法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成20年1月25日(金) 自 午後3時30分                       至 午後5時31分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備について 第4 議 事 (次のとおり)                     議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会少年法(犯罪被害者関係)部会の第4回会議を開催いたします。 ● 本日は御多忙中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。   それでは,早速ですが,諮問事項についての審議に入りたいと思います。   前回までに,事務当局から提出された要綱(骨子)につきまして,様々な観点から御議論いただいたところでございますが,本日は,これまでの議論を踏まえて,要綱(骨子)全体について最終的な議論を行い,議論が終局いたしましたら,当部会としての意見の取りまとめに移りたいと存じます。そのような進め方でよろしゅうございますか。   それでは,そのように進めてまいります。   本日,○○,○○両委員,○○委員,○○委員から意見書が提出されており,また,○○委員から要綱(骨子)についての修正意見が提出されております。   まずは,これらの内容について概略を御説明いただき,その上で議論を行いたいと思います。   それでは,○○委員からお願いいたします。 ● お手元に,「採決に際しての意見」ということで書類を配布しております。これについて簡単に御説明をしたいと思います。   ○○委員,それから私も,ここに記載しましたように,今回の要綱(骨子)の第一及び第二については反対であり,したがって,全体が反対であるという以上は,修正案というものを出すというものでもありませんけれども,ただ,今後,仮にこういう傍聴という制度が導入されるということになるということを考えると,もう少しきめ細かな議論も要るのではないかというふうに思い,そこの点に絞って簡単に意見を述べております。   一つは,まず,傍聴の要件のところで,本要綱(骨子)は,単に「相当と認めるときは」というふうに記載をして,相当と認めるということについての基準が必ずしも明確でない部分もありますが,それに関しては,例えば,「第1条の目的に照らし相当と認めるときは」というようなことを記載して,よりその制度の基準の明確化を図るということが必要なのではないかというふうに思っております。今回,これまでの議論を通じて,傍聴に関する条項というのは,少年法の1条の目的の下で置かれている規定であるというのは,今回の議論の大方の意向ではないかと思います。   それから,今回の改正もそうでしょうし,それから,従前の改正についても,私自身がそういう立場を取るかどうかということはともかくとして,この一連の法制審議会の少年法部会での考え方は,少年法の基本理念をベースに,それを害さない範囲で最小限度の調整を行いながら制度を維持しているという状況だという考えではないかと思うんです。そうであるとすれば,ここの「相当」のところの判断基準に第1条というのを入れて明確にするということが,より全体の議論の趣旨に沿うのではないかというふうに思います。   前回の触法の関係での警察の調査権限に関しても,当初,法制審議会に示された案にはなくて,その後,国会に提出される前に,確か少年の健全な育成という言葉を調査の目的の趣旨に入れたと,法6条の2ですけれども,そういうようなこともあったかと思うんですけれども,今回もそういうような趣旨から入れるということが必要なのではないかというふうに思いました。これが一つです。   それから,あと,(2)の傍聴の対象についての触法の点については議論がこれまでもされており,また,○○委員の方からは修正案という形で出されていますので,ここのところはこの書面に書かれているとおりということで省略をさせていただきます。   それから,要綱(骨子)の中で,傍聴の対象が一定の犯罪で示されているわけですけれども,この中でも,過失犯それから傷害の結果にとどまる犯罪というのを除くということも十分考えられるのではないかと考えております。これも○○委員,それから私,2名の委員なりの理屈というのもあるわけですけれども,事務局の説明枠で考えても,ここにも書きましたように,過失犯というのは少年審判制度の社会的信頼の確保という意味からも,故意犯とは類型を異にすると考えてよいのではないかと。それから,傷害の件については,なお,被害者の方の知りたいという利益に差があるというふうに考えることもできるのではないかということや,傷害により「生命に重大な危険が生じたとき」という要件があいまいであるということも理由になるのではないかというふうに考えております。   なお,審議の経過の中で,確か私の記憶では,○○先生からも,場合によっては,この死亡という要件について絞る余地があるのではないかというような御発言もあったのではないかと思うんですけれども,私どもとしては,そういう観点からのよりきめ細かな議論ということもあり得るのではないかと思っております。   それから,2の被害者等による記録の閲覧・謄写については,これは特に記録の閲覧・謄写の範囲について少年のプライバシー等にかかわる部分が対象になっていくと。もちろんその内容によっては許可されない部分もあるのかもしれませんが,一定類型的には,まずは検討の対象になるということに関しては,やはり問題が大きいのではないかというふうに考えておりまして,場合によっては,記載が形骸化するといったような社会記録の閲覧・謄写で心配されたことと同様のことが問題になり得るというふうに私どもとしては考えておりますので,もう少し内容を絞るというような考え方もあり得るのではないかというふうに思っております。   それから最後に,これは法そのものということではないんですけれども,被害者の方がこういう少年審判の中にかかわりをお持ちになるということとの兼ね合いでは,法律で一定の制度を設ければよいというものではなくて,むしろそういう法律,裁判の中で接触をされてこられるということだからこそ,早い段階から被害者の方にサポートが付いて,そしてそういうサポートの方から法的な手続等についても十分な説明がなされる,もちろん心理的なサポートとか,ともかく話を聴くとか,そういう日常のことを手助けするということが初期段階でとても重要であるということは認識しているつもりですが,併せて必然的に現れてくる一連の法的手続についても早期の段階からサポートが入るということが極めて重要で,そういうものがなければ,こういう傍聴制度も含めて,運用上,非常に困難を来すのではないかというふうに思っておりまして,そのことの重要性が再確認されるべきではないかと思っております。   それから,今回のこの傍聴に関しては,先ほども申しましたように,少年審判の基本的な機能を損なうおそれがあるというような意識も私どもの方では非常に強いものがありまして,元々この審議会が被害者の基本計画の検討会の中で,被害者の方の傍聴が少年審判の基本構造と抵触する可能性があるのではないかというような非常に根本的な問題を提起され,それを受けて議論をしていると。そしてその議論の経過の中では,裁判所サイドも含めて,これは法制審議会に先立って行われた意見交換会などでも,やはり一定の慎重な発言が出ているというようなことも考えると,運用面において傍聴を認めるかどうかの可否の判断,それから認めた場合の運用について,やはり少年の健全育成を損なうことのないような十分な配慮が要るのではないかということを強調しておきたいというふうに思います。   取りあえず以上です。 ● そのほか○○委員から何かございますか。 ● 今の意見についての補足ではなく,配布資料についてなのですが,お手元に自由法曹団の傍聴に反対する意見書が届いております。これは,私が委員として配布をさせていただいたものでありまして,前に意見書を提出しておりますが,それを補足するものとしての扱いで配布させていただきました。弁護士集団の意見として御熟読いただければと思います。 ● それでは,続いて,○○委員,お願いいたします。 ● 私も本日付けで意見書を提出させていただきました。前回の審議会に際して提出した意見書で,「要望」と記載した項目3点になっております。   順に説明すると,まず第一に,要綱(骨子),傍聴をなし得る者の中に,被害者等から委託を受けた弁護士を加えるべきであるという意見です。   理由としては,被害者の中には,被害によって受けた心身の状態等によって,仮に付添いを受けたとしても,加害少年と同室することが困難であるというような立場の方もおられるところ,このような場合であっても,審判の過程を把握したい,見聞きしたいという利益は尊重されるべきと思料します。   