法制審議会民法成年年齢部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  平成21年2月25日(水)  自 午後1時30分                        至 午後4時26分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○鎌田部会長 それでは定刻となりましたので,法制審議会民法成年年齢部会の第12回会議を開催いたします。    (委員の異動紹介につき省略) ○鎌田部会長 本日は文部科学省初等中等教育局教育課程課の髙橋課長に関係官として御出席いただいております。 ○髙橋関係官 髙橋でございます。よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 よろしくお願いします。   それでは,まず事務当局から配布されている資料について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について御説明させていただきます。   第12回会議のために配布させていただきました資料の目録は,本日席上に御用意させていただきました資料目録のとおりでございます。部会資料としましては,事前に送付させていただきました資料番号39及び40がございまして,それに加え,本日席上に配布させていただきました資料番号41-1から41-3までがございます。また,参考資料としましては,資料番号25-1から25-3までの,本日席上に配布させていただきました小学校・中学校の学習指導要領と高等学校学習指導要領案の各冊子がございます。   まず,部会資料について御説明いたします。   資料番号39は,「民法の成年年齢の引下げについての中間報告書意見照会結果」と題するものでございます。第11回会議で御決定いただきました「民法の成年年齢の引下げについての中間報告書」につきましては,事務当局におきまして,昨年12月17日から本年1月30日までの間,パブリック・コメント及び関係各界に対して意見照会の手続に付しました。 資料番号39は,そこで寄せられました意見について,事務当局においてまとめたものでございます。内容の詳細につきましては,後ほど御説明させていただきます。   資料番号40は,「今後検討すべき論点について」と題するものでございます。今後も委員,幹事相互間で,民法の成年年齢の引下げにつきまして御議論いただくことになりますが,中間報告書におきまして意見の一致を見ていない論点を中心に,パブリック・コメントに寄せられた御意見を踏まえて,再度御検討いただきたい論点を記載させていただきました。その詳細につきましては,後ほど御説明させていただきます。   資料番号41-1から41-3までは,文部科学省からちょうだいいたしました資料でございます。その具体的な内容につきましては,後ほど髙橋関係官から御説明いただきたく存じます。   続きまして,参考資料について御説明いたします。参考資料25-1から25-3までは,先ほど御説明しましたとおり,小学校,中学校の学習指導要領と,高等学校の学習指導要領案が冊子となったものでございます。これにつきましても後ほど髙橋関係官の御説明の中で使用されるものでございます。   以上,配布させていただきました資料について御説明させていただきました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,今後はパブリック・コメントの結果も踏まえて意見の一致を見ていない論点を中心に議論を行ってまいりたいと思いますが,その前に事務当局から,今後の部会の進行等について御相談があるようですのでお願いいたします。 ○佐藤幹事 今後は,パブリック・コメントの結果も踏まえて,委員,幹事相互間で御議論いただくことになりますが,パブリック・コメントに寄せられた意見の内容を分析いたしますと,おおむねこれまで当部会で検討を行ってまいりました論点に関するものが大半を占めております。   そこで,今後の進め方について御提案をさせていただきたく存じますが,今回及び次回の第13回部会において御議論いただき,最終報告書の取りまとめに向けた方向性をお出しいただきたく存じます。その後,第14回部会において,最終報告書のたたき台を踏まえた検討を行っていただき,第15回部会において,最終報告書の取りまとめをお願いしたく存じます。 ○鎌田部会長 ただいま事務当局から今後の進行等について御相談がありましたが,今後の進め方につきまして,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。   よろしいですか。   それでは,ただいまの説明のような手順で進めさせていただくこととさせていただきます。   それでは,本日予定していた議事に入りたいと思います。   まず,事務当局からパブリック・コメントにおいて,中間報告書に寄せられた御意見について紹介をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,民法の成年年齢の引下げについての中間報告書につきまして,パブリック・コメントの結果の説明をさせていただきます。   部会資料39を御覧いただきたいと思います。民法の成年年齢の引下げについての中間報告書につきまして,事務当局におきまして,昨年12月17日から本年1月30日までの間,パブリック・コメント及び関係各界に対する意見照会の手続に付しましたところ,合計55件の意見をちょうだいいたしました。全体的には個人からの意見が多く,団体からの意見は数件にとどまりました。   意見の内容につきましては,これからその概要について説明させていただきますが,賛否両論様々な御意見が寄せられました。   それでは,パブリック・コメントに寄せられました御意見の概要を御説明いたします。   まず,成年年齢と選挙年齢等との関係について寄せられました御意見を紹介いたします。   この点につきましては,中間報告書と同様,成年年齢と選挙権年齢は一致すべきであるという意見と,一致しなくてもよいという意見に分かれました。一致すべきであるという意見におきましては,憲法という国家の最高法規を改正する権利を有する者が,その下位法規である民法の行為能力を有していないのは違和感があること,法体系上重要な位置を占める公職選挙法と民法の資格付与年齢が同一であることにより,国民の法的混乱を回避することができるという理由などが述べられております。   一致しなくてもよいという意見におきましては,国民投票の投票権年齢及び選挙年齢と成年年齢を合わせる理論的根拠がないこと,民法上の行為能力があることが選挙権付与の要件とはなっていないので,成年年齢は選挙年齢と必ずしも一致する必要がないこと,参政権については,投票しても直接的な責任を負わないことから,年齢を引き下げても弊害が少ないことなどの理由が述べられております。   続きまして,2ページに移りますが,成年年齢の引下げの当否につきましては,賛成の意見と反対の意見が分かれました。意見が分かれることとなりましたポイントは,若年者の成熟度をどのように見るか,18歳,19歳の若年者が契約を一人でできるようにする必要があるかどうか,消費者被害の拡大のおそれについてどのように考えるかということなどにあったものと考えられます。   まず,成年年齢を引き下げることに賛成とする立場からは,若年者の成熟度について,現在の18歳は,以前の同年代と比較して,インターネットの普及等により,より多くの様々な情報を得ることが可能であること,海外と日本の若年者との間で,意識や能力に著しい差があるとは思えず,日本人の18歳,19歳が未熟であるとは考えられないこと,先進国の多くが18歳成年制を採用していることは,人間の成長が本来これに見合ったものであることを例証していることなどの意見が出されました。若年者の全体的な未熟さと法的な成人年齢とを区別すべきであり,現状の若年者が人間的に成熟していないことをもって成人とみなすべきでないとすることには無理があるという意見もありました。   引下げに賛成である立場からは,契約を一人でする必要性について,16歳から19歳までの若年者は,社会経験が少ないことからくる欠点はあるが,売買や貸借などの法律行為について十分その意味を理解することができ,必要に応じて専門家等に相談する能力も有していること,18歳になれば遠隔地での就学や住居の賃借,旅行などのため,取引を行うことが多くなり,それらについてすべて親権者の同意を得ることは不必要であるという意見が寄せられました。   引下げに賛成であるとする立場から,消費者被害の拡大のおそれにつきましては,成年年齢を18歳に引き下げたからといって,消費者被害のピークが18歳になるだけで,被害の総量は増えないと考えられること,消費者を守る法制度やその周知が十分でないことに問題があり,消費者教育,法教育の充実により対処することが相当であるなどの意見が寄せられました。   成年年齢の引下げに反対する立場からは,若年者の成熟度については,現在の社会は,以前よりも複雑化,専門化,高度化しており,自己責任をとることができるだけの知識,能力,経験を身につけるための時間がかかるようになっていること,成人を迎えた者が精神的に未成熟である,幼稚化したと指摘されていること,社会人又は一人暮らしとなってからの2年間は若者が自覚ある大人へと変化するのに必要な時期であること,成年年齢を引き下げたとしても大人としての自覚が促されるとは限らないことなどの意見が出されました。   引下げ反対の立場からは,契約を一人でする必要性については,中間報告書で指摘されている,18歳,19歳で働いていて親と同居していない者の割合の6.7パーセントは決して多いとは評価できないこと,親元から離れている学生も多いのは事実であるが,いちいち契約のたびに親の同意を得なければならないという実態はないとの意見が寄せられました。   成年年齢の引下げに反対の立場から最も多く寄せられた意見は,消費者被害拡大のおそれについてでした。成年年齢を引き下げると,18歳,19歳の者が悪質商法のターゲットになるおそれがある,近年,携帯電話やインターネットの普及により,若年者が高額の商品を購入したり,サービスを受けたりする機会は,以前よりも格段に増加している,20歳の誕生日直前から悪質業者のアプローチが始まり,契約トラブルに巻き込まれる事例が多い,そして,消費者被害の拡大のおそれは,高校生のうちに必要な教育をしたとしても避けられないのではないかという意見が寄せられました。   そのほかに,中間報告書では特に明記しておりませんが,親の子に対する扶養義務が切り下げられるおそれがあるとの観点から,成年年齢の引下げに反対する御意見もありました。これは,高校卒業後,大学等に進学する者の割合が約半分であるところ,成年年齢を引き下げ,親が扶養義務を負う年齢を18歳までとすることは,離婚があった場合などに,子の進学の機会を奪う結果につながるおそれがあるという御意見でした。   続きまして,資料6ページの成年年齢の引下げをする場合に必要となる施策について寄せられた御意見を御紹介いたします。   お寄せいただきました意見は,消費者被害が拡大しないための施策についてのものが大半を占めておりまして,若年者の自立を援助するための施策につきましては,ほとんど御意見が寄せられませんでした。消費者被害が拡大しないための施策に対する御意見も,中間報告書に掲げられております各施策に対する御意見がほとんどでございまして,新たに具体的な施策を提言ものはあまりございませんでした。消費者保護施策については,未成年取消権と同程度の取消権,解除権を付する必要があるという御意見や,現状の消費者関係教育が不十分であるとの御意見が多数寄せられましたが,後ほどこれらの御意見をどのように考えるか,髙橋関係官からの御説明を踏まえて御議論いただきたく存じます。   7ページ以下で記載させていただいておりますその他の論点ですが,成年年齢の引下げと引下げをする場合に必要となる施策の先後関係,成年年齢の引下げをする場合の年齢,養子をとることができる年齢,婚姻適齢,親権解放制度についても御意見が寄せられましたが,これにつきましては,資料39を適宜御参照いただきたく存じます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   パブリック・コメントで寄せられた御意見に対する委員,幹事の方々の御意見につきましては,後ほど事務当局から説明をしてもらいます部会資料40の今後検討すべき論点との関係で議論を行いたいと思いますので,ここではパブリック・コメントの結果に対する質問のみをお伺いすることとしたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ○松尾関係官 パブリック・コメントに寄せられた御意見は,それぞれのお考えとして尊重すべきであると思いますが,今,伺った中で1か所だけ,18歳に引き下げても消費者被害の総量は増えないという意見がありましたが,これはどうも根拠はないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○佐藤幹事 今回,寄せられた御意見は,成年年齢が20歳である現状では,若年者の消費者被害のピークは,20歳になるのだけれども,もし成年年齢が18歳に引き下げられると,そのピークが20歳のところにあったのが18歳のところにいくだけであり,消費者被害の総量は変わらないのではないかという御意見でした。この点については,部会でもどのように考えるべきかいろいろ議論が出ましたが,確かに総量的には増えるのかもしれませんので,引き続き御議論いただければと存じます。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 パブリック・コメントに寄せられた数を教えていただきたいと思います。問題意識の高い方がコメントを出されてくると思うのですが,その中で賛成・反対がどういう割合なり,数であったかというのを教えていただければと思います。 ○佐藤幹事 先ほど申し上げましたように,全体では55件の御意見が寄せられました。  引下げに賛成か反対か,単純にどうかということですが,結論的にはやや反対が多いということでございます。もちろん中には,引下げについて明確に意見を述べておられない方もおられますし,条件付き賛成という方もおられてどちらに分類するのが適当か難しいものもございましたので,どちらの意見が大勢であったとは言い切れないところがあると考えております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ,木幡委員。 ○木幡委員 付け加えてお聞きしたいのですが,男女比というのは分かりますか。 ○佐藤幹事 御意見が寄せられました方の中には,性別が分からない方もいらっしゃいますが,判明しているもののみを見ますと,男性の方が割合的にやや多いです。 ○鎌田部会長 ほかに御質問ございますでしょうか。   今田委員,どうぞ。 ○今田委員 社会的に大変関心があるテーマなような感じがしていたので,55件というのは何か少ないなというのが私の印象なのですけれども,その点どうなのでしょうか。