検索

検索

×閉じる
トップページ  >  政策・審議会等  >  省議・審議会等  >  その他会議  >  行刑改革会議 第3分科会 第4回会議

行刑改革会議 第3分科会 第4回会議

日時: 平成15年10月6日(月)
14時10分~16時57分
場所: 法務省第1会議室(20階)


午後2時10分 開会

〇高久会長 行刑改革会議第3分科会の第4回会議を開催いたします。
 前回までの3回の会議で,医療関係のことにつきましては,ヒアリングをしたり,皆さん方の御意見をお伺いいたしましたので,それをまとめて10月20日の全体会議に報告したいと思っています。なお,この問題に関しましては,本日もし予定の討論が終わりましたら,御議論を少し継続していただければと思っていますのでよろしくお願いいたします。
 本日のテーマは,一つが,「人的・物的体制の整備,職員の職務環境の改善」ということでして,このテーマにつきましては,定員の在り方,全体会議でも話題になりましたPFIの手法を含めた施設の新設の問題,刑務官の人事管理の在り方などについていろいろと御議論を願いたいと考えていますが,私はこの問題につきまして十分な知識がありませんので,最初に矯正局の方々から説明をお聞きして,質疑応答にも少し時間を割いて,それから御議論をお願いしたいと考えていますので,よろしくお願いします。

1.PFIについて

○高久会長 まず,矯正局総務課の西田国際企画官にPFIについて御説明をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○西田企画官 PFI手法によります新設刑務所の整備運営事業について御説明申し上げます。
 まず,PFIから若干詳しく説明をさせていただきたいと思います。PFIというのは,Private Finance Initiativeと申しまして,公共施設等の建設,維持管理,運営等を民間の資金,経営能力,技術的な能力を活用して行う新しい手法で,効率的かつ効果的に社会資本を整備することを目的とした,平成11年度のPFI促進法により推進されている制度でございます。全体会議において柴田官房参事官からも説明申し上げましたが,本日はもう少し詳しく御説明したいと思っております。
 現在,国,地方公共団体あるいは独立行政法人等で,合わせて108のPFI事業について検討されております。国の事業といたしましては,文部科学省と会計検査院がある中央合同庁舎の7号館の整備事業,財務省が所管しております公務員の宿舎の整備事業,あるいは衆議院の赤坂議員宿舎の整備事業など,23の事業が現在あると聞いております。
 配付しましたペーパーに基づきまして御説明したいと思います。カラーの資料ですが,まずPFIによる新設刑務所を検討するに当たりましては,検討段階から官民協働,つまり官と民がともに考えていくことをベースにしました。また民間の知識とか技術力などをあらゆる場面で活用したいということもありまして,民間アドバイザリー事業者と言われる業者と,いわゆるコンサルティング契約を結ぶことから始めておりまして,現在,業者の選定も終わりまして,契約金額,契約条項について最終の詰めを行っている状況で,早ければ今週中にはそのアドバイザリー事業者とのコンサルティング契約を締結することになっております。
 このアドバイザリー事業者とのコンサルティング契約というのは,国として初めてで分からないことを始めるものですから,大いに積極的に活用しなさいというふうに内閣府の方からも推奨されていることでございます。これからいろいろなことについてコンサルティングを受けまして,どういった刑務所にするかについて検討するわけですが,そのためには矯正として基本理念,基本構想を設定しておく必要がありまして,矯正局案を考えております。このペーパーにはございませんが,PFIを検討するに当たっての基本理念は,ペーパーの真ん中の柿色の○で書いてありますが,「国民・地域との共生」を一つの目的とした矯正施設であること。それから右側の四角いところでちょっと囲んでありますが,過剰収容緩和に効果的であり得ること。最後に,この資料の左上の方の,ピンクの丸で囲んでありますが,改善更生を大きな目的としまして,受刑者を良質な人材として再生して社会に還元するということを基本理念として考えております。
 そして全体として決定しましたことは,PFIによります新刑務所は,官民協働を最優先としたいということから,矯正部内においても抵抗のございました処遇警備部門にも民間の人材と知恵を取り込むことを検討することとしました。
 次に,民間に多くの業務を委託する方針でございますので,その業務遂行にふさわしい設備,構造も当然必要なことでありまして,通常,刑務所をつくる場合は,基本設計とか基本構想とかすべて国の方で考えるのですが,基本設計つまり建物設計の段階から民間の工夫を活用するということにいたしました。
 最後ですが,地域・国民とともに生活することも重要なコンセプトでございますので,行刑施設とは何の関係もない収益施設,公益施設の合築,つまり民間の事業者が収益を上げるための施設,あるいは地元の地方公共団体の公益施設の合築も排除しない。それも視野に入れて検討することといたしました。
 これから具体的に,このカラーの資料に沿って御説明申し上げます。
 まず,資料の構成なのですが,まず結論が上に示されています。1,000人収容の男女混合施設というのが結論でございます。
 それから,下に四つのマスがございますが,右の二つの枠が国が決定すべきこと,左側の二つが,行刑改革会議の御議論をいただきながら,これからアドバイザリー事業者からのコンサルティングを受けて決定していくことであります。したがいまして,左に記載してあります幾つかのテーマというのはまた未定でございまして,当然,今後,追加,変更があり得ますので御承知おきください。
 それから,表題のところに仮称として「社会復帰促進センター」というふうに書いてございますが,名称は従来の何とか刑務所,何とか少年刑務所ということは避けまして,収容のみならず,施設内での処遇や社会復帰にも力点を置いた行刑施設としたいといったねらいがございますことから,これまでと違う名称をつけたいというふうに考えております。
 それでは具体的にお話しします。結論は先ほど申し上げましたが,初犯受刑者男女合計1,000人規模の施設にしたいということでございます。混合施設と書いてございますが,同一区画に男女を収容するわけではなくて,男500人,女500人を各々並べて整備するイメージをお持ちください。そういった収容規模,収容対象とした理由は幾つかあるのですが,全部で五つほどございます。
 まず一つ目ですが,資料の右下に一般受刑者と比較した増加率のグラフがありますが,これを参考に見てください。増加率が大きいことが,この「初犯」を入れた理由でございます。増加率が大きいということは,これへの集中的な対応が過剰収容対策にとって重要でありますし,また効果的と考えられました。これがまず1点目でございます。
 次に第2点目ですが,当該受刑者つまり初犯の受刑者というのは保安警備上のリスクが最も少ないと考えられますので,初めてのPFIであり,収容対象からくるリスクを最小限にできるのではないかということを考えました。
 3点目,これからの新設刑務所には不可欠と思われるのが,運営目標,いわゆる政策目標と言われるものですが,これが具体的に示せるものとしたかったことでございます。後ほど御説明しますが,社会内処遇への早期移行,あるいは再犯率ゼロを運営目標としたいと考えております。
 4点目,運営目標と密接に関連しますが,効果的で柔軟対応の処遇が可能な対象である受刑者を選定したかったということでございます。
 5点目が,先ほど各々500名ずつと申し上げましたが,この500名が確保できるという裏づけがあったということでございます。なお,対象者は男子については初犯であることに加えて,帰住予定地,つまり釈放後,帰る場所がはっきりしていて,改善更生の度が強いという幾つかの条件を設定しましたが,女子につきましては,初犯であることだけを条件といたしました。これまでの女子の刑務所というのは,栃木刑務所を視察に行かれたと思うのですが,初犯も累犯も,長期も短期もすべて混合の施設しかございません。これができましたら,初犯のみの初めての女子刑務所がつくれるのではないかというふうに考えております。
 以上5点が,こういった収容対象を選んだ理由でございます。
 次に,右の二つのマス,「過剰収容対策」部分について説明いたします。上段は,ここにいろいろ書いてございますが,単にこれまでの施設をつくって,刑務所をつくって,入れる場所をつくるというだけの,単なる収容能力を増強するといった従来の過剰収容対策とは違いまして,少しソフトな面も加味したいということでございます。つまり,今回考えております施設におきましては,質の高い処遇を柔軟に実施することによりまして,早期に社会内処遇へ移行できる,言いかえれば可能な限り仮釈放を早めて,早期に社会復帰をさせやすいということ,そして再犯率ゼロ,この二つを目標といたしまして,これを運営目標と考えております。これによりまして収容を効率よく回転させることができますし,再犯,つまりリピーターをなくすことができますと刑事政策全般を活用したという形になりまして,収容定員は1,000人でございますが,それ以上の過剰収容緩和策が講じられるのではないかと考えておりまして,これを大きな特徴としたいと思っております。加え,これを運営目標,政策目標としまして,国民あるいは外部からの厳しい評価とか政策評価を受けることを容易にしようとするものでございます。
 次に,下段なのですが,先ほど申しましたことの繰り返しになりますが,収容対象をどう選定したかというものでございます。グラフは過去5年間の新受刑者,つまり新たに入所してきた受刑者の数の増加率を比較したものでございます。その中で伸び率が大きい男女初犯受刑者に着目し,基本的に増加率の高いこの受刑者にターゲットを絞りまして,それによって有効な過剰対策は講じられるのではないかということでございます。先ほど最初に申し上げましたが,今回の施設においては,見方を変えれば,業務を民間委託することにおけるいろいろな種類のリスクが考えられますが,これが軽減できて,柔軟な処遇の実施も可能になる受刑者ではないかというふうに考えております。
 次に,左側の二つのマスを御説明いたします。これは新設刑務所における幾つかのテーマを例示したものでございまして,特に上段につきましては,行刑改革会議からの提言もいただきまして,アドバイザリー事業者のコンサルティングを参考にしながら今後検討することとなります。
 まず下段ですが,新施設においてはどういった運営をしようかというものでございます。「地域・国民と共生する」ということを命題にしておりまして,これを大切にしたいということから,まず前例のない収益施設,公益施設をあわせ整備することも視野に入れたいということ。それから処遇警備にも官民協働を反映させること。ただ,この点につきましては誤解されがちなのですが,アメリカやイギリス系の包括的な民間委託,いわゆる民営刑務所と言われるものは考えておりません。フランスとかドイツのような大陸法系に多く見られますコアの部分につきましては,国の方で留保いたしまして,部分的な混合運営型の施設をつくりたいと考えております。
 もう一点,IT技術の積極活用ということですが,これにつきましても,これから民間事業者の提案があれば大胆に業務全般にIT技術を活用していきたいと考えております。これらはPFI事業には不可欠で,非常に重要であります民間企業の投資意欲の刺激というような意味もございます。
 次に,上段です。これは具体的にどういった処遇を行うかというものでございますが,処遇につきましては,各分科会において活発な議論が行われておりますので,具体的な方針を決定するには至っておりません。ただ,矯正局といたしましては,人材の早期社会還元ということを目標としておりますので,例えば社会に対する贖罪,償いといった意味からの点字翻訳等の社会奉仕的な処遇ができればと,あるいは良質な労働力としての人材の還元も考えたいと思っておりますので,公益性の高い職業訓練等については,できれば実施させていただきたいというふうに考えております。
 ただ,これからの行刑改革会議の議論を踏まえつつということでございますので,まだ決まっておりませんが,斬新で実施可能な民間からの創意工夫も期待したいというふうに考えております。
 もう一つ,今回考えております刑務所というのは,男子500人,女子500人ということでございますので,当然,勤務する職員も女子半分,男子半分ということになります。ですから,共通業務につきましては双方が足りないところを補い合い,また持ち味を十分出し合ってやればいいのではないかと考えております。どうしても刑務所というのは男子刑務所は男子ばかり,女子刑務所は女子ばかりといういびつな人員構成になるのですが,バランスのとれた人員構成にしまして,男女共同参画の勤務ができればいいなというふうに考えております。