このような場合に,被害を受けた本人あるいは近親者に代わって委託を受けた弁護士が傍聴することで,被害者は審判の過程を把握することが可能となります。この点,被害者本人が直接見聞きするところはありますが,被害者にとって,自分が直接依頼した弁護士から報告を受けることは,調査官等から審判の説明を受けることと比べて,情報の取得過程,要は審判の過程をどういう形で自分が把握するかという過程においての直接性あるいは迅速性というところに格段の差異がありまして,有用性が高い。また,自分が依頼をした代理人ですから,直接見聞きする利益を大きく超えるものでもないというふうに思料します。   もっとも,被害者本人あるいは近親者以外の者を審判廷に入れるとなった場合には,その濫用を防止したり,代理で傍聴できる者の範囲が無限定に拡大することのないよう配慮が必要ですが,弁護士であれば守秘義務を負っておりますし,一般的に高度の職業倫理によって活動しているものでありまして,その濫用のおそれも乏しいと考えられます。   現に,少年法第5条の2も同様の趣旨で,委託を受けた弁護士からの記録の閲覧・謄写を認めているところであります。実務上も,被害者本人が直接審判廷に座っておられるのに比べ,むしろ法律の専門家である弁護士が審判廷に在廷しているというのは,審判に与える影響というのも比較的軽微ではないかというふうにも考えますので,この点について改めて御検討いただければと考えております。   第二は,傍聴の対象となる事件の範囲ですが,被害者を傷害した場合について「生命に重大な危険を生じさせたとき」に限定させず,「心身に重大な故障を生じさせたとき」も傍聴の対象に含めるべきと考えます。   理由としては,今般,要綱(骨子)は,究極の法益侵害であるところの生命侵害あるいはそれに準じるような生命重大危険というのを対象にしたということですが,傷害によって生命に直接的な重大な危険が生じていない場合でも,極めて重篤な後遺障害が生じたようなケースにおいては,その生涯にわたって療養・看護に当たるべき近親者にとっては,審判の過程を見聞きしたいという利益は,生命侵害の場合と異ならず,殺人の場合と匹敵する程度に高度に尊重されるべきと考えます。   三点目,傍聴の方法ということになりますが,傍聴の方法として,モニター等を利用した傍聴も可能と考えます。   理由としては,被害者等が現に在廷することで,少年に何らかの萎縮的作用が働くということが予想されるケースでも,別室でモニター等を利用した傍聴であれば,そのような萎縮的な作用を回避することが可能なケースも十分想定可能です。このような場合まで,被害者等の傍聴の機会を排除するのは相当でないと考えますので,このような形態での傍聴について御検討いただければというふうに考えております。   以上です。 ● それでは,○○委員,お願いいたします。 ● 提出いたしました意見書に対しての説明は特にございません。短いものですので,是非読んでいただければと思います。   付け加えさせていただくこととして,被害者による傍聴が認められた場合,裁判官による裁量という対応が大部分になると思うんですけれども,できるだけ多くの被害者に平等にその機会が与えられるように切にお願いしたいと思います。それと,いずれの判断になりましても,被害者が納得できるような説明をきちんと時間を取って丁寧に行っていただきたいということをお願いしたいと思います。   以上です。 ● それでは,続きまして,○○委員,お願いいたします。 ● 私は,少年審判を被害者等が傍聴するということについては,狭い少年審判廷で少年と被害者が同室・同席するということについて,今までの少年審判の雰囲気が損なわれるのではないかという,余り良い効果は与えないのではないかという非常に強い懸念を持っております。   しかし,今までの審議の過程で,家庭裁判所調査官による被害者調査が十分に行われ,そして家庭裁判所の裁判官が相当と認めるときにのみ,重大な事件に限って,被害者等の傍聴を許容するのだというふうにかなり絞りがかけられるということを確認しました。   少年が反省を要するという場合で,被害者も同席していただく方が,被害者の被害感情の修復に当たっても,その少年の審判を傍聴していただく方が非常に有益な場合というものがあるんだという,そういうふうに調査官,裁判官の方がお考えになる場合もあるのではないかというように考えまして,今のまま,犯罪少年の審判に対する傍聴の余地を全く認めないというふうにしておくよりは,ある程度傍聴の余地というものを認めていくということには賛成するわけですが,ここに触法少年も対象にするということには絶対に反対です。   それは,第3条の2項にもありますように,14歳未満の少年を少年審判に付する場合には,福祉サイド,児童相談所長から送致を受けたときに限るというただし書がきちんとあります。そのように,犯罪少年については全件送致で少年審判に付せられるわけですが,14歳未満の場合には,犯罪少年の場合と,まるで審判に付せられる趣旨が違うわけです。正に,この前,触法少年に対して警察の調査を認め,そして少年院の収容も可能にするということを審議したときには,触法少年の保護のため少年院への収容も認める必要があるという,非常にまれな場合にそれを認める必要があるということは,福祉サイドからの要請で,重大事犯については結構マスコミから非常な攻撃に遭うんだということで,そういうことから保護するためには,やはり開放施設である福祉施設のみで対応するのは非常に難しいという,そういう考え方で少年院への収容も認める方が,より少年の保護のために必要なのではないかという配慮であったと思われるわけです。   ですから,正に少年審判に触法少年が付せられるというのは,その少年の保護のために必要であるという,その意図で送られてくる者について審判が行われるわけで,犯罪少年と一緒に,こういうふうに事実の重大さというふうな形で並列するということは,非常に問題があるのではないかというふうに思っております。重大事犯についての少年審判に対する被害者の傍聴も特に許容するのは,やはり14歳以上の犯罪少年に限るべきであるというふうに考えておりますので,そのために修正案を提出いたしました。 ● それでは,これまで御説明がありました意見等も踏まえて,要綱(骨子)全体について御意見などがありましたら,どなたか御発言をお願いいたします。 ● 1点だけ,確認のための質問なのでありますけれども,○○先生の修正案の理由とされているところの,もちろんこの前の法改正が行われたという前提で議論させていただきたいんですが,専ら,福祉的観点から少年の保護的措置に強制的措置を必要とする場合に限るというのは,先生のお考えとしては,限るべきというふうに考えておられるということであって,客観的に法制度がこうなっておるという趣旨ではないというふうに,私は信じておるんですが,それでよろしいでしょうか。 ● それは,児童相談所の方から,その少年の要保護性のために特に保護処分が必要とされるという,そういう観点の下に送られた場合というふうに考えております。 ● それと,触法事実を明らかにするためではないというふうにお書きの部分も,その意味では,重大な事件につきましては,触法少年その者にとりましても,あるいは被害者等にとりましても,事実があったのかなかったのか,どういったことであるかということがきちんと審判の場で明らかにされていくということが重要であるということで原則送致になったというふうに理解しておりますので,後半部分の触法事実を明らかにするためではないという部分も,その意味では,先生のお考えとしてこういうふうに考えるべきだということでよろしいわけでございますね。 ● はい,そのとおりです。 ● 今,触法の話が出ていましたので,少しそのことで私も議論させていただきたいと思うんですけれども,○○先生の方からの理由付けについて,今,御質問もあったと思うんですけれども,もちろん送致された非行事実とか触法事実というのは,これは確定されないと保護処分を下すわけにはいかないという意味では犯罪少年と同一の部分もあると思うんですけれども,しかし,要するに,年齢がどんどん低くなったらということを考えていただいたらいいと思うんですけれども,おのずから自分のことの話をしたりとか,記憶どおり話をしたりするということが非常に困難になったり,それから,なぜそういう事件が起こったのかということを,年齢がどんどん大きくなればどんどんその人が話をする,そのこと自体をかなり手掛かりにして検討していくということが可能になっていきますけれども,逆に,年齢がどんどん低くなれば,その人が言っていること自体でなかなか背景に迫れなかったり,若しくは一定背景についてかなり遠い推測をしたまま,場合によっては,審判の後にいろいろと処遇をしながらその背景をなお迫っていくというような,かなり福祉的というか流動的な部分がより増えるということだと思うんですね。そういう意味で,年齢の高い少年とかなり年齢の低い少年との審判の意味合いというのもかなり変わるし,中身も,実質的にということだと思うんですけれども,変わっている部分もあるんだと思うんです。   