法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会           第13回会議 議事録 第1 日 時  平成22年1月22日(金)  自 午後1時30分                        至 午後5時45分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  非訟事件手続法・家事審判法の改正について 第4 議 事 (次のとおり)               議 事 ○伊藤部会長 予定の時刻でございますので,法制審議会非訟事件手続法・家事審判法部会の第13回会議を開催いたしたいと存じます。御多忙の中を御出席いただきましてありがとうございます。   まず,配付資料につきまして事務当局から説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   部会資料11は事務当局において作成いたしましたものでございまして,家事審判手続の各論について取り上げているものでございます。部会資料11-2は,部会資料11につきまして皆様からいただきました御意見及び御質問等を事務当局において取りまとめたものでございます。内容等につきましては後ほど御説明させていただきます。   参考資料11でございますが,これは,今回,部会資料11で取り上げております成年後見人についての鑑定に関する資料でございまして,最高裁判所の方で御用意いただいたものでございます。内容等につきましては,問題となる事項について検討する際に御説明があるものと存じます。   以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   前回は「第26 審判前の保全処分」の「12 その他」の前まで審議をしていただきましたので,本日は,引き続きまして「12 その他」から審議を行いたいと存じます。そこで,「12 その他」について事務当局からの説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 御説明いたします。   「12 その他」の(注)の1では,審判前の保全処分等に関する担保の提供について,民事保全法第4条の規律と同様の規律とすることを提案しております。   (注)の2では,審判前の保全処分等に係る記録の閲覧について検討することを提案しております。この点につきまして,民事保全法第5条が,申立人以外の者については,審尋期日の指定又は保全処分の告知があるまでの間,閲覧をすることができないものとしておりますので,それを参考に,保全処分等に係る記録の閲覧について検討することが考えられると存じます。この点について検討することを提案しております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは,ただいま説明がございました「その他」の(注)の1及び2について御質問,御意見がございましたら,お願いいたします。   (注)の1に関しては,特別御意見等はございませんか。―もしよろしければ,こういうことで今後の検討をしたいと存じます。   (注)の2は,ただいま説明がございましたように,民事保全法第5条の規定を参考にしながら検討を進めたいというのが事務当局の考え方でございますが,この点に関して何か御質問,御意見ございますでしょうか。―格別の御意見がなければ,このような民事保全法の規定を参考にしつつ検討を進めることといたしたいと存じます。   それでは,「その他」に関してもしほかに御意見,御質問がなければ,これで御審議いただいたということで,先に進みたいと存じます。   そこで,「第27 費用」についての説明をお願いします。 ○波多野関係官 御説明いたします。   「第27 費用」の「1 手続費用の負担者」では,家事審判事件の手続費用について,各自負担を原則とし,事情により異なる定めをすることができるものとすること並びに手続費用の負担の規律及び負担の裁判によって,検察官が負担すべき費用は国庫の負担とすることを提案しております。   (注)では,審判により利益を受けると考えられる者,例えば後見開始の審判における被後見人,不在者財産の管理に関する審判における不在者等が申立人ではないことが多い類型の事件の費用の規律について検討することを提案しております。この点について,各事件ごとの特性に応じて,本文②の規律で対応することが考えられます。他方で,各則に各自負担の例外規定を設けることが考えられます。この点について検討することを提案しております。   「2 費用の裁判」の(1)では,費用の負担の裁判について検討することを提案しております。   A案は,各自負担とは異なる定めをする場合には,職権で費用について審判すること並びに審判及び調停によらずに事件が完結した場合には当事者に費用の裁判を求める申立権を認めるものです。   B案は,家庭裁判所は,終局審判をする際には,費用の負担についての裁判をしなければならないものとするものです。   (2)では,上級裁判所は,手続費用について負担の裁判をすることができるものとすることを提案しております。   「3 費用の負担についての裁判に対する不服申立て」では,現行の規律と同様に,費用の負担の裁判に対しては,独立して不服を申し立てることができないものとすることを提案しております。   「4 費用額の確定手続」では,民事訴訟法に倣い,費用額確定の手続に関する規律を設けるものとすることを提案しております。   「5 費用の立替え及び予納」では,費用の予納を原則とし,家事審判が後見的・公益的な裁判であることから,裁判所が必要と認める資料を収集するために,費用を国庫において立て替えることができるものとすることを提案しております。   「6 家事審判手続上の救助」では,民事訴訟法に倣い,家事審判手続上の救助の規律を設けるものとすることを提案しております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 それでは,順次御審議をお願いしたいと存じます。   まず,第27の1の「手続費用の負担者」に関して,本文①の各自負担の原則,それから本文②の,それと異なる定めをする場合の例外,そして本文③の,検察官が負担すべき費用の国庫の負担ということ,それと,先ほど説明がございましたように,(注)に書いてある部分,こういったものについて,本文②の考え方で解決する方向で検討するのか,それとも各則に特別の規定を設けるような形での検討が望ましいのか,まずこのあたりについての御質問,御意見をお願いしたいと存じます。 ○長委員 今御指摘になられました問題のうち,(注)に記載されているような事件についてどうするかということですけれども,1の本文②で対応することが可能だと思いますので,特に各則に定めるまでもないのではないだろうかと思います。 ○伊藤部会長 (注)に関してですが,このような問題に関しては,1の本文②のような,家庭裁判所の定めによって適切な解決ができるという御意見がございましたが,この点に関してはいかがでしょうか。 ○山本幹事 今の長委員の御意見に異論はないのですけれども,そういうふうに考える場合,本文②はかなり一般的な形で規定をしていて,とりわけ,だれに対して負担させることができるかということについて全く定めがない。条文だけを読めば,第三者でも,だれにでも負担させられるというような形の規定になるような感じがするのですが,費用を負担させるという,要するに金銭的な負担をかけるということですので,やはり完全な裁量ということになるのはやや問題ではないかという感じがいたします。民事訴訟法などでも第三者に費用を負担させることができる場合は規定されていると思いますが,その場合でも,代理人その他一定の類型の者に限っているように思いますので,それから,現在の非訟事件手続法は,「関係人」に対して負担を命ずることができるということになっているように見えます。「関係人」という言葉を使うのが適当かどうかということは分かりませんけれども,もう少し何らか対象を限定して規定した方がよろしいのではないかという感じがいたします。御検討いただければと思いますが。 ○伊藤部会長 山本幹事の御発言も,基本的には長委員の御発言と同じで,本文②で今想定しているような事態に対しては対処すべきであるけれども,本文②の規律というのが,現在ここに書かれている限りでは無限定になっているので,その点何らかの形で費用の負担を命じられる者の範囲を,概括的ではあれ,もう少し特定ないし限定すべきではないか,こういうことでございますが,ほかの委員・幹事の方はいかがでしょうか。   事務当局から何かその点に関して発言がありますか。 ○波多野関係官 今,山本幹事から御指摘を受けました,本文②でどのような者に負担を命じられるかというところですが,御指摘ありましたように,現行非訟事件手続法が「関係人」としておりますので,その趣旨も踏まえて更に検討させていただきたいと存じます。 ○伊藤部会長 そういたしましたら,ただいまの点,もちろん費用の負担をさせられる者の範囲は想定はされているわけですが,そういった者が含まれるという意味での合理的な規律がどのような形で設けられるかどうか,この点は御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思います。   1の「手続費用の負担者」に関しては,ほかに御意見,御質問ございますか。―よろしいでしょうか。   それでは,先に進んで,2の「費用の裁判」でございますが,これは,以前にも基本的な考え方としてA案,B案という考え方について御議論いただきましたが,改めて家事審判に関しまして,A,B案のいずれが適当かどうか,このあたりについての審議をお願いしたいと思います。以前,非訟についての審議をいただいた際にいろいろ御発言いただいたかと思いますが,若干それと重複してももちろん結構ですので,この点に関して,もう一度御発言を賜れればと思います。   いかがでしょうか。 ○三木委員 非訟のときと同様に,B案が望ましいと思います。金銭負担を命ずるわけですので,法に原則が定められていても,他方で例外がかなり広く裁量的に認められていることでもありますし,原則どおりに負担を命ずるのであれば,その旨の裁判を明示すべきだと思います。それから,これは私が申し上げたわけではなくて,ほかの委員の方の御発言だったと思いますが,費用負担の裁判を書き込むことにそれほど実務上の負担はないのではないかと。そのときの委員の御発言の記憶ですと,一挙手一投足ではないかというようなことも言われたこともあり,きちんとした形でやるのが望ましいと思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。 ○長委員 前にも申し上げたのですが,実務的にはA案というのも大変魅力的な案だと私は今も考えてはおります。 ○伊藤部会長 分かりました。御発言の趣旨はよく理解できました。   ほかにいかがでしょうか。   そういたしますと,前の非訟のときの御審議も踏まえまして,恐らく相当の方がそういう考え方を持っておられるでしょうから,この場ではB案の考え方が有力である,ただ,長委員が御指摘のように,A案というのは,それはそれで,理論的にももちろんですが,実務上も魅力のある考え方である,その程度の整理にさせていただきましょう。   それでは,(2)の「上級裁判所の費用の負担の裁判」に関しては何か御発言ございますか。特別ございませんようでしたら,ここに掲げられている考え方で今後の検討を進めさせていただくことにいたします。   次の42ページの3の「費用の負担についての裁判に対する不服申立て」。内容はここに掲げられているとおりでございますが,これに関してはいかがでしょうか。―この点もよろしいでしょうか。はい。   次に,43ページの「4 費用額の確定手続」。内容はここに掲げられているとおりでございますが,この点に関しては何か御発言ございますか。―この点もよろしいでしょうか。はい。   それでは,先に進ませていただきます。次に5の「費用の立替え及び予納」でございまして,内容は先ほどの説明及び(補足説明)に書いてあったとおりでございますが,現行の制度を若干変更するということが内容となっておりますが,この点はいかがでしょうか。―特段の御意見,御異論はございませんか。   そういたしましたら,次の「6 家事審判手続上の救助」でございますが,この点に関してはいかがでしょうか。 ○長委員 救助の関係ですけれども,甲類事件の場合に,申立人以外に手続費用を負担することがあり得ないような場合にも救助決定ということになるわけですが,この場合にはどのような扱いになってくるのかを教えていただければと思うのですが。 ○波多野関係官 理論上であれば,甲類であっても,裁判を受ける者であるとか,その他の者に費用を負担する場合がないとはいえないということもありますので,そういう場合も踏まえると,いったん申立人に手数料等の納付を猶予するということもあり得るのかと事務当局としては考えていたところでございます。 ○長委員 いったん猶予した費用を,その後,徴収手続をとる形になるのですか。 ○波多野関係官 救助については,猶予したものを徴収することが予定されているものだと理解しておりますので,長委員の御指摘のとおりであると思います。 ○長委員 そこまで救済する必要がある事案においてはそういう事態も生じる,そういう理解ですか。 ○波多野関係官 そうだと思います。 ○長委員 多くは考えにくいようにも思われますが,いかがでしょうか。 ○金子幹事 今お聞きして,ほぼ間違いなく申立人負担になるであろうという事案も想定されるのでというお話だったかと思うのですが,その場合に救助決定をするかどうかというのは,どちらかというと運用の問題であろうという気がしています。そういう場合に備えて,①の要件ではなお不都合があるということであれば考えさせていただこうかと思うのですが,そのあたりの御印象はいかがでしょうか。 ○長委員 運用上直ちに不都合が生じるというわけでもないかなとは思うのですが,どのようにお考えなのか伺っておきたいと思っただけです。 ○伊藤部会長 分かりました。では,その点もう一度事務当局に,今の御発言を受けて,実際上どれだけの意義があるか,あるいは想定されるような場合というのはどういう場合なのかを検討した上で,またしかるべき機会にその点に関しても説明をさせていただければと存じます。   ほかによろしいでしょうか。   それでは,次に「第28 検察官に対する通知」の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 「第28 検察官に対する通知」では,現行家事審判法第7条が準用しています現行非訟事件手続法第16条の規律を維持するものとすることを提案しております。   なお,現行家事審判法第7条の規律を維持して,現行非訟事件手続法第15条と同様の規律は家事審判手続には準用しないものとすることとしております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 この点に関して何か御質問,御意見ございますか。―よろしいでしょうか。 ○増田幹事 総論のところで1点だけ。非訟のときにも申し上げましたけれども,外国家事審判手続における決定等の承認の問題は,今回の改正ではどのようにお考えでしょうか。 ○金子幹事 この部会ではそこまで審議するのは難しいと思っております。民訴法の承認手続に相当するようなものをどう考えるのかという御趣旨かと思いましたが,少なくともこの部会の中で検討することはちょっと難しいだろう。その後どうするかということはまた別途検討させていただければと思っております。 ○増田幹事 今回,家事審判法の全面改正ということですし,それは国際民訴法の問題ではなくて,日本国内で外国審判が効力を生じるか否かのルールの設定の問題ですので,家事審判法のレベルの問題だと考えます。しかも,現在,下級審判例も分かれており,実務的にいろいろと問題が起こっておりますし,新聞レベルでしか知らない事件ですけれども,外国で監護権を裁判上認められた人が,日本へ来て自分の子どもを連れ去ろうとして誘拐罪で逮捕されたというようなケースも見られるところです。少なくとも日本国内において,外国で認められた監護権だとか面接交渉などの決定がどのような効力を持つのか,それを判断するためのルールはここで決めておかなければならないのではないかと考えておりますが,いかがでしょうか。 ○伊藤部会長 事務当局も,ただいまの増田幹事が指摘される問題の重要性自体は当然認識していると思います。ただ,本部会で審議をする予定の様々な課題との関係で,そこまでこの部会での検討が及ぶかどうかということで,先ほどの金子幹事からのようなお返事になったのだと思います。もうちょっとただいまの御指摘に関しては事務当局で検討はして,内容的なことというよりも,どういう形でそういう問題の解決があり得るだろうかというような一般的なことでの検討はしていただきたいと思います。   ほかにございますか。   それでは,以上で部会資料10についての御審議は終わったことにさせていただいて,次に,家事審判手続の各論における規律についての審議を行いたいと思います。   前々回の当部会において御了承いただきましたとおり,家事審判手続の各論における規律に関しては,皆様から事前にいただいている意見で取り上げている事項を中心に検討を行ってまいりたいと思います。したがいまして,部会資料11で取り上げられている規律については,部会資料11-2で取り上げられている事項を中心に検討を行いたいと存じます。   そこで,事務当局から部会資料11-2の「第0 総論」に関しての説明をお願いします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   「第0 総論」のうち,「陳述を聴く」と「意見を聴く」との違いについてまず御説明させていただきます。   現行家事審判規則,特別家事審判規則では,「意見」との用例は,基本的に家事審判官の事務処理方針等を決定するための判断資料としての意見の提出という意味で用いられております。具体的に言いますと,後見人の候補者や保護者の候補者などですが,そういったふうに使われていおります。他方で,「陳述」との用例は,保護の対象となる子,新しい身分関係に入ろうとする者,自らの権利を制限又は剥奪される者など,審判の効果を受ける又はその影響を受ける者に対して,主として手続保障的な意味で話を聴く際に用いられていると理解しております。部会資料11においては,このような理解を前提に記載を行っているところでございます。   次に,「通知」と「告知」との違いですが,この点は,まず,知らせる対象により区別をしておりまして,事実を知らせる場合を「通知」とし,他方で,審判を知らせる場合を「告知」としております。