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行刑改革会議 第1分科会 第1回会議

日時: 平成15年9月8日(月)
    15時50分~16時56分
場所: 最高検察庁大会議室



午後3時50分 開会


○関課付 それでは準備が整いましたので,ただいまから行刑改革会議第1分科会を開催いたします。
 宮澤浩一会長に議事進行をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

1.会長挨拶

○宮澤(浩)会長 ただいま御紹介を賜りました宮澤ですが,それこそ僣越であるとは思っておりますけれども,どうもよく考えてみますと私一番年上のようであります。昭和5年生まれの73歳ですから。そんなこともあり進行役としていろいろ皆さんの御議論の交通整理がうまくできれば有り難いなと思っております。あるいは私よりも論客である菊田君が大いに発言をしてくださるチャンスがふえるんじゃないかと,そういうようなことも考えております。いずれにしても,皆さんの御協力をよろしくお願いしたいと存じます。

2.検討事項の整理

○宮澤(浩)会長 それでは,お手元の行刑改革会議第1分科会の議事次第というものがございまして,この次第に従って議論を深めていきたいと存じます。この論点に関連して事務当局から御説明をしていただきまして,区切り区切りでお話し合いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○関課付 それでは,事務局の方から,議題の2「検討事項の整理」について説明させていただきます。
 まず,当分科会の開催日程についてでございますけれども,お手元に配付してございます「行刑改革会議第1分科会開催予定(案)」というのがございますが,この書面のとおり祝日を除きまして毎週月曜日にお願いしたいと考えております。時間は午後2時から3時間程度を考えております。
 次に,取り上げるべき論点についてでございますが,第4回の行刑改革会議におきまして,委員の皆様から行刑の基本的な理念及び取り上げるべき論点に関しまして意見をちょうだいいたしまして,その結果を「論点整理について」という書面にまとめさせていただきました。そのうち,刑罰処遇の在り方及び被収容者の法的地位の部分が,当分科会で検討すべき論点ということになりますので,その論点を開催日程との関係で整理いたしましたのが,お手元に配付してございます「第1分科会(処遇の在り方等)開催スケジュール(案)」でございます。基本的に,処遇の全般的な論点から意見交換をしていただきまして,その後,懲罰,保護房の使用要件等個別具体的な論点についての意見交換をしてはいかがかという趣旨で作成したものでございます。なお刑罰の在り方,つまり懲役刑と禁錮刑の単一化につきましては,全般的な論点ではございますが,行刑そのものの論点ではございませんし,行刑の改革は早急に行わなければならない喫緊の課題でございまして,懲役刑と禁錮刑の単一化につきましては,仮にこれを行うということになれば,刑罰についての根本的な思想の転換,刑罰法令のすべての見直しをしなければならなくなるなど長期的な課題にもなりますので,まず現行の刑罰制度を前提にして行刑そのものの改革を御検討いただき,その検討を終えた後に,その改革を行ったとしても刑罰の在り方を変更する必要があるのか検討していただいてはいかがかということで,後の方で検討していただくべき論点として提案させていただきました。
 事務局からは以上でございます。
○宮澤(浩)会長 分かりました。それでは,(案)と書いてありますものの(案)を消すことからスタートさせていただきたいのですが,この第1分科会開催予定(案)というのは,この日にちは決めて,もちろんそれぞれ御都合がつかない場合には仕方のないことですが,この9月22日,9月29日,10月6日,10月27日,11月10日,12月1日という,この開催予定(案)の(案)はとってもよろしゅうございますね。決めたということで。

(「結構でございます」との声あり)
○宮澤(浩)会長 それでは,今の事務局の御発言に関連して,会議のスケジュール(案)でありますけれども,これについてスケジュール(案)のスケジュールにするについて,ちょっと待ってくれ,何か発言したいという御意見がありましたら,どうぞおっしゃってください。
○滝鼻委員 この日にこの問題をやらなければいけないというほど,がんじがらめのものでは多分ないのだと思うのですが,それぞれのテーマの重要性といいますか優先順位の問題で若干注文があるのですが,今日は別として,22日処遇困難者の処遇,処遇の基本原則,民間人等の活用,これらを最初に持ってくるのは僕は賛成なのですが,その次に被収容者の所持品,刑務所の規律,更にはその次に,担当制とか刑務作業,非常に細かい問題が入ってきているわけですね。軍隊式行進とか正座がどうだとか,それから賃金制の是非とか,職業訓練の充実。その次にある10月27日に,懲罰と,それから保護房の使用要件等という,特に懲罰の問題ですね。これは今度の名古屋事件の一つの背景でもあるので,この処遇困難者の処遇とか処遇の基本的な問題とか民間人云々の次にこの懲罰を持ってきて,こういう重要なテーマをともかく優先的に議論して,これでも時間が足りるかどうか分からないわけだから,優先的にここで話し合ってみたらどうかというふうに僕は思います。先ほど事務局の方がおっしゃった刑罰の在り方とかそういうことになると,刑法の改正とかそんなことになってしまうので,それは後の方でいいと思うのだけれども,この22日問題と27日問題については,優先的に審議したらどうでしょうかというのが,私の提案でございます。
○菊田委員 9月22日は最初でいいわけですね。
○滝鼻委員 それはいいんです。その次に,10月27日の懲罰制度の在り方とか,こちらの方を持ってきたらどうかというのが僕の提案です。
○成田委員 そういう感じがするよね。刑務所の所持品だとかそんなのは……,本質的な大きい問題をやっておいた方が。
○滝鼻委員 そこで時間がかかると思うのですよね。
○宮澤(浩)会長 これは本当に基本的な姿勢の問題ですからね。
○滝鼻委員 全体会議のときにいつか広瀬委員が,ともかく余り細かい迷路に入らないで骨太の議論されたらどうでしょうかという話,僕も大賛成で,それから成田委員もそういうことをおっしゃっていたので,そういう避けて通れない太い問題というのかな,重い問題を議論したらどうだろうかと思います。正座とかそういうのも大切なのだろうけれども。
○宮澤(浩)会長 ですから,一応それぞれの日にちにテーマは割り振られていますけれども,これはあくまでもその目標でありまして,かなり処遇困難者などというものに時間をとられるということもありますし,それからまた担当制,刑務作業というのは,それは細かく議論すればきりはないけれども,22日に割り振られたテーマというのはやはり相当大事だし,懲罰とかそういう点も。
