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行刑改革会議 第1分科会 第5回会議

日時: 平成15年10月30日(木)
    14時00分~17時00分
場所: 法務省矯正局会議室(14階)



午後2時00分 開会


○宮澤(浩)会長 それでは,皆さんおそろいですし,ちょうど時間になりましたので,第5回目の会議をいたしたいと思います。
 こちらに今日の議事次第があります。アンケート結果というものを前回お配りいただいて,新聞にもその一部が出ましたけれども,それについて意見交換と書いてあるのですけれども,それは何かというと,御自分なりの御所見をお述べいただくという意味であります。
 それから,それ以外に,その間,菊田委員と久保井委員から御意見がありまして,当分科会に関する内容も多く含まれています。これにつきましては,例えば今日意見交換というところで菊田委員から補足的に何かお話があればそれを承るということでも結構と思いますが,御案内のように,私,細かく菊田さんの話を読みましたが,今日これから議論するテーマに関連する事項がかなりございますので,時間を節約する意味で,そこのところで菊田委員あるいは久保井委員の御意見を参照しながら議論をするというふうにしたいと思います。
 それから,手順として,最初に,今日配付された資料について簡単に事務局の方から御紹介をしていただいて,それから,恐れ入りますが滝鼻委員から右回りでこのアンケート結果を踏まえての意見交換,若しくは今日の議事についての最初の一般的な御発言を最初にお四方から伺って,そして,本日のメインであります(2)に入っていきたいと思います。では,どうぞ事務局の方でお願いします。
○富山調査官 お手元にお配りしてある資料の御説明をさせていただきますが,矯正局の方で準備しました資料として,一つは,ちょっと薄目の,「受刑者が居房内で生活するための物品」というものが一番最初に出てきている資料がございます。これは後ほどの御議論の際にプレゼンの資料として使わせていただくものでございます。もう一つ,かなり厚目の,グラフがついてあるのが一番表面に出ております資料がございます。この厚目の方の資料は,今までの分科会等でいろいろ宿題をちょうだいしておりましたものが一部でき上がりましたので,それをお配りするというものでございます。若干中身を説明させていただきたいと思います。
 まず,一番最初の「出所年別再入状況」は,再入率を罪名別に出せないだろうかということを宿題としてちょうだいしておりまして,司法法制部の方にお願いしていたところ,代表的な10個の罪名について出所年ごとにどのような再入状況になっているかというデータをもらいましたので,それを矯正局の方でグラフに加工したものでございます。
 この表の見方を御説明いたしますが,1ページ目を例にとって御説明しますと,一番左側の平成8年出所者再入状況,これは平成8年に釈放になった者のその後を調べたものでございます。
 下に枠が書いてありまして,出所者総数という数字を書いた表がございますが,平成8年は,強姦・同致死傷という罪名で服役していた者が出所した数は,満期で男が103,女はなし。仮釈放で,男が304,女は1名となっております。それぞれの者について,その後再入したかどうかということで見ていきますと,6年分,いわゆる6年再入を順次積み上げてとっておりますが,平成8年から始まりまして,男で満期になった者を見ますと,平成8年に早速入ってきた者が約5%程度いる。それが9年になりますと,その前の年のものも含めまして35%程度の者がまた刑務所に入ってしまっている。これが10年,11年,12年と積み重なってきまして,6年再犯をとりました13年まで見ますと,合わせると55%の者が結局は刑務所に戻ってきてしまっているということが分かります。
 一方,仮釈放になった男性は,黄色い色で示してありますが,これを見ますと,再入者はいるわけですが,6年経って最終的に20%弱ぐらいの者がまた刑務所に戻ってきているということが分かります。女性の方は母数も少なく,これはたった1名の仮釈放の者は再犯はなかったということが言えます。同じように,9年に出所した者,10年に出所した者をグラフにまとめてございます。
 ちなみに,強姦・同致死傷で服役して出所した者を調べていますが,再入したときの罪名が同じとは限りません。これはどんな罪名にせよ,また刑務所に戻ってきた,そういう意味での再入率でございます。
 平成10年については,いわゆる6年再入にするには今年の分の統計数値が欠けておりまして,5年分しかまだありません。その意味では,8年,9年と比べますと1年分足りないグラフになっております。
 以下罪名別でいきますと,殺人というのが次にございます。殺人の場合は比較的再入率が低いという傾向が見てとれるかと思います。
 次が傷害でございます。これは余り低くはないです。特に男子の満期ですと,50%ぐらいの者が6年間では帰ってきてしまう。平成8年の青いのが一番上までいきなり行っているのは,非常に数が少ないこの女性の満期釈放者1名が,たまたまこの年に再入してしまったということで100%になっているということを意味します。
 4番目の業務上過失致死,これも満期の男性についてはかなり戻ってきている率はあるにはありますが,それ以外の,女性と仮釈の男性は極めて再入率が低いということが分かるかと思います。
 次の窃盗でございます。これはやはり再入率が高いです。特徴的なのは,もちろん満期の男性が圧倒的に多くて,6年経ちますと65%ぐらいの者がまた戻ってきているということが言えるのですが,仮釈になった者も結構高い確率でまた刑務所に戻ってきている。特に女性につきましては,満期と仮釈の差が余りないというようなことが見てとれるかと思います。
 6番目,強盗でございます。これは出所した人数が少ないせいもあるのでしょうか,年ごとに大分ばらつきがあります。平成8年の出所者は成績優秀で,4割未満しか満期でも帰ってきていないのですが,平成9年のものは5割を超えている。10年のものは,まだ5年目なのですが,更にもうちょっと高くなっていると,ちょっとばらつきがございます。これもかなり仮釈と満期の差がございます。
 次のページの強盗致死傷もやはり数のせいか年ごとにばらつきはありますが,いずれにしても,満期釈放になった者の再入率は極めて高いということが言えるかと思います。
 次のページは詐欺でございます。これも満期で出た者の再入率が,特に男性について極めて高いのが特徴的かと思います。
 次の覚せい剤もやはりかなり再入率が高いわけですが,覚せい剤につきましても,仮釈放になった者も結構高い率で再入してきているということがうかがえます。
 最後に道路交通法ですが,これも数は結構いるのですが,男性については3割5分ぐらい,ほかの罪名と比べれば,40%から35%ということで若干低目ではありますが,そこそこの再入率はありますということで,また,男性については仮釈放の者もかなり再入してきているということが言えるかと思います。ただし,他の罪名と比べれば大分低いです。
 そのような感じの分析の表でございます。またより詳しい分析は今後することも可能かと思いますが,とりあえず罪名別ということで御要望がありましたので,作りました。
 次の11ページ目でございますが,これは平成14年,昨年1年間に出所した受刑者の主だった罪名で,それぞれ服役期間中に何回懲罰を受けているのか。これはどんな罪種の人がいわば施設の中で規律違反行為を繰り返したりして,処遇が難しい人なのかが分かるかもしれないということで,作った資料でございます。
 これを見ていただくと分かりますが,一番左側のところは懲罰を一度も受けたことがない者の割合,それから1回の者,2回の者,3回の者,4回,5回,6回以上となっているわけですが,非常に高く左の方で上がっています,道路交通法違反ですとか,そのすぐ下の業務上過失致死,これらの罪名の者は服役期間中に一度も懲罰を受けていない者が9割あるいは85%近くいる。非常に行状がいい受刑者であるということがこの統計からも言えるかと思います。それ以外の罪名というのは,ばらつきはもちろんあるのですが,かなり固まった感じで推移はしていますが,6回以上受けているという者が圧倒的に割合が高いのが殺人罪。そのほかは,2番目に高いのが強盗,ほぼこれに近いのが強盗致死傷というような結果が出ております。ただ,これは罪名ごとに刑期がかなり違うはずでございまして,殺人とか強盗とかは当然刑期が長いですから,その分,規律違反を犯す可能性が高くなるということはあろうかとも思います。いずれにしましても,罪名別で分析してみますと,このような結果が出ております。
 12ページでございますが,これは外国で暴動とかの事故について,一体どんなものがあるのかということで,インターネットで検索した,最近の主だった外国での保安事故,欧米を中心に探したのですが,それを事故の類型ごと,暴動・騒じょう,あるいは職員の殺傷,被収容者の殺傷,逃走ですとか身柄の奪取,薬物の持込みといったような類型別に簡単にまとめて載せたのがこの資料でございます。
 14ページから,これは「判例時報」という裁判例を載せている雑誌のコピーでございますが,これは菊田委員の方から御指摘のあった,北海道の旭川で無期の受刑者が長期間独居拘禁になっている件で訴訟が起きていたという件についての訴訟の判決文が公開されておりますので,これを参考までに,かなりページ数が多いのですが,37ページまでコピーをとってございます。なお,この訴訟,控訴審については,ほぼ同じ理由で控訴棄却になっていると聞いております。
 38ページからですが,これは同じく菊田委員の方から,無期刑の者で極めて長期間昼夜独居になっている者がいるはずだということで,それについて調べて答えた質問主意書の答弁書があるはずだということで前回もお話ししたと思いますが,それの該当部分をコピーしたのが,この38ページ以下でございます。
 具体的な人数を書いてある部分として,まず42ページを御覧いただきたいと思います。この42ページの別表一というのは,無期受刑者のうち極めて長期間服役している者がどのぐらいいるのだろうかという人数を調べたものでございます。例えばこの表で言いますと,千葉刑務所,一番上が「三」とあります。これは,千葉刑務所で25年以上30年未満服役している無期受刑者が3名いる。更に下に行きますと,30年以上35年未満服役している者が4名,35年以上40年未満服役している者が2名というふうに見てまいります。一番長く服役している者はといいますと,城野医療刑務所で3名が45年以上,あるいは次のページに行きまして43ページですが,徳島刑務所でも同じく45年以上の者が1名。これがこの当時の調査で一番長く服役している無期受刑者でございます。
 更に44ページの別表二を見ていただきたいのですが,これは,そういった長期間服役している無期受刑者のうち,この調査当時,昼夜間独居拘禁になっている者が何人いるのか,その者について,どのくらいの期間,昼夜間独居拘禁を継続しているのかということを調べたものでございます。これを見ていただきますと,一番長いのが城野医療刑務所で,35年以上40年未満の服役者2名のうちの1名が32年3月,この当時で昼夜間独居拘禁が継続されている。これが当時の調査では最も長い昼夜間独居拘禁の継続期間ということが言えるかと思います。そのような結果を回答しております。
 次に,48ページを見ていただきたいと思います。こちらも前回宿題をちょうだいしまして,今現在,昼夜間独居拘禁を5年以上継続している者,何人いて,どんな罪名の者とか,どんな刑期の者とか,そういう特徴を調べてくれという御依頼を受けまして,調べたものでございます。今年の10月7日現在で昼夜間独居拘禁を5年以上継続している者が45名おります。この45名をまず罪名で分類してみますと,殺人が過半数,そのほか強盗殺人が27%,あとはここにあるように傷害致死が7%,そのほか細かな罪名が幾つか出てきております。刑期を見ますと,無期の者がやはり過半数,その余は,10~14年が20%,15~19年が13%,あとは20~24年あるいは5~9年。もちろん,5年以上昼夜間独居拘禁継続ですから,5年より刑期の短い者は論理的にあり得ません。いないということになります。
 それから,収容分類級で見ていったときにということで,まずA系統,B系統で見てまいりますと,圧倒的にB系統が多いです。96%がB系統です。それから,いわゆるM級,精神的な問題があるという分類級がついているかいないかということで見ますと,Mz級,すなわち精神病者ですとか薬物中毒症等が認められる者が38%,それからMy級(人格障害者等)が24%,M級がついていない者が38%というような結果になっております。
 49ページ以下でございますが,これはたまたま最近「法の支配」という雑誌で,元矯正職員をしていた小野義秀さんという方が,「過剰収容と行刑運営」という,正に行刑改革会議でいろいろ議論されているテーマに関するような論文を書かれておりましたので,あくまで参考資料ということで末尾に添付させていただきました。
 以上でございます。
○宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。
 実は我々,いつも何か考えたり書こうとしたりするときに,これどうなっているかなということで,いろいろなところを調べても分からない問題点をよくやっていただいて,大変参考になると同時に,御努力に感謝したいと思いますが,これについて何か御質問があれば今承りますが。資料についてです。更にこういうのを調べてくれなんていうことがもしあれば,もしございませんようでしたら,先に御紹介いただきました居房内での物品は,今日の(2)のところでまた議論をしたいと思います。

1.個別論点の検討

(1)アンケート結果を踏まえての意見交換

○宮澤(浩)会長 それでは,大変恐縮ですが,先ほど申しましたように,まず滝鼻委員から,前回のアンケート調査などを踏まえた御意見及び例えば今日の三つのテーマの中で特に重点を置いて議論した方がいいんじゃないかというようなもし御意見があれば,それをおっしゃっていただければと思いますが。
○滝鼻委員 アンケート結果を踏まえての意見というのは,今日は特にありません。よく見て,何か言うべきことがあったら全体会議で申し上げます。
○宮澤(浩)会長 分かりました。
 成田委員,いかがでしょうか。
○成田委員 私もそういう考え方です。
○宮澤(浩)会長 では,菊田委員,この御意見よく承りましたが,プラスして。
○菊田委員 私のコピーは皆さんに回っていないですね。
○名取課付 事前にお配りしてございます。
○菊田委員 どこへ。
○名取課付 各委員に。先生からいただいた時点でファックスでお送りしています。
○菊田委員 そうですか。ありがとうございました。それでは,読んでいただいていると思います。
○宮澤(浩)会長 1週間ぐらい前です。
○菊田委員 そうですか。どうも失礼しました。
○滝鼻委員 第1分科会については,ここで議論しているんだから,あえて……。ここで言ってもらえばいいんだね。
○菊田委員 そうですね。今お手元にないかと思ったものですから。失礼しました。
 アンケート結果について,私,概括的にはファックスでお知らせしましたように,一部の委員からは,アンケートを信用しないという発言がありましたけれども,私はとんでもないことだと思っております。これは,とにかく事務当局が一生懸命やってくださったということに対する意味でも,あるいは何千人の人が一生懸命書いてくださったということを踏まえて,あの発言は私は重大なことだと思っております。改めて申し上げておきたいと思います。
 いずれにしましても,アンケートをとるということを,言うなれば記録的なことをやってくださったことに対して感謝申し上げたいし,見る限りは非常に客観的にとらえられて,すべてのデータを公表していただいたということについては本当に感謝したいと思っております。
 そういうことで,具体的なことについては既に書いておりますので,分科会の中で申し上げたいと思いますが,ただ,これは後ほどでもいいのでしょうけれども,今日の日程を見ますと,被収容者の生活,担当制,作業と,こういうふうにスケジュールが決まっておりますけれども,是非とも,もっと大きな問題としまして,前回,部会長がお話しいただいた中で,懲役と禁錮の関係,刑法との関係,このことについても結論といいますか,分科会でも明白でなさそうでございますので,大きな問題について,今日でなくても是非とも入れて,結論といいますか,ある程度の合意を得るような形で議論する時間をいただきたいと思っております。
 あとは,もちろん懲罰その他については後ほどの日程の中に入ってくるのだろうと思いますけれども,今申し上げた,累進処遇はともかくも,懲役と禁錮の関係,それから刑務作業,これは後ほど出てくるようですけれども,その辺の大きなことについて,時間をかけて議論をする機会をいただきたいと思っております。
 以上です。
○宮澤(浩)会長 これはお手元にありますよね,日程案の変更という。
○名取課付 すみません,それはまだお渡ししていなかったのです。
○宮澤(浩)会長 分かりました。それは後でまた出てくるのです。次回にかなり時間をかけて議論しようかなということに,日程案で後でお諮りするのですね。ごめんなさい。ですから,今の菊田委員の御質問については,後でそれが日程案という形で出てきますから,多分満足していただけるだろうと。
 では,井嶋委員,いかがでしょうか。
○井嶋委員 アンケート結果の総括的な意見というのは,私,必ずしもまとめていたわけではないので,今日突然ですからまとまっておりませんけれども。
○宮澤(浩)会長 発言があればということでございますので。
○井嶋委員 全体会議の時も申しましたけれども,A,B,LA,LBと四つの類型に分けて円グラフができていますが,その相互間にやはり差があるというのが非常に興味があるなということで,若干各グループの属性について,なお分かることがあれば教えてほしいということを申し上げましたが,それは結果はまだ出ませんけれども,そういう目で見たら,例えば規律を守るとか守らないとかというような部分で見ますと,やはりLBとかいうのが一番守っていなくて,また,「つらかった」というのが一番多いのがLBであって,Aの方は数的にはそれほどでもないと。つまり,やはり遵法精神というのか,もともと基本的に犯罪性の進んだLBなんていうのは,やはり法を守るという気持ちがそもそも薄いというようなことがこういったものに出てくるのだと。だとすれば,規律違反なんていうのも,あるいは規律に対する考え方というのも,そういうものが反映してくるのかなと思うわけでありますから,そうなってくると,先走った議論でありますけれども,例えばA級の処遇方針とLBの処遇方針の中に,規律の中にも,例えば規律一つ決めるにしても,やはり濃淡の差があってもいいんだろうというようなことが結論づけられるのかなという感じがするので,大変貴重な結果が出ているなと思っております。
 ちょっと意外だなと思ったのは,29ページの問10のDでありますけれども,あるいはその前のCでもいいのですが,「職員は親身に話を聞いてくれるか」とか「職員は信頼できるか」という質問があるのですが,これもこの3番目の答え,「親身な職員もいるけれども,そうでない職員もいる」というのが一番多いわけで,これは正確な分類ではないような気がするのですけれども,信頼できる職員もいるが,そうでない職員もいるというのが一番多いのは,当然だろうといえば当然であって,果たして信頼できない方に分類するのか信頼できる方に分類するのか非常に分かりにくいのでありますけれども,仮にこの答えが,半分が信頼でき,半分が信頼できないのだということを示しているのだとすれば,その下の「ほとんど信頼できない」という数と合わせますと,相当数の者が職員を信頼していないとか,あるいは「親身に話を聞いてくれない」という方のパーセンテージが非常に多いという印象があるのです。
 これは今日議論する担当制の問題とも絡みますけれども,やはり矯正は伝統的にきちっとやってもらっていますし,大変御苦労だと思ってはおりますけれども,何か受刑者との間の問題意識というものを見ると,こういう形になってあらわれてくる。例えば担当さん一つとっても,非常に規律を維持して,工場内の作業場の規律を維持して立派にやっていただいていると見えますけれども,内実を見ると,受刑者は必ずしも信頼を置いていないとか,あるいはそういう形のもとで,言いかえれば面従腹背的な雰囲気の中で維持されているという部分があるのかなというような気がするので,そういう意味で,この数字は,3番目の答えをどう見るかというあれが分からないのですけれども,仮に半分だとしても,相当数の者が「信頼していない」ということを言っているということは,受刑者の側から見た場合に刑務所の実態をあらわしているのかなという気はします。そういったところを,今日は担当制を通じ,あるいは規律の問題を通じて議論していくべきなのかなと思うわけであります。
○宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。
 私が一言申し上げたいと思いますのは,実はあのアンケートをどういうふうに新聞が取り上げてくれるかなという,そんなつもりで主要な新聞の姿勢等を見ながら読んでいて,ちょっと気になったことは,先ほど菊田委員が言われたように,この調査というのは私は画期的なことだし,これだけの大規模なことを,科研費をもらって個人がやろうとしてもとてもできるものではない,そういうものが出てきたということを,私は一人の専門家としてとてもうれしく思ったのです。ところが,新聞の書き方によっては,やはりそうじゃないか,こんなに事件を起こしているじゃないか,それは氷山の一角であって,もっとひどいんじゃないかとかと,もしそういうふうな受け取り方がなされ,それを新聞面でお読みになった例えば法務省の他の局の方たちが,「矯正局,余計なことをしたんじゃないか」というような,もしそんなことが出て,もう二度と再びこんなことはやらんぞなんていうふうになったら困るなと。そういう意味で,やはり一番読者が関心を持ちそうなテーマの,職員がどんなことをやっていたかというだけをかなり1面で取り上げた新聞も少なくないわけでありまして,やはりそういうふうなことをやると,客観的に今どうだというような,他の官庁もそうですけれども,そういう気持ちがなえてしまうおそれがありますので,そういう意味で,マスコミの取り上げ方が少し,このアンケートに込められた,ある意味での,改革するためには現状を把握しようという,そういう関係者の努力に水を差すような結果になったら嫌だなと思ったのですが,その後の様子を見ていると,多分きっと我々の会議の議論で答申が出たときにどういう反応があらわれるか分かりませんけれども,あれ以来,変に尾を引いた議論というのは出てきていないので,まあ,あれはあれで一応よかったのかなと。もうちょっと評価してほしかったなと自分では思っています。もし法務省内で何かそういう問題があったときに,こういう発言もあったということを……。
○名取課付 若干今の会長からの御発言を敷衍させていただきますけれども,やはり新聞等の取り上げ方を見て,江川委員の方からも,少し取り上げ方が一面的過ぎないかと,今,宮澤会長がおっしゃったような御意見がありまして,法務省としてどう考えているのだというようなことは御質問がありました。この関係では,いろいろこのアンケートをお配りするに当たりまして,記者さんたちの方にはいろいろ御説明をして,いろいろな観点から非常に客観的にアンケートをしたつもりですというようなことを説明した上でこのアンケートを公表しているということで御説明を申し上げました。それ以外は特に大きな反応も,法務省側,この事務局の方にはございません。
 会長,もしよろしければ今後の日程のことを先に説明させていただきまして,よろしければ事務局案といいますか,私の方で考えている案を提示させていただきまして,その上で御意見を伺いたいと思っております。
 先ほど菊田委員の方からも刑の単一化ということですか,懲役刑と禁錮刑の問題なんか大きな問題があるのではないかという御意見もありまして,ほぼ同じように考えております。従いまして,次の分科会が11月10日に予定されておるのですが,そこではまだ今日の議論の積み残しがもしかしたら出るかもしれませんけれども,それ以外の論点といたしまして,仮釈放制度の運用の見直しについて,一つ議論としてはあり得るかなと。それから,先ほど菊田委員の方からお話のありました,懲役刑と禁錮刑の単一化の問題。
○菊田委員 私は,単一化までは言っていません。
○名取課付 まあ,論点といたしまして。そういった問題について議論してはいかがかということを考えております。その上で,アンケート結果も出ましたので,これまで一通り議論をしていただいたところでありますけれども,処遇制度全般についての見直しとか,それから規律秩序の在り方について,もう一度アンケートを踏まえながら御議論いただくのはいかがかということで考えております。それを次回の11月10日,それからその次の12月1日,この2期日ぐらい,場合によったらその次に入るかもしれませんけれども,そういったスケジュールでもう一度議論を深めていただくということをやっていただけたらと思うのですが,そのあたりはいかがでしょうか。
○菊田委員 今,井嶋さんからおっしゃったことにも関連があるのですけれども,現行法の収容分類級の議論はどこでしますか。
○名取課付 それは既に一度議論していただいたと思うのですけれども,処遇制度の見直しということを全般に含めまして,そのあたりで議論していただくようになるのかなと思っております。ですから,今日の議論の中では,お手元にお配りしてあります議事次第の,被収容者の生活,それから担当制,刑務作業というあたりを,このあたりは当然アンケート結果も踏まえて御議論いただくことになろうかと思いますが,それ以外でまだ漏れている論点については,第2ラウンドということで次回以降議論していただいたらいかがかと思っております。
○井嶋委員 私は賛成です。
○滝鼻委員 次回は11月10日になるのですか。
○名取課付 はい。
○滝鼻委員 その間はないんだ。
○名取課付 3日が休みになるものですから。それまでに,先ほど井嶋委員の方からの御指示のありました分類級別の属性について,今作業を進めておりますので,なるべく早い段階で事前にお配りしまして,議論の参考にしていただこうかなと思っております。
○井嶋委員 そんな難しいことを考えなくてもいいです。全体に平均年齢が幾つかとか,主要罪名がどうだとか,それだけ分かれば。暴力団の構成とか。
○宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。

