法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第1回会議 議事録 第1 日 時  平成21年3月13日(金)  自 午後1時28分                        至 午後4時27分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○金子幹事 それでは,定刻がまいりましたので法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第1回を開会したいと思います。   本日は,御多忙中,御出席賜りましてありがとうございます。   私は法務省大臣官房参事官の金子と申します。部会長の選任がまだですので,しばらくの間,議事の進行をさせていただきます。議事に入ります前に,法制審議会及び部会について,若干御説明申し上げます。   法制審議会は法務大臣の諮問機関でございますけれども,その根拠法令であります法制審議会令によりますと,法制審議会に部会を置くことができることになっております。この非訟事件手続法・家事審判法部会は,先の2月4日に開催されました法制審議会第158回会議におきまして,法務大臣から非訟事件手続法及び家事審判法の改正に関する諮問第87号を受けまして,その調査・審議のために設置することが決定されたものでございます。法制審議会に諮問された事項につきましては,本日お手元に配布させていただきましたけれども,非訟事件手続法及び家事審判法の現代化を図る上で,留意すべき事項につき御意見を賜りたいというものでございます。   それでは,審議に先立ちまして,まず臨時委員の倉吉民事局長から一言ごあいさつ申し上げます。 ○倉吉委員 民事局長の倉吉でございます。事務当局を代表いたしまして,一言ごあいさつを申し上げます。   皆様,それぞれ御多忙の中,今回の非訟事件手続法・家事審判法部会の委員,幹事に御就任いただきまして誠にありがとうございます。   皆様御承知のとおり,これまで法務省におきましては,民事訴訟法や人事訴訟法などの民事裁判手続を定める基本法につきまして,新しい時代にふさわしいものにしよう,国民にとって身近なものとなるものにしようということで,国民の視点に立って見直しを行ってきたところでございます。   今回,検討の対象となっております非訟事件手続法及び家事審判法につきましては,その制定以来,一部について若干の見直しが行われておりますけれども,その全体について見直しを行ったということはございません。そこでこの二つの法律につきましても,新しい時代にふさわしい,国民にとって身近な,国民が利用しやすいものにしようと考えている次第であります。そこで法制審議会で御検討いただくべく,今回の諮問をさせていただいたわけでございます。   現在,法務省におきましては,非訟事件手続法及び家事審判法の改正案を平成23年の通常国会に提出することを目指しております。御承知のとおり,とりわけ家事審判法につきましては,家庭裁判所の後見的な裁量権との関係がどうかとか,関係者のプライバシー保護の問題にも気を配らなければいけないといった様々な問題がございます。その意味では個々の問題点に当たって相当神経を使ったタフな作業を皆様方にお願いすることになろうかと思いますけれども,是非よりよい法制を構築するために御尽力を賜りますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。    (委員等の自己紹介につき省略)    (部会長に伊藤委員が互選され,法制審議会会長から部会長に指名された。) ○伊藤部会長 一言,ごあいさつ申し上げます。   皆様のただいまの御決定,それから青山会長の御指名で部会長を務めさせていただくことになりました。不慣れではございますが充実した審議ができますよう,よろしく御協力賜ればと存じます。   それでは,お手元に配布されております資料につきまして,事務当局からの説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について,説明させていただきます。   部会資料としましては,事前に送付させていただきました資料番号1から3までがございます。参考資料としましては,事前に送付させていただいたものが,資料番号1から4,それから,本日,資料番号5と6を配布させていただいております。   部会資料1から3までは事務当局が作成したものです。内容は後ほど説明させていただきます。   参考資料のほうに移りまして,参考資料1が非訟事件手続法及び家事審判法に関する調査・研究報告書でございます。   参考資料2は,竹下守夫法務省特別顧問が家事審判法の改正に関し書かれた御論考でございます。   参考資料3-1から3-3までは,最高裁事務総局民事局が作成した資料です。   参考資料4-1から4-8までは,最高裁事務総局家庭局が作成した資料であります。これらの内容につきましては後ほど御説明があります。   参考資料5-1は,昨年成立したドイツの「家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律」の総則部分の仮訳等,それから参考資料5-2は,改正前のドイツの非訟事件手続法の総則部分の仮訳でございます。この二つはいずれも東京大学の民事手続法の研究者にお願いして作成していただいたものでございます。後ほど高田裕成委員から概略を御説明いただけることになっております。   参考資料6は,東京大学の垣内秀介准教授にお願いして作成していただきましたフランスにおける非訟事件と非訟事件手続に関する調査報告書でございます。   配布資料の説明は以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは次に,当部会の今後の審議スケジュールにつきまして,事務当局からの説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,当部会の日程及び今後の審議スケジュールについて若干御説明いたします。   まず部会の日程ですが,本日席上配布させていただきました非訟事件手続法及び家事審判法部会の当面の開催予定という書面がございます。こちらを御覧ください。   続きまして,今後のスケジュールですが,現在の予定ではまず平成22年3月ころまで約1年かけまして一通りの検討を行い,非訟事件手続法及び家事審判法の改正点等についての論点整理等を行うことを予定しております。当面は月1回のペースで行うこととしまして,非訟事件手続,家事審判手続及び家事調停手続,この順番に次回以降それぞれ4回ずつ審議してはどうかと思っております。その後,平成22年3月から5月ころにかけまして,それぞれの検討を踏まえ,更に必要な検討を加えながら中間試案の取りまとめを行いたいと考えておりまして,まとまりました中間試案を平成22年7月ころまでパブリック・コメントに付したいと思っております。そして,平成22年8月ころからそのパブリック・コメントに寄せられた意見等を踏まえまして更に検討を行い,平成23年1月ころに最終的な取りまとめを行えればと思っております。   なお,今回取り上げられる議題や事項等については,それぞれの回の前の回にお伝えさせていただきたいと思います。本日,2回目の予定を記載した書面をお配りしたのはそのような趣旨でございます。   当部会の今後のスケジュールにつきましては以上のとおりでございます。 ○伊藤部会長 それでは,ただいまの説明にございましたスケジュールについて,何か御質問,御意見等ございましたらどうぞお願いいたします。   特に御異論や御質問がなければ,ただいま説明申し上げましたようなことで,今後の進行をさせていただきたいと存じますがよろしいでしょうか。   それではそのようにさせていただきます。   次に審議に入ります前に,この当部会における議事録の作成方法のうちの発言者の取扱いについてお諮りしたいと存じます。まず,現在の法制審議会の議事録の作成方法につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,法制審議会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについて御説明いたします。   法制審議会の部会での議事録における発言者名の取扱いにつきましては,昨年3月26日に開催されました法制審議会の総会におきまして,次のような決定がなされています。すなわち,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,部会長において,部会委員の意見を聴いた上で,審議事項の内容,発言者名を明らかにすることにより自由な議論が妨げられるおそれの程度,審議過程の透明化という公益的要請等を考慮し,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという範囲で議事録を顕名とするというものです。したがいまして,皆様には当部会の議事録につきましても発言者名を明らかにしたものとすることでよいかどうか,先ほどの総会における決定に沿いまして,この部会での取扱いを御決定していただく必要があるものと存じます。   説明は以上でございます。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。   ただいま事務当局から説明申し上げましたが,この点に関して何か御質問等はございますでしょうか。   特段の御意見,御質問がないようでしたら,当部会につきまして部会長の私といたしましては,諮問事項の内容等を考慮いたしまして,発言者名を明らかにした議事録を作成することとしたいと存じますが,よろしゅうございましょうか。   それではそのようにさせていただきます。   それでは本日の審議に入りたいと存じます。   まず,事務当局から配布資料に基づきまして,非訟事件手続法及び家事審判法の現代化の必要性や,今回の検討の対象等についての説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,部会資料1に基づいて御説明申し上げたいと思います。   まず,非訟事件手続法及び家事審判法の改正の必要性について御説明いたします。   非訟事件手続法は,その第1編総則の規定があらゆる非訟事件に適用されるという意味で,非訟事件の手続を定める基本法でございます。しかしながら,同法は,当事者能力や参加,あるいは記録の閲覧等の規定すら置かれていないなど,手続の基本法として備えるべき規定を十分に備えておらず,解釈上,民事訴訟法の規定を準用するなどして,その不足部分を補っている状況にあります。さらに,証拠調べなど,手続の根幹にかかわる事項についての規定の中に,その趣旨が不明確であり,解釈上の疑義が生じているものも見受けられます。したがいまして,手続の基本法として十分なものとすべく必要な手立てを施す必要があると考えられます。   加えて,同法は,明治31年に制定されたものですが,その後我が国の社会,経済情勢の変化に伴い,非訟事件として処理される事件は多様化し,同法の制定当時にはおよそ想定されていなかった類型の事件にも同法が適用又は準用されることとなっております。しかしながら,非訟事件手続法はその制定から今日に至るまで実質的な改正がほとんど行われておらず,これらの変化に対応できる内容とはなっていない状況にあります。   さらに,同法の第1編及び第2編の規定は,片仮名文語体で表記されているため,国民に非常に分かりにくいという問題もあります。したがって,非訟事件手続法につきましては,国民にとってより利用しやすく,現代社会に適合した内容とし,その現代化を図る必要があると思われます。   次に,家事審判法についてでありますけれども,同法は家庭裁判所における家事審判及び家事調停の手続を定める基本法であります。   同法につきましては,昭和22年の制定後,保全処分の見直しなど一部の改正が行われてきましたが,全体について改正が行われたということはありません。この間,家庭裁判所における実務では,家事審判事件及び家事調停事件を適切に運用すべく,その手続の進め方等について,様々な工夫や研究が行われてきたものと承知しておりますけれども,他方で,現在の家事審判法を前提とした運用の改善には限界があると指摘する意見もあるところでございます。また,この間,家事審判法と同様に,家庭をめぐる紛争を扱う手続である人事訴訟手続につきましては,平成15年に人事訴訟法が制定され,その手続が改められたところでございます。さらに,家事審判法の定める家事審判及び家事調停は非訟事件であり,非訟事件手続法第1編総則の規定を包括的に準用しているため,同法を改正する際には,家事審判法を併せて改正する必要が生じます。   以上のような点から,家事審判法につきましても,国民にとってより利用しやすく,現代社会に適合した内容とし,その現代化を図る必要があります。   次に現代化の基本方針について説明いたします。   まず,非訟事件手続法及び家事審判法の記述の内容につきまして,国民にとって利用しやすく,現代社会に適合した内容とするために必要な見直しを行います。加えて,片仮名文語体で表記されている非訟事件手続法第1編及び第2編の各規定につきましては,平仮名口語体による表記に改めるとともに,非訟事件手続法第1編及び第2編並びに家事審判法につきましてこれまでの解釈を踏まえ,それを必要に応じて明文化し,規定を明確にすること等についても,必要に応じて規定の整備を行います。   続きまして,検討の対象とすべき範囲ですけれども,今回は,非訟事件手続法第1編,第2編,それと家事審判法の各規定を対象にさせていただきたいと思っております。