○滝鼻委員 懲罰というのは,僕はいまいち,ちょっとイメージとしてわかないのだけれども,刑務所に入るということ自体はこれは刑の執行ですから,それは公権力の行使でしょう。懲罰というのは,その中で行われるインナーハウスの一つの秩序の問題ですよね。それも広い意味では公権力の行使だけれども,余り手続的には透明性がないわけですよね。
○宮澤(浩)会長 それをより透明にしようと。
○滝鼻委員 透明にするためには,この懲罰という位置付けを処遇の中にどういう風に位置付けるかということは,名古屋事件の反省というか,無罪か有罪かまだ分からないわけだけれども,仮にああいうことがあったとすれば,刑務所の処遇の問題としては非常に大きな問題だと思うのです。
○宮澤(浩)会長 それと,実は私個人的な最近の体験なのですが,ある受刑者から手紙が来まして,ある刑務所で非常に職員によって違うというのです。一々細かいことを言ってすぐ懲罰だと脅かすような者もいるし,例えば話をしちゃいけないというような。「私はきちんと守っているんだけれども,ある看守の場合には平気でしゃべっているのを見逃している。そういうのは不公平だ。」と,こういう手紙ですから,今度返事を出そうと思うのですけどね。そういう風に,懲罰という制度を利用して自分の権威を押しつけるようなことにもし濫用するとすれば,余り好ましいことではないのだなということを個人的には思っているのですけどね。これは,姿勢の問題だろうと思うのです。
○菊田委員 今滝鼻さんがおっしゃったのは,27日分を29日に入れかえろという御趣旨ですよね。
○滝鼻委員 入れかえるというより,要するに22日の問題です。順序としてそこに持ってきた方が。
○菊田委員 29日にこれを持ってくるのは簡単なことだから,皆さんの御了解を得られればいいのではないですか。
○滝鼻委員 29日で余るかもしれない,ひょっとしたらね。余るというか,29日でも片付かないかもしれない。
○菊田委員 だから,順番としては22日に入れろという御趣旨ですよね。
○宮澤(浩)会長 非常に重要だから,先にやることにしようではないかと,そういうことになりますね。
○成田委員 その方が考え方の基本になるでしょう。懲罰とは何ぞやだとか。
○井嶋委員 29日の刑務所の規律等というところに,いろいろ細かい中身が書いてありますが,この中身をどうするかということはここで決める必要はない話ですが,そもそも懲罰のもとというのは規律違反なのですよ。だから,規律というのをどういう風に考えるのかということが先にあって,それからその違反が懲罰なのですね,理屈から言えば。ここに書いてある私語の禁止の緩和とか軍隊式行進をどうするかという,こんなことをここで決める必要はないのです。ただ,規律をどういう風に考えるのかということを,あるいはどういうふうに今後していくべきだということを提言する。
○滝鼻委員 規律が必要だというのはだれも異論ないと思うのですけどね。
○井嶋委員 それと絡めて懲罰と,こうなるわけでしょう。懲罰も大事だから,むしろ所持品の問題は確かにマイナーなことだから後に持ってきて,懲罰と規律というのをそういう意味では一緒の日にしたらどうですか。
○滝鼻委員 それはいいです。刑務所の規律と懲罰。
○井嶋委員 だから,29日に規律を残して,懲罰と,できたら保護房までを持ってきて,所持品等というのは,これはまあ余り規律や懲罰から比べればマイナーだから,これは後にするという滝鼻委員の御意見には賛成します。ある意味では規律と懲罰というのは裏表なのですね。細かいことを決める必要はないけれども,どういう哲学でやるかということをやはり議論しておかないといけないのではないかという気はします。
○宮澤(浩)会長 どうぞ,自由に御発言を願います。
○菊田委員 その他のところの死亡事案についての手続の在り方というのは,これは第3分科会の方が中心ではないのですか。これはどういうあれですかね。
○滝鼻委員 これは,公表するとか,そういうことの問題ではないの。手続とか。原因と結果をきちんと調べて調査してということです。
○菊田委員 そういうことは,第3分科会がやるんじゃないのですか。違うんですか。
○宮澤(浩)会長 やはり手続になると,第3分科会ではちょっとあれかもしれませんね。
○関課付 処遇の中で亡くなった方について,情報公開をどうするかという話ですので,やはりこちらの方だろうと思いますが。
○宮澤(浩)会長 それでは,時計回りというのでしょうか。滝鼻委員から,何でも皮切りの御発言をお願いします。
○滝鼻委員 特に再来週の22日のテーマの中で,処遇困難者の処遇それから処遇の基本原則というところは,先ほどアメリカの紹介などがありましたけれども,この件を本当にどう対応していくのかということが,これからの行刑の非常に大きな問題だと思います。特に僕らが見学しました府中刑務所を見ますと,処遇困難者に対する刑務官のストレスとか,それからあの人たちだって多分有期刑の人たちだから,いずれは出てくるわけですよね。満期になれば必ず出さざるを得ないわけでしょう。そうすると,この社会へああいう人が野放しになってどういうことになるんだ。全部真っ当な人に改善されて出てくるとはとても思えない。そうしたときに,普通の刑務所の一角であのようなことが,ベテランの刑務官ではあるんでしょうけれども,やられているということについて,非常に市民一般としては不安感を持ちますよね。もうちょっと集中的なああいう施設が必要かどうかということも考えなければならないと思うのですね。
 それと,第3分科会と若干関係があるのかもしれないけれども,特に薬物,あるいは精神異常,それから外国人とここにちょうど書いてありましたけれども,こういう者に対する処遇というのはもう少し本格的に取り組まないと,単に過剰収容ということだけで片づける問題ではないと思います。したがって,繰り返しになりますけれども非常に困難な処遇,被収容者に対する刑務所の矯正側の,行刑側の今までのシステムを若干ではなくて大幅に考え直さなければならない問題だと思います。
 それと,先ほど僕は問題をくっつけたのだけれども,懲罰というのはもう表裏一体の問題になってくるので,この問題はやはり同時進行的に考えてもらいたい,議論したいと考えます。
○宮澤(浩)会長 今の御発言に,何か補足的な御発言がありましたら,いかがでございましょうか。
○菊田委員 おっしゃるとおりだと思いますけれども,私は個人的に次回9月22日はどうしても,明日からアメリカに1か月ばかり行くものですから欠席なのですけれども,1回で何らかの結論が出るとは思われませんが,欠席中に結論を出されるということもいかがかと思いますので,ほかの方の欠席された場合も同じだと思うのです。そこから辺はお願いしたいと考えておりますが。
○滝鼻委員 言いたいことをみんな言っておいたら。
○菊田委員 それにしても,こういうことでいきましょうという結論をやられたのでは困るということもありますので,これは私だけではないと思うので,ちょっとお願いしたいと思います。
