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トップページ > 省議・審議会等 > その他会議 > 行刑改革会議 第3分科会 第7回会議

行刑改革会議 第3分科会 第7回会議

日時: 平成15年12月1日(月)
14時04分~15時39分
場所: 法務省第1会議室(20階)


午後2時04分 開会

〇高久会長 行刑改革会議第3分科会の第7回会議を開催いたします。
 この分科会は,本日をもって最終回となりますが,最初に,本日お見えいただいています慶應義塾大学医学部法医学教室の村井教授から,法医解剖のお話をいろいろお伺いいたしまして,その後,今までの全体会議で,第3分科会の議論の整理の報告に対して,二,三他の分科会の委員の方から御意見が出ていますので,そのことについて皆様方の御意見を改めてお伺いしたいと思います。
 村井先生からのヒアリングに先立ちまして,本日議論すべき事項,これまで全体会で第3分科会に対して述べられた,あるいは文書で提出された意見の内容などにつきまして,事務局から簡単に説明させます。
○杉山次長 簡単に,お手元の資料について御説明をいたします。
 お手元に菊田委員から「行刑改革会議分科会報告に対する意見書」というものが2通,10月25日付と11月25日付。それから久保井委員からの意見,10月23日付,1通,この三つが配られていると思います。これらはそれぞれ第3分科会の報告を全体会議でしたわけですが,それに対する意見書でございまして,そのうち二つ,10月25日と10月23日のものは前回説明しておりますので,ただいまは割愛いたしまして,11月25日,前回の報告に対しての菊田委員から御意見について説明いたします。
 これにつきましては,6ページに,第3分科会関係というものがございまして,一つは,PFIの施設の増設というものについて,一般的に新たな刑務所をつくると,いたずらに施設を新設すると被収容者が増えるというようなことで,安易に迎合すべきではないという意見をいただいております。そのほか,健康保険,その他について再検討すべきだという意見をいただいております。
 そのほかに,日弁連からも意見書が届いておりますので本日お配りしております。この中では,第3分科会関係は9ページ以下で,医療の問題と人的物的体制の整備などの問題という2点について意見書が提出されております。
 あとで,これらの点について再度御議論をいただければと思います。
 以上でございます。
○高久会長 ありがとうございました。

1.ヒアリング(慶應義塾大学医学部法医学教室村井達哉教授)

○高久会長 それでは,村井先生,お待たせいたしました。村井先生は,現在慶應義塾大学医学部法医学教室の教授をしておられまして,東京で変死体などがありますと,東大と帝京大学など,他の大学と輪番制で,東京地検の検事の嘱託によって司法解剖をしておられ,現在まで多数の解剖の経験を有しておられます。また数々の法医学の鑑定をされてこられています。本日はまず10分ぐらい,司法解剖の手続や現状について村井先生にお話を伺った後,15分程度質疑応答をしたいと思います。村井先生,よろしくお願いいたします。
○村井教授 今御紹介いただきました慶應大学の村井と申します。先ほど高久会長がおっしゃられた法医の解剖ということのあらましをお話しさせていただこうと思います。
 私ども法医学者は解剖を主な仕事としておりますが,法医の解剖には大きく分けますと2種類ございます。一つは司法解剖,もう一つが行政解剖と言います。しばしば,これを混同されてしまうことも多くて,臨床の先生方が行政解剖とおっしゃっている中に,時々,司法解剖という意味で使われていることもあるので,その違いからお話をさせていただこうと思います。
 一番大きな違いは,司法解剖は犯罪の疑いのある死体について行われる解剖であるということです。それに対して行政解剖の方は,犯罪性のない御遺体,ただし死因が分からないと。その死因が分からないものを究明する目的のために行われるものです。そのように目的が大きく違うということがございます。
 司法解剖の方は犯罪ということが絡んでおります。したがって,根拠となる-死体を解剖するということは,ある意味では大変なことでございますので,それが正当行為として行われるためには,よりどころがなければいけないということでございますけれども,司法解剖の方はすべて刑事訴訟法にのっとって行われているということです。これは刑事訴訟法のたしか223条だと思いますが,検察官,検察事務官,司法警察員という人が鑑定嘱託をすることができるという記載がございまして,それにのっとって司法解剖が行われるということになります。
 それに対して,行政解剖の方は,いわゆる犯罪性,事件性というものではない御遺体でございますので,刑事訴訟法の対象には通常ならないわけです。そうすると,よりどころとしては死体解剖保存法が主体になるということです。行政解剖に関しましては,死体解剖保存法に監察医というものが定められております。基本的には監察医の行う解剖が行政解剖です。ただし,監察医というのは全国で,全地域に施行されているものではないと。施行されているのは大都市に限られております。東京でも23区のみ。それから大阪市,横浜市,名古屋市,神戸市。昔は京都,福岡も入っていたのですけれども,現在は削られてしまっております。そういう大都市に限られていて,それ以外の地域は監察医というものはおりませんので,本当の意味での行政解剖はできません。
 監察医の行う行政解剖と,監察医以外の人が行う行政解剖と称しているもの,あるいは,この表を見ていだたくと承諾解剖と書いてあるものがございますけれども,これは監察医制度のないところでも,実は死因の究明というのはやはり必要だということで,御遺族の承諾をいただいて死因の究明のために解剖をすることがございます。ただし,これは監察医ではないので,監察医が行う解剖は,監察医が必要であると認めれば,御遺族には申し訳ないですけれども,御遺族の承諾は必要ないわけなのです。そういう形で監察医の行う行政解剖というものが行われております。そこが制度上違うところです。
 ですから,司法解剖と行政解剖。それから目的は行政解剖に近いのですが,御遺族の承諾をいただいて行う承諾解剖というものということで,細かく分けると3種類あることになります。
 司法解剖ですけれども,これは全国,どこの都道府県でも同じように行っております。ただし,鑑定の嘱託というのが,先ほど検察官か検察事務官か司法警察員ということを申しましたけれども,東京だけが検察官の嘱託です。東京以外は司法警察員,要する警察官が嘱託するという形になっております。だれに嘱託するかということは明確には定められていないのですが,有識者ということでありまして,個人に対して嘱託いたします。昔は警察医という方が全国におられて,そういう方が司法解剖をやっていた時代がございまして,私が法医学に入ったころは,まだそういう方が結構おられたのですけれども,現在は司法解剖は基本的にはすべて大学の法医学教室で行われていると。ただし,どこどこ大学の法医学教室の何々教授に個人嘱託という形で行われます。それに対して解剖を行った後,鑑定書を作成するという形です。
 流れとしましては,鑑定嘱託というものをいただくのですけれども,それだけでは司法解剖はできない。解剖させていただくためには裁判所の令状,「鑑定処分許可状」と申しますけれども,我々は「令状」と呼んでおりますが,その裁判所からの裁判官の令状が出て初めて御遺体を解剖することができるというシステムになっております。
 司法解剖は先ほど申し上げたように,いわゆる犯罪の疑いのある死体ということですので,明らかな犯罪死体というものもございます。例えば目の前で刺されて殺された方。それから何だか分からないけれども,もしかすると犯罪に原因があって亡くなったのではないか,そういう方を解剖するということになっております。
 その数は年々増えております。この表の一番上を見ていただくと,2000年が抜けていて申し訳ないのですが,これは一応全国の大学の年間の司法解剖数を合計していただいたものなのですけれども,年々増えております。いわゆる病理解剖と言われるものは年々減少していると言われる中で,法医の解剖は年々増えているという特徴がございます。これは一つには,社会的な要請というものが増えているということに起因するのではないかと思います。