そういう福祉的な配慮があったり,より流動性の高いようなそういう審判手続の中に被害者の方が傍聴されるということについてどうなのかということだと思いますし,それから,以前から,要するに,時にはそういう例もないではないかという議論で,一応余地はあってもよいのではないかという反論もあり得るとは思うんですけれども,元々の少年審判への係属の仕方自体も,先ほど○○委員からお話があったように違うと。いろいろな意味で類型的に違っている。前回の少年法の改正の国会の審議でも,そこの違いがかなり強調されて,国会でも修正がされたというようなことなどをいろいろ考えると,やはりそこには,一般的,類型的にかなり違いが顕著であるということがあるので,対象の中で特に触法少年を別に扱うという合理性というのはかなり高いのではないかと思っております。 ● 私も前にも申し上げておりますように,触法少年については外すべきという意見です。前回,意見書を提出しておりますけれども,典型的な事例でいいますと,11歳とか12歳,それから精神面でもいろいろな問題があるような子供が起こすことが多い。また,数としても,数件まで,殺人未遂も入れて年間5,6件までと非常に少ない。ですから,被害者の要望というのも,果たして触法少年についてどれだけあるのかということについては特にお聞きしているところもないわけです。   逆に,触法少年による重大事件については,長期のスパンで事件の背景を探らなければ,短期間のうちに分かるものではないということについて,ひとつ,マスコミも含めて,この間の触法重大事件の経験から,そういう長いスパンでの背景の認識の必要性,慎重な養育環境の中で立ち直らせる必要性というものについて社会的な理解を得られている面もあると思います。   それから,意見書に書きましたイギリスの事例などがそうなんですけれども,そういう事件については,特に,子供の生育歴の中に被虐待体験であるとか,そのこと自体が事件当初には発見されていないとかそういうこともあり得るわけです。そういった面からも,触法少年について,犯罪少年と同列に扱うということは非常に問題が大きいというふうに思っております。   それから,これは触法少年についてだけではなくて,特に犯罪少年についても同じなのですけれども,触法少年では取り分けということで申し上げますと,子供の場合,審判廷の中にいる人の人数が多いと,それだけでやはり語るべきことも語れなくなる,例えば合議体であったがゆえに,少年が本来,付添人との間では審判で語ろうということになっていたことを語れなかったという付添人からの報告なども受けております。   このようなことが,犯罪少年以上に触法少年の場合には典型的に起きますし,本来であればむしろ触法少年の14歳未満13歳以下という年齢の子供たちに対しては,聴き取りの仕方自体も,より一層科学的あるいは研究を経た聴き取りの仕方をしなければならないくらいだというふうに思っております。   そういった観点から,少年法が類型的に犯罪少年と区分けしていること,それから,先ほど来,強調されている福祉的機能が特に重視される類型であることからして,触法少年については,この傍聴から特に外すべきであると強く思います。 ● この点に限らず,要綱(骨子)全体について,御意見ございますでしょうか。 ● 触法少年の件について,今,○○委員の方から,触法少年に係る殺人事件は件数が比較的少ないという御指摘がありましたので,そこのところだけ私の方の意見を述べさせてください。   確かに,件数としては,成人あるいは犯罪少年によるものに比べれば少ないのかもしれませんが,元来,ここでは被害者の方が個人の尊厳を尊重していくという前提で議論が考えられるべきではないのかなと思っております。そのときに,かけがえのない生命を奪われた被害者又は近親者に対して,あなた方の事件は件数が少ないのだから国としては全く手当てを考えませんというのはいかがなものかと思います。だから,仮に件数が少ないとしても,そもそも被害が甚大であること自体は否定ができないわけですから,それはこの場での論拠としては余りふさわしくないのではないかと私は考えます。   もっとも,触法少年に関して特別配慮を要する必要性というものまで否定するものではありませんが,それは審判の状況,年齢等に応じて裁判官に判断をゆだねて,確かに認められる場合は少ないかもしれませんけれども,一律に排除するのは相当でないと,このように考えます。 ● 今の○○委員の御意見について,更に一言申し上げたいのですが,元々この要綱案というのは被害者の傍聴への要望が強いということが根幹にあるわけです。その点で,触法少年の事件は,犯罪少年の事件と元々のニーズ,要望の点で違うのではないかということを申し上げているわけです。 ● ニーズ,要望という意味では質的な相違はないと思うのです。16歳,18歳の少年に生命を侵害された被害者と14歳未満の少年に生命を侵害された被害者にとって,ニーズ,質には全く相違がないのではないかというのは,かねて審議会で私が主張しているところです。相違があるとしたら数でしょう。それは被害者の数は違うけれども,それはニーズが弱い,あるいは希望が少ないということとは違うと思います。 ● 触法少年の問題は,前回までも相当に議論がされたところでありますし,私も申し上げたところがありますので,その点を繰り返すつもりはございませんが,1点付け加えさせていただきますと,先ほど○○委員が御指摘になった点に関連いたしますけれども,○○委員の理由の中で,触法事実を明らかにするためではないということが書かれてありますけれども,やはり触法少年であっても,その事実があったかなかったかということが争いになることがあって,それが正に審理の対象になるという場合があるわけです。その場合に,必要に応じて,その点の解明のために証人尋問が行われる,あるいは必要な証拠調べが行われるものであり,正にそういう事実があったのかなかったのかということについての審理が行われるという過程があるわけであります。   その場合に,被害者にとっては何があったのか,どういう事実があって,どうして被害が起きたのかということについて直接そういう審理の過程を見たいという要望があるときに,それは触法少年であるからということで,およそ一律に否定をするということについては,やはり問題があるというふうに考えられるのではないかと思います。 ● この点について,更に御意見ございますでしょうか。 ● 件数の点だけ一言申し上げたいと思うんですけれども,やはり議論の対象,今,議論をしているのは制度の問題なので,例えば,ごくわずかであってもそういう必要性があるのではないかというものが仮にあるとして,それに対して裁判所が裁量で判断するから適切にできるではないかということで制度の枠を設けてしまったときに,それがまたどういう影響を与えるかということも考えないといけないと思うんです。   ですので,そういう意味から考えて件数は全然関係ないとかということにはならないで,ごく限られた極めて非常に数が少ない,そもそも母体として数が少ない件数のために,その制度の元々の門戸を開いて,そのこと自体で,私自身は,傍聴だけの問題ではなくて,触法事件のいろいろな審理についても,実際問題としては影響を与える可能性があるのではないかというふうにも思っていますので,そういう意味では,やはり数の問題というのは,本来検討すべき事情の一つではないかと思っています。 ● 触法事実についても,警察の調査をしなければいけないというときの非常に大きな理由として挙げられたというのは,やはり被害回復のために捜索もできないというふうなことでは困るのではないかという警察サイドからの意見がかなりあったわけです。   ですから,事実の解明のために警察が調査をなさるということは,やはり被害者の保護のためにも必要なことなのではないかとは思うわけですが,しかし,少年審判というのは,少年の要保護性のために,少年の処遇を定めるために行われるものなわけで,それは触法事実がなければそういうことも行われないだろうということで,触法事実についての審理も行われるかもしれませんが,それは少年の人権を守るためです。ない触法事実について,そういう処遇が行われるということを防止するためであって,正に少年に対する保護のための措置が必要ということで少年審判に付されるわけですから,その事実について知りたいということであれば,いろいろ書類の謄写などもできるわけですから,少年の要保護性についての審理の審判廷に被害者を傍聴させるということの必要はないのではないかと思います。 ● 前回の法改正に関連して,新聞等にも出ておったと思うんですけれども,触法少年による被害をお受けになった御遺族の方などの要望としては,これはもういまだに続いているはずなんですが,闇から闇に葬られていってしまうというか,全く分からない状態で葬り去られていくような,当時の制度そのものに対する不満というのが述べられていたように私は記憶しております。