 それと前後の関係では,例えば処遇困難者というのは一体どういう者が処遇困難者かということ自体が問題だと思いますけれども,いずれにしてもそういう者に対する議論をする場合に,例えば刑務作業というのは現在では8時間強制労働ということになっているのですけれども,他の関係で,これを結びつけて議論していかないと議論が進まないこともあると思うのです。ですから,趣旨は柱としては分かりますけれども,他の問題との位置付けで常に全体を見ながら議論するということでお願いしたいなと思っています。
○宮澤(浩)会長 テーマがクロスするということでしょう。
○菊田委員 そのように思っています。今のところ,そんなところです。
○宮澤(浩)会長 例えば外国人で薬物というのがあるでしょう。その薬物も,その人が中毒しているという薬物もあれば,運び屋で来てしまったというのもいるんですよね。私が実は例の府中の篤面をやっていて,外人専門に行うなんて初め言ったものですから,3,4人引き受けたら,みんなそうなんです。成田で捕まっておりまして,それが3人ともタイで預かった品物で,貴金属だと思って持ってきたら実はそれが覚せい剤だったとか,そういうことなんですよ。この人たちが,それこそみんな刑が大体6年ぐらいなんですよ。そうすると,割合に長いでしょう。こういう人の処遇の目的というのは一体何なんだろうなと思ってみたり。
○滝鼻委員 府中で僕らが見せてもらった一番ひどいところがあったでしょう,レッドゾーンという。あそこに入っている人なんていうのは,もう刑務作業もへったくれもないんでしょう。あれ,やらしていないわけですよね。
○富山調査官 まともにできません。
○滝鼻委員 やったらまた普通のところで暴れちゃうから,やらせないわけだよね。
○富山調査官 室内でできる作業を何とか出すのですが,それも余り上手にはやっていただけないので,新聞紙を折ってごみ箱をつくるような作業ですね。ちゃんとしたものができたら,所内でごみ箱として使うとか,せいぜいそのぐらいのことしか。
○滝鼻委員 そうですよね。だからああいう人たちに対しては,懲役の役の方は余り関係ないんだよね。
○成田委員 私それに関連して申し上げたいのですが,私はこの委員になってから刑務所を見ました。そうすると,基本的にもう間違っているんじゃないか,こいつを矯正して本当に治るものなのか,あるいはもう全然,入った人たちを見ると,これはちょっと欠落しているよ,何かが抜けているよと。今宮澤先生が言われた,運び屋だけで6年入ると。これがいいのか,罪によってあれする,あるいは何しろ人を見て,これはもうとてもだめだぜと。だって暴力団だ何だ,ああいうところの人たちが来たり入ったりしている人もいるわけでしょう。そうすると,私は一律にあれすると,そして基本の思想は人はすべて同じじゃないけれども,何かそういう形でこうやって刑務所に入っている間に良くなっていくと,いろいろな教育もしているでしょうけれども,何か基本的に考え方を変えなくては,これはもう時代錯誤ではないかという気がするのですよね。刑務官だって,昔の刑務官の方はいろいろな経験も積んだかもしれないし。ところが入ってくる人たちはちょっとレベルがかなり上で,大した経験者でしょう。私はあの人たちを,刑務官募集の時に見た,人を何とかして矯正しようという彼らの理想とかなり違ったものになるんじゃないだろうか。だから,もっと意識を変えなくてはいけないのではないか。刑務官はおやじさんだとか何とかいう時代ではなくて,何かそういうことを痛感するのですよ。考え方をね。今いろいろな職業があってあれだけれども,人間を善なる人と見ろという思想があるわね。
○宮澤(浩)会長 ただ,これは本当に基本的な問題とぶつかってしまう問題なのですけれども。それともう一つは,いらっしゃったところの印象というのは確かに非常に強くインプットされると思うのですが,確かに府中などには手ごわいのがいますけれども,そうでない施設だとか,今日の話のいわゆる初犯というものを一つグループとして何とかやってみたらどうだという発想もありますので,だからそもそも行刑とはというときに,余り改善するということに対する夢を打ち砕くような議論が……。
○成田委員 それを分類するなら,これはおこがましいことだけれども,かえって刑務所に入っている間に悪くなってしまうだとか,初犯の人で非常に可能性があると。実際,我々よく,本当に罪を認識して,これによって何年か刑務所で務めることによって社会に出てきて更生していくんだ,そういうのが昔は割と美談として聞いたじゃないですか。ところが今の世の中というのは,果たして,そういうような人もいるだろうけれども,何かこれ考えないことには,何か朱に交わってかえって変になっていく。
○菊田委員 御趣旨は分かりますけれども,現行法ではとにかく刑事刑というものがあって,5年なら5年と命令されて刑務所に入るわけですよね。ですから,その期間内で刑務所はどうあるかということを我々は議論するほかないわけですよ。同時に,基本的には刑務所でその人間を全部100%いい子にしてあげようなんてそんなおこがましいことを考える必要はないわけで,やはり5年間いる刑務所の中で,アメリカもそうですけれども,規則破ったらそれは厳しくやると。もっと規則破ったら更に厳しくやると。そういう秩序を維持するということが大事だと思うのです。だけれども,それに乗っかって努力する人間にはそれなりの見返りをしていく,処遇をしていく,こういう刑の個別化ですよね。それを個人的なものではなくて,組織として規則等々でやるという方向づけが今求められているのではないかと思います。
○成田委員 私もそういう意味で,だから刑と人と,何かそういう気がするな。一律にそれはどうかな。
○菊田委員 それは個人プレーではなくて,一つの組織として動いていくということが,人権を守るためにも必要ではないかと思います。
○宮澤(浩)会長 正に累進制なんていうのも,それを狙って作られたのだけれども,ただ現実の累進制というのを作った昭和8年のころの受刑者と最近のでは変わったなということはあるのです。
○井嶋委員 何か基本的な考え方のプレゼンテーションみたいな形になっていますので,私も考えているところを申し上げたいと思います。これは今後の議論の根っこになっていく,特に成田委員の言われたように非常に重要なことなのですが,私は意見書にも書きましたし,皆さん大体共通してお持ちなのですが,要するに処遇困難者と言われている,いわゆるレッドゾーンに入っている連中ですね。僕の定義でいけば,薬物などによって精神的,人格的な,精神病とまではいかないけれども人格的な欠陥を持って処遇が非常に困難になっている連中,暴力団あるいは外国人受刑者といったものが一括して言えると思いますが,中でも悪いやつですね。こういう人たちが,今日の過剰収容の中を見ますと,こういう者が,必ずしも統計的に言えば,事務当局に聞きますと過剰収容で増えている部分というのは初犯が増えていますと言うのですが,実体的に見るとそういう処遇困難者というグループが,物すごく僕が昔知っていたころから比べて増えている。これが,異常に増えて過剰状態になって,従来の処遇が追いつかなくなっているというのが,今日の問題の根幹だと私は思っております。それは意見書に書いてありますが。