非訟事件手続法のうち,第3編の公示催告事件及び第4編の過料事件につきましては,平成16年に改正が行われております。したがって,今回は検討の対象からは除外したいと思っております。また,借地借家法及び会社法等の諸法令中の非訟事件に関する各規定の中には,今回の非訟事件手続法の改正を受けて,検討を要することになるものがあるとは存じますけれども,これらの改正につきましては,各非訟事件に特有の問題の検討なしには難しいと思われますので,この部会での検討の対象からは除外したいものと考えております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 ただいま,事務当局から御説明申し上げました内容について,御質問等ございましたらどうぞ御自由に御提出ください。 ○山本幹事 非訟事件及び家事審判事件の国際裁判管轄については,その検討の対象になるのですか。 ○金子幹事 財産関係の国際裁判管轄につきましては,御承知のとおり,別の部会で検討が進んでおります。もちろん,将来的には非訟事件手続,それから家事審判手続,この両手続の部分におきましても,国際裁判管轄を検討しなければならないのですけれども,当部会では検討の対象とはしないというふうに思っています。財産関係における国際裁判管轄の検討を踏まえて,後日,検討の機会を設けることを今考えております。 ○山本幹事 私もそういうことで結構ではないかと思いますが,ただ現在,この非訟事件等の国際裁判管轄については,法の適用に関する通則法の下で,後見開始事件と失踪宣告の事件についてだけ国際裁判管轄の定めがあるというやや異例の状況になっております。国際私法現代化部会の際にも,私は意見を申し上げたことがあるのですが,ややちょっとゆがんだ状態にあるような気がいたしますので,是非,将来的に財産関係の国際裁判管轄についての規律がされた後,御検討をいただければと思います。   それから最後のところで,諸法令中の非訟事件に関する規定は検討対象としないというお話だったのですが,民事調停法の取扱いですが,今回,家事調停について見直しがされて,家事に独特の部分というのはもちろんあると思うのですが,調停手続ということで民事調停等と共通するような部分について,手直しはされるということもあり得るかなと思うのですが,そのような事項についての取扱いをお伺いできればと思います。 ○金子幹事 今,山本幹事から御指摘ありましたとおり,家事審判法のうち家事調停を規律する部分につきましては,調停という部分で民事調停と共通する部分がございます。しかし,民事調停法そのものの改正自体をこの部会で検討するには,少し日程的にもまた範囲的にも困難があろうかと思いますので,家事審判法の規律を考える際に,民事調停法の規律を念頭に置きつつということはあろうかと思いますけれども,民事調停法の各条文そのものの改正につきましては,この部会の検討対象からは外させていただければと思っています。 ○伊藤部会長 山本幹事,よろしいでしょうか。   いずれも大変重要な御指摘と思います。今,金子幹事から説明申し上げましたように,この部会でそれを取り扱うことはいたしませんけれども,事務当局でその旨を承ったということにさせていただきます。   ほかにございますか。特に他に御質問等がございませんようでしたら,具体的な審議に入りたいと思います。   本日は,今後の議論の前提として,まず代表的な非訟事件でございます商事非訟事件,借地非訟事件及び家事事件の概況及び運用状況と,昨年成立いたしましたドイツの家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律についての説明をいただきます。その上で,事務当局から非訟事件手続法及び家事審判法の改正において想定される主な論点について説明をお願いした上で,非訟事件手続法及び家事審判法の改正について,自由な意見交換をすることとしたいと思います。   そこでまず朝倉幹事から商事非訟事件及び借地非訟事件の概況及び運用状況についての説明をお願いいたします。 ○朝倉幹事 それでは,非訟事件の概要について御説明申し上げたいと思います。   まず,非訟事件の事件数の動向について御説明申し上げたいと思います。   お手元の参考資料3-1を御覧いただけますでしょうか。この数字ですけれども,平成20年の数字は,いわゆる速報値ということになっております。この表のとおり,会社整理及び特別清算を除きます商事非訟事件の全国の事件数は,平成12年から平成17年まで,8,000件台から9,000件台であったものですけれども,平成18年には約5,800件,平成19年には約2,100件,平成20年には約2,000件と大きく減少してきております。この原因につきましては,商事非訟事件のうち,従前新受件数,新しく起きてくる事件の多かったもののうち,会社の帳簿等保存者選任及び解散届に係る事件について,平成18年5月の会社法の施行によりまして,前者については原則として清算人が帳簿等を保存すべきこととされ,例外的に利害関係人の申立てによって裁判所が選任すべきこととされたこと,それから後者につきましては,通常の清算につきましては裁判所の監督を廃止しまして,解散届を不要としたことによるものと考えられます。法律の改正によって,事件を起こす必要がなくなってしまったということでございます。   商事非訟事件の中で現在最も多い事件といいますのは,後ほど御説明申し上げます清算人の選任,解任の事件でございまして,平成18年,19年,20年と800件台を推移しております。次に多いのが会社清算に関する事件で,平成19年,平成20年の数字は約300件でございます。次が一時役員の選任事件で,100件から180件台で推移しておりまして,その次が先ほど申し上げました会社の帳簿等保存者選任事件で,平成20年の数字は約170件でございます。その次に多いのが株式価格決定請求事件で,ここ3年ぐらいは70件台から90件台を推移しております。   次に,非訟事件のうち民事非訟事件の全国の事件数でございますけれども,平成11年から平成18年までの間,500件台から600件台で推移しておりましたけれども,平成19年は462件,平成20年は442件と,500件を切るに至っております。民事非訟事件の類型としましては,法人に関する事件,信託に関する事件,裁判上の代位に関する事件,保存,供託,保管及び鑑定に関する事件がございます。実際に提起される事件の大半,95%以上のようでございますが,法人に関する事件でございます。   借地非訟事件について見ますと,おおむね300件台後半から400件台後半の間を推移しております。この中で最も多い事件は後から御説明いたします賃借権の譲渡,転貸の許可事件で,100件台で推移しておりますけれども,平成19年は200件近い申立てがございました。平成20年は約150件弱と落ち着いております。   このように,非訟事件には様々なものがございますけれども,まず実務上件数の多い非訟事件といたしまして,商事非訟事件の手続の流れについて御説明申し上げたいと思います。   お手元の参考資料3-2を御覧ください。商事非訟事件にも幾つかの事件類型がございますけれども,本日は最も件数の多い清算人の選任,解任事件のうち,清算人の選任事件を例に挙げて御説明したいと思います。   どのような事件かと申しますと,会社が合併,破産手続開始決定以外の理由で解散した場合,解散した会社は清算手続に入ります。清算手続に入りました会社を清算会社と申しますけれども,清算会社におきましては,清算人が清算手続を行うことになります。だれが清算人になるかにつきましては,会社法上の規定がございますけれども,会社法に定められた清算人となる者がいない場合には,利害関係人の申立てにより,裁判所が清算人を選任するということになっております。   また,設立無効の訴え又は株式移転無効の訴えの認容判決が確定した場合にも,利害関係人の申立てによって裁判所が清算人を選任することになります。そのほか,解散命令又は解散判決によって会社が解散した場合には,利害関係人若しくは法務大臣の申立てにより又は職権で裁判所が清算人を選任するということになっております。   実際には,清算会社につきまして,清算事務全体を清算の手続を最後まで行うために申立てがされる事件はほとんどございません。実際に申立てがされる事件類型としましては,例えば破産した会社が財団から放棄された担保付不動産の任意売却の売主になる場合,若しくは破産手続終了後の会社が債権譲渡が行われる際の譲渡通知の受領者となる場合に,その会社を代表する者が不在であることから,その限定された業務を行うことを求めて,債権者等から清算人選任の申立てがされる事例というのが大半のようでございます。このような事例では,清算人が清算事務を終了した後に,裁判所が職権で清算人選任決定を取り消すという運用を行っております。   このような事例を念頭に置きまして,手続の流れを若干御説明いたしますと,申立てをすることができるのは,利害関係人になります。管轄裁判所は,会社の本店所在地を管轄する地方裁判所になります。申立ては書面によって行われます。申立てがなされますと,裁判所は,まず清算人を選任するための要件として,申立人の申立適格,すなわち申立人が利害関係人であること及び清算人となるべき者がいないことについて審査をいたします。実務上は要件審査のために期日を開いて関係者を審問することは少なく,専ら申立人から書面で事情を説明してもらうという書面審理の方法をとっているようでございます。審理の結果,要件が充足されていると判断されますと,裁判所は清算人候補者の選定及び清算人候補者に対する打診を行います。清算会社が破産会社である場合には,会社の事情を熟知しているという理由から,当該会社の元破産管財人又は元破産管財人代理を清算人に選任する例が多くなっているようでございます。   なお,会社法上は,裁判所の選任する清算人の報酬は清算会社の負担とされているところでございますけれども,先ほど申し上げましたように,清算人の選任が申し立てられる事件というのは,会社が破産してその手続が終了したような場合が多く,清算会社にそのような報酬を払うことのできる実体がないというのが通常でございます。そこで,実際には裁判所は申立人に対しまして,申立手数料のほかに清算人が業務を行うのに必要な費用や報酬に相当する額を予納してもらわなければ裁判所としては清算人の選任手続を進めることができない旨を説明して,清算人の選任に先立ちまして事案に応じて必要と見込まれる費用を予納していただいているということになります。ちなみに清算人の報酬額ですが,先ほど出ました破産した会社が財団から放棄された担保付不動産の任意売却の売主になる場合は,20万円程度,破産手続終了後の会社が債権譲渡が行われる際の譲渡通知の受領者となる場合は,10万円程度になる場合が多いようでございます。   こうした審査の結果,申立てに理由があると認められ,かつ,必要な予納金が納付されますとともに清算人候補者から就任の内諾が得られますと,裁判所は清算人を選任いたします。なお,清算人選任に際しまして,打合せのために清算人及び申立人と面接を行う場合もあるようでございます。   終局決定のうち,清算人選任決定につきましては,理由を付記する必要はございません。また,不服申立ても認められておりません。一方で,清算人選任の申立てを却下する決定につきましては,理由を付さなければならず,また,申立人のみが通常抗告をすることができます。実際には先ほど申し上げた要件のみの審査ということになりますので,申立ての却下決定がなされることはほとんどないものと思われます。申立てから選任決定までは,特に問題のない事案であれば,2週間程度の期間でなされているようでございます。   その後,清算人は,先ほど申し上げました担保物件の売買契約の締結ですとか,意思表示の受領など,当初予定された清算事務を遂行しまして,それが終了いたしますとその結果を裁判所に報告をいたします。清算人から業務終了報告を受けまして,裁判所は清算人の報酬を決定し,予納金からこれを支払います。会社法上,報酬額の決定に際しまして,裁判所は会社及び報酬を受ける者,通常の場合ですと清算人ですが,の陳述を聴く必要がございますけれども,実際には清算人の選任に際しまして報酬額の見込みを示し,これをもって意見聴取としているようでございます。   報酬決定には,理由を付する必要はありません。この報酬に関する決定につきましては,会社及び報酬を受ける者は即時抗告をすることができます。その後,裁判所は職権で清算人選任決定を取り消しまして,清算人をその職務から解放いたします。清算人選任決定があった場合には,清算人が申請して清算人就任の登記がされておりますので,清算人選任決定の取消決定をした場合には,裁判所書記官が清算人選任取消決定の登記の嘱託を行いまして,これによってすべての手続が終了するということになります。   今のは相手方というのが考えられない事件でございますけれども,次に相手方のいる非訟事件,争訟的非訟事件の代表例として,借地非訟事件の流れについて御説明申し上げたいと思います。   お手元の参考資料3-3を御覧いただけますでしょうか。借地非訟事件には幾つかの事件類型がございますけれども,本日は最も事件数の多い建物の譲渡に伴う土地賃借権譲渡許可事件について御説明したいと思います。これは,借地権者がその土地の上に自分で建物を建てて持っているわけですが,これを第三者に譲渡しようとする場合に,借地権を設定した人,通常は土地の所有者になりますけれども,この方が借地権の譲渡を承諾してくれないという場合に,借地権者が土地の所有者の承諾にかわる裁判を裁判所に求めることができるというものでございます。したがって,通常の場合,申立人が借地権者,相手方が借地権設定者ということになります。