法制審議会民法成年年齢部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  平成20年6月3日(火) 自 午後1時30分                      至 午後4時23分 第2 場 所  法曹会館 高砂の間 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○鎌田部会長 それでは,予定した時刻がまいりましたので,法制審議会民法成年年齢部会の第4回会議を開催いたします。   まず,前回の部会後,期日間に高校生との意見交換会が実施されましたので,その実施状況等について事務当局から報告をさせたいと思います。 ○佐藤幹事 それでは,高校生との意見交換会について御報告させていただきます。先週の金曜日の5月30日に東京都立芝商業高校におきまして,同校の高校生と当部会の委員,幹事,関係官との意見交換会が行われました。同日午後3時30分から約1時間,委員,幹事,関係官合計10名に御参加いただきまして,委員,幹事,関係官は3,4名,高校生は5名を一組といたしまして,「大人とはどのようなものか」,「成年年齢が18歳になったらどうか」などにつきまして,意見交換を行いました。御参加いただきましたのは,Aグループが木幡委員,平田幹事と当職,Bグループが今田委員,五阿弥委員と始関委員,Cグループは仲委員,宮本委員,竹下関係官と神吉関係官でございました。この後に各グループの代表の方に結果と感想につきまして御報告をしていただきたいと考えておりますが,各グループごとに報告者を互選していただきました結果,Aグループは平田幹事,Bグループは今田委員,Cグループは仲委員がそれぞれ選出されたと伺っております。   そして,昨日,氷海委員が校長先生をしておられる千葉県立八千代高校におきまして意見交換会が行われました。同日午後3時40分から約1時間,委員,幹事,関係官合計7名に御参加いただきまして,委員,幹事,関係官は2,3名,高校生は5,6名を一組としまして意見交換を行いました。御参加いただきましたのは,Aグループが木幡委員と神吉関係官,Bグループが岡田委員,松尾関係官と当職,Cグループが宮本委員と脇村関係官でございます。意見交換会の結果,感想の報告者につきましては,Aグループは木幡委員,Bグループは岡田委員,Cグループは宮本委員がそれぞれ選出されたと伺っております。   以上が高校生との意見交換会についての御報告でございますが,今後実施することを予定しております早稲田大学におきます意見交換会について日程が決まりましたので,御報告いたします。鎌田部会長及び早稲田大学の専務理事であります内田勝一教授の御協力をいただきまして,7月3日木曜日午後3時から,留学生との意見交換会を,引き続きまして午後4時30分から日本人の学生との意見交換会を実施することが決まりました。この意見交換会に御参加いただくかどうかにつきましては,既に皆様から御希望を伺っておりますが,今からでも参加を希望される方がいらっしゃいましたら,事務当局まで御連絡いただきたく存じます。早稲田大学におきます意見交換会に御参加いただきます委員,幹事,関係官の方々には後日御案内をお送りさせていただきます。   以上,高校生等との意見交換会につきまして御報告させていただきました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   本日は,5月30日に実施されました芝商業高校における意見交換会に御参加いただいた委員,幹事の方々から,意見交換会の結果及び感想等の御報告をいただきたいと思います。各グループの代表者の方から5分ないし10分程度御報告をお願いいたします。   まず,Aグループを代表して平田幹事,お願いいたします。 ○平田幹事 それでは簡単に御報告したいと思います。Aグループは学生は5名で,全員17歳で3年生でした。男子2名,女子3名という構成で,進路については3名が大学進学,1名が専門学校進学,1名は就職をそれぞれ予定しているということでした。総じて5名に共通する正直な感想としては,まだ高校生なのに急に大人だと言われても困る,社会のことをもっと学んだ上でないと成人という自覚が生じないのではないかということでした。ただし,前もって,大分前から言われていれば,心の準備はできるのではないかと思うとのことでした。まだ早いと思うけれども,親から離れて何から何まで自分でやってみたいという気持ちもあるという意見もありました。   民法との絡みで御報告しますと,行為能力制限との関係では,本を売りに行くときや携帯電話の契約のときに親の同意が必要だと言われたことがある。アルバイトをして自分で稼いだお金で契約するのに親の同意は要らないのではないかと思うという意見もありました。   親権との関係では,おおむね皆さん親御さんとの関係は良好で,虐待等の話というのも身近な友人からは聞いたことがないということでした。   婚姻同意,結婚については,高校生で結婚というのは早いと思うとのことでした。親しい友人が結婚したら自分は戸惑ってしまうのではないかと思うという意見がありました。   消費者被害の関係では,自分だけで契約できるとなると,マルチ商法に巻き込んだりするなど同級生の中に友人を食い物にしてしまう人が出てしまうのではないかという危惧はあったりするかというふうに聞かせていただいたところ,これも共通する意見だったと思いますけれども,そういう人はいると思うし,いったんそうなったらだれにも止められない危険があるのではないかという不安を持っているという答えでした。成年年齢の引下げの議論というのは,この意見交換会が行われるまで実は知らなかった,言われてそういう議論がなされているんだと思ったと。普段から新聞を読むことはほとんどない,ネットニュースぐらいはちらちら見るけれどもというようなことでした。   全体的にかなり自分の頭で考えてしっかり誠実に正直に答えてくれたと思います。そういう意味で,現代の等身大の高校生というのがどういうふうに考えているかというのを学ばせていただくいい機会だったなと感じております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   では,続きまして,Bグループを代表して,今田委員,お願いいたします。 ○今田委員 私も同じような感想を持ちました。ただし,今若者がこうした問題に関してどのような意見を持っているのかというのを調べるとしたら,きちんとした枠組みで調査をやった上で分析をしなければいけないと思います。今回の意見交換は,限られたサンプルなので,余り一般化するということは危険だろうし,印象を素直に述べるということが今回の対応についてのスタンスなのかなというふうに思います。聞いた限りでは,今,平田幹事のおっしゃったとおり,高校生なのに各人しっかりした意見を持っていらして,自分の意見を適切にしゃべるという能力,ノウハウを持っているという点に一番驚きました。それはやはり高校がある程度選抜された高校であるのと,選ばれた生徒たちが私たちの前で対応してくださったのかもしれません。それを一般的な高校生像として考えるかどうかは,やはり少しエクスキューズしておかないといけないという点はあるにしても,非常に適切にいろんな意見を,1時間だったのですが,五阿弥委員と始関委員と私3人でいろんな角度から本音を引き出そうとして,柔らかい質問とか固い質問とかをいろいろしました。それに対して,自分達の言葉で適当にしゃべるのかなというふうに思っていたのですが,きちんとコミュニケーションを取って,我々が聞きたそうなことについてもきちんと理解をして押さえているという会話でした。そういう点で,「大人とは」何かという議論をしたのですが,高校生の方が大人かなと思うようなそういうしっかりしたもので,それは本当に驚きました。   本題である大人のイメージ,それから成年年齢の引下げについてですけれど,5人全員,この5人は2年生と3年生,男子と女子,進路も進学,就職といろんなバリエーションがある5人なんですけれども,そうした中でも異口同音に大人に対しては大変そうだ,将来に対して夢がない,何かしんどそうだ,自分は早くなりたいわけではない,できればなりたくないというような,大人に対する否定的なイメージがあるというのは共通しておりました。   これはいろいろ今後の解釈にもなるのだろうと思いますが,イメージの中で,夢が持てないというのがありましたが,身近のお父さんとかお母さんとか学校の先生に対しては,非常に好意的な感触を持っているんですね。親に対しても別に自分のことを抑えつけてこないし,結構コミュニケーションをしているようなんです。進路についてとか人生についてもきちんと話をしている。進路選択においても,担任の先生も進路についていろいろ相談に乗ってくれるし知恵や知識もあるし,頼りがいのある存在だという印象である。にもかかわらず,一般的な大人のイメージに対して非常に否定的で全員嫌だと,なりたくないと言う。大人に対して距離感があるけれども,身近な大人に対してはそうでもない。これは,仮説がいろいろと喚起されます。少なくとも高校生は,自分と大人の間に距離を置いていることだけは確かなのですが,Bグループの5人は,その距離を早く縮めようというタイプとゆっくり時間を掛けるというタイプの二つに分かれました。要するに,まだなりたくない。先ほどの全員なりたくないという,Aグループはそうだったようですけど,我々が対応したグループは二つに分かれたんです。大人になりたくない,まだまだ時間が必要だ,心の準備も必要だ,いろいろ必要だという方と,早く大人との距離を埋めたいという方が少数派になるのかもしれませんが,少なくとも男女の2人はいました。大人との距離はあるけれども,だからこそ,いろいろ経験して早くいろんなことを大人になるためのことを経験した方がいい,例えばアルバイトなどはそのために非常に役に立つだろうという肯定派があったということは,これはまた非常に面白い意見だと思います。要するに大人との間に距離もある,すぐなりたいわけでもない,けれども,直接的な大人への道に早く一歩踏み出した方がいいというのと,やはり時間は十分必要だというふうに分かれたというのが今回非常に面白かったです。特定のサンプルによることなので,これを一般化できるかどうかは分かりませんが。   もう一つの本題である契約とか親権に関しては,全員の印象として,余り重要な受け止め方をしていないと思いました。要するに契約なんかも20歳になってもだまされる人はいるし,18歳でも賢い人もいるとのことでした。 それから,親権に関しては,ものすごく誘導尋問ですが,18歳になったら親の同意なくして結婚もできるんだよという質問をしたのですが,今だって同じことで,18歳になったからって結婚できる自由がそんなに有り難いということはないし,今だって35歳になってもやはり親の同意が必要な場合もある。年齢に関係なく,結婚に関しては親の同意が必要でしょうという意見もありました。   そういうことで,親権に関しても契約に関しても,知識がまだ浅いというのもあるのでしょうし,そんなに困るというような反応ではありませんでした。もともとこのテーマに関して皆さんの関心はどうかと最初に聞いたのですが,それについては,余り関心がなく,今回のことで関心を持ってお友達なんかと話し合ってみたけれども,でも一般的にそれほど関心がなかったというのが印象でした。   以上が報告でありますが,何で大人のイメージがそんなに否定的なのかというのに関しては,これからは私の仮説なので,聞き捨ててくださっていいんですけど,大人のイメージで大人が否定的で,ださいとか暗いとかしんどいとか大変だというのは,具体的な大人がそうなのではなくて,おそらく彼らにとって大人になったら入っていかなければいけない社会のイメージが原因なのではないか。早く旅立ってこの社会の中で自分の場所を見つけたいというような,そういう夢が持てないような社会だということの表れなのではないかなというのが私の解釈です。具体的な大人ということに関しては,そんなに嫌なイメージを持っているわけではない。にもかかわらず,早く大人になりたくないとかいうのは,やはりこの社会が早く旅立って,この社会の中で夢を持って生きていきたいというような夢を持てないような状況が今の社会である,それを反映しているのではないかというのが私の解釈です。   五阿弥先生,いかがでしょうか。 ○五阿弥委員 私は18歳から一人暮らしをしていますが,あなたは一人暮らしがしたいですかと聞きました。高校生が5人いたのですが,1人ぐらいは親元から離れて一人暮らしをしたいというふうに答えるかと思ったら,全員一人暮らしは寂しい,親元に居続けたいとのことでした。聞いていまして,居心地がいいんですよね。やはりそれは豊かさという中だと思うんですけれども,その豊かさの中から出ていく,居心地のいい家,あるいは親との関係から出ていくということに対して非常にある不安感というものを持っているし,先ほど今田委員がおっしゃったように,大人の社会というのは大変だというイメージが非常に彼らの中には強い。しかし,では20歳を18歳に引き下げることに対して,全員が反対かというとそうでもなくて,5人のうち2人は今田委員もおっしゃいましたが,そういうことになったらそれはそれで対応できるでしょう。むしろ引き下げた方がより自分たちも自覚が持てるかもしれないと言っていました。   もう一点,私がなるほどと思ったのは,契約のことです。成年年齢が20歳から18歳に引き下がったとしたら,従来保護されていたものがなくなるけれどもどうかと,消費者被害みたいなものが広がる可能性はないだろうかと聞いたところ,余り変わらないのではないでしょうかと,たとえ18歳,19歳で親の同意がなくてそういうものは今現在では契約を取り消せますが,そういうものが取り消せないとしても,大人でもそういう被害に遭う人がいるし,そこは成年年齢を下げたからといって,被害が急に拡大するということはないのではないかというふうに結構冷静な目で見ていたのが印象的でした。私から付け加えるのはその二点です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,最後にCグループを代表して仲委員,お願いいたします。 ○仲委員 やはり私たちも5人の高校生に面接をしました。女子が3人,男子が2人で,3年生が3人で2年生が2人です。いろいろな質問をしたんですけれども,かいつまんで御紹介しますと,まず,大人のイメージはどんなものか,大人になると何がいいと思うか,何が嫌かということを聞きました。