法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会           第2回会議 議事録 第1 日 時  平成21年11月25日(水)  自 午後1時30分                         至 午後4時13分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  凶悪・重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方等について 第4 議 事 (次のとおり) 議     事 ● 所定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会の第2回会議を開催いたします。 ● 本日は御多用中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。  本日は,前回の審議で皆様にお諮りしまして御了解いただきましたとおり,被害者団体の方々から直接御意見を伺うということにしております。  なお,「地下鉄サリン事件被害者の会」にも御協力をお願いしましたけれども,お差し支えがあるということで御出席はかないませんでしたが,御出席に代えて意見書を提出していただいておりますので,各団体からのヒアリングの後で御紹介させていただきたいと思います。  被害者団体の方々につきましては,時間の関係上,質疑と応答を含めて1団体につき20分以内でということでお願いしておりますので,委員・幹事の皆様方にも,御質問等はなるべく簡潔にお願いできればと思います。  また,今回の目的は,被害者団体の方々から直接御意見をお伺いするということにありますので,御質問につきましては,それぞれの団体の方々からの御意見の趣旨を明らかにするという範囲でお願いしたいと存じます。本日はこのように進行するということでよろしいでしょうか。  ありがとうございます。  それでは,早速ヒアリングを行いたいと思います。最初は,「殺人事件被害者遺族の会(宙の会)」のお三方から御意見を伺うことになっています。それでは,お三方に入っていただきます。 〔被害者団体,席に着く〕 ● 本日は,お忙しいところをわざわざおいでいただきましてありがとうございます。この部会は,法制審議会に諮問されました「凶悪・重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方」や「現に時効が進行中の事件の取扱い」などについて審議をすることにいたしておりますけれども,本日はその審議の参考とさせていただくために,皆様から御意見を伺うものであります。  それでは早速ですけれども,よろしくお願い申し上げます。 ● 「宙の会」代表幹事の○○と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  この度は,このような貴重な機会をお与えいただきましてありがとうございます。本日は,私のほかに世田谷一家殺人事件被害者遺族である○○さん,そして広島県廿日市市女子高生殺人事件被害者遺族である○○さんも遠く広島から駆けつけ,以上3名が出席をし,被害者遺族といたしまして公訴時効見直しに向けた率直な気持ちを訴えさせていただきたいと存じます。  また,事前にお渡しをしております公訴時効に関する意見書並びに「宙の会」発足時及びそれ以降に発信をいたしました文書を資料として添付をさせていただきました。本日は時間の関係ですべてに触れることはできませんが,後ほど是非お読み取りいただきたく存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  私は,平成8年9月9日に,娘の順子が殺されました。夢に見た海外留学を2日後に控えた日の出来事でした。どれほど無念な気持ちで命を奪われ夢を断たれたかと思うと,いつまでも犯人を許す気持ちにはなれません。時々順子の笑顔を思い出すこともありますが,今でもふと「お父さん,何でそんな夢を見たの」と肩をたたいて帰ってくる夢を見ます。  最近,千葉県,そして島根県でも同じ女子大生が殺害されたニュースを見るにつけ,また私たちと同じ悲しみに暮れる親が増えたと思うと,胸が締めつけられます。  それでは引き続き,先ほど御紹介いたしました○○さん,○○さんより,被害者遺族としての率直な心情を伝えていただきたいと思います。 ● ただいま御紹介いただきました,世田谷事件の一遺族,○○と申します。  私の大切な二つ下の妹一家4人,幼い8歳の姪の○○と,6歳の甥の○○を含めました一家4人が亡くなりましたのは,2000年の大みそかでございました。私と妹は大変精神的にもつながりが深く,妹とともに二世帯住宅を建てておりましたので,その姉妹の家で,壁一つ隔てた現場で,4人を失ったのでございます。第一発見者となりました私の母は,今失明の苦しみにあえいでおります。やはり見るべきものではなかった事件を見てしまったという心の苦しみから,今,失明に至ったのだと思います。  その介護の日々の中で,またなぜ助けてあげられなかったのかという自責の念の中で,一家のことを思い,そして自助努力を重ね,何とか生きていこうと,この9年間,前を向いて歩んでいこうとしてきた私たちです。ただ,万が一にでも15年,今年でもう9年になりますが,万が一にでも15年という時が過ぎてしまったら,動機も分からず犯人も分からない,その中で強い不安を覚えております。そして,風化を防ぐために,毎年私たちは「ミシュカの森」という追悼の集いを開いております。昨年は柳田邦男先生,今年は日野原重明先生に御助力をいただきまして,「悼む思いが命をつなぐ」として,支えてくださる方々に感謝を伝えながら,情報の提供を年末には必死で呼びかけております。今年の年末で9年になりますが,処罰感情のみならず,悼む思い,4人への思いは全く色あせることがありません。ですから,時効の存在理由の一つとして挙げられている遺族の感情が薄れるということは,この私の思いを,もし,皆様がお感じくださいますならば,その理由が後付けであるということの証左だと思います。   また,私たちの事件では,4兆7,000億分の1の確率で特定できるDNAが残されております。この科学捜査の進歩を踏まえて,証拠の散逸を挙げた時効の存在理由も私としては納得がいきません。  夢や情熱,挑戦する勇気,自分を信じて進んでいこうという誇り,無形のものこそ取り戻したいのです。行政の線引き主義,時効という血の通わない制度が,こうした無形のかけがえのないものを取り返そうとする,取り返そうと必死に生きている被害者遺族の努力を踏みにじっていると思います。  こうして「宙の会」の一員といたしまして,未解決殺人事件の遺族が手を携えることで,大変心強く感じております。時効制度撤廃,それは私たちの共通の願いです。「宙の会」の会員が中心となり展開いたしました署名活動では,わずか1か月にも満たない間に5万もの署名をいただきました。この署名活動を通じて感じましたのは,遺族の訴えに皆様が共感してくださったというばかりではなく,そもそも多くの国民の方々が時効制度というものの不条理に憤りを感じておられたのだということです。当たり前のことが当たり前に行われていないということへの憤りが,時効制度撤廃への熱い励ましと深い共感を生んで世論を動かしたのだと私は肌で感じました。  刑罰権も捜査権も遺族の手にはありません。ただひたすら国家を信じて,自己を律し,刑罰権も捜査権もお委ねしているのです。この国家への信頼が根底から揺らぎかねません。どうして15年あるいは25年という区切りでもって,国家が刑罰権,捜査権を放棄してよろしいものでしょうか。  私どもは先日時効制度撤廃の署名を提出して,その後想像を超える前進の,署名に対してのお答えをいただきました。ただ,その直後,新政権の登場に伴って時効撤廃に関していささか後ろ向きだという印象の報道に接しました。もし事実でしたならば,極めて残念なことだと感じざるを得ません。司法制度改革の一環として,時効制度の見直しは今後の方針として揺るぎないものと信じておりましただけに,いささか不安を覚えずにはいられません。命の問題は政権のいかんで左右されてはならないと思います。政治の継続性が揺るぎない信頼となって,国民の安心を生むのではないでしょうか。一つ一つの命を大切にする政治をうたい,国民の期待を担って登場された新政権には,命を,人間を大事にするぬくもりのある政治を心より期待しております。  ありがとうございました。 ● 皆さんこんにちは。○○といいます。今日はすみません。どうもありがとうございます。  我が家の事件なのですけれども,今から5年前,2004年の10月5日,自宅で起こった事件です。本来皆様も一緒だと思うのですけれども,一番くつろげる場所,それが我が家でないかと思うのです。その我が家で,本当に残念なことに私の娘が亡くなりました。それから5年たち,今この感情が薄れるかと言えば,薄れることもなく,本当に願うのは1日でも1時間でも早く事件を解決していただきたい,その思いでおります。  ただ事件解決,ではこれがいつ解決できるのかといったときに,やはり気になるのが今ある時効制度,これがすごく気にかかってはおります。というのが,我が家の事件で言えば平成16年10月ですので,時効まで15年。そのわずか3か月後になれば時効が25年になっているわけなのですけれども,一つのどこかで区切りをつけなければいけないということも理解しろと言われても,我が娘を失った父親としては,わずか3か月の違いで15年と25年の違い,これを受け入れてくださいと言われても,なかなか受け入れられるものでもありません。ですから,本当にこれはお願い事になりますけれども,できるものならば時効というものをなくしていただきたい。そういう思いがいっぱいです。  最近でも,本当は起こってはいけませんけれども,悲しい事件,事故は発生しております。特に,私,広島から来たわけですけれども,島根県の女子大生の亡くなった事件は,広島の方では本当に毎日のように新聞やテレビで報道されています。うちの娘は五体満足で対面はできたのですけれども,この島根の事件は一番最初に見つかったのが首だけという本当に悲惨な事件でございます。こういう事件も解決することをすごく願ってはいるのですけれども,もし捜査が難航した場合,これももし時効というものがあれば,今の時間で言えば25年,25年たてばそういう残忍な犯罪を犯した人間が許されてしまう。そういうこと自体がどうなのかなという思いもありますので,どうか皆様この時効というものを撤廃していただくように考えていただいたらうれしく思います。今日はどうもありがとうございます。 ● 私たち被害者遺族は,突然に理由もなく肉親を失ったその日から,人生が大きく変わりました。いまだ未解決のまま,日々ひたすら犯人逮捕,事件解決を願っております。しかし,歳月を重ねるごとに,事件への記憶や犯人に対する処罰感情は薄らぐどころか,今もなお逃走中の犯人に対する憤りは日増しに募るばかりでございます。しかし,一定の時間が経過すれば犯人を処罰することができない現在の公訴時効制度は,国家が処罰権を放棄することに加え,被害者遺族に対しては事件のすべてを忘れなさいということを意味するものなのでしょうか。国家が処罰権を持つ民主国家にあっては,処罰権を行使するために,まずは時効停止の措置を拡大し,生命の尊厳を奪った犯罪に対する処罰権行使の機会を確保していただきたいと考えます。すなわち,犯人と向き合い,真実を明らかにする土俵の上に立たせていただきたいと願っております。