(2)被収容者の生活について

○宮澤(浩)会長 それでは,「被収容者の生活について」という(2)に関して,まず御説明いただけますか。
○富山調査官 では,お手元に「受刑者が居房内で生活するための物品」という綴じた資料があると思います。これで三つの話題すべてについて資料が入っているのですが,まず,「被収容者の生活について」という部分について御説明をさせていただきたいと思います。
 受刑者が居房の中で生活するためには,もちろんいろいろな物品があるわけなのですが,ここでは大きくまず居室内にあるいわゆる備品について(1)で書いてございまして,(2)は官給品,すなわち施設が給貸与する物品,次の2ページにまたがっておりますが,2ページでは更に(3)として自弁物品,すなわち施設が給貸与する以外の物品で,本人が自分のお金で買ったり,あるいは他人から差入れを受けたりするもの,そういった物品を書いてございます。これを読んでいく形で説明することになるのですが,この備品につきましては,特に法令でこういったものを整備しろというような決まりはございませんが,各施設ともおおむね大体同じようなものが入っている。人が生活していく上で必要な備品というのは大体共通であると。
 府中刑務所にお願いをしまして,どんなものが部屋に入っていますかということで,主だったものを書いたのがここでございます。所内生活の手引き,あるいは遵守事項といった備えつけの冊子,それから室内整頓図というのは,例えば布団はふだんはここに畳んでおきなさいとか,そういったことを示した図です。整理箱は私物などを入れておく箱です。それから,衣類をかけるハンガー,テレビ,カレンダー,鏡,座卓あるいは長机,これは独居の場合が座卓で,雑居の場合は長机ということです。それから,ふきん,洗面器,石けんの容器,調味料入れ,タッパー,やかん,ポット,はし立て,食器の水切り,湯飲み,お皿のたぐい,バッカン,お玉,穴のあいたお玉,洗面台の前に敷くマット,碁盤と碁石,将棋盤と将棋の駒,これらの遊具は雑居です。それから洗剤,スポンジ,はたき,ほうき,ちりとり,くずかご,雑巾,バケツ,トイレのブラシ,残飯入れ,消毒袋,室内サンダル,そういったような,主だったものですけれども,そんなものが備品として備えつけてありますということです。
○宮澤(浩)会長 バッカンって何ですか。
○富山調査官 バッカンというのは,食事を入れる大きな寸胴鍋みたいなものをバッカンと呼んでいまして,雑居なんかでみんなで分ける時にいったんそこに空けるというようなことで使っております。
○菊田委員 これはどこまでが雑居ですか。
○富山調査官 基本的に雑居も独居も共通なのですが,碁盤,碁石,将棋盤,将棋駒は独居にはありません。あと,バッカンも多分,必要がありませんので独居にはないだろうと思います。逆に,独居にあるものとして,トイレのつい立て,雑居はトイレが区画された一つの部屋みたいな感じになっているのですが,独居の場合はむき出しですので,座ったときに下半身が見えないようなつい立てというのが独居には備品として置かれています。
 それから,主に外国人受刑者用の居室なのですが,机,いす,ベッド,マットレス,こういったものを備えつけた部屋もございます。これは府中刑務所の例なのですが,例えば女性を収容しています刑務所ですと,栃木刑務所などではこういったもののほかにカーテンを窓に引いているとか,あるいは鏡台が置いてあるといったような,女性の施設ならではの違いがあるということが言えるかと思います。
 次に官給品,施設がそれぞれの人に給与,貸与する物品ということで,かなりいろいろな品目がありますが,ここに書いてあるようなものがございます。まずは食べ物と飲み物ということで,糧食,飲料は当然ございます。それから,文書・図画。これは官本と呼ばれる本,これは府中刑務所なんかにも図書室があったのを御覧いただいたと思いますが,施設の方でも図書室の本を貸し出すなどをしております。また,新聞。これは通常紙,いわゆる一般的な新聞,街で売っている普通の新聞ですね,これを役所が購入しまして受刑者に回覧しております。そういう形で新聞を貸与しております。それから,着るものです。衣類あるいは臥具―寝具を臥具と呼んでおりますが―につきましては,ここに書いてあるような,男女で当然呼び方が違ったりもしていますが,上着と下半身に着る下衣。上衣,下衣,それから襯衣(下着),布団,布団などのカバー類,その他毛布,枕といったものを貸与しております。
 日用品としては,そのほか,ちり紙でありますとか,歯磨きで使うもの,つまようじ,石けん類,タオル,調髪用具,かみそり,女性の場合であれば生理用品,靴下,次のページに参りまして,文房具,食器,座布団といったようなものが給貸与されております。
 それから,(3)の自弁物品,こちらは自分でお金を出して買うことができるものでございます。官給のものと品目がダブっているものがありますが,ダブるものについては,自分のお金で買った品物を使う場合には,当然,官の品物は給貸与いたしません。
 まずは文書・図画ということで,本あるいは新聞,これは自分のお金で買うことができます。新聞については,通常紙は回覧で読ませておりまして,スポーツ新聞を自分のお金でとか差入れを受けて読むことができます。本については,いわゆる単行本のほか雑誌類なども購入できます。
 衣類につきましては,下着については自弁を認めております。役所のものですと自分だけが着ているものとは限りません。洗濯をして清潔にしていても別の人がはいたかもしれないというようなこともありまして,特に衛生の観点からやはり嫌だと感じる人がいると思いますので,下着の自弁は認められております。
 そのほか日用品として,まず嗜好品ということで,菓子,あめ類,氷物,果物,茶,コーヒー,紅茶云々と書いてございます。これはいつでも自由にこういったものが買えて飲み食いできるというものではございません。受刑者につきましては,現在は累進級別の集会というのを行っておりまして,例えば3級者ですと2か月に1回かもしれません。2級者で月に1回程度,同じ級の者が一堂に会して,例えばテレビを見たり,映画を見たり,そういった場面で自分たちのお金で買ったお菓子を食べることができる,あるいは飲み物を飲むことができる,そういう運用をしております。そういった場面での嗜好品でございます。
 そのほか,室内の装飾品として,花や写真立て,ちり紙,歯磨きの用具,石けん,タオル,調髪用具,ひげそり用具,生理用品,靴下,手袋。耳袋というのは非常に何か奇妙なものだと思われるでしょうが,耳がしもやけになるのを防止するために耳にかぶせるキャップみたいなものですが,それを耳袋と呼んでおります。それから,文房具,絵画用具,食器類,室内の調度品,化粧品,計算機類,耳かき,通信用品,印紙,印鑑,書画。
 許可になり得る物品としては,こういった品物がございます。これは,物によりまして行刑累進処遇令などで級の上位の者にしか認めないといった物品もございます。詳しい説明は省略しておりますが,こういった品物は買うことができる可能性があるということで,自弁物品の範囲を示しております。
 3ページですが,受刑者の衣食住の環境ということで,既に御視察いただいて御覧になっているとは思いますが,刑務所の雑居房あるいは独居房の写真です。ここでは単独室,共同室と書いておりますが,それぞれの写真を撮っております。単独室という方は,面積が約6~7.5平米ぐらい。これは,当省としては特に一人当たりどのぐらいの面積という定めはありません。おおむね3畳プラスアルファぐらいかなという感じでございますが,独居房も現在では二人を収容しなければならない場面も結構あるという状況でございます。
 共同室(雑居房)につきましては,ここに書いてありますとおり,トイレですとか洗面所,押入れといった共用のスペースを除いて一人当たり2.5平米という基準で面積算出をしているということでございます。
 下の段は,受刑者の食事でございます。これはある施設の食事を朝,昼,晩,たまたま今日撮ってくださいとお願いして撮ってもらったものでございます。ちなみに,標準熱量というのを訓令等で決めておりまして,男の受刑者について主食は,ここにあるとおり1,200~1,600カロリー,女性の場合は1,100~1,400カロリー。少年については若干カロリーが増えます。副食についても,少年については若干カロリーが増えるというような形でカロリー量が決まっております。そのほか,標準的なビタミンとかカルシウムとか,そういったいろいろなものの栄養量も訓令,通達等で決めております。
 また,食事の予算額についてですが,これは平成15年度の予算です。受刑者一人につきまして,主食で97.69円,副食423.95円,合計1日521.64円というのが予算上の数値でございます。ちなみに,少年受刑者については括弧書きのとおりとなっております。
 次のページを見ていただきますと,これは受刑者の衣類のうち特に上衣と下衣と呼ばれるものの代表的なものを,ちょうど写真を撮ったものがありましたので,ここに掲載してあります。この緑色の衣服が本来は作業着ということでなっておりまして,グレーの衣服は居室衣,居室で着る衣類ということで考えられているのですが,まだこの緑の衣類の整備が予算の関係もありまして必ずしも行き渡っていないということもありまして,各工場へ行っていただきますと,緑を着ている者もいれば灰色を着ている者もいると,結構まだまだらになっていたりすることがあるかと思いますが,将来的には作業着は緑で居室着はグレーということにしたいと考えております。
 5ページは,今御覧いただいたのは男子刑務所の例なのですが,これは女子刑務所の居房の例ということで,一般的な共同室あるいは半開放寮,女子刑務所は結構開放的な部屋が多くございますが,そういった半開放の部屋の写真を撮ったものでございます。また,これも女子刑務所の食事を,ある1日を朝,昼,晩,写してもらったものでございます。こんなものが給与されているということでございます。
 6ページでございますが,これは運動の状況を調べた調査結果でございます。運動の実施は,工場で集団処遇をしている者と昼夜間独居になっている者で大分違いますので,それを上段と下段でまず分けてございます。その上で,現在の行刑施設では,お風呂に入る日と入らない日ということで運動の実施の可否が大きく変わっておりますので,それで分けておりますと,これを見ていただきますと,まず工場に出ている者について,入浴を実施する日には戸外運動は特にやらないという施設が大半でございます。一番下の欄外に当局の調査ということで,全国の刑務所の本所と刑務支所を対象に調べた調査と書いてございますが,98%が「実施しない」。「実施する」と言っているのはわずか2%でございます。この実施している施設について,時間はということで,30分というのが1%,30分以上というのが1%,1施設ずつということになりますか,そういう状況でございます。それ以外に,房内での運動についても,特に実施していないというのが94%,実施しているというのが6%。お風呂に入る日は特に運動の時間を設けていない施設が多いということが分かります。
 次に,逆に,入浴を実施しない,お風呂に入らない日については,戸外運動はすべての施設が実施をするとしております。その場合の時間ですが,30分間というのが大半で約9割,30分よりもっとやるという施設が1割となっております。
 房内運動につきましては,これは当然なのですが,昼間作業している関係もありまして,やらないというのが,入浴を実施しない日と同じで94%,するが6%となっております。
 次に,昼夜間独居拘禁者についてですが,お風呂に入る日は戸外運動を実施している施設は一つもありません,1施設もないという状況です。一方,房内運動については約半々でして,お風呂に入る日でも房内での運動を実施している施設が51%,していない施設が49%となっています。この実施している施設について,時間はというと,過半数が30分間となっております。30分以下というところも18%,逆に30分以上が3%となっています。入浴を実施しない,お風呂に入らない日につきましては,戸外運動は100%実施しています。これについて,実施時間は89%が30分間,それよりも長いというところが11%となっています。房内運動について,「実施しない」が若干お風呂に入る日よりは減っておりまして,41%が実施しない。59%は実施をするというような形になっております。これが運動の実施状況でございます。
 それから,急いでプレゼンをしましたので,所内で所持できる物品の細かな説明をしておりませんでしたが,受刑者のアンケートなどでは,例えば本をもっと持ちたいというような声が結構多かったということを承知しておりますが,受刑者が閲読できる本というのは,国が貸与する官本と自分のお金で買った私本という2種類がございます。国が貸与する官本につきましては,通常ですと1回に3冊程度貸出しをしておりまして,読み終わったらまた返して新しいのを借りることができるというような感じなります。年末年始などの長期の連休のときなどには冊数を増やして貸すなどの措置をとっている施設もございます。
 一方,自分のお金で買った本につきましては,通常どこの施設でも一度に居房内で持っていられる数というのは,原則3冊以内というふうにしているところが多いと思います。ただし,勉強に使う図書ですとか,辞典,経典といったようなものは別枠で7冊まで更に認める。そちらも含めますと,合計10冊を一人の人が部屋の中で持っていられるというような扱いになっています。
 本についてはもちろん取り替えができますので,読み終わった本は領置をして,まだ読んでいない本を部屋の中に入れるということは可能です。ただし,雑誌につきましては閲読後は廃棄を原則としておりまして,雑誌については読み終わったら捨てるということで購読させております。これは,施設の領置倉庫にも限りがありまして,雑誌などはとても領置はできないということからとっている措置でございます。
 それから,自弁できる物品は,ここに一覧表があって品目が限定されておりますが,地域格差といいまして,施設ごとにどうしても特殊事情でこういったものが要るというケースがございます。例えば寒冷地ですとカイロ,携帯型カイロというのですか,「ホッカイロ」みたいなものが必要だということがありまして,寒冷地につきましては,施設の方から上申が上がってきますと,そういったものの使用を許しているケースもございます。これは施設ごとにそういう特徴がごく一部出ることがございます。
 説明は以上でございます。
○宮澤(浩)会長 どうもありがとうございました。
 何か御意見がございましたらどうぞ。
○井嶋委員 自弁の物品というのは許可ですか。
○富山調査官 許可制です。
○井嶋委員 許可制ですね,すべて。
○富山調査官 そうです。
○井嶋委員 それから,房内運動というのはどんな程度のことをやるのですか。
○富山調査官 要は,部屋の中で体操ですね。ただし,極端な騒音を立てるような運動はだめということで,ラジオ体操程度でしょうか。
○井嶋委員 音楽か何かをかけてやってやる。
○富山調査官 そうです。ただいまから運動の時間になります,運動を希望する人は所内で人の迷惑にならないように運動をしてくださいというようなことで,15分程度とか,施設によって時間が違うみたいですけれども,放送を流したりして運動をさせます。
○滝鼻委員 風呂の日には実施しないで,入浴のない日に実施するというのは,どういう関連性があるのですか。
○富山調査官 これは,入浴をすると血行が促進されて,ある意味運動と同じような効果があるだろうということと,入浴に時間をとってしまうと運動の時間がとれないという,その二つがありまして。
○滝鼻委員 ばかばかしいね,本当に。そういうことはやめた方がいいよ。運動というのは割とストレスを発散できるから,時間を30分なんてけちなこと言わないで,もうちょっと長くとらせたらどうなんだろうね。
○菊田委員 最低1時間はやりたいというのが普通ですね。
○滝鼻委員 入浴と,だれが決めたか知らないけど運動の関係なんていうのは,運動した後入浴すれば気持ちいいしね。関係ないんじゃないの,そんなのは。極端に分かれているよね,これ。
○富山調査官 風呂場の設備が,みんな一遍には入浴できませんので,運動してすぐ入浴というのはなかなか難しい場面もありますけれども。
○滝鼻委員 明治時代からこうやっているわけ?
○富山調査官 多分,明治のころはもっと入浴の頻度も低いですから,また違っただろうとは思いますが。
 要は,まず作業時間を確保しなければいけないということになると,そんなに入浴とか運動を全部一遍にはできないというような発想がまずあるものと思います。
○滝鼻委員 そういう関係はあるんでしょうけれども,作業時間をどうするかというのがこれからの議論で,そういうところの関連性からいって,運動というのはもうちょっと,自由に運動させるというわけにはいかないんだろうけれども,時間とか,それから,入浴と入浴しない日は余り関係なさそうだから。
○宮澤(浩)会長 僕は,運動して汗かくというのになぜ風呂に入らないのかなとさっき思っていたんですよ。
○成田委員 私は,その関係でやらないのかと。
○滝鼻委員 その関係だったら,逆だよね。
○宮澤(浩)会長 逆でしょう。だから変だなと思って。
○滝鼻委員 全国の刑務所がそういう考え方でやっているわけ?
○富山調査官 今まではそうです。結局,作業時間を確保するためには,どうしても空きが少ないということですね。運動場にも限りがありますので。
○宮澤(浩)会長 作業時間が何か絶対的命令みたいに。
○滝鼻委員 作業時間8時間が絶対であって,それを削るためには入浴も運動もだめだというのが問題なんだよな。
○井嶋委員 だから,いずれ議論するのですけれども,発想の転換で,要するに8時間ありきではなくて,どういうことを所内でさせるかということをずっと決めていって,その積算の中で決めていく。だから,運動時間を1時間とるというのが多数意見であれば,そういうスケジュールをとるということを前提に作業時間を決めていくというぐらいの発想の転換をしないといけないということだろうと思うのです。
○富山調査官 そうですね。あとは,運動場の問題と職員,受刑者を連れ出す,連れ歩く職員の問題もあるのですが,そういったところさえ担保できれば,それは実施は可能です。
○滝鼻委員 それから,居室内の備品は大体分かるけど,「官給品」と「自弁物品」というのは,何でこんな難しい言葉使っているんですか。
○富山調査官 言葉ですか……。
○滝鼻委員 受刑者は分からないね,こんな言葉。官給品とか。あっ,入っちゃえば分かるのか。
○菊田委員 入っている人はよく知っているわけです。我々が分からないだけです。
○滝鼻委員 僕らは新聞記者だから,「官給品」と「自弁物品」というのは,よく官僚からこういう話を聞くから分かるけど,普通の人は分からないよ,これ。
○井嶋委員 これは明治監獄法の残滓ですよ。
○菊田委員 多分,問題は,今おっしゃらなかったけれども,累進処遇でこれは若干違っているはずなんですよ。
○富山調査官 そうです。
○菊田委員 だから,そこのところは,累進処遇は将来的に廃止するという形で,ここで書かれているのは基本的にすべての受刑者に給与するものだというふうに認識しなければいけないですよね。
○富山調査官 官給品は,これは累進処遇で差はありませんので,差が出てくるのは自弁の方ですね。
○菊田委員 そうですね。
 それと,やはり衣服にしても,ただこういう名前だけ見ていると立派なものが支給されているように思えるけれども,アンケートを見ると,古いとかぼろぼろだとか,古くて保温能力がないというようなことがあるから,やはりこれは人に貸すという以上は,人が使うんだという最低の,全部新しいものを出せということにはならないと思いますけれども,そういうところをやはり考えないといけませんよね。
○滝鼻委員 だけど,税金使ってやっているんだから,余り毎日ピカピカなものを着られても頭にきちゃうな。
○菊田委員 そんなことは言わないですよ。だけど,暖をとるための冬の下着が,非常にすかすかするような使い古しでは困るわけですよ。むしろ反感を食うだけですから。
○滝鼻委員 それから,自弁というのは,これは自分のお金で買うわけでしょう。お金を持っていない人はどうするの。
○菊田委員 買えないですよ。
○富山調査官 お金がない以上はまず買えないんですが。
○滝鼻委員 そのお金というのはどこに置いてあるのですか。
○富山調査官 お金は,一つは入所時に持ってきたお金,これは領置金と呼んでいまして,本人のかわりに役所が預かって。
○滝鼻委員 領置金。また難しいな。
○富山調査官 本人のかわりに預かっているという,領置金という名称で呼んでいるのですが,本人にかわって施設がお金を全部預かりまして,本人がそのお金を使いたいというと,施設がそれを全部計算して必要な支払いをやる,そういう形で使います。あとは,施設の中では作業をすれば賞与金が稼げますので,これは本来は出所時に支給するというものなんですが,一部例外的に所内でも使用ができるということで,所内使用は認めています。現実には,かなりの受刑者が所内で賞与金を使っております。
○滝鼻委員 外から例えば家族がお金を領置金に入れておくということはできるんですか。
○富山調査官 できます。差入れはできます。
○滝鼻委員 だけど,それも全然身寄りのある人がいないということでお金ゼロという受刑者もいるわけ?
○富山調査官 おります。領置金がない者はおります。
○滝鼻委員 そういうのは,菓子とかあめとか,集会時には何も食べられないわけ?
○富山調査官 これは作業賞与金で買わせますので,ちゃんと働いて賞与金を稼いでいれば買えます。
○滝鼻委員 だけど,そういうのは働いていないんだろうな。昼夜独居なんていうのは何も持っていないでしょう。
○富山調査官 いや,昼夜独居でも作業をすれば賞与金が出ますので。独居の中ですから,紙袋を張るとか,そんな作業しかないですけれども。
○菊田委員 ただ,少し外れますけれども,購入するのに,普通のシャバで売っているよりも非常に高いんですよ。これはやはり何とか考えてもらわなければならないと思います。これは,支給する側が全部独占しているわけです,この物品の購入について。
○滝鼻委員 刑務所が作っているわけ?
○菊田委員 いや,差入れ業者というのが決まっているわけです。
○滝鼻委員 競争状態にないんだ。
○菊田委員 ないんです。独占なんですよ。独占ですから非常に高い。
○滝鼻委員 例えば,僕,分からないけど,ちり紙というのは今あるのかね,大体。歯ブラシ1本幾らですか。
○菊田委員 そこまでは私は知りません,幾らと言われても。
○成田委員 これは,そんなに価格が高いわけ?
○菊田委員 高いんですよ。
○成田委員 それは問題だね。
○富山調査官 もちろん,定価を超えるなんていうことは絶対ないのですけれども,ただ,やはり街のスーパーみたいなところでいろいろなものを売っているのと比べますと,価格競争で負けているという感じはあります。というのは,どんな業者でもいいというわけにはいかないのです。全部職員が検査をしていたのではやっていられませんので,信頼が置けるところから入れなければいけない。ところが,東京拘置所みたいな大きなところはいいんですけれども,小さな施設ですと商売にならないのです。ですから,余りやっていただけるところがなくて,やってもいいけどというところになると,どうしても零細な雑貨屋さんみたいですと,余り値引きはできないよということになってしまうというようなことがありまして。
○宮澤(浩)会長 私のところに来た,ある受刑者からの投書によりますと,投書というのは,こちらに来たのが回ってくるのですけれども,矯正協会で購入したのを府中で手に入れるということで,それが市販より安くはないと書いてあるのですね。だから,おそらくスーパーマーケットなんかで10本幾らというふうに安売りするのと比べたらそうかもしれないなと思ってみたり。
○滝鼻委員 ドン・キホーテなんていうのは,そういうサービスをすればいいじゃないね。
○井嶋委員 業者に?
○滝鼻委員 いや,刑務所と契約して。
○井嶋委員 それは,そういう契約ができればいいんでしょうけど。
○滝鼻委員 だって,今,薬までテレビ電話でやろうというサービスをしているんだから。
○井嶋委員 でも,今の話で,本当に検査もちゃんとその人にやってもらうということを踏まえているわけですからね。
○滝鼻委員 それは民間業者なんでしょう。
○富山調査官 民間の差入れ屋さんのこともありますし,どこもやってくれないと矯正協会がしようがないので売店を開いて,そこでやっているケースも結構あるのです。
○滝鼻委員 ただ,これはどう見たって需要は少ないですよね。だから,そんなに市場が形成されるような需給関係はないと思うんだな,僕は。競争させたとしても。
○井嶋委員 それはどこかのファミリー企業とは違いますから。
○成田委員 倍以上高いのか,ただ高いというだけなのか。
