法制審議会保険法部会 第24回会議 議事録 第1 日 時  平成20年1月16日(水) 自 午後2時02分                       至 午後2時58分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり)                   議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第24回会議を開催させていただきます。   まず最初に,配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ● 本日の配布資料は,席上に配布いたしました保険法部会資料27の1点でございます。 ● それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日の会議は,一昨年の11月1日の第1回会議から数えまして第24回目の会議ということになりますが,委員,幹事の皆様の御協力によりまして,前回の部会におきまして要綱案の実質的な内容が全体的にほぼ固まった状況にあるということができるかと思います。   そこで,本日は部会資料27の「保険法の見直しに関する要綱案(案)」に基づきまして,要綱案の取りまとめのための審議を行いたいと思います。   まず,事務当局から前回の部会資料26の要綱案(第2次案)から修正を加えた点についての御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   第2次案からの変更点について御説明をいたします。   まず,全体の構成に関してですが,説明として第1次案からの変更点などを記載していた部分をすべて削除しておりますが,これによって,第2次案の内容を実質的に変更するものではございません。また,前回の部会で御了解をいただいたとおり,片面的強行規定の項目はすべて「保険契約者等に不利なもの」という表現に統一をしております。   さらに,「現行商法」という文言を,単に「商法」に改めるとともに法律番号を削除しており,同様に,16頁の民事執行法の法律番号も削除しております。   最後の点は,要綱案をより簡明なものとするという観点からの形式的な修正でございます。   次に,各項目における変更点を,部会資料27に沿って順に御説明いたします。   まず,1頁の第1について,今回の資料では,努力義務の項目を掲げないこととしております。前回の部会では,規定を設けることができるかについて,法制的な問題があるという前提の下で,基本的な方向性について御了解をいただきましたが,このような問題が残されている項目を要綱案に掲げるのは適当でないと考えられることから,要綱案の項目としては掲げないこととし,今後の条文化に向けた作業の中で,法制的な観点から更に検討することとさせていただきたいと思います。   なお,これに伴い,第1の見出しを「保険法の適用範囲」に改めております。   続きまして,2頁の告知義務についてですが,③の(イ)の「①による事実の告知」という表現を「②の事実の告知」に改めており,12頁と20頁についても同様の修正をしております。これは,(イ)と(ウ)の表現を統一したものでございまして,実質を変更するものではございません。   3頁の保険証券についてですが,①の(カ)については,前回の部会での御指摘を踏まえまして,「保険金額がないとき」という表現を「保険金額の定めがないとき」に改めております。   4頁及び15頁の危険増加の定義に,「以下この項目において同じ」という文言を追加し,23頁の危険増加の定義には「以下同じ」という文言を追加しております。これは,損害保険契約,生命保険契約,傷害疾病定額保険契約のそれぞれの箇所で危険増加の定義をしていることから,他の定義語と同様に,どの範囲で用いる定義語であるかを明示することとしたものでございます。   続きまして,8頁の請求権代位についてですが,②のうち,「①による当該代位」という表現を,単に「当該代位」に改めております。これは単に不要な文言を削除したものでございます。   同じく8頁の重大事由による解除の①の(ア)に「故意に」という文言を追加しておりますが,これは18頁の生命保険契約の項目及び26頁の傷害疾病定額保険契約の項目と表現を統一したもので,実質を変更するものではございません。   続いて,11頁の生命保険契約の意義についてですが,前回の部会での御議論を踏まえまして,「その他の一定の財産上の給付」という文言を削除しております。また,19頁の傷害疾病定額保険契約の意義についても同様の修正をするとともに,「一定額の金銭の支払」を「一定の金銭の支払」に改め,生命保険契約の表現と傷害疾病定額保険契約の表現を統一しております。   