法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第12回会議 議事録 第1 日 時  平成21年12月18日(金)  自 午後1時32分                         至 午後5時47分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)               議 事 ○伊藤部会長 予定の時刻になりましたので,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第12回会議を開会いたします。御多忙のところを御出席いただきましてありがとうございます。      (委員の異動紹介につき省略) ○伊藤部会長 それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   前回は部会資料9まで終わりましたので,本日は部会資料10の審議を行いたいと存じます。   まず,事務当局から,「第22 審判」についての説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 それでは,御説明いたします。   第22の「1 審判の方式」では,審判の方式について,現行家事審判規則第16条と同様の規律とすることを提案しております。   「2 審判の告知」では,審判は,審判を受ける者に告知しなければならないものとすることを提案しております。   また,手続の主体として関与した者には,審判の結果を知らせるべきであるとの考え方に基づき,申立人,相手方及び参加人が審判を受ける者でなかったとしても,これらの者に対して審判を告知しなければならないものとすることを提案しております。   「3 審判の効力発生時期」では,審判の効力発生時期について,現行家事審判法第13条の規律を維持することを提案しております。   「4 一部審判」では,家事審判手続において,一部審判をすることができるものとすることを提案しております。本文①は,事件が併合して申し立てられた場合を想定しており,本文②は,家庭裁判所が手続の併合を命じた場合を想定しております。   「5 中間審判」では,家事審判手続において,中間審判をすることができるものとすることを提案しております。   「6 更正審判」では,家事審判手続において更正審判ができるものとすること及び更正審判に対する不服申立てについて提案しております。   「7 裁判の脱漏」では,民事訴訟手続における裁判の脱漏と同様の規律を家事審判手続に設けるものとすることを提案しております。   「8 審判の効力」では,現行家事審判法第15条の規律を維持するものとすることを提案しております。   「9 戸籍の記載等の嘱託」では,現行家事審判法第15条の2と同様に,一定の審判が効力を生じ又は効力を失った場合には,裁判所書記官は,戸籍の記載又は後見登記等に関する法律に定める登記を嘱託しなければならないものとすることを提案しております。   なお,どのような審判について戸籍の記載等の嘱託をするものとするかについてはなお検討することといたしております。   また,審判前の保全処分がされた場合における戸籍の記載等の嘱託についても別途検討することとしております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは,順次御審議をお願いしたいと存じます。   まず,「第22 審判」の「1 審判の方式」に関しまして,ここに掲げてございますような内容を今後の当部会の審議の基礎とすることに関しては何か御質問,御意見等ございますか。―格別の御発言はございませんか。 ○山田幹事 1点確認なのですけれども,1の「審判の方式」で,理由を付することを要する審判と要しない審判に関して,異議を申し立てることができる審判については,理由を付することを要するという仕分けになると理解してよろしいでしょうか。 ○波多野関係官 山田幹事御指摘の点は検討しなければいけないと思っておりますが,その点は調停手続に関する審議の際に検討させていただきたいと考えております。 ○山田幹事 了解しました。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。   特に御発言ございませんでしたら,先ほどの山田幹事の御発言の趣旨は別途検討させていただくということで,この内容に関して御了解が得られたという取扱いにさせていただこうかと存じます。   それでは,次に,「審判の告知」でございます。これも家事審判手続における手続保障という点から大変重要な事項でございますけれども,先ほど説明があったような内容に関して何か御質問,御意見等ございますか。 ○増田幹事 異論というわけではないのですが,告知について教えていただきたいのです。後の各論のところで,被後見人となるべき者とか,子ども,要するに未成年者に対する通知ということが問題になってくるのですけれども,告知というのは,受ける者の一定程度の能力を前提とするものかどうか質問したいのですが。 ○波多野関係官 増田幹事からの御質問につきましては,最終的には整理をさせていただきたいと思っておりますが,差し当たり告知については審判上の効力が発生しますので,審判行為能力が基本的には必要であろうと考えております。ですので,告知を受ける者に一定の能力が必要であるという整理になろうかと思いますが,最終的には更に検討させていただきたいと思っております。 ○増田幹事 それは,例えば事理弁識能力があれば足りるという趣旨なのでしょうか。審判行為能力という点であれば,未成年者の場合は訴訟と違って排除されていませんので,その線引きが難しいかと思うのですけれども,そのあたりは各論のところで検討するということになりますか。 ○脇村関係官 今の波多野の説明を補足させていただきますと,部会資料8において未成年者や成年被後見人等の審判行為能力については,各則において手当てするという御議論をさせていただいたと思います。ですので,審判の告知については,先ほど波多野からありましたように,審判行為能力が必要であるという前提には立っているのですが,事件ごとによっては,その審判行為能力が,未成年者や成年被後見人に認められるケースと認められないケースがありますので,最終的には個別的に検討することになろうかと思います。 ○伊藤部会長 増田幹事,よろしいでしょうか。一般的には今申しましたようなことで,告知を受けるためには行為能力が必要になるけれども,具体的なことについては更にそれぞれの事項に応じて検討するということのようですが,御了解いただけましたでしょうか。 ○増田幹事 はい,結構です。 ○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。   そういたしましたら,今の点は更に検討を要する問題はございますが,本文①,②自体に関しては特段の御意見あるいは御異論がないものとして承ってよろしいでしょうか。   それでは,次の「3 審判の効力発生時期」に関して,本文とただし書に分かれておりますけれども,この点に関しては御意見等ございますでしょうか。   特段の御意見はございませんか。現行法どおりということですので,特に新しい考え方を打ち出しているわけではないということもあるかもしれませんが,これを基礎にして今後の検討を進めさせていただきたいと存じます。   次の「4 一部審判」はいかがでしょう。①,②の関係は,先ほど波多野関係官から説明があったとおりですけれども。―これも特段の御異論がないものとして,御了解いただいたと承ります。   次の「5 中間審判」ですが,この点に関してはいかがでしょうか。 ○長委員 理論的に中間審判のようなものを設けるということはあり得ることだと思うのですが,(補足説明)に,前提となる法律関係として,遺産分割審判における相続人の範囲とか遺産の範囲というのが例示されています。この点については,現実の実務の運用としてはなかなか使いにくい点があるのではないだろうかと思います。と申しますのは,中間審判のみならず,審判自体が既判力がないものですから,審判の結果によらず判決を求めるということになりますと,なかなか中間審判で考えられているような紛争解決といいますか,そういうものが図りにくいところがあります。ですから,実務的には活用がしにくい面があるのではないかという印象を持っております。 ○伊藤部会長 およそ実務的に利用可能性がないようなものだと,立法を検討する必要性が疑われるということになりますが,必ずしもそこまでのことではない……。 ○長委員 そこまでのことは申し上げません。 ○伊藤部会長 それほどこういった事項についてこれが頻繁に用いられるかどうかについては,必ずしもそういうふうにはいえないかもしれないという御指摘かと思いますが。 ○三木委員 非訟のときにも話が出たように,国際裁判管轄等について使う可能性があり得るという話は同じだと思います。   それから,揚げ足を取るようなことで恐縮なのですけれども,本質に関係ないことですが,今,長委員がおっしゃった,中間審判に既判力がないからという理由づけは,もともと中間判決にだって既判力はないわけなので,中間の裁判と既判力の関係は必ずしもそういう論理関係にはないと思いますので,ちょっと議事録のレベルかもしれませんが,疑義を呈しておきたいと思います。 ○伊藤部会長 長委員の御発言の趣旨をもう一度お願いできればと思いますが。 ○長委員 中間審判に限られることではありませんがと先ほど申し上げた次第でございまして,審判それ自体に既判力がないということで,要するに中間審判をすることによってうまく争点が整理されて,最終的な紛争の解決にまで結びつけばよろしいのですけれども,判決の場合ですと,中間判決がどうであれ,訴訟物についての既判力は生じるわけですから,終局的な解決には資するのですが,遺産分割の審判の場合ですと,訴訟の判決の内容によっては,前提が崩れてしまいます。そうすると,審判自体の効力全体の問題になってくるものですから,判決の場合と同一には論じられないのではないかという視点から申し上げた次第でございます。 ○伊藤部会長 ということですので,御理解いただければと思います。 ○三木委員 審判には既判力のないものももちろんあると思いますけれども,すべてないかどうかはここで決めつけられることはやや問題があるということも疑義を呈しておきます。 ○伊藤部会長 長委員も別に決めつけてはおられないと思いますので。ただ,一般にはそういうことかと思います。 ○三木委員 御承知のように,数々の議論のあるところですので。 ○伊藤部会長 そこは御指摘のとおりかと思いますが。   ほかにいかがでしょうか。   三木委員に先ほどおっしゃっていただいたように,特に適法要件に係る問題に関しては,こういう制度が用いられる可能性というよりも蓋然性でしょうか―が存在するということで御了解いただけますでしょうか。―はい。   そういたしましたら,次の6の「更正審判」に関してはいかがでしょうか。これも実務上の必要性を踏まえてということになるかと思いますが,こういうものを設けることが有用であるとかいう趣旨の御発言があればと思いますが,いかがでしょうか。 ○長委員 審判を出したときに細心の注意を払うのですけれども,ここに予定されているような計算違いなどということも時には起こってしまうものですから,権利関係を明確にするためにはこのような規定を置いていただいた方がよろしいかと思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございます。   長委員の御発言は,ごもっともと思いますが,よろしゅうございますか。 ○畑幹事 ①につきましては,異論はございません。②のただし書がどういう意味を持つのかというのを,あるいは説明を聞き逃したのかもしれませんが,ちょっとお伺いできればと思います。 ○波多野関係官 ただし書の方は,本体の審判に対して適法な即時抗告がされた場合については,更正審判について即時抗告審で審理をする必要はなくて,本体の抗告審の中ですべての審理をすればいいのではないかという考え方に基づいて,ただし書で更正審判に対する即時抗告の制限を設けているという趣旨でございます。 ○伊藤部会長 畑幹事,いかがでしょう。 ○畑幹事 つまり,このただし書の「当該審判」というのは,もとの審判という御趣旨ですか。 ○波多野関係官 さようでございます。表現は更に検討させていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 確かに今おっしゃるような御指摘はなるほどと思いましたが,内容的にはいかがですか。 ○畑幹事 ちょっと自信はないのですが,恐らく大丈夫だと思います。自信がないと申しますのは,民事訴訟法の方は,判決に対して控訴がされたときは即時抗告ができないということなのですが,こちらはどちらも即時抗告ですので,何かちょっと違ったこともあり得るかなという気もするのですが,ちょっと考えを詰め切れておりません。 ○伊藤部会長 分かりました。確かに民訴の規定と比較すると,なるほどという御指摘かと思いますので,言葉については更にまた教えていただいて,事務方でも検討したいと思いますが,内容的にはよろしゅうございますか。   そういたしましたら,次の「7 審判の脱漏」に関してはいかがでしょうか。これも通常にはなかなか想定しにくいような問題かと思いますが,万が一ということも絶対にないというわけではないので,こういう規定を置く意味はあろうかと思いますが,いかがでしょう。―よろしいでしょうか。はい。   そうしましたら,次の「8 審判の効力」に関して,ここで掲げられているような内容の給付を命ずる審判は,執行力のある債務名義と同一の効力を有するということに関してはいかがでしょう。これも現行法の内容と同一のものですけれども,何か検討すべき点があれば。 ○山本幹事 原案の趣旨に対する質問ですが,これは執行文の付与は不要であるという理解を前提にしていると考えてよろしいのでしょうか。 ○波多野関係官 今,山本幹事から御指摘があったとおりでして,執行文の付与は不要とする趣旨でこの提案をしております。 ○山本幹事 そういうことであれば,家事審判法第15条について,そういうことが一般的な理解であると承知していますが,最近は,執行文の付与を不要とするような実質的根拠はないという,中野先生を始めとした有力な反対説があると承知しております。私自身は必ずしもその点について定見はないのですが,もしそういうことであれば,その趣旨を部会として確認しておいた方がよろしいかと思いました。 ○伊藤部会長 ただいま山本幹事から御発言がありましたが,執行力のある債務名義に関して,執行文の付与を不要とするというのが現行法のもとでの一般的な考え方であるかと思いますが,それに対して,今,御紹介のあったような有力な反対説といいますか考え方があるので,もし,この場の委員・幹事の方々でも,そういう反対説について検討する必要があるのではないかとか,あるいは逆に,いや,やはり現行法の解釈どおり,そこは執行文の付与を要しないという考え方を改めて確認した方がいいとか,そういう点に関する御発言があればお願いしたいと思います。   ちなみに,山本幹事御自身は,そういう有力な学説の存在は十分認識されながらも,なおその考え方に今賛同するというお立場ではないわけですね。そのあたりのことを聞かせていただければと思いますが。 ○山本幹事 必ずしも定見はないのですが,そういうお考えは,余り明確に理由は書かれていないかもしれませんけれども,私の思うには,やはりこういう審判については,後で出てきますように,取消し・変更が比較的自由にできるような形になっているので,その時点で執行力があるかどうかということはやはり執行文の形で確認する必要があるのではないかというような実質的なお考えもあるのかなと思ったのですが,ただ,やはりこれらの債務名義というのは,特に迅速な執行が必要な性格のものなのかなと思いまして,そうだとすれば,現行法の一般的な理解というのも理由はあるかなと,その程度のことですが。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。恐らく山本幹事御自身もそうですし,現行法下で執行文の付与を不要とする考え方の最大の根拠は,迅速な権利の実現といいますか,あるいは給付内容の実現というところにあるのかと思いますが,その点に関して何か御発言がございますか。 ○畑幹事 私も結論的には定見はないのですが,今,山本幹事がおっしゃったように,審判についても,執行するためにはやはり確定していることが前提になると思うのですが,そのことは現在はどのようにして確認されているのでしょうか。確定証明書ということでよろしいですか。 ○波多野関係官 それは,畑幹事がおっしゃったとおりでよろしいかと思います。 ○伊藤部会長 確定証明を得てということですね。それに加えて執行文の付与ということを求めるという,そこまでの御意見はないというふうに承ってよろしいですか。―はい。   それでは,これはもちろん考え方の問題ではありますけれども,特に現行法での一般的な考え方を変える趣旨ではないということは大方の御了解を得たということにいたしましょう。   次の「9 戸籍の記載等の嘱託」に関してはいかがでしょう。これはいろいろ更に具体的なこととしては検討しなければいけない問題があるかと思いますが,基本的な考え方として,ここに掲げられているようなことでよろしいですか。   特段御異論がなければ,このような考え方を基礎にして更に検討を進めることにいたします。   それでは,次に,「第23 不服申立て」についての説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 御説明いたします。   第23の「1 即時抗告」では,現行家事審判法第14条と同様に,定められた者が定められた審判に対し,即時抗告をすることができるものとすることを提案しております。   「2 即時抗告期間」では,即時抗告の期間について提案しております。   本文(1)では,終局審判に対する即時抗告期間は,終局審判が本案についての審判であることから,現行家事審判法第14条と同様に2週間とすること及び終局審判以外の審判については,民事訴訟手続の即時抗告期間と同様に1週間とすることを提案しております。   本文(2)では,即時抗告期間の始期について,即時抗告権者が審判の告知を受けたときは,その告知を受けた日から進行するものとすることを提案しております。