生命の尊厳を犯せば一生罪に問われる,こうした社会システムを構築することこそ,凶悪犯罪を未然に抑止し,安心・安全な国家の実現に近づくものと確信をしております。あわせて,凶悪犯罪に対して,公訴時効のない幾つかの先進諸外国における事例も是非御参考にしていただきたいと存じます。  一方,本日も御出席いただいています広島県廿日市市女子高生事件の○○さんの場合は,先ほども触れていただきましたように,わずか約3か月の違いで時効が15年のままという法適用の時間の格差に矛盾を感じており,この遡及問題もまた私たち被害者遺族を苦しめております。事件発生の時点で刑罰権の行使期限が異なるということは,生命の尊厳という観点からも納得できるものではありません。本審議会におきまして,遡及適用につきまして,是非とも前向きな御議論を期待をいたします。  最後に当たりまして,私たち被害者遺族は単に被害者感情から主張しているばかりでなく,今後二度と繰り返してほしくない凶悪犯罪を未然に防止し,悲しみに暮れる被害者遺族をこれ以上増やさないとする社会的使命を背負って,公訴時効の撤廃に向けた活動を行っております。本年6月に,当時の法務大臣あてに行いました署名活動では,わずか1か月足らずの極めて短い期間で4万5,000名もの署名が集まりました。周囲からは,もっと時間があれば更に集められたのにという声を幾度か耳にいたしまして,一般市民の関心の高さを感じました。国民もまた,かたずを飲んで本審議会の動向を注目しております。国民の声を大切にする民主党の政権の下,私たち被害者遺族とそれを支える国民の皆さんの声が,今後の御審議に必ずや反映されますことを切にお願いいたしまして,「宙の会」を代表しての訴えを終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。  それでは,委員の方々から,ただいまの御意見の御趣旨を確認,あるいは明らかにするという観点から,質問等ございましたら御発言願います。どなたからでも,どうぞ。 ● 今日はどうもありがとうございます。どういう方が「宙の会」の会員として,今お二人は具体的な事件のお話が出たのですけれども,どういう方々,つまり時効が現在例えば成立している人とかもいらっしゃるかもしれないのですけれども,そういうことも含めてどういう方々が入られているか教えていただけますでしょうか。 ● 「宙の会」は,今年2月の末に発足をしました被害者遺族の組織としては大変新しい組織でございまして,発足当初は16遺族でスタートをいたしましたが,現在は21遺族で構成されております。今,お話がございましたとおり,その御遺族の中には既に時効を無念にも迎えられた,そういった例えば北海道にいらっしゃる生井さん,あるいは関西の川田さんという方ですけれども,その方々は既に時効を無念にも迎えられている。しかし,この無念な気持ちを皆さん方には決して味わっていただきたくない,そういった一心から私たちのこの「宙の会」の一員として時効廃止に向けてお力をお借りしておるという状況でございます。また,あわせまして,先日,例の船橋のリンゼイ・ホーカーさんの容疑者が逮捕されましたけれども,イギリスにいらっしゃるビル・ホーカーさんも,実はこの「宙の会」の会員として御協力をいただいております。実は,この3月31日,リンゼイさんの命日だったと思いますが,日本にもお越しいただいたときに,「宙の会」で実際に面会をさせていただきました。このような状況が一体いつまで続くのか,何回日本に来たらいいのか,そういったお話を聞いたことが大変印象に残っております。  幸いなことに,国民のああいった御協力のもとで,犯人,容疑者が逮捕に至ったわけですけれども,そのほかにもロサンゼルス事件の白石千鶴子さんのお姉様につきましても,現在「宙の会」に御加盟をいただいて,一緒に現在活動をしております。先日も実際にお会いして伺いました。実際にアメリカの方では事実上時効がないような状況ということで,「自分としてはあきらめていたけれども,やはり捜査が継続して続いているということで本当に救われた気持ちになった。」というお話が大変印象的でございました。  以上でございます。 ● ありがとうございます。では,ほかの方。 ● 本日はありがとうございます。1点教えていただきたいのですが,時効を撤廃しなければ,「時効があるから実は私が」というふうに名乗り出てくる犯人がいると思うのです。一方,時効を撤廃した場合,結局長い間努力をしても犯人が見つからなくて,その場合に,もしそういう制度になった場合に,被害者,御遺族の方々が,それをずっと,言わば時効という区切りなく,際限なく引きずっていくというようなことはないのでしょうか。その点はどういうふうにお考えでしょうか。 ● むしろ,私も先ほど触れましたように,やはり常に真実を知りたいということなのですね。私たち被害者遺族というのは,全くそういった被害を受けるという身に覚えのないような,そういった状況であるということから,もうおしなべて皆さん方が,なぜ我が家が,なぜうちの家族がという思いをそれぞれ皆さん方持っていらっしゃると思うのです。その思いというのは,やはりこれは犯人が逮捕される,仮に犯人が逮捕されないにしても,その思いというのはずっと続くものでありますし,またその期間が長くなればなるほど,犯人に対するそういった思いというのも,非常に強まってくるということが言えるのではないかと思います。何か補足があれば。 ● 今おっしゃいました心の区切りということでございますけれども,例えば15年なり25年たったから,心の区切りをつけろ,ということではないのではないかなと感じております。私自身は報道の方にもいつか申し上げましたけれども,「被害者遺族にとっては『時間が止まっている』という表現は,私にとっては非常にむごい表現だ。」と申し上げたことがございます。と申しますのは,私たちは生きていますので,4人はもう帰ってきませんけれども,私たちは前を向いて生きていかなくてはいけない。そのときに,心の区切りをつけざるを得ない,「生き直し」を迫られているのです。既にもう「生き直し」を迫られて,私たち自身が一生懸命グリーフケアの途上にありながら,15年,25年であなたは心の区切りをつけなさいというのは,その心の区切りを法によって区切られるというのは,納得がいかないことではないかと思います。  あと,先ほど申し上げた,現在は22遺族参加されておられます。  それからあと,先ほど○○が申しました被害比較,アメリカなりイギリスなり,もともと時効のない国の方のお話を伺うにつけても,その時効制度の不条理さというのは強く感じているところでございます。また,「宙の会」の会員の方々に,もう既に時効を迎えられた方々がおいでになって,社会のために何か私たちができることはないかと言って御参加くださった方々に触れ合うにつけても,それはその意味では本当に心の区切りというのはつけておられる,前を向いて歩いておられるということでは心の区切りをつけてはおられますけれども,それと法治国家の中での区切りというのはまた別なことだと思います。 ● ありがとうございました。   ほかによろしいでしょうか。そろそろ予定した時間ですが。  それでは,本日はお忙しい中,貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。お伺いした御意見につきましては今後の審議の参考とさせていただきます。どうもありがとうございました。 ● 本日はありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。 〔被害者団体,退席〕 ● 次に,「被害者と司法を考える会」の○○さん,○○さんから御意見を伺うことにいたします。それでは,お二人お願いします。 〔被害者団体,席に着く〕 ● 本日は,お忙しい中お運びいただきましてありがとうございます。この部会では,法制審議会に諮問されました「凶 悪・重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方」や「現に時効が進行中の事件の取扱い」といった問題について審議することにしておりますけれども,本日はその審議の参考とさせていただくために,皆様から御意見を伺うものであります。  それでは,早速でございますけれども,よろしくお願い申し上げます。 ● 今日は発言の機会をいただきましてありがとうございます。私は「被害者と司法を考える会」の○○と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  きょうの議事録はいずれ公開されるというふうに伺っておりますけれども,法律制度ができる非常に貴重な資料となりますものですから,できましたら私たちの意見の部分だけでも実名で公開をいただければ非常に有り難いというふうに,まずお願いをいたしたいと思います。  公訴時効の延長ないし廃止について私たちはどういうふうに考えているかという点について幾つかの論点に分けて御説明をさせていただきたいと思っております。  まず,凶悪・重大な事件についての公訴時効につきましては,2005年にかなり大幅に延長になったと考えております。したがいまして,今後の公訴時効の延長ないし廃止ということにつきましては,更に時間をかけて判断をしなければいけないのではないかと考えております。被害者が置かれている困難な状況というのは,以前も今も変わりがないわけですけれども,犯罪被害者等基本法ができまして,国が被害者の心情を受け止め支えていく制度が強く出来上がったわけですので,今後は被害者を更に苦しめない制度設計が求められるのではないかと考えております。  私は被害者遺族です。97年11月28日に息子の○○という男の子を交通事故で失った父親でございますけれども,当時は交通事故の公訴時効というのは今よりもずっと短い期間でした。当初,業務上過失致死,それから,道交法違反,ひき逃げ,救護義務違反で被疑者の方は逮捕されたわけですけれども,当初の処分は不起訴処分でした。私たち遺族が一生懸命現場に立ち,目撃証人を集め,いろいろな証言を積み重ねることによって,やっと起訴していただき,業務上過失致死での起訴だったのですけれども,長い長い時間をかけて裁判までたどり着き,やがて有罪判決が出た経験がございます。  その後にも,救護義務違反,現場から走り去ってしまって息子のことを助けようともしなかったことについて,この国では加害者に責任をとらせることがなく終わってしまいました。被害者側としましては,様々な罪の形,それを社会に訴え,また被疑者,被告人に対しても要求をしていくわけですけれども,現実問題としてそのすべてがかなえられるとは到底思っておりません。ただ,被害者側としてある程度達成感を持つこと,刑事裁判の中で自分たちの心情を分かってもらえた,聞いてもらえた,そして二度とこのような被害者を出さないような社会に近づいていくということが,非常に重要なことではないかと考えております。  そのような経験をいかせればというふうに考えまして,いろいろな事件の被害者支援を今でもやっております。その中に幾つか長期捜査事件の被害者支援もございます。いわゆる当時は未解決事件となってしまった事件でございますけれども,被害者側として御支援を続けていく中で,被害者にとってはやはり回復こそが一縷の望みではないか,そのためには,いろいろな場面での不条理感というものを克服していただく必要があるだろうと思います。