法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  平成20年1月10日(木) 自 午後1時32分                       至 午後5時42分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会の第3回会議を開催いたします。 ● 本日は御多忙中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   本日の審議に入る前に,1点,皆様にお諮りしたいことがございます。   先般,非行を犯した少年の親たちの自助グループから,少年法部会で意見を述べたい旨の要請が私あてに文書でございました。その点につきまして昨日,その団体から当部会においてヒアリングの予定はないものと判断し,ヒアリングに代えて発言要旨として用意した文書を意見として提出する旨の連絡がありましたので,そのように対応させていただきたいと存じます。   この点について事務当局から何かございますか。 ● 今回提出された意見書につきましては,事務当局において閲覧できるようにしておりますので,提出された意見書を御覧になりたいとの御要望がございましたら,個別に事務当局に申出をしていただきたく存じます。 ● そのような扱いでよろしゅうございますか。   それから,前回の会議で○○委員からヒアリングで発言した参考人の方について,本人の希望があれば議事録を顕名にするということは考えられないかという問題提起がありましたが,これについても事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 前回会議におきまして○○参考人から御自身の発言部分について,実名で公開されることを希望する旨の御発言があり,これに関連しまして○○委員から,その取扱いについて御質問がございましたが,この点につきましては第1回会議におきまして,法制審議会の庶務を担当する○○関係官から,議事録に関するこれまでの経緯と現状について説明があったとおりでございます。   改めて御説明しますと,法制審議会の議事録の作成方法等につきましては,平成10年の第124回会議におきまして,「発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を除いた議事録を作成し,これを公開する」と決定されているところです。したがいまして,前回の議事録の作成につきましては,委員,臨時委員,幹事,関係官,参考人の別にかかわらず,会議において発言をした者の氏名はこれを除いて作成する取扱いとなりますので,御理解を賜りたいと思います。 ● そのような取扱いでよろしゅうございますか。   ありがとうございました。それでは,そのようにさせていただきます。   それでは,諮問事項についての審議に入りたいと思います。   前回,要綱(骨子)第一について,資料14の「被害者等による少年審判の傍聴についての主な論点(メモ)」,この資料を本日もお手元に配布していただいておりますが,この論点(メモ)に記載した項目に沿って議論を行い,その中の1から4まで,すなわち「総論」,「対象事件」,「要件」,「傍聴の場所,方法等」については,一通りの御議論をいただいたところでございます。   それで,本日は引き続きこの論点(メモ)の5と6,すなわち「傍聴を認められた者への付添い」,それから「傍聴をした者等の守秘義務」について議論を行うこととし,それとともに要綱(骨子)第二から第四までの第二巡目の議論,第2読会を行いまして,更に要綱(骨子)全体についての第三巡目,第3読会を行いたいと考えておりますが,そのような手続でよろしゅうございますでしょうか。   それでは,そのように進めさせていただきます。   なお,本日は席上に○○委員から提出された資料,○○委員から提出された資料,○○委員から提出された資料,○○委員から提出された資料が配布されております。それぞれの委員から提出された資料の内容につきましては,傍聴についての残りの議論と要綱(骨子)第二から第四までの第二巡目の議論を終えた後,すなわち,要綱(骨子)全体についての第三巡目の議論に入る前に御説明いただくことといたしたいと思いますが,それでよろしゅうございますか。   それでは,そのように進めさせていただきたいと思います。   それでは,まず具体的な議論に入る前に,事務当局から法務省が実施した諮問事項に関する意見募集の結果について説明をしていただきます。 ● 法務省におきまして,今回,法制審議会に諮問した事項に関する意見募集を実施しましたので,その結果について簡単に御説明をさせていただきます。   そもそも今回の諮問は法整備に関するものであり,行政手続法がパブリックコメントの実施を義務付けている命令等を制定する場合に該当するものではありませんが,国民のだれもが被害者になる可能性があることなどを考慮しますと,制度を構築するに当たり,広く一般の御意見をお聴きすることが適当ではないかと考えられたことから,意見募集を実施することといたしました。   今回の意見募集は,昨年11月30日から本年1月4日までの間,通常のパブリックコメントと同様に電子政府の総合窓口であるe-Govのホームページに,諮問事項,その他の必要事項を掲載するとともに,法務省のホームページにおきましても意見募集の紹介をしました。その結果,個人や団体から合計78件の御意見が寄せられました。寄せられた御意見につきましては事務当局において整理し,資料15の「意見募集手続に寄せられた御意見の概要」として配布いたしましたので,そちらを御参照いただければと思いますが,各諮問事項に対し,賛成,反対,それぞれの立場から様々な内容の御意見をいただいております。皆様におかれましては,このような御意見についても審議,検討の参考にしていただければと考えております。なお,お配りした資料15は寄せられた御意見の内容を整理したものですが,寄せられた御意見そのものを御覧になりたいとの御要望がございましたら,個別に事務当局にお申出いただければと考えております。   以上,諮問事項に関する意見募集の実施結果について御説明させていただきました。 ● ただ今の説明について,御質問等はございますでしょうか。 ● この各意見が,各第一とか第二について,賛成が幾つで反対が幾つでというような発表はなさらないんでしょうか。 ● 先ほど少し触れましたとおり,今回の意見募集は国民のだれもが被害者になる可能性があることなどを考慮しまして,広く一般の皆様の様々な御意見をお聞かせいただくことにより,そのような御意見をも踏まえた制度の構築が可能になると考えられることから行ったものでありまして,例えば世論調査などのように賛否の多寡を問題にするものではございません。また,実際上も,例えば,今回複数の団体から御意見をいただいておりますが,団体からの意見については,その構成員の数にかかわらず1件として考慮しておりますので,そういった意味からもその数というのを問題とするのは,ややいかがなものかと考えているところでございます。 ● 同じような趣旨の質問なんですが,今日,私の方は午前中に,出ているパブリックコメントを一応全部閲覧させていただいて,後のまた議論でも触れたいと思っていますけれども,寄せられた意見としては法務省の案に反対であるというような意見も相当数あったというか,かなり多かったというような印象もあったものですから,その辺りの大まかな分布なども御説明いただければいいのではないかと思って,御質問をしようと思っていたんですけれども,同じ質問ですのでまた後の議論で話をしたいと思います。 ● そのほかに何か御質問はございますか。   ないようでしたら,要綱(骨子)第一の議論に入りたいと思います。   「被害者等による少年審判の傍聴についての主な論点(メモ)」の5に記載してあります傍聴を認められた者への付添いを認めるかについて,御意見等がございましたら,ちょうだいしたいと思います。 ● 付添いが必要なことについては非常によく理解するところです。ただ,その条件についてなんですけれども,この要綱(骨子)の条件でいった場合に,「不当な影響を与えるおそれがないと認める者」という中に,恐らく必要性としては,支援員とか被害者支援弁護士は当然として,御親族などもおられるかと思います。その場合に,仮にその気持ちの状況が審判等にマイナスの影響を与えるようなおそれがあるような状況に客観的にあるにしても,それを裁判所が判断するということは非常に難しいのではないかというふうに懸念いたします。ですので,例えば例示として被害者支援員とか被害者支援弁護士とか,あるいはもうちょっと広くてもいいのですけれども,要するに,裁判所から見て,類型的に弊害がないと判断しやすいような例示を挙げるとかして,もう少し狭めた方がよろしいのではないかと思います。 ● 御案内のこととは思いますけれども,付添いの制度というのは既にございまして,刑事訴訟法の157条の2で証人に対する付添人という規定がございます。その規定におきましては,その不安又は緊張を緩和するのに適当であり,かつ,その証人の供述を妨げたり,不当な影響を与えるおそれがないと認める者を,その証人の供述中,証人に付き添わせることができるというふうに書いておりまして,この刑訴法の規定につきましては,私どもが承知している限りでは適切に運用されていると承知しており,他方,例えば裁判所の方で特に判断に困って非常にやりにくい規定になっていると,こういった話などは特段承知しておりませんので,ここは同様の規定振りで,是非いきたいと考えているところでございます。 ● 裁判が公開されております刑事裁判での付添いと,本来非公開で,そして被害者についても要綱(骨子)ですらも故意の犯罪行為による死傷とか,かなり被害者についても限定しておられる,そのような状況の下に付添いの名であれば,ほとんど友人,知人,御親族,どなたでも取りたてて問題があるような根拠がなければ審判廷に入れるということになりますと,やや被害者についてこれだけ絞りをかけているということとの均衡を失するようにも思います。 ● この点について,ほかに御意見はございますか。 ● 意見というよりは質問になると思いますが,どういう動かし方というか,運用になるかということとのかかわりで質問します。これは被害者の方が傍聴を申し出るときに併せて付添いの申出がされて,あとは被害者の方についてどうするかという判断と同時に,裁判所が健全な裁量で判断すると,そういう手順になるわけですね。 ● 手続的な事項につきましては,場合によっては規則に定められるかもしれませんけれども,基本的なイメージとしてはおっしゃられるとおりかと考えております。 ● 先ほどの御説明によれば条文の文言も同じですし,これまでの刑事裁判で証人となる方の付添人と同じような事項が判断要素になるわけですので,恐らく裁判所として,この全体の制度の趣旨をも勘案して,適切な裁量判断が容易にできるのではないかと思うのですけれども,その辺りは今度は裁判所の方に伺えればと思います。 ● お差し支えなければ,裁判所の関係の方は御発言いただけますか。 ● 今,事務当局から御説明があったとおりの手順なり,イメージというのを裁判所としても同様に考えております。細かい規則の検討というのは,規則を設けるとしたらどう書くかというのはまだこれからにはなりますけれども,非公開の場合とそれから公開の刑事裁判とで,付添いとして付けるべき者という性質が大きく変わることもないのではないかと思っておりまして,運用は同様のものになってくるのではないかと思われます。 ● このふさわしい方というのはいろんな方が,カウンセラーであったり,お医者さんでありましたり,これまでの関係でいろいろと相談に乗っておられた知人であるとか,いろんな方がいらっしゃいますので,要綱なりあるいは法文の体裁として到底書けないと申しますか,それはもう要綱の体をなさないと思いますので,なおかつ裁判所の方で健全な裁量と申しますか,認定をなさるというふうに思われますので,私は先ほど○○先生がおっしゃったような例示を付することには反対です。 ● 今,刑事裁判と同じということで議論が進んでおりますけれども,例えば第一の三の秘密の漏えいに関しましても,被害者と同様に付き添った人についての秘密漏えいの禁止ということがうたわれているわけです。非公開の審判の内容が付添人及び被害者を通じて外部に漏れるか否か,漏れるとしてどのような場合なら正当で,どのような場合は正当でないのかということは非常に重要な問題です。また,三の議論のところで申し上げたいと思いますけれども,そこにかかわるのであって,刑事裁判の証人の付添いとは違う範疇を持っているということだけ強調させていただきます。 ● 今の議論のうち刑事裁判との比較というのは,裁判所の裁量によるという判断で考えるという点だけが多分似ているのであって,考慮要素というのは恐らく違うんではないでしょうか。考慮要素は,少年審判の特性に応じて配慮・判断をするということになるんではないでしょうか。骨子の二を見ると,その点について「かつ,審判を妨げ」云々,「これ」というのは審判でしょうから,審判に不当な影響を与えるおそれ云々ということで,当然のことながら少年審判の特性に応じて,いろいろな裁量的判断をするということになるんだろうと思いますので,その限りにおいては,今,○○先生御指摘のいろんな点も含めて,裁判所が総合的な裁量判断を下すということになるんではないでしょうか。   それで,同時にまた質問ですけれども,例えばそれにふさわしい人を法文の上で例示ということによって,その裁量判断の合理性は確保できるようになるんでしょうか。ここに列挙された片方の不安・緊張を緩和するのに適当だという者,それから同時に審判について少年審判の特性に応じて,その運営の妨げにならないように考えると,それらの総合的な判定ということの合理性を確保するということは,例示によって高まるということになるのでしょうか。そこら辺,ちょっとよく分からないので教えていただければと。 ● ○○委員が言われたように,「審判を妨げ,又はこれに不当な影響を与えるおそれがない」という要件を掲げているわけですので,実際に,こういう人を付添人にしたいというふうに申出があった場合に,その人がどういう人で,その人が付き添った場合にどういう問題があるかというのは,裁判所の方で必要な判断がされるということになるんだろうと思います。   それから,○○先生が言われた,付き添った者が少年の身上に関する事項を漏らすというような問題についても,付添人に対する義務を定める以上は,例えば付添人になる人について,こういう義務があるので守ってくださいということを,必要があれば説明をするということもあるだろうと思います。そういう意味で,問題がないような形で付添人を認めることや,付添人に義務を守ってもらうかということについては,運用上,適切になされるというふうに考えています。   それから,今の○○先生の御質問にもあった点ですけれども,例示を加えるというのは,結局例示の問題でありますので,それに掲げられた被害者支援員や被害者支援弁護士という例示が仮に書けるとして,それ以外の人が排除されるわけではありませんので,実際に傍聴をされる被害者の方といろいろな形でコンタクトを持って,付添人としてふさわしいという人がいる場合に,被害者支援員でないから被害者支援弁護士でないからという形で,排除されるわけではないということになるんだろうというふうに考えております。 ● 支援員の方とか弁護士以外の人は排除されるべきであるとは,多分,○○委員もそう思っておられないし,私も思ってはいないわけですけれども,そういう意味では例示をすることで,どういう意味があるのかということの問題になると思うんですが,でも,そう言い出したら例示の条文というのはほとんど同じような問題が出てくるわけで,基本的には単純に刑事裁判の場合と同じでないというベースがあるので,付き添われる方がいらっしゃるということ自体はよいことなんだけれども,どなたになるのかということについて,少年審判に与える影響をより慎重に判断した上で,そういう方がいいかどうかということを決めていただくということがいいのではないかという,やはり,そういう注意を促すという意味で,例示をしていただく方がよいのではないかというようなふうに思っています。秘密漏えいの関係もありますし,それから傍聴の問題と絡むわけですけれども,狭い審判廷の中で人数が増えるというようなこともありますし,そういう意味ではいろいろと少年審判特有の問題もあるので,例示をすることでより注意を喚起するというような方法の在り方というのは十分あり得るんではないかと思います。 ● 私が先ほど例示に対して反対だと申し上げましたのは,以前,少年審判規則29条の中にいろんな例示を挙げて書いておられるのは,非行少年側といいますか,その立場に立った方を掲げておられることで,その他などというのも同じような理解に立ってくるというのが一般多数説ではなかったかと思っております。今回も仮に被害者の代理人たる弁護人の方とか,何かそういうふうな一部の方に限りますと,恐らく逆の議論を実務上巻き起こして混乱になるのではないかと思います。つまり,そういうごく一部の方,先ほど被害者の親族の方とかは問題ではないかというふうなことをおっしゃいましたが,そういった方を排除するために,この例示を挙げたのではないかというふうな誤解に基づく主張によって,実務がかえって混乱すると思いますので,例示を挙げるべきではないと思います。 ● 私も○○委員と同意見でありまして,例示は必要ないし,むしろ例示をすることによって有害な場合もあると思うんです。支援員だからといって必ずしもいい人ばかりとは限らない。それよりも親戚の人の方がはるかにいい場合もあるし,それからカウンセラーのお医者さんの方がいい場合もある。だから,例示を挙げることによって,そこに絞りをかけるのはいいようで私はよくないと,逆に悪い場合もあると思います。だから,裁判所のそのときの状況に応じた裁量に任せるのが一番いいと,こう私は思います。 ● この点について,そのほか御意見はございますでしょうか。 ● 最後に1点だけ補足させてください。裁判所による判断なんですけれども,被害者御本人であれば,事前の調査官による調査等で,被害者の現在の心情等,ある程度事前調査も可能です。しかしながら,付添いの方につきましては,事前調査の段階でまで,付添いの方について言及されるということはむしろ少ないと思うんですね。傍聴の際になって親類のこの方をとか御近所のこの方をと言われた場合に,裁判所で把握できるのは恐らく被害者さんとの関係あるいは職業,このぐらいではないでしょうか。その方が一体加害少年に対して,どのような思いを持っていらっしゃるか,少年審判についてどのぐらいの批判的な感情を持っていらっしゃるか,そこまで裁判所が把握するのは恐らく無理であろうと私は思います。 ● この論点(メモ)の5について,そのほかの点について何か御意見,御指摘などございますでしょうか。 ● 事務当局に御質問と,併せてちょっとこちらの方で今日出した意見書の方にも少し触れてあるんですが,検討をお願いしたいなと考える事項がございます。要綱(骨子)ですと,「傍聴する者に付き添わせることができる」という定めになっております。これは文言をそのまま読むと,傍聴する者が在廷しておって,その横にだれかが付き添っているということが基本的な形として予定されているんだと思いますが,場合によったら付添いと呼ぶ範囲を超えるのかもしれないんですけれども,被害者御本人が在席しない場合に,委託を受けた弁護士等が代わって審判廷に在席して,後日,被害者の方に審判の状況等を伝えるといったような,言わば代理傍聴とでもいうような方式も考えられるのではないかというのが一部の弁護士の中で議論されておりまして,現段階で事務当局として付添いというものに関して,被害者が在席しない場合というのは念頭に置かれているのかいないのか,ちょっと教えていただけますでしょうか。 ● 付添いという言葉からもお分かりいただけるように,被害者が在席するということを前提にしているものでございます。 ● ということは,代理傍聴というのは認めない,認めるべきではないという御趣旨でしょうか。 ● 代理傍聴というのは言わば間接的に傍聴するということかと思うんですけれども,間接的に事件の内容を知りたいと,審判の状況を知りたいとの御要望につきましては,記録の閲覧・謄写の制度がございますので,審判調書の閲覧・謄写をすることによって,そこに記載された少年ですとか保護者ですとか,そういった者の供述の内容を把握することが可能でありますので,そのような必要性というのは必ずしも高くないのかなというふうに考えております。また,被害者の方が傍聴を希望することにより,つらいと,不安感や緊張を覚えるというような場合には,正に今御議論いただいている付添いの規定がありますので,そういったもので対処することも可能になっているということで,代理傍聴というのは慎重に検討すべきではないかというふうに考えているところでございます。 ● 代理傍聴の話になりましたけれども,私たちも代理傍聴は必要であると考えております。というのは,事件の審判の成り行きを見たいけれども,加害者と同じ部屋にいることは耐えられない,自分の方がおかしくなると,こういう人だっていると思うんです。現に成人の法廷に出ていて失神した人だっているわけです。だけれども,やはりその審判の成り行きの詳細は知りたいと,こういう人はいるわけでありまして,そういう場合には親戚の者とかあるいは弁護士とか,そういうふうな方に出席してもらって,それから審判の成り行きの話を聞くと,こういうことも必要でないかと思っております。   