通知と告知の方法ですが,両者に特段の違いはなく,いずれも相当な方法でこれを行えば足りると考えているところでございます。ただ,成年被後見人といわゆる未成年者につきましては,別途違う観点から検討を行っておりますので,この点につきましては,後ほど出てきます該当箇所で詳しく説明を行わせていただきます。   次に,一審の当事者でない者が即時抗告することと権利参加することの関係についてですが,まず,即時抗告権者である者で一審段階では当事者でない者が,だれかが提起した即時抗告の事件について抗告人として参加することができるかどうかについては,一審の段階で申立人等の当事者となる資格を有する者が当事者として参加することができるとしたこととのバランス上,これを肯定すべきではないかと考えております。そして,抗告人として参加した以上,その地位は抗告人と同様であると考えているところでございます。もっとも,そういたしますと,別途即時抗告を行ったことと大して違いがないように思われますが,一審段階でも別申立てと権利参加の双方を認める以上,この点は同様ではないかと考えております。   以上です。 ○伊藤部会長 ただいま脇村関係官から説明がございましたが,いかがでしょうか。特に,陳述と意見,それから通知と告知のようなことは,これから御審議いただくそれぞれの検討事項にしばしば登場してくる問題ではございますが,今の段階で何か御質問,御意見ございましたら,お願いいたします。   一応,事務当局の考え方は今御説明したとおりですが,それが果たして貫かれているか,あるいはそもそも適当かどうかという点に関しては,それぞれの検討事項に即してまた御発言いただくということでいかがでしょうか。よろしいですか。―はい。   それでは,次に,「第1 後見の開始」から「第6 保佐人の同意を得なければならない行為の定めの取消し」までに関して事務当局から説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 それでは,御説明させていただきます。   まず,「第1 後見の開始」の「0 手続及び管轄の統一」についてですが,この点については,部会資料11-2に記載しております御意見をいただいているところでございます。   この点につきまして,当局といたしましても,少なくとも後見等に関する事件については,後見等を開始する審判をした裁判所が一元的に管理をして,適切に事務を処理すべきであるし,また,後見等開始などの重要な事項に関する審判以外の審判については簡易な手続により処理することによって,より適切,迅速な事務処理を実現すべきであると考えております。   そのような観点から,後ほど出てきますように,後見等に関する事件については,後見等開始の審判をした裁判所に管轄を集中するものとして,後見等開始の審判をした裁判所が一元的に管理することを実現することを提案しております。   また,後見等開始などの重要な事項に関する審判以外の審判については,部会資料10において検討しましたように,審判書の省略等を行うことで簡易に処理するものとし,適切,迅速な事務処理を実現することは可能であると考えているところでございます。   他方で,いただいている御意見といいますのは,現行法のように,後見等開始の審判や後見人等の選任の審判あるいはそのほかの後見等に関する事件をそれぞれ別個の家事審判事件とすること自体をやめて,例えば破産手続のように,後見等手続というような包括的な手続を設け,その手続の付随的な審判として後見人等の選任等を行うものとすべきであるという趣旨であると理解しております。ただ,民法上は,その包括的な手続を設けることを想定していないと思われますので,そのようにすることが民法等の実体法を改正せずに行うことができるのかについてはやや疑問があるところでございます。したがいまして,当局としては,先ほど言ったような方法でいただいている御意見の趣旨を実現するものとし,包括的な手続を設けないということでどうかと考えているところでございます。   2の「精神の状況に関する意見聴取等」について御説明させていただきます。   現行家事審判規則第24条は,後見開始の審判をするには,本人の精神状況について,医師その他適当な者に鑑定をさせなければならないものとしております。これは,後見開始の審判が本人の行為能力に重大な影響を及ぼすものであることから,判断に慎重を期すために,本人の精神の状況について専門家による鑑定を行うものとするものでございます。当局としても,後見開始の審判が本人の行為能力に重大な影響を及ぼすものであることから,慎重を期す必要があるという点については,現在においては変わりがないものと考えております。しかし,そのための手段として,原則として鑑定という手続が必要であるとまで言う必要はないのではないか,例えば専門家からの意見の聴取によってそれが実現できるのではないかと考えております。そこで,部会資料11においては両論併記し,皆様に御検討いただくことを提案したところでございます。   次に,検討の前提として,鑑定と意見の聴取の違いについて御説明いたします。   まず,法律上の要件等について見ますと,鑑定につきましては,民事訴訟の鑑定に関する規定が準用されますので,鑑定人は鑑定裁判所が指定し,鑑定人を選出しないといけないということになります。また,忌避に関する規定も準用されるところでございます。また,鑑定人は宣誓も行わなければなりません。   他方で,専門家からの意見聴取については,このようなことが法律において定められているわけではございません。もっとも,意見聴取についても,どの専門家が適当であるのかは裁判所が判断するわけですので,鑑定人の指定は裁判所がするものとすることとそれほど差異がないというふうにも思われます。   さらに,鑑定,専門家からの意見聴取の具体的内容,費用,期間及び現在の鑑定の実質等が問題になるというところでございますが,この点については,御審議の際に,裁判所の方から現状について御説明いただければと存じます。   4の「審判の告知等」の本文について御説明いたします。   当局としては,成年被後見人に対しては,成年後見開始の審判がなされたことを原則として知らせなければならないものと考えておりますが,他方で,成年被後見人に知らせたことをもって成年被後見人の即時抗告期間の起算が開始することは相当ではなく,成年被後見人の即時抗告期間は,成年後見人に選任された者に対して告知を行ったときから進行すべきと考えているところでございます。これは,成年被後見人の即時抗告期間が成年被後見人に審判を知らせたことをもって起算するとの法律効果を発生させるには,その知らせを受けるだけの能力,すなわち受告知能力が成年被後見人に必要であると考えておりますが,実際には成年被後見人にはそのような能力がないのではないかと考えているからでございます。   問題は,先ほどの規律内容をどう表現するかですが,部会資料11では,一般に審判の告知を受けた者の即時抗告期間は審判の告知を受けた日から進行するものとしましたので,審判の「告知」ではなく「通知」と表現することにいたしました。審判については,先ほど述べましたとおり,「告知」をするとの表現を原則として用いるというところでございますが,この点では先ほどの整理と異なるということになっております。表現振りについては当局において更に検討を行いたいと存じますので,実質論として先ほどの規律内容でいいのかどうかについて御検討いただきたいと存じます。   次に,(2)では,成年後見開始の審判がなされた場合に,成年被後見人に対して常に知らせないといけないのか,例外を設けるべきではないかを取り上げております。現状については,裁判所の方から御説明等があるのではないかと思っております。   「6 その他」でございますが,このうち,後見命令については別途部会資料を用意する予定でございますので,その際に御検討いただければと存じます。   また,後見に関する申立ての取下げについては,部会資料9において取下げを検討する際に既に取り上げたところであり,現在,事務当局において,中間試案等に向け,その際の議論を整理させていただいているところであります。しかし,この機会に特段の御意見があれば伺っておきたいと考えております。   次に,「第2 後見開始の取消し」の「1 管轄」について御説明いたします。   現行法においては,後見開始の取消しの審判は,成年被後見人の住所地の管轄裁判所でございますが,成年被後見人の住所地以外の裁判所が後見開始の審判をしたケース,例えば後見開始の審判後に被後見人が転居した場合などがその例でございますが,そういった場合は,その裁判所が自庁処理をした上で,後見開始の取消しの審判についても取り扱っていると聞いております。御質問がありました法的な位置づけということでは,自庁処理ということになると思います。当局としては,こういった現状を踏まえ,先ほど説明しましたとおり,後見等に関する事件については,後見等開始の審判をした裁判所に管轄を集中するものとして,原則として,後見開始の審判をした裁判所が一元的に管理することを提案しているところであります。   2の「精神の状況に関する意見聴取」についても御意見をいただいております。原案は,補助に関する現行家事審判規則第30条の9を参考にしております。同条における医師以外の適当な者としては,経験を積んだソーシャルワーカー等であって本人の日常生活の状況をよく知っていて,それを的確に評価できる専門家を想定していると聞いております。意見を求める者の資格について,鑑定においても,その資格者を医師に限っていないことを考えると,常に医師でなければならないとする必要はないようにも思いますが,御検討いただければと思います。   「4 審判の告知等」についてですが,部会資料11では,原則に従って,告知を受ける場合については何も記載しないこととしておりますので,ここも原則どおり,成年被後見人が告知を受けるものとするということでございます。   「第3 保佐の開始」の5の「即時抗告」について御説明いたします。   現行家事審判規則第30条の4は,被保佐人に対する告知の日又は保佐人に対する告知の日のうち最も遅い日を被保佐人の即時抗告期間の起算点としております。これは,判断能力が低下している被保佐人となるべき者の即時抗告権を実質的に保障する観点から,被保佐人の即時抗告権の行使につきまして助言することを期待することができる保佐人と被保佐人の両者に対する告知が完了した上で即時抗告の期間を進行させるのが相当であると考えたからであると聞いております。今回,部会資料11では,この点を修正し,被保佐人の即時抗告期間の起算点は,被保佐人が審判の告知を受けた日から起算するものとしております。これは,部会資料11の4ページの(補足説明)中にもありますとおり,審判の告知を受ける者については,審判の告知を受けた日から即時抗告期間を起算するということとして全体を整理したことや,被保佐人は成年被後見人と違い,一定の判断能力を有していること等を踏まえたものでございます。   次に,第5の「保佐人の同意を得なければならない行為の定め」の「3 審判の告知」について御説明いたします。   原案では,現行法に加えて,保佐人の同意を得なければならない行為の定めの審判等を保佐監督人等に対しても告知しなければならないものとしております。これは,保佐人等による不正を防止するためには,保佐監督人等による保佐人等に対する監督が今後更に重要になることにかんがみたものであります。他方で,部会資料11-2にありますとおり,手続の簡素化等の観点から疑問があるとの御意見もございますので,御検討いただければと存じます。   次に,第6の「保佐人の同意を得なければならない行為の定めの取消し」の2の「陳述聴取」ですが,原案は,保佐人の同意を得なければならない行為の定めの取消しが被保佐人の能力制限を緩和するものであることや,その取消しの効果の大きさ等を踏まえ,特段の規律を設けなかったものというところでございます。   以上です。 ○伊藤部会長 それでは,順次御審議をお願いしたいと思います。   まず,第1の「後見の開始」に関して,資料11-2では「0 手続及び管轄の統一」ということで,寄せられた御意見の内容を紹介した上で,先ほどお聞きいただきましたように,事務当局としては,その御意見の問題意識及び妥当性については十分理解をしている,そのことを前提にいたしまして,しかし,他方,民法の規律との関係などを意識して,ここでは,ここで寄せられたような御意見の問題意識を実質的に実現するものとして,管轄の集中であるとか,あるいは審判の簡素化であるとか,そういったことで対処していきたいというのがここでの考え方の内容であるという説明がございましたが,この点に関してはいかがでしょうか。 ○増田幹事 質問者として,まず質問の背景について申し上げます。   現在は,後見人や相続財産管理人,不在者財産管理人などについて,開始から任務の終了までの統一的な手続にはなっておりませんので,例えば居住用不動産の売却の許可,相続財産管理人であれば権限外行為の許可などを求める場合には,審判申立書を作成し,印紙を貼って,別の審判として申し立てて,裁判所で別の事件番号がついて,立件されて,審判書をいただくということになっております。これは報酬の決定もそうです。中途の財産目録に関する審判とか,いろいろなことがそういう形で行われている。一方,破産事件などの倒産事件ですと,管財人として中途にいろいろと裁判所の許可を求める場合がありますが,これは許可申請書という1枚の紙を裁判所に持っていって,下の「許可する」という欄に判こをもらうだけということで,極めて簡易な手続がとられております。これと比較すると,いちいち審判の申立てをして,印紙を貼って,立件をしなければならないものなのかどうかというのが基本的な問題意識です。さらに,実質的には,破産事件については,事務処理上いろいろなことについて問題が生じた場合には,当該裁判所と管財人が相談することが日常的に行われるのですが,後見人や相続財産管理人につきましてはなかなかそういうことはないし,後見人になった弁護士からは,もっと裁判所と相談できるような体制ができればいいなというような要望が寄せられています。   そういったことで,関係官の方でもその実情を改善しようということは考えておられると思われるのですが,民法の規定との間でそごが生じるという御意見のようです。ただ,民法では家庭裁判所の許可と書いてあるだけで,どのような手続によって許可を得なければならないかということは書いていないわけです。それを独立の審判として構成したのは,現行家事審判法の立法者の一つの考え方にすぎないのではないかと考えております。民法の求める家庭裁判所の許可が破産裁判所の許可と実質的に意味が異なるとは私には思えないし,もしこの点,研究者の方で,それは違うのだという御意見があったらまたお教えいただきたいのですが,特に独立の審判手続と構成しなくても,民法の規定には反しないのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 増田幹事から,資料11-2に掲げられている意見の背景といいますか,何を問題としているのか,そして,その合理的な解決の在り方がどうあるべきかという点に関しての補足がございましたので,ただいまの点に関して,もう少しほかの委員・幹事からの御意見も承りたいと思います。 ○小田幹事 まず,私の意見を端的に申し上げますと,倒産事件類似というところから後見事件なども同じ手続でできないかという点に関しては反対でございます。幾つか理由がございます。   まず一つは,今の増田幹事の御意見にありましたけれども,倒産手続と後見を中心にお話ししますと,裁判所と管財人又は裁判所と後見人の関係というのが果たして同じものかどうかというところでございます。破産手続は,清算に向けて裁判所と管財人が一体となって一定期間協力して共同体として目的を達成するために活動していく手続であろうと思っております。そういったところから,今,増田幹事の御発言の中にもありましたが,管財人が裁判所に常に相談してといった関係も出てくるのであろうと思っております。   他方で,成年後見に関して申し上げますと,裁判所の監督というところは入っておりますが,基本的には,本人のために後見人が非常に広い裁量権を持って,ほとんど居住用不動産の売却許可以外は100%の裁量権,権限を持っているという状態でございます。そういう中で,それが常に裁判所に相談するというような関係にあるのかどうかという点もございます。後見ですと,大体の場合には本人の死亡で終了するわけですが,そこで行う後見人の行為,後見人に求められていることというのも,管財人に求められていることと相当程度違うと思いますし,期間,それから目的といった点も相当程度違う趣旨でつくられているものだろうと思っております。   もう一つ,これは事実上のことかもしれませんが,選ばれる管財人なり後見人が弁護士かそうでないかという点は無視できない点だろうと思っております。管財人の場合には弁護士だと思いますが,後見人,最近は第三者専門職の後見人を選ぶことが増えてまいりましたが,弁護士だけでなくて,司法書士,社会福祉士なども含めて全体の30何%という状態でございます。そうすると,残りはほとんど本人の親族の方でございます。本人の親族の方と後見裁判所との関係,後見が継続していく中での関係というところを考えたときに,果たして破産型が妥当するかということになると,必ずしもそうでないだろうと思っております。   監督に関しては,居住用不動産売却の許可であったり後見監督というのを立件してやっているわけですが,これはそれなりに非常に意義のあるものと考えております。特に,弁護士であればそれほどでないかもしれませんけれども,日常的に相談してやっている中ではない中で,この許可をするかどうか,監督でどういう行為をするかどうかというのは非常に重たいものでございます。そうすると,確かに手続としては,一般的には軽い方がいいということは妥当するとは思いますけれども,このような位置づけの中では,審判を申し立てて一定の手続を踏むということも節目として重要であるということを考えると,それほど不当に重いものということでもなかろうと思っております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 ただいま小田幹事からは,運用の問題はともかくとして,基本的な骨格はやはり維持すべきではないかという趣旨の御発言がございましたが,ほかの方はいかがでしょうか。 ○高田(裕)委員 増田幹事の御発言との関係で言えば,許可でありますから,民法上,破産型の制度設計が論理的にできないということではないのだろうと思います。しかし,どういう形を組み込むかということについて,民法は恐らく一定のアイデア,構想のもとにでき上がっていると理解することができるのではないかと思いまして,それがどういう形かということについては自信を持ってお話しできないのですが,今,小田幹事がおっしゃいましたような発想も,民法の理解としては十分合理性がある。