特に,被害者は参考人として警察から事情を聞かれ,何か事件との関係性があるのかないのか,被疑者につながるような知り合いはいるのかいないのか,そういうことを長いこと繰り返し聞かれるわけですので,大変疲れ果ててしまっている現状があるかと思います。  そのような中で,確かに不安な状況,恐怖に陥ってしまった原因を解決することは一番いい解決方法なわけですけれども,その緊張状態が更に続くということは,支援者として賛成することができません。確かに被害者遺族の中には,強く事件解決を望み,刑事裁判にかけて何とか社会不安をなくしてもらいたいというふうに望んでおられる方もいることを承知しています。しかし,同じ遺族の中でも御自身の生活,あるいは今後の未来のために,あえてそのような事件解決から距離を置く方もおられます。そのような方といろいろお話をしていくうちに,被害者遺族の目的が一つではないということに私は気がつきました。  そこでよくよく考えてみますと,事件ということが起きてしまいますと,被害者,特に凶悪・重大事件の場合は,被害者はまず亡くなってしまっている,命がない状態だというふうに 思っておりますけれども,亡くなった命のことを皆で考えることが非常に重要なポイントではないかと思います。また,残された遺族が今後立ち直っていくために必要な支援はどういうことなのか,改めて考えることもまた重要なポイントではないかと考えております。  そのような意味で,被害者遺族はいろいろなことをきっかけに立ち直っていくと理解をしております。例えば,亡くなった当事者はこれまでに多くの友達に恵まれた幸せな人生であったと思いたい。いろいろな人に見送られて,最後は立派な締めくくりをつけることができた,そう思いたい。 加害者が見つかって謝ってくれた,それがある意味で誠意と感じた。次に同じような被害者が出ないような一助になると実感をして,大変救いに感じた。いろいろなことがあるかと思います。ある意味で,被害事実を打ち消すことができないだけに,いろいろなことを考え,きっかけは人それぞれ様々ではないかなと思います。  また,昨今被害者を取り巻く環境が劇的に良くなってまいりました。今までは,自分たちが被害に遭わなくてよかったという時代から,「人ごとではない,同じ市民として被害者のために何か助けをしたい。」とおっしゃる方がいっぱい出てくるようになりました。これは大変有り難いことだと思っております。  そのような中で,では今何ができるのか,あるいは,私たちが今何を考えなければいけないのかということも,非常に重要になってきたのではないかと思います。そこで,幾つかの論点を整理してお話をしたいと思っております。  まず,公訴時効は2005年に延長になったばかりなのでございますけれども,その効果というものがいまだに明確になっている時点ではないと考えております。したがって,今の時点で公訴時効を延長ないし廃止するというのは,少し客観的な資料が不足していると考えます。また,単に公訴時効延長,あるいは無くしてしまえば被害者が救われるかというと,全くそんなことはなく,現状,被害者は大変苦しくてつらい状態に置かれているわけですから,それが単に延長するだけでは全く何の解決にもなっていないということがあるかと思います。また,昨今では被害者支援も充実してきましたけれども,長期事件,長期捜査事件の被害者支援というのは,いまだに実態としては非常に困難な状況にあるかと思います。私も長期捜査事件の御支援をさせていただきましたけれども,1年,2年,そして3年ぐらいはいろいろな観点を持ち,社会に訴え,また社会との距離感を御遺族に感じていただくことができるわけですけれども,やがてこれでも被疑者が特定できない,検挙に至らないということになると,非常に先行き不安になってしまうということも現実としてあるかと思います。そういったことの方針について,恐らく具体的な施策も現状ではないのではないかと思います。というようなことを考えますと,被害者を孤独なまま放り出してしまうと,非常につらい状況がまた続いてしまうのではないかと思います。  あともう一つ大事なポイントとしまして,時効が既に完成してしまった事件について公訴時効を延長し,あるいは廃止するといったことについては,これは適用するべきではないという御意見が大多数ではないかと思います。それと同じように,施行前に行われた事件,犯罪に新しい法律制度を適用して公訴時効の完成を遅らせるということは,遡及適用に当たってこれはすべきではないと思います。法律制度をお互いに尊重して生きていく市民として,憲法39条に書かれている事柄というのは非常に重いと考えておりますので,公訴期間を長くしたり,また,あるいは仮定のお話として短くするというようなことも,してはならないと考えております。  ほかの被害者の悪影響というのも懸念されるところだと思います。もし遡及適用が認められることになりますと,別の事件の被害者遺族で刑事手続の結果に満足のいかない方,例えば時効が既に完成している,あるいは裁判の結果に非常に不満足であるといった被害者遺族が不安な状況に陥り,更なる法改正を要求するということもいたしかねないと思います。  そこで様々な困難な状況を考えて,私たちの提案として二つほどお願いをしたいと考えております。  まず長期にわたる捜査事件の被害者あるいは社会に対しては,一定の期間ごとに捜査の内容を説明して意見を聞き,可能な施策を施す中間総括の手続をするということを是非ともお願いをしたいと思います。これにより,日々延長し続けていく捜査期間を中間で見直すことによって,被害者も社会への信頼がより増すというふうになっていくと思います。その際に,今は都道府県ごとの捜査体制が敷かれているわけですけれども,是非とも,警察庁直轄で,全国を見渡した視点での捜査ができるようにしていただくのがポイントではないかと考えております。被害者支援が明確になることで,またそのような事件の支援者への負担が軽減され,地域社会への不安も相当解消されるということになるかと思います。  もう一つの提案なのですけれども,公訴時効の期限については,凶悪・重大事件については極めて長いという印象があろうかと思います。一方で同じ生命犯あるいは生命に大きな影響を与えてしまった被害者に対する事件,交通事故,自動車運転過失致死罪,業務上過失致死罪,傷害致死罪,強姦等の生命身体に大きな影響を与えた犯罪についての公訴時効は,10年ぐらいをめどに考えていただくのが適当ではないか,それはほかの被害者とのバランスを考えた場合,そのぐらいが適当ではないかと御提案をさせていただくところです。  昨今警察の捜査は非常に良くなってきていると思います。いろいろな科学捜査も進んでまいりましたし,被害者を出さない,あるいは社会に不安を与えないという考えが,お巡りさん一人一人に行き渡っていると感じます。そのようなことから,長期にわたり捜査をしなければならない事態というのは,今後避けられるようになってくると考えております。  非常に時間が限られておりましたので,このような説明になってまいりました。詳しくは資料を提出させていただきましたので,お読みいただいて御参考にしていただければ有り難いと思っております。どうもありがとうございます。 ● ありがとうございます。   それでは,委員の方々からただいまの御意見の趣旨を確認,あるいは明らかにするという観点から,御質問等ございましたらお願いしたいと思います。どなたからでも。 ● 「被害者と司法を考える会」ですけれども,これは会員は何人でしょうか。 ● 会員は,特に公開をしておりません。会員になろうと思われる方は,だれでも会員になることができます。 ● 運営委員は公開しておられますね。 ● 60人ぐらいになっていたと思います。 ● 今のあれでは38人というのがインターネットで出ている。 ● 非公開の名前の運営委員というのもおられますので。 ● その中で,犯罪被害者は何人いるのでしょうか。 ● そのような統計というのは取っておりません。例えば御自身が被害に遭われたことを伏せたいと思っておられる方も数多くおられます。仮に不起訴事件で御自身が刑事司法にかかわれないということでも憤っていらっしゃる方もおられますし,そのような区分ということを会員の中ですることによって,会員間格差をつけることは私たちの考えではありません。 ● インターネットで見た38人の運営委員の中では,あなたとあなた以外にもう一人しか被害者はいないのかなと思うのですが。 ● いや,そんなことはございません。 ● この公表された運営委員の中に,いますか。 ● 御自身が犯罪被害者であるということを言いたいというお考えと,会に参加をして活動をされたいということとは,全く一致をしないと考えております。 ● いやいや,数をインターネットで見るとあなたと小林美佳さんと二人だけかなと思ったので。 ● いや,そのようなことはございません。 ● ほかにもいらっしゃる。 ● はい。 ● それでは,殺人の被害者の遺族とか,そういう方は会員にいますか。 ● ちょっとこの今回の趣旨とは一致するとは思えないのですけれども,どのような趣旨でお尋ねになっているかよく分からないのですが,その辺の統計は取っておりません。 ● 統計は取らなくても,未解決事件の殺人の被害者の意見を聞いた上で,会員の中にそんな人がいらっしゃって,今おっしゃったような意見を言われたのか,ちょっと聞きたいので。 ● 先ほど御説明させていただいたように,未解決事件,殺人事件の被害者の支援を数多くやってまいりましたので。 ● いや,会員の中にいらっしゃるかということを聞いているのですが。 ● 統計を取っておりませんので,お答えはできかねます。 ● では,致死事件の被害者はいらっしゃいますか。あなたは交通事故の過失傷害致死。それ以外の致死事件の被害者はいらっしゃいますか。 ● かなりおられると思います。 ● ああ,そうですか。終わります。 ● ほかの方はいかがですか。 ● 今日はどうもありがとうございます。被害者団体としては珍しい意見を主張されているとは思うのですけれども,○○さんのこれまでの御自分の経験,それから支援をされてきた経験で,被害者の中にやはり一定程度時効ということで区切りをつけるという考えを持っておられる方がいらっしゃったのかどうなのか,そのあたりは御経験としてはどうでしょうか。 ● かなり実態としては多くおられたというふうに思います。被害者が亡くなってしまった場合,その周りにいた家族というのは皆遺族になるわけですけれども,それぞれの人生を抱えて生きていかなければいけません。その中で,仕事もあり,就職もあり,結婚もあるわけですので,ずっといつまでも事件のことばかり考えて生きていく被害者ばかりではないと思います。ある事件の被害者支援を思い立ち,御遺族から依頼をされ,長期捜査事件の被害者御遺族だったものですから,支援チームをつくって支えていくことにいたしました。ところが時期がたってみますと,御家族の中から支援をやめてもらいたい,自分たちはこれから幸せになっていきたいのだ,そういうことを訴えられました。同じ事件の遺族でありながら,一方では強く刑事事件での事件解決を望み,一方では悲しみは悲しみとして受け入れて,そこから歩いていきたいのだという方もおられました。私は間に入って非常に悩んだわけですけれども,両方の言い分が重いと思いました。したがって,刑事事件というのは捜査機関が捜査をして,立件をして被疑者を検挙して裁判に至るいろいろな流れがあるわけですけれども,何も被害者自身がやらなくてもいい部分というのがあるのではないかというふうに考えました。したがって刑事裁判以外の部分,心の回復ですとか肉体的,身体的な方向性の転換ということも必要になっていくのではないかなと考え,そのような御 支援をさせていただきました。