設定が難しいとか,何か理由があるのでしょうか。 ○佐藤幹事 事務当局といたしましても,やや少なかったのかなという感想を持っておるのですが,なぜ少なかったのかという分析はしておりませんので,その詳細は分かりません。 ○倉吉委員 補足させていただくと,例えば日本弁護士会連合会はもう既に詳細な意見書を出していたということもありまして,その方面の方は成年年齢について一定の意見を言っているということが既にあったのかと思います。 ○鎌田部会長 ほかに御質問いかがでございましょうか。   それでは次の議題に入ります。これまで当部会では,仮に成年年齢の引下げを行う場合には,法教育,消費者関係教育を充実するなど,教育の充実を図る必要がある旨の議論を行ってまいりまして,中間報告書にもその旨盛り込まれているところですが,本日は教育行政を所管している文部科学省の担当官に御出席いただき,学習指導要領の現状等について御説明いただくことにいたしました。   それでは,髙橋関係官,御説明をお願いいたします。 ○髙橋関係官 文部科学省の教育課程課長の髙橋でございます。今日はこのような学習指導要領に関する説明をさせていただく貴重な時間をいただけましたことを部会長を始め皆様方に感謝を申し上げたいと思います。   今日は資料の41-1と41-2,若干それに関連して教科書が具体的にどうつくられているかというのを41-3に持ってきてあります。限られた時間ですので,その一端を御紹介するにとどまると思いますけれども,まず,資料41-1で,今,消費者教育や法教育とありましたが,もう少し全体的なところから少し絞り込む形で御説明をさせていただきたいと思います。   まず,学習指導要領というのは,小・中・高等学校で何を教えるかという教育課程の基準を定めた文書でございます。今日,机の上に,黄色い表紙,緑の表紙の冊子を持ってきておりますが,これがその実物でございます。恐らく学習指導要領という言葉は新聞等でも頻繁に報道されますが,実際に現物を手に取る機会はあまりないのかなと思いまして,今日は参考のために持ってまいりました。後ほど改めて御報告いたしますが,指導要領というのは,大綱的な基準であり,内容を抽象的に書いてあります。それだけで先生が子どもに授業ができるというものではありませんので,実際には解釈を示した文科省の著作の解説とか,さらに指導要領や解説が具体的な教材である教科書という形で肉づけされて,それが授業に使われるということになります。   指導要領の改訂というのは,大変大きな作業になりますので,基本的には10年に1回程度改訂をしてきております。今回の小学校・中学校の改訂は昨年3月に行いましたが,これは戦後6回目の改訂になります。   資料の41-1の1ページ目を御覧いただきたいと思いますが,指導要領というのは,その大もとに憲法,教育基本法がございます。特に教育基本法というのは,我が国の教育の基本理念を定めた根本法ということになっておりまして,これを受けて学校教育法が各学校での教育理念を定め,それを具体化するのが指導要領という位置づけでございます。教育基本法というのは御承知のように,憲法と一体になって議論される,やや政治的な法律ということもあって,戦後60年間改正の機会がなかったのですが,一昨年の12月に全部改正が行われました。今回は,その教育基本法が改正された後の初の指導要領の改訂ということで,これまでになく世間の注目を集めたということもございます。特に今回の基本法改正では,例えば道徳心の涵養,公共の精神,伝統文化の尊重やそれらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度の育成,さらに他国を尊重して国際社会の平和と発展に寄与する態度の育成,それから生命の尊重,自然の尊重,環境の保全と,今言ったようなことはいずれも大変重要な理念なのですが,戦後すぐ制定された教育基本法には明記されておりませんでした。戦後すぐの教育基本法は,個人の尊厳とか,真理の探求とか,そういうことはしっかり書かれていたのですが,今回,欠けていた理念を補って,大変バランスのいい基本法になったのではないかと思っております。   そういった改正を踏まえて,それを教育内容に反映させるというのが今回の大きな特色でございました。   それから,これからの学校教育では生きる力をはぐくむということを明確に打ち出しております。これも,学校教育法の中にそれを理念的に書きまして,一つは基本的な知識・技能を確実に習得させる,学校ではまずそれをしっかりやる,それから,単に知識を教え込むだけではなくて,身につけた知識・技能を使って考える力,判断する力,表現する力,学校教育法上初めて思考力,判断力,表現力の育成ということが今回盛り込まれました。こういったものを我々は,生きる力と総称しておりまして,成年年齢の引下げともかかわってくるのかもしれません。   それから,学校教育では,単に知育だけではなくて,徳育,体育も重要である,知・徳・体の調和のとれた人格の完成を目指すということも,今回の教育基本法改正で明記されましたので,単に知識面あるいは思考力だけではなくて,徳育とか体育も充実する,そういうことが基本になっております。   そして,今回,そういうようなためには,若干現行の授業時数では不十分ではないかということで,授業時数の増が行われております。   それから,主な改善事項として,まず,第一に言語活動を充実する。考えたり,表現したり,判断する,思考,判断,これはすべて言葉を使って行われておりますし,コミュニケーションを図るのも言葉によって行われますので,これからの学校教育では特に言語活動を充実しようと。これは生きる力にも直結するということで,国語だけではなくて,各教科でこういうことをしっかりと教えるということが盛り込まれております。   それから,理数教育の充実,伝統文化の教育の充実,道徳教育の充実,体験活動の充実,国際化ということで,外国語教育の充実も盛り込まれておりまして,そのほか重要事項の中として,環境教育とか消費者教育,食育,こういったことも今日的な課題として充実をするということになっております。   これがまず大きな枠組みでございます。   生きる力の育成というのは全教育活動を通じて行うものですけれども,特に消費者教育とか法教育ということになると,教科で言うと社会科とか家庭科が比較的関係が深くございます。2ページ目に,今回授業時数の増がどうなったかということを示しております。十分な時間が取れないのではないかという御意見が中間報告やパブリック・コメントでもあったようでございますが,小学校の社会科で言いますと,現行3年から6年まで345時間が365時間で,授業時数増としては6パーセント増ということになっております。小学校の家庭科は115時間で,ここは横ばいということでございます。   今回,中学校のほうはかなり増加を図りまして,3ページ目の中学校の社会科は,3学年通じて295時間だったものが,今回は350時間で18パーセント増になっております。これは,地理と歴史と公民と大きく3分野に分かれておりまして,今回は,歴史を若干重視して地理がその分減っておりますが,消費者教育とか法教育を扱う公民の部分は大体18パーセント程度,2割弱の授業時数増になっているとお考えいただいてよろしいと思います。中学校のほうも,家庭科は現行どおり175時間ということになっております。   ここまでは既に,昨年3月に告示をして,もう方針が決定しております。   それから,4ページ目は高等学校でございます。高等学校の指導要領は,昨年12月に改訂案を示しまして,今,パブリック・コメントの意見募集期間が終わって,意見を集計しているところでございます。今後,その意見を踏まえて修正すべき点があるかどうか検討した上で,3月中には告示をすることになっております。大きな方向性としては大体固まっておりますので,今日は案の段階で御説明いたしますが,基本的な考え方は同様でございます。   そして,4ページ目の一番下の重要事項の中にありますように,高等学校においても,環境教育,消費者教育の充実も一つの重点事項になっております。   それから,5ページ目に,小中高で改訂された内容が実際に学校現場で反映されるのはいつからになるのかというのがその表でございますが,実は,これは少しタイムラグがございます。特に社会科や家庭科の内容が学校現場で反映されるのは,小学校が全面実施の平成23年度から,中学校は24年度,高等学校は25年度からになります。よく,1年もあったら,学校の先生に研修をしてすぐできるのではないかという御質問をいただくのですが,実は,これは教科書の準備のためにどうしても過去の改訂もこれだけかかっておりまして,現在,学校では検定を経た教科書を使用する義務があります。この教科書をつくるために,まず教科書会社が編集をするのに1年間,そしてそれを文科省において検定をするのに1年間,検定に合格した教科書,これは複数の会社がつくっておりますので,どの教科書を採択するかということを教育委員会とか各学校が決めて,それから教科書会社が印刷してそれを学校に供給するこの採択,供給というプロセスに1年間,都合3年間どうしてもかかってしまうことになります。例えば小学校の例で言いますと,告示後すぐ20年度に教科書会社が,新しい教科書をつくります。21年度にそれを検定して,22年度にそれを採択して,印刷し供給する,そして,23年度からそれが使用されるということになりまして,どうしてもここは3年間のタイムラグがある。小・中・高それぞれの作業が教科書会社も文科省も1年ずつずれていきますので,こういったスケジュールになるということでございます。   それでは,資料41-2で,学習指導要領にはどのようなことが書かれているのかを御覧いただきたいと思います。繰り返しになりますが,学習指導要領というのは,あくまで国としては大綱的な基準を定めることになっておりますので,非常に抽象度が高い内容になっております。   1ページ目は,消費者・金融経済教育に関する記述例ということで,ここでは中学校の社会科(公民的分野)の新しい指導要領の抜粋を持ってきておりますが,指導要領ではこの1ページの四角囲みにありますように,例えば「私たちと経済」という中で,「ア 市場の働きと経済」,「イ 国民の生活と政府の役割」ということで,相当数の時間をかけて,教科書のページにすると数十ページに当たる部分が,実は,内容的にはこの十数行に極めてコンパクトに書かれている。これが指導要領でございます。   消費者の関係で言いますと,イの国民の生活と政府の役割の2行目に,「消費者の保護」というキーワードが出てきております。これは実は,現行の指導要領にもこの消費者の保護というのが出てきておりまして,これだけを見ると,新しい指導要領でも表現が変わっておりませんが,この消費者の保護ということで具体的にどういうことを教えようとしているのかということが,その下にあります解説というものにより具体的に書かれることになります。   この解説,1ページ目から3ページ目にかけてこの四角の枠の中で書いた指導要領の部分を持ってきておりますが,例えば今の消費者の保護を例にとりますと,この資料の3ページ目の上から4行目を御覧いただきたいと思います。これは解説の部分ですが,かぎ括弧がついているのは指導要領の消費者の保護ということで,この消費者の保護については,「消費者の自立の支援なども含めた消費者行政を取り扱う」こととしています。これは指導要領ではこれだけが書いてあります。この意味するところは,例えば消費者の利益の擁護及び増進であるとか,消費者の権利の尊重及びその自立の支援などのために,国が消費者政策を推進する役割を,地方公共団体は地域の社会的,経済的な状況に応じた消費者施策を推進する役割を担っていることを具体的な事例を通して理解させる,あるいは企業の責任としては,消費者の安全や消費者との取引における公正さ確保の責務があること,また,消費者も自らの利益の擁護及び増進のために,自立した消費者となるように努めなければならないこと,あるいはどのような消費者行政が行われているのかについて理解させること,つまり,指導要領上は単に消費者の保護ということですが,内容的にはこういった国としての解釈が示されております。   ちなみに,ここでアンダーラインを引いてある,例えば,「消費者の権利の尊重及びその自立支援 」とか,「消費者も自らの利益の擁護及び増進のために自立した消費者となるように努めなければならない」といったことは,今回の改訂に合わせて解説書に新たに書き加えられたものでございますので,この下線部については従来よりも新しい教科書では記述が更に充実してくることを期待しております。   具体的に,この指導要領と解説の部分が教科書ではどうなっているのかということを見ていただこうと思いまして,資料41-3の23ページを御覧いただきたいと思います。これは今見ていただいた指導要領と解説に対応した中学校の社会科の教科書でございますが,こういった消費者の扱いが,例えば23ページからいくと,「消費と貯蓄」といった単元になって,例えば,私たちは限られた時間と収入をもとにして,必要な商品の選択を行う,あるいは消費と貯蓄への配分を合理的に行う必要があるとか,23ページの下のほうは,「かしこい消費者」ということで,収入をもとにして予算を立て,予算に従って合理的な選択を行うといった記述とか,次の24ページにいっていただきますと,消費者の権利と保護については,行政がどういった対応をしているか。この中では製造物責任法とか,消費者契約法とか,クーリングオフにも触れるとか,指導要領やその解説を受けて,具体的には教科書にはこういった記述になってくる。これが指導要領,解説,教科書の関係でございます。   今見ていていただいている教科書は現行の指導要領と解説に基づいた検定教科書でございますので,これから教科書会社がつくる新しい教科書には,先ほど下線で見ていただいた,例えば消費者の自立,その支援といった内容が,かなり記述が充実されることになるだろうと思っております。   今,中学校の社会科を見ていただきましたが,次に,中学校の家庭科を御説明いたします。資料41-2の3ページでございます。今回,特に家庭科においては,かなり消費者教育や環境教育が重視されまして,「2 内容」として「D 身近な消費生活と環境」というのがあります。このDというのは,家庭科の中の大項目ですが,これまでは,大項目の中に消費とか環境というのはなかったのですが,今回は消費生活と環境ということを合わせて,一つの大きな項目として立てました。柱が立ったということは,一つ大きなところではないかと思っております。   それから,指導要領上は内容の(1)のアとして,「自分や家族の消費生活に関心をもち,消費者の基本的な権利と責任について理解すること。」とありますが,これは今回の改訂で盛り込まれたものでございます。   これが,実際の解説書になりますと,4ページのアでございますが,この指導要領の解説としては,ここではアンダーラインのところを中心に見ていただきますと,「自分が物資・サービスを購入する主体であり,適切な消費行動をとる必要があることなどに気付く」,「消費者の基本的な権利と責任について理解する」,「自分の消費に使える金銭には限りがあることや優先順位を考えた計画的な支出が必要であることに気付く」となっております。