管轄裁判所はその土地の所在地を管轄する地方裁判所が原則でありますけれども,当事者の合意があれば,その土地の所在地を管轄する簡易裁判所においても審理をすることができます。なお,応訴管轄の規定はございません。   申立ては書面によって行われまして,申立てが受理されますと,第1回の審問期日を指定し,その呼出状とともに,申立書の副本等を相手方に送達いたします。この審問期日におきましては,借地借家法上,当事者の陳述を聴くものとされておりまして,争点や証拠の整理をして鑑定委員会に意見を求めるに先立ち必要な事実関係や権利関係を確定いたします。なお,借地借家法では証拠調べにつきましては民事訴訟の例によるとされておりますけれども,実際には証人尋問が行われることはほとんどありませんで,主に書証の取調べが行われているようでございます。   ここで鑑定委員会という独特の機関が出てまいりましたので,若干御説明いたしますと,建物の譲渡に伴う土地賃借権譲渡許可事件で申しますと,裁判所は借地権設定者の承諾にかわる許可をする際に,当事者の利益の衡平を図るため必要がある場合には,借地条件の変更を命じ又はその評価について財産上の給付を条件とすることができるとされております。このような借地条件の変更や財産上の給付を付随処分と呼んでおりますけれども,承諾にかわる許可をするに当たって,この付随処分を付加するかどうか,付加するとしてどのような内容とするかについては,裁判所の裁量事項とされております。一般市民から選ばれた鑑定委員によって構成された鑑定委員会といいますのは,このような裁量事項に関しまして,その専門的知識,社会的良識を反映させた意見を裁判所に述べることによって,裁判の妥当性を確保しようとしているものであります。   鑑定委員会は3人以上の鑑定委員で組織すると定められておりますけれども,通常,裁判所があらかじめ作成した名簿の中から選ばれた弁護士1名,不動産鑑定士1名,一般有識者1名の3名で構成される例が多いようでございます。鑑定委員会を構成する鑑定委員は,互選によってその中の1人を主任鑑定委員に指名しまして,主任鑑定委員は鑑定委員会の手続を主宰することになっております。裁判所は原則として鑑定委員会の意見を聴かなくてはなりません。実際上は,裁判所が意見を求める事項を書面にまとめまして,鑑定委員会に意見を求めるという運用がされているようでございます。なお,鑑定委員会の意見を求める前に,当事者から付随処分の裁判に関する陳述を聴く必要はございますけれども,実務におきましては申立書のひな形に付随処分の裁判に関する陳述を記載する欄が設けられておりまして,申立ての段階,ないしはできる限り早い段階で陳述をしてもらっているようでございます。   借地非訟事件につきましては,借地の現状等も判断における重要な要素ですので,鑑定委員会は現地に赴いて調査を行い,その調査をもとに意見書をまとめるのが一般的であるようでございます。   参考資料3-3の左側の上から三つ目の点線の四角を見ていただきますと,介入権申立てというのがございます。建物譲渡に伴う土地賃借権譲渡許可手続事件に特徴的なのですけれども,借地権設定者からの土地の賃借権及び建物譲受けの申立てというのがございます。要するに土地の所有者が土地の賃借権と借地権者の建てた建物を譲り受けてしまうという申立てでございます。これを実務上,介入権事件と呼んでおりますけれども,これは借地権設定者からしますと,借地権が第三者へ譲渡されるのを阻止し,自分のもとに利用権を回復するという意味がある一方で,借地権者にとってみれば,譲受けについて相当の対価を得ることで,建物への投資や借地権価格の回収ができるという意味があるとされております。   この申立てはいつでもできるわけではございませんで,裁判所が定める期間内に申立てをする必要がございます。この期間の告知の方法につきましては,送達又は出頭した相手方に対する告知と定められておりますけれども,実際上は審問期日において出頭した借地権設定者に対して口頭でこの期間を告知しているようでございます。期間の末日は規則におきまして告知日から14日以後とされておりますけれども,実務上は3週間としているところもあるようでございます。   さて,鑑定委員会の評議・決議によって意見書が完成いたしますと,裁判所は意見書の写しを当事者に送付しまして,意見書に対する当事者の陳述を聴く必要がございます。借地非訟手続では,調停や和解の成立によっても事件が終了いたします。実際上は和解で終了する事件も多いようでございまして,鑑定委員を指定して鑑定委員会に求意見する前に,まず和解を試みることも多いようでございます。また鑑定委員会の意見書が出された後に,和解が成立するということもあるようです。   鑑定委員会の意見書が出され,それでも和解が成立しないということになりますと,審問期日において審問を終結することになります。終局決定には理由を記載しなければなりません。また当事者に送達する必要がございます。終局決定に対しましては即時抗告をすることができます。終局決定は確定後に効力を生じるとされております。   手続に要する期間ですが,実際には約7か月から9か月とされております。一般に期日は1か月置きに設定しているようでございまして,最も短い場合には2回の期日で終結までまいりますけれども,和解を勧めるような事案では,4回ないし5回以上期日が入る事案も多いと承知しております。   私からの非訟事件の概要についての説明は以上でございます。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。   ただいまの朝倉幹事からの説明に対しまして,御質問等ございましたらどうぞ御提出ください。   よろしいですか。   それでは,次に小田幹事から家事事件の概況及び状況等についての説明をお願いいたします。 ○小田幹事 家事事件の概要について御説明いたします。   まず,事件数の動向でございます。全体の非常に大きな話ですが,家庭裁判所が担当する家事事件,それから人事訴訟事件全体ですけれども,新受件数,まずその中の家事事件ですが,この10年間増加し続けております。   人事訴訟事件の新受件数は,平成16年4月に家庭裁判所に移管されましたが,その後,平成17年から19年までは移管前の平成15年と比べて増加した状態が毎年続いておりましたが,平成20年は15年の件数よりもわずかに減少いたしました。   次に,もう少し具体的に御説明いたしますが,お手元の参考資料4-1を御覧ください。こちらが審判事件についての統計でございます。平成20年の数値も入っておりますが,これは速報値でございます。甲類審判事件は,家事審判事件の97%を占めておりますが,その新受件数はずっと増加の一途をたどっておりまして,平成20年の全国の新受件数は約58万件とこの10年間で約1.5倍となっております。   これを事件類型別に見てみますと,増加しているものとしては,いわゆる成年後見関係事件がございます。この中には法定後見の開始事件,監督事件,それから任意後見というのもございますが,任意後見契約に関する法律関係と,そう少し分かれるものですけれども,そういった成年後見関係事件,ほかに相続放棄の申述,相続財産管理人選任といった事件などがございます。それから,児童福祉法28条事件,保護者選任事件といったところが増加しているものの代表的なものでございます。   この中でもよく社会的に言われておりますのが成年後見関係事件でございまして,この増加には著しいものがあります。一番上の後見開始の新受件数だけを見ましても,現行成年後見制度が始まる前の平成11年との比較になりますが,この10年間で約8倍になっております。   次に,参考資料4-2を御覧ください。こちらは乙類審判事件でございます。こちらにあるとおり,乙類審判事件も増加の一途をたどっております。平成20年の新受件数は約1万5,000件と,こちらはこの10年間で約1.8倍に増加しております。事件類型別に見ていきますと,上から二つ目の婚姻費用分担事件,それから,子の監護に関する処分事件,これには幾つか種類がございまして,監護者の指定,養育費,面接交渉といったものを含んでおります。それから,下から三つ目,遺産分割事件など,全体を見てみますと当事者間で激しい争いになることのある事件が著しく増加しております。   それから下から二つ目でございます。ちょっと名前とあれですが,離婚時年金分割事件といっておりますが,平成19年4月1日以降,乙類審判事件に加えられたものですが,これも施行2年目で比較的多く利用されております。   次に調停事件ですが,参考資料4-3にお進みください。   調停事件では,乙類調停と一般調停と,乙類調停は乙類審判と同じ,裏表でございますが,それと一般調停とに分けてございます。それぞれ見ていきますと,まず乙類調停事件の新受件数も先ほどの乙類審判事件と同様に,増加の一途をたどっております。平成20年の新受件数は,約5万8,000件と,この10年間で約1.5倍に増加しております。それからその事件類型も乙類審判事件と同様でございまして,婚姻費用分担事件,子の監護に関する処分事件,遺産分割事件など,当事者間で激しい争いになることのある事件が大幅に増加しております。   一般調停事件でございますが,これも例えばどういうものかということですが,一番上の婚姻中の夫婦間の事件と,いわゆる離婚事件と言っているものでございます。こういったものや,それから婚姻外の男女間の事件,離婚などに基づく慰謝料,それから親族間の紛争,離縁と,こういったものがございますが,平成20年の新受件数は,全体が6万8,000件で,平成15年をピークにやや減少傾向にありますけれども,その主な要因が今申し上げました離婚事件が減少傾向にあるといったことを反映したものでございます。   続いて,参考資料4-4を御覧ください。審理期間でございます。甲類審判事件の平均審理期間は,おおむね1.1月となっておりまして,大半の事件が1か月以内で終局しているということでございます。   それから,乙類事件,審判と調停と真ん中挟んで上下に分かれておりますが,このいずれにおいても年々短縮化の傾向にあります。平成20年はそれぞれ審判が5.4月,調停が5.1月となっておりまして,大半の事件が6か月以内に終局しているということでございます。乙類以外の調停事件,一般調停ということもこの後ございますが,こちらの調停事件の平均審理期間はおおむね4か月となっております。家事事件は当事者の生活に密着したものでございますが,そういったことから迅速な判断,解決が求められており,今後とも迅速な解決に向けて取り組んでまいりたいと考えております。   それでは,手続の概要に移ることにいたします。参考資料4-5以降でございます。   まず,全体像でございますが,一口に家事事件の審理手続の流れと申しましても,先ほどから出ていますように甲類事件,乙類の審判事件,調停事件,さらに一般調停事件と分かれておりまして,さらにその中でもたくさん事件類型がございます。そのため,事件類型の性質に応じて,一般的な審理の流れがおのずから異なってまいりますが,加えて同じ類型の事件であっても,当事者それから事案の内容に応じて違いが出てまいります。   そこでこの後はまず大きく甲類事件,乙類事件,一般調停事件に分けた上で,各事件類型ごとに審理の御説明をいたします。その次に家事事件における様々な当事者像について御説明いたします。こういった事件の審理のタイプがいろいろあるといったことや,様々な当事者がいるといったことに関するそういった事情は,今回の改正においてつくられる新しい基本法の在り方を議論するに当たって,非常に重要なものではないかと考えております。   それではお手元の参考資料4-5から進んでまいります。こちらは甲類審判事件の代表的なものを三つほど取り上げてございます。先ほど御説明いたしましたとおり,甲類事件については調停という手続はございません。申立て,それから裁判所による資料収集,審判という順序で進行いたします。ちょっと色が見にくくなっておりますが,左側が青で申立て,真ん中の黄色の部分がその審理,正に資料を集めていると。それから赤の部分が審判と,こういう段階で進行してまいります。各事件の判断に必要な情報,それから資料の性質,内容はもうまちまちでございます。それからそれだけでなくて,後見的関与の必要性と申し上げますか,具体的にいいますと,家庭裁判所が積極的に判断資料の収集や審理の進行にかかわっていく必要性の度合いも随分異なっております。これらの内容や程度に応じて,その資料収集の方法ですが,書面審査,関係者への書面照会,家庭裁判所調査官による調査,家事審判官による審問,こういったものを行った上で審判に至っております。   具体例に即して御説明いたしますが,一番上の子の氏の変更許可でございます。どういう事件かと申しますと,未成年の子どもですが,その父母が離婚して子の親権者に指定された母親と子どもの戸籍が別々になる場合が通常でございます。母親にしてみますと,その子どもを自分の戸籍に入れて苗字についても自分の氏にしたいということを考えるわけですが,そういったときに申し立てられることが多い事件でございます。その許否の判断をするためには,母と子の身分関係を確認することで判断できる場合がほとんどでございます。ただ,例えば婚姻関係にない父母の間に生まれた子どもが,父親から認知された後,父親の氏を名乗りたいと。当然に母親のところに入っておりますが,父親の氏を名乗りたいといって申立てをするような場合には,子や父などの関係人から事情を聴く必要が出てまいりますし,そうすると審問を行う場合が出てまいります。審問をしても,何か問題があるということであれば,大半が認容で終わる事件類型ではございますが,却下の審判がされることもあります。   