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行刑改革会議 第7回会議

日時: 平成15年11月17日(月)
14時03分~16時55分
場所: 法務省第1会議室



午後2時03分 開会


○宮澤(弘)座長 お待たせをいたしました。それでは,ただいまから行刑改革会議第7回会議を開催いたします。
 御承知のように,10月8日~19日にかけまして,5名の委員の方が二手に分かれてヨーロッパの刑務所などを視察して来られました。本日は,まず視察結果につきまして御報告をお願いすることといたします。次に我が国の行刑の沿革につきまして,矯正局から御説明をするということを申し上げておりましたが,今日その説明をしてもらうことにいたします。それから,最後に分科会の検討状況について,各分科会長から御報告をいただくことにいたしたいと思います。
 なお,本日は副大臣と政務官が御都合により欠席と伺っております。また大臣と後藤相談役は御都合により中途退席されるようでございます。
 ここで報道機関の方が退場されるので,しばらくお待ちください。

1.海外視察結果の報告・質疑

○宮澤(弘)座長 それでは,海外視察の結果について御報告いただくことにいたしたいと思います。
 最初に,今回の海外視察全般にわたって南委員から御報告いただきたいと思います。なお,御質問等につきましては,御報告の後まとめていただくことにしたいと思います。御了承ください。南委員,よろしくお願いいたします。
○南委員 それでは,報告させていただきます。
 海外の行刑運営の実情を把握し,当会議における議論の参考に供するため,大平委員,菊田委員が10月8日から11日までイギリスを訪問し,大平委員,菊田委員,久保井委員,野﨑委員,それに私南の5名が10月12日~14日までフランス共和国を訪問し,引き続き久保井委員,野﨑委員,私南の3名は15日~18日までドイツ連邦共和国を訪問し,英,仏,独3か国の行刑施設等を視察してまいりました。
 それぞれの視察の内容につきましては,後ほどイギリスについては大平委員に,フランスについては野﨑委員に,ドイツについては久保井委員にそれぞれ御報告していただくところでございますが,まず全体の報告を私からさせていたただきます。
 イギリスにおきましては,同国の刑務所を管理する刑務官庁を訪問し,イギリスの行刑行政について説明を受け,刑務所の適正な運営に資するため施設の近隣の市民から成る独立監視委員会(Independent Monitoring Boards)を訪問し,その職務について説明を受け,更にホワイトムーア刑務所を視察したと伺っております。
 私たちが視察いたしましたフランス及びドイツにつきまして,簡単に申し上げますと,フランスにおきましては司法省矯正局の各担当者から,長時間にわたり同国の行刑制度について説明を受け,また厚生省の担当幹部から行刑施設における医療についての取組状況をお聞きしました。更にポワシー中央刑務所を視察し,行刑施設の具体的な運用について実地に見聞することができました。これまで視察がなかなか認められなかったと聞いておりましたフランスの行刑施設を視察することができ,不足していましたフランスの行刑に関する情報を広範に得ることができました。
 次に,ドイツにつきましては,刑務所における処遇等は,行刑法という連邦法律で統一的に規定されていますが,その運用は各州(Land)に委ねられております。そこで,ベルリン州における代表的な閉鎖刑務所であるテーゲル刑務所及び開放刑務所であるハーケンフェルデ刑務所を訪問し,ドイツ行刑法の規定が各施設において実際にどのように運用されているかに重点を置いて視察いたしました。
 テーゲル刑務所はドイツ最大級の閉鎖刑務所であり,ドイツ行刑法で規定されています面会,信書の発受や施設審議会など,さまざまな事柄について実地に見聞し,その実情を視察してまいりました。またハーケンフェルデ刑務所は,ベルリン州立の開放刑務所であり,外部通勤等の開放処遇が行われており,閉鎖刑務所とは異なった環境,運用等について実情を視察してきました。その詳細につきましては,それぞれ報告書に取りまとめまして当会議に提出されております。このたびの視察によって得られた成果が,当会議の議論にお役に立てば幸いでございます。
 なお,今回の視察におきまして,私が受けました印象なり感想なりを若干付け加えさせていただきます。
 フランスの県,ドイツの州により,また各刑務所によりまして実態も異なっていますので一概には言えませんが,私が視察した刑務所に限って申し上げますと,第1に脱走,暴動を防止するために相当厳重な多重防護措置が施されていましたが,閉鎖刑務所におきましても,受刑者も一般市民の同様の自由を有するとの基本理念に立ちまして,塀の中では一般市民とほぼ同様の自由が許されており,また社会復帰を可能にするために外部との接触もかなり許されているように感じました。
 第2には,舎房にはドアがありまして,小さなのぞき穴はありますけれども,中からはふさがれておりまして,舎房内での受刑者のプライバシーが保たれておりました。
 第3に,医療,教育等について,司法省と関係官庁との間にプロトコル,契約でございますが,契約が交わされまして,運用の具体的細目が定められています。医療との関係につきましても,多少保安上の問題はあるようでしたが,プロトコルによりおおむね円滑な連絡調整が図られているように感じました。総じて,私が見てまいりました刑務所が仮に国際水準であるとすれば,EU諸国の目からしますと,日本の刑務所は国際水準に及ばないというように映るのではないかというような感想を持った次第であります。
 以上でございます。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,各国の視察結果についての御報告に入ります。
 最初に大平委員から,イギリスの視察結果について御報告をいただきたいと思います。
○大平委員 私はイギリスとフランスに視察に行ってまいりまして,今日はイギリスについて報告をさせていただきます。お手元の資料の1ページから46ページまでがイギリスに関するものとなっておりますので,適宜見ながら御説明をさせていただきます。10分ほどお時間をちょうだいします。
 御存知でいらっしゃいますとおり,英国の行刑は今から10年ほど前に発足しました内務省所管の独立行政法人である行刑庁により統括されております。行刑庁は七つの目標というのを定めておりまして,その4番目としまして,裁判所が言い渡した刑の再犯を減らし,大衆を守るために効果的に執行することとしまして,お手元の資料の1ページにあります目的,方針を,このように定めまして,現在運営をしているところでございます。
 行刑庁では,重要な業務指標というのを定めておりまして,毎年その結果を報告しております。添付書類の2,ページ数で言いますと20ページに,その定められた目標が達成できたかどうかの報告がされております。
 2ページ目にあります警備分類なのですけれども,イギリスでは成人受刑者は逃走のリスクに基づいてカテゴリーAからDまで四つの分類がなされています。カテゴリーAといいますのは,一番逃走のリスクが高い受刑者を分類しておりまして,それは実際にその受刑者が逃走するか否かという可能性の問題ではなく,その者が逃走すれば社会一般,警察,国家の安全に高い危険性を与えるという意味での分類でございます。未決拘禁者は,カテゴリーAに分類される場合を除き,カテゴリーBと同様に扱われております。
 3ページになります。行刑計画は,受刑者が釈放後に再犯を犯さないこと,そのために受刑期間を有意義に過ごせることを目的としてなされております。警備度ですけれども,2の(2)のところにあります処遇内容の決定につきましては,職業資格の取得が重要と判断されれば,職業訓練施設に移送することとし,怒り,例えば物事をするのにすぐに怒りを表しまして,それが犯罪に結びつく,そういうことを抑制させるということを学ばせるのが最大限この受刑者にとっては重要であるということが判断されれば,ソーシャルワーカーとかそういうメンタル面でのトレーニングがなされる決定がされます。
 報奨制度というのがございまして,受刑者が中で努力をして良い行いをすれば,例えば自分のお金へのアクセスができるとか,面会が増えるとか,そういった報奨を与えるという意味で,受刑者が社会的なモラル,あるいはそういう人間関係を学べるに最適な方法をとっております。
 4ページになります。処遇へのプログラムと処遇の環境ですが,行刑計画を組むに当たりましては,担当職員と受刑者とが1対1で話し合いまして,そしてプログラムが決められます。もちろん受刑者はそのカリキュラムを断ることはできますけれども,もしその場合には報酬制度のレベルが低下させられる,そういうペナルティもございます。ペナルティと言えるかどうか分かりませんけれども,そういう不利益は被ることがございます。受刑者には,そもそもプログラムを選択する権利,例えば性犯罪者でないのに性犯罪のプログラムを選択するということはできませんが,例えば正当な理由,根拠のある理由がある場合には希望がかなえられるという方向もございます。
 処遇の環境ですけれども,イギリスでは原則として単独房ですが,イギリスの場合も日本と同じように大変受刑者の数が増えておりまして,単独房に二人収容するという事態も生じております。
 報奨制度による私服も所長の判断により認められる場合がございまして,比較的自由だなという感想を持ちました。
 食事の方ですけれども,受刑者が種類を選ぶことができまして,日本の場合と異なりまして配膳係が各房に食事を運ぶのではなく,何と申しましょうかビュッフェ方式といいますか,そういう方式をイメージしていただいて,受刑者がそこにトレーを持っていって好きなものを選択できる,そういうようなシステムになっております。長期の受刑者には,食材を自費で購入して,そして自分の部屋で調理をするということもできます。
 次に懲罰等ですけれども,5ページにありますとおり懲罰の種類はかなりございますが,これまで42日間を超えない服役日数の延長というのも所長の権限でできていたのですけれども,これは欧州人権裁判所において司法と行政の役割を明確にするようにという命令が出た結果,現在は月に1回程度施設に地区裁判官が来まして,その裁判官の権限になっております。懲罰手続におきましては,外部の者の関与としまして,法定代理人や友人等がありますけれども,私が視察に参りましたホワイトムーア刑務所の所長は,自分の18年間の所長としての勤務経験の中でたった1件だけ認めたケースがあると,たった1件だけというふうにおっしゃっていました。その主な理由といいますのは,この下から3行目のところに懲罰の公正さが保たれているということと,もう一つは懲罰のために弁護士を委任する場合には,その弁護士の費用は受刑者自身が負担しなければならない。その費用の負担の面も影響しているというようなことをおっしゃっていました。
 次に,隔離のための独居拘禁ですけれども,懲罰とは別に隔離のための独居拘禁を行うことがあります。これは,本人の希望による場合もございまして,それは主にいろいろなこれまでの社会での地位とか関係しているようですけれども,ただ処遇を希望しても独居拘禁,一人でいるということは決して良くないという判断に立っておりますので,なるべく集団で生活できるような方向には持っていっているということです。例えば他人からいじめられる人たちだけを集めて集団で処遇したり,そのようなことをしているというふうに言っていました。一番の問題は,やはり隔離収容者の中には自殺する者が多く,自殺者がかなりの数に上っておりますので,先ほど申しました指針の中には,自殺者を減らすという目標が達成できたということも挙げられております。
 不服申立ての制度ですけれども,口頭での申立て,書面での申立て等がございますが,口頭での申立てにつきましては,まず担当職員,その後責任者,その後所長というふうに段階が設けられております。書面での不服申立ては,所定の用紙がありまして,この用紙はいつでも入手することが可能です。それぞれにつきまして,回答期間,申立期間などが定められております。
 あと,独立監視委員会のメンバーへの申立てができますけれども,通常メンバーはまず施設の職員に不服申立てすることを期待しておりまして,それでも解決しない場合に取り上げるということであり,その際には所長に再度回答を再考することを促すなどいろんな方法をとっております。それ以外に,すべての不服申立てを行ってもまだ満足できない場合には,オンブズマンに書類を提出することができます。
 次に医療ですけれども,医療はすべて国費で賄うこととされておりましたが,これまで唯一の例外としまして,受刑者については施設内での医療がすべて行刑庁の責任において行われてきました。しかし,これには日本と同じように医師の確保,いろんな問題がございまして,2006年までには完全に日本で言います厚生労働省のようなところに移管されることになっておりまして,現在はその途上であります。
 外部交通ですけれども,既決の場合は最低でも2週間に1回,面会時間は最低60分できまして,大きな部屋の中でそれぞれの受刑者が家族と面会をしまして,職員はその様子を見ているというような状況でございます。もちろん,すべて立ち会って内容を把握するというのが法の建前のようですが,実際のところはそれだけ細かくチェックしておりませんで,例えば違法な話とか暗号とか,そういった兆候が見られた場合には,聞取りをしたりそういうふうに介入するということでございまして,それ以外は様子を見ている,会話が聞ける状態でいるということのようです。