今でもそのようにお付き合いをしております。  それぞれ価値観は被害者によって違いますので,それを一括りにしてしまうということがかえって難しくしてしまう。それぞれ犯罪被害者等基本法にあります個別の回復,あるいは被害者それぞれに応じた対応というのが,本来はなされてい なければいけないのではないかなと考えました。 ● ほかの方,よろしいでしょうか。  それでは,本日はどうもお忙しい中をお運びいただき,貴重な御意見を伺うことができまして,ありがとうございました。お伺いした御意見につきましては,今後の議論の参考にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ● ありがとうございました。 〔被害者団体,退席〕 ● 次に,「犯罪被害者家族の会」の○○さん,○○さん,○○さんのお3人から御意見をお伺いすることにいたします。それではお願いします。 ● 「犯罪被害者家族の会Poena」代表の○○です。こちらが○○,○○です。よろしくお願いいたします。 ● 本日は,どうもお忙しい中お運びいただきましてありがとうございます。私どもは,法制審議会に諮問された「凶悪・重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方」や「 現に時効が進行中の事件の取扱い」などの問題について審議をすることになっておりますけれども,本日はその審議の参考とさせていただくために,皆様から御意見をお伺いするものであります。  早速ですけれども,よろしくお願い申し上げます。 ● 私の事件は,13年前に池袋で立教大生が駅のホームで殴られて亡くなった事件の父親でございまして,私も13年間,初めて日本の社会で社会問題にしながら,被害者が本当に真剣に社会問題にしたのがこの事件が一番最初のような気がします。そういう意味で,20万枚のビラを配りながらかなり訴えて,親として13年間いろいろなものを通しながら,学びながら来たつもりでおります。まだ至らない点はございますけれども,その上で皆様にちょっとお話しさせていただければ,大変私もこの会に参加させていただいて,お呼びいただいたかいがあるのではないかと,そう思っております。  まず皆さんに是非御理解いただきたいのは,息子の命の権利はだれにあるのだろう,まずそこから御理解いただければ有り難いなと思うのです。私は遺族でありながら,亡くなった命の権利は当然息子にあると思っております。命の権利は,遺族になって初めて自分たちが権利だ権利だと言うから,いろいろな方向に論じて間違えた法もできる可能性も,ややもすると今お伺いした中で,私は感じております。そういう意味で,亡くなった命の権利の問題として,これが魂であるというものを御理解いただいた上で,ちょっと御意見を伺っていただければ大変有り難いなと思います。  まず一番私が時効の問題で,息子の事件を通して初めて時効というものはどうあるべきかというものを闘ってきたつもりでおります。13年という闘いの中で一番感じたことは,「法の社会で100年変わっていない。」というものをすごく感じたのです。私が嘆願書を集めて,春日部で集団暴行で起きた殺意の目的を初めて分析して,法務省の太田検事というすばらしい人に出会って,法務省で内緒で文書でやりますよという回答を実はいただきながら,法の初めて時効50年という要求をしたのですけれども,「100年変わっていないからいきなり無理だろう。30年の時効をまず書いていただけませんか。」というので,初めて時効の30年という併合罪が成立したと思っております。 死はどうであるかというものを感じながら,命の権利は息子にあるというのを感じながら,では傷害致死だろうが殺人であろうが,なぜ相違があるんだろう,未逮捕である限り本来違うだろうと。その殺意の目的を初めて分析して論じて,傷害致死が初めて認められて,25年,殺人罪と一緒の同等の刑に時効は変わったわけです。だから傷害致死が法務省に重要犯罪の位置付けで認められた経緯があって変わったことも,皆さんにまず御理解いただきたいのです。いろいろな意味で死の平等で,いろいろ な被害者が権利として中において,今 主体のどうしても問題が,かなり法が,できています。そういう意味で亡くなったその者の命の魂というのはどうであるかというものの上で,まず時効の問題をとらえて,亡くなった命の権利のものをまず考えていただければと思います。  その中で,いろんな面で刑とは何だろうと,今時効の撤廃で凶悪犯罪と重大犯罪に限り今論議が進んでいると思いますけれども,まず私からすると,死の平等は何だろうというものをすごく感じております。うちの事件は,はっきり言って傷害致死です。病院へ入っていますから。だけれども,引き倒したという殺意の目的を変えて殺人罪と同じく15年の時効の改正で殺人罪の適用を受けたわけです。これは遡及に触れないために,殺意の目的を変えた。それで殺人罪に切り替わっております。そういう意味で,死は平等である。だから,法の平等は何だろう。では凶悪犯罪で,軽度の犯罪で捕まえた人が初めて犯人を逮捕した段階で時効を考えた場合は,あるいは過去に凶悪犯罪が後で証言して裏付けがあって自白した中で出てきた。そういう問題があったらどうするのだというのも議論の中に入るわけです。だから犯人未逮捕である限り,本来は最終の判断は法の社会でできないことなのです。初めて検事が起訴する段階において,凶悪犯罪か殺人罪か傷害致死か,そういうものを区別するのが本来,法の中の論議ではないかというのをすごく感じております。いろんな意味で,犯人が未逮捕である限り,本来は捕まってみないと凶悪犯罪か分からない場合もあるし,そういう意味で凶悪犯罪だけに時効を撤廃する論においては,法の平等を,まず私は憲法の問題からいって,侵していると思います。  それでどうなのだと,私も悩みながら実は考えております。人間の社会が欲がある限り,犯罪は消えないわけです。衣食住足りて,日本の社会で何を望むだろう。権利,金と権力と生きる生と男女間の性と,これは消えないのです。だから欲がある限り犯罪は消えないのと同時に,善と悪の問題をとらえながらどうしていくかというのを詰めていくと,被害者のもの で何を得られるかなと思ったら,魂のためには犯罪防止しかないとすごく感じております。残念ながら悔しいのです。私も未逮捕でありながら,悔しい思いをしながら,突き詰めれば犯罪防止のために息子の命はどうするか,これが私は命の代償だと思って13年間頑張ってきております。  来年1年間,捜査の問題と権限の問題,最後の闘いは残してはおりますけれども,時効の撤廃の問題に入りますけれども,時効の撤廃の中において凶悪犯罪とそういうものと法の平等をもう一度皆さんで御審議いただいて。本当にそれでよろしいのでしょうか。私は捜査の期間の問題で区別して,これが本当の人間の死の平等かなとすごく感じております。私も私利私欲を捨てて,日本のために,自分の子供のためにお金を使いながら,法の社会を詰めております。だから,いろいろな意味でほかの人の闘いとはちょっと違う気でおります。20万枚のビラを一生懸命配りながら,土下座しながら少年審判の嘆願書を集めて,少年審判を裁判にするとか,過去に全部詰めておりますけれども,いろんな意味で法は犯罪防止のためにあるのかなと。  時効の撤廃は,本来遡及と平等と存在意義と,全部私は触れると思います。それを犯してまで,被害者が果たして要求することがよろしいのでしょうか。時効の撤廃で,では更生はどうあるべきかというものを考えていただければ,時の経過とともに時効は消滅します。しかし,刑の執行により時効も消滅する。当然刑の中に時効も入ってくるわけですね。この刑罰で30年という時効の延長したおかげで重罰化になっているのも事実です。私が30年間とお願いした併合罪のために,今無期懲役の刑もかなり重罰化になっております。重罰化だけを望んでいるわけではありません。再犯をしないためにどうするかという,そういうものを考えた場合,更生も考えて議論して,その上で撤廃も議論すべきかなというのを,私,すごく感じているのです。未逮捕であるがままに,そのまま被害者が何も警察から謝罪も受けないで,捕まえられないで申し訳ありませんという,そういうものもなしに,それでいいのだろうか。一つの区切りが全く無くなる気がいたします。時効撤廃も,あるべきものは時効がないのが正解なのです。だけれども,時効の撤廃だけ論じていくと,では犯人が捕まらないから時効の撤廃を望むわけですよね。私はまず皆様にお願いしたいのは,犯人を捕まえるために命の人権の論争をしていただいて,今,命は人権より下回っています。捜査のために何が必要だろう。タブーの話ですけれども,12歳で指紋登録を,どうだろう。それも議論して,免許証と顔写真のあるものを使えるにはどうするだろう。そういう命と人権の論争をしていただいて,親の責任,賠償の少年法樹立ができたら,その中に親の賠償と責任をはっきり法の中に明示して,それが真剣に子供を育てるための土台づくりですから,そういうものを考えていただいて,犯罪を防ぐのとどう犯人を逮捕する,この犯罪防止のためにも必要ですから,その辺を皆さんで御議論をもう一度していただいて,本当に時効撤廃で凶悪犯罪か重大犯罪だけに限ってやることが本当の法の中で,法の平等を侵していないだろうか,私も被害者でありながら,それを痛感しております。  次に時効の停止の問題ですけれども,時効の停止で,私前回勉強会で出席して,いろいろ後で聞きましたら,私以外は,これから時効を迎える人たちが,全部時効の停止を求めました。私は,時効の停止は本来どうあるべきかと考えた場合,法の平等,法の遡及に触れ,法の存在意義が全部崩れると思います。これから時効を迎えるからといって,それを求めたら,では最初から法は決める必要はないだろうと,すごく私痛感しておりました。日本でたった一人私だけ,会で時効の停止は人間の社会で遺族であっても人間として私は求めるべきではないと,そう訴えてまいりました。時効の停止は見送りになって今議論中でありますけれども,できたら時効をこれから迎える停止については,遡及に触れますので,これは遺族として私は人間としても要求してはならないことだと思っております。それで皆様に御審議いただいて,時効の停止は今後どうするかというものを考えていただければ有り難いなと,そう感じております。  実は時効の停止で,栃木の足利事件の冤罪事件で,私も最高検察庁の検事とお会いしながら,要望書を出して法務省とやりまして,最高検察庁の検事にはっきり回答をしていただきました。海外以外はどこにもほかに書いてありません。刑事訴訟の中にはそれは全く書いてありませんね。刑事の海外の逃亡以外は認めない,こういう停止の問題がありまして,実は時効の停止が冤罪である限り立証できるかなと,そういう判断の下にお伺いしたのですけれども,現行では無理だろうと。冤罪という国家の誤認逮捕というそういう責任がある限り,国家の責任がある限り,真犯人を捜すという問題も実ははらんでくるわけですよね。そういうものを踏まえて,できたら判決の中で冤罪なり,犯罪者でありながら実証が難しく無罪になるケースもあります。そういう人たちに対して,では国家として真犯人を探すという法はまだ存在しておりませんので,できたら時効停止の中に含めて,こういう真犯人を探すための裁判制度の問題も,皆さんで御審議いただければ,時効の停止の意味はそこに生きてくるのかな,そう時効の停止の意味について考えております。  法の平等から,皆さんでもう少し御審議いただいて,私も要求する気持ちは分かりますけれども,もっと深く考えた場合は,亡くなった命の権利のためにはそれはならないとつくづく思いながら,感じております。