それからまた,これはまた話が別のところに行きますけれども,事件の傍聴をさせる犯人,対象,これについて私どもは重大な傷害を受けた者とか,それから強姦,強制わいせつの罪名も入れるべきだと言っているんですが,これは強姦等によって大変なショックを受ける,一生立ち上がれない人もいる。そういうふうな人たちがやはり審判の状況を知りたいけれども,とても加害者がいる審判廷には行けないと,こういうこともあるわけでありまして,そういう点についても代理傍聴の制度は必要だなと,そういうふうに思っております。これは対象との関係で申しましたけれども,それ以外にも。 ● 私は被害者支援のセンターにかかわりもしているんですけれども,○○委員もそういう御経験があると思うんですが,成人の場合の代理傍聴というのはものすごくニーズが高い。今,○○先生がおっしゃったような場合に,どうしても知りたいんだけれども,出ることが困難だというときに,代理傍聴を希望するというのがありますので,その辺も,ただ,これが成人と少年と同じように考えていいのかというのはあるかもしれませんけれども,ニーズが高いことは事実であります。ちょっと付け加えておきたいと。 ● 代理傍聴という言葉が使われておりますけれども,私は,先ほど○○幹事が御説明したような観点から,制度として設けるのは適切でないと考えます。前回も前々回も少し話題にいたしましたけれども,この度設けようとしているのは非公開である少年審判について,被害者の方がその目で,その場で審判の様子を見たいという強い要請におこたえするために,例外的に裁量的な傍聴を認めるという枠組みであり,代理傍聴というのは被害者の方が直接審判の様子をその場で見るという考え方とはおよそそぐわないものである。傍聴というのはやはり代理できるものではないであろうというのが一つです。そのような御要請があるということは理解できるところでありますけれども,それは審判の様子を第三者から伝達されて間接的に知ることに他ならず,そのような要請にこたえる制度は,実質的には審判経過の通知と記録の閲覧という現行の制度で満たされることになるであろうと考えます。 ● 私も基本的に,今,○○委員がお話ししたところと同じように考えます。傍聴について成人の刑事事件との比較のような事柄も少し出てきましたけれども,やはり制度の前提が全く異なっているわけで,そちらの場合におよそ物理的な状態が許せば,何人であっても傍聴できると,ただし,自分で行きにくいというときに代わりに,だれか私に代わってその様子を見てきてくださいというふうに言うのは全く自然な事柄でありますし,代理ということを持ち出すまでもなく,代わりに行った人が傍聴するという構成が十分とれるということになろうかと思います。ところが,少年審判の場合に恐らく今のようなことと同じようにするということになりますと,被害者以外の第三者にも傍聴の機会を与えようということになるわけで,今,議論しているこの骨子の性格から大きくずれてくるように感じますので,私はこの点については,この要綱との整合性という観点から疑問を感じます。 ● 代理傍聴というと,本人がいないのに代理人だけでやるというふうにとられておって,それくらいなら記録を見るだけで十分ではないかと言われますけれども,そうではないんですよね。自分も聞きたいのはやまやまだけれども,行けないということであって,むしろ,付添人だけの傍聴と言った方がいいかもしれません,そうなれば。だれでも代理人にもなるというわけではないんです。本来,付添人と2人,傍聴すればいいんだけれども,ところがもう息苦しくなっておられなくなってくる,あるいは途中で退席したいと,自分は退席したいと,もう耐えられないということだってあるんだ。そのときに付添人だけが残ると,残って見届けて話をすると,こういうことであって,それは記録を閲覧したからといって満たされる問題とは全く違ってくるんです。私は代理という言葉が悪ければ,当事者と一緒に行ってもいいんですよ,一緒に行って,そして退席して付添人が残ると,こういう制度はできないかと,こういうふうに考えております。ちょっと代理傍聴というと言葉がどぎつく思われるとすれば,付添人だけの傍聴,そのときに本人は外で待っているとかいうふうなことですね。 ● まず,基本的なところは反対論の方々がおっしゃったところと同様でございます。ここでの議論の出発点というのは,審判が非公開であることの要請と,非公開であったこと,今後もあり続けることに当然十分な理由はあると考えております。その一方で,殺人事件などの重大な犯罪の被害に遭った方の心情というのも特に配慮しなければいけません。そこで,やはり少し抽象的な話にはなりますけれども,中心におられるのは被害者本人であり,被害者本人が,そういった重大な事件の被害に遭われた被害者本人の心情に特に配慮する必要があります。これはもちろん裁判所も個々の事件において判断するときに,十分に尊重しなければいけません。これが被害者本人でないと,それが言葉はともかくとして代理ということになってくると,かなり判断の要素としてもちょっといろんな違った要素が入ってくるのではないかという気がいたしております。   また,これも審判運営ということで抽象的な話にはならざるを得ませんけれども,被害者本人が在廷している,このことの意義というのは裁判官にとって非常に大きなものだろうと思いますけれども,そこに被害者本人でなくて,その代理という方が1人でいるといったときに,感覚的なところかもしれませんけれども,少々違和感があるのは否定できないところだろうと思っております。基本的には最初に申し上げたとおり,代理傍聴というところまでくると,何か本来目指していたものとのずれが大きくなるんではないかというところがございます。 ● ちょっと先ほど来のお話を伺っていて,やや私の言ったことも不正確だったかなと,皆さんも少し誤解をされておられるのかなと思うんですが,そもそも今回要綱(骨子)で傍聴する人というのは,先ほど来,被害者本人というお言葉を皆さん使われておられますが,文字どおりの被害者本人が傍聴するケースはほとんどあり得ないんだと思います。死亡又は生命重大危険,生命重大危険は医療行為を施しても死亡に至る蓋然性が極めて高いと。そんな状態の人が自ら審判廷に来る場面というのは,恐らくほとんど想定できないだろうと。元々傍聴するというのは被害を受けた御本人ではなくて,被害者等法定代理人又は配偶者,直系親族等という方が来るケースなんですね。   だから,付添いのところでちょっと私が問題提起を今出してしまったので,やや議論が錯綜したかもしれないけれども,そうであれば,第一の一にかかわる部分の中で「心身に重大な故障がある場合」,つまり,被害者本人がその制度を利用するに困難な場合に,配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹と,ここに委託を受けた代理人,場合によったら,確かに類型的に審判を害するおそれの少ない者に限定するという趣旨で,弁護士に限るとかというような形はあり得ると思うんです。だから,そういう意味では代理傍聴とか本人がいないときの付添いの射程範囲という形で問題提起してしまった私も悪かったかと思うんですが,被害者本人が傍聴しているのと場面が異なるという御議論は,ちょっとこの要綱とそもそも合致していないのではないかというふうに考えます。 ● 確かにそのように言える点がなくはないとは思います。いろいろな理由で被害者本人が傍聴できないケースというのはかなり多いとは思うのですけれども,それでもきちんとした限定を設けて,とりあえずは被害者に準ずる立場の方と言っておきますけれども,要綱はそういう方々に限定して傍聴を認めることにしようとしているわけですね。それから,○○先生の御議論は気持ちとしてはよく分かるのですけれども,要綱が傍聴の際に付添人の在席を認めるという趣旨は,被害者又は被害者に準ずる方々の心情の安定のために付添人として認めるということであって,その副次的効果として付添人がたまたま審判を見聞することがあるにしても,積極的な情報収集あるいは被害者への情報提供という形でそれを正面から認めてしまうのは,やはり非公開の原則を崩すものだろうという具合に思っております。 ● そのほか,この点について御意見はございますでしょうか。   それでは,同じく論点(メモ)の5について,そのほかの論点について何か御意見はございますか。   それでは,その次の論点(メモ)6に行きたいと思います。6は傍聴した者等の守秘義務の点であります。「①どのような事実(事項)について,どのような場合に,これを課すこととするか。」,それと,「②守秘義務のほかに,傍聴をした者に知り得た情報を漏示させないようにする仕組みが必要か。」,この両方の点について御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 確認なんですけれども,審判を傍聴された方又は付き添われた方が,審判の様子といってもいろんな様子があって,非常に高度なプライバシーにわたるようなことを外部に言ってはいけないということは,もちろんそうだとは思うんですけれども,ちょっと高度なプライバシーかどうかというのがあれなんですけれども,例えば審判廷での少年の様子とか,そういうようなことを例えばメディアの方から,どうだったんでしょうかというようなお話があったときに,それを述べるというようなことは要綱からすると,やはり駄目という趣旨なんですか。   それは事柄が駄目なのか,およそやはりメディアに審判に関連して知ったことを言うということ自体が,これは後の方のことになるのかもしれませんけれども,健全育成等で問題だということで駄目だということになるのか,要するに典型的に一つ心配をするのがメディアの人に言ってしまうので,これは別に悪意でおっしゃるとかいう意味でなくて,被害に遭われた場合に,我々が加害者の付添いをしている場合もそうなんですけれども,どっとメディアの人が押し寄せ,しかも毎日のように押し寄せられると,何かコメントが欲しいとか,どうなっているんですかと言われる中で,つい何かを言ってしまうというような,そういうつらい立場に置かれてしまうのではないかということもあるものですから,特にメディアとの関係でそこを確認したくて御質問したんですけれども。 ● この要綱(骨子)の第一の三なんですけれども,前段と後段に分かれておりまして,前段が言わば守秘義務を課したものとして,「少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず」と定めているところです。この「少年の氏名その他少年の身上に関する事項」というのは,少年の氏名ですとか,住居,職業等の少年の一身に関する事項でございまして,今,御指摘のあった内容につきましては,正に内容次第によるかと思うんですけれども,こういった一身に関する事項であれば漏らしてはならない,それ以外のものについてはこの守秘義務はかからないと,法的整理としてはそのようになるかと思います。   あとはそういったことをお話しになった場合に,今度は後段の規定がございますので,例えば,それがマスコミに大きく取り上げられて,最終的に審判に影響を及ぼすようなこと,これは当然避けなければなりませんので,「調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはならない」というふうに書いておりますので,そういったところに該当してくるのではないかというふうに考えております。 ● 事柄のいかんを問わず,報道されてしまうという事態になってしまえば,すべてとここで言えるかどうか分からないので,原則としてとか基本的には後段に当たるということになるんですということなんですか。 ● そこは結局はお話しになる内容ですとか,どの程度,そこが取り上げられるのかといった,正に個々具体的な事案によって変わるものですので,ちょっと一般的に申し上げることは難しいのではないかというふうに考えております。 ● 前段に戻ります。守秘義務のところですけれども,正当な理由があれば漏らすこともあり得る,認められるということになるんですけれども,どこまでが正当な理由なのか,私にはちょっとよく分からないので皆さんの御意見を聞かせてください。例えば民事訴訟を提起するときに,氏名,住所等を使う,これは当たり前の正当な理由だと思うんですけれども,例えば民事訴訟における原告,つまり被害者の本人尋問で少年の身上に関する事項を供述する,しかもそれが余り民事訴訟の主たる請求原因と密接な関連はないというような場合に,公開の法廷で審判で聞いた身上に関する事項を供述するのはどうなのだろうか。あるいは刑事裁判になりました,逆送されました。そこでの意見陳述で審判で聞いた少年の身上に関する事項を被害者がおっしゃるということは,大いにあり得ることかと思います。その場合,それは正当な理由に当たるのか当たらないのか。まず,事務当局の御意見としてはどうなんでしょうか。 ● この正当な理由につきましては,例えばということで申し上げますと,損害賠償請求権の行使の必要がある場合ですとか,民事保全や保険金の請求のために用いる場合というのが考えられるかと思います。それ以上に公開の法廷で,その内容を話すことなどについて御質問があったかと思いますが,これも同様の説明になってしまいますけれども,やはり話す内容ですとか種々の事情を考慮して判断されることになるかと思いますので,ちょっと一般化して申し上げにくいということでお答えさせていただきたいと思います。 ● 裁判所の現場の立場から,傍聴者あるいは付添人に対して説示しなければいけないと思うんですよね,こういうことをしたら問題ですと。ですから,基本的にマスコミの取材に応じて,それが発表されるようなことになると,原則としては少年の健全育成を妨げるおそれがあるので,それは控えていただきたいと裁判所の方は言いたいなと思うんですが,そういう理解でよろしいんでしょうかね。 ● ちょっと繰り返しになってしまいますけれども,やはりおよそ何もしゃべってはいけないかと言われると,難しいところもあるかなと思います。例えば,既に広く知られている事項とかいうのも恐らく事件の内容であればあると思いますので,そういう事柄が仮に審判の中で出てきて,それを改めて知ったということで,それまで言ってはいけないかと言われますと,そこはやはりやや厳し過ぎるのかなという気もいたします。そこは,審判で知った事項をお話しされる内容と,事件あるいは少年についてどういうことが知られているのか,少年については余りもちろん知られていないとは思うんですけれども,それとの兼ね合いの部分もあると思います。 ● 今の○○委員からの質問との絡みなんですけれども,多分,検討しないといけないのは,特に裁判所の立場からすると余計そうなるのかもしれませんが,当該事件において秘密であることが漏れるのかという問題と,要するに非公開でずっと脈々とやっている少年審判が要するに中身によってはメディアに出る,もちろん,既に表になっていることなのかもしれないけれども,そういう形で出るということがあり得るということになると,これから以後の審判もどういうふうになっていくのだということで,やはり私としては不特定多数の人に明らかになるような道がものによってはあり得るみたいな枠組みを認めてしまうと,やはり非公開審判に対する基本が揺らぐというような問題もあるんだと思うんです。   ですから,裁判所の方の説示の仕方もまた難しいとも思いますし,ものによってはこういう場合もいいかもしれないけれども,でも,何かそれも不当な影響が及ぶと駄目なんですとかいうことでは,何を言っているのか分からなくなってしまうので,やはり不特定多数に触れるような形で情報を出してもらうのは困るというふうなところで線を引く必要があるし,最初に言いましたように,当該事件だけの問題ではなくて,少年審判全般のことを考えると,絶対とここで決められるのかどうか分かりませんが,原則はやはり当たるんですよというぐらいの確認は要ると思うんですね。 ● その点は,やはり今の閲覧・謄写の規定と同様の規定振りになっておりますので,閲覧・謄写した結果,審判でこういうことが行われていたということを承知した被害者等の方々がその審判の結果を第三者,特に,先ほどおっしゃられたような不特定多数の方におよそ話してはいけないという形の整理は,恐らくされていないのではないかと思います。傍聴についても恐らくお知りになる事項はかなりの部分で重なってまいりますので,傍聴だからそういう不特定多数の第三者へのことは,全部お話ししてはいけませんという整理をする必要があるのかというと,そこは疑問があるのではないかと思います。 ● ○○です。あともう一点,今の○○幹事と大体同じような観点の話になるんですけれども,要綱(骨子)だと傍聴により知り得た事項ということで,必ずしもプライバシーにかかわる事項に限らない,例えば審判廷が思ったよりも狭かったとか,和やかに進められていたとか,少年がよく反省していることが伝わったとかということも,傍聴により知り得た事項に含まれると思うんです。そういったこと一切を不特定多数,特にメディアに対して話してはいけないということになると,果たしてそこまで秘密を守らなければいけないものなのかと。少年の健全育成を妨げたり,あるいは審判に支障を生じさせるようなことがないのであれば,傍聴した感想ですとか,そういったことを被害者の人が例えばメディアに話すことを,一律に禁ずる必要はないのではないかというふうには思います。 ● 恐らくこの傍聴の秘密の保持ということになると,今,話に出ているように,そんなに強い絞りをかけることは無理であるということになると思います。なるからこそ,私はやはり傍聴の問題点を根本的に考えていただきたいのです。刑事裁判の一般傍聴がある場合であれば,被害者さんが傍聴された結果の感想などをメディアにお話しになりましても,メディアはメディアで客観的な視点を持って裁判について報道することができます。ところが,非公開の少年審判について例外的に被害者が珍しく入られた。そうなればメディアのインタビューは殺到いたします。そこで被害者さんが感想として述べられること,どこまでが主観的な感想なのか,あるいは客観的な状況なのか,これはだれにも区別はつきません。そうなると非公開の原則が被害者さんという窓口を通して破られる。これは単に破られるということではないのです。正確でない,客観的でない,被害者さんというお立場から見た少年審判が外部に伝わってしまう。この問題点は非常に大きいので,単に非公開原則が例外ができたということと,また別な課題があるということを是非意識していただきたいと思います。 ● あと恐らくもし自分が付添人の立場であったらということを考えたときに,被害者の方からそういう形でメディアに,被害者の方から見たということでいいんですけれども,話が出たときに,付添人とかとしては,本当はもうちょっとここが違っていたんだよというところを言いたくなるという部分は出てくると思うんですね。そうなってくると,場合によっては付添人の側も記者会見をして,少年が一見反省しないように見えたけれども,彼はこういうような背景があって,また,この日はこういう質問のされ方をしてしまったために,彼はこういうふうになっていたので,実は彼はこんなような気持ちだったんですということを,またカウンターのような形で述べざるを得なくなるような場合もあり得ると。そうなってくると,非公開で家裁で審判をしているにもかかわらず,場外乱闘のような形でメディアの場面でそこのまたやり取りが出て,世論はそれを見ながら,家裁では今そんな審判をしているのかなということが伝わっていくということにもまたなりかねないので,やはり原則,例外ということをきっちりしておいた方が私はいいと思っているんです。   それから,条文の書き振りで論理的に記録の閲覧・謄写の場合とどうなんだということはあるかもしれませんが,先ほど○○委員が言われたように,特に重大事件においては審判でどんな様子であったのかということについてのメディアの関心が非常に強くて,私自身の経験からも,いつ私が家庭裁判所に行ったのかということ自体を必死でみんな聞きたがって,行ったら,今日は何があったのかとか,どうだったのかとかいうようなことをすごく聞かれるというような実情ですので,やはり記録の閲覧・謄写に比べて,かなり誘惑というとあれなんですけれども,いろんなアプローチが多いので,やはりここのところは慎重にしないといけない。   それから,もう1点,次の6の②とも関係してくるんですけれども,もし漏えいというか,外に出てしまったときに,どういう対応策があるのかということについて,これがまたかなりしっかりした形でもし何かあるのであればややあいまいだけれども,決めておいて,その後の実務でここまでしたときには何か処罰されたとか,ここまでされたら,こんなことが起こったというような形での担保の在り方もあり得るのかもしれませんけれども,仮に被害者の方たちに罰則まで加えるというのはなかなか難しいよというような話になってくると,元の基準はあいまいだわ,それを破っているのか破っていないのかもよく分からないまま,それを担保する措置もないわということになってしまうので,やはり基本というのをしっかり決めていただく方がいいのではないかと思っています。 ● 今,○○委員,○○委員から御指摘があった点ですけれども,現状でも記録が閲覧というよりもむしろ謄写ですね,記録が謄写された場合に関して,同じ要件立てで秘密の保持義務ないし一般的な注意義務というのがかかっておるわけですよね。