法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  平成20年2月4日(月) 自 午後5時00分                      至 午後7時05分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進す        るという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事  (次のとおり)                   議        事 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第12回会議を開催いたします。 ● 本日は,「その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方」のテーマにつきまして,御議論を深めていただきたいと考えております。   その議論に入る前に,事前に頂きました委員・幹事の方々からの御要望を踏まえまして,事務当局の方で,統計関係の配布資料を用意したそうでございます。まずこれにつきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● お手元に資料28,表題としては統計資料7ということで,統計資料を4点用意させていただいております。   資料28,統計資料7の1は「出所受刑者の出所事由」についての資料でございます。これは平成14年から平成18年までの各年に刑事施設から出所した受刑者の人員及びその出所事由の内訳について示したものでございます。例えば,平成18年におきましては,合計3万600人の受刑者が出所しているわけでございますが,その出所事由は,約47.4パーセントの1万4,503人が満期釈放,約52.6パーセントの1万6,081人が仮釈放となっております。   続きまして,資料28,統計資料7の2は「仮釈放者の保護観察期間」についての資料でございます。これは,平成14年から平成18年までの各年に仮釈放された者について,その保護観察期間の内訳について示したものでございます。なお,ここで言う保護観察期間とは,注記の2番目に記載しておりますとおり,保護観察開始時に定められている期間であり,仮釈放の日からいわゆる残刑期間の満了するまでを指すものでございます。   この統計によりますと,例えば平成18年には合計1万6,081人が仮釈放されているわけでございますが,そのうち,例えば保護観察期間が1か月以内であった者が204人,1か月を越えて2か月以内であった者が2,505人,2か月を越えて3か月以内であった者が2,763人となっております。また,この統計には併せて保護観察期間ごとの構成比等を示しておりますが,例えば今申し上げました2か月を越えて3か月以内であった者の新受人員総数である1万6,081人に対する割合は,ここに示しておりますように約17.2パーセントとなっております。さらに先ほど申し上げました1か月以内であった者,1か月を越えて2か月以内であった者及び2か月を越えて3か月以内であった者を累計した,要するに保護観察期間が3か月以内であった者の割合は,平成18年の一番下の欄に示しておりますように約34.0パーセントということになります。同じように累計の構成比を見ていきますと,保護観察期間が6か月以内であった者は全体の約71.0パーセントを占めております。   また,今は平成18年を例として申し上げましたが,平成14年から平成17年につきましても,ほぼ同様の割合で推移しているところでございます。   続きまして,資料28,統計資料7の3は「有期刑仮釈放者の刑の執行率」についての資料でございます。この資料は有期刑仮釈放者の刑の執行率,すなわち,執行すべき刑期から仮釈放に至るまでの間に,どの程度の割合の刑が執行されたのかについての統計資料でございます。この統計によりますと,例えば平成18年には刑の執行率が90パーセント以上であったという者が3,689名であり,その構成比は約23.3パーセントとなっております。そして,刑の執行率が80パーセントから89パーセントまでであったという者が6,428名であり,その構成比は約40.5パーセントとなっております。そして,この刑の執行率が80パーセントから89パーセントまでであった者に90パーセント以上であった者を加えた累計の構成比,すなわち,刑の執行率80パーセント以上であった者の構成比は,平成18年の一番下の欄に示しておりますように約63.8パーセントでございます。さらにこれに刑の執行率が70パーセントから79パーセントの者を加えた構成比,すなわち刑の執行率が70パーセント以上の者の累計の構成比は約93.3パーセントでございます。   続きまして,資料28,統計資料7の4は「罪名別平均仮釈放期間・平均刑期」についての資料でございます。この統計は平成19年版犯罪白書245ページに掲げられていた資料によるものでございまして,平成8年から平成17年までを累計した罪名別の平均仮釈放期間と平均刑期に関する資料でございます。なお,ここで言う仮釈放期間とは,仮釈放の日からいわゆる残刑期間が満了するまでを指すものでございます。   この統計によりますと,例えば殺人については,平均刑期は6年11か月,平均仮釈放期間は1年2か月でございます。また,事件数が多いということで挙げられることの多い覚せい剤取締法違反と窃盗を紹介しますと,まず覚せい剤取締法違反については,平均刑期は2年3か月,平均仮釈放期間は5か月でございます。窃盗については,平均刑期は2年,平均仮釈放期間は5か月でございます。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の御説明につきまして,何か御質問がございますでしょうか。 ● 今,御説明いただいた資料28,統計資料7の1なんですけれども,平成14年,15年,16年について仮釈放率を見ていると,約56パーセント前後で推移しているのですが,17年,18年には少しこの仮釈放率が減少しているのは特に何か理由があるのでしょうか。 ● 仮釈放は,一般的には刑事施設の長から仮釈放申請を受けまして,地方更生保護委員会がその可否を判断しているということでございますが,今,御指摘がありましたように仮釈放率は,平成14年,15年,16年は56パーセント台であったのが,17年には約2ポイント減少,18年にはまた約2ポイント減少しております。この原因を一概に申し上げることは困難でして,複合的な要因が作用しているのではないかと考えております。ただ,要因の一つとして考えられますのは,受刑者の高齢化などによって,帰住先の確保が困難となり,そもそも仮釈放の手続に乗せられない事例が増加しているのではないかということかと思います。   また,地方更生保護委員会の審理の結果であります仮釈放申請の棄却率というのが,平成14年,15年,16年はいずれも約2.6パーセントだったんですけれども,平成17年が約3.9パーセント,平成18年が約4.1パーセントと上昇しております。そういうことで,この棄却率の上昇というのも仮釈放率低下の一つの要因ではないかと考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 今,仮釈放率の増減についての問題提起があったと思いますが,資料28,統計資料7の3にある有期刑仮釈放者の刑の執行率を見ますと,刑の執行率が年々高まってきているという印象を受けます。刑の執行率が70パーセント以上であった者の累計の構成比を見ますと,平成14年は約87.8パーセントであったのが,平成18年には約93.3パーセントに上昇しております。このような数値の動きを見ますと,保護観察の期間を確保することがだんだん難しくなってきているということになるように思われますが,その辺の御感触はいかがでしょうか。 ● 確かに刑の執行率が高まってきている一方で,刑期自体も長期化してきているということから,資料28,統計資料7の4にございますように,平均仮釈放期間は5か月程度であり,この前後で推移はしているんですけれども,やはり最近のいわゆる厳罰化を望む社会的感情というようなところも微妙に影響して,刑の執行率の上昇に伴い,保護観察の期間自体は若干低下しつつあるというところかと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 資料28,統計資料7の1を見ますと,満期釈放で出所する者の割合が大体45%前後になっています。他方で,仮釈放が認められているけれども,その期間が1月以内という場合もあります。そこで質問なのですが,その分かれ目は何なのか,言葉を換えていいますと,満期でしか釈放できない人というのは,例えばどういう類型の受刑者なのかということを教えていただけますでしょうか。 ● いろいろあるかと思うのですが,例えば受刑中に規律違反をずっと反復するような人,これが一番典型的な例になるのかなというふうに思います。矯正の立場からしますと,その段階でもう仮釈放の申請はできないように思われます。主なものとして,そういう人たちが増えているのかなというふうな気がしております。 ● 今の規律違反の関係なんですが,いわゆる過剰収容が影響して,人間と人間との接触が房内でかなり密になり過ぎていて起こっているというケースが,いわゆる過剰収容以前に比べて増えているというのはないのでしょうか。 ● その点についての数字は今持ち合わせておりませんけれども,やはり過剰収容の影響というのはそれなりにはあるかなというふうに思っております。生活空間が狭あいになったりしますので,どうしてもそこで被収容者間のあつれきが生じやすい状態にはなっているということは言えると思います。 ● そうしますと,満期で出所する者のイメージとしては,受刑中に規律違反を反復しているような人が多数を占めるということでよろしいでしょうか。先ほどは,帰住先の確保が困難である人が増えているのではないかというお話がありましたし,また,再犯のおそれが高いというタイプの受刑者もいるかとは思います。それらが重なる場合もあるでしょうから,構成比が出るものではないと思うのですが,実務のイメージとしてはどのようなものでしょうか。 ● 仮釈放を申請する方の立場から申しますと,御指摘のあったいろいろな理由のうち,単一の理由が当たる人や,複数の理由が当たる人などがいるように思います。 ● その点についてお聞きしたいのですが,受刑中に規律違反を反復するという要素と,帰住先の確保が困難であるという要素の相関関係というのはかなりあると考えられているのか,それとも余りないと考えられているのか,これはどちらでしょうか。 ● その点につきましては,調査したことはございませんので,はっきりとは申し上げられません。 ● 確たることは申し上げられないのですが,帰住先の確保が困難であるという要素と受刑中に規律違反を反復するという要素の相関関係というのは余りないのではないかという感じはいたします。 ● 資料についての御質問は以上でよろしいでしょうか。   