 例えば2002年ですと5,348という数が年間行われておりますけれども,東京は23区,多摩地区全部合わせますと全国の1割近い人口がいるはずなのですが,東京に限りますと250体ぐらいで,意外に少ないのです。これはどうしてかといいますと,先ほど,東京には23区内には監察医制度があるというお話をしまして,一応,司法解剖は犯罪の疑いのあるもの,行政解剖は犯罪の疑いのないものというふうに分けているわけですが,東京の場合は割合それがすっきり分けられるのですけれども,東京以外のところは司法解剖以外には御遺族の承諾なしに解剖する手だてはない。ですから,ちょっとでも危ないかなと思いますと,検察官の方あるいは司法警察員の方が,なるべく司法解剖という形で解剖をさせてもらおうと,そういう力が働きますので,どうしても東京以外の方が人口比の割に司法解剖が多くなってしまう。東京は監察医制度があるので,そんなに怪しくないものは監察医の行政解剖で済ませる。手続は行政解剖の方が楽なものですから,どうしてもそういうところがあるのではないかと思います。
 他殺で亡くなる方というのは年間千何百人という数なのですが,実際にはその数倍ぐらいの数の解剖がなされていて,その中で解剖の結果,実は犯罪には関係がなかったとか,そういうこともございますので,解剖数は実際に殺された数よりは多くなっております。
 司法解剖は,殺された以外に,例えばひき逃げ,最近ですと医療行為に起因したような死亡で,もしかすると医療過誤かもしれないとか,そういうようなものも解剖いたしますので,すべてが殺人とか傷害致死という事件名で行われるわけではございません。
 あと司法解剖は現在全国の大学で行われております。全国の医科大学,大学の医学部というのは,防衛医科大学校を入れまして80校ございますが,そのうち5校ぐらい,今,司法解剖をしていない大学がございますが,それ以外の約75校で司法解剖が行われており,その合計がこの数字であるということです。ちなみに,私どもの慶應大学は大体年間70体ぐらいですね。昔は120体ぐらいあったのですけれども,ちょっと少なくなっている面もございます。それは他大学で少し,昔は慶應と東大だけで23区内の解剖を行っていたのですが,ほかの大学も行うようになったという側面がございますので。それから監察医にグレーゾーンの御遺体が行ってしまうということもございまして,ちょっと少な目ではあります。大体そのぐらいの数で推移しております。
 概況としてはそういうところでございまして,手続的にも,司法解剖の方は検察官ないし司法警察員の嘱託,それから裁判官の令状という形で,それがそろわないと解剖できないというシステムでございます。
○高久会長 村井先生,非常にクリアな説明をありがとうございました。
 それでは,村井先生に何か御質問がおありでしょうか。
○野﨑委員 法医学会で刑務所における死亡者については自分たちで解剖してもいいというような御意見があったと伺っているのですけれども,その場合の解剖というのはどういう手続でやることを考えておられるのでしょうか。
○村井教授 基本的に現状の法規のもとで行うということですと,司法解剖か,大都市であれば行政解剖も可能なのですけれども,それ以外の地域ですと承諾解剖という形になってしまいますが,承諾解剖というのは現実には難しいのではないかと思いますので,結局,監察医制度のないところでは司法解剖ということが一番現実的な選択肢ではないかと思います。
○野﨑委員 そういたしますと,犯罪によるもの,あるいはその疑いがないといけないということになると思うのですが,それでよろしいのでしょうか。
○村井教授 建前としてはそういうことになります。
○野﨑委員 そうすると,死亡者全員について行うというのは実際は非常に難しいということになるわけですね。
○村井教授 そうですね。一般の御遺体でもそうですけれども,まず死体を見慣れた警察官が通常は御遺体を見るわけです。それで,これは大丈夫だろうということになりますと解剖ということにはならないと。それと同じように,あるいはそれよりも少し厳密に,よく見るという段階が必要だと思います。それから,よく捜査をして状況を把握すると。そこがあった上で,その次に進むわけですから,すべてを解剖するというのはやはり難しいかなと思います。
○高久会長 医療刑務所で死亡した場合には余り意味がないでしょうね。犯罪の疑いがないから司法解剖には該当しないわけですね。
○村井教授 基本的には特に病死が明らかであれば,また医療行為の問題などが出てきたときには話が違いますけれども,それ以外の場合には必要ないのではないかと考えます。
○江川委員 今のお話の中で承諾解剖は難しいのではないかとおっしゃったのですけれども,この統計を見ていると行政解剖よりちょっと少な目ですけれども,かなりの数の承諾解剖というものが行われているようです。難しいのではないかとおっしゃった理由をお聞かせいただきたいのですけれども。
○村井教授 この行政解剖は,下の注に書いてあるのですけれども,東京,大阪の数字が入っていないのです。東京は年間に大体二千五,六百体行っている。大阪も2,000体ぐらい行っております。ですから,それが抜けております。あと横浜は,東京のような監察医務院という建物がないのですね。個人の資格で監察医の先生方が解剖しているということなので,この統計に入ってこなくなるので,横浜も4けたに及ぶ数をやっているはずですので,そうすると,やはり行政解剖の方が承諾解剖よりも大分多いと思います。ただ,承諾解剖も最近は一般の方の御理解も進んできて,行えるようになってはきたのですけれども,やはり御遺族が見つからないことにはだめであると。また,御遺族に反対されてしまったらできないという制約があるので,刑務所内での死亡というやや特殊な亡くなり方ですと,承諾がとれるというのはなかなか難しいように思いますし,承諾がとれなかったときに,強制的に司法解剖をやるというのも,ちょっといかがなものかなと思いますので,そういう意味では,やるのだったら最初から司法解剖というふうに考えていった方がいいのかなと思います。
○江川委員 医療刑務所で亡くなった場合は別として,それ以外のところで亡くなる人の数というのは大体どれぐらいになるのかな……,ありますよね。八王子医療刑務所が69人,岡崎はゼロですか。ということは大体200近くの方が,医療刑務所以外で亡くなっているのですけれども,その方たちを全部,根拠は何かは別にして,司法解剖なり行政解剖なり,とにかく解剖してくださいといったときに,それぐらいの数だったら物理的には引き受けられる数だと思われますか。
○村井教授 地区がどの程度偏りがあるのか,ちょっとよく分からないところがありますけれども,基本的には医療刑務所以外のものでしたら受け入れは可能な数ではないかと思います。
○高久会長 全国的に5,000例しているわけですし,五つの医科大学ではやっていないと言っても-司法解剖ができない県がある可能性はありますね。五つの医科大学の,しかも県に一つの医科大学しかない県で,その医科大学は司法解剖をやらない,やる人がいない場合には,よその県まで運ばなければならないという問題がありますね。
○村井教授 いろいろなやり方があるのですが,今は一応全都道府県で解剖ができる状態になっております。ただ,教授が定年でおやめになると,後継者のいない大学はしばらくはできなくなって,隣の県に持っていくということはございます。
○高久会長 200件ぐらいですから,できないことはないと,そういうことですね。
○村井教授 基本的には大丈夫です。現在,解剖をやっていない5大学で1県1大学のものは一つもございませんので。
○江川委員 行政解剖のこの数字は,東京,大阪,名古屋,横浜,神戸は入っていないということですか。
○村井教授 名古屋は実質ゼロなんです。ほぼゼロなんです。制度はあるのですけれども,実態がほとんどないのです。東京,大阪はそれぞれに建物を持っておりますので,そこで統計を出していて,このもとの資料には入ってきていないんです。
○江川委員 横浜も入ってないわけですよね。
○村井教授 入っていないんです。
○江川委員 そうすると,神戸。
○村井教授 ですから,ほとんど神戸だけだと思います。本来の行政解剖ですと神戸の数字だと思います。神戸の数字は,神戸大学,兵庫医大で主にやっているわけですけれども。
○江川委員 承諾解剖というのは全国の数字ですか。
○村井教授 今,40以上の都道府県で承諾解剖が行われておりますので,そういう意味ではかなり広く。だから1県当たりにするとそんなに多くはない,10とか20ぐらいだと思いますが,かなりあちこちの都道府県でそれなりに,予算がなかなかつかないものですから,予算で何体と決められてしまったりしているのですけれども,そういう制約の中ですけれども,一応割に広くはやられるようになってきております。