10年前は消費者保護基本法でしたが,消費者基本法に改正されましたので,今回は消費者基本法というのが入ってきて,商品を購入することは,選ぶ権利であるとともに,責任を伴うことも理解する,それから,その五,六行下ですが,これは確か中間報告でも御提案がありましたが,今回は例示として,例えば消費者にかかわるトラブルについてロールプレイングをしたり,地域の消費生活センターを見学したりするなどの学習活動が考えられると。こういう具体的な内容も入れました。   解説にこういう形で入りますと,例えば今度の新しい教科書には,そのロールプレイングするように教材化されたページができるとか,あるいは消費生活センターを見学に行こうといった記述ができて,各学校でロールプレイとか,消費者生活センターの見学などの活動が充実するように,教科書の記述とか,先生方の授業計画が変わってくる。今回,解説にはわずか数行ですけれども,そういった効果があるのではないかと思っております。   それから,4ページ目の一番最後では,販売方法の利点や問題点について話し合うとか,そういったことも記述しております。中学校の家庭科の教科書がどうなっているかも見ていただこうと思います。   資料41-3の37ページからを御覧いただきたいと思います。これは改訂前の指導要領と解説に基づいておりますので,ロールプレイとか消費者生活センターへの見学といったことまではまだ含まれておりませんが,それでも,現行の指導要領の解説に基づいて37ページからぱらぱらと見ていただきますと,消費生活について考えるということで,38ページにはいろいろな販売方法や支払方法があって,あるいは広告の知識というのをどう生かしていくかとか,特に39ページでは,消費者の8つの権利と5つの責任ということを具体的に記述しております。そして,40ページでは,悪質商法の例として,訪問販売,キャッチセールス,アポイントメントセールス,マルチまがい,あるいは催眠商法,41ページになりますと,実際に中学生が遭いやすい例として,自転車を例にとった商品の欠陥ですとか,携帯電話をめぐるトラブルとか,インターネットでの買物,通信販売,42ページにはそういった場合の対処法として,クーリング・オフなどのトラブルへの対処法と,既に現行の教科書でもこの程度の記述は出ておりますが,今後は先ほど申し上げたような解説の改訂を踏まえて,さらなる教科書の充実が期待はされております。   それから,法教育,政治教育などは,時間の関係で割愛しますが,若干法務省に関係いたしますので,資料41-2の5ページ目を御覧ください。これは中学校の社会科でございますけれども,「法に基づく公正な裁判の保障」に関連させて,裁判員制度についても触れることということで,今年から始まります裁判員制度についても必ず教えるということでこういう記述になっております。ここのところは,解説では7ページ目の真ん中ほどの下線ですが,「裁判員制度についても触れ」ということは,国民の司法参加の意義について考えさせ,国民が刑事裁判に参加することによって,裁判の内容に国民の視点,感覚が反映されることになり,司法に対する国民の理解が深まり,その信頼が高まることを期待して裁判員制度が導入されたことに気付かせると,こういったようなことを書いてありますので,こういった視点から,現在新しい教科書が作成されております。   それから8ページから10ページまでは,現行の高等学校の改訂案でございます。解説は告示後につくりますので,今日は主な抜粋だけでございますけれども,高等学校の場合は社会科の延長になります公民科の内容の取扱いのところで,「市場経済の機能と限界」の中で消費者に関する問題も扱うことということで,消費者問題を今回明記をいたしました。   それから,8ページ目の下のところですけれども,家庭科でも生活における経済の計画や消費者問題といった記述を追加いたしております。特に,9ページ目のところ,これも指導要領だけ見ると非常に分かりにくいのでございますが,例えば9ページ目の真ん中のところに内容の取扱いで「契約,消費者信用及びそれらをめぐる問題を取り上げる」という記述がございます。現行の指導要領では,契約,消費者信用及び問題の発生しやすい販売方法を取り上げるということで,マルチ商法であるとかそういった販売方法を取り上げることになっていたのですが,今回はそれらをめぐる問題ということで,範囲を広げております。実は,政府の多重債務者対策本部の決定で,高等学校の家庭科では多重債務の問題をこれからしっかり取り上げるということになりました。ただ,多重債務というのは,指導要領あるいは解説書に書くにはあまりにも個別具体なものですから,今回,「及びそれらをめぐる問題」ということをまず指導要領に書いて,解説書の中では多重債務問題を扱うことということを記述する予定でおります。今の高校の家庭科の教科書には,多重債務についても簡単な記述はございますが,こういう位置づけがなされることによって,より教科書の記述が充実されるのではないかということで,今回そういったような改訂を予定しております。   このように,指導要領だけを見ますと,少し記述が少ないのではないかとか,一見あまり変わっていない印象があるかもしれませんが,実際には解説書の記述などをあわせて読んでいただき,それがまたこれから具体的に教科書に反映されるというあたりを御理解いただきたいと思います。   それから,特に教科書について言いますと,これが授業の一番基本になる教材でございますが,実は,これまでの指導要領の改訂というのは,どちらかというと授業時数や指導内容を精選するという方向で来ております。過去3年間の改訂というのはそういう改訂で,教科書も実は年々薄くなって,内容も若干記述量が減ってきておりますが,今回,指導要領の改訂に合わせて,これは消費者教育,法教育に限らず,全教科を通じて教科書の質・量ともに充実を図っていこうという方針が,示されております。特に今回,言語活動の充実ということをうたいましたので,教科書も単に学校で授業に使うだけではなくて,子どもが持って帰って自分で読んで自学自習できるように,内容を増やしていこうと。それから,これまでは指導要領を上回る発展的な内容の記述というのは1割程度とか,上限規制があったのですが,今回そういうものも撤廃されますので,今回の改訂に基づいて,教科書そのものがまず質・量ともに充実されるという方向になっております。それに加えて,今回こういった改訂がありますので,教科書の充実が今後検討されていくと思っております。   最後に,これは蛇足になるかもしれませんが,どうしても関心が指導要領にいきがちなのですが,指導要領を直せばたちどころに教育がよくなるというわけではありません。当然,改訂した内容をまず教員がしっかりと研修して,それを身につけていただくということが必要になります。環境とか消費者というのは新しい分野ですので,やはりその指導要領の改訂だけではなくて,教員研修などをしっかりやっていくこととか,あるいは教科書を補ういい教材を開発していくとか,あるいはそういう教材を使った先進的なモデル事業みたいなものをつくって,そういう情報を発信していくとか,そういうことをやはりトータルに進めていく必要があるのかなと考えておりまして,文科省といたしましても,この年齢引下げの議論がどうなるかは別といたしまして,今回の改訂を踏まえて,教科書の充実,研修の充実等消費者教育の充実に今後努めてまいりたいと考えております。   以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 どうもありがとうございました。   ただいまの髙橋関係官の御説明について御質問ございますでしょうか。 ○仲委員 大変分かりやすい説明をどうもありがとうございました。子どもたちにこういう知識を与えていこうというのはすごくよく分かったのですけれども,その知識を与えるということと,子どもに行動の変化をもたらすということとは,必ずしも一致するとは限らないのですけれども,そのことについてはどのように考えておられ,また何か方策をとっておられるのでしょうか。 ○髙橋関係官 非常に大きな,正に本質にかかわるような部分なのですけれども,まず,教科の関係としては,社会科は, どちらかというと知識面を中心に教え,家庭科は,そういう他の教科などで身につけた知識も踏まえながら,それを行動につなげられるような教育を行うところに主眼がありますので,それを行動につなげるということについては,一つは家庭科のほうの役割は大きいのかなと思っております。   それから,今日は比較的関係が大きいところを説明しましたけれども,指導要領の中には,例えば道徳では,節度を守り,節制に心掛けて,調和のある生活をするとか,あるいは法や決まりの意義を理解して遵守するといったことは,道徳の中でも扱うことになっておりますし,特別活動の中では,望ましい勤労観や職業観を育成していくといった形で大人になるための教育を行うことにしております。ですから,決して知識だけを教えればいいということではなくて,その知識を具体の場面でどう活用できるのか,どう生かせるかという場面を考えながら授業を展開していく。そのためには各教科や,あるいは総合的学習の時間とか特別活動という時間をかなり十分とらならければいけない。正直,現行の指導要領は,学校5日制の導入などもあって,少し各教科などでのそういった面が足りなくて,知識を教えるのに精一杯で,それを行動につなげるところまでの時間が十分とれなかったのではないかということが中教審の議論でも反省されまして,今回,授業時数は増やしておりますが,教え込む知識はそれほど増やしておりません。社会科でも時間数は18パーセント増えていますが,それほど新しいことをたくさん教えようということではなくて,むしろ教えた知識をどう活用していくのかというところに,これは体験活動であるとかそういったものの時間をとりながら進めていっていただきたいということで,今後そういう方針を現場にも徹底していきたいと思っております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○五阿弥委員 教科書の主な記述例を見ますと,中学生についても,電話勧誘販売やキャッチセールスについて,こういう形で今は教えているのかというのが分かって,参考になりました。   ただ問題は,今,仲委員も御指摘になったのですが,こういう形で教科書で教えるとしても,では子どもたちがどこまで当事者意識をもってそれを学んでいくかというのは,やはり別のことで難しいことだと思うのです。そこで,例えば若い人でキャッチセールスの被害に遭ったり,あるいはほかの様々な悪質商法に引っ掛かったりした人たちに,なぜ自分は引っ掛かったのか。あるいはどういうシチュエーションでそういう詐欺に引っ掛かったのか,何か具体的なものを通して,例えば,そういう人たちを登場させてビデオをつくり,それを学校で見せて一緒に話し合うとか,あるいは場合によっては様々なNPOもございますけれども,消費者被害の救済を行っている方に例えば学校現場でそういう体験を語ってもらうことが必要だと思います。何かそういう子どもたちにとって他人事ではないんだという意識を持たせるような,教科書以外でのそういうやり方というのでしょうか,それは今,やられているのでしょうか。 ○髙橋関係官 正に今御指摘いただいたようなやり方をしていくということが今回体験活動を重視して生きる力をはぐくんでいくという趣旨にも非常にマッチするのではないかと思っております。   10年前の改訂で総合的な学習の時間というのが導入されました。これはカリキュラムを示さずに,各学校が創意工夫をしながら地域の方々などを巻き込んで,いろいろな考える活動をさせていこうということで,それを機会に学校現場も,今,少しずつ開かれていて,外部の方を呼んでお話を聞いたりして,教員とそういう地域の方,外部の方とコラボレーションしながら指導していくという場面は増えていると思います。消費者教育でどこまでそういう場面があるか,私はつぶさに承知しておりませんが,それはやはり今後ともそういう方向に持っていきたいと思っております。   それから,教材については,別のところの研究会でも議論になっているのですが,金融庁でありますとか,金融広報中央委員会とか,それから,国民生活センターとか,いろいろなところがいろいろな教材をつくって学校に送っていただいているのですが,ただ,本当にそれが現場で生かされて,現場で使いやすいのかというのは,いろいろあって,やはり教材についてはこれからもっと関係機関と連携しながら,よく研究していかなければいけないと思っておりますが,今,いろいろな教材を開発はされておりますし,今回やはり指導要領を改訂するというのは,教育界においては10年に1回の大きな変化です。ここで重視されたものというのは,例えば教材会社も教材を開発しますし,教科書会社も研究しますし,いろいろな団体がそういうところで,こういうのを使えないかということをやってきますので,そういうことは多分これから盛り上がってくるのだろうと思いますので,そういったことはこれからしっかりやっていきたいと思っております。 ○鎌田部会長 それでは,木村委員,どうぞ。 ○木村委員 非常に分かりやすい御説明を頂きまして,本当にありがとうございました。  その中で,1,2点質問いたしますが,この部会でも今の大学生などにヒアリングをしたのですが,この消費者教育の問題なども,高校時代にそういう授業を受けたことがあるという学生もいれば,全く受けたことがないという学生もおりました。  そこで,学習指導要領については,私立の学校と国公立の学校に対する扱いがそれぞれどういう形となっているのか知りたいと思っております。  また,受験と関係がないと,どうしても,私は歴史をやりますから公民はやりませんとか,あるいは,先ほど知識を行動につなげるには家庭科が重要というお話がありましたが,家庭科はあまり受験に関係ないため,ほとんど力を入れないというようなこともあり得るのではないかと思うのです。したがって,現実の学校教育の状況などを教えていただけたらと考えています。 ○髙橋関係官 まず,学習指導要領というのは,国公私立学校を通じてすべての学校に適用される,言わば最低基準であります。ですから,これは必ず履修しなければいけない。特に中学校は,基本的にはすべての子どもが学びます。   高等学校の場合は,厳密に言いますと,教科ごとに選択履修という形になっておりまして,例えば,公民であれば現代社会を履修するか,あるいは倫理,政治経済を履修するかということです。ただ,政治経済と現代社会のどちらも,消費者教育や法教育が入っていますので,結果的には学習するようなことになります。   それで,御記憶かと思いますが,実は2年ほど前,ちょうど教育基本法を審議しているときに,高等学校で世界史の未履修問題というのがありまして,一部の学校で本来学ぶべき教科科目が学ばれていないということが社会問題になりました。そのときに大分是正がされまして,その後,私どもも繰り返し,指導要領に定められた必修・履修科目は必ず履修させるようにという指導をしておりますので,現状においては,指導要領の履修というのは行われていると思います。   ただ,現実的にどういう授業を行えるか。