もちろん,個々的には問題になりそうなケースというのはあったのかもしれないけれども,少なくとも私としては記録の謄写を認めたことによって,何か非公開原則が極端に破られるだとか,マスコミとかインターネットに記録がどんどん流出しているという状況はないというふうに理解しておりますので,同じような形での秘密の保持義務ないし注意義務を課すというのは,少なくとも傍聴の場合と閲覧・謄写の場合とで,そんなに決定的に大きな非公開の原則が破られる,あるいはマスコミに情報がどんどん流出していくというような心配は,それほど異ならないのではないかという考えは持っています。   それから,被害者を通じて審判の状況が語られた場合,それが事実かどうかチェックする術がないという趣旨の御指摘がありましたけれども,逆に被害者の側で事件にかかわっていると,付添人弁護士が記者会見等をしたときに,被害者側はそれが事実かどうかというのをそれこそ全く確かめる術が今ないわけですよね。そういう意味では,被害者の人に審判で知り得た事項を仮にメディアに流すようなことがあったとしても,一方的なイメージが世間に間違って伝わっていくというような懸念は,それほどやはり今と変わらないのではないかと私は思いますし,少なくともそれで何か審判を害するというようなことがあった場合には,注意義務違反ということになるわけですから,何らかのペナルティーを負うことになるので,今,お二方がおっしゃったような心配というのは,それほど傍聴の制度の根幹にかかわるほど重大な問題ではないんではないかと私は理解しております。 ● 先ほど○○委員がおっしゃいましたとおり,このような制度ができますと,家庭裁判所の裁判官の御負担は増えると思います。傍聴を希望する被害者の方に対して,十分なお話をされる必要を生ずるのではないか。それも審判廷ではなくて,開廷の前に若干の時間をとってお話しになる方がいいかと思いますけれども,その際,この席でも健全育成という言葉が頻繁に使われますけれども,被害者の方にとってはこれはかなり抵抗のある観念ではないか。もちろん,長い目で見れば理解されるでしょうけれども,事件直後の状態などで手続は少年の健全育成を旨としておりますと裁判官が強調されれば,それ自体に対する反発もあるだろうと思いますけれども,そこのところを工夫して説明していただく必要があります。少年が健全育成の路線から外れて,新たな犯罪者になってしまうというようなことは更に新しい被害者をつくり出すことになるので,そのために少年法というのはこういう形で作られているということを,御面倒でもお話しいただくことが大事なのではなかろうかという気がいたします。 ● 甚だ非論理的なことを申し上げて恐縮なのですが,多分,そのような形になったとしても,○○委員が言われるように,それほど現状と変わるということはないだろうという具合には予測しております。それから,被害者側の方が積極的にメディアに対して発言するなどということも,私はないだろうと思っております。むしろ,メディアの側の誘惑的な動機に基づいてどんどんアプローチが来てしまうことが懸念されるわけです。全く同じ性質のものとは思いませんけれども,これは少年法61条の問題などと似たような構図を持っているわけでありまして,少年法の条文の規定振りでこうした予測される不都合な事態を回避するというのは,到底不可能だろうという具合に思っています。これはメディアの在り方等を含めた大きな議論の下で解決されるべきことであって,この部会としては解決策を見出すことができない,あるいはすべきでない性質のものだという印象を持っております。 ● ○○委員の発言の趣旨はちょっとまた○○委員に聞かないと分からないんですけれども,私の趣旨は仮に条文の規定振りを変えるというようなことでなくても,基本的にこの条文に込められているのは先ほどから言っているように,原則としてというような言葉でしか使えないかもしれませんけれども,メディアに少年審判の情報が出るということは基本的にはまずいんですよというような趣旨が込められていますと,すごく例外的なことがあるのかないのか分かりませんけれども,したがって,家庭裁判所の方が基本的にここで知ったことをメディアに出していただくのはまずいんですよという説明は,そういう説明であれば間違っていないというか,そういう解釈指針のようなものを完全にここで別に決めるわけではないけれども,やはりそういうすう勢,そういうようなものだというような認識で,この条文が作られているんだということを確認するということは,とても大事なことではないかなと思って,ちょっと先ほどから発言をしております。 ● この条文に特に反対の人はいないんではないですか。内容がどうだということで,規定を置くこと自体が反対という人はいるんでしょうか。 ● ですので,私とかは元々傍聴が反対だという意味での問題はありますけれども,それを除けば○○委員が言われるように,要するに正当な理由もないのに情報が漏れるということは,まずいという規定をしっかり置いていただくという意味では賛成なんです。あとはそこの趣旨をしっかり確認する必要があるのではないかと,裁判所での実務などが困らないように,ある程度の指針というか,方向性,趣旨というのを確認できるのであれば,しておいた方がいいというような意味での発言です。 ● やはり余り心配ばかりしておったら先へ進まないと思うんですよ。大きいところで条文を置いて,その趣旨に従って運用するというのが裁判所の説示の問題もあるでしょうし,マスコミの接触の仕方もあるでしょうし,いろんな場面があるので,一つ一つつぶして完全無欠の条文を書けとか,ここで議論しておけと言っても不可能だと思いますよ。やはり大枠の進んでいかなければ事は進まないと,私はそう思っています。 ● こういう具体的な情報が外へ出ることに対する懸念ということで考えてみますと,結局,例えば非行事実ということ自体は社会的にはっきりしておるわけで,しかも被害者であるとか御遺族の方もいらっしゃるわけで,どういう事実が審理対象になっているかというのは,元々何をどういうふうにおっしゃろうがそれが守秘義務の対象になるものではないと思います。残るのは,その事件の当該特定のこの少年がやったかどうかということに結び付く事項について,必要もないのにおっしゃることを差し控えていただくとか,あるいは非公開とされている審判廷ですので,なおかつ物理的な広さだとか何だとかではなしに,具体的なやり取りについて外に言わないようにしていただきたいというだけの話ですので,先ほどのマスコミとの関係をどのように説示されるかというのは,裁判所の方でこれまでの記録の閲覧・謄写と同じような形で運用していただけると,私自身はこういう規定で何ら支障は生じないんではないかと思います。 ● では,論点(メモ)6について,ほかに御意見等ございましたら。 ● 今の被害者が裁判を傍聴することについて,少年が萎縮してしまうとかということはさんざんここでも議論されていることだと思うんですが,傍聴するということは被害者にとってもそんなに簡単なことではなくて,それこそ萎縮という言葉は使えないかもしれませんけれども,緊張感とか,ある種の精神的な踏ん張りみたいなものがないと対応できない事柄なんですね。ですから,まして新しくこういう機会が与えられたら,やはりそれはそれで大変な思いをされる被害者もたくさんいると思います。ですから,先ほど○○先生がおっしゃってくださったように,裁判官の方からやはり被害者に配慮された説明なり話合いの場なりを持っていただけると,大変支援する者としてはありがたいと思います。よろしくお願いいたします。 ● そのほか御意見はございますか。   それでは,6の②について何か御意見はございますでしょうか。 ● 確か法制審議会の親会の方でも,こういう守秘義務が破られた場合の担保の仕組みというような議論が出ていたのではないかと思うんですけれども,ちょっと事務局に教えていただきたいんですけれども,というのは,私もいろいろ考えても,どう考えていいのかよく分からないということがあって,要するに罰則を設けるという以外の方法で,何らかの担保になり得るのではないかというようなことを,もし結果的にそれはとらなかったけれども,こういう検討をしたとか,こういうこともあり得るのではないかというようなことがあれば,ちょっと教えていただきたいなと思います。 ● 審判傍聴により知り得た事項を用いまして,例えば違法なプライバシー侵害を行うですとか,これにより関係人に損害を与えたような場合には民法709条の不法行為が,当該関係人の名誉を毀損した場合には刑法230条の名誉毀損罪が成立する場合があるかと思います。また,再度の傍聴ですとか記録の閲覧・謄写あるいは審判結果の通知,こういったものが認められない場合が多いかと思われます。さらに,今回の要綱(骨子)では,少年のプライバシーに深くかかわる部分を審議する場合など,被害者等が守秘義務違反を行った場合の弊害が大きいと思われるような場合には,裁判所が被害者をいったん退席させるなど,適切に対処させることも可能になっております。したがいまして,このような形での担保措置があるものというふうに考えているところでございます。 ● 実務の経験,感覚からということになるのですが,もちろん理屈上はそういう守秘義務に違反した行為が民法上の不法行為の対象になったり,場合によっては刑事罰の対象になるのかもしれませんが,やはり重大な事件を犯した少年の側が被害を与えた人に対して,それを理由に損害賠償をするとか,それを理由に刑事告発するというようなことは,実際上は困難であり,また弁護士によって違うかもしれませんけれども,私もよほどそれが継続していて大変な事態になったら考えるのかもしれませんが,極端に言えばインターネットにいったん全部出てしまったら,取り返しのつかない大変なことですけれども,だから,これはけしからんから損害賠償請求しようというふうにするかというと,多分しないと思うんです,私であれば。   そういう意味では,実際問題としてはなかなかそういう違法な行為であるから,民事上,刑事上のサンクションがあるというのがこの担保の仕組みになりにくいという認識がありまして,かといって,罰則を設けるということでいいのかということについてもためらいがあり,なおよい担保する方法はないのであろうかと思って御質問したということです。それから,もちろん審判途中であれば,そういう今後傍聴を認めないとかいうような対応もあり得るとは思うんですけれども,審判は非常に短期に終了するのが通常ですので,終了後にそういう情報が出るというような場合もあり得ると思いますので,その辺も含めて何か検討された部分があれば,教えていただきたいという趣旨で質問していました。 ● 一般的な規定があるその他の担保措置については,先ほど御説明したとおりでございますが,更に申し添えますと,これも御案内のように記録の閲覧・謄写制度ですとか,あるいは審判結果通知,こういったものについてもやはり守秘義務というものが課され,それについての担保措置というのは基本的には先ほど傍聴について申し上げたとおりでありまして,一般的な規定で対処するということになっているかと思います。13年4月からそのような制度が運用されていて,先ほど○○委員からも御紹介がありましたように,記録を見て,特に謄写ということになるのかもしれませんが,あるいは審判結果の通知を受けて,それが一般社会に流出して大きな問題になっているという状況はないかと思いますので,そのような一般的な担保措置で十分対応できるのではないかというふうに考えているところでございます。 ● 私自身も今日書いた意見書にも少し引用しましたが,ケースとしてはインターネットで実名も含めて情報が出たというケース自体を把握しておりまして,もちろんすう勢としてそういうものがたくさん出ておるとか,それが何か報道されて大問題になっているとか,そういう状況にないことは私もそういうふうに承知しておりますが,およそそういうケースがないというわけではなくて,現実にそういうケースがあって,やはり一つのケースであってもそういうことが起こったときに,それに対して対処のしようが現実問題ないということは事実でありまして,そういう問題意識を基に申し上げているということなんです。 ● ○○です。例えば状況として当該審判がまだ係属しているとか,逆送してこの後も刑事裁判が開かれるであろうというような状況のとき,先ほど○○先生が現場の感覚とおっしゃったので,私も現場で支援をやっている立場の感覚として言えば,一番強力な担保措置というのは,変なことをやったら次は記録を見せてもらえない,あるいは成人刑事であれば次は特別傍聴券をもらえないということ,これがやはり非常に被害者の側にとっては有効に機能している担保措置だと思います。だから,今後も裁判所にきちっと情報を出してもらう,あるいは傍聴の機会を確保してもらうためには,こちらもきちんとルールを守らなければいけないと,この心理的な枠というのは極めて強力で,だから,審判をやっている最中に関しては,担保措置として事後,傍聴が不許可になるということが最も強力な担保措置になるのではないかと思います。   では,審判が終了しましたと,あるいは逆送後の刑事裁判も全部終了しましたという,いわゆる事件終結後の担保措置に関してですが,おっしゃるとおり,知り得た事項を漏示すると,みだりに用いるというようなことの危険性はあるのかもしれないんですけれども,この場合に関して,別途,罰則を設けたりするほど,被害者に関して類型的にプライバシー侵害だったり,名誉侵害だったりの可能性が,ほかの名誉毀損の場面,プライバシー侵害の場面と比べて大きく違うかというと,私はそうではないんではないかというふうに思っております。ですから,一般的な名誉毀損罪ですとか,あるいは民事的な損害賠償というような担保措置によって,必要十分に担保できるのではないかというふうに考えます。   少年の実名が報道されるとか,インターネット上に少年の身上に関する事項が出るというのは,残念だけれども,現状でも一部マスコミによって確信犯的に行われていたり,あるいは少年と同じコミュニティーに属する人間が面白半分にインターネットに流すというような状況も生じておりますから,被害者の場合に限って,それらのケースよりもより強力な担保措置が必要ということにはならないのではないかと考えております。 ● 事務当局に対する質問になりますけれども,これまでの御議論を聴いた上での私の印象としては,傍聴を希望された被害者や御遺族の方がこの基本的なルールに反して,自ら積極的に守秘義務に反するようなことをするということは,ほとんど考えられないと思うのですね。むしろ,先ほどの話題に出ていたとおり,法61条と共通する懸念,むしろ問題はマスメディアの方ではないかと思います。そこで守秘義務というと思い出すのは,別の法律には,守秘義務に当たる事項を知る目的で関係者に接触することを禁止するというような制度をつくるというのも法制度としてはあり得ると思いますけれども,そのようなことはお考えになりましたか。 ● 御指摘の問題意識につきましては,こちらも認識させていただいたところでございますけれども,基本的に傍聴によろうが,あるいは記録の閲覧・謄写によろうが,あるいは審判結果の通知を受けた場合であろうが,結局,その情報をいったん被害者や御遺族の方,そういった方が入手すると,あとはそれを保持していただくという場面においては,特段の差異というのはないのかなというふうに思っております。繰り返しの御説明になりますけれども,13年4月以降,閲覧・謄写制度ですとか,あるいは審判結果通知制度,こういったものが導入されて特段大きな問題はなく,そのような担保措置,すなわち,閲覧・謄写でいえば5条の2の第3項に書いてあるような担保措置で適切に運用されていると。しかも,先ほど○○先生から御紹介がありましたけれども,再度の閲覧・謄写ですとか,要するにその後,そういった制度を使えないということも非常に重要な担保措置となっているということで,基本的には適切に運用されているというふうに考えておりますので,御指摘のありましたような形での担保措置までは必要ないのではないかというふうに考えたところでございます。 ● 被害者のサポートをされている方から見たとき,そこをどうするかというのはちょっと私は分からないんですけれども,今の議論を聴いていると,もちろん違反自体に対してどういうサンクションを与えるかという意味での担保措置ということもあるのかもしれないんですけれども,やはり,こういう少年司法とか司法に被害者の方が接触していただくときに,基本的には例えば弁護士さんとか,研修を受けたサポートの方とか,そういうサポートの方があるということを何か前提にして,それであれば接触はできるというふうにすることによって,もちろん,なかなかサポートの方が見付けられないと,被害者の方もちょっと厳しいということもあるのかもしれませんけれども,ルールがうまく守れないと,結局,そこのサポートも受けにくいというようなことで,非常に間接的なんですけれども,より司法のルールに則った運用ができるのではないかと。だから,サポートの方若しくは弁護士を何か強制制度みたいにしてしまうのか,そういうことでなくても,より早い段階からそういうサポートの方が付くように,もうちょっと積極的に施策をしていただくということが必須なことだということになるのかとも思うんですけれども,これはすみません,ちょっと感想的なところでもあるんですけれども。 ● 被害者あるいはそれに近い方による傍聴というのは,要するにそういう方々の非常に強い希望によって入れようとしているものであるわけですから,そのような制度になったときには,私は濫用ということを過度に心配する必要はないだろうと思っています。この形にする以上は,一般的な防止策というのはあり得るとしても,それ以上に特別のことは要らない,もはや信頼して運用していくしかないというぐらいに考えております。 ● 私はもっと信頼してほしいと思いますよ。被害者というのは聞いたことをよそでしゃべったり,何かするものだというような前提での話をされては困るんですよ。もう少しこの規定を置いたなら,規定は守られるという前提で考えてもらわないといけないし,こういう規定の置き方はほかにもいっぱいありますよね。それをどんな担保があるんだ,ああだ,こうだと言い出したら,六法全書にいっぱい書いたってしようがないくらいになりますよ。もうほどほどにやりませんか,これはこれで。私はそう思います。 ● 私としましては,親委員会にこの点については報告をする必要がございます。その具体的な内容については私に御一任いただきたいと思いますけれども,なるべくここでの議論を反映した形で親委員会に報告したいと思います。それで,いろいろな御意見を伺いましたけれども,こういうことでよろしゅうございますか。基本的には,事務局の説明の内容で当部会は納得というか,それを基本として考えてよいということでよろしゅうございますか。その点,○○委員に確認したいんですけれども。 ● もちろん,元々傍聴の反対の問題があるので,それを何らかの形で留保を付けていただけたらと思うのと,それと,だからちょっと最後に私が申し上げたことではあるんですけれども,また,条文に盛り込むということではないのかもしれませんが,守秘義務の問題以外のこともいろいろ含めて考えると,やはり非常に早い段階からサポートに入れるような,そういう体制を国としてもしっかり整理していくということがすごく大事だなというふうな思いにどんどんなっていくんです。   たまたま今は守秘義務の問題を言っていますけれども,少年の側からすると,もちろん被害者の方に許していただくというようなことがなかなか難しい,それだけひどいことをしている事件というのもたくさんあるわけですけれども,時として早い段階からサポートがないために,余計たくさん苦しまれて,それで,よりそれが子どもの側に向かってしまうとか,若しくは誤解が生じてしまうというようなこともあるので,そういう意味では傍聴される,それから傍聴した上でのルールがあるという,こういう全体の枠組みの中ではやはり早い段階からのサポートが付くということは,改めてとても大事なんだなということはちょっと私としては強調したいなと思います。 ● その意見は分かりました。それで重ねて確認したいんですけれども,私がまとめたような形で基本的にはよろしゅうございますか。それとも,何らかのそれに付け加える何かの工夫が必要だという御意見なんでしょうか。 ● ですから,傍聴が賛成の方については,そのような御意見でまとまっているということで言っていただいたらそれでよくて,私個人としては,直接担保措置かもしれないけれども,そういうサポートの重要性をすごく言われたということも,できれば,この担保措置との関係では付けていただけたらありがたい,そこで付けるか,全体で付けるのか,それは部会の皆さんのまた御意見にもなるとも思うんですけれども,そういうことは申し上げたいなと思います。あとちょっと細かな部分とかいうのは,基本的には部会長に一任したいとは思いますけれども。 ● 御意見はよく分かりました。 ● 仮に,今の○○先生のような意見をお付けいただくとするなら,逆にそういう弁護士の方なんかが付添人として登場されない場面でなければ,担保措置として不十分という考えには反対であるという強い意見があったことも付記していただきたいと思います。 ● 私の言っているのは少年側の付添人という意味ではなくて,被害者の側の方のサポートという意味で申し上げているんです。 ● 失礼しました。ここでは傍聴に付き添われる方ということで,付添人といいますと加害者側,非行少年側になりますので,私の申し上げたのは被害者に付き添われる方が弁護士の方とかいうことでなければ,担保措置として不十分であるかのようにおっしゃる意見については,強く反対する意見があったということを付記していただきたいということです。 ● その点につきまして,付き添ってくれる弁護士を探すというのは大変困難なことです。東京にはいっぱい弁護士がいますけれども,それでもなかなか大変。