○江川委員 そうすると,ちょっと復習になりますけれども,司法解剖というのは全国の数字ですね。
○村井教授 はい,そうです。
○江川委員 承諾解剖というのは,これも全国の数字で,行政解剖というのは大体神戸がこの数字だということですね。
○村井教授 そうですね。大体そのように理解していただければいいと思います。
○江川委員 分かりました。
○高久会長 ほかにどなたか御質問はおありでしょうか。司法解剖と行政解剖の区別が私もはっきりしていなかったものですから勉強になりました。検察,警察,どちらが犯罪の疑いがあると認めるのですか。警察ですか。
○村井教授 基本的には警察官は検察官のもとに動いておりますので,報告は検察官に最終的には行くわけですけれども。
○高久会長 最終決定は検察官ですね。
○村井教授 でも,司法解剖をやるかやらないかは,かなり警察のレベルで決めてしまっていることが多いようです。東京以外のところはそうですね。東京はすべて検察官から来ます。
○江川委員 村井先生がいらっしゃる間に法務省の方にお伺いしたいのですけれども,身元が不明の,つまり引き取り手のない遺体とか,承諾のとりようがない遺体というのは年間どれぐらいあるのですか。中間的なものでもいいのですけれども,連絡のとりようがないというのは珍しいことですか,それとも,しばしばあることですか。
○西田企画官 各施設に必ず,契約している,契約というか,埋葬させてもらいます無縁墓地を用意していますから,ないわけではないのですけれども,そんなに身元も何も分からないというのは少ないと思います。ただ,遺族がいる場合でも,死亡しましたという連絡をしても,遺族が来てくれることは少ないです。そちらの方で処理をしてくださいというふうに言われることが多いと思います。
○江川委員 では,その処理の中で解剖を承諾してくれたら,それはできることになりますよね。
○村井教授 承諾いただければ問題はないわけです。
○高久会長 病理解剖で一番難しいのは,遺族の中で一人でも反対するとなかなかできない。だれが承諾すれば良いのですか。
○村井教授 特に決まってはいないですね。
○高久会長 みんなが賛成していたのに,最後に,一度も見舞いに来たことのない親戚が来られて反対すると,もうだめですね。
○江川委員 村井先生のところはいつも行政解剖なので,承諾解剖というのは基本的にないわけですよね。
○村井教授 私は埼玉医大で解剖していたこともございますが,埼玉県はいわゆる準行政解剖というのですけれども,承諾解剖がかなりございます。東京は,23区以外のところは承諾解剖でございます。慈恵医大,杏林大学でやっております。
○江川委員 承諾解剖に当たっては何か特別な手続とか書類とか,そういう決まったものがあるのですか。
○村井教授 大体,その県とか地域で決めた書式のものに御遺族に署名,捺印をいただくという形ですね。身元が分からない場合は,そういう意味では監察医制度がないと,例えば身元不明の溺死などは司法解剖でやるよりほかはないわけですね。
○高久会長 ほかにどなたか。
 それでは,お忙しいところ,どうもありがとうございました。
○村井教授 一つだけよろしいですか。
○高久会長 どうぞ。
○村井教授 私,刑務所内で亡くなられた方について幾つか意見を述べさせていただいたことがあるのですけれども,それを見て感じたことなのですが,通常,外で人が亡くなると,警察が来まして,警察の中の死体に慣れた方が見るのですね。それは例えば捜査一課ですとか鑑識課の検視官というのがおりまして,そこに報告が行って,検視官が,ちょっと怪しいなと思うと,検視官が実際に今度は来て見てくれるわけです。それで,やはり怪しいということになると司法解剖になるということなのですけれども,刑務所の場合はそこのところが,警察が入らないので,実際は司法検視をしていただいていることが多いのですけれども,本当の司法検視をしてくださっていることが多いというのは分かりますか。要するに刑事訴訟法の229条に書いてあるのですが,変死者又は変死の疑いのある死体については司法検視をするという規定がございます。司法検視をするのは検察官なんです。ところが,検察官が全部やるのは無理だろうから,それにかわって検察事務官あるいは司法警察員がやってもいいという規定がございます。ほとんど,99%近くは,代行検視といって,実際に検察官がやるのではなく,警察官,つまり司法警察員がやっているのですね。ところが,刑務所内の死亡の場合は警察が入らないことが多いので,検察官がお見えになってやってくださっていて,形としては非常にいいのですが,正直なところ,検察官の方は警察よりも死体は見慣れていないわけです。ですので,申し訳ないのですけれども,検視のときの記録などを見させていただくと,ちょっと法医学的には不十分な記載のことが多いのです。だから,これをもとに事件性がないとか外傷がないから,司法解剖の必要はないと判断したと言われても,ちょっと,本当かなというところがございます。ある程度,検視官のような,死体のプロですと,我々でも下手をすると負けることもあるような人たちですから,そういう人たちが見ていれば,まず間違いないと思うのですけれども,代行検視と言うと,本来の司法検視よりも落ちるような感じがしますけれども,実際には警察官の方が,見慣れている方が多いので,できれば,検察官に見ていただくのは有り難いのですけれども,警察官と一緒に見るというような形をとっていただくと,もう少し見逃しが減るのではないかなと,そういう印象を持ちました。
○高久会長 どうもありがとうございました。
○広瀬委員 その場合に,亡くなった方すべてについて,そういう慎重なことをやっていくべきだという意見と,そうしたら大変じゃないのか,数も多くなるし,刑務所の所長と所内の幹部ができるだけ死亡時に立ち会うとか,その種のことを要請することで済むのではないかという意見もありました。それで,例えば記録を完全にする,死亡時に所長が必ず立ち会う。もちろんそこで疑わしきは直ちに警察の検視を求めるのか,解剖ということになると思うのですけれども,そういうすべてを厳しくやっていく。それから,今よりももう少し段階的に厳しくやる。その中間的なものというのはいろいろあるのですか。
○村井教授 なかなか難しいと思いますけれども,医療刑務所に関しては,私も先ほど申し上げたように,全部をそんなに厳しくやる必要はないと思います。ただ,やはりこういう御時世ですから,しばらくは一般の刑務所内の死亡に関しては少し厳しくやるという,なるべくそういう精神をもってやる方がよろしいのではないかと思います。外傷というのは必ずしも顔とか手とか,見えるところにあるとは限りませんので,プライバシーの問題はありますけれども,着衣を脱がして見るとか,そういうようなことも場合によっては必要だと思いますので,やはりかなり慎重な姿勢で臨むという基本的な姿勢はあった方がいいと思います。
○野﨑委員 先生のおっしゃられているのは,刑務所で死亡した人が出ますね。その中で,解剖に回すべきだという手続をもう少しきっちりすべきだ。そうして,少し網を広くできるようにすることが望ましいのではないかというふうに受け取るのですが,それでいいのでしょうか。例えば病気で死んでいる人,あるいは老衰で死んでいる人を解剖をすることは全くないわけですから,亡くなっている人の中で解剖しないといけないという人をどのように選び出すかというプロセスの問題だと思うのですね。ですから,今,司法解剖という手続でやっていくと,刑務所内での死亡者については検察官あるいは司法警察員が来たりするのだけれども,今までよりも少し広げた方がいいのではないかというところがおありになると思うのですが,私もそれは別に異論はないのですけれども,全部やるということではないのだろうと思うのですね。
○村井教授 全部やるということではございません。
○野﨑委員 そうですね。できるだけ問題がありそうなものについては見てみる。例えば今おっしゃられた着衣を取ってみて,傷があるとすると,あるいはこれは暴行の問題があるのではないかといったようなことをチェックするプロセスをきちんと設けておくと,変死といいますか,つまり解剖すべき事案というものを見逃さなくて済むというふうに伺ったのですが。
○村井教授 基本的にはそうです。プロセスをきっちりやっていただいて,証拠を残していただくということだと思います。