これは指導要領の問題とは別に,現場の先生の意識とか,あるいは,入試との絡みというのが現実問題あるのだろうと思います。一つはやはり,先生方がそういう意識をしっかり持っていただくということで,先生方に対する意識啓発,具体的に言うといろいろな研修をしっかりしていくということが大事かと思います。   実は,今日,ここへ来る前に別の消費者教育の勉強会がありまして,そこで徳島県の教育委員会が発表していたのですが,徳島県は県立高校の先生を1年間,長期研修ということで,県の消費者生活センターに派遣している。先生が正に消費者生活センターで実務をとりながら1年間研修して,そういう先生が現場に戻ってくると,まずは実践的な消費者教育もできるようになるし,学校の消費者教育の核になるし,あるいは日常的に子どもや保護者の相談にも乗ってあげられるようになるということで,非常に成果を上げて,今,4年目か5年目だったと思うのですが,だんだんそういうのが増えてきているという話もありましたが,そういった先生方への消費者教育をまずしっかり教えなければいけないという研修が大事だと思います。   それから,入試については,これは大学は一方で伝統的に大学の自治がありますので,国として一律にこうしろとは言えないのですが,学習指導要領の改訂の趣旨を踏まえた入試をやっていただきたいという要請はしっかりとやっていきたいと思っております。   ちょっと十分なお答えではなかったところもあるかもしれませんが,以上でございます。 ○鎌田部会長 岡田委員,どうぞ。 ○岡田委員 私は消費生活センターで相談員をやっておりますけれども,消費者教育が学習指導要領に入ったのは,もうかなり以前だと思うのですが,現在でも,むしろ消費生活センターから学校に,是非講座を持ってくれという勧誘に行かなければいけないという実態なのです。しかし,学校は時間がないからということで,高校などでは,卒業間際の2月ごろに講堂に生徒が集められて,寒さに震えながら話を聞くというような,そういう現状があります。今回の学習指導要領の改訂は,すごく幅が広くて充実していると思うのですけれども,学校の科目間の先生方がこれ全部をどういうふうにつなげて教育されるかということに少し疑問があります。   先ほど来,消費者教育とか法教育とか出ていましたけれども,法教育も消費者教育も生きる力というのをテーマにしているのですね。法教育の中に憲法とか裁判員というのがありましたけれども,やはり消費者教育の中の,今一番重要なものは契約なのです。ですから,社会科で教える先生と,家庭科で教える先生がどういう形で連携して,その関係を生徒にどういう形で伝え,受講した生徒が消化するような教育がされるのかが一番大事なのですが,そのあたりが明らかになればと思います。   消費生活センターの相談員が行って話をするときは,そのすべてをひっくるめて,今,こういう問題が起きているから,皆さんこういうことを気をつけてください,こういうふうに考えてくださいという形で指導するのですけれども,まずお願いしたいことは,先ほど徳島の例が出ましたけど,地域の消費生活センターと学校とのパイプがつながるようにしていただきたいと思います。と申しますのは,今,足立区で消費者支援計画というのを,私が部会長でやっており,区役所や商店街などいろいろなところと連携しようと思っているのですが,教育委員会,学校が最も距離があるのです。関心のある先生は積極的ですが,そうではない先生は通り一遍のことをやるという形になると思われますので,是非文科省のほうから,消費生活センターと連携して消費者教育を行うべきであると明らかにしていただきたい,それから消費者教育と法教育とを縦割りに行うのではなくて,生活者として何が大事なのか,そういう教育を目標にしていただきたいと思っています。   あと,これは質問なのですが,内閣府から12月に国民生活白書が出ましたけれども,そのタイトルは消費者市民社会ということで,いわゆる先ほど言いました社会科の中に出てくるような市場経済とか,消費者の役割などが書かれていますし,消費者庁の問題も出ていますが,内閣府と文科省の意見交換とか連携というのはどういうふうに進んでいるのかというのをお聞きしたいと思います。前回,国民生活審議会である消費者教育専門の先生から,今回の消費者庁の構想の中で,もう一つ消費者教育というのが見えないという話が出たのですが,どうもその辺が内閣府が消極的なような感じがするものですから,今現在,二つのところでどういうふうな話し合いが進められているのかお聞きしたいと思います。 ○髙橋関係官 内閣府は政府全体で中心になって消費者教育の推進というのを担っておりますが,そのうち学校教育がかなり重要な部分を占めるということで,私ども頻繁に相談にはあずかっております。それから,政府の中でも,例えば先ほど申し上げました多重債務を高校の中でしっかり位置づけてほしいということも,政府の中でそういう提案があり,政府全体で決定した一つの文書の中のごく一部ですけれども,そういうものが盛り込まれておりますので,一応,消費者教育については,内閣府中心に調整をされるという体制になっております。   それから,先ほどの,是非消費生活センターとの連携を呼びかけていただきたいというのは,正に今回解説書に,地域の消費生活センターを見学したりするということを事例として書きました。今後,私どもはこの解説書などを使っていろいろなところで説明会をやっていきますので,そういう中でもしっかりと説明していきますし,逆にこの解説書に書かれているのは,学校現場に対しては大変に大きなインパクトがありますので,もちろん解説書にこう書いてありますよ,どうぞ見学に来てくださいというと,多分今までとは対応が一変すると思いますので,是非御活用いただきたいと思っております。 ○岡田委員 期待しております。 ○鎌田部会長 それでは,大村委員,お願いします。 ○大村委員 岡田委員からあった御発言について,少し私から補足発言をさせていただきたいのですけれども,私が申し上げることではないのかもしれませんが,消費者相談の現場で非常に契約というのが重要だというお話がございましたけれども,その点は今回の学習指導要領の中に盛り込んでいただいておりまして,そのお配りいただきました資料41-2には直接出ていないのですけれども,参考資料25-2の中学校の学習指導要領の42ページの下のほうの(2)に「私たちと経済」というのがございますが,その上のところに,「契約の重要性やそれを守ることの意義及び個人の責任などについて気づかせる」というのを書き込んでいただいております。先ほど御説明があったように,これが解説になり,そして教科書になるというふうに私は認識しております。 ○髙橋関係官 説明の不備を補っていただきましてありがとうございました。 ○鎌田部会長 ほかに御質問はいかがでしょうか。 ○松尾関係官 消費者保護という問題に限りますと,未成年者が被害者になる場合,それを保護するという話に終始するわけですけれども,実際に世の中は未成年者が加害者になる場合というのもあり得るわけです。しかし,そういうことを取り上げようとすれば,犯罪とか刑罰とか非行とか,教科書になじまない言葉が出てきやすくなりますので,なかなか難しいという点はあると思いますけれども,しかし,加害者,被害者という問題を離れても,裁判員制度などが始まりますと,この対象は刑事裁判でありますので,どうしても刑罰とはどういうものか,犯罪は何かということを扱わざるを得なくなると思いますけれども,その辺についての御配慮はいかがでしょうか。 ○髙橋関係官 刑罰を扱うことについての配慮といいますのは,どういったことなのでしょうか。 ○松尾関係官 拝見した限りでは,内容が憲法と私法に傾斜していて,刑事法はほとんど無視されているような感じを受けました。 ○髙橋関係官 今回,一つは裁判員制度に触れるということになりましたので,当然その方面についても記述がされることになると思います。実は,その関係で法務省から例えばその裁判員制度の刑事裁判のさらに行き着く先として保護司といったようなところもあるので,そういうところも指導要領に書けないかといった御要望も頂いたりしておりまして,なかなかそこを個別に指導要領に具体には書けないものですから,そういった趣旨が今後高等学校,これから解説書を書いてまいりますので,そういう中でどう書けるかまた御相談させていただきたいということを申し上げておりますので,今後,解説書を記述する中で検討していくことになると思っております。 ○松尾関係官 今日,お話を伺っておりますと,法教育の問題,社会科とそれから家庭科というふうに領域を限定してお話しくださったかと思うのですが,道徳という時間もあるわけですね。道徳教育と言い出すと話は堅くなりますけれども,例えば日本の民話などでも,「うさぎとかめ」とか「花咲じいさん」とかいろいろあって,それは勤勉でなければいけないとか,正直でなければいけないというような,私どものほうでも,「規範の刷り込み」という言葉を使うことがありますけれども,西洋のイソップ物語にしてもピーターラビットにしても,大体何か規範の刷り込みを子どもに対してやっていると思うのです。そういう意味で取り上げれば,道徳の問題と結び付くのではないかという気もいたしますが,いかがでしょうか。 ○髙橋関係官 今日は道徳について資料を準備しておりませんので,参考資料25-1の小学校学習指導要領の102ページを御覧いただきたいと思います。これが,小学校の道徳のところでございます。道徳は,第1・第2学年,第3・第4学年,第5・第6学年と3段階に分けて示しておりますが,第1学年及び第2学年では,「約束やきまりを守り,みんなが使う物を大切にする」。次に,第3学年,4学年では,4番の(1)で,「約束や社会のきまりを守り,公徳心をもつ。」。これが高学年になりますと,104ページの4の(1)ですが,「公徳心をもって法やきまりを守り,自他の権利を大切にし進んで義務を果たす」。これが中学校になりますと,「法やきまりの意義を理解し,遵守するとともに,自他の権利を重んじ義務を確実に果たして,社会の秩序と規律を高めるように努める」と,道徳では発達段階に応じてこういうことをやることにしております。特に今回,道徳の中には,駄目なものは駄目なんだと,守るべきものはしっかり守るんだと,ある意味で教え込む部分と,それから思いやりとか郷土愛とか,自然に身につくようにはぐくんでいくような,そういうものってやはりありますけれども,特に駄目なものは駄目なんだと,決まりはしっかり守らななければいけないんだというところは,特に今回の道徳では重視していこうというようなことが,指導要領にも盛り込まれております。   それから,道徳というのはなかなか先生方も授業が非常に難しいところでございます。教科ではないので,検定教科書もありません。ただ,一つは,先人の生き方から学ぶというようなことも大事ではないかということで,今回,道徳の中でも,特に伝記とかあるいは人に感動を与えるような,そういう読み物資料を十分充実させて,道徳教育を推進していくべきであると。そういうことも盛り込まれております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 学習指導要領が変わることによって,消費者教育といったものが行き届く,また,具体的に契約がどういうものなのか,自己に対する権利,義務,そういうものが明確に理解できるようになるとお聞きはしているのですけれども,89年の学習指導要領の改訂のときにも消費者教育が本格的に学校教育に導入されたにもかかわらず,平成20年版の国民生活白書には,学校教育における消費者教育の受講の有無により,消費者力の差に明確な差異は見られないとあります。この消費者力というのは,消費者が消費者として生きる力であると定義しているわけです。要は89年に学習指導要領を改訂し,消費者の保護を打ち出したにもかかわらず,そういう現状がある。それから,実際社会を見ていても,相変わらず若年層はだまされるというような状況において,今度,この学習指導要領が変わったということによって,本当に具体的にどういう効果が生じるのかということが,まだ一つ分からないというのが実際の印象でございます。   それから,平成17年4月に政府の消費者基本計画が出ておりまして,そこで学校や社会教育施設における社会教育の推進というところで,これも先ほどお話に出ましたけれども,内閣府や文部科学省間の連携の強化ということで,連携をしながら消費者教育の体系化を図ることがうたわれているわけです。この体系化の中にはもちろん学校というものも重要な要素として組み込まれていまして,そこで今回学習指導要領が変わることによって,その解説が変わり,また,解説を敷衍した形なり斟酌した形で教科書ができることが,その体系化といえるとしても,本当にそうなるのかというのは見えないところがあります。ですから,国民から見ていると指導要領と,それから解説が出てても,ここからはこう読めないのではないですかという疑問が多々出てくる。   それから,消費者教育だけの問題ではなくて,今度,成年年齢を引き下げるということになりますと,18歳になったら親の同意も得ずに結婚ができる。それから,親の同意を得ずに働くことができる,労働契約をすることができるということで,いろいろ社会面において,その年齢層の下がるということになると,意識しなければならない部分も出てまいります。   その中で先ほど,特別科目等の中に職業観というものも出てくるというようなこと,多重債務は,それらをめぐる問題に含まれるというお話でしたが,やはり国民はその他にそういう重要なことが含まれるというふうには直接見えないわけです。それから,時間的な問題もあって,どのぐらいの期間,タイムラグがあるのは仕方がないと思いますが,そのタイムラグによって,その消費者教育は,しばらくは今の状況が続くということになるのではないかと思います。新学習指導要領のもとにおいて,新たな消費者教育なり家庭教育,職業教育,こういうものがきちんとできる,軌道に乗るのはいつごろになるのかというようなことも,併せて教えていただければ幸いでございます。 ○髙橋関係官 御質問がたくさんありましたが,まず,実施時期については,教科書がそろうのが,先ほど申し上げましたように,小学校が平成23年度から,中学校が24年度,高校が25年度からでございます。私どもは,移行措置通知というのを出しておりまして,移行期間中,小・中学校は今年の4月から,高校は来年の4月から,前3年ないし2年が移行期間で,移行期間中にも先取りすることは構いませんということを言っております。ただ,その場合にはまだ教科書がありませんので,適切な教材や授業時数を各学校が確保した場合には先取りはもちろん結構なのですが,全面的に全国一斉に導入されるには,残念ながら小学校で2年,高校で4年待たざるを得ないというのが,今の実情でございます。   それから,20年前の平成元年の改訂から導入されていたではないかというのは,正にそのとおりでございますが,元年改訂のときは授業時数は横ばいで,その次の10年改訂のときは授業時数が減ってしまっておりまして,若干十分な時間を確保できなかった面があった点は否めないと思います。