 信書の発送ですけれども,基本的に発信の相手方はだれでもよいのですけれども,一定の制限はございます。例えば未成年者,子供に対する犯罪を犯した者に対して,子供のいる組織とか,あるいはマスコミに対しての信書の発送などが制限されています。マスコミへの信書の発送につきましては,例えば上訴をするための証人探し,そうした場合だけ一部認められているという状況でございます。
 信書の検閲はされますけれども,すべての信書を検閲するということではなく,ランダムにサンプルをとって検閲するというのが実情のようです。検閲の例外としまして,例えば弁護士あての手紙は検閲の禁止となっておりますけれども,たとえこれらの手紙でありましても,強い疑いを抱いた場合には,受刑者の面前で職員が開封することができるというふうになっております。これは一般的な受刑者のことでございまして,カテゴリーA,逃走のリスクが非常に高い者については,この検閲などは厳格になされております。
 電話につきましては,一年ほど前からカード制を暗証番号で電話をかける制度に切り替わっております。これは,カードのやり取りとかそういった不正を防止するためだと聞いております。
 次に,独立監視委員会ですけれども,独立監視委員会につきましては監視委員会のメンバーが,12ページになりますが,週に1回は誰かが刑務所を訪問しておりまして,所内の状況とかの調査をしております。受刑者から面会の求めがあれば,週に1回訪問した際に面会の予約のようなことをしまして会うことになっておりまして,スタッフォード刑務所では毎週13件から14件ぐらいあるようです。
 次に,実際にホワイトムーア刑務所を視察してまいりまして,この刑務所の感想といいますのは,大変警備が厳しく,私どもが入るときも身体検査,もちろん服を脱いでの身体検査ではなく,ワイシャツの上から危険物が入っていないか,そういう検査はすべてされました。その上での入室となりました。
 刑務所の中では,実際に見られましたのはユニットD,ユニットCでして,ユニットCといいますのは性犯罪者のユニットが別にありまして,この性犯罪を別にするといいますのは,英国では性犯罪を行った者に対しての差別が非常に厳しく,同じ受刑者の中でもやはりいじめが起きたりする可能性があるので,ユニットを分けているということです。ユニットDといいますのは,非常に危険で深刻な人格障害の受刑者を処遇するところです。受入れは92人が収容可能だということですけれども,視察に行きました当時は30人がこのユニットで処遇されておりました。
 前提としまして,イギリスの場合は責任主義をとっておりませんで,例えば人格障害,あるいは心身喪失者が犯罪を行った場合にどうなるかと申しますと,複数の精神科の判断が一致すれば無罪というふうになりますが,なかなかそのような事例はないようです。ですから,ほとんどの者が刑務所に送られます。そして,刑務所の中でいろいろなことが行われまして,それから病院に行くというようなこともございます。ただ,実際上なかなかその処遇に手を焼いているということでございまして,ここのプログラムといいますのは,ユニットの中で職員,心理学者,精神科医,看護師,いろんな職員がいるわけですけれども,水槽を置いている,熱帯魚とかそういう話をしやすい環境を整えておりまして,その中で長期間人格形成ができるようなプログラムが組まれているようです。ただ現在ここに収容されております受刑者はすべて終身刑ですので,改善しなければこのまま刑務所にいることになりますが,将来的には有期刑の者を一緒に処遇をしようというふうな取組をする予定のようでして,そうなりましたら二つの問題がございまして,ここのユニットで処遇されて社会に戻った場合にラベリングをされないかという問題と,あと有期懲役ですから期間が来れば社会に戻さなければなりません。その戻す時期にもし改善されてなければあとはどうなるのだと,そういう問題を抱えているようです。
 その他,実際に刑務所の中を見ました感想ですけれども,重警備刑務所ということで,職員の方がかなりピリピリされておられました。カタッという物音がすれば,ビクッと全員が反応するような,そういう大変緊張したような職場環境でございまして,ただ職員数はかなり人数がおりましたので,だからこの刑務所は運営できているのかなというような,正直そういう感想を持ちました。
 以上がイギリスの報告です。拙くて申しわけございません。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 次に,野﨑委員からフランスの視察結果についてお話を承りたいと思います。
○野﨑委員 それでは,フランスの視察結果について御報告を申し上げます。
 フランスの行刑施設は司法省が所管しております。そして刑の長短のみによって分類がなされておりまして,未決拘禁者及び刑期1年未満の受刑者を収容する拘置所,刑期1年以上5年未満の受刑者を収容する拘禁センター,刑期5年以上の長期受刑者を収容する中央刑務所の三つに大きく分類されます。これは,警備レベルに応じて刑務所を分類していくことが多い他の西欧諸国の行刑施設との比較において,フランスの大きな特色を示していると思われます。
 ところで,フランスの行刑施設における収容動向でございますが,2001年7月1日現在における人口10万人当たりの被収容者数は79人でありまして,これはドイツの95.8人,英国の126人に比較して,相当少ないという状況にございました。ちなみに日本は48.3人であります。しかしその後治安が非常に悪化してまいりまして,治安対策が強化され,これに伴いまして検挙率が増加し,宣告される刑も長期化してまいりました。これに伴い被収容者数は急増いたしまして,2001年の5万人弱から2003年6月1日には6万1,000人,人口10万当たり96人というように急増してまいりまして,これが刑務所における過剰収容の問題を起こしております。この傾向はしばらく続くのではないかというのが一般の見方のようでありました。
 そこで,現在フランスの行刑においては,ただいま申し上げました過剰収容の問題とともに,施設の老朽化,それから逃走,脱獄等保安事故が多発しているということなどが挙げられております。過剰収容については先ほど申し上げましたので,老朽化についてお話ししたいと思いますけれども,2002年11月現在におきまして全国185の施設があるわけですが,その中の実に102施設が1912年以前に建設されたものでありまして,日本の感覚から言いますと大変な老朽化が進んでいるということになります。そして,これは全体の収容定員4万8,000人から見ますと,その35%がこの老朽化施設の収容定員になっておるという状況にございます。このような状況を改善するために,フランスでは2007年までに30施設,収容定員約1万3,000人を建設することになっておりまして,それが現在進行中であるというふうに伺いました。
 次に保安事故についてでありますが,フランスでは例年30件を超える逃走事故と100件を超える自殺事故というものが発生しております。これは,日本に比較すると非常に多いものでありまして,日本では大体逃走事故が3件,自殺は18件でありますから,そのことがよくお分かりいただけると思うのですけれども,近年武器を持って押しかけて施設を襲撃し,そしてヘリコプターなども使って被収容者を奪取するというような脱獄事件が多く発生しており,フランスではこれに対処するために相当の予算を配分しているということでございました。
 今回私どもの調査に協力してくれました司法省行刑局のロンザム次長も,現在フランスの抱えるこの3点が大きな問題だということを説明するとともに,フランスの行刑というのは決して模範的と言えるものではないのだということを謙虚に語っておられました。
 次に,不服申立ての制度について申し上げます。
 懲戒処分に係る不服申立てにつきましては,1996年に制度が整備されまして,被収容者が施設長の懲戒処分に不服の場合は,15日以内に日本の矯正管区長に当たります地方行刑局長に不服申立てをすることができるということになっております。この場合,地方行刑局長は,1か月以内にそれに対する応答をしなければならないということになっております。しかし,その期間内に応答がない場合,あるいは回答に不服がある場合には,受刑者は2か月以内に行政裁判所に提訴することができます。2002年中におきまして約4万件の懲罰事件があったわけですけれども,そのうち地方行刑局長に760件の不服申立てがなされ,90件については処分の取消し又は変更がなされております。それから,行刑裁判所には合計68件の提訴がなされたということでありました。
 外部交通の問題でございますが,受刑者は施設の長が許可した者と面会することができます。しかし,直系の親族以外の者に面会したい場合には,受刑者の方で事前に申請をして,相手方の犯歴等について面会前に警察等により調査が行われ,そして施設の安全治安に問題がある場合,あるいは裁判の進行中のため面会を認めるべきではないという場合,あるいは本人の社会復帰のために好ましくないといった場合には,許可されないということになっております。
 面会時間は大体35分~45分ぐらいでありますが,受刑中の家族との良好な関係を維持するために,家族と一定期間ともに過ごすためのアパート形式の面会施設というものが既に1か所設置されており,その増設が計画されて進行中のようでございました。
 電話につきましては,拘置所では―ここは未決及び一年未満の刑期の者を収容しているのでありますが―ここでは使用は許されない。しかし刑期1年以上の者を収容する拘禁センター及び中央刑務所では,電話の使用というものが認められておりました。その場合における相手方の範囲についてでありますが,拘禁センターでは親族及び面会の許可を受けた者,中央刑務所では重大な事案があった場合に限り家族に対して電話をすることができるというふうになっておりました。
 それから,通信の内容については傍受するということになっている。
 これがフランスの制度であるそうであります。しかし実際の運用というものはどうも各施設によって違うようでありまして,例えば私どもが視察しましたポワシー中央刑務所では,相手方の制限や傍受などは一切やっていないということでありまして,中央の所管庁の言うことと現場の言うこととに非常に違いがあったのが印象的でありました。
 それから,医療体制についてでありますが,施設内の医療につきましては,1994年以降一般社会の医療水準と同等のものにするということで,厚生省の所管になっておりまして,各施設には国公立病院のユニットとして,ユクサと呼ばれる診療所が設けられております。そしてそこで厚生省の職員が医療行為を行っておりますが,ユクサには専門的な治療,検査が行われるような医療機器は設置されてはおりませんで,簡単な診療室といったような印象を受けました。専門的な検査や治療を要する者については,施設と個別に契約した外部の病院に移送されることになっているようであります。
 司法省と厚生省の関係につきましては,おおむねうまくいっているというお答えがございました。しかし,厚生省の方がふと漏らされたので,この移管というのは厚生省にとって非常に高いものについたということを言っておられたのと,それから現場の刑務所で,医療施設については厚生省がもっと現場に来てよく見ていくべきだということを言っておったのが,私には非常に印象的でありました。
 最後に,ポワシー中央刑務所の視察について申し上げます。これは重罪刑務所でございます。最近フランスでは外部から武器やヘリコプターを使っての脱獄事件というものが発生していることもありまして,外部との遮断につきましては非常に厳重な体制が敷かれておりました。しかし,刑務所の中では職員と受刑者の間に我が国の刑務所に見られるような上下の関係というものは余り見られませんで,普通にあいさつをしたり握手をしたりといったような光景が見られました。また,受刑者の多くは個室に起居しておりまして,そこでテレビ,CDカセット,書物,調度品などの私物を所有して,所持品で一定の嗜好品を購入することも認められ,髪形も自由で,私服やそれに刑務所の中でサンダルを着用して一定の域内を自由に歩いたりしておりました。また自由時間にはジムでボクシング,柔道,合気道,フットボールなどに興じておりましたし,時には外部のチームとの試合が刑務所内で行われているということでございました。
 また私どもが視察中に,私どものところへサングラスをかけた人が来まして,自分は無罪,無実であるのにここに長期収容されているんだということを切々と訴えた例がございました。しかし看守は,これについて何らかの措置を採るようなことは全くしませんでした。このような点で,日本の刑務所とは開放度において格段の相違が見られたのが非常に印象的でした。
 このような傾向というものは,フランスで死刑というものが廃止されまして,無期懲役のほかに有期刑の最長刑が30年になり,裁判所がしかも判決で宣告刑期中の仮釈放を許さないということを宣言するようなことができるようになりまして,文字どおり30年間収容されるという者が非常に増えてまいりました。そうなりますと,入所した時点からもう30年,無期の者,あるいはそれ以上といった期間ここにいなければならないということを覚悟しなければならない受刑者が増加してまいりまして,このような受刑者が将来に希望を失い,自暴自棄になるといった傾向が見られました。こういったことを防止するために,この自由度というものを増やしていったということであります。
 それだけをとってみますと,何か刑務所内での平穏というものを維持するために自由度が非常に膨らんでいっているということがその印象でありまして,私どもは刑法を習うときに刑の本質が何だというようなことをよく言ったのですけれども,矯正といった面で果たしてどういうことがなされているのか,そこにどれだけの重点が置かれているのかなということを感じた次第でありました。