そうしますと,大人のイメージとしては責任が生じるとか,一人でやっていかなければならない責任感があるとかということで,大変そうとのことでした。大人になると何がよいかに対しては,好きなことができるとか自由がある,親から離れることができるという回答もありました。何が嫌かに対しては,これは大人のイメージと重なる部分が多いのですが,契約など取り返しがつかないというようなことが生じるかもしれないとか,責任が生じる,責任がどんどん重くなる,自由な分,危険があるのが嫌だという,そのような感じでした。大人になることのイメージというのは今田委員からのお話にもありましたように,何か嫌なことに近くて,余り大人にはなりたくないという意識があるのかなと思いました。   さらに,大人だなと思う先輩などをイメージしてみて,どういうところが大人だと思うかと聞きますと,また少し違う側面が出てきて,例えば後輩に優しいとか面倒見がよいとかいうことが出てくるんですね。こういうことから,いわゆる自立ということだけではなくて,後輩に優しいとか他者に指示が出せるというような,社会的な関係性の中で大人になるということをとらえている部分があるのかなと思いました。   さらにいろいろ自由に対してどんな許可が今は必要なのかとか,あるいは大人になると危険があると言っているけれども,今は守ってもらえるということなのかということなどを聞きました。次に,自立に関してはどうか,例えば将来の進路はどうかとか,一人暮らしはどうかとか,職業についてはどう考えているかということを尋ねたのですが,皆さん将来的な見通しはあって,就職するとか進学するとかいうふうに,結構はっきり見通しを持っておられるようでした。ただ,一人暮らしはどうかということについては,今五阿弥先生からあったように,一人暮らしをしようという人は0人で,みんな家にいたいということなんですね。将来のイメージははっきりしているんだけれども,一人立ちするというよりは家庭にいたいようでした。   どういう節目で大人になるのかということで出てきた回答は,就職するとき,それから就職して給料をもらえるときということでした。また,それだけではなくて,就職したというだけでなく,他者の迷惑にならないようにとか,仕事ができるようになったとき,あるいは後輩ができたときという,これもまた単にお給料とか就職という自立という側面だけではなくて,他者との関係,後輩ができるとか面倒を見るとか,そういうようなことが大人のイメージと重なっているのかなと思いました。   経済的なことに関しては,高校生といっても,バイト収入は比較的ありまして,月に多いときには8万円稼げるというお子さんもいました。しかし,このバイトでお金を稼ぐということは必ずしも半分自立するとか,自立とはつながっていないようでした。例えば,委員の1人がバイトをしていたら半分自立していることにならないかと尋ねたところ,いや,それはバイトだから違うんだという回答でした。就職と経済的自立は大人になることと関連はするけれども,学費を助けることやバイトは,大人のイメージとは重ならないようで,バイトでお金を稼いでも半分自立とはならないようなんですね。   そのほか,選挙権についても質問しました。選挙権についてはあるといい,もし投票することができるのであれば,必ず投票しに行くという人は5人のうち4人でした。また,結婚については,結婚したい年齢は22,23歳が1人,26,27歳が2人,30歳ぐらいまでにはという人が1人いました。   成年年齢の引下げについてはどう思うかということなんですが,5人とも反対で,やめた方がいい,反対である,賛成できないとのことでした。むしろ引き上げた方がいいのではないか,22,23歳ぐらいにしてもいいのではないかという意見もありました。さらに委員が尋ねて,15歳ぐらいのときに,18歳になったら成年だと言っておいたらどうか,準備する期間があったらどうかということを問いかけたのですが,そういう準備期間があっても18歳の時点でやっぱり同じだろうとのことでした。覚悟はできていても,自信がないということを言ったり,あと,オーストラリアでは例えば18歳で成人して,酒や運転が可能であり,大きな無礼講パーティなんかも開かれるというけれども,あなたたちはどうかと聞きますと,外国と日本では教育も考え方も違うので,そういうのは受け入れられないという意見もありました。   まとめますと,大人になることは責任が多くて,どちらかといえば嫌なイメージなのかなと。大人になることについて就職や給料ということは必要条件なんだけれども十分条件ではなくて,仕事が一人前にでき,後輩もでき,面倒見がよく,リーダーシップが持てるというようなことが高校生の回答によれば重要であるようです。バイトでお金を稼ぐとか一人暮らしするといった自立だけでは大人になれないと感じているようで,これはよく心理学の研究の中でも欧米とアジアの自己,自立観の違いということで話題になったりするのですけれども,欧米でどちらかというと,自己の自立ということがすごく重要であるのに対して,私たちの文化の中では,社会的な関係性の中で自己,自立が決まっていく部分があるのかなというふうに思いました。   成年年齢の引下げについては全員反対なのですが,この反対というのは経済的な自立とか,あるいは結婚については早過ぎる,18歳というと早過ぎるということと重なる部分があるのかもしれません。経済的な自立には不安や危険といった感じが伴っているが,選挙権については与えられれば行くという人が大半でしたので,こういう点についてはむしろ18歳からというのも受け入れられるのかなと感じました。   まとめると,投票権はあってもいいけれども,経済的には親の監護が必要で,結婚は余り関係ないという,そんな意見であったように思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   芝商業高校での意見交換に参加されました委員,幹事,関係官で,ほかに何か感想等ございましたら御自由に御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   ありがとうございました。なお,八千代高校における意見交換会の御報告につきましては,昨日意見交換会が実施されたばかりで御報告の準備等もあろうかと思いますので,次回の部会で御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。   それでは,本日予定していた議事に入ります。   まず,事務当局から配布されている資料の説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について御説明させていただきます。第4回会議のために配布させていただきました資料の目録は,本日席上に用意させていただきました。部会資料といたしましては,事前に送付させていただきました部会資料15-1から15-3,16と18がございまして,それに加え本日席上に配布させていただきました部会資料17がございます。参考資料といたしましては,事前に送付させていただきました参考資料13がございます。   まず,部会資料につきまして御説明いたします。   部会資料15は,「ヒアリングをさせていただきたい事項(雇用・労働編)」と題するものでございます。部会資料15-1が本日ヒアリングにお招きいたしました小杉礼子様に対する質問でございます。部会資料15-2が同じくヒアリングにお招きいたしました藤井孝司様に対する質問でございます。部会資料15-3が同じくヒアリングにお招きいたしました種岡成一様に対する質問でございます。ヒアリングさせていただく方に応じて質問事項を変えてございます。なお,部会資料15-1から15-3までは部会資料7の「ヒアリングをさせていただきたい事項(共通編)」とともにヒアリングをさせていただきます方々にあらかじめお渡ししてございます。続きまして部会資料16は,本日ヒアリングにお招きしました小杉様から頂だいいたしました「成年年齢の引き下げについて」と題する資料でございます。そして,本日席上に配布しました部会資料17,三枚ものでございますが,これは同じく本日ヒアリングにお招きしました藤井様から頂だいいたしました「成年年齢の引き下げについて」と題する資料でございます。部会資料18は,同じく本日ヒアリングにお招きしました種岡様から頂だいいたしました「労働組合に対するヒアリング」と題する資料でございます。部会資料16から18までにつきましては,参考人の先生方の発表の際に使われるものでございます。   続きまして,参考資料につきまして御説明いたします。事前に配布いたしました資料のうち後ろの方の四枚でございます。事前に配布させていただきました参考資料13は「消費生活年報2007」という,国民生活センターが発行しております年次報告書の抜粋でございます。前回の第3回部会におきまして国民生活センターの島野理事と河岡統括調査役をヒアリングにお招きして,消費生活相談の実情や成年年齢の引下げに関する御意見について御発表いただきました。その際,事務当局からお示ししたヒアリング事項が18歳から22歳までの若年者に関する消費生活相談というものでしたので,18歳から22歳までの相談件数等について御説明いただきましたが,前回の部会の議論の際に23歳より上の者の相談件数についても知りたいという御意見がございました。そこで,前回の部会終了後に島野理事,河岡統括調査役からいただきました資料が参考資料13でございます。   二枚目を御覧いただきたいと思います。参考資料13の二枚目に2006年度の消費生活相談件数を年代別,男女別,職業別にグラフにしたものが掲載されております。こちらの一番左の棒グラフを見ていただきたいのですが,コピーの関係上若干見づらくなってしまい大変恐縮ですが,一番左のところは上から契約当事者の年代が高い順に並んでおりまして,70歳以上の相談件数が全体の12.1パーセント,60歳代は11.0パーセント,50歳代は14.4パーセント,40歳代は14.9パーセント,30歳代は19.7パーセント,20歳代は15.3パーセント,20歳未満は3.7パーセント,分からないものが8.9パーセントあるということが記載されております。また,同じページの右側の本文に記載されておりますが,契約当事者が20歳代以下及び70歳以上のケースにつきましては,自ら相談窓口を利用するのではなく,その家族や知人など周囲の人が本人に代わって相談するケースが比較的多いということが紹介されております。   以上,配布させていただきました資料について御説明させていただきました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,本日予定しておりました雇用・労働関係のヒアリングに入りたいと思います。   本日は,独立行政法人労働政策研究・研修機構人材育成部門統括研究員の小杉礼子様,トヨタ自動車株式会社法務部東京グループ主査の藤井孝司様,東京電力労働組合中央執行委員長の種岡成一様をお招きいたしております。これから3名の方に民法の成年年齢の引下げに関する御意見をお述べいただきまして,その後に質疑応答をすることを予定しております。御意見をお述べいただきます順番は小杉参考人,藤井参考人,種岡参考人の順とし,3名の発表が終了しました後に質疑応答をすることとしたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,小杉参考人,よろしくお願いいたします。 ○小杉参考人 どうもありがとうございます。このような場にお招きいただきまして意見を言わせていただき,大変有り難く思います。   早速ですが,私が用意いたしました部会資料16を見ていただきたいと思います。   10代の若者たちの労働の状況について,全体的なことをまずお話しして,その上でいただきました質問に対する私なりの意見を申し上げたいと思います。お手元の資料で図表を中心にしばらくお話しさせていただきたいと思います。   10代の若者,18歳,19歳というところが今回のテーマでございますので,まず,年齢別にどのくらい実際彼らは働いているのかが1歳きざみで分かるのは国勢調査なのですが,これをもちまして労働力人口がどのくらいあるかというのを見ましたのが図表1です。労働力人口の比率としましては18歳になれば24.2パーセント,19歳になれば42.2パーセントが労働力人口です。つまり18歳,19歳というのはかなりの割合で既に労働市場に出ていることになります。人口にすると18歳で33万人,19歳で59万人が労働力人口です。ただ,その中でこの国勢調査では仕事をしているという中にも何通りかありまして,主に仕事をしているという人と,それから通学の傍らに仕事をしているという選択もあるわけです。これに完全失業者などを加えて労働力人口になるわけですが,図表1を見ていただきますと,主に仕事という人はどちらの年齢も労働力人口のうちの半分ぐらいです。通学の傍らに仕事というのは18歳は8.6パーセント,19歳は13.8パーセントとかなりの比率がある。先ほど,芝商業高校のお話でも皆アルバイトとおっしゃっていましたけれども,この彼らはまだ17歳,16歳でございますので,この中で上の方なんですが,この通学の傍らに仕事というところにひょっとしたら彼らは入っているかもしれません。ただ,この国勢調査というのは9月の末の1週間だけの労働状況でとっていますので,ひょっとしたら夏休みだけバイトしているという人たちが入っていないということを考えますと,この右側の黄色い真ん中に,仕事はしていなくて通学だけだという人たちの中にも,実はある一定時期,9月の1週間を除いては,実は労働者であるという人たちも結構含まれているかもしれません。つまり,ここにある労働市場に実は何らかの形で既に参加している18歳,19歳の人の数というのは少なくないのではないかというふうに思います。   ここには,いわゆる学生,生徒のアルバイターも入っているわけですが,その部分を除いたフリーターという比率で見てみましたのがその次の図表2です。フリーターという定義をするときには,これは学生を除くということになっていますので,学生ではない人たちでアルバイト・パートをしている,あるいはアルバイト・パートをしたいと思っている無業の人ということになります。専業主婦というのも,主婦層を除くために既婚女性も除くことが普通になっています。そこで,フリーター率というのを出したのですが,大体1年のアルバイト,パート雇用者というふうに大雑把に言っていいと思いますが,この15歳から19歳層というところ,そのうちの多くが18歳から19歳だということはその前の国勢調査で見ていただいたとおりなのですが,この比率が非常な勢いで伸びているのが御覧いただけると思います。