すなわち,民法が許可等を要求している場合には,一つの事件として裁判所が関与するという考え方も十分理解できるところであり,民法がそうした理解になじみやすいという考え方も,お聞きした範囲では非常に納得いくところであったように思います。   その先どう考えるべきかということについては,現在の段階ではそれ以上の知見はございませんが,もし増田幹事の御提案が先ほどおっしゃったようなことであれば,すなわち,表現が適切ではないかもしれませんけれども,必要以上に様々な書類等の作成等が必要であるということであれば,それに対する対応としてで,事務当局の御提案によりますと,管轄の集中と手続の簡易化,とりわけ審判書の簡略化ということを御指摘いただいたように思いますが,それでなお不十分なのかどうかということを考えてみるというのも一つの選択肢かなという印象を現在のところは持っております。 ○伊藤部会長 実際上の手続の合理的な運用の在り方という問題と,もう一つは,後見開始の審判というもの,それからそれに引き続いてなされる各種の裁判所の判断事項を,倒産手続のような付随的な事項として簡易な判断で十分なのか,それとも,それぞれ一応は独立の審判という形で行っていくのが合理的なのかという問題があり,かつ,それは民法のそれぞれの事項に関する裁判所の判断の性質というものとも関係するという御指摘がございましたが,道垣内委員,いかがでしょうか。 ○道垣内委員 恐らく民法のつくりとしては,例えば居住用不動産に関しましては,動かなくてもよいという判断があるのだと思うのです。つまり,居住用不動産を絶対に売却しなければいけないかというとそうではなく,売却できないのならば売却しなければよいということです。それに対して,例えば破産法におきまして,いろいろな任意売却等に関して裁判所の許可が必要であるという条文がございますけれども,全体の清算手続でございますので,動かないでは済まないところがあるのだと思うのです。したがって,許可を得てするという点には同じ形にはなっているわけですけれども,そこにおける考え方の差異というのはそれなりに大きいのではないかという気がしております。 ○増田幹事 例えば民法第853条ただし書の財産目録作成期間の伸長の規定や民法第870条ただし書の後見の計算の期間の伸長の規定なども独立の審判として申し立てなければならないということになっております。それから,先ほど小田幹事から,裁判所の監督の在り方が違うのだというような御意見もございましたが,民法第863条は,後見事務の監督については一般的な監督権限が定められていると解されております。ですから,破産との違いは本質的なものではないだろうと思います。   それから,後見に限らないと申し上げましたが,不在者財産管理人とか相続財産管理人などになりますと,一層破産管財人に近づくもので,特に相続財産管理人などは,実務上の役割は破産管財人とほとんど同じと言っても過言ではないというのが実情でございます。その点も踏まえて再度御検討いただければと思います。 ○伊藤部会長 ただいまの増田幹事の御発言も含めまして,いかがでしょうか。例えば後見人に対して一定の実体法上の地位を付与するという基本的な審判があり,それに引き続くのは,それに付随する事項に関する裁判所の判断という性質があるのであるからと。そのことは,民法の規定の上からもそういう考え方がとられているのではないかという御指摘を踏まえての御発言ですが,この点に関しては,他の皆様はいかがですか。 ○三木委員 今のお話を伺ってみて,条文を見てみて,民法の条文からどちらがどうということは言えないように思いました。つまり,民法がどちらかを指図しているという関係にはないと思いました。したがって,純粋に手続的に議論がされるべき問題だろうと思います。   増田幹事と小田幹事の御意見の相違が結局突き詰めるとどこにあるのかというところが,分かるようでもあり,やや分からないところもある。つまり,一方で,小田幹事がおっしゃっている重要な要素もあるし,実際に後見人等になる人は必ずしも法律家ではないこともある,だから慎重な手続を要するのだというような御趣旨だったかと思いますが,独立の事件を起こさせて印紙を貼らせたりすることが慎重さに結びつくというのもやや形式論であって,慎重かどうかは実際の審判―審判というか,広い意味の裁判をどういう手続でどういうふうに行うかという内容にかかわるものであって,そこは論拠になっているかどうかよく分かりませんでした。他方で,増田幹事のおっしゃっている御趣旨の実務的な意義ですが,要するに,現在のやり方だと,1件1件事件を起こされて,審判申立書を書いて,印紙を貼ってやるのが余計な手間ではないかというようなことに尽きるように思いましたが,それと御提案になるような形をとって破産手続の付随事項等と同じように扱うということが,非常に形而下的なことを伺って恐縮ですけれども,結局何が一番御提案の眼目なのかということです。例えば印紙を貼るという,印紙代の拠出を避けたいということなのか,書類作成の手間の問題なのか。書類作成といっても,どのみち書類はつくらなければいけないのであって,それが申立書であろうと許可申請書であろうと,そこは何が違うのかなと,我々実務に疎い者にはよく分からなかったので,要するに,増田幹事にお伺いしたいのは,御提案の実務的な意味です。それでどういう負担が軽減されるか,あるいは現在のやり方だと何が無駄なのかというのをもう少し教えていただけませんでしょうか。 ○伊藤部会長 それでは,その点について増田幹事から補充していただいて,かつ,増田幹事からの御発言を踏まえて,裁判所の委員・幹事の方からもそれについての御意見をちょうだいするという形でもう少し審議をしたいと思いますので,どうぞ,増田幹事,お願いします。 ○増田幹事 非常に形式的に言えば,確かに,印紙を貼るのが無駄だとか,申立書を書くのが無駄だとか,申立書にいちいち,「申立人は何月何日何々家庭裁判所により選任された後見人である(何々家庭裁判所何号事件)」と書くのが面倒なのかという,そんなレベルにすぎないと見られるかもしれませんが,この提案をしている本当のねらいというのは,やはり一つの事件として統一管理をするという構造をとることによって,破産事件と同様に一体とした事件管理ができるところではないかということなのですが,それが具体的に何を言うかという御質問なのでしょう。これはまた裁判所の方に伺った方がいいかと思いますけれども。事件の管理という点ではかなり省力化になるのではないかと思うのですが,いかがなのでしょうか,そこは。裁判所の方の方がよく分かるのではないかと思います。 ○伊藤部会長 分かりました。それでは,三木委員,補充してください。 ○三木委員 正に増田委員が今最後におっしゃったように,一体的な事件管理ということが実質的に何を意味するのかがちょっと分からなかったということなので,むしろ裁判所の方にお答えいただいた方がいいかもしれません。 ○鈴木委員 私は余り後見の監督の関係の仕事をしておりませんが,実務家としての感覚としては,破産事件の方は,配当や終結に向けて,なるべく早く仕事を終えるという目標がございまして,また,裁判所も,多数いる債権者にかわって監督をしているという立場が強いかと思います。そういう意味で,破産の監督というのは,事件の終結に向けて,目標が定まって監督をしているというところがございますが,後見は,いつ終わるという目標があるわけではなく,継続的にずっと見ている。基本的には後見人にお任せをして,絶えず目を配らせているわけではない。何かあったときに申し立てていただいて,それの許否を判断するということではないかと思うのです。先ほど例に出されました財産目録の調製というのは初期段階の一定期間にやるべきことですから,いつ来るかは予測の範囲内ですけれども,それ以外のものについては,何か必要が生じたときに,その都度申立てを受けて裁判所が判断するという色彩が強いのではないかと思うのです。そうしますと,破産と後見という比較ですから,それの範囲でお話ししておりますけれども,やはりちょっと性格が違うのではないかなと。その結果,手続に違いが出ても,それはそれで理解できるのではないかというような気がいたします。 ○長委員 私は不在者の財産管理人とか相続財産管理人の事件を現に担当しているのですが,事件の管理ということからしますと,例えば不在者財産管理人の事件ですと結構長いのです。破産事件ですと,案件にもよるのでしょうけれども,集中的に清算をしていくということになるのでしょうが,不在者財産管理人の場合には,不在期間が長くても,必ずしも失踪宣告をすることを望まない親族の方もおられまして,大変長くなる。そういうものを管理していくときには,処分行為をする必要が出てくるときがあるのですけれども,それを手続の中で明確にしていった方が,管理の仕方としてはおろそかにならない,そういう印象は持ちます。ですから,先ほど,破産に近いものとして不在者財産管理人を挙げられましたけれども,むしろちょっと性格が違うのではないかという印象を持ちました。 ○小田幹事 専ら後見を念頭に,記録に関して申し上げますと,正に管轄を統一してというのがそこに一つあるわけですが,後見開始事件を担当した裁判所があれば,そこに後見開始事件の記録がございます。その後,居住用不動産処分の許可とか,ほかにもたくさんありますが,関連事件が審判事件として係属したということになると,今回の立法では,自庁処理ということではなくて,明確に管轄をここ一つにということで提案がされているところですが,いずれにせよ,前の記録というのを見ないでするということはございません。仮に違っていた場合でも,その場合には記録を取り寄せるでしょうし,そもそも管轄のところでこちらも希望しているのが先ほどから申し上げているようなもので,継続的にべったりというものではありませんけれども,監督を担当する裁判所は,基本的に後見開始を担当した裁判所にということで,そこに最初から記録がありまして,それ以外の付随事件が係属すれば,記録をその後にどんどんつけていって,開始事件から監督事件その他の付随事件,報酬付与なども含めてすべて記録を一体として管理しているというところにございます。そういった点では,記録に限定してではありますけれども,むしろ一体した管理をしているというところはございます。 ○竹下関係官 これは,裁判所の処分及び当事者の行為のかかわる一連の事項を,どこまで一つの事件として,あるいは一つの手続として統合して考えられるかの問題だと思います。おそらく沿革的には,第二次大戦後,家事審判手続というものを初めて創設するときに,民法の親族法,相続法の全面的改正作業を進めながら,どの処分を家事審判事項とするかを検討し,他方,それを受けて,家事審判法で家事審判事件の範囲を決めていったのであると思います。その際,民法で,これは家庭裁判所の許可とか承認に係らせると定めた事項を,家事審判法の方では,それぞれ一つの事件と受け止めて,それを単位として手続規定を置いたものだと思うのです。したがって,その単位ごとに別個の事件と扱わざるを得ないのではないかと思います。   家事審判制度は,ご承知のとおり,戦前からその導入が検討されており,戦前の要綱では,もう少し事件の単位を大くくりにしていたように記憶していますが,それは要綱であるからであったかも知れません。いずれにせよ,戦後の民法改正,家事審判法制定の際に,そのような定め方をしてくれてあれば,増田幹事のいわれるように,一つの事件の範囲内では,申立ての方式や印紙の貼用などを弾力的にできたかと思いますが,現行法はそうなっておりませんので,民法の定めをいじらずに,家事審判法の方だけで一つの事件のくくり方を変えようとしても難しいのではないかと思います。   以上は,沿革的な観点からの話ですが,理論的には,数個の処分や行為を,どこまで一つの手続を構成するものとしてとらえられるかが問題であると思います。その場合に決め手となるのは,その処分や行為の目的が同じと見られるかどうかであると思います。倒産手続との対比が問題とされていますが,倒産手続は,債務者の全財産の清算あるいは企業の再建という目的を実現するための手続であるので,倒産手続開始の申立てに基づきなされる開始決定と,その後になされる裁判所の処分や関係人の行為を統合して一個の事件,一個の手続を構成する行為ととらえることができるわけです。したがって,理論上は,現在,別個の事件,別個の手続と観念されている家事審判事件も,同一の目的をもつものと考えられれば,その範囲で一つの事件に統合することができるかもしれません。しかし,実際には,現行民法の下で,そのような統合をすることは難しいのではないかと思います。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。   先ほど来の御意見を承っていますと,一つは,一応議論の材料が後見に限定されておりますけれども,後見人―後見手続の機関と言ってよろしいのでしょうか―と裁判所とのかかわりの在り方といういわば実態の問題と,それから,今,竹下関係官から御説明がございました,民法の諸規定と家事審判法の審判の在り方といういわば法制度的な問題が両方絡み合っておりまして,本日いろいろ御意見を承って大分認識が深まりました。なかなかこの場で結論を出すのは難しいかと思いますので,一応現在の時点での事務当局の考え方は,先ほど申し上げたようなことではございますけれども,本日の御審議を踏まえまして,更に,どういう方向で,しかもどういう形でこの問題の合理的解決を探るのが適当なのかを検討してもらうということでよろしいですか。―はい。 ○三木委員 1点だけ思いましたのは,後見なら後見の開始決定後のいわゆる付随的な事項の中にも,文字どおり付随的であって,かつ,開始決定の恐らくは比較的近接した時期になされるであろうものと,それから,延々と後見が続いていって,いつ出てくるか分からないようなものとは若干性格が違うように思いました。それを今回の改正で書き分けることができるかとか,そういう技術的なところまでは何も考えておりませんが,抽象的に申し上げれば,そこはやはり仕分けてもいいのではないかという気がします。   例えば,増田幹事が挙げられた財産目録の作成期間の伸長の許可申立てなどは,付随的なものの一つの例のような気がして,そういったものはまたもともとの開始決定の付随事件的に扱って,しかし例えば居住用財産の売却許可は別事件とか,何かしらめり張りをつけるということも含めて検討していただくという余地もあろうかと思うのです。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。ただいまの三木委員の発言も含めて更に検討することといたしたいと存じます。   それでは次に,部会資料11-2で言うと2の「精神の状況に関する意見聴取等」で,資料11では1ページの2のところですね,「精神の状況に関する意見聴取等」でA案とB案がございます。つまり,医師の診断の結果その他適当な者の意見を聴かなければならないということを原則にするA案の考え方と,もう一つは,鑑定をするということを原則にするB案の考え方,この二つが掲げられておりまして,それに対する意見は部会資料11-2にあるとおりでございますが,この点に関して御審議をお願いしたいと存じます。 ○栗林委員 この点については弁護士会でもいろいろ意見を聴いてみましたが,明確にA案に賛成される方とB案に賛成される方に大きく分かれておりまして,どちらが優勢という状況ではないように思います。ただ,私としては,A案が現実に即していて,妥当ではないかと思っています。B案の鑑定というのが,法律上,鑑定と書きながら,実際上の鑑定にはほとんどなっていないということ,それから,実際上,鑑定を得ることが非常に困難であるということ,それから,一般の方がそういう方を探すのは更に困難であるということもあります。また,宣誓をしていないという現実もございます。それで,実情が法律とずれているということもありますので,それは適正に反映させたものであった方がいいだろう。ただ,A案の中でも,「その他適当な者」ということについては適切ではなくて,精神の状態に関するものであれば,その専門医の鑑定が必要であると考えるべきではないかと思っております。運用としては,現在の実務の扱いが適切な運用ではないかと考えています。 ○伊藤部会長 栗林委員からは,「その他適当な者」の点は別として,A案の考え方,つまり,鑑定を原則としないという考え方が現在でも合理的であるし,また,今後の在り方としてもそちらが望ましいし,また,それで適正な後見の開始の判断ができるのではないか,こういう御発言がございましたが,いかがでしょうか。   それでは,議論していただく材料といたしまして,裁判所から提出していただきました資料についての説明をお願いいたしましょうか。これは小田幹事でよろしいですか。 ○小田幹事 それでは,御説明いたします。   資料は三つございますが,まず,一つ目が鑑定についての期間や費用その他のデータでございます。二つ目が鑑定書の書式でございます。中身も書いてありますが,最高裁が鑑定を引き受けていただく医師に対して配る記載例そのものでございます。ですから,鑑定は大体この程度,こういったことを書いていただきたいというのがあらわれているものでございます。三つ目は最高裁作成診断書の書式でございます。中身については,記載例ではなくて,実際に東京家裁の事件の中から典型的,よくあるようなものをほぼそのまま書いたものでございます。   そこで,御説明としては資料に基づいて,鑑定についての実情と,現に判断能力を実務でどのように判断しているか,このような書式を用いてどのように判断しているかということでございます。   まず,鑑定ですけれども,審理期間や費用の点で,裁判所はそれを常に申立人などから言われるわけですが,申立人などへの負担が大きいものでございます。成年後見制度ができてから10年たちますけれども,後見開始事件の平均審理期間は,いろいろな運用改善によってだんだん短くなってきておりますが,鑑定をするということになりますと,残念ながらこれが非常に長くなってしまいます。背景としては,申し上げるまでもないことですが,だれに鑑定をしてもらうか,それから,どうしても鑑定書を作成してもらう期間がございます。資料1枚目のところですが,1か月以内が52%となっておりますが,平均の日数をとってみても大体30日ぐらい。長いのも短いのも含めて平均してですけれども,1か月程度というのが多いようでございます。どうしても1か月かかってまいります。   それから,医師に鑑定を依頼することになると,費用がかかってまいります。費用が下の円グラフでございますが,5万円以下の割合が5割を超えておりますけれども,5万円を超える事件の割合も相当ありますし,5万円以下といっても,1万円,2万円ということではなくて,もう少し5万円に近いところが多いようでございます。   