いろいろな意味で,法の社会,感じることは,法の中に本当に魂があるのかなということをつくづく思うときがあります。やはり核心に触れて,本当に被害者でもこんなことを言ったらという,被害者抜きで論ずる場合は被害者にもこういう問題があるよなと,そういう問題の中で,犯罪者も被害者も犯罪防止のために命を失ったものをどうとらえて,犯罪の再犯を防ぐ,これから犯罪を未然に防ぐ,そういうものを考えた上で,魂のために法を論じていただければ有り難いなというのをすごく感じております。  今の残念ながら日本の更生の中に,裁判のいろいろな法の中に,犯罪防止と更生が明らかにまだ存在が不足しておると思います。法はもともと私から言わせると,犯罪防止のために本来存在すべきもので,残念ながら被害者も更生を願ってはいけないのだろうけれども,再犯を防ぐためにはそれも考えざるを得ないだろう,いろいろな意味で,そういうものを議論した上で,もうちょっと犯人をどうしたら逮捕していただけるか,それをまず論じていただければ有り難いなというのをすごく感じております。私もあと1年半,時効と15年間闘いますけれども,その中で時効というのが少し見えてくるかな。私もまだ時効道半ばですので,初めて15年間発生から闘って,時効というのが少し理解できるのかな,今その段階でおります。是非皆様に,法の平等と遡及と法の存在意味をもう一度考え直していただいて,重大と凶悪犯罪に限り論議するだけではなくて,命の死の平等を考えていただいて,深く御審議いただければ私も心からうれしく思いますので,簡単ではございますが,私の意見として述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。  それでは,委員の方々から,ただいまの御意見の趣旨を確認し,明らかにする,あるいは確認するという観点から,御質問等がございましたら御発言いただきます。 ● 今日はどうもありがとうございます。確認といいますか,先ほどから時効の停止のことについては,否定的というか消極的な,例外はともかく,御意見だったのですが,時効の,現在,例えば,廃止等した場合に,過去の事件にさかのぼって,現にまだ時効が完成していない事件について,遡及的に過去の事件にさかのぼって適用して時効を延長するというか,そのようなことについてはどのようなお考えですか。 ● 過去に法を決めて,法の存在意味で時効が30年と変わった。では,3か月たってその時効の前は「1か月後に決まったからおれは15年で,不公平だろう。」という,そういう問題も当然発生してきます。法として決めたからには,法に従って法を変えてまで,遡及に触れて変えることが法の存在,では最初から法を決める必要はないだろうと,すごく僕は被害者で感じております。だから遡及に触れること自体が,要求すること自体は人間の社会では僕は要求すべきではないと考えております。それを皆さんで御審議いただければ有り難いなと思います。 ● ほかの方はいかがでしょう。 ● ありがとうございます,今日のお話。「犯罪被害者家族の会」というところのメンバーの方ですが,どのくらいの遺族の方が。 ● 今メンバーは10人ぐらいで,うちの会は,精神障害者で亡くされた人とか,医者の全く不用意なお仕事で亡くなったとか,被害者で非がない人の集まりで,結構激論を交わしながら,痛いことも言いながら,その中で月1回学んでおります。 ● 10人というよりは,10家族という感じです。 ● その中に,いわゆる殺人という形で被害を受けた方もおいでになるのでしょうか。 ● 私は,犯人は触法性心身障害者でございましたけれども,不起訴になりましたが母を殺害されました。あとストーカーで殺害された被害者の方もいらっしゃいます。 ● ありがとうございます。 ● ほかの方はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは,どうも本日はお忙しい中をお運びいただき,貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。お伺いした御意見につきましては,今後の審議の参考とさせていただきたいと思います。本日は,どうもありがとうございました。 ● ありがとうございました。 〔被害者団体,退席〕 ● それでは,ここで,15分ほど休憩させていただきたいと思います。          (休     憩) ● 再開させていただきます。  引き続き,ヒアリングを続行します。  次は,「全国交通事故遺族の会」の○○さん,○○さん,○○さんのお3人から御意見を伺うことにいたします。それでは,お入りください。 〔被害者団体,席に着く〕 ● 本日は,お忙しいところをお運びいただきましてありがとうございます。この部会は,法制審議会に諮問されました「凶悪・重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方」や「現に時効が進行中の事件の取扱い」などについて審議を行うことになっておりますけれども,本日はその参考とさせていただくために,皆様方から御意見をお伺いするものでございます。  早速ですけれども,よろしくお願いいたします。 ● 「全国交通事故遺族の会」の副会長をしております○○と申します。本日はどうも,わざわざ私どもにお呼びかけいただきましてありがとうございます。  時間が非常に限られておりますので,私から会を代表して,今お手元にお届けしてあると思いますけれども,意見書がございますけれども,それを読ませていただいて,その後,この左右におりますけれども,二人の者から,特に二人とも今回私たちがメインのテーマに挙げていますひき逃げの被害者です。ひき逃げで加害者が逃げ切ってしまった,すなわち時効になってしまった人を連れてまいりましたので,その意見をお聞きいただきたいと思います。それでは,この文章を読ませていただきます。タイトル等は省きます。  全国交通事故遺族の会は,交通事故被害者の遺族だけで構成されている,純粋な自助団体です。当会の主な活動は,遺族同士の心の支え合いと,交通事故のない社会を築くための諸活動です。  交通事故をなくすためには,様々な分野での取組が必要とされています。その中で,最も効果が高いのが,処罰の適正化であることは,近年の飲酒運転厳罰化などでも証明されています。  交通事故は,道交法に定められた安全運転義務を怠った末に引き起こされる,明らかな犯罪です。しかし,その処罰は余りに軽く,厳罰を求める被害者・遺族の感情から,かけ離れています。  一般社会には,危険運転致死傷罪・自動車運転過失致死傷罪の新設や道交法の改正により,処罰の適正化が十分に図られてきたという認識があるかと思います。しかし,それは,法定刑が引き上げられただけにすぎず,実態とは隔たりがあります。  現在,交通事故の起訴率は1割程度と低く,たとえ起訴されても,そのほとんどは略式裁判による罰金刑です。そして本裁判になった場合も,多くは執行猶予付きの判決です。  すなわち実刑になる者は,ほんの一握りにすぎず,事故で人を死傷させた加害者は交通刑務所行き,という図式は画餅にすぎません。  これが交通事故を軽視する社会の風潮となり,また加害者の累犯を招く元凶になっていることは確実です。  「全国交通事故遺族の会」は実効性のある処罰の適正化を求めるとともに,今般,見直し論が持ち上がっている公訴時効について,特に「危険運転致死傷罪」と「ひき逃げ罪」は,逃げ得許すまじとの観点から,その撤廃を強く求めます。  1,危険運転致死傷罪   危険運転致死傷罪は,飲酒運転などが度重なる悪質運転の果てに,遺族の強い要望で 実現した背景があります。  しかし,同法が適用される事件の絶対数は余りに少なく,遺族の寄せる期待とは大きな溝があります。  危険運転の認定基準を見直すとともに,無免許運転や暴走族など,庶民感覚で見る危険運転行為も同法に適用されるよう,範囲を改める必要があります。  危険運転致死傷罪は,殺人罪などに匹敵する悪質かつ重大な犯罪です。すべての加害者に罪を清算させるためにも,公訴時効を撤廃してください。  2,ひき逃げ  そもそも交通事故が「過失」とされ,その罪が軽いのは,検挙率の高さが前提になっています。  すなわち,加害者が逃げることを考慮していない点が,一般刑事犯罪との最大の相違点です。  忘れてならないのは,この前提を覆す,「ひき逃げ」という犯罪です。交通事故全体から見るとひき逃げは少数ですが,背景に飲酒運転隠しがあったり,引きずり逃走など陰惨な事件が後を絶たず,社会にも不安をまき散らしています。  さらに近年,ひき逃げが増加傾向にあるとともに,犯人の検挙率も年々低下しているという,深刻な状況もあります。  ひき逃げとは,事故後の被害者救護や警察に対する通報義務を怠った上,現場を離脱する行為です。被害者は,すぐに病院に運ばれていれば,軽傷で済んだかもしれないものが,回復不能の重傷となったり,最悪の場合は死に至ることもあります。  仮に,事故原因は不可抗力であったとしても,負傷した被害者を路上に放置して逃げる行為は,明らかに故意犯として,重罪に値します。  その罪は殺人や放火などにも等しく,もしも被害者が死ぬようなことにでもなれば,これは殺人罪にほかなりません。走る凶器である自動車を運転する運転者にとって,救護は最低限の義務です。  残された遺族は,加害者が分からないため,怒りの矛先の向け場がありません。更には損害賠償交渉においても自賠責保険が容易に受け取れないことや,相手側の任意保険がないことで,大きな不利益を被っています。  ひき逃げには,飲酒・薬物使用など違法かつ悪質運転隠しが,その裏にあると考えられています。こうした悪質運転の挙げ句起こした事故には,本来危険運転致死傷罪が適用され,重罰が下されるのが当然です。  しかし,いったん逃げてしまえば,仮に,後日検挙されても,飲酒・薬物・過労などの因果関係を立証することが難しく,危険運転致死傷罪を適用できなくなります。  正に「逃げ得」となるわけです。  今般の時効制度の見直しには,卑劣な「逃げ得」を許さないという,世論に後押しされた動機があると思います。すなわち,ひき逃げこそ,時効問題から絶対に外してはならない悪質犯罪だと考えます。  時効制度を維持する理由に「時間の経過で証拠が散逸し,公正な裁判ができない」という考え方があります。しかし,日進月歩の科学は,ごく微量の試料からも犯人を突き止められる可能性を秘めています。  私たちは,今年,トヨタ自動車株主総会に株主として出席し,経営者に対して,ひき逃げ犯の検挙につながる,自動車のアイデンティティを,衝突時に強制落下させる仕組みを取り付けるよう求めました。将来は時間の経過が,時効の理由にはならなくなるでしょう。  危険運転致死傷罪と,ひき逃げの時効を撤廃して,安心・安全な交通社会を実現させるよう,求めてやみません。  以上であります。ありがとうございました。それではお願いします。 ● 水戸から参りました○○と申します。私事で大変恐縮ですが,今日は世間で言う命日に当たりまして,精神的に不安定な状態でありますので,原稿を読ませていただくことをお許しください。また,皆様にお願いがあります。お仕事ではなく,私の体験談をどうかお仕事としてではなく,一人の人間として自分の愛する人に置きかえてお聞きいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。  私は,10歳の娘をひき逃げにより亡くしました。