,この保険法のルールによって受取人が亡くなった場合にはその相続人が新受取人になるとなっているとすれば,このルール自体が任意規定なわけですから,このルールを約款で外せば結局民法第896条が復活することになって,亡くなった時点で受取人たる地位が相続財産として受取人の相続人に帰属するということは,民法の理屈でどうなるのかですけれども。 ● ○○委員。 ● 先生もおっしゃるとおり,私は自信はありません。でも,ちょっと大分根本問題にかかわる問題で,○○委員の直感はちょっと今はぱっとうまくは答えられませんが,でも,固有権性とかいろんな問題に関連して,ある意味では業界にもすごく根こそぎみたいな理屈にもなりかねないので,ちょっとよく考えられた方がいいと思うのですよ,これは。根本が崩れ,今までどこまで強行法規で,それをどう理論的にということは微妙ですが,もっときちっと……。 ● 条件付きの保険金請求権を指定によって与えられ,その者が死んだ場合に,一応商法は従来,そこで地位は切れるだろうと。 ● 商法第676条に基づいて。 ● ですね。だけれども,それは強行規定とまでいっていたのか,相続性を一切認める余地はないとまでは言っていなかったのではないかと思うのですが。   どうぞ。 ● 先ほど○○委員の御指摘になった実質を実現するためには,最初に保険契約者が指定した受取人が,受取人というのは変ですけれども,受取人だと。その人が亡くなった場合には,その受取人の相続人が受取人であるという予備的な指定がされていたと,そういったふうに見れば,相続財産として移転したという形でなく,受取人の変更の一般論との整合性もとれたような解釈ができるのかなと。   先生のおっしゃったのは相続財産としてということですと,被相続人の債権者からの追求を受ける形で保険金を取得することになりますが,そこはやはり先ほど○○委員が御指摘になった固有権性との関係からいたしますと,やはり被相続人の債権者からの追及は切断するというのが保険金の本来の性質上,ふさわしいのかなと思われますので,そうだとすると,相続というよりかはむしろ保険金受取人の変更の一般法理に整合的な形で説明をするとすれば,受取人の相続人が新たな受取人として当初から指定されていた,あるいは当初の指定の中にそういう意思が込められていたという解釈をする余地というのも,ないわけではないのかなと思うのですけれども。 ● 今,○○関係官がおっしゃっているのは6頁のエの規律のとおりということですよね。そうすると第427条の適用があるわけですよね。そこで分割の割合は相続分のとおりというふうに保険契約で定めておけば。 ● 申し上げましたのは,例えば被保険者の相続人を抽象的な形で被保険者の相続人を受取人に指定するとしましたら,被保険者の相続人を受取人に指定するという意思表示の中に,相続分で受け取らせますよという意思が込められていると。だから,ある意味,民法第427条の別段の意思表示がされたというのが最高裁判例だと思われますけれども,それと同じ理屈を受取人の相続人が受取人だという指定がされたという場面に置きかえると,相続分で指定されたという意思解釈はあり得るのかなと。   ただ,エの規律というのはまさに法律でもって受取人がだれかというのを定めておりますので,そういうなりますと,民法第427条で言うところの別段の意思表示がされたとは見ることはできないのかなと思われますので,エというのはあくまでも法律で受取人がだれかを定めているので,第427条の原則によってしまうと。意思解釈として受取人の相続人が受取人であるという意思解釈ができるケースがもしあるとすれば,その意思の中に民法第427条の別段の意思表示がされていて,相続分でということもあり得るのかなと。ただ,そこはまさに意思解釈の問題になってきてしまいますので,なかなか断定的なことは申し上げにくいと思いますけれども。 ● 分かりました。そうすると,○○関係官は保険金受取人の地位は相続しないというルールは,強行的なルールであるということを含意されて。 ● そこは民法の方の議論になってまいりますのでどうかなと思いますが……。 ● 僕がそこは答えないと。分かりました。 ● 今の○○委員の御指摘は多分,このエの規律が任意規定であるということなので,このエの規律を丸々契約で排除してしまうと,もともとの民商法のデフォルトルールで民法第896条によって,相続財産としてもとの受取人に帰属するということになるのだろうと思いますが,現行法では第676条でしたかね,これがあるので,恐らくは民法第896条の特則としての面を商法が持っているので,新たな受取人の相続人の固有財産として保険金を受け取らせるというのが現行法の立場で,そこについてはこのエの提案も変わらないということだろうと思うのですが,先ほどの○○関係官がおっしゃった補充的な指定として,受取人の相続人を二次的な受取人としますということをわざわざ言っておけば,そこに意思解釈で読み込んでもらえるけれども,それがないときにはこの規定で頭割りだということになると,この規定があるからそういう補充的な意思表示までは要らないだろうということについては,そこは保護されないわけでありまして,そこはかなりこの規定があるということをどういう理解にするかということについての意識によって随分違った結果になるので,私はむしろこの議論が始まった出発点というのは,最高裁判例からいろいろと三つあって変転したところを,立法でどっちかにそろえようというところに肝があったのではないかと思っていたのですが,そこをまた意思解釈の問題に戻してしまうのかというところを少しお尋ねしたいのです。 ● ○○委員。 ● ○○委員のおっしゃったことと多分共通しているのではないかなと思うのですけれども,私はこのエで規律している内容といいますか,従来の保険法の方での基本的な考え方というのは非常に奇妙な考え方だというふうに思っていて,ただ,それは保険事故が発生する前に保険金受取請求権というのはないのだから,それは遺産に入ってこないという考え方で,であるがゆえに,相続分に従って相続人が権利を割り付けられるということはない,単純な権利割合の決まっていない相続人だけが,要するに保険金受取人だけがいる状態なので,第427条という,こういう発想なのだと思うので,仮にこの適用は排除したとしても,やはり当然に法定相続分に従った割合で,権利が相続人に帰属するという発想には結び付かないのだと思うのですよ。だから,○○委員がおっしゃったように法定相続分どおりに権利を承継させたいというときには,それを相続分に従って相続させるのではなくて,相続分に従った割合で新たな指定をするという,そういう合意だというふうに言わないと,もともとの保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合の権利関係と矛盾した説明になるのではないかというふうに思います。 ● 今,○○委員に整理していただいてよく分かりましたけれども,ただ,いずれにしても○○委員の目指すところは実現はできるということですね,そういう指定の仕方をすればというか,変更の仕方をすればということでしょうか。 ● この問題は大分ややこしい理論的な,以前から議論の積み重ねがあるところで,ちょっとそこらあたりの議論がこういう改正法のもとでなお生きているのか,大分変わってくるのか,少し念のためちょっと整理しておいていただければ。急に重要な問題を指摘をされてしまいましたので,もう一回,なお事務当局に次回までに整理してもらって。 ● 検証をしてみたいと思います。 ● ほかはいかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● ほかの点でよろしいですか。遺言による受取人変更のところなのですが,先ほど御説明いただいた中でウの②のところなのですけれども,「遺言の効力が生じた後,保険契約者の相続人が保険者に通知をしなければ」という,この部分の「相続人」について先ほどの御説明は,私の受け取り方が間違っていなければ,相続人のうちの1人でも通知をすれば,この対抗要件を満たすことができるという御説明をいただいたかと思うのですが,要は複数相続人がいて,そのうちの1人が保険者に通知をすれば,それで対抗要件を満たすと,こういう理解でよろしいのでしょうか。 ● 資料作成者の意図は,今,○○幹事がおっしゃったとおりです。 ● そうすると,解釈でそういうふうにするということになるのですか。あるいは条文上,そういうことを書き込むというようなことになるのでしょうか。 ● 少なくともここで御審議いただいて,一応1人でもということが実質だったと思いますので,あと,それを的確に条文に表すように,こちらとしては立案の作業に努めるということでして,その立案の過程で,このまま資料の5頁に書いてあるような表現でその実質が表わされるということになるのか,もう少し言葉を足さなければいけないのかは多分に法制的な問題もございますので,そこで検討させていただきたいと思っておりますが,実質としては御説明いただいたとおりで,少なくともこれまでの議論で,大体コンセンサスをいただいたのではないかと理解しているところでございます。 ● そういうことでよろしいですか。   どうぞ。 ● 基本的にその線で結構かと思うのですが,要はあと何か遺言書を2通書いていたとか,そういう話になったときに,新旧のそれぞれ自分に利益のある人がそれぞれ通知をするというようなことがないわけではないなと思って,それはもう解釈論にゆだねると,こういうことでよろしいわけですかね。新旧の遺言書というのは要するに第1次遺言書,第2次遺言書といって,当然最後の遺言書が有効になるのでしょうけれども,最初の人が先に通知をしておって,それで保険金を請求し受け取ったと,そういうことであれば,その支払については一応その段階では対抗要件を備えているわけだから,有効ということになってしまうというような解釈になるのですかね。あるいは,それは無効で,新しい遺言書ができていれば,そちらの遺言書,第2次というのですか,新しい方の遺言書の方の通知がなければいけないということになるのかと,ちょっとややこしいことが若干生じるかなと思いましたので,そこはもう解釈にゆだねると,こういうことなのですかね。 ● まず遺言の効力関係は民法でルールは決まっておりますので,それによってどの遺言が最終的な遺言としての効力を有するかが決まるということでして,例えば今,○○幹事が挙げられた例で,実際には後の遺言があって,それによって前の遺言が取り消されているにもかかわらず,前の遺言に基づく通知しかなったので保険者が払った場合には,少なくとも②の対抗要件の問題になりますので,保険者との関係では,後からされた最終的に効力を有する遺言によって指定された受取人は通知をしていなかった以上,保険者には私に払えとは言えないと。ただ,後の方の遺言が民法の遺言のルールによって有効だとなれば,後の遺言によって指定された受取人は実際は受け取る権利があるわけですから,本来効力が失効したにもかかわらず受け取ってしまった人に対して,私によこせという請求をすることができると,例えばそんなような法律関係になるはずでして,そのあたりは解釈で決せられることというように考えております。 ● 懸念しましたのは要するに遺言の効力が生じた後という表現になるとすれば,最初の遺言はとりあえず撤回されているというか,第2の新しい遺言が効力を生じているということになると,そちらの遺言に基づく通知がなければ対抗要件も備えられないのかということになって,最初の通知は無意味な通知ですという話になって二重払の危険が当然出ますなと,こういうことをふと思ったものですから,その書き振りでそこら辺がクリアできるのかなというふうにちょっと懸念したので,解釈論でそこはもう対応するというお話なのか,あるいは条文でそこまでクリアにされるおつもりなのかというのをちょっと確認したかっただけでございます。 ● 今のような問題意識であれば,そこは解釈論ということで,そこまで細かい場面設定をして対抗要件の備え方を書くというのは現実的でないと思いますので,そこは解釈論ということになろうかと思います。 ● どうも今の○○幹事の解釈の方が何か適当なような気もして……。 ● 私は自分ではそう思ったものですから,ちょっと○○幹事とは違うなと思いまして。 ● ○○委員。 ● 今,○○幹事に言っていただいているように,二重払のリスクだけは回避していただくような書き方にしていただきたいなと思うのですけれども。 ● どうぞ。 ● それは多分ここに新しい条文をつくらなくても,債権の準占有者に対する弁済で保険会社は免責されて,先に受け取った人が不当利得者として本来の権利者に受領したものを引き渡すということで処理ができる。 ● 保険会社としては,全然分からないもので全部払わないといけないということには,結果的にはならないと思いますので,そこは確認してもよろしいですよね,当然の前提で。 ● 今,そういうつもりで説明したつもりで,もしかして違うようにしゃべってしまったかもしれませんが,考えている実質は同じでございます。 ● いずれにしても解釈論でございます。よろしくお願いいたします。   ほかにいかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 7頁なのですが,やはり解釈論で補えることだとは思うのですけれども,念のため確認させていただきたいのですが,7頁の(5)の④のところで解除の効力の対抗要件のところで,支払をした保険金受取人が保険者に対して,その旨を通知しなければ対抗することができないというときの通知の時期なのですけれども,これはやはり解約返戻金の支払をするときまでにという読み方でよろしいのでしょうか。   と申しますのは,何かすごく当たり前かなという気もするのと,保険金受取人は支払った場合にほっとするというアクションに出て,保険者に対して解除されていませんというふうに通知するアクションというのは普通に出てこなくて,それがまさに通知だと思うのです。それをいつまでにすればいいのかというのが,ぱっと読んで1か月の期間が経過するまでではなくて支払をするときで,かといって普通に受取人が解除されていないというふうに主張したいのは,保険事故が起こって保険金請求権を行使するときだけれども,そのときまでに通知すればいいというわけではないという,ちょっと当たり前のことを言い過ぎているかも分からないのですが,念のため時期の画し方を確認させていただければと思いました。 ● 今の御質問を正確に理解できたかが定かでないのですが,④で定めていますのはあくまで対抗要件ですから,別に時期の制限はないということになるかと思います。普通,まず支払をして解除の効力をなくしておいて,保険者の方が二重払をしないように通知をして対抗要件を備えるというのが,一番オーソドックスに想定される時系列であろうかと思いますが,いつまでにしなければならないということはありませんから,二重払をしたときに保険者が解除の効力が生じたということで処理をしてしまったときに,それでも構わないと言えば放っておけばいいわけですし,それでは困ると言えば早く通知すればいいというだけですし,債権譲渡の解釈論などになぞらえて言えば,払う前に事前に通知をしておいても,場合によってはその後きちっと通知をした内容どおり支払をすれば,対抗要件としての通知として効力を生ずることになるといったこともあり得るだろうと思いますので,そのあたりは時期の制限は規定上はなくて,まさにあとは解釈で決せられるということになろうかと思います。 ● よろしいでしょうか。 ● ありがとうございました。 ● ほかにいかがでしょうか。   この部分は以上でよろしいでしょうか。   それでは,原案を大体了承したということにさせていただきます。   では,次は8頁の3ですが,分量がそれほど多くないので9頁の下から出てくる4と併せまして,11頁の第3の前のところまでですかね,まとめて御意見をここの部分についていただければと思いますが,いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 9頁の保険者免責のところなのですが,以前から自殺のところは期間制限を希望しておりました。(注2)のところに貸金業法などの参照条文があるのですけれども,貸金業法の第12条の7ですか,これを見ますと,結局,例外的に全期間を通じて被保険者の自殺を保険事故としてはいけないということを定めているわけで,その裏返しにこれを読めば,通常は期間制限があるのですよということが含まれている向きもあるかと思うのです。それで,確かに期間制限といった場合,何年が適当かという,当然,その議論が出てまいりますので,それは面倒だという面は確かにあるのですけれども,現行の実務でも通常の生命保険契約の場合にあって,自殺の期間制限がないものというのは実際にないと思うのですね。   任意規定として置かれるとしても,当事者も通常の意思を表すものが一般の任意規定の位置付けだろうと思いますし,もし当事者の意思がはっきりしない場合には意思の補充規定として働くと,こういう面から考えますと,通常の契約当事者が被保険者の自殺を全期間免責にするという意思を持っているかというと,これは一般的ではないというのが通常の理解ではないかと思います。それを一般則としてここで書くというのは,やはりおかしいというふうに私などは思いますが,あえてこういうふうに書かれるというのはちょっとまだ私は腑に落ちません。   現行でしたら3年というのがだんだん多くなってきているのかもしれませんけれども,大体2年か3年というのが一般かと思うのですけれども,長目に3年というふうに任意規定として置いておいて,それで合理的な理由があるのであれば5年に延びる,あるいはそれこそ貸金業法のように必要があるのであれば当然全期間免責というふうに,合理的な免責条項を定めれば任意規定としてはよろしいというふうに一般には思うのですけれども,あえて全期間免責を任意規定として一般則として置くというのは,何か私はまだしっくりしないのです。 ● 御指摘は十分理解しているところなのですけれども,今,○○幹事もおっしゃったように,やはり一番大きなところは年数が何年が適当なのかというところが,はっきり理由をもって決せられないというところにあるのではないかというように考えております。今,だんだん3年が多くなってきたとおっしゃったところですが,2年のものもあれば3年のものもある中で一昔前はどうだったかと,恐らく1年が多かったのではないかというところもあるわけでして,そのあたりで何年をもって決するのが適当なのかということが難しいのと,仮に書けば書いた上で,いやいや3年では短いから5年にしろ,あるいは5年では長いから2年にしろとかいう,そういうことに常々なるわけで,そこのあたりは契約のデフォルトルールというよりは,まさにここに貸金業法と書きましたけれども,契約ごとに個々の約款でその時点における適切な定めをするということにした方がむしろいいだろうと。ここでは(ア)や(ウ)と同様に,(イ)でも同じように被保険者によって保険事故が招致された場合には,保険という以上,基本的には保険者は免責になるのだという思想を表明するにとどめた方が適切だろうというような判断から,従前どおりの提案をさせていただいているというところでございます。 ● ○○委員。 ● 今,○○幹事の御意見に賛成する形で申し上げたいのですが,やはり自殺免責のところは二つ問題があると思うのです。その一つは今の期間の問題,もう一つは大分前に○○委員も御指摘になった精神病の問題だと思うのですけれども,まず○○幹事がおっしゃったところは,やはり自殺を全く担保しない生命保険というものを余り観念しないような方がよろしいのではないかと。ドイツの保険契約法の第161条は3年を超えた期間について自殺免責をすることは駄目だという片面的強行法規にして,そうすると自殺免責の期間を2年,1年と短縮することはできると,フランスにも似たような規定があって,こういうものをちょっと考えていただけないかと。   そうすると貸金業法のことが問題になるのですが,また,ここは完全にはちょっと詰めていないのですが,要するにこれは受取人が相続人とかいう家族であればいいわけですが,こういう事業者性のあるものはちょっと別にするなり,何かそういう形で考えることができないのかという点がまず1点で,それでもう1点が精神病に基づく自殺の場合は保険金が支払われるというのは大審院の判例があって,保険を知っている人はそうなのですが,しかし,普通の人は分かっているのかと。これはやはり法律上に明示した方がいいのではないかと。現にドイツの保険契約法第161条でもはっきりそれを書いていて,文言としては大審院判例の文言を利用して,精神病その他の原因によって精神障害中に受ける動作に起因して被保険者が自己の生命を絶たんとする意思決定をした場合,こういうのは外形的に自殺であっても保険金を払うというような,何かそういう工夫を消費者の方に分かるようなことが何かうまく入れられないかという,この2点をお願いしたいと思います。ほかの論点はちょっと終わった後にまた申し上げます。 ● 自殺の点について今御意見が出ていますが,いかがでしょうか。 ● 少し付け加えさせてください。一般に自殺免責のところを期間制限する趣旨としては,遺族といいますか,受取人側の保護ということもいいます。そういうことを考えた場合,全期間の自殺免責と言われると遺族といいますか,受取人側の保護ということもできていないということになって,それが一般則でいいのかという疑問が一般的には大きいと思います。とりわけ何年も契約をしてから仕事上の苦痛とか,あるいは病気の苦痛等でやむなく自殺されるというような場合でも,やはり払ってはいけないのかというような,そういう大きく言えば人道的な見地からも自殺免責というのを全期間で設けるというのは,どうも最近の立法の動向から見ても不思議な規定のように思います。 ● 先ほど○○幹事から御説明があったように,全期間免責というのをデフォルトルールとして,これを合理的な契約内容とするという趣旨は含んでいないと思うのですね。文言はそうではないか言われればそうだけれども,立法趣旨としてはまさにそうではないので,自殺というのは非常にいろんな世の中の人のいろんな判断がございまして,一定の期間がたったら払うのが当然だという人もいれば,まさに世の中にはそれが自殺を誘発するという決して無視できない意見があるのですよね。   そこら辺を全部織りまぜて2年がいいのか,3年がいいのか,5年がとか,これはどうもコンセンサスが得られるような形では書けないということを踏まえて,こういう提案になっているのではないかと思います。実務的にこういう規定にしたら一斉に免責期間をやめて,全期間免責をするかというと,それは何ぼなんでもしないでしょうということではないかと思うので,こういう保険契約法が余りいろんな政治的な判断でもみくちゃになるよりは,ここはこういう形で後の合理的な実務にゆだねるというのがこの原案の趣旨ではないかなと私は思っているのですが,どうしても年数を書かないと駄目でしょうか。   どうぞ。 ● 強引に私も任意規定ですから,強行規定と言っているつもりではありませんので,何年というふうに書き切るということは確かに難しい,いろんな事情からですね,ということであれば,どこかの趣旨説明でこれはあくまで任意規定ですよと,全期間免責について強調するものではないと,これはむしろ一定の合理的な期間に制限されることが通常であるというような趣旨のことを,是非強調していただきたいというふうに思います。それを条件にということになるかと思います。 ● ○○委員。 ● 今の点では○○委員のおっしゃるとおりで,その中で私の観点からいきますと,これを基本的な契約ルールで2年だとか3年ということを決めた時点で,契約者に対してかなりゆがんだ情報を与える危険性というのがあって,多分,先ほどの○○委員の話の後半の部分はそれも含めた議論でしょうけれども,むしろ理論的にはそういったものを定めないで,基本的には免責ですよということで,でも実務的には任意規定で,そういったその時代時代,歴史歴史の国民のコンセンサスがありますから,それにゆだねるという方が契約者にとってはゆがんだ情報を与えないというのが私の意見ですが,ついでに質問してよろしいでしょうか。   前回,ちょっと決闘の点で,決闘と自殺は代替的なものという変な発言をしたのですけれども,ちょっとそこで言いたかったことは自殺は免責なのだと,でも,やはり保険金が欲しいからわざわざ決闘をして死ねば,保険金がおりるという選択もあり得るのではないかみたいなお話をしたのですけれども,それはそれとして,決闘とかその他の犯罪を免責から外した合理的な理由というのはどういうところにあるのか,ちょっとそこのところをお聞きしたいなと。 ● 今も○○委員からお話がありましたが,基本的にはこの免責の規定が任意規定だというふうに解されておりますので,このようなものを別途約定するということは可能だと。そうすると法定の免責事由とするまでの必要があるのかという議論の中で,一つは自殺に当たるようなものであればまだしも,そこに至らないような,その他の犯罪というのは非常に不明確な表現であるということもいわれておりますし,そういう意味ではそこが抽象的なままで一律に免責となってしまうということについては,本来,犯罪によって責められるべきは本人であるにもかかわらず,不利益を受けるのが遺族であるというようなあたりが従来から立法論的に批判のあるところですので,そのあたりを踏まえ,なおかつ任意規定でもあるということで,今回,削除することでよいのではないかという判断をしたところでございます。 ● ○○委員。 ● まず精神障害の方はどうなのでしょうか。任意規定の中にそういうものは含まない……。 ● その前にちょっと自殺の点を先に。先ほど免責期間は置かないということはよろしいでしょうか。 ● では,その点に一つ。申し訳ないのですけれども,そういう集約であれば,それはそれで私は少数意見ということで結構だと思いますが,ただ,どういうことを危惧しているかというと,解約返戻金のない保険をつくったときもそうですけれども,いろんなことを合わせて保険料を安く売ろうという中で,こういう自殺部分を持たないというような形で,ほかのものと合わせて何%引きますとかいうような商品が本当に将来出ないのか。ここにおられる方は多分,そういうことはおやりにならないと思うのですけれども,そういう危惧がちょっと,そういう商品開発の方の中にそういうオプションがないかというと,私は項目としてはあるのだと思うのですね。でも,まだそれが現実化していないという御判断もあると思いますので,それは少数意見で結構だと思いますけれども。 ● 自殺の点はよろしいでしょうか。   それでは,今の犯罪免責の点,○○委員,よろしいですか,今の説明は ● そういう理由であれば,どこか何かちょっとひっ掛かるところはありますが,ほかの(ア),(イ),(ウ),(エ)が多分保険料を計算する上で基本的な逆選択があったら困るということでそろっているので,それに対して決闘とかいうのは危険の増加,必ずしもどうなのでしょうか,その辺,何か違う論理があるのかなと思ったのですけれども,何かちょっとまだ頭の中が整理されていないので,先ほどの理由でとりあえず承っておきます。ありがとうございます。 ● それでは,○○委員,ほかの……。 ● 精神障害の点は任意規定として置いていただくのは,誤解している人が多いと思うのでどうかということなのですが。 ● 先ほど来,自殺免責期間の制限のところでも申し上げていますとおり,(イ)は決して全期間免責がいいということを言っているわけではなくて,やはり故意による事故招致ということを意識して,それを被保険者の場合には自殺という言葉で表現しているところでして,ここも言ってみれば(ア),(ウ)と同じ発想で,故意による事故招致ということがございます。   その意味で,今,おっしゃるような精神障害その他のというのは,結局,故意による事故招致ということで免責とした趣旨に当たるのか,当たらないのかという解釈の問題ということで考えておりまして,自殺のところだけ精神障害の点を書くと,言葉が自殺なので書いても余り違和感がないのですが,もとをただせばこれは故意ですから,結局,そこだけ書くとほかの故意はどうなのだということになってしまって,ここだけそれを書くとほかの故意は精神障害があっても故意に当たるということになるという反対解釈が出てくるのではないかといったことまで考えますと,やはりここだけ書くことについては,なかなか難しいものがあるのかなというように考えておりまして,その点は現在と同様に解釈ということで,しかるべき対応がされるのではないかというように考えております。 ● といいますと,今のを伺っていると要するに従来は精神障害は担保するということだったのが,そうではない解釈もあり得るという立場をお採りになるというわけですか。