 そこで,結局は処遇困難者に対してどうするかということを解決すれば,今回の改革論議は自由な部分はある程度解決できると思うのです。しかしそれだけではいけませんが,それに象徴されるように議論を進めていかないといけないと思いますが,処遇困難者というのを,処遇ができないグループ,しかし何とか処遇しなければいけない,引っ張り出さなければいけないという従来のパターンで考えてあつれきが起こっているわけですから,処遇困難者に対する処遇というのものと,今宮澤先生が言われたような一般の通常従来の受刑者,従来の処遇方法で十分対応できて改善できる受刑者といったものをここで分ける必要はないのか。分けるというのも,刑という目的の中のただ範疇から飛び出すわけにはいきませんけれども,処遇の中で分ける方法というものを考えることが一つの方法ではないかというふうに私は考えておりますが,たまたま今成田委員がおっしゃったように,こういったグループ,あるいは滝鼻委員も言われましたけれども,そういう者を分類上どういうふうにするのか。何か処遇困難者分類みたいなものを作って,あるいはそれを一つの区画分類にして,そして作業を中心とした従来の処遇ではなくて処遇するというような方法を一つ取り入れることによって,私は比喩的に申し上げていますけれども,いわゆる善玉コレステロールがたくさんいるのですが,そこに悪玉コレステロールがいて,従来それはまざっていたのですが,今はまぜたら大変なことが起こるぐらい悪玉菌が増えているわけですから,悪玉を何とかするという処遇の方法,分類の方法といったものを考えることによって,今回の問題の相当部分は解決するなという気がしております。ですから,このスケジュールにありますように処遇困難者に対する処遇,それは分類や処遇,累進処遇といったような運用とリンクする問題でありますが,これは一番大事なテーマでありますし,それについて職員が不足するなら民間の活用を考えなければいけないとか,あるいは施設をどうするか,区画をどうするかといったようなことを議論するのが一番大事なことだろうと思っております。
 しかし,宮澤先生がおっしゃったように,善玉の従来の初犯も含めて再犯率が30%から40%あるわけですから,そして出たらもう二度と来ないという連中はいることは確かなのですから,これに対する処遇ということを,今後の新しい処遇というものを考えてあげなければいけない。それも今回のテーマだ。しかしそれは第2の問題で,第1はやはり処遇困難者に対する処遇をどうするかということを解決すれば,いわゆる善玉コレステロールに対する処遇というのを新しくどうするかという議論としては残りますけれども,大半は解決するのではないかという気がしておりまして,そういう議論の進め方はどうだろうかなと。
○菊田委員 御趣旨はよく分かりますけれども,一番最初私申し上げたように,処遇困難者という定義は何だということも,これは問題なのだと思うのです。分類というのは,処遇困難者と処遇が容易な者と簡単に分けられるものではなくて,そもそも処遇困難者,例えばそれは精神上の問題があれば,これは現代の科学である程度それは治療の対象だという意味での分類できると思うのです。だけれども,大きい意味での処遇困難者というのは,その中身は多種多様ですよね。早い話が,例えば我々の分野に入ってはいないけれども累犯というような問題は,これは機械的に5年以内に再犯すれば再犯になるわけですよ。更にやれば常習的なものだというふうにレッテルも張られるわけです。これも処遇困難者かとなると,それはむしろ法的な枠での生産された処遇困難者だという範疇も出てくるんですよね。ですから,これは分類といっても限りなく細かく分類することが最も望ましいのでしょうけれども,それはしかし限られた何千人もいる中でそうは個別化はできませんよね。だけれども,そういう意味では夢はあるけれども現実には今管区内でも分類をやっています。しかし分類やっているけれども,それが現実に機能しないのは,ほかにいろいろ要素が加わっているわけです。例えば累進処遇という形で,4級にどんなに分類をしてももう強制的に労働させるとか,そういうことがあり,ほかのことと絡まっているわけだから,いきなり処遇困難者をうまくやればいいということにはならない。
○井嶋委員 単純にそれだけではないのですが,4級から始まる処遇の問題も,累進処遇の問題も,それはもちろんあわせて全部考えなければいけませんし,累進処遇なんてやめた方がいいと僕は思っていますけれども,そういうようなことも含めて総体的に議論をしたいが,中心はやはり処遇困難者をどうするかということを考えるのが今回非常に大事なことじゃないかということを申し上げているのです。
○菊田委員 極端に言いますと,今の精神障害者でも,千葉刑務所なんか2割ぐらいそういう者が入っていると言われていますよね。だけど,そのことで裁判に文句言ったってしようがない,現実に量刑がそういうことをやっているのですからね。そうすると,刑務所内で治療対象者にすべきだということは,我々主張していいと思うのですよ。刑務官自体が迷惑ですからね。そういう意味でおっしゃるのは分かりますけれども,他の者も含めて一括して処遇困難者と,こういうことは非常に危険になりますね。
○成田委員 でも,それはある程度見ることによって分かるのではないですか。例えば今の8人部屋だとか何とかに,順番を決めているんだと。それで昔は牢名主だとか何とかいったけれども,そういうことをせずに,そういうようなものに同調できない者はあれに入れないということを何か言っていましたよ,刑務所で。
○菊田委員 今でもそういう者は独居房に入れています。
○成田委員 そういうところにやはり選別はしているんだなと。この間ビデオを見たら,何か鉄かぶと,ヘルメットかぶってぶつけてあれしている。この人なんかもう常態じゃないよね。だから,そういう人はもう違う。薬であれしている人は同じようなところではないというような分別はできるんじゃないか。
○菊田委員 言葉変えますけれども,あれ見るとそういう,私も具体的なケースとして知らないからあれですけれども,そうじゃない扱いをした場合にあの人間がそうなったかどうかということも見ることが大事なことなのですよ。あれだけ見ていたのではもともとこんな人間かと思えるけれども,ああいうことになってしまった人間はどういう扱いを今までしてきたのかということの方が大事なのですよ。
○成田委員 どこがですか。
○菊田委員 刑務所にしても,何にしても。
○成田委員 刑務所がしたと。
○菊田委員 そうです。閉鎖すればするほど,人間というのは反発するでしょう。そういうプロセスをやはり理解してかからないと,結果だけ見てこれはもう処遇困難者だ,隔離,隔離といけば,逆に人間というのはおかしくなってしまうからね。そこのところを。
○滝鼻委員 刑務所のことを今考えているので,刑務所以前のことまで我々は。
○菊田委員 いやいや,刑務所に入ったときからああいう人間だったかどうかは,我々は分からない。
○滝鼻委員 それはそうかもしれないけど,刑務所以前のことまで考えるのは,それは議論しても無駄だと思う。