そういう意味で,記録の閲覧・謄写については,触法の被害者の方も,もう既に門戸は犯罪少年の場合と同様に認められる法制になっておりますけれども,なお御要望があると。   それと先ほど来,例えばイギリスの例が出たりしておりますけれども,それぞれ年齢の切り方も違っておりますし,それ相応の配慮は必要といたしましても,13歳以下ということで,一律切っている今の法制の下で,しかし,そういう刑事責任を負わせる負わせないとは別の観点から,被害者の要望に当該対象とされた少年の審判における状況でありますとかいろいろなことを勘案して,差し支えないときには傍聴していただくという制度ですので,何かアプリオリになにゆえ切るのか。そうであるとすると,逆に,むしろ刑事責任というものを年齢で一律に切っていること自体が何かおかしいようにも受け止められてしまうような,その辺の違和感を感じてならないのでありますが。 ● 今の○○委員のお話と全く裏表のことを言うようなんですけれども,被害者の方が触法事件について闇から闇へ葬り去られるような気がすると,もし,お思いであるならば,逆に,低年齢の触法少年の審判に被害者が出席されるということは,本来,処遇の出発点であるべき審判が事実認定についても適正に行われなくなってしまう可能性があるわけです。   理由は,先ほど来申し上げているように,多人数あるいは聴き方についても非常に配慮をしなければ,聴き取りに非常に困難を要するような触法少年について,ほかの価値観が入ってくる,被害者への配慮等々をした上での審判しかできないとなると,処遇決定についても,最も裁判所が適正と思うような処遇決定ができるのかどうかという問題があり,そこに出発点を間違えてしまえば,その後,例えば,今までの例であれば,児童自立支援施設の中で長い期間をかけて処遇をし,その結果について被害者にお知らせをするということもあり得るわけですけれども,出発点の処遇を間違えてしまえば,その後お知らせするとか何とかという以前の問題になってしまうわけです。   それからもう一つ,そもそも14歳という刑事責任年齢がどうなのかというようなお話もありましたけれども,もう一度私の側から申しますと,そもそも刑事法そして少年法が14歳を刑事責任年齢として,刑事訴訟手続と少年審判というふうに,これは正に類型的に分けているわけですよね。今まで被害者のお立場から出たような議論でいえば,14歳5か月の子供よりも13歳10か月の子供の方が判断能力が豊かであったりとか成熟していたりとか,個々的に言えばきりがないわけですよね。それを14歳で区切って,刑事責任年齢を法が定めている。したがって,ここでもう既に刑事裁判の場合には,一般の人も傍聴できるけれども,少年審判の場合には原則として非公開であると。今そこに穴を開けるかどうかの議論をしている。   そうであるならば,14歳以上で刑事裁判にかけられる場合,これは一般にも公開,それから20歳未満の少年審判の場合には非公開であって,その中で犯罪少年については例外的に傍聴を認めるかどうかの議論が今あると。しかし,類型的に更に14歳未満については,少年法が触法少年として,犯罪少年とは区分けして,また,その処遇手続についても区分けされている。ここについては,今回,被害者の傍聴を認めるような例外には入れないということは,むしろ非常に穏当な区分けではないかというふうに思います。 ● 少年審判といえども,やはり犯罪が起きて,事件が発生して,罪を犯す人があって,そこに被害者というものがあるわけですよね。当然,その上で少年審判も行われるものだと私は認識をしているんです。もちろん,少年の保護育成それから健全な回復,それに異議を唱えるものでは決してありませんけれども,そこだけの余りにも偏った視点を持つために,被害者がそこにいなくなるということは,私はどうしても納得できないんです。   それと,あと,被害者が同席するために萎縮するとかあるいは意見が述べられなくなる,あるいは触法少年だと更に審判が正常に動いていくことが難しくなるというようなことをおっしゃる意見がいっぱいあるんですけど,それは被害者が負うべきことではないと思うんです。   そういうことは,やはりそういう専門の方々がしっかり被害者の傍聴を認めるという状況に応じてきちんと対応していただきたいということであって,また,被害者を支援する側として,やはりせっかく与えられた選択肢がより被害者のために,あるいは社会秩序の回復のために血の通った運営のされ方をしていくように,私たちも被害者にかかわっていきたいというふうに思っているわけです。だから,どうしても被害者がどこかに行ってしまったということに私が馴染めなくて,とても違和感を感じています。 ● この論点については,お差し支えなければこの程度にいたしたいと思いますが,特に御発言したいという方がいらっしゃれば伺います。 ● 私も前から申し述べているとおり,もう少年法とか少年審判というのは,基本法,基本計画で質が変わったんですよ。少年のことだけ考えてやればいいという時代ではなくなったということをまず認識する必要があると思うんです。被害者の権利保護をどうやって守るか,尊厳をどうやって守るか,この観点から議論しないと,今までと同じような立場で少年法を議論していたのでは,何のための基本法,基本計画かということになるんです。   13歳の者に殺されようが,14歳の者に殺されようが,親の悲しみは全く変わりません。13歳だから記録で見なさいと,傍聴する必要はありませんということはどうして言えるんでしょうか。同じような悲しみですよ。もし萎縮するというなら,それに対する工夫を裁判所あるいは付添人がすべきであって,それを被害者を排除することによって成し遂げようというのは,私は本末転倒だと思うんです。   そして,私は,触法少年の被害に遭った方の手記を読みました。本当に一所懸命自分で育ててきた子が突然友達にやられたと。その遺族の方は切々とした文章で私は胸を打ったんです。子供が小さければ小さいほど,相手の被害者が小さければ小さいほど,何が何でこうなったのかということを知りたいわけです,一所懸命。それに蓋をするようなことをして,被害者の尊厳や権利保護をどうやって守るとおっしゃるんでしょうか。私は,やはり触法少年であろうと何だろうと,やはり審判を傍聴させるべきだと思います。それが萎縮するというのなら,萎縮させないようにするにはどうするべきかということを工夫すればいい,しかも萎縮するかしないか,全部これは推測ですよ。その推測に基づいて今の大きな流れをせき止めようとすることは,私は間違っていると,こう思います。 ● 繰り返しになりますので,ごく簡単にします。   今の推測の問題については,私も前回,エビデンスの関係で意見書を出していますので,それが私の考えです。   それから,工夫をというような議論がありますけれども,現実に工夫をするということはとても困難で,むしろ推測としては,被害者の方が傍聴されているということを前提にした差し支えない審判運営がされるというふうに恐らく実務が流れるのではないかと。したがって,そこにはいろいろな懸念がある,だから慎重に考えるべきだというのが私の考えです。簡単にそれだけ最後に。 ● 今の○○先生や○○委員の御意見について,私は,被害者の悲しみや,それから知りたいという思いについて無理解なわけでは決してありません。それは非常に大切なことだと思っております。ただ,それを審判という場で行うことが事実認定を狂わせるようなことになれば,御存じの刑事裁判におけるえん罪事件が今,非常に問題になり,警察での取調べの在り方も見直されつつあります。10年,20年経ってから,実はあの子が犯人ではなかったとなったときの被害者は少年だけではないのです。正に被害者が今ごろになってあの子が犯人ではないと言われても納得がいかない。あの子が犯人だと思いたかったり,あるいはだったら真犯人を教えてよという気持ちになるわけです。えん罪を生まないような少年審判を守ることは,被害者の大事な利益の保護でもあると私は確信しております。 ● ○○先生が修正案を提出されました触法事件をどうするかという点について,意見を申します。これまでの御議論を伺ったのですけれども,既に何回か前の会議で述べたことではありますが,やはりこのたびの立法の出発点は,被害関係者の方の少年審判を傍聴したい,直接この目で見たいという利益にどのようにおこたえするかというのが第一の出発点であり,他方で,少年法自体が,触法事件を除外すべきであるという御意見の方が御主張されるように,重大結果を生じた触法事件であっても,それと犯罪少年の扱いを様々な理由で区別していることはそのとおりではあります。しかし,今回の問題につきましては,特に,触法事件については,逆送されて刑事裁判になる可能性が制度上存在しない。したがって,被害者の方にとって,事件の審理される過程をこの目で直接御覧になる機会は少年審判の場しかあり得ないという点が一つ大きいだろうと思います。確かに他の分野は類型的区別がありますけれども,この傍聴という観点について,審判対象者が触法少年であるか犯罪少年であるかという一律類型的な区分をすることは,合理的な制度設計だとは思われません。   