法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  平成21年1月29日(木)  自 午後3時29分                        至 午後4時50分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から,刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事  (次のとおり)           議        事 ● ただ今から法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第18回会議を開催いたします。    (委員等の異動紹介につき省略) ● 今回の部会から委員,幹事となられた方が多くいらっしゃいますので,今後,充実した御議論をしていただくためにも,まずは,今回の部会に至るまでの議論の経過等について皆様に御説明することがよろしいかと存じます。   これまで委員,幹事であった皆様にとっては,言わば復習のようなものでございますが,どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,まず,事務当局から,この部会が開かれるに至った経緯,諮問の趣旨及びこれまでの当部会における議論の経過について説明していただきたいと思います。 ● それでは,御説明させていただきます。   平成18年7月26日に,法務大臣から被収容人員適正化方策に関する諮問第77号が諮問され,同日開催された法制審議会第149回会議において,その諮問については,まず部会において審議すべき旨が決定されました。そして,その会議において,その諮問を審議するための部会として,被収容人員適正化方策に関する部会を設けることが決定されたところでございます。   その諮問は,当部会の第1回会議において配布資料1としてお配りしておりますが,本日改めてお手元に配布いたしております。改めてでございますが,朗読させていただきます。   諮問第77号,被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から,社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否,中間処遇の在り方及び保釈の在り方など刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について御意見を承りたい。   以上でございます。   続きまして,今回の諮問の趣旨とこれまでの当部会における議論の経過について御説明させていただきます。   これは,諮問をした当時の話でございますが,刑事施設の収容人員数は,平成8年の収容人員総数が約4万9,000人であったのに対しまして,平成17年の収容人員総数は約7万9,000人になり,10年間で約3万人増加するなど,一貫して増加傾向にありました。その間,法務省におきましては,刑事施設の収容定員の増員等に努めてきたところでございますが,それにもかかわらず,平成13年以降,刑事施設の収容率は100パーセントを超す過剰収容状態が継続しておりました。   このような状況等を踏まえますと,刑事施設の収容能力の向上にとどまらず,これと併せて,刑事施設に収容しないで行う処遇等の充実強化についても検討する必要があり,そのことによって,犯罪者の改善更生,犯罪の予防という刑罰の目的の一つをよりよく達成しつつ,被収容人員の適正化を図ることができると考えられたところでございます。   また,窃盗や薬物犯罪を繰り返すなどして幾度も受刑する者が相当数存在し,平成8年以降,一般刑法犯検挙人員中の再犯者の人員・割合は増加し続けており,犯罪者の再犯防止及び社会復帰の促進が重要な課題となっておりました。   そこで,平成18年7月,法制審議会に対し,今回の諮問を行ったところでございます。   そして,当部会では平成18年9月から,これまで約2年半にわたり,ただ今朗読させていただきました諮問について御審議をいただいてきたところでございます。   具体的に申し上げますと,幾つかの大きなテーマに分かれておったところでございますが,社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否,その他の社会内処遇や中間処遇の在り方,刑執行終了者の処遇の在り方,保釈の在り方などのそれぞれ大きなテーマに関し,2巡にわたって幅広く御議論いただいてきたところでございます。   また一方で,当部会の○○委員を初めとする学者の先生方に諸外国の関連する法制度を調査していただきまして,当部会で御報告いただくなどしたところでもございます。   次に,これまで御議論いただきました内容を今申し上げましたテーマごとに申し上げたいと存じます。   まず,社会奉仕を義務付ける制度につきましては,これを刑罰として義務付ける考え方など,様々な考え方について議論がなされましたが,刑罰等として導入する考え方につきましては,直ちに御意見の一致が見られる状況ではございませんでした。   一方で,社会内処遇を充実させることにより再犯防止を図るという観点から,保護観察の遵守事項とするなど,保護観察の一内容として社会奉仕活動を行うという制度案につきまして,これを支持する御意見が多く見られ,今後,より具体的な議論を行っていくこととされたところでございます。   また,その他の社会内処遇や中間処遇の在り方につきましては,特に施設内処遇と社会内処遇とをより適切に連携させて,再犯防止・社会復帰を一層促進させるという観点から,様々な制度が検討されたところでございます。 その中で刑の一部の執行猶予を可能とする制度,すなわち,判決で懲役刑・禁錮刑を言い渡すと同時に,その刑の一部の執行を猶予し,必要に応じ保護観察に付すことを言い渡すということによりまして,一定期間の懲役刑・禁錮刑を執行した後,その残りの刑の執行を猶予し,保護観察に付すことも可能となる制度についても議論が行われました。   そして,一定期間の懲役刑・禁錮刑の執行による施設内処遇と,その残りの刑の執行猶予による社会内処遇とを適切に連携させて再犯防止を図る観点から,今申し上げました刑の一部の執行猶予を可能とする制度案を支持する御意見が多く見られまして,その制度案について,今後,より具体的な議論を行っていくこととされたところでございます。   刑執行終了者の処遇の在り方につきましては,例えば刑執行終了者に一定の支援的処遇を受けることを義務付けるという制度等が議論されましたが,直ちに御意見の一致が見られるという状況ではございませんでした。   