○菊田委員 そんなことを言っているのではないのですよ。そんなことを言っているのではなくて,刑務所に入ったときからあの人間がああいう状態だったかどうかという点については,我々は知らないわけですから。ということを言っているのです。
○滝鼻委員 それはだけど,しかるべき方法で調べることはできるわけでしょう。
○菊田委員 そうですね。調べてもらいたい。
○宮澤(浩)会長 さっきの井嶋委員のお話は,おまえはそれ理屈過ぎると言われるかもしれないけれども,考えていきますとね,やはり今みたいに処遇は懲役がほとんどの受刑者だし,禁錮受刑者も請願作業だということになれば,実際は同じで,ほとんどが刑務作業でもって処遇するという建前ですよね。だけど,人によっては作業にかわる適切な処遇を行うという,いわゆる刑法改正草案のあのようなものもやはり考えるべきだということになると,最終的にはさっきの禁錮と懲役の区別を廃止してというようなことになってしまうんですよ。
○井嶋委員 そこまではいかなくても,例えば処遇困難者と言っていますけれども,成田委員も御覧になったように府中で処遇困難者になっている連中というのは,言い方を変えれば現在の刑務作業に出せないという,そういう分類にしているのです,ある意味では。そうすると,結局刑務作業という処遇が原則になっている。だけれども,僕はあいまいというわけじゃないけれども,あえて言えば処遇困難者はもう作業という処遇を考えずにほかの処遇を考えなさいというふうにすれば,一つの類型,分類として成立するでしょう。そうすると,作業という処遇を原則とする,今それが善玉がどうか分かりませんけれども,例えば善玉とすれば,善玉についてはやはりそれなりに新しい処遇の方法をもっと考えてあげれば,もっといいことになるかもしれないというような,処遇の在り方,分類の在り方も含めて,やはり総体的に議論しないといけないのではないか。今の処遇困難者と言っているのは,恐らく刑務所で作業に出したらけんかするから出さない,規律違反をするから出さないという分類,非常に大ざっぱだけれども,そんな感じで分けているような気もするんですね。それは,しかし刑務当局にとっては決して現在の処遇の在り方からすれば,イリーガルとは言わないけれども,通常ではないのです。ですから,刑務所としては,そういうことは本当は外へ出したく,言いたくないです。しかし,せざるを得ないということで,ああいう処遇をしているのだとすれば,それが満期になったら出る,非常に危険だということになるならば,ここで発想を変えて,こういう人たちは前提が刑務作業だという処遇の前提があるからそうなるので,そういう人たちの処遇を新しく考えれば,刑務所の方も今度は法的理屈が前提になって,何も後ろめたいこともない。新しい処遇だよということができるのだろうと思うのです。
 ですから,何もディスクリミネートするつもりではないのだけれども,それに新しい処遇を入れ,新しい分類を入れ,新しい規律を入れ,刑務作業の方も半日作業にして半日もっと教育するとか,社会復帰教育をするとか,教科を入れるとか,カウンセリングを入れるとかいうような新しい処遇を入れてやっていけば,全体としてもっと新しい近代化ができるのではないかということを僕は考えているのです。ですから,決して菊田委員が言われるように一面的なことを言っているのではないのですが,総合的に考えるべきだろうということを申し上げているのです。
○菊田委員 同感です。
○成田委員 今のは,そういう仕事を与えろという意味ですか。
○井嶋委員 作業を与える。現在の処遇では作業を与えるのが基本になっているのです。それに出たくない者,出ても規律を犯す者,教官と相入れない者,これは結局処遇困難者となって昼夜独居に入っているわけです。
○宮澤(浩)会長 ちょっと司会として,これは越権になるかどうか分からないのですが,矯正の関係者というのは,行政機関ですよね。
○富山調査官 はい。
○宮澤(浩)会長 そうすると,行政機関である以上は,刑法で懲役の内容というふうなことの規定があると,今の井嶋先生の御発言は僕はもう賛成なのですが,行政として困らないですか。
○菊田委員 8時間労働を5時間なり3時間にすることは可能ですよ,それは。懲役としてやるわけだから,監獄法で別に8時間ということを規定しているわけではないから。
○宮澤(浩)会長 そうだけれども,作業に服するという。
○菊田委員 だから作業はやらせる,1時間でも2時間でも。だけど,残りは今おっしゃったような形の。
○井嶋委員 一つの考え方として,先生,刑法で言う作業というのはそれほど重く考えなくても。
○宮澤(浩)会長 でも先生,あれだったですよ。僕らは監獄法のときに法制局にどのぐらいいじめられたか分からない。そのころは定役に服させると書いてありましたから。
○成田委員 私はこんなこと言ったらあれだけども,あんな刑務作業やったって無駄だと思いますね。
○井嶋委員 それはみんな分かっているのだけれども。
○成田委員 だから,もっと違った形でやっていく。そういうのが刑務作業と言うのですか。
○井嶋委員 今作業中心に,それは正に懲役の役務を課すわけですね。
○成田委員 処遇というか,全般的なあれとして,役につかせるという意味なのか。
○井嶋委員 それが刑罰の基本なんですね。
○宮澤(浩)会長 それが金縛りになる危険があるのですよ,法律というか行政ですとね。裁判官だとある程度は……。
○菊田委員 今,軽屏禁とか刑罰を受けている連中も全然作業をやっていないから,だからそれは……。
○宮澤(浩)会長 それは違うでしょう。
○菊田委員 いずれにしても,作業は必ずしも全員がやっているわけではなくて,例外がいっぱいあるわけですよ。だから,私は少なくとも1時間,2時間の刑務作業でも,それは懲役刑を別に改正しなくても十分理論的には可能だと。
○宮澤(浩)会長 でも,それは原則にならないもの。
○菊田委員 今8時間を3時間にするということは可能でしょう。5時間なら5時間でもいいですけれども。
○宮澤(浩)会長 それはどうですかね。我々は頭の中では思えるけど,実際に現場を預かる方はそう踏み切れますかしらね。
○成田委員 あれは,そういう役をやらせるということは。
○菊田委員 懲役。
○宮澤(浩)会長 それが9割5分以上いる。
○井嶋委員 禁錮は,それをさせない。
○宮澤(浩)会長 だから二つに分けてあるわけです。
○井嶋委員 ただ,禁錮も自分で希望すれば作業できますから,希望の者は作業をする。
○滝鼻委員 役務を課すことがこの刑法の精神だとしてもですよ,その前にやはり隔離するということが必要なのでね。
○宮澤(浩)会長 それはそうですよ。
○滝鼻委員 隔離して,その隔離がまず大前提として分かってもらわないと,これは社会から隔離されているのだ。なぜ隔離するかというと,出してしまえばまた悪いことをやる。
○宮澤(浩)会長 その点は日本はパーフェクトなんです。その点はパーフェクトですよ。
○滝鼻委員 自由刑だから,自由を奪っているわけですからね。それはやはりきちんと守らせる。その改善更生のために多分役務があるんでしょう。
○井嶋委員 それもあります。
