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更生保護のあり方を考える有識者会議(第9回)議事概要

1 日時

平成18年2月20日(月)午後2時から午後5時30分まで

2 場所

最高検察庁大会議室

3  出席者

(委員等,敬称略)
(座長)野沢太三(社団法人日中科学技術文化センター会長・元法務大臣),(座長代理)金平輝子(日本更生保護女性連盟会長・元東京都副知事),(委員)佐伯仁志(東京大学法学部教授),佐藤英彦(前警察庁長官),瀬川晃(同志社大学法学部教授),田中直毅(21世紀政策研究所理事長),堀野紀(弁護士),本江威憙(公証人・元最高検察庁公判部長)(委員・50音順)
(法務省)
 三ツ林隆志法務大臣政務官ほか
(事務局)
 麻生光洋事務局長ほか

4  議題

(1) 中間報告に対するパブリックコメントの結果について(事務局説明)
(2) 「保護観察官の意識に関する調査」の結果について(事務局説明)
(3) 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案の提出について(事務局説明)
(4) 仮釈放のあり方について(取りまとめ)
(5) 重大再犯事件の概要について(事務局説明)
(6) 重大再犯防止のための指導監督のあり方について(意見交換)

5  会議経過

(1) 事務局から,中間報告に対するパブリックコメントの結果(別紙1【PDF】),「保護観察官の意識に関する調査」の結果(別紙2【PDF】),及び犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案(別紙3【PDF】)について,それぞれ説明したところ,以下のような質問等がなされた。
・  地方更生保護委員会の委員の上限に係る規定は,下位法令に委任してもよいのではないか。
(回答 :地方更生保護委員会については,その位置や合議体の数等については政令又は訓令で定められているが,人数については法律で定められている。同様の指摘は国会議員からも受けており,検討したい。)
・  パブリックコメント等によれば,保護司は一人一人の対象者の心の中に入って改善更生を促すことが喜びという意見が多かった。また,保護観察官は,再犯防止という社会的目的に貢献すべきという意見がある一方で,人員不足を指摘する意見が圧倒的に多かった。体制の強化が強く求められている。
・  パブリックコメントにはたくさんの意見が寄せられたが,関係者が多く,純粋な一般人からの意見は少ないようだ。更生保護に対する国民の関心の薄さがパブリックコメントに表れていると思う。
(2) 第8回会議で意見交換を行った仮釈放のあり方等について,野沢座長が取りまとめ(案)を示したところ,各委員から次のような意見が述べられた。
・  仮釈放の理念については,仮釈放を積極化するという方向性で合意が得られていると解釈してよいのか。仮釈放のあり方について,何を変えようとしているのか,具体的な方向性が不明確である。
・  事案に応じてメリハリをつけることが重要であり,積極化するか否かということを一律に考えるべきではないだろう。仮釈放の対象を増やすとか減らすという視点から議論すべきではないと思う。
・  満期出所者が増えると総体として再犯が増える可能性があるので,慎重に判断しつつも,可能な限り社会内処遇の機会を拡大することが望ましいと思う。
・  許可基準については,単に見直す方向で検討を加えることにとどまらず,基準の具体化のための努力をしてほしい。
・  行動科学的な観点も含めて,許可基準を精緻化するための努力をすべきである。
・  更生保護ももう少しエビデンス・ベイストを重視していくべきである。
・  エビデンス・ベイストの観点からは,法務省令に定める許可基準のうち,「悔悟の状」「更生の意欲」「再犯のおそれ」の3つは,独立したものとは認められない。もう少し明確化すべきではないかと思う。事例をもとに共通の要素を見出す努力をすべきだと思う。
・  実証可能な許可基準を作った方がよいとの指摘については,もちろんできるならその方がよいと思うが,本当に作れるのだろうかと懐疑的に思う。
・  生活状況等基準化できる要素もあると思うが,再犯のおそれや本人の心理的性向等は基準化することが困難ではないか。こうした要素については将来的な課題として止めざるを得ない。
・  理念に基づく方向性という観点から許可基準をとらえるべきであり,そのためにどういう風に判断されたのかという透明性を図ることが大切である。許可基準で解決することはできないと思う。
・  心証を客観的に集積すると客観的な基準になる。だから,許可基準と同様に,誰が判断しているのかという委員構成が重要になってくる。こういう人たちが判断したのなら信頼できるということにしなければならない。
・  地方更生保護委員会の委員構成については,透明化を図るために民間人を参加させることは良いことだと思う。
・  透明性を図り,国民の信頼や理解を得るためにも,第三者機関の設置を考えてほしい。