また,保釈の在り方につきましては,諮問の趣旨を踏まえ,「被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から」,現行の保釈制度を見直す必要があるのかどうか,仮にあるとしたらどのような点についてなのかなどについて,最近の保釈や勾留の運用状況等も踏まえながら議論が行われました。   そして,その議論においては,例えば,勾留以外の方法によって,罪証隠滅や逃亡の防止を図ることによって保釈が広がる部分があるのではないかといった御意見や保釈の要件を見直すべきであるといった御意見など様々な御意見が述べられましたが,このテーマにつきましても,直ちに御意見の一致が見られるという状況ではございませんでした。   これらのテーマについての御議論はいずれも充実したものであり,今後,参考とされるべき内容を多く含むものでございましたが,ただ今申し上げましたようなこれまでの当部会における議論の状況を踏まえまして,前回の第17回会議におきまして,今後,当面は,保護観察の一内容として社会奉仕活動を行う制度と,刑の一部の執行猶予を可能とする制度について,それぞれの具体的な制度案をたたき台としつつ,より具体的な議論を行っていくこととされたところでございます。   そして,そのように二つの制度についてより具体的な議論を行っていくこととされたことを踏まえ,今後の審議をより一層充実したものとする観点から,これまでの法制審議会の刑事法関係の部会の構成等も参考として,法制審議会会長の御指名により,委員・幹事が拡充されたところでございます。   簡単ではございますが,以上が,当部会が開かれるに至りました経緯,諮問の趣旨,これまでの議論の経過についての御説明でございます。   なお,今申し上げました今後より具体的に議論をしていくこととされました保護観察の一内容として社会奉仕活動を行うという制度と,刑の一部の執行猶予を可能とする制度に関連するこれまでの議論の経過につきましては,後ほど,事務当局で作成させていただきました参考試案について御説明させていただく際に,より詳しく御説明させていただきたいと存じます。 ● ただ今の御説明の中でも触れられておりましたけれども,刑事施設の収容状況が,今回の諮問に至る一つの契機となっていると思われます。本日,統計も資料として用意されておりますので,最新の刑事施設の収容人員等について説明していただきます。 ● お手元に配布資料36として配布しております「統計資料13」について御説明いたします。   この2枚目を御覧いただきたいと存じますが,最新のデータによりますと,速報値でございますが,平成20年末の収容人員は,収容定員8万7,754人に対しまして,7万6,881人でございまして,その収容率は87.6パーセントでございます。うち,いわゆる既決に限った収容率は97.6パーセントとなっております。 ● どうもありがとうございました。   それでは,諮問の経緯,当部会の議論の経過等について事務当局からの説明がございましたが,その内容に関しまして御意見あるいは御質問がある方がございましたらよろしくお願いいたします。   特にございませんようですので,審議を進めさせていただきますが,先ほど事務当局から説明がありましたように,前回の第17回会議におきまして,今後,保護観察の一内容として社会奉仕活動を行う制度と,刑の一部の執行猶予を可能とする制度について,それぞれの具体的な制度案をたたき台としつつ,より具体的な議論を行っていくこととされました。   本日,皆様のお手元に配布してあります「社会貢献活動を特別遵守事項とする制度に関する参考試案」と「刑の一部の執行猶予制度に関する参考試案」という二つの参考試案が,ただ今申し上げましたように,今後の議論のたたき台として事務当局で用意した試案となります。   今後,この参考試案をたたき台として,より具体的な議論を行っていくこととなりますが,それに先立ちまして,その議論の進め方について皆様にお諮りしたいと存じます。 この点につきましては,私から提案させていただきたいと思いますが, 本日,参考試案を皆様にお示ししたばかりであることや,今回から新たに委員・幹事となられた方が多くいらっしゃることなどから考えますと,委員・幹事の皆様がこの参考試案を十分に検討する時間を確保する必要があると思われます。   そこで,この参考試案をたたき台として御議論いただくのは次回以降に譲りまして,本日は,事務当局から,この二つの参考試案の制度に関するこれまでの議論の経緯について,より詳しく御説明いただいた上で,その参考試案の内容について御説明いただくのが適当ではないかと考えております。   その場合,参考試案の二つの制度に関する個別具体的な議論は,次回以降に行っていただく方が,より充実した議論になるものと思われますので,本日は参考試案の制度に関する議論の経緯や,その制度の大枠について御質問等をいただくのが適当と思われますけれども,この点いかがでしょうか。 そういうことでよろしいでしょうか。   それでは,御異論がございませんようですので,そのようにさせていただきます。   先ほど簡単に説明がなされましたけれども,この二つの参考試案につきまして,それぞれの制度に関するこれまでの議論の詳しい経緯と,参考試案の内容につきまして,事務当局から説明していただきたいと思います。 まず,分量的にも多く,制度として議論すべき点が多いと思われます刑の一部の執行猶予制度につきまして,これまでの議論の詳しい経緯と,参考試案の内容について説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。 ● それでは,御説明させていただきます。   本日,お手元に配布資料37として,「刑の一部の執行猶予制度に関する参考試案」を配布しております。 先ほど説明させていただいた点と重なる部分もございますが,まずは,刑の一部の執行猶予制度に関するこの部会における議論の経過について御説明させていただきたいと存じます。   先ほども申し上げましたように,当部会におきまして,社会内処遇及び中間処遇の在り方について,特に,施設内処遇と社会内処遇とをより適切に連携させて再犯防止・社会復帰を一層促進させるという観点から,「施設内処遇後に継続して一定期間の保護観察を行うことを可能とする制度」について,様々な制度が検討されたところでございます。   具体的に申しますと,まず,その1でございますが,刑の一定の割合を経過すれば必ず仮釈放の処分をし,その仮釈放の期間,保護観察に付すという制度であります,いわゆる必要的仮釈放制度の導入でございます。