○高久会長 ただ,普通の刑務所で200例足らずぐらいですと,そうしたら,検察官と司法警察員のある程度ベテランの人がチェックしても,それほど手間は大変ではないのではないかと思うのですけれども。今議論になっているのは,検察官よりは司法警察のベテランの人が見た方が見逃しがないと。見逃したのではないかということが,この委員会でずっと問題になってきたわけですから,当分の間は,普通の刑務所で死亡した例は全部両方でチェックをして,司法解剖にするかどうかということを判断をした方が,200例ぐらいですと,できるのではないかと,そういうことではないでしょうか。
○村井教授 法医学の立場からいうと,なるべく解剖した方がいいに決まっているということはございます。かなりベテランの法医学者でも,例えば監察医の仕事をしておりますと,3割ぐらいは外から見ても死因は全然分かりません。
○野﨑委員 全部解剖した方がいいということになるのですか。
○村井教授 全部とは言いませんけれども,なるべく……。
○高久会長 全例解剖ではなくて……。
○野﨑委員 問題のありそうなものはと。
○高久会長 ええ。全部解剖ということよりはむしろ,司法解剖するかどうかというチェックを,検察官だけではなくて検察官と司法警察員のベテランとでチェックをして,最終判断をする。ですから全部解剖にはならないと思います。
○江川委員 村井先生のお話を伺っていると,なるべく解剖した方がいいと。ですから例えばこういうことでしょうか。医療刑務所みたいに,本当に経緯が分かっていて,記録も細かくつけられているようなものは別として,それ以外のものはなるべくは解剖した方がいいのだというふうに受けとめてよろしいのでしょうか。
○村井教授 私のところに以前,相談に来られたような事例は,大体死因が「急性心不全」と書いてあるので,そういうのはやはり解剖しないと,本当の死因は分からないと思います。
○江川委員 令状はなくても。
○村井教授 はい。
○高久会長 医療刑務所でなくても,普通の刑務所でも病死する人はいるわけですね。普通の刑務所で死んだ人を全部司法解剖する必要は必ずしもないのではないかなと思うのですが。
○野﨑委員 それは司法解剖はできないんですよね。普通の病死の人を司法解剖するということは。
○村井教授 病死の場合は根拠としては難しいと思いますけれども。
○高久会長 その場合でも,普通の刑務所で,今まで医者が見ていまして,ある日,急に亡くなった場合でも一応警察が見た方が良いのでしょうね。
○村井教授 そうですね。本当にそれで亡くなったのかどうかということがございますから。
○高久会長 司法解剖にするかどうかということを判断する。ですから,200人のうちの全部ではないが,司法解剖にすべきかどうかというチェックは検察官だけではなくて,両方でした方がいいということではないのでしょうか。
○江川委員 例えば急性心不全とか,明らかにこれだと言えないようなものは全部解剖するという方がよろしいですよね。
○高久会長 警察官のベテランが見れば分かるということなんでしょうね。急性心不全はないというけれども,一般の医師,特に臨床の人はよく分からない。
○江川委員 だって,人間は,最後は心不全なんでしょう。
○高久会長 そうなんです。しかし,私もこの委員になってから聞いてみたら,急性心不全は死因として書いてはいけないということです。ところが,臨床医はよく知らなくて,意外とよく使っているのですよ。心筋梗塞と同じような感じで使ったりしていることがあるものですから。
○江川委員 どちらを原則にするかということだと思うのですね。つまり,なるべく解剖すると。ただし,例えば継続的に医療機関にかかっていた人は除外するとか,原則解剖にして,例外的に明らかに病死だということが分かる証拠がもう全部そろっているのは除外するという方が望ましいのか,あるいは,基本的には今までと同じで,でも,怪しいものだけピックアップするという,どちらを原則にするかということだと思うのです。先生の考え方はどちらですか。
○村井教授 できれば原則解剖にする立場でやった方が,少なくともしばらくの間はよろしいのではないかと思います。
○野﨑委員 その場合は,検察官,警察官でいいのですかね。私などは,もう少しちゃんとした医者のチェックをしてもらって,解剖に回すべき事案というものを決めた方が問題は起きないのではないかと思いますけれどもね。
○村井教授 なかなか法医の人間が対応できるかどうかという問題がございますが。
○高久会長 やはり司法警察の方がいいような気がするのですが。
○野﨑委員 何か起きたときに,身内がやっているからということを言われる可能性があるのですよ。
○高久会長 司法警察でも身内になるのですか。
○野﨑委員 警察,検察庁というのは身内でしょう。そうされるのであれば入れられた方がいい。なぜならば,解剖されるということは,遺族が喜ぶとは限らないのですね。ですけれども,司法解剖の場合は強制的に持っていくわけですから,その手続はきっちりしておいた方がいいと思うのですね。それを広げていくということは,娑婆で起きたときには持っていかれないようなものまで持っていくことになるわけですから,これは医学的に見ても司法解剖をした方がいいのですよということを,つまり検察官,警察官とともにだれかプロが見た方が,より確実ではないかと。私は何も減らすことを考えてはいないんですよ。
○高久会長 例えば刑務所のドクターが見ていて,そのドクターがいない間に急に死んだ場合,これは刑務,警察官よりももっと身内になると思います。
○野﨑委員 僕が言っているのは第三者的なものです。
○江川委員 その人以外の人が解剖しなければならないことになるので,基本的には……。
○高久会長 解剖ではなくて診断です。
○野﨑委員 診断ですから,それは全然違います。
○江川委員 基本的に全件解剖するということにしておけば,ちょっとでも,とにかくずっと入院していて,それでそのまま亡くなったというものを除いては,全件解剖に回るわけですから,それをやればですね。
○野﨑委員 全件解剖するというのは,どういう手続でやるのかということを考えないといけないです。ですから何か法律をつくって,刑務所で死んだ人は全件解剖するというふうにするならばできるでしょうけれども,そうではなしに,司法解剖という手続を使ってやるとすれば,全件解剖というのは無理なんですよね。だけど,問題になるのを残してはいけないから,チェックするのはきっちりした方がいいということで,私は申し上げているのでね。
○高久会長 実際に可能かどうかということですね。第三者のドクターが引き受けるかどうかという問題がありますね。
○村井教授 死体を見慣れている医者というと,法医学者か警察医の人しかいないんですよね。法医学者というのは大体大学にしかおりませんので,刑務所とかなり離れているというと,全件見るというのは難しい場合があるかもしれませんですね。
○野﨑委員 警察官でいいのならそれでいいんですよ。それはそれでいいのだと思いますけれども,恐らく,今先生の言われたのは検察官と警察官と比べたとき,どちらの方が目がいいかという,ベターの問題を言っておられるのだけれども,つまり客観性という点からまたいろいろな議論が出てくるのであれば,何か客観性を満たすような人に見せて分けたらいいのではないかというのが私の意見なんです。
○高久会長 刑務所の中で死んだ人を全例原則司法解剖というと,司法解剖の定義である「犯罪の疑い」ということとに矛盾が出てくるので,やはり,第三者が,犯罪の疑いと判断をするという前提がないとまずいと思います。だから死んだ受刑者をすべて解剖というわけにはいかないのだろうと思います。
○野﨑委員 法律をつくれば別でしょうけれどもね。
○高久会長 今の法律ではですね。
 それでは,村井先生,どうもありがとうございました。

〔村井教授 退席〕

2.議論

○高久会長 今の,村井先生のお話,議論の中でもありましたが,死因確定手続について法医学者が全例の検視に立ち会うということはほとんど不可能だろうと思います。ですから,解剖することはできるけれども。
○江川委員 つまり司法解剖するかどうかを決めるのは検察官か警察官か,そういう犯罪捜査に関することをやっていらっしゃる方ですよね。そうなると,例えばずっと入院していたとか,そういう特別の事情がない限り,なるべく司法解剖に持っていくようにというのは,法務省の方が各検察官にそういう方針で臨むようにと言っておけば,法律を変えなくても,かなりの部分,それが可能になるということはありますか。
○杉山次長 一つの運用としては,慎重を期するようにと。当然やるべきことなのですけれども,疑いがある場合にきちんとしなさいということは当然やるべきことですし,それを通達等で出して徹底するということは十分可能だと思います。
○江川委員 つまり病名まで明らかでない限りという,そういう形だったら,通達で運用は可能になりますか。