おっしゃっている意味が。私はこれは親切に書いてあげれば,それで普通の消費者にとってはいいことで,ドイツでもやっているから見習ったらどうですかということで,余りそういう難しいことを言っているわけではなくて……。 ● 解釈にだれも異論を,変更するとは誰も言っていない。 ● それはありがたいことなのですが,今,伺っているとちょっとそこも変わるような感じを受けたものですから,では,それはそれで結構です。   では,余計に残りの点も申し上げてよろしいのでしょうか。   保険料積立金,返戻金のところなのですけれども,基本的には賛成したいと思うのですが,短いあれで申し訳ないのですが,ちょっとやはり完全に読めないところがあって,次までにもう一度よく考えたいと思います。基本的には賛成すると申し上げたい。それの1点です。 ● 賛成というのは。 ● こういう方向で。 ● 10頁の(5)の①,②に書いてあるようなことの規定を設けるという……。 ● ということで賛成したいと思います。   1点だけ質問なのですが,資料22では上記規律によって支払う金額は「被保険者ノ為メニ積立テタル金額」と同義であるという文章があったのですが,それはきちんとここにも残っているという趣旨でよろしいわけですか。その質問だけです。 ● 1頁の(前注)1に書きましたとおり,資料の作成方針は第1次案の上と同じですので,説明的な注を落としたからといって,説明が変わった,あるいは考え方が変わったということではございません。特に断っていないものは従前の考え方を維持しているということでございます。 ● ○○委員。 ● 保険料積立金及び解約返戻金の支払というここですが,書いてある文言がすごく分かりやすいかと申し上げれば,ちっとも分かりやすくないと言わざるを得ないのですが,それはそれとして,こういう抽象的と言ってしまっていいのかどうか分かりませんけれども,抽象的に書かれていますが,書かれていること自体に意義があるというふうに思っていますので,是非,これは維持していただいて,この書き方がいいかどうかというのもよく分からないし,書いてあることが分かりやすいとは思っていないのですが,書いてあるということがやはりとても大事だと思っていますので,それは是非維持をしていただきたいと思います。 ● ○○幹事。 ● ほかの点でもよろしいですか。免責のところに戻って恐縮なのですが,(4)の(ウ)のただし書の部分なのですけれども,これも学会などでいろいろ質問されるのですが,このただし書を現行法とほぼ同じように残すわけですが,この趣旨はどういう意味ですかと。従来,立法論的にはこのただし書は外すといいますか,ほかの受取人に全額を払えばいいではないかという立法論などもしばしば唱えられてきたところですので,この際,現行法を維持するという御判断をされた理由について御説明いただければありがたい。 ● 恐らく(ウ)の趣旨は(ア),(イ)と同様に故意に事故を招致した保険金受取人に対しては免責ということで,保険金を受け取らせないということだと思いますので,ただし書はその裏返しで,ほかに保険金受取人がいて,事故招致と関係ない受取人に対する責任は結局免責にはなりませんよと言っているだけで,それはある意味当然というか,免責の趣旨に沿った規定だろうと考えておりまして,その実質をそのまま維持するのが適当だと考えているということでございます。書き振り自体は若干これも分かりにくい表現になっていると思いますので,現在の資料は従前の表現から変えないことによって,実質を変えていないことを表明するという方針でつくっておりますが,実際の条文では,今口頭で申し上げた趣旨,故意に事故を招致した保険金受取人以外の受取人に対する責任は免責にはなりませんということをストレートにうたうのが適当ではないかなというように考えているところでございます。 ● 立法論的にはこれは要するに一部免責ということになるわけですけれども,事故を起こした受取人自身が本来受け取る割合が例えば20%だとしたら,その部分について免責ですと,こういう趣旨ですよね。新しい立法としてはそうではなくて,その20%分についてもほかの受取人に受け取らせたらいいではないかというのが従来の立法論としてはあったわけですが,それは余り合理的でないという,こういう御判断ですか。 ● 反射的にほかの人に利得させる必要までは,ここの免責の規定の趣旨としてはないのではないかということで,現行法維持でいいのではないかというように考えているところでございます。 ● ○○幹事。 ● そうすると1点だけ解釈の確認ですが,法定相続人が受取人であるという指定の中で,法定相続人の中の1人が殺害しますと,その者は相続法の規律でいくと相続人から廃除されると思うのですね。相続法の規律でいくと被相続人を殺害した相続人は多分法定相続人から,相続法の廃除のルールによって相続人でなくなると思うのですが,そうすると法定相続人が受取人であるという指定のされ方であると,殺害した受取人が相続人でなくなることによって,残りの相続人が全額受け取れるという解釈になるのかどうか。 ● 故殺免責をどこまで認めるかというまた解釈問題で,当然に他の相続人が全部受け取れるという解釈になるわけではないような気がしますがね,趣旨から考えても。 ● 恐らくそこまで具体的な事例になると解釈問題かと思いますけれども,素直に考えますと,9頁の(4)の保険法における免責のルールとしては,法定相続人と書いてある受取人の1人が故意の事故招致をした場合には,その人は外れるわけですから,その人の法定相続分は結局免責になって,残りの人がもともと持っていた法定相続分だけ受領できるということになるところですが,それに更に相続法のルールで相続人として廃除されれば,もともと相続人でなくなることになりますから,法定相続人という受取人はその人を除いた前提で相続割合を考えることになりますから,そうなれば,廃除された後の相続人で言ってみれば頭割りというか,その人だけが相続人という前提で相続割合が計算されるということに建前上はなるかと思いますが,今,○○委員がおっしゃったように,それで本当に免責の趣旨に沿った解決なのかどうかは,あとは解釈問題かなというように思います。 ● 今の○○幹事が言われた解釈に絶対に一義的になるとは私も思わないので,これは昔からそういう故殺にかかわらなかった受取人に全部払ってもいいではないかという意見はあるのだけれども,それが今の最有力な説かというと,少なくともそうではないような気がしておりますので,そこであえて変えるということの必要性は,現在ではないのではないかなというのが私個人の意見なのですが,そういうことでよろしいでしょうか。   では,お願いします。 ● お時間をいただきまして,先ほどちょっとうまく整理できなかったのですけれども,ちょっと改めて考えてみますと,こういうふうに整理してよろしいでしょうか。先ほど自殺と決闘で死ぬ場合と,決闘で死んだら保険金が出ると言いましたけれども,決闘で死ぬ場合も保険金の不正請求目的の決闘で死ねば(イ)に該当するのだと。一般的に保険金請求目的以外,つまり保険金の請求を目的とする故意の事故招致以外の決闘とか,犯罪ならば遺族のことがかわいそうなので,デフォルトルールでこの免責には加えないで保険会社の裁量に任せると,そういうふうに解釈させていただいていきますと,(ア)と(イ)と(ウ)の趣旨は保険金不正の請求ということで,(エ)は保険料計算にかかわる重大な要件と,そういうふうに判断してよろしいでしょうか,この立法の趣旨といいますか。 ● 基本的な発想としては大きく違わないというふうに我々も考えておりますが,保険金請求目的だけに限定するかと言われると,必ずしも(ア),(イ),(ウ)というのを見ていただいてお分かりのとおり,そこに主観を限定しているわけではありませんので,そういう意味では決闘の場合には(イ)の自殺に当たる場合があり得るということまでは申し上げられると思いますけれども,目的によって決まるかと言われると,ちょっとそこは必ずしもそうではないのかなというところでございます。 ● よろしいでしょうか。 ● どうもありがとうございます。 ● ほかにいかがですか。よろしいでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● 自殺ではないところでもよろしいでしょうか。10頁のところで,保険料積立金と解約返戻金のところで,ここは私もいつまでたってもよく分からないのですが,前回もお尋ねしました払い戻すときに保険契約者から求められたときには,計算の根拠を示さなければならないとかいう開示の趣旨みたいな規定を設けることは難しいとか,そういう判断に立たれているのかどうか伺いたいと思っております。 ● 例えばどういう開示をするということになるでしょうか。 ● 計算書みたいなのを添付するという,そんなイメージ。 ● 金額がこうですという計算書なら幾らでも今でも出ていると思うのですが,あなたの契約ではなぜそういう解約返戻金になりますという,そこを開示せよと言われると,これは金融審のワーキングでも議論になったとおりで,開示すべきことはもうちょっとあるように私も思っていますが,では,何か全部計算根拠を逐一開示するところまで要求できるかというと,あちらの方でもコンセンサスは到底得られないと,まだ,そういう状況。 ● ありがとうございました。 ● ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,3と4の部分は大体こういう内容で御了承いただいておるということで進めさせていただきます。   それでは,次が第3の傷害・疾病保険契約に関する事項について,第3の部分につきまし事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは,傷害・疾病保険契約につきまして,生命保険契約の規律と異なる点を中心に御説明をいたします。   まず,1(2),12頁のところでございますけれども,このアでは,他人を被保険者とする傷害・疾病保険契約において被保険者の同意が効力要件とならない場合について,(注1)に記載しましたとおり,第四読会における最終的な提案と同じ提案をしてございます。他方で,イの(ア)では被保険者の同意が契約の効力要件とはならない場合には,被保険者は保険契約者に対して契約の解除を請求することができることを提案してございます。これは第四読会であった指摘を踏まえたものでございますが,形式的にはアのただし書に当たったとしても,保険契約締結時に被保険者の同意があった場合にはイの(イ)又は(ウ)の場合に限り解除請求を認めることでよいと考えられることから,これを踏まえた提案をしてございます。また,この(2)のイのうち少なくとも(イ)及び(ウ)の部分については,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約についても,人保険であることによる特則として設けることが考えられるところでございまして,その当否について御議論いただければと思います。   次に,13頁の一番下のところの後注では,いわゆる契約前発病不担保条項につきまして契約法上の規律は設けないことを提案してございます。その理由につきましては,これまでの審議の中でも繰り返し御説明してきたところでございますが,改めて資料に記載してございます。   次に,2の傷害・疾病保険契約の変動のところでは,生命保険契約と同様の規律を設けることを提案してございます。このうち(5)につきましては,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約にも同様の規律を人保険であることによる特則として設けるかについて検討する必要があるとの指摘がされてございますが,これは保険料積立金あるいは解約返戻金のあるような再加入の困難性のある契約を念頭に置いた規律であることから,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約については,そのような契約を典型的なものとして想定するまでの必要はないのではないかと考えられ,規定は設けないことでどうかと考えてございます。   次に,3の(1)から(3)までにつきましても,生命保険契約と同様の規律を設けることを提案してございまして,(4)の部分につきましては中間試案と同じ規律とすることを提案しております。また,資料を戻っていただきまして(1)の(注1)のところでは,傷害・疾病保険契約の各規律において「保険事故」と記載している部分につきましては,各規律ごとにその意味を検討すべきということを記載しておりまして,これにつきましては整理をした上で追ってお示ししたいと考えてございます。   最後の4の15頁のところ,傷害・疾病保険契約の終了につきましても生命保険契約と同様の規律とすることを提案してございます。   なお,16頁の(5)につきましては,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約にも,同様の規律を人保険であることによる特則として設けるかについて検討する必要があると思われますが,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約について,平準保険料方式によって保険料が算定されるような契約を典型的なものとして,想定するまでの必要はないのではないかと考えられますことから,規定は設けないことでどうかと考えているところでございます。   以上です。 ● それでは,ただいまの御説明にあった第3の部分について御意見をいただきたいと思いますが,この部分では従来非常に御議論が多くあったのは12頁の(2)の被保険者の同意の問題であろうかと思いますが,この点については契約法上の規律としては,こういうふうに余り生命保険契約と同じように,厳しく同意を要件とするというようなことはできないのではないかということが提案され,他方,しかし,それは非常に問題が残るのではなかろうかというたくさんの御意見もいただいたところで,この問題の従前の私の取りまとめとしては,契約法でなかなかそういう御意見を反映するのは難しいかもしれないけれども,実務的あるいは監督法的にはいろいろやはり検討する余地もあるのではないかと,そこら辺は十分御配慮いただきたいですなということを申し上げたのですが,金融審議会のワーキングの方でも損保業界の委員の方から,いろんなそれなりに実務的に対応するという御意見の御表明をいただいたところですが,ここでもあるいはそういうちょっと今の進行状況等を御説明いただければと思いますが,○○委員。 ● かしこまりました。今,お話がございましたように,この論点につきましては前回の部会において業界としての実務上の対応策をという多くの御意見を踏まえまして,日本損害保険協会として12月20日に開催された理事会において,会員会社の全社長出席のもと,「傷害保険・疾病保険のモラルリスク防止に係る取組について」ということで,次のような申合せ,すなわち,会員各社は,傷害・疾病保険のうち,特に被保険者の同意を取り付けていない契約形態(未成年者の死亡保険を含む)において,モラルリスクを生じさせないため社内態勢を構築し,適正な引受けを行うことを確保するという内容が了承されました。   具体的には,これを踏まえて協会の会員全社が次の3点について自主的な取組みを行うことで合意しております。   1点目は,家族型の海外旅行保険や,家族傷害保険など家族(未成年者を含む)を被保険者とした傷害保険のように,被保険者の同意を取り付けていない契約形態において,モラルリスクを生じさせないための引受基準等を社内規則として適切に定める。   2点目,家族型の海外旅行保険について指摘のあったように,同意を取り付けずに著しく高額の保険金額を販売しているものについては,販売内容・方法の見直しを行う。   3点目,今回の資料のイで提案されている被保険者の離脱制度について,被保険者の同意を取り付けていない傷害・疾病保険にも,現実的に対応可能な制度運営のもと適用することで了解する。なお,保険会社として現実的に対応可能な制度運営については,引き続き検討する。   ということで,保険会社といたしましてもモラルリスクの防止は最重要課題ですので,以上のような自主的なルールを定めて取り組んでまいりたいと考えます。つきましては今回の事務当局案,ア,イの内容で集約していただければありがたいと考えております。   以上です。 ● というふうなことで実務的な今のところ対応を考えておられるということでございます。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● ただいまの○○委員の説明に加えまして,日本損害保険協会での申合せ事項,それから具体的な取組み先につきましては外国損害保険協会という協会がございますが,ここにも内容を伝えております。この外国損害保険協会は日本社と同様の対応を行う方向で現在検討を進めておりまして,正式には1月16日に外国損害保険協会の代表者が集まる会合で,同じ形で申合せが行われるというふうに聞いております。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● その部分について離脱の方で(ア)の条項が入って,本来は同意を取り付けるのが原則だということが裏から示されたとも言えますが,それはありがたいことですし,今,御表明のありました業界の御努力には敬意を表したいと思うのですけれども,やはりもう少し金額的なところまで踏み込んだものにしていただければという気持ちがあるのですね。例えば新聞で報じられるところでは,生保の未成年者の引受けの上限は2000万というのがあるようですけれども,同意をとらずに付ける場合の上限と見ることもできるわけですし,やはり4000万とかデラックスプランで5000万というのは,ちょっと問題があるということは,やはりもう少し,その慣行を共有していただけないかなということを感じます。   それと,もうあと1点,資料25の12頁のアの(注1)に述べられている保険金額の上限を一律に定めることの当否に問題があるというふうに御指摘になっていまして,その技術的な問題はよく分かるのですが,そこの理由はここには載っていなくて,資料21の4頁にあるのですが,そこはちょっとそう簡単に言い切ってしまって,立法事実として最初,○○委員がおっしゃったような全体像がもう少し何かこの資料の中に出るような形にしていただけるといいのではないのか,最終的には全部削られて要綱案に出ないということであれば別ですが,要綱案の注のあたりに入るというようなことを考えていただければと思うのです。   資料25の12頁の(注1)に述べられている一律に定めることの当否というところですけれども,どんなことが資料21に書いてあったかというと,同意が必要な場合についての抽象的な要件設定は適当ではないとか,傷害・疾病保険契約にはさまざまなものがあるので,一律に制限する規律を設けることは問題があるとか,それから金額制限はモラルリスク対策の一要素なのだということが言われているわけですけれども,しかし,例えば被保険者を事前に特定できない構内入場者とか,そういうものについて,という形で繰り出せば,必ずしも抽象的な要件とは言えないと思いますし,一律に制限する規律といっても,ここで問題になったのは死亡担保だけですし,モラルリスク対策の根幹として保険金額に着目することは一番効果的なのであれば,それに着目するということはおかしいことではないと思うので,ここも水掛け論かもしれませんが,もう少し最初,○○委員がおっしゃったような形のものに,やはりこの資料だけを見ていますと,ちょっとそうかなという感じがいたしますので,そういう方向でお願いできればと思います。   以上です。 ● それはだれに対する要請になるのでしょうか。 ● ○○幹事の方にそういうお考え方もあるかもしれませんが,こういう考え方も御配慮いただきたいということです。金額の点は業界の方にお願いしたい。 ● 金額は業界ですか。 ● ええ。 ● ○○委員。 ● 金額の点につきましては協会として一律の金額を定めて,例えば2000万とか1000万以上は契約してはいかんということは,なかなか今の段階では公共の福祉等々は問題があるかもしれませんが,適切ではないと考えておりますので,基本的には各社で判断するということでございますが,一方で協会としては指針的なもの,こういうものにつきまして適切な形で行われるということで考えていきたいと思っています。法制審議会で議論されている内容は,各社の経営トップが極めて重く受け止めて,毎回,必ず全社報告会をしておりますので,御趣旨の点はこれから実務の中で反映されていくものだというふうに確信しております。   以上でございます。 ● いずれ,そういう各社で何らかの基準を決めていただくことになるのだろうと思いますし,また,それはいろんな方面からウオッチしていただいて,おかしいなというものがあればまたいろいろ声を上げていくということになるだろうと思います。今,ここで何か金額を決めろと言われても,みんなが困る話だろうと思いますね。それから法律の規定振りというのはもう再三事務当局から説明があったように,なかなかこの場合なら書けるだろうというのがあって,その場合だけ書けば済むかというと,だんだんやはり連鎖的に波及していくわけで,そこら辺も適切に規定することができるかというと,契約法の分野としてはなかなか難しいのではないかという,そういうことではなかったかと思いますので,それはやむを得ないことかなということで,また業界の方にも自主的に何とか対応をということをお願いしてきたわけでございます。   ほかに御意見はございませんか。   ○○委員。 ● ここでも保険者免責のところで,立法の趣旨との関係で質問したいのですけれども,先ほどの場合は死亡補償ということで残された遺族のためという理屈で現行法の第680条第1項第1号が外されていたと。ここだと傷害保険,疾病保険ということで,残された遺族というよりもけがのためとかいうことになりますと,先ほどの理屈はちょっと何か当てはまらないかなと。つまり犯罪その他を社会正義の観点あるいは公序良俗の観点から,むしろこちらは現行法の趣旨を生かしたものがあっても,先ほどは遺族保障という理屈で成り立ちますけれども,こちらはあっても,むしろあった方が社会正義の観点からよろしいのではないかと考えますけれども,いかがでしょうか。 ● 考え方としては御指摘のような考え方もあると思いますが,今回の整理,冒頭の(前注)2に書きましたけれども,死亡給付も含めて傷害・疾病保険という整理をしたこともございまして,ここも死亡給付を想定して,死亡給付についても生存給付と同様に適用される免責事由という整理をしたこともございまして,そこはむしろ区別をしない方が死亡保険の方との整合性がとれるのではないかということで,デフォルトルールとしてはこういう整理をしてはどうかというように考えているところでございます。 ● ○○委員。 ● では,この第4の手前のところまであと三つ簡単にではないかもしれませんが,述べさせていただきます。まず,やはり始期前発病不担保条項の問題があって,私は何も承知していないのですが,金融審でこういう問題は取り上げられているのでしょうかという質問と,現状を放置すれば正直な契約者が全部告知しているという場合に,前回のままでは放置されたままになりそうな感じがするわけですね。その場合にはどういうふうに対応したらいいというふうに,事務当局の方としてはお考えになっておられるのかというのが第1です。質問の二つ目ですが,保険事故発生の通知のところですが,14頁の(注1)のところの「本資料の各規律において『保険事故』と記載している部分については,各規律ごとにその内容を明示するものとする。」というところですが,これはどういうイメージになるのか,これはちょっと何かイメージを教えていただければと思うのですけれども,何か業際問題に関係するようなところだと,余り簡単に賛成とも反対とも言えないような感じもいたしまして。3番目が消滅時効の問題ですけれども,生命保険とここで言う定額給付の疾病保険,それから損害保険との場合に時効期間が違うという問題があって,よりここで先鋭化すると思うのですけれども,これは何か今検討しておられるのであれば,どんな方向でまとまるとか,まとまらないとか,何かそのあたりを教えていただければと思うのですが,三つお願いいたします。 ● 契約前発病不担保の問題は金融審議会では特に検討しませんでしたよね。これは契約法的なことと,あとは何らかの募集時の情報提供とか,そういうあたりの問題になってくるのかなということかと思いますけれども,その他の点何か。 ● まず,資料の点から申し上げますと14頁の一番下の(注1)のところは,事務当局説明でも申し上げましたが,この傷害・疾病保険の中に俗に言う生保型,損保型,両方のパターンがあることを考えますと,この資料の中では,それぞれの置くことを想定している規律について,一律に「保険事故」という言葉ですべてを記載しているのですけれども,恐らくその一つの概念では書き切れないところが出てくるであろうというように考えておりまして,それについては各規律ごとに傷害又は疾病という点をとらえるべきルールは,傷害又は疾病という言葉に置き換えて書くところが出てくるであろうし,また,場合によっては傷害・疾病に続く入院や手術といった直接的な給付事由そのものをとらえて規定を書くべきものも出てくるだろうと。そのあたりは改めて整理する必要があると考えておりまして,実際の条文化の中では,そういう整理をしながら立案する必要があるだろうということをお断りさせていただくという趣旨でございます。   それから,13頁の後注のいわゆる契前発病のところですけれども,全部告知した者に対する期待権的なものについては,これも従前から御説明しておりますし,この後注にも書きましたけれども,そこは基本的にきちっと告知したからといって,もうそれですべてが終わったということではなくて,別途,告知とは別のルールがあって,この後,仮に発病して入院なり手術ということになっても,もともと発病していたものに基づく場合には保険金は出ませんよということを契約時点できちっと説明すべきであり,その上でなお契約を締結するかしないか,きちっと判断できるようにすべきだと,そういう形で対処すべき問題であろうというように考えているということでございます。 ● 時効の点は。時効期間がばらばらになるのですね。 ● 2年か3年かは検討しているところですけれども,こちらの基本的な考え方としましては契約類型といいますか,損保,生保,傷害・疾病で区分するということは考えておりませんで,同じ時効期間で整理をしたいというように考えているところでございます。 ● では,一言反論といいますか,2番目の14頁,(注1)のところですけれども,要綱案には記載されるという理解でよろしいのですか。「保険事故」について規律ごとに明示するというのは,そこを知りたかった。 ● 取りまとめの後に勝手に整理するということになってはいけませんので,次回の資料ではお示ししたいというように考えております。 ● ありがとうございました。   最初の始期前発病のところはやはり今おっしゃったようなものでは,やはり救われないというところは,そのまま放置はできないと思うのですよね。確かにそういう規定だけを1個ポンと置くのかという問題はあるのですけれども,やはり基本的にはそういうすべて告知した場合にも,保険料割増しで引き受けますよということもあるわけですよね。ということは,要するに付加価値だから,そういうものを全部告知して引き受けてほしいと思っていて,それが保険だと。そういう道があるのに,そういう道を通ってきたにもかかわらず,始期前発病だから払いませんよという非常に過酷な状態があるわけで,少なくとも私は意見の分布はもちろん後でもし○○委員がお許しいただければ聞いていただければと思いますが,やはり何かしなければいけないと。   ただ,それを契約法に置くかどうかというのは,いろいろ議論はあると思うのですが,少なくともそういうものを何か手当てしないと,余りにも悲惨だというのはあると思うのですよね。その一部は信義則で救える部分もあると思うのですけれども,そこはもうちょっと何かここで少し周知を,知恵を出していただかないと,これは何かいたたまれないというか,救われないというか,そういう感じがするのですけれども。   以上です。 ● ○○委員。 ● ○○委員がおっしゃっているとおりなのですが,前回のときに○○委員が消費者側と業界側がよく話をして,○○が言っていることはそれなりにもっともだからよく話をして,そういう基準なり何なり,そういうものをというお話があったように思っております。