7年前の今日,当時5年生と2年生の姉妹が,国道50号線沿いにある小学校に登校中,青信号の横断歩道を渡っているところ,左折してきた10トントラックでのバンパーで5年生の長女がはねられました。刑事記録によりますと,ドライバーはすぐに「さっきの子供だ。」と気が付きましたが,「自分の人生が終わってしまう,大きい車だから気が付かなかったことにしよう。」と考え,ブレーキを踏まずにアクセルを踏んで,路上にうつぶせに倒れている娘の体をランドセルごと前輪で乗り上げると,車体は大きく傾き,更に後輪でも乗り上げ,つま先から頭まで全身を10トントラックで踏みつぶし,逃走しました。  厚さ19センチものランドセルを背負った娘を乗り上げられるのにどれだけアクセルを踏み込んだのか,考えただけで気が狂いそうになります。国道50号線は,通勤通学の時間帯で混雑していましたので,加害者は気が付かなかったふりをするためにわざとスピードを40キロに抑え逃走しました。後続の車両が追跡してくださり,やっとのことで逃走を断念し,現場に戻されました。  無事だった2年生の娘が,私を呼びに走って帰ってきました。家を飛び出すと5分とかからない交差点には,さっき「行ってきます。」と元気に学校に行ったはずの娘が,変わり果てた無残な姿となっていました。触れることは許されず,娘の名を幾ら叫んでも,反応は全くありませんでした。変わり果てた姿となった娘の傍らで,加害者から声をかけられました。私は冷静に,「うちの娘は青信号で渡ったんですよね。」と聞くと,何と薄笑いを浮かべ「おれも青だったよ。」と答え,更にふてぶてしく,「子供がいるのも分かっていた。」と続け,自分に非はなく,まるで正当化するかのような態度に,血の通った同じ人間とは思えませんでした。  民事訴訟を起こすために刑事記録を読むと,加害者の供述調書にはこう書いてありました。「後輪がタンと音を立てタイヤが路面に戻ると,やっつけちゃった,もう死んじゃったんだろうなと思った。」そして,逃げているときの心境を,「漫画みたいな話ですが」と続けられていました。最愛の娘を虫けら以下に扱われた悔しさを表現できる言葉などありません。公判では,追跡されなければそのまま逃げたとまで供述した加害者は,私たちから見れば通り魔殺人鬼と何ら変わりありません。もし逃げ切っていたなら,現在では既に時効になっていたのでしょう。そのような犯人に時効があってはならないと,強く感じてなりません。  悪夢の日から1年後,すべてを目の当たりにした娘がやっとそのときのことを話しました。「お姉ちゃんはちゃんと左右を確認して渡ったんだよ。そして,ランドセルをタイヤで持っていかれるとき,すごく苦しそうだったんだよ。そのときの様子がどうしても頭から離れないんだ。」と,泣きじゃくりました。娘は逃げるために殺されたのです。冷たいアスファルトの上で息を引き取った娘の無念さを,生きている者にははかり知ることなどできません。  ひき逃げが危険運転致死傷罪に含まれていたなら,人間として最低限のモラルを持ったドライバーであったなら,娘は高校3年生になっていました。娘がいなくなって7年になりましたが,家族はいまだに悪い夢を見ているようで,現実を受け入れることなどできません。どうかひき逃げに対して,飲酒の有無にかかわらず,単なる交通事故という固定観念を捨てて,ほかの凶悪犯罪と同等の扱いをしていただき,断固として公訴時効の撤廃をお願いいたします。ありがとうございました。 ● 続けて申し上げます。私は千葉市から参りました○○と申します。  被害者は私の母でございます。平成11年9月に,私の母は3台の車にひかれました。そのうち1番目の車と3番目の車が逃げました。3日後に3台目の車が自首してきました。1台目の車は,警察の捜査にもかかわらず見つかりませんでした。私たちは,この最初の車,これを見つけるためにありとあらゆる手を打って努力しました。警察のわずかな手掛かり,その情報を聞いて,そしてその車,色は何なのか,車種は何なのか,全く目撃者がいなかったために分かりませんが,わずかな目撃者とは言えないんですが,多分今から考えると不確実な情報だったと思いますが,その情報にすがる気持ちで私たちは必死になって,見えないひき逃げ犯を追いました。  その後,その当時は時効が5年でしたから,5年たって,遂に時効を迎えることになりました。そのときの無念の気持ちは,私は一生忘れないと思います。私は時効になった遺族として心情を申し上げますと,私たちはこうして母の死,その死に方について一生悔しい思いをして,こうやって暮らさなければなりません。死ぬまでこの気持ちは続くと思います。しかし,時効になって犯人は,もう何事もなく平和に暮らしていると思うと,悔しくてなりません。こんな不公平が世の中にあっていいのでしょうか。なぜ私たちが一生苦しまなければならないのでしょうか。犯人はもしここで何かのことで捕まっても,もう罪に問えないんでしょうか。こんなことが世の中にあっていいんでしょうか。  そして,どうして捕まらなかった,その原因について,それも悔しい一つなんですが,やはり初動捜査についての警察の度重なるミスがあった。そのミスの中の一つでもミスがなかったのであれば捕まったであろう,そういう思いもいたします。私はひき逃げというものは必ず捕まると思って信じておりましたが,こうなってみると,警察に対する不信感もぬぐい切れません。いろいろなもやもやがずっとあって,そしてこれからも引きずりながら暮らしていくということについて,やはり何としても悔しい。一番肝心な1台目の車について,犯人がもしかするとそのひき逃げ現場に戻ってきて,あ,何もなかったんだな,おれは無事だったんだな,そういう思いでひき逃げ現場を通っていると思うと,悔しさがこみ上げてきてなりません。  是非凶悪なこのひき逃げ,最初に○○が申しましたとおり,ぶつかった瞬間までは百歩譲って事故であったと思います。しかしその後,ぶつかった後逃げるという行為は,明らかに故意です。事故ではありません。事件です。つまり,救護義務違反というのは,単なる軽いけがをして,そしてそれを放っておいたというのと訳が違います。この事件をして5年で無罪放免,こんなことはやめてもらいたい。今は7年ですかね。殺人罪と比べるとこんなに大きな差があるということについても,全く納得できません。申し訳ございません。非常に感情に走って失礼なことがあったかも分かりません。是非公訴時効撤廃ということを強く求めます。ありがとうございました。以上です。 ● どうもありがとうございました。それでは,ただいまいただきました御意見の趣旨を確認する,あるいは明らかにするという観点から,御質問等ございましたら,御発言願います。どなたからでもどうぞ。 ● どうも今日はありがとうございます。御意見は大変よく分かるところなのですが,遡及といいますか,現に時効が間もなく,もう少ししたら時効になりそうな事件で,今法律を改正してその過去の事件にも遡及するかどうか,それについてはどのようにお考えなのでしょうか。 ● 答えにならないかも分かりませんけれども,交通事故というのはやはり今までの法務省の見解とかいろいろ聞いてみますと,事故だからということで非常に軽く見られている。私たちは一つ一つの事例についてどうのこうのというよりも,交通事故全般が軽く見られている結果が,やはりこのひき逃げというものに対する甘さみたいなものだと考えています。確かに過去のものと現在のものをどう考えるかみたいなところはあるのですけれども,私たちは正直言って昔のことについてを今から問うつもりとか,そういったことはないです。○○も○○もそれを言っているわけではなくて,今後の問題として,今の不条理というか,交通事故が軽く見られている社会というものを,当審議会を通じて是非前向きな考え方に変えていっていただきたいというふうな気持ちでおります。 ● よろしいですか。ほかの方はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは,本日はお忙しい中お運びいただき,特に遠路はるばる来ていただきまして本当にありがとうございました。本日いただきました御意見につきましては,今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。 〔被害者団体,退席〕 ● 続きまして,「TAV(交通死被害者の会)」の○○さん,○○さんのお二方から御意見を伺うことにいたしたいと思います。 〔被害者団体,席に着く〕 ● 本日はお忙しい中お運びいただきましてありがとうございます。この部会は法制審議会に諮問されております「凶悪・重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方 」や「現に時効が進行中の事件の取扱い」などについて審議を行うことになっておりますけれども,本日はその審議の参考とさせていただくために,皆様方から御意見をお伺いするものであります。  早速ですが,よろしくお願いいたします。 ● 「TAV(交通死被害者の会)」事務局の○○と申します。それと,会員の○○でございます。  今回,凶悪重大犯罪の公訴時効の在り方についての法制審議会刑事法部会での議論に向けて,私たち交通事件被害者からの意見を聴取していただくに当たり,まず「TAV(交通死被害者の会)」では,自動車運転により人生を奪われる被害者がゼロになる社会の実現を目指して活動していることを,冒頭に御理解いただきたいと思います。被害者が事件の真相を知ることなく,また法を犯して人を死傷させた者が正当に処罰されることがなければ,被害者が人間らしい生活を取り戻すことはできません。犯人が見つからない事件において,死亡等重大交通事件を引き起こした運転手が適正な処罰を受けることもなく公訴時効を迎えることは,交通事故被害者にとっては,全く受け入れがたいことでございます。公訴時効が成立すれば,それ以降,その運転者が自ら悔い反省して,再び道路上で他者に危険を及ぼすことはないという保証は全くございません。それどころか,時効の後も,公訴されることがなかった期間同様,平気で自動車運転を継続し,再び運転中に法を犯して人を死傷させる可能性は非常に大でございます。人の死傷という結果を引き起こした重大事件の犯人を,10年にも満たない短期間で社会に放置するということは,犯罪を助長していると言ってもよい行為ではないでしょうか。  死亡等重大交通事件被害者の処罰感情が,時の経過とともに希薄化することなどはあり得ません。時効により,死亡等重大交通事件を引き起こした運転手が,適正な処罰を受ける可能性が消減し,すべての一般市民が危険にさらされる状態を放置するような法制は,是非とも改正すべき事項であり,国民の命・健康を守るべき国の政策としても早期に解決していただきたく御検討をお願いいたします。  以下具体的に,○○の方から意見を述べさせていただきます。 ● まず,公訴時効制度の改正についてなのですけれども,「当面の検討結果の取りまとめ」の資料を拝見させていただき,公訴時効廃止の場合,対象が殺人など人の死亡を伴う一定の犯罪とされておりますが,私たちは,重度後遺障害の家族を含む交通事件被害者遺族の会であり,冒頭に述べた理由により,被疑者が特定されない事件及び被疑者の所在が不明となっている自動車運転により人を死傷させた事件について,公訴時効の廃止を求めております。  