 それから,先ほどもお話がございましたけれども,各部屋ののぞき窓を中から閉鎖できるようになっておりまして,房内にある受刑者の監視というものがこれで行き届かなくなっている面がございます。日本に比べて自殺者の数がかなり多いのですけれども,この監視の問題は自殺防止の問題とかなり関係があるのかなという印象を受けました。
 ポワシー中央刑務所は受刑者230人でありまして,これは定員を超えておらないようでありました。そして職員はそれに対して200人おりまして,かなり被収容者と職員の数というものが拮抗しておる。日本よりはうんと手厚いことになっているのだなということでありました。ただ,私どもが見かけました被収容者というのはせいぜい20人か30人でありまして,実際ほかの者に対して処遇がどのように行われているかということは必ずしもよく分かりませんでした。しかし,これは私は第3分科会でも申し上げたのですけれども,今後自由化というものが一つの趨勢であるとすると,その中で刑務官がどのように対処していくかということは非常に難しい問題になってまいりますが,少なくとも刑務官の何名かを毎年各国の刑務所に派遣して,そこで行刑の実際を見聞するような機会というものを持たせる,それによって行刑の在り方を考えていくというような施策をとっていくべきではないかというのが,私のフランスの刑務所を拝見した印象でございます。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。
 次に,久保井委員からドイツの視察結果についてお話を承りたいと思います。
○久保井委員 資料の69ページ以下にドイツの視察結果がまとめられておりますので,それを御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。
 私どもが視察いたしましたのは,ドイツの中のベルリン州の二つの刑務所でしたが,ドイツの行刑につきましては刑法,刑事訴訟法とは別にドイツ行刑法という法律がありまして,それに基づいて行刑が行われている。ただし,具体的な実施は各州に委ねられているために,必ずしもドイツ全体が共通しているとは言えない部分があるというふうに聞きました。
 そこで,ベルリンの行刑の視察ですが,ドイツの刑務所は二つに分かれておりまして,閉鎖刑務所,開放刑務所という二つのものになります。そのほかに少年の刑務所,あるいは女子の刑務所がありますが,通常の刑務所としては閉鎖型,開放型になっております。
 まず,最初に訪問いたしましたのがテーゲル刑務所でありまして,これが1898年,明治にいたしますと明治31年にできた刑務所で,日本の刑務所の手本になった刑務所というふうに言われております。建物の雰囲気も,なるほどよく似ているなという感じがいたしました。ドイツの最大級の刑務所,男子の刑務所でありました。収容人員は定員は1,580人のところ,実際は1,700人入っている。やはり過剰収容になっている。特に東西ドイツが統一された後,設備の悪い東ドイツの刑務所が廃止されたりしたために過剰収容が進んだという説明がありました。職員数は850人。そのうち,保安関係が550人ということで,職員と受刑者の比率が日本より高いという感じを受けました。外国人の受刑者,これはヨーロッパでありますから大変たくさんの国にわたっておりまして,63か国の国の受刑者がおるというような話でした。
 次に外部交通ですが,基本的には面会の相手方についての制限はない。ただし,この面会の機会を濫用するおそれがあると認められた場合には制限をすることができるということになっているが,実際には制限はほとんどなされていない。立会いといいますか,職員はガラス窓越しに全体の様子を見ている,全体を見渡しているという程度の状態でウオッチングしているのが実情でありました。会話の内容につきましても,個別的に問題がある場合については傍受をすることができるということにはなっていますが,実際はほとんど傍受はしていないということであります。
 それから,面会室の隣にジュースとかお菓子とかたばこの自動販売機が置いてありまして,面会者は13ユーロの範囲内でこの機械から物を購入して受刑者と一緒に食べることができる。面会の場合に,面会者と受刑者との間に遮るような設備は全くありませんでした。
 そのほかに,長時間面会,最長5時間まで認められるそうですが,職員の立会いなしに配偶者あるいはそれに準ずるパートナー,それからキッチン,ベッド,ソファ,シャワー室などもすべて完備しておりまして,リビングルームのような感じでしたが,そういうところでの面会ができる,そういう設備もありました。どういう人が対象になるかといいますと,信頼できる状態になったと認められた受刑者が,この長時間面会を許されるということでした。
 電話については,これも相手方について制限はなくて,基本的には全く自由である。ただし1か月50ユーロの範囲内で限られる。お金のない場合はかけられないということでしたが,電話の傍受は通常は行われていない。特に必要がある場合には傍受ができるという規定は行刑法にあるわけですが,実態は自由になされているようでありました。
 それから舎房については二通りありまして,古い旧舎房と新しい新舎房。旧舎房は19世紀に建設されて,放射状の十字の舎房,いわゆるペンシルバニア様式という様式であります。定員380人のところ,440人。原則は個室ですが,過剰収容のため一部二人入っているということであります。そして,ドイツでは行刑法19条で,受刑者は自分の物を室内に飾りつけることができることになっておりまして,私どもの見学いたしました部屋では,自分の近親者の写真とか,いろんな記念品等を飾っているのが見えました。室内は,テレビ,ラジオ,ラジカセ等がありましたし,普通の人の生活している部屋とほとんど変わらない雰囲気でありました。午後10時~午前6時までは施錠がなされる。入口は施錠されるということであります。それから,保護室もありました。自殺のおそれのある者,あるいは懲戒として屏禁を科せられた者に,この保護室が使われるということでありました。
 それから新舎房につきましては,1980年代に造られて,一つの階に30の居室があって,各居室と管理室との間はインターフォンで連絡をする。そして,各舎房には共同のキッチンがあるということで,現実に見学いたしました。トイレ,洗面台は,その個室の中に更に個室となっており,外から見えない状態にしてありました。食事は,独居房の自分の部屋でしてもいいし,共有のスペースで食事をしてもいいということになっているということでありました。
 入浴は15人に1人の割合でシャワー室がありました。
 それから保安事故としては,11年前に一度逃走事件が発生しただけで,それ以外にはないという説明でありました。ただ,我々の行く1週間前に,精神的におかしい受刑者が看護師を人質にした事故が発生したが,刑務官が説得をして解決をして何ら問題には発展しなかったということを説明しておりました。
 医療につきましては,一般医が6人,看護師が50人,歯医者が2人で,医師の確保は十分できているという説明でありました。
 作業につきましては,15の作業場があるが,1,700人のうち1,100人が就業している。全員の作業を与えるだけの仕事がないということを言っておりました。作業は,極めて単純な作業をやっているように見受けられました。それから,作業場への行き来は,普通に歩いていくということで,特別に行進をしているというようなことはありませんでした。
 それからスポーツ活動が非常に充実しているように思いました。受刑者は刑務所の中のクラブに所属して,サッカー,ハンドボール,バレー,卓球などを楽しんで,外から先生が来ているようなことを言っておりました。ただし,組織犯罪の者,懲戒中の者は認められないということでありました。
 それから施設審議会は,委員が12人,会合は月1回で,これは刑務所と受刑者の間を取り次いでいる。つまり,施設審議会がその持った印象を刑務所側に伝える。そして,また刑務所と市民の間の仲裁といいますか取次的な役割を果たして,一般市民に対して刑務所の中を広報する役割を,施設審議会が果たしているというようなことでありました。
 私どもは,このドイツの刑務所が非常に開放的であることに大変驚きを持ちましたが,処遇が良すぎるという市民からの批判はないのかという質問をいたしましたが,そういう批判はないという回答でありました。
 処遇について,どうしてこういうふうに自由になったのかということについては,1976年,つまり昭和51年ですが,ドイツ行刑法が制定されるまでは統一的な法律がなかった。どちらかというと規律重視の運営であった。その後自由を認める方向に徐々に変わっていった。ただし,途中で保安事故が発生することがあって,そのたびに規律重視に,元に戻すということをやって,その繰り返し繰り返しの中で次第に現在のような開放的な処遇に変わっていったという説明がありました。
 現在の受刑者と職員の関係は,上下の関係ではなく,対話による関係になっているという説明でありました。そして,女子職員が22%いるが,雰囲気を和らげるために役に立っているということです。しかし,だんだんと増えていって,今では女子職員だからといって雰囲気を和らげるのに必ずしも役に立たなくなって,陳腐化してきているという,そういうコメントもありました。
 続きまして,もう一つの刑務所,開放型の刑務所,ハーケンフェルデ刑務所に行きました。これは,1978年(昭和53年)に開設されたものでありましたが,施設は2年以上の自由刑の者,その中には無免許,麻薬,強盗,窃盗,詐欺で,刑期最高8年までの者が入っているということでしたが,メルクマールは在宅起訴によって有罪判決を受けた者,この自ら召喚状に応じて出頭してきた者,自首という言葉を―自首というのは日本の自首とちょっと違いますが,要するに判決が確定して刑務所に入れという召喚状を出すわけですが,自ら出頭してくる者を対象に選んでいるということでありました。
 収容要員は248人の定員のところ,280人で,過剰収容になっているということでありました。職員は63人,事務が12名,保安が45名,ソーシャルワーカーが6人ということでした。この刑務所は,高さ2メートルのフェンスがあるだけで,本当に別荘というか,そういう感じがいたしました。日本の老人ホームのような感じとも言えるかもわかりません。八つの収容棟があって,単独室が31,共同室が一つあるということでしたが,驚いたのは1日のうち16時間は自由に外出できる。タイムカードでチェックしている。各自の部屋の鍵は各人が保管する。受刑者が入所前に職業に就いている場合は,その仕事を入所後も継続できる。給料は雇い主から施設の方に振り込まれてきて,そのうち100ユーロを差し引いて,残りを受刑者個人の口座に振り替えるというようなことでありました。そして,所内の作業,つまり入所前に仕事のない受刑者につきましては,刑務所が仕事を探すのだが,労働市場が厳しくて仕事がなかなか見つからない。そういう者については,1か月60時間外出を許可している。残刑期が9か月以上になると外泊を許可するということでありました。
 ただし,この開放型の刑務所であっても,飲酒,薬物の使用は禁止されており,外出中においても同様である。したがって,夜,酒を飲んで帰ってきた者は,自動車の運転者と同じような呼気検査をして,それが発覚すれば閉鎖刑務所に移送するということでありました。また薬物については,尿検査をして,抜打ち検査で時々やるそうですけれども,これについても発覚すれば閉鎖刑務所に移送するということでありました。
 医療については,各人が外出中に自分の病院で社会保険を使ってそのまま医療を続けるということでありました。
 施設審議会とも,良好な関係で,そもそも開放型の刑務所ですから余り不満が出ないのかもわかりませんが,良好な関係であるということでありました。先ほどからもお話がありましたが,ドイツの場合ハーケンフェルデの開放型の刑務所は,特別といいますか,ここまで開放するのかという感じを持ちましたけれども,閉鎖型の刑務所においてすら,たいへん受刑者が自由な状態に置かれているという感じがいたしました。
 つまり,日本の刑務所とドイツの刑務所との違いは,日本の刑務所の場合は非常に表情がないのに比べて,ドイツの刑務所は非常に表情があって,例えば職員と受刑者が会った場合でも,こんにちはというあいさつをする。我々外からの訪問者が行っても,受刑者は言葉を話しかけて,こんにちはというようなことを言うということで,比喩的に言うと学校における生徒と先生のような関係,受刑者と職員の関係はそういう感じ,あるいは病院における患者さんとお医者さんのような感じ,そういう感じを受けました。
 今後,この我が国の刑務所をどういう方向で改革していくかということについて,日本がもともと手本にしたドイツの刑務所が,100年間経過する中でかなり大きく自由化の方向に行っているということは無視し得ないのではないかという感じがいたしました。そんなところでございます。
○宮澤(弘)座長 どうもありがとうございました。以上で当会議が実施いたしました海外視察の結果報告は終了いたしました。
 ところで,仄聞をいたしますと,これまでの間に曾野委員が南アフリカの刑務所を,菊田委員がアメリカの刑務所をそれぞれ御視察になったということでございますので,この機会にその状況についてお話をいただければ幸いだと思います。時間も余りございませんけれども,何事か我々の審議にプラスになることであろうと。どうぞひとつ,そういう観点からお話をお願いをいたしたいと思います。それでは,まず曾野委員からお願いをいたします。
○曾野委員 只今までの委員の方々の御報告は,当然でございますが,すべて完璧に内側の機構なり何なりをカバーしていらっしゃいますけれども,私は何を聞いていいか分からないということもございましたし,カメルーン,コンゴ,コンゴ共和国二つでございますが,アンゴラ,南アと,非常にひどい土地を歩いておりまして,南アに来たときには疲労困憊してここへ参りましたもので,ちょっといいかげんになりましたことをお許しいただきたいので,一市民の訪問印象記という形で御報告させていただきます。