家庭局や各家庭裁判所は各県の医師会との連絡を密にするなどして,このような鑑定をそもそも引き受けていただくということ,それから,費用,期間についても御配慮いただくように働きかけをしておりますし,先ほど申し上げたように,参考資料11-2のような,作成しやすいように書式を定めて,記載例を配っておるところでございます。それでも,実情としては,今申し上げたとおりのところの負担がかかってくるというところでございます。   費用と期間を申し上げましたが,特に審理期間が一律に1か月以上延びてしまうということになります。今,鑑定しない事例ですと,全国平均で審理期間が約1か月に近づくところまで来ております。それが,鑑定をするということになると,ただでさえ倍以上になってしまいます。後見開始事件の申立てをする人というのは,何か必要があって来るわけですね。金融機関で指摘されたとか,こういった契約をしなければいけないと。そこで,1か月以上待たされるというのが非常に負担であるということをよく聞いております。   成年後見制度についてはいろいろ取り上げられることが多いわけですが,特に,利用者が更に利用しやすいようにというのは社会的な要請としてあるところでございます。そういった観点からは,適正に判断能力の判断ができるという前提ではありますけれども,可能な限り鑑定の実施を避けることが望ましいと考えております。   それから,実際に提出された診断書を多数見てみますと,このような書式をつくったこと,それから,10年たちまして医師の間でも広く成年後見制度についての理解が進んだことによりまして,分かりやすい,また,裁判所にとっても必要な情報が十分盛り込まれた鑑定書が増えてきております。それと,鑑定を実施する場合には,本人の状態をよく知っている主治医に依頼することが現実的ですし,また,それ以外に探すというのは非常に難しいところがございます。そうすると,これは結果論かもしれませんけれども,申立ての際に主治医が作成した診断書を出してもらっておりますけれども,これと鑑定を実施しても結論が違うということはほとんどないという実情もございます。   まず前半部分については以上でございます。   それから,判断能力についての審理の実情について御説明いたします。   今申し上げたとおり,診断書の書式は,参考資料11-3のようなものでございますけれども,記載内容も充実してきています。具体的な手続の流れとしては,後見申立てを考える人が来たときには,家事手続案内の中で診断書の書式をお渡しして,主治医にできるだけこういった内容を書いてくださいと御説明した上で,申立てのときに出してもらうように依頼しております。全国的にそういった運用が定着しているところでございます。   参考資料11-3を御覧ください。診断書というと,通常,病名と加療何週間というだけ,一行のものが多いというイメージがあるかもしれませんけれども,決してそうではなく,所見として,本人の判断能力を示す具体的な事実や判断能力のレベルについての意見とその判定根拠を書いてもらっております。   そのような診断書の記載に加えまして,申立ての際に面接を実施しております。多くの庁で実施しておるところですが,申立人などから本人の現在の生活状況や介護認定の有無などについて事情をお聞きしております。それから,申立人ではなくても,本人と関係の深い親族がその申立ての中で明らかになった場合には,後見開始,判断能力その他の状況について御意見を書面で伺うこともございます。   以上のような審理の工夫によって,今の運用としては,診断書などによって判断が可能な場合にはこれによることとして,真に必要な場合に限って鑑定を実施するということになっております。平成21年の1月から11月までの全国の後見等開始事件における鑑定実施率,1枚目の資料の枠組みの中にあるものですが,約21.5%となっております。   以上でございます。 ○伊藤部会長 ただいまの小田幹事,それから先ほどの栗林委員の御発言を踏まえますと,結局,鑑定を原則としないというA案の考え方は,時間と費用がかかるという面,それから,逆に,少なくとも専門家としての判断者が医師であることを前提にすると,鑑定という厳格な方法をあえてとること,それによらせることによって得られる利益というのはそれほど大きなものではないのではないか,そのあたりのことかと思いますが,それに対してB案のような考え方も十分あり得ると思いますので,どうぞ御発言ください。 ○道垣内委員 結論的に申しますとB案がいいのではないかと思います。鑑定という言葉自体が緩められた運用をしているという話とか,ただし書をうまく使っているという話は,それは実務の運用としてよく分かりますし,それ自体が妥当ではないと申し上げるつもりはございませんけれども,鑑定が原則であるというルールを外すというのには反対です。   成年後見制度ができ上がったときに,諸外国の動向とかをいろいろ調査いたしまして,鑑定が必要かどうかというのが実体法のレベルでもかなり議論がなされました。そして,そのときに,成年後見制度の性格を表すときの言葉遣いによってイメージが大分変わってきていたのです。つまり,高齢者とか知的障害者の保護の制度であると言う人は,簡単に開始ができる方がいいじゃないかとおっしゃることが多かったのですが,しかし,これに対しては,あくまである行為をしたときに別人によって取り消されることがありうるという行為能力の制限であるという面を持っているわけであって,やはり保護の一言では言えないという意見も強く,私はそちらが妥当だろうと思うのです。そして,保護の制度であるとおっしゃる方は,後見が開始される範囲をどんどん拡大するという方向を提案されたわけですが,しかしながら,昭和54年の改正で,準禁治産宣告の対象者から聾者,唖者を除くという判断がされたように,やはり行為能力制限であり,むやみに拡大すべきではない,というのが一般的な考え方だったと思います。そして,行為能力制限であり,本人の権利を制限するものであるという面があることを踏まえて,やはりそれは鑑定をしなければ,そのような制限はできないのではないかという意見が強かったと私は理解している次第であり,かつ,そのような意見は現在でも誤っていないと思います。運用でやっており,そうするとそれを正面から認めた方がいいのではないかという考え方もあり得るかもしれませんが,正面から認めるのと,理念として鑑定が必要であると書きながら,運用で緩和していくというのとは根本的に違う話であり,私は絶対にB案でないと駄目だという考えです。 ○伊藤部会長 道垣内委員からは大変強いB案支持の御発言がございましたが,どうぞ,増田幹事,お願いします。 ○増田幹事 小田幹事に質問があったのですが,本日いただいた資料の鑑定の割合というのは,当事者が鑑定書をお医者さんに頼んでつくってきてもらうものも含んでいるのでしょうか。 ○小田幹事 21.5%の母数が何かということでしょうか。 ○増田幹事 私の感覚で言えば,当事者がほとんどのケースでお医者さんから鑑定書をもらってきて,裁判所に提出して,それで決定を受けているというのが実態なのですけれども,ですから,それを含めるともっと多いのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ○小田幹事 申立人が医者から鑑定書をもらってくるという……。 ○増田幹事 鑑定を依頼して。ついでに言うならば,費用も5万円を裁判所に納めて,その5万円で済ませているケースが圧倒的に多いという感覚なのですけれども。 ○小田幹事 私が御趣旨を理解できているか分からないのですが,20%というのが鑑定を実施したもので,裁判所が鑑定をすると決定したものがそれのすべてでございます。鑑定をするということであれば,裁判所書記官から医師に依頼が行きますし,もちろん,先ほど申し上げたのは,そこの手続が円滑にいくように,申立ての段階で,もし鑑定をするのであれば,主治医が鑑定を引き受けてくれるかどうかということを聞いてきてくれということで,裁判所に情報は来ております。そのようなことで,申立人と医師との間のやり取りがいろいろあることはあるのですが,鑑定は裁判所から依頼するということで。 ○増田幹事 もちろん,鑑定は裁判所が依頼する,それは当然のことです。ただし,事実上は当事者が頼んで来ている。裁判所から当事者に候補者推薦を求められたということで,それで実務として普通はスムーズにいっているはずなのですけれども,それを含めて21.8%,そういうことですよね。 ○小田幹事 今,増田幹事がおっしゃったものも,要するに,申立人がいろいろ動いているものも,それは裁判所が鑑定をしたというものでありますから,もちろんそれも含めて20%ということでございます。 ○伊藤部会長 議論の整理のためですが,ここで言っている鑑定というのは,もちろん専門家としての鑑定意見は当然ですが,その前提としての宣誓の手続であるとか,いわば正規の手続を経たものという意味ですよね。 ○小田幹事 そうです。 ○伊藤部会長 増田幹事の認識だと,そういうものを言うとしてももっと多くあるのが実務としての実感である,そういうことですか。 ○増田幹事 小田幹事の言われるのは,宣誓をした鑑定ということですか。 ○小田幹事 先ほど栗林委員の御発言の中にもありましたが,書面で宣誓書を出しているのがほとんどだと思いますが,裁判所が鑑定をということであれば,すべて宣誓はしてもらっております。 ○伊藤部会長 それは,書面ということは当然あり得ると思いますが,形はすべてやっているということですよね。そういう本来の手続での鑑定という前提で,どうもちょっとそのあたりの認識が若干ずれがあるように思いますが。 ○増田幹事 それを踏まえて私の考え方なのですけれども,実はA案とB案でそれほど実務的には大きな差はない。鑑定といいましても,実際には書面での鑑定が大半を占める。実際に鑑定を行っているのも必ずしも精神科の専門医に限らず,主治医の方,例えば内科の先生でも鑑定人としての適格性に欠けるとは考えられていないということから考えますと,先ほど栗林委員からは,A案とB案という,かなりの対立があると言われましたけれども,実際は鑑定という言葉の重さだけの話だろうということなのです。B案をとる論者の方は,ほぼ道垣内委員が先ほどおっしゃったことと同じことを大抵おっしゃる。A案をとる方は,「その他適当な者」は問題だというのは別として,鑑定といったところで,現在の実務の鑑定というのは非常に形式的なものであって,鑑定の名に値しないのではないかという意見なのです。ですから,実際には余り変わらない。現在の実務に対して反対する意見をとる方というのは余りいないというのが実態でございます。 ○伊藤部会長 そのあたりは,内容の議論はもちろん更にしていただきたいのですが,私自身の認識ですと,確かに専門家の意見を裁判所に伝達するという実質においてはそれほど大きな違いがないのかもしれませんが,やはり鑑定という方式をとる以上,そこに,随分現在では規律内容は合理化されたとは思いますけれども,相当の差があるように思って,それを見識の違いというだけの問題かなということはございますが,そのあたりはむしろ現実認識の話ですので,その点も含めてどなたか御発言あれば幸いです。 ○杉井委員 結論的にはB案に賛成です。確かに弁護士の中でも,鑑定については,宣誓について昔風に考えると,法廷に来て宣誓をやらなくてはいけないので大変だという意見があります。また,ほとんど後見の事案については書面宣誓で済ませているので,わざわざ裁判所まで来て宣誓ということもない。そういう意味で宣誓が非常に簡略化されているので,本当の意味の鑑定なのだろうかというような意見もありました。しかし,わざわざ裁判所に来て宣誓させる必要はないだろうというのはほぼ一致しています。ですから,だったら,今実務でやっている,そういう程度でいいのではないかという前提で議論をしていた面があるのです。でも,書面であってもやはり鑑定には宣誓が必要ということで,実際もそれをやっているとすれば,それを後退させる必要はないと思います。結構親族間で争いのある事件も多いです。私が後見人になったケース,私はあくまでも裁判所から頼まれて後見人になったわけですが,後で親族で争いになって,結局,後見が取り消されたというような事案もあったのです。そんなことも考えますと,本来的には鑑定が原則であって,ただ,このただし書にあるように,実務の運用上,かなり柔軟な運用ということもできるわけですので,私はB案の方に賛成します。 ○長委員 まず,鑑定において書面宣誓が行えるのは,民事訴訟と同じでございます。家事審判の後見の鑑定であるから違うということはありません。鑑定書の中身の問題については,確かに昔は医学的に詳細な鑑定書というのがつくられていたのですけれども,それぞれの制度に応じて意思能力の程度を財産管理能力の面から把握することの方がむしろ大切でして,旧来の鑑定書の記載の仕方では,財産管理能力の程度がどのくらいかを容易に理解できないものもありました。そこで,医師に対して財産管理の面からの質問をしまして,財産管理の面での意思能力の程度を把握するように努めていました。財産管理という観点から整理されているのが現在の鑑定書の記載例になっています。したがいまして,分量的には昔よりも短くなっていますけれども,必要なことはむしろ書かれていると思います。   ところで,先ほど問題になりました,当事者がもらう鑑定書というのが出てきましたけれども,申立てのときには当事者が診断書を提出します。その診断書の記載から,例えば遷延性意識障害などと記載されておりますと,これは意思の疎通というのは不可能だというふうになっておりますので,そういうものについて更に鑑定を重ねる必要はないと思います。重い意識障害というふうに書かれているものも同じことになると思います。そして,更に先ほどの,書式として診断書の記載例というのがあるわけですけれども,必要な事項にチェックされていて,問題がないようなものについては鑑定まで至らない,こういう形になっているわけです。そしてそれがいろいろ実務で遺漏がないように進めていった結果,先ほどのようなパーセンテージになっているようです。したがいまして,実務で今到達しているところに基づいて,これが全くおかしいという実務であれば別なのですけれども,それに基づいて考えた場合には,もちろん問題がある事案につきましては鑑定を現にいたしております。先ほど,取り消された例というのがおありだったようですけれども,そういう例についてはやはり鑑定をしなければいけない例であったかと思いますけれども,そういう例は,私が今申し上げた遷延性意識障害のような例ではないだろうと思われます。したがいまして,どちらがいいかというと,先ほど栗林委員からも実務について一定の評価をいただいたのは大変有り難いことだなと思ってお聞きしていたのですが,A案がいいのではないかと私も思っています。あと,「その他適当な者」という点についてどういうふうに考えるかというのは,また検討はあろうかと思いますけれども,基本的にはA案がよろしいのではないかと思います。 ○藤井委員 混乱してきたので素人のような質問で恐縮ですが,ここでいう鑑定という用語はどの定義で使っているのでしょうか。例えば,不動産鑑定士による鑑定や,特許事務所の鑑定書もあります。弁護士事務所に意見書をお願いしますと,鑑定書としてもらったり,意見書,メモランダムとして出してもらったりします。今回のA案,B案を比較しますと,条文に鑑定という言葉を書くか書かないかのような気がしますが,A案で医師の意見若しくは専門家の意見と書いたところで,それが必要であれば鑑定書にかわるだけで,実務運用で何とかなるような気もしますので,鑑定と書けば,どれくらい効果が変わってくるのかお教えいただければと思います。 ○脇村関係官 ここで申しております鑑定といいますのは,民事訴訟法上の中で書いてある鑑定の意味でございますので,例えば宣誓をした上でしないといけないとか,忌避事由があってはいけないとかというふうに法律上定まっているものでございます。ですので,専門家の意見というものとは別に,そういった一定の法律上の様式を備えたものを初めて鑑定と言いますので,そういう意味では,鑑定とそれ以外のものというのは明確に分かれているところでございます。恐らく今回の御議論というのは,実質においては専門家の意見を聴取するという点では違いはないのかもしれませんが,一方では法律上の厳格な要件を必ず備えないといけないものとしないといけないかどうかという点で,やはり公正の観点からそれだけの要件が必要だというふうに考えるか,いや,そうすると重くなってしまうのが実際で,お金もかかるので,そこまでやらなくていいのではないかという点で分かれているのだと理解しております。 ○藤井委員 そういたしますと,もし鑑定と書いた場合には,今の実務はかなり否定されるのでしょうか。先ほど8割近くの案件では鑑定を取っていないとの御報告がありましたが,この8割近くの案件について鑑定という手続が加わるべきということになるかと思ったのですが,このような理解でよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 B案を採用して鑑定を原則としないといけないのだという御意見の中には,今,藤井委員がおっしゃったように,現状の実務を変えてもっと鑑定を実施すべきだという意見の方もいらっしゃるのかもしれません。ただ,今,聞いている限りでは,この部会の中では,現状の認識としては,ただし書を活用する形で,現在の運用を前提とするということはいいのだけれども,ただ,やはり原則として鑑定が必要だというメッセージ性は残すべきだということから,B案を採用すべきだという意見の方が多いのかなと思っております。したがって,現状を必ず変えるということでB案を採用すべきだという方が多いということでないのではないでしょうか。 ○伊藤部会長 よろしいでしょうか。―はい。ありがとうございました。 ○山田幹事 私は,ここではB案の方に賛成をしたいと考えております。今,何度か鑑定書という言葉が出てまいりましたけれども,今,脇村関係官がおっしゃったとおり,それは単なる書証にすぎないものだというのが訴訟法上の議論だろうと考えます。そうだといたしますと,医師が作成いたしますので,その文書の成立に問題があるということは基本的には考えられないのは確かではございますけれども,しかし,医療過誤訴訟等でしばしば言われますように,医師の専門性があるからといって,必ず中立である,あるいはほかの議論があり得ないということではないだろうと考えます。また,他方で,この問題は,だれのために行われる手続かといえば,公益的な側面が非常に強いものであろうと考えられますし,また,行為能力が制限される人にとっては,先ほど道垣内委員からもありましたように,非常に大きな制約になるだろうと考えられますので,そういう点からも,単なる私鑑定というものを原則としてもよいという文言にしておくのはやや不安があるかなと思いますので,B案に賛成したいと思います。 ○伊藤部会長 仮にB案の考え方に沿った場合でも,当然,審判の申立人としてはまず診断書のようなものを添付資料として出してきて,裁判所が御覧になって,これは明らかにもう判断ができるというのであればそれ以上は求めないけれども,必要がある場合であれば鑑定をしなければいけない,こういう仕組みになるわけですね。