法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  平成20年7月4日(金)   自 午前10時00分                        至 午後 0時02分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進す        るという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事  (次のとおり)           議         題 ● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただ今から法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第16回会議を開催いたします。 ● まず,関係官の出席の承認の件をお諮りいたします。法務省保護局参事官の○○氏に関係官として本日の会議に出席していただきたいと考えております。と申しますのも,本日の議論におきましては,更生保護法の趣旨,解釈等について,御出席の皆様方から御質問等が予想されますので,その場合にはこれにお答えいただきたいと考えているからでございます。よろしいでしょうか。   どうもありがとうございます。   それでは,○○氏には本日の会議に御出席願うことといたします。   さて,本日の議論の進行につきましては,まだ皆様にお諮りしておりませんでしたが,本日の会議に先立ち,私と事務当局でテーマの案を相談いたしましたので,まずその案につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 事務当局から御説明申し上げます。   当部会におきましては,前回の第15回会議までに「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」「その他の社会内処遇及び中間処遇の在り方」「保釈の在り方」の各テーマにつきまして,それぞれ二巡にわたって御議論をいただいたところでございます。   そのうち「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」のテーマにつきましては,そのような制度を導入することについて前向きの御意見が多く,また,制度導入の法的位置付けにつきましては,執行猶予の条件とする案,あるいは,保護観察の一内容とする案を支持する御意見が多かったように思われるところでございます。   もっとも,社会奉仕に関するこれまでの御議論では,執行猶予の条件や保護観察の一内容とする案以外にも考えられる多くの法的位置付けごとにその当否等を幅広に御議論いただいたことや,時間の制約もあったことなどから,次のステップの御議論に移る前に,更に御議論いただくのが望ましいように思われます。   そこで,本日は,言わば二巡目の積み残しの御議論として「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」のテーマについて御議論いただくこととしてはいかがかと考えております。   具体的には,もとよりこれに法的位置付けの議論を限定する趣旨ではございませんが,これまでの御議論を踏まえますと,執行猶予の条件とする案と保護観察の一内容とする案を中心に「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」を御議論いただき,次のステップの御議論につなげていただくこととしてはいかがかと考えております。   そこで,皆様の御議論の参考としていただくために,既に配布資料22としてお配りしております「『社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否』の検討事項」と題する資料を改めて席上に配布させていただいております。 また,先ほど申し上げましたように,二巡目で御議論いただいた各法的位置付けのうち,最後に御議論いただいた保護観察の一内容とする案につきましては,時間が必ずしも十分ではなく,検討を要すると考えられる事項が多く残されているように思われますことから,皆様の御議論の参考とさせていただくため,考えられる論点を取りまとめた資料を用意させていただいております。 このような進め方で皆様の御了解がいただけましたら,今申し上げました資料につきましても,御説明させていただきたいと存じます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の御説明につきまして,質問がございましたらお願いいたします。   特にございませんでしょうか。   私といたしましても,本日は社会奉仕のテーマにつきまして,先ほど事務当局から説明のあったように御議論いただくのが適当だと考えておりますが,皆様の御意見はいかがでしょうか。   それでは,御異論もないようですので,本日は「社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否」について,執行猶予の条件とする案や保護観察の一内容とする案を中心に御議論いただきたいと存じます。   まず,その議論の前提として,先ほど事務当局から説明がありましたように,社会奉仕を保護観察の一内容とする場合の論点を取りまとめた資料を用意されていますので,その資料について御説明いただきたいと思います。 ● お手元に配布資料35として,「社会奉仕を義務付ける制度を更生保護制度において行う場合に考えられる論点について」と題する資料をお配りしております。   ただ今部会長から御紹介いただきましたように,この資料は社会奉仕を義務付ける制度を仮に更生保護制度において行う場合,具体的には保護観察の遵守事項とする場合の論点を取りまとめたものでございます。   まず,この資料の「1 社会奉仕を義務付ける制度として考えられる枠組みの概要」として,社会奉仕を保護観察の遵守事項として義務付けることとする場合に,当部会におけるこれまでの御議論等を踏まえまして,考えられる枠組みとしてⅠとⅡの二つを挙げております。   このうち,Ⅰは,現行の保護観察における遵守事項,すなわち一般遵守事項及び特別遵守事項とは別のものとして,例えば社会奉仕遵守事項という社会奉仕の義務付けに特化した新たな遵守事項を設けるという枠組みでございます。 法改正の具体的な内容としては,更生保護法に社会奉仕遵守事項に関する新たな条文を追加することになると考えられます。   Ⅱは,現行の保護観察における特別遵守事項の類型に,新たに社会奉仕を義務付ける類型を追加するという枠組みでございます。 法改正の具体的な内容としては,更生保護法第51条第2項各号の特別遵守事項の類型に新たな号を追加することになると考えられます。   今申し上げました両案は,社会奉仕を遵守事項として義務付けるという点で共通いたしますが,他方,現行の遵守事項とは別に新たな遵守事項の枠組みを設けるのか,それとも,現行の特別遵守事項の枠組みの中に収めるのかという点で,社会奉仕の位置付けを異にしております。   次いで,この資料「2 考えられる主な制度目的とそれに伴って生ずる論点」について御説明いたします。これは,社会奉仕を保護観察の遵守事項として義務付ける制度を導入することとする場合にも,その主な制度目的には様々なものが考えられますが,これまでの当部会における御議論等を踏まえまして,「犯罪に対する制裁」を目的とする場合や,「社会への償い」を目的とする場合,さらに,「対象者の改善更生」を目的とする場合の三つを挙げたものでございます。   このうち「①『犯罪に対する制裁』を目的とする場合」に関連して考えられる論点について,順に御説明いたします。   主な制度目的を「犯罪に対する制裁」とする場合には,一般に,保護観察の目的は,対象者の改善更生と再犯防止であると考えられていることや,保護観察処分少年や少年院仮退院者は刑事罰の対象とはされていないこととの関係で,以下のような論点が考えられるものと思われます。   まず,1番目の矢印は,対象者の範囲として,保護観察処分少年及び少年院仮退院者を含めることの当否等です。   2番目の矢印は,現行の保護観察が保護観察対象者の改善更生・再犯防止を目的としていることとの関係で,「犯罪に対する制裁」を目的とする遵守事項を,現行の保護観察制度と整合的に説明することができるのかどうかという点です。   3番目の矢印は,「犯罪に対する制裁」を目的とする遵守事項を,現行の特別遵守事項と同じく,行政機関である地方更生保護委員会や保護観察所の長が設定,変更及び取り消すものとすることの当否です。   4番目の矢印は,「犯罪に対する制裁」を目的とする遵守事項としての社会奉仕を一部実行した者は,刑事責任を部分的に果たしたと見ることもできますので,その後に再犯や遵守事項違反があり,その者が矯正施設に収容されるに至った場合に,既に実行した社会奉仕活動をどのように評価するのか,例えば刑期に算入するのかという点です。   また,「社会への償い」を目的とする場合につきましても,対象者の範囲,現行の保護観察制度との整合性,行政機関が設定,変更及び取消しをすることの妥当性等が論点になり得るものと考えられます。   続いて,「②『対象者の改善更生』を目的とする場合」に関連して考えられる論点について御説明申し上げます。   1番目の矢印は,憲法第18条後段が「犯罪に因る処罰の場合を除いては,その意に反する苦役に服させられない。」としていることとの関係で,「犯罪に因る処罰」としてではなく,「対象者の改善更生」を目的とする遵守事項として社会奉仕を義務付けることと憲法第18条後段との関係をどのように考えるのかという点です。   2番目の矢印は,1番目の矢印の点とも関連いたしますが,少年に対する保護処分は「犯罪に因る処罰」ではないこととの関係で,社会奉仕を「対象者の改善更生」を目的として遵守事項とする場合,これらの者を対象に含めることの当否です。   3番目の矢印は,社会奉仕を義務付けることが本人の改善更生に資することについての実証的研究の要否という点です。   以上に加えまして,「③ 上記①・②共通の論点」として,保護観察の遵守事項として社会奉仕を義務付ける制度導入の必要性,義務付けられることとなる作業の確保をどのようにして行うのかという点,この制度を導入した場合の実行態勢を掲げております。   配布資料の御説明は以上でございます。   もとより,お配りした資料に掲げております論点は,これまでの部会での御議論などを踏まえまして,当面考えられるものを挙げたものでございまして,部会での御議論をこの範囲に限定するという趣旨のものではございません。 ● 続きまして,議論の進め方について,何か御提案がございましたらお願いいたします。 ● もとより部会でお決めいただくことではございますけれども,議論の進め方について,事務当局から御提案をさせていただきたいと存じます。   仮に社会奉仕を保護観察の遵守事項とする場合,制度の目的のとらえ方によって,配布資料35の2の①・②に記載しておりますように,それに伴って生ずる論点も変わってくると思われます。したがって,制度の枠組みや目的をどのようにとらえるのかということと,これに伴う論点とを併せて御議論いただくのが適当ではないかと考えております。   