○富山調査官 あと,例えば靴下なんかは今3足1,000円とか,あるいはもっと安いのも売っていますよね。ところが,そういうのというのは規格外ですから,みんな品物が違うのですよね。3足1,000円のものが,では同じものが100足集められますかといったら決してそうではなくて,いろいろなものがその都度その都度売っていて,みんな好きに買っていると。刑務所の中は,そうすると,「何であいつはおれより質がいいものを同じ値段で買っているんだ」という話が出るので,基本的には同じ規格のものを売ってくださいとお願いしているわけなのです。ボールペンなんかは大体規格は皆同じですからいいのですけれども,特に衣類,下着なんかになりますと,安いやつというのはやはり規格外のものを束にして売っていたりしますので,そういうのを使えないというのもなかなか悩みの多いところなのです。
○成田委員 そんな変なことを言われないようなことを考えた方がいいね。だから,もうこういう条件において買うというようなことだとか,いろいろやればできないことはないんじゃないですか。私は,この人たちは自由を制限するために入っているのだから,ああでもないこうでもないって贅沢言っちゃいかんよという気持ちはあるんですよ。でも,余り極端な,かえってあだになっちゃうというか……。でも実際,私は今の小売状況を見て,そんな極端なものはないと思いますがね。
○宮澤(浩)会長 ただ,お役人以上にうるさいですね,受刑者というのは。暇だろうからいろいろなことを言ってくるんですよ。
○滝鼻委員 考える時間があるからね。
○宮澤(浩)会長 まあ,そうなんですけどね。夜9時以後なんて,ほかにすることないですからね。
○成田委員 主婦が5円安いからといって大根を車に乗って買いに行ったりなんか,そういうあれはあるだろうけれども。
○滝鼻委員 これは房の写真がありますが,これでよく分からないのは,まくらはあるのですか。
○富山調査官 まくらはあります。3ページの写真で見ていただきますと,一番上に寝巻きを畳んだものが多分置いてあると思うのですが,その下がまくらなんです。単独室の写真が一番見やすいかなと思うのですが。
○滝鼻委員 共同室もまくらはあるのですか。
○富山調査官 もちろんあります。ちょっとこれは見づらいですね。ないことはありません。もちろんあります。この紫ぽい,しましまのパジャマの隣に何かありますよね。これはカバーがまだつけていない状態なんですね。多分,洗濯して後から入ってくるような状態なんだと思います。
○宮澤(浩)会長 ただ,この表になかったね,支給とか何とか。
○富山調査官 いや,まくらは,官給品の「その他」の中で,毛布,まくらということで。
○菊田委員 食事の点については最近非常によくなったと言われていて,私もそういう印象は持っていますけれども,アンケートを見ると非常にやはり不満が多いですね。僕も悪い,悪いと言ったときは,今はよくなっているから現実を知らないんだというふうに反論を受けたのだけれども,アンケートを見ると不満が非常にあるのでちょっと意外に思っているのです。アンケートの6ページによりますと,味つけ,調理の方法がまずいということでしょうね,あるいは量が少ないとか,メニューを増やしてほしいとか,こういうことが非常に多いですね。だから,食事の点については,総体的な金額はともかく,やはり工夫をするということは今後とも必要じゃないかと思います。とりわけ,最近はカロリーを減らして主食が減ったから,腹減ったというのが結構増えているようですよね。だから,この辺やはり問題として提起する必要があると思います。
○宮澤(浩)会長 僕はインフォーマルに収容者も入れた献立委員会みたいなのがあるのですかということを聞きましたが,そういう施設もあると。それから,施設ごとに食事についてアンケートをとって,不満を吸収するような努力もしているというふうなことでした。でも,こういうのも,不満がぼんぼこ言えるようになったということだけでもいいんじゃないかなと思いますけどね。僕のところへ来た府中刑務所からの手紙で,同じ人なんですけど,やはり府中は,他の施設で私の食べたとの比べると,大量に作るからかどうか知らないけどいつも冷えているとか,昆布ばかりだという,そんなことが書いてありました。
○井嶋委員 所持品に戻りますけれども,アンケートの問6で,所持品について改めるべき点があったかなかったという問いに対して,41と46でほとんど半々で,改めるべき点がないという人も結構いるわけですが,そういった中で,13ページに若干改めるべき中身が書いてありますが,本とノートの所持数の制限とか,衣類とかいうものの数の制限というのがありますが,自弁で買う場合でも,もちろんたくさんは持たせないのだろうけれども,官品等を含めて数は制限しているわけですか。
○富山調査官 当然,例えば下着を10着買ったからといって,10着全部居房内で持たせるかというと……
○井嶋委員 居房内では持たせない。
○富山調査官 ええ。それは施設の方で預かっていまして,適宜交換してあげるという形はしています。
○井嶋委員 例えば衣類の制限なんていうのは,だから,そういうふうに預かっているものを出してもらうことはできるわけでしょう。
○富山調査官 基本的には交換になります。というのは,パンツを10枚持っていたってしようがないですよね。
○井嶋委員 しようがないけれども……。倉庫には持っているけれども,房内では一つしかないとか。
○富山調査官 洗いがえはあるのですけれども,替えはありますけれども,そんなにたくさんではないと。要するに,今はきかえたいと思えばはきかえられる洗いがえはあるとしても,じゃあ明日の分も明後日の分も何日も後の分も全部居房内にあるのかというと,そうではないということです。
○井嶋委員 それは,何でそんなにたくさん持たなければいけないんだろうね,そういうふうに考えると。
○富山調査官 ですから,ここの,衣類とくくられてしまっているのですけれども……。
○井嶋委員 言えば出してもらえるというものがあるのなら……。
○菊田委員 自分の保管する箱があるわけでしょう。
○富山調査官 私物箱がございます。
○菊田委員 だから,そこに自分が入れたいものを入れるということを基本に考えればいいわけですよ。衣類を多く入れたい人は入れたいし,食べ物を多く入れたい人は入れたいわけだから,それを何枚とか何とか細かいことを制限するから,個人のすべてが規制に入っているわけですよ。そこのところが問題だと思いますよ。一定の枠は仕方ないですよね。
○井嶋委員 数の制限というのが非常に不満の中にはあるんですね,多いのはね。種類というより,むしろ数なんですね。確かに,今,菊田委員がおっしゃったけれども,箱に入る範囲なら自由に持たせてもいいという考えもあるのかもしれないけれども,やはり雑居なんか,同じ種類のものを同じ数持たせているというのがそんなに不合理だとは思えませんけどね。
○滝鼻委員 ただ,僕は経験したことがないから分からないけれども,同じ房に複数入っている雑居房ですよね,長い歳月,同じ面々で入るわけでしょう。
○富山調査官 メンバーの入れかわりはもちろんあるのですけれども。
○滝鼻委員 そのときに,箱は同じスペースの箱だとしても,その中に空っぽの人とたんまり入っている人と,そういうことがだれでも分かっちゃうわけだよね。
○井嶋委員 貧富の差がね。
○滝鼻委員 貧富ということでもないかもしれないけども,物持ちと物不足の人と,そういうのが,普通のそれぞれ自由に生活している社会ではそういうことはあるんだろうけれども,同じ空間の中でそういうことが果たして,個人の自由だといって全部物持ちは何でも詰め込んでいい,金のない人は空っぽでもしようがないということで,安全とか保安とかそういうのが問題ないのかな。
○菊田委員 大枠の制限があるわけですから。領置されているわけですから。
○滝鼻委員 だけど,大枠の制限というのは,要するに箱のスペースでしょう。
○菊田委員 違う,領置されているわけですよ。居房内ではなくて,別のところに置かれているわけです。そこの自分の衣料を借り出すのに,1枚か2枚というふうに限られているわけですよね。私はそれを言っているのです。部屋の中で,私物を入れる箱があるわけです。その箱の中に多く入れるか入れないかは個人の判断でもいいんじゃないか,そういうことです,さっき申し上げたのは。
○滝鼻委員 そうなると,箱に入れるだけ入れちゃうという人は出てこないかな。
○菊田委員 だから,入れたい人は入れて。それ以上は入れられないんですから,あくまでも。みんな箱は平等ですから。
○井嶋委員 そこでも,入れる人と入れない人との不平等が出るのではないかとおっしゃるわけ。
○滝鼻委員 不平等というか,感情の問題だと思うんだよね。貧富の差なんていうと大げさな話なんだけど,彼ら同士というのはそういうことでけんかを起こすことはあるからね。
○菊田委員 そんなこと言えば,今おっしゃった自弁品は,何%かは調べてもらえば分かるけれども,金のない人は一切買えないわけですよ。だから,寒かろうが何だろうが,歯ブラシがぼろぼろになってどうしようもないけれども,買えないで我慢しているわけですよね。
○滝鼻委員 歯ブラシは,だって,官給品だから。
○菊田委員 いや,自弁品が買えない。官給品がだめになっちゃうでしょう。
○滝鼻委員 ブラシのない歯ブラシを持たすと。
○菊田委員 ブラシはあるんでしょうけれども,新しいものを買う場合の金がなければ買えないですから,そういう不平等は徹底的にあるわけですよ。だから,この表には出てこないです。この表を見ると,みんなが自弁品を多少なりとも基本的にこういうものを買っているように思えるけれども,実は買えない人がいる。
○滝鼻委員 買える人と買えない人があるよね。
○菊田委員 そうです。
○滝鼻委員 だから余計,買える人は全部その箱の中に詰め込んでいいんだ,金のない人は空っぽでしようがないんじゃないかというと感情的な対立が起きないか。
○菊田委員 今でも,箱の中はもちろんある人とない人とあるわけです,現実問題としては。
○滝鼻委員 だから,そういうふうにすると感情的な対立が起きないか。ある一定量,富める者も富めない者も大体同じような枚数を入れておいてやった方がけんかが起きないんじゃないかと僕は言っているわけです。
○菊田委員 それは現実にはできていないわけですよ。金のある者は買えているわけですから。
○滝鼻委員 買えるんじゃなくて,私物箱に入れる数は制限されているわけでしょう。
○菊田委員 それは,自分のものを入れるか入れないの話ですからね。
○滝鼻委員 もともと倉庫にも自分のものがないという人だっているわけでしょう。
○菊田委員 それはいます。
○成田委員 だから,私は限度があると思うのです。余り極端に差がつくとあれだろうから,だから余りたくさん本を積んではいけないだとかいろいろあるわけでしょう。だから,その限度はあると思う。でも,ある程度認めた場合は,これが限度だろうな。それでこういう制限がつくんじゃないか。
○宮澤(浩)会長 だけど,私物入れはどこに置いてあるの。この写真で,雑居の場合。
○富山調査官 ちょっとここでは見えないですが,いわゆる私物箱と呼ぶようなものがあると思うのです。あと,棚もありますけれども。これ,棚は写っているのですけれども。
○宮澤(浩)会長 棚は本でしょう。
○富山調査官 本とか,あるいは洗面用具とか,そういったものを入れておく場所があって,それ以外に……
○滝鼻委員 真ん中の写真の状差しみたいなのがあるでしょう。上が本で,下に薄いスペースがあるでしょう。そこにクリームとか歯ブラシとかコップとか入っている。
○富山調査官 歯ブラシなんかはそこに入っていますね。
○菊田委員 もう少しましな箱があるんですよ。
○富山調査官 それ以外に箱が多分あると思うのです。
○宮澤(浩)会長 黒い左側のぶら下がっているものの下の箱,これがそうですよね。真ん中の写真,共同室の。
○富山調査官 これは私物棚ですね。
○滝鼻委員 女子刑務所のところにはあるね。
○富山調査官 女性はプラスチックのケースがございますね。
○滝鼻委員 女子の方がきちっとしているね。きれいだね。
○成田委員 だから,もう認めたら……。
○宮澤(浩)会長 だから,限度でしょう,結局。
○成田委員 限度ですよ。
○宮澤(浩)会長 雑居の中で,やっさかわっさかたくさん持っている人とそうでない人なんて,ちょっとやっぱり目立たない。
○菊田委員 先ほど会長がおっしゃったように,私は,夜9時に寝るというのは実に不自然だと思いますよ。夜9時から寝たふりをしなければいけないんでしょう。これはいかにも不自然。これは何とかして改善してもらいたいと思いますね。少なくとも夜10時とか10時半とか。普通はそうじゃないでしょうかね。
○宮澤(浩)会長 やはり職員の都合かしら。
○富山調査官 そうです。結局,夜勤体制を組むと職員の数が大幅に減りますので,今のシステムですと,職員が増えないとなかなか難しいですね。
○滝鼻委員 病院がそうですよね。病院に入ると,夕御飯が,ひどいときは夕方4時ごろ来るんですよ。それで,夜9時ごろ電気消せと言うわけでしょう。テレビの音もだめだと。あれはやはり食事をつくる給食婦のおばさんが夕方のうちに帰らなければならないからでしょう。
○宮澤(浩)会長 でも,このごろ日本旅館がそうなってきましたね。女中さんの都合で,晩飯は何時までに食べてくれと言われるようになった。比較的いい旅館でもですよ。ひどいものですよ,だから。そういう意味で,刑務所の場合,更にそういう点が厳しいのでしょうね。
 そうしますと,今のテーマは,衣食住の水準から所持品の範囲,運動の在り方,そういうようなことにも大分入ってまいりましたが,これも時間の関係になってしまうけれども,やはり非常に重大な問題がある担当制というものにまで少し入っていった方がよろしいのではないかと。
○菊田委員 今のところでは,運動を1時間にすべきというのは,皆さんの御意見が一致したようでから,私はそれを決めてもらいたいと思いますね。30分というのは,いかにも……。
○滝鼻委員 何時間でもいいけれども,作業時間との在り方の関係で,作業時間を少し削って,運動の方に時間を割いてやったらどうだと。
○井嶋委員 処遇全体をどうするかということの在り方との関係があると思いますし,それから,やはり施設の広い・狭いもありますし,それはいろいろあると思いますが,個別は別として,基本的には運動量を増やすというのは,こういう生活をしている人には大事だと思いますね。
○滝鼻委員 健康的にも精神的にもね。
○井嶋委員 これがやはり改善の一つの大きなファクターだと私は思うのです。
○成田委員 実際,労働して得られる生産と対価を考えた場合に,1時間運動させた方が,どうなのかね,1時間仕事させて得られる生産金額と。
○宮澤(浩)会長 40時間で平均して4,000円弱でしたかね。
○富山調査官 作業賞与金がですね。
○宮澤(浩)会長 ということは,4,000円だとすると100円か。
○成田委員 だから,それはどれだけの富が出るかという問題だってあるよね。走らせておいた方がいいという。健康にもいいし,うっせきもないし。
○宮澤(浩)会長 一月だから,それの4分の1か。25円ですね。平均して,作業1時間25円。
○成田委員 その方がコスト的に見てもいいし,それと,やはり運動すると発散できるでしょう。
○宮澤(浩)会長 ですから,ここも考えようだと思うのですね。余り職員が責任を全部背負うという気持ちになると,30分運動を監視しているのと,それが倍になると,そういう意味での負担量が増えるなというような発想になってしまうとかわいそうなんですよ,職員が。だから,僕はもっと,職員というのはそういう意味で,昔の,明治時代とは違って,今はやはり職員の意識も大分変わっているだろうと思うから,何でもかんでも責任があるぞ,おまえはしっかりやれなんていうようなことをちょっと緩めた方がいいんじゃないかなと,そういう気がしますね。
○成田委員 そういう自由度というかね。
○滝鼻委員 運動時間を増やす分,作業時間は減るわけでしょう。そうすると,作業場で監督している刑務官の労働時間も短縮されるわけですよね,勤務時間は。
○宮澤(浩)会長 その作業場から,今度は運動しているところについていきますからね。
○滝鼻委員 だから,結局,全体の刑務官の労働時間というのは同じなんでしょう。
○富山調査官 一般的には,運動場というのは戸外で塀一つ隔てて外になってしまいますので,余分に職員はつけます。
○滝鼻委員 運動場というのは中にないの?
○富山調査官 中というのは。
○滝鼻委員 塀の中。
○富山調査官 塀の中なのですが,塀を越えればすぐ外が一般社会という状態になりますので,通常,運動の場合は立会職員を増やします。
○菊田委員 その話はまた刑務作業の重要な問題だなと,大事だと思いますけれども,今の話で,やはり職員が余りにも余計なことに時間を費やしているのではないかという点でいくと,やはり,この前も議論あったと思いますけれども,居室内の姿勢とか動作の制限とか,点検が非常に厳しいとか,正座,安座はやめたらどうかというような議論もあるわけで,ここで議論しておかないと,ほかで議論するところがありますか,そういう問題について。余りの規律の厳しさですね。工場内での交談は許すとなっているけれども,ほとんど余計なことはしゃべれないわけだけれども,そういうような面とか,脇見の禁止を緩和しなければいけないとか,いろいろなことがある。
○滝鼻委員 この間ここで議論したじゃない。
○菊田委員 しましたね。
○滝鼻委員 正座とか安座とか,現代生活にふさわしくないような日常生活を普通とっているようなことは,余り無理に,正座できる若者なんかいないのだから,そんなこと強制することはないんじゃないかと。
○菊田委員 緩和すべきだという結論が出たというふうに考えて……
○滝鼻委員 正座についてはね。
○菊田委員 分かりました。
○滝鼻委員 ただ,正座というのは,規律正しく座っているという姿勢そのものを評価するというより,お仕置き的な意味があるんでしょう,やはり。「正座していろ」とよく言うけど。
○菊田委員 そう思いますよ。
○滝鼻委員 懲らしめ的意味が。
○成田委員 我々の小学校のときにはそうだった。
○滝鼻委員 「正座していろ」と言うじゃない。今だって言うよね。
○成田委員 「立っとけ」とか。
○宮澤(浩)会長 今はそんなことやったら大変ですよ。新聞ざたになりますよ。
○成田委員 今は本当に正座しているのですか。
○富山調査官 懲罰中は正座または安座というのが通常の指示です。
○成田委員 安座というのは,あぐら?
○富山調査官 あぐらです。どちらでも自分のやりたい方でやってくださいということです。
○滝鼻委員 この間ここで議論したのは,現代の生活習慣に合ったような房内の生活態度をとらせるということで,今生活習慣にないようなものを無理強いするというのは,やはり余り意味がないということですよ。
○宮澤(浩)会長 それは,類推すれば,この間問題になった,宮澤会長のおっしゃった,号令かけたり敬礼したりというのは,そういうのも非常に神経に障ると言っておられましたよね,全体会議のときに。
○滝鼻委員 軍隊行進。
○宮澤(浩)会長 だから,あれも今の社会にはふさわしくないという中に入るのだろうと。
○菊田委員 あれはもう廃止するように意見をまとめていただきたいと思いますね。受刑者だけじゃなくて,職員もああいう軍隊調のことはやめるべきだと。本当に職員の人だってやめたいという,アンケートに出ていますから,ああいうことはやめるべきじゃないかと思いますね。
○富山調査官 職員がやめたいというのは,受刑者にそういうことをやるのはやめた方がいいという意見があるということですよね。今回のアンケートでは,職員のことは聞いていませんので。
○菊田委員 だけど,職員も軍隊調でやっているのだから,あんなことはやめるべきですよ。座長がいみじくも……
○宮澤(浩)会長 あれはいつごろからの習慣なんだろう。
○富山調査官 それは昔からですね,正に。
○宮澤(浩)会長 だとすれば,これはプロイセンなんですよ。プロイセンは昔,警察も軍隊も刑務所もみんな同じ省だったのです。ですから,日本に教えに来たゼーバッハというのは陸軍中尉だった人なのです。それが病気して監獄の役人になって,それが日本へ来て,それが教えた。彼によって初めて西洋式の体操も……。
○菊田委員 今ドイツでそんなことやっている人……
○宮澤(浩)会長 やっていない。
○菊田委員 ないわけですからね。絶対いないですから。ないわけですから,それは。
○成田委員 要するに革命が先にそうなったのですよ,日本の軍隊革命が。
○井嶋委員 階級制があるものですからね。日本でも階級制のある組織と考えれば,警察もそうだし消防もそうだし,海上保安庁もそうだろうけれども,みんな階級制のあるところはやはり上官に対してはちゃんとこうやるという一つの規律は持っているわけで,刑務所もそういう意味では階級制を持っていますから。
○宮澤(浩)会長 でも,警察署内ではやりませんよ。
○井嶋委員 それはだから,日常やるかどうかの問題はありますけれども,やはり検閲をするとか,朝の朝礼とか,そういうのをきちっとやっていますよね。ですから,階級制がある組織である以上,そういう規律は必要だろう。全部敬礼もやめなさいというわけにはいかないだろう。しかし,のべつまくなし敬礼しなければいけないというようなことがおかしいかどうかということは議論してもいいと思うけれども,急には直らないし,それは最小限直しちゃいけないところはあると思いますよ。
○成田委員 本当,軍隊のような形でバッと。それがまた,ブツブツ,ブツブツこもったあれで言うから,本当分からない。聞いている人も分からないですね。
○井嶋委員 行進も,軍隊式というふうに言うからみんなカチンとくるんだけれども,大きなグループを一つのところからよそのところへ移動させようという場合に,三々五々行きなさいというやり方はありますけれども,やはり例えば高校野球だってちゃんと入場行進をするわけだし,要するに何かに合わせて行進をして皆一斉に動くということはどんな社会でもあるわけで,それに号令をかけるとか何度まで手を上げなければいけないとかいうことをやるからおかしいので,そういうものはなしにした,やはり一定の場所から,居房から作業場に行くという間を三々五々は困るから一緒に行ってくださいという行進はあったっていいじゃないかという議論はあると思うのです。僕は,どっちかというとそうだと思うのです。だから,軍隊調という冠をつけるから皆カチンとくるのですけれども,規律ある移動というものをやるにはどうしたらいいかということを考えてもらえばいい。やはりいろいろな組織にいろいろな場面でそういう場面があるわけですから,それを見習って,取り入れたらいいのだろう。子供だって,登下校で旗持って集団で行きますよね。あれだって一つのあれですから。「第3工場」とかいったプラカードを持って一斉に行けばいいというのも一つの考え方かもしれません。
○滝鼻委員 オリンピックだって,入場するときはみんな並んで来るよね。
○井嶋委員 閉会式はばらばらだけけれども,入場のときはきちっとやる。
○成田委員 野球だって,守備に着くときには走っていくし,帰ってくるときには走ってくるわけだね。
○菊田委員 おっしゃるように,それは限度ですよ。一人の刑務官がついて,軍隊みたいにこんなことを,ばかなことをやっているから言われるので,そういうことはやめたというけれども,こういうアンケートから見るとやはり依然としてやっている刑務所があるのですよ。だから,全国的にやめたわけじゃないから,やはりそこのところは常識範囲内に改正しなければいけませんよね。
○井嶋委員 常識の範囲内で,短時間に無事に全員を移動させる方法というものに何がいいかと考えればいいのですよ。やはり行進しかないと思うのですね,ある意味では。ただ,こんなことする必要はないということだと思うのですね。
○成田委員 しかし,あれだってテレテレ歩いたらたまらないよ。20人なり30人が移動するでしょう,彼らが。そうしたときに,こうやってよたって歩いているのって……。やはり何か整然とあれすることが必要だろうね。こうやってやる必要はないけどね。
○井嶋委員 そんなことやる必要はない。号令もかける必要はないということは言えるかもしれません。そういうことをやはり何か考えてもらっていいと思う。
○宮澤(浩)会長 だんだん世の中の常識に近づいていくことですよね。会社なんかはどうなのでしょうね,何かそういう朝礼があったりして。
○井嶋委員 朝礼なんかやっている組織は,会社はありますね,まだ。
○宮澤(浩)会長 入社式ぐらいのものですか。だけど,分列行進して,あっち行け,こっち行けということは……。
○成田委員 場所の移動,例えば見学に行ったときなんかはやはり整然と歩いていますよ。おい,ちょっと急ぐぞというような形でね。また,権力の指示,あれもあるのかな,刑務官たちの一つの。
○滝鼻委員 だけど,そもそも社会の掟を守らなかった人がそこに入っているのだから,自由に行進しろといったって行進しないよね,大体。自由に移動しろと言ったら,みんなちんたらちんたらばらばらに行っちゃって,どこ行っちゃったかわからなくなっちゃうよ。
○井嶋委員 だから,一つの規律を守らせる方法としても使っているのだと思うのですよ。それはそうだと思うから,それはいいのだけれども,例えば僕はこの前聞いてびっくりしたのだけれども,何度まで上げなきゃいけないとか,そんなことまでやることはないだろうということを言いたいのです。しかし,集団で動く場合はちゃんと規律ある動き方をしようということを皆に植えつけるということ,これは意識として必要だと思います。