その2が,仮釈放の期間を,残刑期間ではなく,再犯の危険性を標準として定め,その間保護観察に付すという制度であります,仮釈放の期間についてのいわゆる考試期間主義の採用,その3が,判決において,一定期間の懲役刑又は禁錮刑とその後の一定期間の保護観察の両方を言い渡すことを可能とするという制度であります,いわゆる分割刑制度の導入,その4が,懲役刑又は禁錮刑を言い渡すと同時に,その刑の一部の執行を猶予して保護観察に付すことを言い渡すことにより,一定期間の懲役刑又は禁錮刑を執行した後に,残刑の執行を猶予して保護観察に付すことを可能とするという制度であります,刑の一部の執行猶予制度の導入についてそれぞれ議論がなされました。   そして,その議論におきましては,主として二つの観点からの議論があったところでございまして,その一つが,これまで刑務所に入ったことのない者が犯罪を犯したが,現行の単純な執行猶予では十分ではないという場合について,どのような対処をすべきかという問題についての議論と,もう一つが,犯罪を繰り返す者が更に犯罪を犯したが,現行の仮釈放制度では十分な保護観察・社会内処遇を実施することができないような場合について,どのような対処をすべきかという問題についての議論という二つの局面についてそれぞれ議論がなされたところでございました。   具体的に申し上げますと,これまで刑務所に入ったことのない者が犯罪を犯した場合についての対処,やや長い表現ですので,この部会では「初入者に対する処遇」と呼ばれたものでございますが,これについては,いわゆる分割刑制度を導入したり,あるいは,刑の一部の執行猶予制度を導入することによって,まず,刑事施設に収容して施設内処遇を受けさせて改善更生を図った上で,その効果を維持すべく,引き続き社会内処遇による改善更生を図ることが,その再犯防止・社会復帰に,より有用かつ必要と認められる場合があるのではないかという御意見が多く見られたところでございます。   また,このような「初入者に対する処遇」の具体的な対象者としては,例えば,道路交通法違反の罪などの比較的軽い罪を繰り返し,初めて実刑に処せられる者,あるいは,執行猶予期間中に再び罪を犯して懲役・禁錮に処せられる者,あるいは,現行制度において実刑判決と執行猶予判決との境界領域にある者などが考えられるのではないかという御意見があったところでございます。   そして,犯罪を繰り返す者が更に犯罪を犯したが,これまでの仮釈放制度等では十分な保護観察を実施することができないような場合についての対処,これも少し長い表現でございますので,この部会では「再犯者に対する処遇」とされたものでございますが,これについては,現行制度では仮釈放が許されても残刑期間が短く,十分な保護観察を実施できない者について,一定期間刑事施設に収容し,所要の施設内処遇を受けさせて改善更生を図るのみならず,さらにその後相応の期間にわたり社会内処遇による改善更生を図ることが,その再犯防止・社会復帰に有用かつ必要と認められる場合があるのではないかという御意見が多く見られたところでございます。   また,施設内処遇の後に相応の社会内処遇を行うための方策に関する議論においては,その一つとして,裁判所が,判決において,施設内処遇と一定期間の社会内処遇を言い渡すこととする枠組みと,もう一つ別の枠組みでございますが,施設内処遇の状況を踏まえ,仮釈放の段階で,必要な社会内処遇の期間を決めるという枠組みについて,議論がなされたところでございます。   そして,今申し上げました前者の裁判所が判決時に判断をするという枠組みにつきましては,いわゆる分割刑制度の導入,あるいは,刑の一部の執行猶予制度の導入を提言する御意見がありましたが,この点については,裁判所が判決段階でそのような判断をすることができるのか,裁判所が判決段階で判断することを容易にするために,制度の対象者を罪名や刑期あるいは個人的属性によって類型化して導入することが考えられるのではないかという議論などがなされまして,対象者の類型化という点については,薬物の自己使用事犯のような場合が一つの類型として考えられるのではないかとの御意見が多く見られたところでございました。   また,今申し上げました2つ目の,仮釈放の段階で所要の社会内処遇の期間を決めるという枠組みにつきましては,仮釈放の段階で,残刑期間を超えて,社会内処遇の期間を決めることができるものとするのであれば,実質的に刑の事後的な変更に当たるので,その判断には裁判所が関与する必要があるのではないかという議論などがなされたところでございました。 そして,この議論の中で,刑の一部の執行猶予制度については,その導入を支持する御意見が多く見られたところでございました。   そこで,先ほども述べましたように,前回の第17回会議におきまして,そのような当部会のこれまでの議論の状況を踏まえ,今後は,刑の一部の執行猶予制度について,より具体的な議論を行っていくこととされたものでございます。   そして,議論のたたき台となる試案作成の御指示を事務当局へいただきましたので,このような当部会における御議論の状況を踏まえ,考えられる具体的な制度の概要を試みにお示ししたものが,本日お配りした参考試案でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,引き続きまして,参考試案の内容につきまして説明していただきたいと存じます。よろしくお願いします。 ● それでは,参考試案の内容について引き続き御説明させていただきます。   本日,お手元に配布資料37として配布しております「刑の一部の執行猶予制度に関する参考試案」を御覧いただきたいと存じます。朗読をさせていただきます。   刑の一部の執行猶予制度に関する参考試案   第1 初入者に対する刑の一部の執行猶予制度    1 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたときは,情状により,1年以上5年以下の期間,その一部の執行を猶予することができるものとすること。 (1) 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 (2) 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,刑法第25条の規定によりその執行を猶予された者又はその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者    2 1の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができるものとすること。    