また,この資料の2の③に記載しておりますが,制度の目的共通の論点もございますので,それにつきましては,更に別途御議論いただくのが適当ではないかと考えております。 ● ただ今事務当局から御説明を受けたわけですが,何か御質問がございましたらお願いいたします。 ● このペーパーを使っての議論の仕方は,今,○○幹事がおっしゃったとおりかと思います。私も制度の目的をどのように理解するかが大変大事なところだと思っておりますが,資料の2の①と②の区別の趣旨をもう少し説明していただければと思います。   と申しますのが,資料の2の②ですと,対象者ということで,主体の改善更生ということに主眼が置かれており,この部会においてもそのように議論が集約されていたと思うのですが,①については,文言だけ見ますと,客観的に「犯罪に対する制裁」あるいは「社会への償い」ということになっております。これは,恐らく,犯罪を契機として,犯罪者に対する制裁ということだと思うのですが,そこを確認させていただきたいと思います。   それと,①,②の関係なのですけれども,私の理解する限りでは,社会奉仕は,当然犯罪者の社会復帰,改善更生へと連動するものなので,「社会への償い」を①とし,「対象者の改善更生」を②として分けて整理することが適切なのか,やや分からない部分が残りますので,このような区別をされた趣旨を教えていただければと存じます。 ● ○○委員の御質問についてお答えしたいと思います。   まず,「犯罪に対する制裁」あるいは「社会への償い」の趣旨の御確認があったかと思いますけれども,この「犯罪に対する制裁」というのは,犯罪を犯したことに対する非難としての制裁というものとして理解をしております。もちろん,そのとらえ方についていろいろ御議論はあろうかと思いますので,そのように限定して御議論いただくという趣旨ではございませんけれども,一般的にはそういったことが考えられているのではなかろうかということで申し上げております。   さらに,「社会への償い」につきましては,観念的な意味で犯罪によって損害を被った社会に対して,象徴的な意味で,社会奉仕活動という形で償いをするといったことが一般的に言われているところですので,そういったことを踏まえて記載したものでございます。ただし,この「社会への償い」のとらえ方につきましても,いろいろと御議論はあろうかと思いますので,その趣旨を今申し上げたようなことに限定するものではございません。   次に,「社会への償い」と「対象者の改善更生」との関係についてでございますが,先ほど委員がおっしゃられましたように,「社会への償い」それ自体の意義を強調するとともに,この「社会への償い」を通じて「対象者の改善更生」を図るといった御見解もあろうかと思っております。したがって,その関係についてどのように理解するのかというのは,むしろこの部会で御議論いただく事柄であると思われますけれども,そういった点につきましては,一定の前提に立つのではなく中立的に記載をしたものでございます。 ● 2の①でいう「犯罪に対する制裁」ということの意味についてですが,ある処分が「犯罪に対する制裁」かどうかという問題については,その処分の法的な性格が何かという話と,その処分の目的が何かという話の問題とを分けて考えた方が良いと思います。例えば,ある処分の法的な性格としては「犯罪に対する制裁」であるとしても,その目的は「対象者の改善更生」であるというとらえ方は十分あり得るわけです。そこで質問ですが,資料の2の①に記載されている「犯罪に対する制裁」という言葉は,端的に言えば応報という意味で使われているという理解でよろしいでしょうか。 ● 先ほども申し上げましたけれども,もとよりこの「犯罪に対する制裁」については,今,○○委員がおっしゃったようにとらえる見解が一般的と思われます。もっとも,もう少し広義の「犯罪に対する制裁」といいますか,犯罪者に対する権利制約があれば制裁であるというようなとらえ方もあるかもしれませんので,仮にこの更生保護制度において,「犯罪に対する制裁」という目的で何らかの制度を導入する場合に,その「犯罪に対する制裁」というものは例えばどういうものが考えられるのか,今,委員がおっしゃったように,応報としての制裁なども許容されるのか,あるいはもっと広い意味での制裁でなければならないのか,あるいはおよそ無理なのか,いろいろ考え方があろうかと思いますので,そこはこの部会において御議論いただければと思います。 ● 仮に①にいう「犯罪に対する制裁」というのが法的性格の問題であるということだとすると,制裁であっても「対象者の改善更生」を目的とする場合があるとすれば,①と②が対立しなくなってしまいます。したがって,2の①で言っている「制裁」というのは法的な性格の問題ではなくて,制度の目的としての応報だというふうに限定しておいた方が,議論する上ではむしろ良いのではないでしょうか。 ● 私がこの資料を作成いたしましたので,本資料の趣旨を御説明したいと思います。   ①と②を分けた趣旨でございますが,制裁のとらえ方ということで今,御議論いただきまして,この資料を作成した趣旨といたしましては,これはあくまでもこの制裁というのは応報という趣旨でございます。応報を含む場合が①であって,応報を含まない場合が②というふうに基本的に考えております。例えば,応報を含んだとしても,副次的な目的として,応報と併せて改善更生を目的とすることは可能だとは思われます。ただし,更生保護法の場合にどうなるのかというその整合性の議論をする必要がございますので,この①の方につきましてはそのような形で特出しをしているという趣旨でございます。 ● 付け加えて申し上げさせていただきますと,今,○○委員の御疑問があった法的性格か目的かということでありますけれども,その意味で申し上げますと,恐らく委員のおっしゃっているのは,保護観察も一つの「犯罪に対する制裁」の性格を持つものの,目的は改善更生であるという御見解もあるということを踏まえて,法的性格か目的かというところをはっきりさせておかないと,仮に法的性格と考えてしまうと①と②が一緒になるではないかという御趣旨だと思われます。その意味で申し上げると,ここで言っている①,②というのは法的性格のことを言っているわけではなく,制度の目的のことでございます。   法的性格としては保護観察も「犯罪に対する制裁」であるという御見解があるのはもちろん承知しておりますし,それが一般的かどうか,そこまでは承知しておりませんけれども,そのような法的性格の問題ではなく,制度の主たる目的として,犯罪を犯したことに対する応報としての非難・苦痛を与えるという意味での制裁を加えるという目的と考えるのか,改善更生あるいは「社会への償い」と考えるのか,という意味での,制度の主たる目的による区別を考えたということであります。   更に付け加えさせていただきますと,①と②で分けたのはもとより便宜的なものでございますけれども,一般的には,恐らく保護観察の制度目的は改善更生だというのが一般的な御理解だと思われます。この点,○○委員からも御指摘がありましたように,「社会への償い」というのも,それを通じて対象者の改善更生を図ることを目的とすると考えるのであれば,「社会への償い」についても,②と同じである,あるいは②につながるではないかという御指摘もあるものと思われます。ただ,現行の保護観察には,一般的には,「社会への償い」というのは少なくとも制度の主たる目的としては入っていないように思われます。その意味で,現行の制度との整合性という観点からは,「社会への償い」という目的を正面から掲げた場合には,②とは若干異なる要素が入ってくるということで,分けた方がいいのではないかと思われた次第です。   もちろん,「犯罪に対する制裁」の目的や「社会への償い」の目的について,その中身をどう考えるのか,その上でそういう目的が適当なのかどうかということは,この場で御議論いただければと考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。御質問がございましたら,お願いいたします。 ● この論点整理では少年も取り上げられておりますけれども,この部会ではこれまで余り少年のことは扱ってこなかったのではないでしょうか。刑事施設という前提で物事を考えてきたような気がしますがいかがですか。 ● 御指摘のとおり,これまでの御議論では,刑事施設が主として念頭であったものと思われます。ただ,配布資料35でも「対象の範囲」ということで掲げておりますけれども,仮に更生保護制度の下で,遵守事項として社会奉仕を義務付けるとする場合に,例えば,現行の特別遵守事項は,少年も含めて対象にしておりますので,それと同じように考える必要があるのか,それとも,別個の考慮があるのかどうか,そういったところも含めてこの場で御議論いただければと考えております。 ● ほかに御質問はないでしょうか。   保護観察の一内容とする案,特に社会奉仕を遵守事項とする案について御議論いただく場合,この配布資料35に沿って,ただ今御説明のあったように御議論いただくのが,議論の焦点が明確になって適当であるように思われますが,そのようにしてよろしいでしょうか。   では,特に御異論もないようですので,そのように進めさせていただきます。   それでは,社会奉仕を義務付ける制度の導入に関し,執行猶予の条件とする案,それから保護観察の一内容とする案を中心に皆さんの御意見を伺いたいと存じます。保護観察の一内容とする案につきましては,先ほど申しましたように,この配布資料に沿って御議論いただきたいと思います。   それでは,どうぞ御意見を御自由にお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。 ● 配布資料35は「更生保護制度において行う場合」という見出しになっているわけですが,新しい更生保護法を拝見しますと,改善更生ということが各所で非常に強調されているように思います。総則においても,運用の基準として改善更生のために必要かつ相当な限度で行うということになっておりますし,さらに,保護観察の実施方法についても,対象者の改善更生を図ることを目的とするとあります。   この論点整理では,更生保護法に新たな条を追加するということが考えられておりますけれども,今挙げましたような規定と,言葉を強めて言えば抵触する可能性があるのではなかろうかという気がいたしますが,いかがでしょうか。 ● ただ今の点は,法制的な問題もかかわりますし,新たな制度をどのように組み立てるかということともかかわりますので,現段階で,抵触する,しないを事務当局の立場で申し上げるのは恐らく適当ではないと思われます。   まずは,どのような目的でどういう制度を作るのか,もちろん作らないのかということも含めて御議論いただくべきなのではないかと思います。その上で,法制的にどういう問題があり得るのかというところは,別途検討が必要になるかもしれませんが,今の段階でその質問に対してお答えすることはなかなか難しいと思います。 ● 自由な議論として述べれば,「執行猶予に伴う社会奉仕活動についての法律」というような別個の法律立ても考える余地があるのではないでしょうか。