この調査は2002年までしか使えないものですから,今のところここまでしかないですが,労働市場に出ている学生ではない18歳から19歳の男性でしたら32パーセント,女性でしたら43パーセントがアルバイト・パート就労者であるというような実態です。   この10代の若者の就業の問題ということで一番大きいのはこのアルバイト・パートというような形での就業者が非常に増えているということだと思います。   次に図表3を御覧ください。これは雇用動向調査という企業側からとった調査です。今まで見た調査は国勢調査にしても就業構造基本調査にしても個人の方をとった調査なのですが,雇用動向調査というのは企業から見た調査です。企業がそれぞれの年に新たに採用した人たちのうち19歳以下の採用者の数をここに載せています。2005年の数字で見ていただきますと,新たに採用した人たちのうち19歳未満の人たちの数は91万人となっております。そのうち3分の2がここでいうパートタイム労働者です。調査によってパートタイム労働者の定義が異なるのですが,ここでいう一般労働者とは,期間を定めずに雇われている人と,1か月を超える期間を定めて雇われている人,それに1か月以内の期間を定めて雇われているが,前2か月にそれぞれ18日以上雇われた人をいい,普通にいう正社員よりはもっと広い概念となっております。それだけ広く一般労働者をとってもパートタイム労働者の方が二倍いるという状況です。さらにその右側には内訳として未就業者と既就業者と二つに分かれているのですが,既就業者の方は落としまして,ここは未就業者,今まで就業したことがない人,過去1年間就業していなかった人を対象にしています。その中の新規学卒者というところが基本的には,今年高校を出たばかり,あるいは中学を出たばかりの若者になります。多くが高校を出たばかりの人たちになります。その高校を出た人たちの中でも,それが大体45万人ぐらいなんですが,そのうち4割強が一般労働者で残りはパートタイム労働者で採用されています。ただし,この高校を出たばかりの人の中には,高校を出たばかりで,進学していない人ではなくて大学生になった人も入るわけです。企業から見れば高校を出たばかりの大学生が行っているアルバイトもここに入ります。そういうことで,新卒採用がみんなパートタイマーになっているというわけではないですけれども,事実そうして見ると,18歳,19歳で雇われている人というのは新たに雇われるというよりは3分の2以上がパートタイマーあるいは非正社員として雇われております。   さらにその変化というので,フリーター比率のところも変化が見られますけれども,こちらの19歳以下の企業側から見た採用の構造の変化を見てみますと,90年から15年ばかりの変化を載せていますが,特に新規学卒者のところを見ていただきたいのですが,90年は60万人くらいです。60万人のうち55万人というのが基本的には正社員で採用されているというのが高校新卒の状態でした。ほとんどこれは高校新卒をあらわしています。そのころ学生アルバイトも含めたパートタイムの数は,5万人であり,一般労働者とパートタイムの比率は,10対1でした。これがこの15年で全く逆転しまして,高校新卒の部分のうち新卒正社員という部分がぐっと小さくなって,パートタイム労働者の部分が非常に大きくなっているという実態があります。   この十数年の間に,10代の若者たちの多くが大学に進学するようになったということもあります。かつ大学に進学してアルバイトを多くするようになっています。それから,高校を卒業して就職する人たちというのは20万人ぐらいに減っていますけれども,それに高校を卒業したけれども,大学にも行かないかわりにアルバイトをしているという若者たちも10万人以上いる,そんな状態が続いてきました。   18,19歳が今労働市場でどんな状態にいるかというと,基本的におおよそ正社員で働いているという人は大体25万人前後だと思われます。それから非正社員で働いている人が50万人弱いるのですが,そのうち半分強30万人ぐらいが学生のアルバイトです。20万人弱がこれが学生ではない,いわゆるフリーターのアルバイターとして雇用についている。今の若者たちの労働条件の一番の大きな課題というのはこの雇用形態の変化のところにあると思います。   さらに,図表4には失業率を載せております。失業率というのは,就職したくて就職活動をしているけれども仕事が見つからないという状態なわけですが,10代の失業率が最も高いという状態が続いています。10代というのは労働市場では非常に弱い立場にある人たちで,失業を最もしやすい。正社員として就業する機会がどんどん減っている。こういう状態にあるのだと思います。正社員でないということが一体どういう問題があるのか。労働条件面では,正社員と非正社員ではやはり大きな差があります。   次の図表5は,これも企業を通じました調査である賃金構造基本調査から18歳,19歳層の部分だけをとってみたものです。この調査の中ではまず労働者は常用労働者と臨時労働者がいて,常用労働者というのは先ほどの一般労働者と大体同じようなものです。そしてその常用労働者の中に正社員と呼ばれる人たちと非正社員と呼ばれる人たちがいて,かつその労働時間が一般的な長さの人たちと短い時間の人たちがいる,そういう構造になっているのですが,ここでは常用労働者のうち正社員で一般的にフルタイムで働いている人,それから常用労働者だけれども非正社員で短時間である,つまり何か月も働いているけれども,1日に働く時間,あるいは1週間に働く日数が短いという働き方をしている人,それから臨時労働者というのは常用労働者にはならない,短期間だけ働いているというタイプの人たち,これらの人たちの労働条件というのをこの調査からとってきました。大体1か月平均,男性の18歳から19歳で正社員だと168時間働いて,超過実労働時間が17時間あって,基本給といいますか決まって支給される金額が19万6,000円となっております。この調査の中ではこういった労働者が11万人ぐらいいて,特別給与を含めた1時間当たりの給与は1,127円であります。これと同じように比較するために,短時間の場合と臨時労働者の場合の数字を求めています。短時間の場合には,大体1日当たりに延べますと5時間前後働いているという人が多くて,1か月当たりの労働日数は大体10日から12,13日というのが平均的なところです。収入にしますと大体1か月4万から5万をちょっと超えるぐらいが一番平均的なところです。これを時給換算にしてみるとどうなるかというのが一番右側で,上がずっと比較できるんですが,大体1時間当たり,同じ年齢の労働者同士で比較して,男性だと短期間の雇用者だと大体75,76パーセントぐらいの水準で,女性だと85パーセントぐらいの水準になっております。   これに対して,図表6は,私どもで,東京都に住んでいる若者を対象に収入と労働時間を調査したものです。この調査では学生アルバイトは除いて,いわゆるフリーターの学生ではないアルバイト労働者だけをとっています。ここでも同じように年齢と性別に分けて,およその年収と最近1週間の労働時間,それから出される1時間当たりの収入というものを出しまして,これを比較したものが右側になります。一番右側の正社員を100としたときにアルバイト・パートはどれくらいの水準になっているかというのを示しています。1時間当たりにすると大体18歳,19歳ですと男性で88パーセントぐらいの水準,女性で86パーセントぐらいの水準,大体賃金構造とそんなに違わない,そのぐらいの水準の賃金が払われているということが分かります。   フリーターの場合には,実は収入というのは学生が入っている場合よりは少し高くなり,年間収入で大体男性で128万円,女性で120万円ぐらいになるのですが,これも年収比例にしますと正社員の6割ぐらいになります。これで自立して生活できるかというと,月12万で,これは東京都の若者ですから,親元である程度のものがあれば食べられるけれども,そうではなければちょっと難しいというような水準になるかと思います。   このように労働条件の上では,正社員に比べればかなり収入の面では落ちるということ,それから雇用の期限に定めがあるかないかといった安定性というところに一番大きな違いがあると思います。   また,もう一つ大事なのは,キャリア,1人の人の経歴として見るときに,18歳,19歳時点での非正社員というのがそのあと結局どういうふうにつながっていくかというところです。図表7は,男性と女性に分けて,この調査の段階での時点での年齢と,そしてこれまでの経験というのを比較パターンにして調べたものです。つまり黒の斜めの線の部分は学校卒業直後から正社員になって,正社員間の転職はしたことはあるけれどもずっと正社員だったというタイプです。それに対して赤の部分は,学校卒業からこれまでずっと正社員になっていない,非正社員しか経験していないというタイプです。18歳,19歳で非正社員しか経験していない人が非常に高卒の場合多くなります。あるいは高校中退とかあるいは高等教育中退と学校中退した人たちの非正社員しか経験していない人が非常に多い。ただし,この図の中では25歳から29歳ぐらい,20代後半層になると非正社員しか経験していない人の比率というのは結構減るのですが,この当時は比較的正社員として就職ができた時代なので,最初からずっと正社員だったという比率が結構高いのです。そういう世代間の卒業しているときの状態に違いがありますので,今正社員になれていない18歳から19歳層というのは,少しは正社員に変わっていくだろうけれども,どうもここの今の25歳から29歳層のようには正社員にはなれないのではないかというふうに思われます。   こういう18歳,19歳の働き方の問題という現状を踏まえて,自立意識についての調査結果についてもお示しします。図表8はやはり私どもが行った調査なのですが,東京都に住んでいる若者に対して,何歳ぐらいまでに親から独立した方がいいと思うかというのを聞いた結果です。大体20歳のところ,25歳のところ,30歳のところ,22歳のところと,こんなところが棒が立つような状態です。これを学歴と年齢別に分解したものが図表9なのですが,大体高卒ですと21歳から22歳となり,今の年齢よりかちょっと上ぐらいになります。高校を中退した層だと20歳ぐらい,短大卒だと大体23歳,大卒だと24歳からちょっと上,大学中退だと22歳という結果となり,非常に学歴と年齢というのが相関して出てきます。実際にはこういうふうに正規分布のものではないですから,平均といっても二つの間ぐらいとして出ているのですが,ただ全体として言えることは学歴と関係がある。つまり学校を卒業してから数年ぐらいのところに自立年齢を設定するというのが普通の考え方なのではないかなと思うのです。卒業してすぐというよりは少し時間が経って2,3年したあたりで大体自立をするという感覚を持っているようです。これはフリーターと非フリーターを比べると,実はフリーターの方が自立年齢が低くて,フリーターをしている人が親元にいつまでも頼っているからフリーターなんだということはちょっといえないのではないかなと思ったりもします   次に,ヒアリング事項への意見でございます。   まず,若年者に関して現在生じている労働問題は何か,親の同意なく労働契約が結べるようになること,あるいは逆に自分で判断して就労できるようになること,これがどんな影響を及ぼすと思うかということなのですが,実際にこう見てみますと,若年者に関する労働問題は何かというと主に非正社員が増加している点です。90年代の初め,19歳以下の採用者というのは,新規学卒就職者がほとんどで,学校あっせんで就職してきた。学校経由の就職にはどのような利点があるかというと,少なくともまず求人票はすべてハローワークで確認されています。したがって,労働条件はきちんと確認されており,法律に違反するような労働条件という求人はありません。現実がちょっとずれているとかいろんなことは起こったりしますけれども。また,学校側にも企業の情報があります。変な企業にはあっせんしません。という意味では,18歳という未成年を守るのに適した就職あっせんの仕組みであるわけなんですね。   これに対して,アルバイトの就職というのは一体どういう経路で就職して就業しているかと申しますと,こうしたあっせんの仕組みが全く機能していないわけですね。ほとんどが折込広告,アルバイト情報誌,あるいは店頭募集などで応募している。ヒアリング事項にありました劣悪な労働条件とか多額な負債,あるいは自分で判断して就労するということがアルバイト市場では既に起こっております。これは事実と法律とのちょっとずれがあるんだろうなと思うのですが,アルバイトの市場でそういう問題なことにさらされがちなのは,こういうアルバイトでの就労者であり,アルバイトの就労というのはほとんど親の承諾というようなことも実はなくてやっていることが多々あるでしょうし,実は労働市場に出ているんだけれども,学生であれ,学生でないフリーターであれ,そこには何ら未成年に対する保護というものが実は有効に働いていない市場であるというところではないかと思います。それだけに私は24パーセントが労働者になるという,18歳を一つの焦点として,そこまでに労働市場で不利な立場に陥らないための教育が必要なのではないかと思います。   次に,18歳まで引き下げたときに,移行期における青年の育成プロセスがおざなりになってしまうのではないかという危惧も指摘されています。これに対しては,日本の育成プロセスは,世界的にも評価されているのですが,これは正に高校新卒者に対してのあっせんの仕組みなのです。このあっせんの仕組みは確かに未成年を育成するのには優れた仕組みだというふうに思いますけれども,今見てみますと,企業側が18歳の高校生を採用して,内部育成するというやはり保護的な部分がある,そういう仕組みだと思います。ただし,22歳で高等教育を卒業した若者たちに企業が内部育成をしないかといえば当然していますので,成人が20歳でなくて18歳になったから企業が内部育成しなくなるかといえば,そんなことは全くないと思います。また,高校におけるあっせんについても,18歳は成人だからあとは自分で判断するようにというようなことは絶対にあり得ないと思います。今大学の中でキャリア教育といって手取り足取り指導していくことがどんどん広がっている時代ですから,これが18歳が成人だとなったとき,既に成人である大学生に対してあれだけの指導をしている日本の社会が18歳の高校生に指導しなくなるというのは,これも考えられないことだと思うのです。