法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第23回会議 議事録 第1 日 時  平成21年5月27日(水)  自 午後5時00分                        至 午後6時41分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  被収容人員の適正化を図るとともに,犯罪者の再犯防止・社会復帰を促進するという観点から刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について 第4 議 事 (次のとおり)              議 事 ● それでは,ただ今から,法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会の第23回会議を開催いたします。 ● 本日は,社会貢献活動を保護観察の特別遵守事項とする制度に関する参考試案について,第二巡目の御議論をいただくこととしたいと存じます。   第一巡目の議論におきましては,事務当局から示されました参考試案について御議論いただきました。   そこで,刑の一部の執行猶予制度に関する参考試案のときと同じように,社会貢献活動の制度につきましても,第一巡目の議論を踏まえ,第二巡目の議論を行うのが適当と存じます。   本日は,まず,参考試案の制度趣旨を踏まえまして,「社会貢献活動を行わせるのが適当と考えられる具体的な対象者」,「社会貢献活動として適当と考えられる具体的な活動内容」の論点について御議論いただき,その議論を踏まえた上で,引き続き,「社会貢献活動につき『社会的活動』と表現することの当否」の論点について御議論いただくのが適当ではないかと考えております。   もとより議論すべき論点を今申し上げたものに限定する趣旨ではございませんので,これらの論点に関連して議論すべき論点がございましたら,随時御指摘いただければと存じます。   また,別途議論すべき論点もあろうかと存じますが,それについては,ただ今申し上げました幾つかの論点の議論に引き続き,御指摘いただければと考えております。   このような進め方を考えておりますが,いかがでしょうか。   特段の御異議もないようですので,そのように進めさせていただきたいと存じます。   まずは議論に先立ちまして,事務当局の方で統計資料を用意したそうですので,これにつきまして御説明をお願いいたします。 ● それでは,資料43として配布しております「統計資料15」について御説明いたします。   統計資料15の1は,「保護観察新規受理人員数及び年末現在係属人員数の推移」についてでございます。   この資料は,平成15年から平成19年までの保護観察の新規受理人員数及び年末現在の係属人員数の推移を示したものでございます。   この資料では,各欄の上段におきまして,保護観察の新規受理人員数につき,各年次ごとに,1号保護観察から4号保護観察までの各号種ごとの内訳と,それらを合算した全号種の人員数を掲載しております。また,各欄の下段の括弧内におきまして,年末現在の係属人員数を併せて掲載しております。   ただし,注記しておりますように,1号の保護観察処分少年につきましては,交通短期保護観察対象者を除外した人員数を計上しております。この点は統計資料15の2以下の資料でも同様でございます。   統計資料15の1のうち,平成19年の新規受理人員数を見ますと,全号種の合計は,4万2,172人であり,その内訳を見ますと,保護観察処分少年が1万7,848人,少年院仮退院者が4,344人,仮釈放者が1万5,832人,保護観察付執行猶予者が4,148人となっております。   統計資料15の2は,「保護観察新規受理人員 罪名・非行名」でございます。   この資料は平成19年の保護観察新規受理人員数の罪名・非行名別の内訳を示したものでございます。   この資料によりますと,保護観察新規受理人員の罪名・非行名別の内訳の比率は,1号観察から4号観察までのいずれの号種別におきましても,その割合が最も大きいものは窃盗罪で,その比率は,例えば,仮釈放者ではその総数の34.3パーセント,保護観察付執行猶予者ではその総数の37.8パーセントを占めております。また,覚せい剤取締法違反の者につきましては,仮釈放者ではその総数の21.6パーセントを占めておりますが,保護観察付執行猶予者ではその総数の9.1パーセントとなっております。   統計資料15の3は,「保護観察新規受理人員 項目別内訳」でございます。   この資料は,平成19年の保護観察新規受理人員数の保護観察期間別,年齢別,職業の有無及び居住状況について,それぞれの内訳を示したものでございます。   この資料によりますと,まず,保護観察期間別で見ますと,仮釈放者では,3月を超え6月以内の者がその総数の38.5パーセントと最も多く,6月以内の者の累計はその総数の73.9パーセント,1年以内の者の累計はその総数の96.9パーセントを占めております。   一方,保護観察付執行猶予者では,2年を超え3年以内の者がその総数の39.5パーセントと最も多く,次いで,3年を超え4年以内の者がその総数の37.8パーセントとなっております。   次に,年齢別で見てまいりますと,仮釈放者では,30代が最も多く,その総数の32.5パーセントであり,次いで40代がその総数の23.4パーセントとなっております。 他方,60歳以上の比率は仮釈放者総数の9.1パーセントとなっております。   一方,保護観察付執行猶予者では,20代が最も多く,その総数の38.3パーセントであり,次いで30代がその総数の23.4パーセントとなっております。 他方,60歳以上の者の比率は保護観察付執行猶予者総数の8.9パーセントとなっております。   続いて,職業の有無で見てまいりますと,いずれの号種におきましても,無職の者の比率が50パーセント以上を占めており,例えば,仮釈放者ではその総数の78.0パーセント,保護観察付執行猶予者ではその総数の58.6パーセントとなっております。   さらに,居住状況で見てまいりますと,いずれの号種におきましても,親族と同居の場合が最も多く,保護観察処分少年ではその総数の94.2パーセント,少年院仮退院者ではその総数の95.0パーセント,仮釈放者ではその総数の63.9パーセント,保護観察付執行猶予者では総数の64.2パーセントとなっております。   そのほか,雇主宅や更生保護施設において他の者と同居している場合が見られますが,反対に,単身で居住している場合というのは,保護観察付執行猶予者でその総数の20.3パーセントとなっている以外は,その他の号種では数パーセント程度の少ない比率となっているところでございます。   統計資料の説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,事務当局からのただ今の御説明につきまして何か御質問等がございましたら,よろしくお願いいたします。 ● 居住状況のところで,「その他」,「不詳」という欄があるのですが,この二つはどのように違うのでしょうか。 ● 居住状況の「その他」につきましては,住居が分かっておりますけれども,単身,親族との同居等とは異なるという範ちゅうでございまして,例えば,知人と同居している場合などがこの「その他」に分類されているところでございます。