部会長が執行猶予の条件としてということもおっしゃいましたので,そういう意味ではこの保護観察からちょっと距離を置いた,実際にはそれはどうしても保護観察所の業務になるとは思いますけれども,そういう区分けも可能ではなかろうかと思います。 ● この更生保護の制度の中において議論する場合に,配布資料35を作成された方がどういうことを考えたのかということを想像いたしますと,社会奉仕というものが我が国にはまだないので,それについては,いろいろなイメージがあると思います。また,社会奉仕を義務付けるということになりますと,先ほど来ありましたように,制裁という言葉の意義を巡って,様々な議論があると思います。ただ,社会奉仕を実際に行って大変効果が上がっている国においてどう理解されているかといいますと,就労支援の一形態でありましたり,あるいは社会復帰を後見的に推進することが目的とされておりまして,それは正に自分では改善更生になかなか一歩踏み出せない人をバックアップをするという,対象者の改善更生を目的とする制度としてとらえられているというのが最大公約数の理解だろうと思います。   そういたしますと,法制上の条文の組み方というのが最後の問題だと思うのですけれども,私の第一の印象といたしましては,更生保護の制度の中で社会奉仕というものを入れていくことは可能ではないかと思います。 ● 配布資料35の2の考えられる主な制度目的というところは,実は更生保護制度の下において行う場合だけの問題ではなくて,執行猶予の条件として検討する場合にも恐らく同じことを考えなければいけないのかなという感じがいたします。   便宜上,①の方を応報モデル,②の方を改善更生モデルというような言葉で言いますと,執行猶予の条件として考える場合にも,制度の目的をどちらに寄せて考えるのかという問題があるのだろうと思います。仮に改善更生モデルの方に近づけて考えるとすると,それと更生保護の制度との関係というのはどういうことになるのでしょうか。いずれにしても実施態勢が必要になるので,それとの関係でどういう組み方が一番合理的なのかということを考えた方がいいのかなという感じがいたしました。   また,応報モデル的に執行猶予の条件として考えるというのも,あり得るような気はするのですが,そうなると,それをきちんと守らなければ,確実に執行猶予を取り消すというような態勢がきちんと組まれる必要があるのだろうなという気がするのです。その実施というのを,先ほど保護観察所という言葉が出ましたけれども,実際上,相当件数も増えるでしょうから,どうやってやるのかというのはかなり大変なことではないのかなという印象を持ちました。 ● どうもありがとうございました。   ただ今応報モデルと改善更生モデルという形で方向性の問題について御提示があったわけですが,これを踏まえてほかに御意見がございましたらお願いいたします。 ● 理論的な可能性としてはいろいろなモデルを検討してみるということは,もちろんあっていいのだろうと思いますけれども,ここの議論を私が理解する限りでは,専ら応報を目的として苦痛を与えるために社会奉仕を命ずるような制度を設けるべきだというような考えは余り出てきていないのではないかという気がいたします。   先ほど○○委員が整理してくださったように,社会奉仕を義務付けることの法的性格について,それを制裁と考えるかどうかということについてはいろいろな意見があるのだろうと思います。けれども,制度の目的として専ら応報を目的として社会奉仕を命ずるべきだという考え方というのは出てきていないのだとすれば,目的としてはやはり改善更生ということで制度を考えた方がいいのかなという印象を持っております。 ● 社会奉仕を義務付ける制度というのをこれから導入しようというときには,まず最初に導入しやすいもので,しかも効果のあるものから導入した方がいいと思うのです。そういう観点からも改善更生ということで考えた方がいいのではないかと思います。 ● 社会奉仕命令が現れた1970年代というのは,社会復帰概念が衰退したと言われた時代であって,これに代わって,ジャスティスモデル,言ってみれば応報モデルが台頭してきた時代であったと思うのです。そういう意味では,社会奉仕は,非常に複雑な状況の中で現れてきた制度であったということは事実だと思います。   しかし,70年代,80年代に,各国が社会奉仕を導入したときに,その実施に当たって配慮したことは,過剰な応報にならないようにということであったと思うのです。つまり,余り強い制裁にならないような形で社会奉仕を実施しようとしていたという印象です。そういう意味では,先ほど○○委員がおっしゃったように,資料の2の①の議論は,それほど生産的とは思えないです。 ● ただ今,社会奉仕の活動を改善更生の理念でやるという方向に行くのが適当であるというお話がされておると思いますけれども,現実の保護観察の形がどのようなものかということを御理解いただければという趣旨で申し上げるのですが,どのような形の社会奉仕の活動命令が想定されるかということによるとは思いますけれども,一般に言われているような,何十時間でありますとか,百何十時間公園の清掃でありますとか,公共の建物の修繕をするとかというような奉仕の活動について報告をいただいているところですけれども,そのようなこと等を考えた場合に,私どもの保護観察で現実にやっていることを考えますと,なかなか改善更生の措置としてやっていること等の間には相当の距離があるように現実問題としては考えられるかなと思うのでございます。   これもこれまでに御報告申し上げているところでございますが,社会参加活動というような名目で現に行っていて,それこそ私どもとしては改善更生の措置という趣旨でやっている現状,つまり,1日数時間を費やして,例えば福祉施設で何らかの奉仕の活動をさせるというようなことでございますけれども,それとのかい離といいますか,相当の違いがあるかなというのが現実としては感じるところでございます。 ● 今現状のお話をいただいたわけですが,それも踏まえて御意見をいただければと思います。 ● 私どもは,できるだけ施設内よりは社会内という観点でいろいろ議論してきたわけですが,新たな制度を作るときというのは,やはり先ほど○○幹事がおっしゃったように,いきなり大きなものを作ってもなかなか制度が根付かないと思うのです。今,現実には少年の社会奉仕活動がかなり効果を上げているというふうに伺っていますので,例えば若年層の成人で二十歳代とか,そういった人たちについて一定の犯罪を対象にするというような形でのやり方をしていくということで,小さく産んで大きく育てるというやり方の導入が最も望ましいのではないかなというふうに考えている次第です。 ● どうもありがとうございました。   現実的な形で立法する場面での制度設計の在り方についての御意見だと思います。ほかにも御自由に御発言をお願いしたいと思います。 ● 先ほどの○○幹事の発言に関する質問なのですけれども,少年の社会参加活動を現在実施しているということですが,仮にそれを特別遵守事項として行うとすれば,それは更生保護法第51条の特別遵守事項の中に組み入れることができるものと位置付けておられるのでしょうか。 ● 現行の制度の下で,どのように理解しているかということでございましょうか。そういうことでございましたら,先に保護観察との関係で社会奉仕の在り方が議論されたときに,当時の私どもの幹事からも申し上げたとおりでございますけれども,特別遵守事項につきましては,特定の犯罪傾向を改善するために設けるというような形以外に,一般的に何かをさせるということについては,この特別遵守事項の類型として制約もございますものですから,特定の犯罪の傾向を改善するためというふうに必ずしも言えない,この社会奉仕の活動につきまして,あるいは社会参加の活動について,この特別遵守事項で義務付けてやるのは難しいというふうに考えております。現状も少年につきましては,そのような活動が社会に対する参加の気持ちでありますとか,あるいは自尊心の向上とかという目的があり得るかもしれないということで,本人の自発的な意思といいますか,任意の活動という位置付けにおいてやっております。実は非常に効率が悪くてなかなか難しいんですけれども,そのような形で現行の制度ではやっているものというふうに考えております。   それから,そのような効果があるものと考えてやっているということでございますけれども,現状の社会参加活動そのものに,その改善更生にどの程度の効果があるかということについての具体的な検証というのはいまだなされていない状況ではございます。 ● そうしますと,特別遵守事項にはできない理由は,少年の社会参加活動というのは,更生保護法第51条第2項の「対象者の改善更生のために特に必要と認められる」という要件を満たさないからということなのでしょうか。それとも,そもそも特別遵守事項というものは特定の犯罪傾向を解消するためのものに限られており,社会参加活動はもっと広い意味での改善更生を目的としているから駄目なんだという話なのでしょうか。 ● 法制的な問題になりますので,私の方からお答えをさせていただきます。   まず,社会奉仕活動を特別遵守事項で義務付ける場合において,条文といたしましては更生保護法第51条第2項が問題になります。同項は,第1号から第6号までございます。可能性があり得るとしますと,まず第6号でございまして,「その他指導監督を行うため特に必要な事項」と規定しております。これはバスケット規定でありまして,しかも社会奉仕というのがいわゆる無償労働を義務付けるということになりますと,このようなバスケット規定で行うというわけには多分いかないと思います。実際に,その更生保護法案の制定作業におきましても,社会奉仕活動を6号ではできないというふうに理解して説明しておるところでございます。   そこで,可能性があり得るとしますと,これは4号でございます。4号は,「医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。」と規定しております。この4号というのはいわゆる処遇プログラムを受講することを義務付けるものでございます。更生保護法のこの特別遵守事項におきましては,第51条第2項柱書きにありますとおり,「保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において,具体的に定めるもの」とされており,要するに必要性について厳密な精査が必要であるとされていることから,非日常的な特別の作為を義務付けることを内容とする4号におきましても,条文にあるとおり,義務付けられる内容が,医学的あるいは科学的な専門的知識に基づく犯罪的傾向を改善するためのものでなければならず,それが体系化された手順による処遇としてのものでなければならず,それが法務大臣の定めるものを受けたものでなければならないというふうに要件が厳格化されているところでございます。   このような要件が厳格化された特定の犯罪傾向を改善するためのプログラムの中に社会奉仕活動が具体的に位置付けられるのであれば,それは可能だと考えております。   しかし一般的に,特定の犯罪傾向を改善するためのものではない,例えば「社会への償い」のために社会奉仕活動をさせるという場合には,これは特定の犯罪傾向とは関係ないものですから,この4号で行うことはできないであろうというふうに考えております。 ● 細かい話になって恐縮ですが,そうすると,現在,少年に対して社会参加活動をさせているのは,「社会への償い」ということではなくて,当然その少年の改善更生のためだと思うのですが,その上で,社会参加活動をさせることが少年の改善更生に特に必要と認められるという場合があるとしても,それは,4号の特定の犯罪傾向を改善するためではないから,4号には入らないという理解でよろしいわけですね。 ● はい。そういうことです。 ● ということは,新たな号を第51条第2項に追加すれば,社会奉仕活動それ自体を特別遵守事項にすることも理屈上はできるわけですね。 ● もちろん,理屈上はできます。ただし,4号のように非日常的な特別な作為を義務付けるものについて,それなりの要件をやはり限定しなければならないと思いますし,あるいはそれが改善更生のために特に必要だというふうな実証的研究というものも必要かどうかというところも含めて御検討いただくことが必要だと思いますけれども,そのような要件をどういうふうに見るのかとの見合いで,可能性としてあり得るかといえば,それは可能性としてはあり得るだろうというふうには思います。 ● 立法論として本条の中に入れるということは不可能ではないということですよね。 ● 要件と実証論がきちんとクリアできればということでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 質問なのですけれども,例えば成人で常習窃盗を繰り返している場合で,その理由が,無職であったり,あるいは定住場所がないというときに,一定の就労援助のような形で社会奉仕をさせるということは,この条文を見ますと,第51条第2項の柱書きにも該当しますし,4号のそれが教育学か社会学かどれに当たるかよく分かりませんけれども,広い意味で特定の犯罪的傾向を改善するためのプログラムとして十分理解できるのではないかと思うのですが,そういう理解は取られていないのでしょうか。 ● それが科学的に実証されるといいますか,専門的知識に基づく犯罪的傾向を改善するためのものという要件に当たるかどうかという研究がなされているわけではございませんので,現段階において,直ちにそれが言えるかどうかはちょっと考える余地があるかと思います。   常習累犯窃盗の就労支援,ただ就労支援のための社会奉仕活動ということになりますと,逆にまた要件が必要になってくるのだろうと思うのです。つまり,ただ常習累犯窃盗の者に対する就労支援のための社会奉仕活動ということになりますと,それが就労支援に役立つようなプログラムでなければならないと思われます。   ですから,そこのところのきちんとした要件化を図って,それが実際に有効であるということが言えるかどうかということをこれから研究する必要があるのではないかと思います。 ● 実証的研究というのは,どこまでの精度をもってそのプログラムの効果を判断するかというところに帰着することになろうかと思っており,それは非常に難しいということはかねてから○○委員から御発言があったところだと思うのです けれども,例えば,就労支援ということに限定いたしましても,特別に普通の人がやっているような仕事として認識されるものをさせることに限定する必要はないように思われます。諸外国でやっているものとしましては,地方に行きまして,地方公共団体で必要なサービスをするのだけれども,成り手が少ない領域ないし地域では,図書館や市役所等でサービスをさせるということも,相当の効果があると説明されています。日本とほかの国とで基盤が違うわけではないと思いますので,素人の考えで言いますと,実証的研究というのをあえてこれから日本でしなくても,相応のプログラムを組んで,最初はパイロット的なものかもしれませんが,やってみるということが先ほど○○委員もおっしゃったように今回の諮問の目的に沿う方向ではないかと思います。 ● どうもありがとうございました。   この実証的研究というものの持つ意味について何かコメントがございましたら,お願いいたします。 ● 現在行われている社会参加活動に対する法的根拠は何かということについては,どのようにお考えですか。 ● 今の社会参加活動というのは,これは義務付けをして行っているものではございません。対象者の了解を得てやっているところでございます。ですから,これは保護観察の指導監督の一環,あるいは更生保護法第56条に規定する生活行動指針としてこれを取り上げて任意で行うということはあり得ようと思います。ただ,これまでのところとしましては,指導監督の一環として任意で行っていたということでございます。 ● もし,その社会奉仕ということを今回入れるとした場合に,同意を得れば義務付けではないということになり,指導監督の一環としてやるということも可能だということになるのでしょうか。 ● そういうことでございます。 ● 先ほどの実証的研究の必要性ということなのですが,例えば先ほど言われた第51条第2項第4号に規定されているプログラムというのは,日本である程度試行的にやってみて効果が出てこないと,4号には入れられないという御理解なのでしょうか。 ● 実際に現在プログラムとしてこの第51条第2項第4号,これで行うためのプログラムというのは,性犯罪者処遇プログラム,覚せい剤などの薬物の関係のプログラム,それからアンガーマネジメント,暴力的傾向を改善するというプログラム,この三つがございます。   そのうち,まず薬物に対するものにつきましては,これは簡易の尿検査と,それから断薬教育みたいなものを組み合わせて行うものでございますけれども,これにつきましては,もう10年以上前かと思いますが,任意で薬物を断たせるための実証的な取組として,任意で簡易の尿検査を受けることを対象者に勧めて,承諾の下に尿検査を受けると。そして,例えば毎月1回それを受けて,それでやはり自分は尿検査でマイナスになったということで,自分が断薬していることについて理解していただけますよねと,あるいはそれで達成感を得られますねというような,そういう積み上げがございました。そのような積み上げの中で,これはやはり役に立つということで,実際にそのプログラムが策定されたものでございます。 それから,それは実証的研究ということで,ただ今手元にあるように本なども出しておるところでございます。   次に,暴力的傾向を改善するものでございますが,これにつきましてはアンガーマネジメントというようなことで,例えばカナダにおいて暴力事犯の改善のプログラムというのを実際にやっておりましたし,あるいは,その他諸外国の例を参考にしながら,こちらにつきましては学識経験者として国立精神・神経センター精神保健研究所の係官,それから早稲田大学の教育学部の教授の方,それから筑波大学の大学院の人間総合科学研究科の方,そしてまた実務家も交えて,実際にそのプログラムについての策定のための作業を行って,作り上げたものでございます。   それから,性犯罪者のプラグラムにつきましても,これも外国の例として,認知行動療法というのがございますけれども,その認知行動療法に基づき,実際の効果が上がっているという,これも欧米の研究だったと思いますけれども,そのようなものに基づきまして,また改めて日本の方でも学者,それから実務家が研究会を行いまして,またあるいは海外にも視察に行った上で,実際の効果検証を行って,それで導入しているという経緯でございます。 ● 現在,第51条第2項第4号でそれらのプログラムの受講が義務付けられているわけですよね。例えば,性犯罪者プログラムであれば,それが日本で実際に効果が出ているかどうかはまだよく分からないわけですから,結局は,外国での実施において効果が出ているということを踏まえてプログラムを作られたということなのだろうと思います。そうしますと,この部会でも外国の例については随分御紹介いただきましたけれども,その中では,社会奉仕活動を義務付けてやらせることによって改善効果が上がっているんだという報告も幾つかあったわけです。我が国でその効果について実証的な研究は行われていないわけですが,そのような外国の例などを踏まえ,社会奉仕活動を特別遵守事項の一つとして加えることとしても,それ自体は問題はないわけですね。 ● その辺のところにつきましては,なかなか難しいところもあろうかと思います。と申しますのは,実際に,法務省の研究官が海外の文献などに当たったところによりますと,イギリス辺りでは,これはちょっと具体的な研究の中で再犯率の比較を行っています。つまり,あるグループに対して社会奉仕活動を行わせて,それからあるグループには行わせなかった場合の再犯率の比較というのをやったものがあるそうでございます。その結果を見ますと,実際には再犯率については有意的な差異が認められなかったという研究報告もございます。   それから,逆に社会奉仕命令を言い渡された者と比較した場合に,再犯率はむしろ社会奉仕命令を与えた方が高かったけれども,これは件数が少ないから,それほど有意的な差異があるとは認められないというような報告もございまして,実際にそれをやるとなる場合には,いろいろな角度から検討しなければいけないと思います。海外の実情に関する研究をもう少しきちんとした形でやらなければいけないだろうと思いますことと,更に加えまして,どの犯罪に対してどのような処遇,どのような社会奉仕活動をさせるのが有効なのか,あるいはそれは例えば年齢的にはどの辺の層に対してやる必要があるのかとか,あるいは任意で今やっている社会奉仕活動につきまして,実際に実証的研究としてそれが効果が上がっているというものはないという状況でございますので,それについて改めて検証作業を行い,さらに,それを強制的に行わせた場合に,それが効果があると言えるのかというようなことも,ちょっとその辺のところをきちんとしたことがないと,その4号の並びとして,このような要件が厳しく絞られていることとの対比においてどうなのかというところは気になるところではございます。 ● 今の○○関係官の御発言は,大変すばらしい発言だとは思うのですけれども,先ほどの御説明では,例えば尿検査については任意のもので行ってきて効果があったから,更生保護法では遵守事項と位置付けて強制することにしたということでした。しかし,別の御説明では,少年の社会奉仕活動は任意のものであり,これを強制したら効果があるかどうか分からないので,社会奉仕活動については実証的研究はないという趣旨の御説明をされました。そうすると,尿検査を特別遵守事項とすることもできないということになるのではないかと思われますがいかがでしょうか。 あるいは,性犯罪についても,もし今後,外国で,認知行動療法によるプログラムには余り効果がありませんでしたというデータが出れば,特別遵守事項として義務付けることをやめるということまでおっしゃっているのでしょうか。   もちろん,制度の導入に当たっては十分な検討が必要ですし,実証的な研究に基づいて立法を行うということは大事なことだと思いますけれども,刑事政策の分野において,今後は,そういう厳しいハードルを設けるという方針でいくということを意図されているのかどうかですね。社会奉仕活動についてだけそのようなハードルを設けるということであれば,それはなぜだろうかというのが,私はよく分からないのですけれども,その点はいかがでしょうか。 ● まず,前段の覚せい剤の関係についてですが,尿検査を任意でやっていて,それで効果が上がったので,それを強制するプログラムが可能になったと申し上げたことと,それから,社会奉仕活動について,任意でやったことの効果が上がっているからといって,直ちにそれが強制的に行った場合に効果があるとは限らないと申し上げたことが矛盾するのではないかという御指摘かと思います。しかし,それは矛盾するわけではなくて,その任意で行った覚せい剤の検査というのは,これは極めて客観的に明らかに出てくるものでございます。 覚せい剤というのは,尿検査をすることによってやったかやらなかったかというのが直ちに明らかになるものなのです。それに対して,社会奉仕命令というのはそれによって効果が上がるかどうかということについては,まず,そもそもがボランティアなものですから,本人の任意の動機付けによって行うことによって,それが改善更生につながるというプロセスがあるのだろうと思うのです。   したがって,社会奉仕活動を義務付けることと,それから尿検査をプログラムの一環として義務付けることとは,やはり少し性質が違うのではないかというふうに考えております。   それから,後段の方でございますけれども,今回のことについて,社会奉仕についてのみ実証的研究を義務付けるのかというと,決してそういうことを申し上げているわけではございませんで,これは4号を導入する経緯なのですが,こちらとしても処遇プログラムを義務付けるということについて,極めてこれは重要な施策であると考えまして,それで立案当時には是非このような形のプログラムを導入することについて,もちろんこれは有識者会議の提言という形でもいただいていたところではございますけれども,そのような処遇プログラムを義務付けるということを何とか法制化したいというふうに考えてまいりました。   ところが,やはりいろいろな制度との絡み,特に第51条第2項のところにもありますように,改善更生のためということになると,しかもそれが非日常的な作為を義務付けるということになりますと,それは必要性が厳密に問われるだろうし,それから実証的にそれが科学的なものに裏付けられたものでなければならないということが法案の作成過程でございました。それで,その要件を厳しく求められたという経緯から,この4号においてはこのような非常に厳格なスタイルとされております。   要するに,私どもといたしましても,できれば余り実証的研究などということをしないで,処遇プログラムを義務付けるようなことを法制化しようとは思っていたのですけれども,なかなかそれが必要性あるいは相当性の範囲が認められるのかということで厳しく求められたところでございまして,それとの並びでやはり今回社会奉仕活動を義務付けるということになりますと,同様の実証的な必要性の研究,あるいは効果検証などということが求められるのではないかというふうに考えているところでございます。 ● 私は,実証的研究が必要ないと言っているわけではないのですけれども,第51条第2項には1号から5号,バスケット規定を入れると6号まであって,確かに4号については専門的知識に基づく処遇ということが強調されていることから,4号に社会奉仕を入れることができるかどうかというと,それは私も難しいと思います。しかし,それは4号の特性でそうなっているだけで,他の号が同じような実証的データに基づいて課されているものかというと決してそうではないと思います。もちろん導入しようとする制度が不合理なものであってはならないでしょうけれども,効果のあることがある程度合理的に期待できるのであれば制度を導入するということも当然あっていいことではないかと私は思っております。 ● 配布資料22の方の,1の④に関する議論を少し行いたいのですが,執行猶予の条件というようなことを考えました場合に,裁判所として社会奉仕活動の内容に立ち入って意見を述べられることは困難だと思いますけれども,時間の上限を示す,例えば,100時間以内の社会奉仕活動を義務付けるという判決は可能なような気がしますが,いかがでしょうか。 ● 制度の目的との関係で,裁判所が言いやすい事柄と言いにくい事柄があるという気がいたします。つまり,応報に近づけて考えていけば,それは先生がおっしゃるとおり,一定の時間を言うということは比較的容易なのかもしれません。他方,改善更生のためにということで考えますと,それが何時間以内であるかということについて,必ず適切な意見を言えるかというと,少し難しい面もないわけではないかなという感じがいたします。中身でなくて時間だけだということであれば,言えないわけではないかもしれませんが,そもそも改善更生のために社会奉仕活動をさせることが適切だということの判断が裁判時の資料で適切にできるかどうかということについてはやはり疑問に思うのです。 ● むしろ保護観察から切り離して,単純に執行猶予にするかどうか,実刑にするか否かに迷いを生じ得るような事案について,この際,社会奉仕活動を付加することによって,執行猶予の方に移そうというような御判断ですね。 あるいは,場合によっては罰金刑についても執行猶予する代わりに社会奉仕を命ずる。今,罰金刑の執行猶予は極めてわずかしか行われていないと思いますけれども,そういう点についていかがでしょうか。 ● やはり何のために,罰金刑と懲役刑,それに懲役刑の執行猶予もあるという中で社会奉仕を条件とする執行猶予の制度を導入するのかということと関係するような気がいたします。懲役刑にしても罰金刑にしても,どちらかといえば応報を基本に考えていると思うのですが,その一環のものとして考えるのであれば,それは可能かなという感じはするわけですが,ただ,それが本当に必要なのかどうかは別の議論が必要かと思います。 また,先ほどの○○委員の御議論では,そもそも社会奉仕について,応報をメインに考えている議論はしていないのではないかという御意見もあったところです。   これに対し,改善更生の方をメインに考えていくと,社会奉仕に適するかどうかという判断を裁判所として適切に行えるのかというところで疑問があるという趣旨であります。 ● 今の御発言との関連なのですが,執行猶予の期間の問題と社会奉仕命令の時間数の問題は全然違うというとらえ方なのでしょうか。   つまり,執行猶予の期間を言い渡すときの基準とか,考え方とかの問題と社会奉仕の上限を何時間と決めるのかという問題は全く性質が異なることになるのでしょうか。 ● 執行猶予に付するときと実刑にするときで,責任の重さが違うのかという議論が確か第11回会議のときにありましたが,やはりそれと関連する問題かなという感じがいたします。つまり,現状で執行猶予にしている場合については,やはり執行猶予にするにふさわしい責任ということを実務上は考えているような気がいたしますから,その社会奉仕についても,かなり応報モデルというか,仮にそういう必要性があるとして,応報を中心に考えていけば,その上限を決めるというのは可能であるような気はするのですが,改善更生をメインに考えていくと,時間数はもとより,そもそも社会奉仕に付すことが適切なのかどうかということの判断を裁判所が裁判時の資料で適切に行えるかというと,そこはやや無理があるのではないかと,こういう趣旨で申し上げております。 ● 今の○○委員の御発言でちょっと教えていただきたいのですけれども,拘禁刑に付すときでも,単に応報の面だけではなく,当然,改善更生も目指されているわけですよね。それは裁判時の資料で判断されているところですので,同じことが他の新たに設けられるかもしれない手段との関係では不可能というのはちょっと理解しにくいのです。要するに,執行猶予の意義をどうとらえるか以前の話として,拘禁刑,罰金刑の上限を決めるときにも社会的な非難に加えて改善更生が考慮されているわけですから,その判断枠組みを使うならば,社会奉仕についても同じことが言えて,上限何時間というのが言えなければいけないはずだろうと思います。 ● 拘禁する場合に改善更生の点も当然考えますが,メインで考えているのはやはりその責任に応じた非難ということであろうと,そういう趣旨で申し上げております。 ● ただ今の件に関しまして,何か御意見あるいは御質問がございましたらお願いいたします。 ● 現行法でも,4号の保護観察対象者については,特別遵守事項の設定に当たり,裁判所の意見を聴くということが規定されております。これは実際にはどういうふうにして,どの程度の意見を聞いておられるのでしょうか。 ● 4号というのは,いわゆる保護観察の4号観察,すなわち,保護観察付執行猶予のことをおっしゃっているのだと思われます。それについての条文は,更生保護法におきまして第52条第4項です。   第52条第4項は,「保護観察所の長は,保護観察付執行猶予者について,その保護観察の開始に際し,法務省令で定めるところにより,刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付する旨の言渡しをした裁判所の意見を聴き,これに基づいて,特別遵守事項を定めることができる。」と規定されております。   そして,平成20年5月9日付けの法務省保観第325号の矯正局長,保護局長の両名によります依命通達「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する事務の運用について」という通達に別紙2というのがございまして,そこに仮釈放者の場合もそうなのですけれども,「保護観察付執行猶予者等の特別遵守事項の標準設定項目」という欄がございまして,実際に標準設定項目として,例えば「犯罪又は非行に結びつくおそれのある特定の行動の禁止」というような項目が付けられまして,特定の者との交際の禁止として,具体的に暴力団について交際を断ち,一切接触しないことというような欄にチェックするような形になっておったり,あるいは暴走族について交際を断ち,一切接触しないことというところにチェックがあったりとか,あるいは飲酒の禁止のところについて,飲酒しないこと(断酒)となっていて,そこにチェックするといった標準設定項目がありまして,これが裁判所から保護観察所に伝えられてくる制度になってございます。 ● 今後は狭い意味の量刑だけではなくて,被告人ないし受刑者の扱いについて,やはり矯正・保護の機関と裁判所との協力が密接になっていくのではないかと思うのです。今日論じているような問題もある意味でその一環であるような気がいたします。 ● 先ほどの第52条第4項に関する説明の若干補足になりますけれども,裁判所が持っている情報を保護観察所に適切にお伝えするというのは,当然の責務だというふうに思っています。この第52条第4項の枠組みも,裁判所が裁判の中で分かる事柄というのも当然あるものですから,それらについては御参考までに保護観察所にお伝えするという仕組みになっているわけでございます。   ただ,その際に,実際にそれが改善更生に役立つかどうかということの最終的な判断をしているのは保護観察所であります。裁判所の意見というのは「基づ いて」となっていますが,これは要するに設定される項目が,その改善更生のために必要な限度を超えて,要するに過剰な権利制限になる場合もあり得るものですから,裁判所はその観点から意見を言うということになっています。