他方で,書面審査で何の問題もなくその認容の判断ができる大多数の事件については,利用者の便宜を考えて申立て当日に即日審判を行うといった簡易迅速に審理・判断を行うようにしております。   二つ目の特別養子縁組成立に移ります。対照的なものですが甲類審判事件の中では,広範囲で多角的な情報収集が必要で,同時に家庭裁判所の後見的関与の必要性が高い事件類型という位置づけができようと思います。この特別養子制度は,子の利益のために特に必要があると認めるときに,養子縁組成立の日から実の親との親子関係を消滅させて,養親との間に実の親子と同様の親子関係をつくろうというもので,専ら子の利益を図るための制度でございます。したがって,特別養子縁組成立事件では,この真ん中にありますとおり,子の利益を図るために十分な審理・調査を尽くす必要がございます。養親となるべきものが子どもを実際に監護している状況であったり,申立人,正に養親となるべき者ですが,親としての適格性があるかどうかといった点について,具体的な方法としては調査官が家庭訪問を行ったり,それから児童相談所の職員などに面接調査を行う,それから必要に応じて審判官が関係人の審問を行うといった方法をとった上で,認容なり却下なりの審判がなされております。   三つ目の類型である後見等開始事件でございます。この事件については,まず要件を迅速かつ的確に判断する必要がございます。判断能力の程度がどうかといったことが中心でございます。他方で,後見人をつけることになりますが,その選任に当たって家庭裁判所が適切に裁量を働かせることが求められる事件類型であると言っていいと思われます。この成年後見制度というのは,認知症,その他の精神上の障害によって判断能力が不十分な方々について,その方々のために働く成年後見人を選任して保護を図ると,こういった制度でございます。   そこで,先ほど申し上げたとおり,御本人の判断能力を適切に判断するとともに,後見人をだれにするか,親族又は第三者ということになりますが,その中からふさわしい後見人を選任することが求められてまいります。同時に,申立人の側に立ってみますと,どういう動機で申し立てるかといいますと,本人の銀行口座を管理したり,施設入所契約を締結したりすると,こういう必要に迫られて申立てをしておりますので,やはり手続を迅速に進める必要もございます。そのための実務上の工夫例を申し上げますと,申立てに先立ち,申立人に家庭局で作成しました成年後見手続説明用ビデオを見てもらったり,成年後見制度の概要,それから申立てに必要な書類などを説明したパンフレットを交付するなどして,円滑な申立てがされるように援助をしております。   また,その申立ての際に,裁判所書記官が申立人から詳しく事情を聴取して判断に資するようにということでございますが,適切にその後の手続選別を行うことによって,家庭裁判所の後見的関与による判断の適正と審理の迅速を図っておるところでございます。   次に,乙類事件の審理の流れについて御説明いたします。参考資料4-6を御覧ください。   乙類事件は,審判手続でも調停手続でも取り扱うことができるものですが,事件の性質上,一次的には当事者間の話合いによって解決されることが望ましく,またそれが十分可能でありますので,一部の例外を除いて調停事件として申し立てられることが多く,実際に先ほど申し上げたとおり,半年以内という期間で調停成立へ終局する割合は高いと,こういった状況でございます。   乙類事件の一般的な流れでございますが,調停手続は申立てがあると調停委員会が調停期日において当事者双方から十分に事情を聴いて,おおよその事件解決の方向性を決めた上で,助言やあっせんを行うことによって,話合いによる自主的な解決を目指すのが基本的な流れでございます。ただ,当事者から事情聴取を行うだけで解決の方向性を決めることができる事案というのは必ずしも多くなく,調停委員会が当事者から提出された資料をもとにして,事実関係の確認を行ったり,これをもとに働きかけたり,またほかの方法としては調査官を活用して審判,調停に出頭しない当事者に出頭を促す出頭勧告を行ったり,それから関係者などから事情聴取する調査をしたり,また心理的調整といっておりますが,感情的に振る舞う当事者に対して,適切に助言や働きかけをしていくようなこと,そういった方法によって裁判所が事案や当事者に応じた働きかけを積極的に行うことによって,調停成立に至るものが多くなっております。   先ほど申し上げたとおり,相当数の事件が調停成立により終局しておりますが,調停が不成立となった場合について,乙類事件は調停手続から審判手続に自動的に移行することになります。現行法の下では,審判手続に移行した後において,事件担当裁判官ですけれども,基本的に調停を担当していた裁判官が引き続き担当しております。そして,その審判手続移行後の進行ですけれども,一から審理をやり直すのではなくて,調停段階での当事者の言い分,提出資料などをもとにして,必要に応じて当事者などから直接事情を聴いたり,調査官による調査を行ったり,当事者からさらに主張を尽くさせるなどと,こういったことをした上で審判を行うというのが基本的な流れでございます。   一般的な概要,手続の概要については,以上申し上げたとおりですが,乙類事件においても,家庭裁判所の後見的関与の必要性,それから手続の簡易迅速性の要請に基づいて,判断資料の収集方法に関して,審判官,調停委員会と当事者がそれぞれ果たすべき役割,責務など,審理の在り方は様々でございます。そこで,事件類型ごとの特色について幾つか御紹介いたします。   一番上の親権者変更や面接交渉などの事件は子の福祉に配慮する必要から家庭裁判所の後見的関与が相当程度求められまして,当事者の合意をそのまま前提としたり,判断資料の収集を全面的に当事者に任せたりすることは相当ではありません。そのため,審判官,それから調停委員会は,審判,調停期日において当事者から直接事情を聴いたり,提出された資料を検討することのほか,調査官による調査,対象としては子どもの養育状況,それから親子の交流状況,こういったところですが,調査を行うことが少なからずあります。特に面接交渉の事件においては,判断に資する資料を集めるというだけではなくて,家庭局が作成いたしました当事者助言用DVDというのがございます。これを当事者に見てもらったり,同様の内容のパンフレットを活用することなどを通じて,どうしても紛争の渦中にある当事者としてはそちらに目が行ってしまって,子どものことを忘れてしまうことがあるけれども,そういった子の目線に立って考えることを気付かせたり,その他の調整を図ることがあります。   二つ目は遺産分割事件でございます。この遺産分割については,身分関係を前提とするものでありますが,財産上の紛争という側面がございますので,家庭裁判所の後見的関与を必要としないことも多く,いわゆる当事者主義的運用,具体的には当事者対立構造的な手続運営が実現されております。この手続運営のもとでは,審判官,それから調停委員会は当事者間の合意を尊重した運営をするとともに,期日で聴取した当事者の言い分や提出資料を基礎として判断をしていくこととなります。   そのほかにも,特徴的な運営がされているものとして,資料には載っておりませんが,養育費や婚姻費用の分担に関する事件がございます。養育費や婚姻費用については,従前,審理が長期化していたところがございます。その背景としては生活費がどれぐらい現実にかかるかと,その養育費を算定する過程ですけれども,そういったところで随分紛争が激化していたところがございます。そういった実務の集積によって,生活費の経費が収入のうちに占める標準的な割合がおおよそ明らかになってきたことなどを背景として,算定表といっておりますが,東京,大阪の裁判官を中心とする研究会が提案した,いわゆる養育費,婚姻費用の算定表を活用した審理が実務に定着しております。この算定表は当事者双方の収入が分かれば,公租公課,生活費といった収入全体から差し引くべき標準的な割合を算定に用いることによって,最終的に求めたい養育費などの額は大体どの程度かというのが示されるというものになっております。これを踏まえて調停審判手続を進めることによって,審理の迅速が図られると同時に,当事者にとっても手続の進行や審判の結果について見通しが立ちやすいと,そういったものになっております。   三つ目は,離婚時年金分割でございます。この事件は家庭裁判所の後見的関与の必要性が低く,それから当事者の便宜を図るため,簡易迅速に処理すべき事件であるということができます。この按分,分ける割合でございますが,法律の趣旨から,特別の事情がない限り,1対1--0.5ということになるのですが--0.5と定められるべきものと一般に考えられております。   そこで確定すべき事実関係も,その話合いによる調整的な要素も少ないものとなっております。そういったことから,離婚時年金分割事件の多くは,審判事件,調停ではなくて審判事件として申し立てられて,審判期日を開くことなく按分割合に関する相手方の意向などを書面照会などの方法によって確認した上で,速やかに審判がなされております。   参考資料4-7に移ります。調停でございます。上が一般調停で離婚,離縁などでございますが,その調停事件の手続の流れ自体は,先ほど申し上げた乙類事件の調停手続と基本的な流れは同じでございます。ただ,その合意が成立しない場合ですが,審判手続に移行するのではなくて,調停事件は不成立として終了することになります。なお,その当事者が離婚などを望む場合には,別途訴えを提起することになりますが,この点については不成立の際に裁判所書記官がその旨,説明をしてございます。   下の部分でございますが,例えば親子関係不存在,認知,婚姻無効,婚姻取消しといったものですが,当事者間の合意のみで処分をすることが許されない,正に身分関係そのものでございますが,これに関する調停事件でございます。これは家庭裁判所の後見的関与の必要性が高くて,当事者間に合意が成立した場合においても,さらに裁判所が必要な事実の調査を行い,当事者間の合意は正当であることが認められた場合に限り,合意に相当する審判が行われます。実務上,23条事件とか,特殊調停事件と呼んでおります。   なお,この23条事件特有のことではないのですけれども,事案の内容に応じた対応が求められる一例として御紹介いたしますと,例えば,親子関係不存在確認調停において,その相手方の男性から母親や子どもに対して暴力のおそれがあるとか,いわゆるDV事案についてはごく当たり前のことではありますが,当事者が顔を合わせないで済むように配慮しております。このように,今いろいろ申し上げてきましたように,同じ事件類型であっても家庭裁判所が事案の内容に応じて柔軟に対応することが求められております。   まとめと,それから先ほど申し上げた当事者の現在の特徴などについて,申し上げてまいります。   まず,家事事件の類型でございますが,甲類,乙類,一般調停事件と分かれるだけではなく,審理の在り方は家庭裁判所の後見的関与の必要性の程度や,それから簡易迅速な事件処理の要請に応じて多数の類型に分かれておりますし,同一事件類型の中でも今申し上げたように,柔軟な対応が必要になってまいります。そのため,現在の実務では裁判官が事案を把握した上で,適切に手続裁量を働かせて対応しているところでございます。こういった事件の内容などに加えて,家庭裁判所での審理に大きな影響を与える要素として,当事者と直接に接してやり取りをする場面が多いといったことも挙げられますので,この点について最後に御説明いたします。   お手元の参考資料4-8を御覧ください。この表は,代理人の関与率に関する統計でございます。この代理人関与率ですが,当事者の少なくとも1人,全部双方ということではなくて,少なくとも1人に代理人がついている事件の割合でございます。家事事件の中で一番高いと考えられる--考えられるというのは,全部を正確にとっているわけではないものですから--そういった候補である遺産分割事件でも全体の約6割となっております。地裁第1審の民事訴訟における数字は75%ということで,これよりも低いものとなっております。   それからほかのところですが,財産分与や婚姻費用の分担などの婚姻関係の乙類事件でございますが,40数%,それから一番右側にいきますと,離婚調停事件では約25%となっておりまして,統計をとっておりませんが,甲類審判事件における代理人関与率はさらに低いものと考えられます。他方で,人事訴訟事件でございますが,代理人関与率は9割を超えておりまして,同じ家庭裁判所で取扱う事件とはいえ,家事事件とは大きく状況が異なっております。   それから最後に,当事者に関して,二極化しているとか,もう少し多様化しているというふうに言ってもいいのかもしれませんが,そういったことが言われることもございますので御紹介いたします。冒頭に申し上げたとおり,当事者間で激しい争いになることがある乙類事件が増加しております。また,内容面でも手続面でも権利意識の強い当事者がいると。またどうも増えてきたなという実感が確かにございます。その一方で,家庭裁判所に強く依存したり,感情的言動が顕著であったりする当事者もおります。家庭裁判所の現場からは,その後者の例として当事者の中には自らは主体的に行動せずに,判断資料の収集を裁判所任せにしたり,DV事案ではないにもかかわらず,相手方と絶対同席したくないと強く主張するなどして,思い通りに手続を進めようとしたりするもの,こういったものが増えているということが指摘されております。こういった事情を背景にして,円滑な審判,調停の運営が困難になることも多いと聞いております。   今,幾つか例を申し上げたような極端な事例ではなくても,家事事件の性質上,当事者は申立ての際,家庭の円満,平和が脅かされた状況に置かれておりまして,精神疾患とまではいかなくても,強い精神的な不安,その他の問題を抱えた状態にあるのが通常でございます。