次に,13頁の保険証券の①の(キ)についてですが,「保険給付の内容及びその額」という文言を「保険給付の額及びその方法」に改めており,22頁についても同様の修正をしております。これらは,保険給付を金銭の支払に限定することとしたことに伴い,保険証券の記載事項を修正したものでございます。   次に,16頁の保険金受取人の意思による死亡保険契約の存続についてですが,前回の部会で御了解をいただいたとおり,第2次案に掲げていた③と④を削除し,(注1)を追加するとともに,(注)を(注2)とした上で表現を一部修正しております。これと併せて,24頁についても第2次案に掲げていた③と④を削除し,(注)を引用形式の表現に改めております。   また,24頁の①の「解除権者」及び②の「介入権者」という定義語について,「以下この項目において」としていた部分を,単に「以下」に改めております。これは単に不要な文言を削除したものでございます。   なお,前回の部会でも御説明をいたしましたとおり,規定を設けるに当たっては,第2次案の③に掲げていたような執行手続等との関係で,更に必要な規定や保険者の二重払のリスクを防止するための措置,傷害疾病定額保険契約において保険事故が発生しても契約が終了しない場合の取扱い等についても検討が必要になりますが,このような検討をすることは,新たな制度を設計する以上当然のことでございますので,検討すべき課題をすべて(注)の中に記載することはいたしておりません。   続きまして,17頁ですが,保険者の免責について,前回の部会での御指摘を踏まえまして,第2次案で(イ)と(ウ)の末尾に付していた(ア)や(イ)に掲げる場合を除くという括弧書きを削除しており,25頁についても同様の修正をしております。条文上の表現につきましては,法制的な観点から改めて検討することになりますが,要綱案としては現行商法と同じ表現にしておく方が,現行商法の実質を変更するものでないことが表現上も明らかになって適当であろうというふうに判断したものでございます。   続いて,19頁以下ですが,「傷害疾病」という文言と「給付事由」という文言につきまして,前回の部会で御了解をいただいたとおり,「保険事故」の文言に統一をし,併せて「傷害疾病に基づき」あるいは「給付事由に基づき」という表現を,「保険事故に関し」という表現に統一しております。これに伴いまして,「傷害又は疾病」という用語について「傷害疾病」という略称を用いるまでの必要はなく,むしろ使用しない方が分かりやすいと思われることから,10頁の傷害疾病損害保険契約における傷害疾病の定義を削除するとともに,19頁と22頁の「傷害疾病」を「傷害又は疾病」という文言に改めております。   第2次案からの変更点につきましては,以上でございます。 ● それでは,ただいま御説明いただいた部会資料27につきまして,御質問,御意見がございましたらいただきたいと思います。いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 幾つか申し述べさせていただきますが,まず努力義務のところですけれども,これは私,前回規定を置くことに反対いたしましたので,少数意見の立場ですから,余り申し上げる資格がないのですが,お願いとして,文言上,前回の部会で議論した内容以上の負担が消費者側に負わせられることがないような,それは効果のない間接的な努力義務ですけれども,そういう点だけはお願いしておきたいと思います。   それから,一番問題だと私が思いましたのは,13頁の(7)の①の(キ)の規定が,従来「保険給付の内容及びその額」というふうになっておりましたが,今回の案ですと,「保険給付の額及びその方法」というふうになったわけですね。前回,私が損害保険契約のところで,「保険給付」の用語について質問させていただいたわけですけれども,そのときにどういうことを申し上げられたかというと,損害保険契約における損害のてん補というのは二つあって,基本的には,保険金の支払と損害てん補の性格を有する現物給付とがあって,この2種類のものをあわせて「保険給付」という言葉を使っておられるのですねということを御質問して,そうだというお話を伺ったのですが,生命保険及び傷害疾病定額保険,いわゆる総称して定額保険の場合,前回の集約によって現物給付を外すとなりますと,保険給付の現実的な中身は保険金の支払だけですから,ここは,前回は「保険給付」でよかったと思いますが,今回の案としては「保険金の支払」というふうに改めていただいて,「保険給付を行う」は「保険金を支払う」と,こういう形にしていただかないといけないのではないかなと思っているのです。少なくとも前回集約した文言から「その方法」というのが入りますと,これはいろいろ議論しなければいけないと。それから,この文言ですと,保険給付の内容には現物給付も含まれるという解釈も可能になるような文言になっているのではないかと思うのです。   