「不詳」につきましては,要するに分からないという範ちゅうでございまして,例えば,仮釈放者について申し上げますと,外国人で退去強制処分に該当する者等が含まれております。 ● 今の確認なのですけれども,「不詳」の例として,外国人の例を出されたのは,主たるものは所在不明者ではないという趣旨ですか。 ● 所在不明といいますか,これは保護観察が開始された当初の居住状況でございますので。 ● 住所不定になっているという意味でもない。 ● 住所不定の者もこの「不詳」に含まれております。 ● 分かりました。結構です。 ● ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,これは私から事前に事務当局にお願いしていたことですが,社会貢献活動としていわゆる介護補助活動を行うことについて,介護には専門的な知識と技術が求められることなどから,これに反対する御意見が新聞に掲載されておりました。   そこで,そのような御意見も踏まえ,現行の社会参加活動として介護補助活動を行う場合,具体的にどのような活動に従事させているのかについて御説明いただきたいと存じます。 ● 現在,保護観察所において実施している社会参加活動のうち,介護補助活動について説明申し上げます。   以前にも説明申し上げましたが,平成19年度に社会参加活動として行われた活動のうち,最も割合が大きいのが,「高齢者等に対する介護・奉仕活動」であり,全体の28.3パーセント,回数にして117回でございます。   「高齢者等に対する介護・奉仕活動」として行われている具体的な活動といたしましては,「施設内外の清掃」,「車いすの清掃」等の活動があり,また要介護者の方と直接接する活動といたしましては,「レクリエーションの手伝い」,「話し相手」,「食事介助の補助」,「車いす介助の補助」などの活動が挙げられます。具体的にどのような活動を行うかにつきましては,活動を行う少年には介護活動の経験等がないことを御説明した上で,受け入れていただく介護施設側において,施設の状況等に応じて決めていただいております。   介護では,要介護者の方の立場に立って生活ニーズを把握し,そのニーズを満たしつつ自立に結び付くよう適切に介護するといった専門的な知識と技術が求められていることは承知しています。これを踏まえまして,社会参加活動においては,特に「食事介助の補助」,「車いす介助の補助」など,直接要介護者に接し,援助する活動であって,介護に関する知識・技術が必要と考えられるものについては,例えば,「車いす介助の補助」であれば,個々の要介護者の方のニーズに応じた介護の内容について,施設の職員の方から事前に説明を受けた上で,その目の届く範囲で車いすを実際に押したり,あるいは,要介護者の方が車いすで移動するのを手伝うなど,活動を行う少年にとって無理なくできる範囲内でそのお手伝いを行っているところです。   このような介護の現場における体験によって,自分や他者を大切にすることを知り,特に自分に対して肯定的な感情を抱くことで,より健全で建設的な生活を送るきっかけとなるなどの処遇効果が期待できるものと考えております。   現在,当部会で議論いただいております社会貢献活動を特別遵守事項とする制度に関して,この制度で行う活動に介護補助活動を含めることは,介護職の方々の自信と誇りをそぎ,国民にも誤解を与えかねないという意見が新聞に掲載されたということは承知しております。   しかしながら,現在,社会参加活動として実施している介護補助活動は,非行をした少年の健全育成及び立ち直りを図るといった活動の意義などを,受入先の介護施設側に御理解いただき,御説明申し上げ,その施設で可能な範囲内の御協力をいただいて実施しているものでございまして,社会参加活動の開始当初から現在に至るまで,継続して実施されているところであります。したがいまして,現在,社会参加活動として実施している介護補助活動について申し上げれば,介護職の方々の自信と誇りをそぎ,国民にも誤解を与えるというようなことはないものと考えております。   説明は以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   ただ今の事務当局の御説明につきまして,何か御質問等がございましたら,お願いいたします。   格別,御質問はないようですが,この点につきましては,また途中で関連する事項がありますので,その際に御質問等がございましたらお願いしたいと思います。   それでは,ただ今の事務当局からの御説明なども参考にしていただきながら,最初の論点であります,「社会貢献活動を行わせるのが適当と考えられる具体的な対象者」の論点について御議論をいただきたいと存じます。   まず,その議論の前提といたしまして,参考試案を作成した立場から,この論点について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 参考試案は,社会貢献活動について「善良な社会の一員としての意識のかん養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動」と規定し,これを行うことを特別遵守事項として設定するというものでございます。   この参考試案の制度は,保護観察対象者を社会に貢献させる活動に従事させ,自らが社会に役立つ活動を行ったとの達成感を得させたり,地域住民等から感謝されることなどを通じ,自己有用感を得させるなどして改善更生の意欲を向上させ,また,他者一般を尊重し社会のルールを遵守すべきことを認識させることなどにより,その改善更生や再犯防止を図ることを趣旨とするものであります。   具体的にどのような対象者が適当と考えられるかにつきましては,第一巡目の議論におきまして,事務当局から参考として幾つかの類型を紹介させていただいたところであります。   改めて御紹介させていただきますと,ただ今申し上げました参考試案の趣旨を踏まえまして,善良な社会の一員としての意識又は規範意識に乏しく,社会貢献活動に従事させることがその改善更生のために特に必要と認められる者ということになると考えております。   飽くまでも例として申し上げますと,まずは,自己の社会的価値に関する劣等感や,社会からの孤立感が強く,改善更生の意欲に乏しいような者という類型が考えられます。   また,暴走族の構成員など,自己中心的若しくは反社会的な価値観を有している少年,あるいは若年の成人という類型も考えられます。   さらには,家庭もあり,正業もあるものの,例えば,道路交通に関する規範意識に乏しく,道路交通法違反を繰り返しているような者という類型も考えられます。   他方で,この適当な対象者を考えるに当たりましては,その反面として,社会貢献活動に従事させるのに適当でない類型の者を検討するのも有益であると考えております。   その観点から検討いたしましたところ,例えば,高齢者や疾病を有する者,薬物・アルコール中毒者など治療を優先すべき者,さらには,住居の確保や就労・就学等の生活の安定を優先すべき者などは,対象者の属性にかんがみまして,社会貢献活動を遵守事項とすることに支障があるのではないかと考えております。   また,社会貢献活動の実施場所において他者に害を及ぼすおそれのある者や,その犯した犯罪の内容等から活動の受入先や地域住民の理解・協力が得られにくいと認められる者につきましても,社会貢献活動に従事させるのに適当ではないのではないかと考えております。