もちろん,通常の民事訴訟の当事者も訴訟の結果について,重大な関心を持って,不安も持っているというのは想像にかたくないところではありますが,家庭の問題にかかわる家事事件の当事者については,それが一層深刻であると考えられます。   こういった様々な当事者,権利意識の強い当事者ももちろん,それ以外の当事者に適切な手続をとってもらって,それからあるいは手続上,主張,立証を尽くしてもらうというのは,特に後者のほうですが,容易でないことがありますし,適切な解決を図るために,書記官や調査官が当事者を援助をして,あるいは裁判官が当事者の主張などの足りない部分を補うというような役割を果たすことも出てまいります。家事事件の円滑な解決は,裁判所はもちろんですけれども,何よりも当事者本人にとって重要なことであり,様々な当事者のいずれにおいても満足の行く手続解決となるよう,今後も適切な運用に努めてまいりたいと考えております。   家事事件の概要についての御説明は以上でございます。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの幹事の御説明について,御質問等ございましたらお願いいたします。 ○金子幹事 参考資料4-4の統計のうち,乙類に限ってお聞きしますが,全審判事件の乙類の欄を見ますと,非常に審理期間の短縮化が顕著かと思うのです。まず,確認させていただきたいのは,ここで言う乙類事件,事件類型によっては調停から始まるケースが多いということでしたが,ここの統計上に上がっている審理期間は調停が不成立で,審判になって以降のものが計上されているということでよろしいのでしょうか。 ○小田幹事 御指摘のとおり,調停で始まって審判の手続不成立で審判に移行する場合がございます。技術的な話ですが,そのときも新たに審判事件としての事件番号を付されることになりますので,そういったことを背景としてここは今御指摘のとおり,全審判事件の中にある乙類の期間というのは,要するに審判手続として事件が進行した期間,要するに調停から審判に移行して審判で終わった事件で,最初が5か月,後ろが3か月ということであれば,その正に3か月の部分のみがこちらに入っているということでございます。 ○金子幹事 そうしますと,調停から始まる事件ですと,全調停事件のうちの乙類調停の期間と全審判事件の乙類調停の期間を足したものがおおよそ全体の審理期間と言えるのかどうかという点と,もしそうだとしますと,調停の期間につきましては,さほど短縮はされていないので,乙類事件の中の期間で見ますと調停に占める比重が相対的に上がっていると言えるのかどうか,そのところをお聞きできればと思います。 ○小田幹事 まず,その前提として,全部の事件についてきちんと統計をとっているわけではないのですが,典型的に遺産分割をもとに申し上げますと,調停のみで終始する事件が8割でございます。ですから,最初の御指摘に関してですが,上の例えば20年で5.4と5.1をそのまま足したのが標準的かというと,そうではないと。むしろ上のほうは圧倒的にといいますか,数としてはごく少数であって,下のほうだけが8割と,例えば遺産分割に限定して申し上げますと,そういうふうに考えていただいて結構でございます。 ○平山関係官 若干,補足的に説明させていただきますと,調停申立てで始まった事件については,先ほど小田幹事から説明があったとおりなのですが,審判事件から申立てがあった場合に,付調停にした場合については,最初に審判の申立てがあった段階で審判の手続が開始しておりますので,その場合には調停に付した後は調停期間で,審判も申立てがあった状態でそのまま継続している状態になりますので,その期間も審判期間ということになっておりますので,審判開始申立て事件については,期間が重複してカウントされているという面もございますので,その点も御留意いただければと思います。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。   どうぞ,倉吉委員。 ○倉吉委員 それから感覚なのですが,審判に回る事件というのは,調停をやってみたけれどもすぐ駄目になってしまって,すぐ審判に行くというのが多いという感じはないですか。 ○小田幹事 感覚的なところですが,どうしても当事者が出てこなくて仕方なくてということはあろうと思いますが,そういった特段の事情がなければ,むしろ乙類に関しては調停の手続の中でかなり十分な詰めがされまして,先ほども申し上げたことの繰返しになるかもしれませんが,むしろ今の例でいきますと,審判手続に移行して,正に一から始めるようなイメージになってくるかと思いますけれども,決してそうではなくて,全体的には調停のほうでかなり充実したことをすると。不成立なものについても,審判手続にいってからそれを前提として現状を申し上げますと審判手続が運用されるというようなイメージでございます。 ○伊藤部会長 よろしいですか。   ほかの方も御自由に御質問など,ございましたらお願いします。   特段現在の時点ではございませんか。   それでは,引き続きまして高田裕成委員から昨年成立いたしましたドイツの家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律についての説明をお願いいたします。 ○高田(裕)委員 御指名でございますので,私の理解しております限りで,改正ドイツ法について御説明申し上げます。   参考資料5-1と5-2がドイツ法の条文を翻訳したものです。順序は逆になりますが,5-2が昨年改正される前の,旧法と呼ぶべきかもしれませんが,現行法の非訟事件手続法でございます。5-1が最初のアスタリスクにも書いてございますように,今年の9月1日に施行が予定されておりますいわゆる新法でございます。   いずれも先ほど御紹介がございましたように,本審議会における議論の参考とするために,ドイツ法の動向についての調査の委託を受けまして,本部会の幹事である畑瑞穂教授と,同じく同僚の垣内秀介准教授の御協力を得て作成させていただいたものでございます。   内容につきましては,適宜御参照していただきたいと存じますが,その前提となりますドイツ法の今次改正経過と改正法の特色について,かいつまんで御説明申し上げたいと思います。   まず,参考資料5-2でございますが,改正前のドイツ非訟手続法は,民事訴訟研究者の方は御存じとは思われますが,1898年に制定された法律でございます。日本の非訟事件手続法の制定と同じ年でございまして,ドイツ法の草案が日本法に影響を与えたと言われております。条文も御覧いただければお分かりになると存じますけれども,日本法に極めて類似した条文が定められているところでございます。   ドイツでは,その後の学説,実務の展開を受けまして,早い時期から改正論が展開され,特に1960年代から70年代にかけまして,改正準備委員会の審議を経て,改正草案が公にされました。その後,幾つかの部分改正はあったものの,全体の見直しにつきましてはその後大きな動きはなかったわけでございますけれども,2003年に至りまして,司法省が改正の検討を開始し,2005年に参事官草案,その後意見照会を経て,2007年に政府草案が公にされ,参考資料5-1の初めのアスタリスクにありますように,2008年に両院を通過しまして,12月22日付けの官報で公布されております。先ほど来,申し上げておりますように,本年9月1日に施行が予定されているところであります。   参考資料5-1は,この新しい法律の条文につきまして理由書に付されております理由を注記しつつ翻訳させていただいたものでございます。今回の改正点は,非常に多岐にわたるわけでありますけれども,大きく見ますとその特色といたしまして2点ほど指摘できようかと思います。   一つは,非訟事件手続法についての従来の改正論の集大成としての性格を持っており,内容的にもこれまでの判例,学説の蓄積を反映し,また法典の構成の上でも体系的,自足的な法典として整備されております。総則規定に限ってみましても,旧法の34条から100条を超える,条文数の大幅な拡充を見ております。   もう一点特色を挙げますと,条文のタイトルからもお分かりのように,家庭に関する事件,あるいは家事事件と呼ぶべきかもしれませんが,家庭に関する事件を包括的に取り込んだことでございます。繰り返しになりますけれども,法令の名称も,従来の非訟事件手続法から家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律に変更されております。ドイツ法には大きな家庭裁判所という構想があるわけですけれども,その構想をさらに一歩進めるものと位置づけることができようかと思います。具体的には,後見裁判所事件を家庭裁判所事件として取り込むことになりました。さらに従来訴訟手続で審理されていた事件も含めまして,家庭関係事件の審理のための包括的な手続法となっております。   便宜,まず後者の点からもう少し詳しく説明させていただきます。新法での家庭関係事件の取扱いになりますが,直前に申しましたように今回の改正で民事訴訟法の第6章,日本法でいえば人事訴訟法に該当する部分が全面削除され,従来日本法でいう人事訴訟手続で審理されていた事件の手続が新たにこの法律の対象となっております。さらに,財産関係事件として,民事訴訟法の適用を受けていた家庭に関する事件もこの法律に取り込まれています。   もっともこのことは,訴訟事件を単純に非訟事件化したということではございません。例えば,離婚事件につきましては,従来は訴訟手続によっていたわけでありますけれども,民事訴訟法から新法にその規定の位置を移行させることになりました。しかし,必要的口頭弁論は維持しております。   このように,事件の種類に応じて,必要と考える場合には訴訟手続と全く同じ規律を民事訴訟法の準用を規定するという特則で取り込みながら,規律のベースを今回の法律が規定する非訟手続の規律に置くという構造になっております。具体的には,訴えとそれに対する応答としての判決,不服申立て手続としての控訴,上告という従来の訴訟手続の原則から離れ,申立てとそれに対する決定という形式による裁判,不服申立て手続としての抗告という規律を取り込むことによりまして,抽象化すれば手続に非訟事件手続の要素を取り込むことによりまして,適正,迅速,かつ実効的な裁判を実現をしようとしているということでございます。   このように見てまいりますと,かつてと申しますか,現在もと言うべきかもしれませんが,日本法の学説において従来の非訟手続でも訴訟手続でもない,第3の手続を構想するという議論がございましたけれども,その試みが実現されているという評価も可能であろうかと思います。ただし,繰り返しになりますが,従来,人事訴訟手続で扱われていた事件につきましては,手続の根幹部分である審理手続におきましては,口頭弁論を維持するということで,この法律の総則規定の適用が大幅に制限され,基本的に訴訟法の諸原則を踏襲しているということには注意が必要かと存じます。   続きまして,非訟手続に関する新法の規律について,ごく簡単に御説明申し上げます。これは総則についての御説明ということになるわけでございますが,私が理解します最大の改正点は,ドイツ法でも懸案でありました関係人の手続上の地位についての規定の拡充ということができそうでございます。   ページで申しますと,参考資料5-1の5ページから6ページ,第7条に関係人の規定がございます。当事者という概念ではなく,関係人という概念を用いることは現行法の方針を維持しておりますが,いわば審理の客体と申しますか,資料収集の相手方という従来の位置づけから,手続上の地位を与えるべき者という,いわば手続上の主体として,関係人の地位を位置づけ直しております。手続主体ということを想定したために必要な規定として,第8条以下でございますけれども,民事訴訟法で申しますと,当事者能力,訴訟能力,さらには代理に関する規定を整備しております。   さらに,当事者の手続権,手続保障につきましては御承知のとおり,ドイツ法では憲法上の権利である,いわゆる法的審尋請求権という思想を基礎に規律が試みられておりますが,これに関係する規定が幾つか入っております。資料で申しますと,12ページに13条として記録の閲覧に関する規定がございます。これはもう既に旧法に34条として存在していた規定でございますけれども,今回,内容を整備しております。   今回新法に新しく入った規定について若干御説明申し上げますと,6ページに戻りまして,7条でございますが,その第4項で,手続開始についての通知の規定が入ることになりました。その申立てにより関係人として手続に参加させなければならない者又は参加させられることができる者は,手続開始についての通知を受けるということでございます。続きまして34条になりますが,資料で申しますと31ページですが,その第1項第1号で,法的審尋請求権を保障するための関係人本人の審問という規定を入れることになりました。さらに,34ページになりますが,37条2項という規定が存在します。裁判所は,関係人の権利を害する裁判をする場合には,その裁判の基礎となる事実及び証拠調べの結果について,あらかじめその者の意見を聴かなければならないということでございまして,法的審尋請求権についてのいわば包括的な規定を準備しております。これに反した場合には,手続法違反ということで,ドイツ法では審尋異議と呼ばれるわけですけれども,審尋請求権の侵害を理由とする不服申立てが許されることになるわけでございます。条文だけ申し上げておきますと,44条になります。   このように,手続上のいわば権能について定めておりますが,同時に関係人の負担に関する規定も存在しております。