先ほど申し上げたように,定額保険の場合の保険金の一定の金銭の支払というのは,保険金の支払しかないわけですから,「方法」という言葉がありますと,ほかにもいろいろな方法があるのかという話になって,損害保険のところを見ていただくと分かるのですけれども,損害保険には給付方法が二つあるのに何も規定がないのですね。定額保険のところは一つしかないのに,こういう「方法」という規定があると。これを見てもおかしいと思いまして,ここは前回承認した案と同じように,前回承認したものは「保険給付の内容」という形でいろいろあり得るということを言っていたわけですが,そこを削りますから,「保険給付の額」という形の規定だけにしていただく必要があるのではないかと。これが第2番目です。   それから,第3番目は19頁の第4の傷害疾病保険の(2)のアの「保険事故」,ここは一つの例ですけれども,先ほど御説明がありましたように,第2次案にあった「給付事由」の文言はすべて「保険事故」に戻されているわけですけれども,これも私が推察するところでは,次のような文言を受けた作業を元に戻されたのだと思うのです。その文言というのは,資料25の14頁の3(1)の(注1)にあったわけですが,「本資料の各規律において『保険事故』と記載している部分については,各規律ごとにその内容を明示するものとする」と。一つ確認させていただきたいのは,この作業は断念して元へ戻されたのか,それとも,要綱案ではこうだけれども,この後,まだその部分についてはあきらめないで道を探られるのかと。それに対して,私は「保険事故」という文言で問題なく規定ができるのではないかと思うのですが,その点を確認させていただければと思います。   それから最後に,24頁の(5)の傷害疾病保険の場合の介入権のところです。前回の最後で私も準備ができていなかったので,質問をしてお答えをいただいたのですが,もう一回そこを確認させていただければと思うのですが,要するに,ここでの問題は24頁の介入権の規定というものの対象,介入権を行使できる対象となる傷害疾病保険契約というものがすべての傷害疾病保険契約なのか,それとも,平準保険料方式を採用している疾病定額保険契約を含んだ傷害疾病定額保険契約だけを意味するのかと。もっと簡単に言いますと,傷害の定額保険契約のみのものについては,介入権を認めないということなのかと。この文言を見る限りは,すべての傷害疾病定額保険が入るように見えますが,介入権の趣旨は,そのとき解除されると,また再加入は難しいということであれば,傷害のみの保険契約,基本的には現在ではいつでも入れるということであれば,それは一つの考え方だと思うのですけれども,問題はどちらかはっきり明示する,分かるようにしておく必要がありまして,前回,事務当局からのお答えは,私の記憶が正しければ,解約返戻金があるものはという,そういうものが対象になると。でも,そうすれば,一部掛捨ての中でも解約返戻金のないものがありますけれども,平準保険料方式を使わないものであっても,解約返戻金がある,特に積立型の傷害保険ですよね。そういうものについては介入権を行使できることになるのか。だから,どういう考え方の下で,どういうふうに最終的に整理されたかというのをもう一度確認させていただければと思います。   以上です。 ● 4点ほど御指摘いただきましたので,順次いきたいと思いますが,努力義務の点につきましては,法制的な問題があるということで掲げないという先ほどの説明のとおりでございまして,法制的な問題をクリアできまして条文化するとなった場合には,当然のことながら,前回御審議いただいて取りまとめられた内容に沿ってということになります。条文化の作業の中で事務当局が,あれも付け加え,これも付け加えということは当然ございませんので,そこはそういう前提でお考えいただければというふうに思います。   それから,一番問題だと御指摘のありました保険証券の記載事項の13頁,それから,同じことは定額保険でいきますと,傷害疾病定額保険の22頁の上の方にも同じく「保険給付の額及びその方法」というのがございます。ここで「保険給付」という言葉をいじっておりませんのは,今回,損害保険,生命保険,傷害疾病定額保険のいずれも「保険給付」という言葉で統一しているということがございまして,全体をいじるのが,またかえってミスを誘発するというふうに考えまして,そこはまず言葉を維持するという前提で考えまして,その上でどう考えたかといいますと,13頁も22頁もそうですが,そのすぐ下に「保険料及びその支払の方法」という記載をしておりますので,同じ決まった額の金銭ということであれば,その額ということとその支払の方法というのを併せて書くのが,表現の平仄上いいだろうというように考えまして,保険料の方は「その保険料」という言葉ですから,その支払の方法ということで「支払」という言葉が入っていますが,「保険給付」というのは,その保険給付の中に支払という意味が込められていますので,「保険給付の額及びその方法」ということで,若干言葉に応じて書き振りが変わっていますが,(キ)と(ク)はいずれも表現の平仄を合わせるという意味でこういう形で記載をさせていただいたという趣旨でございまして,これに,何かまたこっそり別の意図を込めたということでは全くございません。   