(3)担当制について

○宮澤(浩)会長 いかがでしょうか,担当制についての御説明に入っていただけますか。
○富山調査官 では,資料の7ページからを使って説明をさせていただきたいと思います。
 資料の7ページというのは,工場の担当職員がどんな仕事をしているのかということを簡単に,何か分析できないかということで書いてみたものでございます。
 担当職員というのは,実は一人でいろいろなことをやっているわけなのですが,大きく分けますと,ここにあるように処遇関係の業務,警備関係の業務,事務関係業務,あと,その他というのが,どこに入れようかと悩んで入らなかったものなのですが,このぐらいに分けられるかなと。処遇関係という意味では,まさに生活指導,作業指導,工場内で作業をしている受刑者に対していろいろな指導をしていく,また,面接をしたり助言をしたりするといった業務があります。
 警備関係の仕事としては,舎房と工場を移動中に受刑者の人頭を確認して戒護をする,あるいは工場内を巡回して,作業をしていないような者がいないかどうかをチェックする,それから,間違いなく受持ちの人数がそろっているか,あるいは機械や器具が壊れていたり員数が足りなかったりしないかといったようなことをチェックするといった作業がございます。
 事務関係の業務というのは,例えば報告書を書くとか,何かあったときに所定の様式で事務書類を書いていくということがあるかと思います。
 それから,その他もろもろの業務ということになるかと思いますが,いろいろな受刑者からの願出を書く紙を「願せん」と呼んでおりますが,その願せんを受け付けて,それを事務所の方に回付をする処理,あるいは物品を,これを倉庫の方で預かってくれという,領置物にしてくれ,あるいは逆に倉庫の方から回ってきたものを本人に渡す手続,あるいは,薬を飲んでいる受刑者が数多くいますので,それぞれに間違いなく薬を渡して飲ませる,あるいは医務回診,医務の方から回診に来たときにそこに立ち会っていること,そういったようないろいろな業務がございます。
 実際の勤務時間はどうなっているのかといいますと,多分平均的にこんなところだろうと書いてありますが,7時ぐらいに出勤してきまして,基本的には2時間勤務して30分休みというのを繰り返して1日8時間勤務をするという流れになります。これは交代者をつける関係がありまして,最初に2時間勤務する者もいれば,30分勤務してすぐ休みに入る者とか,いろいろパターンがございますが,そのうちの1パターンということで,1時間勤務をした後休憩に入って,以後は2時間,30分,2時間,30分と交互に勤務と休みが続く。一般的にはこんな形で仕事をしていると言えるかと思います。
 次のページに参りますが,こういった工場の担当職員を置いているという担当制,これはここにあるとおり各工場を担当する職員が自分の受持ち受刑者というのを持ちまして,いわば小学校なんかで担任の先生が自分のクラスを持っているというようなイメージで,その受刑者について,それこそ悩み事相談から,そういったものまで含めて集団を管理しているやり方ということは,かなり日本に特徴的なやり方だということは言われております。
 これを評価する見解としては,例えばここにあるとおりなのですが,担当制ということで,いわば心情把握をすることがよくできる,血の通った処遇ができる,我が国においては,こういった形で受刑者との人間関係を築いているので指導監督体制は確立されている,これは担当制によるところが大きいのではないかというようなことが,後ろの方に参考資料を添付していますが,矯正保護審議会での「21世紀における矯正運営及び更生保護の在り方について」という提言が出ておりますが,それにあったり,あるいは赤塚康という,これも退職した元職員ですが,その方が書いた「工場担当制論」というような論文などがございます。
 一方,これに批判的な見解というのもありまして,担当職員の裁量が大きくなり過ぎて恣意的な運用が行われるおそれがあるのではないか,あるいは,収容者の質的な変化があったり,あるいは過剰収容に伴って,既に担当制が有効に機能する前提であるような共同体意識が失われているのではないかといったような問題意識もございます。こちらについては,こういった論調のものとして,今回法務省の方で出しました中間報告あるいは「塀の中の日本」という,これも論文の抜粋ですが,やはり元職員の大芝靖郎という方が書いた論文でございます。こういった,それぞれ賛否両論がございます。
 結局,この担当制というのが,何か言葉だけあるのですが,イメージしているところは皆さんさまざまでしょうし,我々実務家の間でも,担当制って何だというと,100人に聞けば100人微妙にみんな違った答え方をするというようなところがございまして,単にいいか悪いかとだけ言っても実は余り意味がないのかなとも思っております。
 結局,クラス担任みたいな職員がいて,受持ち受刑者を管理しているというやり方なのですが,これは,その受持ち受刑者の管理を全部担当さんに背負わせてしまいますと,ある意味恣意的になってしまったり,あるいは過剰負担でにっちもさっちも身動きがとれなくなってしまう,そういう危険があるということは当局でも以前から認識しております。したがって,担当職員が過度な負担を負わないように,例えば上司が積極的に巡回をして担当職員の困った点がないかということを聞き取ったり,あるいは受刑者と職権で面接をして,何か工場で困ったことはないかと積極的に受刑者の声を吸い上げるようなこともする,そういった管理監督をもっときちんとやるのだというようなこともやろうとしておりますし,あるいは,もっと別の方策として,それこそほかのスタッフ,例えば分類にいる心理技官ですとか,そういったほかのスタッフが受刑者ともっとかかわって,いろいろな不満を聞いたりなんかしながらその情報を担当職員にフィードバックしていく,そういう形で,担当が全部何から何までやらなければいけないというようなことを緩和していってやる,そういったことも必要なのかなというような考え方は従前から出てはきております。
 今,特に過剰収容の結果,担当職員の受持ち収容者数が増えてきていますので,このまま放っておきますと確かに過剰負担でつぶれてしまいかねない。その対策としては,もちろん職員が増やすのが一番なわけですけれども,それ以外にも民間のボランティアなどを活用するとか,いろいろな対策を考えていかなければいけないのかなと当局でも考えておるところです。
○成田委員 これは一人で何人受け持つのですか。一人の職員で数十人。
○富山調査官 大体,以前ですと小規模の工場ですと20~30人,大規模でも大体一人当たりせいぜい50名ぐらいでというようなところで従前やっていたのですが,最近ではとてもそんなぜいたくは言っていられない状況になってきまして,ひどいところでは一人で80名とか100名近い人間を見ているケースがあります。
○成田委員 一人で50人というのは,二人になるわけでしょう,交代は。一人で50人。交代するわけでしょう。
○富山調査官 ですから,正規の担当職員が休みになるときには,別の職員が来て交代でつきます。どっちにしても,職員は常時一人しかいない。そこに受刑者が何十人かいる。もっと大きな工場になりますと,担当は二人になって。
○井嶋委員 だから,100人ぐらいになると……。
○富山調査官 担当が二人になるケースはございます。これもそれぞれ休みでいなくなると,代わりの者がまた別途来て,常時二人はいる,そういうような形でやっているのですが。
○井嶋委員 やはり副担当とかと書いていましたから,担当と副担当という形になるのですね。
○富山調査官 二人配置しているケースもございます。そうすれば,一人当たりの人数は減る。
○井嶋委員 減るといったって,常態にするだけのことですよね。
○富山調査官 はい。
○成田委員 人間の管理限度というのはあるものね。だって,これ四六時中でしょう。10何時間?
○富山調査官 日中は,勤務時間だけを見ますと8時間プラスアルファぐらいなのですが。
○成田委員 でも,その後も見るのでしょう。
○富山調査官 その後は,また別の職員が。
○井嶋委員 夜勤職員が見る。これでもって夜勤に入るわけですね。受刑者は終わると房へ入りますから,房へ入ったら夜勤の人が朝まで警備するわけですね。そこには余り担当的業務はないのですか。
○富山調査官 夜勤という意味になりますと,もちろん担当さんと呼ばれてはいるのですが,業務的には,例えば食事を配ったり薬を配ったりということはございます。
○井嶋委員 そうすると,そのときに願せんの受付けとか領置物の処理とか,そういうことはしないのですか。
○富山調査官 基本的には,夜勤の担当ではやりません。ですから,舎房でそういうことをするのは,昼夜間独居については正に工場と同じような意味で担当がいますので,願せんの受付けとか領置物の配付とか,そういうのは昼間の舎房の担当の職員がやる。
○宮澤(浩)会長 では,工場で働く前までの職員と工場で接する職員とは分かれてしまうわけなのですね。
○富山調査官 ただし,夜勤職員というのは夜だけ働いているわけではなくて,日中も勤務しているのです。ですから,要は,昼間の工場なんかにも交代で入ってくる夜勤の職員なんかがいたり,あるいは日勤の職員も休みをとることがありますので,休めばかわりに夜勤の職員がその日勤職員のかわりに2時間工場にいる方のパターンを夜勤職員がやったりと,そういったことももちろんございます。
○成田委員 これは小学校の先生だとかを想像していいわけですか。例えば学校の先生はクラスに,今は何人ですか,昔は50人ぐらいいて,その人は昼間は全部自分が小学校の先生だとあれしますね。学校から帰ったら親が見るわけだけれども,それはもう50人全部四六時中見ているわけですよね,昼間は。そういう形であるわけですか。
○富山調査官 そうですね。イメージ的には,正に担任の先生というようなイメージだろうとは思います。
○菊田委員 ただ,おっしゃるとおり担当制というのは学校の先生に似ているのですけれども,今,先生のおっしゃった,このAという職員は明くる日休むことがありますよね,8時間働いた明くる日。明くる日休んだときは,それをカバーする人が,別の人が来るわけですよ,担当のかわりに。
○成田委員 でも,月曜日から土曜日までは……。
○菊田委員 それは2日働くのですか。
○富山調査官 工場の担当というのは日勤者ですから,通常,昼間しか仕事をしません。通常はですね。ですから,普通にやれば月,火,水,木,金,出てくるのですが,ただ,例えば年休をとるとか,そういうこともありますから。
○成田委員 それはともかくとして。
○富山調査官 例えばですよ。
○成田委員 だから,普通はもうその人が1年なら1年,2年なら2年見るわけですね。
○富山調査官 そうですね。受持ちの生徒を持つような感じにはなります。
○菊田委員 だから,担当を持たない人は,休み時間を担当するわけなのですね。それは担当者と言わないわけですから。
○成田委員 それはだから,この人は何班というのか,これはその人が1年なり2年担当して持っていく。
○井嶋委員 辞令的には「第1工場担当」とかと出るのですか。
○富山調査官 辞令では出ないのですけれども。
○井嶋委員 出ないけれども,命令が出るわけでしょう。
○富山調査官 勤務命令ですね。「第1工場担当を命ずる」というようなことで。
○井嶋委員 そうすると,その人が毎日出てきて,昼間8時間見ると。間の,その人が休憩する時間だけは交代要員が来ますけれども,その人たちは担当とは言わない。この人たちは実は夜勤の当番になる場合もあるということなのですね。
○富山調査官 呼び名としては,実は「交代担当」とか言ってはいますけれども。
○菊田委員 だから,担当できる人と担当していない人との意識は全然違うわけですよ。担当している人はかなり責任を持ってというか,責任ある人がやっているわけですよね。
○富山調査官 刑務所では担当は花形ですから。
○井嶋委員 担当が一番の働くところなのです。
○成田委員 それが明治以来続いてきているのでしょうけれども,この能力の問題。
○菊田委員 結局,工場を担当している人は,別の工場を担当している人とその工場同士が,その受刑者がどの程度作業の能率が上がっているかということを,やはり毎日の目標が出るわけですよ。そういう点で競い合うことも出てくるのですよ。だから,いずれにしても,一人の人間が50人なら50人を責任を持つということは,そういう意味では,その担当者に嫌われたらもう受刑者は非常に嫌な思いをしなければならないというか,そういうような弊害がいっぱいあるわけです。
○宮澤(浩)会長 僕らだって,小学校でいい先生に持ってもらったときはいいけど,地獄というのがあったよ。
○菊田委員 だから今は,ここにも書いているように,それぞれに精神的に問題があるとかカウンセリングが必要な人間とか,いろいろな個別処遇をするのが必要なわけですね。それが一人の担当者によって意見が重視されるという行き方というのはやはり薄めていかないといけないということなのです。矯正局もむしろ言っていますよね。
○成田委員 例えば生活指導,面接,助言なんかの過程で,あっ,これはあれだといって払って違ったところに持っていくだとか,何かそういうような指導の方がむしろ私は必要ではないかなと。
○井嶋委員 何でもかんでもやっていますからね。
○成田委員 能力の限界がありますよ。
○井嶋委員 何でもかんでもやらせ過ぎているという点はあると思う。
○成田委員 子供なら50人見るのは大変だろうけど,しかし,悪いことしてきた人だからね,知恵は盛んになり,そんなできっこないよ。50人はどうなのかな。限度だろうね。私はそういう問題もあると思う。人間の能力を余り過大に評価してもいけないですね。
○井嶋委員 50人でも多いんでしょう。だから,50人が限度だから増員してほしいということを毎年やるのですけれども,なかなか通らない。
○成田委員 それと,私は,やはり教育水準の問題というのは,IQなんか高いわけでしょう。結局,昔は小学校で終わっていた。明治以後,小学校ですら行っていない人たちが犯罪を起こして入ってきた。ところが,今は,中学まではあれでしょう。
○宮澤(浩)会長 でも,先生,そこが問題なんじゃないですか。みんなそうなっているはずなのになっていないのがぐれて犯罪をしてしまった。
○菊田委員 だから,いみじくも8ページに書かれているように,「担当行刑から組織行刑へ」とありますよね。矯正局自体がこういう問題点を挙げ,利点を生かしつつ除去に努めたいと言っているわけですから,やはり方向としては,これはどうしてもこういう方向に行くべきだと思います。
○井嶋委員 方向は,僕はいいと思います。これから議論ですけれども,私なんかが考えているのは,規律も含めた処遇面で非常に緩やかな刑務所をつくったり,逆に規律も厳しくしてやらなければならない処遇困難者などを中心とした施設も必要だろうという,非常に施設の中身が違うものがたくさんあるのだ,それに対して画一的なことをしてはいけない,やはりそれぞれに応じて柔軟に処遇もしてもらいたいし,規律もそのように見直してもらいたいというのが僕の意見なのです。
 ですから,そういう意味で見ますと,非常に担当制はよかった,担当制でもって改過遷善できる受刑者もいるのです。これは残したいのですね。そういう意味では,ここの「評価する」という見解の方の機能というのはやはり残していきたい。それはおそらく想定されるのは,A級施設あるいは今度PFIでつくろうとしている,考えているような施設には,こういうものを重視した運営ができるだろう。しかし,逆に,府中のようなところ,名古屋刑務所のようなところに行くと,とても担当制のようなわけにはいかないぞということで,今度は批判的な見解の方の問題点がクローズアップされてくる。そこには組織的な体制をもっと作ってやりなさいと。つまりそういうふうに,施設の収容分類の見直しによる施設のそれぞれの種類と,それから処遇のいろいろなバリュエーションを見ながら担当制を重視するところとそうでないところといったものはあっていいのだろう。つまり,画一的な物の見方じゃなくて,個別にもっと見られるようなことにしていったらどうだろうかというのが僕の考え方なのです。
○菊田委員 先生おっしゃるとおりなのですけれども……
○井嶋委員 ですから,担当制は全部だめという言い方は,僕はしたくない。非常に大事な伝統ですから,これは。
○菊田委員 その前提としまして,最終的に実現されるかどうかは分かりませんけれども,収容分類を将来改正しようという話がありますね。収容分類を改正,もし徹底していけば,一つの施設の中で,規則違反をしがちな者と精神的な問題がある者とか,今おっしゃったような普通の集団処遇ができるような人間とか,こういうふうに分けるような方向も考えられるわけですよ。名古屋とか千葉とかいうふうに分けるのではなくて,一つの刑務所でいろいろな区画を分けてやると。
○井嶋委員 区画も含めて分類を見直せと。
○菊田委員 それが徹底した行き方ですね。で,収容分類がなくなってくる。ということでいけば,今,先生のおっしゃったとおりにピタリいくと私は思うのです。
○井嶋委員 だから,そういう,少しフレキシブルに物を考えていかないと,余りにも画一的にやり過ぎていないかということを申し上げたいので,担当制も正にそうだと思う。
○成田委員 前の組織を墨守するという一つの考え方,私はこれはおかしいと思いますよ。だって,企業だって,やはり相手が変化すれば,それに応じた人づくり,組織づくりをやるのですからね。同じようなもので持っていくのがおかしいと思うな,僕は。それは大変な労務ですよ。今これだけの人たちを,50人見るというのは大変だと思うんです。
○井嶋委員 ただ,この前,先生行かれましたかね,市原刑務所。例えば市原なんかの場合は,私は詳しくは分かりませんが,おそらくあそこに入っている受刑者と担当,工場担当をしている人との関係というのは,府中の受刑者と担当との関係と比べると,僕は機能的に見れば正に評価するような方向での機能をしていると思うのです,そういう意味では。だから,そういうものを一律にだめと言うわけにもいかないのだろうというのが僕の考え方なのです。
○成田委員 要するに夢なり何なり,ビジョンとなり得るものがあるということも必要でしょうし。
○井嶋委員 受刑者といいましても,とにかく非常に軽い者から重い者もありますし,それから非常に悔い改めている者もいますし,悔い改めていない者もいる。そういう中で一律的に何かやろうとすると,どうしてもいろいろな問題が起こるから,もう少し詳細に分類をして,その対象者に合った処遇の仕方,組織を作っていったらどうか,こういう考え方なのです。
○滝鼻委員 受刑者から見ると,担当の先生というけれども,いわゆる権力そのものだと思うのですよね。受刑者は,所長とか総務部長とか処遇部長とか,そんな偉い人に会うチャンスは多分ないと思うんだね。だから目の前にいる,この工場にいる担当さんというのは,やはり受刑者から見ると権力そのものだと思いますね。事実上も多分かなりの裁量権持っているのではないかと思うのです,いろいろな不祥事なんかを見ると。そうすると,余り担当さんに過重な責任を負わせるということは,反対に権力も増大していくし,裁量権もどんどん大きくなってしまう。そうすると,今度は仮にそこに何か事件が発生したときに,刑務所の幹部は,あの担当がやったことらしいけれども,あいつにちょっと文句言うとこれは秩序が乱れるな,ちょっと目をつぶっちゃおうかということだってあり得ると思うのですよね。だから,担当の仕事が本当にフェアにやられているかどうかという,これは別の分科会で「透明性」とかいうことをやっているからそっちで決めるのだろうけれども,そういう刑務所という組織の中の担当の位置というのが,今のこの刑務作業上非常に重要なのだけれども,過大な期待を担当さんに寄せるというのも,ちょっといろいろ弊害が,法務省自体も弊害があると言っているわけだから,弊害がもっと拡大すると思うんだな,僕は。
○井嶋委員 名古屋の例はおそらくそういうことだろうと思うのです。
○滝鼻委員 名古屋は担当じゃないんだな。
○富山調査官 名古屋は担当職員ではないのですけれども。
○滝鼻委員 だけど,担当の延長みたいな人だよね。
○井嶋委員 要するに,所長や幹部が,やはり現場の人がガッと抑えているその実力を評価してしまって,何も言わなくなる,言えなくなるという。
○滝鼻委員 下から上にマイナス情報が上がってこないんだね。
○井嶋委員 上がってこないし,また,上が言わなくなるということが一つの弊害だろうと僕は思うのです。そういうことになってはいけませんよ。
○滝鼻委員 だけど,頭の中だけの問題なのだけれども,仮に担当さんを全部廃止して,ロボットみたいなのを置くわけですよ。で,すべてのルール違反はそのロボットが感知すると。で,例えば,ルール違反をやった,あるいは規律違反をやった受刑者に対して,すぐロボットが指令するということは,それは技術上可能かもしれないけれども,やはり人間じゃないということで絶対秩序は乱れるよね。だから,やはりある程度担当と受刑者の間というのは情の部分も必要な場合もあると思うんだね。全く無機質的な,突っ立っていてチェックばかりしているというのではなくて,情の部分も必要だと思うんだよね。かといって,情が権力の拡大につながってはいけないということだね。
○成田委員 私はこの間小山の女子刑務所に行ったときに,所長さんが非常にまじめな方で,涙ぐみながら,今これでも定員を2割オーバーしている,そうすると,それだけ管理が甘くなるし,何か問題が起こったときにそれが心配だと言うのですね。
 私は見ていまして,やはり人の我慢できる限界というのはありますよね。そうすると,やはり結局キャパシティをオーバーすることによって,本当,パンクするじゃないけれども,いら立つだろうし,だからそこのところも考えていかなくてはいけない。それでは,そういうものに対して人数でどういうふうに対処するのだと。そうすると,分散するのか,何か考えていかなくてはいけない。しかし,その欠点も出てくる。だから,そこの限界が今ぼつぼつ日本の刑務所内には出てきているような面もあるのではないか。だから,例えば昔の担当制というのは,こういう形では僕は統治できないと。何かグループ制だとか,何か変わった一つの方法を考えなくてはいけない,システムを入れなくてはいけないのではないかという気はしますね。本当にまじめにやっておられる。でも,限界ですよと。
○滝鼻委員 刑務所の社会では,担当になるということは名誉なことなのでしょう。
○富山調査官 はい。
○宮澤(浩)会長 華の何とかって。
○滝鼻委員 極めて名誉なことなんですよね。華の担当なんだよね。
○井嶋委員 この前テレビでやっていましたけれども,所内の運動会,各工場ごとにやるのです,対抗戦。各工場の担当の人を,最後優勝したチームは胴上げしていました。その工場の応援歌っていうのに,その担当の名前を入れ込んだ歌を歌っているのですね。つまり,担当と工場の受刑者というのはそういう関係ができる場合もあるのです。また,本来そういうものをつくってきたのが日本の行刑だとか言われているわけですよね。しかし,もう今日のような数になり,今日のような処遇の非常に困難な人が増えてしまったものだから,そんな理想ばかり言っていられないでしょうということなので,それにはやはりグループ制をもっと入れていかなければいけないと。しかし,できるグループには残してもいいんじゃないかというのが僕の考えなのだけれども。
○滝鼻委員 しかし,100人は無理だね。
○菊田委員 いずれにしても,井嶋委員がおっしゃったように,基本的には収容分類級というのを原則として廃止するということをやることによって処遇が個別化されるわけですから,個別化するということは,担当制というものは縮小するということになるわけだから,私はそれで,大筋さえ同じ意見であるなら,私はそれが一番あるべき姿だと思います。
○井嶋委員 ただ,理想的過ぎまして,例えば,そんなことをやって予算がつくかとか,人員がそれだけとれるかなんていうことになると大変だけれども,そんな話ではなくてここでは議論するのだということがあるから。
○菊田委員 だけど,それは,建物と収容者がいて,それを区分けするだけの話ですから,金と余り直接関係ないと思います。
○井嶋委員 それから,今おっしゃったとおり,我々がここで議論しているのには,処遇をもう少し見直そうということで,作業一辺倒ではなくて,職業訓練とか,いろいろな教科教育とか,治療とかカウンセリングとかいう時間を入れていこうとしているわけですね。そうすると,当然,担当さんが担当する作業時間というのは減るわけです,施設によっては。ですから,担当さんの担当するシェアが減るということは,それだけ担当制で実質的には少なくなっていく,減少されていくということでもあるわけですね。
○滝鼻委員 その場合は担当とは呼ばないのですか。
○井嶋委員 呼ばないのですね。
○滝鼻委員 運動場で監督している人とか,医務室に連れていく人というのは担当とは言わないのですか。
○富山調査官 連れていく職員は,普通,連行職員と呼んでいるのです。
○成田委員 責任感が違うのかね,担当者の。
○富山調査官 担当は,やはり自分の生徒というイメージなのですね。
○井嶋委員 自分で矯正教育をやる,こういう考え方。
○菊田委員 だから,気に入られなかったら大変なことですよ。さっきの蒸し返しになりますけれども。
○成田委員 気に入らないというのは,どちらが。
○菊田委員 受刑者が担当者に気に入ってもらわなければ困るわけでしょう。だから,迎合してうまく取り計らう人は,担当者にうまく扱ってもらえるわけでしょう。そういう関係ですから。
○滝鼻委員 しかし,反対にその担当さんが物すごくフェアな思想を持っていて,それから腕がいいということになったら,鬼に担当だよな。
○菊田委員 それはいいですよ。だけど,今,全体の何万という組織の中の組織を考える場合に―それは基本的には大事ですよ,人として,刑務官としてやるべきことは。だけど,今は組織として言っているわけですから。
○井嶋委員 ただ,滝鼻さん,いい人,すばらしい人だと言っても,今日のような過剰な状態になったら,これはもう何とかしてあげなければいけないという要請もあるのですね。それに甘えていてはいけないということです。
○成田委員 牧歌性を余り持ち過ぎるんじゃないかな。
○井嶋委員 担当制と呼ばれているのはもう一つあるのですよ,実際。ちょっと説明がないのですけれども。昼夜独居の房,あれをやっているのは昼夜ですから,担当制で見ているのですね。
○富山調査官 昼間の職員は固定の担当職員です。
○井嶋委員 昼夜独居担当職員というのがいるのですね,担当さんが。
○滝鼻委員 そういう意味では,特別なクラスを持っているようなものだな。
○井嶋委員 正におっしゃるとおり。ただ,この場合は房に入っていますから,相手は。いずれにしても問題はある。
○宮澤(浩)会長 落ちつくところに落ちつきましたから,次に行きましょうか。担当制というのがうまく機能して,しかも,その対象者が少なければ,これは世界に冠たるものではあるのですよね。
○井嶋委員 そういうのを採用し得る組織も残していいのだろうと思いますね,分類によっては。
○宮澤(浩)会長 僕が友達,ドイツの人なんかを連れていくと,これはうらやましい,だけどドイツじゃできっこないよというわけ。それほど自分を捨ててまで,自分の私生活を犠牲にしてまでも受刑者のために尽くすなんていうのは,これは日本の美談だったのですよね。
○井嶋委員 だから,余り美談に乗っかってはいけないということはおっしゃるとおりだと思います。
○宮澤(浩)会長 でも,そういう気持ちでやろうという人を,そんなことしないで,もっと官僚主義に徹しろなんて言う必要はないんでしょう。
○井嶋委員 言う必要はない。しかし,また,余りそれに甘え過ぎて,問題になってしまってから後手に回るのではだめなので,やはりグループで何とかサポートする方法も考えていかなければいけない。
○宮澤(浩)会長 だから,この矢印のこの先の,これを大いに合理化してほしいと。