その典型は,従来,職権探知における当事者の協力義務,あるいは関係人の協力義務と呼ばれていた規律に関する規定でございまして,注意深く義務という言葉は避けておりますけれども,関係人は裁判所による事実の調査に協力することが必要とされております。これが27条ということになります。ページで申しますと23ページになります。   以上がいわゆる手続保障の根幹部分に関する規定ということになるわけであります。他方,このほかに特徴的な規定を幾つか挙げさせていただきますと,一枚めくっていただいて29条,30条あたりでございますが,ドイツ法で議論がございました自由な証明と証拠調べの関係について,一定の方向を示しております。これも手続に関してはドイツ法ではかなり重要な規定だと言われているようであります。   もう一点,手続保障と並ぶ大きな改正といたしまして,不服申立て手続きの整備がございます。資料で申しますと55ページ以下となるわけでございますが,非訟事件の裁判は,決定手続で行われますので,その上訴手続は抗告ということになりますが,この抗告に関しましては,いわゆる申立期間の制限のない従来の通常抗告を廃止しまして,すべての抗告について期間制限を設けております。このうち,終局裁判に対する期限付抗告を,単に抗告と呼んでおりますが,節のタイトルを前提に日本の手続法での用語法を借用しますと,非訟抗告ということになるのだろうと思いますけれども,この抗告につきましては,63条で抗告期間を1月としています。これはドイツ民事訴訟法における控訴期間にそろえるということであります。   このように,抗告に一本化するということに関連しまして,幾つかの特色ある規律がなされております。戻っていただくことになりますが,38条で,資料で申しますと36ページということになるわけでございますが,第1審の終局裁判は決定で行うわけでありますけれども,その第3項で理由を付さなければならないとしており,原則決定には理由を付すことにしております。ただし,第4項以下に特則があります。さらに39条で不服申立ての手段と手続についての教示の規定が入っております。即時抗告の機会を確実に保障しようということであります。   さらに,41条でございますが,41条によりますと不服申立てのできる裁判の告知の方式は原則送達によることになります。他方,抗告期間の制限によりまして,裁判の確定というものが観念できることになりますが,それにもかかわらず,40条1項によりますと,第1審の終局決定,終局裁判の効力は,確定を待つことなく,原則告知によって直ちに生じるという従来の思想は維持しております。   抗告につきまして期間制限を導入しましたことは,裁判の変更,制度にも影響を与えることになります。確定した終局決定の変更についての条文が48条となるわけでございますけれども,そこにもございますように,確定した終局決定につきましては,個別にその変更を認める規定,特則が存在する場合のほか,事情の変更があった場合に限り変更を認めることとし,それ以外の場合には再審がカバーすることになっております。もちろん,確定前につきましては抗告提起に伴ういわゆる再度の考案による変更があり得ることになります。   以上が不服申立て手続に関連する改正でございます。   このほかに特徴的な規定といたしましては,続いて49条以下でございますが,手続が若干重くなったことに伴い,保全手続の重要性が高まることがありまして,保全処分について詳細な規定を準備することになっております。さらに執行手続の充実を図るという観点から,執行手続の強化というものが図られておりまして,これが条文で申しますと86条以下でございます。従来の強制金による間接強制に加えまして,秩序罰の導入が図られているわけでありまして,とりわけ面会交流,面接交渉につきましては強制金にかえて秩序罰によることによって実効性の確保が図られることが予定されているようであります。   以上,ごく簡単でございますが,ドイツ法におけます今次改正について御説明申し上げました。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございます。   それでは,ただいまの御説明に関する御質問は,休憩後にいただくことにいたしまして,ここで休憩時間とさせていただきます。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは,再開いたします。   先ほど高田委員からドイツの最近の改正についての要点の御説明がございましたが,それではその点につきまして,どなたからでも御質問等をお願いできればと存じます。 ○杉井委員 先ほど秩序罰のお話がありましたが,これはすごいなと思って聞いていたのですが,日本でいうとこれは刑事罰になるのですか,それとも行政罰になるのですか。ただ,89条を見ますと,拘束はできるのですよね。 ○高田(裕)委員 89条に秩序金という概念がございますが,法的性質についてはお答えできる用意がないのですが,間接強制の履行を確保するために制裁を課す制度と理解しております。 ○杉井委員 秩序金が功を奏する見込みがないときは,この秩序拘束を命じることができると。拘束というのは身柄を拘束という意味でしょうか。 ○高田(裕)委員 はい。 ○杉井委員 ありがとうございました。 ○伊藤部会長 杉井委員の御指摘は,89条1項の秩序拘禁に関する御指摘ですよね。もし,差し支えなければ秩序拘禁という概念について少し御説明いただけますか。   また,適宜,調査いただいてでも結構ですが。 ○高田(裕)委員 現行法でも間接強制がございますが,間接強制におきまして,ドイツは拘禁制度を持っておりますので,これを拡張したものという理解をしております。 ○伊藤部会長 分かりました。その法的性質はともかく,非常にその強制力という意味では非常に強いものがあるわけですよね。 ○三木委員 御説明の中でかつての間接強制から秩序金にすることによって,より効果的にという御説明があったのですけれども,間接強制と比べて秩序金のほうが強制力として効果的だという,その理由を挙げていただければと思います。 ○高田(裕)委員 ドイツ法の実情を存じ上げませんので,どの程度効果的かについては,申し訳ありませんが十分な情報を持っておりません。ただ,制裁的性格を持たせるということに意味があるのではないかと私は推測しておりますが。 ○伊藤部会長 三木委員,よろしいですか。   そのほかいかがでしょう。 ○二本松委員 家庭事件及び非訟事件の手続に関する法律ということで,家庭事件とそれ以外の一般的ないわゆる日本でいう商事非訟,民事非訟,そういった事件も適用のある今度法律ということになったそうですけれども,特に家庭事件ということで審理に当たって,特別に配慮されている事項というのはあるのでしょうか。 ○高田(裕)委員 配慮されている事項ですか。 ○二本松委員 ええ。家庭事件というその特殊性みたいなものを考慮した規律というのは,特に定められているのでしょうか。それとも同じような規律で一般的に通常というか,それまで非訟事件とされていた事件と同じ取扱いをされることになるのでしょうか。 ○高田(裕)委員 先ほど申しましたように,法律としては移行しましたけれども,実質的な手続の多くの部分は,従来の規律を維持することになっておりますので,旧来の訴訟事件につきましては,多くの特則があるということをまず申し上げました上でのお答えですがいわゆる日本でいう家事非訟に当たる事件につきましても,数多くの特則はございます。典型的には子の福祉に関する事項に該当するわけでありますけれども,総則の後に事件ごとに多くの特則が並ぶという法律の構造になっております。   ちなみに,条文数で申しますと,法典は全部で500条近い条文があるわけでありますが,そのうち総則が110条でございますので111条以下373条まで家庭事件に関する特則が並んでいるという構成になっております。 ○伊藤部会長 事務当局から説明がございまして,今日,高田裕成委員から御説明いただいたこの資料ですが,これは言わばこの法律の総則部分で,後日,日本でいう家事審判に相当する部分については,別途,資料が用意されるということでございますので,今の高田委員の御説明の内容はその後日の資料を御参照いただければと思います。 ○二本松委員 分かりました。 ○伊藤部会長 どうぞ,難波委員。 ○難波委員 非訟事件のうち,特に商事非訟では,相手方のある事件の類型と相手方のない類型とで,かなり審理のやり方は違うのですけれども,このドイツにおける非訟事件の手続というのは,両方に共通して適用があるのでしょうか。 ○高田(裕)委員 繰り返しになりますが,この資料の後に続く各則に当たる特則で,事件類型ごとに特別規定が設けられておりまして,それらを精査した上でお答えすべきなのでしょうが,総則につきましては,その区別は私の見るところなされていないようでございます。総則の規定は,争訟性のある事件,相手方のある事件と争訟性のない事件のいずれについても適用されるものと理解しております。 ○難波委員 ありがとうございました。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。   そういたしましたら,ただいま何人かの方からの御質問にもございましたが,まだ家事審判部分の資料ができ上がっておりませんので,またそれが用意された段階で御参照いただければと存じます。   それでは,次に,事務当局から非訟事件手続法及び家事審判法の改正において,想定される主な論点についての説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,これから約2年間をかけて御協議,御審議いただきたい内容について,御説明したいと思います。   資料は,部会資料2と部会資料3になります。   部会資料2は,非訟事件手続,家事審判手続,それから家事調停手続ごとに論点を言わば大胆に手続保障と簡易迅速な処理,手続の明確化という三つの観点に分類したものです。   部会資料3は,そういう手続の種類を問わず,横断的に手続の段階に応じて論点をまとめてみたものです。いずれの資料につきましても,正確性を欠くところは多々あると思いますが,多少,一覧性を重視し,かつ全体を俯瞰できるものという趣旨で作成したものです。そのような趣旨に御了解いただければと思います。   今日は,部会資料3に沿って若干説明させていただきたいと思います。   項目がボックスに入れてありまして,その後,部分的に審とか調あるいは非と書かれていますが,それぞれ手続をあらわしております。主にその手続において問題になるだろうということを想定しているということです。   申立て段階から行きますと,まず申立ての方式のところに書面主義の導入と書いてありますが,これは申立てを書面に限るか,あるいは口頭申立てを認めるかという点を主として御議論いただきたいということでございます。現行の非訟事件手続の中には,家事審判手続のように,口頭申立てを許容する手続がある一方で,労働審判のように,現行法では申立てを書面でしなければいけない手続もあります。一般的な非訟の規律としてはどういうものがいいのか,また,家事審判手続についてどのようにすべきか,御議論いただければと思います。   管轄の問題につきましては,現行の非訟事件手続法の管轄の規定が不十分ですので,整備する必要があると思います。その際,移送及びその申立権の在り方も,併せて御検討いただければと思っています。   事件係属の通知又は申立書の送付というところですが,現行非訟事件手続法あるいは家事審判法では,相手方がある場合であっても,事件が係属したことの通知を受けることが法律上は必ずしも保障されていません。手続保障の観点から,通知を受けることを保障すべきか,また,保障する場合,その方法としてどういう方法がよいのかということを御検討いただければと思います。この問題は後に説明いたしますが,関係人概念の問題とも関係するところですが,申立人,相手方以外にも裁判の影響が及ぶような利害関係人にも通知すべきかというような議論も生じ得るところであります。   代理制度の在り方ですが,ここでは代理人の資格,主として任意代理人の資格のことを御議論いただければと考えております。家事審判法では,裁判所の許可で弁護士以外の者が代理人になることができることになっておりますけれども,そのような規律でよいのかどうか,御検討いただければと思います。   それから除斥・忌避のところですが,現行非訟事件手続法では除斥制度はありますが,忌避の制度がないという規律になっております。そのようなことでよろしいのかということ,それから現在は除斥・忌避の対象とはされていない家庭裁判所調査官,あるいは家事調停委員についても除斥あるいは忌避の対象とすべきかということが問題になろうかと思います。   それから,資料収集段階のところですが,その前に当事者概念と関係人概念と一番上に横断的に書いてあるところがあります。若干ここを説明しますと,現行法では例えば子の親について親権の喪失の申立てが子の親族からされたような場合,親や子は当事者とはなっていないわけです。ただ親はその喪失がされますと,それは裁判の名あて人になるわけですし,子どもは親が親権を喪失しますと,裁判の影響を直接に受けるという関係にあります。こういうことを考えますと,当事者ではなくても,そういう人の意見を何らか手続に反映させる必要がないのか,手続保障を及ぼすべきではないのかというような議論になります。例えば事件係属の通知をもらった上で主張をする,あるいは記録の閲覧・謄写の機会を与えてもらって,不服申立てをできるようにするというようなことが考え得るところです。   こういう議論の中で,関係人と書いてありますのは,非訟事件において,裁判の名あて人あるいは裁判の影響を直接受ける者を含めて関係人と呼んで,一律に当事者に準じた手続保障をすべきではないかという意見がございます。