ですから,場合によっては,裁判所の出した意見以外の事柄で保護観察所においてやはり付けた方がいいと考える設定項目があれば,今度は保護観察所から裁判所に求意見という形で回ってきて,裁判所がそれが過剰な権利制限になるということでなければ,しかるべくという意見を返すという枠組みになっているところでございます。   先ほどの私の発言が更生保護に関する事柄について,裁判所はタッチしませんというふうに聞こえたとすれば,それはやや本意ではないというふうに御理解いただければと思います。 ● 執行猶予の条件にするのか,保護観察の一内容にするのかという話なのですけれども,この部会の大体の合意としては,社会奉仕活動の義務付けは,対象者の改善更生を制度の主たる目的とするということ,配布資料35で申し上げれば,2の②を目的とした形で考えたらどうかということになっているように思います。その上で,どちらの制度が良いのかということについては,○○委員からのお話もありましたように,その改善更生の目的ということを考えたときに,それをどの程度具体的なものとして考えるかによって結論が違ってくるのだろうと思います。   個別的に,ある程度の改善更生の効果というのを見据えた上で社会奉仕活動を行わせるということでしたら,保護観察の枠組みに乗せた方が,正に専門家であるところの保護観察官が個々の事例ごとに判断しますので適切だと思います。裁判所にそこまでの判断を要求するのはかなり難しいのではないでしょうか。   逆に,今日の最初のころに,「社会への償い」ということの意味について,それは,社会への償いということを通じて最終的には対象者の改善更生ということを考えているのだというような意見がありました。そこで考えられている改善更生というのは,犯罪をして社会に迷惑を掛けたので,それに見合う社会奉仕活動を行わせることによって,自分の行ったことの責任を自覚させ,それが改善更生に役立つという,ある意味で抽象的な改善更生であろうと思います。そのような抽象的な意味での改善更生効果を考えるのであれば,それは裁判所が執行猶予の条件として付けるということもあり得るかなと思います。そうではなく,もう少し具体的なものとして考えるとすれば,やはり保護観察の枠組みに乗せた方がうまく回るのではないかなと思います。 ● 今の意見にかなり近いのですけれども,やはり保護観察に乗せるというのが一番実行しやすいと思うのです。だから,そういう意味では保護観察の条件にした方がいいと思うのですが,ただ,今ある特別遵守事項と全く同列でいいのかということになると,先ほどの議論を聞いていても難しいところがあるような気がいたします。   韓国の例なども参考にしますと,単純な執行猶予と保護観察付きの執行猶予のほかに,保護観察付き,かつ社会奉仕命令付きの執行猶予というようなものを設けており,その社会奉仕命令も裁判所が命ずる,それは保護観察の遵守事項というか,保護観察の中に組み入れるものとして社会奉仕命令をやりなさいというのを裁判所がそこで言い渡す形にして,全部保護観察所にお任せではない形のものができないかなと。   それで,実際には確かに判決前調査とかもないわけですから,どんなことをやるのかとか,そこまではいかないでしょうけれども,韓国の例などでは,弁護人がそういうものを求めたときに裁判所がそういう結論を出すということで,現実に求めもしないのに,そういう社会奉仕命令付きというものは出さないというような運用を行えば,同意などの問題も事実上クリアするでしょうし,そういう意欲がある人あるいは改善更生に役立ちそうな人にそういうものが言い渡されるという形で運用ができるのではないかと思います。ただ,それを立法論としてどこにどう組み込めばいいのかという点については,まだ考えられていないのですが,弁護人としてもそういうものがあれば,実刑にするのではなくて,まずそれをやってみてくださいと,この人はこういう意欲があって,改善更生に役立ちそうですと,だから保護観察付き,なおかつ社会奉仕命令付きでいいから,とにかく執行猶予にしてくださいと,特に再度の執行猶予というような場合に,そういうのを弁護人としては活用するというような形になるのではないかと思います。 ● 執行猶予の条件にするか,保護観察の条件にするかという選択肢のほかに,さらに,執行猶予付きで,かつ保護観察の一環として社会奉仕命令を入れてもいいのではないかという御意見と承ってよろしいでしょうか。 ● そのとおりです。 ● この論点に関していろいろ御意見が出ておりますが,ほかにいかがでしょうか。 ● 裁判所の考え方を聞いていますと,なかなか難しいようなニュアンスがかなり聞こえてくるのですが,実は韓国においては,導入して何年かたっていますけれども,裁判所の所長及び責任部長あるいは判事が,判事と保護観察所が一緒になって構成をして,定期的に会合を持って協議会を持つというやり方の中で,自分が言い渡した具体的な事件というよりも抽象的・一般的に,多くの犯罪者にどんなふうに保護観察所がやっているのかという情報を得ながら,これを繰り返しつつやっていくということで,先ほどかなり難しいことをおっしゃったけれども,できないかなと感じました。 ● 執行猶予も,かつては刑事手続の最終段階である刑の言渡しのところで登場するだけでありましたが,今回は即決裁判制度が導入されましたので,言わば非常に早い段階で意識されるということになりつつあるのではないかと思います。   その場合,即決裁判にするかどうかの判断は,検察庁で行われるわけですけれども,そういう場合に,社会奉仕活動という制度の存在が良い意味で影響を与えるか,そうでもないのかというのは予測しにくいですけれども,やはり制度に奥行きを与えることになるのではないかという気がいたします。 ● ○○関係官にお伺いしますが,憲法第18条との関係も御指摘されているようですが,この点について御意見ございましたらお願いいたします。 ● 憲法第18条は,御承知のとおり,「犯罪に因る処罰の場合を除いては,その意に反する苦役に服させられない。」と規定しております。そうしますと,まずそもそも社会奉仕活動というのが苦役かどうかという問題が当然あろうかと思います。これはもちろん御議論いただくべき話ですので,私の方で断定的に結論を申し上げるという趣旨ではございませんけれども,苦役ということになりますと,強制労働ということになれば苦役かなと思うのです。それから,ちなみにこの苦役というのは憲法の本をちょっと拝見しまして検討しましたところ,著しい苦痛を伴う労役に服させることを示すという見解と,著しいかどうかというのは,なかなか客観的に判断できるものでない,あるいは本人にとってどういうふうな苦痛を感じるのかは人それぞれであるということもあるので,この苦役の「苦」の文字には余りとらわれるべきでないという見解もありました。ですから,そこのところは御判断いただくべきかと思いますけれども,まず社会奉仕活動を義務付けられることが苦役に当たるのかどうか。それが意に反する場合に,「犯罪に因る処罰の場合を除いては,」というふうになってございますので,犯罪による処罰ということになりますと,それが保護観察というのは,これは犯罪による処罰ということとはちょっと異なるのではないかという論点がまず第一にあろうかと思います。   それから,もう一つ問題となってまいりますのは,成人の場合,仮釈放者にいたしましても,保護観察付執行猶予者につきましても,いずれも処罰に伴ってそのような保護観察が付されますが,少年の場合にはどうなのかという点です。少年の場合には保護処分でございますし,ましてやぐ犯少年のように犯罪をまだ犯していない者も含まれてございます。そういう者についてはやはり憲法第18条の問題が出るのではないかと思うのです。ただ,この点につきましては,少年を社会奉仕命令の対象としないということについて,今までそういう議論はなかったというふうな御議論があったかと思います。   ただ,現実には,先ほども○○幹事から申し上げましたとおり,現在の保護観察処遇における社会奉仕活動は,少年を中心に行っております。その少年を中心に行っている社会奉仕活動を実際にそれを義務付けを行うというふうにした場合には,またそれを少年に対して義務付けるのではなく,今まで保護観察処遇として社会奉仕活動をやらせていなかった成人に対していきなり義務付けさせるということも,一段階ステップを外しているような気もしないでもない,これは個人的な感想でございますけれども,そういうようなところも含めて御検討いただかなければいけないかなと思っています。   つまり,第18条の問題からしますと,成人はともかくとして,少年について問題があるとした場合には,仮に,社会奉仕を義務付ける制度の対象から少年を外すとなると,そこでまた新たにこれは憲法の問題とは別に,更生保護法との整合性が出てまいりまして,更生保護法は全部の保護観察について,統一的にこれを扱うというスタイルになってございます。それが成人に対して特化したような形の遵守事項を設けることが妥当なのかという論点も更に出てくるのではないかと思われます。その辺のところを御議論いただきたいと思います。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の点について,何か御意見がございましたらお願いいたします。 ● 苦役という問題は,最近,裁判員制度に関連して若干議論されているところでありますが,国際人権規約,市民的及び政治的権利に関する国際規約の第8条に「強制労働の禁止」の規定がありますけれども,しかしそこには幾つか例外が認められていて,市民としての通常の義務を果たすというようなことは強制労働に当たらないということが明記されておりますので,裁判員の方はそれで大丈夫だと思うのですけれども,社会奉仕活動についてはどう解釈することになるのか。やはり日本国憲法と同じように「犯罪に対する刑罰」の場合は例外とされていたと思いますので,その例外規定を少し弾力的に解釈する必要が出てくるのかもしれませんね。 ● ○○関係官に質問なのですけれども,例えば保護処分として保護観察に付せば,当然,保護司さんのところに行かないと駄目ですよね。少年院だったらその少年院の中でいろいろな教育活動を行うわけで,それも当然義務付けられていますよね。それが憲法第18条に反しないということについては,どのような御説明をされているのですか。 ● 少年法を所管しておりませんので,個人的見解であることを前提にしてお聞きいただきたいと思います。   やはり私としましては,少年院に例えば入ること,これは少年院において行うことというのは,これは利益処分とまで言うかどうかはともかくとして,少年に対する教育を行うという措置なので,これは苦役には当たらないという解釈をするのではないかと個人的に思っております。   それから,少年が例えば保護司あるいは保護観察所の保護観察官のところに,これを出頭義務といいますか,接触しなければいけないということが,更生保護法第50条に規定されております。したがって,これもやはり苦役ではないということです。つまり,義務付けられてはいるけれども,特にそこで労役を行うものではないから,苦役というカテゴリーから外れるのだろうというふうに理解しております。 ● そうだとすれば,少年に関しては,仮にこれを対象にして保護観察の遵守事項として社会奉仕活動に従事させるとしても,それは正に少年院での活動の場合と同様に,少年に対する保護処分は一種の教育だということで問題ないということになるのではないでしょうか。   