 私が参りましたのは,ヨハネスブルグ近郊のボツバーグ矯正施設です。よく分かりませんが,プリズンという言葉は使われておらず,コレクティブ・サービスという言葉が使われておりました。この矯正施設は,ヨハネスブルグの郊外にありまして,私が聞いた限りでは4,500人を収容しているという。確かに中庭なんかで運動場を見ているとすごい数なんですが,男性の受刑者でございまして,その内訳は黒人が8割弱,白人が1割,残りがインド人とアジア人です。受刑者の最高年齢は62歳。無期が3人と言われております。
 刑務官は,武術の訓練は受けておりますが,日常は武器は携行しておりません。実は南アと申しますと,新聞の特定ページはすべて殺人,レイプ,強盗,窃盗などの犯罪記事で埋め尽くされているというのが私の印象でございましたので,今回少し訂正したかったのですが,滞在時間も短く,新聞を夜読む時間もなかったので,そのままになっておりますが,いまだに,昼間といえども特定のショッピングセンターのような地域しか自由に一人で歩くということは危険とされまして,すぐそこへ行くにも車に乗らなければならない状態は変わっておりませんでした。在住の日本人は,数ブロック先へ行くにも安全のために車に乗るので,運動不足になって困ると言っておりました。夜には,道を歩いている人影はほとんどありませんし,車は交差点でも停まることさえできるだけ避けて,どのような人が近づいてきても窓もドアも開けないというのが南アの常識でございます。
 最初に矯正施設でブリーフィングを聞いている間に,私は刑務官たちの顔を見ておりました。素人なものですからお顔を見ておりましたが,彼らの人種の微妙なまじり方にほとんど酔っ払いました。白人で目の青い人から黒人の典型まで,微妙にその間の人種的なまじり方が違っておりまして,これだけの複雑な混血が行われるには,どれほど社会的に複雑な問題があり,法律の裏側を行くような階級間の対立があったのかと恐ろしく感じました。
 同様に言葉も,私は日本財団の職員で英語で育った青年を同行しておりましたが,彼でさえなまりがひどいので聞き取れないことが多いと言っておりました。
 所内は非常に清潔で,一部には消毒液の匂いさえしました。受刑者は,柿の実の色の地にプリズナーと字で書いた制服に皮ベルトを着用しております。炊事する係は同じデザインですが,地色が白でした。
 未成年者を収容した房に通されましたが,これは26人収容の部屋にシャワーとトイレが一つだけ。42人部屋というものもありました。テレビは金曜夜から月曜の朝までだけで,したがって受刑者たちは何をすることもなく,ぼんやりと中にいるという感じでした。
 比較的長い刑期を務めなければならないような人たちの房も,中庭に面しておりまして,きれいに芝生や花が植えられ,お互いに行き来自由です。二つのベッドしかない房に三人の青年がいたので,どうしてベッドは二つだけなんですかと聞きましたら,一人はほかの部屋から遊びに来ているだけだからと言うのです。新聞や雑誌から切り取ってきたらしいアイドルの写真は,どの房にも飾ってありました。
 それから,私が非常に印象的だったのは,どの部屋にも風が吹き抜けていました。ちょうど天気も季節も極めていい日に行ったので,冬は寒さに苦しむのかもしれませんが,日本の保護房のような,窓もろくろくなく,換気の悪い圧迫感に満ちた部屋などは全く見当たりませんでした。
 食事は,その日の献立だけを書きとめてまいりました。朝,パン650グラム,マーガリン20,シロップ,コーヒー,ミルク,砂糖,25グラム。昼はマーガリン25グラム,ピーナッツバター20グラム,冷たい飲み物,パン200グラム。夜はすごいのです。ライスが100グラム,ビーフ185グラム,トマトペーストとグレービー,塩7グラム,野菜2種162グラム,ミルク,砂糖,お茶。食費は,一日9ランド,約1,440円になるのでございます。豚肉だけは,イスラム教徒もいるため使いませんが,牛肉はインド系の受刑者が少ないので使うということです。それからちょうど昼御飯の時間でしたが,友だちと好きな戸外の陽だまりに行って,まず5枚のパンにマーガリンとピーナッツバターを塗って,しゃべったり,私たちの問いに答えたりしながら,楽しそうに食べている2人の若者もおりました。
 この矯正施設で明らかに日本と違うのは,労働はみんなが望んでいることで,成績のいい人たちだけが受ける特権だという解釈であります。毎日働きたくても,それだけの仕事がないのだそうです。Working is privilege.とはっきり言われました。仕事の種類は,大体日本と同じで,4人のマネージャー,46人の職業専門家,10人助手,18人の管理者,それらの人たちが380人の受刑者を訓練しております。縫製工場では他の刑務所の制服を縫い,家具工場では官庁の課長さんクラスの立派な机を作っていました。机の大きさだけから見る限り,南アの課長さんは大変偉そうでありました。この作業所の報酬は,最初は1日15ランド,約225円,半年働くと昇給いたします。
 心理学者は常駐しており,弁護士がいつでも会ったり手紙を出せます。電話のことは聞き漏らしました。面会のとき看守は立ち会いますが,キッスもできるということです。凶暴な受刑者には手錠や時にスティール製の足輪をかけることもあるそうです。
 保釈される可能性のある人が病気になった場合には,メディカル・リリースをすることが多く,したがって腎臓透析患者に対する設備も知識そのものも余りありませんでした。そういう患者はいないというだけでした。エイズが判明するとメディカル・リリースの処置をとっているそうですが,検査には約3,000円~3,750円ぐらいかかるので,希望なら実施するといったところを見ると,検査代は受刑者が払うのではないかと思います。
 南ア自体にどのような未来と希望があるか,また人種的偏見は恐らく私達外国人が想像する以上に強いでしょうから,矯正施設の抱える問題もそれを反映していると思われます。
 以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 それでは,菊田委員お願いします。
○菊田委員 私はヨーロッパへ行く1週間ぐらい前に,アメリカのウイチタ州立刑務所,州立の中の二つの,EL DORADO CORRECTIONAL FACILITY,もう一つは,HUTCHINSON CORRECTIONAL FACILITYという二つの刑務所を駆け足で見てまいりました。その理由は,実は大変立派な報告書をコピーしていただきましてありがとうございますけれども,ここにありますように資料1のところで1994年度のカンザス州矯正局受刑者規則というのを翻訳したことがございます。もちろんこのときに当刑務所を訪問したわけでありますけれども,その後今私手元にありますけれども,現在は2002年2月15日まで新しく最新のものが出ております。これはそういう意味では少し古いものであります。これを翻訳したのを州矯正局に送ってくれと言われて昔送ったことがございまして,その関係で今回訪問したいと言ったら,この二つの施設を紹介してくれまして,単独で行ってまいりました。ただ,フランスとイギリスに行く数日にこれを整理いたしまして,コピーしてファックスでお送りしたので,数字がちょっと間違っております。その意味で,大変恐縮ですけれども,ちょっと数字の点は信用しないでいただきたいと思っております。
 最初の訪問地,EL DORADO CORRECTIONAL FACILITY,いずれもウイチタ州ではプリズンという名前がございませんで,こういったFACILITYという名前を使っております。それからアメリカはもうすべてほとんどがインメイト(被収容者)という言葉を使っておりまして,イメージとしてはかなりそういう点では非常に感覚がいい思いをしておりますが,ただ御存知のように世界の矯正施設の中ではスカンジナビア地方が最もすぐれているように思いますけれども,あとヨーロッパと,それから比べますと,アメリカは第3段階ぐらいになるのではないか。日本は4の段階じゃないかと思いますけれども,アメリカでもいいところと悪いところがいっぱいあります。ただ,私は努めていいところを紹介するということに今までも努めてまいりましたし,今後もしたいと思っておりますけれども,カンサスの場合は数年前に死刑を復活いたしまして,現在は死刑囚がおります。けれども,ここ8~9年,死刑囚が出てから,判決はあるけれども執行は一人もやっておりません。主たる目的の一つは,そういった死刑囚と終身刑にインタビューをするということだったわけですけれども,ついでというか,こういうことで見てまいりました。
 この中で,2~3指摘して御紹介しておきたいのは,裏にこの施設の通常房,隔離房,それからSegregation Cell,これは懲罰房,保護房だと思いますけれども,そういうのがありますが,二つの刑務所はそれぞれの刑務所に軽警備,中警備,そして重警備という受刑者がおりまして,終身刑も死刑囚もおるわけですが,死刑囚はちょっと別にしておりますけれども,終身刑も他の受刑者と,例えば軽微のセクションに,ユニットに終身刑も入っている。こういうことで,つまり目的的にも徹底的に分類をしている。処遇分類をしているというところが,非常にすばらしいことだと思います。
 それから,例えば隔離房というある意味では暴力を振るった者を一時隔離するところですけれども,そこでも要するに基本的には他の房と広さは同じであるということと,適当な照明もありますし,それからいわゆる市民生活に必要なすべてのものは制限しないというのが基本的であります。したがって,隔離されても手紙の発信とか受信の機会というものは何ら制約を受けないというのを,州の規則でも決めておりますし,各刑務所はそれにのっとってやっているということであります。いろいろな読書とかその他の資料を読み書きすることも自由だということであります。それが一つ。
 もう一つは,この不服申立ての点では,先ほどのイギリスの報告がありましたけれども,あくまでも第1段階としては所内で処理する。そのために,最初はカウンセラーに相談するとか担当者に相談するということから始まって,それでも不服がある場合にはいろいろな措置が段階的にとられる。最終的には訴訟を起こせるという段取りになっているということであります。
 それから,一番最初の不平を言うときには,今日本でも考えられています目安箱というものがあって,その箱に投函できる。その紙は受刑者が持っているどんな紙でも構わない。どんな紙でも構わないから,そこに箱に入れて不服申立てを伝えることができる。弁護士は各施設に一人ずつ,ここの場合ですけれどもおります。そして,最終的には弁護士にも相談できるというふうになっているようです。ただ,余り弁護士が特に相談に乗るということはほとんどない,むしろ本人の家族が外で相続とかいろんなことが起こったときに,その受刑者の相談にのってあげるというのが仕事としての弁護士の大きな役割だというようなことも言っておりました。
 それから保険は,アメリカの場合すべて保険の適用がありまして,病気のときの保険というのは,最初に被収容者が2ドルを払うけれども,その後は全部州が支払うということであります。それから重病の場合も無料でして,がんの治療も無料でやっている。歯の治療も当然無料でやっております。これに対しては,社会内で,普通の社会で重病でなかなか治療できないのが刑務所に強盗で入って治療ができるというのはいかがかというような批判も出ているというようなことは聞きました。
 それから仮釈放も,昔と違いまして非常に厳しくなっていますけれども,一番最初に出るとき,最初一人に100ドルを支給する。二度目入ってきて二度目出るときは,もうくれてやらないと。このような非常に実利的なことをやっております。
 それから職員の組合について聞きましたが,一応ユニオンというのがあるそうです。けれども,この刑務所では加入者は5人ぐらいで,非常に組合は弱い。このEL DORADO CORRECTIONAL FACILITYというところはできて新しいというので,それほど組合の必要もないのだというような説明でもありました。
 それから仕事の内容というのは,御存知のようにアメリカはほとんど仕事がありませんので,先ほどいろいろありましたようにいろんな運動をしているということが中心になる,あるいは掃除したりいろんなことに時間を費やしているようですけれども,たまたま外部の仕事を請け負っている者というのは,かなり,1時間に5ドルか10ドル程度の支給がある。これはちょうど日本の自己労作というのがありますけれども,それと似たようなもので,社会の会社と本人とが契約して,それの賃金を会社からもらうということで,ほとんど施設側としては関与しない。たまたま,これ一つ持ってきましたけれども,こういう会社から依頼されて何かコインをこういうふうな形でして土産物に売る。こんなことで,これは非常に数は少ない,やっている人は少ないということです。他の受刑者は,1日働いても大体1ドル程度というので,しかし賃金制という名目はとっているわけです。
 それから,その次の第2の訪問地ですけれども,ここは非常に敷地が広くて,見かけは非常に雄大なところでございますけれども,内容的には同じ,先ほど申し上げましたこのインメイト・ルールブックというのがございまして,これはカンサス州が,どの州も同じものをパンフレットとしてインメイトに渡しております。それに従って,これがもうほとんどすべてこれによってやっているということでございまして,処遇内容はほとんど変わりません。