ですから,そういう意味では,先ほど藤井委員から御発言がありましたように,B案の考え方に基づいて何か立案をしたから現在の実務がひっくり返ってしまうということではないとは思うのですけれども。 ○杉井委員 私も今部会長がまとめられた趣旨で申し上げたので,決して今の実務を否定しているわけではありません。 ○伊藤部会長 分かりました。   どうもいろいろ御意見ありがとうございました。審議の結果を踏まえて,更に事務当局で検討を進めたいと存じます。   それでは,ここで休憩を15分ぐらいとりたいと思います。           (休     憩) ○伊藤部会長 それでは,再開したいと思います。   先ほどの継続になりますけれども,「後見の開始」に関しまして,次は資料11-2の4の「審判の告知等」でございまして,資料11の方で申しますと3ページのあたりでしょうか,審判の告知に関する①の内容,そして成年被後見人となるべき者に対してその旨の通知という考え方を設けているのはどうか,さらに,通知自体に関しても,(注)にございますように,果たしてすべての場合にそれをしなければならないものとすることが適当かどうかというあたり,このあたりが実質的に御審議をいただく対象かと思います。それでは,どうぞ御意見,御質問をお願いいたします。 ○増田幹事 この意見は弁護士会で議論した内容を提出したものなのですけれども,前提として告知と通知の違いというのがいまひとつ分からないところがありまして,これは正直言って本当に分からないところがありまして,先ほど法務省の関係官の方のお考えはお伺いしましたけれども,研究者の皆さんのお考えをお聞かせいただければ有り難いのですが。 ○伊藤部会長 分かりました。適切な方は大勢いらっしゃいますので,いかがでしょうか。委員・幹事どなたでも結構ですので,今の増田幹事からの質問に関して,先ほどの事務当局の説明は説明として,何か補充なり,あるいは御意見ございましたらお願いしたいと思いますが。 ○山本幹事 脇村関係官から御説明にあった対象事項によって区切るというのは一つの説明で,それで確かに通知と告知の違いというのが分かる部分もあるとは思います。ただ,手続法全体が常にそういうふうになっているかというと,私の理解は必ずしもそうではなくて,そもそも民事訴訟規則は通知の定義的なものを置いており,民事訴訟規則第4条で「この規則の規定による通知」という書き振りはしていますけれども,必ずしも到達することを要しないものであるというような整理がなされているように思います。また,倒産法上も破産手続開始決定については公告のほか通知をするということになっていますが,この通知も先ほどの定義には当たらない,破産手続開始決定という裁判を通知しているわけですので当たらないもので,これは多分送達より,より簡易な通信方法を通知というふうに一般的に呼んでいるのだろうと思います。そういう意味では必ずしも全体として法制上統一があるというものではなくて,先ほどの脇村関係官の御説明は,私の理解ではこの場ではこういうふうに使おうというか,この資料ではこういうふうに使っていますという御説明であったように承りました。しかも,後見開始のところの通知は少し違う意味を持っているのだというお話でしたので,私も混乱しておりまして,言えることはその程度のことでございます。 ○伊藤部会長 ほかにどなたか手続法の研究者の方で補充をしていただけることはございますか。高田委員,いかがでしょう。 ○高田(裕)委員 山本幹事もおっしゃいましたように,法令,規則ごとにそれぞれの使い方があり得るということだろうと思います。念のために確認させていただきたいのですけれども,現行審判法,審判規則の使い方と今回の提案はほぼ整合しているという御趣旨でしょうか。それとも,今回は今回の御提案として整理されたという御趣旨なのでしょうか。 ○脇村関係官 平成11年の成年後見制度創設の際に,従前の議論として被後見人に対しては審判の告知ができないという解釈が一般的だったことから,意思能力の有無に関係なく知らせるということを「通知」すると表現することにしたのだと理解しております。そういう意味では,今回,部会資料も使い方としてはほとんど一緒だと思っておりますが,今後どのように表現していいのかについては,全体的に告知というものをどういうふうに使うのか,通知をどういうふうに使うのかによって変わってくると思っておりますので,事務当局において更に検討したいと思っております。ただ,成年被後見人に対して審判内容を知らせる,知らせたことにどういう法的効果があるのかについては御審議いただく必要があると思っておりまして,そこが決まれば,あとはそれをどう表現するのかは全体の平仄を見て事務当局において適宜何かいい方法を探したいと思っているところでございます。 ○伊藤部会長 ということで,増田幹事,十分満足していただけるようなことがあったかどうかは分からないのですけれども,それはそれとして,先ほど,部会資料11-2にある意見は増田幹事の側の御意見という御発言がございましたが,その内容に即して実質を議論していただいた方がいいかと思いますが,いかがでしょうか。更に補充していただくことはございますか。 ○増田幹事 言葉の問題を別にすれば,私の意見は,審判の内容について被後見人となるべき者にも知らせるべきであるということです。通知については,何らかの形で例外なく行うべきである。それは,その者が事理弁識能力を常に欠く状況にないとした場合に不服申立ての機会を与えるということになる。ただし,それを即時抗告期間の起算点とするというような考え方ではないです。この点は脇村関係官と同意見ということになります。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。告知と通知の言葉の使い分けについてはややまだ検討すべきところが残っているかと思いますが,考え方としては,必ず成年被後見人となるべき者に対して審判がされた事実を知らせることが手続保障上不可欠であるという考え方を前提にされているというので,そうなると(注)との関係も出てまいると思いますが,今の点は,内容の話としてはいかがでしょうか。 ○山本幹事 現行の規則もそういう趣旨で定められたという先ほどの御説明だったわけですが,その知らせるという事柄の意味なのですが,知らせるというのは,相手方が分かるということがやはり前提になっているように思うのですが。つまり,何も分からない人の前でその文書を置けば知らせたことになるのかとか,その内容を読み上げれば知らせたことになるのかというと,それはやっぱり何か形式を踏んでいるだけのことであって,そういう意味からすれば,私は,3の「陳述聴取」のところにこういうようなただし書を置くのであれば,通知のところにもそういうただし書を置いた方が話は明確になるし,通知ということの意義がより明確になるような感じがしております。 ○伊藤部会長 山本幹事からは,今,通知の意義に関連して具体的な提案がございましたが,この点はいかがでしょうか。繰り返して申しますが,(注)に掲げられているような問題も当然意識されてのことだと思いますが。 ○長委員 通知のことなのですけれども,被後見人が居住しているところに通知が届けられた,発せられた。ところが,そこの関係機関の方で受け取らないような例があるということも聞くのです。それから,関係機関の方で被後見人の親族の方に転送するような例もあるようです。そうすると,こういう規定が設けられていたとしても,山本幹事がおっしゃったような観点からしますと,本当に適当なのだろうか,むしろやはり例外を設けていくということにならざるを得ないのではないかという感じがしています。 ○伊藤部会長 分かりました。先ほどの増田幹事のようなお考えだと,そういう例外を設けることは妥当ではないということになりますか。 ○増田幹事 ですから,特に例外を設けることは妥当ではない。特に,(注)のような理由で例外を設けることはなおさら妥当ではないのではないかと考えております。 ○伊藤部会長 施設の方が拒否したからというのはちょっとあれでしょうが,山本幹事のおっしゃったように,およそ理解を期待できないというような場合ですよね。 ○増田幹事 山本幹事のおっしゃったことが,正に告知なのか通知なのかと言っているのと同じことで,それは受け取る側にどの程度の能力が必要とされるのかという問題にまた戻ってしまうということになるのです。ただ,成年被後見人でも全く分からない人ばかりでは実はないです。統合失調症の方が典型ですが,あるときには分かっていて,あるときには全然分からない,こういう人も大勢おられるので,知らせることが常に全く無意味というわけではないです。 ○平山関係官 施設が拒否するということの実質ですけれども,施設の方が通知の意味内容を知ることができないような方だという御本人の状態を一番よく分かっていらっしゃっていて,そういった通知書なりを預かっても最終的な取扱いに困るという実情なのだと思いますので,補足させていただきます。 ○伊藤部会長 分かりました。なかなかこれもいろいろ実情を考えると難しい問題ではありますが,ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 次の「即時抗告」のところにも関係するのですけれども,4の中だけで申しますと,本人に対する告知とか通知とかというのは,本人がそのような決定がなされたことに対して不服がある場合に一番意味のあることだと思うのです。したがって,議論をする際に,成年被後見人になった人は意思能力がないのだというところから出発して議論をするということは誤りだろうと思います。つまり,本当は意思能力があるにもかかわらず成年後見開始の審判がなされた場合が一番問題なのであって,したがって,類型的にこの人には受け取って読んで理解する能力がないというところから始めますと,それはもう正しい審判が―もちろん,成年後見人をだれにするかという問題がもう一つはあるのですが,正しい審判がなされているという前提になりますので,じゃあいいじゃないかという話にもなりかねないのですが,そう簡単ではありません。告知とか通知とかというのがそもそも概念上よく分からないということですので,どう直すべきかという意見が特にあるわけではないのですけれども,議論の仕方として若干気になりますものですから一言申し上げます。 ○伊藤部会長 先ほどの増田幹事の御発言も,そういったことが基本的な認識としてあるのかとは思いますが。 ○三木委員 意見というか,私なりの頭の整理という程度かもしれませんが,事務局案も増田幹事等が出された意見書も共通しているのは,告知の場合は受告知能力が必要だという前提でつくってある。それは受送達能力と同じ意味ですね。通知は受通知能力というようなものは要らないということで,もちろん送達と告知の違いは,方式性が必要か必要でないかというところで,能力的にはそれが,両者同じものかどうか分かりませんけれども,告知には一種の受告知能力が要る,通知は要らないという理解でいいのかどうか。それは言葉の問題だけかもしれませんし,あるいは今後の議論の進め方かもしれません。   それから,施設の人とか,あるいは本人でもいいですけれども,受取を拒む云々というのはまた別な話であって,送達だって受取を拒むことはあって,差置送達などの規定があるわけです。したがって,送達という一番厳格な方式であっても相手方がそれを認識するかどうかまでは,それは法では保障できないわけです。なので,通知の場合に差置送達に当たるようなもの,例えば受取を拒まれましたという報告は必要だと。つまり,何もやっていないのと,やったけれども届けられなかったのとは違うわけですよね。手続保障というのは,やることまでは必要なわけですよね。しかし,それを物理的に拒まれて手の打ちようがない場合にまでは,それは保障できないわけですね。そういうところはちょっと仕分ける必要があって―先ほどの受告知能力とか受通知能力の問題等はですね―そういう仕分け,今の話が何か議論に役に立っているかどうかもよく分かりませんけれども,そういうような理解でいいのかどうかをちょっと確認したいのですけれども。 ○伊藤部会長 脇村関係官,相手方の能力というのか,それについて説明をお願いします。 ○脇村関係官 用語の問題はおきまして,知らせるということをした上で,それが即時抗告期間の起算点となるためには受告知能力が要るのだと考えております。通常は,それは告知でやっておりますので,告知については受告知能力が要るのだというような説明になるのだと思うのですけれども,では通知は要らないかといいますと,ここでは一応そういう意味で使っておりますが,法的効果のある通知,今まで手続法ですと法定代理権の消滅の通知とか,そういったものの通知については,通知を受ける者の能力は当然必要だと考えていたと思います。そういう意味で,何度も言ってあれなのですけれども,告知と通知という点について,ここではそのような整理をしておりますが,あくまでそれは現行規則はそういう使い方をしているという程度にすぎませんので,そこはこだわっていただかなくても大丈夫ではないかと思っております。問題は,知らせるということが必要かどうか,知らせた際に,それをもって起算点とするかどうかだと思っております。   次に,では知らせたことに例外を置くかどうかについては,正に今,三木委員がおっしゃったように別の議論でございます。起算点とならないにしても知らせることは当然必要なのだということはまた別の議論だと思っておりますので,正に道垣内委員のおっしゃっていたように,これは場合によっては本当は事理弁識能力があるにもかかわらず後見開始の審判が出されたということを保護するために一律的に知らせるべきだという考えがある一方で,現実的な問題として,そこまで本当にすべきなのかという点で意見が分かれるのだと理解しているところでございます。 ○伊藤部会長 それでは,告知と通知という概念は,なお認識に若干のずれがあるかと思いますが,その点はおいておいて,実質の話で言うと,成年被後見人となるべき者に対する通知を必要的なものとするか,あるいは必要的なものとしつつその例外を認めるべきかというあたりについては,これも違った見地からの御意見があったように思いますので,それを踏まえて更に検討することにしたいと思います。   そのほか,「後見の開始」の関係で何か御発言がございますか。 ○道垣内委員 即時抗告のところも含んでいるということでしょうか。 ○伊藤部会長 はい。 ○道垣内委員 そこでの脇村関係官の御説明にちょっと納得ができないところがございまして,御趣旨を少し伺えればと思います。精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるという要件が満たされているがために,本人は告知を受けても分からない。分からないにもかかわらず,その期間から即時抗告の期間がスタートするというのはおかしいだろう。もうちょっと日常的に言えば,酷だろうということになるのかもしれません。そして,もし仮に「酷であろう」というふうに言い換えられることを前提としますと,それにもかかわらず,成年後見人への告知でスタートしうるというのは,どこか矛盾があるのではないでしょうか。この矛盾を消化するためには,成年後見人になった人は成年被後見人と早めに面談をして,後見が開始されたよというふうに伝えるという実体法上の義務があると措定しなければならないのですが,そういった義務があるということが前提で成年後見人に対する告知から進行するというふうになっているのでしょうか。このあたりのお考えをお聞かせいただければと思います。 ○脇村関係官 委員の御指摘のとおり,この点につきまして,正に成年後見人に選任された者を起算点とするということの意味づけでございますが,これは後に出てきます保佐とか補助とかも同じような問題なのかもしれませんけれども,それを起算点としておりますのは,選任された者が本人について助言とかをする,その上で成年被後見人が即時抗告権を行使する,保佐であれば被保佐人が行使するという建て付けをもとに現行の規則は恐らくつくられているのだと理解をしているところでございます。にもかかわらず,被保佐人等については,実は今回修正を加えているところでございまして,その点については今回の部会資料でも御質問いただいているところでございますので,併せて御検討させていただきたいと思うのですけれども,成年後見人に選任された者を起算点としているのは,恐らく,今御指摘があったように,成年後見人に選任された者が,知らされた時点で被後見人と面談した上で,何かあったときには成年被後見人ができるという仕組みを前提に考えておられるのではないかと思います。 ○道垣内委員 民法上の成年後見人の職務として,後見開始を相手方に伝えるということが当然に予定されているのでしょうか。明文の規定は少なくともないわけで,例えば信託法で受託者が受益者に指定された人に伝えなければいけないというふうな明文の規定があるのとは違うわけですよね。その意味では精緻な解釈論だと思うのですが,民法の精緻な解釈論を前提にしてでき上がっているというのが若干気になるところであります。   そして,もっと申しますれば,先ほど申し上げましたように,成年後見人にだれがなるのかという問題もあるのですけれども,ここでは開始の決定でございますので,問題は,その要件が満たされていないかもしれないというところなのです。要件が満たされていないというのが保佐以下のレベルと同じであるというふうに考えますと,通知ないし告知が成年被後見人になった人に到達したときから開始をしてもそれほどおかしくないと思うのです。了知できない場合―了知できないというのは,先ほどの,施設がとめるとかというのとは別問題ですけれども,意思能力がないために了知できない場合には,正にそれは成年後見開始の実体的な要件が満たされている状態であるのに対して,満たされていない状態というのは,逆に了知できる状態ですので,成年後見人に選任される者に対する告知があった日から進行するというのよりも,通知があったときから進行する方がまだ素直なのではないかという気がしてなりません。 ○伊藤部会長 分かりました。今の道垣内委員の御発言に関しては,ほかの委員・幹事で何か御意見ございますか。成年被後見人となるべき者に対する通知の時点から不服申立ての期間を起算するというのが,考え方としては合理的なのではないかということですが。 ○小田幹事 考えがまとまっているわけではありませんが,通常の通知の対象が成年被後見人であり,また,この後に出てくる未成年者,そういった判断能力が明らかにないか非常に少ない者でなければ,その人のところに通知なり告知が達したときからということで何の疑問もなかろうと思います。だけれども,悩ましいのは,成年後見の議論では,成年被後見人というのが正にこれこれの状況にある者ということで,判断能力がなく,理解することができない人です。