 いずれにしましても,今回考えております施設は,基本構想から建物の基本設計,建築,運営管理に至るまで地域・国民とともにつくり上げることを基本方針としておりますので,御援助いただけるものは素直に受け入れまして,スタートからゴールまであらゆる面において地域・国民の目線で実施に移していきたいと考えております。
 現在の作業状況とこれからの見込みなのですが,先ほど具体的にファイナンスをどのようにして銀行から受けるか,法律上どのような問題があるかより安価で効果的などんなアイデアがあるかといったことをアドバイスしてもらうためのコンサルティング契約というものを申し上げましたが,そのアドバイザリー業者との契約を今やっている真っ最中でございまして,これが終わりましたら,本年中に,12月までには候補地,どこにつくるかということを決めまして,来年3月に実施方針の策定,公表,これは具体的に刑務所PFI事業の基本的な考え方を発表するという手続なのですが,それをやりたいと考えております。この実施方針の策定,公表というのは,本年3月の規制改革会議の関係で官製市場の開放,つまり,官の,役所の市場を民間に開放するということで発表せよという閣議決定がございまして,それにも共通した策定,公表になるということになっております。うまくいきましたらば来年中に予算要求いたしまして,平成17年度には契約をし,平成18年,19年度に建物の完成と収容の開始に至りたいと考えております。
 私の説明は以上でございます。
○高久会長 どうもありがとうございました。
 それではいろいろと御質問があると思います,どうぞ。
○野﨑委員 集禁化というのが,よく分からないのですが。
○西田企画官 集禁というのは,集めて拘禁するという意味でございます。これは矯正独特の言葉でございます。
○宮澤(弘)委員 こういう考え方で仕事を進めるというのは,各フィールドともにいろいろみんな研究しながらやっているのでしょうね。例えば学校だとかマーケット,そういうものをPFIのテクニックを使ってやっていくということがあるだろうと思いますが,刑務所については相手がかなりの勉強と知識がなければ,私はできないと思うのですが,その辺はちゃんとできそうなのですか。
○西田企画官 先ほど申しましたアドバイザリー事業者というものの選定に際して,そのアドバイザリー事業者というのは,国側だけではなくて,PFI事業者にもコンサルティングするようになっているのですが,今選定して終わっていますのは,イギリスのいわゆるPFIの刑務所のコンサルティングをやりましたプライス・ウォーターハウス・クーパーズという世界的なコンサルティング会社,その日本法人に決まっておりまして,その法人は,イギリスでPFI刑務所をつくったノウハウを持っておりますので,少しは力になってもらえるのではないかと考えております。
 それから,アメリカとイギリスとは今回考えております刑務所のシステムが全然違いますので,それはアドバイザリー事業者だけではなくて国の当方も相当勉強しなければいけないというふうに思って,ここ2~3年,いわゆる英米法系の刑務所とか,大陸法系のフランス,ドイツの刑務所も調査に参りまして,こちらはこちらでいろいろ勉強させていただいております。
○宮澤(弘)委員 分かりました。要するに,いわゆる監督官庁ですね,矯正局の方が,いわば監督官庁になりますよね。ですからアドバイザリー事業者よりも知識なり技術なり見識なりなくては,それがうまくいくとも思われないので,その辺はかなり数年,十分勉強してこられたのですか。
○西田企画官 今回のPFIで一番考えなければいけないことは何かというと,刑の執行ということ,内容が刑の執行部分に相当部分民間の力を入れていくということでございますので,いかにリスクの分担を事業者と国がきれいに明確に持ち合うかということが非常に大事な問題になってくると思います。ですから,そこのところを,当方が勉強不足で,リスクを余分に持ちますとうまくいきませんし,かといって,民間の方にリスクを持たせ過ぎてもうまくいきません。民間はやはり,利潤の追求型にならざるを得ませんので,いわゆるリスク分担ということを一生懸命,当方も勉強して,はっきりさせておかないと,10年,20年続く事業でございますので,それが最大の懸案と申しますか,ポイントというふうに私は考えております。
○宮澤(弘)委員 あなたは,失礼ですが,この種の仕事を今までおやりになったことがあるのですか。検事さん御出身ですか。
○西田企画官 いえ,違います。外国のことは私のパートナーが勉強しているのですが,私は予算のこととか施設の建設のことなど,いろいろな契約のことを20年ばかりここでやっておりますので,全部は分かっておりませんが,多少は経験がございます。
○江川委員 今の話の続きなんですが,民間となると収益をどう上げるかということにすごく関心があるわけですね。今,こういうものができたきっかけというのは,人権に関する問題から出発したところですよね。収益を上げるということと人権を維持するということは,必ずしも反発することばかりではないですが,どちらが中心になるかということで随分やり方が違うと思うのですね。今は職員の方もそうですし,刑務所の収容者の人権的な問題を何とかしなければいけないということになっているわけですね。どうもそこのところが,どういうふうに担保されるのかという不安があります。
○西田企画官 あくまで,今回できる施設の運営は国がやります。国がやりまして,民間の事業者から借りる知恵というのは,例えば総務部系統の給与の計算,物資の購入,施設の維持管理,あるいは相手によるのですが,受刑者の食事の調達などは手を広げてやってもらおうと思っています。しかし,受刑者に対する直接的な実力行使の場面ですとか,懲罰を科したり,銃の装備をしたり,そうした権力的な作用については民間にやらせるつもりは全くございませんで,それはあくまで国が行おうと考えております。ですから,受刑者の人権にかかわる問題については,利潤を追求する民間の事業者には補足的なことはやってもらうことはあるかもしれませんが,あくまで国がやるということで考えています。処遇,警備の部分についても,もし警備の部分でやってもらえる部分があるとしても,受刑者を直接制圧したり,直接見たり,そこまでは法律上も難しい問題がございますので,そこまでお願いするつもりはございません。
○宮澤(弘)委員 今のことに関連したことですが,私などは古いのですが,公権力の行使という概念が昔からある,今でもある。そうすると,先ほどからのお話で,公権力の行使に当たる部分を民間がやるということはないのですか。あるいは公権力の行使という概念を変えるというようなことがあるのかもしれないが,どうも古い人間は,公権力の行使というのはおよそ民間がそれを行使できないのが公権力の行使だと思っているわけです。ですから,その辺はどう考えていますか。
○西田企画官 公権力の行使という部分をどうとらえるかということもございますが,例えば刑務所であれば外塀がございますよね,高い塀が。あの周辺を警備して回ったりすることというのは今,民間の事業者が,ガードマン,警備会社がやっていることでございますから,こういったことについては民間にやってもらっても差し支えないと思っています。
○宮澤(弘)委員 警備会社は逮捕権というのはないですよね。
○西田企画官 ありません。ですから,あくまで通常の警備会社が道路で交通整理をしたり,あるいは人員の雑踏整理をしたり,そういったイメージのままでやってもらうことになります。それ以上のことをお願いする場合には,警察庁が所管しております警備業法とか法律の改正をしませんとできませんので,今警察庁とも,どこまでできるのかとか,あるいはここまでお願いするのであれば,どういった法令の改正があるのかなどを協議しておりますが,まず,大切なことは,公権力の行使という概念をどういうふうにきっちり整理するかと。今,国民の方は,刑務所でやっていることはすべて公権力の行使だというふうに思っておられますから,その中でも例えば,今はもう始めていますが,護送業務の運転手の運転業務だけを民間に委託しても,これは公権力の行使にかかわるかもしれませんが,それほど非難はないことだと思っています。ただ,例えば護送バスの中で運転は民間の人にやってもらうが,バスの中の警備についてはあくまで国がやるというふうに,先ほど私はリスクの分担をどうするかという話をしましたが,そういったように,一体どこまでを国がやるべきで,どこからを民間の人にやってもらえば良いのかというのをこれから一つずつ決めていきたい。それによって,もし必要があれば新たな立法も考えなければいけないと。
○宮澤(弘)委員 私はどうも必要がありそうな気がします。専門家でないから知りませんが。
○西田企画官 例えば,今もし立法が必要になるとすれば,刑務所の業務について民間委託はできるのだという根拠をまずつくってやること。それから,民間の事業者が入ってきますので,秘密の保持はどのように担保するかということ。あと,みなし公務員の制度で,中でやったことは公務員と同様に扱わなければいけません。そういったことについて,一体これから民間の方がどこまで事業をやってくれるか,まだ決まっていませんので明確なことは説明できないのですけれども,その結果によっては新たな立法も当然検討しなければいけないというふうに考えております。
○高久会長 先ほど銀行云々とありましたが,建物をつくるときのお金は国が出すのですか。
○西田企画官 今回のPFI事業のことでお金の出し方,いわゆる予算の出し方は3種類ございまして,まず一つは,建物を建てる。これは国の予算でやりましたら,1,000人規模の施設をつくる場合には約120~130億円のお金がかかります。今,法務省の予算は全部で200億円しかございませんので,120億円の予算を単年度で使えば,後が何もできないということになりますので,事業者が120億円の経費でまずつくっておいて,PFI事業の場合にはこれを例えば20年ぐらいの年次で償還していくというような形になります。
 それから建物をつくった場合には,あと維持管理が必要になります。光熱水費ですとか,設備が古くなれば更新をしなければいけません。これは毎年毎年必要になってきます。これはまた別途の予算措置でPFI事業者に支払うことになります。
 以上二つは毎年定額でPFI事業者に支払えばいいことです。ところが,三つ目の被収容者にかかる経費,例えば食料,被収容者の服代などいろいろな形で被収容者を収容するために必要になってくるお金がありますが,これについては,人数が増えたり減ったりすれば当然経費が変わってまいります。ですからこれについては我々で単価契約と言いますが,数が変わることによって毎年PFI事業者に支払うお金が変わってくる,こういった3種類の予算の経費の支払い方をして,PFI事業はこれから始まっていくものだというふうに考えております。
○広瀬委員 二,三,お尋ねしたいのですが,法務省が記者発表する2~3か月前に,小説で民間刑務所を実現する,これはもうギャグなのですが,そういう話があって,それは刑務所の受刑者を安い労働力で働かせることができる。そこに魅力を感じてというものなのですが,民間のお金がここに入ってくるその魅力は一体何だと思いますか。
○西田企画官 まず,建物を普通につくれば120億円必要になってくるのですが,そういった大きな建物を国がつくる場合には少なくとも5~6年かかります。というのは,一度に予算措置はできませんので。5~6年かかって120億円のことがあった場合に,民間ですと2~3年でつくり上げます。そうすると,民間は同じ金で,国よりもコストが安く抑えられますので,建物について言えば民間にはそれだけ利潤があると思います。国側にとってみますと,同じお金を支払ったとしても,早くできるというメリットがあります。
○広瀬委員 そうしますと,例えば建物だとすれば,民間にそういうものをつくってもらって,国が,法務省が年間幾らで借り上げるということとほとんど同じですよね。つまり,例えばテレビ局は金持ちではないのですが,120~130億円で刑務所をつくって,土地は借りると思いますが,それで法務省に年間幾らでお貸ししますと。これは国営で,しかし,民間の資本を使ってということになりますよね。これが一つの形態だと思います。
 それから今度は,先ほどからおっしゃっている話の中で,こういう部分は民間でできるのではないかというのは,大体民間委託というか業務委託ですよね。その中に公権力的なものも若干混じるかもしないが,これは今の刑務所でも,官民協働とか言わずに,民間に業務を委託していくという格好でできますよね。それとは質的にどこが違うことになりますか。