それでは,「その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方」のテーマにつきまして,二巡目の議論に移ることにしたいと思います。   ところで,一巡目の議論では「その他の社会内処遇の在り方」,「刑執行終了者の再犯防止・社会復帰支援策」,「中間処遇の在り方」の各テーマごとにそれぞれ御議論いただきましたが,前回の会議で皆様にお諮りしましたように,これらのテーマには共通する性格があることが一巡目の議論で明らかになりましたので,二巡目の議論では,これらを一括して,「その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方」というテーマの形で御議論をいただくことといたしました。 その進め方ですが,私としては,これまでの議論等を踏まえ,考えられる新たな制度とその導入に当たって検討すべき事項を整理し,その中で議論が共通すると思われるものをひとまとまりにして議論していくことが適当ではないかと考えております。   その議論の参考にしていただくため,事務当局と相談して,本日,皆様のお手元に配布している「『その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方』の検討事項」というタイトルの資料を作成いたしました。 そこで,まず,事務当局の方から,この資料の概要と,この資料を用いた議論の具体的な進め方の案について説明していただきたいと思います。 ● お手元に,配布資料27として,「『その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方』の検討事項」と題する資料をお配りいたしております。   ただ今部会長から御紹介いただきましたように,一巡目の議論では今回のテーマを複数のテーマに分けてそれぞれ御議論いただきました。 一巡目の各テーマの議論では,共通して,円滑な社会復帰・再犯防止のためには,施設内処遇及び社会内処遇をより適切に連携させることが必要である旨の御意見が多く述べられ,この点については委員・幹事の皆様の御賛同を得たものと考えております。   そこで,この一巡目の議論を踏まえまして,前回皆様にお諮りいたしましたように,一巡目の各テーマを一括して,「その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方」とのテーマにして二巡目の御議論を行っていただくとともに,その議論に用いるお手元の資料の1に,施設内処遇及び社会内処遇のより適切な連携等の点を,新たな制度導入に当たって考えるべき視点という形で挙げさせていただきました。 この視点を,今後,今回のテーマについて御議論していただく際の共通の視点としていただけましたらと考えております。   次に,資料の2としまして,「新たな制度として考えられるもの」を幾つか挙げさせていただきました。 これは,一巡目の議論あるいは外国法制の御報告で紹介のあった諸制度のうち,資料の1の視点から見て,今回のテーマの中で御議論いただくのが適当であると考えられるものや,これまで施設内処遇と社会内処遇とのより適切な連携策として一般に議論されることの多かった制度を,部会長と御相談させていただいた上で,幾つか挙げさせていただいたものでございます。 そして,この資料の2に挙げました(1)から(6)までの各制度については,その性格上,3つのブロックに分けることができると考えております。   まず1つ目のブロックは,受刑者の中間処遇制度に分類することのできるものであり,(1)の「中間施設における処遇制度の導入」を挙げております。   次に2つ目のブロックは,施設内処遇後に,仮釈放等の枠組みにより,継続して一定期間の保護観察を行うことを可能とする制度に分類することができるものであり,具体的には,(2)から(5)の「必要的仮釈放制度の導入」,「仮釈放の期間についてのいわゆる考試期間主義の採用」,「いわゆる分割刑制度の導入」,「刑の一部の執行猶予制度の導入」を挙げております。   3つ目のブロックは,刑の執行を終えた者に一定の義務付けを行う制度に分類できるものであり,(6)の「刑の執行終了者に一定の支援的処遇を受けることを義務付ける制度の導入」を挙げております。   このように,資料の2に挙げた各制度は,その性格上,3つのブロックに分けることができますので,今後の議論をより分かりやすく,かつ,効率的・効果的に行うためには,その各ブロックごとにまとめて御議論いただくという進め方,具体的に申しますと,まず(1)の制度を御議論いただき,次いで(2)から(5)までの制度をまとめて御議論いただき,最後に(6)の制度を御議論いただくというのが適当なのではないかと考えております。   なお,この資料の表題のすぐ下に(注)として記載しておりますとおり,ここに掲げております各制度及び検討事項は,これまでの議論等を踏まえ,当面考えられるものを挙げたものでございまして,今後の当部会での御議論をこの範囲に限定するという趣旨のものではないことは,前回の社会奉仕に関する議論の際にお配りした資料と同様でございます。   以上申し上げました議論の進め方で皆様の御了解が得られましたら,資料の2の各制度や検討事項のより詳しいところにつきましては,これから御議論いただく際に,必要に応じて説明させていただければと考えております。 ● ただ今,事務当局から,お手元の資料の概要と,本日の審議の進め方の案につきまして,私と事務当局であらかじめ相談したところを御説明いただきました。   まず,ただ今の御説明に対して何か御質問がございましたら,お願いいたします。 特にないようですので,次に議論の進め方についてお諮りいたします。私といたしましても,事務当局からただ今御説明のありました方法で議論を進めるのが適当と考えておりますが,皆様の御意見はいかがでしょうか。   特に御意見もないようですので,そのように進めさせていただくことといたします。   先ほど事務当局からも御説明がありましたように,お手元の資料のより詳しい説明は,必要に応じ,これからの御議論の中で,事務当局から適宜御説明をいただくことにします。   それでは,最初のブロックとして,資料の2(1)の「中間施設における処遇制度の導入」について御議論をいただきたいと思います。   まず,事務当局の方から,この制度の概要と検討事項について御説明をお願いします。 ● 資料の2(1)についてですが,当部会での外国法制の御報告などを踏まえまして,受刑者の中間処遇制度として考えられるものといたしまして,「中間施設における処遇制度の導入」を挙げたものです。   この制度の概要として考えておりますのは,資料の枠囲みの中にも記載しましたように,刑事施設以外の施設である中間施設を設け,受刑者を同所に収容して円滑な社会復帰に向けた処遇を行うという制度でございます。 そして,このような制度の導入につきましては,この資料に《検討事項》として記載しましたように,そもそも今申し上げましたような制度を導入する必要性があるのか否かという点がございます。つまり,既に現行法におきましても,外部通勤作業制度や外出・外泊制度が導入されるなどしているところであり,さらにこのほかに中間施設を設けて行うような処遇が必要かどうかという点について検討を要すると考えられます。   また,仮にこのような中間処遇制度を導入した場合に,新たに設ける中間施設においてどのような処遇をすべきなのか,また,その対象としてはどのような者が考えられるのかという点などについても検討を要するものと考えられます。 ● ただ今の事務当局の御説明について,何か御質問がございますでしょうか。 ● 現在でも,中間処遇として行われている制度があると思いますが,まずこの制度の概要を,確認のために御説明いただけますか。 ● 保護の分野で中間処遇と称しているものは,特に長期間にわたって刑事施設に収容されていた無期刑及び長期刑,すなわち執行すべき刑期が8年以上の仮釈放者に対して,仮釈放当初の1か月間,更生保護施設に居住をさせて,社会適応訓練を中心とした処遇を行うというものであり,現在も実施しております。   無期刑又は執行すべき刑期が8年以上の仮釈放者は,相当長期間服役して社会生活から離れているということでございますので,出所後,直ちに本来の帰住地といいますか,引受人のもとに帰すのではなく,この処遇により,1か月間ではありますけれども,日常生活になじませて,自立的・計画的な生活を営めるようにするための配慮を加えております。   また,このような長期間にわたって刑事施設に収容されていた者は,一般的な社会経験が不足しておりますことから,日常生活のささやかな場面での対応を誤って問題行動に発展するおそれがありますほか,引受人があったとしても,近親者の死別等により関係が薄くなっていることがございます。そこで,直接,引受人のもとに帰すのではなく,本人の同意を得た上で,更生保護施設でワンクッション置き,社会適応訓練として,いわゆる貨幣価値や交通機関の乗り方,就職活動,社会保険,公共機関の使い方等についての指導を,1か月間に限ってではありますが,行っております。 ● そのような処遇は何年から実施されているのですか。 ● 昭和54年から実施しております。 ● 年間どれぐらいの者に対して実施されているのでしょうか。 ● 年間,70人から80人くらいでございます。   平成18年でいいますと,無期刑の仮釈放者が4人,先ほど申し上げました長期の有期刑の仮釈放者が71人,合計75人が対象となりまして,全国に101の更生保護施設がございますが,71の更生保護施設がその受入施設になっております。 ● そのような現行の中間処遇の実施状況について,かなり活発に活用されているというふうに認識されておりますでしょうか。それとも,当初,昭和54年につくられたときの期待感というか,それに比べると余り積極的に活用されていないというふうに認識されておりますでしょうか。 ● 直接引受人のもとに帰すのがちょっと不安な無期刑及び長期の有期刑の仮釈放者につきまして,1か月という期間ですが,更生保護施設でワンクッション置いて,専門的な社会適応訓練を受けて,社会生活に慣れた方がいいと考えておりますし,そのような中間処遇の対象になる者に働き掛けをすればおおむね乗ってくるという実情ですので,相応の実施状況ではないかと考えております。また,そもそもこの中間処遇の対象になる者自体がそれほど多くないということからも,相応の実施状況ではないかと考えております。 ● もう一点ですが,更生保護施設にとって,無期刑及び長期の有期刑の仮釈放者のようなタイプの人というのは,受け入れにくいのでしょうか,それとも積極的に受け入れるという方向なのでしょうか。 ● 当初,こういう中間処遇施設といいますか,更生保護施設には,無期刑又は長期の有期刑の仮釈放者を受け入れるのは相当抵抗感はあったようですが,実際にやってみましたところ,更生保護施設の力量の向上や施設職員のいろいろな情報の交換などにより,当初敬遠していたほど難しくないのではないか,むしろ更生保護施設の処遇能力の向上という観点からしてもやりがいがあるのではないかということで,ある程度受入れが積極化し,今は徐々にその実施施設も広がっていると承知しております。 ● 今の御説明を伺っておりますと,検討事項として並べて記載されております「中間施設における処遇の具体的在り方」と「対象者の選定」は相互に絡み合っているのではないかという気がいたします。今のお話でも長期の受刑者の場合,まず社会生活そのものに慣れさせることが必要だというお話でした。昔,「幸せの黄色いハンカチ」という映画がありましたが,あれも網走刑務所で長期受刑して出所した者が,外の生活にいかに疎くなっているかということをやや誇張した形で描いてあったかと思います。そうした長期受刑者のような対象者に対しては,出所後,それに適した処遇が必要であるということになりましょうし,またそれと違って比較的短い刑期の受刑者であれば,社会生活そのものから遠ざかっているわけではないので,また別個の考慮が必要であろうと思われます。例えば高齢者であるとか,あるいは,いろいろな意味での弱者で,社会生活を営む力が非常に弱いというような者に対しては,本人がどうこうというよりも,むしろ外の社会との間の調整,福祉とのつながりというようなことを図る必要があるのではないかと思います。 そこで,この検討事項の最初にある,制度の導入が必要かという問題につながっていくわけですが,今のような処遇を行う場合に,やはり刑事施設からは外に出した方がやりやすいし,効率的であると考えられますので,そういう意味では,中間処遇のための中間施設を拡充する方向に行くでしょう。 ただ,そうなりますと,もう一つ,この検討事項の中に「実現可能性」という項目も入れて考えるべきではないかと思います。つまり,新たな施設やマンパワーが必要になるという点をどう解決していくのかということについての検討を要するように思われます。 ● どうもありがとうございました。   既に議論の中身にも入っている感もありますので,そのまま議論に入らせていただきたいと存じます。議論の途中で御質問がございましたら,改めてそれをお受けするということでよろしいでしょうか。   それでは,中間処遇制度として考えられる新たな制度として,中間施設における処遇制度を導入することの当否について,皆さんに御議論していただきたいと存じますが,その御議論の参考として,先ほど事務当局の説明の中にも出てきました,現行法による外部通勤作業制度や外出・外泊制度の運用状況について事務当局の方から御説明いただけますでしょうか。 ● 刑事施設に収容しつつ,広く外部への通勤や外出・外泊を認める制度の概要につきましては,第5回部会の際に説明しておりますが,この度は,それぞれの制度の内容につきまして,より詳しく御紹介するとともに,現在の運用状況について御説明申し上げます。   まず,外部通勤作業についてでありますが,これは刑事収容施設法第96条に定められておりまして,一定の要件を備えた受刑者について,刑事施設の職員の同行なしに,刑事施設の外の事業所に通勤させて作業を行わせ,又は職業訓練を受けさせる制度であります。   対象者につきましては,法第96条第1項,第2項及び刑事施設規則第57条におきまして,仮釈放を許すことができる期間を経過した受刑者が,開放的施設で処遇を受けていること,第一種又は第二種の制限区分に指定されていること,又は仮釈放を許す決定がなされていることのいずれかに該当する場合において,刑事施設の長がその円滑な社会復帰を図るために必要と認めた場合に選定できることとされております。   外部通勤作業を行うためには,まずもって外部通勤先を確保する必要がありますが,これにつきましては,法第96条第3項及び規則第58条におきまして,刑事施設の長は,適当と認められる外部事業所の事業主との間で協議をし,作業の種類,時間等必要な事項について取決めを行った上で実施することとされております。   また,外部通勤作業を行う場合には,法第96条第4項,第5項により,あらかじめ,その者が遵守すべき事項として,例えば,指定された経路及び方法により移動しなければならないことや,指定された時刻までに刑事施設に帰着しなければならないこと,外部事業主による作業上の指示に従わなければならないことなどを特別遵守事項として定め,これを受刑者に告知する必要があります。 そして,外部通勤作業に出た受刑者が通勤の日を過ぎて刑事施設に帰着しないときは,1年以上の懲役に処せられることとなり,これは法第293条第2項に定められております。   続きまして,外部通勤作業の運用状況についてでございますが,現在のところ,一つの施設において実施されております。これは平成18年に開始され,現在も続いているものでありますが,その内容を説明しますと,当該施設から10キロメートルほど離れた外部の事業所に数名の受刑者を通勤させ,製品の梱包,運搬,仕分け等の作業を行わせております。通勤は,外部事業所の乗用車による送迎を受けておりまして,朝に出勤して,夕方に帰所しております。昼食及び飲料,これはお茶でございますけれども,これにつきましては,施設から運搬したものを食べさせておりますが,月2回ほど,外部事業所の従業員が弁当屋から購入しているものと同じ弁当を購入することを認めております。   このような外部通勤作業を経験した受刑者の感想の一部を紹介しますと,例えば,「社員の方のほかの人に不快な思いをさせないような人との接し方という部分を考えさせられ,自分の態度や対応の仕方が人付き合いに反映されることを思い出させられた」といった感想とか,あるいは,「いち早く一般の方と触れ合うことにより,社会にいたころを思い出し,早く慣れることができる」といった感想など,肯定的なものが寄せられていると聞いており,外部通勤作業の実施が,受刑者にその自主的な行動規制を促すことにより,自立心と責任感をはぐくみ,もって受刑者の円滑な社会復帰を促進するという目的に照らしましても,効果的なものであると認められます。   次に,外出・外泊についてでございますが,この制度は法第106条に定められており,一定の要件を備えた受刑者について,刑事施設の外において,職員の同行なしに外出し,又は7日以内の期間外泊を認めるものであります。   対象者につきましては,法第106条第1項及び規則第65条において,仮釈放を許すことができる期間を経過した受刑者について,開放的施設において処遇を受けていること,第一種の制限区分に指定されていること又は仮釈放を許す決定がされていることのいずれかに該当する場合において,なお,さらに外泊につきましては,刑が6か月以上執行されているという要件が加わりますが,釈放後の住居又は就業先の確保その他の一身上の重要な用務を行う等のために必要があると認められた場合に選定できることとされています。   具体的には,環境調整に係る用務のため,保護観察官,保護司,更生保護施設,引受人,協力雇用主等を訪問する場合や,出所後の円滑な就労を図るため公共職業安定所その他の公的機関を訪問し,又は企業等の業務説明会や採用面接に参加する場合や,あるいは出所後の居住先や婚姻関係,子の養育関係の調整等のため親族等を訪問し,又は雇用関係の調整等のため釈放後に就職を予定している企業等を訪問する場合などに外出・外泊が許されます。   外出・外泊を行う場合には,法第106条第2項によりまして,外部通勤作業の場合と同じく,あらかじめ,その者が遵守すべき事項として,例えば,指定された経路及び方法により移動しなければならないことや,指定された時刻までに刑事施設に帰着しなければならないこと,正当な理由なく,犯罪性のある者その他接触することにより矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者と接触をしてはならないことなどを特別遵守事項として定め,これを受刑者に告知する必要があります。   また,外出又は外泊に伴って必要となる費用,これは交通費,食費,宿泊費等が考えられますけれども,これらにつきましては,法第108条により,原則として受刑者に負担させることとなりますが,受刑者がその費用を十分に負担することができない場合や,負担する能力があっても国の負担とすることが相当であると認められる場合には,その費用の全部又は一部を国が負担することができることとされております。   そして,外泊した受刑者が,自己の責めに帰することのできない事由以外の事由で刑事施設の長が指定した日時までに刑事施設に帰着しなかった場合には,法第107条により,その外泊期間は,刑期に算入されないこととなり,また,外出及び外泊を許された受刑者が,外出の日又は外泊の期間の末日を過ぎて刑事施設に帰着しない場合には,法第293条第2項により,1年以下の懲役に処せられることとなります。   続きまして,外出・外泊の運用状況についてでございますが,現在のところ,ある刑事施設において,企業の面接のために外出を許した例が1例ございます。これは平成19年に行われたものですが,その内容を御説明しますと,仮釈放が決定している受刑者について,公共職業安定所に釈放後の就労先のあっせんをしていたところ,採用予定の企業から本人と面接をしたいとの申出があったため,当該施設最寄りの駅から交通機関を利用して,1時間ほど掛かる企業の採用面接に赴くために外出を許可したものです。外出に当たっては,当該受刑者に私服を着用させるとともに,交通費や昼食代金等の必要な金銭を持参させ,最寄り駅まで送迎し,その先は当該受刑者単独で行動させましたが,当該受刑者は予定どおりに行動し,採用面接を終えて施設に戻ってきております。なお,当該受刑者につきましては,釈放後,外出時に面接した企業に採用されていることを申し添えます。   外部通勤作業及び外出・外泊の運用実績につきましてただいま説明いたしましたが,実績が1例にとどまっている事情といたしましては,様々な要因が考えられ,一概にこれとは申し上げられませんが,これらの制度が新たに制定されてから,期間が余り経過していないことに加えて,昨年6月には,未決拘禁者の処遇等に係る新法が施行されるなど,刑事施設を取り巻く状況にも変化が生じ,各刑事施設において,新たな制度を実施するための余裕がなかったということが挙げられると思います。さらに,これらの制度が受刑者という身分のままで刑事施設の外に出るというものであることからの限界としまして,受刑者が刑事施設に帰着しない事案が発生した場合における社会の感情を考えると,制度を運用する刑事施設の立場にある者といたしましては,対象者の選定等にはやはり慎重にならざるを得ないといったところが正直なところでございます。   また,それぞれの制度の問題点を考えますと,外部通勤作業の問題点としましては,外部の事業所の確保が前提となることを既に御説明したとおりですが,現在検討を進めている施設におきましても,適切な外部事業所の確保に苦慮している様子が伺われます。   一方,外出・外泊の問題としましては,対象事例が余り発生しないといったことが挙げられます。