(4)刑務作業について

○宮澤(浩)会長 そうしますと,いよいよ難しい問題がたくさんあります刑務作業ということになります。
○富山調査官 では,資料の24ページを御覧いただきたいと思います。
 24ページにつきましては,就業人員の構成比をまとめた表でございます。平成15年の8月末現在で,懲役受刑者が5万9,000人余り,禁錮が275人,労役が799人,未決が1万3,000人弱といった形でおりますが,そのうち刑務作業に従事している者の数が,この就業人員でございます。懲役受刑者は全体の93.3%が刑務作業についております。ついていない者というのは,例えば病気ですとか,あるいは懲罰を受けているとか,いろいろな理由がございますけれども,そういったことでついていない者も一部おりますが,93%は就業している。禁錮受刑者は作業義務がないのですが,御覧いただくとおり実は約90%の者が作業に従事している。それから労役場留置者,これは換刑処分ではありますけれども,やはり90%近くの者が刑務作業に従事しております。未決につきましては,ごくわずかな者が請願作業をやっているという状況でございます。
 刑務作業につきましては,この左の方に丸がありますが,大きく言いますと三つの形態がございます。生産作業,これは物をつくったり,あるいは民間企業から委託を受けていろいろな作業をやる。物品の製作や加工などを受託して行う労務の提供をする,そういった作業に約80%の者が従事しております。それ以外に,職業訓練,これは資格の取得,免許の取得などのためにやっているもので,これも刑務作業と位置づけております。人数的には極めて少ないのですが,2.0%程度常時やっているという感じです。もう一つが自営作業。これは,所内で食事をつくったり受刑者の衣服を自分たちで洗ったりといった,正に経理的な作業,あるいは建物が壊れたところを補修するとか,そういった営繕作業,そういったものをやっている作業でございます。生産作業が一番割合が多いわけなのですが,これを更にどんな業種でやっているのかと見ていきますと,その他は別ですが,一番多いのは金属で13.9%。洋裁が12.4%。木工が6%。印刷が2.7。革工が2.2。農業が0.2。その他が非常に多くなっておりますが,その他としては,例えば窯業,焼き物ですとか,紡績,織物,紙の加工製造など雑多なものがいろいろあるということでございます。これが就業人員の構成比です。
 25ページですが,これは職業訓練の実施状況を取りまとめたものでございます。全国のいろいろな刑務所で職業訓練をやっておりますが,内部的に職業訓練をやる施設を3種類に分けておりまして,「◎」の記号がついている部分は総合職業訓練施設。その種目については全国の施設から適格者を集めて職業訓練を実施する,そういったことをやることができる施設を総合職業訓練施設と呼んでおりまして,全部で七つございます。これは数が少ないので順番に申し上げますと,函館少年刑務所がまずこの総合職訓施設としての職業訓練をやっております。それから山形刑務所でもやっております。それから,川越少年刑務所,福井刑務所,奈良少年刑務所,山口刑務所,佐賀少年刑務所と,それぞれの刑務所では全国の施設から受刑者を集めるような職業訓練種目を行っております。
 次の,「■」の集合職業訓練施設。これは同じ矯正管区管内から受刑者を集めて職業訓練を実施するというような,そういう種目をやっている施設でございます。それから,「△」の自所職業訓練施設。これは正に,自分の施設にいる受刑者を対象に職業訓練をやる,そういう種目をやっている,そういう施設です。一つの施設で複数の職業訓練をやっていれば,同じ施設に記号がいっぱいついていることもございます。この日本地図はそういったことをあらわしております。
 職業訓練,平成14年度の実績ですが,1952名の者が職業訓練を修了しております。どんな訓練かということでここに書いてございますが,溶接が246名,小型車両系建設機械が186名,情報処理が175名云々と,いろいろな種目があるということがお分かりいただけるかと思います。
 26ページですが,こうした職業訓練などで資格,免許をどのくらいの人が取得しているか,どんな資格を取得しているかということを示したグラフでございます。青色の棒グラフが,その資格を受験した受刑者の数。赤の棒グラフが合格した者の数。上の方で黄色の折れ線になっておりますのが,その合格率を計算したものでございます。全体で見ますと2,241名の者が受験をしまして,86%の者が合格をしているという感じです。各種目別に見ていきますと,おおむねかなり高い合格率を保っているのですが,目立って低いのが情報処理技術者。これはやはり試験が相当難しいのだと思います。28%の者しか合格しておりません。あと,その他,これは雑多なものがあるのですが,これもやはり60%と,ほかのものと比べますと下がっております。資格,免許の取得状況はこんな感じなのですが,これは一般社会の合格者と受刑者数との比と比べますと,かなり合格率が高い。それだけ集中して一生懸命やっているということは言えるかと思います。そのかわり少数精鋭で,全体的にいつも2%程度の者しかできていないということはございます。
 次に,27ページの資料は,作業賞与金に関する資料でございます。作業賞与金というのはどんなふうに計算するのかということを図解したものでございます。計算高というのが,最終的に受刑者に毎月計算される賞与金の金額なのですが,それはまず基本月額を定めます。基本月額というのは,基準額×就業時間。基準額はいわば時給ということになります。その時給が下の「※1」のところに書いてありますものでございまして,見習工から1等工まで,これは作業の熟練度などに基づきまして,あるいは一生懸命一定期間作業したというのを評価して,だんだん上に上がっていくというものでございまして,見習工ですと時給が5円20銭。これが1等工と一番上までいきまして,時給36円70銭。賃金として見たら,こんなものとてもまともな金額ではございませんが,あくまでも賃金ではない,恩恵的なものということで位置づけをしております。この基準額に働いた時間数を掛けたのが基本月額になります。これに更に掛けることの「1+加算率-減額率」となっていますが,要は,行状がよいとか作業成績がいいとかプラスになるようなものがありますと加算率がある。「※2」にありますが,作業成績が良好な者は更に7割増しまではできる,行状が良好な者には3割増しまでできる,それから,構外,塀のないところで作業をした者については倍にまでできるというような加算の上限が決まっていまして,それぞれ当てはまるケースについて,この上限のもとで加算ができる。逆に,減額の方もありまして,作業成績不良によって半分までは下げることができる,それから,作業成績ではなくて,日ごろの態度,行状が悪いということで3割まで下げることができるといったようなものがございます。そういったプラスマイナスの掛け率を掛ける。更に,最後の「+加算額」というのは,「※2」の(8),創意工夫というものでございまして,作業に役に立ついろいろなアイデアを出した,いいアイデアを出したときには,1件について最高3,000円加算ができるというようなことになっております。こういった形で毎月の計算高を計算します。
 平均しますと大体4,000円程度の計算額になるのですが,ここではかなり優秀な受刑者の計算例というのを一つ示しております。2等工で構外作業に就業している,この者が164時間働いた,うち4時間はいわゆる残業というのですが,時間外作業をやった,行状も作業成績も極めて良好,更にこの月には作業安全と能率を高める上で有益なアイデアを出したというような形でいきますと,基本月額は2等工ですから28円90銭×164時間で4,739円60銭が出てきます。そして加算率として,1+1。たまたまこれはいろいろなことを考えましてちょうど倍にしました,行状と作業成績を考慮して倍にしましょうという加算をした。更に構外加算,これは構外作業をやった分について3割増しにしたのを足してあります。それから時間外作業を4時間だけやったということで,これも足している。更に創意工夫で非常に有益だったので3,000円足しました。こんなケースがありますと1万4,000円弱ぐらいになっている。これは極めて優秀な例でございます。全部がこんな例ということは決してございません。こんなような計算を実際各受刑者ごとにやっているということでございます。
 次のページを見ていただきたいのですが,28ページです。では,実際にそうやって作業賞与金を払って,所内でももちろん一定額は使えますが,最終的にはこれは更生資金として本人に持って出ていってもらいたいという資金でございます。まず2の方は,諸外国と比べてどのぐらいだと。日本の場合は予算上の平均で4,000円ちょっとなのですが,アメリカなんかを調べますともう少し高いです。作業によって違うのですが,ここにあるように,1か月で,いい作業では8,000円から2万1,000円,あるいはもっといい作業は5万6,000円から8万9,000円なんていうのもございます。そうでもないものでも2,000円から1万2,000円というぐらいになっています。イギリスで約6,000円,フランスで約5万円。これなどは皆「Prisoners’Information Book」というふうなもので計算したもので,今回のイギリスの調査あるいはフランスの調査等は反映しておりません。そちらの方は別途調査報告で上がってくるかと思います。ドイツが約2万9,000円,スウェーデンも約2万3,000円。金額の多寡はございますが,日本がこういった諸国と比べますとやはり低い方にあるということは言えるかと思います。
 それから,出所受刑者にどのくらい作業賞与金を払ったのかということでグラフにしたものがありますが,数的には5万円を超える賞与金をもらった者が一番多くなっております。次に多いのが5万円以下3万円を超える者,その次が3万円以下で2万円を超える者というような形で,最終的にもらう額ですから,これは統計自体が5万より上をとっていないのが実は問題なのですが,なっておりますが,刑期で見ますと,刑期の短い者,3月以下とか6月以下といった者は,やはりほとんどの者が3,000円以下程度しかもらっていない。6月以下の者ですと5,000円以下もおりますが,刑期が短いと余り大量のお金は稼げない。刑期の長い者になりますと,特にこの黄色いのが1年を超えて2年以下の刑期の者ですが,そのくらいになってきますと少なくとも1万円ぐらいは最低でも持って出ている,多い者は5万円を超える金額を持っているというような感じが見てとれるかと思います。
 以上,極めて端的に御説明いたしましたが,刑務作業の状況でございます。
○宮澤(浩)会長 やはり長いこと刑務所にいて社会へポンと出るときに,5万円から7~8万円程度ではやはり少ないんじゃないかなと思いますけどね。
○富山調査官 これは「5万円を超える」ですから,中には100万円を持って出る者もおります。これはもちろん長期の受刑者です。
○宮澤(浩)会長 たかだか10万円以下だろうと思ったのですが,違うのですね。
○富山調査官 それは,正に長い受刑者ですから。15年とか20年とか服役したような受刑者で,100万円以上持って出る者も中にはおります。
○成田委員 1か月が4,215円だから,大体5万円くらい。
○富山調査官 年で頑張ってためて5万円。平均ですけれども,5万円です。
○成田委員 10年で50万か。
○富山調査官 ただ,だんだん長期になればなるほど大体作業等工が上に上がっていきますので,その意味ではもう少したまるようにはなると思うのですけれども。
○菊田委員 資料では諸外国は比較的高くなっているけれども,アメリカだってそんなに高く払っているところもないこともあったり,私は賃金そのものについては当面はそれほど神経質になる必要はないと思うけれども,アンケートで,やはりこれはいろいろ解釈しなければいけないと思うのですが,刑務作業はあった方がいいというのが圧倒的に,72%もあるわけだけれども,これは刑務作業が今の現状の中であった方がいいということであって,先ほどのようにいろいろな処遇を細分化していけば,それは考え方が全然変わってくるわけですよね。だから,これは問題ないと思うのですけれども,ただ,現状のままでいけば,社会復帰に役立たないとか,あるいはまず職種の選択が非常に限られているとか,そういう問題はいろいろあると思うのですね。しかし,それを一々議論していても始まらないので,私はやはり先ほどのお話のように,基本的に8時間というこの強制労働を,何時間にするかはともかくも短縮するということを議論すべきではないかなと思います。
○宮澤(浩)会長 それが少し緩和されれば,金縛り状態から緩和されることは言えるでしょうけどね。
○井嶋委員 質問ですが,職業訓練,24ページの図では2%ですね,作業形態の一つの類型として。この資格をとった人が約2,000人ぐらいいるのですが,この人たちの訓練を与えている各施設では,全部この人たちには刑務作業のかわりにずっと訓練をさせていたと見ていいのですか。
○富山調査官 ずっとといいますと。
○井嶋委員 刑務作業なしで,市原と同じように,市原を見たのですが,あの人たちは朝から夕方まで職業訓練としてやっていますね。例えば,だから,今の各地に職業訓練をやっているところがあるわけですが,そこでいろいろな種類のものをやっていますね。合格者がこれだけ出ました。この人たちは,当該施設では刑務作業のかわりにこの訓練を受けているわけですか。と見ていいのですか。
○富山調査官 そうです。
○井嶋委員 つまり,2%の中に入るわけですか。
○富山調査官 入ります。要は,例えば職業訓練によって期間が2年であったり半年であったりいろいろな期間がありますけれども,その期間中は刑務作業として職業訓練をやっていると。
○井嶋委員 それは全部その各組織でね。
○富山調査官 そうです。
○井嶋委員 それは,ちょっと哲学の話ですけれども,刑務作業,1日8時間という考え方との整合性はどうしたのですか。法務大臣の特別認可か何かでやったわけですか。
○富山調査官 職業訓練は,これも刑務作業であるというふうに私ども解釈しておりまして。
○井嶋委員 そして,大臣の認可をとらずに。
○富山調査官 大臣の認可という意味では,職業訓練の種目とかそういうものの認可はとっているのですが,決して作業をしないというわけではなくて,これが作業なのだということでやっております。
○井嶋委員 分かりました。
○宮澤(浩)会長 賞与金の計算も同じ。
○富山調査官 賞与金も出します。
○滝鼻委員 この分類で言う職業訓練というのは,何か資格をとるための職業訓練なのでしょう。
○富山調査官 基本的にそうです。
○滝鼻委員 したがって,靴を作ったり戸棚を作ったり本箱を作っているのだって,職業訓練と言えば職業訓練だよね。
○富山調査官 ある意味ではそうなのですが,そういうのはただ普通に生産作業と呼んでいます。
○滝鼻委員 出てから大工やるなんていうのは余りいないわけだ。
○富山調査官 中にはいるかもしれませんし,建築の訓練なんていうのもやっておりますので。
○成田委員 左官なんていうのが……。
○富山調査官 左官の訓練もやっておりますし。
○宮澤(浩)会長 左官は資格?
○富山調査官 あれは何かあったと思います。すみません,ちょっと私も詳しくないので。
○菊田委員 ちょっとお伺いしたいのですが,刑務所を満期に出た後の5年,10年という資格制限というのがありますよね。
○富山調査官 いろいろな法令で決まっていますね。
○菊田委員 ここにある免許,資格というのは,それに該当しないものを職業訓練として与えているわけですね。
○富山調査官 要は,在監中に現に資格をとっているわけですから,受刑者が資格をとれないものであれば,そもそもとれないですよね。ですから,これはとらせている以上は,そういう資格制限はないはずですよね。現にとっているのですから。
○菊田委員 私の言いたいのは,例えば調理師というのは,あれは出ても免許をとれないということでやらせていないということなのですか。
○富山調査官 そうかもしれません。すみません,調理師がその制限対象なのかどうかは,ちょっと私,今,把握していないのですけれども。
○菊田委員 制限対象ですよ。だからやらせない。私は今回,フランスで調理師の非常に訓練しているところを見てきたわけです。それなどを見ると,今,フランスで調理師というのは非常に需要がある,だから刑務所でやっているのだと。包丁,ナイフを使って免許とらせているわけですよ。これはないのですよね。やはりこれは資格制限というところを抜本的にやはり検討してもらわなければ困ると思うのですよね。
○井嶋委員 それは役所の問題があるから,ある程度は。
○菊田委員 それは,刑務所を満期で出たのになぜ資格制限を置くかということは,我々が言わなきゃだれも問題指摘しませんよ。だって,社会復帰とか更生を願う矯正という視点で物を考えているのに,出た後,資格制限のある者をほうり出しているのですから,これはもう非常に限られたものになるわけですよ。基本的な問題です,これは。
○井嶋委員 それはちょっと難しいけどね。