今回は特に,社会科は小学校6パーセント増,中学校では18パーセント増ということで,少し授業時数には余裕が出てきているかなと思いますし,現場でもこの消費者教育に関する取組は少しずつ出てきておりますので,繰り返しになりますが,今回の改訂を機に研修の充実でありますとか,モデル的な事例の紹介とか,あるいは教材の開発をやっていくことによって,できるだけその動きを定着させたいと思っております。   ここからは,私がここで言うのはふさわしくないのかもしれないですが,一方で,やはりそのためには条件整備が必要なのです。例えば先ほど,消費者生活センターに教員を一人1年間派遣することが大変成果を上げておりましたが,そのためには教員一人分の人件費,定数が必要で,これはかなりの負担になります。正直,今,学校にいろいろな要望が来ている中で,学校の先生も非常に今,多忙感があって,ぎりぎりのところでやっておりますので,是非消費者教育をしっかりやる以上は,その条件整備というものも,これは是非社会的な理解を得ながら,単に学校現場にいろいろなことを押し付けるのでは,現場も疲弊しますし,実効が上がりません。残念ながら我が国の教育投資は,OECD諸国の中でも最低レベルでございますので,条件整備をしっかりした上でこの定着に努めていきたいと考えております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。山本委員,どうぞ。 ○山本委員 今のことと少し重なるのですけれども,消費者教育を取り組んでいく中で,どういう困難が現場段階から寄せられているのかいないのか。寄せられているとすれば,効果的な教育成果をもたらすためにはどういう問題があるのかと,それをどのように把握されているのか教えていただきたい。これが1点です。   二つ目は,おっしゃるとおり,学校だけではこれはとてもできる話ではないので,家庭教育あるいは地域社会,あるいは企業への働きかけと連携みたいなものは具体的になされているとすれば,あるいはお考えがあればお聞きしたいと思います。 ○髙橋関係官 今までの御説明と重なる部分がありますが,伝統的な教科教育に比べると,消費者教育や環境教育というのは,ある意味では教科横断的な新しい分野です。そうすると,やはり準備に非常に時間がかかります。例えば,外部の方を連れてくると思うと,そのためのいろいろな人を探したり,折衝する,そのエネルギーは膨大になります。それから,教科書だけでは不十分だということで,いろいろな教材を探してくるとか,あるいは自分で開発すると。そういう意味では,やはり新しい分野のこういう教育というのは,大変現場に負担感があるのも事実でございます。そのためには,行政としては,定数の増を図るとか,あるいは,教材のデータベースをつくるとか,いろいろな情報が十分提供できるようにするとか,あるいは,外部の方とのコーディネートするような方を別に置いて,先生方の負担を減らしていくとか,そういうことはやはり現場の方の意見を聞いていると,率直にあるなと思っております。   それから,家庭とか企業とか地域社会への働きかけでございますが,今,文科省で取り組んでおりますのは,これは小・中学校の取組ですが,地域,企業から学校を応援してもらうということで,学校支援地域本部という体制を各学校,中学校区ごとに体制を整えて,そこに少し事務局長的な方を置いて,今まで先生がやっていたやり取りの窓口を少しそういうところに集約して,地域や企業などが学校を支援するときの体制を整備していこうというようなことは,若干予算を確保して進めておりますが,今後,指導要領の説明などについても,単に学校関係者だけではなくて,NPOの方とか企業の方とか,幅広くPRしていきたいと思っております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。宮本委員,どうぞ。 ○宮本委員 いろいろ話を伺いまして,ありがとうございます。   ここの部会は,いかにして青少年を速やかに自立させていくかということにかかわる部会なので,伺いますが,学習指導要領を変えても,学校で,大人になるために必要な教育というものが十分に行われるかどうかということは,それほど楽観的には思えないわけで,これは文科省の問題ではなく,いろいろな仕掛けをする中で,総合的についていく力というタイプのものだと思われます。消費者教育に関しても,もう既に,20年前から必要であるということで,私も教育学部に長くいたので,そういう議論は随分やってきましたけれども,それでも多少時間が増えた,減ったということに大きく左右されることではなく,絶えず課題というのは引きずっていくような問題ではないかという感じはしております。   それで,そうは言いながらもですけれども,消費者教育に関して学校に対して要望があるのと同時に,例えば今,キャリア教育及び職業教育という課題が新しく登場しましたが,この二つは違うように見えながら,実はかなり隣り合わせの課題です。それで,昨年1年間,中教審にて議論がされ,去年答申が出されて,キャリア教育・職業教育の見直し作業をやるようにという諮問が出て,今年になってキャリア教育・職業教育特別部会が設置され,私は,その委員になっており,昨日で3回議論が行われたのですけれども,非常に活発な議論が出て,大方は,まず高校における普通教育偏重見直し,つまりキャリア教育というよりも,もっと職業教育,あるいは専門高校をもっと強化するべきであると。つまり,小・中学校はもちろんのこと,高校も普通教育,大学も普通教育というふうに長期にわたって普通教育中心でやってくるということをやると,いつまで学校にいても社会に出られないということで,もっと職業教育を早期に受ける生徒たちの数を増やしていいのではないかという議論がかなり出てきているという状態がありまして,その職業教育とかキャリア教育というのと,実際に生きていく上に必要な消費者教育等は,ある意味セットで行われてしかるべきものであり,かつ,学校教育の中だけで,時間を若干増やした程度で成果が上がるようなものではないわけですので,そういう点で言っても,より社会に開かれた手法でやらない限り,今回,学習指導要領を改訂したからといって,それだけに期待することはできないのではないかという感想を持っておりますが,いかがでございましょうか。 ○髙橋関係官 今,丁寧に御説明いただきましたように,中教審で昨年の12月から,特に高等学校や大学段階において,正にこの生きる力,自立をはぐくむためのキャリア教育,職業教育についての在り方について議論を開始いたしました。おっしゃるように,一番本質的なところは,そういった学校の教育全体の在り方を見直す中で議論されていくべきというのは御指摘のとおりだと思いますが,一方で現実の問題として,指導要領を改訂して,新しい教育内容を現場に定着させるという作業は,やはりしっかりと進めていかなければいけないと考えております。 ○鎌田部会長 ほかに御質問ございますか。   私からも一つ伺いたいのですが,学習指導要領の改訂を10年ぶりに行うということなのですけれども,その前提としての,主として高校生ぐらいになるだろうと思うのですが,この部会でも最近の若者は幼稚化したのか,あるいはいろいろ知識も増えていって大人になった部分が大きいのかという議論があるのですけれども,前提としての高校生,あるいは中学生が,この10年,20年の間にどう変化してきたのか,あるいは大人に近づいてきているのか,そうでないのかというところの認識について,何かお伺いすることができれば有り難いと思います。 ○髙橋関係官 今回の指導要領の改訂というのは,文科省が勝手にやっているのではなくて,中教審で延べ400人の先生方の400時間ぐらいの議論の積み重ねであります。   その中で,現状認識として触れられておりましたのは,ストレートに大人としての成熟度が高校段階でどうかというような端的な議論というのはなされていなかったのですけれども,子どもの心と体をめぐる状況という中で,例えば子どもたちに自己肯定感というのが諸外国に比べて少ないのではないかとか,あるいは意欲の面において,今回の議論のベースにかなり大きな影響を与えたのは,OECDのPISAがやっています学力比較調査ですが,国際比較調査で,我が国の学力が若干,読解力のリテラシーとか数学・科学のリテラシーが低下傾向にあるという議論はありました。ただ,あまり順位に一喜一憂するよりは,むしろ意欲面で,学習意欲が小学校に比べると非常に低下している,そういうところに危惧があるというような議論がございました。   それで今回は,基礎基本と思考力,判断力をはぐくむのに加えて,学習意欲をはぐくんでいくというのは,指導要領上明確に位置づけて,いかに子どもたちに意欲を身につけていくかということが大きな課題とされております。   中教審として,今の18歳が成熟度においてどうかという,明確な評価はしておりませんので,それでお許しいただければと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかに何か御質問ございますか。   もし,よろしいようでしたら,これで髙橋関係官のお話を伺う時間を終わりにしたいと思いますが,よろしいですか。   どうも,長時間にわたりまして大変貴重なお話を伺わせていただきまして,ありがとうございました。   ここで,いったん休憩をとらせていただきたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開をさせていただきます。   先ほど,髙橋関係官から大変貴重なお話を伺ったところですけれども,それを踏まえて次の議題に移りたいと思いますが,何か先生方からありますでしょうか。 ○木村委員 今日,文部科学省の髙橋課長からお話頂きまして,私自身もよく知らなかったところがよく分かったなという感じがしています。  そこで,これはできればの話なのですが,今までの中間報告の中にも出てきました内閣府が所管されている青少年育成施策大綱の話ですとか,公職選挙法との関係において当事者である総務省の御担当者が,一体どのような施策,あるいはどのような考えを現時点でお持ちなのかというようなことも,同じように聞かせていただけたらと思います。 ○鎌田部会長 岡田委員,どうぞ。 ○岡田委員 追加して,法務省が取り組んでいる法教育のことをお聞きできればと思います。 ○鎌田部会長 今,木村委員,岡田委員からそれぞれ,内閣府,総務省,法務省の担当者からお話を伺いたいという旨の御提案がございましたけれども,これに関連して何かほかに御意見ございますでしょうか。 ○仲委員 先ほど宮本委員がおっしゃったように,例えばこういう教育を学校や家庭だけに押し付けるというのは,もう全然足りないのではないかと思うのです。そういう意味では,青少年の何か,例えばすぐに思い付くのは,性被害に関するキャンペーン的な活動をしているCAPなどは,性被害に当たる,あなたたちはそういうところから自分の身を守らなくてはいけないという活動を,NPOとしてやっておられていますが,こういった,もう少し民法に関係するような活動をやっているようなNPOみたいなものというのはあるのかどうか,あるのならばそういうところの方の話を伺いたいなと思います。 ○神吉関係官 事務当局が把握している限りの話ですが,選挙年齢に関しては,引下げを求めているRightsという名称のNPO団体がございます。この団体は,国民投票法案の審議の際にも参考人として出席されている団体でございます。成年年齢についても,選挙年齢を引き下げた後に,いろいろな条件整備をして,成年年齢の引下げをすべきではないかという御意見を,今回のパブリック・コメントの際に意見として寄せられているところではあるのですけれども,メインとしては選挙年齢について引下げを求めている団体ということでございます。構成員は若い人がかなり中心に入って活動をされているようにも聞いております。この点に関して,宮本委員から補足して御説明いただきたく存じます。 ○宮本委員 Rightsに関しては,20代,30代の若い人たちが2000年に結成して,若者の政治参加,選挙年齢の引下げや,政治的リテラシーの向上,民主主義の促進のための活動をずっとやってきております。また,この間何冊か本を出しています。昨年10月には,「18歳が政治を変える」という本を現代人文社から出しました。その他,模擬選挙の推進ネットワーク,政治教育の実践などの活動をする団体等もあります。 ○鎌田部会長 民法関係に直結するような団体というのは,あまり想像しにくいのですけれども,事務当局の方で少し調べていただくことにしたいと思います。   それでは,内閣府,総務省,法務省,それから関係する団体が存在すればその他の民間の団体からも,可能な範囲内で関係者からのお話を伺えるように,事務当局のほうで調整をしていだたくということでよろしゅうございますか。 ○佐藤幹事 相手方もありますので,お受けいただけるかどうかは分かりませんが,事務当局として,皆様から御意見,御要望が出ましたので,それをお伝えして,できるだけおいでいただけるように調整してみたいと思います。 ○鎌田部会長 それではよろしくお願いいたします。   引き続きまして,「今後検討すべき論点について」と題する部会資料の40に基づきまして,委員,幹事相互間で御議論いただきたいと思います。   検討すべき論点は多岐にわたっておりますので,項目ごとに事務当局に説明をしていただき,それに基づいて,その各項目ごとに議論をしていくという進め方にさせていただきたいと思います。   まず,部会資料40の1の国民投票法附則第3条の趣旨についてから検討したいと思います。まず事務当局から説明をお願いいたします。 ○佐藤幹事 まず,国民投票法附則第3条の趣旨をどのように考えるべきかについて御議論いただきたく存じます。   御承知のとおり,今回の検討のきっかけとなりました国民投票法では,憲法改正の国民投票の投票権年齢の範囲が18歳以上の者とすると定めており,国民投票法の附則では,18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙年齢,成年年齢等の見直しの検討が求められております。   そして,この附則が設けられた趣旨といたしましては,第1回会議の際に,部会資料1として国民投票法との関係についてと題する資料を配布させていただき,御説明させていただきましたが,国民投票法案の国会審議における提出者の答弁等において,国民投票法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由として,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられており,民法上の判断能力と参政権の判断能力が一致すべきであること,諸外国においても成年年齢に合わせて18歳以上の国民に選挙権,投票権を与える例が非常に多いことが挙げられております。   中間報告書では,民法の成年年齢が選挙年齢等と理論的に必ずしも一致する必要がないという点で,部会の意見は一致しましたが,大多数の国で一致していることや,社会的,経済的にフルメンバーシップを取得する年齢は一致していることが望ましいという意見も出されました。パブリック・コメントにおきましても,憲法という国家の最高法規を改正することができる権利を有する者が,その最高法規の下位にある民法の契約行為において,完全な行為能力を有していないとされるのは違和感があるとの御意見が寄せられております。