○西田企画官 現在でも民間委託というのは相当やっておりまして,いわゆるアウトソーシングという形で数億円のお金をかけてやっております。今回やろうとしているのは,建物の建設の関係,将来的な維持管理,それと,今やっているアウトソーシングすべてを含めて一つの事業者にやらせることによってスケールメリットがございますので,安く上げたいということでございます。
 それから,今後の維持管理を業者に任せることによって,今まで国でできなかった相当な業務の機械化ができるのではないか。例えば受刑者の管理にIT技術をどんどんどんどん注ぎ込んで,今,通常1,000人規模の施設ですと,職員が最低でも250人ぐらい必要になります。250人の職員を少しでも減らすことができるのではないか。当方にとっては,そういったメリットを考えております。
 それから,ちょっと質が違うのですが,今回のPFI手法によって刑務所をつくることによりまして,少しカラーの違う,今までの従来の刑務所とは違うものをつくって,刑務所のイメージを変えて,受刑者がなるべく社会復帰がしやすいような刑務所を一つつくってみたいということがございます。
○広瀬委員 これからの刑務所はきちんと規律を守りさえすれば,もっと自由にいけるのだよ,明るいのだよと,そういうものは今回の事件をきっかけに全刑務所でやらなくてはいけないことで,新たにモデルを一つつくって,大きく変動することはないと思うのですが,再犯をゼロにしたい。再犯をゼロにすれば,その刑務所の経営者たちに利益が還元されるということであれば,一生懸命そういう工夫をしてやると思いますよ。民間に委託する,民間の活力を利用するというのは,インセンティブをきちんと与えなくてはいけない。ただそれが,法務省から年間幾らで委託を受けられるということになれば,つまりその金額の中で削ったり削られなかったりということだから,つい食費が削られたりだとか,つまりサービスの低下をもたらすようなことにもなりかねないと思うのです。それで,民間への完全丸投げはやめますよというのは,その辺だと思うのですが,そうすると本当にメリットが少ないような気がするのです。
 もう一つは,比較的初犯で,出てくる時期が確定していてということになりますと,この間見にいった市原の刑務所などは,もう既にして,国家の管理でありながら,そういう明るい刑務所の実を上げていると思うのです。そういうところと圧倒的に違うところはここだというものがないと,どうも世間に叩かれるばかりで終わってしまうのではないか。民間委託というのは,議員宿舎を民間に委託する,これなどは本当にメリットが多いのですよ。つまり,建設業者だとか再開発の事業者というのがそういうノウハウを持って,画一的な変な建物ではなくて,本当に使う方も使いやすい,しかも,一部は民間のマンション事業者に貸し出せるだとか,いろいろな工夫ができると思うのです。そういうことができない一番難しいのは実は刑務所だろうと私は思うのです。刑務所とか警官だろうと思うのです。そこを敢えてやろうというのですから期待はするのですが,もう少し訴えるものがないと,何だ,それは業務委託ではないかとか,ただの,資金を今一時的に集めたいだけではないかとか,その程度のものならば別の方法もあるわけだから説得力がないと思うのです。
○西田企画官 どういったことに最も民間が意欲があるかというのは,はっきり申しましてなかなか分からない部分がございますが,今回の仕事をして,商社とか建設業者などからいろいろな話を聞いてはいるのですが,先生今おっしゃいましたように,作業などで非常に興味を持っている業者が多いわけですね。つまり,乗り気なのは安価な労働力があるのだというところで,とにかく決まった固定した労働力があるということに,民間としては今一番興味を持っておるようでございます。
 ただ,当方,国側にしてみますと,1,000人規模の刑務所をつくるということになれば,少なくとも今すぐ120億円,多ければ150億円ぐらいお金が必要になって,なおかつ250人の職員が必要になります。今の状況ですと,毎年毎年,3,000人,4,000人と被収容者が増えておりますから,どんどんどんどん刑務所をつくっていかなければなりません。そうすると,今申しましたように,250人の職員と百数十億円のお金が必要になってきますが,これが到底間に合いません,補てんができません。ですから,今の国家予算の状況,国の定員の状況からして,そういったものがもらえるとも思っておりませんので,やはり少しでも,1年でも2年でも早くできて,少ない人数で安価な運営ができる刑務所をつくるというのは,当方にしてみると非常に大事な話でございまして,そういったことを考えた場合に,PFIというよりも民間のアウトソーシングの部分が入りますので,PPPと言われる,Public Private Partnershipと言われるような部類の事業だと思うのです。当方としましては,1年でも2年でも早く刑務所をつくるために,こういった手段も必要ではないかと。
○高久会長 「国民・地域との共生」という言葉がありますね。私は医療問題も地域との共生という事が非常に重要だと思います。現在,地域によっては非常に人が減り,経済が落ち込んでいるところでは,刑務所の新設は地域の振興の一つになると思います。PFIの方式の方が地域の振興になりやすいでしょうね。PFIにして民間的な運営を取り入れると,地域の住民の人にとって働き場所が増えると思います。
○西田企画官 刑務所の新設の話がございまして,それと相前後して,51か所ぐらいの市町村から刑務所誘致の話が来ております。この理由は,刑務所が行きますと,地域振興というか,相当な経済効果を生むものですから。
○高久会長 そのときに,医療についても地域の方に協力していただかないと。働き場所,雇用は促進してください,医療の方は専門家でやってくださいでは困るので。
○西田企画官 今回,51か所から3か所選びましたが,この3か所選んだ理由の一つが,地域に,すぐそばに総合病院などの医療施設があるだとか,幾つかインフラがちゃんとあるかとか,そういったことを考えて3か所を選んでまいりました。今その3か所が一生懸命誘致活動をしているのですが,地域の人が一緒にいないと,刑務所というのはどうしても運営ができません。それは医療のことだけではなくて,例えば彼らが何か宗教の信仰をしたいといった場合に,国はできませんので,地域の篤志家とか,そういった方々がいないと刑務所というのは成り立っていかない部分が相当ございます。そのほかにも,いろいろな行事のときに手助けをしてもらったり,いろいろな意味で地域と一緒にやっていかないといけませんし,地域から物資の購入もしませんと,遠くから持ってきても大変ですので,そういった意味で,どうしても地域・国民と共生する。そのためには,従来のような,ただ塀があって隔離された矯正施設ではなくて,もう少し地域に開かれて,例えば新聞で記者発表したときにちょっと申し上げましたが,その地域の小中学校に給食センターがなくて,あるいは地域の老人たちの食事の供給体制が整わなければ,刑務所で1,000人の給食をつくるわけですから,それもあわせて給食をつくって,そちらの方でも活用してもらえるようなことも考えたいと。そういった意味で,地域と一緒に生きていけるような刑務所にできたらと考えている次第であります。
○野﨑委員 先ほどのお話だと,実施方針を策定して,来年早々にも発表して,平成17年ぐらいから,このPFIに基づく拘禁施設を発足させたいというお話がありました。そういう考えをお持ちになるのはいいのですが,ただ,今,私どもが議論しているのは,現在の監獄制度の在り方でどこに問題があるか,どこをどうすればいいのかということを議論している。年末にその答申を出す。恐らく,期待どおりにいけば,来年から立法作業に入って,次の次の通常国会ぐらいに出すというプロセスになるのだと思うのです。その内容によっては,刑務所の在り方は相当違ってくるわけです。ですから,そういうこととの関連でいくと,来年3月,こういうものでやりますよと華々しく打ち上げたものと,これから策定される監獄法の関係というのが必ずしも結びつかないまま出てしまうことになって困ることはありはしないかということを考えるのです。ですから,来年早々に打ち上げられるのは,こういうことだってありますよというのはいいのですが,こういう方針でいきますとまで言ってしまっていいのかというのが,立法との関係での疑問の一つです。
 それから,面白いものを考えておられると思うのですが,例えばPFI手法による新刑務所だけが社会復帰促進センターになるのか。ほかのところは刑務所では,おかしいのではないかというところがありますね。そういう全体を考えていかないと,出所した人の中で「私は刑務所から出てきました」と言わないといけない人と,「私は促進センターから帰ってきました」という人と,差が出てきたのではおかしいのですね。ですから,名前を変えるなら,全体の問題だと思うのです。それはよくお考えにならないといけないのではないか。
○高久会長 この前,行かれた交通刑務所はかなり開かれたというか,重刑の人は入っていないと思います。私も「社会復帰促進センター」は非常にいい名前だと思うのですが,ここだけというよりは,初犯の人と累犯の人とを分けて,初犯の人の刑務所にはこの名前を全部つけた方がいいような気もするのですが。
○野﨑委員 男女500人ずつの混合施設ということですね。これは言うはやすく,なかなか大変なところがあると思うのです。だから混合の在り方をどういうものとするのか。例えば作業所などでは男女一緒に働くのか。それとも,ただ一つの刑務所の中で二つが分かれて入っていて,行事のときぐらい一緒になるのかとか,混合の在り方というのは随分いろいろな方法が考えられるわけですね。今まで男女一緒にしておいたらいかんという考えというのはあると思いますよね。私の個人的な経験でいくと,私が司法修習生のときに「女囚とともに」という映画をつくることになって,シナリオを書いた人や監督の人が,よく知っている人だったものですから,ついてきてくれと言われて,私は和歌山の刑務所に行ったことがあるのです。男が何人も入ったわけですね。出てきた後,もう叫び声がすごかったですね。塀の外に出ても叫び声が聞こえているのがよく分かった。その原因は何か。若い男性が割合入ったからだという感じを非常に強く持ちました。やはりこれはなかなか難しい問題だなということを痛切に感じたことがあります。
 簡単に,初犯者だから500人ずつ混合させて良いのだと言われるのは,必ずしもそう簡単なことではない。混合というのは何なのかということを少し考えないと,大変なことになるのではないかというのが,今までの御説明から受けた私の感想です。
○西田企画官 まず一つ目の,名称の話なのですが,何とか刑務所ということは当然残ると思います。それで,今考えておりますのは,全国の刑務所では職業訓練施設があるところがあるのですが,そこについては別に名前をつけているのですね。「何とか職業訓練所」とか,そういったイメージで最初は考えたい。つまり,名称をつくる以上は省令が必要になってまいりますので,そういった場合には先生おっしゃったようなことを当然考えなければいけませんので,なかなかこのとおりいくとは私も思っておりません。
○野﨑委員 もう一つ,今言われたから少し申し上げたいのですが,懲役刑の在り方というものについていろいろ議論をされる方があるわけですね。もう働かせなくていいじゃないかという人がおられるわけです。私は必ずしもそう思わないのですが。行刑というのは犯罪を犯した人に対する教育,刑罰というのは教育なのだという基本的な考えからいくと,何か教育をしなければいけない。それは授業であることもあるだろうし,作業を教えることもあるだろうと思うのですね。だからそういう意味で懲役刑というのは労働というものがあって良いというふうに私は思います。もし仮に,何もしないで,ただ3年なら3年置いておけばいいんだということになると,それは,ただ犯罪者を社会から遠ざけただけになって,決して犯罪に対する反作用としての刑罰の機能を果たしていないことになると思うのです。しかし,そこについて議論があるとすると,処遇をどうするかということも監獄法の改正に絡んでくるわけですよね。だから,構想の打ち上げ方というのは,よほどお考えにならないと,法律の改正より先に構想が上がってしまって,17年からこれでいきますというのでは困ると思いますよ。
○西田企画官 分かりました。先ほど二つ目に言われました今後のPFIの実施方針の策定,公表という話なのですが,これはどういう処遇をするかとかいう話ではなくて,おおまかな民間委託,いわゆるPFIのやり方をどういうふうにするかというのを発表するのがその時期なのです。実際に,それからPFI事業者のアイデアを受けつけてきて,どんな部分までやってもらえるかということを決めていくことになりますので,少なくとも行刑改革会議の御意見がまとまって,出て,実行に移るまではそういった発表というのは,する予定にはしておりません。