何しろ一月か二月で審判が終わってしまうわけですから,その間に葬式をやり,四十九日をやり,納骨をやり,大変なんですよ。その間に弁護士に接触する機会というのは極めて少ない。特に地方へ行きますと,例えば高知県だと高知市にだけしか弁護士がいません。だけれども,犯罪は全県下的に発生するんですね。それを弁護士を付けろ,付けろと言われても,付けようがないのが実態だということをしっかり認識していただきたいと思うんです。 ● それでは,総会に対する部会長報告は御承知のとおり,ある程度,長さとかいろいろなことでも限界がございますし,その範囲でできるだけ当部会の意見を反映したいと思います。ただ,細部にわたりましては,今のような意見を入れていただきたいというような意見について,直接,それが反映できるかどうかはここではお約束できませんけれども,その点を含めて私にお任せいただきたいと思います。それから,議事録が公開されておりますので,その内容についてはいずれにしても公開されるというふうに理解しております。   それでは,この論点メモにつきましては,議論をこの程度で終了いたしたいと思います。   ここで一息入れたいと思いますので,休憩いたしたいと思います。      (休     憩) ● それでは,会議を再開いたします。   引き続き,要綱(骨子)第二の「被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」についての議論を行いたいと思います。御意見等をちょうだいしたいと思います。 ● 何かいつも○○委員か私が最初にというのも大変恐縮なんですけれども,まず,今回,身上調書が対象になるというところが改正の主眼というふうに承りましたけれども,まず,その身上調書自体について,これはやはりプライバシーの集大成でありますし,前歴なども書かれております。そういう意味で閲覧・謄写の対象とすることに反対をいたします。また,法律記録の中の精神鑑定の結果,簡易鑑定,捜査側が行った精神鑑定あるいは家庭裁判所が行った精神鑑定の結果,これらにつきましても閲覧・謄写の対象とするのはふさわしくないと考えております。理由は詳しくは申しませんけれども,社会記録が閲覧・謄写の対象となっていないことと同趣旨のものであるというふうに考えております。 ● では,私の方から身上に関する記録ですとか,今,○○委員がおっしゃったようなものというのも,閲覧・謄写の申請があったら必ず被害者等が見ることができるかというと,恐らくそうではないんだと思います。実際,現在成人の刑事記録に関してでも,身上に関するものというのは,実際の運用としてはかなり抑制的に閲覧なり謄写が認められている。逆に言うと,余り身上・経歴に関する部分は,成人の場合であっても,裁判所は閲覧・謄写は許可しないという運用が定着しているかというふうに理解しておりますので,仮にこれを対象に含めることになったとしても,一律にプライバシーなりが全面的に開示されてしまうというような事態は,惹起されないのではないかというふうに考えます。   他方,被害者の側にとっては,やはり事件について知りたいという利益は単に非行事実に関するものだけではなくて,差し障りがないのであれば,やはり身上に関する事項も知りたいという希望は極めて強いですから,差し障りがない場合には,支障がない場合には,これを裁判所が許すことができるというふうに対象を拡大することについては私は賛成です。付言しますと損害賠償等に必要な場合という例示を外して,むしろ原則として閲覧・謄写を不相当と認める場合を除き,認めるというふうな形の言わば要件の緩和についても,基本的には私は賛成です。   一つの理由としては損害賠償の場合以外にも,知りたいという希望を持っておられる方が少なくありませんし,また,現行の制度ですと,特に交通事件なんかであることなんですが,加害者の側が任意保険等に加入していて,早期に被害のてん補を受けられる場合でも,それを受け取ってしまうと損害賠償請求権の行使の機会がなくなるわけですから,そうすると記録の閲覧・謄写のときに,損害賠償請求のためという理由が使えなくなってしまうと。現状,記録の閲覧・謄写を受けるために,損害賠償の損害のてん補を先延ばしにされている被害者の方というのも少なからず存在しますので,損害賠償請求権がなくなったとしても,閲覧の機会はきちんとあるんだよということがはっきりする意味では,原則・例外を逆転するということに賛成いたします。 ● 私も損害賠償の目的のためにというものを外す,全体として拡大すること自体には問題はないと思っております。ただ,先ほどの身上調書等に関しましては,明らかに改正の経緯として現行5条の2では非行事実に関するという文言があるわけでして,これをなくして現在の要綱の第二のようにするという経緯からして,身上調書が入ったのだということが明確になると思います。もちろん,個別のケースの認められる,認められないは,○○委員がおっしゃったように裁判官が適切にケース・バイ・ケースで判断されるのですけれども,しかしながら,原則的に身上調書も入ることになったということの大きさは変わらないというか,非常に重みのあることでして,そこについて異論を申し上げているわけです。 ● こういう議論をいろいろ詰めていくと,最後は裁判所が適切に判断されるんだから,いいではないかという議論もたびたび出てくるんですけれども,もちろん条文としてどこまで,どう書くかという問題もあるけれども,やはり法律をつくるに当たって,どんなことを想定したのかとか,どの程度のことまで考えておったのかというようなことがいろいろと議論に出ないと,その後,結局,実務の運用で何も指針がない中でやっていかないといけない。それで適切にするからいいではないかというわけにはいかんのではないだろうかと思って発言をしているんですけれども,その意味から,身上・経歴の部分についても対象としては拡大をしたと,それで,あと正当ではない場合は認めない場合があるからいいではないかというふうに言われても,身上・経歴を出してもいい場合というのが一体どういう場合が例えば想定されているのかとか,どのようなものであれば,また出してもいいというのを想定されているのかとか,その辺りはやはりちょっと私としても分かりにくいと。特に社会記録の閲覧・謄写については,類型的に一律にやはりこれは難しいということで,閲覧・謄写の対象にしないという決断をされているわけですけれども,それとの均衡からいっても,ちょっとそこのところはよく分からないというふうに思っているんです。 ● 今のお尋ねにつきましても,結局,個別の具体的な事情によりますので,なかなか一般的に類型化してお答えしにくいところではあろうかと思います。ただ,例えば身上調書にそういったものが載るかどうかは分かりませんが,やはりプライバシー性の相当高いものは,社会記録に載っている場合は当然あり得るかと思いますけれども,法律記録にも場合によっては載る場合というのもあるかと思います。例えば性的な虐待を受けていたとか,そういった例を出したことがありましたけれども,そういったものが載っている場合などはあるかと思います。やはりそういったプライバシー性の相当高いものについては,閲覧・謄写は相当ではないというふうに考えられますので,御遠慮願うことになるのではないかと思います。ただ,冒頭申し上げましたように,やはり個別の事案における個別の事実に従って判断いただくことですので,なかなか一般的に申し上げにくいということは,再度念のため申し添えておきます。 ● 私は社会記録がこの諮問から除かれておりますけれども,やはりこれを含めるべきだと思うんですね。というのは,なぜこういう決定が出たのかということをやはり知りたいんです。そのために社会記録も見せてもらわないと分からないですね。ただ,非行の事実についてだけは傍聴しました,あるいは記録を見ましたと。だけれども,どうしてそんな結論になったのか。これは分からないままであるということではしようがないので,やはり社会記録も含めて見せるというふうに是非してもらいたいと思うんですね。守秘義務がきちんとあるわけですから,見せたって差し障りはないんではないかと,こう思っています。 ● 社会記録につきましては特に強く反対いたします。これは記録の閲覧・謄写の問題にとどまらず,少年審判の根本にかかわる問題として,保護手続の大事な特徴であります科学主義,家裁調査官が関係者との信頼関係に基づいて収集するそれらの資料,これがそもそも集められなくなってしまう危険性があるわけです。社会記録はそのようなものであるがゆえに,少年本人にもあるいは保護者にも,それから付添人も原則として謄写は認められておらず,閲覧のみでございます。そのようなものについて閲覧ももちろんですけれども,ましてや謄写をということになれば,そもそも,元々の社会記録の価値が非常に減退してしまいます。   例えば,今,学校関係者は個人情報の保護ということに対して大変センシティブになっておりまして,学校のクラスの名簿すらも作らないというような状況にあります。そういう中で,家庭裁判所の照会には通知表の内容であれ何であれ,送ってくれているというのは飽くまでも秘密主義が守られて,そして少年本人にすらもそのままは見せられないと,そのような信頼関係の下に収集されているわけです。そもそもその収集ができなくなる。また,保護者,少年本人も調査官の調査に対して秘密主義,飽くまでも少年の健全育成のために使われると思えばこそ,例えば親が少年の出生の秘密であるとか,あるいは母親や父親による少年に対する性的虐待であるとか,そういった少年にすらも聞かせられない,ましてや,部外者に聞かれたら家庭として大変なことになるようなことでも,お話しする場合があるわけです。病歴などもそうです。あるいは鑑別所の性格テストあるいは心理テストの結果,知能検査の結果,これらについて被害者が全部見られるということになれば,そもそも社会記録の中の情報そのものが減ってしまうということを重々御承知おきいただきたいと思います。 ● 社会記録の全部を見せなくても,裁判所が見せない正当な理由がある場合はいいでしょう。だけれども,社会記録だから全部見せてはいけないということにはならないと思います。今,○○委員が言われたように全部が全部,そういうふうにプライバシーに関係するものばかりとは私は言えないと思うんですよ。 ● 基本的に社会記録は法律記録と比べて,そういうものであるということと,あと被害者の傍聴のニーズの一つの理由として,成人事件であろうと少年事件であろうと,重大事件における被害者の置かれた苦しみには変わりないということがヒアリングの中でも強調されておりました。しかしながら,刑事事件におきましては社会記録にあるようなそこまで刑事被告人のプライバシーが暴かれたり,本人も知らないようなことを被害者に見られたりということはないわけです。そもそも社会記録がないのです。そうすると刑事事件でも知ることができないことが少年事件では知ることができるというのはなぜなのか。逆に言うと,少年事件にそれがあるのは大人の事件との手続上の差異,科学主義,保護主義,ここから来るものでして,だからこそ社会記録があるわけです。そういうものについて刑事裁判と同じようにせよという理屈からは出てこない問題なのではないでしょうか。 ● 裁判所の立場から少し申し上げますけれども,社会記録というふうにここでは出ていますけれども,社会記録というのはもちろん家庭裁判所の調査官が作成した少年調査票,少年鑑別所技官が作成した鑑別結果通知書,あとは調査官の方が依頼して学校の方から回答を受けた学校照会回答書,本籍照会回答書,試験観察等をした場合には試験観察の経過の報告書等が含まれますが,何よりもやはり鑑別所の方から来る鑑別結果通知書には,今,○○委員が言われたようなテストの結果も含めて,飽くまでも裁判所と鑑別所の信頼関係だけで出されるようないろいろな情報も入っております。   そういう意味で,社会記録というのは一般的に非常にプライバシーの根幹にかかわることが相当書かれているもの,特に少年の調査票等につきましてはプライバシーの特に根幹にかかわることまで書かれていまして,これを一部開示,一部不開示というのはなかなか難しい問題があるだろうと思います。そのほか,今,申し上げましたような学校の照会回答書というのも,調査官あるいは家庭裁判所が,関係機関との間で,外部に出ないということを前提にいろいろな情報を教えてもらう,正にそういうことをして,少年の更生あるいは再非行防止のために使うという前提で協力してもらっているものですので,裁判所の立場からしますと,社会記録については,記録の閲覧・謄写等,開示というのは困るというふうに申し上げざるを得ないと思います。 ● ほかに御意見はございますでしょうか。要綱(骨子)第二についてほかの点でも結構ですけれども,何か御意見はございますか。   御意見がなければ要綱(骨子)第三に移ってよろしいでしょうか。   それでは,要綱(骨子)第三の「被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大」について,議論を行いたいと思います。御意見をちょうだいしたいと思います。 ● 意見書の方にも書いたとおりですけれども,これは恐らく反対される方は余りおられないんではないかと思います。「心身に重大な故障がある場合」というのは解説書なんかによると,被害者が自ら制度を利用することが困難な場合というふうに,一般的に解釈されているようですけれども,元々心身に重大な故障がある場合の意見聴取について,配偶者等が対象者に含まれていない理由は,被害者等が生存している場合には,被害者自身に意見を陳述させることを原則とすべきだという考えがあったように聞いておりますし,また,解説書にもそのような記載が多くありますが,やはり自ら制度を利用することが困難な場合において,自ら意見を陳述すべきというのはやはりちょっと不可能を強いることであろうというふうに考えますので,この場合には配偶者等近親者を意見聴取の対象者に含めるのは,当然ではないかというふうに考えます。 ● ちょっとここで申し上げていいかどうか分かりませんが,意見聴取というところでお話しさせていただきますと,私どもは去年の早い時期に意見書を出しておりますけれども,それはいろんな被害者,大勢の被害者に当たった結果,まとめたものであります。そこで,ここの箇所で申し上げた方がいいかどうか分かりませんが,裁判所に対して審判に出たときに,質問させてほしいという意見が非常に強かったですね。いろんなことを言っている。それに対して質問が全然できないのは,誠に耐え難いというのが非常に多くあった。   ただ,これは傍聴だけですから,当事者ではありませんから,どうせ質問はできないでしょうが,裁判所に頼んで裁判所から質問をしていただくとかいうふうな格好で質問をすると,あるいは裁判所と審判の前に話し合って,こういう点を聞いてくださいと言うか,あるいは途中で加害少年の言ったことに対して疑問がある場合には,あるいはその場で言うか,あるいは休憩してもらって裁判所にここを聞いてくださいというか,そういうような格好で何らか質問をするようにできないだろうかと,こういうことが非常に強いんですね。   いろんなうそを言われると。特に集団暴行の場合なんかはそれがありますし,それから被害少年の方が先に手を出したからだとか,いろんなことを言われているのをじっと聞くのはたまらないというんですが,そういう意見がありますので,これはここで議論するか,どこで議論するか分かりませんが,意見聴取というところがありましたから,それを利用して裁判所に質問をしてもらうと,こういうようなことができないものか,お考えいただきたいと思います。 ● それでは,○○先生からそのような御意見がございましたので,この点について審議をいたしたいと思います。御意見等がございましたら伺いたいと思います。 ● ただ今,被害者に直接的ではなくて,裁判官を介する形で質問することができないだろうかという御指摘をいただきました。現行法におきましても被害者が少年の虚言,うそに気付いた場合ですとか,少年がなぜ非行を犯したのかを聞きたいと考えた場合などには,意見陳述などの機会を通じまして裁判所にその旨を伝えることができるかと思います。裁判所におきましても,被害者等の意向を把握した上で,被害者の方のお考えや言い分を踏まえて事実関係を明らかにする質問ですとか,被害者の被害感情をどのように受け止めているか,こういったことを尋ねる質問を行うことなどの対処というのは,可能ではないかというふうに思っております。   ただ,それ以上に裁判官が被害者の意向にそのまま応じまして,その意向に沿った質問をそのままするということにつきましては,あたかも裁判官が少年と対峙するかのような状況を招きかねず,少年に裁判官は専ら被害者の利益を代弁する立場の者ではないかとの不審の念を抱かせて,少年審判の教育的機能を損なうおそれというのも,否定できないのではないかと考えているところでございます。したがいまして,少なくとも裁判官が被害者の意向に応じて,そのまま質問するという制度につきましては,慎重に検討すべき問題ではないかと考えております。 ● 法制度でどうするかということについては,今,○○幹事がお話になったとおりだろうと思います。私からは,現状の少年審判において,今,被害者の要望がこういう要望があるというところをお聞きしたところですけれども,それぞれの点についてどんな実情かということを簡単にお話ししたいと思います。   まず,少年がうそを言っているのをそのまま何もできないで聞いているのは耐えられないと,こういう点がございました。うそといいますか,どういう事実に関する点かというところでいろんな差は出てきますけれども,裁判官ももちろん少年審判に臨むに当たっては事件記録が一切送られてきた中で,事実関係についても十分に把握した上で,もし例えば暴行でどちらが手を出したというような,正に非行事実に関するようなことでどうも記録と違うということであれば,それをそのまま見逃して次に進むということはまず考えられないだろうと思います。非行事実は非常に重要な点でございますし,それから,もう少し広い範囲についても,被害者からの意見聴取によって聞いていることとどうも違うというようなところが出てくれば,やはりこれが非行事実でなくて,もう少し広い範囲のものであっても何かしら確かめるということは,まず通常の審判であれば現状としても行われているだろうと思います。   それから,二つ目としては,今,○○委員の発言中にもありましたけれども,また,意見書などにも多くあるのが,どうしてこういう非行を起こしたのかと,その非行を起こしたことについての原因だとか認識を聞きたいと,こういう点も被害者の持たれる不満として代表的なものだと認識しております。この点についても同じように審判というのは非行事実を認定するだけではなくて,正にいろんな教育的な働きかけというのが一つの柱としてあるわけですが,そのための材料としてはどうして非行を起こしてしまったかとか,それから,現在,そのときはこうだったかもしれないけれども,今考えて,そこをどういうふうに考えているかといったことも,審判の要素としてまず出てこないことはないだろうと,そう断言してまず間違いないものと思っております。   それと,今の○○委員のお話ではなくて,3点目としては心情を直接伝えたい,質問をするということの中には,何か事実関係を明らかにするということでなくて,質問を通して自分の意見を直接伝えたいという,こういう要望もあるんだろうと思っております。その点に関しても先ほど前提でいろいろ共通としているように,法律記録にある被害者の調書はきちんと把握しておりますし,被害者調査であったり,被害者の意見聴取によって,被害者の心情というのを十分に裁判官も頭の中に把握して,十分に理解した上で臨んでおるわけです。これを少年に伝えないということは,審判の一つの大きな柱が教育的な働きかけだというところからしても,通常,考えられないと言っていいと思われます。   もちろん,被害者本人がしたいというお気持ちを理解できない部分がないわけではありませんけれども,審判の中でそれを主宰すべき責任を持っている裁判官としては,現状としても今言ったような被害者が持たれるであろう不満というのは必ず審判の中で裁判官が当然の役割として果たしているものであろうと,こう言ってよろしいかと思っております。 ● そうすると意見陳述の場合に,特にこういう点を聞きたいからひとつよろしくお願いしますと,こういうふうにお願いをしておけば,裁判所の考えとして,それをそしゃくした上で必要と認めればやってくださると,必要がないと思えばやってくださらないでしょうけれども,そういう道はあると,こういうことと理解してよろしいですかね。 ● 個々の事件における裁判官の判断ですから,もちろん私がここでこうだと言えるものではないと思いますけれども,こういうことも聞いてもらいたいんだといった点も含めて,意見聴取の趣旨というのは十分に裁判官に伝わるであろうと思っております。 ● 分かりました。 ● そのほか,要綱(骨子)第三について御意見はございますでしょうか。   もしございませんでしたら,最後の要綱(骨子)第四の審議に移りたいと思います。   要綱(骨子)第四について,御意見等をちょうだいしたいと思います。   特にございませんか。   それでは,これで第2読会を終えたいと思います。   引き続き,要綱(骨子)全体についての第三巡目の議論に入りたいと思います。   ここで,○○委員,○○委員,○○委員,○○委員から,それぞれ提出された資料の内容についての概略をまず御説明いただきたいと思います。   まず,○○委員,お願いいたします。 ● お手元に「意見」という表題で,私の現段階における簡単にまとめた意見を配布させていただいております。