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただ今の事務当局の御説明等を踏まえまして,「社会貢献活動を行わせるのが適当と考えられる具体的な対象者」の論点について御議論いただきたいと存じます。   あわせて,事務当局からのただ今の御説明につきまして,何か御質問等がございましたら,お願いいたします。 ● この適切な人とか不適切な人を議論する趣旨は,今後ここで議論するときに共通のイメージを持とうということなのでしょうか。それとも,将来的には場合によっては規則なり何なりで一応の基準みたいなものとして掲げることなども念頭に置かれているのでしょうか。その辺り,もし事務当局のお考えがあれば,御説明いただければと思います。 ● この参考試案をたたき台として,社会貢献活動を特別遵守事項とする制度の具体的在り方をここで御議論いただいているところですが,その前提として,具体的にどういう者が対象者として適当と考えられるのかといったところの議論をしていただくのが有益ではないかということから,この論点を御議論いただくことが考えられるように思われます。   また,仮にこの制度が導入されて,制度を運用するに当たりましては,やはり立案の過程といいますか,この部会でその運用論も含めてどういう議論がなされたのかというのは,恐らく有益な情報になるのではないかと思われますので,そういった観点からも御議論いただくことが考えられるのではないかと思っております。 ● ありがとうございます。 ● ただ今の件に関連してでも結構でございます。あるいはほかの点でも結構でございますので,御質問等がございましたら,どうぞ御自由にお願いいたします。 ● 適当と考えられる具体的な対象者を今まで議論してきて,今日は不適当な者というところを議論された,この点は議論の流れとしては非常にいい方向だと思うのです。というのは,社会貢献活動をやる場合に,社会全体,一般市民の理解を得ないとできない,社会的な不安を与えるような形ではできないと思いますので,不適当な者はどういうものと考えているかということをきちんと出すということは必要なことだと思います。   ただ,今の御説明は,前にも議論がありましたけれども,犯罪類型別には考えないという趣旨がまず一つ前提にあったと考えてよろしいでしょうか。   それから,先ほど前半に言われたのは個人的な特性そのものだったと思うのですけれども,最後の方に言われたのは,社会に与える不安感というか,そのことを意識されて言われたように思ったのです。この点,不適当なというところの趣旨について,説明の中で統一性に少し疑問を感じたところがあったのですけれども。 ● まず1点目でございますが,犯罪類型別に考えているということではなくて,基本的には,保護観察対象者の問題性なり,属性といったところから考えているということでございます。   2点目は,不適当と考えている類型の考え方の中で観点の違いがあるのではないかという御指摘だったと思いますが,それは基本的に御指摘のとおりでございます。最初に申し上げましたのは,正に対象者の属性から考えて必ずしも適当ではない類型が考えられるのではないかという観点から申し上げました。   もう一つは,これは社会内処遇ということで,正に社会の中で処遇をしていくということから考えると,先ほど委員もおっしゃいましたように,社会から受け入れてもらう,あるいは,社会の理解なり協力が得られるということでないと,なかなか実効的な処遇は行えないだろうということから,先ほど申し上げましたように,受入先等の理解や協力が得られにくいと考えられるような類型については適当ではないのではなかろうかという意味合いで申し上げました。 ● 結構です。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● ○○委員と同じような質問で,確認させていただきたいのですが,適当と考えられる対象者,あるいは不適当と考えられる対象者に共通して,対象者の属性に重点が置かれていたと思うのですけれども,最後の方で,犯した犯罪の性質から,対象者として社会が受け入れることが期待できない者がいるのではないかということを言われたと思います。そこでは,犯した犯罪の重大性とか凶悪性といった客観的なものがどうしても入ってくるのではないかと思って聞いていたものですから,対象者を絞る際に,一つの観点ではなかなか難しくて,対象者の属性プラス犯した罪の性質というものがどの程度入ってくるか,あるいは考慮してよいのかどうか,その辺りをもう一度確認させていただければと思います。 ● 基本的には,特定の犯罪を犯した場合にはすべて除外されるということを考えているわけではなく,その意味では,ベースとなるのはやはりその方の問題性,個人の属性というところになってこようかと思います。ただ,例えば,先ほど申し上げました,犯した犯罪の内容等から活動の受入先や地域住民等の理解・協力が得られにくいと認められる者というところでは,飽くまで例えばでございますが,殺人なり放火なり,そういう凶悪重大犯罪を犯したような方であると,一般的には,活動の受入先等の理解・協力が得られにくい場合が多いのではなかろうか,その場合には社会貢献活動に従事させるのが適当ではないのではないかと考えているところでございます。 ● この点は,少年の社会参加活動の場合,かなり歴史があると思うのですけれども,受入先から見て不適当だと思われる対象者というのはあると思われますか。 ● なかなか難しい質問だと思いますけれども,施設等,受入先の性質によってはあろうかと思います。これも例えばでございますけれども,社会福祉施設でのお手伝いをするような活動の場合でございますと,少年の中には,窃盗をたびたび繰り返しているような者もおりますけれども,そういう者について参加させることはどうかということがあります。あと,通常はそのようなことではないのですけれども,突然,少し暴力的な行為に及ぶ者も中にはおります。そういう者につきましては,今のような施設での活動を考えた場合には,なかなか難しいこともございます。 ● 後段の方の社会に受け入れられないような形の者は社会貢献活動としてなじまないというのはよく分かるのですが,やはりこれも例示が要るのではないかなと思っております。ある種の属性的な,例えば暴力的なものがかなりあるとか,あるいは性倒錯的なものを持っているとか,そういったメルクマールをもってやらないと,社会というのは我々が思っている以上に犯罪者に対して冷たい目があるので,その辺の限界付けをする意味では,後者の方からも一つの例示を掲げながら,そういう理由で社会からはなかなか理解が得られない者というような形にすることの方が望ましいように思うのですが。 ● お答えになるかどうか分かりませんけれども,先ほどの説明でも,犯した犯罪の内容等から,といったことを申し上げたところでございます。やはり,その対象者がどういう犯罪を行ったのか,その内容がどのようなものであったのかといったところからの検討が必要になってくるのではなかろうかと考えております。 ● 適当な対象者ということについて,なかなかはっきりしたイメージをつくり出すことが難しいですけれども,社会貢献活動は刑罰ではないということを前提にしているとは言え,やはり対象者に対する制約という要素はあります。ここで議論してきた,刑の一部執行猶予の際に,「中間的領域」という表現が使われたわけですが,全部実刑にする必要はない,しかし全部猶予にしてしまうことも困るという場合が中間領域でありましょうけれども,そういう意味では,執行を猶予して,それだけで済ますことはやはり少し問題ではないかというときに,この種の社会貢献活動を課するという,これはまず裁判所の御判断でありましょうが,そういうことになるのではないか。