 先ほど申しましたように重警備,中警備,軽警備というのがあるわけですけれども,行状のいい者は軽警備,そして少し違反すれば中警備,更に違反すれば重警備と,こういうふうにその施設の中で段階が変わっていく。重警備も規則が詳しく書かれておりまして,その判定で一定期間正常な状況でおればまた中警備に戻す,更に軽警備に戻す。こういうふうなことで,受刑者の同意と管理者側の規律を守るということを共同の形で行なっているんだという形です。したがって,そういったトラブルというのはほとんど起こらない。自業自得,厳しくされるというのは自分のことでそうなるんだ,こういうふうなことの説明です。
 それから重警備の場合,後ろにこれがございますけれども,1日に1時間45分の運動を必ずする。それも一人だけじゃなくて,同じ重警備に入っている者同士が運動をするということ。それから1日に1時間,休息時間といいますか,セルから出た後は数人の者同士がテーブルで談笑をする。こういうことで,必ずしも昼夜独居といっても重警備でもそういうふうな措置がとられているということでありますので,日本もこれは非常に参考にすべきことではなかろうかと思っております。
 それから,図書室があって,いろんな新聞はもとより判例その他がそろっておるし,そこにライブラリアンがおりましていろいろな相談もできるということであります。
 面会も,先ほどイギリス等でありましたとおり,大きな広場で面会をしている。入るときにいろんな検査を受けますけれども,その周りにある自動販売機からいろんなものを購入できるということも,ヨーロッパと同じような状況であります。それから,現に重警備で懲罰を受けている者も,この大きな広場の面会はできませんけれども,その隅にテレビがありまして,その画面を通じて懲罰中の者と面会をするというふうな措置をとっております。
 医療関係は,先ほど申し上げたのと同じように,これは州立病院から派遣されている医者が管理するということになっております。
 懲罰については非常に細かな詳細にわたって規定がございます。これについてはせっかく資料に入れていただきましたので,御覧いただきたいと思います。先ほど申し上げましたように,終身刑受刑者三人と面接いたしてまいりました。これは私の個人的な関心事でもあるわけですけれども,今日本で終身刑を採用するか否か議論がありますけれども,私のいろいろインタビューしたところ,非常にむしろ終身刑の方が穏やかで,中にはその囚人組合の委員長をやっている終身刑もいますし,広大な敷地の中でトラクターを運転して,それでパンクしたら自分で修理する,こういう終身刑の生活ですから,日本の厳正独居などと比較されては全然物が違うというふうに思われます。今回名前も何もかも全部知らせてくれまして,また数年経ったら同じ人に会いたい,会うつもりでおります。
 簡単ですが,以上です。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。ただいま何人かの方々からいろいろな御報告をいただきました。この際ほかの委員の方々から御質問なり御意見がございますれば,御開陳を願います。
○高久委員 教えていただきたいのですけれども,イギリス,フランス,ドイツでは日本の八王子医療刑務所のようないわゆる医療刑務所というようなものはあるのでしょうか。もしお分かりならば教えていただきたいと思いますけれども。
○宮澤(弘)座長 どなたか,今度御視察になったこととの関連で,今の御質問にお答えになりますか。もっとも今のような問題は,いずれこの委員会で案をつくります際に,いろいろまた御議論を願わなければいけない問題。御質問は,そういう事実があるのか,そういうことでございますね。それだけで,何か御発言があればお願いします。
○久保井委員 ドイツの場合はないように思いますけれども,宮澤先生,どうですか。
○宮澤(浩)委員 医療刑務所という意味がどういう意味であるかよく分からないのですけれども,もし日本のようにいわゆる処分という制度を持たない国で,精神的におかしい受刑者を収容するというような意味で,医療刑務所があるのかという御質問だったら,ドイツには処分制度がありますから,特に精神障害性のある受刑者を扱うというのは,むしろ精神病院とかあるいは中毒者を禁絶する,そういう施設に送るので,そういう施設を持っている州にはそれを使うというようなことは言えるかもしれません。ただ,どうでしょうか,日本的な意味での医療刑務所というのは私はないと思いますけれども,全部州を見たわけではありませんのでお答えできないのですが。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。時間の関係もございますので,御視察を願った方に対する御質疑というのはこの程度にいたしまして,10分ほど休憩をいたしたいと思います。


午後3時27分 休憩
午後3時37分 再開


○宮澤(弘)座長 それでは,再開をいたしたいと思います。

2.日本の行刑の沿革について

○宮澤(弘)座長 かねての予定のことでございますが,次に我が国の行刑の沿革につきまして,矯正局から説明をしてもらう,こういう順序になっておりますので,矯正局お願いをします。
○柴田官房参事官 それでは,あらかじめお配りしておりますカラーで3枚用意いたしました,年表形式の資料で御説明申し上げたいと思います。
 大きく三つの区分に分けておりまして,まず第1枚目は明治の初期から戦中まで。2枚目が戦後から昭和40年代,最後の1枚は昭和50年代から現在まで,こういうふうに大きく分けております。時間の関係もございますので,極力大きなトピックに限って御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず第1枚目でございますが,これは明治から戦中約70年間を示したものであります。この表の見方といたしまして,左側各表につけておりますけれども,全体の収容人員の傾向,それから昭和28年以降は完全失業率というのが判明しておりますので,それを折れ線グラフで参考までにお示ししております。
 まず第1枚目でございますが,このブルーに白い字で抜いた,これは主といたしまして法律でありますとかあるいは処遇の行刑の運営の改善事項,そういったものを順次書き上げたものでございます。明治の初期に刑法の全国統一の初めての刑法典の新律綱領というのができまして,それらを受けまして監獄則あるいは同図式というのが明治5年にでき上がっておるのですが,そのときにこの緒言の中で「獄は人を仁愛する所以にして人を残虐する者に非ず」というような有名な言葉が挿入されております。この規則は,当時非常にイギリスの処遇技術といいますか運営技術を取り入れて,なおかつ日本の古来の宥恕,仁愛といいますか,そういったような考え方のもとに運用するということで,理想の形を描いたものでありました。財政的な理由からほとんどこれは運用されないまま,動いておりません。
 その後,刑法の公布に並びまして監獄則が作られまして,明治22年の旧憲法ができました折に,監獄則の全面改正が行なわれております。プロシアのゼーバッハの来日を得まして,いろいろ手がけたわけでございますが,表には書いてございませんけれども明治36年に監獄官制が発布されまして,監獄が司法省の所管になったということがございまして,これらを受けまして明治41年に現行監獄法が交付されております。当時といたしましては,世界でも数少ない法律による行刑の規則であったというふうに言われております。
 御承知のとおり,監獄法はその後実質的な改正が行なわれていないのでありますけれども,既にこの明治41年に監獄法が発布された直後から,行刑の近代化の推進というのが行なわれています。明治の初期から監獄法ができるまでを近代自由刑の生成と獄制の黎明の時期であるとすれば,監獄法発布以降は実務統一の時期であったということが言えるのではないかと思っています。実質的な法の改正は行なわれませんでしたが,例えば行政指導で監獄擁護の改正が行なわれておりますし,写真でありますような戒具,こういったものの見直し,それから凶悪犯の集禁制の廃止というのが昭和5年に出ておりますけれども,これは当時,ちょっと御説明しますと,当時行刑処遇や管理の大きな問題となっておりました凶悪不良囚の実態に初めて科学的な調査が加えられた。東京大学の精神病理学者に調査依頼を行ないまして,調査の結果その多くは精神障害によるものであったというようなことも判明いたしまして,こういう集禁制というのを改めたという一つの大きなトピックがあるわけでございますが,このことが我が国における最初の行刑の科学化,科学の光が当たったということが言えるのではないかと思います。
 それから,仮釈放の審査規程でありますとか行刑累進処遇令,それから少年行刑教育令,これはいずれも省令でございますが,こういった実質的な運用の改善が行なわれております。しかしながら,戦争へというような日本の大きな動きに行刑の方もこれに埋没といいますか,入っていきまして,下の方に書いてございますが,一つは刑務作業,従来は国内でやっていたのが海外で刑罰を執行すると,極めて異常な事態に突入していった。こういう悲しい事実。行った先で受刑者が亡くなってしまったというような悲しい歴史もあります。
 それから右の下に「「特警員制度」の一般化」ということを書いてございますが,これは当時戦争に駆り出され召集されまして,職員がより不足することになりまして,当時受刑者の成績のいい者を職員の代わりをさせたというような歴史がございます。最初はよかったのですけれども,だんだんボス化して管理運営に大きな支障を来たしまして,当時静岡刑務所で不正な仮釈放を許すまでに至ったという,非常に大きな汚点が残っておりまして,これは終戦後にすぐ無くなっております。
 そういう長い経験を経ながら,次の2枚目でございますけれども,これは戦後からでございます。戦後から40年代はもう過剰収容が最大の課題であったという年代でございました。それと,もちろん終戦後復興という日本国として大きな仕事があったわけでございますが,行刑の分野におきましてもいろいろな施策が打ち出されております。いち早く新憲法が昭和21年に発布されましたのと期を同じくしまして,「監獄法運用の基本方針ニ関スル件」,これは先のこの会議でも御披露申し上げたかと思いますが,ここで「人権尊重」,「更生復帰」,「自給自足」という大きな三つの柱を掲げて,これは戦後の行刑宣言というふうに言われております。
 それから,当時アメリカの矯正の思想というのが,非常に大きな影響を受けております。(Correction)と書いてございますけれども,正確には矯正保護という意味なのでしょうけれども,私ども矯正に限って申し上げますと,これらの影響を受けまして,書いてございますような宗教教誨の在り方,それから受刑者の分類の在り方を少し詳しくしよう。ここで初めて医療刑務所あるいは女子刑務所,こういう処遇を特化した施設ができ上がっております。そのほか,教育的な考え方を更に推し進める策としまして,視覚,聴覚に関する規程,それから通信教育実施基準,それから被収容者に対する篤志家の面接指導基準。これはイギリスのプリズン・ビジター制度が手本になっているというふうに聞いておりますけれども,こういった手法がどんどん取り入れられております。
 昭和20年代から41年までは過剰収容の時代でございました。そんな中にありまして,その戦後の復興とあわせて一つの大きなこの時期最も重要な動向というのが,この真ん中のちょっと上に「初の在監者訴訟(昭和29年)」と書いてございます。大阪拘置所の当時被告人が,刑務所長を相手としまして行政訴訟,民事訴訟を提起したということであります。これまで訴訟というのは一度もなかったわけでございますけれども,これが起きるということになりまして,最終的に大阪地裁の方から一部違憲判決が出されたというふうなことがありまして,非常に衝撃が走りました。こういう訴訟に関して我々がなれていなかったということもありますし,ことごとくこれまでよしとされてきた業務についていろいろ司法判断がなされたというようなこともありましたので,非常に全国的に影響が大きく及んだというところがございまして,それともう一つは軒並み訴訟が起こった,急激に局面が変わってきたというようなこともございまして,現場職員の士気の低下やそれから保安体制の弱体化というようなところにも影響を及ぼしてきたというような背景がございました。
 そのことが,赤く白抜きのいろいろ事件を三つほど述べておりますけれども,こういった広島地方あるいは松山刑務所での大きな暴動ないし紊乱事件というのを誘発させる原因にもなってしまったということが言えるかと思います。もちろんその一方で,武道とか護身術,身柄を安全に確保するための保護房の整備でありますとか,そういう手当てをもちろん一方でやっておりましたし,訴訟に慣れていなかった職員のために訟務の実務の担当者の養成というようなことも一方では行っておりました。
 そういった中で,監獄法の施行規則の一部改正というのも同時に行なわれております。いろいろ訴訟で問題になったこと等が,この施行規則の一部改正には反映された一つにもなっているわけでございますけれども,ここに四つほど掲げておりますが,こういった制限事項の廃止ないしは解除,こういった措置が図られております。
 それからもう一つは,昭和41年を境にしまして過剰収容という状態が次第に緩和しつつあった時代に,公安事件というのが非常に盛んになりまして,この事件関係者が多数収容されるということになりました。所内で組織的に執拗にその条件闘争が行なわれたというようなことが歴史的にあるわけでございますが,これも矯正にとっては非常に大きな出来事でございました。最終的には昭和50年,52年にクアラルンプール事件,ダッカ事件という非常に衝撃的な事件がありまして,この際に刑罰の執行として身柄を収容しておりました都合11名の被収容者が身柄を人質解放のためにとられたという,慙愧にたえない痛恨の事態が発生しております。