そういう意味では,損保業界,外国損害保険協会,日本損害保険協会の方で理事会決定でこういうことを決めたという並びでいくと,責任開始前発病,始期前発病,どういうふうに呼んでもいいのですけれども,それについてもそれなりの引受基準の明確化といいますか,やはり一番困るのはこの間,悪意の引受けと言って,ちょっとひんしゅくを買いましたけれども,悪意の引受けがあり得るということがやはり一番困りますので,そういう意味では,そうではないのだよと,きちんと正しく告知をしたときに,引受けについて条件があるのだよということをきちんと明示をするというやり方が通常だと思いますので,そこの部分について全然言わないでおいて,後からというのが大変ダーティーだと思っているわけで,そこの悪意の引受けが行われないような,そういうルールを業界の方でも是非頑張って汗をかいていただいてやっていっていただければ,少なくともどうしても法律にはならないというのであれば,そこら辺をやっていただけないかなというお願いでございます。 ● ○○委員,○○委員,そのあたり何かございますか。   ○○委員。 ● 前回も申し上げておりますけれども,現在の状況をもう一回申し上げますと,個社としては注意喚起情報,それから商品パンフレット,ご契約のしおり,それから告知書の表紙,それから保険金の支払について,こういったものに告知義務と責任開始前発病の関係については記載しております。   そして,もう一つ,告知した場合,こういう告知がありましたけれども,それは責任開始前のものは払えませんよということを今,証券を送るときの同封物,告知というのは,今,告知書の写しは返送していませんで,複写方式でやっていますので控えがお客さんに残りますので,証券を送るときの同封物に告知をいただいたけれども,これはこういう支払要件に該当しない場合は払いませんよということを今,検討しております。   それから,もう一つ発病の定義,こういう場合には発病はこういうように考えますというのは,今,協会のガイドラインはありますけれども,それをいろいろの資料に更に書くとともに,今,当社では約款にそれが入らないかということを検討しております。ですから,決して不意打ちにならないようにやりたいと思っています。これは別に思い上がって言うわけではないのですけれども,業界で決めなくても1社がそうすれば,やはりそれはいい方向ですから,各社もまねするというか,やっていくと思います。そういう状況で真摯に受け止めて進めております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 我々も前回の審議を踏まえて,まさに今の生保さんと同様に始期前発病不担保条項について説明の方法等,重要事項説明とか証券表示ですけれども,それについては改善を図るべく検討していきたいとは考えております。 ● ということで,○○幹事。 ● 業界の努力はよく承知しておりますので余り申し上げることはないのですけれども,要は前回お話しになりました悪意のケースは信義則上のルールでもって何とか解釈上,対応できるかなと思っておるのですけれども,今,実務でやっておられる善意のケースを救うという実務のルールというのですか,ガイドライン的にやっておられるものが,できればここでできればよかったなというふうな思いは残っているのですけれども,一番問題になりますのは,要するに善意の方に対して支払をしている実務をサポートするルールが法律上ないということで,それを全部ガイドライン等でやりますと,やはり基本的には払わないでいいものを払っているのかという,そういう法律の権利義務関係だけを見れば,本来的に払わないでいいものまで払っているというようなことになりかねない面がありますので,それをサポートするための法律上の手当てが少しできれば一番よかったかなと思っているのですが,確かに書き振りは非常に難しいというのは改めてよく分かりましたので,余り強いことは申し上げられませんのですけれども。 ● 金融庁は保険金の支払は非常に強く監督されているので,まさに約款はこうだけれども,実務はこうするから合理性が確保されているのだというような,そのあたりも含めて監督していただけるのではないかなと思いますので,是非よろしくお願いいたします。それで,○○委員の御説明があったように,何らかの措置を考えておられる会社もあるようで,是非,それがほかの会社にも波及するように,○○委員の方からも強く声を上げていただいて,そうやってだんだんよくなっていくということではないかと思うのですが,○○委員,どうぞ。 ● 1点だけお願いしたいのですけれども,御努力は非常にありがたいのですが,私はやはりこのままだと非常に気の毒な例はまだ生まれてくるのだと思うのですよね。そういう予測は少数意見だとおっしゃる方もいるかもしれませんが,ですから,業界にはやはりそういうガイドライン,自社ルールとして助言義務をルールでやると後が怖いというのがあるかもしれませんが,そうやって正直に言ってきた人にはきちんと対応せよというところまで,それこそいいルールをみんながまねするということだと思います。普通は悪貨は良貨を駆逐するという形になってしまう部分だってあると思うのですけれども,ですから,お願いとしてやはり自主ルールとしても助言義務の本当の一部を切り出してでもいいから,そういうときは説明しなさいと,期待しても駄目ですよと,それで保険契約がとれなくなるかもしれないけれども,言いなさいというところまでちょっと踏み込んで,御検討いただければと思います。   以上です。 ● ○○幹事。 ● すみません,皆さんがおっしゃっていることと重なっていると思いますし,それから,余り実務を知らない中での発言で恐縮なのですけれども,告知をした人に対してどのように説明するかというところが多少,先ほど難しいというふうには教えていただいた保険料積立金とか解約返戻金の支払の金額の計算式のところまでだったら出せるとか,それの発想に多少関係するところがあるのではないかなと思いまして,と申しますのは,契約を締結する時点で発病について告知してもらったということは,保険者の側としてはその病気に関してはもう担保しないということになっているわけなので,そうすると引き受けた基準が減っているのではないかと思うのです。   先ほど○○委員がおっしゃっていた,それでも割増し保険料を払って引き受けてもらうことがあるということは,逆に言うと,そこを保険会社の方で引き受けないというふうになったということで,本当は保険料が低くなるのではないかなとちょっと一瞬思ったのですけれども,もしそのぐらいの担保の範囲が減っただけだったら,保険料の計算は変わりませんよということであれば,割増し保険料で引き受けてもらう場合の逆というのは,そこの部分は引き受けてもらわないで,保険料は変わらないというふうになってしまうのかも分からないのですけれども,そのようになりますとか,ここの部分は担保しません,でも,保険料は同額ですとかいう保険料に対しての説明というのがやはり引受けの時点であってしかるべきだと思いますので,そこについて法律で何か書くということは,先ほどの積立金の支払額のところと同じように困難だと思うのですけれども,発想としては,法律では難しいと思うのですけれども,実務としてはあり得るのではないかなと思いまして,ちょっとコメントさせていただきました。 ● ○○委員。 ● 実際には保険料に及ぼす影響はそんなにないと思うので,それそのものを割り引くとか,そういうことはないと思うのですけれども,したがって逆に言うと,これこれこういうことを告知してあげたことを承知しましたと,保険料は変わりませんという,そういうことだと思います。 ● ○○委員。 ● 現実の制度を前提とすればそうかも分かりませんけれども,もし始期前不担保条項を取り外した場合に,現実の前提となっている状況以上にコストが生じる可能性はあると思うのですね。というのは,契約者がすべて正直ならば問題ありませんけれども,契前発病不担保条項がない場合には,外から見てプライベートなインフォメーションというのは全く分からないわけですから,その意味で経済学的に言うと逆選択のコストというのがすごく大きくなるので,それが保険料にはね返りますので,そういう仕組みを考えますと,契約者がすべて正直という前提以外だとやはりコストが生じると思います。 ● よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。   この契約前発病不担保の問題は,なかなかこういう契約条項の問題で,従来,契約者保護,消費者保護の問題というのは金融審議会の方でいろいろ検討するときにはするということでしたが,こういう純粋な契約法上の問題というのはなかなか乗ってきにくくて,従来,いろいろ問題があったのでしょうけれども,今回,こういう契約法を検討する場でいろいろ問題が指摘されて,契約法での対応というのはなかなか難しいということですけれども,やはりその問題があるというのが明らかになりまして,実務的には何とかそういう問題に対応しましょうということで,○○委員が先ほど言われたような方に少し動いていただくという,それで完全かというと,そこはいろいろな問題がなおあるかもしれない。なお継続的にウオッチして必要なときには,また○○委員,○○委員に,声を上げていただいて,問題点をいろいろ指摘していただいてというふうなことに今後なっていくのだろうと思います。   金融審議会の方では募集の問題とか,そういうことは場合によっては取り上げられるかもしれません。そういうところでまたそういう募集絡みの問題で検討されることはあり得るというふうにも思いますし,そういう中で今回の契約法の要綱の取りまとめとしては,こういうちょっとこちらの方に規定は直接は置かないということで御了解をいただければと思いますが……。○○委員。 ● それで結構ですが,一言だけ確認させていただきたいのですが,要するに,そういう気の毒な事件が裁判所に来たというときは,基本はまず信義則でできるだけ,そういう事例もありましたけれども,救うということで別にそれは救われないという世界ではないと,法律家としていろいろ工夫するのは当然だと,こういう理解の下での今の御集約ということでよろしいのでしょうか。 ● 是非○○委員も学説としてそういうことをきちんと,論文なり何なりで訴えていただければと思います。   ○○委員。 ● まだちょっと私の中で気になっているのですけれども,勧誘の時点,契約の時にいろいろ説明を十分にしてということなのですが,少なくとも今以上に書類をたくさんにしないで,なるべく口頭できちっと証拠に残るように,契約する者が理解できるように,そちらに力を入れていただきたいと。何か紙さえつくればいいというような感じがどうもしてしようがないものですから,それは是非お願いしたいと思います。 ● 募集規制でも今重要事項説明書というのと意向確認書面と,ああいうルールをつくるときも,それまではやたら情報というのはたくさんあれもこれもということで,たくさんの開示事項というのがどんどん増えていったのですが,あの時点では何でも渡せばいいわけではないので,もっと実質的に重要な情報を絞り込んで契約者の人が分かるようにという,少し整理したようなことはあるのですが,それでもかなりの情報,ただ,そういう情報は逆に出さないと,また後でこういう情報をもらっていないというクレームも付くわけで,なかなか難しいところなのですが,この問題は非常に議論の過程でも分かりにくい,お客さんにとって分かりにくい問題だというのは特に認識できたと思いますが,そこら辺は情報の提供の仕方も十分いろいろ御配慮いただければと思います。ということでよろしゅうございましょうか。   それでは,この傷害・疾病保険の部分は御了承いただいたということでよろしゅうございましょうか。   どうぞ。 ● 全部についてということですか,傷害・疾病保険の。最初の損害てん補方式の問題についてちょっと。この問題は,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約を損害保険契約と位置付けるのか,傷害・疾病保険契約と位置付けるのかという問題で,どちらに位置付けようとも実務的には余り影響がない問題ですし,恐らく保険契約者保護という点からも余り違いはないことなので,しかし,学理上は非常に重要な問題なので,ちょっとこの点についてコメントを申し上げたいと思うのですが,仮にこの要綱案で出ていますように,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約を損害保険契約というふうに位置付けた場合,いわゆる人身傷害補償保険で被保険者が死亡した場合に,人身傷害補償条項損害額基準ですか,これに基づいて算出されるところの損害額を保険金額として支払う,被保険者が死亡していますから被保険者の法定相続人に支払うという,現在,既に存在しているタイプの保険,これは恐らく損害保険契約として位置付けることになるのだろうと思うのですが,この種の保険で被保険利益というものは本当に観念できるのか。   もちろん,この保険ではまさに被保険者の生命,身体が失われたときに,その額を算定すると。その額を保険金で支払うということをやっているのですが,学理上の被保険利益というものは,本来は何か観念できないものではないかと思うのです。それを損害保険契約として位置付けることは,本当にそれでいいのかという問題がまずあるのではないかと思います。   そして,このことと関連するのですけれども,人身傷害補償保険を損害保険契約であるというふうに位置付けると,損害保険契約である以上は被保険利益がある人にしか保険金は支払ってはいけないということになるのですが,そうすると,例えば現在の人身傷害補償保険というのは,保険金受取人というのを被保険者の相続人に固定していますけれども,しかしながら,ある保険会社が新しい商品として保険金の支払額は,まさに交通事故等の場合の裁判実務で用いられている基準に従った保険金額は,こういうふうに算定して支払うと,しかし,保険金受取人は被保険者が指定する相続人以外の者であっても,そういう者に支払いたいという場合には,そういう保険商品というのは設計が可能だと思うのですが,ところがこれを損害保険契約だと位置付けてしまうと,そういう商品というのは多分つくれないのではないかと思うのですね。   つまり,損害保険である以上は,保険金というのは必ず被保険利益を有する被保険者にしか支払ってはいけないということになると思うので,損害保険契約だと位置付けてしまうと,保険金受取人の指定とか,あるいは受取人の変更ということはできないと思うのですね。