他方で,損害保険契約の方は,3頁の方で保険給付の方法をそもそも書いてございませんが,これは,従来部会でも損害保険の「損害のてん補」というのをもう少し分かりやすく書けないものかという御指摘を何度もいただいたところでございますが,そこは現時点ではなかなか「損害のてん補」に代わるそれ以上のいい言葉がこちらとしてはまだ持ち合わせていないところでして,現行法どおり「損害のてん補」という言葉を使っているところでございまして,「損害のてん補」という言葉を使いますと,「損害のてん補」というのは損害保険そのものですから,それ以上に証券の記載事項で,わざわざ「損害をてん補すること」とは書かずに,3頁の損害保険の証券の記載事項として,(カ)の,言ってみれば,その上限額である保険金額だけを掲げるという形で整理をしているというのが今回お示しした最終案の考え方といいますか,整理の仕方でございます。   それから,19頁以降,第4の傷害疾病定額保険契約につきまして,いったん第2次案でお示ししました「給付事由」,「傷害疾病」をうまく書き分けるということにつきましては,前回席上配布のペーパーで御提案させていただいたとおりでございまして,最終的な条文化の作業では,恐らく区別をして整理をする必要が生ずるのではないかと現時点では考えてございますが,第2次案でお示ししました内容で本当にきちっと整理がし切れているのかどうか,場合によっては今後の条文化の精査の中で,ここは「傷害疾病」ではなくて「給付事由」だな,あるいは,ここは「給付事由」ではなくて「傷害疾病」だなどということになりますと,要綱案の内容から,あちらもこちらも条文では中身が変わってしまったかのように映ることになりますが,それはかえって不適当だろうという判断から,前回御提案させていただいたとおり,要綱案上は「保険事故」という言葉で統一をさせていただきまして,それを「給付事由」という言葉を使うかどうかがそもそも今後の作業にかかってくるわけですが,仮に「給付事由」という言葉を使うとしますと,「給付事由」と「傷害疾病」とを書き分けるとして,どこをどう書き分けるかといったところは,今後の条文化の作業の中にゆだねさせていただきたいという趣旨でございまして,断念したというよりは,今後の精査に託したいということが今回の整理の趣旨でございます。   それから,24頁の介入権の御指摘がございましたが,ここは前回も傷害疾病定額保険と生命保険のどちらで御指摘をいただいたのか,ちょっと記憶が定かでございませんが,いずれにつきましても,①のところで「解除により保険契約者が保険者に対して金銭の支払を請求する権利を有することとなるもの」となってございますけれども,いわゆる未経過保険料みたいなものが入るのかということについては,そういう趣旨でここの表現を使っているわけではなく,あくまで○○委員御指摘のとおり,解約返戻金などがあるものという趣旨で考えておりまして,ただ,今回,解約返戻金がなかなかこの要綱案に盛り込みにくいということで書いてございませんので,それを引用できないということから,とりあえずこのままの表現を維持させていただいておりますが,条文化の作業の中では,いわゆる解約返戻金といいますか,あるいは条文で残るものという意味では,保険料積立金という表現になるのかもしれませんが,そういうものがあるものという実質ということは,部会で御了承いただいているのではないかと考えておりまして,条文化の中でそこが明確になるように手当てをしたいというように事務当局としては考えてございます。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● では,先ほどの「その方法」というのは,一時払とか分割払とかそういうものを指すということでございますね。 ● そのとおりでございます。 ● 介入権の方は,できれば解除する側の方が分かるようなことを工夫していただければいいのではないかと思います。   以上です。ありがとうございました。 ● ほかにいかがでしょうか。   ○○幹事,どうぞ。 ● 今,○○委員からも御指摘があった「保険給付」という言葉ですけれども,第2次案で「保険給付」という言葉になったのは,前回出てきた資料では,まだ生命保険契約と傷害疾病定額保険契約については現物給付も括弧付きで入っていましたので,その関係で「保険金請求権」ではなくて「保険給付を請求する権利」,「保険金を支払う」ではなくて「保険給付を行う」という,そういう表現になっていたと思うのですけれども,現物給付が外れましたので,生命保険と傷害疾病定額保険については,「保険金請求権」あるいは「保険金を支払う」という表現でも私はよいのではないかと思いますが,しかし,これは最終的な要綱ではなくて条文案の作成のときに考えるべきことかもしれませんので,とりあえず,私自身としては「保険金」という言葉でもいいのではないかということをここで申し上げておきたいと思います。   それから,ほかの点でもよろしいでしょうか。   今回の資料でいうと,4頁の危険の減少なのですけれども,危険の減少のところで,私は「著しく」という文言は不要ではないかということを二回申し上げたと思うのですが,にもかかわらず,まだこの言葉が残っているということは,事務当局の側も並々ならぬこだわりを持ってこの「著しく」という文言を残しておられると思うのですが,なぜ「著しく」という文言を不要ではないかというふうに考えているかという,そこのところをもう一度だけ申し上げておきたいと思います。   危険の増加のところでは,危険の増加について定義があって,保険料に影響を及ぼすような危険の増加だけをここで危険の増加のルールの対象とするのだということが定められておりますので,ですから,「危険の増加」という言葉と「減少」という言葉の対比からすると,危険の減少というだけでも,普通の解釈からすると,保険料に影響を及ぼすようなそういうものが危険の減少のルールの対象であると,保険料減額請求権の対象であるというふうに,そういうふうに普通は解釈できると思うのですが,ところが,ここで「著しく」という形容詞を付けてしまうと,保険料に影響を及ぼすような危険の減少の中でも特に著しい危険の減少,つまり保険料に著しく影響を与えるような危険の減少だけを保険料減額請求権の対象にするのではないかという,そういう誤った解釈が生じてしまうのではないかと。   特に,次の(4)の保険価額の減少のところでも,「著しく減少したときは」という同じ文言が使われていて,こちらはまさに減少の中でも減少の程度が特に著しいものという,恐らくそういう意味で使われていると思うのですが,それと同じように(2)の危険の減少のところでも解釈されるおそれがあると。「著しく」という言葉をとってしまえば,そういう誤った解釈というのはされるおそれがなくなると思いますし,それで保険料に影響を及ぼさないようなそういう減少までここで対象にしているというふうな誤った解釈はないのではないかということで,結論的には,私は,やはり「著しく」という文言を削除していただきたいというふうに思うのですが,しかし,要綱の段階でこのままにしておきたいということであれば,それでもいいのですけれども,しかし,最終的な法文の作成のときには,「著しく」という文言が付いていると,そういう誤った解釈が生ずるおそれがあるのだということも考慮した上で考えていただきたいということを,とりあえず議事録にそういうふうな発言をしたということで申し上げておきたいというふうに思います。 ● 御指摘を忘れているとか無視しているということでは決してございません。十分御意見はいただいていまして,それは条文化の作業の中でまた検討させていただきたいと思っております。ただ,あくまでこちらとしては,前回も申し上げましたとおり,ここで「著しく」という言葉を使っていますのは,危険の増加と差を付けるという趣旨ではなくて,これに保険料にはねるという意味を込めているという趣旨でございまして,それが要らない,あるいはかえってないほうが適切だと,誤解を生まないという判断に至れば,もちろんそういう形で条文化をしたいというふうに考えております。私自身は,条文化のポリシーはシンプルな方がいいと常に思っていまして,ごちゃごちゃ書くのは嫌いですので,その意味でも,もし「著しく」という文言はなくてもその意味が表現できているということであれば,そういうことも含めて検討させていただきたいというふうに考えております。 ● ということで,とりあえずこの要綱案としてはこういうことでよろしいでしょうか。   ○○委員。 ● 今の点について,簡単に一点だけ。   私は事務当局に説得されてしまったのであれなのですが,要するに,従来ある著しい危険の増加を「著しい」を外して定義し直されて,著しい危険の減少だけが残っているという形になっているので,従来のものを「著しい」というのを増加の方に戻して,両方「著しい」にしておくとバランスが取れるのではないかなという,そういう選択肢も残っているのではないかなと思うので,それだけ申し上げたいと思います。 ● そういう御意見があったということで,今日のところはこの原案を直さないということでよろしいかなと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   どうぞ,○○委員。 ● 最後にといいますか,この部会で検討されました内容につきましては,条文となるものにとどまらずに,その前提とかあるいは目的となっている考え方や価値観,そして我々の要望も含めて,しっかりミッションとして真摯かつ前向きに実践していく所存でございます。また,これに関連して,十分な経過措置と準備期間の方はよろしくお願いしたいと存じますけれども,いずれにいたしましても,このような機会,示唆をくださった皆様方に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。 ● ○○委員。 ● では,最後にもう一つお願いをしておきたいのですけれども,言わずもがなのことなのですけれども,消費者に分かりやすい法文という話が最初からありまして,今回,損害保険契約,生命保険契約,傷害疾病定額保険契約という形で,準用ではなくて三つ書いていただいたり,非常にありがたいことだと思うのですけれども,例えば介入権の規定のところとか,いろいろまだ主語,述語の並び方とか,括弧書きを長くしてそれを全部定義にかけるのが本当に分かりやすい規定なのかとか,工夫の余地はいろいろあるのだと思うのですけれども,今までここまでやっていたこと自体非常にありがたいとは思っているのですけれども,そのあたり時間がなかったこと,毎日夜遅くまで大変だったと思うのですけれども,残りの時間を使ってそのあたり御配慮をいただければというふうに思います。   それから,できればということですが,今後,努力義務の規定もそうですけれども,どうも諸外国では法文の規定がフルにそろったような段階で審議をするという,また,ドイツなんかはそうではないかもしれませんが,アメリカなんかではクロスリファレンス,あるところに条文を加えると,どこの条文に影響を与えるかとか,そういうものが注釈付きで議論されることが普通になっておりますので,そういうことも今後,また近い将来改正があるのかもしれませんけれども,そういう点も御配慮いただけたらなと思うのです。   最後に,時間の関係で,例えば○○幹事がおっしゃったような医療倫理等の関係の問題,遺伝子情報と告知義務とか大きな問題,ある意味で正面から取り組むべき問題に時間を割けずにここまで来てしまったと。いろいろやむを得ない事情があるかと思いますけれども,将来そういう点も,また次の機会には御検討をいただければと思います。   以上です。 ● ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。   それでは,ここでいったん休憩をさせていただきたいと思います。           (休     憩) ● それでは,審議を再開したいと思います。   要綱案の案についての最終的な御意見を先ほどまでで頂だいできたかと思いますので,要綱案の取りまとめに移りたいと思います。   本日の資料のとおり,この保険法部会として要綱案を決定するということでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。それでは,そのように決定させていただきます。   なお,要綱案につきましては,今後,法制審議会の総会における要綱の決定及び法務大臣に対する答申に至るまでの間に,誤字脱字が判明するなどして形式的な表現の修正をすることがあり得るかもしれません。そのような形式的な修正につきましては,部会長である私と事務当局とに御一任をいただきたいと思いますが,それでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。   それでは,事務当局から今後の日程等について御説明をお願いいたします。 ● 今後でございますけれども,法制審議会の総会が,来月中旬に予定されてございます。この総会に部会長に御出席いただきまして,この要綱案について御説明いただくと同時に総会にお諮りをいたしまして,御審議いただいて答申をいただくということを予定してございます。   その後は,私ども法務省の方におきまして,要綱の内容に沿った所要の法律案を作成して,内閣提出法案として国会に提出いたしまして,早期の成立を図るべく努力をさせていただくということでございます。   以上でございます。 ● そういうことでよろしいでしょうか。   それでは,ここで○○委員よりごあいさつがございます。 ● ○○でございます。一言御礼のごあいさつを申し上げます。   要綱案のお取りまとめをいただきまして,本当にありがとうございました。   考えてみますと,明治44年以来全く手が付いていなかった保険法を100年ぶりに見直すという大作業を,期間としては1年以上にわたる,長いと言えば長いわけですけれども,審議回数が24回に及んでおりまして,実に密度の濃い部会であったなと,改めて皆様方の御苦労と御貢献に心から敬意を表する次第であります。   