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更生保護のあり方を考える有識者会議(第11回)議事概要

1 日時

平成18年3月29日(水)午後2時から午後5時10分まで

2 場所

法曹会館「富士の間」

3  出席者

(委員等,敬称略)
(座長)野沢太三(社団法人日中科学技術文化センター会長・元法務大臣),(座長代理)金平輝子(日本更生保護女性連盟会長・元東京都副知事),(委員)佐伯仁志(東京大学法学部教授),佐藤英彦(前警察庁長官),瀬川晃(同志社大学法学部教授),田中直毅(21世紀政策研究所理事長),堀野紀(弁護士),本江威憙(公証人・元最高検察庁公判部長),桝井成夫(読売新聞東京本社論説委員)(委員・50音順)
(法務省)
 杉浦正健法務大臣ほか
(事務局)
 麻生光洋事務局長ほか

4  議題

(1) 刑務所出所者等の自立更生の支援について(更生保護施設のあり方)(取りまとめ)
(2) 保護観察における新たな制度(権限)の導入について(意見交換(前回の続き))
(3) 全国保護司連盟からのヒアリング
(4) 更生保護における官民協働のあり方(保護司制度等)について(意見交換)

5  会議経過

(1) 前回(第10回)の会議で意見交換を行った刑務所出所者等の自立更生の支援,特に更生保護施設のあり方について,野沢座長が取りまとめ(案)を示したところ,各委員から次のような意見が述べられ,引き続き検討することとされた。
・  公的な更生保護施設を設置するという方向性について異存はないが,その後の受け皿となる仕組みがないため,障害等を抱えた犯罪前歴のある者をいずれ放り出すことになるのではないか。そこから先の繋ぎまで考えないのは無責任だと思う。
・  更生保護施設が行う処遇に対する支援として,科学研究費の制度に倣い,優れた処遇プログラムに予算をつけることを検討してはどうか。
・  現在の更生保護施設の職員は更生保護官署や矯正官署のOBが大半であり,うまく機能しているが,入所者と同世代の職員がいることも必要である。将来性のある職員を雇用できるよう,単に「必要な予算措置をすべき」とするのではなく,もう少し具体的な方法を考えてもらいたい。
・  更生保護施設に対する保護観察官の関与が以前より消極化している印象を受ける。入所者が問題を起こすのは深夜から明け方であり,保護観察官の夜間駐在や宿泊駐在を増やし,関与を積極化することが必要である。
(2) 保護観察における新たな制度(権限)の導入に関し,事務局から,中間報告に記載されている(1)接触義務の明確化,(2)立入調査権,(3)生活状況等報告義務,(4)居住指定制度,(5)処遇プログラムの受講の義務付け,(6)簡易尿検査の義務付け,(7)特別遵守事項の付加・変更の各事項について説明した上,意見交換が行われたところ,各委員から次のような意見等が述べられ,次回以降も引き続き検討を重ねることとされた。
・  接触義務の明確化により,往訪受忍の義務があることを規定した場合,どの範囲まで対応することとなるのか。玄関先だけでなく部屋まで入ることが可能だとすれば,立入調査権は不要である。
・  保護司からは接触義務の明確化や立入調査権の導入についての要望があった。実際に行使するかどうかは別として,こうした制度や権限を導入することによって保護観察が実施し易くなる面があると思う。
・  接触が確保できない対象者への対策として,接触を義務化することは問題ないと思うが,立入調査権の導入は,現状からあまりにも進みすぎているし,相当性についても疑問がある。保護観察の充実強化という枠を超えている上,保護観察の性質そのものを変容しかねないことから,好ましくない。
・  行政手続上の立入調査権の目的は報告聴取であり,この限度で立ち入っているということになるのだろうが,更生保護の分野で立入調査権を導入する目的は何か。
・  保護観察官と保護司の役割分担のあり方を決める前に,立入調査権を誰が行使するか等について議論するのはいかがか。
・  保護司であれ,保護観察官であれ,立入調査権の導入は,本人の改善更生にとってむしろ阻害要因になるのではないか。立入調査権を導入する前に,いかに監督や観察,指導を充実化するかということではないか。
・  これまで対象者に接触義務がなかったことは不思議であり,これは問題である。今後は対象者の接触義務を明確化し,違反があれば仮釈放等を取り消すという仕組みにして自覚を促せばよい。
(3) 全国保護司連盟の谷川和穂会長等から,中間報告に対する意見として,別紙【PDF】により説明がなされた後,以下のとおり質疑応答等がなされた。
・  意見書の3頁に,「74.8%の保護司が,保護観察官による処遇指導の充実を非常に大切であると回答して」いるとあるが,具体的にどういうことを充実してほしいと思っているのか聞きたい。
(回答 :保護観察の状況は,毎月経過報告書を提出して保護観察官に知らせているが,もっと保護観察官に対象者と面接してほしいと思う。そうすれば,現在よりも保護観察官と保護司が意思疎通を図れるようになる。また,保護観察官の異動が頻繁であることも問題である。もう少し考えてほしい。)
・  保護観察官の専門性について,保護司はどう考えているのか。