実際,保険金受取人の指定変更というのは,この要綱案でいいますと生命保険と傷害・疾病保険契約にしか認められておりませんので,損害保険契約に実はそんなものはあり得ないということになるということで,これを損害保険契約だと位置付けてしまうと,商品設計の自由というものに制限を課すことになるのではないかという問題があると思います。   それから,あと損害てん補方式の傷害・疾病保険契約を損害保険契約と位置付ける場合には,人保険であることの特則を置くということで,その例として,今回,被保険者の意思による契約関係からの離脱のルールを幾つか適用するということを言われましたけれども,前回の要綱案で出ていましたように,そもそも企業保険か家計保険かの区別においても,損害てん補方式の傷害・疾病保険契約は損害保険契約なのだけれども,しかし,生命保険や傷害・疾病保険契約と同じように,常に片面的強行法規の対象にするという,確かそういう規定というか,そういうルールを設けられていたと思うのですが,この片面的強行法規の対象になるという点で,定額給付の傷害・疾病保険契約と同じに扱うということは,結局,損害てん補方式であっても人の傷害・疾病に関して給付を行うものは,やはり広い意味での人保険であるという理解の証左ではないかと思うのですね。   そこのところで人保険の一種であるというふうに考えておきながら,位置付けとしては損害保険契約というふうに考えるのは,やはりちょっとそこが矛盾とまでは言いませんけれども,何か評価矛盾的というふうな印象を受けるものですから,私としては以前も申したかと思いますけれども,傷害・疾病に関して給付を行う保険というのは,損害てん補方式であろうと定額給付方式であろうと傷害・疾病保険契約と位置付けた上で,もし必要な損害保険契約に関するルール,例えば重複保険とか請求権代位とか,それらの規定を適用する必要があるのであれば,そちらの方を損害てん補方式の傷害・疾病保険契約の特則として置くという方がやはり自然ではないかというふうに考えております。 ● 今の御指摘のうち,被保険利益を観念できるかというのはなかなか難しい問題があると思いますけれども,受取人概念を入れるというのは,余り今まで議論されてきていなかったのではないかなと思いますけれども,それがもし損害てん補方式であっても被保険者という概念だけではなくて,被保険者とは別の保険金受取人という概念を持ち込むというのは,本当に一般的な理解なのかどうかというのはちょっとよく分からないところで,余り今までそうは考えてこなかったというのが正直なところでございます。 ● 現在の保険商品としてまさに損害保険的な構成をした保険商品しかないので,ですから,それを前提にこういうルールを考えられたと思うのですが,しかしながら,まさに将来,どんな商品が出てくるか分からない,現物給付のときはそういう説明をされたと思うのですけれども,そのことも考えれば,支払保険金額の算定を,まさに損害額を計算して支払うというものを損害保険契約として位置付けてしまうと,もう非常に枠が狭まってしまうというか,商品設計の自由度が失われてしまうのではないかという気がするのですけれどもね。 ● ちょっとほかの先生方,委員,幹事の方々の御意見を伺わないと何ともあれですが,損害てん補といいながら被保険者でない人がてん補を受けるというのは,今度はそれが保険なのかという気もしますよね。 ● だから,それは傷害・疾病保険契約として位置付ければ,単に保険金の支払額は損害額を算定して支払うということで処理できると思いますので,全く保険法の方にどこか反するということはないと思うのですけれども。 ● 何となく分かるのですけれども,でも,それを言ってしまうと人保険でない損害保険も同じことになってしまわないのでしょうか。別に損害てん補を受けるのは被保険者ではなくて,損害を算定して,だれに払ってもいいではないかということにはならないのでしょうか。 ● いや,それは物保険である以上は損害保険の形態をとらなければいけないという大原則がありますので……。 ● あるのはどうしてなのですか。何が違うのかがよく分からないのですが。 ● それは利得禁止が求められるからだと思います。物保険に関しては利得が禁止されるからだと思います。人保険については別にそういうルールは働かないのでとりわけ……。 ● その利得というのは,損害以上のものは払ってはいけないという意味で,それがだれに帰属するかというところまで要求されるものかというところがまたもう一個出てくるのかなという気もするのですけれども。 ● それを被保険者以外あるいは被保険者の法定相続人以外の者に支払って,なぜ駄目なのかということなのですけれどもね,損害に相当する保険金額を。 ● 物の保険でもそれが同じことになってこないかということですが。 ● 物保険ですか ● 物保険でも同じことではないかと。 ● 物保険では,しかし,そうすると損害をこうむっていない人が保険金を取得して,そこで利得を得ることになりますから,物保険と人保険ではやはりそこは根本的に違うのではないかと思います。 ● ただ,保険金請求権を譲渡してしまえば一緒ではないかと思ったりもするのですが。 ● 別にそれは支払を受けてから譲渡してもいいと思いますけれども。 ● では,支払を受ける前に譲渡した場合とどこが違うのか,へ理屈っぽくなってくるのですけれども。 ● もちろん,支払の対価を受けて譲渡すれば,それは問題ないと思いますが。 ● そういう意味で,どこまで損害てん補ということにこだわるかということにもよりますけれども,それが人であろうと物であろうと損害という意味では,一緒なのではないかなという気がするのですが。 ● 今ごろその論争を始められても困るのですが。   ○○委員。 ● ○○幹事は立派な論文をお書きになっていて,人保険に限ってそういう理論的な主張をされるのは,十分理論的に可能だと思いますけれども,私は非常に保守的にやはり逸失利益の被保険利益として,最高裁の判決がある以上できるということで,今の商品設計も被保険利益の帰属するところにしかできないようなところがあるわけですけれども,それで今日の最初の議論と同じですけれども,立法政策としてはそこは少し価値判断は違うと思いますけれども,理論的には可能だけれども,ここで判断する場合には現状の方向でいけばいいと。3番目として個別にプラグマティックに傷害・疾病保険の規定を適用した方がいいという場合は個別に考えればいいと,そんなふうに考えております。 ● 人身傷害のような保険で,要するに今だと死亡事故の場合には相続人に保険金が行くようにしかなっていないのですけれども,仮にそれ以外の人が保険の客体としての被保険者の死亡によって何か損害を被るという可能性がある人がいるのであれば,保険金請求権者,それを被保険者というかどうかはともかく,その人に保険金が支払われるようにするという損害保険をつくっても,別に何の問題もないのではないですかね。 ● それは別に構わないと思うのですが,ただ,現在の人身傷害保険のような形で保険金を支払うものは被保険者の法定相続人にしかおよそ支払われないということなると。 ● そういうことはだれも言っていないのではないですかね。 ● ただ,損害保険契約だとここで位置付けてしまうと,それ以外の者には支払われなくなるのではないかというのが私の疑問なのです。現在は別にそういうルールがありませんから,ルールがないというか,そもそも傷害・疾病保険契約の規定がありませんから,解釈上,傷害・疾病保険契約の中の損害てん補方式のものについては,損害保険契約法の一部のルールは適用されるというふうに考えられていると思うのですけれども。 ● 実損てん補方式の損害保険契約というものをこの法律の上で考える上で,ここでいう被保険者というのはどういう意味,やはり保険の客体としての人保険でいうような人,保険事故の客体というのはそういう意味になるのかな。そうだとすると,今,○○幹事が言われたようなことになるのかもしれないのですが。 ● 今,イメージしていますのは,単純に考えていましたので,損害保険契約によっててん補されることとなる損害を受ける者のことを被保険者と呼ぶというようなイメージでおりました。 ● ですから,費用保険等であれば医療費用等をてん補する,それは分かりやすいのですけれども,人身傷害のように被保険者の生命・身体が傷つけられたという場合は,恐らく傷つけられた,あるいは死亡した人が損害をこうむるという,そういう構成なのだろうと思いますし,現在の実務ではまさにそういう構成をしていると思うのですね。そういう構成以外にはおよそできなくなってしまうのではないかという懸念を持っているという。 ● ○○幹事がおっしゃるのは,そうしますと損害てん補方式であっても,保険金を受け取るのは被保険者ではなくて受取人という概念を導入して,その人に定額給付方式と同様にしたらどうかと,こういう……。 ● はい。そういうことも認める方がいいのではないかということです。それは保険者が商品設計を自由に考えればいいことで……。 ● 例えば歌手とか俳優の興業中止保険なんて,あれはまさにその人がけがをして公演ができなくなったら,その会社,興業主に収入が入ってこなくなるので,損害保険金の支払を受けるという,ああいうのはどういうことになるのですか。これも人がけがをしたらという,あるいは死んだらということだから人保険的な要素もあるし,だけれども,被保険利益を持っていて保険金を受け取るのは全く別の人ということはあり得るわけですよね。別にそういう保険をこの要綱案の提案で否定する趣旨は全くないと思うので,そこはいろんなまさに契約の工夫で理論的に説明が付くものであれば,それはそれでいいので,何かそこへ急に受取人的なものを持ち込むというところの立法までせんといかんのですかね。 ● 無理に立法しなくてもというのが私の……。 ● どうしても実損てん補方式の規定を置いた方がいいという御意見があったので,今のところ,そういうのを考えてみようかと。もともとは損害保険だから何の規定も要らないということで考えたので,そこはやはり委員の中から,そういう単に損害保険だと言い切るよりも人保険的な面はあるから,少し規定を置こうかということを検討していただいているかと思うのですが,そこへまた非常に定額保険的な概念まで入れると,何が何やら分からなくなってしまうような気はしているのですが,今の時点で。 ● ○○委員からも御指摘があって,確か私の記憶だと保険法研究会のときにも○○幹事からいろいろ御指摘をいただいて,御議論いただいたところだと思うのですけれども,結局,先ほど○○委員がおっしゃった損害保険の損害てん補でいうところの損害のとらえ方で,結局は被保険者というのは損害を受ける者であるという,そこでいう損害をどう見るかによって商品設計の余地というのは,いろんなものが考えられるのかどうか分かりませんけれども,何か特定のものだけしか許されないということではなくて,そこは損害のとらえ方次第で若干の幅というのがあり得るという,そういう御趣旨でしょうか。私もそういうことで考えれば,○○幹事のおっしゃっていることも否定されないという解釈論も十分あり得るところで,そこを法律レベルの建て付けにまで格上げするのか,そこは若干解釈論にゆだねるところがあってもいいのではないかなという気もしなくもないのですけれども。 ● 人身傷害補償保険で被保険者の法定相続人以外の者についても保険金を支払うことが,そういう指定の仕方が可能であると。まさにそうするとそれは損害保険契約ではないという,恐らくそういう解釈をすることになるのかと思うのですけれども,そういう仮に保険が発案された場合には。 ● そこへ,その人の死亡によって損害を被るような立場の人がいたら,損害保険……。 ● それは損害保険として,つまり,そういう人に保険金を支払うのであれば。しかし,そういう人でない人に保険金を支払うという保険契約がおよそできなくなるのかというと,そうではなくて,その場合の支払保険金額が損害額のてん補であるかのように一見見えるけれども,それは損害額のてん補ではなくて一種の定額の保険金の支払であると。だから,傷害・疾病保険契約の一種であると,そういうふうに構成することは可能ではあるのかもしれないのですけれども,そういうことであれば……。 ● 定額保険もきっちりと決まった金額で払うということをしなくては,絶対定額保険でないというわけでもないかと思うので,保険金の支払い方がかなり実損てん補的なものになっているからといって,それで定額保険でないとまで言う必要もないと。それは定額保険の定義に反すると言われるのであれば,そこはどこにも規定がないカテゴリーというのをまた認めてもおかしくないのではないか。何かそういう余りありそうにないものについてあらかじめ規定を置けと言われると,ちょっと今の時点で困ると思うのですね。それとも全く定額給付も損害てん補も区別しないで傷害・疾病保険契約というカテゴリーをつくれということだったら,それはそれで……それがなぜそうならなかったのかと ● むしろ私は今,○○委員がおっしゃったように,そういう区別をせずに傷害・疾病保険契約としてつくることも可能であったと思うのですけれども,そうならなかったのはなぜかというところもお聞きしたいということで。 ● 区別しないでという,そういう意味ではちょっと想像力が乏しかったのかもしれませんけれども,既に損害保険と定額保険と言われる生命保険とがあって,損害てん補か定額かという,そういう発想で考えていたものですから,仮に両方を盛り込んだ傷害・疾病保険という形で何らかの条文を立てようとしますと,例えば保険金をだれが受け取るか一つをとっても,損害てん補方式にあっては被保険者,定額給付方式にあっては保険金受取人というように書かなければいけないのかなという頭がありまして,そうしますと,すべてのルールについて傷害・疾病保険について,全部一つ一つ書いていくのかと,損害てん補方式だったらどうこう,定額給付方式だとどうこうと。   