例えば,企業の採用面接につきましては,受刑者に具体的な採用の話が進んでいても,採用面接は釈放されてから行われることが多いようでありますし,また新法の施行により,受刑者の新たな外部交通手段としまして,電話による通信が認められたために,遠方に居住する親族等との間においては,電話による通信を実施するなどして,必要な用務を済ますことができるようになっております。このため,あえて外出・外泊を行う事例が生じにくいといった事情も伺われます。   以上,十分とは言えない説明ではありますが,外部通勤作業及び外出・外泊の制度が設けられたことにつきましては,私どもとしましても,実際の適格者の確保はなかなか難しいという問題はあるにせよ,施設内処遇と社会内処遇の間の格差をなるべく小さくする,あるいは橋渡しをするという,中間処遇制度の目的・機能の一部はこれらの活用によって賄える可能性は開かれたと考えております。   現在の私どもの取組としましては,外部通勤作業の対象者となるのに適当な者を多く収容していると認められる刑事施設を対象として,外部事業所の確保に努めるよう働き掛けるなどしておりまして,今後ともこれらの制度の運用の拡大に努めてまいりたいと考えております。 ● どうもありがとうございました。   ただいまの事務当局の御説明につきまして,御質問がございましたらお願いいたします。 ● 外出・外泊について,申請があったけれども,認められなかったというようなケースはあるのでしょうか。 ● 各施設の申請状況までは把握しておりません。 ● 御質問は以上でよろしいでしょうか。   ただ今事務当局の方から,外部通勤作業制度や外出・外泊制度の運用状況につきまして御説明がございましたが,昨年制定されました更生保護法の第51条第2項第5号は,「法務大臣が指定する施設,保護観察対象者を監護すべき者の居宅その他の改善更生のために適当と認められる特定の場所であって,宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること」を保護観察対象者の特別遵守事項として定めることができるものと規定しております。 この規定は,保護観察対象者に対するものではありますが,刑事施設ではない施設において指導監督の処遇を行うという点では,資料の2(1)の制度案と共通する部分もあるかと思いますので,この規定の趣旨やこの規定により行われる具体的な処遇のイメージなどにつきまして,事務当局から御説明いただけますでしょうか。   よろしくお願いします。 ● 御紹介いただきましたとおり,更生保護法は,特別遵守事項の類型の一つといたしまして,特定の場所に一定の期間宿泊して指導監督を受けることを挙げておりまして,その最も典型的なものとして想定しておりますのは,現在設置を始めている自立更生促進センターに数か月間宿泊をさせ,同所においていわゆる濃密な指導監督を受けさせる際に,この類型に当たる特別遵守事項を設定することでございます。   保護観察制度の趣旨に照らしますと,この特別遵守事項の目的は,一定の期間,特定の場所に対象者を束縛することにはございません。更生保護法は,対象者の改善更生を図るために特に必要であることから特定の場所への一定期間の宿泊を義務付けることを認めるのでありまして,宿泊を義務付ける場所も期間もこの趣旨に照らして相当なものでなければならないと考えております。そこで,宿泊を義務付ける場所において行う指導監督に一定の必要性が認められ,そのことを含めて当該場所に一定の期間宿泊することが改善更生のために特に必要であるときに限って特別遵守事項とすることができると考えられます。第51条第2項第5号が「指導監督を受けること」と規定しておりますけれども,保護観察対象者が指導監督を受けることは当然であるのにあえて規定しているのは,その場所において指導監督を受けることを意味していると考えられるところでございます。   御承知のとおり,現在行われております保護観察は,ほとんどが,保護観察官と保護司との協働によって行われており,面接を含めて実施の多くを保護司の方が担っておりますけれども,本来は民間のボランティアである保護司の方による保護観察には適さない対象者も少なくないと考えられるところでございます。現在,保護観察官による直接処遇を拡大しつつありますけれども,その場合でも,対象者に対する定期的面接は,一般的には月2回程度にとどまらざるを得ず,一定の限界がございます。これに対して,今設立を開始している自立更生促進センターには,保護観察官が常時駐在し,対象者にとってはそこが住居でありますから,日常的に接触することになり,かつ,専門的な処遇を始め,従来の保護観察では不可能であった高密度,集中的な指導監督を行い得ることになります。現状では専門的処遇でありましても,対象者の通いによる実施を前提としておりますから,実施の頻度,回数等に制約がありますが,その制約がなくなるということになります。また,就労支援を始めとする補導援護につきましても,濃密な接触等が的確かつ十分な措置の実施に資すると考えられます。そのため,従来,仮釈放の対象とならなかった者についても,あるいは従来であれば早期に過ぎる場合であっても,自立更生促進センターにおける保護観察に付することが可能であると考えられるところでございます。   自立更生促進センター構想には,ただ今説明いたしましたものと,主として少年院を仮退院した者を対象に農林漁業に着目した処遇と就労支援を行うことを目的とするものの二つのタイプが含まれております。この主として少年院を仮退院した者を対象とするものにつきましては,昨年10月に北海道の沼田町に既に1施設が設置されております。 また,ただ今説明しましたタイプのものにつきましては,本年度に言わば試行を開始する段階でありまして,福島保護観察所に設置が予定されている入所者定員20名の施設の整備が先行しております。 ここでは,仮釈放後の数か月間対象者を宿泊させて濃密な保護観察を実施し,その後は自立更生促進センターに宿泊中に確保した居住先に対象者を移らせ,言わば通常の保護観察に移行することを想定しております。その主な対象としては,刑事施設内での成績が比較的良好であるものの,現状では適切な帰住先を確保できないなど,現状の更生保護施設では受入れが難しく,そのために仮釈放をされず満期釈放になっている人を想定しております。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の御説明につきまして,何か御質問がございますでしょうか。 ● 今の御説明によりますと,最後は通常の保護観察に移行するということですので,制度のイメージとしましては,今のままでは更生保護施設でも受け入れてくれないようなある程度問題を抱えた人を,自立更生促進センターで濃密な処遇をすることで,更生保護施設が受け入れられるような状態にまで持っていくことを目指したものであるということでよろしいのですか。 ● 現段階での想定としてはそういうことでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。   この点につきましては,また改めて御議論の中で御質問がございましたらお受けしたいということで進めさせていただきたいと存じます。   それでは,ただ今の事務当局の御説明等を踏まえまして,皆さんに御議論いただきたいと存じますが,先ほど御提案がございましたように,この制度の導入に関連いたしましては,制度の実現可能性,施設そのものやマンパワー等の確保の問題の観点をも考慮して御議論をお願いいたします。 ● 今御説明いただいたような自立更生促進センターは,できれば全国各地にあった方が望ましいと思うのですが,以前この部会で3か所ぐらいの候補地があるというふうに伺っておりましたけれども,そのうち2か所はかなり難航しているということも伺っております。そのあたりの事情というのはやはり住民の理解が得られないということなのでしょうか。要するに,マンパワーとか施設とかいうものは,それなりに確保しようとしてもできないという状況に今あるというふうに理解していいんですか。 ● 今御指摘のとおり,新聞報道等でもいろいろ大きく取り上げられておりますけれども,やはり住民の方々には現状の更生保護施設でも受け入れていただくのが難しい状況です。そういう状況で,先ほど申し上げましたような従来の保護観察では対処が難しい人を受け入れるのかとか,あるいは個別の事情で申し上げれば,小学校の近くだとか,そういう施設が必要なのは分かるけれども,なぜうちのすぐ近所なんだとか,いろいろな反対の理由を出してこられている現状でございます。自立更生促進センターは,社会内の施設ということですので,やはり地域に御理解いただかないと,作ったとしてもその円滑な運営が難しいというところで,非常に苦慮しているところではございます。 ● この自立更生促進センターでの生活のイメージなんですけれども,例えば就労支援ということですから,どこかへ働きに行くというようなことを恐らく考えられているんだと思うのですが,例えば夜は外出を禁止するとかそういうような話なんでしょうか。先ほど身柄拘束そのものが目的ではないとおっしゃいましたけれども,そのあたりの対象者の自由の制限というのはどういうイメージでとらえていらっしゃるのでしょうか。 ● まだ詳細なところまでは詰め切ってはいないのですけれども,やはり社会の中へ出てきたとはいっても,集中的な処遇を必要とするような人たちを対象としますので,やはり厳しい門限とか,あるいは外出の際の制約とかというところはある程度考えざるを得ないと考えております。また,夜間につきましてもプログラム的な形での働き掛けをするということを考えております。 ● 質問になってしまいますけれども,この自立更生促進センターというのは20名の定員ということだとしますと,スタッフはこれに対してどのくらいを考えているのでしょうか。人員的には何か新たに手当てをされるのでしょうか。 ● 保護観察官を4名程度置くことを考えておりますが,いろいろな人員配置の問題や予算の増員の問題もありますので,今,その点については定かに申し上げることはできません。ただ,24時間体制ということであれば,相当数の保護観察官のほか,援助いただくスタッフや保護司の方にも御協力いただく必要がありますし,外部のいわゆる警備の関係の人たちも必要ですので,ある程度の人数が必要かと考えております。 ● 例えば24時間体制ということになりますと,保護観察官がどなたか泊まり込むという形になるのでしょうか。 ● はい。そういう形になると思います。いわゆる宿日直体制をローテーションで組むことになると思われます。 ● 中間施設における処遇につきましては,どういう人をその対象として考えるかという問題が前提としてあるのだろうと思います。この点,どんな受刑者であっても,刑務所から社会に出て行くときに段階を踏んだ方がいいことは間違いないわけですから,そういう意味では,すべての受刑者を対象とする中間施設を設けるという考え方もあろうかと思います。   ただ,これに関しましては,先ほど御説明がありましたように,刑務所の中で段階的に開放的な処遇を進めるとともに,外出・外泊,外部通勤等の制度もできたわけですから,それによってかなりの部分は賄えるだろうという気がします。