○杉山次長 病名が明らかでない場合というような要件は,本来の司法解剖の要件としての「変死の疑いがあるかないか」という観点とちょっと違うのではないかと思うのですけれども。
○江川委員 では例えば,普通の一般での病死,犯罪の区別よりも,もっと厳格にするようにということはできますね。つまり,一般よりももっと厳しくそれを考えていくようにと。一般だったら,まあいいかということはないのでしょうけれども。
○杉山次長 一般的に変死の疑いが強い状況である,そういうことは言えると思うのですね。もともとだれも見ていないといいますか,かなり密室的なところがありますから。だからそういう違いというものを十分考えてということは言えるのかと思いますが。
○高久会長 全体会議のときの第3分科会の報告では,従来の検察が見ているのと違って,検察と警察とが協力をして解剖の必要性について,より適切な判断をするようにというコメンテーションをしたのですね。
○江川委員 「より適切な」というところをもうちょっと具体的に表現することは,今いい言葉が浮かばないのですけれども,何かないですかね。
○野﨑委員 前はむしろ警察だけがやっているのを,検察官も入るべきだという感じだったんだと思うのですよね。そうではなかったですか。
○杉山次長 いや,必ずしもそうではなくて……。
○野﨑委員 警察の方がよく目がきくというのは,今日初めて聞いたから,「ああ,そうなんだ」と思っているんですよ。今まで普通から言えば,刑事手続でいろいろ議論になるときに,警察だけが関与したのではないけないから検察官がチェックしろというのが,普通の法律家としての考えなんです。検察官がきっちりチェックした方がいいのだと。捜査などでも検察官がチェックして,つまり選別していく過程で,しっかりした選別が行われていると法律家としては信じていることなので,検察官より,警察官の方がより確かだというふうに言われたのは,ああ,そういう場面もあるんだという,私はそういう印象なんです。
 ただ,先ほど私が申し上げたのは,変死体を見て,これはこういうところに問題があるのではないかというようなところを,警察官はよく見るだろうと思うのだけれども,刑務所で死んだ人を,これは変死の疑いがありますよというチェックに使うときに,これはきっと弁護士会などから見ると,それは甘くないかという議論が出てくるだろうと思うものだから,私は,第三者性のある人をということを申し上げたのであって,問題があるのを逃さないようにするためにという趣旨で言っているので,絞ろうという意思は全くありませんから,それは誤解しないようにしてもらいたいと思います。
○高久会長 司法解剖が年間5,000件もあるわけですから,200例ぐらい増えても大したことはないのですが,法律を変えないと全部自動的にというわけにはいかないのでしょうね。
 司法解剖以外の問題ですが,一つは,菊田委員,久保井委員が意見を出しておられます。日弁連からも,厚生労働省への移管ということをもう一回考えろというふうな御意見がありました。ただ,日弁連の御意見には誤解がありまして,日弁連の御意見では,国立病院に移管すると我々が提案したというふうなお考えのようですが,厚生労働省に移しても,本家本元である国立病院でさえもなかなか十分に医師を充足し切れないから,厚生労働省に移すということだけで刑務所の医師を充足するのは難しいという議論だったと思います。誤解があるので,この点はまた機会があれば御説明したいと思いますけれども,この点についてはいつもフランスで非常にうまくいっているから,イギリスもそういうふうに計画をしているから,なぜ日本もできないかということでありましたけれども,野﨑委員はフランスで御覧になったわけですよね。かなりうまくいっているというふうな御印象を持たれていますか。
○野﨑委員 よく分かりませんでしたね。まだ試行錯誤の段階だと思いますよ。ただ,フランスの刑務所で聞いた話では,例えばエイズの問題があってやったんだという話でした。だけど,フランスでは厚生省に移管されて初めて結核などのチェックをもするようになったということを言っています。つまり司法省が刑務所を監督していたときの医療というのは非常にレベルの低いものだったということは,それでうかがい知れたと思います。同時に,医療施設を見たときに,日本の刑務所と比べると医療機器などはないですね。レントゲンが1台ポンと置いてあったという感じでしたね。だから,私は,そうなってどれだけうまくいっているのかということはよく分かりませんでしたし,いろいろ質問したのですけれども,非常に公式的な答えしか返ってきませんでした。ただ,非常に高いものについたと言ったのが印象的でした。
 それから,刑務所の方は,医療を厚生省に持っていったから非常に気楽な気分になっていまして,もっと,年に何回も来て,ちゃんとやってくれないと困るのだみたいなことを言っていました。
 日本では行政の縦割りの弊害ということをよく言われるわけで,刑務所の中で,今一つがやっているのを,二つの行政機関がやるようになって,うまくいくのかどうかということは,よほど慎重にやっていかないといけないので,フランスでやっているからいいという議論をするのはなかなか問題だと思います。しかし,研究する課題としては,これからずっと勉強していかれたらいいのではないかと,私はそういう意見でした。
○高久会長 この前の第3分科会の報告でも,検討課題としてということで。そのときに,もう一つの議論として,医療と保安とがある程度独立するという考え方もあるので,その点を含めて検討をすると言った方がいいのかなと思っておりますけれども,前回の報告のときには医師の補充という観点だけから言ったのですけれども,今までの,特に日弁連とか,ほかの,菊田委員などの御意見では,保安と医療の独立という観点からも考えろということがあったと思います。その言葉を入れてもよろしいでしょうね。
○江川委員 ただ,難しいのは,民間の病院の立場からすると,受刑者だけをぽんと持ってこられても困るわけで,そうすると,刑務官をつけてくれという話にどうしてもなりますね。今だって,受刑者の立場で刑務官を何人つけてくれなければうちは診ないよというところだってあるわけですよね。だから,検討するのは別にいいのですけれども,事実上,非常にそれは困難なので,それを期待して何かおくよりも,今の状況の中でどうやったら医者をもっと確保できるのか,あるいはどうやって医療を受ける権利が妨害されたりすることがない,あるいは妨害されたと感じることのないようにしていくのかという,やはり現状を踏まえた上での力点をもう少し置いた方がいいような気がします。
○野﨑委員 もう一つ,「刑務所医療の保安からの独立」という言葉が一人歩きすると,非常に危ない言葉なんですね。何か医療を保安が左右してしまっているみたいな表現をしているのですけれども,そんなことはないので,医療は完全に独立して,お医者さんが保安の言うことを聞いて診断するなんてことはあり得ないことなのですから,こういうキャッチフレーズ的な言葉に対しては何か言っておかれた方がいいと思います。
○高久会長 そうかもしれませんね。
○江川委員 問題は,医者のところに行くまでの選別ですよね。
○高久会長 それは難しい問題で,それを医者がすることは物理的にほとんど不可能です。
○江川委員 それを保安がやっている可能性があることが,今すごく問題なので,看護師だとか准看護師の充足というのは急いでやらなければならない課題だということは。
○高久会長 だから,せいぜいできるのは,おっしゃったように,准看護師の資格を持った刑務官がセレクトするという,それを原則にすべきだと僕は思うのですけれども。刑務官に看護師,准看護師の資格を持たせることはできることですからね。この点は強調してもいいですね。
○野﨑委員 もう一つ,アンケートを見たときに非常に興味があったのは,欲しい薬をくれないということです。欲しい薬をくれるのがいい医療なのかという問題だってあるわけですね。だから,ああいう統計の取り方というのは少し問題があるのではないかと思いますね。例えば風邪を引いて抗生物質をくれないと。だけど抗生物質を出す方がいいのか,出さない方がいいのかというのは大問題で,むしろ消極説の方が強いわけですから,ああいうところは誤解を生むなという感じがします。
○高久会長 保険を適用せよという御意見の中に,少しでもお金を払わせたら詐病が減って,受診したがる人が減るのではないかということがあります。そのために保険に近いことを適用して,アメリカみたいに2ドルでもいいから取るべきではないかという御意見もあるのですが,そのことはどうなのですかね。