3 刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは,その刑を執行が猶予されていない期間を刑期とする懲役又は禁錮の刑に減軽するとともに,当該期間の刑の執行が終了した時点で刑の執行を受け終わったものとすること。    4 その他所要の規定の整備を行うものとすること。   第2 薬物使用者に対する刑の一部の執行猶予制度    1 規制薬物又は毒劇物の自己使用・単純所持に係る罪(以下「薬物自己使用等事犯」という。)を犯した者であって,上記第1の1(1)又は(2)に当たらないものが,3年以下の懲役の言渡しを受けた場合において,犯情の軽重その他の事情を考慮して,その薬物自己使用等事犯に係る犯罪的傾向を改善するために必要であり,かつ,相当であると認められるときは,1年以上5年以下の期間,その一部の執行を猶予することができるものとすること。    2 1の場合においては猶予の期間中保護観察に付するものとすること。    3 薬物自己使用等事犯を犯した者に対し,上記1の罪とその罪より重い刑が定められている他の罪とに係る懲役の言渡しをするときは,その一部の執行を猶予することができないものとすること。    4 刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは,その刑を執行が猶予されていない期間を刑期とする懲役又は禁錮の刑に減軽するとともに,当該期間の刑の執行が終了した時点で刑の執行を受け終わったものとすること。    5 その他所要の規定の整備を行うものとすること。   それでは,この参考試案の内容について引き続き御説明させていただきます。   まず,参考試案の第1でございますが,初入者に対する刑の一部の執行猶予制度についてのものでございます。 先ほど御紹介した部会での議論におきましては,比較的軽い罪を犯し,現行制度で実刑が言い渡される場合と執行猶予が言い渡される場合の中間の刑責を有するとともに,一定期間の施設内処遇と相応の期間の社会内処遇を実施することが再犯防止・改善更生に有用かつ必要な者に対し,その刑責を果たしつつ,施設内処遇と社会内処遇を連携させることができるよう,刑の一部の執行を猶予することができるものとする制度について,肯定的な御意見が多く見られたところでございました。   そこで,そのような趣旨の制度として,参考試案の第1に,初入者に対する刑の一部の執行猶予制度を掲げたものでございます。   そして,参考試案第1の1でございますが,これは初入者に対する刑の一部の執行猶予の要件に関するものでございます。   (1)の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」と(2)のうちの後段でございますが,「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても」,「その執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」という部分につきましては,現行刑法の第25条第1項による執行猶予の対象者と同一ということになります。   また,(2)のうち,「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,刑法第25条の規定によりその執行を猶予された者」という部分は,現行法の執行猶予判決を受け,執行猶予中の者を対象とするというものでございます。   以上の者につきましては,初入者又は現行刑法上初入者に準ずるものとされていることから,これを対象に掲げたものでございます。   さらに,参考試案第1の1は,このような対象者が,3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたときは,情状により,1年以上5年以下の期間,その一部の執行を猶予することができるとしております。   具体的には,例えばでございますが,懲役1年6月,うち懲役6月について2年間その執行を猶予するとの判決を言い渡した場合には,懲役1年6月のうち,まず1年について実刑として施設内処遇を実施し,残る6月については,2年間の執行猶予として社会内処遇を実施するということになります。   次に,参考試案の第1の2でございますが,執行猶予の際の保護観察に関するものでございまして,これを必要に応じて付することができるという,いわゆる任意的なものとしております。 初入者に対する刑の一部の執行猶予制度におきましては,その対象は,後に説明させていただきます薬物使用者に対する刑の一部の執行猶予制度のように,犯罪類型等により対象が限定されているわけではございません。   そこで,その対象者には,刑期の一部を実刑として施設内処遇を行った上,残りの刑期を所要の期間,執行猶予の状態に置けば足り,必ずしも保護観察による積極的な処遇を行う必要のない者も含まれることが考えられることから,保護観察を任意的としたものでございます。   次いで,参考試案の第1の3は,刑の一部の執行猶予期間経過の効果に関するものでございます。 現行法は,執行猶予期間経過の効果について,刑法第27条において,「刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは,刑の言渡しは,効力を失う。」としております。刑の一部の執行猶予制度においても,その執行猶予期間を無事に経過した場合には,現行法の刑の執行猶予制度と実質的に同様の効果を有するものとするため,裁判時に言い渡された刑について,「その刑を執行が猶予されていない期間を刑期とする懲役又は禁錮の刑」,すなわち実刑部分の刑期の刑に減軽するとともに,「当該期間の刑の執行が終了した時点で刑の執行を受け終わったものとする」としたものでございます。   これにより,例えば,刑の一部の執行猶予期間を無事に経過した場合であれば,いわゆる実刑部分の執行が終了した時が刑の「執行を終わった」時になりますから,そこから5年間が経過すれば,刑法第25条第1項の現行法の刑の執行猶予の対象者となり得るということになります。   また,同様に,刑の一部の執行猶予期間が無事に経過した場合であれば,いわゆる再犯加重の期間も,いわゆる実刑部分の執行が終了した時から5年間ということになります。   最後に,参考試案第1の4でございますが,その他所要の規定の整備を行うことが必要になるものと思われます。   引き続きまして,参考試案の第2の薬物使用者に対する刑の一部の執行猶予制度について説明させていただきます。   