 3点目の,男女の混合ということですが,私の説明の仕方が悪かったのかもしれませんが,500人の男の刑務所を一つと,女子の刑務所を一つとやって,真ん中に総務部系統の,いわゆる共通でできる部分について一緒にやるのであって,当然,分隔はきっちりしなければいけませんので,男女の受刑者が行き来することはございません。
○野﨑委員 でも,そういうものを混合施設と言うのかという,言葉の使い方からして問題なんですね。「混合」というのは混ぜ合わせるのですから。だから,一つのところに女子の刑務所と男子の刑務所が併設されているというのは「混合」とは言わないのですね。先ほどの「集禁」なんていうのも分かりにくい言葉ですが,PRされるときには言葉を選ばれないと,あらぬ誤解を招きますよ。
○高久会長 管理に関して,運営の責任は法務省ですか。
○西田企画官 はい。
○高久会長 経済的な責任をPFIが持つ。そうでもない。
○西田企画官 すべて国が持ちます。
○江川委員 気になったのは,刑務所に行けば労働力がたくさんあると。そうすると,今の懲役の刑だと,ある種,教育と刑罰の両方の意味で働くことが課せられているわけですよね。だからこそ,もらえるお金というのも本当にわずかなわけですよね。だけど,民間がやって,収益を上げるために働かせているのだったら,ちゃんと賃金にしないとならなくなりますね。だから懲役なのか,それとも労働の対価を払ってもらうのか,そういうことについてはどうなのですか。
○西田企画官 固定的な労働があるというふうに魅力を感じているのは事業者なのですが,当方は,売り物とは考えておりませんので,あくまで処遇の一環として作業あり教育ありという中で議論する話だと思っております。
○江川委員 では,その働くということの意味づけは今までと変わらないということですか。
○西田企画官 変わりません。
○野﨑委員 それからもう一つ,江川委員の言われたこととの関連で申し上げるのですが,僕は報奨金は上げろという説なのです。しかしそれは労働の対価だと言われると,それは違うと思うのですね。つまり,衣食住を保障されて働いている者が労働者と同じものをもらったら,これはやり過ぎになってしまうわけで,それは違うと思うのです。しかし,今の報奨金は低過ぎる。世の中に復帰していくときにでも,それが余り少ないということがいろいろな影響を及ぼしているので,僕は上げるべきだという議論ですが,それを労働の対価だと言ってしまうと,それでは衣食住はどうなるのかとか,そういうことも考えないといけなくなって,難しいと思いますよ。
○江川委員 それから,初犯の受刑者で円滑な社会復帰が見込まれる人に限定とありますよね。例えば懲役何年以下とか,犯した犯罪の種類などはもう決めてあるのでしょうか。
○西田企画官 まだ決めておりません。
○江川委員 例えば麻薬,覚せい剤関係も,初犯の中にも随分そういう人たちがいると思うのですが,そういう人たちも含まれるということですか。
○西田企画官 初犯で,ほぼ3分の1が覚せい剤ですから,母数としては当然入ってまいります。ただ,今回考えておりますのは,刑期とか罪名という今の分類の仕方もありますが,そうではなくて社会復帰がスムーズにできる人,例えば社会復帰の仕方というのはいろいろございまして,帰住地,家族がちゃんと待っていて,帰るところがちゃんとしているかとか,あるいはたまたま今回の犯罪がたとえ懲役刑であったとしても,それほど職業的でないとか,そういった新たな切り口で,初犯の中でも社会復帰ということに重点を置いて選んでいきたいと考えています。
○江川委員 麻薬,覚せい剤の関係でつかまった人たちの社会復帰のために一番大事なのは,薬物依存症からどうやって離脱していくかということだと思うのですね。そうすると,もちろんノウハウは,民間のいろいろなカウンセリングの人たちがいますので,そういうノウハウを吸収するということは大事だと思うのですが,最も儲からない,最も公的にお金をサポートする必要のある対象者になるのではないかと思うのですが,そこら辺は,つまりリハビリテーションとかそういうものがどの程度きっちり行われるような保障があるのか。今一番大事なのはそこだと思うのですが。
○西田企画官 お金のこと,コストのことを申し上げますと,当方が考えているのは,年間に受刑者が一体お金を幾ら使って,今収容されているかということと比べて同等であれば,今の受刑者の処遇よりも良い処遇ができる。もし同等の処遇であれば,今よりも少しでも,1円でも1,000円でも安ければ良いわけですから,その中身を利潤の対象として見るようなことは考えていなくて,覚せい剤の話についても,もし覚せい剤の受刑者がこの施設に入るようなことになったら,正に国がやるべきことばかりだというふうに考えています。民間の人にもし力を借りたとしても,あくまでカウンセリングだとか,そのような部分をお願いすることはあっても,プログラムすべてを民間にお願いするようなことは考えておりません。利潤が上がるかどうかを考えたときに,上がらない部類の事業ですから,民間も乗る気はないと思いますので,事実いろいろとヒアリングをして勉強会をやったときにも,その点については民間の方は余り興味を持っておりませんで,国で収容した場合に年間幾らかかりますかと。それよりも安ければこちらは乗るわけだし,その範囲内で,もし民間の方に利潤がなくて,手を挙げる者がいなければ,PFIの事業というのはもうなくなるということになります。
○野﨑委員 今言われている中で,覚せい剤あるいは麻薬患者をどう処遇するかというところは民間のやることではないのですね。つまり権力作用なのだから,それは国がやるわけです。だからPFIでやるのは建物を建ててもらって,それを借りると。そうすると不動産に投資した人に賃料というリターンがある。それに関連していろいろ非権力作用,例えば食事をどうするか,物を納入する,そういうことについては民間を利用する。しかし,矯正そのもの,つまり公権力の行使に当たるものについては国がやる。先ほどの説明では,外のガードマンに云々と言われるから話が分かりにくくなるのであって,これは一般のガードマンでも,今のガードマンというのは,何か事が起きたら逃げろというふうになっているのですね。しかし,それではガードマンではないじゃないかと。何か少し力を振えるようなことができないかという議論の一環としての話になるので,それは何も権力作用云々ということではないのです。
○高久会長 ありがとうございました。時間の都合もありますので,このPFIは恐らく全体会議のときにもいろいろな御意見がたくさん出てくると思いますが,基本的には野﨑委員のおっしゃったことだと思いますので,全体会議のときには野﨑委員,よろしくお願いしたいと思います。
○広瀬委員 私はこのPFIに直ちに賛成する気にはなれないのですが,過剰状況を早急に打開しなくてはいけないという点は正にそうで,法務省も好き好んでPFIなんて言い出したのではなくて,何とかしなければいけない,政府全体の合意を取りつけるためにだと思うのですね。とするなら,急にそういう施設が必要だという場合には,民間だとちゃんと社債を出して対応するわけで,国には国債というものがせっかくあって,30兆円も出しているのに120億円がどうして出せないのだろうかという,むしろそちらの方がおかしいわけで,増やす,しかもかなり等級を分けて入れて,社会復帰の容易な者はもうどんどんそちらの方向にやっていこうよという,その思想は賛成ですから,もっと,イコールPFIなんていうのでは,私はないと思うのです。そこを我々が少し考えるべきだと思いますね。
○高久会長 PFIについてもこの分科会でまとめるわけですか。
○広瀬委員 この第3分科会が一番近いところにあるのですか。
○杉山次長 そうですね。一応こちらになっております。ですから,きょうはこちらで説明をさせていただいて,次回以降に御議論をいただくということで,今のは質疑応答というつもりだったのですが。
○広瀬委員 この間の村山さんの報告の中で,アメリカにも余りうまくいっていないところもあるのだというお話がありましたね。ああいう詳しいものがあれば一緒につけてくれると。
○杉山次長 そうですね。また資料は提出いたします。
○高久会長 ありがとうございました。

2.刑務官の人事管理等について

○高久会長 それでは,もう一つのテーマである「刑務官の人事管理等について」,矯正局の有山参事官にお願いします。
○有山参事官 あらかじめお手元に配付してあります資料で御説明したいと思います。
 説明内容は5ページの文字面で5枚物があります。その後に十数枚,資料が付いておりますが,それに沿って説明させていただきます。
 まず,1「刑務官の採用試験及び採用状況」ということですが,刑務官の大部分は人事院の刑務官採用試験で採用されております。試験の内容は,高等学校卒業程度の知識,科目としては教養試験,作文試験,人物試験。そのほかに身体測定という,身長,体重の基準が設けられております。
 人物試験については個別に面接を実施しておりまして,人柄,適格性等について判断をしております。過去3か年における刑務官採用試験の受験倍率は大体10倍を超えております。資料の2枚目です。ここに9年度から15年度までの表がありますが,一番右の倍率の計の欄,大体10倍を超えたところで推移をしております。申込者数,合格者数の中に刑務官A,刑務官Bとありますが,Aが男性,Bが女性の区分になっております。女性の倍率が非常に高いという状況がここで伺われようかと思います。
 ついでに資料の手前のページに,刑務官の採用状況ということで,左の一番上の方に刑務官採用試験があって,これは人事院でなされる試験。その下に武道選考というのがございます。柔剣道の有段者で18歳以上,30歳未満。これは学科試験,教養試験と作文試験を実施いたしまして,大体毎年,50名から60名ぐらいの採用をしております。
 このほかに,国家公務員採用試験Ⅰ種,行政,法律,経済,それから国家公務員採用試験Ⅱ種試験で採用になるケースがございます。試験種目等についてはここにあるとおりでございます。
 本文の2枚目でございます。2「刑務官の研修・昇進制度」ということでございます。研修の種類には,先ほどの資料の3枚目に研修体系というのがございます。「刑務官等の研修体系」ということで,新採用になりますと,実務経験を経まして,左の方から刑務官の初等科,右の方に法務教官の基礎科,法務技官の基礎科とありますが,この法務教官の基礎科というのは少年院の教官でございます。それから法務技官と言いますのは鑑別所の技官です。一番左の刑務官の場合には初等科,その次に試験を受けまして合格しますと中等科に入る。
 それで,まず「初級幹部」というふうに囲ってありますが,この初級幹部と言いますのは係長相当。それから中等科を出まして,今度は高等科の試験,幹部候補生の試験に合格しますと,高等研修課程の高等科というところに入ります。これを卒業しますと中級幹部になる。中級幹部と言いますのは,課長,小さい二部制の施設の部長クラス。上級幹部になりますと,大きいところの施設長,大きいところの部長,管区の管区長,部長です。
 これが一連の流れでございますが,本文に戻りまして,(1)研修の種類等のアが初等科であります。これは全く基礎的な学科,実務等を実施いたします。イが中等科,ウが中級幹部になる。このウの中級管理研修課程といいますのは,中等科を出まして,高等科の試験を経ず,おおむね45歳以上になって,実務的に優秀な者に試験をいたしまして選抜をする。これは統括クラスの選抜試験ということで御理解をいただければいいと思います。
 高等科にいきますと,高等科については刑務官の場合には,大体Ⅰ種合格者を含めて毎年60名程度,高等科の研修で鍛えております。このほかに,特定の分野に関する専門的な業務,事務,例えば情報処理業務とか精神科の医療,医療関係業務,これは工場を幾つか受け持つ主任クラスとか,府中で御覧になったと思いますが,昼も夜も独居に入っているという,あそこの担当はかなり面接指導をする機会が多うございますので,そういった独居の担当職員を集めて特別の研修を行う。あと教育活動充実に従事する主任,統括クラスを特別に教育する,そういった専攻科という研修がございます。そのほかに研究科というものがございまして,矯正に関する学理及び制度並びにその運用の調査,研究を行う研究研修のコースも設けられている。我々は通称,研究科と申しておりまして,これは3か月ほど,各現場の優秀な職員を,府中にあります矯正研修所に招聘しまして,制度とか処遇類型別指導の指導書とか,教材みたいなものを研究してつくり上げるといった,特別の研修もございます。今年度につきまして,この研究科において,後ほど説明を予定しておりますが,人権教育に関する指導書の作成,各研修で行う科目の見直しなどの研究について行っております。過去においては被収容者処遇の改善に関して,生活の基本的条件がどうなんだとか,簡単に言いますと食事の改善,居住環境,工場の環境,作業安全等についても,問題が起きたときには個々にテーマを選定しまして研究させるということを,今までやってきております。