また,昨年実施した高校生に対する意見交換会におきまして,制度を改正する場合には分かりやすい制度にしてほしいという御意見も出されました。   これらの意見も踏まえまして,民法の成年年齢と選挙年齢等との関係についてどのように考えるべきか,御議論いただきたいと思います。 ○鎌田部会長 もう既に大分御議論いただいたところで,繰り返しになることが多いと思いますけれども,改めて委員の皆様,幹事の皆様の御意見をお伺いしたいと思います。   論理的には両者を一致させる必然性はないという点では,ほぼ異論のないところだと思いますので,あとは,両者が分かれてもいい,むしろ分かれることが望ましいと考えるのか,両者はできる限り一致させたほうがいいと考えるべきかというところだと思いますけれども,是非御意見をいただければと思います。 ○青山委員 意見ではないのですが,今の問題の出し方なのですけれども,一致させることがいいかどうかということは,20歳で一致させるということも含んだ意味のことなのか,一致させるということは,18歳とか19歳に引き下げるということなのか,そこのところをはっきりしないと,意見の表明が難しいかもしれません。 ○倉吉委員 これはいろいろな考え方があると思うので,どうこうと言うつもりはないのですけれども,一般論として,選挙年齢と成年年齢というのは,幾つになるかは別として,これは分かれているというのはまずいのではないか,一緒のほうが国民には分かりやすいのではないか,という御意見は本当にないのかという点を伺いたいと思います。選挙年齢と成年年齢は,論理的には関連性はないということは皆さん一致しておられるようなので,その上で,国民に分かりやすいかという政策的な観点も踏まえて,成年年齢をどうすべきかお考えいただきたいと思います。最初に結論ありきにしてしまうと,逆に発言しにくいと思いますので,その辺のところをもう少し聞かせていただければ有り難いと思います。 ○鎌田部会長 倉吉委員の御要望は,年齢がどうなるかは抜きにして,選挙年齢と民法成年年齢は一致したほうがいいのか,あるいはそれは必要に応じて別々になっても構わないではないか,どちらの考え方をお持ちなのかという御意見をお伺いできればということでございますけれども,いかがでしょうか。 ○木村委員 分かりやすさという意味においては,一致したほうがいいのだろうと思いますし,フルメンバーシップを得られる年齢というのは一致すべきということになるのではないかと思います。  しかし,今は法制度として議論しており,その前提に立てば,やはりその法律ごとの目的とか趣旨などがそれぞれあるわけですので,それに見合った制度をどうするかという議論にならざるを得ません。  確かに,制度をつくるときに,国民の分かりやすさということも重要な,いわばメルクマールといいますか,要素だとは思いますけれど,そのために若者の保護を切り下げる問題など,民法の法制度上の問題を犠牲にしていいのかというと,必ずしもそうではないのではないかというのが,私の以前からの意見です。したがって,やはり,厳密に考えていくと,それぞれで考えていくべきであろうと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。 ○松尾関係官 先ほど御紹介いただいたパブリック・コメントの中に,憲法は国の最高法規であってうんぬんというのがございましたけれども,それはそのとおりで,したがって,憲法改正の国民投票の問題が18歳ということになりました以上,その下位の法律である公職選挙法を策定する場合,やはり国民投票の場合と合わせるのが自然であると思われます。   しかし,それは,やはり一つ一つの法律の性質を考えてのことでありますから,例えば裁判員制度において,裁判員になる資格の年齢を引き下げることは,恐らく極めて不適当であろうと思います。民法の場合どうするかも,国民投票法とは別個の問題と言ってよいでしょう。 ○鎌田部会長 宮本委員,どうぞ。 ○宮本委員 あまり細かい法律のことは全く素人なのですが,例えば,18歳で選挙ができるということは,子どもに教育するときに,どういう論理で教えていくか。これは,シチズンシップ教育などとかかわっていくと思うのですけれども,やはり選挙の投票権というのは社会のメンバーとしての権利を行使できるのだと,こういうことですよね。それと同時に義務を教えるという,こういうセットになっていると思われます。18歳成年年齢をとっている国の公民教科書とかシチズンシップ教科書を見れば,権利と義務のセットで教えているわけです。   そういう点で言えば,18歳になって,投票権を得る一方で,この部会で大変御懸念の例えば消費者被害等があって,20歳までは保護されるという論理がすっきりするのだろうかという疑問があります。ですから,私はやはりシンプルに考えれば,一致させたほうがよくて,その上で何が必要かということですけれども,18歳で権利だけでなく義務が発生し,それに伴っていろいろな被害もあるといったときに,そこのところをどのようにカバーするかということです。これは正にセーフティネットの問題で,何らかの被害に遭おうと,それが何らかの形できちんとカバーされる仕組みさえあれば,18歳で何の問題もないように思うのです。そのあたりは事細かに言うことはできませんけれども,18歳成年年齢を採っている先進諸国の状態を見ると,若者であるために,要するに完全なフルの大人にはなっていない,成年年齢には達しているけれどもフルの大人にはなっていない,まだまだいろいろな配慮が必要な人が,例えば雇用の問題でいろいろ不利益を被れば,それをカバーするセーフティネットがあるとか,それからまだまだ教育訓練が必要であれば,年齢的には成年年齢の18歳になっていても,それから25歳くらいまでは教育訓練がかなり重要なものということで,強調されているわけです。   そういう意味では,権利,義務の発生と,実体的な,要するに大人になる移行のプロセスにある人のための環境整備するということとは,決して矛盾することではないのではないかという感じがいたします。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 憲法に基づく権利義務というものは特段成人に限るわけではございません。表現の自由その他の基本的人権につきましては,憲法上の権利は年齢を問わず享受できるものです。そういう意味では,別に成人年齢に合わせなくても,憲法の改正,こういうものに加わることはできるというのは,十分論理的ではないかと思います。   実質的に考えましても,社会に対する参加,共同参加を通じて,自分の権利,義務を意識すると。そういう行動を通じることによって大人である意識を高めるということで,逆に共同参加の機会,そういうものを早めに与えておくことによって,成年になったときは自分は社会人として一人前であるということで,私法上の権利・義務も完全に享受できる,こういう考え方もよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はございますか。水野委員,どうぞ。 ○水野委員 先ほどまでの文科省の新学習指導要領のお話などを伺いながらまた考えていたのですが,この部会での議論でも,民法の成年年齢というのは主に契約の観点からだけ議論されることに,私は一貫して強い違和感を持っております。法というものが,我々の社会,つまり多様な価値観をもっている人々がそれぞれの人権を保障されながら,しかし平和に共存するルールというものであるとすると,民法はその中心の一つだと思います。契約に限らず,市民間の共存の基本ルールが民法です。でも今度の学習指導要領の改訂を拝見しましても,そういう意味での法的な教育,法的な考え方というものの教育が非常に薄い。消費者能力でも,いかにして被害を免れるかというのは,むしろ末梢なことだと思うのです。それよりも,我々の社会を構築する上で,一つの価値観に暴走したり,世論や政治はとかく暴走してしまうわけですが,そういう暴走に対していわば社会の抵抗力や安全弁を形成するのが法であり,法的な考え方です。そういう法的な考え方をきちんと教えていくというのが我々の社会の共存のルールの基本だと思うのですが,そういう意味での法的な教育がなかなかなされていないなと,これを見ながら改めて思っておりました。   私より大村委員のほうが法的なものの考え方の教育についてお詳しいわけですけれども,そういう法教育の一環として考えますと,やはり先ほどからの御意見にもありますように,フルメンバーシップを持った人間として,我々の社会の成り立ちをどのようにつくっていくかということの責任を負う一人なのだという,成年年齢をそういうものと考えると,民法も選挙権と一致をしたほうが自然だろうと思います。分かりやすさというものを越えた意義があるように思います。 ○大村委員 私も,民事の能力と公法上の能力,基本の部分は一致させたほうがいいのではないかと思っております。   理論上,一致させる必然性はないという御意見はあろうかと思いますけれども,公法上の能力につきましても,民事上の能力につきましても,当初は非常に制限された状態から出発しまして,これが拡大してくるというのが歴史の流れかと思いますけれども,そのときに,一定の年齢に達していない人はなお十分な能力を持たないというのが今でも残っている制約になりますけれども,その制約が基本の部分において異なるというのは,説明は難しいところが残るような気もいたします。   ただ,例外的な差異が設けられるのは,当然のことでございまして,松尾関係官がおっしゃった,刑法上も異なる年齢が出ているでしょうし,民法上ももちろん,特別養子を迎えることができる能力ですとか,あるいは公職選挙法上も被選挙権の年齢とかというのはあると思いますけれども,そういうものは除きまして,基本の部分は長期的にはそろえることが望ましいのではないかと思っております。   ただ,それとの関係で,先ほどの倉吉委員もおっしゃいましたけれども,どのような形で意見集約するのかということにかかわっておりますけれども,一致したほうがいいと言うと,それでは一致させよう,直ちに一致させようということになるのかというと,一致させたほうがいいけれども,当面これが別々であるという状態を容認するかどうかというのは,また別の問題だろうと思います。今回の意見照会の結果というので資料を頂いておりますけれども,先ほど話題になりましたRightsという団体からは意見がありまして,一致しなくてもよいとの意見として分類されておりますけれども,これは当面,その国民投票の年齢,あるいは選挙年齢の年齢のほうを先に下げてほしいということだと思うのです。一致していなければいけないということだと,一緒ではないと下げられないから,当面は民法のほうは後にしてほしいという御趣旨だろうと思います。中を拝見しますと,究極的にはそれは合わせることが望ましいというお考えのようですので,そのあたりの仕切りも留意しながら最終報告書の取りまとめをしていただければと思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   先日,法制審議会の総会でこの部会の審議経過を御報告させていただいた際には,タックスペイヤーという観点を入れるべきだという御意見がありました。18歳になると相当数の人がタックスペイヤーになっているので,公民権の観点ではやはり18歳に引き下げる必要はあるけれども,自分の財産関係,場合によっては一部家族関係にも入るのでしょうが,そういうところでの自己責任を負うかどうかというのは,また別の話だという御意見が出されたことも御紹介させていただきます。   今田委員,お願いします。 ○今田委員 合わせる必要があるか否かについてですが,選挙年齢が18歳だから成人年齢も18歳に引き下げる論理的な必然性はない,この理解でよろしいのでしょうか。   この議論と,望ましいか否かは別の議論だと思います。望ましいという言葉を使い始めると,いろいろな議論があり得るだろうと思うので,こういう論点で望ましい,こういう論点では望ましくないという両方議論を総合的に考察しないと,ある観点だけで望ましいと言い張っても,なかなかここでは集約できないのではないかと思います。   だから,結局,どこに行き着くのかというのをここでやらないといけないのではないでしょうか。ある観点で望ましい,ある観点では望ましくないという議論をずっと積み上げてきましたが,それを踏まえてこれまでの議論をどういうふうに集約していくかということに議論を進めるのがよろしいのではないでしょうか。 ○鎌田部会長 それはおっしゃるとおりですけれども,ただ,論理的必要性がないというのもある種の立場の表明で,例えば水野委員のような御発想でいけば,むしろ論理的に一致すべきであると,必然的に一致すべきであるという議論だと思いますけれども,別々だという論理が成り立たないとまでは言わないという,そういう意味での論理的必然性はないという表現なのだろうと思います。いずれにしましても,考え方の基本が違えば結論が違うというたぐいの問題で,議論していけば全員一致になることは,ほとんど期待はできないのですけれども,どちらの意見が大勢を占めたかということがある程度明らかになったほうが,どうしようと思っているのか全く分からない答申にしないことができるということで,少しずつでも御意見を固めていっていただいて,その結果でどちらが大勢であるか,あるいはもうこれは本当に結論がここでは出せないとするのかの見極めをつけたいということでございます。 ○木幡委員 そもそもという話になってしまうかもしれませんが,民法の成年年齢が先に18歳になったので,国民投票権や選挙権も18歳に引き下げるというなら分かるのですけれども,先に国民投票権だけ決まって,だから民法の成年年齢も変えるというのは,何だか少し違和感があるという点だけ申し上げたいと思います。 ○鎌田部会長 分かりました。   逆に民法は下げないから国民投票年齢も下げるなとまでは主張しないということになりますか。 ○木幡委員 難しいですね。 ○鎌田部会長 率直におっしゃっていただいたような状況が現状だと思いますので,次の課題に移りたいと思います。   次に部会資料40の2の(1)でございますが,成年年齢を引き下げる必要性についての論点につきまして,検討を行いたいと思います。   まず,事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 次に,成年年齢を引き下げる必要性について御議論いただきたく存じます。ここでは,アからエまでの四つの論点を記載させていただきましたが,それぞれ関係する論点ですので,まとめて御議論いただきたく存じます。   まず,アの若年者の精神的成熟度についてどのように考えるべきかという点でございますが,第1回会議で御説明しましたとおり,成年年齢が20歳と民法で定められた理由の一つとして,民法制定当時の日本人の精神的成熟度を考慮したと言われております。そして,パブリック・コメントに寄せられました御意見の中には,近年の若年者は経済的・社会的自立が遅れており,幼稚であるという意見がある一方,インターネット等の普及により多くの情報を得ることが可能であり,また,海外の若年者と日本の若年者との間に意識や能力で著しい差があるとは思えず,成熟度は高いという意見がございました。   