やはり一番問題なのが日本の優れた組織的な育成の仕組みから外れてしまい,非正社員の労働市場に追い出されてしまう人たちに対する対応というのを考えることの方が今は大事なのではないかというふうに思います。   そこで,現時点で18歳に引き下げることについて,私は実際にそういう形で労働市場に出ている人たちがいる以上,この人たちを不利にしないための対応が必要だというふうに思います。そのためには,当然教育という部分ですることがあるだろうと思います。   本人の意識のところでも見ましたけれども,経済的自立という側面から見ると,確かに卒業してから数年先ということに大体若者たちは自立,経済的自立の視点,ポイントというのを置いているよう です。これは現実的に収入がそのぐらいから伴うということもあるでしょう。今どんどん高学歴化が進展する,これはどこの国でもそうですが,それに従って移行の期間が長期化して,成人的自立の年齢がどんどん遅くなる。これが今後さらに大学院への進学が増えて,またまたさらに遅くなるのか,どんどん自立年齢というのが最後の学校を出てからあと2年先ぐらいのところまで,本人の意識だけを見ていればそうなってしまう。そこまで伸ばすことがいいのかどうか。そういう状態だからこそあえて法律的に成年年齢を設定するということは,社会的な仕組みとしてある一定の時点を成人を意識して社会のメンバーとして自覚を促す装置としての成年年齢という設定が必要なのではないか。私は現実に一部の人たちは市場に出ている,その年齢に焦点をあわせるべきだと思いますし,そこに焦点をあわせて一人前の社会の構成員になるための,本人が不良にならないというのと権利義務とを含めて,労働者になるための教育というのが必要ではないかというふうに思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   次に,藤井参考人よろしくお願いいたします。 ○藤井参考人 トヨタ自動車の藤井でございます。このような場で意見を述べさせていただきまして,光栄に思っております。   それでは,部会資料17のレジュメに沿いまして申し上げさせていただきます。   事前にいただいておりましたヒアリング項目につきましては,ほぼ網羅しているつもりでございますけれども,もし足りないところがあれば,あとで御質問していただければと思います。まず最初に,この中でいろいろ意見とか評価というものを述べさせていただいておりますけれども,それはすべて個人的な判断ということでございますので,御承知置きいただきたいと思います。   それでは,まずトヨタ自動車の状況ということで,会社における未成年者がどのような位置づけにあるか,存在であるかということをまず申し上げます。まず全従業員ということで約8万名強と書いておりますが,4月末の段階で約8万3,500名ぐらいおります。有価証券報告書などでは,出向者を除いたり派遣社員を概数で含めたりというのがございますけれども,ここで申し上げた数字は,期間従業員や採用計画との整合性のためトヨタ工業学園の生徒を含めておりますが,派遣社員は除いております。   この内訳でございますが,嘱託契約を結んでいる方も含めて,いわゆる社員という方が約7万4,000名ほど,正確にいうと7万3,900名ほどおります。そのほか期間従業員の方,トヨタ病院などの看護師をしていただいているパートの方もおりますので,そういう方も含めると9,100名ほどおります。このほかトヨタ工業学園が約500名弱ということを含めますと,これら全部の中から未成年の方,20歳未満の方は合計約1,500名ということになります。構成比でいいますと,全体では約1.8パーセント程度ということになります。ただし,職種別に見ますと,約950名が技能職であり,すなわち社員になります。ですので,社員ということで考えると約1.3パーセント程度ということになります。期間従業員の方はやはりちょっと年齢層が高くなり,未成年の方が約70名ほどおります。1パーセント弱ということになります。まとめると,従業員については,有価証券報告書ベースで申し上げますと,平均年齢が37歳,勤続年数が平均で14.5年となっており,それらの方の中で1.3パーセント程度の未成年の方がいるということになります。   新入社員につきましては,この三枚目の資料を御覧いただくと有り難いのですが,今年の採用計画は3,629名と発表をしております。2007年度の採用実績におきましても3,667名であり,3,000名を超える非常に高水準の採用を3年連続で続けているところでございます。この内訳としましては,大学・高専からの事務職,技術職,これはほとんど四大卒,新卒とキャリア採用になっております。その下の業務職といわれている方がこれが庶務をやっていただいている方であり,これは大卒・高専と一部高卒の方もいらっしゃるのですが,昨年度の採用実績で申しますと170名,この中に10名強ほど高卒の方がいらっしゃいます。その下の技能職という方が工場のラインで働いていたりという方,この中の新卒が昨年度は例えば884名おります。さらにこの登用とあるのは,期間従業員の方で正社員の道を選んでいただいた方なのですが,こういう方が昨年は1,250名,今年も900名と,これも高水準でございます。その下にトヨタ工業学園,これも技能実習というものが学科の中に含まれておりますので,この中に入っておりますけれども,高等部では120名,これは中学を卒業して入ってきていただいております。あと専門部は高校を卒業して1年間の実習過程を経る方です。したがいまして,この技能職の新卒の方とトヨタ工業学園の高等部の方とプラス若干の業務職の方,ここが未成年になります。それで見ますと,2007年度の採用実績で見ますと,約1,000名ほどということになりまして,新卒実績3,667名のうちほぼ3割弱ということになります。したがいまして,先ほど合計で1,500名と申し上げたのは,この新卒1年目の1,000名全部と,あと2年目になりますと誕生日が来ると20歳になりますので,大体半分ぐらいということになりますので,大体その年に採った高卒新卒の方の1.5倍ぐらいが未成年になるかというふうに思います。   ですので,ここ3年ばかり非常に高水準の採用実績を続けておりますけれども,大体その年の採用数を見ると,会社の中における未成年の方がどれぐらいいるかというのが大体想像がつきます。数字を実際にこうやって示してみますと,私自身も思っているのですが,意外と少ないなという印象がございます。   この技能職の高校卒の方の選考につきましては,先ほどの御報告にもありましたが,学校あっせんで入社しています。近年非常に高水準で採用しておりますけれども,離職率を確認しますと,極めて低水準と聞きました。実際のところ,年間で離職する者も数名程度だというふうに聞いております。バブル以前には,2,3割の離職率があるというふうに言われておりましたので,近年は非常に離職率が低いということで非常に驚きました。これと裏腹でございますけれども,やはり入ってこられる方,一般的に職場の評価は極めて高いとのことです。仕事上の責任感は強く,大人の自覚を持っているというふうに人事の方では評価をしております。配属上,特に人事面では特に成年・未成年とで異なる取扱いはしておりません。同じようにラインに配属して勤務いただいております。特段未成年者ということで区別をする必要もなく,逆に言いますと,新卒者が即戦力になっているということになるかと思います。   次に,以上の数字をもとに企業において未成年者をどう取り扱っているかというところを三点でまとめてまいりました。まず,雇用関係において,つまり会社がどのように未成年者を取り扱っているかということを企業と従業員個人との関係で申し上げますと,やはりこれは労働力の提供ということから考えますと,これは事実行為ですので,企業にとって成年・未成年という区別というのは余り意味がないのではないかと思うのです。言い換えれば,法律行為に関する行為能力というのは労務管理上ほとんど問題とはならないと言ってもよろしいかと思います。したがいまして,当社の人事制度上,いろいろな規定を調べてみましたけれども,成年と未成年において取扱いが異なるというところは見つかりませんでした。人事の担当者にもいろいろとヒアリングをしましたが,やはり一様に首をかしげるばかりで,そういうものは特に意識したことはないという答えが返ってきております。業務上の研修とか教育という面でも特段新入社員教育という面では区別というものはしておりません。ただ,細かい点ではございますけれども,コンプライアンスの観点とか,あと自動車メーカーとしての社会的責任という観点で,飲酒については厳しく指導しております。これは特に未成年に限らず,我々につきましても当社では飲酒運転をすると厳しい懲戒の対象になりますので,特に未成年に限るというのではないですが,喫煙も含めて,特に高卒の技能職の方は寮に入って集団生活をしますので,生活指導という点で,その点については厳しく指導しているということはあるようです。その点を除けば,給与を支払う対象という観点で言いますと,成年・未成年というのは同じではないかと思います。同じように税金を源泉徴収して厚生年金,健康保険などの社会保険料を負担してもらっているということがいえるかと思います。これは言い換えれば労働力を提供してもらう存在ということでは全く等しい存在ということであって,給与の支払についても会社があらかじめ定めた給与体系に従って支払うということだけではないかというふうに思います。   一方で,民法上は法律行為には親権者の同意が必要だということから,唯一取扱いが違うところが入社時の誓約書に親権者の同意欄があるというところでございます。入社時に誓約書をもらっているのですが,未成年者の方には同意欄というのが二つございまして,そこの二つに押印をしてほしいというふうにしております。それが入社への抵抗になるかといわれれば別にそういうことはございませんし,ほとんど学校あっせんですので,ルールに従って粛々と進めているだけでございまして,労働契約の締結への障害ということは一切ないというふうに申し上げられるかと思います。   一方で,退職時はどうかというのも調べてみたのですけれども,これは人事の方は全く意識がなく,イントラネット上の手続で簡単に退職できることになっておりまして,当然親権者の同意の必要性について一切考慮されていないようです。単独行為なので意思表示だけで効果が出ると考えているのか,それとも民法5条のただし書を適用しているのか,どちらの考え方かよく分かりませんが,実務上問題になることは一切ないようでして,会社としてもそういうことを深く考えてのことではないようでございました。   あともう一つ,労働法上給与支払は本人に対して行う必要がありますけれども,支払方法としては現在口座振込みでほぼ100パーセント行っておりますので,口座を指定していただいて,本人名の口座であればそこへ振り込んで履行は完了します。以降は本人の財産処分の問題になるわけですので,未成年の方は給与を支払っていただいて得た銀行口座預金を親権者の同意がなくて処分できるのかなと,個人的に思いました。これは法定代理人が処分を許した財産ということなのかもしれませんが,一方で同意が必要ということであれば,親権者の管理ということもあるのでしょうが,言い換えれば親による収奪という懸念もなくはないのではないかというふうに思いました。すなわち,やはり雇用関係という点から見ますと,成年であろうが未成年であろうが,給与の支払いの対象者,あと労働力の提供者として見る限り,対象にとっては何ら変わりはない存在ですので,未成年者ということで区別する必要性というのはどこにも見当たらないと思います。むしろ先ほどの財産処分というようなことを考えれば,権利制限から解放してもよいのではないかという考え方もあり得るでしょうし,ある意味大人としての自覚,自立というものを促すということからすると,社会への責任感というものでは仕事の上でも好影響を与えるのではないかという考えを持ちました。   一方で,社会的・経済的な面から見ますと,やはり悪徳商法の標的になるおそれという表現をいたしましたけれども,ある意味,成年・未成年を問わずということですが,社会経験の浅い従業員が被害を受けている実態というものは,表には出ないんですけれどもあとを絶っていないというふうに受け止めております。この点については会社は十分に把握はしておりませんし,調査もできないところではありますけれども,たまに給与差押通知が来るという形で会社の方へ通知が来ることにより,多重債務者の存在がうかがえることがあります。これが最近急激に増えているとか,若い人に限られているということは一切ないのですけれども,これがやはり実態でもありますし,それからしますと,水面下でもぐってはいますけれども,やはりこういう被害事例というものはあとを絶たないのではないかと思っております。   この今回の部会に先立ちまして,知り合いの弁護士などにも聞いてみたのですけれども,やはり悪徳商法で被害を受けて相談をしてくる事例というのは非常に多いと聞いております。また,あとで申し上げますが,会社では分からないところかなというふうに思いますけれども,デート商法ですとか,ふとん商法,資格商法のような商売に引っかかるもの,あと愛知県では特に多いんですけれども,パチンコにはまってしまう者,さらに出会い系サイトからホストにつぎ込むなどでサラ金に手を出したり,クレジットを積み重ねていって多重債務を負うという方というのは多いようです。そういうところから見ますと,社会における知恵というものはある意味仕事の能力や責任感とは別の問題かなという印象も受けます。弁護士によりますと,やはりこういうものに引っかかる人について,まじめな若者ほどだまされやすいという言い方をしておりました。場合によってはだまされたことにも気がつかないケースもある。こういう方というのは仕事はまじめで仕事の能力もあるということなんですけれども,これと,繰り返しになりますが悪徳商法への耐性というものではやはり別問題だろうと思います。   こういうケースで企業は何ができるかということなのですが,実際問題といたしまして,企業は直接的に助けることができないとしか申し上げようがないと思います。言い換えればやはり救済ということになってしまいますと,例えば会社が借金を肩代わりするとか,かわりに示談交渉をするとかということはこれもあり得ない話ですので,やはり個人の問題としてどこか窓口を紹介するかしかできない。ですから,会社としてやれることは未然予防という観点からの啓発活動というところに力を入れるということしかないんですけれども,これもやはり限界はあると思います。