○滝鼻委員 だけど,あれは法務省が決めているのではなくて,それぞれの業法で決めているのでしょう。だから,それは,調理師なら調理師何とか法というのがあって,それで決めているわけでしょう。そこまで我々のこの行刑会議というのは声が及ぶのですかね。
○菊田委員 基本的には,5年,10年という資格制限という枠があるわけなのですよ。
○滝鼻委員 それは分かるけれども,それを撤廃せよというわけ?
○菊田委員 そうです。
○宮澤(浩)会長 それはそっちの方に言わないといけないから。
○菊田委員 まあ,その議論はちょっと,じゃあ……。調理師というのは訓練できないのですよ,刑務所の中で。
○宮澤(浩)会長 もし訓練できるとすれば,今やっている経理作業で調理場に従事して。でも,あの腕だったら街では使えないのではないかという……。
○滝鼻委員 偏見かもしれないけれども,在監中調理師の免許をとりましたといって免許を持っていろいろな料理屋とか回ったら,就業できるかしら。
○菊田委員 一般的にそう言われるのですが,フランスで一番人気のあるのが,そういう人たちを採用するという。
○滝鼻委員 在監中の調理師。
○菊田委員 はい。
○滝鼻委員 フランス料理というのがあるからね。
○菊田委員 現に刑務官もその中で教えているわけですよ。相手は包丁を持ってやっているわけですね。事故は起きたことがないというのですね。そういう問題があります。
○富山調査官 でも先生,火をつけられたと言ったじゃないですか。調理をやっているところじゃないですか,あれ。
○菊田委員 場所はそうだけど,別に調理をやっている人がやったわけじゃないですよ。
○富山調査官 そこまでは聞いていないですけどね。
○滝鼻委員 職業観の問題もあるかもしれないね。
○成田委員 しかし,いいことだよね。資格又は免許をこれだけとらせてやっていっているのですからね。これで更生していく人たちだって相当いるんだろうな。
○宮澤(浩)会長 理容なんていうのもいいのでしょうね,外へ出てから。だけど,理容は,聞いたところによると,殊に女性の場合かなりコースが長くやる必要があるから,したがって罪種で言うとかなり問題な,殺人とかそういうような女性が理容にいるんだなんていう話は栃木で聞いたことがありますけれども。
○滝鼻委員 刑務作業一般についての考え方なのですが,今まで最初の方で処遇困難者の問題だとか,そういうことを議論しましたよね。そういうような経緯を考えると,やはり今の8時間,これは省令か何かで決まっているのですか。
○富山調査官 これは訓令でございます。大臣訓令で決めています。
○滝鼻委員 法律じゃないんだよね。
○富山調査官 違います。
○滝鼻委員 8時間というのをきちんと守らせるというよりは,今度それを4時間あるいは5時間にしたら,どの刑務所もまた6時間か4時間というのもおかしいと思うんだね。要するに8時間じゃなくてもいい,短縮できるというぐらいにして,その余った時間を,前々回ぐらいに考えた,非常に精神的に問題がある人とか,あるいは本当に病気の人とか,そういう人の治療に当たらせるとか,カウンセリングだとか,それから僕は宗教活動だってしたいやついると思います。宗教活動と言ったらおかしいけど,お経を読みたいとかバイブルを持ちたいという人だっていると思うのですよね。そういうのはそういう時間も与えてやるとか。それから,さっき言ったスポーツの問題,運動。そういう時間にもっと,その8時間の中身をちょっと変質させて,井嶋さんはさっきフレックスでやった方がいいと言ったけれども,フレックスな活用方法,せっかく8時間の時間があるのならね。
○菊田委員 すばらしい発言ですね。
○滝鼻委員 私が言いたかったのは,その8時間を仮に6時間にしたら,また全刑務所6時間にしちゃう。そうじゃなくて,刑務所の7万人もいればいろいろな人がいるのだから,それに合わせた日中の時間の使い方というのを。夜やるわけじゃないのでしょう。夜は寝ろといっているのでしょう,早く寝ろといっているのだから。だから,昼間の明るい時間の使い方というのも,もうちょっと考え直したらどうなんだろうかね。
○菊田委員 それはもう繰り返しません。今までの100年の矯正の中であり得なかったことを今おっしゃっているわけですから。
○滝鼻委員 それは法律の,宮澤先生に言わせると懲役の役務のところはやはり労働だというから,それはだけど刑法を改正しなくたって,省令で8時間なんて言っているわけだからね,内部通達で。それを,時間を短縮したり延ばしたり。
○菊田委員 刑務作業をやめるわけじゃないのですから。
○滝鼻委員 やめるわけじゃないんだから。それは現代的に解釈すればいいんじゃないのかね。
○井嶋委員 ましてや,今の職業訓練の部分は,抽象的に言えば作業とは違うでしょう。やはり訓練しているのですから。でも,それも作業として見ているのですからね。
○滝鼻委員 作業としてその役務の一部をなしているわけでしょう。
○井嶋委員 見ているのですから,現にもう。ですから,教科教育とかカウンセリングとか,そういうものを対象によってきめ細かくやっていって,積み上げていって作業時間何時間残る,こういう感じでやってもらえればいいと思う。
○滝鼻委員 そうなると,担当全権主義みたいなものからもう少し変わってくるんじゃないのかな。
○井嶋委員 だんだん変わってくるのです。さっき言ったように,担当のマークする部分が減ってくる。
○滝鼻委員 担当さんは5時間ぐらいやるかもしれないけれども,あと残ったところにスポーツ担当とか,カウンセリングとか,精神科医だとか,それからお坊さんだとか,そういうのも入ってくるんじゃないの。
○菊田委員 それはもうすばらしいことですよ。それ自体が,アメリカ,イギリス,ヨーロッパがみんなやっていることなんですよ。
○井嶋委員 正に個別処遇なのです。ただ,水を差すわけじゃないのですけれども,個別処遇も余りに個別になり過ぎると,今度は6万人の受刑者を預かってやるという以上はできない部分がある。
○滝鼻委員 6万人を6万通りやれといったって無理なのだから,それは大体のルールをつくっておかないとね。
○井嶋委員 だから,どこでくくるかという問題があるのです。あるのですが,できるだけ個別処遇の実を上げるようにしてもらえないかということが今回の提言ではないですか。
○滝鼻委員 さっき出たように,30分はちょっと短いじゃないか,もうちょっと運動してもらった方がストレス解消するんじゃないかとか,それから,頭がおかしくなったのは治療を先行して,労働作業より治療先行だという考え方にした方がいいかもしれないね。
○成田委員 運動時間って,1日1時間と,国連基準とか何とかあるのですか。
○富山調査官 最低基準規則があります。
○成田委員 それだったら1時間やっていいよ。
○井嶋委員 そういうのは,象徴的にも今回やってもらいたいと思う。
○滝鼻委員 しかし,運動場がないというのは不思議だね。
○富山調査官 スペースに限りがあって,そこに順繰りに出していかなければいけないですから。
○滝鼻委員 狭いのですか。
○富山調査官 これは施設によります。川越少刑なんかは非常に広い運動場を持っていまして,ここはですから実は1日1時間やっているのです,運動を。
○成田委員 かなり大きかったね。
○井嶋委員 概して言えば広いのですけどね。
○滝鼻委員 府中みたいに,怖そうなのがいっぱい入っている,ああいうところは運動場は狭いわけ?
○富山調査官 というか,今,過剰収容で舎房を建てたりするものですから,どんどん狭くなっているというのが実態なのですよね。
○滝鼻委員 グラウンドがないのか。それは小学校を借りるというわけにはいかないものね。
○菊田委員 駆け足するだけが運動じゃないですから,狭いところなら幾らでも……。
○滝鼻委員 いや,ちゃんとスペースあった方がいいんだよ。狭いところで運動させたら,けんかが始まるよ。
○成田委員 今後,1時間は目玉として出して,1時間やらせようと。そうすればいさかいも起こらなくなるだろうし,いやしの一つになるよ。
○井嶋委員 工場が一つつぶせれば,工場のところにスポーツ機械を置いてやれば運動できる。
○滝鼻委員 それより何かお金かかりそうだなと思って,あるいは人の手が大変だなと思うのは,僕は治療とかカウンセリングだと思うのですよね。そっちの方がやはり,民間の本当の専門家,腕のいい医者とかカウンセラーがあの世界に入ってきてくれるかどうかということですよ。
○井嶋委員 それが一番問題ですよ。言うはやすしね。なかなか難しい。
○滝鼻委員 カウンセリングとか治療と口で言うのは易しいけど,本当にそういう人たちが,府中なら府中,川越なら川越に来てくれて,本当に命を張って,体を張って対面してくれるかどうかということだね。
○井嶋委員 それは問題ですが,第3分科会で医療関係の検討をしている中にも若干リンクする部分があるのですね,今のこの問題は。だから,あそこで例えば厚労省との共同とか省庁協力みたいなものとか。
○滝鼻委員 厚生省なんてやってくれないだろうな。
○井嶋委員 そういうようなものを想定しながらやっていくということも一つ考えているのだと思うのですよ。昔,保安処分なんて作ろうとしたときは,我々は,保安処分の職員は矯正ではできないから,厚生省から借りようと考えたのです,精神病の病院の人たちを。
○宮澤(浩)会長 ですから,完全に窮屈だったでしょう。国立では引き受けてくれないから。あの強制措置入院でもね。
○菊田委員 重症者については第3分科会で検討されるでしょうけれども,そういうものでない,いわゆる軽症といいますか,カウンセリングが必要だというような部分については,今までだっていろいろなボランティアが刑務所へ出入りしたりしていますから,だからそういう窓口がないわけではないのだから,やはりこれからはそういう方向を開くという形でやればそれは熟成されてくると,私はそう思いますけどね。また,そうでなければいけないですよ。
○井嶋委員 一遍にはいかないけれども,そういう方向は出せるのではないか。
○滝鼻委員 今日もらったこの再入所の率なんか見たって,何のために刑務所があるんだということになるものね。
○宮澤(浩)会長 正直だなと思うのは,やはり交通関係というのはそういう意味で違う,異質の受刑者なのでしょうね,業過にしても何にしても。
○井嶋委員 やはり過失ですからね。
○宮澤(浩)会長 詐欺はやはり詐欺なんだね。
○井嶋委員 おもしろいですね。
○宮澤(浩)会長 本当おもしろい。
○井嶋委員 しかし,絶対にやはり満期がいつでもトップですね。
○宮澤(浩)会長 ということは,それだけ仮釈放というのは慎重に対応しているということですよね。
○井嶋委員 仮釈放は,ある意味ではワークしているということですよね。
○滝鼻委員 強姦が5割も。強姦の次やったのが強姦とは限らないけれども,強姦をやった人が5割もまた入ってくるというのはやはり怖いことだよね。
○井嶋委員 これも宮澤先生の専門のところですけれども,要するに性犯罪者というのは累犯性がどうしてもあるのです。ですから,これはしようがないと。むしろこれに対して,出すときにミーガン法とかというのがありますけれども。
○宮澤(浩)会長 みんなそうですよ。スイスだってドイツだってオーストリアだって,アメリカがそうだけれども,やはりそういうものに対する社会防衛というのはヒステリカルになっちゃっていますね。
○井嶋委員 特別の手当てが必要なのです。
○成田委員 しかし,ある程度の防衛措置としてやらないと危険だよね。
○宮澤(浩)会長 それはそうなのですけれども,それをどう対応するかというのがこれまた問題で,刑法を変えて重くするというやり方もあるし,仮釈放のときの対応を慎重にするというやり方もあるし,国によって違うのです。
○滝鼻委員 そういうのを少なくするためには,8時間靴をつくらせていることはないよね。もっと別の方法はありそうだね,これは。
○井嶋委員 どこまで入れるかということですね。
○滝鼻委員 それから,アメリカだったかな,この男たち凶暴につきといって,出た人,性犯罪の人をもう……。
○宮澤(浩)会長 それはイギリス……。
○滝鼻委員 イギリスか。刑務所を出ても顔写真をベタベタ張っておくというところもあるでしょう。それだけ社会防衛ということはあるんだと思うんだよね,意識が高い。今,日本でそんなことやったら,刑務所怒られちゃうよね。
○富山調査官 刑務所がそんなことをしたら大変です。
○井嶋委員 今はできませんが,アメリカあたり,カナダもそうですけれども,法律を作っているわけですよ。で,出すときに,地域に通知するわけです,この人がここへ帰りますからと。場合によったら,イリノイだったかどこか,顔写真をだれでも見られるような状態になっているのですね。
○滝鼻委員 だから,半分の人がまた入ってくるということは,同じようなことをまたやる人が多いわけでしょう。そうすると,被害者というか,普通の市民側の方でも防御しなきゃいけないという思想だと思うんだね。
○井嶋委員 そういう警告,ウオーニングを出す法律が合法化されたのです。僕は「こんなもの憲法違反ではないのか」と大分言ったけれども,どうもアメリカでは大体あれは州法だけではなくて連邦法になったのですかね。とにかくあちこちの州でつくっている。
○成田委員 そういう人は,やはりもう病気だろうね。
○宮澤(浩)会長 傷害なんていうのもやはり高いですね。4割,5割。
○成田委員 それと,私は,いろいろ,あれはいかん,これはいかんというのだけれども,懲役といって懲らしめている面もあるわけなのだから,やはり自由がそれだけ制限される,思うようにはいかないよというようなものも根底に思想的にないとおかしいんじゃないかと思いますよ。何言っているんだと。
○井嶋委員 おっしゃるとおりで,その基本を変えるつもりはないのですが,やはり今までやってきた行刑が余りにも明治以来のいろいろなことを引きずっておりましてね。
○成田委員 それはありますよね。だから,めり張りをはっきりすべきだと思うんです。
○井嶋委員 もうちょっと効果的にやれるような方法を考えないと。
○成田委員 要するに1時間は運動させる,これはもう国連で決まっているじゃないか,これをやろうよと。
○井嶋委員 それだけでも大きな哲学の変更になるのです。
○滝鼻委員 公民権はないんだよね。選挙権と被選挙権はない。
○菊田委員 選挙権はないでしょう。それから……
○滝鼻委員 被選挙権もない。
○菊田委員 被選挙権はもちろんないですし。ヨーロッパでは当たり前なのです,選挙権を与えていることは。
○滝鼻委員 与えている方が当たり前なの?
○菊田委員 当たり前なんですよ。ない方が,なぜないかと疑問に思うぐらいなのですよね。
○井嶋委員 それは,まあ,その国の考え方それぞれだろうと思います。
○滝鼻委員 だけど,埼玉みたいに27%じゃあ,そんなところまで与えたって投票するかどうかわからないよ。
○菊田委員 どうしてやるかといったら,刑務所から郵送で送るのですよ,投票を。簡単なことを言っているのですよね。だから,これは議論してもらう必要があると思うのです。
 それから,健康保険は別にしましても,刑務作業でも,要するに刑務所に入ってくると厚生年金なんかもストップですよね。出てからは,希望があれば続けることはできる。
○滝鼻委員 給付じゃなくて負担の方。どっちの方ですか。
○菊田委員 もちろん,給付も負担も。
○滝鼻委員 負担はできるのでしょう。
○富山調査官 国民年金ですけれども,これは掛け金を掛けることができます。
○菊田委員 家族がいなかったらだめでしょう。刑務所内でできますか。
○富山調査官 掛け金を掛けることはできます,本人が。
○菊田委員 支給はないわけね。
○富山調査官 給付はとまります。というのは,国が生活の面倒を見ているわけですから,給付はとまります。ただ,国民年金の掛け金を掛け続ければ,将来の掛けた期間としてはみなされますので。
○菊田委員 それは,家族がいない場合でも,自分が刑務所内でそういう支払うシステムができているわけ?
○富山調査官 支払うことはできます。要は,社会保険事務所にお金を宅下げするだけですから。
○菊田委員 だけど,それは刑務所がやっているわけですか。
○富山調査官 認めますよ,やること自体は。今どこの刑務所でも,「所内生活の心得」に,そういう掛け金を掛けることができますということを説明して書いていますので。ただ,希望者は非常に少ないです。
○井嶋委員 賞与金だけではちょっと賄えないですね。
○富山調査官 賞与金だけで払おうとすると,金額的に難しい面はありますね。
○井嶋委員 やはりそれは家族の差入れがないとだめですね。
○菊田委員 先生は,日本国民は選挙権を与えた方がいいと思いますか。
○井嶋委員 そんなことないですよ。それは制限されるべき。それは考え方ですね。
○宮澤(浩)会長 被選挙権の方は問題かもしれないけれども,選挙権はあってもいいだろうなと僕は思いますけどね。
○滝鼻委員 僕は今のままでいいと思うけどね。
○菊田委員 選挙違反で刑務所へ入ったのを,選挙権を与えるというのはどうかと思いますけどね。
○宮澤(浩)会長 もう一つ,これもやはり刑務作業にかかわる根本的な問題なのだろうけれども,今例えば作業に対する賞与金とかという問題にしても,それから専門のカウンセラーとかそういうような人をパートタイムで,やはり重点刑務所にそういう人のための予算をどうのこうのなんていう,こういう提案をするとなると,やはり金の問題が絡むでしょう。まさか調定額からそれの計算で,もしそういうふうにして特別なことをやってお金がふえるとすれば,作業をもっと増産しなければならないとかって,それとの連動はないのですね。