○滝鼻委員 改善更生と,それから懲らしめとしての役務もあるわけですよね。それから,改善更生のための作業,役務もあるわけでしょう。
○井嶋委員 習慣として,そういう作業をする習慣を与えるという。
○滝鼻委員 ただ,作業所に出したら暴れちゃってどうにも収拾つかなくなったという人に,懲らしめのための役務をやっても無意味ですよね。あなたはそれも少しはやらせろと,こういうわけでしょう。暴れ回っているやつを。それはやはり隔離することに,そういう人たちは100%の意味があるわけだから。
○菊田委員 ですから,この12月1日の刑罰の在り方に書いていますように,やはりこれは懲役を廃止して禁錮刑単一化するという。自由刑ですよ,自由刑として単一化する。これを一つの方向づけとして。
○宮澤(浩)会長 だけど,それを最初にやらなきゃだめなんじゃないかと。
○滝鼻委員 それやったら,だって刑法改正だものね。これは法制審でやるべき問題で,行刑改革会議としては。
○菊田委員 だけど,意見としてはいいんじゃないですか。
○滝鼻委員 意見を勝手に言うのはいいけれども,それでは結論は出せない。
○菊田委員 そういうことがあるから,私は懲役8時間を3時間にすることは,これは私は可能だと言っているのです。
○滝鼻委員 8時間って,どこに書いてある。刑法に書いてあるの。
○菊田委員 刑法じゃないです。刑法で決まっていないから,行刑会議としてはやれるということを言っているのです。
○宮澤(浩)会長 週何時間労働,全体で40時間とか何とかと,そういうようなことがまずあるんですよね。
○滝鼻委員 8時間やっていないでしょう。あそこのレッドゾーンに入っている人なんて,1時間もやっていないでしょう。
○菊田委員 だから,例外はいっぱいあるんですよ。だけど,基本は8時間やっているわけ,定役ということで。
○宮澤(浩)会長 作業日程ではね。
○井嶋委員 朝起きてから,8時間です。
○滝鼻委員 でも,それは矯正局内で決めていることでしょう。それは,ここの会議に乗るテーマだとは思うけどもね,懲役やめて禁錮に単一化しろというのは,それは僕らは越権行為だと思う。
○菊田委員 だからそれができないから,私は8時間を3時間にすることは,ここで議論すれば可能だということを言っているのです。
○滝鼻委員 それは議論はできると思います。
○菊田委員 議論じゃなくて,結論だって出せます,それは。
○滝鼻委員 全体を3時間にしてしまうわけ,全員を。
○菊田委員 ええ。
○滝鼻委員 それは,まあ議論としてはあるけど。
○成田委員 名古屋で非常に悪意にあれして,もう言う事を聞かない。本当どうにもならない野郎だということでやったのか,やったんだろうね。それが,どういう統制違反なり何なりをしてやったのか。それで,私この間ずっと見ていたんだけれども,個人部屋に入っているあれなんか見ると,本当にこれはどうにも手に負えないだろうなと。余りそばに寄らないでくださいと。うんちをあれするからということ。だから,そういう人たちはもう作業にならない,どうにもならないから独房に入れているわけ。入れているのですから,それでもう……。
○宮澤(浩)会長 ですから,昼夜独居にああいう人は恐らくなっているんでしょうね。人とは一緒にならない。だけれども,昼夜独居でも,そこで大声出したり何なり夜やられれば,もうその独居にずらっと並んでいるほかの人たちがみんな眠れないとか,大暴れすると困るから,そこでああいう保護房というのか,そこに連れて行くわけですよね。そこでまた,悪さするわけでしょう。昼夜独居の人はそれぞれの部屋の中で紙細工だ何だのやっている人もいる。それが彼らに言わせると作業なんですよ。
○井嶋委員 それは結局法律の建前があるものだからそういうことをやっているんでしょうが,こういう人たちに対して,そういう日陰じゃなくて正式に認知した処遇方法がないのか。それを一回議論してみたいというのが,僕の申し上げたいこと。アメリカあたりで,例えば重警備,中警備,軽警備ということでやっていますが,重警備というのは正にそういう処遇困難者みたいなものすごい,絶対に服従しない連中を入れているわけですね。これは重警備なのです。日本には重警備,中警備,軽警備という,そういう分類はないのです。だから,みんな塀の高さも同じなんですよね。ただ,市原は別です。市原の交通刑務所は別です。少年院は別ですけれども,成人に関しては皆同じ警備の仕方をしているわけです。しかし,これも収容分類として重警備のそういう人たちを対象とした,例えば処遇困難者を対象とした重警備というシステムを収容分類としてもし取り入れるのだとすれば,それを入れて,この重警備の収容者に対する処遇はどの程度やるのか,どういうことをやるのか。それから,軽警備でも,非常に善玉な受刑者に対してはどういう処遇をするのかという,もっときめの細かい個別処遇の原則というのを新しい刑法改正では打ち出しているわけですから,それをこの際考えるのならば,やはりそういうものも含めた総合的な個別処遇の在り方というものを議論してみたいなという気がするのです。
○成田委員 私もそれは賛成だな。
○滝鼻委員 処遇困難者というカテゴリーが仮に矯正局であるとすれば,何かその基準があるんですか。
○富山調査官 処遇困難者の定義はなかなか今はないのですけれども,ただ要は今おっしゃっているように工場へ出すと反則を犯してしまう。あるいは逆に工場に出したらいじめられてしまう。とにかく集団生活をさせられない者はどうしても昼夜独居になりますので,そういった者の中で特に職員の言うことを素直に聞かないという者が,やはり現場の職員の感覚としては処遇困難者となります。
〇滝鼻委員 今度の名古屋事件の背景でよく法務省が説明するのに,過剰収容ということ。ともかく被収容者が増えてどうにもならないということを言いますよね。それは,処遇困難者の問題ではなくて,刑務官の方が手が回らなくなってきたということもあるわけでしょう。
〇富山調査官 あります。
〇滝鼻委員 それともう一つ,さっきその因果関係は僕も,これは菊田さんと同じなのだけれども,被収容者が増えたことと,処遇困難者というのはそれと比例して増えているのですか。それとも余り絶対数は変わらないの。
〇富山調査官 やはり増えてはきているとは思います。全体の人数掛ける何パーセントというような形では,どうしてもそういった受刑者はいるのかなというのが実務的な印象なのですが,一番困るのは,処遇困難者を今のシステムでやるにはどうしても昼夜独居に入れるしかない。ところが名古屋刑務所なんかの場合は,昼夜独居の房の数が極めて少ないのです。そうなると,新しい者を入れるためには今いる者をまた工場に押し出さなければいけないということで,今いる者に,「おまえ,とにかく工場へ出てもう一回頑張れ」と。「嫌だ,行きたくない」と言うのを「まあそう言わずに頑張れ」となだめすかしたり,時には「いいから行け」と無理やり腕つかんで引っ張っていって押し出したりしようとすると,ますますそれがトラブルになってしまうというようなことがあります。
〇井嶋委員 結局,雑居に入っている一般の人たちに影響を与える。