また,成人に対する社会奉仕の義務付けについては,それは犯罪に対する処罰の一内容としての保護観察の遵守事項として社会奉仕活動を義務付けるということであれば,その点についてもクリアできることになるように思います。 ● そのような御議論もあろうかと思います。しかし,一方において,少年に対して行わせる場合と,それから成人に対して行わせる場合で,それが同じ社会奉仕活動を行わせているのにもかかわらず,それが苦役に当たったり当たらなかったりするということが,果たして法制的に可能なのかという問題は一つあろうかと思います。   それから,保護観察所に出頭させること,あるいは保護司の往訪を受けることとか出頭させることとかということ,あるいは少年院に入れることとやはり決定的に違うのではないかというふうに思われるのは,実際に労役活動を行っているかどうかではないかと思われます。   社会奉仕活動は,確かにそれは教育というふうに仮に言ったとしても,実際にやらせることというのは労務の提供をさせるわけです。例えば,それがごみ拾いにしてもそうでしょうけれども,あるいは社会福祉施設に行って,例えば車いすを引いたりすることも,それはやはり本来労働として行うべきものを行わせるということなのではないかと。なかなかその辺のところについてきちんとした説明ができるかということについては,御議論いただきたいところかと思います。 ● 社会奉仕活動がある場合に労役に当たり,ある場合に労役に当たらなくなるというのはおかしいとおっしゃいますけれども,それは保護処分と刑罰の性格が違うということであれば,別におかしくはないのではないかという気がいたします。   それから労働だから苦役に当たるということなのですが,労役というのをそこまで狭くとらえればそうなんですけれども,今の憲法第18条の解釈においては,恐らくもう少し広く積極的な行為を義務付けるようなものを指すと解釈されているのではないでしょうか。 そうすると,労働を義務付けているかどうかが,必ずしも,苦役に当たるかどうかの判断において決定的な違いになるとは思えません。 ● 実際にその労働に当たるにもかかわらず,それは苦役ではないというふうな解釈が取れるかどうかということはいろいろな御議論をいただかなければならないと思うのです。これは当然のことながら憲法の問題で,特に立案作業をするに当たっては内閣法制局の御見解も伺わなければならないところかと思っております。   それから,成人の場合には,保護観察は刑罰だからというお話がありましたが,保護観察それ自体が刑罰かというと,保護観察それ自体は刑罰ではないものですから,保護観察において行われる具体的内容は,これは刑罰とは言えないのだろうと思います。   そうしますと,その社会奉仕活動が元々の正当化する理由としての刑罰があるかないかによって,実際に行っている内容が労役であったり労役でなかったりするというのは,ちょっとまたそれも論理の段階をもう少し検討しなければいけないところがあるのかなというふうなことを個人的には感じておりまして,その辺のところも御議論いただきたいと思います。 ● 日本国憲法の解釈をするときにいつも思うのですけれども,この日本語に訳されたものに拘泥してしまうと,恐らく趣旨を狭く取ったり,あるいは広く取ったりするのではないかと思います。   「犯罪に因る処罰」という規定について先ほど「処罰に伴って」という御発言があったかと思うのですけれども,その規定の趣旨は恐らくそういうことだろうと思います。明治憲法の下において,行政庁が,司法手続による犯罪の認定を経ずに,その前の段階で不当な体刑等を加えていたということに対する反省として,この憲法第18条後段が作られたのだといたしますと,少年は別として,いったん犯罪の認定があった後,それを契機として一定の不利益的な処分を科すということは,憲法第18条後段の趣旨には全然反していないのではないかと思います。ですからこそ,○○関係官から御指摘のあった国際人権規約第8条も含めてなのでしょうが,例えばアメリカにおいても社会奉仕命令を科すことが憲法違反だという意見は聞いたことがございません。そういたしますと,そのような趣旨を踏まえ,「犯罪に因る処罰」の規定を形式的に解釈するのではなく実質的に解釈するべきでして,そうでなければ,ここでの議論は進まないのではないかと思っております。 ● 今の議論を前提として,実際,改善更生を目的とするということであれば,その社会奉仕が効果的であるためには,本人の意に反してやったのでは多分効果がないのだろうと思うのです。ですから,実際のところ,その社会奉仕を命令するというのはもちろん命令ではあるんでしょうけれども,命令されたら命令に服しますよという意味での同意はどこかで必要だろうと思うのです。だから,そういう意味で言うと,意に反して行わないという前提でむしろ考えた方がいいのではないかなという気がします。 ● 命令として出す,あるいは義務付けるといった場合に,常に承諾を前提とするかどうかという問題にかかわってまいりますが,これは法律論ということになると思いますけれども,いかがでしょうか。 ● 承諾というか同意というかは別ですけれども,明らかに意に反しているという場合には,やはり効果もないと思うんですね。だから,改善更生に効果があるというのはやはり本人にやる気があるということだと思いますので,むしろその社会奉仕を科するための要件と申しますか,事実上の要件の一つとして,本人が同意をしているということが必要だというふうに考えるべきだと思います。刑罰であれば,意に反してもということなんでしょうけれども,今の議論はそういうことではないと思いますので,何らかの形での同意があるという前提で考えた方がいいのではないかと思っています。 ● 現実問題としてはそのとおりだと思います。最初に制度を作り,動かすときにはそういうふうに事実上同意を取っていた方がスムーズだと思います。ドイツでもそうだったと思いますし,フランスでは強制労働に該当するということで同意を取っています。イギリスでは同意までは取りませんけれども,プライバシーに関する場合には同意を取っているということです。   しかし,理屈の面で考えますと,義務付けの段階では意に反するんだけれども,実際にやらせてみたところ,それが自分にとって非常にやりがいがあるということに目覚めて,極めて効果的に改善更生の実が進むということもあり得るかもしれません。ですから,将来のことを考えたときには,ここで議論しておくことは,その同意がなくても科せるかということではないかと思いますし,配布資料35で指摘された問題というのは正にそういうことだと思っております。   ですから,繰り返しですが,現実問題はおっしゃるとおりなんですけれども,理屈の面では意に反する場合でもいいのではないか,それが憲法第18条後段の解釈として許されると私は思います。 ● ○○委員の御意見に対して,何か御意見がございますでしょうか。 ● 先ほど○○幹事から韓国の例を御紹介いただきましたけれども,韓国でも必ずしも,弁護人が求めることが多いのですけれども,弁護人が求めなくても社会奉仕命令が言い渡されて,その結果,今度弁護人の方がそれは不服だということで争うようなこともあるやに聞いています。そういう意味でも,同意がない場合については本人は納得できないわけだから争うという形にもなるのかなという感じもするので,取りあえずは同意を条件としながらやっていくということが必要なのかなという感じがしております。   多分,同意を要件としなくても,恐らく同意が本人にとって大きな要素になってくるので,そこが納得できなければ争う場面というのは出てくるのだろうというふうに思います。 ● 先ほどの○○委員,○○幹事の御意見の中で,保護観察に付した上で社会奉仕命令自体は裁判所が命じるべきだという御意見だったと思うのですけれども,それとその同意を得るというのはどういう関係に立つのでしょう。ちょっとイメージがぴんとこないのですけれども。 ● 確かに韓国では同意がなくても社会奉仕命令は出されているようです。執行猶予は有罪判決ですから控訴できるわけですね。むしろ控訴して,社会奉仕命令を外してくれという控訴もあるようなのです。ですから,同意が前提ではないのだろうとは思うのです。   先ほどの議論に戻って,同意が必要なのかについては,法律上の要件としては,○○委員が言われたとおり同意が必要だということではないと私も思っています。 ただ,現実には同意があった方が効果があるであろうという意味で,もう明らかにこの人はやりたくもないし,やっても効果がないとみんなが思っているときに命ずるのはまずいであろうとは思います。 同意を取るというよりは,むしろ求めた場合に,あるいは社会奉仕命令が効果がある人に社会奉仕命令を科するのだというものを何らかの指針として,あるいは規則がどうか分かりませんが,実際にはその社会奉仕命令を科することによって効果がある人に社会奉仕命令が付けられるというようなものを設けるということなのかなと思います。   それで,韓国の例規の中には「同意」という言葉はないですけれども,社会奉仕命令が効果がありそうな人の要件がそこに書かれていて,それに従って裁判所が判決をしているというようなことだと思いますので,その中に同意があるというのも含まれるというような,だから同意を絶対的な要件にするかどうかというのはちょっと迷うところでは確かにありますが,明らかに意に反しない,あるいはその効果がないという者以外はということかもしれません。 ● 少し話がずれてきているかなという感じがいたします。問題となっているのは,憲法第18条後段との関係で,これから作ろうとしている制度の合憲性を説明できるかどうかということであるわけですが,恐らく新しい制度を作るときに,同意を絶対的な条件とするということを考えているわけではないのだろうと思うのです。そういうものとして合憲性が説明できるのかどうかということなのではないかと思います。そういうことだとすれば,私は先ほど○○委員が言われた御説明に全面的に賛成です。 ● 憲法との関連は,これまで,○○委員,○○委員などの委員がおっしゃったとおりかなと思われます。   また,同意が必要かどうかという点は,どちらかといいますと,社会奉仕を義務付ける場合の必要性の問題かと思われますが,○○幹事,その点はいかがでしょうか。その当人にとって社会奉仕が必要かどうかという判断をする場合の一つの資料であるというような理解でよろしいのでしょうか。 ● 整理し切れていないのですが,同意を絶対的な条件にするかどうかというのは確かに少し迷うところがあります。ただ,明らかに意に反している場合には恐らく社会奉仕には適さないのだろうと思います。 ● 話をぶり返すようですけれども,同意を義務付けの要件とするにせよ,しないにせよ,現実問題として,完全に拒絶している者に社会奉仕を行わせることは不可能だろうと思います。処遇プログラムも恐らくそうだろうと思うのですけれども,刑務所の中でも処遇プログラムを受ける人が嫌悪感を持っていて,そういうことを受けることについて拒否している場合には,事実上,プログラムの受講を強制的に行うことはできない。私は,社会奉仕活動も同じだと思います。法律を作るときにはどちらがいいかは議論する必要はありますけれども,現時点で余りそこを詰めても意味はないのではないかという気がします。   