会社に入ってからの新入社員教育という観点でのこういう悪徳商法への啓発活動というのは当社でも力を入れておりまして,個別の教育の中のカリキュラムに入れたり,ホームページで常に啓発をしたりということをやっておりますけれども,率直に言って,会社に入ってからそういうことをしても遅いのではないかという印象を受けております。   現状では,未成年に限らず,やはり社会経験の浅い若年層の被害が多くて,未成年者もその中に含まれているかと思います。では未成年の方がそういう被害に遭った場合,相談した弁護士に言わせると,取消請求などをすれば,業者はほとんどの場合あっさり落ちるということですので,向こうも分かりながらやっているようですけれども,一方でやはり成年年齢というものがあって,若干多少なりとも業者を控えさせている可能性はあるかもしれません。ですから,この年齢を引き下げると,やはりターゲットになりやすくなるということは否定できないかと思います。   そういう観点からいくと,2年間の社会人経験というのはそれなりの意味があることかもしれませんけれども,やはり早期からの消費者教育の重要性を改めて申し上げたいと思います。いったん会社に入って給与生活者となった以上,税金も支払い,社会保険も支払うわけですから,社会的経済的に自立した存在であるというふうに言わざるを得ないかと思います。したがいまして,だまされないような啓発活動というのは早期にする必要があるかと思います。それによって,自立した,自ら律することのできる消費者になっていただくことを期待したいと思っております。会社としてもこの点については努力いたしますけれども,やはりこの点については高校などから早くから社会的な面からの消費者教育を強化するということは重要ではないかと思います。   三つ目で,これまで漏れていた点を含めまして,成年年齢の引下げに関する意見ということでまとめてみます。まず引き下げた場合,会社にとって何が生じるかという点ですが,余り大きな問題ではございませんが,一つは公務公職につく可能性が生じる。例えば裁判員制度の裁判員候補者は選挙人名簿から選ばれるので,裁判員候補として選ばれる可能性が出てくる。当社の場合,特別休暇扱いで給与,賞与控除は一切なしで行っていただきますので,あえて言えば会社としては若干の負担増は生ずる可能性はあります。   もう一つ,入社時に親権者の同意というものが必要なくなります。これは大した影響はないのですが,万一,悪意重過失によって会社に損害を与えた場合,この請求はどこにするかという点で,現在のところ誓約書に保証人という欄がありますので,こういう保証人の方に求めることになろうかと思います。実際にこのような例はないのですけれども,やはり販売会社とか,お金を扱う会社ではこのような例も聞いたことがあります。   また,ついでに申し上げますと,運転免許というのは18歳から取れますので,免許証を持った未成年の方というのは車を買いたいわけなんですけれども,自動車の注文書には一応連帯保証人欄というのが二つございまして,そこを使って親権者の同意を得ていただくというふうになっております。ですから,この場合,成年年齢を引き下げると,連帯保証人がいなくなるのかということですが,やはり担保能力とか債権担保の必要性ということからしますと,実際にどうなると聞いてみたところでは,やはり保証人は必要であろうと言っておりましたので,その観点からも余り大きな違いは出てこないかなというふうに思われます。   二つ目で,どこまで引き下げるか。下げるとすればどこまで引き下げるかという観点ですが,これも一つのアイデアでございますが,給与生活者となったときというのが経済社会の一員としての責任を自覚すべきときではないかという観点からしますと,むしろ高卒1年目の19歳という考え方があってもおかしくないのではないかという気がいたします。ただ,一方でやはりそのようにするとしても,これは現状でも同じではございますけれども,自立した消費者となるための教育というものの重要性というのはやはり改めて申し上げたいと思います。したがいまして,その社会環境の整備という観点で,移行期間とか,早期からの消費者教育,さらには企業が一部責任を負うわけでございますが,啓発活動の充実等の手当が必要ではないかというふうに思っております。この点については現在でも,労働組合と協力して,新入社員教育でも,携帯電話の使い方とか,出会い系サイトの注意事項などは教育しております。   三つ目としまして,段階的付与についてどう考えるかということもございましたけれども,どのような方法をとるのかというのが何とも分からないところがございますが,自動的に何歳になれば一部の権利を得ることができる,獲得するということになるのか,そうでなければ個人個人,何らかのステップを設定するのかという考えがあろうかと思います。何らかのステップを踏むということになりましたら,ここに幾つか思い付くものを書いてみましたが,これらにつきましてもやはりどれをとったとしても多少の事務処理負担とか公正さへの担保,第三者への透明性という観点からの懸念というのは,やはり生じ得るのではないかというふうに思います。   それからどのような内容の権利を付与するかというところでも,これは素朴な疑問ではございますが,政治的な成熟と民事的な成熟が果たして同一である必要があるのかという点を申し上げます。これは理由にも書いてございましたけれども,参政権のみ18歳からということが難しいという理由が感覚的にどうも納得できなかったので,書かせていただきました。例えば被選挙権が成年年齢と一致していないということとも併せて,個人的には合理的に納得できなかったということがございますので,例えば選挙年齢だけを引き下げるという方法があってもいいのではないかというふうに思います。   以上でございます。 ○鎌田部会長 どうもありがとうございました。   ここで休憩をとらせていただきます。休憩後は,種岡参考人から御意見をお伺いすることにしたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,予定の時間になりましたので,引き続き種岡参考人から御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○種岡参考人 皆さんこんにちは。東京電力労働組合の種岡でございます。今日は発言の機会をいただきまして,ありがとうございます。   お手元の部会資料18に基づきまして若干御報告を申し上げたいと思います。今日は東京電力労働組合の中央執行委員長という立場でお邪魔をさせていただいておりますので,東京電力労働組合の内部の状況について個人的な意見を何点か述べさせていただきたいと思います。   お手元の資料の一枚目でございますが,初めに東京電力労働組合のことについて若干お話を申し上げたいと思います。   御案内のとおり,東京電力という会社は電力設備の調達から建設,そして燃料の調達,発電,そして電気の流通,販売,集金まで一貫してやっている企業でございまして,現在約3万8,000名ほど社員がおりますけれども,そのうち組合員は,そこに記載のとおり3万2,305名ということでございます。1956年の創立でございますので,間もなく満52歳ということになってまいります。東京電力株式会社との間の労働協約に基づきまして東京電力の中では唯一の労働組合,ユニオンショップ制ということで設置をされている組合でございまして,連合,全国電力総連の配下の中に入っているということでございます。東京電力は,関東一円に電力を販売させていただいておりますけれども,水力発電,開発する水系がなかなか関東にはないということで,長野県あるいは新潟県,福島県などにも主に水力発電などの関係の仕事をやらせていただいているところでございますけれども,最近では原子力発電ですとかあるいは火力発電なども新潟県,福島県でお世話になっているということでございます。少し右上に東通と書いてございますが,青森県の東通村で現在原子力発電所建設のための仕事も我々の組合員がやらせていただいているということで,場所が分かるように記載をさせていただいたところでございます。   次のページを御覧いただきたいと思いますが,東京電力の新入社員の採用実績を平成8年からトレンドをつけさせていただきました。平成8年は御案内のとおり1,342人という採用がございましたけれども,その後かなり採用人員が減ってございまして,平成12年度から6年間,年間約500名という採用になっておりますが,近年また800名の採用ということで少し戻ってきているということでございます。赤い線で高校卒の採用の方だけを記載してございますけれども,約半数程度が高校卒ということになりますし,いわゆる新卒学卒以外の採用が年間数十名というのが現在の実績になっているところでございます。   次のページを御覧いただきたいと思いますけれども,労務構成について資料をつけさせていただきました。平成10年度と20年度の状況についての比較でございますけれども,平成10年度では20代,30代の方が多くいらっしゃったわけでございますが,平成20年度で見てみますと,30代後半からの方が多いという労務構成になっておりまして,先ほども申し上げたように採用人員が減っているということも踏まえて,全体的に労務構成の高齢化が進んできているということが言えるのではないかというふうに思います。   今日の本題でございますけれども,事前にいただいておりますヒアリング事項につきまして,冒頭申し上げましたように個人的な意見をというふうに申し上げましたが,若干定量的な分析ができるものがあるかどうかということで検討しましたところ,私どもの組合の中で5年に一度組合員意識調査というものを実施しておりまして,その中で何点か参考になりそうなものがございましたので,今日はその調査結果のデータを少しお披露目させていただきまして,御参考にしていただければというふうに思います。   次のページを御覧いただきたいと思いますけれども,この組合員意識調査でございますが,5年に一度,昭和54年からの実施でございまして,基本的には全組合員を対象に様々なデータを集めておりまして,その中で今日は生活意識あるいは労働意欲,社会意識,こういったものに関してデータを御披露申し上げたいと思います。平成8年,平成13年,そして平成18年のデータをそれぞれ比較させていただきました。若干,平成18年の回答率がその前2回ほどに比べて低くなっておりますけれども,コンピュータを使ってウェブ上でデータを採取をした結果,若干回答率が下がってしまったということでございます。   次のページでございますけれども,未成年の組合員の方と組合員全体の方との比較ということで何点か御報告申し上げたいと思いますが,まず最初に,「生活の中で最も大切だと思うものは何ですか」という意識調査をしてございます。左の方が未成年組合員の状況,右の方が組合員全体の状況ということでございますが,一言で申し上げまして,趣味と家族に対する意識が増加傾向にあり,友人との付き合いが減少傾向にある。これが未成年者のここ何年かのトレンドだというふうに思います。全体的に言いますとやはり家族を重んじる傾向にあり,友人との付き合いというのが若干減少傾向にあるというのがデータとして出ております。   次のページですけれども,「どんな人生を送りたいですか」という設問でございますけれども,未成年者の傾向として,趣味を謳歌し,気楽に生きたいという傾向にそう大きな変化はありませんが,年々,仕事に対するチャレンジ意識などが若干弱まっているというような気配が伺えるかというふうに思います。全体的には,経済的に豊かになること,あるいは趣味を謳歌したいという傾向には大きな変化は見られないのではないかというふうに思います。   その次のページですけれども,労働意欲に関する設問でございます。「仕事で最も充実感を感じるのはどんなときですか」ということでございますが,未成年者の傾向の中では達成感が減少傾向にある一方,社会に役立った実感を得たときが仕事に対してもっとも充実感を感じるんだという回答の傾向が増加しているというふうに伺えます。このことについては,組合員全体についても同じ傾向が言えるのではないかというふうに思います。   次のページでございますけれども,労働意欲の設問の二番目として,「あなたの仕事は会社にとって重要だと思いますか」ということでございますけれども,若干ではございますが未成年者は仕事の重要性を余り感じていないという方が少し増加傾向にあるように思われます。全体的にはおおむね大多数の組合員が重要性を感じておりますけれども,感じていないという者が減少しているのではないかというふうに思います。   その次のページですけれども,労働意欲の三つ目ですが,「職場の人間関係についてどう思っているのか」でございます。未成年者の傾向として,職場の人間関係がうまくいっていないというふうに思っている方が若干増加という傾向にございますし,特徴的なこととして,特にこの平成18年のところを御覧いただきたいと思いますが,無回答という方が増えているというふうにデータとして出ているところでございます。これは全体的な傾向としても未成年者の方と同じような傾向にあるのではないかというふうに思います。   次に「東京電力の社員であることに誇りを持っていますか」という設問でございますけれども,未成年者組合員に誇りを持っている者が減少傾向にあるということと,特徴的なこととして無回答,これも平成18年のところですけれども,若干増加の傾向にあるということでございます。全体の傾向としては,やはり未成年者の方と同じような状況が言えるのではないかというふうに思います。   次に,社会意識ということで「現在の社会についてどのように感じていますか」という質問をさせていただいておりまして,これは特徴的なところですけれども,未成年者の傾向として,不安に思うという方が増加をしていて,無感心者が減少,さらには無回答者がこれも若干でございますけれども,増加をしているという傾向にございます。全体的には未成年者に比べて不安に思っている者の割合が2割から3割程度高い傾向にあるということが伺えるかというふうに思います。   次に,社会意識に関する質問の二番として「今住んでいる地域に愛着心がありますか」という質問をしてございますけれども,未成年者の傾向として「ある」と回答した者はほとんどここ何年かの中で同じような傾向であり,無回答者が増加をしている。それから全体的な傾向としては未成年者の方とそう大きな傾向の変わりはないというふうに思います。   