○富山調査官 歳入と歳出は完全に区別されてしまっていますので。
○宮澤(浩)会長 そうすると,財務省との交渉ということになるわけ? こういう新しいプロジェクトになって,もしかすると職員が必要になるかもしれないし,もしかすると特別なそういういい人たちを集めるような刑務所に外部から専門のカウンセラーとかそういった人たちを,特別予算を組んで我々の提案を実現しようなんていう場合,それはもう……。
○富山調査官 お金の関係は当然財務省ですし,あと,人を増やしてほしいという話になれば,総務省の方にまたお願いしなければいけないと。
○成田委員 これをやり出したときに,仕事をして,刑務作業の結果生み出される富,それと,そういう一つの生産という面で見ていくと,ある刑務所に行ったときに,今,入札で負ける,生産性が非常に低いから,そういうようなことをちょっと聞いたことがあるのです。要するに,印刷なんかやっていたって,大日本なり何なりの大きなところでやっていると,今はそれだけの設備があれば非常に安くできる,我々のところでしこしこやっているのは仕事を見つけるのが大変ですよとか何とかいうふうなことを聞いたような気がするのだけれども,やはり何かそういう視点から一つ見てみたらどうなのかなと。刑務所というのは,今,全部持出しでしょう。
○富山調査官 刑務作業の収入というのが,大体,今,年間100億円弱です。100億円弱,刑務作業の製品を売ったりしたお金が国に入ってくるのです。今は100億円ないと思います。100億円弱です。
○成田委員 100億円が入っているわけ?
○富山調査官 入っているのですが,ただ,行刑運営にかかっている費用というのはとても100億では,全くけたが違います。何千億かかかっていると思いますので。ですから,とても自給自足体制というのはできておりません。
○成田委員 だから,すべて持出し,税金だよね,はっきり言って。
○富山調査官 そうです。
○成田委員 だから,何かそういうような視点から見ていく目も必要なんじゃないかなという気がしたのです。
 例えば,私は,一つの刑務作業の中で,非常に社会が求めている一つの仕事,そういう仕事があるんじゃないかと。そういうものにこの人たちを参加させるだとか,何かそういう……。
○菊田委員 公園掃除とかそういうことをおっしゃるのですか,具体的に言うと。
○成田委員 公園というか,私は……。
○宮澤(浩)会長 あるいは構外関係。
○成田委員 そういうものが放置されているでしょう。だから,そうすれば一つの国の富の生産に参加することができるから。そういうことを考えれば,一つの意味が出てくるんじゃないかなと。
○菊田委員 もともと刑務所なんていうのは金のかかるところだし,税金で動けているのだから,問題は,再犯率をこんなに出しているというのが問題なので。
○成田委員 例えば監視のために外に出ていったときに危険だ,だから大変だということを言うかもしれないけれども,しかし,そういうようなことをやる警備体制をとって,ひとつシャバで働かせるだとか,何か,ちょっと……。
○菊田委員 それは,先ほどから出ている刑務作業を例えば短縮すれば,そういう方向でも時間を使うことも十分出てくるわけですよ。
○成田委員 そういう気が私はするんです。この人たちは,本当一人一人,7万人に幾らかかっているんだと。それで,7万人をやるために何千人ですか。
○富山調査官 職員ですか。職員が今,行刑ですと約1万7,000人でございます。
○成田委員 1万7,000で7万人。これからまだ増えていくわけでしょう。
○富山調査官 1万7,000人では,正直申し上げて,とても足りないと思っております。
○成田委員 大体これはキャパシティオーバーだものね。だから,そういうような認識の上に立って,何か……。
○井嶋委員 成田委員おっしゃるように,刑務作業そのものというのは,明治以来,鉄工とか木工とか靴とか,決まったものをずっとやってきているのですが,どれだけの意味があるのかということを考えますと,むしろ社会に還元できるような作業とか奉仕とか,そういったものを入れるべきだ,それを刑罰としてやらせるべきだということだと思うのです。
○滝鼻委員 僕はそっちの方です。刑務作業を多様化するより,刑罰を多様化した方がいいと思う。ここで議論する話じゃないけれども。
○井嶋委員 それで,イギリスあたりで社会奉仕命令とかいうような命令で,週何回やってきなさいという命令で刑務所に入れずにやるとかいう刑罰もあるわけですが,刑務所に入れていても連れていって公園の掃除をさせるとか,あるいは老人ホームへ慰問するとか,何でもいいのですが,要するに社会の役に立つことを作業としてやらせなさいというものをこれから考えていかなければいけないだろうと思うので,そういう意味では,作業の多様化というのか,そういうものは一つ提言しておかないといけないと思います。ただ,どこまでできるかというのは,今おっしゃるとおり,見る刑務官の問題もありますし,どれだけ社会が受け入れるかという問題もあります。でも,やはりそういう提言をしておかないと,そういう方向へはなかなか行かない。旧態依然とした,木工だ,鉄工だということだけやっていたのではどれだけの意味があるのかということだと思いますから,おっしゃられたことは正に正しいことだと思います。
○成田委員 考えていく時代じゃないのかな。
○井嶋委員 先端的な外国ではもっとやっているわけですね,そういう刑罰を。スウェーデンあたりでは,北欧あたりでは非常に開けた刑罰をやっていますから。
○菊田委員 今日なんかもカリフォルニアで大火事が出ていますけれども,受刑者が伐採のために……。
○井嶋委員 あれは少年院の生徒を出しているようですよ。
○滝鼻委員 作業の多様化とか刑罰の多様化はもちろん僕は大賛成だけれども,それに対して労働の対価を払うというのは,僕は消極説ですね。
○井嶋委員 菊田さんの意見に「賃金制」というのが書いてあったけど,僕も反対です。
○菊田委員 それは名目なのです。実質的には余り変わらないです。
○滝鼻委員 衣食住を国が面倒見ているわけですからね。
○井嶋委員 やはりそれだけ費用をかけてもらっているわけだから,成田さんがおっしゃるとおり,少しは公益で働いてもらう。
○滝鼻委員 賃金という以上は最賃法を守らなければならなくなるでしょう,そうなると。
○井嶋委員 そんなことしたら大変なことです。
○宮澤(浩)会長 多分,理想論なんですよね,どこの国も。ドイツだって,連邦の行刑法ではかなり高いものを与えるように言っておきながら,後ろの方の規定でもって当分の間10分の1にするとかというふうにして。というのは,連邦国家だから州の財政とかかわるから,とてもそんな貧乏なブレーメンだとかザールでは払えないでしょう。だから,そういう意味で,参議院の大反対があるのですよ,いつも。建前論は日本で言う衆議院の法律をつくるときには生かすのだけれども,やがて参議院で削られるということを思いながらやったりしているのですよね。
○滝鼻委員 だけど,外国に行けば,外国というのは自分たちのいいことしか言わないからね。
○宮澤(浩)会長 そうなんです。
○滝鼻委員 日本にまたこういう使節団が来れば,日本のいいことしか言わないわけでしょう。名古屋でこんな事件がありましたなんていうことを積極的に言うわけでもないだろうしね。
○菊田委員 ただ,賃金制については,先ほどから出ているように,国連基準なども賃金制を採用すべきという勧告をしていますから,その中身がそんなに金額は変わらないと私は言っているのですけれども,要するに働いたら賃金をあげるよというのは人間の本能ですから,今は働いても報奨金だというのとはちょっと違うわけですよ。
○成田委員 飯を食べさせているのだから,食費も取ると。
○菊田委員 その賃金から事実上若干引くことは,これは仕方ないですよ。
○滝鼻委員 そこから飯代を引くわけ?
○菊田委員 その考え方はまたいろいろありますよ。
○滝鼻委員 飯代と衣服とか,そういうのを引いていくわけ?
○菊田委員 とにかく刑務所というところは,自分の意思にかかわらず連れてこられたのだから,犬でもそうでしょう,野犬を連れてきたら飯食わせるのは飼い主の義務ですよね。だから,それは,本人が払おうが払うまいが,連れてきた方が払うという議論は根本にあるわけですよ。
○井嶋委員 それは違いますよ。それは悪いことをしたから来るのであって。
○菊田委員 悪いことをしたのは悪いことですよ。ただ,自由を拘束するという刑を受けるわけだから。
○滝鼻委員 社会から隔離するというのが刑罰そのものなんだから。意思に反して連れてこられたから,その働きに対して賃金払わなければならないと,そういう理屈にはならないよ。
○菊田委員 だから,そこのところなんですよ。名目はね。
○滝鼻委員 だから,本当に賃金というのなら,労働の対価を払うのだったら,そこから麦飯代も作業衣もパンツも全部払いなさいと。
○成田委員 住居費。
○菊田委員 住居費と言ったら,それは話にならん。
○成田委員 だって,悪いことしたから,懲らしめるために社会的に隔離するわけでしょう。それで,これがやはり更生するように。
○滝鼻委員 住居費は,社会防衛上必要だから隔離しているのだからいいにしても。
○菊田委員 だけど,国際的には賃金制を採用するというのが勧告ですから。名前を「賃金」にすればいいのですよ。それで,事実上働けば金もらえるなと。額は小さくても。そういうこと必要だと思います。
○成田委員 賞与という言い方をする。
○富山調査官 今は「作業賞与金」という言い方をしております。
○菊田委員 同じ意味だ。
○滝鼻委員 恩恵ですね。
○富山調査官 そういうものだと位置づけておりますので,法的に。
○井嶋委員 位置づけてはいるけれども,ちゃんとさっきの計算にあるように,時給と時間で計算しているのですから,実質は賃金なのですよ。
○滝鼻委員 だけど,腕のいいのは高くなるのでしょう。そうしたら,能力主義を入れているわけだ。
○井嶋委員 極めて近代的な賃金体系なんですよ,実質は。問題は,単価が,時給が安いのですよ。
○滝鼻委員 賃金考課もやっているわけだ。そういう意味では賃金かもしれないね。
○井嶋委員 国民の意識を裏打ちした財務省がどう言うかという問題です。
○滝鼻委員 ただ,これには税金はかからないんだね。
○富山調査官 かかるほどの金額ではないです。
○滝鼻委員 何百万もらって帰るという人がいる。
○富山調査官 それは20年ぐらいかかってためた100万ですから。
○滝鼻委員 単年度から言えば大したことない。
○富山調査官 とても税金のかかる額じゃないと思うのですよね,今のやり方でしたら。
○井嶋委員 僕は賃金制は反対しますけれども,実質はそういうことですからね。実質は賃金と言ったっていいのですよ,国連での説明として。国連に説明するときに,賞与金だなんてまともなことを言うからいけないので,こういう計算して時給はこうでこうやっています,加算金もしていますとやれば,立派な賃金なんですよ。だから,もうちょっと説明をうまくやりなさいと。
○宮澤(浩)会長 夜だけ施設に置いて昼間働くような,そういうところにいるのは賃金らしきものを出すので,普通……。
○滝鼻委員 残業もないのだから。
○菊田委員 ただ,昭和初年の工賃の1日の比較をしますと,今の賃金というのは何十分の1と少ないのですよ。だから昔は,割合からいくともっと出ていたということだけは,そういう証拠はあります。
○井嶋委員 だから,ここの審議会として提案するのに,賃金の時給の単価をもう少し見直してやったらどうだということを言っていいかどうかという問題ですが,成田先生,どうですか。
○成田委員 私は,それは世論が許さんのじゃないかな。悪いことして入れているのに金やっているのかと。私なんか知らなかった。飯も食べさせて……。
○井嶋委員 ただ,安過ぎるというアンケート結果が出ていることは間違いないですがね。それにどう答えるかということですよね。だから,意見として,少しは時給の見直しを考えてやったらどうかということを言うかどうかですよ。これは時々は予算要求しているのでしょう。
○富山調査官 時々というか,毎年予算要求はしております。
○滝鼻委員 キャピックの売上げを充てているわけではないんでしょう。
○富山調査官 違います。100億弱というのは国に入る収入です。キャピックの売上げとは全く別です。
○滝鼻委員 これは国へ行っちゃうわけ?
○富山調査官 はい。
○井嶋委員 だから,全くリンクしていませんよ。
○滝鼻委員 特定目的財源ではないんだ。
○富山調査官 ではないです。ですから,一般歳入として国に入ります。キャピックはそれとまた別の話ですので。キャピックは,材料を買ってきて,それを国に預けて,国が加工して返すのです。キャピックはそれをやってもらって製品ができますので,加工賃を国に納めるのです。
○滝鼻委員 だけど,みんな受刑者が作っているのでしょう。
○富山調査官 そうです。
○滝鼻委員 それを目的化するのはまずいのか。それで報奨金を賄うというのはまずいわけ?
○井嶋委員 まずいでしょうね。
○滝鼻委員 何でまずい。
○井嶋委員 そういう哲学じゃないのでしょうね,矯正というのは。
○滝鼻委員 そこでバランスとっちゃいけないわけ?
○宮澤(浩)会長 僕の記憶によれば,たしか材料費を国が出していたのを出さなくなったので,そこでああいう組織を作って,それで,要するに矯正協会の信用で材料費を銀行から借り入れるか何かして加工して,半年後か9か月後にそれを戻して,その差額を材料代に充てるとかというようなことを聞いたことがありましたけどね。何か爪に火をともすような話で,こんなことまでなぜ法務省が考えなければいけないのかななんて思いながら,キャピックというものを設立するときに考えましたけどね。
○滝鼻委員 しかし,あれもだめだ,これもだめだじゃ進まないけどね。
○宮澤(浩)会長 それはそうです。
○井嶋委員 そうなんですが……。
○滝鼻委員 ただ,やはり刑罰の基本は忘れないようにしないと。ここは別に「ものづくり大学」でも何でもないわけだからね。
○井嶋委員 物をつくる習性を付与するところであって。
○滝鼻委員 改善更生のための手段であってね。
○井嶋委員 決して物を生産することが目的ではないですからね。
○宮澤(浩)会長 おそらく必ず事務当局から,適した人が少ないのですという話が出てくると思うのですけどね。やはり6万人からの仕事をしているのに,職業訓練には1年にたった2,000人ぐらいしかないというのは,ちょっとやはり欠けるなとは思います。やはり職業訓練に,刑務作業しているのと同じ賞与金を払っているということもあるかもしれないけれども,もうちょっと職業訓練の対象者の数を増やしたらどうかなと思うけど。何か聞いてみたら,例の大井作業所というのが今治にあるのですね,松山の。適した人がいなくなってきたということを聞きましたね。
○井嶋委員 構外作業所。造船に連れていっているのです。
○滝鼻委員 そうすると,さっき菊田先生が言ったように,刑務所に入っている人はそういう資格とれないのだという縛りがかなりの業法にあるのかもしれないね。それで資格とれる職種が狭くなっているんじゃない。
○菊田委員 それ以前に,やはり今の刑務所は刑務作業中心ですから。本当に選ばれた者だけが,例えば高校以上出てなきゃいけないとか,そういう条件もあるし,選ばれた者だけがやれるんですよ。だから,普通の受刑者は夢の夢ですよ,講座を受けるということは。そういうような状況です。
○成田委員 今後,要するに農業問題なんかが出てくるようなものを,やはりこれだけのコスト,低いコストを使えるのだし,これで……。
○滝鼻委員 百姓? だけど,やはり都会の刑務所じゃ百姓無理ですよね。都会の刑務所だったら百姓無理だから,北海道とか……。
○成田委員 私は,何か役に立つ,生産的なものを見つけることが必要だと思うな。
○井嶋委員 ずっと昔から大きな農場を持っている刑務所がありました。しかし,だんだん縮小されているのです。これはやはり,とにかく警備が大変なのですよ。
○滝鼻委員 それもあるでしょうね。
○井嶋委員 今,農場をやっているところというのは非常に少なくなっています。
○富山調査官 少なくなっていますよね。というのは,刑務所が都会地から出ていけと言われて,やむを得ず農場に刑務所を建て直したり,そうすると農場が消えちゃうのですね。
○井嶋委員 農場をつぶしたりしたこともあるしね。
○宮澤(浩)会長 喜連川は,合宿所みたいなのをやめて,通わせているらしいですね。
○富山調査官 今はそうしています。
○成田委員 しかし,何か考えていったらいいよね。
○井嶋委員 私は,おっしゃることもあるから,アイデアとしては,例えば分駐所みたいなものをつくって,そこへ泊めさせて,そこで管理しておいて昼間働かせる。それは農業も含めて,作業の見直しというのはあってしかるべきだと。
○宮澤(浩)会長 今日は本当に活発にいろいろな御意見が出て。
○井嶋委員 賞与金上げろという要求は,余り意見がまとまらなかったけれども。