また,即時抗告権者が告知を受けないときは,現行家事審判規則第17条の規律を維持して,即時抗告期間は,申立人が告知を受けた日から進行するものとすることを提案しております。これは,即時抗告期間がいつまでも始まらず,審判がいつまでも確定しないものとすることは,迅速性の観点から相当ではなく,また,手続の安定を図る必要があるということによるものでございます。   「3 抗告審の裁判」では,差戻しを原則とするか否かについて検討することを提案しております。この点につきまして,現行家事審判規則第19条は,家庭裁判所が審理のために必要な家庭裁判所調査官等の人的体制を具備し,家事事件の特殊専門の裁判所であることから,即時抗告に理由があるものと認めるときは,事件を家庭裁判所に差し戻さなければならないものとしております。しかし,現在は高等裁判所に家庭裁判所調査官が配置されていること,実務上も高等裁判所が自判することが多いこと,また,この改正によりまして,第一審の手続を充実し,家庭裁判所ですべき審理が不足している事案は一層少なくなると考えられることを考えますと,高等裁判所が更に家庭裁判所で審理する必要があると認めるときに限って差し戻せば足りるとも考えることができると思われます。この点について検討することを提案しております。   「4 抗告及び抗告裁判所の手続」では,抗告及び抗告裁判所の手続については,その性質に反しない限り,家事審判手続に関する規律及び民事訴訟における抗告に関する規律と同様の規律とすることを提案しております。   家事審判手続に関する規律は,第23の5で別途検討するものを除きまして,原則として抗告審に妥当するものと考えられます。また,民事訴訟における抗告に関する規律で別途検討するものとしているものを除いたもののうち,家事審判事件の抗告に関する規律として妥当するものと考えられるものは,(補足説明)3に記載したとおりでございます。   (注)1では,抗告審における第一審の管轄違いの主張の制限や管轄違いを理由とする移送について検討することを提案しております。この点につきまして,家事審判事件の管轄は,自庁処理の認められる緩やかな専属管轄であることから,抗告審において管轄違いの主張を制限するものとすることや,管轄違いを理由とする移送をしないものとすることが考えられます。他方で,自庁処理が認められるとしても,自庁処理がされなかった場合には,専属管轄違いであることには変わりなく,本来の管轄で審理,判断を受けるという手続的利益が害されていますことから,抗告審において専属管轄違いの主張をすることは制限されず,管轄違いを理由とする移送をするものとすることが考えられます。   (注)2では,特別抗告及び許可抗告の申立権者について検討することを提案しております。   「5 抗告審における審理等」の(1)では,調停をすることができない事項についての審判事件において,申立てを認容した審判に対して,申立人以外の者が即時抗告した場合の審理等について検討することを提案しております。この点につきまして,調停をすることができない事項についての審判事件の抗告審においても,調停をすることができない事項についての審判事件であるという性質は異なることがないことを前提にして,審判の申立人に対する手続保障として,審判を取り消す決定をする場合には,審判の申立人に対し,抗告された旨の通知をし,かつ,審判の申立人の陳述を聴かなければならないものとすることを提案しております。   (注)では,本文の場面において,審判の申立人は,第一審家事審判手続時に有する手続上の権能,例えば,記録の閲覧申立権でありますとか証拠調べ申出権等について同様の権能を有するものとすることを提案しております。これは,本文の場面において,抗告審においても,調停することができない事項についての審判事件であるという性質は異なることがないことを前提としまして,審判の申立人は,対立構造的な相手方ではございませんが,抗告の移審の効果によって,当該事件の申立人として抗告審においても当事者であることは異ならないとの考え方に基づくものでございます。   5の(2)は,調停をすることができる事項についての審判事件の抗告審における審理等についてのものでございます。この点について,調停をすることができる事項についての審判事件の抗告審では,調停をすることができる事項についての事件であるという性質は異ならないことを前提に,抗告された旨の通知,審判期日における陳述聴取への立会権,事実の調査の告知,事実の調査についての意見陳述,審理の終結及び審判日に関する規律は,第一審家事審判手続の規律と同様とすることについて検討することを提案しております。   「6 不利益変更禁止の原則及び附帯抗告」では,不利益変更禁止の原則は適用しないものとすること及び附帯抗告の制度は設けないものとすることを提案しております。   なお,不利益変更禁止の原則を適用しないものとすると,抗告の移審の効果が生ずることにより,双方抗告は不要とも考えられます。しかし,抗告の取下げ制限をしないものとすることを提案しておりますので,抗告権者は,ほかの抗告権者の抗告の取下げに備えて自らも抗告することができるものとすることが必要であろうと考えております。   「7 再度の考案」では,家事審判事件手続において再度の考案の規律を設けるものとすることを提案しております。   (注)では,調停をすることができる事項についての審判事件の終局審判は再度の考案ができないものとすることについて検討することを提案しております。この点につきまして,調停をすることができる事項についての審判事件は,申立人及び相手方が主張及び資料を提出して,十分実質審理をした上で判断が行われますので,再度の考案を認めるのは相当でないとも考えられます。他方で,審理の終結の規律が設けられたとしても,終結前の資料に基づいて,再度の考案をすることを否定するまでのことはないのではないかとも考えられます。そこで,この点について検討することを提案しております。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,また順次参りたいと存じます。   まず,第23の1の「即時抗告」ですが,別に定めるところにより,即時抗告のみをすることができるという事項に関してはいかがでしょうか。―これに関しては特に御異論等ございませんか。   もしよろしければ,次の「即時抗告期間」に参りたいと思います。   まず(1)の「期間」ですが,終局審判に関しては,現行家事審判法と同様の2週間,終局審判以外の裁判に対する即時抗告は1週間という民訴の規定と同様の規律をここで提案しているわけでございますが,この点はいかがでしょう。 ○三木委員 言葉遣いに関する質問ですが,終局審判という言葉は,中間審判とかの対比で使われていて,手続上の裁判は,「決定」と呼ぶか「審判」と呼ぶかはまだ未定という理解でよろしいのでしょうか。 ○波多野関係官 三木委員から御指摘がありました,手続上の裁判についてどういう呼び方をするかについては,今の段階では未定ですが,「決定」という形で整理することも検討する必要はあるかとは,事務当局としては考えております。 ○伊藤部会長 よろしいですか。 ○三木委員 2の(1)の②の「裁判」という言葉の意味をちょっと確認しただけですので。 ○伊藤部会長 分かりました。ほかに特に御発言ございませんか。   よろしければ,次の(2)の「期間の始期」に関して,審判の告知を受けたときは告知の日から,受けないときは審判の申立人が告知を受けた日からという規律内容を掲げておりますが,この点はいかがでしょう。現行の規則と同様の内容ですけれども。 ○山本幹事 これであっていけないということではないとは思うのですが,先ほどの審判の効力の発生時期については,一般的には審判を受ける者への告知によって効力が生じるという規律になっているわけですが,「期間の始期」のところは,審判の申立人の告知が起算点の基本にされているというところが,ちょっとどういう考え方なのかなと。期間の始期の方は,審判を受ける者への告知を受けた日から進行するということではやはりいけないのかどうか,そのあたりをお伺いしたいのですが。 ○波多野関係官 今の山本幹事の御指摘の点でございますが,現行の規律を維持することを御提案させていただいていますが,現行の規律がどうしてこうなったのか明確に分からない点もございますが,恐らく,どの審判でも申立人はいて,その申立人に告知するとする基準の明確性は担保されるという点が一応あるのかなと考えているところでございます。審判を受ける者に対する告知から進行するということでどうかというところについては,審判を受ける者が明確であればとり得るのかとは思われますが,そこについてはこちらでも更に少し検討させていただきたいと思います。 ○山本幹事 審判を受ける者が不明確なのだとすると,先ほどの原則的な効力の発生時期が不明確になってしまうおそれがあるということだと思いますので,それはやはり明確だという前提でこの仕切りはできているような気はするのですが。 ○金子幹事 審判を受ける者は確定的に決まるはずだという前提で少なくとも各則は整理する必要があると思っています。抗告権の保障という面から見たときには,そういう保障をしなければいけないと考えられる利害関係の強い者については,その者に告知をする方向で各則を整理するのがいいだろうと思っています。そうすると,さほど利害関係が強くはなく,告知は要しないのだけれども,なお即時抗告権者とすべき者というものが残ってきまして,その人についての抗告期間の始期をいつにするかということを考えたときには,迅速処理と基準日の明確性という観点で考えるのがよいと思います。申立人は常に手続に関与していて,住所等も当然分かっております。したがって,告知は早期にできますし,基準の明確性という点では,恐らく「裁判を受ける者」よりは優れているのではないかという考えで,実質面と基準の明確性という二つの観点から,それの方が望ましいのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 山本幹事,いかがでしょうか。 ○山本幹事 基本的には,審判を受ける者に対しても告知をするという,裁判所は分かっているという前提ですよね。 ○金子幹事 ええ。 ○山本幹事 そちらの方がどの程度明確になるのかというのはちょっと分からないところはありますけれども,実際上はそちらの方がやりやすいということであれば,それは特に異論はありません。 ○伊藤部会長 即時抗告権者ではあるけれども,告知を受けないものに関してはということですよね。金子幹事からの説明で御了解いただいたのであれば,このような形でと思いますけれども,いかがでしょうか。   もしよろしければ,次の「抗告審の裁判」に参りたいと思います。これは先ほど波多野関係官から説明がありましたように,現行の家事審判規則は,原則は,取り消す場合には差戻しということになっていますが,ここに掲げられている事項で,④,⑤のあたりでは,そうではなくて,原則は高等裁判所が自ら本案の判断をするという,いわゆる自判の形に変えていて,その理由は,(補足説明)に書いてあることと,先ほど波多野関係官が説明をされたとおりでありますが,ここは現行法あるいは規則の考え方を変えることになりますので,御意見を承れればと思います。   いかがでしょう。裁判所からの委員・幹事の方で何か。 ○鈴木委員 私としては原案の考え方に賛成でございますが,多少実情的なものをお話しいたしますと,ここにも書いてありますとおり,現在の制度でも,実際は差戻しをしないで自判をするというのが大多数だろうと思います。私は数字的なものは承知しておりませんし,他の裁判体がどうしていたかというのを確認しているわけではありませんが,多分実情としてはそういう状態にあろうかと思います。   それはどうしてかと申しますと,恐らく,抗告審について御説明しましたときにお話ししましたけれども,抗告審では新たな主張とか資料というものが出てこないで,あとはどう判断するかということが問題で,その点で原審と考え方を異にしたので取り消す,しかし,結論は,特に新たな主張立証を待つまでもなく出てくるというケースが多いからではないかと思います。   それと,現行法で差戻しを原則にしているのは,家裁には調査官が配置されているなど特別の体制があるということも理由となっているのだと思うのですが,御承知のとおり,少なくとも東京高裁には調査官が配置されておりまして,調査官の意見を聴かなければいけないかなというときはそういう対応もできるということもございます。   それでは,実際にどういうケースで差し戻しているかということですが,私の経験ですと,子どもとの面接交渉等が問題になりまして,原審が何らかの理由で面接交渉を認めなかったけれども,それを認めるという方向のときに,どういう態様で認めるのがいいかということがあります。これは高裁でやるよりは,やはり原審でもう一度事実確認をやった方がいいだろうということがございますし,また,原審で面接交渉は認めたのだけれども,その方法が不明確で,実際にどのようにやっていいか分からない,もう少し内容を固めた形で結論を出した方がいいのではないかというときも原審でもう一度考えていただくということがございます。ほかの例としては,扶養義務者が数人いて,その間でどういう負担をするかというときに,もう一度じっくりそれぞれの事情を聞いて具体的な金額を決めた方がいいのではないか,そういうときに差し戻したという経験がございます。しかし,基本的には,取り消す場合にも自判をするというのがほとんどでございます。私の個人的な意見としては,むしろそれに合わせた方がいいのではないかということでございます。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。鈴木委員からは,現行規則のもとでの運用,それが適正な本案についての審判を実現する上でも,自判,つまり高等裁判所が自ら内容について判断をするということを原則にしても差し支えがないという御発言がございましたが,ほかの委員・幹事の方はいかがでしょうか。 ○小田幹事 実情の数字の御紹介をいたします。抗告事件の中で抗告認容になるものが問題になるわけですが,それが全体の中で約2割ございます。平成20年で合計で502件ございますが,その内で取り消して自判をしたものが442件,他方で,取り消して差戻しをしたのが60件でございます。ですから,正確に計算しておりませんが,10%強が差戻しということになろうと思います。2割はいっていないところでございます。 ○伊藤部会長 ただいまの小田幹事からの御発言も,現行法下の実務での,実際上は自判が大部分を占めているということで,それは同時に,それで適正な審判が行われる体制が整えられているということかと思いますが,ほかにその点に対して御発言ございますか。あるいは,弁護士会の委員・幹事の方で,御経験を踏まえて何か。 ○杉井委員 私も原案に賛成です。これでまた差し戻されて,また改めて家裁で審判ということになりますと,利用者にとっては本当に時間ばかりかかってということになりますので,今お聞きした実情からしても,これが利用者の要求にもかなっていると思いますので,賛成です。 ○伊藤部会長 ありがとうございます。適正で,かつ迅速な裁判という点から見ても,原則は自判にするということに変えるのが適当であるという御意見が多いと思いますが,なおどなたか御発言はございますか。―よろしいでしょうか。それでは,この点は,先ほど来申し上げているような考え方で今後の検討を進めさせていただきます。   そこで,15ページの(注)の1でございますが,専属管轄違反の問題をどのように抗告審において評価すべきかということで,内容は先ほど波多野関係官から説明があったとおりですが,結局,自庁処理という制度の重みと申しますか,その評価に係るところかと思って,考え方としては,ここに一応掲げられている考え方と,しかし必ずしもそうでなくてもという別の考え方もあり得るということになりますが,この点はいかがでしょうか。   一応ここに掲げられている考え方は,抗告審において専属管轄違反の主張ができない,それから,移送に関しても,ここに書いてあるようなことで,規律を設けないということですが,その根拠になっているのは,自庁処理という,そういう意味では,管轄の規律に関して,それを緩やかにするような要素があるからということが理由かと思いますが,ここに掲げられている考え方では問題があるというような趣旨の御発言はありますでしょうか。 ○三木委員 この点については,結論はこれでいいと思うのですが,全体の考え方の問題としてやや疑問があります。確かに民事訴訟法の方では,控訴審は,専属管轄違反以外は瑕疵が治癒されるわけですが,その説明としては,任意管轄だからということが理由に挙げられているわけですね。私自身は,もともと家事事件の管轄は,仮に専属だといっても,緩やかな専属であるべきだと思いますから,こういう処理でいいですけれども,そうであれば,なぜ専属でなければいけないかという本来に立ち戻る疑問があって,加えて,結論として,管轄違いの瑕疵が治癒されるような管轄であるならば,それは合意管轄を認める,本来の任意管轄でいけない理由がよく分からないというか,全体の整合性をこっちの厳しくする方にそろえるのではなくて,緩い方にそろえるという形であればいいけれども,少なくとも現在専属でこのように処理をするというのは整合がないような気がします。繰り返しますけれども,整合を,自庁処理があるから管轄違反を問題とする必要はないのだという方でいいのですけれども,そうであれば,仮に任意管轄と呼ぶのが問題であれば,言葉はどうでもいいのですが,しかし,合意管轄を認める専属管轄というのはあり得ないと思いますから,結局は任意管轄になるのかもしれませんが,とにかく整合性という点で,緩やかな方にそろえる整合性を持たせるか,さもなければ,私は賛成しませんけれども,この厳しい方で整合性を持たせなければ全体の仕切りがおかしいのではないかという気はいたします。 ○伊藤部会長 今の点は,事務当局から追加的な説明をされますか。 ○金子幹事 この点について,事務当局が(注)の2段目に書いてある方をお勧めというつもりでもなかったのですが,自庁処理があるというような専属管轄というようなものをどう見るかということで,今御指摘があったように,それなら合意管轄だって認められてしかるべきだというのはごもっともな御指摘ではないかとは思っております。ただ,その上で,やはり専属というところは外せないのではないかなという気持ちも持っておりまして,合意管轄も認めずに,ここも緩めないというのも一つの考え方ではないかなとは思っていました。 ○伊藤部会長 先ほど,資料に書いてある考え方をできたらというふうに,そういう趣旨かと思いましたが,そこは若干私の誤解があったようで,三木委員からの御発言なども踏まえると,こういう形で,いわば専属管轄性を実質的に緩めるということについては考え方の一貫性がない,専属管轄性を前提とするのであれば,こういう形での,いわば弾力的な処理はしない方がいいというのも一つの考え方かと思いますので,どうぞ,ほかの委員・幹事の方の御発言をお願いいたします。 ○畑幹事 私も三木委員と同じように一貫させた方がいいと思うのですが,第一審が緩やかな専属管轄であるとすれば,二審での扱いも同様に,常に取り消すとか,常に主張できないということではなくて,何かその中間になるのが理屈の上では整合的なのではないかという気がいたします。 ○伊藤部会長 中間とおっしゃるのは,ここに掲げられているような考え方とは違うのですか。 ○畑幹事 ここに掲げられているのは,常に主張できない,専属管轄違反であっても常に問題にならないという考え方であり,先ほどの御説明で,それに対置されたのは,常に問題となるという考え方であったように思うのですが,一審での専属管轄というのが中間的なものであるのであれば,先ほどの二つの考え方の中間のような,ちょっとうまい要件は思い浮かびませんが,場合によっては取り消して差戻しをする,しかし,しなくていい場合もあるというあたりではないかという趣旨です。 ○高田(裕)委員 同じことを申し上げることになるのだと思いますが,まさに緩やかな専属管轄というものをどうとらえるかにかかわっているのだろうと思います。今までの私の理解ですと,合意管轄は許さない,しかし自庁処理は可能という点が一番核心部分になりますが,話の筋としましては,結局,第一審で自庁処理をするのが適切であると考えられた事件においては,あえて移送する必要はない,しかし,自庁処理が適切でない事件というのがもし仮にあるとすれば,それはやはり適切な裁判所,本来の裁判所に送るべきだろうと思いますので,基本的な考え方としては,その筋で考えるのも一つの道かなと思います。ただ,法制的にそれを文章にできるかどうかということについては全く自信がございません。 ○増田幹事 私もそれほど深く検討したわけではないのですが,高田裕成委員の御意見についてはちょっと疑問がありまして,自庁処理の適切さを抗告の段階で問題とする余地があるのであれば,自庁処理自体に対して不服申立ての方法がなければいけないのではないかと思うのです。当事者としては自庁処理に対して何も方法がないのに,そのまま自庁処理を,適切でない庁で審理を進めていって,即時抗告があって,管轄違いで差し戻されるというようなことでは当事者の利益に反するのではないかと思うのです。 ○伊藤部会長 高田委員の御発言の趣旨をもう一度お願いできればと思いますが。 ○高田(裕)委員 あくまで考えるとすればということで,不服申立てとの関係をどうとらえるかというのは残された問題であるというのは,増田幹事のおっしゃるとおりだろうと思います。 ○山本幹事 増田幹事の御発言でよく分からなかったところがあるのですが,当事者は移送申立てはできるわけですよね。その結果について争えるという前提だったような気がするのですが,それとは違うのでしょうか。 ○増田幹事 移送申立てできるという認識はあるのですけれども,ただ,それはあくまで便法であって,自庁処理そのものについてやはり何か不服申立てがないと,移送申立てをあえてしなかったことについて何らかの帰責性を求めるようなことができるのだろうかという疑問があるのです。 ○伊藤部会長 山本幹事,今の点よろしいですか。 ○山本幹事 私もそこの問題です。移送申立てをしなかったことから後でもう不服は言えなくなるというふうに仕切ってしまうかどうかという話かなと思っております。 ○金子幹事 ちょっと話が前のところに戻ってしまうのですが,自庁処理そのものについて不服を申し立てられなくても,移送の申立てと,それに対する判断で実質が確保されるようにすべきだという前提では考えておりましたので,あとその工夫の仕方かなとは思います。 ○増田幹事 それは理解しています。しかし,独立の不服申立方法があるのであれば,その方法をとらなかった場合に後で抗告審で文句を言えないというのは分かるのですけれども,移送申立てという別の方法をあえてとらなかったということを理由として不利益を課すことができるかどうかという問題なのです。課すことができるという意見もあるでしょうし,そうではないという意見もあると思いますので,問題の整理としてはその点を踏まえていただければ結構です。 ○伊藤部会長 分かりました。   いろいろ御意見をいただきましたので,ここでもいずれかの考え方を是非ということではなくて,そこは更に検討したいということですので,ただいまの御意見を踏まえて整理をして検討してもらいます。   (注)の2は何か御意見ございますか。特別抗告及び許可抗告の申立権者については,解釈にゆだねるということですが,それに関してこういう考え方があり得るのではないかとか,そういったことはいかがでしょうか。   この点は,もし何かお気付きのことがあれば適宜おっしゃっていただくことにして,先ほど飛ばしてしまいました,13ページの4の「抗告及び抗告裁判所の手続」に関して,第一審の手続に関する規律等と同様にするということについてはいかがでしょうか。―ここはよろしいでしょうか。 ○増田幹事 質問なのですが,職権での付調停は抗告審でもできるという理解でよろしいのでしょうか。 ○脇村関係官 その点につきましては,今後お配りいたすであろう部会資料の中で検討することを予定しておりますが,事務当局としては,今のところできるという方向で検討したいと考えております。 ○増田幹事 また後ほど審議をされるということですね。 ○脇村関係官 はい。 ○伊藤部会長 その点はまたその時点で御意見を承ります。   よろしければ,16ページの5の「抗告審における審理等」ですが,まず(1)の,調停をすることができない事項についての審判事件に関して,審判を取り消す決定をする場合には,申立人に対して,抗告がされた旨の通知をして,陳述を聴かなければならないものとする,こういうことが掲げられていますが,この点はいかがでしょうか。 ○増田幹事 非訟のときにも同じようなことを申し上げましたけれども,このような場合には,(2)と同じように,相手方がいる事件として取り扱うべきだと考えます。 ○伊藤部会長 ということは,取り消す決定をする場合にということではなくてということになりますよね。 ○増田幹事 一般的に相手方のいる事件としての手続保障をすべきだと考えております。 ○伊藤部会長 ということですが,いかがでしょうか。 ○波多野関係官 事務当局からこの提案をさせていただいておりますのは,一審の申立人を調停をすることができる事項についての審判の相手方と位置づけるところまではいかないのではないかという整理をしておりまして,事件の類型としては,いわゆる相手方がいないような,調停をすることができない事件の類型であるということは変わらないのではないか。そして,一審の審理において,認容の審判をする場合には審判を受ける者の陳述を聴くというような規律が現行の規則等でとられていますことを考えますと,抗告審においても,その審判を取り消すときに陳述を聴き,抗告された旨を通知するということでよいのではないかということで,この提案をさせていただいているところでございます。 ○伊藤部会長 やや基本的な考え方の問題というところはございますが,ここに掲げられている考え方は,波多野関係官から説明がありましたように,事件の性質は基本的には変わらないということが前提であるのに対して,増田幹事の御意見は,もともとはこうであっても,抗告審においては相手方のある事件といわば同質のようなものになるので,そういう形での手続保障を図るべきだ,こういう考え方の違いかと思いますが,いかがでしょうか。 ○山本幹事 私自身は,事務当局が今御説明になったような基本的な整理はそれで結構なのではないか。つまり,いわゆる甲類的なものについては,不服申立てがあったとしても,それによって事件の性質が乙類的なものになるというところまではいかないのかなと思っています。ただ,この手続保障の与え方なのですけれども,原案ですと,取り消す決定をする場合に抗告された旨を通知するということで,ある程度高等裁判所が,抗告人の主張が相当である,原審判に取消事由があるという心証を固めた段階で通知をして,そこから審判申立人の当事者としての手続保障が始まるということになるのかなと思うのですけれども,これはやはり審判の申立人を当事者として位置づけるとすれば,そういうような心証を高等裁判所が抱くもっと前の段階で,早い段階から,相手方の主張に対して攻撃防御を尽くしていくということがあってもよいといいますか,それが手続保障にかなっているのかなという印象があるものですから,私自身は,この抗告された旨の通知というのは,抗告がなされた段階でされるというのが手続保障の基本なのかなというような印象は持っております。 ○伊藤部会長 山本幹事の御発言ですと,抗告がなされた段階で通知はすると。通知を受けた申立人が何か意見を積極的に言ってくれば,それは聴くことになる。でも,裁判所から必ず陳述を聴く機会を保障するということまでは必要ない,そういうことになりますか。 ○山本幹事 積極的に審判の申立人の陳述を聴く,つまり裁判所の方から「何か意見はありませんか」と聴くというのは,あるいは審判を取り消す決定をするという段階でいいのかもしれないと思いますが,積極的に攻撃防御を尽くしたいという審判の申立人については,抗告審の最初から手続保障を与えるべきではないかなという印象を持っているということです。 ○伊藤部会長 分かりました。そうしますと,先ほどの増田幹事のように,基本的な考え方としても,相手方のある事件と同様の取扱いをするという考え方と,さらに,今,山本幹事がおっしゃった,基本はここに掲げられているような考え方ではあるが,手続保障という点から見ると,少なくとも通知は,抗告がされた段階でする方がいいのではないか,こういう趣旨のお考えかと思いますが,ほかの委員・幹事の方,いかがでしょうか。 ○三木委員 私も結論的にほぼ山本幹事と同意見を持っております。事務当局の御説明にあったように,抗告されたからといって事件の性質が相手方のある事件に変わるということではないという整理は,私もそういう整理をしております。逆に,そういう整理をするのであれば,抗告審における唯一の手続上の当事者は申立人であるはずで―唯一のというか,抗告人もそうかもしれませんけれども,少なくとも申立人は手続当事者であるはずであって,手続当事者に抗告審の,場合によっては最後の段階でしか通知がされないというのは理屈からいってもおかしいし,それから,手続保障という実態からいってもおかしい気がします。特に,山本幹事は,通知をする方がいいのではないかとおっしゃいましたけれども,私自身は,手続当事者である以上は,通知をしない理屈がよく分からないと考えております。ただ,これも部会長が整理されたように,相手方のある事件に変わるわけではないと思っておりますので,次の(2)の,手続保障のすべてが同様に与えられる必要があるかどうかはまた別問題である。   ただ,1点,山本幹事に聞くのがいいのか,事務当局に聞くのがいいのか分かりませんけれども,ちょっと御発言の趣旨が分からなかったし,私自身も必ずしもよく分からないところは,そもそも抗告審でどのくらい期日が開かれるのか,私はよく実態を知らないのですけれども,仮に期日が開かれる事件がある程度あるとして,期日通知も毎回申立人に送るという趣旨で山本幹事はおっしゃったのか,それは最初の,抗告されたという通知だけでよくて,あとは,原審の結論を覆すときに機会を与えるというだけでいいという御趣旨だったのか,ちょっとそこがよく分からなかったので,その辺はちょっと整理する必要があろうかと思います。 ○伊藤部会長 山本幹事,もし何かその点についてお考えになっていらっしゃるところがあれば補充していただければと思いますが。 ○山本幹事 十分考えているわけではありませんけれども,少なくとも(2)にあるような,審問期日への立会権というところまでは必ずしも必要はないようには思いますので,常に期日を開く場合に通知が必要かどうかということは,必ずしもそうではないのかなというような印象は持っております。 ○伊藤部会長 そうすると,抗告がされた旨の通知はして,あとは,申立人がどういう行動をとるかは,その者の判断あるいはその者が積極的にするかどうかにゆだねるということですね。   今,三木委員から発言がございましたが,少し原案と違う考え方が,それぞれ,増田幹事あるいは山本幹事,三木委員から述べられていますが,現在の抗告審の実務の在り方を前提にして,かつ原案の考え方の合理性をお考えになったときに,裁判所の委員・幹事の方でどなたか御発言ございますか。 ○鈴木委員 私としては,5に関しましては,(1)の方は原案どおりでいいだろうと思っていましたので,余り(1)の方は深く考えてこなくて,むしろ(2)の方で,意見といいますか実情紹介をしようかなと思ったのですが,いわゆる甲類関係で,抗告された結果がどの程度原審の結論と変わっているのかというところがありまして,多分大多数は抗告棄却になっているのだろうと思います。そういう実情を前提として,一応,相手方と申しますか,申立人の方に通知をした方がいいかどうか。ただ,通知をするにしても,どういう通知の仕方をするか。抗告状には必ずしも抗告理由を書いていなくて,抗告理由は追ってというのもありますので,そうしますと,本当に「抗告がありましたよ」という連絡をするだけだということになりますし,先ほど,意見を出す機会を与えるというところまではやらなくてもという話がありましたけれども,裁判所としましては,送った以上は何か反応があるのではないかというところを心理的には持たざるを得ないところがあります。そうしますと,現状ですと,記録を受け取ってから例えば1~2週間ぐらいで判断をしている事件が,場合によっては,何か月単位に延びていくのではないかというような心配がございます。ただ,冒頭に申しましたように,私は,(1)の方は余り実情を踏まえて考えてきませんでしたので,ここでの感覚的な話でございます。(2)に関しましては,もう少し広げた意見を後で申し上げるつもりでございます。 ○伊藤部会長 分かりました。手続保障を充実すれば,その反面として,どうしても審理に要する時間がある程度は延びるということは,これは経験則上やむを得ないことなのかもしれません。そのあたりの調和点をどう考えるかですが。 ○増田幹事 私も,事件の本質が相手方のいる事件に変わるということは考えていなかったわけで,本質的にはやはり甲類であることには変わりはないだろうと考えます。ただ,結論的に山本幹事や三木委員の考え方に近づきはするのですけれども,やはり通知だけでは抗告の理由の内容までは分からないわけですから,(2)並みとまではいかなくとも,少なくとも実質的に意見を述べる機会を保障するということまでは必要であろうと考えておりますので,(1)の原案では少し問題があるだろう。通知を送ったらそれだけでいいというのにも少し問題がある。ですから,審問期日を開くとか,立会権とか,そこまではいかなくとも,実際に意見を闘わせる,あるいは新たに主張,証拠を提出する機会を実質的に保障するべきだと考えております。 ○伊藤部会長 そうすると,審問期日を開く旨を通知するかどうかということは別にして,結局は,原案に書いている考え方を取り消す決定をする場合だけではなくて,抗告があった場合のすべての事件についてということになりますよね。   いかがでしょうか。このあたりはなかなか難しいところかと思いますが。 ○脇村関係官 1点確認させていただきたいのですけれども,取り消しする場合に限るべきではないとおっしゃっていた山本幹事あるいは三木委員のお考えでは,例えば,抗告がそもそも不適法却下のケースであるとか,あるいは明らかに理由がないケースについてはどうお考えなのでしょうか。 ○三木委員 不適法却下のような場合については,理屈の話として,実質以前に,手続当事者が,自分が手続が始まっていることも知らないというのが,どういう理屈が背景にあるのかよく分からないということを申し上げましたが,そこの点に関しては,やはり私は本案手続のことを想定しておりましたので,本案前で処理されるということであれば,理屈上は通知しない処理もあり得るかと思います。あとは,実質とか,先ほど来話に出ている迅速性とかの観点でどうするかという政策的判断でよいのではないかと思っております。 ○伊藤部会長 山本幹事はいかがでしょう。 ○山本幹事 今,脇村関係官が言われたのは,抗告申立てが不適法であるとか,明らかに理由がないという場合ですね。その場合は,当初の審判申立人に対して,あえて手続保障を与える必要はないと思いますので,三木委員と同じです。 ○伊藤部会長 あくまで本案に関して何らかの対応が必要になり得べき場合ということですよね。 ○菅野委員 一審におりますので,余りこの問題は発言する資格はないような気がいたしておるのですけれども,ただ,現場の感覚ということで少し話させていただきます。手続的な保障をするというのはもちろん大切なことであって,ただ,同時に,そういう事柄と,もう一つ,申立人の方に迅速な権利・救済実現というか,それを保障してあげることも大切ですし,あるいは,当事者に過度の負担をかけないということも大切なことだと思うのです。いろいろな事柄の中のバランスで考えていかなければいけないと思います。そうすると,当事者は,通知を受けると,これは大変なことだ,何かしなければいけないかもしれないとか,それもやはり負担になるわけです。しかも,その負担は,実はこれは即時抗告が出ているけれども,それほど実質的争いがないときもありますし,先ほど紹介があった,認容率が1割強という,2割までいかないというお話とかもあります。いろいろ考えると,そういうときに全件について手続保障という方をいわば優先させるのかどうするのか,そのバランスの一つの接地点として,この原案というのは,取り消す決定をする場合,正に利益を害するときには手続的保障の方を当然優先させるのですと。ただ,権利利益を害さない場合には,そこは後退させるのですという,そういうバランス考慮の結果,こういう切り分けをしたのだと思うのです。したがって,どういうふうに判断するか。ある種の政策的な考慮というのか,バランスをとらなければいけないのだろうという気がいたしました。実務的には,こういう通知をする,あるいはその通知をされるということにもそれなりの負担というものはやはりあるのだろうと感じました。 ○伊藤部会長 ただいま菅野委員からは,当事者の負担等を考えても,やはり合理的な調和点がこの原案のあたりにあるのではないかという御発言がございましたが,どうぞ,平山関係官。 ○平山関係官 今の点を補足いたしますと,先ほど,小田幹事から御紹介させていただいた抗告認容率2割という数字は甲類,乙類全部通してのものでございまして,甲類に絞りますとかなり低くなります。原審が認容審判したものに対して,即時抗告権者のどなたかから抗告がされて,その抗告が認容されたものに絞ると1割未満の抗告認容率でございますので,補足させていただきます。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。   というような実情を踏まえて,なお手続保障というのを原案より進めて図るべきかという問題かと思いますが,もし,ほかに御発言があれば伺いますし,一応それぞれの御意見を述べていただいたということであれば,それを踏まえて事務当局において更に検討してもらうようにいたしますが,いかがでしょうか。 ○三木委員 抗告認容率が低いのは私も承知しておりますが,問題は,抗告認容率が今1割未満であるときに,最初から手続関与の機会が与えられていれば,それが更にもっと低くなる余地があるのではないかという議論であるので,低いことが何を正当化しているのか私には全く分からないということを付け加えておきます。 ○伊藤部会長 恐らく,先ほど菅野委員がおっしゃったように,通知がされるとそれなりの対応を考えなければいけないという申立人の負担―それは心理的なものかもしれませんけれども―の関係があるかとは思いますが,ほかにいかがでしょうか。―よろしいですか。   それでは,いろいろ原案とは違った考え方を述べていただきましたので,それを踏まえて検討をしてもらうことにいたします。   17ページにございます(注)はよろしいでしょうか。審判の申立人は,第一審における手続上の権能と同様の権能を有するものとするという,これは特段の御異論はございませんか。   そうしましたら,(2)の,調停をすることができる事項についての審判事件,いわゆる乙類事件に相当するようなものに関して,これも先ほど来関連の議論が出ておりますけれども,一定の事項に関して第一審の規律と同様にするという考え方がここで掲げられておりますが,それでは,先ほど鈴木委員ちょっと御発言ございましたので,お願いいたします。 ○鈴木委員 意見と申しますか,実情の紹介等をさせていただきます。   先日,抗告審一般につきまして御説明したときに,家事審判事件が多数でございますので例として御紹介いたしましたので,かなり重複いたしますが,まず,どういう事件が多いかということでございますが,先日も御紹介しましたように,家事審判の抗告で多数を占めているものは,婚姻費用の分担事件でございます。婚姻費用の分担と申しましても,月々10万とか何十万というのはそれほど多いわけではございませんで,実際には月々数万のやり取りをするかどうかというのが多い上に,しかも,その数万が受け取る側にとっては切実である。早く払ってほしいという事件も多いわけでございます。もう一つは,婚姻費用分担といいますのは,別居しております夫婦の間の問題でございまして,審判の主文自体も,別居の解消又は離婚に至るまでということで,そもそもその審判自体がいわば暫定的な判断だということになろうかと思います。また,これが長期化して事情が変わったりした場合には,またその増額の申立てとか減額の申立てができるという関係にございます。そういうことがございますので,どうしても裁判所としては,むしろ迅速性というところに重きを置いて進めているというところだろうと思います。また,手続が長引けば長引くほど,今度は,既払い額をどうするのかとか,月々払っているのをどこまで判断するのかということが出てこようかと思います。   それから,別のパターンですと,例えば子どもの関係では,やはり別居している両親の間での子どもの監護者の指定とか子の引渡し,あるいは,既に離婚しておりますと,親権者の変更というものがございます。これにつきましては,子どものために慎重な判断をしなければいけない。それと同時に,子の心身の安定と申しますか,子どもをキャッチボールみたいにしてやってはいけませんということがございますし,逆に,現在の状況を既成事実化してもいけない。そういうことで,慎重にやりつつ,しかし迅速に判断すべきだという事例だと思います。殊に学齢期の子どもですと,学校の手続の関係で住所が早く決まらなければいけないとか,親権者が早く決まらなければいけない。そういう意味で,時間に限りがあるということもございます。そういう意味で,先ほどの婚姻費用の分担という事例とはまた別の問題ではございますけれども,やはり早く結論を出さなければいけない。しかも,こういう事例ですと,少なくとも原審では調査官が調査をして,調査自体はきっちり済んでいるという事例が多いわけでございます。   あと,多い事例といたしましては,遺産分割の事例がございます。これは当事者主義になじむ事件でございますけれども,反面,非常に感情の対立が激しい。一言言えば倍言い返すというようなものが多いわけでございまして,むしろ原審でそれを十分といいますか,長い間をかけて調停,審判でそれを尽くしてきてしまっている。そういう意味で,もう抗告審になると,相手方から何か出れば,もちろん言い返すけれども,それほど新しい主張とか資料等は出てこないのが多いのではないかという感じがいたします。   以上のようなことが背景となって,前回申しましたように,実務では,抗告審では事後審的な処理をしているのかなという気がいたしまして,遺産分割等はそれほど早くというわけにいきませんけれども,先ほど少し申しましたけれども,記録到着後1~2週間で判断をする事例も結構多いわけでございます。しかも,先ほど数字が御紹介ありましたけれども,大多数が抗告棄却で終わっていて,また,事件当事者の中には,高裁となりますと,遠距離の当事者も多いという状態でございますので,すべての抗告事件について一審と同様の手続にするということになりますと,かえって相手方の利益を損なうことになるのではないかと思います。そういう意味で,いわゆる乙類と申しますか,調停になじむ事件についての抗告審について,一審と全く同じにするということについては疑問があるのではないかというのが私の意見でございます。 ○伊藤部会長 分かりました。鈴木委員からは,一定の類型の事件が多くを占めているわけだと思いますが,そういったものについての迅速性の要請あるいは場合によっては判断の弾力性などを理由とすると,ここで一審の規律とすべての事件に関して同様にするということに関しては再検討の必要があるのではないか,こういう御発言かと思いますが,いかがでしょうか。 ○増田幹事 原案に賛成する立場から意見を申し上げます。もちろん,鈴木委員がおっしゃるように,迅速性が必要だということについては全く異論はございません。ただ,迅速にするかどうかというのは,必ずしも制度の問題ではないと思います。民事訴訟においても,控訴審については第一審手続の規定が準用されておりますけれども,実際の控訴審というのは第一審よりも非常に早いし,1回の口頭弁論で終結になるということも多々あるわけでございます。実際の運用としては,第一審の主張立証もありますし,結果も出ているわけですから,第一審の規律と同様としたところでそれほど重いものでもないし,時間もかかるものではないと考えております。 ○伊藤部会長 ここでも迅速性という家事審判手続の基本理念は共有する前提に立ちながら,にもかかわらず,原案の考え方,第一審と同様にするという考え方と,それはやや一律に過ぎて,かえって当事者の利益を損なうのではないかという考え方が対立しているように思いますが,いかがでしょうか。 ○豊澤委員 一審の手続のところで当事者の陳述聴取について議論がありまして,必要的な審問期日を設けるのかどうか,このあたりのところの規律のいかんにもよるのだろうとは思いますけれども,仮に必要的審問が家裁の手続に入るとすると,一審でかなり充実した審理が行われる。そうすると,それが抗告審になったときに,抗告審でも再び必要的審問かというと,そこはやはりギャップがあるような気がいたします。一審で充実した分だけそこで主張なり資料はほぼ尽きている。先ほど鈴木委員からも御紹介がありましたとおり,改めて何か出てくるということは実務的には余りないわけですので,その場合にまで,一審が必要的審問だから,抗告審でも必要的審問というのはちょっと重たいと考えます。 ○髙田(昌)委員 今の御発言とも若干関係するかもしれませんが,一審段階でどの程度充実した,きちんとした審理がなされているかによって,抗告審で行うべき審理というものは変わってくるのだろうと思いますので,仮にこういう仕組みをつくっておいたとしても,実際に抗告審で一審と同様の形での審理を行う必要があるものかどうかの判断は,裁判官が判断するということになりますから,制度設計としては,一審の規律と同様のような形で想定しておく方が望ましいのではないかという気がします。   それから,先ほど,必要的審問期日を開く必要があるかどうかが問題とされておりましたが,抗告審を単独で考えるのか,あるいは続審で考えていくのかによって,必要的審問期日を開くかどうかも変わってくるのではないか,一審で審問期日を開いていれば抗告審では再度その必要はないとも考える余地もありますので,そのあたりももっと詰める必要があるのかなという気がいたしました。 ○長委員 家事の非訟事件の場合には,当事者の権利保護の実現の全体の過程について,迅速性ということを考えることが必要であると思うのです。そうしたときに,一審の手続が最終的にどうなるかは未定ですが,それと高裁の手続とが必ずしも同じにならなくともよいのではないかとの疑問があります。そういう点からしますと,要するに手続が厳格に定まっている場合,手続を全部踏まえていかなければいけないということになると,全体としては手続が重くなってきて,トータルの時間というのは長くなると思うものですから,一審についての規律の仕方と高裁の規律の仕方が同一になる必要は必ずしもないのではないかという印象を持っております。 ○伊藤部会長 そういたしますと,例えば抗告審が原決定を取り消すような場合に関してはという…… ○長委員 その場合には,取り消すような場合についての規律の仕方とそうでない場合の規律の仕方について差が出たとしても,それはやむを得ないのではないか,そういうふうに私は考えるのですが。 ○杉井委員 私は原案に賛成です。抗告というものを認めて,不服申立てを制度として許すわけですから,一審での当事者の手続保障がなぜ抗告審で制限されるのかが分からない。それと,先ほど髙田委員のお話にもありましたけれども,基本的に,今の民訴も同じですが,続審ということを考えれば,いろいろな手続保障が規律としてはあったとしても,運用の問題としてそれを全部一審と同じようにやるということはあり得ないわけでして,そこはやはり現実の運用ということで,当事者の要請にかなった迅速処理ということが十分やれるわけです。そしてまた,一つ一つの手続保障についても,規定としてはあっても,最終的にはやはり裁判所の裁量の部分というのも結構あるわけですから,そういう意味で,それほど硬直的な運用にはならないのではないかと思います。その意味で原案に賛成です。 ○金子幹事 事務当局の考え方をもう一度整理して申し上げます。考え方は,続審であって,抗告審においても審理の終結の日を定める。逆に言うと,それまでは抗告人に限らず相手方も資料を提出できる,それから,抗告人から出された資料についても反論の機会が与えられる。乙類に関してはそのようなものとして考えていたわけです。ただいまの鈴木委員や長委員のお話を伺うと,どうも抗告審で新たな資料を出すような場面が余り想定されていないという感触を持ったのですが,それであれば,思い切って事後審的に構造を組んでしまうことも考えられるのではないか。続審である以上は,抗告審において資料を出す機会というのがあるべきではないかなと思いました。   それから,取り消されない限りは関与する機会が相手方になくてもいいのではないかということについては,例えば一審の審判に対しては相手方は特に不服がなかったので,抗告は自らはしなかったけれども,抗告審になって自分に有利な事情の変更がある場合があるのではないかと思うのです。そのことを主張する機会を抗告審で与えなくても,取消し・変更の裁判とか,あるいは場合によっては請求異議等で救済するという道は何らか開かれることになるのでしょうけれども,紛争の一回的解決という観点から,抗告審の中で資料を出す機会を与えた方がいいのではないかという気がします。例えば,抗告審係属後に失業してしまったとか,あるいは一審で給付条項がついていて,それについては自分が自ら任意で支払ってしまったとか,そういう場面は,数は少ないかもしれませんが想定されるので,そういうものは抗告審の中で主張する機会を抗告審の相手方の方にも与えるべきではないかなと思いました。 ○伊藤部会長 今の点は何か御発言ございますか。 ○中東幹事 お話を伺っていて,杉井委員のお話が一番分かりやすいと思いました。と申しますのは,理論的に非常にすっきりしていると思えますし,かつ,実務的にも,続審ということを考えれば問題はなさそうであるということであるからです。実務での問題については,裁判所の先生方,どういうふうにお考えなのでしょうか。実際の規定振りにもよるかと思いますし,あるいは一審の規律そのものをまだ確定しているわけではないので,そのあたり不透明なところはありますが,杉井委員の御意見を踏まえても,なおやはり裁判所としては運用しづらいということなのでしょうか。その点をお教えいただけばと思います。 ○伊藤部会長 杉井委員,あるいは今,金子幹事が説明された原案の考え方も同様かと思いますが,抗告審の基本的な性質を前提とする限りは第一審と同様の規律ということで,あとは抗告審としてそれを踏まえて合理的な運用をすれば,それによって,審理が遅れるという事態は避けられるのではないか,こういうようなことかと思いますが,鈴木委員などでなおその点についての御発言があれば,お願いします。 ○鈴木委員 私も先ほど,一審と全く同じにするのはどうかと言いましたけれども,具体的に何も言っていないのです。一審の方がまだはっきり決まっていないものですから,それとの関連がありまして,今日のところはどうしても基本的な考え方ということになってしまったわけです。先ほど杉井委員は,裁量があるのだから,それでと言われたのですけれども,一審の手続にどの程度の裁量が認められるかという問題が現実にございます。かなり広い裁量があれば,実務的な感覚で抗告審でもやっていけばいいのではないかということになりますけれども,そこがちょっと分からないものですから,なるほどというわけにもいかないというところでございます。   それから,先ほど金子幹事がおっしゃった,相手方にとって有利といいますか,事情が変更になった場合というのも,不利益変更が可能で,ではついでにやってくれと,あるいは附帯抗告が可能で,それをするという問題なら,後の不利益変更の問題となり,その機会を与えるかどうかの問題となります。しかし,こういう状況になったのだから,なおさら原審判の結論でいいはずだという程度であれば結局結論は変わらないわけですし,既払い額等につきましては,先ほども若干申しましたけれども,本来,訴訟のように,口頭弁論終結時を境に既判力云々という問題はございませんので,いずれにしてもどこかで生じてきてしまう問題で,しかも,手続が延びれば延びるほど既払い額の問題が出てくる。長引けば長引くほどその問題があるから,早く結論を出してというようなことも言えるのではないかという気はいたします。 ○長委員 私も鈴木委員が述べられたのと同じ印象を持ちました。弾力的に運営するためには,弾力的に運営することのできるだけのいわば例外的な定めというのがあれば,そういうことが可能になってくるだろうと思います。   それから,例えば収入が減ったというような事例をおっしゃったわけですけれども,どちらの方から不服申立てがされた事例が今想定されているのですか。 ○金子幹事 私が考えていたのは,抗告しなかった方が,機会があれば抗告審係属後に生じた減額事由を主張できたはずなのに,その機会が奪われないかということです。その人に通知もされないとするとですね。 ○長委員 権利者の方がより多額の請求をしたいと思って抗告をしたのだけれども,義務者の方にいろいろな事情があった,こういう事例ですね。それを私が申し上げた手続の中でどう反映していくかというのは,更に細かく検討しないと何とも言えないのですが,ただ,御指摘のようなことは,続審であるならば考慮できるようなことを考えることが可能ではないかと思います。 ○脇村関係官 2点確認したいことがございまして,結局,今,鈴木委員あるいは長委員から,迅速処理の要請もあるのではないかというお話があったと思うのですけれども,その関係でいくとまず問題となるのは,恐らく,終結の例外をどうするか,あるいは抗告がされた旨の通知の例外をどうするかというような問題に帰着するのかなという印象を抱きました。具体的に言えば,恐らく,明らかにこれは棄却だなというときには,通知あるいは終結せずに終われるようにすべきではないか,それは一審の手続と同一だと言ってしまうとできないのではないかとか,そういう御指摘なのかなという印象を抱いたので確認させていただければと思います。   もう1点は,審問期日について,審問期日の発想を,その事件については少なくとも1回は口頭で意見を言うという考えを貫くのであれば,1回聞いているので,もう抗告審ではいいのではないかという意見なのか,それとも,原則は聞くべきだが例外の組み方をもう少し何かした方がいいのではないかという御意見なのかどうかという点を確認させていただければと思ったのですけれども。 ○伊藤部会長 今の段階でただいまの脇村関係官からの質問に関して御発言ございますか。 ○長委員 正確なことを言うためには,具体的に検討させていただいてからの方がいいと思いますけれども,例外的な立て方を工夫すれば可能なのかという点についてだけ申し上げますと,抽象的に言えば,例外的な余地が広くなれば,それは運用でいろいろ工夫ができるはずですから,可能であるということも考えられ得る,それは言えると思います。 ○伊藤部会長 分かりました。