〇滝鼻委員 昼夜独居の被収容者の数というのは分かるのでしょう。
〇富山調査官 調べれば分かります。
〇滝鼻委員 それがどういう変化しているかというのは,分かりますか。
〇富山調査官 そうですねえ。ちょっと定点的な測定を必ずしもしてないのですが。
〇滝鼻委員 昼夜独居というのは,要するに夜も昼もでしょう。夜はみんな。昼もそういうところに入れなければならないということは,要するに共同作業,刑務作業ができない人と,こういう意味でしょう。
〇富山調査官 そうです。
〇滝鼻委員 昼夜独居の数が減っているのか,あるいは大体平均的なのか,あるいは全体の数の一定比率としてそういう人がいるのか。そのあたりは数字的には分かるのかしら。
〇富山調査官 すいません,きちんとした統計として出るかどうかは分かりませんが,時折調査をしたりもしていますので,ちょっと考えます。多分何か出せると思いますので。
〇滝鼻委員 私は分科会の代表じゃないからこんなこと言っていいかどうか分かりませんが,それ,ちょっとどこまで正確に分かるどうか分からないけれども,この次の22日か,ここまでに仮の数字,分かる範囲で教えてくれますか。
〇富山調査官 分かりました。
〇菊田委員 それは統計出てますよ。
〇滝鼻委員 出ているなら見せてくださいよ。
〇菊田委員 何千人かな,全国で。最近公にされているでしょう。
〇富山調査官 それは恐らく質問主意書に答えたものではないかと思うのですが,ですから必ずしも毎年の統計ではないのです。
〇菊田委員 昼夜独居,国会で答弁しているでしょう。
〇富山調査官 それはですから,ある時期,照会をかけて調べた数値というのはもちろんあるわけです。国会で質問され,それに答える際に調べたとか。
〇菊田委員 それは最近明らかになったのです。今まで公にされなかったのです。
〇滝鼻委員 昼夜独居。
〇菊田委員 その数。
〇滝鼻委員 だけど,矯正局は知っているのでしょう。
〇菊田委員 矯正局は分かっていたけれども,今まで我々には公にしなかった。国会で追及されて,改めて。
〇滝鼻委員 国会で追及しようがしまいが,ここでその議論するんだから出せばいいじゃない。
〇菊田委員 だから,これから出るでしょう。今までは出てなかった。
〇関課付 ただ施設上の制約もありますので,正確な数というよりは,増加しているかどうか,正確に出せるかどうかというのは非常に難しい。
〇富山調査官 というのは,何年何月の昼夜独居は何人ですかというのが今分かるわけではありませんので,過去にたまたま調べていった結果を,例えば何とかよりすぐって年代ごとの違いがもしかしたらお見せできるかどうか。
〇井嶋委員 処遇困難者の処遇が今確立してないわけでしょう。各刑務所によって……。
〇滝鼻委員 それがないというなら,昼夜独居で区切ったらどうかと思ったのです。
〇井嶋委員 それはある時点しかとれないのですよ。それは流動しますから。
〇滝鼻委員 それでもいいじゃないですか,全然数字が分からないより。
〇井嶋委員 私も感覚としては増えているだろうと思っているから,悪玉菌がふえていますということを申し上げているわけでね。増えていると思います。
〇滝鼻委員 だけど,やはり実際の数字見せてもらって。
〇井嶋委員 それは僕も見たいと思います。見ているわけではありませんから。
〇宮澤(浩)会長 ただ,数字を操作するときに非常に難しいなとさっきちょっと思ったのは,各施設で単独室というのが少ないのですよね。
〇井嶋委員 だから,施設ごとに違うのです。
〇宮澤(浩)会長 施設ごとに違うのです。しかも新入のときに独居に入れて落ち着かせるとか,そういうような工夫したりすることがあるときに,この間行った名古屋はそうだったと思いましたけれども,単独室に二段ベッドを入れて二人入れるなんていうふうなことをやっていますと,滝鼻先生の質問の数字で単独室がどうのこうのというときには,それを除かないとならないわけなのです。
〇滝鼻委員 施設が少ないから,昼夜独居に本来入れなければならないのを二人部屋に入れたりすることもあるというのでしょう,施設によっては。
〇富山調査官 あり得るとは思います。
〇滝鼻委員 そうなると,要するに実態は分からないということになってしまうから。
〇成田委員 法務省が全部統治しているのだから,どうなっているのだと。それこそアンケートなり何なりで僕は調べればいいと思うのですがね。
〇滝鼻委員 全国で刑務所何か所あるのですか。
〇富山調査官 74庁です,本所が。
〇滝鼻委員 電話したって分かるじゃない。
〇富山調査官 現在の数はもちろんすぐ分かります。
〇関課付 いずれにしても,数字を何とか出すようにいたしますので。
〇富山調査官 時の変化による割合の変化みたいなものがどんな形でお見せできるかをちょっと考えさせていただきたいと思います。
〇滝鼻委員 公表するわけではないということを前提にして,ここの議論の材料にするのだと。
〇井嶋委員 それはそういう認識を持たないといけませんから。
〇富山調査官 次回までに考えさせていただきます。
〇井嶋委員 それは刑務所によって,府中のような刑務所の場合と,横浜とか大阪とか府中とかいう場合と,もっと地方の刑務所の場合と,独居の数も違うし,入っている収容者の質も違うし,やはりそれぞれの刑務所によって,そこが刑務作業に出せないという意味での処遇困難者という判を押してどう処遇しているかという,それぞれの刑務所によって違いがあると思うのです。
〇成田委員 傾向として,悪質な人が増えてきているのだとか,そういうようなデータがあればね。
〇井嶋委員 そういう悪質な者が増えている,処遇の困難な者が増えているというデータが欲しいのです。
〇菊田委員 ちょっとまた文句言いますけれども,厳正独居に入っているのが処遇困難者とイコールにならないのですよ。
〇滝鼻委員 僕はそんなこと言ってないので,処遇困難者というカテゴリーをなかなか作りにくいから,あなたが言うように作りにくいから,少なくとも昼夜通して独居房に入っている人数はどのぐらいいるのかということを知りたい。
〇菊田委員 それと処遇困難者はどういう関係があるのですか。例えば無期懲役というのがいるわけですよ。その人たちだって刑務作業できるわけですね。だけども,訴訟を起こしたりいろいろとこういう不平不満をしている人は,刑務作業に出さないで厳正独居に入れている,こういうこともあるのです。
〇滝鼻委員 ただ不平不満を言うだけで。
〇菊田委員 そうです,そうです。それは処遇困難者でも何でもないです。独居の中では立派な人なのです。そういう者がいるわけですよ。
〇滝鼻委員 それはどこにいるのですか。
〇菊田委員 それは,例えば。
〇滝鼻委員 何々刑務所と言ってみないと分からないな。
〇菊田委員 北海道の札幌刑務所のある受刑者は,今は工場へ入っていますけれども,何十年も独居に入れられたことがあるんです。
〇滝鼻委員 あなたが言ったのは一例でしょう。
〇菊田委員 一例です。
〇滝鼻委員 全部がそうだっていうのだったら考え直すけどさ。
〇菊田委員 ですから,昼夜独居がイコール処遇困難者だと簡単にはいかない。