2.その他

○宮澤(浩)会長 そうしますと,次回は,仮釈放というのは保護局の問題でもあるのだけれども,こういうときには保護局の方に来ていただくようなことはできますか。
○富山調査官 ちょっと話をしてみますが,かなり急な話なので,向こうがどのくらい準備ができるか。
○井嶋委員 これはやはりこちらがアクションを起こすことから始まる手続ですから,こちらの物の考え方を決めるという意味では……。
○宮澤(浩)会長 聞いていただくだけでもね。
○滝鼻委員 さっきから分類の話が出ていますよね。処遇の在り方の第2ラウンドをやるわけでしょう。そのときに,すべてのことがその分類の累進とか分類とか,そういうことをもう一回再議論しないと結局だめなんじゃないのかな。
○井嶋委員 全部リンクする。
○滝鼻委員 ちり紙どうしたとかパンツがどうしたとか,そんなことよりは,僕はそっちの方が重要だと思うね。ここでそれを誤っちゃうと,ほかのところがみんなガタガタいっちゃうから。だから,抽象的に菊田先生は今おっしゃっているけれども,それが本当にそのとおりいくのかどうか僕にはまだ分からないから,それはきちんとした議論をしなきゃいけないと思うね。
○宮澤(浩)会長 ですから,次回の場合には,ここにありますように,第2ラウンド処遇制度の問題,これは非常に重要な意味を持つだろうということはありますね。
○井嶋委員 結局,2日間,第2ラウンドとしてやることになっていますから。
○滝鼻委員 10日でしょう。
○井嶋委員 10日と12月1日。
○菊田委員 後のスケジュール表というのは……。
○名取課付 また後できれいにして……。
○菊田委員 やはり今おっしゃった累進処遇の問題もあるし,分類もそうですけれども。
○滝鼻委員 累進をやめようじゃないかというのは第1回か第2回の分科会でやったけれども,それをどういうふうにやるかということはまだここで議論していないでしょう。
○井嶋委員 僕は,イメージはあるのですけれどもね。
○滝鼻委員 僕はよく実態も分からないし,法律もよく分からないから,だれか考えてもらって,それに対してイエスかノーを言うぐらいだと思うのですよね。
○菊田委員 今やっている収容分類というものをまずどうするかということも,あわせて議論しなきゃいけない。
○滝鼻委員 ただ,さっき言ったように,1か所の刑務所の中にいろいろなやつが渾然といるというのは,これまた管理しにくいんじゃないの。すごい人も軽い人も一緒にいるなんていうのは。
○菊田委員 それはむしろ,それが無理ならいろいろな考え方があります。府中刑務所は規則違反者だけを入れる施設にするとか,そういうことでいろいろ方法は出てくると思います。ただ,今は,長期だとか短期だとか,そんな形で収容分類しているから,長期の受刑者でも非常に処遇のしやすい人間もいるわけだし,また別の処遇をしなきゃならない人間もいるわけで,個別化するのにはそれが一つの障害になっているわけですよ。だから,そこのところを議論しておかなければいけないですよね。
○井嶋委員 だから,施設を一回ガラガラポンして,ここは何専門,ここは何専門と分けられたら分けたいのですが,分けられなかったら,やむを得ないから一つ大きなところに分画をして,2種類のものを並存させるというのを過渡的にはやらなければいけないかもしれないけれども,将来はそういう方向に行くというような提言になると思いますね。
○名取課付 ちなみに,席上に第1分科会あてに来た投書のコピーをお配りしていますので,参考にお願いいたします。


午後5時00分 閉会