 それから一番下に,「受刑者分類規程」というのを書いてございます。昭和23年に受刑者分類調査要綱というのを作っておったのですが,更に処遇の個別化でありますとか収容分類というのを定めるという動きがありまして,ここで一つ体系づける手続の改廃が行なわれております。
 次は3枚目でございますが,昭和50年以降は,もうこれは主として監獄法の全面改正に向けた動きが本格化した時代でございます。既に御案内のとおり,法制審議会に諮問いたしまして答申をちょうだいいたしまして,前後3回国会に上程いたしましたが,諸般の事情でいずれも廃案という結果になっております。法案そのものは成立を見ておりませんけれども,これで非常に大きな副産物と申しますか,この時期の監獄法改正の機運が高まった時代に,この改正作業そのものが当時の行刑運営に大きな影響をもたらす結果となっています。つまり,全国的な視野から行刑運営の現状を再点検する機会にもつながったということでございます。そのことが,後の行刑運営の改善というふうに黄色いマークの上に黒字で書いてございますけれども,さまざまな措置が図られまして現在に至っているところでございます。
 その後,いろいろ我々刑務官の職務規程でありますとか,懲罰の手続規程,それから身柄が拘置所,刑務所に入った場合に当該被収容者に対していろいろ告知し,あるいは指導する事項についてはっきりした規程が設けられました。そういう所要の改善がなされているというところでございます。
 このペーパーに載せておりませんけれども,平成5年にはいわゆる刑務官の組織を,より保安の管理から処遇面の充実を期する意味で,職員の専門官制の導入というのが図られております。これは平成5年でございますけれども。それから平成14年には,平成4年ぐらいから始まりました過剰収容,外国人が非常に増えてきたというようなことも受けまして,平成14年には国際受刑者移送法というのが国会で成立をして,現在に至っているというところでございます。
 以上まとめますと,130年間をちょっと駆け足で御説明申し上げましたけれども,つまり私たちの行刑というのは処遇改善と秩序維持の歴史ではなかったかと思います。いかに被収容者の処遇の充実を図るかということに相応の腐心をしてまいりましたし,一方で,そうはいいながら折に触れまして矯正は手痛い痛恨の出来事を経験してきております。それなりの理由があっていろいろやってきたわけでございますが,そこの処遇の改善といわゆる規律の維持という,そのバランスをどこで軸を置くかということに非常に苦労して今まで至ってきたということが言えるのではないかと思います。
 それともう一つ,触れておりませんけれども,当時いろいろ辛酸をなめた経験をした職員が,世代交代によりましてだんだんやめていっておりまして,戦後教育を受けた新しい職員が入ってきておりますし,一般職員もそうでありますし,それから幹部もそうでありますけれども,そういった中で平成13年ぐらいを契機にして過剰収容が今始まってきておりますけれども,いかに行刑運営をすればよいかということが今後の問題ではないかというふうに思います。
 非常に駆け足で恐縮でございましたが,会議での御議論の参考になればと思います。以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ただいま行刑史の,ヒストリーでございますが,御説明がありました。大変参考になることが少なくないと思いますけれども,時間の関係等もございますので,この問題については今事情の説明を受けたということで,次に進んでまいりたいと思います。

3.分科会検討状況について

○宮澤(弘)座長 次と申しますと,これから約小1時間ございますので,各分科会長さんの御報告といいますか説明といいますか,御報告をここで承っておきたい。そしてまた,それについて委員の皆様方の御意見の開陳もお願いをいたしたい,こういうふうに考えております。そこで,三つの分科会の会長さんに,これから分科会の審議の現状なり,そのほかのことについてお話を願いたいと思いますが,時間の関係もございますので,大体1分科会の会長さんに10分程度で,分科会の状況等のお話を願いたいと考えておりますので,どうかひとつ御協力をいただきたいと思います。
 そこで,宮澤第1分科会長,第1でいらっしゃいますので,まず宮澤会長から第1分科会の審議の状況なり,現状なり問題点なり,そういうことを中心にお話を願いたいと思います。お願いをいたします。
○宮澤(浩)委員 それでは,私どもの分科会が議論をしました問題点,主要な問題点を中心にして御紹介をしたいと思います。皆様のお手元に「検討状況」という,第5回,第6回の主な論点及び論点を整理した第5,第6回分科会についての資料,この2点がお手元にあると思います。これに従って御紹介をいたします。
 10月30日に第5回の分科会をいたしました。ここにありますように,被収容者の生活担当制の在り方,刑務作業の在り方という,ある意味では今回の事件を契機として世間的にも関心のもととなった刑務所における被収容者のいわゆる処遇の中心的な論点というものを,かなり詳しく議論をいたしました。それから第6回の11月10日では,保護局から鈴木観察課長が出席をしてくださって,保護と矯正とのかかわりなどを念頭に置いた審議をいたしました。それから,これは本来なら刑法改正というところで正面から議論すべきテーマでありますが,懲役刑と禁錮刑の単一化,これは当改革会議の正面の話題ではありませんけれども,しかし処遇の在り方とのかかわりが非常に重要な問題がございますので,これについて議論をし,そして処遇に関する議論を踏まえまして,今の処遇制度の見直しという点で,いよいよ第2ラウンドに入る議論をいたしました。
 まず被収容者の生活についてでありますけれども,私どもとしては重要と思われる論点といたしまして,現在では運動時間が30分ぐらいであるという事実について,それでは短過ぎるのではないのか,少なくとも1日1時間の運動時間を確保するような方向でもって,全体としての処遇の在り方を見直すべきではないのか,また,運動制限の理由が,どうしても現在の実務での至上命令である1日8時間の刑務作業を確保すべきだという,この問題での金縛りがあるとすれば,それは作業時間というものを考慮する必要があるという,そういう根本的な認識に立ちまして,刑務作業時間を短縮すること,特にその作業につく受刑者の特性,個性というものを考慮したフレキシブルな刑務作業時間というものを考えるべきではないかというような点を論じまして,大体の委員の御了解がなったところであります。つまり,運動場であるとか職員配置の制約があるとすれば,その設備の増設とか必要な定員の確保ということを考える方が筋ではないかというのが,一致した意見であります。
 そして,処遇生活の中で,居房内に所持できる物品,これが言ってみれば物入れというようなものの制限ということもあるのでありますけれども,その物品の範囲について,保管箱に入る限度で自由にするべきだという御意見と,雑居の受刑者の間で所有物品に,その量に極端な個人差が出るということは,個人的な感情のあつれき,もつれを生じさせるおそれがあるので,やはりそう貧富の差というとおかしいのですが,受刑者の持ち物の量の差というようなものを自由にするということはいかがなものだという点が対立いたしまして,この点については両者の立場がそれぞれ主張し合ったというところで御了解いただきたいと思います。
 それから,処遇に関連しましては担当制というものがあります。日本の担当制というのは非常に日本的な人情が発揮できるという,そういう利点があり,従来のような状況であればうまく機能したのではあるけれども,現在まず物理的な意味で過剰収容が非常に問題である。更には,受刑者の質といいましょうか,いろいろな考え方の非常に多様な,そういう受刑者によって構成されるような状況になりますと,担当制ということが当該担当職員に過大な負担が生じ,一人の担当者の責任と権限というものをもし余りにも強く認めると,そのことによる弊害が生じかねない。そういう点から考えると,今の現実に従来のやり方が果たして適用できるかという点で,限界があるのではないか。そして,犯罪白書等でも指摘されておりますように,非常に処遇が困難な受刑者が多くいるという現状を考えますと,一人の担当が責任と権限を持つ,そこに集中させ,そこに任せるということにしますと,かなり問題であるから,場合によってそのような現状を若干改め,組織的に対応する体制というものを考えるべきではないのかという意見が,大体において委員の間で一致したところでありました。
 それから刑務作業の在り方についてでありますけれども,作業賞与金につきましては,諸外国にも例が,先ほどの御報告でも出てまいりましたけれども,実質はともかくとして,やはり名目上賃金というふうに位置付け,御褒美というようなニュアンスのある補助金という言葉に変える必要があるのではないか,このような御意見が一方でありました。これに対して,他方,国費によって食費とか医療費が賄われ,ある意味では丸抱えになっているような受刑者に対して賃金というのはいかがなものか。したがって,作業賞与金という限度でこの制度を若干手直しするということはあっても,これを賃金制というふうにするのはおかしいのではないかという非常に強力な御意見がありましたので,この点についての意見の一致はありませんでした。
 それから,刑務作業の基本的な在り方。これは先ほど申しましたように,1日8時間ということを絶対的なものとして維持するのは,今の現状上適当ではない。受刑者によっては短縮すべき場合もあるのではないか。作業にかわる治療,カウンセリング,宗教活動,あるいはスポーツといったような処遇を実施することをまず考えた上で,作業時間を決めればよいのではないか。あるいは奉仕作業など社会が求めている作業,あるいは経済的に合わないからといって放置されているような,例えば環境に関する作業,環境浄化に関する作業といったようなものを刑務作業にかえて考慮するといったような余地はないだろうか。また,職業訓練というのは社会復帰のために有用でありますから,現行の制度を手直しして職業訓練に従事する,その者の絶対数を増やすべきである。こういう意見,これが大方の一致を見たところであります。
 仮釈放につきましては,先ほど申しましたように,保護局から御質問をいただいて,この運用がやや消極的過ぎるのではないかという意見が示されたわけであります。そしてこの仮釈放を合理的に運用するため,刑務所に常駐する保護観察官の数を増やす。矯正と保護の間での連携を密にする。施設内から社会内へと円滑に移行することを可能にするような,そういう制度を考えるべきではないのか。仮釈放の事務負担を軽減するために,調査書の簡略化など,仮釈放手続を簡素化する必要があるのではないかという意見が示されました。
 単一刑につきましては,これは行刑改革会議の役割を越える問題ではあるけれども,処遇としての刑務作業の在り方について見直すべきであるという論点で,この点を合理化すべきであるという意見で一致いたしました。
 それから,処遇制度の根幹といたしまして,薬物中毒者,性犯罪受刑者等々,それに特化した処遇,教育プログラムを実施すべきである。そのために要する人員とか施設の体制について,これを積極的に整備するべきである。きめ細かな処遇を施すために,せめて薬物中毒者について,それを集めて収容するということを実施すべきである,あるいは来日外国人については,処遇プログラムを強化する等々を考えるよりも,受刑者移送を積極的に推進すべきである。こういう意見が示されたわけであります。
 非常に駆け足で申しわけありませんでしたけれども,以上第1分科会の検討状況についての御報告を終わります。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。今御報告があったようなやり方で,第2,第3ということをこれからお願いをするわけでございますが,大変駆け足でとおっしゃって,短時間に問題の所在なり何なりをおっしゃることは難しいのかもしれませんが,もう少しお入れになっても大丈夫でございます。もう少し,ほんの少しですが。と申しますのは,御質疑なり御意見なりが当然ここにおいでになる方おありになると思いますが,御質疑や御意見は最後に1,2,3の分科会長さんの御報告があった後にまとめて承りたい。ただそれも,一体時間の関係でどこまで承れるか分かりませんけれども,そういうことにしたいと思います。そのことも頭に置いていかれて,第2,第3分科会長さんの御報告をいただきたいと思います。南第2分科会長,お願いをいたします。
○南委員 それでは,第2分科会の議論の経過報告をいたします。お配りいたしました「第2分科会(透明性の確保等)における検討状況」及び「第2分科会議論の整理(透明性の確保)」に従いまして報告させていただきます。
 当分科会は,前回全体会議以降に開催されました3回の会議におきまして,透明性の確保という論点に関しまして,刑事施設視察委員会(仮称),情報公開等及び内部監査,不服申立制度,外部交通の在り方について,人権擁護局,矯正局から説明を受けつつ議論を重ねてまいりました。このうち刑事施設視察委員会(仮称),情報公開等及び内部監査について,おおむね議論が集約されてまいりましたので,御報告したいと思います。
 お手元の「第2分科会議論の整理(透明性の確保)」を御覧ください。まず第1に,刑事施設視察委員会についてでありますが,目的に関しましては,まず当分科会のテーマでもあります行刑運営の透明性の確保が最重要だと考えました。その一方におきまして,適正な刑事施設の運営を援助し,かつ刑事施設と地域社会との連携を深めるということも重要な目的であると考えまして,このようにいたしました。
 次に構成でありますが,地域の市民及び専門家をもって組織することにし,その人数等についてはこの第2分科会意見に記載されているとおりでございます。