その人に,そのまくら元に置くのかどうか,ちょっとそこはイメージがよくわかないのですけれども,通知内容を分かれといったって無理なわけですよね。法律の技術としていろいろな制度には擬制といいますかフィクションがいろいろあるのだろうと思います。そこで,成年後見人に達したときから起算するというのもゼロではないと思います。全部ということではありませんけれども,ある程度フィクションといいますか,いろいろな事情を前提としたときの制度のつくり方として一つの合理性は持つだろうと思っております。それと,成年後見人又は親権者,未成年後見人その他,未成年者であればその周りにいる親族,そこら辺に確かにこういった裁判が自分のところに来たときに面接しろとかいう義務というのは実体法上明示はしていないのだろうと思いますが,制度を考えるときに当然に,その他の義務を前提とすれば,こういった行為に入れることが期待できるというのは,むしろそれに期待していくことの方が,成年被後見人のように,普通は全く分からない状態の者に分かれと言うよりは合理的なものではないかという気がしております。 ○脇村関係官 道垣内委員に御質問したいのですけれども,仮に成年被後見人に通知か告知か知らせたときをもって起算するという規律を採用した際には,前提として受告知能力は何も考えずに,単に知らせたことをもって起算するということを前提にしていらっしゃるのでしょうか。 ○道垣内委員 それを前提にしているのですが,私はその案に固執するつもりは全然ありません。私が申し上げたいのは,ここには正に小田幹事がおっしゃったような大きなフィクションが存在していて,かつ,民法における成年後見人の義務内容に対する一つの解釈が前提になっているということを今後説明なり何なりできちんとしていくべきであろうというだけです。そうしないと,本人への告知が本人は分からない,しかし,成年後見人になった人は代理権があるので受領できるというのは,いかにも形式論理であって,余り妥当ではないのではないかという気がします。先ほど出ましたように通知であれ告知であれ,何らかの形のものをして,仮に極めてしっかりしている人が誤って成年後見開始の審判を受けたような場合には,その人がその通知を見ることができるということを前提にし,そして,それが成年後見人に選任される者に対する告知があった日というのとさほど変わらないとするならば,さほど実際上問題はないのだろうと思います。 ○金子幹事 道垣内委員の御意見に関しては,正にちょっと悩ましいところかなと思っているのは,成年後見開始でも保佐開始でもいいのですが,開始と同時に選任される成年後見人,保佐人の立場というのはなかなか説明が難しいところがございます。というのは,正に小田幹事から説明がありましたとおり,事実上開始決定に対して即時抗告をするかどうかを相談することが期待できるという以上の説明はなかなか難しいのではないかと思うからです。成年後見の開始の審判自体が確定しない状態で相談に乗れという話になります。成年後見開始の審判が即時抗告により覆えされれば,成年後見人の選任の審判自体は効力を発生しないという状況にあるわけです。にもかかわらず,多くの場合は被後見人とされる者が受告知能力を認め難いという実情のもとで,自分から即時抗告をするということはなかなか認められないだろう。成年後見人自身は,成年後見開始の審判に対する即時抗告権者でないわけで,やっぱり相談に乗って即時抗告をするかどうか決めてもらうというのが被後見人又は被保佐人の保護に資するとのフィクションが今手続上にあらわれているものだと思うのです。今の中ではそれがベストなのではないかと思っているところです。 ○伊藤部会長 それでは,この点も,道垣内委員の御発言の趣旨は私にもよく理解できましたので,今一応の金子幹事からの説明がありましたが,なおもう少し検討をしてもらうことにいたしましょう。   ほかに開始の関係で何か御発言ございますか。―先に行ってもよろしいでしょうか。   それでは,次の「後見開始の取消し」について,まず「管轄」に関しては,先ほど実務上の取扱いの法的位置づけに関して自庁処理であるという説明が脇村関係官からありましたが,この点は何か御意見ございますか。―よろしいでしょうか。   そういたしましたら,次の「精神の状況に関する意見聴取」でございまして,医師の診断の結果その他適当な者の意見を聴くことについて,ここに記載してございますような意見が寄せられております。先ほどの開始の方の審判の判断資料との関係も若干ございますけれども,この点に関してはいかがでしょうか。   栗林委員,先ほどは開始の方ではやはり医師に限るべきだというような御発言がございましたが,取消しの方はいかがでしょう。 ○栗林委員 開始の場合は本人の権利能力を奪うわけですので,ある程度厳格に判断される必要があると思いますが,この場合は権利能力を回復する場合ですので,そこの違いはあるのではないかと思います。ただ,「その他適当な者」というのをどこまで入れるのかということについては,今は意見がございません。 ○畑幹事 聞き逃しただけかもしれませんが,「その他適当な者」というのは,例えばどういう人を念頭に置けばよいのでしょうか。 ○脇村関係官 一応想定しておりますのは経験を積んだソーシャルワーカーとかそういったもので,日常生活をよく知っていて,そういったのを評価できる専門家を想定しております。 ○伊藤部会長 ということのようですが,それを前提にして,先ほど栗林委員からは,やはり開始の場合と取消しの場合とでは,基本となる判断の資料の収集の仕方についても差異を設けること自体は合理的であろうという御発言がございましたが,いかがでしょうか。特に,ここに掲げられているような,必ず医師の診断結果を求めるべきだということを積極的に支持される御意見はございますか。 ○増田幹事 ここは本当に資料に書かれているとおりなのですけれども,先ほどの開始のときのように鑑定を必要とするという意見ではないのですが,後見開始が取り消されますと,一般的に財産管理権を回復するということになります。ここで事理弁識能力の怪しい人が完全に財産管理権を回復するということになると,行為時の意思能力をめぐって後日の紛争が発生する可能性があるので,ここはそういった紛争を事前に防ぐ意味でも慎重にチェックをしておいた方がいいのではないかということです。実務的に経験を積んだソーシャルワーカーだけの意見でやる必要性もないのかなと。医師から診断結果をとってきたらそれで足りるのですから,ここをあえて広げる実務上の必要性もそれほどないのではないかと思っていますが。 ○伊藤部会長 増田幹事からは,実際上,医師以外に枠を広げる意味があるのかという御指摘がございましたが,どうでしょうか。実務に関与されている裁判所あるいは弁護士の委員・幹事の方で何かその点に関して。 ○杉井委員 ソーシャルワーカーというのは何か資格があるのでしょうか。 ○金子幹事 ソーシャルワーカーは,社会福祉士,精神保健福祉士,介護保険福祉士等の仕事の総称かと思いますが,いずれも国家資格です。 ○杉井委員 いずれにしても,精神状況についての判断ですから,幾ら経験を積んだソーシャルワーカーであってもちょっと不安が残りますね。それと,もう一つ,増田幹事も言われた取消し後の紛争が予測されるのです。先ほど私が言いました,後見人が取り消された事案については,要するに,そこで後見開始を求めた側と後見取消しを求める側で熾烈な争いがありまして,それにまた後見人が,私自身が両方からいろいろ言われて非常に困ったということがありまして,やっぱり取消しについても医師の診断というふうにしていただいた方がよろしいのではないかと思うのですが。 ○長委員 恐らく裁判所の実務上は医師の診断書の提出を求めていると思います。 ○伊藤部会長 そうすると,余り実際上の必要性からいってもこれを広げる意味が少ないということになりますかね。とはいえ,こういうふうに書いておいても実際上はやはり医師の診断書の提出を求めるということであれば,実際それほど差がないようにも思えますが。   そうしましたら,この場では,「その他適当な者の意見を聴かなければならない」,「その他適当な者」を入れるかどうかについての積極的な御意見はなかったということで一応現在の段階では取りまとめましょう。   それから,「審判の告知等」ですが,これについては何か御質問,御意見等ございますか。―特別ないようでしたら先に進みたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,次の「保佐の開始」ですが,保佐の開始に関して「即時抗告」のあたりのことですが,このあたりはいかがでしょうか。 ○高田(裕)委員 被保佐人は受告知能力があるという前提でございますので,原案はあり得べき考え方かと思いますが,先ほど,現行法の規律は,広い意味での保佐されるべき者に対する相談と申しますか,助言と申しますか,そういうものの機会を保障するという意味があるのではないかという御説明を受けました。もしそうだとすれば,なお現行規則のように,いずれか遅い方という選択肢も十分あり得る選択肢かなという印象は持たせていただきました。それによって恐らく被保佐人に対して不利なことは生じ得ないと思いますので,被保佐人の自律という観点からすると若干後退なのかもしれませんが,なおあり得べき考え方かなという印象を持っております。 ○脇村関係官 この点ですが,今,高田委員がおっしゃったように,被保佐人であれば一応審判行為能力があると整理をすることを検討してきたところでしたので,それに合わせて変えることを考えていたところではあるのですが,先ほど道垣内委員からも成年後見人に選任された者の関係で御指摘等を受けているところでございますので,そういったことをあわせますと,今,高田委員がおっしゃったようなことで現行の規律をなお維持するということも十分理由があることだと思っているところでございます。 ○伊藤部会長 では,この点は少し検討してもらうことにいたしましょう。どうもありがとうございました。   ほかによろしいでしょうか。   「第4 保佐開始の取消し」のところは特段御意見が寄せられているわけではないですね。   そうすると,11ページの第5の「保佐人の同意を得なければならない行為の定め」のところでの3の「審判の告知」で,保佐監督人に対しては必ずしもその必要はないのではないか,手続の簡素化というようなことですが,この点はいかがでしょう。―ここに掲げられているような意見,寄せられた意見を敷衍して,あるいはそれに賛同するような御意見がございますか。 ○栗林委員 これは,後見監督人の場合とは違って,保佐監督人についてはこういう通知は必要ないという整理ということでよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 いただいた意見は,そのような意見だったと理解しております。当局としては,この御意見のように,確かに手続の簡素化という点からするとなくてもいいのかなという御意見もあるとは思うのですけれども,やはり監督人を選任している以上は監督人もきちんと監督してもらわないといけない。そういう意味で,手続保障とはまた違う意味なのかもしれませんけれども,こういったことは今後の成年後見のためには必要ではないかと考えているところでございます。 ○栗林委員 私も成年後見監督人にはなったことがあるのですけれども,やはり後見監督人として何にも通知がないと非常に不安だということがあって,こういうものは,裁判所の負担はあったとしても,受ける側は非常に有り難いというか,その状況を理解できるし,自分の責任の内容を了解できますので,告知をしていただいた方が保佐監督人にとっては非常にいいことではないかと思っております。 ○伊藤部会長 私もそう思うのですが,特にここに寄せられた意見について,これを支持する御意見がこの場でなければ,原案に掲げられているようなことで今後の検討を進めてよろしいでしょうか。―では,そういたしましょう。   次に,第6ですね。「保佐人の同意を得なければならない行為の定めの取消し」の「陳述聴取」に関して,ここに寄せられた意見が書かれておりますが,この点に関してどなたか御意見等ございますか。―これも特別ここに寄せられた意見を敷衍ないし支持する御意見がございませんようでしたら,このままで先に進みたいと思いますが。 ○金子幹事 話を戻すようで恐縮なのですが,先ほど「精神の状況に関する意見聴取等」で開始の場面と取消しの場面で御議論いただきました。第1の2と第2の2を見比べていただければよろしいのですが,実は第1の2のA案,B案は,いずれも「その他適当な者」というのが入っております。取消しの場合だけここに広げていたという趣旨ではなくて,もともとこの「適当な者の意見」というのは,医師以外の者も想定して,現行法も実はそうなっています。だから,医師以外の者の鑑定ということも一応現行法は予定しております。それで,今日の議論で第2の2の方について,やはりここは医師以外の者は駄目だということになってしまいますと,一般的には取消しの方が要件は緩くてもいいのではないかという方が普通の理解ではないか。つまり,行為能力制限を外す方へは少し緩くてもという方が普通の理解ではないかと思うので,その辺の平仄の問題が出るような気がしています。あるいは,A案,B案の中に「その他適当な者」というのが入っていることを必ずしも十分御議論されていなかったことも思われますが平仄の問題が出てくるような気がしますので,改めてその点を確認していただきたいという趣旨でございます。 ○伊藤部会長 先ほど栗林委員のような御意見だと,そもそも開始の方も医師だけということだから,そういう意味では全部一貫してということになるのですが,その点,開始の方に関しては必ずしもほかの委員・幹事の御意見を十分承っていなかったので,今,金子幹事からそういう点の問題の指摘があったのかと思いますが,改めていかがでしょうか。先ほど長委員からも御発言ございましたが,こういうものを置いておいても実際上は医師の診断書ということで処理をすることが,それ以外は普通は考えられないので,こういう「適当な者」というふうに入れておいても特別それによって何か問題が生ずるということもないというような考え方もあり得るとは思うのですが,どうでしょうか。 ○増田幹事 開始の方のA案も,「その他適当な者」を外すという趣旨で先ほど議論していたという認識でいるのですが,B案の場合は鑑定ですから,それはその他でも構わないのではないかと思っています。それで必ずしも平仄が合わないというふうには思いません。 ○長委員 第1の2について発言した際に,「その他適当な者」の範囲については検討されてもいいかもしれない旨を付加いたしましたのは,どういう人が当たるのかという問題があるようにも思われたものですから,一言だけ申し上げました。ですから,「その他適当な者」が必ず含まれなければいけないという趣旨でA案を支持したわけではありません。A案のその部分について何か限定されるという趣旨であれば,検討する余地はあるのだろうと思います。 ○伊藤部会長 どうでしょうか。実際上,医師の診断の結果に基づいて行うことが適正な処理につながるということは当然だと思うのですが,およそそれでなければいかなる例外も認めないというふうにしてしまうことがちょっと問題があるように思うのですが。 ○脇村関係官 お話を聞いていますと,鑑定にするのか意見聴取にするのか,さらに,どちらにするにしても対象を限定するかどうかという問題があると思うのですけれども,もしよろしければ当局の方でもう少し鑑定の置かれた意義等について検討を加えた上で,どういう選択肢があるのか,もう少し形のある形で御提示できればと思います。あわせて先ほどいただきました,特に意見聴取については医師に限定すべきだという意見が大方であったというようなことを踏まえて,開始についても併せて整理したいと思います。 ○道垣内委員 お任せしますけれども,法律の建て付けとして,戸籍法のように医師の死亡書,診断書があれば事務的にやらなければならないというようになっているものはともかくとして,裁判所に最終的な判定権限があるものについて,医師なら医師に絞るということが現行法上普通なのか,そういう例が多々あるのかということについても,あわせて調査の上御検討いただければと思います。何かちょっと私には違和感があるような気がしますが,それは,全部の法律を知っているわけではありませんので,私の単なる不勉強だけかもしれませんので。 ○伊藤部会長 それでは,そこは,実態はともかくとして,これをもとにして法制的なことを考えるのであれば少し慎重にした方がいいと思いますので,なお検討させていただくことにいたしましょう。   それでは,次の説明ですが,「第17 不在者の財産の管理」から「第19 失踪宣告の取消し」までに関しての説明をお願いします。 ○脇村関係官 御説明いたします。   「第17 不在者の財産の管理」のうち「1 管轄」についてでございますが,現行家事審判規則第31条における住所については,不在者の現在の住所地を意味すると解釈するのが一般的であると聞いておりまして,原案はその点で現在の規律に変更を加えるものであります。   現行法のもとでの実際上の処理についてですが,不在者の財産の管理が問題となるケースでは,不在者の現在の住所が明らかになることはまずございませんので,家事審判法第7条が準用する非訟事件手続法第2条に規定する不在者の最後の住所地の家庭裁判所で処理するのが一般的だと聞いております。そうしますと,現行の家事審判規則第31条はほとんど機能していないことになりますので,見直しが必要ではないかと考えております。そこで,ここでは,不在者の財産の管理に関する事件は,そもそも不在者の従来の住所に残された財産について管理を行うということを目的としていることを考慮いたしまして,民法上の用語である,従来の住所地の家庭裁判所を管轄裁判所とするということを提案した次第であります。   次の4の「管理人の改任等」についてでございますが,原案②及び③は,現行家事審判規則第32条の規律を維持するものでございます。同規則は,そもそもが旧非訟事件手続法第40条に由来するものでございますが,趣旨としては,裁判所は承諾を得た上で管理人を選任するわけではございませんので,管理人であることを希望しない者について自由に辞任することを許すべきではないかというような説明がなされていたところでございます。この点につきまして,部会資料11-2にありますとおり,裁判所によって選任された者がその意思で自由に辞任し,管理人が不在の状況にできるのは相当でない旨の反対意見がございますので,御検討いただければと存じます。   5の「処分の取消し」についてですが,これまで当部会において,会社非訟事件では,清算人の選任につきまして,いわゆるスポット運用が紹介されていたこと等を踏まえまして,原案では,その他不在者の財産の管理を継続することが相当でないときにも取り消さなければならないものとするために取消事由を追加することにいたしました。   