 (2)初等科の研修の概要ですが,学科等についてはここに書いてあるとおりですが,特に初等科においては術科と言いまして,後段に書いてあります集団行動訓練,救急法,護身術。矯正独自の護身術というものがあります。そのほかに柔剣道,戒具操法,消防訓練,ガス銃などの銃の扱い方等についても重点的に初等科でなされるということでございます。当然,学科試験もありますし,術科については実技検定というのも実際には行っており,個々に評価をしております。
 それから,初等科においては人権ということに関しては,人権問題,被収容者処遇に係る国際準則等についても講義を設けて実施しております。
 (3)昇進に関わる研修の概要ですが,昇進が試験制度による研修ということで,中等科,高等科。中等科についてはおおむね3か月,高等科については半年,研修所で研修を受けるということでございます。中等科を出ますと,係長クラス。資料の8枚目に「高等科グループ昇任例」,次のページが「中等科グループの昇任例」,その次に「初等科グループの昇任例」というのがあります。高等科グループについては後ほど説明いたしますが,まず中等科グループ昇任例を見ていただきたいと思います。看守で採用されまして初等科研修を受けます。これは標準例,大体中等科合格者の平均年齢で例をつくっておりますので,早い者は26~27歳の場合もありますが,大体平均的に29歳ぐらいで中等科を修了しますと,卒業してすぐに看守部長になります。左の方に俸給表の級が書いてありますが,2年,3年しますと特2級になる。これが昇任でございます。昇進については,看守部長から副看守長になるのが37歳というところになります。この副看守長というのは,主任矯正処遇官,係長です。係長は事務職で,例えば庶務課とか用度課の係長。主任矯正処遇官というのは,矯正の場合は専門官制をとっておりますので,処遇部門の係長相当ということでございます。この表のように,中等科を出た場合には5級まで昇任制度が設けられています。
 45歳という枠がありますが,その右下の方に中級管理課研修というものがございます。中級管理課研修というのは,中等科を修了して,45歳以上の実務経験が非常に優秀な者,これは試験で選抜をしまして,看守長昇進への道をここで設けております。と言いますのは,高等科だけだと,統括クラス,看守長クラスの欠員のままで,なかなか補充ができないという実態的な状況がございますので,それを高等科修了の看守長で補充せずに,足りない部分を中級管理課研修で補充していく。大体年間20人ぐらい中級管理課研修で看守長になっております。
 その前の高等科グループですが,高等科といいますのは,中等科を修了しまして,まず中等科を修了するということが前提でございます。中等科を出て2年経過しますと高等科受験の資格が得られます。高等科研修に合格しますと,あとこのように昇任,昇進をしていくということでございます。この高等科のグループが所長,施設の部長等に昇任していくという道が開かれております。高等科においては,特に中等科,初等科と違いますのは,指導監督のための人格とか識見などの養成に力を入れております。最近では,高等科においては,社会福祉施設で実習をしたり,国際人権思潮の講座を設けたり,精神医学,あと人事管理を受け持たなければいけませんので,矯正の管理論という学科を設けて,幹部になるために必要な科目の受講をさせております。
 本文の3ページにいきます。では,この初等科,中等科,高等科の中での人権研修ですが,いわゆる名古屋刑務所事件では,刑務官の人権意識の欠落ということが,大きな要因ではなかったかと指摘されておりますが,人権研修というのは,過去もいろいろな科目の中で,例えば憲法とか国家公務員法などが科目としてあるのですが,その中でどういうふうに被収容者を扱わなければいけないのかということ等についての,人権の中身について講義はなされておりましたが,人権のための研修,人権のための講座というのは特別に設けていなかったような気がします。私も高等科を実際に受けたのですが。現在,矯正研修所において,先ほど研究科で人権に関する指導書を作成していることを申し上げましたが,人権研修の指導者用の指導書,それから一般職員に対する指導書をそれぞれつくっております。これができ上がりましたら,各中等科,高等科で科目として取り上げていこうと考えております。
 資料の高等科の昇任例の2枚前に,新たに実施した人権研修というものがあります。これは名古屋刑務所事案の後,実務的に,それから意識的にということで,特別に14年度,15年度に設けた処遇実務監督者研修というものであります。基本的には,刑務官というのは,幹部はほかの施設をかなりの数,勤務経験をしますが,一般職員については,他施設における実務経験が不足する,経験がほとんどありません。したがって,自分のところの施設の処遇の在り方等についてそれが是なのか非なのかという比較するものを待たず,それから,拝命してからずっと同じ処遇,技法,先輩たちの処遇の仕方等で,体で覚えてきたもの,これでよしとして,これが普通だという認識が大部分だと思います。ここに刑務官職務規定というものがあるのですが,我々,初等科に入りますと,まず刑務官の姿勢なり,どういった勤務をしなければいけないか,どういったところに注意をしなければいけないかというところを教え込まれます。その基本を忘れていたのではないかなとも思われます。そこで,そういった意識の問題や,それから問題になりました革手錠の掛け方を重点的にやろうということで14年度,それから15年度。14年度については,少年院,少年鑑別所の統括クラスもあわせて,刑務所,少年鑑別所の全施設の統括クラスを集めて,まず実施いたしました。今年度についても,刑務所,少年施設の統括クラスにプラス,刑務所74施設の主任クラスを集めて大々的に研修を実施したということであります。
 また,16年度の予算要求の中で,人権研修の緊急強化ということで,NCI法というものを導入しようと考えています。これは数年前にテレビ朝日で全国的に紹介されたという非暴力的危機介入法,Non-violent Crisis Interventionというものによる処遇の在り方といいますか,これは学校,特に精神病院とか一般の総合病院,福祉施設,こういったところ等でかなりの方が学ばれておるというものです。これはアメリカから起きた処遇技法といいますか,今現在,日本を含めて7か国ほどで広がっているということです。
 非暴力的危機介入法の開発は,大体1970年代にアメリカで開発されました。現在,全世界で約450万人がトレーニングに参加をした。日本では,まだ日が浅いのですが,導入してから5年ほどになりますけれども,約2,200人ぐらいが,このトレーニングを受けています。
○宮澤(弘)委員 今,横文字をおっしゃったのは,どこに書いてあるのですか。
○有山参事官 資料にありませんので,次回に,増員の説明をする際に資料をつくってお持ちいたします。
○宮澤(弘)委員 説明ですと非常に有効な,効力のあることを付け加えて言われたから。いいです,いずれ日を改めてお話をいただくということですから。
○有山参事官 内輪だけの研修ではなくて民間に委託をして人権意識を高めるという効果的な研修もあるということで,16年度予算要求をしており,今,財政当局に説明中であります。資料をつくりまして御説明に上がります。
 それでは,3「刑務官の異動状況」でございます。幹部職員の異動の現状につきましては,資料の12枚目,これは本年4月1日付で定期異動で動いた人員でございます。上の方に本省等,矯正管区,矯正研修所とありますが,これと行刑施設,この上下,この出入りはほとんど幹部でございます。幹部の異動につきましては,おおむね2年ごと,上級については1年で動かす場合もあります。我々定年60歳でございますので,58,59になると,どうしても上位ポストの方につくということで,1年の場合もありますが,おおむね2年周期で動かしております。
 それから,初級幹部,これは係長,主任クラスです。中等科出の者です。これらの者についてはおおむね8年から10年ぐらいで人事異動を実施している。それから,高等科を出た課長クラス,首席クラスは大体2年,3年,場合によっては4年ということもあります。
 3ページの(2)の一般職員の異動の現状ですが,従来,遠い過去においては,一般職員については異動はほとんどありませんでした。しかしながら,平成9年から人事異動の対象として実施しております。刑務官の場合は1万7,000人ぐらい職員数がいるわけですが,赴任旅費が大体3億4,000万円ぐらいということで,なかなか一般職員の異動に赴任旅費の予算が回っていかないという予算的な縛りもありまして,9年以降,異動はしておりますが,余り他の施設を経験しているという職員は多くはないというのが現状であります。
 4ページです。この人事異動に関する(3)問題点ということでありますが,幹部職員についてはおおむね2年ごとに異動しており,主任クラスについては8年,10年で他施設を勤務するという異動形態をとっておりますが,一般職員については異動の回数が少なく,これによって幹部職員と一般職員の意識のかい離を生むとともに,長年勤務する一般職員による特殊な施設風土を形成する要因となっているおそれがある。これは中間報告の中にも,そういったニュアンスのことが指摘されておりました。
 また,被収容者の処遇に直接当たっているのは一般職員であります。それをまとめる主任クラスは8年,10年単位で他施設へ異動していくわけです。直接被収容者の指導に当たる職員と主任,それと2年,3年で動く,その上の統括,首席,幹部クラスとの一体感の醸成が本来は組織の中になければいけない形なのですが,一般職員は一般職員,幹部は幹部という,意識の開きが,今回の名古屋刑務所事案に表出してきたのではないかと言われております。要は一般職員の職務意識,マンネリ化というものと,幹部は他の施設を経験して,他の施設はこうやっているぞという意識との間にかなりの差があったのではないか。
 更に初級幹部職員についてここに書いてありますが,「更に,初級幹部職員が同一施設内の同一ポストに長期にわたり在職するため」,「職務のマンネリ化を招いたり,ボス化する場合もある」。初級幹部とは主任クラスですが,こちらが幹部からの指示,命令等になかなかついてきてくれないという部分もあるのではないかということです。
 (4)対策としまして,施設間異動の在り方を見直さなければいけないだろうと考えております。幹部職員の異動を若干長いスパンで考えるということ。また主任,係長クラスの8年から10年のスパンも短縮しなければいけないだろうということ。それとあわせて,一般職員の他施設での勤務経験もさせなければいけないだろう,機会を与えなければいけないだろうということで,幹部と一般職員の異動の期間をなるべく近寄らせるということ。一般職員にはなるべく他施設の勤務経験,機会を多く与えてやる。そのような人事異動計画を組まなければいけないのではないかというふうに考えております。ただ,いかんせん,それには相当な予算が必要になりますので,財政当局には,こういったことで一般職員の異動等もしなければいけないということで,16年度の予算要求をしております。
 イ「幹部職員の育成等について」。組織を回していくには幹部の指導監督能力,指揮能力が行刑施設においては非常に大事なことで。適正な幹部として能力を発揮できる幹部職員,当然,適材適所の人事配置を行うことはもちろんですが,これはどういうことかといいますと,処遇能力に長けている者,総務系,事務能力に長けている者を適材適所できっちり配置していくこと。これはもちろんですが,研修所における指導に当たる教官の向上も図らなければいけないだろう。それから,今現在進行中ですが,研修内容,方法等の充実。それから一般職員にも研修の機会を増やしてやらなければいけない。他施設の経験をさせるといっても,幹部ほどには他施設の勤務経験はできないと思いますので,一般職員に対しては意識面の向上を図るための研修の機会をもっと増やしてやらなければいけないかなというふうに考えております。
○高久会長 いろいろお伺いしたいので,もうそろそろいいですか。
○有山参事官 はい。
○高久会長 それでは,今いろいろとお伺いいたしましたが,御質問おありでしょうか。