これに対しては,一律に扱うことは,そのような者が多数に及んだり,あるいはその範囲が必ずしも明確ではないので,なかなか現実的ではないのではないかという意見もあります。そのような点について,御検討いただければと思います。   今の点と多少関係があるので,資料収集段階の真ん中より少し下ほどにある,子どもの代理人制度の導入について説明します。   家事事件において子どもが当事者になる場合,それから先ほどの例のように,当事者ではなくても裁判の影響を直接受けるような場合は,子どもを手続に関与させて,その意見を裁判の中に反映させてはどうかという議論があります。そうしますと,だれかが子どもの意見を酌みとって手続に反映させることが必要になるのですが,その役割を果たす者として代理人をつけることを制度化したらどうかという議論がほかの国などにはあります。現行法の下では,子どもの意思を酌みとるような役割は,家庭裁判所,より直接的には裁判所の職員として配置されております家庭裁判所調査官がその役割を果たしていると思われます。それとの関係がまた問題になってこようかと思います。   資料収集段階の上のほう,資料収集の在り方と手続の記録化と閲覧・謄写権の部分ですが,非訟事件の場合は裁判所が適切な紛争解決のために自ら事実を探知し,資料を集めるという義務と権能を持っています。こういう職権探知主義の下での資料の収集の在り方はどうあるべきかというようなことを御議論いただければと思います。例えば,自ら当事者が判断資料の提供をしたり,あるいは証拠調べの申出をすることも認められるかと,あるいは裁判所に直接事情を説明する機会が保障されるべきか,あるいは相手方がそういう主張をする場合に,立ち会う権利を認めるのか,それから裁判所が収集した資料や相手方が提出された資料について,どういう資料が収集されたのかを当事者に告知し,あるいはそれについて閲覧・謄写の機会を与えるのか,その場合の記録化をどうするのか,このあたりが問題になろうかと思いますので,御検討をいただければと思います。   それからドイツの議論にも先ほど出ておりましたが,裁判所が事実を職権で探知するという義務と権能を有する下でも,手続保障の観点から当事者の権能を認める場合には,その権能に応じた事案解明に向けた協力義務を課すべきではないかという議論があり得ます。この部分がその下に書いた事案解明に向けた義務というところでございます。   参加制度の在り方ですが,現在非訟事件手続法にはそもそも参加の規定がありませんので,少なくとも規定の整備が必要ではないかと考えられます。それからその在り方につきましては,当事者概念,関係人概念に密接する問題でもあろうかと思います。   家事調停事件における資料の家事審判事件の取扱いという,調停審判に特有の問題があります。調停が不成立になって審判に移行した場合,先行する調停手続で提出された資料を審判手続で資料とすることが無条件に許容されるのかという問題です。審判段階における職権探知の在り方につきましては,手続保障の観点から御検討いただくとしまして,調停においては話合いによる円満解決を目指すものである以上,一般的には自分にとって有利不利を問わず,必要な資料は提供されるという建前かと思いますが,そのようにして出された資料を審判の中で無条件に判断材料として使われることがどうなのかと。翻ってそれが許容されますと,調停段階で資料を提出することを当事者がちゅうちょすることになり,調停手続が形骸化するおそれはないのか。この問題については非常に多くの考慮要素を調整する作業が必要になろうかと思いますが,御検討をお願いできればと思います。   テレビ会議・電話会議システムの導入と書きましたが,これは現行非訟事件手続法では明文の規定がないので,導入されていないということになろうかと思いますが,訴訟手続にあるようなものをどの範囲でこういう機器を使ったものを導入するかということを御検討いただければと思います。   参与員のところですが,現行家事審判には,原則として参与員が関与するということになっております。今後の参与員の手続関与の在り方,その場合の規律の在り方について,改めてこの機会に御検討いただくのが相当かと思います。   先決問題を理由とする中止手続の導入はどうかということですけれども,非訟事件では事件で争われている事項の前提問題に争いがあるということがあります。家事審判の例でいえば,遺産分割審判事件において,相続財産の法律関係が争われるような場合,審判のほうを先行させても前提問題の判断が後に訴訟で覆されますと,前の手続が無駄になります。そういうことで訴訟を先行させるという運用はあろうかと思いますが,その場合の審判がどういう手続状態にあるのかということが必ずしも明確ではないので,その辺の手続を明確にするために,前提問題についての訴訟の決着がつくまでの間,非訟事件のほうの手続を中止することを可能にするという規定を設けるということも考えられるところです。現在,借地非訟手続の中には,借地権の目的である土地の権利関係について,訴訟が係属しているときは借地条件の変更の裁判を中止できることになっていますので,このような規定を一般化することはどうかという観点から御検討をいただければと思います。   申立ての取下げ制度と変更制度の在り方ですが,変更につきましては,申立ての趣旨の拘束をどの程度非訟事件において認めるのかということも関係します。変更という手続を設けるのか,設けるとしてもその要件をどうするのかということが問題になろうかと思います。それから取下げにつきましては,非訟事件の場合,一般的に公益性が高いものがあると言われております。申立人以上に利害がある者が想定される事件もあります。そういった場合に,申立人の一存で,無条件に取下げを認めるのが相当なのか,あるいは裁判後は取下げができないとか,あるいは取下げについて一定の要件にかからしめる等の制限をかけることも考えられるところですので,御検討をお願いできればと思います。   受継のところですが,非訟事件手続におきましても手続当事者に手続追行上の支障が生じるということがあります。例えば,実体法上,手続当事者の地位を承継する者はいないけれども,ほかに非訟事件手続の申立権者がいる場合には,それまでの手続を無駄にしないために,その手続を引き継ぐことを認める制度が考えられるところではあります。現在,家事審判手続の場合は,そのような制度がございますので,そのような規定を非訟事件手続に設けるべきか等を御検討をお願いできればと思います。   審判段階のところですが,審理終結という制度が今非訟事件にはありません。ただ,各論的には借地非訟とか労働審判のほうにはそういう終結に関する規定は存在しています。終結概念を導入しますと,終結後は当事者の資料提出,あるいは裁判所の職権探知が許されなくなって,裁判資料の範囲が明確に確定されることになろうかと思います。それから審理を終結する際に相当の猶予期間を置いていついつに終結するということになりますと,不意打ち的な審判あるいは決定という問題もなくなるのではないかと思います。   さらには審理終結後,一定期間に審判をしなければならないと,民訴法で訓示規定もありますが,そういう規定を導入することはどうかということも御検討いただければと思います。それから裁判の在り方ですけれども,終局裁判の方式については,特に告知を受ける者の範囲が問題になります。不服申立ての機会を与えるということも重要な手続保障の一環ですが,家事審判法では必ずしも不服申立権者全員に裁判の結果を告知することにはなっておりません。現実にはなかなかそれが難しいという指摘もあるところで,この辺の規律をどのようにしたらいいか御検討いただければと思います。   費用のところですが,終局段階の問題として,費用負担をどうするのかという問題があります。非訟事件の場合は相手方がいない事件もありますし,あっても勝ち負けというようなものが想定されるものでもないので,敗者の負担という規律はなかなかとりづらいところで,申立人負担か,各自負担か,あるいは別の規律がいいのか,そのあたりを御検討いただければと思っています。   費用負担の裁判をする場合には,あわせてその額も定めるのが今の非訟事件手続法の規律ですが,例えば負担者の審判と額の問題を分離して費用額確定制度というのを導入してはどうかということも御検討いただければと思います。それから費用の問題はほかに予納と立替の問題がありますが,費用を要する行為につきましては,現行法上は国庫立替えが原則ですが,運用上は予納が原則であると承知しております。新たに規律を設けるとして,どのようにすればよいか御検討いただきたいと思います。   それから非訟事件には,現在和解・調停というものは,先ほど御説明があった借地非訟事件等の一部の事件を除き認められていません。そういうような解決を予定していないと言っていいと思いますが,しかし例えば株式買取価格の決定を裁判所に求める手続中に,会社と株主との間で株価について合意が成立した場合というようなことを考えると,和解の余地がおよそ非訟でないかというと,そうでもないようにも思えるところもあります。その辺の御検討をいただければと思います。もちろん,必要性のある類型ごとに規定を置けば十分であり,非訟事件一般の問題ではないという規律の在り方も考えられるところではあります。   調停条項案の書面による受諾の対象の拡大というところですが,これはいわゆる受諾書面による和解というのが民訴にあります。それから非訟では家事調停になりますけれども遺産分割調停では,調停条項案の書面による受諾という方法が認められています。これを遺産分割以外の事件にも導入するものがあるかどうか,この辺を御検討いただければと思います。   合意に相当する審判制度と調停に代わる審判制度,いわゆる23条,24条審判と言われているものですけれども,これは合意に相当する審判のほうは,当事者間に合意があって,原因関係に争いがないことを前提にする審判手続ですが,そこにいう当事者の解釈に争いがあります。この際,規定を明確化する必要性はないのか,御検討いただきたいと思います。それから調停に代わる審判につきましては,離婚調停等において,当事者間で合意に至らない場合に,あっせん案として審判をする制度といっていいと思いますけれども,統計上は年間60件台,あるいは80件台と運用状況が必ずしも芳しくないというような状況がありまして,何か制度的に手当てをする余地があるのかどうか,このあたり御検討をいただければと思います。   それから,抗告審の段階ですが,ここで挙げているのは抗告審に特有の問題だけ掲げております。申立て段階で掲げたところも抗告審でほとんど当てはまると思いますが,ここでは抗告審に特有のところだけ掲げてあります。先ほど,ドイツの御紹介がありましたけれども,例えば不服申立ての手続を即時抗告に一本化すべきかどうかという点,現行の家事審判の終局審判に関しては,即時抗告しか認められていないわけですけれども,これを,参考にしながら御議論いただきたいと思います。   不服申立てがされた場合,執行停止を認めるのを原則とすべきかどうか,あるいは抗告審において,非訟事件におきましても不利益変更の禁止が適用されるものかどうか,このあたりを御検討いただければと思います。   家事審判事件の即時抗告審は,高等裁判所になりますけれども,ここで話合いで解決できそうだという場合でも,今は高裁で調停ができませんので,家庭裁判所の調停に付して,家庭裁判所のほうで調停をするという運用と承知していますけれども,高等裁判所で直に調停ができるようにするべきかどうか,このあたりの御検討をお願いできればと思います。   それから,その他のところですが,手続救助の在り方,それから裁判の取消し・変更制度の在り方,このあたりも御議論いただきたいと思います。   再審制度につきましては,現行法上,非訟事件あるいは家事審判の規定がありません。準用により対応しているものと聞いていますけれども,明文化する必要はないのかどうか,御検討をお願いします。   履行確保制度の在り方というところですが,家事審判及び家事調停に共通する問題としまして,履行確保の制度の充実という問題があります。現在調停審判の手続をとって,そこで命じられたにもかかわらず履行しない者に対して,いかに履行を確保するのかという点はいろいろと問題になっております。よい方策がないか,御検討いただければと思います。   駆け足になりましたが以上です。 ○伊藤部会長 先ほど,金子幹事からは論点について俯瞰するという表現がありましたが,従来の議論,あるいは先ほどのドイツ法に関する改正の内容などを踏まえて,論点として想定できるものを大づかみに提示をしていただいたということかと思います。もちろん,これについていろいろ御意見をいただいて,さらにその内容を詰めていきたいと思いますが,なるべくであれば,早い段階から議論すべきものを洗い出していったほうがよろしいかと思いますので,ただいまの説明に関しまして,御質問ないしは御意見をちょうだいできればと存じます。 ○三木委員 主な論点というのは内容にわたるものだと思いますし,しかも部会長がおっしゃった早い段階から審議すべきものかどうかも分からないことを申し上げますので,適切かどうか分かりませんが,どこかの段階で法律の名称に関する議論を入れていただければと思います。家事審判法については,中身の重要な柱である家事調停が法律名にあらわれていないということで,利用者である国民から見ると分かりにくい法律名になっているところがございます。検討の対象ということで挙げていただければと思います。   それから,非訟事件手続法のほうは,我々法律家にとっては慣れているので分かりにくくはないのですけれども,一般国民から見ると,非訟という言葉がいかがなものかという気もしないでもありません。