〇滝鼻委員 だから,全部100%イコールとは思わないけれども,何か基礎になるデータがなければどうにもならないじゃない。
〇菊田委員 だから,それはいいですよ。だけど,それはイコールにならないです。

3.今後の進め方

〇宮澤(浩)会長 いずれにしても,さっき事務当局が次回までに努力してくださるということなので,そこで次の検討事項の整理というところで,恐らく今までの議論は正にそれだったのだろうと思うので,次にこのスケジュール表によって「今後の進め方」というところへ行かせていただきたいと思うのであります。この具体的な進め方につきましては,事務当局の方から論点についての現在どうしておるとか,これを外国と比べるとどうなのかとか,改めるとすればどんなことがあるのかというようなことを整理して,まず御紹介をして,それから皆さんの意見を聞くということでいかがでしょうか。
 更にもう一つ,きょうお話をお願いしたい重要な点があるのは,ヒアリングをこの分科会でもやりたいなと。
〇成田委員 それは誰に。
〇宮澤(浩)会長 現場の刑務官に。
〇成田委員 私,それを言おうと思っていた。
〇宮澤(浩)会長 それを次の第3点の中で,多分皆さん御希望になると思うのだけど,どういう形でやるかというのが方法論としてはあるわけですから。
〇成田委員 今言ったようなものも含めて,例えば昔に比べて変わってきたようだとか,どうにもならない人がいるよと。何か私はそういう実感的なものをフランクに,それこそアンケートにも,何かそういうことが必要なのではないですかね。
〇宮澤(浩)会長 今後の進め方についての御紹介,事務当局の御発言をお願いします。ヒアリングはやるということで,よろしいですか。
〇井嶋委員 それについて意見がありますが,今後の進め方というのは今おっしゃったとおり,まずその当日テーマになることを当局が,この場合は富山さんですが,やってくれると。それを踏まえて議論を始める。こういうことですね。その富山調査官の説明で足らないあるいは認識できないという部分をヒアリングで補おうと,こういうお考えなのだろうと思いますが,第一義的には時間が非常に少ないですから,富山調査官の説明をしっかりしてもらうということが大事で,それこそ平坦な言葉で言えば包み隠さず全部きちっと説明してもらう,また質問があれば質問するということで,第一義的には調査官の冒頭説明をまずやっていただく,テーマについてのですよ,ということを期待したいと思いますが,どうしてもそれでも足りないあるいは実情をどうしても知りたいという場合には,ヒアリングも必要かもしれませんが,時間が非常に限られますので最小限度にしなければいけないのではないかなという気がしますし,同時に次回以降アンケートの調査結果が出ますので,職員の認識といったものもある程度それでつかめますから,それを見た上でということにもなるのだろうと思いますから,必要な場合にはやるということにお決めいただくことは結構ですけれども,余りそればかり時間をとっていたら一つも進まないというような気がいたしますので。
〇宮澤(浩)会長 大分論点の中に入った,立ち入った議論をもう展開されたから,そちらで用意はされたのでしょうけれども,大体今まで議論で落ちたようなところを中心にして,何か御紹介。
〇滝鼻委員 ちょっとお伺いしますが,懲罰というのは全国の刑務所の統一的な基準とか,あるいは手続とか,全部同じ手続でやっているのですか。
〇富山調査官 手続については訓令を発出しておりまして,統一されております。懲罰を課すための手続ですね。
〇滝鼻委員 中身は。
〇富山調査官 どんな種類の懲罰があるかということについては,監獄法に規定がございまして,その範囲でできるのですが,問題はどんなことが規律違反になるのかという部分については,今のところは各施設に任されております。,基本的には同じなのですが……。
〇滝鼻委員 有罪,無罪が違ってくるわけ。
〇富山調査官 有罪,無罪というか。
〇滝鼻委員 有罪,無罪というのは刑法上の有罪,無罪じゃなくて,懲罰の対象になるかならないかというのは,刑務所によって違うの。
〇富山調査官 違い得ます。ただし,実際にはほとんどそれほどは変わりがないのですが。
〇滝鼻委員 基準は一緒の方がいいね。
〇菊田委員 それは個別的なことですから,現場に判断を任せるしかない面もあるのです。規律で一律にはいきません。
〇滝鼻委員 例えばここに出ている正座しなかったとか,あるいは私語をしたというのにも,刑務所によって罰せられたり罰せられなかったりするわけ。
〇菊田委員 そうですね。
〇井嶋委員 だから,その辺からまず議論をしないといけないわけ。懲罰の前提がね。ですから,その点はスケジュール的には一緒に議論したいと思います。そういう点についても,冒頭に懲罰はどうやっていますか,あるいは規律はどうなっていますかということの説明を彼に冒頭にしてもらって,それを踏まえて議論しようということを会長は提案されているわけですね。
〇菊田委員 ですから,24時間の全部を規則で定めろというわけにもいかないですから,施設によって……。
〇滝鼻委員 それはだけど,象徴的な行為をやっておけばいいのでしょう。
〇菊田委員 現場の判断に任せなければならない面も多いですよね。
〇滝鼻委員 裁判官だって,人によっては量刑が違うのだからね。
〇関課付 今の懲罰の点につきましても,また富山の方から,具体的にこのような手続でこのようにやっておるというのを説明させますので,それでまた足りない部分は御議論いただければと思います。
〇宮澤(浩)会長 次回以降,そういう方向で進めていただくということで。
〇関課付 分かりました。いずれせよ,ですからヒアリングの部分をもし次回やるのであれば,本日お決めいただいて,次回でなくてよろしいということであれば。
〇宮澤(浩)会長 次回は無理ですよね。次回はもう少し……。
〇井嶋委員 次回の注文として,処遇困難の今の数,もし分かればということね。それから,分類と累進処遇。これも現在の制度と運用をやはり皆さんにきちっと頭に入れていただいた上で議論しないといけないと思いますから,これもしっかりと説明してください。少なくともその二つはしっかり説明してもらわないと,次回のテーマは議論が進まない,混乱してしまいますからお願いします。
〇富山調査官 分かりました。処遇困難者の数を把握するのに資するような資料を御説明するということと,分類処遇,累進処遇の制度と運用についての御説明ということでさせていただきます。
〇宮澤(浩)会長 あと,累進処遇に関連して,監獄法改正のときに例の段階的処遇というのを提案したのですよね。あれは今でもそういうふうに改めようとするような考えが当局にあるかどうか。もしあるとすれば,どこが違うのかというようなこと。
〇富山調査官 それはあくまでも法案ですので。
〇宮澤(浩)会長 もちろんそうなのですけれども。
〇富山調査官 分かりました。それも含めて考えます。
〇宮澤(浩)会長 すいません,大いにかんかんがくがくの議論ができるというのはいい雰囲気だろうと思うので,お許しいただければと思います。どうもありがとうございました。


午後4時56分 閉会