遡及適用についてですが,現在時効が進行中の事件について遡及適用を求めるか否かについては,学説上異なる見解が存在しており,十分な検討を要する問題であるとのことですが,昭和25年4月26日の最高裁の判決において,犯罪実行時の刑事訴訟法が,事後に被告人にとって不利益に変更された場合について「……たといそれが行為時の手続法よりも多少被告人に不利益であるとしても,憲法39条にいわゆる『何人も,実行のときに適法であった行為……については,刑事上の責任を問われない』との法則の趣旨を類推すべき場合と認むべきではない。」とされていることや,また海外の判例では,ドイツ連邦憲法裁判所においても「時効は犯人保護が目的ではなく,犯人も『何年たったら時効』と信じて殺害するわけではない。」という判断が示されているということも,毎日新聞の報道にありました。そのような解釈の趣旨からも,今回の検討・議論において,刑事訴訟法の遡及的変更は,憲法上の根拠を持つとされる罪刑法定主義に反するものではないとの判断がなされるべきだと考えております。  時効成立により犯人が,その事件について裁判を受けることのない免罪符を与えられた一生を送る一方で,被害者だけがやり場のない怒りや無力感に生涯苦しみ続けるのは非常に理不尽であります。時代が変わり,時効が見直されるのであれば,被害者が少しでも人間らしい気持ちで生きていくために遡及適用が不可欠であるということも時代の要請だと確信しております。遡及適用が実現されることを強く望みます。  次に,公訴時効にかかわる交通事件の特殊性と実情について,お話しさせていただきたいと思います。  交通事件の「時効」は,前回の時効期間見直しにおいても,10年未満の刑期の犯罪に関しては,5年という期間が据え置かれたままであり,多くの交通犯罪被害者遺族を「たたきのめす」ような制度となってしまっています。  当会だけを見ても,明らかに被害者である家族が「加害者」として処理されているケースもあります。また,検察審査会の不起訴不当議決や明らかな証拠があるにもかかわらず,時効を迎えてしまい,涙を飲む悲劇というのも相当数に及んでおります。  具体的には,まず,不十分な捜査として,交通事故は100万件近くあり,捜査要員の不足は明らかです。そして,初動捜査における証拠物の確保,目撃者の確保,科学捜査の徹底などあらゆる面で,交通事件の捜査が不十分であることは,今まで公訴されることなく時効を迎え,無念の涙を飲んだ被害者遺族が身をもって知っております。不十分な捜査により不起訴とされた事案に対し,納得できない遺族等がいたし方なく自ら目撃者捜し等の捜査をし,自ら鑑定依頼などをしている間に5年がたってしまい,時効を迎えたという事例も相当数存在しております。  次に,情報開示の遅れなのですけれども,被害者遺族等が不起訴の通知を受け取るまでに,既にかなりの期間が経過している事例が多く,そのような事例ほど,上記の不十分な捜査が見られる傾向があります。また公訴となった場合でも,捜査情報は第1回公判後にしか謄写請求ができず,諸外国と比較しても捜査情報の開示時期が余りにも遅い実態があります。  次に,時効成立による検察庁への信頼の失墜と検察審査会の拘束力不足なのですけれども,私たちの会員の中にも「不起訴不当・再捜査・不起訴・再び不起訴不当・再捜査」,これを繰り返している間に時効が成立してしまったという事例が複数あります。このような形で時効が成立してしまった事案においては,検察官が時間を費やし丁寧な捜査に臨んだ結果であっても,被害者の心情としては「検察庁に時効待ちをされた」というように感じるのであり,検察庁に対する信頼の問題としても,このような形で時効が成立してしまうということが無くなるような制度が必要と考えます。  具体的には,公訴時効を延長する。次に,再捜査に着手した場合,及び新たな証拠が提出された場合には,時効をゼロにリセットしたり,停止するというような制度を検討していただく。また,検察審査会の不起訴不当議決1回で公訴を義務付けるなどというような制度の検討を求めております。  要望書に書かせていただいた内容は以上です。 ● それにちょっと補足をさせていただきます。2007年に自動車運転過失致死傷罪が新設されまして,それまでの法定刑上限5年が7年に引き上げられ,恐らくその効果があって昨年は24時間内死者数が5,155人にまで減少した。私たちとしては,厳罰化の効果というのは非常に顕著であると受け止めております。ただ,人が死んでおる事件であるにもかかわらず,依然としてその法定刑の上限は7年という非常に短いものでありまして,ほかの人の生き死ににかかわる事件と比べましても,交通犯罪の刑罰というのは少し度が外れて軽過ぎるというのが我々の思いですし,また交通犯罪が無くならないことの大きな一つの理由であると思っております。  かつ,先ほど要望書の意見書の中にも申し述べておりますように,余りにも多い犯罪件数に比べまして,警察官及び検察官の数が余りにも少ない。世界的に見ても,先進諸国の中でも非常に少ない。そのことから,十分な交通犯罪の捜査がなされていないというのが,残念ながら実態でございます。いろいろな法律の難しい,私たちにはなかなか難しいことの中におきまして,捜査がちゃんとなされている,適正になされているということが前提で考えられているのだとは思いますが,残念ながら交通犯罪においてはそれがなされていないということが前提にある。そこで私たち交通犯罪被害者遺族にとっては,この公訴時効というものの中で,原則,私たちも撤廃,人が死んでいるのにそれに時効があるのはおかしいという意見を申し述べましたが,実際にこれだけの件数の事件が起こっている,そしてその捜査要員が足りないという現実を見ましたときに,これを撤廃していただくことは非常に困難なことであることも認識しております。  そこで私たちは,この余りにも短い5年という時効を,できれば15年,少なくとも10年以上に延長をしていただきたい。このことを強く本日は要望をさせていただきます。申し述べましたように,今現在5年の公訴時効でございますが,この5年間,捜査機関は捜査を続けるわけではございません。事件発生からごくごくわずかの間だけの捜査をして,捜査は終了,検察に送致して,検察官は現場にも行かずただ机の上で処分を決定する。そして,なおかつその情報は,開示範囲が広がったとはいえ,特に不起訴事案に関しては依然として私たちがなかなか情報を得ることができない。その中で,私たちは,家族を失った私たちは,自らの手で捜査を開始せざるを得ないというのが,ほかの犯罪と全く違う事情を持った交通犯罪の実態です。その中で,余りにも短い5年という時効の壁がすぐにやってまいります。  今申し述べましたように,ほとんど捜査機関は捜査をしてもらえませんので,これを5年を10年あるいは15年に延長したところで,捜査にかかる人件費,捜査費用などがそれだけ増えるということでは決してないと認識しております。私たち遺族が真実を求めて捜査ができる期間が長くなるだけでございます。私たちは,せめてそれくらいは認めていただきたいという思いで,交通事件に関する公訴時効の延長をお願いいたします。私からは以上です。 ● 先ほどの意見書の中の,特に私が申し述べたいのは,最後のところなのですけれども,この不起訴不当と再捜査,再び不起訴不当・再捜査を繰り返している間に5年の時効が成立してしまうという,このような事例を是非なくしていただきたいというのが,私たちの会の強い要望なのですけれども,この検察庁に時効待ちをされたと感じるというのは,本当に遺族の声を聞いていただかないと,検察官の方にすれば,ここにも書いていますが,丁寧に時間をかけて再捜査をしていたら5年が来てしまったということだと思うのですけれども,先ほどから述べておりますように,最初に不起訴不当の御連絡をいただくまでにかなり時間を要しているような事例もありまして,そこから捜査という言葉を○○の方から述べておりますが,捜査というのは例えば現場に立って何日も何日もビラを配って目撃者を捜すというような,そのような形での捜査というのは,死亡事故であっても警察の方からはしていただくような現状がありませんので,実際には遺族が現場に立って見付かるまで毎日毎日立つ,そういうことをして,実際に目撃者の方が名乗り出てくれたという事例もあります。そういうことをして,もう一度検察官の方にこういう目撃者が出ましたというような話を持っていって,そこから再捜査が始まり,目撃者の方に聴取をしていただくというような,そういう時間をかけていて5年がたってしまう,そういうケースがあるということをどうか御理解いただきまして,実際上5年では短過ぎるという御判断に至っていただければと思っております。よろしくお願いいたします。 ● どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。 ● それでは,ただいま伺いました御意見の御趣旨を確認し,あるいは明らかにするという意味で,御質問等ございましたら,御発言いただければと思います。  では,私から。1点確認させていただきますと,御提出くださった文書の最初の方で時効の撤廃を求めるという趣旨のことを書かれておりますが,最後のところでは,公訴時効期間の延長を主張されておられるわけですが,この御趣旨は,撤廃が望ましいのだけれども,現実的に考えて,まずせめて公訴時効期間を延長してほしいと,そういう御趣旨でしょうか。 ● はい。ただ,ひき逃げ事案がございます。交通犯罪の場合は,大部分が公道で起こりますから,犯人は明らかになっているのがほとんどでございますけれども,ひき逃げ事案に関しては,これは正に殺人でありまして,これに関してはもう殺人罪に準じて断固公訴時効は撤廃していただきたいとは考えております。 ● 分かりました。ほかの委員・幹事の方々,いかがでしょうか。 ● 1点だけよろしいですか。お話の途中で,そもそも交通事故に対する法定刑の上限,これが軽過ぎるという話がありまして,どのくらいというのは難しいと思うのですが,要望としてはどのようなことを考えておられるのかというのをお聞きしたいのですが。 ● 2007年の自動車運転過失致死傷罪のときの法制審議会に,当時TAVの協力弁護士でありました松本誠弁護士が委員として出席しておりました。残念ながら,列車事故で亡くなってしまいましたけれども,私はその随行員としてその法制審議会の場の傍聴もさせていただいたのですけれども,「法律というのは3年,5年,7年,10年というような形で段階的にあるのだ。」というようなお話も確か記憶しております。私たちがその当時要望いたしました期間が10年,そして私たちとは別にその当時の2006年でしたか,9月21日でしたか,21人死傷の,川口の園児21人死傷事故の御遺族たちは15年ということをそのときに要望しておられました。私どもとしては,最低10年以上の刑ですが,さらにもう一つ難しいこととは存じますが,理想的なことを申し上げますと,危険運転致死傷罪が現在20年となっております。この危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪,故意の罪と過失の罪をくっつけるというのは専門的には非常に困難なことなのかもしれませんが,私たちとしては交通犯罪の特殊性をかんがみると,交通犯罪というものを適正に裁くためには,この二つをもうくっつけてしまって,上限20年という中ですべてを裁くことができないのかということを,素人の意見ではございますが考えております。そういったところを御考慮いただければと思います。 ● どうもありがとうございました。ほかの方,よろしいでしょうか。  それでは,本日はどうもお忙しい中,貴重な意見を承りましてありがとうございます。 ● どうもありがとうございました。 ● いただいた御意見は,今後の審議の参考にさせていただきます。