これに対して,今回の要綱(骨子)は,傍聴をお認めするかどうかに関して,特に少年の年齢,心身の状況,事件の性質というものを考慮した裁判所の健全な裁量にゆだねるという制度設計になっておりますので,法制度としては,このような慎重な裁判所の配慮によって,対象者が触法少年であること,すなわち少年の年齢という観点は十分考慮されるものであろうというふうに私は想像いたします。一律に触法少年を除外するという制度設計よりは,現在の要綱の設計が妥当なのではないかと考える次第です。   以上です。 ● 私もこの点については前に既に意見を申し上げているのですが,改めて今日の議論を聴いた上で述べたいと思います。要綱(骨子)第一の一は,ただ今○○委員から御意見があったように,やはり審判廷を構成する家庭裁判所の個別的な判断を重視している案ではないかというふうに考えます。   具体的な考慮要素として例示列挙されているものの中で,特に少年の年齢ということを明示しておりますので,当然のことながら,家庭裁判所は健全な裁量判断をする際には,そのことも大きな考慮事情にするだろうというふうに思います。したがって,家庭裁判所の健全な判断の中で個別事情の一つとして少年の成熟度を考えるということになるのではないでしょうか。   ただし,その点については,○○委員から,一つ一つの事柄を厳密に検討して慎重な制度設計をするという観点から枠組みをつくるべきである旨の御意見があったようでありますけれども,この点については,この第一の一が出てきた元々の発想は,被害者の方々が単に結果を書面で通知されるということだけでは,その方々の尊厳を保障した手続を実現するには必ずしも十分でないと,こういう認識が出発点だと思いますので,被害者の方々の個別事情の基礎になる事件の性質のほか,少年の側の諸事情,取り分けその年齢,心身の状況などを総合的に考慮する裁判所の健全な裁量にゆだねるのが適切だという考えに至っている次第です。   以上です。 ● この意見は触法少年に特有のことではないので,後で申し上げようかと思っていたのですけれども,触法少年について特に考えていただきたいので申し上げます。   被害者の意見陳述と傍聴の関係です。今現在,意見陳述は,多分,審理の最後の方に行われることが多いかと思います。もし違っていましたら,家庭裁判所の方から御指摘をいただきたいのですけれども,傍聴を認めた場合にも意見陳述が最後の方に行われるといたしますと,傍聴は聴いているだけなんだとはいうものの,ずっと審判全部を聴いて,そして最後に意見陳述をする際には,当然,そこで少年が言ったことあるいは裁判所が言ったこと,調査官が言ったことについて,被害者から見てとんでもないと思うようなことについては,批判の意見,反論の意見というのが出されると思います。   また,時には,直接狭い部屋の中で少年を見聞きするのですから,感情的な攻撃の言葉がある可能性もあります。これまでですと,書面を出されて,ほぼそれを読み上げて,そしてそのまま退席されましたから余り混乱はなかったのですけれども,傍聴と意見陳述が同時に行われるということになりますと,傍聴した審判についての意見が出る。そうすると,少年審判の教育的な機能,特に触法少年についての福祉的な機能が,1時間なり1時間半なり,丁寧に裁判所や調査官が予定どおりに行った審判の最後に被害者がそれをいろいろ批判するような御意見をおっしゃったとき,どうやってその決定を少年たちに納得がいくように告げることができるのか,私は非常に心配です。そこのところもよくよくお考えいただいた上で,特に触法少年の場合にも,傍聴と意見陳述,こういう状態で有りでいいのだというふうにお考えなのかどうか,慎重に御判断いただきたいと思います。 ● 今,コメントで述べられた意見に対して一言述べさせていただきますが,刑事責任年齢の考え方というのは,やはり少年の成熟度というものを考えて刑事責任年齢というのが定まっているわけで,それに代えて年齢を考慮するというのはどういうことを考慮するということなのか,ちょっと私には理解しかねます。 ● うまく議論に乗るのかどうかよく分からないのでありますけれども,犯罪少年であったとしても,当然に傍聴を認めるということではないわけで,その少年のいろいろな特質を見た上で,その傍聴を認めても,特に処遇選択に影響が出ないということを前提にした上でないと認めないはずであります。   その際に,当該少年の,例えば年齢あるいは心身の状態ということがかなり大きな要素を占めるのではないか。つまり被害者の方あるいは遺族の方がその場に現在することによって,本来和やかに行われるべき審判の運営に支障を生じるおそれがあるならば,傍聴を認めてはならないはずであります。すなわち,この傍聴という仕組みと,類型的に何か物事を考えるということは,恐らく余り調和しないのではないかというふうに思います。   したがいまして,触法事件の場合に,もちろんそれは刑事未成年ということが刑法で定められてはいるものの,そのことと適切な少年審判の実施に対する支障を個別事情に従って判断するということとは直接関係しないのではないか。やはり少年の年齢はそれだけで類型的な判断基準にするのではなく,個別の考慮事情の一つとして,しかし重要な一要素としてみるのが適切ではないかというふうに位置付けるものです。 ● 先ほど○○委員のおっしゃったことですけれども,触法であろうと少年事件であろうと,傍聴プラス意見陳述で被害感情むき出しのことをおっしゃったら,これは少年の健全育成を害するのは明らかで,そういうことがあってはいけないと思いますけれども,そういうことがあり得るということを前提にした議論にちょっと疑問を感ずることと,そのような場合に,正にそれこそ裁判所のコントロールというものがあって行われているので,そういうことで解決すべきではないかと。そういう被害感情むき出しのというのが,それはあってはならないことなので,その辺ちょっと私の意見ということで申し上げたいと思います。 ● 私,先ほど申し上げましたのは,被害感情がむき出しになるような場合もあるというのであって,一般的には,要するに行われた審判に対する批判,これは当然ではないですか。別にいけないというふうにも言い難いものですよね。批判はだれでもありますし,反論はあるわけです。   それが最後に行われたような場合に,1時間,1時間半,事実上崩れるような雰囲気になるわけですよね。それで少年審判はもつんだろうかと,そういう問い掛けです。非常に例外的な,初めから裁判官がこの方はきっと感情的になって攻撃的になるであろうと思うような方は相当性で判断されるでしょうからよろしいですけれども,批判ということは,当然,普通の常識的な被害者の方もお持ちになると思います。それ否定はできないと思います。それすらもストップというわけにはいかないと思います。 ● これは前にも申し上げたことですが,この問題は,最終的には神々の争いになってしまっていると思われます。それぞれの委員が,それぞれで想定される場面や予測される問題点をどれだけ強調されるかに応じて,今後の予測に基づいた結論が決定的に違ってくるように思われます。   例えば,被害者の方のお話を聴いたときにも,なかには,傍聴はさせるべきでないという御意見もあったわけです。そうした方々というのは,言葉は適切でないかもしれませんが,きちんと少年が立ち直っている場面を見ているのだろうと思います。だから,そのような原体験の中で話をすれば,傍聴がかえって少年の立ち直りに否定的に働くという議論はあり得るだろうと思います。   また,これも既に申し上げましたが,少年は立ち直る権利を持っておりますし,当然にそれは社会の利益でもあるわけです。しかし,多くの被害者の方が,現在の少年司法の在り方について非常に不満を持っており,せめて審判の場で自分の目で見たいという希望を表明されている。これも,被害者側の利益として,疑いようのないものだといわなければなりません。そのような状況の中で,傍聴を拒否することは,そうした希望は認めないという形で被害者側の利益だけを封じることができるかという議論にならざるを得ません。ですから,これは,最終的には二つの利益をどのようにして調和させるのかという議論の問題だろうという具合に思っています。   もちろん,恐らく傍聴に反対される方が心配されているのは,言わばドミノ理論といいましょうか,これが蟻の一穴になってどこまでも崩れていってしまい,最終的には少年審判の公開に結び付くことが予想される点にあるのだろうと思います。他方,弁護士の方々,更には一般の付添人の方々が一所懸命やっているということを前提にしながらも,私は,もしこれで被害者の傍聴する利益を完全に封じてしまったときには,むしろ現在の我が国の少年司法システムを根本的に変えろという議論が出てくるのではないかということを懸念しております。もちろん,これは想定の問題であって,私の評価あるいは予測にすぎませんから,ここで議論していただくまでの必要はないのですが,私自身は,そのような議論にまで行きついてしまうのではないかという危惧感を持っております。 ● 議論は尽きないようですが,お差し支えなければ,この論点についての議論はこの程度にいたしたいと思います。よろしゅうございますか。   それでは,この論点以外の要綱(骨子)全体について御意見等ございましたら,あるいは,修正の御提案等ございましたらいただきたいと思います。あるいは,部会としての意見の集約の前に,是非とも発言しておきたいというようなことがございましたら,御発言をお願いいたします。 ● ○○です。前回の意見書では,私は傍聴をなし得る者,いわゆる代理の者による傍聴というところで,委託を受けた弁護士等,審判を阻害するおそれのない者というような形で提案をさせていただきましたが,本日は,委託を受けた弁護士に限っては,傍聴をなし得る者に加えていいのではないかというふうな形で,若干自分の考えを絞って持ってきたところもありますもので,いろいろ御批判はあろうかと思いますが,皆様の御意見を伺えればというふうに考えております。 ● 1点質問させていただきたいんですが,被害者等から委託を受けた弁護士が傍聴できる場合というのは,今回の意見書によりますと,心身の状態等により付添いを受けたとしても同室することが困難な被害者,こういう場合に限定されるんでしょうか。   前は,「在廷が困難な場合」というような設定の仕方をされていまして,例えば,被害者の父親が,傍聴はしたいんだけれども,その日は仕事の都合で審判廷に行けないとか,あるいは被害者の親族が遠方にいて,交通費もかかるので傍聴に行けないという,こういう場合も多分御本人たちにとっては在廷できない場合に該当するんだろうと思いますが,こういう場合まで想定されているんでしょうか。   以上が質問です。 ● 端的に申し上げて,今日の時点で,そこまで具体的に絞った意見なり要件立てということを私の中でも整理が終わっていないという状況です。しかし,現場で被害者支援の業務に従事している弁護士の立場としては,正に今,御指摘のあったような場合も,委託を受けた弁護士に,言わば代わりに行ってもらう現実上の利益というのは極めて大きいだろうと思っております。   現場で支援をしている者の実感あるいは体験としては,特に,殺人等の事件の場合,重大事件の場合は,御遺族が犯罪あるいは非行のあった地域に居住しているとは限らないんですね。私,神奈川で仕事をしておりますと,例えば東京の大学に通っておられるお子さんが亡くなった,あるいは神奈川県で仕事をしていたお子さんが亡くなったというようなケースのときに,遺族が遠方に居住しているということはよくありますので,要綱(骨子)が想定しているようなケースほど,実は近親者が遠隔地におられるケースは多いというふうに考えますので,そのような場合も,弁護士に限っては,代わりに傍聴に行くことができるといいなという漠然とした考えは持っております。 ● そういうような場合まで含まれるということになりますと,前回の議論にもありましたとおり,審判非公開の原則を破って傍聴を認めるという制度趣旨からは大分遠くなってしまうのではないかというふうに考えます。   また,こういう場合を想定したときに,傍聴の許否の判断を被害者等とその代理人である弁護士と,そういうことも含めた判断をすることになるのかどうか。例えば,亡くなった被害者の父親が審判廷で,あの少年はけしからんから怒鳴ってやるとかそういうようなことが事前に分かっていた場合,それでは,被害者の父親が出てこずに,代理人である弁護士なら傍聴は認めるのかということや,被害者の父親が審判廷で暴言を吐いた等,あるいは少年が萎縮したということで,次回以降の審判の傍聴については遠慮願うというふうにしたときに,それでは,これは代理人である弁護士が行くから大丈夫だから傍聴を認めろという,そういうふうにもなるのかどうか。そういう意味では,裁判所にとっては,これは非常に判断に困るケースになるのではないでしょうか。これは意見でございます。 ● 私が言っても余り説得力がないかもしれませんが,むしろ弁護士であるからゆえ審判を阻害するおそれというのは,それこそ類型的に少ないということも言えるのではないでしょうか。   先ほど来,触法少年に関する議論の中で,被害者が被害感情をむき出しにするような振る舞いをしたらどうするんだといったような懸念,あるいは被害者が在廷していることで少年に無形の影響を及ぼすのではないかという懸念がありましたけれども,被害者の近親者が正にその場に在廷しているのに比べて,この方は被害者のだれだれさんの代理の弁護士さんだよという説明をするというのは,これは考えようによっては,かえって少年にとっても,近親者の人がいることよりも,むしろ心理的な負担とか萎縮的な契機というのは少ないのではないかということも考えられると思います。   また,近親者が審判の運営を阻害するおそれがあるような場合であっても,その近親者等から委託を受けた弁護士であれば,幾ら怒鳴ってくださいと言われても,我々弁護士は少年を怒鳴りつけるようなことをしませんので,むしろ裁判所としては,判断に困るというよりも,安心して在廷を認めさせることができるのではないかと,私としてはそのような印象を持っております。 ● これも既に意見は述べたところですので簡単に申し上げますが,今つくろうとしている法制度は,被害者ないし被害関係者御自身による傍聴の利益,これは正に事件の当事者としての人的な固有の利益をどこまでお認めするかというお話であろうと思います。このような要請は代理ということには親しまないのであって,代理人が弁護士であろうが,別人であろうが,代理できる性質のものではないだろうというのが一つです。   それから,御提案の方式によれば,弁護士さんが傍聴されてその情報内容を間接的に受け入れるという形にそれはならざるを得ないわけですけれども,被害関係者に対するそのような間接的な情報の収集・伝達の途については既に存在しているわけですので,そのような意味でも,これは直接傍聴とは非常に性質の違う問題であろうと思います。代理人,弁護士による傍聴ということは適切ではないと考えます。 ● 私も同じような意見なのでありますけれども,傍聴という事実行為,その事実行為,被害者との関係で,この際,制度的な手当てということでありますので,ちょっと私の理解からは代理とかそういうものには本来馴染まない。どうも頭の中が整理できなくなってくるという感じがいたします。 ● ただ今御指摘いただきましたけれども,まず,前回の意見書で,私,代理傍聴という言葉を使いましたので,ちょっと代理という言葉が独り歩きしてしまったのかなというふうに考えております。   事実行為であることは確かにそのとおりではありますが,現に記録の閲覧・謄写という直接的には法律的な訴訟行為ではないことに関して,やはり弁護士が委託を受けて行動するということがありますので,事実行為であるがゆえに代わりの者が行く,つまり代理というのがそぐわないということは一律に言えないのではないかと考えております。   御指摘のあった直接見聞きする利益との関係というところですけれども,この場合,私が今回考えておるのは,被害者から委託を受けた弁護士です。そうすると,その人間は,例えば,刑事裁判において検察官から説明を受ける,あるいは審判によって調査官から説明を受けるという,文字どおり,被害者と立場を異にする者から説明を受けるという間接的な情報取得と違って,言わば被害者の手足というべき,被害者の道具というべき立場の人間が審判廷に向かうわけですから,これは言葉の文字どおりの意味で,被害者が御自分の目で見てはいないとしても,被害者に委託を受けた弁護士であるから,イコールこれは直接の制度ではない,間接的なものだというのとはやはり若干違うのではないかと,違う説明もできるのではないかと考えています。   現に,民事訴訟の場合に,通常,原告,被告,当事者は,弁護士を代理人として立てて訴訟活動を行いますが,この場合,間接的な訴訟活動をやっているという評価はふだん聞くことがありませんので,自分が頼んだ弁護士にかかわってもらう,イコールこれが間接的な関与であるという評価とは直結しないのではないかと,今,そのように考えております。 ● 前回の部会でも申し上げたんですけれども,少年審判を運営する立場として,被害者に傍聴していただくとすれば,少年に対して被害者の傍聴による感銘力を与えたいと,そういうことを考えますと,どうしても代理人の弁護士さんが傍聴するということになると,被害者本人から委託を受けた弁護士さんであっても,ややその観点からは落ちると思います。   また,この制度ですと,言わば法曹にとって都合がよくなり過ぎまして,少年が被害者と向き合うという観点からは,むしろマイナスになるんではないかなと思います。仮に,被害者の御遺族の方に傍聴していただいて,その後少年が仮に少年院に入って,仮退院のときにもまた被害者の調査等がございますね。また,被害者に謝罪するというような流れになっていくとすれば,やはり被害者の御本人が傍聴していただく利益というのは強いんではないかというふうに思っております。   