当部会におけるこれまでの議論におきましては,薬物使用者に対しては,参考試案第1の初入者ではないものであっても,その刑責の範囲内において,まず刑事施設において薬物への傾向性改善の処遇を行った上,引き続き,その効果を維持・強化するため,薬物の誘惑のあり得る社会内において,相応の期間にわたり適切な社会内処遇を十分に受けさせることができるよう,刑の一部の執行を猶予することができるものとする制度につきまして,肯定的な御意見が多く見られました。   そこで,そのような趣旨の制度として,参考試案の第2に,薬物使用者に対する刑の一部の執行猶予制度を掲げたものでございます。   参考試案第2の1でございますが,薬物使用者に対する刑の一部の執行猶予制度の対象や要件に関するものでございます。   まず,対象の犯罪である薬物自己使用等事犯でございますが,第2の1に記載されておりますとおり,覚せい剤,大麻,麻薬等の規制薬物やトルエン等の毒劇物について,その自己使用の罪や,営利目的でない単純所持の罪を対象としております。   その上で,そのような薬物自己使用等事犯を犯した者のうち,「上記第1の1(1)又は(2)に当たらないもの」,すなわち,初入者に対する刑の一部執行猶予の制度の対象とはならない累犯者が,3年以下の懲役の言渡しを受けた場合に,「犯情の軽重その他の事情を考慮して,その薬物自己使用等事犯に係る犯罪的傾向を改善するために必要であり,かつ,相当であると認められるとき」は,1年以上5年以下の期間,刑の一部の執行を猶予することができるものとしております。   このうち「犯情の軽重その他の事情を考慮して,その薬物自己使用等事犯に係る犯罪的傾向を改善するために必要であり,かつ,相当であると認められるとき」という部分でございますが,薬物自己使用等事犯を犯した者に対し,刑の一部の執行を猶予するかどうかを判断するに当たっては,刑期の一部の実刑による施設内処遇の後,その残りの刑期の執行猶予・保護観察による社会内処遇を行うことが,その者の刑責の重さや,薬物自己使用等事犯の傾向性改善による再犯防止・改善更生の観点から,必要であり,かつ,相当と認められるかどうかということが重要な判断要素になると考えられることから,これを要件とするのが適当と考えたものでございます。   続きまして,参考試案第2の2についてでございますが,保護観察を必要的に付するものといたしております。 この制度の対象となる薬物自己使用等事犯を犯した者に対しては,一般に,施設内処遇のほか,その効果を薬物の誘惑のあり得る社会でも維持・強化することができるよう,保護観察に付して薬物使用者に対する専門的な処遇プログラムを受講させることなどを通じ,より積極的な社会内処遇を行うことが,その再犯防止・改善更生に有用かつ必要と考えられることから,保護観察を必要的とするのが適当であると考えたものでございます。   次に,参考試案の第2の3でございますが,これは薬物自己使用等事犯とそれ以外の他の罪が併合審判されている場合に関するものでございます。   その内容でございますが,その他の罪の方が「より重い刑が定められている」場合には,刑の一部の執行猶予ができないものとしております。 これは,当部会における議論の状況を踏まえまして,より重い他の犯罪が併合審判されている場合には,その者の問題性の中心が薬物自己使用等事犯に係る犯罪的傾向にあるときのように,施設内処遇に加えて所要の期間社会内処遇を行うことが一般的に,その再犯防止・改善更生のために必要かつ有用であるとまでは言えないように考えられます。   そういたしますと,裁判所が,判決時に,その者に対し,刑の一部の執行を猶予することの必要性・相当性を判断することが必ずしも容易ではないと考えられることなどから,参考試案第2の3を設けたものでございます。   そして,参考試案の第2の4は,刑の一部の執行猶予期間の経過の効果について定めたものでございますが,これは第1の3と同様でございます。   そして,参考試案第2の5でございますが,その他所要の規定の整備を行うことが必要になるものと思われますが,これも第1と同様でございます。   最後に,この刑の一部の執行猶予制度の導入によって,現行制度に比べまして,刑責は重くなったり,あるいは軽くなったりするのかという点について御説明させていただきたいと存じます。   当部会での議論では,刑の一部の執行猶予制度は,現行制度に比べて,刑責を重くしたり,軽くしたりするものではないという御意見でございましたので,本日お配りした参考試案もそのような考えを前提として作成させていただいたところでございます。 言い渡される刑は,刑責の軽重に見合ったものが量定されるものと考えられますが,この点,例えば,第1審で懲役1年の実刑とされ,被告人が控訴し,控訴審で懲役1年6月,3年間執行猶予・保護観察付きとした事案につきまして,いわゆる刑の不利益変更に当たらないとした判例等でも言われておりますように,一般に,刑の軽重は,刑期の長さや,執行猶予の言渡しの有無等も含めた具体的な刑を総体的に比較して,実質的に考察するのが相当であるとされております。 このような考え方によりますと,刑の一部の執行を猶予する場合でも,現行制度に比べて刑責を重くしたり,軽くしたりせずに,犯した罪に対する刑責に見合った刑を量定することが可能でありますし,また,先ほど申し上げましたように,当部会での議論では,そのような刑の量定をするのが相当であるとされたところでございます。   具体的に申し上げますと,例えば,現行制度において実刑が相当な刑責を有する者について,この参考試案第1又は第2の制度によりまして刑の一部の執行猶予を言い渡す場合には,犯した罪に対する刑責に見合った刑の量定をするという観点から,実刑として言い渡す刑期を現行制度よりも短くした上で,残りの刑期の執行を猶予し,他方で,全体の刑期を現行制度より相応に長いものとして刑を量定することとなると考えているところでございます。   試案の内容の説明につきましては以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただ今の説明内容に関しまして,御質問をお伺いしたいと思います。御質問がある方がございましたら,どうぞ御自由に御発言いただきたいと存じます。   これからの議論の共通認識となることでございますので,確認等でも結構です。 ● 第1の1では,「その一部の執行を猶予することができる」となっていますが,この「その一部」というのは,5割程度が限度であるとか,1割より短いのは駄目とかといった制限のようなものは何か考えている,念頭に置いていらっしゃるのでしょうか。 ● この参考試案は,実刑部分をどれぐらいにするとか,どれぐらいの割合にするとか,そういう制限を設けるという趣旨を含むものではございません。そこについては,またいろいろ御議論があるかもしれませんが。 ● そうすると,試案としては,裁判所あるいは裁判官の裁量ということになるのでしょうか。 ● はい。 ● ほかにいかがでしょうか。   特にございませんようですので,また改めて後ほど御質問が出てくる可能性があります。そのときにお伺いしたいと存じます。   それでは,続きまして「社会貢献活動を特別遵守事項とする制度に関する参考試案」につきまして,これまでの議論の詳しい経緯と,参考試案の内容につきまして,事務当局から,説明していただきたいと思います。 ● それでは,引き続きまして御説明させていただきます。   本日,お手元に配布資料38として「社会貢献活動を特別遵守事項とする制度に関する参考試案」を配布しております。 まずは,この制度に関する当部会における議論の経過について御説明させていただきたいと存じます。   当部会におきましては,いわゆる社会奉仕活動を義務付ける制度の導入の当否というテーマの議論の中で,考えられる制度の法的位置付けとして,様々な考え方が御議論されたところでございます。   具体的に申しますと,刑罰とする考え方,執行猶予の条件とする考え方,保護観察の一内容とする考え方など,幅広く,それぞれの当否等を御議論いただいてまいりました。 そのうち,刑罰とする考え方についての議論の状況をごく簡潔に御紹介いたしますと,これは二つ考え方がございまして,一つは独立の刑罰と位置付ける考え方がございました。この考え方につきましては,懲役又は禁錮と罰金との中間に位置する重さの刑罰として導入することが考えられるのではないかという御意見が見られました一方で,現在の懲役,禁錮,罰金等の刑罰体系に加えて,あえて独立の刑罰としての社会奉仕を新設する必要があるのか,あるいは,内容が明確である既存の刑罰と異なり,社会奉仕の内容は,その作業内容や監督態勢等によってその制裁性の程度が大きく左右され得るものであり,既存の刑罰と並べて扱うことは相当ではないのではないか,刑罰として科された社会奉仕が履行されない場合,我が国では刑罰の事後変更が認められていないことから,その実効性を担保するという観点からは,執行猶予や保護観察の条件とする方が我が国の法制度になじみやすいのではないかなどの御意見が見られ,直ちに意見の一致が見られる状況ではございませんでした。   また,刑罰と位置付ける考え方の中で,もう一つの考え方として,短期自由刑の代替刑と位置付けるという考え方も御議論されたところでございましたが,これにつきましては,従来短期自由刑となっていた者を,社会奉仕に従事することを条件に社会内処遇に切り替えることが可能となり,被収容者を確実に減らせる制度であるという御意見が見られました一方で,短期自由刑を社会奉仕により代替させる場合,短期自由刑と社会奉仕を同等のものとして扱うことになるが,両者をどのような基準で代替させることになるのか明らかではなく,そもそも,社会奉仕が自由刑を代替するにふさわしい制裁としての強さがあるのか疑問がある,我が国の刑事司法の現状を前提とすると,短期とはいえ実刑を言い渡されている者は,犯情が悪く,このような者について,自由刑の実刑の代わりに社会奉仕に従事させることを理由に,自由刑を執行しないこととすることについては,国民の理解が得られないのではないかなどの御意見が見られ,直ちに意見の一致が見られる状況ではございませんでした。   また,刑罰のほか,罰金刑の代替執行手段と位置付ける考え方や,起訴猶予,執行猶予又は宣告猶予の条件と位置付ける考え方も御議論されましたが,同様に,様々な御意見があり,直ちに意見の一致が見られる状況ではございませんでした。   他方,保護観察の一内容として社会奉仕活動を行う考え方につきましては,当部会では,その場合の制度の目的は,制裁ではなく保護観察対象者の改善更生に置かれるのが相当であるとの御意見が多く見られました。   また,その観点からすると,保護観察対象者に,保護観察処遇の一環として,公共の場所の清掃活動や介護補助活動等の社会に役立つ活動に従事させることは,その活動を通じ,自己評価を高めて改善更生の意欲を向上させること,社会のルールを守ることの必要性を認識させること,地域社会から受け入れられやすくなることなどの効果が期待されるなど,保護観察における処遇をより充実させるものであることなどから,保護観察の一内容として社会奉仕活動を行う制度を支持する御意見が多く見られたところでございました。   このような当部会における議論の状況を踏まえ,保護観察の一内容として社会奉仕活動を行う制度について,今後,より具体的な議論を行っていくこととされたところでございます。   そして,議論のたたき台となる試案作成の御指示を事務当局へいただきましたので,このような当部会における御議論の状況を踏まえ,考えられる具体的な制度の概要を試みにお示ししたものが,本日お配りした参考試案でございます。 ● どうもありがとうございました。   続きまして,参考試案の内容について説明していただきたいと思います。   よろしくお願いします。 ● それでは,参考試案の内容について御説明させていただきます。   本日,お手元に配布資料38として配布しております「社会貢献活動を特別遵守事項とする制度に関する参考試案」を御覧いただきたいと存じます。朗読させていただきます。   社会貢献活動を特別遵守事項とする制度に関する参考試案   更生保護法第51条第2項各号に定める特別遵守事項の類型に,次のものを加えるものとすること。   善良な社会の一員としての意識のかん養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。   それでは,この参考試案について御説明させていただきます。   犯罪者の再犯防止・改善更生を図る上では,その者の善良な社会の一員としての意識をかん養することや規範意識を向上させることが必要かつ有用である場合があるものと考えられます。 この点,これまで,少年に対する保護観察におきましては,公園,広場等の清掃,福祉施設における介護補助等の活動に参加させる処遇を実施しているところであり,地域住民と交わって地域社会に役立つ活動を共に行い,地域住民から感謝されることなどによって,善良な社会の一員としての意識のかん養及び規範意識の向上に一定の成果を上げておるところでございます。   そこで,当部会のこれまでの議論の状況を踏まえますと,保護観察処遇の選択肢を拡充し,その改善更生・再犯防止のための機能を一層充実させるため,保護観察対象者に社会貢献活動を特別遵守事項として義務付けることができるものとすることにより,その善良な社会の一員としての意識のかん養及び規範意識の向上を図り,その再犯防止・改善更生を図るものとすることが考えられますことから,社会貢献活動を特別遵守事項とする制度を参考試案としてお示ししたものでございます。   