○野﨑委員 保険制度とかいろいろなものと絡んだ問題で,この会議で健康保険をどうするとか,そういうことは難しい問題ですよね。
○江川委員 ただ,「健康保険に入っていないということが日本国民ではない」と言っているのではないことはやはり,非常に大きな誤解があるので,そこのところは。
○高久会長 健康保険に入っていると初診料や3割を払わなければなりませんから,医療のレベルさえ同じならば,今の方がいいと思うのですが。
 今回は実は,この分科会の最後になるものですから,各委員の方から御感想,御挨拶をいただくことになっていますけれども,広瀬委員が早目に御退席になりますので,広瀬委員に御感想,御挨拶をいただければと思います。
○広瀬委員 第1分科会,第2,第3とありますが,ここの問題を考えても,第1,第2と関係のある分がえらく多いと思うのですね。刑務所というのがもっとオープンになってきて,市民の監視も行き届くようになった場合には,例えば先ほどの,刑務所内で死亡する場合も,いいかげんに扱えなくなるのは当然のことで,今より格段にその環境がよくなると思うのですね。そういう点では,一般環境をよくするというのが第一だと思います。
 それから,医療の問題も,日本の場合には2ドルを惜しむ,惜しまないというよりも,労働がきつくて腹が痛いとか頭が痛いとかいう詐病というのが相当多いと思うのです。第1分科会で,労働の時間を午前中だけにするとか午後だけにするとかいうことになれば,頭が痛いからという問題も相当緩和されてきて,本当の病人が十分手当てを受ける時間的な余裕もできてくるのではないかと思うのですね。だから,第3分科会のところだけで問題をすべて解決しようと思っても大変無理があるのですが,第1,第2と協力し合っていけば,相当違うだろうという気がいたします。
 この第3分科会でかなり問題なのは,今後,刑務所の民営化的なものにどこまでプラスを認めていくか。あるいは職員をどういう形で増やしていくか,いかないかという,そこらだろうと思います。
 私たちが見た,例の市原の刑務所など,あれは交通事故が中心だと聞きましたが,懲役ではなくて禁錮刑の人たち,その入所環境というのは極めて良好なようで,余り良好過ぎても困るのでしょうけれども,ああいう形のものは,職員数も少なくて済む。恐らく医療についても,本当に体調が悪いのかどうかというのが十分見極められるぐらいの状況になっている。深刻な医療不足ということもない感じがいたしました。すなわち,凶悪犯の入所者が増えると同時に,初犯だとか,あの種の人たちも相当多いわけですから,そこをきれいに分けて,少ない監視者で済む,処遇者で済むとか,一人でたくさんの面倒を見れるとか,そういう格好のものをできるだけ早くつくっていく。そこに民営的なものを導入していくというのなら,私は十分やる値打ちがあるのではないかという気がいたします。
 いずれにしても,第1分科会の,いわゆる懲役の中身のところ,それから処遇のあるべき姿,市民の監視,そういうものに我々は期待しつつ,第3分科会での改善案を出せばいいのかなという気がいたします。
○高久会長 どうもありがとうございました。
 少し時間がありますので議論を続けたいと思います。
 あとは,刑務所の増設の是非で,菊田委員の方から,刑務所増設には反対であるという御意見が……。
○江川委員 懲役があるから入れておこうというわけではなくて,問題があるから懲役にって,それで満杯になっちゃっているわけですね。これで増やさなかったら……,余裕があるから懲役刑を増やしているわけではなくて,実際にそれが必要なわけですから,増設しなければ,もっと過剰収容になって,もっと悲惨なことに……。
○高久会長 もっと居住環境が悪くなりますね。多くの人を詰め込まなければなりませんから。
○江川委員 ええ,何を考えていらっしゃるのか,よく分かりません。
○高久会長 これは余り問題にならないと思います。
 ほかに何か。
○江川委員 私は自分でホームページを持っているのですけれども,そこでメールの受付もできるようになっているのですね。最近,ある刑務所の刑務官という方からメールをいただきました。それは,返事も出していませんし,その人が本当にそうなのかということは調査をしたわけではないのですけれども,多分本当ではないかなと思う根拠が幾つかありました。それは,上司に対する不満と体制に対する不満だったんですけれども,前回だか前々回だったか,そういった不安に対しては,人事院とかその他,汲み取る機関はあるということだったのですけれども,現にそれがうまく機能しているとは必ずしも言えなくて,現場の刑務官の人たちが本当に不満をうっせきさせているケースも恐らくあるように思うのですね。ですから,この間,団結権のことで組合の話をしましたけれども,一般の職員の人たちが,そういう自分たちの労働環境の問題,つまりそれは上司によって労働環境がいかに悪くなっているかということなんですけれども,そういう問題についても,きちんと何か相談ができるような体制づくりというのはもっと,私は組合というのは一つの役割を果たすと思うので,団結権の問題というのはまた蒸し返したいところがあるのですけれども,百歩譲って,それがすぐ実現しなくても,その不満に代行して対応して,その人が絶対不利益にならないようにしてできる,もうちょっと,工夫が私は必要ではないかなと思いました。
○高久会長 この前の全体会議での報告のときにはどういう表現になっていましたか。
○杉山次長 「刑務官は上命下服の勤務体制をとっており,自己の悩みや不満を直接の上司に伝えることが困難な場合が多いことが想定されるので,メンタルヘルスの窓口のようなものを管区または矯正局に設けて,施設長を飛び越えて直接連絡ができるよう,現実の窓口のほかパソコンのメールによる受付も行うなどして,管区または矯正局の専門の職員が適切にこれに対応することも必要である」というところにあらわれているかなと思います。
○高久会長 「団結権」という言葉はなかった。
○杉山次長 団結権の部分はその次に。「これについては警察,消防とともに公務員法制上の問題であるので,刑務官のみに安易にこれを認めるのは相当でない上,認めた場合の効果についても疑問があるという意見もあった」と,そういうことになっております。
○江川委員 私の意見ももちろん入れていただいているので,付け加えるとしたら,労働環境というか,単に待遇というだけではなくて,いろいろな理不尽な問題も多分起きていると思うのですね。そういうのがあるから思い余ってというか,メールをしてくだったので,今でもそういう不服の申立機関はあると思うのです。だけど,自分に不利益にならないという信頼がないのではないかと思うのですね。ですから,不利益にならないというところを,できれば強調していただきたいというふうに思います。
○高久会長 その点について文章を考えましょう。どうもありがとうございました。ほかにどなたか。
○野﨑委員 行刑一般の問題を考えたときに,これから被収容者の個人的な自由というものをだんだん増やしていこうという傾向に,ヨーロッパなどは明らかにあるわけですし,日本もそういう方向に行くだろうと思います。これは最近の若い人の行動を見ても,私どもの社会人になったころとはうんと違う行動形態があるわけでして,それぞれの人が個人を尊重して生きようというふうにしているわけです。例えばこのごろは社内旅行なんてのはできなくなってきていますよね。そういう時期に,一挙に雑居房をなくすということはとてもできないと思いますけれども,方向としてはだんだん独居房の方にいく,独居房を中心とする方向に行くだろうということは考えておかないといけないと思うのです。だから,これからいろいろな改革をなさるに当たっても,やったところで時間が止まってしまうようなことではなしに,だんだん世の中の動きに従って変わっていく,その方向は今申し上げたような方向にあるんだということを頭に入れておくべきではないかと思います。
 それとの関係でいえば,確かに刑務官というのは上命下服の関係にあるということは間違いないわけですけれども,これも考えによっては,検察事務官だって普通の社員だって,みんな上命下服の関係にあるわけで,上命下服の関係であれば軍隊式でないといけないということでは必ずしもないと思うのですね。私がヨーロッパを,二つ,三つ見せていただいた限りで言えば,向こうでは軍隊調であるところはなくなってきている。ここで今問題にされているのは,軍隊的行進とか点呼の取り方などを主に議論されているわけですけれども,例えば上司が入ってくると,敬礼をして「総員何名。異常なし。」とか言いますね。ああいうのは昔の,私どもが軍事教練を受けたときの,そのままが行われている。私はああいう在り方が必要だった時期があると思うのですけれども,今申し上げたように世の中が変わっていきますと,それはなかなか維持できないと思うのですね。ドイツでもフランスでも,もっと平面的な関係で話し合いをしてやっていこうという姿勢が非常に見えました。その点もやはり考えていかれるべきではないか。