 職務に関しましては,その主なものとしては,いつでも刑事施設を視察し,被収容者の面接ができるとすること。また,定期又は臨時に会合を開催して,刑事施設の運営全般について協議し,刑事施設の長に対し意見を述べること。施設内にメールボックスを設置するなどしまして,被収容者が忌憚なく意見等を述べられるような,そういう環境を作るということ,及び視察等の結果につきまして年次報告書を作成し,法務大臣に提出するとともに,適宜の方法によりその内容を公表するようにしてはいかがかと考えました。
 そして,このような職務を行うには,刑事施設と円滑な関係を築くことが重要でありますので,視察等の職務を行うに当たりまして,規律に及ぼすおそれがある事項については事前に刑事施設の長と協議するとともに,刑事施設視察委員会におきまして内容のある協議がなされるよう,刑事施設の長が刑事施設視察委員会に対して運営状況等について報告することが必要であると考えました。
 また,次のページになりますが,刑事施設視察委員会の委員は,被収容者のプライバシーに触れることもあり得るわけでありますので,守秘義務があることとすべきであると考えました。なお,市民が委員になることを予定しておりますので,そのような委員がどのような事実が秘密に当たるかについて困惑することがないように,刑事施設視察委員会との協議や,刑事施設の職員からの説明等を通じて判断できるようにすることが必要だと考えております。ここに「みだりに漏らしてはならない」と「みだりに」という字を入れたのは,そのような趣旨でございます。
 次に,情報公開及び地域との連携についてでありますが,情報公開については,基本的な立場として行刑運営の透明性を確保するため,行刑に関連する情報の公開を進めることが重要と考えました。まず第1に,主な訓令,通達については,ホームページに掲載するなどの方法により公開をする。第2に,収容人員等の収容状況や所内生活の手引きなどの処遇関連情報については,適宜の方法により公表すること。第3に,刑務所での死亡事案については,適宜の方法により全件を公表するということが必要であるとの意見でまとまりました。
 次に,地域との連携でありますが,行刑運営の透明性を確保するため,刑事施設における行事に地域住民に参加してもらったり,地域の有識者等から講話をしてもらうなどしまして,いわば刑事施設に地域社会を招き入れる努力をするとともに,例えば刑事施設の長が地域社会で刑務所について説明をするなど,刑事施設の側からも情報を発信していくことによって,地域社会との交流を更に活発化することが必要だと考えました。
 更に,第3の内部監査についてでありますが,刑事施設の適正な運営を期するためには,自浄能力を高めることがまず重要であると考えられます。現行法上,刑事施設の運営の実情を実地に監査する制度として,巡閲という制度がありますが,この巡閲制度の運用を見直しまして,法務省部内の刑事施設の監査の充実強化に努めることが必要だと考えました。
 具体的には,まず第1に現行の巡閲では,実地監査と情願の聴取を同時に行なっていますが,これを切り離すことにします。第2に,職員を増員しまして,刑事施設の実地監査を担当する専門職員を配置すること。第3に,刑事施設の実地監査の状況を公表するということが必要だと考えたわけです。
 以上,御説明いたしました論点につきましては,当分科会の議論が集約されたものとして御報告させていただきました。そのほか検討中の論点としまして,なお不服申立制度,外部交通の在り方がございます。
 まず不服申立制度について出ました御議論について申し上げますと,不服審査機能は執行機能と分離しておくことが必要である。情願が多数寄せられている現状では,苦情と不服申立てを分けるなど,不服審査機関が関与すべき案件の範囲を限定すべきではないか。刑務所で問題とされる行為には一過性のものも多いことから,違法の確認のような形式があってもいいのではないか。不服申立機関や処理期間や処分結果を告知する義務を課するなども検討すべきである。また更に,不服申立てをした受刑者の不利益取扱いの禁止であるとか,申立ての秘密取扱いについても明確にすべきであるなどの意見がございました。
 また外部交通の在り方については,主に面接,信書の発受及び電話について議論がなされました。主な議論を申し上げますと,まず犯罪を犯し,更生のために隔離されている以上,外部交通が制限されることは当然だが,監獄法制定当時とは状況が異なっており,時代に適応した制限を試行錯誤で検討していくべきである。次に,親族との面会について,面会時間や回数等を増やすべきである。面会室の構造を改善すべきである。面会時の職員の立会いについても,少し緩和していく必要があるのではないか。刑務所に収容されたことによって,社会との接点を絶つのではなくて,友人,知人との外部交通を認めるなどして接点を維持していくべきである。弁護士会あての信書が検閲されれば,被収容者が萎縮し真実発見がおくれるおそれがあるので,少なくとも弁護士会あてに発信する信書については検閲をやめるべきである。電話については,相手方を確認する方法がなく,その点は問題である。電話については認めていくべきであり,その範囲や条件が問題となると思う。成績優秀者のみを対象としようとした法制審議会の議論を前提としていいのか,疑問である。一般人に,刑務所内に収容されている者との外部交通の仕方について広報すべきではないかというような御意見がございました。
 不服申立制度及び外部交通の在り方については,今後議論を深めまして,次回の全体会には当分科会の議論を御報告するつもりでおります。
 第2分科会の経過報告は以上でございます。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。
 それでは第3分科会,高久会長さんお願いします。
○高久委員 第3分科会の検討状況を御報告いたします。
 第3分科会は2回にわたって開かれておりますけれども,刑務官の研修等について。これは矯正局からの説明を受けました。その後,人的・物的体制の整備,職員の執務環境の改善,職員の人権意識の改革,この三つのテーマにつきまして,分科会の中で討論が行なわれました。お手元に「議論の整理」とありますけれども,少し長い報告になっておりますが,かいつまんでお話ししたいと思います。
 まず最初に,施設の新設・増改築等でありますけれども,現在の過剰収容を解消するためには,収容定員の大幅な増加が何よりも必要である。それから,先ほどの第1分科会でもお話がありましたが,薬物中毒あるいは覚せい剤後遺症者の治療的な処遇施設を含めて,被収容者の特性に応じた集禁処遇体制を整備する。そのためにも,施設の大幅な新築並びに増改築が必要不可欠である。しかしながら,現在は施設費予算は法務省全体で190億円しかない。ところがこの大幅な増改築のためには,概算いたしまして毎年約700億円の施設整備を要するということから,ここでも説明がありましたけれども,施設の整備,維持,管理,運営等を行ういわゆるPFI手法を積極的に利用するなどして,限りある予算の中で対応していく必要があるだろう。しかしながら,PFIによる施設の整備を行うに当たっては,部分的に民間に委託をするにしても,運営の最終責任はあくまでも国が負うということを分科会では確認いたしております。
 更に,現在法務省では男女合計1,000名規模の初犯受刑者の施設をPFIの手法によって整備,運営することを念頭に置いて,現在民間とアドバイザリー契約を締結したところでありますけれども,その検討の結果もあり,見てみたいと考えております。繰り返しますけれども,このようなPFIの手法を取り入れたとしても,国が公権力行使の責任を負うことと,処遇レベルの低下を招かないということに留意をする必要がある。また新施設の整備に当たっては,一人当たりのスペースを広げたり,あるいはさまざまな部屋の改善を加えると同時に,集団生活が困難な被収容者が現在増加をしているということを考えまして,欧米の例のように独居房の占有率を増加させる必要がある。そのような設計の段階で民間の知恵をかりるなどして,少数の職員が効率的に被収容者を管理できるような工夫をすることが是非必要である。
 2番目の2ページ目でありますが,人的体制の整備でありますけれども,被収容者のかなり急速な増加に伴いまして,職員一人当たりの受刑者の負担率は急激に増加をしている。現実に有給休暇の取得は職員にとっては困難になっていると同時に,職員の負担増加に対するストレスが職員の勤務上の余裕をなくすなどして,それがまた事件を起こす要因の一つになったものと考えられる。そのことを考えますと,刑務官の大幅な増員が分科会としては必要であると考えています。
 職員一人当たりの受刑者の負担率は,現在4.1に増加していますが,これを例えばアメリカ並みの3.1にすると仮定をするならば,職員は約1.5倍に増やす必要がある。概算いたしますと,6,500名の増員が必要である。また,先ほど第1分科会で作業の時間のことが問題になりましたが,現在一人の工場担当職員が70人以上の受刑者を管理している状況を,適正規模の40人程度とするならば,やはり職員を増やす必要があるということで,先ほども申し上げましたけれども6,500人から6,700人必要がある。しかしながら,このような大幅な増員を提案するということは,一部に焼け太りと称されるような批判があるということで,国民の理解を得て改革を進めるためには自助努力も必要であって,徹底した業務の効率化を進めるとともに,さまざまな業務,例えば運転業務とか炊事,洗濯,掃除などの業務,あるいは夜間の巡回などなど,あるいは会計経理業務に至るまで,可能な限り民間委託を推進することによって,実際に処遇を担当する刑務官の確保に努めるべきである。そういうことを差し引いても,すなわち民間の委託を積極的に行い,また業務の効率化を図ったとしても,今後数年間,例えば5年間に1,000人規模の刑務官の増員が必要不可欠であるということが,分科会のメンバーの共通した御意見でありました。また,一部の提案としては,即戦力となる刑務官OBの再雇用などもあわせて考慮すべきであるという御意見がありました。
 このような刑務官の増員と同時に,医師,看護師を初めとする医療スタッフが大幅に不足している現状が認められること,あるいは更に薬物中毒あるいは精神状態に問題があり,処遇困難となっている被収容者が急増しており,こうしたものに対するケアが極めて重要であることから,心理技官,ソーシャルワーカー等のスタッフの増員も不可欠であるということであります。
 次に,3ページ目の職員の人事管理の在り方ということでありますけれども,現在男子刑務所に勤務する職員は,ほとんどが男性であるが,欧米の例のように女子職員を配置することによって被収容者の緊張を緩和させ,処遇上の成果を上げることが期待される。したがいまして,男子刑務所において勤務する女性刑務官を増加させることも検討すべきである。しかしながら,女性刑務官を配置する場合に,入浴の監視とか夜間当直など,女性刑務官としては従事できない業務がありますので,当然刑務官の数を増やす必要がある。更に,同一施設に複数の女性を同時に配置するとか,あるいは幹部職員にも積極的に女性を抜擢する,あるいは産休代替職員の確保,その他女性が勤務しやすい状況,そのような環境の整備が不可欠である。
 更に,刑務所の職員自体に業務のストレスが蓄積しやすいということ,さらに超過負担状況にあることから,精神的な問題を起こす職員が少なくない。そこで,先ほどは被収容者に対するカウンセリングとか心理療法といいますか,心理的な対応が必要と申し上げましたけれども,刑務所の職員自体に対するカウンセリングなども積極的に行なうことによって,職員に精神的な余裕を持たせ,これがひいては被収容者に対してより適切な接し方をすることになると考えるという御意見がありました。
 次に,刑務官の労働基本権について少し御議論がありまして,一部の委員から団結権の保障-国家公務員法によって団結権の保障がないけれども,刑務官については職員団体を結成し,当局との交渉権を保障して,その待遇改善することが,ひいては受刑者の人権を尊重することとなるという御意見もありまして,それに対しては必ずしもそうではないのではないかという御意見もありました。いずれにせよ,この団結権の問題につきましては,警察,消防等とともに国家公務員法制全体の問題であるということから,結論には至っておりません。
 最後に,職員の人権意識の改革ということでありますけれども,これはさまざまな形で職員に対して研修などの形を通じて人権教育を直接行なう必要がある。また刑務所の透明性を高める,先ほど第2分科会でもお話がありましたが,そのことによって職員の人権意識を高めることができるのではないか。刑務官としても,この透明性を高めることによって外部の人の目に自分たちの職務をさらすことになりますので,人権に気を配らざるを得ないという状況が起こる。ひいてはそのことが,職員の人権意識の改革につながるものであるというふうな御意見がありました。
 更に,人権意識を高めるためには,刑務所の中で日々に起こるさまざまな事象をもとにしたロールプレイイングとか,模擬監獄を利用して受刑生活を長時間体験するなどのプログラムを研修の中に取り入れる。そういうことによって,刑務官が被収容者の立場に立って感じ,かつ考える機会を与えることが必要である。更に職員の人権意識の改革のためには,他の施設等にも異動して,他の施設での取扱いなども見聞することも必要ではないか。あるいは特に一般の職員についても,例えば昇任などの機会を利用して他施設に異動させるなどして,少なくとも一度は別の施設の執務に触れる機会を持たせるよう,職員の異動を行なうべきであるという御意見がありました。幹部については,むしろ逆に異動の間隔を現在よりも長くする必要があるのではないかという御意見でありました。