以上です。 ● では,お差し支えなければ,この先,部会としての意見の取りまとめを行いたいと思いますので,その前に,是非とも発言しておきたいということがございましたら,御意見をいただきたいと思います。 ● 是非ともと言われると,何か僣越な気もいたしますが,2点ございます。   1点は,傍聴を認めない場合に,要綱でいくと運用はどうなるんだろうかということです。裁判官は,本件については被害者の傍聴を認めません,相当でないと判断しましたという場合に,どのような説明をなさるんだろうかと。   もしもこれが少年の側の事情,少年が年齢が低くてとか,少年がナイーブなのでとかという理由だとすると,恐らく先ほど○○先生や○○委員がおっしゃったように,被害者の方は納得なさらないだろうと思うし,それから逆に,被害者の方に,例えば,感情的過ぎるとか攻撃性が懸念されるとかということだったら,それを正面から被害者に申し上げることは非常にしにくいだろうし,それから,そうかといって,抽象的に要綱の第一にあるような年齢,事件の性質等々をかんがみて,相当でないと判断いたしましたという抽象論では,これはまた被害者の方は,何で私は駄目なんだと納得なさらないと思うのですが,この辺の運用,家庭裁判所の方とか,もしこの要綱が実際に実現した場合,どう説明することになるのであろうかというところをお教えいただけたらと思うのが一つです。   それから,もう一つは,現在の刑事裁判では遺影の持込みが認められております。現に,私が弁護人を担当している刑事裁判では,このように,ほとんど胸一杯,遺族の方の顔が隠れるぐらい大きな遺影をお持ちになって遺族の方は傍聴しておられます。   刑事裁判で認められているものが,少年審判で傍聴をもしもこの要綱あるいは法改正によって認めるとしたら,刑事裁判ではいいけれども,少年審判では駄目だというのはなかなか難しいようにも思えますが,そうなると,少年審判でも遺影は持込み可能になる可能性が非常に高いのかどうか,皆さんの予測をお教えいただきたいというふうに思います。   また,もしもそれは個別相当性の判断であるという御意見も多分あると思うんです。その場合に,では,傍聴はいいけれども,遺影の持込みは駄目だという説明を家庭裁判所がなさるときに,一体どのように説明をなさればそれが実現可能なのか,なかなかそうはならないんではないか,結局は認めることになるのではないか,そうなれば,審判への影響も非常に大きいのではないかという懸念から御質問と皆さんの御意見を是非お聴きしたいというふうに思います。   特に,家庭裁判所の方にどういうことになるであろうという御意見をいただけたら,私,分かりませんので,少年審判は違うんだと,多分違うことになるんだという御意見なのかもしれませんし,分からないので予測にすぎないかもしれませんけれども,今の運用からすれば,多分みたいなところで御意見をいただけたら有り難いと思います。 ● 飽くまでも,こういう制度が入ったらという前提での予測であるということ,もう一つは,どういう理由の説明かということに関して,また,遺影の持込みをどうするかということについては,担当裁判官の指揮にゆだねられているところだという点でのお話だという御理解を前提として申し上げた上で,考えているところをお話しいたします。   まず,理由の説明でございます。大体,今のところ議論してイメージしているのは,この事件で被害者に入っていただくと審判の運営に一定の支障が出てくるという説明が基本でございます。もちろん,ではそれで,はい,分かりましたということでは,なかなかやり取りとしては終わらないだろうと思いますので,その後どんなやり取りをするかというところは,なかなか想像が難しいところがございます。   ただ,一方で,まだない仮定の話ということで想像が難しいところもありますけれども,他方で,民事事件であっても刑事事件であっても,結局は被害が対立する当事者の間に立ってという仕事は,裁判官に当然つきまとっておるものでございます。一方の当事者に向かって,すべてどんな場合でもその人に100%満足できるようなことばかり言っているわけではないわけですから,仮定として被害者の方に何か原因がある場合であっても,表現は十分考えるんでしょうけれども,やり取りの中で何らか触れることはあるのかもしれません。   また,その一方で,そういうやり取りの中で,少年側の事情を強調することはないのではないかと思います。むしろ適正な審判の運営が難しいといったように,少年に対するいろいろな効果が十分に発揮できないと予測しているというのが中心にはなってきますけれども,表現としては,少し抽象的なところでやり取りをするのではないかと,飽くまでも想像ですが,今のところはそんなイメージを持っております。   2点目が遺影でございます。今,御指摘がありましたように,刑事裁判での実務の運用というものが,参考になってこようと思います。事案の性質であったり,被告人の年齢,その期日に予定されている内容,持ち込もうとしている遺影の大きさなど,こういったことを慎重に考慮した上で,また,遺族の感情にも配慮した上で持込みを認めるかどうか。また,持込みを認める場合には,どれぐらいの大きさのもので,また,どこに座るかと,こういった条件を付けることもあると承知していますけれども,今,申し上げたような事情を考慮した上で,各裁判官が判断しているということと思います。   これが少年審判だとどうなるかということでございますけれども,刑事裁判とのいろいろな違いがございますので,刑事裁判の実務の運用そのままということではないだろうと思っております。これまでの議論にもあるように,審判廷と法廷の広さの違いも考慮する必要が出てこようと思います。それから,距離についても,刑事の場合でも,遺影を持つ人がどこに座るかというのを配慮しているわけですけれども,少年審判の場合,多分座る場所の選択肢というのはそれほどないだろうと,こういった制約も出てこようと思います。   それと,刑事裁判で傍聴する場合と,事件後どれだけ日がたっているかといった点も当然違うわけでございます。被告人と少年との年齢なども考慮する必要が出てこようと思いますけれども,このように刑事裁判とは違った事情も考慮した上で,裁判体が判断するということであろうと思います。ただ,一般的に,今申し上げた少年審判に特有の事情を考えると,刑事裁判よりは慎重に判断することが多くなってくるのではないかと考えております。   以上でございます。 ● ○○委員,よろしいですか。 ● ありがとうございます。 ● そのほかに御意見ございますでしょうか。 ● 私の意見は,そういう刑事裁判と少年の違いということについて,私や○○委員は,それに関しての抵触は非常に大きいので,そもそも傍聴を認めるべきではないというような議論をしているわけですが,それに対して,それは裁判所がきめ細かく判断するんだから余り心配し過ぎてはどうかとか,若しくは少年の適正審判を害するような,そういうような場合には認められないんだから,個別に判断すべきだよというような御反論があって,そういう意味でも,相当性の判断の基準として,私が言っているけれども,余り意見がないので評判が悪いのかもしれませんが,「第1条の目的に照らし」というようなものを入れ込むことはできないのであろうかとか。若しくは,少なくとも仮にこの傍聴を認めるということになったときに,賛成をされる方の大方の御意見は,そこは裁判所の非常にきめ細かい,少年の健全育成にも十分配慮した判断がされるからだということを,正に健全な判断を信じて賛成されるということなのかなと思いますので,そうであれば,場合によっては,部会長報告等で,そこについての可否及び運用について,十分第1条の目的に配慮した運用が求められるんだというようなことを入れていただくとか,何かの形でそういう議論が強かったということを御指摘いただければというのが私の希望です。 ● 意見というよりも○○委員にもう一度ちょっと確認したいことがございまして,前回の御議論でも,私はモニター制度のことでちょっと申し上げた,先ほどもちょっとおっしゃったわけですけれども,被害者側が傍聴することによって少年の感銘力を高めたいと,そういう効果をねらいたいということ,だからモニターには馴染まないという御趣旨だったと,それは理解するんですけれども。   そうしますと,例えば少年が萎縮するようなおそれがあるというようなことになると,これはそもそも傍聴は認めにくいということにもなるかと思うんですけれども,そういう点を回避する手段として,○○委員から提案が出ていますように,そういう場合に,被害者側の利益というものもあって,少年の健全育成というその両方の効果から考えて,モニター制度の導入もあり得るのではないかという御意見かと思うんですけれども,その点はどのようにお考えなんでしょうか。 ● モニターについては,前回も申し上げたとおり,被害者側への配慮としては,それは十分理由が分かるんですけれども,少年も裁判官もあるいは付添人も,第三者から見られているという意識は変わらないと思うんですよね。