どうもありがとうございました。 〔被害者団体,退席〕 ● 最後になりますけれども,「交通事故被害者遺族の声を届ける会」の○○さん,○○さん,○○さんのお三方から御意見を伺うことといたします。それではお願いします。 〔被害者団体,席に着く〕 ● 本日はお忙しい中,お運びいただきましてありがとうございます。この部会は,法制審議会に諮問がなされている「凶悪重大犯罪の公訴時効見直しの具体的在り方」や「現に時効が進行中の事件の取扱い」とういった問題について審議を行うことになっておりますけれども,本日はその審議の参考とさせていただくために,皆様方から御意見を伺うものです。早速ですけれども,よろしくお願いいたしたいと思います。 ● 今回,意見を述べさせていただくことに感謝いたします。「交通事故被害者遺族の声を届ける会」を代表しています○○です。よろしくお願いします。  今回は,交通事故で,横にいますけれども息子さんを亡くされて,またこの時効問題で実際に非常に苦労された○○の方から,意見を述べさせていただきますので,よろしくお願いいたします。 ● ただいま紹介を受けました○○と申します。こういうところでするのは余り慣れておりませんので,ちょっとお聞き苦しいところがあれば御勘弁願いたいと思います。  本会は,会の名前に示すとおり交通事故被害者遺族で構成されておりまして,届きがたい遺族の生の声を国等に届け,国家レベルの対応を求める団体でありますので,交通事故被害者遺族として体験をした経験をもとに,交通事犯に限定して意見を述べさせていただきたいと思います。  死亡事故等の重大犯罪につきましては,起訴されるのは全体の約1割で,そのうち9割は不起訴となっております。そして,起訴されても,その9割は略式命令の罰金刑で終わり,公判請求され正式裁判になるのは1割と,本当に少なくなっております。  その原因としては,私なりに考えてみると,過失であるとして法定刑が他の犯罪と比較して非常に低いため,きちんとした捜査段階,初動捜査の段階が行われていないがために,加害者を訴追できるだけの証拠が確保されていないこと,また,証拠が確保されていないため,処分が出されるのが公訴時効間際にその不起訴処分が出されて,遺族が十分な調査をもとに事故の認定が違っているというようなことを言っても,公訴時効をもう間際に控えているということで実質上捜査が止められているような状況でございます。  それと,あと検察審査会に不起訴不当の申立てをして不起訴不当の決議がされても,再度不起訴処分を下して,検察審査会の機能がしてないこと等が考えられます。当会の,私を含めてほかの会員にもなのですけれども,当会の会員の事案の中でも,真相究明途上であったにもかかわらず,公訴時効があったがために,実質上の捜査が打ち切られたものや,検察審査会で不起訴不当の決議がされても起訴されなかったものが実例としてあります。ずさんな捜査が原因で事案処理に時間がかかったり,ずさんな捜査を隠ぺいせんがために公訴時効間際に処分を出しているという実態があります。公訴時効を迎えた結果として刑事訴追がされてない現状がありますので,被害者の日本国憲法で保障される裁判を受ける権利とか,知る権利が侵害されております。そして,加害者の人権のみが重視されているという実態がございます。  交通事故といえばすぐ過失といった形で,短絡した受け止め方がされておりますが,その大半においてはずさんな捜査が行われ,公訴時効が短いため,これに対する補充捜査がされなかったり,捜査が打ち切られ加害者を起訴することができないケースが多いことや,また公訴時効間際に不起訴処分が出されて,検察審査会で不起訴不当の決議がされても不起訴が繰り返されてきたことを考えれば,公訴時効の廃止が第一である。それがかなわないものであるならば,少なくとも公訴時効の期間を10年以上に延長していただく必要があるのではないかと考えております。  交通事故の公訴時効の問題を考えるに当たっては,何にしても,現状の交通捜査がずさんであるということが大きな障害になっている。そういったことから,交通事故の捜査の抜本的な改善が図られない限りは,結局同じ人の命が奪われているという犯罪であっても,交通事犯においては他の犯罪と比較して,先ほど言ったように軽視されておりますので,仮に公訴時効期間の延長をしたとしてもその効果は薄いと考えられますので,十分な検討をしていただいて,被害者並びに遺族の人権が回復されるような処理をしていただければ有り難いなと思います。ちょっとあれですが,そういうことで私の意見ということで。 ● どうもありがとうございました。ただいまの補足がございましたらどうぞ。 ● 意見書の中にはもちろん全部書いてありますので,このとおりだと思います。やはり廃止というのを求める意見書となっているのは,死亡事故,重大事故に関してはやはり交通事故といえども「犯罪」である,一般犯罪と同じではないかという,実際に交通事故の死亡事故を,実際に経験した者から見ると,何ら一般犯罪とは変らないということを身をもって経験しました。これはほとんどの方がそうだと思います。そういう観点から見て,現実には時効5年であるということは重々分かっておりますけれども,交通犯罪であるということを身をもって経験しました者から見ましたら,やはり廃止と言わざるを得ないと思います。でも現実には,不起訴,ここにいらっしゃる○○さんもそうですけれども,不起訴という形で,5年ではとても闘い切れない方が現実にたくさんいらっしゃいます。そういう方のことを考えると,この意見書の中にも書いてありますけれども,少なくとも10年は必要だということで私たちは希望しています。実際問題そういう方がたくさんおられるということも知っていただきたいと思います。 ● どうもありがとうございました。以上でよろしいでしょうか。 ● はい。 ● それでは,ただいまいただきました御意見の御趣旨を確認し,あるいは明らかにするという観点から,御質問等ございましたら,どなたからでも。 ● 今日はどうもありがとうございます。今,御趣旨はよく分かったのですけれども,とりわけ捜査ですね,交通捜査が非常に不十分であるということが御指摘されたと思うのですけれども,この交通捜査の在り方の改善,改革と今回の時効の問題,これは一緒に同時になされるべきであるというお考えだとお聞きしてよろしいのですか。 ● と考えております。そうじゃないと,これを切り離しては,捜査自体が改善されない限りは,幾ら期間を延ばしても,結局きちっと捜査されないために訴追できないわけですから,そういったものがあるので,これはやはり一緒に考えていただきたい。併せて考えていただかないと,交通事故に関しては,これは処理はできないのではないかというようなことで,あえてそういう書き方をさせていただきました。 ● それについて言わせていただいてよろしいでしょうか。捜査ということに関しては,私も経験して,本当に思いましたけれども,これは本当に適切かどうか分かりませんけれども,交通事故に関して捜査していただきましたけれども,実際に警察の捜査は必要だったのかなと思いました。私のところは死亡事故で,スピードも出していた,それから前方不注意であったということも分かったにもかかわらず,略式50万円,罰金でした。   それに対して,何も言えない被害者は私たちでしたけれども,警察での捜査をしていただいても,それを覆すような捜査,調査というのは全くできていないということを初めて知りました。そのときに,交通事故に関して警察は要らないのではないか,無駄な税金を使っているのではないかと思いました。事故が起きたときには,民間でやっている専門の解析する方がいらっしゃいますけれども,交通事故が起きたときにそういう方に頼む,国の方からそういう方を頼んでもらうとか,常時交通事故の警察がどのぐらいの数かちょっと分かりませんけれども,たくさんいらっしゃると思いますけれども,果たして,そういうのが必要なのかということを本当に感じました。実際に警察の捜査というものに対して,実は重大な事故ではなくちょっとした事故,ぶつかった事故,ちょっと車同士がぶつかったとか,そういうような事故のための警察なのかなということを実感いたしました。 ● 本当は,具体的な説明は,どこがどうなのだ,捜査上問題があるのだというのは,これはこの場ではあれではないので,できれば,私はこれは是非機会が与えていただけるものであるならば,どういう状態で公訴時効によって捜査が中断されたのか,状態のあれとか説明できれば,機会があればですね,是非訴えたいと考えております。その辺を訴えない限りは,何あいつが言っているのだというような形でどうも聞きとめられそうな感じで,え,こんなにひどいのかと。   ちょっと脱線してしまいますけれども,今,政権が代わりまして,事業の見直しとかやっておられますけれども,かなり中に隠れた部分が露呈してきている部分もあります。そういったことで,別に,私は,警察と対峙するつもりはございません。ただ,改善していただかない限りは,絶対,時効を延ばしてもある部分では意味のないことになってしまいますので,これは是非,当会の会員の私以外の者についても非常に捜査の関係で不利益を被っている方がおりますので,是非機会があれば御説明をする機会を与えていただければ,非常に有り難いなと私は思っております。以上です。 ● ほかの方,御質問等ございますか。よろしいですか。  それでは,本日は貴重な御意見をいただき,ありがとうございました。今日いただいた御意見は,今後の審議の参考にさせていただきます。御足労いただいき,誠にありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。 ● よろしくお願いします。 〔被害者団体,退席〕 ● 本日御出席いただいた団体の方々からのヒアリングは以上でございます。  次に,冒頭申し上げましたとおり,「地下鉄サリン事件被害者の会」からいただいております意見書を事務局から紹介していただきます。 ● それでは,「地下鉄サリン事件被害者の会」からいただいております意見書を読み上げさせていただきます。 〔『平成21年3月31日付「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について~当面の検討結果の取りまとめ~」についての意見』読み上げ〕 ● ありがとうございました。  被害者団体の方々からの御意見は以上のとおりでございます。本日伺った御意見も参考とさせていただきながら,今後の議論を続けていきたいと思います。   次回の審議の予定についてですけれども,特に御意見がなければ,第1回に配布させていただいた資料10の論点ペーパーに従って,引き続き議論を続けていきたいと考えておりますけれども,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは,特に御異論もないようですので,そのようにさせていただきたいと思います。  次回の部会の日時,場所について,事務当局の方から説明をお願いしたいと思います。 ● 次回の部会は,来月12月9日(水)の午後1時30分~午後5時30分まで,検察ゾーン17階の東京高等検察庁第2会議室で行うこととなっております。 ● どうもありがとうございます。来月12月9日(水)の午後1時30分~午後5時30分まで,検察ゾーン17階の東京高検第2会議室ということでございますので,お間違えのないよう,よろしくお願いします。 本日はありがとうございました。長時間御苦労さまでした。                                      -了-