(回答 :以前の保護観察官は,おおざっぱな人が多かったのに対し,最近は心理学や社会学を学んできた優秀な保護観察官が増えてきた。こうした流れは,保護司にとって非常に有り難いことであり,更に進めるべきだと思う。)
・  夜間,対象者のことで保護司が警察から呼ばれることがあると思うが,その際,保護観察官への連絡はどうしているのか。
(回答 :保護観察官に連絡することはない。保護司ができることは保護司がする。ただし,女性の保護司の中には,きちんとした体制を整えてほしいとの要望もある。)
・  対象者との面接場所の確保について触れているが,具体的にどういう場所を考えているのか。
(回答 :具体的にどういう場所ということまでは考えていないが,特に女性の場合には,面接場所の問題から保護司になることに二の足を踏む人がいる。バブル崩壊後,地域によっては,使っていない建物を抱えているところもあるので,地方公共団体の協力が得られれば,予算がなくても何とかなるのではないかと思う。また,面接場所としてだけでなく,保護司会の事務局も兼ね備えた更生保護センターのように使えればという気持ちもある。)
・  保護司適任者の確保が困難であるとあるが,公募制に対する考えを聞きたい。
(回答 :現在進めている「保護司候補者内申委員会モデル地区」事業も,ある程度公募のスタイルになっている。保護司組織の透明化を図る観点から,公募制の導入は避けて通れないと感じており,どういう公募にするのかを考えていく必要がある。)
・  保護司(組織)に対する地方公共団体の協力は地域によって様々である。更生保護は国の責任でやらなければならないが,地方公共団体に協力してもらうことができれば,大きな力になると思う。保護司法第17条に地方公共団体の協力に関する規定があるが,これを義務規定にしてもよいのではないか。
(回答 :地方ではコミュニティをいかすことが可能だが,大都市ではなかなか難しい。国も地方公共団体も協力して,どうやって新しいコミュニティをつくれるかという大切な時期にきているのだと思う。)
・  地方公共団体の協力に関連して,保護司としての法務大臣からの委嘱に加えて,地方公共団体も何らかの委員として委嘱をしたらどうかという提案があるが,どうか。
(回答 :保護司は,これまで地域から身を隠してきたが,最近になって,前に出るようになった。今後はもっと地域に出るべきだと思う。)
・  “社会を明るくする運動”では,保護司はポケットマネーを持ち出していると聞くが,それはどんな場合なのか。
(回答 :例を挙げれば,“社会を明るくする運動”の一環として,講演会を行うときに,講師料が充当できないということがあった。
 また,企業が無償で会場を貸してくれる場合もあるが,これは実質的には寄付である。もっと企業の協力が必要だと思う。現在は,保護司(組織)に寄付しても免税の対象になっていない。企業が保護司(組織)に協力できるような制度をつくってもらいたい。
 さらに,更生保護の意義を理解し,地方公共団体や地域住民に協力してほしい。その意味でも“社会を明るくする運動”は重要である。中間報告には,イベントが負担になっているという表現があったが,地域の関係機関・団体と連携をとる場でもあるし,更生保護について理解してもらうよい機会であり,イベントも大事である。)
・  被害者支援施策について触れているが,更生保護の仕事をよりよくするためには,加害者支援も被害者支援も一体として取り組むことが必要だと思うがどうか。
(回答 :被害者支援の話が出た当初は,保護司が加害者も被害者も対応するのは無理だという声が多かったが,最近では地域で同じように悩んでいる被害者を,保護司として支援したいという声が多くなった。なお,加害者を担当する保護司と被害者を担当する保護司を,別の組織にする等の意見については,消極である。)
・  修復的司法についてはどう考えるか。
(回答 :修復的司法の考えは,更生保護の目的に適うものであり,積極的に考えていくべきだと思う。ただし,その力量が保護司にあるかどうかは今後考えていきたい。
 誰かが被害者の立場に立つことが必要だし,被害者の感情の融和を図ることも大切である。これまでは守秘義務もあって,保護司はできるだけ表に出ないようやってきたが,いよいよ取り組むとなったら,新しい知恵を出し,やっていく方向で検討すべきだと思う。)
・  意見書の最後に,「予算の裏付けのない改革は,組織論から考えても頓挫する可能性が高く,現状の改善につながらないものと思われる」とある。また,「改革を十全に実行できるだけの保護観察所の体制整備が図られるよう,保護観察官の増員を含め,その趣旨を明確に盛り込まれたい」との記載があるが,この点が全国保護司連盟の意見の中核を成していると理解してよいか。
(回答 :先進諸外国を見ても,社会内のマイナス要因をどう押さえるかというところで苦労している。国の資源をどう使うかという視点から提言してほしい。)
(4) 時間の関係で,更生保護における官民協働のあり方(保護司制度等)についての意見交換は,次回(第12回)の会議で行うこととされた。

6  今後の日程等

次回は,平成18年4月13日(木)午後1時15分から開催する予定。


(文責 更生保護のあり方を考える有識者会議事務局)

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