併せて○○委員とも共通するんですけれども,今回のパブリックコメントの中で,私どもというか日弁連の方にもこういう意見を出したということで,法務省と共にこちらにも直接いただいているような意見などもありまして,その中で,この審議をするに当たって,是非直接お読みいただけるとよいのではないかというものを私どもの方でちょっと選びまして,配らせていただいているものがあります。それは○○さんという方の意見書,それから全司法労働組合の意見書,それから非行と向き合う親たちの会の代表の方の意見書であります。   私の方は,この意見書についてごく簡単に説明したいと思うんですが,議論としてはちょっと個別の議論のときに中身を議論した方が,全体的に一方的に読んで聞いていただくよりもよいと思いますので,本当に概括的にこんなものを書いているという説明をさせていただきたいと思います。   結論自体は,被害者の傍聴を許可する新たな今回の制度の導入については反対し,また,法律記録の閲覧・謄写範囲の拡大の部分については反対であるというものです。   1頁目の最初のところには,総論として本諮問が少年法の基本構造にかかわる問題であるということで,少年審判の非公開がプライバシーの保護はもちろんのこと,真実解明機能であるとか教育的機能であるとか,要するに少年法の根幹をなすものと非常に結び付いており,かつ少年の未成熟さということとも密接に結び付いた重要なものであるということを述べております。併せて2頁目の1-3で,国際準則においても,司法手続の中で少年が実質的に参加をしていくということを確保することが,いかに重要であるかということが強調されておりますので,それを併せて書かせていただきました。   2頁目の2からは,「今回の諮問にいたる経緯について留意すべき点」ということで,犯罪被害者等基本計画においても,少年法の基本構造との抵触が問題になって,傍聴の可否を議論するということで今回の諮問に至っているんだということを合わせ,それと2-2で書きましたけれども,少年審判の実際を経験している者のほとんどが反対をしているということについて,是非留意をしていただきたいと思っております。   そして,3以下で特に傍聴を中心として,個々の論点で議論すべきことということを書いております。1つは犯罪被害者等基本法との関係で,最初の議論でも少し話が出ましたけれども,私としてはどこまでの範囲で傍聴を認めるかということについて,議論して決めればいいではないかと言われれば,そういう議論なのかという意見もあるかもしれませんが,やはり元々その権利の性格がどの程度のものであって,どういうものなんだというようなことについての議論がなしでは,あとの非公開の原則の例外をどう設けるかということの調整の軸というか,基準との兼ね合いからいうと,そのことはやはりとても重要なことだと思っておりまして,そのことについて具体的な権利とまでは言えないのではないか。そのことを踏まえて傍聴を認めたときに,弊害がないということをやはり実証的に十分慎重に検討した上で,議論すべきではないかということを縷々述べております。   4頁の3-2からは,具体的に「被害者の傍聴を認めることにより,少年審判に与える影響について」を述べているんですけれども,私としては,これも途中で一度申し上げましたけれども,被害者の方が傍聴することによって少年が萎縮をする,しないということが議論になっていますが,基本的に非公開であるものに例外を設ける以上は,そういう傍聴によって萎縮のおそれがないというエビデンスを,立法当局が本来は示すべきであるというふうに思っております。しかも,そのエビデンスというのは単に感覚的に,ああじゃないか,こうじゃないかというような議論をするとかいうことではなくて,本来的にはいろいろな実験というと言葉が悪いですけれども,検証を経て議論をなすべきものが筋であり,仮にそういうものがないとしても,子どもが萎縮するかどうかというような少年の心理とか,若しくは行動科学に密接にかかわることですので,そういう専門の方の知見,経験,意見などを十分に参考して議論すべきではないかということをその後述べています。   併せて,私自身が幾つか経験しているケースを書かせていただいていますが,この趣旨は子どもからいろんなことを聞き出すということが非常にデリケートな作業で,大人から見るとそう大したことではない,例えばここで一つ挙げていますけれども,シンナー吸引の背景に自分のテストの点が悪かった。でも,少年院に行くかどうかが問題になっているのであって,テストの点が悪いとか悪くないとか,そんなことは別に恥ずかしがる必要もなく,そんなことがあるのだったらすっと言ってくれればいいではないかというような,そんなちょっとしたことでも恥ずかしくて言えないということで,心にしまっているというようなこともケースとしてはあるわけです。若しくはアルコール依存の例を書きましたけれども,自分の保護者がアルコール依存症であり,そこで親子関係が非常に悪くなったために,今は保護者の方が回復されているわけですけれども,実は全く自分の親を親とは思っていないというような,非常に重大なことをだれにも言わないでくれといって,弁護士だけに言われるというようなこともありまして,ともかく,そういう非常にデリケートな作業であるがゆえに,やはり子どもが自分の考えていることを言える環境を,できるだけしっかり整えるということがとても大事であるというふうに思っております。   6頁の下の方の「萎縮に関するエビデンスについて」ということですけれども,先ほど申し上げたように,萎縮がどう起こるか,起こらないかというそのものを検証するような研究データはないわけです。ない中で,私なりに子どもが本当のことをできるだけしゃべると,しゃべりやすい,コミュニケーションしやすい環境を促進するという意味で,ある程度確立させたものとしてどういうものがあるかということを考えたときに,7頁のフォレンシック・インタビューと言われていますが,司法面接という手法で子どもから聞く際に,いかに子どもに対する圧力を減らし聞こうとしているのか,若しくは②で触法調査マニュアルというふうに書きましたが,これは警察庁生活安全局少年課の方が先般つくられた触法少年に対する調査のマニュアルですが,ここでも醸し出す雰囲気とか威圧感とか,そういうもの自体が聴き取りを困難にするというようなことで記載をされているものなども引用しまして,私どもの経験からしても萎縮があり得るのでないかということを強く思うわけですけれども,そういう確立した知見からも,そういうふうな推測ができるのではないかというようなことを書いております。併せて,被害者の方と直面することが少年にどういう影響を与えるのかということについても,やはり時期や状況を十分選ばないと,単純に直面したから反省が進むというようなものではないのではないかということで,海外の研究結果ですけれども,それも引用をさせていただいています。   7頁から後は,今は少年が萎縮をするのではないかというようなことについて述べましたが,そこも含めて少年以外の関係者,これはそこに出席されている家族,それから付添人もそうかもしれませんが,特に裁判官も含めて審判自体の形骸化が起こるのではないかというようなことについて指摘をしています。このような指摘については被害者による傍聴すべてを否定する必要はなくて,一定の要件を定めて傍聴を認めるんだからいいではないかというような議論,要するに全面否定しなくていいではないかというような議論もあり得るところですけれども,今回の諮問をされている要綱(骨子)の中身を見ると,少年の健全育成に資する場合が積極的に意義を見いだせるという場合に限定して,明確な要件の下に傍聴を認めているとは考えにくい,ややあいまいな要件で傍聴をあとは裁判所の裁量に任せるというようなもののように思えます。そういう状況の中で,今まで述べましたような弊害が生じない,認めても大丈夫だというようなことは言えないのではないかというようなことを書いております。   それから,あと「社会記録の閲覧謄写との比較」においては,今回,社会記録の閲覧・謄写を外しているというのは,究極においては被害者の方がそれを見られるということについて,結局,関係者が率直に意見を述べたり,若しくは協力したりということができなくなる,そういう意味での萎縮があるのではないかということを考えたのではないかと思うんですけれども,そうであれば同じようにやはり被害者の方の傍聴ということに際しては,関係者の萎縮ということは意識しなければいけないというようなことで書いています。   あと9頁以下は,今,申し上げた相当と認める場合ということの要件のあいまいさの問題や,それからまたこれもちょっとそれぞれの個別の論点で少し議論したいと思っていますが,前回も出ました生命に重大な危険を生じさせたという要件のあいまいさ,触法少年を対象に加えていることの問題,それから傍聴の関係の要件では健全育成という言葉が入っていないことなどについて触れています。それから,11頁で,今日もですけれども,適宜,高度なプライバシーの話が出れば被害者の方の一部退席を求めて,それで運用すればいいではないかという意見が出ていますが,私は裁判官ではありませんけれども,私の感覚からすると,部分的に退席してまた入っていただくというような運用は,現実問題としては極めて困難ではないかというふうに思っております。そのことについて述べています。それから,併せてモニター傍聴についても,前回以降,私もいろいろ考えたんですけれども,やはりこれは適切ではないというふうに考えまして,その旨述べております。   それから,あと最後に記録閲覧のことについて,先ほどちょっと私もいろいろ述べましたけれども,そのようなことを書かせていただいております。   以上です。 ● ありがとうございました。   それでは,次に○○委員,お願いいたします。 ● お時間をいただきましてありがとうございます。簡単に申し上げます。   私の意見書は,第1のところ,8頁まで,この前半が傍聴に反対する理由の意見書になっております。9頁以下は要綱(骨子)に対する批判的な意見でございます。前半についてのみ申し上げますし,既に○○委員が言ったところについては重ねて申し上げません。   基本的に私は被害者の方々が傍聴したいという思いをお持ちになることについては,もっともな気持ちというふうに思っております。それについては第三者がとやかく言うべきことではない,仮にそれによって傷ついたとしても被害者の方が必要であるならば,被害者の立ち直りにとって必要なプロセスだという御意見もございます。しかしながら,私はやはり刑事裁判のように一般に公開されているものについて,つらい思いをしてでも傍聴されるか否かは確かに被害者側あるいは支援者側の御判断であろうと思います。しかし,法制度として非公開となっているものについて,特に被害者には傍聴を認めるような支援制度を設立する場合におきましては話は別だと思います。それが受益者である被害者の方にとって,どのような影響を持つのかについては,マイナス面も含めてしっかりと法制審議会,国会が議論すべきであって,望んでいるのだから,あとは傷つこうがどうであろうが,御本人の御自由ですというような議論は許されないというふうに思っております。   それから,知りたいという思い,処遇決定過程を知りたいというのは当然という意味で,傍聴には反対いたしますけれども,しかし,様々な工夫は必要だと思っております。それが主に6頁に書いてあるところです。   当然のことながら,①として平成12年の被害者配慮規定のより一層人的,物的な設備の拡充という点での拡充だと思います。   2番目としましては,被害者からの要望がある場合,特に被害者が審判廷においでになっている,意見陳述をされた,そういう場合には終わった後,そのままお帰りいただくのではなくて,審判の模様,概括的に裁判官なり調査官からなり,お話しし,御説明すべきだと思いますし,また意見陳述の被害者の意見を少年がどのように受け止めていたかというのも,審判廷の中で分かる範囲においては,被害者にお伝えすべきであるというふうに私は思います。   それから,3番目としまして重大事件では非常に困難とは思うものの,少年審判の目的に資するような場合に,規則29条によって被害者が在席される場合があるということについては,十分活用してよいというふうに考えますし,また,事実認定の問題で被害者から見れば虚偽の事実を少年が言っているのではないかという御指摘がありましたけれども,それについてはもし必要があればきちんと証人尋問をして,被害者の主張する事実を事実認定において,証人として御証言いただくということも勇気を持って決断すべきではないかというふうに思っております。   5番目ですけれども,被害者と加害者の対話についてです。これは御承知のように国際的にもかなり大きな潮流となっておりますし,修復的司法は特に少年事件について有効である,あるいは地域的な理解が得られやすいという特色を持っております。日本でもまだ始まったばかりではありますけれども,私も千葉でNPOを実施しておりまして,そこでの経験からしますと,重大事件では非常に丁寧な長い準備を行ってからでないと,被害者と加害者の接点というのは非常に危険です。それ以前に様々な苦しみの中で,誤解や疑心暗鬼の中でより一層距離が開いているケースもございます。そうした誤解を一つ一つ解いていきながら,あるいは少ない情報を間接的にお伝えしながら双方の距離を縮めつつ,そこできちっと対話が開けるという確信を持ったときに開く,そうでなければ二次被害を生じたり,あるいは少年の方にとっても立ち直りにマイナスになったりいたします。   重大事件における四十九日前後の審判に被害者が傍聴されるということは,このような全く丁寧な準備もなしに接点を持つこと,ましてや少年が語っていることは被害者に伝えたいと思って語っているものではございません。審判の目的そのものは被害者に情報を伝える目的ではございません。したがって,裁判官の質問に少年が真っすぐに答えたつもりの言葉が被害者から見れば許し難い言葉であったり,被害者への配慮の全くない言葉であったりということは必然的に起きてまいります。これは裁判官や調査官にとっても同じだと思います。そうした接点を持ってしまったことによって,マイナスの結果が大きくなってしまいますと,後にたとえ対話の会というような選択肢があったとしても,今度はそれ自体困難になります。それを実施すること,あるいはそれを選択することが困難になります。したがいまして,審判での傍聴というのは,そういう面からも問題があると思います。   欧米では,少年院の中での少年あるいは刑務所の中の受刑者と被害者との対話,特に重大事件では飽くまでも被害者のための対話,被害者イニシアチブな対話というものが実践されています。被害者からの申込みがあって初めて被害者の立ち直りのために行うものです。そういうものにも学んで,できるだけ選択肢を増やすことによって,苦しい時期にどうしても傍聴を選択せざるを得ないというような事態に,被害者が陥らないようにすべきであると思っております。   あとパブリックコメントのうち,先ほど○○委員からも紹介しました3通につきましては,まず,非行と向き合う親たちの会は,もちろん少年本人,審判に出たときにがたがたと震えていた少年の話とか,そういう少年や保護者の立場からの意見です。次に,全司法は言うまでもなく調査官の立場からの意見書です。さらに,○○さんという個人のお名前での意見書をお配りいたしましたが,これは元少年院,それから鑑別所で少年院長等を務められた方が,そこでの少年矯正の立場あるいは少年鑑別の立場,経験を踏まえて,少年たちの実像に沿ってこの傍聴問題を考えた御意見ですので,私がこれを配布したかったのは少年家裁調査官,そして少年矯正,それらの現場の声を是非お聞きいただきたい,そういう趣旨でございます。   以上です。ありがとうございました。 ● ありがとうございました。   それでは,次に○○委員,お願いいたします。 ● 私の意見書は大変短いものですので,お読みになっていただければと思いますけれども,基本的には今まで私が述べてきたものをまとめたものです。   まず,要綱(骨子)第一の一,審判の傍聴については賛成であると。理由としては審判の過程,基本的に自分の受けた,あるいは親族の受けた事件の加害少年の処分結果がどのように決まるのかという審判の過程を直接見聞したいという利益は,犯罪被害者等基本計画を引くまでもなく,これは十分尊重に値するというべきであろうと考えます。他方,それで尊重に値するからといって,やはり無限定に在席を認めたりすることによって,結果として現行制度の少年の健全育成等の理念が阻害されるといった場合は,やはり回避されねばならないというふうに考えています。   その両者の調和としては,被害者の傍聴の利益が高く尊重されるべき場合においては,健全育成を阻害しない範囲で認めると,こういった制度設計が一番望ましいと私は考えています。少年審判規則29条の活用によるべきという見解は,この点でやはり何の限定もついていない裁判長の広範な裁量を是認する点で,私は失当ではないかと考えております。   この要綱(骨子)に関しては,対象罪種を究極の法益である生命の侵害,あるいはこれに匹敵する危険を生じた場合というふうに定めておりますし,審判の状況その他を考慮して健全育成が阻害されることのないよう配慮されている点も,私は相当だと考えます。   なお,触法少年に係る事件を含めていることについても,私としては相当であると考えています。生命侵害等の被害を受けた被害者にとって,たまたま加害少年が14歳未満であるか否かによって,傍聴したいという希望,利益に関して異なるところはありません。他方,触法少年が常に被害者が在廷することによって萎縮するとか,心情の率直な吐露が阻害されるという事態はむしろ考えづらいだろうと。年少であることを考慮して特別な配慮が必要かもしれませんが,これについては裁判所の相当な裁量というのが期待できるというふうに考えています。   なお,要望という形で諮問の範囲を超えるかもしれないけれども,少し被害者支援に従事する弁護士の仲間内とかで議論した結果ですけれども,生命に重大な危険を生じさせたときというのは事務局の御説明を前提とすると,やや狭い嫌いもあるので,心身に重大な故障を生じさせたときも,傍聴の対象に含めるべきではなかろうかというふうに私は考えております。   なお,例えば各種の委員会等の議論の中では,性犯罪の場合も含めるべきではないかという意見も一応出てはおりました。   それから,傍聴の方法ということでここに書きましたけれども,現に在廷することで少年に対する萎縮的作用が予想されるケースでも,別室でモニター等を利用することでそれを回避することが可能であれば,そういった場合にも傍聴の道を残すべきではないかということで,モニター等を利用した傍聴についても,導入を検討されるべきだというふうに考えております。   審判傍聴への付添いについては賛成であると。現に成人刑事あるいは逆送後の少年事件についても,心身の状態で付添いを希望する被害者の方は多数おられて,弁護士や民間支援団体のボランティアが傍聴しているというケースはたくさんありますので,少年審判の傍聴の場合でも,審判を妨げる等のおそれがない者の付添いを認めるのは相当であると考えます。先ほど少し問題提起しましたけれども,要望としては,御本人が直接在廷できない場合であっても,委託を受けた弁護士等が御本人に代わって傍聴するという代理傍聴という言葉を使いましたけれども,そういった仕組みについてもちょっと検討を図られるべきではないかというふうに考えております。   情報漏示の禁止,閲覧・謄写の範囲の拡大は,今日先ほどの議論で,おおむねここに書いてあることを私は述べましたので,後半についてはちょっと割愛させていただこうかと思います。お読みになっていただければ幸いです。 ● 以上ですか。ありがとうございました。   それでは,○○委員,お願いいたします。 ● 私の意見書も極めて簡単に書いております。   1頁を見ますと,少年審判の傍聴についてはおおむね賛成として,「おおむね」と書いておりますが,これはなぜかと申しますと,傍聴する人の範囲が狭過ぎるということで,「おおむね」と書きました。傍聴自体はもちろん賛成でございます。どこの範囲が狭いかと申しますと,要綱(骨子)には,傷害の場合は「生命に重大な危険を生じさせたときに限る」となっておりますが,この範囲が狭過ぎる。命は取りとめたけれども,あと10年も20年も口をきけないで寝たきりの人がいる。こういうような人は命には関係ないけれども,これは生きている以上に大変なことであります,周囲の者に。生命を失った場合は,そのときは大変でありますけれども,あと,そういう介護とか何かの苦労はないんですね。苦しみもない。そういう面で私は生命,身体に重大な危険が生じなくても,重大な傷害を負わせた場合にはやはり傍聴の機会を与えなければならないと。本人は行けないでしょうけれども,その家族の人が傍聴すると,こういうことですね。そういうふうに私は考えております。   傍聴の方法としては,代理傍聴については先ほども申しましたので申しませんが,モニターによる傍聴,これは是非必要でないかなと。傍聴はしたいけれども,加害者の前にいると怖くて仕方がないと,こういう人たちが現実にいるわけなんです。民事の場合だってもちろんおります。普通の民事でも暴力団だとか何とか加害者が。だから,やはりモニターによる傍聴も許していただきたいなと,こういうふうに考えております。   それで,理由というのが1頁にありますが,これは今までの議論を見ておりますと,少年法の目的は少年の健全育成ということできておりますけれども,私は基本法の成立によってこの目的は変更されたんだ,少年の健全育成のためだけではなくて,被害を受けた少年の立ち直りのためにも少年法はなければならないと,こういうふうに目的は変更されたものだと考えております。