英語に訳すときなど,このままでは訳せないので,苦労して言葉を補ったり,置き換えたりして訳したりすることもございますので,場合によってはということで,お願いできればと思います。あわせて,同じく内容に渡らないことを重ねて恐縮ですが,法律の中にある概念,あるいは言葉といったほうがいいのかもしれませんが,について,若干整理が必要かもしれないと思われるものがございます。例えば,審判概念と決定概念の関係などです。そうしたものについても,早い段階でやる必要があるとは思いませんけれども,どこかで取り上げる機会があればと思っております。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。冒頭に金子幹事から説明がございましたように,国民にとって分かりやすいものとするという視点がございますので,三木委員が今御発言になったことは当然のことかと思います。   いかがでしょうか。学者の方はもちろんですが,裁判所,あるいは弁護士会,それぞれ豊富な御経験をお持ちの方が委員,幹事の方多いと思いますので,どうぞ御自由に御発言いただければと存じます。 ○山本幹事 先ほどの三木委員と同じようなことで,中身にかかわることではないのですけれども,本日の参考資料にも挙げられている竹下先生の御論文で言われていることで,私もなるほどそのとおりだと思った点ですが,自己完結的家事審判法の制定ということを竹下先生は言われていたかと思います。家事審判法というのが国民にとって分かりやすい法律としてあるべきだというところからすると,やはり現在の規定ぶりというのは,非常に準用を重ねる形で,分かりにくいことになっているということは明らかではないかと思います。先般,最高裁判所の昨年5月8日の抗告審の抗告状の送達が問題になった事案でも,調査官等の解説によりますと,適用される条文はその家事審判規則から家事審判法に行って,家事審判法から非訟事件手続法に行って,非訟事件手続法から民事訴訟法の抗告のところに行って,そこから控訴のところに飛んで初めてその条文が明らかになるという構造になっていて,しかもそれぞれのところに法律に特に別段の定めのない限りとか,性質に反しない限りとかという条件がついていて,関連する法律のすべての条文をチェックして,あるいはその性質を判断しないと適用条文が確定できないような状況になっているのではないかと思いますけれども,これはやはり立法の在り方として問題であろうと思っております。   もちろん,法律の規定がどのような在り方になるかというのは,本部会の多分直接の対象にはならないことであろうとは思っていますけれども,ただ,最終的にはやはりできるだけそういう簡潔的な形で家事審判法の中に条文があることが望ましいと,もし考えるとすれば,現在はその準用で済まされている部分を家事審判法の中で個々的に条文を書けば,どのような形になるかというルールをやはり明確にしていく作業というのが必要だろうと思います。   本日の資料を見せていただいても受継制度とか,いろいろ個別のところでそういうような形に配慮されているような論点の整理ということになっているかと思いますけれども,そのあたり是非御配慮をいただいて,論点としてできるだけ網羅的に取り上げていただければと思っております。 ○伊藤部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。もちろん,個別的な論点についての御指摘,御意見でも結構ですし,今般,その非訟事件手続法,家事審判法の改正を考える上での言わば基本的な視点として踏まえるべきものはこうではないかというような御意見でも結構でございますので,是非お願いしたと思います。 ○中東幹事 難波委員と同じ問題意識に立つものでありますが,相手方のある事件か相手方のない事件かによって,事件類型を区別して考えていこうということですが,相手方があるかどうかというのは,はっきり分かるのでしょうか。実務的には相手方については,各種の処理で対応できているというのは存じ上げているのですが,これは文理や理屈でもはっきり分かるのかどうかというのをお教えいただければと思います。 ○金子幹事 特に会社非訟で挙げられているものの中に,条文上からは相手方があるかどうか,私が見た感じでは必ずしも分からないのですが,実務上は相手方がある事件として扱っているかどうかは,恐らくこれは難波委員のほうにお聞きすべき,お教えいただきたいと思うのですが,実務上は,はっきりしているのだろうと思います。例えば株式価格決定請求事件でも,会社が相手方になるかどうかというのは,条文上からはストレートに出てきていないと思うのですが,恐らく相手方がある事件として扱っているのだろうと思います。ちょっとその辺,お教えいただければと思います。 ○難波委員 私が理解している事件では,例えば相手方のある非訟事件の類型として,代表的なものは株式価格決定と,それ以外は例えば株主総会の招集許可をめぐる事件であるとか,あるいは株主総会で総会検査役を選任してくれと,こういう類型のものは相手方がいると。こういう場合は会社側,それから申立人側,双方を呼んで,どうやりますかということで,必ず事情を聴取して判断しています。特に株式価格をめぐる事件は,もう通常の民事訴訟と変わりないような形で審理をやっております。他方,相手方がない事件というのは,今日,朝倉幹事が説明された破産に伴っての清算人の選任であるとか,あるいは一時取締役の選任,取締役がいなくなったので選んでほしいとか,重要資料の保存者の選任とか,どちらかというと相手方のいない事件の類型のほうが多いです。だから,むしろ相手方がいるほうを特定すれば,それ以外は相手方のない類型ということになります。今申し上げた三つぐらいが一応相手方のある代表的な類型であるということです。相手方がいるかいないかの類型というのは,これは利害関係を考えれば大体分かります。 ○中東幹事 ありがとうございました。大変勉強になりました。価格決定について難波委員のほうでは丁寧に通常訴訟のような手続をされているというのは存じ上げておりまして,判例批評でもすばらしいと書かせていただいたところでございます。   今の分類にも関係して,会社の各種の帳簿,書類の閲覧・謄写請求についてお伺いしたいのですが,裁判所の許可がいるものといらないものがあります。必要ないものについては,これは会社がすぐ閲覧・謄写請求に応じればいいのですが,応じなければ保全手続を使い,保全で決着が付かなければ,本案に行くという形であると理解しています。他方で裁判所の許可がないと閲覧・謄写が認められないものは,非訟に行くわけでございます。非訟については,会社法870条で請求を受けた会社の陳述を聴取しなければいけないということになっていて,会社を相手方として扱っていないようにも思えます。他方で裁判所の許可が不要である保全手続については,完全に相手方として扱うということになっていると思います。この点はどういうふうに整理すればいいのかお教えいただければ幸いでございます。 ○伊藤部会長 難波委員,いかがですか。 ○難波委員 何か急にいろいろ細かい論点に入ってきたので,ちょっと私も頭が混乱しているのですけれども,民訴においては謄写・閲覧,これは書かれていますし,非訟事件でも,改正があった会社更生法などの倒産法には記述されていますけれども,それ以外の改正されていないところ,非訟事件で今規定のないところでは,許可申請があっても,閲覧・謄写というのは基本的には認めるのが難しいのではないかという形で運用されているのではないかと思います。だから,どうしても必要なところは今回の改正で検討していただくと。こういうふうに思われますが。 ○伊藤部会長 よろしゅうございますか。今のやり取りについての確認をさせていただきますが,そうしますと,結局申立てに係る当該紛争について,言わば定型的に重大な利害関係を持つものが想定されるような,それが相手方のある事件で,そういったものについてはやはりその相手方とされるような人を何らかの形で手続の中に組み込んでという,そういうふうに理解してよろしゅうございますか。 ○難波委員 いいです。 ○伊藤部会長 ありがとうございます。   どうぞ,道垣内委員。 ○道垣内委員 部会資料1の2ページの補足説明の2といたしまして,借地借家法及び会社法等の諸法令中の非訟事件に関する各規定は,各非訟事件に特有の問題があるから,検討の対象としないと書かれています。それはそれでそうなのだろうと思うわけですが,他方,先ほど御説明いただきました全体の論点の整理との関係で考えますと,必要的尋問とか,あるいは申立てに理由を付すべきか付さないべきかとか,そういった今回,その非訟事件手続法で全体的な規律をしようとするものについて,検討の対象としないとされている諸法規の中に,あらかじめ既に規定が準備されていることがあるわけですよね。それは触らないということになりますと,何か場合によっては逆転する可能性もあるような気がするのです。先ほどの閲覧・謄写で申しますと,この場合には閲覧・謄写を是非認めなければいけない,一般的には認められないのだけれども,この場合にはここまでの範囲で認めようというわけで,特則によって閲覧・謄写権を拡大していたわけですが,それは触らないままに,他方で,非訟事件手続法一般で閲覧・謄写権を広く認めるということになると,今までは特に例外的にでも認めるべきだとされていたものが,今度は原則との関係でかえって狭い範囲でしか認められなくなってしまうという可能性があるような気がいたします。   参考資料1の研究報告資料の後ろのほうに,主な非訟事件の一覧がありますので,自分自身で勉強してくればそれがいいのですけれども,個々の論点について検討する際に,それに関連して既に会社法とか信託法とかの中に,個別的な形で規律が置かれているものにはどういうものがあるのかを,お忙しいところ恐縮なのですが,お示しいただきたいと思います。それとの関係で議論をしていくことが必要なのではないかと思いますので,自分の不勉強を棚に上げて,人の仕事を増やすようなことで申し訳ないのですけれども,よろしくお願いできればと存じます。 ○伊藤部会長 今,道垣内委員の御発言があった部分,事務当局としては考えなければいけない点があるかと思いますが,現在の段階で何かございますか。 ○金子幹事 非訟事件手続法を準用している法律が非常に多いものですから,非訟事件手続法の改正の議論にどこまで目配りできるかという限界はあろうかと思いますが,例えばここの法律ではこの論点についての規律はこうなっていますということをできるだけお示しできるように努力したいと思っています。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,杉井委員。 ○杉井委員 いろいろな事案に弁護士として関与していますと,本当にこの簡易迅速な解決というのは非常に大事になってくると思います。この想定される主な論点のこのレジュメの中にも,そのことが書かれておりますが,その関連でいいますと,現在の審判前の保全処分というのが,審判の申立て後でないと出せないという。ですから,普通の民事訴訟上の保全処分の場合には,本案係属が条件になっていないわけですが,そこが審判前の保全処分ではそうではないということで,事実上,保全処分を申し立てても結局本案と並行してといいますか,本案の審判が出る時期に保全処分がやっと出るとか,そんなことも経験しているものですから,是非やはり保全処分の問題についても論点にしていただきたいなと思うのですが,先ほどのこの論点整理の表の中では,その保全処分の問題はどこに位置づけられるのでしょうか。 ○金子幹事 この表の中には,これから取り上げるテーマのうちの一部を記載してあるわけで,全部ではありません。保全は御指摘のとおり,当然取り上げるテーマの一つだと認識しています。表に記載してあるものが,この部会で取り上げるべきテーマのすべてではないということで,御理解いただければと思います。 ○杉井委員 ありがとうございました。 ○伊藤部会長 ただいまの杉井委員からは,正にお願いしたい御指摘でございますので,ほかにもそういう点がございましたら,もちろん今回これで打ち切りということではありませんので,適宜この場でも,あるいは事務当局にお伝えいただいてもという形でお願いしたいと存じます。   ほかには今日の段階では御意見,御質問等ございませんが,繰り返しになりますけれども,今のことでもその一端でございますが,決してこれが網羅的なものではございませんので,さらにこの部会の言わば守備範囲において取り上げるべき問題については,適時に御指摘を賜ればと存じます。   それでは,大体予定をした時間でございますので,本日はこの程度にしたいと思います。次回の議事日程等について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○金子幹事 それでは,次回の議事日程について御連絡いたします。次回は平成21年4月17日金曜日,午後1時30分から午後4時30分までを考えております。場所は今日と変わります。法曹会館の高砂の間になりますので,御留意いただければと思います。   それから次回に何をするかという点でございますけれども,これも今日席上配布させていただきましたが,非訟事件手続法・家事審判法部会第2回予定案の範囲を取り上げてみたいと思っております。よろしくお願いします。同じように,こういう形で毎回,その次の会議で取り上げるべき議題をお示ししていく予定でありますのでよろしくお願い申し上げます。 ○伊藤部会長 それでは,ほかに特に本日の議事全体についての御発言等がございませんようでしたら,本日は非訟事件手続法・家事審判法部会をこれで閉会にさせていただきます。   長時間,御熱心な御審議をいただきましてありがとうございました。 -了-