そうであれば,すべての受刑者を対象とした中間施設というのは,もちろんあればそれにこしたことはないですが,その実現可能性という問題もありますので,差し当たりは現在の制度をより積極的に運用することにより対処していくということでよいのではないかと思います。   これとは異なり,中間施設を設けるもう一つの意味として,自立更生促進センターが正に想定しているような,これまでは満期でしか外に出せなかった人を,新たな施設を作ることによって仮釈放できるようにするということがあると思います。そして,この意味での中間施設の必要性という点から考えると,自立更生促進センターが,正に今動き出しているわけで,この観点からも,現在の制度によって対応が可能ということになろうかと思います。   したがって,いずれの点から見ても,中間施設とういうのはあった方がよいことは間違いないのですが,その狙いとしているところは,現行の制度でも十分対応できるのではないかというのが私の今のところの印象です。 ● 中間施設を設けて,受刑者を同所に収容して円滑な社会復帰に向けた処遇を行うという理念自体は,私はこれは基本的に賛成だし,拡大すべきだと考えます。   ただ,先ほど御説明のあった,長期の受刑者を対象とするいわゆる現行の中間処遇制度が,昭和54年にできて,それが年間70人ないし80人程度というのはやはり小規模過ぎるし,その対象が無期刑と執行すべき刑期が8年以上の仮釈放者に限られていることについても,なぜそのように限られているのかという疑問を持っています。中間処遇は全受刑者に必要であるとの見方が可能なので,その対象をもっと拡大していいのではないかというふうに考えます。   そこで何が問題になるかというと,その中間処遇制度は更生保護施設を拠点にしているわけですけれども,従来の更生保護施設というのは経営難に悩んでいて,全部民間施設であり,そこで処遇することが困難な人はできるだけ引き受けたくないという認識がありますので,なかなかそういう人は引き受けてくれないということもあるし,また引き取っても非常に問題が多いということもあって,なかなかその対象が拡大しないところが問題点だと思うんです。そういう点で,更生保護施設というのは極めて重要な最後の犯罪者の処遇基地ですので,もっとてこ入れしていいというふうに考えます。 また,今回のこの自立更生促進センターというのは,もう一つその先を行こうとしているもので,これまでのいろいろな問題点を一挙に解決するとまでは言いませんけれども,解決への一つの突破口になろうとしているものなので,大きな期待をかけるべきであるし,大げさに言えば,これが我が国の犯罪者処遇のいろいろな問題点を解決できる一つの重要な起点になるのではないかと思います。ですから,大いにこの自立更生促進センターの制度については活用される方向で促進すべきだというふうに考えています。 ● 資料では,中間施設の定義として,刑事施設以外の施設というのが念頭に置かれていて,そこで,その具体化として自立更生促進センターの活用などが考えられているのですが,これは大変その対象者にとっては手厚くケアが行き届いたものだと思うのですが,やはり先ほども御指摘のあった実現可能性というところでは,実施主体において,非常に大きな難しい問題を初めから抱え込む構造なのかなという気がいたします。   中間施設あるいは中間処遇というときには,もう少し刑事施設に足場がある中間処遇というのもあるわけでして,その最大の難点はやはり身柄の確保といいますか,外に出したときの規律違反がないか,規律違反があった場合にその者をどのように探し出して確保するかということなんだろうと思いますけれども,その点がソフトな形で実現できるのであれば,前に御報告したと思いますけれども,諸外国で行っているように,まずその刑事施設の中でしっかりした基盤を持ちながら,徐々に外出しをしていくという方向ももう少し考えられてもいいのかなと思います。日本で行われているのは,もっと先を行っている理想的なものですが,その手前があってもいいのではないかなという意見でございます。 ● 私も,外部通勤制度,外泊・外出といったものを積極的に運用していって,それを更に進める形で,施設内において更に外へ出て行っていろいろなことができるような形にすると。その先にあるのが恐らく自立更生促進センターではないかという意味では,私もそうあるべきだと思っています。   ただ,問題は刑務所そのものの施設,こういう施設そのものが非常に郊外にあるというのが結構多いんですね。福島のように福島市内にあるような形であれば非常にこういうのも受け入れやすいし,施設内に作ることも可能だしということがあると思うのですが,そこら辺が大きな難点ではないかなというような感じを持っています。刑務所もできるだけ交通の便のいいところに行けば,そういうことが可能になるのかなというふうに思っております。 ● 今日の検討事項の全体は社会内処遇,中間処遇としてまとめられているわけですけれども,今議論の対象になっている(1)は,やはり中間施設というところに特徴があるのではないかと思います。現在でも外出・外泊等の中間的処遇をやっているという御説明を伺いましたけれども,それはそれで大いに発展していくことが望ましいと思います。しかしここではそれと別個に,外へ出すということを本質的な要素として中間施設を設けることがどうかという議論をする必要があると思います。   その一つの適切な例として,福島の自立更生促進センターのお話を伺いまして,私はこういう施設を作るのは土地の問題とかいろいろ大変だろうという気がしていたのですけれども,保護観察所に併設という,そういう知恵もあったのかなという思いです。これは新しい建物がつくられたわけなのでしょうか,それとも,保護観察所を改築されたわけですか。 ● 福島では,検察庁とか保護観察所が建っている同じ敷地内に別棟で,保護観察所に付設する建物という形で建設することにしております。   そのほか,京都と福岡につきましては,福岡は同じ保護観察所の建物の中,それから京都は今の福島と同じように保護観察所と同じ敷地内に建てるということを想定しています。 ● この種の施設は半ば必然的に小規模なものになると思いますので,そういう意味ではいろいろな工夫の仕方があるのかもしれませんが,しかし,いずれにしても予算も人手も必要な話です。これまで外国の御説明をいろいろ伺いましたが,そういうときによく取り上げられたのは,拘禁状態だとどれくらいの経費がかかるがこの種のハーフウェイハウスに移せばどうなるという御議論だったのですが,日本ではその辺のコストの問題はどうなんでしょうか,福島の御経験では。 ● ちょっとコストの問題というところまで計算した資料等々を,今の段階で持ち合わせておりませんので,申し訳ありません。 ● 確かにお金はかかる問題なんだろうと思いますけれども,やはり刑務所の中に入れたままでできる中間処遇と,外に出してできる中間処遇というのは質的に違うものもあると思うんです。この福島の自立更生促進センターにおける処遇としても,薬物依存等の問題性に応じた処遇というのがあると思うんですけれども,そういう処遇をする場合に,刑務所の中では誘惑がないわけです。およそ薬とは縁が切れているわけですけれども,一応外に出ているという形で,誘惑のあるところで処遇を受けるというのはそれなりに意味があると思いますので,特に薬物の自己使用を繰り返しているような受刑者にとっては,非常に中間施設というのは意味のあるものなのではないかなという気がいたします。 ● どうもありがとうございました。   刑事施設以外の施設での中間処遇の必要性については,皆様方,必要だという認識で一致していると思うのですが,いざマンパワーや施設などのコストの点を考えると難しい問題があるという点でも共通の認識が得られたのではないかと思います。 ● 今できるとするならば,やはり国民の理解が得られるような形のピーアールが必要ではないかと思うんです。一般的に国民の人たちは刑務所の中でどんな処遇がされているかということが全く分からない。塀の中にいる人は危険な人物だという発想で物を見ているという部分がかなりあるのではないかと思うんです。実はそうではなくて,いろいろな事情の中で犯罪を犯してしまったという人がいて,実は自分たちと余り変わらないんだということを広くアピールするようなやり方を,我々もそうですけれども,いろいろな役所の方でそれをピーアールしていかないことには,どうしてもその懸念は払拭できない。そうすると,今の福岡と京都のようなことが起こってくるということがあるので,それを是非やることによって一歩でもこういうセンターは増やしていくということをやっていただきたいというふうに思っております。 ● 「更生保護のあり方を考える有識者会議」でも御提言いただいているところでありますし,地域の方々にもうまくいっている施設,例えば,更生保護施設の例でございますけれども,建設あるいは増築等々で地域の人たちの反対運動が起こったときには,その反対している方たちにうまくいっているところをバスを連ねて見に行っていただくとか,周辺の方にいろいろアピールするとか,あるいはマスコミ等々にも協力をいただくような形で広報に努めてきたところであり,これからもそのような努力をしていきたいとは思っていますが,往々にしてマイナス,反対の方の動きというのですか,そちらの報道の方が先行して,なかなか難しいところがあるのも事実かと思います。 ● ほかにいかがでしょうか。   御意見がございませんようでしたら,資料の2(1)についての議論はこの程度として,次に移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。   では,そのようにさせていただきます。   それでは,次は,2つ目のブロックとして資料の2の(2)から(5)までの各制度について一括して御議論いただきたいと存じます。   まず,事務当局の方から,各制度の概要と検討事項につきまして御説明をお願いいたします。 ● 資料の2の(2)から(5)についてでありますが,一巡目の議論や外国法制の御報告などを踏まえ,施設内処遇の後,仮釈放その他の枠組みにより,一定期間の保護観察を行うことを可能とする制度として考えられるものといたしまして,(2)の「必要的仮釈放制度の導入」,(3)の「仮釈放の期間についてのいわゆる考試期間主義の採用」,(4)の「いわゆる分割刑制度の導入」,(5)の「刑の一部の執行猶予制度の導入」を挙げたところでございます。   まず,刑事政策等に関する文献などで,これまでもその採否が議論されることがありました(2)の「必要的仮釈放制度の導入」についてであります。   この制度は,資料の枠囲みの中にも記載しましたように,刑期の一定割合を経過すれば必ず仮釈放の処分をし,その仮釈放の期間,保護観察に付すという制度でございます。 この制度については,仮釈放制度の趣旨との整合性,すなわち,個別の受刑者について「改悛の状」が認められる場合に限り仮釈放を許すものとしている現行制度と大きく異なり,一定の時期が来れば一般的に釈放することとする必要的仮釈放の制度を導入することの当否について検討を要すると考えられます。 