基本法は,今まで刑事司法において,被害者を蚊帳の外に置いて苦しませ続けたということを反省して,18条の参加の機会の拡充ということをうたっておりまして,基本計画でも,刑事司法は被害者のためにもなければならないとして,これは成人の刑事事件のみならず,少年保護事件でも同じだということを基本計画に書いておりますので,少年法の目的自体は既にここで変身したと考えなければならないと思っております。   そうすると,少年の被害を受けた者は,なぜ,どうして,だれから,どんな被害を受けたんだということの詳細を知りたいというのは人情であって,知ることはもう権利であると思います。これは成人の場合も少年の場合も変わらないので,もう知る権利を持っている。ところが少年法には一方,加害少年の健全育成という目的があるものですから,そのために自分の権利行使をどこまで我慢してやるかということであると思っております。健全育成の少年法の中でどこまで権利を与えていただくかということではなくて,どこまで我慢をしてあげるかというふうな観点から考えなければならないと思っているわけであります。   また,これに対して少年法は有効に機能してきたんだとおっしゃる方がいますけれども,それは少年被害者の苦しみが十分社会に認識されていなかった。一,二の運動家はおりましたけれども,それが社会の潮流として被害者の苦しみを皆さんに知って,社会の方に知っていただくような潮流になっていなかったから,少年法はうまくいっているんだと思われたんでしょうが,実はとんでもない。これだけ被害者を泣かせ,嫌われた法律はございません。今でも一番嫌われていると思います。ということの認識に立って考えていただきたいと思うわけです。   そうすると知る権利ですから,傍聴することは当然なことであるということで,傍聴したからといって少年の健全育成に支障を来すことはないと私は考えているわけであります。特に萎縮するということを言われますけれども,どの程度萎縮するのか,検証は全くなくて,想像の上で言っているわけでありますが,萎縮というものをよく考えてみると,なぜ萎縮するのかと。萎縮する中にもいろいろある。非常に自分のやったことが悪いということを考えて思って萎縮する場合もあるでしょう。そういう場合には,その中から一つ教訓的なものを芽生えさせるということが必要だと思っております。また,全部が全部萎縮するとは言えない。それとまた仮に萎縮したとしたならば,それにもかかわらず自由に意見を言えるようにリードしていくのが,裁判所や付添人の務めではないかというふうに考えておるわけであります。   以上であって2頁ですが,それから触法少年についてもやはりこの対象にすべきだということであります。そういうことで,あとは3頁にありますように被害者に対する付添いとか,情報漏えいの禁止とか,それから記録の閲覧・謄写の拡大とか,意見聴取の対象の拡大,成人の事件の管轄の移管等,これはもちろん賛成でございます。   以上でございます。 ● ありがとうございました。   それでは,これから第三巡目の審議に入りたいと思います。   これからは要綱(骨子)全体について,第一から第四まで全体を通して,どの論点でも結構ですので,御意見をちょうだいしたいと思います。むろん,これまでの議論の繰り返しでももちろん結構ですが,よろしくお願いいたします。 ● ○○委員から国際準則についての指摘と,エビデンスについて御指摘をいただきました。事務当局として,その2点について,少し時間を要するかもしれませんが,御説明したいと思います。   まず,国際準則の方でございますが,○○委員の意見書の2頁目の真ん中,やや下にあるかと思います。要するに2点指摘をされておりまして,1点目が少年が実効的に手続に参加することの確保と,もう1点が少年のプライバシーの尊重と,こういったことを定めている国際準則,あるいは児童の権利委員会で採択された一般的意見,こういったものとの関係で問題があるのではないかと,こういう御指摘かと思います。   まず,1点目の実効的に参加することとは,被害者が傍聴することで少年が萎縮して,十分に自分の考えや物が言えないのではないかと,もう少し平たく言うとそういうことではないかと思いますけれども,御指摘いただいているような規定あるいは意見が,一般に,およそ被害者等による審判の傍聴を認めることを禁止しているというふうには,解されないのではないかと考えております。現に,児童の権利に関する条約の締約国でありますイギリスですとかフランス,ドイツ,こういった国の法制度を見ましても,一定の要件の下に被害者の方々が少年事件の審理を傍聴することが認められているものと思います。   また,少年の年齢ですとか心身の状態,少年と被害者の方との関係というのは様々でありますし,少年に付添人が付されている場合もあることなどを考えますと,およそ被害者の方が傍聴することにより,常に少年が萎縮して,弁解ができなくなるというわけではなく,少年のプライバシーにかかわる事項を,取り上げることができなくなるというものでもないというふうに考えられます。   さらに,今回の諮問に係る要綱(骨子)では,裁判所による適正な処遇選択が困難になったり,少年の内省の深化が妨げられたりすることのないよう,その許否につきましては裁判所が各審判期日ごとに少年の年齢や心身の状態等の考慮事情を考慮しまして,きめ細かくその相当性を判断した上で,被害者の方の傍聴を許可することにしております。また,傍聴が認められた期日であっても,プライバシーに相当深くかかわる事項に立ち入る場合には,退席をさせるなどの措置をとることができるということにもなっております。したがいまして,被害者の方に傍聴を認めることによりまして,少年が萎縮して十分に自分の意見を述べることができなくなるということはなく,御指摘の国際準則ですとかあるいは意見に反するものではないというふうに考えております。   次に,プライバシーの尊重の観点につきましても,少なからず同様のことが言えるかと思うんですけれども,そのようなプライバシーの尊重を求めている規定があることは,そのとおりだと思います。ただ,その上でそういった規定がおよそ被害者の方による審判の傍聴を禁止しているとまでは解されないところでありまして,同様にイギリス,フランス,ドイツの国々では,被害者の方による傍聴をすることが認められていると思います。しかも,今回の要綱(骨子)は,被害者の方による少年審判の傍聴を少年審判の非公開の例外として認めるものにすぎず,もとより少年審判を一般に公開するものではございません。   また,これも,縷々御説明しているところですけれども,少年のプライバシーに相当深くかかわる事項を取り上げる場合には,退席をしてもらうなどすることにより,そういった情報に接しないような措置というものも可能になっておりますし,また,守秘義務を課す,あるいは知り得た事項を濫用しないように注意義務を課す,こういった措置も講じているところでございます。したがいまして,事務当局としては,今回の被害者の方による傍聴の制度というのが御指摘の準則ですとか意見,こういったものに反するものではないというふうに考えております。   引き続きまして,エビデンスの関係について,少しまた時間を割いて御説明させていただきますと,現在のところ,被害者の方による少年審判の傍聴,これは行われておりませんので,当然のことでございますが,それが行われた場合に少年や審判にどのような影響を与えるかということについて,実証的に裏付けることが困難であるということは申し上げておきますが,その上で更に申し上げますと,そもそも少年の年齢や心身の状態,少年と被害者の方との関係,こういったものは様々でありまして,審判の状況にしましても非行事実に関する審理や要保護性に関する審理などの内容が考えられますけれども,被害者が死亡したような重大事件では少年に付添人が付されている場合も少なくないことからしますと,およそ被害者の方が傍聴したからといって,常に少年の健全育成を阻害し得る事態が生じるわけではないというふうに考えております。   すなわち,例えば非行事実に関する審理で,取調官や目撃者の証人尋問を行う場合や参考人の供述を聴取する場合には,被害者の方の傍聴を認めたとしても,健全育成を阻害し得る事態が生じるわけではないと考えられます。また,少年に対しまして非行事実や動機について供述を求める場合でありましても,例えば少年が年長少年であり,被害者を前にして自分の言いたいことを十分言える程度に成熟していると考えられる場合には,健全育成を阻害し得る事態が生じない場合もあるのではないかというふうに考えております。さらに,非行に至る経緯ですとか非行事実について,特段の争いのない事案で外形的な事実関係を確認する場面では,被害者の方が傍聴していたとしても,少年が十分に供述できる場合もあるのではないかと思われます。他方で,これも今まで少し触れてきたことですけれども,少年が家庭内で性的な虐待を受けており,そのことが非行の原因となったような事案では,被害者を前にして少年が虐待を受けた心情等について,率直な気持ちを吐露することができない場合もあるかと思いますので,そういった場合にはやはり退席などの措置をとることができるかというふうに考えております。   こういったもろもろの事情あるいは事実関係があるかと思うんですけれども,そういったことを踏まえまして,今回の諮問に係る要綱(骨子)では,傍聴の許否については,家庭裁判所が審判期日ごとに種々の考慮事情を考慮した上で,きめ細かくその相当性を判断した上で許可することにしていると,さらに,プライバシーに深くかかわる事項を取り上げる場合には退席させることも可能にしていると。また,家庭裁判所は審判において,このような相当性の具体的な判断を行う際には,家庭裁判所調査官の調査報告書ですとか,少年鑑別所の鑑別結果通知書などの資料を参考することにより,少年の心身の状態を相当深く把握することもできると考えられます。さらに,被害者との関係におきましても,重大事件では被害者の被害感情等を把握することを目的として,家庭裁判所調査官が被害者等に面接するなどして,いわゆる被害者調査を行うことも少なくないと思われますから,このような調査を通じて被害者と少年の関係などについても十分に把握することができると思われます。家庭裁判所はこのような措置を的確にとることで,適正な処遇選択や内省の深化を妨げられないようにすることは十分に可能ではないかと考えております。このようなことを考慮いたしまして,少年の健全育成を阻害しないで被害者等による少年審判の傍聴を認めることは,可能ではないかというふうに考えております。   少し長くなりましたけれども,事務当局の考え方を説明させていただきました。 ● よろしいでしょうか。私の方で追加を。 ● ○○先生。 ● 傍聴の対象の範囲ですけれども,私の意見書に強姦とか強制わいせつを入れておきました。これは強姦された人が20年たっても家を出られないという人たちが私たちの会におります。家の中でつむぎを織る織機を買って,それで織って生活していると,20年も。そういう人がおりますし,それから結婚できなくなった女性もおります。これは大変重要な影響を及ぼす犯罪でありますので,これについても傍聴を是非認めてもらいたいと,こういうことでございます。そのためにはやはりモニターなんかも必要だなというふうにも考えております。 ● 今,事務局から御説明いただいた点で,一つは国際準則の考え方との兼ね合いで,同じような子供の権利条約の締約国で,被害者の傍聴を認めている国もあるではないかという御指摘もあったんですけれども,私が今まで1回か2回ほどですけれども,国連の子供の権利条約の審査に参加をしたり,また,その委員の人と話をした経験からすると,国連の子供の委員会というのは,世界一律に一定の制度を統一的に何か求めるというよりは,それぞれの国に対して権利委員会が考える理念に少しでも近づくように,その制度を変えていく,良くしていくということの努力を求めるというようなことだと思うんです。そういう意味では,もちろん現に傍聴を認めている国もありますけれども,今,日本において現に行われている少年司法がこの権利委員会が求めるような実効的参加する権利を促進する方向に進むのか,そうでないのかということについて慎重に議論するというのは,正に今,国連の委員会の趣旨にも合うのではないかと思っております。   これはちょっとやや形式的な話なんですけれども,その中身の問題として要するに今の事務局の御説明だと,裁判所の方できめ細かく検討して,弊害がないように運用するわけだから,よいではないかというような御趣旨だと思うんですけれども,一つはどのような萎縮が起こり得るかということについて,もちろん調査官の調査や鑑別所の鑑別結果でかなり蓋然性が高く,この子はこういうふうになるだろうというふうに言える場合もあるとも思うんですけれども,一定の場合はこういうおそれがあるとか,こういうことが心配されるというようなレベルのことが多いと思うんですね,実務上は。そういう場合についても私の立場からすると,そういうおそれがある以上は,とりあえずは傍聴をしてもらおうということではなくて,傍聴しない状況の中で審判を進めていかないといけないのではないかと思うんですけれども,その辺が要綱の内容では非常にあいまいで,基準もはっきりしないというようなことになってくると,結局はここの国連で言っているようなこと,若しくは少年法が考えている基本構造との関係で抵触が出てくるのではないかというふうに思っています。 ● 要綱全体に関して自由にということですので,第一の一に関して先ほど申し上げた代理人による傍聴というところに関して,少しお伺いしたいんですけれども,現行の記録の閲覧・謄写の場合は申出のできる者,言わば主体として被害者等又は被害者等から委託を受けた弁護士という定めになっておると思います。先ほどは傍聴の方法という形で私は問題提起をしてしまったんですけれども,傍聴の主体という考え方として,逆に要綱(骨子)第一の一であるところの被害者等から申出がある場合においてと,ここに被害者等又は被害者等から委託を受けた弁護士から申出がある場合に,その申出をした者に対し,傍聴をすることを許すことができると,こんな制度設計もあり得るのではないかと思って,ちょっと皆様の御意見を伺えれば,あるいは事務当局のお考えを伺えればと思って問題提起させていただきます。 ● 代理傍聴という言い方がちょっと独り歩きしている嫌いはあるかと思うんですが,被害者あるいはその御遺族の方から委託を受けた弁護士による傍聴というのも認めてよいのではないかということでしょうか。 ● そうですね。代理傍聴と言ってしまうと,その代理は一体,だれがどこまでできるんだというように広がりますけれども,自分で言うのも面映ゆいですが,委託を受けた弁護士ということで限ってしまえば,代理というよりは委託を受けた者,つまり,代理人を通じた被害者等の傍聴というような形で,非公開の原則に対する影響とかも割と低いのではないかと,そんな考えもできるんではないかと思ったものですから。 ● そこは同様の説明になってしまうんですけれども,やはり間接的であっても,その状況を知りたいということであれば,閲覧・謄写の制度をまずは利用していただければというふうに思っておりますし,また,出ていくことがつらいということであれば,付添いの制度もございますので,言わばそういった形で手当てをしているところですので,更に仮に弁護士の方としても代理といいますか,委託を受けた方の傍聴を認めることについては非公開原則との絡みもありますので,慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。 ● 若干補足いたしますと,先ほど○○委員の方からも傍聴はしたいけれども,なかなか心情的につらくて自分は行けないので,そういう場合に代わりの人,それは弁護士さんでもいいのかもしれませんが,弁護士さんに行って見てきてもらうという必要性というのが高いというお話を伺いましたし,また,記録を閲覧・謄写すればいいではないかという点について,それでは足りないんだという御意見もあったところですので,実際,そういう形で委託を受けた人に傍聴をしてもらうという制度というのが,もちろん考えられないではないとは思います。しかしながら,ここから先は,なかなかすぱっと割り切れる話ではないところかとは思いますが,結局,少年審判が非公開を原則にしていて,それに対してどういう範囲で,どういう人に傍聴を認めるかという例外を設定するという問題を考えた場合に,やはり一種のバランスの問題をどうしても考えざるを得ないと思います。一方で,そういう少年の健全育成というものを図りつつ,他方の被害者,御遺族の希望をどうやって実現させていくかというそこの兼ね合いを探る際に,確かに記録の閲覧・謄写では十分でないという御意見は,もちろん理解できなくはないわけですけれども,被害者,遺族にとって直接審判を傍聴する,見聞きするということからすれば,やはり人に見てきてもらうというわけですので,間接的にならざるを得ないわけで,人に見てきてもらって話で聞くというのと,審判の経過を記録で見るというのとでは,もちろん差はあるかもしれませんが,間接的にそういう審判の経過,結果を知るということについておよそ代替がないわけではないということからすると,やはり直接傍聴を認めるということとの比較でいえば,委託を受けた弁護士さんに見てきてもらうという制度は,やや一歩後退する部分があるのではないかというような感じがしております。そういう意味で,どの辺でバランスをとるかということからすると,今の案の形がよいのではないかというふうに考えています。 ● 私も同じ意見です。審判の傍聴というのは,自分の眼で,直接に審判の状況を見るというところに重要な意味があり,その意味で,それは,審判で何が行われているかを知るということを超えた意味を持つものだと思います。代理傍聴というか,あるいは委託を受けて傍聴するというかどうかはともかくとして,被害者の方が弁護士に頼んで審判を傍聴してもらって,後から審判の様子を聞くというのは,正に,審判で何かが行われたかを知ること自体を目的とするものですから,その意味では,記録の閲覧・謄写と質的に同じものではないかと思います。そうだとすれば,傍聴の主体を委託を受けた弁護士の方にまで拡大すると,傍聴の性格及びそれを認める趣旨が,全く違うものになってしまいますので,そもそもの出発点からは,傍聴は,被害者の方自身が直接に審判廷で見る場合に限定した方がいいだろうと思います。   その上で,自ら傍聴できない場合に,記録の閲覧・謄写をするだけでは,審判で何が行われたかを知るという観点から不十分であるということがあるとすれば,例えば,通知の内容を拡大するとか,あるいは,先ほど○○委員からも御提案がありましたけれども,例えば,審判の様子を調査官の方が説明するとか,そういう形で対応すべき話で,傍聴の主体の拡大というのは筋が違うのではないかと思います。それから,記録の閲覧・謄写については,確かに,御指摘のとおり,被害者の方から委託を受けた弁護士もできるということになっているわけですが,記録の閲覧・謄写というのは,当該記録を直接に見ることそれ自体に意味があるというよりは,それを通じて,審判で何が行われているかということを知ることに意味があるので,ここで問題となっている傍聴とは区別して考えられるのではないでしょうか。 ● 裁判所の立場から考えましても,直接,被害者の方に来ていただいた方がむしろいいんではないのかなと,直接被害に遭われていない代理人の方がおられても,ちょっと審判はやりづらいですね。もし傍聴が認められるということになれば,被害者の方に直接在席していただいて,それを教育的な効果に結び付けようというのを考えるのが裁判所の立場だと思います。実際,直接被害に遭われた方あるいはその遺族でない方がおられても,そういう教育的な働きかけの手だてにならないんではないのかなと思います。ですから,先ほど話題になっていました代理人の話とか,あるいはモニターの話もちょっとこれは消極にならざるを得ないというふうに思います。実際,審判廷でその場に被害者の方がおられた方がむしろいい,どこにおられるか分からない被害者の方を念頭に置いて審判しても,少年には直接伝わらないわけですので,どうもそこはやはり言わば被害者の方の直接主義的な構造が必要かなというふうに考えております。   以上です。 ● 先ほどの萎縮の関係の話をもうちょっとしたいんですけれども,今の話の流れで私は傍聴そのものが,今の要件であると,一般的に少年の健全育成などとの関係で問題があるのではないかと思っていますが,その立場をちょっと横に置いたときに今の○○委員の話などを聞いて思ったのは,やはり被害者の方が直接そこにいるということで,少年の健全育成というような理念が首の皮一枚でつながっているというか,要するに何らかの弊害などいろいろあり得るかもしれないけれども,なお,そこでやはり働きかけということがあり得るんだと,若しくは被害者の方が審判を見られて,どんなような様子になっておられるのかというようなことも直接見聞きしながら,少年の更生という観点からも何かできることはないのかというような部分も絡んでいるのかなと。そういう意味で傍聴というふうになるときに,審判廷の中にいる傍聴とそうでない傍聴というのは,やはり少年法の基本枠組みからいっても少し違うところがあるという趣旨なのかなと思いました。基本的立場は違うんですけれども,そういうふうに今,感じたものですから,ちょっと述べておきたいと思いました。 ● ○○委員にお伺いしたいんですけれども,今,モニターの話が出ましたのでちょっと質問なんですが,その場にいる,現在することによって,被害者の方が傍聴人として,少年の健全育成に効果があり得るということで,別の部屋でどこにいるのか分からないというのは問題ではないかとおっしゃったんですが,例えば被害者の方としては出たくても出にくいという方がいらっしゃいますよね。それで,問題は少年の方,健全育成の方ですけれども,何かモニターの工夫によって少年は別室で聞いているけれども,少年にとっては被害者の方が分かると,存在が,例えばですよ,そういう画像とかの方法で。そういうようなことの工夫次第では可能ということはあり得るんでしょうか。 ● ビデオリンクが今,そういう構成になっていると思うんですけれども,恐らくその場にいたくない被害者が御自分の画像を提供することに承諾するかどうか,ちょっと疑問があるかと思いますが,少年の側から見られるということですよね。私が申しましたのは審判廷でそこに在席していただくと,この方が被害者,遺族なんだって,そこが分かるわけですよね。もちろん発言はしていただきません,傍聴ですから。だから,現在するという,そこを少年が実感できるんではないかなというふうに思っているんです。モニターですと,この部屋以外に被害者,こういう方がいます,来ていますと,説明すると思うんですけれども,それでは実感ができないんではないのかなという趣旨で申し上げました。 ● 被害者の方もいろいろだと思うんですけれども,顔も見られたくないと,そういう方も確かにそういった場合,問題があるかもしれませんが,現在すると見られるわけですよね。ただ,同じ狭い空間の中にいるのは耐え難いという被害者の方がいらっしゃった場合に,例外的な適用なので,元々傍聴というものが,例外的にそういうのを認めるということも考慮され,考え得るかなと思ったんです。 ● それはこれからの御議論だと思いますけれども,私の立場から言いますと先ほど申し上げたのが今の意見でございます。 ● 私は意見と申しますより,むしろ○○先生にちょっと教えていただきたいなと思ったのですが,先生が触れておられる国連の子供の権利条約というのは18歳未満でございますね。したがって,18歳以上はこれの射程外ということなんですが,それは明白なんですが,もう1点で司法面接について触れておられるんですが,これは確か本当に小さいお子さんで,元々被害者とか目撃者とか,その辺から証人尋問みたいな形をとらないでインタビューして,そのものが証拠になるという制度ではなかったんでしょうか。 ● 司法面接が元々そういうところを出発点にしているということは確かだと思うんですけれども,私がお聞きしている範囲では,イギリスなどでも司法面接のルールそのものが被疑者などに適用されるわけではないんですけれども,やはりコミュニケーションしやすくする環境をどう整えるかということが意識されているというふうに聞いています。それから,私がここで司法面接の議論を出しているのは,要するに司法面接と全く同じ場面だという意味ではなくて,やはり子供から話を聴き取るというのは,これほどに細心の注意が要るということであるということが言いたくて出しているわけです。ですから,それと年齢の低い子も中心になっていますけれども,もちろん例えば児童虐待の事例でいえば,16,17,18歳の子が性虐待を受けたというようなケースでも,児童相談所の方では児童相談所ですから17までになりますけれども,17歳までの子供でしたら,今,現実に司法面接若しくはこれに類似するような仕組みをとっている児童相談所もありますので,それを実行しているということなので,低年齢の子供に限ってやっているわけではないと思います。 ● 制度を導入した場合の裁判の実際については,やはりいろんな細かい考慮が必要になってくるだろうと思います。例えば被害者の方と少年とどちらを先に入廷させるか,あるいは,今,規則29条で在廷しているような人は少年の方を大体みんな分かっている人たちでしょうけれども,今度は被害者の方を裁判長が紹介されるといいますか,説明されるといいますか,そういう場面も出てくるのではないか。この辺,いちいち規則に書くようなことではありませんけれども,裁判所としての実務の上でお考えいただきたいという気がいたします。 ● 今,○○先生からそういうお尋ねがありましたが,裁判所の部内では仮にこういう制度が導入された場合に,運用でどういう工夫をするかについて,まず,一つは少年審判の適切な運営に支障を生じさせないか,あともう一つは不測の事態が生じないようにするためにはどうしたらいいかと検討しております。例えば,○○先生がおっしゃったような場合,普通は刑事の方もそうでしょうけれども,審判廷内の何らかのトラブルが予想されるとしたら,一つはまず先に審判官が入って,それで次に被害者に在席してもらって最後に少年を入れるかとか,いずれにしても裁判官が常にそこの審判廷に入っていて,それで皆さんが退廷されてから裁判官が引き揚げるとか,あるいはもちろん,その場合には事務官を必ず審判廷内に在席させるとか,仮に導入されたときはそういうことを考えないといけないだろうという議論はしております。   あと,もう一つは,多分被害者あるいは被害者の遺族の方と少年が面識がないこともあり得るでしょうから,その場合はもし付添いが付いている場合には,事前に被害者側の方から傍聴希望があるという形で,あるいは傍聴を認めるということで連絡をして,付添人を通じて少年の方にもそういうことは意識させるとか,あるいはそこもないようでしたら,裁判所の方がきちんと事前に少年に伝えるとか,そういうような運用は考えられるだろう,今,そういうことを第一線の裁判官や書記官,調査官等と意見交換を始めているところです。 ● 要綱の第一の一の文言にかかわることで,既に第1読会か第2読会で,事務当局から御説明があったとは思うのですけれども,その確認です。審判傍聴の可否について裁判所が考慮すべき要因と,第二の記録閲覧についての考慮すべき要因というのは,もちろん重なるところもあり,違うところもあるかとは思うんですけれども,第一の傍聴可否の方に少年の健全な育成に対する影響という文言を特に入れなかった理由というのは何でしたか。 ● 重要な点ですので,今一度御説明させていただければと思うんですけれども,被害者の方に少年審判の傍聴を認める場合には,縷々御説明しておりますように,裁判所による適正な処遇選択ですとか内省の深化を妨げられないように,審判や少年などにどのような影響を及ぼすのかを具体的に考えるべきであるというふうに考えております。したがいまして,考慮事項の例示としましては,少年の年齢ですとか心身の状態など,傍聴が少年や審判に与える影響を考える上で直接的に関連する要素,こういったものを考慮事情として挙げるのが適当ではないかというふうに考えたところでございます。少年の健全な育成に対する影響というものにつきましては,当然のことながら広い意味では考慮されるものであるというふうに考えておりますが,少年や審判への影響を具体的に考慮するための要素としては,あえて挙げる必要はないのではないかということで,このような整理をしたところでございます。 ● 分かりました。そうだったと思うのですが,当然の前提になっているのであえて挙げる必要もありませんが,あえて書き込むと何か不都合があるかというとどうでしょうか。書き込んでもいいような気がするのですけれども。 ● それと法制的な観点をも考えていかないといけないと思うんですけれども,例えば少年の健全な育成に対する影響というふうに書いてしまいますと,その考え方によってはそれだけ書けばいいのではないかということも,考え方としてはあり得るかと思います。ただ,やはり特に現場の裁判官といいますか,判断される方としては,具体的にどういった事情を考慮して,最終的に相当性判断をするのかということをかみ砕いて書いた方がより判断しやすいかと思われますので,このような直接的に影響するようなものを個別具体的に書き出したということでございます。 ● 分かりました。ありがとうございます。 ● ○○委員と私とで提案しました傍聴者の範囲といいますか,対象,これについて御議論いただきたいと思うんですが。 ● この点について,御意見はございますか。 ● 私どもはここに書かれているより,もっと範囲を広げるようにということを申し上げたわけですが。 ● これは繰り返しの意見になりますけれども,先ほど既に議論がありましたとおり,○○教授が述べられたと同じ理由で,傍聴する主体の範囲は要綱(骨子)の範囲にとどめるのが妥当だと思いますが,その点ではなくて……。 ● 「生命に重大な危険を生じさせたときに限る」という限定にしておりますので,非常に狭いんではないかと。 ● 対象事件の範囲ですか。すみません。私,勘違いしました。   その点,私自身は,この要綱の範囲が適切な範囲ではないかと思っております。ただ,前回も確認しましたとおり,この生命重大危険という文言が判断が難しいことになると,かえって申し出られる被害者の方に面倒をお掛けすることにもなるので,そこが明確に判断できるのであれば,この範囲は妥当なものであろうというふうに考えております。 ● 被害者の方による少年審判の傍聴ですけれども,対象犯罪をその点について線を引くことにつきましては,やはり元々少年審判が非公開になっていると,そこを考えなければいけないというふうに考えております。すなわち,非公開原則というのはこれまでも何度か御説明申し上げてきたように,やはり維持すべきと考えておりまして,その例外を設けるということですと,その傍聴の利益といいますか,その御要望が特に強いものに限るべきではないかというふうに考えたところでございます。   御案内の犯罪被害者等基本法におきましては,すべて犯罪被害者の方は「個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と,こういった規定があるかと思うんですけれども,この基本理念に基づき,少年審判の傍聴ということを設けるものにしたものでございまして,特にこの個人の尊厳の根幹をなす人の生命に害を被った被害者等,中心はやはり御遺族ということになるかと思うんですけれども,そういった方を傍聴の対象とすることがその趣旨に合致するものというふうに考えられます。冒頭申しましたように,非公開にした趣旨,こういったものからしましても,やはり例外を認めるものとしましては,その対象事件としては殺人事件等の重大事件など何ものにも代え難い家族の生命を奪われた場合のように,被害者側の事実を知りたいという審判傍聴の利益が特に大きい場合に限るのが適当ではないかということで,今の事務当局案のような線引きをさせていただいたということでございます。   もとより性犯罪ですとか,あるいは生命重大危険に至らない程度の傷害,こういったものについてもニーズをいただいている,あるいはそういった方,あるいはその周りの家族の方が傍聴したいというお気持ちを持たれることは当然のことかと思いますけれども,やはり,その一方で考えなければいけない非公開の原則などを考慮しますと,特に個人の尊厳にかかわる生命に関するもの,こういったものを中心に考えるべきではないかということで整理したところでございます。 ● ちょっと生きるか死ぬかの人でなければ傍聴できないという,その家族でなければ,なっていますけれども,先ほど言ったように生きて寝ついた方が実は大変なんですよ,実際。私は,死亡事件の遺族ですから,私なら言えるといって話すんですけれども,亡くなった場合は亡くなったで終わりなんです。喪失感はありますよ。一時の大変さはありますよ。だけれども,あとおむつを替えたり,病院を転々とさせたりする苦労というのは,障害の人は大変なわけですね,重傷の人は。だから,犯給法でも遺族給付金よりも障害の給付金の方が高いですよね,ずっと高くなっている。それはそういう大変さがあるからなんですよ。   だから,生命は大事だけれども,でも,現実に傍聴しようとする家族にとってみれば,本当に寝ついて,あと何年もかかるかもしれない,介護しなければいけないという人の方がずっと大変だし,悔しさも一段だと思いますよ。だから,これだけはやはり入れていただかないと困るなという気がします。死亡よりもその方が大変な犯罪で,私は刑が死亡よりも傷害が軽いのを不思議に思っているくらいです。私どものずっと会員の話を聞きますといかに大変か。家がもう破滅状態ですよ。それはやはり少なくとも法制度の中で救ってあげたいなと思いますね。 ● 私も○○先生と同じ考えを持っております。今,事務当局から御説明いただいた考え方は基本的にはそのとおりでしょうし,個人の尊厳の根幹となる生命の侵害に限定するという,その基本方針自体に異論を唱えるものではありませんが,やはり重大な傷害結果の中には,私の意見書では高次脳機能障害というようなケースの場合を引用しましたけれども,やはり近親者にとって,生命侵害の場合に匹敵するほどの重大な法益侵害が生じているというケースはたくさんあると思うんですね。生命重大な危険に関して従来の御説明を前提とすると,正に先ほど○○委員がおっしゃった,生きるか死ぬかの状態ということを念頭に置いておられるようですけれども,死亡に至る蓋然性が極めて高いとまで言えないにしても,まず,重度の後遺障害が残存することが確実に予想されるようなケースというようなものは,やはり傍聴の対象に含めてもいいのではないでしょうか。 ● 基本的には,○○幹事がお話になったような基本的な構造というのは,今,○○委員もおっしゃったような,そういう方向で考えるべきと思っております。あと補足としては,今,○○委員から高次脳機能障害ということが出てまいりました。これに関して裁判所の民事事件などでもいろいろ損害算定などのところで出てくることもあるものですから,そういうところの記憶なども手繰り寄せてみますと,非常に症状というのがばらばらなものではないかという気がしております。少々技術的なところですけれども,障害の重大な障害というのが判断が難しいと,さて,実務で裁判官がどう判断したらいいかというのが問題になるだろうというのが,前々回ぐらいにも出たのではないかと思いますけれども,高次脳機能障害ということに関して申し上げると,多分,それがより鮮明な形で問題になるものではないかという気はしております。   以上です。 ● 傷害の中身といいますか程度といいますか,そういうもののどこで線を引くかという話ですので,理論的にこれ以外にないという話では多分ないとは思いますが,私も○○委員の言われるように,死亡に至らない傷害の事件,特に傷害が重篤な結果を生じさせたような場合,その本人でありますとか,あるいはそれを囲む家族の方々が長期間にわたって非常に苦しい思いをされるということですとか,あるいは長期間にわたって支援が必要であるということ自体を全く否定するものではありませんし,確かに死亡事件よりもある意味では苦しい思いを被害者なり家族に負わせるという意味で,より重大だと言えるような場合もあるんだろうというふうに思っております。   ただ,そのことと,この傍聴の範囲をどこまで認めるか,あるいはどういう理由で認めるかということを考えることは,別であり,一方の少年審判の持っているそういう非公開の原則ですとか,健全育成の要請話と対峙する形で,正にどういう被害が生じた犯罪を対象とするかということを考える場合には,やはりまず生命の侵害あるいはそれに匹敵する危険性のあった犯罪というところでひとまず線を引くというのが,考え方としてはいいのではないかと思います。もちろん,別の切り方もあるというのは議論としては当然あるところですので,ほかの方の御意見も伺いたいところですが,その範囲について,どういう理由で,どういうふうに引くかというのは,非常に難しいところがある問題だというふうに考えております。 ● 私は,元々こういう枠組みの傍聴というのは反対ではあるんですけれども,少年法の健全育成の理念の枠組みの中で,例外的に傍聴を認めるというふうにするときに,恐らく要するにその線というのは,どういう場合が対象になるのかという線引きというか,外枠がやはり明らかでなければならないと。そうでなければ単純なニーズとニーズの調整ということになると,いろんなことが逆に広がりを持っていって,結局,少年審判,更には全体が変質していくという問題もあるというようなところもあって,何らかの明確な基準というのを一つ枠を置かなければならないというような,そういう事務局の発想もあるのかなと思ってお聞きしていたんですが,むしろ,だから,そういう立場からすると,傷害により生命に重大な危険を生じさせたということ自体も,私としては前々回に申し上げたように,更にやはりあいまいな規定で,場合によってはお亡くなりになったケースということだけに逆にまた限定するという立場も,十分あり得るのではないかというふうに思っています。   前回,前々回でしたか,事務局の方からどれぐらいのけがの状態,大変だったのかということは,通常捜査などでも明らかにされるんだという御説明もあったかとは思うんですけれども,ただ,私の感覚ではいわゆる殺人未遂になるか,殺人未遂にならないかという当該被疑者ですかね,少年の行為と死亡との結果について神経質になって検討するということは,正に罪名が変わるので捜査機関も検討されるだろうし,関係者もみんなそれについていろいろと検討する,今までの蓄積もあると思うんですけれども,傷害そのものが要するに実行行為ではなくて,傷害そのものが生命の危険との関係で重大さがあるかないかというような,そういうような判断の仕方というのは,私の感覚では余りそういうものはされていないのではないかと。   だから,例えばある事件が来たときに,裁判所の方はよく分からないのでドクターに,この傷は生命に重大な危険がありましたかというふうに問い合わせをしたときに,ドクターとしてもちろん明らかに答えられるような場合もあるとは思うんです。本当に瀕死の状態になられたとかいうような場合もあろうかと思いますけれども,そうでない,もっと微妙な場合もたくさんあるのではないかと思いました。 ● 今の点なんですけれども,次の行の「被害者等」のところで「被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合に」というふうになっておりますから,生命に重大な危険を生じさせたときというのが,正に心身に重大な故障を生じさせた場合というふうに置き換えられるのではないのかなと思うんですけれども,どうなんでしょうか。そうすると,生命には危険がなくても,重大な故障が生じたという重大な傷害事件というものを,最初のところに含めさせられるのではないでしょうか。 ● ちょっと確認になりますけれども,傷害を死亡の要件につきまして,生命重大危険ではなくて,心身重大故障にしたらどうかと,最終的な御提案かどうかは別にして,そういう問題提起をされているということでしょうか。 ● ○○委員の要請も入れてその範囲を広げるといいますか,「被害者等」の中にはそういう場合には配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹が傍聴できるということになっておりますので。 ● そこは事務当局からも少し御説明したところですけれども,線の引き方として,それぞれ,ここは御見解,考え方があるところかと思います。心身重大故障ということですと,生命重大危険よりは,それなりに広いものを拾っていくのかなというふうに考えておりまして,その場合の説明振り,あるいは非公開原則との関係で,そういったものまで対象とすることの当否を考慮しないといけないのかなと思っておりまして,事務当局としましては,再三の御説明になってしまいますけれども,やはり死亡した場合というのを中心に考えると,それと同等,匹敵すると思われるような生命重大危険に限るべきだということで,整理をさせていただいたところでございます。 ● 結局,裁判所の方で傍聴を認める場合の相当と認めるときという,その範囲といいますか,どういうときに傍聴が許容されるのかという,その要件が非常に問題だと思うんですけれども,今の裁判所の側からの御説明ですと,結局は少年に被害者が傍聴しているということで,ある程度,教育的な効果も期待し得るという,そういうふうな場合に慎重に認められるのだという御見解だったというふうに思うんですね。   そうしますと,「年齢及び心身の状態,事件の性質」というところに込められているのかもしれないんですけれども,非常に低年齢の触法少年なんかの場合,この故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪とか,刑法211条をやる場合というのは,ほとんどないだろうと思いますし,犯罪行為により被害者を死傷させた罪などというものも,ほとんど2年に1回ぐらい起こるかどうかなという感じのものではないかというふうに思いまして,そういうものが,教育的な効果というものを被害者の傍聴によってある程度期待し得るという場合に,そういう低年齢な者までも対象に含まれる可能性があるのかという疑問があるわけですね。ですから,第二号に掲げる少年というのをどうして入れなければいけないのかという,そこのところをちょっと疑問に思うのですが。 ● ちょっと裁判所の方へのお尋ねに,横から出てきていかがかと思いますが,まず,事務当局としての考え方からいたしますと,教育的効果がある場合でないといけないという趣旨では必ずしもないということでありまして,教育的効果も損なわないということも含めて審判が適正にできると,そういうことを損なわないという意味での相当性というのはありますけれども,積極的に教育的な効果がある場合に限られるという要件の趣旨ではないと思っております。先ほどの御発言も恐らくは被害者の方が傍聴されるのであれば,それをなるべく生かしていく方向で審判を行う立場としては考えていかれると,そういう御趣旨だったのではないかというふうに理解したところですけれども。 ● 教育的な効果に関しては,今,○○幹事がおっしゃったところと私は全く同意見です。1点補足させていただくと,触法少年の場合,刑法211条に該当するケースは余りないのではないかという○○委員の御発言がありましたけれども,14歳未満であっても,昨今,暴走族ですとか,その手の不良交友団体なんかに入る形で無免許運転をやって,死傷の結果を引き起こすというようなケースは,必ずしも少なくないように現場の感覚としては思いますので,触法少年だから対象となる件数が著しく少ないということは,言えないんではないかという考えがあります。 ● 私も触法少年については対象から外すべきという立場です。先ほども出ましたけれども,触法少年についての殺人事犯というのは非常に少ないわけです。近年,社会の耳目を集めた事案として思い起こされますのは,長崎,佐世保の事案でしたけれども,いずれも発達障害というふうに判断されて,そして児童自立支援施設に送られたというような事案でありました。11歳,12歳という年齢で,皆さんも,もし御自身が11歳,12歳で殺人に相当する事案を起こした子どもから事情を聞くというのがどういうことか,御自分でなさるのに自信があるでしょうか。非常に難しいです。付添人も難しいですし,裁判官も難しいです。類型的に触法少年というのは,そういう扱いだからこそ刑事未成年というふうになっているわけで,この類型がもしされるということは非常に危ないというふうに思っております。   全般的にもう一つ言わせていただきますと,なかなかサインは得られないのであろうとは思いますが,私自身はたとえ被害者の傍聴のためという目的であっても,要綱(骨子)第一の一が過失犯と故意犯を同列に扱っていること,犯罪少年と触法少年を同列に扱っていること,これは正に被害者のおっしゃる過失であろうと故意であろうと,死んだり,大きなけがをさせられた被害者にとっては同じだという論理を取り入れているわけです。あるいは,14歳以上であろうと14歳未満であろうと,被害者にとっては同じだという論理を取り入れているわけです。そうなってくると,更に大きく言えば被害者たちがおっしゃりたいのは,刑事事件であろうと少年事件であろうと被害者にとっては同じだと。この論理に近づくことになりはしないか。そこに私は大きな懸念を持っております。これは懸念ですので,特に御議論ということでなくて結構です。 ● こだわるようですけれども,先ほど○○委員がおっしゃったように,対象のところで心身に重大な故障がある場合というのと,生命に重大な危険を生じさせたというので,ちょっと違うように思うんですね,意味が。だから,日本語としてこの二つを並べておくのもちょっとおかしいのではないかというふうに思うんですがね,片一方は生命に重大な危険という非常にすごいことを書いておいて,片一方は心身に重大な故障があるときには別の者が傍聴することができるというのはちょっとおかしいので,どっちかに統一する必要があるんではないかなという気がしました。 ● 同じような趣旨で事務当局への質問ですけれども,生命重大な危険というのはやはり死亡に至る蓋然性が極めて高いんだとしたら,死亡に至る蓋然性が極めて高いということは,自ら制度利用が困難なことはもう当然ではないかと,要するに生命重大な危険だけれども,心身に重大な故障がないというケースというのはあり得るのかという疑問があるんですね。だったら,心身重大な故障のある場合というのに統一するという考え方も十分成り立つんではないかと私は考えるんですが,いかがでしょうか。 ● 生命重大危険と心身重大故障,これが使われる場面の話なんですけれども,生命重大危険につきましては要するに殺人ですとか自動車運転過失致死ですとか,そういったものと同様に,言わば対象となる犯罪をまず絞る場面で使っている概念でございます。他方,心身重大故障というのはこれからいざ見に行こうとするときに,被害者の方がどういう状況にあるのかについての概念です。例えば,生命重大危険が生じたような事案におきましても,犯人の検挙が少し遅れるとか,種々の事情で回復する場合というものも否定できないと。その場合,更に自分で見に行けるのか,あるいは見には行けない,床に付しているような状況にあるということですと,床に付しているから傍聴できないというのは,やはりいかがなものかと思いますので,他の制度と同様,要するにそういった制度を利用できないほどの重大な故障を生じている場合には,その周りの方に傍聴していただくという,言わばこれからいざ傍聴する場面についての対象の区切り方ということで,そういう整理をしたところでございます。 ● そこがどうも分からないんですよね,私には今の御説明が。 ● ただ今○○幹事から御説明があったとおりだと私は理解しておりまして,生命重大危険と心身重大故障は全く異なった局面で使われる独立の法律的な要件であり,これを心身重大故障に統一するということになりますと,実質的には対象の犯罪の範囲を拡大することになり,それについては様々な意見がありますけれども,私自身は事務当局の対象犯罪についての御説明は説得的なものだと思っておりますので,言葉を一緒にするということは,かえって不適当であると思います。 ● そうすると,今の説明で確認をさせていただきたいんですけれども,生命重大な危険というのは傍聴を申し出るときになくてもいいんですね。 ● 生命重大危険を「生じさせた」ですので,それは傍聴している時点に必ずしもなくてもいいものであるというふうに理解しております。 ● 了解しました。 ● 「危険を生じさせたときに限る」となっていますよ,「危険を生じさせたときに限る」。だから,危険を生じさせていないといけないんでしょう,申込みをするときに,申立てするときに。 ● 過去形でございますので,過去に生じていればいいという趣旨です。 ● 過去に生じて今は元気になっていてもいいと。 ● はい。そういうことです。 ● ○○先生とかのおっしゃるとおりだと思いますし,ほかの用語例からいきまして,心身に重大な故障というのは意見陳述ですか,こういう一定の行為を,お出でいただいてなさるには支障があってできないような場合の用語として使われておりますので,前段部分の被害者を傷害した場合を限定する概念としてちょっと使えないものと思われますが。 ● もう1点だけ補足しますと,飽くまでもこの「生命に危険を生じさせたとき」というのは,その頭にあるように「これにより」という,正に犯罪によりというのが付いているわけですので,その犯罪の結果がどうであったかということを問題にしている局面です。 ● それは継続していなくてもいいと。 ● そういうことです。それで,飽くまでも後ろの「心身に重大な故障がある」というのは正に申立てをするとき,傍聴するときに,そういう問題があるので代わりの配偶者なりに行っていただくという,そういうことを認めるという,そういう意味で局面が違うということを申し上げているわけです。 ● 今,「これより」というのが犯罪によりという御説明だったんですが,これは多分,傷害によりという御趣旨ですよね。 ● ごめんなさい,傷害によりということです。 ● 併せて,ちょっと広がるというか,くどいようですけれども,事務当局にお尋ねしたいのは,たまたま回復したけれども,寝込んでいるから自分で行けないのは気の毒であるから,近親者の方にというような御趣旨だとおっしゃいましたけれども,中には独身であって兄弟姉妹等もおられない方もいるわけで,そうすると,寝込んでいて近親者がいないから,あなたは見られませんではなくて,そういうときに近親者の代わりに委託を受けた弁護士に傍聴してもらうということは考えられないでしょうか。 ● それは恐らく生命重大危険とはちょっと違う,そこの範囲の問題自体ではないのかなという印象でございますので,そこは先ほどの議論の際に事務当局としての考えは御説明したとおりでございますので,それ以上につきましては御議論をいただければと思います。 ● その点は先ほどの○○幹事の発言に私は全く賛成でありまして,要するに当該手続の目的は何かといいますと,本人に代わり得るような気持ちの人がその場に行って,そこで状態を見聞するということによって,この手続の目的が達成されるということになりますので,委託弁護士がそういう目的を達成するためにふさわしいかは,疑問です。その目的を達成することのための者として想定される世界と,やはりちょっと違うかなという気がいたします。したがって,先ほどの○○委員の説例についても答えは消極的であるというのが私の意見です。 ● 途中で言ったんですけれども,要件の関係で相当と認める場合には傍聴することを許すという規定になっているわけですけれども,事務局の説明では多分規則29条との違いというのは,そもそも規則29条は被害者を対象にしているかどうかという点を横に置くと,積極的に少年の健全育成に資するわけではないけれども,それを害するような要素がないということであれば,傍聴を認められてもいいではないかというようなことを多分おっしゃっているのかなとも思うんですけれども,基本的に多分多くの場合は先ほど申し上げたおそれというか,確実にどうなるというわけではないけれども,調査の結果等からすると,少年が何らかの形で萎縮をするというおそれがあるのではないかというふうに心配されるケースも一定あると思うんですね。それはおそれの程度であっても,やはりそういうことが心配されれば,傍聴をお断りするということになるのか,その辺はまた総合判断ということになるのか,その辺りはどうなんでしょうか。 ● 結論から申しますと総合判断でございますが,もちろん,すべてがおそれなので,まだやっていない,まだ傍聴されていない,まだ審判をしていない,傍聴した上での審判をしていない時点での判断でありますので,そういう意味ではすべてがおそれがあるかどうかという判断になると思います。その上で結局は裁判官の心証によるというところでありまして,そのおそれの大きさがどの程度なのか,生ずる害の大きさがどの程度なのかということなんだと思います。害が非常に大きければ生ずる可能性,蓋然性,確率みたいなものが多少低くても,という考えもあり得るんでしょうし,そういう意味での総合判断でありますし,場合によっては審判の工夫ということで,これまでの議論の中でも出てきましたけれども,比較的,そういう弊害が生ずるおそれの少ないような客観的な犯罪事実に関するような審判から始めてみるというような工夫があって,それでどこまで大丈夫なのかというようなことも考えながら,進めていくということもあるのではないかなというふうに考えております。 ● ちょっと元の萎縮の議論にも戻るんですけれども,私も意見書の中にも書きましたが,この法制審議会の少年法部会に至るまでの意見交換会などでは,裁判所の方でも被害者の方が傍聴するということによる萎縮効果ということを心配され,それから,今回,パブリックコメントなどを見ても実際に携わっている関係者からは,多くの人が萎縮を心配しているということもあって,私の感覚からすると,そういう心配をせざるを得ない,おそれが強いと言わざるを得ないというケースが相当数に上るのでないかというような感じもするんですけれども,それはちょっと意見としか言いようがないのかもしれませんが,一定の何か指針的なものがもう少し踏み込んでできるのか,ちょっとここでは難しいのかと思って質問をしているわけですけれども,最後,総合判断ですと言われれば,全部それまでのことではあるんですけれども。 ● 今,○○委員のお話を聞いていて,今後の家裁の実務の中でやはり傍聴を前提にして被害者等から申出があったら,調査の過程でもそれを前提とした調査がされると思います。ですから,その関係で少年が傍聴に耐え得るかどうか,そこは割と情報が結構そろうのではないかなと想像しております。ですから,そういう少年の状況と被害者の要望を加味して,家裁が判断していくわけですけれども,情報が足りないということは余りないんではないかなという,ちょっと楽観的かもしれませんけれども,そんな気はしております。難しい判断を迫られることは間違いないんですけれども,情報がなくて判断に苦慮するということはないというふうに思いますけれども。 ● 今の○○委員の御意見は被害者についてもでしょうか。少年については鑑別期間中,ずっと丁寧に行動観察もありますし,調査官調査もやっているので分かりますけれども,被害者側ということになると,ちょっと難しいと私は感じるんですが,その点はいかがでしょうか。 ● 前にも説明があったかと思いますけれども,被害者調査がほぼ先行する事例が多かろうというふうに思いますので,その辺の情報も裁判所はおおむね得ているのではないかなというふうには思います。今,○○委員がおっしゃるように被害者の情報がないときは,ちょっとやや慎重にならざるを得ないと思いますけれども,そこはやはりお申出があったときに,被害者調査もしていくということになろうかなというふうに思いますが。 ● 問題は情報がなくて不明といいましょうか,はっきりと問題がないとも言い切れないし,あるという根拠もないという,そのときがどうなるかということだと思うんですね。やはり傍聴については裁判所が相当と認めるときとある以上,相当である積極的な理由がきちっと裁判所として認められる場合に,認められるというふうに理解してよろしいのかと思いますが,そういう理解でよいでしょうか。 ● ちょっと御趣旨が分かりにくいところもあったんですけれども,積極的にというか,相当と認められなければ許してはならないということは,法文の書き方からそうなると思いますけれども,先ほども申し上げましたように,審判を適正に行うことができるかどうかという予測の問題でありますので,そういう意味で若干不確定な部分がいずれにしろ,飽くまで予測だということにはなってしまうんですけれども,その中で先ほども申しましたけれども,弊害がどんなものがあって,それがどの程度起きるのかということで,それらを考えて審判は適正に行えるであろうという判断になったときに,傍聴が認められるということではないかと思います。 ● 少年の健全な育成を妨げないというのが相当な場合であると,そういうことでよろしいわけですか。 ● 審判の目的の中には,少年の健全な育成という目的も入っておりますので,そういうことも含めて審判が適正に行われるかどうかということではないかと思います。 ● ちょっと細かな実務的な心配でもあるんですけれども,傍聴を得て審判が始まって,途中でというか,要するに実際にやってみたら,少年が十分話ができているのかどうなのかということに疑義が生じたというような場合に,もちろん,審判をしていて,おのずからそれがはっきりするような場合は,ちょっと待ってというようなことで言えると思うんですけれども,私の感覚からすると,本当は引き出せたかもしれないことが引き出せていないかもしれないとか,要するにその辺がまたちょっとよく分からなかったりするわけですね。   要するに,少し意見書の中にも書きましたけれども,例えば少年審判という意味では保護者と子供とが一緒になる場面というのは,審判手続までには基本的にはないわけですね。身体拘束されているような場合に,調査官調査で親と子供と一緒にするというような場面はないので,そうすると審判で初めて,そういう正式な場所で同席するという形になって,そうすると我々からすると,今まで何か余り予想してこなかったような反応が,時として起こったりするような場合もあるわけです。それが起こっているのか,起こっていないのかがよく分からないみたいな話になってきたときに,途中で審判を止めて付添人側から何か言うのかとか,その辺の途中の段階で何か評定するのかしないのかみたいなものは,どうするのかなと思うんですけれども,最初にもう始まってしまったら,少々何か問題はあるかもしれないけれども,目に見えて問題がない限りは,そのまま進んでいきましょうみたいな運用になってしまうのかなというふうにも危惧もするんですが。 ● ちょっと趣旨を正確に理解できたか分からないんですが,何が何でも最後まで突っ走ってやろうということはないだろうと思います。○○委員もいろいろ御存じのように,審判というのは筋書きなく,ぶっつけ本番でやるわけではなくて,調査官,裁判官,それから時には付添人も入って,今までの結果から進行はこんなところが予測されると,また,ある意味では演出を考えるようなところもあるわけです。そういうところに関しては被害者がいる場面であっても全く同じであって,そういう計画を立ててしている以上は,これがどうだろうかという検証は進む中で不可欠だろうと思います。   それとは別に,そういう筋書きがある意味でないところであって,それで本当にこの働きかけが効果を上げたのかとか,それから,どうも調査で尽くしていないところがあったのを,審判という場で引き出すことができたのかと,こういうところになってみると,被害者がいる場合であろうといない場合であろうと,神様のみぞ知るというところがどうしても出てきてしまうと思います。もちろん,被害者がいる場での審判ということになると,そういったところを裁判官としては一般的により注意すべきということになってくるんだろうと思いますので,やりながら,それぞれ表情を見ながら,これはどうなんだろうかと,被害者もいるわけですから,裁判官としては目配りするところは随分増えてくるということにはなろうと思いますけれども,進行を主宰する中で,立ち止まって検証する場面もあるでしょうし,そういう場合には休廷して調査官と議論をしてもいいと,飽くまでも予測ですけれども,思っております。 ● 話が少し前の事柄になるんですが,○○先生が今回の傍聴に絡んで,何か意見交換会の席上でのどなたかの発言を取り上げておられたんですが,私は素直にここで引用されている部分をお読みいたしますと,こういうおそれ,御指摘も踏まえて,それでもって総合判断として相当な場合に傍聴を認めるという,非常に慎重な検討の結果の要綱のように見えます。あえて申し上げましたのは,何かこの言葉の議論の前提が違ったり,対象としておられたところが違うところで,一部だけ切り出した御意見になっているように私には見えますので,今回の要綱自体がいろんな様々な要素,少年法の目的等を踏まえた上で相当な場合に傍聴をお認めになるというのは,非常に適正な制度だと思われますが。 ● ○○です。事務当局にちょっと細かいところをお聞きしたいんですけれども,記録の閲覧・謄写に関する今の5条の2だと,申出の時期に関して「21条の決定があった後,」だから,審判開始の決定があった後,申出があったときはというふうになっていますけれども,今回の要綱(骨子)だとあえてそういうようなのが入っておりませんが,審判開始の決定の前でも審判が開始されるのだったら傍聴をさせてくださいと,そういう申出も含んでいるという御趣旨でしょうか。 ● 事務当局への質問を横取りするつもりはないんですが,記録の閲覧・謄写に関して審判開始決定をというのは,審判開始決定があった事件についてのみ,これの対象となるという趣旨で,特に時期ということではなかったんだろうと思います。むしろ,それに関連して,時期ということに関してこちらの希望といいますか,裁判所側としてはやはり極端な場合,当日にやはり傍聴するというのは,いろんな意味で困るところがあります。そういうところから,早い時期にそういう意向がもし表明されるのであれば,早い分には構わないのではないかと思っております。 ● 御指摘のように閲覧・謄写につきましては,「第21条の決定があった後」という要件がありますけれども,第一については特段そういうものは書いておりません。また,実際上も先ほど少し御指摘がありましたように,早い段階からの申出というのが実際上も便宜かなということで,結論的には少なくともそういった申出を開始決定がある前にしていただくことも,あり得るのではないかというふうに考えております。 ● だから,その時期的なことは特に書いていないけれども,今,裁判所がおっしゃったように当日言われても対応できないという意味でいえば,あらかじめという程度のイメージでよろしいんでしょうかね。 ● はい。 ● また,全然ちょっと角度の違う御質問になるんですけれども,被害者の方で後に証人尋問が予定されているというような,そういうような場合に傍聴の申出がされたときに,その点は何らかの配慮があるという前提なんでしょうか。 ● その点は「審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき」のうち「審判の状況」という考慮事情について御説明したいんですけれども,そのように書いておりますのは,一つの例として○○先生がおっしゃったような後に証人尋問が予定されると,当然のことながら,その前にほかの方の証人尋問を傍聴してしまいますと,証言が影響を受けるおそれがあると,そういった場合にはやはり御遠慮願わざるを得ないというふうに考えておりますので,御指摘の点は「審判の状況」という考慮事情で十分考慮していることになっているというふうに考えております。 ● そのほか御意見,御発言がないようでしたら,本日の審議はこの程度で終えたいと思います。これで3巡目の審議を終えたことになります。   それで次回ですが,次回は全体について最終的な詰めの議論を行いたいと思います。そして,できますれば,答申案の決定までいきたいと思っております。修正意見を始めとする御意見等がございましたら,次回の部会までに書面で事務当局に御提出いただければと存じます。   では,次回の日時,場所等についてお願いいたします。 ● 次回の部会は今月25日金曜日の午後1時30分から,今日と同じこの法務省ゾーンの20階の第1会議室で行うこととなっております。 ● それでは,これで本日は散会といたします。ありがとうございました。