すなわち,参考試案の制度は,保護観察対象者を社会に貢献する活動に従事させ,当該対象者をして,社会に役立つ活動を行ったとの達成感を得させたり,地域住民等から感謝されることなどを通じ,自己有用感を獲得させたりして改善更生の意欲を高め,また,他者一般を尊重し社会のルールを遵守すべきことを認識させることなどによりまして,その改善更生・再犯防止を図ろうとするものでございます。   このように,参考試案の制度は社会貢献活動を保護観察対象者の特別遵守事項とすることができるとするものでございますが,現行法上,保護観察の対象者は,少年法上の保護観察処分に付された者,少年院からの仮退院を許された者,仮釈放を許された者,保護観察付執行猶予を言い渡された者などでありますので,参考試案によれば,これらの保護観察対象者に対し,必要に応じて社会貢献活動を特別遵守事項として設定し得るということになります。   また,特別遵守事項の設定の手続につきましては,更生保護法第52条が規定しております。これによれば,まず,保護観察処分に付された少年につきましては,保護観察所の長が,保護処分をした家庭裁判所の意見を聴き,これに基づき特別遵守事項を定めることとされております。次に,少年院を仮退院した者及び仮釈放者につきましては,地方更生保護委員会が,特別遵守事項を定めることとされております。さらに,保護観察付執行猶予者につきましては,保護観察所の長が,裁判所の意見を聴き,これに基づき特別遵守事項を定めることとされております。   特別遵守事項は,このような手続により,「保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において,具体的に定めるものとする。」とされておりますので,社会貢献活動を特別遵守事項と規定する場合におきましても,これと同様の手続により設定されることとなるところでございます。   説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の説明内容に関しまして御質問をお受けしたいと思います。 ● この規範意識の向上に資する地域社会のうんぬんというふうにございますが,この規範意識の向上に資する社会的活動というのは,どのような活動をイメージなさっているのか御説明いただければと思います。 ● 具体的にはまたこれからこの部会で御議論いただければと思っておりますが,これまでの部会の議論を踏まえますと,先ほど少し申し上げましたけれども,特に現行の保護観察の処遇の中で,少年に対してこの社会貢献活動的なものを行っているということが紹介されております。   そのように,この部会で紹介されたところを参考に考えますと,例えば公共の場所の清掃活動のようなものに従事させたり,あるいは,老人ホーム等の福祉施設におきまして,介護の補助に当たるといった活動を行うことが紹介されたところでございますので,そういったところが参考になるのではなかろうかと考えております。 ● ありがとうございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 今の御説明ですと,社会貢献活動に付する場合というのは,仮釈放の場合等もあり得るということなのですが,そうしますと,その社会貢献活動を具体的に決めるといいますか,そういうものを遵守事項とするという場合について,執行猶予の場合はある程度裁判所の判断が保護観察所との連携の中で条件を決めていく形になり,それで仮釈放の場合について言うと,これはもう純粋に矯正の担当者と保護の関係者の中で決めていくと,こういうことになるのでしょうか。 ● 事務当局からの御回答をお願いいたします。 ● 先ほど特別遵守事項を定める手続について御説明申し上げましたけれども,保護観察付執行猶予者に対しては,その事件を審理した判決宣告裁判所,あるいは,その保護観察の開始後にあっては,その保護観察所の所在地を管轄する裁判所が特別遵守事項に関する裁判所の意見を述べ,これに基づいて保護観察所の長が設定することとされておりますので,参考試案を前提とすると,委員御指摘のように,裁判所の意見に基づき,保護観察所が判断をしていくという枠組みになっていくものと考えております。   仮釈放者につきましては,これも先ほど申し上げましたように,地方更生保護委員会において設定することとされておりますので,その枠組みの中で判断されることになるのではないかと思います。   ただ,そういう判断の枠組みの中で社会貢献活動を特別遵守事項とするのに適当な保護観察対象者をどうやって適切に選定していくのか,そのためにどのような運用上の工夫,方策等が考えられるのかということにつきましては,仮に参考試案の制度を導入するとした場合には,更に検討する必要があるのではないかと考えておりまして,この部会においても今後そういった観点も含めまして,御議論をお願いできればと考えております。 ● これに関連して,弁護人の立場からしますと,例えば判決文に,主文には表れませんけれども,理由中に,こういう理由で保護観察,すなわち社会貢献活動が適切であるというような形のものが,判決文の理由の中に記載されることを予定されているのでしょうか。弁護活動の中においては,それが全く出てこない判決文というのは,全く我々の分からないところで,裁判所とその保護観察所で決めてしまうというところがちょっと気になるものですから。 ● 今の点についていかがですか。 ● 現行の枠組みで申し上げますと,これは具体的な運用でございますが,判決宣告裁判所が保護観察付執行猶予者の特別遵守事項について,まず,保護観察所に意見の見込みを伝達するという運用になっております。それを踏まえて,これを受けた保護観察所の長において,保護観察対象者と面接するなどして,そのような特別遵守事項の設定について検討した上でその結果を回答し,判決宣告裁判所がこれを踏まえまして,判決確定後,特別遵守事項に関する意見を保護観察所の長に通知し,これに基づいて保護観察所の長が設定するということになっております。したがって,仮に参考試案の制度を導入した場合には,そのような枠組みの中で適切に運用していくことになるのではないかと考えております。 ● 判決の主文は恐らく難しいと思うのです。理由中の中にそのような判断がされ得るようなことを想定されているかどうかということなのですが。 ● 理由中で書くか書かないかも,やはり運用になってしまうのでしょうけれども,当面,参考試案の前提としては,今御説明申し上げたような現行の取扱いといいますか,保護観察付執行猶予の場合には裁判所の意見を聴くという手続によることを前提として考えているということでございます。 ● ただ今の御回答でよろしいでしょうか。 ● はい。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 先ほどの執行猶予について,統計的な話なのですけれども,薬物犯罪の受刑者というのは,今の中で何割ぐらいになっているのですか。   参考試案の第2の制度の対象となる罪は,規制薬物等の自己使用と単純所持に限るということですけれども,実際に現在どのぐらいの受刑者がいるか。結局そういう人たちが具体的な検討対象になってくるので,被収容者の人員の適正化というのにどの程度貢献するのかということなのですけれども。 ● 平成19年の統計で申し上げます。平成19年の新受刑者が3万450人おります。そのうち,覚せい剤取締法違反の罪に限定して申し上げますと,覚せい剤取締法違反の者が6,125人おります。ただ,これは自己使用や単純所持に限るものではなく,恐らく密輸とか営利目的事犯なども含む数字です。そういう前提で6,125人になります。そのうち刑期が3年以下であった者,これは5,155人になります。これは先ほど申し上げました新受刑者全体の3万450人に対して16.9パーセントという数字になります。 ● どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。今二つの参考試案が出ておりますが,いずれの参考試案に関してでも結構です。   どうぞ,○○委員,お願いします。 ● 社会貢献という言葉を使った点なのですけれども,これまでイギリスから始まった制度でコミュニティーサービスという言葉が翻訳されて社会奉仕と言われたり公共労働と言われたり,いろいろな言い方がされてきたと思うのですけれども,ここで参考試案として社会貢献という用語を選択した理由を是非教えていただきたい。 ● 奉仕という言葉は,一般にいわゆるボランティアのイメージを想起させやすいように思われるのではないかと考えております。   その一方で,この参考試案の制度と申しますのは,この一定の活動を遵守事項として法的には義務付けるというものでございますので,その奉仕という用語と必ずしも整合的ではないように考えられたことから,この奉仕の用語を用いずに,貢献という言葉を用いたというものでございます。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 結局,この試案によりますと,更生保護法第51条第2項各号に定める特別遵守事項の類型に次のものを加えるということが書いてあります。現行の更生保護法の第51条を見ますと,6号まで規定がありますが,これに付け加える,新たに創出するというような感じですね。 ● 御指摘のとおりでございます。 ● 以前の議論で,第51条第4号の特定の犯罪的傾向を改善するためにという議論があったかと思うのですが,これには入れ込まないという趣旨だということでしょうか。 ● 参考試案は,一応別の類型のものとして新たに加えるという趣旨で作っております。 ● よろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ● この部会の出発点となりました諮問では,被収容人員の適正化と,それから犯罪者の再犯防止・社会復帰というこの二つが並列されているわけで,特に部会の名称としては「被収容人員の適正化」の方が使われておりますが,今日いただいた統計資料を拝見いたしますと,収容率はかなり顕著に低下してきていて,被収容人員の適正化,過剰拘禁の是正という問題として考えますと,事実上かなり解決が進行したようにも見えます。   ただ,数字を細かく見ていきますと,顕著に減少しているのは,実人員としては未決の方は確かにそうですけれども,既決の方は減少数が必ずしもそれほど大きくはないので,むしろ収容率の低下は新しい施設の建設による収容定員の増加が大きく寄与しているのではないかと思われます。その意味では,現在もなおこの被収容人員の適正化,すなわち過剰拘禁の解消という問題は残っているのかなと思いますけれども,その辺について事務当局のお考えはいかがですか。 ● 確かに御指摘のとおり,受刑者の収容率は,97パーセント程度ということで,辛うじて100パーセントは切っている状況ではございますが,御承知のとおり,受刑者というのはいろいろな特質に合わせて分類をして施設ごとに割り振って収容をしております。その関係では,いまだに施設のかなり多くの部分で定員よりも超えている状況というのがございまして,全体にならしてしまいますと,確かに97パーセント程度にまで下がってきているのですが,いまだにまだ過剰収容の弊害というのはあると考えておりまして,やはり問題はまだ残っていると考えております。 ● ほかにいかがでしょうか。   本日,事務当局から御説明を受けたわけですが,全体を通して御質問がございましたらお願いしたいと思います。   今回,初めて参考試案の御説明を受けて,質問していただきたいと申し上げられても難しい部分もあろうかと思います。お帰りになって,時間をかけて御検討されると思いますので,本日の審議はこの程度で終わらせていただきたいと存じますが,よろしいでしょうか。御質問につきましては,次回以降にまた改めて承りたいと存じます。   それでは,次回の議論の進め方についてお諮りしたいと思います。本日,事務当局から御提案あるいは御提示いただいた二つの制度のうち,刑の一部の執行猶予制度の方が参考試案の分量も多く,また,制度としても議論すべき点も多いように思われますので,まずは刑の一部の執行猶予制度の方から参考試案をたたき台として次回の会議から議論を進めていくのがよろしいのではないかと考えております。   皆さんはこの点いかがでしょうか。そういうことでよろしいでしょうか。   特に御異議がございませんようですので,次回は,刑の一部の執行猶予制度に関する参考試案につきまして御議論いただくことにさせていただきたいと存じます。   次回の日時,場所等につきまして,事務当局から御確認をお願いいたします。 ● 次回は,2月24日火曜日に法務省第1会議室において会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては,午後1時30分からでございます。 ● ただ今御案内がございましたように,次回は2月24日火曜日,法務省第1会議室において会議を行うことといたします。開始時刻につきましては,午後1時30分からになりますので,よろしくお願いいたします。   本日はこれで散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-