 上命下服的な,つまり軍隊的な体制を維持して,規律をもっと臨むと,どうしても体罰的な発想にいくのですね。それは,私から言わせると,人権上,非常に問題が出てくる。つまり,土壌の一つになりかねないものを持っているということを私は言いたいですね。だから,是非,これを一挙に変えろということは私は申しませんけれども,各国のいろいろなものを視察されて,あるべき姿,方向性を見出されるととも,だんだん,あるべき姿に向けて進んでいくような形を考えていかれるべきだろう。その中には,上命下服関係の在り方ということもかなり含んでいるのではないかという気がいたします。
○広瀬委員 市原でもイチニ,イチニをやっているんでしょうか。
○宮澤(弘)委員 多少は。しかし,派手にオイチニ,オイチニというのはなかったですね。動くときに多少の気合いがかかって。
○西田企画官 市原は,職員ではなくて受刑者がお互いに号令をかけてやらせるようにしていると思います。
○広瀬委員 あそこは禁錮刑だから,仕事をしなければいいのに,うそか本当か,皆,希望するというあの心理がよく分からない。
○野﨑委員 何もしないのは辛いのではないですか。何もしないというのはとても辛いことだと思いますよ。
○広瀬委員 何もしたくない人が,100人のうち10人や20人はいると思うのですけどね。
○高久会長 一律に働く時間を減らすよりも,ある程度段階をつけて,自分は何時間組に入りたい,自分は何時間組みに入りたい。まあゼロ組でもいいのですが,そうした方が……。
○広瀬委員 そういうことができれば,弁護士会が言うように,自給幾らという少し高目のものを渡しても,むしろいいわけで。
○野﨑委員 賃金だと言われると,衣食住全部を保障して賃金を差し上げるというのはおかしいですよね。だから僕は報奨金は上げるべきだという議論ですから,誤解されると困るのですけれども,賃金というのかなという気がしますね。
○高久会長 賃金ではないでしょうね。
○広瀬委員 被害者に対する保証金上積み分とか。
○高久会長 労賃ならば良いですかね。賃金というと,その会社のために働いた人が……。
○野﨑委員 報奨金でいいんですよ。額を上げていけばいい。刑務所を出たときに,昔と違って親戚縁者に頼っても,断るような時代になってくると,頼れるものはお金だけですから,働いたときに得た金で,少なくとも相当の期間が過ごせるということでないと,出ていって,すぐ悪いことをしないといけないということになりかねないと思いますね。だからその点はよく考えるべきだと思います。
○江川委員 更生保護施設の方に伺ったときに,出てきたときに160円しか持っていなくて,更生保護委員会か何かが貸して,つまり,これから就職をしなければいけないというときに,それだけのお金では履歴書に貼る写真も撮れない。だから,社会復帰に向けての準備ができるようなことは考えた方がいいですね。
 それから法務省の方にお伺いしたいのですけれども,この間,朝日新聞の方から取材依頼があって,私はその内容を聞いたのです。大阪の方の事件だったと思うのですけれども,未決らしいのですが,拘置所で自殺を図って,外の病院に運ばれて,すぐ執行停止になったのだけれども,そこで亡くなったと。未決も含めて自殺の場合は公表するようにはなっているはずだけれども,執行停止だから,うちの人間ではないということで発表しなかったというふうに新聞記者は言っているんですね。そういうような運用というのはなされているのでしょうか。今回やろうという方向の精神からすると,拘置所なり刑務所なりで自殺を図って,外の病院に行って,仮に執行停止になったとしても,それは一つの公表事例に含まれる。こちらの,こういうことをやろうという精神からすると含まれるのではないかと思うのですけれども,運用はどうなんですか。
○西田企画官 一般的には病院移送をして執行停止になった場合には,当方の身柄ではないものですから,かえって,刑務所あるいは拘置所の方で「死にました」と言って,嫌がる家族がいることは間違いないんですね。ですからそういった場合にはなるだけ在監者ではないような形にしてやってというような思いもあると思うのです。今言われたのは,どういった事案か,ちょっと私もよく分からないのですけれども,本来公表すべきものを,執行停止になったからということだけで,そういう扱いにしているとは思わないのでけれども。
○江川委員 なかなかそういうものは公表して,つまりどこまで公表するかは別ですよ。本当に一般に知らしめられるようになっては困るという人はたくさんいると思うし,それはそれで分かるのですけれども,例えばこういう事故がありましたということを言わないというのはどうなのかなと思ったんですね。
○宮澤(弘)委員 法務省の方に伺いたいのだけれども,来年度の予算というのはもう事務的には大分詰まってきているのですか。
○西田企画官 そうですね。
○宮澤(弘)委員 そこで,刑務官の増員とか,そういうものはどういうことになっていますか。増員なんていうのは,こちら側で増員,増員といってもできる問題ではないですね。何か,大臣がまなじりを決して,尻まくりして,これを認めてくれなければ,俺はやめてもいいやと,まあそういうのは最近いなくなったのですけれども,そのような非合理的な要素が,こういう予算の獲得などには,ある力を持つということがありますね。
 私は,夢を見ているのかどうか,警察官を増やそうという話があって,ところが,これはどうもなかなか,予算が辛いからそういうわけにはいかないという話になって,いや,そうでないと。今の日本の政府,内閣は,治安の問題を非常に重要視しているのだから,警察官というものは増やそうじゃないかと,そうなったのかな。どうですか,聞いていないですか。
○高久会長 新聞では増員と。
○宮澤(弘)委員 予算があれだからだめだと言ったけれども,警察官を増やそうと。警察官を増やすなら,この際,刑務官だって同じだと思うのですけれども,世の中の人は,警察官のことは言っても,刑務官のことまではいかないですね。警察官の方は毎日御厄介になるけれども,刑務官なんてものは「わしゃ知らん」ということかもしれないけれども,やはり今度の政府の予算編成方針の一つの重要な点が治安であると。これは,予算もそうだけれども,都知事の石原さんも,あの人はああいうことが好きだけれども,治安ということを言っておりましたね。ですから,政府の方針として警察官を増やすならば,刑務官だって同じではないかと。
○高久会長 警察官が増えて検挙率が上がれば,また被収容者も増えて,刑務官もと,本当は連動しているのですけれども。
○宮澤(弘)委員 警察官というのは半分地方にお金を持たせるものだから,割合にそういう意味においては政府としてやりやすいのかもしれませんね。どうも,警察官のことばかり言って,刑務官にはいかないというのもおかしな話で。
○西田企画官 まだ予算編成直前でございますので,はっきりしたことは分かっていないのですけれども,去年100人以上の純増をもらったということがあって,多分こういった会議の追い風があったからではないかと思っているのですけれども,来年度は,去年以上の増員をいただけるのではないかというふうに期待しております。
 それから,それ以外に民間委託をする人数の関係も,去年まで二百何十人ぐらいしか民間委託の人数というのはしていないのですけれども。
○宮澤(弘)委員 何がですか。
○西田企画官 民間の方に,いわゆる業務の外出しをして,これを経費で見てもらうのですね。刑務官がやらなくても済むような業務を探して,実質増になるものですから,そういったものも去年以上に認めていただけるのではないかと。少なくとも,増員は,去年百何人かあったのが,もう,そんなことは国の職員では珍しい話ですが,去年,百何人の増員があったのも大変な話なのですけれども,去年以上に認めてもらえるような空気ではないかと思います。多分こういった会議で,割と新聞でも言っていただいていますので,そういったことが追い風になって,去年以上の増員をいただけるのではないかと。
○宮澤(弘)委員 丁寧におっしゃるけれども,やはりこういうことは喧嘩ごしでいかなければだめですからね。(笑声)
○広瀬委員 宮澤座長談話か何か出して。