 更に,刑務官は一般に,ともすると閉鎖的な環境の中でおり,そのために世間の常識と離れた考えを持つようになる可能性もあるので,刑務官が他の職種の勤務を経験することが有効と考えられ,長期間こういう経験を積ませることは現況から考えて現実的ではありませんけれども,例えば初等科,中等科,高等科等の集合研修の中で一定期間,例えばサービス業など他の職につかせることは十分可能である。更に刑務官を海外の行刑施設に一定期間派遣して,外国での処遇の在り方に触れさせるといった方策も有効と考えられるという御意見がありました。
 以上であります。
○宮澤(弘)座長 ありがとうございました。分科会の会長さんお三方,御発言がありましたので,先ほど申しましたように,御発言のあったものあるいはそれに関連をしたもの,何でも結構でございますけれども,この際是非発言をしておきたいとおっしゃる方は,そうたくさん時間があるわけではございませんが,若干時間がございますので,御発言をいただけたらいいと思います。ただ,おそらくおいでの方は皆さんいろんな意見をお持ちで,全部の方が俺もしゃべりたいとおっしゃれば,ちょっと収拾がつかなくなることがあると思いますが,そういう場合も考慮いたしまして,意見交換は一定の,やはりある程度でやめなければ,ちょっとこの会議がもちません。そういうこともございますので,どうか,そういう意見がおありになる方は今週中に事務局に,この前もお願いをいたしましたけれども,事務局に書面で提出をしていただきたい。そうすれば,それを各分科会にお伝えをして,次回の分科会の議論に役立てていただくことが可能だと思います。それだけ付言をいたしまして,まだ若干時間がございますから,この際是非ひとつ自分の生の声を言いたいとおっしゃる方は,御発言をいただきたいと思います。
○瀬川委員 第1分科会なのですけれども,仮釈放の在り方について,これまで消極的に過ぎるのでということで,積極化されることは非常に賛成ですし,大いにやっていただきたい。また,もっといろんな御議論をしていただきたいと思うのですが,第2分科会の委員の立場から言いますと,手続面の問題ですね,これは非常に大きな問題だと思うのです。簡素化するというのは賛成なのですけれども,一方で適正化の観点から是非議論いただきたいと思うのです。特に公正さの確保も含めまして大いに仮釈放手続の議論をしていただきたい。例えば仮釈放を認めない場合に理由をどういう形で受刑者に伝えるのか,明示するのかという点です。仮釈放については,受刑者の最大の関心でもあるわけですから,今回行刑改革の中でも,受刑者の法的地位という問題ですね,この点を考える上で是非お考えいただきたいということ。以上です。
○江川委員 第1分科会に,やはり私の意見というかお願いというか,こういうことも検討していただきたいということなのですけれども,この2ページ目の仮釈放の制度の在り方についてなど,この全体を通して,施設内処遇から社会にどういうふうに円滑にもっていくかということの立場からお考えになり議論されていると思うのです。その観点で,職業訓練のことについても触れられているのですけれども,やはり社会の中に円滑に移行していくということを考えると,職業だけではなくていわゆる生活力というのですか,そういうことについても,もしできれば触れていただければという気がします。例えば更生保護施設の方なんかに話を聞いてみても,特に男性の場合は食事を自分で作ることもできないというようなことで,アルコール依存症の人がコンビニ弁当なんかに飽きてしまって,結局居酒屋へ行って御飯食べて,それでまたアルコールで問題を起こすとか,そういうようなこともあって,特に生活がきちっと自分で確保できなければ社会の中でまた生きていくということが難しい。特に犯罪を犯すと家族から縁が切れてしまう場合もあるのでということだったので,申し上げました。
○宮澤(弘)座長 この際発言をしたいとおっしゃる方,おいでになりますか。
○久保井委員 意見というよりも御質問なのですけれども,第1分科会で,前回の全体会議で出ておりましたけれども,軍隊式行進はやめることになったのでしょうか。
○宮澤(弘)座長 いかがでございますか。第1分科会でそういう議論が出て,どういう方向で。
○宮澤(浩)委員 まだ御質問が出るのでしたら,出るのを待ってお答えしたいと思いますが,いいですか,今までの御質問に対するお答えだけでよろしいですか。
○宮澤(弘)座長 時間がとにかくあと20分ぐらいで,その中でお互いが納得するような議事運営をしたいと思っているわけでございます。
○宮澤(浩)委員 それでは,どうも第1分科会が一番,紹介が簡単過ぎたのかもしれませんけれども,実はいろいろなことを議論しまして,特に皆さんにお伝えしたいものに絞って,しかも10分でやろうというのを12分ぐらいでやったものですから舌足らずでありましたけれども,まず第1の,公正さを確保するためにどういう方策をという質問に対しては,実はこういう分科会方式又は行刑改革会議というその制約というのは,非常に議論するのに困難なたがになりまして,非常におかしな話でありますけれども,矯正と保護との連携プレーというような非常に難しい問題を議論するのに,やはり主としては行刑畑の方,事務局の御意見などを伺いながら我々の意見をぶつけるというようなことをしましたために,なかなか保護の実態がしっかりとつかめて議論できなかったということがあります。実はよく聞いてみますと,矯正の方も保護のことを余り御存じない,保護の方も実は矯正のことを御存知ないというところに,この問題の根幹があるようでありまして,公正さの確保という点についても,矯正としては保護がどういうような仮釈放についての判断をしたかという情報が必ずしもきちんと伝わるシステムではないようなのですね。今度は保護の方は保護の方で,矯正がどういうような基準でもって保護の方へ仮釈放の予定者の書類を上げていくかということについても,必ずしも風通しのいいような連携がないというような関係で,そこでどうしても我々委員としては判断するのに時々悩み苦しむことがあるわけです。
 現場ではどうかということを実は議論のところでは出ませんで,ちょっと調べていただいたわけなのですが,仮釈放の申請が棄却された場合,受刑者への告知というのは現在では矯正施設の分類部門の幹部職員が口頭で行っているということなわけです。それから告知内容の詳細等については,実は余りきちんとまだ確認できないわけであります。ですから,そういう微妙な矯正と保護との連携プレーの実態につきまして,もう少し詰めて議論をしました結果を,次回報告させていただきたいと思います。
 次に,生活力をつける云々ということは,現在のいわゆる処遇分類で言いますと,御存知と思いますがガイダンスというG級というのが圧倒的多数なのです。その生活指導をするというガイダンスの内容も,実を言いますと,分かったようで分からないわけなのです。ですから我々としましては,実質的にそれぞれの受刑者の特性に応じて適切な処遇というものを実現するにはどうしたらいいかというような,そういう点の細かい詰めの議論は実はできていないのです。江川委員に申し上げたいのは,例えば生活指導をする男子の矯正職員が,うちへ帰って食事を作るかというと,ほとんどはそんなことができないわけです。そうすると,できない人ができない人にできないことをやらせるということは,これはちょっと矛盾になるわけでありまして,私としては,私個人は何でもできますから,全然そのことを意識もしないで洗濯もするし食事もしますものですから,ちょっとそういうことを議論のタネにしなかったわけなのですが,そんなことまで言い出すと,この委員会は空中分解する可能性がないわけではありません。そういうわけで,よく意見として伺いまして,先ほど言いましたような本当に個人の実情に応じて所内でもってどういう社会復帰のための処遇をするのかということを,もう少し煮詰めて議論するべきなのかどうかということも含めて,次回までに議論したことをお答えしたいと思います。
 最後に,軍隊式行進云々という問題でありますが,行刑改革ということで,余り細かいところに立ち入るのもいかがかという御意見もないわけではありませんでしたけれども,この問題につきましては社会的な常識,社会的に今そういうようなことが,かつて我々が少年時代なんかでは,もう学校の朝礼でも何でもすべてが号令で動いていましたけれども,今の学校生活ではおそらくそういうことはないでしょうし,一般の職場でも朝礼するところも少ないでしょうが,朝礼が終わってから部署へ帰るときに号令かけて行ったりならんだりするような習慣というのはほとんどなくなっているだろうというようなことも皆で議論しました。そこで,社会の通念が許すようなそういう行動というようなことを考えるべきではないかという抽象的な表現でもって議論したのです。ほかの部会の委員から,そういう細かいところにまで一応,例えば具体例としてこうだというようなことまで答申として言うべきかどうかということについて,もしコンセンサスが得られるならばそういうことをいたしますけれども,余り細かいことを提案の中に盛り込むことはどうかというのが,我々第1分科会の委員たちの間での一種の自己抑制の議論でありました。
○宮澤(弘)座長 一般論でございますが,もちろんまだ議論を煮詰める余裕がある,またなければいけないと思います。
○宮澤(浩)委員 前々回か何かの会長の言葉の中に,戦争中に軍隊経験をした者としては非常にショッキングであったという個人的な述懐が我々の心にドスンと来ておりますけれども,それはそれといたしまして,やはり我々分科会としての案を作るときには,やはり余り細かいことを入れますと,かえって今度は現場の方で困ってしまうのではないかなということも実は考えた……。
○宮澤(弘)座長 正直に申しまして,本当に私はびっくりしたのです。刑務所を視察する一員に加えていただきまして,何をやっているだろうと思って,本当にびっくりいたしました。
○菊田委員 あの軍隊式行進というものについては,私の感触では,ああいうオイチニオイチニはもう絶対やめましょうということは皆さん一致したと思います。ただ,例えば風呂へ行くときに何人か一緒に行くのについて,ただ勝手にぞろぞろ歩くというようなことはどうか。普通どおりに行けばいいじゃないかということについては,皆さん意見は一致したと思いますので,いわゆる軍隊調というのはもうやめましょうということで一致したというふうに理解しています。
○宮澤(浩)委員 先ほどの社会常識の範囲内においてというのが,実はそういう意味が入っている。
○菊田委員 これはやめましょうということははっきりした。
○宮澤(浩)委員 というのは,我々委員の中には座長代理もおられますし滝鼻委員もおられますし,そういう社会常識の権化のような方々がいらっしゃるわけでありますから(笑声),その方々は当然オイチニオイチニがいいなんていうことはお考えにならんという最低限のコンセンサスがあるわけです。ただ,それを提案として書くにはどうかというと,軍隊式はやめましょう,あるいは腕を45度に上げなんていうような,そういう細かいことまで入れるというようなことを提案はできないだろうということから,先ほど言いましたようなところにまとまった。
○宮澤(弘)座長 おっしゃるように,どこまで入れるかという問題は非常に重要な問題です。
○高久委員 第2分科会の御報告の中で,刑務所での死亡事案については適宜の方法により全件を公表するとありますけれども,これはプライバシーの問題等はどういうふうにお考えになられるか……。
○南委員 これはプライバシーに反しない限りということです。
○高久委員 それはある程度プライバシーに関する,ただ数とかそういうふうな報告をするだけではほとんど意味がないので,現実に意味のある公表ということになりますと,その点が非常に問題になるのではないかと思うのですけれども。
○南委員 「適宜の方法により」と書いてありまして,そこではプライバシーに反しない限りということが含まれていると理解しております。
○宮澤(弘)座長 時間がある,あると申し上げましたけれども,余りもうございませんので,もしお許しを得られれば,この議論は今日はこの辺で終わりにいたしたいと思いますが,先ほども申しましたように,書面で事務局の方に出していただくということは,やはり御主張の一端が残っていくということでございましょうから,そういう利用の仕方もあるということを再度申し上げておきたいと思います。

4.その他

○宮澤(弘)座長 そういうことで,今日の議論はこの程度にいたしておきますが,次回のことも含めて,大体こちら事務当局でも考えておりますことをちょっと申し上げたいと思うのですが,次回の全体会は12月8日の午後2時からという,ルールに従えばそういうことになります。その際に,今日もお話をしていただきましたけれども,各分科会の検討状況について御報告をいただきたいと思っております。そして事務当局といたしましては,最終的なそろそろもうやはりそういうことを考えていかなければならないタイミングになってまいりましたので,最終的な提言の骨子というものを作りまして,皆様方の御議論の対象にさせていただきたいという考え方を持っておりますので,そのことを御報告をいたしておきたいと思います。
 誠に,時間がある,あると申しましてなくなってしまいました。恐れ入りますが,今日はこれで閉会にいたします。ありがとうございました。―今スケジュールのことを私申し上げましたので,もう少し先のことを申しますと,最終的な提言の取りまとめのため,12月15日及び22日に全体会を開催することといたしたいと考えておりますので,御承知おきください。
 それでは,これで今日の会議は散会にいたします。ありがとうございました。


午後4時55分 閉会
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