そうしますと,社会貢献活動の内容もさることながら,同時に,どの程度の制約にするのかという量的な問題,何時間の社会貢献活動を想定するかというようなことも必要になってくるかと思います。少年の社会参加活動の場合は,あまり繰り返してやっておられるわけではないような印象を受けましたが,今議論している新しい制度については,1回や2回何かやったからそれで終わるというものでは多分ないだろうという気がしております。 ● ただ今の点に関して,何かございますでしょうか。 ● 先ほど,除外される方として就労とか就学していない者というのがあったかと思うのです。一般論としてはそれは分かるのですが,例えば就労しない,あるいはできないという中に,そういう意欲がないというようなことで,能力はあっても就労できないというような人については,場合によってはこの社会貢献活動を行わせるのが適当な人もいるのではないかという気もするのです。少年の社会参加活動などの場合に,例えば学校に行けない子などは入っていないのでしょうか。 ● おっしゃるとおりかと考えます。就職,就学が必要ということであっても,もともとそういう意欲に欠けるという場合と,意欲はあるけれども就職・就学先が見つからない場合と,大雑把に言ってそういう二つに分けられると思いますが,意欲に欠けるという面が強いと思われる者につきましては,現状では社会参加活動に参加させることが効果を上げていると考えております。一方,例えば仮退院して間もない少年のように,当面の生活の基盤を作るという観点から,就職あるいは学校に戻ることを強く支援することの方が適当ではないかと思われる者につきましては,そちらの方を優先した方がいいという判断になることもありますし,個別の判断ということになりますが,現状そのように考えてやっているところでございます。 ● 今のでよろしいでしょうか。 ● はい。 ● 先ほど○○先生の言われたことはすごく重要なことだと考えております。今日の論点としては,三番目が「社会的活動」と表現することの当否ということで,1,2を論じて,最後にこの問題を持っていくという感じですけれども,その際には,○○先生がおっしゃったように,質的な問題ではなくて,量的な,どのぐらいの対象者に負担をかけるのかということを議論しないと内容的に議論としては不十分になるのではないかと思います。外国でもそういうきちんとした枠組みはあると思いますけれども,「一定の時間」ということが書いてあるだけですので,どの程度の時間なのかということ,あるいはどの程度の範囲内で済ませるのかということはやはり議論すべきだと思います。 ● 先ほど○○先生も御指摘されましたように,これは社会貢献活動として適当と考えられる具体的な活動内容の論点とも密接に関連しておりますので,その際にもう一度具体的に御議論いただくのがよいのではないかという気もいたしております。 ● 結構です。 ● 社会貢献活動を行わせるのが適当と考える具体的な対象者の論点に関しまして,ほかにいかがでしょうか。もちろん,これは相互に関連しますので,ここだけで限定するという趣旨ではございませんが,当面の問題として,この論点に関してほかに何か御質問,御意見がございましたら,お願いいたします。   特にございませんようですので,とりあえずこの議論につきましてはこの辺りにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただき,次の論点に移りたいと存じます。   引き続きまして,「社会貢献活動として適当と考えられる具体的な活動内容」の論点について御議論いただきたいと存じます。   この論点につきましても,参考試案を作成した立場から,まずは事務当局から御説明をお願いいたします。 ● 参考試案の制度趣旨を前提といたしますと,社会貢献活動の対象となる活動内容は,当該作業に従事することにより,保護観察対象者に自己有用感を得させて,改善更生の意欲を高めるなどの処遇効果を得るのに資する活動ということになると考えております。   すなわち,参考試案の制度は,保護観察対象者を社会に貢献する活動に従事させることにより,当該保護観察対象者をして,社会に役立つ活動を行ったとの達成感を得させたり,地域住民等から感謝されることなどを通じ,自己有用感を得させるなどして改善更生の意欲を向上させ,また,社会の一員として,他者一般を尊重し社会のルールを遵守すべきことを認識させることなどにより,その改善更生・再犯防止を図ろうとするものでございますので,それに適した活動であるべきであります。   具体的に考えられる活動の内容としましては様々なものがあると思われますが,例えば,現行の社会参加活動の実施状況を参考に考えますと,公共の場所での清掃活動や,福祉施設における介護補助活動等が考えられます。   他方で,これも飽くまで例示でございますが,この参考試案の制度が保護観察対象者に保護観察の特別遵守事項として社会貢献活動を義務付けることからいたしますと,専門的な知識・技術を習得しなければ従事できないような活動や,作業に危険を伴うような活動は,適当ではないと考えております。   また,参考試案の制度が,飽くまでも社会内処遇の一環として社会貢献活動を行うものであり,また,それによって「善良な社会の一員としての意識のかん養」などといった処遇効果を期していることなどから考えますと,その活動内容は,対象者において,自らが社会の一員であるとの自覚を促すことができますように,社会とのかかわり合いのある活動であることが適当であると考えられます。   例えば,公共の場所等の清掃活動は,仮に対象者が単独でこれを行う場合でも,社会に対し直接かかわり合いを持つ活動でありますので,参考試案の制度から排斥されるものではないように考えられます。   もとより,参考試案の社会貢献活動として適当な活動といえるためには,社会とのかかわり合いがある活動であれば足りるというものではなく,対象者がその活動に従事することにより,参考試案の制度が予定している「善良な社会の一員としての意識のかん養及び規範意識の向上」につながる一定の処遇効果を期待できるものである必要があり,その観点からの検討も必要になるのではないかと考えております。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただ今の事務当局の御説明等を踏まえまして,「社会貢献活動として適当と考えられる具体的な活動内容」の論点について御議論していただきたいと存じます。   あわせて,事務当局からのただ今の御説明につきまして何か御質問等がございましたら,それもお願いいたします。それから,先ほど○○先生が御指摘された量的問題についても,ここで御議論いただきたいと存じます。 ● この種の活動を考えていく際の一つの要素は,地方自治体との連携といいますか,地方自治体が協力してくれそうな仕事が適切ではないかという気がいたします。地方自治体の立場から言えば,その種の仕事が受け入れやすいというためには,監督しやすいとか,いろいろな要素があると思いますけれども,例えばごみを集めるという作業があります。あれは休日などは人手不足で困っているのではないかと思いますけれども,休日だからといって作業を休んでしまいますと結局は後で大変なので,若干無理をしても休日にも仕事をしているようです。そういうところに受け入れてもらう。