○宮澤(弘)委員 それで,警察官が増員になれば当然,刑務官も右へ倣えでいかなければ,いつまでたっても同じですよ。ですから,その辺のことは,大臣に少し元気をつけさせなければだめですね。予算の査定がどういう段階になっているのか知らないけれども。まあ,それは,増えなければ困るけれども,警察だけに行っちゃって,刑務官には行かないなんて,変なことならないようにしてください。
○高久会長 宮澤(弘)委員は全体会議の座長でございますから,御報告なさるときに,是非その点も強調して,大臣の方に報告書をお渡し願えればと思うのですけれども。
○宮澤(弘)委員 私は全く何も,よく分からないのですけれども,そういう世の中の世俗のことは多少分かるものですから。
○高久会長 確かにおっしゃるとおりだと思います。

3.その他

○高久会長 そろそろ終わりにしたいと思いますので,各委員の方から御感想,御挨拶をいただきたいと思います。名簿の順ですと,江川委員からまずよろしくお願いします。
○江川委員 感想でいいんですか。
○高久会長 感想でも何でも結構です。
○江川委員 私は医療についても人事管理とか,そういうことについても,全く素人なのですけれども,いろいろなことを勉強できましたし,それから,こんな素人でも,本当にほかの先生方と同じように自由に意見が言える雰囲気をつくってくださってありがとうございました。
 刑務所を幾つも見学して,特に府中での状況というのは衝撃的でした。
 それから医療のことについても,いろいろ教えていただければいただくほど,こうすれば別の問題があるという,一個に対応しようとすると違う問題が見えてきて,本当に単純ではない,いろいろなところに目配りしながらやらないとうまくいかないということもよく分かりました。
 今回の提言にまとまるわけですけれども,それが,今のいろいろな意味での悲惨な状況,つまり入っている人もそうですし,働いている人にとっても大変困難な状況が少しでも緩和されるように,そういう実効性のあるものにというふうにすごく願っています。
○高久会長 どうもありがとうございました。
 それでは,野﨑委員,お願いします。
○野﨑委員 私はずっと裁判官をやってきたのですが,若いころ刑事をやっただけで,あとはずっと民事できたものですから,そんなに刑事のことはよく分かっているとは思わないのですが,しかし,若いころ刑務所,それから少年院といったところに,仕事の関係でよく行く機会もありましたし,そういう時代のことを考えてみますと,最近見る刑務所というのは随分変わったなという感じがいたしますね。麻薬とか覚せい剤の関係もあるでしょうし,相当精神病質的な人も増えてきている。刑務所の中が昔ほど明るく,明るいというか,昔でも刑務所は暗いのでしょうけれども,昔よりももっと暗くなっているような印象を非常に受けました。
 今後というものを見たときに,犯罪は今非常に増えつつあるし,しばらくはそういう時代が続くだろうと思います。それに対応して,最近は犯罪被害者が物を言うようになってきましたし,日本の刑が軽いということをみんなが意識するようになって,刑罰が長期化していく傾向にありますし,これはもう避けられないだろうと思いますね。そうなってくると,刑務所の中の様子はだんだんそのことが影響してくるわけでして,例えばフランスやドイツの刑務所が自由化されていったのは,長期刑を言い渡されて絶望的になってきた被収容者をどうしてマイルドな心に少しでもさせて,刑務所の中の平穏を維持するかということと決して無関係ではないということを聞いてきまして,日本でもそういう傾向はだんだん出てくるだろうと思います。
 先ほど自由化といいますか,刑務所の中の規律の自由化ということを申し上げたのですが,私はそういうこととも関連して,自由化せざるを得ない状況というのはどんどん出てくるだろうと思うのですね。そういったときに,例えばいつまでも房内で話をしてはいかんとか,正座をしろとかいったような規律というのはどこまでもつか。私らが小学校や中学校のときに,クラスで騒いだりすると,先生に全員正座させられたりというような生活を送ってきましたから,あっ,まだやっているんだ,懐かしいなという感じもしないではないのですけれども,今の人たちにとっては理解できないのかもしれないのですよね。やはり規律を守らせるためのペナルティーというのは,その受ける人の理解できるものでないといけない。だからそういった点で,これから行刑というのは大変難しい問題に直面していくだろうと思います。そういうことをこの機会に少し長期的なビジョンに立って是非考えていかれたらいい。
 そして,よその国の人が見学に来たときに,日本は異常じゃないかというようなことを,今でもあの号令,行進などを見ると,そう言うんだと言うのですが,日本人は必ずしもそうは思わないと思うんですよね。しかしだんだんそう思うようになっていくと思うんです。だから,これは長期的な観点でよくお考えをいただいて,立派な行刑というものをやっていただきたい。その中にあって,一体行刑というのは何をすることなのか。ただ,穏やかにさせておけばいいというわけではないので,やはり矯正目的というものがどうしても入るわけですから,犯罪者を更生させるということも考えていかないといけない。それは,そういう中にあって,どういうふうに実現していくかということも非常に大切なことだと思うのです。だから,こういった面をひとつ是非検討していっていただきたい。
 私は,3年ばかり人権行政をやった経験があるものですから,これからも人権の問題についてはいろいろ発言をしていきたいと思います。しかし,それも,地道な努力の積み重ねでしかよくらないものなので,いろいろ工夫をされて,刑務官の人権意識というものを高めていかれるようにしていただきたいし,もし私でできることがあったらお手伝いしたいというふうに思います。
○高久会長 それでは,宮澤(弘)委員。
○宮澤(弘)委員 私は刑務所というのは初めて見ましたけれども,刑務所の塀というものがこんなに高いものかということで,びっくりしましたね。外の情報が内に伝わり,内の情報がまた外に伝わる,そういう空気の流通というのでしょうか,これがとんでもなく悪い世界ではないだろうかと。私は初めてなものですから,なおそういう感じがいたしまして,結局,内と外との情報流通をもっとよくするということが一番重要なことで,刑務官を100人増やそうとも,内と外との流通をもっとよくするということの方が,考え方によっては重要なことではないか。私は何も知らなかっただけに感じました。
 ですから,刑務所に行きましたら,先ほどお話が出ましたが,オイチニをやっていまして,私,びっくりいたしましたよ。戦争時代の雰囲気がまだこの辺にこういう形で残っているかと。皆さんは,当たり前のごとくオイチニをやっていらっしゃるのですね。びっくりいたしました。
 一言で申しますれば,先ほど申しましたように,もっと内と外との流通がなければいけないし,それが一番重要なことかなと。何も知らないであるがゆえに,盲,蛇に怖じずで申し上げているかもしれません。そんな感想でございます。
○高久会長 どうもありがとうございました。
 私の方も,今,宮澤(弘)委員がおっしゃったように,刑務所のことは全く知りませんで,もちろん,刑務所の医療のことは全く知りませんで,全体会議の委員になることを何となく気安く引き受けましていましたら,ドクターは私一人でした。結局,医療の問題ということになりますとなかなか大変な問題でして,ほとんど解決のめどがないような気もしたのですが,皆さん方のいろいろな御意見をお伺いいたしましたし,また事務局からもいろいろな案を御提案いただきまして,それから,ヒアリングでもいろいろなことをお聞きいたしまして,何とかまとめられたのではないかと思います。当然いろいろなところから御不満が出てくるのではないかと思いますが,現状ではこういう形でしか仕方がないと思っています。
 もう一つの,体制の問題も,このように意見として,あるいは提案として出すのは簡単なのですが,それを実行していく方はもっともっと大変でして,法務省の方々の御健闘を祈るというのが私の感想です。どうも長い間ありがとうございました。
 また,8日の全体会議で皆さんに第3分科会の報告をいたしますが,いろいろな御意見が出た場合には,あるいはその問題について御意見をお伺いする機会があるかもしれませんが,一応,本日でもって第3分科会を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


午後3時39分 閉会
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