また,イの諸外国の成年制度と一致させる必要性についてですが,諸外国の多くでは,18歳成年制を採用しているところ,我が国の若年者と諸外国の若年者の成熟度には差異がなく,我が国の成年年齢もグローバルスタンダードに合わせて,18歳に引き下げるべきという意見がございました。これらの点についてどのように考えるべきか御議論をいただきたく存じます。   次に,ウの若年者の社会参加,自立の促進の論点ですが,こちらは,先ほどのア,イの論点におきまして,我が国の若年者は成熟度が十分ではない,十分な自立をしてないという結論を前提にということになるのかもしれませんが,契約年齢,親権に服する年齢が引き下がることにより,若年者の社会参加,自立を促進すべきという意見についてどのように考えるべきかということにつきまして,御議論いただきたいと思います。   最後にエの論点ですが,こちらは若干観点が異なるものですが,親から独立した18歳,19歳の者に,親の同意なく一人で契約をすることができるようにする必要性をどのように考えるかという論点でございます。親の同意なく一人で契約をする必要性が相対的に高いと考えられる,親元から離れて暮らしており,働いている18歳,19歳の者の割合は,全体の6.7パーセントであるというデータがございましたが,こちらを多いと見るか,少ないと見るのか,御意見が分かれるところだと思います。   また,パブリック・コメントにおきましても御意見が寄せられましたが,仮に大人の同意なく一人で契約をする必要性が高いとしても,現行民法の解釈の範囲内において,少額の契約であれば,親の同意なく一人で契約をすることができ,実際上ほとんど不都合がないという御意見がございましたが,この点についてどう考えるかなどについて御議論いただきたいと思います。 ○鎌田部会長 これらの点も従来議論してきた項目を大きく外れるものではございませんので,重ねた御意見になろうかと思いますけれども,是非この場で御意見をいただければと思います。 ○大村委員 実質的な事柄については何度も意見を申し上げておりますので,繰り返しませんけれども,今,挙がっていたア,イ,ウ,エのうち,最後のところだけ民法の解釈の話が出ておりますので,そのことに触れたいと思います。   2ページの真ん中あたりですけれども,「また,仮に親から独立した18歳,19歳の者が親の同意なく一人で契約する必要性が高いとしても,成年年齢を引き下げる必要性があるか(現行民法の解釈の範囲で対処が可能かどうか。)。」という箇所でございますが,現行民法は,未成年者に対して,ある財産について処分を許すということを認めておりますけれども,これは目的が定められているとか,あるいは少なくともある財産,どの財産かということについて定めがあるというのが出発点だろうと思います。ただ,その範囲を緩めていくことによって,解釈論でどこまでカバーすることができるかという問題になってくるかと思います。   実際の問題として,相当多くのものは,その運用によってここに含めるということは,不可能ではないだろうと思いますけれども,限界的なところでこれは入るのか入らないのか,あるいはおよそ一般的に未成年者に対して,包括的に財産の処分を許すことが可能なのかどうなのかということは,疑義が生ずるところだろうと思います。制度をつくるということであれば,そのような疑義はできるだけ生じないようにしたほうがよいのではないかと思いますので,仮に解釈論上,かなりの程度までカバーが可能であるとしても,明確な制度をつくるということの意義はあるだろうとは思います。 ○鎌田部会長 その場合の明確な制度というのは,成年年齢を引き下げて一律にすべてのことができるようにするというのもあれば,部分的に能力を与えるという方法もあるという,その両方を含むという意味ですね。 ○大村委員 はい,そうです。 ○鎌田部会長 五阿弥委員,お願いします。 ○五阿弥委員 日本の若者は幼稚であると思っている人が結構多いと思うのですが,ただ考えてみると,何をもって幼稚というのか難しい面もあります。昔は漫画を読んでいると幼稚と言われましたが,今はもう40代でも漫画を読む。それどころか,漫画こそ日本文化の代表の一つになってきているわけです。   かつての教養主義的な考え方からすると,カントも読んでいなくて高校生かという話になるのでしょうけれども,やはり今の社会そのものが変わっているのではないかと思います。子どもが単独で育つわけではなくて,そこは必ず大人社会の反映ですから,子どもが幼稚だったら大人も幼稚なわけです。だから,やはり幼稚という言葉を使ってしまうと,非常に何か難しい感じがするなと思います。ここにも書いてありますけれども,今の若者は,昔の若者とは違う意味で様々な知識の広がりを持っていることは確かですし,やはり昔と比べていろいろな世界を見ている若者というのは,実数としては多くなっている。   この前,留学生と話す機会を早稲田大学で持っていただきましたけれども,そのときに留学生の方が日本の同じ若者を見ていて,精神的に未熟だと思いますかどうですかという質問をこちらがしたのです。そうしたら,私たちより大人だと思いますと答えました。どうしてですかと聞くと,アルバイトをしているからと言うのです。この部会でも出たと思いますけれども,やはりアルバイトの体験というのが非常にその子どもの意識を変えていくというのがありましたけれども,そういう意見もあって,私自身驚いたんですけれども,やはり一言でなかなかくくれないなというのが私の感想です。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   それでは,また次の課題にも関連してくると思いますので,何かありましたら後ほどでも御意見をお出しいただければと思います。   次に部会資料40の2の(2),成年年齢を引き下げた場合の諸問題の論点についてでございます。この点につきましても,事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 続きまして,成年年齢を引き下げた場合に生じる弊害,問題点をどのように考えるべきか,御議論いただきたく存じます。   中間報告書では,成年年齢を引き下げた場合の問題として,若年者の消費者被害の拡大及び自立に困難を抱える若年者がますます困窮するおそれの二つの論点を掲げていただきましたが,パブリック・コメントの結果を踏まえて,ウとして,親が子に対して扶養義務を負う年齢が18歳に引き下げられるおそれについてどのように考えるべきかを付け加えさせていただきました。   イの自立に困難を抱える若年者がますます困窮するおそれ等の論点につきましては,パブリック・コメントでも意見があまり寄せられませんでしたので,本日は,ア及びウの論点を中心に御議論いただければと思います。 ○鎌田部会長 それでは御意見をいただければと思います。どうぞ,仲委員。 ○仲委員 成年というのをどういうふうに考えるかというのは,先ほどの問いとも関係するのですけれども,何か能力がついてそれを達成したから成年になるというわけではないと思うのです。社会的な期待を反映して,そういう行動がとれるようになっていくということだと思うのです。そういう意味では,権利を与えて何かをできるようにするという点では,引き下げるということは権利の拡大につながって望ましいことだと思うのですけれども,反対に,権利を与えられることによって生じるいろいろな問題を社会が切り捨てていいのかという,そこがすごく大きな問題だと思います。   民法の成年というのは,刑法とかそのほかのものとは全然個別に考えるということではあったわけですが,しかし理念としての成年,フルメンバーシップということになっていくと,やはりほかの領域にも影響を及ぼしてくると思うのです。そういう意味では,福祉であるとか,あるいは刑事的なところでの少年の扱いとかいうことにも影響を及ぼす。そういうふうに考えると,権利はいいのだけれども,それをうまくきちんと積極的に使うことができない立場にいる青少年たちの扱いをどうするのか。引き下げて生じる問題があるとすれば,それは相当期間長く,今はもう20歳に期待ということでやってきているわけですから,社会が面倒見ていかなくてはいけないのではないかと思います。 ○鎌田部会長 宮本委員,どうぞ。 ○宮本委員 今の仲委員のこととかかわっていると思うのですが,イの自立に困難を抱える若年層が18歳に引き下げるとますます困窮するのではないかという点に関してですが,実態として,自立に困難を抱えて,親に見てもらえない人たちは,成年年齢が18歳だろうが20歳だろうが,変わりなく見てもらっていないのです。その部分に関して,むしろ問題は,親に見てもらえない青少年,若者が,社会によって保障されていないというところのほうが,日本においては問題であると思います。その点では,このイというのは,成年年齢にはかかわりのない,もっと別の問題で,近年で言うと,家庭の経済状態が非常に悪くなって,親からお金も出してもらえないような,そういう家庭の問題というのは,もう中学,高校あたりではっきり出てきているという状態で,その人たちは20歳までは親の責任だから,親が責任を果たせということでは救済されません。20歳と定めることによって,親に責任を転嫁して公的責任をとらない結果にもなります。   それから,ウも同じことがいえると思います。18歳に引き下げられることで,子どもの進学の機会が奪われるおそれについても実態が明らかにしていると思いますけれども,進学のためにお金を出せないような家庭の親というのは,もう既に高校時代の授業料が出せず,そして中退をしていくというのが実態で,この5年から10年の間に,そういうタイプの家庭が2倍に増えていると言われております。そういう点でこのイとウというのは,成年年齢とは別の問題ではないかと思います。 ○鎌田部会長 これは以前,平田幹事の御意見の中にもあったかと思うのですけれども,離婚に伴う扶養義務の問題等もここに少し絡むんだと思うのですけれども。 ○平田幹事 このイ,ウに関しては,恐らく18歳に引き下がって,実際成熟度はどうかともかくとして,一人立ちしなければいけない立場だというので,突き放す親が増えるのではないかというところで,特に離婚の際に問題が顕在化するというのが日弁連の委員会内で出ていた意見です。それでも成年年齢が20歳であれば,家庭裁判所の審判官に求めれば,20歳までは養育費の支払義務があるんだと明確に認めてもらえるのが,18歳に引き下がることによって希薄化していくのではないかと。現実に払っていないではないかと,それもそうなんだと思いますけれども,現状では少なくとも家庭裁判所に養育費支払請求を求めて,履行勧告の請求までできるという前提が失われやしないかという危惧感で,こういう意見が述べられていた,そういう趣旨だと思います。 ○鎌田部会長 水野委員。 ○水野委員 二重,三重の問題があると思います。実態として,そもそも扶養能力がないような親がたくさん増えてきているという問題と,そういう場合に若年層に直接的に支援をすることができない,社会の支援がないために,いわば貧困の再生産が生じているという問題があります。それからまた別のレベルの問題として法的な扶養義務の強制,今,平田幹事がおっしゃった法的な扶養義務の強制のレベルの問題等というのがあります。法的な扶養義務の強制のレベルの問題では,これも日本はここでも遅れておりまして,社会保障と連動させて子に代わって公権力が取り立てるのが先進国では普通ですが,日本では妻や子が訴訟をしなくてはなりません。先ほど例外的に,いわば家庭裁判所に行ったときに審判官が命じてくれるとおっしゃいましたけれども,その結果としての扶養料の履行強制は,先進諸外国と言いますか,西欧法ですと,これは刑事罰などを伴う非常に重いものになっているわけですが,日本ではそこの強制力も弱いのです。   ただ,先ほどの日弁連の危惧は,そのようなもの,つまり強制力が弱いものであったとしても,そういう義務が法的にはあるのだということが失われてしまわないかということなのですが,厳密に解釈論で言いますと,必ずしも現在の段階でも,20歳を超えたときに扶養義務がないというような解釈論は成立していないと思います。つまり,直系血族間に相互の扶養義務がありますし,親権者でなくなったら扶養義務がなくなるというものではないと思います。国際的な扶養条約などでも,大学教育のうちは教育資金に対する親の義務をどこまで課すかという議論がされております。ここのところは解釈論としては柔軟に開かれていますので,民法としては,親の資金があって,そして大学教育を受ける子どもがいて,そしてこのような社会状況の,つまり子ども本人に対する支援がない現状では,大学教育について,20歳を過ぎ,18歳を過ぎても,教育費用が必要な子どもに対する親の扶養義務はあるのだという解釈論を立てることは,十分にあり得ると思います。 ○鎌田部会長 岡田委員。 ○岡田委員 私はアの部分なのですが,前にも申し上げましたが,18歳で未成年取消権を使うケースがあるかというと,それほどないのです。同時に,では20歳になっているからもう消費生活センターで救済できないかというと,それもないと考えますと,18歳に引き下げたから被害が拡大するということが,どうしても現場の人間としては違和感があります。それはなぜかというと,民法以外の部分で,契約自体が適正かどうかというスタンスで今,解決へ持っていくものですから,もし能力が成人であっても劣っていれば,その部分で救済するということをやっているので,パブリック・コメントの中で,相談員の方が何か被害が増えると書いてありましたけれども,そういう認識は私の周りでは深刻に受けとめていません。確かに18歳に引き下げたとき,一時期に増えるかもしれないけれども,ではそれによって救済できないかというと,それもないと思っているので,このためだけに20歳であるべきだということに関しては,もう一つ納得できないという気持ちでおります。 ○木幡委員 でも,18歳のところにそういう勧誘が来ると,20歳の方よりも引っ掛かりやすいとか,そういうことというのは考えられないですか。 ○岡田委員 18歳のところへ来ればというのは,今はもちろん取り消せますよね。ですけれども,今の時点でも,未成年者取消権を使うケースがそれほどないのです。 ○木幡委員 それとは別にしても,実際被害に遭うといろいろな精神的ショックもあるし,影響力というのは大きいと思うのですけれども,18歳にそういう勧誘がたくさん来たときは,やはり被害に遭う確率は高いのかなと思うのですが。 ○岡田委員 下がった1年とか2年とか,それはあるかと思います。ただ,できればそういう被害に遭ったときに,その人間がすぐ行動を起こしてくれることをむしろ期待したい。それが消費者教育であり,法教育かなと思うのです。自分で被害に遭ったと,ないしは不本意な契約をしてしまったということに,気付いてほしいのです。 ○鎌田部会長 実際には岡田委員がおっしゃるとおり,救済を求めれば救済を受けられるのに,そのままになって泣き寝入りしている,あきらめているという人が,潜在的に多く存在しているということだと思います。 ○青山委員 アの点ですけれども,18歳に引き下げれば,被害が多くなるかどうかという議論がありますけれども,前にこの部会で,18歳から20歳までの間の中間的な者に対してどう扱うかということが議論されていたと思いますが,18歳に引き下げて,もうあとは成年と全く同じだというのではなくて,そこのところの救済の方法というのは何か議論が進んでいるのかどうかということを伺いたいと思います。   というのは,取消権を認めるのであれば,これは改正する必要は全くないわけですから,取消権とは違って,例えば消費者契約法の今のままではなくて,消費者契約法の中に若年であるということの考慮を入れた,使い勝手のいい消費者契約法の改正というようなものが考えられるかどうかと。大村委員は,前,中間的な扱いという3段階方式のようなことを言われましたけれども,そういうもの,民法の中で3段階ではなくて,民法は民法として成年年齢を引き下げた上で,他の法で救済を図るというようなことができるかどうか。所管が違うので,法務省では答えにくいかと思いますけれども,先ほど内閣府からも人が来て,話をしてほしいという御意見がありまして,私ももし,そういう人が来て話をしてくれるならば,その仮に引き下げた場合に,消費者契約法の改正とかそういうことについて,何か話をしてもらえると大変有り難いなと思っているということだけ,付け加えます。 ○鎌田部会長 御専門の大村委員,何か御意見はありませんか。 ○大村委員 内閣府の件については,私がお話する立場にございませんけれども,前に消費者被害が増えるという前提に立ったときに,どのような対応策が考えられるかということで,幾つかお話ししたことがございます。その中で,他の省庁の管轄である特別法について,今,高齢者については一定の範囲で考慮するような扱いがされているので,若年者についても同様の取扱いを設けてもらうというようなことが考えられるのではないかと申し上げました。   それから,消費者契約法そのものということではありませんけれども,民法の法理として,その当事者の置かれた状況を勘案して,契約についてその効力を否定するという考え方は,諸外国でもございますし,現在,債権法の改正が話題になっておりますけれども,その中ではそのような考え方も提案されているところではございます。 ○鎌田部会長 山本委員,お願いします。 ○山本委員 アについてでございますけれども,民法の成年年齢を引き下げる,下げないにかかわらず,とにかく消費者教育,広い意味での学校教育の中だけではなくて,全社会的な規模での消費者教育というのは強力に進めなければいけないということは,はっきりしていると思います。それから,消費者被害に対する対策も,これは政府を挙げてきちんとやる必要があると思います。   過般,具体的なデータで紹介されたときに,各年齢層の中で消費者被害に遭っている人の割合を見たときには,例えば20歳,あるいは21歳,つまり成年年齢に達した人たちが特段に多いというよりも,むしろもっと年齢を重ねた人たちの割合のほうが多いというデータもあるわけです。そういう意味では,この成年年齢を引き下げる,下げないにかかわらずやらなければいけないことなのであって,これがあるから成年年齢を下げてはいけないとか,あるいは下げたほうがいいとかという種類の議論ではないのではないかと思います。   それから,イとウについては,宮本委員が指摘されたとおりだと思いますので,いずれにしても何を基準にして成年というのかということに,ずっと突き詰めていくことになるのだろうと思うのです。その意味で繰り返しになるのですが,ピンポイントで成年というのは実態に合っていないと。そのゾーンで,だんだん成年として,成人としての能力,あるいは知見が形成されていくのであって,そのスタートを18歳にしても,それは社会的な様々な施策を講じ,一定の時間的準備をすれば,十分可能ではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。木村委員,どうぞ。 ○木村委員 そういうことであれば,このアもイもウもあまり成年年齢と関係ないという話になり,成年年齢を引き下げた場合の問題はないということになるのでしょうか。ないと言い切って良いのかどうかがよく分からないということと,ないのであれば,成年年齢を引き下げる場合の環境・条件整備なども必要ないということになるのではないかと思います。それとは関係なく,今こういう問題があるから対応しようということはあるでしょうが,成年年齢を引き下げる場合の環境・条件整備など必要ないということになっていくのでしょうか。今のお話を整理するとそうなってしまうのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ○山本委員 成年年齢を引き下げる,下げないにかかわらず,必要ですねというのがベースにあって,成年年齢を仮に引き下げるとすれば,それを契機として強力にやっていく必要があるのではないかということだと思うのです。 ○鎌田部会長 つまり民法の側で内発的に18歳にしなければいけない必然性がどれほど強いかということと,その強さとの相関でどういう不都合があるかという問題点の持つ重みというのが,やはりちょっと変わってくるということだと思うので,それぞれおっしゃられていることはみんなもっともだと思われますが。 ○大村委員 今,部会長のおっしゃった内発的な要請ということにかかわるかもしれませんが,先ほど総会においてタックスペイヤーという視点が出たという話がございましたけれども,その趣旨は,18歳を超えると,実際に働いていて収入を得て税金を払っている人がいるから,そういう人には,国政への参加を認めるべきだという御議論ですか。 ○鎌田部会長 そうです。 ○大村委員 仮にそういう御議論だとすると,18歳以上になるとそういう人は増えてくるだろうと思うのです。ですから,選挙権も認めようということになるのだろうと思いますが,他方,民事で見たときにも,やはり18歳以上になると,働いている人は同じようにいるわけでして,その人たちが自分で働いていて自分の財産を自分で処理できなくていいのかということになるのではないかと思うのですが。 ○鎌田部会長 先ほどおっしゃられたように,自分に有利に使う分については,あまり法は干渉していないので,その責任を負わされるという部分が主として議論の対象になってきて,その自己責任を負えという観点と,18歳を過ぎるとある程度の人は働き始めているということとは,そこは連動させる必要はないという御意見だったと理解しております。   山下幹事,お願いします。 ○山下幹事 ウに関連する話なのですが,専ら委員からは,扶養義務との関係とか,お金の問題のほうで議論が出ておりますけれども,大学の入学そのものも契約でございますので,親権者の同意がないと大学に入学できないという問題が恐らくあると思います。そうしますと,むしろ成年年齢を引き下げないほうが進学の機会を奪うという立論もある程度可能なわけでございまして,ちょっとこのウが必ずしも論理必然ではないという点についてコメントを申し上げます。 ○鎌田部会長 元のパブリック・コメントの記載を読んでいませんけれども,現に子どもが大学にいるときに離婚したというよりも,子どものうちに離婚したときに親が何歳までの養育費を支払うべきかという場面で,18歳で打ち切られると大学には行けなくなる。20歳まで養育費を持ってもらえれば,まだ大学への進学への機会は保障されると,そういう状況のもとでのお話だろうと思います。   ほかにいかがでしょうか。   よろしければ,次に,3の成年年齢を引き下げる場合の環境・条件装備の内容についてというところに検討を進めたいと思います。   まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ○佐藤幹事 成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策についても御議論をお願いしたいと思います。   まず,必要となる施策の内容についてですが,中間報告書では,消費者被害が拡大しないための施策の充実として,消費者保護施策の充実と,消費者関係教育の充実が挙げられました。パブリック・コメントに寄せられた意見の中には,消費者保護政策の充実について,未成年者取消権に代わる新たな取消権,解除権は,少なくとも現行制度と同程度の消費者被害救済手段として設けられる必要があるという意見がありますが,どのように考えるべきか御意見をちょうだいしたいと思います。   また,消費者保護施策として,中間報告書8ページから10ページで,1から5まで具体的な施策が挙げられておりますが,この施策に付け加えるべき施策はないかについても御議論いただきたく存じます。   また,中間報告書では,消費者関係教育の充実も大きく取り上げていただきましたが,先ほど文部科学省の髙橋関係官から,消費者関係教育の現状等につきまして御説明を伺いましたので,先ほどの御説明を踏まえてどのように考えるべきか,御議論を賜りたいと思います。   なお,パブリック・コメントでは,若年者の自立を援助するための施策の充実について,特に御意見は寄せられませんでしたが,中間報告書に付け加えるべき施策はないか,御議論いただきたく存じます。   以上の具体的な施策の内容を踏まえ,さらに仮に成年年齢を引き下げる場合,これらの施策をどの程度充実する必要があると考えるべきか,また,成年年齢の引下げとこれらの施策の充実の先後関係についてはどのように考えるべきかにつきましても,中間報告書の内容に付け加える事項があるかどうか,御議論いただきたいと思います。 ○鎌田部会長 それでは,これらの件につきまして御意見を伺いたいと思います。 ○佐藤幹事 先ほど委員の皆様から,内閣府や総務省の御担当者に来ていただいてお話を伺いたいということもございましたので,それを踏まえてからということでも構いません。本日は,お時間の関係もありますので,特に御発言があればということで,また次回で結構です。 ○鎌田部会長 3のアの①につきましては,先ほど少し大村委員からもお話のあったところと関連しますけれども,現行制度と同程度の取消権を与えるのであれば,成年年齢を引き下げる必要はないというのが一番素直な反応になると思いますので,それとは違うどういう保護が必要なのか,実現可能なのかということが問題になって,そうなると,中間報告書でそういうふうに掲げているようなものとの関連ということで,また改めて御議論いただくということになろうかと思います。   消費者関係教育につきましては,先ほど来議論があったところでございますけれども,さらに御意見はございますでしょうか。   先ほどの学習指導要領の表現も,読み方によれば自己責任だという側面がやや強調されていると読むことも不可能ではないような表現になっていたかと思いますが,具体的にどういうふうなことがという部分については,岡田委員等を含めてかなり御提案をいただいたところでございますので,またさらにあれば,次回以降にまた御意見をお出しいただくということで処理させていただいてよろしいでしょうか。   自立援助のための施策というのは,かねてより宮本委員が一番中心的におっしゃられていたことではございますが,またこれも内閣府の御説明を伺った際にということでよろしいかという気がいたしますが,次回以降にまたこの部分については議論させていただくということでよろしいでしょうか。本日の時点で御意見があれば承りたいと思いますが。   よろしいですか。   最後に,4以下の論点について,事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 時間の関係もありますが,先ほどのパブリック・コメントの関係であまり御説明しませんでしたところもありますので,御説明だけさせていただきたいと思います。   4以下の論点については,まとめて御説明させていただきます。   まず,4の成年年齢を引き下げる場合の年齢等について御説明いたします。   中間報告書では,仮に成年年齢を引き下げる場合,成年年齢を何歳とすべきかにつきまして,18歳にするというA案,18歳に達した直後の3月の一定の日に一斉に成年とするB案,19歳とするC案の3案を掲げていただきました。   パブリック・コメントに寄せられた意見としましては,A案とB案をそれぞれ支持する御意見がありましたが,C案を支持する御意見はございませんでした。そこで,この点についてどのように考えるべきか,御意見をちょうだいしたいと思います。   次に,5の養子をとることができる年齢についてですが,仮に成年年齢を引き下げるとしても,現状維持とすべきということでよいか,御議論いただきたく存じます。   パブリック・コメントに対しまして,意見の一つとして,25歳に引き上げるべきという意見が出されましたが,部会の意見としましては,中間報告書どおり現状維持でよいか,御意見をちょうだいしたいと思います。   次に,6の婚姻適齢についてですが,中間報告書どおり,仮に成年年齢を引き下げる場合には,男女とも18歳とすることでよいか,御意見をいただきたいと思います。   なお,部会では男女とも18歳を原則としつつ,16歳,17歳の場合であっても,妊娠した場合など特別な事情がある場合には,家庭裁判所の許可を得れば婚姻することができるようにすべきという意見も出されましたが,こちらは成年年齢を引き下げた場合の特有の論点というわけではない気もいたしますが,この点についてどのように考えるべきか,御意見を賜りたいと思います。   その他,7ですが,親権解放制度の導入についてもどのように考えるべきか,併せて御意見をちょうだいしたいと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。これも,次回に主として議論することになるかもしれませんけれども,本日の時点で御意見がございましたらお出しいただければと思います。 ○五阿弥委員 養子のことについてです。現状維持でいいと私は思っているのですが,25歳に引き上げるべきであるという意見もあるようです。現状の20歳で養子をとれることが,何か今,不都合が生じているような事例があったら教えていただければと思います。 ○佐藤幹事 特にないとは思いますが,一応確認はしてみます。 ○五阿弥委員 現状で問題点があるのであれば,それは変えるべきでしょうけれども,ないのであれば別にいいのかなと思ったものですから,お伺いしました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。   ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,ここまでで本日の審議を終了させていただくことにしたいと思います。   次回の日程につきまして,事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 次回の議事日程について,御連絡いたします。   次回の日程は,3月27日金曜日,午後1時30分から,場所は本日と同じ,法務省20階の第1会議室になります。   議事内容につきましては,成年年齢の引下げ等について,委員,幹事相互間で御議論いただき,最終報告書の原案に向けた方向性をお出しいただければと思っております。 ○鎌田部会長 それでは,法制審議会民法成年年齢部会第12回会議を閉会にさせていただきます。本日は御熱心な御審議を賜りまして,誠にありがとうございました。 -了-