それからもう一つ,今日せっかく保護局の方が来られていて,非常に理路整然と御議論されていることは結構だと思います。   ただ,単純な疑問ですが,保護局としては,少年を対象にやっておられる社会参加活動というものをどうとらえておられるのかを改めてお聞きしたい。以前の御説明の中では,社会参加活動は非常にうまくいっている,成果が上がっているというふうな御議論であったようにも思えるのですが,今回の御説明では,これは苦役であって問題があるというふうな理解も持たれているように思えます。   また,最初に,科学的,実証的な研究のことをというふうにおっしゃったんですけれども,そういう科学的,実証的な研究を踏まえて社会参加活動をやられているのかどうかということを含めて,社会参加活動についてどういう評価をされているのかということですね。この点,少しまとめていただけますでしょうか。 ● まず,法的な整理の問題と,それから実際にやっている状況についての検証がどの程度なされているものなのかという問題も,なかなかそのときそのときの問題点に従って説明ぶりのニュアンスが違って伝わっているのかもしれませんので,その辺のところを整理しながら申し上げたいと思います。   まず,基本的にこれまで行っております社会奉仕活動というものは,先ほども申し上げましたとおり,任意で行っているものでございます。任意で行っているものでございますので,これについては特に実証的研究あるいは科学的な研究に基づいたものでなければならないというふうには考えておりません。したがって,実際に科学的な根拠あるいは実証的な研究に基づいて現在の社会奉仕活動がなされているのかといえば,それはなされておりません。   それから,若干誤解のないように申し上げたいところが一点ございまして,現在,保護観察で行われております社会参加活動というのは,社会奉仕のみを対象としているものではございません。つまり,例えばともだち活動と申しまして,少年が余り友達もいない,あるいは家庭に帰ったらばその家庭がもう崩れていてしまって,友達といえば悪い友達しかいないような,そういう子供たち,保護観察対象少年について,BBSが協力して社会参加活動を行っております。BBSというのは,御承知かと思いますけれども,Big Brothers and Sistersということで,青年による更生保護ボランティアでございますが,その更生保護ボランティアであるBBSがお兄さん,お姉さんの役割を担って,それで一緒にともだち活動に行ったりするわけですが,そのときに例えば一緒にカヌーに乗ってレクリエーションをするということもかなり多くあります。ですから,社会参加活動につきまして,その成果が上がっているとしても,それが直ちに奉仕を義務付けるところの研究になるわけでもないということも一応念のために申し上げておきます。   それで,現在,実際に行われている社会参加活動につきまして,いろいろな研究がなされております。具体的に申し上げますと,平成7年の2月に,保護観察官であります菅沼登志子という者が「社会内処遇における社会奉仕活動の研究」という論文を出しておりますし,保護観察官である染田恵の著作に係る「犯罪者の社会内処遇の探求」という論文もございます。このような形で研究をしていることは事実でございます。ただ,それが実際に例えば更生保護法第51条第2項第4号に当たるような,例えば処遇プログラムを基礎付けるときに実証した科学的な研究と同じレベルまでできているのかというと,それはなかなか難しいところでございます。   先ほども申し上げましたけれども,その菅沼論文によりますと,例えばイギリスの文献を当たりましたところ,なかなか社会奉仕が再犯率の面で効果が上がっているかというと,そうでもないというようなところもございます。あるいは,染田論文におきましては,これは科学警察研究所の研究をまた引用したりしているのですけれども,その科学警察研究所の係官,星野周弘という方の著作に係る「非行防止のための地域活動への参加と非行抑制因子の体得との関係」というような論文もございますが,これも実際には社会奉仕活動そのものを取り上げたわけではなくて,実際の世の中にいる少年たちが,これまで例えばクラブ活動をやったことがあるかどうかによって,非行因子との関係で顕著なものがあるのかどうか,要するに有効かどうかというようなことを検証しているのですが,そこにおきましても,実際には地域社会における健全育成活動や非行防止活動への参加状況は非行少年と非行のない少年とで大きく異ならないとされており,結論としては,一般的に地域活動への参加経験の有無や頻度によって非行をするか否かが直接的に決定されるとすることはできないというような結論が出ているというようなことがあります。現在どうしてもやるべきこととして,考えておるところとしては,このようなこれまでに行われていた研究の成果から社会奉仕活動あるいは社会参加活動に再犯防止あるいは改善更生に効果があるというところまではちょっとまだ認められていないので任意でやっているという,そのような状況でございます。 ● 少なくとも,少年に対する社会参加活動自体否定されるべきではない,むしろ好意的にとらえていいわけですね。 ● 任意で行うものとしては好意的に見ているということは事実でございます。 ● 我が国の社会参加活動の場合,当初もそういう論文があったと思いますけれども,いわゆるイギリスで行われている社会奉仕活動や,各国で行われている社会活動の一つの試みという認識で導入されたものと思います。その意味で,その成果が上がっているということは,一つの実証だというふうにも私には思えます。実証とは何か,あるいはエビデンスとは何かというのは大きな問題ですけれども,少なくとも,我が国でも,社会参加活動で社会奉仕ということがある程度根付いているということは言えるのではないかと思うのですが,その点での認識はどうでしょうか。 ● 確かに少年を中心として,実際に社会参加活動をやっていることは事実でございまして,それが根付いているという部分はございます。   実際の数字がありますので申し上げますと,これは平成18年度の社会参加活動の実施状況でありますが,先ほど申しましたように,これは必ずしも社会奉仕に限らない活動でございますけれども,平成18年度の全国の保護観察所の合計の数値は,対象者の人数といたしましては,1,395人に対して行われているということでございまして,これについてはいわゆる1号の少年,すなわち保護観察処分少年に対する関係がそのうちの大体81.6パーセントでございまして,2号の少年,すなわち少年院の仮退院者でございますが,166件ですので11.9パーセントになります。一応その他にも若年層の成人の保護観察対象者は89人程度で6.4パーセント程度でございます。これを大きい数字と見るかどうかは,いろいろな評価があろうと思いますが,一定程度根付いていると言えるだろうと思います。ただ,成人についてはちょっとまだその辺のところは,ただ今申し上げたように6.4パーセント程度ですので,ちょっとまだまだということかと思います。 ● 今の御説明の中で菅沼さんの御論文を挙げられまして,イギリスにおける社会奉仕命令の実情について,余り効果が上がっていないという御報告があったと思うのですが,多分,その方の使われているデータは1990年代前半のものだと思います。ブレア政権が誕生する前で非常に経済情勢が悪いときです。当時の,犯罪全体の情勢が非常に悪いときのデータでも,社会奉仕命令の効果はそこまで上がっております。それが,現在では,随分と改善されたということは,この部会でも報告しておりますので,是非背景となる時代が違うということを踏まえて,現状で評価をしていただきたいと思います。 ● もちろん,そのようなことも踏まえまして,実証的研究が必要ではないかということはおっしゃるとおりだと思います。 ● 恐らく,更生保護法ができたばかりですので,今また何かやらされるのかという気持ちが保護局にあるのではないかという気がしますし,あるいは実行態勢を考え,恐らく心配されているのではないかというふうに思われます。   私は,イギリスを始め,各国で社会奉仕が導入された経緯を見ますと,もちろんいろいろな問題があって,社会奉仕がいわゆるプロベーションになじむのかどうか等の問題が,かなり検討されたように思います。   ただし,先ほど申しましたように,社会奉仕命令が導入された当時というのは,社会復帰モデルが非常に厳しい批判を受けて衰退し,正義モデルが出てきた時代に行われたわけですけれども,そういう意味では,改善更生という意味も,現在では言ってみれば正義モデルの洗礼を受けたものである。言い換えれば,正義モデルのフィルターを通した改善更生という意味で今使われていると思うのです。 したがって,改善更生という意味は,やはり社会的な要請や,被害者からの要請,そういうものを含んだ改善更生としてトータルに見ているのではないかというのが第一点です。   それからもう一点は,恐らく各国が悩んだことだと思うのですけれども,従来は保護観察というと,1対1のケースワークというか,福祉的な意味でのケースワークも含めて,そういうふうにとらえてきたと思うのです。ところが,現代の社会内処遇というのはそうではなくて,むしろ社会をベースとしたというか,コミュニティをベースとした処遇だと思うのです。 そういう意味では,現代の社会内処遇は,1対1のケースワークという概念から離れて,社会の中で,社会との関係もつながりも含めて,あるいは被害者の目も意識した上で行われるべき処遇となったのであって, そういう意味で,社会奉仕の導入がこれまでの現行法制などになじむかどうかという議論も大事かも分かりませんけれども,恐らくここでの議論というのは次の時代を見据えた議論だと感じておりますので,その点も踏まえて是非御議論いただきたいと思います。 ● どうもありがとうございました。   本日の御議論はこの辺りといたしまして,また次のステップで御議論いただくことにしたいと存じます。   では,次回の議論について,事務当局の方で何か御提案がございましたらお願いいたします。 ● もとより審議の進め方につきましては,この部会において決定される事柄ではございますけれども,本日までの御議論を踏まえまして,事務当局の方で部会長と御相談の上,進め方の案を検討させていただき,その上で改めて皆様にお諮りさせていただければと考えております。 ● 私も,ただ今事務当局から御提案のあったようなところでよろしいのではないかと考えております。   この点につきまして,皆さんいかがでしょうか。   どうもありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。   次回の日時,場所等について,事務当局の方から御確認をお願いいたします。 ● 次回は,10月7日火曜日に法務省20階の第1会議室において会議を行う予定でございます。   開始時刻につきましては,午後1時からでございます。 ● ただ今御案内がございましたように,次回は10月7日火曜日に,法務省20階の第1会議室において会議を行うことといたします。   開始時刻につきましては午後1時からでございますので,よろしくお願いいたします。   本日も非常に充実した御議論をしていただき,ありがとうございました。   それでは,本日はこれで散会といたします。 -了-