今後,来月の法制審議会の総会で要綱案の御承認が得られましたならば,その後は,私どもといたしまして全力を挙げて通常国会に法案を提出いたしまして,できるだけ早くこの法案が法律として成立するように努めてまいります。   全力を挙げるということはお約束いたしますが,実は今も何人か枢要な議員にこの要綱案の取りまとめがあるということで,事前に大体こういうことをやっておりますという御説明に回っているわけですけれども,おおむね好評であります。よく部会でもいろいろな立場の方が出られて,いろいろな御意見を述べられて,非常に難しい問題だったのだけれども,皆さん何とか取りまとめようということで,努力を私も肌身をもって感じているというような話も申し上げているわけですが,ただ一部の方からは,いろいろな議論も出てきておりまして,それはそれで説明しなければいけないなと,そういうことも考えております。   御承知のとおりのねじれ国会でして,私もこの保険法だけに限りませんで,いろいろな案件で予想外のことが起きます。こんなことになるのかというようなことを絶えず思いながら走り回っているような情勢でして,そういう意味ではなかなか先が読みにくいというところもございます。   それから,もう一つ気にしなければいけないのは,100年ぶりの改正ということもありますので,国民に広く周知をするということもやらなければいけません。そのような意味で,委員,幹事の皆様方には,今後ともさまざまな形での御支援をお願いすることがあろうかと思いますので,ひとつよろしくお願いしたいと思います。   いずれにいたしましても,部会長,委員,幹事の皆様,本当に血と汗の結晶と言ってもいいぐらい密な議論をいただきました。これを生かすべく,これから最大限努力してまいりたいと思いますので,引き続きよろしくお願いします。   本当にありがとうございました。 ● ○○委員,どうもありがとうございました。   それでは,最後に私からも一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。   本日,要綱案について満場一致で御了承いただいたということで,部会長としても大変うれしく存じております。   この保険法は,法務省の民事立法だと一つ前が電子記録債権法というように,現代的な新しいことにチャレンジすることが明らかな法律に比べれば,題名の上でも地味でございますし,要綱案の内容も地味と言えば地味ということになります。しかし,電子記録債権に遭遇する一般国民がどれぐらいいるかというと,今のところそんなにはいないだろうと思いますが,保険,共済というと国民のほぼ全員にと言っても過言でないぐらいの人々が,日常生活の中で契約の当事者あるいは関係者となっているわけでございまして,そういう契約についての民事的な基本ルールが現代の状況に合致したものになるということは,大変重要なことではないかと思っております。   商法の保険契約に関する法律は,約100年前にできたものが大体そのまま残っておったのですが,それで非常におかしなことになっていたかというと,そこは行政的な規制,私法的な規制,あるいは自主規制など,契約者保護を図ったり,いろいろな新しいサービスの試みをするためのいろいろな努力が関係方面によってなされていて,それがあったからこそ世界でも有数の保険大国という状況を迎えているわけでございますが,契約の基本法としての商法以外のところで改善を図るということにはいろいろな限界があるなということも,私も常々感じていたところでございます。今回のこの部会の審議では,そういう問題を根本にさかのぼって,幅広く関係の皆様方にお集まりいただいて,意見を闘わせ,またそれを集約して要綱案を取りまとめることができたということは,部会長としても大変ありがたいことだと思っている次第でございます。   今後とも,事務当局におかれましては,この要綱案に基づきまして法律として成立するまで更なる御努力をいただけると思いますが,部会の委員,幹事の皆様方におかれましても,引き続き是非とも御支援,御協力をよろしく申し上げる次第でございます。   最後でございますが,私の拙い司会進行にもかかわらず審議に毎回熱心に御協力いただきました委員,幹事の皆様方に御礼申し上げますとともに,この要綱案に盛り込まれた個々の内容については,要綱案ができるかどうかについて,結構ハードルの高い課題がいろいろあったのですが,そのうち,かなりのものはこの要綱案の中で実現できているということで,これはすばらしいことではないか思いますが,そのために非常に御尽力をいただいた事務当局の皆様方にも心より御礼を申し上げたいと思います。   それでは,これで当部会の審議をすべて終了とさせていただきます。   どうもありがとうございました。 -了-