○江川委員 幾つかの施設を見ていて一番深刻なのは,受刑者が増えている割には職員が増えないで,職員の負担がどんどん増えているということだと思うのです。職員を増やすことについて,定員が法律などで決まっていて,もう動かせないものなのか。職員を増やすことに関して何が障害となって,職員の大幅増ができない現状があるのかということをまず伺いたいです。
○有山参事官 これは次回に定員と増員等については御説明しようかなと思っていたのですが。
○高久会長 増やすということではなかったですか。マニフェストか何か知りませんが。
○宮澤(弘)委員 今お話を承っていて,クラスによって違うでしょうが,一人の人間が長くいるというのは余り良くないと。これはどこの社会でも,組織があるところはみんなそういうことがあるわけですね。だから,ポジションによって8年が良いとか5年が良いとか,いろいろあるが,とにかく一人の人間が余り長く居座るということは良くないと。これはもう原則だろうと思うのです。
 そこで,今承っていて,異動がなかなかスムースにいかないというのは,お金が少なくて,異動のための予算が足りないということが影響しているのですか。そうではなくて,御本人自身が余り動くのは嫌だと。
○有山参事官 多くは予算の影響です。
○宮澤(弘)委員 当局は動かしたい。
○有山参事官 はい。
○宮澤(弘)委員 だけれども旅費がないと。多くはそこに原因があると。
○有山参事官 そうでございます。
 それから,江川委員の先ほどの質問にお答えしますが,この間の8,500人という数字は,自民党のマニフェストか何かに載るかどうか分かりませんが,実は一般職員の職員一人に対して収容者の負担率が,日本の場合は4人なんですね。アメリカの場合は3人です。それをアメリカに近づけたらどうか,1対3に。そうしますと,今1万7,000人ですから,あと5割増しだということで,8,500人という数字が出たのかなと。
○江川委員 私は,次回と言われたので,何をきょう聞いて,次回に何を聞かせてもらったらいいのか,分からないのですが,そのことを聞いていいですか。
○西田企画官 先ほどの質問にお答えしますと,日本の総定員法というものがあるのですが,そういったものでいろいろな形で国全体,一体何人にするかという大枠がありまして,それに基づいて当然小さな政府を求めておりますので,どんどん経費も落としなさい,人も落としなさいという大方針があって,法務省も何年間に何人か削減しなさいという方針があるのですね。その大方針があるものですから,どうしても刑務所の定員も増えていかない。ただ,その削減に対するこちらの要求として,やはりこれだけ欲しいですというお願いを,政府部内の話なのですが,財政当局とか定員を管理しているところにお願いをして,それを認めてもらうという格好なのです。それがなかなか,先ほどの大きな方針として削減するのだとあるものですから,認めてもらえないということです。
○江川委員 自民党がどう見るかは横に置いておいて,現場の感覚としてあと何人必要で,そのためには幾らかかってというのはもう出ているのですか。
○有山参事官 全体の話としては,なかなか難しいものがございまして。といいますのは,来年度の増員要求というのはもう一応枠が認められております。
○江川委員 いや,認められる認められないではなくて,現場の人たちに聞くと,例えば一人で80人を持っている人が50人だったら何とかなるとか,いろいろ具体的なことを言っているわけです。例えば女子刑務所だって,あと20人増やしてほしいとか。そういうものをどれだけ当局が現場の声を吸い上げて,それを実際にやるにはどうしたらいいのかと。どれぐらい必要なのか。現実問題としてほかの課題もあるから,それは全部通るかどうか分かりませんが,そういうものをとにかくちゃんとつくってやっているのかどうかということなのです。
○有山参事官 それはつくっております。
○江川委員 やっているのですか。
○有山参事官 はい。昔は,担当一人に受刑者50人ということで一箇工場という,そういった積算でずっと積み上げて要求をしているわけですね。しかし,これだけ急激に過剰人員になりまして,50人で計算しますと,もう1,000人単位で職員数が足りないわけです。だけど,総定員法による増員要求というのが,なかなか1,000人も2,000人もという要求はできない。
○江川委員 現場の声を集約して,できればこれぐらい欲しいとかというものはできているわけですね。
○有山参事官 ええ,一応毎年毎年,矯正ではつくっております。
○江川委員 ではそれを次に出していただけますか。
○有山参事官 それは難しいものがあります。
○江川委員 何で難しいのですか。
○高久会長 数としては比較的簡単に出てくるのではないですか。被収容者全員を50で割ればいいわけですから。どれだけ足りないという。それをどう取り扱うかは別にして,数としては出てくるわけですね。
○野﨑委員 増員というのは私もやったことがありますが,増えるときには,定員の縛りだとか予算の総枠とかあって,なかなか追いついてはいかないが,徐々に増やしていく。逆に被収容者が減ってきても定員減というのは,後から追いかけるからということになります。だから今50人が云々だとか,職員一人当たりアメリカは3人で日本は4人と言われましたが,それだって,事務系の人と現場の看守作業をやっている人との割合をどうするかによっても違ってくるわけだし,なかなか難しい問題ではあるのですね。しかし,今はっきり言えることは,非常に人が足りないのだということ。そこで一人が扱う人数が50人という基準でいきますと,今は何千人も要ることになるけども,それでは予算要求が通るわけはない。そうすると,片一方で仕事の内容を合理化していくが,しかしどうしても要求しないといけないものが出てくるわけだから,それを省内,省外のサポートを得ながらやっていかないといけない。そういう意味では,今はこういう問題が起きて,非常に内外的なサポートも得やすいときだから,予算要求するには強気になるというか,かなり抜本的な改革を要求しやすいところにあるわけで,それはやられたらいいと思います。今やるべき時期だと思います。
○有山参事官 我々も努力しているのですが,法務省全体の増員の枠がありまして,その中に今,入管もありますし,矯正もある。その上にいきますと行政管理庁が管理をしている。そこに説明しに行って説得しないと,その要求する枠がもらえないと。
○江川委員 だから,そこを説得するには,これだけの現場の声があって,これだけのものが必要なんだということを数字で言わなければいけませんよね。その数字がないで,ただ大変ですと言うだけで,大体これぐらいだったら認められるだろうから,その範囲で言っておこうみたいなのでは逆だと思うんですよ。例えば女子刑務所では,夜間の見回りを一人でやっているというのですね。それはできれば二人でやりたい。だけど今の状況ではできない。あと何十人欲しいと,具体的な数字は現場の方から行けば出るわけですよね。それを集約して,我々としては受刑者の人権のこともちゃんと確保するためには,どれだけのものが必要だという,それがなければ駄目なのじゃないですか。
○有山参事官 江川委員の質問にお答えするべく努力いたします。というのは,毎年5,000人ずつ増えていっているのですよね。そうすると,5,000人ずつ増えるということは,職員を一千何百人ずつ増やしていってもらわないと足りないというのはもう間違いないです。
○野﨑委員 今までの基準でいけばですね。だから,それを多少手直しもしないといけないだろうが,最小限これだけ要るのだという要求をお出しになってもいいと思うのです。
○有山参事官 簡単に言いますと,今1万7,000人という刑務官の職員数がありまして,今1対4の比率で被収容者を処遇している。毎年5,000人ずつ収容者が増えていきますと,将来は一人の職員で7人近くの受刑者を持たなければいけない。そうすると,今のままでも大変なのですね。4.2ですから。これを4.2でずっと抑えていくとしたら,この部分の職員を埋めてもらわなければいけないということになる。その分だけお願いしますということは簡単に言えるのですが,要求といいますのは,例えば訴訟も増えます。それから面会も増えるでしょう。またいろいろな業務が増えていくわけですね。それを全部積み重ねて増員要求をするものですから,非常に難しいものがあります。
○高久会長 教えていただきたいのですが,幹部職員は,初めから公安職2級とか公安職3級として雇った人なのですか。それとも,公安職の1級として雇って,いろいろな研修を受けて上に上がっていった人,どちらが多いのですか。
○有山参事官 幹部というのはⅠ種という意味ですか。
○高久会長 Ⅰ種というのは数が少ないですね。一般の職員と幹部職員ということをおっしゃっいましたが,幹部職員の大部分は一般職員の人が上がってなるわけですか。
○有山参事官 試験制度を経て上がっていきます。
○高久会長 一般職員の中で意欲的な人とか能力のある人が幹部職員になっていく。
○有山参事官 そうです。もちろん,Ⅱ種採用の職員も,数は少ないですが,ほとんど上の方に上がっていきます。
○野﨑委員 矯正職員の待遇を良くしないといけないという問題があると思うのです。これで見ると,初等科研修を経た人は3級にはほとんどになり,4級が最後でしょう。中等科研修で5級。ここで中級管理職研修を受けていかないと上がってはいけないという状況がありますね。高等科研修の人だけは管区長まで行く可能性を持っている。私は法務省の高等科研修とか中等科研修というのはなかなか良い制度だと思います。つまり上に上がるチャンスを与えていくという意味ではね。最後に高等科研修を通れば,いわゆる上級職の職員とちゃんと拮抗できるポジションになる。これはなかなか,よその官庁にはない制度だと思うのですが,問題は,初級のまま4級で終わる人,それから中等科で7級で終わる人,そういうもので1万7,000人を分けたときに,一番上まで行く可能性,高等科を終えた人の割合はどれだけか,その人数ですね。中等科を終えた人の割合,それからその他の割合を知りたい。その上で,法務省は例えば検察事務官,法務事務官といろいろあるわけでしょう。そういう人たちとの対比においてその割合というのはどうなっているのかということを知りたいです。何か低いのではないかなという感じが私はするのですが。つまり,5級まで来ない人の数というのが非常に多くないかなという感じがするものですから。人数不足で過剰な労働をしているわけでしょうし,それに対する処遇というのはきっちりしないと,ただ転勤の機会だけを増やしますよとか,そういうことではなかなか,中のモラールというのは保てないと思う。だから,職員の待遇を考えたとき,どうすればいいのか。割合的に見て,ほかの職種の者と釣り合いがとれているのかどうかということを知りたいと思います。
○宮澤(弘)委員 今のお話を端的に言えば,刑務官の増員の要望は矯正局ではやっていらっしゃるわけですね。だけどまた法務省の中の別のところで,検事をもっと増やさなければいけないとか,あるわけですね。検察庁は検察庁である。そうすると,法務大臣としては,どこに重点を置いて,どうやるかと言うことが一つのポリシーとしてあると思うのです。ですからそれは今ここで,矯正局にうんと言わせても,なかなか無理な話だと私は思うのですね。ですから,国全体としての定員法というものがあって,減らすところは減らします,しかし増やすところは増やしますと。そうすると,来年度は何百人か,何千人か増えますというのが,今定員をあずかっているのは総務省ですか,そこの仕事になるわけですね。そうすると,法務省に対してはどのぐらいという話が出てきて,そこで検察庁の方が今とても忙しいから検察官を増やしましょうと。だから,矯正局はちょっと待ってくれと。1年待ってくれとか。そのような話になって,全体の大きな枠の話が前提になってくるから,矯正局だけ大幅に増員の要望をするとは,なかなか難しいのではないですか。法務省は法務省で,法務大臣がどこをどう増やすかということのポリシーを持って,総務省と掛け合いをなさるという枠の中の話ではないですか。
○有山参事官 法務省が突出しますと,ほかの省庁がへこむ形になると思うんです。どこを優先するかという,これはもう本当に政策論になってしまうので。ただ,矯正としては……。
○宮澤(弘)委員 あなたのところは死に物狂いで,検察がどう言おうと,矯正局は頑張るのだと。しかし,各局みんな頑張ろうとしている。だから最後は結局法務大臣の判断というものが物を言うのだろうと思います。
○有山参事官 正にそのとおりでございます。