それはとても煩瑣で耐えられないだろうということから,傷害・疾病保険のうち定額給付のものと傷害・疾病保険のうち損害てん補方式とは,それを講学上まとめて傷害・疾病保険と呼ぶことはもちろん何ら妨げないと思いますけれども,規定振りとしては二つに分けて,かつ,傷害・疾病保険のうち損害てん補方式については,基本的には損害保険のルールを素直に適用した方が分かりやすいのではないかということでこれまでは考えておりましたが,今日の御指摘を受けて,要するに損害保険における被保険者でもなく,生命保険における保険金受取人でもない,傷害・疾病保険における保険金の帰属主体みたいなものを新たに考案して,その両方を取り込んだもの,何かまさに第三類型というのをつくって条文を書けばいいではないかと言われてしまうと,確かにそういう発想もあるかと。   でも,書き切れるかはとてもこの段階では自信がありませんので,軽々なことは申し上げられないのですが,おっしゃる御趣旨は分かりましたが,今日の段階ではどちらかということではなくて,検討してみて,その検討結果はまた御説明させていただきたいと思います。 ● おっしゃるような保険がおよそできないということにはならないような気がするのですが,いろんな工夫をすれば。ちょっと,では,なお検討していただいて。 ● ○○幹事がおっしゃるとおり,もともと事務当局は先ほど来の現物給付の論点につきましても,あり得るものにはきちっと契約ルールがかかるようにしてと,自ら申し上げている立場として,その発想はここでも全く同じですので,ここになった途端に条文を書くのが大変だから引っ込めるという,そういう御都合主義に走っているわけでは決してありませんので,そこはちょっと考えてみたいと思いますが,ただ,いかんせん困難な問題があることも間違いなさそうですので,検討したいと思います。 ● では,その点はそういうことで。   ほかはよろしいでしょうか。   それでは,この傷害・疾病の部分は今の点を除いて御了承いただいたということかと思います。   それでは,最後の16頁,第4の保険法の適用範囲につきまして御審議いただきます。まず,御説明をお願いいたします。 ● 資料の16頁,第4では実質的に保険契約と同様の共済契約なども契約法である保険法の適用範囲に含めることを提案してございます。また,中間試案では「保険」の意義につきまして,多数の者がその危険に応じて保険料を拠出することなどの内容を含む規定を置くことの当否を含めて,なお検討することとされてございましたが,(注1)に記載したところを踏まえ,明文の規定は設けないことを提案してございます。   保険法の適用対象となる保険又は共済等について,明文の定義規定を設けないとしても,告知義務や危険の増加等の各規律の内容から,被保険者の危険の程度を踏まえて契約の締結の可否や保険料が定められるようなもの,あるいは大数の法則が妥当するようなものが前提とされているということができると考えられますので,保険又は共済等の内容については現行商法と同じく解釈にゆだねることを提案してございます。これに関連して契約の規律について定める保険法の規定が共済等にも適用されることを法文上明確化することについても検討することを資料に記載してございます。   次に,(注2)では保険契約が関係当事者間の信頼関係を基礎とするものであることを踏まえ,関係当事者が信義に従って誠実に行動することや情報の格差を是正するために,相互に必要な情報の提供に努めることなどを定める総則的な規律を設けることについて記載してございます。具体的な規律の内容については,保険法がいわゆる企業保険をも含めた保険契約一般を規律の対象とするものであることや民法の一般法理との関係も踏まえつつ,更に検討する必要があると考えられますが,契約の締結の場面や保険金の支払請求の場面などにおいて,個別具体的な説明義務なり情報提供義務なりを契約法上の効果と結び付く形で規定することがなかなか難しい中で,抽象的な努力義務とはいえ,このような信義則及びこれに基づく相互の情報提供についての規律を設けることには意味があると考えられますので,この点について御意見をいただきたいと考えております。   以上です。 ● それでは,この部分につきまして御意見をいただければと思います。   ○○委員。 ● 簡潔に申し上げます。(注2)のところですけれども,結論としてはやはり反対したいと思います。まず,ずっと前に資料20の10頁のところで,保険者,保険契約者等による説明・協力義務というところで,このとき決めたのは保険契約者等による説明・協力義務を直接定める規定を設けないものとするという形になったのだと思いますし,助言義務との関係で助言義務を認めないのだったら,こちらも負担させることもできないという御発言もあったのではないかと思います。それで,信義則はもう言わずもがなですが,民法第1条第2項にあって,保険契約の債権債務関係に適用されると。それにもかかわらず,なぜ屋上屋を架すような規定を置かなければいけないのかというのが論点だったと思うのです。   この(注2)の文言には断定はできないのですが,幾つか4つぐらい問題点がありまして,1つは従来,民法上の理論からいって被保険者とか保険金受取人というのは関係者とは言えても,厳密には契約当事者とは言えない。それがこの規定で当事者的な地位に引き上げられて,何か義務を負わされてしまうのかという危惧と,次に「互いに協力する」というときの「互い」という文言によって,従来,法律上の義務とまでは考えていなかった事項について,契約者側の被保険者とか受取人に負担させる可能性があるのではないか。それから,保険会社側にも義務があるではないかといっても,規定上は努める義務にとどまっていると。最後に「終了に至るまで」という文言で,保険金支払時,解約返戻金支払時,さらにいうと失効返戻金支払時まで含まれるのかというような問題もあるのだと思うのです。   そういう危惧を除いた規定というと,結局,想像するに保険者,保険契約者その他の関係当事者は,保険契約が適用されるすべての場合において保険契約の特有の何か当事者間の利害関係を特に考慮して,信義に従って誠実に行動しなければいけないとなれば当たりさわりはないのですが,これだったら民法の規定で十分だというふうに思いますし,やはり当初持ち出されたときの規定で,立法趣旨説明で契約者側にいっぱい負担を課すことばかりあったわけですので,いろいろ熟慮したのですが,この規定には反対したいと思います。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 私は積極論者でして,定めてくださいというように前から申し上げておりまして,先ほどの契約前発病不担保条項の問題もございますし,いろいろ今回規定上定めればよかったけれども,なかなか技術的に難しいというところも多々ございましたので,契約者側もそれから保険者側についても両方,場合によってはこういう一般条項から導き出せるものが,根拠付けられるものがあり得るというふうに私は思っておりますので,この点については私は積極論をとりたいと思っております。 ● ○○委員。 ● 二点,意見を申し上げたいと思います。   一点目はただいまの信義則的な規定につきましてですが,この22回にわたる部会におきましてさまざまな御意見,保険者に対する期待を頂だいいたしまして,また,保険会社としても被保険者を含めました方々に対する御協力いただきたい事項をいろいろ申し上げましたが,残念ながら必ずしも法律の中に規定するということにふさわしくない内容,しにくい内容もございましたのですが,こういう精神は盛り込む意味で罰則のない努力義務として,是非この規定を設けていただきたいと。保険というのは関係者が互いに協力してつくるものだという趣旨も,この中に是非盛り込んでいただきたいと思っております。   もう一点は,共済等も適用範囲に含めるという事務当局の整理につきましては,このとおりで賛成したいと思っております。   以上でございます。 ● ○○委員からどうぞ。 ● もう残すところあと2回になりますので,一応3点ほど意見なり要望を申し上げたいというように思います。   1点目ですけれども,中間試案にありましたように検討事項ではありましたけれども,保険法の適用対象を明確にするために保険法上の「保険」の意義,それについて明確化することを検討するということになっておりました。私どもはその必要性について,あるということで見解を述べさせていただいたところでございます。本日の部会の提案につきましては,これまで述べてまいりました私どもの見解とは異なるということでございますけれども,8月のパブリックコメントの意見やさまざまな検討の状況を踏まえ,慎重な検討をなされた結果として私どもは受け止めたいというふうに考えております。   それから,2点目でございますけれども,ただ,提案にあるように適用範囲につきましては,さまざまな保障の類型を包含をするという契約のルールを策定をするということでございますので,その適用の可否について無用な混乱が生じないように,適用範囲については可能な限り明確化していただきたいというように考えております。   それから,3点目でございますけれども,本部会の審議事項でございませんけれども,共済等も含めた新たな契約ルールを策定をするということでございますので,具体的にはそれにかなう法律名も含めた検討というのを要請申し上げたいというように思います。   以上でございます。 ● では,○○委員。 ● 信義則に関しまして,ちょっと私もこれは消費者に不利になるのかなとか,いろいろ考えてはいたのですけれども,余り不利になるということがちょっと考えられないのと,それから生保,損保,それから共済さんのお話を伺っていまして,余り疑ってもいけないかなと思いまして,まさに自分自身が信義則でいかなければいけないのかなというふうに思っていましたが,先ほど○○幹事の方からこの条項があることによって,ある部分,消費者に,法律に盛り込まれなかった部分が裁判所において検討されることもあるのかなというふうに考えまして,私は賛成したいと思います。 ● それでは,○○委員から。 ● (注2)の信義則なのですけれども,考え方の背景みたいなところは理解できるのですけれども,一方でやはり具体的な規律というのは,要件とか効果を明確にして規律すべきものではないかなというふうに思っていまして,そういう意味で,こういう信義則,抽象的なものというのが果たしてどういう意味を持つのか,ちょっと条文を見てみないとにわかには判断できないかなというふうに思っていまして,ちょっと条文を見て判断させていただければというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 同じようなことを申し上げるつもりでいますが,先ほどの事務当局説明ですと情報の提供というお言葉がありましたので,情報の提供というのが今まで先ほどの皆さんおっしゃったように,全く言わば撲殺というか,一所懸命そういうものを入れてくださいと申し上げたけれども,なかなかかなわなかったと。そういう点ではおっしゃるように評価をしたいと思うのです。ただ,条文の書き振りではありますが,もしかすると,ややもするとイーブンに消費者側と保険者側を扱うような条文が出てこられると,それは大変困ると。   明らかにもうこんなに違うわけですから,こんなに違うことからいえば,保険者側には努力義務なんかではなくて,ねばならないという義務を課したいぐらいでございまして,そういう意味では情報の提供という部分に一るの望みはあるのだけれども,消費者側,契約者側,被保険者側,みんなまとめて関係者というふうに言われていますが,その人たちとそれから保険者のたとえ努力義務だとはいえ,責務の条項の立て方によってはイーブンにされてはかなわない。そこの辺は,是非明らかに違うものに対してきちんと保険会社側に,そもそもお金を預かって長期間運用して,それを保険事故のときに払うのだという,言わば忠実義務といいますか,お金を預かる責任というか,そういうものを全部盛り込んでいただくような形にしていただかないと困るかなと思っております。 ● では,意見をずっと聞いていきます。   ○○委員から,では。 ● (注2)のところは賛成したいというふうに思います。   あと基本的にはこの保険法というのがこういう形で基本的な規律を規定するという意義は非常に重く感じておりますし,全体的には賛成をしたいというふうに思いますが,第4の保険法の適用範囲でございますけれども,ここに「(共済等)」というふうに書いてございます。   共済というのは特に○○委員が代表で出ておられますけれども,制度共済というものとあと私どもが組合の方でやっているいわゆる自家共済といいますか,労働組合の共済が労働組合法に基づく福祉活動としてやっているものがございまして,大きな制度共済なんかは心配ないというふうに思うのですけれども,小規模なところ,あるいは升があっても割と簡素な形での運用をやっているところ,幾つかございます。慶弔見舞金的なものからかなり大きなところまでいっぱいあって,これを通観して何か言うことはなかなか難しいと思うのですけれども,特に大きな規模でやっているところから非常に不安の声といいますか,そういう声が出ているということでございます。それはなぜかといいますと,いわゆる一般の保険と一緒にされてしまうのではないかという漠然な不安でございまして,私もここでの議論だとかその趣旨については説明をしているのですけれども,なかなか不安な気持ちを持っているということでございまして,彼らの心配はまさに共済つぶしの法案になってくるのではないかということでございます。   労働組合の共済というのは,もともと労働組合というのは共済活動から始まったというところがありまして,非常に歴史が長く,そういうところで大小を問わず,いろんな形で取組みがされているわけですけれども,そういったところの現実的な運営に大きな支障が出ないような形でしんしゃくをしていただきたいと,基本的にはすべて適用範囲に含めるということについては基本的なルールですから,これは当然だというふうに思いますけれども,これによって各業法なり何なりが改正されると思いますけれども,その中でやはり同じようにやりなさいということになりますと,事業を廃止せざるを得ないとか,そういうことになると,私どもとしては労働運動的にはその部分からして,ちょっと承服しかねるという声が出てきてしまいますので,是非,そこは慎重にお取扱いをいただきたいというふうに思います。 ● ○○委員。 ● 論点が二つあるのはばらばらになっていますが,よろしいのでしょうか。   では,信義則のところですけれども,やはり○○幹事のおっしゃったところ,私はそうは考えていない。例えば始期前発病のところ,これがあると何か救える場合が広がるのかと。