特に,この制度では,改善更生の意欲がなく,釈放されれば直ちに再犯を犯すおそれが大きいような受刑者についても,一定の時期が来れば必ず仮釈放を認めることになることから,それが相当かどうかという点についても検討を要するものと考えられます。   そのほか,資料に記載しておりますように,現行法下において仮釈放を積極的に運用すれば,必要的仮釈放制度を導入したのと同じ目的を達することが可能ではないか,そうであれば,あえて必要的仮釈放制度を導入する必要性があるのかという点や,刑期が満了しないのに必ず釈放するのは裁判の内容を実質的に変更するのと同じであり,これを予想して裁判所が現在より刑の量定を重くすることにつながるおそれがあるのではないかなどの点についても検討を要すると考えられます。   次に,やはり刑事政策の文献等において,仮釈放制度について述べられる際に紹介されることが少なくなかった(3)の「仮釈放の期間についてのいわゆる考試期間主義の採用」についてでありますが,この制度は,資料の枠囲みの中にも記載しましたように,仮釈放の期間を,残刑期間ではなく,再犯の危険性を基準として定め,その間保護観察に付すという制度でございます。   この制度の導入につきましては,裁判所が言い渡した刑期を超えて仮釈放の期間を定め,その間対象者の自由を制限することが可能となると,犯した罪の責任の範囲を超えて対象者の自由が制限されることとなり,責任主義に反するのではないかという点や,これに関係する問題ではありますが,仮釈放の期間をどのような機関が,どの時点で,どのような手続で決めるのかという点について検討を要すると考えられます。   次は,(4)の「いわゆる分割刑制度の導入」ですが,これは,一巡目の議論において,複数の委員の方から積極的な御意見があったものでございます。なお,これは,米国で,split sentencesと呼ばれている制度を念頭に挙げたものでございますが,その概念は必ずしも一義的なものではないようでございまして,(5)の「刑の一部の執行猶予」に相当するものをsplit sentencesと呼ぶ州もあるようでございます。   そこで,次の(5)と区別するために,(4)で御議論の対象としていただきたい制度は,資料の枠囲みの中に書いておりますように,判決において,一定期間の懲役刑又は禁錮刑とその後の一定期間の保護観察の両方を言い渡すことを可能とするという制度を考えております。   この制度の導入については,この制度における保護観察を法的にどのように位置付けるのか,すなわち,この場合,保護観察は懲役・禁錮の執行猶予に付随するものではなく,独立して課されるものでありますことから,その法的性格をどのように考えるのか,例えば,保護観察自体を刑罰の一形態として考えるのかなどの点について検討を要するものと思われます。   また,分割刑を言い渡す対象者としてどのような者を想定し,どのような場合にその言渡しを可能とするのかという点や,保護観察期間中に義務違反などがあった場合に,どのような措置をとることが考えられるのかという点についても検討を要すると思われます。   そして,(5)の「刑の一部の執行猶予制度の導入」は,当部会で委員の方からフランスの制度として御報告があったほか,先ほど述べましたように,米国でもsplit sentencesとして採用している例があることなどを踏まえたものでございます。この制度では,判決において,懲役刑又は禁錮刑を言い渡すと同時に,その刑の一部の執行を猶予して保護観察に付すことを言い渡すことにより,一定期間の懲役刑又は禁錮刑を執行した後に,残刑の執行を猶予して保護観察に付すことを可能とするという制度でございます。   なお,この制度は,実質的には,懲役刑・禁錮刑を分割し,一定期間の懲役刑又は禁錮刑の実刑とその後の執行猶予付きの懲役刑又は禁錮刑を同時に言い渡すことを可能とする制度と同様ですので,その意味で(4)として御説明した分割刑制度と共通する側面も少なくないと考えております。   この制度の導入については,刑の一部の執行猶予を言い渡す対象者としてどのような者を想定し,どのような場合にその言渡しを可能とするのかという点について検討を要すると思われます。 また,この制度を導入した場合に,仮釈放制度との関係をどのように考えるのかという点も検討を要すると思われます。   以上でございます。 ● ただ今の事務当局の御説明につきまして,何か御質問はございませんでしょうか。 ● (5)については仮釈放制度との関係を検討する必要があるというのはおっしゃるとおりだと思いますが,(4)についても同じ事情はないのでしょうか。 ● 御指摘のとおりであり,(4)についても同じように仮釈放制度との関係を検討する必要があると思われます。 ● ほかにいかがでしょうか。   これらの点につきましては,御議論の中で疑問が生じた場合に,御質問いただけたらと思います。   それでは,議論に入っていきたいと思いますがよろしいでしょうか。 では,そのようにさせていただきます。   ただ今の事務当局の御説明等を踏まえまして皆様に御議論をいただきたいと存じます。御意見のございます方はよろしくお願いいたします。いろいろ問題点が挙げられておりますが,どうぞ活発な御議論をお願いしたいと思います。 ● (3)の「仮釈放の期間についてのいわゆる考試期間主義の採用」について,本来の残刑というものを超えて保護観察をするという不利益を課すということになった場合には,責任主義との関係で問題があると思うのですが,現実の問題として,私は考試期間主義を無期懲役者の仮釈放に適用できないだろうかと。これは無期ですから永遠に続くわけなんです。ただ,中には無期懲役者であってもそれなりにきちんと考試期間の中で,それなりに社会生活ができるような場合について,残りの部分を考試期間の形でもって判断をするというやり方で行うことが可能かどうかということなんです。要するに,無期刑の仮釈放者について考試期間を採用し得るような受刑者がいるのかいないのかというのはよく分からないんですけれども,恐らくいるのではないかというふうに思うんですけれども。 ● 今のは御質問ということでしょうか。 ● 考試期間主義ということが出てきたので,そういうことが考えられないのかなということです。ちょっと趣旨がずれてしまうかもしれないんですけども,この部会の議論とは。 ● 過剰収容の問題とも関連しますので,ただ今の御質問につきまして,事務当局の方で御説明が可能でございましたら,お願いしたいと思います。 ● 無期の仮釈放者についての考試期間主義というのは,ちょっとイメージがわかないのですが。 ● 無期懲役については,言わば無期ですから,保護観察はずっと続くわけですよね。ですから,無期懲役刑を受けている人の仮釈放については,残刑期間主義ではなくて考試期間主義というものの採用が考えられるのかどうかということなんです。ちょっと現行制度を変えることになりますからね。 ● 現在も,ちょっと制度は違いますけれども,刑の執行の免除という形で,成績が良ければ打ち切ったり,少年の時であれば10年という形の,無期でも保護観察期間を一定の条件の下に打ち切る制度としてはあるわけですけれども,ちょっとそれぐらいですかね,今お答えできるというところは。 ● 今,委員がおっしゃった制度には,どういうメリットがあるのでしょうか。 ● 無期の仮釈放者がいつまでも監視をされた形でいくというのが果たしていいのかどうか。場合によっては,自立できているのに更にそれに保護観察に付する必要があるのかということでの議論ですので,この部会で議論されている「適正化」という意味とはちょっとずれるかもしれないですが,そういうことが考えられないかどうかということなんです。 ● 生涯保護観察が続くことの方が大きな問題点を残しているように思いますので,それを改める必要があるのであれば,考試期間主義に切り替えるというよりは,無期刑の者に対する保護観察自体を一定期間で打ち切るという方がいいのではないかというふうに思いますけれども。 ● 委員がおっしゃった,無期刑の仮釈放について考試期間主義を導入すべきであるという御意見の趣旨としては,有期刑の仮釈放者については現行どおり残刑期間主義とするが,無期刑の仮釈放者については考試期間主義を採用すべきであるというものでございますか。 ● はい。そうですね。 ● 有期刑の仮釈放者と無期刑の仮釈放者とで仮釈放期間の考え方が全く異なることとなるのですが,そのような区別を設けることについてはどのような御説明をなさることになるのでしょうか。 ● そこは,残刑期間主義を採っている現行法からするとかなり不整合なんですけれども,そこを修正をするという形のものがあってもいいのではないかなというふうに思っただけです。 ● お話を伺っておりますと,無期刑の仮釈放者が保護観察によって生涯監視されるという点を問題とされているように思われますが,それは仮釈放の状態そのものをなくしてしまえばいいという,そういう御趣旨ですか。 ● そうです。 ● 仮釈放制度についての議論に際し,残刑期間という観念にこだわることが不適当な場合があるということは前から指摘されているわけですが,通常これは保護観察の期間を確保するのに足りないということ,短か過ぎるという方向で議論されていて,現にここの検討事項もそういう趣旨で書かれているわけです。これに対して,○○委員からは「保護観察の期間が長過ぎる」という逆の方向の御批判があって,なるほどと思いますけれども,委員としては何年ぐらいが適当だとお考えなのでしょうか。 ● これは現実に保護観察をやられている方の御意見の方がいいのではないのかなという感じで,私たちは単なる感覚なので,それは恐らくどのくらい施設内で処遇を受けてきたのかということとも関連してきて,一概に何年と言い難い部分があるのではないかなというふうに思います。長期であればあるほど保護観察期間というのは長く必要なのかもしれないというふうに思います。 ● 無期刑受刑者の仮釈放については,それ自体に対して批判的な意見もあるわけですね。ですから,その辺の折り合いを付けるためには,どの程度の期間がどうしても必要かということについて,何らかの目途は要求されるのではないかと思いますけれども。 ● この第2ブロックの議論というのは,そもそも仮釈放されず満期で釈放される人が半数近くを占めているのでそれをどうしたらよいのかという問題意識と,仮釈放されても保護観察期間が短か過ぎるのでどうしたらよいのかという問題意識の双方を背景とするものだと思います。そういう観点から見ますと,(2)の必要的仮釈放制度については,その内容自体について様々な批判がありますが,そのこととは別に,この制度では,今申し上げた第2の問題には必ずしも対処できませんので,その点で,ここでの検討課題の解決策としては不十分といいますか,そぐわない制度だという感じがします。ですから,両方の問題を解決し得るという意味では(3)から(5)を検討した方がよいのではないかと思います。 ● 私も,必要的仮釈放制度は刑期の一定割合の経過で必ず仮釈放の処分をする制度ですので,もともとの刑期が短ければ仮釈放になっても保護観察の期間は短くなるという問題が出てきますし,やはり施設内処遇と社会内処遇のより適切な連携を実現するには,ある程度個別の事情を考慮して,どのくらいのソフトランディングのための期間が必要かということを考えなければいけないところがあるのではないかという気がいたします。そうすると,必要的仮釈放制度のように,一律的な扱いということではなかなかそこのニーズは酌めないのかなという感じがいたします。 ● 今の委員の御発言に関連して,あくまで参考までに紹介させていただきたいと思いますが,皆様御承知のとおり,改正刑法草案の議論の過程で,この必要的仮釈放という制度が検討されております。当時検討されていたのは,刑期の6分の5を経過した段階で仮釈放にするというようなものなどが検討されたようでございます。   仮にそのような制度を導入した場合ということでございますが,矯正統計年報によりますと,平成18年の懲役新受刑者は3万2,769人いるわけですが,その刑期を見ますと,2年以下の者が1万8,977人であり,約58パーセントとなりますから,刑期の6分の5を経過したところで必要的に仮釈放するとしますと,新受刑者全体の約6割の者が長くとも4か月間の仮釈放の期間しか確保できないこととなってしまうということになります。そういう意味からすると,先ほど委員がおっしゃられましたように,それが社会内処遇の期間として十分かどうか,そういった観点からの検討も必要になってくるのではなかろうかと考えております。 ● ありがとうございました。   ただ今の参考の御指摘を踏まえて,ほかに御意見がございましたらお願いいたします。 ● 日弁連では,かつて拘禁2法案という法律が出てきた段階で,刑事処遇法案という日弁連独自の案の中では必要的仮釈放制度,それは特に善時制というものを導入したらどうかという,細かな善時制の中身についてはかなり技術的なことにわたりますのでそこは省略させていただきますけれども,先ほどのお話では規律秩序をかなり守らない,それを反復するというのが非常に多かったということが言われておりましたので,その善行を保持するというよりも,むしろそういう違反のない人たちについて,例えば1年間それなりの違反がない場合については何日間という形のもので少し早めに出してやるという形のものがあってもいいのかなというようなことの提案はしております。 ● 資料の2の(3)から(5)は,先ほど御説明がありましたが,基本的には同じような内容を考えていて,それをどう法律的に構成するかという違いではないかという感じがしております。まず,(3)については,検討事項として責任主義との整合性ということが挙げられていますけれども,以前から指摘されていますように,考試期間主義というのは,要するに,刑の一部の執行猶予を事後的に行う制度と構成できるものですから,その意味で責任主義と整合する説明は可能であると思います。ただ,この制度については,検討事項として記載されていますように,仮釈放期間を定める機関やその決定手続等の関係の問題があります。ドイツやフランスのように裁判所が刑の執行に直接に関与するような制度であれば,自由刑の事後的な執行猶予という制度も採用しやすいのですけれども,現在の日本の制度はそうはなっておりませんので,現在のままで,例えば地方更生保護委員会のような行政機関がそれを決定するという仕組みにした場合には,執行猶予の法的性格にもかかわりますが,行政機関による刑の変更ということになりますと,それが制度として成り立つのかという問題が出てきます。そういう点でいうと(4)や(5)の方が制度としては採用しやすいだろうと思います。   その上で,(4)については,検討事項にありますように,懲役刑・禁錮刑の後に付ける保護観察の法的性格という問題があります。保護観察の法的性格についてはこれまで余り詰めた議論がなされていないのですが,現行制度における保護観察についていうと,恐らく,例えば執行猶予に付される保護観察と仮釈放中の保護観察とでは,その法的性格が違うという理解がなされているように思います。つまり,仮釈放中の保護観察というのは,刑の執行形態の一つであるのに対し,執行猶予に保護観察を付す場合というのは,刑の執行は猶予されているわけですから,刑の執行の一形態というよりは,付随処分という言い方がなされますけれども,言わば一種の刑罰に近いものとしてとらえられていると思われます。そうしますと,それらを更に進めて,(4)の制度のように,懲役刑・禁錮刑の後に保護観察を独立した処分として付すということは,それ自体としては制度としては十分考えられるだろうと思います。   ただ,(4)の場合,これも検討事項の最後にありますように,保護観察における義務違反があった場合にどうするかという問題が出てきますので,その点まで考えると,一番説明しやすく,採用しやすいのは,(5)かなというのが今のところの私の考えです。 ● まず,質問になりますが,(4)にしても(5)にしても,資料の1の「新たな制度導入に当たって考えられる視点」である「犯罪者の再犯防止及び社会復帰を一層促進する」という観点から,一部実刑に服してもらって,その後に執行猶予にするということが再犯防止あるいは社会復帰との観点ではどういうメリットがあるというふうに考えられるのでしょうか。アメリカの制度は以前事務当局から配布していただいた資料によると,刑期の一部を先に経験することによって,刑務所生活での試練を体験して,それが再犯防止あるいは更生に資すると,こういう仕組みだろうと思うんですけれども,そうだとすると,そこで想定されているのはどれぐらいの長さの刑罰を想定しているのだろうかという感じが個人的にはしております。つまりショックプロベーションと言われているようですけれども,実刑に処す刑期は極めて短いものを想定しているのではないでしょうか。もっと長期のケース,例えば,2年刑務所に服した後で,プラスアルファとして残り1年を執行猶予にするということになると,「犯罪者の再犯防止及び社会復帰を一層促進する」という観点から,どういう意味を有することになるのか,私としては,根本的に分からない感じがしています。   それが結局,保護観察の期間を長くすることに目的があるんだとすると,それを裁判所の判決の段階でやるのが適当なのか,あるいは現在の仕組みのように刑務所に入った後の行状を見ながら決めるのが適当なのかという,最終的にはそこの問題のような感じもするのですが,この点について御意見をお聞きしたいと思います。 ● 例えば,実刑にすべき刑期をどうするか,あるいは執行を猶予して保護観察に付す期間をどうするか,その辺りは様々な在り方が考えられると思いますので,仮に,(4)や(5)のような制度を導入するのが適当だということであれば,更にその具体的在り方を検討していく必要があるのではなかろうかと思っております。   また,ここに掲げております(4)の分割刑や,あるいは(5)の刑の一部の執行猶予の導入によって,資料の1の視点との関係で,どういうことが効果として期待できるのかという点ですが,そのような制度を導入することによって,犯罪者に対して個別の事案ごとの必要性に応じて,かつ,これは当然犯した罪に対する行為責任の範囲内においてということになろうかと思いますけれども,まずは刑事施設に収容して施設内処遇を行い,その上で,十分な社会内処遇を行うことが可能になるだろうと考えております。そうすることによりまして,施設内及び社会内の各処遇を適切に連携させて,犯罪者の再犯防止,あるいは社会復帰を一層促進することができるというような効果があるのではなかろうかと考えております。そういうことを考えまして,資料の1としてお示しした視点から見て御議論いただくのが適当であると考えられる制度の一例として(4)や(5)の制度を挙げさせていただいたというところであります。 ● 今の御説明に補足ですが,ここでは(4)と(5)の制度の結果としての類似性ということで一緒に議論してはどうかというお話もあったのですが,少なくとも,フランスで導入されている刑の一部の執行猶予制度では,先ほど指摘のあったショックプロベーションのような考えは余りとられていないようです。対象罪名の多くはフランスでいうところの軽罪ですから軽いものですけれども,薬物の自己使用のようなものがかなり多く適用対象の罪名として選ばれているようでして,短期自由刑の弊害を避けるという観点から始まったようです。ですから,一定の拘禁刑の執行の後,できるだけ社会内に置いておいて,まさに薬物の禁絶処分のようなものを受けさせるというもののようです。そのために保護観察も付しますけれども,そういうことによって当人の刑の個別化を実現するという観点からのもののようです。刑務所に入ってその威嚇効果を体験してもらってということは余り言われていないようですから,それは制度の組み方なのですが,分割刑といいますとやはり刑の執行が先に出ているイメージがありますが,刑の一部の執行猶予の方ではちょっと違った発想のようだということを申し添えます。 ● この(4),(5)の制度については,どのような対象者を考えるのかによって制度の在り方がかなり違うということが鮮明になってくるのではないかと思います。一巡目のときの御議論に出てきたショックプロベーション,ショックインカーセレーション(shock incarceration)とも言いましたかね,そのようなものとして(4)や(5)の制度を考えますと,一つには今まで刑務所に入ったことのない者をその対象者とし,この者に対して比較的短期の収容処分を言い渡し,後は社会内処遇が想定できるでしょう。例としては,交通違反を何度も繰り返しているが,どうも実刑にはしにくかったというような対象者が考えられるのではないかと思います。   しかし,そうではなくて,むしろ社会内処遇としての保護観察に力を入れるのだということになれば,今のような対象者像からは全く離れて,何度も刑務所に入っているような受刑者が対象とされるでしょうが,この二つの制度の在り方はかなり違っているので,ここで一括して採用するということはなかなか難しいようにも思われます。御議論の内容として,どちらに力点を置くかということも考えた方がいいのではないかという気がいたします。 ● ありがとうございました。   ただ今御指摘がありましたように,制度の在り方としてどこに力点を置くかという点も踏まえて御意見がございましたらお願いいたします。 ● 先ほど委員から,保護観察の期間を長くすることに新しい制度を設ける目的があるのだとするとすると,それを裁判所が判決の段階で判断するのと現在の仕組みのように刑務所に入った後の行状を見ながら行政庁が決めるのと、どちらが適当かということが問題であるという御発言がありましたが,そのお話は,新しい制度を作らなくても現行の仮釈放を積極的に運用することでいいのではないかというような趣旨にも聞こえました。確かに,仮釈放の積極化ということも一時言われたわけですけれども,実務の運用によって保護観察期間を相当程度長くするという目的を達成することは,なかなかやはり難しいことのように思います。今日御説明いただきました統計を見ても,刑法では刑期の3分の1で仮釈放が可能でありますが,現実には,平成18年では,刑の執行率が49パーセント以下はゼロで,59パーセントを切るものも約0.2パーセントですから,早期に仮釈放が認められているのは本当にわずかであるという現状です。