○広瀬委員 去年,警察問題が起きたときに,やはりこういう審議会ができて,結局,警官を少し増やさなければいけないとか質をよくしなければいけない,待遇も良くしなくてはいけないというような報告になって,今回,これができるときに,刑務所で名古屋刑務所事件が起きて,結局,刑務所の職員を増やすとか待遇改善,医療改善など,また焼け太りの結論になる懸念があったと思うのです。私は,今のままいくと,そういうことになりかねないと思うのですね。なぜならば,我々は医療ももっとよくしたいし,過剰と言えば職員も大変だけれども施設に入っている受刑者も大変だと思うし,その施設の改善もある。それで,職員の数だけを優先して,あるいは待遇改善だけを優先することは,私は許されないと思うのですね。それで例えば,現在4.2人までなっていると。職員一人で4人以上みなくてはいけない。だったらば,どういう施設ならば,少ない職員で安全な運営ができるかとか,それからできるだけ外出しを考えようとか。恐らく刑務官一人と,外出しするならば2人ぐらい雇えると思うのですよね。そういう刑務官を減らして外からの導入を増やす,そういう選択もあるのではとか,何か具体的な案を,これなら堂々と報告書に書いて,政府に持っていって,大臣に持っていって,通りますよという,そういう知恵をつけてくれると有り難いと思うのですね。ただただ,5,000人ずつ増えているのだから,それに見合う職員を増やしてもらわなければいけないというという話にはならないのではないかと思うのですがね。
 それから,刑務所の場合には,たくさん人が入ってくる。受刑者が増えていく。先ほど民間のお金もとありましたが,それは安い労働力というか,受刑者も社会にお返ししてもらわないと,刑務所に入っているだけではしようがなくて,受刑者の労働力で若干職員を増やす分だとか,医療レベルを上げる分だとか,そういうところに回せる原資が増えるのか増えないのか。ただただ数が増えれば出費が増えるだけなのか。その辺も一度,しっかり説明していただきたいと思うのです。事務局の方でそういう説明のできる方をまた呼んでいただきたいと思います。
○有山参事官 民間活力につきましては,矯正も,もう本当に業務の中身について民間に委託していく方式を一部とっております。江川委員が言われた女子施設の警備は今,民間に徐々に委託しようとしています。
○江川委員 中のところですか。
○有山参事官 いえ,外回りの警備です。
○江川委員 私が言ったのは中の方です。
○有山参事官 中の話ですか。
○広瀬委員 外出しまで含めれば,今でもアメリカの3人に近いところまでいくのではないですか。純粋職員となると4.2人ですが,外注分を含めていけば,その数字はもっと緩和されていくのではないですか。
○江川委員 刑務官も外にするのですか。
○広瀬委員 刑務所の外周りを云々とおっしゃるから。
○江川委員 外周のことですね。
○広瀬委員 つまり外注職員を母数にするならば。
○有山参事官 今まで職員がやっていた業務を部分的にでも民間に委ねるということですね。それはもう一部既にやっておりまして。
○広瀬委員 だからその人数を入れれば,4.2よりもっと数字は減るのじゃないのですか。
○有山参事官 それがなかなか,処遇の中身にまで職員として導入できるかということになると,非常に難しいものもございます。ただ,総務系の事務業務については民間に委託できるものは,なるべく民間に委託して,総務系の職員を処遇の中に入れさせようという努力は一部やっております。
○広瀬委員 ほかの場所で言えば,税金が高過ぎる,政府が大き過ぎる,公務員だって不況のときには給料をカットすべきだとか言うわけで,今回に限って,何でもいい方がいいやというわけにはいかないわけですね。もう少し具体的な……。
○有山参事官 自助努力をしなければいけないと思っています。
○広瀬委員 そういうのを,こういうことをやっていますよ,今後もやりますよというのが一方にあると,医療レベルのアップだとか,そういうことを要求しやすいと思うのですね。
○江川委員 職員一人当たりのというのが出ていますが,今大事なのは,実際に被収容者と接する人たちの負担の問題なのですよね。多分この数字は経理とかそういう人たちも入っていると思うのですね。だから現場の職員があとどれぐらい必要なのか。例えば4週8休の確保が困難,74庁中68庁で確保できていないと。これは異常な事態なわけでしょう。異常な事態を正常に戻すためには,あと現場の職員はどれだけ必要なのかというのは,きちんと数字で出さないと,交渉も何もできないと思うのですよね。今それがないのですか。つまり,先ほど宮澤(弘)委員がおっしゃったように,全体的なものはもっと上の人たちが決めるにせよ,この問題は死に物狂いにならなければだめなのは皆さん方で,それを死に物狂いにやっているかどうかを私は問うているのです。
○有山参事官 それはもう死に物狂いでやっております。
○江川委員 だったらその数字もちゃんともう当然できていると思うと言っているわけです。
○高久会長 数としては毎年出ているはずですね。
○有山参事官 積み上げで出してはおるのですが。
○野﨑委員 こういう会議があって,こういうところでバックアップしてくれる意見が出れば,予算要求は非常にやりやすくなるのです。増員にしてもそうなのです。しかし,皆さんが納得しなければ,だれも応援してくださらないというのが広瀬委員の意見なので,ただ,4で割ったらこうなるみたいなことを幾ら言ってもだめなのですね。現在はこういう状況で,それを打開するためにはアウトソーシングもします,こういう合理化もします,いろいろなことをやりますが,これだけ足りないんですということを,だれでも,それはそうだろうと分かってもらうような形に持ってこないと,だれも納得して,「そうだそうだ」とは言ってくださらない。それはきっちりなさったらいいと思います。
○高久会長 中等科とか高等科の教育を受けるわけですね。先ほど野﨑委員からの質問にもありましたが,その数は限られるわけですね。進む人の数は大体決まっているわけですね。やたらには増やせない。
○有山参事官 はい。それと将来やめていく幹部に合わせて……。
○高久会長 受けさせるわけですね。ですから,それがどれぐらいの割合。1万7,000人のうち高等科まで行く人は10%もいかないわけですか。もっと少ないですか。
○有山参事官 刑務官の級別・階級別構成という資料の7枚目に。
○高久会長 分かりました。それで,この人は中等科に行く,高等科に行くというのはだれが決めるのですか。刑務所長ですか。
○有山参事官 いや,これは本人の意思です。
○高久会長 意思があっても数に限りがあるから。
○有山参事官 選抜試験で。
○高久会長 試験に通った人が行くわけですね。
○有山参事官 そうです。
○高久会長 分かりました。
○有山参事官 これが大体,今年度末の階級別,職名別の人員の内訳です。
○高久会長 矯正処遇官が数としては一番多いのですか。
○有山参事官 そうですね。一般職員と言いますのは専門官には入っていない看守部長,看守です。
○高久会長 ほかにどなたか。
○江川委員 職員の研修の件なのですが,民間のいろいろなものも導入しているとおっしゃいましたよね。それは次回御説明があるということですか。
○杉山次長 議題の整理が若干悪くて申し訳ございませんでしたが,こちらの意図としては,きょうは人事管理ということで,その階級制度を中心とした人事管理,それから異動の問題を取り上げて,次回に研修と定員の問題というふうに考えておりました。きょうは話が前後したものですから,次回は残りの部分の研修と定員の問題を御説明して,それで全体の議論に入りたいと思います。
○江川委員 では,研修のことは次回に伺います。
○高久会長 きょうは人事管理ということだそうです。
○江川委員 では異動のことで伺いますが,こういうふうにしたらいいのではないかと。大体何年に一回移したいというのがありましたよね。それを実現するためにはあと幾ら必要なんですか。
○有山参事官 一般職員ですか。
○江川委員 そうです。
○有山参事官 基本的に今考えているベースでいきますと,一般職員だけで1億4,000万円要ります。今まで機会がなかった一般職員に,我々が考えている,10年ぐらいで一回どこかの施設を経験させると。そうすると,人員を絞れば別ですが,今我々が考えているベースで1億4,000万円必要になります。
○江川委員 その1億4,000万円がなかなか手に入らないということなのですか。
○有山参事官 16年度に要求しているのですが。
○高久会長 どうもありがとうございました。またいろいろと教えていただきたいのでよろしくお願いいたします。
○有山参事官 今度は資料を整理してお持ちします。
○高久会長 国立大学や国立病院が独立行政法人になったときには,公務員の数が減ったことになるのですか,減ったことにはならないのですか。
○西田企画官 定員は減ったことになります。独立行政法人になれば,定員管理からは外れます。
○高久会長 お金はかかるけれども,定員管理からは外れる。16年度になりますから,その数を回せるはずですね。どうもありがとうございました。

3.その他

○高久会長 前回までいろいろ御議論いただきました医療体制のことにつきまして,来週の月曜日は休みですので,10月20日の全体会議のときに第3分科会で議論した医療体制のことについて御報告をして,皆さん方の御意見をお伺いしなければならないことになります。それで,今までの御議論を事務局と私の方である程度まとめまして,このことについて20日に,時間の許される範囲で報告をしたいと思っています。項目がたくさんありますので,簡潔に申し上げたいと思います。
 1ページの「矯正医療の基本的視点」で,矯正医療の費用負担,健康保険の適用ということですが,健康保険の適用に関しましては,かなり否定的な意見の方がヒアリングでも多かったと思います。いろいろな状況を考えますと,日本弁護士会の方からは,御提案がありますが,余り現実的ではないというか,健康保険にしたから云々ということは余り利点がないということを申し上げようと思っています。
 それから,矯正医療の水準は,一般社会の医療水準と同程度の医療を提供するということしか言いようがないのではないかと考えています。
 「医療の人的・物的体制の整備」ですが,先ほどの御議論にもありますように,多ければ多いほどいいのですが,一つ強調したいのは,医師の定員が1名だけというのはかなりきついということと,2名以上の定員のところでは一人は精神科のドクターであることが非常に重要であるということだと思います。
 それから,歯科医療につきましても,いろいろ問題がありますので,常勤ということは難しいかもしれませんが,その整備の充実ということ。非常勤でもいいから,充実するようにということ。
 また,ほかの医療関係の施設と比べて非常に違いますのが,看護師や准看護師,薬剤師等コメディカルのスタッフが非常に少ないことですので,これもまた人員の問題で苦しいのですが,コメディカルのスタッフの充実が不可欠である。
 医療機器に関しても,一般の開業医と言ってもいろいろまレベルがあると思うのですが,開業医と同程度の医療機器は整備する必要があるのではないか。この問題は医療水準ということで取り上げる必要があると思っています。
 「外部病院への移送体制の充実」ももちろん重要でして,地元の医師会,医療機関,都道府県等との協議会を設けるなどして連携協力関係をつくる。これは当然のことで,その必要があるということには御異論がないと思います。
 3ページの「薬物乱用後遺症への対応」という問題は,今までも何回も議論されまして,覚せい剤後遺症の受刑者に対しては社会復帰ができるような特別な体制をということで,後の方でまた出てきますが,名前を「覚せい剤中毒センター」にするのか「矯正医療センター」にするのかという議論はありますが,覚せい剤中毒の者に対して特別のケアをする施設になると思うのですが,そういうものを設ける必要があるということです。
 それから,「矯正医療センター」のようなもの,現在は医療専門施設と医療重点施設,一般施設とわけられていますが,今後,医療少年院と医療重点施設とを一緒にした「矯正医療センター」をつくる必要があるのではないか。覚せい剤中毒者に対する対応もこの矯正医療センターの中で取り扱っては。センターの一部になる可能性はあると思うのですが。
 それから,矯正医療を特殊な医療と位置づけて,矯正医療の専門家,これは精神科だけではないと思うのですが,専門家の養成を矯正医療センターで行うということを,この分科会の一つの目玉にしてはどうかという意見があります。
 「厚生労働省への移管」に関しましては,ヒアリングでもいろいろ御意見がありましたが,厚生労働省に移管をしたら,すぐに医師が確保できるかということは難しいと思います。ただ,そういう御意見が日本弁護士会から出ていますし,委員の中にもそういう御意見の方がいらっしゃいますので,厚生労働省への移管については将来の一つの方法として,諸外国の動向を見ながら慎重に検討すべき課題として申し上げた方が良いと思います。