正規の職員と一緒に仕事をするわけですから,比較的監督もしやすいのかなという気がいたします。これは飽くまで一つの例を考えてみただけでございます。 ● ただ今具体的な例の御提示もございましたので,いろいろ皆様の方からも例をお示しいただきながら御議論いただければと存じます。 ● 公共の場所での清掃活動と,いわゆる福祉施設における介護等の補助ということがございましたけれども,今,○○先生から話があったように,地方自治体の協力ということを考えた場合,実は韓国では四つぐらいに分類がございまして,今,おっしゃった一つ目,公共の場所と福祉施設の関係についてはあるのですが,例えば,市町村役場等の行政機関の業務の補助をするとか,郵便物の仕分けの補助をするとか,図書館の蔵書の整理をするなどといった形で,そういったものも保護観察所の仕事としてかなり確保しているという話を聞いていますので,場合によっては韓国の例などをもう少し調査してみると,日本の方の仕事としても広がりがあるのかなという感じがあると同時に,地方自治体の協力がそういうところからも得られるのではないかなと思っております。 ● かなり具体的な例が提示されましたので,いろいろイメージがわきやすくなったかと存じます。ほかにも御意見等ございましたら,お願いいたします。 ● 意見というよりも質問ですけれども,「一定の時間」というのは,何らかの手続の過程で特定されることが予定されているのかどうか。すなわち,1時間以上とか明示されるのか,飽くまで一定の時間ということで,それは個別に判断していくのか,どちらのイメージなのか教えていただけますでしょうか。 ● 参考試案で「一定の時間」と記載している趣旨でございますが,これは不定期ではなくて,具体的に特別遵守事項として社会貢献活動に従事することを設定するに当たっては,定期でなければならない,一定の時間に限定される,そういったことを法律上の義務として明らかにしたというものでございます。そこで,ではその時間数をどうするのかというところでございますが,これは一巡目の議論でも申し上げたところかと存じますけれども,例えば,通達等により,作業の種類・内容等に応じて,標準的な時間数等を示すようなことが考えられるように思います。 ● ただ今の御回答でよろしいでしょうか。 ● はい。 ● 具体的な内容を考える上で,一つ前提と申しますか関係することと思われるのは,保護観察所でプログラムとしてこういうものを用意するのか,あるいは各対象者ごとのオーダーメイド的なものを考えることも含んでいるのか,そこで少し変わってくるところもあるのかなという気がいたします。先ほどの事務当局の御説明の中では,例えば専門性が高いものとか,あるいは危険性が高いものは向かないだろうとおっしゃいましたけれども,プログラムとして用意するのであれば,おのずと専門性が高いものは排除されていくかなという感じもするわけですけれども,その辺りのイメージとしてはどのように考えられているのかということをお聞かせ願いたいと思います。 ● 参考試案としてはいろいろな可能性を排斥するものではないと考えておりますけれども,今考えておりますところを申し上げますと,社会貢献活動として行わせる具体的な活動の選定に関しましては,制度の円滑な運用を確保する必要があるだろうと考えております。そういう観点からいたしますと,これまでの社会参加活動における実績等を踏まえまして,保護観察所が社会貢献活動として行わせる具体的な活動の内容をあらかじめ用意しておき,この中から,個別の対象者について社会貢献活動として行わせるのが適当な活動を定めるという運用が想定されるのではないかと考えているところでございますが,そのような運用の在り方の当否につきましても御議論いただければ幸いに存じます。 ● 処遇を行う側の立場からいたしますと,特に4号観察の場合,オーダーメイドもあり得るということでこの制度を考えるということになりますと,そこはやはり保護観察の開始の時点でそのオーダーメイドをするに足るだけの十分な情報を保護観察所に提供していただくことが条件になるのではないかと考えております。 ● 「社会的活動」の内容が普通の労働の性質に近づけば近づくほど,それに対する報酬といいますか,賃金のようなものを全く想定しなくてよいかということが気になってまいります。お尋ねしたいのですが,その辺はどう考えたらいいのでしょうか。 ● 報酬を要するかというところでございますが,無償でこういった活動に従事させるということを考えております。参考試案の制度の趣旨を前提といたしますと,社会に貢献する活動を通じ,「善良な社会の一員としての意識のかん養」や「規範意識の向上」が図られるのは,一般に,無償でそういった活動を行った場合であると考えられますことから,参考試案の制度における社会貢献活動は,無償で行うことを要するものと考えております。   なお,有償の活動を義務付けることに関しましては,社会貢献活動ということではなくて,それは正に労働でございますので,更生保護法第51条第2項第2号で「労働に従事すること」という特別遵守事項がございますので,そちらで設定することにより行うべきものではないかと考えております。 ● 前に外国の実情を伺ったときも無償でというお話はあったと思います。しかし,普通に考えまして,受刑者は懲役刑の場合には当然強制的に労働をしているわけですけれども,反面,刑務所では衣食住すべてを保障しているという側面があって,バランスがとれています。しかし,社会に出して,自分の家から通ってくる,交通費も必要である,お弁当も食べなくてはいけないとなったときに,それをすべて自分で負担せよというのは少し無理なところもありはしないかという気がいたしますが,その辺どうでしょう。 ● ○○先生御指摘のとおりかなと思って伺っておりましたが,前に海外法制を御紹介したときは無償労働が多いということを報告しました。それはやはり刑罰としての社会奉仕命令がメインストリームだったからだと思います。今回の参考試案の制度は,社会貢献活動を刑罰とせず構成するというものですから,そこをどのように考えるかということなのかしれません。   それから,制度を実施する側としては,具体的な活動内容といってもかなり類型的なもので対応せざるを得ないというのは分かるのですが,例えば,対象となろうとする者が自ら情報を提示して,「自分には,こういうことはできる。」と言ってきたときに,それを認めるか認めないのかというのはまた一個残っている問題かもしれないと思って聞いておりました。 ● 参考までに現状の社会参加活動ということで説明させていただきますと,これまで申し上げましたとおり,当然の前提のようにしておりましたけれども,現在行っている活動につきましてはすべて無償の活動として行っております。これは参加する者もあらかじめそのことを理解して参加しているということもあります。実際,活動の中には,その活動の性格からすると場合によっては労働に近いような内容を有するものも全くないわけではないと思いますけれども,そういう活動をした後において,ちょっとこれはただ働き的なことをさせられたのではないかというようなことを漏らす者というのはこれまで聞いたこともございませんし,やはり役に立ったでありますとか,そういうもともとこの社会参加活動で期待されている効果というのは,無償の活動であることによって相当程度担保されているのではないかという気はしております。   この点はかなり重要な意味を持っていると思いますので,どうぞ御意見をお示しいただきたいと存じます。 ● 私は無償が当然と考えてきたのですが,確かILO条約では無償での労働を強制するのは禁止されていたかのようにおぼろげながら記憶しているのですが,ILO条約との関係で問題があるのかどうかというのは事務当局の方で御検討なさったのでしょうか。 ● 今,事務当局からも申し上げたところでありますが,ねらいとしているところが無償で社会に貢献したことを通じた自己有用感の獲得等でありますので,そのために必要な範囲内で行っていくということなのかなと思っております。もちろん,労働に近いことをやって一定程度の報酬を得ることによる自己有用感というのも当然あるわけでありましょうけれども,それは少し性質が違うもので,参考試案としてお示ししている制度がねらっているところとは少しずれる,カテゴリーとして違うものではないか。そういうことを通じた自己有用感のようなものがありますし,もちろんそういうことを通じて勤労の習慣をつけていく,それが改善更生につながるという部分もあるのでしょうけれども,それは先ほど申し上げたとおり,労働に従事することという方の遵守事項になるのかなと,そういう切り分けではないかと考えているところであります。 ● これまで少年などで実施されてきたような,本当に介護活動の手伝いですとか清掃ですか,ボランティアのような方と一緒に清掃をやるということだと,ちょっと労働ということにはならないのかなということで,余りそういう疑問も抱かなかったのですが,先ほど○○先生がおっしゃったような,ほかの労働者と一緒に作業するということも含まれるのだとすると,正に労働なのかなと思ったものですから,活動内容をどのようにイメージするのかによっては論点として出てくるのかなと思いました。 ● それとの関連で確認しておきたいことがあるのですが,少年の場合に現地に行く交通費はどうなっていますか。 ● 交通費等につきましてこちらで負担しているということはございません。前回例としてお示ししましたように,参加いただいておりますボランティアの方に車で運んでもらうとかというようなお手伝いはしていただいているところでございます。 ● 先ほど留保しておきましたが,量的制限の論点もこれに関連すると思いますが,その点からはいかがでしょうか。 ● 量的制限があるかどうかという点を考える前提として,今回の制度は,社会貢献活動につき一定の時間を定めるということなのですが,社会貢献活動のそもそもの目的からすると,ここでいう一定の時間というのは,それだけやれば改善効果があるだけの時間ということになろうかと思います。ただ,本当に,そのような時間が決められるのだろうかという疑問もあります。その関係でお伺いしたいのですが,現在,社会参加活動を実施している中で,この少年については,これぐらいの時間活動をさせれば改善効果が上がるといった判断はできるものなのでしょうか。その判断ができないということだと,時間を決めるといった場合に,改善教育のための活動というよりはむしろ制裁的な側面が出てきて,犯罪の重さに見合っただけの時間,社会貢献活動をさせるといったことになりかねないように思います。その辺りの見通しがどうなのかということをお聞かせいただければ有り難いのですが。 ● 現在の社会参加活動でどのように行われているかということから申し上げたいと思うのですけれども,例えば環境美化活動であれば,1回当たりの活動時間は2時間から3時間ぐらいで行われている例が多く,介護の補助活動でございますと1回当たり4時間から5時間の活動時間が多いわけでございます。現状の社会参加活動につきましては1回の活動で終わる場合がほとんどでございますけれども,参加者の希望によっては複数回に及んでいる場合もございます。   補足させていただきたいと思いましたのは,平成19年に行いました社会参加活動について調査いたしましたところ,保護観察処分少年のうち成績が良好で解除という措置で終わった者が約86パーセントおりました。これが社会参加活動に参加した者も含む保護観察処分少年全体でございますと約76パーセントという調査の結果もございます。   御質問のありました回数について,現状やっていることについて確たることは申し上げられないのですが,数少ない複数参加している者からの感想等に,これは個別の感想等の状況でございますけれども,繰り返しているうちに人と話し合っていく自信がつきましたとか,そういう感想が多く聞かれるような気はいたしております。ただ,その場合であっても,これまでは5~6回ぐらいが上限ではないかと思っております。 ● 制度が導入されてもいないうちからこのような質問をするのもどうかとは思うのですが,例えば,先ほどのお話で,社会貢献活動についても一定のプログラムのようなものを作る,例えば清掃活動を何時間させるという形でプログラムを組むとした場合,その何時間というのは,こういう対象者については清掃活動を何時間行わせることによって改善効果が上がるだろうという想定でプログラムを作ることになるという理解でよろしいわけですか。 ● 現在はそのような形でやっているということを参考に検討していきたいと考えております。 ● 感想でございますけれども,先ほどの「一定の時間」という言葉の意味は,永久に作業させるわけではないという趣旨であるとすれば,何時間やれば効果があるという観点もあるかもしれませんけれども,逆に言うと,過度な負担にならないという観点も入ってきそうに思うのですけれども,それはいかがなものでしょうか。 ● この点について,事務当局から何かございますか。先ほどは,御指摘のとおり不定期でないという趣旨を明確にするとの御説明もございました。ただ今は,具体化した場面で,その具体的内容として量的にどうかという議論になっていると思いますが,その点,何かございましたらお願いいたします。 ● 御質問の趣旨は,法令に上限をということでしょうか。 ● そういう趣旨ではなくて,今,具体的な運用の話をされているのだと思いますけれども,効果が上がるかどうかという観点もあるかもしれませんけれども,むしろ過度の負担にならないか,仕事も持ちながら保護観察を受けている場合もあるものですから,当然のことながら自らやっている仕事の支障にはならないとか,いろいろな観点が社会人である以上出てくるので,当然,目安をつけるときには,教育効果というだけではないのではないかという感想を申し上げたものであります。 ● それに関連して,時間だけではなくて,時間帯とか曜日もどのようにイメージするのか。特に就労している人の場合に,余暇にやるということになるのかどうかという点も,どのようにお考えなのかをお聞きできればと思います。 ● 今後導入された場合に検討していくことになると思いますけれども,今,御意見として出ておりますように,特別遵守事項として定めて行わせる活動ということでございますので,当然に過度の負担にならないという観点が入ってくると思います。そういう観点から日程についても検討しなければならないと考えております。 ● 当然改善更生のために行うわけでありますので,それ自体として効果が上がっても,負担として大き過ぎればそれはある意味効果が上がらないということでもありましょうし,仕事の妨げになるとかいうことであれば,トータルとしては当然マイナスという話になりますので,もちろんその辺りも具体的な運用の中では考えていくということだとは思います。 ● 今,中身にかなり入ってきたと思うのですけれども,社会的な貢献活動をどれぐらいしたら改善効果が上がるということは,理念上の議論はともかく,実際上は困難ではないでしょうか。例えば,刑務所でどれぐらい働いたらどれだけ改善効果があるのかというような議論ができないのと同じように,それは非常に難しい議論ではないか。