最初はそう思ったのですけれども,やはりそうはならないのではないかと。まず,これは一応条文の骨子だという前提で,ここに掲げられているものがですね,そう考えたのですけれども,要件効果がなくて単なる努力義務規定で,努力義務規定が効果を果たしている場合があることは認めますけれども,どういうことで,どういう論理というか理屈で,これで始期前発病が救えるのかというのは,もし救えるのだったら,そもそもこちらの方で認めていただいてもよかったのですけれども,私はそういう理屈にはどうもならないのではないかと。だから,一見いいようで不利益の方が大きいのではないかと。   特に私はいろんな法曹の各層の方ともいろいろ話してみたのですが,こういうものがなければいけないというのはどうも,特に裁判規範という観点から見ると理解できないと私も思うのですが,そういう観点で,ですから,まことに申し訳ないのですけれども,○○幹事,始期前発病の場合がこの規定があると救われるというのはどういう論理なのでしょうか。それがとてもそうはならないのではないかと。互いということでまさに先ほど○○委員がおっしゃったように,対等なものとして巻き込まれていってしまうというのであれば,やはりそれは注意しないといけないという,そういう気持ちなのですけれども。 ● ○○幹事。 ● お答えいたします。始期前発病のところで申し上げますと,保険者側がしっかり説明するということはここから出てくることだろうとまず思いますし,それから,前々回ですか,善意の契約者に対していろいろ申し上げましたグッドプラクティスをルールとして,ガイドラインとしてあるいは設けられるということは,その努力の表れの一つだろうというふうに思いますし,そういった形でいろんな保険者側の努力を条文上は後押しできるというふうに思います。もちろん,契約者側についてもこの信義則条項を設けることによって,不正な利得を目的とした行動をすることはいけないのだということは,当然,ここから導き出せるので,保険契約の射倖契約性といった基本的な性格からも,そういう背信的な行為を防ぐ,そういう意味で契約者側にそういうことはしないようにという意味で,信義則に従って行動せよというのは,言わば当たり前の話ではないかというふうに思いますので,これがそんなに契約者側に不利に働くというふうには私は考えておりません。 ● ○○委員。 ● 私もこの信義則の規定について賛成でございます。逆に言うと,反対する理由がないではないかと。だから,目先でこれがたまたま不利に働くのではないかとかいう,そういう発想で物事を進めるべきではないのではないかなと。やはり究極のところは裁判官が信義則を,要するに契約当事者ではない受取人も含めて,トータルに判断していただくことのよすがになれば最低は結構なのですが,もう一つは企業ユーザーとしても信義則,これは当然であると,これに反対する意味なんて全くないし,それから相手方の保険会社さんの立場に立って,私がもし保険会社のコンプライアンスオフィサーだったら,こういう規定は大歓迎です。やはり保険会社を運営する立場で,経営の立場で従業員,末端契約者,皆さんが信義則に従って行動してほしいという号令をかける立場にあったら,こういうのが欲しいなと思いますし,したがって,これに反対する理由がちょっと考えづらいというのが私の見方でございます。 ● ○○委員。 ● 簡単に。要するに,でも,それに従わなくても何の効果がないわけでしょう,この規定ですと。私は,昔,企業の社会的責任というのを商法に入れろといったときの議論と同じで,目的はとてもいいのでどうしても引かれるし,私も引かれてやはりいいのかなといったん思ったのですが,突き詰めていくと,やはり根本的な保険契約関係というものとこの規定のものとは,先ほど言われた情報格差,情報処理能力格差,その差を埋めるコスト負担能力格差がない中で,こういうものを入れるというのは,もっと成熟して保険契約関係が正常なのが普通だというときにはいいと思いますけれども,そうではない段階で効果のないような規定というものを置くというのは,やはり根本的に問題があるのではないないかという考え方です。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 私は,この規定はやはり諸刃の剣ではないかというふうな懸念がありまして,殊に義務を負担する名宛人がその他関係者となっていたり,又は互いにというふうになっていたりというところに多少懸念は持っていたのですけれども,結論としては賛成いたします。   と申しますのは,先ほど○○幹事がおっしゃっていた保険契約を金融商品,これは業法のレベル,監督のレベルだと思うのですけれども,金融商品と評価されているということをお聞きしまして,従前,保険契約というのが先ほど○○幹事がおっしゃっていた射幸性との線引きという,ちょっと危ないところに行きがちな契約だというところと,あとは先ほど○○委員がおっしゃっていた長期間にわたって多数の人から拠出を受けた資金を運用して,それで偶然に発生する危険に備えるということですので,お金を預かる側,運用する側の忠実義務というのが本当であれば,そのように正面から規定があれば望ましいなと思っていたところだったのですけれども,集団投資スキームであるということを金融庁の側からでもおっしゃっていただいたということは,やはりこの相互という文面に,これが最終的にどういう規定振りになるかは分からないですが,やはりいろんなところで解説するときに,集団投資スキームの運営者として負担する忠実義務というのが,やはり比重としては大きくしていただけるのではないかなと期待しますので,この規定を設けていただくことは賛成いたします。 ● ほかに,まず二つ,適用範囲とこの信義則の両方ありますが,まず信義則の方について,そろそろまとめをしたいと思いますが,ほかに御意見はございますか。   ○○委員。 ● これは努力目標ですから,結局は特にこうしてくれということはないのですけれども,もしかなり強く考えると,基本的に経済学のモデルだと,だれにも知られなかったら自己の利益を最大化するというモデルを考えていまして,それと信義則とはどうつながるのかなと,ちょっと私自身にこの信義則とは何だろうという疑問がございます。それとの関連で民法で規定している以上に,より多くの善意契約性が要求される根拠というのが果たして何だろうかというその辺が何かはっきりしていないので,先ほどの○○幹事の射倖契約性ですか,あれもよく分からないところがありまして,どうも確かに言葉としてはお互いに行動基準として信義に基づき誠実だ,これは当然で大切なことであり,また,協力して契約を遂行するというのも非常に大切なことなのですけれども,実態として考えると,これは何を意味しているのか,あるいは何を根拠に,繰り返しになりますけれども,民法以上に要求されるのかというのが,その辺が私自身よく分からないところがございます。 ● 若干補足させていただきますと,今,○○委員から御指摘いただきましたけれども,この規定でより多くの善意契約性が求められるとか,そういう難しいことを言うというよりは,まさに○○委員がおっしゃったように,こういう努力義務がありますということを素直に言っている規定ということで,確かに効果と結び付かない規定についてという御指摘は,○○委員からも○○委員からもいただいたところですが,個別具体的な場面での説明義務といったところについては,なかなか具体的な効果と結び付けるのは難しいので,規定を置くのはということをそもそも私どもが申し上げてきたところですけれども,ですから,それが難しい分,なおさらせめて努力義務の形であれば何とか書けないことではないのではないかという,そういう素朴な発想から出発していまして,何かこれに裏の意図を込めてとか,そういうことではなくて,文字どおり,先ほどまさに○○委員がおっしゃっていただいたとおりでして,お互いそういう努力はすべきではないかということを表明してはどうかという発想でございます。   民法で足りるのではないかということにつきましては,確かにおっしゃる疑念はあるのですけれども,保険契約の場合は保険契約当事者である保険者と保険契約者以外に,まさにその他の関係当事者として被保険者もいれば,保険金受取人もいるということが所与の前提としていろんな規定が成り立っていますので,やはり民法ではそういう意味では言い尽くせていない部分もあるのかなと。そういう意味で,保険法で独自にこういう信義則をうたうことには,一定の意味があるのではないかというように考えているところでございます。   るるいただいた御懸念は保険者サイド,契約者サイド,両方あるわけですけれども,言ってみればどちらもそれは努力義務であって,できないことを求めるわけではありませんし,あくまで「必要に応じ」と,(注2)の2行目から3行目にかけてありますとおり,必要以上の理不尽な要求にこたえなさいという根拠になるようなものを考えているわけでは全くございませんので,そこはまさに必要に応じて,お互いにそういう努力はすべき立場なのではないかということをうたってはどうかという発想で考えているということでございます。 ● お互い自分の立場を有利に運ぶのならいいけれども,不利に運ばれては困るというそこの懸念があって,なかなかストレートにみんな賛成というわけにはまだいっていないのですけれども,やはりこの部会でずっと審議してきた中で,それぞれみんなこういうことが本来望ましいのに実現できないということが多々あって,コンセンサスができないわけだから,そのままでは規定も何もないということで,本当にそれでいいのかということであって,そういうところをこういう努力規定のようなもので少しすくい上げていって,今後の解釈論の発展の契機になればというぐらいのところではないかと思います。   特に消費者がこういう努力義務を課されることによって,何か従来以上に厳しい扱いを受けるのではないかということはないと思うのですね。消費者と保険会社との間には情報の格差があると。これは厳然たる事実であって,それを踏まえた上での信義則,努力義務ということなので,その点はこれが妙に保険会社によって濫用されていくというふうなことにはまずならないのではないかなと思っておりますが,なお今日いろいろ御意見をいただいたことでございますので,次回に向けてなお事務当局の方で御検討いただくということにしたいと思いますが,○○委員,どうぞ。 ● 一点だけ。私が主張しましたのは,どちらがいいかなという観点は根本的にはなくて,そういう観点でやるのはやはりよくないと。今,○○委員が前回議論したときにまさにそういうことをおっしゃっていて,それはそのとおりだと思うのですけれども,効果のはっきりしないものを規定しておいて,それをひょっとしたら裁判所が利用してくれるかもしれないというふうに思わない方がいいのではないかという,そういう観点ですので,ちょっとそこだけ。 ● あとは御意見として伺ったということで,ほかによろしいでしょうか。   それでは,また,これは次回に御審議いただくと。   もう一個の適用範囲の方はいかがでございましょうか。○○委員の方から,あるいは○○委員の方から御意見をいただきましたが,そのあたり,何かございましょうか。では,一応そういう御意見を伺ったということで,事務当局の方から補足していただけますか。 ● 第4の保険法の適用の範囲の本文,それから(注1)につきましては,○○委員,○○委員から重要な御指摘をいただいたというように考えております。仮に共済も適用範囲に含まれるということで御答申をいただいた場合には,当然のことながら,それを前提に事務当局として立案作業にかかるということになりますけれども,その際に適用対象になったからといって,共済も保険も一緒くただみたな乱暴な説明振りにならないように,今日の御指摘を十分踏まえて,あくまで基本的なルールは共通ということで整理がされたけれども,保険,共済,それぞれについてはさまざまもう第1回目の部会から御指摘いただいている点がございますので,その点はそういう部会での御指摘も踏まえた上での共通ルールなのだということは,十分こちらとしても説明する際に留意し,意を尽くしたいというように考えております。   それから,○○委員から御指摘がございましたけれども,共済が適用の対象になった場合に,混乱が生じないように適用範囲が明確になるようにという点も,実質をお決めいただいたことを踏まえての立案作業に当たっての法制的な問題がございますので,どこまで実現できるかということはございますけれども,立案する立場として新しく適用される範囲が極力明確になるように取り組むのは当然のことでございますので,そのような形で今日の御指摘も踏まえて検討していきたいというように考えております。 ● ということですが,よろしゅうございましょうか。   ○○委員。 ● そのように取り扱っていただければありがたいというふうに思いますけれども,いわゆる自家共済,私も労働組合のことしか分からないので,ほかのところは全然分からないのですけれども,共済規程を設けてかなり簡便な手続で安い共済掛金でやっているということで,かなり組合員には喜ばれているというようなことと,組織論的にそれで労働組合の組織化に使ったりとかしているという,これは内側の事情でありますけれども,そういうものもあるという背景がありまして,かなり私どもの方にはいろんな声が来ていると,私自身はこの保険法の趣旨は説明はしているのですけれども,なかなか御理解いただけないので,いろんな説明会のときには是非とも御協力をいただきたいということも併せてお願いしておきます。 ● では,そういうことを伺ったということで。   では,この点もよろしゅうございましょうか。   それでは,これで部会資料25の全体の審議を一応終わりまして,現物給付の問題とか,若干年越しの積み残しの問題が出ましたが,なお審議は続きますので,次回とその次で最終的な取りまとめに向けて,なお御協力をいただきたいというふうに思っております。どうかよろしくお願いいたします。   では,事務当局から。 ● 次回の会議ですが,第23回会議は来年1月9日水曜日午後1時30分から,今日と同じ法務省のこの20階第1会議室での開催を予定をしております。   何か保険法部会で1年が終わって保険法部会で1年が始まるみたいで,非常に寝心地の悪い年末年始になるかもしれませんが,是非,あと少しですので御協力をお願いしたいと思います。 ● それでは,大変長時間ありがとうございました。これで終了いたします。 -了-