そうしましたら,原案に賛成というお考えも有力にございますし,それに対して,第一審の規律と同様にするということには問題があるのではないかという御指摘もありますが,ただいまの意見の交換にもございましたように,もう少し詰めて考えると,両者のお考えのちょうど調和点のようなものがあり得るような予感がしないでもありませんので,そのあたりを事務当局に検討してもらうことにいたしましょう。   まだ6,7が残っていますが,ここでいったん休憩をとらせていただきます。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは,再開したいと思います。   引き続きまして,18ページの「6 不利益変更禁止の原則及び附帯抗告」ですが,①,②についての説明は先ほど波多野関係官からあったとおりですが,この点は何か御意見ございますか。 ○三木委員 どのような言い方をすべきかによるのですが,附帯抗告の制度を設けないという点については,特段の意見はございませんが,①の不利益変更禁止の原則の関係ですが,これは,場合によっては,法制審議会でつくる何らかの書類の表現振りの問題だけかもしれません。正面から規定を設けるのが難しいということは分からないではないということですが,ただ,委員・幹事の皆さんには御案内のように,非訟的な事件についても不利益変更禁止をどう考えるかというのは多々議論のあるところでして,また,実質において不意打ち的な変更をしていいとは恐らくだれも思っていないというところですので,正面から規定を置かないという言い方ならまだしも納得できるのですけれども,適用しないと言われると,解釈論まで制限するのかということではもちろんこの書面の趣旨はないと思いますが,その辺少なくとも慎重な書き振り,ないし法制審議会でこういう議論があってこうなったということが,そういうことはないとは思いますけれども,間違ってもないように,この場での議論と最終的な書面のつくりを御配慮いただきたい。 ○伊藤部会長 「不利益変更禁止の原則は適用しないものとする」という表現の意味について,補足していただけますか。 ○波多野関係官 (補足説明)にも記載していますとおり,家事審判手続において何を不利益と言えばいいのか判然としないこととか,家事審判事件においては家庭裁判所が後見的に,公益的に判断するということですから,抗告申立人の利益,不利益は分かりませんが,それに拘束されることなくあるべき審判を求めるという要請は異ならないという意味で,いわゆる民事訴訟的な不利益変更禁止の原則という審判の範囲が拘束されるということは適用していないという意味合いで提案しているところでございます。 ○伊藤部会長 それを踏まえて,仮に適用しないということでの立法がなされたときに,三木委員がおっしゃるように,しかし抗告人に対する不意打ちであるとか,そういったことの視点から一定の考え方がそのもとでも提示されるということは当然あり得ることではないでしょうか。 ○三木委員 蛇足ながら申し上げますと,今の御説明にもあったように,ここで言っておられる意味は,申立拘束原則が働かないという趣旨であって,ただ,これはもちろん学説なりによりますけれども,不利益変更禁止原則は申立拘束原則に尽きるものではないという理解もまた極めて有力ではないかと思いますので,そのようなことを私は懸念し―書き振りだけではなくて,要するにここで言っているのはあくまでも申立拘束原則の不適用であり,また,申立拘束原則の規定は置かないということではないかと思うということです。 ○伊藤部会長 そこは,三木委員のおっしゃる申立拘束原則の不適用というふうには,もちろん限定する考え方もあり得るかと思いますが,そのあたりは,仮にこういう適用しないというふうにしたときのその後の議論の話かと思いますが,いろいろ議論はあると思います。 ○三木委員 もちろん政策説的な発想を是とすべきだというところまでを議論しているわけではなくて,しかし立法の段階でやれるのは,申立拘束原則をうたった規定は置かないということではないかという趣旨です。 ○伊藤部会長 ほかに,ただいまの点について御意見ございますか。高田裕成委員,いかがでしょう。 ○高田(裕)委員 特に付け加えることはございません。おそらく,法制的にも民事訴訟法第304条の不適用という立法形式になるのだろうと思います。民訴法第304条につきましては,今,三木委員がおっしゃいましたように,申立拘束主義と理解する立場もあり得そうですし,条文上は私もそう理解すべきかと思いますが,そうだとしますと,その範囲で適用が排除されるということでして,それ以外にいわゆる政策説的な規律,すなわち不利な判断を恐れて抗告を提起することを差し控える当事者にどう対応するかという刑訴法第402条のような規律については,そもそも民事訴訟法自体に条文はございませんので,解釈にゆだねる余地を残しておいていただくということではないかと思います。 ○増田幹事 理論的にどう説明すべきかとなるとちょっと私の能力を超えるのですが,事案によっては,つまり事件類型によっては,例えば婚姻費用,養育費,財産分与,遺産分割といったものを考えますと,主として当事者の私益にかかわる事件であろうと考えますし,財産関係事件と位置づけることが可能なものですので,こういったものに各論的に不利益変更禁止の原則を入れるということもできないかなというふうには思っております。 ○波多野関係官 増田幹事が御指摘された点でございますが,一定の類型,財産的な類型についてであっても,不利益変更の禁止,いわゆる申立ての拘束力を認めるかのような制度を設けるということは,非訟,家事審判の本質と相いれるのかということについて慎重に検討しないといけないのではないかと考えてます。 ○増田幹事 そういう問題点があることは十分了解しておりますので,こちらでも検討しておきます。 ○伊藤部会長 分かりました。それでは,増田幹事からは問題の提起があったということで受け止めさせていただきます。ほかにいかがでしょうか。―よろしいですか。   それでは,不利益変更禁止の原則は適用しないということの意味については若干の御議論はありましたけれども,ここで掲げられている考え方そのものに関しては特段の御異論がないということでよろしいでしょうか。 ○増田幹事 附帯抗告につきましては,先ほどの5の(2)の審理の在り方ともかかわるのではないかと思いますので,これも引き続きよろしくお願いします。 ○伊藤部会長 分かりました。   それでは,7の「再度の考案」に関して,再度の考案の可能性を認めるということと,あわせて(注)のところでございますけれども,いわゆる乙類的なものについての終局審判に関して再度の考案を認めるか,それともそれを否定するか。(注)の最後のところに書いてある考え方,このあたりを含めて「再度の考案」に関して御議論はございますか。 ○菅野委員 本文につきましては,特段の異議はございません。(注)でございますが,消極の意見,積極の考え方というふうになっていまして,私が読んだときには,「他方で」というところで,「終結前の資料に基づいて,再度の考案をすることを否定するまでのことはないとも考えられる」という,この言い振りとほとんど同じ考え方でございます。再度の考案は,御承知のとおり頻繁に行われているわけではございませんから,実務側から見て極めて譲れないことであるとか,そういうことではないのだと思うのです。ただ,例えば,訴訟に近いぐらいきちんと審理をしている借地非訟などの場合におきましても,この再度の考案というのはあり得るという前提で動いておりますし,普通の抗告以上に,やはり家事の問題での後見性とか公益性とか,そういうことの意味合いでの職権性というのでしょうか,そういう色彩もあるという家事審判においては,この再度の考案という制度がむしろしっくりいくというか,ぴったり適合することなのではなかろうかと考えます。見直したところ,ああそうかと,間違っているところがあったというところで直せるのだったら,抗告審に行くまでもなく,その場で直せるものは直す。それが当事者に対しての,むしろ裁判所の責務なのではなかろうかと思います。   実際に緊急性ということを考えましても,前にも申しましたように,それほど家事の経験が長いわけではございませんけれども,例えば親権者の変更などの問題でも,聞いてみると,本当に緊急なときというのがあり得るのです。あした外国に出る,一方で,実は今の親権者とは非常に疎遠であって,実際に呼び出しても出てきてもくれていない,そういう緊急性がある事柄というのもいろいろございますし,せっかくあり得る制度なのになくしてしまうのはもったいないような,そんな感じがいたします。裁判官というのは結構優柔不断なところがありまして,いろいろと悩んだり迷ったりしながら,でも,切りのいいところ,この日までにやらなければいけない,言渡日なら言渡日,決定日なら決定日,そこまでで踏ん切りをつけるわけです。結構本当はエンドレスに考えたいところを切りをつける。切りをつけた。で,やっぱりそこで間違っているよと気付いたときは速やかに直すという制度はあった方がよいような気がいたします。 ○伊藤部会長 菅野委員からは,「他方で」という部分に関して,終結前の資料に基づいてやるのであれば,当事者の手続的な利益も害しないし,かえってまた当事者の利益に資するという,例外的ではあってもそういうことがあり得るので,この考え方が妥当なのではないかという御意見がございましたが,いかがでしょうか。 ○三木委員 (注)にあります点ですが,調停ができる事件についての再度の考案については,どうしても危惧の念をぬぐえないところがあります。よく分からないのは,そもそも相手方のある事件で,あるいは争訟性のある事件でどのようなケースを典型例というか想定して再度の考案ができる,できないということを書いておられるのかがよく分からなくて,私自身も争訟性のある事件で再度の考案の例が頭に浮かばないものですから,そこで歯切れのいい発言になっていないのですが,抽象的に考えますと,争訟性のある事件につきましては,即時抗告がなされて再度の考案で変更されるということは,相手方にとっては不利な変更になるわけですから,それで果たして手続保障が尽くされるのかという点は疑問があります。終結前の資料に基づいてやるのだから手続保障は尽くされているのかといいますと,即時抗告の申立書に何がどう書かれているかとか,それに添付資料とかがあるのかどうかによっても違うのかもしれませんが,そこで何かしら新しい情報が出てくることはあり得るわけですね。それを,再度の考案というような形で結論をひっくり返したり,変えるということが適切なのか。   繰り返しますけれども,それは結局どのような事件でこれを使おうとしているのかが分からないと,おかしいとかおかしくないとなかなか言いにくいところがあるのですが,できましたら例を挙げていただいて議論できればと思います。私が今申し上げたのは,少なくとも調停ができる場合はということで,そうではない場合についてもやはり若干の危惧が全くないわけではないということです。 ○伊藤部会長 先ほど菅野委員からは親権者の指定の話が出ましたが,今,三木委員からは,なおその具体例についてもう少しというような御発言がございましたので,もしできましたら関連する点でお願いしたいと思いますが。 ○菅野委員 頭の中にありましたのは,緊急性ということで親権者の変更がぱっと思いついたのでしゃべってしまいましたが,確かに再度の考案ということで言うと,親権者の変更でそのような例は余りないのではないかという気はいたします。ただ,例えば婚姻費用の分担の問題や養育費等,金銭的な問題であっても,例えばこの給料とこの所得とこの所得ということでちゃんと資料が三つ出ていた。三つ合算するとこうなる。ところが,見落として二つで計算してしまった。それを抗告を見たら,一つ見落としていたと。そういうときに手続をもう一度やり直す形でやるのかということなのです。裁判官は,先ほどいろいろ迷ったり優柔不断なところがあると言いましたけれども,一度決定してしまえば,それを維持したいという意識は非常に強いはずで,それほど簡単に変えないはずなのです。だからこそ再度の考案というのはそれほどないだろうという話をしたわけで,それでも変えるというのは,正に失敗した,見落としたと,そういうことを頭に置いていたのです。そうすると,これはもしかしたら現場の者の甘えなのかもしれませんけれども,せっかくならそういう制度があった方が,そういうミスのところを直せるし,それが当事者にとってむしろ利益になるのではなかろうか。そうすると,新たにこういう制度を構築しようというような発想というのは余り生じないのかもしれませんけれども,今あり得るのなら何もなくす必要はないというふうに,そういうレベルで考えた次第でございます。 ○伊藤部会長 婚姻費用の分担についての具体例が示されたわけですが,三木委員はなおやはり消極のお考えですか,この類型の審判事件に関しては。 ○三木委員 婚費分担の例は一つ挙がりましたが,しかしもちろんそれに尽きるものではないと思いますので,ほかにどういう使われ方をするのか。もちろん抗告が理由はあると認めるという要件はあるのですけれども,実質的な要件は何もないので。繰り返しますが,抗告権者にとってはもちろん迅速な結論が出ていいでしょうけれども,有利な地位を獲得した相手方はそれを奪われるわけですので,なお争訟性のある事件については疑問がぬぐえません。それから,他方でニーズがどのぐらいあるかというと,今,菅野委員もおっしゃったように,甲類のような事件であればともかく,争訟性のある事件でそれほどニーズがあるのかという気もしまして,一方で使われ方がよく分からないし,相手方の権利を不当に害する可能性はある。他方で,それほど争訟性のある事件でこれが使われるようなニーズがあるとも思えないということで,消極な意見を述べておきます。 ○伊藤部会長 ほかの委員・幹事の方はいかがですか。菅野委員と三木委員の意見がいわば対立するような形になっておりますけれども。 ○増田幹事 調停をすることができる事項についての審判事件の終局審判について再度の考案を認めるとすると,それに対する不服申立ても認めないわけにはいかないだろうと思います。そうすると,再度の考案でひっくり返された相手方から見れば,更に不服申立てをするというのが通常になろうかと思いますので,再度の考案を認めたとしてもそれで終局的な解決になるのかどうかというところに疑問がありまして,事件全体の迅速性の観点からも,やはり認める実益はないのではないかと考えております。 ○鈴木委員 今ここで考えたことだけで,私は再度の考案というのは自分でもやったことがありませんし,見たこともない。先ほど裁判官の気持ちの問題がありましたけれども,間違っていても再度の考案だけはやりたくないというところだと思いますので,濫用ということは余り心配することはないと思います。あり得るかなと思いましたのは,先ほど婚姻費用の分担の例がありましたけれども,既払い額として主張があった,しかもそれは相手方も争っていない,ところが,それを入れるのを忘れてしまったと。審判書の中にそれが出ていれば,単に引き算だけして違算ということで更正決定ができるのでしょうけれども,審判書自体にそれがあらわれてこないと更正決定もできない。そこで,争いのない既払い額について,減額した再度の考案をやるかというぐらいであれば,しかも即時抗告の理由がそれだけであればあり得るかなと思う程度です。そのために規定を置くかというのは別問題だと思いますけれども,そういうのもあり得るということで残しておいても,先ほど言いましたような濫用のおそれはないと思いますので,いいのではないかなというところが私の今ここで考えたことです。 ○菅野委員 先ほど増田幹事から御指摘を受けたのですけれども,要するに,本当に争いがある事柄や問題の争点について再度の考案で変えるということはちょっと考え難いのです。したがって,言ってみれば,ここでちょっとやればそれで終わってしまうのに,それはやらないとまずいかなと思ってやるのが多分再度の考案であって,それでやったものに対して更に抗告が出るだろうとか,争いがまた起きるだろうというものなら,それは絶対やらないと思うのです。そういう意味では迅速性には資するのだろうと考えます。裁判官の心理みたいな,心の中みたいなことばかり言ってしまって申し訳なかったのですが,推測はされ得るところではあろうと思う次第でございます。 ○山本幹事 私が気になるのは,やはり民事保全法との関係です。いろいろな立法時の議論はあったのだと思うのですが,説明されている立法趣旨というのは,やはり十分な攻撃防御の機会を与えた上でなされる裁判であるので,それに対して申立てがあったときに安易な更正は認めるべきではないというのが公式の説明だと思います。それからすると,保全異議とかと今回の調停をすることができる事項についての審判事件の手続保障のレベルというのは,私の見るところかなり近いような印象を持っています。終結を設けるとか,双方立ち会うことができる規律を設けるとか。そういう点を考えると,どうこれをディスティングイッシュすることができるのだろうかということが私の関心だったのですが。   先ほど,家事の場合にはやはり裁判官の裁量が広いというか,そういう部分が違うのかなということでもお話を伺っていたのですが,今,御議論になったような例というのは,計算間違いに近いような,そういう意味での誤りのようなものというのは,それは保全の場合でもそういうことはあるような気がして,迅速性というのは,保全も私の理解ではやはり迅速な裁判を求められているような気がするので,今の御議論からすれば,私は違いを見つけるのは難しいような気がしております。 ○菅野委員 民事保全法との違いについてきちっと考えたわけではないのですけれども,保全の場合の手続保障と家事とではやはり差はあるのではないかと今まで思っていました。同一ではないと思っておりました。   それと,先ほどもちょっと申しましたけれども,家事の場合に,やはり後見性というか公益性というか,裁判所側も,言ってみればミスに気付いたら正さなければいけないというような発想,それはどのような裁判でもあるのでしょうけれども,そういうものがある程度前に出るのか,それとも後ろに一歩下がるのかというバランスの問題の中で,普通の,例えば民事訴訟における抗告の次元あるいは保全抗告の次元というものと家事審判における抗告の次元というのはやはり差があるのではないかと思います。そうすると,ある部分について再度の考案という制度があるときに,家事審判の方においてそれを殊更抜いてしまうのはどうかという,そんな問題意識で申し上げていまして。ちょっと余り回答になっていないような気もしますけれども。 ○伊藤部会長 どちらかというと,やはり後見性の方ですね。 ○菅野委員 そうですね。 ○金子幹事 一つの考える素材として申し上げますが,相手方のあるといいますか,調停ができる事項についての審判について,審理終結日を入れることについては大方の御理解が得られたものと承知していますが,その前提で考えたときには,さすがに終結後の資料に基づいて再度の考案をするというのでは,何のために終結概念を入れたかという問題になるので,それで「他方で」のところも終結前の資料に基づいてするということだけを念頭に,その余地もあるということで書いてあります。しかし,実は,民事訴訟法の決定手続における決定に対する再度の考案については,これは資料の制限がないというふうにされていますので,実は「他方で」のところを入れるにしても,同じ再度の考案でありながら資料の制限について違う規律を設けなければいけないという,その悩みもあるのです。翻って考えて,終結概念を入れたということと,それから民事保全法第41条第2項の方との整合性ということも考えると,やはり「他方で」の前の部分の方がいいかなというくらいには考えていたところです。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。大体御議論,御意見のある方はお出しいただいたでしょうか。 ○畑幹事 私自身は非訟のときに,この「他方で」以下のような考え方もあり得るのではないかということを申し上げたように記憶しているのですが,確かに問題点もあり得るところでありまして,とりわけ三木委員がおっしゃった,不利に変更されてしまう相手方の利益というのはやはり考える必要はあるだろうと思います。そこで,仮にこういう再度の考案を認めるとしても,相手方に何か更に反論の機会を与える必要があるような場合には,審理を再開する,あるいは逆に再度の考案をしないということが前提になるのではないかと考えております。 ○脇村関係官 今の畑幹事のお考えも理論的に十分あり得るとは我々としても考えていたのですけれども,ただ,相手方に反論の機会を与えるために,審理を再開することは,我々も検討していたのですが,そこまでやってしまうと,終結制度を設けた意味がなくなるのではないかという気がしております。 ○伊藤部会長 よろしいでしょうか。大体御意見が出たように思いますけれども,それを踏まえて事務当局に検討を続けてもらうということにいたしましょう。それでよろしいですか。―はい。   それでは,次の「第24 再審」及び「第25 審判の取消し又は変更」の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 御説明いたします。   第24の「1 再審の可否及びその対象」では,確定した終局審判及び即時抗告をすることができない終局審判に対しては,再審の申立てをすることができるものとすることを提案しております。   「2 再審の手続」では,再審の手続について,民事訴訟法第338条から第348条までの規定に準ずる規定とするものとすることを提案しております。   「第25 審判の取消し又は変更」の「1 家事審判手続の指揮に関する裁判」では,家事審判手続の指揮に関する裁判は,その性質上,当然取り消すことができると解されますことから,これを明文化することを提案しております。   「2 審判の取消し又は変更」では,不当な審判の取消し又は変更について,現行非訟事件手続法と同様の規律とすることを提案しております。   (注)1では,取消し又は変更の裁判に対する不服申立てについて,取消し又は変更の対象となった裁判に関する不服申立ての規律に従って不服申立てをすることができるものとすることを提案しております。   (注)2では,本文の(1)及び(2)に該当し,本文の規律では取消し又は変更することができない審判に関する,いわゆる事情変更の取消し又は変更について総則的な規定は設けず,個別に規定を整備することを提案するものであります。   (注)3では,取消し・変更を制限すべき場合については,いかなる場合に取消し・変更を制限すべきか容易に判断し難く,また,網羅的に規定することは困難であると考えられますことから,これを解釈にゆだねるものとすることを提案するものでございます。   以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは,まず「第24 再審」でございますが,1の「再審の可否及びその対象」に関してはいかがでしょうか。―特別御質問,御意見等ございませんか。もしそうでしたら,ここに掲げられている事項を基礎にして今後の検討を進めさせていただきたいと思います。   2の「再審の手続」に関しても,民訴の規定の準用ということですけれども,これもよろしいでしょうか。   そういたしましたら,次の「第25 審判の取消し又は変更」の1の「家事審判手続の指揮に関する裁判」の取消し可能性に関して,これは何か御発言ございますか。―よろしいでしょうか。   それから,次の22ページの「2 審判の取消し又は変更」に関して,まず本文のところで,(1),(2)を除いて取消し又は変更の可能性を認めるということですが,この部分はいかがでしょう。 ○増田幹事 一般的にこういう規定を設ける必要はないのではないかと考えているのですけれども,その前に,質問があります。例えば保佐人に代理権を付与する旨の審判などは,取消しの審判が後で別途できるのです。即時抗告はできないのだけれども,その取消しの申立てはできる,こういう類型のが他にも幾つかあるのですけれども,こういうのは対象になるのかならないのか,どうお考えなのでしょうか。 ○伊藤部会長 今の点は,保佐人に代理権を付与する旨の審判の例ですね。 ○脇村関係官 個別にこの段階ですべてについてお答えすることは難しいのですけれども,民法第876条の4に,保佐人に代理権を付与する旨の審判がありますが,―今,例に挙げられたものだと思うのですけれども―これと現行非訟事件手続法第19条との関係については,民法第876条の4第3項は,「第1項に規定する者の請求によって,同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる」ということで,職権による取消しを認めていないことからすると,非訟事件手続法第19条による取消し・変更というのはできないと解釈することもできるのではないかと思います。   今回,非訟事件手続法第19条とほぼ同趣旨の取消し・変更を認める案を出しておりますが,民法の規定との関係で,一部については今言ったような考え方で適用されないものもあるとは思っております。 ○伊藤部会長 増田幹事,いかがでしょう。 ○増田幹事 非訟のときも同様のことを申し上げましたけれども,あえて一般論としてこういうものを認める必要はなくて,もし各論で必要であればその都度入れていけばいいのではないかと思っております。それほど適用の必要性がある事案があるわけでもないように思います。 ○伊藤部会長 今の増田幹事の,必要があるような類型に関しては,それぞれの事件類型に応じた各則で設ければいいので,一般的な通則として取消し・変更の規定を設ける必要があるのかという,現行法とは違いますけれども,そういう問題の提起でございますが,その点はいかがでしょうか。このあたりはやや法理論的な問題かと思いますが,学者の委員・幹事の方,どうでしょう。 ○高田(裕)委員 増田幹事に御質問なのですけれども,そもそも不当であった審判に対する取消しについてもなお限定された領域しかないというお考えなのでしょうか。従来は,事情変更についてはともかく,不当な審判がある場合には,非訟の裁判であれば職権取消しというのは可能であるという理解があり得,かつ,それに従って議論してきたというのが私の認識でございますけれども。 ○増田幹事 私もちょっと具体的なものが思い浮かばないのですが,非訟のときに実例としてあったのは,確か過料の裁判だったと思うのです。あれは本当に行政処分のような類型のものだから,行政庁が行政処分を取り消せるのと同じような形で取り消すことが可能ではないかと申し上げたと思うのですけれども。家事審判において,そもそも客観的に当,不当ということが言えるのかどうか,客観的な基準がないものを,いったん示した判断を取り消すことができるのかどうかという根本的な疑問があるということです。 ○伊藤部会長 そうすると,増田幹事の今のお話ですと,こういう取消し・変更可能性をどこに設けるかという話よりは,一般的にはそもそもこういう規定を設けることの合理性があるかどうかという,そちらの話ですね。 ○増田幹事 そうですね。 ○脇村関係官 非訟のときと同じ議論なのかもしれませんけれども,現行非訟事件手続法第19条の趣旨というのは,非訟事件という,家事審判もそうですけれども,基本的に合目的,後見的な作用であるという非訟事件の特質から,あるべき審判をすべきであるということを前提に,それが後になって,審判を出した後もやはりそれが合目的な観点からおかしいというときにはやはり原則として取消し・変更を認めるべきだという点にあると理解しているところでございます。ただ,即時抗告できるようなケースについては,それは正に早期確定をすべきことから除外すべきではないかと我々としても考えていますが,基本的な考えというのは現在でも維持してもいいのではないかと考えているところです。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。こういう規定を設けることが何か問題を生ずるとか,そういうことが想定しにくいように思いますが。 ○三木委員 初歩的な質問を含みまして恐縮ですけれども,(1)の「却下」というのは,いわゆる棄却の趣旨でいいのでしょうか。それから,今,部会長がおっしゃった,弊害を生じるおそれがあるかという点,そこは私もよく分からないので伺うのですが,(1)と(2)で,例外で,できない場合で外してあるので残ったものの中に以下のようなものが含まれるかどうかということです。以下のようなものというのは,要するに,私の理解が間違っていなければ,この取消し・変更は時間的制限はないわけですね。したがって,理論的には何年後でもできるわけで,地位が一定期間継続した後に,それが安定したと本人が思っているときに,かなり将来になってひっくり返るというような事態がすべてこれで排除されているのかどうか。ちょっと私,すべての残っているものと排除されたもののリストがつくれないものですから,お教えいただければと思います。 ○伊藤部会長 三木委員がおっしゃった前半の部分,却下の意味ですが,そこはいかがですか。 ○波多野関係官 そこは,三木委員がおっしゃったように,棄却の意味を含むと思われます。   2点目のところは,いわゆるいつまでたっても取消し・変更できることによる不都合でございますが,ちょっと今明確にどの類型でどういう不都合があるかは即時にお答えすることは難しいですが,取消し・変更の効力との関係でもまた整理をしないと恐らくいけないところかと思われますので,そのあたりを踏まえて,こちらも少しそこは検討させていただきたいと思います。 ○三木委員 続けての質問ですけれども,参考に挙げていただいているドイツ法の現在の改正法はこのようなものは認めていないという理解でよろしいのでしょうか。 ○伊藤部会長 そこは,(参考)のドイツ法の規定の意味ですけれども,いかがですか。 ○波多野関係官 今おっしゃった継続的な……。 ○三木委員 そうではなくて,事情変更もないのに取り消せるというのは認めていないということでよろしいのでしょうか。 ○伊藤部会長 この点は,どうぞ,畑幹事,お願いします。 ○畑幹事 私もきちんと調べたわけではないですが,そういう理解でよろしいかと思います。 ○三木委員 ドイツがどうだからということを言うつもりではないのですが,ドイツはなぜ認めていないのかというか,あるいは日本がなぜ認めているのかという話かもしれませんし,もともとドイツは最初から認めていなかったのか,途中で何か議論があって認めなかったのかとか,何かその辺,いかなる形でも結構ですけれども,参考のために教えていただければと思います。 ○畑幹事 もとは認めておりました。現在の日本法と同様のものを認めており,今回の改正で―今回というのは,ごく最近の改正で変えたということのようであります。それがなぜかというところの詳細までは調査が及んでおりません。 ○三木委員 増田幹事の御発言にもあったように,必要性というか,あるいは正当性を,規定振りを抽象的に見る限り余り感じないものですから,かえって,時期のいかんを問わずに本案的なものの変更が可能ということですから,弊害の方がむしろ大きいのではないかという印象を持っております。ただ,先ほど質問しましたように,これでそういうものが例外規定で外されているのかどうかがよく分からなかったものですから,現実を知りたいと言ったのと,恐らくこれは私も今伺って知ったばかりですからもちろん存じませんが,ドイツでも何かしらの議論があって外されたのかなという気もしましたので,卒然と考えて,余り合理性はないように思ったという次第です。 ○伊藤部会長 ドイツ法がそういうふうに変わったことについては,確認のために調べられる範囲で調べてと思いますが,それはそれとして,先ほどの再度の考案と若干似たような面もなくはありませんが,こういうことの規定をやめてしまう,そういう決断をすることがどうかという―どうぞ,平山関係官。 ○平山関係官 例えば限定承認の申述がいったん受理された,その後どうも財産管理をしている間に法定単純承認行為をしていた相続人が見つかったような場合に,そのまま限定承認の状態が続いておりますと,清算まで相続債権者は何も取り立てられないことになるのだと思いますが,そういったような場合に元の限定承認の申述受理を取り消すということはあり得ていいという気がいたします。 ○伊藤部会長 ありがとうございます。 ○中東幹事 部会長がおっしゃった,なくしてしまって大丈夫かという点については,私も,再度の考案についての菅野委員のお話等を伺っていますと若干不安なような感じがいたしました。例外では,即時抗告できる審判は取消し・変更はできないということなのですが,どちらの立場でも早期に法律関係を安定させるということが重視されているように思えるのですが,どちらの方が当事者にとっていいのかをお教えていただきたいと思います。それから,この審判取消し又は変更でいけば,先ほど三木委員からお話がありました,いつまででもいいというのがありますが,先ほどの再度の考案にいけば,不服申立てをだれかがしなかったらもうそれでおしまいということになってしまうという違いもあるかと思います。その点で,公益的,後見的な非訟の性質からいって,これを本当になくしてしまっていいのかが分かりませんので,お教えいただければと思います。 ○伊藤部会長 もちろん作用する場面は再度の考案とここでの話は全然別の場面なのですけれども,いかがでしょうか。先ほど平山関係官からは具体例のお話があったのですが,こういう場面で「不当と認めるとき」ということでの取消し・変更の可能性を認めることが法律関係や地位の安定をかえって害するおそれがあるとか,そういう問題が出る可能性がありますでしょうか。 ○中東幹事 先ほど来の裁判官の先生方のお話を伺っていると,恥ずかしくてそのようなことはおよそされないというような印象を持ったのですが。 ○菅野委員 発言しなかったのは,結局先ほどの見解と同じようなことになってしまうので,繰り返しお耳を汚すのもなんだと思いまして,それで何も発言しなかったのですけれども,確かにそれほど使われるものなのか,あるいはこれが使われることが望ましいことなのかと言われれば首をひねらないといけないことです。けれども,では,こういう制度をシャットアウトして,それで非常に後見性なり公益性なりの観点から,本来だったら気付いたらしなければならないようなことでも手段がそのときなかった,そういう意味での不安感というのでしょうか,現場側からすると,なくしてしまうことに対する不安感というのはあるというところが偽らざる気持ちなのでございますが。 ○伊藤部会長 そうしましたら,ドイツ法のお話も出ましたので,そのあたりをもう一度確認した上で,再度検討する機会を持つことにいたしましょう。それでよろしゅうございますか。   あと(注)の関係が何点かございますが,まず(注)の1,取消し又は変更した裁判に対する不服申立てについては,ここに掲げられているとおりの考え方ですが,いかがでしょうか。もとの裁判に対する不服申立てを基準として考えるということですが,これはよろしゅうございますか。   そうしましたら,(注)の2ですが,先ほど来関連する話が出ておりますけれども,いわゆる事情の変化による取消しの又は変更の可能性。本文の方では,できない裁判に関してですけれども,これに関してはいかがでしょうか。ここでは,一般的な規定は設けないで個別的に必要な規定を整備したらどうかということが記載されておりますけれども,この点はいかがでしょう。 ○三木委員 あくまでも確認ですが,仮に部会長がおっしゃった再度の検討で取消し・変更を置かないことになったとすれば,逆に事情変更の取消し・変更は置くという理解でよろしいのでしょうか。 ○金子幹事 今,事情変更の特則といいますか,個別に規定があるものの中には,2の本文の規定によって,取消し・変更ができない類型に入ってしまうけれども,その後の事情変更があれば,当然前の審判の有りようも変わってくることが当然想定されるものについては,事情変更によって変更できるという規定を置いているものがあります。そちらの方の規律が多いと思います。いわば事情変更によって,一律に事情変更があれば取消し・変更できるというよりは,基本的には事情変更があっただけでは取消し・変更は一般的に認めるものではなくて,それは個別にきめ細やかに検討した方がいいのではないか。例えば,即時抗告を許していて,それはそれで確定させてしまえば事情変更を許さないというのを原則にして,その上で,それでも事情変更は想定されるようなもの,例えば扶養料とかそういうものについては個別で対応するということで考えていたものですから,今,三木委員の前提となるお考えにどこまで答えているかちょっと疑問があるのですが,それにしても,一般的に事情変更によって取消し・変更を認めるということについては,かなり問題が多いのではないかと思います。 ○伊藤部会長 仮に先ほどの取消し又は変更,本文の方でそれを認めないということになっても,ドイツ法のような形で規定を設けることが合理的かどうかは必然的に決まってくる話ではないということだと思うのですけれども。 ○高田(裕)委員 非訟のときの議論を誤解しているのかもしれませんので確認させていただきたいと思いますが,2で事情変更による裁判の取消し云々という形で個別に規定を設ける場合には,これはいわゆる新事件として扱う,つまり旧来の審判事件とは異なる事件として扱うという理解でよろしいのでしょうか。 ○波多野関係官 通常は,それは新しい事件として扱うことになろうかと思います。 ○高田(裕)委員 私の理解ですと,審判の取消し・変更の場合には,結果として旧手続が復活するという形になるのではないでしょうか。 ○脇村関係官 確かに現行の民法の事情変更による取消し・変更については,これは新事件として扱うものでして,いわゆる手続上の取消し・変更とは異質のものであると理解しております。   手続法上の取消し・変更ということで個別的に手当てするのか,あるいは新事件として,具体的には民法に書いた上で取消し・変更規定を置くのかについては,まだ現段階では詰め切れていないところですが,いずれにしましても,どちらかの個別の規定で対応する,実質を確保するということを現時点では確認させていただきたいという趣旨でございます。 ○伊藤部会長 ということで,事情変更の方に関しては,ここに掲げられていますように,一般的な総則としての規定を設けるというよりは,それぞれの裁判の性質に応じて,新しい事件として個別的な規定の手当てをするということでよろしいでしょうか。 ○青山委員 本文の方はやめるというふうな結論をおっしゃったのですか。 ○伊藤部会長 いやいや,本文の方はなお再度検討するということです。 ○青山委員 分かりました。   ついでに発言させていただいていいですか。先ほどから再度の考案による取消しと審判の取消し又は変更とを一緒に考えられている向きもあるようですけれども,もともと全然制度の趣旨が違うと思うのです。再度の考案の場合は,抗告が出てきた機会に前の裁判が間違っていたということに気がついたら迅速に直そうというだけのことで,こちらの方の審判の取消し又は変更,あるいは非訟事件なら19条のような規定は,ある裁判がなされて,それが長くたって,不当だというのは,事情が変更してきて,現状にマッチしなくなったということなら,それは裁判所が後見的に事件に介入して事後的に直そう,それが非訟事件の本質なのだ,そういう取消し・変更制度があることが非訟事件の本質なのだというふうに理解されてきたのだろうと思います。それで,個別的に取消し・変更の制度があるものはもちろんそれでいけばいいと思いますけれども,それは大体即時抗告によって確定するような事件の場合ですね。そうでなくて,即時抗告はしない事件について,この規定をもし置かないとすると,ある裁判がなされたら,それがずっと固定していってしまうという危険がある。それを是正するために,個々の条文で対応するのではなくて,こういう一般的規定を置いた方がいいと私自身は思っています。だから,再度の考案を置くかどうかは,そちらの方はなくてもいいかなと思いますけれども,こちらの方は,やっぱり非訟事件としては必要なのではないだろうかと考えております。 ○伊藤部会長 分かりました。私が先ほど再度の考案と実質的には重なるところがあると申しましたのは,やや誤解を生じさせるような発言だったかと思います。今,青山委員に整理していただいたとおりかと思いますので,この取消し・変更の規定を設けるべきである,あるいは実質的に維持するということになるのでしょうか―という御意見もございますので,もう一度この点について,消極の御意見も含めて検討をすることにいたしたいと思います。   (注)の3についてはよろしいでしょうか。これも今の議論が前提になるわけですけれども,いかなる場合に取消し・変更を制限すべきかに関する規律を設けることは容易でないので,そこは解釈にゆだねることにならざるを得ないのではないかということですが。 ○山本幹事 このこと自体には異論はないのですが,先ほど来出ているように,全く無制限にこの規定によって取消し・変更ができるのかという点なのですけれども,時間的な制限というのはあり得ないのかということなのですけれども,先ほど出てきた,再審については民事訴訟法の規定を適用するということですから,審判の確定から5年というのが最大限になると思うのですけれども,重大な手続的瑕疵で取り消せるのが5年だとすると,内容が不当な場合というのも何か期限の制限があってもいいような気がするのですが,それだとやはり実務的には不都合なのでしょうか。 ○金子幹事 それを前提にいろいろな法律関係が積み重なってしまったような場合に,そこを取消し・変更をすると,その後の手続が覆滅してしまうということで法的安定性を害するような場面は,そういう理由で取消し・変更を制限するということになるのではないかと思っております。ただ,一般的な規律としては,当該審判に利害関係人があって,きちんとそこを争わせた方がいいというものは即時抗告ができる方向へつくって,さほど第三者がとやかく言うものではないけれども,しかし,公益性の観点から変更しなければ問題が生じるものについて取消し・変更の余地を残すというのが基本的な考え方であったのです。そういうものについては,比較的利害関係が出にくいということがあるので,そこで一般的に期間を制限するというのは逆になじまないのではないかなと思っていたところです。個別にどうなるかというところは,もう一度各論をやりながら考えてみたいと思います。 ○中東幹事 質問ですが,取消し・変更というのは必ずさかのぼって取り消すという形にしなければいけないのでしょうか。いつ以降はこういうふうに変えるということはできないという理解でよろしいのですか。 ○金子幹事 取消し・変更の裁判の効力の問題なのだろうと思います。それから,高田裕成委員がおっしゃった,新たな裁判をするのか,前の裁判を変更して,それと置き換わった形になるのかということも影響すると思うのですが,一般的には事情変更を理由に裁判を変更した場合は遡及しない。しかし,当初から不当であったがゆえに取消し・変更をした場合は遡及するというふうな解釈が非訟上はされているようなのです。だから,一律さかのぼるという必要は恐らくないのではないかとは思います。 ○伊藤部会長 よろしいでしょうか。   それでは,なお検討課題が残されておりますけれども,この点についての審議は終えたことにしていただいて,次の「第26 審判前の保全処分」についての説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 「第26 審判前の保全処分」の「1 審判前の保全処分の申立ての方式」では,審判前の保全処分の申立ての方式について,現行家事審判規則第15条の2第1項の規律を維持するものとすることを提案しております。   「2 審判前の保全処分の要件(総論)」では,審判前の保全処分の申立てをするについて,本案たる審判事件が係属していることを要するものとするか否かについて検討することを提案しております。   A案は,審判前の保全処分の実質的要件として,本案審判において一定の具体的な権利義務の形成がなされることについての蓋然性が必要と解されますことや,本案審判で当事者が求める申立てが判然としない状況では適切な保全処分を命ずることが困難と考えられますことから,現行家事審判法第15条の3第1項の規律を維持し,本案たる審判事件が係属している場合に限って審判前の保全処分をすることができるものとしております。   なお,A案の本案たる審判事件が係属した場合には,申立てにより係属した場合及び職権で手続が開始された場合も含むことを前提としております。   B案は,本案たる審判の申立てを常に必要とすることはう遠であること,離婚に至っていない場合には本案審判の申立てがなくとも,民事保全手続により,離婚に伴う財産分与請求権を被保全債権として,仮差押え,仮処分を求める余地があるのに対し,離婚後には,本案審判の係属がない限り,審判前の保全処分をすることができないものとすることの違いに合理性はないとも考えられますことから,本案たる審判事件が係属していなくても,審判前の保全処分をすることができるものとしております。   (注)では,審判前の保全処分を命ずる審判の担保,裁判長の権限,仮差押命令の必要性,仮差押命令の対象,仮差押解放金,仮処分命令の必要性等について,現行家事審判法第15条の3第7項が準用する民事保全法第14条,第15条,第20条から第24条までと同様の規律とすることを提案しております。   「3 審判前の保全処分に関する審理等」では,審判前の保全処分の緊急性,暫定性という性質から,審判前の保全処分の審判を疎明に基づいてするものとすること及び申立人に疎明義務を負わせるものとすること,他方で,審判前の保全処分であっても家庭裁判所の後見的機能が期待されますことから,家庭裁判所が必要と認めるときは,職権による事実の調査及び職権で申立てにより証拠調べをすることができるものとすることを提案しております。   「4 審判前の保全処分の審判の効力発生時期」では,審判前の保全処分を命ずる審判の効力発生時期について検討することを提案しております。   この点につきましては,保全処分の緊急性の要請から,現行家事審判法第15条の3第4項の規律と同様に,即時抗告をすることができる審判であっても,これを受ける者に告知することによって効力が生じるものとすることが考えられます。   他方で,このような規律では,告知に時間を要する場合に緊急の事態に対応できないことがあります。このような場合に審判前の保全処分の効力を申立人又は審判を受ける者に告知することによって生じるものとすることが考えられるのではないかと思われますので,この点について検討することを提案しております。   「5 審判前の保全処分についての審判に対する即時抗告」では,(注)も含めまして現行家事審判規則の規律を維持するものとすることを提案しております。   「6 審判前の保全処分の取消しの要件等」では,(注)も含めまして現行家事審判規則の規律を維持するものとすることを提案しております。   「7 審判前の保全処分の取消しに関する審理等」,「8 審判前の保全処分を取り消す審判の効力発生時期」,「9 審判前の保全処分の取消しの申立てについての審判に対する即時抗告」,「10 審判前の保全処分の執行及び効力」,「11 審判前の保全処分又はこれを取り消す審判に対する即時抗告に伴う執行停止」については,原則として現行の規律を維持するものとすることを提案しております。   「12 その他」の(注)1では,審判前の保全処分に関する担保の提供について,民事保全法第4条の規律と同様の規律とすることを提案しております。   (注)2では,審判前の保全処分等に係る記録の閲覧について検討することを提案しております。この点につきまして,民事保全法第5条と同様に,申立人以外の者について,審尋期日の指定又は保全処分の告知があるまでの期間は閲覧することができないというような趣旨を踏まえて,審判前の保全処分の記録の閲覧について検討することを提案しております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは,順次参りたいと思いますが,まず,24ページの「審判前の保全処分」の「1 審判前の保全処分の申立ての方式」はいかがでしょうか。何か御意見ございますか。   もし特別の御意見がなければ,このような形で今後の検討を進めさせていただきたいと思います。   次の「2 審判前の保全処分の要件」で,ただいま説明がございました,家事審判事件の係属を前提とするというA案の考え方と,それを前提にしないでもできるというB案の考え方の二つが掲げられておりまして,それぞれの考え方の根拠となる点は(補足説明)に記載されているとおりでございますが,この点に関しての御意見をいただきたいと思います。 ○栗林委員 私は,B案が妥当ではないかと思っております。本案の係属を前提としなくとも,疎明が必要になりますので,疎明の中でどういう本案が求められるのかというのはおのずと明らかになってきますし,本案に関する権利関係を当然裁判官は考慮した上で,保全処分を出すかどうかを判断されると思いますので,あえて本案が係属しているという事実関係を求める必要はないのではないかと思います。また,民事保全法と違う扱いをする必要はないということもございます。さらには,婚姻費用の分担などについては,非常に緊急性がある事案もありますので,審判を申し立てたり調停を申し立てる必要はあえてない。まず保全処分をとった上で,暫定的な地位を確定して,その上で本案については別途確定させるという手続でよろしいのではないかと思っております。 ○長委員 私はA案を支持いたします。今御指摘になられた民事保全との対比ですけれども,家事審判の場合には権利関係がまだ形成されておりませんので,保全処分を出す上で,本案審判で一定の権利関係が形成されるということについての蓋然性との密接な関係があって初めて保全処分が出されるべきである,このように考えています。確かに,人事訴訟事件の附帯処分を本案とする場合については,本案が提起されていなくても保全処分が出される,仮処分が出されることがあるのですけれども,実情としましては,財産分与請求権に基づく仮差押えなどが出されている程度でございまして,家事審判に基づく保全処分の中身というのは多様でございますので,私はAの考え方を支持したいと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。A案,B案,それぞれ支持の御意見がございますが,どうぞほかの委員・幹事の方,お願いします。 ○杉井委員 私もB案を支持します。権利義務の形成がなされているか否かについては,先ほど栗林委員が言ったように,実際,疎明がどれくらいなされているかということに係っているかと思うのです。実態として言いますと,審判事件が係属しているということが現行法の要件になっておりますので,そうしますと,結局は本案の審判事件と並行してこの保全処分の審理がなされるということで,本案の審判とほぼ同じ時期に保全処分が出るということもよくあることなのです。それでは本当の意味の保全処分の,緊急な場合に保全処分を認めた法の趣旨というのが全然没却されていると思うのです。特に婚姻費用などの場合,生活に係っていることですから緊急性を要するわけですけれども,そして婚姻費用の場合には,以前だったらともかく,今は算定表で金額の目安があるわけですから,あるいは本案でどれだけきちっとした権利関係が形成されるかということに不安であれば,その算定表よりは保全処分なのだから若干低めのところで保全処分を出すということもあり得るかと思います。とにかく最終的な権利関係の形成を待ってでは遅過ぎるということを強調したいと思います。 ○伊藤部会長 今の杉井委員のお話ですと,仮に本案の申立てと保全処分の申立てを同時にしますと,しばしば本案の判断と保全処分の発令が同じ時期になってしまうということですか。 ○杉井委員 はい。本案の審判をできるだけ早くするので,保全処分の方は待っていてくださいといったことで実際の運用がされていることを私はしばしば経験しているのです。それから,例えば子どもの引渡しの事件などについても,最終的に本案は,監護者の指定が本案になるかと思うのですけれども,子どもの引渡しの保全処分を申し立てた場合に,最終的には,監護権者の指定の審判,最終的な本案の審判とほぼ同時に子の引渡しについての保全処分の決定が出る,そういうこともしばしば経験しております。 ○伊藤部会長 分かりました。 ○長委員 審判官は,例えば養育費であるとか,婚姻費用の分担の保全と本案の申立てがあった場合には,まず保全事件を処理して,その後,本案を処理するということに心掛けています。もし今の実務がそうでないとすれば,それはそこを直すべきでしょう。   子の引渡しの事件というのは非常に難しい事件だと思います。人身保護請求が多用された時代に,むしろ子の引渡しの保全処分の方で処理すべきだという最高裁の判例が出た後,私どもは研究をしまして,保全事件を迅速に処理するための審理の方式を検討しました。子どもの引渡しというのは非常に大きな影響を与えるものですから,保全の段階で調査官調査を入れたりすることもあるので,時期的に保全と本案の各審判の発令が近接してしまうということは,ないではないと思います。以上のとおり,保全と本案の処理の関係については,事件の種類によって異なります。実務を法の趣旨に従って運営するという前提で考えるのであれば,B案というよりはむしろ原則的にA案に従った立法をしていただいた方がよろしいのではないかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。どうぞ,ほかの委員・幹事の方,お願いいたします。 ○三木委員 この問題については特に定見がなく,今日のやり取りを伺いながらいろいろと考えていたのですが,やり取りを伺う限りでは,B案を主張される方の方に理屈があるように感じました。というのは,立法する際に要件を民事保全法のように被保全権利と保全の必要性という形で組もうが,あるいはそういう表現を使わずに組もうが,実際には保全の発令のときには,実質的には一種の被保全権利と保全の必要性を判断してやる以外にはないと思うのです。B案を支持する方がおっしゃっているように,そこでその要件を満たさなければしょせん保全は発令されないわけで,逆に言うと,本案が先行していなくても,それが認められるのなら発令して,(注)で書いているような懸念というものは本案がなくても生じないように思われます。また,実質的にも保全はやはり早いことに意味があるわけですから,本案が係属しなければ絶対に出せないというのが保全の本旨にかなっているかという点も気になります。したがって,B案は,繰り返しますが,要件をきちんと組めばもちろんですが,組まなくても,結局懸念されるような形で発令されることは考えにくいように思います。 ○伊藤部会長 この場合の保全処分の法律的な性質もやはり制度を考える上では踏まえておかなければいけないとは思いますが,そのあたりは,学者の委員・幹事の方はいかがでしょうか。 ○山本幹事 私は,結論的にはA案でよいのではないかと思っています。   一つは,理論的なことなのかもしれませんが,今,部会長がおっしゃった,保全処分の性質というのはやはり,いわゆる講学上の特殊保全処分ということなのだろうと思います。長委員が先ほど言われましたように,通常の民事保全のように実体法上の請求権を前提として,それを保全するために被保全権利と保全の必要という明確な要件のもとに発令されるというものとは違って,本案の審判官が,本案についての権利義務関係を形成していく中で,それに必要と考えられる保全処分を比較的広い裁量のもとに適宜発令していくという,やはり性質上はそういうものなのだろうと思います。