最後になりますけれども,選挙のことを少し聞いてございまして,「選挙で投票することによって,自分の意見を政治に反映できると思っているか」という質問でございます。未成年者は「思う」の回答が増加をして,「できないと思う」という回答が減少してきていますし,ここも無回答者が増加をしてきているということでございまして,全体的な傾向としてもやはり未成年者と同じような傾向にあるということが伺えるのではないかというふうに思います。   以上,これは労働組合で実施をいたしました意識調査の傾向の中から何点か参考になりそうなものをピックアップをさせていただきました。これらを踏まえまして,事前にヒアリングでお答えをという質問につきまして何点か個人的な意見を申し上げたいというふうに思います。   部会資料15-3に沿ってお話を申し上げたいと思います。   まず最初に,18歳,19歳の未成年者を含む若年者の雇用状況とか,あるいは業務の担当ということでございますけれども,これにつきましては先ほど申し上げたとおりでございますので,割愛をさせていただきます。   次の質問,最近の若年層の考え方や性格,昔と変わっているかと,こういうことでございますけれども,先ほど御説明させていただきました組合員意識調査の結果から見てまいりますと,人生観あるいは仕事の達成感,仕事の重要性,社員としての誇りなどにつきましては,組合員全体と未成年者の意識はほとんど同じような傾向にあるのではないかというふうに思います。   さらには,現在の社会について近年の回答といたしまして,不安とする回答者が未成年者にも増加をしてきておりまして,社会への感心が,従来以上に高まってきている傾向にあろうかというふうに思います。高校を卒業された後に東京電力に入社してまいりまして,例えば新入組合員研修などによって,労働組合の役割ですとか,あるいは組合員の権利義務などということについて初めて組合員の人たちは学ぶということになっております。このことについては,昔も今も変わらないわけでございますし,労働組合以外のこと全体をとってみても,組合員それぞれでございまして,会社に入ってきた段階から既にいろんなマナーですとかあるいはモラル,あるいは意識ということを身に付けている方もいらっしゃいますし,そうでない方もいらっしゃるということで,職場に配属されて以降,上司やあるいは先輩から指導を受ける,あるいは労働組合の活動を通じて社会人として必要なものを身に付けていく,そういったのが実態だというふうに思います。このことは今も昔も変わってはいないのではないかというふうに思っているところでございます。   次に,ヒアリング事項の三つ目ですけれども,最近の若年者の仕事に対する取組と昔の若年者の仕事に対する取組で差異があるかということでございますけれども,これにつきましても,結論から申し上げますと,昔も今もそう大きな差異はないのではないかというふうに思います。若干,職場の状況を申し上げますと,会社に入ってから1年ぐらいの間は,新入社員の研修ということで,研修を受けながら業務に必要な専門分野における業務知識ですとか,あるいはその技術,技能などを修得して,それぞれの職場に配属ということになります。配属してからは先輩社員からOJTを中心に,業務に必要な知識を勉強いたしまして1年間過ごすということになります。その後の20歳までの1年間ですけれども,これにつきましても先輩社員の指導のもとで現場の仕事に従事をしていくということになってまいります。冒頭申し上げましたけれども,電力会社でございますので,現場での作業は,どうしても高所作業になったりですとか,あるいは直接電気とかなり近いところで仕事をするという関係もございまして,基本動作などをきちんと身に付けていただくということが極めて重要だということでございますので,そういったものを日々の仕事の中で先輩の指導を仰ぎながら身に付けていくというのが19歳,20歳ぐらいの間の状況かというふうに思います。   例えば,発電という職場でも非常に広い範囲での電力の安定供給ということに直接携わっている仕事ということになりますので,体系的な研修カリキュラムを作りまして,19,20歳ぐらいの間でしっかりと勉強していただくというのが実態であるということでございまして,ここの部分につきましては昔も今も変わってはいないというのが職場の状況かというふうに思います。   次に,若年者の雇用・労働に関して,どんな問題を抱えているかということでございますけれども,一言で申し上げまして,先ほど申し上げましたように,これは若年層のみならず職場の人間関係というところに若干不安を覚えている組合員が最近増えているのではないかというふうに思います。これは先ほどお示したデータにも出ているわけでございますけれども,このことについて私ども組合員と直接いろんな意見交換をしながら,その要因・原因は何なのかということについて検討してきているところでございますが,御案内のとおり,電力自由化ということが導入をされまして,当然国際競争力の中でそれなりの価格を出していかなければいけないということになっておりますので,より一層従来に比べて職場の繁忙感が高まっている。結果的にコミュニケーションが少し希薄になっているのではないか。こんなところがあえて言うならば職場の問題・課題というところで分析をしているところでございます。   若干数字を申し上げますと,2007年度の年間総実労働時間は,平均で1,973時間ということで,これもここしばらく高い水準での高止まりしているというのが私どもの職場の実態でございます。   次に,民法の成年年齢を18歳に引き下げた場合,労働契約などで何か問題はないかということでございますけれども,冒頭申し上げましたとおり,私ども東京電力労働組合はユニオンショップ制でございますから,新入社員で入った時点ですぐ東京電力の組合員ということになります。したがって,労働契約といっても実際は労働組合と会社との間で協議をし,決まっている労働協約のもとで労働契約が結ばれるということになるわけでございますので,仮に18歳,19歳の方でも東京電力にお入りいただいて組合員になった時点で,労働協約に基づいた労働契約を結ぶということになりますから,特段問題はないのではないかというふうに思っているところでございます。   さらには,これは少し本題から外れるかもしれませんが,私ども東京電力労働組合の場合は,労働組合が中心になって設立をいたしました職域生協,生活協同組合も一緒に有しておりまして,この中で様々な物資あっせんですとか,あるいは各種保険なども提供させていただいているという現状がございますので,そういう意味では多額の負債を負うというようなことも現状としては,ないわけではありませんけれども,可能性としては低い傾向にあるのではないかというふうに思います。とはいいながら,金銭面に関する様々なトラブルなどもないわけではございませんので,労働組合としても生活設計のためのセミナーなどを通じまして,組合員に対して研修を進めてきているというのが実情でございます。   次に,民法の成年年齢を引き下げると移行期において若者の育成のプロセスがおざなりになるのではないかという指摘があるということでございますが,これは先ほども申し上げましたとおり,高校卒新入社員で入ってこられる方,人それぞれでございまして,かなりモラルあるいはマナーなどもしっかり身に付いている方もいらっしゃいますし,そうではない方もいらっしゃるということで,これも繰り返しになりますけれども,会社に入ってから労働組合の活動もそうでございますし,会社の中の様々な研修の機会,あるいは先輩上司などの指導によって,様々なことを身に付けていくというのが実態だというふうに思います。しかしながら,それらがスムーズに行われるためには,中学校あるいは高校における教育あるいは家庭での教育,あるいは若い時期から社会全体で教育・育成により一層取り組んでいくという必要があるのではないかというふうに私自身は感じているところでございます。   部会資料15-3の2ページ目になりますけれども,民法の成年年齢を18歳に引き下げた場合,親などの同意なく自分自身の判断で就労できるようになり,稼いだお金も自分自身で管理できるようになるけれども,18歳,19歳の若者の大人としての自覚を促すことができるので,このことについてはどういうふうに考えるかということでございますけれども,私どもの組合の内部の状況から申し上げれば,既に就職した段階から,実態としては自分自身の考えで自分の賃金などの管理をするということでございますので,18,19歳の段階でも,会社に入った段階で,自覚は出てきているのではないかというふうに思います。正直申し上げまして,年齢によらず,しっかりと自覚のある方はあるわけでありますし,ない方はないということで,自覚という意味ではばらつきがあるのではないかというふうに思います。自分で苦労して得た収入なわけでありますので,自分でしっかり管理するという自覚が生まれてくるのではないかというふうに考えているところでございます。   最後の項目でございますけれども,法教育など教育の充実が必要なのではないかという指摘があるけれどもどうかということでございますが,これも繰り返しになりますけれども,会社に入って,組合に入った時点から,人それぞれであるというふうに申し上げましたけれども,実態を見てみますと,会社に入った後に,数は多くはございませんけれども,東京電力をお辞めになる方もいらっしゃいます。いろいろ聞いてみますと,会社に入る前に思い描いていた仕事と職場の実態が違うということをおっしゃる方もいらっしゃいますし,あるいは労働そのものへのこだわりということが少し希薄化している。少し乱暴な言い方をすると少し何事にも我慢できない,そういうことでほかに職を求めるケースもあるのではないかというふうに感じているところでございまして,一番年齢が若い新規採用者である高校卒の方に対して,もう少し中学なりあるいは高校の中で,そういったことに対する体系的な勉強も必要なのではないかというふうに思います。   具体的に申し上げますと,企業活動というのはどういうものなんだとか,あるいは職場で働くということはどういうことなんだとか,あるいは働くということに対する喜びですとか尊さ,こういったものについて中学あるいは高校の中で勉強する機会があればよろしいのではないかというふうに思っているところでございます。 ○鎌田部会長 どうもありがとうございました。   お招きいたしました3人の参考人の方から大変有益な御意見をお述べいただきました。これからの時間は,委員,幹事の方々から各先生方への御質問等をお出しいただければと思います。順番は特に問いませんので,どこからでも御発言をいただければと思います。   それでは,五阿弥委員。 ○五阿弥委員 小杉参考人にお伺いしたいのですが,大人をどう定義するかと,いろいろあるでしょうけれども,少なくとも精神的自立と同時に経済的自立,これは非常に大切なことだと思うのですが,その点で小杉参考人がお示しになった資料を見ていますと,若年者の中で,非正社員が非常に増えていますよね。そうすると,これは今後もこうした傾向が続いていくのかどうか。それがまず一点です。   それと,七五三という言葉,これは中卒の場合は就職しても7割,高卒は5割,大卒の場合は3割が辞めていくということを意味するものだと以前聞いたことがあるのですが,現在もそうした傾向というのはあるのでしょうか。そしてまた若者の労働観,これは我々のときは就職ではなくて就社と言われましたけれども,労働観というのは変わりつつあるのかどうか。その三つについてお伺いできればと思います。 ○小杉参考人 まず第一点目の非正社員が今後どうなるかという話ですけれども,2002年辺りから景気が少し良くなるとともに若干減少傾向にあります。ただ217万人が207万人になるとか,そういうぐらいのことでございまして,減少傾向にはあるけれども,なくなるとはとても言えないと思います。それはやはり今のサービス産業や小売などは,非正社員を前提に営業しているところも幾つもあるわけで,今回のトヨタさんの中でもある程度の臨時の方は入るという構造になっている,そういう一定の一時的な雇用とか有期限が残るというのは必要な社会情勢なのではないかと思います。そこに無技能の若者が入るということも,これも技能がないですから,入る機会,これはもしこういう機会がなければ逆に失業者が増える可能性もあるわけで,一概にそれを全く否定するという,そういう社会になることはないと思います。これ以上どんどん増えるとは思わないけれども,一定数はいるだろうと,こういう状況が続くと思います。また,大学生のアルバイトというような形では,これも今後特に日本の場合には高等教育の費用が個人持ちの部分が非常に多いので,これも当然続くのではないかというふうに思います。   それから,七五三の離職という話ですが,現在も傾向としては変わっておりません。高卒については70年代からこのデータがあるのですが,就職後3年目までには4割の人がやめるという状況がずっと続いてきて,最近少し上がって5割に近くなったかなと。中卒も6割というのがずっと続いてちょっと上がったかなと。大卒は今3割をちょっと超えるぐらいになっているかもしれません。こういう離職というのはもともと一定数あるという状態があるんだと思います。その中で,最近若干上がってきているというのは,一つには中卒の市場がずっと悪かったことですね。転職ということであれば,離職でなくて転職ということであれば,これはよりよい高校卒業時,大学卒業時にはたまたま就職の機会が非常に悪かったから景気がよくなって機会が増えたから転職するという意味での離職もここには含まれますので,景気がずっと悪い状態が続いて,それがよくなってくると転職というのが増えるというのもあると思います。   それから,景気が非常に悪い時期というのはやはり大企業さんはずっと採用を渋りましたので,その結果,中小零細というところにどんどん入っていきました。もともと中小零細企業の離職率と大企業の離職率とは全く違うのです。トヨタさんは,今はもちろん少ないですが,前もずっと少なかったと思います。それに対して10人未満の企業になると,やはりもともと離職率が高い。その辺の新卒対応で入る市場が変わったわけです。より零細の多く人が移動するような,そういう企業に入る人が増えているということも一つの原因です。ですから,七五三の離職というのは確かにもともと多く離職したんだけれども,今少し増えていることがある。その背景にあるのはやはり就職自身の構造とかあるいは今の経済環境など要因の方が大きくて,若者の意識が変わったのかというところは,それで説明できるところの方が少ないのではないかと私は思います。むしろ構造的なものの方が大きくて,それに若者意識もかぶる。