むしろ姿の見えない人に見られているという方が何かやりにくさを感じるわけです。実際,直接的な傍聴にしていただければ,被害者の反応なんかも裁判官は直接目にできますし,そちらの方の,言わば直接主義の方が審判はむしろしやすいんではないかなというふうに思っております。 ● ほかに御意見ございますか。   ございませんようでしたら,これで議論につきましては終結とさせていただきます。   続いて,部会としての意見の取りまとめに入りたいと思います。   諮問第83号は,犯罪被害者等基本法の趣旨及び目的等にかんがみ,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,別紙,要綱(骨子)について御意見を承りたいというものであり,その別紙として,要綱(骨子)が付されておりました。   そこで,採決の方法ですが,これまでの議論の状況にかんがみますと,要綱(骨子)の第一から第四までについて,各項目ごとに採決し,そのうち要綱(骨子)第一については,○○委員から修正案が提出されましたので,この部分につきましては,まず修正案について採決し,その上で原案について採決することといたしたいと思いますが,そのような方法でよろしゅうございますでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきます。   それでは,まず,要綱(骨子)第一の被害者等による少年審判の傍聴について採決いたします。   最初に,○○委員から提出された修正案,すなわち被害者等による少年審判の対象となる事件から触法少年に係る事件を除くこととするというものですが,これについて採決を行います。賛成の委員の方は挙手をお願いします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,この修正案に反対の委員の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● 結構です。   それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方1名,反対の委員の方15名でした。   出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。 ● ただ今御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第一の被害者等による少年審判の対象となる事件から触法少年に係る事件を除くこととする修正案につきましては,挙手された委員の反対多数で否決されたものと認めます。   次に,要綱(骨子)第一の被害者等による少年審判の傍聴の原案について採決いたします。   要綱(骨子)第一の原案に賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,次に,反対の委員の方は挙手をお願いします。           (反対者挙手) ● 結構です。   それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方13名,反対の委員の方3名でした。   部会長を除く出席委員総数は,先ほどと同様でございます。 ● ただ今御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第一の被害者等による少年審判の傍聴の原案につきましては,挙手されました委員の賛成多数で可決されたと認めます。   それでは,次に,要綱(骨子)第二の被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大について採決いたします。   要綱(骨子)第二に賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の方は挙手をお願いします。           (反対者挙手) ● 結構です。   それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方14名,反対の委員の方2名でした。   部会長を除く出席委員総数は,先ほどと同様でございます。 ● ただ今御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第二の被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大につきましては,挙手されました委員の賛成多数で可決されたと認めます。   それでは,次に,要綱(骨子)第三の被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大について採決いたします。   要綱(骨子)第三に賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● それでは,採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方16名,反対の委員の方はいらっしゃいませんでした。   部会長を除く出席委員総数は,先ほどと同様でございます。 ● ただ今御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第三の被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大につきましては,挙手されました委員の全員賛成で可決されたものと認めます。   それでは,次に,要綱(骨子)第四の成人の刑事事件の管轄の移管等について採決いたしますが,その1と2について一括して採決したいと思います。   要綱(骨子)第四に賛成の委員の方は挙手をお願いします。           (賛成者挙手) ● 結構です。   それでは,反対の委員の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ● それでは,事務当局から採決の結果を報告してください。 ● ただ今の採決の結果を御報告いたします。   賛成の委員の方16名,反対の委員の方はいらっしゃいませんでした。   部会長を除く出席委員総数は,先ほどと同様でございます。 ● ただ今御報告がありましたとおり,要綱(骨子)第四の成人の刑事事件の管轄の移管等につきましては,挙手されました委員の全員賛成で可決されたものと認めます。   以上で,すべての事項についての採決を終わり,諮問第83号につきましては,諮問に付された要綱(骨子)を部会の意見として総会に報告することに決しました。この決定につきましては,部会長から総会に報告いたしますが,部会長報告については,慣例として部会長に一任願っておりますが,今回もそのようにさせていただいてよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,本日予定しておりました議事はすべて終了いたしました。   この際,特に発言しておきたいことがある方がいらっしゃいましたらお願いいたします。   よろしいでしょうか。   それでは,事務当局から何かございますでしょうか。 ● 刑事局長の○○でございます。事務当局を代表いたしまして,一言ごあいさつを申し上げます。   委員,幹事,関係官の皆様方には,御多忙中にもかかわらず,今回の諮問につきまして,毎回長時間にわたり,大変御熱心な御審議をいただきまして厚く御礼を申し上げます。また,部会長には,議事の進行,意見の取りまとめに格段の御尽力を賜り,誠にありがとうございました。   この部会の冒頭でも申し上げましたけれども,犯罪被害者等基本法やこれを受けて策定された犯罪被害者等基本計画の趣旨等を踏まえまして,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図ること,これは大変重要なことであるというように考えております。事務当局,法務省といたしましては,本日お取りまとめいただいた御意見に沿いまして,必要な法整備を速やかに実現する必要があるものと考えております。   今後のスケジュールにつきまして申し上げます。   本日の部会におきます諮問第83号に関する御決定は,2月13日に開催が予定されております法制審議会総会に部会長から御報告をいただき,速やかに答申を頂だいすることにしております。その上で,法案の立案作業を進め,できる限り早期に関連する法律案を国会に提出いたしたいと考えております。   委員,幹事,関係官の皆様方には,今後とも引き続き御支援,御協力のほどをよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。 ● 皆様の御協力により採決に至ることができました。本当にありがとうございました。事務当局の方々の御尽力にも厚く御礼申し上げます。   それでは,これにて散会といたします。 -了-