特に保護観察の場合は,社会貢献活動が導入された場合に,実施する処遇主体がだれであるかということを当然考えなければいけないし,どれだけの陣容を持っているかということを考えないといけませんので,この点は非常にいろいろな現実的な問題と絡むので,私は,そういう議論は余りに理念的過ぎるのではないかと考えます。   それからもう一つは,たくさんの時間やったからといってうまくいくというよりも,少ない時間であっても,例えば,対象者とスタッフと作業をした後に互いに話し合ったりするようなことも重要であるように思います。大げさに言えばケースワークだと思いますけれども,対象者が貢献したという満足感というか充足感を持つことを目標とするわけですから,ただ何時間したら充足感があるという問題ではなくて,むしろ,前に社会参加活動の例が紹介されたときに,バーベキューをしたりとか何かおっしゃったことがありましたけれども,やはり周りの人の善意というか,周りの人の好意とか,一緒にする人との触れ合いとか,そういうものの中で改善更生というのは生まれると思うので,何時間ということでの議論には,そういう仕事を行う時間以外のものも絡むのではないかと思います。 ● 委員のおっしゃることはよく分かりますし,理念を振りかざすつもりもありませんが,しかし,社会貢献活動は,飽くまで対象者の改善更生のために特別遵守事項とするものであるという前提からすれば,その時間も,第一義的にはそれによって改善効果が上がるかどうかという観点から決まるのだということは確認しておく必要があると思います。その上での具体的な時間の設定についてですが,これまでの話からすると,個別の対象者ごとに決めるというよりは,あるタイプの対象者に対して,この仕事をこの程度の時間という形で,いわば類型的に決めていくという運用になるという理解でよろしいのでしょうか。 ● 運用に関して,先ほどの御説明ですと,プログラム的な要素の場面と,対象行為者ごとの個別具体的な内容の確定という点もあったかと思いますので,一律にどれということではなかったように思いますが,その点いかがでしょうか。 ● どの程度の対象者数になるのかということにもよってくると思いますけれども,相当数と想定いたしますと,円滑に行う,かつ効果的にという観点もございますので,保護観察所で用意した活動内容で実施するか,個別的な活動内容とするかについては,一律に定めることは難しいと思います。 ● 今,○○委員がおっしゃった点に共感する点が大きいのですけれども,一定の時間を定めるということは,無限定ではないということを示そうとするのであれば,これは飽くまで例ですけれども,20時間を限度として社会貢献をすることというような形の定め方もあるのではないかということを,伺っていて感じました。例えば海岸の清掃作業を行うという場合に,3時間という決め方で,3時間来たからまだ半分残っているけれどもやめようとか,もう清掃作業は終わったけれども3時間経たないのでぶらぶらしていましょうとか,どちらも改善更生という点では余り望ましいことではないような気がいたします。それから○○委員がおっしゃったように改善更生に何時間必要かということも恐らく正確に定めることはできないように思いますので,むしろ,過度の負担にならないという観点から一定の上限を定めることが望ましいのかなということを,議論を伺っていて感じました。 ● 海外の例では,法令上の仕組みとして,上限と下限の両方とも定めている例が多いのか,上限だけ定めている例が多いのか,その辺はいかがでしょうか。 ● 覚えている範囲でですけれども,先ほど申しましたこととも関連しますが,刑罰としての社会奉仕命令においては当然ながら実施期間の上限,下限を決めていて,その範囲内で言い渡すというものが多いです。それから,日本で言うところの特別遵守事項として言い渡す場合も,言渡しの際に,上限といいますか,何時間を何日以内にせよと,出頭命令等についてもそのような運用がなされていたと記憶しております。 ● ○○委員,どうもありがとうございました。 ● 例えばでございますが,フランスにつきましては,法令上,12か月以内に40時間から210時間の間で命ずるという規定となっておりまして,制限期間と上限と下限が法令に定められております。 ● ほかにいかがでしょうか。   ほかに御発言がございませんようですので,この論点につきましては以上で終えることにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。御質問がほかの個所で出てきたときに改めて御提示,御指摘いただければ有り難いと存じます。   それでは,次の論点に移りたいと思います。これまでの御議論を踏まえまして,「社会貢献活動につき『社会的活動』と表現することの当否」の論点について御議論いただきたいと存じます。この点についても過去に何度かお話しいただいておりますが,今日は二巡目の最後ということで,この点について御議論していただきたいと存じます。 ● 議論の前提として補足で御説明申し上げたいと思いますが,一巡目の議論では,「社会的活動」とは,他人と交わることが予定されている活動という趣旨であることを御説明したところでございます。そして,一巡目の議論における様々な御指摘を踏まえまして,改めて社会的活動の趣旨・意義等を事務当局でも検討したところでございます。先ほど申し上げましたように,社会的活動とは,他人と交わることが予定されている活動をいうものと考えているところでございますけれども,そこでいう他人とは個別具体の特定人ということでなくともよく,人の集合体である社会,こういったものを含む趣旨と考えております。すなわち,社会的活動というのは,広い意味で社会とのかかわり合いがある活動であれば足りると考えているところでございます。そういった考え方の当否も含め御議論いただければと考えております。 ● ただ今の趣旨を前提に「社会的活動」と表現するということでございますが,いかがでしょうか。これは先ほど議論いたしました対象者と具体的な活動内容と密接に絡んでおります。それを踏まえて御意見を賜りたいと存じます。「社会」という言葉は非常に多義的でございまして,それに何を盛り込むかについてはいろいろ問題点も多いかと思います。それも考慮に入れながら,こういう表現を用いていいかどうかという観点から御議論いただきたいと存じます。 ● 参考試案を見ますと,「社会」が3回出てくるわけです。そのところどころで意味が違うと言えば違う多義性を持っていることから,この議論をしたときに若干の御指摘があったと思うのです。私としては,この参考試案の表現しか落ち着きようはないように思いますが,文章をよく見ると,「善良な社会の一員」,「地域社会」,「社会的活動」と出てきますので,一考を要するかもしれません。 ● ほかにいかがでしょうか。 ● 設定された論点とは少し違うかもしれないのですが,この「地域社会の利益の増進に寄与する」という文言を「社会的活動」に更にかぶせる必要があるのかなという感想を持っております。「地域社会の増進に寄与する」というのが社会的に明確にプラスになる,その活動自体で社会が利益を得るということだとすると,活動に大きな制限を与えることになってしまうのかなという感じがしますし,そこは余り厳しくとらえないで,犯罪者が改善更生していくこともこの「利益の増進」の中に含まれるような広いとらえ方であるとすると,社会的活動と同じようなことになるのかなというような感じもありまして,制度をつくって,実際に現場,特に保護観察所などでいろいろメニューを考えていただいていく中でこの文言が余り独り歩きしないように,この「地域社会の利益の増進に寄与する」は除いてもいいのかと思ったりしております。 ● ただ今,「地域社会の利益の増進に寄与する」という部分の扱いについて御意見が提示されました。 ● 私もこの部分を厳格に解するのは適当でないと思いますが,この部分を除いてしまいますと,社会貢献活動の「貢献」の部分がなくなってしまいますので,除くのは難しい気がいたします。重なるという意味では,むしろ「社会的活動」の「社会的」の方がなくても,「地域社会の利益の増進に寄与する活動」というのは社会的活動かなという気もいたしますし,先ほどの御説明ですとかなり緩やかに「社会的」を解されるということで,なくてもいいかなという気もいたしますが,緩やかに解することを前提とすれば,あっても構わないかなという気もします。 ● 先ほど,社会とのかかわり合いが基礎にあるという関係で「社会的」という表現が必要であるとの説明を受けておりますが,そういうことでよろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ● 今の点と同じところですけれども,もう少しイメージがわくために,地域社会の利益の増進には寄与するのだけれども社会的でない活動というのはどのようなものがあるのかというのがあると,もう少しすっきりするかなと思います。「社会的」というのが入っている必要があるのだということがふに落ちるかなと思うのですけれども。 ● 一般的には,地域社会の利益の増進に寄与すると言える活動であれば,社会とのかかわり合いが予定されている活動ということになってこようかと思いますけれども,先ほど申し上げましたように,参考試案の制度は,社会内処遇の一環として,保護観察対象者に社会に貢献する活動に従事させ,社会に役立つ活動を行ったとの達成感を得させたり地域住民等から感謝されることなどを通じ,自己有用感を得させるなどしてその再犯防止・改善更生を図っていくということを趣旨としております。そのように参考試案の活動は,社会に貢献する活動である一方,社会の方から所要の処遇効果がもたらされるという相互作用を趣旨とするものでございまして,そういう制度趣旨をより明確にするという観点からは,単に「活動」と規定するのではなく,「社会的活動」と規定する方がより適切ではないかと考えているものでございます。 ● 今の点の確認なのですが,社会とのかかわりの下での活動という意味において,純粋に個人活動ではないことを示す趣旨で「社会的」という言葉が使われていると理解してよろしいでしょうか。つまり,個人で行っていても社会の利益の増進に寄与するけれども,社会とのかかわり合いなく行ったという場面は排除すべきだという趣旨なのでしょうか。 ● 先ほど申し上げましたように,そこは難しいところでございまして,公共の場所で単独で活動したとしても,そこは正に社会に対して直接働き掛けをしているということで社会的活動になりますので,一人か複数かということではなく,広い意味で社会に対して何らかのかかわり合いがあるものとして考えております。 ● ほかに,この点に関しましていかがでしょうか。 ● 大分議論が煮詰まってきたようには感じるのですが,やはり「社会的活動」という言葉の「社会」が三つも出るというのはどうかなという感じがしております。今,事務当局からも説明がありましたように,実質的に一人で行う行為でも,それが社会のために役立っていて,それなりに本人もやったという達成感が得られるなら,それはもう社会的活動なのだとおっしゃるのであれば,「社会的」を取ってしまっても,正に「社会の一員としての意識のかん養」という形で主体面からの言葉が出ていて,同時にそれが地域社会に貢献するということになれば,それはもう「活動」と書くだけで十分ではないかなという感じがしております。 ● 今の委員のおっしゃったことは誠にそのとおりだと思いますけれども,これまで実務にも携わってきた者の観点から言いますと,先ほどこちらの幹事からも申し上げましたように,社会あるいは個人に対して働き掛けて,それに対しての反応を,感謝の言葉であれ,何かやっているねというような励ましの言葉であれ,いただいて,そういう具体的なやり取りを通して規範意識の向上なり善良な社会の一員としての意識のかん養なりが可能となるということが経験としてございますので,定義の問題としてどうかということになると一概に言えないものがあるかもしれませんけれども,活動の具体的なイメージを明確に喚起させるという観点からは,「社会的活動」というのもそう捨てたものではないのではないかと考えております。 ● 運用の話ですのであれですけれども,もちろん,先ほど申し上げたように,そういう単独の作業も「社会的活動」から排除されるものではないということではあるのでしょうけれども,これまで社会参加活動としてやってきた実績からしても,参考試案に規定されている「善良な社会の一員としての意識のかん養」などの目指している処遇効果を得るという観点からして,少なくともより望ましいのはどういうものかというと,今,話が出ましたように,社会の人から直接反応が返ってくる,あるいは一緒に作業する人がいる,そちらの方がより望ましいというようなことがあることから,「社会的」という言葉をなかなか外しにくいという気持ちがあるというところを御理解いただければと思います。 ● 別の観点からになるかもしれませんけれども,この参考試案は更生保護法第51条第2項各号に定める特別遵守事項の類型にこれを加えることを想定しているわけですが,現在,第51条第2項各号で掲げてある作為を義務付ける類型を見ると,割と要件を事細かに書き込んでいるところがございます。そういった特別遵守事項の類型の中にこの条文が入ってきたときのバランスがどうかといった観点からも検討する必要があるのではないかと考えているところでございます。 ● 議論も煮詰まってまいりまして,これでほぼ尽きたのかなという感じがいたしますが,ほかに御意見はございませんでしょうか。ほかにございませんようでしたら,この議論につきましては,この辺りで終了させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   特に御異論がございませんようですので,そのようにさせていただきます。   社会貢献活動に関する参考試案につきましてこれまで議論した論点に関連し,あるいは別途検討すべき論点がございましたら,どなたからでも結構でございますので,御指摘,御発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。   この点について特に御異論がないようでございますので,本日の審議はこの程度にしたいと存じます。   それでは,次回の日時・場所等について事務当局から御確認をお願いいたします。 ● 次回は,6月25日木曜日に,東京高等検察庁の第2会議室において会議を行う予定でございます。開始時刻につきましては午後1時30分からを予定しているところでございます。 ● ただ今御案内がございましたように,次回は,6月25日木曜日に,東京高検の第2会議室において会議を行うことにいたします。   開始時刻につきましては,午後1時30分からになりますので,よろしくお願いいたします。   それでは,本日はこれで散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-