もちろん個々の保全処分で,その濃淡といいますか,民事保全に近いようなものももちろんあるとは思うのですが,全体的な審判前の保全処分としてはそういう法的な性質なのかなと。そうだとすれば,性質上は本案が係属した後に本案の裁判所が発令するというのが原則になるような感じがします。   それから,実質的な理由としましては,B案の理由のところで書かれている,離婚に伴う財産請求権のお話ですけれども,私の理解では,訴訟を前提として保全処分をする場合には,訴え提起というのは当事者にとってかなり負担の大きな行為でありますので,とりあえずの保全を求めるために訴え提起はしないで,まず保全処分をということは十分理解できる感じがするのです。審判の申立てというのは,訴え提起に比べれば申立人の負担というのはそれほど重いものではないような気がしまして,それを考えると,離婚に伴う場合には訴え提起前にできて,離婚した後には審判の係属がないと保全処分ができないというのは,それほどおかしなことではないような気がいたします。   あと,実際上審判の係属後にしかできないと,それに引きずられて保全処分の審理が遅くなる可能性というのは,長委員が言われたように,それはそうあってはならないもので,本来は,疎明ができれば,まだ証明ができていなくても保全処分というのは発令しなければいけないものなのですから,そういう実務があれば,それはそれを改めるのが筋なのかなと思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。長谷部委員はいかがですか。 ○長谷部委員 私はB案でよろしいのではないかと思います。審判前の保全処分については,今,山本幹事がおっしゃったように,本案であるところの家事審判事件と密接な関連があるといわれてきました。子の監護などはそういう位置づけであったかと思いますし,長委員の先ほどのご発言にもありましたように,そのように規律すべき典型例と言われてきたかと思うのですが,人訴改正で第30条に人事訴訟を本案とする保全命令の規定を入れたときに,二つのルートができたわけです。つまり,従来の本案の係属を前提とする審判前の保全処分のほか,本案の係属よりも前に,例えば子の監護について適切な処分を行う,夫婦が別居していて法律上は共同親権の状況にあるときに,父母のいずれかに監護権を暫定的に規律するといった保全命令です。本案が提起されていなくても,当事者間に子の監護権をめぐって争いが起きるということは,それは当然あり得ることですので,それについての規律は,本案係属を前提としない,民事保全の方から持ってきているところの人訴法第30条の保全処分でいくのだろうという理解だったかと思います。このように,本案と密接に関連すると言われている子の監護に関する処分の中でも,本案係属を前提としない類型があり得るかと思いますので,家事審判の申立てを前提としないとこういった処分ができないというのはどうなのかなと……,理由づけの中で「う遠である」という表現がありましたけれども,緊急性があるのにそれができないというのはどうかなと思うのです。できないのだったら民事保全でやればいいという考え方もあるのかもしれませんけれども,ここで立法しておくというのも一つの考え方だと思っております。 ○三木委員 理論的な話ですが,山本幹事の御説明は,理論的には納得できないところが多々ありました。非訟事件,審判事件の場合,事前に権利がなくて,権利は裁判によって形成されるものだというので,訴訟のように事前に存在する権利を確定するものとは違うのだというような説明もされるところですが,そうであれば,しかし理論的には裁判が始まっても権利は形成されないのであって,審判が確定して初めて形成されるわけですから,審判申立てがあればできるというところにつながることにはならないように思います。   それから,先ほど実務の運用で,長委員がおっしゃったように,たとえ早い段階でも疎明がされれば発令すべきだというのであれば,それは審判申立てがなくても疎明がされれば発令すべきものだということで,いずれにしても疎明がされれば発令されるべきだというのに,審判申立ての前後を問うという理屈は私にはよく分かりませんでした。   それから,権利性という言葉との関係で再び言いますと,婚姻費用の分担とか財産分与のような事件は,実質的には既に一種の権利があって,その金額を確定するというような作業ですから,「権利性」という言葉をどういう意味でとらえるかによりますけれども,それは訴訟事件と実質においては,やはり権利性という意味ではさほど変わらないのだろうという気がします。したがって,長谷部委員がおっしゃったように,そういう権利性というものが余り認められないような事件であっても,私は一般的に保全として審判の申立てを問わずに認めるべきだと思いますけれども,たとえそれが受け入れられなくても,事件類型によって,「権利性」という言葉を使うのが妥当かどうかは分かりませんが,一種の権利性があるようなもの,あるいはそれと同視しやすいものについては,少なくとも個別的には審判申立て前の保全を認めるべき事案がそれなりにあると思います。 ○伊藤部会長 なかなか難しいですね。実務的な視点からも二つの御意見が対立し,理論的にもそれぞれ,私から見ると非常に説得的な論拠が示されて対立する意見が述べられているという状況ですが。 ○青山委員 B案をとっても,審判の申立てがなされない間に保全処分を出すということは恐らくあり得ないと思うのです。だからこそ,ここでは起訴命令みたいなことを考えておられるのだと思うのです。そうすると,保全処分が審判の係属前に申し立てることができるのか,あるいは審判の申立てがあった後にしかできないのかというのは,理論的な差異があるとはいえ,それほど大きな違いではないと思うのです。私自身は,どちらかというとA案でいいのではないか,現行法でいいのではないかという考え方をとっておりますが,それは,民事訴訟の保全処分と本案との関係は,必ずしも本案が訴訟でなければいけないということはなくて,例えば仲裁の申立てであっても,本案になるというように考えられていますから,保全処分と本案の権利関係とは少し距離がある。ところが,家事審判の場合の保全処分と本案たる審判上形成される権利というのは,先ほどから言われるように密接不可分の関係にありますから,ある程度本案の見通しがつかないうちに保全処分は出せないのではないかと考えますので,A案とB案はそれほど差異はないとは思っておりますけれども,どちらかというとA案で不足はないのではないか。A案をとって,先ほどの保全処分の方が長引く,本案の最後のぎりぎりでないと出ないというのは,性質によっては確かにそういうのもあると思いますけれども,それは運用の改善を図るべき点ではないかと思っております。 ○伊藤部会長 ありがとうございます。ほかに,今の点について更に御意見のある方はおいでになりますか。   そうなりますと,御意見がはっきり分かれている以上,もう少し整理すべきところは整理して,再度お諮りをする機会を持ちたいと思います。   26ページの(注)のところはよろしいでしょうか。(注)に掲げられている事項については,現行家事審判法の規定が準用している民事保全法の規定と同様の規律にするというあたりですけれども,何か御指摘がございますか。―特別御発言はありませんか。それでは,ここは御意見が一致したということにいたします。   それでは,3の「審判前の保全処分に関する審理等」に関して,御意見ございますか。 ○山本幹事 本文②の規定の趣旨と本文③との関係なのですが,疎明をしなければならないという,申立人に疎明義務を課したのは,当然その反面として疎明権というか,そういうものを申立人に認めるという趣旨だと思うのですが,そのことは申立人に証拠提出権というか証拠調べの申出権を認めるということを含意しているような感じがします。もしそういう理解が正しいとすると,本文③のところにあえて「申出により証拠調べをすることができる」ということが書かれていること,確認的な趣旨なのかもしれませんけれども,ややこの間の関係が私にはちょっと整理できないので,その点を御説明いただければと思います。 ○波多野関係官 山本幹事から御指摘いただきました点は,本文②の方でいわゆる疎明義務を課しておりますので,今おっしゃったように,反面として疎明する権能はあるということになろうかと思われます。ですので,本文②の方で当事者には資料を提出するような積極的な行動ができるということになろうかと思いますので,本文③は基本的には当事者に任せていますが,ただ,後見的に家庭裁判所の職権での補充的な事実の調査等をする規定ですから,ここは本案の方で当事者に証拠申出権を認めるということとの関係で,「申出により」を記載した方がそれとの整合性はあるのかと考えていたところでございますが,なお検討させていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。御指摘ありがとうございました。今,波多野関係官から発言があったとおりで,若干本文②と③,特に疎明と申出による証拠調べの関係については整理をするようにお願いいたします。   ほかにいかがでしょうか。―よろしいですか。   そうしましたら,4の「審判前の保全処分の審判の効力発生時期」に関してはいかがでしょう。内容については先ほど説明があったとおりですが。現行家事審判法第13条のような考え方もありますが。 ○小田幹事 必ずしもこの効力の発生時期だけの問題ということではありませんが,部会資料にも少し書かれてあることについての実務上の問題意識を述べさせていただきます。典型的には,後見人の職務執行停止と代行者選任の保全処分の場合です。そういう保全処分を打つ場合には,残念なことですけれども,何らか不正があって,職務執行を止めた上で代行者を選ぶ。当然,緊急性があり,代行者には,例えば金融機関に行ってこういうことをしてもらいたいなどの必要性があります。そのときに,成年後見であれば後見登記ということになりますし,未成年後見であれば戸籍ということになってまいりますが,職務代行者を選任したことの登記なり戸籍がいつ入るかという問題がございます。現在では,効力の発生時期が,「これを受ける者に告知することによって」となっておりますことと,もう一つは,職務執行停止の効力が生じてから代行者についての手当てを可能とするという,その段階論ということもありまして,早く代行者についても手当て,登記なり戸籍を入れて早く手当てをしてもらいたいところ,職務執行を停止される者に対して告知ができない。そうすると,こちらの効力が発生しないということで,一番緊急を欲しているところの代行者の選任の登記なり登録,戸籍ができないという問題がございます。ここでの直接の論点は効力発生時期ということですけれども,今申し上げたとおりいろいろな問題が絡むところでございまして,実務としては,最終的に解決が図れればいいということであって,必ずしもこの論点でということではないのですが,関連しますので述べさせていただきました。 ○増田幹事 この問題は,民事保全の保全命令の効力の発生時期ともかかわると思うのですが,民事保全の保全命令の効力発生時期というのは,どうも調べてもよく分からないのですけれども,おそらくは発令時と解してよいと思われます。民事保全の保全命令は送達を要するのですが,送達で効力が発生するとは考えられていなくて,送達される前に既に第三債務者への送達がなされていたり,実際の執行行為がなされているということもあり得るわけで,送達前に効力が発生していることが当然の前提になっているわけです。家事審判の場合の保全処分も同じように,仮差押えだとか仮処分などというものも含まれますので,基本的には民事保全と横並びで,発令時ではないかと思います。 ○伊藤部会長 一応ここは「どのように考えるか」というオープンクエスチョンになっていますので,ほかにもしお考えがあればお願いいたします。 ○山本幹事 増田幹事と問題意識は近いのかもしれませんが,(参照条文)に挙がっている民事保全法第43条第3項で,保全執行は,保全命令が債務者に送達される前であっても,することができるとされています。これは,後の方で出てくる保全執行の規定はこれにも準用するということなので,準用するという前提なのだろうと思います。やはり(参照条文)に挙がっている民事保全法第56条の法人役員の職務執行停止の保全処分についても,この登記嘱託は執行方法だと理解されている。そして,これは解釈論かもしれませんけれども,この登記のときに仮処分の効力が生じると一般的には解されているように思われます。先ほど小田幹事から問題が提起されたような後見人とかの職務執行についても,先ほどのところでは戸籍の記載の嘱託がされるというようなことのようですけれども,それと同じように考えることはできないのかどうか。現在の規律振りは,効力が生じた後に裁判所書記官が登記嘱託するということになっておりますけれども,これを保全執行の一環というふうな形で整理をすることは,私は戸籍法理というのは全く知らないのでよく分からないのですが,それはできないものなのかどうかということを伺えればと思います。 ○波多野関係官 山本幹事から御指摘がありましたところですが,戸籍の嘱託は,審判の効力が発生したものを戸籍に反映するという建前がとられております。したがいまして,後見登記の嘱託,戸籍の記載の嘱託が保全執行という概念になじむのかどうかについては,今までの考え方とは違う考え方を取り入れることになるかとは思われますので,それが果たしてできるのかどうか,そこは戸籍に関する基本的な考え方との関係で,今の段階ではこうだということを申し上げることはできないところでございます。 ○金子幹事 民事保全法第56条の方の登記嘱託は,この登記が第三者に対する対抗要件であることもあって,法律的な効力を発生させることになるものですから,それを一つの執行方法と見ることにさほど違和感がないのだろうと思いますが,戸籍の今の考え方からすると,効力が発生していない身分関係なりを戸籍に記載してしまうということは,相当ハードルが高くて,これを執行と見るということはなかなか難しいのではないかと思います。恐らく,先ほど小田幹事がおっしゃったような問題意識は,戸籍に記載するという行為は,問題のある解任の対象者等が送達を受け取るかどうか,あるいは告知を受けるかどうかというのと関係なくやれるので,それであれば,いわば裁判所なり,あるいは戸籍の方の窓口なりの努力で早めにできるということで,戸籍記載自体に意味があるのではなくて,早めに活動させるような仕組みがとれないかという趣旨だと理解していますが,それでよろしいのでしょうか。 ○小田幹事 早めに活動する必要があるということはもちろんなのですけれども,戸籍に記載することの意義は非常に重要です。早く活動してほしい,だからそのために早く戸籍に記載してもらいたいという要望がございます。先ほど申し上げたとおり,金融機関に行って,預金口座に関する手続をしてもらうためには,どうしてもこの記載が求められているようですので,早く活動してもらうためにはこちらも早くという趣旨でございます。 ○金子幹事 分かりました。そのような要望と,それから戸籍の先ほどの実務と両立させるためには効力を早く発生させてしまうしか道がないのではないか。そうすると,債務者の告知ではなくて,それより前に効力が発生するということにできないか,例えば,申立人への告知等で効力を発生させることができないのだろうかというのが問題提起になると思います。 ○伊藤部会長 ここは,できる限り早くその効力を発生させることが望ましいという点では認識の一致があるように思いますが,それを踏まえて,先ほどの増田幹事や山本幹事からの御発言であるとか,あるいは(補足説明)の末尾に書いてある考え方などについての検討をしてもらうことにいたしましょう。   それでは,次の5の「審判前の保全処分についての審判に対する即時抗告」に関してはいかがでしょう。何かございますか。―よろしいでしょうか。(注)も含めまして特別御意見がなければ,御了承いただいたものとして。   あとは,「6 審判前の保全処分の取消しの要件等」,それから7,8,9,10もそうですね。11もそうですか。一応,現行の規律と少なくとも実質的には変わるところがないのですが。大分時間も過ぎておりますが,しかし,御発言があるようでしたらもう少し実質的な議論をしなければいけませんので,どうでしょうか。私がまとめて申し上げてしまいましたけれども,この点に関してはもう少し議論をきちんとした方がいいという点があれば,なお続行してということも考えられますが。いかがでしょう。もちろん細かい点についてはいろいろ,また別の機会に御議論いただかなければいけないと思いますが,基本的な考え方としては,それぞれに関して現行の規律を維持するということで御了解がいただけますでしょうか。   それでは,大分急いでいるようで申し訳ございませんが,38ページの「その他」というところに,先ほど波多野関係官から説明がございましたが,「その他」の特に(注)の2として,「審判前の保全処分等に係る記録の閲覧等について,どのように考えるか」と,これもややオープンクエスチョンになっておりまして,関連するものとしては,その下に民事保全法第5条の規定などが引用されておりますが,この点に関して御意見があるかどうか。相当時間がかかるのであれば次回に御審議いただくということが考えられますが,いかがでしょうか。   余り急いでというのも,審議を尽くさないということにもありますので,特に記録等については次回に御審議をいただきたいと思います。   それでは,実質的な審議はそこでとどめさせていただきまして,部会資料の送付及び次回の日程等についての説明を金子幹事からお願いいたします。 ○金子幹事 先日,家事審判手続各論の前半部分をお送りさせていただきましたが,その後半部分を来週の月曜日に発送する予定にしております。詳細につきましては,前回と同じように事務連絡を同封させていただきますので,それを御参照の上,御意見を是非いただきたいと思っております。   前半部分,御意見をいただいた何人かの委員の方,ありがとうございました。ちょっと進行が遅れていますので,一応締め切りは過ぎていますけれども,もしいただけるのであれば,なお前半部分についてもお寄せいただければと思います。後半部分についてもよろしくお願いします。   それから,次回の議事ですが,来年の1月22日金曜日,午後1時30分からということで,場所はこの会議室でございます。よろしくお願いいたします。 ○伊藤部会長 それでは,大分時間を超過してしまいましたが,これで本日の部会を終了させていただきます。長時間ありがとうございました。 -了-