例えば,3年の有期刑を言い渡されて,そのうち2年間刑を執行した後に仮釈放を認められるという者は,その刑の執行率は66パーセントということになりますから,この統計によれば,そのような例は現在ではほとんどないことになります。 しかし,新しい制度を導入すれば,恐らくそれが可能になるのではないかと思うんですね。そういう意味では,理論的には今の制度の下でも可能であっても,やはり新しい制度を作ることによって,現実に可能にするという意味はかなり大きいのではないかという気がしております。例えば,3年のうち1年間刑を執行して残り2年で仮釈放を認めるということも法律上はあり得るのですが,実際にこのような処遇を実現するためには,やはり新しい制度の下でないと恐らく不可能であろうという意味で,新しい制度を導入する意味は相当あるのではないかと思っております。   ついでに申し上げますと,(4)と(5)の選択については,私も先ほど他の委員がおっしゃったのと全く同じような感想を持っており,(5)の方が導入しやすいと思います。あと,余り重要な問題ではないですが,(4)の名称について,私のイメージでは,あるものを分割しているのではなくて,懲役刑・禁錮刑と保護観察とを併せているので,分割刑というよりも混合刑とか複合刑とか呼ぶ方が実態にぴったりくるのかなという気がいたします。むしろ,(5)の方が,懲役刑・禁錮刑を,実刑部分と執行猶予の部分とに分割しているので,分割刑という言い方に合うようなイメージです。 ● 私は,(5)は反対だと言ったつもりはありません。今の委員の御意見は,判決で刑の一部の執行猶予を言い渡せるようになれば,現状では仮釈放することが難しいという人についても,早期に社会内処遇に切り替えられるという御意見だと思います。そうすると,なぜ判決をするときに,本当は1年の実刑にして2年は保護観察でいいと考えているのに,3年の刑を言い渡すのかというところが,やはり問題があるような気がします。3年の刑を言い渡して,そのうち1年を実刑にしたら,あとに2年は保護観察が付くので大丈夫だという判断を宣告時にすることになるわけですが,仮釈放の段階では,現状困難だと言っているものを判決宣告の段階で判断できるというのはどういう場合なんだろうか,具体的にどういう被告人であればそういう判断ができるんだろうかということを考えますと,なかなか難しいように思います。   逆に,本来1年の実刑でいいと思っている人について,やはり保護観察で面倒見てもらわないとうまくいかないから,むしろ刑を重くする要因に働くのではないかなというのが私の率直な感覚です。   先ほど申し上げましたように,短い刑の人について,いわゆるショックプロベーションのようなものが必要かどうかという議論は,この議論とは全く別だと思っておりまして,少なくともショックプロベーションのようなものを考えることについて,私は消極的なことを言っているつもりはありません。どういう人を想定して議論をしているかというのを明確にしないと,なかなか議論がかみ合わないかなという感じがいたします。 ● また薬物の話になってしまうんですけれども,先ほど委員が(5)でフランスの場合に薬物の自己使用のケースが多いというふうに言われたんですが,この(5)というのは薬物の自己使用ということに限定して考えてもかなり効果的な使い方ができるのではないかなという気がするんです。   先ほどの話にもつながるのですけれども,薬物からの離脱というためには,やはり社会の中においても薬物から離脱しているということが必要であり,しかし何度も薬物を繰り返しているからこそ実刑になるわけで,一度はとにかく刑務所に入ってもらって,完全に薬物から切り離した上で,さらに,その後も社会の中で薬物の誘惑に勝って完全に離脱していくことが必要ではないかと思います。あくまでも執行の猶予なわけですから,刑務所で3年の実刑を受けたら終わりということではなく,また薬物の誘惑に負ければまた刑務所に戻るかもしれないということになるわけです。そういう意味で,責任としては3年分の責任はあるけれども,むしろ再犯を防止するために保護観察に付するということで,この(5)の制度は薬物の自己使用に使えるのではないかなという気がいたします。 ● 私も薬物に関して,この(5)の制度というのは非常に有意義な形で運用できるのではないかなというふうに考えています。先ほどいただいた資料28,統計資料7の4では覚せい剤取締法違反の平均仮釈放期間は5か月です。半年足らずぐらいだと,何となく「まあ,うまく切り抜ければいいや」という感じになるけれども,これが1年とか2年という形になった場合,恐らくかなり社会の誘惑の中で頑張らなくてはいけない。そこに保護観察というものがかんでいって,場合によっては尿検査なんかも義務付けながら,そこでもうやっては駄目だよということを徹底的に強制するということも必要なのかなという意味では,これは意味があるのかなというふうに思います。 ● ちょっと若干のイメージだけですけれども,例えば,現在だと,実刑3年の判決が言い渡されるような人に対して,実刑部分というか,実際に刑務所に入る分は1年にして,残りは執行猶予です,あるいは保護観察ですという形になると,やはり確かに委員がおっしゃるように,現在言い渡している実刑3年の判決は,行為責任との関係で,きちんと説明が付くのかという御疑問が生じるのはある程度もっともかなという感想を持ちました。   ただ,仮に制度を構想すると,現行の制度で,例えば,3年の実刑が行為責任に見合っているとしますと,刑務所に入る部分を多少減らして,ただその代わりに,ちょっとこれは非常に比喩的なものでそれが正しいかどうか分かりませんけれども,保護観察の期間なり執行猶予の期間なりを若干長くとれるようにすることによって,実刑部分と保護観察・執行猶予部分とを併せた総体としては,現行の例えば3年の実刑と行為責任の量としては変わらない刑になっているというような形をとることがあり得るのではないかと思っています。ショックプロベーションの話は別にしまして,もし整合的に考えるならそのような制度があり得るのではないかと思っております。 ● 私も,現行の制度のもとで3年間の実刑が必要な人が1年間刑務所に入り,2年間社会内で処遇されるようになるというようなことではないのだろうと思います。どの辺りが責任に見合った刑かというのは難しいんですけれども,刑の一部が執行猶予になるということをも見込んで,総体として責任に対応したところになっていくということなんだろうと思います。そういう意味では,責任主義に見合った刑であることをはっきり示すためには(4)の制度の方がすっきりしているのは確かですけれども,現行の制度の下で,刑罰に違反したから更に刑罰を新たに科すという仕組みに日本はなっていないので,そういう現行の制度を大きく変えるということをしないのであれば,(5)の方が受け入れやすいというようなことかと思います。 ● (5)の制度を採用する場合に,仮釈放は適用しないとの考えに立てば,裁判所がこの部分を実刑だと言われればそのとおり刑を執行するということになりますから,裁判所に一つの新しい権限を与えることになるかと思うのですが,その点はいかがですか。 ● (5)の制度を採用した場合,仮釈放の適用がないとすれば,裁判所が,刑の宣告の段階で,どの程度刑務所に入ってもらった後,保護観察をどの程度付けるのが適当かという判断をすることとなりますが,そのような判断を裁判所が的確にできるか,むしろそうした能力があるのかという問題のような気がします。確かに,薬物事件は分かりやすいような気もするのですが,例えば傷害ですとか,性犯罪ですとか,その手の犯罪について,一定期間たつと実刑としての責任が終わり,そこから保護観察に切り替えることが適当なんだという判断を宣告の段階で実際にできるのかどうか。そうした判断が難しいからこそ,現在の仮釈放もなかなか大胆な運用は難しいのであって,それを随分前の段階で予測してできるのではないかと言われると,それは難しいのではないかなという感じがいたします。 ● 今の御発言に関連して参考までに申し上げますと,事務当局の立場として,この(5)の制度をとった場合に,刑の一部の執行が猶予された事案については仮釈放を許さないというものにするかどうかという点については白紙でございまして,それは制度の在り方としては両様考えられるところではなかろうかと思っております。 ● 実刑部分と保護観察部分と併せて責任と見合うようにするというのが一つの考え方として示されていたと思いますけれども,もう一つの見方としては,実刑部分が責任と見合っていて,現在は,仮釈放という形で行政的に早く出すという制度があるわけですけれども,そこの部分を言わば司法的にあらかじめコントロールしてしまうというモデルがもう一つあるように思います。この二つは少し性格が違うのではないかと思うわけですが,両者ちょっと一緒に議論されているようなところがあるかなというふうに思いました。どちらでどう理解したらいいのかというのは,私も今はちょっとまだ意見を申し上げられる段階ではありません。 ● 今の議論の流れでいくと,保護観察の法的性格をきちんと検討しながら,この(4),(5)についての議論を煮詰めるべきであると考えています。なお,先ほど,裁判所の能力についての御発言がありましたが,その点は,いわゆる社会調査がどれほどできるのかということとの関連もあるかもしれませんけれども,私は,そのような調査ができなければ制度が導入できないというように考える必要はないと考えています。   また,今までの議論と少し違った観点から言いますと,やはり現行の犯罪者処遇の制度,日本の刑事政策自体の非常にジレンマと言っていいと思いますけれども,保護観察の必要性のある者が満期釈放になっている,つまり再犯の可能性の高い人を満期で出している点に問題点があると思うので,そのジレンマをどうするかを,刑事責任の範囲内という前提の下で新しい処遇形態の必要性というものを考えていくべきだというふうに思っています。 ● どうもありがとうございました。   非常に議論が盛り上がったところで打ち切るのは忍びないのですが,予定の時間がまいっておりますので,今日の議論はこの程度にさせていただきたいと思います。資料の2の(2)から(5)までの御議論はまだ終わっていませんので,次回に継続して御議論させていただきたいと存じます。   それでは,次回の日時・場所等について,事務当局の方から御確認をお願いします。 ● 次回は,3月28日金曜日に,法務省20階の第1会議室において,会議を行う予定でございます。 開始時刻につきましては,午後3時からでございます。 ● ただ今御案内がございましたように,次回は3月28日金曜日に,法務省20階の第1会議室において会議を行うことといたします。 開始時刻につきましては,午後3時からということになりますので,よろしくお願いいたします。   それでは,本日はこれで散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-