「第18 失踪の宣告」の「3 審判の告知」についてですが,この点については,失踪宣告前に公示催告の手続がとられる上,失踪宣告後も抗告手続がとられ,必要に応じて失踪宣告の取消しを行うこともできることを考慮すると,利害関係人に対して審判の告知を必ず行わなければならないものとすることは相当ではないということから部会資料を作成しているところでございます。   第19の「失踪宣告の取消し」の「3 審判の告知」についても同様に考えております。 ○伊藤部会長 それでは,順次参りたいと存じますが,まず,「第17 不在者の財産の管理」の「管轄」に関して,ただいま脇村関係官から説明がございましたように,現行家事審判規則第31条の考え方を変えるという意味で,従来の住所地の家庭裁判所の管轄ということにしたという説明がございますが,これがここでの意見といいますか疑問に対する回答の形になっていますが,この点は何か,なお御意見や御質問ございますか。―よろしいでしょうか。内容から見ても,こういう考え方の方が合理的だと思いますが。   そうしましたら,次の4の「管理人の改任等」で,この点に関しては,意見の内容にありますように,管理人の意思に基づいて,それでやめられるというのはおかしいのではないかというようなことが意見として寄せられておりますけれども,この点はいかがでしょうか。 ○長委員 財産管理人を選任する前には,就任する意思があるかどうかということは聞くのですけれども,ただ,辞任届を出してくる例ももちろんございます。そのときに,突然やめられますと,やはり財産の管理がありますので困ってしまうものですから,次の方への引継ぎの問題というのがあるものですから,引継ぎがしやすいように,今やめるのはちょっと待ってください,代わりの人を探したいと思いますということでやっている実務があるようです。そういうことからしますと,ここに提案されているようなことが考えられるのではないかと私も思います。 ○伊藤部会長 自らの意思で辞することは認めるけれども,引継ぎとの関係で届け出るという義務を課するということが合理的だということですね。ということですが,この寄せられた意見に関して何かここでの御意見がございますか。 ○山本幹事 今の実務の運用を伺うと,破産管財人と似たようなことのような気がします。破産管財人の場合は裁判所の許可を得て辞任することができるという規定になっておりますので,あるいはそういうような形の規律も考えられるのではないかという気がしました。 ○伊藤部会長 そうですね。いかがでしょうか。 ○豊澤委員 実務の運用としては,長委員が御紹介になったとおり,選任の段階で意向を確認して,それで管理人に選任している,それにもかかわらず何らかの事情でやめたいというときに届出だけでやめられるというのは,その間のつなぎの問題がどうしても出てきてしまいますので,裁判所の許可に係らしめるか若しくは家裁が職権で新たな管理人を選任する,それの職権発動を促すような趣旨の届出の効果しかないのだ,そんな形の規律にしていただけると,つなぎ目が制度的に担保されるということになるのではなかろうかと思います。 ○伊藤部会長 ここに寄せられている意見の考え方を支持するような御意見と承りましたが,先ほどの山本幹事の御発言もそういう趣旨だと思いますので,そういう方向での検討をすべきだということがどうでしょうか。それに対して違った御意見ございますか。これは全く素人考えですが,裁判所の許可がないとやめられないということがかえって選任を難しくするというようなことはありませんか。そんな大変なものなら容易には引き受けられないなという。 ○長委員 そういう方向には直ちに結びつかないだろうとは思います。 ○伊藤部会長 もしそんなことが杞憂であるとすれば,ある程度責任を持って職務を遂行していただくという意味ではいいのかもしれませんが。 ○平山関係官 今の部会長の御指摘の点は,次の取消事由をどうしていただくかということにもかかわっているような気がいたします。 ○伊藤部会長 分かりました。   それでは,この場の大勢は,ここに寄せられた意見のように,裁判所の判断を経てということで辞任を認めるべきだという御意見だというふうに承りました。 ○道垣内委員 実質論としては全く賛成で,異論はないのですけれども,民法全体として,やめられないときにはやめられないと書いてあるのですよね。例えば,後見人は正当な理由があるときに裁判所の許可を得て辞任することができるというふうな形で,不在者財産管理人についてそういう規定がないときになお可能なのかというのが,私,実質論としては全く反対するものではないのですけれども,気になっております。それならば,例えば民法第654条のように,受任者は勝手にやめられるのだけれども,やめた後に必要なことがあったら,次の人が出てくるまでは何かやらなければいけない,こういうのを手続法の中でプラスするのなら何となくまだ……。そういうのは難しいのですかね。ちょっとよく分からないのですが,余り簡単な話ではないかなという気がします。 ○伊藤部会長 分かりました。道垣内委員の御指摘は誠にごもっともだと思いますので,その点も十分研究した上で結論を出したいと思います。   では,改任の関係はこの程度でよろしいでしょうか。   それから,5の「処分の取消し」に関しては,これはここに寄せられている御意見も賛成のもののようですし,特に何かございましたらですが,よろしいですか。   それでは,「第18 失踪の宣告」ですが,まず3の「審判の告知」の相手方で原案に掲げられている考え方と寄せられた意見で,推定相続人及びその承継人に対して告知すべきだと。これが影響が大きいからということですが,ここに寄せられた意見に関しての御質問,御意見等はございますか。―格別の御意見がなければ,特にこういう寄せられた意見のような考え方は,ここでは取り上げないということにいたしたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。杉井委員,何かございますか。 ○杉井委員 失踪宣告というのは死亡という効果が出るわけですから,そうなるとやはり相続という問題が当然生じますので。もちろん一定の資料で,申立て時の資料で分かる範囲でいいですけれども,やっぱり推定相続人及びその承継人に告知すべきだというふうにしていただきたいと思います。 ○増田幹事 同意見なのですけれども,そもそも本人が知らない間に権利関係が変動するという事態が以後の法律関係を混乱させるものだと考えますので,手続保障以前の問題としても当然告知すべきであると考えます。 ○伊藤部会長 それについて,ほかの方,御意見いかがでしょうか。 ○小田幹事 手続を通して,多分申立てがあって,最初の段階で失踪宣告の要件,いろいろな調査をするわけですが,もし今告知をすべきと言われている相続人が,当然身分関係などが分かるわけですから上がってくるわけでございます。その所在について何か知っているかもしれないというようなことであれば,その段階で何らか調査をしているのが実情でございます。多分,ここで告知をすべきという主張の意見というのは,事実を知っているからということではないと思いますが,先のような事情であればそこで担保されているということが一つございます。   それと,確かに失踪宣告が出るということは,相続が発生するということですから,権利関係の変動というのは出てくるわけでございます。これが,通常の死亡の場合とどう違うのかというところがございます。通常は親族関係を前提とすれば,自分が相続するような場合に,被相続人が死亡したということは当然に知っているわけですけれども,この失踪宣告が問題になるような当事者の場合には,必ずしもそうでない場合があると思います。そこで告知するというのが,権利保障ということの意味合いがどれだけあるのだろうか。十分検討できていないところですけれども,何か行政サービス的なといいますか,死んだということを知りたいという趣旨が濃くないかなと。半分そこは私の推測ですが,そういった意味合いも随分強いような気がしております。通常の権利関係としても,自分の知らないところで相続が発生しているということは社会の中であるわけでして,そういったこととの比較でも,必ずしもこれは権利保障の趣旨で告知する必要がどれだけあるのだろうかと疑問に思っているところでございます。 ○伊藤部会長 いかがでしょうか。 ○杉井委員 確かに事実上いろいろな関係者に,実質的に推定相続人に当たる人に,本当に所在を知りませんかという形で調査をされますよね。そういう形で調査して,その調査に一定程度協力して,あるいは書面を出すとか何とか協力しますよね。そういうふうになっていて,最後にこれで失踪宣告になりましたということで告知するということは,確かに行政サービスかもしれませんけれども,市民に対する司法サービスという点ではむしろいいことなのではないかと思うのですけれども。 ○伊藤部会長 ここに寄せられた意見や,今,杉井委員がおっしゃった意見の根拠というのは,結局,告知によって即時抗告の機会を保障すべきだということですよね。 ○杉井委員 そうです。 ○伊藤部会長 この意見は単に死亡と同様の法的効果が発生するから,それを知らせてあげましょうという趣旨ではないですよね。 ○杉井委員 そうですね。 ○増田幹事 それは,訴訟法的に考えた場合の理由づけであって,実体法上の権利変動を知らせるべきではないかと思ったのが本音でございます。 ○伊藤部会長 ほかに御意見ございますか。―それでは,この点も今の御意見を踏まえて更に検討することにいたしましょう。 ○山本幹事 ちょっと時機に後れた主張で誠に申し訳ないのですが,「失踪の宣告」の1の「管轄」のところなのですが,失踪宣告については,法の適用に関する通則法第6条で国際裁判管轄を規定しております。それによれば,日本国内に不在者の従来の住所地がない場合であっても,日本が国際裁判管轄を持つ場合が認められています。日本国籍を持っていれば,例えばオーストラリアから失踪しても日本が国際裁判管轄を持ちますし,日本国内に財産があったり,日本国内に配偶者がいたりすれば日本が国際裁判管轄を持つ場合があることが規定されております。そうだとすると,その場合の国内管轄をやはり規定する必要があるのだろうと思っておりまして,これは総則のところの問題なのかもしれませんが,今般の国際裁判管轄の方の部会では,国際裁判管轄があって国内がない場合については,最高裁判所規則の方で割合包括的な規定を定めるというようなことになったようでありますので,こちらの非訟の方もその点をお考え―もうそういうふうになっていったのかもしれませんが,それをお考えいただければと思っております。 ○脇村関係官 非訟については,部会資料4の第8の(注)で,非訟事件手続法第2条第3項にある最後の住所地もないケースあるいは相続開始地で定まる場合に日本以外で相続が始まったケースについては,財産所在地又は最高裁で定める地の裁判所が緊急的に管轄することとしているのを,一般的に広げましょうという提案をさせていただき,家事審判についても,部会資料8の第5の③で同様の提案をさせていただきました。 ○山本幹事 私の記憶不足を露呈しただけになりましたけれども,御検討よろしくお願いします。 ○伊藤部会長 御指摘ありがとうございました。   それでは,「第19 失踪宣告の取消し」の3の「審判の告知」ですが,先ほど類似の問題に関しての意見が寄せられておりますが,この点に関してはいかがでしょうか。これも先ほどの杉井委員,増田幹事のようなお考えですと,同様の検討をするべきであるということになりますでしょうか。―それでは,その点はそういう御意見を承ったということにして。 ○山本幹事 下の方のポツのところなのですが,「適切な要件を定めるべきである」というところで,ちょっと私,現在の規律がよく分かっていないのかもしれませんが,この(補足説明)を読むと,ただし書は,失踪者が現に生存しているような場合が想定されていて,その場合には住所・居所に対してあれする。そうすると,本文は,死亡していて,死亡している時期が違うような場合を想定しているということなのでしょうか。 ○脇村関係官 異時死亡といいますか,違うときのことを想定しております。 ○山本幹事 その場合には,失踪者は死亡しているので,告知を要しないということを書く必要は全くないような気がするのですが。 ○脇村関係官 総則で,審判を受ける者については告知をするという規定がある関係で,字面だけ読むと,例外がないと告知しないといけないということになるのではないかとの疑義が生じかねないのではないかと思いました。 ○山本幹事 それはしかし,当事者能力がある,人間として生存している場合が当然前提になっているのではないでしょうか。 ○脇村関係官 当然だということで書かなくてよいということでも,現行法はそうだと思うのですけれども,これまで成年被後見人等については手当てをしようとしていることもあるので,分かりやすいかなというふうに思って今回書かせていただいたのです。ただ,最終的に確かに余りに当たり前過ぎるということであれば,書かないという選択肢もあると思いますので,もう少し検討させていただきたいと思います。 ○山本幹事 分かりました。 ○平山関係官 今の点ですが,生きていることは判明したけれども,住所が分からないというような場合が本文に当てはまる余地というのはないのでしょうか。 ○脇村関係官 そういったことがあれば,そうだと思います。 ○伊藤部会長 規定の仕方については,今の御指摘を受けて検討することにいたしましょう。   ほかによろしいですか,「失踪宣告の取消し」まで。   よろしいようでしたら,今度は「第20 嫡出否認の訴えについての特別代理人の選任」から「第24 死後離縁をするについての許可」までに関する説明をしていただきましょう。 ○脇村関係官 御説明させていただきます。   「第20 嫡出否認の訴えについての特別代理人の選任」の「即時抗告」について御説明いたします。特別代理人の選任の要件が備わっているにもかかわらず,これを却下することはおよそ考えにくいということを考えますと,即時抗告を認める実益があるのかという御意見もあるとは存じておりますが,当局といたしましては,民事訴訟法第35条において,特別代理人の選任の申立てを却下する決定においては,通常抗告ができることや,非訟事件,家事審判事件の特別代理人の選任については通常抗告又は即時抗告ができるものとすることを提案していることから,ここだけ即時抗告を認めないものとすることもバランスがとれないのではないかと考え,御提案しているところでございます。   次に,第21の「子の氏の変更」の「陳述聴取」についてでございますが,この場合には15歳未満であれば法定代理人等が子の氏の変更について申し立てることからすると,子自身から陳述聴取をしなくてもよいのではないかということや,この事件類型では,子と法定代理人で利害対立があるとは考えておりませんので,規定としては特段書いていないところでございます。   第22の「未成年者等を養子とするについての許可」の2の「陳述聴取」でございますが,この点につきましては,当局といたしましては,子,未成年者に関する一定の事件においては,意思を形成する能力を有している子,未成年者の意思について裁判所がこれを適確に把握した上で,適切にそれを考慮する必要があると考えております。もっとも,子,未成年者がその年齢に関係なく裁判官,家裁調査官等に対して口頭又は書面により自らの意思を伝えることができると考えることには,現実的な問題として無理があるように思われますし,子,未成年者が陳述するということにいたしますと,場合によっては子,未成年者の利益を害することもあるように思われます。そこで,まず,15歳以上の子,未成年者については陳述により自らの意思を表明することもでき,かつそれによって不利益が生じることもないと思われますので,これらの子,未成年者については一律に陳述を聴取するものとすることを提案いたしました。   次に,15歳未満の子,未成年者についてですが,これらの者の意思を裁判所において把握する方法としては,もちろん陳述聴取ということも考えられますが,子,未成年者の発達程度等を考慮いたしますと,陳述聴取の方法ではなく,専門家,現行法ですと家裁調査官ですが,そういったのを活用する方法をとる方がより適切な場合もあると思いましたので,その線引きを行うことを考え,原案のような提案をさせていただいているところでございます。   陳述聴取をしない場合について特段記載をしておりませんのは,陳述聴取をしない場合に家裁調査官等を活用して,子の意思を把握,確認することを否定するものではなく,事案に応じて適切に対応することを当然に想定しているものでございます。当局の考えとしては以上でございますが,是非皆様の御議論をいただければと思います。   なお,部会資料11-2の※で取り上げた事件においても同様の問題と考えております。   次に,「審判の告知」についてですが,ここで養子となるべき者を審判の告知対象者から除外しているのは,養子となるべき者が15歳以上であれば,養子縁組届は養親となるべき者と養子となるべき者が共同して行わなければならず,裁判所がしなくても,いずれ養子となるべき者は許可されたことを当然知ることになるということからでございます。また,養子となるべき者が15歳未満であれば,代諾権者と養親となるべき者が共同して行わなければならず,代諾権者が適宜情報提供をするということを考えておりますから,このような形にさせていただいております。   「即時抗告」ですが,認容審判に対して養子となるべき者に即時抗告権を認めませんでしたのは,養子となるべき者又は代諾権者が認容審判に対して不服があれば養子縁組届を出さなければいいだけではないかと思いまして,あえて即時抗告まで認める必要はないと考えたからでございます。また,却下する裁判に対して即時抗告を認めなかったのは,民法上,許可の申立権が養子となるべき者にないことに加えまして,養親となるべき者が不服を述べていないケースで養子となるべき者に即時抗告を認める実益もないのではないかと考えたからでございます。   次に,「第23 養子の離縁後にその未成年者後見人となるべき者の選任」の「4 審判の告知」についてですが,部会資料11において,未成年者に対して告知することを記載しておりませんのは,未成年者が即時抗告権を有していないことと,未成年者に対しては未成年後見人等に選任された者や申立人から適宜知らせることになるということで足りるのではないかと考えたからでございます。なお,この点は部会資料11-2の※で取り上げた事件についても同様であります。   「その他」についてですが,申立てを取り下げた場合,離縁はされないことになりまして,養子は養親のところで養育されるだけでありまして,未成年者に親権者や未成年後見人がいない状態は発生しませんので,特に許可を要件とする必要はないように思われます。   最後に,「第24 死後離縁をするについての許可」の事件係属についてですが,ここであえて記載をしましたのは,ここについては人事訴訟法との関係が特殊なので,問題になるのではないかと考えたからでございます。