・  第三者機関の設置は,説明責任という意味ではあってもよいと思うが,委員会制度は専門性を重んじたものなので,第三者機関の権限や性格について慎重に検討する必要があると思う。
・  地方更生保護委員会の委員は,原則として全件面接を行う規定になっているが,重大再犯事件を起こすおそれのある者等慎重な判断をする必要がある事案もある。委員の絶対数が不足している現状では,この規定を改め,メリハリをつける必要があるのではないか。
・  受刑者本人の主体的な関与という観点から,本人に申請権を付与することは困難かとも思われるが,仮出獄申請を棄却した場合には,口頭でなく書面で告知を行うべきであり,かつ,これを一部の矯正施設ではなく全施設で行うべきである。
・  仮釈放は,もともと矯正施設からの申請に基づいて行われているものであり,その意味からも許可基準の相互理解等,矯正と保護との連携のあり方を検討すべきではないか。
 以上の意見交換を踏まえ,仮釈放のあり方等について,別紙4【PDF】のとおり取りまとめることで合意し,許可基準等については更に検討を継続することとされた。
(3) 事務局から,本会議立ち上げ後に起きた重大再犯事件について追加説明をした。
 その後,重大再犯防止のための指導監督のあり方について,事務局から,(1)重点的に保護観察を行うべき対象者を的確に選択するための分類の精緻化,(2)保護観察官の接触頻度の明確化や処遇プログラムの実施等による処遇内容の明確化と充実化,(3)関係機関との連携の強化,(4)遵守事項違反や所在不明に対する適切な対応の必要性などを説明した上で,重大再犯防止のための指導監督のあり方について意見交換が行われたところ,各委員から次のような意見が述べられた。
 なお,説明及び質疑応答等のうち,個別の事件に関する部分については,非公開とする旨の決定がなされた。
・  現在は,更生意欲が強く認められる者に対する保護観察と,満期で出所させるよりは社会内処遇の期間を設けることにより再犯可能性を低くすることを期待した保護観察との2種類があるとの印象を受ける。運用基準を別にするなどしないといけないのではないか。
・  満期で出所させるよりも再犯可能性を低くすることができるという観点から仮釈放し,保護観察を受けさせるというのでは,実態と仮釈放許可基準がかけ離れている。実態に基準を合わせる必要があると思う。
・  再犯可能性を低くするために,満期出所の直前に保護観察に付すということであれば,施設内処遇の一環として中間処遇的なことを実施する等,これまでの伝統的な保護観察とは異なる方法を考えた方がよいのではないか。
・  満期出所者は,支援もないままに刑務所から出所することになり,住む場所の確保や就労の斡旋等,むしろ支援が求められている。満期出所者に対して何らかの支援を行うことを考えてもよいと思う。
・  無職者の再犯率が有職者に比べて約5倍ということから,自立・自活できる仕組みを矯正の段階から組み立て,更生保護に引き継ぐことが大切である。
・  保護観察を実施する上で,重大再犯のおそれが高い事案について検証が行われるべきである。
・  重大事件の背景について,ライフヒストリーの観点からも検証してほしい。
・  重大再犯事件があった場合に,保護局で検証をしているのであれば,その結果を公開してほしい。個々の事例を公開してほしいとは言わないが,公開することが更生保護に対するプラスの評価にもつながると思う。
・  重大再犯事件の分析によれば,所在不明になることと無職であることが大きな要因ということだが,諸外国で導入が進んでいるGPS装置の活用状況等を事務局で調査し,報告してほしい。
・  保護観察官については,再犯防止ひとつとらえても,その意識の差が大きい。また,再犯防止に関する保護局の方針も不明確なのではないか。この機会に,犯罪者予防更生法第1条の目的規定を改正し,再犯防止を明記することについて検討してほしい。
・  再犯防止を明記すれば解決する問題ではなく,保護観察官の使命感も大切である。保護観察官の採用や育成等について検討する必要があるし,24時間365日の執務体制ということも理解できるが,それに見合う体制整備等を行う必要もある。目的規定の改正だけが先走りしないようにしてほしい。
・  保護観察官の意識改革が必要だという指摘はもっともだが,上から押し付けるものではないと思う。増員配置をしながら,こういう仕事をしてくださいという説明が必要だろう。
・  パブリックコメントの結果,保護司等の関係者の中に再犯防止を強調することに対する抵抗感が強いことが判明した。更生保護制度の改革には保護司等の理解が必要であり,保護司組織等との話し合いを進めながら検討する必要がある。
・  重大再犯防止のために保護観察官の直接的な関与を強化するということであれば,理想的な姿としてどれだけ保護観察官が必要なのか具体的な数字を提言に明記することが重要だろう。

6  今後の日程等

次回は,平成18年3月14日(火)午後2時から開催する予定。


(文責 更生保護のあり方を考える有識者会議事務局)

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