 「矯正医療の保安からの独立性」ということも,弁護士会の方から言われていますが,医療に関しては医師が医療的な判断に基づいて行い,その点に関しては当然独立性が要望されると思います。しかし,診療の場に保安要員がいないと,ドクターの方が身の危険を感じるということを直接医師から聞いています。それから,病院に移送する場合,あるいは入院させる場合には,刑務官がついていくものですから,完全な独立ということはかなり難しいと思います。医療に関しては医務官が主導権をとるが,実質的にはお互いに協力し合っていくしか,やりようがないのではないかと思います。
 難しい点は,今も議論がありましたように,診察を希望する受刑者が非常にたくさんいる中で,刑務官が診察を受ける受刑者を選ぶということについての不満がかなりあります。これはなかなか難しい問題だと思いますが,現実には准看護師の資格を持った刑務官を増やして,その刑務官に必要な教育をして,その准看護師の刑務官が選ぶということしか方策がないのではないか。もちろん,緊急な場合には医師が直接対応することが十分にあり得ると思いますが,原則としてはそうせざるを得ないと思います。
 「医療の透明性の確保」ということでは,当然,一般社会と同じように,原則としてカルテは開示しなければならないと思います。ただ,カルテの開示をしない場合には,受刑者から,あるいはその家族からの不服の申立てを受けるシステムをつくらなければならないと思います。その件については行刑全体をチェックするシステムの中で,カルテの開示に関する不服も取り扱う必要があると考えています。カルテの開示をするならば,カルテをきっちり書くことが医務官に要望されますので,医務官に対する教育の中でその事を徹底していくということになると思います。現実的にどの程度可能なのかどうかということは別といたしまして,精神としてはそういうふうになると思います。一般病院でもカルテの開示ということで病歴をきっちり書くようになっていますので,刑務所も例外ではない。
 次の「医師の確保」がなかなか難しい問題でして,どこまで書いて良いかという問題があるのですが,ドクターへのアンケートをみますと,お金の問題よりは時間の問題が重要だということを皆さんほとんど例外なく書かれるので,今後勤務の条件や採用の形態を変えていかないと難しい。例えば,ある程度兼業を認める。兼業で収入を得た場合には給与から差し引くということを文部科学省ではやっていますので,その方式をとる必要があると思いまして,6ページのような表現になっています。
 それから,6ページの(3)「矯正医療に関する専門家の養成」については,矯正医療センターをつくって,その中で矯正医療の専門家を増やしていく。この様な矯正医療の専門グループをつくっていくことが矯正の分野でドクターを集める一つの方法としては可能なのではないかと。そういうことで「矯正医療に関する専門家の養成」というタイトルにしております。
 7ページの5「被収容者の死因確定手続」ですが,刑務所内での死亡については,全件司法解剖するということは実際的ではないと思います。私は法医学を専門にされている方,3人ほどに聞いてみたのですが,全件司法解剖は現実的ではない。ただ,名古屋大学の教授で,法医学会の会長さんがそう言われているのですから,私が知り合いの法医学者に本当にできるのですかと聞きましたら,かなり難しいのではないかということでした。ですから,今まで行われているように,自然死が明らかな場合には司法解剖までは行う必要がない。ただし,自殺とか変死,あるいは死因が分からないときには当然,司法解剖をするという常識的なことになっています。これについては,宮澤(弘)委員から,被収容者の死因確定については何か新しいことを出した方が良いのではないかという御意見がありました。これでよろしいですかね。
○宮澤(弘)委員 私ですか。ほかの宮澤さんではないの。
○高久会長 たしかそういうふうにおっしゃったと思うのですが。
○宮澤(弘)委員 死因についてですか。
○高久会長 はい。
○宮澤(弘)委員 そうでしたかね。私申し上げたのでしょうか。
○広瀬委員 所長がきちんと見れと。
○宮澤(弘)委員 所長がちゃんと,人に任せないでやれと。
○高久会長 第1回目のときにそういう御意見がありました。
○広瀬委員 二,三いいですか。
○高久会長 はい,どうぞ。
○広瀬委員 まず,4ページのいわゆる「保安からの独立性」云々というのをここで議論して,余り妥当な表現ではないのではないかというのがありました。4ページの3「矯正医療の保安からの独立性,医療の透明性の確保」という場合に,「保安からの独立性」と「医療の透明性」は両方とも確保すべきだと,この分科会が言うわけはないので,むしろ「矯正医療と保安との関係」というふうにして,弁護士さんたちが言うのは,どうも保安優先ではないのかと。
○高久会長 そういうことですね。分かりました。
○広瀬委員 そうではなくて,やはり言葉は注意した方がいいのではないかなと。
○高久会長 「矯正医療における医療と保安との関係」ですね。
○広瀬委員 はい。それから,「透明性の確保」の方は,そのまま我々の要求だろうと思うのですが。
○高久会長 これはそのままで良いと思います。確かにおっしゃるとおりです。どうもありがとうございました。
○広瀬委員 もう一つは,死因確定の手続と,数年後にも記録がある。その記録がいいかげんな医療の抑制力になるわけだから,記録をきちんと残せという。
○宮澤(弘)委員 思い出しました。所長がきちんとやれというような意味のことを申し上げたと思います。
○高久会長 記録をきっちりとれという,私は死亡帳を見たことがないのですが,御意見があったように,「死亡帳」という言葉自体が何か……,「死亡記録」ですね。
○宮澤(弘)委員 「帳」なんて,捕亡帳みたいでね。
○広瀬委員 矯正局には写しが来ていると言いましたよね。今回みたいに,なくなっているというものは矯正局にも来なかったということですか。
○西田企画官 これまでは死亡帳は長期間の保存があったのですが,矯正局に報告されるものは3年間しか保存されていなかったのです。3年より前のもので,なおかつ現場で記録がなくなったものは,もう記録はなくなってしまっていたのです。ですから,それにあわせて,両方とも保存期間を10年にしなさいと。それで,現場でつくる記録は10年間保管をして,同じく矯正局に報告するものも10年間保存しなさいというふうに改めました。
○広瀬委員 そうした記録の保存が,あいまいさを残したまま,みんな口をつぐむというような事態を抑制すると思うのですよね。
○高久会長 そうですね。私も死亡帳をまだ見たことがないのですが,ニ,三,サンプルを見てみれば,どの程度のことが書かれているか分かると思います。本当はダブルのはずですから,なくなるはずはないのですよね。それはここに明記しておいた方がいいのではないですかね。
 ほかにどなたか,御意見おありでしょうか。
○江川委員 先ほどちょっとお話しした,本当に重症者で長期にわたるかもしれない,外に入院をさせなければならないような被収容者の責任問題というのですか,これはもう本当に現場,現場で苦労しながら対応していると。例えば植物状態になってしまったような人をどうするのかとか,実際にそういう問題が起きていてる。では,その人を執行停止にしてしまうと,今度は家族が面倒を見ないものだから,医療費を払えなくて,結局何百万も病院が負担して,その病院はもう刑務所からの依頼を受けなくなってしまったという事例もあるということも聞いています。そういう重症の,八王子に行けた被収容者は良いのですが,そうではない,民間の病院に委託して,長期間になれば,その分ずっと刑務官を張りつけなければいけないわけですよね。病院からは,刑務所の人間である限り絶対に刑務官をつけてくれという。ですから,民間の病院との,あと地域の行政とのというのをもう少し,こういう場合はこういふうにするという,ある程度の方向性を決めておかないと,例えば本当に理解ある市長さんがそこにいれば,市長さんが身元引受人になって福祉の対象になるというふうになるのだけれども,それが必ずしもうまくいかないケースもたくさんあるようです。よその自治体の出身者で,よそで犯罪を犯したのに,たまたまうちの刑務所に来たので,何でそこの住民の税金を使ってやらなければいけないのかということで,もめたりするということもあるらしいので,重症者の扱いをどうするかということもちょっと議論する必要があるのではないでしょうか。
○宮澤(弘)委員 覚せい剤中毒センターの話は。
○高久会長 矯正医療センターの中でそういうものをつくる。
○江川委員 一緒にするということなのですか。
○杉山次長 3ページの上の方に書いてございますけれども,例えば覚せい剤中毒センターというようなものを独立に設置するか,あるいは一つの施設をつくるのが無理であれば,医療刑務所に併設するか,どちらかで,いずれにしてもそういう機能を持った施設をつくるべきだと。
○江川委員 矯正医療センターは矯正医療センターですよね。
○杉山次長 そうです。医療刑務所に併設と書いてありますが,場合によっては矯正医療センターにつけるということも考えられます。そこは組織のつくり方の問題で,いろいろあろうかと思いますが。
○高久会長 矯正医療センターの中で,ある程度矯正医療の専門家を養成しようとする。覚せい剤中毒センターもそこにあった方がいい点もあるのかな。そこは運用の問題だというふうに思っておりますが。
 さっきの問題は難しいですね。
○江川委員 難しいですが,今現場ではすごく問題になっていることの一つなので,それをどうするかというのは素通りにはできないと思うのですね。
○高久会長 基本的にはそういう人は医療刑務所に入れるべきですね。そうでなければ,特に長期ですと刑務官が毎日6人もといったら,刑務所そのものが維持できなくなりますから。ではまた医療刑務所を増やせとかいう問題になってきて,難しいのですが。
○江川委員 ただ,発作的に何か起きて,ダッーと運んで,そこでもう動かせない状況になってしまうということだってあるわけですよね。
○高久会長 それは,動かせないことはないと思うのですが。
○江川委員 距離の問題もあると思うのですが。
○高久会長 寝台車か何かで動かせばですね。急性期ですと,そこで勝負がつきますから。実際は医療刑務所に移さないと,一般病院では長期は無理ですね。
○野﨑委員 もう一つ問題になったことに,外部なり内部のチェックをする機関を設けるべきではないかというところがあったと思うのです。例えば収容者が拘禁下にあるとすると,医師や病院の選択が全く自由であるということはあり得ないが,必要な場合にはちゃんと診てもらえないといけないということが書いてあるわけですが,それがやられなかったということが問題になっているわけですし,死亡の場合でも問題事例を隠してはいないかというところが問題になっているわけですね。だから,そういうものを,つまりきっちりやりますよというだけでいいのかということは一つの大きな問題だろうと思うのです。
○高久会長 刑務所全体の運営についての,それを見る第三者……。
○野﨑委員 この前は,そういうことを僕も申し上げたのですが。つまり,モニタリングをするような機関を作ろうということです。よその部会でやっているわけですが,そういうものができたときには医療も,そういうものの中に入れてチェックを受けることになるということは書いておいた方がいいと思います。
○高久会長 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。当然,その一部としてモニタリングをするようになると思いますので,そのことについては,この前の,カルテ開示をしないことについてのコンプレイントのときにちょっとディスカッションがありましたが,カルテ開示だけではなくて全体として,死亡帳,死亡の報告を含めてモニターをする体制をとっていくことになると思いますから,それは書いた方がいいですね。だけど,実際にはみんなモニターされると大変ですね。
○野﨑委員 どういう機関をつくるかということと関わってくると思います。
○高久会長 それから各地区ごとにつくるのかとか,いろいろな問題がありますが,当然,医療もその中に入ってくると思います。
 それでは,20日の日には,またいろいろな御意見が出ると思いますが,第3分科会の委員の先生方,よろしくお願いいたします。
○杉山次長 今の意見を踏まえて,もう一回お送りして,今週中ぐらいに御意見をいただいて。
○高久会長 そうですね。来週は休みですから。
 それでは,もう一回事務局の方で整理いたしまして,委員の皆さん方にお送りして,御意見をお伺いして,20日に中間報告をしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。


午後4時57分 閉会