若者の意識というのはむしろ育つものですから,そのときの環境がどうかというので変わってくるところが非常に多いので,学校卒業時にうまく安定的なところに入れて,そこで上司に恵まれるとぐんぐん伸びていくし,たまたま悪い状態で,とても厳しいところに入ると我慢できない。問題はその後転職にならないで次の機会がアルバイト・パートしかないという今の市場の中で技能が形成されないまま転々とする若者をたくさん生んでしまっているというところなんですね。最後の労働観というところにかかわりますが,労働観自体がそんなに大きく変わったとは思えない。これは環境の影響が非常に大きいのだというふうに私は思います。 ○五阿弥委員 ありがとうございました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。では,今田委員お願いします。 ○今田委員 今回のヒアリングの前半に,小杉参考人から非常に詳しく若者の非正規化の状況,不安定状況というのがこの10年ぐらいで急速に進んだということを示していただいたわけです。また,東京電力,トヨタの方から,学校から職業への移行のプロセスについて,非常にきめ細かく,職場や組合その他で,育成されていることを示していただきました。これら二つのことが事実をすべて示していると思います。要するに,学校,職場,組合などによる育成の支援を受けられない非正規雇用に吸収される子どもたちが大量に増えている。ここまでは全員同じ認識だと思うのです。そこに関して異論はないのですが,そこで私の発想から言えば,そういう保護されない状況が非常に拡大をしている,そうするとやはり学校から職業への移行についての社会的な支援とか制度,それをもっと手厚くすることが必要なのではないかというふうに私は考えるんですが,小杉参考人は正に若者の労働のプロフェッショナルの御意見として,18歳まで下げた方がいい,そして,その際の最大の条件はそれまでにきちんとした成人教育が必要であるという議論ですよね。だから,何もやらないで消費者教育も成人教育も従来のままで18歳に引き下げろという意見ではないわけですよね。まず,その点だけ確認したいのです。では,なぜ20歳よりも18歳の方がいいのかということがよく理解できないのです。   お答えいただく前に,この間のヒアリングのときに,高校のカリキュラムの中でそうした消費者教育とか成人教育は何かというようなことを学校ではできないのではないかと高校生が言っていました。成人教育というものは,カリキュラムを作って先生が何か授業で数学を教えるように教えるものとはやはり違うのではないかという感じがいたします。小杉さんはそういうことをよく御存じで授業もお分かりになるので,18歳に引き下げるとしたら,引き下げる利点は何か,さらに成人教育,消費者教育というのを本当に18歳までに学校,家庭,地域その他で,どのようにどういうことを教えられるのか,その点に関して是非教えていただきたいと思います。 ○小杉参考人 最初の点はおっしゃったとおりで,やはり18歳というのは教育等の整備を伴ってということでございます。18歳までにそうした人たちの教育をして一人前にするということを設定するメリットとして私が考えている点は,実効性も含めて二つあります。一つがやはり学校という機会が使えるということです。今のように20歳というのはだれも責任を持たないといいますか,大学は成人にそこでしようというようなプログラムをそもそも持っていません。高校のレベルは全人教育としてやはり大学よりもずっとそういう生徒指導面では機能しているところがあると思います。全体に対する影響力という意味でも,私は高校まで18歳まで教育を義務化することとセットにしたいというぐらいに思っています。高校に97パーセントの人が進学しているという状況ですから,高校はほとんどの人たちに対してほとんど影響力を与えられる機関と認められます。そういう機関が大人にすることのプログラムに対して責任を持つことができるというのが一つ大きなメリットだというふうに思います。現実に18歳を過ぎて労働市場に出ていて,それである意味では無知なまま,様々な劣悪な機会などに最も陥りやすい,そこから離れるのですから,彼らを救うために,彼らをエンパワーするという意味では,組織的な教育ができるこの高校というのが非常に役に立つのではないかと思います。   第二点は,そうした教育というのは,実は海外ではいろんな形でやられているわけです。基本的にはどこも義務教育終了時点というのに焦点があると思いますが,ドイツでの労働科というような形で労働者になるためのプレ教育をする。その中では仕事の探し方まで含めて現実的な教育をしている。あるいは,イギリスのシチズンシップ科というような形のものですね。そうしたものが単に教科書を使っての授業で,今は日本では公民のような形でやっていますが,そういう形ではなくて現実に労働市場との接点の中でインターンシップ等々も今始まっていますけれども,実際に就業先を探すというような行為の中で,あるいは実際に体験的な就業をする中で,プログラムがそこの中に組み込まれているわけです。多分現実的なところであり得るのは,今の高校生がどれだけアルバイトをしているのかということを考えると,アルバイトというような行為をとって彼らを身近なところでそこにおけるいろいろな事例を引きながら,労働者として自分はそういうときに何を考えたらいいかとか,あるいは何かあったそのときに一体公的な支援というのはどんなことがあるのかとか,そういう現実的な教育というのは彼らが実際にやっているアルバイトを通じて,アルバイトでやったことなどを吸収することの中でプログラムとして展開できるのではないかと思います。おっしゃるとおり,教科書で公民をやってもなかなか労働三権があるんだということは分かっても,それが自分にとって何なのかは伝わってこないけれども,それを現場でアルバイトに行ったのにお金をもらえなかったという事態とかを想定させて,そういうプログラムの中で体験を語らせながら教育していくということが高校の中でできるのではないかと私は期待しております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   では,始関委員お願いします。 ○始関委員 小杉参考人にお伺いをしたいのですけれども,この図表の見方の問題なのでございますが,図表3は一般労働者とパートタイムという分け方になっていまして,この一般労働者というのは正社員だという御説明を頂だいしたように記憶しております。それから図表5でございますが,これは常用労働者で正社員・一般と,それから常用労働者で非正社員・短時間というふうに分かれており,図表6ですと正社員とアルバイト・パートというふうに分かれています。最近は時間的には全く正社員と同じ時間,同じ日数働くけれども,正社員ではないという人,典型例は派遣労働者ですけれども,そういったものが相当数おり,また増えていると言われているわけですけれども,この派遣労働者というのはこの図表ですとどういう位置づけになっておるんでしょうか。 ○小杉参考人 まず,図表3の年間入職者というのは,これは基本的にはその事業所に直用している労働者のことを指しているので,派遣という場合には,これは派遣元が雇用しているのであって,派遣先は雇用していないので,ここには,この事業所の調査には入ってこないのではないかと思います。派遣の元企業に対しての調査の中ではカウントされておりますが,ここからパートタイマーの中に派遣労働者が入っているというのもなかなか言い難いところがあります。派遣にもいろいろな形があるので,雇用主である派遣元の会社にとってその人たちが登録型の派遣でこの1か月の間に例えば10日しか出てこなかったりすると多分パートタイムのところでカウントするでしょうが,それは派遣先の会社のパートタイマーではないですから,自分の派遣元なんですよね。そういう意味ではちょっとここの中で派遣を読み込むというのは別立てするというのはちょっと無理だと思います。そういう点では,次の図表のも同じです。事務所側からとるということはそういう形になると思います。図表6の場合は,これは私どもの調査で個人に聞いていますので,個人の中にはアルバイト・パートではなくて派遣という働き方の人もいました。ここではアルバイト・パートタイマー対正社員という比較で出しているので,派遣は外しています。派遣の場合には大体労働条件から言うと正社員とアルバイト・パートの間ぐらいのところに位置していたと思いますが,全体の数としては相対的には少なかったので,ここでは整理のために二つを取り出しているということです。 ○始関委員 よく分かりました。   それで,その高卒18歳,19歳で働く人たちのうち,派遣というのはどのぐらいの比率でいるものなんでしょうか。 ○小杉参考人 ほとんどいないのではないかと思います。ただ,いわゆる事務職の派遣などはほとんど短大卒以上ぐらいの学歴の方がほとんどですので,高卒学歴で事務職派遣というのはほとんどいないのではないかと思います。ほかには,製造現場への派遣になると多分高卒の方も入ってくると思います。一部新卒段階でも製造の派遣型の会社に採用される,あるいは請負会社に採用されるということが非常に景気の悪い2002年辺りには少しありましたが,今は非常に少なくなっていると思います。アルバイト・パート,アルバイターというのが一番多いのが高卒の状態だと思います。 ○始関委員 分かりました。 ○大村委員 3人の参考人のお話をいずれも大変興味深く伺いました。先ほどの今田委員の御質問とも関係するのですけれども,3人の参考人のうち,小杉さんは積極的に18歳というお考え方を示されたので,それは条件付きではありませんかという今田委員の御質問が出たのかと思いますけれども,私は小杉さんも含めて今日お招きした参考人のお話を伺っていて,こういう理解でいいのかどうかというのをまず確認したいのですけれども,労働市場では18歳以上,働いている人は既に大人として扱われているというのが実態なのではないかという印象を強く持ちました。   この先は質問なんですけれども,一つは藤井さんと種岡さんに対してなのですけれども,働いている方が自分で稼いだものについては自分が管理するのが原則だろうというスタンスでお2人の方はそれぞれおっしゃっていたように思うんですけれども,現に今そのように行われているという御認識なのかというふうに思います。民法の建前に従うとそれは必ずしもそうではないのかもしれませんけれども,現在の在り方というのを維持すべきだというふうにお考えなのかどうなのかというのを確認させていただきたいと思います。   それから,もう一つは小杉さんに対してなのですけれども,アルバイトについて親の同意などというのは実際には機能していないというような御指摘があったと思いますけれども,そのときの同意が機能していないというふうにおっしゃるのは18歳,19歳についてそのようにおっしゃっているのか,あるいは17歳以下も含めてのことなのかということについて確認をさせていただければと思います。 ○鎌田部会長 まず,藤井参考人からお願いいたします。 ○藤井参考人 現在のたてつけを維持するというのは民法の20歳未満について取り消し得るということを維持するということでございますか。 ○大村委員 というよりも,実態の問題として,18歳,19歳で就労されている方は,自分で獲得した収入については自分で管理をし,親が干渉したりするようなことはないという御理解だったように思うのですけれども,その状態が望ましいという積極的な評価をされているという理解でよろしいのでしょうか。 ○藤井参考人 それでは申し上げます。先ほどレジュメにも書かせていただきましたように,会社と個人との雇用関係というところから考えると,成年,未成年という区別は意識してございませんので,未成年の方であろうと給与支払対象者であって,税金を払って社会保険を払う以上,一つの経済的に自立した存在であるべきで,得た給与については個人が自由に処分して当然ではないかと思うのです。むしろそのことによって大人としての自覚を促し,それが社会責任への自覚,あと仕事への責任ということにもつながるだろうというふうにも思います。あと,実態としても,例えば自動車販売で先ほど親権者の同意を保証人欄を使ってとっているということですが,実際のところ登録時には車庫証明をとるときなどに親の同意が必要であったり,いろいろな場面がございますので,本人の名義で登録したり,親の名前で登録したりということはテクニック的にやっておりますけれども,それがために抵抗になっているというようなことはございません。あと,クレジットカード会社のクレジットカードの申込書には親権者欄が一個しかなくて,あれでいいのかなということも疑問に思わなくもないのですが,実際にはそれでほとんど通しているのです。実際に申込みを受けて親権者から取消しが来るかといえば,実際にはほとんどないというふうに聞いておりますので,民法の規定はありますけれども,ほとんどそれが差し障りになっていないようです。 ○鎌田部会長 種岡参考人お願いいたします。 ○種岡参考人 私どもの労働組合の内部のことだけで申し上げるならば,御自分の給料ですから,御自分で管理をなさるということで,現状の中では問題ないのではないかというふうに思います。ただ,これも繰り返しになりますけれども,私どものところには労働組合があって,会社との間で労使関係があって,きちんとした就業規則などが結ばれている。そういった上に立っての労働契約ということなわけで,そういった中にあるということが一つの大きな安心材料になっているということは言えると思います。企業の大小の問題だけではなくて,労働組合が組織されていて,きちんと労使関係があって労働協約が結ばれていて,きちんと賃金の支払なども約束される,そういう状況の中にあればそう大きな問題はないと思いますけれども,現実的には我々労働組合の立場でも労働組合をお持ちでない皆さんに労働組合を作っていただくとか,あるいは労働組合にお入りいただくということで,労働組合の組織を広げる活動もしていますけれども,現実的には労働組合をお持ちではないところも多いわけでございますので,そういった中で現実に18歳から働いている方もいらっしゃるということも事実なわけでありますから,そういう意味では18歳で働いていらっしゃる方にそれ以前に高校教育の中などで,例えば労働契約というのはどういうものなのかとか,あるいは労働に関する法制などをきちんと学んでいただいた上で社会に出ていくということも片方では必要なのではないかなというふうに感じています。 ○鎌田部会長 小杉参考人お願いします。 ○小杉参考人 16歳,17歳については調査のデータが何もないで,感触なのですけれども,学校によるとは思いますが,高校生の場合には高校の生徒指導というのはかなりしっかりしています。アルバイトを許可制にしたような場合にはきちんと親の同意をとらせるとかいう指導がありますので,16歳,17歳はある程度親のコントロール下にあるかなというふうに思います。 ○鎌田部会長 よろしいですか。   ほかにいかがでしょうか。それでは,宮本委員お願いします。 ○宮本委員 小杉参考人に伺えればと思いますが,今の御議論は,18歳を過ぎて未成年できちんと働いている人たちは,基本的に労働市場で自立しているというお話でした。そのことはそれでいいと思うのですけれども,この間二つの高校の聞き取りなどでも強く感じたところですが,高校生のアルバイトというのは相当程度広がっていると感じました。アルバイトで稼いだ金額がこの間聞き取っただけでも1人は8万円と言っていましたし,高校へ入ってからずっと3年間そのアルバイトをやっている人もいました。自分の必要なものはアルバイト収入で全部賄っているという例も少なからずあるわけですね。18歳で卒業して直ちに就職する人たちというのは,先ほどの小杉参考人の資料でも割合が低いのですけれども,現実には,アルバイトという形態で労働市場に入っている若者が相当いるという実態があると思われます。つまり,高等教育ユニバーサル化というのは,学生本人のアルバイトなしには成り立たない状態になっていると思われます。したがって,18歳で就職したかしていないのかという区分は,不正確なのではないかという感じがしております。   それからもう一点,先日の高校のヒアリングで感じましたことは,進学するに当たって,専門学校,短大,大学いずれの奨学金においても返済義務があるものですから,基本的にはローンを借りて進学するといっているわけですけれど,10年前と非常に違うなと思ったことは,契約自体,生徒本人が自分の名前で書いたという人もいれば,親が借りるけれども,卒業後は自分が返すというように,終了後は本人が返すという人たちが非常に増えていると思われます。要するに18歳を超えるとかなりの人が借金を抱えるということになります。その返済は後だけれども,借金を抱えるという意味ではかつての学生と大分状況が違っている。つまりアルバイトもするし借金も抱えるという点で,経済主体となっています。ですけれども,本人たちは未成年であるので余りそういう自覚がなく,社会全体としても経済的な主体としては半人前だと,半人前扱いしているという問題があるのではないかと思われるのです。小杉参考人が今日労働市場の問題をおっしゃっていたのですけれども,17,18歳から22,23歳あたりというのはきっぱり区分できるものではないのではないかと思うのですが,いかがでございましょうか。 ○小杉参考人 18歳で就職ではなくて進学してアルバイトしている学生については,全く同じで半人前の労働者扱いをされているけれども,きちんと労働者としての教育は18歳までにはその人たちにもすべきだというふうに私も思います。そこの点は全く,私が今回こういう形で資料を作ったのもそういう意味で,見落とされている学生をしながらのアルバイター,半分労働者という人たちが半分でも労働市場に入っている以上はきちんと自分を守れるだけの能力をつけなければいけないと思います。高校在学中については,調査をきちんとしていないのですが,学校の種類によって把握のされ方が随分違っている。学校それぞれの状態によって違うのではないかと思います。一方で,いろいろな形で要するに犯罪に巻き込まれる高校生たちが実はアルバイトというふうに本人は思っていろいろなところに入り込んでいるのも事実なので,そこが親の許可を得た労働だとはとても思えないようなところに入り込んでいますので,そういう点も含めて,18歳まで,本当は18歳まででは遅いのかもしれないですが,そこまでにはきちんと少なくとも親も学校も社会が全体となって彼らを,自分を守れるだけの知識を身に付けさせる仕組みを作らなければいけないと思います。そのためには,やはり教育効果がしっかり把握できる高校で是非それをやっていただきたいというふうに思います。 ○宮本委員 これもこの間のヒアリングで感じたことですけれども,経済的な自立の早さという点から言うと,いわゆるお受験をやっていない高校生たちは非常に早くに自立が始まるわけです。つまり相当早くからアルバイトしてかなり稼ぐようになっています。ところが,このように早めに自立が開始される高校生ほど,先ほどの18,19歳の労働市場のように,いつまでも完全に自立できないという状態が長く続いています。ここのところも問題があって,同じ若者といってもグループで非常に状況が違うということもわきまえた上で,とりわけ早めに自立が開始するのだけれども,なかなか完全な安定した自立に至らない人たちに対してきちんと経済主体として位置づけるということが必要ではないかという感じがしております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,仲委員どうぞ。 ○仲委員 少し性差についてお尋ねしたいと思います。今日参考人の先生方からお話いただいたのは,男性も女性もあわせた平均的な側面のところが多かったかなと思うのです。まず小杉参考人にお伺いしたいのは,部会資料16の図表5を見ますと,18歳,19歳の女性は18歳,19歳の男性に比べて所定内実労働時間が多い。しかし,支給される現金給与額は少ないということですとか。あるいは図表6を見ますと,例えば男性は高校卒の方も短大卒,それから大卒の方も,年齢が上がるにつれて年収が高くなっている。これに対して女性は大卒24歳以下では191万円とあるのですが,大卒25から29歳になると135万円と減っており,何か年齢が高くなっていくと給与が増えるとか,たくさん働くと給与が増えるというのとは違った数値になっているのかなと思うのです。性差ということから見た場合に,例えば経済的に活動を始める。始めてそれでだんだん年をとっていくわけなんですが,その見通しみたいなものが男性と女性でどう異なるのかということを小杉先生にお尋ねしたいです。   また,藤井先生,種岡先生にもお尋ねしたいのですが,藤井先生のところでは,未成年か成年かは関係なく,ともかく仕事をしていれば未成年ではない,成年か未成年かは関係がないというお話だったんですけれども,性別というところでは何か違いはないのかということも併せてお尋ねできればと思います。 ○鎌田部会長 それでは,まず小杉参考人からお願いいたします。 ○小杉参考人 今御指摘があったのは,図表6のアルバイト・パートのところかと思われます。ここで,1時間当たり収入のところを見ていただきますと,男性の場合18歳,19歳の高校生が大体730円から870円,940円とだんだん上がっていくのに対して,女性の方は760円,820円,890円となっており,上がり方がかなり鈍いという話ですよね。あるいは大卒なんかですと,24歳以下が960円なのに25歳以上になると890円に下がっていると。 これはやっている仕事の内容とか何かもあるのですが,やはり性役割の意識がかなり働いているのではないかと思います。私はインタビューなども数多くやっているのですが,女性の場合,フリーターで居続ける理由として,自分はキャリア志向ではないからというような発言がよくされるのです。ですから一時的な働き方でいい。収まるところは専業主婦というような気持ちがある。したがって,労働時間はどんどん短くなっています。長い労働ではなくて短い労働時間で一時的な働き方でという選択,そういう本人の中の意識のジェンダーもあるし,あるいは就業機会そのものも中高年パートという市場がありますから,女性には,そちらの方にだんだん移っていくというそういうものがあると思います。一方,男性は男性役割をどんどん高めなければならないので,労働時間もどんどん長くなりますし,賃金も高くなる。収入がなければ結婚できないですから,例えば結婚というような契機が男性の場合にはフリーターの終了時にきつくても正社員になろうという,そういうきっかけになったりする。間違いなくジェンダーはここで働いています。 ○鎌田部会長 藤井参考人お願いいたします。 ○藤井参考人 当社の場合,確かに資料上も採用計画上も男女の区別は一切なく,会社の立場からしますと,そういう区別はしてはいけないので,賃金制度上も性差というものは一切ありません。ただ,現状を見ますと,生産ラインも事務職,技術職も男性が圧倒的に多いので,実際上まだそんな性差の有無が社内で問われるような事態にもなっていないというのが正直言って実態かもしれません。 ○鎌田部会長 種岡参考人お願いいたします。 ○種岡参考人 東京電力の内部のことだけで申しますと,男女それぞれ別な労働条件あるいは賃金テーブルというようなことにはなっておりませんので,ここは男女全く同じ機会が与えられているんだというふうに思います。ただ,実態を申し上げますと,ここ何年間の間に様々な法律改正などもされましたけれども,女性に関して様々な就業上の制限などもございまして,結果的にそのことが社内の中での昇進を少し妨げている原因になったことは事実だというふうに思います。具体的に申し上げますと,原子力発電所のオペレーターをやるということになっても,少し前までは夜間の仕事は女性はできないということになっておりましたので,当然3交代でなければオペレーターはできない。そうするとオペレーターを統括する部門の部長になるということになると,やはりオペレーターの経験がなければいけないということになって,結果的になかなかオペレーターを統括する部門の部長にはならないというような実態はございましたけれども,ここ何年かの中で相当法律も変わってまいりましたので,これからは余りそういう意味での差はなくなっていくのではないかなというふうに思っています。 ○鎌田部会長 ほかにいかがですか。それでは,氷海委員お願いします。 ○氷海委員 種岡参考人にお聞きしたいのですが,私は部会資料18を見て驚いたのですが,新入社員の約50パーセントが高卒であるという点です。これはやはり企業として,意図的に50パーセントは高卒ということが必要であるのでしょうか。それと二点目は,地方によって違うかもしれないけども高卒の倍率ですね。大きな企業での高卒のこれだけのパーセントをとっているときの試験の倍率と,先ほど言った新入社員の50パーセントを高卒としている意図ですか,その二点について御質問いたします。 ○種岡参考人 これは企業の政策なので,余り労働組合として感想を述べる立場にないのかもしれません。しかし,職場の実態を申し上げますと,先ほど申し上げたように電力設備の調達から建設,あるいは流通設備の建設から調達から,その運転保守ですとか,あるいは販売から集金までと,非常に幅広い仕事がある中で,やはり高校を卒業なさって会社に入っていただいて,会社に入ってから現業の技術,技能を身に付けていただくということの方が合っている仕事の割合が多いのではないかと思います。大学を出てきたからできないということでは決してありませんけれども,むしろ若いうちに入っていただいて,現場の仕事についていただきながらOJTを含めてスキルを高めていくというようなことに適している仕事が割合多いのではないかというふうに私自身は思っています。   それから,どのくらいの倍率かというのはちょっと私たちは数字を持ち合わせておりませんので,お答えを控えさせていただきたいと思います。 ○氷海委員 ありがとうございました。 ○佐藤幹事 藤井参考人にお聞きしたいのですが,トヨタではトヨタ工業学園というところがあって,ここで若いうちから仕事をして,学生もやり仕事もするということをやっておられるということだったかと思いますが,トヨタ工業学園について簡単に御説明していただきたいのと,トヨタ工業学園と通常の高校生と何か違いがあるのか。例えば高校でどういうことをやっているのかが参考になるかもしれませんので,御説明いただけたらと思います。 ○藤井参考人 トヨタ工業学園は,職業能力開発促進法に基づいて認可を受けた認定職業訓練所です。ですので,実際にラインに入って実習もいたしますが,カリキュラムとしては学科教育などもございまして,技能教育は学校の資料を見ますと全体の時間の40パーセントで,そのうちの半分がライン実習となっております。あと,専門教育は自動車生産に係る生産技術に関する技能の習得と理論の取得というところになっておりまして,それぞれについてのいろいろな専門資格などが在学中に得られるようになっております。それなりの生徒手当が支給されていると聞いております。あと,基本的に全寮制で集団生活なども訓練をされておりまして,卒業生はトヨタ自動車にそのまま社員として配属をしております。現場では,早くから専門教育を受けているということもありますので,非常に意欲も高くて,工場の現場の核になる人材として非常に重宝されているというふうに聞いております。 ○佐藤幹事 どうもありがとうございました。 ○鎌田部会長 先ほど来話題になっているような法教育とか消費者教育などについては,特には意識されていないのでしょうか。 ○藤井参考人 特にそういう面での教育カリキュラムは意識されていないように思われます。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   おおむね予定の時間になりましたので,この辺で終了させていただいてよろしゅうございましょうか。   それでは,小杉参考人,藤井参考人,種岡参考人,本日は大変有益な御意見を賜りまして,大変ありがとうございました。   最後に,事務当局に次回の議事日程等について説明してもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,次回の議事日程について御連絡いたします。   次回の日程は,平成20年7月1日の火曜日,午後1時30分から午後4時30分まで,場所は法務省の第一会議室を予定しております。   次回は,発達心理学を御専門とし,特に青年期以降の発達についての御研究をしていらっしゃいます東北大学大学院教育学研究科の菊池武剋教授,思春期・青年期の精神病理学や引きこもり等についての御研究をしていらっしゃいます爽風会佐々木病院診療部長の斎藤環医師,当部会の委員で社会学の観点から若年者の御研究をしていらっしゃいます宮本みち子委員の3名からヒアリングをさせていただきたいと考えております。 ○鎌田部会長 それでは,法制審議会民法成年年齢部会第4回会議を閉会させていただきます。本日は御熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。 -了-