事件係属の通知の一般原則につきましては,総論の際に御意見がございましたので,別途検討する予定でございます。   3の「陳述聴取及び審判の告知」ですが,我々としては,通知をしているので,そこまで必要ではない,不要ではないかと考えたところでありますが,御検討いただければと存じます。 ○伊藤部会長 それでは,まず,第20の「嫡出否認の訴えについての特別代理人の選任」で,即時抗告をすることができるものとすることについて,そのような必要があるのかという意見が寄せられているのに対して,実際上その必要がどれだけあるかということについてはいろいろな考え方があるかもしれないけれども,ほかの規定や場合との均衡上こういう考え方を掲げているということですが,この点は何か御意見ございますか。―よろしいでしょうか。   それでは,次の「子の氏の変更」の関係での「陳述聴取」で寄せられた意見としては,子自身から陳述聴取をしなくてもいいかということですが,先ほど脇村関係官から説明がありましたように,特段それによって不利益等を受けるおそれはないのではないかということでこういう原案のような考え方になっているということですが,この点はいかがでしょうか。―この点もこういうことでよろしいでしょうか。 ○長委員 今の点は原案に賛成なのですけれども,先ほどの特別代理人の関係で,即時抗告を認める必要性があるのかということなのですが,これは,疑問しかここには書いてありませんけれども,必要性がないのではないかと思いながらもバランスで書かれたというのですけれども,そこは御検討いただく余地というのはないものでしょうか。 ○脇村関係官 恐らくこれはここだけの問題ではなくて,特別代理人制度一般の問題としてとらえるべきだという趣旨であのように申し上げました。特別代理人一般について,即時抗告,通常抗告を認めますのは,あれがないと申立てがもうできなくなってしまうことからすると,効果が大きいからではないでしょうか。そういう意味では,間違えることはないと思いますけれども,間違えたときの効果からすると,やはり必要ではないかと考えているところでございます。 ○平山関係官 今の点は,訴訟手続の中で判断している場合には,ほかに手段がないということにもなろうと思うのですが,独立の裁判事項となっているときに万々が一選任がされないということがあれば,裁判を受ける権利の侵害ということになって,特別抗告ができるなことにはならないのでしょうか。 ○脇村関係官 いただいた意見を踏まえて検討させていただきますが,それを言い出しますと,およそ即時抗告を認める必要があるものはなくなるように思いますが。やはりここでは,効果等を考えますと,他の特別代理人のケースと同様に,同じように考えざるを得ないのではないかと考えているところです。 ○伊藤部会長 いかがでしょう。余り大げさにするよりも,それほど実際にこういうものが使われることは別として,可能性は残しておいた方がいいように思いますけれども。―はい。ありがとうございます。   それでは,第22の「未成年者等を養子とするについての許可」の「陳述聴取」についてですが,先ほど脇村関係官から説明がございましたように,15歳以上の者と15歳未満の者に分けて,15歳未満の者に関してはこういったことが認められるときに限って陳述聴取をして,それ以外の場合については適宜の方法で意向等を確認するという考え方に対して,寄せられた意見では,養子となるべき者の陳述聴取は必要的とすべきであって,あとは聴取の方法と当該意見の考慮の在り方だというようなことが書かれておりますが,この点はいかがでしょうか。 ○増田幹事 意見の趣旨について御説明いたします。   まず,原案は,15歳未満である場合には,原則は陳述聴取をしない,かつ,この文章を読みますと,15歳未満である場合に聴取をすることは基本的に子の福祉を害する,聴取をすること自体が害するというふうに読めるわけです。しかし,これらの事件は子どもにとっては非常に重大な影響を受けるものです。未成年者養子の許可の件が一番最初に出てくるので,ここで書いておりますけれども,下に書いてありますように,第23以下,特に親権者の変更などを念頭に置いていることなのですけれども,親子関係の変更ということは,実際の生育環境の大きな変更を伴うものである。ですから,何らかの形で意見を聴取すべきだと考えているわけです。日本が子どもの権利条約に調印している以上,子どもの権利条約12条との間の上位法,下位法の関係においても,条約に違反するような手続は問題であると思います。   この意見表明をするということと,これは間違っていただいては困るのは,意見表明をするというと,未成年者自身に対して直接,こういうことになっているけれども,ではここに養子に行っていいのかということを小さい子どもに聞くとか,父と母と親としてどちらがいいというようなことを小さい子どもに聞くとかいうことを想定される方もおられるのですが,それは別の問題だということです。すなわち,陳述聴取をするということ自体と,その方法だとか,その子どもの意見を裁判所としてどう判断するかということは全く別の問題だと考えているものです。聴取方法につきましては,場合によっては家庭裁判所調査官によるという方法もありますし,以前総論のところで提案している子ども代理人というような考え方もあると思います。ですから,そこのところはちょっと間違った方向の議論には行かないようにしていただきたいなと思っております。15歳未満であっても,表現方法の工夫だとか,その子どもの発達の程度によって,この子には直接聞いてもいいなという子どももいるでしょうし,あるいは,直接は聞けないけれども,ほかの何らかの方法でこの子の意思を探るべきだという場合もあるでしょう。それはケース・バイ・ケースで適切な方法をとればいいと考えております。そういう前提で御議論いただきたいと思います。 ○伊藤部会長 先ほど脇村関係官から説明があった,陳述聴取の対象にはしないような子どもに関して,調査官などによって適切にその意向を確認するということと,今,増田幹事がおっしゃった,やり方はいろいろあるけれども,しかし,陳述聴取を必要的な,必ずするということはやはり維持しなければいけないという考え方の実質の違いはどの辺にあるのですかね。いずれにしても,子どもの意思だとか意向だとかいうことを確認もしないで云々ということはあり得ない話で,そうなると,陳述聴取という形でそれをするのか,それともそれ以外の方法でするのかということの違いというのはどういうところにあるのですかね。そこをまだ私もよく分かっていないものですから。 ○杉井委員 陳述聴取の対象として子どもを見る,そういう発想がどうなのかなという気がするのです。そうではなくて,やっぱり子どもは意見を表明する権利がある,そういう主体なのだろうと思うのです。主体であった場合に,もちろん自分できちんと意見が表明できる,特に15歳以上の者については自ら表明する,そういう形でいいと思うのですが,そうでない,特に本当に小さい子どもたちに対して,先ほど増田幹事が言ったように,お父さんとお母さんとどちらを選ぶとか,そういうストレートな質問をしての聴取ということは,それはよくないと思うのですが,やっぱり主体である以上,何らかの形で,私も先ほど言われた,調査官の調査というのが適切かなと思うのですけれども,そういう中で子どもの本当の気持ちを聞き出して,子どもの意向に沿う,子どもの本当の意向がどうなのかというのを確認していく,そういうふうな作業が必要なのだろうと思うのです。   それから,弁護士会で議論したときに一番問題になったのは,先ほど増田幹事も言いましたけれども,部会資料の書き方は,15歳以下の場合は,あくまでも子の福祉を害しないと認めるときに限って意見聴取をしなければならないと。だから,意見聴取すること自体が,意見表明を求めること自体が子どもの福祉を害するのだという前提で書かれているということが非常に問題だろうと思うのです。書き方としても,文章としても非常にひっかかったというところがあります。   それで,今も言ったように,確かに陳述聴取という,そして聴取の対象として見るならば,確かに先ほど言ったようにストレートに聞くということが子どもの福祉を害するということもあり得るのだろうと思うのですけれども,そうではない,私が言った意味での子どもの意向を確認する,そういうふうな意味での意見聴取,意見陳述ということであれば決して子どもの福祉を害しないと思うのです。そういう意味で,確かに原案の(補足説明)でも,養子の福祉に配慮した方法により養子の意見を確認する方法などということで,恐らくその辺も配慮はされているとは思うのですが,どうも原則と例外がひっくり返っているのではないかと思ったわけです。 ○伊藤部会長 原案の発想と表現に問題があるという御指摘ですが。 ○金子幹事 そこは事務当局の中で改めて振り返ってみて穏当でなかったと考えております。例えば「養子の年齢及び発達程度その他の一切の事情を考慮して養子の福祉を害すると認めるときはこの限りでない。」とすれば原則,例外が逆になります。現在は,その方がよかったと思っていますので,そういう前提で御議論いただいていいかと思います。あとは,陳述聴取というものが何を指すか,それから事実上意思を確認するようなものをどのように表現するのかというあたりを御議論いただければと思います。 ○伊藤部会長 金子幹事から今,表現振りに関しては少し修正するという前提で考えていただいて結構だという発言がございましたので,それはそれとして。 ○長委員 陳述聴取というふうに言ったときには,恐らく,端的に意思を聴取するということを念頭に置かれていると思うのです。広義の意味で,その人の思っていることを聞くという意味で陳述聴取と言うのであればあらゆることが含まれると思うのですが,用語としては,その意思を聞くというのを陳述聴取と表現したと思われます。   家裁の実務からしますと,これはお子さんの発達段階に応じて確認する内容も確認の仕方も違うものになっています。かつ,それは個々具体的に決まるものですから細かいことは言えないのですけれども,おおむね0歳から3歳ぐらいまでのお子さんと面接するような場合は,意思を聞くということはできませんので,観察をするということになると思うのです。それからまた,おおむね3歳から9歳までのお子さんの場合ですと,観察のほかに,言葉がしゃべれるようになりますから,会話を交わすということはあります。どんな気持ちかとかですね。私は実際問いを発したわけではありませんから間接的にしか聞いておりませんけれども,そういう会話をして生活の様子というのは確認をする。ただ,そういうことをだれがやっても,これは子どもにとっては負担になることですから,全くの負担のない形でそういうことができるということはないと思うのです。そこで,金子幹事などが子の福祉のことをお考えになって文言をお書きになったというのは気持ちとしてよく理解できるところです。さらに,おおむね10歳以上のお子さんの場合ですと,これは観察のほかに,そのお子さんがどういう発達状況か,心身の状況などを考慮した上で気持ちを,聞き方はいろいろな聞き方がありますので,核心的なところだけをぽんと聞くと取られるといけないのですが,いろいろな聞き方をしながら気持ちを聞くこともあるのです。意思を聞くようなところまで進むこともあるように聞いています。ただ,15歳以上ということになりますと,これは比較的,端的に聞きやすい状態にある。もちろん,これもお子さんの状況によっては聞き方を考えなければいけませんし,確認する仕方も考えなければいけませんけれども,15歳以上ですと聞きやすい,おおむね聞いている。こういうことが実情のようです。ですから,そういう実情の中で養子縁組をする際にどういう立法をするかということなのですけれども,陳述を聞くという形にした場合には,どちらかというとやはり,子の福祉を害するか害しないかという表現の書き方は別としても,書き方としては1項に書かれているような方向になってくるのではないか。そのことは,私が申し上げた,それよりも小さいお子さんたちとの関係では,別にそれをしてはいけないということではありませんよというふうに注記になっておりますので,こういうことになるのではないかなと考えています。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○栗林委員 部会資料を見ますと,ずっと陳述聴取のところがありまして,例えば事件の当事者であるとか,直接影響を受ける者というのは,手続保障の観点からその意見を聞くということ。ただ,子どもの場合は,手続の当事者かどうかということはありますけれども,非常に影響が大きいということと,それから子どもの権利条約とかがあって,例外的に子どもについては意見を聴取するという観点,その二つの観点から,陳述聴取というものはそういう手続保障の観点から定められるものという理解でよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 冒頭でお話しましたとおり,陳述聴取については,基本的には手続保障の意味合いで使っているものでございますので,裁判を受ける者かどうかという点についてはさておくとしても,少なくとも影響を受けるということから手続主体性を認める方向でこの規定振りというか,このような記載をしているところでございます。ただ,そうはいったとしても,陳述聴取というのは,一応我々としては口頭とか書面で意見等を言うということを念頭に置いておりますので,そういう方法として陳述聴取と書く以上は一定の例外を置かざるを得ないのではないかと考えていてこのような記載になっているのです。今までお話を伺っていると,子どもの意思を表明する権利を充足するために,ここで言う陳述聴取以外の適宜な方法―例えば,家裁調査官の調査等ですが―で子どもの意思を把握することについてどううまく表現すればいいのかということが問題なのかなというふう思いました。できるだけ皆様の御意見,恐らく大枠としては御意見は一緒だと思いますが,うまくそれが表現できるようにもう一度考えさせていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 これも基本的な考え方に違いがあるようでもあるし,しかしそうでもないようにも思いまして,子どもの気持ち,意思等について十分配慮して,それを手続上反映しなければいけないというあたりに関しては恐らく全く違いはない。それを陳述聴取という法的な概念との関係でどういうふうにそのことを実質化するかというので,本日ここに掲げられている原案は,先ほど説明があったようなことですけれども,特に15歳未満の子どもについて,こういう書き方だけでいいのか,更に本日いただいた御意見を反映して,よりその実質をあらわすような規定の方向というのはないのか,そのあたりをもう少し検討していただくことにしましょう。   あと,「審判の告知」と「即時抗告」に関して,これも今の議論との関係がございますが,ここに寄せられた意見との関係で何か補充ないし賛否の御意見はございますか。 ○増田幹事 子が利害関係を持つ事件について,一般的に告知の対象と即時抗告権者から子どもが外されております。しかしながら,陳述聴取のときと同様,その権利の行使方法を別途考えるということは別といたしまして,権利自体の存在は否定すべきではないのではないか,その権利の行使をするための告知自体も否定すべきではないのではないかという考え方です。実は第21も子どもの権利と関係がないとはいえないのですけれども,第21を私が意図的に外しているのは,これについて陳述録取とかいろいろなことを言い出すと実務が止まってしまうからなのです。ですから,本当は子どもの権利条約12条からすれば,第21も含めて告知や即時抗告権を保障すべきだと思うのですけれども,あえて第21については申し上げなかった次第です。 ○伊藤部会長 分かりました。ただいまの増田幹事からの御発言に関して何かほかの委員・幹事の方,御意見ございますか。 ○脇村関係官 当局から御説明させていただきますと,基本的に子どもに影響を受けるものについて情報を提供するということは必要だという認識でいるところでございます。ただ,即時抗告につきましては,民法上の申立権等の関係からそれについては一応精査をしているところでございまして,今回の養子とするについての許可については,却下については申立権の関係と,認容については,今回,ここに関しては少なくとも不服を言わなくても不服申立てできると同じ効果が発生するのではないかと思っていたので,あえてそこまでしなくていいのではないかというところで外しております。   告知につきましては,裁判所が直接するという方法と,裁判所が直接しなくても適宜の人を通じてできる場合というのがあり得るのではないかということから,一定の選別を図っていきたいと思っておりまして,正に利害関係のないような人,利害対立がないような人が子どもに言えばいいケースとかについては,裁判所が直接するという方法をとらなくてもいいのではないかということで精査はしているところです。ただ,そうだとしても,その基準について,個々的にやはりおかしいのではないかという御議論はあると思いますので,個別的に御検討いただきたいと考えているところでございます。 ○増田幹事 申立権との関係につきましては,子が手続上の当然の利害関係人であるということ,それから,通常の場合は利害関係人が自分で参加していくことができますけれども,子の場合には自分の方から主体的に参加していくことが実質的にできないということを考慮に入れていただきたいと思います。 ○伊藤部会長 それでは,この点もただいまの御意見を踏まえてもう少し検討をしてみるということにいたしましょう。   大分予定の時間を超過いたしましたが,もしよろしければ本日の審議はここまで,つまり第22まで終えていただいたことにして,残りました部分については次回にしたいと思いますが,それでよろしゅうございましょうか。   それでは,事務当局から次回の日程等についての連絡をお願いします。 ○金子幹事 事務連絡を2点申し上げます。   1点目は,部会資料の発送についてですが,今日のような各論の御検討をいただくものとしまして,既にお送りした部会資料12に加え,もう一つございます。これは,保全処分についての各論部分ですが,この部分については,今日と同様に事前に意見を聴取させていただいて,いただきました意見のところを中心に議論をするという方法をとらせていただきたいと思っております。来週の冒頭には発送の手続に入れると思っております。締切り等につきましてはまた事務連絡で詳細を書かせていただきますので,御覧いただければと思っております。一応2月5日を締切りとさせていただければと思っております。   2点目は次回の日程です。次回は2月12日の金曜日,午後1時30分から,場所はこの法務省第1会議室です。よろしくお願いします。 ○伊藤部会長 何か特段の御発言ございますか。   もしございませんようでしたら,本日はこれにて閉会にさせていただきます。どうも長時間ありがとうございました。 -了-